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【資料】神秘主義の系譜【探索】

207名無しさん:2013/07/23(火) 00:26:37
>>206


 アマテラスの伊勢遷座の由来は《日本書紀》に語られている。神と人との同殿共床をはばかって宮廷内にまつられていたアマテラスをいったんは倭笠縫邑(やまとのかさぬいのむら)にうつしたが,よりよき宮処(みやどころ)を求め,皇女倭姫命(やまとひめのみこと)が御魂代(みたましろ)(神霊の代りをするもの)となって遍歴した末,大和の東方伊勢度会(わたらい)の地に鎮座させたという。伊勢神宮の成立は,諸豪族中の一氏にすぎなかった天皇家の祖神が国家的最高祖神に転化することを意味した。天皇家と諸氏族の支配服従関係は擬制血縁関係をもって表現されていたからである。伊勢神宮には三種の神器の一つである八咫鏡(やたのかがみ)がまつられている。この鏡は,ニニギ降臨の際,アマテラスが太陽神にふさわしくみずからの御魂代として授けたものである。ヤマトヒメによる伊勢遷座にはふれていない《古事記》では,鏡にかんする話がかたがた神宮起源譚にもなっているらしい。

[アマテラスの前史――ヒルメ]  ところで,この神には前史がある。広大無辺な,政治性をおびたアマテラスという名の神格がいきなり成立したわけではない。この神は《日本書紀》《万葉集》などで〈ヒルメ〉ともよばれている。日の妻(め),すなわち日神に仕える巫女の意である。巫女は仕える男神に依(よ)り憑(つ)かれ,その子を生む母神として神話化される。そこでヒルメは日の神に感精して神の子の母となり,その子が支配者の地位を確立するにつれ,母自身が日の神に昇格してアマテラスとなったと説かれてきた。さらにヒルメが仕えたのは高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)だという説もある。この神は国譲り神話や天孫降臨神話でアマテラスと並んで采配をふるう男神だが,《日本書紀》ではこのほうが主役になっているおもむきもあり,皇祖とすら書かれている。しかしあきらかに父系観念が強化されつつあった記紀編纂当時,タカミムスヒであれなんであれ,父神を退けて母神が国家的祖神の座につくためには,よほど強力な契機が必要であったろう。その点の説明がないので,上の説は説得力十分とはいえない。このような点からみて《日本書紀》におけるタカミムスヒは,それを貫く律令制的精神にもとづいて新たに前面に押し出されたものではないかと思われる。

 アマテラスはしだいに中性化していくとはいえ女神の面影も残している。ヒルメからアマテラスへの転化の過程あるいは古代日本の王権神話で女神が国家的至上神になりえた理由は,問題点として残っている。                倉塚 曄子

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