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本のブログ(2013年から新規)

717korou:2023/12/15(金) 12:15:22
大脇利雄「フェレンツ・フリッチャイ」(アルファベータブックス)を読了。

この本の出版元であるアルファベータブックスという会社が
近年数多くのクラシック音楽家の本を出している
貴重な出版社であることが分かり
さらに、中川右介氏が創業した出版社であることを知って
そのことも驚きの一つ。
フリッチャイのような必ずしも絶大な人気を誇っているわけではない指揮者について
さらに専門家でなく、その指揮者のファンであるという一般人の著作を
こうして企画し出版する心意気には
敬意を表さざるを得ない。

そうして出来上がったこの本は
中身も素晴らしく
さすがに長年のファン(フリッチャイのサイトの運営者でもある)だけのことはある。
知りたいことはほぼ書き尽くされていて
逆にこれ以上のことは推測でしか分からないだろうと思われる。
フリッチャイの命を奪った病名は
一般に言われる白血病とは断定できず
むしろ悪性リンパ腫と考えたほうが辻褄が合うという最後のコラムなどは
従来の見解を覆すものであり
こうした研究成果は広く知られるべきだろう。

まあ、フリッチャイに興味ない、そもそも知らないという人には
何の価値もない本ということになる。
伝記だから仕方ないけど。

718korou:2023/12/28(木) 17:50:24
笹山敬輔「昭和芸人 七人の最期」(文春文庫)を読了。

またまた笹山氏の著作をゲット、県立図書館の書庫から出してもらって借りた本。
七人の昭和芸人とは、エノケン、ロッパ、エンタツ、石田一松、シミキン、金語楼、トニー谷のこと。

個人的には
金語楼とトニー谷の晩年のテレビでの姿しか判らないわけだが
一般的にも、この本が出版された時点(文庫書下ろしで2016年刊行)で
これらの芸人のことを事細かく書けるほどリアルタイムで観ていた人は
皆無ではないかと思う。
その意味で、まさに
二次資料を駆使して見事な文章を組み立てる笹山氏の面目躍如たる本なのである。

「最期」とはいえ、きっちりとその生きざま、活躍の概要が簡潔にまとめられていて
そもそもがあまり詳しい生涯が語られなくなった人たちばかりなので
それだけでも貴重なのである。
もっと他にもいろいろと書いてほしいと
切に願うばかり、それ以上のことはない。
見事な複数伝記本。

719korou:2023/12/29(金) 10:29:20
田山力哉「世界映画俳優全史 現代篇」(社会思想社)を読了。

トイレ本として読了。
いまはなき社会思想社の映画シリーズとしてほぼ最新版といえるが
現代篇と銘打ちながら1984年頃までの映画俳優について語っているわけで
今となってはレトロ編といえるだろう。
メリル・ストリープ、トム・クルーズなど
2023年の現在でも大活躍を続けている例もあるが
その大半は80年代もしくは90年代の活躍で終わっていて
なかには何で取り上げているんだろうと疑問な人選も
ないではないが
個人の著作なのである程度の偏りは免れないところ。
そして、田山氏ならではの仏映画偏愛の傾向は
この著作でも顕著で
女優偏愛の傾向も全然改められていないのは
もはやご愛嬌という他ない。
そういう独断と偏見も
この方の著作の大きな魅力といえる。

さて、次は何を読もうか。

720korou:2023/12/29(金) 10:40:45
(2023年読了本① 1月〜9月)
(1月)
ナシ
(2月)
宇佐見陽「大リーグと都市の物語」(平凡社新書)
(3月)
宮崎勇・田谷禎三「世界経済図説 第四版」(岩波新書)
池上彰・佐藤優「真説 日本左翼史」(講談社現代新書)
(4月)
池上彰・佐藤優「激動 日本左翼史」(講談社現代新書)
安西巧「歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想」(日経プレミアシリーズ)
池上彰・佐藤優「漂流 日本左翼史」(講談社現代新書)
(5月)
半藤一利・池上彰「令和を生きる」(幻冬舎新書)
(6月)
中川右介「社長たちの映画史」(日本実業出版社)
中川右介「アニメ大国建国紀 1963-1973」(イースト・プレス)
早川隆「日本の上流社会と閨閥」(角川書店)
(7月)
中川右介「プロ野球『経営』全史」(日本実業出版社)
(8月)
中川右介「世襲」(幻冬舎新書)
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 女優篇」(社会思想社)
(9月)
本多圭「ジャニーズ帝国崩壊」(鹿砦社)
木村元彦「江藤慎一とその時代」(ぴあ)
西崎伸彦「海峡を越えた怪物」(小学館)

721korou:2023/12/29(金) 10:42:10
(2023年読了本② 10月〜12月)
(10月)
井沢元彦「日本史集中講義 1〜3(大活字本)」(大活字)
猪俣勝人・田山力哉「世界映画俳優全史 男優篇」(社会思想社)
(11月)
川島卓也「ユニオンズ戦記」(彩流社)
岸宣仁「事務次官という謎」(中公新書ラクレ)
二宮清純「証言 昭和平成プロ野球」(廣済堂新書)
連城三紀彦「悲体」(幻戯書房)
笹山敬輔「興行師列伝」(新潮新書)
(12月)
竹中功「吉本興業史」(角川新書)
笹山敬輔「ドリフターズとその時代」(文春新書)
大脇利雄「フェレンツ・フリッチャイ」(アルファベータブックス)
笹山敬輔「昭和芸人 七人の最期」(文春文庫)
田山力哉「世界映画俳優全史 現代篇」(社会思想社)

<計28冊>

722korou:2024/01/03(水) 15:02:05
ルーベルト・シェトレ「指揮台の神々」(音楽之友社)を読了。

ユンク君サイトで話題になっていたので
県立図書館の書庫からリクエストして借りた本。
苦手の翻訳ものだったが意外と読みやすく
450pを超す分厚い本ながら短期間で読み終えることができた。

ハンス・フォン・ビューローから始まる指揮者列伝で
普通なら次はニキシュになりがちなところを
ハンス・リヒターをその間に挟むところが
いかにも分かってらっしゃるというセンスを感じる。
ニキシュの後にマーラーというのもさすがだし
そこでやっとトスカニーニの登場と相成る。
以下、ワルター、クレンペラー、フルトヴェングラー、クナと続き
さらにベーム、カラヤン、バーンスタインという流れ。
最後にラトルへのインタビューとなっている、
叙述は妙にバランスを崩してまでは詳しくもなく
かといって押さえるべきところはきちんと押さえてあって
なかなか信頼に足るバイオグラフィーだと感じた。

特に、ビューロー、リヒター、ニキシュ、マーラーあたりは
詳しい生涯を知るところが無かったので
新鮮でタメになった。
いい感じの佳著である。

723korou:2024/01/15(月) 16:44:57
ベン・リンドバーグ&トラヴィス・ソーチック「アメリカン・ベースボール革命」(化学同人)を再読。

2回目の読書となる本書。前回は、次に予約が入ってしまい、500p近いこの大著を大急ぎで読む羽目に陥ったのだが、今回は
年末年始の貸出期間長期となる期間を利用して、さらに2週間の貸出延長もかけて、じっくりと読むことができた。
前回は、最初に読んだ衝撃ということもあり、この本に書かれたいろいろなMLBでの変化について、初めて知った喜びが強すぎた
かもしれない。今回は割と冷静に読むことができ、こうしたMLB内での「革命」を過大にも過少にも評価できるようになったよう
な気がする。

この「革命」の最大の利点は、超一流選手は才能、という従来の決定論のような思考を覆して、一流に近い才能さえあれば、より科学的
にベースボールを追求することによって、誰でも超一流選手になれるということが実際に証明されたことである。超一流選手が増えれば
それは間違いなく野球界全体のレベルアップにつながり、今まで見たことのない新しい世界が開かれるはずだ。

一方、この「革命」は、野球のアスリートとしての側面だけを一気に改善する流れなので、野球そのものの競技としての側面には一切
関係なくなっていく。イチローはそれが言いたかったのだろう。でも、競技としての野球のレベルアップは、今のMLBだとかなり
難しいのではないか。より優れたアスリートになろうとする努力は、おそらくMLBレベルにまで達した選手であれば、ほぼ全員が
その方向により良くなろうとするだろうが、野球という競技のなかで頭脳を発揮する方向により努力しようとする選手は、どうしても
限られてくるのではないだろうか。残念ながら、近代スポーツはどうしてもその方向に発展しがちだ。それは他の競技でもそうなのだ。

また、こうした努力が、結局若い選手の早期育成につながることによって、その反作用として高年俸の選手の排除につながり、選手に
とっていいことばかりではなくなり、一方的に球団の財務が潤うだけという批判もある。その一方で、この流れが定着すれば、高年俸の
選手であってもまだまだ進化していくということでもあり、この点はまだ進行中の事実ということで結論には至っていない。
そして、そうした努力の最先端にいたアストロズの球団ぐるみの不正行為は、いかなる努力でもある程度の良識抜きだと皆が納得する
「革命」にはなり得ないということを明らかにしている。少なくとも野球界の外部では、厳しいコンプライアンスが要求されている現在
において、結果だけを追い求める姿勢は社会からは支持されないわけで、それに加えて、ファンあってのプロスポーツである以上、あま
りに極端な「革命」にならないよう、今まで以上に慎重に検討されるべきだろう。

今回の読了ではそんなことを考えた。そして、この本が名著であることに変わりないと再度思った。

724korou:2024/02/01(木) 16:57:30
大見崇晴「『テレビリアリティ』の時代」(大和書房)を読了。

笹山敬輔氏の著作からこの本の存在を知り、
さっそく県立図書館で書庫から出してもらって借りることに。
読了後の印象としては
思ったほど整理された本ではなく雑然とした叙述だったが
部分的には優れた考察も見られる好著ということになる。

戦後日本でスタートしたテレビという媒体を
「民主化を促す」媒体という本来の設立趣旨と
コンテンツ自体が内包している「エンタテインメント」としての性格に二分するとともに、
それらが自ずから両立し得ないものであることから
1970年代の「あさま山荘」実況中継のあたりから
「エンタテインメント」としてより
「ダダもれ」としてのドキュメント性のほうが優位になるという考察。
視聴者と制作者がお互いにお互いを必要とする日本のテレビ独特のコンテンツが形成され
そして、それが21世紀になって、ネット全盛時代に引きずられるかのように
双方向性、コメントする視聴者と
「やらせ」のないコンプライアンス重視のドキュメントスタイルの番組を作り続ける制作者との双方向性、
そして、それは「ニコニコ動画」のようなスタイルにすぐ馴染む日本独自の感性を生んだ、という考察。

しかし、この本の後半に頻発する「環境環境」という言葉などはあまりに抽象的で
この本の前半の分かりやすさ(萩本欽一の役割の強調、そして彼の復権をもくろむ叙述)に比して
後半の抽象的な難解さには閉口した。
前半の叙述だけでうまくまとめていればもっと面白い本になっただろうけど
著者が素人文学ファンということから、それは難しかったのかもしれないが。

725korou:2024/02/11(日) 12:31:42
マイケル・チャーリー「ジョージ・セル」(鳥影社)を読了。

480ページに及ぶ大著で、さらに優に100ページ以上あると思われる注釈・参考データが末尾に続く
稀代の名指揮者ジョージ・セルに関する伝記の決定版と言える好著である。
翻訳の文章が誠実過ぎて堅苦しいこともあって
読み続けるのには苦労したが
詳しいことは何一つ伝わっていない20世紀前半から中盤にかけての欧米のクラシック音楽界の実情を
前回読了したフリッチャイの伝記と合わせて
具体的かつ詳細に知ることができたのは
読了前の期待通りとなった。
ただし、全体を通して(クリーヴランド時代以降の後半の叙述では特に)
細かすぎる記述(個々の演奏会についていちいち曲目を羅列する細かさ)には閉口した。
翻訳文体の固さと相俟って
この本を必要以上に読みにくくさせている。

そうした退屈さの合間合間に
(人としてはともかく)芸術家としては極めて誠実な人生を送ったセルらしい言葉が挿入され
それはこの本の最大の魅力となっているだろう。
そして、もう一点。
絶賛を浴びた晩年の指揮ぶりでさえ
「予測可能だった」「説教臭い」などという批判も浴びていたことも
忘れてはならない。
どんなに真剣に芸術に取り組んでいて、まして才能に満ち溢れていたとしても
それだけでは完璧な芸術にならないという、いわば当たり前の事実が
ここには示されているのである。
そして、それはセルにどうしても馴染めない今の自分には
重要な真実であるように思えたのである。

726korou:2024/03/01(金) 14:08:47
山崎浩太郎「演奏史譚 1954/55」(アルファベータブックス)を読了。

読み始めるまでは、それほど期待はしていなくて
クラシック音楽の雑学が少し増えればという程度だったのだが
読み進めるにつれ、予想に反して面白い本であることが分かった。
ちょうど、今の自分の関心が深まっている分野、時代についての著書であることが
この読書を有意義なものにしているというわけだ。

直前にセルの本を読んだので
トスカニーニ、ミトロプーロスに関する出来事、あるいは
ワルター、モントゥー。ライナー、バーンスタインについての当時の評価など
まるで復習をするかのように読むことができた。
そして、トスカニーニはもちろん、フルトヴェングラー、カラヤン、カラスなどの
この時期の詳しい動きも
的確な記述で手に取るように分かった。
さらに、吉田秀和、山根銀二、朝比奈隆などの当時の日本音楽界での立場とか
大岡昇平、福田恆存などの当時の文化人のクラシック音楽への関心など
全く新しく知ることが多かった。

意外なほどタメになる本だった。

727korou:2024/03/05(火) 17:45:23
ノーマン・レブレヒト「クラシックレコードの百年史」(春秋社)を読了。

第1部が本編で、第2部・第3部はレコード史における名盤・迷盤の紹介となっている。
第1部は読み切ったが、第2部・第3部は読了しなくてもよいと思ったので
飛ばし見程度、そういう意味での読了ということになる。

第1部だけ完全読了とはいえ
実に読みにくい本で苦労した。
最初は、自分が固有名詞を覚え切れないせいだろうと思っていたが
読み進むにつれ、叙述自体が滅茶苦茶なせいも大きいと気がついた。
段落切れも何もなく、いきなり次の行で全く違う話が続いていたりして
読んでいるほうは、それに気づくまでかなりの時間がかかるのだから。
同じ段落のなかで、最初の行だけEMIの話、その次の行がいきなりデッカの話という風に
何の脈略もなく連続しているわけだ。
訳担当者は、もっと思い切って意訳すべきで
原著の不都合な流れをそのまま翻訳してどうするのか
と言いたくなる。

書いてある内容は興味深いもので
途中から極端な悲観論に終始するのには閉口したが
それ以外は、現時点でぜひ知りたい情報、知識が大半だった。
少なくとも、レコード会社、その関係者に関する知識量は
読む前よりも飛躍的に増えたような気がする。
まあ、もっと分かりやすい本で読みたかったけれど(^^;;

728korou:2024/03/16(土) 18:01:58
戸部田誠「芸能界誕生)(新潮新書)を読了。

予想以上に面白い本だった。
いわゆる聞き書きスタイルで書かれている本なので
そのすべてが真実であるかどうかは定かでないが
この種のサブカル本については
こうしたスタイルで書かれた本が必須なのであり
きちんとした検証が不可能な場合も多いので
そうなれば、ここで書かれたことが真実に一番近い事実として
語られることになるだろう。

”芸能界”については
ここで語られたことが全てでないのは勿論で
ナベプロが興行の世界まで支配し始めた時期の直前まで
日本の興行界を牛耳っていたヤクザの存在については
この本では全く語られていない。
しかし、それ以外の
おもにテレビ時代以降の芸能界の中心的存在となった芸能プロダクションについては
ほぼ完ぺきに歴史が網羅されていて、しかも簡潔で読みやすい記述となっている。
(あと、レコード会社とテレビ・ラジオ放送局の歴史も必要だが・・ここまで書いてみて
 それが不足していたと思い当たった)

昭和、特に戦後について芸能界を語る上での
必読書ともいえる佳著であることは間違いない。

729korou:2024/03/18(月) 12:18:22
お股ニキ「セイバーメトリクスの落とし穴」(光文社新書)を読了。

ダルビッシュ投手とのやりとりで有名になった著者だが
基本的に野球シロウトとしての立場を踏まえつつ
最新の野球理論についてどう考えたらいいのか、ひいては
最終的に野球の面白さとはどういうところにあるのかについて
いろいろな観点から語っている本である。
副題に「マネー・ボールを超える野球論」とあるが
出版社などの担当者たちが
いかに野球のことに無知であるかが
この副題のつけかたに示されている。
そして、その副題を了承してしまったところに
この著者の”シロウトとしての遠慮”が見えて面白い。
マネー・ボールはセイバーメトリクスと何の関係もない。

記述は多岐にわたっていて
そのすべてを理解するには
かなりの”野球愛”を必要とする。
そして、分析面では鋭いものの
著書全体としてはまとめ方が上手でなく
結局何が言いたいのかということにもなるのだが
この種の本では、そこは目をつむって
分析の面白さを味わうべきだろう。
特に変化球の分析に関しては
他に類のない見事なもので
ハッキリ言って全部理解することは難しいのだが
一読の価値はあると思った。
もう少し分かりやすいものが出ればベストなのだが
著者の次回作を待ちたいところである。

730korou:2024/03/26(火) 11:32:04
猪俣勝人・田山力哉「世界映画作家全史(上)」(社会思想社・教養文庫)を読了。

トイレ本として読了。
読む前から面白い本として分かっていたし
実際、タメになった本だったのだが
それにしても、今更ながら知らない人物も多くて
映画史全体を把握することの困難さを
改めて思い知った次第。
特に、ハリウッド以外の地域の映画人については
代表的な数人しか知らないわけで
この本に載っている人物にしても
この共著者たちが選んだ範囲内ということでしかないので
すべてが網羅されていることではないわけだ。

そんななかで
かなり古い映画について
猪俣氏が実際に観たときの感想、世評などを
具体的に書かれているのは貴重は記述だと思う。
なかなか、昭和初期の頃の映画をめぐるエピソードなど
ここまで細かく書ける人は
この本の出版時でもそう多くは居なかったわけで
まして2024年の今、それを知ることができることそのものが
奇跡のようなものだ。

というわけで貴重な読書だった。
次は下巻。

731korou:2024/04/02(火) 11:56:52
吉田光男(編著)ほか「韓国朝鮮の歴史」(放送大学教育振興会)を読了。

放送大学の講義を随時聴いている関係で
一度通史を読んでおきたいと思い
何でもいいから読みやすそうなものをと県立図書館で借りた本が
たまたま放送大学のテキストだった(借りる前には気付かなかった)という
ウソのような話。
そして、ゆっくりゆっくり読んでいって
貸出延長でさらに2週間かけて読もうと思った矢先
次の人の予約が入ってしまい延長ができなくなったので
慌てて昨日、今日で一気読みしたという経緯。
まあ、それでも落ち着いて読めたのでよしとするか。

期待通りの通史の内容、レベルで
非常に満足できる読書ととなった。
後はこのイメージに具体的な事項を追加していくことになる。
韓国朝鮮の歴史は思ったよりも複雑で
こうして通史を知ることは
すべての日本人に必要ではないかと感じた。
誤ったイメージで語られることが多すぎるので
自分としてももっと知識を増やしていく必要があるだろう。
放送大学のテキストというのは
その意味で(基礎知識の網羅。知識を身に付けるための最初のステップ)
重要な意味合いをもつと
今回の読書で認識させられた。

732korou:2024/04/10(水) 14:38:35
生明俊雄「二〇世紀日本レコード産業史」(勁草書房)を読了。

いわゆるコロンビア、ビクターなどのレコード会社について
二〇世紀における企業としての隆盛史を記した本である。
この本のあとがきで著者が書いているとおり
この種の本はほとんど書かれておらず
その意味でこの本の存在は貴重ですらある。
ただし、文章は生硬で晦渋で読みにくく
誤字脱字、単純な勘違いなどが頻出する
言ってみれば、編集者は何をしていたのかと
嘆きたくなるような本でもある。
読みにくいけど、初めて詳しく知る事実も沢山知ることができる
という類の本になる。
(それにしても、これで東京芸術大の博士論文の草稿かと思うと唖然。
 要するに、誰もこの本の中身をチェックできないということか。
 それで博士論文として幅を利かせるのはどうかと思うが・・・)

今回の読書で得た知識は膨大なものになる。
音楽雑談スレを新設した上で、いくつかそのスレでまとめて記しているが
それでもごく一部に過ぎない。
まあしつこく読み通せば、編集の不備はなんとか解決できるので
全体としては良書と言えるかもしれない。
誤字脱字、勘違いなどは、著者に全部、責があるわけでもないので。

733korou:2024/04/22(月) 18:36:45
ジョン・カルショー<山崎浩太郎訳>「レコードはまっすぐに」(学研)を読了。

実に面白い本だった。
もともとの文章がイギリス人独特のひねくれたユーモアに満ちていて
さらに訳文もその文章の特徴を十分に生かした巧みな文章になっていたので
翻訳本を読んでいるある種辛い日本語体験など
まったく感じることなく読み進めることができた。
アマゾンの評だと、訳文の間違いなどが厳しく指摘されているが
確かにそういう誤りが頻出している上に訳文も酷ければ
その指摘はそうだと思うのだけれども
これだけ面白く訳されているのだから
細かい間違いは、それはそれでグッと腹に収めておくのが
読書人の良識というものだろう。
誰かと厳密な議論をするわけでもあるまいし。

この本でもし残念なところがあるとすれば
カルショーが自身の仕事ぶりについて
あまりに謙虚で、自慢すらしない書きっぷりなので
客観的にみてカルショーの評価はどうなのかが
さっぱり分からないことだろう。
幸いにも、カルショーを高く評価している本を先に読んでいたので
「指環」録音の偉業なども知った上で読むことができたのだが。

それにしても生々しい(笑)
ルービンシュタインのエピソードなど、本当なのだろうけど
ちょっと可哀想(爆)
この本のおかげで、(今後も多分聴くことは少ないだろうけど)
オペラなどで活躍する名歌手の人たちについて
親近感が増したのは間違いない事実。

734korou:2024/05/17(金) 16:38:45
中川右介「市川雷蔵と勝新太郎」(KADOKAWA)を読了。

やや小さめの活字なので、読むのを後回しにしていたが
ついに読書にとりかかり、一気に前半を読了。
ところが、表題の2人が映画界に入ってからの記述が
暦年別に逐一出演作品の解説ばかりになるので
次第に食傷気味となり、一気に読書スピードが落ちてしまった。
このまま途中までで読了扱いにしようかなとも思ったが
何のタイミングなのか、急にそういう記述でも面白く読める瞬間が訪れ
そこからは一気に読み通してしまった。

読み始めるまでは
勝新太郎についてはある程度知っているつもりで
ゆえに市川雷蔵のことを知りたいと思っていたのだが
こうして読み終えてみると
勝新太郎のこともほぼ知らないことばかりだったことが分かる。
読んでみて良かったと思える。

日本映画の斜陽時期にスターとなった2人だけに
輝かしいだけの人生ではなかったことはもちろんだが
それでも、ギリギリでその輝きの中心に居たとも言える。
残るは歌舞伎界の旧態依然とした慣習の酷さ(映画界の五社協定も酷いものだが・・・)が
印象に残った。
今はそこそこ栄えているが
この体質はどうなのだろうか。
そんなことまで考えさせられた読書だった。

735korou:2024/06/01(土) 21:28:45
ショルティ「ショルティ自伝」(草思社)を読了。

やや小さめの活字で読了するのをためらったが
読み続けて良かった。気持ちの良い本だった。
読後にこれほど好印象の本には
そう出会えるものではない。

ショルティの人柄が文章の隙間からにじみ出てくるようだった。
決して圧倒的な幸運と才能に恵まれていたわけではなく
20世紀の戦争と圧制と不合理な運命に苛まれた音楽家として
不断の努力を重ね、その努力を確実に成果として挙げ続けた人である。
この本を読んだ後でも
ショルティの指揮には
やはり不満は残るだろう。
ただ、それはショルティ個人への不満にはなり得ない。
それは単なる個人的嗜好の話なのだと心の底から思えるようになった。

いろいろと面白い話、蘊蓄に満ちていて
とても読後すぐにそれらについて的確な感想を書き得ない。
あと、彼の蘊蓄を彼の演奏で確かめるという楽しい作業が待っている。
何か書けるとしたら、その時かもしれないが。


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