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本のブログ(2013年から新規)

1korou:2012/12/31(月) 18:30:01
前の「本」スレッドが
書き込み数1000に近づいて、書き込み不可になる見込みなので
2013年から新規スレッドとします。
(前スレッドの検索が直接使えないのは痛いですが仕方ない)

644korou:2021/11/10(水) 12:05:08
読了しなかった本、的場昭弘・佐藤優「復権するマルクス」(角川新書)について。

マルクスについて、資本論について、共産主義国家について、ソ連について
もっと具体的に、この2021年の現在において、もっと知りたいと思い借りてみたが
いきなり「国家と市民社会」、「マルクスと宗教」といった副次的かつ難解なテーマについて
博学な著者たちが、高度な基礎知識を前提にして語り始める本だったので
早々と読書意欲を削がれてしまった。
今日になって、全体構造を見ておこうと再度チェックしたら
第3章の「社会主義はなぜ失敗したのか」のあたりが
そこまでの難解な対話から一変して
具体的な留学時での体験を語り合う箇所になっていたので
急きょ、そこだけ読み通した。
ソ連崩壊から東欧社会の変動に至った時期まで、1990年頃までの
その地域での生活はもっと再認識されてもいい、日本では誤解だらけだという指摘は面白いと思った。
国外へ出れば自国通貨が弱いのでダメだが
国内に居る限り、意外と充実した生活、人間らしい生活が送れるというのは
意外だった。
そして第4章以降も覗いてみたが
資本論の話、マルクスの可能性の話となると、また難解、というか細かい話になってしまい
これも読むのは断念。
結局、70年代から80年代にかけての東欧諸国(主にユーゴ、チェコ)での具体的な話を読む
という読書に終わった。
まあ、それだけでも結構面白かったけれど(佐藤、的場両氏の博学が効いている)

645korou:2021/11/17(水) 11:07:10
末廣健一「岡山表町商店街物語」(吉備人出版)を読了。

何かのきっかけでスネークマンショーの桑原茂一の表町での少年時代のことを検索したときに
この本の存在に気付き、県立図書館で予約をかけたところ、すぐ貸出可になったので借りることにした。
思っていた内容に近いところもあり、そうでなく単なる個人の趣味をだらだらと書き連ねている部分もあり
特にプラモデル制作の蘊蓄を語る部分は途中で読み飛ばしたりもしたが
全体としては、この種の本がもっと欲しいと思わせる好著ではあった。
何よりも、著者が表町(上之町)で周囲の人たちに十分に可愛がられ愛されていた存在であったことが
この本の内容をかなり前向きにさせているのを感じ
自分にもしこれだけの精密な記憶が残っている環境、世代であったとしても
随分違った感じのものを書くに至っただろうと想定できるのである。
そうした現実肯定的な気分は、その後の朝日高校での充実した生活とか
自分の感性、趣味に合った職業、進路選びにもつながっているわけで
自分とは正反対の人生を送った人なのである。
そういう感性で表町を思う気持ちというのは
自分には想像もできない部分であり
その意味では大変興味深かったのだが
その反面、そうじゃないだろうという気持ちが残るのも事実である。
著者の音楽趣味が随分と軽いものであることを、この本の記述により知ることになるが
そうした数少ない欠点を知ることで、我ながら嫌味たっぷりな優越感に浸ったことも
間違いなく事実なのである。
その意味では読後感としては、読む前の予想よりはかなり違ったものにはなったが
まあ、それでも結論として好著であることも間違いない、まあ複雑なテイストだなあ、これは。

646korou:2021/11/19(金) 18:00:45
ジョン・G・ロバーツ+グレン・デイビス(森山尚美<訳>)「軍隊なき占領 戦後日本を操った謎の男」(講談社+α文庫)を読了。

岸信介のオーラルヒストリーの本を読んで
ハリー・カーンという謎の人物に興味を持ったところ
その人物についての格好の著作があるというので
すぐに借りて読んだ次第。
ある程度予測はしていたものの、想像以上に「陰謀もの」だった。
そして、陰謀論の本によくみられる欠点が、読むにつれてどんどん気になってきだして
途中からは読み続けるのが苦痛にすらなった。
これは、最近になって広瀬隆の本を読む際に感じる不快感と同質のものだった。

たしかにGHQの「逆コース」について、いろいろな関係者が暗躍したことは間違いない。
しかし、それは正式なルートでも解析可能なので、
そこを強引に非公式なラインからの解説で強調する必要はないのである。
開戦直前の日本からの対米和平工作について
いわゆる神父たちの暗躍が民間外交として知られてはいるものの
そこは、松岡外相の公式外交と近衛首相の対米外交との齟齬、及び野村駐米大使の奮闘をメインとして
そのサブストーリーのなかで神父たちを記述すればいいだけの話なのだ。
それと同様、ダレス、ドッジなどの活動、米国本土でのマッカーシー旋風などをメインとして
サブストーリーのなかでハリー・カーンたちを描いていけばいいだけの話に思えた。
この本では、マッカーサーの占領行政の方向を”反共”に変えたのは
カーン一派の功績が大きいという前提で書かれているので
終始違和感がつきまとった。
未知の人物も多く登場したが、大半はネット上にデータが存在していなくて
その点も、この本の叙述が公式に認められていないことを示すように思われた。
活字が大きいので、苦しくても読了はできたが、なかなかオススメはできない本。

647korou:2021/11/25(木) 10:44:44
「ノモンハンの夏」(半藤一利)<大活字本>を読了。

かつて活字の小ささのせいで読むのを断念していたこの名著が
大活字本で県立図書館にあるのを知り、すぐに上巻(全3巻)を借りて読んだのがこの夏のこと。
すぐに読み終わり、中巻に進み、これも読んだところで、県立図書館がコロナ禍で1か月ほどの臨時閉館となり
中巻を返却した時点で一時ストップとなる。
図書館が再開して、しばらくして行ってみたところ、全3巻全部が借りられて現物が消えているのに呆然となる。
それから2か月ほど経ち、ノモンハンへの興味というか読後の記憶そのものが薄れてきて
どうしようかと思案したが、このままではあまりに中途半端なので
再び現物が戻ってきたのを確認後、定評ある研究書と一緒に下巻を借りることにした。
その下巻を今日読み終わり、これで全3巻読み通したことになる(ただし現時点で上巻と中巻の記憶はほぼ薄れている)。
ただし、半藤氏の丁寧な記述、注釈とか、巻末の土門周平という方の全巻の内容をコンパクトにまとめた記述などのおかげで
下巻だけの記憶しかない中途半端な読書ということにはなっていないので、助かる思いである。

それにしても、読んでいてこれほど怒りがこみあげる本もなかなかないだろう。
司馬遼太郎がノモンハンの本を書き上げることができなかったのも
こういう誰もが感じる怒りの感情、それも激怒に近い感情、そうしたコントロール困難な精神状態のせいだろう。
しかも、誰もが辿ることになる、つまり、その激怒の感情がいつしか諦めの感情になっていくこと自体、自分でも許せなくなり、
そうなると、渾身の大作になるに違いないこの素材を扱うことすらできなくなる。
本当に気の毒すぎる下士官、兵卒たち、これこそ無駄死に、犬死というものだ。
日本人自体、戦争を指揮する人材を大量には生み出せない民族なのだろう。
上杉謙信、武田信玄は輩出できるが、それ以上同時代には生み出せないのだろう。
そう思うしかない、こんなヒドい高級軍人ばかり見せつけられては。

648korou:2021/11/26(金) 15:58:39
岩城成幸「ノモンハン事件の虚像と実像」(彩流社)を読了。

ノモンハン事件に関する最新資料が網羅された話題作ということだったが
実際に読んでみると、著者が元国会図書館職員ということもあって
全体の脈絡が不明というか漠然とした最新情報源の羅列ばかりの本だった。
もちろん、ゾルゲとの関連、石井部隊の活躍など
他の類書ではあまり見たことのない項目も多く
その点は参考になったのだが
肝心の事件概略について記述した部分が皆無なため
そもそもノモンハンで何があったのかについては
同時進行で読んでいた半藤さんの著作に頼るほかなかった。
同一テーマについて複数の研究者がそれぞれの視点から論を深める、といったタイプの本は
よく見かけるが
これは一人で書かれた本であり、なおかつ、
第一章に「村上春樹と司馬遼太郎のノモンハン事件」、第二章が「ノモンハン事件の主要文献、研究動向」ときて
第三章に「ノモンハン事件の概要と敗因」とあるのだが、そこには概要についての記述がほぼなくて
第四章で「同事件の見直しと歴史上の”もし・・”」とあるのに、大した「もし」の記述がなく
第五章以下は、自分の調べ得た範囲のみの各論が延々と続くのである。
途中からは読み進めるのに苦痛を覚えたが、飛ばし飛ばし何とか300p弱を読み終えた。
入門書の延長にある本ではなく、研究者のための論文集のような趣き。

649korou:2021/11/27(土) 17:01:00
有元葉子「今さら聞けない料理のこつ」(大和書房)を読了。

少しは料理のことについて知識を広げたいと思い、県立図書館で借りてみた。
ただし、今回の本は、”レシピ以前に知っておきたい”という副題を
初心者のための本と勘違いして理解していて
実際に読んでみると、料理の初心者というより
中級者程度のある程度献立を工夫し始めている人が
今後の参考に読んでおくための本だったようだ。

ということで、実際には今の自分にはあまり役立たない本だったのだが
まあ、こういう失敗はよく知らないジャンルだとよくある話だと思い
要は、こうした感じで次々と読み進めていくことだと悟った。
沢山読んで、沢山忘れて、それでも頭に残っていった部分で
スタートしていくしかないだろう。

ということで、この本についての感想はここまで。
次回も料理の初心者用の本を探して、借りることにしよう。

650korou:2021/12/01(水) 11:29:53
嵯峨隆「頭山満」(ちくま新書)を読了。

今年になって読んだ頭山満の伝記本は
かなり頭山の思想に共鳴の深い著者の手になる本だっただけに
随所に礼賛の記述が見られて、その点で違和感も多かったので
県立図書館の新刊本コーナーで見つけたこの本については
当然ながら客観的な叙述というものを期待するところ大であった。
読了した直後の今の印象で言うと
たしかにある程度は客観的な視点も感じられたのだが
新書としての独自性を出そうとするあまり
その思想から独自のアジア主義を抜き出すことを強調し過ぎて
叙述が空回りしている点も否めない、という感じだ。
頭山翁がアジアの関心が深かったというのは事実としても
単にそうしたインド、東南アジアなどの政治面での先駆者と対面したというだけで
何かを成し遂げたというわけでもないだろう。
やはりもう少し肉付けが必要で
結局、本当のところは、たまたま出会いがあって、そこから関係を深めた数人についてのみ
少なからぬ援助を施したという程度ではないだろうか。
そうなると、ムダなことにかなりのページ数を費やした本ということにもなる。
とはいえ、なかなかコンパクトな伝記すら見当たらない頭山翁について
やっと新書サイズのきちんとした本が刊行されたこと自体は
画期的なことである。
新書であれば数年は大型書店で現物が並ぶ可能性があるので
歴史の裏道に興味がある人たちにとって便利な本となることは間違いないだろう。
一応、それだけのクオリティは備えている本ではある。

651korou:2021/12/02(木) 18:05:56
高木大成「プロ野球チームの社員」(ワニブックスPLUS新書)を読了。

今日、県立図書館で借りた本で、もう今日のうちに読了してしまった。
大きい活字で170ページ程度、文章も平易で内容も明快なので、さすがに1時間程度あれば読了可能だ。
高木大成という久しぶりに見た名前と、書名が表す明快な内容に惹かれて、借りてみた。
読んでいくうちに、これは自分にも共通する物語だなと思えてきた。
32才で最初の社会人人生というか、その職業の人生を終え
似たような感じではあるけれど、それまでの経験が直には活かせない別の職業に転じ
しっかりとそれに向き合っているうちに、その職業も自分に向いているのではないかと思え
そこからまたまたもっと知らない世界の職業に転任して、そこでもやれることはすべてやりながら対応し
今また戻ってきて、47才の今充実しているという流れは
そのまま自分の人生に重なってくる。
(ここからの人生は、自分にとってはそれほど楽しいものではなくなってくるのだが
 それは自分だけの独特な世界なので、高木氏には参考にならないだろうが)
そう思って読んでいると、おのずからページをめくる手が早くなっていくのが分かる。

まあ、そういった個人的感慨は措くとして
本の内容についていえば、西武ライオンズがどうのこうのというよりも(具体的に書いてあるのだが、実際にそれを体験できないので)
パ・リーグの最新の動向、球団同士が連携して効率的な運営の仕組みを発展させたことについて
分かりやすく書いてあるのが参考になった。
映像関係のライセンスを、球団自身がコンテンツを制作した上で、共同管理することで効率的に収益を上げているのは
素晴らしいし、今やそれは米国まで輸出できるコンテンツ、運営になっているのには驚いた。
そうなると、セ・リーグの立ち遅れが惜しいところだ。
そんな新しい知見を得ることができた。
名著という類ではないが、NPBの現状をイメージするのに最適な本だと思った。

652korou:2021/12/06(月) 20:13:38
スージー鈴木「EPICソニーとその時代」(集英社新書)を読了。

県立図書館で借りて、ゆっくり読もうと思っていたら
知らん間に予約が入ってしまい、期限内に返却しなければいけないことに。
急いで、今日一日で読了。まあ1日で読めるライトな本ではあるけど。
最初の章で、EPICソニーが出した名盤を逐一年代順に紹介、評価、コメントを行い
次の章で、ざっとEPICソニーの歴史を、特にキーとなる人物中心に記述、
最後の章で、そのなかでも特に重要な小坂洋二、佐野元春の2名へのインタビューという構成。

最初の章では、youtubeで実際に聴いてみながら読み進めていった。
バービーボーイズなんて今までほぼ聴いていなかったのだが
こうして聴いてみると、男女のツインボーカル、それも個性的な声質、歌唱のボーカル
というのも案外日本では珍しいのではないかと思ったし
LOOKの「シャイニンオン」などは懐かしく、また改めて聴いてみて素晴らしいボーカルだと再認識。
岡村靖幸は相変わらず訳が分からない。訳わからなさでは椎名林檎と双璧か。
大沢誉士幸のサウンドも、今聴くとなかなかクオリティ高い。

第2章の歴史編は、今日ではなく借りてきた日に一気に読んでいたので、もう内容については忘れかけている。

第3章のインタビューは興味深かった。
小坂洋二という人そのものが面白かったし、
後で知ったのだが、大塚博堂の「めぐり逢い紡いで」の作詞者”るい”は小坂氏のことだったというのも驚きだった。
佐野元春のインタビューも、佐野さんの人柄もにじみ出ていて愉しく読めた。

さらに「リマインダー」というサイトも発見(これから探索する予定)。
予約でせかされたとはいえ、なかなか収穫の多い読書になった。

653korou:2021/12/10(金) 21:44:07
歴史読本WORLD「20世紀の政治家たち」(新人物往来社)を(主にトイレで)読了。

トイレ本第3弾?かな。
とにかくタメになる本だった。
アフリカはもちろん、中南米なども全く政治情勢などに無知だったので
この本で主要政治家とその業績をおおまかに知ることができ有意義だった。
また、アフリカ、中南米の国々では
なかなか民主政治が実現せず
形だけはソ連の独裁制を真似た疑似共産主義のような政体になっていくのも
独立までの諸事情などから頷けたし
この本の出版時期(1989年)以降の政治情勢についても
Wikiで確認したりできるのも、ネット時代の良いところだ。

ナセル、ネルー、あるいはチトーなどは
本当に大政治家だと思う。
思えば日本において、こういうスケールの政治家となると
戦後誰一人として思い浮かばない。
全世界的にも、随分と政治家が小粒になったのではないだろうか。
20世紀の特に中盤にそうした優れた政治家が続々現れたことに
何か理由があるのだろうか。
そんなことも思わせた本だった。

654korou:2021/12/15(水) 10:45:02
小熊英二「<民主>と<愛国>」(新曜社)を読了。

800ページにわたって、一読で理解できるような容易なものではない文章が延々と連なっている大著。
時に史実の叙述というか、取り上げる人物の小伝のような部分も挟まってはいるものの
その大半は、著者曰く「名前のない”何か”」というべき言葉をもたない概念、それも本書の主題となるべき重要な概念について
それをめぐる知識人たちの言葉の使い回しとか、その言葉が時代によって”読みかえ”られる過程を丹念に追跡していく記述であるため
本当に読むのがしんどく、大変な読書だった。
にもかかわらず、途中であきらめることなく読み続けられたのは
そこに書いてあることに多くの真実らしきものが感じられ
なおかつ、例えば「吉本隆明は何を訴え、何を書き、そしてそれが多くの人に影響を与えることになったのか」というような
今までの自分が全く知っていなかったことについて、新しい知識をもたらす読書であったことが大きかった。
膨大すぎる新しい知見のせいで、mixiの日記まで書いてしまったが(当掲示板の「政治・経済」スレまで復活!)
結局、この本について、読後直後の今の時点で
多くを語ることは不可能に近いと言わざるを得ないのである、

この著者には、まだまだ多くの読むべき著作があるのだが
今回の読書のしんどさを思うと、そうたびたび読破に挑戦できるものでもないと痛感する。
『単一民族神話の起源――<日本人>の自画像の系譜』(新曜社 1995年) とか
『<日本人>の境界――沖縄・アイヌ・台湾・朝鮮:植民地支配から復帰運動まで』(新曜社 1998年)などは
いずれ読んでみたいとは思うのだが
しばらく間隔をあけたいと思う。
今は、今回の読書について、いろいろなキーワードを心にとどめ
徐々に発酵させていきたいと思っている。

655korou:2021/12/21(火) 16:57:20
マイケル・ルイス「マネー・ボール」(ランダムハウス講談社)を読了。

以前読了したはずの本だったが
このところMLB関係の面白い本をいくつか読んでみて
この本の内容をほぼ忘れかけていることから再読しなければと思い
今回再読してみた。
案の定、初めて読んだ本だった・・・(爆)

そもそも2002年のアスレチックスのレギュラーシーズンの戦いぶりを描いた本だということを
初読の際にきちんと認識できていなかったというのも不思議だが
それはともかく、当時はとても読みにくい本だという印象だった。
今回、再読してみて、その印象について前半は正しく、
後半の主にA'sの試合ぶりを描いた部分では全く正しくないことが分かった。
初読のときには後半を読んでいなかったのではないかと思ってしまう。
逆に、この本には重大な欠点があり、前半があまり面白くなく、後半は面白いということ。
にもかかわらず、前半のほうが重要で、後半は付け足しと極言してもよい内容であることが
この本の評価を難しくさせている。
さらに、この本が指摘していることは、球団のフロントの人間にしかあてはまらないわけで
その意味で、多数の野球ファンと選手自身を置き去りにしている。
にもかかわらず、不思議な魅力を湛えているのは
著者がMLBとは全く無関係な職種の人であり
どんなに客観的に書いても、それが普通であるという一般的な、野球を好まない人までも納得する感覚の持ち主である
ということだ。
野球本は、想像以上に、野球好きな人が野球好きな人のために書かれている間口の狭いジャンルなのである。
この本は、そのジャンルの外にあるころで
いまだに名著のクオリティを保っているのである。

656korou:2021/12/30(木) 11:49:32
(2021.12.30読了だが、2021年読了分はまとめてしまったので、2022年読了分としてカウント予定)
佐藤啓「無名の開幕投手」(桜山社)を読了。

高橋ユニオンズのエース格だった滝良彦投手の生き様を
その出身校の後輩にあたる中京テレビの元アナウンサー(スポーツ畑)が
テンポのよい文体で書き上げた本である。
専門のノンフィクションライターではないものの
一つ一つの手がかりを手際よくまとめていて
調べて分かった事実へのコメントも適切で
読んでいて気持ちの良い本だった。
高橋ユニオンズのキャンプは岡山で行われていたが
宿舎が「たきもと旅館」であったこと、練習は岡山県営球場であったこと、
陸上競技の専門のコーチがランニングの指導にあたったことなど
かつてネットでチラッとだけ見たことがある事実を
再確認できたのは良かったし
滝投手が後輩(佐々木信也)を連れて後楽園で撮ったスナップ写真などは
珍しいワンショットだった。
他にも、今や跡形もない名古屋の八事球場という場所で
選抜高校野球の第1回大会が開催されたことなど
知らなかった史実も多く発見できた。
思った以上に楽しい読書となった。

657korou:2022/01/06(木) 11:59:01
佐藤啓「ウェルカム!ビートルズ」(リットー・ミュージック)を読了。

1966年のビートルズ武道館公演については
招へいしたキョードー企画の永島達司氏の存在が知られていて
かつて読んだ永島氏の評伝の記憶も鮮明なのだが
この本は、さらに踏み込んで、
その永島氏の周辺の人物、特に東芝音工の石坂範一郎(専務)について
知られざるその功績を明らかにしている。
当時、財界総理的存在だった石坂泰三の親戚筋だったということもあり
本人に十分な野心があれば
戦後、東芝の復興に尽くした石坂一族として著名な財界人になれたはずの範一郎だったが
当人は全くの温厚な紳士で
あえて言えば、泰三の執念(本来は東芝傘下だった日本ビクターを松下に奪われ、その代償として東芝に音楽事業部を創設)を
影ながら支えたことくらいが財界人としての唯一の業績として残ったのである。
著者は、そんな謙虚な範一郎について、もっと知られるべき人物として
この本を執筆したということになる。
それゆえ、範一郎への過度な賛美も随所に見られ
その分だけ永島氏の業績への言及が過少になっているきらいもあるのだが
それを除けば、(石坂家の直接取材以外すべて)二次資料を駆使した本とはいえ
概ね妥当な線で叙述が進んでいるので
安心して読めた。
1966年の出来事、あるいはその前段として1960年代前半の日本、世界の様子など
もはや活字の世界では忘れられがちな時代になりつつあるのだが
その意味で、2018年にこうした本が読みやすい形で出版された意義は
それだけで大きいものがあると言える。

658korou:2022/01/07(金) 15:27:25
スージー鈴木「サザンオールスターズ 1978-1985」(新潮新書)を読了。

読む前にはあまり期待していなかったのだが(例によってスージー氏独特の理論が展開か?)
一通り読んだ後の感想としては、意外と面白かったということになる。
やはり、この本にしても、1980年、あるいは1981年の頃のサザンの低空飛行ぶりなどを
すっかり忘れていたにもかかわらず、そのことを指摘されると
「ああ、そうだったな」と意外なほどリアルに思い出せるのであり
そんなにリアルだったはずなのに、なんで今まで忘れていたんだろうという
不思議な感覚にとらわれたということが大きいのである。
ただし、このグループについて何か書くのであれば
やはり21世紀の今現在までを含めて書くのが正しいやり方だろうし
40年以上の活躍のなかで、最初の活動停止状態までの8年間だけに絞るやり方は
中途半端以外の何者でもない。
あえてそういう角度で書かざるを得なかったのは
著者の思い出回顧という側面が強かったということでしかない。
もっとも、そうであっても
上記のように、リアルタイムであれもう40年以上も前の出来事について
いろいろと思い出させてくれるのは
同じ同時代人としてありがたいとも言えるので
これは世代を選ぶ本かもしれない。

659korou:2022/01/09(日) 20:51:29
小林信彦「私の東京地図」(筑摩書房)を読了。

2013年刊行の本で、その時期に、往時の東京と現在の東京の街並みなどの様子を
長年、東京周辺で暮らしている著者が、エッセイ風にまとめた本である。
いつもの小林流というか
自分が実際に見聞きしてその中でも確かなものだけを
きっちりと書き尽くすというスタイルが貫かれている。
読んでいて不確かなものも含めてとりあえず吸収するといったよくあるタイプの読書とは
その点で一線を画している。
東京の地理の話なので、どうしてもグーグルマップなどでの確認作業が必要となり
大きな活字で200pにも満たない本なのに
丸一日費やすような読書を数日続けないと読破できなかったのも確かである。
前半の赤坂、青山、渋谷、新宿あたりの記述は
想定以上に読み進めるのが大変だったのだが
後半の日本橋、本所、深川、両国あたりの記述は
すらすらと読み通せたのは
著者の幼少期の地元だったからなのか。
深川の「イースト21」というホテルとか、富岡八幡宮、清洲橋、深川江戸資料館など
あるいは人形町あたりの風情、明治座とかの名所などは
この本を読んだせいで行ってみたくなった。
相変わらずの小林節にホッとしながら読み終えた。

660korou:2022/01/15(土) 11:20:30
「ヒット曲の料理人 編曲家 萩田光雄の時代」(リットーミュージック)を読了。

リットーミュージック刊行の同シリーズの第1弾で
第2弾の船山基紀のほうは半年前ほどに読了済みである。
何と言っても筒美京平サウンドを筒美氏と一緒に作り上げた人という印象が強いので
筒美氏が日本のJ-POPの祖であるとするなら
萩田氏も同じくらいの栄誉を受けて当然だと思うのである。
つまり、この種のシリーズで第1弾が萩田氏であることに
音楽業界の誰もが異存ないだろうと思えるのである。

ただし、音楽ブログでも書いてアップしたが
本としては船山本の面白さに至らなかった。
これは萩田氏が、自分の仕事について十分に語れないという
個人的な制約からくるものだろうと思うし
また、萩田氏が自分の性格というものをよくご存じなのだろうと
今思えばそう解釈できるのである(要するに理系の頭脳で自分の感性で突進するので
ひいては業界仲間に迷惑をかける叙述になる可能性を直感しているのでは?)
まあ、ことはどうあれ、アレンジャーとして先駆者的存在であることにはかわりはないのだが。

最後のほうのインタビュー記事で、クリス松村氏の分はマニアックで面白かったし
何よりも、佐藤剛氏のインタビュー記事の見事さには脱帽だ。
これほど的確に日本の大衆音楽、流行歌⇒歌謡曲⇒ニューミュージック&アイドル⇒J-POPという流れのなかで
アレンジャーの果たした役割をまとめた文章は
今までに見たことがない。
永久保存の価値があると思い、その部分だけコピーしたくらいだ。
萩田氏の叙述が不十分でも、この部分だけでこの本の価値は十分にある。

661korou:2022/01/18(火) 10:26:27
松尾秀哉「ヨーロッパ現代史」(ちくま新書)を読了。

少し前に読んだ「ヨーロッパ近代史」(ちくま新書・君塚直隆著)の続編のような標題だが
その本と時代が連続しているかどうかは未確認。
「近代史」がややがっかりな内容だったのに対して
この「現代史」は、「近代史」を読む前のときのような過度な期待感もなかったせいもあって
事前の予想よりは遥かに内容の濃い名著であるように思われた。
とにかく、センテンスの長さが的確で、文脈がとれない部分がほとんどなく
スラスラと読めるし
各国の指導者について、結構手間がかかるであろうミニ評伝の類がほぼ完ぺきに記述されていて
これなど伝記マニアの自分には
嬉しい限りだった。
内容は、ほぼ10年単位で章組みが為されていて
そのなかで英・仏・独・露(途中まではソ連)については必ず記述され
さらにその10年ごとに東欧、北欧などが特集されてまとめて記述されるという
実にスタンダードな構成で分かりやすくなっている。

当初は、総力戦となってしまった世界大戦の反省のもと
各国とも福祉国家を目指して戦後の復興を急いだものの
60年代途中で行き詰まり、さらにオイルショックなどを経て
80年代からは新自由主義(=自由主義、小さい政府)が台頭、
そして今現在はその新自由主義がもたらした弊害(&EU統合に伴う諸問題)に
各国とも苦しんでいるという大きな流れが
この本を読むだけで、何となくつかめてくるという名著。

662korou:2022/01/18(火) 10:38:58
恒川光太郎「白昼夢の森の少女」(角川書店)を読了。

小説については、退職後は1冊だけ読んだ(東野圭吾)ような気がするが
それ以来の久々の小説となった。
恒川さんなら何とか読めるのでは、と目論んだのだが
もくろみ通り、面白く読めた。
短編集というのも正解だった。

記憶力が本当になくなってしまっていて
あんなに面白く読んだのに
今、目次を見て
その表題からすぐに内容が思い浮かばないのに
我ながら苛立つというか、呆れてしまう。

子供の頃の話で、友達の家と思ってついていって、ものすごい数の布団にまみれて遊んでいたら
実は友達の家ではなかったという「布団窟」が、リアルな感じで秀逸だと思ったし
謎の船に乗ってしまう「銀の船」は、「スタープレイヤー」などの異世界物を連想させる
まさに恒川ワールドと呼ぶしかない独自の境地へ連れていかれる物語だった。
「平成最後のおとしあな」は、こんな短い作品で見事なまでに伏線の回収ができていて気持ちいいくらいだし
「オレンジボール」も、何ともいえぬ不安な感じの読後感に苛まれて、やみつきになる。
最後の「夕闇地蔵」は。やや説明的な文章が多すぎるようにも思うが
描かれた世界は、「夜市」のようなおどろおどろしい、まさに前近代の闇の世界が突然現れたような
生々しい感じで、どこかで血の匂いも漂うホラー風味となっている。

ああ面白かった。

663korou:2022/01/20(木) 11:23:55
小林泰三「パラレルワールド」(角川春樹事務所)を読了。

今回図書館で借りた小説は
今読んでいる福田赳夫本の合間にちょこちょこ読む程度で済ませようと思っていたのに
この本は、読み始めると途中で止められなくなって
一気読みとなってしまった。
小説を一気読みなんて
東野圭吾のミステリーを除けば
最近ではそうそうない体験だし(司書時代も含めて)
東野ミステリーでさえ最近は一気読みも難しいはずだったのに
一体この読書体験は何なのか?
アマゾンの書評でこの本は散々な書かれようだが
自分には無条件に面白かった。
まあ、パラレルワールドをここまで徹底的に展開されると
我が粗雑な頭ではもはや完全理解は不可能なわけで
途中意味不明なところも読み飛ばすように進んでいってわけだが
それにしてもハラハラドキドキで面白い。
小説の一気読みがこれほど時間を忘れさせてくれる、ワクワクする時間を与えてくれるとは
久々の体験で、もうすっかり忘れてしまっていた。
小林泰三さんは裏切らない。
アリスなど名作パロディものも
今読むと面白いのかもしれないが
まあとりあえず書架に並んでいるものから借りることにするか。

664korou:2022/01/28(金) 14:30:36
五百旗頭真ほか「評伝 福田赳夫」(岩波書店)を読了。

2021年刊行の本で、なぜか今まで本格的な評伝がなかった福田赳夫に関する本ということで
県立図書館に予約までして借りた本である。
680pにも及ぶ大部な本であり、しかも活字が小さめに印字されているので
その意味では読み通すのに苦労したが
内容そのものは期待通りで面白い本だった。
その財政家としての基礎といえば
高橋是清のバランス感覚から学んだものであり
それが、第一次石油ショック直後の蔵相として的確な政策判断を培い
ひいては、物価高、消極投資のダブル不況となりながらも
日本が、先進国のなかでショックからいち早く立ち直ったという
大きな功績につながった、ということがよく分かった。
また、政治家としてはナイーブすぎる信念をもっており
そのことが政治家・福田の最大の魅力でもあり
反面、政治家として為すべき政策の完結を妨げる短命政権の元と
なったことも否定できない。
優れた「安定成長」経済政策家であり
ナイーブな理想主義者であり
しかし高級官僚にありがちな自己アピールの下手な人でもあったということ。
そういった福田氏の個性を強調するあまり
反対勢力の中心だった田中角栄への評価が
かなり一方的になっているのが、この著書の最大の欠点ではあるのだが
そこは、別に田中角栄本で補うしかないだろう。

665korou:2022/01/30(日) 20:48:05
なべおさみ「やくざと芸能界」(講談社+α文庫)を読了。

以前から気にはなっていたので
とりあえず1冊だけなべおさみの本を読んでみた。
思ったよりもズブズブの芸能界裏話の連発で
芸能界入りする前のヤクザとの交流なども
思ったよりも面白く読めたのだが
読み込んでいくうちに
文章の雑な展開が嫌になってきて(主語を省く日本語でこういう文章を書いてはいけないと思う)
第3章の前半のほとんどを占める「裏世界の人間とは」という哲学的な考察は
とても読み進める自信がなくなり、そこは全部飛ばして読み終えた。

読み終えた後、youtubeでなべおさみの映像をいくつか見た。
シャボン玉ホリデーをリアルタイムで観ていたときも
なべおさみの映画監督のコントだけは
不快な感じがして好きでなかったのだが
今こうして観ても、印象は変わらなかった。
何かが足りないのである。それが何かは曰く言い難いのだが。
ダウンタウンの番組で、この本に書いてあるような芸能界の裏話をしている動画は
ダウンタウンや坂上忍のリアクションが面白くて
なかなか良かったのだが。
ネットのチャンネルまで持っていて、頻繁に更新しているようだが
時間が長めの動画なので、今すぐには観る気がしなかった。

まあ、図書館で借りて読むぶんには、特にどうということはない本。
こんな本、買ってしまったら後悔するだろうな。
悪い人じゃないんだけどねえ。

666korou:2022/02/01(火) 17:14:50
本間ひろむ「ユダヤ人とクラシック音楽」(光文社新書)を読了。

今一つ分かりにくいユダヤ問題を
しかも個人的に既知の事実が多いクラシック音楽というジャンルのなかで
新書という読みやすいサイズで、かつわかりやすそうな文章で書いてくれている、ということで借りてみた。
読み始めは、なんだかよく分からないまま一方的に
ユダヤの歴史が民族音楽とかオペラとかの関係で語り続けられていて
これは相当粗雑な頭の人が書いた本なのか?直前に読んだなべおさみと同等のトンデモ本の類かと思わせたが
読み終わってみると、いわゆるクラシック雑学のなかの
ユダヤ人関係の部分だけがうまく抜き取られた上でコンパクトにまとめられたような
比較的良さげな印象になってしまった。
新しい知見、新しい解釈を望む向きには全く役に立たない本だが
そうした「まとめ」サイトのような効能を期待する人には
なかなかの好著だと思った。
「まとめ」サイトで簡潔でもあるので
文字にできる形では、これ以上の感想はない。

667korou:2022/02/06(日) 23:08:16
秋山長造「わが回想録 一筋の道」(山陽新聞社)を読了。

かつて神野力先生の山陽新聞社賞受賞祝賀会で受付をした際
「あ」行の来賓の担当だったのだが
そこで秋山長造氏を受付した際
「大変だね、ありがとう、頑張って」と激励して頂いた記憶があり
参議院副議長という大物でありながら
全く偉ぶらない人柄に魅了されたということもあり
秋山氏の名前は気にしていたのだが
今回、県立図書館の郷土資料コーナーでこの本を見つけ
借りて読んだ次第。
前半は自叙伝、後半は各所で発表された文章のアンソロジーで
自叙伝はシンプルなスタイルで読みやすく一気読みだった。
後半は、今となってはその時代だけの関心事だけのものも多かったので
いくらか飛ばし読みした。
社会党が斜陽化していく時代を党の長老として生きたわけで
そのあたりに何とも言えない不燃焼感、残念な気持ちが
どの文章からもにじみ出ていて
いかにも誠実、真面目な秋山氏の心情を思わせた。
加藤武徳と知事選で争ったことなどは初めて知ったのだが
昭和30年代の政界の様子などは
こうした古老の回想談でないと知れないわけで
その意味で貴重な本ともいえる。

668korou:2022/02/11(金) 12:29:30
中国地方総合研究センター「歴史に学ぶ地域再生、中国地域の経世家たち」(吉備人出版)を読了。

中国地域に関する本ということで、岡山県以外にも記述があるので
本来は岡山県関係の人物だけ読んで終わろうと思っていたのだが
読み進めていくにつれ、他県のことも知っておこうと思い直して
結局全部読了することにした。
江戸時代の地方各藩の財政の苦しさ加減は
ある程度知っていたつもりでいたが
この本を読んで、生半可なものではなかったのだなと
再認識させられた。
その反面、決意を強くして藩財政改革に当たれば
意外と早く状況が好転するということも分かったのだが
これは、江戸時代という主従関係が強固な時代にあって
藩政を左右できる立場という強みの為せることなのだろう。
要は、商業経済をどうみるかということであり
それは深く言えば、この世界、そこで生き抜いている人間全般を
どう見るかという人生観、世界観の話にも通じるのだが
そこが、そういう深い認識になかなか結び付かない現代の財政問題と
大きく違う点だろう。
また、グローバル経済に巻き込まれた現代と違って
この時代にあっては、とりあえず日本国内のことだけを想定しておけば良いので
その点でも随分異なるのだが
それ以外の面について言えば
江戸時代のことといえども、現代でも参考になる事例が豊富にあるように思えた。
なかなか渋い好著である。

669korou:2022/02/16(水) 17:07:59
こだま「夫のちんぽが入らない」(扶桑社)を読了。

興味深い本ではあったが、書名のせいで高校図書館で購入するのには躊躇したことがあり
今回その判断の可否も知りたくて借りてみた。
予想通り、良い本ではあったが、内容は高校生向きではなかったので
書名うんぬんは関係なく、購入しなかった判断は正しかったと分かった。
本としては上質であることは間違いない。
これほど自分の心情を率直に書くことは
簡単そうで難しい。
その一点のみで、この本には価値がある。
もっとも、いろいろと書き切れていない部分はあって
そんなダメ女がなぜいきなり結婚するような展開になるのか
いかにも不自然だし
ダメ先生が、退職後も児童に慕われるくだりも
納得できる記述がない。
両親などについては過不足なく書けているようなのだが
自分のことと夫のことについては十分に書けていないはずで
随所に不自然な記述が見られる。
しかし、そんな不備など吹き飛ばしてしまう率直で大胆な記述スタイルが
この本の最大の魅力だと感じる。
最終的に「夫(だけ)のちんぽが入らない」私の性器が
一番の苦しみになり
それを乗り越えようとしている現在進行形の「私」で物語は終わる。
それもいさぎよい終わり方で好感が持てた。
どうしてもこの書名になるだろうな、この物語は。

670korou:2022/02/22(火) 17:18:46
塩田潮「江田三郎 早すぎた改革者」(文藝春秋)を読了。

江田三郎には以前から関心があった上に
最近になって秋山長造の本を読んだばかりだったので
”郷土資料・連続「伝記」読書に挑戦”の一環として
今回読んでみた。
塩田氏の叙述は、この時期にはまだ生硬で結構読みにくかったのだが
とりあえず江田三郎を語る上で最低限必要なことはほぼ網羅してあったように思え
とりあえずの紹介本として十分に役立つ本だった。
「党を離れるのには遅すぎ、亡くなるのが早すぎた」人という評価は
まさにその通りで
江田氏は早めに社会党に見切りをつけて、最低限でも民社党と共闘していれば
随分と日本の政治も変わっていっただろうと想像できる。
また、社会主義協会が出しゃばる前に
佐々木更三の抵抗を押し切って党内で主導権を握れていたら
もっとダイナミックに変わっていただろうと十分想像できる。
社会党の幹部でありながら「アメリカの生活水準」という目標を掲げるあたり
まさに江田氏の見識は見事で時代をよく読んでいたと思う。
それを阻んだ鈴木ー佐々木-成田という主導部の動きについては
今度は当事者側から反対検証もしなければならないが
どちらにせよ、時代を読み誤っていることには変わりはない。
後は、和田博雄、黒田寿男なども含めて
岡山県人がこうした先駆者の仕事を忘れずに顕彰していくことも大事なことだろう。
とりあえず江田三郎を知るための本としては十分な内容。

671korou:2022/03/01(火) 16:17:51
谷川健司「近衛十四郎 十番勝負」(雄山閣)をほぼ読了。

全500p弱の大部な本であるが
後半の約300pは、近衛十四郎の出演した映画の詳細な紹介であり
今さら入手の難しいそれらの映画について
ストーリーや企画の経緯などを詳しく知っても仕方がないので
前半の200p読了の時点で「ほぼ読了」とすることにした。

市川右太衛門プロの研究生募集に応募して研究生となったのを初めとし
その右太プロでの人脈で大都映画に入り
一躍若手時代劇スターとして名を馳せたものの
戦時中の特殊事情で大都映画は大映となった時点で
時代劇スターばかりの大映では活躍できないとして
劇団を結成して巡業生活を続けた近衛十四郎。
兵役で中国に渡り、苦しい抑留生活の後、帰国し、再度劇団生活を続けるが
映画への夢も捨て切れず、嵐勘寿郎の芸能プロに所属しながら新東宝などの映画に
端役で出演した後、阪妻急逝後の松竹に移籍して時代劇スターとして復活。
ただし、あくまでも準主役に止まったので、第二東映設立と同時に移籍して
そこでは短期間なら主役として活躍。第二東映解散後もしばらく東映で活躍し
「柳生武芸帳」の剣豪柳生十兵衛役などの当たり役もあったものの
東映の任侠路線への変更を機に、東映テレビに所属してテレビ時代劇に進出。
そこで「素浪人月影兵庫」「素浪人花山大吉」の大ヒットとなり
日本中で知られる有名時代劇スターとなったというのが大筋。

ちょっと前に大都映画の本を読んではいたが
詳しい流れがこの本で分かって頭の整理になった。
まさに労作という印象の本。

672korou:2022/03/07(月) 18:00:09
鈴木美勝「北方領土交渉史」(ちくま新書)を読了。

鳩山一郎が行った対ソ交渉から、安倍晋三の対ロ交渉までを
動きの無かった時代を省きつつ
主なところはすべておさえて解説してある「北方領土交渉史」だった。
多少文章が読みにくい点はあるのだが
書いてある内容が興味深いので
思わず読み込んでしまうという迫力あるノンフィクションとなっており
また、著者が主観を入れて書いてある箇所は
読んでいて、ここは著者の主観部分とはっきりと分かるようになっていた。

1956年の「平和条約と同時に二島返還」というのは、当時としてはギリギリの線で
鳩山首相としては、国連加盟と抑留者帰還という優先事項を実現させたのだから
後世の人間としては文句は言えないところ。
それを粘り強く交渉して、相手国の国力が落ちた時点で
「四島返還」についてソ連(ゴルバチョフ)及びロシア(エリツィン)に認めさせたところまでは
日本外交の成果だったに違いない。
しかし、外交なのだから、「四島返還」可能な時点で、わざと妥協する手法もあったはず。
恩を売って、とりあえず「二島」で妥協して平和条約を結び、経済協力を進める手もあったに違いない。
もちろん、その後の歴史を見ると、ロシアは強硬な態度に変貌したに違いないので
「四島」全部は永遠に戻ってこなかっただろうが
今のように、二島返還でさえ日米安保破棄を条件とするような事態には至っていなかっただろう。
安倍晋三の外交の失敗についてページ数が割かれているが
これは橋本政権時に政治決断ができなかった龍太郎の責任ではないか。

まあ、それにしても、よくまとめあげたものだ。
政治記者経験豊富な著者にとってはそれほどでもないのだろうが、労作と言ってよい。
タメになった本。

673korou:2022/03/09(水) 10:18:31
グレンコ・アンドリ―「プーチン幻想」(PHP新書)を読了。

最初のほうで、
米国がロシアに対しNATO拡張はしないと約束した史実は一切ないと断言している記述を読んで
これはなかなか面倒な本だなと思い、いったん読書を中止(明らかな史実誤認なので)。
読書再開後も、日本外務省の「ロシア・スクール」は対ロシアで好意的な見方を助長している
などという調査不足の記述に悩まされたが(こういうのが自分の気付かない他の箇所でもあるのかという疑い)
実際のところは、再開後の読書については、ある程度のリテラシーを確立して読み続けることができたので
それほど面倒ではなかった。
そういった些細ではあるが、結構致命的な事実誤認を除けば
これは熱量の高い、志の高い、なかなか日本人のライターではここまでは書けないだろうと思われるほど
徹底して自説で説得してくる本で
その自説も荒唐無稽でなく、むしろ知見を正す類の良書に思えた。
また、文章に関しても、どういう仕掛けなのか見当もつかないが
少なくとも、これだけの日本語を駆使できるのだとしたら
本当に敬意に値するレベルで
他の多くの日本人学者も見習ってほしいくらいの熟達した流暢な日本語だった。

この本で「プーチン幻想」がほどけていったかどうかについては
読む人にとって様々だろう。
しかし、こういう本は貴重である。出版されて然るべきである。
著者のスタンスはどうあれ、これこそ民主主義社会における言論の自由なのだと思った。
(少なくとも、プーチンはそれを認めていないのだから)

674korou:2022/03/13(日) 17:07:25
東郷和彦「危機の外交」(角川新書)を読了。

1990年代の日本の外交をリードする外務省官僚だった著者が
2015年頃の時点で一民間外交研究家として
日本の外交のあるべき姿を論じた本である。
250p足らずの新書ながら、中身はきっしりと詰まっており
どの文章の行間からも、実際に外交実務に携わってきた外交官としての感覚が
滲み出るようだった。
恐らくはここに書かれているような在り方が
日本の外交としてはベストなのだろう。
しかし、もうこの著書から7年近く経過し
「対韓国(慰安婦・徴用工・竹島)」「対中国(靖国・尖閣)」「対ロシア(北方領土)」のどの問題についても
解決の方向どころか悪化する一方だし
むしろ、日本自体の国力について地盤沈下が激しく
国際政治上のポジションが著しく低下しているのが現状だ。
対韓国となれば、お互いに国力が伸び悩んでいることに加え
国際法上ムリな要求をしているのが韓国自身であることから
その関係は、韓国の強引な国際社会へのアピールだけ注視していけば足りるのだが
こと対中国に関しては、本気で対日関係に圧力をかけてくれば
日本にはそれに対抗し得るものは何一つない状態だ。
対ロシアは、すでにこの著書の時点で破綻の方向を示していたが
その後の安倍外交の失態、そして今回のロシアによる強引なウクライナ侵攻により
完全に手がかりを失ったうように見える。
インド・太平洋共同構想も絵にかいた餅に傾きつつある。
そのような悪化の方向にある中で、この本を読むことは
もはや採るべき方向の示唆をいうよりも
この時期ならまだ可能だったかもというノスタルジーに近い絶望を感じる作業とも言えた。
本は立派なのだが、もはや現状がそれに追いついていない。

675korou:2022/03/16(水) 12:04:28
風間賢二「怪異猟奇ミステリー全史」(新潮選書)を読了。

18世紀西欧で隆盛となったゴシック文学から始まり
現代日本のミステリー事情まで
おもに怪異、変格ミステリーに焦点を当てて
その歴史の概略が記された本。
ゴシック文学が、近代社会において根強い人気を保ち続け
それが明治以降の日本においても
日本独特の形で受け入れられたという流れが明確に示され、
読んでいてタメになった。
新しく知ったことが結構たくさんあって
その逐一をここで確認することすら難しいくらいだが
例えばWikiの力も借りて「嵐が丘」のあらすじを詳細に知ったり
谷崎潤一郎のミステリーを読みたくなり
県立図書館でのチェック本リストに追加してみたり。
途中から、ゴシック文学史なのかミステリー史なのか
日本”キワモノ文学”史なのか日本ミステリー文学史なのか
判然としない感じもあるが
全体として、書かれるべきことがしかるべき妥当な著者によって書かれたという
安心感が漂う好著であることには間違いない。

676korou:2022/03/25(金) 12:20:57
歴史読本臨時増刊(’88-9)「特集 世界を動かす謎の国際機関」(新人物往来社)を読了。

トイレでの読書本として、結構長期間読み続けていた。
かなり怪しい本かと思っていたが
他の本ではなかなか読めないような特殊な分野の情報について
要領よくまとめてあるので
これはこれで要保存の本とすることにした。
1988年発行の本なので
データとしては古いのだが
それも今となってはなかなか面白く
ソ連の存在とか、インターネット以前の情報産業の様子とか
案外もう人々の記憶から薄れかけている時代を
思わせてくれて
なかなかユニークな本である(というか、ユニークになってしまった、というか)

677korou:2022/03/30(水) 21:08:13
村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」(新潮社)を読了。

かなり昔に単行本で買って、いつまでも読めずにいて
数年前に意を決して読み始めたところ
主人公が冷凍食品を買って、そのまま家に帰らずに食品を車に積んだまま
いろいろな店に寄って、結局数時間後に帰宅するというシーンを読んだとき
非現実的な話だと思い、読むのを止めてしまった。
そういう経緯で、また数年ほったらかしにして
今回、その非現実には目をつぶって読み進めようと思い(「ねじまき鳥」を読みたいと思い、その前提となる小説として)
またまた意を決して読み始めた。
今度は、冷凍食品を車に長時間放置どころではなく
随所に飲酒運転のシーンが出てくるのには呆れたものの
こうまで作者が飲酒運転を気にせず書きまくり、ハルキさんの編集者もそれを黙認しているとなると
もはやハルキ作品を読むのに”ハルキさんの常識”に従って読まなければならないのだと観念した。
(だから、冷凍食品はいつまでも腐らない、飲酒しても車の運転に支障はない、大けがの後でも酒を飲んでよい・・・等々)

さてそういう読書の入り口での不審な点を切り抜けて
なんとか最後まで読み切ってみて
この小説がどうだったのかといえば
とても短い文章では書き切れないし
かといって、長文をしたためる余裕も知識も体力もない。
ただひたすら、並行して描かれた2つの世界が最後に合体する仕掛けのみが
脳裏をぐるぐると回り、印象に残るのみである。
意識と無意識、企みと受け身、世界の終りと世界の崩壊・・・何だろう、分かるようで分からない、分かりにくい。
こうなると「ねじまき鳥」を読んで、まとめて感想を書くしかない。

678korou:2022/05/17(火) 18:23:50
「特集 日本の名門1000家(別冊歴史読本)」(新人物往来社)を読了。

トイレ読書本として読了した。
この種の本は今までに何冊も読んではいるのだが
この本に関しては、他の本ではなかなか取り上げられない分野が
意外と詳しく書いてあり、結構面白く読むことができた。
能・狂言、あるいは茶道・華道などの名門の歴史などは
今回初めて詳しく知ることができたし
巻末の「華族一覧」も
詳しくチェックすれば、なかなか役に立つ「辞典」のように使える。
その反面、財界とか、他の本でも詳しい歌舞伎などについては
特に目新しい叙述はなく、むしろ出版年(1988年)からくる古さが目立った。
トータルとしてみれば
かなり使える本であり
しばらくは捨てずに保存しておこうと思った本である。

679korou:2022/05/25(水) 22:20:26
村上春樹「ねじまき鳥クロニクル(第1部〜第3部)」(新潮文庫)を読了。

多分4月1日から読み始めた。そして今日読了。1か月と25日、最近では期間最長の読書となった。
些細なことではあるが、第1部の文庫本が最近再版された大き目の活字だったのに対し
第2部と第3部は改版前の比較的小さめの活字だったことが
期間最長の一因であることは間違いない。
この大きさの活字は短時間で済ませないといけないと思い
第2部からは一層読書スピードが遅くなった。
それでいて、その期間中、トイレ読書以外の本はほぼ読まず、この本の読破に専念した。

思ったよりも凡作で、同時に思ったとおりの力作だった。
作者は渾身の思いでこの小説を書き、作者はそれにより何かを得てなにがしかの変化を体得したが
読者はそこまでの感銘を得られない場合がほとんどだったに違いない。
何といっても混乱している。
そうでなくても、飛躍の多い文体と直喩や象徴が頻出する実は難解な文章(読みやすいのだが・・・)の作者が
さらに近現代史に踏み込んで、しかも日本語文体のコラージュまでも意図してちりばめているので
読者としては、それら全体を統一した形で把握することにかなりの労力を要するのである。
しかもその労力は小説を読むことによって得られる愉悦には昇華せず
最後まで「飽きないんだけど面白さとなるとどうかな?」という印象が続く。
彼は意識と無意識、自我と他者などの近代人のエゴを描こうとしているのだろうけど
そこに至るまでの道具立てが勿体ぶった大層なものになっていて
まあいうなれば効率が良くない。
印象的な場面はいくつもあるのだけれど
結局、主人公以外の登場人物はどれも人物が描けていないも同然だ。
とにかく、読後直後の今は
この作品の美点よりもガッカリ感のほうが支配して
作品そのものへの批評にまで至らない、というのが正直なところだ。
また何か書けるようになったら書くことにしようか。

680korou:2022/06/01(水) 13:33:00
横山源之助「明治富豪史」(現代教養文庫)の前半2篇を読了。

文庫本200ページの中身が、「明治富豪史」「富豪貴族」「海外の人」の三つに分けられていて
「明治富豪史」は本人もとりあえずのまとめとして一気に書かれたものであるのに対して
「富豪貴族」「海外の人」はいろいろな雑誌に書かれた同種の内容をまとめた章立てとなっている。
今回の読書では、「海外の人」は読了せず、他の2篇を読了した。
やはり、現代の財閥系企業につながる大本の話のほうが面白く
移民関係の話は実感が湧かないので。
そして、横山の意図が、富豪の成り立ちの偽善性を暴くものであったとしても
令和の今読むにあたって、そういう社会主義的な視点はなくとも
ただ単純に明治時代の秘められた歴史ということだけで
面白く読めることは否定できないわけである。
なかなか、ここまで詳しく明治初期の富豪の様子を書いた本というのは
ありそうで無いように思う。
期待通りの面白さだった。

681korou:2022/09/03(土) 12:03:41
猪俣勝人・田山力哉「日本映画作家全史(上)」(現代教養文庫)を読了。

トイレ本として読了。
猪俣氏の関係した人物が多数取り上げられていて
そのことは逆に、猪俣氏が
日本映画史上重要な役割を果たした人物であるということの
証しということにもなる。
そして、各人物の略伝に付記される形で書かれた各エピソードが
どれも人間ドラマのように思わるほど面白く
列伝を読む面白さ以上の魅力が付け加わっていた。
ちょっとこれは廃棄できない。永久保存版の本。

682korou:2022/09/04(日) 23:08:08
ロボットマナブ(原案)・大仏見富士(著)「自衛隊入隊日記」(学研プラス)を読了。

必要があって急きょ県立図書館から借りて読んだ本。
借りる前にパラパラとめくった感じで、これは読みやすいはずと判断したが
実際読んでみて、全くストレスなく最後まで一気読みできた。
結構個性的な著者なので、書いてあることが普通にそうなのだろうかという疑問は残るのだが
誰が書いても恐らく細部はそうなるだろうという部分に関しては
とりあえず最低限の描写がしてあるので
実際に実戦部隊として自衛官を志望する人にとっては
これほど有益な本はないかもしれない。
反対に、自衛官志望者以外にとって
どんな意味がある本なのかと言えば
なかなか難しい。
文章が極めて主観的なので、客観的に自衛隊のことを知ろうと思った人には
あまり参考にならないかもしれない。
個人的には、まあ話のタネとして使えるかも、という感じだった。
結局、巷によくある珍しい体験本という部類か。

683korou:2022/09/08(木) 15:02:38
岡田真理「自衛官になるには」(ぺりかん社)を読了。

必要があって読み始めた自衛隊本第2弾。
当面知りたい部分だけ先に読み、それで終わろうかと思ったものの
思い直して、再度、最初から全部読み通した本。
「なるにはBOOKS」をこんな形で読むことになるとは
想像もしなかったが
ある意味、その職業の良い面だけを強調して
闇の部分は抹消してあるともいえるので
高校生対象の推薦本、進路関係本として
本当にこれでいいのかという疑問も残った。
これはロクに読み通していなかった学校司書時代には
意外と見落としていた部分だが
それはともかく
当面の役には立った。
それ以上の感想は出てこない。

684korou:2022/09/12(月) 17:33:06
佐道明広「自衛隊史」(ちくま新書)を部分読み。

どうにも目が痛くなる本なので(活字は普通程度の大きさだが文章が読みにくく目が疲れてしまう)
読了は諦めて、ざっと目を通す程度にした(前半半分は読了したのだが、もう限界)、
自衛隊史としては
1960年代までは政治の思惑に振り回され、むしろ存在感を消すように要請されていたくらいだが
1970年代後半から、米国の衰退、軍事力の低下を背景に、日本の自衛力向上が要請され
1980年代はその押し問答が続き、なんとか日本の経済力と政治家の駆け引きで現状維持を保っていたものの
1990年代になり、例外的な措置を余儀なくされ、自衛隊の存在は曖昧なまま目立つレベルになってきた。
2000年代になり、周辺国からの危機が顕在化し、さらに神戸大震災などの災害等非常事態への対応も大きな任務とされ
2010年代になり、おもに安倍内閣の主導で、自衛力向上のためのプログラムが組まれるようになる。
まあ、そういった以前から何となくそうではないかと思っていた流れを
再確認した本ではある。
細部では知らない事実もいくつかあって参考になったが
そこまで読み込むための代償としては
この激しい眼痛は痛すぎる。
残念だが、他の本で探ってみたいと思う。

685korou:2022/10/01(土) 17:51:02
中川右介「文化復興 1945年」(朝日新書)を読了。

野球のシーズンも終わりかけているので
読書も少しずつ始めなければと思い
”中川本”でまずウォームアップということで
この本からスタート。
ただし、日によって目の疲れがひどいこともあるので
ムリはできない感じだ。

本そのものは、いつもの”中川本”で
安心して読める文章と、かっちりとした資料読み込みで
全く問題なく読めた。
ただし、一次資料を追って叙述するスタイルだけに
こうした特定の地点に絞った著作だと
中川氏の個性がうまく生かせない面も出てくる。
今度は、時系列に沿って推移するスタイルの本を
読もうと思っている。
あと、トイレ本として今現在も読書進行中の「映画作家全史」との関連で
客観的な叙述の中川氏と、あたかも自伝小説のような猪俣氏とで
同一人物ながら全く違った印象の人物評になるところも
興味深かった。

686korou:2022/10/29(土) 11:15:43
中川右介「至高の十代指揮者」(角川ソフィア文庫)を読了。

いつもの中川本。読みやすく、タメになって、読書ストレスフリーの本。
十大指揮者は、ベルリン・フィル常任指揮者(フルヴェン以降)を軸に、世代、国籍について万遍なく選んだ結果らしい。
トスカニーニ、ワルター、フルトヴェングラー、ミュンシュ、ムラヴィンスキー、カラヤン、バーンスタイン、アバド、小沢征爾、ラトル
といった面々で、前半の数名についてはすでに読んだ本の内容と重複することになる(しかしすでに忘れてもいるのでムダな読書ではない)
後半のアバド、小沢、ラトルについては、今回初めてその活躍の詳細を知ることができた。
これ以上の感想はもう書けない。
あとはそれぞれの指揮ぶりを、実際の音響で堪能することになる。

687korou:2022/11/08(火) 17:26:52
小菅宏「異能の男 ジャニ―喜多川」(徳間書店)を読了。

とにかくヒドい日本語、ヒドい文章だった。
こんなレベルで、よくフリーのライターが務まるなあと思った。
最初のページから最後のページまで、まともな文章はほとんどなかった。
意味を理解できるところだけ飛び飛びに読んだというのが実感だ。
意味を理解できる箇所は、ほぼ過去の事実をそのまま書いている部分で
それすら、かなりの部分が意味不明だった。
まして、著者の考えが書いてある部分など
どうやって読解せよと言うのかと言いたいくらいだった。

それでも読了(いや飛ばし読みかな)してしまったのは
ジャニーズに関する解説本が
あまりにも少ないという現実、しかも著者は
少なくとも80年代途中までは伝聞ではなく直接ジャニ―姉弟を取材していた
大手出版社の編集者だったからで
これが違うジャンルの違う著者であれば
最初の10数ページで投げ出していただろう。

著述の中身は、あまりに断片的に読んだので(そう読まざるを得なかった!)
イマイチ頭の中でまとまらない。
すでに整理してあるジャニーズ関係の知識と照合しながら
徐々に理解していくしかない。

キツい読書だ(苦笑)

688korou:2022/11/13(日) 15:30:02
小菅宏「女帝 メリー喜多川」(青志社)を読了。

前著同様、読みにくい本だった。
明らかに著者の文章は下手くそを通り越して
日本語として意味を成していない。
このような著作を出す人が
ジャニーズ関連本の権威と目されているのには
呆れてしまうが
それが現代日本の現状なのだろう。
いかに意味不明な文章が連なっていようとも
その中に挿入されるエピソードの数々は
著者でなければ書けない、他の人は体験すらできない事実なのだから
尊重されてしかるべきなのだが
それにしても、である。
結局のところ、何が書かれていたのか
読み終わった今は
むしろ悪文を通し読みした疲労のほうが勝ってしまい
何も思いつかないのである。
そして、最後には、オリジナル事実も散在しているが
やはり無視しても大丈夫な本かな、という評価になる。
オリジナルにしても
そんなに大したことない話だし。

689korou:2022/11/25(金) 13:54:47
猪俣勝人・田山力哉「日本映画作家全史(下)」(現代教養文庫)を読了。

トイレ本として9月上旬から読み始め、本日読了。
下巻のほうは、田山氏が主に書いているようで
取り上げられた作家たちも
この本の出版時(1978年)においては
中堅どころの人が多く
これからの活躍が期待される人々列伝という趣きである。
そして、最後のほうの数名について
その後の経歴もWikiで調べてみたが
ほとんど活躍できておらず
この本に書かれた仕事以降
映画人としては終わってしまっている状態だった。
それを思えば、物悲しい列伝ということになるが
本そのもののテイストとしては
やはり名著と言えるだろう。
これだけの人々を取り上げて
1冊の本に仕上げる苦労、努力は並大抵でない。
これもうかつに廃棄できない本である。

690korou:2023/02/17(金) 15:40:47
ほぼ3カ月ぶりの読了!
宇佐見陽「大リーグと都市の物語」(平凡社新書)を読了。

2001年発行の新書で、当掲示板がMLB関連の書き込みで潤っていた時期にはもう購入済みで
その時期からずっと、読みかけては途中で断念、途中で止めるを繰り返していた本だ。
ほぼ20年越しでやっと読了できた次第。
決して面白くなくて読み終えることができなかったということではなく
ただ単に偶然により読書が中断しただけだが
まあ、そういうことはよくある。
今回読み終えて、思ったよりも内容が濃かったことと
さすがに20年も経つと内容が古くなるということを痛感した。
2001年時点では、見事な新書と言えるが
やはり現在進行形の出来事を扱っているだけに
それ以後の多くの現在進行形が抜けてしまうのは
当たり前とはいえ、内容の新鮮さにおいて致命的になってしまっている。
あれからMLBは日々変化し、停滞もすれば進展もした。
20世紀のMLBはこの本でかなりの部分を参照できるが
21世紀のMLBも22年経過している。
読む時期を逸したと言わざるを得ない。
でも、不思議なのは、読後にこれは即廃棄かなと思えなかった点だ。
またいつか読み返したい、でもいつ読み返すんだという自問自答。
もう少し時間が経たないと結論は出ない。

691korou:2023/03/10(金) 12:57:11
宮崎勇・田谷禎三「世界経済図説 第四版」(岩波新書)を読了。

トイレ本として読了、前回が9月に読了だから、この本を半年かけて読んだことになる。
思ったより長くかかったが、やはり読みやすいとはいえない内容のせいだっただろうか。
事前に思っていたほどデータが多くなく、むしろ経済学の立場から現代の世界経済を眺めた場合
どのような考え方が最も妥当で一般的なのかを、文章で説明している本といってよい。
共著者の宮崎氏(福田赳夫氏のOBサミットの事務局長でもあった)は
この本の前回の改版(第三版)の直後に亡くなられ
今回の版の著者は田谷氏単独ということになったが
本としての構成、版組みは確立済みなので
単独著者になっても、そこのクオリティに関しては問題ないわけである。
なかなか平和が実現せず、むしろ新しい紛争の火種が増えてきていること、
紛争のない先進国にあっても、経済運営はスムーズでなく、むしろ格差問題が生じていること、
経済の世界一体化が進む一方で、そこでの問題、課題を解決する組織が機能していないこと、
そういったことが語られている本で
ある意味、普段感じていることの総復習のような読書でもあった。
悪くはないのだが、新しい知見に乏しく、魅力ある本とは言い難く
もっとデータ提供に徹したほうが使い手があるのだがと
思ってしまう。

692korou:2023/03/28(火) 17:28:14
池上彰・佐藤優「真説 日本左翼史」(講談社現代新書)を読了。

昨年11月にジャニー姉弟の本を借りて以来、久々に県立図書館の本を借りて読む。
これは、出版された当時に概要を知って、ぜひ読みたいと思った本である。
それから1年半ほど経って、世間的には注目度はぐっと落ちたのか、普通に書棚に並んでいて
続編共々、借りる人が居ないようだったので、それならと思い借りてみた。
自分としても以前よりは日本左翼史への関心は落ちてはいるが
まあ新書ぐらいならと思い読み始めてみたところ
結構その方面の記憶すらあやふやになっていて
小熊英二氏のあの力作を読んでいた時期とは
随分異なっている自分にまず戸惑う。

読後の印象としては
左翼全般について、まさに社会党のシンクタンク組織に属していた佐藤氏の独壇場とも言え
池上氏は、当時の政治状況について優しく解説を加えるにとどまっている。
そして、左翼史とはいいながら
実質、日本共産党と日本社会党の政党史となっており
そのことには違和感はなかったが
佐藤氏が、向坂逸郎とか宮本顕治などを絶賛する姿勢には
違和感を覚えた。
時に滑稽なくらい違和感を露呈するのも佐藤氏の個性ではあるのだが。

さて、しばらく他の本を片付けてから、続編に挑むことになる。

693korou:2023/03/29(水) 20:49:42
読了断念本
平川克美「喪失の戦後史」(東洋経済新報社)

BSプレミアムの特集番組で、戦後日本の60年代の喪失感が気になり
似たような問題意識かもしれないと思い県立図書館で借りた本だが
いつまで経っても、そうしたテーマは現れなかった。
そして、重要なポイントにおける認識の違いも目立ち
ある意味、著者の友人である内田樹氏の文章で感じられる「一流なんだけどうさんくさい」感が
鼻についてきたのも事実。
まあ、それ以前に目的に合ってなかったので読了断念。


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