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―ヤサシイコト―

1鳳凰:2012/08/25(土) 21:58:41 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 何となく思いついたニックネームの、「鳳凰―ホウオウ―」です。

 なんか色々思考回路を働かせた結果、こんな物語が生まれました。 中身は、「優しさ」を知らない主人公が友達や仲間を守ろうとするものです。

 なんか面倒な話になると思いますが、お世話になります。

2鳳凰:2012/08/25(土) 22:11:05 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ここは、とある施設。施設名は、「竜泉子供施設所―リュウセンコドモシセツジョ―」。

 この施設は、一般の施設同様、訳あって育てられなくなった子供などが預けられる所だ。 しかし、この施設では裏で、ある組織を結成させようとしていた―…

3鳳凰:2012/08/25(土) 22:19:12 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 

 No.1 ―真実という名の悪夢―

4鳳凰:2012/08/25(土) 22:38:28 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 「……スンマセンした…」

 竜泉子供施設所の入口門付近で、青と黒の混じり合ったツンツン頭ヘアーの少年、勝神:紫呉―ショウジン:シグレ―は顔のそこらじゅうにシップやら絆創膏やらを貼った、同い年ぐらいの男性に謝罪をする。

 しかし、男性の隣に居る親らしき女性はそんな謝り方には納得していないようで、文句を散らす。

 「何なんですか、その謝り方は!?この子は、何もしていないのにいきなりその子に殴られたんですよ!!もっと真剣に謝ってください!!」

 「…何にもしてないだぁ〜…「本当にすみませんでした」

 紫呉が親の言い分に反発しようとした時、施設の管理者であり、紫呉の親代わりである、時実:玄次郎―トキザネ:ゲンジロウ―は頭を下げる。

 「お前も頭を下げろ」と、言い玄次郎は紫呉の頭を掴み、下に押し込む。

 「…今後またこんなことが起こったら、訴えさせてもらいますからね」

 女性はそう言い、男性を連れながら施設を後にした。

5鳳凰:2012/08/25(土) 22:57:02 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ――――

 「っで、一体何であのガキを殴ったんだ?」

 先ほどの奴らが居なくなった後、玄次郎は紫呉を施設の大広間に連れて行き先ほどの男性を殴った理由を聞く。

 「……別に…」

 紫呉は、大広間の机の椅子に腰掛け、頬杖をしながら小さく答える。

 玄次郎は深くため息を着くと、座っていた大広間の椅子から立ち上がり、距離を置いて座っていた紫呉に近寄る。

 「お前はただでさえ、普通の奴より腕力やら何やらが強いんだ。そういう力は人を傷つけることなんかじゃなくて、『優しいとこ』に使え」

 ポンと、玄次郎は紫呉の頭に手をおいて真面目な顔でそう言ってくれた。

 玄次郎は、紫呉が問題を起こすごとにそう言ってくる。

 「…優しいことってなんだよ……」

 そう言うなり、紫呉は立ち上がり大広間を出て、施設寮の自分の部屋に走っていった。

 残された玄次郎は、また深くため息をついてもう一度椅子に腰掛けた。

6鳳凰:2012/08/25(土) 23:26:56 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ―――

 「んあぁぁぁ〜〜…!!ガチイラつく、マジイラつく、スんげェイラつく!!」

 紫呉が自分の寮の部屋に戻ってきた時の、第一声がこれである。

 タダでさえ、イかっていたのに、玄次郎からいつものようなお説教もプラスされるとイラつきもマックスになる。

 「大体、ナーニが『この子は、何もしていないのにその子に殴られたんですよ!!』だよ!!ついでに行ったら優しいことって一体どういうことなんだよ!!?教えるなら具体的に教えろってんだよ!!!!」

 紫呉は部屋のベットに飛び込むなり枕を殴りながら怒りを爆発させる。

 (…何が、何もしてねェだよ……)

7鳳凰:2012/08/26(日) 08:33:37 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ――1時間ほど前――

 紫呉は、施設の近くにある公園に脚を運んでいた。 公園には小さい子供が数人と、一人の男性がいた。 そうさっきの紫呉に殴られた男性だ。

 紫呉は、子供たちが楽しそうに遊具で遊ぶ姿を見て、小さく微笑みながら公園のベンチに腰掛ける。 遊具で笑いながら遊ぶ者たちは可愛い笑顔を作り、楽しそうにしている。

 「イデッ…!」

 何かが倒れる音と共に男の子のような声がした。 紫呉は声を上げた男の子の方に顔を向ける。 すると、半袖半ズボンの男の子が、男性の腰掛けているブランコの囲いの前で転んでいるところが見えた。

 「ダイジョーブ〜?」

 そんな男の子に、1、2歳ほど年上の姉らしき女の子が手を挙げながら、滑り台の方から男の子のところに走ってきた。

 「ウン、ヘーキだよ」
 
 「よかった〜…」

 男の子は女の子の方を借りて立ち上がる。 ここまでは仲の良い姉弟のごく普通のやりとりだ。 しかし、

 「おいガキ…」

 ブランコの囲いに腰掛けていた男性が男の子を睨みながら低くつぶやく。

 「なに人の靴に砂フッカケてんだよ。買ったばかりなんだぞ、これ」

 男性は、そう言うや否や男の子胸ぐらを掴んで宙に浮かす。 姉らしき女の子は、男性の足にしがみつき「はなして!」と訴える。 だが、男性は男の子を離すどころか、足にしがみついてくる女の子を蹴り倒した。

 その行為に、紫呉は目を見開く。

 「はなじで〜!!」

 女の子は泣きながら、もう一度男性の足にしがみつく。

 「タク、うっセーナー…」

 男性はキレたのか、男の子をパッと離し、女の子を殴ろうとした。

 「ッ―――!!」

 女の子はうるんだ目を閉じる。 だが、いつまでたっても男性の拳が女の子の顔には飛んでこなかった。 女の子は恐る恐る片目を開き、前を見る。 すると、そこには男性の腕を掴んだ紫呉がいた。

 「お前、なにすんだ「ガキいじめて楽しいか。あぁ゛?」

 紫呉は男性の言葉をさえぎる。

 「昼間っから御大層なことしてんじゃねえよ!!」

 そう言いながら、紫呉は硬い拳を男性の顔に飛ばした。

8鳳凰:2012/08/26(日) 09:00:24 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ―――

 「俺は全くこれっポチも悪くない!」

 ベットに背中をベッタリと付け、白い天井を見上げる。 大体これが優しいことでないなら、どんなことが優しいことなのだろうか。 そう思うともっと苛立ってくる。

 『ピーポー、ピーポー、ピーポー』

 すると部屋の外からパトカーと消防車、救急車のサイレン音が聞こえてきた。

 最近火事が多発しているので、今回もどこかで火事が起きたのだろうかと思い、紫呉は窓の前に立つ。 窓を開け、外に身を乗り出すと、施設から数百mほど離れたところから煙が立っていた。 どうやら本当に火事が起こっているらしい。

 「…………」

 火事が起こったのは、今ではないが、紫呉は火事が起こるごとに一つの疑問が生まれる。 それは、

 「また、火事現場、近付いてきてやがる」

 とのものだった。 確かに、1番最初は施設からものすごく遠いところだった。 だが、1週間に1度という期間で起こる火事は、日に日に施設に近付いてくる。 それが偶然なのか必然なのか、放火なのか事故なのか全く誰もわからなかった。 しかし、紫呉だけはそれが必然と思えた。

 そして、数ふんと経つと、近所の者が火事現場に集まり始めた。 野次馬というやつだ。

 紫呉も火事が気になったため、施設から出て火事現場に向かった。

9鳳凰:2012/08/26(日) 09:27:47 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 紫呉が火事現場に着くと、もう数人の野次馬が群がっていた。 紫呉は、人を上手くよけ現場保存のテープが貼ってあるところまで行く。

 「……コゲ臭…」

 紫呉はとっさに鼻をつまむ。

 火事が起こっている現場は、3人家族らしく、家の塀についている表札には3人の名前が掘られていた。

 「悲しいことねぇ。まだ子供は生まれたばかりだっていうのに」

 紫呉の隣にいた、少々太りがちの女性が、近所友達らしい、同じぐらい太っている女性に話しかけた。 

 紫呉は、火事の起こった家を見つめる。 2階建ての意外と大きな家だ。 だが、3人家族だったら丁度良い広さかもしれない。 ジッと、固まったように火事の起こった現場を見る。 すると、

 『……て…』

 一瞬だけ。 一瞬だけだが、確かに聞こえた。 紫呉の耳には確かにその声が。

 (助けて…)

 その言葉。

 『…けて……た…すけ…たす……』

 紫呉の耳にその言葉は引っかかる。

 「……ごめん…」

 紫呉は少し驚いたがすぐに、つらそうな顔になりうつむく。

 「俺は、お前のことを救えるほど強くねぇ……」

 そう言って、紫呉は施設に引き返した。

10鳳凰:2012/08/26(日) 10:45:10 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 ――――

 「イッタ…!!」

 午後7時頃。 紫呉はコンビニで晩ご飯のおにぎりやら何やらを買って、施設に戻ってきた時。 紫呉の右手に痛みが走った。

 「んだぁ…?」

 紫呉は右手に持っていた、コンビニの袋を左手に持ち替え、右手の甲を見る。 特に何か怪我をしたというわけではないが、ヒリヒリと痛む。 まるで、電流が走ったかのように。

 「…ん?紫呉、どうした?」

 紫呉が部屋の前で立ち往生してると、玄次郎があらわれた。

 「親父…。いや、なんか手が痛むっツーか…」

 そこまで言うと、玄次郎は小刻みに震える紫呉の右手を取る。

 『…………』

 玄次郎も紫呉も黙る。 紫呉はキョトンとしていたが、玄次郎はあきらかに真剣な顔だった。

 「な、何だよ親「お前、魂霊―コンレイ―の言葉に応えたのか」

 言葉をさえぎりまで発された言葉に、紫呉は「っは?」っと聞き返す。

 しかし、玄次郎はそれ以上言葉を返さない。 そして、玄次郎は服のポケットから黒い携帯を取り出しどこかにかけ始めた。

 「…あぁ、俺だ。今からそっちに行く。ドアを開けとてくれ…あぁ、頼む」

 それだけ言うと、玄次郎は携帯を切りポケットに入れ直した。

 「…紫呉、お前今年でいくつになる?」

 そして今度は意味不明な質問だ。 紫呉は、またも「っは?」と聞き返したが、「いいから教えろ」と玄次郎にきつく言われた。

 「今年で、17…だけど…」

 とう言うより、もう17だ。 高校2年という歳だが、高校に入っていない。 中卒というわけではない。 ただ単に行っていないだけだ。 

 「そうか…、もうそんな歳になってたのか…」

 玄次郎はうつむきがちに言う。 一体なんなのか、と思うが、次の言葉でそんな考えどこかに飛んでいった。

 「紫呉、お前は……化け者なんだ」

11鳳凰:2012/08/26(日) 11:06:54 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 生まれつき腕っ節の強かった紫呉。 小学校で測った握力は最高で39だった。 普通なら全くありえない。 ありえたら逆に怖い。 一番最初に握力を測った時には、何かの間違いだと思い測り直したのだが、やはり1番最初に測った時となんの変わりもなし。

 中学生にもなるとよく他校の者と喧嘩した。 紫呉からしたらただの暇つぶしだ。 だが、喧嘩が終わり、施設に帰ると玄次郎からいつもの言葉、「お前の力は『優しいこと』のために使え」が繰り返される。 そして、その度に「優しいことってなんだよ…」と返す。

 学校の者からは、「化け者」だの「怪物」だのと言われ、他校の者からは、毎日のように喧嘩を売られ、玄次郎は同情するどころか、毎日同じ言葉を繰り返される。

 味方もいない、身内もいない、肉親もいない、同情者もいない。 たった一人、自分だけが自分の味方だった。 毎日自分は人間だと言い聞かせた。 なんと言われようと自分は人間だ。 そう思っていたのに、こんな、タイミングで――………。

12鳳凰:2012/08/26(日) 11:54:11 HOST:softbank220024115211.bbtec.net
 「…俺が……化け…者…」

 紫呉は、玄次郎から言われた言葉に絶句する。 玄次郎は、紫呉の手首を掴んだまま大広間まで歩いて行った。

 「…ど、どう言う意味だよ!親父!!俺が化け者って…」

 紫呉は、バッと玄次郎の手を振り払う。 玄次郎は、言うか言わないか考えたあとに、思い切った顔になって口を開いた。

 「生きている人間は、死後、魂霊―コンレイ―となる。だが10年以上経つと悪霊―アクレイ―となり、生きている人間に取り付き、寿命を縮ませるんだ」

 全く話についていけない紫呉。 魂霊だの、悪霊だの、一体何を言っているんだ。

 「ちょっと待てよ親父!!何の話だよ!大体、それが俺とどういう関係があるってんだ!!?」

 紫呉は苛立ちを隠せない。

 「…紫呉、お前わな……」

 玄次郎が言葉を続けようとした瞬間、

 『ウ゛ー、ウ゛ー、ウ゛ー』

 携帯電話が鳴った。 玄次郎は紫呉に説明するのを止め、携帯に出る。

 「俺だ、どうした?………なに!!?…分かった!」

 先ほどのようなやり取りだった。 玄次郎は、携帯を切ると紫呉と向き合った。

 「いいか、紫呉。この携帯を持って、大広間まで行け。そうすりゃあ、なんとか助かる!!!」

 玄次郎はそう言うと、紫呉を残し、一人どこかに走っていった。 残された紫呉は、今聞かされたことを精一杯、頭の中で整理した。 そしてたどり着いた答えは、

 「全く、意味がわからん」


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