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紫の歌×鈴扇霊
204
:
ピーチ
:2012/08/21(火) 21:58:43 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴
「やっぱ凄いねー」
ぱちぱちと拍手を贈るあおりに、天音は苦笑しながら。
「…それ、誰に言ってるの?」
「全員」
「「「誰が!?」」」
あおりの言葉に三人が同時に怒鳴る。あおりは予想の範疇(はんちゅう)だったらしく、軽く耳を塞ぐ。
「はーいはい、三人とも凄いわよ?あたしなんか、できることって言ったら場所視くらいだもん」
「……その場所視のお陰で、私は何回救われたのかしら?」
「それはまぐれー」
あくまで自分のことは眼中に居れず、あおりが面白そうに言い募る。
「でもさー…」
直後。
突然、ギャアァァァと言う叫び声が聞こえ、四人がはっとして振り返る。その後ろに居た八人も気付いたようで。
「な……何、これ…!?」
「も、もしかして…あの時みたいな化け物じゃ…」
ソフィアとシェーラが呆然と呟く。
それを視て、天音が鋭く怒鳴る。
「みんなどいて!そのままじゃ、あなた達が死ぬのも時間の問題よ!?」
天音の声を聞いて、シュオンが真っ先にそれを促す。どうやら、天音の言わんとしていることを理解したらしい。
「安全な場所……って、どこかある?」
「……その、木の下」
「え?」
「今すぐ結界張るから。だから今すぐ…」
天音に最後まで言わせず、シュオンが頷く。
「分かった。…と言うことだから、みんな」
その一言で、指定された木の周りに集結する。
全員が集まった直後に、周りのピンと空気が張り詰める。
「……あおり。場所、どの辺か分かる?」
「ちょっと待って」
そう言って、あおりの瞳の色が変色する。
昼と夜とで違う猫の如く、能力(ちから)を使う時のみ、彼女の瞳が漆黒から青に近い藍に変わるのだ。
…どちらも似ているせいで、大した変わりもないように見えるが。
言ってから数秒。地に右手をつき、じっと様子を伺っていた彼女の顔がすっと上がった。
「右斜め上から左斜め下への移動。今居る場所が、あんたが結界張った木の真後ろ」
「っ……!」
場所を受けた天音が、すっと扇を取り出す。
―――己の血で染めた、紅い扇を。
そして。
「―――」
小さく呟いた声は、周りの者にも、妖自身にも届くことはなかった。
205
:
ピーチ
:2012/08/22(水) 18:02:44 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
紫色の鈴
―――やがて。
「……天音、今、何やった……?」
昇の言葉が、心なし堅い気がしないでもない。
が。
「……別に、ただ妖を潰しただけよ」
そう言って、平然とした態度で“それ”が居た所に歩み寄る。
「あま……っ!?」
「大丈夫よ。さっきので気配も何も、跡形もなく消し去ったから」
柊一の言葉を遮り、天音が平然と答える。
綺麗な顔をしていながら、とてつもなく恐ろしいことを、あっさりと言って退けるはただ一人。
…………この少女、神代 天音ただ一人である。
「…………んー、どうなんだろ…」
「…何、探してるんだ?」
「あいつ、集合体だったから…まだ、残りが居ないかと思ってね」
天音の言葉に対し、柊一が苦笑しながら呟く。
「まぁ…居たら居たで面倒だしね」
「えぇ。でも、もう居ないからいいわ。…ごめんね、みんな」
そう言ってソフィア達の周りに張った結界を解き、帰ろうと促す。
「……で、満足したかしら?」
「へ?」
「まだ他に、行きたい所とかある?」
ただ、危険は絶対のつき物よ、と苦笑しながら呟く天音に、ルイーズが言う。
「これ、おいしいな!今度うちの料理長に作らせよう」
「……この子は、まさかまだ他にも行きたい所ある…?」
「あ、いや……」
「じゃあ、僕達はそろそろ帰ろうか」
シュオンの言葉に、ソフィアが同意する。
「そうね、さすがに長い間邸を開けるわけにもいかないし…」
今度はソフィアの言葉に、シェーラとヒースが。
「そうですね」
「ほんとはもうちょっと居たいけど…仕方ないですよね」
「……じゃあ、みんな帰る?」
天音の問いに、一同が揃ってはい、もしくはうんと答える。
「じゃあ、今から異界の戸を開くから…間違って違う世界に飛ばされないようにね?」
「…………は、はい…」
それを想像したのか青ざめるシェーラに、天音は薄く微笑んで。
「大丈夫。あなた達なら、ね?」
その次の瞬間、真正面に一筋の光が現れた。
直後。
「還れよ。元の国へと…己が故郷(いえ)へと、今還られよ」
呟いた、瞬間。
―――異国の彼らの身体がふわりと浮き上がり。そのまま、その光に呑まれていった。
206
:
月波煌夜
:2012/08/22(水) 18:15:05 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ
なんか迷惑かけるだけかけて帰っていったなあいつら…w
皆ほんとごめんね!
バカ共がお世話になりました!
…力使うときに瞳の色が変わるっていいよね…(ぉい
207
:
ピーチ
:2012/08/22(水) 18:33:24 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>
いやいや、前はこっちが迷惑だけかけて帰ったから!お詫びと思えば何のその!
バカ共じゃないしw
うん、あおり特有の能力w←何気に気に入ってるw
208
:
麻利
:2012/08/22(水) 19:12:26 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
続き気になる〜!
209
:
ピーチ
:2012/08/22(水) 19:36:01 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
麻利>>
ごめんっ!続きないっ!
終わりました…
210
:
麻利
:2012/08/23(木) 12:56:58 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
終わったんだ・・・。
結構面白かったよ!
続きは、書く気無いの?
出来たら、その後のストーリーも見たいな!
211
:
燐
:2012/08/23(木) 12:57:10 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
終わったんだ・・・。
結構面白かったよ!
続きは、書く気無いの?
出来たら、その後のストーリーも見たいな!
212
:
ピーチ
:2012/08/23(木) 13:05:38 HOST:nptka202.pcsitebrowser.ne.jp
麻利さん、燐さん〉〉
ごめーん、次はつっきーの話だからさー
ごめんね!
213
:
月波煌夜
:2012/08/23(木) 13:44:49 HOST:proxy10085.docomo.ne.jp
ごめんなさいピーチの後は駄文が引き継ぎます本当にごめんなさい。
月波のターンは、とりあえず番外編が完結したら始め(てみ)ます(`・ω・´)
連載始めたら始めたらでピーチのキャラを盛大にぶち壊すのは目に見えてるから、早めに修正頼みます((こら
214
:
ピーチ
:2012/08/23(木) 14:09:29 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>
つっきー間違えてる!
ピーチの後は神作品が引き継ぎます、の間違いだョ!!
うん。修正必要ないね。←
連載始まったら絶対に一文字一文字が輝き出すよ!!
楽しみに待ってまーす!
215
:
燐
:2012/08/23(木) 14:27:49 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
私はこんなコメントを書いた覚えはありませんが。
>>211
216
:
燐
:2012/08/23(木) 14:34:21 HOST:zaq31fbc2fe.zaq.ne.jp
麻利の間違いだと思うので、削除依頼を出して置いてください。
217
:
にゅるにゅる
:2012/09/07(金) 21:43:14 HOST:softbank126048082020.bbtec.net
どうも!
一気読みさせていただきました!
お二人様は神ですか!?
私はこんなにうまく書いたことなんて…ううぅぅぅっ…←
これからちょくちょく読みますね^^
218
:
月波煌夜
:2012/09/07(金) 22:40:22 HOST:proxy10040.docomo.ne.jp
>>にゅるにゅるさん
初めまして!
いえ、ピーチは神ですが月波は地を這う虫ケラです\(^o^)/
ありがとうございます、是非ピーチとついでに月波が執筆の本編もよろしくお願いします←
あと、もう少ししたら月波の低俗な文章が発生しますのでお目汚し注意です(・∀・)
219
:
ピーチ
:2012/09/07(金) 22:48:41 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
にゅるにゅるさん>>
初めましてー!
お二人は、じゃなくてつっきーのみが神様ー!←自分は虫以下の存在w
つっきー>>
そんなに謙遜しなくても……((汗
……つっきー?お目汚し注意はあたしの小説じゃないかなぁ?
220
:
心愛
:2012/09/16(日) 13:12:37 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ピーチ
いや、このへんできっちり謙遜しとかないと言い訳が…(*_*;
ではでは、長らくお待たせしましたがここあのターン開始です!
とても残念なことになること必須ですがね!
それから新作も動き始めるのでゆっくり行きます、重ね重ねごめんねピーチ(´・ω・`)
あ、元月波だよー!
心愛で、ここあ、って読みます←
221
:
心愛
:2012/09/16(日) 13:13:28 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――開幕――』
全てを呑み込む宵闇よりも深い、濡れ羽色の髪が静かに波打つ。
銀に透き通る月光を浴びて一際艶めく見事なその黒髪は、極上の絹糸の如き滑らかさ。
―――さああああっ
突如吹き抜けた微風が、深い藍色の着物の袖を、この上なく優雅に膨らみはためかせる。
―――揺らめく蝋燭の灯りに照らされ、その人物の姿が浮かび上がった。
女性と呼ぶべき年齢ながら少女のあどけなさをも残した、怜悧で整った顔立ち。
長く繊細な睫(まつげ)が陰を落とす、黒曜石のように澄み渡った瞳。
清らかな白菊の花弁にも似た、しっとりとして瑞々しい肌。
その少女は美しく、しかし無心に舞い続ける。
指先で鮮やかな紅の扇を広げ、弧を描く所作は流れる水のよう。
凛と背筋を伸ばし、足を運ぶその様は月下に咲く一輪の花のようでもあった。
―――りん―――……
―――そのとき、玲瓏たる鈴の音が、静寂を破って涼やかに響いた。
「…………!」
少女が舞を止め、星のない夜空に唯一、煌々と輝く満月を真っ直ぐ振り仰ぐ。
「……これ、は……」
ふ、
珊瑚の色をした唇から漏れる吐息。
小さな呟きが、静まり返った深闇に儚く溶け込み、僅かな余韻を残した。
222
:
ピーチ
:2012/09/16(日) 13:31:26 HOST:nptka204.pcsitebrowser.ne.jp
心愛さん〉〉
やっほーい!コラボ開始ー!
おぉ!?早速天音が動いてるよー!
あ、あいつらをあんなに上手く動かしてくれて……!
感謝ですー!
223
:
心愛
:2012/09/16(日) 15:44:39 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
>>ピーチ
いや、これから大惨事になるよ…?
『邪気眼少女』と、今からスレ立てる『ソラの波紋』と並行するんで更新遅くなります…。
平日は、一日一回どれか更新できればラッキーって感じかな←
ここあは受験生に突入する前に、さっさと心残りを片付けねばならぬのだ…!
224
:
ピーチ
:2012/09/16(日) 16:42:40 HOST:nptka203.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
いやいやいやいや!大惨事はないでしょ!?
平行か!楽しみだよー!
225
:
心愛
:2012/09/21(金) 18:59:08 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――黒猫は告げる――』
処(ところ)変わって―――
「あら……?」
プラチナを伸ばしたように輝く銀髪を二つに結い上げる、淡い紫の瞳を持つ少女が窓に歩み寄る。
「シュオン!」
ぱっと顔を輝かせた少女が振り返り、部屋の中の人物の名を呼んだ。
「なあにソフィア」
眩い純金の髪、暖かみのあるサファイアブルーの双眸。
その美しい青年―――シュオンが、穏やかな微笑を浮かべながらソフィアに寄り添う。
この場に吟遊詩人でもいたのなら、詩の一つや二つを綴らずにはいられないに違いない。
そんな、一枚の絵画のように、非常に麗しい光景だった。
「見てシュオン、猫よ!」
ソフィアが嬉しそうに、外を指差す。
にゃあ、と可愛らしく一鳴きする声は、彼女の言葉通り、間違いなく猫のもの。
二又に分かれた黒くつやつやした尻尾を揺らめかせ、つぶらな目でこちらを見上げる。
ソフィアがそろそろと手を伸ばし、すぐ近くにあった猫の頭を撫でた。
気持ち良さそうに喉を鳴らすそれに、ソフィアはにこにこと笑って。
「可愛いわねー」
「そうだね。……ところでソフィア」
なに?と彼女が猫から手を離したその刹那。
シュオンはキラキラした至極の笑顔を浮かべて、言った。
「―――オスかな?メスかな?」
「ま、待ってシュオン、その手に持ってる爆弾は何に使うの!?」
マルグリットの実権を掌握する、王国中の貴族の筆頭エインズワーズ公爵家次期当主様の嫉妬の対象は、猫にまで及ぶらしかった。
*゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。**゚*。,。*゚*。,。*゚*。,。*
「……猫、か」
にゃー!と鳴きながら何処からか走ってきた猫が、こちらを見るや特徴的な尻尾をしゅるりと動かして地面に座り込んだ。
漆黒の髪に、鋭い眼光を生み出す同色の双眸。
無駄を削ぎ落とすかのように鍛えられた長身。
ヒースは猫の前で立ち止まり、
「黒猫って……確か、不幸を呼ぶんじゃなかったっけか」
「にゃー」
「迷信だけど……ってあれ、そういや御嬢様と反対だな」
「にゃー」
「じゃあ本当なのか?」
「にゃー」
「ま、どうでも良いけど」
と、そこで、ヒースは猫を見下ろして冷たく言う。
「残念だったな。俺は何も持ってねえし、にゃーにゃー可愛く鳴いたって拾わねえもんは拾わねえよ」
「にゃー」
「こういうのは、一旦懐かれっと面倒だからな」
ヒースは、すがるように鳴く猫を黙って背を向けて振り切り、
「……………ミルクで良いか?」
全然振り切れてなかった。
226
:
ピーチ
:2012/09/21(金) 19:41:06 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
ねーこーだーよー!?
シュオン様ぁー!!猫にまで嫉妬しちゃだめー!!
………二又に割れた尻尾の猫ってまさか……
227
:
心愛
:2012/09/21(金) 20:55:49 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>ピーチ
要するに、ここあは猫が大好きだってことだね!
ちなみにヒースは、「うるさいから嫌い」とかぶっきらぼうに言いつつ、小さい子供とか動物とかは結構好きで世話焼いちゃうタイプw
良いお父さんになるよ!(笑)
天音ちゃんたちのご登場はもうちょいお待ちを<(_ _)>
228
:
ピーチ
:2012/09/21(金) 22:00:30 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
おおいヒースっ!好きなら好きであっさり白状しなさい←え
お、天音達そろそろ登場?
229
:
心愛
:2012/09/22(土) 16:15:28 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>ピーチ
それができないのがヒースなんだ!(≧∀≦)
天音ちゃんたちをお借りします…(ふかぶか
残念なことになること必須だけどね!((しつこい
230
:
ピーチ
:2012/09/22(土) 17:20:06 HOST:nptka307.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
ヒース優しすぎだよー!
天音逹ならどーとでもお使い下さいw
な、何かとんでもなくレベル高そうな気が……!
231
:
心愛
:2012/09/24(月) 21:07:45 HOST:proxy10056.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ちょっと質問なんだけど、
天音ちゃんは基本ソフィアと同じ口調で良いのかな?「〜わ」「〜よ」「〜かしら」とかでNGある?
それから、三人とうちのバカ共の間で決まってるお互いの呼び方があったらお願いしますw
黒髪は承知してるよー(・∀・)
232
:
ピーチ
:2012/09/24(月) 22:30:40 HOST:i121-118-221-80.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
OK!天音の口調はソフィア様と一緒ww
……うちの三人とここにゃんキャラんぼ間での呼び名……
ヒースは黒髪君←何か定着させちゃってごめん><
シュオン様は金髪君もしくは金髪(主に昇と天音が使用)
それ以外はあんまりない……
柊一と昇はヒースに黒髪って呼ばれてる←柊一は気にしてないけど昇はたまに怒るww
天音は………特に決めてないけど、ヒース辺りから結構色んなあだ名つけられてそう、てきとーに決めていいよww
はいほとんど適当ですねすみません><
233
:
心愛
:2012/11/06(火) 23:19:30 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp
>>ピーチ
……(土下座中)
え、えっと、とりあえず更新しますはい。すみませんほんと。謝るしかないですほんと。
234
:
心愛
:2012/11/06(火) 23:20:32 HOST:proxyag051.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――異世界のモノ、現る――』
ヒースの背後―――
彼が背を見せた瞬間、尻尾を揺らめかせる猫の眼が、禍々しい光を湛えてギラリと輝いた。
小さな体が、みるみるうちに膨れ上がる。
間抜けな獲物を掻き裂こうとでもするように、凶悪に歪む口元から尖った牙が、手足からは鋭利な針の如き爪が覗く。
猫―――だったモノは助走の勢いを生かして音もなく跳躍、ヒースへと飛び掛かり、
「―――……なっ……んだよこれっ!?」
間一髪。
敏感に不穏な気配を察したヒースは振り返ると同時に後方へと飛び退く。
何もない空(くう)を、彼を引き裂かんと繰り出された爪が抉(えぐ)った。
《フニャァアアアア゙ア゙ア゙ア゙!!》
最早原形を留(とど)めずに蠢(うごめ)く、耳障りな奇声を撒き散らしている黒い影にも似た『何か』。
「ちょっ」
咄嗟に身を捻り、無心で剣を突き出す。
経験に裏付けされた勘は正しく、ほぼ紙一枚分という距離で何とか爪の軌跡を回避した。
しかし、
「……嘘だろ!?」
正確無比に突き出された剣先は、まるで影を切断しようとしたかのように『ソレ』をすり抜けた。
ヒースは舌打ちをしながらバックステップ、遠心力を利用し無駄のない動きで剣を彼の下へと戻す。
「効かない……っつうことは……」
敵は驚く暇さえも与えてはくれない。
感情の起伏を乱したら終わりだと、相手の攻撃をさばきながら必死に念じる。
直接攻撃を与えてもびくともしない、この常識外の化け物を撃退することは、ヒースが処理できる範囲を遥かに超えている。
「くそっ……」
ヒースだけなら良い。
けれど此処で何とかして仕留めてしまわなければ、屋敷の人間たちにまで危害が及ぶだろう。
兵士たちを呼ぶ? ……無駄だ。
ヒースとほぼ互角の力を持つジルを筆頭にしたエインズワーズ兵は確かに強いが、彼らはヒースと同じく剣の腕前に頼っているにすぎない。
おそらく数で圧倒することも不可能だろう。
こうして時間を稼いでいてもどうしようもないということは分かっている。
けれど人外のものが相手では、己の剣技も意味をなさないのだから他にどうしようもないのだ。
体力には人一倍自信があるヒースにだって、いつかは限界が訪れる。
そうしたら―――
『彼女』の笑顔が瞼の裏に浮かび上がる。
何も知らずに、今も無邪気に、晴れやかに笑っているだろう『彼女』。
「……くそ……っ」
ぎり、と噛み締めた歯が軋む。
シェーラを守ると誓った。
ソフィアを守ると約束した。
「……どうすれば……っ」
ヒースは獣のように唸る。
隠すべくもない焦燥感が滲む低い声色。
それが空気を震わせ、波紋のように広がるその前に―――
「―――……そこまでよ」
―――りん……―――
凛然たる声と共に、
涼やかな鈴の音が、響いた。
235
:
ピーチ
:2012/11/07(水) 20:04:00 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
いやいやいやいや!? 土下座いらないからね!?
こーしーん!! うわぁ、ヒースやばいかっこいい!!
間一髪ってこと自体凄いよ! 天音(らしい)の登場もさすがだよね!
236
:
心愛
:2012/11/07(水) 21:24:03 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ
よ、よかった…(^-^;
天音ちゃんはソフィアと同じ言葉遣いで、でも結構キツいことも言う。クールビューティーだけど表情はそこそこ動くイメージ。
昇くんはヒースと似たような喋り方、ポジション。でもヒースよりは明るいし融通利きそう。天音ちゃんを怒らせてとばっちり喰ってるイメージ。
柊一くんはシュオンと似た話し方だけど一人称「俺」。
穏やかで天然、でもたまにすごい鋭い。
以上がここあの三人に対する大まかな印象なんだけど、ずれてるとこもあるだろうから訂正よろしく!
あと、天音ちゃんは、ソフィア黒バージョンみたいに、人をからかったりボケたりできるかどうか。
それから皆さんは甘いもの…お菓子類は平気ですか?
ということをお聞きしたく存じます(^-^)/
237
:
ピーチ
:2012/11/07(水) 22:16:04 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
性格みんなぴったりだよー! 確かに昇と柊一は毎回必ずとばっちり喰うよw
昇はどっちかって言うとうるさいし柊一は後ろで苦笑してる感じ?←え
天音は……からかえないボケられないごめん! あと三人ともお菓子類とか甘いものは嫌いってことで!
…女の子が甘いもの嫌いって珍しいよね←
何かこう考えてみると何気にここにゃんキャラとかぶりまくってる気がする←え
238
:
心愛
:2012/11/08(木) 12:02:57 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ
りょうかい!
これからも、なんかあるごとにちょこちょこ聞くと思うけどよろしくね!
ここあなりに天音ちゃんを動かしてみたんだけど、おかしいとこはばんばん言っちゃってください(´ー`)
あと呪文らしきものは適当にやりましたごめんなさい。残念ながらこれがここあの限界だった…!
いやあ、ピーチの偉大さが身にしみて分かるね(*´д`*)
239
:
心愛
:2012/11/08(木) 12:03:58 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――咲乱華(さきみだれしはな)――』
風を纏う髪は漆黒。
美しく冴えた深い闇の双眸が、すう、と細められる。
絶対零度の眼差しに、冷たく研ぎ澄まされたエキゾチックな顔立ちの持ち主は。
「……お、お前……っ!」
神代 天音(かみしろ あまね)。
妙な縁があって、ヒースたちと一騒動―――いや、二騒動あった少女だ。
《グルルルルル……》
“異形”が攻撃の手を休めて地面に降り立ち、天音を前にしてじりじりと後ずさる。
まるで、この可憐な一人の少女を畏(おそ)れてでもいるかのように。
「………………」
ヒースの声が届かなかったのか、それとも単に無視したのか。
どちらとも取れる真剣そのものの表情で、天音は猫―――否、“異形”と対峙する。
刹那の空白の後―――
すっ、
天音が鮮やかな紅色をした扇を取り出し、彼女を濁った赤い眼球で睨みつける異形へと翳(かざ)した。
「―――……燦爛たるは仮初めの紅鏡」
桜の色をした唇が淡い音を紡ぐ。
「深淵に眠りしは銀雪の氷輪」
決して大きくはないのに不思議と耳に残る、心地良い、流れるような詠唱。
「虚しく吼ゆる哀しき獣よ。我、其の枷を解き放つ」
瞼を閉じる彼女の、足首にさえも届こうかという長さにまで伸ばされた、黒檀のように艶やかな髪がふわりと広がる。
「此の夜の果てに帰する刻」
悪しきモノを常闇(とこやみ)へと誘(いざな)い囚うかの如く、瞳が強い光を湛(たた)え、
華奢な指先は、扇を空高く天へと掲げた。
「―――汝、散り逝く華となれ」
―――ざあっ―――!
「わっ」
ヒースは慌てて飛び退く。
庭園の花々が散らせた無数の花弁が、少女と“異形”とを包み込むように、勢い良く舞い上がった。
くるくると廻り、揺らめき、踊る花片たち。
それは妖精の輪舞のように、幻想的な光景で。
「……な、何が……っ?」
やがて風に流されて、視界を覆い潰していた大量の花びらが捌(は)け、ひらひらと降り積もる頃。
「………………」
いつの間にやら、あの“異形”の姿は綺麗に掻き消えており。
後に残っていたのは、深藍色の着物の褄先(つまさき)と袖口をはためかせる、少女ひとりだった。
視線が合う。
「…………………」
とっさのことに言葉が出ず、ヒースは口を開きかけて、また閉じる。
「…………………」
「……………………」
くる。
「いや一言くらい何か言えよ!?」
無言で背を向けて立ち去ろうとした天音に、ヒースが突っ込んだ。
非常に億劫そうに、髪を片手で後ろに払いながら彼女が振り向く。
「……何、」
「ちょっと待て」
ヒースは何か言いかけた天音を遮り、
「お前のお陰で助かった。礼は言う。ただ……お前今また『黒髪君』って言おうとしただろ」
「そうだけど?」
当然のように、天音。
「やっぱりまだそのネタ引っ張ってくんのかよ……。他に呼び方ってもんがあんだろが」
「……あぁ」
納得したように頷いて。
「そういえば、『黒髪君』の他にもちゃんとした名前があったわね。そっちの方が良いってこと?」
「……な、なんだ。分かってんじゃねえか」
意外そうにたじろいだヒースに、天音は「えぇ」ともう一度頷き、真摯な瞳を向けた。
「勿論よ。……黒目君」
「どちくしょ―――――!?」
「五月蝿いわね……」と苛立たしげに眉をしかめる天音の顔には冗談の色はなく、完全に本気で言っていたということが分かる。
―――ある意味シュオンよかよっぽど酷くねえかこいつっ?
いつも一方的にからかわれ、遊ばれている悪友の姿を思い浮かべ、ヒースはわなわなと震えた。
240
:
彗斗
:2012/11/08(木) 18:14:19 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
ピーチさん>>
凄くお久しぶりです!! 物凄く長い間見ないうちにここまで進んだのか……!?
もう私が次に来た頃には終わりが近かったりして……!?
もっと急いで此方も更新せねば(汗)
心愛さん>>
大変長らくお待たせいたしました! そろそろ本気で更新しないと……(汗)
新キャラの考案に凄く時間を喰ってしまって……心愛さんの世界観に沿った作者泣かせのオリジナルキャラが三人、やっと出来ました(泣)
241
:
ピーチ
:2012/11/08(木) 20:39:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
お、おかしいとこが何一つない…さっすが神様! 詠唱だって凄く凄い!!←どういう意味だ
黒髪&黒目君来たー! ま、まさかの冗談抜き…さすが天音だw
ヒース相変わらずだ! かっこいいときと遊ばれてる時の違いがある意味見所ある←おい
242
:
心愛
:2012/11/08(木) 23:17:46 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>彗斗さん
ここあのターンはまだ始まったばかりです(´ー`)
のろのろとカス以下の駄文を垂れ流しておりますが、宜しかったらまた見てやって下さいな(^-^)/
おお、三人も!
楽しみに待ってます(*^_^*)
>>ピーチ
ほんと?
…よ、よかったあー…
それぞれ「紅鏡」が太陽、「氷輪」が月の別称の一つらしいけど何かかっこいいよね!日本語ばんざい!
あと、「此の夜」は、ほんとは「此の世」にするつもりだったんだけど、天音ちゃんをリスペクトということで、イメージ的に「夜」にしてみましたよー(≧∀≦)
天音ちゃんは素で酷いこと言うのね…。
ヒースは相変わらずですw
次は最大の不安要素、男性陣二人組だよー…。がんばる!
243
:
ピーチ
:2012/11/09(金) 06:57:19 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
ほんとほんとー!←
な、何かあたし以上に詠唱が……((泣
天音は無意識に人喜ばせて無意識に止め刺すからね! 微妙に夕紀ちゃん的な?
男二人組みだー! あ、どっちかって言うと柊一は立場的に弱いから! たまに一番強くなるけどね!
244
:
ピーチ
:2012/11/09(金) 07:02:01 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
ごめん補足!
男二人組みに関しても昇は天音とほど一緒でヒースのことは黒髪もしくは黒目君です←
柊一は一応ちゃんと全員の名前憶えてるからヒース含めそれで呼んでるよ!←
245
:
心愛
:2012/11/09(金) 16:17:56 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ
補足ありがとう!
柊一くんはなんか可哀想であんまりいじめられん…(ぉい
一応やってみたんだけど、また何かあったら遠慮なく言ってください!
早いうちになんとかしなきゃだし←
246
:
心愛
:2012/11/09(金) 16:18:34 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――遠い世界で、彼らは出逢う――』
「天音っ?」
突如として割り込んだ若い男の声に反応し、天音がゆっくりとそちらへと視線を投げた。
「ったく、此処にいたのかよ」
駆け寄って来た、精悍な印象を与える風貌の青年―――昇(しょう)が天音の姿を認めるなり、一瞬だけ浮かんだ安心したような表情を崩して毒づく。
「はー……。急に走り出すからびっくりしたよ。幸い、無茶はしてないみたいで良かったけど」
同じく、二人と同年代であろう、昇の隣に並んだもう一人の青年が、こちらは怒る様子もなく苦笑した。
その彼、柊一(しゅういち)の温和な性格が滲み出る笑みにも目もくれず、天音は冷え冷えとした一瞥と共に、この上なくシンプルな一言。
「―――遅い」
「そりゃないよなっ? 歩いてる人に道聞いて、何も知らない異界でお前探しながら必死に走ってきた俺らに言うことじゃないよなっ?」
「……昇が一人勝手に聞き込んでる間に、最終的に異形の場所から此処を突き止めたのは俺なんだけど……」
天音はさらりと髪を梳き、
「やかましい。特に昇、あんたの声は五月蝿いのよ。鼓膜が破れたらどうしてくれるの?」
ぴしゃりと言い捨てる天音を前に、昇は顔の筋肉をひくひく痙攣させながら。
「俺はこの胸にこみ上げる怒りを何処にぶつけるべきなんだろうなぁっ!?」
「何か言った?」
「いえ何でもないです俺が悪う御座いました」
天音に妙な迫力が籠もった横目で見られた昇は、慌てて口をつぐんだ。
ついでに柊一も黙り込む。
「……おーい」
三人のやり取りを傍観していたヒースは、そろそろ良いかと半眼で声を掛けた。
柊一と昇がやっとのことでヒースを視認し、
「あー! 黒髪じゃん!」
「だっから誰が黒髪だ誰が!」
声を上げるや彼を指差した昇にヒースは早速突っかかる。
「俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があんだよ! 何回言えば分かるんだっ」
「黒髪・ユーゼルな。覚えた覚えた」
「あれ、意外と語呂良いね」
「……なあ殺して良いか? こいつ殺っちまって良いか?」
「俺に聞かれても。そういうことは天音に言ってよ」
「お、やるか黒髪……って待て柊一っ!? お前今なんつったっ?」
「……悪いけど、それは駄目。勿論柊一も」
「へ」
きっぱり言い切った彼女を、昇、それから柊一が信じられないものを前にしたときのようにまじまじと見た。
「……あ……天、音?」
「何を馬鹿みたいに驚いてるの? 二人とも私の所有物で家来みたいなものなんだから。いなくなると不便じゃない、色々と」
「あ、あーうん。分かってたよ。分かってたけどさ……」
とても微妙な顔で、昇。
「天音……? えーともしかして、怒ってたりなんか……?」
「五月蝿いのは嫌いだって、言ってるわよね?」
「「すみませんでした」」
「お前らにプライドはないのかっ?」
真顔の天音に頭を下げる大の男二人。
……こりゃ駄目だ、とヒースは直感した。
この面々は一見常識人のようで―――
……とにかく、放っておいたらいつまでもこのままなのは間違いないだろう。
「……で? お前ら、これからどうするんだよ。あの化けもんを追いかけてきたんだろ? じゃあもう用はないのか?」
天音がぴく、と柳眉を動かす。
「そう、なんだけど」
「何か引っ掛かるんだよね」
「まだ残ってるってことか? この近く?」
「そこまでは分からないけど、そんなに遠くはない……と、思う」
「俺もそんな感じかな。いまいちはっきりしない」
「どうする?」
霊感とかそういう類のものには無縁なヒースは黙ってそれを聞いていたが、
「……じゃあさ。ちょっとで良いから、茶でも飲んでかないか? その化けもんみたいなのもそのうち出て来るかもしんねえだろ」
「でも」
「お前らが来たって知れば、御嬢様も……あいつも喜ぶだろうし。ちょうど午後から客人が来るから準備してたんだ、三人くらい変わんねえだろ」
三人は顔を見合わせた。
247
:
ピーチ
:2012/11/09(金) 18:35:34 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
すっげー!! 柊一と昇の口調があたし以上だ! 一人で大笑いしてた!←
あ、ちょこっと訂正&補足
天音は柊一のことは「柊」って呼んでます。ついでに二人のことは家来扱いしてるように見えるかもだけどそんなことないよ!
……ごめんね、表現分かりにくくてごめんね
それと、天音は男性軍(シュオン様とかヒース、ジルも?)には毒舌吐きまくってるけど女性軍にはめっちゃ優しいよー←
…そして、その天音の毒舌を内心で冷や汗だらけで止めるのが柊一ね。こいつは誰に対してもフレンドリー
んで、昇もフレンドリーだけど、ヒースのあだ名に関しては弄り倒してるって言うw←ひでぇ
ごめんね何か多くてごめんね!?
248
:
心愛
:2012/11/09(金) 19:21:42 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
>>ピーチ
……やっちまったぜ……((((゜д゜;))))
データ残ってたんで、とりあえず軽い訂正バージョンをば↓
大変失礼しました(;O;)
249
:
心愛
:2012/11/09(金) 19:22:56 HOST:proxyag067.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――遠い世界で、彼らは出逢う――』
「天音っ?」
突如として割り込んだ若い男の声に反応し、天音がゆっくりとそちらに視線を投げた。
「ったく、此処にいたのかよ」
駆け寄って来た、精悍な印象を与える風貌の青年―――昇(しょう)が天音の姿を認めるなり、一瞬だけ浮かんだ安心したような表情を崩して毒づく。
「はー……。急に走り出すからびっくりしたよ。幸い、無茶はしてないみたいで良かったけど」
同じく、二人と同年代であろう、昇の隣に並んだもう一人の青年が、こちらは怒る様子もなく苦笑した。
その彼、柊一(しゅういち)の温和な性格が滲み出る笑みにも目もくれず、天音は冷え冷えとした一瞥と共に、この上なくシンプルな一言。
「―――遅い」
「そりゃないよなっ? 歩いてる人に道聞いて、何も知らない異界でお前探しながら必死に走ってきた俺らに言うことじゃないよなっ?」
「……昇が一人勝手に聞き込んでる間に、最終的に異形の場所から此処を突き止めたのは俺なんだけど……」
天音はさらりと髪を梳き、
「やかましい。特に昇、あんたの声は五月蝿いのよ。鼓膜が破れたらどうしてくれるの?」
ぴしゃりと言い捨てる天音を前に、昇は顔の筋肉をひくひく痙攣させながら。
「俺はこの胸にこみ上げる怒りを何処にぶつけるべきなんだろうなぁっ!?」
「何か言った?」
「いえ何でもないです俺が悪う御座いました」
天音に妙な迫力が籠もった横目で見られた昇は、慌てて口をつぐんだ。
ついでに柊一も黙り込む。
「……おーい」
三人のやり取りを傍観していたヒースは、そろそろ良いかと半眼で声を掛けた。
柊一と昇がやっとのことでヒースを視認し、
「あー! 黒髪じゃん!」
「だっから誰が黒髪だ誰が!」
声を上げるや彼を指差した昇にヒースは早速突っかかる。
「俺にはヒース=ユーゼルっつう名前があんだよ! 何回言えば分かるんだっ」
「黒髪・ユーゼルな。覚えた覚えた」
「あれ、意外と語呂良いね」
「……なあ殺して良いか? こいつ殺っちまって良いか?」
「俺に聞かれても。そういうことは天音に言ってよ」
「お、やるか黒髪……って待て柊一っ!? お前今なんつったっ?」
「……悪いけど、それは駄目。勿論柊も」
「へ」
きっぱり言い切った彼女を、昇、それから柊一が信じられないものを前にしたときのようにまじまじと見た。
「……あ……天、音?」
「何を馬鹿みたいに驚いてるの? 昇も柊も、いなくなると不便じゃない、色々と。当たり前のことでしょう?」
「あ、あーうん。分かってたよ。分かってたけどさ……」
とても微妙な顔で、昇。
「天音……? えーともしかして、怒ってたりなんか……?」
「五月蝿いのは嫌いだって、言ってるわよね?」
「「すみませんでした」」
「お前らにプライドはないのかっ?」
真顔の天音に頭を下げる大の男二人。
……こりゃ駄目だ、とヒースは直感した。
この面々は一見常識人のようだが、それは見せかけだけなのかもしれない。
とりあえず、放っておいたらいつまでもこのままなのは間違いないだろう。
「……で? お前ら、これからどうするんだよ。あの化けもんを追いかけてきたんだろ? じゃあもう用はないのか?」
天音がぴく、と柳眉を動かす。
「そう、なんだけど」
「何か引っ掛かるんだよね」
「まだ残ってるってことか? この近く?」
「そこまでは分からないけど、そんなに遠くはない……と、思う」
「俺もそんな感じかな。いまいちはっきりしない」
「どうする?」
霊感とかそういう類のものには無縁なヒースは黙ってそれを聞いていたが、
「……じゃあさ。ちょっとで良いから、茶でも飲んでかないか? その化けもんみたいなのもそのうち出て来るかもしんねえし」
「でも」
「お前らが来たって知れば、御嬢様も……あいつも喜ぶだろうし。ちょうど午後から客人が来るから準備してたんだ、三人くらい変わんねえだろ」
三人は顔を見合わせた。
250
:
ピーチ
:2012/11/09(金) 21:06:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
……………………ごめんね何かわざわざやり直しなんかやらせちゃってごめんね!?
やばい凄い!! キャラそのものだー!!
多分柊一と昇の「すみませんでした」はプライドなんかよりも自分の身の安全を優先したものだね←おい
ヒースの突っ込みも面白いー!
251
:
心愛
:2012/11/09(金) 23:00:13 HOST:proxy10053.docomo.ne.jp
>>ピーチ
いや、なんか落ち着けない性分なので←
それはよかった(*^_^*)
……やっぱり命>プライド?(笑)
ヒースはいつも通り平常運転w
あとあと、皆さん紅茶とか飲める?緑茶じゃないとダメ?(←勝手なイメージ)
それから天音ちゃんがブチギレたらどうなるのか気になるんだが…
252
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 09:35:23 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
わーごめんなさーい!!
うん。プライドなんかよりも命、だろーねあの二人は。
紅茶は別に飲めるよー
………天音が切れたらほぼ一瞬で部屋の中の物が粉々になる。もしくは建物一個余裕でぶち壊す。←おい
253
:
心愛
:2012/11/10(土) 10:39:59 HOST:proxy10026.docomo.ne.jp
>>ピーチ
マジデカッ!?
殺傷能力はんぱないね天音ちゃん! 昇くんと柊一くんが恐れるわけだ!
…え、えっとそれは、霊的な力で破壊するってこと?
254
:
心愛
:2012/11/10(土) 12:27:51 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――集う者たち――』
「わー! わ―――! わぁあ―――!」
「うるせえ落ち着け黙ってろ」
「すっごいお久しぶりですっ! 会いたかった―――!」
大きな青灰色の瞳をこれ以上ないくらいにキラキラと輝かせるメイドの少女。
シェーラは柔らかな小鹿色(フォーン)の髪を揺らしてぱたぱたと走り出し、
「やっぱり可愛ぃぃぃぃいっ!」
「…………え」
さっ。
「にゃぎゅっ?」
「わっ!?」
天音は―――思わずというように、突進してきたシェーラを避けて、隣に立っていた柊一を盾にした。
ぼすっとそのままの勢いで、シェーラが彼にぶつかる。
「ま、またやっちゃった……。ごめんなさい、大丈夫?」
「ふへー……いいんれすよー」
赤くなった鼻をさすりながら、シェーラがえへへと笑う。
「あ、そちらのお二人もお久しぶりですっ! ぶつかっちゃってすみません」
「俺らは天音のオマケかよとか突っ込んじゃいけないんだろうな多分」
「あはは……。久しぶり」
昇、柊一と握手を求めてにこにこしているシェーラを見て―――ヒースはむっつりと口元を引き結びそっぽを向いていた。
「………………」
「何をそんなに不機嫌そうに……あぁ。もしかして二人に妬(や)いてるの? 黒髪君」
「はっはあ!? んな訳ねえしっ……ってか結局黒髪なのかよ俺はっ!?」
「慣れちゃったから直すのも面倒なのよね」
「うぇへへへ……クールな美人さんって素晴らしいよねぇ。あたしなんかもう見てるだけでしあわせー」
「ええと……有難う?」
「俺への対応と全く違うような気がするんだがっ!?」
によによと顔面を完全崩壊させてしまっているシェーラを見て、天音は少し困ったように首を傾げた。
「―――やっぱり君たちだったんだね。急にお客様が増えたって言うから、誰かと思ったけど」
「……こんにちは」
二人ぶんの足音が聞こえ、人好きのする笑顔を浮かべたシュオンが庭園へと現れた。
警戒してか彼の背後に隠れるようにしていたソフィアも、安心したように出てきてぺこっとお辞儀をする。
「金髪君」
「……髪の色で人を呼ぶのはどうかと思うのだけど……」
「で、そっちはソフィア……ちゃん、よね。お邪魔してるわ」
「私は名前なのっ?」
ソフィアが驚いたように紫の双眸を丸くする。
「貴女だけじゃないわよ。ちゃんと覚えてるもの。まずそっちはシェーラちゃん」
「えへへ、そうでーす」
次に天音は視線をずらし、真紅の髪を持つメイドの女と、傍らに立っていた大地色の髪の男―――ユーリエとジルを見やって。
「それから、貴女はユーリエ……ちゃん、で良いの? それとも『さん』?」
「え? え、ええと」
急に振られたユーリエが口ごもっている間に、ジルがけらけらと笑った。
「アッハハお嬢ちゃん良く見てみろって、こいつは『ちゃん』が通用するよーな年じゃな―――」
「……ジル?」
「―――くもないかもしンねェな、うん」
にっこりと怖すぎる微笑を向けられたジルは目を泳がせながら誤魔化した。
「じゃあユーリエ『さん』で」
「うん、それが良いかも」
「で……最後に茶髪君。ね、全部合ってたでしょう?」
「完璧ね」
「うん。僕の呼び方以外はパーフェクトだと思う」
「俺の『黒髪君』もいい加減嫌なんだが」
「いーじゃーん。これ以上ないくらいぴったりだもん」
「わ、私、意外とまだ『ちゃん』でいけるのかしら……?」
「オレの呼び名に関してはノーコメントかよッ!? 今明らかにおかしかったよなァ!? 三人はまともだったのになんでオレだけッ?」
「男に生まれたからには天音に逆らう方が無茶だから、諦めた方が良いと思うよ?」
「諦めって肝心だよな」
「ヒースみてーなこと言うんじゃねェよッ!」
何処かで聞いたような台詞と共に悟りきったように微笑む二人を見て、ジルは戦慄の色を走らせた。
255
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 13:23:48 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
マジデスッ!!
殺傷能力ならある意味お任せあれだよ←
うーん…基本的に霊的な力かなぁ…
ジルの呼び名受けた! それと柊一達の言葉! あれ絶対言うかも!
やっぱり神様がキャラを動かすと違うもんだねぇ←おい
256
:
心愛
:2012/11/10(土) 14:25:37 HOST:proxy10027.docomo.ne.jp
>>ピーチ
破壊神光臨w
好き勝手やってすみません(´ー`)
あ、天音ちゃんすげえ…
あとの二人は、そういう破壊的かつ霊的な能力はないの?
257
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 15:19:44 HOST:nptka103.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
うん、天音が切れたら本気出した柊一でないと止められないからね←
いや、破壊能力は持ってないけど霊的な力はあるよー
258
:
心愛
:2012/11/10(土) 17:31:41 HOST:proxyag081.docomo.ne.jp
>>ピーチ
柊一くんもすごかった!
天音ちゃんは怒ると無表情になるんだっけ?
一回軽くキレてもらおっかなーと思ってるんで←
259
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 17:46:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
柊一は地味に凄いからね←
うん、天音は無表情になる=キレるだからw
柊一も一回マジギレしたことあるよーまだ載せられてないけど←おい
260
:
心愛
:2012/11/10(土) 18:15:32 HOST:proxyag120.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――新たな招待客――』
「……それで? 本来のお客様って誰?」
白く塗られた樫で出来た椅子に腰掛けながら、天音が問う。
「ええと」
「あ、ちょうどいらっしゃいましたよ!」
言葉に詰まったソフィアの代わりに、シェーラが嬉しそうに叫んだ。
同時にシュオンが立ち上がり、人影に向かって声を掛ける。
「姫君、クロード殿! こちらです!」
「おお、シュオンではないかっ」
赤みの混じる輝かしい金髪、小柄な体躯に若草色のドレスを纏う天使のように愛らしい少女が、ぱっと顔を綻ばせて駆け寄ってきた。
「お会いできて光栄です、姫君」
「うむ! わたしも嬉しいぞ」
身長差を埋めるように軽く膝を折ったシュオンに、少女―――ルイーズが大仰に頷いた。
「訪問状はきちんと受理されたようじゃな」
「はい。姫君の御要望通り、お菓子もたくさん用意してあります」
「ほう! それは楽しみじゃ! 具体的には何が」
「ルイーズ様」
「む……わ、分かっておるわ。最初に挨拶じゃろう?」
傍に控えた従者(ヴァレット)の青年にたしなめられ、ルイーズは唇を尖らせた。
「クロード殿もお久しぶりです」
「はい。ロード・シュオンも御機嫌麗しく」
その従者、艶のある黒髪を風に泳がせた長身の青年クロードが、完璧な姿勢で一礼。
「ロード・シュオン、ロード・ヒース、そしてレディ・ソフィア。本日は私のような者までお招き戴きまして大変恐縮です。……シェーラはどうでも良いが」
「何それひどーい!」
「こら、クロード。……久しいな、ロード・ヒース、ソフィア嬢、シェーラ嬢も」
「お久しぶりです。クロード殿、王女殿下」
ヒースが紳士的な仕草で礼をし、それに倣うソフィアもドレスの裾をつまんで挨拶をする。
ルイーズは笑って、
「堅苦しい挨拶はなしだといつも言っておるではないか……む? そちらの二人も、この前会ったような気がするが」
「あ、は、はい! その節はどうも!」
「いぎっ?」
ルイーズに視線を向けられたユーリエは、愛想笑いをしながら慌てて「あ? 誰だっけかこのガキ」などと漏らしていたジルの首を掴んで無理矢理頭を下げさせた。
「やはりそうだったか。そなたたちも、今日はよろしく………え?」
と、言いかけたルイーズの紺碧の瞳が、ようやくのことで天音たちを捕らえた。
「ああーっ!?」
「……貴女だったの、我儘王女……」
耳を押さえてげんなりとしている天音を指差し、ルイーズは驚愕にぷるぷるとうち震えながら。
「菓子をくれた女とその家来ではないかっ!」
「ルイーズ様。その覚え方には少々、いえ多大な問題があるように思われます」
クロードは仏頂面で、頭痛でもしたかのように息を吐き、額に手をやった。
「……家来って」
「第三者からはそう見られてんのか俺ら……」
「む? 違うのか?」
「同じようなもんじゃね?」
「うっせーよ黒髪!」
「はあ!? だから黒髪じゃねーし! お前こそ黒髪だろ!」
「黒髪にだけは言われたくねーよ!」
「ふざけんな! 絶対お前の方が黒髪だ!」
「……びっくりするくらい低レベルな争いね……」
「本人たちにとっては大事なことなんだろうね」
「話題入れ替わってますしねー」
「……呼び方くらいであんなに熱くなれるものなの?」
「らしいなァ……」
「天音もそうだけど、昇は怒りっぽいからね」
「……柊?」
「い、いや何でも」
「楽しそうでよいなぁ」
「ロード・ヒースにもこのような一面があったのですね」
結局、ヒースの茶々から始まった『どちらが“黒髪”の称号により相応しくないか』という内容の罵声飛び交う口論は、天音が「どっちでも良いから黙ってくれる?」と冷ややかな声を出すまで続いたのだった。
261
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 20:01:16 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
うるさいからやめろ……あいつなら言いかねないw
我侭王女も久しぶりの呼称だー!←
262
:
心愛
:2012/11/10(土) 21:00:05 HOST:proxy10005.docomo.ne.jp
>>ピーチ
天音ちゃんはキレると無表情ね、分かった←
こっちのキャラバカみたいに多いから大変だわ(^-^;
ピーチ、ほんとお疲れ様ですすごいね…!
今回は、二人が家来に「見える」だけなんだよってとこと、昇くんがヒースに黒髪って呼ばれると怒るって要素を入れてみました(≧∀≦)
我儘王女ーw
263
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 21:30:06 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
キレると無表情w←
見えるだけ、ね。おっけー
我侭王女ーw
264
:
ピーチ
:2012/11/10(土) 23:11:11 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
あ、ごめん質問いーですか←
ソフィア様達とうちの天音達との肝試し的なのなんかある?
いきなりごめんね!?
265
:
心愛
:2012/11/11(日) 11:02:43 HOST:proxy10037.docomo.ne.jp
>>ピーチ
うん、しばらくしたら肝試し(もどき)は入れるつもりだよーw
それまでが長くなりそうなんだけど(´ー`)
266
:
心愛
:2012/11/11(日) 15:47:11 HOST:proxy10034.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――新たな招待客――』
「……こほん」
ルイーズが空咳をして喉の調子を整える。
「この前は初対面じゃったというのに自分の紹介もできなかったからな。改めて、わたしはマルグリット王国の第三王女、ルイーズ=リィ=ユリア=ローエンシュタイン。そしてこの無愛想な男がわたしの騎士をやっているクロード=ヴィスエルじゃ」
「前回はルイーズ様が大変お世話になりました」
「いえいえ」
三人を代表してか、柊一がにこやかに応える。
「うむ、礼を言うぞ………って、あああっ!?」
「今度は何……」
ルイーズはサッと青くなり、クロードの黒装束を引っ掴んで。
「し、しまった、わたしとしたことが! 部外者にはみだりに身分を明かしてはいかぬと父様に言われておるのじゃった……! 今からでもクロードやイルゼの目を盗んで王宮の外で遊ぶときのように、リィルと名乗っておくべきか……っ?」
「今の発言につきましては後でじっくりと言及させて戴くこととして、既に名乗ってしまったからにはその心配は無用ではないかと」
「そ、そうか?」
気を取り直したらしいルイーズは、次に天音たちに目を向ける。
「そなたたち、名を何と申す」
「……神代 天音。それからこっちが飛鳥井 昇で、そっちが天神 柊一よ」
心底呆れ果てた眼差しをルイーズに注いでいた彼女が、それでもルイーズの偉そう且つ今更な問いにきちんと答えてくれる。
「……そういやこの前もそうだったけどさ、何で俺らの紹介まで天音が?」
「面倒だからまとめて言っただけだけど?」
「ほう。では、天音、昇、柊一とやら。これからも何か、危険なことがあったらよろしく頼む」
「そんな機会がなければ良いけど……って言いたいところだけど、そうも言ってられないのよね」
肩をすくめる天音、
「おう。任せときな、ちびっ子」
「昇、ちびっ子はちょっと……。ええと、よろしく」
昇、柊一も流石と言うべきか、一国の王女が相手でも萎縮した様子はなく、むしろ堂々としたものだ。
「お、おい、お前ら……」
「気にするでないぞ。このようにわたしと対等に向き合える者とは珍しい」
内心冷や汗たらたらのヒースに、ルイーズは嬉しそうに言う。
「それで、そちらの二人は」
「わ、私はユーリエ……です。エインズワーズのメイドで」
「……王女って貴族よか偉いんだよなァ? ほんとにこのアホそーなガキがむぶッッ」
「そして、コレが兵士のジルです」
貴族嫌いが発動しているジルの口を思いっきり塞いだ上にギリギリと首を絞めながら、ユーリエが当たり障りのない返答をする。
「……ねぇ、茶髪君死にそうじゃない? 顔色すごい悪くなってきたけど」
「大丈夫よ天音ちゃん。こいつは馬鹿みたいにしぶといの。ちょっとやそっとでは死なないから」
「なら良いんだけど」
「良いのっ?」
「……ああ、なるほど」
ルイーズは得心したように、ぽん、と手を打った。
「さては恋人同士か、そなたら。仲がよくて羨ましいことじゃのう」
「「はっ?」」
ユーリエと、解放されたジルの声が重なった。
「ルイーズ様。その様なことは面と向かって言うものでは御座いません」
「や、あ、ちっ違……っ」
「ゲホッゲホッ……ッはぁァああッ? ばっ、何言ってくれちゃってンのクソガキ目ェ腐ってンぎゃあああああ!?」
「貴方は黙ってなさい……!」
「おー。出た、ナイフ」
「照れてるユーリエは可愛いわね」
「ですねー」
「こっちまで危ないのが傷だけどな」
「おお! こ、これはすごい!」
「彼女は手品師の類なのでしょうか」
和やかに笑いあう面々。
「この世界の人たちって、頭がイカレてるのかしら……?」
「大丈夫、天音も十分変わっ」
「何か、言った?」
「別に何もっ?」
「本当、すごいコントロール能力だね……。あのナイフ、全部ユーリエって人が信じられないくらいの速さで投げて、しかも的確な場所に落としてるよ」
「お前の目はどうなってんだ!?」
感心したように呟く柊一に、昇が恐怖を感じたように後ずさった。
267
:
ピーチ
:2012/11/11(日) 15:47:25 HOST:softbank126048082020.bbtec.net
ここにゃん>>
もどきw←
我儘王女の覚え方がすごいよね←今さら
268
:
ピーチ
:2012/11/11(日) 16:59:13 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
コメントが遅かった←
そっか、シュオン様達含め、今三グループくっついてるんだっけ?
天音と柊一も一応両思いだよー、今までと同じように接してるだけで←関係ない
269
:
心愛
:2012/11/11(日) 22:06:42 HOST:proxy10041.docomo.ne.jp
>>ピーチ
(゚□゚;)
マ ジ で ?
え、嘘天音ちゃんと柊一くんくっついてたの!? 超初耳だよ!
な、なんだと…。天音ちゃんも柊一くん相手には照れたりなんだりするのっ? ますます可愛いじゃないか!
あれ、とすると昇くんは独り身?←
あと、ソフィア&シュオンペア、ヒース&シェーラペア、ユーリエ&ジルペア、ルイーズ&クロードペア全員くっついた後の話だよ!
いちゃこらは今のとこ控えめにしてるけどね!
シュオンとソフィアは婚約中なう。
270
:
ピーチ
:2012/11/12(月) 06:49:12 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
マジだよーw
いや、昇にもちゃんと居るよ思い人w
……それコラボに載せたいと思ったあたしがバカなのだ←当たり前だ
271
:
心愛
:2012/11/12(月) 12:29:53 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』
「ほぉぉおおおお―――!」
「ルイーズ様、淑女たる者、涎を垂らしてはいけません」
テーブルに置かれた幾つもの皿の上、陽光を浴びてつやつやと輝くのは木苺やベリーのタルト。
アーモンドチーズケーキにドロップケーキ、杏子の砂糖漬け(ブリザーヴ)。
他にも趣向の凝らした焼き菓子の数々が美しく並べており、甘党のルイーズはたまらず身を乗り出す。
「ほっ……本当に食べてもよいのかっ」
「勿論です、姫君。遠慮なくどうぞ」
「では遠慮なく全…………わ、分かっておる。分かっておるからその目をやめろ」
「……全……?」
「どうぞお気になさらず、レディ・ソフィア」
食い意地の張った主をその視線だけでたしなめたクロードが、不思議そうに繰り返したソフィアに告げる。
「これは何じゃっ?」
「ビスケット・サンドウィッチです。二枚のビスケットの間に、アイスクリームとジャムを挟んだものですよー」
「……相変わらずの腕だな、シェーラ」
「えへへ、そう? クロードは意外と甘いもの好きだもんねー。あたしが作ったやつとかも良く食べてくれたし」
「なっ……そうだったのか!? 初耳じゃぞ!?」
「常識的な範囲内でのことです。……シェーラ、余計なことを言うんじゃない」
「はぁい」
なんとも洗練された手付きでテーブルを整えるシェーラはのほほんと笑った。
「うっわ甘そ……」
「見てるだけで胸焼けしそうなんだけど……」
顔をしかめた昇と天音に、「ええっ?」とシェーラが食いつく。
「二人とも、お菓子駄目なんですかっ?」
「そうね……。甘いものはちょっと」
「俺も苦手かな」
頷く三人に、続いて「なんじゃとっ!?」とルイーズまで大きな声を上げた。
「菓子が苦手だなんて……! そんなの人間ではないわ!」
「お言葉ですが、ルイーズ様。面妖な能力をお持ちとはいえ、此方の方々には確かに血が通っているように見られます」
「ただの比喩じゃぞっ!?」
「……そ、そんな人がヒース以外にいたなんて……!」
「ほら見ろ」
珍しくシェーラをやり込め、ふっと満足げに笑うヒース。
「お前らと初めて気が合ったな」
「黒髪君と気が合っても嬉しくないわね。微塵も」
「何てこと言いやがるこの女尊男卑女ッ!?」
髪を片手で梳きながらクールに言い放つ天音と、すぐにムキになるヒース。
「じゃあ皆さんには、すぐに紅茶をお淹れしますね! うーん、甘さ控えめだとすっきりしたハーブティーも良いかなぁ」
シェーラは指を頬に当て、うーんと首を捻った。
272
:
心愛
:2012/11/12(月) 12:30:54 HOST:proxy10017.docomo.ne.jp
>>ピーチ
マジでか!
じゃあここあが書きたくなったときにはまた改めて質問するわ!
273
:
彗斗
:2012/11/12(月) 19:23:37 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
なんか、ヒースは回を追うごとに言い返す口調がエスカレートしてる感じがするけど気のせいなのかな?
それに……天音ちゃんも相変わらずですね(笑)
弱まる所を知らないのはある意味、一種の化物って感じですねーww
いつ見ても思うけど……黒い発言する部分の再現が上手すぎるっ!!
274
:
ピーチ
:2012/11/12(月) 20:23:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
マジだよ!
りょーかーいw←
……ここにゃんが終わってから、もう一回コラボ駄目かな?←
275
:
心愛
:2012/11/12(月) 22:54:57 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>彗斗さん
ヒースエスカレートしてますか!
特別意識はしてなかったのですが…確かに(笑)
ここあもヒースもこなれてきたのかもです(*^_^*)
いえいえ、天音ちゃんはクールに黒くカッコよく!を目標に必死に頑張っております(^-^;
でも思いっきり可愛いとこも書いてみたいな(≧∀≦)
>>ピーチ
もっちっろっんっ!!
またまた長い間お待たせすることになるけど頑張るから!また月末試験だけどギリギリまで粘るから!
あとここあはこれ一本きりで他書く気サラサラないんだけど、それでもよろしいの?
なんか楽して楽しませてもらっちゃって悪いなぁ(*´д`*)
276
:
ピーチ
:2012/11/13(火) 06:46:02 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
あっりがとーう!!
いや、何かソフィア様達だったらアイディアが出てくれまくってるから!
うん、あたしが我侭言ってるだけだから全然一回でもいーよー←
277
:
心愛
:2012/11/13(火) 16:16:49 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>ピーチ
ありがとう…!
そんなにソフィアたちを好きになってくれて本当にありがとう…!((号泣
楽しみにしてるね!
引き続き、ちょっとでも訂正あったらよろしくです(´ー`)
278
:
心愛
:2012/11/13(火) 16:19:24 HOST:proxyag053.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』
「あの、シェーラとヒースも……ユーリエとジルも、座らないの?」
その四人へと、椅子に収まったソフィアが遠慮がちに声を掛けた。
「座りますよォー? あーオレ様超腹減ってき」
「ジル、仮にも使用人が主人と一緒にテーブルを囲むなんて言語道断よ」
「えぇーッ?」
ユーリエの言葉に、ジルが不満の声を出す。
「そうですよー。それに今日はお客様もいらしてるんですから、特にちゃんとしないと」
困ったように笑ってジルを諫(いさ)めるシェーラ。
ヒースも『馬鹿かこいつは』とでも言いたげな呆れた目でジルを見やった。
「いや……わたしは」
「……其処の人たちも座れば?」
ルイーズを遮ったのは天音だった。
ひんやりと冷たい、澄んだ氷のような声。
「そんな所で突っ立っていられても気分が悪いだけよ。……そうでしょう?」
退屈そうにカップの縁を指先でなぞりながら、何でもないような口調で言う。
「……天音ってそういうとこ優しいよね」
「すっげー分かりにくいけどな」
「柊、昇。後で覚えてなさい」
ちらっと視線を上げて、二人を睨む。
「う、うう……天音ちゃん、可愛いだけじゃなくて優しいいい」
「シェーラちゃん、感動したのは分かったから抱きつくのはやめてあげて」
目をうるうるさせて今にも天音に飛びつかんばかりのシェーラを、ユーリエがしっかりと捕らえて嘆息。
「天音さんの言う通りよ。良いでしょう? シュオン」
主催者であるシュオンは「えー」と不服げに。
「シェーラとユーリエは良いとして……男二人も?」
「お前まで女尊男卑かよ!?」
「お茶が不味くなりそうだし……」
「ひでェ言われようだなおいッ!?」
「……シュオン?」
上目遣い気味の紫の瞳に、ちょっと責めるように見つめられたシュオンは。
「分かったよ……。冗談だってば。ジルはともかく、ヒースとは昔から何度も一緒に食べてるしね。今更な話でしょう?」
「良かった」
「本気に取るなんて、ソフィアは心配性だなぁ。そういうとこも好き」
「……もう」
ソフィアの銀に輝く髪を撫で、優しく微笑んだまま―――ぼそっと一段階低い呟きを落とした。
「……ヒースと害虫の癖にソフィアに誘われるなんてムカつくし」
「「絶対そっち本音だよなッ!?」」
「……この中で一番権威があるのは金髪君? それともあの子?」
「王女殿下を抜かせば表向きにはシュオン様、裏ではソフィアちゃんでしょうね」
「ソフィア様は凄いんですよ! シュオン様の唯一のストッパーなんです!」
「ふぅん……」
「それ聞いてどうする気だ天音……」
唇に妖しい微笑を載せる少女に、隣の昇が顔を引き攣らせた。
279
:
ピーチ
:2012/11/13(火) 17:34:05 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
いえーいっ!←
うわぁい、ジル何も知らんねw
天音は企んでる……?
280
:
心愛
:2012/11/13(火) 19:31:55 HOST:proxy10025.docomo.ne.jp
>>ピーチ
天音ちゃんのあれはあんまり深い意味はないけどねw
お借りしてる子だから黒さのさじ加減が難しい←
でねでね、『鈴扇霊』の本編、さらーりと流し読みさせてもらったことがあるんだけど…天音ちゃんって炎に何かトラウマある感じだよね?
あと、妖って幻覚みたいなの使えるのいる?
ラストあたりに使えないかなーと思ってるんだけど…( ̄〜 ̄)
281
:
ピーチ
:2012/11/13(火) 20:27:13 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
流し読みしてくれた!? 感謝!
いや、炎にトラウマあるって言うか、出てきた人にトラウマある?←
な、何かごめんね分かりにくくて←
282
:
心愛
:2012/11/13(火) 21:10:14 HOST:proxyag063.docomo.ne.jp
>>ピーチ
「雅さん」かな?
炎から、その人とか特定の出来事を連想した…とかそういうことでもなく?(~_~;)
や、ここあが読解力ない上に勝手に突っ走るからいけないんで!
じゃあ難しいかなー(^-^;
283
:
ピーチ
:2012/11/13(火) 21:18:32 HOST:nptka104.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
あ、ごめんあたし説明力ないよね←
うん、炎からの連想で思い出した人だよある意味←おい
284
:
心愛
:2012/11/14(水) 18:05:55 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp
>>ピーチ
あ、それならよかった←
もしかしたら使わせて戴くかもー(*^_^*)
それから、お二人は両思いとのことですが、柊一くんは天音ちゃんの容姿を褒める言葉をサラッと言える派?
天音ちゃんは全く照れたりすることはない?
ということを、これ以上大切なキャラ様方を破壊する前にお聞きしたく存じます(*^-^)ノ
285
:
ピーチ
:2012/11/14(水) 19:08:07 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
良かった?←
おっけーw
容姿かぁ…無意識にあっさり言ってのけるみたいな?
天音はその無意識聞いて照れ隠しにそっぽ向いたりする←
286
:
心愛
:2012/11/15(木) 23:01:12 HOST:proxy10038.docomo.ne.jp
>>ピーチ
かわええ(=°ω°=)
なんだこの初々しいカップル!素敵すぎるな!
でも再現できる気がしないのでほどほどのところで止めておかなくては←
ありがとー(^^)/~~~
287
:
ピーチ
:2012/11/16(金) 06:58:53 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
ここにゃん〉〉
何かいいよね!
天音と柊一と昇と相手の子はどっちもさらさらカップル目標←おい
288
:
心愛
:2012/11/16(金) 12:28:40 HOST:proxyag075.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』
「ところで姫君、その白いものは……?」
「んむ?」
ルイーズの小さな手の中のものを見て、シュオンが不思議そうに尋ねる。
緩やかな楕円状の球体。
雪のように真っ白なそれに「はむっ」と彼女がかぶりつけば、かなり柔らかいようで、引っ張られるまま素直にみょーんと伸びた。
「それってまさか……」
「ん、んー」
「はい。あの不可思議な体験をした際に、そちらの方にルイーズ様が戴いたものです。それを研究させて、我が国流に新しく作り出したとか」
主の口元についた白い粉を拭いてやりながら、クロード。
「我が国で採れる原料と技術では無理があると料理長が泣くのを、王族権限で無理矢理屈伏させまして」
「……っぷは! だってとても美味なのじゃぞっ? 外は柔らかくてもっちりしていて、中に甘い……豆? のようなものが入っているのじゃ! あれは何というものなのかの?」
「……大福」
「ダイフクっ? そうか、これはダイフクというのか!」
ルイーズは無邪気な笑顔で。
「天音とやら、礼を言うぞ! こんなに美味い菓子に巡り逢えたのは、そなたのお陰なのじゃからなっ」
「……コンビニの大福でこんなに大喜びされると、何だか複雑な気分ね……」
天音は微妙な表情をしていた。
「他にも色々貰ったが、これが一番わたしの舌に合っていたからな! 料理長をこき使ってでも半ば厨房に閉じ込めてでも何としてでも開発したかったのじゃ」
「そんなに美味しい?」
「うむ! 美食品の中では五指に入る出来じゃな!」
苦笑する柊一に、ルイーズは拳を握って力説する。
「……面白いわね」
「うちのシェフにも頼んでみる?」
「まんまるで綺麗……! ね、ヒースっ」
「まあ、見た目は悪くねえな」
「俺ら、この国の文化に変な影響与えちまったんじゃ……」
「……考えないようにしましょう……」
明らかにこの世界にはミスマッチな物体に興味津々な様子のソフィア達を見て、天音は力なく笑った。
「あんなに豊富な種類の菓子が店にあるとは、そなたたちの国はよい所じゃな! 少し羨ましいぞ」
ルイーズの声に、皆が一斉に反応して喋り出す。
「あのお店、こう、ういーんって扉が勝手に開いてましたよねっ? それともあたしの見間違いかなぁ」
「興味深い発明だね」
「……自動ドアのことか?」
「妙に中が明るかったし……。品物の包装も凝っていたわ。見たこともないものがたくさんあって驚いた」
「凝って……る、の? あれが」
「最初に落ちた場所は、あの店とは全く違う雰囲気じゃったな。あれは屋敷か?古めかしいような造りの」
「そのようですね。時代の流れを感じさせます」
わいわいと盛り上がる面々。
「あの服も変わっていたわね。軽くて、凄く楽だった」
「ドレスとは大分素材もデザインも違ったよね。僕たちが貸してもらったやつは、いつものと比較的似てたけど」
「ちゃんとしたドレスなんてめったに着ないし、メイドの衣装に慣れちゃったから私はそこまで新鮮味はなかったかも。でも面白かったわ」
「うむ、重いドレスは大変じゃぞ。コルセットはきついし、中から蹴飛ばしながらも優雅に歩いているように見せかけるのは至難の技じゃからな。あのような服がマルグリットにも普及すればよいのに」
「……ルイーズ様……」
奔放が過ぎる王女の哀れな教育係は溜め息をついた。
「ねねね」
「…………」
「あーまねちゃーん」
「え」
無関心を決め込んでいた天音が顔を上げる。
289
:
心愛
:2012/11/16(金) 12:30:26 HOST:proxyag093.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』
「ね、天音ちゃんはドレス着てみませんかっ?」
「…………」
突拍子のないシェーラの台詞に、天音が絶句した。
「……一応訊いておく。……なんで?」
「ぜええっったい可愛いからですよ!」
ばんっとテーブルに手を付いて身を乗り出すシェーラに、天音が微妙に己の身体を遠ざけた。
「その変わった服も可愛いけど、見てみたいですドレスの天音ちゃん! 落ち着いたトーンで黒髪に合ってフリル控えめでシルエットが綺麗に出るソフィア様系の……うぇへ」
「にやけてんじゃねえよ」
「おーねーがーいーでーすーかーらー!」
生ける日本人形の如き純和風の容姿を持つ天音だが。
「案外似合うんじゃねーの?」
「そうだね。天音って服にあんまりこだわらないし。折角可愛いのに勿体ないよ」
昇と―――それから微笑む柊一にさらりと言われ、天音は、う、と一瞬言葉に詰まったように見えた。
「……余計なお世話よ」
沈黙と動揺を誤魔化すように小さく言い、ぷいっとそっぽを向く。
「とにかく。悪いけど、それは遠慮しておくわ」
そう断られたシェーラはと言うと、
「……うん! あたし、満足!」
目を横線にして、ぺっかー! と顔を無駄に輝かせていた。
それはそれは嬉しそうに。
「え?」
「いえ何でもないです! すっごく残念ですよ! あー残念だなぁー…………や、やばいやばいやばいでしょちょっと無自覚っ? これで無自覚なのっ!? 可愛すぎるぅうううううう」
「何言ってるの? この子」
「いつもこんな感じだから、気にしなくて良いんじゃないかしら」
不可解そうに首を捻る天音に、ソフィアが苦笑してみせた。
「……おい」
「…………」
「シュオン」
「…………あー、今日もソフィアは可愛いなぁ」
「聞いてんのかよっ!?」
ヒースの呼び掛けにも気づかず、ほわほわした笑みでソフィアを眺めていたシュオンは、
「やだな、聞いてたよ。この世界に本当の平和なんて存在しない。存在しないんだよね」
「全ッ然聞いてねえ―――!?」
「で、何」
「悪びれもしねえしっ!? ……別に、大したことじゃないけどさ」
天音の方をちらっと見て、声を潜(ひそ)めた。
「お前、あの女のことは口説かねえよな……と思って」
「そうだね」
「それっておかしくねえか? いつも初対面の女は何処の誰だろうと大概モノにしとくのに」
「ちょっと、品のない言い方はやめてよ。ソフィアに誤解される」
嫌そうに眉をひそめたシュオンを見て、ジルも口を挟む。
「確かにな。あのお嬢ちゃん、口は悪ィけど美人なのに」
「………」
かちゃん、とカップがテーブルにぶつかる音がした。
不安げに俯いたユーリエの赤い髪が彼女の表情を覆い隠す。
「……いっいや美人だけど同じ美人でもオレのタイプとは全然違うしッ」
「……ジルのタイプの美人って?」
「へッ? や、そりゃあ……そのー……」
たちまち赤面してしどろもどろになるジル。
「と、ユーリエといちゃつき始めた害虫は置いといて」
シュオンはとても輝かしい笑顔で、
「これからの僕とソフィアの人生に関係のない人に媚び売っても仕方ないし」
「うぉい」
「冗談だけどね」
「お前の冗談は冗談に聞こえねえんだよ!」
いきり立つヒースを「どうどう」と落ち着け、
「だって彼女、どんな手練手管を使っても落とせそうにないもの。最初に会ったときから僕のことをヒースとジルと同列に扱える程の人材を、無駄に骨を折ってまでわざわざ口説く趣味はないなぁ」
「……今すげえ失礼なこと言われたような気がするんだが」
「気の所為じゃない?」
それに、と視線を滑らせ、天音と柊一を視界に映して。
透けるサファイアの瞳を僅かに細めた。
「……想い人がいる女性に、一時的とはいえ手を出すほど、野暮じゃないよ」
「あ? 何か言ったか?」
「何も?」
シュオンはくすりと笑った。
290
:
ピーチ
:2012/11/16(金) 18:10:52 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
大福ー!あたしも大好きー!
シュオン様鋭いね! 天音が絶句する所、何気に見て見たい←おい
柊一と天音のやりとりも凄かったー!
291
:
心愛
:2012/11/16(金) 19:40:25 HOST:proxyag062.docomo.ne.jp
>>ピーチ
大福大福w
…だ、大丈夫?
そこまでおかしくなかった?
いやぁ、天音ちゃんと柊一君のやり取り(?)で結構悩んじゃって←
ここあの女の子キャラはシャイで赤面症の傾向にあるのでそのままの勢いで天音ちゃんのイメージをぶっ壊してはならぬ!と……大丈夫、だよね…?(汗)
292
:
ピーチ
:2012/11/16(金) 19:48:19 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
お久しぶりです。天音です。あのバカ(作者)がまたも放り出してテスト勉強なんか始めたので、代わりに私が。
相変わらず文章力高いですね。私達の個性をしっかり生かしてくれて。
あの作者では絶対にこんなに上手い小説なんて書けませんよ。
それでは。
293
:
心愛
:2012/11/16(金) 21:24:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
>>ピーチ
天音ちゃんやふー!(←イミフ)
慰めをありがとう…!
ピーチにテスト頑張るよう伝えてくれ!
ここあも月末だわやべえ←
294
:
ピーチ
:2012/11/16(金) 22:03:03 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
お久しぶりです飛鳥井です
……心愛さん、あの天音がそんな優しい言葉かけるわけ…いっいや何でもないです聞き間違い!! 痛い、痛いから天音!?
…柊一に頼むのが一番ですよ?
295
:
心愛
:2012/11/16(金) 23:35:42 HOST:proxy10032.docomo.ne.jp
>>ピーチ
天音ちゃん何したのっ?
昇くんに何しちゃったのっ?
……OK。柊一くん、頼んだぞ!
296
:
彗斗
:2012/11/17(土) 01:41:46 HOST:opt-115-30-133-28.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>
……コイツは驚いたな、まさか下手すりゃ、サエリヤよりもリアスよりも腹黒そうなあのド変態が……夢にも思わなかったぜ。
おっと、名前を出さなけりゃ同じ様な口調の奴らが多いから(あのアホの所為でな)分らねぇだろうな。俺はギ―ク、そのまあ……作者に遊ばれてる可哀そうな神様とでも言っておこうか……ん? 何か自虐的になってるだって? ……気のせいだろ…多分。←図星
こうしてほっつき歩いてみるのも良いもんだな。今回は特に注意視しとかなくちゃいけねぇ奴の意外な一面が垣間見えた……様な気がしたが幻か? 気のせいか? それともげn((殴
はいはい、そういう風に言い回すの止めようねー? (グッ……ふ、不意打ちとは卑怯な……このアホ作sy((蹴 グホッ!? byギ―ク)
何か言ったかな〜? そろそろ監獄に帰ろうか? 目を離したすきにどっか行っちゃうんだから……それじゃ、ギ―クが世話になりました〜ww(だ…だから扱いが妙に俺だけ酷いってい((殴&蹴 ゴフッ!? byギ―ク)
297
:
ピーチ
:2012/11/17(土) 08:14:32 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
一応伝えておきました。天神です。今はテスト消えろと叫んでますよ。
……昇の件については、気にしないで下さい
そりゃねぇだろ柊一!? 俺何で無害なのに殴られなきゃいけないんだよ!?
298
:
心愛
:2012/11/17(土) 15:21:42 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
>>彗斗さん
……(・∀・)ガンバ!
完全なる手探り状態ですがちょっとずつ頑張っていきますよ(*^-^)ノ
>>ピーチ
殴ってたんだ!
なかなかにバイオレンスなのね天音ちゃん!
ありがとうございました柊一くん(笑)
消えろ消えろー!
299
:
心愛
:2012/11/17(土) 15:23:22 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――お茶会――』
「……天音」
「何?」
「気の所為だったら良いんだけどさ。なんか……さっきから変な感じしないか? こいつら以外の誰かに見られてるような……」
釈然としない表情の昇の言葉に、天音は黙って瞼を閉じ。
「言われてみれば……。でも、妖の類はいないはずよ?」
「だよなぁ」
霊感の強い天音がそう言うのだから、きっとそうなのだろう。
けれど……何か、引っ掛かる。
「おい黒髪」
「……忍耐って、大切だよな……」
額に青筋を立てて呻くヒースを綺麗に無視し、昇が続ける。
「なんか、違和感とか感じないか?」
「は? いや、別に。神経質すぎんじゃねえのお前」
「おかしいわね……。確かに誰かの気配みたいなものを感じるのに」
「え? 皆して何言ってるの?」
一人、きょとんとした顔をした柊一が首を傾げる。
「その人、さっきからずっと其処にいたけど」
「は?」
「そ……その、人?」
「ま、まさか」
シェーラとヒースがはっとして息を呑む。
ソフィア、ジル、ユーリエも何かに気づいたように顔を見合わせた。
「そのまさかだよ」
シュオンは―――『彼』の方を向いて、にっこりと笑った。
「ね、レイフォード?」
『やっぱりっ!?』
「うわあああああんっ!」
涙の粒を撒き散らしながら走っていく、仕立ての良い執事服を着た茶色の髪の青年の背中を、ソフィアたちは半ば愕然として見送った。
「何だったの、あの人……」
「? 使用人じゃろう? 今更何を驚いておる?」
「あの方、気配の消し方が達人並みでしたね。私でも気づくのにはかなりの時間を要しました。敵兵であったなら非常に恐ろしい相手となったことでしょう」
「そうだったのか?」
幾つ目かも分からない“大福”片手に―――摂取した砂糖の量は常人の致死量を軽く超えているのではなかろうか―――ルイーズがぱちくりと瞬(まばた)く。
「僕が呼んだときから其処に控えてたんだけど。ヒースたちは気づかなかった?」
「お、お前絶対わざとだろ……」
「まさか」
ヒースの非難がましい視線を受け流して、シュオンはルイーズとクロードに微笑みかける。
「流石は姫君、そしてクロード殿。上に立つ者とそれを支える者としての、素晴らしい観察眼をお持ちですね。……ちなみにあれはうちで雇っている執事のレイフォードです」
「恐れ入ります」
「……わたしは喜ぶべきなのか?」
「喜ぶべきですよ! 黙ってるレイさんを自力で見つけ出すなんて、あたし一度もできたことないんですから!」
「な、何だか彼が哀れに思えてきたな……」
ルイーズは同情が籠もった眼差しでレイフォードの消えていった屋敷を見る。
続いて、シュオンは好奇心と感心とが入り混じった目で柊一を見て、
「君、凄いね。あの驚異的なまでに影が薄いレイフォードを一発で見抜くなんて。一体どんな修行を?」
「どちらかと言うと、柊の場合はただの勘だと思うわ」
「しかも根拠なしのな」
二人に言い切られ、「……そう?」と困ったように笑う柊一。
「すぐ傍にいても全然気づかれないって……影薄いって一言で片付けられるのか?」
「執事というより、忍者みたいな人ね」
「ニンジャ?」
「えっと、どう説明したら良いのかな。忍者っていうのは……」
親切な柊一に説明してもらい、ルイーズは「ほー」と深いブルーの瞳を輝かせた。
300
:
ピーチ
:2012/11/17(土) 18:38:29 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
メッセージもらったよー! ありがとー!
……そーなんデス。殴られちゃったんです昇君。それも単純に憂さ晴らしも混じって←
よし柊一偉いぞ! 小さい子に教えるのは当たり前だからね!
…絶対、天音とか昇は教えないだろーけど←おい
301
:
心愛
:2012/11/17(土) 20:24:36 HOST:proxyag071.docomo.ne.jp
>>ピーチ
なにげに300突破おめ!
殴られてたのか…w
今回、柊一くんの鋭さってものを出すためにレイさんを利用したここあでした←
強く生きろ、レイさん(キリッ
302
:
ピーチ
:2012/11/17(土) 22:04:17 HOST:i121-118-222-157.s11.a046.ap.plala.or.jp
ここにゃん>>
自分で立てたスレで300行ったの初めてだ!←ここにゃんのお陰だし
殴られてたんです…
柊一は確かに根拠ナシだ! てかあたしもレイさん使わせてもらおうと思ってたのだが←おい
303
:
心愛
:2012/11/18(日) 10:53:29 HOST:proxy10016.docomo.ne.jp
鈴が歌う奇跡の旋律
『――決断――』
「暗くなってきたね」
赤く染まり始めた空を見上げ、シュオンが呟いた。
「天音、妖の方はどう?」
「この近くにいるのは確かだと思うけど、はっきりとはしないわね」
「どうすっかなぁ。これ以上無意味に時間潰してても仕方ないし」
異界の三人が話し合いを始める。
「それではルイーズ様、そろそろ」
「ええー! まだ遊び足りん! せっかくシュオンと会えたのに」
「…………」
「く、クロードっ? 誤解するでないぞ、わたしはもうシュオンのことは何とも思っておらんからなっ? 今はその……っ」
「おー、クロードがやきもち妬いてるよーぷくく」
「俺にはいつも通りにしか見えないんだが……」
無表情で押し黙ったクロードに慌てて弁明するルイーズを見て、シェーラが楽しげに笑う。
対照的に、とても珍しいことにシュオンは複雑そうに顔を曇らせていた。
「屋敷の中に入れてあげられたら良いんだけど……」
「けど?」
首を傾げるソフィアに、シュオンは溜め息をついて。
「……今、母上がいるんだよね……」
『………………あー』
「何?」
「む?」
エインズワーズ家の面々が、天音とルイーズを見て一様に頷いた。
「奥様……ぜーったい喜んじゃいますよねー……」
「これ以上被害者を増やす訳にはいかねえな……」
「金髪の『母上』ってのがどうかしたのかよ」
「レディ・アゼリア? よい母君ではないか。彼女のことで何か?」
『…………』
ソフィアたちは気まずそうにサッと目を逸らす。
シュオンがこほん、と咳払いした。
「とにかく僕としても、姫君は勿論、何の罪もない人を飢えた猛獣の檻に放り込むような真似はしたくないってことだよ」
「どんな人なのよ……」
「……それだけは訊かないでくれるかな……」
呆れた眼差しの天音から逃げるように、シュオンまでもが視線をずらす。
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