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鈴扇霊
22
:
ピーチ
:2012/07/24(火) 22:03:51 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第七話・先客』
「…分かったから、うん。もう来た方が早いよ、うん…」
『分かったー、じゃあ今から行くねー』
その会話を最後に、天音はようやく受話器から手を離した。そう。今まで梓の電話の長話に付き合わされていたのだ。
「梓が来たら、なぁ…」
友達としては仲良く出来るが、好感も持てるが。あの話の長さは少し異様だ。彼女自身、そう思うことが何度かある。
そんなことを考えながら三十分ほど経った後、神社の方から足音が聞こえてきた。参拝客が来たのか、梓が来たのか。確率的には後者が高い。この『神代神社』は、参拝客の出入りがそこまで激しくない。要するに、参拝客が少ないのだ。極端ではないが。
「こんにちはー」
にっこりと笑みを湛えながら、神社の外から梓が顔を出す。
「あ、いらっしゃい」
天音の方は、予想していたのでそこまでの驚きはない。
「ごめんねー、いきなり押しかけて」
「いいのいいの。こっちも、泊まるなんて言われたら今日くらいしかないからさ」
そう言って、天音は冷蔵庫に入っていた冷たいお茶を差し出す。
「あ、どーも」
そう言って、梓はにこにことしながらお茶を受け取る。
「…言い忘れてたけど」
天音が、そう前置きしながら口を開いた。
「―――私、普段家に食材無いから」
「…はい?」
天音の言葉に、さすがの梓も表情を失い、必死で意味を理解しようとしている。
「…だから、何か食べたいものがある時は、自分で買ってね」
「…うん」
ようやく意味が理解できたのか、今度は恐ろしく冷たい笑みを浮かべ、勢い良く天音に詰め寄った。
「つーまーりー、天音ちゃんは普段、何も食べてないってことかなー?」
「え?あ、いや…食べてるよ?ちゃんと」
たまにだが、と、天音が頭の中で付け加える。そこに。
「―――失礼、ちょっといいかな?」
「え?」
声のした方を向いて、天音があっと声を洩らす。そう。昨日の電話の相手―――奥平がそこに居た。
「お、奥平さん…」
「準備は終わった?」
柔らかい物腰でそう尋ねる奥平に、天音は薄い苦笑を浮かべながら、
「…えぇ、大体は」
とだけ答えた。それに対し、奥平は
「あ、そうだ。柊一も一緒に行ってもらうから」
と付け足す。
「はぁ!?」
思わず、天音が声を荒げた。その反応を見て、奥平も驚いたのか、しきりに目を瞬(しばた)かせている。
「あ、いや…私一人で十分です」
そう言って、何が何でも柊一の名前を話に出さないように努めているが、彼はそれを見て、
「…喧嘩したな」
と、ぼそりと呟いた。
「…えぇ、私が一方的に怒ってるだけですけど」
「へぇ?何があったのか聞きたい所だけど―――」
そこまで言って、梓を見てから肩を竦めて言う。
「柊一に、直接聞いてみるよ」
「えぇ。どうぞ御勝手に」
しかし、天音のその言い方には耳も貸さず、柊一も一緒に行かせるから、とだけ言ってそのまま帰っていった。
…正しくは、自分に火の粉が飛ばない場所に移動したのだろう。
「…ね、ねぇ天音?」
「へ?」
呼ばれて振り返ってみれば、梓の瞳がキラキラと輝いている。そうだ。梓が居ることを、忘れていた。
「今の人、誰っ?知り合い?」
「…んー、どうなんだろ。知り合い、かな?」
「へぇ…」
なぜか、梓の瞳は依然輝いたままだ。その理由は、至って簡単であった。
「―――あの人、何かミステリアスな感じでかっこいいねぇ…」
「……」
そうだった。梓は、ミステリアスな雰囲気を持つ人間を見かけると、すぐさま飛びついていくのだ。男女問わずに。
このままだと話も長引きそうだったので、天音は一度、話題を逸らした。
「そ、そう言えばさ、梓って神社とかって好きだっけ?」
答えは、NOだった。…はず。
「ううん、あんまり好きじゃない…って言うか、はっきり言って苦手」
「やっぱり」
苦笑しながら、天音がじゃあ、と言いながら梓に尋ねた。
「寝る前、どうする?」
「…それ、考えてなかった」
家なら、一人で寝るらしい。が、ここはあくまでも神社。普通の神経をした人間ならまず夜に近寄ることはないだろう。多分。
「まぁ…いざとなったら睡眠薬あげるから」
と面白そうに笑いながら言う天音に、梓が
「それだけはご勘弁」
と訴えたお陰で、睡眠薬はなし。…普通のはずだが。
「…あ」
「え?」
「あ、いや。ごめん…ちょっと待ってて」
そう言って、天音はそのまま外に出て行った。
「あ、ちょ…天音?」
23
:
ピーチ
:2012/07/24(火) 22:25:12 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
※お知らせ
明日からしばらく更新できませーん
多分読んでる小説には一気にコメすると思いまーす。
24
:
ピーチ
:2012/07/25(水) 08:42:32 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第八話・秘密』
「もー…何でこんなに広いのよ、この神社は…」
そうぼやきながらも、しばらく歩き続け、ようやく天音を探し出した。速攻で引き摺ってでも中に連れ戻そうとしたが、天音の声が、それを阻んだ。
「…迷えし魂よ。今還れ、己の行く道へ」
そう呟いた天音に続くかのように、彼女の手首に巻きつけられた鈴が鳴る。りん―――…と、涼しげに、軽やかに。
「…はぁ…」
ため息を吐いた天音が何気なく後ろを振り返ると、そこに梓が居た。驚いて、思わず全身がびくん、と痙攣する。その拍子に、手首に巻きついた鈴がりんと鳴る。
「あ…梓…?」
「今の…何?」
まるで、独り言だよね?と確認しているようにも聞こえるその声は、しかし嘘や偽りは通用しない。
それを悟った天音は静かに鈴を眺め―――そして重々しく口を開いた。
「…あのさ、このこと、誰にも言わないでくれる?」
「え?」
「今、梓が聞いたのは独り言なんかじゃない。それを教える代わりに、誰にも言わないでくれる?」
「…うん」
いつものように、にっこりと笑みを湛えた友人を見て、天音が自分の能力について話し出した。梓は途中、何度か声をあげることはあっても、それ以上のことは無かった。
「―――で、今この鈴を私が受け継いだ…ってこと。理解できた?」
別にできなくていいが。というより、できない方が助かるが、と思いながらも念のために確認したら、彼女は、「うん」とにこにこしながら答えた。
「じゃあ、さっきの人も?」
「うん、あの人は裏会を仕切ってる人」
「仕切ってる…」
「そ。だから何かと信頼の置ける人ではあるわよ」
「へぇ…」
「あ、それと」
「へ?」
「私、今夜ちょっと…」
「どこ行くの!?」
天音の一言に、梓が敏感に感応する。
「…いや、この敷地内にはいるから」
その言葉を聞いて、梓がほっと安堵の息を吐く。
「…それから、神社の中だから。ほんとにたまにだけど、参拝客も居るかもしれないから」
「…たまに?」
「そう。たまに」
神代神社にあまり参拝客が来ないのは、今に始まったことではない。彼女が幼い頃から、既に神社に来る人間は少なく、天音自身も、しれが当たり前だと自覚するようになっていたのだ。
「じゃあ、私ちょっと部屋行くから」
「え?部屋?」
「うん、ここは神社。家は隣。敷地内だけど」
つくづく分からない少女であると、梓の顔から思わず苦笑が洩れた。
「…来たかったら、来てもいいよ」
「ありがとう」
にっこりと笑みを湛えながら、しかし梓は速攻で天音にくっつく。
まぁ、仕方ないかと思いながら、天音はそのまま部屋へと足を向けた。
25
:
ピーチ
:2012/08/26(日) 11:40:08 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
鈴扇霊 〜初めての世界(いばしょ)〜
『プロローグ』
―――「のうりょくしゃ」だって、しられたくなかった。
しったら、みんなきっとおびえるから。
おれがわるいわけじゃないのに。
―――でも。
「はじめまして」
そういってくれた人がいた。
それが、はじまりだった―――。
26
:
ピーチ
:2012/08/26(日) 11:56:43 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
『第一話・出会い』
「だーかーらっ!ちかよるんじゃねぇって!!」
そうどなりながら、おれがうしろをふりかえる。そして、おれがタイショウにしてるザコれいをなぐりつけた。
まわりでは、クラスメイトやそのおやたちがきみわるそうにおれをみてる。
まぁ、とうぜんだろうな。こんなものがみえるやつ、いるわけが―――。
「あれ?どうしたの?」
……いきなり、うしろからこえをかけられた。そっちをみたら。
―――かたよりもすこしながいくらいの、まっくろなかみ。それとおんなじ、まっくろなひとみ。
かみはうしろで一つにくくってて。やさしそうなかおからは、ジャキなんてまるで見つからない。
そうおもって、おれがこたえずにむししてたら。
「…あ」
いきなり、そういっておれが見てたほうとおなじほうを見た。
「……きみ、あれが視えるの?」
しばらくぼうぜんとした後、そいつがいった。それをきかれて、おれのほうこそびっくりして、
「お、おまえこそ視えるのか!?」
と、おおごえできいた。まわりから、よけいにへんなシセンをおくられる。けど、そんなのきにしてるひまもない。
「うん。まぁ、いちおう」
にがわらいみたいなかおでつぶやいたそのかおは、どこかこまったような。
「でもさ、きみさっきなぐってなかった?あれを」
そいつのことばに、
「あぁ。うざかったから」
ってかんたんにかえした。するとそいつが、
「…へぇ…すごい、ねぇ…」
なんか、わらいをかみころしながら、そういわれた。
「…るせ」
おれがそのままかえろうとしたとき、そいつがいった。
「ねぇ、そういえばさ。なまえ、なんていうの?」
「へ?」
そういえば、たしかにおたがい、まだなまえもしらなかった。
そのかんがえにおもいいたって
「飛鳥井 昇」
なまえだけ。ほんとうになまえだけをいって、そいつにきく。
「で、おまえは?」
そいつの口からつむがれたなまえは。
「そういえば、まだいってなかったよね。はじめましてって。おれは天神 柊一」
―――それが、であいだった。
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