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高崎家のオカシナ事情

1竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/06/02(土) 23:28:35 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
どうも、ここまで来て初めての方のほうが少ないと思われます、竜野翔太です。
今回は四作品目、といっても何かを削除依頼出してこれを書く、というわけでもなくて。三作品を信仰させつつの、四作品目です。
三作同時進行、というキツイ状況の中、四作品目を投稿するには勇気がいりました。
まあ、ぶっちゃけ一つがちょいと行き詰まり気味でして、続ける所存ではありますが、もしかしたr((
さて、今回の作品は僕としてもとても珍しいバトル無しの作品であります。
それでは、注意事項を少々。

・荒らしやチェンメ、アスキーアートなどはご遠慮ください。
・今回の話は前・中・後編という三部作になっています。それぞれの編で主人公が変わります。誰視点で描いているのか、推理しながらお楽しみください。
・また、日常系の話があまり好みではない方は観覧しない方をお勧めいたします。
・グロ表現などはないと思われますが、多少歪んだキャラが存在いたしますので、妙なことをほざく程度だと思われますが、苦手な方はバックです。
・コメント、アドバイスなど常時受け付けております。

それでは、次のレスから始まります!

29森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/07/22(日) 17:24:25 HOST:180-042-153-139.jp.fiberbit.net
 いろいろと質問がございましたので、とりあえず回答。

 特定の一人称から三人称へ、ですか。
 正直、一人称と三人称は一緒になってはダメなものなので、これもNGですね。それらしき文章を書くのは良いですが。

 あと、キャラの出し方ですが、以前にも漫画と小説を一緒にしてはいけないと言った記憶があるのは自分の勘違いでしょうか?
 漫画は絵というビジュアル面があるからこそキャラクターを区別しやすいのであって、ビジュアルのない小説においてはこれまたNGです。

 さらに性格のことに回答していきます。
 「俊介がドライに見えるのはイベントとか、そういう人生の岐路になるような事に対してです。」とありますが、それってちゃんと前文で表せていませんよね? そうやって短く出せているなら文中にも同じように描けたと思いますが?
 ちなみに、イベントの事は書いてありますが、それを例に挙げて全体的なドライとしか書いていません。また、そういう風にしか見えません。この場合は、イベントのみドライとハッキリ記述するか、ドライだが、感情的に動くこともある……と、この二択のどちらかで書きましょう。

 裏付けが難しいというのも、まず、詳しく書こうと焦りすぎるのが良くありません。
 こんなに俊介を見知った人物がいるならば、会話文というのが効率的でしょう。そのなかで、「俊介はドライだけど、人のためなら感情燃やすよね」という会話を入れるみたいな感じでしょうか。
 また、「〜が〜という事情があって、〜のような特殊な性格になってしまった」など、三人称の地の文でもこれは書けます。
 さて、女性キャラの方ですが、「何故、十代の若者が語尾に「〜じゃ」となっているのか」「中三女子が何故男装趣味なのか」という理由がないため、人間味がないということです。普通の人間にはあり得ないため、どんな経由でこの様になったか地の文で纏められたらいいかと思いました。
 これがギャルゲー等だったらまだいいものの、小説の場合は読者にどれほど共感を訴えられるかがキーポイントになりますので、それをお忘れ無く。
 例えば、ボクっ娘が兄妹の妹だったとしたら「僕の妹は、男だらけな家庭で育ったため一人称がボクになってしまった」など。こういう書き方が出来ます。
 この様に裏付けは、一人のキャラに付き一行範囲で表せることが分りましたでしょうか?

 それでは。

30竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/27(金) 19:31:29 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
 
了解です。
とりあえず、この質問は解決しました。

いいえ、勘違いではありません。
ですから、それを踏まえて反論させてもらいます。
確かに漫画と小説の一番の違いは絵のあるなしです。ここで僕が好んで読むライトノベルの作品だと、僕のほど多くはありませんが、一気に五、六人程度出している作品だってあります。
ライトノベルばかりを参考にするのはいけない、と言われもしましたが、あなたが出す参考になる作品は、決まってライトノベルですよね?
『それはプロだから』などという意見で、この質問は済ませないでもらえますか? かつ、馬鹿な僕でも納得できるような意見でお願いします。

僕は一気に結論まで到達してしまおう、という癖があるので。
じゃないと何となく頭から抜けてしまいそうで……それならノートに書くなりなんなりすればいいんですが、生憎お金がないので。
ちなみに、幽美の話し方については、かなり分かりにくい描写ですが、最初にちゃんと書いてますよ? 『俗に言う中二病で』という文のみですが、何となく変な喋り方をする理由が掴めるんじゃないでしょうか。
手がかりが少ないのもありますが、読解力があれば何となく分かってしまうような、と思うのは僕だけでいいとして。
そもそも、『普通の人間にはありえない』と断言するほどのことでしょうか?
身近にいないだけで、実際そういうことをする人がいるから、『中二病』や『僕っ娘』などの言葉が出来てるんじゃないでしょうか?

これは多分タブーだと思うんですけど、そもそもキャラの個性に理由は必要ですか?
キャラの性格や趣向だけならともかく、喋り方にまで理由が必要でしょうか?
これもまた、例に挙げるのがライトノベルなのですが、十二、三歳の少女の一人称が『僕』であったり、論文のような喋り方なのに理由は必要ですか?
もう一つもラノベですが、高校一年生の少年が『〜だぜい』『〜ですたい』などの言葉を使う、外国人なのに日本語を話すと『〜でございますよ』や『〜たるわよ』『〜なきことなのかしら』など。
以上のものにも理由が必要でしょうか?

31:2012/07/27(金) 19:46:38 HOST:zaq7719deca.zaq.ne.jp
竜野s>>

こんばんわです。

新作の小説ですか?

何かほのぼの系小説になりそうな予感がします(p_-)

頑張ってくださいね!!!

32竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/27(金) 21:28:56 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
燐さん>

コメントありがとうございます。

たまにはバトルのようなハイスピードなものではなく、こういったゆっくりと読めるものもいいかな、と思いましてw
まだ始まったばかりで、数多くあるうちの一つの山場が終了しました。
これからも、温かい目で見てくださると嬉しいです。

33竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/27(金) 22:34:41 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 朝早く起きた色葉と子湖乃の二人は食堂で、向かい合うように座りながら話していた。
 子湖乃はコーヒーカップを傾けながら、色葉との談笑に興じている。
「……しっかし、色葉姉も物好きだよね」
 子湖乃の言葉に色葉は意味が分からないのか、首を傾げた。
 そんな仕草をする色葉に、子湖乃は説明するような口調で言葉を続けた。
「だって、うちの兄妹なんて変態変人のオンパレードだよ? そんな奴らを自分から会いたいなんて……まあ、それも全貌を知らないから言えたことなんだろうけど」
 子湖乃は僅かに表情を緩ませながら言った。
 しかしながら、子湖乃の言ったとおり全貌を知らない色葉は、すぐさま反論に転じる。
「だ、だって失礼じゃん! 家族全員に挨拶もせず勝手にお邪魔しちゃったのと同じだし……やっぱり、そういうのは非常識だと思う!」
 
 変態変人オンパレードの中での『非常識』って何だろう、と子湖乃は思う。
 
 しかしながら、ぶっちゃけていうと彼女の急な入居を反対したのは、実質的には誰もいない。
 全員公認。そういう形で彼女の入居は認められている。そもそも、俊介が翠恋と話し終わった後に『残りの奴らは私が説得しとく』とか言っていたが、翠恋がちゃんとそれを実行したかは分からない。ちゃんとしたのなら問題ないだろう。そもそも彼女の説得を応じない人間は、このマンションの中には一人もいない。状況だけなら俊介しかいないと思う。通常にいたっては、彼も翠恋を前にしたら役立たずになってしまうのだが。
「まあ、常識を言うならそうだけど……本当に良いの? ここの住人変態とか変人がいっぱい……いや、かなり多い……じゃなくて、大半が……訂正しよう。全員そんなのだよ?」
 何度も訂正した挙句、結局は全員が変態変人にされてしまった。
 しかし、色葉が思うところそんなに変態や変人が多いという印象は薄い。
 それも色葉が会った事があるのはごく少数だ。
 俊介、藍、駆、幽美、子湖乃、晃、明架梨、翠恋の七人でマンション住人が変態変人と決めつけるのはどうだろうか。

「子湖乃ちゃんて変態かな? 私はすっごく普通の女の子だと思うんだけど……」
「僕? ははっ、冗談はよしてくれよ。僕のどこが変じゃないの? 男の子の格好してるじゃないか」
「……それだけじゃ変ってことにはならないよ!」

 色葉の言葉に子湖乃は困ったような表情をする。
「……変だよ、僕は。毎朝こんな早くに起きてるし……」
「でも、それは皆のご飯のために……」
 そう言い掛けた色葉の言葉が途切れる。
 瞬間、子湖乃の表情が明日や明後日よりさらに数日先を見てるような表情に変わる。
「え、どこが? 中学から始めた事が習慣になって、今ではこの時間に起きないと気が済まない女子のどこが変じゃないんだい?」

 子湖乃口調を変えてしまった。
 何故か色葉は、感じなくてもいい罪悪感を感じ始めているようだ。だが、気持ちは何となく分かる。
 そう言った子湖乃は思い出したように、色葉にある話を持ちかける。
「そうだ。今日は折角の休みだし、マンションの人に一人ずつ自己紹介していってもらおうよ」
「いいの?」
「だって、色葉姉もよく知りたがってるし。皆嫌がらないと思うよ? でも、それなりに面倒な人がいるけど……大丈夫?」
 こくり、と色葉は大きく頷いた。

「大丈夫!」
「……そっか。なら、いいんだけど……」
 色葉の意外なほどの食いつきに、子湖乃は僅かに眉を下げた。
 それから、彼女は視線を食堂の入り口に向ける。
「さて、と……最初に来るのは、藍姉かな?」

34竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/28(土) 21:40:14 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「えーと……色葉ちゃんとは学校でも会ってるから分かると思うけど、一応自己紹介するね。高崎藍。高校一年生の十五歳。マンション三階の住人です」
 子湖乃の言ったとおり、次に食堂に入ってきた人物は高崎家の五女、高崎藍だった。
 藍は色葉と向かい合うように座り、彼女の隣には子湖乃が両手の指を絡ませながら肘をついていた。
 案外早く紹介が終わってしまったため、子湖乃は視線だけを藍に向ける。
「……藍姉、いまいち締まんないから、何か適当に言って」
「えぇっ!? 何その無茶振り!?」
 子湖乃の言葉にそう返す藍だったが、子湖乃の言葉にも納得したのか話題を探そうと考え始める。
 すると、かなりいい話題が浮かんだのか、彼女の目つきが変わる。

「好物はエビピラフですっ!」
「藍姉。それ言ってどうするつもりだったの?」

 藍はどこか自信に満ち溢れていたが、言われた色葉の表情は僅かに引きつっている。
 半分泣きそうになりながらも、藍は新たな話題を持ちかける。
「……小学校から中学までバスケやってました……。でも、高校生になってからは新聞部に入ろうと思ってます……」
 それを聞いた子湖乃はじとっとした目で、落ち込んでいる藍を見る。
「何故それを先に話題にしなかった?」
「ごめん。今同じ事思った」
 藍の言葉に色葉は『部活かぁ』と呟く。
 今まで部活をやった事がないらしく、高校からは新しい事に挑戦しようと思っている、とクラスでの自己紹介の時に言っていた。
 一回新聞部に勧めたが、文の構成が苦手らしく、すぐに断られた。
「藍姉。もっと何かないの?」
「うー、何で私ばっか……。子湖乃は? 自己紹介したの?」
「おっと、そうだった。僕がまだだったね」
 そう言うと、子湖乃は椅子から立ち上がって、薄めの胸に手を当てる。

「高崎子湖乃。十四歳の中学三年生で、六女の高崎愛莉の妹だよ。ちなみに、僕は二階に済んでる。特技は家事全般。好きなものはパイナップルと寝ること。嫌いなものは汗と虫。好きな言葉は『早寝早起き』でっす!」

 子湖乃の自己紹介もすぐに終わった。
 というか一方的に喋っただけに見えるが、椅子に座りなおした彼女はどこか満足気だ。
 色葉としても、どう返していいか分からない。
「……子湖乃も私と大差ないよ」
「うっ!」
 ぼそっと発した藍の言葉が、子湖乃の心をぐさっと突き刺す。
 改めて自己紹介の難しさを思い知らされた藍と子湖乃は、
「(……自己紹介って意外と難しいよね)」
「(……だから言ったじゃん! よく会う私達は必要ないって)」
「(……でもさぁ、色葉姉が『もう一回顔と名前を一致させておきたい』って言うもんだから)」
「(……そりゃ気持ちは分かるけど)」
 それなりに小声で話しているのは分かるのだが、時刻は未だに朝の六時半だ。テレビを突いていなければ、食堂で大きな音や声もないので、会話の内容は全て色葉に筒抜け状態になっている。
 そんなことに気付いていない二人の背後から、

「さて、貴様らは私と色葉を置いて一体何を話しておるのじゃ?」

 ビクッ!! と二人の肩が大きく揺れる。
 振り返るとそこにいたのはゴスロリ衣装に身を纏った少女、高崎幽美だ。
 五月の中旬に差し掛かっていると言うのに、彼女は暑苦しそうな衣装を身に纏っている。暑くないのだろうか。
「そうだ、幽美姉。幽美姉も色葉姉に改めて自己紹介したら?」
「……ふん」
 子湖乃の言葉に幽美は鼻で笑い、腕を組みながら言葉を返す。
「……自己紹介、か。大方貴様らがやっていい感じにスベったので、私を道連れにしようという魂胆であろう? そんなこと、貴様の顔に書いてある。それしきの事を、闇の眷属である私が見抜けぬとでも思ったか!」
 さすがに言い返せない。
 子湖乃の腹の内は全て幽美に見通されていた。

 が、自己紹介は色葉の頼み。
 子湖乃の魂胆を見抜こうが、幽美も決して避けて通れぬ道なのだ。
 彼女は色葉の正面に座らされた。

35森間 登助 ◆t5lrTPDT2E:2012/07/29(日) 09:46:01 HOST:180-042-153-139.jp.fiberbit.net
 えーと、なんだかヒートアップしてしまいそうなので、一度落ち着いて説明のし直しをしますか。

 まあ、そうですね。アマチュアなら、別に娯楽として楽しむならそこまででもいいですね。僕も理解が出来ていない馬鹿でした、済みません。
 ちなみにライトノベルで示しているのは、ライトノベルに多く触れている貴方に分りやすいように記載した結果ですので、そこはご理解いただけるようお願いします。

 説明の部分では、実際そういうところはあまり読者に委ねない方が後になって安定します。
 まあ、これ以上追求してもあれですので、これも本気でプロを目指すのならという理由で謝罪。m(_ _)m

 これは一般論ですので、申し上げますと、東京生まれの東京育ちの人間が関西弁喋るかどうかって事です。言葉にも寄りますが、補足がなかった自分の過失です。済みません。
 今回は少しやり過ぎたところがありました。申し訳ありませんでした。

36竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/07/29(日) 10:39:18 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
いえいえ、こちらも少し熱くなりすぎました。

人数を出しすぎ、と書いている途中は意外と思わないんですがね。
それも頭の中で『さらっと人物一斉に出して、後で個人個人をピックアップしていこう』という構想が出来上がっているからかもしれません。
これからはライトノベルじゃなくても構いません。
多く触れている、といっても主にアニメとか見てるだけですから^^

なるほど。
結局はすぐに結論に到達しよう、という僕の悪い癖です。それに文字数とか考えると、どうも説明がへたくそになってしまって。

そういうことですか。
今回で分かりました。幽美は次で自己紹介させますので、口調が可笑しな理由も書こうと思います。
いや、こちらも少し喧嘩越しになりました。こちらからも、謝らせていただきます。

37竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/11(土) 21:10:36 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 色葉の向かいに腕組で座っている幽美は、左右に座っている藍と子湖乃を交互に見た。
 幽美にとって、彼女達は大事な妹であり、大切な家族である。ここは姉として二人の我侭に応えてあげねばならないのだろうか、と考え出す。兄や姉は弟や妹に期待されると、ついつい良いところを見せたくなってしまう。言ってみれば、好きな子が目の前にいる男子と同じだ。あれは大抵空回りするオチだが。
 重い溜息をついた幽美はやる気の無い表情をしてから、
「……高崎家四女である高崎幽美じゃ。今年十九歳である。ちなみに、私の部屋は二階じゃ」
 幽美は自己紹介を終えると、ふぅと息を吐いて、椅子から立ち上がり、食堂から出て行こうとしたところを、

 藍と子湖乃に全力で食い止められた。

「な、何をするのじゃ……。もう良いじゃろう。私の用は済んだ!」
「……いや、済んだけどさ……もうちょっとだけ付き合ってくれない?」
 子湖乃がそう頼み込む。
 恐らく色葉は住人全員に挨拶せねば気が済まないようで、これから各個人の部屋に向かおうとしているのだ。とは言っても、簡単な人物ばかりではないこのマンションの住人どもは藍と色葉と子湖乃だけでは突破できない要素が大きい。特に、翠恋は強敵だから。
 妹の我侭に応えるべく、幽美はなし崩し的に自己紹介チームに加わった。
 幽美はまた重い溜息をつき、呟くように言う。
「……何か、数年分の我侭が放出したようじゃ……」

 とりあえず、生まれた順に部屋を回っていく事にした色葉達自己紹介チームは、長女である高崎マンションのボス、高崎翠恋がい四階へと向かっていた。とりあえず階ごとに回った方がいいんじゃない、という藍の意見もあったが、色葉が生まれた順に回りたい、と熱望したらしい。
 四人は歩きながら、特に話すこともないため、自己紹介チームを重い空気が包んでいた。
 この空気に耐えられなくなったのか、色葉が口を開く。
「……あの、何で幽美さんは独特な喋り方をしてるんですか? 年寄りっぽいというか……」
 その言葉に幽美は生き生きとした表情を見せる。
 まるで、その質問を待っていたかのような反応を幽美は見せる。
「ふっふっふっ、知りたいか青羽色葉。いいだろう、ならば教えてやる」
 なにやら幽美の周りに黒いオーラが見える(ような気がする)。
 彼女は怪しげな笑みと共に、口を開いた。

「私は、この世に生を受けてから千余年もの月日を過ごしてきた。私は人に乗り移り、転生を繰り返す事により、不老不死ともいえる肉体を―――」
「幽美姉は俗に言う中二病で、大好きなアニメの敵キャラ『アスマリン・オーゼリック』の喋り方を真似る内にこうなったのさ。ちなみに、今でも部屋に篭ってアニメを観まくってるから、どんどん中二病が悪化して、今では『自分は闇の眷属。光の眷属を滅ぼすために生まれてきたのじゃ』とか痛い言葉を言うようになったんだ」

 子湖乃に詳しく説明され、幽美は柄にもなく顔を赤くする。
「ち、違うもん! 私は闇の眷属なんだもん! 決してアスマリン様の口調を真似てるとか、そんなんじゃないもんね!」
 動転して喋り方が変わってしまっている。
 変わっている、というよりむしろこれが本来の幽美の喋り方なのだろう。実に可愛らしい喋り方だ、と色葉は思う。
 顔を赤らめながら反論する幽美を、子湖乃は落ち着くようになだめている。もうどっちが姉だか分からない。
「と、とにかくじゃ! 私は千余年の時を転生して今に至る! 文句ある!?」
 幽美はまだ顔を赤くしながら、色葉を指差しそう言う。
 色葉は表情を引きつらせながら、首を横に振ると、幽美はふんと息を吐いて歩き始める。
 そして、そうこう話していると―――、

「ついに来たね」
「……うん。やっぱ緊張するなぁ」
「姉だろうに、緊張するなよ藍」
「……ここが、翠恋さんの部屋……!」
 四人の自己紹介チームは高崎翠恋の部屋の前に立っている。
 今まさに、ラスボスとの決戦を迎えるのと同等の緊張感が、四人を包み込んでいる。

 念のために言っておくが、高崎翠恋は化け物でもなんでもない、普通の女性だ。

38竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/08/18(土) 09:26:42 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 『高崎マンション』の魔王・翠恋の部屋の前に立つ、色葉、幽美、藍、子湖乃の四人。
 誰一人として扉を開けようとも、ノックしようともしない。
 色葉をここに住まわせる時の俊介との話し合いを見ていたら、誰もが恐れるだろうことは用意に想像できる。
 そんな中、部屋の前で腕を組んでいた幽美が、隣でかなり緊張している色葉に声を掛ける。
「……色葉。お前はあの日以来、翠恋姉に会ったのか?」
「……いえ、会ってません……。俊介くんとの話し合いの『あれ』が演技だったとしても……」
 確かにそうだ、と思う。
 普段から、マンションに住んでいる自分達でさえも翠恋と話すことは少ない。ただ分かるのは『面倒な我が家の権力者』という適当な立ち位置しか把握できていなかった。
 子湖乃は扉の前に立ち、インターホンに手を伸ばしていく。
「でも、止まってられないよ。翠恋姉が怖いのは分かるけど……」
 全員が息を呑む。
 いよいよ、最初にして最大の試練を迎える時が来た。

 ピン、ポーン!! と子湖乃がそのまま指でインターホンを押す。
 彼女が寝ていたら最悪だ、と思いながら扉を開くのを待っていると……。
 おかしいな、一分くらい待っても出てこないよ。

 全員が声を揃えて『あれ?』と口にする。
「……子湖乃。鳴らした、よね……?」
「うむ。私達にも聞こえてたから、間違いはないじゃろう」
 インターホンの音は、外にいる四人にも聞こえていた。
 もしかしたら、翠恋は一度寝ると中々起きてくれない人なのかも知れない。
 藍がもう一度インターホンに手を伸ばすと、
「あ、待って藍姉!」
 そう言った子湖乃が自分のポケットへと手を伸ばす。
 取り出したのは携帯電話だ。
 子湖乃が電話を掛ける相手は決まっている。

 そう、扉の向こう側にいる―――、
 高崎翠恋だ。

39:2012/09/02(日) 17:29:51 HOST:zaq31fbcab1.zaq.ne.jp
こんにちは。

翔太さん。

元燐ですm(__)m

暇な時に見ているんですが、登場人物が多すぎて憶えられません。

ま、結構ゆったりモードで見ていくので、よろしくです。

小説の感想などは次回書きます。

40竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/09/23(日) 01:16:02 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 子湖乃は携帯電話に耳を当て相手が電話に出るのをじっと待っている。
 彼女の携帯電話は『中身は男だ!』の彼女にしては以外にもピンク色で、可愛らしい犬のストラップがつけられている。本当に彼女は『中身は男だ!』と言ってもいい人物なのだろうか。だが、そこが彼女のおかしくも矛盾している部分なのかもしれない。
 携帯電話に相手が出たのか、子湖乃は『おっ』という声を漏らす。
『もしもし?』
 電話の相手、高崎翠恋はようやく朝の七時を回ったというのに、脳も身体も完全に覚醒しきっている声だった。割と生活はしっかりしているのかもしれない、と色葉は心の中で思う。
 扉一枚を隔て、翠恋と子湖乃は電話で会話をしている。なんとシュールな光景だろう。
 子湖のはごく普通なやりとりのような口調で、
「翠恋姉。今もしかして部屋の鍵閉めてる?」
『勿論じゃない。用心しないと』
「……翠恋姉。今耳にイヤホンかヘッドホンつけてた?」
『……ごめん。今すぐ鍵開けるわ……』
 携帯電話のスピーカー機能をオンにしていたため、あの絶対的なマンションの支配者、高崎翠恋が屈する瞬間を体験できた色葉、藍、幽美の三人は驚愕に満ちた表情をしていた。
 子湖乃が携帯電話をしまうと、
「ほら、入るよ皆。鍵開いたらしいから」

 翠恋の部屋は電気がついておらず、パソコンの画面の明かりだけが部屋を照らしていた。それも一台だけではない。ノートパソコンが二台机に並べられており、巨大なモニターのような画面が四つもあった。そのせいか、パソコンの画面からの光が集中している一点だけがかなり眩しく思えた。
 色葉達はパソコン画面の前の椅子に座る翠恋の前に立ち、まず最初に彼女の謝罪を聞いた。
「えと……その、ごめんなさい。私は毎日と言っていいほど仕事が山積みで部屋から出ることは滅多にないの……。そろそろ一段落つきそうだから。仕事に集中するため、普段はヘッドホンしてるのよ」
 申し訳なさそうに謝る彼女は可愛く思えた。
 いつもの統括者のような威厳は全く無く、普通の女性として。そしてしゅんと落ち込んでいる今の彼女を見て、色葉達は全員可愛さに心を打たれていた。
「で、子湖乃。来た理由はなんなの?」
「ああ、色葉姉がマンションの住人全員の顔と名前を一致させたいんだって。だから自己紹介してあげてよ」
 なるほど、と翠恋は快諾してくれた。
 咳払いをし姿勢を正して、にっこり笑顔を浮かべながら彼女は自己紹介を始めた。

「高崎家長女の高崎翠恋。部屋はここ、一階ね。年齢は永遠の二十歳ですっ☆」

 あーあ、やっちゃったよこの人。
 そんな視線を翠恋に送る藍、幽美、子湖乃の三人。今の自己紹介はないだろう、と色葉も心で思っている。ウインクもしてくれているのだが、皮膚の筋肉がぴくぴく動いているので、無理をしてるっぽい。
 色葉は恐る恐る翠恋に訊ねる。
「あ、あのー……本当の年齢は……?」
 表情に影が差す。
 なんともいえない恐怖を孕んだ表情で、にっこりしたまま翠恋は答える。
「永遠の二十歳ですっ☆」
「あの、えーと……」
「えーえんの、二十歳です」
「……は、はい……。そのとおりでございましたね……」
 色葉が半泣きになってしまったので、翠恋の自己紹介はここで終わってしまった。

41竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/10/07(日) 21:44:35 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「うぅ……」
 泣き出してしまいそうな色葉を、両横から慰める幽美と藍。子湖乃はそんな三人の後ろを着いて歩いていっている。
 翠恋の(精神的な意味での)殺人スマイルは色葉の心を深く抉ったようだ。色葉から黒い負のオーラが立ち上っているような、子湖乃はそんな錯覚に陥った。
 ふむ、と考えるような仕草をしながら幽美は、
「やはり翠恋姉はリスクが大きかったようじゃな。私も未だ、彼女と向き合うと身が硬直してしまう。まあ、それも私が強力な魔力を封印してるからであって、私が封印を解けば翠恋姉も我が前にひれ伏すことと―――、」
「あー、もしもし翠恋姉? 今幽美姉がさぁー」
「おい、子湖乃!? 翠恋姉に電話するな!!」
 子湖乃の声で幽美は勢いよく振り返る。
 案の定、子湖乃は自身の携帯電話を耳に当てていた。幽美が止めると通話はしていなかったようで、単に幽美の中二的発言が鬱陶しかったらしい。
 何もしていなかった藍と色葉は『あー、また言ってるよコイツ』みたいに聞き流していたに違いない。
「ぬぅ……、子湖乃謀ったな!」
「騙される方もどうかと思うけど? それに幽美姉の中二発言程度、翠恋姉は歯牙にもかけないだろうね」
 そんなことないもん!! と素を丸出した幽美が叫ぶ。
 そんな光景を傍観していた藍はくすっと、思わずといった調子で軽く吹き出した。
 色葉はそんな藍に、
「どうしたの、藍ちゃん」
「ん? いや、なんかさ……」
 言い合う幽美と子湖乃。ひいては姉妹。
 藍は笑みを浮かべながら、

「今までは、幽美姉も子湖乃も。心の底から笑わなかったなーってさ。色葉ちゃんのおかげだよ!」

「私、の……?」
 きょとんとした顔で色葉は聞き返す。藍は、ただ笑って頷くだけだ。色葉も嬉しさと照れがまじり、頬を僅かに赤く染める。
 色葉と藍が友情を深め合っている横から、幽美と子湖乃の汚い言葉の応酬が耳に入ってくる。

「大体貴様は、私を姉として慕ってないだろ!」
「慕ってるよ! そんな中二病を開放するなんて逆に尊敬するよ!」
「それは敬愛でも慕情でもなんでもないだろ! 私分かるもん!」
「幽美姉に何が分かるって言うんだよ! あれか、例の冥界の王から授かった『冥帝の邪王眼(めいていのじゃおうがん)』か!!」
「使うまでもないもん! 貴様の心など手に取るように分かるわ!」
「人って成長すると怖いね。昔は『私大きくなったら駆と結婚する』とか言ってたくせに!」

「「「え?」」」

 その場の発言者の子湖乃以外が驚きを露にする。
 わなわなしながら顔を赤くしていく幽美。そして廊下の奥から、

「え?」

 男の声が聞こえる。
 そこにいたのは、絶望に打ちひしがれた許婚(仮)の、
 高崎駆だ。

42竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/10/19(金) 21:20:40 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 ただ喧嘩する声が聞こえてきただけだった。
 偶然四階に用があり、その帰りに妹と姉の叫び声が聞こえるなーと思って近寄ってみると、妹の口から突然衝撃の事実が告げられたのだ。
 当然のことではあるが、彼は悪くない。
 ただ四階に用があっただけで。ただその帰りに妹と姉の言い争いが聞こえただけで。ただ何事かと近づいただけで。ただ妹から衝撃の事実が告げられただけで。
 だから、二回目になるが、彼は。
 高崎駆は悪くない。
「……」
 言ってしまった当の本人である子湖乃も『あ、ヤベ』みたいな顔をしているし、幽美は耳まで真っ赤にしているし、藍と色葉は展開が気になるようでそわそわしている。
 幽美はあわあわした様子で、
「ち、違うぞ! 駆! い、今のは、その……子湖乃の冗談で……!」
「……何だろう。胸の奥底にしまっていたパンドラの箱が開けられた」
 全員が言葉の意味が理解できないまま、駆は口を押さえだした。
 その行動も全員が理解できないまま、駆は表情を悪くして、
「……すまん、藍。ちょっとトイレに……。吐き気が……」
「そこまで!?」
 さすがの幽美も驚いたようだ。
 自分が小さい頃言ってしまった言葉は、駆をそれほどまで追い詰めるものだったのか。何だか悲しくなってくる。
 しかし、ここは都合よく現れた駆を逃がすまい、と藍と子湖乃が駆の腕を掴んで引き止める。
「まーまー、駆兄! 折角なんだし、色葉ちゃんに自己紹介していこ、ね?」
「トイレは後で行けばいいじゃん! もう一回尋ねるのも面倒だし、ここで済ましちゃお?」
 妹二人に止められ、駆は渋々応じる事にした。
 とりあえず椅子などもないので、立ったまま自己紹介する羽目になったわけだが。

「高崎家三男の高崎駆。一階の住人だ。ちなみに年は今年で十八。翠恋姉の年齢は二十七だ」

 最後の付け足しいるか、と思いながらも翠恋の年齢が分かった色葉にとっては良かったことだった。
 しかし、ここで色葉は『あれ?』と思う。
 ―――高崎駆は意外と普通なんじゃないのか、と。
 見た目はカッコいいし、頭は良いらしいし、モテそうだし。初めて普通の人に会ったような気がした。
 が、
「見た目に騙されるなよ、色葉。こいつはこんな済ました顔をしておるが変態じゃぞ」
「え?」
「そうだよ。駆兄ってば勉強が趣味とか言ってるし。暇さえあれば勉強してるもん。私達もたまに問題出されるよね」
「え、え?」
「たしか一日五時間は勉強しないとすまないんだっけ? 学校での勉強時間抜いて。朝六時に起きて七時から八時まで勉強してるもんね。頭を起こすため」
「え、え、え?」
 つまり、

「「「こいつも変態ってこと」」」

 色葉は改めて実感した。
 やっぱりこのマンションに、普通の人っていないんだぁ。と。
 その片隅で、『俺は普通だろ』と駆は呟いている。

43竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/10/27(土) 17:42:20 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 駆は自己紹介をすると自分の部屋へと戻っていった。
 どうやら『吐き気がする』は嘘だったらしい。嘘だと分かった幽美はホッと胸を撫で下ろしていた。
 続いて、色葉達が向かったのは四階にいる長男の部屋だった。
 確か次男には一回会った事があったっけ、と色葉は曖昧な記憶を呼び起こす。自分と俊介を恋人だと勘違いしたあの人だ。恋人と勘違いされたと思い出すと、ちょっとだけ色葉は恥ずかしそうな顔をした。
 その恥を隠すため色葉は藍達に質問をする。
「ねえ、長男さんってどんな人なの? 普通の人?」
 ここまで来て普通じゃなかったら違和感じゃないし、普通だったら逆に違和感を感じてしまう。
 色葉は心のどこかで『普通であること』と『普通じゃないこと』の両方を願ってしまっていた。ここで普通の人じゃなくてもそれなりの驚きは無いだろうと思ってはいる。既に今一緒にいるメンバーも裏を返せば普通じゃないのだから。
 色葉の質問に藍が僅かに考えた後に、答えを絞り出すようなざっくりとした答えを言った。
「……お父さん、かな?」
 色葉は固まってしまう。
 ここってお父さんとお母さんとかっているの? いや、そもそも長男のところに向かってるんだよね?
 意味が理解できていない色葉の耳に、次は幽美の言葉が届く。
「うむ。強ち間違いではないじゃろう。私は奴を新聞読みながらコーヒー啜ってるところしか見たことないぞ」
(お父さんだ)
「それに休日やたらと出掛けようとするよね。鈴礼や明架梨を楽しませるように遊園地とかさ」
(お父さんだ!)
「それで料理はてんでダメだよねー。玉子焼きとか焦がしちゃうしさー」
(お父さんだ!!)
 謎のお父さん長男がどんなのか色葉はより気になってしまった。
 逆にここまでいくと普通なんじゃないだろうか? しかし話しによれば翠恋の弟らしく、二七歳以下でお父さんキャラも嫌だろうなあ、と思う。
 すると、長男の部屋の前に辿り着いた。
「着いたよ。ここがお父さん……じゃないや。亮(りょう)兄の部屋だ」
 子湖乃が言いながら部屋のドアノブに手を掛ける。


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