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紫の乙女と幸福の歌

1月波煌夜:2012/03/10(土) 12:03:26 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
初めまして。
月波煌夜(つきなみ・かぐや)と申します。
小説を書くのは初めてで、とても緊張しています(^-^;
拙くて見るに耐えない文章かもしれませんが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、月波は非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)



不定期の更新になると思います。
お話は少女小説風をイメージしています。


†主要な登場人物†

ソフィア―――
しあわせを呼ぶと云われる紫の瞳を持つ少女。

シュオン―――
エインズワーズ公爵息。変わり者だが心優しい青年。

シェーラ―――
ソフィア付きのメイド。

ヒース―――
ソフィアの見張り役の従僕。

568ピーチ:2012/08/19(日) 09:35:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…シュオン様ははっきりしすぎてるよねw

ヒースもヒースで何気にしっかりガードしてる的な?

後はジルとレイさん達だけだよね〜ww←ちょー他人事w

569月波煌夜:2012/08/19(日) 11:26:22 HOST:proxyag106.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 6』




「出てきたぞ、第三王女だ!」



「殺すな、生きたまま捕らえろッ」



驚く主人に事情を素早く説明し、旅籠の外に出ると、兵士たちが二人を取り囲み、一斉に刃を構えた。



「っ……!」



「ルイーズ様」



恐ろしさから息を詰めたルイーズに、クロードは囁く。


するりと彼女の身体を下ろし、



「目を閉じて、私にしがみついていて下さい。……御命令通り、すぐに終わらせます」



ルイーズは一瞬迷ったものの、素直にぎゅっと固く目を瞑り、彼の胴体に強く腕を回した。



「……敵の戦力は」



「《イルファーレ》とまではいきませんが、王立騎士団並みの者が数十名程」



「……やれるのか」



「はい」



クロードは頷き、上着を脱いで彼女の頭に掛ける。



「ルイーズ様の御身は、この命に掛けましてもお守り致します」



何も言わず、瞼を閉じてルイーズは頷いた。



クロードはそれを確認してから、


ひゅん、と剣を一振り、じりじりと距離を縮めてくる集団を静かに見返す。


「ルイーズ様に仇為す者に情けは不要。……と言いたい所ですが」



翠緑色の瞳を婉然と細める。
鋭い爪を隠した獰猛な鷹を思わせる、剣呑な眼差し。



「ルイーズ様の広い御心に感謝することですね。……楽に殺して差し上げます」



その声が合図。



「ッアアアアア!」



ザラザラとした耳障りな声と共に、男たちが飛び掛かる。



クロードは怯まない。
身体は動かさず、完全に右腕だけを使って長剣を突き出す。



一閃―――



漆黒の刀身が不吉に煌めく。



「ぐあっ」



肉を切り裂く鈍い音と、勢い良く血潮が噴き出す音。



ルイーズが小さく震えた。



無音の剣戟。
僅かな風さえも生じさせない、超高速にして不可視の一撃。


長剣を一度振るう、その衝撃波だけで軽々と屈強な男たちが吹き飛ばされ、彼らの肌が裂け、血飛沫が舞う。



それはあまりに美しく、

あまりに一方的な、殺戮。



「……くそ、貴様が、……あの、“悪魔”……ッ」



「御名答」



断末魔の悲鳴の中、事切れる寸前の一人の男が憎々しげに漏らした単語に、クロードは唇の端をほんの僅かに上げた。

570月波煌夜:2012/08/19(日) 11:29:54 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ねー!
あのおちゃらけと突っ込みと剣しか取り得のない馬鹿男をどうするかだよ…。
ヒースはやる時はやってくれる子だったけど…うーん。

571彗斗:2012/08/19(日) 12:02:48 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
やべぇ…クロード、格好良過ぎる……無表情なキャラは明るかったりおしゃべりだったりする重要なキャラと同じ場所に入れておくと対照的なオーラが出ますね。
最もな話、ルイーズ姫とクロードに至ってはその効果が滲み出過ぎてるしww

572ピーチ:2012/08/19(日) 13:09:22 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あのー、作者様ー?自分のキャラに対して随分と酷いこと言ってません?

うん、やる時だけってのが悲しいね、どことなく。

573月波煌夜:2012/08/19(日) 14:13:18 HOST:proxyag076.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

身長差・年齢差・性格差(?)の三拍子揃ったカップルですね!
こういう対照的なコンビは書きやすいので楽です←

クロード格好良いですか?ありがとうございます(・∀・)



>>ピーチ

だってジルだから☆

ヒースはやらない時はただの哀れないじられキャラだからね…。
何気にこの二人、扱いが似てきたよね…。
主にシュオンによる(^^;;

574ピーチ:2012/08/19(日) 14:21:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

いやいやいやいや!ジルだから☆ってどーゆーことー!?

……うん、確かに似てきてるよね、ヒースとジルの扱いw

575月波煌夜:2012/08/19(日) 18:54:22 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 7』






「―――きゃああああっ!?」



突如響いた、この場に似つかわしくない高い悲鳴に、一瞬敵の動きが鈍る。


視線を走らせれば、集団のさらに向こう側、民家の扉の前で女がへたり込んでいた。
騒ぎに気付き、様子を見に外に出て来てしまったのだろう。



「クロード!」



「承知」



ルイーズの鋭い声に、クロードは俊敏に反応する。
先程と同じように彼女を左腕でふわりと抱き上げ、



「ルイーズ様。申し訳御座いませんが、私にしっかりと掴まっていて下さい」



「う、うむ」



肩口にぎゅっとしがみつくと、さらさらとした黒髪がルイーズの手を擽(くすぐ)る。



「行きます」



トン。

地を蹴る音さえも置き去りにし、クロードは動いた。


疾走、そして加速。


兵士と転がる死体の間を縫い、真横や背後に足下、死角を狙って慌てて繰り出された剣の軌跡を読み正確に回避。



「……そこな者!此処は危険じゃ、早よう中へ入れ!」



兵が向かう前に女の下へと無事に辿り着き、ルイーズは声を張り上げる。


「……っ、………!」


しかし女は屍(しかばね)や血溜まり、そして武器を携え走り寄って来る兵士たちを見据えたまま動かない。……否、動けない。


「仕方がありませんね」


「そうじゃな。……頼むぞ」


「はい」


クロードは女を背に庇う形で立ち、長剣を構えた。


「一撃で全員仕留めますので、少し動きますが」


「構わぬ。存分にやれ」


「はい」


クロードは言うが早いか駆け出し、突き出た岩に足を掛けて跳躍。


瞬く間に周囲の背景が移り変わり、目標へと一瞬で距離を詰める。


ルイーズと彼を目掛け雄叫びを上げて突進してくる兵。


後ろ髪を夜風に靡かせるクロードは、冷たく凍ったエメラルドの双眸を細めてそれを見つめ、静かに長剣を振りかぶった。



「……来世には覚えておきなさい。ルイーズ様には指一本……いえ、血の一滴でさえも、触れさせはしません」



煌めく銀閃。





―――黒き騎士の刃が空間を抉り、全てを凪ぎ払った。

576月波煌夜:2012/08/19(日) 18:57:19 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

だってジルですから☆


…ヒースもジルもついでにクロードも、剣使ってるときくらいは貧困なボキャブラリーを駆使してでも格好良く見せかけてあげたいという月波の親心ですw

577ピーチ:2012/08/19(日) 19:01:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……最初の台詞が前と同じに見えるのは、あたしの気のせいか…?

剣使ってる時限定!?ついでにってクロード殿も!?

うん、あのね、つっきーの親心はス補遺と思うよ。

でもね、その「〜限定」はやめようよー!?

578月波煌夜:2012/08/19(日) 19:08:00 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp
>>ピーチ

気のせいだよ☆(キラキラッ


う、うん…分かったよ!
剣使ってないときも真面目に書きます!多分!
…格好良くなるかは運による(ぇ

579ピーチ:2012/08/19(日) 19:09:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

気のせいなのねぇ気のせいなの!?

……格好良くして?←え…(退き

580月波煌夜:2012/08/19(日) 19:16:36 HOST:proxy10067.docomo.ne.jp
>>ピーチ

気のせいなんです☆(しつこい


…(´・ω・`)ガンバリマス…
まずはジルだな…。うん。

581月波煌夜:2012/08/19(日) 20:38:11 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 8』






「……終わった、のか?」


「はい」



そっと地面に降ろされたルイーズはクロードの上着を頭から外し、新鮮な空気を吸い込んだ。

その拍子に錆びた鉄のような臭いが鼻腔に入り込み、うっと顔をしかめる。


「ルイーズ様。御無事ですか」


「ずっとおぬしに抱え上げられておったのだから、無事に決まっておるじゃろう」


「万一ということもあります。随分と振動を与えてしまいましたし」


「わたしは首が据わっていない赤ん坊か……。あの程度、何ともなかったぞ」


「それは何よりです」


クロードはいつもと変わらぬ無表情で、ルイーズに渡された上着を羽織る。


「そなたは?わたしに上着を寄越せば、怪我をしやすくなるじゃろうに」


「ルイーズ様を血で汚れさせる訳にはいきませんので。私は傷一つありません」


「相変わらず凄まじいな……」


仮にも国中の精鋭が集う王立騎士団級の兵士数十人を、ルイーズを常に庇いながら相手にしていたのにも関わらず、此方は怪我も何もせずに余裕で瞬殺。
しかもルイーズに血が飛ばないよう配慮していたときた。


「やはりそなたは“戦神”であり“悪魔”なのじゃなぁ」


「クラウスの話では、私は我を忘れて歯止めが効かなくなると、それこそ本物の悪魔が乗り移った様に目の色を変えて敵兵を虐殺し始めるそうです。……ルイーズ様の前でそんな醜態を晒すことがなくて本当に良かった」


「気にするのはそこなのか」


全く、腕の割に天然というか何というか。



「ふう。これ以上村の者に迷惑を掛ける訳にはいかぬ。夜が明けたら帰るぞ。とりあえず後始末の前に、村人たちに無事を伝えて来よう」


「御意に」


ゆっくりと歩き始めるクロードに、ルイーズは小走りで追いつき。


少し迷ってから。そっと、彼の血まみれで大きな手を取った。



「……ルイーズ様?いけません、汚れてしまいます」



「汚れてなどおらぬ。わたしを守ってくれた手じゃ」



労いの言葉も、礼も言わない。
騎士に守られる姫君は、そんなことは当たり前だと、昂然たる態度でいなければならないから。


だから、

ルイーズが何も言わなくても、この繋いだ手から、この気持ちが伝わるといいなと思う。


―――お疲れ、じゃったな。クロード。



隣の騎士が、ふっと小さく笑んだような気がした。

582ピーチ:2012/08/20(月) 09:18:06 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……あの、タイトルの割りにルイーズ王女が我侭に思えないのはナゼ…!?

むしろすっごく優しい王女様じゃーん!!

クロードー!?心配するとこちがーうっ!?

583月波煌夜:2012/08/20(月) 10:58:58 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp


特別編 『我儘王女と忠実なる従者 9』






「―――という訳で。お疲れだったな、ルイーズ、クロード」



ルイーズはぷるぷると震え、沸き起こる激情を必死に諫めた。



「に、兄様?すまんが、もう一度言って貰えるかの」



「ああ」



豪奢な金髪に碧眼の麗しい青年、この国の王太子にしてルイーズの実の兄であるレオンハルトは爽やかに笑って言った。


「極秘任務、大変御苦労だった」


「その前じゃその前!」


ルイーズは癇癪を起こしてむきゃー!と髪を逆立たせる。


レオンはにっこりとした笑みを崩さずに。



「―――国家に関わる機密事項だから、言ってはいなかったが。隣国の一部の者に不穏な動きがあったのは私も気付いていたのだが、近いうちに何とかしなくてはと様子を伺っていたところにクロードが村に帰省するという話が出たからな。此処はルイーズを餌におびき出して、この絶好の機会に手っ取り早くクロードに一掃してもらおうと考えて、ルイーズの外出を後押ししたんだ。……ちなみに奴らにルイーズの居場所の情報を流したのも私だ」



「ええい離せクロード!この愚兄の頭をカチ割っておかねば我が国の未来がないッ!」


「ルイーズ様。次期国王陛下たる王太子殿下を殺害すれば、ルイーズ様の御立場が危うくなります。どうかお控え下さい」


「クロード、諫言の仕方がおかしいぞ」


レオンが言い終わった途端に弾丸のように飛び出そうとしたルイーズを見事、襟首を掴んで片手で止めてみせたクロードを見て、レオンは一層楽しそうに笑う。


「おかしいぞではないッ!妹を何だと思っておるのじゃこの馬鹿兄が―――ッ!?」


「二人とも無事だったのだし良いじゃないか」


「よいわけがあるかぁああああ!」


「……殿下。私もこの件については正直如何なものかと思います。機密事項というのは分かりますが、それにしても事前に注意を呼び掛けておくなどの対策を―――」


「クロード」


レオンは一転、かつての自身の騎士を真剣な表情で見つめる。


「はっ」


ルイーズは、この兄がクロードに対してこのような顔をしたときは大概ろくなことを言わないと分かっているので、嫌な予感と共に二人を見上げた。



「お前はいずれ私の義弟となる存在だ。大切な妹姫を預ける為には、その男の技量を見定めて、本当にルイーズの夫に相応しいかどうか事前に確かめる機会を設けたかったのだよ」


「成程。それで、その結果は如何でしたでしょうか」


「無論、合格だ。不意打ちの夜襲にも焦らず動じず、ルイーズを見事守りきったお前は私の義弟として十分の器を持っている」


「恐れ入ります」


「恐れ入らんでよいから少しは人を疑うことを覚えろぉお―――!」


「はは、仲が良くて羨ましいことだな。……実の実を言えば、普通に言い忘れただけだったのだが誤魔化せたようで良かった。さすが単純」


「今何か言ったじゃろう兄様!?絶対言ったじゃろう!?」


「うん?何のことだか分からないな」


またも食ってかかろうとする妹とそれを止める騎士を見て、レオンは微笑。



―――今日も王宮には、小さな王女の怒鳴り声が木霊する。

584月波煌夜:2012/08/20(月) 11:02:42 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ

月波のキャラは、何だかんだで皆優しいとこがあるからね(`・ω・´)
ルイーズがワガママはワガママだけど、むしろ強引、とかの方が近いかも←

585ピーチ:2012/08/20(月) 11:41:08 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…レオン殿下、何気に酷いネ…

普通に言い忘れてた…ルイーズ王女はとんでもない兄上を持ったんだネw

レオン殿下も確かに、妹に怒鳴られても痛くも痒くもないかもw

586月波煌夜:2012/08/20(月) 15:37:44 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、レオンは酷いんだ←
でも憎めない酷さ、と側近には思われていたり思われていなかったり?w

シュオンまではいかないもののちょいブラックが入ったレオンは結構好きで、あと一回だけ登場するよ!何気に超重要な役割背負ってるよ殿下!




さて、次はジルとユーリエがくっつく話ということで、ねここさんにリクを戴きました!
暗殺者組は、本編ではあまり良いイメージなかったと思うんですけど、こうしてリクを戴いてみると結構好きになっていただけたのかなとしみじみ←

…ええと、最初に謝っておきます。
ごめんなさい月波に恋愛メインのモノは一生無理だということが今回判明しました本当にごめんなさいこれで御容赦下さい。
残念ながらこれが月波の全力です…!°・(ノД`)・°・

↓からとりあえず始めてみます(^^;;

587月波煌夜:2012/08/20(月) 15:44:12 HOST:proxyag010.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 1』





“こっちはそこまで覚悟決めてるのに、私だけ逃がそうですって?ふざけないでよッ”



闇を照らす焔(ほのお)のように、風に靡いてふわりと広がった真紅の髪。



“だって私は、あの日からずっと、貴方のことが―――ッ”



……消えてしまったあの言葉の続きは、何だったのだろう。



―――今でもふと、そう思うことがある。








*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*








ユーリエは困っていた。


「あ、ああの、……っ良かったらお俺と、あの、お付き合いし……っ」


「そ、それはもう分かったから」


赤面してどもりまくる兵士の正面で、ユーリエも少しつられたように赤くなりながら、それでも内心溜息をつく。


猫を思わせる瞳は黄金にも似た琥珀の輝き。
物憂げに伏せられた長い睫、色香が漂う泣きぼくろに、頬に掛かった一房の髪を掬って払うほっそりとした指。

とびきりの美人で性格も柔和と使用人の中で専らの噂のユーリエだが、今までにも何度もあったというのに、このような場面にはまだ耐性ができていなかった。


落ち着け、と息を吸い込む。


「……ごめんなさい」


人を傷つけるのは苦手だ。
長年、人を傷つける為だけの職に身を置いていたというのに、やはり苦手なものは苦手なまま。
相手が心に受けるだろう痛みを想像すると、自分まで胸が苦しくなる。


「その……好きになってくれて有難う。……でも、貴方には私なんかよりもずっと、素敵な人が見つかると思うわ」


申し訳なさそうに眉を下げて、ユーリエは微笑む。


「……はい」


青年兵はやはり落ち込んだ様子だったが、それでもユーリエに合わせてはにかんだ。


ユーリエはこのまま、自分から立ち去るべきなのか少し悩む。
それは冷たすぎるような、でもこれ以上の話もしようがない。


「―――あの!」


突然呼び掛けられ、ユーリエは驚いてぱっと顔を上げる。


兵士は真面目そのままの顔で。



「やっぱり、好きな人とか……いるんですか?」



不意打ちだった。



「え、……」



そう言われてすぐに脳裏に思い浮かんだのは、かつての相棒だった大地色の髪の男。
ユーリエが長い間想い続けてきて、でもこちらの想いにはまるで気付こうともしない、そんな男の姿だった。



「そう……ね」



無意識のうちに、頬が緩む。



「いるといえば、いる……のかも」



「そうですか」



兵士はニカッと笑い、頑張って下さい!とおどけて敬礼してみせる。

明るい彼に感謝しながら、貴方もね、とユーリエも笑った。

588彗斗:2012/08/20(月) 16:07:35 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
やっと見つけた……
ヒースとジルの話…レス数が多過ぎて見つからなかったって言うww

私の目から見てもやっぱり最高でした! 月波さんって何のジャンルを描いても凄いですね〜正にオールラウンダーですね☆

589ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/20(月) 16:10:21 HOST:EM117-55-68-36.emobile.ad.jp

ついに始まったとか内心思いながら告白されちゃってるユーリエちゃんにモテるなあとか言ってみr((
そして兵士くんも性格的に好きです!
明るいところでいi(ry←

やっぱり恋する人はみんな輝いているんだと名言を吐き捨てたところで去りますw
つづき、楽しみにしてますね!

590月波煌夜:2012/08/20(月) 20:26:55 HOST:proxyag073.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

ヒース&ジルの話、気に入って戴けたようで何よりです!
彗斗さんに捧げます(キリッ
いやいや、どのジャンルも中途半端で困ったものです←



>>ねここさん

ユーリエは結構モテる子でした←
兵士くんは名前もないけど良い人ぽいですw
ありがとうございます、続きも期待はせずにお待ちください(`・ω・´)

591月波煌夜:2012/08/20(月) 21:19:03 HOST:proxy10035.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 2』





―――最近、ジルの様子がおかしい。



屋敷の中を歩きながら、ユーリエは悩ましげに眉を潜める。


元々まともな奴とは言えないけれど、近頃は明らかに、輪を掛けておかしいと思う。



ひとことで言えば。……ユーリエを避けているような。そんな気がしてならない。



話し掛けようと近付くと、すぐさま何処かへ行ってしまう。
しかもあの脳天気なお気楽男が、何故かいつも不機嫌そうに顔をしかめていて、



―――怒ってる、のかな。



こんなの、今までになかったことだ。

自分が何か彼を怒らせるようなことをしただろうか。

……何年も一緒に暮らしてきたけれど、ユーリエがジルを叱り飛ばすことはあっても、ジルが本気で怒っているところは、ユーリエは一度も見たことがない。

どんな時でも最高に楽しそうに、ユーリエの隣でへらへら笑っていて。



―――どうしたっていうのよ……。



ユーリエはふうっと息をつき、それからふるふると頭を振る。


……悩んでいても仕方がない。
今日はもう遅いから、明日にでもジルを捕まえて詳しく話を聞こう。
そう思うと、少しだけ足取りが軽くなった。


「こんばんは」


すれ違おうとした人物に声を掛けられ、ユーリエは笑顔で応える。


「こんばんは。……あら、貴方」


「はい。今日も御苦労様です」


誰かと思えば、先日告白してきた青年兵だった。


「御苦労様。こんな時間まで訓練?」


「そうなんです。ジルさんがなかなか許してくれなくて」


あはは、と兵士は頬を掻く。


「その調子なら、毎日大変よね」


「はい。でも少しずつ腕が上がってるような気がして楽しいです」


にっこり笑う青年。

……こんな風に、真っ直ぐな人を好きになっていたら苦労しなかったのかな、とユーリエが苦笑したとき―――



「―――ユーリエ」



低い声。
ユーリエはハッとして振り返る。


やや長い大地色の髪に、猛禽を連想させる山吹色の双眸。
異常な程の痩身を、深緑色の軍服で包んだ青年。



「……ジル?」



「ちょっとこっち来い」



鋭い視線。

ユーリエと兵士は、思わず顔を見合わせた。

592月波煌夜:2012/08/20(月) 21:20:25 HOST:proxy10059.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 3』





「……で?何なの?」



自室の扉をバタンと閉めたジルに、ユーリエは問い質す。


ジルはむっつりと黙り込んだまま、返事もせずにすたすたと部屋を突っ切って、後ろ手に腕を組み、寝台(ベッド)に仰向けに寝転がった。


……意味が分からない。


ユーリエは少し迷った末に、適当に椅子を引っ張って来てジルの横に座る。



「ちょっと。聞いてるんだけど」



険悪な雰囲気にしたい訳ではないけれど、どうしても語気を強めてしまう。



「……私が貴方に何かした?なら―――」



「―――お前が」



唐突にジルが口を開く。



「……お前が好きな奴って、誰」




心臓が跳ねる。



まさか。



「聞いて、たの?」



あのとき。
ジルもユーリエの言葉を、聞いていた?



「……散歩してたら、たまたま聞こえちまっただけ」



一瞬ばつが悪そうな顔になったジルはすぐにそれを崩し、上半身を起こしてユーリエを見た。



「誰。オレが知らない奴?」



ユーリエは、ジルが“オレ”と自分を呼ぶときには、彼にふざける余裕がないときだということを知っている。

だから、余計に分からなかった。


……なんでジルは、こんなにも動揺している?



声が震えないように、膝の上でぎゅっと両手を握り締める。



「……何で、そんなこと聞くの?これは私の問題よ、貴方は関係ないでしょう?」



ジルはまた黙り込んだ。



ただの興味本位、だったらこんな態度は取らない。
なら、どうして?



「ねえ」



彼の偽らない、本音が聞きたい。



「最近のジル、なんか変だよ」



ジルは喋らない。



「いっつも機嫌悪そうだし、ほんとに悪いみたいだし。それはどうして?」



「……分かんねェんだよ」


ジルが、ぼそりと呟いた。



ユーリエは黙って続きを促す。



「何がなんだか、オレにもさっぱり分かんねェ。……そ、おかしいンだよオレ」



自嘲するように、何かを吐き出すように。



ジルは薄笑いを浮かべて言う。



「なんか、さ。……」



ユーリエを見つめる山吹色の中に火影(ほかげ)が揺らめく。




「お前がいつか、オレが知らない誰かのモンになんのかって考えたら……良く分かんねェけどすっげえムカついて」

593ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/20(月) 21:42:40 HOST:EM117-55-68-19.emobile.ad.jp

余裕があるジルもかっこいいけど余裕がないジルもかっこいいいい(ry
なんかもうきゅんきゅんしてます←
そして相変わらずジルって鈍感ですね(・ω・)
でもそこがいi((


続きもとってもとっても期待してます←
がんばってください!

594月波煌夜:2012/08/21(火) 16:32:21 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
☆★ねここさん感謝祭★☆


特別SS 『恋の焔は燃えゆく 4』






「……なに、それ」



カッと頬が熱くなった。



「ずるい、……そんなの」



「何が」



ユーリエは笑った。
嬉しくて、くすぐったくて、少し期待してしまう自分がいて、……そんなわけない、と否定する自分もいて。


でもやっぱり、嬉しくて。


色々な感情が限界を振り切って、泣きそうになりながら、笑った。

あたたかい何かが、胸の奥から込み上げてくる。






「……好きだよ」





自分でも不思議なくらい、するりと言葉が出てきた。




「……冗談は―――」




「言っとくけど本気だから」




ジルを遮り、静かに言の葉を紡いでいく。




「好き」




「……………」




「世界で一番、貴方が好きだっていう自信がある」




「待っ………今待って」




ユーリエは、光に透ける羽根のように、優しく微笑んだ。




「初めて逢ったあの日から、貴方だけがずっと好きだよ」




「待てって……頼むから」




顔を隠すように額に右手をやり、俯くジル。
くしゃり、と長めの髪を掻き上げる。

その耳が赤い。



……そんな些細なことさえも、愛おしくてたまらなくなる。



顔を覗き込もうと近付くと、左手で止められた。



「見んな。……オレ今、すげぇカッコ悪ィから」



「そんなのいつものことじゃない」



目が合った。
何か言い返そうと口を開いていたジルが、慌てて顔を逸らす。

やっぱり、真っ赤。



「……ったく……ほんとおかしい、オレ」



熱に浮かされたように声を僅かに震わせながら、苦しげにジルがぼやく。



「……すげえ…頭ン中、熱い」



「……こっちの台詞よ」



ユーリエは小さくそう呟くと、


横を向いたジルにそっと顔を近づけて。





―――その頬に、軽く唇を押し付けた。





「……………ひゃぁえ!?」



「何そのやたら可愛い悲鳴」



ユーリエが触れた箇所を手で押さえ、見ているこっちが面白くなるくらい赤くなって、ずざざっと壁際に後退するジル。



「な、なん、おま、……い、いきなり……ッ」



「んー……練習、みたいな?」



悪戯な猫みたいに、ふふっと笑う。


……耳の形が自分でも分かるくらい、熱くなってるけど。



―――今日くらいは、強がってみても、良いわよね。




「……本番は、ジルからしてね?」




口元に笑みを浮かべて、上目遣いに見上げると。



「な、あ、………ンなの無理に決まッ」



「あ。今想像した?」



「ハァ!?しっ……こ、こっち見んな馬鹿!」



「やだ。照れるジルなんて滅多に見れないし」



「ぎゃぁああ―――!?」



ジルは毛布を引っ被ってこちらに背を向ける。



「出てけ!お前もう出てけ!」



「呼びつけたのは貴方でしょうに」



ユーリエは立ち上がり、



「……ね、ジル」




―――私のこと、好き?




毛布がもぞもぞと動く。



しばらくして。




「…………多分」




くぐもった小さな声が、聞こえてきて。


ユーリエは頬を染めて、微笑んだ。

595月波煌夜:2012/08/21(火) 16:37:50 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>ねここさん


これで一応終わりです(^_^;)

…大変申し訳御座いませんでした!
すみませんこれで勘弁してくださいお願いしますっ(T^T)


ジルを格好良いと言って戴けて、実はちょっと嬉しい月波でした←

596ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/08/21(火) 16:46:40 HOST:EM117-55-68-148.emobile.ad.jp

うわああああもう本当神ですねヤバいジルかっこかわいいユーリエかわいいいい(ryry
いや読む前からニヤニヤしちゃうとは思ってたけど想像以上に良すぎて見たあともずっとによによしちゃいました←
ねここみたいなゴミ野郎のリクエストにこたえてくれて本当にありがとうございます!
もうテンションあがりすぎてやばいですw
何度も言っちゃいますが本当にありがとうございました!

597ピーチ:2012/08/21(火) 17:45:34 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やばい神様ー!!

あ、あのジルがんな素直に…!?

あのー、これはくっついたと見なして宜しいでしょうか?←

598月波煌夜:2012/08/21(火) 18:02:06 HOST:proxyag020.docomo.ne.jp
神=読者の皆様((キリッ



>>ねここさん

こちらこそとても素敵な案をありがとうございました!
月波には純愛ものは一生無理だという良い教訓になりました\(^o^)/
そういうのはねここさんにお任せします(ぇ
また何か、リクエストあったら是非ともお願いします!



>>ピーチ

このアホにどうやって、自然に自覚させてかつ素直にさせるかすごい悩んだ←
くっついたと見なしてください!
ジルがジルなんで!
あの鈍感男がここまで漕ぎ着けたからそれで許してっ<(_ _)>




そろそろ、あと一個の特別編と、それから番外編の最終回に取り掛かろうと思いますが、他にも短編のリクエストがありましたらどんどんお願いします(≧∀≦)

599ピーチ:2012/08/21(火) 19:21:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

…アホ?ジルが?←確かに多少アホ要素は混じってるけど…(酷w

りょーかーいっ!やっとくっついたよこの二人!

リクエストいーですかー!

メイン四人プラスユーリエちゃん、ジル、ルイーズ王女、クロードの八人の肝試しとか見てみたいw

…無理だったらスルー頼んます。

600月波煌夜:2012/08/21(火) 20:06:06 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp
>>ピーチ

肝試し、新作というかなんというかの学園もので書きたかったんだよね←

あ、コラボの方でやってもいい?
天音ちゃんたち皆頼りがいありそうだしw



なにげに600超えましたいえーい!
記念SSは間に合ってるんでやめときますが←
皆さんご協力(?)とご愛読、本当にありがとうございます!

601ピーチ:2012/08/21(火) 20:29:58 HOST:nptka102.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

え、いいの!?

ありがとうございますー!

…あいつらは頼りがいないとこの仕事やっていけないからネw

602月波煌夜:2012/08/22(水) 18:09:25 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>ピーチ

うん、上手くできるか分かんないけど←
肝試しってグループとかペア分けした方が良いのか?w




次からは、レオン殿下の「悩める王子と銀の妖精」に入ります!
これは前からしつこくうだうだと言ってるとおり、とっても大事なエピソードになります(・∀・)
むしろ本編に入れろよというレベル。
これを読んだ後に、本編や、ピーチリクのユーリエとソフィアの話などを読んで戴くとまた違う感触が得られるかも?\(^o^)/

ではでは(^-^)/~~

603ピーチ:2012/08/22(水) 18:39:52 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

やほーい☆w

うーん、三人のみの時は基本的に天音、柊一・昇って感じw

基本的に天音は一人で居たがるタイプ

だから多分、天音はソフィア様組のどっかに入ると思うw

604月波煌夜:2012/08/23(木) 13:56:29 HOST:proxy10086.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 1』





「………………」



レオンは辟易として、目の前にどっさりと積み上げられた書類、そして肖像画を見た。



「何の嫌がらせだこれは……」



ただの政務に関する仕事なら、さほど嫌ではなかったのだが。

彼は優秀な王子だ。
緻密な計画力と実行力を持ち合わせ、税金の管理や式典の計画、指示、それから法の整備もお手のもの。
語学や音楽も堪能だし、武力にも優れている。
何処かの変態息子とはまた方向が違うものの、すべての人を惹きつける力にも恵まれている。


赤味が混じった豊かな金の髪に、鮮やかな碧の瞳。
窓越しに差す光を浴びたその横顔は、薔薇というよりも向日葵―――いや、その向日葵が振り仰ぐ太陽のように眩しく輝いている。
彫りの深い端正な顔立ちの彼は、相当の美形でもあった。


だが、その全てにおいて完璧で、常に余裕の態度を崩さないレオンを持ってしても、



「はあ……」



この状況に溜息をつかずにはいられなかった。


仕方なしに、一枚の名簿に目を落とす。


公爵家や侯爵家の令嬢やら未亡人やら、果てには他の国の王女や著名な貴族女性の名前がずらりと並ぶそれを見るだけで目眩がして、レオンは額に手を当てる。
肖像画の方も、実物よりも誇張しているのだろう、麗しい姫君の姿ばかりだ。……見たままを正直に描いたなら画家の首が飛ぶのは明白である。


……頭が痛くなるこれらは、現国王の正妃にしてレオンの実母、ファウスリーゼが寄越したものだった。
この量でも、ファウスリーゼが厳選に厳選を重ねて、申し込みの手紙から選び出したものだというのだから信じられない。信じたくもない。



―――王太子レオンハルトの結婚相手。



レオンは、すでに愛人どころか妃を娶っていても何の不思議もない年頃だ。
さらに、同じような好条件を持つシュオンが婚約を大々的に発表した今、レオンの下には今までよりもさらに、結婚の申し込みが殺到するようになってしまった。


「…………はあ」


また溜息をつく。



古い慣習に縛られた、愛情もない形式的な結婚なんて正直したくない。

レオンは革新的な青年だった。

だからこそ、王女である妹のルイーズと、それなりに地位はあるが元々は没落した貴族の出身であるクロードの仲を応援できるし、シュオンとソフィアのことも心から祝福できる。
身分の差なんて、本当につまらないしくだらない問題だと思う。
それが分からずにお高く留まっている貴族がほとんどというのが、残念ながらこの国の現状だけれど。

605ピーチ:2012/08/23(木) 14:04:03 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……レオン殿下…間違っても倒れないで下さいねー?

…画家の首が飛ぶって、ある意味凄いよネ…w

606月波煌夜:2012/08/23(木) 20:18:29 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 2』





「―――レオンハルト殿下」


「クラウスか。どうした」


亜麻色の髪に淡褐色(ヘーゼル)の双眸を持つ騎士が、浮かない顔でノックをして部屋に入ってきた。

彼は《イルファーレ》の騎士団長を務めるクラウス。
柔らかな物腰や明るい笑顔、人懐こい性格と確かな力量から、若いながらも多くの騎士に慕われている青年だ。


「殿下。平民と思(おぼ)しき三人が殿下に謁見を賜りたいとしきりに申しておりまして……。今侍従が追い返そうとしているのですが、如何致しましょう」


……平民?


レオンはふむ、と眉を寄せる。
普通の王族ならば、ふざけるなと一蹴するのだろうが生憎レオンは違う。

民の意見を聞き入れるのめ支配者の務め。
何か特別な事情があるのかもしれないし、話くらいは聞いてやっても良いかもしれない。
クラウスもレオンの性格を熟知しているからこそ、わざわざ知らせに来たのだろう。


「謁見の間に行くのも面倒だな……。構わん、此処に通せ」


「畏まりました」


クラウスが一礼して退室する。

レオンは侍女に、部屋を軽く片付けるよう言いつけた。





*・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・**・゚゚・*:.。..。.:*・゚゚・*





「客人をお連れしました」


クラウスが扉を開け、背後の人物たちに入るよう促した。


「王太子殿下!急なお願いをして申し訳御座いません……!」


レオンは人好きのする笑顔を一瞬で装備し、神でも目にしたように頭を床に擦り付けんばかりに萎縮してしまっている、質素な身なりの男女に声を掛ける。



「はは、そう固くならなくて良いぞ。私がレオンハルト=フェリ=ユリア=ローエンシュタインだ。初めて目に掛かるな。どうした、一体何が―――」



そう言いかけて、遅れて入ってきた女を目にした途端。

、レオンは言葉、いや、呼吸を止めた。



妖精がいた。



肩まで届く、冴えた月明かりのような銀細工の髪。
限りなく淡い碧―――水色の瞳に白磁の肌。
氷のように冷たく、清らかな高潔たる美貌。



「………………」



何故王宮に妖精が?とレオンは真面目に考える。


妖精はちらりと熟年の男女を一瞥すると、



「ちょっと何やってるの?父さん、母さん。いつまでもそんな調子だったら日が暮れるわ。王太子殿下にお話をするんでしょう?」



なかなかキツいことを言う妖精だった。


彼女が短めの髪を揺らしてレオンを振り向く。
呆けたように見惚れていたレオンは慌てて、こほんと咳払いをした。



「御前で大変失礼致しました、殿下。お目に掛かることができて嬉しく思います」



妖精はまるで似合わない地味なドレスの裾を摘み、完璧な仕草で膝を折って女性の最高礼を取る。



「―――この様な粗末な格好で御前に出ることをお許し下さい。……私たちは陛下から伯爵家の称号を戴いておりますミルフルール家の者です。この度は、差しがましくも殿下にお聞きしたいことがあって参りました」

607月波煌夜:2012/08/23(木) 20:19:24 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ

大丈夫!レオンは強い子!

画家は雇われてるだけだからね←

608ピーチ:2012/08/23(木) 21:21:28 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

え…うん、まぁ、レオン殿下は強い子に見えるけど…

よ、妖精ってソフィア様みたい…←銀細工の髪がw

609月波煌夜:2012/08/23(木) 22:03:36 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 3』





ミルフルール伯爵家か、とレオンは顎に指を当てた。

辺境に大きな屋敷を構える由緒正しい家柄だが、先代の伯爵の遊び癖と散財ぶりはそれはそれは有名で、当主が代わっても社交界に出ることはおろか日々の暮らしにも困っている状況だと聞いたことがある。

つまり、やや威厳が足りないように思えるが、目の前の中年の男が現伯爵、隣の女が伯爵夫人だということだろう。


「なるほど。貴女の名を教えてもらえるかな、美しいレディ」


「イルゼと申します」


物怖じせずにはっきりと答える妖精―――イルゼを、両親ははらはらと見守っている。
良く見れば、受ける印象は全く異なるものの、三人は銀髪や水色の瞳、気品のある顔立ちがそっくりだ。



―――それにしても。



レオンは腕を組む。



―――この三人、私が知っている誰かに似ているような気がするのだが……。



「……イルゼ嬢、ミルフルール伯爵夫妻よ。それで、この私に何の用かな」



生活を助けてほしい、ということか。
いや、この見るからにプライドが高そうな娘がそんなことを了承するとも思えない。


イルゼは一瞬銀の睫を伏せ、
それから背筋を伸ばして、真っ直ぐレオンを見つめた。




「―――行方不明になっている妹の居場所を、教えて戴きたいのです」




「……妹?」


「はい」


「その妹君の居場所を、私が知っていると?」


「おそらくは。……少し長くなりますが、聞いて戴けますでしょうか」


イルゼが目配せをすると、気の弱そうな伯爵が躊躇しながら。


「重ね重ね申し訳御座いません、殿下。どうか、できる限りこのお部屋の人数を減らして戴けませんでしょうか」


「それは……どうしてだ?」


「事情がありまして……。この話は、あまり多くの方に聞いて戴きたくないのです」


怯えたような表情の伯爵。
レオンはふむ、と頷いた。


「分かった。クラウスを除いて、皆表に出ていろ」


使用人たちが出て行くのを何度も頭を下げて見届け、伯爵はようやくのことで口を開いた。



「……もう十五年以上前の出来事です。妻が二人目の娘を出産しました。イルゼに似た、利発そうで親の贔屓目を抜いても、とても可愛い子でした」


「………………」


レオンは黙って瞼を閉じた。

今にも泣き出しそうに端正な顔を歪ませた夫人が続きを引き取る。


「……ところが、ある日。屋敷に強盗が押し入って……。生まれたばかりのその子を、何処かへ連れ去ってしまったのです。誰にも言うな、言ったなら私たちの命はない、と」



「絶対にあの男の仕業です……!遊ぶお金がなくなったから、あの子を人買いに売ったんだわ!」



「イルゼ!やめなさい!」



イルゼは悔しそうに俯き、言葉を絞り出す。



「……だって、あの子にはそれだけの価値があったもの……!」



それを聞いて。
レオンは静かな確信と共に、そっと微笑みを浮かべた。




「―――その妹君の名前は、ソフィア嬢……ではないか」




ソフィア。



その名前が空気を震わせると同時、
耐えきれなくなったように、夫人が顔に手を当ててわっと泣き崩れた。

610月波煌夜:2012/08/23(木) 22:04:41 HOST:proxy10074.docomo.ne.jp
>>ピーチ


……………(・∀・)キヅカレタ!

611ピーチ:2012/08/24(金) 07:24:54 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

……………やっばりカ!

…ソフィア様ってお姉さま居たんだネ…

え、え、あのご両親はともかく、お姉さまは絶対に認めなさそう←婚約

612月波煌夜:2012/08/24(金) 14:45:36 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ソフィアがなんで気づいたらいろんな屋敷点々としてたのかなーってとこ書きたかったのよね←

お姉さんのイルゼなんだけど、一番最初の案だと、《紫水晶》の双子として本編に登場するはずだったんだよー\(^o^)/
《紫水晶》は百年に一度生まれるって設定だから双子ならいけるんじゃね?っていう。
面倒だからやめたけど☆
女の子にしては髪が短めなのはずっと考えてたんだけどね!


ソフィアのフルネームはソフィア・ミルフルールでした。
みるふるーるって可愛くない?←
一応伯爵家の娘だったらシュオンとヒースの中間くらいだから丁度良いはず!


イルゼは気が強いけど、理解がある子だから大丈夫だよー(`・ω・´)

613ピーチ:2012/08/24(金) 15:44:04 HOST:nptka303.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

…あのー?面倒を理由に出さないのは、よかったのか?

大丈夫?理解ある子?

614月波煌夜:2012/08/24(金) 16:30:26 HOST:proxy10052.docomo.ne.jp
>>ピーチ


メイン4人で精一杯だったから、そんな重要人物投入しちゃったら大変なことになってただろうし(^_^;)


月波のキャラって時点で良い人確定だから大丈夫!
ほんとに悪い人って丁寧に書けない…

615彗斗:2012/08/24(金) 17:17:27 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
ま…まさかのソフィア様の御姉様…!! Σ(0_0;)

お姉さんが…まさかお姉さんが居たとは…正直驚きました…しかも出身が没落した貴族の出とは…本当に今とは考えられない…ここから行方不明になってシュオンと出逢って幸せになったんだね。

最初から見てると…ソフィア様って本当に苦労人なんだ…あ〜何かもう泣きたい…(半泣)

616ピーチ:2012/08/24(金) 17:36:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うん、確かにつっきーキャラってだけで安心だ!←

あたしは次の小説の主人公を悪い人を丁寧に書こうカト思ってマスw

617月波煌夜:2012/08/24(金) 18:21:46 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 4』





「ソフィア嬢なら私の知り合いだ。エインズワーズ家の跡取り息子と元気にやっているよ」



良かった、良かったと嗚咽を漏らしてハンカチを濡らす夫人と、それを、涙を耐えるように唇を噛み締めながら支える伯爵。

イルゼも、安心しきったように瞼を閉じた。
頬に一筋の涙が伝う。



「やはりそうでしたか……。噂で、《紫水晶》の少女とその方が婚約したという話を聞きまして……。もしかして、って居ても立ってもいられなくなって、父と母を急かして此処まで来たんです。エインズワーズのお屋敷の場所は分からないけれど、王城に行けば何か分かるかもしれないと思って」



「……貴女は美しいだけでなく賢明で、行動力もある女性なのだな」



愛娘を手放し、他人に訴えることもできず苦しい毎日を哀しみ暮らしていた夫婦。
先代の伯爵が亡くなり、そしてシュオンの婚約が発表されたのを契機に、イルゼは動いた。
怯える両親を説得し、門前払いを食らうかもしれないのに王城にまで出向いて。


「そんなことはありません。私がこうやって行動を起こせたのも、王太子殿下はどんな民の声でも聞き入れて下さる、とてもお優しい方だという評判を聞いていたからです。……お会いできて、本当に良かった」


イルゼは眦に涙を溜めたまま、レオンに微笑みかける。


―――じわ、と頬が熱くなった。


レオンはそれを誤魔化すように早口で言う。


「……それで、貴方たちはソフィア嬢を取り返したい、と?」


「まさか。あの子が見つけたしあわせですもの。私たちの出る幕はありません」


イルゼはきっぱりと言い切った。


「ただ、無事が分かった今は、妹……ソフィアに一目会いたい。それだけです」


「そうか」


気の強さが伺える物言いと、可憐な見た目や心の優しさ、純粋さがアンバランスで微笑ましい。


レオンは知らずのうちに口元を緩める。


「今すぐエインズワーズの屋敷への案内人と馬車を用意しても構わないのだが……。長旅で疲れただろう、当城で休んで行くと良い。エインズワーズに使いを出して明日にでもソフィア嬢を呼び寄せよう。……もれなく過保護な虫がくっついて来るがな」


「そんな、殿下!貴重なお時間を取って戴いて、これ以上お世話になる訳には……」


「父さん、折角のご申し出を断る方が殿下に失礼よ」


ぴしゃりと言い、イルゼは再び深々と頭を下げた。


「本当に、何と言って良いのか……。恩に着ます。このお礼はいつか必ず」


「なに、礼などいらないよ。貴女の助けとなれるのなら何だってしよう」


「殿下は冗談がお上手なのですね」


ふふっと笑うイルゼ。

……さらりとかわされたレオンとしては、あながち冗談という訳でもなかったので曖昧な苦笑いを返した。

618ピーチ:2012/08/24(金) 18:28:40 HOST:nptka107.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

イルゼちゃんって優しいよねー

…レオン殿下って、やっぱ身分の違いのせいかな

619月波煌夜:2012/08/24(金) 18:30:07 HOST:proxy10024.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

貧乏な家に生まれたと思ったら悪い祖父の手引きで誘拐されて、家族の記憶もないまま侮蔑と好奇の視線に囲まれて育った所為で、ユーリエに慰められつつも小さいシュオンと出逢った後くらいから心閉ざしちゃって、貴族のお屋敷を回った挙げ句やっとのことでエインズワーズに到着、と。
可哀想な境遇のソフィアでした(´・ω・`)
でもそういう子が思いっきり幸せになってくれたら良いですよね!



>>ピーチ

安心設計☆((違う

悪い主人公ってのも良いと思います!

620ピーチ:2012/08/24(金) 18:39:02 HOST:nptka301.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

安全設計w

…その主人公が、ジルとそっくりなんだけど、いーでしょうかー?

621月波煌夜:2012/08/24(金) 21:38:43 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>ピーチ


イルゼは良い子ですよ(≧∀≦)


え、ジルに?
あの剣バカにそっくりって…大丈夫?
いや全然構わないけど(*^-^)

622彗斗:2012/08/24(金) 23:01:01 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
確かに! それは言えてますね!!
ソフィア様がシュオンの力で幸せになってくれたら良いですけど…私の春は……来るどころか見当たりもしないです(泣)

623ピーチ:2012/08/24(金) 23:08:09 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

イルゼちゃあぁぁぁぁん!!!←退き

ありがとーうっ!!ほんとにほんとにありがとぉー!!

や、似てるって言っても口調とか性格がね?ちょーっと問題アリなわけでして…

624月波煌夜:2012/08/25(土) 11:08:30 HOST:proxyag100.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 5』





「殿下はお若いのに、本当に立派な方でいらっしゃるのねぇ。手筈を整えて下さった上にこんなに立派なお部屋や着替えまで……。いくら感謝してもしきれないわ」


きちんとしたロイヤルブルーのドレスに着替え、メイドたちによってメイクを施された伯爵夫人―――コーネリアは、見違えたように若返っていた。
イルゼのような目を見張るタイプの美人ではないものの、顔立ちは極めて整っていて、微笑みの形に刻まれた皺さえも品が良い。


「ああ。……ソフィアに……明日、会えるのか」


未だに信じられないような声音で呟く伯爵アルフレッド。
僅かに白が混じる銀髪を丁寧に梳いた彼は背格好も良く、紳士然とした雰囲気を振りまいているが、残念ながらおどおどとした態度がそれを相殺してしまっている。


「え、ええ……ど、どうしましょうアルフ、私何て挨拶したら良いのかしら。まず母親だって信じて貰えるかも怪しいし」


「そ、そうか、そういう心配もあったか……!」


「二人とも五月蝿い。黙ってて」


イルゼの冷たい流し目に、二人はびくっと身体を震わせた。


「でも、ソフィアに十六年ぶりに会えるのよ?緊張するのは当然だし」


「こっちが緊張してどうするのよ情けない。父さんも母さんも堂々としてれば良いから」


口調は相変わらずつれないが、さり気なく遠回りな励ましの言葉を掛けているのがイルゼらしい。

娘の性格を熟知しているアルフレッドとコーネリアは、静かにそっと微笑み合う。


「ところでイルゼ、貴女はさっきから何を?」


「決まってるじゃない。市で売るショールを編んでるのよ」


イルゼは指先の動きを止めずに言う。


「家庭教師(ガヴァネス)の仕事はしばらくお休みなんだから、こういうちまちましたので稼ぐしかないのよ。丁寧にさえやれば結構な値が付くわ」


「こんな時まで……。いつも悪いな、イルゼ」


「別に良いのよ。私ってそこそこ器用だし。教えたり働いたりするのって結構好きだから」


自分たちより断然しっかり者の長女に、両親は頭が上がらない。


「イルゼも良い年頃なのにねえ……。折角綺麗なのに、浮いた話もないし」


「何言ってるの?こんな状態で家を捨ててお嫁になんて行ける訳ないわ。父さんと母さんだけだったら絶対そのうち野垂れ死ぬわよ」


イルゼは自嘲の笑みを浮かべる。



「持参金がない上に実家が借金抱えた花嫁なんて、よっぽどの物好きでなければ歓迎される訳ないもの。……だから、何も知らないソフィアがしあわせになってくれて本当に良かったと思ってる。私はそれで十分」



「……そのことだけど、イルゼ」


コーネリアは彼女の顔色を伺うように。


「何よ」


妻の後を引き取り、アルフレッドはそろそろと口を開いた。



「……王太子殿下、お前のことをとても熱心に眺めておられなかったか」



イルゼは手を止め、父親と母親を睨む。


「何が言いたいの」


「え、ええと、いえ、もしかしたらその、……やっぱり何でもないから!気にしないで」


「なら言わないでよ」



父さんも母さんも何を考えているんだか、とイルゼは思う。


―――たかだか一回会っただけの貧相な小娘に、王子様ともあろう方が血迷う訳がないじゃない。


無意識のうちに脳裏にレオンの姿を思い描いていたイルゼはハッとして、火照る頬をぱんぱんと両手で叩き縫い物を再開する。


「ほら、父さんも母さんも余計なこと考えてないで、暇ならソフィアに会ったときのシュミレーションでもしてなさい」

625ピーチ:2012/08/25(土) 12:12:39 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

うわやべぇ、ソフィア様とはまた違うけどやっぱり優しい!!

でもさー、ソフィア様って何で自分の名前知ってたの?

連れてかれたのって赤ちゃんの頃でしょ?

まさかの記憶があったとか?

626月波煌夜:2012/08/25(土) 12:24:47 HOST:proxy10019.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

シュオンのことですから命を掛けてでもしあわせにしますとも!
月波の春も見当たるどころかその気配すら全くないです☆



>>ピーチ

イルゼは優しいんだよ!良いお姉さんだよ!

そう、そこに気がつくとはさすがピーチ、目ざとい!
ソフィアはイルゼの指摘通り、遊び人でどうしようもなかった祖父の手引きによって誘拐されたんで。
祖父はさすがにソフィアの名前知ってたから、貴族に受け渡すっつーか売り渡すときに、一応忘れずに伝えたんだと思うw
この死んだじーさん伯爵の所為でイルゼとかお父様お母様は今も苦労してるんですよ。困ったものです!

627ピーチ:2012/08/25(土) 13:20:14 HOST:nptka305.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

えぇぇぇ!?

まさかの身内に売られた!?

…最悪だな。ソフィア様のじぃさんw

628月波煌夜:2012/08/25(土) 15:20:29 HOST:proxyag095.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 6』





「ソフィアには家の事情は一切伏せておくこと。良いわね?」


迎えた当日、ソファの隣でカチコチに緊張している両親に、イルゼは囁いた。


「え、どうして?」


「あの子が気に病まないようにする為よ。だからこそ殿下の御厚意に甘えて綺麗な服装をさせて貰ってる訳だし」


実際、王宮に入るときは見窄らしい格好から平民だと勘違いされた。
幸い、今の自分たちは何処からどう見ても、実際の身分に相応しい紳士と貴婦人だ。
だというのに、苦しい家庭事情が露呈したら、やっと自分自身でしあわせを掴んだソフィアに心配させ、さらには迷惑を掛けることになる。


「あの子は何も知らない方が良い……。そうでしょう?」


娘の言葉に、納得した夫妻はこくりと頷いた。



「―――失礼」



ドアが開けられ、レオンが顔を出す。
慌てて立ち上がったアルフレッドとコーネリア、それから相手をしっかりと確認してから席を立つイルゼを見て、レオンは燦々と輝く太陽のようににっこりと微笑んだ。


「今、城門にエインズワーズの紋章の馬車が入ってきたのが見えたから知らせに来たのだが。心の準備はできたか?」


「ほほほ本当ですか!わざわざ申し訳御座いません!」


「父さん落ち着いて」


がくがくと膝が笑っている父を見て、イルゼが嘆息する。


「有難う御座います、殿下」


「あのう……。一つお聞きしたいことが……」


遠慮がちにコーネリアが申し出る。


「何だ?」



「ええと、……ソフィアは、どのような子に育っているのでしょうか」



それはイルゼも気になっていた。
何しろ、生まれたばかりだったソフィアとはもう十六年近く顔を合わせていないのだ。
ぼんやりとした記憶を辿ってみても、あんなに小さかった彼女がどう成長したのかは、全く想像できない。



「そうだな……。私の私見になってしまうが」



と、そこでレオンはイルゼの顔を見た。


美しく澄んだ深いブルーの双眸に見つめられて、心臓がどくんと跳ねる。



「容姿で言うならば、イルゼ嬢に最も近いな。勿論、瞳の色は違うが……。綺麗な銀髪で、そう、まるで御伽噺から出て来た妖精のように愛らしく可憐だ。初めて逢ったときは、まさかこんなに美しい女性がいるとはと見惚れてしまったよ」



「まあ。やっぱり、あの子はイルゼに似ると思ったのよ」


嬉しそうに声を弾ませるコーネリアに、ええとか何とか曖昧な返事を返しながら、イルゼは顔を隠す為にサッと俯く。

……それはそのまま、イルゼに対してのレオンの評価と受け取って良いのだろうか。



「性格は……そうだな」



レオンはイルゼの苦悩もつゆ知らず、腕を組んで考え込む。
それから爽やかに笑い、



「私は、貴方たち三人のそれぞれに良く似ていると思う。内気で心優しく、人を思いやることができて、しかし芯は驚く程強い娘。……真実は貴方がた自身で確かめると良い」



レオンが言い切ったと同時。



「―――失礼致します。シュオン様とソフィア様をお連れしました」



侍従が、扉を厳かに開けた。

629ピーチ:2012/08/25(土) 15:43:31 HOST:nptka101.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

イルゼちゃーん!!

やっぱりお優しいおねーさまだねー!

イルゼちゃん大好きー!

いやもちろん、ソフィア様のご両親もいい人だと思うよ!

630月波煌夜:2012/08/25(土) 16:07:14 HOST:proxyag001.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 7』





さすがのイルゼもごくりと喉を鳴らし、入ってきた人物を注視した。


蜂蜜のように甘やかな金髪に、サファイアの瞳。
少女の理想をそのまま具現化したような、完璧に整った目鼻立ちに優しい笑顔。

一瞬、レオンより少し下の王子であったら第二王子だろうか、と考えてしまったが。


―――この人が……。


『あの』エインズワーズ公爵家のシュオン。
じきにソフィアの夫となる男だ。



「ソフィア。僕がついてるから。大丈夫だから、ね?」



困ったように笑い、シュオンは縮こまってぎゅっと彼の袖を握り締める少女を振り返る。


アルフレッドが身を乗り出した。
コーネリアは口元を押さえて、淡い空色の双眸に涙を滲ませる。



きらきらと輝く銀の髪を背に流した小柄な少女。
透き通る肌、繊細な硝子細工のように華奢な体躯。

―――淡い紫の瞳。



ソフィア。



「遠路遥々ようこそ。シュオン、ソフィア嬢」



気を遣ったレオンが微笑み、この場を取り仕切る。



「さて、ソフィア嬢。事前に知らせた通り、こちらの方々が貴女の実の御両親と姉君だよ」



両親に目で合図をして、イルゼはびくりと身体を震わせたソフィアに近づいていく。


シュオンがそっとソフィアの背中を押した。



「―――ソフィア」



イルゼは妹の手を取り、微笑んだ。



「貴女、が……私の、お姉様……?」



「そうよ」



安心させるように、小さな手を優しく握る。


ソフィアは紫の瞳を揺らし、イルゼの背後に立つ二人を見上げた。



「……お父、様?」



アルフレッドが唇を引き結んで力強く頷く。



「……お母……様」



ぼろぼろと涙を零してハンカチーフを濡らしながら、コーネリアも何度も頷いた。



ソフィアの喉から、ひっ、という小さな嗚咽が響く。



「会いたかった……っ」



今にも崩折れそうになる身体を、イルゼは頬を伝う熱い涙を感じながらも抱き締める。



「ずっと、ずっと会いたかった……!」



少し離れてシュオンとレオンが微笑んで見守る中。



実に十六年の時を経て。


―――少女は、家族との再会を果たした。

631月波煌夜:2012/08/25(土) 16:09:09 HOST:proxyag002.docomo.ne.jp
>>ピーチ


ありがとう!
イルゼは月波も特に気に入ってるよー!

両親も娘に押されがちだけど良い人たちだよー!


ソフィアを家族に会わせてあげたいってずっと思ってたから嬉しいです(`・ω・´)

632ピーチ:2012/08/25(土) 16:16:57 HOST:nptka404.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

うわやべぇ、つっきーちょー天才!!

十六年…めっちゃ長い時間だよね…

再開、おめでとうございます!!

633月波煌夜:2012/08/25(土) 21:08:17 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 8』





四人は色々なことを話した。


レオンが、ソフィアを心配するシュオンを半ば無理矢理連れ去って退室してしまったので、家族だけでテーブルを囲む。


物心がついたときからしあわせを呼ぶ贈り物《紫水晶》として多くの屋敷を点々とし、沢山の心ない言葉を浴びせかけられてつらい毎日を過ごしたこと。
とある舞踏会で出逢ったシュオンと九年後に再会し、今は彼や優しい使用人たちと共に満たされた日々を送っていること。


アルフレッドやコーネリア、イルゼは顔を曇らせたり、時には声を上げて笑ったりと親身に話を聞いてくれた。



「貴女にソフィアって名前を付けたのはイルゼなのよ」



コーネリアはふふっと目元を和ませる。



「まだこーんなに小さかったのにね。自分の名前はきっちりした音だから、柔らかい感じが良いって言って聞かなかったのよ」



「そうそう、イルゼは小さいときからいつもつんとしてた癖に、ソフィアが生まれたときの喜びようは凄かったな。それはもう、ぴょんぴょんそこら中跳ね回って」



「ちょっと父さん!?」



余計なことを、と父親を睨みつけるイルゼ。
彼女の隣で、ソフィアはこらえきれなくなったように笑いを零した。



「……お姉様が?」



「そうよ。『わたし、お姉さんになるのね!』ってにこにこしちゃって」



「元気に育ちますようにって、時間を決めて毎日お祈りしてたもんな」



「いい加減にしてよ二人とも!?」



激昂したイルゼはテーブルをばんばん叩く。


「ソフィアじゃなくて私の話になってるじゃない!」


「私はお姉様のお話の方が楽しいけど」


「そうだろうそうだろう。よしソフィア、実はイルゼはな―――」


「…………父さん?」


冷たく凍った水色の瞳でちらりと見られ、アルフレッドはすごすごと引き下がった。

コーネリアとソフィアは顔を見合わせてくすりと笑う。


「ねえソフィア、それより私はあの……シュオン、様?の話を詳しく聞きたいんだけど」


イルゼはすぐ隣のソフィアにずいっと顔を近づけた。


「え」


「確かに、それは大事よね」


コーネリアとアルフレッドもうんうんと同意。


「ソフィア、お姉様には正直に答えて。凄く評判は良いけど、実際はどんな方なの?私が見た限りでは、ただのお坊ちゃんじゃなくて、なかなかのやり手っぽいかなって思ったけど」


「イルゼは人を見る目がかなり良いからなぁ」


「ええと……。確かにシュオンは、一癖も二癖もあるけど」


ソフィアは、心から嬉しそうに微笑んで。



「とても優しくて……私を凄く大事にしてくれる人よ」



「……それを聞いて安心したわ」


イルゼも笑って言った。



「つらい思いをしてきたからこそ……これからしあわせになるのよ、ソフィア」



「ええ」



両親と姉に、ソフィアはしっかりと頷いてみせた。

634月波煌夜:2012/08/25(土) 21:10:24 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>ピーチ


いや凡才以下です(^_^;)

ありがとう!
あの人見知りのソフィアが大分リラックスできてるし、やっぱり家族は違うんだね(≧∀≦)

635ピーチ:2012/08/26(日) 09:33:40 HOST:nptka402.pcsitebrowser.ne.jp
つっきー〉〉

いやいや!つっきーで凡才以下だったらあたし泣く…

ソフィア様のご家族様ー!!←意味分からんw

636月波煌夜:2012/08/26(日) 19:27:56 HOST:proxy10021.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 9』





「……此処にいたのか」



夜風に短めの銀髪を踊らせるイルゼが振り向いた。


「王太子殿下」


「レオンで良い」


レオンはバルコニーの手すりに掴まる彼女の隣に立ち、微笑みかける。


「……は?」


「レオンと呼んでくれないか」


「え、……レオン、殿下?」


「そう……なのだが」


レオンは口元を緩め、



「……一度だけで良い。敬称を付けずに呼んでみてくれ」



「はい!?無理です、そんな無礼なっ」



「無礼かどうかは私が決めることだよ」



イルゼは王太子の命令に逆らうことはできないと判断したのか、助けを求めるように視線をあちこち彷徨わせた後。



「…………レオン」



耳まで真っ赤になって、レオンの顔を見ないまま消え入るような声で言った。


レオンはそれに満足げな笑みを浮かべる。



「有難う」



意味が分からないという顔のイルゼ。
それはそうだ。
レオンだってどうしてこんなことを言い出してしまったのか、自分でも良く分かっていないのだから。


分かることは、ただ一つ。



「……もう、行ってしまうのか」



ソフィアとの再会を果たしたのだから、彼女たちにはもう、この王宮に用はない。
明日にでも発つつもりなのだろう。



―――それが、イルゼと別れることが、嫌でたまらないということ。



「……はい」



イルゼはこくりと頷く。



「仕事がありますから」



「仕事?」



「……一応、家庭教師(ガヴァネス)を少し。専門は裁縫だけですが」



レオンはぱちくりと碧の双眸を瞬かせた。

それから。



「………はははっ!」



自分がおかしくなって、笑ってしまう。



「全く……。こんなことを思いつくなんて。どうやら私は、貴女を引き留める理由を作るのに必死らしい。困ったものだよ」

637ピーチ:2012/08/26(日) 19:55:27 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

まさかのレオン殿下、イルゼちゃんを引き止めたい派ですかww

まぁ、あのソフィア様の姉君だからねぇww

638月波煌夜:2012/08/26(日) 21:12:34 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp


特別編 『悩める王子と銀の妖精 10』






「……え!?」



驚いたように淡い空色の瞳を見開き、イルゼはかあっと頬を染め、怒ったようにレオンに詰め掛かる。



「ど、どういう意味ですか、それっ」



「どういう意味だろうな。……くくっ」



「笑ってないで答えて下さい!」



イルゼの叱責に、レオンはまた笑って。



「貴女を引き留めるには、具体的にどうするのかって?」



「そっちではなく……あ、いえ、そうですっ」



彼女にしては珍しく、慌てている様子のイルゼ。

レオンは一頻(ひとしき)り笑ってから。



「……私の三番目の妹は裁縫や刺繍の才能が驚異的なまでに皆無でね。ある騎士に世話役や教育係を一任しているのだが、いくらあの万能な男でも無理がある」



そこで一度切り、イルゼの反応を伺う。


イルゼは次の言葉を予想したように、息を呑み込んだ。



「貴女に、妹―――第三王女ルイーズの家庭教師の仕事を依頼したい」



「私に、……王宮仕えをしろということですか」



「そうだ。ルイーズはどうしようもない暴れ馬だが、クロード……奴の騎士にサポートさせるし、それに貴女にならきっと制御できる。働く場所が変わるだけなのだから、負担はないだろう?」



「………………」



王族の家庭教師といえば、名門貴族の出の者ばかり。
ミルフルール家は爵位こそあれ、その現実は没落する寸前。
王宮に勤めるということは、勿論給金も非常に高い位置で安定する。
父母の生活の救済、伯爵家の権威の復興を目指すイルゼにとっては願ってもない話だ。



「無論、休みにはお父上とお母上に会いに帰っても良いし、此処からは近いからソフィア嬢がいるエインズワーズの屋敷に行くこともできる」



「……それは、とても有難いですけど……」



イルゼは疑うように、レオンの顔を見上げた。



「私なんかに……何故、そこまで……」



「貴女を離したくないから」



微笑んで手を伸ばし、レオンはイルゼの滑らかな頬を指先でそっと撫でた。

イルゼはびくんと身体を跳ねさせる。



「それは……どういう、意味ですか」



「知りたい?」



薄い肩に片手を置き、接近してくすりと笑う。

暗がりでも分かるくらい、彼女の白い肌が赤らんでいる。
指先に伝わる熱。



イルゼは視線を逸らし、こくん、と小さく頷いた。


それを見て。



レオンは。




「―――うん。やはりまた今度にしようか」




「…………はああ!?」




人民向けの爽やかな笑みを瞬時に装備、何事もなかったようにイルゼから手を離した。



「こんな早い段階で取って置きの切り札を使うのは面白くない。もっと焦らしてからでないと。……そうだろう、イルゼ?」



茶目っ気たっぷりのウインクをするレオンに、イルゼはぷるぷると震えて。



「こ、……この馬鹿王子ぃ……ッ!」



「おお、その呼び方は新鮮だな。もっと呼んでくれて構わんぞ」



イルゼは涙目で、キッとレオンを睨みつけ。



「タラシ!女の敵!……レオンなんかもう知りませんっ」



お?と思ったのも束の間、イルゼは身を翻すと、つかつかと高いヒールの音を立てて歩き去った。



「ははっ!この私に向かって馬鹿王子ときたか……。ますます惚れそうだな」



バルコニーに残されたレオンは心から楽しそうに笑う。



「さて、未来の妃の機嫌を取りに行きますか」



とある悩みからやっとのことで解放された王太子は、彼の天使―――否、妖精の後ろ姿を追い掛けようと一歩を踏み出した。

639月波煌夜:2012/08/26(日) 21:27:20 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp
>>ピーチ

なんかの本で、王族とは伯爵家以上なら結婚できるって記述があったんでマルグリットでもできるよ!イルゼもソフィアも、苦労した子は報われるんだよっていうシンデレラストーリーみたいだね(`・ω・´)

イルゼの話は、またいつか書きたいかもしれない←




【お知らせ的なもの】

さて、月波の心残りだった「ソフィアと家族の再会」も無事終わりましたので、次からは最終回のシェーラ編、そしてソフィア編になります。

ただ、輪をかけてつまらない話を致しますと月波の学校の課題がぱっぱらぱーなことになっておりまして。
しかもすぐに定期考査が控えておりまして。

そんな訳でして、結構迷ったのですが、時間がない中で焦って適当に完結させてしまうよりは、折角ですからじっくりといきたいので、申し訳ありませんがしばらくの間更新はお休みさせて戴きます。
でも寂しかったらスレには出没するかもしれないので、良かったら構ってやって下さい(・∀・)

番外編が完結したら、ピーチとのコラボに移りたいと思います。ごめんねピーチ!

そうしたら、新作の学園ラブコメ(ラブが存在するかは神のみぞ知る)を始める…かもしれません。
『邪気眼少女の攻略法。(仮)』
↑こんな感じのタイトルを見つけたらよろしくです!
痛い中二病の女の子っていいよね…!
あと多分ハンドルネーム変えると思います。


詳しい予告はまた今度!

640ピーチ:2012/08/27(月) 08:11:11 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

あー!確かにー!!

……何か何気にイルゼちゃんがかわいいw

…………あたしも課題ぱっぱらぱーだw

学校で居残り喰らうww

641彗斗:2012/08/27(月) 14:07:02 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
課題がパッパラパ〜ですか〜私ももうすぐ課題と言う名の殺人狂にに殺されちゃう……ww

それはともかく…イルゼちゃん、流石ソフィア様のお姉さんだからきっと可愛い人なんでしょうね☆

小説にも入れよっと☆

642月波煌夜:2012/08/27(月) 16:24:34 HOST:proxy10039.docomo.ne.jp
ぱっぱらぱーww
…なんかもう物理的に終わる訳ないんだけど頑張りますよ…。
読書感想文とか消えれば良いのに…○| ̄|_



>>ピーチ

イルゼかわいい?(笑)
月波が書く女の子キャラは基本皆シャイになる模様ですw



>>彗斗さん

…刃物を持った殺人鬼に追い掛けられてる気分です(T^T)
イルゼ出して下さいますか!
では説明載っけときます(*^-^)ノ

643ピーチ:2012/08/29(水) 13:41:20 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

イルゼちゃあぁぁん!!!

うん、ソフィア様御一行様大好きー!!

644彗斗:2012/08/29(水) 15:43:10 HOST:opt-183-176-175-56.client.pikara.ne.jp
月波さん>>
あ……ついでに教師という名の鬼もやって来たww

これは…正に八方塞がりww 

確実に殺しに来てる…もうすぐ本当に死んじゃうww

645ピーチ:2012/08/30(木) 22:50:28 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
もしこんな駄文小説を読んでる人が居たらすいませーん!

アイディア綺麗さっぱり消え失せましたー

………いや、何か良く考えたら最初の方の計画しか立ってなくて。

そこで、ほとんどつっきーのまねになるけど、何かリクあったら言ってくださーい

…………今の所、慧斗さんのみが読んでくれてるらしいです。

つっきーもし読んでたら、ほんとごめんまねばっかで!!

646Mako♪:2012/09/03(月) 21:20:26 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
ううっ!

再会のシーン…。泣いちゃいました。(T^T)

ソフィア様、家族に会えて、本当に良かったです!!!!

レオン様、恋しちゃいましたー!
叶うとイーネ☆

647ピーチ:2012/09/04(火) 22:21:30 HOST:i118-18-142-51.s11.a046.ap.plala.or.jp
つっきー>>

ごめんなさいすいませんスレ間違えましたー!?

あれ自分のスレに載せるつもりだったやつです!!

ごめんなさいっ!!

648心愛:2013/03/10(日) 09:10:14 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp



○| ̄|_←土下座のつもり

何ヶ月返事遅れてんだよバカー! このバカーっ!



>>Mako♪さん

本当すみません…。

レオンも恋しちゃいましたね!
イルゼとしあわせになってもらいたいものですw

ありがとうございます! ソフィアの家族はずっと書きたかったので、そう言っていただけるとすごく嬉しいです(*^-^)ノ



>>ピーチ

すみません今の今まで気づかなくてすみませんほんとに…!





さ、さて!
このスレではとてもとてもお久しぶりです、心愛(元月波)ですヽ(≧▽≦)/

紫の歌、本日で一周年記念ということで、短いながらちょっとした話を載せてみようかなと。
リクは、紫の歌を皆さんが忘れ始めた頃合いに…と企んでいたのですが、まだ使う機会がありません。
本当に、本当にありがたいことです。


それでは始めます!

649心愛:2013/03/10(日) 09:11:02 HOST:proxyag090.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 1』






「―――ひとつ、買いましょう」




「……えっ?」




花売りの少女―――アイリーンは、驚いて目の前の人物を見た。



少年だ。


彼女よりも三つは年下だろう、子供っぽさが抜けない目鼻立ちはしかし異様なほど整っていて、彼の貴族的な美貌にアイリーンは思わず見惚れてしまう。


―――……なんて綺麗な子。


深い、深い青の髪に冷ややかな鳶色の双眸。
それに、下町の子供には有り得ない上等なコートを着込み、片眼鏡(モノクル)を光らせながら小さな手を差し出している彼は、



「か、可愛い……」



……カチンッという音が、少年の眉間の辺りから確かに聞こえた。


彼の目つきが一気に蔑みの色を帯びる。



「貴女は数秒前にぼくの言ったことも覚えていられないのですか? 蒙昧(もうまい)で卑しい小娘と無駄話をしている暇はぼくには一秒たりともないのですが」



耳を打つ冷罵に、アイリーンは自分が何を言われているのか分からずにまず唖然として、それから、



「あ、ご、ごめんなさいっ」



慌てて、手に持っていた花束を少年に手渡した。


摘んだ野花を新聞紙にくるまれただけのひどくみすぼらしいそれ。


いくら声を張り上げても、誰にも見向きもされなかった乱雑な花束を、どうしてこの少年は買う価値があると判断してくれたのか。
アイリーンは疑問に思う。



「どうも」



少年はそれだけ言ってコートの裾を翻し、左手で彼女へと『何か』を放った。


アイリーンは慌ててそれを受け止め、手のひらを開く。



「……えっ!?」



ずっしりとした重みに、きらきら金色に光る丸いもの。



金貨。



「ま、……待って!」



それが何なのか理解した瞬間、アイリーンは少年を引き留めるべく叫んだ。



「何です」



「いただけません、こんな大金っ」



少年は心から億劫そうに顔をしかめた。



「ご心配なく。貴女にとっては大金でも、ぼくにとってはそれ一枚如きは無価値も同然ですから」



……物凄い台詞だ。


一瞬納得しかけたが、それでもアイリーンの良心がそれを許さない。


たとえそれが大金持ちの貴族様の気まぐれだったとしても、こんな花数本のブーケが何百、いや何千も買えるだろう金を払ってもらうわけにはいかないのだ。



「そっ……それでも駄目です! こんなのと引き換えにいただけるような金額じゃ、全然ありませんからっ」



「……面倒な小娘ですね」



少年は肩をすくめた。



「ぼくが、それが釣り合う価値がこの花束にあると判断したのです。ぼくの審美眼に何か不満がお有りですか?」



……この少年は頭がおかしいのだろうか。

それとも、あまりに恵まれた生活を送っている所為で、金貨の価値というものを理解していない?



なら身分の差なんか関係ない。年上の者として最低限の常識を教えてやらなければと決心し、アイリーンは拳を握った。



「あるに決まってるじゃない! 大有りよ! 君は何も分かってないからそんなことが言えるんだわ。いい、金貨っていうのはほいほい人にあげて良いようなものじゃなくて……って、え? どうしたの?」



身体をくの字に折り曲げ、くっくっ、と何かをこらえるような声を漏らし始めた少年に、アイリーンはびっくりして駆け寄った。



「だ、大丈夫? お腹痛いの? どうしよう、お医者様に診てもらわないと……。でも私、そんなお金持ってな……あ、そうよ、これを使えば良いじゃない!」




「くっ………っあはははは!」




「へっ?」



突然上がった盛大な笑い声に、アイリーンは目を白黒させた。



「……はっ! もしかして変な毒キノコ食べちゃったとかっ? ええとええと、此処から一番近い病院は、確かカーク―――」



「あははははははははっ!」



「わ、私一人で運べるかな……。でも何事も根性だってママも言ってたわ。……よし、頑張るのよアイリーン!」



「ぷ、ふく、く……っ、……小娘」



「なに? そんなにつらい? ……え、ちょ、ちょっと、駄目だよ無理したら!」



少年はアイリーンの制止も聞かずによろよろと立ち上がり、片眼鏡を掛け直した。

650心愛:2013/03/10(日) 10:50:36 HOST:proxyag054.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 2』





「ふふっ……。このぼくに、こんな物言い……。爵位を継ぐ前から色々な人間を見て来ましたが、こんなに愉快な女に会ったのは初めてですよ……」



「なにか言った?」



「いいえ」



少年は何故か、とても上機嫌な様子で花束を抱え直した。



「残念ですが、ぼくは至って健康です。気遣いは無用ですよ」



「そうなの? 良かった……って良くないよ!」



「はい?」



ぽかんとしてしまう少年。
アイリーンは打って変わって、真剣な顔で言った。



「元気でいるのに、それを残念なんて言っちゃ駄目」



少年は、じっとアイリーンの揺れる瞳を見つめ返す。




「元気になりたくても、なれない人だって……たくさん、いるんだから」




アイリーンの顔に一瞬、暗い影が立ち込める。
沈黙を割り、少年が口を開いた。




「……貴女のご家族のように?」




アイリーンは目を見開く。



「なんで、分かるの」



「あれを見ましたのでね。後はただの推測です」



少年はつい、と少し離れた場所を指差した。

ひとつの、申し訳程度に佇むちっぽけな、まだ真新しい墓石。
その周りには物寂しさを紛らわせるように、小ぶりの野花が一面に咲いていた。
アイリーンが持っているのと、同じ花。


彼女は息を吐いた。



「当たり。ママが眠ってるの」



「いつからです?」



「五日前。……ちゃんとしたお墓も、買ってあげられなかった」



肩を竦め、苦笑する。




「駄目ね。まだ、離れるのが嫌で……唯一の家族、だったから」



「それで、こんな辺鄙な場所で花売りを?」



「そんなとこ」



少年の勘の良さに軽い驚きを覚えながら、アイリーンは頷いた。



「……あはは。お葬式とかの費用で貯金は全部使っちゃったから、ほんとに一文無しなんだ、あたし」



つい、口が滑る。
アイリーンは見知らぬ子供相手に愚痴を零している自分が情けないような気がして、ただその笑みを深くした。



「まだお情けで置いてもらってるけど、家賃も払えてないし。だからこうして、ママの傍で小銭を稼いでるんだ」



はっ、と今まで黙って聞いていた少年が鼻で笑った。




「いい加減強がるのはやめなさい、白々しい」




意味が分からず首を傾げかけた彼女に、少年が続いて冷徹な声を浴びせる。



「貴女、全く吹っ切れていないではないですか」



「……」



再び笑顔を作ろうとして、でも、できなかった。
だらりと腕が下がる。



「娘を縛りつけることで、貴女のお母上が喜ぶとでも?」



何を思ったか、溜め息をついた少年が、突き出た岩にすとんと腰掛けて。
黙って立ち尽くすアイリーンの姿を、やや細めた大きな双眸に映し出し、呟いた。



「……悪くないと思いますよ」



「え?」



反射的に聞き返すと、微かに笑われる。




「夕陽色。……みすぼらしい小娘にしては、悪くない色です」




彼に言われて。
アイリーンは、背中に流れ落ちる、自らの髪を掬い上げた。
赤ともオレンジとも、純粋な金色とも違う、夕映えの雲のように不思議な色。



「そう? あたしは、あんまり好きじゃないんだ」



どうやら話し相手になってくれる気らしい少年に、アイリーンは髪と同色の瞳を静かに向けた。



「ああ、一日が終わっちゃうんだなぁ―――って、虚しくなるから……。太陽が沈むと、なんか変に悲しくなるよ」



「愚かなことで何をうじうじと感傷的になっているのです。沈まない太陽がありますか」



あまりにもあっさりと言われ、拍子抜けしそうになってしまう。



「黄昏の後に、冷たく暗い夜がやってくる。それは、ぼくらがどんなに努力しても、大金を積んでも、どうしようもないことです」



目を丸くしている彼女に、少年は口端を上げて笑んだ。




「―――でも、夜明けのない世界だって、ないでしょう?」

651ピーチ:2013/03/10(日) 17:11:37 HOST:EM49-252-15-7.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ひっさびさのこうしーん!

え、この少年ひょっとしてオスヴァルト少年?←

652心愛:2013/03/10(日) 18:59:01 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp
>>ピーチ

せいかーい!
オスヴァルトだよ!

『お子様伯爵と未来への翼』にちなみまして、その翼の欠片的な羽根をタイトルに使ってみたw

653心愛:2013/03/10(日) 19:02:26 HOST:proxyag118.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 3』





それは酷く、月並みな台詞だった。
当たり前のことだった。



「終わりは始まり、と云う言葉もあります」



なのに、
少年の陳腐な、使い古した言葉に、何処か救われている自分がいる。




「貴女の“それ”は、始まりの色なのですよ」




アイリーンはもう一度、自分の髪を見る。


母が残してくれた色。
終わりじゃなくて、新たな始まりの色。


温かなものが込み上げてきて、唇を噛んだ。



始まり。
……だったら。



「あたしは、どうしたら、いいの……?」



譫言(うわごと)のように、呟く。


どうしたらいい?
夜を乗り越え、再び暁の光を呼び戻すには、どうしたらいい?



「死ぬ気で生きなさい」



冷たいようで、温かい声音。



「今生きていることが一番大切で、それだけが真実です。無様でも、笑われても良い。自分だけのしあわせを探しながら、懸命に生きなさい」



アイリーンは、動揺に揺れる瞳で少年を見た。



「あたしのしあわせって……」



「さあ? 甘えないで自分で考えることですね」



はっ、と笑ってあっさり切り捨ててから。


少年はふと物憂げな表情になり、広がる空を見上げた。




「……そう言うぼくも、以前幸福というものの意味を履き違えて、早とちりをしたことがあるのですが」




年齢に見合わない、哀愁が漂う儚い笑みだった。



「その結果、多くの罪なき人を傷つけました」



良く分からずにきょとんとするアイリーンに、少年はふっと微笑を零して。



「でも……もう、ぼくは奇跡なんて曖昧なものは信じませんし、頼る気もありません」



僅かに首を横に振り、

顔を上げ、きっぱりと言い切る。




「ぼくは何より、自分を信じます。可能性を持つ、自分の未来を」




「みらい……」



未来。
誰にだって、当たり前のように与えられたその存在。


なのに少年が口にしたその言葉は、酷く甘美な響きに思えた。



「そう、未来」



少年のコートが翻る。
風に煽られる濃青の髪を小さな手で抑えながら、



「貴女はこれから、無数の道に出逢うでしょう。でも、覚えておきなさい。正しい選択肢なんて最初からありません」



一言も聞き漏らすまいと、アイリーンは懸命に耳を傾ける。
少年の眼差しが和らいだ。




「―――選んだ後で、それを正しいものにしていけば良いのです」




「……そっか」




過去に縛られたまま悩んでいては、今生きているこの時間を無駄にしてしまう。

間違ってもいい。
必要なのは、前へ進むこと。
どちらが前か分からなくても、がむしゃらに頑張ってみること。


……それしか、ない。



「ふん。まあまあ見られる顔をするようになったではないですか」



くくっと喉の奥で笑う少年。


彼は岩から降りて着地し、花束を抱えてそのまま花畑の方へと歩き出した。



「え、えと……」



ついて来い、ということらしい。
アイリーンは慌てて後を追いかける。


少年は、花畑の中を歩き、墓石の前でぴたりと足を止めた。



「……見せかけが豪華なだけで、中身のない花束より」



灰色の石の前に、花束をそっと横たえる。




「こちらの方が、価値のあるものだと思いませんか?」




少年は慣れた様子で十字を切り、瞼を閉じる。


まだ幼く見える少年にも、花を供える人がいるのだろうか。
容姿がそう思わせるだけで、本当はもう少し年上なのかもしれない。



少年が祈りを終えるのを見てから、アイリーンは口を開いた。





「……君は、どんな道を選んだの?」



話を聞く限り、この少年は、とても重い過去を背負っているようだった。
彼がどうして、再び立ち上がることができたのか。


踵を返し、立ち去ろうとしていた少年は足を止め、しばし考えてから。




「ある人に……いえ、一人ではありませんね。“彼ら”に堂々と顔向けできる自分になるための道、でしょうか」

654心愛:2013/03/10(日) 22:08:31 HOST:proxy10023.docomo.ne.jp


『黄昏の少女と祝福の羽根 4』





決して明るい口調ではなかったけれど、そう答えたときの鳶色の瞳は、晴れやかに澄んでいた。



「……今は、この身体を生かしてくれた“彼女”にも、感謝していますよ」



付け足されたその小さな呟きの意味は、良く分からなかったけれど。
アイリーンは微笑む。



「……色々、ありがと。なんか、元気出たかも」



「言っておきますが、貴女に同情した気は全くありませんよ。今までの無駄話はただの独り言ですので」



「うん」



少年のきつく感じられる言い方がなんだか可愛らしくて、アイリーンはもう一度同じ言葉を繰り返した。



「でも、ありがとう」



「……お人好しも過ぎると危険を招きます。精々気をつけることですね」



少年は一瞥を残してアイリーンに背を向け、今度こそ歩き去った。
アイリーンは彼の後ろ姿が丘の向こうに消えるまで、静かに見送る。



「……そういえば、名前も聞けなかったな」



あれだけ色々話をしたのに、馬鹿みたいだ。

アイリーンはくすくすと笑い、それから、光の所為で赤に色づいた瞳を霞ませる。



「道を探しなさい、か」



気持ちに整理はついた。
でも、これから具体的にどうするべきか分からない。



「自分で、決めなきゃ」



そうしなければ何も始まらない。
これから何処に行ったら良いだろう。
アイリーンが頭の中に地図を思い描いていると、




「お? 嬢ちゃん、こんなとこに用でもあんのか?」



旅人といった風情の男が二人、アイリーンに声を掛けてきた。



「あ……えっと……」



アイリーンは、少年のときのように見ず知らずの他人に身の上話をして良いものか、少し迷う。

しかし男たちは彼女の身なりや困惑した様子を見て、大体の事情を察したようだった。




「嬢ちゃんさ。困ってんなら、あそこ―――カークランドの孤児院に行ってみたらどうだ?」




「孤児院?」



アイリーンは素っ頓狂な声を上げる。



「ああ。此処の領主様が経営してる孤児院でね、つい最近出来たから設備が良いと評判なんだ」



「え、領主様……が、作ったんですか? 孤児院を?」



アイリーンは首を傾げる。
そんな事業、このローエン地方の領主である大富豪、カークランド伯爵の派手なイメージに合わない。



「そそ。代替わりしてからしばらくたつけど、病院作ったり貧しい家に巨額の寄付したりしてさ。良い人だよ」



「オスヴァルト様だろ?
この辺も、たまにお忍びで巡回してるらしいぜ。領地の隅の隅もいいとこなのに、熱心だよな」



「そうだったんですか……」



世間知らずな自分が恥ずかしい。



「それよりあんた、身寄りがねえんだろ。ならちょうどいい!」



男は荷物から紙とペンを取り出し、下手な地図を書いてアイリーンに手渡してくれた。



「連れてってやりたいところだが、俺らが行く方向と逆だからな」



「領主様に逢えるかもしんねえぞ」



「あ……ありがとうございます!」



ぺこぺこと頭を下げ、アイリーンは親切な二人組と別れた。

ふう、と息をつき、握りしめてくしゃくしゃになってしまった地図を見る。



「……行って、みようかな」



思わぬ道標。
よしっ、と一人気合いを入れ、アイリーンは何気なくポケットをまさぐり、



「ああーっ!」



唐突に叫んだ。



「金貨!」



無意識のうちにポケットに入れてしまっていたらしい。
アイリーンはその重みも忘れて少年と別れてしまった自分を呪う。



「うー……今は借りるしかないか……でもでもっ! 次逢ったら、絶対返すんだから!」



いつになるか、分からないけれど。
願い続けていれば、いつか巡り逢えると信じよう。
自分の未来を、信じてみよう。



アイリーンは、笑顔で後ろを振り返った。



「ママ。寂しいけど……いったん、お別れ」



墓石を撫でる。
それから、ゆっくりと手を離した。




「あたし、頑張ってくるから!」




祝福するように、吹き抜けた風が色鮮やかな髪と、野花とを揺らす。
夕焼けの光が、ふわりと舞う羽根の如き優しさで、新たな道を歩き出す少女を柔らかに包み込んでいた。

655たっくん:2013/03/11(月) 10:15:03 HOST:zaq31fa58ac.zaq.ne.jp
たっくん
『貴方のサイフは私のものです。どうか小銭を』

サツ
『たっくん・・あんた>>1さんのサイフを懐に入れた張本人か。
あんたも組織の一員だったのか・・?』

たっくん
『いやいや誤解しないで下さい。私は一般人です。
一般人のまま名無しさんのサイフを欲しています。
言ってみれば私こそ、はじめて名無しさんのサイフを手にした男というわけです。』

サツ『そんな事誇らしげにいうな。』

たっくん
『いやいやそんな・・。何をほざこうが
>>1さんの小銭は私のものですからね。』

小銭下さいね1さん

656ピーチ:2013/03/12(火) 14:59:45 HOST:EM1-114-198-155.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

アイリーンちゃん目が丸くなりそーだねーw←

オスヴァルト様も丸くなったよねー←

657心愛:2013/03/12(火) 18:50:13 HOST:proxy10065.docomo.ne.jp
>>ピーチ

オスヴァルトはもう、ソフィアのこと恨んでないよって台詞も言わせておきたかったのですw


アイリーンとオスヴァルトがばったり逢ったりしたらどんな反応するのか…だいたい予測つきそうな気も←
ひねくれたお子様なオスヴァルトには、天然入ってるけどお姉さんぽいアイリーンとくっついたりしてくれたらいいなぁ。

658ピーチ:2013/03/13(水) 05:05:21 HOST:EM114-51-28-190.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

ばったりって言っていいんだ!? 向かってるんじゃなく!

あー、確かに若干天然入りだよねアイリーンちゃん!←

659心愛:2013/03/13(水) 22:05:38 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
>>ピーチ

一応偶然だからね、逢うの!


オスヴァルトにはこういう真っ直ぐな子が合うと思ってたのよね。
遊ばれつつ喧嘩ふっかけつつ仲良くやってくれるさw

660彗斗:2013/03/14(木) 16:41:09 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

早速来てみました☆

心愛さん>>

正直、最初から読んでまさかのオスヴァルトには驚いた……

あれ? どこかで頭打った? みたいなww

悪役にはとことん悪いイメージを持ってしまう私はオスヴァルトをちょっと見なおしました(笑)

661彗斗:2013/03/14(木) 18:37:04 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

何かややこしい事をしてしまった―!?

すみません入力ミスです……

662名無しさん:2013/03/15(金) 05:36:47 HOST:EM49-252-224-96.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

真っ直ぐ過ぎないですかねぇ……?

まぁ確かに! とか思ったあたしもあたしだけどw←

663心愛:2013/03/16(土) 10:57:44 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>彗斗さん

まさかのオスヴァルトですw
もともと口は悪いけどいい子なんですよ!
お父さん亡くなったり不幸なトラブルが続いて暴走しちゃっただけなんです!

ここあ作品……少なくとも、紫の歌では悪役はいませんよ〜(o^_^o)
これでオスヴァルト少年を少しでも見直していただけたなら幸いですw



>>ピーチ

下町出身でお姉さん気質のアイリーンは、たぶん孤児院の子供たちのリーダー的存在になることでしょうw
見回りに来たオスヴァルトと揉めたりなんだりしながら頑張ってほしいなぁ←
あのオスヴァルトを笑わせられる逸材なんだから、相性は悪くないはず!

664ピーチ:2013/03/16(土) 21:02:35 HOST:EM114-51-179-122.pool.e-mobile.ne.jp
ここにゃん>>

お姉さん気質か! それもうらやましいかも!←

「あの」オスヴァルト少年を笑わせられる……?

で、でもまぁ、根性悪はいないよね! ここにゃんキャラで!

665心愛:2013/03/18(月) 17:17:08 HOST:proxyag096.docomo.ne.jp
>>ピーチ

ここあキャラはいくら腹黒でもなんだかんだで悪い子じゃないからw

今のところは、根性悪さんはいないぜ←

666彗斗:2013/03/18(月) 22:46:03 HOST:opt-115-30-217-109.client.pikara.ne.jp
心愛さん>>

それなら私の作品の方でも、安心してどの人からでも書けるって訳ですね☆
未だ出していないのがティルダのお姉さんとレイさん、あと話にもなっているオスヴァルトもアイリーンちゃんも……

まぁそれはそれとして、心愛さんの方から私の作品にこの子は出して欲しい! 等々があるのなら喜んで引き受けますよ☆

667心愛:2013/03/18(月) 23:11:47 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp
>>彗斗さん


クラウスはティルダのお兄さんですよー(笑)

え、アイリーンも出してくださるんですか!?
それならオスヴァルトとレイさんも、もしやってなかったら三人合わせてキャラ紹介しちゃいましょうか? あれ、二人はやりましたっけ…?←


うーん。
出してほしい子…紫の歌では完璧出尽くしましたね!
ヒースの兄姉はここあもまだ書いてないしなぁ。
ここは思い切ってソラの波紋のミレーユと空牙をお願いして…でも無理があるかなぁ…(´・ω・`)
悩むところですw


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