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紫の乙女と幸福の歌

1月波煌夜:2012/03/10(土) 12:03:26 HOST:proxy10082.docomo.ne.jp
初めまして。
月波煌夜(つきなみ・かぐや)と申します。
小説を書くのは初めてで、とても緊張しています(^-^;
拙くて見るに耐えない文章かもしれませんが、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
感想等戴ければ泣いて喜びます。
ですが、月波は非常に小心者です。一つの批判にもガクブルしてしまうと思われます。
なので、厳しい御言葉はできるだけオブラートに包んで戴けると嬉しいです(>_<)



不定期の更新になると思います。
お話は少女小説風をイメージしています。


†主要な登場人物†

ソフィア―――
しあわせを呼ぶと云われる紫の瞳を持つ少女。

シュオン―――
エインズワーズ公爵息。変わり者だが心優しい青年。

シェーラ―――
ソフィア付きのメイド。

ヒース―――
ソフィアの見張り役の従僕。

2月波煌夜:2012/03/10(土) 17:22:06 HOST:proxy10073.docomo.ne.jp

『―――――――』

豊かな緑に囲まれ、あらゆる資源に恵まれた小さな王国、マルグリット。
この国には、代々語り継がれてきた伝承がある。
王侯貴族から平民まで。
全ての子どもたちは寝物語として聞いて育ち。
ゆくゆくはまた、彼らが自分の子に話して聞かせる、ささやかな伝説。
細部は違えど、筋書きは皆同じ。


“百年に一度生まれてくる紫の瞳を持つ者は、他者に幸福をもたらす”


人々は彼らを、畏怖と憧憬の果てに。美しい宝石の名に因んで、
《紫水晶(アメシスト)》と呼んだ。

3月波煌夜:2012/03/10(土) 17:52:32 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)1』

『それ』は、少女の形をしていた。
簡素な部屋。
飾り気の無い寝台、椅子に箪笥。生活するのに最低限のものしか存在しない、どこかもの寂しい場所だった。
その粗末な部屋の中央付近の椅子に、
「……………」
『それ』は腰掛けていた。
酷く、美しい少女だった。
年の頃は十代中盤。ほっそりと痩せた体躯を、薄い水色のドレスで包んでいる。
両耳の辺りで結った、冴えた月明かりの如く輝く、銀細工のように冷たくも優美な光沢を放つ長い髪。
闇夜に一雫ワインを垂らしたような、神秘的に光る紫の瞳。銀の蝶の羽根のような睫が影を落とす淡い菫の色をした双眸はまさしく宝石の美しさ。
薄紫に発光して見える真珠の肌も、硝子を削りだしたように美しく尖った顎も、花びらみたいに可憐な唇も。全てが精巧な人形を思わせる、繊細で完璧な美貌を持つ少女だった。
しかし。
彼女には生気というものが無かった。
感情を湛えることなく静かに凪ぐ、絶望に彩られた紫の瞳は、そうすることが使命であるように、ただ、虚空をぼんやりと映していた。
華奢な四肢はだらりと力無く投げ出され。本当に、幼い主人に忘れられてしまった、大きな人形のようだった。

4月波煌夜:2012/03/10(土) 19:45:09 HOST:proxy10003.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)2』

此処は、広大な面積を誇るブッドレア伯爵邸の隅に聳える塔の最上階。
しあわせを呼ぶ『貢ぎ物』、《紫水晶(アメシスト)》として、様々な家を転々としてきた彼女は、三ヶ月近くこの部屋で暮らしていた。
その時。ガチャガチャ、と乱暴に外側から鍵を開ける音がし、召使いの女が入って来た。
気味悪そうに、身動き一つしない少女を一瞥しながら食事のトレイをテーブルに置くとすぐに、扉の鍵を閉めずにそそくさと出て行ってしまった。―――今からまた伯爵が来て、願い事を叶えるように言われるのかしら。
少女は椅子から降りてテーブルに近づき、固いパンを手にとると、部屋の北側にある窓の方へ足を進めた。
そして、背伸びして窓を開き、手に持ったパンを細かく千切って外側の枠にまいた。
しばらくの間、少し窓から離れてじっとしていると、餌に釣られて小鳥がやって来るのだ。
何も無い部屋、何も無い日々の中で、彼女が一番好きな時間だった。

5:2012/03/10(土) 20:03:04 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
こnです。

かぐやさんの小説、読みやすくて話に吸い込まれていきます^^

応援してますよ(*^_^*)

また来ますね\(^o^)/

6月波煌夜:2012/03/10(土) 22:07:27 HOST:proxy10068.docomo.ne.jp
>>5

初めまして。
こんな稚拙な文章に目を通していただいて本当に有難う御座います…!
燐さんのような偉大な先輩にコメントいただけるなんて…光栄です。
発見したとき「ふおおおおおお!?」と飛び上がってしまいました(←変態)

燐さんの小説も、私の更新が落ち着いたら、必ず!読ませてもらいますね(^-^)v

それでは。
まだまだひよっこですが、宜しくお願いします(*´д`*)

7ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/03/10(土) 22:41:00 HOST:e0109-49-132-13-14.uqwimax.jp

はじめまして、ねここという名前で小説を書かせていただいている者です(`・ω・´)
タイトルや本文に釣られてやってきましたv

ここまで読ませていただいたのですが、とても文章力が高く羨ましいなと感じました(笑)
表現が細かくできていて、この場で何が起こっているのかとかどういう服装なのか、容姿まで完璧に文章のみで再現できているのは本当に憧れます。

これからも月波煌夜さんの小説を読んで勉強させてください(笑)
小説を書く者同士の仲間として、よろしくお願いしますm(_ _)m

8月波煌夜:2012/03/10(土) 23:00:46 HOST:proxyag072.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)3』


―――そうだわ。椅子に乗れば、もっとよく見えるかもしれない。
少女は踵を返し、先程まで座っていた椅子を持ち上げると、窓の下に置いて、その上で立ち上がった。
「……わぁ!」
少女は大粒の瞳を輝かせた。
愛らしい小鳥たちが仲良くパン屑を啄んでいる様子がすぐ近くで見える。
―――何で今まで気づかなかったのかしら!
彼女は窓枠に掴まり、夢中になって下界の景色を眺めた。
―――綺麗……!

少女を現実に引き戻したのは、男の鋭い声だった。
「何をしている!」
はっとして振り向く。
部屋に踏み込んできたのは、この屋敷の主の伯爵だった。
「捕まえろ!」
側にいた大柄な従僕(フットマン)がすぐさま少女を椅子から引きずり降ろす。
「何するの!?離して……!」
暴れたが、小柄で力の無い少女にはどうしようもない。
抵抗虚しく腕を掴まれ、乱暴に床に押し付けられた。
「……まさか、逃げようとするとはな」
伯爵が苦々しく呟く。
「違います!こんな高い所から私が逃げられる訳が無いでしょう!?」
「だが、お前は《紫水晶》だろう!奇跡が起きて、お前を怪我なしで逃がすかもしれない」
そんな訳が。
無い、とは言えなかった。
少女の幸福を呼ぶ力は、ありとあらゆる事に及ぶ。
それに、少女にも自分の力がどういうものなのか、分かっていなかった。自分どうやって幸福を呼びこんでいるのかも分からない。
黙ってしまった彼女に、怒りに燃える伯爵が告げる。
「しあわせを呼ぶのは、その瞳なのだろう?なら、その目だけを抉りだしてしまえば良いのではないのか?」
さああああっ、と少女の美しい顔から血の気が引いた。

9月波煌夜:2012/03/10(土) 23:30:26 HOST:proxyag002.docomo.ne.jp
>>7

初めまして。
うあああああありがたい御言葉、本当に有難う御座います…!
私は無駄にゴテゴテと美少女の容姿を飾り付けるのが好きでして…。
ねここさんの小説も、更新が一段落したら必ず拝見させていただきます!
これからも見放さずに仲良くしていただけると嬉しいです(*^-^)ノ
宜しくお願いします!

10竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/03/10(土) 23:43:15 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
初めまして。
コメントをさせてもらう竜野翔太と申すものです。

話の内容が分かりやすく、更新する話が短くて、スラスラと読んでいけますね。
ですが、あまり短すぎるのもよくはないので、そこら辺はもうちょっと伸ばした方がいいかと。
作品へのアドバイスではなにのですが、なるべく『普通はこうは読まないだろう』という漢字にはふりがなをつけたほうが良いかと……僕も読めない漢字がちょこっと出てきたので……。
作品自体はとても読みやすく、いいと思います。
紫色の瞳を持つ少女が幸せをはこぶ、か……。頭の構造が中二でバトルしか考え付かない僕には永遠に出ない設定なので、羨ましいです!

これからも頑張ってくださいね^^

11月波煌夜:2012/03/10(土) 23:55:01 HOST:proxyag018.docomo.ne.jp
>>10

初めまして。
貴重なアドバイス、有難う御座います!
確かに、時間の合間を縫って急いで書いていたので、妙に短くなってしまいました。
これから少しずつ、伸ばしていきたいと思います。
あと漢字にも気をつけます(^-^;ふりがなふりがな…。

話の感想も有難う御座いました。
これからも是非、宜しくお願い致します!

12月波煌夜:2012/03/11(日) 10:16:55 HOST:proxyag042.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)4』


「ごめんなさい……」
震える声。
黙ったまま伯爵が腕を伸ばし、テーブルの上にあったナイフを静かに手に取った。
「ごめんなさい……ごめんなさいごめんなさい!もうしません、ずっと、ずっと大人しくしてるから……っ」
鈍く光る刃が近付いてくる。
「いや!いやああぁっ!誰か!誰か助け……っ」
少女は、息を飲んだ。
―――……誰の名を、呼べばいいの?
彼女は愕然とした。
少女は物心ついたときから、《紫水晶》として、欲望の権化(ごんげ)たる人々の中に放り込まれ、必ずと言っていいほど、鍵の掛かる一つの部屋に監禁されてきた。
部屋の外に出ることは許されない。だから、同年代の友人なんているはずもない。
親の名も、知らない。
『おまえは、しあわせを呼ぶんだよ』
口元に厭らしい笑みを浮かべた、小さな少女のもたらすという幸福に酔う貴族たちの顔が次々と思い浮かんで。
彼女は。
「………………」
感情を映さなくなった瞳で、すぐ近くまで迫る刃の切っ先を見返した。
もう、何もかもがどうでもよくなってしまって。
ただぼんやりと、今にも彼女の瞳に触れそうなナイフと、その先の伯爵を見つめ。
「……旦那様。その娘を傷つければ、折角の幸福が逃げてしまうのではないですか?」
意外にも、口を開いたのは少女の腕を捕らえる従僕(フットマン)の男だった。
少女がはっと我に返ると同時に、刃先が離れていく。
「そうなのか?」
少女はこくこくと必死に頷いた。
本当は分からないけれど、他にこの状況から助かる術(すべ)は無いから。
「チッ……面倒な」
伯爵がナイフを放り出して吐き捨てる。
「確かに、折角こいつが来た後、奇跡的に娘に最高の縁談が舞い込んだんだ、それが破談にでもなったら元が取れないからな。……いいか、もし今度懲りずに同じことをしたら、窓の無い物置にでも閉じ込めるから、覚悟しておけ」
後半は少女に向けての台詞だった。
彼女はまた、必死に頷く。
不機嫌そうに顔をしかめ、伯爵が開いた扉から出て行った。
部屋には、少女と、やっと彼女を離してくれた従僕(フットマン)の二人だけになる。
―――ほんとに助かった……?
ぺたんと床に座り込んだ少女は、立ち上がった男を見上げる。身長差がありすぎて、顔は見えない。
―――もしかして……助けてくれたの……?
「あ、あの……っ」
他人に自分から話しかけるのは初めてで。かなりの勇気を振り絞って、彼女は言った。
「あ、ありが……っ」
「旦那様も、何でこんなものを養女にしてまで置いておくのか」
彼女の言葉を遮ったのは、男の冷たい声だった。
「本当に面倒だ。……もう幸福は手に入ったのだから、さっさと売り払ってしまえば良いのに」
男が閉めた扉が、ギィィイイイイ……と耳障りな音を立て。
部屋に、静寂が戻った。

13名無しさん:2012/03/11(日) 10:37:47 HOST:wb92proxy15.ezweb.ne.jp
立て板に水のように書いて下さいね。


自分の顔に満足していたら老人になっても子供だった


そうはなりたくないですね

14月波煌夜:2012/03/11(日) 11:01:19 HOST:proxyag111.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)5』




「おお、可哀想に……!こんなにやつれて。すぐに温かい食事を用意させるからね」
カークランド伯爵邸。
少女一人が暮らすにしては大きすぎる一室に、彼女はいた。
恰幅の良さと気前の良さで知られる老紳士、それがカークランド伯爵だった。
「可愛い《紫水晶(アメシスト)》、何か欲しいものは?何でも言ってくれ」
少女は、この屋敷についた途端、待ち構えていたメイド達に連れ去られ、薔薇の花が浮かぶ浴槽に入れられ身体中洗われて、豪華なドレスを着せられていた。
薄いローズピンクのシルクサテン。スクエアに開いた胸元には金色のコットンレースが贅沢に重ね使いされ、華やかで大きなリボンが縫い止められている。ふんわりと愛らしく膨らんだ姫袖を彩るレースにも、黄金の糸で繊細な小花が刺繍されているという凝りようだ。
光沢のある華やかなサテン地に施された銀糸の刺繍は透き通るような白い肌を引き立て、星屑のようにちりばめられた真珠は美しい輝きを彼女に添えた。
「……特にありません」
「そうか?では帽子にしよう。君の綺麗な銀髪に合うものをね」
―――帽子なんて、此処から出て行く時以外被る機会は無いでしょう?
「他に何か望むものは無いかね?」
いいえ、と言いかけて、美しく着飾った少女はささやかな望みを一つ、思いついた。
身体の自由ではなかった。自由を願ったって、無知な彼女は、どうやって生きていけば良いのか分からない。そんな夢はとうに捨てた。
「あの。……私の名前は、《紫水晶》ではなくソフィアです」
彼女―――ソフィアは滅多に呼ばれることのない自分の名前を口に出した。
「そう、呼んでいただけませんか」
そう呼ばれることで、自分は《紫水晶》という『モノ』ではなく、一人の少女なのだと思いたかったのだ。
「ソフィア。ソフィアか。良い名だ」
ソフィアは少し、ほんの少しだが嬉しさを感じた。自分の親が名付けてくれた―――そう信じている―――名前が誉められるのは、悪い気はしなかった。
胸の奥に、小さな、しかし暖かな焔が灯ったような、そんな気がした。

15月波煌夜:2012/03/11(日) 11:30:56 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)6』

「ではソフィア、このくらい君にプレゼントすれば、私の息子の病気を治してくれるのかな」
冷水を頭から浴びせられたような気がした。
「……え」
「息子の病気は生まれつきでね、医者にもあと二ヶ月ほどしか保たないと言われているんだ。ソフィア、君の奇跡の力が頼りなんだよ」
―――そうよ。
―――《紫水晶》の私に、人が無条件に優しくしてくれる訳がないんだわ……。
「……はい」
ソフィアの感情を灯さないヴァイオレットの瞳が、微(かす)かに揺らいだ。
「そうか!治してくれるか!何て素晴らしいんだ、ソフィア!」
伯爵は喜色満面、という様子で、ソフィアの前に跪く勢いで彼女を仰いだ。
「他には何を贈ろうか。色とりどりのリボンや……うんと素敵な靴もいいな」
すっかり舞い上がり、一人であれこれと考えている伯爵は、ソフィアのわずかな変化になど全く気がつかなかった。

16月波煌夜:2012/03/11(日) 12:02:38 HOST:proxy10075.docomo.ne.jp

0.『少女は孤独(ひとり)7』





「聞いてくれ、ソフィア!息子の病気がすっかり治ったんだ!」
顔を輝かせて伯爵がソフィアの部屋に駆け込んできたのは、それから一ヶ月余りのことだった。
「医者も奇跡が起こったとしか思えないと言っている。本当に君のお陰だよ!どんなに感謝してもしきれない!」
伯爵は寝台に腰掛けたソフィアの小さな手のひらを両手で包み、彼女を絶賛した。
「本当に君は素晴らしいよ、ソフィア……!今日は都で流行りの色のドレスを仕入れてきたんだ、是非着てくれ」
「……有難う御座います」
ソフィアはずっしりと重い箱を受け取った。
一度も開けないでそのままにしてしまっている箱が、広すぎる部屋の片隅に次々と積まれていることを、彼は知らない。
「気のせいか、私も最近身体の調子が良いんだ。これもソフィアの力かな」
彼の緑の瞳に映るのは、少女の姿ではなく。ただの幸福の偶像で。
「他には何が欲しい?」
「……特にありません」
毎日繰り返される、いつものやりとりだ。
「そうか、君は謙虚で良い子だなぁ!」
こう伯爵が言うのも、いつものこと。
でも、次に来る言葉は、今までと違った。
「そうそう。君にはかなり世話になったからね。そろそろ君を他の方に譲ろうと思っているんだ。エインズワーズ公爵の開催する舞踏会に招待して戴いたから、公爵への土産にしようと思うのだが、どうだろう」
―――……土産。
「……はい」
「よし、君が此処にいられるのはもう少しなのだから、張り切って贈り物を考えないとな」
しあわせが逃げないようにね!と笑い、伯爵は軽い足取りで部屋から出て行った。

「旦那様は騙されている」
「あの金食い虫」
伯爵が退室した途端。わざと部屋のソフィアに聞こえるように言っているとしか思えない、使用人たちの言葉たち。
「やっと居なくなってくれるのか」


人(せかい)は―――
ひとりの少女を、否定した。

17月波煌夜:2012/03/11(日) 13:27:46 HOST:proxyag012.docomo.ne.jp
ここまで御覧戴いた皆様、本当に有難う御座います!
やっと序章が終わりましたので、次からは1章『邂逅』に入りたいと思います。
こんなグダグダな話ですが、ハピエン目指して頑張りますので、これからもよろしくお願いしますヽ(´ー`)ノ

18月波煌夜:2012/03/12(月) 10:25:35 HOST:proxyag035.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 1』


天蓋付きの豪奢な寝台(ベッド)で、その少女は眠っていた。
純白のシーツに散らばる、プラチナを伸ばしたように純粋な銀色の髪は朝日を弾いてキラキラと光る。
練り上げたシルクの如く輝く肌は洗練された麗しさ。
芸術家があらゆる人間から集めた美しい部分を、細心の注意を払って配置したような造形、一部の隙も無い冷ややかな美貌。硝子細工のような冷たさ、儚さはどこか神聖な雰囲気を醸し出していた。

「…………………」
突如、閉ざされた瞼(まぶた)が僅かに痙攣し、銀の長い睫(まつげ)がゆっくりと持ち上がった。
現れたのは、大粒の紫の瞳。
《紫水晶(アメシスト)》の少女、ソフィアである。
ソフィアはぼんやりと天を見つめ、それから毛布(ブランケット)を鼻の上まで引き上げた。
―――あたたかくて……お日様の良い匂い……。……カークランド伯爵邸の毛布は、こんな匂いがしたかしら……?
内心首を傾(かし)げ、そしてやっと気がついた。
―――そうだわ。此処は……。
ソフィアは昨日の夜、このエインズワーズ公爵の屋敷にやって来たのだ。
舞踏会の後、ソフィアを自慢気にエインズワーズ公爵に見せびらかし、その恩恵について饒舌に喋り倒していた伯爵の姿が思い浮かび、ソフィアは唇を噛んだ。
―――何処に行っても一緒だわ。少しでも期待する方が間違ってる。
ソフィアは、次こそは違うかもしれない、と信じることすら、諦めるようになっていた。

19月波煌夜:2012/03/12(月) 11:02:39 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 2』


静寂を破ったのは、コンコン、とドアをノックする小気味よい音だった。
「おはようございます、ソフィア様!もうお目覚めですかっ?朝の紅茶(モーニングティー)をお持ちし……」
とそこで、元気良く入室してきた人物の瞳と、ソフィアの空虚な紫色の瞳が、合った。
一人のメイドだった。
まだ若い。16のソフィアと同じくらいだろう。
ふわふわとした柔らかそうな小鹿色(フォーン)の髪に、ぱちぱちと瞬(まばた)きを繰り返す大きな青灰色の瞳。
小さな顔に、同じく小さな鼻や唇がそつなく収まっている。
僅かに幼さを残した、愛くるしい顔立ちをした娘だった。
しかし、侍女の容姿などソフィアに関係するはずもない。
すぐにふい、と視線を逸らし、もう一度毛布(ブランケット)に潜り込もうと、
「……か、か、か、」
……したのだが、奇妙な声がしたのでそちらを見やる。
―――急に鴉(カラス)の鳴き真似を始めるなんて、頭のおかしいメイドなのかしら。
それはちょっと困るわね、と思ったその刹那。
「か、可愛いいいいいぃぃぃぃ!?」
「ひッ……!?」
メイドが飛びかかってきた。
ソフィアを寝台(ベッド)に押し倒し、青灰色の瞳をこれ以上無いほど輝かせて、
「やだ何この子超可愛い!?肌すべすべ髪サラサラ良い匂い―――!」
「……………!?……………!?」
「きゃあ引きつった顔も可愛い―――!」
ソフィアの華奢な躯(からだ)を力一杯抱き締めて揉みくちゃにした挙げ句、すりすりと頬擦りしてくるメイドの少女。
理解不能な状況にソフィアが意識を飛ばし掛けたとき、
「こらシェーラ!」
「ふみゅっ」
いつの間にやら部屋に入って来ていた男が、メイドの後ろ頭をべし!と叩いた。
しなやかな黒豹を思わせる漆黒の髪に同色の瞳、目つきが少々悪いということを除けば、なかなか男前の青年だった。
「御嬢様に何しやがる!」
そのままメイドの少女の首根っこを掴み、ひょいっと片手で持ち上げて床に放り出した。
「ひゃんっ!……何すんのよヒース!」
「それはこっちの台詞だろうが何御嬢様襲ってんだよボケ!ほら怯えてらっしゃるじゃねーか!」
「ああっ!ごめんなさいソフィア様!」
慌ただしい会話が繰り広げられている間に、ソフィアは寝台の隅っこに縮こまり、クッションを盾にしてふるふると震えていた。
―――な、何なのこの人たちは……っ?

20月波煌夜:2012/03/12(月) 16:42:10 HOST:proxy10071.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 3』

「えー……この馬鹿が大変失礼致しました。俺は御嬢様の護衛に任命されたヒースです」
ヒースはクッションで半分以上隠れたソフィアのネグリジェ姿をちらと見て、
「いや……ほんと、すみません」
気まずそうにすぐに目を逸らした。
「で、あたしはシェーラ!ソフィア様の身のまわりの御世話をさせていただきます!いぇい☆」
「いぇいじゃねぇ―――!お前今まで御嬢様に抱きついてただろうがそれの何処が御世話なんだよ!?」
「えーと、ほら、あれよ。まずはお互いのことを良く知らないとね?」
「……ほぅ。で、何が分かったんだ?」
シェーラは眩しい笑顔で人差し指をぴんと立て、
「ソフィア様の胸のサイむぐっ」
「お前もう出て行け!」
「む!むむむーむ、むむむむむ!」
「あ?……あぁそうか。お前はまだ自分の仕事があるのか」
「……っぷは!そうよあんたこそ出て行きなさいよ!淑女(レディ)の部屋に何の断りもなく侵入するなんてこのスケベ!恥知らず!」
「う。そればっかりは返す言葉も無い……」
「どうせ、どさくさに紛れてソフィア様にやらしーことしようとしたんでしょう!?ハッ、これだから男はっ」
「お前がどさくさに紛れて御嬢様にやらしーことしてんのを止めようとしたんだよ!?」
「……なぁんて言いながら照れて必死に誤魔化す弟を、優しいお姉さんなあたしとしては温かい目で見守っていこうと―――」
「突っ込み所が有りすぎて混乱してきたよ!あーもう、まずお前俺より三つも年下だろうが!そしてお前のどこが優しいお姉さんなんだよ!それから照れても誤魔化してもいねぇ!」
律儀に一々訂正してから、はあっと溜め息をつき、扉に向かって歩を進める。
「御嬢様、本当に色々と失礼しました……。俺は基本いつもこの扉の前に居ますので、外に用があったり、身の危険を感じたりしたらすぐに呼んで下さい」
ヒースの礼をする姿が廊下へ消え、扉が閉まる。
その音でソフィアは、ついさっきシェーラが入って来たとき、彼女が鍵を開ける音が全くしなかったことに初めて気付いた。
―――……気のせい、よね。
ソフィアの部屋の前に、護衛……とは名ばかりの、監視役を置かない家はあった。が、扉を施錠しないなんて不用心な所は、今まで無かった。
どの屋敷でも、《紫水晶(アメシスト)》たるソフィアの奇跡の力を恐れ、万一彼女が逃げ出すことのないよう、厳重な警備を欠かすことはなかった。
彼女の自由を奪うことで、自分たちの幸福を守ろうとしたのだ。
でも。
―――『“外に”用があったり』?
今、彼はそう言わなかったか。
―――まさか。きっと聞き間違いよ。
だって、もしそうなら、彼女が部屋の外を出歩いても良い、と言っているように思える。
そんなこと、何が起こっても有り得ない。
ソフィアは僅かな違和感を抑え込み、落ち着きなさい、と自分に念じた。

21:2012/03/12(月) 20:26:56 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>イエイエノシ

偉大な先輩…全然そんな気配ないんですけどね…;

私の小説はもう…連載終わったんです。

色々事情がありまして…。

何時か復活するかもしれませんが…今の所はそんな気配すらないです^^;

22月波煌夜:2012/03/12(月) 20:33:32 HOST:proxyag052.docomo.ne.jp
>>21

えぇっっ((((゜д゜;))))
ほ、本当だ…!
うわー…凄く残念です(´・ω・`)
執筆を再開される予定はほんとにないんですか…?

あ、これからもちょくちょく遊びに来てくださると嬉しいです!

23:2012/03/12(月) 20:44:54 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>ごめんなさいm(__)m

でも、第1期と2期は完結したので見てくれれば幸いです^^

今の所、ないですね…。

24月波煌夜:2012/03/12(月) 20:55:24 HOST:proxy10060.docomo.ne.jp
>>23

そうですかー…
燐さんの作品、タイトルからして凄く素敵で…読むの楽しみです(*^_^*)
感想とか、絶対書きますね!
とりあえず、この話の主要登場人物が全員揃うとこまで更新できてから、ゆっくり読ませていただこうかなーと思ってます。

25:2012/03/12(月) 22:08:18 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
かぐやs>>ごめんなさいm(__)m

楽しみにしてる読者を裏切る行為になってしまって…m(__)m

絶対…強制じゃないので書かなくてもいいですよ^^

26ピーチ:2012/03/12(月) 23:14:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
月波さん>>

初めまして♪こーゆー小説大好きだよ☆

更新楽しみにしてるね〜!

それと・・・名前なんて読むの?←バカだから分かんない((汗

27月波煌夜:2012/03/12(月) 23:33:02 HOST:proxyag024.docomo.ne.jp
>>25

いやいや(^^;)
私が書きたいだけので、是非書かせていただきますっ(・∀・)

28月波煌夜:2012/03/12(月) 23:37:13 HOST:proxyag024.docomo.ne.jp
>>26

初めまして!
つきなみ・かぐや、といいます。
煌夜で「かぐや」は、本当は「輝夜」のところをかなーり無理矢理読ませておりますので(^-^;
分かりにくくてすみませんっ

コメ有難う御座います!凄く嬉しいです…!
これからも宜しくですヽ(´ー`)ノ

29名無しさん:2012/03/12(月) 23:44:12 HOST:wb92proxy04.ezweb.ne.jp
先輩きどりすぎてんのちゃう

30ピーチ:2012/03/13(火) 07:14:49 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

OK!「かぐや」ね!

憶えた〜←数秒後には忘れるww

31月波煌夜:2012/03/13(火) 08:26:54 HOST:proxy10055.docomo.ne.jp
>>30

忘れちゃったら一番上↑を御覧下さい(笑

32月波煌夜:2012/03/13(火) 12:58:51 HOST:proxy10080.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 4』


「はぁい、お待たせしました!ソフィア様ー、お茶ですよー?」
まだ寝台(ベッド)の上に居たソフィアはその声を聞き、床に脚を下ろした。
そろそろと、白く塗られたテーブルとメイドの少女に近付く。
「今日はとっても良いお天気ですねー!気分まで晴れやかになっちゃいます」
シェーラは笑顔で話しながらも、その手は驚くほどてきぱきと動き、この上なく優雅で洗練された手付きで、繊細な薔薇の紋様が描かれた可愛らしいティーカップに琥珀色に輝く液体を注ぐ。
シェーラに薦められて椅子に腰掛け、ソフィアはそっとカップを持ち上げ、恐る恐ると口に近付けた。
ひとくち含んだ途端、微風(そよかぜ)のように爽やかで涼やかな香りが鼻を通り、しつこすぎない絶妙なバランスの甘さと苦さが舌に広がった。
「……美味しい」
思わず口に出してしまう。
「本当ですかっ?良かったぁ」
シェーラは、花が咲くようにぱああっと顔を輝かせた。
「そうだ!お聞きしたかったんですけど、ソフィア様ってお幾つですか?」
突然の質問に内心面食らいながらも、極めて平坦な声で告げる。
「……多分、16」
「わ、やっぱり近いです!あたし17ですよー」
……そんなことを知ってどうするのだろう。
ソフィアには意味が分からなかった。
彼女の、無愛想なソフィアに対する好意的な言動は、とても演技とは思えない。
あの青年、ヒースもそうだ。
―――……きっとただの気まぐれよ。そのうち飽きたら、放っておくか、願いを叶えろと詰め寄ってくるんだわ。
「ソフィア様……そのネグリジェはどうされたんですか?」
自分なりに考えをまとめた途端。
真剣な顔付きでソフィアの着ている服を見つめるシェーラ。
「…………………?」
「いただきものですか?」
カークランド伯爵からのプレゼントだ。こくり、と頷く。
「うーん……ソフィア様にはもっと大人しい色の方がお似合いになるんじゃないかなぁ……?こういうピンクはちょっとなぁ……。うんとフリフリ!っていうのも可愛いけど腰とか手足の細さを強調するような……。それかこう、清楚な雰囲気のすっきりしたやつ……。あったかなあ…………作るか?」
下を向き、小声でぶつぶつと呟く。
―――や、やっぱりこのメイド、何かおかしい……!
「あ!ご、ごめんなさい!あたしこういう仕事大好きでー……つい自分の世界に入っちゃいました」
「……そう」
「はいっ!」

33月波煌夜:2012/03/14(水) 12:21:00 HOST:proxy10069.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 5』

心から嬉しそうに声を弾ませるシェーラ。
自分の人生を思い切り楽しんでいる様子の彼女を見て、少し羨ましく思っている自分に気づき、ソフィアは少し驚く。
今まで、人と関わることはほとんど無かったから。
心を閉ざして、常につきまとう悲しみも痛みも、何も感じなくて良いように。
だから、『人』と自分とを同じ天秤に掛けて初めて生まれる、『羨ましい』なんて感情を抱くのは、単なる『モノ』であるソフィアには、初めてで。
慣れないその感覚に戸惑う。
―――私、は……。
「あっそうだ!ソフィア様、坊ちゃまにはもうお会いになられました?」
その声に、いきなり現実に引き戻される。
「……いいえ」
昨夜、気難しげなエインズワーズ公爵と、優しげな風貌をした公爵夫人には簡単な挨拶を済ませたが、その息子の姿は見ていなかった。
「そうなんですか!シュオン様っていうんですけど、す――っごく綺麗でお優しくて格好良いんですよー!」
シェーラは豊かな胸の前で手を組み、夢見る眼差しで天を仰いだ。
彼女の周りにはピンクや白の小さな花々が舞い踊り、大きな瞳にはキラキラと星が瞬いている。……ように、見える。
「綺麗な金髪で、ほんとの王子様みたいなんです!あたしたちメイドの間でも大人気なんですよっ!……でもぉ」
シェーラはくるりと鮮やかにターンを決め、ぴっと人差し指を立ててソフィアの方を向いた。
「ちょおっと変わり者でして。あ、内緒ですよ?」
反応を示さないソフィアにも気分を害することなく、楽しそうな表情のまま、秘密を打ち明けるように声を潜める。
「ピアノやダンスもかなーり御上手で、……でも、火薬とか爆薬とか毒薬とかの開発に異常にハマっていらっしゃるんです。なんか御自分で色々な研究をなさってるらしくて、たまに専門家さんの方も此処にお見えになるんですよ!」
ちょっと怖いですけど凄いですよねぇ、と軽やかに笑う。
「小さい頃は、木に登って下にいる召使いに向かって如雨露(じょうろ)で水を掛けたり、屋敷中で何処から来たのかも分からないほどの量の猫を放し飼いしようとしたり、高価な花瓶を割って歩いたり……他にもありますけど、相当な悪戯(いたずら)好きだったみたいですよ?奥様に怒られたときは決まって、『悪戯じゃない、これは純粋な実験だ』っておっしゃったそうです。……うーん、例えるならー、」
そこでシェーラは少し考え込み、それからまたぴしりと人差し指を立て、
「変態王子?」
……とんだ王子様である。

34ピーチ:2012/03/14(水) 21:48:08 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

あははっ♪分かった〜!

更新待ってるよー!!

35月波煌夜:2012/03/15(木) 12:03:35 HOST:proxyag060.docomo.ne.jp
>>34

有難う御座います♪
書いてる本人も何処に行きつくのか分からないという絶賛迷走中ですが、ビーチさんにそう言っていただけると凄く嬉しいです…!
これからも是非覗いてくださいね(*^_^*)

36月波煌夜:2012/03/15(木) 16:37:32 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 6』

「……そう」
「そうなんですよー。……ってああーっ!忘れてたっ!ソフィア様、朝食はいつお摂りになりますか?うぅ、これ聞けって言われてたのに……」
―――い、忙しい子ね……。
「……後でいいわ」
「うーん、じゃあ一時間くらいしたらお持ちしますね!それまでゆっくりお風呂にでも入ってお待ちください〜」
―――お風呂?
予想外の言葉に、ソフィアは目を瞬(しばたた)かせた。
「朝シャワー浴びるとすっきりしますよねぇ。あ、こちらです、どうぞどうぞ」
シェーラが壁の側面にある扉を開けると、小綺麗なタイルに囲まれたバスルームが姿を表した。
中を覗くと、猫足のバスタブには既に温かい湯が満ちている。
―――いつの間にお湯を入れたのかしら……?
このメイドの少女は紅茶を淹れる手際といい、意外と優秀であるようだ。
「お背中流しま―――……うぅ。そうですか、大丈夫ですか……。何かあったらヒースに声を掛けるか、この呼び鈴を鳴らしてくださいね」
それではごゆっくりー、と言い残し、シェーラは扉を閉めて出て行った。



半刻ほど後。
ソフィアは用意してあったバスローブを纏い、浴室を出た。
温めの湯が気持ちよく、浸かっているうちに身体が完全に目覚めたような気がする。
ソフィアは改めて部屋を見回した。
落ち着いた、けれどどこか可愛らしい印象の、品の良い部屋。
天蓋付きの豪奢な寝台(ベッド)や洒落た洋燈(ランプ)、薔薇模様が描かれた優美なカーテン。
白いクロゼットには美しく刺繍された垂れ絹が掛けられ、床にはふかふかとした毛足の長い絨毯が敷き詰められている。
白く塗られたテーブルの上にあるものに目を留め、ソフィアはそっと歩み寄る。
ふわりとそれを広げると、純白のワンピースだった。
きゅっとウエストを絞った、バレリーナのようなロマンティックで愛らしいシルエット。
繊細なシフォン生地が控えめに高貴なニュアンスを醸し出し、雪のようなファーが胸元を飾る。
―――これを着ろってことよね。
ソフィアは自分の荷物からも必要なものを取り出し、さっさと着替えを始めた。
透明にも見える白絹の靴下を履き、ワンピースに袖を通す。
ソフィアの為だけにあつらえたようにぴったりで、堅苦しいドレスよりもずっと着心地が良い。
それから鏡台の前に立ち、髪を二つに分ける。幼い頃からしてきていることなので、意識しなくても指が勝手に動き、すぐに綺麗に結い上げ終えた。
身支度を全てひとりで終わらせてしまったソフィアは、本棚を見つけ、中から適当に一冊を取り出した。
本は、何もすることが無く、無意味にただ時間を過ごすことを余儀無くされるソフィアにとって、退屈を紛らわせる一番の友だった。
読み書きを習ってからというもの、運良く本棚のある部屋に通されたときは、同じ本であっても、内容を覚えてしまうまで読み込んだものだ。
ソフィアは、表紙を眺める自分の唇が思わず綻ぶのを感じた。

37ピーチ:2012/03/15(木) 23:58:01 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

ソフィアちゃんって・・・偉ーーーーーーーい!!!!

ヒース達も優しいねー!ってゆーか・・・どこに行き着くか分かんない

はないでしょww  更新待ってま〜す♪

38月波煌夜:2012/03/16(金) 10:43:40 HOST:proxy10008.docomo.ne.jp
>>37

わぁ!またお越しいただいて有難う御座いますっ(*´д`*)
ソフィアは「ほんとは普通な女の子なのにそれを自分で閉じこめちゃってる」キャラのつもりです。
ゆくゆくはツッコミもできるクールな子に育てるつもりです(ぉい
ビーチさん、どうぞ気長にお付き合いくださいませ(≧∀≦)

39月波煌夜:2012/03/16(金) 11:50:20 HOST:proxy10043.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 7』


しばらくして、寝台(ベッド)に座るソフィアが、小説の序章を読み終えた頃。

……ドゴオオオオオンッ!

突如、大きな爆発音が響き、部屋が僅かに揺れた。
ソフィアは驚いて思わず本を取り落とす。
「ご無事ですか御嬢様!」
扉が勢いよく開き、慌てた様子で従僕(フットマン)のヒースが顔を出した。
「……ええ。何があったの?」
「いや、その……何と言いますか、ちょっとした手違いだと思うのですが…………す、すみません御嬢様、少しだけお暇(いとま)を!すぐに戻りますから!」
あンの馬鹿男……!と唸り、あまり良いとは云えない目つきをますます鋭くして弾丸の如く廊下へと飛び出していく。
扉は開いたままだ。
「…………………」
ソフィアはちらりとそれを見て、急に不安に襲われ、寝台の上で膝を抱えた。
―――……誰かが、私を探しに来たの?
今まで、《紫水晶(アメシスト)》の力を欲する者による侵入は幾度もあった。その全てを、それぞれの屋敷の優秀な見張り役は叩きのめしてきたのだが。
今、ソフィアを見張る者もいなければ、守る者もいない。
それに。ソフィアの“しあわせをもたらす”奇跡の力は、彼女自身に及んだことは一度も無かった。……だから、ただの非力な少女であるソフィアには、自分で身を守る術(すべ)も、無い。
「…………………」
と、そこで。
「ソフィア様ぁ―――!」
ぱたぱたと駆けてくる足音が聞こえ、小鹿色(フォーン)のふわふわした髪を揺らし、シェーラが飛び込んできた。片手には朝食と思(おぼ)しきトレイを持っている。
「ああっ!もうおひとりで着替えられちゃったんですか!?……でもやっぱりあたしの勘は正しかった!超似合ってます!可愛いです!……ってちがーう!違わないけど違うっ!」
シェーラは瞳を輝かせたかと思うとぶんぶんと手を振り回し(なのにトレイはぴくりとも揺れない)、人差し指をぴんと立てて―――どうやら彼女の癖らしい―――こう言った。
「ね、さっきの音がした方で何があったのか見に行ってみましょうよー!」
…………………。
「…………………………え?」
今、この娘は何と言った?
何があったか見に行く?
部屋の、外に?
この、ソフィアと?
「ねねねねね、一緒に行きましょうよー!気になるじゃないですか!……まぁ大体予想はつきますけどね?」
ただ呆然と紫の瞳を見開くことしかできない。
―――何なの、このメイドは……。
ソフィアを勝手に部屋の外に出したと主人に知れたら、シェーラは解雇されるだけでは済まないかもしれない。
そんな危険を冒してまで、ソフィアを誘うというのか。
しあわせを呼ぶ人形《紫水晶》でしかない、ソフィアを?
「ね!早く行きましょうよー!ほら、れっつごー!」
シェーラは待ちきれなくなったらしく、トレイをテーブルに置き、座り込んだソフィアの手を取って強引に引っ張った。
思考以前に、竦(すく)んでいた脚が、自然と動いていて。
紅潮した頬に、部屋のものよりも少し涼しい空気が当たる。
シェーラが軽く走り出した。
廊下と幾つものドアが次々と視界を横切る。
繋いだ手のひらは、とても柔らかくて、温かかった。

40月波煌夜:2012/03/16(金) 15:28:21 HOST:proxyag022.docomo.ne.jp

Ⅰ. 『邂逅 8』

辿り着いたのは、一つの重厚な作りの扉だった。
「しーっ、ですよ」
シェーラは悪戯(いたずら)っぽく人差し指を唇に当てると、扉にそっと近づいた。そのままそろそろとドアノブを回し、少しだけ間隔を作る。
―――危険は、無いみたいね。
ソフィアは少し安心して嘆息し、それから、どうしようかと迷った後、何となくシェーラの後ろに立った。
さっきから、心臓がばくばくとうるさい。
何しろ、初めて命令以外で―――自分の意志で、部屋の外に出たのだ。
見知らぬ使用人たちとすれ違うたびに冷や冷やしたが、彼らは抜け出してきたソフィアの姿を見ても、にこやかに笑って頭を下げるだけだった。
何処かの客人とでも思っているのだろうか。
でももし、ヒースやソフィアの正体を知る者に見つかってしまったら、どうなるのだろう。分からない。
ぐるぐると考えを巡らせている間に、部屋の中の声が漏れ出てくる。
「―――……だっからお前は……!何度言ったら分かるんだよ家ン中で爆発引き起こすんじゃねぇ!毎回後片付けさせられるこっちの身にもなれや!」
―――……ヒースっ?
最初に聞こえた怒鳴り声と粗野な言葉遣いは、間違いなくあの見張り役のものだ。
「嫌だなぁ、ただの純粋な化学の実験だよ?」
「その台詞はもう聞き飽きたわ!つーか何の言い訳にもなってねぇ!」
「うーん、でも威力は想定していたものよりも大分落ちるなあ。硝石に不純物が多いのが原因かな、やっぱり」
「威力があってたまるかッ!もう火薬と結婚しろこのド変態!」
「あ、それは良いね!あと是非毒薬とも結婚し―――……うん?そこに誰かいますか?」
その声が聞こえた途端、シェーラは驚くほどの速さで扉を閉め、
「よし逃げましょうソフィア様!」
「させるかあッ!」
扉を開けて素早く出てきたヒースが、身を翻したシェーラの首根っこをこれまた驚くほどの速さで掴んだ。
「にゃー!はーなーせぇー!」
「お・ま・え・はぁっ!何で御嬢様連れ出してんだよ馬鹿!もしっ―――」
「……ごめんなさい、部屋の外に出て。その子は悪くないわ」
ヒースが言い終える前に、ソフィアが口を開いた。
「すぐ戻るから」
「あ、ち、違うんです御嬢様!いや、えっと……女のこいつには御嬢様の安全は十分に確保できませんから……。だから、不用心に連れ出したこいつに対して怒ってるだけです」
ソフィアはきょとんとしてしまう。
―――えっと……、つまり……?
「……どうしたの?」
部屋の中で聞こえたのと同じ声がした。
ソフィアは振り向き、―――息を飲んだ。
辺りが急に明るくなったような、そんな気がした。
サラサラとした蜂蜜色の髪はまさしく天使の美しさ。
大きく見開かれた、明るいブルーに輝く瞳はどこまでも蒼く、碧く。雲一つない晴れた日の空を閉じ込めてしまったかのよう。
すっと通った鼻梁、薄い唇。
その男の、優しげで、乙女心を捉えて離さない甘く整った究極の美貌はまるで、
―――御伽噺の王子様……?
と、いうことは。
「君、は……もしかして、例の《紫水晶(アメシスト)》の……?」
「……はい」
「……初めまして。僕はシュオン。一応ここの跡取り息子です」
気品と愛嬌に溢れた微笑みは、彼の育ちの良さを十分すぎる程に証明している。
―――この方が。
なるほど、シェーラが騒ぐのも当然といえるだろう。
「……あの、さ。良かったら」
そして、エインズワーズ公爵家の嫡男シュオンは、ソフィアに向けて。
「庭園に、散歩にでも行かない?」
『………………………………は?』
ソフィアとヒースの声が綺麗にシンクロした。

41ピーチ:2012/03/16(金) 17:13:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

わぉぉ!!喜んで貰えたww←アホ抜かせ!

ってゆーかシェーラ達も凄いことしたね〜

だからこそ続きが気になるぅぅぅ!!!!

42玄野計:2012/03/16(金) 17:35:26 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
ボクは、限り無く幸せを生みます。

43月波煌夜:2012/03/16(金) 19:34:55 HOST:proxyag010.docomo.ne.jp
>>41

わーいわーいo(^o^)o(←ただのバカ

またまたコメ有難う御座います!
これからメイン四人の関係が動いたり動かなかったり。
二章からもよろしくです(・∀・)

44月波煌夜:2012/03/16(金) 19:52:26 HOST:proxyag009.docomo.ne.jp
ここまで読んでくださった皆様、有難う御座います('-^*)
初めての上に、キャラが勝手に動き出して当初の予定と凄い差ができてしまったりと……。こんなどうしようもない駄文ですが、何とか一章まで書ききることができました。
次からは二章『願いのカタチ』に入る予定です。
ソフィアがクーデレな乙女化したり、シュオンがソフィアを口説いたり、シェーラが暴走したり、ヒースが苦労したりするかもです。後半二人は一章と変わらないと思われます。はい。

感想等、引き続きお待ちしております!
これからもどうぞ『紫の歌(←意味なく略した)』を宜しくお願いします((o(^-^)o))

45ピーチ:2012/03/16(金) 21:55:42 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

すごーい!!もう第二章行くの??

早いっ!早すぎるっ!!

46月波煌夜:2012/03/16(金) 21:59:35 HOST:proxyag105.docomo.ne.jp
>>45

もう、ソフィアの主要メンバーとの「邂逅」は終わりましたからね('∇')
速めな分残念クオリティですがご容赦を(>_<)

47ピーチ:2012/03/16(金) 22:33:22 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

ラジャーwww

結局、ヒース達ってソフィアの味方なの??

48月波煌夜:2012/03/16(金) 23:47:37 HOST:proxyag057.docomo.ne.jp
>>47

はい!
味方というよりは……理解者?
《紫水晶》としてではなく普通の女の子として接してくれる人たち、のつもりです。
まぁ私利私欲とか考えられない単純バカともいえますがw


〜〜全く関係ない話〜〜

この話の下書きもどきのノートを親に発見されてしまったorz← 勉強しろ!と怒られた……。
頑張って親の目をかいくぐりつつ更新します(´_ゝ`)
もし更新が滞ったら、「あ、あいつまたドジ踏んだな」とお思いください。
が、頑張りますよー。

49ピーチ:2012/03/17(土) 00:01:01 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

・・・わぁい・・・大変・・・

まぁまぁまぁ!ドジ踏まないように頑張って!!

50月波煌夜:2012/03/18(日) 17:55:48 HOST:proxy10088.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 1』


「ソフィア、こっちこっち!ほら、この花も綺麗でしょう?」
陽光を弾いて蜂蜜色に輝く艶やかな絹糸の髪、暖かみのある優しい色の碧の瞳。
神に祝福されているとしか思えない端正な美貌に、女の子を百人くらいまとめて卒倒させてしまいそうな極上の微笑を乗せた麗しの王子―――ではなく、エインズワーズ公爵息シュオンが、中央庭園に咲き乱れる可憐な花々のうちのひとつを見て、傍らのソフィアに話し掛ける。
「………はい」
対するソフィアは、機械的に返事をするだけで心ここにあらずという状態だ。
白薔薇のコサージュが幾つも溢れる帽子の下、虚ろな瞳は幸福をもたらすと云われる《紫水晶(アメシスト)》の証の紫。二房の煌めく銀色の髪が微風(そよかぜ)に靡く。
―――まさか、屋敷と屋敷の移動以外で帽子を使う日が来るなんて……。
正直、嬉しさよりも大分混乱が勝っている。
今朝は、目覚めたと思えばメイドに襲われかけたり、家の中で爆発騒ぎが起きたり、初めて部屋を抜け出したり、それから現在進行形で知り合ったばかりの公爵の息子と一緒に庭園を歩いていたり……と、今まで一日中同じ部屋に閉じ込められて、変わり映えのしない毎日を送ってきたソフィアにとっては、非日常的な出来事ばかりだったのだ。
本当にこれは現実なのか。それとも、新入りの自分をからかっているだけ?または、御機嫌取りをして願いを叶えてもらおうとしているのか。
無表情を保ちつつも内心ぐるぐると悩んでいるソフィアのやや後方―――同じく釈然としない様子の者が一人。
「意味が分かんねぇ……」
鴉羽色の髪を揺らす、従者の青年ヒースである。
極めて嬉しそうにソフィアに解説をして歩くシュオンを見、しきりに首を捻る。
「あ、あの火薬毒薬馬鹿の変態が自分から進んで女と話そうとするだと……?ありえねえ……」
「いっやあー、面白くなってきましたなぁ!あのタラシの癖に実は相当の女嫌いって噂のシュオン様が今日いらしたばかりのソフィア様とお散歩!つまりデート!むふふー、これはこれはこれからの展開が楽しみねー!」
「……って何でお前がいるんだよ!?」
いつの間にやらひょっこり現れ、やーねー、と人差し指を左右に振って笑う少女はメイドのシェーラ。
太陽に負けないくらい眩しくにこにこと笑い、
「あたしはソフィア様の担当なんだからついて行くのは当然でしょ?護衛役のあんたと一緒。それに、あたしだってちゃあんと用事があるんだから!」
と、そこで、
「ソフィア、朝食はまだ?僕もだから、良かったらここで食べない?」
一行を先導するシュオンが、華やかに水を吹き上げる噴水の前に並ぶ優美な木製のテーブルと椅子を指差した。
「……はい」
その返事が聞こえるや否や、
「はいはーい了解ですーっ!少々お待ちください〜」
シェーラがたたっと駆け寄り、椅子を引いてソフィアを座らせる。
シュオンがその向かいの席に腰を下ろす僅かな間に、持っていたバスケットから薄いブルーのクロスを取り出し、鮮やかな所作でテーブルに掛け、皿、ティーナプキン、ナイフやカップを配置していく。
中央に置いた銀の盆には色とりどりのサンドウィッチやパン、スコーンを美しく並べ、美麗な金の装飾が施されたカップに紅茶を注ぐ。
「はい、大変お待たせしました!準備かんりょーです!」
……待ってない。全然待ってない。

51ピーチ:2012/03/18(日) 19:09:43 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

凄いね〜!いっつも見てるけどその度に圧倒されるのはナゼだ!?w

でもなぁ、頭ん中が推理・異能者系だけのあたしには一生かけても書けない作品だわにゃあww

52:2012/03/18(日) 19:14:52 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>>この度は私どもの小説にコメを頂きありがとうございます!!

しかも・・・長文で・・・。

でもごめんなさいm(__)m

こっちの小説を読む時間がなくて…。

時間があいたら必ず読むので、完結まで読むので、頑張ってくださいノシ

53月波煌夜:2012/03/18(日) 21:04:52 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>51

またまたコメどうもです!
「このカス文章をよく堂々と載せられるな」的な意味なら確かに圧倒されますよねw
…推理・異能系…だと…?
私の憧れジャンルではないですかo(^o^)o
頭の中が桃色お花畑な月波には到底無理だ…尊敬( ´∀`)

54月波煌夜:2012/03/18(日) 21:21:48 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>52

いや、あまりの低クオリティにびっくりする可能性があるので読まない方がいいかもです(^-^;

また、わざわざこちらにまでお越しいただいて有難う御座います…!
燐さんの神作品に一ミリでも近づけるよう、精進します(^-^)/

55ピーチ:2012/03/18(日) 22:49:23 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

やーだなー!単純に好きなだけだって!!

実際書いてる小説も基本的に異能系だしww

まぁ、リア友には珍しがられたけどね〜ww

頭の中は桃色お花畑の方が絶対いいって!!←何のアドバイスだww

56月波煌夜:2012/03/18(日) 23:18:13 HOST:proxy10076.docomo.ne.jp
>>55

そう言ってもらえると嬉しいです〜(o^_^o)
まあたまに蛍光ピンクみたいなドピンクになったりしますが←

ピーチさんの異能系小説も読みたいなぁ(〃▽〃)
そのうちお邪魔させていただきますね!

57:2012/03/19(月) 10:31:25 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>>呼びタメOKですよ^^v

にょほほほ…←キモw

どうでしょう…あんまりそこら辺の所は分かりません。

イエイエノシ

此処には遊びに来ているとだけ認識しておいてください(*^_^*)

神作品…ですか。

あんなの神でも何でもないですいよ^^;

58月波煌夜:2012/03/19(月) 12:51:31 HOST:proxyag019.docomo.ne.jp
>>57

呼びタメOKかー(・∀・)

ではでは…神に対してアレですが…お言葉に甘えて馴れ馴れしくさせてもらうねw

燐も、月波のことは何とでも呼んでいいよー(^^)v

どんどん遊びに来てねー(^-^)/~~

59月波煌夜:2012/03/19(月) 13:48:40 HOST:proxy10054.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 2』

シュオンも目を丸くしている。
「君、凄いね……。こんな子がいるなんて知らなかったよ。名前はなんて云うの?」
「えへへー、シェーラっていいます!」
「……シェーラ?」
その途端、ヒースが明らかに『しまった!』という顔をして血相を変えた。
「へえー……君がシェーラ、かー……」
シュオンは天使の美貌に意地の悪い微笑みを浮かべ、そっぽを向きつつもダラダラと脂汗をかいているヒースを見つめた。
「そっか〜。いやぁ、シェーラは可愛いし良い子だし器用だし……良いお嫁さんになるんじゃない?ねえ、ヒース」
「な、何で俺に聞くんだよ!?」
「可愛いよね?」
「はァ?意味わかんねーしッ」
「ね?」
「俺は知らねえ!」
完全に茹で蛸状態で叫ぶヒースと、にやにやと笑っていなすシュオンのやり取りが続く。
「な、何なのよ……ってかヒースあんた、顔凄い赤くない!?絶対やばいよそれ、とりあえず治療しなきゃ中入ってっ」
「の、ノープログラムだッ」
「その発言からして大丈夫じゃないよね絶対」
「とにかく熱計らなきゃ……!ヒースおでこ出しなさい!」
「ぜっったいに嫌だ!」
「な……!ま、待ちなさいよー!」
「俺に触るなあああッ!」
「えええええッ?ちょっとそれ酷くない!?こら待てえー!」
庭園で追いかけっこを始める二人。ソフィアは自分の担当を決めた人の人間性が少々心配になった。
「うん、良いネタができた!当分使えるなこれ」
シュオンは御満悦という感じでにこにこしている。
「……少し羨ましいです。仲がよろしいのですね」
傍観していたソフィアの口からぽろりと零れ出たのは、心からの言葉だった。
自分でも驚いて口元を押さえる。
―――私、今……自分から喋った……?
つい、気がゆるんだのかもしれない。
「うん。僕の乳母がヒースの母親でね。同い年なんだけどほとんど兄弟みたいな感じ。アレ反応面白いじゃない?小さい頃からヒースを弄るのが趣味の一つなんだぁ」
……ソフィアはヒースに魂から同情した。
哀れすぎる。
「……シュオン様は、シェーラの名前をご存知だったのですか?」
まただ。するりと言葉が出てきて、ソフィアは唖然としてしまう。
―――この人は、何か魔法が使えるのかしら……。
人の心を知らずのうちにほどかしてしまう魔法。
「あーうん。できた特製爆弾の出来を試したくて、ヒースの部屋の扉を鍵ごと吹っ飛ばしたときに」
「……その前置きから既におかしいような気がするのですが」
「威力はそれはもう最小限に抑えたんだよ?……それでね、上手く音も抑えて破壊できたから、ついでにあいつの顔に落書きでもしてやろうかと思ってぐーすか寝てるあいつに近づいたんだ」
「……そこもかなりおかしいような気がするのですが」
「気のせいだよ。……それで、僕特製“絶対消えない油性ペン”を持って顔に近づけた瞬間、ヒースが『シェーラぁ……』って寝言言ったんだよ!ほんと面白いよね!ちなみにその後しっかり指でペン押し戻しながら飛び起きて。それ誰ー?って死ぬほどからかってやった」
……実にえげつない。
「今まで誰なのか必死に隠し通してきたんだけどね。今日やっと分かったよ」

60:2012/03/19(月) 13:54:20 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>ではかぐちゃんと呼ばせて頂きますノシ

うんw呼びタメ全然おkなんっすよw

61月波煌夜:2012/03/19(月) 15:45:33 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>60

かぐちゃんか(゚Д゚)
何か新鮮w

燐は…何か呼び方のリクエストあるかな?

62ピーチ:2012/03/19(月) 16:53:02 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>えー??あたしの小説ってつまんないよ?おもしろくないぞよ?

それでもいーのかえ??←どんな言葉だ!?ww

燐さん>>ひっさしぶりー!!

最近ねーあんまり小説書いてないんだー((笑

63:2012/03/19(月) 17:09:21 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>ちゃんずけ好きだからさw

私の親友も皆ちゃんずけなもんで;

別にないなぁ…。

そのまま燐でもいいよ。

64月波煌夜:2012/03/19(月) 18:01:56 HOST:proxy10071.docomo.ne.jp
>>62

全然構わないぞよw(←なんか無理してみる

というか面白いよ絶対!
そのうち覗きに行きます(o^-')b

65月波煌夜:2012/03/19(月) 18:09:45 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp
>>63

りょうかーいV(^O^)

いやー、皆のお陰(?)であっという間に60超えちゃったよ( ´∀`)
ありがたいなぁー

66ピーチ:2012/03/21(水) 00:01:25 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

燐さんいーなー!!

ねーねー、あたしも「かぐちゃん」って呼んでいい??

67乃亜:2012/03/21(水) 00:12:09 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
初めまして月波さん!!
最初から見ましたがとてもおもしろかったです\(^o^)/
これからも頑張ってくださいm(_ _)m

68:2012/03/21(水) 09:17:53 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
ピーチs>>

気のせいでしょうか。

貴方、少しウザイです。

69月波煌夜:2012/03/21(水) 09:39:55 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>66

勿論良いですよー!
あ、私も呼びタメしていいですか?
こっちだけ敬語もアレなので(・∀・)

70月波煌夜:2012/03/21(水) 09:43:17 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>67

乃亜さんはじめまして!
わああ……お読みいただきまして有難う御座います(〃▽〃)
嬉しいですっっ

これからもどうぞ宜しくお願いします!

71:2012/03/21(水) 09:45:31 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>はろはろ♪

新しいスレ作ったぞー!!

ジャンルはホラーだぞ!!

良かったら読んでみそw

72月波煌夜:2012/03/21(水) 09:58:59 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅱ.『願いのカタチ 3』

「……………………そうですか」
「うん」
ソフィアは、『人の見た目に騙されてはいけない』ということを改めて学んだような気がした。

「―――ところでさ。君は……しあわせを呼ぶ、んだよね?」

―――……来た。
ソフィアはカップを持ったまま、ピシリと全身を硬直させた。
―――……願いを叶えるよう、言われるんだわ。
予想より遅かったけれど。
自分の欲を満たす目的以外で、ソフィアに親切にする人間がいる訳がないのだから。
胸の奥が氷のように冷たくなる感覚が、急速に蘇っていく。
「…………はい」
「やっぱりそうなのか。《紫水晶(アメシスト)》の伝説は本当だったんだね」
シュオンは上品にサンドウィッチを口に運びながら、感心するような声音で呟いた。
目の先の幸福に溺れる彼の表情を見るのが怖くて、ソフィアは唇を噛み、俯く。
―――どうして、私はこんなに恐れているのかしら……。
今まで数え切れない程、求められてきたことだ。
それなのに。
―――……きっと、中途半端に情を移してしまったからだわ……。
不覚にも、ソフィアは。
今日出逢った三人と、ほんの少しだけれど、時間を過ごして。
嬉しい、と。楽しい、と。思って、しまったから。
―――駄目ね、私。
ソフィアは下を向いたまま自嘲する。
感情を、意志を、捨ててきたつもりだったのに。
ただの、しあわせを呼ぶ『モノ』として生きてきたつもりだったのに―――

「ね、どうやってしあわせを呼んでるの?」
「…………………っ?」
ソフィアは驚いて顔を上げる。
驚いたのは、楽しそうに弾むその声が、純粋な知識欲から来るものに感じたから。
今まで、同じ質問をされたことはそれこそ何回もあったが、こんな声で言われたことは、無かった。
ソフィアは一瞬迷い、僅かに震える声で告げる。
「…………わ、わかりません」
正直にこう答えると、相手は決まって動揺し、激昂し、騙されたと怒り狂う。
怖い。でも、
でも、この人は―――?
「君にも分からない、ってことは……君の意志とは無関係に幸せを呼び込んでる、ってこと?」
「……は、い」
「それは……」
彼はしばし言葉に迷う素振りを見せ、それから、
「それは、……つらいね」
「……………え」
さ迷っていた視線を、目の前の人物に向けた。
瞬間、息を飲む。
碧の瞳は深い海のアクアブルーに染まり、真剣さと悲痛な色に満ちていた。

73月波煌夜:2012/03/21(水) 10:01:46 HOST:proxy10063.docomo.ne.jp
>>71

はろはろー♪
授業中なうo(^o^)o

おお!
新スレとな(≧∀≦)
絶対読むよー!

74:2012/03/21(水) 11:14:04 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>授業中?

あれ、中3じゃなかったん?

てか、私より下かww

75月波煌夜:2012/03/21(水) 12:06:08 HOST:proxy10072.docomo.ne.jp
>>74

ぶっちゃけると現高1w
燐はー?

というか年上か…今更ながら呼び捨て&タメ口すみませぬ(´・ω・`)

まあ、あの文章力で年下だったら泣くww

76:2012/03/21(水) 12:17:08 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>いや、春から高1っすw

春から高2か〜w

ま、年上でも私はタメにするw

特別扱いなんてしないw

77月波煌夜:2012/03/21(水) 12:27:41 HOST:proxy10070.docomo.ne.jp
>>76

わ、リアルにまさかの年下!
バカでごめん…(つд`)
タメの方が月波は嬉しいよーw

78:2012/03/21(水) 12:34:32 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

年下でごめんちょm(__)m

馬鹿?

いや、私の方が馬鹿だよw

日本人なのに外国人だと良く間違えられるのも事実ww

79月波煌夜:2012/03/21(水) 12:49:24 HOST:proxyag108.docomo.ne.jp
>>78

いやいやそれはないw

…って外国人!?
何故に!?

80:2012/03/21(水) 12:54:34 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

いや、馬鹿だよw

真面目そうに見えて実は○○でした!!みたいなオチだからw

お父さんに良く言われるんだよ…。

[日本語ちゃんとしてない!!]

とか何とか…etc

見た目じゃなく、性格や口調で良く言われるなw

81乃亜:2012/03/21(水) 15:45:49 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
月波さんコメありがとうございますm(_ _)m
とっても良かったです( ´ ▽ ` )ノ
続きが気になります!!

82月波煌夜:2012/03/21(水) 19:07:40 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>燐

いやいやいやいや(^o^)
って、でも外国人ぽいて言われるって凄い才能だよねw
英語得意だったり?ww

83:2012/03/21(水) 19:09:33 HOST:zaqdadc2a8b.zaq.ne.jp
かぐちゃん>>

いや、得意じゃないなw

国語は得意なんだけどね…。

84月波煌夜:2012/03/21(水) 19:10:42 HOST:proxy10078.docomo.ne.jp
>>乃亜さん

うああああこちらこそ有難う御座います…!
そう言っていただけるとほんと嬉しいですっ(〃▽〃)
全部丁寧に読ませていただくので、どんどんコメしてくださいね!

85乃亜:2012/03/21(水) 22:15:58 HOST:p2178-ipngn100203sasajima.aichi.ocn.ne.jp
どんどんコメしてくね〜( ´ ▽ ` )ノ
頑張ってください!!

86月波煌夜:2012/03/22(木) 10:06:31 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp

Ⅱ.『願いのカタチ 4』

「………………っ」
初めてだった。
誰かが、ソフィアの為にこんな表情を作るのは。
身体ががくがくと震えていことに気づき、ぎゅっと手のひらを握った。
ふと、頭の片隅であの時握ったシェーラの手の温かさを思い出す。
「……百年に一度の《紫水晶》なんだ、この社会の貴族連中はこぞって君を利用したがるだろう。でも、君が望んでそうなっているんじゃないんだろう?……きっと、凄くつらいと思う」
シュオンは、王族の血をも継ぐ誉れ高き名門エインズワーズ公爵家の跡取り息子。
華やかな社交界の裏でひしめく陰謀や画策のことは、重々承知しているのだろう。それらを全て完全に理解した上での彼の言葉は、強くソフィアの胸を打った。
「でもね」
シュオンはそこで一旦区切り、ソフィアの紫の瞳を覗き込んで、言った。
「僕らは、君を利用しない。《紫水晶》の力を利用しようと思って、君を迎え入れた訳じゃないよ。それだけは信じてほしい」
―――……そんなことが、あってもいいの?
ソフィアは、未だに信じられない思いで一杯だった。
―――……ほんとうに?
信じれば信じるほど、裏切られたときの痛みは大きい。他でもない、ソフィア自身が嫌になるほど幾度も経験してきたことだ。
……でも。
―――信じても、いいの……?
「だから……ちょっとずつでもいいから、仲良くしてくれたら嬉しいな」
シュオンは頬を僅かに染め、照れくさそうに、少年のようなあどけない微笑みを作る。
今までの、甘くとろけるような魅力的な微笑とはまた違うその笑顔。
「…………………!」
思わずソフィアの胸がきゅんっと高鳴り―――
―――き、きゅんって何よばかじゃないのっ?
とても相手の顔を直視できなくて、また光の速さで下を向く。
頬や耳が焼けそうなほど熱くなり、その妙に居心地の悪い感覚に、意味もなく椅子にもぞもぞと座り直してみる。
優しい春の風が、心地良い沈黙を守る二人の頬の熱を攫い、金と銀の髪をサラサラと揺らしていった。

と、そこで。
「ヒースぅぅうううう!はあっ、はあっ……いい加減答えなさい!シュオン様とはデキてるのデキてないのっ?」
「デキてる訳がねぇだろうが気色悪い!つかいつの間にどんだけ趣旨変わったんだよ明らかにおかしいだろ!」
「はあっ……今メイドの中で超話題なのよ!?あたしは良くわかんないけどさ!何か自分たちで『シュオン様×ヒース』だっけ?……いろんな本を作って売り買いしてる子もいるんだから!」
「ぎゃああああああああああッ!」
やたら女がキラキラした目で見てくると思ったよちくしょおおおおお、と叫びながら全力疾走するヒース、と息切れしつつも必死に追いかけるシェーラ。
「……………中、入ろっか」
「……………はい」

ソフィアとの良い感じの空気を邪魔されたシュオンはにこにことした笑みを取り戻しながらも、その瞳は一ミリたりとも笑っていなかった。

87ピーチ:2012/03/24(土) 14:01:03 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

久しぶりーー!!

うん!タメでも何でもいーよーww←自分が敬語使え!

88月波煌夜:2012/03/24(土) 19:43:24 HOST:proxyag116.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 5』



アルコールランプの青と橙の炎が、薄暗い部屋を妖しく照らし出す。
フラスコや試験管、様々な実験器具が無造作に転がる、気味が悪い―――もとい、個性的でとても味わいのある部屋の奥、青年が一人、粗末な椅子に座っていた。
闇の中、本人の輝きで、精緻な美貌が浮かび上がる。
髪は純金、瞳はサファイア。滑らかで、健康的な美に溢れた仄白い肌。
美青年は蠱惑的に碧い瞳を細め、恍惚とした眼差しで手に持ったビーカーの中の揺らめく液体を見つめた。
「そろそろ、かな……」
呟き、熱していた試験管を手に取り、中の琥珀色の液体をビーカーに流し入れる。
「ふふっ……」
薄く、形の良い唇から吐息と共に嘲(わら)い声が漏れ―――
「シュオンいるかー?って暗ッ!」
目つきと言葉遣いの悪い青年―――ヒースが扉を勢い良く開けた。
「わっ」
突然の侵入者と急についた明かりに、薬品を調合していたシュオンの手元が狂い、試験管が床に落ちて中の液体を吐き出す。
「あああああ……っ!この薬液、精製するのに一週間かかったのに……!」
悲痛な表情で床にしゃがみこむシュオンを見て、ヒースがばつが悪そうな顔で頭を掻く。
「わ、悪かったよ……。あー……何作ってたんだ?」
シュオンはたちまち花が咲いたような笑顔になり、
「致死率99%、超高純度濃縮毒液キャンディ」
「前言撤回だッ!ま、ま、またお前はぁ……!で、でも良かった阻止できて……」
「え、もう完成してるよ?」
シュオンが机の上のビーカーを指差す。
「それを早く言えぇッ!」
ヒースがビーカーを覗き込み、
「……なあシュオン、俺はこーいう化学とかには全く詳しくないんだが……何でこの固形物蛍光ピンクなんだよ!出てる煙も極彩色だし明らかにおかしいだろッ!?」
「え、綺麗でしょ?」
「お前の感性には心底脱帽するわ!」
「やだなぁ、そんなに褒めないでよ気持ち悪い」
「褒めてねえ―――!つーかお前ほんと性格悪いな!」
「有難う、最高の褒め言葉だよ」
「うがぁ―――ッ!」
「あはは。こんなにバカにして楽しい人ってそうそういないよねえ」
シュオンは軽やかに笑う。その純粋で子供っぽい笑顔は普段彼が振りまいている大人びていて華やかな微笑とは全く違い、そのギャップに、目にした女性は魅了されてしまうのだが、残念ながらというか幸運にもというか、今向き合っているのは野郎一人なので問題はない。
「……ねえヒース、ソフィアはどうしたの?」
ふと疑問に思ったシュオンは、ぎぎぎと歯軋りしているヒースに聞いてみる。
ちなみに、こんな単純バカだが、従僕(フットマン)の中でのヒースの能力や反射神経はずば抜けている。
本人曰わく『散々小せぇ頃からお前の度を超した悪戯に身体で耐えてきたからな、そりゃ鍛えられるわ』とのことなのだが、そんなことはシュオンには関係ないので気にしない。
「仮眠取る時間貰ったんだよ、四時間くらい。今は他のやつに代わってもらってる」
「ふーん。昨日は寝たの?」
「んな訳ねーだろ。ここ連日公爵とお前にほとんど不眠不休でこき使われ続けた上に、昨日からは御嬢様の部屋の前張ってたんだからな」
……さすが、とシュオンは内心にやりと笑う。
こちらを睨むヒースの顔には、疲労の色は全く見えない。
こうでなくては、自分の親友は務まらないというものだろう。
「……ん。お疲れ」
「な、何をたくらんでるんだよ……お前が俺を労(ねぎら)うとか、何かの前触れだとしか思えねえ……」
シュオンはにっこり笑顔のまま、明日のヒースの休憩時間に、珍しい薬品の材料の調達を命じることを決定した。
「で、わざわざその仮眠時間に、なんでわざわざ僕を探しにきたわけ?」
「お前絶対薬液駄目にしたの根に持ってるだろ……」
「そんなことないよ?」
怖ええ、と顔を引きつらせつつ、ヒースはこう切り出した。

89月波煌夜:2012/03/24(土) 19:49:16 HOST:proxyag115.docomo.ne.jp
>>ピーチ

有難う!
でわでわ遠慮なく(≧∀≦)

月波のことも好きなように呼んでくださいな♪

90ピーチ:2012/03/25(日) 01:07:05 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

・・・こっちの方が慣れた・・・←意味無いことをする大バカww

まぁ・・・いーよねー((笑

91月波煌夜:2012/03/25(日) 11:33:41 HOST:proxy10066.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いーよね(^-^)v

92ピーチ:2012/03/25(日) 12:29:09 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

だーよねー^0^

更新待ってまーす!!

93月波煌夜:2012/03/25(日) 17:54:43 HOST:proxy10046.docomo.ne.jp
>>ピーチ

有難う!
がんばるよー( ´艸`)

94月波煌夜:2012/03/25(日) 22:23:31 HOST:proxy10064.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 6』

「シュオンお前―――御嬢様と面識があるのか?」
その問いに、シュオンは一瞬で、お得意のその場を誤魔化す言葉をいくつか思い浮かべたが、
「…………………」
真剣な輝きを帯びた漆黒の瞳を見て。柳眉を下げ、諦めたようにふうっと一つ嘆息し。
「………何でそう思うの?」
「勘」
ヒースはきっぱりと断言する。
「つーかさ、研究馬鹿で女嫌いのお前が女と進んで話すってこと自体おかしいんだよ。いっつも猫かぶってよー……女なんか釣るだけ釣ってテキトーにあしらって終わりだろ?でも、御嬢様のことは散歩にまで誘った。御嬢様が美人だとか……そーいう普通の男が考えるようなことは、お前は絶対考えない。だったら他に理由があるとしか考えられないだろ?」
「それで、僕がソフィアと会ったことがあるって考えたのか。へえ、ヒースにしては頭回るじゃない」
「余計なお世話だッ!」
「しかも正解。……まあ、ソフィアは覚えてないみたいだけどね」
シュオンは肩をすくめ、微苦笑してみせる。
ヒースはそんな悪友の様子をちらと見、
「………何処で、とか、聞いてもいいか?」
思わず吹き出しそうになった。
―――こいつが僕に遠慮する日が来るなんてね。
恐ろしく似合わない。
「ふふっ……まあ、そんなに凄い話でもないんだけど」
そう前置きをして、シュオンは瞳を閉じ、穏やかな表情で、遠い日に思いを馳せた―――

95月波煌夜:2012/03/26(月) 09:04:03 HOST:proxy10042.docomo.ne.jp


Ⅱ. 『願いのカタチ 7』



「本日はお招きいただきましてきょうえつしごくです、はくしゃく夫人」
シュオンが教え込まれた挨拶を危なげなくこなすと、彼を取り囲むルーフェ伯爵夫人やその娘たちが、きゃーっと黄色い歓声を上げた。
十歳という実年齢よりやや幼く見える彼は、社交界の女性方に大人気なのだ。
蜂蜜色の髪も宝石みたいな碧眼も、つんと尖った小さな鼻も、真っ白な肌につやつやしたさくらんぼ色の唇も。人形のように愛くるしく整った容貌は、天使という例えがぴったりだ。
「シュオン様は本当に可愛らしいですわねえ、公爵。将来が楽しみですわ」
「そうでしょうそうでしょう。それにシュオンは驚くほど頭が良いのです。もう何人家庭教師を代えたことか」
「まあ」
―――……アホか。
シュオンはにこにこと完璧な笑顔を保ったまま、心の中で毒づいた。
可愛い可愛いと言われても全く嬉しくない。むしろ吐き気がする。
それに、こっちを見ているあの娘たちの目。飢えた獣のようにギラギラしてるじゃないか。
将来良い結婚をするようにと散々親に言われているのだろう。
絶対的な権力を持つ名門中の名門、次期エインズワーズ公爵なんて恰好の餌だ。
―――くだらない。
「……すみません。少し気分が悪いので、外ですずんで来ます」
「まあっ、大丈夫ですか?冷たいお水はいる?」
「いいえ。そのおきづかいだけで十分うれしいです。……それでは」
「シュオン、くれぐれも無理はしないようにな」
「はい。父上」
もう、シュオン様は本当に良い子ねえ、という声を背に、幼いシュオンは伯爵邸の庭園に向かった。
一人になりたかった。
醜悪な世界から、少しでも離れたかった。
公爵家の跡取りに生まれた自分は、あの世界から逃げることはできない。
誰よりも上手く社交を展開し、立場に恥じないような振る舞いをしなければならない。
シュオンは歩きながら嘆息した。
外に出ると、夜の涼やかな風が火照った頬を撫で、熱を奪っていく。
座る場所を探して見回すと―――眩しい銀色が、視界をよぎった。
少女だ。
しゃがみ込んで、薄紫の小さな花を熱心に覗き込んでいる。
「……花、好きなの?」
何となく。シュオンは歩み寄り、少女の背に話し掛けた。
少女がぱっと振り返った。
二つに結った長い髪が風に踊る。
「――――――――っ!」
シュオンは息を飲んだ。
月の欠片が淡く紡ぎ出した幻影のような、儚げな少女だった。
年の頃は七、八だろう。
凍てついた氷河を思わせる、一部の隙も無い冷ややかな美貌。
……そして。
こちらを見上げた少女の輝く瞳は、鮮やかな紫色で。
―――《紫水晶(アメシスト)》っ?
「いいえ」
はっと我に返る。
透き通った、硝子の鈴を転がすような声色。
「めったにお花なんて見れないから」
―――……めったに見れない?花が?
シュオンはぽかんとした。
―――何で?
訊きたくなったが、少女が哀しげに長い睫を伏せるので、押しとどめた。話したくないことなのかもしれない。
「君の目……きれいだね」
少女の隣に座り込んでこう言った途端、少女が大粒の瞳を見開き、それから、
「……ありがとう」
ふわっと。幸せそうに、嬉しそうに、微笑んだ。
凄い破壊力だ。シュオンはドキリとしてしまう。
「あなたは……お花、好き?」
「うーん。嫌いじゃないけど……。ともだちとか、大人を困らせるのがいちばん好きかな」
何それ、と少女はまた笑った。
夢のようなひとときだった。

96月波煌夜:2012/03/26(月) 09:53:26 HOST:proxyag117.docomo.ne.jp

Ⅱ. 『願いのカタチ 8』

シュオンは、自分がこのちいさな少女に惹かれていくのを、確かに感じた。
他愛のない話を少ししたあと。
「君の名前は?」
こう訊くと、少女はきょとんとして、それからしばらく、うーんと考え込み、
「………………………ソフィア」
「ソフィア、ソフィアか。僕は―――」

「《紫水晶》!」
会話に乱入してきた男の声が大音量で響き、二人はそろってびくりと震えた。
「どこに行ったかと思えば……!今から伯爵とお会いするというのに、折角の土産が消えたらと思うとぞっとしたぞ」
男はずかずかとソフィアに近づき、今にも折れそうなほどか細い手首を掴んで、引っ張った。
その痛みに、ソフィアの美しい瞳から、一雫の涙が零れる。
「ソフィアに何するんだ!」
シュオンは立ち上がり、男に向けて怒鳴った。
「こ、これはこれはエインズワーズの……」
男はへりくだった下品な笑みを浮かべ、
「はは。大丈夫です、コレを悪いようには致しません。大事な《紫水晶》ですからね」
―――そうじゃない!
シュオンは再び叫ぼうとしたが、
「…………………」
ソフィアが眉を下げ、『もういい』とばかりに首を横に振るので、ぐっと口を結んだ。
「それでは、失礼致します」
男は、無抵抗のソフィアをずるずると広間に引きずって行く。
ソフィアが引っ張られながらも、こちらを向いた。
『……さよなら』
その形に、唇が動く。
シュオンは二人が消えた方を見つめたまま、しばらく突っ立っていた。
ソフィアが見つめていた小さな花が、もの言いたげに、揺れた。







「―――と、いう訳なんだよ」
19歳になったシュオンは、話の終わりを結んだ。
「彼女の瞳と笑顔が、忘れられなかった。彼女を、しあわせにしてあげたいと思った……その為に、噂を嗅ぎつけてカークランド伯爵とも仲良くしておいたんだしね」
ほんとに僕らしくないでしょう?と、シュオンは壁に寄りかかった悪友に笑いかける。
「それに、火薬とかの発明にハマりだしたのも、ソフィアのことを忘れられるかもって思ったからなんだ……結局忘れられなかったけど」
「……じゃあ、お前が御嬢様と会ったときに庭園に誘ったのは」
「僕のこと、思い出してくれるかなーとちょっとだけ思ったんだよ」
シュオンは寂しそうに笑った。
「まーったく知らんかった……何でずっと相談しなかったんだよ?」
「え、ヒースごときに相談なんかして意味あるの?」
「うぐぐぐぐぐぐぐ!?」
獣のように唸るヒース。
「ま、そういうことで僕の話はおしまい」
「じゃあ……御嬢様のことはこれからどうするんだよ?」
「んー……彼女、変わっちゃったからねえ……。少しずつ、心を溶かしていってあげたいなーとは思ってるんだけど」
「そーいうの得意じゃねえのか?」
「お世辞とかなら得意だけど意味ないもん」
二人は黙って考えていたが、突然ヒースが膝を叩いた。
「そうだよ!人の気持ちを和ませる特技、お前にもあるじゃねーか!見せて差し上げれば良いんじゃねーの?」
「……どの特技?」
「嫌みかッ!あれだよあれ―――」

97ピーチ:2012/03/26(月) 14:02:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

わぉぉ!!凄い文章力!!

え?シュオンの特技(?)って何々??

98月波煌夜:2012/03/26(月) 15:09:07 HOST:proxyag114.docomo.ne.jp
>>ピーチ

いつもコメありがとう!
キャラの名前出して感想くれると凄く嬉しいんだよー(≧∀≦)
シュオンの特技は……シェーラが最初に話してたとこにさらっと載ってたり。
明日あたりに、できればまた更新する予定だからお楽しみに☆

99ピーチ:2012/03/26(月) 16:46:30 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
かぐやさん>>

マジマジ??でもあたしさー、最近ちょっとコメ遅れたよ>M<

ゴメン!!

明日かぁ〜!ちょー楽しみー!

うん!待ってるよ〜^0^

あ、そーだ。かぐやさんのことツッキーみたいな呼び方してもいい??

100月波煌夜:2012/03/26(月) 17:48:18 HOST:proxyag045.docomo.ne.jp

†祝☆100レス突破†
〜シェーラ&ヒースによるラジオ風コメント〜


「ぎゃあああああすげえ無茶振りきたぁぁぁあああああああ!?」
「みんなやっほー☆シェーラお姉さんだよー♪『紫の歌』読んでくれてありがとーっ!」
「順応してやがるッ!意外にも!」
「んーと、えーと、ここでは『紫の歌』の裏話とか紹介していくつもりらしいです!いぇい☆」
「激しく誰得!?」
「まずタイトルですがー……ぶっちゃけテキトーだそうです」
「ホントこれやる意味あんの!?なあ!?」
「『紫の乙女』はソフィア様だよね。『幸福の歌』はなんか語呂が良いから何となくだそうで」
「あとで無理矢理つじつま合わせするんだろうな」
「はい、次に登場人物〜。最初はやっぱりソフィア様だよね!彼女の設定『紫の瞳』は……月波の趣味だそうで」
「最悪だな」
「銀髪も、ツインテも、クーデレヒロインが目標なのも、全部月波の趣味だそうで」
「今これを読んでくださっている神様女神様読者様、そろそろキレていい頃合いではないかと俺は思う」
「ヒースはせっかちねえ。カルシウム摂りなさいカルシウム」
「がぐぎがががががが」
「次、シュオン様。最初は頼りない弱虫キャラにするつもりだったんだってー」
「ええええええええ」
「今は軽く腹黒っぽくなってるよねー。最初の登場人物紹介で『心優しい』とかあるよね」
「あ、あいつが優しい……?嘘だろ……?御嬢様限定じゃねーの?」
「え、シュオン様あたしにも優しいよ?」
「それは猫被ってるからだ!」
「そ、そんなにムキにならなくても……はっ!ヒースあんたやっぱり……」
「や、やっぱり?」
「シュオン様のこと好きなのね!?」
「どうせこんなことだと思ったわ畜生!違えしッ!」
「そうよね、シュオン様はソフィア様のことばっかり……。つらいよね。大丈夫、どうしてもつらくなったときはあたしに言って?慰めるから」
「うが―――――!」
「で、次にあたし、シェーラ!あたしは最初はソフィア様の恋路を邪魔するおしとやかなお嬢さんっていう設定だったんだってー」
「ええええええええええええええええッ!?」
「で、月波が『やべえこれ絶対暗くなる』ってことでこの性格にした、と」
「それでお前の脳天気なアホキャラが確立したわけか」
「えへへぇ」
「何故照れる」
「それから最後にヒース!ヒースは、当初の計画では、……いませんでした」
「俺の扱い一番ひでえ―――ッ!?」
「ツッコミポジション大事だもんね、ってことで急遽追加。しかも、シュオン様の親友って設定なのはぁ」
「うん?」
「腐ってる月波の趣味」
「殺す―――――!?離せシェーラ!あいつを闇に葬り去る!」
「あはは。それでは謝辞に移りたいと思います」
「あ?謝辞ぃ?」
「うん。えっとぉ、二回以上こちらのスレに書き込んでくださった皆様へ、贈ります」
「ホントありがてぇな。頭が上がらねー」
「ってことで、まずは燐さん!書き込みありがとうございます!これからも他愛のないことでもだべりましょう☆」
「俺からも」
「で、乃亜さん!コメントいつも癒されてます!どんどんよろしくですー♪」
「よろしくお願いします」
「最後にピーチさん!最近ほとんど毎回コメくれて……ホントありがとうございます!これからもよろしくね☆月波のことは何とでも呼んでね!」
「『この低脳が』とかでも構わないですよー」
「最後に!ここまでお付き合いくださった皆様!ありがとうございましたと♪」
「そんな人いるのか……?あー、これからも、御嬢様の恋の行方を見守ってくださいね」
「それではー!」

101彗斗:2012/03/26(月) 17:49:42 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
話を最初から全部読んでみました。
本当に面白いです!! 見ていてフッと笑ってしまいます。こういう物語は結構好きです。
ちょくちょく見に来ます。後、時間さえあればコメントも出来るかと…


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