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蝶が舞う時…。 ―永遠―
100
:
燐
:2012/01/22(日) 14:30:25 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
100行ったぜw
ひゃっはーw
101
:
燐
:2012/01/22(日) 15:13:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「その事なんだけど…やっぱ私と別れてくれないかな…。
誠の手紙見て分かったんだ。何時までも逃げてちゃ駄目だって…。
誠は…私の手で何とかしなくちゃって思っちゃって…。
だからごめん…!!」
私は席を立ち上がって亮介に向かって深く頭を下げた。
「いきなりかよ…。でもいいよ。じゃせめて友達って事で居させてよ。
誠の事で何かあったら俺や姉ちゃんが力になるからよ。遠慮せずに何でも言えよ。」
亮介は笑顔で言った。
「そうよ夜那ちゃん。あたし達友達でもあるんだし。」
南さんは笑顔で言う。
友達…。
その言葉は私の心を大きく動かした。
「亮介…南さん…ありがとうございます!!」
そう言った直後だった。
店に一本の電話が入って来た。
南さんは傍に置いてあった小型受話器を手にとって耳に当てた。
102
:
燐
:2012/01/22(日) 15:33:19 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「はい。fiore・giardinoの南です。はい。分かりました。少々お待ちください。」
南さんは受話器を耳から離して私に差し出した。
「夜那ちゃん。誠さんのお母様から。」
南さんはいつもの笑顔で言った。
私は受話器を耳にあて深呼吸してから一声を発した。
「もしもし。」
『あっ夜那ちゃん。朝から何処に行ってたの!?急に居なくなるから失踪かと思ったわ…。』
誠のお母さんは心配そうに言う。
「そうじゃないんです。詳しい事は帰ってから言うので。」
私は落ち着いた口調で言った。
『それより…誠が居なくなっちゃったのよ。』
えっ――…?
居なくなった?
その時私の手から誠から貰った手紙が地面に落ちた。
受話器を握り締め、ただ硬直していた。
地面に落ちた手紙は亮介が静かに拾い上げた。
103
:
燐
:2012/01/22(日) 15:53:14 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何だこれ…。これって誠が書いたのかよ。つーか…この花ってアツモリソウじゃねーか?」
亮介は不思議ように紙をジロジロ見る。
『…と言う訳だから夜那ちゃんも今から誠を探してね。私も今から探してみるから。』
そこで会話は途切れた。
「おい夜那ちゃん!大丈夫か?」
亮介の声に私は我に返った。
「えっ…!?あっ…ごめん。聞いてなかった。。」
私は席を立ち上がって扉方面に向かった。
「夜那ちゃん…。きっと誠はもう限界なんだよ。だからアツモリソウなんて絵を描いたんだよ。」
亮介は冷たい口調で言った。
104
:
燐
:2012/01/22(日) 16:59:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「アツモリソウ…。花言葉は?」
私は訊く。
「…“君を忘れない”だよ。本当はこんな事言いたくないんだけど…。
きっと誠は今でも自分を責めている気がしてさ。もしかしたら夜那に幸せになって欲しくて
自分は死ぬ気なんじゃないかな…。」
えっ…。
死ぬ気?
誠が…?
私は唇を思いっきり噛み締めた。
「となれば早く探さなくちゃね。あたしも協力するね。今日はお店閉店にしておくから。」
南さんはそう言って私の紅茶のカップを下げて、奥の部屋に行ってしまった。
しばらくして南さんはお店用の服からラフな格好になった。
「鍵閉めるから二人とも外に出て。それと夜那ちゃん。これ履いて。」
南さんに渡されたのは黒のスニーカーだった。
「大丈夫。サイズは問題ないから。あたしのお古だけど…サンダルじゃ歩きにくいでしょ?
そう思って持って来たの。」
南さんは笑顔で言った。
105
:
燐
:2012/01/22(日) 17:14:51 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
南さんのその優しさに私は思わず泣いてしまった。
「何泣いてんだよ。夜那ちゃんって泣き虫なんだな。」
亮介は笑いながら言った。
「泣き虫…かもね。」
私はすぐに泣き止んで南さんから渡してくれた黒いスニーカーを履いた。
たしかにサイズはぴったり。
きつくもないしブカブカでもない。
ちょうどいいサイズだった。
「どう?」
「ちょうどピッタリです。ありがとうございます。」
106
:
燐
:2012/01/22(日) 20:17:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「さて、誠さんを探しに行きますか。」
南さんは陽気に言った。
「姉ちゃん…。本当に店休んでいいのかよ。最近なってまた店が繁盛して来たのにさ。」
「いいの。大切な友達の為に頑張らなくちゃならないしね。」
南さんは仁王立ちして言った。
「姉ちゃんは暢気でいいよな。俺とは大違いだな。」
亮介は呆れた表情をする。
「アンタは元気が有り余ってるだけ。さっさと行くのよ。」
南さんは亮介の背中を押して外に追い出した。
「南さん…ちょっとやり過ぎなんじゃないんですか?」
私は横から入る。
「いいの。亮介にとってはいい薬でもあるし。」
そう言うと南さんは指と首をポキポキと鳴らし始めた。
「…でも亮介が可哀想です。」
「そうだよ姉ちゃん。たまには弟の気持ちも分かってよ。」
亮介は私の後ろに隠れた。
「はいはい。さてと鍵も閉めたし、さっそく探しに行きますか。」
107
:
燐
:2012/01/22(日) 21:21:57 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そうだな。こんな所で喧嘩してても埒が明かねー…。とりあえず俺は向こうの方面に当たってみる。」
亮介はそう言って行ってしまった。
「亮介もいい加減な奴よね。ま、あたしに似て面倒見いいし。」
南さんは嬉しそうに言う。
「いい加減じゃないです。私より頼りになる人で正義感もちゃんと持ってる人です。
あの顔じゃきっとモテますよ。」
私は冗談半分に言った。
「亮介が?ないない。だって告られた事ないって言ってたし。さ、話はこれぐらいにしてあたしはあっちの方を探してみるわ。」
南さんはそう言うとその場を立ち去ってしまった。
一人残された私はしばらくその場で佇んでいた。
私はパーカーのポケットに手を突っ込んで、ハートのペンダントを取り出した。
憐…。
この2ヶ月間ぐらい私の傍に居てくれてありがとう。
このペンダントがあったから辛い事も乗り越えられた。
でももう迷わないよ。
誠は私が助ける。
今までの全部を誠に恩返しする。
憐…この事が解決したらもう向こうに行って?
ずっと私の傍に居たら何かと辛いと思うし…。
私憐にだけは迷惑かけたくないから…。
私の我儘かもしれないけど…。
108
:
燐
:2012/01/23(月) 12:02:01 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私…いつも誠に守られてたのかな…。
誠が傍に居てくれたから今まで生きられたんだ…。
きっと誠が居なかったら今の私は居ない。
今思えば今まで誠に何一つ借りなんていう物を返してない。
私も馬鹿だな…。
本当に馬鹿だよ…。
今まで生きてきて大切な存在に何一つお礼なんてしてない。
だから今回で全部…今まで分をちゃんと返す。
そう決めたんだ。
もしかしたら誠は…あそこに居るかもしれない。
一か八かと賭けに出てみるしかない。
いつの間にか私はその場所へと足が動いていた。
109
:
燐
:2012/01/23(月) 13:51:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
“あそこ”とは半年前誠が一時期入院した病院だった。
半年前のあの日…誠は私に指輪を渡してくれた。
あの時の誠の笑った顔…今でも忘れられない。。
私は病院の前に着くと、何の躊躇いもなく病院内に足を踏み込んだ。
病院内に入ると人盛りはなくてがらんどうだった。
ロビーの受付には誰も居なくて急に不安になった。
本当に大丈夫だろうか。
私は手に持っているハートのペンダントを首につけた。
ペンダントを首に身に付けた私は屋上を目指した。
階段を上って屋上に続く扉の前に着いた私は小さく深呼吸をした。
此処で怖気づいて逃げては駄目だ。
私は意を決して屋上の扉をゆっくりと開いた。
110
:
燐
:2012/01/23(月) 14:23:01 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
屋上の扉をゆっくりと開き、私は屋上に足を踏み込んだ。
屋上は冷たい風が吹き向けていた。
でも屋上には誰も居なかった。
「居ない…か。」
そう思った時、私の前方から青い蝶が青い燐粉を飛ばして私の目の前に来た。
「蝶さん…。」
蝶は私の前で一回転すると屋上の右側にあるこの病院の空調設備みたいな所で止まった。
私は蝶の所へ駆け寄ると誰かが蹲っていた。
「…誠?」
私はしゃがみ込んで誠の頭を撫でようとした。
「…何で此処に来たんだよ…。」
誠は威嚇するような声で言った。
111
:
燐
:2012/01/23(月) 15:33:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「誠を助ける為に来たの。誠を過去から救う為に。」
「うるせぇよ。お前なんかに俺の気持ちなんか分かるか。」
誠はそう言うと右手に握っていたカッターで左手首を切った。
スッーと赤い血が地面に滴り落ちる。
「止めて!」
私は誠の左手首を左手でそっと握った。
「お節介なんていらねぇから。もう帰れ。」
誠は私を睨みつけながら言った。
「帰らない!誠が立ち直ってくれるまで私は帰らないから!!」
私は強気に言った。
「…お前に分かる訳ねー…。俺がずっと耐えて来た苦しみなんて誰も分かってくれねぇ。」
誠は弱々しい声で呟く。
「たしかに分からないよ…。でも誠は私に言ったよね?救う事は出来なくても支える事は出来るって…。
だから今度は私が誠の盾になる。」
「分かったような口聞いてんじゃねぇ…。」
誠は私の左手を強引に振り解き、また左手首を切ろうとした。
「もう自分を傷つけるのは止めて…。」
私はカッターの刃を左手で握り締めた。
左手が微かに震えてる。
112
:
燐
:2012/01/23(月) 15:55:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私の左手の指の間から血が流れ落ちる。
「…何でそこまでする必要がある。」
誠の声は怒りに満ちている。
「だって大切な存在の為に救いたいの。誠はずっと私を守ってきてくれた。
半年前のあの日から…私の人生は大きく変わった。誠が私の家の隣に引越して来てくれて
から全てが変わった。きっと誠が居なかったら永遠に死ぬまであんな事を繰り返してたかもしれない。
それに誠に出会えたから恋も出来たし、生きようと思えたんだ。今頃誠に会ってなかったら私は死んでた。
だから生きてて良かったって思ってるよ。辛い事や苦しい事があっても今まで2人で乗り越えて来たじゃない。
だからこの先も二人で頑張っていこうよ。」
私がそう言うと誠が握っていたカッターの力を緩めて地面に転がり落ちた。
113
:
燐
:2012/01/23(月) 19:15:24 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…でもお前は亮介を選んだ。亮介は俺よりお前を大切にしてくれるだろうな。」
誠はゆっくりと地面から立ち上がった。
「…選んでないよ。昨日はそう宣言されて渋々了承しちゃったけど…。
私には誠しか居ないし…。今日ちゃんと断ってきた。」
私が笑顔で言うと誠も薄笑いで呟く。
「断ってきたって…アイツがそう簡単に諦める訳ねーよ。俺に似て一途な奴だし。」
「…今笑ったね。」
私は誠の顔を覗きこみながら言った。
「……。」
誠は黙って手で顔を隠す。
「あれ?もしかして恥ずかしかった?」
私はクスクス笑いながら言う。
「見んな。」
誠はそう言い放つと私に背を向ける。
まだ怒ってるのかな?
私は心の中でそう思った。
「後…誠の手紙見たよ。誠は…死ぬ気なの?」
私は単刀直入に言った。
「…うん。って言ったらどうする?」
誠は上を見上げながら言った。
114
:
燐
:2012/01/23(月) 20:06:04 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「冗談は止めて。こっちは真剣なの!!」
「お前さ…変わったな。」
ぼそっと出た誠の言葉。
「変わったって何が?」
私は首を傾げる。
「惚けんな。自分が一番よく分かってるくせに。嘯く真似は止めろ。
それに俺が好きだった夜那はもう何処にも居ない。この2ヶ月間でお前は大分変わった。
性格も…全てが変わった。だから正式に別れてくれないか?」
誠の言葉に私は唇を噛み締めた。
本当は別れなくなんてない…。
でも誠がそれでいいなら私はそれで構わない。
「やっと見つけたぜ。お二人さん。」
その声に後ろを振り返ると亮介と南さんが立っていた。
「亮介…。」
私が呟くと亮介は私に近づき、私の左腕を強く引いた。
「ちょっと亮介。夜那ちゃんまた嫌がってるじゃない。」
南さんに注意され、亮介は手を離す。
115
:
燐
:2012/01/23(月) 20:40:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「わりぃ。てかよ…誠。お前また夜那ちゃんを泣かせるような真似しただろ!!
お前はどうしてそんな変になっちまったんだよ…。」
亮介の言葉に誠は急に笑い始めた。
「はは…お前も面白い事言うな。変じゃねーよ。寧ろ正常だぜ?」
「じゃその手首の傷は何だよ。」
亮介はすぐさま誠に指摘すると、誠は黙り込んだ。
「お前なぁ…いい加減にしとけ。過去の事もあるけどさ…何時までもそうやって引き摺って生きていくつもりか?」
「亮介に俺の何が分かんだよ。何も知らないくせに良く言うぜ。」
誠は鼻で笑って言った。
「たしかに俺はお前の何も知らねぇ。だけどよォお前だって今の今まで辛かっただろ?
一回さ…その辛かった分を俺に肩代わりさせてくれよ。そうすればお前の心の闇は少し晴れるかもしれねぇだろ?」
亮介は明るく言った。
「肩代わりだと?そんな事出来る訳でもねーのに何言ってんだよ。」
誠はそう言って再び地面に座り込んだ。
「ああ出来るさ!たぶんだけどな…。」
亮介は笑って誤魔化す。
116
:
燐
:2012/01/24(火) 15:11:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…お前の発想は相変わらず単純だな。」
誠は素っ気なく言った。
「単純で悪かったな。とりあえずさ…家に帰ろうぜ。朝方は寒いしさ。」
亮介は腕を擦りながら言う。
「…なぁ…亮介。」
誠はゆっくりと立ち上がった。
「ん?どした?」
亮介が訊く。
「…お前のお陰で少し頭が冷めた気がする。サンキューな。」
誠は亮介の肩に手を置く。
「夜那…。」
誠に呼ばれ私は振り向く。
「夜那にも迷惑かけたな。ごめんな…。」
誠はそう言って私を軽く抱擁した。
「ううん。誠が謝る事じゃないよ。」
私は言ったが、何か違和感があった。
妙な胸騒ぎがする。
何かがまだ終わってない。
そんな気がした。
117
:
燐
:2012/01/24(火) 18:30:16 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「さて一件落着したし。今からでも俺ん家に来いよ。」
亮介は私にグットポーズをした。
「一件落着じゃないでしょ!!今からでも帰って学校行ったらいいじゃない!!」
南さんは口を尖らせて言った。
「姉ちゃん。そんなに怒んなよ。そんなんだから姉ちゃんには何時まで経っても
彼氏が出来ないんだよ。」
亮介は呆れた表情で言った。
「アンタだって一回夜那ちゃんに振られてるくせに良く言うわね。」
南さんはクスクス笑いながら言った。
何かこの二人…漫才コンビみたい。
一緒に居るだけでこんなに笑えるんだから。
「亮介も止めとけ止めとけ。みっともねーよ。」
誠が笑いながら横から入り込む。
「みっともない訳ねーよ。姉ちゃんが悪いし…。」
「何でアンタはいつも人のせいにすんの!!まったく…懲りない弟だわ。」
南さんは亮介の頭に拳骨を入れる。
「いてぇ…。てか本当の事じゃんか。」
「煩い。アンタのその口引き破ってあげようか。」
南さんはそう言って亮介の口を左右に引き伸ばした。
118
:
燐
:2012/01/24(火) 23:18:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「姉しゃん…ちょっとおしょくっただけじゃん…。いたたたた。」
亮介は笑いながら抵抗する。
「今笑ったんじゃないの?姉を愚弄する気でしょ?」
南さんはさらに亮介の口を横に引っ張る。
「いだだだだぁぁぁ!!…破れる…さすがに破れるぞこれ…。」
亮介の声は涙声になっていた。
「南さん…もう止めたらどうでしょう。亮介が可哀想です…。」
「夜那ちゃんがそう言うなら止めるわ。」
南さんから解放された亮介は地面に尻餅をつく。
「ガチでいてーよ。もっとさ…弟には優しくしろよ。」
「何でそんな上から目線なの?まだ懲りないなら今度は腹に殴りこみよ。」
南さんは妙にワクワクしながら言った。
「もう良いですから…。」
私は止めに入る。
「はぁ…。夜那ちゃんが止めてくれなかったら今頃俺は姉ちゃんに殺されてたな。」
亮介は笑いながら言った。
「殺されてたって?なんなら今からでも瞬殺してあげるよ。」
南さんはそう言うと指をポキポキと鳴らし始めた。
「もう良いですってば…。」
「あっごめん。」
南さんは我に返った。
南さんってドS過ぎるよ…。
に引き変わって亮介は南さん相手にいじられキャラって言うか…。
「さっさと帰るぜ。こんな所に長居してたら日が暮れちまう。」
亮介は欠伸をしながら言う。
「日が暮れるってまだ朝方だぜ?」
誠が横から突っ込む。
「あ…そう言えばそうか。でもどっちでもいいじゃんか。ははは…。」
亮介は大笑いしながら歩き出した。
「アンタ何馬鹿笑いしてんの。笑われるよ?」
南さんは呆れた表情をしながら言った。
「笑われてもいいっすよ。俺はどうせ馬鹿ですから。」
「それ全然自慢になってないし。」
南さんは亮介の頭に拳骨を一発入れる。
「いてぇ…。何も拳骨する事ねーじゃんか。」
「いいの。アンタにとっては良い薬でしょ?」
南さんは笑いながら駆けて行く。
「馬鹿姉ちゃんは何時まで経っても成長しねーぞ!!」
亮介は大声で叫び、南さんの後を追いかけた。
119
:
燐
:2012/01/25(水) 16:12:25 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あの二人って…面白いね。」
私は笑みを浮かべて言った。
「あの姉弟は昔からだ。亮介が居るだけで俺は過去の事を一瞬だけ忘れられた。
もし亮介が居なかったら俺はもうとっくに死んでた。もう生きてなかったかもしれない。」
「そっか…。じゃ亮介は誠の命の恩人なんだね。」
私は上の空で答える。
「そうだな。後さ…別れる件だけど…もう少し考えてみるわ。」
誠は笑顔で言った。
「えっ…。」
それってまだチャンスがあるって事?
誠とやり直すチャンスがあるって事?
もしそうだとしたらやり直したいよ…。
私達の絆を取り戻したい…。
散らばった私達の欠片を丁寧に拾い集めて欠片を繋ぎ合わせたらきっと私達の絆は戻る。
120
:
燐
:2012/01/25(水) 17:13:42 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
そう思っていた。
「何だよ…そんな固まっちまって。」
誠が私の顔を覗き込んだ。
「…何でもない。」
私はそう呟き、静かに歩き出した。
「夜那ちゃん〜!遅いよ。早く行くよ。」
亮介は屋上の扉からそっと顔を出して手招きする。
「…ほら誠も行くよ。」
私は誠の右腕を引っ張った。
「…夜那。」
誠は寂しげに言った。
「何?」
私は明るく言った。
「…アメリカに行く時は亮介も連れて行っていいか?」
誠は頬を赤く染めながら言った。
「…うん。大歓迎だよ。」
「だってさ亮介。良かったな。」
誠は手をズボンのポケットに入れながら亮介の方に首を動かせる。
「よっしゃ!サンキューな。夜那ちゃん。」
亮介は私に駆け寄り優しく私の身体を抱き締めた。
亮介は何処かご機嫌。
「痛いよ…。」
私が呟くと亮介は私の頭をポンポンと撫でて離れてくれた。
何か亮介って猫みたい。
そう思うのは気のせい?
121
:
燐
:2012/01/25(水) 17:46:46 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「で…誠はどうすんだよ…。夜那ちゃんの事。」
亮介は私の肩に手を回す。
「…少し考える事にした。決断が固まったら報告するからさ。」
誠は答える。
「ふーん。あんま長過ぎたら俺が夜那ちゃんを貰うからね。」
亮介はニコニコ笑顔で言った。
「何だよその勝手なルール…。意味分かんねー…。」
誠は不貞腐れた表情で言った。
「亮介…冗談は止めてよ…。」
「冗談じゃねぇよ。俺…夜那ちゃんに振られても本気だし。」
亮介は真剣な顔つきになる。
「…それって今でもなの?」
私は俯きながら言った。
「当たり前に決まってんじゃん。今でも好きだって事何が悪いんだ?」
「…っ。」
そう言われると私は黙り込んだ。
「誠に一応言っとくが…誠に夜那ちゃんは渡さない!!たとえ友達でも俺は容赦しねーから。」
亮介はそう言って私の身体をゆっくりと抱き寄せた。
「…それって宣戦布告のつもりか?」
誠は鼻で笑って言った。
122
:
燐
:2012/01/25(水) 18:02:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「せ、宣戦布告に決まってんだろ!!」
「じゃ何でそんなに焦ってる訳?」
誠は無愛想で言う。
「……。」
亮介は黙っている。
「…夜那を自分だけの物にしたいとか?」
誠のその言葉に亮介は唇を噛み締めた。
123
:
燐
:2012/01/25(水) 19:45:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…そうだよ。悪いかよ。」
亮介は私の肩からそっと手を離した。
私は亮介の言葉に言葉を失った。
えっ…?
どう言う意味?
124
:
燐
:2012/01/25(水) 20:01:43 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「ふーん。」
誠は興味のなさそうな目で言った。
「何だその興味なさそうな目は!こっちは恥ずかしいんだぞ!!」
亮介は顔を真っ赤にして言った。
「お前顔真っ赤…。」
誠は苦笑いしながら言った。
「お前ぜってーおちょくってるだろ!!」
亮介は口を尖らせて言った。
「おちょくってねーよ…。」
誠はふいに顔を逸らす。
「今顔逸らしたじゃねーか!それはどーゆう事だよ!!」
亮介は誠に指を指しながら言った。
125
:
燐
:2012/01/25(水) 20:35:56 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何ムキになってんだよ。もっと冷静になれ。お前は昔から熱いんだよ…。」
誠は笑いながら言う。
「…悪かったな。」
亮介は目を逸らす。
「亮介…。」
私はそっと呟く。
「…ごめん夜那ちゃん。俺だって夜那ちゃんが好きになっちまってさ…。
たとえ振られても俺は本気だから!!」
亮介は掌を握り締めながら言った。
「…っ。」
亮介からの2回目の告白。
断らなくちゃ…。
でも出来ない。
言えない…。
言ったらまた亮介が傷つくかもしれない…。
「とにかくだ。俺は今でも夜那ちゃんが好きだ。振られても諦めねーから。
たとえ相手が誠だとしても俺はこの勝負譲れねーからな!!」
亮介のその声は空まで響き渡った。
「何時から勝負になったんだ?ま…俺も譲る気ねーけど。」
誠がぼそっと言った。
「いいだろう。上等だ。最終的には夜那ちゃんに決めてもらわなくちゃいけねーしな。」
亮介はそう言うと私を強く抱き締めた。
「お前は何時からそんなに偉くなったんだ?偉そうな態度取るのもいいがな。」
誠は呆れた顔をする。
126
:
燐
:2012/01/25(水) 21:22:46 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「いいだろ別に。人の勝手だし。」
亮介はそっぽを向く。
「…相変わらず素直じゃないな。」
誠は鼻で笑いながら言った。
「…っ。」
亮介は一瞬黙り込み、私に顔を近づけた。
「…素直じゃねーと思うか?俺だって成長してんだ。」
亮介はそう言って誠を一瞥して私と唇を重ねた。
!?
唇が離れて私は地面に座り込んだ。
「俺だって成長してんだよ。何時までも捻くれたままではいけねぇから
今証明したんだよ。」
亮介は言った。
「…証明か。そうやって好きな奴の為に真っ直ぐな所も俺にそっくりだな。」
誠は苦笑いしながら言った。
127
:
燐
:2012/01/25(水) 21:37:43 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「亮介…。」
私は亮介の左手を両手で強く握り締めた。
亮介は黙って私を地面から抱き上げてくれた。
「あのさ…誠ってさ…本気で人を好きになった事ねーだろ?」
亮介に痛い言葉を言われたのか誠は答えない。
「何時までも過去を引き摺ってたら夜那ちゃんに嫌われるのも時間の問題だぜ?」
「…嫌われるか。」
「好きだよ!!」
とっさに出た私の言葉。
「えっ…ちょっと夜那ちゃん!?」
私は亮介の元を離れ誠の身体に抱きつく。
128
:
燐
:2012/01/26(木) 11:53:56 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「私は何があっても誠が好きだよ。たしかに亮介も好きだけど…。
亮介の好きは誠の好きとは全く別物なの…。亮介の好きは“Like”で
誠の好きは“Love”だから。」
私は笑顔で誠の身体から離れる。
「Likeか…。それだけ俺が信頼されてるって事だな。」
亮介はニコニコ笑顔で言った。
「信頼?」
私は首を傾げる。
「だって…昨日会ったばっかなのに此処まで仲良くなるって相当ねーよ?」
亮介は笑いながら言う。
「亮介は何時も明るいね。それに面白いし。」
私は微笑みながら言った。
「面白い!?ま…俺はボケ担当だしな…。うーん…。」
亮介は腕を組んで考え込む。
「何でこんなに考え込むの?」
私はクスクス笑いながら呟く。
「だってさ、ボケねーと面白みがねーだろ?ただ俺はボケよりツッコミの方が
向いてるんじゃないかって友達に言われてさ。夜那ちゃんはどう思う?」
どう思うって言われても…。
どう答えればいいのかな?
「お前はボケの方が向いてんぞ。」
誠は横からぼそっと言った。
129
:
燐
:2012/01/26(木) 14:57:11 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何で誠が言うんだよ。俺は夜那ちゃんに訊いてんのに!」
亮介は不機嫌そうに頬を膨らます。
「…夜那は答えねーよ。」
誠の意味不振な言葉に亮介は首を傾げる。
「は?何でだよ。」
「お前の理解不能な質問されたら夜那だって困るだろ。」
誠は深い息を吐いて言った。
誠の図星に私は固まってしまった。
「そうなの?夜那ちゃん。」
亮介は訊く。
「…はい。ボケとかツッコミとかの意味があまりよく分からなくて…。
ごめんなさい…。」
私は大粒の涙を零しながら私は涙声で呟く。
「何泣いてんだよ…。じゃ俺はこれで御暇する。お前らも出来るだけ早く帰って来いよ。」
亮介はそう言い残すと私と誠だけを屋上に残して去って行った。
130
:
燐
:2012/01/26(木) 16:02:42 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
屋上に残された私は地面に静かに座り込んだ。
「…誠。」
私はふと呟く。
「…何?」
誠は少し間を開けて答える。
「誠は…私の事好きになって良かった?」
「…何で今更そんな事訊くんだよ。変な奴…。」
誠は無愛想な口調で言う。
「だって…私の事嫌いだから別れるなんて言ったんでしょ?」
私は誠に問い詰める。
「それは…違う。俺は今まで一度も夜那を嫌いになったりはしてない。」
「何でそんな事が言えるの?」
私は鼻を啜りながら呟く。
「お前が気づいてないだけ…。俺がどれだけ夜那を好きか知らねぇだろ…。」
誠は恥ずかしそうに私の隣に座り込む。
「…知らないに決まってるよ…。」
私は口を尖らせながら言った。
身体の震えが止まらない。
「夜那…身体が震えてる。」
誠はそう言うと私を優しく横から抱き締めた。
「ごめん…誠。。また誠を傷つけて…。私って誠を傷つけてばっかだよね。。
誠を傷つける事でしか愛せないって変だよね…?」
私は泣きながら呟く。
131
:
燐
:2012/01/26(木) 16:38:17 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…お前は俺を傷つけてねー…。全部お前のした事は俺を守る為なんだろ?
それなら一層の事…お前を殺したい…。」
誠は震えた声で言った。
殺す…?
私を…?
「殺したいんだ…。昨日の夜…あんな現場見てから…俺怖くて…。」
誠は涙を私の両手の甲に零しながら言う。
こんなに弱々しい誠を見るのは何処か久しぶりだった。
「私は殺せない。誠を殺せないよ…。殺したら死んじゃうよ…。」
「でも夜那は2ヶ月前言ったよな。俺が死ぬ時はお前も一緒に死ぬって…。
あれは嘘だったのか?」
誠の言葉に私は唇を噛み締めた。
「嘘じゃない…。誠に捨てられるなら私は命までも捨てられる…!
それだけ大きい存在なんだよ…。」
私は俯きながら答える。
132
:
燐
:2012/01/26(木) 17:00:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…俺も俺の中で夜那が一番大きな存在だ。俺…今まで実の両親をずっと憎んでいた。
純の事も…義理の母さんの事も…憎んできた。
でも亮介や夜那に出会ってたくさん笑えた…。たくさん楽しめた…。
亮介は一緒に居るだけで笑いが飛ぶから俺はアイツが大好きだ。
夜那は俺に生きる勇気をくれた。半年前のあの日…夜那が母親の元を抜け出して
俺の元に来てくれた時…コイツと一緒に生涯共にしたらどれだけ救われるだろうって…。
思ってた。」
誠は泣きながら言う。
133
:
燐
:2012/01/26(木) 17:53:06 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「半年前までの俺は本当に惨めで自分が傷つくのが嫌でお前を救う事が出来なかった。
でも夜那に出会って俺の心が晴れた気がする。お前に出会えて良かった。
これからも宜しくな。それにこれからは存分に俺が夜那を守っていくから。」
誠はそう言って私の身体を離れて、右手を差し出す。
「私も誠が苦しんでる時は一緒に戦う!それが絆ってものでしょ?」
私は笑顔で言った。
「絆か。そういや憐も言ってたな…。絆で結ばれてるとかどうとか…。」
誠は曖昧に答える。
「言ってたっけ?憶えてない…。」
「…そっか。じゃあの事も忘れた訳?」
誠は指摘する。
「あの事って?」
全く心当たりがない私は首を軽く傾げる。
「俺らが相思相愛だって事も忘れた?」
誠は意地悪そうに言った。
「相思相愛?何それ…。」
私は訊く。
「…忘れてたんだな。相思相愛って言うのはな…互いが好きって事を指してんだよ。」
誠は恥ずかしそうに言った。
134
:
燐
:2012/01/26(木) 18:02:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「それって…何か恥ずかしいよ…。」
私は頬を赤らめて呟く。
「もっと恥ずかしがって。夜那可愛いし。」
誠はニコニコ笑顔で言った。
「か、からかわないでよ!もっと恥ずかしくなるよ…。」
私は顔を逸らす。
「怒ってる夜那も可愛い。夜那って苛めがいがあるよ。」
誠はそう言うと私の左手をそっと絡める。
「あれ?夜那…指輪は?」
誠は訊く。
私の左手の薬指に嵌めていた指輪は昨日やけになって投げ捨てたんだ…。
誠にどう説明しよう…。
私がモジモジしてると誠はクスッと笑って私の前にあるものを差し出した。
「あっ…指輪。。」
「今日の朝、リビングに落ちてたけど…夜那が捨てたの?」
135
:
燐
:2012/01/26(木) 23:10:02 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あれは…ちょっとやけになってたから…。ただそれだけだよ。」
私は笑顔で誠から指輪を受け取る。
指輪に残ってた血の痕跡はすっかり消えていた。
「…夜那も嘘吐きだな。」
誠はそう言って私の唇を塞ぐ。
私は右手で誠の服の袖を掴む。
「…涙の味がすんだけど。まだ泣いてんの?」
誠は唇を離して私の耳元で囁く。
「泣いてないよ…。本当だから…。」
私は誠の胸に顔を埋める。
いつから私はこんなに涙脆くなったんだろう…。
何か本当に涙腺が弱くなるよ…。
「本当にごめんなさい…。大切な私と誠の結婚指輪なのに…投げ捨てちゃって…。」
「投げ捨てた?」
誠は怪訝そうな顔つきで言った。
136
:
燐
:2012/01/27(金) 13:07:40 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あっ…ごめんなさい。本当にごめんなさい…。」
私は震えた声で誠に謝る。
「…じゃ失くさないように左手の薬指に嵌めとけ。」
誠は笑顔で呟く。
「…うん。」
私は指輪を左手の薬指にそっと嵌める。
「この指輪…血がついてたはずなのに…どうして?」
「それ俺が拭いた。水で丁寧に洗って血の痕跡を完全に消しただけ。」
誠は言った。
「そうだったんだ。」
私は安堵の息を吐く。
「何ションボリしてんだよ。亮介に笑われるぞ。」
誠は私の頬を左手の人差し指で突く。
「…意地悪。。ションボリなんかしてない…。ただ嬉しいだけ。」
私はそう言って誠に笑みを浮かべた。
「ならいいけどな。さ、そろそろ戻ろう。亮介が怒るしな。」
誠はゆっくりと立ち上がって私に右手を差し出した。
137
:
燐
:2012/01/27(金) 14:08:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そうだね。」
私は誠の右手をそっと左手で握る。
「そういや亮介ってお前に告ったんだっけ?」
誠は思い出したように言った。
「…うん。2回も告られちゃって…。でもちゃんと断ったよ。
たしかに亮介も好きだよ。でも亮介の好きは“Like”なの。
“Love”じゃない。だから…断ったんだろうなぁ…。」
私は空を見上げて言った。
今日の空は快晴。
雲一つなくて気持ちが晴れ晴れした。
「よし。戻ろう。」
「何が“よし”なんだよ…。」
横で誠が呆れた表情をする。
「気合を入れ直しただけだよ。何か身が引き締まらないって言うか…。」
私は誠の手を引きながら屋上の出入り口扉に近づく。
138
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/01/27(金) 16:58:33 HOST:w0109-49-133-133-145.uqwimax.jp
此処には初めてコメントさせてもらうことになるかな(´・ω・`)?
まだ途中までしか読んでないんだけど、すごく面白いです!
うん、つづきが気になる←
ということで、また時間があるときに読んでコメントするね!
139
:
燐
:2012/01/27(金) 17:04:20 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「ぷっ。緊張してんのかよ。」
誠は笑いながら言った。
「…っ。うん…。」
私は扉のノブに右手をかける。
「…やっぱまだ行くな。ずっと此処に居ろ。」
誠の右手が私の右手をそっと握る。
「何で?早く行かないと亮介に…。」
「亮介が何?そんなに亮介の所に行きたいの?」
誠は何処か怒っていた。
「そう言う訳じゃないけど…。さすがに怒られるような気がして…。」
「怒らねーと思う。アイツそこまで短気じゃねーし。」
誠は優しく私に問い掛ける。
私と誠の身体が密着し過ぎて余計緊張するよ…。
「夜那はやっぱ可愛い。」
140
:
燐
:2012/01/27(金) 17:33:26 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…私は可愛くなんかないよ…。どっちかって言うと不細工の分類に入るよ…。」
「何処か不細工なんだよ…。勘違いもほどほどにな。」
誠は私の頭を優しく撫でる。
まるで猫みたいな撫で方だった。
「じゃ私はそろそろ行くね。」
私はすぐさま話を逸らす。
「じゃ俺も行く。」
私と誠は仲良く手を繋ぎ、屋上を後にした。
141
:
燐
:2012/01/27(金) 17:34:06 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
ねここ>>おうw
了解しますたー!!!
142
:
燐
:2012/01/27(金) 20:55:40 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私と誠は階段を下りてロビーに向かった。
ロビーに向かうと二つの人影が玄関方面に居た。
「亮介〜南さん〜!」
私はその人影に向かって呼んだ。
すると二つの人影がほぼ同時に振り向く。
「おせーよ。二人とも。」
亮介は不機嫌そうに言った。
「女の子には色々あるの。亮介に分からないと思うわ。」
南さんはクスクス笑いながら言った。
「何だよ色々って…。訳分かんねー…。」
亮介は頭を掻きながらめんどくさそうに言った。
「訳分からなくて結構よ。」
「姉ちゃん…何笑ってんだよ。」
亮介は呆れたのか、玄関に向かって歩き出した。
「逃げるつもりでしょ。そう簡単に姉から逃げられると思ったら大間違いよ。」
南さんはそう言うと首を左右にポキポキと鳴らし始めた。
「姉ちゃんは何時でも本気モードかよ。何か修羅場みてぇ…。」
「修羅場ねぇ…。今から瞬殺してあげるわ。」
南さんは不気味な笑みを浮かべて言った。
「瞬殺?出来るもんならやってみろ〜!」
亮介は余裕の顔を見せた。
「じゃやってあげるわ。」
南さんはそう言って亮介の後を追いかけた。
143
:
燐
:2012/01/28(土) 14:42:12 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「姉ちゃん。冗談だって!何で本気になるのさ!!」
亮介の顔がどんどん真っ青になっていく。
「冗談?冗談なら最初から言うんじゃないわよ!」
南さんは口を尖らせながら言った。
「あの〜お二人さ〜ん!!」
私は遠くに居る南さんと亮介に向かって大声で叫んだ。
でも二人には全く聞こえていない。
「亮介〜!!」
誠の大声に亮介は振り向く。
「何だ誠?」
亮介が油断した瞬間に、南さんが亮介の腹に拳をぶつける。
「うっ…。」
亮介は呻き声をあげて、地面に倒れた。
「完敗ね。冗談半分に言うからよ。」
南さんは勝ち誇ったような顔つきで言った。
一方、亮介は気絶してしまったみたいで動じない。
144
:
燐
:2012/01/28(土) 15:16:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「おーい。亮介〜!!」
私は亮介に近づき、右頬を右手の人差し指で突く。
突いても起きる気配が全然ない。
「南さん。こう言う時ってどうやったらいいんですか?」
私は訊く。
「引き摺って持って帰るしかないわ。それか担ぐか。」
南さんは笑いながら言った。
「担ぐって…亮介をですか!?」
「うん。こう見えても怪力はあるし。」
南さんは自慢げに言った。
145
:
燐
:2012/01/28(土) 16:27:31 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「じゃ俺が亮介を担いで行きます。」
誠は言うと、亮介は両目を見開いて呟く。
「いやそれは止めとく。お前は無理すんな。」
亮介は立ち上がって服についた汚れを手で叩(はた)く。
「何でだよ。」
誠は指摘する。
「何でって…身体の事もあるし、心臓だって…。」
どうやら亮介は誠がまだ心臓が悪いとでも思っているかのようだった。
「…亮介に言ってなかったっけ?」
誠は言うと、亮介は不思議な顔をして頭を傾げる。
「俺、半年前に心臓の手術して、無事成功したって言う話。」
誠が言うと、亮介は目を丸くした。
「言ってねーよ。あーだから毎日誠ん家に電話しても居なかったんだな。
なるほどな。」
亮介は納得したのか頷く。
「何か亮介…勝手に解釈してない?」
私は苦笑いしながら誠に訊く。
146
:
燐
:2012/01/28(土) 17:23:29 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そうか?」
誠はイマイチ分かってないみたい。
「てか夜那ちゃん!」
急に私の名前を呼ばれ、私は我に返った。
「は、はい!」
「…好きだ。」
えっ?
「それだけだから…じゃ。」
亮介は顔を真っ赤にして何処かに行ってしまった。
今日で2回も亮介から告られた。
トータルで3回も告られてしまった。
「あの子も良くやるよね。夜那ちゃんに1回振られてるのに諦めてないなんて…。」
南さんはそう言って亮介の後を追いかけた。
私は俯いて両手の掌を握り締めた。
147
:
燐
:2012/01/28(土) 18:39:35 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「亮介も大胆な告白するな。」
誠は意外と落ち着いた口調で言った。
「私…もう3回も告られてるんだよね…。どうすればいいのかな…。」
「断れよ。そんなの。」
誠は素っ気なく言った。
「…そうだよね。と言うか誠…嫉妬してるの?」
私の言葉に誠は頬を赤くした。
「…ちょっとだけな。亮介の奴本気っぽかったし…。夜那の事取られそうだし。」
「大丈夫。私は誠から離れないから。」
私は笑顔で呟く。
「大丈夫って…一回離れたのに…良く言う。」
誠は怪訝な顔をする。
「…今思ったんだけど、亮介って昔からあんな性格なの?」
私は訊く。
148
:
燐
:2012/01/28(土) 18:53:35 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「話逸らしただろ。」
誠は私を睨む。
「うん。明るい話にしようって思って。」
私は笑顔で言う。
「ふーん。てかさ…此処2ヶ月で天然キャラになってねぇ?」
誠に言われ私はキョトンとする。
「天然キャラ?何それ…。」
「俺に訊くより辞書で調べろ!人に訊くより自分で調べた方が自分の為にもなるからな。」
誠は明るく言った。
「分かった。で、亮介は昔からあんな性格なの?」
「昔からって…俺と初対面の時は何と言うか…近所迷惑な奴だったな。
声のボリュームは大きいし、苦情が来るぐらいの声の大きさだったな。
でも一緒に居るだけで飽きない奴だ。だから亮介が居るだけで昔の過去も忘れられたのかもしれないな。」
誠は上の空で呟く。
「それ何回も言ってない?今日で2回は聞いてるよ。」
私は失笑しながら言う。
149
:
燐
:2012/01/28(土) 19:26:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「ま…いいんじゃね?」
誠は適当に言う。
「適当な所の誠…初めて見たかも…。」
私は肩を落としてため息を吐く。
「初めて?ぷっ…夜那は相変わらず面白い事を言うな。」
誠は笑いながら言った。
150
:
燐
:2012/01/28(土) 21:38:21 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「笑わないでよ…。」
私は恥ずかしくなって顔を逸らす。
「面白いと笑うもんだ。」
誠はそう言いながら私の長い黒髪に手を通していく。
「うぅ…。」
「どした?そんな呻き声みたいの出してさ…。」
誠は心配して私の顔を覗き込む。
「ううん…。何かまた緊張しちゃって…。」
私はつい誤魔化した。
本当は…こんな状況にあまり慣れてないからつい声を漏らしてしまった。
「また嘘吐いただろ…。俺を欺けると思ったか?」
誠は呟く。
「誠は何でも分かっちゃうんだね…。まるで心の中を読んでるみたい。」
私がそう言うと誠は後ろから私を優しく抱擁した。
「顔に書いてあるし。それにもう半年以上も夜那を見てきたからそれぐらい分かる。」
誠の吐息が私の首筋に掛かる。
「顔に?そんなに書いてる?」
私は首を傾げる。
「お前…変な風に解釈してね?顔に書いてあるってのは、言わなくても表情で
分かるって事だ。」
誠は優しく問い掛ける。
151
:
燐
:2012/01/29(日) 13:52:56 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何か余計意味が分からない…。」
誠の言葉は余計に私の頭の中を混乱させた。
「夜那には一生分かんないだろうな。」
誠は笑いながら言う。
私は…その誠の笑い顔を見るたびにどれだけ救われてきたのだろう…。
きっとそれは手では数え切れないだろうなぁ…。
誠はきっと私を笑わしたくてこんなに励ましてくれる。
それはきっと―――――…。
そう思うだけで胸が痛くなる。
苦しくなる。
涙が出てくるよ…。
私は地面に蹲った。
「夜那?」
誠は私の正面でしゃがみ込み、頭をポンポンと撫でる。
「誠はずっと私を笑わしたかったんだよね?」
152
:
燐
:2012/01/29(日) 14:10:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私は涙声になりながら呟く。
「何だよ急に…。」
誠は困ったような表情をした。
「誠はずっと私の笑い顔を見たかったの?半年前のあの日から全てが変わった。
半年前のあの日…誠は私に初めて声をかけてきてくれたよね?
あの時は正直怖かった。だっていきなり私の名前呼ぶから…びっくりしちゃった。
でも…誠と一緒に居ただけで何時しか笑いたくなって来るの。今まで笑う事がなかった
私を笑わせてくれそうな気がして…。で、誠が私の事好きって言ってくれた時…
私にはそんな感情を持った事がなかったから戸惑っちゃった。」
私は顔を上げて静かに呟いた。
153
:
燐
:2012/01/29(日) 14:44:22 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…お前あの義理の母親に縛られてたんだろ?」
「縛られてた?どう言う事?」
私は首を傾げる。
「呪縛だよ呪縛。お前を強制的に束縛する事だ。」
「束縛…。それって誠も同じ事なんじゃないの?」
私がそう言うと誠は一瞬焦ったような顔をした。
「…そうかもな。」
と、素っ気なく誠は言った。
「何か誠…背伸びた?」
いきなり話題を変える。
「背?何でそんな事訊くんだよ…。」
誠は右手で頭を掻きながら言った。
「だって明らかに私が小さく見えるから…。」
「背丈に嫉妬かよ。どんだけ器の小さい奴。」
誠はそう言うと私をそっと抱き上げた。
「お、下ろしてよ…。こんな所誰かに見られたら…。」
「誰かに見られたら不味い事でもあんの?」
誠の冷たい視線が私に注がれる。
154
:
燐
:2012/01/29(日) 15:28:31 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そ、そう言う訳じゃ…。」
私は思わず目を瞑った。
「何恥ずかしがってんの?」
誠は笑いながら歩き出す。
「恥ずかしいよ!亮介とかに見られたら…絶対誠に問い詰められるよ?」
「…俺は別に構わねーけど。夜那が嫌なら止めとくよ。」
誠はそう言うと私を地面に下ろす。
気のせいだろうか。
何か妙な胸騒ぎがするのは気のせい?
前もこんな事があった。
2ヶ月前の憐の時だってそうだった。
妙な胸騒ぎがあってその矢先に憐はこの世を去った。
まさか今回もそんなパターンとか…?
そう考えるだけで目の前が真っ暗になるような気がした。
155
:
燐
:2012/01/29(日) 20:13:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
まさか誠はまだ何か隠してる事あったりして?
…そんな訳ないよね?
私はそんな事を思いながら私は歩き出す。
「夜那!」
背後から呼ばれ、私は立ち止まり振り返る。
「ねぇ…誠。まだ何か隠してない?」
私がそう言うと誠は面食らった顔つきを見せた。
明らかに動揺している。
「…してねーよ。」
誠は顔を逸らす。
「本当に?」
私は訊く。
「本当。」
誠はストレートに言った。
そんな真っ直ぐに言われても困る。
「…分かった。」
私がそう呟くと、私は誠に抱き締められていた。
「あのさ…夜那。」
寂しそうに誠が呟く。
「何?」
私は訊く。
「アメリカに行く日時なんだけどさ…来月でいい?」
「来月って…もう2週間もないよ?」
私は呟く。
156
:
燐
:2012/01/29(日) 20:55:00 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「うん。来月の1日には此処を旅立ちたいんだ。今日の朝5時に…母さんに話した。
手続きの方はこれからするつもりだ。で、旅立つ前日に書いて欲しい物があるんだ。」
誠は淡々と言った。
「書いて欲しい物?」
私は訊く。
「…今は秘密だけどな。今渡しても夜那には理解出来ないだろうし。」
誠は笑いながら言った。
「理解出来ない?って事はその日になったら分かるって事なんだよね?」
そう言うと誠は深く頷く。
「まぁな。」
そう言うと誠は私に顔を近づけてきた。
「誠?」
「夜那はやっぱ分かってないな。」
誠の言った言葉が私の頭の中を駆け巡る。
「お前が無防備だって事。」
157
:
燐
:2012/01/29(日) 21:11:05 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「無防備?どう言う事?」
私は誠に訊く。
「無防備の意味も知らねーのか?とんだ世間知らずだな。」
誠は呆れた表情をする。
「だって本当に知らないんだし…しょうがないよ。。」
私は誠から視線を逸らす。
「目逸らすな。ちゃんと俺を見ろ。」
誠はそう言うと私に唇を押し付けた。
息が…出来ない…。
それにこんな所人に見られたら…。
うっ…。
158
:
燐
:2012/01/30(月) 14:25:16 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
急に目眩がした。
両手に力が入らない。
まるで両手が麻痺してるかのように感覚がない。
3月って言ってもまだ寒い。
寒いから手の感覚がないのかな?
…分からない。
このまま倒れてしまいそう――――…。
「大丈夫か?顔真っ赤だぜ。」
誠は唇を離し、私の頭を撫でる。
少しヤバイかも…。
頭は痛いし…立ってるだけでも目眩がする。
「お前熱あるんじゃね?ほら、乗れ!」
誠は私の身体から離れて、私に背を向けてしゃがみ込む。
「…悪いよ。それに私重いし…。」
私は少し遠慮がちに言った。
「そんな事言ってる場合かよ。ほら。」
誠の言葉に押されて私は渋々誠の背中に乗った。
159
:
燐
:2012/01/30(月) 14:54:16 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
誠はその姿勢からゆっくり立ち上がり私を負ぶって歩き出す。
誠におんぶなんてされた事がなかった私は少し緊張した。
重たくないのかな…。
と、つくづく考えてしまう。
「誠…。本当に…重たく…ない…?」
私は途切れ途切れに誠に訊く。
「重たくねーよ。お前ってさ…俺が体力ないとかでも思ってんの?」
誠に言われ私は黙り込んだ。
「図星かよ。てか、まだ気にしてんの?俺の身体の事。」
誠は前を向いて言った。
「だって…心配なんだもん…。また心臓が悪くなったらどうしようって…。」
私は涙を零しながら呟く。
「悪くなんねーよ。手術は無事成功したし。再発も恐らくねーって言ってたし。」
「恐らくって…なるかもしれないじゃない……。」
私は誠の背中に顔を埋めながら言った。
160
:
燐
:2012/01/30(月) 15:17:12 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…俺を完全に信じ切れてねーのかよ。」
誠は弱々しい声で言った。
何も言えない。
「俺は…お前の事信じてるのに…信頼してんのに…。何で……。」
誠は泣いているようだった。
「信じてるよ…。信じてるけど時々思う…。何時か誠が私の前から消えるって事…。
運命は皮肉だよね…。最後まで結果が決まってないんだから…。」
私はそう言って目を静かに瞑った。
「じゃお前は運命は最初から決まってる方がいいって言うのかよ!!」
誠は強い口調を言い放つ。
「そんなんじゃない…。そんなんじゃないけど…誠が消えてしまうんじゃないかって
思うと…どうしても…。」
私がそう呟くと急激な眠気に襲われた。
私はそこで眠りについてしまった―――…。
161
:
燐
:2012/01/30(月) 15:56:21 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
第4章 相思相愛
―――――…
「此処は…何処?」
私はうっすら目を開けると上には天井。
自分の部屋だって事は一瞬で分かった。
身体が異常に熱いって事も分かっていた。
身体全体が熱くて痛くて起き上がれない。
私の額には濡れタオルが置かれていた。
私は右手で首元につけてあるペンダントを握り締める。
憐から貰ったハートのペンダントを握り締めた瞬間、涙が溢れて来た。
憐…私って本当に馬鹿だよね?
無茶ばっかするし…迷惑かけてばっかだよね?
「はぁ…。」
私は天井に向かってため息を吐く。
162
:
燐
:2012/01/30(月) 16:40:22 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
そんな事を思っていると部屋の扉が2回ノックされた。
私は“はい…。”と小さく返事をした。
すると扉が開き、誠のお母さんが洗面器を抱えて部屋に入って来た。
「大丈夫夜那ちゃん?」
誠のお母さんの言葉が私の心の中を温かくする。
「大丈夫だよ…。そう言えば誠は…?」
「誠なら夜那ちゃんの為に下で何か作ってたわね。」
誠のお母さんは笑顔で言いながら私のベッドの傍に腰掛ける。
誠は何作ってるんだろう…。
「とりあえずタオルだけ代えておくわね。熱測りたいけど…身体ダルイでしょ?
起き上がるのもしんどいと思うし…今日はタオルだけ代えておくわ。」
誠のお母さんはそう言うと額のタオルが取り、新しい濡れたタオルを私の額に置く。
初めはひんやりしたけど我慢。我慢。
163
:
燐
:2012/01/30(月) 17:02:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
私はペンダントから手を離した。
「ありがとう…お母さん。。」
私は精一杯の気力で誠のお母さんに礼を言った。
声を出せたくても出せない。
熱があるせいなのかな…?
何かドラマとかに良く出てくる悲劇のヒロインみたいな感じだなぁ…。
私って…。
「じゃそろそろ行くわね。他に何か要る物ある?」
誠のお母さんはそう言って地面から立ち上がる。
私は首を左右に振った。
言葉を出す気力すらもない。
声を出すだけで身体が疲れる。
誠のお母さんはそれを確認すると、洗面器を持って部屋を出て行った。
164
:
燐
:2012/01/30(月) 19:26:10 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
部屋に一人残された私は茫然と天井を見上げていた。
身体がベッドにへばり付いているみたいに動けない。
好き…。
そんな言葉が私の頭の中を駆け巡る。
誠に“ずっと前からお前が好きだった…。”って言ってくれた半年以上前のあの日…。
あの時の私は“恋”って言う物が分からなくて思わず断ったんだっけ?
それかその時まだ義理のお母さんの事があったから断ったのかな?
今となってはどっちかも分からない。
今は“幸せ”と“複雑”が両方来る感じで良く分からない。
誠…。
私ね…誠に逢えて良かったよ?
恋も出来たし何より来月からアメリカ行くんだよね?
亮介と誠と三人で…。
何か亮介が行くと朝から晩まで騒いでいそうなイメージがあるんだよね…。
そんな事を考えていると私の部屋の扉が三回ノックされた。
誰だろう。と私の頭の中に疑問が生まれる。
165
:
燐
:2012/01/30(月) 19:55:41 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「夜那。起きてんだろ?」
その声に私は唇を震わせた。
「誠…。」
私は無意識に呟いていた。
そう思うとまた涙が溢れてくるよ…。
扉が開き、誠が鍋らしい物を両手で持ちながら私のベッドの傍まで来る。
「大丈夫か?顔が前よりも真っ赤だぜ?」
誠は鍋を地面に置き、私に語りかけた。
でも私は答える事が出来ない。
本当に喋る気力すらない…。
「てか、お粥作って来たから少しでも食べないか?」
誠にそう言われても私は首を左右に振った。
「そうか。ならテーブルに置いておくから好きな時に食べろよ。」
誠はそう言い残すと、鍋をテーブルに置いて部屋を立ち去ろうとした。
166
:
燐
:2012/01/30(月) 21:05:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「嫌……。」
私は重たい身体を必死に起き上がらせて壁に身体を押し付けた。
壁に押し付けた瞬間、額に置いてあったタオルがそっと足元に落ちる。
身体の所々が痛い。
何かもう両足の感覚までも無くなって来ている。
座っていられるのもやっとだった。
「おい夜那…無理すんな。寝てろ。」
誠の言葉に私は強く左右に首を振る。
「…い…や……だ…よ……。」
私は途切れ途切れに言った。
167
:
燐
:2012/01/30(月) 21:58:32 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…喋るのもやっとなのに無理すんな。」
誠は私の隣に座り込んだ。
頭がズキズキ痛む。
足が微かに震えている。
背筋が焼けるように熱い。
「おい夜那…。」
誠はそう言うと私を優しく抱き寄せた。
問い掛けられても私は茫然と俯く。
熱があるせいか…少し意識が朦朧としてくる。
視界が徐々にぼやけて来るのが分かる。
私…無理し過ぎたのかな……?
誠は何も言わずに私の左手をそっと握ってくれた。
「…こんな状況にこんな話すんのも何だけど…アメリカへの滞在期間が4年って事に
決まった。前に一回言ってたっけな…。憶えてねーけど。で、4年後帰って来たら
また此処に2人で住もうって感じだ。それでいいか?」
誠の言葉に私は小さく頷く。
「ま、此処に帰って来るのが4年後だし…物凄く長い期間だけどよ…。
でも最高の思い出が出来ると思うんだ。」
誠は何処か嬉しそうに言った。
168
:
燐
:2012/01/30(月) 22:09:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「最高…の…思い出…?」
私は思わず訊く。
「うん。アメリカに知り合い居るし…って言っても純の友達だ。
ま、ソイツと俺は仲が良いし、意気投合してしまったのも事実だし。
ソイツに家を借りる事になってる。それと日本人だから心配すんなよ。」
誠はニコニコ笑顔で言った。
「そう…なんだ…。」
私は俯きながら答える。
169
:
燐
:2012/01/31(火) 11:42:12 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「てか、ちゃんと喋れてんじゃん。」
誠は苦笑しながら言うと、私は黙り込んだ。
「…ひっく…ひっく…。」
私は太ももに大粒の涙が零した。
「…ごめんな。お前を泣かせてやる事しか出来なくて…。」
誠の言葉は儚くて消えてしまいそうな声だった。
「ううん…そんな事ないよ。。」
私は少しだけ笑顔を返す事が出来た。
でもその途端、両手の力が少しずつ抜けていくような気がした。
駄目…このまま倒れてしまいそう…。
そう思った直後だった。
私は瞬時に誠に抱き締められていた。
「ま…。」
「夜那…。」
私が呟く前に誠が呟いた。
誠はまだ私の左手を握り締めたままだった。
「…このまま寝ればいい。お前が寝る前で一緒に居てやるから。」
誠はそう言うと私の額にそっとキスをした。
誠は額から唇を離すと、私をベッドに寝かせた。
「…おやすみ。」
私は静かに呟いて布団を被って眠りについた。
でも私が眠ってる隣で誠が密かに涙を流してたなんて…。
私は知る由もなかった。
170
:
燐
:2012/01/31(火) 14:38:51 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
―――――…
「う〜ん。」
私は背中が冷たい事を悟り、起き上がった。
「また…夢の世界に来たのかな?」
私の視界に映ったのは辺り一面黒の世界。
と言うよりも黒の空間に近かった。
服は水色の水玉ワンピースだった。
足は裸足で、靴下は履いていない。
裸足だとどうしてもあの時の事が頭でフラッシュバックする。
半年以上前のあの日…私はお母さんに反抗したせいで家の地下牢らしい所に
閉じ込められた事。
今となってはその出来事は薄れつつあったのに…また蘇って来る。
「嫌…嫌ぁぁぁぁぁ!!!!!」
私は頭を両手で抱えて大声で泣き叫んだ。
泣き叫んでも誰も助けてくれないって事は分かっている。
でもそうしてる間に過去の出来事が徐々に蘇って来る…。
怖い…怖い…。
171
:
燐
:2012/01/31(火) 16:12:58 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
怖いよ…。
私の心の中は‘絶望’と言う言葉だけが取り残された。
絶望…。
その言葉を口にするだけで目の前が真っ暗になる。
微かに唇が震えて、少し肌寒い。
その時前方から青い光が見えた。
何…?
その青い光は徐々に大きくなっていく。
「蝶さん…。」
その青い光の正体は青い蝶だった。
青い蝶は私の目の前まで来ると右に一回転して来た道に戻っていく。
まるで“着いて来て”と言っているみたいだった。
私は無言で蝶の後を追いかけた。
172
:
燐
:2012/01/31(火) 17:41:46 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
蝶さんの後に着いて行くとまた前方に光が見えた。
今度は赤い光。
私はその時ふいに悟った。
きっと誠の赤い蝶なんだろうってそう思った。
すると私の予想通り、赤い光の正体は誠の赤い蝶だった。
赤い蝶の後ろには小さな子供らしい人物が居た。
その子供の腕や足に殴られた痕跡があり、子供の顔は酷く腫れていた。
子供の顔を見ると何処か誠に似ていた。
まさか子供の時の誠なんじゃないかって思ってしまう。
その子供は泣いているのか顔だけ俯いていた。
「大丈夫?」
私は子供の正面でしゃがみ込み、右手でそっと頭を撫でる。
「…お姉ちゃんも一人ぼっちなの?」
その子供は涙声で言った。
173
:
燐
:2012/01/31(火) 17:56:27 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「……。」
私は答えなかった。
と言うか答えたくなかった。
「君は何て名前なの?」
私がそう言うとその子供は‘誠って言う名前だよ’と笑顔で返してくれた。
誠…。
やっぱり幼い時の誠なんだ…。
「誠君って呼んでいい?」
私は笑顔で訊く。
すると誠は小さく頷いてくれた。
「お姉ちゃんはそのまま‘お姉ちゃん’って呼んでいいの?」
誠は言う。
「うん。もちろん。」
私は言った。
174
:
燐
:2012/01/31(火) 22:27:15 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「お姉ちゃんは何歳?」
誠が言った。
「私は17歳だよ。誠君は?」
「俺は10歳。小学4年生なんだ。」
誠はその場に座り込んだ。
「10歳か…。しっかりしてるんだね。」
そう言うと誠は急に黙り込み、右手で左腕にある傷を触わりながら俯いた。
「俺…父さんと母さんに嫌われてるんだ…。父さんと母さんは俺の事なんか要らないみたいでさ…。
俺を何時も苦しめるんだ。毎日毎日身体に傷をつけて行くんだ。俺って死んだ方がいいのかな?」
誠の言葉一つ一つが震えていて私は思わずその場で誠を抱き締めてしまった。
「ごめんね…。誠…。」
私は無意識にそう呼んでいた。
「お姉ちゃん?どうしたの?」
誠は戸惑いながらも私の髪をそっと撫でてくれた。
「ずっと辛かったよね…。ごめんね…。」
私は誠を抱き締めながら何度もその言葉を繰り返していた。
175
:
燐
:2012/01/31(火) 22:37:30 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…お姉ちゃんは優しい人なんだね。一瞬で分かったよ。」
誠が笑顔で言うと、私はそっと小さな誠の身体を離れた。
「えっ…?」
意味が分からなかった。
「何があったのか俺には分からないけど、お姉ちゃんなら信用出来そうな気がする。」
誠は笑顔で言う。
「信用?」
私は訊く。
「うん。お姉ちゃんは俺を必要としてくれてるような気がする。」
176
:
燐
:2012/02/01(水) 14:06:42 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
必要…。
その言葉が私に重く圧し掛かる。
「…必要じゃない人間なんてこの世には居ないよ。人は常に誰かを必要としてるし、
必要とされている。そういうもんじゃないかって思う。」
私は上を見上げて言った。
「じゃお姉ちゃんも誰かに必要とされてるんだね。世界は広いなぁー!」
誠は座りながら背伸びした。
「…うん。」
私は少し間を開けて答えた。
どうしても誠の腕や足を見ると涙が溢れてくる。
「誠君はさ…悲しくないの…?」
私は半泣きになりながら呟く。
「悲しくなんかないよ。いつか俺を助けてくれる人が居るって信じてるから頑張れる。
俺を何時か救ってくれるってそう信じているから―――…。」
信じる…。
「お姉ちゃんは知ってる?信じるって英語で“believe”って言うんだって。」
believe…。
‘信じる’か…。
177
:
燐
:2012/02/01(水) 15:09:43 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「今日はお姉ちゃんの話せてとっても楽しかったよ。また会えるよね?」
誠は笑みを浮かべて言った。
「うん。きっと会える。」
そう言った瞬間、私の視界がぼやけ、地面に倒れ込んだ。
「お姉ちゃん…!?」
誠が叫ぶ。
でも私の意識はそこで途切れた。
178
:
燐
:2012/02/01(水) 15:31:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
――――
――――――――…。
「んっ…。」
私が目を覚ますと右手で右目を擦った。
私の右隣で誠が横倒れになって眠っている。
「誠…。」
私は額に置いてあったタオルを取って右手で眠っている誠の前髪をそっと掻き分ける。
誠の前髪はサラサラしてて滑らかだった。
そう言えば足の感覚もちゃんとしてる。
身体もだるくはない。
不思議だった。
「……。」
私は無言で誠の左手を両手で握り締める。
握り締めた途端、目から涙がポタポタと零れて誠の手を静かに濡らしていく――…。
「グスッ…。」
私は黙ってその場で泣き続けた。
179
:
燐
:2012/02/01(水) 16:04:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
“何泣いてるの?夜那。”
その言葉に私はハッとした。
憐の声だ…。
姿は見えないけどちゃんと私の事心配してくれてるんだ…。
そう思うだけで元気が出る。
私は首からハートのペンダントを外して改めて手元から見る。
変わらない鈍色の光沢。
「ありがとう…憐。」
私は静かにそう呟き、服のポケットにペンダントをしまった。
「ん…夜那?」
我に返ると誠は凝視した目で私を見つめる。
「ごめん…起こしちゃって…。」
私は握ってた手をすかさず離そうとした。
「離さないで。もう少しこのまま…。」
誠の甘い声が私の脳内を支配する。
「…分かった。」
私はそのまま両手で誠の手を握り返す。
180
:
燐
:2012/02/01(水) 17:48:15 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「お前泣いてる?」
誠は右手で私の目に滲んだ雫を拭き取る。
「…泣いてなんかない。」
私はそう言って誤魔化した。
「ま、いいよ。それと夜那口開けて。」
私はゆっくりとベッドから起き上がった。
口を開けた瞬間、誠の手によって飴が私の口の中に放り込まれた。
「ん?何か酸っぱいような…。レモン?」
私は口の中で飴を転がしながら呟く。
「正解。俺はイチゴ。」
誠は笑顔で言う。
「誠は…私の何処を好きになったの?」
私は唐突に言った。
「何だよいきなり…。何処を好きになったかって?特に理由なんてねーよ。」
誠は私に背を向けて言った。
181
:
燐
:2012/02/01(水) 18:17:07 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そっか…。」
私は低い声で肩を落としてベッドの淵に座る。
「…冗談だ。本気にしてしまったんなら謝るから!」
誠は起き上がり後ろから私を抱き締める。
「じゃ何処を好きになったのか答えてくれる?」
私は涙目で呟く。
「…素直な所と少し泣き虫な所が好きになった。でも最近になって少し我儘になって来たな。
ま、性格は徐々に変わっていくものだからしょうがない事だしな。」
182
:
燐
:2012/02/01(水) 19:34:56 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「我儘か…。たしかにそうかも。」
私は素直に納得した。
突如、誠の左手が私の左手と重なり合う。
「誠?」
「色々あったよな…この半年間ぐらい。」
誠は言った。
「そうだね…。辛い事は散々あったよね。いっぱい…数え切れないほど…。」
私は半分涙声になっていた。
「そうだな。でも辛い事を乗り越えてこそいい事があるもんだ。」
誠は呟く。
「いい事…。それって…。」
私の鼓動が早くなる。
「俺達が出会った事もいい事。もしかしたら決まってた運命かもしれないな。」
誠は何処か悲しげに言った。
「決まってた運命…。」
‘運命’なんて最初から決まってないんじゃないの?
‘運命’は自分が変えていく‘人生’と同じものなんじゃないの?
そんな事が私の脳内を駆け巡る。
「運命は最初から決まってないよ。自分で変えていくものだよ…。」
私は恐る恐るその言葉を口にした。
「ま、人それぞれの考えがある。夜那がそう思うならその意見を突き通せばいい。」
誠は笑顔で言った。
183
:
燐
:2012/02/01(水) 20:26:12 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
ねぇ…何でそんなに悲しそうな顔をしてるの?
笑顔で言ってももう騙されないから。
まだ隠してる事があるなら包み隠さず話してよ…。
あの時みたいに…。
そう思った直後、私が握っていたハートのペンダントが音を立てて地面に落ちる。
「憐が…呼んでるの。」
不意に出た私の言葉。
「憐が?アイツは死んだんだぜ?」
「でも時々聞こえるの…。“夜那”ってずっと前だって2回も呼んでくれたんだよ!!」
そう言うと誠は手の力を緩める。
「それは幻聴じゃねーのか?」
誠は冷静な口調で言った。
「幻聴…の訳がないよ。はっきり聞こえた!憐はまだ居るんだよ!この世界に!」
184
:
燐
:2012/02/02(木) 15:15:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「憐は死んだんだ!!もうあれから2ヶ月も経ってんだぞ!!」
誠は激しく私の肩を揺する。
「だってさっきだって…“何泣いてるの?夜那”って聴こえた…。
ちゃんと聴こえた…。」
私がそう言うと誠は身体から離れる。
「…憐は私の傍にずっと居るの。2ヶ月前からずっと私の傍に居るんだよ。
姿が見えなくてもちゃんと私の傍に…。」
私は立ち上がって机の方面に向かった。
机にはピンクの携帯が置かれている。
2ヶ月前のあの日から携帯は開いてない。
怖くて開けなかった。
ピンクの携帯のアドレス帳には今も尚憐のアドレスが入っている。
私はその携帯を手にとって画面を見た。
すると新着メールが1件入っていた。
きっと誠だろうと思ってそのメールの中身を見た。
185
:
燐
:2012/02/02(木) 15:51:55 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
差出人は“Yogiri Ren”とローマ字で書かれていた。
憐…!?
私はメールの中身を見て思わず手が震えていた。
メールの中身は中心に一言だけ“Je vons suis attach'e”と書かれていた。
メールを受信した日にちは憐が死んだ翌日のものだった。
“Je vons suis attach'e”とはどう言う意味だろう…。
「ねぇ…誠?」
私がそう呟くと誠は私の耳元でそっと囁く。
「何?」
誠の吐息が耳と首筋にかかる。
「これ…憐から…意味分かる?」
私は携帯の画面を誠に見せる。
「“Je vons suis attach'e”か…。“私は貴方の傍に居ます”とか“ずっと一緒”とかの意味だな。」
誠は呟く。
「私は貴方の傍に居ます…。」
そう思うだけで涙が出てくる。
186
:
燐
:2012/02/02(木) 16:40:08 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「憐…。」
握っていた携帯が地面に落ちる。
憐はちゃんと私の傍に居るんだ…。
そう思っただけで私は全身の力が抜け、私は地面に仰向けになった。
「おい夜那。怠けてんのか?」
誠は私の顔を覗き込んだ。
「怠けてなんかないよ。あ!そうだ。誠に逢って欲しい人が居るの。
私と一緒に着いて来てくれないかな?」
「着いていくって何処にだ。」
誠は怪訝な顔をする。
「夢の世界に行くの。向こうの憐が誠に逢いたいって。」
「でも消滅したんじゃねーのか?」
「詳しい話は後。さ、早く行こっ。」
私は誠に右手を差し出した。
「あぁ。」
誠は私の右手を左手で握る。
187
:
燐
:2012/02/02(木) 17:15:14 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
手を握った瞬間、私の手の甲に青い蝶と赤い蝶が止まる。
「蝶さん…。」
誠は私の手を握ったまま、私の隣で仰向けになる。
「何か久しぶりだな。あっちに行くの。」
誠は嬉しそうに言った。
「私はそうでもない。ずっと前だって向こうの憐に逢って来た。」
「マジかよ。何もされなかったのか?」
誠は躊躇なく言った。
「されてないよ。」
私は平然と答える。
「そうか。ならいいが。」
誠は呟く。
188
:
燐
:2012/02/03(金) 13:48:41 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「と言うか憐は何もしないと思う。私に害を加える事はしないと思うけど…。」
私は背伸びしながら呟いた。
「害…か。もし憐が夜那に何かしたら俺が殺してやる。」
「こ、殺す!?それはさすがに止めてよ…。」
「冗談だ。てか、変な所で本気になるよな。お前って。」
誠は呆れた顔をした。
何か馬鹿にされたような言い方だった。
「じゃ蝶さん。お願いね。」
手の甲に止まっている蝶に話しかけた。
すると話しかけた瞬間、視界がぼやけた。
「…。」
私は無言で目を閉じて、そのまま意識を失った。
189
:
燐
:2012/02/03(金) 16:14:22 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
――――…。
「…な…夜那…!」
何処かで私を呼んでいる声がする。
優しくて何処か寂しい声。
きっとその声は――――…。
「おい夜那!何時まで寝てんだ!!」
誠の怒鳴り声に私は目を覚ました。
「へっ…?」
私は惚けた声を出す。
「やっと起きたな。」
誠は私の身体を抱き抱えて地面から起き上がらせた。
190
:
燐
:2012/02/03(金) 16:53:02 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「着いたんだね。」
私は誠の身体に抱きついたまま、上を見上げた。
「まぁな。それにしても見渡す限り、白の世界だな。」
「そうだね。」
私は誠の身体から離れて前へ一歩ずつ歩き出す。
「おい夜那。」
背後で誠の声がするが、私は振り向かなかった。
「あら誠じゃない。一人で来たの?」
その声に私は振り返る。
振り向くと誠と話してる黒い髪で後姿の人物が居た。
「いや夜那と来たんだ。」
誠の目線が私とぴったり合う。
誠の目線に気がついたのか後姿の人物も振り返る。
「久しぶりね。バカップルの片割れさん。」
振り返った人物は影の私だった。
191
:
燐
:2012/02/03(金) 17:20:38 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「影の私さん…。あの…憐は?」
私は訊く。
「今日は居ないの。それと陽の私にお願いがあるの。」
影の私は顔を真っ赤にして言った。
「こっち来て。それと誠は着いて来ないでね。宜しく。」
影の私はそう言うと私の手を引き、誠から距離を取る。
誠から十分離れた所でようやく影の私が口を開いた。
「お願いしたい事は他でもないの。その…私恋しちゃったみたい…。」
影の私の顔を見ると頬が凄く真っ赤になっていて耳まで真っ赤に染まっていた。
「えっ…。相手の名前は何て言うの?もしかして誠?」
私は声を震わせながら言った。
もし誠だったらどうしよう。
そう思った。
でも影の私は首を左右に振った。
それを確認すると私は安堵のため息を吐いた。
「じゃ…憐?」
そう訊くと影の私は黙り込んだ。
「そう…みたい。。もう気まずくなっちゃって…目を合わせるのが怖くなっちゃって…。
どうすればいいかな?」
「それなら誠に相談してみるのもいいよ。何かと言って仲良しだし。」
私はニコニコ笑顔で言った。
192
:
燐
:2012/02/03(金) 19:25:03 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「そうなの!?なら聞こうかしらね。」
影の私はニヤケ顔で言った。
「じゃ私が聞いてくる。ちょっと待っていて。」
私はそう呟き、誠の所に向かった。
「誠。」
私は誠に問い掛ける。
「ん?何?」
誠は訊く。
「憐の事で聞きたい事があるんだけどさ…。憐ってどう言った女の子が好みなの?」
「!!!!!」
そう訊くと誠は面食らった表情をする。
「どうしたの?」
私は誠の顔を覗き見る。
「てか何だその質問!!」
予想以上の誠の慌てっぷり。
明らかに戸惑っている。
「何でそんなに慌ててるの?」
私は誠に訊く。
「いや…夜那がいきなり変な質問するからな…思わず戸惑っちまった。」
誠は右手で頭を掻きながら言った。
193
:
燐
:2012/02/03(金) 19:39:09 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「ふーん…。で、憐ってどんな女の子が好みか分かる?」
「分かるか!!」
即答で誠は答える。
「そっか…。じゃどんな女の子が好みが予想しよう。私的には大人しくて可愛い子がタイプだと思うんだよね。
誠は?」
「何で予想する方向に向かってんだ?意味分からん…。」
誠は呆れた顔をする。
「さ、早く。」
私は妙にワクワクしながら言った。
「ん?おっ!憐!!」
誠は横に振り向いて言った。
私もそれに続き、横に振り返る。
すると前方から人影が一つ近づいてくるのが見えた。
194
:
燐
:2012/02/03(金) 20:25:26 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「あれ?誠?何で居るの?」
憐は口を尖らせて言った。
「何でって…夜那に呼ばれたから来ただけだ。後、お前に聞きたい事があんだけど。」
「何?」
憐は誠を睨みながら言った。
「お前の好きな好みのタイプを教えて欲しくてな。」
誠がそう言うと憐は‘嫌’と即答で答える。
「でも、夜那だけなら教えてあげるよ。誠には教えたくないからね。」
そう呟くと憐は私の隣に来た。
「お前なぁ…ある意味で腹黒いぞ…。」
「腹黒い?面白い事言うよね。相変わらず。」
憐はクスッと笑いながら言った。
「お前ってさ…笑うと女みてぇー…だな。」
誠は苦笑いしながら言う。
「女?」
憐の眉がピクッと反応する。
「うん。女。夜那もそう思わね?」
「いや…私は…。」
「もういいよ!!僕はどうせ女っぽい男だよ!!」
憐は泣きながらどっかに行ってしまった。
「アイツ…女だって言われるのがコンプレックスかよ。意外な弱点だな。」
「コンプレックスって何?」
私は訊く。
「ま、簡単に言えば自分自身の一番触れて欲しくない所だ。難しく言えば劣等感ってヤツだ。
俺のコンプレックスはやっぱ昔の過去だな。」
195
:
燐
:2012/02/03(金) 21:36:50 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「コンプレックス…。」
私は俯いて右手を握り締めた。
行かなきゃ…。
憐の所に…。
私の足は無意識に憐が居る方向に進んでいた。
「夜那。何処に行くつもりだ。」
背後で誠が呼ぶ。
「…誠。お願い…私を…憐の所に行かせて!!」
そう言って私は一気に駆け出した。
その様子を見ていた影の私は悲しそうな目で私を見ていた。
「誠は追いかけるの?陽の私を。」
影の私は静かに口を開いた。
「いや…止めとく。アイツの問題に態々俺が首を突っ込む必要がない。
憐の弱点を克服させるつもりだと俺は思う。」
「そうね。きっと夜那なら憐を助けてくれるわ。私はそう信じる。」
影の私は胸元に手を乗せ、目を瞑りながら言った。
196
:
燐
:2012/02/04(土) 13:15:15 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「信じるって鼻っから信じてないくせに良く言うぜ。」
誠は苦笑いで呟く。
「信じてるわよ。アンタこそ信じてないんじゃないの?」
影の私は言った。
「信じてるさ。アイツから全部学んだ事だ。信じる事が何よりも大事だって事を教えてくれたからな。」
「ま、陽の私ならそんな事言いそうね。私は言わないけどね。」
影の私は呆れた顔をする。
「なぁ…本当に影の夜那か?全然夜那に見えないんだが。」
誠は呆然とした表情で言った。
「本当よ。ま、性格が異なるからそう見えないかもね。」
影の私はクスクス笑いながら言った。
「そうかよ。で、お前ってさ憐が好きなのかよ。」
誠がそう言うと影の私は思わず戸惑う。
「そうよ。悪い?」
影の私はそっぽを向く。
「いや別に。てか、憐の何処に惚れたんだよ。アイツのいい所で限られるぞ。」
「何処って…。何処でもいいじゃない。ただ守ってあげたくなるような子だから。
そこら辺かな…。」
影の私は照れながら言った。
197
:
燐
:2012/02/04(土) 13:40:42 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何照れてんだよ。意外にツンデレキャラだったんだな。」
「ツンデレ…。それ周りから良く言われる言葉だわ。て言うかこんな話してていいのかしら。
陽の私はどうなったのかしら。」
影の私は不貞腐れる表情になりながらも呟く。
「大丈夫だ。夜那ならちゃんとやってくれる。俺が言うよりも十分に強い意志を持っているからな。」
「あら。意外に小心者なのね。ま、いいわ。」
影の私はそう言って前方を見る。
「やっぱ追いかけるわ。心配だし。」
「そう言う事なら私も着いていくわ。此処で黙って一人で居るのも納得がいかないもの。」
影の私はそう言って誠の右手を握る。
「素直に‘私も連れてって’みたいな感じで言えばいいのにな。素直じゃねーな。」
「あら誠も素直じゃないのに良く人の事言えるわね。自分の立場をもっと考えなさいよ。」
影の私は笑いながら言った。
誠はその言葉が頭に来たのか、一気に駆け出した。
「さっさと行くぞ。こんな所で時間食ってる場合じゃねーし。」
誠はそう言って陽の私の居る場所に向かうのだった。
198
:
燐
:2012/02/04(土) 13:41:39 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
※お知らせ※
レスの200は書き込まないでくださいね。
記念すべき200なので…。
では宜しくお願いします。
199
:
燐
:2012/02/04(土) 13:55:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
一方、陽の私は影の憐を追いかけていた。
あれからどれぐらい走ったのだろうか。
足がもう棒のように痛くてズキズキしていた。
「はぁ…。はぁ…。」
私は立ち止まって中腰に息を切らしていた。
額から流れる汗が私の足元に雫となって滴り落ちる。
もう体力の限界だった。
元々体力がない私は少し走っただけでも息が切れる。
でも今回は結構走った。
だから息が切れるのは当たり前かもしれない。
「駄目…。こんな所で諦めるもんか。憐の元に追いつくまで私は諦めない。」
私は体勢を立て直して、再び走り出した。
足が痛いけど…諦めない。
諦めないよ…。
そんな事を心の中で言い聞かせながら私は走り続けた。
やがて前方に白い光が見えてきた。
‘出口’
そんな言葉が頭に浮かんだ。
私は力を振り絞ってその光の元へ全力疾走で走りこんだ。
200
:
燐
:2012/02/04(土) 13:57:33 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
200行きました!!!
第4章は長いですが・・・。これからも宜しくお願いします。
関係ない話ですが・・新作の方のタイトルと章の構成が出来上がりました。
また新作の方も宜しくお願いします。
では、引き続き宜しくお願いします!!
201
:
燐
:2012/02/04(土) 14:19:00 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
白い光の正体は白い蝶だった。
穢れの無い純粋な白。
触れたら消えてしまうんじゃないかってぐらいの儚さ。
「白い蝶さん…。」
私は蝶さんに近づくと蝶さんの後ろに地面に蹲っている人影が居た。
「憐…。」
私はその人影に近づき声を掛けた。
「どうして着いて来るんだよ!!」
その人影はゆっくりと顔を上げて言った。
人影の正体は憐で、憐の瞳は涙で滲んでいた。
「心配だからに決まってるよ。ねぇ…戻ろうよ。誠も影の私も心配してるよ。」
そう言うと憐は激しく首を左右に振る。
「嫌。誠は僕を侮辱したんだ。戻りたくない。」
憐は酷く怒っている。
「大丈夫。私も一緒になって謝るから。それならいいでしょ。」
私は笑顔で言った。
202
:
燐
:2012/02/04(土) 19:48:23 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…嘘だ。そんなの嘘だ!!僕は騙されないから!!」
憐は立ち上がって何処から持って来たのか私にナイフを突きつける。
「嘘じゃないよ。本当の事だよ!!」
私は少し強気で言った。
「じゃ証明して見せてよ。それまで僕は信じないから。」
憐は明らかに警戒している。
影の憐がこんなにも挑戦的なのは気のせいだろうか。
「分かった。証明してあげる。でもその代わりちゃんと証明したらちゃんと戻ってくれる?」
私がそう言うと憐は小さく頷き、ナイフを地面に投げ捨てた。
「後、憐って影の私の事どう思ってるの?」
そう訊くと憐は一瞬黙り込んだ。
「どうって…そんなの分からないよ。何でそんな事聞くの?もしかして頼まれたの?」
憐は疑わしい目つきで言った。
「そう言う訳じゃ…。」
「夜那って本当に嘘下手だよね。僕はそんな夜那が好きだよ。
2ヶ月前からね。でもそれは“友達”としての好きだよ。今は影の夜那の方が好きかな。」
203
:
燐
:2012/02/04(土) 20:09:30 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「それって恋愛の方?」
私が訊くと憐は笑顔で頷く。
これって両思いってヤツなんだよね?
「でも恥ずかしくて告れないんだ。だってもし振られたら一生落ち込むし…。」
憐は再び地面に座り込んだ。
「でも告白してみないと分からない物じゃない?告白って最後まで分からない物だと私は思うよ。
私は告白した事なんてないけど…気持ちは分かる。」
私は胸元に手を置いて小さく深呼吸して呟く。
「夜那の場合、誠から告られたんだよね?半年前。影の夜那から聞いたよ。」
憐は笑顔で言った。
「そうなんだ。でも何で影の私がそんな事知ってるの?」
「あれ?言ってなかった?陽と影の関係は対になっているからお互い気持ちは共有し合ってるんだよ。
だから影の夜那が陽の夜那の行動を把握してあるし、過去に夜那が何したか全て記憶してあるよ。
それが影の仕事ってものさ。」
憐が分かりやすく私に説明してくれた。
204
:
燐
:2012/02/04(土) 20:19:52 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何か奥が深い気がする…。」
私は呆然としながらも呟く。
「そう?ま、細かい事は気にしない事が一番いい事だよ。」
憐がそう言った直後だった。
何処からか私の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。
205
:
燐
:2012/02/04(土) 21:02:35 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「夜那ー!!」
その言葉を聞いた瞬間、私は声のする方向へ振り向いた。
憐は怖いのか立ち上がって私の後ろに隠れる。
やがて前方に二つの人影が現れる。
その内の一つは手を振っていた。
206
:
キルア
:2012/02/05(日) 08:40:58 HOST:proxy10010.docomo.ne.jp
どうも!
1から全て見ましたけど、とってもクオリティが高い小説でビックリですΣ( ̄□ ̄)!
宜しければ入っても宜しいでしょうか?
>燐様(燐兄貴)
207
:
愛歌
◆EFyjchDnb.
:2012/02/05(日) 08:42:17 HOST:proxy10009.docomo.ne.jp
名前間違えました…ory
正しくは愛歌(ロンド)です!
208
:
燐
:2012/02/05(日) 12:26:05 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
愛歌>>どうぞwどうぞw
兄貴って呼んでくれぇw
209
:
燐
:2012/02/05(日) 12:47:37 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
その影はすぐに誠だって分かった。
誠も私の姿を確認したのか私と数メートルの位置で立ち止まる。
誠の隣には影の私が仲良く誠と手を繋いでいた。
憐は私の背後から二人の様子を伺っていた。
「何で着いてきたの?」
私は冷たく誠を睨みながら言った。
「…心配だからに決まってんだろ!!」
「て言うか誠は憐に謝る事あるんじゃないの?」
私は誠の言葉を遮って指摘する。
「……。」
誠は黙り込んだ。
「憐は怒ってるよ。誠があんな事言ったから。」
私は誠に向かって右手の人差し指を突き刺した。
「憐…すまねぇ。」
誠は謝るが、憐は黙っている。
「感情が籠ってない。ちゃんと感情込めて謝ってよ!!精密なロボットみたいに
謝らないで。」
憐は誠を睨みながら言った。
210
:
燐
:2012/02/05(日) 15:56:24 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…ごめん!!」
誠は憐に向かって深く頭を下げる。
「…いいよ。合格。今度からその事については一切触れないでね。」
憐は冷たく言い放つと、影の私の所へ駆け出した。
「夜那…。」
誠は私にゆっくりと近づき、私の身体を抱き締めた。
「…さっきはあんな言い方してごめん。」
私は謝る。
「夜那にしては上出来だったな。あれも芝居だったりしてな。」
誠は笑いながら言った。
「何で分かったの!?凄い。超能力みたい…。」
「芝居だったのかよ!?ま、普段の夜那ならあんな言い方しねーし。馬鹿でも分かる。」
「私って演技下手なのかな…。見破られるって事は。。」
私は肩を落として地面に座り込む。
「そんな事ねーと思うけど。気のせいじゃね?」
誠は私の頭をポンポンと撫でながら言った。
「そうなのかな。あっ!そう言えばだけど…。あの二人両思いっぽいんだよね。。」
私は二人を一瞥しながら言った。
211
:
燐
:2012/02/05(日) 16:26:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「マジかよ。でも絶対吊り合わないと思うぜ?」
誠の“吊り合わない”と言う言葉が心に突き刺さる。
そう言えば義理のお母さんにもそんな事言われたんだよね。
でもそんな言葉はすぐに私の心から消えて行った。
「でも、案外いいカップルになりそうだよ。」
「いや俺は反対だと思うな。だって腹黒とツンデレだぜ?絶対合わねーわ。」
誠はケラケラと笑いながら私の身体を離れる。
「腹黒とツンデレって…憐と影の私の事?」
私は訊く。
「うん。」
誠は頷く。
私はふと視線を二人に移す。
二人は恥ずかしいのかお互い背を向けている。
私はしばらく二人の様子を見守る事にした。
隣に座っている誠は薄く笑いながら二人の様子を見ていた。
「憐…。」
影の私が振り返って静かに呟く。
212
:
燐
:2012/02/05(日) 17:15:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何?」
憐は素っ気なく振り返る。
「あの…その…私ね……ずっと憐が好きだったの!!」
影の私は顔を真っ赤にして言った。
「…僕も好きだよ。夜那の事。」
憐はさらりと言った。
「本当…?」
「うん。本当。」
憐はそう言って影の私の身体を抱き締める。
「嬉しい…。」
「良かったね。二人とも。」
私は横から割り込む。
「うん。」
影の私はとても嬉しそうだった。
213
:
燐
:2012/02/05(日) 20:49:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
でも何処かツンデレなのだろうか。
全然普通に見えるのに…。
私の中に一つの“疑問”が生まれた。
と言うかこの場合、“疑惑”に入る?
何か良く分からない…。
「てか、憐痛いわよ。」
影の私は苦しそうに呟く。
「あ…ごめん。」
憐はすぐさまに影の私の身体を離れる。
その時、私の視界が少しずつぼやけてくる。
嗚呼…もうすぐ夢が解けるんだ。
そう思って地面に寝転がる。
「おい夜那。」
誠が私の右肩を揺する。
私はそのまま目を瞑って意識を失った。
214
:
燐
:2012/02/05(日) 21:14:07 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
―――――――…。
「んっ…。あれ?私…。」
私は重い身体をゆっくりと起き上がらせて辺りを見回した。
いつもの光景が目に飛び込んでくる。
良かった…私の部屋だ…。
そう安心しただけで全身の力が抜けた。
私の隣には寝息を立てて眠っている誠が居る。
まだ夢から覚めないのだろうか。
誠の左手の薬指には指輪が嵌められている。
「誠…。」
「何?」
すぐ返事は返ってきて私は驚く。
「お、起きてたの?」
私がそう言うと誠は小さく頷く。
「うん。てか、夜那の寝顔可愛かった。」
誠はニヤニヤしながら言った。
「えっ…。」
私は恥ずかしくなって顔を逸らす。
「ならもっとその顔俺に見せて。」
誠はわざとらしく妖艶に微笑む。
何時もの誠とは明らかに違っていた。
215
:
燐
:2012/02/05(日) 21:35:25 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「どうしたの…?一体…。」
私は地面から立ち上がって一歩ずつ後ろに後ずさりする。
何か嫌な予感がするのは気のせい?
「夜那。」
誠の声に私は立ち止まる。
「何?」
私は顔を正面に戻して俯きながら呟いた。
「お前ってさ…今でも亮介が好きか?」
誠の言葉に私は首を横に振る。
「好きじゃないよ。友達としては好きだけど…。それがどうかしたの?」
「…良かった。本当に…。」
誠は嬉しそうに言う。
「それだけ訊きたかったの?」
私がそう言うと誠は左右に首を振った。
「後もう一つ…。お前にプレゼントがあるんだ。」
216
:
燐
:2012/02/05(日) 22:00:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「プレゼント!?何々?」
私はつい嬉しくなって舞い上がってしまった。
「後ろ向いて。」
誠に言われ私は後ろを向く。
「目も瞑っておいて。」
そう言われ目も瞑る。
数分後…。
髪に違和感を感じた私は思わず目を開けてしまった。
「出来たよ。」
誠は私に黄色の手鏡を渡した。
思わず手に取ると、髪が一つに結ばれていた。
ヘアゴムかと思ったがよく見ると赤いリボンで髪は結ばれていた。
「これ…。」
「うん。夜那は髪結んだほうが可愛いかなって思って。気に入った?」
誠はニコニコ笑顔で言った。
「ありがとう…。」
私は嬉しさのあまりその場で泣いてしまった。
「ホント、夜那って泣き虫だな。でも俺はそんな泣き虫な夜那も好きだ。」
誠は私の頭を撫でながら言った。
「ありがとう。とっても嬉しい。」
私は微笑みながら言った。
「で、俺のお願い訊いてくれる?」
誠はそう言うと私の身体を抱き上げて、ベッドに下ろさせた。
「う、ん。何?」
私は戸惑いながら言うと、誠は不意に私の身体をベッドに押し付けた。
身動きが取れない。
「誠…?」
「夜那ってさ…無防備だよな。」
217
:
燐
:2012/02/05(日) 22:15:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
不意に出た誠の言葉に私は理解出来なかった。
「誠…。」
私は震えた声で呟く。
「お前さ…分かってねーよな。俺が男だって事。」
突然の事に私は言葉を失う。
「今まで何時もお前に遠慮して来たけどよ…。今日は遠慮しねぇから。」
明らかに何時もの誠とは違っていた。
誠の冷たくて冷酷な瞳に思わず顔を逸らす。
「いや…嫌ぁぁぁぁぁ!!!!!!」
私は声が枯れるほど大声で叫んだ。
その声を訊いて誠のお母さんが部屋に入って来た。
「何をしているの!!」
誠のお母さんの怒鳴り声が部屋中に響き、誠は我に返る。
「母さん…。」
218
:
燐
:2012/02/06(月) 17:51:13 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
誠は無言でベッドから下りる。
私は怖くてその場で震えていた。
「誠!!今夜那ちゃんに何しようとしたの!!」
誠のお母さんの怒鳴り声が部屋中に響く。
「何もしてねーよ。」
誠が冷たくそう呟くとパチンと乾いた音が部屋中に響く。
誠のお母さんが誠に向かって平手打ちされたからだった。
頬を叩かれた誠は無言で俯く。
219
:
燐
:2012/02/06(月) 19:46:44 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「止めてください!!!」
私は大声で叫んだ。
「夜那ちゃん!?」
「誠は何も悪くありません…。どうか責めないでください。。」
私は泣きながら呟く。
「夜那ちゃんがそう言うならいいわ。」
そう言って誠のお母さんは部屋を出て行った。
誠のお母さんが出て行った後、私は安堵のため息を吐いた。
「何で俺を庇った?」
誠の冷たい視線が私に注がれる。
「守りたかったの…。もう誠に辛い思いをさせたくないの…。」
私はベッドから下りて誠の身体に抱きつく。
220
:
燐
:2012/02/07(火) 18:01:20 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「…同情のつもりか?」
誠は冷たい口調で言った。
「…そうかもしれないね。でも見方変えたらそうでもないかもね。」
「謎々みたいだな。」
誠は冷たい口調から朗らかな口調に変わる。
221
:
愛歌
◆EFyjchDnb.
:2012/02/07(火) 20:58:22 HOST:proxyag057.docomo.ne.jp
thank youでーす!(藤●)
どしたらこんな上手い小説かけるん?
>燐兄貴
222
:
燐
:2012/02/08(水) 12:27:53 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
愛歌>>とにかく本をたくさん読む事だなw
一日に2冊ぐらい。
223
:
燐
:2012/02/08(水) 13:03:27 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「結局、俺は夜那にしてあげる事が一つもない。」
誠はポツリと呟く。
「そんな事ない。今まで誠は私の為に尽くして来たじゃない!」
「でもさ…それって夜那の為になったか?役に立ったか?」
誠は冷たく言うと、私は誠の身体を離れて黙り込んだ。
「役に…立ったよ。」
「明らかに動揺してるのが見え見えだぜ?」
誠は鼻で笑いながら言った。
「動揺してるのは誠の方なんじゃないの?」
私は少し強気に言った。
「…そうかもしれないな。俺だって不安で不安でどうしようもねーんだ。」
誠は弱音を吐く。
「私だって不安だよ!!でも…一人じゃ解決出来ないと思うの。たった一人じゃ
きっと何も出来ない!!」
224
:
愛歌
◆EFyjchDnb.
:2012/02/08(水) 14:37:35 HOST:proxyag103.docomo.ne.jp
本…
…私も母に頼んで家にある本全て(大体70くらい)持ってきてもらおうかな!
>燐兄貴
225
:
ピーチ
:2012/02/08(水) 23:10:00 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
お久〜>w<
最近pc禁止になったりしてあんまり見れなかったけどおもしろい!
226
:
燐
:2012/02/09(木) 08:07:46 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
「何も出来ない…か。たしかに一人じゃ何も出来ないし、何も変わらない。
でもそれは人間一人一人として同じ事だ。でも一人が二人になってみたら
人手が増えて何か変わるかもしれない。」
誠はズボンのポケットに手を突っ込みながら言った。
「誠は…それで何か変わった?」
「ああ。変わったさ。昔の過去に囚われず今を生きよう。って思えたんだ。
それに半年前だって、お前に出会えたから今の俺が在ると思う。
きっとお前に出会ってなかったら今の俺は死んでたかもな。」
誠は少し鼻で笑いながら言った。
「それ…全く私の同じ事言ってない?」
私は少し誠を睨む。
「言ってない言ってない。気のせいだ。」
誠はニコニコ笑顔で言う。
「今誤魔化したでしょ?」
私はすぐさま指摘する。
「誤魔化してないよ。気のせい気のせい。」
「…分かった。その事は聞かなかった事にしておくね。」
私は笑みを浮かべて笑った。
227
:
燐
:2012/02/09(木) 08:17:34 HOST:zaq7a66fd0c.zaq.ne.jp
でもその時の誠の笑顔に違和感を覚えた。
妙な胸騒ぎが頭の中を過る。
いつもと変わらない笑顔だけど何処か違う。
言葉に表すなら“不穏”な笑み。
「どうした夜那?」
誠が横から私の顔を覗き込む。
「ううん。何でもない。」
私はいつもと変わらない笑顔を誠に見せた。
「よし。何か作るか。」
誠は背伸びしながら言った。
「何かって?」
228
:
燐
:2012/02/10(金) 18:36:46 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
「旨いもん。夜那の好きなもんにする。何がいい?」
誠は嬉しそうににんまりした。
「何でもいいよ。油系以外は…。でも焼肉は好きかな。」
私は暢気な声で呟く。
「焼肉!?お前肉なんて食べるのかよ。ほっそりしてんのに…。
肉なんて食べたら太るぞ。」
誠は笑いながら言った。
「うん。だってお肉美味しいんだよ?」
こう見えても私はかなりの肉好きだ。
豚肉と牛肉はもちろんの事、鶏肉、ラム肉も食べられる。
誠が海外から帰って来る2週間前に、家でお肉パーティーをしたからだ。
それ以来、肉好きになってしまった。
「夜那が肉好きだったなんてな。新たな一面発見だな。」
「そう言う誠はお肉食べるの?」
私は首を傾げる。
229
:
燐
:2012/02/10(金) 18:55:11 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
「いや…俺は肉系は食べられないんだ。昔から。母さんも油がのってる
肉は身体に毒とか何とか言うから食べない。」
「…それって自分の身体を気遣ってるって事なんだよね。」
私はポツリと呟いた。
「気遣ってる?何で?」
誠は私の髪を触りながら呟く。
「だって昔からなんでしょ?その時、まだ心臓が悪かったんでしょ?
それって自分が自分の身体を守ろうとしているのと同じだよ。
必死に生きたいって言う気持ちが伝わってくるよ。私にも。」
私は目を瞑って両手を胸元にあてて深呼吸して言った。
誠は黙っている。
「それに生きるって事が全てじゃない。生きたかったら生きればいい。
死にたかったら死ねばいい。それは自分自身が決める事。
人に意見に着いて行くのも自分自身が決める事。他人が決める事じゃない。
全て自分で決める事なんだよ!!」
私の言葉が深く心に響いたのか、私の肩に顔を埋める。
230
:
燐
:2012/02/10(金) 19:12:36 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
「…俺さ…今でも実の両親が憎い…。憎くて憎くてたまらない…。
そーゆう時ってさどうすればいいのか分からないんだ。」
誠は涙声になりながら言った。
「じゃ今から神社に行こう。」
私は何気に言った。
「何で神社なんだよ…。」
誠は呆れながらも笑いながら言った。
「神社に行くときっといい事があるよ。さ、行こっ!」
私ははりきりながら誠の腕を引っ張る。
「このままで行くのかよ。せめてさ何か羽織って行こうぜ。外寒いし。」
誠はそう言うと私の部屋を出て行った。
誠の言うとおり、外は極寒。
冬並みの寒さ。
231
:
燐
:2012/02/10(金) 19:26:24 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
たしかに寒そうだし…。
と言うか今、何時だろう…。
西の空に日が照ってるから、もう夕方なのかな…。
私は不意に思った。
誠に‘神社に行くときっといい事があるよ’なんて言っちゃったけど…。
自分の真意はノープラン。
唐突に出たから、後先の事が心配になってきた。
私…本当に何考えてるんだろ…。
後先の事何も考えないで誠にあんな事言って…。
はぁ……。
このため息は心配?
それとも不安?
…きっと答えはどちらも同じ。
変わらない。
232
:
燐
:2012/02/10(金) 19:52:38 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
そんな事を思っていると背後から‘夜那’と呼ばれた。
その声に反応して私はすぐ振り返る。
ドアの所でカーキ色のパーカーを着た誠が腕組みしながら立っていた。
誠の首元には去年私がクリスマスにあげたマフラーが巻かれていた。
「お前服1枚で寒くないのかよ。」
誠は不機嫌そうに言う。
「大丈夫だよ。と言うか服1枚じゃないよ。3枚だよ!下着合わせて3枚!」
私は笑みを浮かべて言った。
「…大胆且つ素直だな。夜那は。」
誠はそう言うと私に近づき、私の右手を握り締める。
「そ、そんな事ないよ…。」
私は頬を赤らめて誠に背を向ける。
233
:
燐
:2012/02/10(金) 20:05:19 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
「お前は…俺が好きか?」
誠は弱々しい声で私の耳元で囁く。
「…好きだよ。でも何でそんな事訊くの?」
私は小さく深呼吸をして呟く。
「……。」
誠は黙り込んだ。
「今のは聞かなかった事にするね。さ、神社に行こっ!」
私は誠の腕を引っ張って自分の部屋を後にした。
234
:
燐
:2012/02/10(金) 20:56:09 HOST:zaq7a66c464.zaq.ne.jp
階段を下りてリビングに寄ると、誠のお母さんがソファで寛いでいた。
誠のお母さんは私達の存在に気づいたのか傍まで駆け寄ってきてくれた。
「あら。こんな時間にお出かけ?何処行くの?」
誠のお母さんは微笑みながら言う。
「はい。神社に行って来ようと思います。少し確認したい事があるので。」
私は少し緊張しながら言った。
「そう。でももう夕方よ?明日にしたら?」
「いえ。今から行って来ます。」
235
:
燐
:2012/02/11(土) 16:30:36 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
私は誠のお母さんに軽く頭を下げ、誠の手を引き、玄関に向かった。
「何か強引でごめん…。でもどうしても確認したい事があるの。」
「確認?神社に行って何の確認だよ…。」
誠は納得のいかない顔をしていた。
「少しね。でも大した事じゃないから安心して。」
私は笑顔でスニーカーを履く。
「大した事じゃないからって夜那の事が一番心配だ。
何かあったらどうすんだよ。」
「何かあるって…考えすぎだよ。誠って極度の心配性なんだね。」
私は笑いながら言うが、誠は悲しげな表情をしていた。
「心配するのは当たり前だ!!何かあってからじゃ遅いんだ!!」
誠は真剣な表情で私に言う。
236
:
燐
:2012/02/11(土) 16:43:00 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
でも私は不意に悟った。
明らかに誠には裏がある。
表であんな事を言っていても不意に思ってしまう。
その言葉は私を安心させる為の偽りの言葉なんじゃないかって。
そう思うだけで辻褄が合うような気がする。
そうやって脅えている自分が居た。
237
:
燐
:2012/02/11(土) 18:49:33 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「…分かりました。」
私は渋々言った。
言い返せないなんて何て情けないんだろ…。
私って何処まで弱い人間なんだろう…。
そんな事を思いながら誠と共に家を飛び出した。
家を飛び出して私と誠は手を繋いで神社に向かった。
神社に向かう途中、私はふと空を見上げていた。
空はほんのり茜色に染まっていた。
茜色と言うより緋色に近かった。
「綺麗…。」
空を見ているだけで悲しい事も全て忘れてしまいそうな気がした。
「…さっきはごめん。」
誠の言葉に私は唾をゴクリと呑み込んだ。
「俺…いつの間にかムキになってて…。本当にごめん!!」
私の手を握っている誠の手が微かに震えていた。
「…もういいよ。そんな事で気にしてたらあっという間に人生終わっちゃうし。
やっぱ今生きている時間を楽しまなきゃね。」
238
:
燐
:2012/02/11(土) 20:13:53 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
私は前方を見ながら言った。
「今…生きてる時間。」
「そう。今生きてる時間を大切に忘れないように自分の心の中に刻み続けるの。
自分が生きた証として。何時までも手に残るようにね。」
私は空を見上げながら言った。
「…失った幸せはもう元には戻らない。」
誠はポツリと呟いた。
「えっ?」
私は訊き返す。
「…何でもない。」
誠は落ち着いた口調で言った。
「あっ!着いたよ。」
私はいつの間にか神社の鳥居の目の前に来ていた。
239
:
燐
:2012/02/11(土) 20:20:26 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
でも誠は何か考えているのか何も返事を返さない。
「誠?」
私が話しかけると、誠は我に返った。
「えっ?あっ…ごめん。聞いてなかった…。」
誠は一瞬狼狽した。
「着いたよ。神社。さ、早く行こっ?」
私が訊くと誠は小さく頷いた。
私は強引に誠の手を引き、神社の境内に足を踏み入れた。
240
:
燐
:2012/02/11(土) 20:27:23 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
第5章 偽りと本心
私と誠は共に境内に足を踏み入れると、人が一人も居なかった。
「がらんどうだね…。」
私がそう言うと誠はやっぱ返事を返してくれなかった。
私と誠は境内の右側にある絵馬堂の所に向かった。
そこには私と誠、二人で書いた絵馬が一番上にかけられていた。
241
:
燐
:2012/02/11(土) 21:12:55 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
そう言えば私…憐の葬式が終わった翌日の夕方に此処に来て誠と一緒に書いたんだっけ?
二人で一緒に此処で将来の事を誓ってさ…。
一緒に絵馬を書いたんだ…。
私は誠の手を握ってた手を離して、一番上にかけてある絵馬を手に取った。
そこにはマジックペンで“これからもずっと一緒に居られますように”と書かれていた。
でも私は分かってしまったんだ。
そう誓い合ったあの頃にはもう戻れないんだ…。って。
分かってしまったんだ。
そう思うだけで涙が溢れてくる。
絵馬に涙の雫が落ちて字が少し滲んだ。
「…夜那。」
背後に居る誠がふと呟く。
私は答えなくなくて何も言わない。
242
:
燐
:2012/02/11(土) 21:29:10 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「…ごめん。」
その言葉に私は唇を噛み締めた。
何に対してのごめん?
不安?それとも恐怖?
…そう思っても答えは見つからなかった。
「俺…今まで夜那に嘘吐いてた。」
儚いその言葉は私の心に突き刺さる。
「何の嘘?内容を言ってくれなきゃこっちも分からない。」
私は口を尖らせながら言った。
「…数え切れないほどの嘘を今まで吐いて来た。きっと今も…。」
誠の言葉に一瞬言葉を失いかけたが、どうしてか許す気になってしまう。
本当は許せなくて怒っているくせにどうして私は…。
「例えば?」
私は訊く。
243
:
燐
:2012/02/12(日) 14:09:15 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「…俺の身体の事とか…さ。」
誠は顔を曇らせながら言った。
「…っ。」
私は両手で絵馬を握り締めながらポタポタと絵馬に涙を零して行く。
「…でもまだ確定じゃない。再発するかもしれねーし、しないかもしれない。
有耶無耶でごめん…。」
「でもそんな可能性があるって事でしょ!!何で今の今までそんな事黙ってたの!!」
私は誠に問い詰める。
「言ったら夜那は何かしてくれた?対処してくれた?」
誠の冷たい眼差しが向けられ、私は何も言えなくなってしまった。
つくづく自分が情けなくなった。
「もう半年間ぐらい夜那を見てきたけど夜那にはがっかりした。
夜那は何も知らない方が良かったんだよ。俺の事も過去も何も知らない方が良かったんだ。
俺達…出会わなかった方が良かったのかな。出会ってなかったらこんな事にはならなかったのかもしれないのに…。」
誠は地面に蹲った。
244
:
燐
:2012/02/12(日) 14:26:18 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「そんな事ない…。誠は私を闇の中から救ってくれた。命の恩人じゃない。
最近の誠は何処か可笑しいのは薄々気づいてたけど…まだ親の呪縛から
抜け出せないのは、誠が抜け出したいってそう思わないからじゃないの!!」
私の声が神社内に響く。
「…そんなんじゃねー!!お前が分からないだけだ!!俺だってな…自分でも分かってるんだよ…。
何言ってんだろうって…。でもそう思っただけでアイツが俺の中に出てくるんだよ。
アイツが出てきてから俺は…自信を失くしてしまったんだろうな…。」
誠は両手で頭を抱えて泣きながら言った。
「アイツって?アイツって誰?」
私は誠に駆け寄って話しかける。
「アイツはアイツだよ!!俺の片割れだ!!」
誠は息を切らして怒鳴り声で言った。
片割れって…亮介の事?
でも亮介と誠は友達なんじゃないの?
245
:
燐
:2012/02/12(日) 15:15:15 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
もし亮介が違うとすれば思い当たる人物は一人しか居なかった。
でもどうしてもその人物は私と深く関わっている気がしてならなかった。
根拠はないけど確かめる術はある。
「…もしかしてその片割れって…影の誠なんじゃないの?」
私が恐る恐る訊くと誠の身体が微かに震え始めた。
「もし誠の言う‘アイツ’が影の方の誠だとすれば全ての辻褄が合う気がする。
今までの出来事も全て“影”と言う存在が握っているだとすれば答えは一つしかない。」
「…真実を全て聞いて俺を解放させる事か?」
誠は地面から立ち上がって呟く。
「うん。私ずっと考えてたの。もしかしたら私達は今まで“影”と言う存在に
誘導されてたのかなって。今解決しなきゃきっとこの先もずっと影の存在に操られたままだと思う。
きっと私達二人なら解決出来る気がする。全ての真実も何もかも。」
私はそう言って誠の目の前に右手を差し出す。
246
:
燐
:2012/02/12(日) 15:38:29 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「Truthって英語で‘真実’って意味なんだぜ?」
誠は泣き笑いながら言った。
「そうなの!?でも何でいきなりそんな事を?」
「何となくだ。後、自由は‘Liberty'って言うんだぜ?」
誠は嬉しそうに言う。
「‘Liberty'?何かいい響きかも。」
「俺はその二つの言葉を信じて生きてきた。辛い過去があってもその二つの言葉を
信じて、生きて行くって決めたんだ。」
誠は優しく私の右手を握り締める。
「信じるは英語で‘believe'って言うんだよ!!」
私は笑みを浮かべて言った。
247
:
燐
:2012/02/12(日) 15:59:47 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「それぐらい知ってる。」
「そっか。」
私は言った。
他愛の無い会話だ。
「で、夜那に一つ聞きたい事があるんだけど。」
「ん?何?」
私は訊く。
「お前さ…アメリカ行ったら何するつもりだよ。」
「何するって…観光とか?」
私は呑気に言った。
「観光か…。呑気でいいなお前は。」
誠は呆れた顔をして言った。
「何で駄目なの?」
「駄目とか何も言ってねーけど。俺、アメリカに行ったら短大に行くつもりだ。
ま、三年ぐらいか。」
「短大?それって凄いの?」
短大の意味が分からない私は訊き返す。
「…お前全然分かってねーな。大学に行くって事は人一倍勉強しなきゃ行けねーんだ。
亮介も俺と同じ短大行くみてーだけどよ。お前はどうすんの?」
「どうするって…私には絶対無理だよ…。」
私はつい弱音を吐く。
248
:
燐
:2012/02/12(日) 16:16:34 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「でも、やってみたい事はちゃんとあるの。内緒だけど。」
私はそう言って左手に持っていた絵馬をまた絵馬堂の一番上にかける。
「やってみたい事?何だそれ。将来の夢的な?」
誠がそう言うと私は小さく頷いた。
「そう言えば誠の将来の夢って何?」
私は訊く。
「俺はギター奏者になりたいんだ。カッコイイしな。」
誠は嬉しそうに言った。
「そう言えばギターしたいって言ってたもんね。ギターかぁ…。
何かいいよね。楽器弾ける人って。憧れるし。」
249
:
燐
:2012/02/12(日) 16:28:55 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
「てかさ、こんな話していいのかよ。辺り暗くなってきてるし。」
誠に言われ私は周りを見回した。
ほんのり空が黒く染まってきている。
「ホントだ。さ、早く家帰ろっ!」
「はいはい。」
誠は呆れ顔で、私と共に神社を後にした。
250
:
燐
:2012/02/12(日) 16:34:11 HOST:zaq3dc00699.zaq.ne.jp
コメします。
レス250行きましたがまだまだ終わりません。
まだ最後の問題が残ってるので・・・それが解決したら完結ですね^^
完結したら、蝶が舞う時…。の番外編があるのでそれを書き始めます。
番外編は長いですね・・・。←自分で言うほどでもないんですが・・。
とりあえずあの3人の話を書こうと思います。(変更アリ)
で、話逸れますが、新作の方のストーリーがちょくちょく出来上がってます。
新作の方も恋愛系なんですが…また切ない感じが加わります。
また2人の男女の物語ですが・・宜しくお願いします。
では、引き続きお楽しみくださいノシ
251
:
燐
:2012/02/13(月) 12:53:02 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
神社を後にして家に帰る道を歩いていると誠は私の左頬を右手の人差し指で突いて来た。
「誠?」
私は横目で誠を見ながら呟く。
「…夜那にはたくさん救われたな。」
「えっ?」
私は立ち止まって横に振り向く。
「ん?どうした?」
誠は不思議そうな顔で私を見る。
「えっ…。ううん。何でもない。」
救われた?
そんな自覚が全くない私は少し戸惑った。
救われたより、助けたの方が自覚はあるけど…。
252
:
燐
:2012/02/13(月) 16:56:30 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
うーん。
実際の所、どうなんだろう…。
私これまで誠を救う事が出来ただろうか。
何かほとんど中途半端で終わってる気がする…。
うぅ…。
何か物凄く威圧感を感じるよぉ…。
「夜那?」
誠の声に私は我に返る。
「あっごめん…。少し考え事してた。。」
私がそう言うと誠は笑顔で何かを渡してきた。
「これ聴いて見ろ。俺が死なずに済んだのはお前が居たからとこの曲のお陰なんだ。」
誠が差し出して来たのはiPodだった。
ipodを見るのは2回目。
前に見たのが2日前ぐらいだった。
たしかこれで粉雪を聴いたんだっけ?
今日も粉雪なのかな?
「今日も粉雪聴くの?」
私が聴くと誠は首を横に振る。
「今日は違う曲だ。俺に元気を与えてくれた曲だ。」
誠はそう言ってipodについているイヤホンの片方を私の耳につける。
253
:
燐
:2012/02/13(月) 17:21:11 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
残ったもう片方のイヤホンは誠自身が耳につける。
数秒後…イヤホンから優しい歌声と音楽が聴こえてきた。
「いい音楽…。」
それしか言葉に出ない。
「だろ?どんなに辛い現実があってもこの曲を聴いてれば頑張れたんだ。
でも最近見つけた曲だけどな。」
誠は嬉しそうでその笑顔も本物だったのかもしれない。
あれ?
どうしてだろう…。
全然悲しくないのに涙が出てくるのは何故?
「これ…何て名前の曲なの?」
私は泣きながら誠に訊く。
「えっとな…いきものがかりの“歩いていこう”って曲だ。
てか、夜那も泣いてんだな。この曲ってさ…何か生きる意味を与えてくれるんだよな…。」
「そうだね。生きる大切さと未来へ進んで行く事を教えてくれてるみたいだよね。
何か道標みたい。」
私は泣き笑いながらまた歩き始めた。
254
:
燐
:2012/02/13(月) 18:13:34 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
「道標か。たしかにそうかもな。」
誠は納得したような顔で言った。
「はい。」
私はイヤホンを外して誠に渡す。
「そのまま持っとけ。忘れないように。」
「忘れないように?何を?」
私が訊くと誠は答えてくれなかった。
255
:
燐
:2012/02/13(月) 18:48:23 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
聞こえてなかったのかな?
そう思った私は誠に声をかけようとしたが、突如背後から声が聞こえて来た。
「おっ!夜那と誠じゃん!!」
その威勢のいい声に私と誠は振り向いた。
そこには亮介がビニール袋を片手に持って立っていた。
「何だよ亮介…。」
誠は不機嫌そうに言った。
「今、近くのコンビニでアイス買って来た所。美味いぞ!」
亮介は笑顔で言うと、袋からアイスの入った袋をビリッと破り、その場で食べ始める。
256
:
燐
:2012/02/13(月) 20:34:09 HOST:zaqdadc2a4d.zaq.ne.jp
「アイスなんて春に食べるものじゃないと思うよ?」
私はクスクスと笑いながら言った。
「明らかに季節外れだな。」
誠も笑いながら言った。
「お前ら!俺を見物にする気だろ!!」
亮介は口を尖らせて言った。
257
:
う
:2012/02/14(火) 12:53:56 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
うわwww何これwww
へたくそ過ぎwwwwwwwww
258
:
燐
:2012/02/15(水) 07:26:47 HOST:zaqdb739ed3.zaq.ne.jp
257>>
へたくそですが何か?
259
:
名無しさん
:2012/02/15(水) 10:39:29 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
へ
260
:
名無しさん
:2012/02/15(水) 10:39:40 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
た
261
:
名無しさん
:2012/02/15(水) 10:39:57 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
く
262
:
名無しさん
:2012/02/15(水) 10:40:10 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
そ
263
:
ピーチ
:2012/02/16(木) 21:50:49 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
お久で〜す☆燐さ〜ん!
いきなり変な質問するけど、アメーバピグってやってる?
264
:
名無しさん
:2012/02/16(木) 23:01:37 HOST:wb92proxy04.ezweb.ne.jp
君がはいと言うならいいえと云おう
君が前にいくなら後ろに進もう
全く別の人間だから
相反する程でもなかろう
あったかいものを飲むなら冷たいものを飲もう
酒を飲むなら水を飲もう
265
:
燐
:2012/02/17(金) 09:37:31 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
ピーチs>>やってない(-_-;)
お金かかるっぽいし…。
266
:
燐
:2012/02/17(金) 09:39:45 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
お知らせ
この度、この小説は未完結と言う事で終了させてもらいます。
なのでもう書きません。
此処近々パソコン禁止令が出るかもしれないんで…。
なのでもう此処には来ません。
私を応援してくださった皆様、アドバイス・感想をくれた皆様、
今までありがとうございました!!
何時か来るかもしれませんが・・その時はまた。
ではさようならm(__)m
267
:
ピーチ
:2012/02/17(金) 22:54:04 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さん辞めないで〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!
隣さんの小説、ちょー楽しみにしてるんだよぉ・・・
辞めないで〜〜〜!!!
268
:
名無しさん
:2012/02/18(土) 00:47:54 HOST:wb92proxy16.ezweb.ne.jp
なんだこれww
269
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/02/18(土) 15:00:06 HOST:w0109-49-133-128-18.uqwimax.jp
ねここは燐の小説おもしろくて大好きだったし
コメントだってとっても嬉しかったよ
だから燐がいなくなるっていうのは寂しいです
できることならもっと小説書いてほしいな
燐が決めることだからねここはやめないでとか言えないけど
いつでもいいから暇なとき絡んでほしいな(´・ω・`)
もし燐が心変わりしたらそのときはまたよろしくね!
今まで仲良くしてくれてありがとう、お疲れ様でした
戻ってきてくれるの、待ってるよ!v
270
:
燐
:2012/02/18(土) 17:04:18 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
こnです。
少し空き時間が出来たので来て見ました。
この度、小説を再開させてもらいます。
と言っても楽しみにしてる人達は居ないと思いますが…。
一日で再開させてもらうとか、調子乗ってるとか思ってますよね。
でもそれでも構いませんよ。
何言われてもスルーするのでw
後、この小説を完結させたらもう書かないと思います。
あんまり書いたら迷惑だと思うので…。
新作の方ももう書きません。
なので最後までお付き合いください。
では。
271
:
ピーチ
:2012/02/18(土) 17:14:43 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
燐さ〜ん!
「蝶が舞うとき」再開させる?
楽しみにしてるよ!
272
:
燐
:2012/02/18(土) 17:16:07 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
ピーチ>>…うん。
一応…ね。
273
:
燐
:2012/02/18(土) 17:19:06 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
「そんな訳ないじゃない。何ムキになってるの?」
私はクスクス笑う。
「だってそうじゃねーか。どーせお前らなんかに俺の気持ちなんて分かるかよ。」
亮介はそう言うとまたアイスの袋をビリビリと破き、二本目を口にする。
「行こうぜ夜那。」
誠がそう言うと私は亮介をその場に置いて歩き出した。
274
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/02/18(土) 19:02:18 HOST:w0109-49-133-128-18.uqwimax.jp
よかった、燐が心変わりしてくれて(´・ω・`)
何か言われても気にしないで燐なりにがんばれ!
でもでも、何かあったら相談乗るからねv
迷惑なんかじゃないから、この小説がおわってもまた新作を書き続けてほしいとは思うけど
それは燐が決めることなので結局口出しできないよー(´・ω・`)
まあ一つの意見というか希望としていうなら
書き続けてほしいなあ
がんばってね!
275
:
ピーチ
:2012/02/18(土) 19:06:16 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさんの意見(希望?)に賛成〜!
「道化師と仮面」の方も最初から全部読んだよ〜^0^
いやだったら無理には言わないけど・・・あたしとしては
続けて欲しいな・・・って感じだよ>M<
276
:
燐
:2012/02/18(土) 19:14:04 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
ねここ>>おお!!ありがとう!!
新作は考えておきますノシ
ありがとう!!!
ピーチ>>道化師ryなぁ〜w
完結するかどうか心配やけど頑張るわあw
277
:
ピーチ
:2012/02/18(土) 22:37:20 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
やったー>w<
頑張ってね!!!!!!
姉ちゃんもその内更新するって言ってたから見てみてね〜!
278
:
燐
:2012/02/19(日) 19:52:39 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
ピーチ>>そんなに喜ぶ事なんか?
駄作やで?
しかも更新率低めやで?
ま・・エエわ・・。
279
:
ピーチ
:2012/02/20(月) 16:44:49 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
隣さん>>
え?駄作?
あんなにおもしろいのに?
まーいーや、おもしろいからww
280
:
綾那(*/杏里
:2012/02/20(月) 19:11:50 HOST:110-133-160-47.rev.home.ne.jp
燐さん>
私の小説を読んで頂、有り難うございます!
最初から読ませて貰いますっ`∀´
281
:
燐
:2012/02/20(月) 19:22:13 HOST:zaqdb739e54.zaq.ne.jp
ピーチ>>うんw
だっておもっきり駄作やんw
綾那>>はろはろ♪
最初は此処ではありませんよ。
第1期から読んだ方が内容も分かるかと。。
でも第1期は物凄く駄作なので気をつけてくださいませ。
282
:
ピーチ
:2012/02/20(月) 21:32:30 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
え・・・思いっきり!?
でもさー、道化師以外にも何か新作考えてるの?
283
:
燐
:2012/02/21(火) 18:00:12 HOST:zaq77195e19.zaq.ne.jp
ピーチ>>…うん。
ま、一応だけど…。
284
:
燐
:2012/02/22(水) 16:08:47 HOST:zaq77195e19.zaq.ne.jp
お知らせ
「蝶が舞う時…。」第3期ですが・・・。
まだ終わらないと思います。
番外編も含めてですけど・・・。
それと、更新率が極端に遅くなりそうです。
週1ぐらいしか更新出来ませんが・・それでもいいなんていう人は見てくださいねノシ
では。
285
:
名無しさん
:2012/02/23(木) 18:20:33 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
こんにちは
燐さんの小説を拝読しました。
生意気ですがアドバイスをします。
まず、もう少し視点を定めた方がいいと思います。
読んでいてすごく違和感です。
あと、誰かが発言する度に
「〜は言った」や「〜で言った」などを使い過ぎです。
最後に、無理に難しい言葉を使わなくてもいいんじゃないでしょうか。
失礼しました。
286
:
燐
:2012/03/10(土) 20:10:07 HOST:zaqdadc28cc.zaq.ne.jp
※お知らせ※
この度は私の小説に足を運んで頂き誠にありがとうございます。
この掲示板で7ヵ月ぐらい、小説を書き続けてましたが、この度此処を辞める事に致しました。
理由は様々あるんですが…あえて言いません。
なので、この小説も未完結という事にさせていただきますm(__)m
本当にすみませんm(__)m
たまに此処に来て他の人達の小説を見に来たりはします。
なので、小説を書く事だけは辞めさせて頂きます。
私の小説にアドバイスしてくれた皆様、感想を書いてくれた皆様、
本当にありがとうございます!!!
今まで、小説を何個も掛け持ちしてきましたが、掛け持ちしてきた小説も未完結とさせて頂きます。
本当にすみませんでした!!
では、私はこれで。
さようなら。
287
:
名無しさん
:2012/03/10(土) 22:01:31 HOST:wb92proxy07.ezweb.ne.jp
もうじき春ですよ。頑張りましょう。
288
:
月波煌夜
:2012/03/18(日) 18:18:06 HOST:proxy10036.docomo.ne.jp
こんにちは!
先日は月波の小説……と呼べるのかも分からない駄作にコメントしてくださり、有難う御座いました(≧∀≦)
1から読ませていただいたのですが……
文章力高ッッ!
と唖然としました……。
魅力的なキャラが一杯で、気持ちがひしひしと伝わってきます(゚Д゚)
是非続き読みたいです……。気になります……。
私ごときが口出しできることでは無いと思うのですが、個人的には再開してくだされば凄く嬉しいなーと思います。
駄作に引き続き駄文ですみませんww
ではでは。
289
:
燐
:2012/03/18(日) 18:28:43 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>>こちらは第3期なので、第1期から読んで見てください。
第1期はこれよりもっと酷いです^^;
でも、読んで頂きありがとうございます!
290
:
月波煌夜
:2012/03/18(日) 20:57:05 HOST:proxy10077.docomo.ne.jp
>>289
ですよねー(>_<)
でも今までのお話を知らなくてもあんまり違和感なく読めましたよ!
よろしければ一期の作品名を教えていただけますか?
探します!
291
:
燐
:2012/03/18(日) 21:16:29 HOST:zaqdb739ec8.zaq.ne.jp
かぐやs>
そのままですよ。
永遠がないだけです。
292
:
麻琴
:2012/04/22(日) 00:12:22 HOST:hprm-57422.enjoy.ne.jp
憐さん!!ここ、終わって結構立ってますけど、言います。小説、辞めないで下さい。「ホワイトレザーソール」を読んで、この話も読んで、とっても上手だと思いました。どの話も辞めないで、続けてくれませんか?あなたの小説、素敵です。もっいないし、何より読めないことがとても悲しいです。憐さん本人が決めたことだから仕方ないかもしれない。でも私は続けて欲しい。それだけです。いいお返事、お待ちしております。それまで、忙しくても毎日ここを覗きます。どうか、再開してくれますように。 青木麻琴
293
:
燐
:2012/04/28(土) 13:30:15 HOST:zaq7a66fe3c.zaq.ne.jp
麻琴s>>返信遅くなって済みませんm(__)m
今は短編小説を書いてますが…見事にスランプ状態です。
この小説も未完結で終了したって書いてましたよ?
気分が乗れば再開するかもですが、気分が乗らない限り、再開は厳しいです。
正直、此処を続けたかったんですが…。
中傷になる事を言われたり、家の事情もあったり…何やかんやで物凄く大変でした。
でも『素敵』とか『上手』とかの一言で少し肩の重みが取れた気がします。
こんな情けない私にコメントをくださってありがとうございます。
でも麻琴さんがそんな事を言ってくれるのなら、少し考えて見ます。
でも、前のレスにもう書きませんって書いてしまったので書かないかもしれませんが…。
後、名前間違ってますよ(笑)
294
:
聖奈
:2012/04/28(土) 13:34:52 HOST:p248.net220148011.tnc.ne.jp
入れてッチョ
聖奈です
295
:
燐
:2012/04/28(土) 13:45:13 HOST:zaq7a66fe3c.zaq.ne.jp
暇な時間に少しだけ特典を書きます。
エピソードだと思って読んでください。
※意味不明な言葉が出て来るかもです。
episode. 1 (特典no,1)
『永遠』なんてあるのかな…。
『永久』なんてあるのかな…。
私はふと空を見上げる。
―俺はあると思うぞ―
誰かがそう言った。
―私は正直、分からない―
私はそう答える。
心で思ってもない事をふと告げるって…。
“心”がない人形と同じだ。
―馬鹿って、お前の為に作られた言葉みてぇ―
貴方はそう言った。
でも私は何も答える事が出来なくて・・・ただ俯いていた。
296
:
燐
:2012/04/30(月) 10:08:53 HOST:zaq7a66fe3c.zaq.ne.jp
―私はどうせ、馬鹿ですよ―
少し涙声になってた言葉。
そう言うと、貴方は笑った。
私もそれにつられて笑った。
楽しかったあの頃ももう戻って来ない―――…。
貴方は今はもうお空の向こうに行ってしまったんだから…。
297
:
名無しさん
:2012/05/02(水) 18:30:29 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
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298
:
名無しさん
:2012/05/02(水) 18:30:44 HOST:zaqdadc2281.zaq.ne.jp
死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね
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