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FRAME・GHOST

111竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/11/17(土) 22:39:44 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

「……剣木浜、かつての最強?」
 工藤の言葉に藤村、神山、神乃院の三人が復唱した。
 彼らは今年の四月に入学したばかりだ。工藤と剣木浜の最強、東城との事件は二年前。彼らがまだ中学二年生の頃だ。知らないのも無理はない。同じ高校の一年と二年が決闘した、という噂を神乃院が耳にした程度だ。
 真田は二つ目のプリンカップを開けながら口を開いた。
「政宗くんと東城先輩の事件は、二人の苗字の頭文字を取って『東工(とうこう)事件』と呼ばれてるわ。ま、事件と言うほど大きなことじゃなかったんだけどね」
 プリンを食べながら真田は淡々と述べる。
 その事件に直接とは言わずとも、現場は目撃していたはずだ。その割には噂だけを耳にしたような、自分はそのことをほとんど知らなかったような口調だ。
 あまりに淡々とした口調に違和感を覚えた藤村の心中を読み取ったのか、工藤は口を開いた。
 こういう時は、何かと鋭い男が工藤政宗だ。
「紫ちゃんは決闘の場面を目撃したわけじゃないからね。彼女が駆けつけたのは決着がついた後さ」
「そうなんですか?」
 反応を示したのは藤村ではなく神乃院の方だった。
 彼女も真田の反応には違和感を覚えていたようだ。当の真田は冷蔵庫から三つ目と四つ目のプリンを取り出している。かなり上機嫌だ。
 神乃院の反応に、真田はプリンを取り出しながら言葉を返す。
 あくまでも淡々と。自分は無関係だ、とでも主張するように。
 彼女の口調はさらりとしていて、聞きやすいといえばそうだが、違和感を覚えずにはいられない。
「まあ、二人が決闘するなんて知らなかったし。クラスメートから聞いて初めて知ったわ。柄にも無く血相変えて飛び出しちゃったし」
 真田は冷静さを失わない人物だ。それは今までのやり取りからでも、藤村や神山は分かっていた。
 能天気な工藤を支え、苛立つことが多い那月をなだめ、控えめな明智を牽制し、神乃院に好かれるような非の打ち所の無い彼女だ。よって生徒会メンバー四人の中でも群を抜いて冷静なはずだ。そんな彼女が血相を変えて飛び出すほど、工藤と東城の決闘は恐ろしいものだったのだろうか。
「当時の生徒会長は緩かったからね」
 今でもそんなに変わらないだろうが、彼女は誤解を生まぬように『今よりもね』と付け加えた。
 真田は四つ目のプリンも食べ終わり、再び冷蔵庫からプリンを取り出そうとするが、既になくなっていることにショックを受けていた。
 ショックを受けたまま、彼女は説明を続ける。
「……当時の会長さんは形だけの置物のような会長さんだったわ。仕事を部下に任せ、実力があるくせにそれを振るわない。良いように言えば平和主義者。悪く言えばただのヘタレ。それが当時の会長だった。だから政宗くんと東城先輩の決闘を知っていても何も言わなかったんでしょう。仮にも当時の二年最強だったんだから。東城先輩は」
「あの時は俺もびっくりしたよ。いきなり先輩に喧嘩売られたんだもの。それを言うなら俺も藤村くん達に似たようなことしちゃったね」
 工藤はあはは、と笑い飛ばす。
 そこで、神山ははっとする。
「って待てよ。じゃあ本拠にいる七瀬チャン達が危ないんじゃ?」
「大体そうですよ! そんな危険人物がいるなら、早く退却させた方が大体良いですって!」
 そうだね、と工藤が呟くように言う。
「紫ちゃん。俺から連絡しとくから、打ち合わせておいた場所へ向かってくれないかい」
「了解」
 二人はまるで長年連れ添った夫婦のように必要以上の言葉を交わさなかった。
 真田は部屋を出て、工藤は携帯電話で連絡を取る。

 連絡先は折宮明日香の携帯電話だ。


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