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[これは夢?]LOVE DOLL[それとも現実?]

10キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/09/21(水) 18:04:59 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp

私がよく分からず首をかしげているとフランポワーズさんが私の耳元で静かに囁く。

「よく耳を澄ましてごらんなさい。」

未だにわけがわからないまま言われた通りによく耳を澄ます。
すると、どこからか何かの声が聞こえてきた。

『わぁー!、あれが新しいマスターかな??』

『…まだ決まったわけではいだろう。』

『でも、あんな可愛い子がマスターになってくれたら嬉しいよね』


確かに聞こえた、だけどよく耳を澄まさないと聞こえるか聞こえないかの本当に小さな小さな声。
恐る恐る私はフランポワーズさんを見るがにっこりと笑ってこちらを眺めているだけだった。

( まさか、そんなはず…ない、よね? )


私はゆっくりと振り返ってショーケースの中を覗く。
そこにはさっきと変わらず3体の人形が仲良く並んで座ってこちらを見ていた。

私の気のせいだろうか、いや…気のせいであってほしい。


あの声は、このショーケースの中から聞こえた気がしたのだ。
フランポワーズさんは相変わらずにっこりと笑ってこちらを見ているだけ。

私はもっと耳を澄ませればじっと3体の人形を見つめた。
そして数秒後、店内に私の声が響き渡るのだった。





『ねぇねぇ、なんかじーっとこっち見てるよ?、おーい!!』

『……。』

『あはは、何か面白いねー。おーい!』




…………。

2体の人形が私のことを話しながら手を振ってきた。

( 人形が…手、振ってる…… )



「―――…きゃーーーー!!!!!?????」







――――数分経過。



「大丈夫かね?、驚かせてすまないね。」


フランボワーズさんが苦笑いして私に謝ると温かい紅茶を出してくれた。
私は人形が喋ったことに驚き腰が抜けてしまった。

( 恥ずかしい…… )


私が恥ずかしくて俯いているとすっと目の前に3体の人形が現れる。
フランボワーズさんがショーケースから出して私の膝の上においてくれた。



フランボワーズさんは人形のことを全部、私に話してくれた。



人形を作ったのはこのフランボワーズさんで、この人形は”LOVE DOLL”、恋愛人形という。
恋人のいない人に幸せと癒しを与えるために作られた人形。
そしてその恋愛人形の願い、目的は……

――主の笑顔と幸せ――

だけど少し変わっていて普段は人形の姿だが与えられた名前の紅茶を飲むと人間の姿になれること。

人形の名前はすべて紅茶からとっているらしくて…



――明るくて好奇心旺盛でどっちかっていうと可愛い系に入りそうな子がリゼ。

――物静かでクールでたまに天然で何事にも熱心になる美形な子がラミン。

――チャラそうに見えるが女心をよく分かっているこちらもまた美形で…、その子がカラメル。


リゼならリゼティー、ラミンならラミンティー、カラメルならカラメルティーを与えると人間になれるという。


容姿は人間そっくりに作ったものの、中身は人形らしく心臓は動かなければ痛みを感じることも無い。
つまり、心がなく気持ちというものを分からないらしい。

恋愛人形だが主を恋人人形として幸せにすることが彼らの役目。
恋という苦しさや愛おしさの気持ちを知らない。

その気持ちを知ってしまいこの人形を返品する人もいれば気味悪がって返品する人も多いらしい。




それを聞いて私は少し悲しく思ってしまった。
人形でも恋人としていてくれるなら同じ気持ちを知ってほしい、と。


そして私は決意した。




「フランボワーズさん!、私この人形買います!!」

私が勢いよく顔を上げてそう告げるとフランボワーズさんは少し驚いた表情を見せるとすぐに優しくくしゃとした笑みを見せてくれた。

「貴方ならそう言ってくれると思いました、よろしければその人形達を貰ってください。」




そして私はその3体の人形、リゼとラミンとカラメルを譲り受けた。
この子たちが人間になれる紅茶、リゼティーとラミンティーとカラメルティーと一緒に。







そしてこのときから私の人生の歯車は動き出した。

11キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/09/21(水) 18:28:18 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp

(( 登場人物:詳細 ))


井上 遥―イノウエ ハルカ―

郁と同じ大学に通う20歳で郁の親友。
何でも相談に乗ってくれて、ちゃんと叱る所で叱ってくれるお姉さん的存在。
高校からの仲。


椎名 枢―シイナ カナメ―

郁と同じ大学に通う2コ上の先輩。
よく郁にちょっかいを出していて彼の気持ちはまだ謎に包まれている。
だが、郁もよく慕っている。

12キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/09/21(水) 21:59:52 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp

「何か名前を付けてあげてはどうですか?、貴方と過ごすとなるとこの名前では少し不便かと」

帰り際にそうフランボワーズさんに言われて私はそのお店を去った。


「―――よろしく頼みましたよ。」


フランボワーズさんのそんな呟きは私の耳には届かず秋風とともに夜の闇に消えていった。




――11時30分、帰宅。



「はぁー、今日も疲れたけどいつもと違うことろがひとつ…」

帰宅した私はそう呟くとかばんの中から3体の人形を取り出す。


( いつ見てもみんなキレイな顔してるなー……ちょっと悔しい。 )

私は心の中でそう呟いてさっそく紅茶の準備を始めるのだった。



リゼにはリゼティーを、ラミンにはラミンティーを、カラメルにはカラメルティーを。

準備完了、なのはいいがこんなことで本当に人間になれるのだろうか。
フランボワーズさんのことだから嘘は言わないと思うが、あまり信じてはいなかった私。

そして私は淹れたての紅茶をそれぞれの人形の前に置く。
このあと私は本日二回目、腰を抜かしたのだった。


「でも、こんなにキレイな人が私の恋人だったらなー…」

そう呟いてテレビのスイッチを入れた瞬間、突然背後から鈍い音がした。
私は恐る恐る振り返ると、そこには……


「「「マスター!!」」」


そこには見事に腰を抜かし間抜けな面をして3体の人形…いや、人間を見上げる私がいた。



「大丈夫?、マスター…」

リゼが子猫のような瞳で心配そうに私を覗き込む。
ちっちゃくて可愛いものが大好きな私は思わずリゼを抱きしめる。

「むー、マスターくすぐったい!」


本当の子猫のようにじゃれてくるリゼは可愛くて仕方なかった。

( 私、今幸せ…かも。 )


するとじゃれていたリゼが突然私から剥がされた。
そこに立っていたのは美形で大人っぽいラミン。

「マスターとじゃれるのはいいがほどほどにしろ、リゼ」

「むー…、はぁい」

ラミンがそう注意するとリゼはショボンと拗ねたように返事をする。
そんなリゼも可愛くて私は口元が緩んでしまう。

( 私としては、全然いいんだけどなー )


「マスター、俺たちはお前の笑顔が見たい。具体的に何をすればいいだろうか」

ラミンはさらっとそんなこと言うが、私はあまりに恥ずかしくて俯いてしまう。
フランボワーズさんがいうには人形には感情があまりないと言っていた、きっとこれもそのせいなのだろう。
私がしばらく恥ずかしくて俯いていると私の膝の上に誰かの手がそっと触れる。
そこにいたのは目をうるうるとさせたリゼが私を見つめていた。

「マスター?、元気だして??」

私のきゅんきゅんメーター、1200%超え。

( 私、生きていけるかな…いろんな意味で。 )

するとまたも明るい声が部屋に響く。

「まぁまぁ、これから先長いんだから自己紹介がてらマスターに名前付けてもらおうよ。ね?」

カラメルの少し高い声が私の耳に届く。
そういえばフランボワーズさんも言ってたっけな、名前か――…


「私が名前考えちゃっていいの?、今のままがいいとか…」

と、言いかけるとカラメルがにこっと笑って私を見る。

「僕達にとって名前はマスターとの絆みたいなもの、付けてほしいんだよ。」

「うんうんっ!、俺マスター大好き!!」

「それには俺も同意だ。名を頼む、マスター」

カラメルの言葉に続いてリゼとラミンがつづく。

私はその言葉を聞いて少しほっとしたような嬉しいような気持ちになった。
恋愛人形なんてしょせん人形だと思っていた、そんな自分が嫌になった。
こんなにも優しくて一緒にいて温かくて、一緒にいるだけで笑顔で幸せになれる。

私は照れながら笑顔を見せると3体の人形も笑ってくれた。

13 ◆uXwG1DBdXY:2011/09/21(水) 22:03:51 HOST:KD027082037068.ppp-bb.dion.ne.jp

再びコメント失礼しますノ

本編読ませていただきました、これからこの三人の人形と郁さんの成長が気になりますね。
遥さんなどの他のキャラの登場も楽しみです。個人的にはラミンとカラメルが好きですね、勿論他のキャラも個性的で可愛らしいんですがクールな子とかちょっとチャラっとしている子とかがツボでして←

更新頑張って下さい、応援しています

14キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/09/23(金) 13:41:49 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp


「だけど、突然名前って言われてもなぁ……あ、」

そう呟いてうーんと悩んでいると私の目の前に一冊の本が


―――恋愛小説


パラパラとページをめくっていると3人の登場人物を発見する。


明るくてムードメーカーの久木 葵―ヒサギ アオイ―

冷静で天然?、無自覚なタラシの宮瀬 玲―ミヤセ レイ―

女好きでたまにキザな蓮眞 馨―ハスマ カオル―


この登場人物をみて私はある3人を思い浮かべると無性に可笑しくなってつい笑いだしてしまった。
3人は何故私が笑っているのかは分からなかったようで首を傾げて私を見つめる。


「ふふ、決まり!、リゼは久木葵でラミンは宮瀬玲、カラメルは蓮眞馨!」

3人にぴったりな名前を見つけた私はそう提案してみた。
ゆっくりと3人を見るとリゼもラミンもカラメルも嬉しそうに笑っていた。

「わぁーい!、マスターから名前もらっちゃった!!」

「宮瀬玲、か。これは”嬉しい”で合ってるだろうか。」

「僕たちに合ってるよね、ありがとう。マスター」


そんな3人を見て私は一人幸せを噛みしめるのだった。

そして気付けばもう12時を回っていた。

「もうこんな時間じゃん!!、明日も学校だよー!」

私は叫びながら明日の支度をしては急いでパジャマに着替える。
そんな私を見て3人は可笑しそうに笑うのだった。



そしてもっとも辛い選択をしなければならないことを知るのはもっともっと先の話―――

15キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/09/23(金) 13:47:08 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp

>>13 慎様

嬉しいお言葉ありがとうございます。
楽しみにしているといわれるとますますやる気がでてきます! 私的にはラミンがツボなんです←

これからも応援よろしくお願いします

16キョーコ ◆wYW6SiJDXE:2011/10/02(日) 10:27:37 HOST:nttkyo494190.tkyo.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp

チュンチュン――…

「ん……」


カーテンの隙間から太陽の光が差し私の顔を照らす。
私は静かに身体を起こすとトントンと音とともにいい匂いが私の鼻をかすめる。
それは、キッチンからだった。

私はパジャマ姿のままキッチンをこっそりと覗く。

そこにいたのは…――――ラミン、玲だった。


「…玲?、何やってるの?」

私が横から声を掛けると玲は味見をしていたお皿を置くと私に視線を移し、そして優しく微笑んだ。

「おはよう、マスター。」

私は思わずドキッときてしまった。

( 朝から、心臓に悪いけど…こういうのも悪くないな…… )


ずっと一人暮らしだった私はふと幸せを感じたのだった。

「今、朝食を作っているからもう少し待ってくれ。」

玲はそう説明するとまた私の朝食の準備を始めた。
とても手際がよくまるでどこかのシェフのようだった。

( 恋愛人形ってすごいんだな… )

そして私は静かにその場所を去った。






着替えて玲の作った朝食を待っていた。
すると、豪華な朝食が私の目の前に置かれた。

それはホテルで出てくるようなフルコースの…
私は目を丸くして玲を見る。

「冷蔵庫にあったもので作ったので少し栄養が偏っているが、味には問題ないはずだ。」

自信ありげに笑う玲を私はただ驚いて見る事しかできなかった。
キレイなフレンチトーストにコーンポタージュ、トマトとレタスのサラダにヨーグルト。
今までは栄養ドリンクに食パンだった私にはとんでもない朝食だった。

「えっと…これ全部、玲が作ったの?」

「あぁ、ほかに誰が作るのだ。」

ふっと笑う玲を見て私はまた驚くのだった。

( 朝から驚かされてばっかだな…、恋愛人形っていったい…… )


そして私は玲の作った豪華で美味しい朝食を頬張るのだった。



「ごちそうさま!、美味しかったー…玲すごいよ!!」

そう言って私が微笑むと玲もふっと笑い私の髪を優しく撫でるのだった。

「マスターが笑ってくれることが俺の存在している意味だ、また明日も作ろう。」

少し大袈裟に聞こえるけどきっと玲は本心で言ってるんだろう。
玲が人形だということを考えると胸が痛むのだった――




「マスター、いってらっしゃい!!」


リゼ、葵が元気よく私に手を振る。その後ろには腕を組み私に微笑む玲の姿と優しく笑って手を振るカラメル、馨の姿があった。

「いってきます!!」

私は3人に微笑むと手を振って学校に向かうのだった。


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