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211竜野翔太 ◆sz6.BeWto2:2012/11/27(火) 16:42:05 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp

 今は何時だろう?
 目が覚めてから白波が思ったことはそれだった。
 薄暗い廃屋の中。カーテンで閉め切られている窓の光も何も無いこんなところでは時計があっても時刻を確かめることもままならない。しかし、白波は気になっていた。監禁されているとはいえ。人質になっているとはいえ。せめて今が何時なのか、それだけは把握しておきたかった。
 すると薄暗いこの部屋に一人の人物が入ってきた。
 紫々姉弟の長女、紫々浪暗だ。
 長男の紫々死暗曰く、彼女はサディスティックな性格で、身動きが取れない相手を嬲(なぶ)ることが大好きらしい。しかし、意外と乙女的な一面もあるらしく、たまにだが恥ずかしがったり照れたりすることもあるようだ。しかし、会って早々散々殴られた白波にとってはそんな一面はどうでも良かった。あってもなくても、自分への接し方は変わらないのだから。
 真っ直ぐ白波に近づいてきた浪暗は、警棒のようなステッキで自身の肩を軽く叩きながら、
「ただいま午前八時でございまーす。良い子の皆は元気に登校してる頃かな?」
 白波の心を見透かすように時刻を言った。
 あらかじめ時計か何かを見ていたのだろう、若干のズレはあるだろうが大体の時間が把握できれば問題ない。そんなに細かく分や秒を知ったってどうにもならない。
 浪暗は溜息をつきながら、
「しかしここって不便よねー。時計もないし。っていうかアンタトイレとか大丈夫なの?」
 僅かに視線を上げた白波は、睨みつけるような眼差しで浪暗に言う。
「……どうせ、行きたいって言っても行かせてくれないでしょ……?」
「馬鹿ね、行かせるわよ。女の子の失禁なんて誰が見て得すんのさ。どうせアンタの契血者(バディー)くらいしか興奮しないでしょ」
 手は鎖で繋いだまま行かせるけどさ、と付け加えるように笑顔で言った。
 すると白波のお腹が、きゅぅ、と可愛らしい音を鳴らした。
 その音を聞いた浪暗はすかさずポケットの中を探り、
「食べないよりはマシでしょ。はい、口を開けなさい」
 一つの飴玉を取り出した。
 何か変な物でも入っているんじゃないかと疑う白波だったが、やがて素直に口を開くと飴玉を口の中に放り込まれた。何てことはない、普通のみかん味の飴玉だ。
 その飴玉を口の中で転がしながら、白波は頭にクエスチョンマークを浮かべていた。

 何故、この女は自分にここまでしてくれるんだろう?

 時刻を伝えたり、トイレに行かせると言ったり、飴玉を差し出したり。
 どう考えても監禁してる相手にする行為ではない。たとえ自分をここに連れて来た理由が、真冬達をここに誘うためでもここまでするだろうか?
 白波は彼女の真意を測りかねていた。
 浪暗は思い出したように、『あ』と呟くと、
「ちょっくら出かけてくるわね。あの馬鹿な弟どもももう少しで帰ってくるだろうけど、ちゃーんと大人しく待ってるのよ、涙ちゃん♪」
 白波の頭を優しく撫でながら微かな笑みを浮かべて部屋から退室していった。
「……やっぱり、わかんない……」
 勘繰れば余計に。
 彼女といれば余計に。
 
 紫々浪暗という人物像が掴めなくなってしまう。


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