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210
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/11/25(日) 21:21:42 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
馬鹿どもの激しい論争が白熱する中、茜空九羅々は一人でさっさと帰っていた。
理由は馬鹿どもに付き合いきれないと思ったからである。あのままあそこにいては、自分も何らかの流れからあのどうでもいい話に巻き込まれそうな気がした。多分朱鷺あたりが『自分には関係ないと思っていたら大間違いですわよ!』などと言ってきそうな気がした。
ぶっちゃけると、彼女は霧澤夏樹に対して特別な感情は抱いていない。友達といえばそれまでである。本来ならば嫌ってしまいそうな人格だが、奏崎の友人(片思い中の相手)なら無下に嫌うことも出来ない。だから無理矢理といえば無理矢理、彼に対して好意的に接している。しかし、それも表面的な話であって、彼と二人になれば彼へ敵意を少々向けてしまうし、嫌悪感を少なからず放出する。
彼女があの場から去った理由はもう一つある。それは奏崎が気になったわけではない。ただ単に一人で考え事をしたかったからだ。
彼女は暗い夜道をとぼとぼ、という効果音が似合いそうな足取りで進んでいく。時折道の端に立っている街頭の光の眩さに僅かに目を細めたりしながら彼女は家路へと向かう。
「……なんつーか、かなり悠長ですよね、あの人達」
溜息でもつきそうな口調で茜空がぽつりと呟く。
オレンジ色の瞳で空を見上げる。眼帯によって隻眼となっている彼女のオレンジ色の瞳には、暗い夜空に浮かぶ星々を映し出していた。きれいだ、と思う。ただ素直に、率直な感想を彼女は抱いた。
「どっちにしろ、遅かれ早かれ紫々は行動に出る。それもこっちが看過できないような。それから動くか、その前に動くか。どっちにしろ今の状態では前者の方になりそうですね」
彼女は退屈そうに自分の髪をいじりながら言う。
街頭の下に彼女がいれば、その銀色の髪は自ら輝きを放っているかのように光りだす。
その美しい輝きを誰の瞳に映すこともなく、彼女は一人で呟き続ける。
「こっちの戦闘要員は僕を含めて三人。朱鷺さんを入れて四人。ちょいとキツイような気もしますね。やっぱ白波さんが抜けた穴はデカイですね」
でも、と茜空は続けながら右手を夜空に向けて伸ばす。当然だが何も掴めはしない。
「その大事な彼女を助け出すために僕らが尽力しないと、ですよね」
分かってます、分かってますよと言いながら彼女は家路へと向かう足を急がせた。
211
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/11/27(火) 16:42:05 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
今は何時だろう?
目が覚めてから白波が思ったことはそれだった。
薄暗い廃屋の中。カーテンで閉め切られている窓の光も何も無いこんなところでは時計があっても時刻を確かめることもままならない。しかし、白波は気になっていた。監禁されているとはいえ。人質になっているとはいえ。せめて今が何時なのか、それだけは把握しておきたかった。
すると薄暗いこの部屋に一人の人物が入ってきた。
紫々姉弟の長女、紫々浪暗だ。
長男の紫々死暗曰く、彼女はサディスティックな性格で、身動きが取れない相手を嬲(なぶ)ることが大好きらしい。しかし、意外と乙女的な一面もあるらしく、たまにだが恥ずかしがったり照れたりすることもあるようだ。しかし、会って早々散々殴られた白波にとってはそんな一面はどうでも良かった。あってもなくても、自分への接し方は変わらないのだから。
真っ直ぐ白波に近づいてきた浪暗は、警棒のようなステッキで自身の肩を軽く叩きながら、
「ただいま午前八時でございまーす。良い子の皆は元気に登校してる頃かな?」
白波の心を見透かすように時刻を言った。
あらかじめ時計か何かを見ていたのだろう、若干のズレはあるだろうが大体の時間が把握できれば問題ない。そんなに細かく分や秒を知ったってどうにもならない。
浪暗は溜息をつきながら、
「しかしここって不便よねー。時計もないし。っていうかアンタトイレとか大丈夫なの?」
僅かに視線を上げた白波は、睨みつけるような眼差しで浪暗に言う。
「……どうせ、行きたいって言っても行かせてくれないでしょ……?」
「馬鹿ね、行かせるわよ。女の子の失禁なんて誰が見て得すんのさ。どうせアンタの契血者(バディー)くらいしか興奮しないでしょ」
手は鎖で繋いだまま行かせるけどさ、と付け加えるように笑顔で言った。
すると白波のお腹が、きゅぅ、と可愛らしい音を鳴らした。
その音を聞いた浪暗はすかさずポケットの中を探り、
「食べないよりはマシでしょ。はい、口を開けなさい」
一つの飴玉を取り出した。
何か変な物でも入っているんじゃないかと疑う白波だったが、やがて素直に口を開くと飴玉を口の中に放り込まれた。何てことはない、普通のみかん味の飴玉だ。
その飴玉を口の中で転がしながら、白波は頭にクエスチョンマークを浮かべていた。
何故、この女は自分にここまでしてくれるんだろう?
時刻を伝えたり、トイレに行かせると言ったり、飴玉を差し出したり。
どう考えても監禁してる相手にする行為ではない。たとえ自分をここに連れて来た理由が、真冬達をここに誘うためでもここまでするだろうか?
白波は彼女の真意を測りかねていた。
浪暗は思い出したように、『あ』と呟くと、
「ちょっくら出かけてくるわね。あの馬鹿な弟どもももう少しで帰ってくるだろうけど、ちゃーんと大人しく待ってるのよ、涙ちゃん♪」
白波の頭を優しく撫でながら微かな笑みを浮かべて部屋から退室していった。
「……やっぱり、わかんない……」
勘繰れば余計に。
彼女といれば余計に。
紫々浪暗という人物像が掴めなくなってしまう。
212
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/11/30(金) 21:13:19 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
中々連絡が来ない。
朱鷺が魔界へと情報を収集に出かけて二日経つが、未だに霧澤にも朧月にも何の情報ももたらされなかった。霧澤達は昼休みに屋上に集まることが習慣だとでもいうように、自然に足が運ばれていった。
四角形になるように座った後、不安が募ってきた真冬が口を開く。
「……涙ちゃんがいなくなって五日くらい経つけど……、何の進展もないね」
真冬の言葉に返事は無い。
全員がどう言えばいいか分からないからだ。何て返せば正解なんだろうか。どう対応すればいいのか。励ました方がいいのか。正解の言葉も、対応の仕方も、励ます方法も思いつかない。いや、正解なんてないし、対応なんてできっこないし、方法なんてあらかじめ用意されてないのかもしれない。
霧澤は何気なく携帯電話を開くと珍しく汐王寺からメールが届いていた。
彼女とはフルーレティの一件以降連絡を取り合えるようにしており、メールは常に霧澤からだった。彼女とのメールの回数こそそこまで多くない。だが、今回ばかりは頻繁にするようになっており、大抵自分からメールしない汐王字からメールするなど、彼女も相当不安になっているようだ。
内容は『進展はあったか?』という女子のメールとしては、可愛らしさが足りない味気の無い内容だ。
『いいや』とこちらも短く返信すると『そうか。何かあったら連絡頼む』と男子とメールしているような内容のメールが届く。
「……白波さん、大丈夫だよね……?」
奏崎が口を開く。
大丈夫、というのは『死んでないよね』というニュアンスの言葉だろう。
死んだ、という内容を紫々が伝えに来る可能性は極めて低い。自分達が突入したら既に死んでいた、というパターンも考えられなくない。
そんな奏崎の肩にぽん、と茜空が優しく手を置く。
「大丈夫ですよ。感知されにくい場所にいるか、もしくはそういう結界を張っているせいか分かりませんが、僅かに白波さんの魔力を感じます。まだ生きてますよ」
茜空の言葉に奏崎はこくりと頷く。
だがそれもいつまで続くか問題だ。いつまでもこのままというわけにもいかないだろう。
そんな時、霧澤の携帯電話が着信音を鳴らす。
これはメールの受信ではなく電話だ。表示された名前は朱鷺綾芽。
霧澤は急いで携帯電話を開くと、微妙に荒くなった声で『もしもし!?』と返す。
その様子に驚いた様子で、朱鷺が話し始める。
『……どうかなさったんですか……? びっくりしましたわ。まあいいでしょう、それでは今からわたくしが手に入れた情報をお伝えしますわ』
霧澤は息を殺して朱鷺の言葉を待つ。
彼女は資料を見ながら電話しているのか、紙をめくったりした時に聞こえる音が微かに霧澤の耳に届く。
朱鷺は落ち着いた口調で、
『恐らく首謀者は三人ですわ。皆さんご存知の紫々死暗と紫々伊暗。そして、彼女達の姉―――紫々浪暗が今回の犯人ですわ』
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