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光のロザリオ
14
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/07/31(日) 20:32:59 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
黒崎は学校からの帰り道の途中、携帯を開いて白銀に電話をかけようか悩んでいた。
早退したし、謝ることも出来なかったので、こうなったら電話越しにでも誤ってみるかと思っていたのだが、いざとなると電話をかけることが出来ない。携帯電話を閉じて、家に帰ってからかけるか、と携帯をポケットにしまう。
すると、道の小脇からちいさなおんなのこ
15
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/07/31(日) 20:58:34 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
黒崎は学校からの帰り道の途中、携帯電話を開いて白銀に電話をかけようか悩んでいた。
早退したし、謝ることも出来なかったので、こうなったら電話越しにでも謝ってみるかと思ったのだが、いざとなると電話をかける勇気が無い。黒崎は携帯電話を閉じて、家に帰ってからかけるか、と携帯電話をポケットにしまう。
すると、まったく注意してなかった前方から小さな女の子にぶつかってしまう。
ぶつかった衝撃で女の子の方は、ひゃっ!?と言って思い切り転んでしまう。
「あ、悪い。大丈夫か?」
黒崎は急いで女の子に手を差し伸べる。
「いたたぁ〜……うにゅ、大丈夫…」
小さな女の子は小さな手を伸ばして黒崎の手を掴み、立ち上がる。
肩くらいの金髪に、大きな瞳の十二歳程度の女の子だ。
服は簡素なTシャツに、赤と黒のチェックのミニスカートに黒のニーハイにブーツを履いていた。
「だから走るなって言ったでしょ。ごめんなさいね」
少女の後ろからゆっくりと歩いてきたのは着物姿の腰くらいまである黒髪をなびかせた美人な女性だった。年齢はだいたい二十歳はいってそうだった。しかも身長は黒崎より少し高めだ。
黒崎はこの子のお姉さんかな、と思いその女性を見ている。
「ほら」
着物の女性は小さな女の子に手を差し伸べ、少女はその手をきゅっと握る。
それじゃ、と着物の女性は少女の手を引いて、その場から去っていく。
「うにゅぅ、わらりん!あたし、ケーキ食べたい!」
「我慢しなさいな」
少女の健気な要望を着物女性はあっさりと拒否する。
何となくニックネームで呼ばれていた着物女性を思って、姉妹じゃねーの?と首をかしげる黒崎。
「うおーい、少年!!」
急に後ろから謎の人物が肩を組んできた。
彼の声には見覚えが無かったが、顔には見覚えがあった。ロザリオをくれた眼鏡青年が探していた金髪ピアスのチャラ男だ。
いきなりなんだろう、と僅かに警戒する黒崎だが、金髪のチャラ男は全く気にもせず、
「いやぁー、助かったぜ!あの時は!あの後無事に相棒と会うことができてよー!お前のお陰だ!!」
ハハハ、と笑いながら肩を割りと強い力で叩いてくるが、自分は情報を提供した覚えは無い。どこか彼の脳内で情報が捏造されている。
チャラ男は小さなメモ書きをこっそりと渡してくる。
黒崎が首をかしげていると、
「(…俺の携帯の連絡先。困ったことがあれば気軽に連絡しろよ兄弟)」
いつの間に兄弟になった、とツッコむ前にチャラ男はさっさとその場を離れてしまう。
メモ書きを開いてみると、彼の名前が書かれていなかったため、一応『金髪チャラ男』で登録しておこうと心に決めた黒崎だった。
>>14
はミスです。
気にしないでください
16
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/08/05(金) 21:12:42 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第3話「サガシビト」
電話のコール音が耳に響き続ける。
黒崎は街で出会った金髪チャラ男(仮名)の連絡先を携帯電話に登録して予定通り白銀に謝罪の電話をしようと電話をかけたのだが、
「………………出ねぇ」
コール音が二分続いても出る気配がない。
今時刻は四時半過ぎだ。よっぽどの早風呂ではない限り、すぐに出てもおかしくないのだが、と考えるが、
「…やっぱ登録してるし、出てくれないのかもな。明日面と向かって謝っとくか」
黒崎は懈怠電話を折りたたみ、テーブルの上に置く。そして冷蔵庫の扉を開けて、晩ご飯の支度を始めた。
「え、白銀来てねぇの?」
学校に来た黒崎は玄関の靴箱の前で奥村からそう聞いた。
鞄も持ってないし、完全に上履きを履いている辺り既に登校していたのだろう。
腕を組み、眉間にシワを寄せている奥村は、
「ああ。来てねぇよ。心配で玄関まで待ってるんだが……お前、昨日電話で何を言いやがった?」
「お、俺は何も言ってねぇよ!」
胸倉を掴むような勢いで迫る奥村に黒崎は思わずたじろぐ。
『何も言ってない』が僅かに引っかかったようで、奥村は眉をひそめる。
「昨日帰って電話しようとしたんだけど、出なくてな。それなら明日面と向かって謝ろうって思ったんだけど…」
ふむ、と奥村は顎に手を添え考える仕草をする。
黒崎が何か言ったのが原因でないとすれば、やはり昨日のが原因なんだろうか。だったら電話に出ないのもおかしい。自分は悪くないと思っているなら学校には来るはずだし、悪いと思っているなら電話にも出てくれるはずだ。
奥村は、黒崎の手を掴んで、
「まだ始業には時間がある。倉木先生に聞いてみようぜ」
奥村は黒崎の手をぐいぐいと引っ張って職員室へと向かう。
多分、白銀に手を掴まれたら顔を赤くするだろうが、奥村に手を掴まれてもそういうセンサーが反応しないということは自分の心の中で奥村を女と認識していないのだろうか。
そう思うと、途端に申し訳なく思ってしまう黒崎を気にも留めず、奥村は黒崎と共に職員室へと向かう。
17
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/08/06(土) 12:41:58 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
黒崎は半ば強引(というか完全に強引)に奥村によって職員室の前へと来ていた。
奥村はドアを軽くノックして『失礼します』と言って職員室へと入っていく。黒崎もそれを真似て同じように『失礼します』と言って入る。奥村は職員室内を見回して倉木を見つけると、真っ直ぐにそちらへと歩き出す。
「倉木先生」
奥村の呼びかけに何かの作業をしていた倉木は手を止め、顔を上げる。
「あら、奥村さん。それに黒崎君まで。どうかしたの?」
倉木がそう問いかけると奥村は言い淀むことなく、
「白銀から、欠席や遅刻の連絡は?」
状況がまったく読めていない倉木は首をかしげて、
「…いや、まだ入ってないけど…。白銀さん、まだ来てないの?珍しいわね」
自分の担任のクラスの生徒が大体来る時間は把握しているようだ。
しかし、毎朝黒崎が来ても教室にはいないし、現に今も職員室にいるのだから、どうやって知っているのかは謎だが。
そうですか、と奥村は再び考え込むと、再び黒崎の手を掴む。
「分かりました。連絡があったら教えてください。行くぞ、黒崎」
黒崎の慌てるような声が聞こえるが奥村は気にしていない。
そんな二人を眺めている倉木はほっとしたような表情で、
「…良かった。奥村さんにもお友達が出来て」
ハタから見れば強引に連れ回されている光景だが、どうやら倉木には友達に見えたらしい。
奥村が黒崎を連れて来たのは、玄関だ。
『そこでちょっと待ってろ』と言ってどこかへ行った奥村は鞄を持って戻ってくる。
黒崎は教室に入ってもいないので鞄を持っている。この状態で玄関にいて、奥村が何を言いだすか黒崎には大体予想できた。
「………オイ、奥村。お前まさか……」
「ああ。早退するぞ。白銀の家に行ってみようぜ」
やっぱりか、と黒崎は息を吐く。
奥村はロッカーから外靴、つまりローファーを出して行く気マンマンだが、黒崎はふと呟く。
「…つーか、お前白銀の家知ってんの?」
ギクッと肩を大きく揺らす奥村。
どうやら知らなかったらしい。
結局こっそり早退することが出来ず、奥村は黒崎と共に職員室へ行って白銀の家が何処か聞きに行った。
18
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/08/11(木) 11:57:29 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
倉木先生に訳を正直に話したところ『友情という事でオッケーなのよ!』らしいので、早退することが出来た。
それにしても、友達の様子見だけで早退させてくれるとは頭のネジが何本か富んでいるんじゃないだろうか、と思った黒崎だったが口にしたら早退させてくれなくなりそうなので、黙っておいた。
白銀の寮もアパートで五階の一番端っこにある部屋が白銀の部屋らしい。
倉木先生によると白銀の他にもう一人ルームメイトがいたらしいのだが、何ヶ月か前に何処かに行ったきり帰ってきていないということだ。自分の家に来たのは寂しかったからなのかもしれない。そう思うとさらに謝らなければならないと黒崎は白銀の部屋のインターホンを押す。
音が鳴ってから数秒、全く扉が開く気配は無い。
「……留守か?」
「どーだろうな。少なくとも扉の向こうからは音がしねぇ」
扉に耳をつけて中の音を聞いていた奥村はそう言う。
昨日から帰ってないというのなら、それはそれでさらに心配だ。黒崎と奥村も彼女の行きそうなところを考えてみるがやはり思い当たらない。
奥村はそんなに話したこともないし、黒崎はつい最近知り合ったばかりだ。
最初に見たときの事を考えれば本を読んでいた気もするが、自分が来るまで本を読んでいたわけでもなさそうなのでそこまで本が好きというわけでもなく、ただ暇つぶしに読んでいただけだろう。
そこで黒崎は、この周辺に詳しそうな人を思い出す。
「そうだ!チャラ男さんなら知ってるかも」
「……チャラ男さん?」
奥村は黒崎の口から出てきた奇抜なニックネームに目を点にする。
『チャラ男さん(仮名)』は黒崎が帰宅中に紫眼鏡(仮名)が探していた人だ。貰った連絡先を書いてある紙に名前が記されていなかったので、一応『金髪チャラ男』で携帯電話に登録していたはずだ。
黒崎は携帯電話を取り出して例の『金髪チャラ男』に電話をしてみる。
『ふぁ〜い、もしもしぃ?』
電話から飛んできた声はかなり眠たそうだった。
九時過ぎだから眠たいのは分かるが、もしかして寝起きなのではないだろうかと思う。
「チャラ男さん、聞きたいことがあるんだけど」
『誰がチャラ男さんだ!!俺には…ってその声あの時の少年か!いつ電話してくるのかと思って待ってたんだぞ!』
チャラ男さんの声に元気が戻る。
とりあえず黒崎はチャラ男さんの長くなりそうな話を遮るかのように本題に入る。
「チャラ男さんって第十地区に詳しい?」
『んあ?まあ、詳しいっちゃあ詳しいかな。可愛い子探しに行ったりしてるし、むしろ十地区に住んでんだぜ?』
『詳しい』と『可愛い子』探しで黒崎は確信を持ったのか、単刀直入に聞く。
「じゃあ、ここ最近で長い銀髪の女子を見なかったか?」
『ああ、見た見た!ありゃあお前と一緒の高校だろ。でも、昨日いつも見かける道で待ち伏せてたけど見なかったな。帰ると仲間が『誘拐事件』について話してたけど……?』
黒崎の眉がピクッと動く。
誘拐事件。
白銀と関わっているのなら何か分かるかも知れない。
「……奥村、お前は先に帰っててくれ」
「はぁ?お前はどうすんだよ?」
黒崎はもう一度携帯電話の向かって、
「チャラ男さん!俺を、アンタの仲間のところに連れて行ってくれ!」
19
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/08/11(木) 20:46:41 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
黒崎は一人でチャラ男さんに指定された場所まで来ていた。
着いたのは一つの廃工場のような場所。目を疑うような場所だが、ここで間違いないはずだ。
最後まで反対していた奥村だが、渋々了承して先に帰ってもらった。あとで奥村にも謝らないとな、と黒崎は心の中で呟き廃工場の扉を開く。
「やあ、待ってたよ」
中には奥の方でシートが引かれており、その上にテーブルや飲食物が置かれている。随分と雑な状態だが辛うじて生活は出来ているらしい。
シートの上には紫色の髪の眼鏡をかけた青年が座っていた。
彼は黒崎にロザリオを渡してくれたチャラ男さんを探していた人だ。
「……あら、貴方は…」
黒崎は横合いから飛んできた呟くような声の方向に首を向ける。
そこにいたのは着物を着た美人な女の人と、その女の人の妹のように傍らにくっついている、この前ぶつかった少女だ。
「…あんた達、この前の…」
黒崎も彼女達のことを忘れていなかった。
小さい女の子の方はともかく、着物を着た長い黒髪の人なんてそうそう忘れられないだろう。
眼鏡をかけた青年が携帯電話を取り出して、黒崎に話しかける。
「話は聞いてるよ。例の誘拐犯のことだよね?情報を掴んだのは僕じゃないから、情報主に連絡するけど……一つだけ訊いてもいいかい?」
眼鏡をかけた青年は黒崎の目を真っ直ぐに見つめてそう問いかけた。
「その誘拐犯に攫われたらしき少女は、君にとって救う価値は何かな?」
黒崎は白銀のことを思い出す。
第一印象は成績優秀で可愛い子。でも実際は口数が少なく、無断で人の家に上がり込んだり、修行と称していきなり剣を振り回したり、弁当を作ってきてくれたりと、見た目とは逆な奇抜な行動が残っている。
でも、黒崎が彼女をどういう理由で救うか、どういう価値があって助けるか。そんなものは彼女がこの先何をしようが変わらない。
黒崎は眼鏡をかけた青年を真っ直ぐに見詰め返して、
「友達だからだ」
ただそう告げる。
「オッケー。今からネットカフェにいる仲間に連絡を取るよ」
数回コール音が鳴ると、電話をかけた相手は抑揚の無い声で『はい』と返す。
「バルかい?君がこの前話していた誘拐犯のことだけどさぁ…場所、確定出来るかい?」
『舐めてんの?そんなモン、情報知ってから二十八秒後に見つけたさ』
電話の相手はずっと平淡な声で、
『場所は第十七地区の潰れた娯楽施設の中にある一つのビル。ビルは一個しかないからすぐ分かるはず。分からなかったらクズ以下』
「誘拐された人の名前も特定できてる?」
だからなめんなって、という言葉の後に返答が帰ってくる。
『最近誘拐された人は黄金高校の一年所属の白銀流奈。白い髪が特徴の可愛い子だよ』
「ありがとう。じゃあまたね」
眼鏡をかけた男は電話を切って、折りたたみポケットにしまう。
「君だけじゃ心配だから僕も行くよ」
「んじゃ、俺も……」
「貴方はダメよ。女の子に何するか分かったもんじゃない」
チャラ男さんの勇み足を鋭い言葉で着物美人が止める。
着物美人は傍らにいた女の子の肩をポンと叩いて、
「代わりに行きなさい」
「おっす!」
着物美人の声に女の子は元気よく返事をした。
「じゃあちょっと準備とかあるから、一時間後駅で会おう」
「はい!」
黒崎が返事をして、廃工場を出ると入り口の壁に奥村が腕を組み、壁にもたれた状態で黒崎が出てくるのを待っていたかのように立っていた。
20
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2011/08/19(金) 19:37:28 HOST:p3161-ipbfp3105osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「……奥村……」
奥村は黒崎が向かった場所へとこっそりついて行ったのだ。
話の内容は大体分かった。
詳しくは聞き取れてなかったが、白銀が攫われたことと、黒崎と廃工場にいる二人とともに白銀を助けに行く、ということは理解できた。
奥村は力になりたい、と願っていた。
それなのに、自分を巻き込まないとはいえ、蚊帳の外にされるのは嫌だ。
だからこそ、奥村は悔しさを噛み砕いて黒崎に尋ねる。
「……何も、言わなくていい」
黒崎は奥村の目を見て黙ってしまう。
睨まれたわけでも、ガンを飛ばされたわけでもなく、ただ彼女の目力に口を開くことが出来なかった。
「お前がここで何をしていたのか、理解は出来た。お前は俺を巻き込ませないために、俺をここに連れて来なかったんだろう?」
ああ、と黒崎は小さく頷く。
奥村は怒らない。
相手の気持ちを汲み取って、相手を信じているから怒らない。
「…信じて、いいんだな」
奥村は真っ直ぐに黒崎を見つめる。
期待や願望ではなく、ただ信じて。
「戻って来てくれるのか。お前も白銀も無事で」
黒崎は奥村を見つめ返して、告げる。
「当たり前だ。信じてくれるか」
奥村はフッと笑みを浮かべ、当たり前だろ、と返す。
奥村はすれ違い様に、
「信じてるよ」
と小さく呟いて、黒崎の頬に軽くキスをする。
一気に黒崎の顔が赤くなり、その反応を楽しむ奥村。
からかわれた黒崎は今にも奥村に殴りかかりそうな雰囲気だが、
「行け。戻って来ないと撃ち殺すからな」
「……撃ち殺されてたまるか。絶対に戻ってきてやる!!」
黒崎はその場から走り去る。
その背中を見えなくなるまで奥村は眺め、踵を返し歩き出す。
ただ一言呟いて。
「案外、二人のこと好きなのかもな」
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