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剣―TURUGI―
319
:
森間 登助
◆t5lrTPDT2E
:2012/06/10(日) 14:37:26 HOST:222-151-086-011.jp.fiberbit.net
コメント失礼します、森間です^^
ついに修行編、楽しみにしております。
それと、沢木宅のガールズトークがなんか和みますね。
>>316
で引っ掛かったところがあったので、少し意見させて貰いますね。
葛城の『少し興味があるので、成長した彼と戦ってみたい』という動機ですが、少々不純かなと思いました。動機というのは本来読者に共感を訴えるものですから、それだけでは読者が納得してくれません。もっと一般人が納得できるような理由を混ぜるといいと思います。
また、リーダーが仲間内でも不明なのはちょっと…… と思ってしまいました。まず、姿の知れない強大な力を持った何者かなんて着いていきたいと思うのでしょうか?
まだ脅しを掛けられているから脱退できない、とかなら分かりますが、裏付けさえもされていないので不安定かなと。
主人公の出番が無いのはズバリ言っちゃいますと、その主人公が動かしにくい性格に設定してしまっているということです。
厳しいことを言っちゃいますと、動かしにくいキャラは主人公向きではありません。こういう場合は、もっと単純なキャラ(極端に熱血、クールなど)にした方が動かしやすいですよ^^
ではでは、ご参考までにw
320
:
名無しさん
:2012/06/10(日) 17:06:12 HOST:ntfkok244208.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>1
中二臭いよ中坊www
321
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/23(土) 00:36:51 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
森間 登助さん>
コメントありがとうございます。
修行編……ぶっちゃけ魁斗が本気のメルティ相手に死なないか不安でいっぱいです((
レナとハクアの会話は書いてても、何だか和みます。さてさて、天草がどう入っていくか……。
ガールズトークの輪に入れない、恋音とカテリーナ(( 桐生がハーレムじゃねぇk((
次に書こうと思っていたところをご指摘いただきました。
いや、葛城さんの戦いたい理由の方じゃなく、『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの話ですね。
ぶっちゃけ、葛城さんはリーダーさんに弱みを握られています。
ただ、素顔を知らないだけで、面識自体はあるので(
>>285
参照 この場にいるのは、リーダーとその側近と葛城、天草です)。
単純なキャラ……結構熱血だと思うんですけどね……。
アイツ、いまいち熱くなりきれてないのか。松岡○造の力が必要d((
貴重なアドバイスありがとうございました。
322
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/06/23(土) 00:58:57 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
電気が全くついていない暗い部屋の中で、一人の少女が顔を机に突っ伏して、睡眠を取っていた。
そんな彼女の首元に、スッとナイフの刃が寄せられる。
ナイフを握る人物が、彼女の首を掻こうとした瞬間、後ろから唐突に声を掛けられる。
「……何をしている?」
後ろから掛けられた声は割りと若く、大体高校生くらいの少年の声だろう。
仮面をつけているため、顔までは確認できないが、黒髪の痩身であることは見た目で分かる。
ナイフを握っていた男も、仮面をつけており、表情は確認できない。
だが、
「参ったね。まさか、君がいるとは予想外だったよ」
特徴的な声のせいで、仮面の効果が全くない。
ナイフを持っていたのは葛城獅郎だ。
葛城はナイフを床に放り捨て、少年から距離を取る。
「……貴様、まさか殺そうとしたのか?」
「まさか。彼女がその程度で殺せるわけないだろう。さっきので私が殺せたら、既に『十二星徒(じゅうにせいと)』の誰かが殺してるさ」
「そーゆーこと」
いつの間にか、葛城が殺そうとしていた少女が彼の背後に立っている。
音も無く、誰にも気付かれず、本当に『いつの間にか』だ。
葛城は仮面を外し、少女へと視線を向ける。
少女は、仮面をつけたまま、腕を組み愉しそうな口調で告げた。
「さっきのアンタの話だと、私って相当嫌われてるみたいね。まったく、どいつもこいつも……私の何が気に食わないんだか」
少女は伸びをしながらそう言った。
隙だらけだ。無防備で、無邪気で、無垢で。今なら殺せそうな気がしないでもない。
だが、葛城にはどうしても彼女を殺せない理由があった。
「そーいえば、そろそろなんじゃない? アンタの娘が転校するのって」
「ああ、そうだね。私は娘の保身のために君らに協力しているんだ。娘が危険な目に遭ったら……その時は分かってるね?」
「あーはいはい。分かってるってば」
少女は面倒くさそうに答える。
それからしばらく考えて、彼女は少年の方に質問をした。
「ねぇ、向こうで残ってる奴らって誰がいたっけ?」
向こう、というのは恐らく魁斗達の戦力の事だろう。
少年は僅かに逡巡し、答えを導き出す。
「天界でなら、エリザ、ザンザ、クリスタ、ルミーナ、ゲイン、フォレストの六人。どれも厄介な奴らです。人間界では、切原魁斗、レナ、ハクア、桐生仙一、藤崎恋音、カテリーナ、メルティ、そして天草秤です」
「……そ♪」
少年の言葉に、少女は面白そうに返事をした。
彼が天草の名前を出したのは、恐らくもう彼女の事をどうとも思っていない理由だろう。仲間でなければ、ただの抹殺対象。そうう認識しか、彼らには出来ないのだ。
少女は、出口へ向かって歩き出し、室内にいる二人に告げるように言う。
独り言のような一言を。
「……葛城が与えた猶予って、確か七日よね。七日後、葛城。アンタは真っ先に天草を狙いなさい」
指名された葛城は、ニッと笑みを浮かべて、最終確認のように問いかけた。
「裏切り者は即刻排除、ですか?」
少女は間髪いれずに答えた。
「当たり前じゃない」
驚くほど、感情の篭っていない無表情で無感情な声で。
323
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/07/08(日) 14:28:12 HOST:p4147-ipbfp1503osakakita.osaka.ocn.ne.jp
現在、桐生の家にはその家の住人である桐生仙一とハクアの組み分けにより、彼と行動を共にする事になった、藤崎恋音の二人だけである。
本当はカテリーナなども居候していたのだが、今はいない。いつもなら学校から帰ってきたら、おもむろに部屋の中を(何か食べながら)物色しているのだが。
今日は家に帰ると、彼女の代わりにテーブルの上に彼女の残したであろう置手紙が置かれてあった。
『エリザ様から召集かかっちまったぜ! てなわけでバイビー』と書かれてあった。
文面だけでもイラッときたが、とりあえずいなくなってくれてよかった。
桐生はそう思っていたが、一人だけこの二人きりの状況を良く思っていない人物がいた。
言うまでもなく、藤崎恋音だ。
実を言うと、彼女は桐生とペアになった時点でどきどきしており、カテリーナがいてくれた事により、その心臓の鼓動を抑えていたのだが。
(もー、カテリーナさんの馬鹿ー! これじゃ結局同じじゃん! 二人になると余計に意識しちゃうんだってば!)
彼女の頭の選択肢には『意識しない』という解答はないようだ。
藤崎は顔を赤くしながら、桐生との距離を空けながらソファにちょこん、という効果音が似合いそうな様子で座っている。
彼女の顔が赤いことに気付いた桐生は、心配そうな表情をして、
「大丈夫かい、藤崎さん? 顔が赤いけど……熱でもあるの?」
「へ!? べ、別に……私は全然大丈夫だけど……」
「そうか。……何かあったら言ってよ。遠慮とかしないでいいから」
桐生のその言葉に藤崎はこくりと頷く。
部屋に再び沈黙が訪れる。
そんな中、桐生はいろんな事を頭の中で考えていた。
(……しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』との戦いに備え、切原くんはメルティさんと修行してるって聞いた……。ということは、彼は自分の力の足りなさを感じているということか。……また、置いていかれてしまうかもな)
桐生は魁斗より戦っている期間は長い。
しかし、最近ではその魁斗よりも自分の方が弱いと感じてしまう。
『死を司る人形(デスパペット)』との決戦では、自分はスノウと戦ったが、彼はそのスノウより強いディルティールと戦い勝利を収めている。
やはり、置いていかれている。
「……僕は一体、切原くんに何が出来るんだろう……?」
言葉が、口から出ていた。
その言葉を聞いた藤崎が、口を開く。
「そんな、気負う事ないよ」
いつの間にか、彼女は自分のすぐ隣にまで来ていた。
藤崎は桐生をじっと見つめたまま、彼の左手にそっと自分の右手を重ねる。
「何でもできる。力になることも、隣で一緒に戦うことも、傍で支えてがえることも。桐生くんなら何でも出来るよ」
「……藤崎さん……」
「自分に自信を持って! その方が、桐生くんらしいって、私は思うよ!」
にっこりと笑いながら、彼女は伝えてくれた。
桐生はフッと笑みをこぼしながら、藤崎を見つめて一言だけ告げた。
「ありがとう。何だか、自分への自信と、元気をもらったよ」
「いやいや、力になれてこっちも良かったよ!」
一方、天界でも動きがある。
敵の、ではなくエリザ達の動きだ。
現在この場には、エリザ、ザンザ、カテリーナ、クリスタとフォレストが集まっていた。
代表のエリザが口を開く。
「しし座の『十二星徒(じゅうにせいと)』の撃退は、とりあえずカイト君達、人間界の人達に回そう。私達は、彼らがしし座を倒した後、すぐに残りの奴らを倒せるようにアジトを探す」
「まあ、その方がいいだろうな。その方が私達も人間界と天界とを右往左往せずに済むだろうしな」
エリザの言葉に、腕を組んだまま聞いていたクリスタが同意した。
次に、カテリーナに抱きかかえられ、不機嫌な顔をしているフォレストが口を開く。
「ですが、実際どうすんですか。情報収集に特化しているメルティさんは、現在天子の修行に大忙し。僕らだけで特定できるような場所に陣を構えているとも考えられませんが」
「うん。だから最初にこの事を伝えておいたルミーナとゲインには先に捜索に当たってもらってるんだけど……中々連絡が来ないのよね」
「そう簡単に見つかっちまっても面白くねェしなァ」
エリザはしばらく考えて、結論を出す。
「だから私達も手分けして情報を集めるわよ。私とザンザ。カテリーナとクリスタとフォレストちゃんで、分かれるわよ」
その提案に異を唱えるものはいない。
五人は二組に分かれて、捜索を開始する。
エリザとザンザの二人に、黒い影が迫っている事は誰も知らない。
324
:
計ちゃん
:2012/07/11(水) 18:02:25 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
アナタ、シコシコ文章、いつもご苦労様ですね。
あなたのシコりには、感動させられました。
325
:
計ちゃん
:2012/07/11(水) 18:03:57 HOST:ntfkok253193.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
もちろん、良い意味でのことですよ。
悪い意味で言うような、浅はかな女等どもとは違いますから。
326
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/08(土) 21:05:40 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
ハクア「ひっさびさのハクアお姉さん登場ー!!
いやぁー、このレス随分ご無沙汰ですなぁ。駄目な作者がずっと放置しててごめんねー。
つーわけで、今日からちょこっとやる気出すらしいわ。実のところ『こっからどうすっかなー』って考えてたらしいから。
しかしこっから始めても、もっかい読み直すのツライじゃん?
ってなわけで、簡単なあらすじを紹介するわ。
紹介っていっても、私がやるわけじゃないのよ? 『説明なら私にお任せ! 動く広辞苑』ことレナちゃんに頼むわ!」
レナ「どんだけ適当なやり方ですか! もう、いいです。やる気がないようですし。
この物語は、私とカイト様が出会うところから始まります。
脚力が高いことだけが自慢のごく平凡なイケメン高校生カイト様は―――」
魁斗「オイコラ。誰がイケメン高校生だ。変な属性追加すんじゃねーよ」
レナ「あら、違いました?」
恋音「つーかこれじゃ一向に進まないわよ? 本当に大丈夫?」
仙一「大丈夫じゃないだろうね。君ら知ってる? これって文字制限あるんだよ」
魁斗「それを早く言えよ! あー、まともにあらすじ紹介してねぇじゃねぇか!!」
レナ「ですから、最初から私がやった方が―――」
ハクア「いやー、今のは無いと思うわー」
レナ「責任を丸投げした貴女に言われたくありません!!」
メルティ「ねーねー、再開だって言うから来たのにさ、いつになったら私の出番?」
フォレスト「ずっと準備してんですけど。もう僕ら待ちくたびれてますよ」
エリザ「私らも来たんだよー? ね、ザンザ。カテリーナ」
カテリーナ「そうだよー。私らの出番くれくれー!」
ザンザ「つーかこれさ、番外編みてーに全員集合してるけどいいのか? いい加減本編始めようぜ」
沢木「では、あらすじは私が!
脚力が高い少年、切原魁斗は天界からやって来た女性・レナと出会い、自分が天界の王の子、天子であることと、自分の身体の中に『シャイン』があると知らされる。
彼はレナやハクア、その他大勢の仲間達と死闘を繰り広げ、『死を司る人形(デスパペット)』をついに倒したのだ!
しかし、次に現れたのは『六道輪廻』! さらには『十二星徒(じゅうにせいと)』とも戦うことに!
カイト君は最強の『十二星徒』葛城獅郎と戦うために、修行を開始したのですっ!!」
全員「あらすじ言われたぁぁぁっ!!」
すいません、おふざけで書きました。
次レスから再開いたしますm(_ _)m
327
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/08(土) 21:28:26 HOST:180.5.55.152
第七十七閃「約束は破るために」
「……」
ザンザはエリザと歩きながら、どこからどう見ても、十人中十人が分かるくらい不機嫌な顔をしていた。
彼の視線の先には傍らにいるちっこい上司に向けられたものではなく、横や後ろの方へと巡らされている。
彼の視線に気付いた上司であるエリザは、ごく軽い調子で彼に訊ねた。
「どうしたの、ザンザ。随分と不機嫌かつ警戒してるわね」
まさかコイツ気付いてないのか、みたいな視線をしたザンザはエリザの方を見ずに、前を見ながら歩いている。
彼の不機嫌さは一向に晴れない。むしろ足を前に進ませれば進ませるほどに彼の不機嫌は募っているようにも見える。だが、上司のエリザを話す時だけは、僅かに苛立ちを緩和させて、落ち着いた口調で話す。
「……いや、なんつーか……」
その様子にエリザは子供らしくくすくすと可愛らしく笑う。
自分の前に萎縮する部下を見て可愛らしいと思っているのだろう。彼女はおそらくドが付くSだ。
「……随分楽しそうに笑ってんなァ。まさかエリザ様、気付いてねェわけじゃねェだろ?」
ぴくっと、エリザの肩が動く。
ザンザの言葉に彼女は楽しそうに口の端を歪めながら、辺りをきょろきょろと見回している。
恐らくは敵の位置を見つけようとしているのか、彼女はちょっとだけふざけて手をかざしながら『どこかなー?』などと言っている。この程度の挑発では敵も乗ってこないだろう。
「オイ、そんなんじゃダメダメだってのッ!!」
ザンザは背負っている巨大な刀を振り回す。
ザン!! と鈍い音を立てて、木が三本切り倒される。大きな音を立てながら巨大な木が地面へと落ちる。
「とっとと出て来ねェと、ここの木全部切り落とすぞ!!」
「やめなよザンザ―――」
彼が再び刀を振り回した瞬間、
ガァン!! という金属と金属の鈍い音が辺りに響き、彼の斬撃がエリザの槍によって阻まれる。
「―――あァ?」
「え?」
止めているエリザ自身も驚いていた。
二人は状況を把握するため、数秒固まっていたがザンザが落ち着いた口調で問う。
「―――どういう事っすか、エリザ様」
彼の目は怒ってはいなかった。
むしろ『止めるなら口で言ってください』と言っているような。
しかしエリザは弁解する。自分の意志でやったんじゃない、と。
「い、いや違う! 今のは私がやろうとしたんじゃなくて、何がなんだか分からないけど身体が勝手に―――!」
ズン!! と何かを貫く気味の悪い音。
ザンザの腹部から血が流れ、彼の腹部にはエリザの槍が深々と突き刺さっていた。刺したのは言うまでも無い、エリザ本人だ。
彼女の幼女らしい小さな手が、しっかりと槍の柄を握っている。
328
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/09(日) 21:28:21 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「「……え……?」」
エリザとザンザは同じ声を同時に漏らした。寸分の狂いも無く、小さい頃から一緒にいる親友のように、以心伝心してるとでも思わせるような、ズレが全く無い、本当に声が揃っていた。
ザンザの腹部にはエリザの槍が、刃の根元まで突き刺さっている。その腹部からは赤い鮮血がぽたぽたと森の地面に生えた草を赤く染めていく。
刺されている側のザンザも、槍の柄を握ったままのエリザも状況が把握出来ていないような表情のまま固まっている。
『何故自分は今刺されている?』というのがザンザの心情で、『何で自分は部下を刺している?』というのがエリザの心情であった。
ザンザは口の端から、一筋の血を流しながら、
「……オイ、どォいうことだよ……ッ!」
「わ、分からないよ……! 私だって、いつの間にか貴方を刺してて―――」
「んな冗談が、通じると思ってんのかよ……ッ!」
ザンザがエリザを睨みつける。
部下から信用されなくなったとほぼ同じ感覚に陥ったエリザは何も言うことが出来なかった。
そんな中、がさっと草を踏みしめる音が二人の耳に届くと同時、若い男の声が届く。
「彼女は嘘をついてなどいない。主を信ずることこそが―――臣の務めではないか?」
現れたのは、高校生ぐらいの少年だ。黒髪の痩身で、一見すると優男という印象を与える少年だ。彼は『十二星徒(じゅうにせいと)』のリーダーの側にいる少年だ。
そのことを知らない二人は、キッとその少年を睨みつける。
少年は余裕さえを感じさせる笑みを浮かべながら、自分の首からぶら提げているネックレスへと視線を落とした。
「しかし、あの方から頂いたこの神具(しんぐ)の効果は本物だ。『使用者の姿が対象者に見えていなければ、対象者の動作を自在に行える。しかし、自害のみ不可能』。それがこの『動作の決定権(コントロール)』という神具だ」
エリザは眉間にしわを寄せ、少年を睨みつける。
十歳前後の少女とは思えないほど、鋭く怖ささえも感じさせる眼光で。
「……つまり、これはアンタがやったってこと? ザンザの攻撃を防がせたのも、今彼を刺しているのも!」
「今更気付いたか、低脳な小娘め。実力は本物でも知能までは浅ましいただの餓鬼と同じようだな」
少年は僅かに笑みを浮かべながらそう言った。
辛辣な言葉に、エリザは表情を変えることは無い。ただ、彼女は槍の柄から手を離し、手に幅の広い刀を握る。
「……アンタが姿を見せたってことは、もう神具の能力は使えないってことよね。判断を見誤ったわね。貴方は、今姿を晒すべきじゃなかった!」
「……ならばどうする。まさか貴様のそのオンボロ刀で私を倒せるとでも?」
「倒す、じゃないわよ。殺す!!」
エリザが言った瞬間だった。
ドッ!! と彼女の背中から腹へと刀が貫いた。
エリザは背後に立つ犯人の顔を確認する前に、地面に倒れこみ意識を失う。
「うおおおおおおおおあああああああああッ!!」
自身の上司を倒されたザンザは、巨大な刀を背後の襲撃者に向かって振り回す。前に、
背後からの襲撃者が一瞬でザンザの目の前に現れ、彼の身体を切り裂いた。
地面に横たわる二つの身体を見ながら、少年は呆れたように呟く。
「……動くな、と言ったはずですが? 運動不足を理由にしないでくださいよ?」
「えー、言い訳封じられた……。まあ、理由をつけるとしたらそうねー……『約束は破るためのものだから』かな?」
背後からの襲撃者は女子だった。
『十二星徒』のリーダーの声だ。彼女は気持ちよさそうに伸びをしながら、そう答えた。
「でもこれって、切原魁斗を焦らせることも出来るんじゃない?」
少女は二人の血を使い、紙切れにメッセージを残しその場を去っていった。
329
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/09/14(金) 19:19:11 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
河川敷で金属と金属がぶつかり合うような、ずっと聞いていたら耳が痛くなるような音が響いている。
いるのは二人。
一人はメルトイーア、通称メルティ。彼女は十六歳の姿で、身長よりも長いハルバートを両手で軽々と振り回している。
もう一人は切原魁斗。彼は二本の刀『祓魔の爪牙(ふつまのそうが)』で、メルティに必死に対抗している。
すると魁斗が押し負け、後方へと飛ばされてしまう。地面を数回バウンドし彼は呻きのような声を漏らした。普通なら相手を休ませるためにここで止めてもいいのだが、メルティはそんな甘い考えをしてなどいなかった。
「ほら、立て! カイトくん『十二星徒(じゅうにせいと)』を倒すんでしょ!? 奴らならここで止まらない、さらに追い討ちをかけてくる! 死ぬ気でいかなきゃ本当に死ぬよ!?」
魁斗は今自分の守りたいものを思い浮かべる。
たくさん出てくるが、まず出てきたのは仲間だ。
レナ、ハクア、桐生、藤崎、メルティ、フォレスト、沢木、そしてエリザやザンザ、カテリーナ達元『死を司る人形(デスパペット)』のメンバー。魁斗は彼らを思い浮かべ、ポツリと、
「……負けらんねぇよな……」
彼は呟く。
きつい言葉を浴びせるメルティも、相手を思っているからこそ口から出る言葉だった。
魁斗は一本の刀を杖のようにして身体を支えながら立ち上がる。彼女の言葉が励みになったのか、彼の瞳に再び闘志が宿る。
その表情に満足したのか、メルティは再びゆったりとした動きでハルバートを構える。
しかしそこへ、
「あ、見つけました! 天子さん、メルティさん!」
僅かに聞き覚えのある控えめそうな少女の声が聞こえてきた。
魁斗を『天子』と呼ぶのは天界の人間。天界出身で控えめそうな顔馴染みの人物。一人しかいないのだが、魁斗には名前が思い出せなかった。
振り返ると、そこにいたのは肩までの赤髪にアホ毛が真下に垂れ下がっている、十歳前後に見える少女。
魁斗が名前を思い出そうとしていると、名前を覚えていたメルティが彼女の名前を呼んだ。
「ありゃ、ルミーナちゃんじゃん。人間界に来るなんて、一体どしたの?」
ああ、そんな名前だった、と魁斗が納得し、ルミーナの言葉に耳を傾ける。
彼女は息を切らしており、急いでこっちに来たことは一目瞭然だ。一体どうしたんだろう、と魁斗とメルティが思っているとルミーナの口からとんでもないことを告げられた。
「い、今すぐ天界に来てくれませんか? ザンザさんとエリザさんが敵に襲われて重傷なんですっ!!」
「な……っ!?」
その言葉に魁斗とメルティは目を大きく見開き驚愕した。とりあえず、彼女の言うとおり二人は一度天界へと向かうことにした。
ルミーナの先導に従い、二人は目的地へと走っていく。
魁斗とメルティは走りながらルミーナの言葉を聞いていた。
「……実は、天子さんが葛城獅郎と戦うまでの七日間を無駄にしないために、私達は私達で敵のアジトを掴もうと手分けして探そうとしたんです。それで、二人の帰りが遅かったから探しに行くと、ゲインさんが傷だらけの二人を見つけて……」
なるほど、とメルティが納得したように言う。
魁斗は走りながら、ルミーナに質問した。
「二人が襲われたのって、二人でいたからって理由なのか?」
「……真偽は定かではありませんが、直結はしてると思います。あと、エリザさんが仮にも私達の司令塔だから、とも考えられます」
理由を聞いたメルティは、
「理由としてはそっちが大きそうね。このことを他の人間界の人達には?」
「伝えに行ってもらってます。桐生さんと藤崎さんのところへはカテリーナさん、沢木さん達のところへはゲインさんとクリスタさんが。必ず戻ってきたら皆を連れて、フォレストさんの家に集まってと言ってありますから、大丈夫です」
そう言っている間に、見覚えのある家が見えてきた。
目的地である、フォレストの家だ。
330
:
竜野翔太
◆sz6.BeWto2
:2012/10/12(金) 22:57:41 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
「ザンザ!!」
魁斗はフォレストの家の扉を勢いよく開けた。
そこには身体に包帯を巻いて、無理矢理に身体を動かそうとしているのを止めているフォレストがいた。
魁斗の到着に気付いたフォレストはほっとしたような、安心した表情を浮かべ、それに反してザンザは小さく舌打ちをした。
全快ではないだろうが、とりあえず無事でよかった。魁斗は心から安心すると、
「おはようの挨拶は、必要か?」
「見りゃ分かんだろォが、馬鹿」
とりあえず、いつものザンザでよかった。
とりあえずザンザを上の階でエリザと一緒に寝かせ、魁斗とメルティはフォレストの話を聞くことにした。
しかし、彼女自身も他人から話を聞いたので、詳しくは分かっていないらしい。こういう時に第一発見者であるゲインがいればいいのだが、彼は現在人間界のメンバーを呼んできているところだ。まだ帰ってはこないだろう。時間を無駄にしないために、とフォレストが説明役をしてくれた。
彼女は二人の前にお茶を出し、向かいに座ると話を始めた。
「まず犯人の方ですが、当然というか……まだ情報は掴めていません。ザンザさんとエリザさんの傷口を調べたんですけど……」
フォレストが言いにくそうに言葉を切る。
その様子にメルティは眉をひそめて、
「……けど、何よ」
「はい。二人の傷口は全くの別のもの。つまり、二人は違う人間にやられたということです」
「ッ!?」
魁斗とメルティが言葉を失った。
フォレストは続ける。
「ザンザさんからはエリザさんと同じ傷口が見られましたが、彼は他にも違う傷口がありまして。それはおかしなことに、エリザさんの『剣(つるぎ)』と一致していたんです」
「……どういうことだよ?」
「こういうことよ」
よく理解できていない魁斗に、メルティが説明する。
「エリザとザンザを倒したのは、恐らく同一人物。あの二人を一人で相手取るのは相当難しいだろうけど、同じ傷口があるってことはそう考えるのが妥当。そしてあの二人がやられるってことは、仲間割れでもした……とか?」
ザンザにはエリザの『剣(つるぎ)』で傷つけられたと思われる傷がある。しかし、フォレストは捜索に向かう前は仲が悪いようには見えなかったと語っている。真相は謎のままだ。
すると、フォレストが思い出したように手紙を差し出す。
その紙に書かれていたのは英文だ。英語が全く出来ない魁斗には読めず、メルティも首を傾げていた。フォレストも読めなかったようだ。
すると、後ろから声がかかる。
「『約束は破るためにある』って書かれてるんだよ、それ」
後ろから言ったのは桐生仙一だ。
やはり、彼にかかれば英文の解読など楽勝だったのか。
「これは挑戦状だよね?」
桐生の後ろにいた藤崎がそう言う。
彼は小さく頷くと、
「切原くん。もう時間はない。彼らは、七日も待ってくれないかもしれない」
331
:
一護/泪/恭弥/当麻/高塚凛/亜梨子/安心院紅羽/疾風やみゆ
◆u7pJ1aUXto
:2012/11/09(金) 21:45:18 HOST:p8152-ipbfp4204osakakita.osaka.ocn.ne.jp
第七十八閃「鬼再び」
魁斗とメルティはゲインとクリスタが呼びに行ったレナ達が来るより早く、人間界へと戻り修行を再開していた。
敵がエリザとザンザに重傷を負わせ、挑発的なメッセージを残した。これ以上誰にも傷ついて欲しくない魁斗は一刻も早く強くなる必要があった。しかし、強さとはそう簡単に手に入るものではない。彼が今まで戦ってきたザンザやエリザ、ディルティールだって血の滲むような努力をしてきたに違いない。
こういう時に思い知らされる。
自分は本当にまぐれのみで勝ってきたのだと。
今魁斗の目の前にいるのは修行の相手であるメルトイーア。彼女は伸びをしながら軽く体操のような動きもしている。
彼女はハルバートを軽く片手で振りながら、
「カイトくん、再開するけど準備はおっけー? ダメでもやるけど」
魁斗は二本の刀を真っ直ぐに構えて、
「ああ、来い!」
瞬間、メルティの姿が視界から消える。
自分の目を疑った刹那、メルティが背後に忽然と現れ、鋭い膝蹴りを魁斗のこめかみにヒットさせる。
魁斗の身体は横向きのまま三メートル程飛ばされ、彼のこめかみから頬にかけて一筋の血が伝っている。
彼は苦しい表情をしたまま刀を杖代わりに立ち上がる。
再び視界に移したメルティは腰まで銀髪を伸ばした、まだ見たことの無い年齢のメルティだった。
「二五歳。今私がなれる年齢の上限だよ。気ィ抜くと『アイツ』がまた出てくるから、本当は使いたくなかったんだけどな。カイトくんに『アイツ』の私見られるの嫌だし」
アイツ? と魁斗は首を傾げる。
彼が知らないのも無理はない。彼女の言う『アイツ』とはキルティーアとの戦いで『時の皇帝(タイムエンペラー)』の暴走により出現した、なれる年齢の上限を超えた二八歳のメルティのことだ。
彼女はあの時の、二八歳の自分の出現に恐れ、年齢を上げるのにかなり抵抗していた。だが、
(今までに無い以上に向上心を見せてる。だったら私も協力しなくちゃね! 私が気を抜かなければいいだけだもん! きっと、カイトくんなら大丈夫!)
魁斗とメルティの修行が再開した。
一方で、ゲイン達が連れてきたレナ達もエリザとザンザの容態を見るなり、ホッと一安心して帰ってしまった。
ザンザは面倒くさそうに溜息をつきながら、
「チッ。何で怪我人なのにアイツらは容赦っつーモンがねェんだ!! これじゃ回復しようにも出来ねェぞ!!」
「まーまー、大勢でお見舞いに来てくれたんだし。私はよくなる気がしてきたよ」
ザンザはもう一度舌打ちをした。
エリザは子供を見てるような親のように笑って見せた。
その様子を見ていたフォレストは壁に背を預けながら、
「とか悪態ついて、実は超嬉しかったりするんでしょ? あー、もういいです。その面倒くせぇツンデレは」
「ざっけんなッ! 何で俺がアイツらが来た程度で喜ばなきゃ―――ッ!」
叫んだザンザは傷口が開いたのか、腹を押さえながらベッドの上で悶える。
「怪我人は大人しくしててください。ちっとはエリザさんを見習えです」
エリザはきちんと布団をかぶって寝ている。怪我人というよりは病人に見えてきた。
ザンザはもう一度舌打ちをした。
「……逆に安心は出来たがな。アイツらの顔見てよ」
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