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「それでも君を愛していた」

1 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/12(木) 19:46:22 HOST:p5246-ipad207okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
久々の投稿になります。結です。
駄作、駄作と続いての今回w
今回は途中でポイッってならないように既に書いたものをちょっとずつ挙げて
こうかなっと。

市川拓司さんの恋愛小説が好きでドップリな自分。
憧れて趣味程度に書いてましたが、やはり素人にはうまく書けませんが・・
それでもいいのです、好きなんだから!w

んでは、次からちょいちょいあげてきます。
よかったらどぞー

2 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/12(木) 19:51:36 HOST:p5246-ipad207okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「亜樹、俺は嘘なんか付かないよ?  絶対に」

春の穏やかな日。 桜が満開に咲き渡り、辺りには桜の花びらが所々舞っていた。
晴れて今日から大学1年となる、深見 創(はじめ)は、この大学の入学式に色々な思いを寄せ参加していた。
 「絶対に、この大学を出て海外で鉱物の研究をするんだ」 
創は幼いころに、家族と初めて行った旅行で母親にきれいな石を買ってもらった。 アメジスト。 深い紫色で、艶やかな形。創はこれを見て一気に石に興味を持ち始めた。 独学で勉強するほど鉱物に興味を持ち、インターネットでよく海外の鉱物を買っていた。 高校の時のバイト代も全て鉱物にかけていた。 それほど鉱物が好きだった。
「それでは、挨拶を終わります。引き続き、御来賓の方々のお言葉を」
学長が長々と話している間、トイレへ行くそぶりを見せ、学長のあいさつを聞かず、創は入学式会場を後にした。
「あんな話、聞いてるほうが無駄だ。図書館に行ってみよう」
教室や講堂が並ぶ廊下を見渡す創。案内図を見つけ、図書館の方へ足を向けた。
角をまがった先には、女性が一人、学校の掲示板をじっと見ていた。 見るからに新1年生だと思った。
「あの、1年生?」 創はとっさに聞いた。 彼女は一瞬、驚いた顔をした。
「はい。 先輩ですかね?」 あ、いや。 自分も1年だ、と彼女に伝えた。
彼女はとても不思議そうな顔でこちらを見ていた。 なんだろうか?
「あの、入学式どうしたんですか? 私も1年生なんですけど」
「えっ?」  創は驚いた。 自分のほかにまだ抜け出しているひきょう者がいようとは。」
「なんで入学式出てないの? 私もだけど」
「そっちこそ、なんで? 僕は、学長の話がめんどくさかったから」
「へぇ。 これからどこ行くの? 私何も予定ないよ」
別に、この子の事なんか聞いてもいないし、予定ないからって。 創はめんどくさそうな顔をした。
「僕はちょっと用あるからさ、またね。 そういえばクラスどこなの?」
「私は、国際英語学科だよ。 海外行きたいなって適当に選んじゃったとこがここ」
ふーん、というと創は 「じゃ、行くから」 と言い、その場を後にした。
図書館につき、扉を開けようとした。ガラス越しに後ろに人がいることに気付き、すぐに創は後ろを振り返った。
「へぇ。図書館に用あるんだ。 何見るの?」
「さ、さっきの! なんで着いてきてるの?」
「別にいいじゃない。 予定あいてるからさ、私も一緒に見てもいい?」

3 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/12(木) 19:53:00 HOST:p5246-ipad207okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
そのままコピペしたらスペースなかった・・
読みづらくてすみません、次から気をつけます。

4:2011/05/12(木) 22:52:44 HOST:wb92proxy02.ezweb.ne.jp
外人は十万らしい

5 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/13(金) 00:12:30 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「だから、なんで?! まだ名前も知らないし、友達でもないのに」
彼女はぶすっとした顔で創を見た。

「別に、同じ1年生なんだし。友達でいいじゃん。そんなに拒否らなくても。 
あ、さては女友達とかいないタイプだな、君」

冗談口調で彼女は言った。
「馬鹿にしてるの? いるよ、それくらい。 ただなんでついてきてるのかって聞いてるの。 名前、なんていうの?」
「亜樹。 国際英語学科1年の、宮内 亜樹です。宜しく」
「僕は、IE研究学科の、深見 創。 よ、宜しく」

図書館の入り口前で自己紹介という形になった。 そうこうしていると、体育館の方から人の声が聞こえてきた。
「あ、入学式終わったみたいだ。早く中入ろう」  「うん」
広々とした図書館はきれいに整備されていた。 まだ新築の大学。 図書館もそれなりの設備があった。 創はあたりを見渡し、
さっそく目的のジャンルの方へ足を向ける。

「僕、鉱物が好きなんだ。石だよ石。 それも綺麗なね」
「へぇ。石が好きなの。そんなのいっぱいあるじゃん、石なんてどこでも」
「馬鹿、そこらへんにない石が好きだって言ってるの。それも、海外のごく一部だとか日本のごく一部とかさ。 中身とか見てみたいと思わない?どうやってそんなにきれいに出来てるのかを」
「全然、想像できないなぁ。 石で綺麗なのって、丸い石? それともキラキラしてるの?」
「原石はそりゃぁ汚いよ。それを特殊な方法で加工して〜」

図書館にどっと、人が入ってきた。 まだ話している途中なのに。

「あ、1年来ちゃったな。 さっそく暇人は図書館かよ。 僕もだけど」
「少しは友達作ったら? いきなり【入学式お前いなかったぞ】なんて言われたら嫌でしょ?」
「だからなんで。 関係ないだろって言ってるじゃん」
「もう。 で、続き。 教えてよ」
渋々、話を飲んだ創は じゃあそのジャンルがあるとこまで行くよ と言い、亜樹を連れ添って鉱物の本がある列まで行った。
「これこれ! 鉱物大全の素! これが見たかった!」 創は眼を輝かせていた。 亜樹はその顔をじっと見つめていた。
「そんなに、石が好きな人初めて見た」
「だからさっきから言ってるじゃん。 興味ないならどっか行けよ」
「そういうわけにも、いかないんだよねねぇ」
創は本を見ながら聞いた。
「なんで? それに亜樹も友達作ったら?僕なんかと一緒にいないで。今さっき僕に言ったことそのまんま返すよ」
「まぁ、いいじゃん。 私は一人でいいの」

6 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/13(金) 00:16:01 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
そう話していると、奥から大勢、図書館の見物であろう人が来た。

「創! ちょっと」 「な、何?」
亜樹は急いでその場を離れた。 それも真剣な顔をしながら。人ごみから逃げるように。
「なんだよ? どうしたの?」
「・・・なんでもない 1人がいいっていったじゃん」
「いや・・今2人じゃん。 僕、これから、本を、読んで、家、帰るから!わかった?! 1人がいいなら1人でいろよ」
「わかったよ・・・ 創のバカ!」

だだっと、亜樹は小走りで人を避けるように図書館を出て行った。 何だろう。不思議だ。 そこまで変な子じゃないし、といってもついてきたのは変だが、
なかなか可愛い感じだったし。 なぜ人ごみを避けるのか創はわからなかった。

「おい、美晴! いたよ例の子」
創は耳を傾けた。
「えー、どこどこ? 見えなかったよ私ぃ」
「さっき、俺らきたらドカドカ逃げてったよ。 さすがだなぁ」

なんだろう。どう聞いても亜樹の事だろう。何かあるのか、と創は本を読むふりをして聞いていた。
「宗ちゃん、あの子本当に対人恐怖症なんだね。初めて見たよ私。本当に人を避けてるって感じ」
なんだよ、それ。対人恐怖症って。僕には普通に話してたよ? そんなわけあるか。
「マジだよ美晴、俺さ、あの子可愛かったから入学式前に廊下でばったりいてアドレス聞いたらすっげぇ剣幕して怒ってよ。
俺マジでキレそうになったよ。なんでそこまで怒るんだって。 俺のプライドずたずただしよ、周りには恥ずかしい目で見られるしよ」
「後付けてやったんだよ。そしたらそいつ、人のいないとこばっか移動してて超笑ったよ! 人が誰かいたらプイッってよけるんだよ」
創は我慢の限界だった。亜樹はそんな事ない。現に最初に声をかけた時でも普通に話してた。それが本当なら僕のことだって怒ったり無視したはずだ。
「ねぇ、ちょっと、いいかな?」 

創は男の前でしゃべった。

「さっきの、子の話、もうちょっと聞いていい?」
「お前、誰? 1年?」 「そうだけど」 「お前いたか? 全然お前見なかったぞ」
「抜けてたからね 入学式なんて。 それで、その子と一緒に図書館に来たんだ。さっきから聞いてるとその子、変だったから。 僕と一緒にいたから対人恐怖症なんかじゃないんじゃない?」
「お前、全部聞いてたの? マジなんだよお前。 まぁいいよ教えてやるよ」

「あいつ、変人なんだよ。病気なのか知らねぇけど。 すぐに怒る病気。だから変人女って有名になってる。 俺もキレられてよ、頭きてたんだ。噂で聞いた話だけどな」

7 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/13(金) 22:50:38 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「噂で聞いた話をそのまま鵜呑みにしたの? それたぶん嘘だよ」
「マジだって! 俺も怒られたんだよ! ただ、仲良くしたいなって思ってアドレス聞いてただけなのによ」
「それが、イヤだったんじゃないかな? 」  創はしっかりとした顔をして男の日焼けした顔を見つめた。
「お前も頭に来るな、なんだよ突っかかってんのかお前」


「その噂は嘘だって言ってるんだ。 別にあの子を擁護するわけじゃないけど、嘘は嫌いなんだ。本当の事を知ってるからさ」

創はきりっと歯切れよく答えた。 その真摯なまなざしに負けた男。

「チッ・・お前それ本当だろうな? あの子かわいいからよ、それ本当ならアドレス聞いといてくれよ。そして俺に教えてくれ。それだけでいいからさ。
 スポーツ学科の沢口って言えば出てくるから。よろしく!」
「ちょっと宗ちゃん!私は?」 「美晴、お前は特別だ」

くだらない。実にくだらない。 軽いんだ、今の若い男女って。 アドレス、電話番号。そんなの彼女がいるあなたが聞いてどうするの? 
創は不満そうな顔をしたが、断れないタチの為、了承をした。 もちろん、友達ができなくなるのが怖いから。

目的の本を借りて、創はすぐに図書館を出て亜樹を探した。
「あの子、なんだろう。本当っぽいっていえば本当っぽいけど、でも僕といたら同じことするはずだし」 考え事をしながら探していた。

だが結局その日は見つからず、あきらめて帰宅した。

                            ※
創!
甲高い声で僕を呼ぶ。 クラスで最近仲良くなった大輝っていう子。 大輝はスポーツ熱心、勉強熱心で好奇心旺盛タイプ。
誰にでも優しく楽しく接してくれる、いわばクラスのムードメーカー的な存在である。 大輝は僕に優しく、声を掛けてくれた。 
最初のきっかけは僕が見ていた鉱物の本からだ。

「わ! めちゃくちゃ綺麗な石やね! 石が好きなの?」
う、うん。 ぎこちない、挙動不審な態度をとる僕なんか気にせず話しかけてくれる。
今日も、いつものアレ かなぁ。

「創! ご飯食べようよ! 今日も彼女が作りすぎちまったみたいなんだ」
大輝には同棲している彼女がいた。 大輝はそれはそれはみんなから愛される存在だ。 

彼女がいない方がおかしいと思うくらい、紳士で素敵なんだ。
「創にもさ、もっとみんなに紹介したいからさ、今日新たに友達呼んできたん

8 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/13(金) 22:54:52 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「創にもさ、もっとみんなに紹介したいからさ、今日新たに友達呼んできたんだ」

「え?」  内心、僕は少し嫌だった。 
会話下手でコミュニケーションもまともにとれない僕にできたたった一人の、友達。
誘ってくれて紹介してくれる気持は大変ありがたい。けど、これ以上へんな事できないし、益々不安になる。そんな気がした。

「鶴見、慶ちゃん」

2人の名前を呼ぶと、奥から男女2人が出てきた。 僕は益々不安になってきた。
「こっちの色黒男児が鶴見。鶴見慎吾。で、こっちのお嬢様が波多野 慶子ちゃんね」
「深見 創君だよね? 大輝から聞いてるよ。 すごいね、長身でさわやか系だー! 慎吾と大違い」
「お前、アホ言え! 俺は野球で焼けただけや! まぁ、創君よ、よろしくな。慎吾でいいよ」
「う、うん。 宜しく」

大輝がひっそりと僕らに言った。

「まぁぶっちゃけ、クラスでイケる奴てこのくらいなもんだな。 ほかとも結構話したけどさ、これで仲良しグループって事にしない?」
「いいね、それ。ほかはみんなギャル男とかそんなんばっかだし」

いきなりこのグループに誘われ、いちグループの仲間として入れてくれた。真面目で奥深くてコミュニケーションもまともにとりそうもない僕を。

「だ、だけどなんで僕を誘ってくれたの? あっ、そ、それは嬉しい・・事だけど」
「えー?だって、いつも一人で本見てるしさ。大学生活くらい楽しく行こう!っておもってね。 とりあえず自己紹介OKだから、これから講義終わったら遊びに行くぞ! 皆、いつものところな」
そしていきなり遊びにまで誘われた。こんな大学生活、思ってもみなかった。 高校時代もひっそりと過ごしてきた僕にとっては最大の転機になった。 気分は上々だ。 この人たちとなら仲良くなれるだろうな。 
「それで、皆とどこに行くの? カラオケとか?」
「それがねー、バーなのよ。 バー。」
「夕方から?バーなんか行くの?」
「あれ、創、お酒とか飲めないくち?」
「い、いや飲むけど。得意・・とまではいかないかな」
「マスターがおれの友達のお父さんだからさ、気軽に飲めるし、仲もいいし時に安く飲ませてくれるし・・。それに可愛い子も結構、来るんだよ。おしゃれでさ」

すごい上機嫌な大輝。本当にバーが好きみたいだ。僕なんかバーにさえ行ったことないのに。 まぁあれだ、社会勉強の一環だし、何より親友からの初めてのお誘い。
これは行かざるを得ないし、鉱物の勉強も今日は息抜き、ということで。
待ち合わせは夕方5時過ぎの駅前で。 僕は大輝と一緒に待つことになった。

9雪音 ◆mzHXeB1fFY:2011/05/14(土) 13:16:55 HOST:119-231-155-5f1.shg1.eonet.ne.jp

結さんの小説発見したぜ!
まじで文章力ありすぎます(´;ω;`)
私には一生降りかかってこない才能ですね☆☆☆
では更新楽しみにしてますノシ

10 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/14(土) 20:34:13 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
>雪音さん
タイトル紹介してませんでしたね。すみません。
今回は自分主体というか、そういう書き方してみました。淡々と説明
する文章ではアレだなぁと思いまして。それでも下手っぴですがw

ありがとうございますー。雪音さんのも楽しみにしてますよ〜

11 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/14(土) 20:38:56 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「おっ、大輝! 悪いなちょっと買い物しててよ」

駅で2人でコーヒーを飲んでいるときに慎吾が来た。 慶子は遅くなるから後でバーに直接向かうらしい。
「よし、とりあえずみんな来たな。しかし慶子いないと本当に華がないなこの面子」
確かに慶子は綺麗だ。凛として大人の女性という雰囲気を出している。

 慎吾は体育会系だし、大輝は爽やかイケメンだし。僕は至って普通すぎる。釣り合わないなぁ。

「駅から歩いて10分くらいかな。駅前も駅前で色々と店があって楽しいしさ」

意気揚々と話しながら10分があっという間に感じた。 そのバーは赤いレンガ造りの、こじんまりとした店で、入り口前には綺麗な白い花が花壇に並べられていた。 
そしてその横には店の看板ネコの「ミュウ」という名前の猫がいる。

「ミュウ〜! 今日もお前でっかいなこの野郎」

ミュウは真っ白のネコで少しふくよかな猫。愛想よくニャー、と鳴いてくれて可愛いらしいことこの上ない。僕も少し撫でてあげた。
カラン、と入り口を開け中に入る。
「おっちゃん! 今日新しい友達連れてきたよ」
マスターなる御父さんは、ひげが達者でやせ形のテンダーだった。見るからにバーテン。これが本物か。 しかしとても優しそうな顔をしていて大輝が友達を連れてきた、
というとすぐにニコッと笑った。

「大輝君、本当に顔広いね。羨ましい限りだよ。息子にもバカな友達ばっか作らないで大輝君みたいな友達ばっかだといいんだけどね」
「あ、俺もそのバカな友達に入ってますよ」 
「そんなわけない。息子のバイク友達に言ってるんだ。毎回、晩になるとうるさくてねぇ。人様に迷惑かけるな!と言ってるんだが・・」
「まぁまぁ、その辺にしといて! おれモスコね」 
「おっす、マスター。俺じゃぁいつもの。俺スペシャルで」
「創は・・何がいいかな。甘いのがいい?柑橘系がいい?ソーダ系?」
「じゃ、じゃぁ甘いので」

正直、皆何を言ってるのかわからない。モスコ?俺スペシャル?いったい何なんだ。とりあえずなされるがまま頼んだ。
「創にはライチとパイナップルの甘い、女の子向けの頼んだけど、いい?」
「いいよ。大丈夫」

客は今のところいない。それもそうだ、まだ夕方の6時だ。遅くなるにつれて人は増えるだろうけど。
マスターが奥で頼まれたドリンクをシェイクしている。専用の容器に入れ、シャカシャカと。初めて間近で作る様子を見て、僕は少し感激した。
「やっぱり、こういう風にするんですね。僕、バーとか初めてなので」

12 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/14(土) 20:43:30 HOST:p5190-ipad11okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「カッコだけはね。味は保証しないよ」

マスターはニコニコしながら話してくれた。マスターさんも、かなり優しいだろう。僕は出会って数分なのにそう思ってしまった。
「いやいや、おっちゃんのは世界一だよ。俺も相当飲み歩いてきたけどここがやっぱり一番おいしいし、雰囲気最高だし」
「ありがとう大輝君。そう言ってくれると俺も頑張れるよ」

いいなぁ。こういう雰囲気。僕は今までこういった青春というかこの感じを、一つも身体で覚えたことがなかった。 
聞く、聞く、聞く。人が話しているのを聞く。 これだけだった。 

実際に自分がこういう雰囲気に入れると、それらしくなってくる。 勉強とか読書ばっかりしてないでこういうのもアリだなぁ。としみじみ思った。
他愛もない会話を1時間ほど、ちびちびと飲みながらみんなと話していた。
カラン、と音がしたのでさりげなく皆入り口を見る。

「お、慶ちゃん! 遅かったね。皆飲んでるよ」
「ごめんね。お母さんがちょっと買い物いくから車出してって言われて。」

4人が揃い、慶子という華もあってバーは益々いい感じになった。 

そうこうしていると、少しホロ酔いになってきたのがわかった。少し火照っていた僕。

「わ! 創けっこう顔赤いよ? 大丈夫か」
「う、うん。飲みなれてないからかも。でも大丈夫だよ。このくらい」
「無理しないでな。慎吾はこの前ウォッカ飲んでつぶれたけどな」

「余計なんだよ大輝! あれ何度あったと思ってるんだ」
ハハハ、とムードは最高潮。大学の話もあり、恋の話もあり。リアル充実ってこういうことか。
気付けば時計は23時。なんやかんやでバーに5時間も居座ってたのか。 僕が新たにグループに入ったってことでそのことで長くなってたみたい。

「ごめん、明日講義早いから。いい感じのところ悪いけど今日はこの辺で」
「お、そういえば俺も明日早いんだよね。みんな、どーする?」
「そろそろあがろう。慶ちゃん、明日も綺麗だよ〜」
「もう慎吾、何いってんの意味わからない」

結局、みんなで帰ることになった。慎吾はあれほど強がっていたのに、やっぱり途中でウォッカを飲まされてデロデロに。慶ちゃんは強いのだろうか、何も変わらず。
大輝は少しテンションが上がっていた。お代はいいよ、と大輝に言われ「今日は創の歓迎会なんだし。男2人で割り勘だ」

「ちょっと! いつもいつも悪いよ。私も払う」 
「いいって。慶ちゃんには今度ディナーおごってもらうし」
「もう!そっちのほうが高いじゃん!」
お代は大輝と慎吾が払ってくれて、店を出た。本当にいい親友でみんな紳士だ。僕もこれから頑張ろう、と思った。

13 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/15(日) 21:06:49 HOST:p6198-ipad27okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
「1年生として出会って数分! 俺はこれが得意技なんだ。仲良くなれない奴はいないと断言する!」

大輝は少し酔っ払い気味に歩いていた。僕も少し酔っていたが自我はまだまだあった。

「俺さ・・」  大輝が少し真剣な口調になった。
「こういうキャラだけどさ。昔は全然違ったんだ。中学校まではね」
「高校から別キャラってか?大輝、そりゃねぇよ」
「それが大アリなのよ。中学校3年までは超根暗だったんだから」

大輝が昔は根暗?毛頭そんな感じはない。感じさせない。みな冗談っぽく彼をからかう。
「お前が根暗だったら俺どーなるんだよ。中学時代なんて女にまでからかわれてた俺なんか」
と慎吾は自虐で言う。そうだ。そうだったら僕なんか比べれないほど根暗なんだから。

「高校から変わってやろうと思ってね。だから地元を離れたんだ。少しでも中学時代の友達に会いたくなくてね。
今は、変わったね、とか中学の友達に会うといわれるけど気にしてない」
「へぇー。そんな過去、あったんだ。大輝パーフェクト人間だもんな。あり得ない」
「創君は、昔から真面目でいい人だよね?大輝みたいにチャラくなくて」
そ、そうかな。今も変わらず根暗だけど。
「また、行こうね」
うん。 駅前の繁華街に出た。慶子と慎吾とはここでお別れみたいだ。
「じゃ、また明日だね。おやすみ」
慎吾は慶子にもたれかかっていた。

「慎吾ぉ! お前慶子ちゃんに手出したら俺でも怒るぞ」
「あー。大丈夫だよぉ。大丈夫・・・」
「きゃあ! ちょっと慎吾どこ触ってんの?!」
お前!と大輝が叫ぶ。
「ウソウソ。慎吾からかっただけよ。それじゃ今日はありがとね」
「慶子ちゃん・・俺何もしてねーよ」
「わかったから!自分で歩きなさい」
繁華街の出口で2人と別れた。 行こう、と大輝が言った。



振り向いて行こうとすると、そこにはどこかで見た女性がいる。  
「あ、亜樹!」
「え?何なに?あの子知ってるの?」
偶然、繁華街に買物をしていたであろう亜樹が、
僕らのことをじっと見ていた。気づいた瞬間、亜樹はすぐに人ごみに紛れた。

「亜樹・・人ごみにいるじゃん」

やっぱりあの男が言っていたことは嘘だ。繁華街に人嫌いの子が行くわけがない。真相を聞くため、昨日なぜ大学に来なかったのか、
合わせて聞こうと創は亜樹を追った。
「ちょっ、創! 置いていくなって」

14 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/17(火) 01:19:09 HOST:p6246-ipad205okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
人ごみの先の、駅の高架下に亜樹が止まっていた。

「亜樹! どうしたんだよ。なんで大学来なかったの?」
黙ったまま後ろを向き続ける亜樹。 大輝は創の顔を見合わせた。

「創、何があったの?あの子、友達?」

「入学式のときに知り合ってさ。ちょっと色々あって」
亜樹が振り返った。

 
「創、嘘ついてるじゃん・・」
「え?」
「創は、一人だって。一人主義だから友達とか持たないって。言ってたじゃん」
「でもそんな・・。一人もいないって言ったわけじゃないだろ? いるって言ったよ最初に」
「もういいよ。私大学辞めるかも」

重苦しい雰囲気になってしまった。大輝は少し考えた末、
「ごめん、また明日な。俺行くから」
と空気を察したのかその場を後にした。   



2人となってしまった。

「なんで・・・。入学したばかりじゃないか。 何か嫌なことがあったの」
「別に変人でもいい。嫌われたっていい。どうせ私は一人なの。一人で頑張って生きていくから」
「だから、なんでそんな内気なんだよ! 」
カッと言ってしまった。

僕は今最低なことをしているかもしれない、と思いつつ。

「創にはわからないよ!わからせたくもない」
「本当に・・何かあるんだったら真面目に、真剣に話してよ。僕、亜樹の事もっと知りたい」
「え・・?」


亜樹は少し涙ぐみながら創の顔を見た。


「あの色黒の男が言ってたことは、嘘なんでしょ?」
「色黒って。入学式のときの人?」
「そう。連絡先聞かれたんでしょ? それで、拒否して怒って。
 そのことをあの人から聞いたんだ。少し違ったこと言ってたから僕も反論したけどね」
「反論・・してくれたんだ」
「ああ。亜樹はそんな子じゃないって。変人でもなんでもない、ただの女の子だって」
「創になら、話すよ。誰にも言わないって誓って」
「誓うよ。僕は、嘘をつかない」


                             ※
亜樹の幼少期。 それは想像を絶する恐怖と不安に包まれていた。
母親は3歳ころに離婚し、父親からは邪魔者扱い。いわば”望まれない出産”で生まれた。それが宮内 亜樹 の存在だった。

15 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/19(木) 11:31:23 HOST:p6246-ipad205okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
見かねた母方の祖父母が小学校まで養育してくれた。 おじいちゃん、おばあちゃんはとても優しく亜樹に接していた。 運動会、授業参観。他人の目など気にせずおばあちゃんは来てくれた。
運動会の親子でやる競技にはおじいちゃんが出てくれた。 おじいちゃんはたくましい元漁師。力いっぱい亜樹と両親として、見てくれた。


だが中学校に上がる間際、おばあちゃんが亡くなった。持病が悪化したためだった。 おじいちゃんは心ここにあらず、といった感じになってしまった。 地獄は連鎖する。
今度は、父親が愛娘を迎え入れるという。嫌な思い出しかない父。 少しは丸くなったかな、と思い気を許し父親の元へ戻った。


以前の邪魔者扱いを超すものであった。 児童虐待。 

亜樹は中学校2年まで父親のところにいた。 それから耐えかねて家を出た。 何も身寄りもない亜樹。信じるものも何もない。

頼っていい人が誰もいない。 そのことで学校ではいじめられ、不登校になった。 甘える人もいない。
亜樹は14歳から、働いた。 年齢を詐称してまでコンビニでも働いた。パン屋で見習いもした。


優しい建築会社の社長からは、15歳とわかっていても掃除なり事務の小さな仕事でさえ働かせてもらい、給料をもらっていた。 親友はいない。
全て今まで働いてきた職場の人間のみが、亜樹を支えていた。

建築会社に現在、住み込みで働きながら、大学まで行かせてくれた。 そろそろ勉強もした方がいいと優しい社長の考えだろう。
だから、亜樹には友達がほしかった。 大学もきっと友達ができると信じ、入学した。 だが、思った以上にその雰囲気に溶け込めなかったのだ。 
だから私は、社長さんには悪いけど大学を辞めて今の会社にずっと働きたい、と思ったのだ。
           ※
「亜樹・・それじゃ社長さんの気持ちが受け取れてないよ。きっと大学なら職場の仲間じゃなくて友達ができると思って入れてくれたんじゃないかな」
「わかってるよ。 本当に社長さんには感謝しきれない。けど、私はいいんだ。あの雰囲気がダメなの。働いてきた人生だし、
 今まで散々な思いしかなかったけど、私の居場所は会社なんだって。気づいたんだよ」
「きっと、社長さんは大学辞めるっていうと、怒ると思うよ」
「それもわかってる! けど・・今更勉強したって・・友達作れって言われたって・・」
「あの図書館のときだってそうだよ。私、創に声かけられて嬉しかったんだよ。でも、私は嘘つけれないみたい」


亜樹はわかっていた。どれだけ頑張って友達を作ろうが、うわべだけの付き合いになるだろうと。
恋だってしたい。遊んでいたい。けど、それじゃ私が私じゃない。 私は会社でみんなに仲良くされて、和気あいあいと仕事をする方が気が楽なんだって。 それが私の今の生きる糧になってる。
友達はもういらない―
亜樹は心を閉ざしているように見えた。

16 ◆YLdWB0/d2s:2011/05/19(木) 11:32:59 HOST:p6246-ipad205okayamaima.okayama.ocn.ne.jp
あ、なんか読みづらいですね;

失敬。

というかなんか構成下手だな僕・・。
頑張ります。


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