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没作品投下スレ

1名無しさん:2006/12/07(木) 19:10:22
キャラが被ったり、様々な理由で没になったSSの供養場です。
SSの一時投下も承っております。

141カケラ遊びの最後に  ◆qwglOGQwIk:2007/07/22(日) 18:31:32 ID:g8n17Nyw
※引き続きひぐらしのネタバレ全開なので注意




「羽入、今日は昭和何年の何月何日?」
「昭和58年6月の……19日なのです。あぅあぅ……」
「…………そう」

いつもの部屋、いつもの始まり。隣にはすやすやと眠る沙都子。
古手梨花の100年、あるいは千年に渡る終わり無き旅は、今まさに最悪のバッドエンドへと近づきつつあった。
梨花はとうに諦めきった様子で、一言呟いたきり羽入と話すのを辞めた。
梨花は食器棚からグラスを取り出す。
そして冷蔵庫へと向かい氷を取り出すと、押入れからお気に入りのワインを取り出す。
梨花は氷の入ったグラスにワインを並々と注ぎ、氷が解けるのも待たずに口へと運ぶ。
ぷはぁと息を付く古手梨花の顔は、怠惰と絶望に満ちていた。
羽入の顔もまた、苦々しい表情に包まれていたのは苦手なワインのせいだったのだろうか。
それとも――

「梨花。まだ、まだ終わってはいないのです。あぅあぅ……」
「何をやっても無駄よ羽入、もう何もかもが遅い。今日は綿流しの日なんだからね。
 今日もまた富竹が死に、仲間が狂い……」

――そして私が殺されて、永遠の時の牢獄へと閉じ込められる。

ここ数百回のやり直しは梨花にとっても不幸だったと思う。サイコロの1が連続して出たというべきだろうか。
圭一は再び仲間を疑いだした。暴走してレナと魅音を殴り殺した時もあれば、暴走を止めようとした私が殺されたこともあった。
レナが暴走すれば、いつものように学校を占拠し、私ごと学校を爆破して死んでいった。
ある時は鉄平が雛見沢に現れ、沙都子を拉致していった。その時は圭一やレナ、あるいは詩音が殺人を犯していった。
この数百回は、こんな顛末が続いていった。そうするうちに羽入の力はどんどん衰えていった。

例外は詩音、そして富竹だろうか。
詩音だけは何故かある時を境に二度と園崎家を疑うことなく、沙都子のねーねー役として雛見沢にやってくるようになった。
富竹が失踪したケースは、もしかしたら逃れられない運命を変えたのではないか? と梨花も羽入も考えていた。
その期待を裏切るかのように富竹の変わりとして北条鉄平が死に、少しばかり変わった運命は結局梨花を飲み込んでいった。

再び活性化した大切な仲間の暴走、不活性化した詩音の暴走に考えを巡らせたって、梨花が望む最高の結末は手に入らない。

142カケラ遊びの最後に  ◆qwglOGQwIk:2007/07/22(日) 18:32:18 ID:g8n17Nyw
羽入だけが全てを知っていた。
ある世界で梨花は突如失踪し、梨花だけが永遠にその世界へと戻らなかった。
またある世界では圭一が、レナが、魅音が、沙都子が、富竹が失踪し、やはり梨花と同じように帰ってこなかった。
平行世界を移動し、『オヤシロ様』として超常的な力を持つ羽入でさえ、不可解な失踪は何が起こったのか分からなかったのだ。
分かってることは二つ、失踪は一人に付き一度しか起こらない。
そして、失踪した人間は、平行世界の記憶、経験を全て失っているのだ。
これは、全てを知る視点の羽入にしか分からない事実でもある。
梨花が失踪した次の世界では、梨花は全ての記憶を失い、最初の頃のような無垢な少女へと先祖帰りしていた。
最も、その表情は幾度かの繰り返しの末に、記憶を失う前へと戻っていった。

圭一が失踪したときは特に顕著だった。
失踪直前の圭一は仲間を信じ切り、暴走することは無くなっていたのだ。
だが、失踪後は極めてレアなイベントである圭一の暴走が再び起こり出したのである。
レナのケースにおいても、失踪後では格段に発生率が上がったのだ。
羽入は梨花の事例、レナの事例、そして圭一の事例からそういった結論を導き出したのである。

いずれは詩音も失踪し、再び過ちを犯すのだろうか。だが詩音の失踪は起こる前に、羽入の力は尽きた。
これが本当に最後の最後、もう二度と昭和58年6月19日より前へと時は戻らない。
惨劇を防ぐことが出来るのは、これが本当に最後の最後。







―昭和58年 6月22日

――その日梨花はいつものように、あっけなく殺された。

143カケラ遊びの最後に  ◆qwglOGQwIk:2007/07/22(日) 18:33:05 ID:g8n17Nyw

「くすくすくす。ごめんなさいね。……あなたは神に試されなさい。
 私は今日を境に試す側となるのよ。」
「…………以上で、黙祷を終了する。」

「全小隊、滅菌を開始せよ。」

人がゴミのように殺されていく。ころころ、ころころと。
リングはそんな人を人とも思わない光景を最後まで見届け、報告文書に淡々と事の顛末を書き上げるしかなかった。
あのバトルロワイヤルさえ超える虐殺を、ただただ黙って見届けるしかない自分の力の無さに打ち震えるしかなかった。

「なんで、なんでこんな歴史が……」

この日雛見沢村が消えるという歴史は、正史のものとなった。
鷹野三四という女は、神の高みへと昇った。
タイムパトロールの捜査方針に従い、バトルロワイヤルの影響下にあった各並行世界群の調査をするというのが今のリングの仕事だ。
その平行世界の一つ、『ひぐらしのなく頃に』と呼ばれる世界の調査に来てしまったのは、リングにとっての不幸だった。
リングはバトルロワイヤルの犠牲者である部活メンバーたちに手を差し伸べ、未来を変えるだけの力を持っていた。
しかしその権限はリングには無い。
歴史に不干渉であるべきという23世紀のタイムパトロールの方針から、各平行世界を本来あるべきであろう結末へと導くことが出来ない。
最も一部の世界を除けば、未開の平行世界のあるべき未来の姿など、誰にだって分かりはしない。
それでも、歴史は変わらない。リングがどれだけ歴史を変えようと願っても、願いは決して叶わない。


惨劇は、永遠のものとなった。

144カケラ遊びの最後に  ◆qwglOGQwIk:2007/07/22(日) 18:34:08 ID:g8n17Nyw
どう? あなたは楽しかった?

梨花がまさかこの閉じた世界から居なくなるとはさすがの私も予想が付かなかったわね。
タイムパトロールとやらがこの閉じた世界に興味を示しているみたいだけれども、閉じた時の世界にどうやって干渉するのか見物ね。
もう私でも閉じた世界のカケラには触れても干渉は出来ないし、新しい私の妹『古手梨花』もやってこない。
あなたはどうか知らないけど、私としては出来ることなら梨花たちが帰ってきて欲しかったかな。
もしかしたらあの後梨花達は運命を覆し、昭和58年6月を超えるかもしれなかったかもしれないのだから。
最も、梨花が永遠に昭和58年6月19日に閉じ込められてしまった以上、私にはもうそのカケラは知覚できないんだけどね。

ねえ? もしかしたらあなたは知っているのかしら?
梨花達が見事苦難に打ち勝ち、運命を覆して昭和58年6月を超える世界を――

145魔法少女カレイドナナシ:2007/07/23(月) 02:16:18 ID:cxWg6Ou6
ドラえもんのエピローグに登場する野比玉子が
カオスロワ仕様。

間違いなくNGなので没。

146魔法少女カレイドナナシ:2007/07/24(火) 15:35:35 ID:iq8FEpzo
>>145
カオスロワEND? ぜひここに投下してくれw

147魔法少女カレイドナナシ:2007/07/24(火) 18:43:47 ID:x7wX/E4w
本スレでちょっとだけ触れたルパンEDのプロット

視点はリンディ提督とかリングとか、外部の世界の人間(つーかキャラあんまり知らないから書けなかったり)。
ルパン一味の存在が消えたことで、その消えた時間以降に彼らが関わった事件の結末も変わることになる……
……はずだった。

舞台はカリオストロ公国。ルパン達が消えたことで、クラリスと伯爵の婚礼は邪魔もなく執り行われ、
伯爵の野望は完遂する……はずだった。
ところが、リンディ達が確認すると、婚礼は何者かの乱入により中断、伯爵のゴート札の悪事も公になり、
本来の歴史となんら変わらない……いや、全く同じと言っていい結末を迎えていた。
紛れもない、ルパン一味の手口。
そんなはずは。絶句するリンディ達。
改めて調査し直すTP達だが、詳細は不明のまま。
未来科学や魔法をもってしても、なんとルパン一味の素性は全く洗うことができなかったのだ。
一体何者なんだ、あの連中は?

そして最後に問いかけるのだ。

我々がこの物語で見てきたルパン一味は、本当に本物のルパン達だったのだろうか……と。


様々な謎を丸投げしつつEND。
はいはい、ダメに決まってるでしょこんなの。NGNG。

148魔法少女カレイドナナシ:2007/07/24(火) 19:22:50 ID:oKgHaJNA
押井ルパンじゃんこれwww

149魔法少女カレイドナナシ:2007/07/24(火) 20:33:09 ID:MSxoqESU
これマニアックすぎるだろwwww

150魔法少女カレイドナナシ:2007/07/25(水) 01:36:36 ID:PQUcdaio
この設定に駄目出しされた押井が劇場版パトレイバー1を作ったのは有名な話。

151貝がら Ghost in the Shell ◆TIZOS1Jprc:2007/07/26(木) 00:23:17 ID:8D/kycn.
油圧駆動系――応答なし。
人工筋肉作動信号――応答なし。
電波信号送受信――不可。
破損度チェック――不可。

手足を砕かれ、喉を潰された彼は、ひとり廃墟の街に横たわる。
出来ることは何もない。
伝えることも叶わない。
彼は辛うじて残された"目"を見開く。
最後の使命、"観測"を成し遂げるために。

一時間が経ち、二時間が経ち。
相変わらず変化はない。
時折遠くから響く爆音も、"耳"が用を成さなくなってからは聞くことが叶わなくなった。
太陽が登って、また沈み。
やはり、周辺に変化は見られない。
忘れ去られ、捨て置かれ。
丸一日が過ぎて、突然世界が白に包まれた。

ホワイトアウト。
信号が飽和する。
CCDもサーモグラフィーも焼き切れた。
遂に"目"すら潰され、世界は黒に包まれる。

衝撃。
だが、終わりではない。
まだ、考えられる。
まだ、憶えていられる。
不思議な浮遊感。
ここは何処だろう?
死後の世界などというものが有り得るのか。
それとも――――。
ひょっとすると、不安定な時空のタペストリーを突き破り、別の宇宙へと迷い込んでしまったので

はないだろうか?
ジャイロが周期的で穏やかな加速を検出する。
どこへ向かっているのか。
その先を見ることは最早叶わないと言うのに、彼の胸は期待で膨らんでいた。
――――かつて、無限の遠宇宙に向けて旅立った兄弟が居たという。
それに勝るとも劣らぬ冒険譚を聞かせられるかもしれない。
彼は、最後の記録を開始した。

到達点に向かって。



・・
・・・
・・・・
・・・・・

152貝がら Ghost in the Shell ◆TIZOS1Jprc:2007/07/26(木) 00:23:53 ID:8D/kycn.
――――今でないいつか、ここでないどこか――――


潮の香りが強くなる。
鬱蒼とした森を抜けると、浜辺が広がる。
波打ち際に、彼はいた。

人気の無い砂浜の上に足跡が一列に延びていく。
女が、たった一人、歩いていた。
金髪を白いリボンで一つに結んだ、まだ少女と言っても良いかもしれない年齢の、美しい女。
向かう先には、砂に半ば埋まっている、中型車量程の大きさの青い機体の残骸が転がっていた。
装甲はグチャグチャに歪んで原型を留めておらず、全面を錆とフジツボに覆われていても、一目で"

彼"と判った。
錆を払い、キャノピらしき所に付いている取っ手に手を遣る。
パラパラと錆が落ちるだけで全く動かない。
ぐっと力を込めると、音を立てて止め具ごとハッチが外れてしまう。
搭乗席の中に光が差し込み、小さな蟹やフナムシがわらわらと逃げ出していく。
身を乗り出し、メインモニタにそっと触れた。
微かに唸る起動音。
教わった手順に従ってプログラムを立ち上げる。
なけなしの予備電源を消費している為、長くは持たないだろう。
モニタが明滅しノイズだらけの起動画面が表示された。

"ニューロチップとの接続…………エラー。
自己診断モードへの移行…………エラー。
メインエンジンの起動…………エラー。
…………"

片端からプログラムを実行していくが、全て失敗に終わる。
彼女は最後に残された項目、メモリーの再生の項にカーソルを合わせると実行のキーを押した。

"非運動系内部記憶との接続…………完了。
警告:致命的なエラーが発生しました。
データの99..%が消失しました。作業を続行しますか?"

女がYesのキーを押すと、生き残った情報が表示される。

"・視覚情報:32件
・音声情報:32件
・テキスト:32768件
…………"

女は視覚と音声を選択し一つ一つ再生していった。
モニタにノイズ混じりの映像が映し出される。
最初に見えたのは、無機質などこかのラボの風景。
それは、闘いの記録だった。

153貝がら Ghost in the Shell ◆TIZOS1Jprc:2007/07/26(木) 00:24:18 ID:8D/kycn.
闘うために生み出され、分化し、破壊し、より優秀なものだけが掛け合わされ、再び並列化させら

れる。
試験。試験。試験。訓練。実戦。捜査。監視。点検。訓練。拘束。殺害。大破。再生。実戦………


無味乾燥で殺伐とした世界。
だが、彼は、彼等はそこで情報を集め、他者と触れ合い、徐々に己を知り始める。
義眼の男がこっそり変わったフレーバーのオイルを補給している映像。
ペットの墓の前で泣く少女の映像。
容量を割いて保存するに値しない、何の意味もない、何の役にも立たない映像だ。
そんなデータを、彼はバックアップまで取って、大切に保管していた。

御前達はは無力でない、と諭す女の声が音声として添えられた、彼を見送る義眼の男の映像を再生

し終えると、残された映像は後一つになっていた。
女の指が再生を促すキーを押す。

金髪の少女が映し出される。
顔は煤で汚れ、服はボロボロ、体はあちこち擦り傷だらけ。
時を越え、彼女はかつての自分自身と再会した。
くしゃくしゃの顔で、少女は、泣いていた。

『けど……こにいる――――は……ここにしかいないじゃない!』

映像がノイズに飲まれる。
ノイズすら小さな粒子に散らばっていきフェードアウトしていく。
最後に、一回だけ、

《――――thanks》

と、表示されると、画面が完全に消える。
もう、何も映さなかった。
どのキーを押しても、何も映らなくなった。

…………………………………………

154貝がら Ghost in the Shell ◆TIZOS1Jprc:2007/07/26(木) 00:24:45 ID:8D/kycn.
潮騒が響く。
顔を上げると、もう夕方になっていた。
水平線の向こうへと、夕日が沈んでゆく。
青い装甲が朱に染められ、虹色に輝いている。
潮溜りになった搭乗席の底で、アメフラシやイソギンチャクが遊んでいるのを見て、彼女は一時微

笑んだ。
きっと、ここなら寂しくない。

女の影が残骸から離れて行く。
後ろ姿は一歩ずつ小さくなり、やがて見えなくなった。
残された足跡を、波が浚う。
さっきまでここに誰かがいた、そのことを示す痕跡は、もう、ない。

日が沈み、夕凪の時間が終わる。
マニピュレータに結ばれた黒いリボンが、風に揺れていた。

155 ◆2kGkudiwr6:2007/07/28(土) 19:46:14 ID:WcADepnE
没ネタその一・トウカvs小次郎。半年くらい前に書いたもの。
所々空白になってて話が繋がってないのは没ネタで未完成だから。

没にした理由
・トウカと小次郎が会う機会に恵まれず
・キョンの話し方と似非剣豪小説風味の文体、相性が最悪すぎる
戦い方はセイバーvs小次郎、セイバーvsトウカに流用できたけど文体は流用しようがない(トウカと小次郎じゃなきゃ意味がない)
しかもトウカも小次郎も初書きで殺してしまう始末。

いつかこんな感じの文体で剣士対決を書いてみたい、とは思っていますけどね。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


不釣合いに巨大な剣を携え、日の中に剣士は立つ。
彼らに殺し合いという言葉は似合わぬ。
合う言葉はただ一つ……果たしあうというべき言葉か。

「名乗られたからには名乗り返すが礼儀。
 我が名はトウカ。仕えるが主、聖上はハクオロ。
 そして今刀を預ける相手はキョン殿」

女侍が名乗りを上げる。
その声さえ優雅。戦場(いくさば)に咲く凛とした花。
ゆえに、小さく剣士は笑う。彼にとってこれほど嬉しいことはない。

「ふむ……やはり真の侍か。
 喜ばしい。我が剣が『侍』に届くか否か、是非とも試しておきたかったのでな」
「某にはよく分からないが……侍ではない、と言っていた。
 しかし、それほどの剣気を見たのは某も数度しかない」
「残念ながら、私が生まれた時には既に一介の農民には仕官の望みは無く……
 できたことは燕でも斬ることのみだった……故に、この戦いこそが」

「我が望み」




「……いざ」


巨大な剣。おそらく

「ふむ、これは中々」

剣こそ巨大。
しかし小次郎が剣は剛が本質ではない。
柳のように流れ、風のようになびくこそ小次郎が太刀。
女侍はそれを見切ったからこそ、柔を以って剣を舞わす。
その動き、舞妓にも劣らぬであろう芸術。

「そなたの剣、まさに剣舞。雅なことよ」

156 ◆2kGkudiwr6:2007/07/28(土) 19:47:37 ID:WcADepnE
「小次郎殿も」

共に、その顔に浮かぶは笑みである。
周囲に響くは美しき風切りの音。生えている草が剣風にそよぎ、剣舞の場を彩る。
「流す」ことを主体にした二人の剣が周囲の物を傷付ける事無し。
だからこそ、芸術として生えよう。相手に対しては、剣は赤い血を流させるが故に。
右腕上腕、右腕下部、右手薬指、左腕肘、肋骨部分より心臓まで、胃部より腹部まで。
ほんの数瞬で剣は敵目掛けて流れ、その全てを刀が流す。
そのまま刀が相手の同箇所を目掛けて流れ、やはりその全てを剣が流す。
どちらの足も重心を動かすのみ。だが、その腕は風さえ追いつかぬ。
そして、生半可な手合いではその刃を視ることさえ叶わず。
ここで女侍が踏む込む。



小次郎は後退したのではない。構えたのだ――

「秘剣――燕返し」

奔る剣は二つ。一つの剣が二つの剣と化す。
一つをとっさに流したものの、翼のごとき耳が落ちる。鮮血が迸る。
それでも苦悶の声さえ漏らさず、女侍は後ろへ跳ぶ。
続いて繰り出された剣筋がその肩を掠めていた。

「はっ!」
「っくぅ……」

ここで流水のごとき剣は怒涛と化す。
退いた相手を飲み込まんと、小次郎の剣が女侍を襲う。
先ほどまでは美しい剣舞。だが今描かれるは凄惨なる死闘。
傷ついた女侍の刀には鈍りがあり、小次郎の剣にそれは無い。
故に、女侍は追い詰められていく。
剣が振り上げられる。刀で虚空へ流す。
返しの薙ぎ。流しは間に合わず、ゆえに力による真正面からの受け。
動きが止まったことを見逃さず、小次郎が剣を流し斬り返す。再び後退し回避。
小次郎がすばやく追い、剣を振るう。また、繰り返し。剣を幾度も流し、防ぎ、避ける。
女侍の服は裂け傷は増えるのみ。このまま戦えば敗北は必定。

――故に、女侍は己が閃きに賭けた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

最終的にどちらが勝ったかは……そこまで書いてませんでした。

157魔法少女カレイドナナシ:2007/07/29(日) 01:52:26 ID:UvfMrMPA
病院からハルヒが出てって、のび太が疑心暗鬼だった辺り



水銀フォース暴走。
なんやかんやで不意をつかれ、凛気絶。
 ↓
セラス・劉鳳、のび太・ドラ・凛を守りつつ応戦。
 ↓
疑心暗鬼状態ののび太が、ドラの手を引いて移動。
 ↓
『Photon Lancer Genocide Shift』 幾百もの光弾により、辺りが光に包まれる。
光の中に劉鳳の叫び声だけが、響き渡る。
 ↓
のび太が目を開けると、ドラえもんごと何かに巻かれていたようで目の前は真っ暗。
巻いていた何かがボロボロと砕けていき、視界が開けていく。
その時になって、のび太は理解する。
自分とドラえもんを巻いていた物は、真・絶影の触鞭だと。

周りを見て、状況を把握する。
凛はもう1本の触鞭に、セラスは絶影の本体に守られていたと。

その時、のび太は気付く。
2本の触鞭と本体で他人を守ってしまった以上、劉鳳自身を守るものが存在しないことに。
自分がドラを連れて動かなければ、凛と同じ触鞭に自分達が入ることが出来、もう1本の触鞭に劉鳳が入れたことに。
 ↓
激昂したセラスとドラが特攻するも、水銀フォースの魔法で拘束。
 ↓
のび太、劉鳳への誤解に気付くが時既に遅し、劉鳳死亡。
水銀フォースに銃を向けるが、旅の鏡。
 ↓
水銀フォースがのび太を最初に殺そうと、彼に近づいた瞬間、カズマ登場。
のび太により、劉鳳がのび太・ドラを守って死んだことを知る。
ほとんど消滅してしまっている絶影をアルター化。
 ↓
ボロボロのセラスに、ドラ・のび太・凛を連れて何処かへ行けと頼む。
 ↓
セラス達を背に、アルターで覆われた拳を水銀フォースに向ける。
「劉鳳、のび太……お前らの反逆、この俺が引き受けたッ!」



時間軸とか、トグサとか、リアルでの予定で没に
のび太の改心と劉鳳の最期を書きたかったんだ、うん。

改めて見ると凛とドラ空気すぎww

158 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:10:55 ID:vp1hckrY
※注意

・あんまりロワ関係ありません。
・嘘予告です。自分は書きません。
・実を言うと没ネタでさえありません。
・FateやっててリリカルなのはStSを見ている人限定のネタです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「告げる――」

声が響く。
魔法陣が魔力を紡ぎ、唱えたものを光に染める。

「――誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者――」



「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」

幼い少女の声が響く。
紫色の魔法陣が魔力を迸らせ、長い紫色の髪を巻き上げる。
その中心には、金色の鞘。

「――告げる。
 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
 聖杯の寄るベに従い、この意、この理に従うならば応えよ――」



「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。
 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

凛とした声が響く。
赤い魔法陣が魔力を紡ぎ、赤い女を紅く染める。
10年前にした時と、同じように。

「告げる――汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」






10年後の、第六次聖杯戦争。
それは冬木市を舞台とする、七人のマスターと七人のサーヴァントによる殺し合い。
けれど、魔力を使わずに溜め込み続けたことと――
数多の陰謀と黒い意志が原因となり、さまざまな異世界までその戦場を広げることとなる。


魔法少女リリカルフェイトHeaven's feel



159 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:12:22 ID:vp1hckrY

冬木市のとある街角。そこは既に、異界と化していた。
ただし……区切っているのは結界ではなく、無数の蟲。

「このっ!」

3mを超える巨大な蟲が、その触手を振るう。
それはたんなる打撃ではない。強力な溶解液まで撒き散らす、危険極まりない範囲攻撃だ。
エリオはなんとかそれを回避して……跳ぼうした先に、大量の蟲が蠢いているのを見た。

「う、うわっ!」

生理的嫌悪と危険察知から、なんとかエリオは足の向きを変え、退いた。
あの蟲を下手に潰せばその体液で溶かされてしまうという事は、もう既に知っていること。
空を飛べないエリオが足を失うことは、死を意味すると言っていい。

戦況は最悪だ。
周囲には蟲の群れ、目の前にはまるで得体の知れない気色悪い巨大な蟲。
既に周囲には悪臭が満ち溢れ、地面は蟲が発する酸で溶けている。
まともに近寄ればそれだけで倒れそうな相手だ。何より下手に近づけばそれだけで溶かされる。
それでもエリオの機動力ならば、逃げること程度は可能だっただろう。
それをしない理由は単純。脇に、気絶したキャロを抱えているからだ。

「くっ……」

思わず呻くエリオの頭に、蒼い英霊の姿が過ぎる。
もし彼だったら、こんな苦境も簡単に……

「……こんなこと考えてる場合じゃない!」

そう呟いて、エリオは頭からその考えを振り払った。
何度も特訓をつけてもらったとはいえ、彼はここにはいないのだ。
触媒をくれたバゼットや彼本人に感謝こそすれ、嘆く権利などエリオにはない。

「ストラーダ、カートリッジロード!」
「ほう、まだ諦めぬというのか。殊勝な心がけじゃのお。
 ……じゃが、いつまで持つかな?」

間桐の翁、アサシンのマスターが嘲笑う。
包囲している小さな、しかし無数の蟲はゆっくりと距離を詰め、
その女王たる巨大な蟲は動かずに触手を振るい、液を撒き散らしていく。
……だが、突如エリオが呆けたように止まった。

「……む?」

すぐにエリオは回りを注意へと移したものの、その様子は未だどこか意識を他へと向けているように見える。
老練な魔術師がそこから、自分の好機よりも相手の転機を感じ取った数秒後――
その瞬間、エリオがキャロをその場に置いて跳んだ。

160 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:12:41 ID:vp1hckrY

「ふむ……何か考えがあるようじゃな……」

そう呟いた翁が手を動かすのと同時に、小さな無数の蟲がキャロへと殺到する。
何をしてくるか分からないエリオへの対応を考えるより先に、弱者を殺しておくべきと考えたのだ。
……もっとも、正確には殺さず蟲漬けにし人質とするつもりだったが。
だがその瞬間。キャロの竜、フリードリヒが群がる蟲を焼き払っていた。

「――猛きその身に、力を与える祈りの光を」
「……ほう?」

思わぬ事態に、老練な翁の眉も思わず動いていた。
答えは単純。意識を取り戻したキャロは寝たふりを続けながら、念話でエリオに話しかけていたのだ。
単純だが……念話を知らない間桐の翁には、これ以上なく効果的な作戦。
翁が事実に気付き舌打ちした時には、キャロは既に起き上がって呪文を詠唱している。
唱えたのは支援魔法。対象の攻撃力を一時的に増加させるもの。
そして、その対象であるエリオは、既に。

「一閃必中――シュタールメッサー!!!」

バリアジャケットに無数の穴を開けながらも、巨大な蟲と距離を詰めている――!



161 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:13:56 ID:vp1hckrY

「……つまり、スカリエッティがずっと冬木で蠢いていたのは」

リインフォースの言葉に、相手はどこかつまらなげに頷いた。
今までの会話を総合すれば――ガジェットドローンを冬木の教会跡地周辺に送り続けていたのは、
言峰が遠坂家から密かに持ち出していた触媒、つまり最古の蛇が残した抜け殻を得るためである。
その触媒で何を召還できるのか?それは、とある叙述詩を見れば分かろう。
蛇は、不老不死の薬を飲んだからこそ脱皮するようになったとされる。
そして、その薬を元々手に入れていたのは。

「ふん、貴様は我(オレ)を知っているようだな。10年前の聖杯戦争とやらか?
 よい、発言を許す。貴様も我が財に加えてやるのだからな」

リインフォースの前に立っている、人類最古の英雄王――ギルガメッシュに他ならない。
彼は金色の鎧を纏わず、黒いライダースーツを纏っていた。そして、その右手はデバイスと思しき杖を弄んでいる。
見当はつく。恐らく、彼は異世界の物であるデバイスに興味を持ったのだろう。
ギルガメッシュの圧倒的な威圧感とカリスマは、訓練された兵隊でも立ち竦ませて余りある。
だがリインフォースは臆せず、嫌悪をはっきりと口に出した。

「……大層な自信だな、ギルガメッシュ」
「ほう。我に逆らう気か?」
「凛から話は聞いている。お前の歴史は数千年に過ぎない。そして、僅か一つの世界でしか生きていない。
 数多の世界で生き、数万の歴史を重ねた私を、お前が扱いきれることなどない」
「……ほう? 何が言いたい」
「ならはっきり言ってやる。
 お前は我が二人の主、そのどちらにも及びはしない」
「く……くははははははははは!」

明らかな挑発。リインフォースの言葉は、尊大な英雄王を怒らせておかしくはない。
しかし、英雄王は怒るどころか……まるで狂ったかのように笑い出していた。

「……何がおかしい」
「侮るなよ、魔道書風情が。貴様の経歴は聞いている。
 だがどれほどのものであろうと、我が所有すると宣言した以上はそれは我に所有されなくてはならぬ。
 数万年の歴史? 数多の世界での経験? それがなんだと言うのだ。世界より重いのか、貴様は?
 貴様はかの半神のように大地を支えたことがあるか?我のように神の裁定と戦ったことがあるか?
 ――幾千幾万の民を、幼子を、守ったことがあるのか?」
「……何?」

そう言い返すリインフォースの語気は、先ほどより弱い。
彼女には、英雄王の言う事がまだ理解できていない。何より、悪寒がしたのだ。自分の根幹を抉られるような、そんな予感が。
そして、それは決して間違いではなかった。

「雑種共は脆い。ましてや今の人間共は無秩序に増えるだけで余計に弱くなった。
 その程度の者共が向かう先は、世界の破滅のみよ。
 貴様がしたという変質がその証拠。驕り高ぶった雑種共が、数多の世界を滅ぼしたのだ」
「…………!」
「もっとも、貴様の背負った業の全てを我に背負わせてもなお足りぬがな。
 英雄とは目に見える全てを背負う者。
 所詮貴様も騎士王と同じよ。一人で背負いきれなかった貴様に、我と競う資格などない!」

驕りも、慢心さえなく。
英雄王は数多の世界の滅亡を、自分ならば背負ってみせると断言した。



162 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:14:52 ID:vp1hckrY

「一対一か。さっきまでの袋叩きとは違って随分とまあ礼儀正しいことだぜ。
 ……セイバーはどうした?」
「セイバーは……アーチャーと戦ってる」
「アーチャー……ああ、あの嬢ちゃんが呼んだ赤い方のことか。
 クラス重複ってのは呼び方に困るぜ。で、お嬢ちゃんはちゃんと俺と戦えるのか?」
「……ガリューがいる」
「使い魔か? そりゃよかった。張り合いがありそうだ」

ルーテシアの答えにランサーはそう軽口を叩いたが……その体は見るも無残な様子を晒していた。
左半身は熱で焼け爛れ、左腕からは骨が覗いてさえいる。そしてその身に残っている魔力は、本来の四分の一にまで減っていた。
理由は腐るほどあるが、特に悪かったのはヴィヴィオを庇い、ヘビーバレルを直接受けてしまったこと。
ナンバーズ10・ディエチによるSランクオーバーの砲撃は、いかに英霊といえど耐えられるものではない。
しかし、それでもなおランサーは己が魔槍を構え……無表情だったルーテシアの顔が、僅かに動いた。

「…………」
「諦めが悪いと思うか?
 だがあいにく、俺の売りはそれなんでね。死ぬまで戦い続けるさ」
「……セイバーも?」
「さあな。育ちのいい騎士王様のことなんざ知らねえよ。
 もっとも、そう簡単に諦める腰抜けなんて英雄にはいねえがな」

ランサーの言葉に、ほんの一瞬だけルーテシアは考え込んだ。
聖杯は破壊しなくてはならないとセイバーは言う。だから彼女はずっと、あと一歩の所でルーテシアに逆らってきたのだろう。
そこまでしなくてはならないほど、セイバーにとって大変なことなんだろうか。

……けれど。



163 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:15:11 ID:vp1hckrY

「ディバイン、バスタァァァァァァァァァ!」

スバルが、叫んだ。
既にその瞳は金色に染まり、彼女の魔力は暴風となって周囲の物を吹き飛ばしていく。
そして、撃ち出したその砲撃は暴風すら上回る、ただの暴力の塊だ。
……しかし、当たらない。
ディバインバスターが抉ったところには、既に何もいなかった。

「キキ――素質は評価しヨウ。
 その能力ハ対魔力ヲ持つサーヴァント殺シといウべきモの。
 特ニセイバーにとっテは、あノ金髪の女ヨリ厄介ダ」

髑髏が喋る。声から位置を探ろうとスバルが周囲を見渡すが、無駄なこと。
暗射者の気配遮断は、声の響きさえ異様な形に変えていた。
声はまるで、全方位から響く山彦のよう。そんな音から居場所を探るなど出来はしない。

「ダが、ワたシに対魔力はナイ……キキ、キ。
 しカし避けル手段と隠レる手段なラば山ほドあル」

山の翁――サーヴァント・アサシンが投げつけた短刀は、プロテクションを貫通してスバルの肩に上から突き刺さった。
しかし、痛みを堪えながらスバルが天井を見上げても、アサシンは既にそこにはいない。
彼女に暗殺者の位置が分かるのは、攻撃して来る瞬間のみ。
アサシンの隠れ身は、スバルに全く位置を悟られない。悟らせない。
故に、アサシンは断言した。

「つマり……本来最弱でアるワたシこソ、相性がイい」

完全にスバルの死角に入りこんだアサシンが、折りたたんでいた右腕を伸ばす。
その名は宝具・妄想心音(ザバーニーヤ)。鏡像を作り、離れた位置から相手の心臓を握り潰す呪いの腕。
宝具である以上は魔力を消費する。それゆえに、スバルに位置は悟られる。だがそれは問題ではない。
体の各所に傷を受けているスバルは、確実に反応が遅れるだろう。そして、反撃をする前に彼女は死ぬ。
その距離は20m。走り寄るには遠く、スバルの射撃では溜めが間に合わない。
驕りも油断もない。これは正しい判断であり、事実である。

164 ◆2kGkudiwr6:2007/08/04(土) 18:15:42 ID:vp1hckrY

――スバルに限った話ならば。

「隠れるのはそっちだけの専売特許じゃない――クロスファイアー・シュートッ!」

響いたのは、新たな声。
伏兵が撃ち出したオレンジ色の魔弾が、アサシンの右腕に命中する。
アサシンを倒すには、遠く及ばない一撃。しかしそれでも……一瞬だけ、アサシンの動きは止まっていて。

「ありがと……作戦通りだね、ティア!」

スバルが相棒に言葉をかけながら、走っていた。
状況が変わった今、勝敗の行方も変わりつつある。
アサシンが宝具による呪いを完遂するより先に、スバルが距離を詰め、アサシンに一撃を叩き込む可能性も多いにあるだろう。

「キキ……キィ!」

それでも、蟲が鳴くような声で髑髏が笑う。
アサシンに慢心はない。なればこそ、今までスバルを痛めつけ、宝具を文字通りの必殺となそうとしていたのだ。
現に傷ついたスバルはティアナの援護を受けて尚、反応が遅れている。
故に、この程度で敗れはしないというのがアサシンの矜持であり。
皆と一緒なら勝てると言うのが、スバルの誇りだった。



目覚めた黒い聖杯。攫われたギンガ。そしてスカリエッティの真意。
それぞれの目的のため結託する間桐と英雄王。立ちはだかる最優のサーヴァント。
世界の全てを集めし最強の王と、それに拮抗する贋作者。
サーヴァントに対する新たなジョーカーと、立ちはだかる暗殺者。
従来のルールを尽く覆し破綻した聖杯戦争の中で、フェイトと凛は――



「――教えてあげるわ、金ぴか」
「確かに、私達一人じゃ背負いきれない。だから、皆で一緒に背負うんです!」

165次のバトルロワイアルのために ◆TIZOS1Jprc:2007/08/26(日) 22:26:25 ID:OXAMUAwY
青い空に、青い海。
人気のない白い砂浜に椰子の木が風に揺れる、どこかの瀟洒なリゾート地みたいな南国の風景。
パラソルの下でデッキチェアに寝そべる半裸の老人がいた。
ブーメランパンツ一丁で、皺だらけの貧相な肉体を周囲に晒している。
はっきり言って、目に毒である。見る者とていないが。
否。

「ご機嫌麗しそうね、何度も死にかけた直後だって言うのに」
「ふふ、王たる者は何度窮地に追い遣られても決して取り乱したりはせぬのだよ、テスタロッサ」

何の前触れもなく、妖艶な魔女、プレシア・テスタロッサが、彼の隣に出現していた。
下手な水着よりもキワどい黒の衣装に黒のマントと言う、通常の神経の持ち主なら絶対に公衆の面前には立ちたくない格好である。
娘さんもレオタード一枚で飛び回ってるけど、このヒトの場合年齢ってモンを自覚し……ゲフンゲフン。

「脱獄の支援、感謝するぞ。さすがの私でもあのままじゃちとマズかった」
「ギブアンドテイクよ、こちらからは魔法技術とロストロギアの模造品の供与。貴方からは次元断層からの救出と未来の科学技術と秘密道具の供与。
こっちから一回は助けないと、お合い子にならないの」

実際は有用なコネクションを失いたくないと言うドライな打算に過ぎないのだが。

「タイムパトロール……だったかしらね。あの程度の連中、出し抜くのは簡単だったわ。遣口を教えられていたし」
「上長上長」

老人は機嫌良く高笑いを始めた。

「アルハザードに至る為……私の願いを叶える為に、貴方にはもっと役に立って貰わないといけないのよ」
「ん? 何か言ったのか?」
「いいえ……。それより貴方はこれからどうするつもり?」
「そうだな、しばらくはほとぼりを冷ましてから……」

老人は、ぐっと握り拳を天に掲げた。

「今度こそ、バトルロワイアルを完遂して見せる!」
「……。まだやる気なの」
「そうとも。神に等しきこの私に苦汁を飲ませたあやつらに、何としても目に物見せてやらねば。
次こそは全員絶望のどん底でむごたらしく嬲り殺しになって貰おうではないか!」
「そう」

プレシア、心底どうでも良さげに相槌。

「何でも良いけれど、今度はヘマをしないことね。私ね、無能な子は嫌いなの」
「フッフッフ、勿論だとも。同じ失敗を私が繰り返すと思うか? 次回は手心など加えん。
私自身の絶対的安全を保障した上で、奴等から反抗への手立てを完全に奪い去る。これで完璧だ。
今回の忌々しい生存者共に新たに数十人加えて第二回バトルロワイアル、開催決定だ」

無関心げなプレシアがふと興味を引かれたように老人を見た。

「どうして、そんなにその"バトルロワイアル"に拘るのかしら?」
「私の……悲願だからだ」

握り拳を己が胸に当て、断言する。
実際は今回の"興行"の取り引き相手が軒並逮捕されたおかげで、闇業者からの借金を返すアテがなくなり、首が回らんくなったからです。
いかに30世紀の未来技術を持つとは言え、表社会からも裏社会からも追われるようになっては、にっちもさっちも行かんとです。
等と、格好の悪い話は置いておく。

「まあ、そろそろほとぼりも冷めた頃合か。追手の連中がここを嗅ぎ付けるやもしれん。そろそろここを引き払って……」
「そうは行かないねぇ」

背後からの第三者の声に振り返ると同時、断続的な銃声が響く。
複数の機関銃からフルオートで撃ち出される7.92mm弾が白い砂浜に青い海と青い空が広がる平和な光景を、文字通り"粉々に吹き飛ばした"。
砕けたガラス片が一面に舞い、ホログラム装置と背景の液晶画面が機能停止する。
機械で演出されたリゾートの代替物は、数秒後には滅茶苦茶に散らかった、近代的な高層ビルの一室に過ぎないと言うその正体を暴かれていた。

「お客様の様ね」

プレシアの声に老人が顔を上げると、そこには十数名の旧ナチスドイツ親衛隊の制服を身に纏った屈強な兵士が雑多な銃火器を構えていた。
そして一列に並んだ彼等がさっと道を開けた場所を通って、後ろに控えていた三人組が悠々と歩み出てくる。
中央の、小太りというにはちょっと肥え過ぎな感じの眼鏡の中年男が語りかけてくる。

「やあ、お取り込み中の所を悪いね、ギガゾンビ君。
はじめまして。我々は、"最後の大隊"さ。
私の事は、取り合えず少佐、と呼んでくれ給え」

166次の次のバトルロワイアルのために ◆TIZOS1Jprc:2007/08/26(日) 22:27:30 ID:OXAMUAwY
男の視線が、這いつくばっている老人の横で平然と立ったままでいる女の方にずれる。

「おや、確かお嬢さんは……プレシア・テスタロッサ嬢ではないかな?」
「だったら?」

プレシアの猛禽を思わせる眼が細められる。
少佐は鷹揚に笑って返した。

「いやいや、君のような美しい女性とは一度ゆっくり話がしてみたいとは思うが、今、我々の用事があるのはそこのご老体なのだよ」

老人、ギガゾンビがよろよろと立ち上がりながら、男を睨み付ける。

「貴様……。そうか、思い出したぞ。
確か、あの吸血鬼どもを引っ張って来た世界にいた、連中の宿敵……」
「宿敵は良かったな」

少佐は含み笑いを漏らした。

「そう、宿敵。君が玩具扱いした、あの素敵な化け物たちは我々の宿敵だったのだよ。
大切な、唯一無二の、何者にも代え難い。
彼等が相手でなくては、我々は、その全身全霊をかけた全力で戦争をすることが叶わないのだよ。
なにしろ、先の大戦から半世紀。我々が力を蓄えている間に、世界は我々の事を忘れ去ってしまった。
かつての英雄たちは死に絶え、のうのうと平和を甘受する先進諸国民達は、豚の群となり果てているではないか!
いかん! 実にけしからん! 本当に嘆かわしい! そうは思わないかね?」

少佐は、握り拳を固めて振り回しつつ、問われてもいないのにベラベラと長ったらしい口上を、とうとうとぶった。

「我々の望みは唯一つ。戦争をすることだ。
唯の戦争、そこいらで毎日起きてる地域紛争程度では勿論良い訳がない。
司令官が地下深くに掘られた安全な指令所でボタン一つ押すだけでカタが付く、大陸間弾道ミサイルが飛び交うだけの単調極まりない、無機質で"クリーンな"未来戦争など問題外だ。
我々の望む戦争とは、もっと血飛沫騒ぎ肉片踊る、千差万別有象無象老若男女を巻き込んだ、親に合うては親を殺し仏に合うては仏を殺し神に合うては神を殺す、五臓六腑を喰い千切り阿鼻叫喚の怒号に包まれた、そんな素敵で脅威で大惨事な大戦争なのだ!
それをする相手はもう、彼等しか存在しなかった!
アーカードとその下僕、そして"死神"ウォルターを擁する英国国教騎士団!
そして化物殺しの鬼札アンデルセンを有する法王庁特務局第十三課!
彼等しかいなかった! 彼等でなくてはならなかった!
彼等が存在しないのでは、我々の、この振り上げた拳をどこに振り降ろせば良いのだ!
半世紀もの間密かに研ぎ、磨き続けて来たこの牙を一体だれに突き立てれば良いのだ!
戦争するしか能の無い、戦争の事しか脳に無い我々が、この地球上に存在する意味が無いじゃないか!
……………………。
一体この落とし前はどう付けてくれるんだいギガゾンビ君?」

ねっとりとした和やかな笑みを浮かべながら、男はギガゾンビに対しすごんでみせる。
しかし孤立無援のはずの老人は不敵に笑って見せる。

「フン……群れねば何も出来ぬロートル共めが。貴様等の相手など下らない面倒をしていられる程、私は暇では無いわ」

言うと同時に、金属製の分厚いシャッターが彼等の間に滑り落ちてきた。
完全に遮断され、無効の物音一つこちらに届いてこない。
ちなみに、プレシアも向こう側だ。

「やれやれ、これだから礼儀を知らぬ野蛮人は。
まあ、これで十分時間は稼げる。今の内にさっさと、おさらばするとしようか……」

先程の銃撃で砕け散った窓ガラスから、外を覗き込む。
すぐ真下に小型のタイムマシン兼用クルーザーが待機している。
ギガゾンビはニヤリと笑うと、外へと一歩を踏み出そうと……、

「遅すぎですゥ」

突如耳に届く粘っこい男の声。
同時、クルーザー全体にスパークが走ったかと思うと、次の瞬間には爆発四散していた。
爆風を食らいかけて腰を抜かした老人の目の前に、白蛇を思わせる風体の男が立っていた、空中で。
オールバックの白髪、色の濃いバイザー、ぴっちりとした黒のスーツ、口元に浮かべられた皮肉げな笑み。

「ンフフフフフ……捕まえましたよォ、ギガゾンビ」
「き、キサマは、あのアルター使い共の世界での、"本土"側の能力者!」
「はいィ。本土のアルター使い、無常矜侍ですゥ」

167次の次のバトルロワイアルのために ◆TIZOS1Jprc:2007/08/26(日) 22:28:33 ID:OXAMUAwY
相変わらずのスローペースで自己紹介をする男。

「い、一体私に何の用だ! 私は貴様とは何の関わりもない!」
「貴方に無くとも、私にはあるのですよォ」

腰を抜かしたまま後ろにズリ下がる老人にゆっくりと迫りながら、蛇男はとうとうと語りかけた。

「今回貴方が仕組んだ"バトルロワイアル"の全容、私はちゃーんと把握しております。
やってくれましたねェ……。
よく私の"向こう側"とのコンタクトと言う悲願を見事に打ち砕いてくれました……。
もうあそこにはアルター反応がありませんでしたねェ……ストレート・クーガーも殺されたのですか?
ま、あの精製を受けてボロボロの体では、当然の事でしょうねェ……。
それにしても、あと一息のところで扉を開く鍵であるあの二人、カズマと劉鳳がお亡くなりになってしまうとは……。
ジグマールさんには残念でしたが、私はもっとでしょうか……。

はじめてですよォ……。
このわたしをここまでコケにしたおバカさんは……。
まさかこんな結果になろうとは思いませんでした……」

と、それまでの皮肉げな雰囲気が一変。俯いてなにやらドス黒いオーラを放ち始めた。

「ゆ……」
「ゆ?」

思わず聞き返したギガゾンビは、夜叉の如き憤怒の表情を見せている無常の顔をまともに見る羽目になった。

「ゆるさん……」

いつもの、常に嫌味っぽいほどマイペースな彼を知る人間ならば別人かと疑う程に、無常矜侍は激怒していた。

「ぜったいゆるさんぞこの虫ケラめが!!!!!
じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!!!!
塵一つ残さんぞ覚悟しろ!!!」

気圧されたギガゾンビはじりじりと下がるが、すぐに壁際まで追い詰められる。
へばりついた隔壁が突然轟音と共に揺れ動き、大きくひしゃげた。
二、三回それが続いたかと思うと、次の瞬間には壁ごとバラバラになって吹き飛ばされる。
土煙の向こうには、軍帽を目深に被り、バレルを非常識な位長く改造してあるモーゼル拳銃を腰に提げた、長身の軍人が拳を突き出していた。

「大尉、ご苦労」

ギガゾンビの背後は、あっと言う間に、SS軍人たちに取り囲まれていた。

「おやァ? これは面白い。彼等も君を帰すつもりはないようですねェ」
「フフフ、どうやら、そこの男も我々と目的は同じの様だね。
しょうがない。君も混ざり給えよ」

なにやら少佐と無常が意気投合している。
今の所は同士討ちしてくれることは有り得ない様だ。
だが背水の陣となったギガゾンビは、不敵な態度を崩さなかった。

「ククク……、身の程死らずの愚か者めが……。
生きて帰れぬのは貴様等だと知るが良い。
やれッ! テスタロッサッ!
奴等を皆殺しにしろッ!!」

168次の次のバトルロワイアルのために ◆TIZOS1Jprc:2007/08/26(日) 22:29:21 ID:OXAMUAwY
声高に叫んだ。
沈黙が降りる。
壁に寄り掛かって、様子を見ていたプレシアはしかし、動かなかった。

「テスタロッサ……?」

プレシア、溜息。

「正直言うとね、貴方には失望したの」
「なんだと……!」
「"剣を持つものは、また自らも剣によって滅ぼされることを覚悟せねばならない"。
あれだけの事をしでかしたのだから、法による罰以外にも、個人的な報復なども警戒しておくのが当然でしょう。
それなのに貴方と来たら……この体たらく。付き合ってられないわ。
幸い貴方がコンタクトした科学技術の発達した世界とのコネクションは私も貰った事だし。
科学の特徴とはその再現性。
魔法と違って、知識と道具さえあれば専門家なしでも事は済ませられる。

貴方、用済みだわ。
そちらの方々、彼の処遇はご自由にどうぞ」
「なッ……! そんなッ……!」

哀れ老人は屈強な軍人二人に両脇を拘束された。

「頼むッ……! 見捨てないでくれッ……!」

誰も老人の懇願に耳を貸さない。

「そうだッ! お前達! 私の科学力は欲しくないか!?
私は二十三世紀最高の技術力と三十世紀の科学技術の両方を持っているぞ!」
「それは良いことを聞いた。ドク!」
「は」

少佐が指を鳴らすと、背後に控えていた、血濡れの白衣を纏った多重レンズ眼鏡の男が歩み出てきた。

「彼を拷問に掛け給え」
「はッ! ゲシュタポ上がりの腕利きを多数用意しております」

チャッと音が出る程に畏まって見せる男の背後から、見るからに近寄りがたい風貌をした軍人三人が現れる。

「……こ、殺すならさっさと殺せッ」
「死に損いの分際で命令するつもりか!」
「よぉし、こいつの肉はお前たちにくれてやる。好きにしろッ!」
「秘密道具さえあれば……こんな奴等に……」
「へへへ。おい、あべこべクリームってやつを用意しろ。みんなで気持ちよくしてやる」

老人がズルズルと引き摺られていく。
それをよそに、異なる世界からやってきた三悪人達はのどかに談笑していた。

「はは、これでまた戦争が出来るかもしれない。
しかも今度は唯の戦争じゃない。宇宙を股にかけた時空戦争だよ! H・G・ウェルズもびっくりだ!」
「左様ですね、少佐」
「ほう。時空を操作する力ですかァ。興味深いですねェ。
私も同伴させて頂いてよろしいですかァ?
ひょっとすると私の能力の役に立つかもしれませんし」
「私も一枚噛ませてもらっても良いんでしょう?」

もはや唯の無力な老人に過ぎないギガゾンビを顧みる者とていない。
老人は惨めに喚き散らすしか出来なかった。

「待て! 待って!! まって――――!!!
テスタロッサ――――ッ!
スラン! ボイド! ユービック! コンラッド! フェムト!
テラ! テラテラテラテラテラテラ――――!
だれか、私を助けてくれ――――!」

ああ、誰か彼をこの窮地より救い得る者がいるだろうか?
そうだ、彼なら。ギガゾンビと縁浅からぬ彼ならば。
並行宇宙の一つでは物語の主人公として万人に語り継がれる彼ならば、あるいは。
だが、あれだけの事をされた彼が、この老人を助けることなど、どう考えても有り得ないこと。
しかし、それでも、藁をも縋る思いで、ギガゾンビは彼の名を叫んだ。

「ド、ド、ドラえも――――ん!!」

169 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:32:10 ID:JbKpKyeU
時間軸はきっと◆lbhhgwAtQE氏の『静謐な病院Ⅱ 〜それぞれの胸の誓い〜』から
◆S8pgx99zVs氏の『陽が落ちる』の間(または、『陽が落ちる』の平行世界?)になるんでしょう。

『静謐な病院Ⅱ 〜それぞれの胸の誓い〜』の状態表を見た瞬間から頭の片隅から離れなかったネタを今回文章にする事を覚悟しました。

短く、面白くも無く、ひねりも無く、キャラ把握もちゃんと出来ていないであろう話ですが暇つぶし程度にはなるかも……。

170 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:32:24 ID:JbKpKyeU
「魔力がたりないのよ」

凛がいきなりではあるが言い出した。

「私もフェイトも今までの戦闘で魔力を大量に消費したわ。フェイトに関してはもう完全に魔力が無いの」

病院から出ていた5人が戻って来て、全員の状態を確認し終わって直ぐに凛はその場に居る全員に話す。

「これからギガゾンビとの戦いになるだろうけど、そこには大量のツチダマが居るのよね?」
「そ……sうだ、ギガゾnビの……しrには……何まnもの、tチdマが居る……」

ユービックが凛の質問に答える。
ツチダマであるユービックは、ギガゾンビの城の情報について知っている。
もちろん仲間のツチダマが大体何体居るかも把握していた。

171 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:32:46 ID:JbKpKyeU
「その大量のツチダマを相手にするのに魔法、魔術があればグッと勝率が上がってくるんだけど……」

使うためには魔力が必要なの。と悔しそうにつぶやく。

「魔力はどうやったら回復するんだ?」
「時間がたてば自然に回復するんだけど……今はその時間が無いの。一日あれば完全には戻ってくるのは確かよ」
「一日ですか……凛ちゃん、他の回復方法は?」

ドラえもんが聞いてくるのも無理は無い、一日も待っているうちに向こうから動いてくるのはわかっている。今は一時間、いや、一分ですら惜しい状態なのだから。

172 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:33:12 ID:JbKpKyeU
「何らか魔力を持ったアイテムがあれば、そこから魔力を吸収して回復することも可能です。でも、そんなアイテムもありませんし……」

フェイトが申し訳ないように説明をする、何でもカートリッジでは一時的に魔力を上げるだけで時間がたつと元に戻ってしまうらしい。

「とにかく、私とフェイトで魔力を何とかする方法を考えてみるわ。皆は首輪の解除の方をお願い」
「判った。じゃあここはご婦人御二方に任せて、他のご婦人&野郎共は首輪の解除に専念するぞ。

ゲインの号令に一斉に動き出す。
部屋にはフェイトと凛の二人だけになった。

173 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:33:49 ID:JbKpKyeU
「……ねえ、フェイト」
「なんですか?」

二人になって一分ほどの沈黙をした後、凛はフェイトに振り返りながら言葉をかける。

「実は……さっき皆には黙ってたんだけど短時間で魔力を回復する方法が一つあるの」
なぜかその顔は真っ赤に染まり、いつもの三倍増しの真剣な表情だ。

「魔力が回復する方法があるんですか!?何故今までだまっていたんです?」
「いろいろと事情があるのよ!……いい?この方法、半端じゃナイ覚悟が必要なの。話してもやりたくないって言ってもから、よく聞きなさいよ」
「は、……はい!」

返事を聞き、凛は口をフェイトの耳元に持っていき

「………………」

何かを教えている。

174 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:34:15 ID:JbKpKyeU
「………え、えーーーー!!!!!!ほ……本当ですかーーーーー!!!!!!」

突然フェイトが目覚まし時計も真っ青な叫び声を上げる。
なぜかその顔は凛以上に真っ赤に染まっている。

「声が大きいわよ!悲しいけど事実なの、どう?あなたに出来る?」

凛の問いかけにフェイトはじっくりと考え……。
「私は……」

175 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:34:39 ID:JbKpKyeU
「よお、チャンプ。何か解決方法は見つかったかい?」
「ゲインさん、まだ見つかりませんよ。あなただって見つかってないみたいですね」

首輪の解除方法を探していたゲイナーは途中、ゲインに遭遇する。
御互い有効な首輪の解除方法が見つからず、困っているようだ。

「お二人さん、どうだい調子は?ってやっぱり駄目みたいだな……」

廊下の奥からトグサの姿が現れる、トグサもやはり首輪の解除方法について困り果てている様子で、表情があまり良くない。
そこで三人で首輪について話をしていると今度はドラえもんがやってきた。

「あ、三人ともここにいたんですか?凛ちゃんが部屋に来て欲しいっていってましたよ」

ドラえもんの伝言を聞いた三人は凛とフェイトが居る部屋の前にやってきた。

176 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:34:50 ID:JbKpKyeU
「あれ?トグサ、ゲイン、ゲイナー、三人も呼ばれたのか?」

ドアの前にはロックがいた。
何でも彼もドラえもんの伝言を聞いて来たらしい、しかもドラえもんが伝言を頼まれた相手はこの四人で他の人は呼ばれていないとのことだ。

「一体俺ら四人に何のようがあるんだ?まあいい、開けよう」

そして四人は凛とフェイトの待つ部屋の扉を開く。

177 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:35:05 ID:JbKpKyeU
「……来たわね。四人とも」

凛が喋ると同時に部屋の中に違和感を覚える。
「結界を張らせてもらったわ、防音と人払い、そして内側から出ることが困難な結界を」
「結界って、僕たちを閉じ込めてどうするつもりですか!?」

ゲイナーの言葉には一切言葉を返さず、凛は話を続ける。
「……実はね、魔力を回復する方法があるの、その方法を、……その、手伝ってもらうというか……やってもらうと言うか……」

凛の言葉に切れがないと思い不思議がってみると二人とも髪が邪魔でわかりにくいが顔を真っ赤にしている。

178 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:35:21 ID:JbKpKyeU
「魔力を回復する方法があるだって?一体どんな方法なんだい?」
そう言ってゲインは部屋に二つあるベットのうちの一つに腰掛ける。
しかし、ベット二つもあったか?とゲインは同時にそう思った。

「一般人にもね、魔力があるの。でも他人から魔力を共有するにはラインって言うものが必要になってくるの」
「そ、それで。あ、あの……ラインを繋ぐには如何したらいいかといいますと……」
「答えはとっても簡単に出来るのよね」
「それは……」「それは……ですね……」

179 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:35:44 ID:JbKpKyeU





「「私達を抱いてください!!」」






四人は二人が何を言ったのかを理解するのに時間が掛かった。

180 ◆RX7Gqr4C4s:2007/11/05(月) 01:36:46 ID:JbKpKyeU




凛&フェイトーー魔力全回復



【トグサ、ゲイン・ビジョウ、ゲイナー・サンガ、ロック    死亡――死因 腹上死】


これ以上は無理です……。
やはり書き手でない自分が話を書くべき手はないのでしょうね……。
没作品投下スレとは言え、これを投下してよかったのかは未だにわからない……
駄目だったらスイマセン。

181魔法少女カレイドナナシ:2007/11/08(木) 18:09:14 ID:nZupFnIU
近大とか東大阪大学?といった、超難関大学が在る。

182魔法少女カレイドナナシ:2007/11/15(木) 22:43:43 ID:cc0XmCR6
>>180
たしか、当時も雑談でチラッと出ていたネタだと思うけど、まさか文章化してしまうとは……
内容的にはもちろん多種多様な意味でやばすぎるけれど、
企画終了後の没作品投下スレ作品としては十分ありな範疇。
最初は「ネタとはいえこれで4人殺すか!?」と思ったけど、たしかにそうしないとオチがつかないか。
なんせよ、自分はそれなりに楽しめた。

あと、書き手なんて、本来“話を書いて投下した人”程度の意味あいしかない。
没ネタとはいえまがりなりとも一つの話を書いて投下した以上はあなただって立派に書き手でしょうに。
そりゃ足りないところだってあるだろうとは思うけれど、妄想を具現化するのが嫌いでなければ、
気が向いたらまたどこかで挑戦してみては?

185:2007/12/07(金) 14:31:22 ID:TJvrl9yU
いじめ撃退法

186残された欠片「異郷」 ◆k97rDX.Hc.:2007/12/28(金) 23:36:09 ID:dXEPpd9E
予告より、えらく遅れて申し訳ないのですが、一応形になりましたのでここに置いておきます。内容は……蛇足ですが「ドラえもんのエピローグのその後」の没ネタです。“ひぐらし”の原作をご存知の方は、TIPSを読むような感覚で見てくださるとありがたいです。



「異郷」

 ――21××年。
 大都市の郊外にある、とあるスクラップ工場。そこが、いくつか提示されたなかからドラえもんが選んだ就職先だった。
 勤務時間は長く、労働環境がよいとはお世辞にも言えない。しかし、あちこちにガタがきた子守ロボットを採用しようなどという雇用主などそうあるものでは無い。それに、基本的な工学知識を持ち、力仕事もこなせるドラえもんにとっては自分の能力を十分に生かせる職場であることには違いなかった。

 ドアを開けて室内に一歩進んだところで、かすかな躊躇を覚えてドラえもんは踏み出した足を引っ込めた。そこは自分に割り当てられた部屋であり、寝起きをするようになってからすでに数ヶ月が経過している。入ることを誰に止められるいわれもないし、別に何か不審な点があったわけでもない。
 念のためにもう一歩下がってドアのわきを見てみれば、予想を裏切られることもなく「ドラえもん」と記された表札がそこにかかっていた。
 いつになったらこんなことをせずにすむようになるのだろうか。自分の姿に半ば呆れながら、いつもその日の仕事を終えてからするように、ドラえもんは部屋の壁と一体化したテーブルの前に座った。その上にしつらえられた端末を起動させ、その画面に表示された内容に目を通す。
『2件ノ着信アリ』
 一方の差出人は、あのタイムパトロールの隊長。彼は――と言うより、タイムパトロールの組織全体が――ドラえもんに同情的で、いくつかの件については少々の無理も聞いてくれていた。今回のメッセージは、依頼していた事案が達成できたことを伝えてくるもので、これには丁寧な文章でお礼状を送ることにした。
 さて、もう一方はと言うと、これはユービックから。中身に目を通すと、ロボット学校での生活や、日常生活の細々としたことが新鮮な驚きとともに綴られている。
 新しい環境に慣れようとして四苦八苦する友人の姿を思い浮かべ、嬉しさとともに一抹の淋しさを感じてドラえもんは微笑んだ。こちらに来たばかりの頃は毎日のように届いていた彼からの私信も、最近は週に一度に減ってきている。いい加減、自分も自立しなければいけない。
 そんなことを考えながら画面をスクロールさせ、メッセージの最後まで読んだところで、ドラえもんは目を見開いた。文面の最後に、校長先生からの伝言としてロボット学校で働かないかという誘いが記されていたからだ。
 当然と言えば当然の話で、結局、自分の存在を誰にも知られずにいるというわけにはいかなかったということになる。おそらく、ユービックがロボット学校の手に委ねられると決まった時点で、校長先生にはあの事件についての説明があったに違いないのだから。
 したためたユービックへの返信の最後に、心遣いに感謝しつつもそれについては断る旨を追加することにし、ドラえもんはできあがった二件のメッセージを送信した。
 いっそ、馴染み深い場所で、罪深い思い違いをしたまま生きられたならそれも幸せだったのかもしれない。でも、――

 部屋の隅に置かれたままのタイムテレビを眺めて、ドラえもんはため息をついた。あの日以来、一度も電源を入れられることもなく、入力キーや画面の上にはうっすらと埃が積もっている。

 そんな思い違いも許されないことは、もう十分に知っていた。

187残された欠片「遺言」 ◆k97rDX.Hc.:2007/12/28(金) 23:36:51 ID:dXEPpd9E
「遺言」

 突然の物音に、ドラえもんは道具を磨く手を休めて顔をあげた。
 もしかしてネズミじゃないだろうか? とっさに頭に浮かんだ考えに身が竦む。恐る恐る首をめぐらせて背後を確認し、そうしてやっと緊張を緩めた。
 振り向いてみればわかることだった。今も聞こえているその音は、この部屋の主、野比のび太の机がたてている音。いや、より正確には、動きが渋いその引き出しが“内側から”開けられようとしている音に違いない。
 なら、ネズミなどということはありえない。大方、未来デパートがダイレクトメールでも送ってよこしたのだろう。そう結論づけると、ドラえもんは立ち上がった。
 立ち上がって机に近付き……出し抜けに開いた引き出しに、頭をしたたかに打たれてその場に倒れた。
「タイ……大丈夫かね?」
「ええ、なんとか」
 そう言ってはみたものの、目の前では星がチカチカと瞬いている上、耳鳴りのせいで相手の声もよく聞こえない。一度目を閉じて頭を振ると、ドラえもんはその場に座りなおした。
 時がたつにつれだんだんと視界が元の明るさへと戻っていく。その中央に、見覚えのある服装が写しだされていくことにギクリとさせられながら、彼は目の前の人物の次の言葉を待った。
「もしかすると、君は私のことを知っているのかもしれないが……
 見てのとおり、私はタイムパトロールの者だ。
 “別の世界の君”に頼まれていた物を届けに来た」

                    〇〇〇

 カウンタがちょうど一時間を刻んだところで、ドラえもんはビデオの再生を中断した。記録ディスクをタイムテレビの中から抜き取ってポケットの中へ収めると、自然とため息が漏れていた。
 いくら覚悟をしていても、辛いものはどうしようもなく辛いし、哀しいものはどうしようもなく哀しい。そんなことを今更になって思う自分に苦笑しつつ、彼はタイムテレビの操作を再び開始した。
 画面に映し出されたもの。それは。

188残された欠片「決意」 ◆k97rDX.Hc.:2007/12/28(金) 23:37:19 ID:dXEPpd9E
「決意」

 タイムテレビの前で、彼はそっと呟いた。
「もう二度と――」

189残された欠片「日常」 ◆k97rDX.Hc.:2007/12/28(金) 23:38:29 ID:dXEPpd9E
「日常」

 天気予報は本当にあてにならない。雨粒が叩きつけられる窓ガラスを眺めて、僕はため息をついた。
 予報が外れたこと自体は大した問題じゃない。雨が降り始めた時は少し不安になったけれど、ドラえもんが迎えに来てくれたから、ずぶ濡れにならずにすんだ。後で自分がパパの迎えに行かないといけないのはちょっと面倒だけれど、それもまあいい。
 本当に問題なのは、どこにも遊びに行くあてがないことだ。しずかちゃんちに行ければ良かったんだけれど、都合が悪いと言われてしまった。
 こんな日には……
(やっぱり昼寝が一番)
 僕はそう結論づけてランドセルをその辺に放り投げると、引き寄せた座布団を枕にして畳の上に寝っころがった。
(……あれ?)
 眠りにつくほんの一瞬前に、微かな違和感を覚えて僕は跳び起きた。
 部屋を見渡すまでもない。体を起こしてちょうど正面、ドラえもんが寝床にしている押し入れの襖に、竹刀が立て掛けてある。
 なんで、こんなものがここに? 僕は襖の前まで這っていき、それを手にとった。
「今日のおやつはドラ焼き〜♪」
「ねえ、ドラえもん」
 都合の良いことに、ちょうどその時、上機嫌のドラえもんが鼻歌まじりに部屋に入って来た。早速、この竹刀について尋ねてみることにする。
「ん? なんだい?」
「こんな竹刀、どうしたの?」
「え!? ああ、それ? ええと、この前ジャイアンが君を追い回してたことがあったろう。
 そのとき取り上げといたのがポケットの中を整理してたら出てきたんだよ」
「……そんなことあったっけ?」
「あれ? 覚えてないの? まあ、いいでしょ。しまっちゃうから返してよ」
 怪しい。……あ、今、目をそらした。何か僕から隠そうとしているな。
 よし。
「そんなこと言ってさ。僕に使わせたくないだけで、実はひみつ道具だったりするんじゃないの?」
 僕がそう言うと、ドラえもんはきょとんとした顔でこっちを見つめてきた。黙ったまま何も言わないから、なんだか気まずい。
「な、なんだよ」
「ク、クク。ウヒャハヒャヒャ」
と、思ったら突然吹き出し、腹を抱えて大笑いし始めた。
 そのまましばらくゲラゲラと笑いつづけて、しばらくして言うことには、
「フヒ、フヒヒヒ。き、君は実に……まあいいや。変なこと言わないでよ、のび太くん。
 それはただの竹刀で、ひみつ道具なんかじゃないよ」
 もう。そこまで笑うことないじゃないか。僕がふくれてそっぽをむくと、ドラえもんはそれを宥めにかかってきた。
 『ごめん』とか、『あんまり突拍子もなかったから、つい』とか色々と言ってきたけれど、しばらく許してやるもんか。……とは思ったけれど、こんなことで意地をはるのも馬鹿馬鹿しいからすぐに振り向いた。
 そしたら、やっぱりあの気色悪いにやにや笑いに出迎えられた。
 目の端に浮かんだ涙をぬぐったりなんかしちゃってさ。泣く程面白かったって言うわけ?


 変なドラえもん。






あとがき

蛇足の話の更に蛇足ですが後書き。今回の4つの“かけら”(うち1つはえらく短いですが)は互いにつながった話かもしれませんし、まったく関わりのない話かもしれません。また、どの話を「あり」と考えどれを「なし」とするかも読む方次第です(実際、書いた自分自身、趣味に合わないのでなかったことにしているものも1つあります)。
また、解釈に幅が出る部分や妄想の入る余地を意図的に増やしてもいるので、もし、面白いと感じていただけたなら、エピローグの方と合わせて色々考えてみてください。例えば、「もしもボックスの使用の有無」、「(ロワに出場した)ドラえもんが消滅してしまったか否か」、「竹刀がのび太の部屋にある理由」あたりと今回の話のどれを採用するかを変えれば色々違う話を作れるでしょうしね。

だらだらと書きなぐってしまいましたが以上で終わりです。書く側としては力不足の目立つ自分ですが、またどこかでお会いしましたら、よろしくお願いします。

190魔法少女カレイドナナシ:2008/01/02(水) 14:01:48 ID:vroHKqk.
もう誰もいないと思ってたからそれ含め感動


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