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避難用作品投下スレ4

146十一時三十六分/this is a B.R.:2008/10/13(月) 03:29:15 ID:5deI7JdI0
「この程度!」

光球を斬り飛ばした白髪の男、坂神蝉丸へと短く叫び返し、光岡もまた厳しい表情で前方を見据える。
見上げた視界に映るのは、壮麗な光景である。
雄々しく、或いは麗しい巨大な英雄像が蒼穹の下に立ち並び、その偉容を誇示している。
惜しむらくは、石造りの像がそれぞれ刃を潰さぬ鋼鉄の武器を手にしているという不釣合い。
そして、そのすべてが動き出し、見る者を黄泉路へと送り出さんと刃を振るうことであった。

―――隙が、ない。

巨人像は八体。
北側から時計回りに虎の背に跨る少女、黒い翼を持った少女、大剣の女、白い翼の女。
南に刀の女、長槍の男、双剣の男、そして最後の一体はじっと動かず、祈るように目を閉じている女の像。
厄介な布陣だった。
有翼の像、そして祈る女の像を左右から護るように武器を構えた像が並んでいる。
加えて恐ろしいのは長槍の像の間合いであった。
どれかの像と切り結んでいれば、横合いから優に数十メートルはあろうかという距離を正確に突き込んでくる。
石造りと見える像はその外見に反して俊敏であり、だが同時にまた、その外見通りの重量を持っていた。
正面から受ければ容易く弾き飛ばされる一撃は、そのどれもが致命的な威力を秘めている。
動きが止まれば有翼の像から光球が飛ぶ。
見事な連携であった。
必然、下がらざるを得ない。

敵の狙いを分散させ、一対一へ持ち込めれば或いは状況も変わるやも知れぬ。
だが如何せん、手が足りなかった。
鹿沼葉子と動きを打ち合わせる余裕はなかったし、また信頼に値するかも怪しい。
単に暴れまわるだけの天沢郁未や川澄舞は論外だった。
結局のところ、坂神蝉丸との呼吸だけで切り抜けねばならない。

一寸の勝機すら見出せぬまま、時だけが過ぎていく。
傷は、治る。
だが失われた時は、戻らない。


***


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