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Awake

33Awake 3話(3/24):2013/09/20(金) 05:27:20

 俺たち二人は親同士が僚友で物心ついた時から知っていたけど、俺自身は少しヒューの事
が苦手だった。
 あいつの一族の中でも傑出した素質を持っていて、子供なのに冷たい目で、いや、人を
見透かすように真っ直ぐに対面した人物の目を見る癖があって、何もしていないのに責め
られているようで嫌な気持になったことがしばしばあったから。
 よく覚えている。その日も今日みたいに外は突き刺さるような寒い風が吹き荒れていた。
 だから怯え余計に震えて鳥肌が立っていたが、不思議と握り締めたその手に安堵を覚え
た。
 俺の体温より温かかったこともあるだろうが、修行をしているからか柔らかい自分の手
とは違い、両親の手のような固い表面でタコが出来て傷だらけのあいつの手に、少し大人
に頼るような心持を覚えたからかもしれない。
 いずれにしろイコンと正教十字に縋るため、長い石畳の回廊をゆっくりとだが足音を極
力立てないよう礼拝堂へ俺達は向かった。
礼拝堂は祭壇に置かれた儀式用の長い蜜蝋の柔らかな灯りが揺らめきながら、その内部の
姿を幽玄な異界さながらに映し出していた。
俺達はその姿に心を奪われ暫らく手を繋いだまま呆然と立っていた。
 だが夜中に礼拝堂に立ち入るのは黒ミサと取られてしまう節があるので、無意識にそう
考えて誰にも見つからずに礼拝堂に入るしかなかったが、幸い見回りの修道僧がいなかっ
たのに安心した俺達は身廊(中央の廊下)を駆け抜け袖廊(祭壇側)の信徒席に手を繋い
だまま座って心の中で祈りを呟き始めた。
 しばらくして、俺は静謐の空間に何か不吉な知らせが舞い込んでくるような不安に駆ら
れて、耐え切れなくなり小声だけどヒューに訊ねた。「帰って……来るよね?」と。


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