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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第十章

95embers ◆5WH73DXszU:2024/04/21(日) 06:04:33
【ポジティブ・キャンペーン(Ⅵ)】


『皆さん、落ち着いてください! これから皆さんを安全なところに誘導します!』

マンダレイ・ベイ・リゾートには事前の情報通り大勢の避難民がいた。
エンバースはあえて抜き身のダインスレイヴを持ち込んでいた。
突然の来訪者が良くも悪くも「異常」である事を手っ取り早く証明する為だ。
群衆の制圧には――慣れていた。一周目ではそうした事が必要な時も多々あった。

それはそれとして、マスターアサシンローブのフードは目深に。
体の左半分が焼死体の姿は余計な混乱を招くに違いない。

「聞いての通りだ。今から『門』を開く。見た目は少し悪いが――
 詮索はなしだ。誰も質疑応答に時間をかけたくないだろ?」

『二列に並んで、落ち着いてゆっくり進んでくださーい!』

群衆がなゆたの呼びかけに応えて動き出す――多目に見積もって、半分くらいは。
残りは――押し合いへし合いだ。一刻も早くこの場を離れたいと我先に門を目指す。

「……フラウ」

呼びかけを受けたフラウの触腕が踊る/群衆の間を駆け抜ける。
蜘蛛糸のごとく細分化した触腕/だがそれは紛れもなく竜の腕――ただの一般人が抗える筈もない。

「急ぐ気持ちも分かるけど……心配しなくていい。大丈夫だ。門は勝手に閉じないし、俺達は逃げない」

避難誘導はフラウに任せ周囲を見回す――なゆたは歩行も覚束ない傷病者などを援助していた。
が――遠目にも分かるくらいに顔面蒼白だ。

『大丈夫、絶対にみんな助けてみせるから……。
 だから元気出して。全部、救って……ハッピーエンドに……』

見かねたエンバースがなゆたの右腕を掴む/応急処置に割り込んで手早く済ませる。
怪我人を最大限穏やかに見送ってから、なゆたの両肩を掴んで目を合わせる。

「……おい、ここは俺達に任せて少し休め。自分でも分かっているだろうが……ひどい顔色だぞ。
 考えてもみろ。ずっとここで息を潜めて生き永らえて、やっと助けが来たかと思ったら、
 ソイツはへろへろで今にもぶっ倒れそう。お前ならどう思う」

意地を張るのはいい。それがなゆたをなゆた足らしめているならもう仕方ない。
だが――だとしてもこんな風に擦り切れていくのは見過ごせない。

「お前は十分よくやってる。けど、無茶をするなら……今じゃないだろ。
 ここぞという時に備えるんだ。一回休んだくらいで置いていったりしないから――」

『お、お願いです……息子を、息子を探してください……!』

不意に、視界の外から聞こえた懇願の声/縋り付く右手――エンバースは一度深呼吸をして、そちらを振り返る。
そこにいたのは初老の女性/事情=息子が医薬品を求め病院区画へ独断専行――嫌な予感がした。

『……わかりました。おばさんはここで待っててください。
 わたし、すぐに見つけて……きます……!』

「おい……!」

なゆたが即答/すぐに歩き出す/すぐによろめき倒れかける――エンバースがそれを支える。


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