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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第十章
93
:
embers
◆5WH73DXszU
:2024/04/21(日) 06:04:04
【ポジティブ・キャンペーン(Ⅳ)】
エンバース/なゆたの目的地=マンダレイ・ベイ・リゾート。
暫しマップとにらめっこをした結果、目的地へは地下街を通るのが最適と結論が出た。
下水道を想定した装備の選出は徒労に終わったが、その事をエンバースが残念に思う事はなかった。
そうして暫く無人の地下街を進んでいくと――いた。イクリプスが二人が行く手を阻んでいる。
「……ベータテストの最中にわざわざこんな地下街をほっつき歩いているって事は、お前ら浅パチャ勢だな。
とりあえずマップのあちこち歩き回ってみようとか思って来たんだろ?
いいと思うぜ、そういう楽しみ方もあるよな。邪魔するつもりはないぜ。ここは見逃してやるから――」
『来るよ、エンバース!』
「――最後まで言わせてくれよ。さっさと失せろって」
『死ね……ッ!』
「悪いな。生憎もう死んでる」
迫る剣閃/剣閃/剣閃――同じ数だけ響く金属音=防御音。
「もっともお前が俺を殺せないのは、別にそんな理由じゃないらしい」
不敵に笑ってみせる――ものの、やはりイクリプスは速い。
3DアクションRPGというシステムに保証されたスピード感はエンバースにとっても脅威だ。
受ける分にはどうにかなっているが――問題は攻めだ。
実力の拮抗を時に「先に動いた方がやられる」と表現するように、先手を取るという事は存外難しいものなのだ。
特にこの相手――イクリプス・ブラックホールは見るからにスカウト型=スピード特化。
一方で――ブラックホールはそんな事はお構いなしに飛びかかってきた。
影をも置き去りにするかのような鋭いステップイン/右から弧を描き迫る剣閃。
それらを弾く/受け流す/躱す――今度はさっきよりも際どい。
エンバースは困惑を禁じ得なかったからだ。
自分が遅れを取りつつあるから――ではない。
ブラックホールの二度目の攻撃が――初手の連撃と殆ど代わり映えしなかったからだ。
あえて隙を見せてカウンターを誘われているのかとも思った。
それでかえって防御が際どくなっていたが――どうもそうではなさそうだ。
再三、ブラックホールがエンバースへ迫る――剣閃を躱す/躱す/躱す。
やはり斬撃は単調=今度は一転、ダインスレイヴで受ける必要さえない。
そして連撃の最後=両手のダガーを投擲する――その直前。
両手を振りかぶる瞬間に合わせてエンバースは反撃に出た。
ダインスレイヴの横薙ぎ――半信半疑/小手調べ程度の一撃だった。
まさかこんな安直なカウンターが通る筈がない。
そう思いながら放った刃が――いとも容易くブラックホールの首を刎ねた。
「……なるほどな。イブリースは相性が悪かったか」
イブリースは足を止めて敵と正面から合する戦闘スタイル――つまり単純なステータスの差を押し付けられやすい。
同胞を守るべく進んで敵の的にならねばならない状況であれば尚更だ。
もっとも――今倒したブラックホールは恐らくイクリプスの中でも下振れの部類なのだろうが。
「なゆた、そっちは――」
『く、ぅ……!』
なゆたを振り返る/見るからに防戦一方/攻めに転じる兆しも見えない――見かねたエンバースが加勢に入る。
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