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【TRPG】ブレイブ&モンスターズ!第七章

320embers ◆5WH73DXszU:2021/07/26(月) 21:40:46
【フューネラル・エッジ(Ⅷ)】

「雨を呼べ。嵐を呼び覚ますんだ」

遺灰の男が空を指す――【総てを無に帰す大嵐】が終わった今もなお、暗雲に覆われたままの空を。
カザハ/カケルが空高く、その雲の中へと飛び込んでいく――遺灰の男はそれをただ見ていた。
ぽつりと、その額に雨粒が落ちる――遺灰の口元に笑みが浮かぶ/狩装束のフードを被る。

「……やるじゃないか、カザハ。上出来だ」

降り注ぐ豪雨/響く雷鳴/吹き荒れる風――上出来な『ポッと出』のスペルだった。
規模は確かにレクス・テンペスト級――だがイブリースには通じるはずもないスペルだった。
それでも問題はなかった――嵐が吹き/雨が降っている――その事実だけが、遺灰の男にとっては重要だった。

『ゲーム感覚――俺たちの信念をそう切り捨てたなイブリース。
 間違っちゃいねえよ。俺たちの能力はゲームシステムに則ったもんだ。
 レベリングの為にお前の同胞を殺しまくったってのもその通りなんだろうぜ』

雨の中、明神がイブリースに語りかける――遺灰の男は何も言わない。
殺した殺されたの話に首を突っ込めるほど、遺灰の男は潔白ではない。
なんなら今でも、自分達を召喚した連中と出会えばきっと殺している。
未来を変える為に/結末を変える為に/そして――恨みを晴らす為にも。

イブリースと遺灰の男の違いは、己が憎む相手に出会ったか/出会わなかったかだけだ。

『だけど、だからこそ、俺はこの世界を愛せる。守りたいって心から思える。
 生まれた世界じゃなくても。お前にだって負けないくらい、アルフヘイムやニブルヘイムの美しさを知ってる。
 ロールアウトからずっと、寝る間も惜しんで親しんできた世界だからな』

「ああ……それなら俺にも同じ事が言えるよ。自信を持って」

『そこに息づく命が、単なるデータじゃないってことも、身を持って理解した。
 なおさらだ。一巡目とやらで殺した分のケツを拭う。取りこぼしてきたそいつらの命を、今度こそ救う』

「……そっちは、ちょっと約束出来ないけど」

困った調子の声――なにせ、どれほどのツケがあるのか分からない/数えてもいない。

『――『好きだから』。何かを大切にするのに、それ以上の理由は要らない』

「……明神さん。こっちの準備はもう整った。後はタイミング次第だ」

狩装束のポケットを探る――最後の切り札を強く握り締めた。

『ガザーヴァ!手ぇ貸せ!』
『久々にいくぜ、オリジナル魔法!『影縛り(シャドウテンタクルス)』――!!』

稲妻が浮き彫りにしたイブリースの影から無数の触手が生える。
触手がイブリースの尻尾を絡め取る/その身動きを制限する。
剣も振るえる/魔法も使える――ただ、逃げられないだけ。

それだけで、十分だった。

「イブリース、これで最後だ」

遺灰の男がポケットから左手を引き抜く/握り締めた小瓶を嵐の中へと投げ込む。

「――来い。ミドガルズオルム」

天と地と、その狭間。全てが水に満ちた空間をスクリーンに、超レイド級の影が映る。


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