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仮投下スレ

1名無しさん:2015/07/15(水) 00:22:03 ID:YFA/rTa20
作品の仮投下はこのスレでお願いします

405※放送案ではありません ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:49:20 ID:n2PrJxpc0

「もう変に責任感じてんじゃないわよ。他にも収穫はあったんだからいつでも操作できるように集中して」

 沈んだ思考を察したかのように夏凛の叱咤激励が飛ぶ。
 るう子は深呼吸をし、「うん」と返事をして笑顔で返した。
 そう、夏凛が留まったのは無駄ではなかった。
 
「シャロさん、どうですか?」
「うん少し疲れるけど私にも扱えるみたい」
「そうですか」

 淡々と応えるシャロに対し、アインハルトは喜色と困惑が入り混じった表情で返した。
 シャロの支給品の腕輪は今では手錠へと変化していた。
 それはアインハルトもよく知る魔法補助具――デバイス。
 彼女自身、親しい訳ではないがそのデバイスとその元の所持者の事は知っている。
 アインハルト自身も参加していたインターミドル・チャンピオンシップ出場者の1人エルス・タスミン。
 デバイスの固有名はパニッシャー。
 本来なら魔法少女ほどの力も技術も持っていないシャロが扱ったところで起動などできる筈がない。
 3つに分裂した手錠とそれを繋ぐ鎖がシャロの頭上を舞った。

「幾つも出せるのね」

 急な疲労が襲ったのだろうシャロは額に汗を滲ませながら手錠を1つに戻し、上手く手元に戻す。

「……」

 そうおかしいのだ。夏凛が素質ありと推測したるう子はまだしも(起動させただけですぐにシャロに返したが)、
 素質ありとは思えないシャロが起動及びコントロールできてしまっている。
 さすがに元の所持者であるエルスには遠く及ばないが、それでも実戦で扱えてもおかしくないレベルまで及んでいた。

「……すいません、私にも使わせてくれませんか?」
「いいわよ」

 パニッシャーを待機形態の腕輪に戻しながら、シャロはアインハルトにパニッシャーを手渡す。

「……」
 
 腕輪を装着しつつ、エルスは元の所持者であるエルスの事が心配になっていた。
 参加者ではないものの繭に囚われているのではと。デバイスに魔力を通す。
 腕輪は手錠の形態へと変わり、その感覚を元のデバイス ブランゼルのと脳内で比較する。

406※放送案ではありません ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:49:52 ID:n2PrJxpc0
「……おかしい」
「何がなの?」
「私は同じ形をしたデバイスに似た別のアイテム、運営が用意したレプリカだと思ったのですが、判別できません」
「本物かも知れないって事?」
「はい。本来ならこのデバイスはシャロさんが扱える道具ではありません」
「だよね」

 シャロとるう子はアインハルトが特別な力を持つことや、補助具である専用デバイスを探している事は彼女からも夏凛からも聞いていた。
 
「なのに性能に反して違和感がないんです」
「……って事は改造?」
「はい。どのような改造を施しているかまでは判断できませんが」

 短い鎖に繋がれた5つに増やした手錠が小さく音を立てて揺れる。
 シャロと違い、アインハルトに疲労は殆ど無い。

「それって……」
「考えたくはないですが……」


 違和感や表立ったい不具合のないほどのデバイスの改造ができるのは、少なくとも極めて高レベルの
 アインハルトがいた世界の魔法使いか、あるいは全能に近い力を持つ存在でなければ説明がつかないとアインハルトは思う。
 どちらにしても絶望に繋がりかねない推測。
 2人の気持ちが更に落ち込もうとした時、ぱたんと何かが閉じる音がした。

「るう子さん?」 
「……」

それはノートパソコンを閉じる音。るう子は俯かせた顔を上げて言った。

407※放送案ではありません ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:50:43 ID:n2PrJxpc0

「詳しく言わなかったけど、セレクターバトルって、ただカードを出し合ってするゲームじゃないんだ」
「ルリグが関係してくるワケね」

 スイッチが落ちる前に再びノートパソコンの蓋を上げる夏凛。
 るう子その挙動を気にせず続ける。

「うん」

 頭に浮かぶのは純白のルリグで最初のパートナー タマに会う前に夢に見た光景。
 血の色をした空と大気、そして荒廃したビル群とそれを蹂躙する少女のような姿をした凶悪な巨人。

「セレクターバトルが始まる時、セレクターは別の空間に飛ばされるんだ」
「それって……」
「正確には精神だけが飛ばされるんだけどね」
「……!」
「ルリグはゲームの進行に従って色々とアクションするんだけど」
「まさか魔法を使えるんですか?」

 るう子は頷いた。

「ルリグ同士のバトルは見かけだけなら魔法を撃ち合ってるような派手なもの。
 けど、どちらかが命を落とす事はない。ただバトル後はどっちも消耗する……」

 比較的簡潔に、だが必要な情報分どうしても長くなった説明――推理が終わる。

「ルリグも繭次第で死んでしまうって事か……」
「カードが本体って訳でもないんですね」
「……」

 過去、るう子はちよりという年下のセレクターの脱落(死んだ訳ではないが)を見届けた際。
 彼女のルリグ エルドラがカードを抜け出し、繭の元へ去ったのを目撃していた。
 ルリグとなった参加者とは違う遊月の証言通り、繭の力次第でルリグの肉体は変わるのだろうと推測できた。

「繭が力を付けて、私達の魂を抜き取ってルリグ同様に管理に都合の良い肉体を移し替えた可能性もある、と?」
「うん……咲さんの腕輪を壊そうとした時、どうやっても傷一つ付かなかったから、もしかしたらと思って」

 浮かない顔でパソコンの画面を見つめるるう子。
 セットアップ中の画面が表示されてから一時間はとうに過ぎていた。

「外れてほしい推理ね」

 夏凛は吐き捨てるように言った。
 だがそれはるう子に対する悪態ではなく、繭が用意したゲームのシステムに対してだった。
 絶望はしない。意地でも。同じ勇者である美森や風を止めるのもまた至難。
 それくらい……!

408※放送案ではありません ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:56:20 ID:n2PrJxpc0


「るう子ちゃん、バッテリー残量大丈夫?」
「セットアップ完了までは持つと思いたいけど……」

 シャロは呟きに沈んだ声で応えるるう子。
 夏凛は反射的にスマホを出して操作するも、相変わらず通信機能は失われている。
 ノートパソコンの充電をするには建物の中に入らなければならない。
 ここから近いのは放送局だが……。

「研究所に行く手もあるけど」

 シャロの言う事にも一理ある。
 研究所は放送局と比べれば大分遠いが、スクーターと巨大犬 定春。
 そしてもう一つの高速手段がある彼女達にとって遠くはない。
 放送局は殺し合いに乗る参加者も利用する可能性が高い。
 本調子でないるう子とアインハルトが同行している中、知己以外の参加者との不用意な接触は避けたい。
 研究所は駅からは遠く、他の参加者と遭う可能性は低い。
 落ち着いて作戦を練るには持って来いの場所とも思える。

 どうするか?


-----------------------------------------------------------------------------------------------------



【F-3/エリア北部/一日目・早朝】

【三好夏凜@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康
[服装]:普段通り
[装備]:にぼし(ひと袋)、夏凜のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
     黒カード:なし
[思考・行動]
基本方針:繭を倒して、元の世界に帰る。
   1:研究所、放送局どこに向かう……?
   2:東郷、風を止める。
   3:機会があればパニッシャーをどれだけ扱えるかテストしたい。
[備考]
※参戦時期は9話終了時からです。
※夢限少女になれる条件を満たしたセレクターには、何らかの適性があるのではないかと考えています。

【アインハルト・ストラトス@魔法少女リリカルなのはVivid】
[状態]:魔力消費(小)、歯が折れてぼろぼろ、鼻骨折
[服装]:制服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(20/20)、青カード(20/20)
    黒カード:0〜3枚(自分に支給されたカードは、アスティオンではない)
    高速移動できる支給品(詳細不明)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いを止める。
0:パニッシャーを借りて使う?
   1:私が、するべきこと――。
   2:仲間を探す。
[備考]
※参戦時期はアニメ終了後からです。

【桐間紗路@ご注文はうさぎですか?】
 [状態]:疲労(小)、魔力消費(小)
 [服装]:普段着
 [装備]:パニッシャー
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(8/10)、青カード(8/10)
     黒カード:不明支給品0〜1(確認済み)
 [思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らない。みんなと合流して、謝る
   1:研究所か放送局に向かう。
   2:パニッシャーをもっと上手く扱えるように練習する?
 [備考]
  ※参戦時期は7話、リゼたちに自宅から出てくるところを見られた時点です。

409※放送案ではありません ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:56:41 ID:n2PrJxpc0

【小湊るう子@selector infected WIXOSS】
 [状態]:微熱(服薬済み) 、魔力消費(微?)
 [服装]:中学校の制服、チタン鉱製の腹巻
 [装備]:黒のヘルメット着用
 [道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(8/10)
     黒カード:黒のスクーター@現実、チタン鉱製の腹巻@キルラキル、風邪薬(2錠消費)@ご注文はうさぎですか?
          ノートパソコン(セットアップ中、バッテリー残量残り僅か)、宮永咲の不明支給品0〜2枚 (すべて確認済)
     宮永咲の魂カード
 [思考・行動]
基本方針: 誰かを犠牲にして願いを叶えたくない。繭の思惑が知りたい。
   0:研究所に向かうか、東の市街地に向かうか
   1: 遊月、浦添伊緒奈(ウリス?)、晶さんのことが気がかり。
   2: 魂のカードを見つけたら回収する。出来れば解放もしたい。
   3:ノートパソコンのバッテリーを充電したい。
 [備考1]
  ※参戦時期は二期の8話から10話にかけての間です。
  ※桐間紗路と情報交換をしました。遊月が過去から呼ばれたのではと疑いを持ちました。
  ※るう子、シャロ、アインハルトはパニッシャーを使用しました。
   効果の強弱は確認できる範囲では強い順にアインハルト、るう子、シャロです。


[備考2]4人が共有している推測は以下の通りです。
1:会場の土地には、神樹の力の代替となる何らかの『力』が働いている。
2:繭に色々な能力を与えた、『神』に匹敵する力を持った存在がいる。
3:参加者の肉体は繭達が用意した可能性がある?



【パニッシャー@魔法少女リリカルなのはVivid】
桐間斜路に支給。
エルス・タスミン(ロワ不参加)が所持している腕輪型デバイス。
起動形態は手錠。複数に増やすことも可能。
用途は見かけどおり拘束主体。

【ノートパソコン@現実】
小湊るう子に支給。
仕様は一応現代基準。通信機能あり。充電機付属。
ただしまともに扱うには1時間超のセットアップが必要。
バッテリー残量が少なくセットアップ完了後には30分も使えないので充電が必要。

410 ◆WqZH3L6gH6:2015/10/14(水) 23:58:51 ID:n2PrJxpc0
仮投下終了です
題名は「その少女は切望」です
この度はここまで遅延してしまった上に、こういう形で本投下してしまいすみませんでした

411名無しさん:2015/10/15(木) 00:59:23 ID:xz0GpZEI0
仮投下乙です
一つ気になったのですが、夏凜のスマホの通信機能が失われているというのは、臨也と切嗣の話に出てきたチャットやメール、電話の機能は「あるけど制限でまだ使えない」のと「少なくとも夏凜のスマホでは全面禁止」のどちらでしょうか?

412 ◆WqZH3L6gH6:2015/10/15(木) 01:13:47 ID:XF5EnJj.0
>>411
勇者スマホ同士の通信機能は失われているつもりで書きました
本投下の際にその辺訂正します
問題がなければ今夜に本投下します

413名無しさん:2015/10/15(木) 01:42:44 ID:XE6bJ61.0
>>412
勇者同士で話せないだけで、他の参加者も使えるチャット機能などはあるということでしょうか?

414 ◆WqZH3L6gH6:2015/10/15(木) 01:51:20 ID:XF5EnJj.0
>>413
はい
作中の夏凛は気づいてませんが

415 ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:43:55 ID:YUgGVSwI0
度重なる議論を呼んだキャラのパートなのでいったん仮投下します

416誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:44:39 ID:YUgGVSwI0
小さな分校の教室。
布がかけられた侍の遺体の横で、放送に聞き入る男の姿があった。
絶世の美青年とでもいうべき容貌を持つ男。だが、その顔には冷たい汗が満ちている。
青年――ランサーの胸中を支配するのは焦り。

「馬鹿な……17人……17人だと……!?」

ここに来る直前までサーヴァントとして参加していた聖杯戦争。
戦闘に長けた者同士が争うあの戦いですら、最初に脱落者が出るまでは相応の時間がかかった。
それがこの島においては、たった6時間のうちに全参加者の2割を超える数の命が刈り取られたのだ。
考えられないような速度でこの殺し合いは進んでいる。
さらに。

(ヴィヴィオ……!)

黒子の呪いをはねつけた魔力的素養。さらにあの訓練された者に特有の体さばき。
それは明らかに無力な少女のものではなかった。
加えて彼女の傍らには、自分を圧倒してみせたあの本部もいる。
にも関わらず彼女は死んだ。

(やはり離れるべきではなかった……っ!)

考えられることは一つ。
彼らを上回る力を持つ敵の襲撃を受けたのだ。

(穂乃果、千夜……)

417誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:45:25 ID:YUgGVSwI0

幸いにも、黒子の呪いにかけてしまった2人の名前は呼ばれなかった。
しかし彼女たちは戦える力を持たない。
襲われ傷付き、今もどこかでただ1人でさまよっているのかもしれないのだ。
何としてもあの場所、駅に戻らなくてはならない。

その時だった。
窓の外に、少女らしき人影が見えた。







「私の名はディルムッド・オディナ! 大丈夫だ、こちらに敵意はない!」

迷いもあったが、穂乃果たちの消息につながる情報をもしこの少女が持っているなら、それだけでも聞き出す必要がある。
黒子の呪いにかからないようにするため、距離をおいた上で話しかける。
攻撃する意思のないことを示すため、キュプリオトの剣と村麻紗を地面に置く。

「出会ってそうそうすまないが、私は急いで駅まで戻らねばならない!」

少女はうつむき加減で、眼帯を付けていることもあってその表情はうかがい知れない。

「すまないが高坂穂乃果、宇治松千夜、もしもこの2人の名に覚えがあるなら教えてほしい!」

声を張り上げて会話を試みるが、少女は相変わらず顔を上げない。

(くそっ、警戒されているか……)

もっと近づいて話しかけるしかない。
黒子の呪いにかけてしまうことになるが、一刻を争う場面だ。

「繰り返すがこちらに敵意はない! 君の名を教えてほしい!」

ランサーは一歩ずつ少女に近づいていく。

418誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:45:58 ID:YUgGVSwI0







ランサーの胸中には焦りが満ちている。
その証拠に、眼前の少女を穂乃果や千夜と同じ無力な存在とみなしていたこともあるとはいえ、、
真名である「ディルムッド・オディナ」を出会い頭に教えるというのは、サーヴァントとしてはありえない行為だ。
そんなことをしたのも、一刻も早く駅に戻り、穂乃果たちと再会しなければならないという思いに駆られていたから。

そして、そこまでの焦りをもたらす原因は実に複数個にも及んでいた。

17人もの参加者の脱落。
ヴィヴィオの死。
魅了にかけた上、取り残してきてしまった穂乃果と千夜。
外道に堕ちたと思われるかつての好敵手、セイバー。
参加者の脅威になるであろうキャスター。
音ノ木坂学院からここまでの唐突なワープ。
槍の英霊でありながら相応しい得物を手に入れられていないこと。

本部と一戦を交え、騎士でもサーヴァントでもなく、一人のディルムッド・オディナとして生を全うする覚悟を決めたランサー。
だがそのことは、ひたすら戦いに生きるということは意味しない。
むしろそれは、主君にも愛する女性にもマスターにもとらわれることなく眼前の人々を守り抜くという決意を意味している。
だからこそ、こうして必要以上の事柄に責任感を覚えることになったともいえるのだ。

その焦りゆえに、傍に近寄るまで気付くことができなかった。

(何だ? この感じは……)

少女の体の周りに、ヴィヴィオに感じたものにも似た魔力めいた気が集まりつつあることに。

419誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:46:48 ID:YUgGVSwI0







焦りに満ちたランサーの胸中とは対照的に。
少女――犬吠埼風の心は静まり返っていた。
彼女はつい先ほど、妹である樹の埋葬を終え。
そして、「魔王」としてこのバトルロワイアルを生き抜く決意を固めたばかり。
その心に満ちるのは、魅了の呪いなど歯牙にかけないほどの、純粋で研ぎ澄まされた、殺意。

(樹――行くね)

少女が顔を上げ、男を見据えた。







サーヴァントと勇者。
お互いに人の枠からはみ出した存在。

ここから先の2人の命運を分けたのは、この状況、
つまり「殺し合いという舞台の中2人きりで対峙している」という現状に対する、心構えとでもいうべきものの差。





420誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:47:21 ID:YUgGVSwI0



(拙いっ!!)

少女の体が急速に光に満ち、衣服が黄色い華やかなものに変化する。
その手に握られているのは、およそ少女の細腕には似つかわしくない、鉄塊ともいうべき大剣。
ここに至り、眼前の少女が極めて危険な敵であることをランサーは認識する。

(武器を――――ッッッッッ!!!!!)

半身になりながら全力で飛びずさる。目指すのはさきほど地面に置いた武器。
が、相手が完全に警戒を解いた状態で間合いに踏み込んでいたこと、大剣のリーチ、それに加え勇者としての高い身体能力。
様々な要素が積み重なり、犬吠埼風の攻撃は、聖杯戦争において最速を誇るクラスをも上回る。

(がっ――――――)

横薙ぎに払われた大剣の切先はランサーの胴体を深々と捉えていた。







(何が、起きた……やられ、た、の、か……)

腹部から、血と共に生命そのものがどくどくと流れ出すような感覚。
数多の戦場をくぐり抜けた経験が教えている。これは致命傷に等しいものだと。

(武器、が……武器が、あれ、ば……)

それでも、大量の血を流して倒れ伏しながら、震える手を伸ばす。

「死んで」

421誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:48:45 ID:YUgGVSwI0
だが、その手は無残に踏みつけられる。
見上げれば、霞む視界の中、目に入るのは大剣をふりかぶった少女の姿。

(ああ……)

この後に及んでも、胸中に満ちた焦りは消えてはくれない。

(穂乃果……すまない……どうか無事で……)

――最期の瞬間、誰でもなくここに来て初めて出会った少女のことが脳裏によぎったという事実は。
――彼が英霊でも戦士でもない、ディルムッド・オディナとしての束の間の生を全うしたことの、証左だったのかもしれない。







「ふぅ……」

そして一人残った眼帯の少女、犬吠埼風は汗をぬぐいため息をつく。
樹の遺体を埋葬し、校庭に戻ってきた時に、校舎の中の人影にはすぐ気付いた。
もともと食事と休息を取ろうと思っていた。だから、隠れてやり過ごすこともできた。
だが、あまりにも早く巡ってきた「魔王」としての初陣の機会。
犬吠埼風は、戦いを仕掛ける道を迷わず選んだ。

(普通の女の子を装って、近付いてきたところを一気に仕留める。――ここまでうまく行くとはなあ)

作戦は極めて単純。しかし結果的に大成功。
あろうことか自分から武器を捨ててくれた時は、あまりに理想通りの展開に内心あぜんとしてしまった。
放送で知り合いの名前が呼ばれて動揺している、とでも思われたのかもしれない。

(あんまり感慨ってものがないね)

初めて殺しに手を染めた。
だが、風の心は動揺してはいない。それどころか、目的をより強く見据えてますます静まり返っているといっていい。

422誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:49:22 ID:YUgGVSwI0

(さてと)

あまり目立つ場所に放置するわけにもいかないので、男の死体は校舎の中に放り込んでおく。
その際、2本の剣を回収するのと、カードを抜き取っておくのも忘れない。

(どうしますかね……)

赤のカードから出したうどんを啜り、青のカードで出したお茶を飲みながら考える。

(このIDカードとかいうのが使えればラッキーだったけど、6時間も待ってられない)

つい数刻前の彼女であれば、人を殺した直後にもかかわらず平然とうどんを啜るようなことはありえなかっただろう。
まして、死体を校舎に投げ入れる際には別の男の死体も目にしているのだ。
死の臭いが濃厚に立ち込める中、必要な食事を摂り、次に取るべき最適な行動を思案しているということ。
それは、彼女のメンテリティが常人のものを凌駕しつつあることをはっきりと示していた。

(人が多そうなのは、やっぱりこっちの市街地のほうかな)

特に市街地の中でも南のほうは名の付いた施設が多く、いかにも人が集まっていそうだ。
たどり着いたらどう戦うか。先ほどこそ奇襲に成功したが、そう何度も同じ作戦が成功するとは思えない。
場合によっては、最初から変身をした上で殴り込んで暴れるほうが効率的なこともありえる。
また17人も死んだということは、自分と同じように殺して回っている人間は確実にいる。彼らと一時的に手を組むのも有効かもしれない。
いずれにせよ、そこは状況を読んで仕掛けていく。

(それからこのチャット)

423誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:50:42 ID:YUgGVSwI0
スマートフォンにチャットが送られてきたことには、変身を解除した時に気付いてた。
折原臨也という情報屋と名乗るうさんくさい人物が送ってきた長々とした文章。
ざっと読んで分かるのは、やはり市街地にあるゲームセンターで小鞠という女の子が殺害され、犯人である衛宮切嗣が折原の知り合いらしい平和島静雄に罪を着せたという顛末。

(危ない連中がいるなあ……って、私が言えたことじゃないか)

風にとって重要なのは事件の真相うんぬんよりも、これから向かう先にいるかもしれない衛宮切嗣と、自販機を投げつけてくる怪力の持ち主らしい平和島静雄の2人が危険人物であるということ。
加えて、これを送ってきた折原臨也のことも警戒しておくべきだと感じる。
文章を信じるなら、これを書いていた当時、彼は真犯人である衛宮切嗣と2人で対話していたという。
このチャットが送られてきた時刻は放送の前。そして、名簿にある彼の名前に×は付いていない。
つまり折原は、危険人物と一対一で渡り合えるだけの実力を持っているということだ。

(ま、どんな連中がいてもやることは変わらないか――樹、もう少しだけ待っててね)

先ほど遺体を埋葬した方をもう一度だけ一瞥し、風はこの場を去っていく。







こうして、朝日の照らす中で魔王の進軍が始まる。
彼女を説得できる勇者はもうどこにもいない。



【ランサー@Fate ZERO 死亡】
【残り52人】

424誰かの為に生きて ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:51:16 ID:YUgGVSwI0
【F-5 北東/朝】
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、参加者を皆殺しにする覚悟
[服装]:普段通り
[装備]:風のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(29/30)、青カード(29/30)
     黒カード:樹のスマートフォン@結城友奈は勇者である、IDカード、キュプリオトの剣@Fate/zero、村麻紗@銀魂
     犬吠埼樹の魂カード
[思考・行動]
基本方針:樹の望む世界を作るために優勝する。
   1:市街地の南部に行き参加者を殺害する。戦う手法は状況次第で判断。
   3:衛宮切嗣、平和島静雄、折原臨也には警戒。
[備考]
※大赦への反乱を企て、友奈たちに止められるまでの間からの参戦です。
※優勝するためには勇者部の面々を殺さなくてはならない、という現実に向き合い、覚悟を決めました。
※東郷が世界を正しい形に変えたいという理由で殺し合いに乗ったと勘違いしています。
※村麻紗の呪いは精霊によって防がれるようです。

425 ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 01:52:56 ID:YUgGVSwI0
仮投下終了です

426名無しさん:2015/10/20(火) 02:12:15 ID:WMQ2Lgys0
セイバーっていう見た目は少女でも物凄く強い実例(体格的にもセイバーより9cm長身)を知っているのにこの対応は流石に結果ありき過ぎる感が……

>(このIDカードとかいうのが使えればラッキーだったけど、6時間も待ってられない)
6時間経たないと使えないのは送信側の装置だけなので、旭ヶ丘分校から本能字学園への移動は今すぐ可能ですね
というか駅に行くのも、分校から学園へすぐにワープしてC-6の駅に行くっていう最短ルートがあったり

427名無しさん:2015/10/20(火) 02:17:20 ID:WMQ2Lgys0
あと、黒子の呪いが通じなかったってことはゆゆゆのキャラにはこの手の洗脳系?能力は通じない扱いってことになるのかな

428名無しさん:2015/10/20(火) 02:19:17 ID:9InEhZ6o0
投下乙です
ランサーに関しては油断しすぎかなとは思いますが、作中でその原因が説明されていますしそこまで不自然には感じませんでした
ただ、

>ざっと読んで分かるのは、やはり市街地にあるゲームセンターで小鞠という女の子が殺害され、犯人である衛宮切嗣が折原の知り合いらしい平和島静雄に罪を着せたという顛末。

「 『犯人』に罪状が追加されました 」では臨也の気が変わらない限り、切嗣との同盟が成立すれば切嗣の情報は流さずにおくと描写されていたかと思います
チャットの書き込みの内容についてはぼかしておいた方が無難ではないでしょうか

429名無しさん:2015/10/20(火) 02:24:00 ID:fg6215820
自分は不自然過ぎるって思ったな
女の子だから無害っていうのとは正反対な出展作成だし

あとゆゆゆの精霊って普段はどんな状態でいるんだっけ
霊体の気配も分かるサーヴァントが精霊の気配に気付かず無害判定するような状態なのかな

430名無しさん:2015/10/20(火) 02:25:43 ID:iTqDz8AQ0
ランサーの顛末自体は自分も問題ないと思いました。
ちゃんと理由付けもされているようなので、これを不自然とするのはさすがにどうかと

431名無しさん:2015/10/20(火) 02:26:54 ID:fg6215820
作成ってなんだ作品だ

焦ってるから云々ってのも、足早いんだからさっさと走って帰らず情報収集ってのもちょっと

432名無しさん:2015/10/20(火) 02:30:15 ID:WMQ2Lgys0
>>431
ああ、それも思った
何の情報を聞き出そうとしたっていう想定なんだろう

位置も時間も腕輪見れば一発なんだから、一瞬の内に遠くへワープさせられたってのはすぐ分かるわけで
そんな駅から遠くを歩いてた子に声かけて、ずっと違う島にいた穂乃果と千夜について何を教えてもらえると思ったのかな

433名無しさん:2015/10/20(火) 02:35:24 ID:fg6215820
>>432
理由は説明されてるっていうけど、一番大事なそこの説明が抜けてるな
ワープ先の見知らぬ人が二人の現状について何か知ってると思ってるのが一番不自然

434名無しさん:2015/10/20(火) 02:50:09 ID:G/qlYN5g0
そこの理由は確かに変だね、あとチャットの件くらいかな
そこ直せば筋も通るし多分大丈夫かと

洗脳については対面時間が少ないからってので一応説明はつく
精霊については神樹ありきって設定になってるから分からないけど、霊体とは違ってあくまで土地にアクセス・抽出って形だから鯖にも感知はできないと思う

435名無しさん:2015/10/20(火) 02:59:29 ID:ABx05Td.O
焦ってるのは別にいいけどその理由が情報収集っていうのがね
通りすがりだけど風先輩も守るべきだとか考えたならまだ分からなくもないけど

436名無しさん:2015/10/20(火) 02:59:31 ID:WMQ2Lgys0
・先を急いでいる割に放送をその場に留まったまま聞いている
 放送は腕輪からも流れているので走りながらでも聞けるのでは?
 (サーヴァントの感覚は優れているので尚更)

>>432で挙げた点に補足。現在位置について確認済みなら>>432だが、
 前の話で「ここから走って駅まで、どれだけ時間がかかる」か気にしているので、現在位置を未だに確かめていないと解釈すると余計におかしくなる

他に自分が気になったのはこの辺りかな
特に前者、放送は腕輪からも流れてるのに何でお前ずっと教室で聞き入ってんの、と

437名無しさん:2015/10/20(火) 03:10:50 ID:fg6215820
もっかい前話読み直したけど、早く戻らなきゃって焦ってるのはやっぱり前話からなんだよね
放送を聞いてから焦り出したわけじゃない

だから確かに、放送をその場に留まって聞いてるのは不自然だな
施設からしか流れない放送だったならまだしも、そういうシステムじゃないし

438 ◆eNKD8JkIOw:2015/10/20(火) 07:31:06 ID:wvwiHhhk0
仮投下乙です

まずは、申し訳ありません。
自作「犯人に罪状が追加されたようです」にて誤解を招く表現をしてしまいましたが、臨也の遺書は彼が「死ぬ」と判断していないため、未だチャットに送信されてはいません
紛らわしい書き方をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした

その他の指摘については、出先から拝見しているため精査は出来ていませんが、流し台見したところ決定的な矛盾はないように見受けられました
今夜、帰宅後にまたこちらの意見も書かせていただきます。

439名無しさん:2015/10/20(火) 07:48:53 ID:9InEhZ6o0
>>425
すでに書き手さんが指摘された箇所を修正すれば大丈夫だと思いますが、細かいことですがもうひとつだけ
>特に市街地の中でも南のほうは名の付いた施設が多く、いかにも人が集まっていそうだ。
>たどり着いたらどう戦うか。先ほどこそ奇襲に成功したが、そう何度も同じ作戦が成功するとは思えない。
>場合によっては、最初から変身をした上で殴り込んで暴れるほうが効率的なこともありえる。
>また17人も死んだということは、自分と同じように殺して回っている人間は確実にいる。彼らと一時的に手を組むのも有効かもしれない。

風はすでに東郷さんから「自分が市街地に向かうので、効率よく殺して回るためにも市街地以外の場所で殺してください」と言われてますので、
それでも市街地に向かうのか、あるいは東郷と組むことを視野にいれた上で市街地に向かうのか、何らかの言及はあった方がいいかと思います

>>437
走りながら放送を聞いたか止まって放送を聞いたかがそんなに重要でしょうか
急いで走り出したのは放送前からかもしれませんが、別に誰しも常に最適の行動を取れるわけではないのだし
つい放送で動きが止まってしまったとかでもいいと思います

440 ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 10:39:23 ID:YUgGVSwI0
色々な意見ありがとうございます。

・IDカードについての描写
・ランサーと風の邂逅時の描写
・チャットに関する記述の全削除
・風の今後の行動方針についての描写

ひとまず以上の4点を加筆修正します。
修正ルールに従い明日夜までには本投下いたします。

441 ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 10:40:18 ID:YUgGVSwI0
書き忘れていました

・放送時のランサーの描写

これも同様に加筆修正します

442名無しさん:2015/10/20(火) 10:52:41 ID:D66PD6oI0
ヴィヴィオのように見た目幼女でも何らかの強さがある者がいる と知っててここまで油断するのはちょっと無理あるような
武器置くにしてもなんで馬鹿正直に二本とも置いてるんですかね。剣か刀のどっちかをカード化させておけば不意打ちにも対応できるのに
むしろこれだと捨てたはずの騎士道どっかで拾ってるよね

443名無しさん:2015/10/20(火) 16:36:59 ID:bkrWSX/I0
>>439
迅速に駅へ引き返すというのは、ワープ前の前々話でも、ワープ後の前話でもずっと引き継がれてきた最優先の方針です
急にワープさせられた大混乱の最中でも一番優先して考えている選択肢なわけですから、混乱して忘れていたというのはおかしいでしょう
つい放送で動きが止まってしまったとしても、金縛りにあうわけでもなし、またすぐに移動再開できるわけですし

一旦B-2の駅に戻る→可及的速やかにB-2の駅に戻る、とリレーを経てどんどん強化されていった方針をあっさりなかったものにして、
移動しながら放送を聞けると即座に分かるはずなのに分校から少しも移動することなく聞いていたり、
可及的速やかに駅に戻るのが優先事項なのに手間暇かけて聞き込み調査を始めたり
このリレー無視が一番の問題点だと思いますね

444名無しさん:2015/10/20(火) 17:03:22 ID:bkrWSX/I0
ついでなので、細かいのも含めて今まで出ていない点もいくつか

>考えられることは一つ。
>彼らを上回る力を持つ敵の襲撃を受けたのだ。
穂乃果が独断専行して危険に陥るかもしれないとこれまでの話で想定していたんですから、
いなくなった穂乃果を探しに出たヴィヴィオが犠牲になった、とかもキャラ視点では想定の範囲内なのでは

>槍の英霊でありながら相応しい得物を手に入れられていないこと。
ディルムッドはもともと剣と槍を同時に扱う戦士なので、剣の扱いでもエキスパートですね

>むしろそれは、主君にも愛する女性にもマスターにもとらわれることなく眼前の人々を守り抜くという決意を意味している。
以前までの話だと、見ず知らずの相手よりも駅組を優先する思考で動いています
駅組の生き残りのために他の全員を殺すという展開も選択肢に入りうると想定していますし
ここでもやはりリレー無視の感が

>>442
>油断するのはちょっと無理あるような
やっぱりそこも違和感ありますよね
本部のように見た目が強くなさそうでも技術面で秀でている者もいる、とも知っているわけですし
騎士道精神全開の対応になっているのも同意です

445 ◆eNKD8JkIOw:2015/10/20(火) 18:38:18 ID:mjEI9p8I0
ただいま帰宅しました。
◆3LWjgcR03U氏が既に修正にかかっているようですので多くは語りませんが、一つだけ
「急いでいたから焦った」というだけにするよりも「放送を聞いて泣いている少女を見捨てられず、またこれ以上彼女の不安を煽らないために武器を捨てた」という要素も追加したほうがよりランサーらしいかと
拙作「犬吠埼風は■■である」でもふれたように、風先輩が放送を聞いて泣く可能性は十分にありえます
ですので、それを見たランサーが「こんなに傷ついている少女を見捨てることなどできない」という感じで彼女を保護しようと決意し、まずは信頼を得るため武器を捨てる、といったような具合にしたほうが、よりディルムッドらしいと思います
「単なる弱者」として見るのではなく「大切な人の死を悲しんでいる少女」として見て、ランサーの「つねに我が身の苦難よりも相手の心の痛みに想いを致す」という信念に付け込まれた、という形ですね。
また、駅組を優先するという思考なのだから目の前の少女は切り捨てるはずだ、という意見も見受けられましたが、それこそ今までのリレー無視となりえますね。

例えば◆zUZG30lVjY氏の書かれた「Libra」におかれましても
>
『多数』を切り捨て『少数』を選ぶに等しいこの決断。
正しき天秤の守り手たらんとするならば、迷うことなく『多数』を選ぶべきである。
しかし、ランサーはそのように振る舞うことを良しとできなかった。
親しき者も見知らぬ者も強き者も弱き者も『1』と数え、純然たる数量の多寡で生死を切り分けるなど、到底許容することができなかったのだ。
そんなものは人間の考えではない。正しくあり続ける機械装置の在り方だ。

とあるように、駅組という親しき多数のために目の前の泣いている見知らぬ少女という少数を切り捨てることをよしとしないはずですし
放送で呼ばれなかった以上、本部に守護られている可能性が高い穂乃果、千夜よりも、保護者もおらず、おまけに放送を聞いて泣いている少女の安全を少なからず想ったとしても、矛盾とはなりえません

また

>つねに我が身の苦難よりも相手の心の痛みに想いを致す。それがディルムッド・オディナという男の本質。たとえ騎士道を捨てようと消え失せない生まれ持った色である。
彼が"マスターに従うサーヴァント"として戦う心積もりでいたなら、あくまでも忠節を尽くす道を優先し、このような思考は心の奥底に押し込めていたかもしれない。
しかし、サーヴァントとしてではなくディルムッド・オディナとして戦い抜くと決めたのなら話は別だ。

とあるように、自身の身の危険よりも、大切な人が死んで泣いているであろう少女のために、武器を捨ててでも彼女を安心させたいと思うのは当然のはずです

さらに言えば、◆0safjpqWKw氏の書かれた「フォロウ・ザ・コールド・ヒート・シマーズ」においても、ランサーは駅に真っ先に向かわず、土方の遺体を移動させています
ランサーはロボットのように「駅組のためだけに動く」わけではなく、血の通った人間(サーヴァント)ですので、例えば土方を尊重したように目の前の泣いている少女を見捨てられなかったとしても、決定的な矛盾にはなりえないかと

放送を分校内で聞いていることに関しては、自分としてはそこまで違和感がありませんでしたが、何なら放送を聞きながら移動している際にばったり風先輩に遭遇した、とでもすれば問題は解決するかと

もちろん、◆3LWjgcR03U氏がこのように修正せずとも問題が解決できるSSを投下していただければ、自分としては何の問題もございません。
長々とお目汚し、失礼致しました。氏の修正案を心よりお待ちしております。

446名無しさん:2015/10/20(火) 18:45:15 ID:bkrWSX/I0
>>445
>親しき者も見知らぬ者も強き者も弱き者も『1』と数え、純然たる数量の多寡で生死を切り分けるなど、到底許容することができなかったのだ。
>とあるように、駅組という親しき多数のために目の前の泣いている見知らぬ少女という少数を切り捨てることをよしとしないはずですし
これって、駅の面々を少数、それ以外を多数として「駅の面々以外の人々の為に、駅の面々を不利益に晒すことはできない」って意味じゃ……

>放送で呼ばれなかった以上、本部に守護られている可能性が高い穂乃果、千夜よりも、保護者もおらず、おまけに放送を聞いて泣いている少女の安全を少なからず想ったとしても、矛盾とはなりえません
「彼らを上回る力を持つ敵の襲撃を受けたのだ。」って考えているわけですから、ヴィヴィオが死んで本部が無事と考えるのはおかしいと思いますけど
本部は死んではいないけどより強い敵にやられ、ヴィヴィオを守りきれずに殺されたって感じで

447 ◆eNKD8JkIOw:2015/10/20(火) 19:04:40 ID:mjEI9p8I0
繰り返し言いますが、ランサーは土方を見捨てられなかったように、駅組だけを絶対に優先するというロボットめいた思考でのリレーはされていません。
ですので、ちゃんとした理由さえあれば「他の誰か」も助けたいと考えるのも、人間として当然の思考です。

ヴィヴィオが死んで本部が無事と考えるかどうかは、それこそ書き手の裁量次第だと考えます
ヴィヴィオが死力を尽くして相手を撃退したために本部、穂乃果、千夜は無事だったと考えることもできますし
絶対にこう考えるはずだ、とは言えない以上、矛盾にはなりませんね。

448名無しさん:2015/10/20(火) 20:53:09 ID:srA1FCfc0
土方を回収したときは「一旦駅に戻る」という程度だったけど、その後不慮のワープに遭って「可及的速やかに駅に戻る」と方針を改めた(より緊急性を高めた)わけでしょう
明確なきっかけがあってわざわざ状態表レベルで方針をアップデートしてるのに、アップデート前の方針と行動だけを元にリレーしていることになりますよ?
土方のときとは文字通り事情が違うんですから

後半の方も、守護役の本部ではなくヴィヴィオが戦うこと自体が異常事態では
本部が守護を放棄したか、どちらが駅を離れたか、先に本部が敗北したかのどれかになるかと

449名無しさん:2015/10/20(火) 21:03:25 ID:srA1FCfc0
というか、情に負けて寄り道したせいでこんなことになってるのに、また情で動くとかやったら学習能力がヤバい……

450名無しさん:2015/10/20(火) 22:19:15 ID:ae1WhpwI0
書き手さんが良しと言ってるのに何を騒いでるんだ…

451 ◆3LWjgcR03U:2015/10/20(火) 22:55:01 ID:YUgGVSwI0
>>440と重複しますが、修正点について改めて

・IDカードについての描写
・チャットに関する記述の全削除
・風の今後の行動方針についての描写
・「考えられることは一つ〜」のくだりを他の可能性も考慮している描写に差し替え
・「槍の英霊でありながら〜」のくだりを削除
・放送中のランサーの描写
以上は比較的単純な修正ですので特に説明は不要かと思います。


以下は説明が必要と思われる箇所についてです。

・ランサーの前話からの行動方針
ランサーは駅組を優先するか、それとも風の保護を優先するか、2通りのご指摘を頂いております。
どちらの展開も自分が書く上では問題はありません。ですが今回は、登場キャラの1人のリレー元のSSを書かれた方ということがあるので
◆eNKD8JkIOw氏のご指摘に従って修正しようかと思います。

・ランサーと風の邂逅時の描写
ご指摘の通り確かにランサーが油断しすぎていると感じますので、風が自ら油断を誘ったような描写に差し替えます。
また>>445で提案いただいた描写も可能な限り加筆いたします。

452名無しさん:2015/10/20(火) 23:16:47 ID:srA1FCfc0
その理由だと、ランサー側の以前の話を書いた人から逆の指摘があったら修正内容を変えちゃうのかな

453名無しさん:2015/10/20(火) 23:17:48 ID:w/YpsUbE0
修正作業大変でしょうが頑張って下さい

454 ◆zUZG30lVjY:2015/10/21(水) 03:01:30 ID:KbnY6hJw0
正直あまり口を挟むべきではないかもしれませんが、自分の文章の解釈が根拠に使われていたので、参考までに1レスで補足を
トリを出して書き込む予定は一切なかったですし、自分でこんな風に意図を解説するのは褒められたものではないですけど、
他の書き手さんがトリ付きで文章解釈を修正議論の根拠に使っているなら、自分もトリを付けて説明しておくべきだろうと思った次第です


結論から言いますと、>>445
>とあるように、駅組という親しき多数のために目の前の泣いている見知らぬ少女という少数を切り捨てることをよしとしないはず
という読解は少なくとも書いた本人の意図とは正反対です

引用箇所の少し前に
>片方の腕には、他の2つの島に送り込まれた顔も知らぬ多数の命。
>もう片方の腕には、己の呪いが心惑わせた少女を含む少数の命。
と書いてあるように、その部分の多数少数という表現は>>446で指摘してある内容の方が正しいです
「Libra」では、風のように単独行動あるいは少人数行動をしている駅組以外の参加者も前者の『多数』に含めて記述していて、
そういった参加者よりもいわゆる駅組の少女達を優先するという指針を固めた、というのが「Libra」での描写の意図ですね

また、
>とあるように、自身の身の危険よりも、大切な人が死んで泣いているであろう少女のために、武器を捨ててでも彼女を安心させたいと思うのは当然のはずです
という部分の根拠にされている引用箇所も、書いた当人の意図とは違う解釈になっています
>「(……彼女達の身にもしものことがあれば……例えどのような形であろうと、俺の責任だ)」
>(中略)あの少女達から心の痛みを訴える声と共に手を伸ばされたなら、きっとその手を取ることだろう。
>たとえ多くを敵に回すことになろうとも――
という文脈の中で書いてあるとおり、そういう理由で駅組の少女達の身の安全と去就に強い責任感を抱いているのだという意図の文章であり、
>>445で提示されているシチュエーションのように、最重要点である強い責任感とその対象を一時的にせよ後回しにする根拠として引用するのは、いささか恣意的な切り抜きかと感じました
駅組の件が最初から無ければ充分ありうる展開だとは思いますが……

以上、書いた本人としてはこういう意図だったということで、参考までに

455名無しさん:2015/10/21(水) 08:14:54 ID:Nqb13w5A0
書き手さんの修正中に言うのもなんですが

ランサーが少女より駅組を優先するはずだったから不自然だというなら
「少女が穂乃果や千夜の同年代であり、元からの知り合いの可能性を考慮したから」といった理由を追加すればいいんじゃないでしょうか
そこまで駅組の身とメンタルを心配してるようなランサーなら、「穂乃果や千夜と合流した後で泣いてる友達を見捨てていたことが発覚したら目も当てられない」とか懸念しても不自然ではないでしょう

456名無しさん:2015/10/21(水) 08:40:32 ID:B.UWcYWE0
流石にロワにいる知り合いの情報(名前とかみんな同じ学校だとか)くらいは聞いてるだろうから、それは難しいんじゃないかな
制服も違うから違う学校の生徒だってことは一目で分かるし

まぁとりあえず修正待ちかな

457名無しさん:2015/10/21(水) 08:51:30 ID:aQ4jvSdM0
そもそも相手が少女だからってこの状況で油断するキャラではないような
普通に戦って勝つんじゃ駄目なんですか?
本部が勝てるくらいなんだから勇者だったら少なくとも性能の面でも互角くらいでしょうし

458名無しさん:2015/10/21(水) 09:09:19 ID:x6gPxKt.0
勇者もルールで戦闘能力の制限対象なのでパワーダウン中

459名無しさん:2015/10/21(水) 10:19:07 ID:5sWpsBvo0
ラブライブはともかくごちうさは5人で3つの学校通ってるし、制服は違う子もいるぞ
そもそもみんな制服で来てるとも限らないんだし

460名無しさん:2015/10/21(水) 12:26:49 ID:qmTtpMGU0
そもそもあの短時間の接触で千夜から知り合い1人1人の名前と特徴まで聞き出す余裕があったかは怪しい
穂乃果もランサーも知り合いが巻き込まれている前提なんだから
見た目15歳前後の女の子を見れば知り合いの可能性くらいは考えるだろう

461名無しさん:2015/10/21(水) 18:03:50 ID:3OHXNBLY0
確かに千夜からは「これまでにあったこと」しか聞いてないからな
でも逆にいうと、千夜からは友達が違う学校に通っているという情報もないわけだから、
違う制服の生徒が知り合いかもしれないと思う理由もないし、ここにいる知り合いの中に同年代がいると判断できる材料もない
横並びで女子高生ばかりだっていうのは本人達とメタ視点からしか分からないんだし

だから、千夜の知り合いかもしれないから見捨てられないって理由付けは、ほぼ全年代に適用できてしまって本末転倒だろうな

462名無しさん:2015/10/21(水) 18:15:12 ID:Q8/KxI8Y0
そこまで行くとただの水掛け論じゃないか
一旦修整を待とうや

463名無しさん:2015/10/21(水) 18:18:05 ID:3OHXNBLY0
あと見た目15歳前後っていうけど、風って成人女性の平均身長より5〜6センチも背が高くて発育も良かったりするからなぁ(DVD Vol3パッケ参照)
ラブライブで一番長身の高3の絵里より1センチ大きくて、成人女性にしか見えないとネタにされてるほたるんより1センチ低い程度という

464名無しさん:2015/10/21(水) 18:18:27 ID:3OHXNBLY0
>>462
そうだな、脱線しすぎてた

465 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:04:03 ID:nIWoZ2aQ0
一度仮投下します

466この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:04:56 ID:nIWoZ2aQ0

――真実は偏に、カードの裏/表


 *  *  *


犬吠埼樹が死んだ。

いつかこうなると、分かっていたこと。
皆が死ぬというのも、覚悟していたこと。
もうどうにもならないと、諦めは付いていたこと。

「……そう、か」

だが、私はいい。勇者部の皆はどうだろうか。
友奈、風、夏凜。私同様にこのゲームに呼ばれている彼女たちは。
特に風。先刻あの旅館で話をしたところだが、感情的な彼女のことだから今頃大泣きしているかも知れない。
或いは……吹っ切れて、どこかで暴れているだろうか。

夏凜と友奈はどうだ。
風は夏凜と遭遇したらしいが、何があったかまでは聞いていない。
“ただ、一緒に戦うとなると、勇者部の皆を思い出しちゃう、っていうか”
こう言っていたくらいだし、大方逃げてきたというところだろう。
そもそも、夏凜が殺し合いに乗るような性格だとは思えない。
遭遇したら……殺すことになるだろう。

友奈は……友奈は。
きっと、風同様に泣いているに違いない。
友奈も殺し合いには乗らないだろう。彼女も、手にかけることになるだろう。
――なるのだろうか。

優勝し、願いを叶えて世界を滅ぼしてしまえば、どうせ皆死んでしまうのに。
友奈までも、殺すのだろうか。

「(……駄目)」

これだけは、白黒つけることが出来ない。
きっと樹のように、他の誰かが勇者部の面々を、友奈を殺してくれる。
死ぬ姿なんて見たくない。心のどこかで、そう願っているのだろう。

どんな環境で育ったからとはいえ、幾ら覚悟を決めたとはいえ。
東郷美森にとって、親友を、友奈を殺すということ。
それだけは、割り切ることが出来なかった。
いつかそんな局面が起こるかも知れないというのに。

考えているうちに、大きな建造物が前方に姿を現す。
地図を見る限り、『アナティ城』だろうか。

友奈たちのことを思考の隅に追いやり、東郷は一度アナティ城へと寄り道をする。
支給されている黒カードがスマホしかない以上、普段の自身は丸腰、それも車椅子だ。
何か今後に役立つ物資が欲しいところではあるし、何より少々疲れた。

 *  *  *

467この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:05:55 ID:nIWoZ2aQ0
放送を淡々と聞き終えた浦添伊緒奈は、アナティ城を物色しているうちに薄暗く狭い部屋に来た。
その手には厨房から持ち出したナイフが握られて、背中には兵士たちの武器庫から失敬した弓矢を担いでいる。
武器庫には大剣もあったが、“ウリス”ではなく“浦添伊緒奈”の身体で扱うには少々無理がある。
鎧を纏うかどうかも少々悩んだが、機動力が落ちることも考えた結果やめた。

彼女にとって、死者の読み上げなど心の底からどうでも良いものだった。
最初に殺した男の名前などとうに忘れたし、次に会った空飛ぶ男の名前は知るつもりもない。
強いて気掛かりだったのは禁止エリアの件だったが、幸いこの近辺は安全そうだ。
だからこうして堂々と物色に勤しんでいたのだが。

「ほんっと、カビくさい城ね……ん?」

異様な雰囲気を放つその部屋は、毒々しい色をした茸、今にも叫び声を上げそうな植物、何かの臓器……。
城の備品と言う割には、随分と物騒な物に溢れていた。
一際目に付くのは、部屋の隅に描かれた魔法陣らしきもの。
それらはまるで。

「黒魔術の工房……?」

とりあえず役に立ちそうなものがないか、手当たり次第に棚を探る。

空っぽ、よく分からない物、空っぽ、何かの材料。

埃まみれの棚には、まるで使えそうな物が見当たらない。
もし仮にあったとしても、魔術や薬学に精通していない伊緒奈にとっては無理な相談だった。
テーブルの上も全て、何かの材料や実験道具らしき物に溢れている。

「……クソったれ」

一言、そう結論付けるには十分すぎた。
最終的な戦果はナイフと弓矢だけ。やはりあの空飛ぶ男に奪われたマシンガンが非常に惜しい。
部屋を去ろうとして……伊緒奈は、城に誰かが足を踏み入れる気配を感じた。
気取られないように、物陰から気配の正体を探る。

車椅子に乗った少女が周囲を警戒している姿が目に入った。
そのままどこかへ向かう少女を観察し、ニヤリと笑みを浮かべる。

今までに遭遇した2人は、いずれも道具にする価値もない程度の相手だった。
だが、ここに来てようやくの獲物になり得る人間だ。逃がすわけには行かない。
手に持っているそれを持ち替え、こっそりと少女の後を付けた。


 *  *  *

468この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:07:56 ID:nIWoZ2aQ0
城内の狭い通路を移動していた東郷美森は、朝日の差し込む大きな広間に出た。
羽の生えた像に囲まれ、中央にでかでかと位置するのは巨大な龍の像。
青カードから出した「はるかす」を飲みながら目を凝らすと、龍の頭部には鎧の騎士が跨って剣を突き刺している。

まるで勇者ではないか、と思わず苦笑した。
龍/バーテックスからの侵略を防ぐために、剣を抜いて戦う騎士/勇者。
羽の生えた像は……神樹か大赦にあたるだろうか。

「もっとも、そんなに綺麗事ではないけれどね……」

そう。いかにもありがちな御伽話なんかと違い、東郷たち勇者の真実は――。

少し時間を無駄にした。
先を急ごうとする東郷の右耳に、コツン、とわざとらしい革靴の足音が聞こえて来た。

「!!」

この時、東郷の身に降り掛かった不運が3つある。
後方からの不意打ちに驚いたあまり、思わずスマホを取り落としそうになってしまったこと。
もたついた一時のタイムラグを縫って、相手が左目に赤い何かを飛ばしてきたこと。

「ッ――!」

そして、思わず左目を押さえてしまったその隙に、素早い動きで右手首を掴まれ、

「ご苦労様」

――スマホを、奪われてしまったこと。

「始めまして、私は浦添伊緒奈。あなたは?」
「……東郷…美森」

伊緒奈と名乗った相手が持っていたのは、赤い光を放つレーザーポインター。
成る程、これで目潰しをして時間を稼いだということか。

「何をそんなに睨んでいるの? 奪われたコレが惜しい?」
「……」
「それとも……奪われたら困るだけの『秘密』があるのかしら」
「……っ」

あくまで表情を一貫させていた東郷が、この時ばかりは少しだけ顔を顰めた。
伊緒奈は、それを見逃しはしなかった。
そして、嘲笑を浮かべると、スマホの画面をタップし――

――薄青紫の花弁に包み込まれた。


東郷は目を疑った。
まさか、勇者部以外にそれを扱える者が居ようとは。
或いは、誰でも扱えるように主催者が何かテコ入れをしたのかも知れない。

花弁が飛び散ると、更に目を疑う様相が展開されていた。
ついでに言うなら、伊緒奈自身も驚きを隠せなかった。
よく知っている姿と違う点として、全体的に青みを帯びているが。

その姿は紛れも無く、ウリス――ルリグのそれと、何ら変わりなかったからだ。
肩にはロベリアの花があしらわれ、武器は東郷のそれと全く同じく複数の銃。
伊緒奈はその内の1つを手に取ると、彼女の額に押し当てる。

469この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:09:11 ID:nIWoZ2aQ0
「バイバイ」

動作1つに手間取った結果が、これか。
抵抗することもなく、大人しく目を閉じる。
思い返すのは、これまでの行動全て。これが走馬灯というやつか。
それでも、失われていた2年間の記憶はどこにも見当たらないのだな、と苦笑いしたくなる気分に駆られ。


……一向に引かれない引き金に、痺れを切らして目を開けた。

「なんて、言うと思った?」

既に伊緒奈は変身を解き、スマホ片手にケラケラと笑っていた。

「……馬鹿にしているのかしら」
「そんなつもりはないわ。ちょっとした“取引”をしましょうっていうのよ」
「取引ですって?」

怪訝な顔を露にする東郷を意に介さず、伊緒奈は続ける。

「あなた、知人の誰かが殺されたでしょう。
そして、あなた自身も既に誰かを殺している」
「……!」

培った勘があるとはいえ適当にカマをかけたつもりだったが、どうやら図星だったらしい。

「どう? 私と組んでみないかしら」

それは、悪意に満ちた誘いだった。

「なにぶん私もこのゲームに勝ち残りたいクチなんだけど、いかんせん手札が悪くてねえ。
これなんかもこの城で調達したってワケ。そこで「いいですよ」

伊緒奈の言葉を遮ってまで誘いに乗った東郷の顔を、しげしげと見つめる。

「いいですよ。一時的になるとは思いますが、共同戦線を張りましょう」
「……そう、なら話は早いわね。とりあえず、食堂で朝食にしながら情報交換と洒落込みましょうか」


 ✿  ✿  ✿

食堂、というよりはパーティー会場に近いホールで黙々と朝のエネルギーを摂る2人。
東郷はうどんを啜り、伊緒奈は片手間で食べられる握り飯を頬張る。

ここまで東郷が提供した情報は、
・伊緒奈の言うように、既に2人以上殺した
・知り合いと温泉旅館で出会い、互いに協定を結んだ
・スマホで変身すると、複数の銃器を扱える

対する伊緒奈は、
・1人と遭遇、後に別れた
・次に遭遇した男に襲われ、一時意識を失っていた

元いた世界や他の知り合い等踏み込んだ話は一切せず、教えるつもりのない情報は全て隠し、嘘偽りで塗り固めた。
2人はそれ以上話もせず、付け入ろうともしなかった。

470この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:09:59 ID:nIWoZ2aQ0
「御馳走様でした」
「じゃあ、今後の方針だけど」

朝食が終わると、伊緒奈は背負っていた弓矢を差し出してきた。

「あなた、こういうの出来るかしら」
「大丈夫ですよ。身体には染み付いているので」

記憶は無いけれど、と心の中で付け加える。
当時の知り合いだった乃木園子曰く、失われた2年間の間に愛用していた武器、らしい。
ならば、記憶が散華していようとも身体は覚えているだろう。

「ならこれはあなたにあげるわ」
「スマホは預かっておくつもりなんですね」
「必要になったら返すわよ。あくまで『契約料』といったところかしら」
「……では、必要な場面で」

やけにすんなり引き下がったな、と不審がりつつも、伊緒奈は続ける。

「目的地は?」
「私は当初の予定通り、市街地に向かうつもりです。
風先輩との協定もありますから」
「奇遇ね。じゃあ決定」

会話がひと段落して、立ち上がる。もう出発の時間だ。

「車椅子の方は大丈夫かしら」
「結構です。一人で大丈夫なので」

こうして2人は、アナティ城を後にした。

 ✿  ✿  ✿

【side:東郷】

上手く隠し通すことが出来た。

スマホの主導権を握られてしまったのは手痛いが、このまま伊緒奈に戦わせるのもいいかも知れない。
満開の代償を恐れている自分にとって、それを代理してくれる“生贄”の存在は非常に好都合だ。

彼女の満開ゲージは0だったが、自分は4。
神社での一件もあったお陰で、変身を躊躇する理由にするには十分過ぎた。

「(いつだって、犠牲になるのは何も知らない者ばかり)」

だから、勇者の実態を知らない浦添伊緒奈を利用する。
やっていることがまるで大赦そのものだな、と苦い顔をした。


【side:ウリス】

妙にあっさりしている女だな、と思った。
スマホの件もそうだが、同盟に至っては言葉を遮ってまで同意して来た。

「(……随分と手の掛かる手札を引いちゃったかもね)」

彼女もこちらを利用する腹積もりか。
どちらにしても、とスマホを弄る。

6時から解放されたというチャット機能と名簿を見比べながら、文面を打ち込んで行く。
“風先輩”とは“犬吠埼風”のことだろう。そして、同じ苗字であり赤いバツ印のついている“犬吠埼樹”。
こんな苗字がそう簡単にあるものではないし、血縁者、ひいては東郷美森の知り合いと見ていいだろう。

『東郷美森は犬吠埼樹を殺害した』

だから、電子の海中にその文言を放り込んだ。

471この花弁は悪意 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:15:36 ID:nIWoZ2aQ0
 ✿  ✿  ✿

互いに相手を利用するつもりでいる2人。
悪意の花は、まだ開花したばかり。


【G-4/アナティ城/朝】
【東郷美森@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、両脚と記憶の一部と左耳が『散華』、満開ゲージ:4
[服装]:讃州中学の制服 [装備]:車椅子@結城友奈は勇者である、弓矢(現地調達)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)
[思考・行動]
基本方針:殺し合いに勝ち残り、神樹を滅ぼし勇者部の皆を解放する
     1:南東の市街地に行って、参加者を「確実に」殺していく。
     2:友奈ちゃんたちのことは……考えない。
     3:浦添伊緒奈を利用する。
[備考]
※参戦時期は10話時点です


【浦添伊緒奈(ウリス)@selector infected WIXOSS】  
[状態]:全身にダメージ(軽度)
[服装]:いつもの黒スーツ
[装備]:ナイフ(現地調達)
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(9/10)      
     黒カード:うさぎになったバリスタ@ご注文はうさぎですか?
     ボールペン@selector infected WIXOSS
      レーザーポインター@現実
     東郷美森のスマートフォン@結城友奈は勇者である
[思考・行動]
基本方針:参加者たちの心を壊して勝ち残る。
     1:東郷美森を利用する。
     2:使える手札を集める。様子を見て壊す。
     3:"負の感情”を持った者は優先的に壊す。
     4:使えないと判断した手札は殺すのも止む無し。    
     5:蒼井晶たちがどうなろうと知ったことではない。
[備考]
※東郷美森が犬吠埼樹を殺したという嘘をチャットに流しました。
※変身した際はルリグの姿になります。その際、東郷のスマホに依存してカラーリングが青みがかっています。

472 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 20:18:20 ID:nIWoZ2aQ0
仮投下を終了します
タイトルはWIXOSS風+ゆゆゆ風にロベリアの花言葉です

指摘等あればお願いします

473名無しさん:2015/10/22(木) 20:32:40 ID:xcxL8zoQO
仮投下乙です、特に問題はないかと
腹に一物抱えてる二人は手を組んだか、お互いに騙し合いしてるのがどう影響するか
そしてこっそりウリスがエグいことしてきたなあ…樹ちゃんの死因知ってる風先輩はともかく残りの二人が不安、特に東郷さんが乗ってるのを知ってる夏凜

474名無しさん:2015/10/22(木) 20:54:44 ID:o6WzLrv.0
仮投下乙です
しかし、問題というか疑問が一つ
弓矢、しかも魔法のとかではなく普通の弓矢って、車椅子に乗ってる状態ではまともに扱えないのでは…

475 ◆DGGi/wycYo:2015/10/22(木) 21:30:40 ID:nIWoZ2aQ0
>>474
完全に失念していました
本投下の際にはそこに関する描写を修正します

476名無しさん:2015/10/23(金) 01:12:03 ID:x/vJ4B/Y0
スマホ手に入れても伊緒奈の方には満開ゲージって付かないのかな
状態表には無いっぽいけど

477名無しさん:2015/10/23(金) 07:35:35 ID:8acIEuHYO
まだ0だから明記してないだけでは?

478名無しさん:2015/10/23(金) 07:37:34 ID:8acIEuHYO
連レス失礼
>>470にも、ウリスの満開ゲージはまだ0って描写があるしね

479名無しさん:2015/10/23(金) 10:38:14 ID:kpTfUj.E0
仮投下乙です

強いて言えば、勇者について全く知らないウリスがいきなりスマホを奪うのに違和感がありましたが、これについてはいくらでも理由付けできそうですね

本投下に問題ないと思います

480 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:47:17 ID:AawIviBk0
仮投下します

481 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:48:11 ID:AawIviBk0
花京院典明は迷っていた
ここで"姿の見えないスタンド使い”を追って放送局へ踏み入るか、それとも一旦退いて当初の予定通りに島を南下し、仲間を集めるか

元々"姿の見えないスタンド使い”を撒くために墓地を経由して南下していた上、相手のスタンドは明らかに逃げ場の少ない閉所でこそ真価を発揮するタイプだ
先ほど奴が入っていった放送局など、どう考えても相手のホームグラウンドだろう
最悪の場合、既に何かの罠が仕掛けられているかもしれない

さらに言えば、先ほど邂逅したアフロの男にしても、まだ善玉であると決まったわけではない
本人は襲ってきたのは女の方だと言っていたが、その女が否定も肯定もする前に死んでしまったのだから、確認する術も最早ない
普通に考えれば、ここは無理をせずに一旦退くのが良いのだろうが…

(僕が拘束していなければ、彼女は……)
花京院は、彼女の死の原因を作ってしまったことに苦悩していた

『法皇の緑』で周囲を警戒していた花京院でさえ、一切の無駄なく殺しにきたあのスタンド使いの攻撃は避けるのが精一杯だったのだから、拘束しようとしなかろうと、アフロの男との戦いに注力していた彼女にあの攻撃を避けることは難しかっただろう
さらに、あの状況では一旦アフロの男と女の両方を拘束して場を収めるのが最善の手であったことは間違いない
だからと言って、そう簡単に割り切れる訳もなかったが

(どれだけ逃げても追ってくる"姿の見えないスタンド使い”…
このまま追跡され続けるくらいなら…奴に他の参加者を殺され続けるくらいなら、いっそここで倒すか…?)
彼女の死に対する自責の念が、花京院を焦らせ、蛮勇へと走らせそうになる…







「なんでもいいけどよ、何が起きてんのか説明してくれよ!」
そんな花京院の思考を邪魔するような声が響いた
アフロの男ことファバロ・レオーネである

しかもこの男、『法皇の緑』による拘束を解かれた後、ちゃっかりヴァローナの持ち物を回収していた
賞金稼ぎはがめついのである

482 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:49:38 ID:AawIviBk0
「ありゃ召喚魔法か!?でもよぉ、あんな召喚魔法見たことねぇぞ!」
ファバロは賞金稼ぎとして、報酬をかけられた賞金首たちと何度も戦っており、その中には召喚魔法を駆使して戦う者たちもいた
召喚された魔物は得てして、人間よりも強力な力を持っている
しかし、魔法陣もなしにいきなり現れて、一撃で人を〝削り取る〟ような召喚魔法は彼は知らない

「本当に一瞬で死んだアル…」
神楽は困惑していた
あらかじめ敵の能力を花京院から聞いていたとはいえ、目の前で女性が一瞬で死んだのである
流石の彼女も動揺を隠せなかった

「あれは『スタンド』!特殊な守護霊のようなものだ!それも姿を消し、探知にも掛からず、一撃で相手を殺す、とびきり強力な!」

「おいおい、その『スタンド』ってのはよく分からねぇがよ、それってヤバいんじゃねぇか?」
スタンドについては全く知らないファバロだが、花京院の説明からその危険性を嫌でも理解させられた

(ジル・ド・レェってゾンビ使いも大概だが、お次は見えない一撃必殺の殺人者かよ…)
チャンスがあれば危険極まりないゾンビ使いを倒すつもりだったファバロだが、あるいはそれ以上に厄介な相手と遭遇してしまった

「どうするネ?あいつ、あの中に入っていったアルヨ」
神楽はそう言って放送局を指差す
日が出てきたからか、持っていた傘を差している

「僕もそれを考えていたんだが…」
と言って、花京院はファバロに顔を向ける

「ん?勝算があるなら俺も手伝うぜ?」
(ま、勝算がないんだったら、さっさと逃げちまおう)

"姿の見えないスタンド使い”をのさばらせておく危険性を分かっているファバロは、勝算があるのであればこの二人組に手を貸して戦うつもりだった
先ほどの拘束の手際からして少なくとも男の方はかなりの使い手だろうし、敵の『スタンド』とやらにも詳しいようだから、協力すれば勝ちの目もあるとファバロは踏んでいた

「それはありがたいんだが…」
と、花京院は微妙そうな表情をする
ファバロを信用していいかどうか、まだ迷っているらしい

483 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:50:46 ID:AawIviBk0
「んだよ、まだ疑ってんのかよ?
ならよ、こいつに聞けば俺が被害者だったってわかるぜ?」
そういってファバロは、先ほど失敬したヴァローナの持ち物から、「あるもの」を見せた

「え、僕?」
言わずもがな、緑子のカードデッキである
ヴァローナの突然の死に呆然としていた緑子は、急に話を振られたことによって狼狽えた

「そうだよ、お前最初っから見てた…つーかあの女に協力してただろ?」
「たしかに、最初に攻撃したのはヴァローナの方だったけど…」
「ほらよ聞いたかぁ!?俺は逃げながら応戦してただけだっつーの!」

「…なんか釈然としないアルけど、とりあえず信用してやるアル、ハナ◯ソ頭」
「だから言い過ぎじゃね?」
アフロだのボンバーヘッドだのはよく言われるが、さすがにハナ◯ソ呼ばわりはされたことのないファバロであった

「勝算はある、だが今から戦えば、まず放送は聞き逃すだろう」
「でもよ、放送の内容って白のカードでも確認できるんだろ?だったら問題ねぇだろ」
「大事なことは後回し、それでも大抵なんとかなるネ」
(そこはかとなく不安を感じるな…)
しかしそんな不安は顔には出さない花京院であった

「えっと…放送を聞いてからじゃだめなのかな?」
「おいおい、姿の見えない敵がいつ狙ってくるかも分からない状況で、呑気に放送なんて聞いてられるかよ」
「それに情けない話だが、もし承太郎たち…僕の仲間たちの名が放送で流れたとしたら、少なからず動揺してしまうだろう…その隙を突かれたりしたら大変だ」
「ま、銀ちゃん達がそう簡単にくたばるとは思えないアルけどね」
緑子の提案はにべもなく却下された

彼らにとって不幸だったのは、同じ世界の出身でありながら花京院がヴァニラ・アイスについて詳しくは知らなかったことだろう
もしヴァニラ・アイスが吸血鬼であることを知っていれば、太陽の出ているこの時間帯に見えない襲撃に怯えることも、被害の拡大を防ぐために無理を押して放送局へ攻撃を仕掛ける必要もなかったのだから…

「よし、では簡単に説明する
先ほどのやつの行動で、やつのスタンドの弱点も大よそわかった いいか、まずは…」

484 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:51:57 ID:AawIviBk0


「と、その前にさ、そういやまだ名乗ってなかったよな
俺はファバロ、ファバロ・レオーネだ」
「話の腰を折るんじゃねーヨ、厨二くさい傷なんて付けやがって…神楽アル」
「僕は花京院典明。スタンドの名は『法皇の緑』だ」
「お、やっぱアンタもその『スタンド』ってのを使えるんだな」
「ああ、詳しくは次の機会にでも話すよ。それで作戦なんだが……」








◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






(フフ…どうやら追ってきたようだな 何やらスタンドで索敵しているようだが、『クリーム』にそれは通じん)
自分の支給品の一つである双眼鏡を覗きながら、ヴァニラ・アイスは早くも勝利を確信していた

(だが焦りは禁物だ…あまり入り口付近で戦って太陽の光を浴びては敵わんからな…もう少し奥へと進んだ時が貴様の最期だ、花京院!)


どうやら先ほどのアフロの男が一行に加わっているようだが、それでも三対一
奇しくも憎きポルナレフと戦った時と同じ人数差であり、不意打ちで十分一網打尽にできる数だ
あの時は自分の身よりも仲間の命を救うことを選んだアブドゥルによって不意打ちでの一網打尽は失敗したが、今自分が狙っている相手たちは出会ってからほんの僅かな時しか経っていない烏合の衆…そのような事態が起こるはずもない

(不意打ちの上、この狭い通路では先ほどのようには避けられまい…)
入口から真っ直ぐ奥へ進んだ所の通路の左右に一つずつドアがあり、そこからさらに真っ直ぐ行った所、花京院のスタンド『法皇の緑』の索敵範囲外ギリギリにヴァニラ・アイスは待ち受けていた

彼にとって幸運だったのは、DIOの僕が何度もジョースター一行と戦っており、そのおかげで彼らのスタンドの情報をある程度手に入れていることだった
しかも、花京院とポルナレフに至っては元々は同じDIOの僕
一行の中でも特に正確な情報を手に入れていた

(さて、奴のスタンドに感知されてはかなわんからな、そろそろ暗黒空間に入るとしよう)
彼は望遠鏡を黒のカードに戻してから自分だけの空間に入り、外部からの干渉を完全にシャットアウトする
これにより、
こちらも相手の状況が分からなくなり攻撃のタイミングは当てずっぽうになるが、ここまで来れば多少タイミングがずれようとこの形態で突撃すればそれだけで事足りる

(目の前にドアがあれば、自ずとそちらに注意がいくもの…それを踏まえ、あえて正面から攻撃を仕掛ける!)
ちなみに、二つのドアはいずれも内側から重い物を立て掛けて簡単には開かないようにしている
『クリーム』の力を持ってすれば、花京院達が追うかどうか迷っているうちにこの程度の小細工は可能だ
これにより、攻撃の際に部屋の中に咄嗟に入るということもなくなった

(死ね、花京院…この裏切り者が!)
そして、いよいよヴァニラ・アイスは攻撃を行った

485 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:53:08 ID:AawIviBk0














「跡形もなく消滅したか…はたまたアブドゥルのように一部だけは残ったか…」
『クリーム』の内部でヴァニラ・アイスは再度勝利を確信した
花京院らにあの攻撃を躱せる道理はない
彼は悠々と暗黒空間から出て、周りを確かめようとした
その直後…



「おらぁ!」
突如、奇妙な銃声がしたと思ったら、これまた奇妙な弾丸がヴァニラ・アイスめがけて飛んできた
なんと、アフロの男が奇妙な銃をこちらに撃ってきているではないか!

「なに!?」
咄嗟にスタンドでガードするが、スタンドを通して体にダメージが入る

(スタンドのスタンド以外に対する無敵性がなくなっている…?)
このバトルロワイヤルが始まって以降、初めてまともな攻撃を喰らった彼は、スタンドに制限がかけられていることにようやく気付く

「ふぅん!」
と、今度はチャイナ服の娘が傘を構えて突っこんできた
…と思ったら、なんと傘から銃撃が発射された!

「が!?」
接近戦を予想していたヴァニラ・アイスは、意表を突かれて弾丸をもろにくらってしまった

(く、一旦暗黒空間に戻るか…)
体操選手の倒立静止のような体制を取って飛び上がり、クリームの口の中に戻ろうとするヴァニラ・アイス
だが…


「エメラルドスプラッシュ!」
「な!?」

突如飛来してきた固い氷のような物体を腹部に受けて吹き飛ばされてしまい、暗黒空間へ戻ることに失敗してしてしまった



「な、何故だ…何故全員、五体満足で生きている!?」
床に這いつくばりながら、ヴァニラ・アイスは叫ぶ
彼の前には、花京院典明、ファバロ・レオーネ、神楽の三人が無傷で立っていたのである

「作戦成功だな、花京院」
「まったく、緊張して損したアル」

花京院の立てた作戦というのは至極単純なものだ
"姿の見えないスタンド使い”の弱点…物質を消滅させながらでないとステルス状態での移動ができないことを放送局の破壊具合や道まで削り取られていることから察した花京院は、自らのスタンドを紐状にして周囲に張り巡らせておいたのだ
これにより"姿の見えないスタンド使い”が迫ってきたとしても、『法皇の緑』の損害具合からその軌道が分かるということだ

幸い、紐状にした『法皇の緑』ならば多少の損壊はダメージにならない
攻撃の瞬間はステルス状態を解除しなければならないことにも当たりを付けた花京院は、その瞬間の迎撃をファバロと神楽に頼み、怯んだ所にエメラルドスプラッシュを放つという算段だった

ステルス状態を解除せずに突っこんで来たことは想定外だったが、軌道が分かっていればいくら狭い室内とはいえ、避けるのは容易かった

486 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:55:22 ID:AawIviBk0



(い、いくら紐状ならダメージが軽いとはいえ、限度があるだろう!
花京院のスタンドにこんなに耐久力があるとは聞いてなかったぞ…?)


「…ハッ!」
そういえば、以前もこんなことがなかったか?
そうだ、ポルナレフと戦った時も、聞いていた以上のスタンドパワーを発揮していた
ポルナレフよりもアブドゥルを評価していたこともあり、所詮火事場の馬鹿力と大気にも留めなかったが…

「"姿の見えないスタンド使い”…貴様は既に知っているだろうが、一応名乗っておこう」

そう、ヴァニラ・アイスは知らないが、スタンドの性能は本人の精神力によって成長するのである


「我が名は花京院典明」

では、何が花京院の精神力を増大させたのか?

「悪人とはいえ、貴様に後ろから殺された範馬勇次郎の無念のために」

ポルナレフの時はアブドゥルを殺されたことだった
ならば花京院は…

「僕の判断ミスで死なせてしまった、名も知らぬ女性の魂の安らぎのために」

下手人であるヴァニラ・アイスへの怒りだけでなく自らの判断ミスを責め、自分への怒りで静かな怒りを爆発させている


「死をもって償わせてやる」

【E-1/放送局近辺/一日目・朝】


【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]:疲労(大)、脚部へダメージ(小)、腹部にダメージ(中)、自分への怒り
[服装]:学生服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:繭とDIOを倒すために仲間を集める
   1:死をもって償わせてやる
   2:承太郎たちと合流したい。
   3:ホル・ホースと『姿の見えないスタンド使い』、神楽の言う神威には警戒。
   4:スタンドが誰でも見れるようになっている…?
   5:僕が拘束していなければ、彼女は……
[備考]
※DIOの館突入直前からの参戦です。
※繭のことをスタンド使いだと思っています。
※スタンドの可視化に気づきました。これも繭のスタンド能力ではないかと思っています。
※第一回放送を聞き逃しました


【神楽@銀魂】
[状態]:健康、呆然
[服装]:チャイナ服
[装備]:番傘@銀魂
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:不明支給品0〜2枚
[思考・行動]
基本方針:殺し合いには乗らないアル
   1: 『姿の見えないスタンド使い』を倒すアル
   2:神威を探し出し、なんとしてでも止めるネ。けど、殺さなきゃならないってんなら、私がやるヨ。
   3:銀ちゃん、新八、マヨ、ヅラ、マダオと合流したいヨ
[備考]
※花京院から範馬勇次郎、『姿の見えないスタンド使い』についての情報を得ました。
※第一回放送を聞き逃しました


【ファバロ・レオーネ@神撃のバハムート GENESIS】
[状態]:疲労(中)、右頬に痺れ、酔いも覚めた
[服装]:私服の下に黄長瀬紬の装備を仕込んでいる
[装備]:ミシンガン@キルラキル
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(8/10)
    黒カード:黄長瀬紬の装備セット、狸の着ぐるみ@のんのんびより、小型テレビ@現実 グリーンワナ(緑子のカードデッキ)@selector infected WIXOSS、カードキー(詳細不明)ビームサーベル@銀魂
[思考・行動]
基本方針:女、自由、酒ってか? 手の内は明かしたくねえんだよ
   1: まだ油断はできねぇな
   2:チャンスがあればジル・ド・レェを殺す。無理そうなら潔く諦める。
   3:カイザルの奴は放っておいても出会いそうだよなあ。リタにも話聞かねえとだし。
4:『スタンド』ってなんだ?    
5:寝たい。
 [備考]
※参戦時期は9話のエンシェントフォレストドラゴンの領域から抜け出た時点かもしれません。
 アーミラの言動が自分の知るものとずれていることに疑問を持っています。
※繭の能力に当たりをつけ、その力で神の鍵をアーミラから奪い取ったのではと推測しています。
 またバハムートを操っている以上、魔の鍵を彼女に渡した存在がいるのではと勘ぐっています。
 バハムートに関しても、夢で見たサイズより小さかったのではと疑問を持っています。
※今のところ、スタンドを召喚魔法の一種だと考えています
※第一回放送を聞き逃しました

487 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:56:07 ID:AawIviBk0
【ヴァニラ・アイス@ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース】
[状態]: ダメージ(中) 疲労(中)
[服装]:普段通り
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)、黒カード:双眼鏡@現実 不明支給品0〜2、範馬勇次郎の右腕(腕輪付き)、範馬勇次郎の不明支給品0〜3枚
[思考・行動]
基本方針:DIO様以外の参加者を皆殺しにする
   1:おのれ、花京院!
2:血を吸って回復したい
   3:承太郎とポルナレフも見つけ次第排除。特にポルナレフは絶対に逃さない
[備考]
※死亡後からの参戦です
※腕輪を暗黒空間に飲み込めないことに気付きました
※スタンドに制限がかけられていることに気付きました
※第一回放送を聞き逃しました

支給品説明
【双眼鏡@現実】
ヴァニラ・アイスに支給。
一般に流通している物と同じ仕様の双眼鏡。 遠くを見渡すことができる。














「ふむ、こんなものですか」
キャスターは放送局の一室で水晶玉を用い、局内で起こっている戦闘を観察していた
今のところ三人組が有利だが、まだまだ勝負は分からない
色々な人物が放送局を目指しており、いつ何時どんな形で妨害が起こっても不思議ではない現状なら、なおのことだ

「それにしても、先ほどの放送で呼ばれたジャンヌの名前…なんだったんでしょうねぇ」
本物のジャンヌ・ダルクであるセイバーがこの場にいる以上、先ほど呼ばれたジャンヌが本物であることはありえない

最悪のパターンとしては、セイバーというのは別の聖杯戦争のセイバーであり、先ほど呼ばれたジャンヌこそが本物のジャンヌであることだが、キャスターの自分と先ほど遭遇したランサーがクラス名で呼ばれている以上、その可能性は低いだろう

「やはり、偽物…でしょうね ジャンヌの名を騙る不徳者が死んだというのは、喜ばしいことです」
結局、偽物だったということで思考から追いやることにした


涜神の舞台は、まだ始まったばかり…

【E-1/放送局/一日目 朝】
【キャスター@Fate/Zero】
[状態]:健康、魔力300%チャージ
[装備]:リタの魔導書@神撃のバハムート GENESIS、神代小蒔、南ことり、満艦飾マコのゾンビ
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(10/10)、青カード(10/10)
     黒カード:生命繊維の糸束@キルラキル、遠見の水晶球@Fate/Zero
[思考・行動]
基本方針:ジャンヌ・ダルクと再会する。
1: ひとまず、今起こっている戦闘を見届ける
2: 放送局で宝具を持つ参加者とジャンヌを待ち受ける
[備考]
※参戦時期はアインツベルン城でセイバー、ランサーと戦った後。
※ジャック・ハンマーをバーサーカーかあるいは他のサーヴァントかと疑っています。
※神代小蒔、南ことり、満艦飾マコの遺体をゾンビ化しました。

488 ◆45MxoM2216:2015/11/15(日) 17:57:03 ID:AawIviBk0
仮投下終了です
何か意見があれば、ご指摘お願いします

489 ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:30:15 ID:UtG9Nc7s0
仮投下します

490和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:30:55 ID:UtG9Nc7s0
ラビットハウス。
その2階で眠る少女、香風智乃の意識を覚醒させたのは、燦燦と降り注ぐ朝の陽射しだった。
見れば、隣で眠っていた大人びた少女、一条蛍も身を起こしている。

時刻はまもなく午前6時。
殺し合いの区切りを告げる最初の定時放送、その時間だった。











ラビットハウス、その1階。
腕輪から女の声が響く。
それに聞き入るのは2人の少女――香風智乃、一条蛍。加えて大柄な学ランの不良――空条承太郎。

『それじゃあ、これで放送を終了するわ。次は正午、また私の声が聞けるといいわね』

やがて放送が終わりを告げる。
安堵と狼狽が入り混じった顔のチノ、「越谷小鞠」の名前を聞いて少しうつむく蛍、終始顔を伏せる承太郎。
聞き終わった3人の表情は文字通り三者三様だった。

「私の友達、誰も呼ばれませんでした……」

最初に口を開いたのはチノ。

「でも、17人も……それに、最後に呼ばれた満飾艦さんって、蟇郡さんの……!」

「知り合いか」

チノの言葉に承太郎が顔を上げる。

「はい、ちょっと難しい名前でしたけど、最初にお話しした時におっしゃってましたから、覚えています。
 満飾艦マコさん……蟇郡さんの後輩で、纏流子さんのご親友だと」

「私は眠っていたから覚えてないですけど、蟇郡さんたちって今ごろ……」

「ああ、ゲームセンターに行ってるはずだ」

蛍も口を挟み、承太郎が後を継ぐ。

「『満飾艦マコ』『南ことり』……さっきの放送で、この2人だけが別に呼ばれたな。よくわからねえが魂を喰われたとか何とか」

承太郎が確認を仰ぐように言うと、2人も頷く。

「出目金野郎のテレビ放送……あるいは、あれに映ってた3人のうち2人がこの2人なのかもしれねえ」

491和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:31:28 ID:UtG9Nc7s0
「え、それって……!」

「じゃあ、蟇郡さんがあれを見てたら……」

「1人だけ放送局に向かってもおかしくねえな」

17人もの死。
この場において、大切な人を失ったのは決して蛍だけではないのだ。
それを再び思い知らされる。3人の間に再び重苦しい雰囲気が流れた。

その時だった。
ラビットハウスの入口をノックする音が聞こえた。
放送を聞いた直後だったこともあり、3人の間には緊張が走る。

「ゲームセンターに行った人たち、帰ってきたんでしょうか」

「俺が出る」

やや剣呑な空気を纏わせ、承太郎が立ち上がる。

「待ってください」

それを制したのはチノだった。

「その、ラビットハウスを預かってるのは私ですから……お客様は私がお出迎えします」

「……分かった」

少し雰囲気を緩め、承太郎は一歩下がる。
気を付けろよ、とうながされたチノが、扉の前に立った。

「どうぞ」











扉の前に立っていたのはなぜかメイド服を来た少女。そして精悍な顔つきをした青年の2人だった。

「……リゼさん?」

強く待ち望んでいた人のはずなのに。
いざ目の前に現れたら、チノはなぜかきょとんとした顔になってしまった。

「チノ!!!!!!」

「わっ」

待ち望んでいた人に会えたのは、リゼにとっても同じだったから。
感極まって、思わず抱きついた。

「会いたかった、会いたかった……!! チノ……よかった、無事で……!」

「く、苦しいですよ〜、リゼさん」

チノの抗議の声も構わず、ひたすらぎゅっと抱きしめ続ける。

「感動の再会、ですね」

先ほどの緊張した空気から一転。
蛍が満面の笑顔で承太郎に語りかける。

「やれやれ……」

こういう場面は苦手だぜ、と呟き承太郎は店の奥に引っ込んでしまう。
そんな姿に、本当は嬉しいはずなのに、と蛍は苦笑する。

492和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:31:57 ID:UtG9Nc7s0
「チノ、チノっ……!」

「もう、いい加減にしてくださいリゼさん……!!」

依然として、リゼは抱き着きをやめようとはしない。

「百合の花が見えるな」

その光景を前にして、青年は一人呟くのだった。











空条承太郎、香風智乃、一条蛍、天々座理世、風見雄二。
今、ラビットハウスに集まった3人の少女と2人の青年。
彼らがまず行ったのは、朝食をとりつつの情報交換であった。

「キリマンジャロか。こんな朝にはなかなかいいものだな」

「風見さん、すぐ分かるなんてすごいです……銘柄はうちのココアさんも分からないのに」

途中、煎れたコーヒーの銘柄をすぐに言い当てた雄二にチノが尊敬の目を向けるという一幕や、

「私、一条蛍っていいます。ええと、小学5年生です」

「「小5!!!???」」馬鹿な、その姿でだと……?」

半ばお決まりのように、蛍の容姿と実年齢のギャップにリゼと雄二が驚愕するという一幕もありつつ。
情報交換は比較的円滑に進んでいく。
雄二とリゼは、殺し合いが始まってすぐに出会い、ずっと行動を共にしていたこと。
ゲームセンター付近では道路や標識がめちゃくちゃになっているのを見つけたこと。
中では女の子――越谷小鞠の死体を発見し、そして衛宮切嗣、折原臨也、蟇郡苛の3人と会ったこと。

「3人と会ったのか」

「ああ、軽くだが情報交換もした」

それから、折原たち一行との顛末を語っていく。
折原からは、小鞠を殺した犯人――平和島静雄の危険性を強調されたこと。
そこでキャスターを名乗る男のテレビ放送が流れてきたこと。

「あの放送を見たんだな、お前らも」

「そうだ! 蟇郡さんからチノに言伝てを預かってたんだ、放送局に行って友達を保護してくるって」

「それって! やっぱり、満飾艦さん……!」

「……どうやら危惧していた通りになっちまったな」

ため息をつき、座りなおす承太郎。
蟇郡は大切な友人を助けに行ったが、向かった時には既に手遅れだったということだ。
彼と接した時間は短かかったが、その内に熱いものを秘めていたことは十分に理解できた。
最も長く彼と触れ合っていたチノもその心中を思い目を伏せる。

「……彼らと分かれてからここに来るまでの間は、特に何事もない。
 さて、承太郎。今度は君たちの話も聞かせてほしいな」

雄二に促され、蛍、チノ、承太郎が顔を見合わせる。
3人は語る。
まず、チノは真っ先にここで蟇郡と会い、蛍と承太郎と折原臨也は映画館で会った後、衛宮切嗣と合流しここに来たこと。
今は雄二の持っている探知機を使って発見した2人の人物の探索に出ていた間、そのうち一人の反応が消えた――それはいまでは越谷小鞠であることがはっきりしている――こと。
衛宮が戻ってきたあと、折原と蟇郡と臨也の3人が再び探索へ出かけたこと。
その間、紅林遊月という少女の訪問の後は、残った3人で再度の情報交換などを進めていたこと。

493和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:32:34 ID:UtG9Nc7s0
「なるほどな、あの3人がゲームセンターまで来た事情……俺があそこで折原臨也に聞いたものと相違はないな」

「チノ、大変だったんだな……大丈夫だったか? 誰かに怖いことされなかったか?」

「え、ええと」

「……風見、天々座。ちょっとばかし質問があるんだが」

また暴走しそうになるリゼを抑え、承太郎は聞いておかなければならないことのために言葉を紡ぐ。

「あのテレビを見てたってなら話は早い……あいつが名乗っていた『ジル・ド・レェ』ってのがどうにも気になる。何か知ってることはないか」

その質問に、リゼもチノから離れて考え込む。

「ジル・ド・レェって、そういえば高校の世界史の授業でそんな名前を聞いたような……確か、昔のフランスの戦争で……」

「……14世紀から15世紀にかけて、フランスとイングランドとの間に百年戦争といわれる戦争があった」

静かに語り出したのは雄二。

「その末期、オルレアンの戦いでフランスの一軍を率いたジャンヌ・ダルク……
 彼女を助け、勝利に導いたのがジル・ド・レェ――。本名は確か、ジル・ド・モンモランシ=ラヴァルだったな。
 その後は錬金術や魔術に耽溺し、何百人もの幼い少年を殺害。最後は絞首刑となったはずだ」

「え? え? ちょっと待ってください、14世紀、15世紀って……?」

唐突に始まった歴史の話に、チノは戸惑いを隠せない。

「1300年代から1400年代。今から600年ほど前になるな」

「そんなバカな……! タイムマシンでもあるってのか!?」

「え、それにその、ジャンヌ・ダルクって名前、さっき……」

ここに来てからというもの数多くの不思議な事象に行き会ってきたリゼや蛍にも、この話はかなりの驚きだった。

「ああ、放送で呼ばれていたな。
 聖処女ジャンヌ・ダルク……やはり百年戦争終結の立役者。ごく普通の農民の娘だったが、神の声を聞いてフランスを率い、最後は火炙りにされた」

「とんだこった……歴史上の英雄様がこんな辺鄙な島に勢揃い、でもって片割れは勝手にくたばりましたってか? 不思議のバーゲンセールだなここは」

「まあ、どっちも本人とは限らないな。単に自分のことを過去の英雄だと思い込んだ妄想狂の類なのかもしれん。
 それに承太郎、不思議のバーゲンセールと言ったが、俺にはさっき君が見せてくれたスタンド能力とやらも十分すぎるほど不思議に見える」

「まあな……」

「それだけじゃない。このカードと腕輪。俺の支給品の剣の解説にある『魔術』。生身で街を破壊したらしい平和島静雄とかいう男。
 チノ、君の友人が記憶を消されているらしいって話もあったね。
 正直、俺がここで出くわすのは、俺の常識や理解のレベルを超えたものばかりだった。
 そういう怪しげな類のものには十分注意すべきだが、しかし逆に――」

雄二はそこで一旦言葉を切り、低い声で続ける。

「逆に、そうした力がこの腕輪、そして魂を閉じ込めるという白いカード――
 これらを何とかするための鍵になるんじゃないかと、俺は考えている」

雄二の言葉に、一同は再び緊張に包まれる。
無理もないだろう。話が、世界史の復習から一気にこの殺し合いの核心へと移ったのだから。

「たっだいまーー! ごめんねー、いやいや〜入念に調べてたらすっかり遅くなっちゃって」

その緊張を破ったのは、雰囲気に似つかわしくない軽薄な声。
最初にここからゲームセンターに向かっていった3人のうち2人。折原臨也と衛宮切嗣。
彼らが遅れて帰ってきたのだ。







494和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:33:00 ID:UtG9Nc7s0





「でもよかったよ、チノちゃんも蛍ちゃんもリゼちゃんもみんな無事で。女の子は大事だからねえ」

男女合わせて7人の大所帯となったラビットハウス。
帰ってきた臨也と切嗣の2人を加え、チノとリゼが甲斐甲斐しくコーヒーを出す中、再び各自で朝食をとりながらの情報交換となる。

「リゼちゃんたちが行ったあと、僕と衛宮さんの2人でゲームセンターをよく調べたけど。怪しいものはなかった……。ですよね。衛宮さん」

ここに入ってきたときのままの軽い口調でありながら会話の主導権を握ったのは、折原臨也。

「……ああ。折原君の言う通りだったよ」

一方、衛宮切嗣は自ら言葉は発さず、ほとんど受け答えに終始する。

「……」

そんな2人に、空条承太郎は雄二や少女たちに向けるものとは違った眼差しをときおり送っていた。

「ま、この通り僕らのほうは新しい収穫なしって有様だよ。
 ただ、僕の支給品のこのスマートフォン。これに入ってるチャットとかを使って連絡ができそうってのは分かったんだけど。
 でも、どうもこれ、あの繭ちゃんって子に監視されてるっぽいんだよねえ」

「なるほどな。外部への連絡手段がないかと思っていたが、そう簡単に渡すはずもないか。
 ……繭に監視されてるだけじゃなく、危険人物に覗き見される可能性もあるな」

臨也の言葉に、雄二が更なる懸念を述べる。
協議の結果、スマートフォンの扱いについては以下のようなことが決定した。

・位置の特定に繋がる情報は、チャットとメールではやり取りしない。
・電話で話す際は、念のためこの場にいる8人で決めた合言葉を言いあってからにする。
・電話番号とアドレスは記憶するに留めて紙などには書かない。
・腕輪や脱出に関する大事な情報の交換は直接会って行う。

「それじゃあ、チノちゃんに蛍ちゃん。僕らがいない間に何か進展とかあったのか、聞かせてもらえると嬉しいな」

そしてチノと蛍は、先ほど雄二たちに話したこととほぼ同じことを語る。
しかし、記憶を消されたらしいチノの友人――桐間紗路のことに話が及ぶと、新しい可能性が浮上してきた。

「なるほどね、その遊月ちゃんって子が会ったシャロちゃんは、チノちゃんの知ってるシャロちゃんとは明らかに様子が違っていた。
 だからシャロちゃんは、何かの力で記憶を消されてると考えるのが辻褄が合ってる……そういうわけだね。だけど、こうは考えられないかな?
 ――チノちゃんとシャロちゃんは、時間が違うんだ」

「?」

臨也と切嗣を除く6人の顔に一斉に疑問が浮かぶ。
それを前に、臨也は滔々と自説を語っていく。
ゲームセンターまで行動を共にしていた蟇郡苛。彼が住んでいた世界では、鬼龍院財閥やREVOCS社といった存在が世界の覇権を握っていたという。
しかし、臨也はそんな話は全く聞いたことがなかったのだ。

495和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:33:31 ID:UtG9Nc7s0
「ついでに言うと、俺がここに来る前は『殺人鬼ハリウッド』って名前の連続殺人犯が世間を賑わせてたんだけど……やっぱり誰も知らないって感じだよね。
 こうなると、俺たちは『全く違う世界から連れてこられた』って考えるしかないんじゃないかな」

世界が違う。
この場にいる70人――今は53人――は、それぞれ違う平行世界のような場所から連れてこられたということだ。

「あの白い部屋の女の子――彼女には、俺たちの住んでる色んな世界を移動する力があるとする。
 そう考えていくと、俺たちを『全く違う世界から連れてくる』と同時に、『全く違う時間から連れてくる』ことができても不思議じゃないと思わない?
 時間が違うとしたら、さっきのジル・ド・レェだのジャンヌ・ダルクだのがいるのも、このスマートフォンを知らない人がいるのも説明がつく。
 チノちゃんとシャロちゃんの場合だと、シャロちゃんは貧乏だったことがばれちゃったときの時間からここに来て、チノちゃんはその後の時間から来たってことになるね」

臨也の言っていることは、本来ならば少女たちには難しいものだったかもしれない。
しかし、3人ともここに来てから十分すぎるほどに不思議な経験を積んでいる。理解はできなくても、何となく受け入れることはできる。

「時間が、違う……」

臨也の言葉に、考え込んだのはチノだった。

「リゼさん。自分の記憶だと、クリスマスパーティーのあと、ココアさんが熱を出して倒れてしまったことがあるんです。
 そのこと、リゼさんは覚えていますか?」

その言葉に、明らかに困惑した顔でリゼは答える。

「いや、自分にはココアが倒れたなんてことは記憶にない……
 というか、クリスマスパーティー、って……間違いない! 自分の記憶じゃそんな季節になってもいなかったはずだ!」

「――ビンゴだ」

やり取りを聞き、してやったりという顔で指を鳴らす臨也。

「どうやらはっきりしたね。繭ちゃんには、全く違う世界を移動すると同時に、全く違う時間を移動する力がある」

「違う時間、か……厄介なことをしてくれるぜ。これはちと面倒になってきやがったな」

時間軸の違いという話を聞き、俄かに色めき立ったのは承太郎だった。

「覚えてねえかもしれねえが、名簿に載ってる俺の仲間、花京院典明とジャン=ピエール・ポルナレフ――
 こいつら2人はな、最初に会った時はDIOに肉の芽を埋め込まれて俺たちと敵対してたんだよ」

「な……それでは」

雄二の反応を受け、続ける。

「ああ、もしその敵対していた時間から来てるなら、今ごろは他の参加者を殺して回っていても不思議じゃねえ。
 ……そういう可能性があると分かっちゃ、これ以上ゆっくりはしてられねえな。
 俺はすぐにでもここを出て、DIOの館へ向かうぜ。歩いていくか……いや、俺だけなら電車のほうが早ええな」

承太郎は立ち上がり、7人の中のある人物に眼を向ける。

「衛宮。あんたは吸血鬼について色々と知ってると話してたな。危険だろうが一緒に来てもらえねえか」

言葉をかけられた切嗣は、わずかに臨也と目配せを送り合い、頷く。

「……わかった。僕でよければ力になろう」

俄かに慌ただしくなってきた空気を断つように、臨也が再び言葉を発する。

「さてと、情報交換もあらかた終わったし、僕らも空条君が出ていく前に今後どうするか決めないとね。
 レディーファーストで行こうか。蛍ちゃん、君はどうする?」

「私は……」

臨也の言葉に、あまり会話に参加していなかった蛍がゆっくり口を開く。

496和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:33:59 ID:UtG9Nc7s0
「私は、旭丘分校に行きたいです。れんちゃん……私の友達の宮内れんげちゃんも、そこに向かうはずですから」

「私はここに残ろうと思う」

続いて、リゼが口を開く。

「さっきの放送、私たちの友達は誰も名前を呼ばれなかった……。今ごろはみんなここを目指してるはずだ。
 チノも、一緒でいいよな」

リゼに促され、チノも意思を告げる。

「はい。今は私がここを預かってますから。お客さんの相手は私がつとめます」

「わかった。3人ともそれだけ強く思えるお友達がいるってのは羨ましいね……。じゃあ俺は、せいぜいそのお手伝いをさせてもらおうかな。
 蛍ちゃんと一緒に分校まで行くことにしよう。
 風見君。君はここに2人と残ってもらえるかい。君はリゼちゃんとずっと一緒だったそうだから、そばにいてあげるといい」

「了解した。俺も2人を守る盾くらいにはなれる。君たちも、それで異論はないかな」

雄二の言葉に、蛍だけは少し複雑そうな顔を見せたが、3人とも頷く。
こうして、7人のこれからの方針が決まった。

電車を利用してDIOの館に向かうのが、空条承太郎、衛宮切嗣。
旭丘分校に向かうのが、一条蛍、折原臨也。
ラビットハウスに残るのが、天々座理世、香風智乃、風見雄二。
そして、7人は午後6時になったらラビットハウスにいったん帰還する。

すでに、6時の放送から相当な時間が経過していた。











8人がこれからに向け、思い思いに支給品の確認などを行う中。
承太郎は蛍に声をかける。

「一条。お前には渡しておくものがある」

「何でしょう?――っ!!」

承太郎が蛍に渡したもの。
それは白のカード――他の誰でもない、越谷小鞠の姿が書かれたカード。

「渡すのが遅れちまったが、これはお前が持っているべきだな」

「――はい」

カードをしっかりと握りしめるその体が、以前のように震えてはいないのを見届けると、続いてチノにも声をかける。

「香風、コーヒーを馳走になったな。この借りは必ず返すぜ」

「借りなんて――」

そう言いかけて、その言葉の裏にあるものにチノは気付く。
承太郎は、必ずチノの元に戻ってくると言っているのだと。

「――わかりました、また来て下さいね。ラビットハウスは食い逃げ厳禁です」

「ああ。風見、……折原。彼女たちは頼んだ」

「この風見雄二、命に代えても守り抜くと誓おう」

「そんなに怖い顔しなくても大丈夫だって。俺の『実力』は見たでしょ?」

「承太郎君、そろそろ」

最後まで口数の少ないままだった切嗣にも促され。

「じゃあな」

承太郎はラビットハウスを後にする。







497和を以て尊しと為す(上) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:34:20 ID:UtG9Nc7s0





「さてと、蛍ちゃん。僕らもそろそろ行こうか」

「……はい」

飄々とした態度を崩さない崩さないままの臨也と、僅かに表情に固さを残す蛍。
彼ら2人もまた、歩き出そうとしていた。

「ああ、そうだ。最後にこれを言っておかないとね。
 俺は考えたんだけど、小鞠ちゃんを殺した『真犯人』は――DIOかもしれない」

「なっ――」

長くなったラビットハウスでの会合。その最後の最後に投下された爆弾。
残った面々は驚きを隠せない。

「どういうことだ、それは」

詰め寄る雄二を抑え、臨也はこれまでと変わらない口調で自説を語っていく。

「……なるほどな。確かにそれであの状況の説明はつく。
 しかし、なぜそれを肝心の承太郎には話さなかったんだ」

「そこはほら、承太郎君は肉の芽を抜き取ることができるって聞いたでしょ?
 そんな彼なら、この話をしたら当然こう思う。『自分がシズちゃんの肉の芽を抜き取ってやろう』ってね。
 けど、いい加減しつこいようだけど、シズちゃんはそもそもが超危険人物なんだよね。
 加えて今はDIOに操られて、猛獣から悪魔にランクアップしてる可能性がある。
 そんな代物を相手に、『肉の芽を抜き取るために、手加減して』ことに当たったら
 ――いくら承太郎君でも、どういうことになるか分かるよね」

「……確かに」

推理の成否は別に置くとしても、臨也の言うことは筋が通っている。

「君たちも気を付けなよ。今のシズちゃんはゴリラパワーに加えて、俺たちみたいな善良な集団の中に紛れ込む悪知恵まで身に付けてるかもしれない。
 もし見かけたら、即座に撃ち殺すなり逃げるなりするのをおすすめするね。
 それじゃあ、俺たちももう行くよ。分校で蛍ちゃんのお友達が待ってるだろうからね」

もし連絡手段が手に入っても、さっき決めたことは忘れないでね、と言い残し。
その物腰は最後まで変わらないまま。大人びた少女と2人、情報屋もまた喫茶店を出ていく。







498 ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:34:48 ID:UtG9Nc7s0
以下からは下編になります

499和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:35:38 ID:UtG9Nc7s0
7人もの参加者が集ったラビットハウス。
そのうち3人の男と1人の少女が去り、2人の少女と1人の青年がここに残っていた。

「……」

青年――風見雄二は、しかしシックな店内に似合わない、難しい顔をしていた。
その頭を悩ませるのは、先ほどの会合の中にいた1人の男の存在だった。

(衛宮……切嗣)

あの中では最も年長に見え、そして最も言葉少なだった黒いコートの男。
雄二はラビットハウスの会合の前に彼に会っている。
そして。

『(衛宮切嗣――この男が平和島静雄に罪を着せた……?)』

僅かな、疑惑を抱いた。
その彼と、空条承太郎を共に行かせても良かったのだろうか。
さらに――放送の男、「ジル・ド・レェ」の存在。

(あれが本物の青髭――ジル・ド・レェだとしても、誇大妄想狂の類だとしても。あの声は、いったい――)

気のせいなどではない。
思い返せば思い返すほど、似ている。
自分を殺人マシーンに仕立て上げたあの男、ヒース・オスロに。

「大丈夫ですか」

思いに沈んでいた雄二を現実に引き戻したのは、この喫茶店のマスターの娘だという少女――香風智乃。

「何だか怖い顔をしてらしたので……。よかったら、リゼさんみたいに休みますか」

そういって、テーブルに突っ伏して寝入るもう1人の少女……天々座理世の姿を見やる。
不慣れな状況で、精神的な疲れが限界だったのだろう。
会合が終わった後ほどなくして、こうして眠りに落ちてしまったのだ。

「……俺は、そんなに怖い顔をしていたか」

「い、いえそんな! ただ少し元気がなさそうに見えたので、その」

(……まずいな、失態だ)

護衛対象に余計な心配をかけさせるなど、あってはならないことだ。
思わぬ事態の連続で、集中力が乱れている。

「……承太郎さん、心配です」

会話が途切れてしばらくして、チノが口を開いた。

「実は承太郎さん、言っていたんです。……衛宮さんは怪しいかもしれない、帰ってきたら問い詰めるって」

「何……!」

雄二の身体に少なくない衝撃が走る。
自分が衛宮切嗣に抱いた疑念。承太郎は、その疑念をさらにはっきりした形で持っていたということだ。

「じゃあ、2人で向かったのは――問い詰めにかかろうとしたということか」

チノが小さく頷く。

(どうする……今からでも追うか?)

500和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:35:59 ID:UtG9Nc7s0
心中に浮かんだその考えを、しかしすぐに打ち消す。
ここを発った時の承太郎の顔は、月並みな言い方になるが――確かに、覚悟を決めた顔だった。
自分はその承太郎からここを任されたのだ。2人から離れるにしても、3人で行くにしても、いずれにせよ2人を危険に晒すことになる。

(もしも2人に何かがあったら――何度腹を切っても詫びようがない)

今の自分がしなければならないことは、この少女たちを守り抜くこと。
余計な心残りを残したまま任務に当たることは、市ヶ谷の人間にとっては命取りになる。
雄二は過去の経験からそれを嫌というほど学んでいた。
不安げに顔をのぞき込むチノに、ゆっくりと語る。

「チノ。承太郎は覚悟を持ってここを発ったのだろう。心配もあるが、今は彼を信頼し、無事を祈ろう。
 ――そうだな、もう一杯コーヒーを頼めるか。浅煎りで、とびきり目の覚めるようなやつを頼む」

その言葉に、チノの表情も少しだけ緩んだ。

「――はい!」


【G-7/ラビットハウス/二日目・午前】
【香風智乃@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[服装]:私服
[装備]:なし
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
    黒カード:果物ナイフ@現実、救急箱(現地調達)、チャンピオンベルト@グラップラー刃牙、グロック17@Fate/Zero、ジャスタウェイ×2@銀魂
 [思考・行動]
基本方針:皆で帰りたい
   1:ラビットハウスの店番として留守を預かる。
   2:ここでココアさんたちを待つ。探しに行くかは相談。
   3:衛宮さんと折原さんには、一応気をつけておく。
   4:承太郎さんが心配。
[備考]
※参戦時期は12羽終了後からです。
※空条承太郎、一条蛍、衛宮切嗣、折原臨也、風見雄二と情報交換しました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。


【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ】
[状態]:健康
[服装]:美浜学園の制服
[装備]:キャリコM950@Fate/Zero、アゾット剣@Fate/Zero
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
    黒カード:マグロマンのぬいぐるみ@グリザイアの果実シリーズ、腕輪発見機@現実
[思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   1:天々座理世、香風智乃を護衛。2人の意思に従う。
   2:入巣蒔菜、桐間紗路、保登心愛、宇治松千夜の保護。こちらから探しに行くかは3人で相談する。
   3:外部と連絡をとるための通信機器と白のカードの封印効果を無効化した上で腕輪を外す方法を探す
   4:非科学能力(魔術など)保有者が腕輪解除の鍵になる可能性があると判断、同時に警戒
   5:ステルスマーダーを警戒
   6:平和島静雄、衛宮切嗣、キャスター、DIO、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフを警戒
[備考]
※アニメ版グリザイアの果実終了後からの参戦。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎と情報交換しました。
※キャスターの声がヒース・オスロに似ていると感じました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。


【天々座理世@ご注文はうさぎですか?】
[状態]:健康
[服装]:メイド服・暴徒鎮圧用「アサルト」@グリザイアの果実シリーズ
[装備]:ベレッタM92@現実
[道具]:腕輪と白カード、赤カード(9/10)、青カード(10/10)
     黒カード:不明支給品0枚
[思考・行動]
基本方針:ゲームからの脱出
   0:……zzz
   1:ここで友人たちを待つ。
   3:外部との連絡手段と腕輪を外す方法も見つけたい
   4:平和島静雄、キャスター、DIO、花京院典明、ジャン=ピエール・ポルナレフを警戒
[備考]
※参戦時期は10羽以前。
※折原臨也、衛宮切嗣、蟇郡苛、空条承太郎、一条蛍、香風智乃と情報交換しました。
※参加者の時間軸がずれている可能性を認識しました。
※『越谷小毬殺人事件の真犯人はDIOである』という臨也の推理(大嘘)を聞きました。必要に応じて他の参加者にも伝える可能性があります。












501和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:36:21 ID:UtG9Nc7s0





ラビットハウスからだいぶ離れ、建物の数もまばらになってきた市街地の外れ。
その中を駅を目指して歩む2人の姿があった。
学ランを羽織った大柄な不良。そして一切の光の消えた目をした男性。
2人の間に会話はない。











不良――空条承太郎の誤算は、単純に言えば人が増えすぎたことだった。
チノに語った通り、衛宮切嗣と折原臨也が帰ってきたら、即時にでも尋問を始める予定だった。
だが、その前に風見雄二と天々座理世がやってくる。
そして2人の帰還。危惧していた通り、会話の主導権は折原臨也に握られる。
こうなってくると、集団の話し合いを無視して切嗣たちを問い詰めるというわけにはいかなくなる。
そもそもこの殺し合いにおける最優先事項は、何よりもまず主催者を打倒し、脱出を図ることにある。
風見雄二は修羅場の経験値が高そうに見えたし、頭も回る。天々座理世も守るべき対象だ。
香風智乃、一条蛍の2人もそう。せっかく結んだ友好関係。目の前で不穏な動きを見せ、雰囲気を崩壊させるような真似は避けなければならない。
いや、単に雰囲気が悪くだけならまだいいだろう。
下手に追いつめたことで、もしもキレた2人が爆弾でも使ってきたりしたら、取り返しのつかない大惨事になる。
あるいは、かつてニューヨークで不動産王に成り上がった経歴を持つ祖父ならば。
多人数を前にしながらうまく誘導尋問に持っていくようなこともできるのかもしれないが、あいにくそんなテクニックも持ち合わせていない。
承太郎は密かに話し合いの中で考えを進め、次善の策を巡らせる。

次善の策――すなわち、2人を集団から遠ざけ、危険の及ばない場所で尋問すること。
しかし、2人両方を連れ出していくのは難しいと承太郎は考える。
なぜなら、自分と折原臨也と衛宮切嗣の3人がここを離れれば、残された3人の少女を守るのは風見雄二1人だけになってしまうからだ。
そのことを理由に折原あたりが反対するのはいかにもありそうなことだ。そこで無理を通せば、これまた不和の原因が発生してしまう。
そうなれば、連れ出すのは1人。

折原臨也。
衛宮切嗣。
どちらにすべきか。

まず、折原臨也。
情報屋などど名乗る男。最初に遭遇した映画館ではいきなりナイフを向けてきた。
見るからに胡散臭く怪しげだが、逆に言えばそれだけともいえる。
承太郎が目を光らせていた範囲内では、少なくとも誰かに直接危害を加えるようなことはしていない。
ナイフの件については……実力を図るための行為として、この際100歩譲って見逃す。
また風見雄二の話では、雄二とリゼと最初に情報交換した時にも、嘘は一切ついてはいないようだった。
参加者の時間がずれているという情報を、惜しげもなく渡したというのも確かだ。
そして、次の点。これが最も大きい。
越谷小鞠の反応が腕輪探知機から消えた時、折原臨也は間違いなくラビットハウスにいたという『アリバイ』がある。
油断をしていい人物では絶対に決してないのは明らかだが、それでも折原は『危険度』は低いと見積もる。

502和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:37:08 ID:UtG9Nc7s0

そうなると、消去法で残るのは――衛宮切嗣。
越谷小鞠が死んだ瞬間、まだ姿の見えない平和島静雄と並び、全く『アリバイ』を持っていない男。
吸血鬼について知っているという彼ならば、DIOの討伐を理由に連れ出す口実も作りやすい。
ついでに言えば、DIOの館に行きたいというのも、最初からの目的であり6割方は本心だ。
最初は忌避していた電車を使用するのも、一刻も早く到着したいがため。
『容疑者』の筆頭は――定まった。











『容疑者』――衛宮切嗣の心中を占めるのは、全く別のことであった。

(DIO。……吸血鬼)

承太郎が追い求めている敵が吸血鬼であることは、最初に出会った時にすでに聞いた。
そのため、ラビットハウスに戻った後の目標は、2度目にあそこを発ったあたりからすでに決めていた。
吸血鬼といえば、多くの場合、魔術師にとっては吸血によって他者を自らの眷属としていく『死徒』のこと。
DIOは肉の芽という手法を用いるらしいが、感染を広げていくという点においてはその危険性は変わらない。
そして、万が一DIOが『真祖』に類するものであれば――その危険度ははね上がる。

衛宮切嗣はしばしば外道と称される男だ。
事実として、この場においてもすでに幼い少女をその手にかけている。
だがその行動原理は、常に多数の利となることを前提としたもの。
吸血鬼という、多数の脅威となる物がこの島にいるとなっては――それを放置しておくことはできない。

(そのためならば……空条君のことも『利用』させてもらおう)

だからこそ、『同盟者』である折原臨也と離れることになっても、承太郎の誘いに応じたのだ。
今の自分には妻のアイリスフィールも、助手の久宇舞弥もいない。
愛用してきた武器も絶対命令権である令呪もなく、さらにはあの女の細工によって術のいくつかも使えない。
普段の力を使うことができない以上は、利用できる手駒を増やすことが何としても必要だ。
空条承太郎。未だその底を見せてはいないが、スタンドという魔術とは異なる体系の力を持ち、何度も戦いを切り抜けてきたらしい。
風貌の似ている蟇郡苛とは違い、単純な直情型ではなく冷静さも持ち合わせている。
加えて今は、DIOを抹殺するという目的を共有してもいる。
利用する手駒としては、十分に価値があると当たりを付ける。

(僕にとって理想的なタイプではないだろうがね……)

舞弥のような自分の行動原理を理解して協力してくれる人材が都合よく現れるとは、この6時間あまりの経験も踏まえ、もはや毛ほども思っていない。
ならば、利用する。
聖杯戦争で、自分の一番嫌うタイプであるセイバーを利用していたように。
もっとも、先ほどの会合の中で彼が自分に鋭い視線を送ってきているのには気づいていた。
おそらくその原因は、越谷小鞠の死。
承太郎はそれについて必ず追及してくるだろう。
だが、折原臨也とのゲームセンターでの会談をやりすごしたように。
魔術師殺しの異名は伊達でも酔狂でもない。この程度の修羅場は何度も潜ってきている。
たとえ『信頼』は得られなくても、一時的な協力関係くらいには持ち込む自信は――ある。

(しかし、吸血鬼……。死徒か……)

脳裏に浮かぶのは、思い出したくない――
いや、彼の人生の全てを変え、魔術師殺しとしての道を踏み出す切っ掛けとなった、二つの記憶。
島を覆い尽くす死徒。炎を上げて墜落していく飛行機。
殺せなかった少女。殺してしまった師。

吸血鬼。
まだ見ぬその存在を前に、自らの心に少しずつ焦燥とざわつきが生まれ始めていることに、切嗣は未だ気付いてはいなかった。

503和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:37:32 ID:UtG9Nc7s0











ふと、承太郎がその歩みを止めた。
切嗣は、7、8歩ほど歩くと、同行者が遅れているのに気付き、また歩みを止める。











「衛宮。――こんな所ですまねえが、話がある」

低い声で、数メートル前で立ち止まった切嗣に向かって話しかける。

「――何かな、空条君」

切嗣も振り返り、承太郎に向き直る。

「君の見たっていう時刻表だと、電車の間隔はかなり開いていたんだろう?
 話は電車に乗ってからか、ホームに着いてからのほうがいいんじゃないかな」

「いや」

ずい、と一歩。承太郎が踏み出す。

「今ここで、聞いておかなきゃならねえ」

問い詰める場所として、駅や電車の中でなく離れた場所を選んだのも理由がある。
万が一。切嗣たちがあの少女たちに対して、よからぬ企てを働いているようなら、承太郎は全速力でラビットハウスに引き返すつもりだった。
それは電車に乗ってしまったら不可能だ。それに切嗣が電車で逃走する可能性も考慮しなければならない。

「俺が聞きてえことってのは、たった一つだ」

「あんたが俺から離れてる間、つまりゲームセンターとあのサ店を2回往復してる間――本当は何があったかってことだ」

睨みつける、という表現にふさわしいくらいの眼力で。
切嗣の虚ろな目を見据え、質問を発する。

「――はあ、何かと思えばそんなことかい」

承太郎の迫力にも構わず、切嗣はため息をついてみせる。

「僕の回答は何も変わらないし、変えようがないよ。
 最初にゲームセンターに行ったときは、平和島静雄に殺された、越谷小鞠ちゃんの死体を見つけた。
 2度目に行ったときは、折原君と一緒に入念に調べてみたけど、やっぱり手がかりは見つけられなかったよ。
 ……僕が言えるのはこれだけだ。さあ、DIOの館を目指そうか」

再び背を向けて駅に向かおうとする切嗣。

「待ちな」

その背に、承太郎は声をかける。
それは、この対話が始まってから最も鋭く切嗣を捉えた。

「俺はこれでもそこそこの数の敵とやり合ってきたからな……分かるつもりだぜ。
 衛宮、あんたはまだ何か、俺やあいつらに言ってねえことがあるんじゃねえのか」

「空条君……君は」

切嗣も再び承太郎に向き直り、その目を見据える。

「自分が何を言っているのか、分かっているのかい」

静寂が流れる。
しかし、この場に他の人間がいれば、ゴゴゴゴゴと言う音と共に、2人の間の空間が歪む錯覚を見ただろう。
空条承太郎はまだスタンドは出していない。
しかし、今にも獲物に食いつく猛獣のごとき殺気をみなぎらせている。
衛宮切嗣も、武器の類は見せない。
だが、その表情からは先ほどまでの無感情さは減り、険しさが増している。

その時、極限に達した2人の緊張を破ったのは。

「おーい! そこの2人!!」

駅の方角から聞こえてきた、少女の声だった。







504和を以て尊しと為す(下) ◆3LWjgcR03U:2015/11/15(日) 21:37:53 ID:UtG9Nc7s0





時刻は、ラビットハウスで7人が集まって情報交換を始めたころに遡る。
まんまと紅林遊月をトイレに閉じ込め、その姿を盗むことに成功した生命戦維の怪物――針目縫。
彼女は映画館の前に佇んでいた。

「どっこにしようかな〜」

一体何をしているのかというと、迷っていたのだ。
ここからどこへ向かうべきかということに。

向かう候補は3つ。
万事屋。何でも屋というなら、武器の類も豊富に揃っているかもしれない。
ゲームセンター。こんな時にゲームに興じる者がいるとはあまり思えないが、人は集まってきそうだ。
駅。この島の中でも最も人が集まりやすそうな、移動のための施設。

「そうだ、もうこうしちゃえ」

さんざん迷った末に、彼女が最終的に決めたのは。運を天に任せることだった。
地面に大きく円を描き、それを線で3分割。
3つの枠の中にそれぞれ

「よろずや☆」
「えき♪」
「げーせん><」

と書く。

「そーれっ」

そして、手にもつ片太刀バサミを、くるくると投げ上げた。
その刃先が突き立ったのは――











「おっかしいなあ〜、だっれも来ないや」

それから数刻後。少女の姿は駅のホームにあった。
しかし、こうしていれば誰かがやってくるだろうと踏んでいたのだが、人の姿も見えず、電車もやって来ない。
参加者が過度に逃げ回ることを防ぐためか、この島の電車のスピードはかなり遅くなっているのだ。

「ピルルクちゃんも大したこと教えてくれないしぃ」

「……別に、隠していることは何もないわ」

カードをつんつんとつつき回す。
カードの少女――ピルルクに話を聞いてみたものの、彼女は単に繭から参加者に協力するように言われただけだという。
ただ、彼女の読心能力「ピーピング・アナライズ」と、セレクターバトルについて最低限の話を聞くことが出来たのは収穫といえる。

「うーん、もう待ってるの飽きちゃったな★」

ベンチから立ち上がり、思い切り伸びをする。
この場における目的は有益な人間を探し出すこと。待っても誰も来ないなら自分から探しに行ったほうがよいだろう。
ついでに言えば、縫はあの鬼龍院羅暁にすら、制御は不能と言わしめた気まぐれさの持ち主でもある。
参加者を待ち伏せる作戦を立ててはいたが、一か所にじっと長く留まって、来るかも分からない人間を待つようなことには向いていないのだ。
時間は間もなく午前8時。
次に向かうのはどこにしようか。
最初に決めた行き先のうち、万事屋とゲームセンターはほとんど同じ距離にある。


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