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作品投下スレ

1 ◆rgg2/UGNQg:2016/03/03(木) 22:17:29 ID:Y2q7WhB.
本スレ転載用スレが1000ちかく、ロワの進行がしたらば進行になったので必要かと思って立てておきました。
2chスレで進行になった場合、または議論等でこのスレが不必要になった場合は削除してください。

2名無しさんは砕けない:2016/03/09(水) 22:11:00 ID:HXH82Yu6
前スレ埋めたほうがいいのかね?
なんかまた過疎っぽい周期に入った感じがしてるけど

3名無しさんは砕けない:2016/03/10(木) 22:51:25 ID:le.r8r2g
あと1作くらいは入りそうだしまだいいっしょ

4名無しさんは砕けない:2016/03/27(日) 22:10:55 ID:4SeRmoI.
よくよく考えたら本スレ転載用スレ第2部のほうが良くないか?
どっちでもいいか

5名無しさんは砕けない:2016/03/29(火) 18:05:06 ID:Mqhd.oxY
今転載する本スレがない状態だしいいんでないか?
あと今来てる予約キャラが多めだし、前スレ埋めたほうがいい気がするんだが、どうだろうか

6名無しさんは砕けない:2016/03/30(水) 00:25:58 ID:F/ZXv2iw
埋めちゃおうZE

7 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:39:37 ID:kiEb6VHY


なにか大きなものを切り崩したような音が聞こえた。地面が揺れて、窓枠が揺れてやかましく鳴いた。
トリッシュは時計を一瞬見つめ、それからナランチャを振り返った。
ナランチャは固く結んでいた腕をのろのろとほどいた。相変わらず席にはつかず、立ったままだった。
壁に背中をもたらせたまま、目の前にレーダーを展開し状況を報告する。左目は暗く、しつこいくらいにプロシュートから離れなかった。

「―――この家の周りをうろつく反応が五つ、西に大きな反応が一つ。その大きな反応を中心に衛星みたいに動いてる奴が全部で六つ。
 数が減ったり増えたりしてるから、きっと戦闘中なんだろう。じりじりとこっちに寄ってきてる。このままいけば十分もしないうちに俺たちとかち合う」
「……遺体が反応する方向と一緒、ですね」


千帆が不安げにプロシュートの顔を見た。部屋の隅でシルバー・バレットが首を振り、低く嘶いた。
しばらく沈黙が続いた。風が窓を揺する音、地面が震えて花や椅子が擦れる音―――どんな音でも不安をわき起こさないものはなかった。冷たい空気が低いとろこにたまり込むように、そこにいた六人(と一匹)の胸の内に不安が大きく忍び込んでいった。

なし崩しに築かれた、やわな同盟がぐらついている。同盟でありながら協力する目的が霧で覆われていた。
本当に協力する必要はあるのか。協力して解決できるものなのだろうか。
ぴしゃりと膝を叩く音で皆が我に返った。全員の視線がプロシュートに向かう。一人一人と目線を合わせながら、男は慎重に言葉を選んだ。


「できすぎた結果はこの際脇においておくとしよう。
 誰かが恐竜を使って俺たちをカーズとぶつけようが、ぶつけまいが、どっちにしろやつはほうっておけない驚異だ。
 逃げようにもヤツの―――柱の男のスピードじゃいずれ追いつかれる。遺体という『レーダー』を互いに持っていることだしな。
 だからここは逃げずに立ち向かう―――今ここにいる全員で、カーズを……―――ぶッ殺す!」

少しだけ、不安がまぎれた。プロシュートの言葉には確かな覚悟があったから。
何をしてでも成し遂げてやる、という鋭い目が全員の目を覗き込むように見返していった。
ナランチャはほんの一瞬だけ男のことを警戒することを忘れた。
固く覆われた殻の中に強引に割り込んでくる男……プロシュートはブチャラティを思い起こさせた。ナランチャはそんなことを考えた自分が嫌になった。


違う、コイツはトリッシュを狙う『悪』なんだ―――吸い込まれることに抗うように、首を振って意識を集中させた。ナランチャの耳にプロシュートの言葉が力強く響いた。

8 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:44:03 ID:kiEb6VHY



「前に立つのは俺とイギーと……アンタだ、ボスの娘」
「トリッシュよ。名前で呼んでもらっても構わないわ」

トリッシュは素早く返し、微笑んだ。シーザーはその美しい横顔を眺め、ため息を漏らした。気を抜けば恋に落ちてしまいそうだった。
プロシュートの顔に奇妙なシワが浮かんだ。強引に笑おうとしたところを無理やり止めたかのような、不自然な表情だった。千帆は隣で物珍しそうに、そんな男の顔を眺めた。
プロシュートは気を取り直すとまた険しい顔に戻り、話を進めた。

「俺と、イギーと―――……トリッシュ。俺たちの狙いはヤツの首輪がどうなっているか、確認すること。
 ダメージを与えることが目的じゃあない。だから交戦回数はできるだけ少なくする。足止めして状況把握に務める。
 仮に首輪が正常に働いているようだったら数でやつを押しつぶす。シーザー、ナランチャの二人にも戦いに参加してもらう」
「首輪が動いていなかったら?」
「その時は『こいつ』の出番だ」

シーザーの目の前に突きつけられた、しなびれた遺体。見た目はただの汚い干物のようで、シーザーは身を引くのを我慢するのに苦労した。

「ヤツから遺体を奪い、首輪を起動させてから今度こそヤツを吹き飛ばす。
 シーザー、アンタが最初前に立たないのはそのためだ。俺たちの戦い次第でアンタが一番負担を負いかねない」

シーザーは頷き、拳を握った。

「ナランチャはレーダーで周囲の確認、不安要素の排除に務める。恐竜たち、ほかの参加者たち―――できるだけ俺たちが戦いに集中できるように、頼む」
「私と玉美さんは……?」
「ナランチャと一緒に行動してくれ。お前たちの役割は遺体の死守。お前たちが遺体を守るんだ。いいな、信頼してるぜ」


言い残したことは何もないように思えた。時間も、危機も迫っていた。プロシュートが席を立ったのを合図にそれぞれが戦いの準備を始めた。
ざわつく仲間たちの背中にプロシュートは小さく言った。

「犬死にするんじゃねーぞ、てめェら」





9 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:44:49 ID:kiEb6VHY
「おい、ムーロロ。お客様はお疲れのようだぞ」
「琢馬ーッ! 琢ッ馬―! いねェのか、おいッ!」
「いや、僕は……―――」

宮本は青白い顔で何事かをもごもごと呟いた。ムーロロの声でそれは遮られ、誰の耳にも届かなかった。
そうしているうちに扉が開き、琢馬がのっそりと姿を表した。扉を半分ほど開くと部屋に入らないまま顔だけを覗かせた。
宮本以上に不健康で、不機嫌そうだった。ムーロロはそんな迷惑そうな表情を無視して一方的に話を進めた。

「お客さんだ。宮本輝之輔と吉良吉影さんだ。お客さんはどうやらお疲れのようなんでな、部屋に案内してやってくれ」

宮本は琢馬の背後から現れた三匹の恐竜を見て、たちまち反論することを諦めた。どうにでもなれ、といった気持ちだった。
諦めと疲れで体を引きずりながら扉へと向かう。琢馬はほんの少しだけ脇に避けると宮本が通れるように道を開けてやった。
琢馬は部屋をぐるりと見渡した。煙が充満し、荷物が散乱し、机の上には地図と何かを表すピンのようなものが転がっているのが目に映った。そして不愉快そうに立ちすくむ一人のサラリーマンがいることも。
最後にほんの少しだけ地図に目をやると、琢馬は扉を閉め、部屋から出ていった。直前に一匹の恐竜が入れ替わるように部屋に滑り込んだ。
そうしてそこにはディエゴ、ムーロロ、吉良吉影が残された。

「まぁ、立ち話もなんだ。座ってくれよ、吉良吉影」

ムーロロの言葉を無視して、吉良は一直線に窓に向かっていった。部屋中にある窓を全開にして、煙を追い払った。
続いてジャケットを脱いで角に置いてあったハンガーにかける。椅子に座る前にハンカチでタバコの灰を落として、ようやく腰を下ろした。
匂いと汚れにたいそう迷惑そうな表情を吉良は浮かべていた。出迎えの準備をするには急だったもんで、とディエゴが見え透いた嘘で茶化したがぴくりとも眉を動かさなかった。
ムーロロは温め直しておいたポットからお湯を注ぐと吉良の前に茶を注いだ。吉良は黙り込んだままだった。

「毒は入っちゃいやしねぇよ」

吉良のカップから一口飲むと、カップを手元に押してよこす。吉良は干からびた鼠を差し出されたかのような目でカップを見た。
無言のままポットに手を伸ばすと、違うカップに茶を改めてついで、飲んだ。ムーロロは舌打ちをした。ディエゴはクスクス笑いを堪えられなかった。
それから吉良は時間をかけてネクタイを緩め、大げさに肩を鳴らした。もう一口茶を飲むと、目の前に座る二人の顔を眺めた。

「それで?」

反応はない。ディエゴは人を小馬鹿にした笑みを貼り付け、ムーロロはむっつりとしまま吉良を睨んでいる。
恐竜たちに囲まれ、半ば強引にここまで連れてこられた吉良のイライラは相当なものだった。
カップを下ろすと、ガチャン、と危なっかしい音がした。苛立ちを自覚していたがキラはそれを堪えられなかった。

「それで? 君たちは随分と私たちのことを知っているようだが、いったいどういう目論見で私たちを―――私をここに呼んだんだね」

部屋に残されたのが自分一人という点も気に入らなかった。部屋に案内されたかったのはむしろ自分だ。
交渉事は宮本に任せたかった。シャワーが浴びたい。ベットで一晩とは言わないが、数時間仮眠がとりたい。
平穏を求めて体が一斉に抗議している。煙の残り香がむっと吉良の鼻をくすぐった。吉良は額を両手でこすると、机の上に荒々しく手をおろした。野蛮な音を立てないように意識しなければならなかった。
ディエゴは組んでいた足をほどくと前のめりになって、ゆっくりと話し始めた。そののろまさが吉良の神経を逆撫でにする。


「アンタと手を組みたい。おっと、握手をする気はないぜ。アンタの手がどれだけ綺麗だろうと触れるつもりはない」

10 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:45:22 ID:kiEb6VHY
吉良はもう我慢しなかった。青筋がぴくぴくと動くのが自分でもわかった。
気に入らない。自分の能力がバレているのが気に入らない。優位を振りかざして自分の自由を侵されているのが気に入らない。
いっそのことここで戦ってやろうかとも思った。平穏なあの世界なら迷わずそうしただろう。自分の能力がバレることは決してあってはならないことなのだから。
吉良はハンカチで手首についた汚れをおとし、右の爪をまじまじと見た。ぼそぼそと噛み殺した声で返事をする。

「そこまでわかっているのなら、私がどれだけプライベートを大切にするかもわかっているはずだ」
「今のところアンタのスタンド能力をべらべらしゃべろうって気はこれっぽちもない」
「通帳を盗んでおいて金に手をつけてないと言われたら君は信用できるのか? とんだお人好しだな」

ディエゴの笑い声は場違いに部屋に響いた。隅にいた恐竜が顔を上げ、まるで賛同するように鼻を左右に降った。
ムーロロは帽子をかぶりなおすと二人の会話に割って入った。

「まァまァ、ミスター・吉良……俺たちはアンタと対立する気は一切ないんだ。それどころか、ひょっとしたら俺たちと組む必要すらないかもしれない。
 アンタに望んでいることは、ぶっちゃけた話だ、ある時間までここにいて欲しい、ただそれだけのことだ」

吉良が鼻を鳴らした。不信感が体中からにじみ出ている。このままではマズイな、とムーロロは思った。
対立することが考えになかったわけではない。だが今はまずい。近距離でのキラー・クイーンの強さは充分観察済みだ。
今戦いが起きれば三人の中で真っ先に自分が始末される。ムーロロは横目でディエゴを眺めた。両手を頭の後ろで組み、足は机の上。
援護は期待できない。あるいは自分は試されているのだろうか。舌打ちの代わりにもう一度帽子をかぶり直した。使いぱしりが板についてしまいそうだった。

「もちろんただとは言わないさ。俺たちが差し出せるもんはそれ相応のものを用意してある。
 アンタが望む平穏と安心とやらを俺たちは提供するつもりだ」

ムーロロは情報のカードを切った。地図に広げられた現状を吉良に余すことなく伝えていく。遺体については伏せたままだった。
ヴァレンタインについて、ジョースター一族について、そしてカーズについて。
トランプたちから情報が入ればリアルタイムで駒をさりげなく動かした。吉良は姿勢を正した。少なくとも興味は引いたようだった。五分ほどで話が終わったが、その間、吉良は一言も話を挟まなかった。


「ナンセンスだ」

ムーロロが話を終えた直後、吉良はバッサリ話を切って捨てた。冷え冷えとした視線が二人に向けられた。ディエゴは小さく、鼻で笑った。

「アメリカやイタリアには――ー君たちは見たところそこら辺の出身だろ?―――捕らぬ狸の皮算用という言葉がないようだな。
 それになにより気に食わないのが、結局のところ直接カーズと対峙するのは私だけじゃないか。
 君たちはぬくぬくと安全地帯から配下を使って『サポート』とやらをするだけだ。それで労を惜しまない、というつもりなら―――私を舐め腐るにもほどがある」

風が窓辺のカーテンをゆっくりと揺らしていた。部屋にかかっていた靄はすっかり去り、熱もいつの間にか失われていた。
三人は黙り込んだままだった。誰も視線を合わせようとしなかったし、話を始めようともしなかった。諦めと気だるさが部屋に充満していった。
吉良が席を立った。扉まで向かうと一度だけ二人に視線を送り、そのままドアノブを掴んだ。それを引き止めたのは―――背後でかさかさと何かが動く音とムーロロの声。


「くれてやるよ」

11 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:46:07 ID:kiEb6VHY
振り返ってみれば机の上には干からびた『なにか』が転がっていた。
吉良は黙ってそれを見つめた。自分を引き止めるほどの価値がそんなものにあるとは到底思えなかった。

ムーロロは手札を切り尽くした、と言わんばかりに椅子に身を投げ出し返事を待っている。吉良はムーロロの隣に座ったディエゴに目をやった。
平静を装っていたが、驚きを噛み殺そうと頬が神経質そうに震えていた。あの余裕ぶったディエゴの表情は、一欠片も残っていなかった。
吉良は手元に目線を落とし、ゆっくりと扉を占めた。そのまま扉に寄りかかり、腕を組む。ムーロロの視線が刺すように吉良に注がれていた。吉良は黙ってどちらかが―――ムーロロか、ディエゴかが口を開くのを待った。しばらく無言が続いたが、ムーロロが口を開いた。


「身につければ―――身に付けるって言葉が適当かは俺にはわからんが―――少なくとも『平穏』の一部は手に入るぜ」


そういってムーロロは首をなでた。吉良は話が飲み込めず、無表情のまま二人を見返した。だが『平穏』の意味を理解したとき、吉良は思わず扉から腰を浮かした。
ムーロロはもう一度首元をなで、隣に座るディエゴの方を顎でしゃくった。ディエゴは首をすくめた。同意か、諦めかはそこからは読み取れなかった。
吉良は少しの間ためらったが、ゆっくりとテーブルに近づいた。椅子には座らなかった。机の上の遺体に目をやり、しばし考え込んだ。ムーロロは吉良の言葉を待った。


「この館に水は通ってるのかね」


考えあぐね、ひねり出したのはそんな問いだった。吉良のその言葉を聞き、ムーロロはニヤリと笑いを浮かべた。
遺体に手を伸ばすと、そのまま吉良の方へと押しやった。吉良はまだ手を伸ばさなかった。だが視線は遺体に向けられたままだった。

「もちろん」
「君がさっき言った『ある時間』というのはおおよそ何時までの事なんだ」
「そうだな、ざっと見積もって今から二時間ってところか」
「なるほど」

なるほど、の言葉の裏に込められた同意。吉良が目線を遺体から離せないうちに、ムーロロとディエゴはさっと視線を交わしあった。
駒はどうやら思い通り動いてくれたようだった。カードと恐竜から入った情報によると、カーズは計算通り東の遺体に惹きつけられ、集団と戦いに入るようだった。
そして仮にカーズが戦いに勝利しても―――二人の手元には少なくとも『エース』が残った。
あとは現状から目を離さず、対処を誤らなければ盤上がひっくりかえることはない。もしも、このまま、何も起こらなければ―――。



 ―――突風が部屋を通り抜け、窓をガタガタと大きく揺らした。

12 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:46:59 ID:kiEb6VHY




「興味深い話ですね」



吉良は驚いたように顔を上げた。ディエゴとムーロロは凍りついた。ありえない第四の声が部屋の隅から聞こえてきた。
ムーロロはゆっくりと席から立ち上がると、後ろを振り返った。腕がブルブルと震えて、それをごまかそうと帽子をかぶり直したがうまくいかなかった。
危うく帽子を取り落としそうになったので、そのまま顎をなでて、それをごまかそうとした。
ディエゴはやれやれと小さく呟き、皮肉な笑みを浮かべた。振り向いた先には……一人の少年がいた。



「カーズ討伐同盟―――僕もぜひ一枚かませて欲しいと思います」



やたらと朗らかな声がこの場には場違いだった。月が背後からさし、その顔に影を落としていた。
だがムーロロは知っている。この耳をくすぐる心地よい『彼』の声を知っているッ!

春になり、花が一斉に芽吹くように、安心感と光が部屋中に咲き誇っていった。ジョルノ・ジョバァーナは控えめな笑みを浮かべ真っ直ぐな視線を三人に向けた。
その足元にはぺしゃんこになった恐竜の皮がうずくまっていた。それもムーロロが見つめている間にゆっくりと姿を変え、最後には可愛らしい華が咲いた。

ディエゴはしばらくの間窓枠に腰掛けた少年を見つめていたが、のろのろと時間をかけて動き出すと、吉良とジョルノが座れるように椅子と机をきれいにしてやった。そうして諦めたように、どさりと椅子に身を投げ出した。
ジョルノは控えめにその様子を眺めていた。ディエゴが動きを止めたのを見て、窓枠から腰を上げる。二人の元に近寄り、一礼してから椅子に座った。
吉良は混乱した表情を浮かべていたが、同じように最後には席に着いた。机の上にはまだ遺体が転がっており、吉良はそれに手を伸ばしたいという欲望と必死で戦っているようにも見えた。

ディエゴもムーロロも何も言えないうちに、ジョルノはさっと手を伸ばした。机の上の遺体が吉良の手元からズズズ……と音を立ててジョルノの方へと引き寄せられた。三人は―――めいめい驚きを必死で隠そうと努力を払い―――黙ってそれを見つめた。
すっかり手元に遺体の脊椎を動かすと、ジョルノは耳元へと手を伸ばし、ゆっくりと『それ』をおろした。
ジョルノは『遺体の左耳』を机の上に転がし、三人の顔をそれぞれ眺めた。そして落ち着いた、はっきりとした声で問いかけた。



「僕の話を聞いてもらっても?」


誰も返事も反論も用意していなかった。ジョルノはさわやかな笑みを浮かべ、それでも誰かが口を開いてくれるのを待っていた。





13 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:48:03 ID:kiEb6VHY


頭上では誰も観るはずのない信号機が、黙って赤いライトを照らしていた。
数秒するうちにそれは青いフラッシュに変わり、トリッシュの隣に立つ男の顔に光を投げかけた。
二人は十字路の交差点、そのど真ん中に立ち、敵を待った。時々恐竜たちの叫びが聞こえて、トリッシュの中で不安が膨らんだ。

「ギャングには怯えないくせに、古代生物にはビビるのか」

プロシュートは真正面を向いたまま、そう話しかけた。トリッシュは流し目で男を見て、表情を変えないようにしながら返事をした。

「アタシ、こう見えて臆病なのよ。父に会う時もそうだった。足が震えて立てなくなるぐらい、怖かった」
「父親は父親でしかない。怖いとか怖くないとかどうこう心配するってのは……親子らしくはないな」
「あの人も同じことを言ってたわ」

ブチャラティも―――その言葉を聞いたプロシュートは眉をひそめ……返事をする前に、現れた影に目を凝らした。
道路の突き当たり、十字路を曲がって一人の影がこちらに向かってきている。急いではいない。隠れてもいない。
ひたひたと柔らかい足音を立てながら、着実に二人のもとへ近づいてくる。左手には死にかけの恐竜がぶら下げられていた。刀で貫かれ、断末魔の痙攣を上げている。

街灯がカーズに光を落とした。長い髪が顔半分を覆うように、怪しく揺れている。トリッシュにはカーズが笑っているようにも見えた。
カーズが左の刃を引っ込めると、つられて恐竜の体がカーズの体に引きずり込まれていった。来るぞ、と低い声でプロシュートが言った。


二人の頭上で信号が赤に変わった。カーズの体が沈み、そして素早い動きで二人にせまった―――赤い余韻がカーズを追った。


捉えきれない影が、二人の間に割って入るように飛び込んだ。プロシュートがトリッシュを突き飛ばし、カーズの前に立ちはだかる。
刃が振り上げられた。赤いフラッシュが三人の顔を照らした。プロシュート、とトリッシュの叫び声が道路に響いた。
グレイトフル・デッドの腕をかいくぐり、カーズの刃が振り下ろされた。







14 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:51:56 ID:kiEb6VHY
遠いどこかで雷鳴が轟いたような―――嫌な空気の震えをジョセフは感じ取った気がした。
しばらくそのまま耳をすませたが、何も聞こえなかった。ジョルノのやつ、大丈夫なんだろうなと思わずひとりつぶやいた。
振り返って見れば、黒く崩れた空条邸がジョセフにむかって倒れこむように立っていた。何かしら不吉な感じがする光景で、向かいの道路に場所を移した。


「承太郎はなし、おじいちゃんもなし―――いやァァアな感じだぜ〜〜〜〜〜」


ジョセフは頬を引っかきながら左手からスタンドを出した。紫色の茨が地面を撫で回すように伸びていった。
待つのが自分の役割だと分かっていたが、のんびりするのも性には合わない。ガンバルのも気合を入れるのも大嫌いだが、みずみすチャンスを逃すのはもっと嫌いだった。
ジョセフは右耳に手を伸ばすと、そこから『遺体』を引きずり出した。出現した地図を辿り、ナヴォーナ広場でみつけたものだ。


『ジョセフ、僕はあなたを信頼しました。だからあなたも僕を信頼して欲しい。
 この遺体、片方をあなたに渡します。これをもってあなたは承太郎と合流してください。
 はぐれてしまっても僕たちには血の繋がりがある。加えてこの遺体の感覚をたどってもらえれば必ず会えます。
 大丈夫、僕には策がありますから―――」


「お前を信頼するのはいいけどよォ〜〜、もうちょっとかっちょよく会う方法ってのはないもんかね」

改めて見ると少し……いや、かなり気色が悪い。誰のとも知れない朽ちない遺体。人の体に自由に出入りする遺体。
指先でつまんで匂いを嗅いだが、かすかにかび臭いだけで特別なにがあるってわけでもなかった。
気持ちわりィ〜〜! と一人でふざけてみせたが、反応してくれる仲間がいるわけでもなく……ジョセフは虚しくなって仕事に取り掛かることにした。

遺体を手の中に収め、神経を集中する。目には見えないがたしかに感じる遺体の呼吸―――或いはそれが持つパワーを探った。
そしてそれを茨の先へと流し込んでいく。なかなかうまくはいかないが、時間はある。ゆっくり、ゆっくりと時間をかけていく。自然と使い慣れた―――いつもの波紋の呼吸が戻っていた。


「釣れたぜ! 大漁、大漁!」


地面に浮かんだのは会場全体を表す地図。そこに浮かんだ遺体全ての在り処。

ジョルノに信頼された、と大見得切られた以上大人しくするってのが大人な態度だろう。
だが残念なことにジョセフは大人になった気もないし、いつまでも子供心を忘れらないタイプだ。少なくとも年をとってもそうありたいと思ってる。(60になってもアラビアのロレンスに憧れてるような)。
ならば空条邸でとどまっているなんていうのは無理な話だった。ようするに承太郎と合流すればいいんだろ、とジョセフは勝手に納得していた。

「ど・れ・に・し・よ・う・か なァ〜〜〜?」

DIOの館に反応が四つ、その西に二つ。東の市街地にも四つ。南の方に残り二の反応が記されている。
ジョセフはニンマリと笑った。暗闇の中で白い歯がキラリと光った。疲れてはいたが気分はいい。
やってやろうじゃないか―――前進と希望がジョセフの胸で広がり、そして決断はくだされた。

15 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:52:29 ID:C/bREDIo
【D-3 DIOの館/一日目 夜中】
【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康
[装備]:遺体の左目、地下地図、カイロ警察の拳銃(6/6)
[道具]:基本支給品×4(一食消費)、鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、シュトロハイムの足を断ち切った斧
    ランダム支給品7〜12、全て確認済み
   (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、犬好きの子供、徐倫、F・F、アナスイ、織笠花恵)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る。
1.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる。
[備考]
※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。
※承太郎の支給品(1つのみ)、花京院の支給品(1つのみ)、仗助の支給品(2つ)を開封しました。
 それぞれ順にSBR第一レース後のシャンパン、リサリサのタバコ、レコードプレーヤーと90年代ベストヒット!レコード集でした。

【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット、フロリダ州警察の拳銃(ベレッタ92D 弾数:15/15)、予備弾薬15発×2セット、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖
    不明支給品(2〜10、全て確認済み、遺体はありません)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が有利になるよう動く。
1.ディエゴを利用して遺体を揃える。ディエゴだってその気になればいつでも殺せる……のだろうか。
2.琢馬を手駒として引き留めておきたい?
[備考]
※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
 会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。

【吉良吉影】
[スタンド]:『キラークイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(大・応急手当済)
[装備]:波紋入りの薔薇、空条貞夫の私服(普段着)
[道具]:基本支給品 バイク(三部/DIO戦で承太郎とポルナレフが乗ったもの) 、川尻しのぶの右手首、
    地下地図、紫外線照射装置、スロー・ダンサー(未開封)、ランダム支給品2〜3(しのぶ、吉良・確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する
0.自分が優位になれるよう立ち回る
1.宮本輝之助をカーズと接触させ、カーズ暗殺を計画
2.宮本の行動に協力(するフリを)して参加者と接触、方針1の基盤とする。無論そこで自分の正体を晒す気はない
3.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい
[備考]
※宮本輝之助の首輪を爆弾化しました。『爆弾に触れた相手を消し飛ばす』ものです(166話『悪の教典』でしのぶがなっていた状態と同じです)
※波紋の治療により傷はほとんど治りましたが、溶けた左手首はそのままです。応急処置だけ済ませました。
※吉良が確認したのは168話(Trace)の承太郎達、169話(トリニティ・ブラッド)のトリッシュ達と、教会地下のDIO・ジョルノの戦闘、
 地上でのイギー・ヴァニラ達の戦闘です。具体的に誰を補足しているかは不明です。
※吉良が今後ジョニィに接触するかどうかは未定です。以降の書き手さんにお任せします。
※宮本と細かい情報交換は(どちらも必要性を感じていないため)していません。

16 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:52:53 ID:kiEb6VHY
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(中)、精神疲労(小)、両腕欠損(違和感大)
[装備]:遺体の左耳
[道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.この場を丸く収め、『夢』実現に向けて行動する。
2.ジョセフ・承太郎と合流する。



【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(大)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、
    不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る。
0.???
1.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない。
[備考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
 また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
 また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。

【宮本輝之輔】
[スタンド]:『エニグマ』
[時間軸]:仗助に本にされる直前
[状態]:左耳たぶ欠損(止血済)、心臓動脈に死の結婚指輪
[装備]:コルト・パイソン、『爆弾化』した首輪(本人は気付いていない)
[道具]:重ちーのウイスキー、壊れた首輪(SPW)、フーゴの紙、拡声器
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男を倒す、自分も生き残る、両方やる
0.???
1.柱の男や死の結婚指輪について情報を集める、そのためにジョセフとシーザーを探す
2.1のため、紙にした少年を治療できる方法を探す
3.吉良とともに行動する。なるべく多くの参加者にカーズの伝言を伝える
4.体内にある『死の結婚指輪』をどうにかしたい

※フーゴをシーザーではないかと思っています。
※思考1について本人(ジョセフ、シーザー)以外に話す気は全くありません。
 従って思考1、2について自分から誰かに聞くことはできるだけしないつもりです。
 シーザーについては外見がわからないため『欧州の外国人男性』を見かけたら名前までは調べると決めています。
※第二放送をしっかり聞いていません。覚えているのは152話『新・戦闘潮流』で見た知り合い(ワムウ、仗助、噴上ら)が呼ばれなかったことぐらいです。
 吉良に聞くなど手段はありますが、本人の思考がそこに至っていない状態です。
 第三放送は聞いていました。
※カーズから『第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる』という伝言を受けました。
※死の結婚指輪を埋め込まれました。タイムリミットは2日目 黎明頃です。
※夕方(シーザーが出て行ってからルーシーが来るまで)にDIOの館を捜索し、拡声器を入手していました。
 それに伴い、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会の倒壊も目撃していました。

17 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:53:12 ID:kiEb6VHY
【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:紙化、右腕消失、脇腹・左足負傷(波紋で止血済)、大量出血
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
1.……(思考不能)
[備考]
※フーゴの容体は深刻です。危篤状態は脱しましたが、いつ急変してもおかしくありません。
 ただし『エニグマ』の能力で紙になっている間は変化しません。
※第三放送を聞き逃しました。


【備考】
※D-4南西にスーパーフライの鉄塔が建ちました。大きさとしては目立ちますが、カオスローマなので特別おかしくは見えないかも。
 原作通り中に入った誰かひとりだけを閉じ込めます。
 現在サヴェジガーデン一羽が居残っていますが、何故これで居残りが成立しているのかは後の書き手さんにお任せします。
※D-3の路地、フーゴが眠っていた位置にカーズの伝言(第四放送時、会場の中央に来た者は首輪をはずしてやる。カーズより)が書かれた紙が置かれています。
 シーザーたちはまだ気が付いていません。




【D-6 中央部 市街地/1日目 夜中】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:健康、覚悟完了
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 28/60)、手榴弾セット(閃光弾・催涙弾×2)
[道具]:基本支給品(水×6)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具、露伴のバイク、打ち上げ花火
    ゾンビ馬(消費:小)、ブラフォードの首輪、ワムウの首輪、 不明支給品1〜2
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還
0.カーズをぶっ殺す。
1.大統領に悟られないようジョニィに接触する
2.育朗とワムウの遺志は俺たち二人で"繋ぐ"
3.残された暗殺チームの誇りを持ってターゲットは絶対に殺害する
[備考]
※支給品を整理しました。基本支給品×3、大型スレッジ・ハンマーがB-4の民家に放置されています
 また育朗の支給品の内1つは開けた事になっていて、本物はプロシュートが隠し持っています
※支給品のうち、一つは「ヘルメット」でした。千帆に譲りました。また所持していたワルサーP99とその予備弾薬も玉美に譲りました。

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:健康
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体
[道具]:基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
1.今の声……ルーシー!?
2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき?
3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく

【イギー】
[スタンド]:『ザ・フール』
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する。
0.現状に興味なし。死なない程度に頑張る。
1.あいつ(フーゴ)、どこ行きやがった!?
2.コーヒーガム(シーザー)と行動、穴だらけ(フーゴ)、フーゴの仲間と合流したい
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わないけど、DIOを倒したのでちょっと見直した

18 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:53:37 ID:kiEb6VHY
【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)、ワルサーP99(04/20、予備弾薬40)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.カーズ討伐に協力するが、トリッシュの身を第一優先。
1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう
2.玉美は気に入らないけど、プロシュートはもっと気に入らない

【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:健康、強い決意
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)、遺体の心臓、遺体の胴体
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、ノート、地下地図、応急処置セット(少量使用) 、顔写真付き参加者名簿、大量の角砂糖
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く 。その為に参加者に取材をする
0.カーズ殺害に少しでも協力する。
1.大統領に悟られないようジョニィに接触する
2.主催者の目的・動機を考察する
3.次に琢馬兄さんに会えたらちゃんと話をする
[ノートの内容]
プロシュート、千帆について:小説の原案メモ(173話 無粋 の時点までに書いたもの)を簡単に書き直したもの+現時点までの経緯
橋沢育朗について:原作〜176話 激闘 までの経緯
ワムウについて:柱の男と言う種族についてと152話 新・戦闘潮流 までの経緯
188話 風にかえる怪物たち のくだりはプロシュートが書きましたがホッチキスで留められて読めない状態です
[備考]
※トリッシュとプロシュートからそれぞれ遺体を譲り受けました。

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発の傷跡
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット
[道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本
   ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC、イギーの不明支給品1
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒。
1.カーズと戦う。
2.フーゴを探し、保護する。
3.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す。
[備考]
※DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。
※フーゴの言う『ジョジョ』をジョセフの事だと誤解しています。




【D-5 空条邸/1日目 夜中】
【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを打破し、幸せに末永く生きる。
1.遺体の回収を目指す。
2.承太郎、ジョルノと合流する。

19 ◆c.g94qO9.A:2016/04/04(月) 21:54:57 ID:kiEb6VHY
以上です。題名は、仮ですが(しっくりこなかったので)「DEUCE TO 7」です。
なにか抜け等ありましたら教えてください。
よろしくお願いします。

20名無しさんは砕けない:2016/04/08(金) 11:38:21 ID:4DWP9NYg
投下乙です。いろんなキャラが一気に動き出した感じがしますね。
なによりもジョルノ!その胆力に度肝を抜かされました。でもジョルノならやりかねないという説得力もあり・・・
今後がわくわくする作品でした。

21名無しさんは砕けない:2016/04/11(月) 00:06:35 ID:aAV6WYrA
遅くなりましたが投下乙です。
ムーロロとディエゴ、小賢しくも狡猾な男二人の退廃的な雰囲気がすごく「らしい」気がしました。
シーザーがトリッシュにうっとりきたのは1stの再現?ニヤリとさせられましたね。信用できる人間を探すための
ザ・ロックの使い方はこう来たか!と驚かされました。
ついに大規模作戦に打って出たがジョルノの登場により混迷を極めるDIOの館。
混乱の中生き残りを賭けて即席チームでカーズに立ち向かうトリッシュ達。そしてジョセフはどこに向かうのか!?

疑問なのですが、ディエゴはあれだけの恐竜をどこから調達してきたのでしょうか。
また宮本が前話の最後で拡声器を手にしていましたが、結局使われなかったのでしょうか。
宮本が残したメモをシーザーが見つけたのかどうかも本文中に説明があればよかったかなあと思います。

非常に緊迫して目が離せない展開でした。次作も楽しみにしています。

22名無しさんは砕けない:2016/04/11(月) 00:18:18 ID:aAV6WYrA
あ、もう一つ。
プロシュートが作戦を説明するくだりで首輪が起動しているか確認すると言っていますが、遺体で首輪が起動するという情報は
誰が持っていたのでしょうか?あそこにいるメンバーが過去首輪の情報を得る話は無かったと思うのですが…読み込み不足でしたらすみません

23名無しさんは砕けない:2016/04/13(水) 01:40:47 ID:YrBU42kc
投下乙です!
ムーロロの胃に穴どころか擦り切れそう(笑)
このままだと兄貴は2nd同様にカーズと戦うことになるのですね
今度はどのような結末になるか今から楽しみです

私からも1つ
この作品で指摘するのもおかしいですがジョルノの状態表について
両腕欠損扱いになっていますが前話で義手による作成・治療は一応出来ているので表記を変えた方がいいかと思います

24名無しさんは ガオンッ されました:名無しさんは ガオンッ されました
名無しさんは ガオンッ されました

25名無しさんは ガオンッ されました:名無しさんは ガオンッ されました
名無しさんは ガオンッ されました

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27名無しさんは ガオンッ されました:名無しさんは ガオンッ されました
名無しさんは ガオンッ されました

28名無しさんは砕けない:2016/05/15(日) 01:48:28 ID:e.K.PXMg
集計者様いつも乙です
月報失礼します

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
196話(+1) 25/150 (-0) 16.7 (-0.0)

29 ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 22:57:39 ID:e4qxtae2
セッコ
本投下開始します。

30目覚めぬ者に夜明けは来ない ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 22:58:49 ID:e4qxtae2
生き残った参加者たちが鎬を削る『戦場』からは遠く離れた、会場のとある片隅。
この場所はいうならば……『何もない』ところ。
会場の端に近いうえ、どこかへ通じる道や特別な建造物があるわけでもない。
正直用がなければ立ち寄ったりせず、またそんな用ができるわけがない場所のはずなのだが………
今、ここに一人の参加者の姿があった。

「えーと、G-5は違って……G-6も違った……G-7でもない……」

ブツブツ呟きながら手にした紙にメモしているのは泥のようなスーツを全身にまとった男―――セッコ。
彼がこんなところで、しかも単独で何をしているのかというと……先の放送で伝えられなかった『どこかわからない』禁止エリアの捜索である。
とはいえ予想はつくと思うが、勿論セッコが自分からこんな役目を買って出たわけではない。
少し(といっても一時間以上)前―――


『禁止エリア……だぁ?』
『そう、それがどこか調べてきてほしいの』
『うぐ、うおお………それやったらよお………甘いの、くれるかああ?』
『ええ、いいわよ―――ただし『誰にも見つからないように』、ね』
『う? めんどくせーなあ……見つかっても……そいつ、殺しちまえばいいだろぉ?』
(………………)

会話の相手―――ルーシー・スティールは心の中で嘆息する。
やはり、この男は危険だと。

『ダメ……とは言わないけど、できるだけやめてほしいの。
 もし誰にも見つからず、うまく禁止エリアを見つけてこれたら甘いのを、そうね………十個あげる』
『じ、十個? ホントかッ!!?』
『勿論よ、なんだったらもっとあげてもいい……ほら、ここにいっぱいあるでしょう?
 ムーロロはもう角砂糖をそんなに持ってないから、あたしよりたくさんあげるって言われてもだまされないようにね」
『うお、おお、おおおおお………もっと………いっぱい………』

陶酔したような表情を浮かべるセッコ。
人間の味を覚えたとはいえ、それで甘いものが嫌いになるわけではない。
片や物騒、片や普通ながら、二つの嗜好は両立しうるものなのだ。

『もし禁止エリアに入っちゃったら、まず後ずさりしてエリアの外に出なさい………
 後は……そうね、調べるなら一番南東の方から―――地図もメモも持ってない?
 ………………ジョニィ、あなた余分に持ってないかしら?』
『うお……おおっ、甘いの……いっぱい』
(ちゃんと聞いてるのかしら……? まあ、動かしやすいのは助かるのだけど)

報酬で釣りつつ必要事項を伝えるルーシーであったが………実際のところ、彼女の中で禁止エリアの優先順位はそれほど高くはない。
ただあの狡猾な男たちを相手にすることを考えると、獅子身中の虫―――自分たちよりもムーロロと付き合いの長いセッコを抱えたままなのはリスクが大きいのだ。
さらに本人の言動を踏まえると、他の参加者と接触する際に彼がいては自分たちが困ることになりかねない。
そのため彼をしばらく遠ざけ、しかも孤立させておくための方便が例の禁止エリア捜索というわけだった。

『うおおっ、それじゃあ行ってくるぜ!
 会場をダニ潰しに……じゃなくて、ハエ潰し……でもなくて、うぐぐ………ノミ潰し………飲んでる場合かよおおお―――ッ!!』
(………まちがいない、これでまちがいない………セッコ、彼が言いたいのは………『しらみ潰し』)

31目覚めぬ者に夜明けは来ない ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 23:01:40 ID:e4qxtae2
―――と、そういったいきさつでセッコはこのような会場のはずれまで来ていたのである。
彼が通ったルートまでは定かではないが、確かな事実と言えるのは三点。
現在位置がG-7とG-8の境目付近である事、少なくともセッコ自身は誰にも見つかっていないと認識している事、そして肝心の禁止エリアにはまだ一度も引っかかっていない事。
そんな何もない退屈ともとれそうな道中に飽きかけていたその時………セッコの先で何かが動いた。

(うお?)

反射的に動きを止め、よくよく目を凝らしてみると……なにやら『影』が見える。
月は雲に隠れ、周りには街灯も無く、影の近くにも明かりになるような物は皆無。
そのため周囲は果てしなく暗く、わかったのはかろうじて影自体が人型をしていることだけ。
―――要するに『誰かがいた』。

(あー………)

セッコの判断は、その場でできる限り物音を立てないように地面へ潜るというもの。
『誰にも見つかるな』という命令を忠実に守るために。


「………」

一方、人影のほうはセッコに気付かなかったのか首を少し落とし、自分の腕へと向ける。
時間でも確認しているのか数秒後にはまた顔を上げ、今度は周囲を確認するような動作を見せ……その動きが止まる。
そこにいた人影の元に、何処かから新たに近づく別の影を認めたことにより。
人影は近づいてくる別の影を認識するとそちらへと向き直り、静かに口を開いた。

「首尾は……?」
「………………」

元々か、それとも何かを警戒しているのかその声量はギリギリまで近づかないと聞き取れないほど小さく、子供とも大人とも、また男とも女とも判別できない。
問われた方は無言で懐に手をやり、『何か』を引っ張り出して前へと差し出す。
セッコが覗けたとしても暗がりのためその正体はよく見えず、理解したのは当人たちだけであろう。

「………」
「………………」

無言ではあったが、小さく頷いたところを見るとそれは人影を満足させる結果であったようだ。
一方差し出した側はその様子を見て、考え込むような仕草を見せる。
何やら疑問がありそうだと判断した人影は少しそちらに寄り、再びそっと囁きかけた。

「これで何かをするというわけではない―――重要なのは『奴』にこれを渡してはならないということ………」

二つの影が何者なのか、そして何を目的としているのか。
その思考は勿論、表情や性別すら窺い知れない今は、何もわからない。
やがて影が連れ立って歩き出し、再び何処かへと消えていくまでの短い間にただ一度、雲から顔を出した月の光がその手に持つ物に反射して―――


                       ―――キラリと『赤く』光った。

32目覚めぬ者に夜明けは来ない ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 23:03:55 ID:e4qxtae2

「………………」

数分後。
足音が十分遠ざかったことを確認したセッコは首から上だけ出して様子を窺ったのち、浮上した。

(見つかって、ねえよなあ?)

影の正体や会話内容などどうでもよい………重要なのは『誰かに見つかったら甘いのがもらえない』ということのみ。
それでも一応気にはなったのか彼らのいた場所を眺め、もっと近くで見てみようと前進したとき―――


                『おいセッコ おまえ今…禁止エリアに入ってんじゃあねーのか? なんでここにいる?』


「うお!!? チョコラータァ!?」

突如響いた、殺したはずの男の声に仰天して辺りを見回すも、先ほど自分自身で確かめた通り誰もいない。
やがて聞こえてきたカウントダウンにより、ようやく声の発生源が自分の首輪で、禁止エリアに踏み込んだことに気が付いた。
ひとまず言われた通り後ずさりして脱出し、現状を再確認する。

「ここ……かよォォォ! 禁止エリアは……おっ?」

目的の場所を見つけたことに歓喜しかけるも、言葉途中でふと疑問が湧き上がる。
しばし宙を見つめた後、デイパックから時計を取り出す―――23時少し前。

「………ん〜〜?」

自分"だけ"が禁止エリアの警告を受けた点、それが妙に気にかかり、顔に手を当て考え込む。
先ほどの影たちには何も起こらなかったのに………19時からか21時からか、影たちのいた場所はとっくに禁止エリアになっていたはずなのに。

「やはり……あいつら……『禁止エリア』に引っかからない……入ってたのに………なんなんだあいつら…」



               ―――それは、影たちが殺し合いのルールに囚われる参加者ではありえないことを示していた。



「お、思い出した……! ルーシーに教えてやらなきゃあな……G-8が禁止エリア……うおお、これで甘いの……たくさん……ッ!!」

その口調からは想像しにくいが、セッコは意外と細かいことに気が付く男である。
だが、同時に決して記憶力が優れている男でもないのだ。
果たしてその疑問をルーシーか、別の誰かにぶつけるまで覚えていられるのか?
あるいは『それならそれでどうでもいい』と忘れてしまうのだろうか?

「うああ、うぐぐ……にしても……なんか……変、なんだよなああ……おれの…………からだ……どうなってんだよおおおお?
 誰か答えてくれよォ〜〜〜〜重要なんだよオオオオ!」

加えて、先ほどから自覚し始めた体の変調。
どこがどうおかしいのか具体的な説明はできないのだが……とにかくおかしいというのがセッコの思考を狂わせていた。
―――それがじわじわと進みつつある『恐竜化』の兆候であることを、彼は知らない。

「チキショー、イライラするなあ……食いてえなああ……作りてえなあああ………
 けど見つかるなって言われてるしなああああ………知らせたら、また遊んでいいんだよなあああああ?」

考えるべきことは多く、されどいずれの事柄も彼単独で解答に辿り着くのは極めて困難。
そして……『考えるのをやめた』、『狂人』ッ!―――この世にこれほど何をしでかすかわからない組み合わせがあるだろうかッ!?
セッコがどこまで考えるかはさておき………最優先事項は、ひとまずこれで『任務完了』ということ。
望みの報酬を受け取るべく、すぐさま方向転換し移動を始めるのだった。

―――他人から与えられるものばかりを享受し、自分自身の思考は未だ中途半端なものばかりであるセッコ。
ある意味最も迷走している彼が『答え』に辿り着くときは、果たして来るのだろうか………?

33目覚めぬ者に夜明けは来ない ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 23:06:20 ID:e4qxtae2


【G-7とG-8の境目付近 / 1日目 真夜中】

【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、恐竜化(進行:小、それに伴い違和感)
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:基本支給品、死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:??
0.角砂糖ほしい
1.ルーシーのところへ戻り、甘いのいっぱいもらう
2.禁止エリアに引っかからない誰かに変な自分の体、いったいどうなってんだ?
3.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。新しい死体が欲しい。
4.吉良吉影をブッ殺す

※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
※千帆の事は角砂糖をくれた良いヤツという認識です。ですがセッコなのですぐ忘れるかもしれません。
 DIOのことは完全に忘れ去りました。
※恐竜化はディエゴから距離をとっているため進行は緩やかですが、変化を意識し始めている段階です。
※ルーシーから不明な禁止エリアを調べてくるよう頼まれています。
 それに伴いジョニィの基本支給品一式を譲り受けました。
 ルーシーたちとどこで待ち合わせしているかなどは次回以降の書き手さんにお任せします。

【備考】
・21時に設定された禁止エリアはG-8でした。
・会場内に禁止エリアを無視できる何者か(最低二人)がいるようです。
 正体、目的は現時点で一切不明です。

34 ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 23:13:11 ID:e4qxtae2
以上で投下終了です。
特に目立った変更点はありません。
ご意見などありましたら遠慮なくお願いいたします。

地道にでも進んでほしいですが
何をするにしても書き込みが少ないというのはどうにもしがたいですね。

35名無しさんは砕けない:2016/06/23(木) 20:13:14 ID:Q5HNLhMc
投下乙です。
セッコが見つけたのはいったい何者なのか・・・そして手に持っていたものは!?
そしてセッコがちゃんとそれを覚えていて伝えられるかどうか・・・
短い話ながら不安や期待が大きな作品でした!

36名無しさんは砕けない:2016/06/24(金) 14:34:20 ID:d3G28fhA
投下乙です
唐突な飲んでる場合かで吹き出しましたw 3rdは首輪の警告メッセージが音声になっているからバリエーションが楽しみです
禁止エリア内で動ける人物の正体・・・誰かが首輪を解除できたのかはたまた新キャラなのか?
今だ食人願望にかられる凶暴さと甘いものにつられていう事を聞く素直さを併せ持つセッコの行く末も今だ定まらずと言った感じで
今後が非常に気になりました。次回も期待してます!

37 ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/25(土) 22:10:53 ID:gfctQs3M
感想ありがとうございます。
ネタ仕込まずにはいられないのは性分なので、面白いと思っていただければ幸いです。

問題点は仮投下時にだいたい言われた通りでしょうが、特に新しい意見がないようならこのまま収録する予定です。
それでは、失礼します。

38名無しさんは砕けない:2016/07/15(金) 10:19:43 ID:uF4Yof42
月報失礼します

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
196話(-1+1) 25/150 (-0) 16.7 (-0.0)
破棄に伴いましてこういう表記とさせていただきました
問題があるようでしたら適宜修正お願いします

39名無しさんは砕けない:2016/07/19(火) 04:21:38 ID:LCma44TU
遅くなりましたが月報乙です。ゆっくりでも確実に進んでいってますねー

40覚醒 その1 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:32:54 ID:W6H5mrzw
『俺たちの戦いはこれからだ』――というフレーズを聞いて、君たちは何を想像する?

打ち切り?不人気?マンネリ?テンプレ?
……まぁ、大体の人はそう感じるだろう。

が。

それは正しい表現ではない。――というより、『それだけではない』と言い換えるべきか。

つまりだな……


●●●

41覚醒 その2 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:33:25 ID:W6H5mrzw
……ジョジョ。ジョジョ……


柔らかい日差しが水面に反射している。僕は――何をしていたんだっけ。
どこかに行くはずだったんだけど……どこだったっか。
フラフラと歩いて来たこの川辺、隣に誰かいたような。最初から一人でここまで来たような……

ふと視線を上げると、石造りの大きな橋。
そうだ、思い出した。あそこに行くために歩いていたんだ。

走っていってもいいんだろうけど、なんだか勿体無い気がする。
せっかくだし、ゆっくり行こう――穏やかな川の流れに身を任せるように。逆らわないように。
時折り髪をゆらす風が心地良い。今まで、こんなにのんびりした散歩をしたこと、あっただろうか?
天気も良いし、エリナと一緒に歩きたかったな。


――着いた。遠目から見てもかなりの大きさだったけれど、目の前にするとかなりのものだ。
そして、長い。一体どこまで続いているんだろうか。
川だと思っていた流れも、まるで海のように、どこまでも広がっている感じがする。


向こう岸まで渡ろうとここまで来たけれど、いざ一歩を踏み出そうとすると、足が震えてなかなか動かない。
そう考えた途端に、なんだか怖くなってきた。本当にこの橋を渡ってしまっていいのだろうか。


……ジョジョ。ジョジョ……


そんな橋の中ほどから、だろうか。立ちつくす僕を呼ぶ声――とても懐かしい、もう聞こえないと思っていた声。

あぁ、あなたは。あなた達は。
姿は見えない。でも。でも何故。
『あなた達が死んでしまった』なんて、思ってしまったんだろうか。
『あなた達を僕の手で殺してしまった』なんて、感じてしまったんだろうか。

なんて、なんて失礼な事を。
きっと、そう――そんな夢を見てしまったから。
とても辛く、とても悲しい夢を。だからそんな風に――

ごめんなさい。ごめんなさい。
そう言いたくても思うように口が動かない。喉が開かない。
どうして。どうして。
手を伸ばそうにも鉛を詰め込まれたように重い。

42覚醒 その3 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:33:52 ID:W6H5mrzw
……ジョジョ。ジョジョ……


目の前の声が遠ざかってゆく。
あぁ――あぁ、行かないで。おいていかないで。ぼくをみすてないで。
それと入れ替わるように背後から近づく呼び声――この場所に来るまでに何度も聞き、これからも聞き続けるであろう声。


……ジョジョ。ジョジョ……


あぁ、君は。君たちは。
正面の光景に名残を惜しみつつ、振り返った先には共に歩いてきた仲間たち。
こちらもその姿ははっきりと見えるわけではない。ぼんやりとした輪郭。それでも彼らがどんな表情で僕を見つめているのかはよく分かる。

でも、なぜだろう。

彼らの手をすぐに、喜んでとることが少し怖い。
僕が本当に手を取りたい相手は、取るべき相手はいったい誰?
誰かの手を取らなければ僕はこの広く、美しく、そして寂しいこの場所で独りぼっちになってしまう。
けれど、どうしてもその一歩が踏み出せない。半歩ぶん足を動かすことすら躊躇わせた。


……ジョジョ。ジョジョ……


またも違うほうから呼びかけ。
そちらを向こうとする僕を必死に止めようとする目の前の彼ら。
それでもそちらを向くことを僕自身に止められない。


……ジョジョ。ジョジョ……


しかし、今度の声はいったいどこから聞こえてくるんだろう?
橋の上でもなければ、川沿いの砂の上でもない。

ふっ――と。川の中を覗き込む。
穏やかな水面に映るのは僕の不安げな表情ではなかった。

その顔は。

その声の主は。

――僕のことを呼び、手を伸ばしてくる、その顔は。

……その、口元から鋭く伸びる牙はッ!


●●●

43覚醒 その4 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:34:15 ID:W6H5mrzw
「ディオオォッ!」
がば、と体を起こしたジョナサン・ジョースターの周囲は、彼の叫びとは対照的に、静かに夜の闇に佇んでいた。

え?という自分の疑問を確かめるように周囲をきょろきょろと見まわし――数十秒もしないうちに答えを見つけ出す。

「夢……か……」

いったいどのくらい眠ってしまっていたのだろうか――最後に肌に感じたのは夕焼けの日差しと温かさのはずだった。
しかし今この場所にあるのは、淡い月明りと、柔らかく、しかしヒンヤリした風だけ。

自分の置かれた現状をおぼろげながら把握しはじめ、ここから何をすべきなのかを考えようとした矢先。


――ほう?このDIOを葬っておきながらノンビリと夢心地だったと?ずいぶんノンキしてるじゃあないか……ジョジョ……


「えッ!?」
もう聞こえない、聞こえるはずもなく……ある意味では聞きたくもない、その声に勢いよく振り返る。
当然、その場には何もいない。あるのは厳かにそびえ立つ城のような建造物のみ。

「げ、幻聴……か」

決して記憶を失ったわけではない。つい数刻前、自分は確かに波紋の力でDIOを浄化した、はずだ。


――おいおい、あんまりな言い草じゃあないか、ジョジョ。目を凝らしてよーく見てみろよ……


「えッ!?――こっ……これはッ!?」
見えた。確かに自分の――感覚の目、とでもいうべきか。そこにはしっかりと映っていた。
“その”先に映る建物がレンズのように歪みだし、“それ”の輪郭を形作る。
“それ”の名は――そこに、姿は見えなくとも確かにいる、“そいつ”の名はッ!

『やあ。さっきぶり、ジョジョ』

「……ディオッ!?」


●●●

44覚醒 その5 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:34:46 ID:W6H5mrzw
正直に告白しよう。それは偶然だった……計算でここまでは読めない。

おまえと落下したこの身体が水中でジョジョと衝突しなければ。

その完全なる『茜色の波紋疾走』にこのDIOは負けていたのだからな……

やはり運命は……存在した。わたしに味方する、とまでは言わないが。

波紋疾走で我が身体を貫いたその身はその直前。

私の懐に少しだけ“触れて”

そのうえで私の身体を貫通した。


ジョジョ……お前は……
(波紋で私を倒すために)波紋を『身にまとってたがゆえに』
この吸血鬼のDIOを敗北、死亡させるに至ったが。

波紋を『身にまとってたがゆえに』DIOとの因縁を抹消させるには至らなかった。


……もう少しわかりやすく説明してやろう。自分の身体だから感覚的には理解しているのだろうがな。

ついさっき、お前は“スタンド使いとして覚醒した”のだ。

――スタンドの名は『リンプ・ビズキット』ッ!
その能力は『死体を視認できないリビングデッドとしてよみがえらせ、使役すること』ッ!!


……本来、この能力で蘇ったものは、本能のまま血を求めるだけの存在になるそうだ。
しかし、このDIOにそれがないのは、おそらく“最初からそうだった”からなのだろう。
そして『この身体』になったがゆえに……この瞬間!このDIOも『太陽の克服』を達成したと感覚で理解できる!

そして――そしてッ!
この能力と生まれは違うといえ、『屍生人』をその手で葬り続けてきた貴様がッ!
あろうことか『リビングデッドを支配する能力』を身に着けることになるとはッ!

なんという皮肉!いや――“だからこそ”――そうッ!『だからこそ』というべきだろう!?
なんという運命!『幽霊』の『波紋』と書いて『スタンド』!……フフ、よくぞ言ったものだッ!


……しかし。無論、というか。選ぶのはジョジョだ。
お前の波紋でなら、『能力によって生まれた死体』であろうとも、俺を浄化することが可能だろう。
あるいは頭部に衝撃を受けたなら、DISCが吐き出されることで能力は使えなくなることだろう。

しかし、そう。

『なぜこんな姿をあえてみせるのか……それはジョジョ、あれほど侮っていたおまえを今、おれは尊敬しているからだ……
 勇気を!おまえの魂を!力を!尊敬している……それに気づいたからだ……
 神がいるとして、運命を操作しているとしたら!俺たちほどよく計算された関係はあるまいッ!』

これはかつて――いや、ジョジョ、お前にとっては未来の話になるが、ともかく――お前に送った言葉だ。
そう、今の俺は個人的にお前のことを尊敬しているし、それを抜きにしても、今のお前はこのDIOの“本体”だ。


……たかだか元チンピラのスタンド能力ごときで吸血衝動、捕食衝動を抑えられなくなるほどこのDIOは落ちぶれてはいない。
お前の命令ならばどんなことだって引き受けるとここに誓おう。代わりに戦うことも、盾になることも、喜んで引き受けよう。
このDIOを使役していいのはこの世界でもジョジョ、お前だけだ、お前にしかその資格は存在しない。


今一度いうが、選ぶのはお前だ。
しいて一言忠告をさせてもらうなら――あまりノンビリしている時間はないはずだぞ?


●●●

45覚醒 その6 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:35:12 ID:W6H5mrzw
さてさて……これはまた大事件になってしまったな。
じゃあとりあえず、ここでDIOがジョナサンに解説したことにいくつか補足して終わりにしよう。


まずは――ん?DIOがリンプ・ビズキットの吸血衝動を超えられた理由から?
そりゃあ簡単だよ。彼自身が言った通り、DIOがもともとゾンビ以上の存在だったから。
これがもしも“人間状態のディオ”だったらダメだっただろうね。

で……そんな状態でありながら『太陽を克服した』と確信した理由だな。
まぁ、これもタネがわかってしまえば簡単だ。あくまで今のDIOは能力で生み出された『透明ゾンビ』でしかないから。
さらに付け加えるならDIOから生まれたもの――いやジョルノとかじゃあなく、『緑色の赤ちゃん』が太陽の元を歩いていただろ。
あくまでも『吸血鬼そのもの』以外には太陽光は弱点となりえない。

――という理解ができると同時に新たな疑問が浮かぶだろう。『DIOはいったい何ができるのか?』とね。
まず結論から言うと、スタンドは使えない。
これは……そうだな『アンダー・ワールドで掘り起こされたスポーツ・マックスの記憶』を例に出すと……
あれはあくまで『能力によって生み出された現象』だから、“そのひと・そのもの”ではないということ。ゆえにあの時の彼もスタンドを使用しなかった、できなかった。
今回も同様。だからDIOのもとにもう『世界』は存在しない。
吸血能力は――どうだろうか。ある意味で『ゾンビ』と劣化した存在になった以上、これも不可能“かもしれない”。
なぜ推測なのかって?そりゃあ、ジョナサンがさせないだろうから。仮にDIOを使役するとして、ディオに対して「よし血を吸って攻撃だ」とは言わないだろう。きっと。
ゆえに、純粋な身体能力――吸血鬼となって、しかも鍛え上げられた彼の肉体ならそれで十分だろうが――それしかないとみていいだろう。
ちなみにいうと、DIOが口にした『幽霊の波紋』だが、彼は幽霊じゃあなくてゾンビだから、これも可笑しな表現だな……と、話題がそれたか、ごめんごめん。

あとは――そう、『リンプ・ビズキットに課せられた制限』か。
まず、本体がゾンビたちに“命令”することは可能。もっとも、今回のDIOのような場合を除き、ほとんどは本能的に動いてるような奴らだからどこまで聞いてくれるかは微妙だが。
付け加えるなら、もちろん本体であるジョナサンには視認できているし、会話による意思疎通も可能だ。じゃなきゃあ命令も何もないからな。
次に、本体が死んだときに――もとのスポーツ・マックスのように“復活”できるのか。これは不明。いくら適応したとはいえ死ぬ瞬間にDISCが吹っ飛ばないとも限らないし。
あとは……“従えられる人数”か。たぶん主催者サイドが最も制限をきつくしたのはここだろう。殺し合いが続けば続くほどこの能力は力を増すんだから。
だが、これも具体的な人数は『不明』だ。
――え?だってそうだろう、いまジョナサンの周囲にはそれを証明できるほどの死体はないし、彼なら『安らかに眠ってくれ』とか言って蘇らせない可能性すらあるから。
強いて言うなら……仮にこのロワイヤル序盤でスポーツ・マックスが死なずに墓地やらなにやらにたどり着けていたとしても、それらの死体全てを配下にはできなかったろうね、と。そのくらい。


……さてと。いろいろ言ったが、最初の話題に戻ろうか――って、おいおい。そんなイヤそうな顔をするなよ。

『俺たちの戦いはこれからだ』

この言葉が意味する真のところは、つまり。

『だれも見ていない――見えていない――ところでも、絶対に彼らは戦いを続けている。我々にそれを知る手段がないだけで』
――そういうことだ。

だとするなら。
この話を締めくくる言葉も自然に浮かぶだろう。

『彼らの戦いはまだまだ始まったばかり!
 ジョナサン・ジョースターのバトル・ロワイヤルはこれからだッ!』

バ ァ ――z__ ン !!

46覚醒 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:35:35 ID:W6H5mrzw
【F-4 エア・サプレーナ島 / 1日目 夜中(22時ころ)】

【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:波紋法
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:左手と左肩貫通(応急処置済)、疲労(中〜大程度に回復)、混乱(小)
[装備]:リンプ・ビズキットのスタンドDISC、透明なDIOの死体
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒
1.蘇った(?)ディオをどうするか混乱中
2.仲間と合流したい
3.現状の把握をしたい

[備考]
1.DIOが所持していた『リンプ・ビズキットのスタンドDISC』がジョナサンの体内に入りました。そのほかの所持品はどうなったか不明です。
2.放送を聞き逃しました。また、当然ながら19時、21時の禁止エリア作動も気づいていません。
  ※この話の時間軸では、まだ23時の禁止エリアは作動していません。22時前後の話とお考えください※

【透明になったDIOについて】
0.能力は原作に準拠。スタンドビジョンはなく、死体を透明ゾンビとして復活させ使役する。
1.あくまでもリンプ・ビズキットによって生み出されたものなので『世界』は使用できない。
2.同様の理由で吸血もできないと予想されるが、ゾンビの本能での『食らいたい衝動』はある。ただしDIO自身の精神力で抑制中。
3.原作の描写から、遺体が動いているわけではないが、透明DIOにダメージがあれば遺体にフィードバックする模様。つまり大統領が回収したDIOの遺体に変化がある。
4.リンプ・ビズキットに課せられた制限は『使役できる人数』のみ。ただし詳細は不明。
5.DIO自身はなかなかハイな状態。しかし尊敬するジョナサンの命令には(能力を抜きにしても)従うつもりなので、彼が死ねといえば喜んで自殺するだろう……

47覚醒 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/08(月) 21:43:34 ID:W6H5mrzw
以上で本投下終了です。

●仮投下からの変更点
・誤字脱字、改行位置の変更
・表現の変更(内容に変更はありません)
・状態表に少々加筆

さて。仮投下時には割と好評でしたのでリンプ・ビズキットをそのまま出しました。
……書いてて感じましたが、射程距離の制限とか「ない」と明言してしまいましたがどうでしょう?
まあ人数に制限かけたし、原作を見るに透明DIOだけを何100mも飛ばしたりはしてませんが……
遠くのエリアの死体を無理やりよみがえらすとかも出来ないでしょう、というか暗黙の了解で頼みますw
つまり何が言いたいかというと――
『聖人の遺体とかよりはよっぽど良心的なフラグだと思うんだけどどうよ?』
と、炎上覚悟で言わせていただきますw

とはいえ、この過疎気味た現状。
読み手の皆様はもちろんですが、他の書き手の皆様が書きにくいと感じてしまえば更なる停滞の恐れもあります。
その辺の不安も踏まえてご意見いただければ幸いです。

またリアル都合の調整もありますので1週間から10日程度は収録なしでおいておきます。それではまたノシ

48 ◆yxYaCUyrzc:2016/08/12(金) 04:28:45 ID:yFGjph8Y
・・・えーと、感想は仮投下時にいただきましたのでともかく、問題ないようでしたら来週月曜〜火曜にwikiに収録予定ですがいかがでしょう?
と、生存報告をかねてご報告をさせていただきます

49名無しさんは砕けない:2016/09/06(火) 21:43:42 ID:PaTGgyUg
超!遅くなってしまいましたが投下乙です
制限については問題ないと思います
もし気になるのであれば復活および使役周囲を適当に1マス範囲にとどめておけば今後の万一のKY展開も無くなるかと思います(過疎状況でそんな書き手さんもいないでしょうけど(笑))

50名無しさんは砕けない:2016/09/15(木) 03:09:27 ID:eL8jmn2E
集計者様いつもありがとうございます
今期の月報です

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
197話(+1) 25/150 (-0) 16.7 (-0.0)

51英雄 その1 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 11:46:39 ID:TICpFGQQ
――ヒーロー。
そう聞いたとき、人はいったいなにを連想するだろうか。

魔王を倒すべく旅立つ勇者の血を受け継いだ少年かもしれない。
いかなるミッションも危なげなく完遂する諜報員かもしれない。
どんなトリックであろうとたやすく見抜く名探偵かもしれない。
潜んでいる妖怪変化を人知れず退治する霊能力者かもしれない。
人類の自由と平和を守るために日夜戦う改造人間かもしれない。

別に、そのようなフィクションの住人だけとは限らない。
ヒーローは、ブラウン管や紙の束のなかだけにいるワケじゃない。

一一〇番をすればすぐに駆けつけてくれる警察官かもしれない。
体調が悪い理由を的確に教えてくれるお医者さんかもしれない。
一打逆転のチャンスを決して逃さないスラッガーかもしれない。
沸き出す気持ちを思いのままに歌うロックスターかもしれない。
敵陣のゴールを正確無比に射抜くファンタジスタかもしれない。


つまるところ、この世界中の誰もがヒーローになりうるというわけだ。
ならば……だとするならば。

いったいどんな人物のことを“ヒーローと呼ぶ”のか。

皆にも考えてもらいたい――じゃあ、始めよう。


●●●

52英雄 その2 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 11:49:23 ID:TICpFGQQ
広瀬康一が目を覚ました時には、すべてが終わっていた。
彼自身の治療も。休息を兼ねた束の間の情報交換も。そして、決着も。

ことの顛末を耳で聞き、頭で理解することはなんとか出来た。
しかし……彼の心は『納得』することを許さなかった。

「僕は――また何もできないままだったのか」
彼の両頬を大粒の涙が伝う。
その涙は、友を失った悲しみか。守られたという悔しさか。自分自身の情けなさか。あるいはそれらのいずれもか。

誰も言葉を返さなかった。
うわべだけの慰めが意味をなさないことを理解していたし、何より自分たちも同じ境遇にあった――というより、現在進行形でその境遇にあるのだから。

重く静かな時間が周囲を包み込む。
周囲に敵がいるわけでもないのに、焼けつくような緊張感を全員が感じ取っていた。

やがて……そのチリチリとした感覚が――実際は音として静寂の中に流れていたのだが――ジャリっという足音にかき消される。
承太郎が煙草を踏み消し、デイパックを担ぎ上げたのだ。

「どこへ行くんですか?承太郎さん」
口を開いたのはアナスイだった。同時にシーラE、エルメェスも顔を上げる。互いの視線が交差する。
康一は未だに泣きながらうつむいたままだ。

「……まさかあんた、『ここで足踏みしてる暇はねぇぜ、俺は先に一人で行くぜ』とか言うつもりじゃあないですか?」
言葉を返さない承太郎の意をくみ取るようにアナスイが続けた。承太郎は黙々と準備を続けている。

沈黙のさなか、やっと康一が重い顔を上げる。良いことか悪いことか、涙は止まっていた。

「ヘイッ承太郎サンよ!これから全員で車で移動するって決めたじゃあねーかッ!
 もうちっと――待ってやったらどうなんだよ!?」
エルメェスがチラリと康一を振り返りながら声を上げる。

待ってやれ、つまり気を使ってやれと言っているのだ。
誰に――?自分にだ。そう感覚として理解できた康一はまたも俯く。

「――やれやれ。待ってほしかったら、待ってほしい奴がそう言うもんだ」
デイパックをどさりと落とし、康一の元まで歩み寄る承太郎。気配を感じて再び康一が顔を上げる。
お互いの視線がかち合う。一触即発とはいかないが、決して穏やかなものではないのを全員が感じ取った。

「今からDIOの野郎の死体を確認しに行く。さっき言った通りにな。
 が――はっきり言おう。アナスイたちはともかく、康一君、君が足手まといだから……全員を置いて一人で行く」
威圧するような口調ではない。しかしその言葉の重みが康一の全身を駆け巡る。

「僕が……弱いからですか」
「弱いというのがスタンドの強さのことを言ってるのか、泣いてることを言ってるのか、それ以外の何を言ってるのかは置いといて――そうだな、確かに今の君を連れていっても仕方ない」
淡々と事実のみを述べる承太郎に対して康一は情けなさや悔しさよりも、怒りを覚え始めた。

「だって承太郎さん!さっきの話じゃあ、時を止められないんでしょう!?そんなあなたが一人で行って何になるっていうんですかッ!」
「今の君よりはマシだと思うんだがな……
 そして――こういうのは皆まで言わせるもんじゃあないぜ、康一君」
言いながら、言われながら康一が立ち上がり、すっと距離をとる。およそ10メートル。エコーズの間合いだ。

「わかってますよ……そのセリフは僕のもんです。
 『だったら!力づくで僕を止めてみせろ!承太郎さん』ッ!!」


●●●

53英雄 その3 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 11:52:06 ID:TICpFGQQ
「……ねぇ」
ぼんやりと口を開いたのはシーラEだ。
今、彼女はアタシとアナスイと一緒に車に寄りかかって見物――そう、見物だ。彼らのやり取りを眺めている。

「あぁ。コウイチがまだ寝てるときに聞いた話の通りっちゃあ通りだけどよ。
 ズイブンな言い方だったよな。アタシもついブチキレそうになっちまった」
「承太郎さん的には、どっちに転がるのが正解だったんだろうな。自分自身だってヤバいってのに……」
アタシの返事にアナスイが付け加える。

「イタリアじゃあ聞かないけど、ニホンには『カワイガリ』って文化があるらしいわよ。アメリカはどうだか知らないけど。
 ま、つまりは“そーゆーこと”でいいんじゃあなくて?ていうかさっきのあなたは確実にブチキレてたわよ」

シーラが余計な一言をつけつつ話をまとめた。
そう、アタシたちは予想していたのだ。この展開になりうることを。
『たまりたまった怒りやら何やらをぶつけることが今の彼には必要だろう』なんて。
承太郎サンの口からそう提案されたときは、この状況で何考えてるんだかと半信半疑だったけど。

「しっかし……」
「お、エルメェス、お前もそう思うか?」
「あら奇遇かしら?きっと私も同じことを考えてるわ」
三人の言葉がハモった。

「「「なァんか“それだけじゃない”気がするんだよなァ」」」


●●●


わかってるさ――
「康一君、君の思いはそんなもんか?俺を止めるんだろう?」

承太郎さんが明らかに“手を抜いてる”ことくらい。
「だったら!本気で僕のことオラオラすればいいじゃあないですか!もう一度だ!Act2ッ!」

飛ばした尻尾が文字の形を作る前に弾かれる。少し離れた位置で文字がバチッっと感電する感触を地面に伝えた。
「ちくしょうッ!」

本体である僕自身も承太郎さんに向かって拳を振りかざす。スタンド頼みで足踏みしてるだけじゃあ進まない。

「やれやれ――もう一度言うぞ康一君、君の想いはそんなちっぽけなモンなのか?」
僕のパンチを避けも受けもせず、腹に受けたままで承太郎さんが放ったカウンターの蹴りが綺麗にみぞおちに入った。
息が詰まる。だけど――だけどッ!

「わかってますよ!僕が弱いことくらい!そのせいで仗助君や――シュトロハイムさんたちを死なせてしまったことくらいッ!」

54英雄 その4 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 11:54:21 ID:TICpFGQQ
Act1が僕の怒りを言葉にしてそこら中にぶちまける。
危険な人物を呼び寄せてしまわないように小さな音で、なんて気分には正直なれなかった。
そんな余裕なかったというのもあるけど――僕のおもいはそうやって抑え込むものじゃあない。今ここで承太郎さんにぶつけなければならない。

「そうだ――しかし君が弱いというのは半分は間違いだ。
 君は最初に、このAct1の大きな声で『ニゲロ』と叫んだはずだな?
 その時は名簿がない上に距離があったようで正確な位置と正体の把握ができなかったから無視したが、スタープラチナの耳にはかすかに届いていた」

――は?何を言っているんだ?今?このタイミングで?
「だったらなんだっていうんだ!結局その時だって……ダイアーさんをッ!」

「それは結果論だ。君は確かにあの時自分を顧みず他人のために言葉を発した」
言いながらスタープラチナが殴りかかってくる……いや、手は平手だ。ビンタだ。

ビンタ――そうだ、承太郎さんは僕のことを『しつけている』今こんな状況で!
それがたまらなくムカついてくる。手を抜かれるとか、止める止めないとかじゃあなく、“そんな承太郎さんにムカっ腹がたってくる”!
そして何よりも、“承太郎さんの手を煩わせている自分自身にもムカっ腹がたってくる”!

「痛ッッッ――クソッ!Act2!」
しっぽ文字が効かないからタックルだ。しかしそれもスタープラチナの両手に受け止められる。

「康一君。俺はこう見えても、そういう君のひた向きなところは尊敬しているんだ」
その言葉は僕の耳には入ってこなかった――入ってきてもそれを素直に受け止めるほどの理性が残っちゃあいなかった。

「だったら――だったら!この僕のおもいを受け取ってくださいよッ
 承太郎さんの――馬鹿野郎ォォォッッッ!」
おもい切り叫ぶ。じりじりとAct2がスタープラチナを押し始めた!あの無敵のスタープラチナをッ!

「やれやれ、馬鹿野郎とはずいぶんだな……
 しかし、そうだ。誰かにおもいを伝えるということは素晴らしい。それをもっとぶつけてみろと――言っているんだ!オラァッ!」

スープレックスだかバックドロップだかで思い切りAct2が吹っ飛ばされる。
スタンドのフィードバックで僕自身も吹っ飛び、背中から地面にたたきつけられてたまらずせき込んだ。
だけど――負けるもんか!

「そうだ、負けるか……負けてたまるもんかッ!食らわせろッAct2!」


ごろん


「――え?」

「来たか」


●●●

55英雄 その5 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 11:57:25 ID:TICpFGQQ
「お。終わりましたかい?承太郎さん、康一?」
「えっ、あっハイ。終わりました、少しスッキリできましたし」
「やれやれ――これで準備完了ってとこか。」
照れ隠しなのか、帽子を目深にかぶった承太郎はアナスイの言葉に短く返してさっさと車に乗り込む。
そう。最初から承太郎は一人でここを出ていくつもりなどなかったのだ。

「しっかし――『オモイを伝える・カッコブツリ』ってやつかい?それとも『言葉のオモミ』ってか?イカしたジョークだな、コウイチ」
「まっ、この『ヘビーな状況』で成長したんなら当然な結果じゃあないかしらね?」
エルメェスとシーラEが茶化す。
康一本人も少し照れたように頬をポリポリと掻く。涙の跡は消えないが、それでも彼の顔は晴れやかだ。

「康一君。余計なお世話かもしれないが、同じ男として、一つだけアドバイスをしよう。『男なら、誰かのために強くなれ』。
 ――今の俺には説得力なんかないのは分かってる。それでも、俺もこれからもっと強くなって見せると約束しよう。君にも、そうなってほしい」
アナスイが康一の肩を強く握った。見つめる瞳の中には確かに燃えるものを感じられる。

「そうね――さっきまでのあなたみたいに『泣いてもいいのよ。また笑えればいい』」
横から覗き込まれてたまらず頬を赤らめるところは年相応のものを感じさせる。その姿にシーラEはほんの少し安堵した。

「今までアンタがどうやってきたかをアタシたちは知ってる。だから自信もって。
 『これが正しい!って言える勇気があればいい――ただそれだけできれば英雄』なのよ。
 ……さ、これ以上ダベってると本当に承太郎サン一人で行っちまうかもよ。アタシらも行こうぜ!」

バンと康一の背を叩いて歩き出すエルメェスもシーラEと同じ気持ちであった。
復讐は彼女たちの人生にとっても、そして今の康一にとっても重要なことであるのは変えようのない事実である。
しかしその為だけに他を犠牲にするような戦いをしてはいけない。仲間であれ、自分自身であれ。
彼女を追い越して車に向かうアナスイにバレないように、シーラEとエルメェスは視線を合わせて少しだけ頷き合った。

「はっ――はいッ!ありがとうございます!」
一瞬ぽかんとし、慌てて駆け出す康一。
悲しみが言えたわけでもない。怒りが収まったわけでもない。不甲斐なさは未だに胸に残っている。
それでも今の彼の姿には“弱さ”は感じられなかった。


●●●


さて。ヒーローとは。
先にあげた改造人間だろうと、ロックスターだろうと。
『考えるより先に体が動く』『誰かのためにある』そんな人種――人種という表現が適切かどうかはさておき、そういう者のことをいうもんだ。
康一もそうだ……というより、彼の場合は最初からそうだったろう。

ディアボロと対峙したときに真っ先に周囲に警戒を発したことも。
吊られた男から由花子を守るために突き飛ばしたことも。
燃え盛る空条亭にいるかもしれない生存者に向けて叫んだことも。

これで康一君がヒーローじゃあないなんて言うやつがいたら、そりゃあ可笑しいぜ。
世が世なら、平和の象徴なんて呼ばれたかもしれないだろうな。

あ、まてよそうしたらヒーローネームを考えなきゃあならないか。
個性というか……スタンドがエコーズで、成長することをふまえると……うーん……

56英雄 状態表1 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 12:00:15 ID:TICpFGQQ
【D-2 /1日目 夜中(22時過ぎ)】
【チーム名:AVENGERS】

【広瀬康一】
[スタンド]:『エコーズ act1』 → 『エコーズ act2』 → 『エコーズ Act3』
[時間軸]:コミックス31巻終了時
[状態]:右二の腕から先切断(止血完了)、疲労(極小)、憤怒(極小)
[装備]:エルメェスの舌
[道具]:基本支給品×2(食料1、パン1、水1消費)
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.車でどこかへ移動する
1.うわォッ!ひょっとして成長したんですかァ!?
2.ずいぶん解消はしたけど、やっぱり後悔や怒りは消えなさそう

【エルメェス・コステロ】
[スタンド]:『キッス』
[時間軸]:スポーツ・マックス戦直前
[状態]:健康
[装備]:ジョルノがカエルに変えた盗難車
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.車でどこかへ移動する。
1.運命への決着は誰も邪魔することはできない……
2.ジョジョ一族とDIOの因縁に水を差すトランプ使いはアタシたちが倒す?
3.にしても承太郎さん、演技にしちゃあキツすぎるぜ……

【シーラE】
[スタンド]:『ヴードゥー・チャイルド』
[時間軸]:開始前、ボスとしてのジョルノと対面後
[状態]:健康
[装備]:トンプソン機関銃(残弾数70%)
[道具]:基本支給品一式×6(食料1、水ボトル少し消費)破れたハートの4
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いには乗らない。
0.車でどこかへ移動する。
1.ジョースター家とDIOの因縁に水を差すムーロロ、アタシが落とし前をつける?
2.ジョルノ様の仇を討つ、と思ってたら聞いた話じゃあ生きてるっての!?キャージョルノ様アァァ
3.成長おめでとう、コウイチくん

【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』(現在時止め使用不可能)
[状態]:右腕骨折(DDによる治療済)、肉体はほぼ健康状態まで回復
[装備]:ライター、カイロ警察の拳銃の予備弾薬6発、 ミスタの拳銃(6/6:予備弾薬12発)
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、肉の芽入りペットボトル、ナイフ三本
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.車でどこかへ移動する。
1.状況を知り、殺し合い打破に向けて行動する。
2.やれやれ、康一君が成長してメデタシメデタシってとこか
3.自分自身も時を止められるよう成長する必要があるってところか

【ナルシソ・アナスイ plus F・F】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:健康、首輪の機能が『どうやら』停止しているらしいという『予測』
[装備]:なし
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:徐倫、フー・ファイターズ、F・Fの意志を受け継ぎ、殺し合いを止める。
0.車でどこかへ移動する。
1.エルメェスたちと共に行動する。
2.男なら誰かのために強くなるんだ、康一君

57英雄 状態表2 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 12:03:23 ID:TICpFGQQ
【備考】
全員で情報を共有しました。以下、共有した内容など

●シーラの面識がある暗殺チーム、ミスタ、ムーロロについて。
※元親衛隊所属なので、フーゴ含む護衛チームや他の5部メンバーの知識はある・か・も。
 またムーロロについても、参戦時期の都合上シーラも全てを知っているわけではないので、外見と名前、トランプを使うらしい情報チーム、という程度。

●承太郎が度重なる精神ダメージのせいで時が止められなくなった現状。
※回復するかどうかは不明(以降の書き手さんにお任せいたします)

●アナスイと『フー・ファイターズ』が融合し、『ダイバー・ダウン・フー・ファイターズ』となったこと。
※能力は『ダイバー・ダウン』に『フー・ファイターズ』のパワーが上乗せされたこと。
 基本的な能力や姿は『ダイバー・ダウン』と同様だが、パワーやスピードが格段に成長している。
 (普通に『ダイバー・ダウン』と表記してもかまいません)
※アナスイ本体自身も、スタンド『フー・ファイターズ』の同等のパワーやスピードを持ち、
 F・F弾や肉体再生など、原作でF・Fがエートロの身体を借りてできていたことは大概可能となったこと。
 (その他、アナスイとF・Fがどのようなコンボが可能かは後の作者様にお任せします)

●アナスイの首輪が停止している可能性について
※首輪は装着されたままですが、活動を示す電灯が消えています。承太郎の『予測』では『どうやら』首輪は活動を停止しているらしい。
 (詳細は以降の書き手さんにお任せいたします)

●カーズという危険人物の存在。
※『大乱闘』にて承太郎がカーズのことを語ったときと同様の内容。もっと詳しく説明を受けているかもしれません。

●車内に放置されていたティム、噴上、シュトロハイムの基本支給品とトンプソン機関銃と破れたハートの4を全員のアイテムとして共有。
※便宜上シーラEの装備品という扱いです。

●禁止エリアについて、
この話の時間は前作からさほど経っていない(22時すぎです)ので、彼らのやり取りの間にエリア作動、ということはなかったようです。

58英雄 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/03(月) 12:07:53 ID:TICpFGQQ
以上で本投下終了です。ずいぶん長い間お待たせいたしました。

仮投下からの変更点
・文脈の修正(内容に変更なし)
・備考欄、禁止エリアについて(本来なら書く必要すらないですが、以降の書き手の皆様に向けて、という意味合いで修正し表記)

仮投下時にも感想をいただきましたが、こんな何でもない繋ぎSSでもエコーズが進化してしまうことに反対意見が(今のところ)ないようでホッとしておりますw
無論、この先wikiに収録するまでの間にもご意見ありましたらどんどんレスいただければ幸いです。

レスを待ちつつ自身の都合もありますゆえ、収録は(もちろん問題ないと確定したうえで)1週間くらいお待ちいただければと思います。では次回作でお会いしましょうノシ

59 ◆yxYaCUyrzc:2016/10/08(土) 21:36:45 ID:ikAwivR6
えー・・・と。収録しても問題ないんでしょうかねえ?
この連休中には都合がつくかなと思っておりますが、別に感想じゃあなくても、というより問題点の指摘など後で困らないようにだけ配慮したいのですが・・・

60名無しさんは砕けない:2016/10/10(月) 01:12:23 ID:ZKLiXa9c
投下乙です。
康一君、ついに重い思い能力に覚醒…!
1stは仗助、2ndは億泰が頑張ってたし、今回残された康一君にはこれからAct3で大暴れしてほしい。
そしてどこまでも苦労人な承太郎……
現在対主催の最大勢力(だよね?)がどう動くのか、続きが気になる話でした。

収録はいいんじゃあないですか?
仮投下から合わせて十分期間はありましたし、その際の指摘も直されています。
これ以上は「後で文句はたれないで下さいよ」ってやつだと思います。

61名無しさんは砕けない:2016/11/15(火) 00:41:04 ID:wg1aEOHs
集計者様いつもありがとうございます
今期の月報です

話数(前期比) 生存者(前期比) 生存率(前期比)
198話(+1) 25/150 (-0) 16.7 (-0.0)

62名無しさんは砕けない:2016/11/19(土) 04:21:57 ID:dksEc9I2
月報来てたことにすら気付かなかったからage

63 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 22:57:37 ID:FfaHblAk
ジョセフ・ジョルノの本投下を開始いたします

64地図 その1 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 22:58:33 ID:FfaHblAk
男には地図が必要だ。
荒野を渡り切る心の中の『地図』がな。

いやぁ、いい言葉だ。そして、もちろん、というべきか。男だけじゃあない。女にだって、赤ん坊にだってジジイにだって『地図』は必要だ。

が――だが。ここで一つの疑問が浮かぶ。

『地図』とは一体なんのことだ?何をもって心の中の『地図』を定義する?
もっとわかりやすく言おうか、『地図』ってのは『何のためのモノ』なんだ?

……ということで、今回は目の前に――心の中ではなく、現象として、大きな地図を広げた男の話をしよう。


***


「なんだこれ……地図か?」
ジョセフは目の前に広がる光景に驚きを隠せずにいた。
周囲の砂や建物の破片、仗助の血液さえも用いられて描かれた『それ』はただの絵というよりは、確かに地形のようにも見える。

「ッてことは……」
滴る冷や汗を拭う事すら忘れ、ぎこちない手つきで支給された地図を取り出す。
描かれた模様と支給品である地図に誤差はほぼ見当たらない。挙げるとするならば、数か所に付け加えられたアスタリスク記号のような印。

「じゃあ――」
「ふむ、その印はなにか重要なアイテムだか人物だかの所在を表しているようですね」
誰に言うわけでもない、ぽろりと口から洩れただけの言葉に返事が返ってきたことに勢いよく振り返る。
聞きなれた声が誰のものかであるかはすぐに理解出来たのだが、あまりのタイミングに完全に不意を突かれた。

「バッ――いやジョルノなんで起きてんだ、寝てろっつったろ」
「いやあ、職業柄というか、睡眠時間はかなり短いんですよ。でも、おかげで頭の中もすっきりしましたし、身体もだいぶ動かせます。ありがとうございました」
「な、ならいいケドよ。で……」
「この地図ですよ。あなたが作ったんでしょう?」

65地図 その2 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 23:00:16 ID:FfaHblAk
寝起きとは思えない応対の丁寧さがなんとも“らしい”と感じつつ、ジョルノに促されて視線を地面に戻すジョセフ。
しかしジョセフ自身にもこれがこの会場の地図を模した何か、としかわかっていない。

「いや、えっ?――オレェ?つくったー!?」
「そうですよ。その『隠者の紫』で……あぁそうか、あなたさっきスタンドを発現させたばかりでしたね」
答えを導き出せないジョセフに代わるようにジョルノが会話を引き出してゆく。

「そうだよ、それ。なんで俺だけおめーらと違ってイバラのスタンドなんだよ。仗助のやつはホラ……教えてくれないままだったしよ」
「あぁ、説明するのはそこからですか。そもそも“スタンドで殴り合う”ってのは副次的な効果なんですよ。
 スタンドの本質とは――うーん、超能力という現象をビジョンにしたもの、とでも言えばわかりやすいでしょうか。
 あなたのそれは、会場のアイテムらしきものを映してる。そこから推測できる能力はおそらく『索敵』もしくは『探索』。
 いや、この地図……会場そのもの……なにかを……映し出す。『映し出す』……ならば『念写』か?
 だとすれば撮影自体は本体であるジョセフの腕がやることだから、ビジョンも人型である必要がない、か――」
ジョルノ自身もスタンドの発現や戦闘を始めたのはつい最近なのだが、それでもジョセフとは経験値が違う。
どんどんと推測を重ねてゆくジョルノにたまらず口を挟む。

「ね、『念写』ってアレか?何でもないところカメラで撮ったのに別の場所の写真が出てきたりする?」
「そうです。心の中で見たいなと思ったものを目の前に見せる能力。今回の場合は『写真』じゃなくて『絵画』という形で写りましたが。
 しかし念写という能力が発現するとなれば……ジョセフあなた、女性の風呂場とか覗こうとしたこととか、あるんじゃないですか?」

「へっ?……ばっバカそんなこと、ああある訳ねえぇじゃねーかッ!そそそんなんで能力決まってたまるかよッ!
 大体だな、風呂場のカギ穴がそんなズサンなつくりなのがいけねーんじゃあねぇのッ!?
 とっ、ともかく俺の“これ”が念写の能力だとして、結局こっちの『これ』はなんなんだよ!?
 お前が言った通りアイテムでも落ちてんのかッ?……何か所かあるし、探しに行ってみるか?確認って意味も込めてよ」

露骨な動揺を見せながらも話題を地図のアイテム(らしき存在)に無理やりシフトさせるジョセフ。
ふむ、と少しだけ顎に手を当てて考えたジョルノの答えは、

「僕は反対です」
「はぁ?なんで」

意外!それは否定!

「あなたが本当にやるべきことはそんな『くだらないこと』じゃあないでしょう」
「あン?俺の能力がくだらねーってぇ?いくらスタンド初心者相手でもそりゃねーんじゃあねーの?」
ズバズバとしたジョルノの物言いにジョセフの語気が強くなる。
それを知ってか知らずか、ジョルノは冷静に言葉を繋ぐ。
「違いますよ。この『殺し合いゲーム』の中でわざわざ『アイテム収集』に使う時間はないってことです。
 ジョセフは最終的にこのゲームでどうしたいんですか?」

「どうって、そりゃあ主催者の――黒幕ってのか、あの大統領とかいうのをぶちのめすに決まってんだろ」
数瞬ののちにきっぱりと言い放つジョセフにジョルノも頷き返す。

「そう、僕もそのつもりです。だったらそうですね……あなたにわかる表現レベルで話しましょう。
 その大統領を『ラスボス』としましょう。とすればさっきまで僕たちが戦っていたDIOはいわゆる『中ボス』か、下手したら『小ボス』です」
「――てことは、って待ておい俺のレベルってどういうこった」
先ほどの死闘を、さらには自分の父親とも言えるDIOの事をも小ボスと表現するジョルノ。
若干イラっと来る言葉のチョイスではあったが、中身を理解できないほどジョセフの頭の中に余裕がない訳ではない。

66地図 その3 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 23:00:51 ID:FfaHblAk
「まあまあ。でも気付いたようですね。まだまだこの会場には『ボス』がいること。ゲーム打開を目指す僕らの――いうならば、目の上のタンコブ」
「ああ――だがその『ボス』のうち、俺の頭に真っ先に浮かんだクソヤローは“タンコブ”どころか“ガン細胞”だぜ」
ジョルノに対する意趣返しのような捕捉にふぅ、と短い溜息をつきつつジョルノが続ける。

「なんでもいいです……とにかく、僕たちが優先すべきはそちら。そして」
「そして?」
「その存在を同じように目の上のタンコブに」
「ガン細胞だっつったろ、しかも末期の」

「……目の上の、ガン細胞、に。感じている連中がいるはずです。まずは彼らと接触します」
ジョルノが折れながらも方針を明確にする。
しかし、ジョセフはどことなく信じられないような心境で眉を吊り上げる。

「放送で呼ばれてない連中で素直に信じられそうなやつらなんてもう何人もいねぇぞ」
「何も『仲間』である必要はありません。敵の敵は、ってやつですよ」
回答を準備していたかのような淀みのない返事と輝く瞳にジョルノの絶対的な自信と、ある種のカリスマ性を見たジョセフ。
視線を地面に落とし、映し出された地図を一瞥。
軽い音を立てながらそれらを手で払い、消し去った。

「つまり」
再び手を伸ばし、念じる。先ほどのような朧気なものではなく、はっきりと。
倒すべき相手の顔、そして会場に残った参加者たち。血縁者。主催者。守れたもの。守り切れなかったもの……

「そう」
ジョセフの想いに答えるように掌から無数の茨が這い出して来る。
再び形を表した地図は先ほどと変わらない。
――表示されているマークが一か所だけの「バツ」になり、その位置が変わったこと以外には。

ジョセフとジョルノ、二人の視線が重なり合い、どちらからともなく己の地図に印を書き込んだ。

倒すべき“ボス”が誰であるか――さらに言えば印の位置にいる相手でさえ素性は重要ではない。
目の上のタンコブがガン細胞であろうが、中ボスが小ボスであろうが。順番の問題だ。

今考えなければならないことは――まず彼らがやらねばならないことは。

『印の場所にいる、敵の敵。それらと同盟を結成させること』

たったそれだけの、シンプルな答えである。

無論、簡単に事が運ぶとは思えないし、思ってもいない。
しかし、この地図を念写したジョセフ。作戦を打ち立てたジョルノ。
この二人だからこその方針であり、今の彼らにしかできないことである。

頷きあい、立ち上がる。
「――行ってくるぜ、仗助」
歩き出す刹那に小さく放たれた言葉に返事をするものは今度こそおらず、闇夜の風に流れていった。

67地図 その4・状態表 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 23:01:26 ID:FfaHblAk
***


――と、そういう話だ。
わかるかい?地図というものは都合のいい『水先案内人』では決してない。

いいかよく聞けッ!心の中の『地図』とはッ!
自分がどこにいるのかを指し示し!
そして“自分が今どこに向かうべきかを確認させてくれるもの”の事をいうのだッ!

と、大きな声を出してしまったが、つまりはそういう事さ。
心の中の地図じゃあない、現実の地図でも同じだ。何を置いてもまずは現在位置の確認をするだろ?
今回のジョセフとジョルノの作戦に関してもそう言って差し支えないと思う。
あくまで彼らは『ゲーム打開の障害になりうる存在を、同志とともに排除すること』を優先させた。
それは決して遺体を――まあ彼らはそれが何かまでは現時点で把握してないが――軽んじているわけではない。
他人任せというと聞こえは悪いが……『今の自分たちにしかできないこと』を考えた場合、前者のほうが重要だった、という事だ。

まあ……安全な方向を指し示してくれたり、文字通りナビゲーションしてくれる、そんなスタンドもいないではないが、それはまた別のお話だ。
今あわてて話す事じゃあない。いずれどこかで――


【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会西の川岸 / 1日目 夜中】


【ジョセフ・ジョースター】
[能力]:『隠者の紫(ハーミット・パープル)』AND『波紋』
[時間軸]:ニューヨークでスージーQとの結婚を報告しようとした直前
[状態]:全身ダメージ(中)、疲労(やや大)
[装備]:ブリキのヨーヨー
[道具]:首輪、基本支給品×3(うち1つは水ボトルなし)、ショットグラス、念写した地図の写し
[思考・状況]
基本行動方針:チームで行動
1.この『地図』を利用して『敵の敵』に接触し同盟を結成する
2.その前に空条邸に戻って仲間と合流する?
3.悲しみを乗り越える、乗り越えてみせる
4.リサリサの風呂覗いたから念写のスタンド、ってありえねーからな、絶対

※『隠者の紫』の能力を意識して発動できるようになりました。
※すぐ近くの地面に地図が念写されていました。現在はジョセフによってかき消されています。以下地図の詳細
 ※ジョセフが先に無意識で発動させた地図は『アイテムか何か』を『*』のような印で複数個所に示していた。こちらの記録はしていない。
 ※二度目に意識して発動させた地図は『ジョセフたちが今目指すべき場所』を『×』のような印で一か所だけ示している。その場所は以降の書き手さんにお任せします。


【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(中)、精神疲労(やや大)、両腕欠損(治療済み、馴染みつつある)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、地下地図、トランシーバー二つ、ミスタのブーツの切れ端とメモ、念写した地図の写し
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える
1.ジョセフの念写した『地図』を利用して『敵の敵』に接触し同盟を結成させる
2.その前に空条邸に戻って仲間と合流する?
3.考えるべきことは山ほどある。しかし『今やらねばならないこと』もあるから、そちらを優先させる

※先に念写された『アイテムの地図』は消されてしまいましたのでメモ等はないですが、ジョルノのこと、もしかしたら記憶している・か・も


[備考]
仗助の遺体が近くに安置されています。持ち物である基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)もその場にあります。
また周囲には花京院、ジョンガリ・A、徐倫(F・F)の遺体があります。

68地図 ◆yxYaCUyrzc:2017/05/11(木) 23:01:56 ID:FfaHblAk
以上で本投下終了です。
アドバイス、ご意見くださった方ありがとうございました。
以下修正点。
・誤字脱字の修正、表現の変更
・『カーズ討伐同盟』という表現を変更、それに伴う状態表の表記の修正
・その他少々の加筆。内容に変更はありません
さて、仮投下時にもお話ししましたが、今回のSSは没話になってしまった『カーズ討伐同盟』の案を捨てきれなかったので二人の行動の動機付けという位置で書いてみました。
もちろん、指摘があったようにカーズ一人を対象とするのはいささか軽率だったので、敵はだれか、接触すべきはだれかをあえて不明瞭にしておきました。
彼らが誰とどのように接触するか、いち読み手としても期待したいところです。
仮投下から数日で意見が出てきてくれたあたり、ジョジョロワも案外過疎じゃないのかな、と安心しております。

最後になりましたが、再度矛盾点や誤字脱字等ありましたらご指摘いただければ幸いです。それでは。

69 ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:13:47 ID:gmQKlgUA
ディエゴ・ブランドー、カンノーロ・ムーロロ
本投下開始します。

70Rule Out ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:15:31 ID:gmQKlgUA

「ところでオメー、怖いものってあるか?」
「………………?」

開口一番、急げばルーシーとジョニィに追いつけるといった矢先にこの質問。
カンノーロ・ムーロロの唐突な問いにディエゴ・ブランド―は思わず口を半開きにする。
とはいえ彼も狼狽えたりはしない――この程度で隙など見せるわけにはいかないのだ。

「……オレは、その質問に馬鹿ショージキに答えなくちゃならないのか?
 それとも――マンジュウに熱いお茶が一杯怖い、みたいな答えをお望みかい?」
「……なんでオメーがその返しを知ってんだ……」
「へえ、この答えになんか特別な意味でもあるのかい?
 故郷の味が恋しいとかほざいてた妙な爺さんの受け売りなんだがな……」
「………………」

会話のペースは握らせない、という態度に埒が開かないと判断したのかムーロロは両手を上げる。
先に振ったとはいえ、彼の方も時間が惜しいのは確かなのだから。
だが、思わず手の方に目が行きそうなその状況でディエゴは彼の足元に新たなトランプが寄ってきていたのを見逃さなかった。

「わかったわかった……ふざけるのは終いだ。
 目下、オレ達にとって一番の脅威となる参加者の話だけしておきたい」
「……?」

脅威、つまり怖いもの。
先ほどの質問はそういう意味かと繋ぎ合わせて考え込んだ後、ディエゴが口にした名は……

「ルーシー・スティール?」
「不正解だ……このまま放っておけないって意味じゃあ確かに厄介だが
 力づくでねじ伏せられる相手を怖いとは言えんね」
「……ジョースター?」
「残念、またもや不正解……奴らは満身創痍、しかも連絡手段無しで三手に別れてる……
 おまけに根っこの部分は揃って甘ちゃんだ」
「そうなると――」

いまさら話を急ごうとはせず、ディエゴは椅子に座りなおして考え直す。
ここまで来て話を中断するというのも妙な気分だし、ルーシーたちに動きがあれば目の前の男が知らせてくるだろう。
男二人以外には部屋の隅でのそのそと『亀』だけが動く部屋で、淡々と話は進んでいく。
ディエゴは残る参加者についてムーロロほど情報は持っていない。
それでも彼が知る者のうち、脅威と考えられる相手はさほど多くなかった。

71Rule Out ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:17:18 ID:gmQKlgUA

「――カーズとワムウ、ってやつか」
「三度目の正直だな、正解だ……もっともワムウはついさっき死んだから、カーズひとりってことになるがな。
 優勝か、あるいは主催者打倒か――どっちにしろ奴は現時点における最大最悪の障害……
 今のうちに取り除いておかないと後で手詰まりになる」
「……フゥ〜」

ディエゴは一息つく――溜息を隠しながら。
優先的に名前を出した通り、彼にとって厄介なのは遺体を所持するルーシーとジョニィのほうだった。
さらに言うなら彼自身カーズ、どころか柱の男すら直接見たことが無いため脅威のイメージが湧かなかったからなのだが。
とはいえ目の前の相手が持つ自分以上の情報収集力は侮れず、話を聞かずに飛び出すのは愚策と理解していた。

「フン、しょうがない、付き合ってやるか……率直に聞くがどうやって取り除く?」
「より正確に言えば取り除いて『もらう』だな。
 他の参加者を集めて奴を倒させる……単純極まりないが、これが最有力手だ」
「……おいおいおいおい、ワムウってのがどうやって死んだかは知らないが、同じようにやれないのか?」
「実行犯はひとりで正面から戦い、倒したが残念ながら直後に死亡、相討ちってやつだな……
 ついでに言うと、オレの見立てでは残る参加者でカーズと一対一で正面からやりあって殺せそうなのはひとりだけ……
 そして、そいつはオレのことを知ってるのさ……悪い意味でね」

いまいましいフーゴめ、と口ではそう呟きながらも残念そうな表情ではなかった。
ディエゴのほうもそんなオイシイ話は無いか、と逸れた話題を戻す。

「そいつはわかったが、集めるね……今まさに悪評をばらまかれているかもしれないオレたちが、かい?」

自分の意見にケチを付けられた意趣返しか、今度はムーロロの意見にディエゴが突っ込む。
依然、ムーロロは涼しい顔で返すのみだったが。

「それについては全く問題無し、だな。
 カーズは宮本ってガキを使って第四放送時に会場の中央で首輪の解除をするってふれまわってる……
 奴が現れる時間と場所が正確にわかるならそこに他の連中を動かすぐらい朝飯前だ」
「………………首輪の解除?」

気になった単語が投げかけられるも、代わりに返ってきたのは溜息。
無表情にも関わらず、『呆れた』とその顔には書かれていた。

「――今の流れでそいつを信じるのか? この際首輪解除が行われようが、行われたとして結果がどうなろうが関係ない……
 重要なのはその後発生する戦闘だ……残る参加者はそう多くない以上、確実に討ち取れる戦力を一度にぶつけなきゃならねえ。
 そのための駒が……」
「ジョースター、ってことね……
 やつらは教会でジョニィとも接触したようだし、そっちを抑えることでルーシー対策も兼ねてるってワケか……
 で、三手――ジョニィは数に入れないよな?――に別れてるやつらにいちいち声をかけて……」

と、ここでディエゴの言葉が遮られる。

「いいや、そこまでする必要はねえ……ひとり切り崩せばどうとでもなるさ」
「どいつ……いや、当ててやろうか…………『ジョータロー』だ、どうだい?」

反射的に聞き返そうとするも思うところがあったのか挑戦的な笑みを浮かべる。
そんなディエゴに対してムーロロは無表情に意味ありげな薄ら笑いを浮かべ返した。

72Rule Out ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:19:22 ID:gmQKlgUA

「おしいおしい、確かに承太郎を味方につけられりゃ最良だが、今の時点でそれは高望みってもんだ……
 正解はジョルノ・ジョバァーナ……奴を呼ぶ」
「……オレの聞き違いか? 確認させてもらうぞ?
 『呼ぶ』って言ったのか? そのジョルノってやつを、ここへ?」
「Exactly(その通りでございます)だ……まあ、場所は必ずしもここの必要はねえが」
「……おいおいおいおい」

あまりにも馬鹿げた提案……有効とかそういう次元ではない。
敵視されているであろう相手にわざわざ姿を晒す、しかも遠隔操作のスタンドによる連絡手段があるにもかかわらずである。

「やるかどうかはともかく……オレはなるべくあいつ……あいつらとは会いたくねえんだがな」
「あー、心配するな、オレだって奴らとDIOの戦いで片棒担いだオメーを奴らに会わせる気なんざない」
「その立場、そっくりそのままおまえにも当てはまるんだがね……
 じゃあ、ひとりで会うのかい?……一応言っておいてやるが――おまえ、殺されちまうぜ?」

ディエゴのあくまでおどけているような口調を気にもせずにムーロロは続ける。
……こちらも表情は変えずに。

「リスクは承知さ。だがDIOが死んだ以上、協力していたオレがこのまま何にもしなきゃあ、どのみち狙われる……
 オレのスタンスを知ってるのは切ったフーゴに逃がしたルーシーたち……
 奴らがジョースターと接触してオレのことを話される前……つまり今動かなきゃ余裕で詰みだ」
「直接会う意味は? ついでに、ジョルノって理由は?」
「ここまで来て姿は見せたくない、じゃあさすがに信用してもらえないことぐらいガキでもわかる。
 だが向こうの要である承太郎ははっきり言ってヤバイ、会ったとたんにこの世とおさらばすることになりかねねえ……
 となりゃあ、そいつとの橋渡しができてなおかつ話が通じそうな相手――それがジョルノってわけだ」
「要は踏み台ね……間違っても向こうサイドの誰かにゃあ聞かせられない理由だな」

ディエゴの瞳かそれとも脳裏には何が映っているのか……遠いような近いような何処かへと視線が向けられる。
それも一瞬で、すぐに言葉が重ねられていくのだが。

「で、肝心のジョルノを動かせるだけの材料はあるのかい?
 呼んでみたけど断られました、って展開も多分にありそうなんだが?」
「そこで、さっきの話に戻るってわけだ」

予想していた質問がようやく来た、とばかりにムーロロは足を組み替えて頬杖をつき、逆の手の人差し指を立てる。
気取りすぎた仕草で逆に絵になっていなかったが、両者ともに気にせず会話は続く。

「『カーズ討伐同盟』……や、名前なんざどうだっていいんだがこれで交渉を持ちかける……
 要するに手を組む――振りをして情報提供と最小限の労力だけ貸しつつカーズを倒してもらうって寸法だ」
「言うは易く行うは難し……ってね。うまくいくとは思えんが」

相手のブレーンを騙す――極力省略した文字だけでも無謀さが漂ってくる。
この男、何を考えているのかといわんばかりにまじまじと顔を観察するも、相手もまたそれを意に介さない。

「まあ、交渉は任せときな……ジョースターもルーシーも、カーズを厄介と考えてるとこに付け入る隙あり、だ……
 なにより一緒にいるジョセフには『貸し』があるし、あいつならカーズの情報を欲しがることは間違いねえ……
 うまく抱きこめりゃ残る参加者の半数以上と休戦状態まで持ってくことも可能っておまけつきだ。
 それとは別に参加者の誘導やこっちの手札も揃える、とやることは山積みなのが辛いとこだがな」

よほど自信があるのか、それとも口先だけのハッタリか……
判別不能のポーカーフェイスに内心気分を害しつつも、ディエゴにとってまだ確認すべきことはあった。

73Rule Out ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:21:14 ID:gmQKlgUA

「心底同情させてもらうよ……ところで、オレはその間どこで何をやってりゃいいんだい?」
「あー、オレの邪魔にならず、むやみやたらと参加者を減らさないなら何しようが構わんさ。
 ただし、今言った通りオレは忙しい……サポートは期待するな。
 カーズにうっかり出くわしちまった、なんてことのないように頼むぜ」
「わかりきってることを言うのは無駄だ……
 それと参加者を減らすなってもルーシーたちは好きにさせてもらうぜ……?」

ディエゴはこれ以上有用な情報は引き出せそうにないと判断する。
役割が無いなら何故わざわざ呼び止めてまでこの話をしたのか、とは聞かなかった。

「ああ、構わねえさ……この状況で動きが予測できない駒は、除外して構わねぇ……
 後厄介なのは味方なのに指示通りに動くかどうかわからない駒だが……オメーはどうかな?」
「……おまえ、わかってて言ってるだろう?」

質問責めに淀みなく返すあたり、既にムーロロの中でシナリオは出来上がっている。
そしてその中に自分の出番は無い――要するに相手は「しばらく出ていけ」と言っているのだ。
交渉を本気で行うかはともかく、自分がいると何か困るような事態があるのは本当なのだろう。
またしてもオレはお呼びじゃないか、と小さく呟くとディエゴは立ち上がった。

「……ま、いいさ。オレからの質問は以上だし、もう行くぜ?
 うまくいったら呼んでくれよといいたいとこだが……
 ハッキリ言うぞ――――おまえの考えてるようにはいかない」

最後の言葉だけは明らかに今までとは違う、真剣な口調だった。
言い切った根拠までは告げず、デイパックをこれ見よがしに揺らしながらディエゴは去っていく。
急ぐ様子は見られないことから、まずは支給品をじっくり見返しでもした後どこかへ行くつもりなのだろう。
やけにあっさりに見えるが、ムーロロがその動作について疑うことはしない。
彼の目当てである『遺体』について、これから呼ぶ予定の者たちは情報を持っていないことは明白なのだから。

「連絡用のを付けるぞ。ああ、そっちのジョーカーは別だ……『指示通りに動くかどうかわからない』からな……」

サポートまでは無いが連絡役という名目の監視は必要――当然それは理解している。
その証拠に後ろにトランプがついてもディエゴは何もしようとしなかったが……
まさに部屋を出ようかというその時、一度だけ振り返ると思い出したかのように言った。

「そうそう、オレにだって怖いものはあるぜ? まあ『ある』ってよりは『いる』だがね。
 どんな状況下でどんなに戦力が充実してようと、そいつとだけは関わり合いたくない、そんなやつがな……」
「おやおや、そんなことオレに教えちまっていいのかい?」
「全く問題ないね。その怖いやつっていうのは……」




                        「オレ自身、さ」




さらりと述べると、ディエゴはそのまま部屋を出て行った……ずっと控えていた、恐竜を連れて。
――二人を知る者ならわかるだろうがこの対話、信頼しあう者がくつろいで話しているような状況では断じてなかった。
微動だにしないトランプと恐竜、そして本体同士の睨み合いと口先の化かし合い……
どちらかが妙な動作をすればその瞬間に戦闘開始となりかねない、それほどまでに緊迫感の絶えない対話だった。

                    ((さて、それじゃあ……やるか))

彼らが思っていたよりは早く話は終わったが、それでも多少の時間を食ったのは事実。
支給品の確認後、ディエゴの行先は果たしてルーシーたちの元かそれとも別の何処か……?
そして、ムーロロの企む『カーズ討伐同盟』は果たして現実のものとなるのだろうか……?

74Rule Out ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:23:23 ID:gmQKlgUA


【D-3 DIOの館/一日目 夜中】

【ディエゴ・ブランドー】
[スタンド]:『スケアリー・モンスターズ』+?
[時間軸]:大統領を追って線路に落ち真っ二つになった後
[状態]:健康、なかなかハイ
[装備]:遺体の左目、地下地図、恐竜化した『オール・アロング・ウォッチタワー』一枚
[道具]:基本支給品×4(一食消費)鉈、ディオのマント、ジャイロの鉄球
    ベアリングの弾、アメリカン・クラッカー×2、カイロ警察の拳銃(6/6) 、シュトロハイムの足を断ち切った斧
    ランダム支給品11〜27、全て確認済み
   (ディエゴ、ンドゥ―ル、ウェカピポ、ジョナサン、アダムス、ジョセフ、エリナ、承太郎、花京院、
    犬好きの子供、仗助、徐倫、F・F、アナスイ、ブラックモア、織笠花恵)
[思考・状況]
基本的思考:『基本世界』に帰り、得られるものは病気以外ならなんでも得る
1.ムーロロを利用して遺体を全て手に入れる。
2.ひとまず支給品を再確認、その後ルーシーたちを追う?
[備考]
※DIOから部下についての情報を聞きました。ブラフォード、大統領の事は話していません。
※装備とは別に『オール・アロング・ウォッチタワー』のカード(枚数不明)が監視についています。
※ディエゴが本来ルーシーの監視に付けていた恐竜一匹が現在ディエゴの手元にいます。


【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』(手元には半分のみ)
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降
[状態]:健康
[装備]:トランプセット、フロリダ州警察の拳銃(ベレッタ92D 弾数:15/15)、予備弾薬15発×2セット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、遺体の脊椎、角砂糖、
    不明支給品(2〜10、全て確認済み、遺体はありません)
[思考・状況]
基本行動方針:自分が有利になるよう動く
1.ジョースターを利用するべく、ジョルノに『カーズ討伐同盟』の話を持ち掛けて呼び出す。
2.ディエゴを利用して遺体を揃える。ディエゴだってその気になればいつでも殺せる……のだろうか。
3.琢馬を手駒として引き留めておきたい?
[備考]
※現在、亀の中に残っているカードはスペード、クラブのみの計26枚です。
 会場内の探索はハートとダイヤのみで行っています。 それゆえに探索能力はこれまでの半分程に落ちています。

75 ◆LvAk1Ki9I.:2017/05/22(月) 22:26:24 ID:gmQKlgUA
以上で投下終了です。
指摘を受けた三点リーダ、ダッシュを偶数個に直しています。
それ以外の変更点はありません。

◆yxYaCUyrzc氏の話と合わせてご指摘、感想などありましたら遠慮なくお願いいたします。

76名無しさんは砕けない:2017/05/24(水) 21:18:57 ID:hDxoMLus
投下乙です。
仮投下時に動きが少ない話になってしまったとおっしゃっていましたが、こういう話があってこそ物語がしっかり進むと思うので全然かまわないと思います!
ディエゴもムーロロもどちらも「いかにも」な感じで氏の描写に驚かされます!
これからルーシーを追うであろうディエゴに、ジョルノの行動を読んでいるかのようなムーロロ。
近くには確かまだ琢馬もいるはずですし、どう話が展開していくか今後に期待がかかりますね〜

77際会 その1 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 11:56:51 ID:K9OR.IT.
『考えるのをやめる』

さて、君たちはこの言葉についてどう思――いや、聞き方が悪いな。
考えるのをやめるということは“どういう状態のこと”をいうのだ?と質問しよう。

例えばそうだな、腹が減ったから飯を食うとして、何を食べるか考える。
この時点ですでに『食べたいモノ』『食べるという判断』『腹が減ったという認識』の三つを考えている、といえる。
この例に当てはめるなら、考えるのをやめるというのは相当に難しい。まぁ皆までは言わないが……


それではここで、今回の主人公を紹介しておこう。それにあたって、まず皆に確認しておきたいことが二つある。

マル1、『彼はおそらく、考えるのをやめることができない』
マル2、『彼は記憶の全てを本に依存しているわけではない』

前者に関してはほぼ全ての人間に当てはまるから……『彼にはボーっとする、という概念がない』とでも言い換えよう。
たとえ周囲からそう見えていたって、視界に入るすべて、耳に届く音すべてが本に記録され続けるということは、だ。
そりゃあボーっと、なんてしていられる訳がない。で、ここで後者だ。

彼はドーナツという食べ物の名前を憶えていなかった。もちろん本にはそこかしこに書いてあるだろう。でも自分の頭の中には必要ないと本に一任していた。
一方で、この会場で母を刺した感触、リサリサを絞め殺した感触、そして千帆が自分の手を取らなかったあの瞬間の表情。それらはすぐにでも思い出せるだろう。

つまり、何を言いたいかというとだな――

『いつの間にか琢馬も姿を消していた。二人ともそんなこと、と意に介さなかった』
『あいつは妹を失ったショックで放心状態、何をすることもない無害な置物だ』
『仮に今更あのガキが動いたところで俺たちの計画になんの支障もない』

……と。ディエゴ・ブランドーとカンノーロ・ムーロロの二人が彼の――琢馬の事をそう評価したのなら、それはまさに琢馬の思うツボ、戦略勝ち、ということだ。
このゲーム序盤、ミスタやミキタカを相手に『普通の人間のフリ』『物を知らないフリ』をしていた琢馬には、その程度は造作もないだろう。

ジョニィやルーシーたちとソファに座っていた時。確かに何気ない所作を繰り返しているだけに見えた琢馬。だが決して“ボーっとしていた”訳ではない。
本を手元に呼び出さずに己の頭の中で、やるべきこと、やるべきではないことを考案し、耳に入る会話を記憶し、それまでの記憶と合わせ推測および検証をし。
そして仕上げに、あたかも放心した自暴自棄の少年のように部屋を出るだけだった。

「少し外の空気を吸ってくる」
少しホテルの中をフラフラしつつ――無論この時も思考を止めることはなく――どこで聞いているか分からないムーロロに向かってぽつりと呟きホテルのドアを押し開けた。

78際会 その2 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 11:57:35 ID:K9OR.IT.
さて……いくらか歩き、ホテルからたっぷり300メートルは離れたあたりで歩みを止めた琢馬。
しかしあくまでも今の彼は『スタンドは使えるが無害な無気力少年』だ。歩き方に迷いこそなかったが、過度に周囲の警戒をすることもせず。
そういう所作が琢馬にとって必要だったからだ。しかしこれには本人も流石に冷や汗をかいただろう。
殺人者による無言の不意打ちがなかったことも、ムーロロからの警告や尾行もなかったことも。ただただ幸運だったとしか言いようがない。

だが――ここがゴールではない。あくまでもここからが本番だ。

琢馬はなにも『あいつらの遺体争奪戦に巻き込まれてたまるか!逃げ出してやるぜ!』だとか『もう何でもいいや〜フラフラ』だとかのためにホテルを出たのではない。
二度ほど深呼吸をし、ゆっくりと口を開いた。


「あんたに……協力したい」


もちろん琢馬の目の前には誰もいない。傍から見れば、十人中十人が『虚ろな目をして道のど真ん中で独り言をつぶやく危ないヤツ』というだろう。
そんな風体に気付いているのかいないのか、それでも言葉は続く。

「いや、協力だなんて偉そうなことを言いたいんじゃあない。
 俺はあん――あなたに“ついていきたい”ただそれだけなんだ」

そう。これこそが琢馬の辿り着いた答え。

「あなたには何か『とんでもない目標』があるんだろう?
 それを達成したとき、あなたの目の前に何が映っているのか。
 あるいは達成できなかったとき、あなたは一体どうなってしまうのか。
 俺はそれを見てみたい。そして俺に教えてほしい」

……訂正しよう。ある意味で琢馬は答えを出すことを放棄した、とも言える。

「俺には人生を賭して果たすべき目的がある――あった。
 それは達成されたとも言えるし、達成できなかったともいえる。
 まだチャンスはあるかもしれないし、もう二度と訪れないかもしれない。
 俺は目的を失った。ずっとそのことだけを考えて生きてきた、そんな目的を。目標を」

掠れた声色でありながら、それが消えることはない。
その目は下を向きながら、輝きを失うことはない。

「あなたに『俺に目標をくれ』なんて贅沢な頼みをするつもりはない。
 教えてほしいなんて言ったが、あなたはあなたの目指すべきところに行くだけでいい。
 本当に、ただただついていきたいだけなんだ。それを隣で――いや、後ろから見られるだけでいい。
 それをあなたが受け入れてくれるなら、なんだってやってやる」

泣いているわけでも、怒っているわけでもない。
焦っているわけでも、恐れているわけでもない。
蓮見琢馬の表情は、いつもと変わらない無機質なそれだった。

79際会 その3 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 11:58:04 ID:K9OR.IT.
「……」

言いたいことをすべて言い切ったのだろう。口を閉ざした琢馬の頬を緩やかな夜風が撫でた。

「……」

琢馬自身にもわかっていたことだった。
ただ、あの場で、あの状況で、そして自分の出来うることを考えに考え抜いた結果だった。
普段なら絶対にしないであろう、そんな賭け。

「……」

つまり――琢馬の言葉に、呼びかけに。
返事をするものは。
彼に答えを見せるものは。

「……」

「……」

「……なんてな」
琢馬が踵を返す。あの居心地が悪く、そして自分を縛り付ける連中の屯すホテルに戻るべく。


――と。少し琢馬から視線を変えよう。ここで登場人物その2についてだ。
彼について一言二言の説明をするなら……

マル1、『彼は究極の天才である』
マル2、『彼は別に人間を殺したいと思っているわけではない』
前者は改めて言うまでもないが、言っておかなければならない。問題はマル2の方、これが少々厄介だ。
彼が到達したい場所はあくまでも『自分が究極の生命体となること』である。
そのために脳を押す装置を作り出した。それだけでは足りないと赤石を求めた。それが偶々人間の手にあっただけである。
食事に関しても、自分が必要なカロリーを得ることができれば、何も人間や、その脳を押した吸血鬼を食わねばならないという訳でもないだろう。
世が世なら、死刑囚をあてがうとかして人間と共存さえできるかもしれない。

少々話が逸れたが、自分の邪魔をしなければ異種だろうが同種だろうが彼は――カーズは殺さないのだ。
逆に言えば、自分に逆らうなら同種だろうとなんだろうと、問答無用でぶっ殺すって事なんだが、まぁそれはそれとして。
崖に咲く花を踏むこともなければ、犬を見殺しにすることもない。
克服すべき太陽も、その輝きを己の瞳に映せば感動の声さえ漏らすだろう。

要するに何が言いたいかと言うとだな――

80際会 その4 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 11:58:30 ID:K9OR.IT.
「なんだって、か」

カーズにとって、この提案は悪い話ではなかった。

「ククク……今の演説を、まさか大統領だとかいうの“だけ”に聞かせていたわけではあるまい?」

そのバケモノじみた……いや、実際に人間から見れば十分にバケモノなんだが、目と耳が道の真ん中で呟き続ける琢馬をとらえていた。
独り言を終えて元来た道を戻ろうとする琢馬の背後。つまり先ほどまで琢馬が見つめていた方向に姿を現す。

「そうだろう?だからこそ、このカーズを前にしてそんな顔でいられるのだろう?
 私ほど『とんでもない目標』を持ったものもそうは居ないだろうからな」

振り返った琢馬の目がカーズと合ったとき。
琢馬がギョッとしたのはほんの一瞬で、むしろ、その口角が少しだけ上がったようにさえ見えた。
夜の闇で誰にも分らないほどごくわずか。少なくとも俺にはわからなかったが――カーズは分かったのかもしれない。

「そして――フフ。人間はこういう時、だいたいこう言うそうじゃあないか」

笑いをこらえきれないカーズと、こちらもまた表情が緩む――安堵したような顔をした琢馬。

そう。カーズの言った通りだった。
琢馬は自分の体に吸い込まれた『遺体』のパワーが一体何なのか。
耳に入ってくるその遺体の情報。生前が“何者”であったか。なぜこんなゲームバランス崩壊のようなものが点在しているか。
なぜそれを知っているものがいるのか。なぜスティーブン・スティールが殺されたのか。なぜ遺体と遺体が引かれあるのか。
それらを踏まえての先の独り言――演説、大立ち回り。そういっても過言ではないだろう。
ある意味では、むしろ大統領には本当に“聞かせるだけ”でカーズのような“ドでかい目標を持つもの”に接触してもらうところまでが琢馬の作戦だったのかもしれない。
むろん、大統領が接触してくれたのなら、それはそれで琢馬にも動きようがあったのだとは容易に推測できるけど――

「MMM???今『なんでもする』って、言ったよヌァアァァ〜〜?」

言いながらついに高笑いを始めるカーズ。
それを静かに見守る琢馬。ほんの少しだけ洩れた溜息は安堵のものか、あるいはカーズの言い回しに引っかかるところでもあったのか。
それは本人にしか分からないだろう。敢えて言及するのは避けさせてもらうよ。


――と。
ここで最初のテーマに戻る。
『考えるのをやめる』ということについて。

何がどうあっても考えるのをやめることが出来ないであろう蓮見琢馬は、考えに考え抜いて、カーズに接触した。
だがしかし、双葉千帆のことを『考えるのをやめた』とも表現できなくもない。

一方でカーズは一族の中でも――つまり全ての生物の中でもダントツに頭がいい大天才。考えることに関して右に出るものはそういないだろう。
だが、そんなカーズが『考えるのをやめた』という話を我々は知っている。

さてさて、カーズ討伐同盟やら聖人の遺体の争奪戦やらで周囲がざわつく中。
ある意味では誰よりも早くカーズに接触したといえる……いえなくもない琢馬。
この出会いがどう転がっていくのか。皆も少し“考えて”みておくれよ。

81際会 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 11:58:54 ID:K9OR.IT.
【D-3 路上/一日目 真夜中】

【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(小〜中に回復)、疲労(なし〜小に回復)
[装備]:遺体の左脚
[道具]:基本支給品×5、サヴェジガーデン一匹、首輪(由花子/噴上)、壊れた首輪×2(J・ガイル/億泰)
    ランダム支給品1〜5(アクセル・RO:1〜2/カーズ+由花子+億泰:0〜1)
    工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図、スタンド大辞典
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる
0.参加者(特に承太郎、DIO、吉良)を探す。場合によっては首輪の破壊を試みる
1.目の前の男(=蓮見琢馬)に興味
2.ワムウと合流
3.エイジャの赤石の行方について調べる
4.第四放送時に会場の中央に赴き、集まった参加者を皆殺しにする
[備考]
※スタンド大辞典を読破しました。
 参加者が参戦時点で使用できるスタンドは名前、能力、外見(ビジョン)全てが頭の中に入っています。
 現時点の生き残りでスタンドと本体が一致しているのは承太郎、吉良、宮本です。
 まだ琢馬の事は詳細を聞いていない&見ていないので把握していません。
※死の結婚指輪がカーズ、エシディシ、ワムウのうち誰の物かは次回以降の書き手さんにお任せします。
 ちなみにカーズは誰の指輪か知っています。死の結婚指輪の解毒剤を持っているかどうかは不明です。
 (そもそも『解毒剤は自分が持っている』、『指示に従えば渡す』などとは一言も言っていません)
※首輪の解析結果について
 1.首輪は破壊『可』能。ただし壊すと内部で爆発が起こり、内部構造は『隠滅』される。
 2.1の爆発で首輪そのもの(外殻)は壊れない(周囲への殺傷能力はほぼ皆無)→禁止エリア違反などによる参加者の始末は別の方法?
 3.1、2は死者から外した首輪の場合であり、生存者の首輪についてはこの限りではない可能性がある。
 4.生きている参加者の首輪を攻撃した場合は、攻撃された参加者の首が吹き飛びます(165話『BLOOD PROUD』参照)
※遺体の左脚の入手経路は シーラEの支給品→シュトロハイム→カーズ です。
※カーズの首輪に「何か」が起きています。どういった理由で何が起きてるかは、次以降の書き手さんにおまかせします。
※康一たちとカーズの移動経路はE-4→ F-4→ F-3→ G-3→G-2 です。
 その間に夜(〜20時)までに発動する禁止エリアは存在しませんでした。

【蓮見琢馬】
[スタンド]:『記憶を本に記録するスタンド能力』
[時間軸]:千帆の書いた小説を図書館で読んでいた途中
[状態]:健康、精神的動揺(極小)
[装備]:遺体の右手、自動拳銃、アヌビス神
[道具]:無し
[思考・状況]
基本行動方針:他人に頼ることなく生き残る……?
0.ドでかい目標を持つものについていき、『答え』をその目で見る
1.その“もの”カーズと接触。あとはカーズの指示次第だが――?
2.自分の罪にどう向き合えばいいのかわからない=思考0へ
[備考]
※参戦時期の関係上、琢馬のスタンドには未だ名前がありません。
※琢馬はホール内で岸辺露伴、トニオ・トラサルディー、虹村形兆、ウィルソン・フィリップスの顔を確認しました。
 また、その他の名前を知らない周囲の人物の顔も全て記憶しているため、出会ったら思い出すと思われます。
 また杜王町に滞在したことがある者や著名人ならば、直接接触したことが無くとも琢馬が知っている可能性はあります。
※ミスタ、ミキタカから彼らの仲間の情報を聞き出しました。
※スタンドに『銃で撃たれた記憶』が追加されました。右手の指が二本千切れかけ、大量に出血します。何かを持っていても確実に取り落とします。
 琢馬自身の傷は遺体を取り込んだことにより完治しています。
※DIOの館を手ぶらで出てきましたので、以下の所持道具を館に置いてきています。カーズの指示次第では放置して立ち去るつもりです。
 基本支給品×3(食料1、水ボトル半分消費)、双葉家の包丁、承太郎のタバコ(17/20)&ライター、SPWの杖、
 不明支給品2〜3(リサリサ1/照彦1or2:確認済み、遺体はありません) 救急用医療品、多量のメモ用紙、小説の原案メモ

82際会 ◆yxYaCUyrzc:2017/08/25(金) 12:02:07 ID:K9OR.IT.
以上で投下終了です。
仮投下からの変更点は
・誤字脱字、開業位置の修正
・表現の修正と若干の追加
……このくらいです。

仮投下時に感想くださった皆様ありがとうございます。
ゲームも終盤、どんどんフラグ立てていきたいので、大きなバトルやどんでん返しは皆様にお任せいたしますよw

さて、最後になりますが、引き続き矛盾点などのご指摘がありましたらどんどんとレスいただければ幸いです。
また1〜2週間程度の時間を置いて、修正がないようでしたらwiki収録にうつらせていただきます。ではではノシ

83引力 その1 ◆yxYaCUyrzc:2017/11/20(月) 21:35:52 ID:zAcdPnQw
彼らの話をするとき、あるいは聞くとき。どうしても避けては通れない言葉がいくつか存在する。
今回はその中から『引力』というキーワードについて考えよう。

だが……今回は悠長に問答をしている場合じゃあなさそうだ。事態は刻一刻と変動しているものだからな。
まずは答えを話そう。というよりも読んで字のごとくさ。引力とはズバリ『力』だ。

力――パワーとかエネルギーと言い換えても良いかも知れない。
引き合う、引き付けあう“力”。シンプルだが、それゆえに重要な要素だと言っても良いかもな。

さて。“事態は刻一刻と”なんて言ったが今どうなっているか。
そうだな、これも結果から説明しようか。そのほうが紛らわしくないだろう。


トリッシュ一行はルーシーに出会うことが出来ずにいた。それは一体なぜか?そこに関わってくるのが『引力』だ。


まずはトリッシュ。彼女の心に直接語り掛けるような声を聴いたところから。
ルーシー……トリッシュは正体を知らないから、正確に言えばルーシー“らしき女性”の、となるが、とにかく声を聴き。
それをナランチャと玉美に問い。そこから幻聴だの罠だのという、ある意味お約束なやり取りをし。
そうこうしている内に、というのは少々違うが――彼女の耳に声が届くことはなくなった。

では話題に上がったルーシーはと言えば。こちらは改めて説明するほどでもないが……
DIOの館でのやり取りを思い出してもらえればトリッシュに声をかけている余裕なんか存在しないとわかるだろう。


つまり――トリッシュとルーシーの間にはたらく“引力”は弱まり。
もっと言うならルーシーの側はジョニィ・ジョースターというより大きな“力”に『引き寄せられた』という訳だ。

84引力 その2 ◆yxYaCUyrzc:2017/11/20(月) 21:36:20 ID:zAcdPnQw
話をトリッシュ一行に戻そう。
“メッセージ”が途絶えたとはいえ。それが罠であれ何であれ。他に行く当てがないのもまた事実。
敵も味方も数少ない現状、とにかく移動すべきだというトリッシュ自身の提案で、声が告げていた方角、北を目指すことになった。


そしてここに新たな『引力』が発生する。


目指していた方角にて地鳴りとともに突如出現した巨大な鉄塔。
玉美に曰く『地元の観光名所にそっくり』とのことだが、なぜそれが今ここに?
先の幻聴、そしてこのタイミング。何もない訳がない。無視できる訳がない。

ちなみに鉄塔それ自体もイギーに支給された紙から地球の『引力』に従って地面に突き刺さった訳だが――今回は置いておこう。
彼らを呼び寄せた“力”は鉄塔のもつ“パワー”の比ではなかったのだから。


最大限の警戒をし。最小限しか音を立てずに歩み続けるトリッシュたち。
不意に先頭を行くナランチャが手を伸ばし立ち止まる。
振り返りこそしなかったが、トリッシュにはその表情がどんなものかは容易に想像できた。

「いくつ?」
スパイス・ガールを介しての問いに、開かれた指が折られて形を作る。『3』だ。
この状況、何をもって優位とするか。これは結構重要な考え方だ。
単純に数の大小のみで語れば互角ではある。あるが――ただただ人数だけが多ければいいってもんじゃあない。

振り返れば、後方の警戒を請け負った玉美の震える足が少し後ろに引いたのがトリッシュの目に留まる。
視線を上げて目を合わせてみれば、瞳が揺れ、一瞬後には口から弱音が漏れ出しそうな表情。だが、それを軽蔑することは出来ない。
トリッシュ様をお守りします!なんて啖呵を切ったって、未知の存在を相手にすると思えば、そりゃあ当然のリアクションだから。
さっき話した優位の定義とはちょっと矛盾するようだが、この時点で数の上での不利が確定。玉美を守りながらとなればマイナスの振れ幅は一層大きくなるだろう。

玉美を安心させるように小さく頷き前を向きなおせば今度はナランチャと目が合う。
少し細められた目は、それも玉美を軽蔑する眼差しではない。『任務を全うするギャングの眼差し』だ。
しかしその“一人で行く決断”を許す訳にはいかない。首を振りナランチャを制する。

迅速な決断を求められるトリッシュ。チリチリとした緊張感が限界に達する。
自身の体調やルーシーの心配もあるからと撤退を宣言しようとした刹那。

「ふたつ先の角にいる三人組!俺たちはこのゲームに否定的な者だッ!
 今からそちらに出ていくが、対等な出会いをお願いしたいッ!」

85引力 その3 ◆yxYaCUyrzc:2017/11/20(月) 21:36:46 ID:zAcdPnQw
ここで!このタイミングでッ!?ギョッとする三人。
ナランチャがレーダーを数秒見つめ、頷く。間違いない、声の主はこっちに来る。
しかも相手はこちらの人数まで言い当てた。それが何を意味するかは想像に難くない。
真っ先に力を抜き、スタンドを引っ込めたのは意外にも――いや当然、トリッシュ・ウナ。
次いでナランチャと玉美。隊列も崩して横並びに立ち尽くす。

間もなくして現れたのは馬に跨るバンダナの男と、犬。
先ほどトリッシュが“なんにん?”ではなく“いくつ?”と問うたのはこの可能性を考慮してだったのだが、そんなことを喜んでいる場合でもなくなってしまった。

「俺の無礼な願いを聞き入れてくれてありがとう。
 さてお三方、こんな夜道にどこへ行こうというんだい?」
バンダナの男から発せられたそれは先ほどの声色と同じ。つまり――

「オイオイオイオイ、油断させようったってそーはいかねーぜ」
「そッ、そーだそーだッ!こっちは三人、てめーは一人!それともなんだ!そのウマだのイヌだのも戦力に入れるってのかァ!?」
と、トリッシュの心配を代弁するかのようにナランチャと玉美が凄む。
だがわざわざ口に出さ無くても……慌ててトリッシュが制するが、相手の男は柔らかい笑みを浮かべながら馬から降りる。
(犬のほうは警戒しつつも興味なさげに顔を掻いていた)

「まさか!もし、俺たちがゲームに乗っていたとしたら君らに声をかけずにそのまま襲ってるさ。
 それに俺は味方を探している――おそらく敵に攫われた。ならばまずは“そのどちらでもない参加者”とは会話をするのが筋ってもんだろう?

 ……ま、いずれにしても俺は女性には手を上げるなんてゲス野郎みたいな行動はもってのほかだと思っているがな。
 それで、シニョリーナたち。君らはどこかに向かっているように見うけられるが……こんな暗い夜道は危険だ。
 俺も一緒に行こう。君の力になりたい」

……ん?
と不思議がる暇さえ与えられないようだ。つくづく状況は変化し続けるものだと痛感する。
ピラピラとメモだか伝言だかの紙切れを振りながら歩み寄ってくるその男には不思議と警戒する気が起きなかった。

「オイてめー、こんな場所でナンパかよ!?」
「サラッとセリフから俺ら抜いてってるんじゃあねェーッ」

そのトリッシュの不思議さはナランチャと玉美も感じているのだろうか。戦闘前の威嚇とは少し毛色の違う敵意を自分の両サイドから感じ始める。
このままでは収まりがつかないと二人の頭に軽くゲンコツを食らわせ、口を開いた。

「その“敵”とやらが女性だったらとか考えないのかしらね?
 なァんて言いたいこともあるし、逆に答える理由もないのだけれど……ここで断ってもあなたのこと、絶対に諦めなさそうね。
 そして確かに私たちはご指摘のとおり、ある場所に向かっていた。あなたたちがやって来た方向よ。
 ま……そのへん込みで、とりあえずそこらで情報交換といきましょうか」


――と。分かったろう?
トリッシュたちに働いた『引力』はシーザー・ツェペリとイギーとの『引力』だったって訳だ。

そして最初に言った通り、引力とはすなわち“力”だ。
ナランチャのエアロスミス、つまりスタンドのパワー。
シーザーの波紋レーダー、呼吸が生み出すエネルギー。
それに比べたら、そりゃあ鉄塔が引力によって落っこちただなんて、些細にもほどがある。

おっと、最後に一つ。
俺が感じ、そしてどうしても君らに伝えたかった『引力』を彼らのセリフとともに紹介して終わりにしよう。


「ところでシニョリーナ。俺は君に会ったのが初めてな気がしないな。どこかで会ったことがあるかい?」

「「て、テメェ性懲りもなくトリッシュ(様)のこと口説いてんじゃあねえよッ!」」

「――あら不思議ね、気のせい程度なら、私もあなたの事を初対面のようには感じられないわね」

「「えっ……エエェ――――ッッ!?」」

86引力 状態表 ◆yxYaCUyrzc:2017/11/20(月) 21:37:16 ID:zAcdPnQw
【D-3とD-4の境界付近 民家内/一日目 真夜中】


【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:4部終了後
[状態]:健康
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る
0.今後もトリッシュ様のお役に立つでござる
1.なんだこのナンパ野郎ッ許さんッ!が、トリッシュ殿の命令なのでとりあえず情報交換してやる
2.ナランチャは気に食わないが、同行を許してやらんこともない

【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)
    不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.なんだこのナンパ野郎ッ!?でもトリッシュがあぁ言ってるし情報交換だけすっか
1.早くフーゴとジョナサンを探しに行こう
2.玉美は気に入らないけど 、まあ一緒でもいいか

【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:健康
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服、遺体の胴体
[道具]:基本支給品×4
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する
0.とりあえずこの3人組(?)と情報交換
1.さっきの声……ルーシー?今聞こえないのはなぜ?
2.フーゴとジョナサンを探しに行きたいけど、DIOの館に行くべき?
3.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく

【シーザー・アントニオ・ツェペリ】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:サン・モリッツ廃ホテル突入前、ジョセフと喧嘩別れした直後
[状態]:胸に銃創二発(ほぼ回復済み)
[装備]:トニオさんの石鹸、メリケンサック、シルバー・バレット
[道具]:基本支給品一式、モデルガン、コーヒーガム(1枚消費)、ダイナマイト6本
   ミスタの記憶DISC、クリーム・スターターのスタンドDISC、ホット・パンツの記憶DISC、イギーの不明支給品1
[思考・状況]
基本行動方針:主催者、柱の男、吸血鬼の打倒
0.シニョリーナ一行と情報交換しよう
1.フーゴ、どこに……?とにかくフーゴに助かってほしい
2.ジョセフ、シュトロハイムを探し柱の男を倒す
※DISCの使い方を理解しました。スタンドDISCと記憶DISCの違いはまだ知りません。
※フーゴの言う『ジョジョ』をジョセフの事だと誤解しています。

【イギー】
[スタンド]:『ザ・フール』
[時間軸]:JC23巻 ダービー戦前
[状態]:疲労(ほぼ回復)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:ここから脱出する
0.こいつら(トリッシュ一行)と情報交換?勝手にやってろ、とりあえずついてくけど
1.あいつ(フーゴ)、どこ行きやがった!?
2.コーヒーガム(シーザー)と行動、穴だらけ(フーゴ)、フーゴの仲間と合流したい
3.煙突(ジョルノ)が気に喰わないけど、DIOを倒したのでちょっと見直した

[備考]
※イギーのデイパックと中身の基本支給品(食料無し)は鉄塔付近に放置してあります。
※トリッシュを中心とした地図は他の遺体の点在箇所を示しています。部位は記されておらず、持っている地図に書き写されました。
 DIOの館以外に星が記されているかどうかは以降の書き手さんにお任せします。
※トリッシュとシーザーの面識と引力については完全に“気のせい”です(ジョジョロワ1stのオマージュですので影響力はありません、あってはなりません)

87引力 ◆yxYaCUyrzc:2017/11/20(月) 21:41:59 ID:zAcdPnQw
以上で本投下終了です。
仮投下の際にいただいた『馬は?』『宮本のメモは?』について少々の加筆、それから文章表現の修正等を行いました。

どんどん人を動かして、新しく出会いやらフラグやらを作っていきたいですね。
個人的には今の参加者全員書いて「俺どこ書いても自己リレーになっちゃう!」とか言ってみたいですw
それがいいことか悪いことかは置いといて……これを機に書きたい人が増えてくれれば有難いんですがね。

それでは、引き続きご指摘ありましたらレスください。1〜2週間を目途にwiki収録も行いたいと思います。

88 ◆LvAk1Ki9I.:2018/01/23(火) 21:26:00 ID:sROjq4tQ
ジョナサン・ジョースター、ジョニィ・ジョースター、ルーシー・スティール
本投下開始します。

89すれ違い ◆LvAk1Ki9I.:2018/01/23(火) 21:27:38 ID:sROjq4tQ

――D-2、倒壊したサン・ジョルジョ・マジョーレ教会の跡地にて。
後二時間ほどで日付が変わろうかという深夜、瓦礫の中に佇む一組の男女の姿があった。
辺りを見回して人を探す彼らの名は、先ほどDIOの館から脱出したジョニィ・ジョースターとルーシー・スティール。

「……やっぱり、誰もいない?」
「ああ、伝言でもあればと思ったけれど、本当に何も残っていなかった……
 こんな場所にいつまでもいたくないっていう気持ちはわかるけれど」

彼らの目的は第三放送直前、ジョニィが教会地下で遭遇した『ジョースター』との合流。
共通の仲間たるマウンテン・ティムは所在不明、ルーシーが呼びかけたトリッシュ・ウナもここまで来る間に遭遇せず。
そうなるとせめて、この教会跡でジョニィが遺体の中心と語るジョースターとの接触を試みたかったのだが……

「ジョニィ、わたしはその……ジョースター?
 その中の誰とも会ったことがないのだけれど……本当に信頼できる相手なの?」
「全員がそうかはわからない……けど、話が分かりそうなのはちゃんといた……
 それにぼくたちが会ったDIOという男は、似ていたディエゴと一緒で間違ってもいい奴じゃあなかった……
 だったら、ジョースターの側はぼくらの味方になると考えてもいいんじゃあないか?」

結果はまたしても空振り――目的の男たちは一人も残っていないどころかその足取りすら掴めない有様。
ムーロロの情報網、そしてその基盤であろうスタンド能力を考えると、このタイムロスは非常に痛かった。

「……聞きたいのは憶測でなく事実よ。実際会って、私が決めるしかなさそうね……
 あのムーロロが既に他の全員を私たちの敵に仕立てあげている可能性もある以上、油断はできないッ!
 …………他のジョースターはあなたよりかはましだといいのだけど」
「……わかったよ、今はそれで構わない……で、どうするんだ? ぼくにはこれ以上の案内はできない……
 地図を頼りに遺体を探す……いや、それより遺体の所有者に呼び掛けてここに来させられないのか?」

――『遺体』と『ジョースター』のどちらを優先させるべきか。
どちらも現在はわからないことが多く、しかも感覚だよりというのがなおさら不明瞭。
セッコを送り出した後二人は多少の口論を経て、結局ジョニィがルーシーを説き伏せてここまでやってきたが……
それが何の成果も得られなかったとあらば多少不機嫌にもなろうというもの。

「そんなに便利なものじゃあないわ……呼びかけても相手が聞いてくれるか……
 いえ、そもそもこちらの声がきちんと届いているのかすらあいまい……
 ただ、どこかにいることがわかるだけ…あなたこそどうなの?」
「ぼくも同じ…というより、さっきまではまるで誰かが呼んでいたようにだいたいの方向がわかったけれど……
 あの時だけが特別だったのか、今は何も感じない……
 この会場のどこかに何人かいる……それだけで、どこにいるのかは全くわからない」

不確かすぎる感覚では人探しに有力とは言えず、お互いに小さくため息を吐く。
……だが、次の瞬間ジョニィが目線を外す。

「いや、訂正する……『今』『ここに』誰かが来た……」

言いつつ一歩前へと出る――繋がりを感じるとはいえ、それが『味方』であるかは別問題なのだから。

90すれ違い ◆LvAk1Ki9I.:2018/01/23(火) 21:28:49 ID:sROjq4tQ

#


「きみは、ジョニィと……そちらの女性は?」
「そういうきみはジョナサン、だったな……」

やってきたのは黒髪に精悍な顔つきの青年――ジョナサン・ジョースター……!
エア・サプレーナ島で目覚めた彼は仲間と合流すべく、川沿いを北上してようやく教会へと戻ってきたのだ。
他に誰かいないかと辺りを見回しつつ歩み寄ろうとする彼に対しジョニィは――



                                  ドン!!




                       ――――何の前触れもなく『タスク』を構え、発射したッ!!



「うわっ!!?」

不意を突かれたジョナサンは録に回避すらできなかったが……爪弾はどうにか体ギリギリを掠めるだけに止まった。
反射的に掠めた箇所を確認――『穴』は、無い。
次いで驚きの表情を浮かべるとともにジョニィの方へと向き直るが……
視線の先にはジョニィが殺意の表情とともに、相も変わらず構えていた。
――下手な動きをすれば即座に再攻撃するといわんばかりに。

「質問に答えるのは構わない……だが、それ以上近づくことは許さない……
 彼女こそルーシー・スティール、あの時話したスティール氏の婚約者そのひとだ……
 さあ答えたぞ。今度はこっちの質問に答えてもらう……
 さっきここの地下にいたきみたちはいったい、どういう繋がりなんだ?
 そしてあの後、ここで何があったんだ?」

まだ困惑顔のジョナサンに冷え切った声で要求、回答、そして質問が矢継ぎ早に浴びせられる。
初対面の時と同じ、あるいはそれ以上か。
一度対話した相手――加えて、ジョナサンは知らないが先の会話内容――からすれば過剰すぎる警戒だったが……

「……わかった! 望むならこの距離で、そちらの質問に答えよう!
 その上で撃つなら撃て! ただし撃った瞬間ぼくの丸太のような足蹴りが君の腕を折る、それでもいいのなら!」

そこはジョナサン、困惑こそすれどこれしきでひるむような男ではない。
むしろ知りあいとはいえ状況がわからない中ひとりで現れた相手に対しては当然の反応。
婦女子を守りながらとあらばなおさら慎重にもなると勝手に納得、負けじと覚悟を見せつけていた。

「あの場にいた者たちは、簡単に言えば血の繋がりがあるぼくの子孫たち!
 彼らはぼくの子供に孫に、そのまた子供……皆、ぼくから見て未来から連れてこられたといっていた……
 今ならはっきり言える……ぼくらの姓が同じなのは偶然などでなく、きみもおそらくそうだからだ……!」
「……なるほど、ね。やっぱりそういう繋がりか……血統についてはやはり心当たりはないが…………?」

思うところはあったが納得まではいかず、その指先はジョナサンの方を向いたまま……
ジョニィは一瞬ちらりと明後日の方向を見てすぐに視線を戻し、ジョナサンの言葉の続きを待つ。
対するジョナサンも相手を見くびってはおらず、いざとなれば本気で相手の懐に飛び込む覚悟だった。


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