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作品投下スレ

32目覚めぬ者に夜明けは来ない ◆LvAk1Ki9I.:2016/06/22(水) 23:03:55 ID:e4qxtae2

「………………」

数分後。
足音が十分遠ざかったことを確認したセッコは首から上だけ出して様子を窺ったのち、浮上した。

(見つかって、ねえよなあ?)

影の正体や会話内容などどうでもよい………重要なのは『誰かに見つかったら甘いのがもらえない』ということのみ。
それでも一応気にはなったのか彼らのいた場所を眺め、もっと近くで見てみようと前進したとき―――


                『おいセッコ おまえ今…禁止エリアに入ってんじゃあねーのか? なんでここにいる?』


「うお!!? チョコラータァ!?」

突如響いた、殺したはずの男の声に仰天して辺りを見回すも、先ほど自分自身で確かめた通り誰もいない。
やがて聞こえてきたカウントダウンにより、ようやく声の発生源が自分の首輪で、禁止エリアに踏み込んだことに気が付いた。
ひとまず言われた通り後ずさりして脱出し、現状を再確認する。

「ここ……かよォォォ! 禁止エリアは……おっ?」

目的の場所を見つけたことに歓喜しかけるも、言葉途中でふと疑問が湧き上がる。
しばし宙を見つめた後、デイパックから時計を取り出す―――23時少し前。

「………ん〜〜?」

自分"だけ"が禁止エリアの警告を受けた点、それが妙に気にかかり、顔に手を当て考え込む。
先ほどの影たちには何も起こらなかったのに………19時からか21時からか、影たちのいた場所はとっくに禁止エリアになっていたはずなのに。

「やはり……あいつら……『禁止エリア』に引っかからない……入ってたのに………なんなんだあいつら…」



               ―――それは、影たちが殺し合いのルールに囚われる参加者ではありえないことを示していた。



「お、思い出した……! ルーシーに教えてやらなきゃあな……G-8が禁止エリア……うおお、これで甘いの……たくさん……ッ!!」

その口調からは想像しにくいが、セッコは意外と細かいことに気が付く男である。
だが、同時に決して記憶力が優れている男でもないのだ。
果たしてその疑問をルーシーか、別の誰かにぶつけるまで覚えていられるのか?
あるいは『それならそれでどうでもいい』と忘れてしまうのだろうか?

「うああ、うぐぐ……にしても……なんか……変、なんだよなああ……おれの…………からだ……どうなってんだよおおおお?
 誰か答えてくれよォ〜〜〜〜重要なんだよオオオオ!」

加えて、先ほどから自覚し始めた体の変調。
どこがどうおかしいのか具体的な説明はできないのだが……とにかくおかしいというのがセッコの思考を狂わせていた。
―――それがじわじわと進みつつある『恐竜化』の兆候であることを、彼は知らない。

「チキショー、イライラするなあ……食いてえなああ……作りてえなあああ………
 けど見つかるなって言われてるしなああああ………知らせたら、また遊んでいいんだよなあああああ?」

考えるべきことは多く、されどいずれの事柄も彼単独で解答に辿り着くのは極めて困難。
そして……『考えるのをやめた』、『狂人』ッ!―――この世にこれほど何をしでかすかわからない組み合わせがあるだろうかッ!?
セッコがどこまで考えるかはさておき………最優先事項は、ひとまずこれで『任務完了』ということ。
望みの報酬を受け取るべく、すぐさま方向転換し移動を始めるのだった。

―――他人から与えられるものばかりを享受し、自分自身の思考は未だ中途半端なものばかりであるセッコ。
ある意味最も迷走している彼が『答え』に辿り着くときは、果たして来るのだろうか………?


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