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「DISCはお前目掛け投げつけたのではない。ホット・パンツだ。
私は指令を書きこんだDISCを、彼女目掛け放り投げた。実際にこうなるかどうかは賭けだった。
頭部にDISCが入らないかもしれない。もはやホワイト・スネイクにその力は残っていないかもしれない。
ホット・パンツが完全に死んでいるかもしれない。彼女の手刀より、お前の拳のほうが早いかもしれない。
全ては偶然だった。幾つもの“かもしれない”を潜り抜け……ここに私は立っている。そしてお前は地に伏している」
「………ッあ」
「弟よ、お前は運命に敗北したのだ。神が選んだのは私だ」
力なく伸ばされた腕は何も掴まずに、地に落ちる。
プッチの胸ぐらを握ろうと、二度三度、最期に虚しくあがくが、ウェザーの腕はそれっきり動かなくなった。
空っぽの瞳は憎き相手を捕えるでもなく、未来を見据えるでもなく、ただ虚空を見つめる。
プッチはウェザーの傍らに立つと、そっと優しく語りかけた。
もう決して間にあうことのない病人を見送るような、そんなそっとした口調でプッチは言う。
「天に召される前に何かいい残したことはないか?」
辺りを包んでいた雨音が段々と遠くなる。湿った服の冷たさが染みいるまでの長い沈黙の後、ポツリとウェザーが呟いた。
「……―――雨を、ふらしたんだ」
「……なに?」
ウェザーはぼんやりとした表情で、プッチに顔を向ける。
その目は確かにプッチを見つめていると言うのに、どこか遠くのものを眺めているかのごとく、深く澄んでいる。
ウェザーは雨をふらしたんだ、とだけ繰り返した。困惑するプッチ向かって、そう言い続けた。
言葉は途切れ途切れでえらく聞き取りづらい。プッチが身をかがめて、口元に耳を寄せる必要があったくらいだ。
途中で何度もつっかえながら、血をせき込み吐き出しながら、それでもウェザーは懸命に言葉を紡いだ。
「俺は、ただ……雨を振らしただけなんだ。そこから先は、運……だった」
「……何のことだ? 何を言っている?」
「た、だ雨を……振らしただけ。それだけなんだ……。だから、立ち……あがったのは“彼”の意志だ。“彼”、自身の 強さだ……。
ほんとに、ほ んとにありがとう……それしか言葉が出な……い。彼は 俺を信じて く……れた。俺は彼を救え た。
記憶のないこの俺を……、人殺しのこの俺が……」
天より降りそそいだ水滴が、ウェザーの頬に落ちると、涙のように伝っていく。
雨はほとんど上がっていた。黒くぶ厚い雲は頭上を去り、本来の天気が辺りに戻って来る。
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何かがおかしい。何かが、変わってきた。
プッチはゆっくりと振り向いた。雲が去り、雨が上がり、辺りは温度のは急激に上昇する。
その影響で濃い霧が街を包んでいた。前方十数メートルは立ち上った水蒸気が遮り、多くの影が蠢いては怪しく揺れる。
プッチの眼はその蠢きの中に異質のものを捕えた。あれは……ちがう。あの蠢きは、あの揺れ方は……本物の人影だッ!
「ありがとうを言うのは、僕のほうです」
コツン、コツン……と革靴の音が民家に反響する。頭上の雲が薄れ、少しずつ太陽が街を明るく照らす。
「そして同時に謝らなければいけません……」
霧が晴れ、その中から一人の少年が姿を現した。
プッチは反射的に胸のポケットに手をやった。ない。そこにあるべきはずの、“あの”DISCが……。
一枚のスタンドDISC、三枚の記憶DISC……。そしてあるはずの“四枚目の記憶DISC”……!
一番大切にしまっておいたはずのあのDISCが……! 決して手放さんと、丹念にしまったはずのあの記憶DISCが……―――!
―――『ロックコンサートにでも行こうというのかい、神父様』
「ハッ!? ウェザー、貴様まさかッ!?」
ウェザーは何も答えなかった。否、答えれなかった。
答えるにはあまりに血を流しすぎていた。いつ死んでもおかしくないぐらいだ。
文字通り血の池にその身体を鎮めながら、ウェザーはそれでもプッチに向かってニヤッと笑って見せた。
その通りさ、と馬鹿にするように。今頃気づいたのか、馬鹿めと言わんばかりに。
「あの一撃はこの布石だったのか……ッ!? 全てはこのため、全ては“彼”のために……ッ!?
何故だッ!? 何故そんなことができたッ!? 何故お前は今日会ったばかりの、見ず知らず同然のヤツを信用して……ッ
そのもののために命すらかけたと言うつもりかッ―――!?」
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プッチとの距離およそ10メートル。“少年”は歩みを止めなかった。
爛々とその瞳輝かせ、傍らに黄金のスタンド並び立たせ、希望に満ちた表情をして。
少年は歩みに合わせて、話を続ける。雨は既に止んでいた。濡れた街の向こうには、一本の虹が弧を描いていく。
「『何かあったら雨が教えてくれる……』、貴方のその言葉を僕は危険信号だと思っていました。
一種の救助サインだと、助けを求めるサインだと、僕は勘違いをしていたのです。
だが違いました。あの雨こそが……、あの豪雨こそが、僕を救ったんです…………ッ!」
ウェザー・リポートは戦いの直前に、プッチがDISCを胸ポケットにしまっていたところを見ている。
すぐにでも取り返そうとは思っていなかった。正直に言えば戦いに勝ち、復讐を果たすことが一番の目的だったから。
けれども、取り返そうとする意志は衰えていなかった。ウェザーは自責の念を抱えていたのだ。
“彼”を巻き込んだのは自分だと。自分こそが彼とプッチを引き合わせてしまった。
自分のせいで、“彼”はこんな目に会ってしまったのだ、と……!
だからDISCが落ちた時、ウェザーはそれを見逃さなかった。そして自分が負けるかもしれないと思った時、瞬間的に閃いたのだ。
この豪雨を利用してやろう。濁流のように湧きあがった雨粒をコントロールし、彼がいるあのカフェまで……彼が寝るあの部屋まで。
このDISCを運んでやる、と。そうしたならば、仮に負けたとしても心おきなく逝くことができる、と……。
ウェザーは今にも落ちてきそうな瞼を必死でこじ開けると、プッチの背中越しに彼の姿を捕えた。
ウェザーが笑えば、彼も笑い返してくれた。ひどくやられたな、という顔をしたので君ほどじゃないと、おどけてみせた。
そんななんでもないやり取りができることがうれしかった。こんな死に間際でも彼とそんな些細な、友人のような挨拶ができ、ウェザーは心の底からそれを喜んだ。
“彼”がいう。力強い、何もかもに任せられるような、エネルギーに満ち溢れた声だった。
「ウェザー・リポート、あなたの覚悟は天降りそそぐ太陽よりも貴く、まばゆい光を放っている……!
その誇り高き輝きが照らし出した道は……この僕を導き、呼び寄せたッ!
僕は貴方に敬意を表します、ウェザー……! そして貴方は死なせない……!
この“ジョルノ・ジョバァーナ”の名にかけて! 僕はッ! 必ず貴方を救いだすッ!!」
―――雨が上がった。ジョルノを照らし出すように、ぶ厚い雲の隙間を切り裂き、太陽の光が降りそそいだ。
そうさ、俺はウェザー・リポートさ。お天道様の名前をしてるんだ。イカすだろ? なぁ、ジョルノ……。
口の中で、自分だけに聞こえる冗談を口にしてウェザーはそっと目を閉じる。
そのまま全身を包む無力感に逆らわずに、彼は闇に意識を手放した……。
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辺りの景色は様変わりしていた。
雲は流れ、霧は晴れ、さんさんと輝く太陽が照らす。
気温は上昇し、フライパンを温めるかのごとく地面が熱を帯び始めた。
プッチが口を開く。ジョルノが来たときの動揺や驚きは既におさまっていた。
「大見え切って啖呵を吐いたのはいいが……足元がふらついているぞ、ジョルノ・ジョバァーナ」
「…………誰のせいでそうなったか、とぼけるつもりですか」
ジョルノを中心として円を描くように、足をすすめていく。
左に流れていくプッチを追うことなく、ジョルノは身体を傾けるだけで動かなかった。
互いに様子を伺う慎重な立ち回り。戦いは既に始まっている。しかし激突の時は、まだ“今”ではない。プッチは話を続ける。
「君におとなしくしてもらうにはああするしかなかった。時間が必要だったのだ。
これは私と弟、私とウェザー・リポートの問題だ。何も知らない君に首を突っ込んでもらいたくなかった。
それが結果的に、ああいった形で君を傷つけるようなことになってしまったのは……謝りたい。本当に申し訳なかったと思う。
だが君には必ずやDISCを返すつもりだった。それだけは神に誓ってもいい。私の本心だ」
「僕が神ならば例え一時とはいえ、他人から記憶を奪う盗人を赦すつもりはありません。それが神父というのならばなおさらです」
「神はいつだって私に寄り添ってらっしゃる。時に神は人知を超えた行動をとることもある。それが神だからだ」
「神の選択と言えば何でも許されると? まるで免罪符ですね。神が聞いて呆れます」
じりじり、じりじり……プッチは足を止めることなく、ジョルノの周りを回り、最適な角度を探す。
地面の状態、背後にさがるスペースの少なさ、ウェザー・リポートと射線を重ねること。
“攻撃”に必要な条件はそろっていた。あとはタイミングだ。一瞬でもいい、あとはジョルノが見せる隙を待つのみ……。
「君はまだ若いから知らないのだろう。人間はそれほど強くない。
不都合がその身に襲いかかった時、不条理なことが起きた時、納得のいかない災害に襲われた時……。
縋るモノが必要だ。祈るモノが必要だ。自分を支えてくれる、見持ってくれている存在が。
そんな神と呼ばれる存在が……弱い人間を強くする時がある」
「……ならば僕には神は必要ありません」
「……なに?」
「そんなものが神ならば、こっちから願い下げだと言ったのです」
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思わず足が止まった。それは聞き逃せない言葉だった。
プッチの怒りを込めた視線を受け止めながら、ジョルノは鋭く返す。
「エンリコ・プッチ、あなたは悪だ。それもこの世で存在するなかで最も醜い悪、独善に満ちた悪だ。
貴方は自分が正しいと思っている。まごうことなく正義だと自分を信じている。大した精神力です。すがすがしいほどの割り切りだ。
だが違う。そんなものは正義ではない。邪悪だ。
貴方はそうやって自分が信じる正義のために! 自分の信じる正義を振りかざしたいがために!
何人ものを無知なるものを踏みにじってきた……吐き気を催す邪悪だ!」
民家の壁に反響し、辺りはジョルノの叫びで埋め尽くされる。
最後にひときわ大きな声で叫ばれた邪悪だ、の一言が何度も何度も繰り返される。
邪悪だ、邪悪だ、邪悪だ……。険しい顔のプッチはやがてふっと顔をあげるとため息を吐いた。
彼の顔にはやれやれ、といった表情が浮かんでいる。
「……君には失望した、ジョルノ・ジョバァーナ」
目を閉じ、頭を振る。聞き分けの悪い小僧を相手するのはつかれた、と言わんばかりだ。
ホワイト・スネイクが新しく一枚のDISCを創り出す。プッチはそれを無造作に、ジョルノの前に投げ捨てた。
「幸運なことを一つ上げるならば……君がDIOと会う前にこうして私と会えたことだな
君には相応しい役割を演じてもらうことになりそうだ。王には王の、料理人には料理人の、そして皇子には皇子の役割がある。
今はわからなくてもいい。段々と君もわかり、そして身につけていくがいい。だが私はDIOを失望させたくない」
「なんのつもりですか」
「そのDISCを頭に入れろ。そうすれば一時的ではあるが君はそのバカげた考えを忘れることができる」
「拒否します。僕は操り人形なんかじゃない」
「やれやれ、DIOにこんな報告をするのは心苦しい事だが……そういうのならば仕方ない。
君の息子は随分と聞き分けの悪い男で、しかたなく私が処分した……なんて報告を聞かせるようになるとはなッ!」
言い終ると同時にDISCがものすごいスピードでジョルノ目掛け飛んだ。
ジョルノはゴールド・エクスペリエンスではじきとばし、その一撃を回避する。
と、同時にプッチ目掛けて駆けだした。答えるように、プッチも走る。二人の距離はあっというまに縮まっていった。
白の大蛇、黄金の戦士。激突の時が来た。互いに吠え声をあげながら、二つのスタンドがぶつかり合う。
「ホワイト・スネイクッ!」
「ゴールド・エクスペリエンス!」
―――……戦いが始まる。
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二人の力は五分と五分。プッチはウェザーとの戦いで消耗し、ジョルノは記憶を取り戻したばかりで本調子じゃない。
プッチは強引に攻勢を仕掛けていった。長期戦になれば先に体力が削れているプッチが押し負ける。
ジョルノが調子を取り戻す前に決着をつける。狙うは短期決戦……、呼吸を整える前に終わらせてやる!
「……くッ」
苦しそうな、短い息がジョルノの口から零れ落ちる。
心臓目掛けて放たれたプッチの手刀を間一髪のところで防ぐ。鋭い一撃だった。ワンテンポ遅れたら、殺られていた。
続けて放たれた回し蹴り。今度は防げなかった。体勢が崩れたところに重い蹴り。
腹をけり飛ばされ、ジョルノの細い体が吹き飛ばされる。民家に叩きつけられると呼吸が止まった。
ガハッ、と空気が肺から押し出され、同時に血を吐きだす。プッチは隙を見逃さず、攻撃を畳みかける。
石を穿つ音がひびき、ジョルノ顔のすぐそばをホワイト・スネイクの拳がとんだ。
背後の壁を削りながら、構わずプッチは攻撃を続ける。ジョルノは避けの一手だ。攻撃をする暇もない。プッチの猛攻がそれをさせなかった。
しかし何の策もなかったわけではない。
攻撃をかわし続ける中でジョルノのスタンドは既に壁に触れていた。その壁から既に、生命を産みだしている。
「小賢しい真似をッ!」
まとわりつくように伸びた蔦をさけるため、プッチが一旦距離をとる。
今度はジョルノの番だ。ゴールド・エクスペリエンスが躍動すると、プッチ目掛け拳を振るった。
地面を砕き、民家を崩し、辺りを破壊しながらゴールド・エクスペリエンスがプッチを追いかけていく。
だが完全にとらえるには至らない。後一手が足りない。どうしてもプッチを捕えられず、いたずらに住宅街を破壊する音が木霊した。
「どこを狙っているッ!」
何度目になるかわからない破壊音、そして伸びる蔦。プッチはかわす。もう何度繰り返したかわからない攻撃と回避。
ジョルノは少し離れたところで膝をついて、息を荒げていた。段々と攻撃が単調になっていた。体力の回復より消耗が上回っていたのだろう。
状況はプッチに傾いた。腰を落とし、瞬時に踏み込むと間合いを詰める。
ジョルノが敷いたガードの上から強引に殴りつけてゆく。パワーでのごり押しだ。実際、今のジョルノにそれを受ける体力はない。
焦燥が表情に浮かぶ。徐々に、そして少しずつ、ジョルノの体にダメージが浮かんでいく。
頬に走る真っ赤な線。身体に浮かぶ真っ青なあざ。少しずつ、だが着実にジョルノの体は浸食されていく。
一方プッチに消耗は見られなかった。攻勢一方なのだから当然だ。
つまるところ勝負の分かれ目はひとつだ。消耗したジョルノにプッチを押し返す力はあるのか。プッチを防戦に持っていく策があるのか。
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ついにプッチがジョルノを追いつめる。
街中を飛び回るように戦っていた二人が辿りついたのは袋小路。三方を高い壁に囲まれて逃げ道なし。正面にはスタンドを構えたプッチがいる。
ジョルノの額を汗が伝った。それは疲労ゆえのものなのか。追いつめられた危機感ゆえのものなのか。
ゆっくりと、そして確実にプッチが距離を詰める。後ずさりしていたジョルノの身体が壁にぶつかった。
もう時間を稼ぐことも不可能。消耗したジョルノに正面のプッチを打ち倒すことも無理。
観念するんだなと、プッチが言った。文字通り将棋やチェスでいうところの『詰み』だ。ジョルノは唇を噛み、青い顔で黙り込んだ。
「覚悟するんだな、ジョルノ・ジョバァ―ナ……ここまできたら逃げられない」
「“覚悟”……ですか。それなとうに済ませましたよ」
「ふっふっふっ……殺される覚悟か? それとも自分を捨てる覚悟か?」
「いいえ、そのどちらでもありません。僕にできた覚悟、それは…………」
疑惑がもたげる。不安がよぎる。思わずプッチの動きが止まってしまった。
ジョルノはすでに疲れ切っている。そこに偽りはない。
ダメージも相当のものだ。生傷、青痣、骨折、打撲……プッチはジョルノに生命を生み出す隙、治療させる隙を与えなかった。
つまり状況は圧倒的有利なはずだ。ここからプッチに負ける要素など、皆無のはずだ。
―――ならばこのジョルノの余裕はなんだ? その顔に浮かんだ不屈の心は、輝くきらめきは……?
「危険を冒してでも貴方を殺す覚悟です」
「……なに?」
プッチの問いかけは地響きに紛れ、ジョルノの耳まで届かなかった。
直後、辺りを揺るがすような轟音が響いた。否、事実、現象として辺りが揺らいだ。
プッチの足元が崩れる。ジョルノが倒れた地面が割れる。民家が、壁が、木が、街が…………!
突然足元に生まれたぽっかりとした穴に二人の体が吸い込まれていくッ!
「ゴールド・エクスペリエンス!」
「うおおおおおおおおおおおおおお――――ッ!?」
プッチは見た。そして理解した。
固いコンクリートを貫き張り巡らされた根。水道管をぶち抜き伸びる木々。
ついさっきの光景が頭の中で再生される。つまりは『こういうこと』だったのだ。すべてはジョルノの策だったのだッ!
ジョルノの攻撃はプッチを狙っていたのでない。地面だッ!
すべてはこの時のため、プッチをはめるためッ! ジョルノは! あえて大振りで拳を振るったッ!
プッチに悟られぬよう、あえてそうしたのだッ!
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底知れぬ闇に落ちていく二人。プッチの叫びが聞こえる。
どこまで落ちていくんだろうか。この先はどこに通じているのだろうか。
まさか行き着く果ては……転落死? 固い地下通路にたたき伏せられ、この私が……こんなところで…………死ぬ?
―――バシャンッ
「こ、これは…………“水”……?」
濡れた顔を拭い、足着かぬ縦穴で泳ぎながらプッチは上を見上げた。
相当深いところまで落ちたようだ。さっきまで見えた太陽がまるで針の穴かのように細く小さく、上から射している。
辺りを見渡せば少し離れたところにジョルノもいる。闘志は衰えていない。ここからが勝負だということか。
足場もない水の中、そこでの真っ向勝負と洒落込むわけか。
「貴方は覚悟を口にした……それは軽々しく口に出してはいけない言葉だ
なぜなら覚悟とは与えらるものでも押し付けられるものでもないからだ」
しかし直後プッチは自らの勘違いに気づく。ジョルノの言葉が狭い穴の中で増幅される。
ジョルノの策は終わっていない。むしろここからだ。逃れられない結果だけが、そこには存在していたのだ!
「覚悟とはッ! 己の意志で、自らの手で……光り輝く明日を切り開くことだッ!」
顔を打つ雨粒。滴り落ちる水滴。そして聞こえる轟音。水の音。
太陽がさえぎられる。黒い雲が細い光を遮り、今にも泣きだしそうな天候がプッチを見返した。
絶望に染まった顔でプッチはジョルノを見た。ジョルノは何も言わなかった。スタンドすら構えなかった。
なぜならここに落ちた時点でプッチは“終わっていた”のだから。
なすすべもなく“死ぬこと”だけは、すでに決まりきった“運命”なのだから。
「嘘だ……ありえない。この私が、この私がこんなところで、こんな小僧と共に…………ッ!!」
「“覚悟”してもらいますよ、エンリコ・プッチ…………」
縦穴に水が流れ込む。ゆっくりと、そして次第に加速して。肩までだった水が顎まで伸びる。顎までだった水位が唇まで上がる。
ジョルノはゴールド・エクスペリエンスであちこちの水道管をひねり、曲げて、そしてこの縦穴に流れ込むように細工した。
ウェザー・リポートの豪雨を最大限に利用したのだ。
逃げ道はない。今のプッチに縦穴を上る力は残されていない。仮あったとしてもジョルノがそれを許さない。
逃げようにも足は底をつかず、絶えず立ち泳ぎ状態。辺りはすべてに壁に囲まれている。
井戸に落とされたも同然だ。そして井戸に突き落とされたままそこに水がなだれ込めば……しかも記録的、災害的豪雨の直後であったならば……。
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「このちっぽけなゴミ糞がァァアアア――――ッ!」
やけっぱちに悶えたプッチのスタンドがジョルノに迫る。ジョルノは冷静に、落ち着いて……一閃。
黄金の輝きがクロスカウンター気味に拳を叩き込んだ。つぶれた饅頭のような格好でプッチがうめき声をあげる。
ジョルノは止まらない。ジョルノは今一度、力を振り絞り、すべてのエネルギーを解放し……スタンドの拳をプッチ目がけ叩き込んだ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄―――」
雨よりも多い拳がとぶ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄―――」
風よりも早く拳が打つ。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄―――――――――ッ!」
そして耳をつんざく轟音と共に、この世の終わりを思わせるほどの濁流が天より降りそそぎ……二人の姿は見えなくなった。
そこにあったのは水。二人は水に飲みこまれ……そして浮かんでくるものは何一つなかった。
▼
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「終わったのか……」
底も見えないほどの深さの池の近くで、男の声がそう問いかけた。
ウェザー・リポートは身体を引きずりながらジョルノとプッチが落ちていった池を覗き込む。
真黒で何も見えない。あの大雨全てが流れ込んだのだ。二人が生きてるはずがないだろう。
――――もしもなにも策を講じていなければ、だが
「……ぶ、はアッ!」
「ジョルノ、大丈夫か」
池から二本の腕が伸びると、水面からジョルノが顔を出した。身体には何十もの蔦が絡まっている。そしてその腕に丸々と太った魚が一匹。
ジョルノはあの濁流を乗り越え、底知れない池より這い上がり、見事に生還した。
ジョルノの完全勝利だ……! プッチは死に、ジョルノは生き残った……!
濁流が流れ込んだ瞬間、ジョルノは頭上と体全身をスタンドで生んだ木の葉でつつんだ。
あの状況で真っ先に死ぬ要因として挙げられるのは溺死でなく、圧死。
何万トンもの水が、雪崩のように流れ込むのだ。そのまま何もせずにいたならば、まず真っ先に水の重さで、潰れて死ぬ。
ジョルノはそれを避けるために、隠し持っていた木の葉、木の枝、あらゆるものを身に纏った。
プッチとの戦いでそれをしなかったのは機動力を殺さないため。そしてプッチに攻撃してもらうためだ。
ジョルノにとって避けなければいけなかった事は長期戦と、ウェザーをいけにえに取られるような行為だったから。
長引けば体力を限界まで削りきっていたジョルノは押し負けていだろう。そのためにもカウンターではなく、一撃で沈める必要があったのだ。
水の濁流をスタンドの反射で乗りきり、次にすべきことは脱出だ。
圧死は免れたとしても深さ20メートルはあろう縦穴からの脱出は困難必須。
一度に流れ込んだ水流が安定するのには時間がかるだろうし、渦潮のように滅茶苦茶にうごきまわる可能性もある。
人間の体は自然と浮かび上がるようにできているとはいえ、それを待っていては窒息死、あるいは戦いの中でついた傷が開いて失血死が待っている。
ジョルノがとった策は二重。穴の外にいるウェザーによるサルベージ。そして生みだした生命が元の持ち主戻ろうとする性質を利用するもの。
生みだした魚は生まれた地上目指し上昇する。舵を取るように蔦が動けば、もう大丈夫だ。
何をする必要もなく、ジョルノは水面にたどり着く。そうして今、こうやって彼は生きている……。
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「やったな」
柔らかな笑顔をこぼし、ウェザーが言う。水を滴らせながら呼吸を整えていたジョルノはその言葉に顔をあげ、そしてニヤッと笑った。
「目にもの見せてやりました」
ぱんっ、と乾いた音が辺りに響く。二人の掌がぶつかり合う音だ。高らかに鳴る勝利の音。
ウェザーは笑った。ジョルノも笑った。この勝負、二人の勝ちだ。しかもただの勝利ではない。二人がいたからこそ、二人だったからこその勝利。
どちらかが欠けていても負けていた。どちらかの意志が伝わらなかったら負けていた。
二人こその勝利。二人だけの勝利。それはとっても嬉しい事だ。境遇を越え、年齢を超え、二人が真に心を通じ合わせた証拠とも言えよう。
「ジョルノ」
「はい」
「頼みがある」
「はい」
「アメリカ、フロリダ州メーランドに俺の家族の墓がある。母、父、そして妹……一家の墓なんだ。
そこに俺の名前を刻んでほしい。頼まれてくれるか?」
だからこれは悲しい事ではない、とジョルノは自身に言い聞かせようとした。
血を流し、白色の顔で倒れたウェザーを見て、奥歯をグッと噛みしめた。
既に手遅れだった。最後のあの豪雨、大穴に雨を流し込んだ時点でウェザーの命は燃え尽きていた。
否、実際はもっとそれよりも前に、ウェザー死んでいたのだ。ウェザーが今動けているのはジョルノのおかげ―――。
「君が悲しむ理由はない。君がダービーズ・カフェで俺に拳を叩きこんだ時、ちょっぴり君のエネルギーをわけてもらえた。
そうでなければ俺はとっくに死んでいる。今こうやって話していられるのも君のおかげなんだ。だから悲しむことじゃない」
「わかっています……。わかってはいるんです……」
「ジョルノ、君は俺を救ったんだ。家族との決着を済ませた。一夏の恋物語もついに決着だ。
もうなにもいらない。登場人物はとうに皆、死んでいる。だから今度は俺の番。ただ今それが来ただけ。
それだけのことなんだ……」
時が来ようとしている。二人は口にするまでもなくそれを察した。
残る力を振り絞って、ウェザーが腕を持ち上げる。その手を受け止め、ジョルノが手を握る。
死ぬ間際とは思えないほどの温かくて力強い握手を交わし、二人は言う。別れの言葉だ。
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「君と友達になれて良かった、ジョルノ」
「僕もです、ウェザー・リポート」
太陽が真上から二人に降りそそいだ。そして一瞬雲が横切って……再び光が見えた時、既にウェザーはこと切れていた。
冷たく硬くなった手に一度だけ頬よせ、ジョルノ目を瞑った。
仲間がいた。上司がいた。敵もいたし、コイツだけは許せないと思うヤツも何人もいた。
ウェザーはそのどれにも当てはまらない不思議な人物だった。
互いがどんな音楽を好きかも知らない。食事を一緒にとった回数だって一度だけ。
今回だって共に戦ったとはいえるが、肩を並べて戦ったわけではない。
「人と人との出会いは偶然です。もしかしたら、それは運命と言えるのかもしれません」
それでもジョルノにとってウェザーは友人だった。
年齢も人種も性格も境遇も全く違うが……違うからこそ芽生えた不思議な連帯感はそうとしか形容ができなかった。
もっと一緒にウェザーといたかったとジョルノは思った。
記憶を取り戻したウェザーは予想以上に激情家だったが、そんな一面も新鮮で面白いと思えた。
落ち着いた一面だって素敵だった。物静かで、読書や音楽を楽しむ時に一緒にいてくれるだけで幸せにしてくれるんじゃないかと思った。
そんな風に期待できる何かを、ウェザーは持っていた。
「だったら僕はあなたと出会わせてくれた運命に感謝します」
約束は必ず守ってやる。この戦いを終えたらウェザーの言った通りに、花束を持ってアメリカにわたり、そして彼の名前を刻んでやる。
とびっきり派手にだ。なんだったら墓一つ丸々作り変えてもいい。
名前以外になんて刻もうか。偉大なる気象予報士、ここに眠る、なんてジョークを書くのがアメリカ式なんだろうか。
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「さよなら、ウェザー・リポート」
ジョルノは振り向かない。冷たく転がる遺体に一瞬も目をやることなく、彼は先に向かって足をすすめた。
いいだろう、約束してやる。約束してやるとも。
ウェザー・リポート、僕がまとめて救います。貴方を救ったよう、僕は皆を救います。
もう誰も失わない。もう誰も死なせません……!
決意を胸に少年がいく。その背中を押すように温かな光線が降りそそいだ。
雲は去り雨は上がり太陽が輝く。ジョルノは進んでいく。その輝ける未来めざして。
【ホット・パンツ 死亡】
【エンリコ・プッチ 死亡】
【ウェザー・リポート 死亡】
【残り 58人】
【C-2 北部/ 1日目 午前】
【ジョルノ・ジョバァーナ】
[スタンド]:『ゴールド・エクスペリエンス』
[時間軸]:JC63巻ラスト、第五部終了直後
[状態]:体力消耗(小)
[装備]:閃光弾×3
[道具]:基本支給品一式、、エイジャの赤石、不明支給品1〜2(確認済み/ブラックモア)
地下地図、トランシーバー二つ
[思考・状況]
基本的思考:主催者を打倒し『夢』を叶える。
1.ミスタ、および他の仲間たちとの合流を目指す。
2.放送、及び名簿などからの情報を整理したい。
[参考]
※時間軸の違いに気付きましたが、まだ誰にも話していません。
※ミキタカの知り合いについて名前、容姿、スタンド能力を聞きました。
※ウェザー・リポート、エンリコ・プッチ、ホット・パンツの支給品、デイパックを回収し、必要なものだけを持って行きました。
必要のないものは全て放置しました。回収したものはエイジャの赤石、不明支給品、トランシーバー二つ、閃光弾二つ、地下地図です。
-
以上です。遅れてすみません。
何かありましたら連絡ください。
ウェザーは書いてて、天気で演出ができるので楽しかったです。
-
――さて突然だが、
ピシュッ
――……おおっ、この距離で投げたフォークを全員が回避できるとは!
先っぽ研いであるから当たれば結構痛いかななんて思ったんだけど。
……あ、イヤ悪かったよ本当。ごめんごめん、何も君らに怪我させようなんて意味はないんだって。
フォークだってほら最近流行ってる名状しがたいカオスなナントカのアニメで良く見るからってだけの理由だし。
――しかし君らは“カンが良いな”。
俺の最初の一言から何かしらのニュアンスを感じたか、単純に飛んでくるフォークを見てからどう動くかを一瞬で決めたか。
いずれにしてもその直感、もっと磨いた方が良いよ。
さて、この『カン』は――えーと、まあつまり“判断力”ってことだと思う。
この判断力って何するにも重要だと思う訳よ。学校のテストにせよ今のような戦闘――じゃないんだって、まあ何にせよね。正解を選んだり、あるいは今自分はどうすべきか、とか。
じゃ、そういう事で今回はそんな連中の話をしよう。
●●●
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「おい、聞こえているだろう。
どこからか攻撃を受けた。なにか情報をくれ……」
小さく呟いた僕の言葉に対しトランプからの返事はない。
情報の提供どころか、たとえば『テメーで考えろバーカ!』のような煽りもないとは。
あっても迷惑なだけだが。
しかし……この状況、裏を返せば“ムーロロの情報を聞かなくても対処できるレベル”という事なのでは?
「フーゴッ!おい外は大丈夫なのかッ!?」
――と、ここで悲鳴にも似たナランチャの呼びかけに意識を引き戻される。
そうだ、ここは三人で切り抜けなければならない。とりあえず飛び出そうとするナランチャを手で制す。
「フーゴ、今のは……突然緑色の飛礫がガラスを割ったように見えた!これがスタンド攻撃というものなのか!?」
ジョナサンがそう聞いてくる。緑の飛礫?僕には見えなかった。彼の波紋の力か、あるいは動体視力か?いずれにせよ彼の力もスタンド使いに引けはとらない。
「君には今のが――僕には見えなかったが――見えたと?すごい動体視力だ。そして、そう、今のは明らかにスタンド攻撃。
そしてナランチャ。君ならこの場をどうする?」
あえてナランチャに話題を振る。この状況を三人で切り抜けると決意した以上、状況と思考は共有しておかなければならないからだ。
「そ、そんな事急に言われたって俺にわかる訳ねーだろッ!」
「落ち着いて、ナランチャ。君は『飛び道具で攻撃するスタンド使い』を良く知っているはずだ」
「この攻撃がミスタだってのかよォーッ!」
……以前ならここで『んなワケがあるか』とブチ切れて彼を殴り倒していただろう。だが、そうはしない。
「そうじゃあない。ミスタを良く知ってる君なら“銃使いを相手にしたらどうするか”を考えられるはずだ」
ナランチャがハッとして目つきを変える。どうやら彼にも理解できたようだ。
『銃弾の軌道をも操作される可能性がある以上、我々のスタンドの間合いまで突っ込む』ッ!
-
「待ってくれ!戦うという事なのか!?僕たちには味方が必要だ!
怯えて不意にスタンドを使ったのかもしれないッ」
ジョナサンが話に割り込む。彼が言いたいこともよく理解している。
「ジョナサンも。スタンドに関しての戦闘は僕やナランチャの方が慣れています、落ち着いて聞いてください。
――あれを見てください。ふわふわと浮いている、あれがスタンドです。きっとあれが僕たちを監視しているのだと思う」
人差し指を立てて静粛を促し、そのまま指さした先には鍵のぶら下がったUFOのような物体が浮いている。
どう見てもスタンドだ。しかも“人型ではない遠距離型あるいは自動操縦型”と推測できる。
「じゃああれが先の飛礫を放ったというのか?」
「おそらくは。ですが推測のし過ぎは良くない。ハナから相手はチームで、飛礫を放ったのは別のスタンドという事も考えられる。
そして、とにかくここで立ち止まっていれば全滅の可能性もある。ならば戦うにせよ逃げるにせよ、必要なのは移動ってことです。
さらに先にナランチャに聞いた質問の答え。飛び道具が相手なら、それが届かない距離に逃げるよりもこちらの間合いまで突っ込むのが鍵。
……ここは僕が引き受ける。全力で君らを逃がす!」
ジョナサンの質問に回答しつつ方針の決定、行動に移す旨を伝える。
そして僕がこの場を引き受けるという発言を受けナランチャがギョッとする。そりゃあそうだろう。
ジョナサンの腕を引っ掴み戸口へ走った。
「行くぞジョナサン!ここはフーゴに任せるぞッ」
「彼を置いていくというのか!?僕も戦うぞッ!」
「ちげーよバカ!近くにいたら巻き込まれる!とにかく行くんだよ!!
おいフーゴ!そうだよなッ?」
振り返って叫ぶように僕に問うナランチャ。僕も彼の目をしっかりと見返し、頷いた。
「ああ。ここはあくまで足止め、僕もすぐ行くから、安全な場所についたらエアロスミスを飛ばしておいてくれ。勝手に見つけて合流しますから」
最後の方なんかほとんど聞いてないんじゃあないか、という勢いでナランチャが飛び出した。
ジョナサンは心配気味に最後まで僕の方を見ていたが、それでもナランチャを追って行ってくれた。そう、それでいい。
さあ、いくぞ……“全力で”!
パープル・ヘイズ・ディストーション!
●●●
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結論から言ってしまえば、ジョンガリ・Aは三人を襲撃するつもりはなかった。
三人のうちに知り合い、あるいは敵がいるのかどうか、そういった状況を把握するためにとスタンドを行使しただけである。
それが気付けば前を走っていた奴と同一人物か、またはチームでの襲撃かと勘違いされて攻撃を受けたという訳だ。
人型のスタンドではない『マンハッタン・トランスファー』のダメージフィードバックが全身の皮膚に傷をつけている。
だが、まだ彼が再起不能になったわけではない。
一瞬だけ襲ってきた、蝕まれるような鋭い痛みにひるみ、さらにその後に吹き上がった煙に気流を乱されその場を退いた、それだけだ。
そしてこの屈辱を、『恨み』を晴らさぬジョンガリ・Aではない。
とは言え、とは言えだ。
自分の能力で、あるいは単独行動というスタンスで今後も動き続けられるかと問われれば素直にイエスとは言えない。
狙撃手ならば狙撃手らしく安全かつ有利な場所に陣取って動かずにいるという事も選択肢の一つであるし、放送で得た情報、得られなかった情報の獲得に動こうとしていたことも事実。
それらを理解しているからこそジョンガリ・Aは歯噛みをしつつも再びスタンドを空中に舞い上げ、歩き出すしかない。
そんな逆境続きの中、数分もしないうちに先の三人組を見つけられたのは彼にとって幸運以外の何物でもなかった。
当初からそう遠くへ逃げ出そうとする気はなかったのだろう。そんな推測が一瞬頭をよぎるも、問題はそこではない。
『三人組が五人組になっていること』と、
『己のスタンドで読めるのは気流から得る体格や動きだけで会話を聞き取ることが出来ないこと』の二点が問題なのだ。
ジョンガリ・Aは考える。
先の戦闘の際に向こうの五人組のうち少なくとも一人以上には自分のスタンドが見られており、自分が攻撃を仕掛けた“と思われている”事は大いに問題だ。
姿を現しただけで有無を言わさずスタンドのラッシュを受ける可能性だってある。
しかし、『ガラスを割ったのは自分ではない』と証明することが出来たのなら。
割った本人に罪をなすりつつ――事実彼が割ったわけではないから些か語弊のある表現ではあるが――彼らに取り入ることも不可能ではないのでは?
自分が攻撃“された恨み”を抑える事さえできれば『無実の自分を問答無用で攻撃してきた』として逆に弱みを握ることも出来るのでは?
もちろん……この五人組を相手に今度こそ本当に攻撃することも選択肢の一つである。
さまざまな可能性を考えながらも歩みは止めない。止められない。
全てはDIO様のため。迷いこそすれ立ち止まる訳にはいかないのだ。
――緩やかな日差しが注ぐ街並みにジョンガリ・Aは姿を消した。
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「お、おーいフーゴぉ〜」
「よかった!無事だったのか!」
ラジコン飛行機みたいなスタンドがナランチャとかいうガキのもとに戻ってくる、一人の男を連れて。
ジョナサンとか言われた方も顔がゆるんでやがる。マッチョのニヤニヤ顔なんて見たくねーっつーの。
「ええ――倒すことを前提としなかった分楽に逃げられましたよ」
「え、お前のパープル・ヘイズで倒さねーなんて、そんなこと出来るのか!?」
「まあ……何でもいいじゃないですか、無事だったんだから」
フーゴと言われた奴がナランチャと一言二言挨拶してこっちに歩いてきた。
「だな、それよりよォ!スゲェ人と会ったぜ!誰だと思う?ドジャァ〜ン!」
どじゃぁ〜ん、ってお前ガキかよ。確かに見た目ガキだけど。
最初から俺ら隠れてもいねーし。フーゴとやらも最初からこっちガン見だったし。
「フーゴ……久しぶりね」
――え?
「あ、あぁ。久しぶり。元気そうで何よりです、トリッシュ」
え?え?
「なんですかトリッシュ様?この穴スーツもトリッシュ様のお知り合いで?」
思わず聞いちまった。
穴スーツなんて呼んじまったせいで明らかに嫌な顔をされた。チクショウ。
「まあね、あ、こいつは小林玉美っていって――」
ト!トリッシュ様が俺の事を紹介してくださってる!思わず背筋が伸びる。
「紹介に預かった玉美と言いやす。縁あってトリッシュ様のお供をさせていただいておりやすが……」
が。そうだ。ガキらにナメられる気はさらさらネェ……そこまで言うとこっちがガキ臭くなるので言わねーが。
「――なぁフーゴ?トリッシュの奴あんなちゃっちぃオトコを連れて何のツモリなんだろうな?」
「さあ……この半日間の間に何かあったんでしょう。あとでゆっくり聞けばいい」
小声で話してるつもりなのか!?聞こえてるっつーの!流石の俺様も怒り爆発のサムライ激怒ボンバーってやつだ。
「オイ!おめぇらな、いくらトリッシュ様の知り合いだからって俺にイバりちらすんじゃあねーぞ!俺が忠誠を誓ったのはトリッシュ様だけなんだからな!」
「……玉美、うっさい」
ぐっ……流石にトリッシュ様に怒られると引き下がるしかない。
「し、失礼しやした……」
そうか、トリッシュ様の命令次第じゃ俺はこいつ等の下になっちまうのか……
「まあまあ。君たちが皆顔なじみの友人でよかったじゃあないか。
改めて、僕の名はジョナサン・ジョースター。君たちとともに力を合わせて戦いたいんだ!」
と、ここでジョナサンとやらが自己紹介して場をリセットする。
学級委員タイプだな。コラ男子静かにー!ってか。まあ、嫌いじゃあねーかな。好きでもないが。
「決まりね。じゃあちゃっちゃと情報交換……始めようかしら、ね。フーゴ。ナランチャはエアロスミスで周囲の警戒を」
「な、なんで俺がトリッシュに命令されなきゃなんねーんだよ!?おいフーゴッ」
しかし切り出したのはトリッシュ様!流石です!ナランチャてめーは黙ってトリッシュ様にしたがってりゃいいんだよ!ケッ!
「いや、まあ……でもトリッシュの言うとおりだ、とにかく周囲の警戒を。
トリッシュ、特に君とはいろいろ話をしておきたい」
こっちはこっちでナニ気安くトリッシュ様のこと呼んでるんだよ!こいつぁメチャムカ着火ファイアーなんじゃねーの!?
「あァん?てめぇトリッシュ様に馴れ馴れしkブゲッ」
「玉美、うっさい」
トリッシュ様……ナイスな腹パン、ありがとうございます……
●●●
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さて、ここでいったん話を切ろう。
最初に君らに念頭に置いといてもらったのは“判断力”ってことだが、どうだろう?
ここで一番物事を判断しなきゃならないのは誰だ?
ジョナサンはまあ、今回そろったメンツの中では顔見知りがいない分判断は連中任せ……とは言っても本人の目的は明確だからまっすぐ行くだろうね。
玉美も同じ。まあ判断の基準が『トリッシュ様』の命令だから何とも言えないけど。全て彼女に一任します!って感じで。
ナランチャは……頭がアレだから行動方針やら何やらの判断は出来なさそうだなぁ。戦闘になれば天才的な勘、つまり判断ができるんだけど。
で、メインはトリッシュとフーゴの二人だろうね。
どちらも『ジョジョ』を知ってて、しかもトリッシュに至ってはブチャラティに送り出されてきたばっかりで。
情報交換も慎重になりそうだ。各々の考えや判断をいかに先の三人に伝えるかが課題だろうね。
――で、忘れちゃあいけないのがジョンガリ・A。
現状で選択肢が、つまり判断しなければいけないことが一番多いのは彼だと思うよ。しかもそれを一人で判断しなければいけない。自分の判断の尻拭いもすべて自分ですることになる。
これは中々のプレッシャーだろうね。あ、いやプレッシャーと表現するのはアレだけど。
あとはそうだなぁ……この話には出てこないけど、ムーロロだってずっとフーゴのポケットで話聞いてるはずだからね。判断要素が一気に増えたと思うよ?
殺戮ウイルスって聞いてたフーゴのスタンドが相手を殺さなかった?
最近デビューした歌手がなんでパッショーネの連中と知り合いなの?
……とか。
でもまあ、ここで俺がムーロロについて話しても仕方ないからね。ほら何というか――話さない方が面白くない?彼の場合は。
――え?俺の判断力?
いや俺は大してないよ。選択肢を選んでくゲームなんかはいっつも負けばっかりで、
……ってうわっヤメ、フォーク投げるの止めて!痛いから!ごめんマジごめんってッ――
-
【E-6 南部 路上 / 1日目 午前】
【ジョナサン・ジョースター】
[能力]:『波紋法』
[時間軸]:怪人ドゥービー撃破後、ダイアーVSディオの直前
[状態]:全身ダメージ(小程度に回復)、貧血(ほぼ回復)、疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:力を持たない人々を守りつつ、主催者を打倒。
0.ナランチャやフーゴの知り合いか!情報交換をしよう。
1.先の敵に警戒。まだ襲ってくる可能性もあるんだから。
2.『21世紀初頭』? フーゴが話そうとしていたことは?→方針0の情報交換で聞こう
3.『参加者』の中に、エリナに…父さんに…ディオ……?→方針0の情報交換で何かわかるかも?
4.仲間の捜索、屍生人、吸血鬼の打倒。
5.ジョルノは……僕に似ている……?
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。
【ナランチャ・ギルガ】
[スタンド]:『エアロスミス』
[時間軸]:アバッキオ死亡直後
[状態]:額にたんこぶ(処置済み)&出血(軽度、処置済み)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、不明支給品1〜2(確認済、波紋に役立つアイテムなし)
[思考・状況]
基本行動方針:主催者をブッ飛ばす!
0.トリッシュだ!仲間増えてよかった!エアロスミスで警戒してるから情報交換しようぜ!
1.フーゴが話そうとしていたことは?→方針0の情報交換で聞こう
2.ブチャラティたちと合流し、共に『任務』を全うする。
3.アバッキオの仇め、許さねえ! ブッ殺してやるッ!
4.フーゴのパープルヘイズが『逃げ』で済ました……?よくわかんねー
[備考]
※放送を聞いていません。フーゴのメモを写し、『アバッキオの死が放送された』と思ってます。
※エアロスミスのレーダーは結局花京院もジョンガリ・Aもとらえませんでした。
【パンナコッタ・フーゴ】
[スタンド]:『パープル・ヘイズ・ディストーション』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』終了時点
[状態]:健康、やや困惑
[装備]:DIOの投げたナイフ1本
[道具]:基本支給品(食料1、水ボトル少し消費)、DIOの投げたナイフ×5、『オール・アロング・ウォッチタワー』 のハートのAとハートの2
[思考・状況]
基本行動方針:"ジョジョ"の夢と未来を受け継ぐ。
0.トリッシュ……素直に喜んでいいものか、とにかく情報交換はせねば。
1.先の襲撃&追撃に引き続き警戒。
2.ジョナサンと穏便に同行するため、時間軸の違いをきちんと説明したい。→方針0でしっかり話しておこう
3.利用はお互い様、ムーロロと協力して情報を集め、ジョルノやブチャラティチームの仲間を探す。
4.ナランチャや他の護衛チームにはアバッキオの事を秘密にする。しかしどう辻褄を合わせれば……?
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【トリッシュ・ウナ】
[スタンド]:『スパイス・ガール』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』ラジオ番組に出演する直前
[状態]:肉体的疲労(中程度までに回復)、全身に凍傷(軽傷だが無視はできないレベル)、失恋直後、困惑
[装備]:吉良吉影のスカしたジャケット、ウェイトレスの服
[道具]:基本支給品×4、破られた服、ブローノ・ブチャラティの不明支給品0〜1
[思考・状況]
基本行動方針:打倒大統領。殺し合いを止め、ここから脱出する。
0.フーゴ……いざ会うと複雑な気持ちね、とにかく情報交換かしら
1.ウェカピポとルーシーが心配
2.地図の中心へ向かうように移動し協力できるような人物を探していく(ただし情報交換・方針決定次第)
3.ありがとう、ブチャラティ。さようなら。
4.玉美、うっさい
[参考]
ブチャラティ、ウェカピポ、ルーシーらと、『組織のこと』、『SBRレースのこと』、『大統領のこと』などの情報を交換しました。
【小林玉美】
[スタンド]:『錠前(ザ・ロック)』
[時間軸]:広瀬康一を慕うようになった以降
[状態]:全身打撲(ほぼ回復)、悶絶(いろんな意味で。ただし行動に支障なし)
[装備]:H&K MARK23(0/12、予備弾0)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:トリッシュを守る。
1.トリッシュ殿は拙者が守るでござる。
2.とりあえずトリッシュ様に従って犬のように付いて行く。
3.あくまでも従うのはトリッシュ様。いくら彼女の仲間と言えどあまりなめられたくはない。
4.トリッシュ様、ナイス腹パンです……
[備考]
拳銃の弾は無くなりました。
【E-6 中央部 / 1日目 午前】
【ジョンガリ・A】
[スタンド]:『マンハッタン・トランスファー
[時間軸]:SO2巻 1発目の狙撃直後
[状態]:肉体ダメージ(小〜中)、体力消耗(ほぼ回復)精神消耗(小)
[装備]:ジョンガリ・Aのライフル(30/40)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済み/タルカスのもの)
[思考・状況]
基本的思考:DIO様のためになる行動をとる。
0.襲撃する?取り入る?見逃す?どうする、俺?
1.情報がほしい。
2.ジョースターの一族を根絶やしに。
3.DIO様に似たあの青年は一体?
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以上で本投下終了です。……規制YYYYYYYYYorz
仮投下からの変更点
・wiki収録に合わせて***を●●●に変更(これをやると必ず作品を読み返すので誤字訂正も兼ねてたりします)
・若干の表現の変更(内容に変更なし)
当初はもう単純にフーゴ組とトリッシュ組を出会わせるだけの予定でしたが、襲撃中だったのね彼ら。ということで。
残念ながらc.g氏が破棄した予約、そこに入ってたムーロロは混ぜませんでした。予約は取り消してましたし当然と言えば当然ですが。
あと、私が描く『出会いや移動のみのつなぎ話』の場合、大概は状態表の疲労やダメージが前SSよりも若干回復します。
原作でも治療担当がいなくても結構回復してるだろお前らwってことで大きなフラグになりそうにないダメージや時間が相当経った疲労などはどんどん回復させてます。
そういった点に関してもご指摘いただければと思います。
今後もちょっとでも過疎っぽい個所動かせていければなと思っております。それではまた次回。
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ずっと規制中です。今回も代理投下お願いします
川尻しのぶ、空条承太郎、リンゴォ・ロードアゲイン
投下します
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車は市街地をのろのろと進む。
川尻しのぶは、運転席に座る空条承太郎の顔色をうかがっては前を向き、話しかけようとして口をつぐむ、そんなことを繰り返していた。
彼女がなにか話しだそうとしていることに、承太郎は気づいている。しのぶも、彼が気づいていることに気づいている。
しかし二人の間に会話はなかった。
のろのろ進む車と同じように、わだかまった空気が二人を取り巻き、車中を支配していた。
やがて、意を決したようにしのぶが口を開いた。
「さっき、…………死んだ、あの人、死ななければならないほどのことをしたの? って思うんです。
空条さんはあの人のことを知っているみたいでしたけど、
こんな、殺し合いをしろだなんていわれて、あの人、怯えているようにも見えました。
『危険人物』として、処理しなければならない人だったのか、わたしには……」
「あの男、スティーリー・ダンは疑いようのない人殺しで、他人の命をなんとも思わねぇクズだ。
ヤツは俺たちを殺す気でいた。かつて対峙したときも、先ほども。
すでに攻撃もなされていた。あなたが気づかなかっただけで」
「でも、あんな一瞬で、……無力にするだけで十分だったかもしれないのに……」
承太郎が静かにため息をついた。
「聞き出すほどの情報もないと俺は判断した。
手足を縛ったところでスタンドを封じることはできねぇ。
気を失わせれば無力化はできる。が、そうしたところでなんの役にも立ちやしない」
――だからスティーリー・ダンを殺したのは正しい判断だった。
承太郎はしのぶを見ようともしない。その目はあくまで窓の外に向けられている。
車中に静寂が舞い戻る。それきり、話しは終わる。
と、思われた。
少なくとも承太郎はそう思っていたのだが、しのぶは違ったらしい。
彼女は逆に息巻いてまくし立てた。
「でも、判断が間違っている可能性もあるじゃないッ!
よくわからないけど、人によって『未来』から来た人、『過去』から来た人、それぞれ違うんでしょ!?
誤解して間違いを犯してしまう人もいるかもしれないわ。
こんな状況だし、誰かを守るために闘おうとしている人、目的があって悪人と協力している人もいるかもしれないじゃない。
アナスイさんが嘘をついている可能性や誤解している可能性だってゼロじゃないわ。
その状況でプッチという人の仲間に出会ったら、その人が悪人ではなさそうだったら、空条さんは」
「すでに、話してあるはずだ。
俺は、俺の判断により危険人物を排除すると。
あなたはそれを承知でついてくるといった。
俺にあなたを守る義務はない。
俺の判断基準について、あなたを納得させる必要もない」
しのぶの早口を遮り、単純な説明を繰り返すように承太郎がいう。
声をあらげるわけでもなく、ただ、淡々と、ゆっくりと。
ぐっと言葉につまり、息だけは荒くしのぶが顔を歪める。
でも、でも、と子供のように話の糸口を探す。
「でも……、わたし、ひどい母親でした」
話の飛躍に承太郎は閉口する。
なぜ感情を優先して、非論理的な話し方をしたがるのだろう。彼女もそうだった。
過去を思い出し、承太郎の目がかすかに遠くなった。
そんな彼の様子などおかまいなしにしのぶは話し続ける。
-
「早人のこと、むかしは全然かわいいと思いませんでした。
生まれた頃はかわいいと思ったこともあったけど、自己主張するようになってからは手に負えなくて。
あの子がなにを考えてるかわからなくて、不気味に思ってました。自分の、子供なのに。
あの人に対してもそう、回りがかっこいいっていうから、優越感からつきあって、そのまま結婚して……
あの人はなにもいわなかった。それすら不満に思ってました。
なんて『つまらない』男なんだろう、って」
『つまらない』といったとき、しのぶははっきりと嫌悪の表情を浮かべていた。
「あの人がいなくなって、生活していけなくなって、わたしと早人は以前に住んでいたのよりずっとぼろいアパートに越しました。
せまいアパートで、二人で暮らすようになって、わたし……、
ようやく、……あの人の真面目さがわたしたちへの愛情だったことに、気づいたんです。
給料が安くても、夕飯が用意されてなくても文句も言わず、あの人はわたしと早人のために毎日働いていた。
「でも、ふとしたときに、急にムカムカした気持ちが湧き上がってくることがあって、
隣の部屋から、薄い壁を通して、幸せそうな声が聞こえてくるとき、
どこからか、わいた虫をゴミ箱に捨てるとき、
くだらないことで早人と言い争ったとき……、すごくつらくなって、
何故もっと早く気づかせてくれなかったの、直接いってくれたなら、いい返してくれたならよかったのに、
こうなる前に、なにかが変わっていたのかもしれないのに、
……って、そう何度も何度も、いなくなったあの人をなじっているんです」
「おっしゃりたいことがわかりかねます。
いま、そのことを話す必要性についても」
話の着地点がまったく見えて来ませんが。
と、承太郎が口を挟んだ。慇懃でいて、ひどく無礼な口調で。
彼は神父でもなければ、カウンセラーでもない。
無駄な話に付き合って精神を消耗させる義理はないのだ。
しのぶはいくらか傷ついた表情をしたが、
「わたしは、ひどい母親でした」
しっかりと承太郎の瞳を見据え、もう一度繰り返した。
「でも、いまは、息子を、早人を愛しています。あの人のことも。
わたしは十一年間気づかなかった。それでも、わたしは、自分がむかしとは変わったはずだと、信じます。
『人』の本性は変わらないと、空条さんは考えますか?」
しのぶは、どこか焦っているように頬を紅潮させている。
いい足りないようにも見えたが、彼女はそれきり喋らなかった。
承太郎は、やはりしのぶを見ようとはしなかった。
彼にしては長いこと黙り込んでいたが、やがて、口火を切る。
その声色には、あからさまな侮蔑の念がこめられていた。
「川尻さん、あなたは……、
さきほどのスティーリー・ダンも、そして吉良吉影も、プッチとかいう野郎も、更正の可能性があるといいたいのか……?
排水溝のネズミにも劣るゲス野郎にも反省の機会を与えれば、生まれ変わる可能性があると。
俺にそれを見極めろというのか?
この、殺し合いの場で。肉親を亡くしてなお。
その必要があると、そういいたいのかッ!?」
しのぶは、これほど多弁になった承太郎を見たことがなかった。
承太郎はそのまましのぶの返答も待たず、言い募る。
「俺はいい父親とはいえなかった。あなたと同じだ。
娘の行事に顔を出したことは一度もない。
あいつが望むように、なにかしてやれたことはなにもない。
いつも、怨みがましい目であいつは俺を見ていた」
承太郎の双眸がしのぶに向けられる。暗緑色の瞳は激しい感情を映し燃えていた。
-
「俺は娘を愛している。心の底から『愛していた』。
だが、人は……、人の本性は変わらない。
俺はいい父親にはなれなかった。今までも、これからもだ」
――その機会は、永遠に失われてしまったのだから。
「どんな方便をいったところで変わらない。
あなたは……、あなたが思いこんでいるようには変わっていない。
おそらく、あの『吉良吉影』を想っていた頃と、少しも……」
承太郎が視線を逸らす。彼の声は次第に小さくなっていった。
「人道を説くのはあなたの勝手だ。
だが、あなた自身は…………」
(自分の、本当の気持ちに、向き合えるのか?)
最後は言葉になっていなかった。
車中の熱気が急速に去っていく。
承太郎は少しばつが悪そうに窓の外を眺めていた。
しのぶは深くうなだれている。細いあごの先から、水滴がパタリと落ちた。
それきり、なんの物音もしない。
車はいつの間にか止まっていたらしい。
承太郎が車を降り、ドアを閉めた。
足早に去っていく。振り返りもせず、ただまっすぐに。
すぐに足音も聞こえなくなった。晴天の下、のんびりとした空気の中にしのぶはただひとり残される。
こんなことを話そうと思っていたのではない。
と、しのぶは自分の無力さに打ちひしがれる。
頭の中には、論理的な話の道筋ができていたはずだった。それなのに。
話し始めるとつい感情に流され、けんか腰になってしまっていた。
承太郎を糾弾したかったわけではない。
まして『吉良吉影をかばおう』としていたわけではなかった。
たしかに、あまりに一方的な惨殺劇は、ショックだった。
『見張られている』という緊張感、銃を持ち出されたときの恐怖、転がってきた生首の衝撃。
大の大人の首が、あんなにも一瞬で、簡単に……。
衝撃から遅れてやってきたのは哀れみだった。
川尻しのぶはスティーリー・ダンを知らない。
もしかしたら、彼は殺人者でありながら、家庭では優しい人間だったのかもしれない。そう考えてしまう。
身内に優しい犯罪者など、客観的に見ればそれこそ処断されるべき人間だとは思う。
それでも、胴体と切り離された頭のヴィジョンは、哀れみを誘わずにはいられなかった。
そして『吉良吉影』への未練がまったくない、といえば嘘になる。
夫が初めて自分で夕食を作ったあの日――あの瞬間から、夢見がちな少女のようなドキドキした日々を過ごした。
その淡い感触は、罪悪感を伴って、いまもまだこの胸の内にある。
死んだはずの吉良吉影が存在している。
その人は連続殺人鬼だというけれど、もしかしたら、自分をかばってくれたときの彼が『本当』の彼で、心根は優しい人間なのかもしれない。
どうかしてると思いながら、それを期待している自分も認めざるを得なかった。
自分が夫や息子への愛情を得ることができたのは、逆説的には吉良吉影のおかげという事実を、正当化したいのかもしれない。
吉良吉影が、本質的には真っ当な人間であったから、彼との一時的な生活が、自分を変えた、と。そう、自分を納得させたいだけなのかもしれない。
それを承太郎に指摘されたため、しのぶは言い返せなかった。
夫を亡くし、息子を亡くし、それでも『危険人物』の排除を止めて欲しいなんて、身勝手でとち狂っている。
しかも最愛の娘と母親を亡くした人に対していったのだ。
けれど、吉良吉影との再会を承太郎に甘えて、彼の温情にすがって行おうなどとは、しのぶも考えていない。
しのぶは、ただ、承太郎を止めたかったのだ。
承太郎が『殺人者』になったときから感じるしのぶ自身の苦しみを、彼女は承太郎がひた隠す内心そのものだと感じていた。
感じてはいたけれど、うまく言い表せない。
言い出したとたんになにか別のものに変わってしまう。
-
無差別に人を殺すのは悪人で、悪人を懲らしめる必要な人が必要というのは理解できる。
罰されるべき人間、罰されるべき罪は存在する。
(でも、どこまでが許される罪で、どこからが罰される罪なの?
その判断を一人の人間に負わせてしまっていいの?
あんなに……、優しい人なのに)
人を殺したあとの承太郎の瞳を、しのぶはもう見たくなかった。
あの目を見ているとつらく、悲しい気持ちになる。
(でも、どうすれば……?)
アナスイ青年は力で承太郎を止めようとして、返り討ちにあった。
純粋な力で、承太郎にかなう人間なんているのだろうか。
(わたしの、本当の気持ち……)
額に手をあてて考える。
息子の顔が、夫の顔が、まだ見ぬ吉良吉影のぼんやりとした輪郭が、そして空条承太郎の寂しげな横顔が浮かんでは消え、浮かんでは消えた。
うめきながら顔をあげる。
少し落ち着いたためか、周囲を見渡す余裕ができていた。
車外を見れば見慣れた景観、杜王町のぶどうが丘高等学校がすぐ目の前にあった。
「あっ……」
しのぶがなにかに気づき、声をあげる。
その視線の先にあるのは高等学校のグラウンドだった。
不自然に土が盛り上がり、よくみればすぐ脇に大きな穴があいている。
人を埋めようとして穴を掘れば、あれくらいの土が積み上がるだろうか。
(空条さんは、あれを調べるために出て行った……?)
ついに愛想を尽かされたわけではないらしい。
いくらか希望を取り戻し、しのぶも車を降りた。
足元に、小さなシミのようなものがあるのに気づき、目をこらす。
血痕だった。
よく見れば点々と標のように残されている。
不安な気持ちを抱えたまま、小走りに人けのないグラウンドを横切った。
「……なにも、いないわ」
おそるおそる穴を覗き込み、しのぶは少し安堵した。
土塊の横の大きな穴の底には乾燥して白くなった地肌がのぞいている。
正直、無残な死体が転がっていることを覚悟していた。
自分の墓を掘らせて殺す。そんな、どこかで聞いた拷問方法を、置かれた状況から連想してしまっていたのだ。
(なら、空条さんは、どこへ……?)
そう思ったとき、ふと程近い茂みの向こう側が気になった。
白い塊がちらちらと見え隠れしているように思える。
胸が早鐘を打つ。
見ない方がいい。と頭の中から警告がグワングワンと響いていたが、足は自然とそちらへ向かう。
白い布地になにかがくるまれている。
ミイラのようなそれは、ところどころが点々と赤黒い。
布の隙間に手を伸ばす。
厚い布地からあらわれた、それは――――
血で固まった逆立てた銀髪。
威圧的にせりでた額。
眼帯によって隠された、顔の右半分を十字によぎる古傷。
すでに絶命した白人男性の顔……。
「うぅ……」
目を背け、後ずさる。吐き気をこらえるのでやっとだった。
川尻しのぶに知る由はないが、それは承太郎の旧友J・P・ポルナレフの死体。
アヴドゥルは親友を埋葬しようとして思い止め、ビーティーと手を組んだ際にポルナレフを置き去った。
埋めてしまうのがしのびなかったため、彼らは死体を茂みへと隠していったのだ。
アヴドゥルが背負って歩くには文字通りただの『荷物』であると、当然の判断だった。
親友を置いて去るのにはあまりに簡素、手を抜いた後始末に見えないこともなかったが、
手を組んだばかりのビーティーを私事に長時間付き合わせるわけにはいかないという、アヴドゥルの苦渋の判断がそこには垣間見られた。
が、しのぶにそれを知るすべはない。
そこにあるのは、頭を割られて絶命したと見られる男の死体。
なぜ穴を掘っておきながら埋葬されずに置き去られていたのか。埋葬をしようとした人間と殺害した人間は異なるのか。
結論を出すことも不可能だった。
-
おそらく承太郎も同じような思考をたどったのだろう。
近くに犯人の痕跡があるかもしれない。
そう考え、見渡してみれば、校舎の一階に窓ガラスが割れている箇所がある。
承太郎はそこに向かったに違いない。
(もし、この人を殺した人と、空条さんが鉢合わせたら……?)
胸がざわざわする。いてもたってもいられず、しのぶは走り出した。
* * *
割れた窓ガラス。熱でひしゃげた金枠。無数の弾痕。
プラスチックの焦げた匂い。腐臭。かすかに混じる、血の匂い。
ぶどうが丘高等学校の校舎の中を空条承太郎は歩いていた。
(火事、か……?)
それにしては燃え方が局所的で、爆発物にしては床面の破壊が少ない。と、承太郎は思った。
金属が溶けるほどの高熱が発されたはずなのに、火は自然に消えている。
燃えカスが少ない点も不自然だった。一瞬の発火と同時の鎮火。化学的な現象とは思えない。
というより、実のところひとりの知り合いの『能力』を承太郎は思い出していた。
情に厚く、生真面目な男の『炎を操る能力』を。
1年B組の教室に入ったとき、腐臭がひどくなった。
原因はじっくりと探すまでもなくすぐに判明する。
人間のような四肢を持ってはいるが、とても人間とは思えない形相をした化け物が教室の中央で絶命していた。
ところどころが炭化し、凄絶さに色を添えている。
承太郎は無表情に、焼死体とその周囲を検分した。
死体はすでに冷たくなっている。数時間前に絶命したと思われた。
死体の周囲には机とイスが放射状になぎ倒されている。
どうやら化け物は隣の1年C組の教室を突き抜け、ここまで吹き飛ばされてきたらしい。
穴の向こうにいっそう煤だらけの机やイスが散乱しているのが見えた。
C組もB組と変わらない、いや、それ以上の腐臭と血の臭いが充満していた。
死体はどこにもなかったが、ここで殺し合いが行われたとはっきり理解できるほどの血が床に広がっている。
学校にはあつらえ向きのサッカーボールが、赤く血に染まっている様がある種不釣り合いだった。
そして床の上には、ドロドロに溶けたおぞましい『なにか』がある。
『星の白金』を発現させドロドロの『なにか』を解剖してみる。
臓物をこねくり回して焼き上げたような異様な物体は動かない。
それが生物だったとしたら、すでに絶命しているようだった。
これ以上この教室を調べてもなにも利はあるまい。そう判断した、そのときだった。
ずずっ、と引きずるような足音が廊下の方から聞こえてきたのは。
(化け物の仲間か?)
学校を根城にし、迷い込んだ人間を惨殺する化け物を思い描いてみる。
ポルナレフを斬殺したのは彼らだろうか。
戦闘の予感を感じながら、あくまで冷静に、承太郎は教室を後にする。
廊下に出てみれば、50メートルほど向こうにひょろりと長身の男の姿があった。
男の足取りは重い。脚を引きずるように全身を上下させている。
怪我をしているのか右腕を無気力にぶらぶらとゆらし、左腕で空気を『掻く』ようにしてこちらへ歩いて来る。
二人の間が10メートルほどの距離になったとき、男は足を止めた。
顔をあげ、話しだそうとして、むせ、ベッと口中のものを吐き出す。
黒ずんだ床の上に、真っ赤な鮮血が散った。
「……エシディシという男を知らないか。
民族衣装の様な恰好をして、がっちりとした体つきの2メートル近い大男だ。
鼻にピアスを、両耳に大きなイヤリングをしていて、頭にはターバンの様なものも巻いていた」
今にも倒れてしまいそうな、か細い声で男は語る。
ぜいぜいと喉がなり、何度もつばを飲み込んでいた。
「放送を聞かなかったのか?
エシディシという男は名前を読み上げられた。
『すでに死んでいる』」
承太郎のにべもない返答に、リンゴォの灰白色の瞳が暗く沈みこむ。
モゴモゴとなにか、聞き取れないことを自嘲気味に呟いて、ふたたび彼は歩き出した。
承太郎は微動だにしない。が、彼はリンゴォを見送らなかった。
「人を殺しそうな目をして、人探し、か。
死んだはずの男になんの用だ?」
「………………」
-
リンゴォは答えない。そのまま通り過ぎようとする。
彼の腰に差したナイフが承太郎の目を引いた。
どこかで見たことがある小振りのナイフは、血曇りで汚れている。
「そのナイフ……、野ウサギでも捌いたのか?
ここで、なにをしていた」
ゆきかけていたリンゴォが、歩みを止める。
上体だけをひねった姿勢で彼は承太郎を見つめた。
その血走った瞳が映すは、純然たる『憎悪』の感情。
「貴様には関係のないことだ、『対応者』」
「ほ……う……」
* * *
「はぁ……はぁ……」
まともな運動をしなくなって何年経っただろう。
少し走っただけで息があがってしまう。
心だけが急く状況で、高等学校のグラウンドは川尻しのぶにとってやたら広く感じられた。
空条承太郎は優しい。
だからこそ、彼はもう迷わない。
いまの彼はきっとすべての危険人物を排除してしまう。
時間軸の違いから生じる無知、誤解から殺人を犯してしまう人、『彼自身』が救いたいと願う人も、許したいと思った人も、
『危険人物だから』
その判断さえあれば彼は殺してしまうだろう。
でも、そうやってすべての危険人物を排除したとき。
あなたのそばには誰が残っているの?
最後に滅ぼすのは、もっとも許せない、ほかならぬ自分自身じゃないの?
「空条さん……ッ!」
しのぶが空条承太郎の後ろ姿を見つけたとき、すべては『終わった』あとだった。
彼の足下には壮年男性が横たわっており、その胸には、承太郎が所持していなかったナイフが突き刺さっている。
男が承太郎に襲いかかろうとしたのか、あるいは会話から承太郎が危険人物と判断したのかは、もうわからない。
男のこけた頬には血の気がなく、地面に流れ出た血液はすでに手遅れだということを暗示していた。
承太郎はしのぶを見留め、少しだけ意外そうな顔をする。
「どうして、どうして……ッ!!」
しのぶが、わっ、と泣き出し、くずおれる。
承太郎はなにも語らない。しのぶに対してなにかを説明する義務はもう微塵も感じていないようだった。
しのぶを横目にリンゴォの荷物を探り始める。
その手が一枚の折りたたまれた紙を見つけたとき、はたと、止まった。
それに気づいたしのぶが、泣きながらも不思議そうな表情を浮かべる。
いまや見慣れた『支給品』が出てくる紙を、なぜ承太郎は注視するのだろう。
緊張した様子で承太郎が紙を開く。
現れたのは、奇妙な形をしたロケットペンダントだった。
虫のようにも見えるそのフォルム。
チェーンもついていないそれを『ロケットだ』としのぶが判別できたのは、承太郎がそれを開いてみせたからだ。
中を確認し息を呑む。
「…………ッ!!」
安堵でもない。驚きでもない。
哀しみに似た感情が、承太郎の顔面を、さっ、とかけめぐった。
彼の無骨な手の中でロケットがパキリと小さな音をたてる。
彼が泣いているのかと、しのぶは思った。
それほどまでに沈痛な表情で、長いこと、承太郎は双眸を閉じていた。
だらりと下げた手の隙間から、いびつな形になってしまったロケットが転がり落ちる。
彼が目を開いたとき、承太郎は表情はサイボーグのようなそれにまた戻っていた。
承太郎が立ち上がる。校舎の出口へと向かう足取りに迷いはない。
-
追いかけようと、立ち上がりかけたしのぶの目の隅で、ロケットがチカリと光った。
承太郎が捨てていったなんの役に立つかもわからないロケットを、迷いつつ、しのぶは手に取った。
急いで走り出し、承太郎の横に並ぶ。
(わたし、あなたを止めてみせる……ッ)
挑むように睨み付ける。
承太郎はその視線を受け流すように、ただ前を向いていた。
* * *
「フ……フフ……、これが……果てか…………」
その胸に短刀が突き立てられたとき、リンゴォ・ロードアゲインは笑っていた。
時を巻き戻す能力を所持した彼は、止まった時の中でも、そこで起きていることをすべて認識していた。
承太郎が不快感をあらわに睨みつける。
見知らぬ、死にかけの男が止まった時を認識できたことが意外で、気に入らなかった。
スティーリー・ダンが浮かべた驚愕の表情とは違う。
死を理解して、なお、男は嘲るように笑う。
「フフ……ハ、ハハハハハ…………」
時が動き出し、リンゴォの長身が崩れ落ちる。
名は、と問いかけた承太郎を無視し、彼は笑い続けていた。
全身をひきつらせ、血を吐きながら、地面をのたうつように、笑う。
実際には痙攣がそうさせていたのだが、すべてが承太郎には不快だった。
呪詛のようなその声が。宙をさまようその視線が。
アナスイの彷徨が。
ポルナレフの死に顔が。
しのぶの熱情的な双眸が。
結果的に彼女を連れまわしていることに意味などない。意味などないのだ。
川尻しのぶの手の内では、いびつになったロケットの奥で、一組の男女が、穏やかな表情を浮かべている。
【リンゴォ・ロードアゲイン 死亡】
【残り 56人】
-
【C-7 ぶどうが丘高校 / 1日目 昼】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
[状態]:???
[装備]:煙草、ライター、家/出少女のジャックナイフ、ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
[道具]:基本支給品、上院議員の車、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3、ランダム支給品4〜8(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵+ドルチ/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.ポルナレフの死の間際に、アヴドゥルがいた?
【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中) すっぴん
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
1.どうにかして承太郎を止める。
2.吉良吉影にも会ってみたい。
【備考】
承太郎はポルナレフの死体を発見し、ぶどうが丘高等学校の一階部分を探索しました。
リンゴォが所持していた道具の内、折れていない3本を承太郎が回収し、折れている2本は基本支給品とともに放置しました。
リンゴォが装備していたナイフはリンゴォの死体の胸部に突き刺さっています。
リンゴォのランダム支給品の残り一つが【承太郎が徐倫におくったロケット】でした。
しのぶはロケットの中身をまだ見ていません。
【承太郎が徐倫におくったロケット@6部】
徐倫の危機に承太郎がおくったロケット。
矢の欠片は入っていなかった。
潜水艇の探知機能に反応するかは不明。
-
以上で投下完了です。
タイトル『本当の気持ちと向き合えますか?』
言葉の誤用が多かったので、仮投下時から何箇所か変更しています
内容の変更はありません
問題点、誤字脱字等ございましたら指摘をお願いします
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せっかくゲリラ投下しようと思ったのに、スレが立てられねえ。
悔しいけどこっちに投下します。
というわけで、みなさんお久しぶりです。
ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル発売記念。
DLC配信キャラ VS セッコ 投下します。
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(さて………どこへ隠れたのかな………?)
薄ピンク色の亜人を傍に携え、吉良は礼拝堂内を見渡す。敵の姿は見えない。
この広い礼拝堂にはテーブルも椅子も多い。
柱や彫刻像のような遮蔽物も多ければ、カーテン付きの懺悔室まである。
隠れる場所は多い。
敵は吉良の『キラー・クイーン』とように特殊な能力を持ったスタンド能力を所持している。
吉良には初めての『スタンドバトル』だ。
現在のこの状況は吉良にとって非常に好ましくない状況であった。
1つめの問題は、講堂内にいたはずのストレイツォとリキエルの姿が見えない事だ。
死体を発見したわけではないが、吉良は2人が既に無事ではないであろうと推測し、その前提で考えを進めていた。
正義感の強いストレイツォがこの期に及んで姿を現さない理由がないし、それに現在の敵の手口は不意打ちの暗殺だった。
攻撃を受けた『キラー・クイーン』の―――吉良の両腕がまだビリビリ痺れている。
敵スタンドのパワーは非常に強い。波紋やロッズでは攻撃を防ぐことすらできないだろう。
奴を相手にするには、こちらも高い攻撃力を持つ『スタンド』でなければならない。
例えばそう、『キラー・クイーン』のような。
第2に、『キラー・クイーン』を敵に見られてしまった事だ。
先ほど攻撃を防ぐために、咄嗟に出現させてしまった。
もっとも防がなければ殺されてしまっていたので仕方がない事なのだが、目撃されたからには必ず消す必要が出てきてしまう。
姿は見えないが殺気は感じるため、敵側も戦うつもりではあるようだった。
その点については幸いしているが、もう逃すわけにはいかなくなった。
この先も無力なサラリーマンを演じていくためにも、目撃者を生かしておくわけにはいかない。
-
「ストレイツォ! リキエルッ! どこだ助けてくれ!? 攻撃されている!!」
おそらく返事は帰ってこないであろう呼びかけを叫ぶ。
声を張り上げた理由は敵を呼び寄せるためだ。『私はここに居るぞ、さあ掛かって来い』といったところだ。
だが、それでも敵は姿を見せようとしない。
吉良のハッタリを見破って、挑発に乗らずチャンスを伺っているのか?
だとしたらなかなか大した奴だ。
見た目は頭の悪そうな出で立ちであったが、戦闘においてという点ではバカでは無いということか。
(これでもまだ出てこない。やれやれ、面倒だな………)
問題その3。ホル・ホースと空条徐倫の存在だ。
散歩に出かけたあの2人。まだこの教会の付近……遠くへは行っていないだろう。
戻ってくるまで、あの1分?2分? 今すぐにでもここに現れるかもしれない。
ストレイツォたちが(おそらく)死んでしまった今となっては、もはやホル・ホースたちと組み続けることはできないだろう。
いろいろ聞かれて誤魔化し切ることは難しい。あの2人も、もう消すしかないだろう。
2人を殺すこと自体は別に問題無いのだが、まずいのは『今の敵との交戦中にこの場に戻って来られること』なのだ。
そのまま吉良と力を合わせて3人で戦ってくれるのならばまだいい。
だがあの空条徐倫という小娘は、『敵』と『私のスタンド』を確認して、そのまま何処かへ逃げ出してしまうかもしれない。
あの怯えていた様子では、無理もない。
さらにホル・ホースがそれに同調したならば、『吉良吉影がスタンド使いである事』、そして『その事実を隠していた事』を知る人間が、吉良の元より逃げてしまうということになる。
無力で無害な一般人を演じたい吉良としては、その展開は非常にまずい。
よしんばその場は共闘を選んだとしても、スタンド使いであることを隠していた事実は変わらない。
疑念を抱かれてしまえば、1対2では暗殺も難しくなる。
吉良にとってのベストは、ホル・ホース達の帰還前に敵を瞬殺し、後に戻って来た2人を不意討ちで仕留める事だ。
(敵は動きを見せない。時間は無い。ならば――――)
「『シアーハートアタック』―――!」
吉良自身から打って出るしかない。
-
『キラー・クイーン』の左手甲から分離し射出される、無慈悲なる爆弾戦車。
第二の爆弾『シアーハートアタック』。
本体である吉良の意思とは分離した自動操縦型の能力であり、『温度』を頼りに標的を見つけ出し爆殺する。
禍々しい髑髏の顔とキャタピラのみの小さな車体は異常なまでの強靭さを誇り、物理的な破壊をすることもほとんど不可能と言える。
「――――――『弱点』は、ない」
そう吉良が自負するに値する強力な能力なのだ。
『コッチヲ見ロォォ―――』
ギュルギュルと音を立てながら爆弾戦車が礼拝堂内を駆け巡る。
長椅子やテーブルの間を縫うように走り回り、自動で探索する。
この能力の前では、隠れる場所も逃げる場所もない。
やがて『シアーハートアタック』は『何か』の温度に反応し、走り出す。
(やれやれまったく、この能力まで見せる羽目になるとは思っていなかったが……
だが、『シアーハートアタック』が『奴』を捕捉した以上、もう勝負は付いた。
結局あの男が何者で、どんな能力だったのかわからないままだったが、しかし一つだけ間違いなく言えることがある。『シアーハートアタック』に弱点はない。
狙われた標的は、必ず仕留められる…)
講堂の入口方向へと加速する『シアーハートアタック』。
ロケット噴射のように飛び上がり、ターゲット目掛けて飛翔する。
妙な動きだ、と吉良は思った。
吉良の推測では敵が姿を潜めているのはテーブルか椅子の陰か、もしくは柱の後ろか、せいぜい壁際の懺悔室の中あたりだろうと思っていた。
それが、『シアーハートアタック』は空中に飛び上がったのだ。
この建物にも2階はあるが、天井はかなり高い。
敵の戦闘スタイルから言って、吉良を奇襲するに適した隠れ場所とは思えない。
やがて『シアーハートアタック』は、目標とした『標的』へと接近―――
(いや、違うッ! 『シアーハートアタック』の標的は『奴』ではないッ!!)
教会の入口扉から数メートル上方の壁にめり込まれた『何か』へ衝突し、大爆発を起こした。
「ああああァァァァアアアアア―――――!!!」
(何ッ!!)
突如、吉良の背後より聞こえる絶叫。
『シアーハートアタック』の標的が『敵』では無かったと気が付いた吉良が視線を切る間もなく、わずか背後1メートルに現れた敵の影。
スタンド『オアシス』に身を包んだセッコが、今にも吉良を殺すべく腕を振り上げていた。
そしてその手刀は振り下ろされることもなく宙を泳ぎ、視線と意識は爆心地付近を彷徨っていた。
-
(この男ッ! いつの間に私の背後にッッ!? 何故『シアーハートアタック』に探知される事なく私の傍に近寄ることができたのだッ!?)
何より吉良は『シアーハートアタック』発動中でも周囲への注意は怠っていない。
その警戒を掻い潜り、吉良は敵の射程距離内への接近を許してしまったのだ。
「ああああっ!!! おっ おっ おれのアートがァァああ!!! まだDIOに見せてなかったのにィィィィィ!!!」
セッコは吉良の姿には目もくれず、爆散した肉片に駆け寄り、グロテスクなそれをかき集め始めた。
吉良にはようやく、爆破された『それ』がなんであったかを理解した。
あれはリキエルだ。この男は教会に忍び込み、リキエルを襲い殺害した。そして彼の体を切り刻み、オブジェを作り上げて教会の壁に飾っていたのだ。
そしてそれを『シアーハートアタック』が探知し、爆破した。
折角の傑作を破壊され、この男は攻撃を止め、絶叫して肉片を拾い集めているのだ。
この事は、吉良吉影のプライドを大きく傷つけた。
この男にとって、死体オブジェが爆破された事は吉良への攻撃よりも重要なことだった。
オブジェが爆発されたことで、吉良への攻撃を中断して、今、肉片を掻き漁っているのだ。
そしてもし、オブジェを爆破しなければ。この男が攻撃を途中で止めなければ。
(殺されていた――― この私は――― 『いともたやすく』――――――)
怒り。
屈辱。
(この私を殺す機会がありながら、それを安々と棒に振ったということか………)
この上ない負の感情が、吉良の心を侵食する。
決して生かして帰すものか。
(この吉良吉影を侮辱した罪、その命で償って貰うッ!!)
一方のセッコも、四散して拾い集める事など到底できないであろう肉片たちを胸に抱え、吉良への怒りに燃えていた。
彼の『処女作』は3人の少年の肉をグニャグニャと練り合わせて作った、いわば肉塊の粘土だ。
それはそれで気に入ってはいたのだが、今度の作品は一人の人間(リキエル)から、原型をあまり損ねず、なおかつ独創性のある人形、剥製の様なオブジェを作り上げていた。
チョコラータの好む恐怖の表情までも取り入れた自信作だった。
DIOをここに連れてきて、これを見せたらなんと言ってくれるだろう。そんな事を想像していた矢先の出来事だったのだ。
-
「ゆっ 許さねェェ」
視線を切り、吉良を睨みつけるセッコ。
吉良は温度を感じさせない冷ややかな目つきでセッコの姿を眺めていた。
「てめえェェ! 絶対許さねえぞオオオオオ!! ぶっ殺――――」
『今ノ爆発ハ人間ジャネェ――――』
「ぬお?」
攻撃態勢に入ったセッコであったが、明後日の方向から聞こえる機械的な声に注意が逸れる。
吉良本体のいないセッコの側面より、活動を再開した爆弾戦車が忍び寄る。
自動追尾型スタンド『シアーハートアタック』は、本体である吉良吉影が能力を解除しない限り、いつまでも標的を狙い続ける。
攻撃はまだ終わってはいない。
『コッチヲ見ロォォ!!』
「なっ なんだコイツゥゥゥ!!?」
「私に屈辱を味合わせた分きっちりなぶり殺しにしてやりたいところだが、あいにくもう時間がないのでね。
悪いが一瞬で蹴りを付けさせてもらうよ」
即効で勝負を付けにかかる吉良。
『シアーハートアタック』はリキエルの死体オブジェを爆破したあとも、その勢いを衰えさせることもなく猛然とセッコの方へ向かっていく。
だが、『シアーハートアタック』はまたもや吉良の思惑とは異なる挙動を見せ始めた。
(何!?)
「なんだァ?」
軌道は僅かにそれ、『シアーハートアタック』はセッコが背中に回していたデイパックをめがけて突っ込んだ。
体当たりの直撃を受けたのは、中に入っていたポラロイドカメラ。
思い切り殴りつけたような鈍い音と共に、カメラはデイパックから投げ出され地面に転がる。
そして同時に、デイパックの中から写真と思われる紙切れが数枚、ヒラヒラと溢れ出てきた。
「あああああ!! おっ オレのカメラ!!」
そして爆発は怒らなかった。『シアーハートアタック』は――――――
『アレ? アレ?』
標的を見失い、ウロウロと辺りを彷徨っているだけだ。
-
(なるほど、そういうことか)
ようやく、吉良は理解した。
奴の身体には、『温度』がない。
正確には、土と一体化したようなスーツ状の『スタンド』に身を包んでいることで、外からは奴の体温を感知することはできない。
だから、『シアーハートアタック』は奴を探知できなかった。
既に冷たくなったリキエルの死体よりも更に低温。だからこそ、『シアーハートアタック』はリキエルの死体を攻撃したのだ。
そして次に、あのポラロイドカメラ。
宙に撒かれた写真を数枚拾って見てみる。被写体はリキエルとストレイツォの死体、それも大量にだ。
ほんの数分前にこれほどの枚数を撮影したというのならば、カメラには熱が残っていたのだろう。
『シアーハートアタック』はその温度に反応した。しかし今度は爆発まではない。低くとも人間の体温程度の温度に達しなければ、爆発は起きないからだ。
そしてカメラが破壊されたいま、『シアーハートアタック』の攻撃対象(温度)は存在しない。
スタンド『オアシス』の温度は、教会の地面の温度と大差がないからである。
(弱点はないと思っていた『シアーハートアタック』だが、『温度を感じさせない敵』……
これではとんだ役立たずだ。こんな落とし穴があったとは、『スタンド』とは奥が深い)
だが、吉良は動じない。
『シアーハートアタック』が爆発しなくとも、まだ吉良には『第1の爆弾』という別の攻撃手段が残されている。
こちらは単純明快。『キラー・クイーン』の手で触れられやものは、なんでも爆弾に変えることができる。
例えそれが100円玉であろうと、なんであろうと。
今度は『シアーハートアタック』ではなく、『キラー・クイーン』の右手で敵に触れるだけでいい。
-
「てめえカメラまで壊すとはあああッ!! っ覚悟できてんだろうなあ!?」
役目を終え吉良の元へ戻る『シアーハートアタック』を追い、セッコの『オアシス』が手刀を振り下ろす。
だが、無駄だ。『シアーハートアタック』の頑丈さは筋金入りだ。
吉良自身も『オアシス』の攻撃力は最初の攻防で理解していたが、それでも『キラー・クイーン』の両腕で止められる程度。
『シアーハートアタック』の強靭さは、そんなレベルをはるかに超えている。
ドロリ
そんな甘い考えが間違いであったことを、自らの溶け始めた左手首の痛みで思い知るのだった。
(何ィィィ!!?)
土や石と同じ温度で身を守る『オアシス』だが、能力の本質はそこじゃない。
鉱物のドロ化。それが『オアシス』の特殊能力。
爆発しない『シアーハートアタック』など、いくら硬くとも、『オアシス』の前ではただの硬い石でしかない。
(左手に痛みが……!! 『シアーハートアタック』を―――いや、物を溶かす能力―――――!!
誤算だ! 役立たずどころではない、これでは足手纏いだッ!!)
『シアーハートアタック』へのダメージが返り、左手首が泥のように溶ける。
激しく痛む左手を抑えうずくまる吉良と、その様子を見てゲラゲラと笑うセッコ。
攻撃が初めて通り、もう勝った気でいるセッコはこれから吉良をどう苦しめてやろうかを考え始めていた。
「吉良ッ!! これはいったいどういうことだァ―――!?」
そんなとき、サン・ジョルジョ・マジョーレ教会に、新たな登場人物が現れた。
ホル・ホース、その後ろには空条徐倫。気晴らしにと散歩に出かけて難を逃れた2人が帰ってきた。
教会から発せられる不穏な空気を感じ取り、警戒しつつも講堂内に入った2人は、吉良たちの前にたどり着いたのだ。
-
(ホル・ホースッ!! しまった、遅かったかッ!!)
まだ目の前の敵を仕留めていない、それどころか形勢は依然として不利なこの状況で、ついにホル・ホースたちが帰還してしまった。
ホル・ホースは訝しむ目で吉良と、その傍らの『キラー・クイーン』を見ていた。
無力な一般人を装っていた男が、目の前で敵とスタンドバトルをしていたのだから当然だ。
そして、その戦っている相手。
忘れるわけがない。忘れられるわけがない。
こいつは、あのDIOと共にいた、あの残酷で残忍な―――――――――
「いやあああああああああああ――――――ッ!!」
次の瞬間、空条徐倫が叫び声を上げながら脱兎のごとく逃げ出した。
ホル・ホースたちのケアもあってか幾分精神を持ち直した徐倫だったが、身体の乗っ取りからくる不安定さと、一度覚えた恐怖はそう簡単に忘れられるものではない。
DIOへの恐怖。セッコへの恐怖。
あるいは教会入口に散らばっていた、ストレイツォなのかリキエルなのかも判別できない肉片の山に、自分自身を重ねてしまったのか。
「ホル・ホースッ!」
「はッ!?」
動揺し徐倫の走り去った方向を見て立ち尽くしていたホル・ホースが、吉良の呼び声に反応し正気を取り戻す。
行くな!と、吉良は目で訴え掛ける。
苦虫を噛み潰したような顔を見せたホル・ホースは、やがて冷や汗まみれの顔を背け、カウボーイハットを深く被って目を隠し、そのまま徐倫の逃げた方角へ走り去った。
(ホル・ホースの奴―――ッ! 逃げやがった! あの糞カスどもがァァ!?)
吉良にとって最悪の展開となった。
『キラー・クイーン』を見られ、敵と戦闘している自分を見られ、そして逃げられてしまった。
嫌な予感はしていたのだ。
あの残酷で悪趣味な『アート』の姿を見た時から。
そしてリキエルの死体オブジェを爆破したとき、「まだDIOに見せてなかったのに」と、確かにそう言った。
情報交換にて得た、ディオの情報。
現在戦闘中のこの男は、空条徐倫を恐怖させた原因となった、食人鬼ではないか。
あの徐倫の反応を見るに、その想像は正解だったのだろう。
敵が他の誰かだとしたらともかく、これではまず間違いなく徐倫は逃げる。
目撃者は生かしておけない。
だが、この状況では彼らを追う事はとうてい不可能だ。
セッコは、吉良の想像をはるかに上回る強さを持った敵だった。
こいつを倒すのに、あと何分かかる?
その間に、ホル・ホースと徐倫はどこまで逃げる?
どこへ逃げる?
どうやって後を追えばいい?
セッコを倒したところで、もはや吉良吉影の秘密は守られない。
このゲームにおいて、無力なサラリーマンを演じる吉良吉影は、もう存在できない。
-
「何だったんだァ? あいつら?」
2人が走り去った教会入口の外を、セッコは呆然と見つめる。
吉良という獲物が目の前にいる以上、逃げた奴らまでは対して関心がないようだ。
「フフフフフ、フハハハハハハハハ………」
そして吉良吉影は、自分の存在をアピールするかのように、自嘲的な笑い声をあげ始める。
「あんたァ、何が可笑しィんだあ? 仲間に逃げられて、これからオレに殺されるってのによお?」
「君、名前は?」
質問に質問で返す吉良。
突然英語の授業に出てくるような日常会話を始めた吉良に対し、セッコは「ハァ!?」とごく当然の反応を示した。
「私の名前は『吉良吉影』年齢33歳。自宅は日本のM県S市杜王町北東部の別荘地帯に有り、結婚はしていない。
仕事は東日本最大のデパート企業『カメユーチェーン店』の会社員で、毎日遅くとも夜8時までには帰宅する。」
「? 何言ってんだァ? おめえ……?」
「正直、こんな事態にまで陥るとは思わなかった。平穏な私の暮らしは台無しだよ。全て君のせいでね。もうどうやら安心して熟睡できないらしい。
ただし――――――」
そこで吉良は言葉を切り、そして語気を強めて叫んだ。
「ただし『このゲームが終わるまで』だけだッ! このゲームで優勝して勝ち残り、元の生活を取り戻すまでだッ!!」
消極的なスタンスでいるのはもう終わりだ。
無力な一般人を演じ、誰かが主催者を倒してゲームが崩壊するのを待つのはもうやめた。
もうゲームは半分を過ぎ、多くとも残り70人ほどだ。
殺し尽くせばいい。
吉良吉影が残りすべてを殺し尽くし、優勝者になればいい。
もちろん、平穏な人生を送るためには、そのあと更に主催者陣営も壊滅させ、ゲーム自体の秘密も暴かなければならない。
困難で、先の見えない長い試練ではあるが、しかし………
「この吉良吉影が切り抜けられなかったトラブルなど、一度だって無いのだッ!!」
-
【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会内講堂/1日目 昼】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左手首負傷(ドロ化)、『シアーハートアタック』現在使用不可
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.まずは目の前の敵(セッコ)を始末する。
1.優勝を目指し、行動する。
2.どうにかして左手の治療がしたい。
3.ホル・ホース、空条徐倫(F・F)を始末する。どこへ逃げたかはわからないが、できるだけ早く片を付けたい。
4.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
5.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ(大破して使えない)
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良を殺す。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
[備考]
※リキエルの死体で作ったオブジェがありましたが、『シアーハートアタック』で爆破されました。ストレイツォの死体については詳細不明です。
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
リキエル:基本支給品×2
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【D-2 サン・ジョルジョ・マジョーレ教会周辺/1日目 昼】
【H&F】
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.またあいつ!!? もう嫌だああああああ!!!
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.とりあえず徐倫を追う。
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
2.吉良はスタンド使い? DIOの手下と戦っていた?
3.散らばっていた肉片はストレイツォ?それともリキエル?何が何だかわからねえ!?
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。内容はストレイツォ、吉良のメモから書き写しました。
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はい、ここまでです。
タイトルは「GANTZ」です
(私にしては)短めな話に収まりました。
決着までも考えていたんですが、ここらで投げてみるのも面白いかなと(←ようやくリレー小説であることを自覚)
もしかしたら続きも書きたくなるかもしれませんが、しばらく無理でしょう。
なぜならオールスターバトルやらなあかんからや!
でも、さすがに今回ほど期間を開けることはしないよう努力します。
俺は9ヶ月間も何をやっとったんや……
ではまたそのうち。
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うおお投下が来とるううう!
短い話とおっしゃってますがその中に多くのフラグを立てていますので今後に繋げやすい内容だと思います。
ASB発売で投下数が増えるか減るか……増える方になることを祈りたいですね。投下乙でした。
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投下乙です
『シアーハートアタック』が完全にゲームの声で再現されます
吉良の状況厳しいが頑張ってほしい
でもセッコの活躍ももっとみたい
いきなり逃げたホルホースはポイーでw
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投下お疲れさまです!!!!
今後の展開が楽しみですね!!
ASBが発売されましたし、皆さんゲームに夢中になって
まだ暫く新作はお預けだと思ってたので嬉しいです!
これからも楽しみに待ってます!!
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ご無沙汰しております。予約していたパート、投下します。
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「ようこそ……男の世界へ…………」
―――リンゴォ・ロードアゲイン
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僕らが話を終えてどれぐらいの時間がたっただろう。
真昼だと言うのに北向きのキッチンは薄暗く、僅かに入った日差しもどこか埃っぽい。
向かいに座った千帆さんの頬に長い影が落ちる。彼女が首を傾げるたびに髪の毛が揺れ、衣擦れの音が僕の鼓膜を震わせる。
壁時計が沈黙を破るように時を刻む。チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。
不意に、壁越しに男たちの声が聞こえた。一つはさっき千帆さんと一緒にいた男の声。そしてもう一つは……聞き覚えのある声だった。
椅子を引き、立ち上がる。千帆さんは顔をあげ、何か言いたげな表情で僕を見る。僕も彼女を見返す。沈黙が流れる。
チクタク、チクタク……チクタク、チクタク……。そして僕は扉に向かう。
「ジョニィさん」
僕を引きとめるように、彼女が僕の名を呼んだ。懸命に、何かを訴えるようにその目は僕をまっすぐに射抜いて行く。
僕は立ち止まり、その目を見つめ返す。睨み返す、と言ったほうが正確かもしれない。
たじろく彼女に指を突きつけると、 僕はこう言い放った。
「君の言い分はわかるし、必死だってこともわかる。
できることなら協力してあげたい、殺さずに済むのであればそれに越したことはない……。
それは僕が感じていることでもあるからね」
「なら……」
「けどもしも彼が、蓮見琢馬が僕の邪魔をするというのなら僕は手を止めることができない。
繰り返すことになるけど、これは決定的なんだ。僕の確固たる意志なんだ」
一言一言僕が言葉を吐き出すたびに、彼女の顔は大理石のように固まっていった。
真っ白になった彼女の顔を見て、胸が痛まないと言えばウソになる。
けど、仕方がない。こればかりは避けようもないほどに、僕の中では“絶対的”だった。曲げることのできない、確実なものだった。
もしも蓮実琢馬が僕の行く手に立ちふさがるのなら……僕は宣言通り彼を撃ち抜く。僕のこの手で、容赦なく。
男たちの声が大きくなった。僕は彼女に向かって話を続ける。
弱った動物に止めを刺すかのように、僕は言葉を振りおろす。
-
「殺し合いという舞台に立った以上、望むに望まざるに戦いは避けられない。
僕には叶えたい目的がある。必ず会わなければいけない友達がいる。
そのためなら……なんだってする。僕にはその覚悟が、ある」
「…………」
「優しさで誰かを救えるなら僕だってそうするさ。だけどそうじゃない……本当に誰かを救うのは強さだ。優しさなんかじゃない。
今までも……そして、これからも…………ずっと」
扉をあけると暗闇を切り裂くように陽が刺した。眩しさに目を細めながら外に出る。僕は後ろを振り返らなかった。
彼女がどんな顔をしているか、見たくはなかったから。
「夢見る少女じゃ世界を救えない。僕はそう思うよ、双葉千帆さん」
バタン、と扉が閉まる音がする。あの薄暗い部屋に彼女を閉じ込め、僕は光の中を進んでいった。
▼
「その子からさあ、きたない手をはなせよ。どうせ小便してもあらってないんだろ」
―――蓮見 琢馬
▼
「なるほど、話はわかった」
プロシュートさんの声はどことなく歯切れが悪い。そっとばれないように視線をあげると、彼は何も言わずにコーヒーを一口すすっていた。
キッチンの窓を背にした彼の表情は影になって、よくわからない。
けど、なんとなくだけど……どこか面白可笑しく思っているように、私には見えた。
ジョニィさんとの話し合いに時間はかからなかった。
お互いに出会った人について、知っている人について、危険人物の特徴、支給品の披露などなど……。
けど結局はそこ止まりだった。ジョニィさんは辛抱強くて、気が利いて、冗談を言って私を笑わせてくれたりしたけど一緒にはいられなかった。
一緒にはいてくれなかった。
-
話し合いが終わるとジョニィさんは私を置いて出ていってしまった。
少しの間、外ではなしあうような声が聞こえ、入れ替わりにプロシュートさんが部屋に入ってきた。
放送も近いし昼飯でも食べておこう……そう言って私たちはここに留まり、私はプロシュートさんにジョニィさんの話をしていたのだ。
彼の真っすぐな目と、折れることのない硬い、硬い意志について……。
「もしもここがタダの街で、俺とお前が偶然街ですれ違うような関係で、それでもってたまたま何か事件に巻きこまれただけとしたら……俺も同じことを言っていたかもしれない」
コーヒーの香りをぬうように、プロシュートさんの言葉が飛びこんできた。
顔をあげた私を見て、彼は話を続ける。
「俺もジョニィ・ジョースターと一緒だ。
目的のためならば手段を選ばない。他人を蹴落とす必要があるならそうする。ぶっ殺すと心の中で思った時には既に行動は終わっている。
心やさしいなんて的外れもいいところだ。そんな人種だ、俺たちはな」
コト……、陶器が触れ合う音が響いた。私は両手の中にあるマグカップを見下ろした。
真黒な液体の中で、白い顔をした私自身が見つめ返している。
どこまでも深く、濃い、真黒な渦の中で。
「だけど、死んだ。そんな人種と呼ばれる俺の仲間たちは六時間も持たずに、死んだ。どいつも俺より凄い奴らばかりだって言うのにな。
一人は俺以上に強くて、頑固で、厄介な野郎だった。
一人は俺以上に頭が回って、冷静で、冷酷だった。
一人は俺以上に意地汚くて、しぶとくて、ぶっ殺しても死なないような奴だった。
それなのに死んだ。そしてお前は生き残っている」
「プロシュートさん、私……」
「千帆、お前はとびきりの大甘ちゃんだ。 誰かを蹴落とすなんて考えたこともないって面してる。
誰かを犠牲にするぐらいなら私が犠牲になってもいい、そんな夢みたいなことを大真面目に考えてる。
実に、馬鹿馬鹿しくなるほどに、世間知らずのお嬢様だ」
言葉とは裏腹に、プロシュートさんの顔には笑顔らしきものが浮かんでいた。
コーヒーから立ち上る湯気越しに、微かに浮かぶ頬笑み。唇をひん曲げただけの不器用な笑顔は、それでも私を励ましてくれた。
これでもいいんだって、そんな気分になった。
女々しいかもしれない。臆病かもしれない。
でもそれはもしかしたら私にしかできないことかもしれないんだ。
私だけが持つ、大切なものなのかもしれないんだ……。
「そんな大甘ちゃんだから、俺はお前に賭けることにしたんだ」
ポケットに入っている歪な形の黒い武器。傍に佇むならず者剥き出しの男の人。
どちらも私からは遠く、遠くのものだった。けど今は、それ全部が大切に思えた。
強くならなきゃいけないと思った。ジョニィさんにああやって言われて、何一つ言い返せなかった事が急に悔しく思えてきた。
-
「少し寝ておけ、放送が始まったら起こしてやる」
目を閉じると暗闇が広がる。奥行きのない、どこまでも広がっていく闇。
私は何て言えばいいのだろう。こんな目をした、あのジョニィさんに何て言えば“勝つ”ことができるのだろう。
眼を開けてみれば差し出した腕はどこにも届かず、ただ天井向かって延びただけだった。
私はまだ、答えられない。けどいつかは……“答えられるよう”になりたい。
▼
「来いッ! プッチ神父ッ!」
―――空条 徐倫
▼
「俺はそう思うよ、ジョニィ」
「だったら尚更僕は一緒にいられない」
足を引きずりながら進む俺と、ただ真っすぐに進んでいくジョニィでは彼のほうが歩くペースが速い。
少しだけ前を行くジョニィの後ろ姿を見つめながら俺は見たこともない、その双葉千帆という少女のことを考えた。
何故だか彼女の姿はイメージの中で、俺の愛した少女と重なった。
それは彼女がきっと……双葉千帆が徐倫と同じぐらい優しい子だと俺が思ったからだ。
殺したくない、傷つけたくない。誰だってそう思うだろう。
彼女に足りないものがあるとするならば、それを貫きとおす勇気だ。
武力でもなく、説得力でもなく、ただ自分にそれを課す勇気……いや、勇気と言うより愛、だろうか?
母親が子に授けるような不変の愛、聖母のように慈しみ信頼する心……それを貫き通すのは難しい。
だけど徐倫だって昔は寂しさのあまりメソメソ泣くような女の子だったんだ。
彼女なら、できる。双葉千帆にだって、なれるだろう。俺はそう思いたい。
このジョニィ相手に一歩も引かないような女の子なんだ……あとはきっかけさえあれば、彼女は変わる。俺にはそう思えた。
「彼女のことが心配かい、アナスイ」
「……いいや」
振り向きもせずにジョニィがそうたずねてきた。俺は返事をし、その後ろ姿をじっと見つめる。
ジョニィは変わった。たった数時間ぶりに会っただけだと言うのに……どうしようもなくわかってしまうほど、今のジョニィは剥き出しで鋭い気を放っている。
前に比べてずっと無口で、座った目をしている。ときどき俺がギクリとなるぐらいに。
-
会いたい人がいると言っていた。必ず会わなければいけない友人なんだと。
きっとその気持ちがジョニィを変えてしまったんだ。失うことを恐れるあまり、失う怖さを理解しているがゆえに。
俺とジョニィの立場は完全にひっくり返ってしまった。今や俺が下がり、ジョニィが先だ。
しっかりとした足取りで前を行く彼は、頼もしげだけれどもどこか怖さを感じる。そんな風に俺には見えてしまった。
「アナスイ」
ジョニィに呼ばれ、俺は我に返った。
行き過ぎた道を戻ると、曲がり角で元来た道へと戻っていく。待ってくれていたジョニィと肩を並べ、俺たちはまた歩き出す。
―――全てをなぎ払い、踏み倒し……それでも何も手に入らなかったらお前はいったいどうするんだ?
そうジョニィに聞いてみたかった。けれども俺は尋ねない。
俺がその問いに答えることができないならば、それを口にする資格はない。
それになんとなくだが、ジョニィの答えが想像できたのだ。
―――それでも変わらず、歩き続けるだけさ。
俺は、ジョニィがうらやましかった。
こんな抜け殻になった俺なんかとは違う。死んだ女の亡霊に取りつかれるでもない。
ただひたすら道を行く、ジョニィ・ジョースターという男が…………。
「そろそろ放送の時間だ」
「ああ」
短くそう答え、俺は空を見上げる。
底抜けするように青く澄んだ空を、馬鹿みたいにでかい雲が横切っていく。
心地よい、昼下がりのことだった。
▼
-
【D-7 南西部 民家/1日目 昼】
【プロシュート】
[スタンド]:『グレイトフル・デッド』
[時間軸]:ネアポリス駅に張り込んでいた時
[状態]:全身ダメージ(中)、全身疲労(中)
[装備]:ベレッタM92(15/15、予備弾薬 30/60)
[道具]:基本支給品(水×3)、双眼鏡、応急処置セット、簡易治療器具
[思考・状況]
基本行動方針:ターゲットの殺害と元の世界への帰還。
1.暗殺チームを始め、仲間を増やす。
2.この世界について、少しでも情報が欲しい。
3.双葉千帆がついて来るのはかまわないが助ける気はない。
【双葉千帆】
[スタンド]:なし
[時間軸]:大神照彦を包丁で刺す直前
[状態]:疲労(小)
[装備]:万年筆、スミスアンドウエスンM19・357マグナム(6/6)、予備弾薬(18/24)
[道具]:基本支給品、露伴の手紙、救急用医療品
[思考・状況]
基本行動方針:ノンフィクションではなく、小説を書く。
1.プロシュートと共に行動する。
2.川尻しのぶに会い、早人の最期を伝える。
3.琢馬兄さんに会いたい。けれど、もしも会えたときどうすればいいのかわからない。
4.露伴の分まで、小説が書きたい。
【D-7 西/1日目 昼】
【ナルシソ・アナスイ】
[スタンド]:『ダイバー・ダウン』
[時間軸]:SO17巻 空条承太郎に徐倫との結婚の許しを乞う直前
[状態]:全身ダメージ(極大)、 体力消耗(中)、精神消耗(中)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条徐倫の意志を継ぎ、空条承太郎を止める。
0.徐倫……
1.情報を集める。
【備考】
※放送で徐倫以降の名と禁止エリアを聞き逃しました。つまり放送の大部分を聞き逃しました。
【ジョニィ・ジョースター】
[スタンド]:『牙-タスク-』Act1
[時間軸]:SBR24巻 ネアポリス行きの船に乗船後
[状態]:疲労(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×2、リボルバー拳銃(6/6:予備弾薬残り18発)
[思考・状況]
基本行動方針:ジャイロに会いたい。
1.ジャイロを探す。
2.第三回放送を目安にマンハッタン・トリニティ教会に出向く
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以上です。なにかありましたら指摘ください。
めちゃくちゃ久しぶりだったので、すごい自分自身違和感を感じてます。
ようやく生活が落ち着いてきたので、少しずつまた書ければいいな、と思ってます。
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すみせん、遅くなりました。投下します。
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◇ ◇ ◇
ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)
◇ ◇ ◇
-
「君たちには……人探しをしてもらいたい」
とろけそうになるほど甘い声。その声は一流音楽家が奏でるヴァイオリンよりも美しく響いた。
DIOは目前でうずくまる四人の男たちを眺める。誰もがぼんやりとした顔で、DIOの言葉に聞き惚れている。
「ジョセフ・ジョースター、空条承太郎、花京院典明、モハメド・アヴドゥル……。
この四人を、君たちには探してもらいたい。いずれもこの私の野望を邪魔せんとする輩だ。
君たちには彼らを探し出し、このDIOのもとに連れてきてもらいたい。
生死は問わない……信頼する君たちなら必ずやり遂げてくれるだろう……。
さぁ、行くがいい……このDIOの忠実な部下たちよ……」
話が終わったのを合図にDIOは椅子から立ち上がり、男たちは深々と頭を下げる。
薄暗い室内をぼんやり照らすロウソクが、怪しげな影を男たちの頭に落とした。
よく見れば額に小指大の肉片がうごめいていることに気がつくだろう。DIOによる洗脳、”肉の芽”だ。
部屋の奥へとDIOが姿を消し、男たちも立ち上がる。その足取りはどことなくぎこちない。目つきも虚ろだ。
プログラミングが終わったばかりのロボットのような動きで彼らは建物をあとにする準備を始める。
一連の出来事を部屋の隅で眺めていた虹村形兆は、ゾッとしない気分だった。
これがDIO……! これが悪の帝王……ッ!
他人を踏みつけることなんぞなんとも思っていない。
喉が渇いたから喫茶店に入るような気軽な感じで、彼は人を人有らざるモノに変え、己のコマとする。
罪悪感がない……、人としての『タガ』が外れている……。その点では間違いなくDIOは人間を超越しているだろう。
何かをしようとするたびに悩み、苦しむ形兆なんかとは違って。
形兆の指先がビリビリと震えた。『格の違い』に恐怖を覚えたのは初めてのことだった。
震えをごまかすためにもう片方の手でギュッと腕を押さえつける。
隣に立ったヴァニラ・アイスに動揺を知られたくはなかった。
「行くぞ、虹村形兆。奴らに先を越されてはならん」
ヴァニラの声は無機質で、人工的で、カラッカラに乾いてるように聞こえた。
形兆が小さく頷くと、ヴァニラ・アイスは先に立って歩き始めた。
その背中を眺めながら、こいつの首筋に弾丸をブチ込めたらどれだけスカッとするだろう、と形兆は思う。
第五中連隊をそっくりそのまま投入。
三六〇度より一斉一点射撃。首元の爆弾を引火させ、上半身を根こそぎ吹き飛ばす……。
そんな夢みたいなことができたならば……。
-
「なにをしている、早く行くぞ」
「そう急かすんじゃあない。隊列行動は規律を守ってだ。俺に指図するのはやめてもらいたいね」
表面上は軽口を叩きながらでも、互いに警戒は全くといていない。
ヴァニラは隙あらば形兆を殺そうとしているし、形兆だって素直に殺される気はない。
まだここがDIOの目の届くところだから、ただその一点のみで二人は戦わずに済んでいる。
だが『ここ』からは違う。この扉を開け、GDS刑務所から出ればそこはもはや無法地帯だ……。
最後の扉を開くと強い日差しが差し込んできて、思わず目を瞑りそうになった。
目がなれると辺りの風景が一気に視界に飛び込んでくる。見れば先の四人は四方に散って、それぞれの方向へと向かっている。
同時に甲高い叫び声が聞こえ、つられて上を見上げれば一匹の鳥が上空高く舞っている。
側にも、上にも監視付きってことか。逃げ場なんてものはどこにも見当たらなかった。
ため息をひとつ吐くと、形兆はバッド・カンパニーを広げていく。
遅れないようヴァニラ・アイスについていきながら一人心の中で毒づいた。
(なぁ、億泰……なかなか狂ってやがるだろう?
あれだけ嫌ったオヤジなのに、今俺はオヤジの代わりに仕事を引き継いでいるんだ。
皮肉なもんだ。殺したいほど憎んでいたはずなのに、そのオヤジの跡をそっくりそのままたどってやがる!
この俺が! この俺がだぞ……!?)
吸い込んだ空気はベタベタと口周りで張り付いて、学ランの下で汗がシャツをぐっしょりと濡らした。
(だがな、俺は忘れてないからな…………!
諦めたわけでもない。必ず俺とお前の借りは返してやるから!
だから見とけよ、億泰!)
形兆の足元で何人かの兵士たちが武器を構え直した。
金属がぶつかりあう、特有の重量感を持った音が響いた。それは戦いを予期させるような鈍い音。
兵士たちは知らない。この拳銃をこの先誰に向けることになるか。
ひょっとしたら顔も知らない若者かもしれない。戦いに明け暮れた歴戦の兵士かもしれない。
そしてもしかしたら……。渋い顔で形兆の隣を歩くヴァニラ・アイス。
彼にその武器を向けるときは、そう遠くないのかもしれない。
-
◇ ◇ ◇
散歩に付き合ってくれないか。そう言ったDIOの提案にヴォルペは黙って頷いた。
別に断る理由もないし、ちょうど暇をしていたところだった。
頷くヴォルペを見てDIOは笑みを深め、彼を地下へと誘った。二人はGDS刑務所内の地下へと続く階段を下っていく。
最初はコンクリートでできていた階段も下るに連れて砂や石が混ざり、ついには壁も足元も未整備のものへと変わっていた。
天井から滴る水滴が水たまりをあたりに作る。ゴツゴツした地面に足元を取られないようヴォルペは慎重に進んでいく。
DIOはどこか上機嫌で鼻歌交じりで先を進んでいた。さっきからやけにハイなようだとヴォルペは思った。
何かいいことでもあったのだろうか。
特別変わったことはなかったと思っていたが、思えばヴォルペはDIOのことをよく知らない。
好きな花も好みの歌も、出身も年齢も血液型も知らない。そもそも自分から誰かに興味を持ったことなんぞなかった。
足元が一段と荒れてきた。天井が低くなり、背が高いヴォルペは身をかがめながら進む。
頭をぶたないようにしながら、水溜りに足を突っ込まないようにするのはなかなか難しい。
進んではかがみ、よれては立ち止まる。DIOはなんでもないようにスイスイと進んでいく。
ヴォルペより一回り大きな体をしているというのに器用なものだった。
「君のスタンドは素晴らしいよ、ヴォルペ」
洞窟に入ってから一言も口を開かなかったDIOが突然そう言った。
返事をするどころでないヴォルペは言い返すこともできず、ただ頷く。この暗闇では頷いたところでわからないだろうけれども。
ともに足を止めることなく、進みながら話は続く。ヴォルペは黙って耳を傾けた。
「先の三人と一匹……チョコラータ、サーレー、スクアーロ、そしてペット・ショップのことだが……。
君のスタンドは最高だ。ほとんど再起不能当然だった彼らが今ではピンピンしている。
全くの無傷だ。本当に素晴らしいよ、ヴォルペ……!」
「……それは、どうも」
「確かにただ動けるようにするだけなら、この私にも可能だ。
首元に指先をつきたて、吸血鬼のエキスを流し込めばいい。そうすれば屍生人として彼らは再び動き出すだろう。
だがそうなってしまえば二度と陽の光を浴びることはできなくなる。
この狭い舞台で地下でしか動けない部下なんぞ、扱いづらいことこの上ないよ」
「…………」
「だが君は違う。君の能力は違う。私の真逆の能力そのものであり、だが隣り合わせのようによくなじむ!
過剰なエネルギーを流し込み、細胞を活性化させる。復元するのではなく、再生させるのだ。
いうならば体の内部を加速させているわけだ。一日ががりの傷を三秒で、一年がかりの怪我を三分で!
君は確かに生命を操っているよ、ヴォルペ! なんて素晴らしい! これ以上ないほど素晴らしい!
君は生命を与え、私は生命を奪う。君は万物を加速させ、私は世界を凍りつかせる。
コインの裏表のようだ! 素晴らしい引力だ! フフフ……! ヴォルペ、君は素晴らしいぞ! ヴォルペッ!」
DIOの喜びようはヴォルペを戸惑わせた。
話していくうちに喜びが増してきたのだろう。DIOはまるでクリスマスと正月が同時に来たようにはしゃぎだす。
だがヴォルペにはその喜びが理解は出来ても、共感はできなかった。
喜色満面のDIOを見つめながら、ヴォルペは何をそんなに喜ぶのだろうと考えていた。
自分はただ言われたとおり手当をしただけだ。
何も特別なことをしたわけではない。そもそもそんなにすごいというのなら、それは俺ではなくスタンドがすごいだけだ。
すごいのはむしろ君の方だ。そんな類まれなすべてを惹きつける、君の引力がすごいんだ。
-
だが、それでもヴォルペはかすかにだが、『喜び』というものを感じていた。
だれかの役に立てたという達成感と満足感がヴォルペをすっぽり覆う。
それは初めての経験だった。こんなものが感情だというのなら、それも悪くないなと思える程だった。
「ところで」
ヴォルペの声は相変わらず乾いていたが、どこか和らげな感じだった。
先を進んでいたDIOだったがヴォルペの声に立ち止まると、彼が追いつくのを待った。
二人並ぶとゆっくり進みだす。道はだんだんと平坦になっていき、天井も3、4メートルほど高くなっていった。
「俺たちは今、どこに向かっているんだ?」
DIOはなんでもないといった感じで返事をする。
「どこでもないさ。強いて言うなら君の引力が向くがままにさ」
そしてそれに応えるかのように、前方から物音が響いてきた。
硬い金属をぶつけ合うような音だ。それは戦いの音。
DIOの顔に笑顔が広がる。今までの笑みとは違う、邪悪で凶暴な笑みだ。
ヴォルペはその横顔を黙ってじっと見つめていた。DIOの横顔からなにかをかぎ取るようにじっと……。
-
◇ ◇ ◇
洞窟。
光が刺さない地下深く、手に持った懐中電灯だけを便りに二人は歩いていく。
空条承太郎と川尻しのぶ、二つの足音がこだまする。天井は低い。承太郎が手を伸ばせば触れられそうなほどだ。
承太郎としのぶはぶどうが丘高校を後にし、空条邸に向かっていった。
承太郎は理由を言わなかった。黙ったまま車を走らせ、門のところで止めると彼はようやく口を開いた。
『アンタ、吸血鬼の存在を信じているか』
突然の質問にしのぶは何も答えられない。承太郎も答えを期待してたわけでなく、淡々と話を続けた。
承太郎が持つ支給品の中の一つに地下地図、というものがあったらしい。
この街全体に張り巡らされたような地下道は交通のためにしては不自然で、下水や浄水のためにしては大規模すぎる。
しかしもしも日中外に出られないようなものたちがいたならば……。吸血鬼と言われる怪物たちが本当に実在するならば……。
そこはこの地で一番の危険地帯に早変わりだ。
学校の周りも駅の周りも人気は少なく、情報捜索は空振りに終わった。
承太郎はこれ以上待つことは不可能と判断し、攻めることにしたのだ。
参加者名簿の中に吸血鬼と呼ばれる人種が何人もいると、承太郎は言った。
そしてそれ以上の怪物、柱の男たちと呼ばれる者もいるといった。
『俺は今から地下に踏み込み、片っ端からそういう奴らをぶちのめすつもりだ』
にわかには信じられない話だ。おとぎ話でももう少し信ぴょう性がある。しのぶは何も言えず黙っている。
だが無言のまま承太郎が車から降りようとしたとき、既にしのぶも助手席の扉を開いていた。
もはやなんでもアリだ。スタンド、人殺し、爆弾首輪。そんなものがあるのであれば吸血鬼だっているだろう。
それになにより、さっき決めたばかりではないか。
空条承太郎を止めてみせる。ならばしのぶには選択肢はない。承太郎が行くところがしのぶの行くところだ。
たとえそこがどれだけ危険な死地であろうとも。
しばらく歩くと天井が高くなり、あたりもうっすらとではあるが明るさを増した。
壁に生えるコケがかすかに光り、ところどころから飛び出た燭台にはロウソクが灯らされている。
薄明かりの中、二人は無言のまま歩く。ただひたすら歩く。
承太郎は憎むべき敵を探し、一切の気配を見逃すまいとして。しのぶはそんな彼の大きな背中を眺め、内なる決断を済ませて。
-
しのぶは諦める決断をした。
難しい判断だったがそうする勇気を持つことを、彼女は自分に決めた。
この先承太郎は何度も戦うだろう。
望まない相手に拳を振り上げる羽目になるだろう。自分を押し殺し、戦うべきでない相手と戦うことになるだろう。
しのぶにできることは『なにもない』。
なにもないとわかり、でもなにかせずにはいられない。そのためにまずは自分の身は自分で守ろうと思った。
戦う相手を救うことを、しのぶは諦めたのだ。今の彼女に、それはあまりに大きすぎたものだった。
彼女に救えるとしたらせいぜい一人ぐらいだろう。救えてたったひとり……承太郎、その人ぐらいなものだ。
だから承太郎が戦い始めたら彼女は逃げるつもりだ。
戦いを止めることは不可能だし、承太郎のそばにいたところで負担がますだけだ。
悲劇のヒロイン気取りでもうやめて、なんていうこともしない。
彼がどれだけ思いつめて、苦闘しているかはわかっているつもりだから。
大きく息を吸い込むと、砂の臭いに混じってタバコの匂いがした。
空条さんはいったい何を考えているのだろうか。一体彼には何が見えているのだろうか。
隣を歩いているというのにしのぶには承太郎の何もが、わからなかった。
頑張ったところで空回り。ただ励ましたいのに、力になりたいのに。
それなのにどうやったら力になれるかがわからない。
だけど、これ以外に、そしてこれ以上にできることは何もない。
それすらも欺瞞で、傲慢で、押し付けがましいおせっかいだ。
だから一緒にいたい。だけどそばにいたい。脇で立っていたい、寄り添っていたい。
何か一つだけでも秀でたものになりたかった。
しのぶは、心の底から『必要』とされたかったのだ。
今は無理でも……いつかはかならず……―――
―――そう、思っていた。
-
「柱の男、カーズ……か」
「え?」
「アンタは逃げろ」
突然立ち止まった承太郎がポツリとつぶやいた。しのぶには何が何だかわからなかった。
次の瞬間、承太郎の姿が消え、凄まじい轟音が響いた。
しのぶは音にたじろぎながらも反射的にその場に伏せる。ぱらぱらと音を立て、頭上から崩れた砂が落ちてきた。
衝撃が収まるのを待ち、こわごわと顔を上げる。
目を凝らすと十数メートル先に承太郎の背中が見えた。そしてその脇に立つスタンドと……さらに奥に男の影が一つ。
その男は怪我でもしているのか、しのぶと同じように地面にうずくまっていた。背は高く、肩幅も大きい大柄な男だ。
黒いターバンのようなものを頭に巻き、冒険家風にマントを身につけている。
近くにはついさっきまでかぶっていたと思われる山高帽が転がっていた。
状況から察するに、承太郎がその男に攻撃を仕掛けたらしい。突然姿が消えたように見えたのは、彼のスタンド能力だろう。
「川尻さん、もう一度言う。死にたくなかったら逃げろ」
しのぶのほうを振り返りもせず、承太郎は今度ははっきりとした声でそう言った。
承太郎のもとへ駆け寄ろとしかけたしのぶはその言葉に足を止める。
それは拒否の言葉ではあったが、拒絶ではない。
承太郎がほんとうにしのぶのことを思ってなかったら何も言わず、そのまま戦い続けていただろう。
しのぶの脳裏に学校での出来事が古い映画を観るように、思い出される。
駆け寄るしのぶ、突き立てられたナイフ。薄笑いを浮かべた髭面の男。ガラス玉のような承太郎の目……。
ここで彼の言葉を無視するのは簡単だ。近くに駆け寄って、手を広げてもう戦うのはよして、と叫べばいい。
だがそれで何になるというのだ? しのぶは悩んだ末に、逃げることにした。
それは承太郎を困らせることになっても、改心させることにはならないだろう。
本当に承太郎を止めたいのであれば今は動く時でない。自分勝手な馬鹿なことをすべきでないと、しのぶは学んだのだ。
だがそれでも……やはり胸が痛んだ。
承太郎に独り戦いを任せること苦しさ、戦う相手にも家族がいるのではという哀れみ。
それでもそれらすべてを飲み込むと、しのぶは元来た道を走り出す。最後に承太郎にむかって、大声で言葉を残しながら。
「空条邸で待ってますからッ! 二時間でも、三時間でも……どれだけ待たされようとも待ってますからッ!」
-
そして…………―――また、轟音。
カーズの体が車にはねられたように吹き飛び、何度も洞窟の壁に叩きつけられる。
バウンドを繰り返し、天井まで達し……放り投げられたおもちゃのように落ちてくる。
当然のように位置を変えた承太郎はそれを黙って見ていた。今まで違ったのはその腕に真っ赤な線が走っていること。
時を止め終えたほんのゼロコンマの瞬間に、カーズの指先が承太郎の腕の肉をえぐり飛ばしたのだ。
音を立てて、承太郎の腕から血が滴り落ちる。傷は深くもないが、浅くもない。
二度の衝撃を終えて、両者はにらみ合う。
ゆらりと立ち上がったカーズの顔には憤怒の表情が張り付いている。承太郎は変わらず、機械のように無表情だ。
泥だらけになった自分の姿を一瞥し、カーズは苦々しく言った。
「貴様、何者だ……」
「てめェには関係ないことだ。これから俺にぶちのめされる、お前にはな……」
―――……殺してやる
これほどの屈辱は未だかつて味わったことがなかった。
ダメージはない。が、餌の餌、家畜当然かそれ以下の存在である人間にこうも弄ばされいいようにやられて、カーズのプライドはズタズタだった。
スラァァァ……と薄い氷をひっかくような音を立て、カーズの腕から刃が飛び出した。承太郎もスタンドを構え直し、戦いに備える。
最初から全力全開……最強のスタンド使いと最強の究極生命体のぶつかり合い。この戦いは長くは続かないだろう。
薄暗がりの中、影が動いた。そして……三度轟音が、そして今までよりさらに凄まじい轟音が、洞窟を震わせるように響いた。
-
◇ ◇ ◇
「スター・プラチナッ!」
「KWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
カーズが感じたのは強烈な違和感だった。
目の前の男は自分を知っている。柱の男の性質を、光の流法を……波紋使いでもないのに、完璧に対応しカーズの攻撃をさばいていく。
カーズの体に直接触れることは決してしない。輝彩滑刀に対しては刃をはねのけるように側面をたたいている。
数度の交戦を経て、大きく距離を取る。承太郎も無理には追わず、一度互いに呼吸を整える。
気に入らないな、とカーズは思った。その余裕が、強さが、すべてを見透かしたようなスカした視線が!
全てがッ! 気に食わんッ!!
大地を強く蹴りあげ、跳躍。狭い洞窟であることを最大限に利用する。
天井まで上昇、今度は天井を蹴り加速。壁を蹴り、進路を変更。また床に戻り、そして上昇……。
人間には決してできない、超三次元的な動き! あまりのスピードにカーズの影がぶれてみえるほどだ!
「刻まれて、死ねェェェエエ―――ッ!」
「オラオラオラオラオラオラッ!」
だが、やはりだ。それでも承太郎は完璧に対応してみせた。
上から切りかかっても、下から切り上げても、右から真っ二つにしてやらんと振り上げても、左からます切りにしようと振り下ろしても。
スピードと破壊力では間違いなくカーズが上だ。体力も、耐久力も、地の利もカーズが上。
だがしかし精密性という一点のみで! 悔しいが認めるしかない……ッ!
承太郎の体に細い切り傷が無数に広がっていく。その先の一歩が踏み込めない。
承太郎の超人的な集中力と、スター・プラチナの能力がそれをさせない。
カーズの刃を揺らし、折らんばかりに振り下ろされるスター・プラチナの攻撃に柱の男は認識を改める。
こいつは……強い。波紋使いとは違った次元でコイツは……このカーズの脅威となる男だ、と。
そしてなにより……ッ!
「……スター・プラチナ・ザ・ワールド」
そう承太郎がつぶやき、カーズの世界が一変する。
つい今の今まで、目の前にいたはずの影が消える。と同時に、ほんのゼロコンマ秒のズレもなく、体の側面に強い衝撃。
きりもみ回転をしながら洞窟の壁に叩きつけられる。
あまりの衝撃にそれだけでは収まらず、バウンドを繰り返し、何度か壁と床を揺らしてやっとカーズの体は止まった。
-
そう、この謎の能力……。
人形使いに会うのは初めてではない。この舞台ではじめにあった人間もそれらしき能力をもっていた。
が、コイツはタダの人形使いではない……ッ! なにかそれ以上の恐ろしい……凄まじいなにかを、秘めているッ!
(そうでなければこのカーズが、こうまでも苦戦するはずがなかろうが……ッ! たかが人間相手に……忌々しいッ!)
体についた砂埃を払い落とし、立ち上がる。形としてはこればかりを繰り返している。
攻めるカーズ、迎え撃つ承太郎。互いにダメージはほとんどない。
なんどもカウンターをくらっているカーズだが、柱の男の耐久力、回復力がそれを補ってくれている。
承太郎も決して無理をしない慎重な立ち回りだ。じっと隙を伺い、待ち続けている。
互いを牽制しあうような時間が続き、小競り合いが二度三度。
焦れるような戦いが何度も続いた。このままでは決定打にかけ、いつまでたっても戦いは終わらないだろう。
二人にできることといえば待ち続けることだけだった。
集中力を途切らせることなく、何かこの状況を打破してくれるような「何か」をひたすら待つことだけ……!
「オラァ!」
「ふんッ!」
長い交戦の終わり際、二人はここぞとばかりに踏み込んだ。だがそれも有効打にはならない。
キィィン……と甲高い金属音が響き、カーズの刃をスター・プラチナが蹴り飛ばす。
よろめき体制が崩れたところを追撃するも、柱の男特有の柔軟さがそれをなんなく躱しきる。
顎先をかすめた蹴りをさけ、カーズは大きく飛び下がる。承太郎はスタンドを呼び戻し、また戦いに備える。
その時だった。
その金属音が止まないうちに、近づく一つの足音。そしてその場にそぐわぬ、乾いた拍手の音。
パチパチパチパチ…………。承太郎の動きが思わず止まる。一歩踏み出したところでカーズは何事かとあたりを見渡した。
二人の視線が向いた先から人影が浮かび上がってくる。
薄明かりの中出てきたのは……黄金に輝くド派手な衣装、筋骨隆々のたくましい肉体、傍らに立つスタンド。
張り詰めていた空気がさらに殺伐としたものに変わる。
承太郎の体から目には見えない、だが強烈な怒りの感情が熱となって一斉に吹き出した。
「…………DIOッ!」
「ンン〜〜、ご機嫌じゃないかァ、承・太・郎ォォ………? ンン?
しばらく見ないあいだに随分と老け込んだじゃないかァ……。
それともこのDIOに会うのは『数年』ぶりかな?」
-
返事はなく、代わりに拳が飛んできた。いくつにも増え重なった拳が、壁のようにDIOめがけて迫ってくる。
手洗い歓迎というわけだ……ッ! DIOは軽いウォーミングアップだとつぶやくと、自らもスタンドを出現させた。
「ザ・ワールド!」
その音は拳と拳がぶつかり合う音にしてはあまりに殺気立ったものだった。
刃物と刃物をぶつけ合うように鋭く、甲高い音が洞窟中に響く。それも無数に……そして同時と聞き間違うほど素早い間隔で!
承太郎とDIOはスタンド越しに火花を散らす。
パワーA、スピードAのスタンドのぶつかり合いは凄まじく、衝撃で洞窟全体がビリビリと震えた。
突きが徐々に早くなっていく……。DIOの顔から余裕の笑みが消えた。承太郎は奥歯を噛み、鼓舞するように叫びを上げる。
だが!
「KUWAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」
この時を待っていた……ッ! そう言わんばかりの迅速な行動だった。
屈辱ではある。たかが人間相手に苦戦し、突然現れた邪魔者に助けられた形で隙を付くことになった。
だがカーズにとってもはやそんなことはどうでもいいことだった!
プライド、過程、こだわり……そんなもののために勝利を犠牲にするほどカーズは甘くないッ!
目的を遂行し、そのためにはどんな手であろうと迷わず実行するッ! そう、これが真の戦闘だ!
カーズにとってはそれがなによりもの真理ッ!
「その命、刈り取ってくれよォォオ―――――ッ!! KUWAAAAAAAAA!」
正面から真っ向勝負の二人に対し、真横から超速で接近。
狭い洞窟内に逃げ場はない。上下、左右。いずれに避けようとも、カーズのスピードを持ってすれば腕か足、あるいは両方共もっていかれる……ッ!
魚を下ろすかの如くッ! ただ包丁を振るうようにッ! カーズの鋭い刃が承太郎とDIOに襲いかかるッ!
―――その瞬間! ……またも世界が止まった。
「「スター・プラチナ・『ザ・ワールド』ッ!」」
二人は迫り来る刃を前に、示し合わせたように同時に動いた。
ともに止まった時の世界で、DIOは左に、承太郎は右に。
たとえ柱の男といえど、止まった時の世界では『喰らう』ことは不可能だ。
DIOはそうとは知らず、承太郎はそれを知っていて。ともに最大速度でカーズめがけて拳を振るう。
-
すみません、抜けがありました。
>>631と>>632の間です。
承太郎は動かない。返事もせず、頷きもしなかった。
足早に去る音を背にしながら、ただ目の前の男をにらみ続ける。
しのぶの足音がすっかり消え去った頃になって、ようやく地に伏せていた男が立ち上がった。
直角に曲がっていた足首も。あらぬ方向にひん曲がっていた首も。
一向に気にする様子もなく淡々と立ち上がると、服の埃を払ってみせた。
-
右からザ・ワールド、左からスター・プラチナ。左右からのすさまじい衝撃が一秒の狂いもなく、カーズの体内に圧縮されていく。
すべてが止まった世界でなお、その凄まじいエネルギーは暴走し、カーズの体を変形させていく。
極限までしなやかな骨は折れ、ゴムのように柔軟な皮膚ですら突き破られる。空気配給菅に押し込まれたわけでもないのにカーズの体はぺちゃんこに変わっていく。
「承太郎、貴様ッ!」
「オラオラオラオラオラオラァ!」
そして、ともに対処しなければならない共通の敵がいたとしても。
この二人が手を組むことは不可能だ。たとえそれが一時、一秒であったとしても。
時が動き出すほんのコンマゼロ秒前、体制を立て直した二人が激突する。
拳の嵐、蹴りの応酬。DIOの右肩が大きく裂ける。承太郎の腕の傷がぱっくり開き、天井に血のシミを作った。
「「そして時は動き出す……」」
「BAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
吹き飛ぶカーズとその叫びを耳にしながら、最後に拳を放つ二人。
凄まじいエネルギーがぶつかり合い……衝撃波が洞窟を通り抜けていった。
弾き飛ばされるようにDIOも承太郎も、大きく飛び下がった。
天井と壁が割れ、パラパラと小石が落ちてくる。砂埃が舞い、足元を舐めるように通り過ぎていく。
「やはり止まった時の世界で動けるか、承太郎……! このDIOにだけ許された世界にッ! 貴様はやはり入り込んできていたのか!」
「答える必要はない」
会話の終わりに二人の傷口が大きく開いた。カーズとてただ闇雲に突っ込んだわけではない。
承太郎との戦いの中でその不思議な能力は曖昧ながらも把握していた。
たとえと時間が止められようと、吹き飛ばされる直前にDIOと承太郎の体に『憎き肉片』を飛ばす。
カーズは倒れふしながらもそれでも意地を見せた。しかし屈辱には変わらない。
あの柱の男の一族が、人間と吸血鬼相手に劣勢であることは変わらない事実なのだから。
「よかろう……例え貴様が時に侵入してこようとも、このDIOが貴様をたたきつぶしてやるッ!」
「……貴様らは殺す。肉片一つ残らず殺す。バラバラのブロックに切り裂き殺す。死体も残さずこの体に取り込み殺す。
このカーズ自らの手で! 直々に! 殺し尽くしてやるッ!」
-
激高するカーズの叫びと、DIOの高笑いがあたり一面にこだました。
増幅された怒りと憎しみの感情が霧のように承太郎を包んだ。しかし承太郎は怯まない。
その霧を弾き飛ばさんばかりのエネルギーが承太郎の体から立ち上った。
思い出せ、23年前のあの日のことを。怒りのままにDIOをぶっ飛ばしたあの日。
母を人質に取られ、友を殺され、祖父を侮辱され、プッツンしたあの日の怒りを……―――俺はッ!
洞窟内に見えるはずのない陽炎が立ち上っているかのようだった。
三人に増えたことで状況はより複雑なものになった。
誰かが動けば誰かが相手しなければならない。その隙に完全に自由な一人が生まれる。
ひりつくような状況で、いたずらに感情だけがそれぞれの中で昂ぶっていく。
コップいっぱいに水を注いでいくよう緊張感。火蓋が切られるギリギリまで一滴、また一滴……。
そして―――!
「お取り込み中申し訳ないのだが……君たち、泥のスーツをまとった奇妙な男を知らないか?」
辺りを漂っていた霧が散っていく。
戦いに水を差すようにひとつの影が姿を現すと、冷め切った調子で三人そう尋ねる。
見た目はただのサラリーマン以外の何でもない。きちっとしたスーツ、曲がっていないネクタイ、ピカピカに磨かれた革靴。
だがその奇妙な質問が何よりも知らしめていた。
この極限状況で、この殺気立った異様な空間で。こうまでも冷静に問を述べることができる。
カーズもDIOも理解し、承太郎は101%の確信をした。
この男もまた異形……・。絶対に始末すべき相手であると……。
-
◇ ◇ ◇
たっぷり一分は待っても返事がないことを確かめ、吉良吉影は残念そうに首を振った。
「どうやら誰も心当たりがないようだな。すまない、邪魔をした」
「待ちな、吉良吉影」
唐突に名前を呼ばれ、立ち去りかけた男は振り返った。
彼の名前を読んだ男は視線を上げることなく、斜めに構えたままだ。
吉良はその生意気な横顔に生理的嫌悪感を抱きながらも、丁寧な物腰を崩さない。
「ええと、すまない。仕事柄人と沢山合うので名前を忘れてしまったようだ。どちら様で?」
問いかけられた承太郎は長いこと無言のままだった。
ロウソクの先から雫が垂れさがるほどの沈黙の後、承太郎はポケットから右手を出すとカーズを指差しこう言った。
「カーズ、柱の男と呼ばれる一族の中で天才と言われた男。
太陽を克服したいという目的の元、石仮面を開発。さらなる進化を遂げるべくエイジャの赤石を求めた。
1941年イタリアで目覚めたのち赤石を求めヨーロッパを放浪。のちにジョセフ・ジョースターの手によって始末される」
カーズの驚いたよう表情を無視し、承太郎は続いてDIO指し示す。
「DIO、本名ディオ・ブランドー。
1860年代に生まれジョースター一族を乗っ取るべく、石仮面をかぶり吸血鬼となる。
ジョナサン・ジョースターの手によって一度は殺されたと思われたが、100年の時を経て再び野望を達成すべく蘇る。
1987年、エジプトにて空条承太郎の手によって殺される」
DIOはカーズとは対照的に驚きを一切示すことなく、承太郎の言葉を鼻で笑って見せた。
だがその目は怒りに染まっている。承太郎を睨み殺さんとばかりにその視線は赤く、燃え滾っている。
承太郎はそれを無視して吉良を指差す。あらかじめセリフ考えていたごとく、スラスラと言葉が飛び出てきた。
「吉良吉影、1966年生まれ。
18歳のとき初めて殺人を犯す。それを皮切りに手の綺麗な女性をターゲットとした殺人を繰り返す。
最終的には48人もの女性を殺害、二次被害を考えれば殺害数はそれ以上と推測できる。
1999年、M県S市杜王町の郊外で自動車事故に遭い死亡する」
言葉はなかったが空気が揺らぐような感覚が辺りを走った。
いきなり死を宣言される戸惑い、自分の領域に勝手に土足で踏み上がられた気味の悪さ。
しかし稀代の極悪集である三人はそれ以上に怒りを感じた。屈辱を味わった。
時代のズレについては理解している。なるほど、自分はそうやって死ぬの『かもしれない』。
だがそれがどうしたというのだッ! それは『貴様』の世界でおきた出来事に過ぎないッ!
自らの終りの決めるのは自分自身の行いだ。自分自身の信念だ。
この私が! そうも無様な終わりを迎えるだと? 野望を叶えることなく、惨めに地に伏すことになるだと……?
-
吉良の登場で冷え切った空間が急速に熱せられていく。
爆発直前のエンジン中のように、三人の怒りがあたりの空気を変えていく。
承太郎とて同じことだった。彼は怒っている。どうしよもなく、こらえる必要もなく怒っている。
ここにいる三人は間違いなく性根の腐りきった「悪」だ。
川尻しのぶの放った言葉が上滑りしそうなほどの悪。彼らを悼む家族などいない。彼らが突然良心に目覚めることもない。
殺し合いに巻き込まれたから仕方なく殺すのでない。
彼らは殺し合いが起きなかったとしても、自ら殺しあいを仕掛けるような人種なのだから!
怒りに震える三人を眺めると、承太郎はポケットからタバコを取り出し一服する。
全員から立ち上る殺気をそよ風のように受け止めながら独りごちる。
「三人同時は『少しだけ』骨が折れそうだな……やれやれだぜ」
余裕の笑みを崩すことなく、しかし内心は怒り狂いながらDIOはザ・ワールドを傍らに呼び出す。
もはや遊びはおしまいだ。死よりも残酷な結末を……ここに描いてみせるッ!
「どんな未来に生きていようとも……どんな過去を辿っていこうとも……! 『世界』を支配するのはこのDIOだッ!」
吉良吉影は己の半生を思い返す。
どんな困難であろうと切り抜けてきた。どんなピンチもチャンスへと変え、この生活を守ってきた。
譲りはしない……! びくびく怯えながら過ごす日は『今日』だけだ。
私は帰るんだ。元の世界に帰って、必ずあの平穏な日々を……!
「私の正体を知られてしまった以上、誰であろうと生かしてはおけない。全員まとめて……始末させてもらおうか」
パキパキ……と音を立てながら体が修復をはじめる。しかし木っ端微塵に砕かれたプライドまでは決して治すことはできない。
突き出た刃物越しにカーズは三人の顔を眺めた。
どいつもこいつもアホヅラを下げてやがる。このカーズの足元にも及ばぬ程の、原始人どもが……ッ!
「簡単には殺しはしないぞ、人間。このカーズを踏みにじったその行い……泣き喚き、許しを乞うほどの後悔を与えてやるッ!」
そこは既にただの洞窟ではなくなっていた。
四人の超人たちによる生き残りデスマッチ。時間無制限。ギブアップなしの一本勝負。
先の戦いの余波で、天井からゆっくりと小石が落ちてくる。そしてそれが地面に落ちたその瞬間!
―――四人の戦いが始まった。
-
◇ ◇ ◇
一番に動いたのはDIOだった。
承太郎目指し、真っすぐに向かっていく。が、左方向から迫る影を察知し、急停止。
スタンドを構え直したと同時に、上から振り下ろされた刃から身をかわす。
カーズの動きは早い。DIOが足を止めた一瞬の隙に二手、三手と攻撃を畳み掛けてくる。
小刻みに距離を取りながらDIOは考える。カーズは接近戦を仕掛けようとしている。スタンドを持たず、飛び道具もないようだ。
ならば距離を取るのが定石。スタンドがある分、距離を広げれば有利になる。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄ッ! ……なに?!」
「無駄、と言ったか……? 『無駄』と言ったのかァ、DIOォォ〜〜?」
が、しかしDIOは見誤っていた。相手を大きく吹き飛ばそうと放ったカウンター。
巨大なゴムをたたいているような違和感のなさ。見れば叩き込んだ拳にべったりと蠢く肉片が付着していた。
強力な酸を浴びせ掛けられたような熱さを感じ、DIOは歯を食いしばる。
嘲るカーズの追撃を間一髪でさけ、足元に転がっていた岩を放り投げ牽制する。
ようやく距離をとった頃には指先の皮膚は全て喰らい尽されたあとだった。
余裕の表情を見せるカーズ。強敵の出現に表情を険しくするDIO。
「フン、たかが吸血鬼がこのカーズに楯突こうとはなァ……。やめるなら今のうちだぞ、吸血鬼よ」
「柱の男だがなんだか知らんが……頂点に経つのはこのDIOだ。その言葉、そっくり返してやるぞ、カーズ!」
「…………」
「タバコ、やめてくれないか。そもそも吸うのであれば周りの人に一声かけるのが常識だろう」
人有らざる者たちの戦いの脇で、人同士の戦いも始まろうとしていた。
カーズとDIOの戦いを眺めていた承太郎は吉良の言葉に振り向く。
気だるげにこちらを眺める吉良の姿を確認すると、承太郎は黙って二本目のタバコに火を付けた。
吉良はイラついたような表情を浮かべたが、諦めたのか言葉を繰り返すようなことはしなかった。
代わりにキラー・クイーンを傍らに呼び出し、戦いの構えを取る。
ポケットに隠し持っていた小石を爆弾に変えようと手を伸ばす……―――。
「―――!」
「スター・プラチナ」
その一瞬の隙を付き、承太郎が仕掛けた。
時をゼロコンマ止め、一気に吉良の懐に潜り込む。吉良は突然の接近に慌てて後退するが、二人の距離は3メートルもない。
吉良は一瞬ためらい、距離をとることを諦めた。
キラー・クイーンは接近戦を得意としているわけではない。爆発の能力をフルに発揮できない分、戦いにくさは否めない。
「しばッ」
「オラァ!」
-
連戦と負傷で満足には動けないといえど、それでもやはりスター・プラチナが上をいっている。
キラー・クイーンが振り下ろした手刀を拳で跳ね除ける。続けて放った連撃に、キラー・クイーンは対処しきれない。
二発、三発が入り、キラー・クイーンの体が衝撃に揺れる。吉良の口から苦しげな呻きが漏れた。承太郎は手を緩めない。
だが、キラー・クイーンは吹き飛ばされた衝撃を利用して、逆に後ろに飛び跳ねた。
さらに追ってくるスター・プラチナに対し、無造作に小石を投げつけていく。
どれが爆弾化されたかわからない承太郎は闇雲に突っ込むわけにも行かず、スタンドを止める。
急停止、急後退。承太郎は追撃を取りやめ、カウンターを恐れた。
接近戦ではかなわないと悟っていた吉良は、下がった承太郎に対しむやみに仕掛けない。
そのまま距離をとり続け、爆弾が届く距離で止まった。
再び両者の距離は広まり、承太郎と吉良の間には二十メートル強の間合いが生まれる。
勝負はこの間合いにかかっている。この間合いをいかに保つか。この間合いをいかに詰めるか。
吉良は口元からたれた血をハンカチで拭う。
ポケット内で染みがうつることのないよう、折り目を逆にしてしまいなおす。
一つ一つの動作は冷静だったが、その表情は屈辱に燃えていた。苦々しげにつぶやく。
「なるほど、全てお見通しというわけか……! 私の正体のみならず、キラー・クイーンの能力までもお前は知っていると!」
「どうした、俺を吹き飛ばすんじゃなかったのか……? そんなに離れてちゃ、爆弾どころか煙すら届かないぜ」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!」
「KUWAAAAAAAAAAAA――――ッ!」
両者の戦いは熾烈を極めていた。互いに吸血鬼、柱の男の再生能力頼みの荒っぽい真っ向勝負。
DIOはカーズの『憎き肉片』に対処するため、ザ・ワールドに二本の斧を持たせていた。
自身もいやいやではあるが拳銃を手にする。直接手を触れずに、確実に息を止めるため。
カーズは既に纏っていたコートを脱ぎ捨て、帽子も放り捨てていた。
肉体を120%フルに活動させ、己の体でDIOを殺す。体面などを気にしている暇もなかった。
まるでおもちゃを扱うように、ザ・ワールドが斧を振り回す。カーズの刃をはじき飛ばし、首もとめがけ豪快に振り下ろす。
カーズは時に迎え撃ち、時に関節を捻じ曲げ、スタンドの攻撃をいなしていく。同時にDIOへの対処も怠っていない。
DIOも最初の数発でただいたずらに弾丸を打ち込むだけでは無駄と悟り、今では首輪のみを狙った射撃を心がけている。
もちろん隙あらば自身もザ・ワールドに混じり、カーズの体に攻撃を叩き込んでいる。
血が天井までとび赤いシミを作り出す。細かくちぎれた肉片が壁一面にべたりと張り付いていく。
そしてしばらくすると……パキパキパキ、と背筋が凍るような音が洞窟に響いた。
カーズの傷が癒えていく。DIOから流れ出ていた血が止まり、傷口がふさがっていく。
まさに化物どうしの戦いだった。凄まじい轟音を立てながら二人は洞窟内をめちゃくちゃに飛び回り、互いの刃を真っ赤に染めていた。
-
「『シアー・ハート・アタック』!」
「スター・プラチナ!」
一方人間たちの戦いに動きは少なかった。すり足で間合いを詰める。牽制を細かくいれつつ、後退する。
飛び交う爆弾、立ち込める砂埃で視界は悪い。どちらも強力なスタンドを持ってるが故に不用意に攻撃を仕掛けるわけには行かない。
人間同士だからこその堅実で、しかし息詰まるような戦いは、吉良の仕掛けで崩れた。
左腕から飛び出た不気味なスタンド。
それを見ると承太郎は即座に詰めていた間合いを放棄し、後ろ後ろへ下がっていく。
シアー・ハート・アタックの後を追うようなかたちで吉良も走る。
二つのスタンドによる波状攻撃。ここで一気に仕留める……!
承太郎はさらに後退する。時折、姿が消えたようなあの不思議な能力を発動しながら、彼は逃げていく。
ついには四人が顔を見合わせた天井の高い洞窟を離れ、狭く暗い横穴に消えていく。
吉良にとっては好都合だった。承太郎の攻撃方向を前方のみに限定できる。
間合いを見誤らなければ今までよりもう一歩踏み込んで攻撃できるだろう。
『コッチヲミロォォォォオ――――ッ!』
シアー・ハート・アタックがついに承太郎に追いつく。合わせて吉良も足をはやめる。
たとえスタンド能力を使ってシアー・ハート・アタックをかわしたとしても、必ず隙は生まれる。
承太郎のスタンド能力は連発が効かない。ならばそこをキラー・クイーンで仕留める!
狭い横道に逃げ場所はなかった。承太郎は息を切らせながら後退する。
もう少し……、もう少しでシアー・ハート・アタックが追いつく……!
「今だ、殺れ! 『シアー・ハート・アタック』!」
爆発とともに舞い上がった煙を見て、『殺った!』と吉良は思った。逃げ場などはなく決定的だと彼には思えた。
しかし次の瞬間、吉良はものすごい衝撃を喰らい、ロケットのように吹き飛んだ。
今走ってきたばかりの洞窟を逆戻りし、地面を何度も跳ねながらようやく止まる。
同時に凄まじい痛みが全身を貫いた。腹部、左腕、左手、背中、後頭部……。
フライパンで思い切り殴られたかのような痛みに、情けないうめき声が漏れた。
爆破の余波で舞い上がった煙に紛れ横道から一つの影が浮かび上がる。
のたうつ吉良の視界に移ったのは、殺ったと確信したはずの男の姿だった。
承太郎の左半身はシアー・ハート・アタックの爆破でズタズタに引き裂かれている。
だが、足も腕も、頭も無事だ。ピンピンしている。
それどころかさらに怒りを滾らせ、吉良を始末しようと迫ってくる……!
両者のダメージで言えば承太郎のほうがひどい。吉良は軽傷、承太郎は重症だ。
だがスタンドは精神力だ。心と心のぶつかり合いだ。その点で、吉良にもう勝ち目はもうなかった。
彼の心は完全に折れていた。自分の能力を完全に把握し、秘密を知っている男に吉良は不気味さと恐怖を覚えていた。
戦いは一転、弱腰の吉良を承太郎が追い詰めていく形になる。
吉良はもう攻めていかない。彼の頭にあるのはいかにこの場を切り抜けるかだけだ。
-
四人は戦った。時折相手を入れ替えて、一瞬のつばぜり合いをし、また戦う。
死力を尽くし、自らを鼓舞しながら戦い続ける。
終りの見えない、嫌な戦いだった。もしも誰かひとりでも倒れれば、四人のバランスは大きく傾き、戦いは終局に向かっていっただろう。
だが終わりは唐突にやってきた。誰ひとり倒れることなく、突然に。そして、唐突に。
「捉えたぞ、カーズ! 『ザ・ワールド』! 時よ、止まれッ!」
幾度の交戦を経て、DIOはフルパワーで時を止め、勝負を仕掛けた。
停止時間五秒をすべて攻撃に回しカタを付ける。
今までほんの一瞬時を止めてもフルパワーで時を止めるようなことはしなかった。
それはDIOならば承太郎の存在が、承太郎にとってDIOの存在が。
互いに時を止め終えた瞬間に時を止め返されたら大きな隙ができるとわかっていたからだ。
しかし長く待ちわびた状況がついに訪れた。
DIOとカーズ、承太郎と吉良。二組は洞窟内の端と端に分かれ、その間は優に三十メートルは離れているだろう。
たとえ時が動き出した瞬間に承太郎が時を止めても距離が大きく離れた今、十分に対処できる範囲内だ。
DIOは時を止めた瞬間、一瞬だけ承太郎の姿を確認する。いける……、今ならば間に合わない!
五秒前 ――― 戦いの余波で崩れ落ちてきた岩石をさけ、カーズのもとへ向かうDIO。
四秒前 ――― 十分間に合う。カーズまでの距離、残り十メートル。
三秒前 ――― DIOの顔に邪悪な笑みが広がった。哀れなり、カーズ……! こいつは自分が死んだことも知覚できない!
二秒前 ――― ザ・ワールドが構えた斧を振り上げる。死刑囚の首筋に叩き込むように斧が迫る!
「な、何ィィィ―――?!」
しかし直前でDIOは二つの違和感に気がついた。馬鹿な、とそう叫びたくなった。
まだまだ時間停止の世界は続くはずだった。途中で途切れたならば自身の消耗が激しかったからと納得も行きよう。
DIOにとって予想外だったのは自身も動けなくなっていたからだ。
斧が振り下ろされたその瞬間に、凍りついたようにすべてが止まったのだ!
「俺が時を止めた。カーズを始末したいのは俺とて一緒だが、お前を好きにはしておけないんでな……」
「承太郎、貴様ァ!」
そして二つ目の予想外は承太郎の行動であった。
大きく離れた位置から彼がしたことは間合いを詰めるでもなく、拳銃をぶっぱなすでもなく……。
なんと承太郎は『放り投げた』のだッ!
今しがたまで相手をしていた吉良のスタンド、『シアー・ハート・アタック』を掴むとDIOの目前めがけ放り投げたッ!
狙いすましたように斧の切っ先で停止した自動爆弾。
たとえDIOが振り下ろすのを止めたとしても、熱源に反応したスタンドは爆発するだろう。
―――そして時は動き出す
-
そして……直後、凄まじい音と光を発しながらシアー・ハート・アタックが爆発した。
その衝撃は凄まじく、近くにいたカーズとDIOは爆風に吹き飛ばされる。
遠く離れた位置にいた承太郎と吉良も、巻き上げられた砂埃に視界を奪われた。
轟音がとどろきあたりは一面何も見えなくなる。爆破音はいつまでもこだまするかのように、洞窟中を揺らしていた。
いや、違う……! 本当に洞窟が揺れているのだ!
ミシリ、ピシリ……と音を立てて洞窟全体が揺れ始める!
四人の戦いの余波で崩れかけていた洞窟が限界を迎え、今の一撃で完全に崩壊しようとしていた!
すさまじい音を立てて天井が崩れはじめた。次から次へと巨大な岩が、雨あられと降り注ぐ。
戦いを続けることは不可能だった。承太郎はそれでも逃がすものかと、懸命に三人の姿を追ったが後の祭りだった。
影がひとつ、ふたつと横穴に消えていく。承太郎が落ちてくる岩を壊し、かわし進むスピードより、三人の逃げ足の方が上だった。
そして四人の戦いは終わった。
あとに残されたのは手持ち無沙汰の怒りをぶら下げた承太郎と、天井まで積み上がった行き止まりの洞窟のみ……。
誰も死なず、誰も殺さず。痛み分けの、後味の悪い戦いだった。
-
◇ ◇ ◇
ずるずる…………ずるずる…………―――
洞窟の壁にもたれかかるように進む影がひとつ。体を引きずる音に紛れ聞こえるのは荒い呼吸音、ぴちゃんと液体が滴り落ちる音。
何も知らない人が彼を見たらぎょっとするに違いない。
吉良吉影は満身創痍で息絶え絶え、動いているのが不思議なほどにボロボロの姿をしていた。
何より目に付くのが血だらけの左腕。
手の甲は蜘蛛の巣のように裂傷が走り、上腕部は出血箇所がわからなくなるほどに真っ赤に染められている。
自慢のスーツも台無しだ。泥まみれ、血まみれ、埃まるけ……。時間をかけてセットした髪も、今はだらしなく垂れ下がっている。
ずりずり、と弱々しく進む。目に力はなく、もはや自分の容姿を気にかける余裕すらない。
「この吉良吉影が、なぜこんな目に…………どうして……」
闘争を嫌っていても劣っていると思ったことは一度もなかった。自分の能力をフルに発揮すればいつだって勝利できると、そう思っていた。
だが……見よ、この有様を! どうだ、この現実は!
惨めだった。情けなかった。誰ひとりとして敵う相手などいなかった。
黄金の吸血鬼、刃物を操る超人、最強のスタンド使い……どいつもこいつもこの吉良吉影よりも巨大な力を持っていた。
「くっ……なんでこんなことに……」
ぽたり、ぽたり……。
腕からの出血が止まらない。止血のため乱暴にまいたネクタイは既にたっぷりと血を吸って重くなっている。
滴る血に紛れて、頬を伝う涙が音を立てて落ちた。今、吉良は初めての敗北に打ちひしがれている。
何事も切り抜けられると思っていた。幸運は常に自分に味方してくれると、そう根拠もなく信じていた。
だが違ったのだ……! ここではそんな盲信は通用しない!
植物のような平穏な生活を送っていた彼にとって、まさにここは真逆の世界。
奪い合い! 殺し合い! 吉良は悟った。この期に及んでようやく、自分がどんな状況にいるのかが理解できたのだ……!
「私は、死なないぞ……ッ! 死んでたまるものかッ! 必ずあの平穏な生活を取り戻して……ッ!」
だがそう理解していても、吉良はどこか無用心だった。
怪我を負っているとはいえ、初めて敗北を知ったといえ、だれかの接近に気づかないほどに今の彼には余裕がなかった。
ころころと音を立て、小石が転がってくる。視線を上げ、すぐ目の前までに人影が迫っていることにようやく気がつく。
「空条……さん、じゃないですよね」
噛み殺したような声と共に懐中電灯が吉良の顔を照らす。顔を上げた吉良の視界に映ったのは川尻しのぶの姿だった…………。
-
◇ ◇ ◇
「…………」
目の前高く埋まった石を見て、承太郎は元来た道を引き返す。もうかれこれ地下道を歩いて十数分はたっている。
承太郎が思った以上に先の戦いの影響は大きかったようだ。行く先行く先で天井が崩れ、元来た道も引き返せなくなっていた。
頼りになるのはコンパス一つのみ。地下地図はしのぶに渡してしまったため、方角のみを頼りに地上に向かうしかない。
走るほど焦ってはいないが、のんびり歩いているほどのんきでもない。
早歩きで分かれ道に向かい、左へ曲がる。ずんずんと道を進み、僅かな物音も聞き逃さないと耳を澄ませる。
まだ体の中で熱は残っていた。それは、確固たる怒り。
カーズ……、DIO……、そして吉良吉影……。
いずれも裁くべき邪悪だ。容赦なく拳を振り上げれる存在だ。改めて問いかける必要もない、完璧な悪。
承太郎はどこかで彼らを求めていた。
徐倫を失った悲しみを思う存分ぶつけられる相手を。自分の不甲斐なさを怒りに変え、躊躇なくぶつけられる悪を。
歩けば歩くほどに、少しずつその事実が承太郎を蝕んでいく。
娘の死にやけっぱちになっている自分。罪滅ぼしのために無謀な何かをしてみたいと思ってる自分。
わかっている……、わかっているとも……ッ!
『徐倫は……そんなことを望んではいやしないッ!』
『わたしは、ひどい母親でした』
頭の中でナルシソ・アナスイの言葉がガンガンと鳴り響いた。川尻しのぶの戒めるような視線が承太郎の体を貫いた。
そうだ、承太郎だってわかっている。とっくに知っていたんだ、こんなことをしてどうなるかなんて。
でも、それでもどうしようもないほどに、承太郎は自分が許せないのだ。
何か目的をもたなければ体がバラバラになって二度と立ち上がれないように思えるのだ。
その場に崩れ落ちて、ズブズブと地面に溶けさってしまいたい気持ちになってしまうのだ。
誰かを断罪せずにはいられない……そして、誰よりも罪を贖うべきなのは…………罪を償うべきなのは…………。
-
―――娘をこんなことに巻き込んだ、俺自身だ
はたり、と承太郎の足が止まる。どうやら考え事に集中しすぎていたようだ。
気づいた頃には、迫り来る足音がもうそこまでやってきていた。
誰かがそこにいる……。スター・プラチナを呼び出し、戦いの構えを取る。
今は考えている場合ではない。今やるべきことは、とにかく空条邸まで戻り、川尻しのぶと合流すること。
「……川尻さん?」
ぴたりと相手が止まった気配がする。川尻しのぶでは、ない。
痛む左腕をそっと抱きながら、承太郎は一歩、二歩と足をすすめる。
スター・プラチナの驚異的視力をもってしても、この暗闇では相手が誰なのかわからなかった。
しのぶでないしても無害な存在なら一応保護しなくてはならない。
この殺し合いに反している正義のものなら、もしかしたら協力できるかもしれない。
そうでない奴らであるならば…………容赦はしない。たとえ手負いであろうと全力を尽くして……ぶっ潰す。
承太郎の目が妖しく光る。無言のまま、さらに近づいていく。相手が動く気配はしない。さらに一歩……さらに一歩。
そうして懐中電灯が届くであろう距離まで近づいて……
「そこにいるのは誰だ……答えな」
―――相手の顔を照らすように光を掲げ、次の瞬間、承太郎の息が止まった。
手から滑り落ちた懐中電灯が地面で跳ね上がり、何もない空間を照らす。
ジジジ、ジジジと熱線がこげるような音が聞こえ、当たり所が悪かったのか、懐中電灯が消える。
暗闇に包まれる洞窟の中、見えるのはぼんやりと浮かんだお互いの影だった。
視界が遮られ、不自然にお互いの呼吸だけが鼓膜を揺らす。
ドクンドクンと異常な速さで心臓が早鐘を打った。
尋常でないスピードで、体の隅々めがけ血流が回っているのが承太郎にはわかった。
懐中電灯を取り上げようとする手は震えていた。
承太郎は懐中電灯が壊れてないことを確かめるともう一度目の前の影に光を向ける。
―――……徐倫
そこにいたのは空条徐倫だった。
青ざめた顔、震える両の肩、ほどけた髪の毛。自分に似た目の色をもった……まぎれもない空条徐倫が自分を見つめていた。
承太郎の中で時が止まる。何も考えられない。目の前の光景が信じられない。
チクタクチクタク……デイパックの中で動き続ける時計の音があたりに響いた。
どちらも動かなかった。誰も動けなかった。
二人はバカみたいな格好のまま、それでも互の姿を目に焼き付けるようにいつまでも見つめ合っていた……。
-
◇ ◇ ◇
―――空条徐倫は死んでいる。それは紛れもない事実だ。だとしたら考えられるのは……スタンド能力、か。
マッシモ・ヴォルペは冷静にそう結論づける。
放送で読み上げられたならそれは動かしようもない、確固たる事実のはずだ。
ならば承太郎がどれだけ望もうと、どれだけ願おうと、今彼が目にしている少女は少なくとも彼が望む『空条徐倫』ではない。
もちろん承太郎とてそんなことは分かっているはずだろう。だからこそ、ヴォルペは次の反応を息を潜めて待った。
ヴォルペはずっと見ていたのだ。
DIOに連れられてこの地下に入り、DIOが承太郎と戦うところを見ていた。鬼気迫る表情で怒りの拳を振るう承太郎を見た。
戦いが終わり、腕をかばいながら歩く承太郎を追った。瓦礫で先がふさがっていても、冷静に対処するその姿も見てきた。
―――だが……この状況でどうする……? お前は今何を考えている、空条承太郎……?
ヴォルペは気づいていなかった。目の前の現象に『夢中』になるあまり自分自身の大きすぎる変化に、彼はまだ気づいていなかった。
ヴォルペは自分に感情なんてないと思っていた。感情がないならば執着もない。感情がなければ冷静さを失うこともない。
だが今や彼は承太郎の一挙一動に『夢中』であった。
彼の苦痛に歪む表情が、怒りに染まった瞳が、血だらけになった両の拳が……その全てから目が離せなくなっていた。
ヴォルペは開花しつつある……。
その魂の奥底に撒かれた邪悪の花は、DIOの手に掛かり、承太郎という餌を喰らい、今おおきく花開かんとしている。
ヴォルペの右肩に乗った『マニック・デプレッション』が怪しげな笑い声を漏らした。
誰に聞かれるでもないその邪悪な声はヴォルペ自身をも通り抜け、洞窟の暗闇の中、木霊し続けていく……。
ヴォルペは学んでいる。憎しみという感情を。嫉妬という感情を。
そして……誰かを『壊してみたい』という邪悪な想いを……。
-
◇ ◇ ◇
愚痴の一つも言いたくなるもんだ、とホル・ホースは小さな声で毒づいた。
だらだらと冷汗が流れ、シャツをぐっしょりと濡らしていく。さっきシャワーを浴びたばかりだというのにこのざまだ。
慎重に、相手に悟られることのないよう、ホル・ホースはもう一度身を乗り出す。
はるか遠く、視線の先にいたのは学生風の東洋人と……あの『ヴァニラ・アイス』だった。
(どうしてこんなんになっちまったんだよ、まったくよォ……)
徐倫を追って教会を飛び出したものの、既に彼女の姿は見えず手当たり次第あたりを駆け回った。
どこをどう探しても見つからず、諦めようかと思っていた頃に人影を見つけた。
しめた! と思ったものの見つけたのは最悪も最悪、『あの』ヴァニラ・アイスだ。
能面のように固い横顔を見つめながら、ホル・ホースは震え上がる。
(DIOに首ったけのあのヴァニラ・アイスのことだ……見つかったらただじゃすまないに決まってる!
そのうも、お供もついてるってもんだ。一対一ならまだしも二対一じゃ多勢に無勢だぜ……。
ああ、クソ……徐倫のやろう、見つけたらただじゃおかないぜ……あんちくしょう〜〜〜!)
物音を立てないよう、もう一度木の陰に隠れなおす。
このままやり過ごすべきか。そもそもやり過ごせるのだろうか。
仕掛けるとしたらもう少し引きつけてか? いやいや、これ以上近づかれたらまずい。この距離なら『エンペラー』でやつのどたまを……
だが待て、逆方向から弾丸をぶち込めばそっちに向かってくれるのでは? 無理に戦う必要なんてない。
ここをやりすごせれば俺としては……―――
しかし、ホル・ホースの思考は突然そこで破られた。
ウニョン、と嫌な感触を足元に感じる。生暖かい息遣いと対照的に湿った手触り。
見下ろしてみれば泥のスーツをまとった男がホル・ホースの足首を掴んでいた。
二人の視線がぶつかりあう。突然のことに、ホル・ホースの思考が止まる。
泥の男としても掴んだものがホル・ホースであったことが予想外だったのか、固まっている。
二人とも動くに動けない、奇妙な沈黙が漂う。
そして―――
「うぉおおおおおおおおおお―――ッ!?」
立て続けに銃声が三発、叫び声が二つ。それを聞いた遥か遠くの二つの影が止まる。
ヴァニラ・アイスは立ち止まると形兆に合図を送った。バッド・カンパニーが一斉に動き出す。
ホル・ホースの不幸はまだまだ続きそうだった。
-
◇ ◇ ◇
ぱちぱちぱちぱち……―――(拍手の音)
◇ ◇ ◇
-
ぱちぱちぱちぱち……―――乾いた拍手の音が洞窟内に反響する。
「ご苦労、戻ってこい、『オール・アロング・ウォッチタワー』」
働き蜂が巣に戻ってくるように、どこからともなく一枚、また一枚とトランプのカードたちが姿を現す。
小言や愚痴を吐きながら、ムーロロの持つ帽子の中へと飛び込んでいくスタンドたち。
はるか遠くまで飛ばしていたカードもあって、完全撤退には時間がかかった。
ハートのクイーン、クローバの8、ダイヤの10……そうして、よろよろと最後の三枚が帽子の中に入っていった。
それでもムーロロは微動打にせず数十秒待った。が、それきり帰ってくるカードはいなかった。
ムーロロは眉をひそめる。足りない。スペードのキングがまだ帰ってきていない。
「ひょっとして君が探しているのは……コレのことかな?」
即座に振り返る。と、同時にものすごい速さで一枚のトランプカードがムーロロの足元に突き刺さった。
地面に突き刺さったまま、スペードのキングが弱々しく呻く。
ムーロロはちらりとそれを眺めると、目の前に立つ男に向き直った。
DIO。本名はディオ・ブランドー。
ジョナサン・ジョースター、空条承太郎を尾行させていてた時に仕入れた情報を思い出す。
相手に悟られない程度に舌打ちをした。考えうる中で最悪最強のやつと、よりにもよってこのタイミングで会ってしまうとは……。
ムーロロは後ずさりたくなる衝動をこらえて目の前の敵をじっくりと眺めた。
王者の風格、強者としての自信……なるほど、凄まじいわけだ。先の激戦を思わせるものは何もない。
疲弊をものともせず、堂々とした態度に気負いそうになる。だが、ムーロロは呼吸を繰り返すと冷静に頭を働かせ始めた。
決して敵わない相手ではない。
ムーロロが事前に調べ上げた情報と、この『オール・アロング・ウォッチタワー』があれば勝てる。
そう、ムーロロは確信した。そして、確信した同時に奇妙な虚しさがどこかから湧き上がってきたのを感じた。
「血肉湧き踊る戦いだったろう……楽しんでもらえたかな、『カンノーロ・ムーロロ』君?」
「…………!」
「おいおい、そんな驚くなよ……そんな難しいことじゃあない。ヴォルぺを知っているだろう?
彼が教えてくれたんだ。当然君も知っているはずだ。
なんせ私たちを、この六時間、それ以前から監視していたんだからなァ」
手負いだというのにDIOはそんなことを気にかけず、無用心にムーロロに近づいてくる。
ムーロロは背中に手を回し、集めたばかりのスタンドたちをふるい落とした。同時にポケットに『亀』がいることを確認する。
DIOは気がついているのだろうか。それともあえてムーロロの好きなようにやらせているのだろうか。
だとしたら舐められたものだ。もっと俺のことを見下すがいいさ、と内心で毒づく。
DIOが油断すれば油断するほど勝機は増える。生き残る確率は高まっていく。
「彼が君のことを教えてくれたよ。君自身のこと、君のスタンド能力について……。
ありとあらゆる知っている限りのことを洗いざらいね」
-
二人の距離が縮まっていく。闇に紛れて何枚かのスタンドたちがDIOの背後に回る。
それ以外はムーロロの足元で待機。急襲時に壁になり、迎撃にも備えさせる。勝負は一瞬だ。
DIOが『時を止める』にはどうしたって一呼吸が必要なのだ。戦いの中でその「くせ」は見抜いている。
その瞬間にムーロロは自らを囮にし隙を生み出す。そして……喉元をかっきり、腕を切断し、バラバラに引き裂いてやるッ!
「どうだい、カンノーロ・ムーロロ……ひとつ、提案なんだが……」
もう少し……もう少し……―――今!
DIOが間合いに踏み込んだ完璧のタイミングで、四方八方から51枚のスタンドカードが襲いかかった。
ザ・ワールドの精密性とスピードをもってしてもすべてをはじき飛ばすことはできない。
DIOはあまりにたやすくムーロロの間合いに踏み込みすぎた。ムーロロはやった、と思った。
拍子抜けるほど簡単だ、とムーロロはその瞬間に違和感を覚えた。
達成感と同時にどこか虚しさすら覚えるほどだった。またこうやって俺は殺しを重ねるのかとがっかりしたほどだった。
だが……―――
「私と友達になってみないかい……?」
ムーロロが予想した以上に、DIOの時を止める能力は優れていた。
もう一秒、早ければ殺ったとは言わずとも両腕を吹き飛ばすぐらいは出来たかもしれない。
気がつけばトランプたちに埋もれるはずだったDIOの姿は掻き消え、ムーロロの目の前にその姿はあった。
ほんの一メートルもない距離に、その黄金の姿を見せつけるように彼は立っていた。その顔に満面の笑みを貼り付けて。
DIOは焦るふうでもなく、なんでもない感じでムーロロの肩に手を置く。
お気に入りの甥っ子をながめるように少しだけ目線を下げるとまっすぐムーロロと目線を合わせる。
いつのまにかのびた腕はがっちりと両肩をつかみ、例え殺されようと離さないにと言わんばかりの意志の強さが腕から伝わってきた。
ムーロロはDIOを見る。DIOはムーロロを見た。
考えてみれば二人共、直接こうやって互の姿を見ることは初めてのことだった。
真紅で縦長の切れ目はまるでオパールのように美しい。
瞳に反射した自分の顔が写り、ムーロロは『無様に狼狽している自分』をそこに見た。
沈黙が辺りを覆った。たっぷり三十秒はそのまま二人は向かい合い、DIOは手を離した。
そうして彼は満足げに頷きを繰り返すと、囁くようにこういった。
-
「なんて『恥知らず』なんだ、君は」
それは『未来から』の伝言であり、『送られる』はずの言葉だった。
ジョルノ・ジョバァーナがカンノーロ・ムーロロに宛て、贈るはずだった言葉だ。
ムーロロの底知れない闇と、虚しさを知り、そこから救い出すべく差し出した言葉。
だが時をこえ、因果を超え……・今、その言葉が新たなものから彼に送られようとしている。
ムーロロは動けない。雷に打たれたかのように、彼はその場に凍りついたままだ。
(見破られた、この男に。自分のこのうっすぺらな根性が……! 全て! 包み隠さず!)
時が止まった空間を切り裂くよう、スティーブン・スティールの声が聞こえた気がした。
だがそんなことすらムーロロにはどうでもいいように思えた。
今はただ息を潜めて待つだけだ。自分の目の前に立つ男が何を言うか。
DIOは放心するるムーロロを眺め、笑みを深めた。
子供をあやすような優しい声音で彼は今言ったばかりの言葉をもう一度繰り返す。
「友達になろうじゃあないか……、カンノーロ・ムーロロ君……?」
-
◇ ◇ ◇
【D-4とD-5の境目 地下/一日目 昼】
【カーズ】
[能力]:『光の流法』
[時間軸]:二千年の眠りから目覚めた直後
[状態]:身体ダメージ(大)、疲労(中)
[装備]:服一式
[道具]:基本支給品×5、サヴェージガーデン一匹、首輪×4(億泰、SPW、J・ガイル、由花子)
ランダム支給品3〜7(億泰+由花子+アクセル・RO:1〜2/カーズ:0〜1)
工具用品一式、コンビニ強盗のアーミーナイフ、地下地図
[思考・状況]
基本行動方針:柱の男と合流し、殺し合いの舞台から帰還。究極の生命となる。
0.首輪解析に取り掛かるべきか、洞窟探索を続けるか。
1.柱の男と合流。
2.エイジャの赤石の行方について調べる。
3.自分に屈辱を味わせたものたちを許しはしない。
-
【D-4中央部 地下/一日目 昼】
【空条承太郎】
[時間軸]:六部。面会室にて徐倫と対面する直前。
[スタンド]:『星の白金(スタープラチナ)』
-
NGワード規制に引っ掛かりました。
たぶん家/出がそれみたいです。
[状態]:左半身火傷、左腕大ダメージ、全身ダメージ(中)、疲労(大)
[装備]:煙草、ライター、いえで少女のジャックナイフ
ドノヴァンのナイフ、カイロ警察の拳銃(6/6 予備弾薬残り6発)
-
[道具]:基本支給品、スティーリー・ダンの首輪、DIOの投げナイフ×3
ランダム支給品3〜6(承太郎+犬好きの子供+織笠花恵/確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:バトルロワイアルの破壊。危険人物の一掃排除。
0.???
1.始末すべき者を探す。
2.空条邸で川尻しのぶと合流する?
[備考]
※ドルチの支給品は地下地図のみでした。現在は川尻しのぶが所持しています。
※空条邸前に「上院議員の車」を駐車しています。
【F・F】
[スタンド]:『フー・ファイターズ』
[時間軸]:農場で徐倫たちと対峙する以前
[状態]:髪の毛を下ろしている
[装備]:空条徐倫の身体、体内にF・Fの首輪
[道具]:基本支給品×2(水ボトルなし)、ランダム支給品2〜4(徐倫/F・F)
[思考・状況]
基本行動方針:存在していたい(?)
0.混乱
1.『あたし』は、DIOを許してはならない……?
2.もっと『空条徐倫』を知りたい。
3.敵対する者は殺す? とりあえず今はホル・ホースについて行く。
[備考]
※第一回放送をきちんと聞いていません。
※少しずつ記憶に整理ができてきました。
【マッシモ・ヴォルペ】
[時間軸]:殺人ウイルスに蝕まれている最中。
[スタンド]:『マニック・デプレッション』
[状態]:空条承太郎に対して嫉妬と憎しみ?、DIOに対して親愛と尊敬?
[装備]:携帯電話
[道具]:基本支給品、大量の塩、注射器、紙コップ
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい。
0.DIOと共に行動。
1.空条承太郎、DIO、そして自分自身のことを知りたい 。
2.天国を見るというDIOの情熱を理解。しかし天国そのものについては理解不能。
-
【D-5 南部 地下/1日目 昼】
【吉良吉影】
[スタンド]:『キラー・クイーン』
[時間軸]:JC37巻、『吉良吉影は静かに暮らしたい』 その①、サンジェルマンでサンドイッチを買った直後
[状態]:左腕より出血、左手首負傷(極大)、全身ダメージ(極大)疲労(大)
[装備]:波紋入りの薔薇、聖書、死体写真(ストレイツォ、リキエル)
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:優勝する。
0.けがの治療のため、地上を目指す。
1.優勝を目指し、行動する。
2.自分の正体を知った者たちを優先的に始末したい。
3.サンジェルマンの袋に入れたままの『彼女の手首』の行方を確認し、或いは存在を知る者ごと始末する。
4.機会があれば吉良邸へ赴き、弓矢を回収したい。
【川尻しのぶ】
[時間軸]:The Book開始前、四部ラストから半年程度。
[スタンド]:なし
[状態]:精神疲労(中)、疲労(小)すっぴん
[装備]:地下地図
[道具]:基本支給品、承太郎が徐倫におくったロケット、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考・状況]
基本行動方針:空条承太郎を止めたい。
0.地下道を抜け、空条邸で承太郎を待つ。
1.どうにかして承太郎を止める。
2.吉良吉影にも会ってみたい。
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【E-2 GDS刑務所付近/1日目 昼】
【ホル・ホース】
[スタンド]:『皇帝-エンペラー-』
[時間軸]:二度目のジョースター一行暗殺失敗後
[状態]:健康
[装備]:タバコ、ライター
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:死なないよう上手く立ち回る
0.なんとかしてこの場を切り抜ける
1.とにかく、DIOにもDIOの手下にも関わりたくない。
【セッコ】
[スタンド]:『オアシス』
[時間軸]:ローマでジョルノたちと戦う前
[状態]:健康、興奮状態、血まみれ
[装備]:カメラ
[道具]:死体写真(シュガー、エンポリオ、重ちー、ポコ)
[思考・状況]
基本行動方針:DIOと共に行動する
0.オブジェを壊された恨み。吉良を殺す。
1.人間をたくさん喰いたい。何かを創ってみたい。とにかく色々試したい。
2.DIO大好き。チョコラータとも合流する。角砂糖は……欲しいかな? よくわかんねえ。
[備考]
※『食人』、『死骸によるオプジェの制作』という行為を覚え、喜びを感じました。
※それぞれの死体の脇にそれぞれの道具が放置されています。
ストレイツォ:基本支給品×2(水ボトル1本消費)、サバイバー入りペットボトル(中身残り1/3)ワンチェンの首輪
リキエル:基本支給品×2
【ヴァニラ・アイス】
[スタンド]:『クリーム』
[時間軸]:自分の首をはねる直前
[状態]:健康
[装備]:リー・エンフィールド(10/10)、予備弾薬30発
[道具]:基本支給品一式、点滴、ランダム支給品1(確認済み)
[思考・状況]
基本的行動方針:DIO様のために行動する。
0.虹村形兆と合流、ジョースター一行を捜索、殺害する。
1.DIO様の名を名乗る『ディエゴ・ブランドー』は必ず始末する。
【虹村形兆】
[スタンド]:『バッド・カンパニー』
[時間軸]:レッド・ホット・チリ・ペッパーに引きずり込まれた直後
[状態]:悲しみ
[装備]:ダイナマイト6本
[道具]:基本支給品一式×2、モデルガン、コーヒーガム
[思考・状況]
基本行動方針:親父を『殺す』か『治す』方法を探し、脱出する?
1.隙を見せるまではDIOに従うふりをする。とりあえずはヴァニラと行動。
2.情報収集兼協力者探しのため、施設を回っていく?
3.ヴァニラと共に脱出、あるいは主催者を打倒し、親父を『殺して』もらう?
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【ペット・ショップ】
[スタンド]:『ホルス神』
[時間軸]:本編で登場する前
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:サーチ&デストロイ
0.???
1.DIOとその側近以外の参加者を襲う
【サーレー】
[スタンド]:『クラフト・ワーク』
[時間軸]:恥知らずのパープルヘイズ・ビットリオの胸に拳を叩きこんだ瞬間
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
【チョコラータ】
[スタンド]:『グリーン・デイ』
[時間軸]:コミックス60巻 ジョルノの無駄無駄ラッシュの直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品×2
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
【スクアーロ】
[スタンド]:『クラッシュ』
[時間軸]:ブチャラティチーム襲撃前
[状態]:健康
[装備]:アヌビス神
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本行動方針:ティッツァーノを殺したやつをぶっ殺した、と言い切れるまで戦う
0:???
【ディ・ス・コ】
[スタンド]:『チョコレート・ディスコ』
[時間軸]:SBR17巻 ジャイロに再起不能にされた直後
[状態]:健康
[装備]:肉の芽
[道具]:基本支給品、シュガー・マウンテンのランダム支給品1〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本行動方針:DIO様のために不要な参加者とジョースター一族を始末する
1.DIOさま……
[備考]
※肉の芽を埋め込まれました。制限は次以降の書き手さんにお任せします。
※ジョースター家についての情報がどの程度渡されたかもお任せします。
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【E-3とD-3の境目 地下/1日目 昼】
【カンノーロ・ムーロロ】
[スタンド]:『オール・アロング・ウォッチタワー』
[時間軸]:『恥知らずのパープルヘイズ』開始以前、第5部終了以降。
[状態]:健康
[装備]:トランプセット
[道具]:基本支給品、ココ・ジャンボ、無数の紙、図画工作セット、『ジョースター家とそのルーツ』
川尻家のコーヒーメーカーセット、地下地図、不明支給品(5〜15)
[思考・状況]
基本行動方針:状況を見極め、自分が有利になるよう動く。
0.???
1.情報収集を続ける。
2.誘導した琢馬への対応を考える。
[備考]
※回収した不明支給品は、
A-2 ジュゼッペ・マッジーニ通りの遊歩道から、アンジェリカ・アッタナシオ(1〜2)、マーチン(1〜2)、大女ローパー(1〜2)
C-3 サンタンジェロ橋の近くから、ペット・ショップ(1〜2)
E-7 杜王町住宅街北西部、コンテナ付近から、エシディシ、ペッシ、ホルマジオ(3〜6)
F-2 エンヤ・ガイル(1〜2)
F-5 南東部路上、サンタナ(1〜2)、ドゥービー(1〜2)
の、合計、10〜20。
そのうちの5つはそれぞれ
『地下地図』→マーチン
『図画工作セット』→アンジェリカ・アッタナシオ
『サンジェルマンのサンドイッチ』→ホルマジオ
『かじりかけではない鎌倉カスター』『川尻家のコーヒーメーカーセット』→エシディシ
のものでした。
【DIO】
[時間軸]:JC27巻 承太郎の磁石のブラフに引っ掛かり、心臓をぶちぬかれかけた瞬間。
[スタンド]:『世界(ザ・ワールド)』
[状態]:全身ダメージ(大)疲労(大)
[装備]:携帯電話、ミスタの拳銃(0/6)
[道具]:基本支給品、スポーツ・マックスの首輪、麻薬チームの資料、地下地図、石仮面
リンプ・ビズキットのDISC、スポーツ・マックスの記憶DISC、予備弾薬18発
[思考・状況]
基本行動方針:『天国』に向かう方法について考える。
0.???
[備考]
※地下道D-4付近一帯が崩壊しました。ひょっとしたら横道を使って通り抜けれるし、通り抜けれないかもしれません。
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以上です。なんかありましたら指摘ください。
予約延長宣言できなくて申し訳ありません。
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投下乙です
息もつかせぬ大乱戦に興奮しました
2、3、4部のラスボスに承太郎というまさに頂上決戦
どのパートも熱く、読み応えも抜群でした。
指摘ですが、吉良のシアー・ハート・アタックは現在使用不可能では?
というか、そもそも吉良はセッコと交戦中だったのですが、いつの間にか戦いが終わっているのですが?
説明もないので、セッコがその後どうなったのかよくわかりません。
あとは、カーズがジョセフにやられたのは1939年です。
スクアーロにのみ肉の芽がついていません。
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議論中に申し訳ありません。
タルカス、イギー、ジョルノ・ジョバァーナ、仮投下します
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