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カオスロワ避難所スレ3

1管理人 ◆WI16BozYZw★:2015/07/08(水) 21:45:14 ID:???0
前スレッドが1000間近のため新規スレッドを用意いたしました。

397シシャの想い:2019/07/15(月) 18:38:54 ID:1sfJCahU0
――そんな時、ある転機が訪れる。


「……」

「レスト?」


転移の魔法でやってきたのは、前線の最後の壁とも言えるレスト。
押されてはいるが、彼自身には怪我はない。
夥しい量の狂信者の血を浴び、その表情を窺い知ることはできない。


「ダオスさん。このままでは……」
「わかっている! だが……!」


「――、――。――――。――!―――!!!」


「「!?」


彼の口から出た言葉に、ダオスも小鳥も、避難していた魔物も全てが面食らう。
怒号と激しい戦闘音にかき消され、狂信者には聞こえていないだろう。


「――の件がある以上、ここだけは絶対に素早く勝たなければなりません」

「そして――の為にも、一刻も早く――するしかない」


提案された案。
それはすぐに承認できるものではなかった。

だが……彼らは多くの者と約束をかわしている。
みんなが帰るべきこの場所を、守り抜くのだと。
今も戦い続けている影薄と聖帝、散っていった多くの魔物のためにも。
そして、最後に希望を託してくれたノーデンスの為にも。


「……わかった」
「ここにいない、他の魔物にも伝達しておきます……」

やがてダオスと小鳥は頷いた。
遅れて、魔物達も。


「ありがとうございます。それじゃあ――いきますね」


タンと勢いをつけ、レストは世界樹の天辺から飛び降りた。


――

398シシャの想い:2019/07/15(月) 18:39:40 ID:1sfJCahU0
ピイイイイイイィィィィィィィ!




突然、戦場に高い音が鳴り響く。
その音に一瞬だけ狂信者の動きも止まるが、本当に一瞬だけだ。
大勢に影響はない。


「――総員、退却!!!」


しかし、その音を聞いた瞬間に最前線で奮戦していたアルルーナが全ての魔物に退避の指示を出した。
今のは鳴き声。世界樹内にいるワイバーンの、緊急退却を報せる鳴き声だ。


「……これがきたということは、そういうことなのかしら……?」

僅かに悲しげな表情を浮かべるアルルーナ。
そんな彼女の傍に、空よりレストがやってきた。

正しくは、降ってきているというべきか。


「アルルーナ、念の為衝撃に備えて!」
「りょ、了解ですの!」

ぐぐっとアルルーナは耐ショック体勢を取る。
今の一言で、彼女は全てを理解した。





「 グ ラ ン ド イ ン パ ク ト ! 」





天辺からの落下速度も上乗せされた、かつて狂信者の一団をまとめて封殺した大震撃が辺り一帯を襲う。
その破壊力はかつての比ではなく、範囲もより広くなっている。



当然、直後に吹き上がる衝撃波――破壊の力も、段違いに。
そしてこの技は――味方以外の視界に入る生物を無差別に襲うのだ。
それはつまり……

399シシャの想い:2019/07/15(月) 18:40:41 ID:1sfJCahU0
「ひ、人質がいるのにぎゃぼぉ!?」

ある狂信者は言葉を言い切る前に、機体ごとバラバラに吹き飛んだ。
当然、機体に張り付けていた人質も同じく。



「く……ま、まさか連中が……!?」


ゼオライマーに乗るドリスコルは射程外にいたため無傷。
しかし離れていたからこそ、今の一撃で着弾地点からの円範囲がごっそり吹き飛んだのだということはわかった。
まさか、こうもはやく仲間を切り捨てる様な真似をしてくるとは流石のドリスコルも想定外であった。

「ふん、所詮は獣か。自分達の命と仲間の命を天秤にかければ当然なのかもしれないがな……」

敵の選択を嘲るドリスコル。
しかし、彼の頬には冷や汗が流れていた。
今回の作戦は、人質を用いての高火力技を封じるもの。
本来の殲滅担当でない男の一撃でアレなのだ。問題のダオスやフォレストセル達も同様に動くとなるとゼオライマーも流石に危ない。
元より人質は防御のための時間稼ぎでしかなかったが、ここまで早く破られてはゼロの計画も実行しきれないだろう。

「ん?」

そんな時、ドリスコルは目の前の惨状に僅かな違和感を感じた。
吹き飛んだ狂信者と人質の中から、無数の淡い光が立ち昇ったかと思えば空に吸い込まれるようにして消え去ったのだ。

「なんだ? あれは――」

「……!? まさか――」

そして違和感を覚えたのは、大震撃を放ったレストも同じくであった。
追撃を取るはずであった彼は、その違和感から大きく動きが鈍る。
そして彼は――その場から退いた。
ドリスコルのスキル程万能ではないが、拠点への即時帰還魔法『エスケープ』

「奴め、再び落下速度を上乗せした攻撃をしかけるつもりか……?」

ドリスコルは、僅かに警戒の色を強める。
敵が人質も気にせず、広範囲の攻撃技を使うとなると少々攻めがたくなる。
いくら自分と天龍がいるとはいえ、敵もまた規格外な連中が何人もいるのだ。
人質(潜入員)をもう少し活用しなければ、策は完全には機能しない。

狙うは、転移帰還からの攻撃への動作にある程度の時間を要するという点。
そして世界樹からの落下攻撃である以上、距離を置けば被弾はしないということ。
冷静に、そして冷徹にドリスコルは部下達に次の指示を出していくのであった。




――まさか人質作戦の裏の目的に薄く感づかれたとは、夢にも思わずに



――

400シシャの想い:2019/07/15(月) 18:42:16 ID:1sfJCahU0
「――人質にされた魔物の中に、人間が混ざっているだと!?」
「!!」

「ええ……天に還ったルーンの数が少ないことに加え、半数はバラバラになった『死体』が残っていましたから恐らくは」


再び世界樹の天辺に戻ったレストは感じた違和感をダオス達に伝えた。
何故そんなことがわかるのか。それはそもそも彼が持ち出した攻略手段に起因する。


「……先程もお伝えしましたが、僕らアースマイトの扱う『タミタヤ』の魔法は不殺の魔法です。
 これを宿した武器で倒された魔物は死体を遺さず、その全てを生命のルーンへと変えて一度天に還る。
 やがて魔物の魂は楽園とされる始まりの森ですごした後、いずれまたその姿で転生して現世に再臨する。
 正直、蒼に歪められたこの世界じゃこのサイクルが今も完全に機能しているかは怪しくて使いたくなかったんですが……」

渋った表情のレストに対して、ダオスはまだ言葉を返さない。
こと大地の生命の扱いに長けた彼らの一族の魔法は、自分の専門外でありこの状況下では指図もできない。
苦痛を与えずに楽園に送り、同様の姿で転生……一時的にこの世を離れる不殺といったことなのだろう。
しかし確かに黒き獣の攻撃がある今、魂とて安心はできないのも間違いない。

「とりあえず、ルーンが天に還った……タミタヤそのものは機能したのは間違いありません。ビッグサイトに吸収もされていない。
 それなのに、死体が残ったものもある……つまり、魔物じゃない存在がいたということになります」
「ど、どういうことなの?」
「タミタヤの不殺の効果があるのは、あくまで魔物やそれに準ずる存在だけ。人間相手には全く効果がないんですよ」

ぞっとするような言葉を聞き、小鳥は震えあがる。
魔物のフリをした人間がいる。つまりそれは……

「しかし、魔物達も馬鹿ではない。いくら皮を被り偽装したところで人間の臭いはごまかせないのではないか?」
「はい。だから僕も気になって、こうして戻ってきたんですが……」
「あっ……!?」
「ど、どうした小鳥!?」

そんな時、今度は小鳥が叫び声をあげる。
嗅覚に魔物に気付かれないほどの偽装――自分達も使ったではないか。


「――オーバーボディ! スニゲーターさんが言ってた……オーバーボディさえあれば都庁でも姿を偽れるって……!」
「っ! フェイが着ていたあれか!」


今は亡き悪魔騎士スニゲーター。
彼は最初、都庁に向かうための策としてオーバーボディを提案していた。
事実フェイが機械であることは脱ぎ捨てるまで、氷竜にすら気がつかれなかったほどの高性能っぷりだ。

「……敵に超人がいれば、あるいは超人から奪えば可能性はかなり高いな」
「で、でもそれだと……」
「おのれ……デスマンティスとラージャンと同じく内部工作をするつもりか……」

ダオスは小さく舌打つ。
この件を伝えれば、少なからず魔物間にも動揺が奔るのは間違いない。
まさか世界樹内の魔物にまでグランドインパクトを撃ちこむわけにもいかないだろう。
既に救助と言う名の潜入を許しているとなると、取れる対策は限られてくる。

「……まずは救助者全員を固めて見張るべきだな」
「そうですね。魔物から恨まれる覚悟は決めていましたがこれは……それと、さっきのもう一件の方ですが……」
「……気になるところではあるが、おおよその察しはついた。件の敵は――被害が広がる前に処理して問題ないだろう」
「わかりました……!」

――

401シシャの想い:2019/07/15(月) 18:43:25 ID:1sfJCahU0
……


「死にたくなければ、お下がりなさいな!」
『うるさい羽虫どもだ!』

華の女王アルルーナは、そのしなる蔓で次々に狂信者を蹴散らしていく。
叫帝ウォークライはその牙と爪でヨロイを砕き、できた残骸を敵パイロットに投げつけてさらに倒して行く。
地上は彼女が、空中はウォークライが。
たとえ彼女らの主と離れていても、しっかりとした連携で狂信者の進軍は阻まれていた。


『おいアルルーナ、さっきの主のあの様子は……』
「何かあったのでしょう。……盾にされていたあの子達が穏やかな顔で天に還って行く中で……苦悶の表情で息絶えた子もいた……」
『主の魔法は、ゲートリジェクト以外は完璧に機能する筈だ。そこに何かありそうだが……』
「考えるのは私達のすべきことではありませんわ。レストさんが戻られるまで、私達でこいつらを蹴散らすわよ!」
『おうっ!」



「やるじゃねえか。だが、世界水準軽く超えている俺を止められるかな……!?」



しかしそんな二人の前に、天龍が凄まじい速度で駆けよってくる。

「くっ……!?」

僅かな水でも、水上であればその機動力を格段に向上させる艦むす。
対する守りの要であるアルルーナとウォークライは、能力こそ極めて高いがそれは攻撃と防御面の話。
機動力という面では、水を得た天龍には遠く及ばない。

『おのれっ!』
「ふふ、欠伸がでちまうな。どうだ、俺が怖いか?」

振り下ろされる爪もなんなくかわし、翻した刀でウォークライを切りつける天龍。
強固な鱗ではあるが、天龍の刀はそれにさえも傷をつけていく。




「ふむ、これであの二体は始末できそうだが……」



離れた場所で、ドリスコルはなおも戦場を見渡していた。
あの大型の竜と植物女さえ葬れば、もはや都庁が抱えている戦力たる魔物は全滅したと言っても過言ではない。
最後の壁としてあの巨大な触手と蕾の化け物がいるが、連中も恐らくは速度に難がある。
魔王は雷が弱点であるというし、プロトンサンダーで処理が可能だろう。
それでなくとも、戦局を見誤りさえしなければ烈メイオウで勝ててしまう。

しかしここで、彼は再び予想外のものを目撃することとなった。

「なにっ!?」

402シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:04 ID:1sfJCahU0
世界樹を護衛する形で立ち塞がる歪みし豊穣の神樹。
彼は徐にその蔓を動かしたかと思えば『何か』を投擲したのだ。
そしてそれの正体はすぐにわかった。
先程撤退した筈のあの男。
今度は『落下』ではなく仲間の援護を借りてより強力な『弾丸』として放たれたのだ。
圧倒的な巨体かつ精密な投擲が可能な神樹ならば、視界内の狙った場所に確実にその弾丸を撃ちこめる。
神樹が狙った場所、それはゼオライマーに乗るドリスコルではなく……


「ウォークライ! 全力で上に飛んで!」
『こ、心得た!』


一瞬のやり取り。高速飛来する主人の命を受けてウォークライは上空へ飛び上がる。

――狙われたのは天龍だ。


「はっ! 対空能力が無いと思って油断したか!? 多少はマシだが、その速さじゃまだ俺は――」


驚異的な能力で即座に飛来してきたレストに照準を合わせる天龍。
しかしその瞬間、突然彼女はがくりと膝から崩れ落ちた。

「――え? なん、でだ……?」

攻撃は受けていない。
それなのに突然、動きが鈍った。世界水準を超えている筈の自分の機能が……オシリスの能力さえもが、機能しなくなっている。

「……天龍。そして、氷竜さんが亡くなる直前に呟いた名……君に『混ぜられた』命は……」

「一度眠れ『オシリスの天空竜』。その想いは僕らが、君の仲間であるイチリュウチームが引き継ぐ……!」


レストが振りかざしたのは、世界樹の剣にあらず。
――絶対の竜殺兵器『天羽々斬』に自身の持つ竜殺の禁術『ドラグキャリバー』を上乗せしたもの。
上位神であるアイオトやノーデンスすら、この力の前には対峙も許されない、対竜の極致攻撃。
オシリスの力を継いでいるからこそ、天龍はその凶悪な破壊力と特殊能力を封殺する光に晒されてしまったのだ。


「お、俺はロリに――」


青く光り輝く巨大な刃は、天龍に触れると同時に彼女を硝子細工のように粉々にしてみせた。
そこから天へと昇って行く二つの魂を見つめながら、レストは天羽々斬を仕舞い、元の世界樹の剣を握りしめる。
切り札をいつまでも敵の目に晒すわけにもいかない。

【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】消滅確認
※肉体が消滅し、天龍とオシリスの魂がそれぞれ還りました。その後どうなるかは不明


――

403シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:33 ID:1sfJCahU0
「く……! おのれサーフ、やはりあてにならぬ男だ……!」

ゼオライマーの中で、ドリスコルは拳を叩きつける。
折角回収したオシリスを使った天龍が、ああも容易く破壊されるとは。
だが無理もないかと、同時に理解も示す。
ドリスコルはそれほど詳しいわけでもないが、竜殺剣に対する知識もあった。
というよりも既に過去に目にしている。そう、サーフがセルベリアに手渡したあれだ。
あの剣も奴が作ったのだとして、それほど深い知識を持つわけでもない自分でも一目でわかる圧倒的な武器性能差。
この二点から、ドリスコルはサーフに対する信頼を下の下まで下げていた。
やはり、自分の方がオシリスを有効活用できたのではないか。

(いや、今考えるべきことはそれではない……)

しかし苛立ちはすぐに抑え、残された彼は再度戦況を把握する。
天龍が敗れたのは予想外ではあったが、彼女は既に厄介な氷竜を奇襲し抹殺する任務は遂行している。
確かに敵の竜殺剣は想像を絶する威力の様ではあるが、その効果は竜の類を相手にして初めて真価を発揮する。
つまりはあれも竜以外であれば、ただのでかいよく斬れる頑丈な剣止まり。
フットワークと分身があれば、かわせないことはないのだ。
ここまできたのであれば仕方がない。
最も厄介なフォレスト・セル達の処理はゼロに任せるとして。
前線を維持するあの三人だけはこの手で始末するしかない。
下手に世界樹内に引っ込まれては、ゼロ達も動きにくくなり作戦成功率が低下する。
物理攻撃をメインに据えている連中であれば、自分とゼオライマーにとっては相性がいいのだから。


「……行くか!」


まずはエスケイプを用いた、ヒット&アウェイで削りつつ――



「――魔物以外には容赦はしないよ。タミタヤ抜きで、ここで土になれ!」
「なっ!?」



いつの間にか、剣を構えたレストがゼオライマーの背後へと回り込んでいた。
敵との間合いを詰め背後に回り込む彼のスキル縮地法の効果なのだが、ドリスコルは知る由も無い。

「『フットワーク』『分身』……っ!」
「ちぃ!」

しかしそれでも冷静にドリスコルは鉄壁の布陣でもって背後からの奇襲を回避する。
千載一遇のチャンスを外したレストは忌々しげに見つめるが、その目はまだ死んではいなかった。

「まだだっ!」
「無駄だ!」

返す刃による連撃。
しかし物理攻撃である以上、通常手段ではゼオライマーに当たることは無い。
再び回避され、ゼオライマーは飛び退いた。



「――かかったね」
「!?」

404シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:59 ID:1sfJCahU0
「――セルちゃん! 『エンタングルレイ』!!!」
「ニシャビーム!」




ゼオライマーが回避した先は、丁度フォレスト・セルと視線がかち合う位置であった。
その瞬間、フォレスト・セルはおぞましい眼を見開き、怪光線をゼオライマー目がけて発射した。
エンタングルレイ……世界樹を旅するボウケンシャ―をもつれさせて雁字搦めにするフォレスト・セルの魔光だ。
常時アクティベイトモードとなっている彼のエンタングルレイを受ければ、頭も腕も脚も、その全身を絡め取られ一切の抵抗ができなくなるだろう。



「うおおおおっ!? ――!」


「「え?」」



予期せぬ奇襲に僅かに焦るドリスコル。
しかしそれは一瞬。即座に冷静にして冷徹な判断を下す。
すなわち――近くを飛んでいたホモ二人を盾にしたのだ!
哀れ、光に絡め取られた二人はホモ団子となり地表へと転がされた。


『――ついに、スキル以外の回避行動をとったな!』
「な、貴様……!」


しかし追撃の魔光をかわしたと思ったところへ、さらに予期せぬ奇襲。
上空高くに退避した筈のウォークライによる急降下攻撃。
ゼオライマーの装甲はそれでも破られることはなかったが、密着を許してしまった。

「う……なんだ、この赤紫色の花は……!?」

やがてゼオライマーの全身に赤い毒花・フロワロが咲き誇る。
世界樹の加護を得ている魔物達には効かないが、そうではないドリスコルには有毒だ。
機内にも無遠慮に咲き誇るそれは、ドリスコルだけでなくゼオライマーの機能を弱体化させる。
だが、これが本命ではない。フロワロはあくまで注意を逸らすための時間稼ぎ。


『……クラウザーなんぞより、俺の『叫び』を聞けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


機体を貫通する音の暴力と振動。放たれるは、叫帝最強奥義・タイフーンハウル。
圧倒的なシャウトで聞いた者の全身を痺れさせ――『全てのスキルを使用不可』にさせることができる雄叫びだ。
全ては、この攻撃をゼオライマーに確実に当てるための同盟軍の作戦。
それを悟りこそすれ、今の一撃でドリスコルの耳は完全に破壊されそれどころではない。

(ク、クラウザーさんが……クラウザーさんの歌が聞こえない……?!)

それは、なによりも大切な死活問題。
敬愛し渇望するクラウザーさんの歌を失うことは耐えがたい。
そしてその狼狽はさらなる隙へと繋がっていく。

405シシャの想い:2019/07/15(月) 18:45:23 ID:1sfJCahU0
「よくもやってくれましたわね、このガラクタが!」
「面倒くさいスキルさえ使われなければ、装甲の程度はきらりんロボ以下だっ!」

アルルーナとレストが怒りの形相で回避能力を失ったゼオライマーを解体しにかかる。
素手に無数の蔓でバキャバキャと豪快な音を立てて破壊されていくが、目的はゼオライマーそのものではない。

「うっ……」
「――太古の呪粉」

引きずり出されたドリスコルの顔面に、世界樹の呪いが吹きかけられる。
与えられた異常は『盲目』
石化や混乱に比べれば遥かにマシなものなのだが、今ばかりは状況が違う。
タイフーンハウルで聴力を破壊され、続けて視力を奪われて。
今のドリスコルは、敵地の中心で『見えないし聞こえない』という恐ろしい状況に追い込まれているのだ。

「よし、とどめを――」
「お待ちになってレストさん。このニンゲンには、最も屈辱的な罰を与えてやりますわ……」

とどめを刺そうとするレストを制し、アルルーナは実に冷酷な笑みを浮かべる。
そして直後、蔓で縛り上げたドリスコルを――投げた。
投げた先には――待ち構えているフォレスト・セル。
当然、ドリスコルはそれが見えない聞こえない。


「にしゃあ……(貴様は――堕ちろ)」


仮に聞こえていたとして、フォレスト・セルの言葉を完全に理解できるのはまどかと同族の神樹のみ。
フォレスト・セルはドリスコルを口に放り込み……

「お? 処刑開始ってか。いいぜ、こいつらの道具も利用させて貰おうじゃないか」

神樹は飛び回っていたマシンから引きはがした拡声器――クラウザーさんの歌を拡散させていたパーツをセルの口元へ添える。


そして――治療ではない。
マーラ様さえ戦慄した『本気のフォレスト・セルのテクニック』が披露されることとなる。


(な、なんだ!?)


闇の中で、ドリスコルは自分の衣服が全て破り捨てられたことを知る。
そして股間部と尻穴に感じる――おぞましい感触。

(ま、まさか――この私をレ○プする気なのか――!?)

恐怖は一瞬。



『あ゛あ゛あ゛あ゛ ?! アアアアアアアアア―――ッ?!?!』

『やめ……耳から脳オッホオオオオォォォォォーッ?!?!』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ ショクシュッンギモチイィィィィィィ?!?!』

『イギダクナイッ! モウイギタク……イガゼテクレェェェェェェァァァァァァ?!!?!?』

『イイ! クラウザーニレ○プサレルヨリモイイノォォォォォォォォォォ!??!?!?』

406シシャの想い:2019/07/15(月) 18:45:46 ID:1sfJCahU0
フォレスト・セルから漏れ聞こえる断末魔は、神樹の用意した拡声器で大音量となり辺り一帯に響き渡る。
あまりにもおぞましい惨状だが、クラウザーさんに心酔してきた彼が、大衆の前でよがり狂い、快楽の前に屈し
クラウザーさんへの忠義を圧し折られながら死んでいくというのはこれ以上ない屈辱であろう。
フォレスト・セルは迅速にかつ徹底的に、ドリスコルの魂の根底まで凌辱していく。
たとえ転生できたとして、クラウザーさんのことなど二度と思い出せないくらい。転生直後から触手を求める淫乱になるくらいに。

『あ――』

やがて膨大な快楽の中、肉体の限界を超えた射精を続けたドリスコルは何かがぷつりと切れてそのまま動かなくなった。


【ドリスコル@フロントミッション】死亡確認


『な、なんて恐ろしい処刑だ……』
「凄いな、敵部隊も流石にドン引きしたのか統制が乱れている……」
「世界樹の怒り、思い知りまして!?」


前線部隊の三人は、この狂信者の指揮官がこと切れたことを確認して大きく息を吐き出す。
アルルーナのみ勝ち誇った様子であったが、唸る彼女の触手のような蔓をみればなんとなく察することができた。
とにかくこれで、大きな犠牲を払いつつも厄介な相手は倒すことはできたのだ。残るは――



「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


そう考えた彼らの目の前に、ボロボロになったエヴァ初号機が吹き飛んでくる。
飛んできた方角を見れば、ダメージを負ってこそはいるがしっかりと大地を踏みしめるエヴァ4号機の姿がそこにあった。

「シンジ君……」

寂しげなカヲルの声が漏れるが、その眼はしっかりと前を見据えていた。
とても大切な友を、この手で討ちとるという覚悟が既に出来ていた。

「カヲル君……」

換装された初号機とロンギヌスを持たない4号機とでは、本来ならば初号機に分がある。
しかし二人の明暗を分けたのは、心の強さであった。
バサラや多くの者の想いを引き継ぎ、そして先程は小鳥との大切な約束を交わしたカヲル。
カギ爪の男の思想に同調し、同志の為にと戦い続けてきたシンジ。
しかしシンジのそれはいわば盲信。バサラの代わりではなく自分の歌を届けると決め前に進むカヲルとは違う。

「僕が死んでも、カヲル君の心の中で生き続けられるのかな……」
「……ああ。忘れないよ、シンジ君のこと。いつかまた……」
「……うん」

その瞬間、確かに二人の少年は小さな笑みを浮かべる。
そして直後、未練を断ち切るかの如く4号機の拳は振り下ろされ、踊らされた少年の命を奪い去った。


【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】死亡確認

407シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:10 ID:1sfJCahU0
「……どうやら、そちらも片付いたみたいだね。あの男の気色悪い声は嫌でも耳に残ったけど」
「カヲル君、あなた……」
「……僕は大丈夫。まだ、やりたいことが、やらなければならないことがあるからね」
「そうだね。悲しむのは、全てを乗り越えてからだ」
『天龍、ゼオライマー、そしてエヴァ……敵主力はこれで潰せたか?』

都庁の前線組は再度集まり、状況を確認する。
また多くの命が失われた戦い、しかしだからといって立ち止まる猶予はもうない。
悲しみを乗り越え、そして生き残った彼らは辺りを見回し、改めて敵主力の撃破を確認する。




――その安堵の一瞬




「――っ!」


「なっ!? 速い……っ!?」


『黒と白』の影が、高速で彼らの横を過ぎ去っていった。
レストのみその敵影を捕えて剣を振るうが、当たることはない。
その恐ろしい速度は先程倒した天龍に匹敵するほどだったのだ。

『水上移動……!? まだ艦むすがいたのか!?』

剛火球をウォークライが放つが、着弾前に敵は遥かかなた――世界樹へと接近していた。
そして彼らは知る由も無いが、敵は艦むすとは似て非なる者――深海棲艦。
その中でも特に強い力を持つ人型、『姫』と呼ばれる種であった。

「ま、不味い! みんな、乗ってくれ!」

ドリスコルの断末魔で戦場は混乱状態。
レストの転移魔法では全員を運べないため、カヲルはエヴァの手に全員を乗せると全速力で世界樹へと駆け戻る。

しかし、間に合わない。
指揮官を失ったというのに、敵は一直線に世界樹を目指している。
まさかこれも敵の策だったのか。
主力を倒したと油断したところを、奥の手で一気に大将首を取る算段だったのか。

「間に合ってくれ……!」

歌だけでは意味がない。
巫女も器も、そして予言とは関係ないが仲間をこれ以上失うのは嫌だ。
カヲルはただ駆ける。




――

408シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:32 ID:1sfJCahU0
「くっ!?」

「ライオットランスの雨が、掠りもしねぇだと!?」


異変は世界樹を防衛していたダオス達にもすぐ察知できた。
幸いなことに大部隊は先程の攻撃で数を減らし混乱状態。
単騎相手であればダオスも神樹も迎撃ができる。

しかし、彼らを持ってしても深海棲艦は止められない。
敵は単騎、しかし攻撃行動を全て放棄し、ひたすらに直進してきているのだ。
魔物が群がろうとするが、高速進軍で寄せ付けない。
天龍の様に魔物を斬り伏せようともしないため、被害も無いがその分侵攻されるのが早い。

「にしゃ……」

ドリスコルの死体を捕食しながら、フォレスト・セルも迎撃を考える。
かなりの速度、一度セルメンブレンを展開し様子を見るべきか。
しかしまずはまどかの指示を待とう。



「あの人……」



そんな緊迫状態の中、まどかだけは反応が違った。
圧倒的な速度で迫る深海棲艦。その眼を、まどかは離れていながらに見てしまった。


「――泣いて、いるの……?」


身体に纏っているのは重々しい力だと言うのに、その深海棲艦は哀しげな眼をしていた。



「どうして……っ!?」



その時、ずきりとまどかを頭痛が襲う。



『――! ――!』

『―――!』


「何、これ……? セルちゃんの時と同じ――過去の、記憶……っ!?」



――

409シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:56 ID:1sfJCahU0
――――
―――
――




森奥で、青年が少女を庇いながら剣を振っていた。


「勝利を! 提督に!」
「今日こそいくネー! バーニング、ラ〜ヴッ!!!」
「お姉さま、援護しますっ!」
「計算通りなら、これで……!」


それに襲い掛かるは、揃いの衣装に身を包んだ娘達。
彼女達は相手を取り囲むと同時に、一斉に砲撃を開始する。
激しい轟音が響いたあと、そこには……

「ふん、この程度で僕の守りが破れるか! 巫女には傷一つつけない!」

無傷の青年と、巫女と呼ばれた少女が立っていた。

「シット! 私達四姉妹の連携でも駄目ですか……!」
「作戦失敗、ですね。総員、退却! 本営に戻り次の策を練ります!」
「殿は、私達が!」

その光景を見た四人は勿論、彼女達が引きつれていた部下達も慌てて逃げ出していく。
作戦失敗、撤退。悔しいが怪我人が出ていないのはよかったと、逃げながらに彼女達は考える。
殿の4人は自分達よりもずっと強い。遅れても、必ず戻ってきてくれると信頼していた。
だからこそ淀みなく迅速に撤退は行われた。



――それ故に、彼女達は知ることはない



「いやー、さすがデスネー!」
「私の計算では、一応一発は当てるつもりだったのですが……」
「やめてくれ。もし彼女に当たったらどうするつもりなんだ?」
「まあ貴方もですけど、そちらの巫女様もお強いですからね! 大丈夫です!」
「そ、そんなことないですよ。私なんて愚図で鈍間で……」
「謙遜はノー! 私達はこれでも姉妹全員が巫女候補のエリートなんですからネー?」
「特にこの妹は見るネー! 紅白色の服は最上位巫女の証デース!」
「そ、そんな。お姉さま方を差し置いて……」


戦争のど真ん中で。八百長が行われていたなどと。
グンマ―とミヤザキの巫女が秘密裏に友好的な関係を築いていたなど、知ることは無い。

410シシャの想い:2019/07/15(月) 18:47:21 ID:1sfJCahU0
「さて、一仕事終えたらティータイムデース!」
「一仕事って、僕に弾撃ちこんだだけだけどね。そっちの弾薬残数って大丈夫なの?」
「問題ありません。元よりあなたには効かない想定でしたので、コストのかからない偽物ですよ」
「よ、よかった。資源が減り過ぎたら、そっちも大変だもんね……」
「戦争なんてろくなことないですよ。司令もいい加減うんざりだって言ってましたし」
「……正直、僕らもそう思うよ。艦むすも魔物もまだ小さい子まで戦いに送り込んだりするだなんて……」
「グンマ―もミヤザキも、もうへとへとです。どうにかして、せめて停戦が結べたらよいのですが」
「……大丈夫。だって、私達がこうして仲良くお茶を飲めているんだもん。きっともうすぐ……」
「そうなったら、どれだけ良いことでしょう。平和になれば、もっとあなた達ともこうしてティータイムも楽しめるかな……」


紅茶を飲みながら、両国の巫女は笑いあう。
まだ明かせない、秘密の茶会。
その時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。


「……名残惜しいですけど、そろそろ戻らないとですネ」
「司令も今、上層部に掛け合っているそうですし、これで次はもう少し落ち着けるといいですねぇ……」

「それじゃあ、皆さん。また……できれば、今度こそ戦場じゃない場所で」
「はい!」



……



「そうか、やはりグンマ―の巫女と盾も……」
「はい。提督と同じく、この戦争には反対の様ですが……」
「上からの圧力か。しかしグンマ―でも力を持つ巫女と盾が戦争に否定的なのは私としても嬉しい限りだな」

拠点に戻った四姉妹は、自身の指揮官に対して報告を行っていた。
白い服の男は報告を聞き喜びつつも、しかし同時に苦い顔もして見せる。

「提督?」
「……停戦を結ぶなら、急いだ方がいいかもしれん。実はとある提督が、大規模作戦の為これから建造する艦むす全てに対する
『提督への絶対忠誠プログラム』を埋め込むことを立案していてな……」
「「なっ!?」」
「他にも色々と埋め込むつもりらしいが、要は君達のように自分の意思で考え行動し、時に提督に意見することもできなくなる……
 艦むすを完全に兵器としか見ていない過激派連中が増長するのは明らかだ。そうなればもう、グンマ―との停戦は――」


提督と呼ばれた男は、次の瞬間その白い服を己の血で染め上げていた。

411シシャの想い:2019/07/15(月) 18:47:47 ID:1sfJCahU0
「て、提督っ!?」


「ヒャハハ! 悪いがそのカスはもうご退場。今日から俺が新しい提督だ。宜しく……って言いてぇところなんだが。
 お前達みたいなのが出てくると戦争が上手く回らないからな。――旧型は全員、解体処分ってかァ!?」

「「艦ムス……コロス!」」

「なっ!? こいつらは……うぐ!?」
「黒い、艦むす……!? くぁ!?」
「……っ! 逃げて! そしてあの子達に、このことを――」

如何に強者とはいえ、多勢に無勢。
新たに現れた男が引きつれていた軍勢は、あっという間に三人を呑みこんだ。

「あ、あぁ、そんな……提督、姉様……」
「ん? なんだテメェ。その格好、巫女か? 流石に解体処分は勿体ないかもしれねぇな。なら――こいつで、このバケモノ共の仲間入りでもしてもらうか」
「な、何をする気ですか!?」
「コイツらは深海棲艦っていってなぁ。提督の言うこと聞かない旧型艦むすに悪魔化ウイルスを撃ちこんだら偶々できた産物だが、
 これがなかなか使えてよ。艦むすより遥かに強くなるし、止まらない破壊衝動で敵も躊躇なく殺せる。そして一番の利点は……
 ――お前ら旧型でも提督の言うことに嫌でも従うようになるし、死んで水底に沈んでも再生が楽なことだ。勿論、再生は深海棲艦としてな? ヒャハハ!」
「っ! 嫌だ……嫌だ!」
「あん?」
「あの子と、約束したんです……! こんな真似、許しません……!」
「ああ、そうかい。健気な巫女様で。そんなくだらねェもんは、いっぺん死ねばすぐに忘れちまうのになァ? ――殺れ」

「く――ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」

(わたシは……ツタえ、なきゃ……ミヤザキとグンマ―……ヘイワ……タメ…………)



――
―――
――――


「……っ!」

流れ込んできた過去の記憶に、まどかはポロポロと大粒の涙を零す。
世界樹と一つになっているからだろうか。それとも、目の前の深海棲艦の強い無念からなのか。
理由はわからない。それでもまどかはもう、この深海棲艦を殺せなくなっていた。


「テイトク、シタガウ……テキ、シズメル……!」


「まどか! 千樹の守りを!」


「――チ、ガウ、ミコ……トモ、ダチ……?」

迫る深海棲艦に恐怖することなく、まどかは世界樹の枝を伸ばす。
自身を守る為でなく――遠いグンマ―の記憶、果たせなかった約束を今度こそ果たすために。

「大丈夫だよ……もう大丈夫だから……」

世界樹は、慈愛の心で深海棲艦を優しく包み込んだ。

――

412シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:09 ID:1sfJCahU0
……

戦況は混沌としていた。
有能な指揮官であったドリスコルを失った狂信者の反応は様々。
一度ビッグサイトに戻るべきだ。
このままSATUGAIを続けるべきだ。
ちょっとフォレスト・セルに入ってみたい。
魔物も混乱していた。
退却命令に加え、前線を維持していた仲間もみな世界樹へと集まってしまった。
まさか追い込まれているのか。それを不安に思いつつも、彼らは命令に従う。
その間に、狂信者の一部は僅かに前へと前進する。



しかしこの時、予言の一節は一人の少年の手でより大きなものへと昇華されることとなる。



「カヲル君……!」
「小鳥さん、あなたとの約束は守れてよかったよ」
「まどかちゃんから、もう話は聞いているかしら? はい、これ!」

カヲルの手に、彼が書き上げた楽譜が戻ってくる。
必ず帰ってきて歌を取り返しにきなさい……小鳥とのこの約束は、カヲルに大きな力を与えていた。
何が何でも生きて戻る。その強き心の力が親友を討ち、それを失う痛みにも耐えることを可能としていた。

「……よし」

彼がいるのは、世界樹内でも特に広い一室であった。
生き残った魔物、世界樹を防衛している面々、そして助けた魔物も一塊となり全てが集まっている。
そして必至に腕を抑える深海棲艦と、かつてオオナズチから教わった魔法陣を描きその上に座るまどか。
そんな群衆を前にして、カヲルは静かにギターを持ち直す。

狂信者が迫っている。時間がない。
けれどどうしても、これだけは果たさないといけないという巫女の強い願い。
グンマ―の秘術でも駄目かもしれない。しかし垣間見た過去の記憶によれば、この深海棲艦は哀れな死者でもあるという。
――死者を弔う鎮魂歌。その可能性にかけて予言よりも一足早く、それはいきなり披露されることとなった。


(バサラ……みんな……シンジ君……僕は……)


「――どうか、聞いて欲しい。僕の、歌を……」



やがて、静かに演奏は始まった。


――

413シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:29 ID:1sfJCahU0
「にしゃあ……」

世界樹を防衛していたフォレスト・セルは確かにその歌を聞いた。
まどかの声とはまるで違うが、それでもとても哀しく死者を悼む気持ちのこもった歌。
まどかと世界樹以外に興味のなかった筈の彼でさえもが、その歌には不思議と惹かれた。


「な、なんだ……この歌は……」

世界樹に接近していた狂信者もまた、漏れ聞こえるその歌が何故かするりと耳に入ってきた。
クラウザーさんの歌以外、この世に歌と呼べるものはないと。そう思っていたのに。

「ク、クラウザーさん……」

どうして、聞いているだけで涙が出てくるのだろうか。
復活すると信じているのに、クラウザーさんの死を突き付けられるような、それでいてそれを哀しむような……
彼らは静かに泣きながら、いつの間にか攻め込むことを忘れていた。



(な、なんですかこの歌は……これは、耳を貸してはいけないやつです……)

そして密やかにフォレスト・セルに近寄っていた深雪もまた、この歌を聞いていた。
しかし彼女は素早く耳を塞ぎ、歩を速めた。
自分はお兄様から大役を仰せつかっているのだ。こんな妙な歌でしくじるわけにはいかない。
気を抜けば、思わず聞き入ってしまいそうな歌に抗いながら、やがてついに辿りつく。


(つ、ついに来ましたよフォレスト・セル……! 大きすぎて何がなんだかさっぱりですが、マスターボールなら無問題!)


どうやらこの歌は、フォレスト・セルにさえ影響をもたらしているらしい。
この様子なら、一瞬とはいえ反応が遅れるかもしれない。
願ってもいない、またとない好機だ。

(……大丈夫、相手は歌で集中力を欠いている……焦らず、確実に……)

マスターボールを手に、深雪は息を呑む。機をうかがい、そして……フォレスト・セルが瞬きをした時を狙い。


(今っ!!!)



――投げられたマスターボールは、ぶつかったターゲットを見事に一発で捕獲してみせた。

414シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:53 ID:1sfJCahU0
「――え?」


しかし、思わず深雪の口からは絶望の声が漏れてしまう。
マスターボールは、確かに捕獲成功した。それなのに、どうして。
どうして目の前にまだ、フォレスト・セルの巨体が健在なのか?



「――やはり、ですか。シルフカンパニーのマスターボールまで持ち出すなんて……」
「とんでもねえ野郎がいたもんだなおい?」
「!?」


その答えは、上から深雪に降りかかる声ですぐにわかった。

「魔物に化け、この子を捕まえるつもりだったようですけれど……甘いですよ?
 私もよくジムで居眠りをしている時に泥棒されかけましたが、そのおかげで、泥棒の特有の動きはよく把握しているんです」
「上から見るとあからさまに挙動不審だったな。俺ら含めて、この歌が気になってる時にその動きは嫌でも目立つぜ?」

どこか冷たさを感じるエリカと神樹の言葉。
計画がばれていた? それでは捕獲できたものはなんなのか?

「信じられないって顔してんな。答えはそのボールの中だぜ?」
「っ!」

状況を把握しきれていない深雪は、思わずマスターボールを開く。
フォレスト・セルが入っているなら開封は厳禁だが、彼が健在な以上開いても問題はない――その判断は誤りであった。

「なっ――これは!?」

ボールから出てきたのは神樹の一部――『欲に狂う黒き鉤爪』であった。
神樹は本体と蕾、鉤爪がそれぞれ独立した個体。まどかとドラゴンハートの力で強化された彼は、その蕾と鉤爪の数も増やしている。
一つのボールにポケモンは一人まで。マスターボールが捕獲できたのは、フォレスト・セルを庇った神樹のほんの一部分でしかなかったのだ。
さらに……

「ひっ!?」
「どうやら、トレーナーのレベルが足りていないようですね。正規のトレーナーではない様子……それではこの子の一部分たりとも言うことはききません」
「あー、そりゃ欲に狂う黒き鉤爪の一本だな。俺のせいなのか、それともその鉤爪になんか宿ってんのかはしらねぇが……
 名前の通りよ。その鉤爪、時たま――欲望のままに獲物を嬲り殺しにしたくなるんだ」
「い、いや……お兄様……」
「……静かな音楽は、大人しく聞くべきです」
「無粋なお前さんは、そのまま永遠に黙って貰おうか!」

ボールから飛び出た欲に狂う黒き鉤爪は、神樹の言葉通りに暴れ狂い、欲のままに深雪を切り刻んで蹂躙する。

「お、おに゛、ざまぁ゛――」

すぐには殺さない。恐怖を植え付け、徹底的に嬲る。
静かな鎮魂歌が流れる中、世界樹の下では喉を潰され声をあげることも許されなくなった少女がもがき苦しむ。
果たして彼女はこの鎮魂歌が終わるまでに死ぬことができたのか?
もうそれは、誰にもわからない。



【司波深雪@魔法科高校の劣等生】死亡確認



――

415シシャの想い:2019/07/15(月) 18:49:20 ID:1sfJCahU0
そして外ではそんな一悶着があったことなど誰も知らず……
世界樹内では、いよいよカヲルの鎮魂歌の演奏が終わった。


「……」


静かに一礼するカヲル。
それに対して拍手は起こらなかった。
ただ皆が、その余韻に浸っていた。心の中で彼の死者を悼む気持ちの強さに感動をしていた。
そしてその歌は――予言の前に一つの奇跡を起こす。


「……大丈夫?」
「うっ……」


優しくまどかが声をかけるのは、紅白の巫女装束のような衣服を身につけた娘であった。
それはまさしく、まどかが遠い記憶の中で見た人そのもの。
絶望の中で死亡し、深海棲艦に成り果てて。
水底に沈められ永い眠りにつき、現代に復元されてなおも過去の怨念に捕らわれてしまった――哀れな巫女。
グンマ―の秘術、まどかの願いでは足りなかった。カヲルの歌が、死者の魂……深海棲艦の荒ぶりを鎮めたのだ。
誰かの代わりではなく、自分の歌を。決意した使者のもたらした奇跡は、次へと繋がれていく。


「ありがとう、ございます……聞こえていましたよ、私達を悼んでくれる歌が……
 そして……遠い遠い今……あの子と交わした約束を、今度こそ……」
「あなたは、かつてのミヤザキの……」

「はい。――金剛型3番艦にして旧ミヤザキの巫女、榛名です。あなたも、ありがとう。現代のグンマ―の巫女……」

起き上がった榛名は、優しくまどかを抱きしめる。
かつて果たせなかった約束。それでも、奇跡が起きたのであれば、遅くはない。
すぐにまどかから手を離すと、彼女は軽く周りを見渡した後、決意に満ちた表情を浮かべる。

「私の狂おしいほどの無念……願ったのは、ミヤザキとグンマ―が争わないこと……
 ですが永き時の果てに今、再びかつてのような……いえ、それ以上の悪意が渦巻いている」





「私達を復元し、蒼の力を狙う者がいます。その名は――サーフ・シェフィールド……!」




旧時代のミヤザキの巫女の登場に驚く一同に、さらに驚愕の言葉がもたらされる。
奇跡の果てに辿りつく未来は、どのような形になるのだろうか。

416シシャの想い:2019/07/15(月) 18:49:43 ID:1sfJCahU0
(――ッ!!!)
「……」


そして、魔物の中でただ一人隠れる男、ルルーシュ。
彼に命じられ、治療しているように傍に仕えさせられたさやか。
二人の未来もまた、まだわからない。


【二日目23時00分/東京都 新宿都庁世界樹内部】

※全てを虜にする歌→鎮魂歌がカヲルの手によって作成されました
 楽譜はカヲルの手に戻りました
【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【榛名@艦隊これくしょん】
※元はサーフが所持していた復元された深海棲艦のため、支給品扱い(現所有者はまどか)
※死亡しても放送で呼ばれることはありません


【潜伏者と操り人形】
【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※四条化した魔理沙の死体を道下から譲渡されました。
※深雪の死にはまだ気がついていません
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】

417シシャの想い:2019/07/15(月) 18:50:08 ID:1sfJCahU0
――


……


「よっと……!」


ずぼりと、地面に転がされていた光の繭からフェネクスとユニコーンの頭が生える。

そう、激しい戦闘の中でもホモコンビは生きていた!
ドリスコルに盾にされこそしたが、エンタングルレイは拘束力に特化したもつれ光線。
殺傷能力はないのである。
そして光の繭となり転がされる……無害な存在と化せば、狂信者も魔物もそんなものにはもう警戒している場合ではない。
やるかやられるかの戦いの中で、かまけている暇などない。
それが逆に、ホモコンビの命を救っていたのだ。

強力無比なエンタングルレイとはいえ、その拘束力は強靭ながら永続ではない。
ようやく封じ――頭部分だけだが、それが解除されたのだ。

「ま、不味いですよこれは……」
「一度、セルベリアおばさんのところへ戻るべき……?」

そして光の繭の中にいた二人は鎮魂歌も聞けていないし、ドリスコルの断末魔も聞けていない。
とりあえずわかるのは、ゼオライマーがスクラップにされ放置されている点からしてドリスコル達が敗れたということ。
まだ兵力は残っているが、指揮官を失っては勝てる戦いも勝てないだろう。
強運にも生き延びた彼らは、聖帝軍の時と同じようにさらなる悪意と執念を持って――




「にしゃあああぁぁぁぁぁぁ!」



「「え?」」



しかし、両手足は繭のままの二人は、正面で目の合ったフォレスト・セルに異物と判断された。
異物は焼却だと言わんばかりに吐き出されたサンダーストームは、今度は二人のホモに愛する人への遺言も許さずに一瞬で機体ごと炭へと変えてしまう。
奇跡は起こることもあるし、起こらないこともあるのだ。

【道下正樹@くそみそテクニック】死亡確認
【遠野@真夏の夜の淫夢】死亡確認

418名無しなんじゃないのー☆:2019/07/15(月) 18:50:32 ID:1sfJCahU0
投下終了となります

419名無しなんじゃないのー☆:2019/07/15(月) 23:00:11 ID:F6dl5lNM0
投下乙です
ドリスコル&ルルーシュの作戦は悪辣だったが、都庁との経験や繋いだ絆の差が大きく出たな
そしてDMC狂信者もネームドは極ひとにぎり、サーフも黒幕バレという墓穴を掘る
ギムレーor小町の作戦もうまくいけば狂信者の壊滅も目前
ただ、さやかを駒にしているルルーシュはちょい怖いが……

420名無しなんじゃないのー☆:2019/07/16(火) 19:19:53 ID:BJe8oqnk0
投下乙!まさか深海棲艦に鎮魂歌で浄化して榛名登場とは予想外
気にもとめない送り込んだ道具から正体バレるってのもなんかサーフらしい気がするわ
しかし各々の知識と能力フル活用して戦うメンバーも当然すごいが、非戦闘員のピヨちゃんの貢献度が凄すぎる

421名無しなんじゃないのー☆:2019/07/17(水) 17:00:48 ID:7X0BuYkY0
>「ヒャハハ! 悪いがそのカスはもうご退場。今日から俺が新しい提督だ。宜しく……って言いてぇところなんだが。
 お前達みたいなのが出てくると戦争が上手く回らないからな。――旧型は全員、解体処分ってかァ!?」

これ絶対テルミだろw

422セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:34:58 ID:75ItxlDo0
新宿都庁の地下、奥深く。
そこにある広めの一室には、たくさんの物資と魔物たちがひしめき合っていた。
彼らは地上で戦っているFOEらと違い、ドラゴンハートの補正を受けても大きな戦闘力を得られない、いわば非戦闘員と呼ぶべき弱小魔物である。
彼らは戦闘についていけないとダオスから言い渡され、部屋に内側から鍵をかけることで狂信者からの攻撃をやり過ごすよう命令され従った者たちだ。

誤解なきように言っておくと世界樹を守るためには力だけではなく、復興の人員も必要なため、彼らもまた都庁にとっては欠かせない存在であった。
そのため、資材に加えて回復薬や武器などの物資も保管していた。
最悪、地上の世界樹がやられても彼らだけ逃げ出して再起を図る……という考えもダオスの中ではあったのだ。

そして、その魔物たちの中に紛れて諸星きらり、悪魔から人間となったザ・魔雲天の姿もあった。

「――ッ!」
「大丈夫だ、きらり、俺がついている!」

避難所は地上からの戦闘音が聞こえないほど深くにある。
だがそれでも、地上からの振動は伝わっており、それが地上で行われている戦いの激しさを物語る。
ただの少女に戻ったきらりが不安に駆られるのも無理はない。
周囲の魔物たちもこれまでの比ではない戦闘の激しさを肌で感じており、不安で胸がいっぱいであった。
電波の届かない地下なのでスマホ等で地上の様子を確認することもできないことが、余計に拍車をかける。
誰かが叫び声をあげれば確実にパニックになる……少女を必死で励ます、魔雲天は肌で感じていた。

「……?」
「どうした?」

ふと、きらりは誰かが歌っているような声を感じだ。
地中深くなのでホントに微かだが、音楽が聞こえた気がしたのだ。
そして、しばらくすると振動は完全に止んだのである。

「振動が止まったぞ……?」
『戦闘が終わったのか?』
『終わるにしては早すぎる』
『ど、どっちが勝ったんだ……?!』

魔雲天たちは知る由もないが、この時、狂信者側はドリスコルら多くの指揮官を失っており、戦場に残る残る狂信者・カギ爪団員も渚カヲルの歌によって戦意喪失。
魔物として潜伏しているルルーシュがまだ生き残っているため戦闘は完全終了したわけではないものの、ほとんど勝利の手前まできていた。
ただ、決着が付くにしろ予想よりも格段に早いため、魔雲天たちを逆に不安にさせたのだ。

「だ、だいじょ、うぶ……み、ん、な、は……勝て、るよ」
「!? きらり、おまえ声が……」
「ちょ、っと、だけ、ね」

きらりはかつてテラカオス化に伴う殺戮で、罪のない人や親友を殺めてしまったことで心の傷を負ってしまい、声を出せなくなる障碍を患ってしまった。
そんな彼女が、拙い発音ではあるが、確かに喋っていることに魔雲天は驚きと感動を隠すことができなかった。

「きらりには、地上の連中が勝ったのがわかるのか?」

魔雲天の問いかけに、きらりは首を横に振るが、完全な否定というわかではない。

「信じ、てる」

地上の者たちが勝ったというのはきらりの直感に過ぎないが、彼女にだけは聞こえた鎮魂歌が、都庁同盟軍の仲間たちが敗北したために歌ったとは信じられなかった。
きらりの少女はさっきまでの怯えた表情ではなく、いつもの自信に溢れた「ハピハピ」なオーラがにじみ出ていた。

423セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:35:22 ID:75ItxlDo0

(まったく、この娘は……下手な超人よりも強い心を持っている)

魔雲天は静かに微笑みながら眼をつぶり、きらりをそっと抱き寄せた。

「ああ、きっと上の連中は勝てるさ。そして俺たちに未来をもたらしてくれる」

今度は二人共服をちゃんと着ているが、布ごしでも二人の心臓の音がわかった。

「殺し合いも大災害もなんとかなったら……きらりはアイドルとして『ハピハピ』な歌をみんなに届けてくれ。
俺はすぐそばで、見守りながら聞いている」
「ありが、と、う…天ちゃん」

きらりの心の傷は深く、魔法では治せない障碍のことも考えると殺し合いが行われている間――少なくとも二度目の大災害が防がれるまでは歌を歌うこともできないだろう。
だが、それでも殺し合いが終わった後なら希望を持てる。
魔雲天の瞼の裏には平和になった世界、ステージの上で幸せそうに歌うきらりのビジョンが写っている。

「ゲヘヘヘ……ああ、この気持ちはなんだろうな……悪魔の時には感じられなかった、人間になってから感じる『この感情』……」

殺し合いが始まってからの付き合いであるが、魔雲天の中できらりの存在は確かに大きくなっていった。
悪魔将軍や味方の超人に向ける敬意とは違う、この熱い気持ちの正体は――


「きらり、ひょっとしたら俺はおまえのことが――」





【二日目・23時45分/東京都 新宿都庁世界樹・地下】

【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【状態】人間、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】柔道着、ターバン
【道具】なし
【思考】基本:きらりや仲間を全力で守る
0:俺はきらりのことが――
1:騒ぎが収まるまで、きらりや戦えない魔物たちと共に避難所に待機する
2:都庁のみんな、聖帝軍のみんなの無事を信じる
3:悪魔超人は引退したが、あのお方や仲間への敬意まで失ったわけではない
※フォレスト・セルに悪魔の力を浄化され、ただの人間になりました
 戦闘力は激減であり、悪魔超人にはこれから起こる事情もあって二度と戻れません


【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【状態】魔雲天に抱きしめらている、首がない
【装備】血まみれになった服
【道具】落ちた首
【思考】基本:死んでいる
0:死んでいる




「え……?」

急に、体を抱き寄せていたきらりの心臓の鼓動が止まった気がした。
魔雲天は気になって眼を見開くと、そこには

首が無くなり、断面から噴水のように血を吐き出したきらりの骸があった。

人間となった魔雲天の脳は理解が追いつかず、真っ白になる。

だが、きらりの真後ろにはTVゲームから飛び出したような奇抜な格好をした仮面ライダーがおり、その仮面ライダーが持つゲーム機コントローラーのような剣には少女のものと思われる血がついていた。
きらりを殺したのは、目の前の存在で間違いないだろう。

「貴様ッ――……」

先程まで仏のように穏やかだった魔雲天の表情が鬼のような形相になり、今にも仮面ライダーに襲いかかりそうだった。
だが、そんな彼も側面から傘で胸を貫かれた。

「がッ!?」
「残念ね、せめて候補者と悪魔のままだったら耐えられたでしょうに」

傘と言っても、怪物じみた存在による怪力も加わっている。
ただの人間からするとただの傘も騎士のランスと同じ威力であり、魔雲天は肺と心臓を貫かれる致命傷を負ってしまった。

息も絶え絶えの中で頭のないきらりの骸と共に地面に倒れた魔雲天。
そんな彼が死に際に見たのは絶望の光景だった。
魔雲天と共に避難してきた非戦闘員の魔物たちが叫びをあげることも許されないまま、装甲服を纏った兵士たちに次々と殺されていく。
一方的な虐殺であり、避難所にいた全ての魔物が全滅するまで2分かからなかった。

「きらり、きらりッ!」

死期が目前まで迫った魔雲天は這いずりながら魔物たちの死体の山をかき分け、きらりの生首を見つけて抱える。
きらりの表情は死後硬直で希望を持ちながら笑ったままだったが、眼から光も消えていた。
心臓を失った魔雲天もじきに眼から光を失うのだろう。

「ま、守ると誓ったのに……がはッ……――」



【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ 死亡確認】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン 死亡確認】

424セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:36:45 ID:75ItxlDo0




「……悪いわね、私たちにも世界のためにやらねばならないことがあるのよ」

魔雲天ときらり、避難所の魔物を残らず全滅させた存在は主催の手の者たち。
バイカイザーに変身した八雲紫。
仮面ライダーエグゼイドもといbiim兄貴に怪人ロボット・メガへクス。
そしてbiimがRTA走者という名前の暗殺者集団に仕立てあげた300名ほどの主催兵士たちであった。

彼らはロックマン・エックスの残した記録からフォレスト・セルの危険性を知り、撃滅を決意。
本拠地である九州ロボにはココとメフィラス、黒き獣への切り札であるなのはとユーノを残し、襲撃を敢行したのだ。
避難所は厳重に閉じられていたが、境界と境界のスキマを操り侵入できる八雲紫には鍵など無意味。
むしろ部屋を密室にしていたために誰も逃げることができず、地下深くにあったため誰にも助けを求められないまま全滅する憂き目を味わうことになった。

「感傷に浸るのはガバの元ですよ」
「あったぞ、お目当てのN2爆弾だ」

メガへクスは山のような物資の中から、かつてココが貴虎に売却し、世界樹破壊の要になる予定だった核以上の威力を誇る兵器N2爆弾。
起動コードは高虎しか知らなかったので誰も使うことができず無用の長もの、最高の職人であるレストでさえ未知の技術で作られていたため解体も不能。
かといって拾われたらマーダーや狂信者の武器になってしまうので捨てることもできず、廃棄できる余裕が出来るまで倉庫に死蔵されていたのだ。

ところがこの爆弾を売ったのは他でもない主催のココであり、ココを通じてこの三人は起動コードを教えられている。
避難所は爆弾を奪還を狙う主催陣営によって全滅させられたも同然なのだ。
それでも念押しにダオスらは魔術的な封印を上から施していたが……

「残念ね。どれだけレベルを上げても封印系魔術までは上げられないようね」

一山いくらの魔術師ならまだしも、幻想郷を作り上げた賢者である八雲紫の前に封印も解かれてしまった。
すかさず、三人は爆弾にコードを打ち込んで起動させる。
セットされた起爆時間は全て30分後だ。

「さて、潜入と起爆開始の第一工程はクリアだ。さて、世界樹本体の方に向かうとするか」
「ここから三つに分かれましょう」
「世界樹の中では都庁の連中も大技は使えないですしね」

三人はN2爆弾を一つずつ、兵士を100人ずつ同伴させて、世界樹の上層・中層・下層に分けてスキマを展開し、世界樹の内部へワープせんとした。
その前に、紫が他の二人や兵士に作戦を再確認する。


「ジャックの立てた作戦を再確認するわ。
この作戦の趣旨は古代グンマーの悪しき置き土産フォレスト・セルの撃滅にある。
ただし、世界樹を残していると都庁戦力あの手この手で傷ついたセルを回復させてしまう可能性もある」
「だから世界樹もついでに叩いてしまおうというわけだな」
「ええ、成長に成長を重ねて砦となった世界樹を地下で起爆させても大した効果は得られないけど、三つに分散させて一つでも内部で爆発させれば世界樹に大打撃を与えられる。
少なくともセルを支援する余裕はなくなるわ」
「爆弾の設置がバレたらバレたで、外にいる連中を世界樹の中におびき寄せることはできる。
 竜までならまだしも、フォレスト・セルと神樹、ついでにエヴァは狭い通路には入れないし、世界樹も巻き添えになるから高すぎる威力の技も使えない」
「……でも注意して欲しいのは私たちの任務は都庁勢力の虐殺や、世界樹の破壊が目的じゃない。
 本当の任務は囮、フォレスト・セルを守るナイトたちを遠ざけることよ」

世界樹の爆破だけでも同盟軍には致命傷だが、その部分はついでにすぎず、あくまで目的はテラカオス因子を消してしまうフォレスト・セルの一点だけである。

「都庁の強さは、数の少なさをものともしない質だけでなく、どんな作戦を練っても連携でそれを補ってしまうチームワークにある。
 私たちがそれを断ち、ジャックがフォレスト・セルを仕留める。
 これが私たちの作戦よ」
「ゆかりさん、そろそろ行かないと時間のロスが……ジャックさんも待ってるでしょうに」
「biimに同感だ、こんなヘルヘイムみたいな居心地の悪いところはさっさと出るに限る」
「脱出するにはせめて起爆1分前までは爆弾を防衛してね。
 頃合になったらさっき渡したキメラの翼を使って脱出して、それなら新宿ひいては都庁勢力の射程外から逃げられるから。
 ……そういえば、地上からの振動がなくなったわね」
「決着するにはやけに早いが都庁が勝ったか狂信者が勝ったか」
「都庁が勝ったばかりなら疲弊してる今しかチャンスがないですね。
狂信者が勝ってても御の字。頑張った彼らのご褒美に爆破寸前のN2爆弾をプレゼントしてあげましょう」

425セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:38:13 ID:75ItxlDo0

そして、303人は紫が用意したスキマに入り込み、世界樹へと侵入する。
だが、彼らは地下深くにいたために気づかない。
都庁が予言の歌を手に入れ、この大災害を引き起こした元凶の名前が浮上したことに。





一方その頃、天魔王軍と狸組との戦闘で跡形もなく消し飛んだ首相官邸跡地。
そこには水色の重量二脚級ネクストAC・フォックスアイと100名の兵士が佇んでいた。
彼らはなのはとユーノを拘束した後、九州ロボから人知れず東京へと降り立ったのだ。

(紫たちは侵入できただろうか……彼女らが地上に出るまで連絡が取れないのがもどかしい)

直撃さえすればフォレスト・セルをも撃滅できる可能性を秘めたオーバードウェポン――フォックス・アイに接続した何かの上に布を被せながら、主催陣営の参謀、ジャック・Oは今か今かと待っている。

「ん……?」

ジャックはギリギリまで状況を見極めるべくACのスコープで都庁と狂信者の戦いを見ていた。
首相官邸からだと少し遠すぎて見えづらく錯綜する激音のせいで声もよくわからないが、人質ごと爆散されるロボット軍団、撃墜されるグレートゼオライマーやガンダム、戦意を失いとうとう攻撃もしなくなったモブ狂信者たちから、狂信者の三度目の襲撃も失敗に終わったのがわかった。

「狂信者どもは彼らを見誤ったな……テロリストの善意につけこんだところで追い詰めてしまえば親兄弟を切り捨てる。
人質など所詮一時凌ぎにしか過ぎず、弾除けにするにも限度がある。
まあ、私なら人質の中にスパイを混じらせることも考えるが、狂信者最高火力のゼオライマーがやられた時点でどの道スパイだけでフォレスト・セルの撃破は不能。
そもそもゼオライマーでフォレスト・セルを倒せるのならば最初から殺せているだろうしな。
せめて支給品による捕獲は考えられなくもないが、都庁側がデコイなどで対策を練っていないわけもなさそうだから望み薄だ」

ジャック・Oは冷静に分析し、なんとなくではあるが狂信者側の作戦内容にアタリをつける。
見かけ上の狂信者の敗北がほぼ決定と見たところで、内部の紫たちから合図が届く。

「狂信者は頼れん……やはり我々で決着をつけるしかないようだ」

ジャックはコクピットの中でヘルメットをかぶり直した後、フォックスアイのマニピュレーターを操作して兵士たちに合図を送る。
出撃の準備だ。
兵士たちは一斉にホイポイカプセルを投げ込むと、そこにヒトマキナ・MS・TIEファイターが現れて中に搭乗する。
その様子を蝿と蛆が集り始めていたニャル子の首級だけが見ていた。


「グンマー、君たちに恨みはないがフォレスト・セルとその撃破に伴う犠牲だけは払ってもらう」
 今の君たちはドミナント(選ばれし者)ではない、イレギュラー(危険因子)だ」

狂信者の次は主催陣営。
都庁勢力は休む間もなく、戦わなくてはならない。

だが、悲しいことに、都庁から遠くにいた彼は気づかない。
都庁が予言の歌を手に入れ、この大災害を引き起こした元凶の名前が浮上したことに。
もし、それを知っていれば話し合いによる協調路線もあったかもしれないが、全ては遅すぎたのだ……



【二日目・23時00分/東京都 首相官邸跡地】


【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃    
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100、主催兵士×100、オーバードウェポン一式
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する
1:フォレスト・セルを倒せる瞬間を見極めてオーバードウェポンを叩き込む
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
3:アナキンの回収は後回し、後で何らかの方法での情報共有を行いたい
4:フォレスト・セルの撃滅が終わったら残滓(ツバサ)と翔鶴も回収したい
  鎮魂歌に最適な歌い手も見つけたい
5:紫たちを信じる
6:ココ側による黒き獣討伐はうまくいくだろうか?
※どのオーバードウェポンを装備したかは次の書き手氏にお任せします
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません

426セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:38:37 ID:75ItxlDo0


【二日目・23時00分/東京都 都庁世界樹内部のどこか】

【八雲紫@東方Project】
【状態】健康、バイカイザーに変身中
【装備】傘(血まみれ)、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド、セイバーの手作り模型
    N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
0:フォレスト・セルを撃滅する作戦の一貫として世界樹内部で囮を引き受ける
1:どのような事をしても幻想郷を守る
2:仲間と認めた存在の犠牲を無駄にはしない
3:ジャックを信じる
4:テラカオス化したなのはによる黒き獣討伐は捗っているかしら?
※境界を操る能力に制限がかかっています
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します


【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド、その他不明
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話、N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:フォレスト・セルを撃滅する作戦の一貫として世界樹内部で囮を引き受ける
1:世界を滅ぼされたら敵わないので契約続行
2:都庁の勢力が大災害をやり過ごした後で敵に回ると面倒なので、
  戦後を見据えて殺せるだけ殺しておく
※九州ロボの改造は終わりました
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します


【biim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿、変身中
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
    N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:モブ兵士を全員強化(RTA走者にする)
2:再走は面倒なので主催陣営は裏切りません
3:個人的にダオスやレストと戦ってみたい、戦ってみたくない?
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します

427名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 16:39:29 ID:75ItxlDo0
投下終了です
……都庁にはもう一個だけ試練を乗り越えて欲しいと思った

428名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:35:34 ID:t/fGL/fY0
人数多くて状態表省略されてた弊害だが、N2爆弾全部ほむほむが回収してなかった?

429名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:50:29 ID:t/fGL/fY0
確認してきたが5224話でほむほむが三つとも盾に入れてた
まあココが追加で用意したとかで辻褄は合うけど……
もし起爆したらもうサーフの勝ち確で自分達で可能性潰したと後から知ることになるこいつらどんな顔するんだろう

430名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:59:20 ID:75ItxlDo0
>>428
あ、ホントや
じゃあ、>>429風に修正しよっと

431修正:2019/07/18(木) 19:17:12 ID:75ItxlDo0
>>424部分のみ修正


「……悪いわね、私たちにも世界のためにやらねばならないことがあるのよ」

魔雲天ときらり、避難所の魔物を残らず全滅させた存在は主催の手の者たち。
バイカイザーに変身した八雲紫。
仮面ライダーエグゼイドもといbiim兄貴に怪人ロボット・メガへクス。
そしてbiimがRTA走者という名前の暗殺者集団に仕立てあげた300名ほどの主催兵士たちであった。

彼らはロックマン・エックスの残した記録からフォレスト・セルの危険性を知り、撃滅を決意。
本拠地である九州ロボにはココとメフィラス、黒き獣への切り札であるなのはとユーノを残し、襲撃を敢行したのだ。
避難所は厳重に閉じられていたが、境界と境界のスキマを操り侵入できる八雲紫には鍵など無意味。
むしろ部屋を密室にしていたために誰も逃げることができず、地下深くにあったため誰にも助けを求められないまま全滅する憂き目を味わうことになった。

「感傷に浸るのはガバの元ですよ」
「いちおう、世界樹の内部には侵入できたが転移位置がかなり下過ぎないか…?」
「蒼のせいで遠距離のワープができないし、世界樹は内部構造も時間増しに変化しているみたいだから地図は当てにならない以上仕方なかったのよ。
 まさか転移した先に兵隊の詰所があったのは驚いたけど、奇襲でなんとかなったわね」

ちなみに紫たちは避難所を予備兵力の詰所だと思っている。
幻想郷の賢者と言えど、魔雲天たちが非戦闘員ということまでは見抜けなかったようだ。
ここが避難所だとわかれば勘違いによって皆殺しにする必要はなかっただろう。

「さ、すぐそこの物資を破壊した後、N2爆弾を起動しましょう」

回復薬など目に付く物資を全て破壊した後、三つの爆弾を起動する。
爆弾とはココが貴虎に売却し、世界樹破壊の要になる予定だった核以上の威力を誇る兵器・N2爆弾。
それと同じ爆弾が三つだけ九州ロボの倉庫には残っていたのである。
そして、三人は爆弾にコードを打ち込んで起動させる。
セットされた起爆時間は全て30分後だ。

「さて、潜入と起爆開始の第一工程はクリアだ。さて、世界樹本体の方に向かうとするか」
「ここから三つに分かれましょう」
「世界樹の中では都庁の連中も大技は使えないですしね」

三人はN2爆弾を一つずつ、兵士を100人ずつ同伴させて、世界樹の上層・中層・下層に分けてスキマを展開し、世界樹の内部へワープせんとした。
その前に、紫が他の二人や兵士に作戦を再確認させる。


「ジャックの立てた作戦を再確認するわ。
この作戦の趣旨は古代グンマーの悪しき置き土産フォレスト・セルの撃滅にある。
ただし、世界樹を残していると都庁戦力があの手この手で傷ついたセルを回復させてしまう可能性もある」
「だから世界樹もついでに叩いてしまおうというわけだな」
「ええ、成長に成長を重ねて砦となった世界樹を地下や地表で起爆させても大した効果は得られないけど、三つに分散させて一つでも内部で爆発させれば世界樹に大打撃を与えられる。
少なくともセルを支援する余裕はなくなるわ」
「爆弾の設置がバレたらバレたで、外にいる連中を世界樹の中におびき寄せることはできる。
 竜までならまだしも、フォレスト・セルと神樹、ついでにエヴァは狭い通路には入れないし、世界樹も巻き添えになるから高すぎる威力の技も使えない」
「……でも注意して欲しいのは私たちの任務は都庁勢力の虐殺や世界樹の破壊が目的なんじゃない。
 本当の任務は囮、フォレスト・セルを守るナイトたちを遠ざけることよ」

世界樹の爆破だけでも同盟軍には致命傷だが、その部分はついでにすぎず、あくまで目的はテラカオス因子を消してしまうフォレスト・セルの一点だけである。

「都庁の強さは、数の少なさをものともしない質だけでなく、どんな作戦を練っても連携でそれを補ってしまうチームワークにある。
 私たちが連携を断ち、ジャックがフォレスト・セルを仕留める。
 これが私たちの作戦よ」
「ゆかりさん、そろそろ行かないと時間のロスが……ジャックさんも待ってるでしょうに」
「biimに同感だ、こんなヘルヘイムみたいな居心地の悪いところはさっさと出るに限る」
「脱出するにはせめて起爆1分前までは爆弾を防衛してね。
 頃合になったらさっき渡したキメラの翼を使って脱出して、それなら新宿ひいては都庁勢力の射程外から逃げられるから。
 ……そういえば、地上からの振動がなくなったわね」
「決着するにはやけに早いが都庁が勝ったか狂信者が勝ったか」
「都庁が勝ったばかりなら疲弊してる今しかチャンスがないですね。
狂信者が勝ってても御の字。世界のために頑張った反社会的勢力にはご褒美にN2爆弾大爆発をプレゼントしてあげましょう」

432魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:13:06 ID:Jdkw41xY0
18時30分からおおよそ4時間の間にシャドウであった者は、大量の取り込んだ死者の魂を砕き、己のエネルギーへと変えた。
多くの者の断末魔が体内で響くが、シャドウは完全に無視する。


※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません

【デューク渡邊@新テニスの王子様】
【霧雨魔理沙@東方project】
【TDN@真夏の夜の淫夢】
【ケルベロス(小) @カードキャプターさくら】
【熊田薫@キテレツ大百科】
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【ヘルクラウダー@ドラゴンクエスト7】
【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”@ヴァンガード】
【田井中律@けいおん】
【ザ・テリーマン@キン肉マン】
【ビーストマン@ロックマンエグゼ】
【カギ爪の男@ガン×ソード】
【初音ミク@VOCALOID】

『くッ……』

また多くの魂が砕かれたことに辛い思いをする、混沌の騎士。

「この世界の者の魂はいずれ、全てが蒼に還る。
 魂を消された者には痛みや悲しみという感情も失うのだ。
 考えようによってはこれが一番の幸福なのだ、苦い顔をするな混沌の騎士よ」

シャドウは砕いて蒼に還元した魂の力を吸い、力を蓄えていく。


「それにしてもダークディケイドたちは圧倒的な力の前に魂を消失したか……」

ダークディケイドたちはシャドウによって肉体・魂を加工された死者。
普通に殺しただけならリソースとしてシャドウに魂が戻るハズだったのだが、いかんせん相手のパワーが強すぎた。
または死や闇の力を司る邪竜が近くにいたために力場が乱れ、魂は戻ることなく砕け散ったようだ。
戻ってきたのはディケイド・ディエンド・仮面ライダーダークキバもといOTONAの力が永久に失われたことだけだ。

「クッ、せめてディーヴァの残滓が今どうなっているか、どこまで力を取り戻しているか知りたかったが、それさえできんとは」

この殺し合いはより多くの弱点を知ろうとする、情報戦が全てであると言っても過言ではない。
残滓が再戦した時に前に戦ったよりも格段にパワーアップしているケース、戦闘方法が全く違う可能性さえあるのだ。
いずれ戦うかもしれぬなら知っておいて損はない。
いちおう、諸事情で彼女の周りに大量の死者が出ているのだが、死者スレで抗うカルナたちの奮闘により、犠牲になったイチリュウチームの面子やアウラの民の魂を取り込めてないので情報が入ってこない。

「……致し方あるまい、もう一度尖兵を送り込む。
 今度は戦闘力よりもスパイ活動に向いてそうな頭の良さそうな者をメインに」

今度は頭脳面に優れた者を主軸に送り込もうと、取り込んだ死者を再生する。




「あ、そうだ。(唐突)
 いつまでも我の名前が『シャドウであった者』だと締まりが悪い気がするからこの度、『黒き獣シャドウ』に改名したぞ」
『誰に向けて話しかけてるんだ……メタ発言か』
「しかし、改名するだけで死者の魂を百人使ったのは骨が折れたな」
『私が言うのも難だが魂の力を無駄使いすな!』

死者の魂を大量に取り込んだ影響かは不明だが、唐突に第四の壁に向かって発言をするシャドウであった者、もとい黒き獣シャドウ。
そんな一幕の直後、彼が再生しようとしていた死者の魂が、遠方からの砲撃によって弾けとんだ。
間近にいたシャドウは直前で攻撃に気づき、後方へのロングスウェイで躱す。

「ぬう!?」
「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」

シャドウへの被害はなかったが、死者三体は再生しきる直前に蒸発した。



※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません


【夜神月@DEATH NOTE】
【クルル曹長@ケロロ軍曹】
【金田正太郎@太陽の使者 鉄人28号】

433魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:15:02 ID:Jdkw41xY0




「攻撃か!
 だが、我に打撃を与えられるのはテラカオスだけ!
 いかなる攻撃でも他は蒼の力によって消滅する!
 ……ということは」

全てを破壊するエネルギーである蒼を纏った黒き獣に近づける存在は蒼の耐性者とテラカオスの二つだけ。
シャドウが自分に攻撃した存在を探すと。数キロ離れた位置に巨大フェレットによく似た怪物が空を飛んでいた。
怪物は遠くからでもわかるぐらい、殺意をこちらに向けていた。
シャドウは急いでを臨戦状態に移り、聖約・運命の神槍を抜く。

「フェレット型の怪物……ユーノ・スクライアか!」


シャドウが一つだけ誤解していたのは、フェレット型の怪物はユーノではなく、彼のテラカオス因子を事故で引き継いでしまった高町なのはである。

(あれを倒せば私が完成したテラカオスとなり、ユーノくんを救える……ゼッタイ二アイツヲコロサナキャ)

怪物となった高町なのは、もといテラカオス・リリカルは黒き獣に向けて咆哮をあげた。



☆彡 ☆彡 ☆彡

沖縄県から少し離れた位置……ギリギリで蒼の影響を受けない位置ではダークザギが撮影機材らしきものを手に持って二つの獣たちの戦いを撮影している。
そのカメラの映像が送られる先は、成層圏まで浮上した九州ロボだ。


「テラカオス・リリカル、黒き獣との交戦に入りました」

九州ロボのコクピットにて、メフィラス星人がオペレーターのようになのはたちの戦いの様子をココやユーノに伝える。

「なのはは勝てるのか……?」

同室にいたユーノは、九州ロボのファクターであるココに不安そうに尋ねた。

「勝てる保証はしかねるわ……ただ物理攻撃にもエネルギー攻撃をも無効化できるほどの防御特性を持ったテラカオスでは彼女だけ。
 現状で黒き獣に勝てる存在が彼女しかいないから、本州に残った人々を守るためには彼女に戦ってもらうしかないのよ。
 勝てば彼女は黒き獣の蒼の力を吸収してテラカオスとして完成、そこに救済の予言の完遂も果たされば、晴れて世界も大災害の驚異から救われるわ」

なるべく冷静を装うとしているココだが、彼女も貴重なテラカオスがやられてしまうんじゃないか、不安と焦りを押し殺していた。


伊豆諸島基地を犠牲に、なのは(テラカオス・リリカル)とユーノを拘束した主催陣営。
二人はその後、もっとも知りたかった殺し合いの真実を知ることになる。
当初の予定と違って情報を主催から奪うというより齎された形ではあったが。


主催陣営は世界を大災害から救うためにやむを得ず、殺し合いを開くしかなかったこと。
野田総理はただの傀儡。
大災害の正体や蒼、テラカオスの必要性や救済の予言の意味。
さらに都庁にいるフォレスト・セルは世界的には危険な存在であり、因子を消してしまうことで世界を滅びに導く存在と知った。
そして……大災害さえ乗り切れば、テラカオスは正気に戻り、原初のテラカオスと巫女は戦乱で命を落とすまでは生きていたことも……


これを教えられたなのはは、ユーノを救うために最大の障害である黒き獣の討伐に乗った。
また膨大な蒼の塊である黒き獣の力を吸収できれば自身がテラカオスとして完成し、大災害突破への道が開けると踏んだからだ。
なのはは危険を承知で、ユーノの反対を押し切り(逆らえばユーノが主催に殺される可能性もあったため)、九州ロボから沖縄に向けて出撃した。
ちなみに同時期にジャック・紫・メガへクス・biimもフォレスト・セル討伐のために東京へ出撃し、ココとメフィラスそしてユーノが九州ロボに残ったのだ。


(だが、きな臭い……
 古代の事件に救済の予言。
 フォレスト・セルの危険性はいちおう信用するけど。
 本当に大災害を止めたテラカオス……なのはは助かるのか?)

肝心のユーノは主催陣営の話を全ては鵜呑みにしていなかった。
特にテラカオスとなり大災害を止めた者が助かった件は、記録の中の存在でしかないエックスが喋っていただけであり、幸せに過ごした瞬間などの映像はない。
むしろ世界を破滅させる災害のエネルギーを吸収した存在など、力を疎まれるか狙われて命が危ないだろう。
常識で測れない怪物になるのに幸せに過ごせるなどとても思えない。
だからその一点だけは嘘ではないかとユーノは疑っていた。

(クソッ、せめてこの首輪さえなんとかなれば)

だがユーノは主催への口答えもできなかった。
理由は首につけられた特別性の首輪。
これは参加者が既に見つけた方法では絶対に外せない仕組みであり、これがユーノとなのはの反抗を防いだ。
逆らえばユーノの首が主催の意志一つで飛ぶだろう。
だから核心に迫ったことを聞き出すことができなかった。

434魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:16:02 ID:Jdkw41xY0



実際、主催が二人に渡した情報は古いか手を加えたもの。
原初のテラカオスは太古の大災害を止めた時に命を落としており、ナノマシンに備え付けられた自滅プログラムがある以上、なのはもまた大災害を止めたと同時に命を落とすことが決定づけられている。
テラカオス化した存在に未来はないことをココとメフィラスは伝えてない……全ての真実を明かさないことでなのはを黒き獣と戦わせて、テラカオス以外の未来を守らせるために。

そして主催陣営も知らないのがフォレスト・セルの現状。
確かにフォレスト・セルは古代グンマーが滅びを美徳とする理想を叶えるために因子を消してしまう危険な存在であったが、現代のグンマーの巫女によりその危険は回避されていたのだ。
だがユーノはなのはから教えられた千年タクウの未来で自分の尻が掘られることを教えられ、そこからフォレスト・セルは危険な存在であると認識。
実際の真実より嫁の言葉を優先したのだった。

(ココたちはなのはがピンチに陥った時に彼女を見捨てる可能性も十分にある……そうなる前にどうするユーノ、考えろ……)

いちおう、主催の目的や理念は知ったが、まだユーノは主催陣営を完全に信用したわけではなかった。



(ココ嬢、ユーノさんに目論見を気づかれてませんか?)
(中身九歳児のなのはちゃんはまだしも、聡明な彼の方は、おそらくね。
 でも私たちにも退けない理由がある。
 テラカオスや予言が完成する前に黒き獣に本州を攻められたら大災害を防げなくて世界はおしまい。
 鬼だ悪魔だと罵られようとも、なのはちゃんには黒き獣を倒し、最終的に死んでもらわないといけない)

ココとメフィラスもなんとなくではあるが、ユーノに疑いの目を向けられていることを察していた。

(ところで万が一、なのはさんが黒き獣に負けた場合はどうなるんです?
 奴に吸収能力などがあった場合、危険だと思うんですが)
(その時は殺される寸前にダークザギにサルベージしてもらうわ。
 ダークザキは犠牲になるけど、あれの耐久力と瞬間移動能力ならなのはちゃんを救う数秒間はなんとかなる筈よ)

主催にとってなのははただの鉄砲玉ではなく、いちおう危険になったら助けるつもりであるということをユーノはまだ知らない。



【二日目・22時00分/沖縄県】

【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:ユーノ(実際はなのは)の破壊
1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する
2:死者スレの掌握
3:体力と傷の回復
4:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫く
5:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に9時間30分以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません
※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため)

435魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:16:20 ID:Jdkw41xY0


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【状態】19歳の身体、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度50%
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ユーノの安全を最優先
0:黒き獣を殺し、テラカオスとして完成する
1:ユーノくんの身が危ないので今は主催に従う
2:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない
  イチリュウチームに戻りたくない
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。
 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。
 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。
※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました
※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました
 「ロボ化」は不明
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 テラカオスに自滅プログラムがあることは知らず、大災害突破後も助かると思い込んでいます



【二日目・22時00分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です
※千年タクウはなのはから没収しました


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る
※ユーノとなのはに見せたプロジェクトテラカオスの全容とエックスの記憶は
 完成したテラカオスの結末が生きている形に変わっています


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、19歳の身体、特別性の首輪
【装備】ストームトルーパーの装甲服
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……?
0:なのはの身が危ないので今は主催に従うふりをする
  危なくなったら主催を裏切る
1:全てにおいてなのはの安全を優先する
2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
3:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許したくないが……クソッ!
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 ただしテラカオスが大災害突破後も助かることには懐疑的です。
 なお、フォレスト・セルは千年タクウが見せた未来の一見もあり普通に危険視。

436実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:03:30 ID:VUmLQe4I0
第一回にて双方に一名ずつ戦死者が出てしまった、配置が以下のように変更になった。


『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
平等院鳳凰        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)



『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
千早           5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

(代打・代走)
イオリ・セイ


――では、試合の続きをお楽しみください。


 ◇

カッキーンッ!

「なん…だと……!?」

第二回の始まりは、聖帝軍ピッチャー高津の投球がプニキに打たれるところから始まった。
プロクラスでないとまず捉えられないメジャーリーガーの剛速球。
それを天才バッター・プニキはいとも容易く、まるで呼吸するかのように打ったのだ。
打球はホームランコースであり、轟ッとセンター方面へと飛んでいく。

「ダメだ!届かない!」

高津は宗則の時のようにブルースワローの飛翔能力を使って取ろうとするが、打球は彼よりも遠く早く飛んでいった。

「レイジ」
「君に任せた!」
「おう、任せろ!!」

高津の後方、二塁にいた金色の闇もトランスフォーム能力で髪を伸ばして取ろうとするが間に合わなかった。
極制服なしでは特殊能力を持たない犬室田ならなおさらである。
そこでさらに後ろに居たセンター、スタービルドストライクに乗るレイジが取ろうとする。

「体のどこかに当たってくれ!」

18mはあるガンダムに直径70cm前後のボールをキャッチするのは、レイジの操縦技術をもってしても難しい。
しかし巨大なボディのどこかに当たれば、少なくともホームランだけは防ぐことができる。
そうすれば被害をヒットに抑えるか、ガンダムにぶつかった球を他の選手が取ればアウトに持ち込むこともできる。

「甘いな、その考えはハチミツのように甘いぞ」

しかし、プニキのほくそ笑み、彼が言ったとおりにその作戦は甘かったと聖帝軍は痛感することになる。

「なにィ!?」

球はガンダムの右脇の辺りに当たった。
だが、球は装甲と装甲の凹凸に弾かれるように跳弾し、何回かガンダムの脇の中を跳ね回ったあと、後方へ飛んでいき……そのままフェンスを超えてホームランとなった。

「まるで、曲芸……!」
「フッ……」

プニキはセンター方面にいるガンダムがホームランの障害になると見越しており、ガンダムの装甲の凹凸をあらかじめ狙って、ホームランになるよう計算して打ったのだ。
見事に拳王連合軍に先制点をもたらしたプニキは悠々とベースを巡り、ホームへと帰っていった。

「まさか、あんな化け物バッターがこの世にいたとは……」
「高津さん、気を落とさないでください。まだ一点です。
それにデータも取れました。次の戦いに生かしましょう」
「……そうだな、一回打たれただけで挫けちゃあの世にいる佐々木に笑われる」

プロでもない熊にあっさりと自分の投球を取られ、先制点を許したことに高津は気を落としかけるが、犬牟田の励ましにより立ち直る。
他の選手もまた「これからだ」という気持ちを抱き、闘志を鈍らせることはなかった。


                 拳 1-0 聖

437実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:17 ID:VUmLQe4I0


その後、高津はプニキの後に控えていたMEIKO、平等院、翔鶴(+ロックマン)を完封する。

「チッ!」
「殺気がダダ漏れだぞ、俺から見たら次にどんなコースを打とうかわかるレベルだ。
ピッチャーならまだしも、バッターには向いてないな」

「簡単には滅ぼさせてくれないか……」
「さっきの女よりはマシだがおまえも殺気が漏れている、メジャークラスだと動きを読まれるぞ」

「このバトルチップじゃ通用しない」
『他のチップ温存のために使ってみたけど、やっぱりガッツマンとデカオのバトルチップはダメだ』
「道 具 の せ い に す ん な」

三人も本来なら強敵であるが、高津もプロ野球選手であり、バッティング力で宗則やプニキには及ばなかった。




「なんとか、失点を一点に抑えられましたね」
「ああ、巻き返すぞ」

第二回裏のイニングでは四番バッターとしてサウザーが出陣する。
対するピッチャーのMEIKOは舌なめずりをしながら、攻撃態勢に入る。

「へえ、大将直々のご出陣か」
「かかってこい年増女、聖帝サウザーの本気を見せてやる」
「……おまえはMEIKOボールでぶち殺す!!」

年増という言葉が逆鱗に触れたのか、MEIKOは本気の一球・MEIKOボールを投げた。

(最初はコース見極めのために見送るか)

打ってもキュアエースレベルの贅力では殺されてしまう殺人球。
まずは目でMEIKOボールの威力・速さを知るためにサウザーは初球は見送る判断とした。

しかし放たれたMEIKOボールを打たなくても凄まじい風圧を巻き起こし、ボール本体はラオウのミットの中に収まっていくだけのストレートに関わらず、残った風圧がかまいたちとしてサウザーの上半身を切り刻んだ。

「うわ!?」
「「サウザーッ!?」」
「し、心配するな、見た目よりずっと軽傷だ」

かまいたちにより斬られ鮮血を撒き散らしたサウザーであったが、南斗聖拳の使い手として「お師さん」に鍛え抜かれた肉体に助けられ、表面の皮膚が切れただけで済んだ。
これがサウザー以下の耐久力の選手ならもっと悲惨なことになっていただろう。

「大将が見送るなんてつまらない真似すんなよ」

マウンドの上からケラケラと相手を煽るMEIKO。
一方のサウザーはこれが安い挑発だと見抜き、煽りに乗って激昂することはなかった。

(とはいえ、向こうの四番バッターだ。
四番に選ばれるにはチーム最強のバッティング力はあるはずだ)

表面上の態度は世紀末ヒャッハーなMEIKOであるが、内面では計算高さと冷静さを持ち合わせた猛獣も飼っている。
四番バッターとは本来、最高のバッティング力を持ってしかる存在だ。
拳王連合軍でも四番の証はプニキが持っているように、サウザーも最高のバッティング力を持ってなければおかしい。
プロである高津を差し置いて四番の椅子に座っているのだから聖帝が高津以上の攻撃力を持ってなければ筋が通らないのだ。

(だったら、全力のMEIKOボールで仕留めてやる。
このMEIKOおばさんを年増と言って見下したことを後悔させてやるぜ)

MEIKOは別に年増と言われたことを怒っているのではない。
見下されることに何よりも殺意を覚えているのだ。

「さっきの小娘の時とは違う全力全開でいくぜ、黄金の回転を加えた……MEIKOボール!!」

ほぼ直角に曲がるシュート回転(黄金の回転)。
そこにメジャーリーガー級のパワーと漆黒の殺意をミックスした殺人球MEIKOボール。
投げられた殺意の球は真っ直ぐにサウザーへと向かっていく。
なお、普通の野球ならデッドボールだが、カオスロワ式野球ではバッターの殺害に成功した場合はそのままアウトになる。

「あれはヤバイ……」
「サウザー!」

直感でこれまで以上に殺傷力がある球が投げられたと悟ったベンチの聖帝軍。
思わず高津と闇はサウザーの身を案じ、声を上げてしまう。

だが、サウザー自身は至って冷静であった。

(心配するな、闇、高津。
俺だってただ黙って見てたわけじゃない、あのピッチャー女のクセを探っていたんだ!)

サウザーはこれまでの試合の流れをぼうっと見ていただけではなく、MEIKOの投球のクセ、そしてキャッチャーとして高津とバッテリーを組んだ時もMEIKOは5番バッターとしてバッターボックスに立っており、その際に肘や腕の動き方も観察していた。
帝王の星「将星」、南斗鳳凰拳の伝承者の名前は伊達ではない。
常人なら見逃すレベルの超速フォームでさえきっちり視界に捉え、MEIKOの球がどこに来るのかを予測する。

(俺に直撃コースは当たり前として……狙いは心臓か!)

読み通り、MEIKOボールは心臓を屠ろうと狙って投げたものだ。

438実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:51 ID:VUmLQe4I0

「面白い、見せてやろう! 聖帝サウザーの本気を!!」

サウザーは心臓を打ち抜かれる前に、MEIKOボールに対抗しようとした。
発生するかまいたちの余波で傷つくが、サウザーをバッティングフォームを全く崩さない。

「む、あれは……!」

キャッチャーとして間近にサウザーのフォームを見ていてからわかる。
あの打ち方は――




「――バント?」




バント。
普通に打つよりは命中しやすくなるが、大きなヒットは絶対に望めない、牽制的な打ち方。
拳王連合軍はそう、タクアンから聞いている。

「アハハハハハ、これが聖帝の本気かよ」

MEIKOの嘲笑も無理はない。
いちおう、サウザーは打ち返しには成功したが、飛んだ球は少し地面をゆっくり転がっただけのゴロであり、それもまたMEIKOの手前に落ちて拾われてしまう。
あとは一塁に届ければサウザーはアウトのハズ。

「まあ、打ち返したことは褒めてや」
「いかん! MEIKO、早く投げるのだ!」
「え?」

それはラオウに呼ばれ、MEIKOが瞬きを一回しただけの僅かな瞬間であった。

バッターボックスに入っていたハズのサウザーが姿を消していた。
サウザーが一塁へ走ったのは誰でもわかるだろう。
だが、拳王連合軍に取って予想外だったのは――サウザーの機動力であった。

「きゃあ!」
「ぐあ!」
「WRYYYYYY!?」
「なッ!?」

MEIKOは驚愕する。
黄色い閃光のようなものが走っているかと思いきや、一塁・二塁・三塁を防衛していた選手すなわち翔鶴・ジョジョ・ディオが順番に弾き飛ばされたのだ。
飛び道具を使ったわけでない証拠に、ベース一つ一つに確実に足跡がついていく。
閃光の勢いは止まるどころか増していき、ラオウが守るホームベースまで「前進制圧」を行わんと向かっていた。

「ラオウ!」

MEIKOは即座にラオウに送球を行おうとする。
その送球もラオウ以外には取れないレベルのかなりの剛速球だったが、閃光となったサウザーがベースを早いように見える。

(彼奴の方が僅かに早いか……? ならば!)

ラオウは閃光となったサウザーに向けて、残った片手で拳の一撃を放つ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の妨害は反則にはならない。

「遅いな」
「うぬうッ!」

ラオウの拳が直撃すれば運が良くても瀕死は避けられない威力だったが、サウザーはこれを体操選手のように軽やかに跳躍して躱し、ラオウの巨体を乗り越えた後にホームベースを踏んだ。
ラオウのキャッチャーミットに球が入ったのは一瞬後であった。

直後、翔鶴・ジョジョ・ディオ・ラオウの順番で体から鮮血が吹き出た。
サウザーはすれ違い様に極星十字拳で選手たちを切っていたのだ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の攻撃は反則にはならない。


「見たか、MEIKOよ、拳王よ、これが聖帝の本気だよ」
「クッソたれ!!」
「ぐぬぬ」


拳王連合軍が侮っていた……いや、まだ正式に野球の試合をしたのがこれが初めてだったため、データ不足というべきか。
サウザーの速度を多くの者が知らなかった。
対カギ爪団戦ではドラゴンハートで強化されたこともあり、世界樹の番人であるレストをも凌ぐ機動性を見せた。
その時の比較対象はドラゴンハート強化前のレストだったが、実はサウザーの方は早さの成長に関しては格段に伸びしろが残っていたのである。
少なくとも能力に頼らないスピードへの素質は強化レストより……いや現状全ての参加者の中でトップと言っても過言ではない。

はっきり言おう、サウザーの足の速さは全参加者最速であると。
彼がバントした後、10秒もあればベースを一周できてしまうぐらい早く、対応が遅れたことに拍車をかけてサウザーの帰還を許してしまったのである。
そして両チームは同点に並んだ。


                 拳 1-1 聖

439実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:17 ID:VUmLQe4I0


一点を取り戻したことに聖帝軍側は歓声に湧く。

「流石、サウザーです!
でもまだ同点……あんまり調子には乗らないでください」
「手厳しいな闇……できれば亡くなった亜久里のためにも一人ぐらい南斗鳳凰拳で首を落としたかったが、拳王連合軍の猛者には打撃を与えるだけに留まったか」

先程拳で斬った四人を見るが未だ健在であり、多少の怪我は負ったようだが選手として試合続行は可能だった。

「アイツよくもうちの未来の旦那に怪我を!」
「怒るなMEIKO、こんなものただのかすり傷だ」

『翔鶴!』
「翔鶴姉!」
「大丈夫、肩当てが切れてちょっと切り傷を作っただけ」

『お館様……』
「右腕を斬られたが筋は繋がってる。
危なかった……咄嗟にムラマサブレード出して防御しなきゃ首が飛んでたぜ」
『奴の攻撃はあなたの幻想殺しでは防げない。注意をなされよ』

「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!!
悔しいが、スタンドを出す暇もなかった」
『俺とフュージョンして鎧を纏ってなかったら、心臓まで手刀が届いていたかもな』


ラオウは分厚い筋肉の鎧に守られ、他の三人はネットナビと融合して防御力や瞬発力を上げていたため、軽傷で済んだのだ。


「さあ、我々の攻撃はまだ終わっていない、ゆけ千早よ
『ふなっしーならまだしも、おまえに命令されるのは……まあ従うが』

点をもぎ取ったサウザーに続き、千早がバッターボックスに入る。
ちなみにバットは口にくわえて使うようだ。

「くそ、聖帝の次はおニャンコかよ……いいぜ、死を恐れないならきやがれ!!」

聖帝にしてやられたことでイライラのボルテージを上げていたMEIKOだが、ラオウになだめられたこともあり、なんとか気を取り直す。
そして、MEIKOボールを投げたが、これもサウザーに投げたものと同じ、直撃コースの危険球だ。
だが千早は直立不動でこれを避けることも打つこともせず、直撃させたのだ。

「嘘だろ……!?」

MEIKOボールは確かに直撃した。
本当ならば虎は木っ端微塵の肉片になっていてもおかしくなかった。
だが、虎は健在・そして無傷だった。
いつの間にか虎が纏っていた氷でできた鎧にボールは張り付いていた。


「ふう、アタイの最強の頭脳と氷を操る程度の力、それから大阪での経験が生きたね」

MEIKOが投げる前に千早に鎧を纏わせた下手人はベンチにいるチルノであった。
その横で眼鏡を輝かせる犬牟田と共に解説をする。

「君はボールで直接的にも間接的にも選手を殺そうとするクセがつきすぎている」
「そしてアンタの投げる球は黄金比による超回転技「黄金の回転」を使って威力と命中率を底上げしている。
裏を返せば、何らかの手段で逸らしたり、逆に威力を最小限にとどめてからあえてぶつけさせてしまえば良い。
アタイの氷なら、アンタの投げた球の回転をゼロにする芸当も不可能じゃない」
「罠にかかったね。MEIKOおばさん」

千早の氷の鎧は防具としてだけではなく、命中したボールさえも凍らせて氷に閉じ込めてしまい、MEIKOボールの回転を強引にゼロにしてしまうための罠であった。
デッドボールを狙ってくるであろう敵をまんまと、罠にはめたことにチルノと犬牟田はハイタッチをする。

「お、おい……」
「なんで俺たちの時はやってくれなかったんだ?」

サウザーと紘太から恨めしい顔をされたが、それにも理由はある。

「すまない、強度計算やタイミングを図るためにある程度のデータ収集がどうしても必要だったんだ」
「あの鎧着てたら身動き取れないしね」
『どうでも良いが、鎧を解いてくれ〜、寒くて凍え死んでしまう』

氷の鎧にも欠点があり、自由に身動きが取れないのだ。
言うなれば完全防御と引き換えに一切の身動きが取れないアストロンと同じ。
しかしデッドボールには無敵であり、MEIKOの故意の死球をやり過ごせるだけでも聖帝軍は安心して野球に打ち込むことができるのだ。
余談だが、直接触れでもしない限り味方への技術を使った強化・支援はカオスロワ式野球ではOKである。

440実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:54 ID:VUmLQe4I0


そして千早の殺害に失敗したということは、聖帝軍のアウトではなくデッドボール。
つまり氷の鎧を脱いだ千早の一塁への進軍を許したのである。

六番バッターはデストワイルダー。
MEIKOは懲りずにデッドボール紛いの殺人球を投げるが、こちらもチルノが用意した氷の鎧で防がれ、デッドボール失敗である。

『なんだよ、まるで学習してねえな?
ゴリ押しでなんとかなるほどチルノは魔力は弱くねえぞ』
「…………」

あまりにもあっさりと進軍する聖帝軍。
二塁に千早、一塁にはデストワイルダーが立った。
そして、次にバッターボックスに立ったのは高津臣吾。

「きやがったかオッサン」
「聖帝軍で野球でならナンバーワン、そう自負するぜ」
「ほう……」

自信満々にMEIKOとラオウに宣言する高津だが、誇張でもない。
実際にプロで野球選手としての技量は聖帝軍トップだ。
大魔神であるササキ様をライバルと言い張るだけの実力は持ち合わせている。

「すぐに……後悔させてやるよ! MEIKOボール!!」
「またこれか……」

何度目かのMEIKOボールが放たれたが、これも死球コースだ。

(個人的にMEIKOとは真剣勝負をしたかったが、向こうにその気がないなら仕方あるまい。
今は俺がピッチャーである以上無理に打って肩を壊すのも面白くない)

高津は致し方なしとベンチのチルノにアイコンタクトを送り、氷の鎧を纏わせるよう願った。


……だが、氷の鎧は千早やデストワイルダーのように纏われることはなかった。
背後からの熱気によって。

(なに!?)

僅か数瞬の間に異常に気づいた高津がチラリと後ろを見ると。
ラオウが気のようなものを放って、チルノの冷気を阻害していた。
これでは氷の鎧を纏うことはできない。
氷のアストロン鎧戦法が打ち砕かれたのだ。

(ヤバイッ!)

この間、僅か0.5秒。
目前まで迫ったMEIKOボール。
しかし高津もプロ選手であり、ギリギリで迎撃が間に合い、渾身の力で打ち返すことができた。
「打ち返すこと」には成功した……

「しまった! これは取られる!」

氷の鎧を纏う前提だったことをいきなり解いたことによる高津のフォームの遅れ、そこから出した無茶な打ち返しにより、打力が出ず、打球はワンバウンドしてMEIKOに捕球される。
ヒットにはヒットなので高津や他の二頭も走りだすが、サウザーと比べれば格段に劣る速さだ。

『くそッ、なんとか三塁へ……!』
「最初はてめーだ! 送球MEIKOボール!!!」
『ご、ご主人様あああああああああああああああ!!!』

千早は虎の俊敏性を持って三塁へ向かおうとするが、その途中、MEIKOからの送球という名前の直撃弾を喰らう。
対象が機敏に動いていたため、チルノの氷の鎧作成は間に合わず、そのまま上半身と下半身が分かれて泣き別れになった。
即死である。

【千早@皇国の守護者 死亡】
※支給品なので放送に呼ばれません


『姐さああああああああああああん!』

デストワイルダーも二塁へ向かうが、虎仲間である千早の死のショックにより速度を緩めてしまう。
その間に内野手の宗則が千早の死骸からボールを回収して二塁に送球、イマジンスレイヤー上条がキャッチし、直後に迫ってきたデストワイルダーに左手のムラマサブレードと、ボールを握った右手の男女平等パンチを叩き込んだ。

「『イヤーッ!』」
『グワーッ!』

幸いデストワイルダーの耐久力が高かったため、千早のように死に至らなかったが、アウトに変わりなかった。

441実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:27 ID:VUmLQe4I0

そして、最後の一人である高津は翔鶴が召喚した戦闘機軍団に一塁への進軍を阻まれた。

「くそッ、進めねえ!」
「『アルトリア・ペンドラゴンさんの仇!』」

メジャー入りしたプロ野球選手でさえラジコンサイズの戦闘機を相手にするのは初めてだ。
しかも戦闘機の放つ攻撃一発一発が殺傷力が高く、高津は掃射を避けるのが精一杯であった。
サウザーほどの機動力があれば避けることはおろか、発進前に翔鶴に一撃を与えることも可能だが、高津及びブルースワローでは速さが足りない。
そのまま進塁できず、上条からの送球を翔鶴が受け取り高津もアウトになった。
チェンジである。


「くそ……MEIKO、これを狙ってわざと千早とデストワイルダーを進塁させやがったな」
「ご名答だよ、だが作戦を立てたのはそこにいるラオウだ」
「この男が?」

高津はラオウを見る。

「そう、具体的な手段は知らなかったけど、あの氷娘の鎧を解く方法を思いついたらしいって眼で言ってたからわざとデッドボールを取って進ませてやったんだよ。
まさか体から出る熱気で氷を溶かすとは予想外だったけど、油断したアンタや虎どもに痛い目を見せるには十分だったな」
「……恐ろしいやつだ、拳王め」
「あれがアタシのダーリンの力だよ。
おまえら聖帝軍はアタシのMEIKOボールに震えていりゃ良いんだ」

高津臣吾は、ただの筋肉の塊ではなかった拳王に、恐れの感情を抱きつつあった。
少なくともプロだから勝てる、ということは絶対ないことを自覚するのだった。



(別に俺は作戦など考えてなくて、頑なにMEIちゃんがデッドボールに走るからイライラして熱くなっていただけなんだが……まあ、MEIちゃんが気を良くしただけヨシとしよう)

なお、ラオウがチルノの鎧を打ち破ったのは偶然の産物であり、アイコンタクトは死球狙いはやめろという意味だったが、何はともあれ、聖帝軍は氷の鎧で凌ぐ戦法はできなくなったのである。



「すまんサウザー、俺としたことが」
「落ち込むな高津、まだ次がある」
『姐さん、姐さん……』
「……すまない誰かデストワイルダーのメンタルケアを頼む」


両軍一点ずつもぎ取り、二回が終わる。
次は三回表側からだが、聖帝軍側に新たな死者が出たためメンバーの変更が余儀なくされた。


『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


……ベンチのイオリが出たことにより、聖帝軍側の代打・代走はいなくなった。

442実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:51 ID:VUmLQe4I0



【二日目・22時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと2時間00分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

443破滅の足音:2019/08/12(月) 18:56:27 ID:melOZAog0

「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ちっ……!」


テラカオス・リリカル。そして黒き獣シャドウ。
ついに始まった、勇者候補と滅びの化身の戦い。


「……」


それを映像越しに見守るのは主催者陣営のココとメフィラス。


「なのは……」


そしてリリカル――高町なのはの恋人であるユーノのみであった。

世界の命運を決めかねない戦いだというのに、こんな寂れ荒れ果てた地で、観客もこれだけとは。
仮にテラカオスが、リリカルがシャドウに勝利したとして、生き延びた人間達のほとんどは彼女の功績を知ることは無い。
かつてのテラカオス・ゼロ以上に、その存在は認知されずやがては消え行く哀しい存在。


(絶対に、こいつを殺して、私はユーノ君と……っ!!!)


そして待ち受ける運命を改竄されて聞かされているリリカルは、そうとは知らずに勇猛果敢にシャドウに挑んでいく。


「くっ!?」


その勇猛さ、執念、シャドウに対する殺意。
根底にある恋人ユーノへの愛。
それは確かにリリカルの原動力となり、シャドウを押していた。

(馬鹿な、ユーノ・スクライアがこれほどの力を持つなど……!?)

シャドウはこの獣の本当の正体に気がついていない。
元より素体が強力ななのはであり、望まぬ形とはいえバイオライダーの力さえ取り込んだ彼女は強い。
テラカオス化に際して手に入れたエネルギー系統の増幅反射能力と併用すれば、ほぼ全ての攻撃を遮断できるのだから。
いくらシャドウの持つ運命の神槍が強くとも、エネルギー系統に分類されるこれはいくら撃ちこんでも反射される。
そして元の威力が高いからこそ、反射されればシャドウとてただでは済まない。

444破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:04 ID:melOZAog0
(四源の舞で威力を5倍にしたこれが通じないのであれば、現時点で捕縛できている死者の能力ではアレの反射は抜けぬか……!)

早急に、シャドウはリリカルの反射を破ることを放棄した。
単純に強力無比なラインハルトの槍と、周囲の魔力を操れば攻撃力を跳ね上げられるサクヤの舞。
死者スレに侵攻した最初期、不意をつく形でこの二人やディケイド達の魂は運よく捕獲できたものの……
警戒され、カルナから一定時間置きに砲撃を浴びている今では実力者や異能持ちはそう簡単に捕まえられない。
おそらく、攻撃に参加してこそいないが切れ者の死者がいるのだろう。
確実に、取り込まれたらまずい死者の魂を遠方へと逃がしている。
混沌の騎士の妨害に掌握へのリソース、これらを加味すると、現時点でシャドウが行える最大の攻撃は蒼の直撃を除けば、この四源神槍となる。
そしてリリカルは、それを増幅反射できる。
敵の最大攻撃を反射できるともなれば、それは圧倒的にリリカルが有利であるということだ。


「よし、この調子なら……!」
「ええ、行けるわ……!」


メフィラスとココはリリカルの優勢に笑みを浮かべる。
シャドウの苦々しい表情からしても、優勢なのは疑いようも無い。

無論、優勢だからといってリリカルが即座に勝利できるわけでもない。
防御面では最高ランクと言って問題ないリリカルであるが、攻撃面においてはディーヴァ等を下回る。
敗けはないだろうが、こうなってくるとシャドウを討伐するまでの時間が気がかりであった。


(黒き獣の動きが鈍い……おそらくは、ディーヴァがつけた傷が原因ね。
 あれが完治する前に、なのはちゃんが仕留め切れればいいのだけれど……)


敵は、あのディーヴァを打ち破る程の存在。
リリカルが無敵の防御能力を持つとはいえ、なるべくはやく勝負をつけたいというのがココの本音であった。



「コロスコロスコロスゥゥゥゥゥゥ!!!」
「ぬぅぅ……!」



愛の獣が黒き獣を薙ぎ払い、さらに噛み砕かんと牙を光らせる。
転がり逃げる黒き獣。傷は増え、負傷により魂の捕縛が鈍っているのか神槍の黄金の光も弱まっていた。


(なのはさんが優勢……あと数分もあれば、きっと……!)


メフィラスも戦況から、間もなくリリカルの勝利で終わると確信していた。
彼女やユーノに対する後ろめたさはあるが、とにかくこの黒き獣を葬り大災害を防がないことには全てが終わってしまう。
となりで黙ったままのユーノに声をかけることもなく、彼は祈り続けた。


そしてついに。


時刻は22時30分。


……その時が、訪れた。

445破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:59 ID:melOZAog0
パリン…




「え?」



なのはとユーノは……

いや、この場周辺にいた者は確かに何かが小さく砕ける音を聞いた。


「結界が、壊れたのか……?」


無意識のうちに、ユーノはそう呟いた。




「っ! あはは! アハハハハハ! クァハクァハハハハハハハハハァァァ!!!」



それと同時に、シャドウは突然笑い出した。
少女のような、獣のような、竜のような、混沌とした笑いを。
誰もが、背筋が凍りつくような感覚を覚える。

「忌々しい結界が無くなったか……ならば今こそ、ディーヴァから奪った力を使う時だなぁ!」

言うや否や、シャドウの背から禍々しい白い翼が生える。
元はテラカオス・ディーヴァのもの……さらに大元を辿ると、ディーヴァに喰われた真竜VFDの翼だ。


「咲き乱れろ! 凶兆の妖華よ!」


そしてシャドウの咆哮と共に、一斉に黒華が撒き散らされる。
結界が無くなった今、その繁殖は沖縄の外にも伸びることだろう。


「「あ、あの華は……!?」」


ココとメフィラスは見覚えある黒華の再来に戦慄する。
あれを拡散させないために、止む無く大阪をこの世から抹消したというのに。
これでは大阪の犠牲は全くの無意味ということになってしまう。
だが、ココ達の対応も間違っていたわけではないだろう。
全ては彼女達の知識が不足していたことが原因。

真竜やフロワロという名称を把握できたとして、その本質を知らなかった。
ディーヴァがバグったのか7匹になった真竜を全て食い、強力な真竜の能力を奪い、
そしてフロワロは真竜……その力を持つ者を葬らない限り無限に咲き誇るということを知らなかった。
即ち今回の場合、真竜を喰らったディーヴァを喰らった存在……黒き獣を葬らない限りは何度街を焼こうが無意味なのだ。
既に華がある場所には新たな華は咲けない性質も知っていれば、焼かずに何らかの手段で『閉じ込める』手段が取れたであろう。
今となっては手遅れだが、かつてチルノが行った全面凍結の方が対処法としては優れているのだ。

そして、一つの無知は次なる災いを招く。

446破滅の足音:2019/08/12(月) 18:58:42 ID:melOZAog0
「え……?」

何気なく、視界を塞ぎ始めたフロワロを薙ぎ払ったリリカルの腕が、一瞬で腐り果てて地面へと落ちたのだ。

「あ、ああ? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ! ! ? 」

激痛にもがくリリカルに対して、シャドウは酷薄な笑みを浮かべる。

「ふん、やはりか。確かにお前は物理は効き目が薄いし砲撃の類は反射するしで強敵ではあったが……
 それら能力を行使しているのは『敵意に反応するお前自身』だ。敵意も何もない、ただ普通に咲くだけの華には反応しきれまい?」

笑いながら、シャドウはリリカルの脚にまで浸食してきたフロワロを見やる。
やはりものの数秒もかからず脚は腐食し、さらにリリカルは悶える。

「まあ、そもそもその様子では、毒への耐性などといったものが備わっていなかったようだがな」

シャドウはさらに歩を進める。

「気に病むことは無い。これは特に強力な劇毒。竜か、竜の力を持つ者以外では相当な毒耐性を持たねばとても耐えきれぬからな」








「ダークザギッ!!! なのはちゃんを回収してっ!!!」




リリカルを取り込まんとしていたシャドウの前に、ダークザギが転移してくる。
如何に強靭な力を持つダークザギとはいえ、蒼への耐性までは持たない。
この場に来た瞬間、彼の死は揺るぎ無いものとなった。

しかし蒼による死は絶対ではあるが、即死というわけでもない。
無耐性のものでも、身体や精神を歪めきられるまでに個人差が存在する。
そして巨体のダークザギは、数秒間だけであればかろうじて生き延びることができた。
その数秒を無駄にすることなく、彼はリリカルを命令通りに回収してみせる。


「くそっ!?」


寸でのところで獲物を取り逃がしたシャドウは転移間際のダークザギに蒼の塊をぶつけるが間に合わず。
結果として自分は貴重な能力を手に入れそびれ、結界が破れたとはいえ軽くは無い傷を負わされてしまった。
これではまだ本州を攻めることはできないし、死者スレの掌握にも時間はかかる。


「やってくれるな……」


蒼と黒華が埋め尽くす沖縄で、黒き獣は休息の時に入る。

447破滅の足音:2019/08/12(月) 18:59:20 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/沖縄県】


【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 、真竜の翼、他不明
【道具】不明、ラインハルトの魂、サクヤの魂、真竜VFDの魂、他多数の魂、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:まずはリリカル戦の傷の回復
1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する
2:死者スレの掌握
3:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫き、黒フロワロを繁殖させておく
4:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します
※ディーヴァの捕食した者の能力(魂)も取り込み、行使できます
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に9時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません
※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため)
※沖縄から本州に向けて黒フロワロの侵攻が開始されました

448破滅の足音:2019/08/12(月) 19:00:27 ID:melOZAog0
「――」


「ダークザギ……」



九州ロボに戻ってきたダークザギ。
しかしその身体は瞬く間に蒼により歪められ、その魂ごと粉々に砕け散ってしまう。
そして、彼が命と引き換えに回収したリリカルは……



「ユーノ、君……」
「なのは……っ!」


リリカルは人間態……なのはの姿に戻っていた。
しかしその両手足は腐り果てて、生きているのが不思議な程。
テラカオス化で得た強靭な生命力がかろうじて彼女の命を繋ぎ止めているにすぎない。
そしてそれも、彼女の中に浸食した毒がいずれ削りきることだろう。


「……くっ!」
「……」


ココは拳を叩きつけ、メフィラスは茫然と目の前の惨状を見つめる。
勝てた……いや、まだ認識が甘かった。
黒き獣の恐ろしさを、理解したつもりでしきれていなかった。
おそらく、今回の黒き獣の力はかつての黒き獣を上回っている。
もはや九州ロボに用意されている解毒薬では、なのはを助けることはできない。
即効性の腐食毒、OTONAすら耐えられなかった毒。
完璧に見えた穴のあったリリカルの護り。
今更こうしていたら、ああしていれば。たらればの話は意味が無い。
ただただ無慈悲に、なのはの死が、貴重なテラカオスの死がつきつけられるだけ。
これをシャドウに痛手を与えたのだから意味はあったなどと言えるだろうか?

ココ達は知らない。
イナバ物置に、グンマ―の書物があったことを。
その内容が、不完全な化身は黒き獣の前に敗れ去る予言であったことを。
完成しきったテラカオスではないリリカルではシャドウには勝てない。
書物通りにリリカルの能力がシャドウに奪われていないことだけは、幸いと呼べるのかもしれないが。

449破滅の足音:2019/08/12(月) 19:01:09 ID:melOZAog0
「……消えてくれ、頼むから」


ぽつりと呟かれたユーノの言葉に、ココとメフィラスは素直に従った。
彼が何を考えているのか、嫌でも察しがついたからだ。


(……ごめんなさい)


口には出さず、ココは二人の犠牲者に心中で詫びる。
自分が許されるとは思っていないし、謝罪などまるで無意味だということはわかっている。
だからこそ、せめて今の自分達にできることはただ黙ってこの場を去ること。
愛する存在を失う辛さだけは、わかっているつもりだから。


「ユーノ、くん……ごめ……んね……」
「なのはは悪くない……僕が、僕がもっとちゃんとしていれば……!」

大粒の涙を零しあう二人。
崩れゆくなのはの身体を、ユーノは迷いなく抱きしめる。

「ユ、ユーノ君!? だ、だめ、この毒は……!」
「構わない。君を一人で逝かせるくらいなら、僕は……」
「ユーノく……んぅ……!?」


なのはの口内に、深く深く舌が入り込む。
残り少ない時間を無駄にしないように。
絡み合った舌は、互いの唾液と毒とを等しく馴染ませあう。




「……なのは、愛しているよ」

「うん、私もだよユーノ君……!」





泣きながら、笑顔で。

愛の言葉を口にした二人は重なり合うように崩れ去っていった。


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】

それぞれ死亡確認

450破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:01 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギンガ、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
    主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:これからどうすれば……
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:これからどうすれば……
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る

※それぞれ、シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※倉庫内に黒フロワロに対抗できる解毒薬はありません

451破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:35 ID:melOZAog0
――少し、時を遡ろう。

――黒き獣が、希望の一つを打ち砕くほんの少し前の時間に。



「いたわ、イチリュウチームよ!」
「あれ? 千葉よりも近いなっしよ?」
「向こうからもこちらに向かって飛んでいてくれたとみるべきですかなwwww」


都庁より飛び出した、イチリュウチームとの接触及びキュゥべえの野望の阻止を狙うほむら達。
慎重に飛んだ影響もあってか思ったよりも時間がかかったが、安全に接触することは達成できた。
後は悪辣極まりないインキュベーターの手で疑念を抱かれていなければいいのだが……



そう考えていたほむらは、その瞬間にざわりと嫌な気配を感じた。
ドラゴンハートで強化されていなければ、あの魔王マーラをこの目でみていなければ、絶対に心が折れていたであろうほどの魔力。
そして、この嘆きの気配は間違いない。幾度となく経験してきた、魔女の誕生の瞬間。



「な、何故魔女が!? それにこの力、まどかには及ばないけどワルプルギスは超えている……!」
「ひいいぃぃぃぃ!? こ、怖いなっしー!? イチリュウチームや苗木達は無事なっしかー!?」
「……ほむほむ、指示を頼むんですぞ。魔女相手はほむほむしか頼れませんからな」
「この魔力、イチリュウチームの中心部から!? ……危ないけど、このまま突っ込んで!」
「了解ですぞwwwww」

かつてオオナズチはそのステルス能力で倒した狂信者から大量の支給品を奪い取っていた。
今はある程度盗んだ品も整理され、都庁の仲間達やほむら達に分配されているが、その中には当然銃器の類もあった。
思わぬ形で武器を補充できたほむらはこれで以前以上に戦えるようになっているが、彼女の焦燥は強い。
いくら武器を補充し、ドラゴンハートで強力な力を得てもまだまだ強敵は多いのだ。
魔女の誕生の理由はわからないが、戦力面の問題からしてもイチリュウチームとの接触はさらに必須事項となった。
オオナズチも全速力を出し、魔力の発生源へと飛んでいく。

452破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:04 ID:melOZAog0
「ホルゥ! ホルゥ!?」


そしてすぐに、燃える隼とその背に乗る野球選手を見つけ出す。
ステルスを解除した瞬間に驚かれたが、あくまでそれだけ。
いきなり攻撃されることがなかった以上、まだ対話の余地はありそうだとほむらは口を開く。

「驚かせてごめんなさい。その格好……イチリュウチームの人かしら?」
「ハ、ハイ!?」
「と、とつぜん闇夜からまな板の子が出てくるなんてどうなって……なんでもないホル」
「懸命な判断ね。とりあえず、信じて貰えるかわからないけど……私達は都庁の者。あなた達と敵対するつもりはないわ」
「「!?」」


警戒しつつも正体を明かすほむらに対し、ホルスとラミレスは僅かに驚いた表情を浮かべるがやはりそれだけ。
すぐに焦ったような表情に戻ると、ラミレスが口を開いた。

「アア、ヤハリギムレーサンハ正シカッタンデスネ……!」
「んんwwwwwナイスですぞギムレーwwwwそちらがテラカオスを保護していることもネットワークで把握済ですぞwwwww」
「あ、てことはお前がオオナズチホル? ってのんびりしてる場合じゃないホル! そのテラカオス絡みでなんかやばい事態になってるホル!」
「……簡単に説明してもらえるかしら。なんにせよ、火急の状態なのは間違いないわ……! はやくしないと他のイチリュウチームメンバーが危ない!」
「た、助けてくれるホルか!?」
「アリガトウゴザイマス……!」

そしてホルスは慌てながらも、少し前に起きた事件を語る。
バイクに乗っていた三人組を発見し、仲間の6/達が接触を試みたこと。
聞けばホワイトベース組の生き残りだと言う苗木少年は都庁と拳王を憎んでいたが、ギムレーとはやての話から誤解だと説明をすると彼は混乱した。
幼女と白い獣はあまり話に入ってこなかったが、蛮とクリスの説得ではやてから直接話を聞いてみたいという流れになった。
拳王連合の被害者というのは間違いなく、都庁の誤解さえとければイチリュウチームにも協力してくれるかもしれない。
苗木も拳王連合に報復できるだけの力を持つイチリュウチームは味方に引き入れたい。
打算的な思いも0ではなかったかもしれないが、とにかく平和的な接触はできたといえる。

問題はここから。

都庁へと飛行予定だったイチリュウチームは滞空しており、苗木達との顔見せも空で行われた。
そして今まで静かであった幼女、霧切が……
テラカオスたる『ツバサ』の顔を見た瞬間、狂乱状態に陥ったのだという。

「持ってた宝石みたいなものが、一瞬で真っ黒になって割れたんホル……
 そしてそこから一気に魔力が噴き出て……イチローとアナキンに戦えない監督とこの子を連れて逃げろって言われたホル……」

「こ、これは……!」

見れば、ホルスとラミレスの他に、彼らが隠す様に庇っていた少女の姿がようやくほむら達の目にも入る。

「うぅ……」

ぐったりとした様子で汗を流す少女。
その姿は、だいぶ幼さが増しているが確かにかつて指名手配された風鳴翼に瓜二つであった。

453破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:27 ID:melOZAog0
「その子が、テラカオス……『不屈の精神を持つ勇者』かもしれない子なのね」
「そうホル。でも、元々体調悪そうだったのが霧切と対面してからさらに悪化してこんなことに……」
「……オイラ、霧切達のことは知ってるなっしー……
 強力な魔法少女だけど、テラカオス・ディーヴァへの恐怖心が特に強いって確かにキュゥべえが言ってたなし……」

沈み込むふなっしーの言葉に、ほむらやラミレス達は今回の騒動の原因を理解する。

「ツバササンハ、シャドウトイウ存在に敗レタテラカオス・ディーヴァノ残滓ダトイイマス……」
「自分に恐怖を植え付けた存在と再度遭遇して一気に絶望……魔女化してしまったということね……」
「……せめて、苗木はまだ無事なっしか?」
「残念ホルけど、苗木とキュゥべえはもういないホル……
 その、魔女化? した霧切の一番傍にいたせいで……彼女を止めようとして、魔力で消し飛ばされたホル……
 それからなんでかさらに霧切は泣き喚く子供のように暴れて……」
「そんななっしー……」

聞かされたのは、苗木達の死。
いや霧切も魔女化したともなれば、死んだも同然だろう。
説得を目指していたふなっしーの落胆は、計り知れない。
おそらく魔女化した霧切がさらに暴れてしまった原因が、はからずも自分の手で心のよりどころを殺してしまったからであると、
そう察せてしまうだけにより悲しみは深まる。

(……まさか、こんな形で決着がつくとはねインキュベーター……
 人を食い物にし、少女の心がどれだけ繊細で些細なことでも大きく揺れ動くか……その感情の変化を見切れなかったあなたの負けよ)

ほむらは内心で宿敵の死を冷静に分析する。
本来であれば喜んだであろうが、状況が状況なだけにそうもいかない。
わかるのは危険を感じたであろうインキュベーターが逃げる暇もない程に、この魔女の魔力は強いということ。

「……あの魔女の結界内にイチリュウチームが囚われているようね」
「あまり時間はかけれそうにないですな。そしてこの魔女を倒さないと、多分この子は本来の力を発揮できなそうですしwwwww」


不運な幼女は魔女に堕ちながら因縁の相手を弱らせ苦しませる。
希望の祈りは絶望で反転する。自分に近寄らないように、二度と近寄れないようにディーヴァの系譜とそれを守る者は皆殺し。

祈りの結界は崩れた。
黒き獣は愛の獣を腐食させ、やがては本州に牙を剥く。
黒き魔女は残滓とその仲間を苦しめる。
同時刻に起きたプロジェクト・テラカオス、救済の予言を破綻させかねない緊急事態。
生き延びた者達は、どう動くのか。

454破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:59 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

※ほむらにいくつか武器が補充されています
※霧切が生存している限り、『ツバサ』は立つことも困難です

共通思考:イチリュウチームの救出及び『ツバサ』の護衛


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
それぞれ死亡確認

【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】→魔女化

※結界内に残るイチリュウチームのメンバーを全員閉じ込めています。各員の安否は次の書き手さんにお任せします
※霧切を打ち倒さない限り、内部のイチリュウチームメンバーは通常手段での脱出ができません
※魔女化し、ディーヴァの因子を持つ者を極度に弱らせ、またその周囲の存在に無差別攻撃をしかけます
※沖縄の結界が消滅しました
※強さはワルプルギス以上まどか以下

455何が可笑しい!!:2019/08/12(月) 21:09:33 ID:rl3FuA/w0
投下乙...!
面白かったけど、すげー絶望感
中盤までは対主催を支えてくれると思ったなのユーカップルも落ちてドン底のまま絶望死か...

456何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:13:25 ID:jjdhWbNA0
苗木の最期が十神よろしく台詞がないのは草
まあ次の話で補完してくれるだろたぶん

しかし、なのは組は合流できないまま壊滅
ネオ・クライシスは事実上全滅
ホワイトベース組はひとり残らず皆殺しになったか

457何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:44:05 ID:RNY/i6/Q0
投下乙!なのは無敵過ぎない?と思ってたら綺麗に穴突かれたなぁ…
なのはといいOTONAといいベジータといい、今期は絶望の中での毒殺多い気がする
苗木達もある程度覚悟はしていたが、イチリュウ逃走不可ってのが地味にきつそう

4589月13日はカイザの日 FOREVER:2019/09/08(日) 17:58:16 ID:zlRsuNk20

『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

その頃、草加さんを書いていた書き手は今年もまたカイザの日を祝おうとしていた。
……去年も一昨年も三年前も四年前も五年前も六年前も同じことを書いていたが、その書き手にとって大事なことなのだ。

ここまで書いた時点で筆が止まった。
流石に6年も連続で同じ日に同じキャラを書き続けるのにも限界が来たのだ。
大体復活禁止というルールを破ってまで書いてたのだ。
それくらいまでにはカイザの日にこだわっていた。

しかし、現状はどうだろうか?

DMC狂信者だ。
未だにクラウザーさんも復活しないし。
草加と他のキャラに絡ませてもすぐに引き離すし。
他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず次元連結システム(端的に言えば他の次元からエネルギーを持ってくるシステム)で動くロボット出してるし。
さらにはぽっと出の黒幕まで中に紛れている。

正直この書き手の技量ではもう収拾がつかない。
収拾をつかせる気もない。
だから、今回で終わりなのだ。

元号も変わったし、平成の古参書き手は令和の新時代では生き残れないのだ。


だから、自殺したのであった。


【カイザの日の書き手@カオスロワ 死亡確認】

459何が可笑しい!!:2019/09/08(日) 19:05:45 ID:ZdZMYhbo0
>他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず

次元が滅んでんじゃなくて歪んでて出られないって書いただけなんだよなあ……

460何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 14:08:46 ID:ioq/KqdU0
10期一体何年続いてるんだろう...

461何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 19:32:32 ID:RUIUt5PA0
気にするな
他のロワも大概同じやで
進行遅いなりに書きたい人が残ってるだけここは恵まれている

462痛みの唄:2019/10/04(金) 13:24:26 ID:e/bigAbo0

時刻が22時に差し迫った要塞ビッグサイト。
その敷地内の一つにあるテントの内部で、三人の狂信者と一機のロボットバイクは情報を交換していた。
ホモどもが持ち帰ったテラカオスという怪物の情報を探っていたセルベリア。
そして草加もといサイドバッシャーの言葉により、明らかに狂信者としては異質な行動を取っていたゼロ(ルルーシュ)を探っていた切歌とレジーナ。

「蒼の源泉…聖別…テラカオス、そして主催とは違う目的で動くカオスロワちゃんねる……」
「この殺し合いにそんな秘密があったんデスか……」
「信じられないけど、いちおう話の辻褄は合うわね」

しかし、三人の乙女を驚愕させた決定打は、草加の言葉であった。

『ああ、確かに俺は見たんだ。
大災害の発端らしいニルヴァーナの生き残り、ウエムラのビデオレター。
そして証拠を見つけた俺の持ち主を殺そうとした怪物と女を』

草加はセルベリア・切歌・レジーナは信用……否、利用できると思い、あえてパーティー会場で見た真実を語ったのだ。
この殺し合いのそもそもの発端、カオスロワの意味、大災害を唯一防げるテラカオス、そしてカオスロワちゃんねるの闇に蠢くもの。
もちろん、自分が支給品ではなく無機物への憑依能力を得た参加者であること、そもそも持ち主であるバドは狂信者ではないことを隠して話したが。

「なんでさっきは私たちにそのことを隠してたんデスか?」
『おまえたちが、この殺し合いのどこかに潜伏しているカオスロワちゃんねる管理人……長いから“提督”とでも言っておこうか。
切歌たちが提督の手先だった場合は俺が破壊されるだろ』
「あ」
「……なるほど、このビッグサイトの中なら私か切歌たちの誰かが提督の手先だったとわかっても、騒ぎを起こせば狂信者仲間が殺到して提督の尻尾も掴めることに賭けたというわけか」
『流石元軍人さんは話が早い』

幸い、セルベリアも切歌・レジーナも提督の手先ではなかったようだ。

「大災害の原因は誰かが意図的に起こした蒼の源泉の暴走。
それが本当なら許せないデス……大災害で引き起こされた殺し合いでクラウザーさんやマリアは間接的に殺され、調とは離れ離れ、右京さんたち多くの狂信者も死ぬハメになったんデスから」
「切歌、怒りたい気持ちはわかるけど今は抑えて」
「気持ちは同感だ。クラウザーさんほどの素晴らしい歌を歌える方や数万を越える信望者が、ひと握りの者の思惑のせいで殺されたも同然なのだからな」

三人の狂信者は怒りを共有している。
殺し合いを開かれたことでクラウザーさんが死ななければならなかったことが一番頭に来ているようだが、この三人は大災害時にも大切な人々が喪うか、行方知れずになっている。
聖別たるカオスロワを開いたのはベイダーら主催陣営だが、それ以上に犠牲を強いる聖別を開かざるおえない状況に追い込んだのは他でもない“提督”なのだ。
見つけ次第、最優先でSATUGAIしたい殺意が芽生えていた。

「サイドバッシャー、その提督の手先に纏わる情報は他にないか?」
『提督の方はスマホの通話越しで辛うじて男とわかること、女の方は透明になる能力でもあったのか、どっちも声しかわからん。
録音機能なんて都合の良い物は俺の身体にはないが、聞けば一発でわかると思う。
そいつらはまだしも巨大サボテンみたいな緑の怪物は特徴的すぎるからすぐわかると思うが……』
「いちおう狂信者側に属する魔物狂信者(モブ)にサボテンボールとかサボテンダーがいるデスけど……」
『う〜ん、こいつらじゃないな。もっとデカくて汽笛みたいな鳴き声でインドラと吠えていた。
名前はメーガナーダと見えない女に言われていた』
「そんなに目立つならすぐ見つかるハズなのに、ネットじゃそんな怪物の目撃情報は一切無いわね……」
「というより、誰かが見かけても情報を隠蔽するように、カオスロワちゃんねる自体に仕向けられているのだろう。
ますます、このSMSがきな臭くなってきたな」

サイドバッシャーは少なくともメーガナーダの情報は握っていた。
だが一致する存在がカオスロワちゃんねるの掲示板上には一レスも無い。
それはテラカオス化に纏わる情報も同じであり、ふわふわしているものばかりで核心に迫るレスが見当たらない。
何も知らない参加者ならまだしも、テラカオスを少しでも知った参加者からすれば違和感バリバリだ。
共有されるべき情報が便所の落書きレベルにもないのである。
情報操作の線は確かにあるようだ。

463痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:16 ID:e/bigAbo0

「セルベリアおばさん、このことをすぐにディーに報告を!」
「ゼロも提督かその手先の線も捨てきれないわ! すぐにでも調査を!」
「……いやまて、ディーがその提督であるという可能性も捨てきれない」
「信者仲間を、それもクラウザーさんの蘇生を提案したボスを疑うの?」
「提督がクラウザーさん信者を装った偽信者である可能性も捨てきれないんだ。
ましてやディーは狂信者集団を発足してからビッグサイトから一歩も動いていない」
「それは狂信者をまとめるリーダーデスから……」
「だが、人数では桁違いなビッグサイトは前線に比べれば安全圏、カオスロワちゃんねるを管理する余裕もあると取れる。
たまに杜撰な作戦を通したり、そもそも狂信者側の全滅を前提においた作戦さえあった。
第一、神でありながら沖縄の異常気象をクラウザーさんの力だと持て囃しているのも怪しい」

セルベリアはディーを草加の言う提督ではないかと怪しんでいた。
ディーに同調していたドリスコル、突然接触してきたゼロも怪しいが、両方死ぬ可能性がある最前線送りになったので提督である可能性は低い。せいぜい手下止まりだろう。
どのみち、防衛部隊であるセルベリアたちはビッグサイトからは動けないので戻ってくるまで正体を確かめる術がない。

「せめて決定的な証拠さえあれば、他狂信者の賛同も得られて、全力で企みを阻止することもできるが……証拠がない内は逆に情報操作で仲間の狂信者に追われるハメになる」
『メーガナーダはこのビッグサイトはいなさそうだし、提督も手下もビッグサイト以外のどこかにいる可能性もあるがな』
「まだ関東圏内のどこかにいるなら良いけど、過疎地に引きこもってたら最悪ね」
「うう、私としては同じ信者は信じたいデスけど……」

ルルーシュに唆された部分も多いとは言え、他の上層部の人間を信用できないセルベリア。
同じクラウザーを信仰する仲間を信じたい切歌。
ルルーシュへの疑念を捨てきれないレジーナ。
そして三人には隠しているが提督への殺意を漲らせる草加。

しかし、ネットが信用できなくなった以上、提督を探す方法が現状の四人にはなく、ネット以外の追加情報でもない限り捜査の進展はないだろう。
黒幕が存在していることはわかっても、正体と居場所を掴む術がない。

(提督の目的はなんだ?
わざわざ主催に隠れてこそこそ真実を知る者を暗殺し、情報操作を行った。
ならば主催には知られたくない目的があって行動をしているハズ……
テラカオスには主催も知らない隠された力があるのか?)

セルベリアは無言でテラカオス化したと思わしき少女の死体を見るが、答えは出ない。

狂信者たちは提督による水面下妨害も手伝って圧倒的に情報が足りないのだ。
この中では大きな進展を齎した草加でさえ、テラカオスが具体的にどうやって大災害を抑えるのかまでは知らない。
彼女らがこれ以上、真実にたどり着くには答えが不足していた。

「仕方がない、いったん考察は打ち切りだ。まずはゼロの正体と思惑から調べるぞ」
「ゼロは今、最前線デスけど」
「半数のカギ爪団構成員がビッグサイトに残っている。
ゼロに何かされている可能性もある以上、確かめる価値はあるだろう……ん?」


セルベリアが切歌とレジーナに指示を出そうとした時だった。
ただでさえ暗い夜空が、星さえ見えなくなるほど暗くなったのだ。

 ◆

464痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:42 ID:e/bigAbo0


同時刻、ビッグサイトの敷地に地下から侵入できた影薄組もまた、マンホールの傍から異様な空を見ていた。
小町とデモニカを纏う四人は驚きの表情で空を見ているが、影が薄いのと仲魔としてデモニカの中に入っているため、周囲の狂信者がそれに気づくことはない。
というより仮にステルス状態でなくても、狂信者たちも皆唖然として空を見ているため、侵入者が誰であっても気づかないだろう。

『なんだい、こりゃあ……』

何かとてつもなく巨大な物体が、ビッグサイトの要塞を空から覆い尽くしているのだ。

「コイツは……千葉に現れた例の邪竜じゃねえか!」
「それがどうしてこんなところにいるんすか!?」

空を覆う者の正体は狂信者や拳王連合軍に宣戦布告をし、何らかの目的でイチローたちがいる浦安を覆った超巨大竜ギムレー。
それがどういうわけか、ビッグサイトの空の上まで移動してきていたのだ。

ビッグサイトの狂信者たちはすかさずギムレーに向けて対空砲やら魔法、MSなどで迎撃を行う。
無論、影薄組の周りでもそれは同じだ。

『ま、まったく効果があらへんぞ!?』

しかしギムレーには全く効いている様子はない。
影薄組たちからはさほど離れていない位置にいる巨人化した大日本人こと松本、彼と同じ感想を狂信者たちは口にしていた。

そして、狂信者たちへのお返しに邪竜のブレスが放たれんとしていた。
それはワイルドハント率いる狂信者集団すら一撃で全滅させた超高威力攻撃。

「まずいよ……こっちを攻撃してくる!」
「早く逃げないと」

そのブレスの矛先は偶然にも影薄組たちがいたエリアにも含まれていた。
影薄組の五人は急いで周辺から離脱しようとする。

『うわあああああああああああああああああああああああああ!!!』

数瞬後、大日本人の叫び声と共に邪竜のブレスはビッグサイトより東側を焼き払い、大日本人と数千人ほどの狂信者を一瞬で蒸発させた。


 ◆

465痛みの唄:2019/10/04(金) 13:26:30 ID:e/bigAbo0

「よし、少しは黙ったな」

本体である巨竜の上に乗るギムレーは、キノコ雲が上がったと同時に迎撃の手を止めた地上のビッグサイトを見てそういった。

ギムレーがここに単身で来た目的はオシリスの生死を問わない奪還。
オシリスの能力がテラカオス化したなのはの拡大化した能力を止めるために重要なファクターであったし、そうでなくとも洗脳されたり能力だけ抽出されて狂信者に利用されれば対主催にとって危険であるからだ。
そのため、交渉という名の脅迫をしにきたのだ。

案の定、狂信者は反撃をしてきたが邪竜としての能力を解き放ったギムレーには蚊が刺したほどの威力しかなく、止めるには不十分。
あんまりうるさいと狂信者の元締めと話し合いができないので、攻撃で多くの狂信者に消えてもらった。
それが功をなしたのか、狂信者は効果がない攻撃を流石にやめた。
地上の狂信者共がワイルドハントたち同様、恐怖に慄いているのがギムレーにはわかる。
もっとも、多大な魔力が集中しているため、日本を巻き込んだ誘爆の危険があるビッグサイトそのものへの攻撃はできなかったが。
なお、影薄組は存在感が薄すぎたため、ひと握りの対主催が狂信者の巣窟に潜入していたことは流石に気づかず、攻撃の巻き添えを食らわせてしまったことには流石に気づいていないようだ。

「さて、交渉に入るか、スゥー……」

ルフレ(人)としてのギムレーと、本体(竜)としてのギムレーは深呼吸をすると、厳かでドスの効いた口調で狂信者たちに告げた。


『狂信者どもに告げる。

生死は問わぬ、貴様らが捕えたオシリスの天空竜を我に差しだせ。

早急にできぬのならば、貴様らの神と崇めた存在を蘇えらせるカテドラル――ビッグサイトをこの手で粉砕する』


ギムレーの突然の脅迫にビッグサイトは騒然とする。
狂信者どもの恐怖が邪竜であるギムレーにとっては心地良いものであったが、目的は最後まで忘れない。
オシリスは救助対象であると同時に、彼の持つ魔法・罠無力化能力はテラカオス化したなのはを止める可能性がある数少ない存在なのだ。
仮に殺されていたとしても、その能力に狂信者が目をつけないわけがない。
狂信者をこれ以上、のさばらせないためにも、オシリスを取り戻す必要があった。

そしてギムレーの要求から一分経たない内にビッグサイトに設置された外部スピーカーを通して、赤いロボットに乗せると似合いそうな男の声が聞こえた。

『私は狂信者まとめ役をしているディーだ。
……要求を飲んだ場合と飲まなかった場合、君はどうするつもりだ?』

顔は見えないが、焦りの見えない声で質問がくる。
流石に総大将だけにそこらの下っ端よりは冷静を保てるか、などと思いつつ、ギムレーは空から返答する。

『要求を飲んだ場合は、キサマらの居城……この場でのビッグサイト破壊を先延ばしにしてやろう。
我には急用があるのでな、数時間程度は狂信者どもの絶望する顔は後回しにしてやろう。

だが飲まなければ、この場で破壊の限りを尽くす』

ギムレーの一言が数千人規模のモブ狂信者が一斉に失禁するほど、底のない恐怖を与えた。
少なくとも精神的に強くない者や、彼の人となりを知らない限りは、本能的恐怖で逆らえないレベルだ。

『正気か?
ビッグサイトを破壊すれば集めた魔力が暴走し、少なくとも関東は滅びるかもしれないぞ』

真である。
高位の魔法に精通する者ならビッグサイトを破壊するのは危険だと肌で感じられるほどの生体エネルギー(マグネタイト)が集中している。
ギムレーにもそれがわからないわけではない。が。

『知れたこと! その程度の魔力なら我を殺すには不十分だ。
それに我は破壊と絶望を糧に生き、死を司る邪龍!
他の者共の命など知ったことではないわ!』

嘘である。
例え特定の武器以外は鉄壁の耐久力を誇る邪龍とて、ビッグサイトが間近で爆発すればただではすまないことは理解している。
無論、イチリュウチームの仲間を含む他の対主催の命さえ無碍に散らす気はない。

しかしこの場は引いたり弱みを見せたら負けだ。
嘘をついても邪悪の仮面を被ってでも、味方の運命を左右するかもしれないオシリスを取り戻さなくてはならない。


『……なるほど、断らせていただく』
『なに…?』

ギムレーの言葉による脅迫では、ディーは揺らがなかった。
今度は少し語気の強い形でディーは言葉をぶつける。

『貴様にオシリスを返したところで、後に牙を向いてくるのは明白。
最悪、オシリスを返した直後に契約を破棄して襲いかかってくる可能性さえある。
何より、クラウザーさんを蘇生させるためのビッグサイトを襲撃したことは、クラウザーさんに中指を立てたことと同じ。
万死に値する行為だ』

466痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:15 ID:e/bigAbo0

次にディーは、攻撃の手を止めていたビッグサイト中の狂信者に呼びかける。

『狂信者たちよ、SATUGAIを再開せよ。クラウザーさんが見ているぞ。
あの方のために命を捨てられぬ不届き者にクラウザーさんの歌を聴く資格はない!』

実質的な交渉の打ち切り宣言と同時に、邪龍ギムレーの体に再び無数の攻撃が放たれる。

(やれやれ、狂信者の愚かさからして予測ができなかったわけじゃないが、まさかここまでとは)

様々な攻撃が全て巨大な邪龍の体に命中するが、ギムレーは本体も人間体のどちらも涼しい顔であった。
地上に蟻のように群がっているモブ狂信者どもには確実な怯えが見え、ほとんど全ての攻撃がうろたえ弾であった。
一部は本能的な恐怖に負けて逃げ出している者もいる。
ビッグサイトにいる兵力がいくらあってもギムレーを倒すにはとても足りない。

(だが、諦めるわけにはいかない、オシリスは戦力としても仲間としても、見捨てるわけにはいかないからな!)

ギムレーは攻め方を変えた。
ビッグサイトからは遠い位置にいる狂信者やトーチカなどの建造物はブレス攻撃で焼き払う。
今、できるだけ破壊と死を齎せば、あとで仲間と攻め込んだ時に楽にビッグサイトを陥落できるだろう。
さらに……

「お、おい! あの龍ゆっくりと落ちて来ていないか?」
「まずい、ビッグサイトが、クラウザーさんが潰されてしまう!」

今の焦るような言葉は名も無きモブ狂信者が放ったものだ。
ギムレーはビッグサイトに対しては徐々に空から接近する形で無言の圧力を仕掛ける。
ゆっくり落ちることで交渉に応じなければビッグサイトをそのうちに潰すというポーズであり、仮に倒したところで、落下したギムレーがビッグサイトに直撃し、結局狂信者は終わるのだ。
ほぼ全ての狂信者がこの事態に焦る。
しかもだんだん近づいていくことで流れ弾がビッグサイトに当たるのを恐れて攻撃の手も緩めていった。

「さあ、根比べと行こうかディー。
早くしないとビッグサイトが僕の手で潰されるよ」

爆発の危険があるのでビッグサイトを本気で潰す気はないが、そうでなくとも狂信者など「いつでも潰せる」ことを仲間や対主催に示さなくては行かない。
潰されないにしろ、ギムレーの体がビッグサイトに少しでも触れたら狂信者は敗北したも同じ、全国の狂信者の士気は間違いなく急下降するだろう。
現状でも「もうダメだあ、おしまいだあ」という声が狂信者の中から聞こえる。

その絶望が、ギムレーにとっては心地良かった。


 ◆

467痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:36 ID:e/bigAbo0

混乱するビッグサイトの中、その玄関口にて。

『はあはあ……危うく全滅するかと思ったよ』
「助かったぜ、こまっちゃん!」

小町ら影薄組は、ギムレーからの攻撃を回避していた。
一撃でも喰らえば全滅確定の攻撃ではあったが、小町が咄嗟にCOMPから出て距離を操る程度の能力を使用。
自分を含めた五人をビッグサイトの玄関口まで引き寄せることで回避したのだ。

ビッグサイトの混乱もあり、影薄組は尚の事、小町の姿はまだ見られていない。
見られたとしても小町がいたところの兵隊は全滅しているため、潜入は結果的に気づかれてないだろう。

「まずいですね……あの竜がだんだんここに落っこちてきています」
「黒子くんはホント病的なまでに冷静っスね……」
「ここぐらいしか逃げ込む場所がなかったとはいえ、どうするの?!」

ちなみにギムレーが対主催である影薄組の存在に気付かなかったとはいえ、向こうから攻撃を受けたのは事実。
ビッグサイトも潰す気であるようだし、現状は味方として見ない方が良いだろうと影薄組は胸中で思った。
そんな竜にモタモタしているとビッグサイトを潰すと言われているのだ。
施設が潰れれば狂信者どころか都庁軍も聖帝軍もイチリュウチームも関東にいる参加者は問答無用で全滅してしまう。
そうなる前になんとかしなければならなかった。

「あの邪竜をここを潰す前に倒すという選択はないな。
単騎でここにこれるぐらい戦闘力はかなりのものだろうし、倒してもここに落っこちまう」
「小町さんが戦ったら狂信者に存在がバレて潜入作戦がおじゃんになるっす」
「戦闘そのものを避けた方がいいみたいだね」
「じゃあ、あの邪竜が落ちる前にクラウザーの蘇生手段を探して制圧、それが出来次第すぐにビッグサイトを離脱するのはどうでしょうか?」
『あたいは黒子の案に賛成だ。当初の目的に添ってるし、狂信者を倒して全員生き残るにはそれしかない。
ビッグサイトが外だけじゃなく、内側も混乱している今がチャンスだ。
早いとこ探し出すよ!』

予想だにしてなかったギムレーの出現はピンチと同時にチャンスを影薄組にも齎した。
混乱によってまだまだ時間がかかるかと思った狂信者本拠地心臓部への近道ができたのだ。
ここから蘇生手段を探したり、エネルギーと溜め込んでいる何かを奪うか壊すかすれば影薄組は目的を達成でき、狂信者がなくなれば次の大災害から世界を救う道が大きく開ける。
時間との勝負ではあるが、確かに希望への道もできたのだ。

 ◆

468痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

469痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

470痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:19 ID:e/bigAbo0

突然の襲撃を受けたビッグサイトに対し、セルベリアは出撃を余儀なくされた。
ギムレー相手にはエースと言えど切歌たちで勝てる見込みは薄い。
そこで竜殺剣ドリスを持つセルベリアが向かうことになったのだ。

ビッグサイトの屋上からギムレーの翼に飛び乗ったセルベリアは、乗っていた翼を一枚切断した直後に邪竜の背中に飛び乗った。

「貴様はいったい!」
「クラウザーさんを信望する者、セルベリア・ブレスだ」
「この強さ……狂信者でも上位クラスの者か……!」
「この竜の上に平然と乗っている人間……おまえがこの竜にとって大事なキーマンであると見た。
 クラウザーさんのためにもSATUGAIさせてもらうぞ」

ヴァルキュリアが使用する槍の代わりに、ドリスを人間の方のギムレーに構えるセルベリア。
人間体ギムレーもまた周辺の雑魚は本体の竜に任せて、攻撃の妨害をしてくるセルベリアとの一対一の戦いを選択する。

(あの蒼い剣、竜を殺す力に特化しているのか!
あの剣のせいで僕の力は……厄介なものを!)

剣から帯びる力からギムレーはセルベリアの剣が竜殺しの力を持っていることを理解する。
これは大正解であり、竜殺剣ドリスはあらゆる竜の力を弱める剣。
難攻不落な結界を切り裂き、人知の及ばぬ存在であっても不死身であっても、それが竜であるならば殺せるレベルまで強引に引き下げる魔刀なのだ。
余談だが、ギムレーとは違うベクトルでチート能力の持ち主である竜が、都庁で創られた竜殺剣によって討たれている。
それほどまでに竜殺剣はドラゴンにとって危険なのだ。

(だが……戦闘力を完全に奪うまでの力はないようだ!
さっきは油断したが、今度はそうはいかない!)
「赤の呪い&華炎付き、ダークスパイク!」

利用できる限りのスキルで強化した闇の針をセルベリアに向けて放つ。
だが、それらはセルベリアにあっさりと躱され、次の瞬間には肉薄されていた。

「なに!」

そして次の瞬間には回避する余裕もなくギムレーの右腕が鮮血を撒き散らしながら宙を舞い、さらに追撃の蹴りがギムレーの腹に入り、床もとい竜の背中に叩きつけられる。

「くっ……! おのれえ!」
「遅いな、その程度の迎撃速度ならば見切るのは容易い」

更なる追撃を交わすために迎撃に闇の魔法を使うが、セルベリアはその攻撃を軽々と躱し、射程外まで逃げられてしまう。
戦いは仕切り直し……いや手傷を負わされただけギムレー側が大きく不利であった。

幸いなのはギムレーは右腕も切られても冷静な判断力を失ってなかったということだ。
次なる攻撃に備えて数秒で戦力分析を行う。

(スキルがほとんど発動していなかった……あの蒼い剣、ファルシオンよりも数段危険じゃないか!)

ファルシオンとは、邪竜に対して有効打を与え封印できる剣である。
だがセルベリアの持つ竜殺剣ドリスはそれ以上の性能を誇っているようだ。
ドリスによって攻撃に必中効果や攻撃上昇スキルはほとんど力を失っていた。
第一、普通に装備の持ち主ならばギムレーの背中に乗っただけで闇の力に引き裂かれて瀕死の重症を負うが、セルベリアは剣に保護でもされているのか、全くダメージを受けていない。
少なくとも今のギムレーの戦闘力は首輪をはめられた時と同じくらい能力が制限されていると見ていい。

(だが……それだけなら、僕の鉄壁の防御力がこんなに簡単に破られるハズがない。
あの女自体も、防御力を無効化するスキルを持っているとみた!
あと接近されたらきっついニオイがした。能力を底上げする強化系の何かを使ったな!)

471痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:45 ID:e/bigAbo0

その推測は正しく、セルベリア自身もまた、スキルやアイテムで強化をされていた。
まずセルベリアはドリスコルから借りた時間が進行しないシミュレーターや、倉庫にある悪魔の能力を永続的に上昇させる「力の香」「魔力の香」「体力の香」「速さの香」「運の香」を限界まで使い、レベルや能力をカンストさせるまでに強化。
そして体内に埋め込んだマガタマで「貫通」を手に入れたため、耐性の無視が可能になった。
ところが「貫通」のスキルが突破できるのは耐性だけで、高防御を貫くスキルではない。


しかしセルベリア自身もそれを知っており、自身が持つ戦闘力をより完璧にするための布石としていた。
そこで手に入れた特殊能力(パーソナルポテンシャル)、その名も『貫通攻撃』である。
『貫通攻撃』こそ防御力を完全無視し、どんなに硬くした相手でも被弾すれば紙のように貫くことができる。
反面、こちらは「貫通」と違って耐性は貫けない。

だがスキル「貫通」とポテンシャル『貫通攻撃』をかけ合わせれば、ギリメカラのような物理反射系防御を主体とした敵でない限り、防御力などあってないようなものと化す。
物理反射系の敵とあってしまった場合もヴァルキュリア固有の槍ビームで対処すればいいため、多くの敵を屠ることができる。
ここに竜殺剣まで加わればドラゴンキラー・セルベリアの完成である。

そしてもう一個、補足するとすれば……

「攻撃が全く当たらない……素早さに差がありすぎるのか!」

ギムレーのファルシオンなどの竜特攻武器以外の弱点を上げるとするならば、「機動力」の低さである。
低いと言っても格段に遅いというわけではないがこれは意外と大きく、手練からの攻撃はまず避けられず、攻撃に関しても追撃が間に合わないこともしばしばだ。
ギムレーはその弱点を必中や鉄壁のスキル構成で補い、回避がほぼいらないほどの反則級の命中率と防御力・火力を確保していた。
ところが完璧だと思われた戦闘スキル構成も竜殺剣で抑えられ、セルベリア自身のスキルで神装甲は一気に紙装甲に。
高い火力もまた、当たらなけらばどうということはない。
鍛えてなかった機動性の無さがここでは仇になってしまった。

「ぐっ、がはっ!!」

よって狂信者を追い詰めていたつもりが、今では一方的に追い詰められることになった。
僅か数分の間でほぼ無傷のセルベリアに対し、ギムレーは為す術なくボロボロにされていった。

 ◆

472痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:16 ID:e/bigAbo0

「一人で来たのが失敗だったな。」

竜の背中に倒れ伏すギムレーを見つめながらセルベリアは呟いた。
ギムレーは既に両腕を切断され、片足をもがれ、治療でもしない限り継戦は不可能であった。
少なくとも人間体のギムレーの方は敗北したのである。
本体はまだ残っているが、地上の狂信者との戦闘に手を裂かれており、そもそも加勢したところで戦闘が自分の背中で行われているため自分自身を撃つ危険があるため迂闊に手が出せなかった。
とはいえ、思考を司っている人間体が傷ついている分、本体もまた攻撃の手が明らかに緩まっていた。
おまけにドリスを持ったセルベリアが背中に乗っている分、邪竜の方も防御スキルを抑制されてモブ狂信者による打撃を受けていた。
人間に換算すると蚊に刺される程度の攻撃が、今にはキラービーの針に刺された並みの激痛となっている。


「クックック……」
「何が可笑しい?」

深い手傷を負わされても不敵に笑うギムレーをセルベリアは気味悪いと思う。
この笑いはテラカオス化した仲間を殺そうとした結果、仲間からの信頼を失ったことへの自嘲か?
最強だと疑わなかった自分がこうもあっさりと反撃を受けて無様に転がっていることへの失望か?
否。

「いや、気づいたのさ。
これだけボコボコにして、なぜトドメを刺さない? セルベリア・ブレス」
「……」
「おまえたち狂信者は恐れているんじゃないか?
僕を殺せば竜の方が落下してビッグサイトを本当に押しつぶし……クラウザーの蘇生手段を失わせてしまうことを!」
「……!」

よく考えてみれば、ギムレーを殺すだけなら人間体でなくても本体の竜の首を落とせばいい。
少なくとも今のセルベリアの能力ならそれが可能だ。
だが彼女は竜自体の攻撃も(初撃を除いて)、控えていた。
人間体に関しても手足はもいでも首や心臓のような急所は狙わなかった。

「おまえの目的は僕を殺害することじゃなくて時間稼ぎか制圧……リスクがある内は殺せたくとも殺せないハズだ!」
「……」

セルベリアは沈黙を貫いていただ、微かに眉が動いていたことをギムレーは見逃さなかった。
図星のようだ。
おそらく戦闘をしている裏で、ビッグサイト内部ではギムレーを追い返す手段か蘇生する装置をどこかへ移動する手段を考えているのだろう。
セルベリアがここに送られたのは竜への有効打を持つという他に、時間稼ぎができるということもあったのかもしれない。

(向こうが時間稼ぎをしたいのならば、それを利用してやる。
このワンピースに出てきそうな体型の爆乳脇みせ女を倒す策を考えるか、もしくはイチリュウチームに逃げる作戦が思いつくまで、こっちも時間稼ぎをさせてもらう)

セルベリアにも何かしらの弱点があるかもしれない。
もしくは逃げ道はあるかもしれない。
前者はともかく、後者はオシリスを助けられない状態でイチリュウチームの戻るとはやてがうるさそうだが、竜に関して共通の弱点となる装備があるのなら情報を持ち帰るだけでも損はない筈だ。
そのためにもまずは唯一無事な口を動かし、敵であるセルベリアとの対話を試みる。
この際、どう思われても構わない。
策が閃くまでの時間を稼ぐことが大事であった。


 FIGHT
 ESCAPE
⇒TALK
 AUTO 
 

「大災害以降、あらゆる蘇生魔法が使えなくなったというのに。
おまえたち狂信者は本当に死者が、クラウザーが生き返ると信じているのか?」
「『さん』をつけろ」
「げふっ!」

473痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:44 ID:e/bigAbo0

ギムレーの腹にセルベリアの蹴りが入る。
これもまた死なない程度に手加減されているが、いつタガが外れて本気の蹴りになるかわからないので(不本意ながら)ギムレーはクラウザーをさん付けで呼ぶようにした。

「蘇生は可能だ。
詳細は話せんが、実際に冥府への扉を開くことができた。
その時はクラウザーさんを見つけらなかったがな」
「ほう、眉唾じゃなきゃだが、それはすごい。で、今は開けないのか?」
「一度の発動に大量の生贄が必要なのだ、一度開いたら大量の生贄を狩りなおしていく必要がある。
専門家の見立てだと生き返れるのは一人だけ。クラウザーさん以外は生き返れると思うなよ」

あくまで重大な内容は話さない範囲でセルベリアはギムレーに向けて話す。
話にはいちおう応じてるようだが、警戒は一瞬たりとも怠っておらず、ギムレーに剣は向けたままだ。

「随分、熱心なようだけど、クラウザー…さんがそれで喜ぶと思うのか?」
「それは生き返してみないことにはわからんし、喜ばれるなら我々は感無量。
嘆かれたら大人しくクラウザーさんに土下座した後に自分をSATUGAIするさ」

「……それに、私たちが生きがいを見つけるにも、死にがいを見つけるにもクラウザーさんの歌が必要不可欠だからな」
「おまえたちはそこまでしてクラウザーさんに頼らないと生きていけないのか?」
「否定はしない。
狂信者というのは元々ファンであった者の他にも、多くが大災害や殺し合いで大切な物を失った者だ。
私も日本に難民としてやってくる前は一軍人だったが、祖国も守りたかった人も全部失った。
もはやクラウザーさんの歌なしでは生きていくことも死ぬことの意義も見つけられない。
おまえたちが殺した天子も同じだ。
クラウザーさんという希望があったからこそ、あの方一人のために命を投げ出せた」

セルベリアはいつしか狂信者の信仰の意味について熱く語っていた。

「それが手を血に染めることであってもか?」
「それが例え手を血に染めることであっても、人は希望なしでは生きていけない。
狂信者とは本質的に弱者だ……おまえのような強者にはわからんだろうが、何かにすがらないと生きていけない。
強者ならば仮に殺し合いが終わった後の世界でも生きているだろうが、狂信者は違う。
クラウザーさんがいなければ、殺し合いがあろうがなかろうが、生ける屍となり死ぬことに意味も見いだせなくなる。
だからこそクラウザーさんからは何を言われようとも構わない覚悟で生き返さなければならないんだ」
「他の者から大切な者を奪ってもか?」
「そうだ。
狂信者は悪と罵られても構わないし、恨んでくれてもいい。
だが、全ての希望であるクラウザーさんを否定させたり、蘇生を妨害することだけは絶対に許さん」
「うへえ……すごい狂信ぶり」
「褒め言葉として受け取っておく」

ギムレーはセルベリアの狂信ぶりに驚く。
ヒャッハー集団なので全員がセルベリアみたいな理想を掲げて殺しをするタイプとは思えないが、理性を持ちながら「狂っている」者もいるようだ。

「フンッ、大層な御託だけど、殺し合いを使って利益を得ようとする奴に良いように利用されているだけじゃないか?」
「なに?」
「盲目的にクラウザーさんに尽くしているみたいだが、視野の狭い奴は利用されるよ……殺し合いを利用して利益を得ようとする奴……周りに身に覚えがないかい?」



「…………」
「あれ? って、ぎゃああああああああああああ!!」

直近に喋った言葉が何かの逆鱗にでも触れたのか、近くにあったギムレー(竜)の鱗を強引に剥がされた後に四方を囲むように閉じ込められた。
鱗でできたテントの中にはセルベリアも一緒だったが、中で仲間の狂信者にも見せられないほど凄惨な拷問でもするつもりなのか?

(ヤバイ、地雷踏んだか……?)

セルベリアの表情には鬼気迫るものがあった。
比較的冷静だとはいえ所詮はイカれた狂信者。
一度プッツンさせてしまえば、暴走して殺しに来ることは目に見えている。
言葉選びをミスしたと思ったギムレーだったが、それを後悔する前に、重い物がドンッと落ちた。



「え……?」
「おまえを殺すのはもう少し先だ。
テラカオス、カオスロワちゃんねる、聖別……この中で聞き覚えのある言葉はないか?」

ギムレーの目の前に落ちたのは半分に割れた魔理沙……テラカオス化した参加者の骸。

ギムレーの誤算は、狂信者であるセルベリアが情報交換を求めてくるとは思わなかったことだ。


 ◆

474痛みの唄:2019/10/04(金) 13:31:03 ID:e/bigAbo0

一方その頃、影薄組の眼前には黄泉レ○プマシンがあった。
影が薄いという天然潜入スキルのおかげでここまで誰にも気づかれずに近づくことができたのだ。
だが、ここで障壁にぶち当たる。

「参ったな……」
「どうしたの? 早くこの機械を止めようよ」
「それが……この機械を停止させるには狂信者の上層部の生きた網膜が必要みたいなんです」

黄泉レ○プマシンを稼働させたり安全に止めるには、網膜認証式で生き残っている上層部の人間……すなわちディーやセルベリア、ドリスコルの網膜が必要だったのだ。
ドリスコルは都庁に出撃、約二名は戦死しているため、影薄組は実質ディーかセルベリアを生きたまま捕まえないといけない。

『破壊はできないのかい? バーンと爆発させるんじゃなくて配線を切って故障させる程度に』
「ダメだ、配線が複雑すぎてどれを切れば良いかわかんねえ!」
「やめた方がいいっす、素人が超巨大な時限爆弾を解除するようなもんすよ」
「しかも、上層部が全員死亡しても自爆する仕組みになっているようです」
「なんでわかるの黒子くん?!」
「そこに説明書が放置されてありました……あ、さっき言った方法以外の止め方は書いてないですよ」

ハッカーや技術者を連れてこなかったこと――というか極制服なしだと戦闘力も潜入能力も発揮できない犬牟田しかいないのだが――がここにきて仇になってしまった。
影薄組がどうしても狂信者を挫きたいのならばこのビッグサイトにいる上層部の二人の内一人を連れてこないといけなくなった。

『仕方がない、セルベリアは邪竜と戦っているようだから戦い終わるまで待つか、部屋という部屋を洗いざらい探してディーを見つけるしかないね』

小町の言葉により、一行は仕方なく手の付けられない蘇生装置をあとにしビッグサイト中を探索してディーを探すことにして、生け捕りにするために。

そこで一行は何かを発見する。

「待って小町さん、格納庫の方から何か出てくるっす!」
『なんだいアレは? やけにデカイが……』

窓の外には赤くて巨大な何かが稼働していた。
 
 ◆

475痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:06 ID:e/bigAbo0

わざわざ傷つけて鱗を引っペがしたのは、二人にとって不都合な存在に情報を交換していることを気づかせないため。
漏洩に危険を防ぐために即席のテントを作ったのだ。

その中で二人は情報交換をし、お互いが知りえない情報を知り得たのだ。


「大災害の原因は蒼という未知の物質で、二度目の大災害が世界に迫っている……テラカオスは滅びを吸収して防ぐための存在。
一見すると意味不明な怪文書・救済の予言はテラカオスによる世界救済を確実なものにする手段。
主催は滅亡を防ぐために殺し合いを開催したが、「提督」はそれを利用して滅びの力を手に入れ、宇宙の絶対的な支配者になろうとしているかもしれない、か」
「提督に行き着く鍵は『悪魔』『科学都市ニルヴァーナ出身』、ここまでわかれば正体をしぼり込める!」

オオナズチが都庁にイチリュウチームが合流してから教えれば良いと思ったためか、竜殺剣や艦むすの件をドラゴンネットワークでギムレーに教えなかったため、流石にセルベリアが今、手に持っている剣が黒幕もといサーフ・シェフィールドが
使っていたものとは見抜けなかったが、尻尾を掴むための布石としては大きな前進であった。

「沖縄の異常気象も、原因は蒼によるもの……クラウザーさんの怒りだというディーの言葉はやはり間違っていた」
「これはクラウザー…さんの復活を望む君たち狂信者にとっても由々しき事態だろう。
復活させたところで二度目の大災害でクラウザーさんごとお陀仏だ。
しかも冥府の入口である死者スレも進攻を受けているときた」
「クラウザーさんもこのままでは……」

セルベリアも狂信者が暴れている裏で世界滅亡が目前に迫っていることまでは知らなかった故、衝撃を受ける。
このまま無軌道に生贄を狩り続けたところで誰にとっても未来はない。
先ほどセルベリア自身が述べた希望も黒幕に利用された挙句に失うことになるだろう。

「言っておくけど、僕がここに来た目的はあくまでオシリスの奪還であってビッグサイト破壊やクラウザーさん蘇生阻止じゃない。
関東を根こそぎ滅ぼす誘爆も不本意だし、本当は耐えられない。
君相手に僕一人では勝てないのは十分に分かった。
セルベリア、オシリスを返してくれないか。
せめて捕まえたという名目でビッグサイトに入れるか、ここは見逃してくれないか?」

ここでギムレーはセルベリアに交渉を測る。
オシリス奪還は絶対、ビッグサイトに入れれば狂信者の中に黒幕が紛れている場合は捜索ができ、見逃してもらっただけでも有用な情報を味方に持ち帰ることができる。

「馬鹿な貴様は敵だぞ、ビッグサイトに入れるわけがないだろう。
ちょっと対話したからって信用を得たなどと誤解するんじゃない!」

ビッグサイト侵入に関してはピシャリと言い放たれた。
まあ、侵入して黒幕探しならまだしも蘇生手段をついでに破壊される危険があるので当然と言えば当然である。

「……だが、一つ言っておくと、おまえが探し求めていたオシリスの天空竜はここにはもういない」
「じゃあどこに? 生きているのか?」
「残念だがもう死んでいる。加工された兵器は都庁との戦闘に投入された。
今頃、多くの魔物をSATUGAIしているだろう」
「そうか……」

彼女の話に嘘がなければオシリスはこの世にいないようだ。
だがそれは都庁及びドリスコルの部隊の手元にあるらしく、オシリスの力だけならばイチリュウチームと合流してから都庁と共に取り戻すことも可能。
ひょっとしたら既に合流した都庁かチームが狂信者から奪還した可能性さえある。
ビッグサイトに執着する意味は、現状では、なくなったのだ。

「では、見逃すのは……?」
「おまえが撤退したという体を取るならば、見逃してやってもいい」
「トホホ……この邪竜ギムレーが負けを認めろというのか」
「私情はない。
ここでおまえが私に打ち負かされ、やむなく退却したという形をとらないと内通を疑われ、私は他の狂信者から疑われる。
そうなるとディーの真意も探れないし、最悪ビッグサイトに提督が潜んでいた場合は警戒されて逃げられる、我慢しろ」

セルベリアは退却に関しては了承した。
蘇生したクラウザーさんが大災害で結局死に、黒幕が嘲笑うぐらいならば、目先のSATUGAIは後回しである。

476痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:46 ID:e/bigAbo0

「言っておくが私は、私たちはクラウザーさんの蘇生は絶対に諦めたわけじゃない。
黒幕さえ討伐し、大災害さえどうにかなったのならば次はお前たちだ。
次は勝てると思うな。我々はされに対策を洗練し強くなり、最後の一人まで戦うつもりだからな」
(……ああ、僕もおまえらを許したわけじゃない。
ここは負けを認めるが、次に敵として戦った時は根絶やしだ)

ギスギスした空気ではあるが、情報交換と交渉自体は恙無く終わり、セルベリアは鱗のテントから出ていこうとする。
本当に見逃してくれるようだ。





「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!?」

セルベリアが邪竜の背から飛び降りようとした瞬間。それは起こった。
突如、ギムレーが竜体・人間体含めて苦しそうに叫び出したのだ。

「ギムレー!?」

セルベリアが咄嗟に振り返るとギムレーの体から鮮血が噴き出していた。
それは器である人間ルフレだけでなく、今彼女が足場にしている本体である邪竜ギムレーからも…‥



『時間を稼いでくれてありがとう、セルベリア』
「その声は……ディー!」

セルベリアが地上の方を見ると、真紅の鎧をまとった異形……ディーの真の姿であるウィツァルネミテアがビッグサイトを背に顕現していた。

『ようやく、私の切り札であるネオ・ジオングスーツが完成したよ』

ネオ・ジオングスーツと名付けられた機械鎧をウィツァルネミテアは纏っている。
その大きさは元々のウィツァルネミテアとアーマー(ハルユニット)の分を含めて100mにも及んでいる。
ただそれだけではない、アーマーの背部からは光る黄金色のリングのようなものが出ていた。

『見せてもらおうか、サイコシェードの性能とやらを』

光輪・サイコシェード発振器から放たれた目に見えない力がギムレーの肉体を引き裂いていく。
しかもセルベリアの手元に竜殺剣があるとはいえ、彼女相手以外にはまだまだ堅牢な防御力を持っているにも関わらず、スキルや防御力が全く機能していなかった。
一方で、おそらく射線上に立っているハズのセルベリアは無傷。
この超常現象に二人は思わず同じことを口走る。

「「これはいったい……!?」」
『これが私の真の力……願いを叶える力。
それに思念に感応して力を増大させるサイコ・フレームの共振が呼び起こした奇跡の力だ!』

ディーもとい大神ウィツァルネミテアの隠された能力は「あらゆる願いを叶える力」。
その気になれば不老不死や、凡人に神の知恵を授けることさえ可能にしている。
そしてホモ共が乗っていたユニコーンガンダムに搭載されていたものと同じサイコ・フレーム。
乗り手の精神次第では大多数の機械へのハッキング、果てはコロニーレーザーや超巨大隕石さえMS一機で跳ね返してしまう奇跡を起こせる機構。

477痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:25 ID:e/bigAbo0

「バカな……そんなもので……神の出来損ないと機械如きに……ギムレーがやられているというのか?」

ギムレーは口惜しそうに呟く。
だが実際、抗う術もなく、ギムレーはたった一体の異形に追い込まれていた。

『ああ、今の願いはクラウザーさんを敬わない者の完全抹殺。
それをサイコシェードで実現しようとしているのだ。
故に仲間である狂信者を傷つけずに、君だけ殺すことも可能。
さらに相応の思念さえあればあらゆる耐性や防御力、スキルさえ無力化してSATUGAIもできる』
(だから私は影響を受けないと言いたいのか…?)

セルベリアが影響を受けていないのは、ひとえに彼女が狂信者であり、意図的にディーが殺さないようにしているためである。
実際のネオ・ジオングも相手武器だけ破壊してパイロットや機体にダメージを与えなかった。
サイコシェードによる攻撃を受けてもギムレーだけ殺してセルベリアだけ助けることも可能なのだ。

「だが、神とはいえ所詮は一人……混沌を食らう邪竜相手にここまでの力が出せるわけが」
『私だけの願いじゃないさ……おまえが先ほどまで見下ろしていた地上を見てみるが良い』
「……これは!」

ギムレーは竜側の瞳を持って、眼下を見る。
そこには先ほどまで絶望の表情を浮かべていた大量のモブ狂信者たちが……


……今では希望の表情を浮かべて、処刑されるギムレーと執行人のディーを見つめている。

「この思念は希望!? バカな!
こいつらは邪竜である僕を全く恐れなくなったというのか!?」
『そのとおりだ。君は我らDMC狂信者に絶対的な恐怖を与えに来たつもりだが。
セルベリアのおかげで、皆が希望を持てたようだよ』
「私が……」
『ありがとうセルベリア。
君がたった一人でギムレーをレ○プしてくれたおかげで、我々は強大な力を持つ邪竜にさえ優位に戦えると証明してくれた。
狂信者の絶望は裏返って大きな希望になった!』

ギムレーはビッグサイトに来た時に圧倒的な力で狂信者の多くを絶望の淵に叩き落とした。
だが竜殺剣を持ったセルベリアというイレギュラーにより、逆に圧倒されることになった。
それを見ていた観客である大量のモブ狂信者は強大な敵にさえ勝てる「ショー」を見たことで希望を持ったのだ。
今や狂信者のボルテージはギムレーがここにやってきた以前の倍ぐらいに膨らんでいる。
希望と絶望は裏返った時の落差が激しく、一度絶望しかけた彼らがセルベリアの活躍により希望側に裏返されたのである。


『正直、モブ狂信者は何人いても弱い。大半は素人の寄せ集めばかりだからな。

だが、このサイコフレームの力さえあれば彼らの数は力となる。
しかも死んだ者の残留思念さえサイコフレームは力にできる!
数千数万の狂信者の想いによってネオ・ジオングと私は最強の兵器に昇華されたのだ』

モブ狂信者は膨大な数があるが、いくら鍛えても上位のネームド参加者を越えることはできない。
端的に言えば一斉に襲いかかっても理不尽級ならばまとめて皆殺しにさえできるだろう。
しかし、だ。
思念には物理的限界がなく、思念が大量かつ統一されているならば、サイコフレームの放つサイコフィールドはより強固なものになる。
塵も積もれば山となり、それが邪竜の力をも凌いでしまったのだ。

478痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:50 ID:e/bigAbo0

「これが絶望の思念だったならば……く、邪魔を! 身動きが取れない!」
「「SATUGAIせよ! SATUGAIせよ!」」

ギムレーはなんとかサイコフィールドから抜けだそうとするが、モブ狂信者たちの砲撃が逃走を阻む。
先程まで失いかけていた士気は、もはや取り戻した分を越えて爆増していた。

「待てディー! ギムレーを殺したら……!」
『ビッグサイトへの落下なら心配するな、そうはさせないように完全消滅させる。
セルベリアはそろそろ脱出したまえ、サイコフィールドはともかく、ギムレー自身の消滅に巻き込まれるぞ』
「くっ……!」

セルベリアとしては黒幕である提督を探すための鍵として、内通者となるギムレーは殺したくなかったが、ディーや狂信者は聞く耳持たないだろう。
むしろ内通していることを明かしたら彼女も裏切り者と見なされてサイコシェードによって潰されるため、竜殺剣をディパックにしまいこむ素振りさえできなかった。。
クラウザーさんの蘇生に貢献することもなく、黒幕に一矢報いることさえできないまま死ぬのは不本意であった。
ギムレーの存在は惜しいが見捨てるしかあるまい。

「…………すまん、所詮は敵同士だ」

セルベリアはギムレーに振り返ることなくビッグサイトへ降りようとする。


「ははは……本当に大した狂信だよ……もはや神にさえ崇められるクラウザーが羨ましい。
勝利の差は信望の差か……これに関しては敗北を認めてやってもいい……」

去りゆくセルベリアにしか聞こえない声で、ギムレーは自嘲げに彼女に向けて呟く。
セルベリアの足が降りる直前でピタリと止まる。

「だが、おまえたち狂信者の目は信仰で曇りすぎている。
このままだと提督に足元を掬われるだろうな。

クラウザーへの信仰をやめろとはいわない。
だが、蘇生や救済の予言を完遂する前に提督を見つけだして必ず殺すんだ。
でないと、狂信者だとうと何だろうと関係なく……クラウザーを含んだ全てが未来を失う……」

セルベリアはそれだけ聞くと、ビッグサイトへ降りていった。

「皮肉だな……最後に黒幕殺しの役目を任せるのが狂信者になるなんて……」

ギムレーは自嘲する。
もはや体はサイコフィールドの重圧でくしゃくしゃになっており、人間だったらとっくに死んでいるレベルである。

(僕はどこで間違えたのか……
チームの誰かを連れて来るべきだったか?
いや、セルベリアの話を信じるならばオシリスの骸は都庁にある。
そのままチームとは別れずに都庁へ向かうべきだったか。
いや……誰かと相談したりせずになのはを殺そうとした時点で……今更だな)

瀕死の身で自身の行動を省みるが、たらればにしかならない。
ただただ悔しかった、この悔しさは対主催が大災害と提督を打ち破ってくれると信じないと晴れない。

「エラーを取り返したかったが、ここで退場か……こんなところではなく、チームが優勝するのを見届けたかったよ」

最期の言葉は、邪竜ギムレーの本心からの言葉であった。




無論、それらの言葉はディーには届いていない。

「坊やにひとつだけ言っておこう……
君は間違いなく強敵だったが、我ら狂信者の希望(きょうき)を侮りすぎのがいけないのだよ」

ディーはサイコフィールドでギムレーの巨体を東京湾の沖にまで誘導し、果実のように潰した後、大爆発を起こさせた。
その爆発はビッグサイトに被害を与えることなく、ディーは右腕を振り上げて狂信者たちに高らかに勝利宣言をした。
そのままウィツァルネミテアは鎧ごと格納庫へしまわれていった。


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒 死亡確認】


 ◆

479痛みの唄:2019/10/04(金) 13:34:49 ID:e/bigAbo0


画して、邪竜に勝利した狂信者であるがセルベリアの面持ちは晴れていなかった。
竜殺剣ドリスを片手に一人物思いにふける。
思い返すはつい先ほど死んだギムレーの遺言、このまま狂信者が進んでも未来はないということ。

(いったい提督はどこに潜んでいる……もっと情報を、誰かヒントを教えてくれ……!)

セルベリアの中で焦りが募っていく。
しかし完全な味方と言える存在は切歌やレジーナだけ。
あとは提督の疑いがあり、最悪モブ狂信者でさえある可能さえあるのだ。
手詰まりか? そう思った矢先である。

「!」
「チィッ!」

瞬間、背後から殺気を感じたセルベリアは咄嗟に竜殺剣で防いで凌ぐ。

「おまえは……小野塚小町!? なぜここに!」

セルベリアに剣を向けたのは、サイファーを持った小町――かつて自分を敗北に追い込んだ相手である。
小町はどこかで拾ったローブを被っていたが、その顔と特徴的な赤い髪に爆乳を見間違えるハズがなかった。
両者は殺気と戦意を込めて、竜殺剣とサイファーで鍔迫り合い、ついでにお互いにでか過ぎるバストをぶつけあう。

「セルベリア・ブレス……!」
「小町ちゃん!!」
「もうひとりいる!」

追撃するように、エンシェントソードを握ったあかりが側面から襲いかかるが、セルベリアは冷静にヴァルキュリアの槍を左手に具現化して防ぎ、剣と槍の二刀流による回転切りで小町とあかりを突き飛ばし、戦闘を仕切りなおす。

「セルベリア! なんでおまえさんが悪魔の力と竜殺剣を持っている!!」

小町が怒りと共に発した言葉。
その怒りの理由は世界に神々を殺して大災害を招いた悪魔がこの世に数点しかないハズの竜殺剣を持っていたからである。

 ◆

「ぐはッ!」

格納庫にて、ネオ・ジオングスーツを脱ぎ、人間体に戻ったディーは血を吐いていた。

「大丈夫ですかディー?」

心配そうな面持ちで、狂信者の技術主任であるサーフは倒れそうになったディーの体を支える。

「これは願いを叶える力の代償か……君の技術のおかげでできるようになったとはいえ。
よもや自分に使って代償を支払うことになるとはな」

実はウィツァルネミテアの願いを叶える力とは簡単に行えるわけではなく、代償があって初めて行使できるのだ。
例えば不老不死の願いならば死ねない代わりにスライム同然の姿と知性になってしまい、神の知恵が欲しいならば自我を失う必要がある。
だから他の狂信者や敵対者にも、この力はいままで殺し合いで使ったことはない。
もちろん、クラウザーさんの蘇生は不可能である。

そして「ギムレーをSATUGAIする」願いを叶えるためにディーは自身の魂の力を代償にし、サイコシェードを通して願いを叶えたのである。

「サイコフレームと数多の狂信者による思念の後押しがなければ、ギムレーより先に私が死んでいただろう。
それだけに完成を急いでくれた君や狂信者たちの熱いクラウザーさん愛に感謝しなければなるまい」

どれか一つでも欠けていたらネオ・ジオングスーツは究極の兵器とは言えないのだ。
余談だが、このサイコシェードのエネルギーをクラウザーさんの蘇生装置に回すことはできない。
精神を扱うため、エネルギーが不安定すぎるためである。

「サーフ、次にこのスーツを使用できるのはどれくらいかかる?」
「やむを得ない事態だったとはいえ急ごしらえと無理矢理な稼働でサイコフレームはガタガタ。
確実に稼働させたいなら早急なメンテナンスが必要です。見積もって三時間は必要かな?」
「二時間で終わらせてほしい」
「はい」
「まだ完成には至ってないことを気取られたら戦いは厳しくなる。
イチローたちも後に復讐にビッグサイトにやってくるのは目に見えている。
その前に完成させてほしい」
「わかりました」

ネオ・ジオングは辛うじて動かせるだけで完成はしていない。
しかし、完成したら最後、残る参加者を皆殺しにさえできる超兵器となりえるだろう。
相手の実力に関係なく、先に撃てれば敵の殲滅を約束できる核兵器……いや、味方だけ影響を受けないようにすることができるだけ、核兵器よりも有用な兵器を手に入れたのだ。

ただし、乗り手であるディーの魂を弾丸にしてしまうが。

480痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:13 ID:e/bigAbo0


「しかし無茶をしてくれますね。
一度失った魂の力は戻らない……最悪、あと一回でも使うと死ぬ可能性さえある」
「クラウザーさんの蘇生が叶い、あの方の敵を滅ぼせるなら構わんさ」
「あなたがいなくなったら誰が組織を率いるんです?」
「セルベリアに任せるよ。
狂信者敗北時の自爆にこそ反対されたが、それは彼女が真面目な証でもある。
引き継がせるなら最も信頼のおける人物だ」

ディーは自分がいなくなったあとのことも考えており、跡目としてセルベリアを推していた。
彼本人としてはセルベリアを信用しているのだ。

「……私は引き続き、司令室から狂信者たちに指令を出す」
「医務室にはいかないのですか?」
「時間が惜しいし、どうせ魂の傷は治らん。
君はスーツのメンテナンスを急いでくれたまえ」
「了解しました」

ディーはそれだけ言うと、ヨロヨロと自室へ戻っていった。
見送ったサーフは作業に戻りつつ、静かにほくそ笑む。



(せいぜい、手のひらで踊ってくれよディー)

この男こそ、クラウザーを間接的に殺害した元凶であることをディーは知らない。

(ネオ・ジオングスーツ……悪いが僕にとって有益になるように細工させてもらったよ。
僕や翔鶴に深海棲艦はもちろん、九州ロボに野球チームやテラカオスには効かないようにセットさせてもらった。
思念を操るとはいえどうせ機械だ。僕には制御可能だ)

他の参加者はもういらないので一掃されても構わないが、自分や自分にとって有益になる存在まで根こそぎ殺されるとサーフにとってはよくないので、予め細工を施されていたのだ。
なお、ギムレーはひとりで行動していたためプログラム的にはチームから脱退したと認識されたらしく、もし誰かがついてきていたら、チームにまだ残留されていると見なされて死なずには済んだかもしれない。

(ギムレーがひとりでやってきた時は流石に冷や汗かいたが、なんとかなかったな。
さて、ギムレーのせいでカオスロワちゃんねるが手付かずだ……1時間で戦況がどこまで変わったか調べねば)

サーフは凝った肩を鳴らしつつ、巨大スーツの整備を深海棲艦たちに任せて、自分は秘密の部屋でカオスロワちゃんねるの管理運営に戻った。
自分にネットのチカラで状況をコントロールせねばなるまい……そして不都合な情報は早急にシャットダウンせねば。と思いながら。



サーフと入れ替わるように、格納庫のとある通気口から三人の男女が現れた。
だが彼らは格納庫の狂信者たちに存在が気づかれることはない。
ステルス体質だから。

「……あれですね」
「ウィツアルなんとかは乗っていない、今が破壊のチャンスっす」
「モモは爆弾になりそうなものを探してこい。
俺と黒子はあの機体を調べて壊しやすいポイントを探す」

日之影、黒子、モモの三人はネオ・ジオングアーマーを破壊するために格納庫まで潜入してきていた。
あの兵器の威力はギムレーとの戦闘で目の当たりにしてきた小町たちは、黄泉レ○プマシンの停止と合わせて破壊を決意した。
那由多の狂信者の精神を得たサイコシェードとディーは最悪フォレスト・セルさえ殺害を可能にする超兵器だ。
フォレスト・セルが喪失したとなれば救済の予言は完遂失敗であり、世界は大災害によって滅ぶ。
そうならないために破壊を決意した。

幸い、使ってすぐに格納庫にしまいこんだところからして、機体は未完成かなんらかの事情により長く使うことができないだろうと影薄組は予測。
そこでセルベリアを拘束する班とネオ・ジオングを破壊する班に別れたのだ。

小町とあかりによるセルベリア捕縛からの黄泉レ○プマシンの停止。
日之影・黒子・モモによる超兵器の破壊。
果たしてうまくいくかは「神」にさえわからない。


 ◆

481痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:47 ID:e/bigAbo0

一方その頃、切歌とレジーナコンビはギムレーによる混乱を生き延びていた。
しかし一緒についていたサイドバッシャーは粉々に破壊されていた。
ギムレーの攻撃による流れ弾の直撃を受けたのだ。

「サイドバッシャーが!」
「また仲間を喪ってしまったデス……」

相手は支給品の機械とはいえ、仲間の死に悲しみの感情を覚える二人の少女。




(クックック、俺が真理と結婚する前に死ぬと思うなよ)

どっこいサイドバッシャーを破壊されても草加は生きていた。
厳密にはサイドバッシャーが破壊された直後にベルトであるカイザギアに憑依し、死者スレ送りを防いだのだ。

(おのれギムレー……と言いたいところだが、セルベリアたちが倒してくれたからヨシとするか。
やっぱり俺を傷つける奴は死ぬべきなんだ。

……それはともかく、あのネオ・ジオングスーツとやら異様に強かったな。
もしかしてグレートゼオライマーより強いんじゃないのか?)

ベルトさんみたいになった草加が新たに目をつけたのはサイコシェードを持つ、ネオ・ジオング。
あれに憑依すれば提督をぬっころして全世界を掌握することも不可能ではあるまい…と草加はみていた。


(決めたぞ、次はアレに憑依する! 切歌! 早く俺をひろ……ぷぎゃ!?)


野望を燃え上がらせていた草加入りカイザギアは何者かに踏まれて大破した。

「いてててて、なんかやけに硬いゴミ踏んでもーた」
「あなたは……」
「まっちゃん! 生きてたんデスね!」
「ああ、なんとかな。
クソ竜の攻撃を受ける直前に脱出して致命傷だけは避けたで」

松本はまだ生きていた。
直感でまずいと思った松本は大日本人との接続を切って項から脱出。
巨人の変身者特有の再生能力で死は回避したのだ。

「それよりも再会を喜んでる暇はあらへん!
すぐにビッグサイトの中に向かわへんと」
「え……どうして?」
「脱出する時、空中から一瞬見えたんや。
赤毛のツインテールがビッグサイトの玄関口にいたところ
……アレはたぶんネット上で名が上がってる乳神や」
「乳神……小野塚小町が!?」

松本の言葉に切歌もレジーナも驚く。
彼は偶然にも移動の為に一瞬だけしか召喚されなかった小町の姿を目撃したのだ。

「まさかギムレーの方は陽動……?」
「可能性は0じゃあらへん。
なんにせよ乳神は敵や、すぐに見つけ次第殺害せんと浜……クラウザーさんの蘇生装置が破壊される危険があるで!」
「そんなの許せないデス! ビッグサイトに急ぎましょうデス!」

482痛みの唄:2019/10/04(金) 13:36:15 ID:e/bigAbo0

新たなる敵の出現に切歌たちはビッグサイトへ急ぐ。
幸い、施設からはさほど離れていない。
仮に小町が何をしようとしてもまだ間に合うはずだ。

(クラウザーさんの蘇生を誰にも邪魔させないですよ、邪竜にも乳神にも!)
(クラウザーさんが蘇らないならマナのいない世界で私はどうやって生きていけばいいの? そんなの辛すぎるよ)
(浜田の蘇生のためにはどうしても装置が必要なんや! 邪魔する奴は死んでもらうでえ!)

それぞれの想いを抱きながら狂信者たちは走る。




(くっそう、やってくれたな松本めえ! ネオ・ジオングに憑依できたらいの一番に殺してやる!)

どっこいカイザギアを破壊された草加はしぶとく生きていた。
厳密には切歌たちには見えない霊魂となって彼女たちの周囲を漂っている。

(だが、切歌たちが俺が死んだと思い、ビッグサイトの中に向かっているなら好都合。
このまま格納庫の近くまで案内してもらってネオ・ジオングに憑依する……計画は完璧だ)

執念深い草加は何度壊されても諦めることなく、ネオ・ジオングの憑依と自らの蘇生への野望を燃やす。

(次はあれに憑依するか!)

彼が目につけたのは切歌のもつ鎌「イガリマ」だ。
超兵器憑依までの繋ぎとしてとり憑くにはちょうどいいだろう。

(さあ、俺の能力で    ピシッ      あれ?)

だがイガリマにとり憑いた瞬間に異変は起こった。
草加自身の霊魂が砕け始めたのだ。

彼は忘れていた……テラカオス化によって得た無機物への憑依能力を使えば使うほど、魂の力を失っていくことに。
眼魂・サイドバッシャー・カイザギアと憑依を短期間に繰り返した結果、彼の魂の寿命は急激に削れてとうとうゼロになってしまったのだ。


(そんな……俺がこんなところで……誰か助けてくれ!

こんなの嫌だ……全部全部、乾巧のせいだああああああああああああああああ!!!)



誰にも聞こえない叫び声をあげながら、誰にも知られることなく913の男は消えた。
消滅した時間が22時9分13秒だったりはしない。






【草加雅人@仮面ライダー555 消滅】
※物語がどのような結末を迎えても復活できません
※今年から913の日はなくなりました

483痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:06 ID:e/bigAbo0




【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト内部】

【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:戦況をチェックしたいので司令室に戻る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:ひとまずカオスちゃんねるのチェックに戻る
1:今は狂信者のフリをしてディーに従う
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました

484痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:28 ID:e/bigAbo0


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました


【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト屋上】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:小町を倒す
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:大災害の元凶である提督だけは絶対に殺す
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
  そろそろ、あいつらヤバイ気がしてきた
6:ゼロという男に対しての疑念
7:このままだと狂信者にも未来はないか……
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※ギムレーとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の存在を知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    あかりのCOMPの中
【装備】サイファー@ストライダー飛竜
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:セルベリアを倒して捕獲する
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
6:悪魔の力に竜殺剣……セルベリアは何かを知っている!?
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)
※予言やテラカオスの真実を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせる!
1:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
2:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
3:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
4:まさかセルベリアが大災害の元凶……?
※予言やテラカオスの真実を知りました

485痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:51 ID:e/bigAbo0



【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト近く】


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(中/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町を殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません

486何が可笑しい!!:2019/10/06(日) 00:33:04 ID:YGO.fsHI0
投下乙です
ここでギムレーがやられたか……
戦力面でも考察面でもかなり痛手だけど、セルベリア達に与えた影響は相当大きい
監視の屍兵消滅でアナキンも気が付くだろうけど、どうなるやら

487 ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:10:42 ID:RpHoSSuk0
投下します

488死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:11:26 ID:RpHoSSuk0
『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
(考え中)        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火(負傷中)   1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


               拳 1-1 聖

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



第三回の攻防が始まる……まずは表・拳王連合軍の攻撃。
ここでもメジャーリーガーでもあった高津のピッチングが猛威を振るった。
まずは剛速球で上条・シャドーマンタッグことイマジンスレイヤーを完封。

『アイエエエエエエエエエエ!
 プロの投球はニンジャ反射神経やニンジャ運動能力を凌ぐと言うのか!?』

敗れたジョジョに続いてディオとデューオがクロスフュージョンして挑む。
ザ・ワールドによる時間停止は対抗手段を持たぬ高津には有効……かに思われた。

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?
球が重すぎて全然動かないぞ!!」

無駄無駄ラッシュの如くバットを叩き込むが投球はビクともしなかった。
投げられた際のパワーが桁違いであり、ディオの腕力では力不足だったのだ。

「こ、こうなれば…奥の手のデューオーバーヘブンで……」
『やめておけ、まだ試合も中盤なのに倒れてしまうぞ。
回復のアテも少ない、後にはイチロー・ドラゴンズの奴らも控えているのに最悪ここで再起不能になるのは勿体無い』
「くっ……今は機ではないということか」
『そういうことだ、使いどきは今じゃない。見送ろう』

リオレウス戦で発揮されたディオ最強の技「デューオーバーヘブン」による一分間の時間停止ならば、千を越えるバットのラッシュで高津の球を飛ばすこともできるだろうが、使用には極大クラスの疲労というバックファイアがデカすぎた。
一発のために博打を打つよりも、戦場に長く残り時間停止能力を安定して使い続けるために、ディオは「勝つために逃げる選択」をしてあえてアウトになることにした。


そして、打席は一巡し、一番バッターに戻る。
ということは高津と互角かそれ以上の実力を誇るメジャーリーガー・ムネリンに打順が巡ってきたということだ。

「あなたの球は見切った!」
「チッ!」

ムネリンはベンチにいる間に高津の投球を研究し、どこに当てれば良いのかを学習。
そして、見事にクリーンヒットさせたのだ。
しかし、狙いはホームランのような大きい当たりではなく、ワンバウンドさせてからのゴロだ。
ただし……

「ぐあッ! ヘルメットに土が!」
「計算通り」

球は高津の目の前で落ちたが、その際にマウンドの土が飛散し、それが高津を襲った。
ジェットマンのスーツに守られている高津には土によるダメージこそなかったが、視界は土で覆われ見えなくなってしまう。
それにより捕球できなくなった隙にムネリンは一塁へ走る。

「取らなくちゃ……!」
「……待て、犬牟田!」

ショートの犬牟田がゴロになった球を取ろうとするが、高津が慌てて静止する。
高津の静止よりも早く捕球してしまった犬牟田だったが、そのボールはグローブの中で未だに高速回転していた。
それは運動エネルギーという形で犬牟田に襲いかかる!

「なに!? 勢いがまだ死んでな……」
「かかりましたね」
「うわああああああああああああああああ!!」

一時間ほど前に闇がヒロインXを殺害した時と同じように、死にきっていない莫大な打球による運動エネルギーが犬牟田を襲う。
そのまま、腕の中の球に数十m地面を引きずられ、血しぶきと土煙を上げた。

489死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:01 ID:RpHoSSuk0

「犬牟田ーッ!」

高津の悲痛な叫びがスタジアムに木霊するが、ムネリンは何の感傷も抱かず……むしろイチローラブの障害をまた一つ取り除けたとして、喜々として一塁を越え、二塁へ走ろうとする。
このまま三塁まで、あわよくば一発ホームインを目指そうとするが、残念ながらムネリンの期待通りの進軍にはいたらなかった。
彼が二塁へ向かおうとした時、セカンドの闇のグローブに野球ボールが入ったのだから。
そして彼女に送球はしたのは死んだと思われたショート・犬牟田である。

「なん……だと……?」
「ゲホッ……! 死んだと思った? 残念、対策済みでした!」
「ふう、アタイの氷がギリギリ間に合って良かったよ」

犬牟田は血まみれのボロボロでこそあったが、確かに生きていた。
本当ならドラゴンハートの補正ありでもバラバラになりかねない一撃であったにも関わらずだ。
その理由は三塁にいるチルノが、先程も披露した氷の鎧による防御を犬牟田が吹き飛ばされる寸前に施し、彼の命を守ったからである。
更にボールも止まったところで近くにいた二塁の闇へ渡したことでムネリンの進軍も阻止できた。

「無事で良かったぜ犬牟田」
「イタタタ……ちょっと計算ミスがあるとすれば彼のパワーを侮って怪我をしてしまったことですね。
すいません……血が止まるまでベンチで休ませてもらいます」
「わかった無理をするな、それで良いなサウザー」
「ああ、了解だ」

相棒の無事を喜ぶ高津。
一方、辛くもムネリンの攻撃を止めた犬牟田だったが代償として手傷を負ってしまった。
ある程度治るまで戦場に立つのは危険であるし、犬牟田自身も負傷者が残り続けるのは危険であるとして退場することになった。
代えの選手もいない聖帝軍はショートと一番打者を欠いた状態で戦うしかない。


ムネリンの次はクロえもんであったが、ブラックホール打ちにこだわりすぎた結果、打てないまま三振してしまい、ムネリンの進軍の甲斐無く拳王連合軍の第三回攻撃は無得点で終了となった。

「俺、いちおう元から野球選手なのに扱いわるくねえか!?」




第三回・裏

「ダメか……!」
「あのメスゴリラの妖怪、氷の壁をぶち破ってきやがった!」
「フンッ」

スタービルドガンダムに乗ったレイジと、妖精王クラスの魔力を得たチルノでさえMEIKOのボールを捉えることはできなかった。
レイジはガンダムによる質量とビームサーベルのパワーを使って突破口を開こうとするが、MEIKOボールの威力はビームサーベルの出力よりも上であり、逆に突破され。
チルノは氷を使った防御や、投球の減速を狙うが、圧倒的パワーと殺意の前ではどうすることもできず、三振を許してしまった。
既に投球の余波(というかデッドボール万歳なMEIKOの投げ方)によりガンダムもチルノもダメージを少なからず負ったが、むしろ四肢がしっかりと残って生き残っているだけ、実力者の証左でもあった。

ツーアウトにより聖帝軍も拳王軍と同じく、打順が一巡した。
ただし、一番目のバッターボックス入って犬牟田がリタイアしているため、二番打者の紘太こと鎧武・極アームズが入ることになった。

(さっきは手も足も出なかったが、犬牟田が考案した作戦で行くしかない)

選手としては今試合は退いた犬牟田だが、ベンチ送りにされても休んでいるわけではない。
その頭脳でチームのために敵のデータを研究し、作戦として提供しているのだ。
紘太もまた、バッターボックスから出る前に作戦を受け取っている。

「へへ、ぶっ殺してやるぜ、MEIKOボー……」
「今だ!」

鎧武はMEIKOがボールを投げる前に、クラックから一本の槍を召喚し、バットと持ち帰る。
槍の名前はバナスピアー……ライバルであるバロンこと戒斗が使用する槍である。
更に槍を手にとったと同時に、MEIKOの足に黄色いバナナ状のエネルギーが絡みつく。

「なに!? フォームが……!」

絡みついたエネルギーにはさしたるダメージはない。
だが、この妨害がMEIKOが投げることに至って大事なものを奪うことになる。
MEIKOボールに圧倒的殺傷力を与えていた「黄金長方形のフォーム」それによる「無限の回転」が失われたのだ。

『極スカッシュ!』

先ほどのまでの勢いを失った状態で投げられたMEIKOボールに鎧武はバナスピアーによる必殺技、スピアビクトリーを放つ。
眼前まで来た球は剛速球でこそあったが破壊力は薄く、見事にバナナのエネルギーにクリーンヒットした。

「クソッ!」
「これが俺たち聖帝軍の力だ!」

490死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:58 ID:RpHoSSuk0

悔しがるMEIKOを尻目に打ったと同時に走る鎧武。
ボールの飛んだ先はレフト方面……即ちプニキが待ち構えているが、熊はボールが来てもまったく取ろうとする気配がない。
それもそのはず、プニキはバッターとしてホームランを取ることだけにしか興味がなく、打つこと以外の能力も極端に低い。
犬牟田は試合の中でそれを見抜いたために、他の選手たちに飛ばすならレフトであると指示を出したのだ。

「それぐらいは予測済みです!」

されど長らくプニキと付き合ってきた拳王連合軍には、熊が守備ができないことなど織り込み済み。
レフトへボールが飛ばないように、ショートのムネリンが射線をカバーするように配置されている。
元々そういう作戦であり、ムネリンは高くジャンプして打球を取ろうとする。

『イチゴチャージ』
「悪いな! 犬牟田の方はアンタがレフトを守るために動くことも予測済みだ」
「空からクナイが、イタタタ!」

走行中の鎧武は次なる手としてイチゴアームズの力であるクナイバーストを発動。
空から無数のイチゴクナイの雨が降り注ぎ、ムネリンにダメージを与える。
ムネリンを殺すには威力が足りないが、打球を掴ませないことには成功し、飛んでいったボールは放物線を描いてレフトに落ちた。

……え? 守備妨害の反則じゃねーかって?
カオスロワ式野球という名前の決闘にそんなルールはない。

ちなみにプニキは持ち場に落ちたボールを拾いに行こうともせず蜂蜜を食べている。


「こさせません!」

鎧武の次なる障害として艦載機を発進させた空母艦むす、一塁守備者の翔鶴およびクロスフュージョンしたロックマンが襲いかかる。
だが、鎧武は艦載機の攻撃に怯まず、前進しながら火縄大橙DJ銃を召喚しオレンジのロックシードをセットする。
するとオレンジ状のエネルギーが銃から発射されて無数の艦載機を飲み込んだ。

「沈め! ロックマン、翔鶴!」
『危ない! アイアンボディを!』
「はい!」

エネルギーは艦載機を全滅させた直後に翔鶴とロックマンを飲み込み、あたりを閃光に包む。
二人は直前に動けなくなる代わりにダメージを微量に抑えるアイアンボディのチップによる防御を行い、ほぼ無傷で攻撃をやり過ごす。
だが、その隙に鎧武には一塁を踏ませてしまった。
拳王軍にとって幸いなのは、この間にセンターの平等院がレフトのプニキに代わって(ついでに熊にゲンコツをして頭にタンコブを作らせた)球を拾って二塁に送球。
鎧武の二塁進行だけは防いだことか。

次にバッターボックスに入ったのはMEIKOから今試合始めてヒットを取った金色の闇。
再びラオウ同様に首から下がマッチョな体型となってMEIKOに挑む。

「また、それか……だがさっきこそ面食らったが、ダーリンの打ち方の欠点はわかっている」
「くッ……!」

ラオウの相棒であるMEIKOは、彼の癖や体格の都合上、打ちにくいコースがあることを知っている。
MEIKOはそこを的確に突き、闇からツーストライクをもぎ取った。

「次はど真ん中だ、イクぜ」

このど真ん中とは、心臓狙いということである。
次の一撃で闇を討つつもりである。
そして全力全開のMEIKOボールが放たれた。
嵐のような投球が、闇に襲いかかる。

実際に球は手に持つバットと筋力だけでは抑えきれず、闇を押しつぶそうとさんとした。


(なるほど……先ほどより格段に威力が増している。
ラオウの筋力を真似たところで打つのは困難ですね)

一方の闇は、文字通りの意味で死球が迫っているにも関わらず冷静であった。
なぜなら闇にはまだ討つ手があったのだから。

「これで、どうですか」
「髪の毛!?」

闇のトランス能力は全身に及ぶ。
髪の毛をラオウのような豪腕に変えて打つこともできるのだ。
闇は新たに作った髪の毛パンチで真上から打ち込んで、胸を抉るハズだった野球ボールを近くの足元にめり込ませた。
足元と言っても殴られた野球ボールは数mほど下の地中までめり込んでいるが……とにかくヒットである

「畜生ッ!!」
「やるな……」

MEIKOが叫び声とラオウの呟きと共に、ヒットを確信した闇と鎧武はマウンドを走る。
ラオウは地中に埋まったボールを掘り起こそうする。

「今度こそ突破は……」
「させない! 走れ、闇!」
『邪魔を!』
「ありがとう、コウタ」

一塁の翔鶴が再び、妨害のために艦載機を発進させ、ガンデルソルなどのバトルチップによる攻撃も加えようとするが、先に一塁を発った鎧武が火縄橙DJ銃による攻撃で翔鶴の攻撃を迎撃し、召喚したガンデルソルも破壊。
その内に闇はトランス能力で元の女性の姿に戻って一塁を突破する。
ロックマンは翔鶴を守るために防戦……すなわちインビジブルのチップを使って回避することにした。
怖気づいたのではない、聖帝軍の副リーダーである闇に懐に入られたら危険を察知したからだ。。

491死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:14:39 ID:RpHoSSuk0

「惜しい……あと数瞬とどまっていれば首をはねられたものを……」

ロックマンの勘は大当たりであり、暗殺者としては一級である金色の闇は一撃で殺害するつもりであったようだ。


場面は三塁へ走る鎧武に移る。
二塁にいたイマジンスレイヤーは、クラックから王の財宝の如く取り出した無数の武器で足止めに成功。
鎧武は彼に右手によるタッチを許さないように二塁をふみ、三塁へ向かう。

「滅ぼす……」
「それはこっちのセリフだ! 俺は大阪やたくさんの人々を殺害したおまえらを絶対に許さねえ!」

その前に鎧武はセンターから前面へと走ってきた平等院の相手をすることになった。
ショートにいるムネリンはどうしたって? 彼は直接殴り合う戦闘は専門外だから……

「平等院!」
「ジョジョ、助太刀は無用だ。
おまえはMEIKOからボールを受け取るためにも二塁から動くな!
あと一人でもアウトに追い込めば、スリーアウトでチェンジになる」

平等院は今にも持ち場から離れそうになったイマジンスレイヤーを制止し、鎧武との一対一の戦いを選ぶ。
鎧武はすかさず、火縄橙DJ銃による砲撃を放つ。
フルーツのエネルギーが立ちはだかる平等院に向かうが、彼はこれを待っていましたと言わんばかりに弾き返す。

「散れ……」

平等院が返すのは光る球(デストラクション)。
フルーツエナジーは光球となって鎧武に跳ね返る。

「まだだ!」

鎧武はここで単純な単純な防御力とパワーなら極アームズより上なカチドキアームズに変身し、光る球を耐える。

「ぐう! うおおおおお!!!」
「来るか!」

光る球はカチドキの鎧を破壊し、中身の紘太にも決して低くない打撃を与えたが、進軍を止めるには至らなかった。
鎧武はその身を再び、極アームズによる白い鎧に変えて突進してくる。
その手には大剣モードに変えたDJ銃……ロックシードを装着したところからして斬撃で決めるつもりか。

「滅びよ!」
『極オーレ!』

鎧武が放つオレンジ色の光・火縄大橙無双斬と、培ったテニヌの力を行使した平等院のラケット。
二つの全力がぶつかり、爆発を起こした。





結果としていえば、DJ銃は平等院の渾身のラケットひと振りによって折られ、平等院に届くことはなかった。

492死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:16 ID:RpHoSSuk0

……だが!


カチャッ

「!!」
「この距離ならラケットは振れないな!!」

鎧武の腕にはこっそりと召喚したブドウ龍砲なる銃が握られており、それが平等院の胸部を捉えていた。
鎧武はラケットを振って直接叩くことができないほど肉薄していたため、迎撃や防御は間に合わない。
次の瞬間にはブドウ龍砲が火を噴き、平等院の胸を貫いた。

いかな、人間を超越したテニヌプレイヤーといえ、攻守はラケットに依存している。
ラケットかそれに近しいものを振ることができない状況に追い込まれては戦闘能力は激減する。
それに気づいた鎧武は火縄大橙無双斬自体を囮にし、弾かれることをあえて念頭に入れてわざと振らせ、そこで産まれた隙に銃を叩き込むんだのだ。

「平等院……!」

未だに地面から野球ボールを掘り起こす作業をしていたラオウは倒れた平等院を見て、確かに言葉を漏らした。


「ラオウ、すま「トドメだ!!」」

平等院を確実に葬るために鎧武はさらに2、3撃追加で頭に向けて銃弾を放つ。
平等院の死体は、頭が粉々のザクロのようになった。



【平等院鳳凰@新テニスの王子様 死亡】



「貴様ら……!」
「よくも平等院を!」

平等院を殺した直後に聞こえてくる拳王軍からの怨嗟、そしてロックマンなど遠距離攻撃できる存在が、鎧武に向けて一斉射撃を放つ。
だが鎧武は慌てた様子はない。

「ここまでは作戦通りだ、あとは……」

後方を見ると一塁から二塁へ向かう闇の姿が見えた。

「よし、ここで一気に!」

闇は鎧武が平等院を下したと見るや、再度トランス能力を使用。
今度はサウザーのような細身のマッチョな体型になった。

『あの体型……まさか!』

シャドーマンがひと目で闇の肉体がサウザーに近いものに変わったとわかった時、嫌な予感を感じた。
そしてその嫌な予感は見事的中する。

以前に拳王軍から点を奪った時のように、闇はニトロエンジン付きの改造車の如く爆走を開始。
トランスによってサウザーと同じ速度を闇は手に入れたのだ。

『「アイエエエエエエエエエエエエエ!」』

二塁のイマジンブレイカーがどこぞのゴールキーパーのように闇に吹っ飛ばされて宙を舞った。
ジョジョとシャドーマンはサウザー化した闇に命を取られないだけで精一杯であった。

「闇!」
「さっきのお返し……捕まってコウタ!」

サウザー闇の速度は圧巻の一言であり、既に鎧武の背後まで迫っていた。
そこで紘太はあえて変身を解き、身軽になった体が闇の小脇に抱えられた。

「よっしゃあ! このまま二人でホームインするぜ!」

紘太と闇はこの状態でホームインし、一気に二点稼ぐつもりなのだ。
カオスロワ式野球のルールなら無論問題ない。
過去に二人でポジション守っていた守備もいたし。

「させるかよ……ダメだ、止められねえ!」

三塁のクロえもんが阻止に入ろうとするが、失敗して上条同様に吹っ飛ばされる。
紘太を抱えているせいか僅かに遅く、片手が塞がっている分だけ攻撃力も落ちているが、それでも高速の移動はできていた。
ロックマンたちの援護射撃もまた、すいすいと躱していく。

このままホームベースへ走りたい、闇。
だがベースの近くにはやっと野球ボールを手にしたラオウがいた。
まだベースは踏むには数瞬だけかかる。

(拳王がベースを踏む前に……!)
(同じチャンスは二度とないかもしれねえ、勝負に出るぞ闇!)
(ええ!)

493死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:45 ID:RpHoSSuk0

三塁を二人で踏んでしまった以上、戻るという道はない。
前進制圧しか道は残されていなかった。
ラオウが先に踏むか、闇たちが先かの勝負であった。

スピードは僅かであるが、闇の方が上だ。
しかし、拳王には剛拳があった。


「受けてみい、このラオウの無敵の拳・天将奔……」

ラオウは奥義の一つである天将奔烈を放とうとする……が、撃てなかった。
その射線上には三塁で倒れているクロえもんがおり、敵に当たろうが当たるまいがクロえもんが巻き添えになってしまう。


「……ただのブラフ! このまま押し通……」
「図に乗るな小娘が!」
「がッ!」

闇はかつてサウザーがラオウを突破した時のように高くジャンプして乗り越えようとするが、ラオウは同じ手は二度と食うかと、蹴りで闇を打ち落とす。
闇は寸でで髪の毛を盾のように硬化させて防いだが、ダメージを受け落下。
さらにボールを持っていたラオウに触れられたことでスリーアウトが確定した。
だがラオウの表情に喜びはない。

「……あの背が低いガキがいない!」

本当なら闇と一緒に倒れているべきの葛葉紘太の姿がなくなっていた。

「ここだぜ」
「いつの間に……」
「悪いが、アンタが闇に触れる前にベースを踏ませてもらったぜ」

ラオウが振り返ると、そこにはベースの上に立っていた紘太がいた。
彼は闇によって投げられ、ベースへと帰還を果たしたのだ。
他の者の目では紘太がスリーアウトになる前に踏む瞬間をはっきり捉えている。

すなわち……聖帝軍がまた一点をもぎ取ったのだ。
聖帝軍側ベンチからは歓声が沸き立ち、拳王軍側は平等院の死も含めて落胆の声が上がった。



               拳 1-2 聖


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

494死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:12 ID:RpHoSSuk0

時刻は22時27分。第四回表。
拳王軍の打者はラオウ、聖帝軍ピッチャーは高津。

高津はラオウに関しては以前の打席で食らいついてくるような危険性を感じていたが、それでもピッチング自体を放棄するわけにはいかない。

(ラオウ、おそらく一番危険な男だろう。
しかし、負けるわけにいかないし、負ける気もしない!)

高津の士気は最高潮であった。
犬牟田が、サウザーが、闇が、聖帝軍の者たちが死力と絆を持って拳王軍の罠を突破していく様に、これ以上ないくらい熱意を感じたのだ。
最初からプロ野球である高津が燃えないわけにはいかない。

(あの世で見てろ、ササキ。
俺は必ず、聖帝軍を優勝させて世界を救う!
おまえが大魔神軍で到達できなかったステージに、代わりに行ってやる!
だから、まだ魂が無事なら応援していてくれ……
ライバルである俺が強ければ戦ったおまえの株もあがるんだからな)

先に旅立った強敵(とも)に、心の中で誓いを立てつつ最高のコンディションで高津は剛速球を投げた。






「聖帝軍、貴様らは」
「!!」

「 貴 様 ら だ け は こ の 拳 王 が 絶 対 に 許 さ ん ! ! ! 」
「ッ!?」


相対していたラオウから発せられた強烈な殺気。
憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情。
そのラオウの目は、覗いてしまった高津の士気が一瞬にして奪われかけるほどであり……

次に高津が目にしたのは、フォームが見えないほどの速さでバットを振ったラオウ。
そこで高津の意識はブラックアウトした。



【高津臣吾@ササキ様に願いを 死亡】



全ては一瞬の出来事であった。
ラオウがボールを打った瞬間、打球は高津のジェットマンのヘルメットすら突き破って彼の頭部を粉砕し、高津の血を帯びた野球ボールは聖帝軍の誰も捉えるころができまま、観客席に巨大クレーターを作った。
ホームランである。

聖帝軍が次に理解したのは拳王軍に一点取られてしまったことと、ピッチャー高津の死であった。


「た、高津さああああぁああああぁああああん!!」

ベンチから犬牟田の悲痛な叫び声が上がったのは、ちょうど22時30分の出来事であった。




               拳 2-2 聖

495死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:40 ID:RpHoSSuk0



『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
考え中          6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

なし           1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
考え中          7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード



【二日目・22時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

496エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:21:44 ID:IfalQ6jE0
6/らに安全と判断され苗木・霧切・キュゥべえはアウラのドラゴンの背に乗り、空でイチリュウチームとの平和的な接触が果たされるかに思われた。


「その娘と……ツバサを会わせるなあ!!」


それが二人と一匹を見た時のアナキンの、焦りと怒号の混じった第一声である。
元ジェダイの騎士にしてシスの暗黒卿、アナキンはフォースの力によって接触してきた苗木・霧切・キュゥべえの心を読んだのだ。
内二人は個人的復讐や生存に関する打算的な思いがあったのは確かだが、少なくとも世界の破滅――大災害を招きたがるような者ではなく、接触は有益と判断できたが、問題は残る一人である霧切。
彼女の心は崩壊しかけており、トラウマの原因であるツバサを引き合わせたら最後、確実に崩壊することがわかった。
絶望したら魔女になる魔法少女ならトラウマの火に油を注ぐことになる。

だが、アナキンの忠告は遅く、霧切はイチリュウチームに匿われているツバサを見てしまい……発狂、ソウルジェムは一瞬で真っ黒に染まり、砕けた。

「やめるんだ、霧切さ――」
「キョウコ……なにを、きゅっぷい――」

今にもツバサに飛びかかろうとした霧切を苗木は抑えつけようとするが、彼は触れた瞬間に彼女から溢れ出る魔力で一瞬にして蒸発。
せめて彼がダイヤの指輪に似た魔法石の効果を知っていれば結果は変わったかもしれない。
続いて近くにいたキュゥべえもまた、蒸発した。
キュゥべえは人間と違い、心や感情を理解できないために、ツバサを会わせた場合のリスクを予測できなかったのだ。

『キュゥべ……苗木ク……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

自らが原因で、親友二人を殺してしまったことにも魔法少女の絶望を加速させる。




私はただ、この世界の謎を解いて希望を見出したかっただけなのに――




その思考を最期に、霧切響子は絶望で死んで、魔女として生まれ変わった……
そしてイチリュウチームは咄嗟の判断で脱出できたラミレス・ホルス・ふなっしー、そしてツバサを除いて脱出不能の結界の中に閉じ込められた。

 □

魔女誕生による魔力だけで100名近いアウラの民が命を落とした。
姫巫女であるサラが民の死を嘆くが、クリスとシマリスは彼女を立たせようとする。

「なんてこと……また、多くの民が」
「サラ! 悲しみたいのはわかるが、手を止めてる場合じゃないぜ!」
「あの魔女をやっつけないと、ぼくらは全滅でぃす!」
「ええ……わかっています」

魔女の誕生から30分が経った。
幸いというか、ここまで生き延びたイチリュウチームのメンバーは猛者が揃っていただけに、ある者は直感的に回避し、ある者は優れた耐久力で、ある者は強い運に助けられ、またある者は野球による技術によって誕生時点で死亡したメンバーはゼロであった。
だが、そこからが真の戦いの始まりであった。


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