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90's バトルロイヤル

232灰色の男 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:08:05 ID:5XOn0UoM0

 何か思う所があったようだが、大方、「T-800」とか「T-1000」あたりがグレイの名だと思ったのだろう。しかし、生憎ただの型式番号に縛られるつもりはない。
 自分の名は……「グレイ」。
 無慈悲で無感情な型式番号を授けられた者たちも、おそらくは、いつぞやの「G2」のようなロボットたちであろう。
 グレイは、吸殻を持った右腕を、そっと下げた。
 と、その時、おキヌが大声をあげた。

「あっ、グレイさん!」
「何だ」
「──煙草を吸うのは良いですけど、ホラ、吸殻はあたしに預けてください!
 あとで、ちゃんとゴミ箱見つけたら捨てておきますから! 『ぽいすて』は、駄目なんです!」

 彼女は毅然としてそう言う。
 グレイは今まさに吸殻を捨てようとしていたし、グレイの足元には、一本の吸殻が落ちている。先ほど、吸い終えた粕を地面に放り捨てた証だった。
 確かに言われてみれば、人間にとって吸殻を捨てる場所は定められているらしい。その規則に則るならば、グレイは違反である。……が、彼にはそんな事は関係ない。
 ただ、おキヌがそれを拾おうとした時、グレイはそれに先んじるように自らが捨てた吸殻を拾い上げた。

「構うな。俺が、自分の手で片づける。……他人に借りを作る気はない」

 グレイは、自分の撒いた種を他人に摘まれるのを嫌う性格だった。
 自分の所作には、自分で蹴りをつける。他人には関わらせない。
 誰にも会わなければこのまま捨てただろうが、こうして他人に拾われ作業を押し付けるとなると話はまた別だ。
 ……二つの吸殻を丁寧に指先でつまんだグレイを前に、おキヌは呆然とする。
 そんなおキヌの方をグレイは見つめた。

「……一つだけ訊こう。お前は、私が怖くはないのか?」

 そう問われると、ふと我に返ったおキヌは顎の下に手を置いて少しだけ悩んだ。
 それから、すぐに答えを出した。

「私は、マリアさんっていうロボットの知り合いもいますし……今更これくらいじゃ驚かないっていうか……」
「……私が訊きたいのは私がロボットであるからという話ではない。
 ──この状況で、武装した敵に対面する事も含めてだ。今は、誰もが武器を持っている。他人を怖れず、ただ信用するのは……愚かだ」

 おキヌの不可解な所は、そのある種能天気な部分だ。
 グレイは、今この時を「戦争の只中」のように解釈している。これまでも幾つもの次元でそんな激しい戦いに身を投じて来た。
 中には、味方に裏切られた者もいる。
 そして、グレイの手に命を奪われた者もまた数知れない。
 しかし、そんなグレイを彼女はあっさり信用しようというのだろうか。

「ああ、それなら大丈夫ですよ……グレイさんも良いロボットでしたし。美神さんも横島さんも悪い人じゃないし、あの二人ならそう簡単に死にません。
 そして、美神さんや横島さんは、きっと私と一緒にこんな戦いを終えてくれるって信じてるから」
「……甘いな、氷室キヌ。生き残るつもりならば、もう少し考えて行動した方が良い。
 たとえ、生き残る事が出来るのが、この中のただ一人だとしても……」

 と、そこまで言った所で、グレイは考えた。

 彼女は何と言ったか。──そう、「戦いを終える」と言ったのだ。
 グレイには、その発想そのものがなかった。……つまるところ、ノストラダムスを打倒し、バトルロイヤルそのものを破綻に導くという事だ。
 だが、一度始まってしまったゲームを根底から崩すのは難しい。いかに理不尽な決闘であっても、ゲームマスターには、簡単には歯向かう事の出来ない仕組みが出来ている。
 たとえば、このバトルロイヤルにおいては、「首輪」である。
 だから、グレイにはその選択肢はなかったのだ。

 しかし、目の前のおキヌはおそらく、その、最も過酷な「戦い」を行う意思を持っていた。……ただの能天気かもしれないが、考え方としては面白い。
 グレイは、おキヌの目を見て、彼女の言う事を解した。

「……だが、なるほど。この戦いを終える為に戦う……それがお前の戦い方か」

233灰色の男 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:08:29 ID:5XOn0UoM0

 グレイはそんな言葉を、思わず発した。
 ざっと見た所、このおキヌの性格ならば、確かにそれを行おうとするかもしれない。能天気である以上に、結構な楽天家だ。
 通常の人間ならば警戒するような相手に、何のブレーキもなくこうして寄ってくるのは、ある意味ではどこか狂っている人間のようにさえ思った。
 そのお陰か、おキヌは、グレイにとって、凡庸な人間ではなく、少しは話す価値のあった面白い人間として認識されたのだろう。
 グレイは、自らに支給されていたデイパックをふと一瞥し、それをがっしりと掴むと、おキヌの手に渡した。

「──これは私には不要だ。少しでも長く生きる為に、持って行くと良い」
「え? これ……私に……?」

 おキヌは、少々驚いた様子を見せている。
 この状況下、自らの支給品を明け渡す者は流石にいないと彼女も思っていたのだろう。実際、グレイも人間ならばこんな事はしまい。
 だが、グレイはそのロボットだ。
 ロボットである彼にはその鞄の中に押し込まれている物全てが嵩張るだけである。

「ああ。私にとっては邪魔なだけだ」
「……でも、地図や名簿とかは?」
「地図や名簿も情報として記憶した。メモなど取る必要はない」
「うわぁ。凄いんですね〜。私なんか忘れっぽくてぇ……この前も……」
「世間話をするつもりはない」

 グレイがデイパックを渡したのは、不要であったと同時に、おキヌに興味を示したからでもあった。
 彼女がいなければ、吸殻と同じくその辺りに捨てていただろう。

「……ありがとう、ございます」
「……」

 照れたように礼を言ったおキヌに対しても、グレイは何も思わなかった。

「あ、でも、グレイさん、知ってます? このデイパック、実は凄く変なんですよ」
「……何がだ」
「あたし、『誰かの肉体』が支給されていたみたいなんです。外国の人だと思うんですけど……」

 おキヌは不可解な事を言い出した。「誰かの肉体」……? それはつまり、どういう事だろうか。
 普通に収まるような三箱の煙草だけが支給されていたグレイは、その辺りの話は知る由もない。
 少しだけ、おキヌの話に興味も湧いた。おキヌの方を見る。

「ほら、これ……」

 すると、おキヌは、自分の方を見たグレイに見せるように、息を飲みながら、そっとデイパックの口を開けた。
 そこから出て来たのは、非常に濃い顔立ちと高い身長をしたボブカットの男性の姿だった。色っぽい姿は女性のようにも見えるが、体格上、それは男性である可能性が高い。……勿論、おキヌも確認してたわけではないが。
 ただ、おキヌの言っているように、彼は眠っていた。
 まるで死んだように冷たい身体で、そこには血液の循環すらもない。
 何より、デイパックの開け口よりも、彼の身体は大きかった。

「……」
「変ですよね? やっぱり、ドラ●もんのポケットみたいになってるのかな……。
 ……えっと、ちなみに、他にも、カードとか、私の笛とか色々入ってました」

 今度はおキヌの懐から、数枚のカードや、横笛が出て来た。
 トランプのカードでも、マリアの奏でる草笛でもない以上、グレイの興味はやはり、デイパックに入っていた人間の肉体の方だ。
 グレイは、サーモグラフィでその人間の肉体のデータを確認する。

「……この人、死体じゃないみたいですよ? 心臓とかは動いてないですけど……」
「肉体の構造は人間そのものだが、体温もない。心音、脈拍ともにゼロ。呼吸も当然していない。──死体と同じだ」
「ええ……でもやっぱり違います。『ぶろーの・ぶちゃらてぃー』さんという人の身体だそうです」
「名簿にあった名だ。……なるほど。少し興味はあるが、関係のない話だ」

234灰色の男 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:08:54 ID:5XOn0UoM0

 そこまで確認して、グレイは、すぐに興味をなくした。
 要するに、これは魂をなくした肉体というわけだ。
 これがデイパックの中から出て来た事実は不可解ではあるが、一度おキヌに明け渡したデイパックを取り返すつもりもない。
 幾つかの謎も、バイラムの幹部であらゆる次元を旅したグレイには、大した事ではなかったのだろう。
 そんなグレイに、背後からおキヌが声をかけた。

「あ、グレイさん……私も」
「ついて来る気か? だが、私はお前に用などない」
「だって……私が向かっている場所も、そっちに行かないと行けないし……」
「……」

 グレイが向かった方角は、確かに、彼女が目指すと言っていた「美神令子事務所」があるG-5エリアの方である。
 結局のところ、グレイからすればどこに向かっても良いつもりであったが、やはり人気のある場所は、もっとマップの中央寄りの位置であろう。
 こんな隅にいるよりは、その方が良い。たとえおキヌがついてくるとしても、それで自分の選んだ道を変えようとは思わなかった。
 ただ……煩わしいが、もしついてくるならば、一言だけ忠告をしておくのが礼儀と思い、立ち止まったグレイは、おキヌに一言だけ言った。

「……キヌ。一つ、言っておく。私はゲームに乗っている」
「え? そんな人には見えませんけど……」

 おキヌは気楽な口調で言う。
 だが、グレイにとっては事実だ。
 彼は、バトルロイヤルというデスゲームには乗っている。
 ただ、おキヌをその刃を向ける対象としなかっただけである。

「……それは、私には私のルールがあるからだ。お前を倒す気にはならん。
 強い者と戦う事……それが私の、戦士としてのゲームだ。
 だが、ゲームに乗っている者はいる。──それを忘れるな。
 特に……ラディゲという男や、女帝ジューザには気を付けろ」

 グレイは、それだけ言うと、おキヌの方を見る事もなく歩きだした。
 そんなグレイの背にはおキヌがついてきているが、二人が会話をする事は、またしばらく無かった。
 夜の街のどこかに二人の姿は消えていった……。

235灰色の男 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:09:45 ID:5XOn0UoM0



【H-6 街/1日目 深夜】

【グレイ@鳥人戦隊ジェットマン】
[状態]:異常なし
[内蔵装備]:グレイキャノン(背中)、ハンドグレイザー(腕)、マルチショットガン(腕)
[追加装備(支給品等)]:なし
[道具]:ラークマイルド三箱(残数は18/20・20/20・20/20)@鳥人戦隊ジェットマン
[思考]
基本行動方針:ゲームには乗る。ただし、ノストラダムスの言った通りにはせず、自分のルールに沿い行動する(少なくとも積極的に殺して回るつもりはない)。
1:結城凱とは決着をつけたい。ラディゲ、ジューザとも殺し合う事になるかもしれない。
2:天堂竜を殺すつもりはない。少なくとも今はマリアの意思を尊重する。
3:優勝した場合も、マリアの誇りを穢すつもりはない。
[備考]
※参戦時期はマリア死亡〜凱と決着をつけるまで。
※名簿や地図は電子頭脳に記憶しています。死亡者や禁止エリアも聞いてさえいればすぐに記憶する事ができるでしょう。

【氷室キヌ@GS美神 極楽大作戦!!】
[状態]:健康
[装備]:ネクロマンサーの笛@GS美神 極楽大作戦!!
[道具]:支給品一式×2、ブローノ・ブチャラティの肉体@ジョジョの奇妙な冒険、クロウカードセット(雷、雨、霧、雪)@カードキャプターさくら
[思考]
基本行動方針:ゲームからの脱出。
1:美神令子除霊事務所を目指す(今は同じ方向に向かっているグレイについていく)。
2:美神令子、横島忠夫との合流。
3:ラディゲ、女帝ジューザに気を付ける。
[備考]
※参戦時期は不明(ただし少なくともネクロマンサーの笛を使うようになってから)。巫女服を着ているので、大きな騒動の最中ではないと思われます。
※幽体離脱によりブチャラティの肉体と氷室キヌの肉体を行き来する事も可能ですが、長時間、ブチャラティの肉体に入りこむ事は不可能です。
※幽体離脱中は元の肉体は睡眠状態になります。ちなみに、その間に元の肉体が死亡レベルの損壊を起こすと幽体も消滅します。
 また、幽体のまま移動できる距離も短距離に制限されています。



【ラークマイルド@鳥人戦隊ジェットマン】
グレイに支給。
結城凱が度々咥えている煙草の銘柄。
20本入りが3箱支給されている。ライターはついていない。

【ブチャラティの肉体@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の旋風】
氷室キヌに支給。
ブローノ・ブチャラティの肉体。
基本的には人間の肉体や死体などが支給される事はないが、ブチャラティがディアボロの姿で参戦した為、参加者の本来の器として支給された。
ただし身体の機能は停止しており、氷室キヌの幽体離脱などによって入りこむ事はできても、長時間彼の身体に入り続ける事はほぼ不可能。

【クロウカード@カードキャプターさくら】
氷室キヌに支給。
月属性「水」に属し、天候などを操る以下の四種類のクロウカード。
・「雨」=雨を降らす事ができる。
・「雲」=雲を操る事ができる。
・「霧」=金属を腐食させる事ができる(ただし首輪には無効で、グレイやT-800にはチョコラータのカビ同様の制限がかかる)。
・「雪」=雪を降らせる事ができる。
これらはいずれも、使用の際には、ごく局地的(戦闘を行う狭い範囲)に行われるよう制限されており、1エリアすべての天候が変動するわけではない。

【ネクロマンサーの笛@GS美神 極楽大作戦!!】
氷室キヌに支給。
霊、霊能力を持つ人間、妖魔などを操る事が出来る笛。この笛を使う事が出来る者は、ネクロマンサーの資質を持つおキヌだけに限られる。
ただし、首輪をつけた参加者を根本的に操作する事は不可能であり、上記の条件を満たす場合であっても、「パワーダウン」もしくは「パワーアップ」程度の恩恵しか与えられない(この条件を同時に使い分ける事は不可能)。
一方で、参加者外の霊や妖魔に対しては、原作通りの能力を発揮する事もできる。

236 ◆V1QffSgaNc:2015/11/13(金) 11:10:21 ID:5XOn0UoM0
以上、投下終了です。

237名無しさん:2015/11/14(土) 00:49:01 ID:UO7upKQI0
投下乙です

グレイ渋くてかっこいいな。マイペースなおキヌちゃんとのコンビでどう動くんだろう

238名無しさん:2015/11/14(土) 22:41:30 ID:JUOcgF9s0
投下乙です
グレイは良く知らないものの、独特なキャラに引かれるなあ。
出会うキャラによって展開も変わりそうな二人だ。

239 ◆V1QffSgaNc:2015/11/15(日) 01:27:42 ID:gD/bgRyo0
感想をば。

>豹
マチルダ、別にマーダーではないけど殺し屋の卵なだけあって少しは危険で打算的。
今泉くんの無能ぶりを考えると、今泉くんが頑張れとしか言いようがないwww

>世界の理を壊すモノ
マーダーになるか対主催になるかきわどいラインだったルシオラとかも一斉にマーダーに
更には、一般人の苺鈴もいきなり発狂モードで殺し合いに乗る形に…
結構チートマーダーが多いせいもあってか、このロワもだんだんとマーダー比率が上がって結構ヤバい感じですね
強マーダー、奉仕マーダー、発狂マーダーの三人が揃ったエピソードですねコレ

>拳に生きる者達
リュウと戸愚呂、筋肉モリモリの格闘バトルですねこれは
ていうか、リュウ流石に強え…
マーダー側の戸愚呂も魅力的なキャラなだけあって、かなりド直球な熱血バトル回でした

240名無しさん:2015/11/30(月) 11:21:08 ID:NJsIUwYQ0
掲示板に仮投下ありー

241名無しさん:2015/11/30(月) 16:05:20 ID:yomSERZU0
マジですか

242 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:01:02 ID:82Fn.W3U0
投下します。

243不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:03:10 ID:82Fn.W3U0
「…………まさか、ダイやバーンとこんなことに巻き込まれるとはな……。
何の因果…………いや、やはり宿命と言うべきか。あいつと決着を付けるための……」

殺し合いの地に立つ一つの人影。
人のシルエットを為すそれは、しかし明らかに人では無かった。
全身から露になる異形は、数多の魔物の長所を移植手術によって魔族の身に宿した戦闘生物、
超魔生物たる証。
かつては地上を席巻した魔王ハドラーは、一介の戦士たる超魔生物ハドラーとなっていた。

ハドラーはその生涯において、栄光と破滅の繰り返しだった。
魔王として軍を率いて地上を侵攻し、勇者アバンに打倒される。
そして大魔王バーンの下で復活を果たし、勇者アバンを倒して魔軍司令として権勢を振るうが、
アバンの残した使徒を相手に幾度も敗北を繰り返した。
アバンの使徒に勝利するために、ハドラーは決断をする。
それは自らの肉体を超魔生物へと改造する決断。
魔族の肉体と魔王としての過去を捨て、ハドラーはダイとの決戦に臨んだ。
しかしそこで判明したのは、自分の身体に伝説の超爆弾”黒の核晶(コア)”が埋め込まれていた事実だった。
黒の核晶(コア)の爆発によってダイとの決着を付けることは叶わず、バーンとも決別したハドラー。
ハドラーは魔族の肉体も、元魔王のプライドも、地位も名誉も失った。

「……ある意味、この状況は好都合と言えるな。ダイと邪魔の入らない状況で決着を付けるのには」

それでもハドラーは目的を失ってはいない。
その意思は揺らぐことは無い。
ハドラーの目的はアバンの使徒打倒のみ。
魔族の肉体もプライドも地位も名誉も、目的のために自らの意思で捨てたのだ。
目的は明確である以上、不必要に思い悩むことも無い。
殺し合いと言う状況に巻き込まれたならば、それに沿って目的を達成するまでだ。
気に掛かる点は別にあった。

「問題はオレの崩壊しかかっている身体が、どこまでもつか……か」

ハドラーの巨躯をより際立たせている超魔生物の威容。

244不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:05:27 ID:82Fn.W3U0
しかしそれは完全な物とは言い難かった。
欠けた角。胴体に大きく開いた穴。
本来、超魔生物は強い回復能力を持っている。
しかし今のハドラーはそれを十全に発揮することができない。
既にその血肉と化していた黒の核晶を摘出したことで、ハドラーの肉体は崩壊しかかっていた。
おそらくハドラーの肉体は、もう長くは保たない。
殺し合いの時間程度は保つだろうが、ダイに出会うまでにおそらく戦闘は避けられない。
今の状態で戦闘を重ねれば、無事にダイの所まで辿り付くことは叶わないだろう。
何か危険を避ける手段が必要になる。
そう考えながらハドラーはデイパックの中を検め、目ぼしい支給品を手に取る。

もっとも既に手遅れのようだった。

「……オレに何の用だ?」

背後の気配に振り向くハドラー。
ハドラーが振り向いた先には一人の女が居た。

「へぇ……あたしの気配に気付くとはね」

長く髪を伸ばしたその女は、まだ少女と呼んでも差し支えの無いほど若い娘だった。
しかし若さに見合わない怪しげな空気を纏っている。
その気配からも人間でない、それも相当の力量を持っていることは容易に察せられた。
背後から隙を窺うように近づいて来た女を、ハドラーは睨みつけるが、
女は怖じる様子も無く、尚もハドラーに気安く話し掛け続ける。

「あんたは見た所魔族みたいだけど……」
「かつてはな……今は魔族の身体は捨てた」
「ふふふ……それでも強いことには違いないわよね?」
「もったいぶった話をする前に、名前くらい名乗ったらどうだ」

女の含みのある口振りを遮るハドラー。
今のハドラーにあるのは自分の目的のみ。
他者を無闇に撥ね付けるつもりは無いが、愛想を振り撒くつもりも無い。
他者からの情報が無くとも、殺し合いが進んでいけばダイとは自ずと行き当たるはずだ。

「私はメドーサ。竜神族だけど、これでも魔族には通じていてね」

ハドラーが只者ではないと睨んでいた通り、メドーサは神族の者だった。
主に天界に棲む神族ならば、ハドラーを知らずとも不思議は無い。
今のハドラーは自分の知名度などに関心は無いが。

「もったいぶった話が嫌なら、単刀直入に言うわ。私と組まない?」
「……組んでどうする? 二人は生きて帰れんのだぞ?」

メドーサの提案は、おおよそハドラーにも予想できた。

245不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:07:07 ID:82Fn.W3U0
そして実の所、そのメリットも理解できる。
殺し合いを優勝するのだろうと、脱出するのだろうと強い協力者が居ればメリットは大きい。

「優勝したいのなら最後の二人になるまで組めば良い。
脱出したいのなら協力者は多いに越したことは無いわよね」

ハドラーの態度も意に介さず薄い笑みさえ浮かべているメドーサ。
その様子からメドーサの己の力量に対する自信が感じ取れた。

「いずれにしても神族である私とあんたが組めば、殺し合いの中でも敵は居なくなる。
見た所殺し合いの参加者のほとんどが人間、下等なゴミに過ぎない連中なんだから」

それでもハドラーは、何故かメドーサと組むつもりにはなれない。
メドーサの言葉の中に引っ掛かるものがあるからだ。

「……下等なゴミ? 随分と人間を見縊るのだな」
「無闇に人間を見縊るつもりは無いわ…………。
油断さえなければ……人間にしてやられることは無い。そうでしょ?」

メドーサはここで初めて、その態度から余裕を無くす。
余裕を無くす、どころでは無い。
思わず歯を食いしばり、目を血走らせる。
人間を見縊る、という話題から思い出したのだ。
メドーサにとって最大の屈辱を与えた人間、横島忠夫の存在を。

神族でありながら魔族のアシュタロスと繋がり、数多の陰謀をめぐらしていたメドーサにとっては、
人間など、陰謀のための駒に過ぎない矮小な存在だった。
しかしその矮小な存在であるはずの人間、その中でも取るに足らない下らない存在であるはずの横島に、
何度も自身の計画を妨害され、その末に倒された。
メドーサにとってこれ以上ないほど屈辱的な事実だった。

だからメドーサの最優先事項は横島の殺害である。
それさえ達成すれば、後は優勝を目指しても脱出してもどちらでも構わない。
もっとも、参加者にはその横島の他に美神令子も居るために脱出は容易くは無さそうだが。

「その人間に……随分してやられてきたらしいな」

まるでメドーサの心中を見透かしたようなハドラーの口振り。
メドーサの苛立ちがハドラーに向かう。

「……あんた、私を知ってるの?」
「おまえのことなど知らんな。だが、おまえの見せた怒りには覚えがある。
見下していた相手に勝てぬ苛立ち、下らんプライドに固執する者の怒りだ」

メドーサの抱える憤りは、ハドラーにとってはよく理解できる物だった。
自分のプライドに固執して相手を見縊り、それゆえに敗北を重ねる。
アバンとその使徒を相手に失態を積み重ねてきた時の心情。
先刻のメドーサの様子は、ハドラーにそれをありありと思い出させた。

246不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:08:46 ID:82Fn.W3U0
しかし今のメドーサはハドラーにその怒りを向けている。

「知った風な口をきいてくれるね……魔族の身体も守れずに魔物に身を落とした分際で」
「種族の別は関係無い。神族だろうと魔族だろうと、自分も相手も見誤っている程度だということだ」

ハドラーにとってメドーサは、己の愚かな過去を思い出させる存在である。
当然、そんな相手と組むつもりなど無い。
そしてそれは最早、メドーサにとっても同様であった。

「…………馬鹿な奴ね。素直に手を組んでいたら、使える内は生かしておいてやったのに!!」

メドーサは最初からハドラーも使い捨ての駒にするつもりだった。
その使い捨ての駒に屈辱を思い出させられて、見透かされたようなことを言われた。
それを黙っていられるようなメドーサではない。

地を蹴るメドーサ。
その一蹴り何メートルもあるハドラーとの距離を、文字通り一足飛びに詰める。
メドーサは跳躍ではなく飛行している。
何も持っていなかったはずのその右手には、二又の刺又槍が握られていた
右手から現出させた刺又槍に、霊力を込めてハドラーに向けて振るう。
並の魔族や魔物ならば絶命を避けられない一撃。
その一撃がハドラーに届く、寸前に止まった。

「竜神族か何か知らんが……」

刺又槍はハドラーの手の甲から突き出るように伸びた爪、地獄の爪(ヘルズクロー)に止められていた。
メドーサは両手に持ち更なる霊力を込めるが、地獄の爪に挟まれた刺又槍は突端は全く動かない。
ハドラーは並の魔族や魔物ではない。
かつての魔王にして今や超魔生物であるハドラーの力は、竜神族をも上回る。

「オレをなめるなァッ!!!」

今度はハドラーが地獄の爪を振るった。
挟まれた刺又槍はおろか、メドーサの身体ごと軽々と吹き飛ばされる。
メドーサは地面に叩きつけられ、それでも勢いが収まらずに転がる。
ハドラーはそこへ更に追い討ちを掛けるべく、両肩を広げ推進力を得る。
跳躍力でメドーサとの距離を一足飛びに詰めるハドラー。

247不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:10:24 ID:82Fn.W3U0
そのまま地獄の爪で貫いた。

「――――!?」

地獄の爪が貫いたのは地面。
転がっていたはずのメドーサの姿が、地獄の爪に貫かれる前に消えたのだ。
否、ハドラーはその影を捉えていた。
メドーサの影が消え去って行った右後ろを振り向く。
同時に右肩に走る痛みと衝撃。右手に持っていた支給品を落とす。
ハドラーの右肩に刺又槍が刺さっていた。

「チッ、超加速の加速度が低い!」

ハドラーを奇襲したメドーサはしかし、自分の動きの遅さにごちる。
メドーサが使ったのは一部の神族が使える秘術”超加速”。
物理法則をも超えて加速できるこの術は、しかし常より加速度が劣っていた。
加速度の低下の原因は制限によるものだが、今のメドーサに原因を探っている余裕は無い。

「地獄の鎖(ヘルズチェーン)!!」

右肩を刺されたハドラーだが痛みも意に介さず反撃に出る。
ハドラーの左腕から伸びる鎖、地獄の鎖(ヘルズチェーン)がメドーサに襲い掛かった。
巻き付かれる寸前に超加速で回避。

捕まれば力で劣る自分は負ける。
しかし速さであれば超加速が使える自分が勝る。
自他の戦力を分析したメドーサは、勝利のための戦術を導き出す。



(速い! 速さならヒムやシグマをも上回るか……)

地獄の鎖すら回避されたハドラーは、メドーサの速さに瞠目する。
ハドラーの反応速度を上回り、超魔生物の視力でも追うのがやっとと言う有様だ。
地獄の鎖を回避したメドーサは、一瞬でハドラーの左側に周り左肩に刺又槍を刺す。

「イオ!!」

それにも構わずハドラーは即座に反撃。
魔法力を爆発させる爆裂呪文”イオ”を放つ。
自身の左側、メドーサの居た場所を爆発させた。
はずが、やはりそこにはメドーサは居ない。
次の瞬間、ハドラーの背中に痛みが走る。
背後からメドーサが刺又槍で刺していた。
ハドラーが振り返った時には、メドーサの姿は消えていた。

メドーサの取った戦術を、ようやくハドラーも把握することができた。
それはヒット&アウェイの戦術。
一撃離脱を繰り返し、ハドラーの消耗を狙う戦術である。
単純であるがゆえに対応に難かしい。
ハドラーが万全であれば、対応法もあっただろうが。

幾度かの交戦の後、遂に刺又槍がハドラーを貫通した。

248不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:11:49 ID:82Fn.W3U0
ハドラーの右掌をメドーサの刺又槍が刺し貫いたのだ。
しかしハドラーは痛みの中、右掌を握り締める。
刺又槍の動きが、メドーサの動きが一瞬止まる。

ハドラーの地獄の爪がメドーサを刺すのと、
メドーサが超加速で刺又槍を引き抜くのは、ほぼ同時。

地獄の爪はメドーサの左肩に刺さったが、
鮮血だけを残して、再びメドーサは姿を消す。

しかしハドラーには、次にメドーサの来る方向が大よそ読めていた。
ハドラーは左後方に目をやる。
そこに現れた人影。そして鮮血の色。
ハドラーはそれが何かを確認する前に地獄の爪で刺し貫いた。

何かが砕け散る乾いた音。
光や肉片、そして液体が飛び散る。
ハドラーは瞬時に、自分が破壊した物がメドーサではないと気付いた。
それはメドーサの鮮血が塗られた、ホルマリン漬けの人間の肉片だった。

ハドラーには知り得ないことだが、それはメドーサの支給品『輪切りのソルベ』。
それでもメドーサの罠に掛かったことには瞬時に気付いた。
同時にハドラーの胴体に激痛が襲う。
そこはちょうど、バランの手によって黒の核晶を摘出された箇所。
バランの手によって刺し貫かれたのと同様に、メドーサに正面から刺又槍で貫かれた。

「下等なゴミは、あんたもだったねハドラー」

勝ち誇り、ハドラーを見下ろすメドーサ。
ハドラーの全身から力が抜け、膝から崩れ落ちていた。

(馬鹿な……オレはこんな所で終わるのか…………ダイにも辿りつけず…………)

無念を抱え、未だ闘志は衰えないハドラー。
しかし身体がまるで追い付いてこない。
身体の全ての力が完全に抜けていく中で、ハドラーは自らの死を実感する。
身体を支える全ての力が完全に抜け、ハドラーは自分が落とした支給品の上に倒れ伏した。

ハドラーが落とした支給品、それは本来世に二つと無い物であった。

249不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:13:15 ID:82Fn.W3U0
それは本来、美神令子の魂と融合した一つしか存在しない。
しかし美神令子が過去にタイムスリップした際、
美神令子の前世であるメフィストフェレスと融合した固体のもう一つと同時に存在した。
そしていかなる所以か、このバトルロイヤルにおいてももう一つの固体が支給されていた。
それは霊力の高い人間の魂を集め造り出される、エネルギー結晶と呼ばれる物だった。

エネルギー結晶は倒れて来たハドラーの傷口から体内に入り込む。
エネルギー結晶は侵入した存在と融合する性質を有していた。
そして黒の核晶を失っていたハドラーの肉体は、エネルギー源となる代替物を欲していた。
エネルギー結晶はハドラーの肉体と融合していき、
ハドラーの肉体はエネルギー源を利用して、生来の回復能力を発揮する。

ハドラーの肉体が再び超魔生物の威容を取り戻していく。



「…………しつこい奴ね」

徐に身体を起こすハドラーを見て、メドーサは吐き捨てる。
超加速がある限りメドーサの有利は揺るがない。
しかしこれ以上、ハドラーを相手に手間取りたくは無かった。
今度は胴体の傷を貫通してやると決意するが、その胴体の傷が泡を吹いて治癒して行っている。
ならば治りきる前に貫ぬく。
そう決意してハドラーへ向けて飛ぶ。
ハドラーの胴体の傷目掛け、刺又槍を突いた。

「――――!?」

甲高い粉砕音。
中ほどから切断されて、宙を舞う。
メドーサは切断されて宙を舞った刺又槍ではなく、
刺又槍を切断したハドラーの剣を信じ難いと言った表情で見ていた。
ハドラーの右腕から噴出する光の剣を。



「フフフ……生まれ変わった気分だ」

ハドラーにはエネルギー結晶がどういう物かも、自分に何が起きたのかも分からない。

250不屈の超魔生物 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:15:15 ID:82Fn.W3U0
そしてエネルギー結晶は、本来の持ち主であるアシュタロスでなければ完全な融合・活用は不可能。
それは不完全な融合・活用に過ぎない。
しかし取り戻された回復能力。
当然のように発現できた生命エネルギーを噴出して武器に転化する、生命の剣。
ハドラーはかつてない力が自らの身体に漲るのを実感する。

「今ならばかつてない力が出せる!! 幾らでも掛かって来いメドーサ!!」

立ち上がったハドラーは再び完全に超魔生物の威容を取り戻す。
こうしてハドラーのバトルロイヤルが始まった。



【H-4 海岸付近/1日目 深夜】

【ハドラー@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
[状態]:健康、エネルギーの結晶と不完全融合中
[装備]:生命の剣@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2、
[思考]
基本行動方針:ダイと戦い決着を付ける。
1:バーンを倒す。
2:メドーサを倒す。
[備考]
※参戦時期は、原作23巻終了後です。
※エネルギー結晶と融合しました。融合は不完全な物でエネルギー結晶を活用しきれません。
※回復能力を取り戻しました。
※生命の剣を発現させることが可能になりました。

【支給品説明】
エネルギー結晶@GS美神 極楽大作戦!!
ハドラーに支給。
霊力の高い人間の魂を集め造り出されるエネルギー集合体。
侵入した存在と融合する性質がある。
宇宙処理装置(コスモ・プロセッサ)の起動に使用される。

【メドーサ@GS美神 極楽大作戦!!】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2、
[思考]
基本行動方針:横島を殺す。
1:ハドラーを殺す。
2:殺し合いを優勝するか、脱出するかは保留。
[備考]
※参戦時期は、原作34巻で復活直後です。
※刺又槍を現出させることができます。
※超加速は制限されています。
※輪切りのソルベは破壊されて、周囲に散乱しています。

【支給品説明】
輪切りのソルベ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の旋風
メドーサに支給。
暗殺チーム一員ソルベがディアボロによって輪切りにされ、
透明のケースに入れてホルマリン漬けにした物。

251 ◆emwJRUHCH2:2015/12/02(水) 23:16:35 ID:82Fn.W3U0
投下を終了します。

252名無しさん:2015/12/04(金) 19:40:12 ID:oPwJqizcO
投下乙です

覇者の剣没収されてるとはいえ、いきなり生命の剣はダイ戦まで保たないと思うが、メドーサがそこまでの強敵ってことか

253名無しさん:2015/12/05(土) 12:14:44 ID:louiqRVw0
age

254<削除>:<削除>
<削除>

255<削除>:<削除>
<削除>

256<削除>:<削除>
<削除>

257名無しさん:2016/02/20(土) 23:03:23 ID:9xAw.zgU0
あれ…?
参戦作品一通りチェックしてから久しぶりに来てみたらこんなことに…
うそー終わっちゃうのー?(´・ω・`)
lみんな戻ってきてよー楽しみにしてたのにー…(´;ω;`)

258名無しさん:2016/02/20(土) 23:42:54 ID:pff/NqdE0
終わって欲しくないなら自分で書けばいいだろ

259名無しさん:2016/02/21(日) 18:26:07 ID:/KYTuiqc0
簡単に言ってくれるねえ…

260名無しさん:2016/02/23(火) 23:19:04 ID:5FrJpeJQ0
イッチが書く気無いから仕方ないね

261名無しさん:2016/02/26(金) 22:32:40 ID:jUZayGcs0
更新来たのかと思ったら雑談か
せめてsageてくれよ

262 ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 17:57:50 ID:mBVUxkME0
投下します

263あなたはどっち? ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 17:59:00 ID:mBVUxkME0
GS(ゴーストスイーパー)。
それは人々のために日々命の危険を顧みず、妖怪や悪霊を退治する過酷な職業である。
厳しい国家試験を勝ち抜き、危険の代償として高額な報酬を得る、いわば選び抜かれたエリートなのだ。


横島忠夫。
殺し合いのゲームに招かれた参加者であり、一見どこか間の抜けたような風貌のこの少年もまたGSの一人。

GSの仕事での経験のおかげなのだろうか。横島は殺し合いの場に巻き込まれたというのに、静かに物音を立てず目標を窺っていた。
目には支給品としてデイパックに入っていた暗視ゴーグルを付け、じっくりと観察している。

(うーん、遠くてちょっと見えずらいな)

まだ気付かれてはいないようなので、じわじわと近づき、もっとはっきりと観察できるように試みる。
目標に気付かれる危険があるが、この非常事態において他の参加者を見極めるのは重要事項であるため仕方がない。

(焦るなよ……慎重に行動するんだ)

そう自分に言い聞かせ、緊張からか高まる気持ちを抑えつけながらゆっくりと進んでいった。















「ちくしょう。あのノストラダムスって野郎、絶対にぶん殴ってやる」

横島が進む先には、浜辺に座り込み脱いだ上着を絞りながらぶつくさ文句を言っている、ずぶ濡れの少女がいた。
赤毛の髪をおさげにした可愛らしい顔立ちでありながら、粗暴な口調で独り言をつぶやき、豊かな乳房を堂々と晒したまま人目を気にする様子もないという、なんともミスマッチな少女であった。

なぜ彼女が不機嫌なのかというと、殺し合いなどという馬鹿げたことに参加させられたのはもちろん、さらに気付いたら海に落とされていたからである。
混乱しながらも浜辺までたどり着き、落ち着いたところでふつふつと沸いてきた怒りに任せて、ノストラダムスを打倒する決意を固めていた。
名簿を確認したところ、許嫁のあかねをはじめ数人の知り合いの名前があり、尚更殺し合いに乗るわけにはいかない。
あかねは可愛くはないが一応は許嫁だ。早く合流して、自分が助けてやらねばならない。

264あなたはどっち? ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 18:00:24 ID:mBVUxkME0



(ん?誰か見てやがるな)

ひととおり上着を絞り終えたところで、ふと自分へ誰かの視線が向けられている気配に気付く。
注意深く見てみると、暗闇に紛れて一人の男がほふく前進をしながら迫ってきているのが見えた。

「おい、てめえ!!そこで何してやがる!!!」

明らかに怪しいこの男は、殺し合いに乗っているかもしれない。
水分を落とした上着を足元に放り捨て、熟練者と思わせる構えをとり、戦闘態勢に入りながら不審者に怒鳴りつける。

すると、男の身体が固まったように硬直したのもつかの間、すぐさま目に付けていたゴーグルを外し物凄い勢いで走り寄ってきたのである。
少女は思わず攻撃しそうになるが―――――

「すんまへん、すんまへん、すんまへーーーん!!ほんの出来心だったんや〜」

目の前に来た途端、泣きながら土下座を始めてしまう。
謝っている内容から察するに、裸を覗き見ていたことを詫びているようだが。
怒りよりも先に、こんな状況でなんとも胆の座った奴だと、呆れ半分に感心してしまっていた。




「で、お前は殺し合いに乗っているのか?そうなら半殺しにでもしてやるが」
「も、もちろん乗ってない!」

一応確認を取ってみるが、やはり殺し合いをする気はないようだ。
何が起こるかわからないので、無駄な戦闘は避けるに越したことはない。

「そうか、とりあえず信じてやる。俺の名前は早乙女乱馬。お前は?」
「横島忠夫です、よろしく」
「……ああ、よろしくな」

どことなくキリっとした表情で握手を求めてくる。どうやら今更好印象を持たれようと画策しているらしい。
面倒そうに握手に応じてやると、乱馬は次の話題を切り出した。

「ところで横島。お前、お湯持ってないか?」
「お湯?生憎デイパックの中には入ってなかったみたいだけど、風呂にでも入るのか?」
「まあそんなとこだ……」

できれば早くお湯を手に入れて万全な状態に戻したかったが、ないのならば仕方がない。
力やリーチは劣るが、幸いこの状態でも戦えないことはないので、どこかで調達するまで我慢しようと諦めかけていたのだが。



「なんとかできないこともないぜ?」

いきなりそんなことを言い出すと、ずいと手を差し出してきた。
いつの間にか横島の手には小さな玉が握られており、そこには『湯』という文字が記されている。

「冗談に付き合うつもりはねえんだ、無いのならさっさといくぞ」
「まあまあ、それは今から証明―――おっと滑った!」

何をふざけているのかと乱馬が困惑しているなか、横島はその玉を持って近づくとわざとらしくこけ、玉を乱馬の頭上に放り投げた。
すると不思議なことに玉が光ったかと思うと、頭上から乱馬とドサクサに紛れて彼女に引っ付いている横島へお湯が降り注いだ。
水をかけたのではなく、横島は紛れもないお湯を生み出してみせたということになる。

265あなたはどっち? ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 18:01:56 ID:mBVUxkME0




「お湯で暖まれたことだし、これは事故ってことで。ん??」

何かがおかしい。
横島が乱馬に抱きついた直後には、たしかに極楽のように柔らかな感触に包まれていたはずだ。
しかし、今は固く筋肉のような感触しか伝わってこない。
そう、まるで男に抱きついているような。


「おお〜助かったぜ。何やったんだ?」


聞こえてくる声も初めて聞いた男の声。


「ありがとよ。でも気持ち悪いから、さっさと離れろよ」


横島は恐る恐る顔を上げて確認する。


「よう、早乙女乱馬だ。改めてよろしくな」


そこにいたのは、服装や髪型は同じでも明らかに別人な黒髪の男。


「ど、どちら様で?」
「だから言ったじゃねえか、早乙女乱馬だ。
 ほんとは男なんだけどよ、水を被ると女になるって厄介な体質でな」

いや〜ほんと助かったぜと、目の前の乱馬と名乗った男は嬉しそうに笑っているが、震えている横島には途中から聞こえていない。

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「うおっ!!」
「男は嫌じゃーーーーーーー!!!女がいいんじゃーーーーーーーーーー!!!!」

などといきなり叫びだすと全速力で走り去っていってしまった。



「なんだったんだ……世の中には変なやつがいるんもんだな」


第三者から見たならば、同じく変人に分類されるであろう乱馬は横島が走り去る様を呆然と見つめていた。

266あなたはどっち? ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 18:03:03 ID:mBVUxkME0



【C-7 海辺/1日目 深夜】




【横島忠夫@GS美神 極楽大作戦!!】
[状態]:健康、びしょ濡れ、霊力消費(中)、精神的ショック大、錯乱中
[装備]:
[道具]:支給品一式、暗視ゴーグル、ランダム支給品1(確認済)
[思考]
基本行動方針:殺し合いから脱出する
1:男は嫌じゃーーーーーーー!!!
2:女に会いたい
3:死にたくない
[備考]
※乱馬と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。
※乱馬の体質を知りました。
※名簿未確認。
※少なくとも文殊を使えるようになって以降からの参戦。
※叫びながら北に向かって入っています。


【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:健康、びしょ濡れ
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスをぶん殴る
1:知り合いと合流する
2:あかね最優先
3:お湯を確保しておきたい
[備考]
※横島と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。
※パンスト太郎戦以降からの参戦。


【支給品説明】


【暗視ゴーグル@現実】
ゴーグル型の暗視装置。
装備すると暗闇でも視界を確保できるようになる。

267 ◆uuM9Au7XcM:2016/03/29(火) 18:03:43 ID:mBVUxkME0
投下終了です

268名無しさん:2016/03/30(水) 19:23:01 ID:f3IitRr60
乙です
横島…お前ってヤツはどこでも変わらないな

269名無しさん:2016/04/01(金) 17:47:03 ID:t3q3f//g0
投下おつーw
予想可能回避不可能な展開に笑ったw
これはいい横島かつ乱馬なコメディ

270あなたはどっち? ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:33:07 ID:QiveXJTE0


【C-7 海辺/1日目 深夜】




【横島忠夫@GS美神 極楽大作戦!!】
[状態]:健康、びしょ濡れ、霊力消費(中)、精神的ショック大、錯乱中
[装備]:
[道具]:支給品一式、暗視ゴーグル、ランダム支給品1(確認済)
[思考]
基本行動方針:殺し合いから脱出する
1:男は嫌じゃーーーーーーー!!!
2:女に会いたい
3:死にたくない
[備考]
※乱馬と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。
※乱馬の体質を知りました。
※名簿未確認。
※少なくとも文殊を使えるようになって以降からの参戦。
※叫びながら北に向かって走っています。


【早乙女乱馬@らんま1/2】
[状態]:健康、びしょ濡れ
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスをぶん殴る
1:知り合い(あかね、良牙、シャンプー、ムース)と合流する
2:あかね最優先
3:お湯を確保しておきたい
[備考]
※横島と自己紹介しましたが、知り合いなどの情報交換までは至っていません。
※パンスト太郎戦以降からの参戦。


【支給品説明】


【暗視ゴーグル@現実】
横島忠夫に支給。
ゴーグル型の暗視装置で、装備すると暗闇でも視界を確保できるようになる。

271 ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:34:05 ID:QiveXJTE0
誤字等があったので少し修正しました。

272 ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:36:40 ID:QiveXJTE0
投下します。

273愛と憎しみのハジマリ ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:37:07 ID:QiveXJTE0
「バトルロイヤル……」

いつもならば、すでに眠りについている深夜。
自分の置かれた状況が信じられないのか、真宮寺さくらは確認するかのような独り言を呟きながら、配られた参加者名簿を見ていた。
神社の境内で姿勢よく座っているその袴姿は、真っ暗な闇のなかランタンの灯りに照らされ、見惚れてしまうような凛とした美しさを醸し出していた。

「大神さん……それにアイリスと紅蘭まで……」

名簿に記されていた名前のなかにあったのは、愛しい人と帝國歌劇団の仲間たち。
そんな大切な者たちが、自分と同じく殺し合いの場に連れてこられているのは悲しいことではあるが、同時に心強さも感じる。
一人だけなら混乱もしよう。
しかし、共に苦難を乗り越えた頼もしい仲間と、何よりもその仲間たちと自分を支え導いてくれた隊長がいる。

地図を眺めてまず目についたのは、大帝国劇場。
ほぼ島の中心に位置していることから参加者が集まりやすく、危険も高まるかもしれないが、見慣れたこの場所に知り合いが向かう可能性も同じく高い。
迷った結果、知り合いとの合流を最優先するという結論になり、最初の目的地を大帝国劇場に決めた。
先ほどまで感じていた不安はどこへやら、彼らを探さねばと立ち上がり歩き出そうとする。
月峰神社へ新たな客人が訪れたのは、ちょうどそんな時であった。











「…………先客がいたか」

姿を見せたのは、甲殻類の殻のような兜と奇妙な鎧を身にまとい、怪しい気配を漂わせる男であった。
その瞳には友好的に接しようなどという意思を欠片も感じさせることはなく、自分以外すべてのものを見下し支配する、そんな邪悪さを放っていた。
かつて戦った、黒之巣会の叉丹を思い起こさせる。


「!?……止まりなさい!!」

すぐさま危険な相手と判断したさくらは、デイパックの中から支給されていた刀を取り出すと腰の位置に添え、構えながら警告する。

「ほう……このラディゲに無礼な口をきくだけあって、なかなかの覇気を持っておるようだな」
「あなたは何者ですか!!その場で答えなさい、近づけば斬ります!!」

274愛と憎しみのハジマリ ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:38:44 ID:QiveXJTE0

口調は気丈に努めてはいても、相手から発せられるプレッシャーから、刀の柄を握るさくらの手のひらには汗がにじんでいく。
さくらの警告を気にも留めていないのか、男はゆっくりと近づきながら問いに答える。

「ふん、私が何者かだと?我が名は次元戦団バイラムが幹部、ラディゲ。
 そして、いずれは全次元の頂点に立つ者だ。このラディゲの手にかかって死ねることを誇るがいい!」
「くっ!?」

そう言うと、右手からムチのようなものを発生させ、さくらのいる場所へ向かって勢いよく振るった。
さくらが刀を構えた状態のまま、横っ飛びをするように回避したと同時に、背後にあった境内の一部が音を立てて崩れていく。
すでに警戒態勢に入っていたことから、いきなりの攻撃にも対応でき、なんとか躱すことに成功する。

ラディゲは即座にさくらが移動した場所にもムチを振るうが、またしても手ごたえはない。
さくらたち帝國歌劇団の面々は、妖魔たちと対していた際には、神武と呼ばれる霊子甲冑に乗り込み戦っていた。
だが、さくら自身も、魔を祓う破邪の力を持つ真宮寺一族であり、北辰一刀流免許皆伝の腕前を誇る凄腕の刀士である。
その実力を発揮し、次々と繰り出されるラディゲのムチによる攻撃を躱し続けるさくら。




「どうした、なぜ攻撃してこない。
 私に届くかはともかく、攻撃を仕掛けることはできたのではないか?」

十数分間そのようなやり取りを続けながらも、まだ余裕の表情のラディゲは、途中から抱いていた疑問を投げかけた。
ラディゲの言う通り、攻撃に移ることのできるタイミングは何度かあった。
躱し続けていても、誰かの救援が望めぬ以上、事態を好転させることが難しいのもわかっている。
さくらは手に持っている刀に目を向け逡巡する。


「来ないのならばそれでもよい、そろそろ終わらせてやる」

それまでムチを振るっていた右手を掲げる。
するとその手から衝撃波が放たれ、さくらは勢いよく傍にあった木の幹へ叩きつけられた。
ぶつかった衝撃によって、たまらずうめき声をあげてその場に倒れ込む。
なんとか目だけを向けると、再度ムチを発生させたラディゲが、今まさに止めをさそうと寄ってきていた。

(このままでは、やられる……)

もう迷っている暇はない。

「大神さんに会えずに、こんなところで死ぬわけにはいかない」

「真宮寺さくら、参ります!!」

さくらは決断し、急いで体勢を立て直すと、構えてた状態から刀を抜き斬りつけた――――――






「なにっ!?」

ラディゲとて、けっしてさくらを侮っていたわけではない。
しかし、その放たれた斬撃には、思わず驚きで目を見張った。
優れた刀士であろう、さくらによる斬撃の鋭さは予想できていた。
問題なのはその数。
なんと同時に八つの斬撃が放たれたのである。

真宮寺さくらに支給された刀の名は、『八房』。

人狼によって作られ、一振りで八つの斬撃を繰り出すことのできる妖刀である。

慣れた獲物である刀を支給されたのはありがたかったのだが、説明書に妖刀と記されていたので使うことをためらっていたのだ。

275愛と憎しみのハジマリ ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:39:23 ID:QiveXJTE0


まだ十分に制御できていないのか、あらぬ方向に飛んだ斬撃もあったため、ダメージを与えることはできなかった。
にも関わらず、警戒しているのかすぐに攻撃に移らずに、何かを考えるようにじっとさくらを見つめている。

これは好機とばかりに八房で斬りつけると、突然ラディゲの姿が欠き消えた。

「えっ?」

戸惑いの声をあげたのもつかの間、続けて背後からわき腹を蹴り上げられる。

「がふっ」

すかさず身体をずらし、ダメージを和らげながらその方向に斬りつける。
が、ふたたびその姿は消え、斬撃は辺りを破壊する。


「さすがに今のままでは、それを相手に無傷とはいかなそうだ。
 この勝負、預けておくぞ」

別の方向に現れたラディゲは、などと勝手なことを言いながら闇夜の中に姿を消していった。

「逃げた……の?」

緊張が解け、力が抜けたように座り込む。
さっきの戦闘で、精神肉体ともにだいぶ消耗してしまったようだ。

「でもすぐに移動しないと。音を聞いて、また危険な人が寄ってきちゃう」

「それに、早く大神一郎を殺さないといけないしね」

立ち上がるさくらの腰元のあたりには、見慣れないブローチが輝いていた。











(これは当たりだったようだな)

傍に潜み、気配を殺して様子を眺めていたラディゲは、満足そうに笑みを浮かべた。
見つけた参加者へ攻撃をしながら観察をしていた最中、誰かの名前を口走ったので支給品を試してみることにしたのである。
『反転宝珠』という、逆さまに付ければ愛情が憎悪に変わるブローチ。
あの言動から察するに、思惑通りにいったようだ。

(くくく、愛などという愚かな感情を持つから、己の身を亡ぼすことになるのだ。
私のために、せいぜい暴れてくれよ)

ラディゲといえども、ジェットマンやグレイ、そしてなぜか甦っている女帝ジューザ、奴らがいる以上たやすく優勝できるとは思っていない。
会場を混乱させる要素を作っておいた方が、人数も減りやすいだろう。

(とりあえずの問題はジューザか)

女帝ジューザは、ジェットマンたちとも協力して、ようやく倒せたほどの存在だ。

(誰かと手を組む必要があるな、まずは蒲生の屋敷とやらに行ってみるか)

方針を決めると、さくらが向かったのとは逆の方向へ向かって歩き出した。

276愛と憎しみのハジマリ ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:40:06 ID:QiveXJTE0



【D-2 月峰神社付近/1日目 深夜】




【真宮寺さくら@サクラ大戦シリーズ】
[状態]:疲労(大)、精神的疲労(大)、反転宝珠(逆向き)の影響下
[装備]:妖刀『八房』
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1(確認済)
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスを倒す
1:知り合い(アイリス、紅蘭)と合流する
2:大帝国劇場へ向かう
3:憎き大神一郎を殺す
[備考]
※八房の斬撃を当てると霊力を吸収できることは知りません
※反転宝珠(逆向き)が腰の後ろあたりにつけられています
※1本編終了後からの参戦
※まだ八房を使いこなせていません



【ラディゲ@鳥人戦隊ジェットマン】
[状態]:疲労(中)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本行動方針:優勝する
1:手を組める参加者を探す(今のところグレイ最有力)
2:蒲生の屋敷へ向かう
3:ジェットマンとジューザはできるだけ早く始末したい
[備考]
※少なくとも女帝ジューザ戦以降からの参戦



【支給品説明】

【妖刀『八房』@GS美神 極楽大作戦!!】
真宮寺さくらに支給。
一振りで八つの斬撃を繰り出せる妖刀。斬った相手のエネルギーを取り込むことができる。
フェンリル狼の封印が、使用者にどう影響を与えるかは後の書き手さんにお任せします。


【反転宝珠@らんま1/2】
ラディゲに支給。
笑顔と苛立ちの表情が上下に描かれたブローチ。
正位置につけると愛は豊かになるが、逆につけると愛が憎悪に変化する。

277 ◆uuM9Au7XcM:2016/04/03(日) 12:40:44 ID:QiveXJTE0
投下終了です。

278名無しさん:2016/04/03(日) 22:35:38 ID:tkzUwUfIO
乙です
まさかこういう流れになるとは大神さんやばす
限定的ながら厄介なステルスだあ
ラディゲの今後の立ち回りも楽しみな一幕でした

279名無しさん:2016/04/24(日) 23:46:55 ID:aYZEDiNg0
投下乙です
さくらが…大神さん

280名無しさん:2016/05/06(金) 17:25:10 ID:3yjNbx5gO
予約きた

281 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:03:07 ID:3QljqbYE0
投下します

282咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:04:21 ID:3QljqbYE0
人類が宇宙へ新しい発見を求めて旅立ち、国家ですらもスペースコロニーへと移転した未来世紀の時代には、ガンダムファイトと呼ばれる世界のリーダーを決める代理戦争が行われてい

た。
ガンダムファイトは、コロニー国家間での全面戦争を防ぐためにと考案され、地球をリングとして『ガンダム』と呼ばれる兵器を用いて行われる。
アレンビーも国家の代表としてガンダムに乗り、闘っていた一人である。
まだ17歳の少女ながらも、新体操の動きを取り入れた軍隊式格闘術を駆使する凄腕のファイターだ。

今現在、彼女が置かれている状況はガンダムファイトと似たようなものではある。
ただ違うのは、ガンダムに乗って闘うのではなく生身の人間同士で競い合うということ。
そして、勝ち残った一人しか生き残れない殺し合いだということ――――――





(こんな子どもまで参加させられてるなんて……)

アレンビーは一人の少年と共に、広い草原を線路に沿って歩いている。
少年の名前はジョン・コナー。
10歳という幼さにも関わらず、取り乱した様子はない。
つい先ほどアレンビーと出会った時も、自分は殺し合いに乗っていないから協力しようという提案をしてきた。

話を聞いてみると、ターミネーターというロボットに命を狙われ、同じく別のターミネーターに守られていたという。
「襲ってくる奴の方が、規格外の化け物だったけどね」
とジョンは言っていたが、味方のターミネーターのことを語る表情から察するに、かなり頼りになる存在だったことが伺える。
これだけ落ち着いているのも、そのターミネーターが自分を見つけ出して守ってくれると信じているからなのだろうか。
殺し合いの場だというのに、弱音を吐かず歩みを進めている。

(まだ可愛い顔してるのに、ずいぶんとしっかりしてるのね)

それにしても、冷静過ぎのように思える。
アレンビーを先導するように目の前を歩くジョンへ視線を向けながら、心中感心しつつも訝しむ。

「あのさ……」
「うん?どうかした?」

そんなことを考えながら歩いていると、不意にジョンが立ち止まり、後ろを歩くアレンビーに話しかけてきた。

「あのノストラダムスってやつは何がしたいんだと思う?」
「何がって……道楽だって言ってたけど……」
「でも、あいつは答えることはできないって言ってた。
 遊びならそれが楽しいからで済むはずでしょ?」

283咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:05:04 ID:3QljqbYE0

そう言われてみればそうである。だが改めて考えてみても、何が目的かなど見当がつかない。
ガンダムファイトのように大規模な戦争を防ぐための手段としてでもなく、こんな殺し合いに多数の人を無理やり参加させるなんて、普通の人間が考えるようなことではない。
見世物として金儲けをするか、本当に道楽だという方が納得できる。
金と変人の欲求というのは、常人が理解できない状況を生み出すものだ。
とにかく、推理するにはまだ情報が足りない。

「ジョンくんは何か心当たりでもあるの?」
「ううん。でもさ、相手の目的が分かれば何か弱点も分かるんじゃないかと思ったんだ……」

そう話すジョンの表情には、どこか不安げな感情が読み取れる。
こんな状況で初めて会った人間だ。おそらく、アレンビーがいくら殺し合いに乗っていないとわかったとしても、多少警戒したまま接していたのだろう。

「大丈夫だって。
 あいつが何をしようとしてるかはわかんないけどさ、私が守ってあげるから」

こう見えてもほんとに私強いんだよ、と元気づけるようにジョンへ向かって笑いかける。
これ以上続けても進展はないと思ったのか、ジョンも話題を切り上げて曖昧な笑みを浮かべた。

「ガンダムファイターだっけ?」
「うん、もう一人ドモンていう私よりも強いファイターも参加者にいるよ。
 でも絶対にこんなゲームに乗るような人じゃないから安心して」
「ドモン……あった、ドモン・カッシュ」

話を聞きながら名簿を確認してみると、たしかにその名が載っていた。
アレンビーは自分のことを話す時よりも、生き生きとドモン・カッシュのことをジョンに語る。
アレンビーがここまで熱弁するほどなのだからよほど屈強な人物のようだ。
そしてその話す様子から、彼に対する淡い想いを感じることができた。

「それにレインはガンダムのメカニックもしてたから、この首輪を外せるかも」
「首輪を――――うわ!?」

ジョンが持つ名簿を覗き込み、続けてレイン・ミカムラという名を指さす。
本当に外せるものなのかと思い、後ろから覗き込んできているアレンビーへ向くと、女性特有の甘い匂いと共にその顔が至近距離にあったことに驚く。

「ちょ、ちょっと!近いよ!!」

顔を赤らめながら、思わずアレンビーとの距離を取る。
ジョンもそういうことを意識してしまう年齢だ。年上の美女の顔がいきなり至近距離にあれば、狼狽するのは当然といえる。

「あはは。ごめんごめん、もしかして照れてる?」
「ち、違うよ。ちょっと驚いただけさ」
「………」
「……何?」
「ううん、ちょっと安心しただけ」
「??」

目の前であからさまに狼狽えている少年を見ながら、その年相応な反応にアレンビーはどこかほっとした気持ちになった。
いくら落ち着きのある行動を取れていたとしても、やはりまだ子どもなのだ。
これから先、どのようなことになるか予想できないが、自分が彼を守らなくてはとの思いを堅固にする。

284咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:05:54 ID:3QljqbYE0



「あ、誰か来る」

そんなやり取りをしていた時、向かい合って話していたジョンが、視線の先を指さしながらアレンビーに告げる。
振り返って少年の緊張の眼差しの先を見てみると、たしかに一人の女性がこちらに向かって歩いて来ているのが見えた。
その足取りとただならぬ雰囲気から何かを察したのか、アレンビーは自然とジョンを庇うような位置を取っている。
近くまで来た女性は異様な格好をしており、まるでコミックから出てきたようなその様相は、この異常な状況においてより一層の不気味さを醸し出している。

「私たちは殺し合いをする気は―――」
「ジェットマン、ラディゲ、グレイ。こいつらの居場所に心当たりはあるか?」
「え?……知らない、ここであったのはあなたが二人目だから」
「そうか、ならば貴様らの首輪を貰うとしよう」
「な!!!?」

まずは対話を試みようとしたアレンビーを無視して、一方的に自分の要件を済ませる。
さらに聞き捨てならない言葉が発せられると、危険性を確信したアレンビーがすかさず攻撃に移ったが――――

「嘘……」
「この程度で私に抗うとはな」

思わず驚愕の声を漏らすアレンビーであったが、それも無理もない。
標的の頭部目がけて放たれた上段蹴りは、相手の不意をつくには十分な速さと威力を備えていたはずだった。
しかし、その攻撃が事も無げに受け止められ、そのまま足を掴み取られてしまったのである。
それもそのはず、彼女が攻撃を仕掛けた相手は裏次元を征服した武装集団、次元戦団バイラムの首領でありバイラムいちの実力者。
見た目は妙齢の女性だが、女帝ジューザといえば部下をもその存在を恐れる女傑なのだ。

「まだまだ!!」

一瞬面食らったアレンビーだったが、すぐさま足を掴まれた腕へ絡みつき関節技を試みる。

「ふん、小賢しいわ」
「がはっ」

ところが、そのままアレンビーもろとも腕を地面へ叩きつけるという荒業へ出る。
衝撃音が鳴り響き、地面に倒れ込み悶えるアレンビー。
すると今度は片手で首を掴み軽々と持ち上げると、満足気に微笑んだ。

「このまま絞め殺してやる」
「あ……ぐ……」

「アレンビーッ!!」

デイパックから取り出した銃を構えて援護しようとするも、ジョンの腕前ではアレンビーに当ててしまう可能性もあり、構えたまま立ち尽くしてしまう。
早くも勝負は決したかに見えたが、ここでこの場にいる誰もが予想していない事態が起こる。

285咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:06:37 ID:3QljqbYE0

「なんだッ」

ジューザの立っている地面が、いきなり爆発したかのように弾けたのだ。
その際に見せた隙をついてアレンビーは拘束から脱出し、少し離れた場所から様子を窺っている。

「ここはどこだ……」

土煙の上がる地下から現れたのは、中華風の服を着て黄色いバンダナを頭に巻いた男。
まるで迷子のようにキョロキョロと辺りを見回している。
そしてジューザの姿を目にすると、ぎょっとしたような顔をして後ずさる。

「な、なんだてめえは!」
「私の邪魔をしておいて無礼な口まできくとは、そんなに殺してほしいのか?」
「殺すだと?まさかお前、こんな馬鹿げたゲームに乗ってやがるのか」
「ノストラダムスもお前たちも同じよ。私の邪魔をする者は殺す。
 お前のでも構わん、そのために首輪のサンプルを貰うぞ」
「うおっ」

ジューザから放たれる拳をなんとかガードするも、その凄まじい威力から、バンダナの男はさらに後ろへ押し出された。
そこへ背後からアレンビーが受け止める。
そして静かにバンダナの男へ向かって話しかける。

「す、すまん。助かった」
「いいえ、気にしないで。私はアレンビー、そっちにいる子はジョン君。
 二人とも殺し合いには乗ってない」
「俺は良牙、響良牙だ。俺も殺し合いには乗ってない」
「じゃあ、あいつをどうにかするの協力しない?
 正直言って、一人じゃとても敵いそうにないの」
「同感だ、あいつはヤバい」




響良牙とアレンビー・ビアズリー。
二人とも達人といってもいい格闘技術を持っている。
しかしながら、相手も常識破りの怪物だ。
最初のような一方的な展開にはならずとも、決定打を与えることができないまま疲労だけが蓄積していく。
その様子を悔しそうに見つめるジョンは、戦いに向かう際に良牙が投げ捨てたデイパックへ目を向けた。
その中に何か役に立つ支給品があるかもしれない。
そう思い立ち、中を探り始める。

(あった……)

運よく武器になりそうなものを探し当て、見つけた支給品をアレンビーへ渡そうと顔をあげる。

286咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:07:16 ID:3QljqbYE0

「ぐあっ」
「きゃあっ」
「そろそろ煩わしくなってきたぞ。お前はもがき苦しみながら死ね」

吹き飛ばされた二人と、まだ余裕のありそうなジューザ。
そのジューザの額にある石が光り、アレンビーに向かって光線が発射される。

「あああああああああああっ」

なんと、光線を受け叫ぶアレンビーの腕からは結晶のようなものが生えてきているではないか。
心配して駆け寄ったジョンが見たものは、皮膚を破って血を滲ませながら結晶が生えてくる痛々しい姿だった。

「ちくしょおおおお」
「お前も終わりだ」

最後の力を振り絞るように突進していった良牙だったが、腹部を打ち据えられジューザの足元に倒れ伏す。
アレンビーは正体不明の光線を受け戦闘不能。良牙もジューザの力の前に屈してしまった。
今度こそ本当に終わりかと思われたその時、倒れていた良牙の手がジューザの足を掴む。

「なあ、俺はこのまま死ぬのか……」
「そうだ。だが私の役に立つのだ、誇り思って死ぬがいい」
「くそぉ…………」
「……ん、なんだ!?」

ジューザが良牙の異変に気付た。
突然、良牙の身体から凄まじい闘気が発せられたのだ。

「逃がさねえぞ」
「くっ!!」

離れようとするジューザを、掴んだ手に懸命の力を込めてその場に食い止める。

「ああ…憂鬱だ……獅子!!!咆哮弾ーーーーーーーー!!!」

良牙が叫び声をあげると、巨大な光の弾が頭上に現れ落下。
放たれた技の威力を物語るように、中心部にいた良牙の周辺はクレーターのように大きくへこんだ状態になっていた。
そこにはジューザの姿はなく、良牙が一人ゆっくりと立ち上がる姿だけが確認できた。

287咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:07:55 ID:3QljqbYE0

「だ、大丈夫なの?」
「ああ、なんとかな。
 獅子咆哮弾の直撃を食らえばあいつだって―――」


振り返った良牙の誇らし気な顔に安心したのもつかの間。
その言葉が途切れる。
強大な敵を打倒したはずの男の口からは血が流れ、その胸を剣が刺し貫いている。

「ごふっ……」
「この剣を見ると思い出す。あの忌々しい裏切り者の顔をな」
「あ…かね…さん」

抉れた地面の下から現れ、良牙に致命傷を与えたジューザは、膝をついた彼の首をその剣で切り落とした。
さっきまでジューザと激闘を繰り広げていた男の首が、あっさりと体から離れ地面への落ちていく。


「さあ、小僧。次はお前だ」

「…………」

「安心しろ、手早く済ませてやる」

「…………」

「私はいいから……早く…逃げて…」

呆然と立ち尽くすジョンへ、アレンビーが逃げるように促す。
あそこまでの威力の攻撃を受けて生きているような相手に、銃だけで敵うわけがない。
だが今更逃げられるかと問われれば、それもNOだ。
乗り物も持ってない子どもが逃げ切れるとは到底思えない。
悩みぬいたジョンは、自身が生き残るために危険な賭けに出た。


「俺は役に立つよ」
「なに?」
「その首輪を調べるあてがないんなら、俺がやれる」
「ほう……」

ジョンの言葉を受け、歩み寄っていたジューザは足を止めて思考する。
はっきりいって首輪を解析する手段に心当たりはない。
だが、トランのような例があるにせよ、このような子どもがそれをできるなど信じがたいことだ。

「……いいだろう」
「!?」

しかしながら、ジューザは了承した。
嘘であったとしてもその時に殺せばいいことであり、この首輪がジューザにとっても最大の懸念事項であるからだ。

「ただし、裏切れば殺す。役立たずだと判断しても殺す」
「……わかった」
「よし、では行くぞ。
 その女は放っておいてもそのうち死ぬ」

この場を立ち去ると促すジューザに対して首肯すると、アレンビーの傍に置いていたデイパックを取りに戻っていく。

「おい、早くしろ」
「は、はい!!」

デイパックを取りに行く際の一瞬、苦しむアレンビーへ視線を向けるが、ジューザの呼びかけに応え後を追って走っていった。
嵐が去った後に残されたのは、悪に立ち向かった男の物言わぬ骸と得体のしれない現象に苦しみもがく女の叫び声。
そして、女のそばには一つの支給品が目立たぬように置かれていた。

288咆哮 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:08:28 ID:3QljqbYE0




【響良牙@らんま1/2 死亡】




【D-3 1日目 深夜】





【女帝ジューザ@鳥人戦隊ジェットマン】
[状態]:疲労(大)
[装備]:秘剣ブラディゲート
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜1、首輪(響良牙)
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスを殺す
1:ジョンに首輪を解析させる
2:ジェットマンと裏切り者(ラディゲ、グレイ)は見つけ次第絶対に殺す
3:邪魔をする者、目障りな者は殺す
[備考]
※参戦時期はラディゲに殺された直後
※結晶化現象はジューザが一定の距離離れたら解除されますが、ジューザはまだ気付いていません


【アレンビー・ビアズリー@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:疲労(極大)、全身打撲、左腕に結晶化現象進行中
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2〜3、
[思考]
基本行動方針:殺し合いから脱出する
1:ジョンを守る
2:知り合い(ドモン、レイン)と合流する
3:白いローブの女(女帝ジューザ)を警戒
4:東方不敗を警戒
[備考]
※同作参加者たちを知っている時期からの参戦
※ジョンからターミネーターの話を聞きました
※倒れているアレンビーの傍に支給品(魔甲拳)が置かれています
※響良牙のデイパックは戦闘した場所の周辺に落ちています


【ジョン・コナー@ターミネーター2】
[状態]:精神的疲労(大)、良牙・アレンビーへの強い罪悪感
[装備]:ベレッタM92F
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2
[思考]
基本行動方針:母の元へ生きて帰る
1:逃げるチャンスが来るまでジューザに取り入って生き残る
2:T-800と合流したい
3:T-1000を警戒
4:アレンビーの知り合い(ドモン、レイン)と会ったらどうしよう……
5:天道あかねが良牙の知り合いなら良牙のことを伝えたい
[備考]
※T-800、サラと共に逃走中からの参戦
※アレンビーからガンダムファイター・ドモンたちの情報を聞きました




【支給品説明】


【秘剣ブラディゲート@鳥人戦隊ジェットマン】
女帝ジューザに支給。
次元をも切り裂くことができる裏次元伯爵ラディゲ愛用の剣。


【魔甲拳@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
響良牙に支給。
魔界の名工ロン・ベルク作の武器。
利き腕と逆側に装着し「鎧化」の声に反応し手甲の一部が鎧に変わる。
鎧化後は呪文が効かないが金属のため雷系は防げない。


【ベレッタM92F@レオン】
ジョン・コナーに支給。
イタリアのベレッタ社が設計した自動拳銃。
マチルダがレオンから使用法を習っていた銃の一つ。

289 ◆uuM9Au7XcM:2016/05/11(水) 22:09:03 ID:3QljqbYE0
投下終了です

290 ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:29:59 ID:5j7TAO9U0
投下します

291誰がために我は行く ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:30:59 ID:5j7TAO9U0
暗闇が支配する草原を猛スピードで駆け抜ける物体。
ヘッドライトが照らす僅かな範囲を視界に捉えながら、ルシオラはそのスピードを緩めることなく蒸気バイクを走らせ続けている。
背後にはすでに豪鬼の姿は見えず、追って来ているような気配も感じない。
だが、だからといってすぐに警戒を緩める気にはなれなかった。

それほどまでに豪鬼は異質な存在であった。
魔族である自分や、その主であったアシュタロスとも違う。あそこまでむき出しの殺気を平然と放っている相手に会ったのは初めてだ。
魔族には欲求のままに殺しを行い、それをなんとも思わない者は多い。
しかしあの男は、もっと純粋に意識することなく、感情に左右されずに殺気を放っている。
殺し合いを円滑に進めるため、しばらくは乗っている者たちと潰しあいをするつもりはないが、いずれは戦うことになるだろう。


「さすがに、あんなのがごろごろいるってのは勘弁してほしいわね」


初っ端から会ってしまった規格外の参加者のことを考えていると、つい愚痴が漏れてしまう。
強者相手でも死なない自信はあるが、なにしろ未知数な状況だ。
それに自分は絶対に失敗できない。


ヨコシマを―――愛する人を優勝させるという目的があるのだから。






「あれは…………死体?」


しばらくの間蒸気バイクを走らせていると、進行方向に人らしきものが倒れているのが見える。
怪我でもしているのか、あるいは寝ているだけなのかもしれないが、今この状況を考えればすぐに死体だと連想された。
ルシオラ自身もすでに戦闘を経験していて、他の参加者を殺そうともした。
別の場所で誰かが殺されているというのは十分にありえる。

何か情報を得られるだろうかと思い、バイクを減速させ死体とおぼしきものに近づいていく。
近くまでいくと、遠目では曖昧だった輪郭もよく見えてくる。
倒れていた人物は大柄な男のようだった。


(反応がないし息をしてる様子もない、やっぱり死体みたいね)

292誰がために我は行く ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:32:16 ID:5j7TAO9U0


しかし、ランタンの灯を照らしてみるとふと違和感に気付く。


「こんな大きな傷があるのに周りに血がない?」


おそらく死因であろう。腹部や胸に何かで貫かれたような傷を確認できたが、それほどの傷を負っているにも関わらず血が流れた痕跡がない。
吸血のような能力を持つものにでも殺されたのだろうかと考察しつつ、ランタンの灯を頭部にまで進める。


「え!?……ロボット?」


そこにあったのは皮膚が剥がれむき出しとなった機械の顔。
ロボットが参加者の中ににいるという事実に一瞬驚きの表情を見せたものの、すぐに落ち着きを取り戻す。
アシュタロスの部下であった時、直接の上司である土偶羅はロボットであったし、ヨコシマの仲間にも、人間の女性にそっくりなアンドロイドがいた。ありふれていたというほどではな

いにしても、ありえないことではないのだ。

わかったことは2つ。
バトルロイヤルにはロボットも参加していると言うこと。そして、その明らかに戦闘型と思われるロボットを倒しうる存在がいるということ。
先ほど出会った男といい、普通の人間に出会う方が稀なように思えてくる。


「これは……ちょっとやり方を考え直す必要がありそうね」


今まではヨコシマを優勝させることを最優先に、まずは参加者を積極的に減らすよう行動する方針だった。
けれども、想定していたより危険人物や得体の知れないものが多いようだ。
ヨコシマを優勝させるという方針に変わりはないが、ヨコシマが死んでしまっては本末転倒になってしまう。
ノストラダムスの言う、どんな願い事も叶えるという優勝賞品も本当かどうかは怪しい。


「ヨコシマは強い。けれど、絶対なんてないもの……」


そう呟き周囲の様子を確認すると、目の前に転がっている無機物の身体へゆっくりと手を伸ばしていった。

293誰がために我は行く ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:33:07 ID:5j7TAO9U0






                 ◇






「成功したみたいね」


機能停止の状態から再起動を果たしたT-800の前には、見降ろすようにボブカットの女が立っていた。
先ほど交戦した男はもうこの場にはいないようだ。


「申し訳ないけど、武器は預からせてもらってるわ」


T-800が何かを探す仕草をしたのを見て察したのだろう、女は手に持ったボウガンを掲げて見せる。
ボウガンをデイバッグに仕舞いながらさらに言葉を続けた。


「言葉は理解できる?それともまた眠りたいかしら?」
「……何が目的だ」
「話が早くて助かるわ。単刀直入に言うと、殺し合いに乗っているのなら手を組みましょうってこと」
「私が殺し合いに乗っておらず、そして断ったとしても破壊するということか」
「……そういうことになるわね。早く返答を聞かせてくれない?」


T-800が作られた理由は人類の殲滅および人類軍リーダーの抹殺。
故に、人間と協力するなどありえないことだ。
だがもし任務遂行の役に立つのなら、本来の目的を秘し利用するのも有効な手段だろう。


「殺し合いに乗ってはいる。だがその前に質問がある」


女は無言でその先を促す。


「見たところさほど時間が経っていないようだが、再起動にはまだ時間を要するはずだ。お前が処置をしたのか?」
「ええ、前にメカニックをやっていたことがあるの。
 とは言っても、あなたの身体はわからないことも多かったから成功するかどうかはイチかバチかだったけどね」
「他に質問は?」
「いやない。……わかった、そちらの提案を飲もう」

294誰がために我は行く ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:33:50 ID:5j7TAO9U0


T-800は女の提案に乗ることにした。
相手に機械についての知識があり、自身の身体に手を加えられたというのなら、提案に乗った方が無難だ。
戦力として役に立つのかは判断できないが、標的であるジョン・コナーを探すには人数が多い方がいいという利点もある。
未だ寝そべっていた身体を起こし、右手を差し出し握手を交わす。


「これで交渉成立ね。私の名前はルシオラ、短い付き合いになるでしょうけどよろしくね。
 あと、他の参加者を殺すうえで注意してほしいんだけど、ヨコシマタダオという参加者は殺さないようにお願い。
 そちらは何か要求はある?」
「T-800だ。
 ジョン・コナーという少年を探している。できれば私の手で確実に殺したいが、発見したならば優先的に殺してもらいたい」
「へぇ―――恨みでもあるのかしら」
「お前が知る必要はない」


一度愛する男を失ってしまった女は二度と同じ過ちを犯さぬために突き進み。
少年を守るためのターミネーターはバトルロイヤルという渦にその存在意義を歪められた。



本来ならば別の形で協力できたであろう二人の異端者が、凶行へ向かうべく手を結んだ。





【C-5 草原/1日目 深夜】
【ルシオラ@GS美神 極楽大作戦!!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)
[装備]:蒸気バイク@サクラ大戦シリーズ
[道具]:支給品一式、ランダム支給品0〜2、
[思考]
基本行動方針:ヨコシマを優勝させる。
1:参加者を見つけ次第殺す。
2:ヨコシマを殺す可能性のある危険人物とジョン・コナーを優先して殺す。
3:T-800と組む。
[備考]
※参戦時期は、原作34巻東京タワーでの死亡直後です。



【T-800@ターミネーター2】
[状態]:腹部・左胸部が大破、顔の皮が無い、プログラムに異常
[装備]:ボウガン、ボウガンの矢×4
[道具]:支給品一式、不明支給品0〜2、ボウガン@ケイゾク
[思考]
基本行動方針:人類、ならびに指導者のジョン・コナーを排除する。
1:ジョン・コナーを殺す。
2:ルシオラと組んで参加者(人類)を殺す。
[備考]
※参戦時期は少なくともジョンとハイタッチの遊びをした後です。
※ルシオラがT-800を再起動させましたが、チップの抜き差しは行わなかったため目的が人類の殲滅に変わりました。

295 ◆uuM9Au7XcM:2016/08/21(日) 16:35:14 ID:5j7TAO9U0
以上で投下終了です
ご指摘等あればよろしくお願いします

296 ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:12:27 ID:pELL9T0I0
投下します

297希望の道しるべ ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:15:37 ID:pELL9T0I0



「くそッ!なんなんだこれ!!」


功夫は大声で毒づきながら手近にある人形を蹴り飛ばした。
おそらく、バトルロイヤルが開始されてからずっと暴れていたのだろう。博物館に飾られていた展示物の大半は、その価値を知るものが目を背けたくなるほどに無残な状態となっていた


それでも怒りが収まらないのか、持っていたデイパックまでをも床に叩きつける。

思い返せば、今日はずっと想定外のことばかり起こっている。
上手く観覧車に爆弾を設置できたまでは良かった。しかし、自転車のカギを落としたことがきっかけで、警備員に見つかってしまったのがケチのつきはじめ。
それから爆弾を仕掛けた自分が警察に呼ばれてしまうわ、そこにいた鬱陶しい刑事がしつこく自分を疑ってくるわでイライラが募るばかりの一日である。
本来なら、今頃はあの邪魔な観覧車を作ったやつらから3000万円を手に入れていい気分に浸っているはずだったのだ。
それがどうしたことか。殺し合いをしろと言われ、得体の知れない島に放り出される始末。


「……あいつのせいだ」


名簿には、あの古畑とかいう刑事が載っていた。
古畑の他に自分の知り合いが載っていないことから、あいつに関わったせいで巻き込まれた可能性が高い。
どうせ犯罪者の恨みでも買っているのだろう。
自らの古畑への印象を根拠に、功夫はそう結論付ける。


古畑のせいにすることによって、少しばかり心の平穏は得られたものの、自分が危険な催しに参加させられているという状況は変わらない。
優勝を目指すかという考えも浮かんできたが、1人や2人を隙を付いて殺せることはあっても、大人数での殺し合いを格闘技の経験もない自分が無事に勝ち抜けるとは思えない。
せっかく警察がいることが分かっているのだから、刑事である古畑に保護を求めるのが賢明であろう。
観覧車への爆弾設置の犯人だと疑われている身ではあるが、この非常事態だ。
大事の前の小事ということで自分に構っている暇はないはず。

古畑はどこにいるだろうかと、ふと見上げた窓の先に一際目立つ輝きが目に入った。













李紅蘭はその紫色の髪の隙間から瞳を覗かせ、目の前にそびえ立つ灯台を見上げた。
灯台へ来たのにそれほど深い意味はない。
大神たちと合流しようにもどこにいるのかわからないので、とりあえず自分がいる周辺を高い場所から見てみるかという程度であった。


「入るのなら早くしよう。殺しに乗ったやつが僕らと同じようにここへ来るかもしれない」
「せやな、目立つ場所やからさっさと済ませてしまおか」


隣に立つ白衣姿の男――――林功夫の提案に賛同する。
功夫とは数分前に出会った。
こんな状況だから仕方のないことではあるが、会った当初の功夫は紅蘭をひどく警戒していた。
自分が殺し合いに乗っておらず、ノストラダムスを打倒するよう動くつもりだと必死に訴え、どうにか信用されこうして同行しているというわけである。

298希望の道しるべ ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:18:54 ID:pELL9T0I0

また、ここまでの道中で簡単な自己紹介なども済ませている。
功夫によると、古畑という知り合いの警察官の名前も参加者名簿に載っていたらしい。
紅蘭も大神たち帝国華撃団の面々が殺し合いに乗ることはないと伝え、彼らとの合流を目指すことで一致した。


「なあ、林はん」
「……なに?」
「林はんて電子工学の専門家言うてたやろ。これ、どう思う?」


灯台の内部にある上部へ続く階段を登っている途中、前を歩く功夫に紅蘭は自身の首に嵌められている首輪を指さして言う。
『どう思う?』とは『解除できると思うか?』という意味なのだろう。
後ろへ振り返ったまま功夫がどう答えたものか返事に窮していると、返事を待たず紅蘭は続けた。


「いや、ウチもそこそこ機械には自信あるんやけどな。
 専門家なら林はんの意見もちょっと聞いときたいって思っただけなんや」
「下手に触って爆発したら元も子もない。サンプルを手に入れるまでなんとも言えないな」


気楽に気楽に―――と軽く質問しただけだと強調する紅蘭。
だがそう促されたことでかえって不快に思ったのか、功夫は声のトーンを落として応える。


「せやなぁ。でも誰かを殺して首輪を取るってわけにもいかへんやろし、死体見つけてそこから回収するしか方法あらへんかな」
「あんたはどうなんだよ。見たところ、外す自信があるみたいだけど」
「さっき林はんも言うたように、まだわからんよ」

紅蘭は功夫の指摘を静かに否定する。
しかし、
「ただな、システムや道具がどれだけ優れていても、使うてる人が完璧なんちゅうことはありえへん。
 絶対に綻びや付け入る隙があるはず。ウチはそう思ってるだけや」
「だから、林はんも諦めんと生き残るために一緒に頑張ろうや」


立ち止まっている功夫の位置まで歩み寄りながらそう告げると、ニコリと笑いかけた。
それで納得できたのか、あるいは到底共感できることではなかったのか。
功夫は道中口を開くことはなく、紅蘭もまた無理に話しかけようとはせず、しばらくは二人の階段を上る靴音だけが響いていた。





黙々と階段を登るっていると、踊場が設置してある部屋へ辿り着く。
二人して入口から顔を覗かせ別の参加者がいないかどうか中の様子を確認してみる。


「誰もおらへんみたいやな」
「…………」


紅蘭がふっと息を吐き緊張を緩めたのと同時に、近くにいる功夫も同じようにほっとした様子が伺えた。
だが奇妙なことに、部屋の中央には台座のようなものがあり、そこに電子レンジ程の大きさの箱が置いてあるのに気付く。
まるでお伽話で主人公が伝説の塔を踏破して、宝のある場所に辿り着いたかのようである。


「なんや、これ見よがしに取ってください言われてるみたいで怪しいな」
「……でもこのまま何もせず帰ったら、わざわざここまで来た意味がないでしょ」
「そりゃそうやろけど―――――って、ちょっ待ちいや!」


紅蘭はその様相を怪しむが、功夫は部屋に入り足早に台座まで進んでいく。

299希望の道しるべ ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:20:45 ID:pELL9T0I0
「もし生き残るために役に立つものがあったのなら、他の参加者に横取りされる前に手に入れないと」
「だから、そう思わせて焦らせること自体が罠かもしれん言うてるんやて!」


警戒する紅蘭は声を荒げ制止を試みる。
その声を意にも介さず、歩みのペースを落とすことなく功夫は台座の前まで到着し、四角い箱に手をかけた。
箱は木製で、ところどころ金具の意匠が施されており、どこか味わい深さを感じさせる。
意外なことにカギはかかっていないようで、フタの部分を持ち上げるようにするとゆっくりと開いていく。
完全に開いた状態になると、考え込んでいるのか功夫の動きが止まる。


「林はん、どうないしたんや。大丈夫なんか?」


何も反応を示さない功夫を不思議に思い、ゆっくりと近づきながら紅蘭が訝しげに尋ねる。
その言葉にハッとしたようにビクリと肩が動くのが見え、とりあえずの無事は確認することができた。
すると振り返りざまに、無言で一枚の紙を差し出してきた。
紅蘭は手を伸ばて受け取り、何事かと広げてみる。


「……導きの光により道標が現れるであろう?」
「そう……入ってたのはその紙だけ。なんのことかサッパリだ」
「これがノストラダムスの言うてたことなんやろか」
「言ってたこと?」
「ほら、おさげの男の子と黒ずくめのおっちゃんと話した後に…………
 あ!?そういやあのおっちゃん古畑て呼ばれとったな!林はんの知り合いてあのおっちゃんかい!」


紅蘭が今更な驚きに直面している横で、功夫はその時のノストラダムスの言葉を想い返す。

『最後に一つだけアドバイスだ。勝ち残るには、力や武器だけではない。知恵も必要となる。』

たしかにそう言っていた。
そうなるとこれは、知恵を絞って解いてみろということなのであろう。
こんな推理小説みたいなことまでせねばならぬのかと、功夫が頭を抱えたい気分になっていると―――


「ちょっと待っといてや」


一人で騒いでいた紅蘭だが、ツッコミがこないとわかると灯台の最上部へと続く梯子を登り始める。
紅蘭はチャイナドレスを着ているため、慌てて目を反らす功夫。
急に梯子を登り始めた紅蘭の行動の意図を図りかねていた功夫だったが、行こうとしている目的地に思い至るとすぐにその意図を理解する。


「導きの光というのは灯台のライトのことか!?」
「せやせや。そしてたぶん、道標が現れるということはこうしてっと。
 ほらな、これで正解や」


灯台の頂上部分に着いた紅蘭は、デイパックから地図を取り出すとそれを灯台のライトへ掲げ、一度確認すると功夫にも見るようにと渡してきた。
それによって現れた変化は微細なものであったが、明らかな変化であった。
地図上のいくつかの箇所に、星の形をした印が浮き出ていたのである。
数分の間、印の出た地図をしげしげと眺めていたが、降りてきた紅蘭へ向けて目線を上げ口を開く。

300希望の道しるべ ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:21:35 ID:pELL9T0I0


「これでとりあえずの目標ができたってことかな」
「そこへ行ったところで、いい事があるのかわらへんけどな」
「……いや、有利になる何かがあるはずだ」
「まぁ……元気が出てきたようで何よりや。
 ウチは上のライト調べときたいやけど、しばらく待っといてもらってええやろか?」
「……ああ、わかった」
「じゃあ、すんまへんけどここで待っといてや」


そう功夫に断り再び梯子を登っていく。
登っている最中、紅蘭は内心少し安心していた。
出会ってから同行していてずっと、功夫には自暴自棄にもなりそうな不安定さを感じていた。
さっきの一件によって生きて帰る希望が見えたのか、地図から顔を上げた時の功夫の表情は、気力が湧いてきているように見えた。
どんな絶望的な状況でも、諦めてはいけない。
紅蘭が華撃団の仲間と一緒に戦ってきて学べたことだ。
きっと、隊長である大神はもちろん、さくらやアイリスだってノストラダムスを倒すために―――
そして強引に殺し合いをさせられている参加者たちを助けようと、諦めず懸命に頑張っているに違いない。
絶望する力なき民衆へ希望を与えるのも、自分たち帝国華撃団の仕事であり使命なのだ。

再び回転するライトの前まで到着し、構造を調べるべく作業に取り掛かる。とはいっても必要な道具類もないので、簡単な確認作業となってしまう。
その結果、ライトに何か変わった仕掛けが発見できたなどということはなかった。
地図にも特殊なインク等が使われている形跡はなく、首輪解除の一助になるかと思い調べてみたものの、どのような仕組みで印が浮き出てきたのかは謎のまま。
数分頭を悩ませ、諦めて戻ろうかと思った時ふと思い浮かぶ。

『霊子甲冑のように、霊力あるいはそれに類するものを利用しているのではないか』


「林はん!!ちょっと気になることが……ありゃ?」


功夫にも意見を聞くべく、箱のあった部屋まで勢いよく下りた紅蘭を待っていたのは無人の空間。
ここで待っているはずの同行者はおらず、なぜか部屋の隅に彼の白衣が放り捨ててある。


「なんや、待ちくたびれて先に出てしもたんか。
 しゃあないな……。上着忘れていったみたいやしウチも急いで降りるか」


そう呟きながら白衣を拾い上げる紅蘭の顔が、呆れ顔から驚愕の色へと染まる。













時限装置付き爆弾。
メッセージの書かれた紙と一緒に、灯台内で発見した箱に入っていたものである。
紙はすぐさま紅蘭へ見せたものの、独り占めするため隙を見てこっそりと自らのデイパックへ入れることに成功した。
灯台の頂上部から中に入る姿は確認できたが、灯台の外へは出てきておらず、タイミング的に爆発の直撃を受けたものと見れる。


「ごめんな。最初は殺すつもりなんてなかったんだけど、生き残るための手段はできるだけ持っておきたいからさ」


「殺すつもりはなかった」その言葉に偽りはない。
正確には「危険を冒してまで殺し合いをするつもりはない」であるが、その根本的な考えが変わったわけでもない。
ではなぜ紅蘭を殺したのか。
やはりきっかけは、灯台内での新たな支給品の取得と地図の仕掛けの発見。
他の参加者よりも有利な情報はそれを知る人物が少ないだけ重要度が増し、邪魔者を簡単に始末できる道具も手に入れることができた。
この場所には生存者は彼一人で、目撃者もいない。


(諦めないで頑張ろう……か。おかげでちょっとは生き残る希望ってやつが見えてきたよ)


功夫へ希望をもたらした灯台は脆くも崩れ去り、そのきっかけを与えた女を飲み込んだ。
それを引き起こした張本人は、もはや一瞥もせずにその場を後にした。

301希望の道しるべ ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:22:20 ID:pELL9T0I0




【D-7 灯台付近/1日目 深夜】
※爆発により灯台が崩れました。


【林功夫@古畑任三郎】
[状態]:疲労(小)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2〜3、時限装置付き爆弾×4
[思考]
基本行動方針:生き残って元の生活へ戻る。
1:古畑と合流する。
2:地図に出た印のある場所へ行ってみる。
3:首輪解除の方法を探す。
4:生き残るために邪魔と判断した参加者はばれないように殺す。
5:紅蘭の知り合い(大神、さくら、アイリス)は信用できそう。
[備考]

※紅蘭の知り合いの情報を得ました。
※印の出た地図は持参しておらず、印の位置を記憶しています。
※地図に出た印のうちの一つはEー4です。


【李紅蘭@サクラ大戦シリーズ】
[状態]:???
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2〜3
[思考]
基本行動方針:ノストラダムスを倒す。
1:知り合い(大神、さくら、アイリス)と合流する。
2:首輪解除の方法を探す。
[備考]
※功夫から古畑が刑事であるという情報を得ました。
※紅蘭がどうなったのかは後続の書き手さんにお任せします。



【支給品説明】

【時限装置付き爆弾@現実】
灯台内部にて取得。
時限装置が付いている爆弾。
デジタル式の時計が使用されており、時間は1分から1時間まで自由に設定できるようになっている。

302 ◆uuM9Au7XcM:2016/12/03(土) 02:22:58 ID:pELL9T0I0
以上で投下終了です

303 ◆uuM9Au7XcM:2017/01/11(水) 00:17:35 ID:ftIs30W60
投下します

304竜は再び昇る ◆uuM9Au7XcM:2017/01/11(水) 00:19:06 ID:ftIs30W60
多くのひとが集い、夢や感動あるいは恐怖や悲しみを感じることを楽しむ場所。
本来、映画館とはそういう場所なのだろう。

しかし現在ここにいるのは自分ひとりだけ。
上映室の最後列の席から眺める景色はなんとも寂しげだ。
この薄暗い空間が今の俺には相応しい。
生きることに絶望し心を暗闇に染めてしまった俺には、暗い場所でひとり座り込んでいることしかできないのだから。

かつては地球のため人類のために、覚悟を持ち戦士として戦っていくのだと信じていた。


そのはずだったのだ。


だがそれは偽りの覚悟だった。
戦士としての俺は、リエを2度失ってしまったことで完全に死んでしまった。
2度もリエが目の前にいたのに助けることができなかった。

今はもう戦う気力も、戦うことに意味を見出すこともできない。
まるで自分の身体が鉛にでもなったかのように動こうとしないのである。
バトルロイヤルが始まり、近くに映画館を見つけてそこに入ってから支給品や名簿の確認すら行っていない。
ノストラダムスはこんな俺に何をさせたくて参加者として選んだのか。
このまま映画館があるエリアが危険エリアとなって、首輪が爆破されるという最期も悪くない。そうなれば、これ以上後悔や絶望に苛まれることもなくなるだろう。

そんなことを思い、無理やりにでも自分を納得させ安心を得ることに成功していた俺を現実に戻すように、不意に映画の上映が開始された。


「――――誰かいるのか!?」


俺は驚愕した。

その役割を果たすことはないと思っていた場所で、いきなり映画が上映されたことにではない。
生きることを諦め、死ぬことを是としていたはずの自分が、予想外の出来事に命の危険を感じ警戒したことをだ。
自ら戦士であれと生きてきた影響がまだ残っていたのだろうか。
それとも……俺はまだ生きようとしているのか……?

上映室には相変わらず人の気配はしない。
どうやら自動で上映される仕組みになっているようだ。
スクリーンのなかでは主人公とその恋人と思われる女性が映し出され、ふたりは仲睦まじく浜辺で語り合っている。
その様子を眺めているとリエとの楽しかった思い出が甦り、今はそれがどうしようもなく辛い。
リエを失った現実から逃げたように、リエとの思い出から逃げるためデイパックの中から名簿を取り出してみる。
だがそこには、更なる衝撃が待っていた。

305竜は再び昇る ◆uuM9Au7XcM:2017/01/11(水) 00:19:41 ID:ftIs30W60

「女帝ジューザだと……あいつは俺たちが倒した……そう、たしかに死んだはず」


名簿の記入ミスか?
いや、殺し合いを催すような組織がそんなくだらないミスをするだろうか?
これがミスではないのだとしたら、ジューザが実は生きていたことになる。
もしくは――――


「生き返ったということなのか……?」


ノストラダムスは言っていた。
『このゲームの勝者には、商品としてどんな願いでも一つだけ叶えてやろう。不老不死、巨万の富、死者蘇生……あらゆる用意もある』と。


そして、
「『その証拠を持つ者とは、生きてさえいればいずれ証人に会えるだろう』とも言っていたな」


ジューザがノストラダムスの言う証拠を持つものなのかはわからない。
ただし、その可能性は高い。ということはリエを生き返らせることも可能であるということだ。

名簿を隣の席の上に置き、支給された食料であるパンをデイパックから取り出し豪快に噛り付く。
そのまま味わうこともなく咀嚼し、水で流し込んでいく。
腹が減っては戦はできぬというように、戦うためにはエネルギー補給が必要だ。
そう―――俺は再び戦うことに決めた。
リエを生き返らせることができるという確証はないが、希望を持つことはできる。彼女のためになら、俺は鬼にでもなってみせる。
考えるのはこれで終わりにしよう。
あとは無心にバトルロイヤルでの優勝を目指すのみ。

これから大罪を犯すことになるであろう自分は生きていくことは許されないが、リエを生き返らせることさえできるのならそれでも構わない。

参加者名簿には、ジェットマンとして共に戦った結城凱の名もあった。


「あいつは……きっと止めるだろうな」


凱ならば止めるどころか、俺が殺し合いに乗ったとわかると殴りかかってくるだろう。
普段クール振ってはいるが、その心は正義の炎で熱く燃えている男なのだ。
凱と自分が相対してしまった場合を想像すると苦笑してしまう。
好きな女のために戦士としての義務を放棄しようとする自分と、その行いを正そうと叱りつける凱――――


なんとも皮肉な話ではないか。
あれはジェットマンになってまだ間もない頃、俺たちふたりが喧嘩をしていた時と逆の立場になっているのだから。



【D-4 街/1日目 深夜】


【天堂竜@鳥人戦隊ジェットマン】
[状態]:健康、満腹
[装備]:クロスチェンジャー@鳥人戦隊ジェットマン
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本行動方針:優勝して藍リエを生き返らせる。
1:参加者を殺す。
2:女帝ジューザに会って生き返ったのか確認したい。
3:バトルロイヤル終了後、自害する。
[備考]
※参戦時期はラディゲによってマリア(リエ)が殺された後です。

306 ◆uuM9Au7XcM:2017/01/11(水) 00:23:49 ID:ftIs30W60
投下終了です。

申し訳ありません、場所を記載ミスしていました。
正しくは【A-7 映画館/1日目 深夜】です。

307名無しさん:2017/02/01(水) 19:07:15 ID:9bcabzDA0
乙です。
林ナチュラルに悪党やなあ……猫箱の中の猫になった紅蘭のその後は如何に。
竜は……不安定な精神状態な時に連れてこられたから、仕方ないかな。
どちらも納得して楽しめる話でした。状態表の満腹にほっこり。

308 ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:08:46 ID:ZufKuwkY0
投下します。

309さくらとあぶない刑事さん ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:10:03 ID:ZufKuwkY0
「バトルロイヤルねえ……。まったく……面倒なことに巻き込んでくれたもんだ」


暗闇に包まれた草原に座り込んでいるスーツ姿の男――――真山徹は面倒そうに、しかし苛立ちを含んだ物言いで呟いた。
その声はすでに疲労を感じさせ、息遣いも荒く肌には汗が滲んでいる。
すでに殺し合いに乗った者と戦闘をした後―――
というわけではなく、バトルロイヤルが始まる以前にある事情から警察に追われ、銃撃を受け負傷しているのである。


(殺し合い……もしかして……朝倉の仕業か?)


真山は刑事として数年間働いてきたが、数十人を拉致して殺し合いをさせることができる人物などそうそういるわけがない。
どこかの国のイカれた独裁者か、刺激を欲した金持ちの道楽か。
考えを巡らせても、そんなぼんやりとした可能性しか浮かばないなか、具体的な人物として思い至ったのが朝倉裕人。
真山徹の妹を同級生たちに輪姦させ自殺に追い込み。
大沢麻衣子を洗脳し自殺させ。
真山の同僚の谷口剛までも操って死に至らしめている。
真山徹が最も憎み、殺したいとさえ思っている凶悪犯罪者だ。

朝倉は何人もの人間を自分の都合のいいように操り、弄んできた男である。殺し合わせるなんてものを催したとしても不思議ではない。
だが、いくら朝倉でもここまで大規模なことをできるだろうか。
それに説明を受けた場所で死んだワニの化物はいったいなんなのか。
などといったいくつもの疑問点が湧き、朝倉の仕業だと想定したくとも確信できない現状に、思わず頭を掻き毟る。

しばらくそのような考えに頭を悩ませていた真山だったが、纏まらない考察は後回しにしようと決め、ランタンを草の茂った地面へ広げた名簿に掲げ視線を落とす。
そこにはよく知る名前が載っていた。
柴田純と野々村光太郎。

二人とも警視庁捜査一課弐係の同僚で、今年配属されたばかりの新人とどこか抜けている係長である。
殺し合わなくてはならない参加者の中に殺したい朝倉の名前はなく、知った顔がいるというのは真山の心情をさらに騒めかせる。
参加者に朝倉がいないということは、朝倉が主催している可能性も捨てきれない。


(ちっ……また朝倉か)
(朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉朝倉――――
 くそっ!何をしていてもあいつの顔が浮かんできやがる……)


「朝倉ぁ!お前は絶対に俺の手で――――」

「ほえっ!?」


真山が朝倉裕人への恨み言を口から吐き出そうとすると、背後から驚いたような声が聞こえ、思わず出しかけていた言葉を止める。
後ろを振り向くと、小学生くらいの少女が怯えた表情で立ち尽くしていた。
真山は気付かなかったが、おそらく声をかけようと後ろから近づいていたところ、いきなり朝倉の名前を叫んだので驚いて反射的に声を出してしまったのだろう。
学校の制服と思われる服を身にまとい、栗色の髪をショートカットにした可愛らしい顔立ちの少女であった。

310さくらとあぶない刑事さん ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:11:07 ID:ZufKuwkY0

「おいッ!そこから動くなよ」

「は、はいっ!!」


真山はすかさず支給品のサブマシンガンを構え、少女に銃口を向けると、その場で静止するように警告する。


「あ、あの……わたし、木之本桜っていいます。
 ノストラダムスって人の言いなりになって、おじさんを殺すつもりなんてあ、ありませんからっ」
「……悪いけどな、初対面の人間をはいそうですかとすぐに信用できるようなお人よしじゃないんだわ、俺」
「そんな……」


拒絶する真山の返答に、桜と名乗った少女は残念そうに肩を落とす。
真山とて、目の前の少女が自分を害するために近づいてきたと決めつけているわけではない。
だが、同僚の谷口剛ですら豹変して襲ってきたのだ、年端もいかない少女とはいえ簡単に信用しろというのは無理な話である。
しかも出会ったのが殺し合いを強制されている場所だ。
人間というものは己が死ぬかもしれないとなったら何でもやるものだ。
たとえそれが人殺しとは無縁に見える子どもであったとしても。


「それでも、……桜ちゃんだっけ?君みたいな女の子殺すのも寝覚めが悪いからさ。
 さっさとどっか行ってくんない?」


信用できなくても殺すことは躊躇われる。
そう桜に告げ、この場から立ち去ることを促す。


「でも、おじさん腕を怪我してるみたいだし1人じゃ危ないですよ」


殺し合いをしろと放り出された場所で、酔狂にも銃を持った見ず知らずの男に手を差し伸べようとしてくる。
桜からすれば純粋な善意からくる行動であったのだが、真山はその善意を受け入れることができない。
心優しい少女を演じているのか、あるいは本当に心配しているのか。
今の自分はそれを正常に判断できる精神的な余裕がなく、もし危険人物だった場合に対処できる保証もないのだ。
だからこそ、殺すことはせずこの場から離れさせるという対処法を取ったのである。


「気にするな、早く立ち去ってくれる方が助かる」
「じゃあ!1つだけ質問がありますっ。
 李小狼、大道寺知世、李苺鈴って子たちに会っていませんか?」
「……いいや」
「そうですか……ありがとうございました……」


ようやく真山を説得することを諦めたのか、桜は真山に背を向け歩き出そうとする。
ところが、その小さな背中に向かって――――


「……ちょっと待て」


真山が銃口を向けたまま呼び止める。

311さくらとあぶない刑事さん ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:12:07 ID:ZufKuwkY0


「その子たちは友達か?」
「……ええ、そうです。
 とっても大切なお友達なんです。」


桜は少し驚いた表情に変わるが、振り返らずに一歩踏み出した体勢のまま止まる。


「……そうか、会えるといいな」


それだけを言うと、小さな声で「行け」と再び促すようにして言葉を締めくくった。
次に驚くのは真山の方であった。
真山から遠ざかるように歩き出すと思っていた桜が突如反転、しかも猛然と走ってきたのである。
予想外の事態に身体に力が入ったのか、左腕の傷が痛み、構えていたサブマシンガンを手放してしまう。
慌てて右手で拾い上げ顔をあげるも時すでに遅し、桜は至近距離まで迫っており、気が付くと草原に押し倒されていた。


「おい、何のつもりだよ」
(くそっ……信用しないとか言いながら油断してどうすんだよ……)


眼前には先ほどの怯えた表情と違い、意志の強さを感じさせる瞳。
押し倒されたドサクサで、真山が構えていたサブマシンガンも桜の手にある。
後悔を胸に抱きつつ、返答を期待せずに問いかけた。


「ハァ……ハァ…………やっぱりおじさんは……悪い人じゃないって……思ったから」
「大丈夫……わたしは絶対におじさんを殺そうなんて……しないから」


全力で走った影響で息切れしながらも、桜は必死に作ったような笑顔でそう応じた。
しかも、証拠とばかりにせっかく奪った武器を放り捨て、困惑顔の真山に向かって再度微笑んだ。


「…………わかった、降参だ」









「闇の力を秘めし鍵よ。
 真の姿を我の前に示せ。
 契約のもと桜が命じる。
 レリーズ!」

「……なんだこりゃ」

312さくらとあぶない刑事さん ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:13:03 ID:ZufKuwkY0
桜が病院へ行って真山の左腕を治療するべきと主張し、じゃあ歩いていくかと真山は応じた。
そして、その必要はないと桜が言い出したのが数分前。
歩いて行かなきゃどうするんだ、車でも出してくれるのかと馬鹿にした物言いで真山が吐き捨て、それに桜がムッとしたのが数十秒前。
桜がペンダントを取り出し、何やら呪文のようなものを唱えると急にピンク色の杖が出現。
それを見て、真山が狐に化かされたような顔になったのがつい先ほどである。

真山の混乱はまだ続く。
次に桜が取り出したのは1枚のカード。そこには鳥の絵が描かれているのがチラリと見えた。


「クロウの創りしカードよ。
 我が鍵に力を貸せ。
 カードに宿りし魔力を
 この鍵に移し我に力を!」


取り出したカードを宙に投げたかと思うと、桜がそのカードに向かって杖の先端部分を叩きつける。
すると叩きつけた杖に翼が生え、桜は当然のようにその杖に跨ると、ゆっくりと宙へ浮かび箒に乗った魔女のように真山の周りをくるりと華麗に1周してみせた。


「さあどうぞ!おじさんも後ろに乗ってください。
 これで一緒に病院へ行きましょう」

「……おじさんじゃない。真山さんと呼びなさい」


何が起こったのか理解できない真山は、とりあえずずっと気になっていたおじさん呼びを改めさせることにした。




 
【E-3 草原/1日目 深夜】


【真山徹@ケイゾク】
[状態]:左腕負傷
[装備]:H&K MP5K@ダイ・ハード2
[道具]:支給品一式、赤いテープの巻きついたマガジン(30/30)×3、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本行動方針:殺し合いには乗らないが危険な参加者は殺す。
1:桜と共に大凶病院へ向かう。
2:柴田や野々村係長のことが少し心配。
[備考]
※参戦時期は谷口剛の死亡現場から逃げ出した直後です。
※朝倉裕人がバトルロイヤルを主催しているのではと考えています。
※木之本桜の知り合いの名前を知りました。
※MP5Kに現在装着されているマガジンには青いテープが巻きつけてあります。


【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:疲労(小)、魔力消費(小)
[装備]:封印の杖@カードキャプターさくら
[道具]:支給品一式、クロウカード(フライ他2枚)@カードキャプターさくら、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考]
基本行動方針:友達と一緒に殺し合いから脱出する。
1:真山さんを大凶病院へ連れていく。
2:知世ちゃんたちと早く合流したい。
3:ケロちゃんはいないのかな……。
[備考]
※まだ真山徹と情報交換をしていないので、彼の苗字が真山ということしか知りません。


【支給品説明】

【H&K MP5K@ダイ・ハード2】
 真山徹に支給。
 ドイツのヘッケラー&コッホ社が設計した短機関銃。 
 ダイ・ハード2ではテロリストらが使用していた。

【封印の杖@カードキャプターさくら】
 木之本桜に支給。
 クロウカードを封印・解除するアイテム。
 普段は鍵の形をしており、桜が紐をつけてペンダントのようにして持ち歩いている。

【クロウカード(フライ)@カードキャプターさくら】
 木之本桜に支給。
 封印の杖に翼を生やし飛行能力を付加する。

313 ◆uuM9Au7XcM:2017/03/20(月) 20:13:50 ID:ZufKuwkY0
以上で投下終了です。

314 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:13:17 ID:5M7EDqZ20
投下します。

315それぞれの道 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:14:20 ID:5M7EDqZ20
バトルロイヤルが始まってすぐにムースが感じたのは、殺し合いを開いた主催者への怒りであった。
そして支給品や地図、名簿の確認を行っていく過程で、怒りは焦りと不安へ変わっていく。
眼鏡を没収されなかったのは不幸中の幸いであった。彼は視力が低く、眼鏡をかけていないと銅像と人間の区別もできないほど、対象の判別ができない状態になってしまう。
名簿にはムースの知人の名前が複数人記されており、その中には彼の想い人であるシャンプーの名前もあった。
それは即ち、シャンプーが殺し合いのゲームに参加させられ、命の危険にさらされていると言う事に他ならない。
もし眼鏡まで没収されていたのなら、名簿を読むことができずにシャンプーが参加していることに気付くことができなかった。
この状況に気付くことができただけでも、本当に不幸中の幸いだったといえる。


「ここにおればいいが……」


差し当たっての目的地と定めた風林館高校へと到着したムースは、違和感を感じつつもその馴染みのある建物を見上げ呟いた。
この場所へ来た目的は、知り合いと合流しシャンプーを捜索する助力を得ることである。
強制的に殺し合いをさせられている以上は、初対面の人間は信用できないため、知り合いが立ち寄るであろう彼らの母校の名と形をしたこの場所へ赴いたのだ。
乱馬、あかね、良牙の3名のことは好きではないが、このような催しに乗るような人間ではない。むしろ抗うのが容易に想像できる。
ただし、シャンプーはどうだろうか?
ムースにとっては心底口惜しい事実であるが、彼女は乱馬に好意を抱いている。熱情的で直情的な彼女ならば乱馬のために殺し合いに乗るのではないか?
ムースは想い人が殺し合いに乗り、その結果死んでしまうことが恐ろしくて堪らない。
そんなことを考えながら校内へ入っていくと、奇妙な光景を目にした。


「これは……寝ておる……のか?」


中学生か高校生か、つまりはムースと同い年か年下ということになるが、その程度に見える少年が校舎に背を預け座った状態で熟睡していた。
一瞬、既に殺された参加者の骸かとも思ったが、寝息によって上下する肩を見て寝ているのだと理解した。
余程疲れて眠っているのか、近付いたムースを意にも介さず気持ちよさそうに眠りこけている。


「なんとも。豪気と言うべきか、滅多におらん馬鹿なのか迷うところじゃのう」


殺し合いの舞台において、まさか始まって早々に寝ている参加者がいるとは予想していなかったムースは困惑する。
しばらく少年を見下ろしながら逡巡していたが、張り詰めた神経が背後から人の気配を察知すると、少年へ向けて手を伸ばした。






316それぞれの道 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:15:42 ID:5M7EDqZ20


「人の気配がしたから来てみれば……なんだコイツは」


先ほどのムースと同じ場所に立ち、同じような反応をしているこの男の名はドモン・カッシュ。
ネオジャパン代表のガンダムファイターであり、世界の調停者『シャッフル同盟』の一員キング・オブ・ハートの紋章を受け継いだ青年である。
鋭い目つきにボサボサの黒髪には赤いハチマキをし、右頬に十字の古傷を付けたその姿はどこか近寄りがたい雰囲気を漂わせている。


「おい!こんなところで寝ていると危険だぞ起きろ!」


ドモンは眠っている少年に声をかけながら、軽くゆすって起こそうと試みるも、一向に起きる気配がない。
悠長に起こしている場合ではないと、今度は頬を叩いてでも起こそうと手を振り上げた。
すると、


「――――なんだとッ!!}


攻撃する相手に反撃してカウンターをいれるかのように、頬を叩こうとしたドモンへ向かって風を切るように少年が拳を繰り出してきたのだ。
腹部へ放たれた拳をドモンは咄嗟に左腕でガードしてみせるも、彼を警戒させるには十分な威力を持っていた。


「眠ったふりをして攻撃を仕掛けてくるとは卑怯な!!
 そのつもりならば相手になってやる!!さあ、かかってくるがいい!!!」


少年に敵意があると思ったドモンはすぐさま構えをとり、戦闘態勢に入り相手に出方を窺う。
しかし、もう寝たふりをする必要のなくなったはずの少年は未だ起きる気配がない。
ドモンがどういうことだと再び困惑していると、


「それは彼が本当に寝ているからですよ」


急に背後から声をかけられた。
それは女性のような柔らかさと凛々しさを併せ持ったような、中性的な声。


「はじめまして、オレの名前は蔵馬。
 名簿には南野秀一とありますが、蔵馬と呼んでください」
「……コードネームみたいなものか?」
「ちょっと違いますが、そのような認識でも構いません。
事情を説明すると長くなるので割愛させてください。貴方の名前を伺ってもいいですか?」
「ドモン・カッシュだ」


振り向いた先にいたのは、声からの想像通りの中性的な人物であった。赤く美しい長髪に女性と見紛う整った顔立ち、『オレ』という一人称を聞かなければ女性と勘違いしてしまってい

たであろう。
蔵馬と名乗ったその少年は、丁寧な口調でドモンに目の前の少年が寝ていることを説明した。
ということは、彼らは顔見知りと言う事になる。名前の説明にも引っかかったが、そちらは後回しにしてさらなる説明を求めることにした。

317それぞれの道 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:16:48 ID:5M7EDqZ20


「寝ているとはどういうことだ?コイツは俺に攻撃を仕掛けてきたぞ」
「寝ているというのは本当ですよ。体力を回復させるため睡眠をとっているのでしょう。
 反撃してきたのは……まあ彼の本能で、というしかありませんね」
「要するに、こいつはこのゲームに乗るような奴ではないと言いたいのか?」
「……ええ。そして、オレもノストラダムスの思惑通りに殺し合いをするつもりはありませんよ。
 もちろん、仕掛けてくる相手に手加減するつもりもありませんけどね」


説明になっているのか疑問な説明をしながら、蔵馬は少年の元へ向かい彼の傍にしゃがみ、顔を覗き込む。
ドモンは、横を通り抜けていく蔵馬の美麗な横顔に見惚れてしまいそうになりつつも、二人の様子を注意深く見つめていた。
手加減するつもりはないと口にした時のほんの僅かだけ、蔵馬の雰囲気が冷徹なものへの変わった。
ドモンはそれを感じ取ると、蔵馬が見た目通りの男ではないと察する。


「おい、幽助。いくら君でもこんな所で呑気に寝ていたら危険だぞ」
「……グゥ…………ムニャムニャ……」
「だめだ……しばらく起きそうにないな」
「そういえば、その幽助というやつのデイパックが見当たらんが」


蔵馬も幽助を起こそうと試みてみるが、ドモンの時と同様に効果がないということが判明したところで、ドモンがある事実に気付く。
彼らバトルロイヤルの参加者全員に配られているはずのデイパックが、幽助の傍にないのである。
殺し合いのゲームにおいて命を繋ぐために必要不可欠な、地図や食料などが入っており、いくら実力者であったとしてもそれらなくしては死亡率は跳ね上がることだろう。
ドモンと蔵馬は二人して周囲を探してみるも、見つけることはできない。


「どこかに隠しているのか?」
「いえ、そこに気を使うのならばこんな無防備なところで寝ていないと思います。
 オレ達よりも先に、この場所にいた何者かが持ち去ったと考えるのが自然かと」
「ならば取り返すのは難しそうだな。
 何しろ手がかりがまるでない。犯人がどちらの方向へ逃げ去ったのかすらも分からん」
「ちょうどこういう時に便利な物が、俺の支給品にあるんです」


そう言って蔵馬がデイパックから取り出したのは、木製の箱に突き刺してある、指をさしたポーズの人形であった。


「見鬼くんという名前の道具なのですが、首輪を探知してその方向を指さすらしいです。
 オレが見鬼くんを使って幽助のデイパックを盗んだ参加者を探すので、もしよろしければミスターカッシュ――――」
「ドモンでいい」
「ではドモンと―――ドモンは目が覚めるまで幽助についてやっていてくれませんか?」
「…………すまないが、俺の知り合いも参加させられていてな。あいつらを放ってここに留まるわけにはいかないんだ。
 それにこいつと一緒にいるのはお前の方がいいんじゃないのか?」
「それが、この見鬼くんは妖気や霊気を使って動く仕組みのようで……」


妖気や霊気というドモンの常識の範疇から外れた言葉が出てきたが、今は問いただすのを後回しにする。
とにかく、限られた者にしか扱えないということらしい。
しばし考え込んだドモンだったが、蔵馬に一つの提案をした。

318それぞれの道 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:17:30 ID:5M7EDqZ20


「蔵馬、お前はそいつを使ってデイパックを探してくれ。俺は幽助を背負って移動する。
 そして、俺の知り合いに会ったら手助けをしてやってほしい」
「わかりました。では、軽く情報交換をして、待ち合わせの場所と時間を決めておきましょう」


基本方針が決まると、二人はすぐさまデイパックから地図と名簿、そして筆記用具を取り出し情報交換を始めた。


「まずはドモン、貴方の探し人を聞いておきましょう」
「レイン・ミカムラ、アレンビー・ビアズリーの二人だ。
 そしてもう一つ言っておくことがある。東方不敗には手を出すな」
「それは危険だから?それとも何か因縁があって自分が手を下したい相手ということですか?」
「…………両方だ」
「わかりました。こちらも伝えておきますが、戸愚呂兄弟には関わらないようにおススメします。
 少なくとも、幽助が目を覚ますまでは」

蔵馬の重苦しい物言いに、ドモンは深く肯いた。


「次に待ち合わせ場所ですが。互いに成果がなくても、二回目の放送頃にD-4地点のプレミアマカロニで落ち合いましょう。
 それまでにD-4が禁止区域となっていた場合には、E-3の駅に変更ということで如何でしょう?」
「よし、それでいこう」



蔵馬は見鬼くんが指し示す方角である西へ向かって駆けていく。
彼はドモンに伝えようか迷った結果、確証が持てずに伝えられなかったことがあった。
それは、幻海という名前が名簿に載っていることについて。蔵馬の認識では、彼女は戸愚呂弟によって殺されたはずであった。
幽助のように何らかの事情で生き返っていたのかもしれないが、どうもそう単純な話ではない予感がしたのだ。


(幽助の荷物やドモンの知り合いも大事だが、もう一つ確かめなければいけない事があるみたいだな…………)









ドモンと蔵馬が今後どうするか話し合っている頃、風林館高校から程なく離れた場所を移動していた。
その手には、先ほど風林館高校で寝ていた参加者のデイパックを持って――――


(すまぬッ!シャンプーのためにオラには多くの武器が必要なんじゃ)


暗器使いのムースが本来の力を発揮するためには、手持ちの武器を没収された状態をどうにかしなければならない。
ムースに与えられた支給品のなかにも戦闘に役立ちそうな物があったものの、暗器として用いる類の物ではなかった。
支給品が必要ではあったが、デイパックごと持っていくつもりではなかった。
人が来たため咄嗟にとった行動だったとはいえ、彼に死ねと言っているのと同じようなことをしてしまったことには、罪悪感が拭えない。


「駄目じゃ!駄目じゃ!駄目じゃ!!
 支給品を持っていくだけでも十分。よく知りもせん他人に同情しておってはシャンプーを救えんぞムースッ!!!」


ムースは自らの基準で許容範囲とした罪を抱きつつ、愛する女のために、その道をひた走る。

319それぞれの道 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:19:13 ID:5M7EDqZ20




【F-5 風林館高校周辺/1日目 深夜】


【ムース@らんま1/2】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式(2人分)、ランダム支給品4〜6(浦飯幽助の分は未確認)、
[思考]
基本行動方針:シャンプーを連れて脱出する。
1:シャンプーと合流する。
2:乱馬たちと合流する。
3:知り合い以外は信用しない。
4:可能ならば他の参加者から支給品を奪取する。


【ドモン・カッシュ@機動武闘伝Gガンダム】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダム支給品2〜3
[思考]
基本行動方針:打倒ノストラダムス。
1:浦飯幽助を連れてレイン、アレンビーを探す。
2:第二回放送頃にD-4プレミアマカロニまたはE-3の駅で蔵馬と合流する。
3:東方不敗は自分が倒す。
4:戸愚呂兄弟を警戒。
[備考]
※参戦時期は東方不敗死亡前です。
※蔵馬と知り合いについて情報交換をしました。


【浦飯幽助@幽☆遊☆白書】
[状態]:疲労(極大)、熟睡
[装備]:
[道具]:
[思考]
基本行動方針:????
[備考]
※参戦時期は霊光波動拳を継承して寝ている最中です。


【南野秀一(蔵馬)@幽☆遊☆白書】
[状態]:健康
[装備]:見鬼くん@GS美神 極楽大作戦!!
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2(確認済)
[思考]
基本行動方針:バトルロイヤルを壊す。
1:幽助のデイパックを奪った犯人を追う。
2:ドモンの知り合いに会ったら保護する。
3:東方不敗と戸愚呂兄弟を警戒。
4:幻海の存在を確かめる。
[備考]
※参戦時期は戸愚呂チームとの対戦当日です。
※ドモンと知り合いについて情報交換をしました。



【支給品説明】

【見鬼くん@GS美神 極楽大作戦!!】
 南野秀一(蔵馬)に支給。
 作中では妖気を探知する道具として使われていたが、首輪探知機として改造されている。
 半径50メートル以上で一番近い首輪に反応し、指先を向けることでその方向を知らせる。
 少量の妖気や霊気を消費することで使用することができる。

320 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/28(日) 01:20:02 ID:5M7EDqZ20
以上で投下終了です。

321 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/29(月) 01:00:04 ID:7iJnnJiA0
投下します。

322放たれた怪物 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/29(月) 01:01:28 ID:7iJnnJiA0

病院というものは人の命を救う場所であるが、必然的に死が発生してしまう場所でもある。
そのため怪談の舞台になることも多く、どこか居心地の悪さを感じるものも少なくはないだろう。
夜間の大病院ともなれば、その広大さと昼間の喧騒から一転しての静けさにより不気味さはさらに増すことになる。
命を奪い合うバトルロイヤルの会場に設置された施設の一つ、大凶病院。
ゲームが開始され、この無人の病院に飛ばされた男が一階の待ち合いフロアの椅子に腰かけている。
彼の名前はチョコラータ。


「素晴らしいっ!!なんと心躍るイベントだ!」


その口から発せられたのは主催者への恨み言や嘆きではなく、最大限の賞賛の言葉。
彼の手には支給された名簿があり、そこに記された67人の名前を喜色をあらわにしながら眺めている。
それはまるで、腹ペコの子どもがご馳走の並んだメニューを手渡され、どれを食べようか迷っているかのようであった。


「この名簿に載っている者たちが殺し合うのか。
 くくく……私が主催者となってそのすべてを観察したいところだが、自ら好きに殺して回るのも悪くない」


舐めるように名簿に目を通していたチョコラータだが、ふと見覚えのある名前に目が留まった。


「ブチャラティとジョルノ・ジョバァーナ。……そしてリゾット・ネエロか」


彼らがこのゲームに参加していようと、チョコラータの行動方針に影響を与えることはない。
知った名前ではあるが、顔見知りでも親しいわけでもなく、むしろ積極的に殺しておきたい人物だといえるだろう。
ここに呼ばれる直前、チョコラータが始末しようと動いてた標的がブチャラティとその部下たちなのだ。
報告にあった人数はボスの娘を入れて5人だったはずだが、名簿に記されているのは2人だけ。チョコラータの相棒であるセッコがゲームに参加していないのと同様に、ブチャラティたちも全員が参加しているわけではないようである。
ボスから裏切り者たちを始末しろとの指令が下り、与えられた情報にはブチャラティたちの能力も含まれていた。だが、新入りのジョルノだけは能力が不明のままであった。
よりにもよって……と思わず顔をしかめそうになる。
だが、所詮は新入り。自分のスタンド、グリーン・デイに敵うはずはないと高を括り心の中で問題はないと断じる。

唯一注意すべきはリゾット・ネエロ。
同じく組織の裏切り者であるが、組織では暗殺を専門としており、手練れであるのが容易に想像できる。
また、その能力も不明なため、いくらグリーン・デイが強力なスタンドであろうとも慎重にならなければいけない。


「まあいい……能力がわからずともやりようはいくらでもある」

323放たれた怪物 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/29(月) 01:02:51 ID:7iJnnJiA0


一通り名簿を見終えたチョコラータは、次にデイパックの中身を確認し始めた。
食料などと共に入っていたのは、加工された鳥の羽と囚人用の手錠。


「おいおいおい、ビデオカメラがないぞ!
 気の利かない連中だな。これではせっかく殺しても死の瞬間を撮影して楽しむことができないではないか」


それまで上機嫌だったチョコラータだったが、お目当てのものが支給されていないことに怒りを露わにし、賞賛していた主催者へ理不尽な批判を吐き出した。
苛立ちが収まらないのかブツブツと愚痴を零しながら、取り出した支給品と院内を周って調達したメスなどの医療器具をデイパックへしまっていく。


「おや、客が来たようだな」


デイパックへ荷物をしまい終え、チョコラータが立ち上がりかけた時、正面入り口の自動ドアがゆっくりと開く音が鳴った。
人の気配を察したチョコラータは、狂気を隠すようににこやかな表情を作り人影の方へ歩き出す。
狂人の待つ病院へ、それを知らない参加者が足を踏み入れたのであった。





【E-4 大凶病院/1日目 深夜】


【チョコラータ@ジョジョの奇妙な冒険 Part5 黄金の風】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:支給品一式、キメラのつばさ、アルゴの手錠(鍵付き)
[思考]
基本行動方針:殺しを楽しむ。
1:ビデオカメラを探す。
2:スタンド使いは優先して殺しておく。
[備考]
※参戦時期はブチャラティたちを待ち構えていて遭遇する直前です。
※ボスの名前を知らないので参加していることに気付いていません。
※グリーン・デイには何らかの制限が加えられています。


【支給品説明】


【キメラのつばさ@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
チョコラータに支給。
キメラという鳥型モンスターの羽を加工したアイテム。
使うと一度行ったことのある場所へワープすることができる。


【アルゴの手錠(鍵付き)@機動武闘伝Gガンダム】
チョコラータに支給。
ネオロシア代表のガンダムファイター、アルゴ・ガルスキーに付けられていた手錠。

324 ◆uuM9Au7XcM:2017/05/29(月) 01:03:42 ID:7iJnnJiA0
以上で投下終了です。

325名無しさん:2019/02/02(土) 18:07:10 ID:9M/.Jvmc0
僕はポップさ・・・今は道端で拾ったカメラで遊んでるのさ!。偶然ある男と出会う。あれ・・・あなたはあなた僕和久田春彦は

326名無しさん:2019/02/02(土) 18:07:47 ID:9M/.Jvmc0
僕はポップさ・・・今は道端で拾ったカメラで遊んでるのさ!。偶然ある男と出会う。あれ・・・あなたはあなた僕和久田春彦さ、では

327名無しさん:2019/02/04(月) 18:18:49 ID:dTRVSbnY0
【和久田春彦@金田一少年の事件簿】 状態:健康 装備:望遠鏡、お寿司

328名無しさん:2019/02/09(土) 10:22:43 ID:aNJtzMFA0
「ここは何処だ。」ポップはそうつぶやいた。そこにいた一人の中年男性が言った「ああ、」男の名前は甲田征作

329左近寺ェ・・・:2019/02/09(土) 11:02:24 ID:aNJtzMFA0
カードマジックの道化師戸愚呂兄がとある大岩「エアーロック」なる岩の中に入り、ワイヤーで吊るされた。しかしその中では「おい、事故だ。開けろ!!!あああああーアチー、開けろーあ開けてくれぇぇギャアアアアアアアーーー」なる断末魔が聞こえ、舞台に戸愚呂兄が落下してきた。その姿はまるで某・カードマジックの道化師の様な凄惨でグロデスクな死にざまだった。【戸愚呂兄@幽遊白書 死亡?】

330左近寺ェ・・・:2019/02/11(月) 13:21:25 ID:u5GEGY5I0
その頃、山神と夕海は、夫婦競演マジックを行っていた。

331名無しさん:2019/02/25(月) 16:39:21 ID:OcACmTuo0
投下します。

332名無しさん:2019/03/25(月) 12:27:59 ID:EdkT2Ljc0
偶然迷い込んだ天道なびき「あれ、ここはどこなの・・・もー。」【天道なびき@らんま1/2】[支給品]コナンの蝶ネクタイ 、変な眼鏡。「ああ、なびきちゃん。こんにちは」「都築さん!どうしたらいいの?」「私も分からないよ。」【都築哲雄】[所持品]:ビデオカメラ、放送機器一式

333名無しさん:2022/03/30(水) 22:05:55 ID:Td2jKHVQ0
「灯台が、崩れてしまっただと...」
功夫は大声で喚き散らした。
そこですれ違った自分より6cm前後低い男とすれ違った。
その直後、功夫は腹に激痛を感じた。そして、腹は赤く染まっていた。
刺されたのだ、彼はそう思った。
「テメェ!よくも刺しやがったな!」
功夫は立ち去っていく男―――小田切にそう叫んだ。
だが、小田切は素知らぬ顔で立ち去って行った。
【林功夫@古畑任三郎 死亡】

334悲劇は突然に:2022/03/30(水) 22:06:31 ID:Td2jKHVQ0
「灯台が、崩れてしまっただと...」
功夫は大声で喚き散らした。
そこですれ違った自分より6cm前後低い男とすれ違った。
その直後、功夫は腹に激痛を感じた。そして、腹は赤く染まっていた。
刺されたのだ、彼はそう思った。
「テメェ!よくも刺しやがったな!」
功夫は立ち去っていく男―――小田切にそう叫んだ。
だが、小田切は素知らぬ顔で立ち去って行った。
【林功夫@古畑任三郎 死亡】

335名無しさん:2022/04/07(木) 17:44:07 ID:jsOjFzgc0
久しぶりの書き込みだな


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