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変身ロワイアルその6

453あたしの、世界中の友達 ◆gry038wOvE:2015/07/26(日) 18:10:23 ID:2QeaXfr60
 自分の記憶が正しければ、それを言い出したのは三人いる。
 涼村暁、石堀光彦、レイジングハートの三人だ。

「……ああ、そうか。嘘の報告したのはあの三人か……。じゃあ仕方ないな。男二人は論外だし、レイジングハートもあれでうっかりしてるし……」

 杏子は、すぐにヴィヴィオの生存について納得した。
 次いで、杏子は──自分がその死を確認していない中で、もしかすれば、死んでいない者がまだいるんじゃないかと思った。
 そう、たとえばマミとか──。

「……ちょっと待ってください。誰がうっかりですか」

 そう考えていた時、杏子の背後で、ふと知った声が聞こえた。
 振り返ると、そこにいたのは、レイジングハート・エクセリオンの娘溺泉モードである。彼女は、ラフな服装で杏子の方にそうして睨むような瞳を向けていた。

「レイジングハート……!」

 この部屋から外に出ていたようで、手には何故か大量のドーナツを持っている。ヴィヴィオにでもあげるつもりだったのだろうか……。思ったより平和そうである。
 杏子も彼女の生存は覚えている。とにかく、彼女も、杏子より一足先に保護されていたらしい。

「今、この艦で保護されているあの戦いの参加者は、ヴィヴィオとそれからレイジングハートとあなたのみです。各世界に時空移動を繰り返して探してはいますが、あまり長く滞在すると攻撃を受ける可能性があるので、今は情報を集める事を最優先に行動しています」

 織莉子が言った。
 杏子は、早い段階で見つかる事が出来た一例のようである。遠い惑星からの端末であり、それ自体が無数の肉体を持つキュゥべえは、魔法少女の反応に敏感だ。
 自分の世界に杏子が現れたとなれば、すぐにそこに向かう事ができるのだろう。
 そして、同時に、織莉子との念話によって交信し、彼女を呼ぶ事もできる。

「……なるほどね」

 杏子は概ね納得した。
 その言葉の中で、少なくともヴィヴィオ以外に生存者は確認されていない事が明かされたような気がする。
 ──しかし、元はといえば諦めていた所に、こうして意外な生還者がいたという事だ。
 あまり落ち込むべきではない。なくしていたはずの物を一つ見つけられただけ儲けものである。杏子は、気を取り直す。

 それから、じっと、レイジングハートが持つドーナツの袋の方を見ていた。
 あまりの好奇の目にプレッシャーを感じ、ドーナツの袋をとりあえず開けた。
 中には、五つのドーナツが入っている。

「……あ、杏子。これをどうぞ。艦内ではドーナツを作って配り続けている人もいます。なんでもドーナツが世界を救う鍵になるとか主張しているらしいので。……ただ、実際おいしいので、まあ、これがあれば確かに士気は──」
「いいからくれ。腹が減っちゃってさ」

 杏子は、レイジングハートから受け取り、それを口にする。
 と、その時に杏子は、自分のデイパックにシュークリームが残っているのを思い出した。要冷蔵だが、あの不思議なデイパックなら保存もきく。
 それは、美希から貰ったものだ。──あれはいつまでに食べればいいのだろう。

「ん? なあ、そういえば、世界がそれぞれバラバラだって事は暦も違うよな? 賞味期限とかどうするんだ?」
「杏子。ここに来て最初の質問がそれですか……」
「いいだろぉ、別に」

 あのバトルロワイアルの中で美希が持ってきたシュークリームは賞味期限が書いてないはずだ。
 まあ、一日経ってないくらいなので平気だと思うが、そろそろ食べなければまずいだろうと杏子は思っていた。
 しかし、時間軸はバラバラなので、食べ物には割と気を付けなければならない事になりそうなのは事実である。世界移動をしてから、安易に書いてある賞味期限を信じると酷い目に遭いそうだ。

「……ん? ていうかさ。もしかして、この船使えば、ベリアルを倒して帰ってからもお互いの世界に行ったりできるのか?」


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