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パラレルワールド・バトルロワイアル part2

1 ◆rNn3lLuznA:2011/09/23(金) 01:17:06 ID:hUjGYcYM
『バトル・ロワイアル』パロディリレーSS企画『パラレルワールド・バトルロワイアル』のスレッドです。
企画上、グロテスクな表現、版権キャラクターの死亡などの要素が含まれております。
これらの要素が苦手な方は、くれぐれもご注意ください。

前スレ
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/14757/1309963600/

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244私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:29:13 ID:ifjirkO6
「驚いたな。よもや、勘付かれるとは思わなかった」
 凛とした、少女の声色で。
 豪胆な武将のごとく、重く。
 相反する2つの印象を内包した、襲撃者の声が響き渡る。
 ガラスのごとき眼球からは、感情が読めない。フラットな発音と相まって、無感情な印象を与える少女だ。
 意志のある魔法少女にも、心ない魔女にも見える存在だった。
「特技のようなものね……生憎と、私に不意打ちは通用しないのよ」
 にこり、と笑みを湛え、織莉子が告げた。
 この鎧の少女が物陰から迫り、サカキを両断する未来――彼女は数十秒前に、それを見たのだ。
 故にそれを迎撃せんと、変身し宝石を放って先手を打った。
 故にそれからサカキを守らんと、稼いだ時間で回避を取らせた。
 未来視の力を持つ美国織莉子には、あらゆる不意打ちが意味をなさない。
「だが、それだけだ。斯様に軽い攻撃では、私の身には届かぬぞ」
 ぶん、と剣を唸らせ、襲撃者が告げた。
 やはり、相当な手練だ。下段に取ったその構えからは、微塵の隙も感じ取れない。
 ほとばしる魔力は濃霧と化し、より深き暗黒へとドレスを染める。
「では、これならばどうかな」
 にぃ、と口元を歪めたのは、サカキだ。
 白い三日月を浮かべる男が、両者の会話に割って入った。
 手にしたモンスターボールを放り投げ、彼もまた臨戦態勢を取る。
 白光から姿を現したのは、紫の怪獣・ニドキング。
 かのポケモン城での戦闘においても、リザードンを撃退した強力な相棒だ。
 ダメージの回復が済んでいない上に、相手は見たところ人間だが、そうも言ってはいられない。
「ほう、見たこともない魔物だ」
「今度は怪物呼ばわりか」
 女の声に、苦笑した。
 どうやらこの黒ドレスの少女も、ポケモンというものを知らないらしい。
 どころか、魔物とまで呼んでいる。そんなものと日常的に触れ合っているとするならば、もはや完全なファンタジーの住人だ。
 やはり彼女も、そして織莉子も、伝説のポケモンが持つ力――空間を超える力により、異界から招かれた存在なのだろうか。
「いずれにせよ、ここで立ち止まるわけにはいかない……」
 黒に対峙するのは、白。
 魔法少女のドレスから湧き上がり、その場を満たしたものは重圧。
 細められた織莉子の藍眼が、莫大なプレッシャーをもって敵を威圧する。
 全てを飲み込み、熱を奪い。
 さながら極寒の吹雪のごとく、見る者の四肢の自由を奪う。
 どう――と鼓膜が揺れた気がした。
 無風のはずの正門前に、突風が吹き荒れたかのような錯覚を覚えた。
 かつてのロケット団総帥が、ほう、と賞賛の声を漏らす。
 気高き令嬢・美国織莉子が、生来備えていた最強の武器は、優雅さでもましてや美貌でもない。
 あらゆる外敵を物ともせず、毅然と、悠然と相対する、この圧倒的なプレッシャーだ。
 その気迫は、魔法少女としての経験で遥かに勝る、あの巴マミですらも沈黙させる。
「貴女が立ちはだかるというのなら、全力で排除させてもらうわ」
 漆黒の騎士を睨みつけ、純白の姫君が宣告した。

245私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:29:47 ID:ifjirkO6


(どうにも、解せん……)
 びゅん、と音を立てながら。
 魔剣グラムを振り回し、漆黒のセイバーが思考する。
 敵の戦力は合計2体。
 浮遊する球体を操る、魔術師と思しき白い女と、コートの男が操る紫の魔物だ。
「ニドキング! だいちのちから、続けてシャドークローをぶつけろ!」
 厳つい男の声に応じて、紫の魔物が叫びを上げる。
 刹那、ニドキングなるそれの雄叫びに呼応し、足元を鋭い衝撃が襲った。
 轟、と伝わるのは地震――否、文字通り大地から迫る衝撃波だ。
 振動、波動、そして瓦礫。
 灰色のアスファルトを粉砕しながら、下方から炸裂する衝撃がセイバーを煽る。
「チッ!」
 ここに来て彼女は、彼が下した、追撃の命令の意図を察知した。
 舞い上がる瓦礫を掻き分けて、ニドキングが突撃を仕掛けてきたのだ。
 漆黒のオーラを纏った爪撃を、黄金の剣を振り上げ、迎撃。
 足場が安定しない。姿勢がままならず、力が入らない。
 なるほど、パワーやスピードだけでなく、心的余裕すら奪い取る有用なコンボだ。
 故に英霊アーサー王は、らしからぬ強引な回避手段を取る。
 切っ先からこちらも暗黒を発し、裂音と共に相手を吹き飛ばす。
 ゆらゆらと金髪をはためかせながら、セイバーは着地するニドキングを見据えた。
(パワーではこちらが勝っている……手数は豊富なようだが、決して押しきれない相手ではない)
 魔物に下した評価が、それだ。
 小柄な割に獰猛な容姿を持った紫の魔獣は、その外見特徴同様、非常に攻撃的な性質を有している。
 コンクリートをも粉砕する技の威力、見かけによらぬ俊敏な身のこなし、どちらもなかなかに強力だ。
 しかしそのどちらもが、一兵卒からの観点によるものである。
 元より己も鈍重なスピードはともかく、パワーではセイバーが上回っていた。
 故に相手の攻撃を恐れず、積極的に踏み込めば圧倒できる――
「――させないわ」
 という目論見を潰すのが、もう一方の存在だ。
 冷やかな女の声と共に、5つの影が飛来する。
 反射的にそれを見定め、バックステップで回避を取った。
 先ほどまで具足のあった場所が、銀の球体によって破砕された。
(そうだな……警戒すべきは、こちらの敵だ)
 崩れた構えを立て直し、その双眸で敵を見据える。
 宝石のごとき球体を操る、全身白一色の魔術師――先ほど相対を宣言した、白い少女だ。
 こちらもニドキング同様、セイバーの剣を退けるにはパワーに欠ける。
 どころか、魔物の背後に立ったまま、前に切りこんでこないということは、耐久力もさほどではないのだろう。
 しかし、こちらが攻めあぐねている原因は、むしろこの女の方にあった。
(こちらの動きを予測しているのか?)
 思考と共に、剣を振るう。
 ニドキングが黒の剣先をかわし、その影から球体が襲いかかる。
 これをグラムをもって弾き返せば、死角から攻め込んでくるのはニドキングの爪だ。
 そして攻撃のタイミングも角度も、男に女が告げ口していた。
 こちらが攻められて困る箇所を、正確に察知し、指摘したのだ。
(……違うな。単純な計算では、ここまで偶然が続くはずもない)
 影を纏う剛腕の一撃を、身を反らしてかわしながら、否定した。
 既にこのように対処された回数は、悠に10回を超えている。
 単純に相手の考えを推測していただけでは、これほどの的中率には至らない。
 こちらの考える最善手と、相手が推測する最善手が、必ずしも一致するとは限らないのだ。
 相手が読み違えるか、あるいは、こちらが悪手を打ちでもしたら、予測は真実との乖離を起こす。

246私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:30:29 ID:ifjirkO6
(ならば、読心の能力を有しているのか?)
 故に想定すべきはそれではなく、それとはまた別の可能性だ。
 考え得るもう1つの可能性へと、推理の対象をシフトした。
 ぐっ、と大地を踏み締め、疾駆。
 弓から矢を解き放つかのように、自らの身体にロケットスタートをかける。
 進むべきは正面ではなく、側面。
 目の前のニドキングを一度無視し、回り込むようにして魔術師を狙った。
「!」
 刹那、目の前に展開されたのは弾幕。
 合計7つの炸裂弾が、瞬時に連続発射される。
 数は多い。しかし、見切れない速さではない。
 足元を狙う石を跳躍して回避。顔面を狙う石をグラムで切断。胴体を狙う石を身をよじって回避。
 巻き起こる灰色の爆風を掻き分け、その先の白い少女へ切りかかる。
 初撃は喉元を狙っての突き――複数の球体を盾にされ、阻まれた。
 追撃は胴体を狙っての薙ぎ――タイミングを読まれ、飛び退かれた。
(やはり、違う。心を読める程度では、こうはならない)
 援護に出たニドキングを振り払いながら、またもセイバーは仮説を否定した。
 今の強襲で試した手は、2つだ。
 初撃では一度に10通りの攻撃パターンを考案し、ギリギリでその中の1つを選び放った。
 追撃は逆に思考回路を全カットし、完全な直感に任せての攻撃を仕掛けた。
 己の攻撃を全てかわされ、猛スピードで突っ込んでくるというプレッシャー下での、この二撃である。
 前者なら限られた時間のうちに、10の攻め手に対応できるはずがない。
 後者ならそもそも思考が存在しないから、攻撃を読み取れるはずがない。
 しかし、彼女はやってのけた。
 読心の限界と穴を突いた、双方の戦術をくぐり抜けたのだ。
(そうなると)
 奴は過程を見てはいない。
 こちらが攻撃に至るまでに、どのような考えを展開しているのかを、覗き見ているわけではない。
 この敵が見据えているのは結果だ。
 意識下、ないし無意識下を問わず、思考の果てに辿り着いた、その結果だけを読み取っているのだ。
 心理ではなく、現象を見ている。
 事実を構築する論理ではなく、論理の後に付随する事実を見ている。
 すなわち、
「未来を読める、ということか」
 考えられるのは、それだけだった。
 白い魔術師は相手の行動判断ではなく、自分の身に起こる未来を予知していたのだ。
 であれば、これまでの行動にも納得がいく。
 こちらの正体すら定かではなかった、最初の闇討ちに対処したことすらも、その一言で証明できる。

247私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:31:03 ID:ifjirkO6
「その通りよ」
 ふわり、とドレスの裾が揺れる。
 たんっ、と着地の音が鳴る。
 緩慢な動作で地に足をつけ、柔らかな銀髪を虚空に揺らした。
 回避運動を終えた末、白き魔術師が着陸したのは、車道のど真ん中だった。
「私は現在だけでなく、未来に起こる事実をも見ている」
 ビルの間から、光が漏れる。
 開けた大通りの真ん中には、遮られることなく陽光が差す。
 純白一色のドレスが、黄金の煌めきに彩られた。
 後光を浴びた装束が、荘厳な銀色に輝いた。
「全てを炙り出す光の前では、あらゆる企みが意味をなさない」
 静かに、波風を立たせぬ声で。
 厳然と、有無を言わさぬ声で。
 日輪の光に照らされて、1人の少女が言葉を紡ぐ。
 そこに宿された威圧感は、さながら戦場の武士のそれだ。
 無双の英霊に対峙してなお、これほどの気配を保てるとは。
 しかもこれほどの濃密な気迫が、年端もゆかぬ小娘のものだとは。
「貴女が何を為そうとも、私の光が全てを照らすわ」
 それは聖女か、教皇か。
 この世全ての善を従え、暗黒を祓うかのように。
 白銀に煌めく未来視の魔女が、堕ちた騎士王へと告げた。



(相変わらずの、ふざけた素質だ)
 苦笑を浮かべ、サカキが心中で呟いた。
 目の前に展開された攻防に、軽い衝撃を覚えつつも、冷静にニドキングを前へと出させる。
 戦闘で目の当たりにしたのは2度目だが、織莉子の未来予知というものは、何度見ても凄まじいものだ。
 もちろん、万能の力ではない。
 そこには数秒先の未来しか見えないという限定条件と、本人の肉体的限界という問題がつきまとう。
 現に先ほどの薙ぎ払いは、完全に回避しきることができず、僅かにドレスの表面を切り裂かれていた。
 恐らくあの漆黒の女剣士と、単独で相対していたのであれば、こうまで凌ぎ切ることはできなかっただろう。
(だが、それを可能としたのがニドキングだ)
 つくづくポケモントレーナー向けの女だ、と。
 自らのパートナーに視点を落とし、次いで織莉子の姿を見据える。
 自分を卑下するつもりはない。現に自己の判断で、あの剣士を退けたケースも存在する。
 しかしこれまでのやり取りの中で、何度かは織莉子のお膳立てによって、よい結果をもぎ取れたケースがあるのも事実なのだ。
 魔法少女とやらのスタンダードが、どれほどの能力であるのかは知らない。
 しかし目の前の敵に比べれば、織莉子の単独での戦闘能力は劣る。
 それを覆したのは知略であり、未来予知であり、そしてニドキングという護衛の存在。
 恐らくこの美国織莉子という少女は、単独での一騎打ちではなく、他者を指揮しての組織戦に長けている。
 そういう資質なのだ、この娘は。

248私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:31:54 ID:ifjirkO6
(だが、だとしてもこれからどうする?)
 後ろ向きな感想を振り払い、敵を見つめて目を細めた。
 そうだ。うっかり失念しかけていたが、今は戦闘中なのだ。
 妙な気の迷いを抱いている暇などない。そんなことを考えるよりも、現状の打開策を考えなくては。
(美国織莉子、そしてニドキング……悔しいが、単体のスペックでは、どちらもあの敵には及ばないようだ)
 実際に戦ってみて分かる。黒いドレスを着た少女は、当初の想像以上の難敵だった。
 妙な影をまとう剣捌きは、ニドキング渾身のシャドークローをも、容易く切り返すほどの破壊力を誇る。
 今は織莉子の先読みによって、何とか持ちこたえている状態だが、それもあくまで互角に過ぎない。
 こちらの損傷が軽微であるように、向こうの損傷もほとんどない。互角同士の戦いでは、ケリがつかないままジリ貧だ。
(そうなると、先の戦闘でのダメージが響いてくるな……この勝負、有利に見えて不利なのはこちらか)
 ちら、とニドキングを見やって、判断した。
 先ほどのリザードンとの戦いで、ニドキングはダメージを負っている。
 無論、現状では軽微なものではあるが、長期戦ともなれば、そうはいかない。
 蓄積された疲労と相まって、どんな影響を及ぼすか、知れたものではない。
 そしてニドキングが倒れた瞬間、こちらの敗北は確定する。織莉子の移動速度では、敵の攻撃を避け続けるのは困難だからだ。
「……なるほど。であれば、これ以上の読み合いは無意味か」
 黄金の剣が持ち上げられる。
 これまで下段に構えられていた、剣士の刃が天へと向かう。
 刹那、ほとばしったのは暗い光だ。
 陽光を覆い隠すかのように、漆黒のオーラが剣へと集った。
 びりびりと大気が震動する。空気が針となったかのように、ちくちくと肌へ突き刺さる。
 この世全ての暗黒を、一点に集束させたかのような。
 膨大な瘴気の結晶体が、少女の手元へと形成された。
(! まずいな、これは……)
「飽和攻撃が来ます、逃げて!」
 どうやら敵は言葉通り、小競り合いには飽きたようだ。
 相手がいくら予知をしても、避け切るだけの余地のない攻撃――強力な広範囲攻撃を放って、一網打尽にする気なのだろう。
「言われずとも……!」
 そしてそれは、わざわざ未来予知に頼らずとも、一目見ただけで誰でも分かる。
 あれ程強大なエネルギーの塊だ。それ以上の使い方など、見当たらなかった。
「ニドキング、最大パワーでだいちのちからを放て!」
 オートバジンに跨りながら、命令を下した。
 ニドキングは即座にそれを実行し、周辺一帯に衝撃を走らせる。
 波動は敵の足元を襲い、瓦礫は織莉子達を覆い隠した。
 爆音はバイクのエンジン音をも掻き消し、サカキを不可視の存在へと変える。
「きゃっ!」
 そのまますれ違いざまに、強引に織莉子の手を引いた。
 荒っぽく2人乗りの形を作ると、モンスターボールのレーザー光を、ニドキングに当てて回収する。
 後はとんずらを決め込むだけだ。あんなものにまともに付き合っていては、いくら命があっても足りない。
「ォオオオオオオオッ!!」
 雄叫びと共に闇が弾けたのは、サカキのバイクがその場を離れ、ビルの影に入り込んだのと同時だった。

249私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:32:38 ID:ifjirkO6


「……またしても、取り逃がすとはな」
 黒と灰色の靄の中、セイバーは静かに独りごちた。
 あのニドキングの使い手の目測は、見事に的を得たらしい。
 足場を崩されたことで安定を失い、瓦礫に阻まれたことで視野を失い、轟音によって聴覚すらも失った。
 そこに放ったあの波動は、ただでさえ低下した索敵能力を、更に削る羽目になってしまった。
 未来が見える向こうからすれば、逃げ出すことなど容易だっただろう。
「どうにも、雑把な戦い方では上手くいかんらしい」
 己の不甲斐なさを恥じ、思い出したようにヘルムを再生成した。
 これまでに経験した戦いは3度。
 一度は衛宮士郎および、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンとの戦闘。
 一度は、あの英霊というものを嘗め切った、背の高い女の魔術師との戦闘。
 そして最後の一度が、先の白い魔術師と、紫の魔物との戦闘だった。
 このうち敵を逃したのは、二度。これまでに撃破した敵は、ゼロ。
 最優のサーヴァントなどとおだてられていながら、あまりにも不甲斐ない戦績だった。
「過小評価が過ぎたようだな」
 認めよう。
 この儀式とやらの空間に、油断すべき場所などないのだと。
 適当にあしらって勝てるような、簡単な相手ばかりなのではないのだと。
 であれば、今度は逃さない。
 次なる戦闘の機会があれば、誰であろうと確実に殺す。
 衛宮切嗣の感傷を断ち切り、慢心さえも切り捨てて、セイバーは再び歩を進めた。


【E-7/見滝原中学校前/一日目 午前】

【セイバー・オルタ@Fate/stay night】
[状態]:健康、疲労(小)、黒化、魔力消費(中)
[装備]:グラム@Fate/stay night
[道具]:基本支給品、不明支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:間桐桜のサーヴァントとして、間桐桜を優勝させる
1:人の居そうな場所に向かう
2:間桐桜を探して、安全を確保する
3:エクスカリバーを探す
4:間桐桜を除く参加者全員の殲滅
5:クロエ・フォン・アインツベルンを探す
6:もし士郎たちに合った時は、イリヤスフィールが聖杯の器かどうかをはっきり確かめる(積極的には探さない)
[備考]
※間桐桜とのラインは途切れています
※プリズマ☆イリヤの世界の存在を知りました
 クロエ・フォン・アインツベルンという存在が聖杯の器に関わっていると推測しています

250私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:08 ID:ifjirkO6


「……大丈夫ですか、サカキさん?」
「気にすることはない。かすり傷だ」
 オートバジンを操るサカキへ、気遣うように織莉子が言う。
 どうやら先の爆発の際、コンクリートの破片が掠めたようだ。
 さほど深くはないものの、黒い左袖が引き裂かれ、赤い血の色が覗いている。
「まぁ、あれほどの脅威から逃れられたのだから、これくらいで済んだのは御の字だろう」
 言いながら、サカキの両手がハンドルを切った。
 角を曲がり、方向を修正して、地図にあった美国邸へと向かう。
 周知の通り、織莉子とサカキは、あの場を危険と判断し、標的をその場に残して撤退した。
 殺し合いを望んでいたであろう者を放置し、おまけにサカキに怪我を負わせてしまった。
 その事実は自責という名の鎖となって、織莉子の心を深く沈める。
「しかし、美国織莉子……本当にあの娘の力には、特に覚えはないんだな?」
「ええ……かなりの強敵であることは、間違いないと思うのですが」
 言いながら、先ほどの戦闘を回想した。
 あの漆黒の戦士の戦闘能力は、並の魔法少女を上回るものだ。
 最後に放った大技の威力は、かの巴マミがキリカを仕留めた際の、あの炸裂弾すらも凌駕している。
 恐らく彼女を倒すには、今以上の戦力と、今以上の連携が必要だろう。
 サカキという第三者を介した、ニドキングとの連携は、あまり勝手の利くものではない。
 それこそあのキリカのように、直接の意思疎通が可能なパートナーの確保が、何よりの必須条件と言えた。
(……キリカ……)
 ふと。
 黒き騎士との戦闘分析から、親友の姿が連想される。
 あの場にもしもキリカがいたら――そんな無責任な仮定が、否応なしに想起されてしまう。
 戦力などと、とんでもない。傷つき苦しんでいるはずの友に、そんな役目を押しつけられるものか。
 彼女は無事でいるだろうか。
 我が最愛の友人は、無事で生きているだろうか。
(私が必ず助けに行くわ)
 今度は私がキリカを助ける。
 己の人格を破壊してまで、私を救ってくれた愛に、今度は私が報いてみせる。
 固く胸に誓いながら、織莉子は行く先を見据えていた。


【F-7北部/一日目 午前】

【美国織莉子@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:健康、疲労(小)、ソウルジェムの穢れ(3割)、白女の制服姿、オートバジン騎乗中
[装備]:
[道具]:共通支給品一式、ひでんマシン3(なみのり)
[思考・状況]
基本:何としても生き残り、自分の使命を果たす
1:鹿目まどかを抹殺する。ただし、不用意に他の参加者にそれを伝えることはしない
2:キリカを探し、合流する。
3:積極的に殺し合いに乗るつもりはない。ただし、邪魔をする者は排除する
4:サカキと行動を共にする
5:美国邸へ行く。調査が終わった後、再び見滝原中学校を調べに行き、その後鹿目邸へ行くことを進言する
[備考]
※参加時期は第4話終了直後。キリカの傷を治す前
※ポケモンについて少し知りました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※アカギに協力している者がいる可能性を聞きました。キュゥべえが協力していることはないと考えています。

251私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:38 ID:ifjirkO6
【サカキ@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に裂傷(軽度)、オートバジン騎乗中
[装備]:オートバジン@仮面ライダー555、高性能デバイス、ニドキングのモンスターボール(ダメージ(小)疲労(中))@ポケットモンスター(ゲーム)
[道具]:共通支給品一式 、技マシン×2(サカキ確認済)
[思考・状況]
基本:どのような手段を使ってでも生き残る。ただし、殺し合いに乗るつもりは今のところない
1:『使えそうな者』を探し、生き残るために利用する
2:織莉子に同行する
3:美国邸へ行き、その後見滝原中学校へ戻る。可能ならばフレンドリーショップやポケモンセンターにも寄りたい
4:力を蓄えた後ポケモン城に戻る(少なくともニドキングとサイドンはどうにかする)
5:『強さ』とは……何だ?
6:織莉子に対して苦い感情。
[備考]
※『ハートゴールド・ソウルシルバー』のセレビィイベント発生直前の時間からの参戦です
※服装は黒のスーツ、その上に黒のコートを羽織り、黒い帽子を頭に被っています
※魔法少女について少し知りました。 織莉子の予知能力について断片的に理解しました。
※ポケモン城の一階と地下の入り口付近を調査しました。
※サイドンについてはパラレルワールドのものではなく、修行中に進化し後に手放した自身のサイドンのコピーだと思っています。
※アカギに協力している者がいると考察しています。

【オートバジン(バトルモード)@仮面ライダー555】
現在の護衛対象:美国織莉子
現在の順護衛対象:サカキ
[備考]
※『バトルモード』時は、護衛対象の半径15メートルまでしか行動できません
※『ビークルモード』への自律変形はできません
※順護衛対象はオートバジンのAIが独自に判断します

252私の光が全てを照らすわ ◆Vj6e1anjAc:2011/12/24(土) 20:33:55 ID:ifjirkO6
投下は以上です。問題などありましたら、指摘お願いします

253名無しさん:2011/12/24(土) 21:14:14 ID:6yY52fdI
投下乙でした
サカキと織莉子の見事なコンビネーション、そしてそれと互角以上のセイバー。
結果は撤退となりましたが怖い状況でした。必ず何らかの痛手を与えるとこは厄介だな…
ところでセイバー、君のマスターは全員一般人とはいえ現在トップマーダーだぞ。

254名無しさん:2011/12/24(土) 22:17:23 ID:uv7j3wXg
乙っす
いい戦いでした
それにしても、もしキリカがこの戦いについて知ったらきっと自分を責めるんだろうなあw
あの時きちんとセイバーをブッ殺しておけば織莉子を消耗させることはなかったのにって

255名無しさん:2011/12/25(日) 06:10:29 ID:ahFlHmGc
投下乙です。
セイバー、というかサーヴァントはやっぱり凶悪ですけど、まだ誰も殺せてませんねw
いつかその威力を存分に振るう時が来るのだろうか。

それはそうと、セイバーの魔力消費についてちょっと指摘です。
これまで二回の闘いを経ても消費した量はまだ微小だったのに、この戦いだけで中まで減るのはちょっと消費し過ぎではないかと思います。
大量に魔力を消費する様な戦闘には見えませんでしたし。

256 ◆Vj6e1anjAc:2011/12/25(日) 12:18:35 ID:wPyVq776
そういえば、似たような大放出系のオーラ攻撃は、今までにやってましたね……
了解しました。では、微小→小に変更とさせていただきます。

……正直、スタミナ馬鹿高すぎね?と思うけど、原作からしてそんなんなのかしら?

257名無しさん:2011/12/25(日) 13:45:33 ID:keVFwJ.M
まあカリバーならまだしも黒版風王結界ですし

258名無しさん:2011/12/25(日) 15:12:48 ID:Gjb.fRk.
受肉して格段に魔力消耗が減ってますからね。桜からの供給は切れてるけども

259名無しさん:2011/12/26(月) 00:15:16 ID:lV4vSmWw
そういや魔力の回復手段て、あるの?

もしスタミナ高すぎと思うのでしたら、回復に制限つけるって方針はいかがでしょうか?

260名無しさん:2011/12/26(月) 00:27:44 ID:7YBKtCdE
>>259
いや、いらねえw
そんな細かいことまで干渉されるのも気分悪いよ

261名無しさん:2011/12/26(月) 16:38:01 ID:ZQLV.W4s
たしかセイバーは竜の因子を持ってるから、呼吸するだけで魔力が回復していくというチート能力があったはず
ついでに肉体の再生能力も半端じゃない(胴体かっさばかれて内臓ぶちまけても数分で復活可能)

士郎と契約していた時も、その能力のおかげで消滅せずにすんだとか

262名無しさん:2011/12/26(月) 20:58:56 ID:wY850yts
バーサーカーにの宝具についても七面倒な設定がありますし、そのあたりはフィーリングでいいと思います
過度に落とし込むことをせず細かく描写する必要はない、という程度で

ちなみに魔力回復で一番手っ取り早い手段は魂食い、生者を食べることです
食べるについては色々な意味があります。ええ色々と

263名無しさん:2011/12/27(火) 18:08:05 ID:IQQacykg
過去ログ読むとハンバーガー食っても魔力は回復しなかったみたいだな

まどマギ系魔法少女がSGの浄化が極めて困難だから、
そっちとバランスとるためにも魔力は自然回復しない方がよさそう

264 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:52:52 ID:HTyC8c2U
夜も遅い時間帯ですが
完成しましたので投下します

265Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:57:37 ID:HTyC8c2U
道を行く二人の元に、定時放送が流れる。
その内容は、道を行く一人と一匹にも少なからぬ影響を与えていた。

「そんな…、遠坂さん…」

呼ばれた名は己の教え子の一人、そして士郎の友人であった遠坂凛。
その名が呼ばれた意味、それが分からぬほど彼女は鈍くはない。
なぜ彼女が死ななければならないのか。
大河の頭の中は疑問だらけであった。

「プクゥ…」
「プクちゃん?もしかしてあなたの知り合いも…?」

ピンプクの仲間も呼ばれたのか、悲しそうに大河の胸に顔をうずめる。
桜の謎の行動、そして呼ばれた教え子。
大河にはもはや何が何だか分からなかった。

そんな疑問を持ったまま、やがて目的地である教会の近くへとたどり着いた。
やはり想像通りだったのか、すでにそこは焼け落ちた後だった。
真っ黒になった、かつて教会をなしていたであろう木材が見えるのみだった。もはや誰もいないだろう。
と、立ち去ろうとしたとき、焼け跡の下に人間の手を見た気がした。

「!プクちゃん、お願い!!」
「プ、プク!」

ピンプクもそれに気付いたのか、その怪力で次々と木材をどけていく。

「ッ?! プクちゃん!見ちゃダメ!!」

そして、その下から現れたのは男の人の死体だった。
大河は怯えるピンプクをその胸に抱くことでそれが見えることを防いだ。
死体の有様は大河ですら正視に耐えられるようなものではなかった。これは火事に巻き込まれた死体ではない。
右腕はなくなり両脚は折れ、胸の辺りは潰れていて、挙句首の向きがおかしかった。
漫画でしか見たことの無いような、だが確かに現実としてそこにある惨殺死体。

この人もさっきの放送で名前を呼ばれた一人なのだろうか。
大河は、改めてこの異常な状況というものをはっきりと理解した。

「こんな所で落ち込んでいてどうするのよ私…!しっかりしなさい!!」

顔を叩いて喝を入れる。
そうだ。まだ士郎や桜ちゃんも生きているんだ。こんなところでグジグジやっている場合ではない。
目の前の死体には、せめて人目につかないように焼け焦げてボロボロになっているが布を被せる。

「どうか安らかに眠ることができるよう祈っています…。遠坂さん…、力になれなくてごめんね…」
「プクゥ…」

やることは山積みだが、まずは桜ちゃんを追わなければならない。
だがあの様子では一人で追うのは危険だろう。
桜ちゃんを助けるためなら危険だろうと行く覚悟はある。だが今の彼女はそれだけでどうにかできる状態ではないだろう。
まず誰か協力してくれる人を探したい。こんな危険なことに付き合ってくれる人がいるかどうか分からないが。
ここからあまり離れていないところに何かの店のような施設があるようだ。まずはそこに行く。

266Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 01:59:21 ID:HTyC8c2U
「じゃ、気を取り直して!行こう、プクちゃん!」
「プ、プク!!」

彼女は知らない。その死骸を作ったのは、先ほど出会った少女、間桐桜だということを。



「やっぱり回復アイテムの数は少ないな…」

フレンドリーショップにて、ポケモンを回復させるための道具を探しにきたNとそれに同行する海堂、ルヴィア。
瀕死のリザードンの回復にはげんきのかけら、あるいはかたまりが必要であり、フレンドリーショップであればかけらぐらいはあるはずだった。
そう思っていたのだが、どうやら予想は外れたようだ。
先ほどここに来たときからおかしいとは思っていたのだ。このショップ、回復アイテムの棚が随分奥のほうにある。
そして実際行ってみると、傷薬はある程度あったが、いい傷薬は数個、すごい傷薬に至っては一個しかなかった。げんきのかけらなど影も形もない。
そのくせ、ボール類やスプレー系など、この場においては必要なさそうなものに限ってしっかりと並んでいる。
リザードンをボールから早めに出してやりたいと思っていたが、それまでしばらく時間がかかりそうだ。

「話が途中ですわよ」
「ああそうだったね。どこまで話したか…」

ルヴィアと海堂も一応探してはいたが、どれがどういう道具なのか分からないため探し物はほとんどN任せだった。
それでも時間も惜しい。Nからは質問の答えを聞きながら一応道具を見て回っていた

「僕達はね、ポケモンと人間が本当に共に歩める世界を作ろうと思っているんだ」
「その為に彼らを人間から引き離す、と?」
「そう。もし彼らから本当の信頼を得られているならこんなものが無くたって一緒にいられるだろう?」
「ちゅーかよく分かんねーんだけどよ、ポケモンってつまりどういうやつなんだよ?ペットみたいなもんじゃねえの?」
「ペット、というのも少し違うね。
 人間は彼らを共存と称して戦わせ、ポケモンを傷つけていながら競うことでお互いを伸ばしあうと言っている。
 それはおかしいんだ。彼らと人間は対等の存在でなければならない」
「ピカ、ピカピ!!」
「ああ、違うんだよ。君達のように信頼し合っている者を引き離そうってわけじゃないんだ。
 ただ君達のような関係を持ったトレーナーとポケモンってわけでもないんだよ」
「んー、よく分っかんねえなぁ」

確かに海堂が分からないのも仕方がないだろう、とルヴィアは思う。自分でもよく分からない。
つい数時間前に知った存在が元の世界でどのようなものであるかなど分かろうはずもない。
判断材料はN、そして先ほどのゲーチスの言葉ぐらいである。が、これから判断しても偏った答えしか得られそうにない。
まあこれ以上は彼らの問題だろう。自分達がどうこう言うようなことではない。
ただ、どうも胡散臭い印象はあるが。

「どうもここには目当てのものは無いみたいだ。そこまで遠くもないしポケモンセンターまで行こうと思うんだけど、君達はどうするんだい?」
「どうしましょうかしら…?あの女はこちらには来ていないみたいですし…」
「ショージキ俺は結花のことも気になるんだよなー。でも、そのキツネは……っと」

元々あの女を追ってここまで来たのだ。いないとなれば移動したほうがよい。
それにあのゾロアークは言っていたらしい。喋る杖を持った少女と戦わされた、と。
詳しい特徴を聞くと、それは美遊の特徴に当てはまる。戦ったということもありやはり気がかりだ。
だが、そっちに行くにしてもゾロアークの案内を受けるのは難しいだろう。
Nはポケモンセンターとやらに行くと言っている上、ゾロアークは彼にしか心を開いていないようだ。
今でも露骨な警戒心が発せられているのが分かる。

と、唐突にゾロアークが何か物音を捕らえたのか、耳を立てて警戒の様子を見せる。

「ゾロアーク、どうしたんだい?…誰か近付いてくるって?」

ガチャッ
と、その直後、フレンドリーショップの扉が開く。

267Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:00:37 ID:HTyC8c2U

「あの〜、誰かいらっしゃいますでしょうかー?」
「プ?プク!」
「ピカピカ?!」
「プクゥ〜!」
「あ、プクちゃん!」

現れたのは虎縞の長袖と緑のワンピースを纏った女性とピンクの丸い、ポケモンと思わしき生き物だった。

「このピンプクは君の仲間かい?」
「ピカ!」
「プク〜」
「よしよし、ここは大丈夫だよ。僕は君の味方だからね」

ピンプクは知り合いと会えた喜びと安心感からだろうか、泣き出してしまった。
やはり仲間の死がよっぽど堪えていたのだろう。

「あなたは?」
「私は藤村大河、穂群原学園の英語教師よ。よろしくね」
「ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトと申します。以後お見知りおきを」
「海堂直也っちゅーんだ。こっちのクソ生意気なガキはNってんだとよ」
「こら、そんな言葉遣いじゃ駄目でしょ!よろしくね、N君」

「よろしく」

簡潔に自己紹介を済ませる3人。ピンプクの仲間がいたこと、大河の警戒心の無さ(というより雰囲気)からお互いに安全であることが確信できていた。
やはりというか、ゾロアークのみ警戒を解かなかったが。
と、全員の自己紹介が終わったところで、ルヴィアは一つの聞き覚えのある名前に気がつく。

「…一つ伺いたいのですが、穂群原学園と言いました?」
「え?そうだけど、あなたももしかしてうちの生徒?」
「ええ、少し前に留学した者ですわ」
「ちょっと待って、留学した子なんてうちの学校にはいなかったと思うんだけど?」

何かがずれているような気がする。藤村大河という教師が英語教員ではなかったはずだ。

「ミスフジムラでしたわね。あなたの知り合いはこの場に呼ばれていらして?」
「私の知り合いは、士郎…衛宮士郎と間桐桜ちゃんと、遠坂凛さんとセイバーちゃんね。
 遠坂さんは残念だったけど…。誰かと会ったりしてない?」
「え?」

聞き間違いだろうか。
今の答えの中に明らかにおかしな者がいた。

「あなたシェロの知り合いの方ですの?」
「う〜ん、まあ知り合いっていうよりは保護者かなぁ。ルヴィアゼリッタさんって士郎のこと知ってるのよね?
 ほら、あの子って切嗣さん、父親が亡くなってから家に一人じゃない?だからやっぱりちゃんと面倒を見る人必要じゃない」
「……一つ伺いたいのですが、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンという少女をご存知かしら?」
「聞いたことないなぁ。士郎の知り合いか誰か?」

違和感が膨れ上がる。
士郎の知り合いというならイリヤのことは知っていなければおかしい。
それにイリヤの父親は家にはいないと聞いていたが、まだ存命だったはずだ。
さらに、セイバーという存在も気にかかる。それはあの時自分達を追い詰めたクラスカードの名前のはず。それと士郎にどんな関係があるというのか。

268Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:02:47 ID:HTyC8c2U
だがそれを問おうとしたとき、先に大河の口から質問が発せられた。

「それで一つ聞きたいんだけど、私の知り合いの誰かと会ったりしていないかな〜って」
「いえ、ワタクシの知る限りではあなたのお知り合いとは会っていないと思いますわね」
「そいや、あのベルト使った女が暴れたあの学校には結構色んなやつ集まってたけど、あん中にいたかもな。
 俺にゃー分かんねーが」

ルヴィアにはNやゲーチスが演説をした場所という印象が強いが、海堂はさっきまで戦っていたあの女の方が記憶に残っているのだろう。
だが、ここで海堂がそれを言った直後、大河の顔色が変わった。


「ベルト…?もしかしてその女の子って、紫の髪をした子じゃなかった?!」
「え、ええ、たしか紫の長髪に赤いリボンをして――」
「桜ちゃんだ!ねえ海堂君、暴れてたってどういうことなの?!!」
「うわ…!ちょ、落ち着けって!な?」
「その人ってあのアッシュフォードって所で人を殺したあの子だよね?」
「おいコラァ!!!」

ただでさえややこしくなっているところに発せられたNの言葉。
当然大河の耳にも届く。

「何でおめぇはいちいち余計なこと言うんだよオイ!ちったあ空気読めや!」
「余計なことって。かなり重要なことだと思うんだけど?」
「ああもう、テメェは向こうであいつらの面倒でも見てろ!!」

余計なことを喋られるとややこしくなると考えた海堂はNを追い払う。
言葉に従いNはピンプクやゾロアークの面倒を見始めた。

「…ねえルヴィアちゃん、今のって、本当?」

誤魔化せそうにはなかった。
しかし先延ばしにしても辛い事実だろう。ルヴィアは口を開く。

「ええ、本当ですわ。それに加えて、私達も彼女に襲われましたわ」

間桐桜がしたであろうことを知っている限りで、魔術については伏せた上で全て話した。


「そんな…!だって桜ちゃんは、とってもいい子で、士郎の手伝いもしてくれるいい子なのに…!!」
「その間桐桜とは、どのような子でしたの?」

空気を読んだ問いではなかったかもしれないが、ルヴィアとしては会話をさせることである程度気を紛らわせることもできると思い、大河に問いかけた。
それに、あの遠坂凛の妹という存在がどのように生きてきたのか、それを聞きたかったのだ。

大河は桜のことを知りうる限り話し始めた。
自分の学園で受け持っている弓道部に所属していて、士郎の家によく手伝いに来ること。
おとなしいいい子で料理やマッサージができること。
話し方もちぐはぐで内容もそれ以上のことを言おうとしていたのだろうが、やはり動揺は収まっていないのか、分かりづらいところも多かった。
説明の大半は皆が聞きたいことからはかなり外れていたが、逆にそれが大河という人間をよく表していた。

また、この会話から確信する。藤村大河は魔術とは何の関わりも持っていないものだということを。
そしてもう一つ、あの女が言っていた先輩とは―――衛宮士郎のことなのだと。

269Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:05:49 ID:HTyC8c2U
「どうして…、そんな…」
「あ〜、そのだな、ちょっくら俺のほうに心当たりがあったりするかなーって」

あまりにも悲しそうな様子を見ていられなかったのか、海堂がフォローを入れ始めた。
考えながら言っているのか説明はあまりスムーズではなかったが。

「あのベルトみたいなやつあったろ?
 あれな、似たようなやつがいくつかあるんだけどよ。
 大体俺達みたいなオルフェノクにしか使えないんだよな。
 一つは人間が使うと変身できずに弾かれちまうんだよな。
 で、もう一つは人間でも変身できるけどその後で灰になっちまうんだよな
 んで、ここまで言やぁ俺が何て言いたいのか、分かるか?」
「…つまりあなたは彼女があのベルトで変身したことで何かしらの異常を引き起こしたと?
 例えば精神汚染や幻覚などの」
「まあ、かもしれねぇってことだけどよ」
「そ、そうよね、桜ちゃんそのなんとかってベルトを使ってちょっとおかしくなっただけなんだよね?」

フォローとしては割と苦しいものでもあったが、それでも少しは大河の気持ちを落ち着かせるのには役立ったようだ。
実際はそのフォローも外れではないのだが、それを知っているものはこの場にはいなかった。

「それで、あなたは彼女に会ったのですわね?」
「え?うん、私を見た途端、何だかよく分からないことを呟きながら逃げていったの。なんか魔術師がどうとかなんにも知らないだとか自分は汚いとか。
 確か北の山道を降りたところを東に向かっていったと思う」
「分かりましたわ。ワタクシがそのマトウサクラを追いましょう。危険ですから貴方はここで待っていてくださいな」
「え?行ってくれるの…?って、私も行くわよ!あの子が苦しんでるなら私だってちゃんと助けてあげたいもの!!」

ルヴィアとしてはついてこられるのには気が進まなかった。
危険なのもあるが、おそらく彼女を追えば自分もあの女も魔術を使うことになるだろうから。
一般人に魔術の存在を知られるのは避けたい。自分と同じ(かもしれない)世界の人間となればなおさらだ。
それにもし海堂のフォローの言葉が当たっていたとして、彼女がああなった原因はそれだけとも思えなかった。
相対したときの叫びは、間桐桜の中に何かしらの歪みを抱えているとしか思えなかった。
それを知らせるのは、大河のためになることではないだろうと思う。

一方で大河も譲らなかった。
大河にとって桜は生徒であり、それ以上にもはや家族のようなものなのだ。
仮にあのベルトのせいで道を間違えてしまったのであれば、ちゃんと元に戻して支えてやるべきだと考えていたのだ。
何の異能的なものの無い、一般人であるからこその思いであるともいえる。

結局折れたのはルヴィアのほうだった。

(全く…、仕方ありませんわね。まあこんな場所でもありますし…。
 魔術を見られても少しぐらいなら誤魔化せますわよね…?)

向こうが魔術を使ってきたときは全てをあのベルトのせいにすれば誤魔化せるだろうか。
探し人の居場所が分かった今、こんなやり取りで時間を取られたくはない。

「でもおい、おめぇの妹はどうすんだよ?そっち追ってたら多分見つけられなくなるんじゃね?」
「確かそっちにはあなたの探し人もいらっしゃるんでしたわね?ならそちらはあなたに任せますわ」
「おいおめぇ、妹のこと心配じゃねえのかよ」
「もちろん心配ですわ。だからあなたに任せると言っているのです。
 N、あなたはどうしますの?」

海堂に追い払われて話にあまり混じってこなかったNにも一応聞いてみるルヴィア。

「僕はポケモンセンターに行きたいな。リザードンを早く回復してあげたいんだ」
「まあ、そうでしょうね」

270Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:07:54 ID:HTyC8c2U

ポケモンセンターは間桐桜の向かった方向の近くにある。Nとはもうしばらく共にいることになるだろう。
と考えているとNはピカチュウの傍で佇むピンクのポケモンに話しかけていた。

「ピンプク、君はどうするんだい?」
「プ?プク!!」
「なるほど、彼女と一緒に行くということでいいんだね?」
「? N君、君もしかしてプクちゃんの言葉が分かるの?」
「…ああ」
「へぇー、すごーい!!ねえねえ、プクちゃんは何て言ってるの?」
「あなたはポケモンを知る人間じゃないのなら、あまり彼らについて詮索するべきではない」
「むー…?別にそこまで言うことないと思うんだけどなー。もう少しオープンになってくれてもいいと思うんだけどなー」
「あまり彼らに関わってほしくないんだ。ポケモンについて余計なことを知ってしまえば強引に引き離すことになりかねないからね。
 アナタがこの子のトレーナーでないのならなおさらだ」
「えっと…、N君?」
「確かにこのピンプクは本来のトレーナーでもないあなたであっても気を許しているようだ。
 でもそれに甘えて何をしてもいいということにはならない。むしろそうだからこそその辺りの分別は必要だ」

何故か大河をピンプクと引き離そうとするN。
大河は何か気に障るようなことを言ってしまったか考え込む。


(何か気に障るようなこと言っちゃったかな…。それにしてもN君、私のこと嫌ってるのかな?…………N?)
「どうかなさいまして?」
「…そういえばNっていえば……もしかして」

何かぶつぶつ言っているが、ルヴィアにははっきり聞き取れない。


「ねえ、ルヴィアゼリッタさん、ちょっと待っててもらってもいい?」
「構いませんけど、どうかなさいまして?」
「5分くらいでいいの。N君と二人で話をしたいの」
「え?」

突然の大河の申し出に、Nは困惑するかのような声を出す。

「いきなりどうしたの?」
「いいから。ちょっと二人っきりにしてほしいの。もちろん、このピカちゃんや黒キツネさんも抜きでね」

そう言うと、ゾロアークは大河に噛み付くかのように警戒心を剥き出しにして威嚇を始める。
余りにも危険なその様に、しかし大河は全く怯む様子を見せない。
海堂がオルフェノクに変身してゾロアークを抑えようかと動く直前、Nが宥めた。

「大丈夫だよ、危険なことなんてないから。少しここで待っていてくれればいいから」

そう言って、Nは大河と共に奥の事務室か何かに入っていった。
納得がいかないのか、ゾロアークは唸り声を上げ続けている。

「フシュルルルルル」
「ピカ、ピカピ!」
「何ですの?あれは」
「さぁ?もしかしたらあのガキにガツンと言ってくれると俺は期待してるんだが」
「?…まあいいですけど」
「で、お前は待―ってうおっと」

271Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:08:43 ID:HTyC8c2U
そう言いながら、ルヴィアから海堂の元に一枚のカードが投げられた。
書かれているのは中世の戦車のような物を繰る戦士の姿。

「何だこれ?」
「おそらくあなたの探しているユカという人の近くには美遊がいるはずですわ。
 そのカードはこの場において使いこなせるのはおそらく二人、その一人が――」
「おめーの妹ってわけか?」
「ここまで言えば分かりますわね」
「おう、つまりこいつをその美遊ってやつに渡せばいいんだな?
 しゃーねえ、それぐらいのことはしてやんよ」
「お願いしますわ。もう行ってもよろしくてよ。
 大切な人なのでしょう?」
「べ、別にそんなんじゃねえよ、ただの仲間だ、ただの。
 …あーくそ!じゃああとのことは任せたかんな!!」

そうして海堂直也は走っていった。
途中でオルフェノクに変身したのだろうかと思うほどのスピードで足音は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。

色々と頼りないところもあるが、何だかんだであの男に助けられたのも事実だ。
それにこんな考えを持つなど笑われそうな話でもあるが、あの男なら何かやってくれそうな、そんな気がしてくるのだ。
自分の目に間違いがなければ、きっと美遊の力にもなってくれるだろう。

「妹を頼みますわよ、カイドウ」

そんな願いをこめて、おそらく声が聞こえることがないと分かっていながらもその男の名前を、おそらく初めて呼んだ。



【C-4/森林/一日目 黎明】

【海堂直也@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:怪人態、体力消耗
[装備]:クラスカード(ライダー)@プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:人間を守る。オルフェノクも人間に危害を加えない限り殺さない
1:結花の元へ急ぐ。ついでにルヴィアの妹も探す。
2:パラロス世界での仲間と合流する(草加含む人間解放軍、オルフェノク二人)
3:プラズマ団の言葉が心の底でほんの少し引っかかってる
4:村上とはなるべく会いたくない
5:結花……!
[備考]
※草加死亡後〜巧登場前の参戦です
※並行世界の認識をしたが、たぶん『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ』の世界説明は忘れている。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました……がプラズマ団の以外はどこまで覚えているか不明。



272Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:11:40 ID:HTyC8c2U
フレンドリィショップ。
そこは様々な物品を取り扱う店舗であり、当然客の入れない場所には事務室もある。
本来であれば関係者以外立ち入り禁止であるその空間も、関係者の存在しないこの空間においては立ち入ることは容易い。

「こんなところで何の話があるんです?」

その空間、Nは大河の前に二人っきりで立っていた。
そもそもなぜ友達であるピカチュウやゾロアークまで排してこのような場所にいさせられているのか、Nには分からなかった。

「うん、まあ少しね。大したことじゃないの。
 ただね、ちょっと藤村先生、N君とお話したいなーって」
「…分からないな。何がしたいんだい?」
「だからただお話がしたいだけだって。少しでいいの」

全く意図が掴めないNに対して大河は言葉を続ける。

「N君ってさ、夢とかある?」

夢。無論持っている。
ポケモンを人間から解放し、本来の意味で人とポケモンが共存できる世界を作ること。
それが夢、己の存在意義だ。
多くのトレーナー、人間は反対するだろう。でも決して否定はさせない。
それを許すのは、――だけだ。

その夢、理想の全てを話すN。

「あなたも僕を間違っているというのかな?」
「……ううん、私は間違ってはいないと思うな」
「?」

だが予想外なことに、全てを話し終えた後大河から発せられた言葉は肯定だった。
なぜポケモンのことも知らないはずの彼女が僕の理想を肯定できるのか、理解できなかった。

「でもね、その夢を叶えるのに君は一つだけやらないといけないことがあるの、分かる?」

やるべきこと?それは伝説のドラゴンポケモンを従え、僕の理想と対等に渡り合えるようになった彼を倒し――

「人というものを理解すること、それがN君がやらなきゃいけないこと」
「え…?」



「遅いですわよ」
「ごめんごめん、あれ?海堂君は?」
「もう出発させましたわ。向かう場所が違うのなら待たせていても仕方ありませんでしょう?」

5分を若干過ぎた頃、ようやく戻ってきたNと大河。
別にそれをとやかくいうほどルヴィアは狭い心をしてはいないが。
待ちくたびれたのか、ゾロアークはNの元に飛びついていく。
そんなゾロアークの頭を撫でるN。

273Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:13:08 ID:HTyC8c2U


「一体何の話をなされていましたの?」
「うん、ちょっとね。ちょっとした面談みたいなもの。でももう終わったからいいの。
 それじゃ、早く桜ちゃんを追いかけに行こう!!」

好奇心から問うが、返ってきたのは要領を得ない返事。なんだか誤魔化された気がしたが、これ以上聞いても答えは出ないだろう。
だからあの女、間桐桜のことを考える。

あのにっくき遠坂凛の妹、そして――自分の恋敵。
どうもあの女との因縁は彼女が死んで終わったわけでもなさそうだった。
美遊との合流を前にしても、その因縁は無視できるものではなかった。
それに美遊にはサファイアもついている様子。ちょっとやそっとのことで遅れは取らないだろう。なにしろこのルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトの妹なのだから。

あの女には遠坂凛の妹であること、そして衛宮士郎に好意を持つことがどういう意味をもつのか叩き込んでやらなければ気がすまない。
無論、藤村大河の言葉でもどうにもならないことが分かればそのときは――殺すだけだ。

それに大河からはまだ聞かなければならないことがある。
彼女の知る衛宮士郎、そしてセイバーとは何者なのかという事を。

「ええ、では参りましょうか」

彼に妹を託したことを間違いではないと信じて、ルヴィアは因縁を清算する戦いに向けて出発した。

(そういえば、結局助けてもらったお礼、言えませんでしたわね…)



あまりに混じり気のない、純粋というものは得てして染まりやすいものだ。
白という色に、少量でも別の色を混ぜるとそれは白ではなくなる。白という色はR、B、Gが均質であるが故、そのバランスを少しでも崩すと白とはいえなくなるだろう。

Nに平穏を与えていたという平和の女神は、彼の心をあまりにもピュアでイノセントと称した。
その心に不純物ともいえるだろうものが混じったのはおそらくあるトレーナーとの出会い。これまで人間に傷つけられたポケモンのみを見て過ごしてきたNにとっては大きな衝撃となった。
そして今、新たな不純物がその心に混じりつつあった。

『N君ってさ、人に対して凄い偏見を持ってると思うのよね』
『君はそのポケモンっていう子達のことは理解してるみたいだけどさ、片方だけ理解していても共存なんて無理だと思うの』
『だってそれを目指すN君も、人間じゃない?』

今まで人間というものはポケモンとは決して相容れないものと、そう考えて生きてきた。
だが、彼女はそんな人間を理解していなければならないと言った。

今までこの理想を理解できず非難する多くのトレーナーの声も聞いてきたが、そのことごとくを人間の勝手と自分の中で切り捨ててきた。
だが、大河の言葉はそう言って切り捨てるには、Nは純粋すぎた。故にその内に小さくも確実に疑問を作りつつあった。
すなわち、『人間とは何なのか』、と。

274Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:14:54 ID:HTyC8c2U
(…うーん、やっぱちょっといきなりすぎたかな?)

やはり大河にとってはあまり自信がなかった。なにしろ自分はあくまで教師でありカウンセラーではないのだから。

Nの夢を聞いたとき、正直外れていて欲しかった嫌な予感が事実であることに気付いてしまった。
もしあの部屋を見ていなかったら、大河とてNの違和感に気付けなかっただろう。

Nの城。つまりさっきまでいたあの場所は彼が住んでいた場所なのだろう。

あの猛獣が暴れたかのような傷痕――彼の連れていた黒いキツネを見てわかった。きっとあのような生き物とずっと過ごさせられたのだろう。
おかしな遊ばれ方をしたおもちゃ、テレビも本もない部屋――それは人と隔離され、ずっと一人で過ごしていたということ。
プクちゃんの言葉が分かるというのもそれが原因かもしれない。何かの本で、狼に育てられた子供の話を読んだことがある。
全ては憶測でしかない。だがNが見ているものを知ってしまった時、それらの憶測が糸のように繋がったのだ。

今にして思えばぞっとする話だ。
虐待どころではない。あそこまでくると親にとって何か都合のいい人形か何かとして育てられたのではないかとさえ思えてくる。

きっと、Nは人とまともに付き合ったことはないのではないか、と大河は感じた。
長い間、そのポケモンという生き物だけと共に過ごし、人というものを知らないで育ったのではないか。そして、自分が人間であることすら知らずに育ったのではないか、と。
そこまで行くと考えすぎかもしれないし、できればそうであってほしいが。

自分には彼の夢は分からない。だから否定することはできない。
人間とそのポケモンという生き物の共存できる世界。よく分からない大河には大きく、立派な夢に思える。
だが、彼は人間を知らない。そしておそらく、自分も人間であるということも知らないのかもしれない。
だからせめてNに人間がどういうものなのかということを、いいところも悪いところも色々と教えてあげたかった。

桜のことも心配だが、だからといってNを放っておくことなど大河にはできなかった。
こういうことは時間が必要だ。慌てても何も変わらない。それでも、きっかけぐらいは作ってあげたかった。

間桐桜、N。
保護者として、教師として、そして一人の大人として助けなければいけない者達。
大河の戦いは始まったばかりだ。


【C-4/フレンドリーショップ/一日目 黎明】

【ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:魔力消耗(大)
[装備]:澤田亜希のマッチ@仮面ライダー555
[道具]:基本支給品、ゼロの装飾剣@コードギアス 反逆のルルーシュ
[思考・状況]
基本:殺し合いからの脱出
1:間桐桜を探し、どうにもならないなら引導を渡す
2:元の世界の仲間と合流する。特にシェロ(士郎)との合流は最優先!
3:プラズマ団の言葉が少し引っかかってる
4:オルフェノクには気をつける
5:あの女(桜)から色々事情を聞きたい
6:美遊のことは海堂に任せる
7:大河から詳しい話を聞く
[備考]
※参戦時期はツヴァイ三巻
※並行世界の認識。 『パラダイス・ロスト』の世界観を把握。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

275Nの心/人間っていいな ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:16:03 ID:HTyC8c2U

【N@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:健康
[装備]:サトシのピカチュウ(体力:満タン、精神不安定、ゾロアークを牽制)サトシのリザードン(戦闘不能、深い悲しみ)
    ゾロアーク(体力:満タン、海堂と大河を警戒)、傷薬×6、いい傷薬×2、すごい傷薬×1
[道具]:基本支給品、カイザポインター@仮面ライダー555
[思考・状況]
基本:アカギに捕らわれてるポケモンを救い出し、トモダチになる
1:ポケモンセンターに向かう
2:タイガの言葉が気になる。
3:世界の秘密を解くための仲間を集める
4:人を傷付けはしない。なるべくポケモンを戦わせたくはない。
5:ミュウツーとは出来ればまた会いたい。
6:シロナ、サカキとは会って話がしてみたいな。
7:人間って、何なの?
[備考]
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※並行世界の認識をしたが、他の世界の話は知らない。

【藤村大河@Fate/stay night】
[状態]:額に大きなこぶ、顔面強打
[装備]:タケシのピンプク@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:基本支給品、変身一発@仮面ライダー555(パラダイスロスト)、不明支給品0〜1(未確認)
[思考・状況]
基本:出来ることをする
1:桜ちゃんを助ける
2:Nをちゃんとした人にしてあげたい
3:士郎と桜を探す
4:セイバーも探す
[備考]
※桜ルート2月6日以降の時期より参加
※ミュウツーからサトシ、タケシ、サカキの名を聞きました
※Nの部屋から『何か』を感じました。(それ以外の城の内部は、ほとんど確認していません)
※間桐桜の状態がデルタギアの影響であると思っています

※フレンドリィショップでは回復アイテムしか探していません。それ以外の物で使える道具があるかもしれません。

276 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 02:17:55 ID:HTyC8c2U
投下終了です
矛盾などありましたら指摘お願いします
そして予約が長期間にわたってしまい申し訳ありません

277名無しさん:2011/12/28(水) 02:37:31 ID:MOLipgEQ
投下乙です

最初は指摘から
海堂さんはカイザの呪いを知りません
劇場版の啓太郎も知らなかったわけですし、本編だと流星塾組、真理、巧以外はカイザの呪いを目撃していないand説明を聞いていません
草加登場時も、啓太郎は呪いを目撃or説明されるようなじたいには遭遇しませんでしたし、そのあとカイザの呪いに触れているのは草加と花形社長くらいです

そして感想
二組にわかれましたか
地味にルヴィア、Nが危機に直面しているw 特にルヴィアさん……そのセリフは……w
大河いい感じにNに影響与えるようなこと言っているなぁ。胸が暖かくなった。タイガーの胸ないけど
投下乙!

278名無しさん:2011/12/28(水) 05:12:11 ID:8/6j8tOU
投下乙
Nはゲームでは救われないから、彼をいい方向に導けられるかも知れない人と出会ってよかったな

流石先生、Nの心を癒し和らげてくれ 大河の胸は和らいでないけど

279名無しさん:2011/12/28(水) 11:50:22 ID:5SaYG656
>>277については
「で、もう一つは人間でも変身できるけどその後で灰になっちまうんだよな」
の一文さえなければ丸く収まる話でしょうか。
その辺り(海堂がカイザの呪いを認知してるか)は少しあいまいなところがあるので。

それはともかく投下乙。
さすがタイガー!俺たちに出来ないことをあっさりとやってのけるッ
Nに必要なのは良き大人だよね。普段はあんなでも教育者だぜタイガー……
さりげなくポケモン4匹の過多戦力だけど……奪われることを考慮に入れると決して安全とはいえないんだよなぁ

280 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 12:07:13 ID:HTyC8c2U
指摘ありがとうございます
そういえばそうでしたね。その辺りは修正しておきます

281名無しさん:2011/12/28(水) 12:26:57 ID:MOLipgEQ
>>279>>280
それで問題ないと思います
修正お待ちします

282名無しさん:2011/12/28(水) 13:03:58 ID:ED8LgzfA
投下乙です

別れたのか
ルヴィアさんはヤバいなあ。Nもヤバそうだが大河さんがいてくれて助かったよ
でも大河さんは大河さんでやること多いしな…
先が気になるなあ

283 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/28(水) 14:57:14 ID:HTyC8c2U
修正したものを一時投下スレに投下しておきました
確認お願いします

284名無しさん:2011/12/28(水) 16:38:19 ID:MOLipgEQ
>>283
修正乙です。問題ないと思います

285名無しさん:2011/12/30(金) 18:33:35 ID:P9.Wcx1I
◆Z9iNYeY9a2氏より
今更ですが、「Nの心/人間っていいな」の時刻表記が【黎明】でした。
【朝】か【昼】か【午前】か、指定をお願いします

286 ◆Z9iNYeY9a2:2011/12/30(金) 19:18:31 ID:e6rt8qAk
【朝】でお願いします

287名無しさん:2011/12/30(金) 19:45:26 ID:P9.Wcx1I
対応しました

288 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 18:55:00 ID:MUYBXhzA
お待たせしました
これより投下始めます

289独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 18:57:58 ID:MUYBXhzA
走る美樹さやか。
しかし今の彼女は焦りによって冷静さを失っていた。

ゲーチスを襲った襲撃者。それを探して街の中を走っていた。
あの時のニャースのボロボロになった姿。相手はきっと何かしらの力を持っているに違いない。
だが、今自分には魔法少女としての、人を守るための力があるのだ。戦えない人達を守るために、絶対に襲撃者は逃がしてはいけない。

そんな、何かに急き立てられるかのように走り続けた結果、

「……ゲーチスさん?」

気付くと、守ると決めたはずのゲーチスの姿が見えなくなっていた。
魔法少女の全力疾走に、(身体能力的には)人間でしかないゲーチスがついてこれるはずもない。
探しに戻るか、あるいは襲撃者を追うか、その二つが頭の中で渦巻く。
が、考える時間がもったいないとして、即座に襲撃者追跡に向かう選択肢を選んだ。
時間勝負なのだ。早く片付けて彼の元に戻ればいいと、そう自分に言い聞かせて。

もし、ここで彼女に(利用されているとはいえ)ゲーチスを探すという選択肢が取れるほどの冷静さがあったなら。
その結果ゲーチスに弄ばれることになったとしても。
あのような結果を生むことはなかったかもしれない。



そんな美樹さやかのいる場所からそう遠くもない道路の車道。
政庁に向かう救急車の中での出来事。

「……う…ん?」
「やっと起きたのか、マミ」

政庁も近くまで迫った辺りで、巴マミは目を覚ました。
それを確認した杏子は巴マミに話しかける。

「佐倉…さん…?」
「そうだよ、あたしだ。しっかりしろよ」

まだはっきりと目が覚めているわけではないようだ。詳しい話を聞くのはもう少し待ってからのほうがよいだろうか。

「…?……たっくんは?」
「は?たっくん?……ああ、乾巧のことか。
 なんだよその呼び方。一瞬誰のことか分からなかったじゃねえか」

まさかあの巴マミが他人にそんな呼び方をするとは思わなかったので突如出た呼び名に戸惑ってしまった。
話を聞いた限りでは自分から置いていったという話だったような。言うべきだろうか。

290独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:01:00 ID:MUYBXhzA
「その巴マミって人目を覚ましたの?」
「ん、ああ。まだ半分寝ぼけているみたいだけどな」
「……暁美さん?」

話しかけていると、前に座っているクロが話しかけてきた。
はっきりと目が覚めていないせいか、どうやらその声を自分の知る魔法少女のものと勘違いしているようだった。

(そういやどことなく声似てるよな?)
「マミ、こいつはな、」
「…ひっ!!!?」

前の助手席から顔を覗かせる、自分達とは違う魔法少女についての説明をしようとしたとき、その少女の顔を見たマミの顔が驚愕に包まれる。
それはまるで幽霊でも見たかのような顔、少なくとも杏子はマミのそんな顔を見たことはなかった。

「おい、どうした?!」
「嫌…、来ないで!」

なぜかクロの顔に怯えながら、よりにもよって魔力で作り出したマスケット銃を向け始めた。

「え、何?」
「おい止めろマミ!」

パンッ

状況が掴めなかったクロは反応が遅れてしまうが、慌ててその腕に飛びついた杏子のおかげで銃弾がクロを貫くことはなかった。
しかし、放たれた銃弾はフロントガラスの中央を突きぬけ、前面の視界を遮るほどのヒビを作った。
運転者、夜神総一郎はあまりに突然の出来事にとっさに急ブレーキを踏む。
大きな音をたてながら急ブレーキの衝撃で揺れる車内。。
そんな中、巴マミは後部のドアを体当たりで強引に開いて飛び出して行った。

「マミ!!」
「一体何があった?!」
「知らねえよ!何かいきなり錯乱しやがったんだ。
 お前ら先に行ってろ、あたしはすぐマミ連れて追っかけるから!」
「佐倉くん!」

そう言い残し、マミを追うために救急車から飛び出した杏子。

「私の顔見た途端、いきなり怯えだしたのよ。何が何だか…」
「…彼女のことは佐倉くんに任せて大丈夫なのか?」
「どうもあの反応だと私も行くとややこしくなりそうなのよね。一体何なのよ…?」

あまりにも急な出来事。
ゆえにクロエは一つの可能性を失念していた。
巴マミが自分と同じ顔をした存在――イリヤスフィール・フォン・アインツベルンと遭遇したという可能性を。
まあもしその考えに至ったとしても、一見巴マミとも相性のよさそうに見えた彼女とその行動につながりを求めることなどできないだろうが。



291独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:03:43 ID:MUYBXhzA

走る巴マミの精神状態はかなり不安定だった。
救急車を飛び出すときにドアに体当たりしたことでその体には若干の打撲を負っていた。
しかし、そんな痛みも今の彼女には気にする余裕がなかった。

さっきの少女の顔。それはあの時ルルーシュの前で戦ったあの少女と同じものだった。
そしてそれは、その少女との戦いの中の記憶を掘り起こされるには充分な刺激となってしまったのだ。

あの戦いで私は何をした?
ルルーシュに撃たれた。だから危険と判断して彼を拘束しようとして。
そしてその少女が現れ、戦い――
その先の記憶が断片的にしか思い出せない。

金色のロボット。
吹き飛ぶルルーシュの腕。
そして、炎に包まれる周囲。

(私が…、ルルーシュを…、あの少女を、殺した…?)

それだけの記憶からマミはそれが何を意味するのかに気付く。
つまり、あの時ゆまを見捨てたように、今度はこの手で人を殺してしまったというのか。

もしあの行動が、自分で最良と思い下した判断であればここまで混乱し、不安定にはならなかっただろう。
だが、マミにはそれに至るまでの記憶がなかった。生きろと命じられたギアスは、己の意思とは無関係に彼女を生かすためだけに最良の判断を取らせる。
それが自分というものに対する認識を分からなくさせ、マミの心に得体のしれない恐怖を煽る。
それに加えてティロ・フィナーレを人を殺すために使ったという事実もまたマミの精神を追い詰める。

(違う…、あれは…あんなの私じゃ…)

イリヤスフィールの名を知らず、放送を聞き逃したマミの中では、あの少女は自分が殺したと思い込んでいた。
だからこそクロエの顔を見てそれまでの記憶がフラッシュバックしてきたとき、その少女が自分を責めるために現れたとしか考えられなかった。
そして、今の彼女にはその責めを受けることができる勇気などあろうはずもない。

転びそうになりながらも走るマミの頭の中には、一刻も早くその得体のしれない何かから逃げることしかなかった。



「…どこに行ったっていうのよ…?!」

もうかなり走り回ったにも関わらず襲撃者は見つからない。
その存在が虚実の中にしか存在しないということに、未だ気付いていない。

さやかの中にはゲーチスに嘘を付かれているという発想はない。
元々彼女自身そういった人間の負の部分とは無縁に生きてきたのだ。
弥海砂という、嘘をついて人をおびき寄せたという存在を知ったところで、ゲーチスの黒い部分に気付くはずもない。

彼女の中の焦りが大きくなる。もし見つけられなければ危険にさらされるのはゲーチスなのだから。

そして走り続けるさやかは小さな物音を聞く。
ほんの小さな音。しかし今、何の手がかりもないさやかには、その音は手がかりになりうる唯一の存在だった。

その音がした場所でさやかは、

「…何やってんのよ、あんた」

鎖状に変化させた槍で縛った巴マミの腹を殴り気絶させる佐倉杏子の姿を見た。

292独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:04:50 ID:MUYBXhzA



夜神総一郎が難しい顔をしているのを見て、ふと気になったクロエが話しかける。


「やっぱり心配?」
「当たり前だろう。あんな子供達だけを残して行くなど…」

夜神総一郎は魔法少女が実際に戦っているところを見たわけではない。
だが、そこに自分が行っても何かできることがあるとは思えなかった。
巴マミという少女のことは佐倉杏子に任せるしかない。

「ま、大丈夫だと思うけどね。あの子結構経験積んでるみたいだし」
「何?」
「多分1年かそれ以上は。でもあのマミって方はそれ以上みたいなのが気になるけど」
「……」

ふと思い出す。
確か彼女には家族はいないと言っていた。だがあの少女がどこかの保護施設にいたとは思えない。
ならばそれまでどうやって生きていったというのか。


「どうかした?」
「クロエ君、確かにあの子達はそういう戦いには慣れているかもしれないしそれに手を貸してやることはできないだろう。
 しかしな、だからといって人間というものは一人で生きていくことはできない。導いてやる存在も必要なんだ」
「え?」


かつて弥海砂という、殺人犯に家族を殺された者がいた。
犯人は捕まったにも関わらず司法において裁きを下されることはなかった。
そうして大きく傷ついた彼女は、キラの裁きに救われ、彼に心酔し多くの人を殺す殺人者となった。

無論裁きと称されたそれを肯定するつもりはない。それは例え息子の言葉であっても動かされるものではない。
だが、もしそのときにその犯人に相応の裁きが法によって与えられていれば、あるいは彼女の心の傷を癒す存在があれば。
彼女があそこまで道を外してしまうことはなかったのではないか。
そして法による裁きを与えるのも、当時少女だった彼女の心を癒すのも、それらは我々のような大人がするべきことではないのか。

人間というのは一人で生きるものではないのだ。
特に子供にはそれを導いてやる大人の存在が不可欠だ。
確かに彼女達の戦いというものには力を貸すことはできない。
だがそれでも、彼女達が間違ってしまったときなど、正し、支える存在は必要なのだ。

脳裏に、ずっと共にいたにも関わらず彼の持つ歪みに気付いてやれなかった、息子の姿が浮かぶ。

こんな場所だが出会ったのも何かの縁だ。
あの二人と合流したらその辺りをきちんと教えてやるべきだろう。
特に佐倉杏子とは色々と慌しかったせいで共にいた時間の割にあまり話していない。
少し落ち着いたらそういった話もしてやるべきだろう。
全てを自分ひとりで背負い込もうとせず、もっと周りの人間のことも頼るべきだ、と。

293独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:06:39 ID:MUYBXhzA
「もうそろそろか?」
「あ、うん。だいぶ近付いてきてるわね」

時間は8時になろうかとする今、二人を乗せた車は政庁へ向けて走る。
到着は近い。


【D-2/市街地/一日目 朝】

【クロエ・フォン・アインツベルン @Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:疲労(中)、魔力消費(小)
[装備]:
[道具]:基本支給品、グリーフシード×1(濁り:満タン)@魔法少女まどか☆マギカ、不明支給品0〜2
[思考・状況]
基本:みんなと共に殺し合いの脱出
1:みんなを探す。お兄ちゃん優先
2:お兄ちゃんに危害を及ぼす可能性のある者は倒しておきたい
3:どうしてサーヴァントが?
4:9時に政庁に集合する
[備考]
※3巻以降からの参戦です
※通常時の魔力消費は減っていますが投影などの魔術による消耗は激しくなっています(消耗率は宝具の強さに比例)
※C.C.に対して畏敬の念を抱いています


【夜神総一郎@DEATH NOTE(映画)】
[状態]:健康
[装備]:救急車(運転中)、羊羹(2/3)羊羹切り
[道具]:天保十二年のシェイクスピア [DVD]、不明支給品1(本人未確認)
[思考・状況]
基本:休んでいる暇はない。警察官として行動する。
1:政庁に行き、月の嘘についてを説明する。
2:警察官として民間人の保護。
3:真理を見つけ、保護する。
4:約束の時間に草加たちと合流する。
5:月には犯罪者として対処する。だができればもう一度きちんと話したい。
6:二人が気がかりだが…
[備考]
※参戦時期は後編終了後です
※平行世界についてある程度把握、夜神月がメロの世界の夜神月で間違いないだろうと考えています。




「…はぁ…はぁ、佐倉さん来ないで!!」
「おい、どうしたってんだよ、何で逃げるんだ?!」

佐倉杏子が巴マミを見つけるのにそこまで時間は掛からなかった。
逃げるマミの魔力を追っていけばすぐに見つけることはできるのだ。
加えて今のマミは走り方すらおぼつかないようだ。やがて足を縺れさせ転んだ所で槍を多節棍に変化させて身動きを封じたのだ。
今のマミを落ち着かせるにはそれしか思いつかなかった。それに下手に銃を撃たれても困る。

294独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:07:46 ID:MUYBXhzA
「離して!あれは私じゃないの、私じゃないのよ!!」
「あーもう、少し落ち着けよ!何があったんだよ?!」
「あ、あの子は私が殺したの…!でもあれは私じゃない…!あんな私知らないの!」
「はぁ?何言ってんだよマミ。あいつは死んじゃいないだろうが。じゃなきゃあそこにいるわけないじゃねえか」

杏子にはマミが何を言っているのかが分からなかった。
先ほど会ったときにはこんな様子ではなかったはずだ。この数時間のうちに一体なにがあったというのか。

拘束されてなお、マミは必死で足を動かし逃げようとしている。
放っておくわけにはいかないが、このまま連れて戻るにはあまりにも危ない。

「ああくそ、仕方ねえ!」
「あぐっ!」

止むをえない。
余りの取り乱しように落ち着かせることを諦めた杏子は、マミの腹に力いっぱいの拳を打ちつけた。
息を吐き出すような音を出してマミは意識を失った。

「はぁ、目が覚めるまでには落ち着くか?」

鎖でぐるぐる巻きにしたまま、抱えあげようと近付く杏子。
荒療治ではあるが、マミの精神状態からするとまあ間違ったやり方とはいえないだろう。
もしこのままの状態で放置しておくと何をしでかすかわからない。

ただ、この場合。

「…何やってんのよ、あんた」

少し間が悪かった。

「え?」

杏子は聞き覚えのある声にふと振り向く。
頭の中が真っ白になった。

青い髪、白いマント、剣を構えるその少女の顔は怒りに彩られている。
それはかつて救えなかった、自分と同じ道を歩みかけ、違う末路をたどった少女。
美樹さやかが立っていた。

「何でマミさんを…」

その言葉を受けてはっと今の状況に気付く。
マミはさやかの憧れの魔法少女である。そんな人を縛り上げ、あげく殴って気絶させる。
そんな行為がさやかにはどう映っただろうか?


弁解しようとするも焦りから言葉が出てこない。
そもそも彼女は鹿目まどかの家に向かったのではないのか?どうしてここにいるのだ?
もし会ったら色々と言いたいこともあった。もし変な方向に行こうとしているならちゃんと言って聞かせないといけないから。
しかし、一時的にだがさやかのことを頭から外してマミのことに意識が行っていた杏子は唐突すぎる邂逅に何を話すべきかをすっかり忘れてしまった。

295独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:09:48 ID:MUYBXhzA
故に、さやかの問いかけには沈黙をもってしか答えられなかった。
今のさやかにそれはまずかったというのに。

「…やっぱり、あんたもそうなんだ?」
「い、いや、さやか、これはだな――」

ガキン!!

混乱する頭を回転させて話そうとした杏子の元にさやかは一瞬で詰め寄り、その剣を振りかざした。
反射神経がかろうじて反応し、その手に新しく槍を作り出して受け止める。

「あんたは!私はあんたならこんなところで殺し合いに乗ったりしないって信じてたのに!!
 よりにもよって!マミさんを!!!」
「ま、待て!少し話を――」
「うるさい!そうやってまた私を惑わそうっていうの?!
 私は違う!あんたみたいに自分のために生きたりなんかしない!」

さやかと杏子の剣戟。それはいつか、初めて二人が会ったときと同じ構図。
元々さやかと杏子の能力、才能自体にはそこまで差はない。初めての戦いにおいては経験の差が決定打となってさやかを追い詰めていた。
しかし、今の戦いでは明らかに杏子が押されていた。
さやかは己の憧れの先輩を守るためにおそらく己の限界を超えるのではないかというほどの動きを見せている。
しかし杏子はさやかと戦う意志はなく、むしろこの状況に戸惑っている。さらに戦いのなかでは己の思考が纏まらず、どうするべきなのかすらはっきり分かっていない。
ゆえに伸縮自在のリーチを持った攻撃も多節棍を用いた拘束技も使用できず、たださやかの攻撃を受けるのみという有様だった。
そして、杏子と全力でぶつかったことのあるさやかだからこそ、そのような動きをする杏子には舐められているとしか考えられず、更なる怒り、苛立ちから剣の一閃をより激しくさせる。

さやかの剣の一閃を、槍で弾く。だがそのあとが続かない。
大振りになって隙だらけの胴体を見せる。だが迷いが攻撃の機会を逃させる。
今の杏子にはかつてのように軽くあしらうような余裕はなかった。

だが杏子自身、そんな自分とあまりに聞き分けのないさやか、こんな現状に少しずつ苛立ってきた。

「ああくそ、いい加減にしやがれ!!」

と、その苛立ちをぶつけるかのようにさやかの剣を力いっぱい弾き飛ばす。体が隙だらけになるのも構わず。

(―あ)

296独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:11:15 ID:MUYBXhzA

そして気付く。
さやかが剣を弾かれた無茶苦茶な体勢から、また新たに作り出した剣をこちらに振りかざしていることに。
本来ならばとれるはずのない姿勢。それができるのは魔法少女故だろう。
それが体に掛かる負荷を度外視してのその一閃。この体勢からそれを避けるのは無理だ。

(――畜生)

それが体に触れるまでの間、まるで時間がゆっくりと進むかのような錯覚にとらわれる。
その中で、ふと脳裏に浮かんでくる光景。これが走馬灯というものなのだろうか。
あの日魔女の結界から出たとき、偶然父親に見られてしまった。
それさえなければ家族が崩壊することはなかったはずだ。
あの時さやかをようやく探し出したとき、すでに手遅れだった。
もう少し早く見つけられていれば。
そして今回。
またさやかを救うことはできなかった。

(なあ神様、なんであたしっていつもこんな――)

そうして弾いた剣が地面に突き刺さったと同時。
さやかの剣は杏子の体を斬り裂いた。



「はぁ、はぁ…」

無茶な体勢から斬りつけた一撃。
それはさやかの肩と背筋に大きな負荷をかけ、筋肉の断裂、捻挫を引き起こしていた。
無論さやか自身そんなことは承知の上だ。これぐらいの犠牲がなくては勝てる相手ではないと思っていたから。
そのはずだった。

「…何でよ?」

痛みも気にすることなく問いかける。
納得がいかなかった。
かつて戦ったときはこんなやつだっただろうか。
今の一撃など、避けられないまでもダメージを最小限に抑えるくらいはできたはずだ。
そもそもそれまででもずっとこんな調子だった。手を抜かれているのかと思っていた。
だから本気で戦っていたのだ。ともすれば死に繋がるかもしれないほどに。
なのに。

「あんたこんなものじゃなかったでしょ!!」

血塗れた剣を振りかざして叫ぶ。
しかし返事などない。
地に伏せた佐倉杏子の体は魔法少女の衣装ではなくいつもの普段着に戻っている。
傷が回復する様子もなければその顔には生気などない。
未だ目覚めぬ先輩の体を縛る鎖も消えていた。

そう、最後の彼女の一撃。
それははっきりと杏子の胸部を裂き、ソウルジェムを破壊していたのだ。

「あのときみたいにもっと攻めてくればいいじゃない!!
 何でよ!私がそんなにおかしいの?!」

その事実を否定したいのか、あるいはそれまでの過程を否定したいのか。
さやかはもの言わぬ骸となった杏子に叫び続ける。
彼女には佐倉杏子に手加減されるような覚えはなかった。せいぜいあの教会での会話だが、この場で巴マミを襲っている彼女がこうなることには繋がらない。
認めたくなかった。自分よりも強かったあの佐倉杏子がこんなに、驚くほどあっさり死んでしまったことを。
だがどれだけ叫んでも現実は変わらない。

297独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:13:21 ID:MUYBXhzA
そして、

「…佐倉、さん?」

その声が一人の魔法少女の意識を覚まさせた。
さやかの意識はその声の主に向かう。

「マ、マミさん、大丈夫ですか?」
「あなたは…誰…?」
「え?」
「あ…佐倉さん!!」

血塗れになって倒れている杏子に気付き駆け寄るマミ。
己の制服が血塗れになるのにも構わずに杏子に呼びかける。

「佐倉さん!しっかりして!佐倉さん!!」

その叫ぶ声は襲われた相手に向かってかけるようなものではなかった。


どうしてマミさんは自分に襲い掛かった相手をこんなに心配しているのだろうか?
もしかしてマミさんと佐倉杏子って何処かで何か関わりがあったのだろうか?

だとしたらちゃんと殺してしまったことについて話さなければいけないだろう。
マミさんならきっと分かってくれるはずだ。

シュルッ

「え?」

そのはずなのに。
何で今この体にはマミさんのリボンが巻きついているの?
何でその銃をこっちに向けているの?
何でマミさんは私のことを、まるで仇を見るような目で見てるの?

「マ…マミさ―」
「何でよ!どうして佐倉さんを!!この子が何をしたっていうの!!」

大声でまくし立てる巴マミ。そこにはかつてさやかが憧れた魔法少女の姿はなかった。
今のさやかは体を縛られており、身動きをとることができない。
だが、もしその拘束がなくとも今のさやかは動くことはできなかっただろう。
例えマミがその手に持つマスケット銃の引き金に指をかけていたとしても。

どうして?ねえ、マミさん、私ですよ?美樹さやかですよ?
私、マミさんみたいにみんなを守れるようになりたくて魔法少女になったんですよ?
これから一緒に戦えるんですよ?
なのにどうして?どうしてそんな目で私を見るの?

それじゃあ、まるで私―――――

298独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:14:57 ID:MUYBXhzA


巴マミにとっての佐倉杏子とはどういう存在なのか。
一言でいえば共に戦ったこともある仲間ということになるだろう。
しかし、両親を失い、ずっと一人孤独に戦ってきたマミにとっては、たとえ仲違いしてしまった後でも大切な、そして唯一の存在であったのだ。
この巴マミにとっては暁美ほむらは利害次第で協力し合える魔法少女ではあるが決して親しい仲ではない。美国織莉子、呉キリカはむしろ敵対する存在である。
千歳ゆまとは関わりこそ薄いものの友達と言えるくらいの関係はあった。だが彼女はもうこの世にはいない。
そして――美樹さやかに至っては存在すら知らない。

だからこそ、その唯一の仲間だったといえる佐倉杏子を殺した相手を目の当たりにして、激情に任せてその手のマスケット銃で相手の頭を吹き飛ばしてしまっても。
それ自体は仕方のないことなのかもしれない。

頭を吹き飛ばされたその魔法少女の死体は目から上を喪失させて倒れていた。
その死体を前に、巴マミは己の行動に大きく後悔していた。

「佐倉さん…!ごめんな…さい…!」

もしあの時自分がしたこととちゃんと向き合えていればこんなことにはならなかったはずだ。
あそこで罪の幻影から逃げ出したりしなければこの魔法少女に襲われて死ぬことなどなかっただろう。
千歳ゆまが死んだときと同じ。全ては自分のせいだ。

仲間を失ったという大きな喪失感がマミの心を絶望で覆う。
もう仲間が誰もいない一人ぼっちという今への絶望感。
それはマミの目には届かないもののソウルジェムの濁りとして表れていく。
だが、そんな中でも一つの希望があったことを思い出す。

「…たっくん?」

もしもの時、お互いの命を預けあった存在、乾巧。
だが今この場にはいない。
さっき飛び出したときにおいていってしまったのだろうか。その辺りの記憶は寝起きの上色々とショックも大きなことがあったためよく覚えていない。
もしそうなら今すぐにでも追わなければいけない。
だがそっちに向かうとまたあの魔法少女の亡霊に会ってしまうかもしれない。

299独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:16:05 ID:MUYBXhzA
今更何だというのだ。
もうこの魔法少女を、殺人者とはいえ殺してしまったのだ。
もはや逃げるだけではなく受け入れなければならないのだろう。

そして最後に杏子の骸をせめて人目につかない通りに隠し、マミは歩き出した。
大きな絶望を、唯一の小さな希望で誤魔化しながら。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【巴マミ@魔法少女おりこ☆マギカ】
[状態]:ソウルジェム(汚染率:中)、絶対遵守のギアス発動中(命令:生きろ)、大きな罪悪感、精神不安定
[装備]:魔法少女服
[道具]:共通支給品一式×2、遠坂凛の魔術宝石×10@Fate/stay night、ランダム支給品0〜2(本人確認済み)、不明支給品0〜2(未確認)、グリーフシード(未確認)
[思考・状況]
基本:魔法少女として戦い、他人を守る。だけど…
0:たっくんに会いたい
1:さっきの救急車を追う
2:自分が怖い
3:佐倉さん…
[備考]
※参加時期は第4話終了時
※ロロのヴィンセントに攻撃されてから以降の記憶は断片的に覚えていますが抜けている場所も多いです
※見滝原中学校の制服は血塗れになっています  
[情報]
※ロロ・ヴィ・ブリタニアをルルーシュ・ランペルージと認識
※金色のロボット=ロロとは認識していない
※銀髪の魔法少女(イリヤスフィール)は死亡しており自分が殺したものと認識
それと同じ顔をした少女(クロエ)はそれゆえに見える幻影と認識
※蒼い魔法少女(美樹さやか)は死亡したと認識




そうしてその場に残った美樹さやかだったもの。
だがそれは少しずつではあるが元の形に戻りつつあった。

300独りの戦い ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:17:08 ID:MUYBXhzA
もし、巴マミが頭を吹き飛ばされていたらまず死んでいたと思われる。
ソウルジェムが頭についているからという話ではない。
彼女はソウルジェムの秘密を知らない。ゆえに多少頑丈であっても心臓や脳など急所を撃たれれば死ぬと考えている。
先に撃たれたのは心臓であったが、脳に働きかける生の呪縛が彼女を生かした。
だがその脳を破壊されれば呪縛は働きかけなくなるだろう。そしてその再生より早く死への絶望がソウルジェムを汚し尽くす。

しかし美樹さやかはその秘密を知っていた。
魔法少女の体などただの抜け殻にすぎないことを。ソウルジェムさえ無事なら死ぬことはないことを。
だからこそ彼女は未だ絶望してはいない。
さらに彼女固有の能力、癒しの力によりその頭部は少しずつ形を戻しつつある。
そして完全に形を取り戻してしばらく後には再び意識を取り戻すことだろう。

だが、それが果たして彼女にとって幸せなことなのか、あるいはこの場で絶望に身を任せてその魂を消滅させてしまったほうが幸せだったのではないか。
それはまだ分からない。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:頭部欠損(回復中)、意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】

※D-3、美樹さやかの近くに基本支給品、羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1が放置されています。

301 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/02(木) 19:19:34 ID:MUYBXhzA
投下終了します
おかしなところがあれば指摘お願いします

あと、雑談スレでも言われていましたが
もしゲーチスも書いたほうがよければそこのパートを追加しようと思います
なのでそれについての意見もお願いします

302名無しさん:2012/02/02(木) 19:34:17 ID:iEUJ7OnY
投下おつ
杏子……あんあんされず死亡確認!
さやかさんもマミさんもやばい状況だw
余裕ない人たちだな、ほんとに

ゲーチスはどちらでもいいですかねw
なくても問題なさそうですし

303名無しさん:2012/02/02(木) 22:11:59 ID:mWk6FunE
投下乙
あれ……なんか十話でこんな感じの話を見たような……
原作キャラ同士なのにこうも擦れ違うとは。おまいらちょっとは仲良くせいよwいや無理な状態なのはわかるけど
あんこちゃん……斬られて撃たれてホントご苦労さまです(泣

ゲーチスは……微妙なところですが、先に行けとかでほんの少しだけ出すぐらいは…?
氏の負担にならない程度の追加ならあった方がいいかもしれません
実はこっそりとナズェミデルンディス!しててもいいしねw

304名無しさん:2012/02/02(木) 23:30:58 ID:wyR2ZuYU
投下乙っす。
マミを助けようとしたら、誤解されて一番助けたかったさやかに殺されて絶望する杏子。信頼してた杏子を殺されて、自分を助けようとしたさやかを拒絶し、絶望の中ただ一人さ迷い続けるマミ。信じようとした杏子に裏切られたと思い、憎悪の果てに凶行に走り、その結果信頼してたマミの怒りを買い、わけがわからないまま絶望してゆくさやか。この3人の物語の果てにあるのは絶望しかない。…これなんて昼ドラ?

305名無しさん:2012/02/03(金) 18:03:28 ID:OOExkc6E
投下乙です

これは酷い(褒め言葉)
確かに原作でも微妙な関係だったけどそれがこういう形で火種にするとは…
悲劇だわ…

306名無しさん:2012/02/03(金) 18:12:00 ID:IT6S.cQw
投下乙です。
さやか熱くなりすぎだろ・・・
それにしてもマミさんは運が悪いww
勘違い魔法少女マーダーとか新しすぎる
そしてさやかは月の誤報とゲーチスの説法でアウトかな
これはW発狂マーダー化かな?

307名無しさん:2012/02/03(金) 19:41:20 ID:V8Yl7nhM
投下乙です。
やっぱりやりやがったな豆腐メンタルコンビwwwもうやだこの魔法少女www

おりこマミさんからした安定のさやかあちゃんは冷静な状態ならほむほむの友人の一人、程度のはずがまあものの見事にw

308 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/04(土) 00:24:01 ID:y6tIZUo6
ご意見、感想ありがとうございます
ゲーチスの件ですが書いたほうがいいという意見も見受けられますので若干の描写を追加させてもらっても構わないでしょうか?
おそらく土日中には投下できると思うので

309名無しさん:2012/02/04(土) 01:04:29 ID:M31pzWW.
投下乙です
うわぁ…ドロドロだな…この魔法少女達…
マミさんはこれでたっくんまで死んだら…アァァ…

310名無しさん:2012/02/04(土) 15:20:20 ID:IW0e6gx.
>>308
構わん、やれ
冗談ですお願いしますオールオッケーです待ってます

311名無しさん:2012/02/04(土) 16:26:26 ID:UHqxnhUI
いいんじゃないの
矛盾が無ければいいですよ

312 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:26:47 ID:WftRh.go
こちらでよろしいですかね?
ゲーチス加筆したものを以下のように差し替えさせてください
まず>>293の状態表前の部分を次のように
////
「もうそろそろか?」
「あ、うん。だいぶ近付いてきてるわね……ん?」
「どうした?」
「いや、今何か…」

ふと、クロエの目に一瞬黒い影がよぎった。
おそらく隣で運転中の総一郎には見えていないはず。
アーチャーとしての能力を持つクロエの視力だからこそ、それを視認できたのだ。
その黒い影は六枚の羽と三つの首を持った何かに見えた。
そのような生き物は自然界にはいなかったはずだ。もしかしたらシロナの連れていたガブリアスの仲間のようなものなのだろうか。
それは普通の人間なら見落としてしまいそうなほどの高度を飛び、やがて視界から外れていった。

「…、何だったんだろ?」

何故なのか分からないが、それがクロエにはとても不吉なものに見えた。

約束の時間も一時間と半刻という時間となる今、二人を乗せた車は政庁へ向けて走る。
到着は近い。
/////

313 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:30:12 ID:WftRh.go
>>299>>300のマミさんの状態表以降を次のように
///

「なるほど、なかなか面白いものではありましたね」

魔法少女三人によるこの出来事、その一部始終をゲーチスは見ていた。
正確にはさやかと赤い魔法少女が斬り結んでいるところからとなるが。

あの速さで走る美樹さやかにゲーチスが追いつけるはずもない。
だからサザンドラに上空からさやかの探索をさせておいたのだ。
当然、己の安全も第一であるため、怪しい人物を発見した際はさやかの追跡は諦めて戻ってくるように指示しておいたが、どうやらそれは杞憂に終わったようだった。
すぐにさやかを発見したためすぐにここへ来ることができた。

どうやらこの惨状は美樹さやかの先走りによるものらしい。まあ間接的には煽った自分のせいにもなるのだろうか。

ただ、一つ気になることもある。
あの金髪の少女―外見的特長からおそらく巴マミだろう―はさやかの知り合いと聞いていたが、あの反応はおかしい。
そもそもいくら仲間が殺されたといっても殺す行為にあまりに躊躇いがなかった。少なくとも知り合いにする態度ではない。
その関係自体に興味はないが、あの学園でのNのこともあり少し気になってしまう。

「どうも結論を出すには早いですか。
 さて、どうしたものか…」

近くに寄ってみても、やはり確実に彼女は死んでいる。
頭を吹き飛ばされたのだ。これで生きていたら人間、いや、生き物ではないだろう。

さやかの、あの巴マミに銃口を向けられたときのあの顔。あれは中々のものだった。
それだけに今ここで失ってしまうのも惜しい。だがこうなってしまった以上仕方あるまい。
そうなるとあの巴マミという少女。彼女を駒とするのもいいかもしれない。
だが彼女の向かう方向は政庁だ。行動するなら早く行かなければ。



さやかから視線をそらしているゲーチスはまだ気付いていない。
その、かつて美樹さやかであった骸の異変に。
撃たれた頭部が少しずつではあるが元の形に戻りつつあることに。

もし、巴マミが頭を吹き飛ばされていたらまず死んでいたと思われる。
ソウルジェムが頭についているからという話ではない。
彼女はソウルジェムの秘密を知らない。ゆえに多少頑丈であっても心臓や脳など急所を撃たれれば死ぬと考えている。
先に撃たれたのは心臓であったが、脳に働きかける生の呪縛が彼女を生かした。
だがその脳を破壊されれば呪縛は働きかけなくなるだろう。そしてその再生より早く死への絶望がソウルジェムを汚し尽くす。

しかし美樹さやかはその秘密を知っていた。
魔法少女の体などただの抜け殻にすぎないことを。ソウルジェムさえ無事なら死ぬことはないことを。
だからこそ彼女は未だ絶望してはいない。
さらに彼女固有の能力、癒しの力によりその頭部は少しずつ形を戻しつつある。
そして完全に形を取り戻してしばらく後には再び意識を取り戻すことだろう。

もし、ここでゲーチスが彼女の体に再び視線を戻せば、その異変に気付くだろう。
そうでなければ、異変に気付くことなく、おそらくは巴マミを追ってこの場を去っていくことだろう。

だが、どちらになったとしてもそれが果たして彼女にとって幸せなことなのか、あるいはこの場で絶望に身を任せてその魂を消滅させてしまったほうが幸せだったのではないか。
それはまだ分からない。

【D-3/市街地/一日目 朝】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:頭部欠損(回復中)、意識なし
[装備]:ソウルジェム(濁り中)
[道具]:
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない。主催者を倒す
1:????
※第7話、杏子の過去を聞いた後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

314 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/05(日) 01:32:54 ID:WftRh.go
【ゲーチス@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:左腕に軽度の火傷(処置済)
[装備]:普段着、きんのたま@ポケットモンスター(ゲーム)、ベレッタM92F@魔法少女まどか☆マギカ
[道具]:基本支給品一式、モンスターボール(サザンドラ(ダメージ小))@ポケットモンスター(ゲーム)、病院で集めた道具
[思考・状況]
基本:組織の再建の為、優勝を狙う
1:表向きは「善良な人間」として行動する
2:理屈は知らないがNが手駒と確信。
3:切り札(サザンドラ)の存在は出来るだけ隠蔽する
4:美樹さやかは惜しいが仕方ない。次の手として巴マミを駒としようか
5:政庁からはなるべく離れる
※本編終了後からの参戦
※「DEATH NOTE」からの参加者に関する偏向された情報を月から聞きました
※「まどか☆マギカ」の世界の情報を、美樹さやかの知っている範囲でさらに詳しく聞きだしました。
(ただし、魔法少女の魂がソウルジェムにされていることなど、さやかが話したくないと思ったことは聞かされていません)
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)
※どの方向に向かったかは後続の書き手さんにお任せします
※さやかがまだ生きていることには気付いていませんが、もしここでもう一度さやかを見ることがあれば異変に気付くでしょう。

【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカ 死亡】

※D-2、美樹さやかの近くに基本支給品、羊羹(1/4)印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入 印籠杉箱入 大棹羊羹 5本入×4、不明支給品1が放置されています。
////

これでお願いします

315名無しさん:2012/02/05(日) 18:34:42 ID:ObjH2jc6
乙した。これで大丈夫かと思います

316名無しさん:2012/02/05(日) 18:51:30 ID:r1P8nXjQ
投下乙!
これまでどのロワでもマギカのメイン5人は生き延びてきたが、遂にここで死者が出たか
しかもこんな最悪な形で…
マミさんもさやかも、もろにパラロワというこのロワの特性に絡め取られちまったなあ。
これからいったいどうなるんだー!

317 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:26:15 ID:eSEoQ3Xs
村上峡児、オーキド博士、マオ投下します

318接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:09 ID:eSEoQ3Xs


「ここがしばらく禁止領域にならない。なら今は動かなくても構わないってことね」
 片目を隠している少女は自分に確認するようにつぶやいた。
 日は昇っているもの、廊下の窓は西側にあるため校内は暗い。
 彼女、マオはショーヘアの銀髪をかきあげながら、いまだ目を覚まさないオーキド博士を見下ろした。
 彼女のギアスは相手の目を見なければ発動しない。
 かつ、意識を失っている相手の思考を探るなど不可能だ。
 殺すにしても情報を探ってから始末したいものである。
 先ほどのやり取りと荷物を見たところ、抵抗する手段はないのだろう。彼に関してはこのままでいい。
 確認後、ひと通りゼロの行方の手がかりがないか探ってみたが、それらしきものはない。
 単純に方角から責めるべきか。もしくはゼロに勝てないため、逃げるか。迷ったが、結論は出ない。
 そのため、マオは思考を切り替える。
 死者の名に知っているものがいた。
 ルルーシュ・ランペルージ。接触を望む相手、ナナリー・ランペルージの兄だ。
 事情は知らないが、より自分のギアスが効果的になる好材料と判断した。今のナナリーは感情的になり、付け入る隙はいくらでもあるだろうから。
 もっとも、ゼロとウィッチ・ザ・ブリタニアがわかれている以上、会いに行くべきかは疑問だ。
 もしかしたら魔導器が分離している可能性がある。
 そのため、ゼロと魔女の二人にわかれたのではないか。
 だが、そんなことが起こりうるのか疑問でもある。
 たとえナナリーと魔導器が分離しても、ゼロやウィッチ・ザ・ブリタニアのどちらかと同等の存在ができるとは思えない。
 生き延びるため、魔導器を求めるマオとしては判断を誤るわけにはいかない。
 ナナリーか、魔女か。どちらを追うか思考を続ける。
 答えのでない苛立ちか、床で眠るオーキド博士を軽く蹴った。
 瞬間、靴が床を叩く音が聞こえる。
「正直に答えていただきたい」
 落ち着いた男の声が廊下に低く響く。
「あなたの蹴った男性は生きていますか? そして、危害を加えたのはあなたですか?」
 高級スーツを包まれた、歳の割には若々しそうな男がマオを睨んでいた。


 マオの不運は一つ。
 寝ているオーキドを放って移動しなかったこと。ただそれだけに尽きる。
 まだそのことに気づかず、距離をとって精悍な目を覗き見た。
 シナプスサーキットを通し、相手の思考を認識できるのは、ギアス・リフレインの副次的なものだ。
 だが、副産物は副産物でも強力な代物である。今までこの能力で生き延びてきた。
 今もまた、相手の思考を読み取り、こちらの優位に進める。
 そのつもりだった。
「…………まいったな。あなた、アカギに殺されたオルフェノクの仲間ね」
「ほう? どこかでお会いしましたか?」
「いいえ。ただ、ボクには隠しごとは……」
 マオはすぐさま前方に転がった。薔薇の花びらがいつの間にか待っている。
 一瞬遅れて、先ほどまでマオが立っていた場所が粉砕される。
 粉塵を巻き上げ、片手でコンクリートを破壊しているのは白いスマートな怪人だ。
 村上の姿はとっくにない。
「せっかちねぇ」
「申し訳ありません。あなたの能力を確かめさせてもらいました」
 悪びれもせず、本心を語る相手にマオは顔をしかめた。
「さて、確かに隠しごとは無理そうですね。差し支えなければ、あなたの能力を教えていただけないでしょうか?」
「嫌味ね。だいたい当たりはついているのでしょう?」
「ということは、私の推測で間違いないわけですね」
「『ならば人の思考を読むことが出来るか。この能力を持ったままオルフェノクになれるのなら、上の上にふさわしい』。これでいいの?」
「ええ、証明としては充分です。ついでに、あなたなら続きも読めるでしょう?」
 自信満々な相手で不快になる。
 この村上峡児という男は『ここまで能力を明かすということは、別の本命の力があるということだ』と考えていた。
 事実ではあるが、敵の言いようにされるのは好きじゃない。
「喋りすぎちゃった?」
「しかたありません。心を読める以上、駆け引きの経験は自然と浅くなります。それはこれから学んでいけばいい。
お嬢さん、そろそろお名前を教えていただけないでしょうか? そして我々と共に行きませんか?」
「そうねえ、それもいいわね」

319接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:28 ID:eSEoQ3Xs
 などと、心にもないことをいう。今の目的はこの男から離れること。
 すでに相手はこちらの切り札に警戒を払っているが、このギアスを避けれる奴はいない。
 頬に手を当てるふりをして、いつでも眼帯を取れるようにする。
「オルフェノクになるのも悪くわないわ……なんて、ボクが言うとでもおもった?!」
 素早く眼帯を上げ、隠された左目を晒した。
 C.C.細胞に侵食されて体が痛むが、音を上げず続ける。
 今、この期を逃すほどマオほど頭が悪くない。

「ボクのギアスで幸福の監獄へ行くといい!」

 左目に刻まれた刻印が村上へと放出される。
 ギアスの光を通じて、永遠の夢へと意識を案内された。


「ぐぅ……くっ」
 マオは魔女因子に蝕まれた右手を掴み、歯を食いしばる。
 抑制剤を今消費するわけにはいかない。やはりいつもより消耗が激しくなっていることを自覚しながら、今後のことを考える。
 これで村上は無力となったはずだ。今どのような過去を見ているか、仕上げに入る。
「さて、君は……えっ?」
 戸惑いのつぶやきが上がる。ギアスをかけたはずの相手は優雅ささえ感じる佇まいのまま、こちらに近寄ってきた。
「幸福の監獄。なんのことかと思えば、過去の幸せだった記憶を見せる能力なのですね。
確かに人間相手ならば効果的でしょう。ですがひとつ覚えてください」
 コッ、コッ、と硬い床を革靴が叩く音を聞きながら、マオは左頬に手を添えられるのを黙って見ていた。

「オルフェノクは例外なく、未来にしか幸福はありません。
それさえ理解すれば、あなたの力はもっと上に行けます」

 優しい口調で語りかける村上峡児から、必死で離れた。
 相手は追いかけず、こちらがどう動くか観察している。
 マオは小さなボールを握りしめ、地面に叩きつけた。
「ほう」
 感心する村上の声が聞こえる。
 ボールの中から飛び出したのは、二メートル近い大きさの怪獣だった。
 鼻の上に存在する角が、ドリルのように旋回する。
「あいつを足止めしろ!」
 マオの指示通り、サイドンが村上に突進を開始した。
「サイドン、でしたか。おやめなさい」
 だが、その進みはあっさりと止まる。
 村上峡児の雰囲気が変わったのだ。
「くっ……」
 無意識にうめいてしまうほどの、圧倒的な殺気。
 気圧されながらも、サイドンの方へ視線を動かす。
 背中しか見えないポケモンは、まったく動かなかった。目を見ずともわかる。
 野生の生物であるからこそ、目の前の男に絶対勝てないと理解してしまったのだ。
「私としては貴重なポケモンを失いたくありません。そしてあなたに危害を加えるのも気が進まない。
ポケモンを収めて、私たちとともに行動をしませんか? 上の上たるあなたの能力なら、我々とも対等な関係を結べる。そう信じています」
 村上峡児は笑顔を浮かべ、手を差し出してきた。
 本心を読まれているというのに、豪胆な男だ。
 もちろん、仲間になって欲しいというのは本心だ。ただ、危害を加えない、というのは若干怪しい。
 彼には自分をオルフェノクにするつもりだからだ。若干、とつけた理由は、村上峡児本人はそのことを『危害』と認識していないゆえである。
 マオはため息を小さくつく。迷う余地などない。
「戻りなさい、サイドン」
 ボールを握ったまま、降参のポーズを取る。相手は満足そうに頷いていた。
「歓迎します。それではお嬢さん、あなたの名前をお聞かせください」



320接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:27:44 ID:eSEoQ3Xs
「なるほど。ギアスユーザーについて、だいたいは理解しました。魔女因子の侵食、抑制剤。なるほど」
 校内の保健室で、マオは自分の持つ情報を全て開示しなければならなくなった。
 別に脅されているというわけではない。村上峡児の態度は、マオの素性や能力のことを詳しく教えても教えなくても良い、というものだ。
 ただ、相手に能力を向けたため、詳しく話さない場合は監視が厳しくなりそうだったのだ。
 魔女を探したいマオにとって、実力のある村上の警戒心は解きたい。
 ゆえに、オルフェノクの寿命に目をつけて、彼が興味を持ちそうな話題をした。
「そうさ。ボクは能力で君たちの問題を知っている。ギアスユーザーの解決策である魔女因子は、君たちにも有益なものだと思うけど?」
「もちろんです。マオさん、よく私に打ち明けてくれました。魔女因子の解析を我が社で行い、あなたにも技術提供をすることを約束します。
もっとも、この状況を打破しなければなりませんが」
「どうにかするつもりなのね。まあ、その実力なら当然かしら?」
「実力など関係ありません。やるべきことを、やれる人がやるだけ。それだけの話しですよ、マオさん」
 マオは肩をすくめて、村上が煎れたコーヒーを口に運ぶ。
 苦味を味わい、心地良い匂いを堪能してからまたも問いかける。
「まあ、ボクがあなたたちの支援を受けるには、世界を超える技術が必要だけどね」
「もちろん奪うつもりですよ。そんな技術、あんな輩に預けておくわけにはいきません。もっと有効に使うべきです」
「あっそ」
 割と失礼に会話を打ち切ったが、村上が気分を害した様子はなかった。もちろん、力で読み取っている。
 そういえば心を読むために目を覗く必要があるのを伝えているはずだが、今まで逸されたことは一度もなかった。
 本心を読まれるくらいどうとでもない、という自信があるのだ。うんざりするほどぶれない男である。
「そういえば、私たちは確かめなければならないことがある。
私が魔王と名乗る男、ゼロと接触したことはお伝えしましたね」
「そうね。ボクもこの校舎で出会っている。魔王の力であなたと出会ったあと、ここに移動したと考えるのが自然ね」
「そのことですが、時間帯を整理しませんか?」
 マオは彼の意見とすりあわせ、それぞれのゼロと出会った時間を照らしあわせた。
 すると不可解なことがわかる。
 村上が魔王と出会った時間と、マオが目撃した時間は重なる部分が多いのだ。
「どういうことなの?」
「考えられることは、魔王が分身できるのか。それとも二人いたのか、と言ったところでしょうか」
「二人いたとすれば、片方が偽物と考えたほうがよさそうね。けど、ボクが目撃した方もギアスユーザーにふさわしい身体能力だった」
「私と戦った相手は、私や上の上のオルフェノクを数名束ねても、苦労しそうな実力者でしたね。これは調査を進める必要があります。よろしいですか?」
「どのみち会ってみないと、ってわけね。了解」
 マオが納得の意を伝えた後、人のうめき声が聞こえる。
 どうやらオーキドが目覚めたようだ。村上がベッドの方に向かった。
 彼女はコーヒーに息を吹きかけ、口元に運ぶ。
 ポケモンはマオが預かることになった。村上に渡そうかと尋ねたが、それはこの儀式を潰してからでいいと言われた。
 こちらが反抗しても簡単に潰せるという自信から来るのだろう。
 自分をオルフェノクにしたい、という追求からどう避けるか。目下一番の悩みである。
 だが、悪いことばかりではない。
 村上はあの魔王(らしき相手)に互角に渡り合った。心を読めるため、本当であることを確認した。
 それ程の実力者を敵に回さずに済んだのは、素直に幸運によるものだと感謝する。
 ならば、マオがすべきことはオルフェノクになることを避けつつ、村上を敵に回さないことだ。
 そうであるかぎり、彼は自分をどうこうするという気はない。
 希望が少し湧いた、と右手の痛みに耐えながら、目を覚ましつつあるオーキドに視線を向けた。

321接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:28:08 ID:eSEoQ3Xs

【C-3/アッシュフォード学園 校庭/一日目 朝】

【マオ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:魔女細胞の浸食(中)
[装備]:左目の眼帯
[道具]:共通支給品一式、魔女細胞の抑制剤、モンスターボール(サカキのサイドン・全快)
コイルガン(5/6)@コードギアス 反逆のルルーシュ、ランダム支給品0〜3
[思考・状況]
基本:ナナリーの魔道器を奪って魔女となり、この『儀式』から脱出する
1:村上と行動。オルフェノク化は避けたい
2:ナナリー、C.C.、二人のゼロに接触したいが、無理は出来ない。
3:『ザ・リフレイン』の多用は危険。
4:抑制剤を持つものを探す
5:この『儀式』から脱出する術を探す
[備考]
※日本に到着する前からの参戦です
※海砂の記憶から断片的なデスノート世界の知識と月の事、及び死神の目で見たNの本名を知りました。
※スザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)


【村上峡児@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(中)、人間態
[装備]:なし
[道具]:基本支給品×3、拡声器、不明ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:オルフェノクという種の繁栄。その為にオルフェノクにする人間を選別する
 1:マオのギアス、魔女因子に興味。
 2:ミュウツーに興味。
 3:選別を終えたら、使徒再生を行いオルフェノクになる機会を与える
 4:出来れば元の世界にポケモンをいくらか持ち込み、研究させたい
 5:魔王ゼロはいずれ殺す。
[備考]
※参戦時期は巧がラッキークローバーに入った直後


【オーキド博士@ポケットモンスター(ゲーム)】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
基本:ポケモンの保護、ゲームからの脱出
0:現状の把握。
1:プラズマ団の思想には賛同できない。 理解は出来なくもないが。
2:ミュウツーについては判断できる材料を持ちきれていない。
3:オルフェノクに興味
[備考]
※プラズマ団について元々知っていることは多くありません。
※桜とマオとスザク以外の学園に居たメンバーの事を大体把握しました(あくまで本人目線)

322接触 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/09(木) 20:28:26 ID:eSEoQ3Xs
投下終了します
問題点がありましたら、指摘をお願いします

323名無しさん:2012/02/10(金) 15:53:59 ID:5GaTLles
投下乙です
社長はやっぱり頼もしいなあ!人類の敵だけど
他のギアス勢がパラレルワールドをしっかり理解してるか
気づかなくても通常営業なのに比べると
マオはナナナ世界と原作のギャップに振り回されてるな

324名無しさん:2012/02/10(金) 16:03:51 ID:XWTHFbHo
投下乙です

社長が頼もしいのは同意。ただ人類の敵なスタンスがどう転ぶか…
人間で碌でもない連中が多いからなあw
マオはとりあえず社長と行動を共にするのか
こいつはこいつで脱出以外にもやる事あるから忙しそうw

325名無しさん:2012/02/10(金) 19:10:51 ID:qePtBLsg
投下乙です。やっぱ社長は格って物があるなぁ、しかしマオも結構ヤバげだしオーキド博士の胃が心配だw

326 ◆Z9iNYeY9a2:2012/02/13(月) 23:13:39 ID:TRaQzhBE
『独りの戦い』においての誤字脱字などを修正、またマミさんの状態表に書き忘れたことがあったので加筆しましたので報告しておきます
追記内容は以下の通りになります
備考欄に※第一回定時放送を聞き逃しました。禁止エリア、死者などは把握していません

327 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:06:43 ID:yLPKO6/U
投下します

328憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:07:18 ID:yLPKO6/U


「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」
 獣のような咆哮が周囲に響き渡る。
 ビリビリと空気が震え、地面が揺れる錯覚を起こした。
 草加雅人はアルティメットファインダーと呼ばれる、ファイズの黄色いレンズの下から視線を向けた。
 警戒しないといけない相手だが、本命はあの化け物ではない。
 大柄のオルフェノクが両足を踏ん張って、丸太のように太い豪腕を受け止めていた。
 両手に竜の頭を模した武装をつけたオルフェノクは、この世で一番殺さなければならない存在だ。
 ギリッ、と奥歯を噛み締める。草加雅人は静かにファイズショットを起動させた。



 時間は放送の終わりまで遡る。
 草加の隣でまどかはホッとしていた。彼女の知り合いは全員無事だったのだ、無理も無い。
 草加もひとまず安心といったところか。啓太郎が死んだことに対して、悲しむふりをしておく。
「まさか彼が……」
 そうつぶやいた途端、まどかは申し訳なさそうな顔をしていた。
 おおかた、自分のことだけ喜んで罪悪感を感じているのだろう。わかりやすい。
「あの、草加さん……」
「大丈夫だ、まどかちゃん。彼ならこうなる可能性のほうが高かったんだ」
 沈んだ声を演出しながら、間桐邸の門をくぐる。ここには用はない。
 彼女の家に向かい、済ますべきことを済ましてから流星塾に向かうだけだ。
 なるべく寄り道はしたくない。目的地に向かって歩き出した。


 あまり時間は経たなかったと思う。
 間桐邸を離れて歩道をしばらく歩いていたとき、急に空気が一変する。
 そして突然、大気が震えた。
 吹き飛ぶような衝撃と誤解するほど、爆発的な怒声。
 尻もちをつくまどかをかばいつつ、発信源を探した。
 もっともすぐに見つかる。『それ』は隠れもせず、隠れられるような存在でもなかった。
 パワータイプのオルフェノクよりも一回り大きい体躯。
 柱そのもののような豪腕。杭のように地面にそびえ立つ両足。
 牙を剥き出しに周囲を薙ぎ払いながら進み続けるバケモノが現れた。
 まだ距離はあるというのに、押し潰されると錯覚するほどの迫力がある。
 まどかを立たせながら、草加は流れるようにベルトを巻いた。
「まどかちゃん、できるだけ君の家の方向に逃げるんだ。俺は足止めしたあと、君を追いかける」
「そんな、無茶です!」
「無茶でもやらなくてはいけない。俺に任せるんだ」
 などと言いながら、冷静に生き残る算段を立てる。
 ベルトにファイズフォンを叩き込んだのと、まどかを突き飛ばしたのはほぼ同時だった。
 ブラッドラインに沿って外装が作られる中、相手が視界に入ったはずの自分に反応しないことを気づいた。
 目が見えていないのだろうか。ならばチャンスだと、草加はファイズフォンを変形させる。
 シングルモード、という電子音を確認するのと、トリガーを迷いなく引く。
「こっちだ!」
 草加の声に釣られて、敵はこちらを見た。その顔面に赤い閃光が飛び込む。
 ほぼ効果はないが、自分をターゲットと定めたようだ。
 さて、どうしたものかと草加は思考する。
 この化物から逃げるだけなら距離を取ることで余裕でできるのだが、戦うとなれば話は別だろう。
 現状、まどかを守るのはついででしかなく、さほど優先順位が高いものではない。
 適当に相手をして、逃げてからまどかと合流するか。
 そう考えをまとめた時、背中に衝撃が走る。
「ガハッ! くっ、なにを……」
 よろめきながら振り向き、声を失った。
 忘れもしない。ドラゴンを模した両腕と禍々しい雰囲気を持つオルフェノク。
 ラッキークローバーの一人で、自分たちの仇である男だ。
「きさまぁ!」
「邪魔しないでくれるかな? あれは僕の獲物だ」
 ドラゴンオルフェノクは草加を尻目にバーサーカーへと接近する。
 その灰色の背中を睨みつけながら、草加は歯を食いしばった。

329憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:07:57 ID:yLPKO6/U



 Lたちがバーサーカーを発見するのに大して苦労はなかった。
 ただひたすら直進する相手だ。しかも痕跡を山ほど残している。
 ただ、発見したときに北崎が不機嫌になるのを見逃さなかった。
 その理由を察するのも簡単だったが。
「ファイズのベルトか。邪魔だね」
「知っているのですか?」
「いつも僕達の邪魔をする連中さ。でも、いい遊び相手でもあるんだ。……今はいらないけどね」
 最後の一言が冷たい声音に変わる。同時に魔人の影が顔に浮かんだ。
 ゼリーが潰れたような音が連鎖しながら、隣人が姿を変える。
「冷静に頼みますよ。あなたが勝つにはその灰化能力以外、手はないのですから」
「わかっているよ」
 北崎はそう言い残して戦場へと走った。
 さっそくファイズと呼んだ相手を吹き飛ばしている。協調するのが最善だと思うのだが。
 そして頭の中でどうにかする手を探っているLの視界に、一人の少女が目に入った。
 ポリポリと頭をかきながら、戦場を凝視している彼女に近寄る。
 視線の先に集中しているせいか、Lの足音に気づかない。なんとも危なっかしい。
「よろしいですか? ボーッとしていると危険ですよ」
「ひゃっ!」
 びくっと震えてからおさげの少女はこちらを見た。
 目線で挨拶をして、再び北崎たちへと視線を移す。
「申し遅れました。私、探偵のLです」
「Lさん……? もしかして、夜神さんの言っていた……」
「夜神……若い方ですか? それとも歳をとった方ですか?」
「ええと、年をとった警察官の方で、あなたのことを仲間だと言っていました。はじめまして、わたしは鹿目まどかです」
「そうですか。さっそくで申しわけありませんが、ファイズのベルトを使っている方とお知り合いですか?」
「え? なんでベルトを知って……もしかして草加さんの仲間の方から聞いたのですか!?」
「いいえ。私はあそこで戦っている彼から聞きました」
「戦っているって……まさかオルフェノクと……」
 まどかが一歩後ずさる。一般的な判断は出来るくらい、頭が冷えたようだ。Lは淡々と続ける。
「どう取るかはあなたの勝手ですが一応説明させてもらいますと、私は彼を倒すために共に行動しています。
彼らと敵対するというのなら、あなた方と手を結べると思うのですが、どうですか?」
「倒すため……それで一緒にいるなんてどうして……」
「彼に同行者を殺されましてね。犯罪者は裁かれねばなりません。そのための手段を探し、彼自身は自分の目的のために私を放置している。
おおまかに言えばそのような関係でしょうか」
 まあ、あの厄災を潰すために一時休戦という形ですが、と締めくくる。
 まどかの瞳はこちらを信じきれていない迷いがあったが、かまわない。
「それにしてもまずい。ばらばらで戦っているだけならともかく、ファイズの方は北崎さんまで相手にしようとしていますね。
これでは二人ともあの怪物に殺されてしまいます」
「そんな! 草加さんは……」
「下手すれば彼だけ死ぬでしょうね。よって、あなたの手を借りたいのですが……」
「なんでも言ってください! わたしにできることなら、なんでもします!」
 Lが最後まで告げる前に、彼女は助力を申し出た。
 もう少し優柔不断かと思ったが、話が早い。あとは彼女がどれだけ、草加という人間に信頼されているか。
 これが鍵だろう。
「それでは鹿目さん。あなたに早速お願いしたいことがあります。それは…………」

330憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:08:26 ID:yLPKO6/U


 グッ、と軽く呻いて草加は両足を踏ん張った。
 やはりカイザでないため調子が狂う。首もとをさすり、苛立ちながら後ろに跳ぶ。
 瞬間、踏みしめていた地面が爆ぜて、土砂が天高く舞い上がった。
 拳を打ち下ろしたままの姿勢であるバーサーカーを見据えながら、フォンブラスターの銃弾で牽制をする。
 一瞬でも目を離せば殺られるだろう。草加にとっての仇にして、最大の敵である北崎を殺す機会だというのに。
「はあぁ!」
 オルフェノクとなった北崎が、右腕をバーサーカーの脇腹へとねじ込んだ。
 ひたすら真っすぐに、全力で。
 自分では死にはしないでも、耐えられない一撃だ。なのに、黒い怪物は微動しただけでさほど堪えていない。
 怒りで気が狂いそうになる。
 北崎は、ドラゴンオルフェノクは自分の獲物だ。流星塾の仲間の、自分の仇なのだ。
 なのに、かろうじて人の形をしているとわかる薄汚い存在に自分たちを殺した牙が通用しない。
 腕を無造作に振るうだけで最強のオルフェノクが吹き飛んでいく。
 許せない。
 それだけの力が自分にはない。それどころか使い慣れた力(カイザ)すらない。
 長年の仇をどこの馬の骨かもわからない化物によって奪われかけている。
 ふざけすぎだ。あれは存在してはいけない。
 なにがなんでも倒す。

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

 バーサーカーの咆哮が轟き、鉄槌のごとく拳をドラゴンオルフェノクが受け止めた。
 その姿を冷静に見つめ、ファイズショットを起動させる。
 赤い光を携え、甲高い待機音を奏でながら一足飛びにバーサーカーの腹に打ち込む。
 硬いタイヤを殴ったような感触が腕に伝わったのと同時に、後ろに下がる。
 あの程度ではかすり傷にもならない。たたみかけるためにファイズポインターを足に装着した。
「草加さん、あの化物の動きを止めて!!」
 懐かしい声が聞こえた気がした。あの日、いじめられていた草加に手を差し出した少女の声。
 頭の片隅でまどかの声だとわかるのに、かつての安心感のままにバーサーカーを蹴った。
 獣のような唸り声が頭上から聞こえる。嵐のような暴力が飛び込む前に、エンターキーを押し終えた。
 『EXCEED CHARGE』と並のオルフェノクには死刑宣告となるつぶやき。
 鳴り終わると同時に赤い円錐が黒い泥にまとわりつかれたヘラクレスを縛り上げる。

「■■■、■■■■■■■■――――!!」

 なのに、胸部装甲に相手の腕がかすめた。
 軽々と吹き飛ばされながらも、草加は眼下の敵を睨み続ける。
「褒めてあげるよ、君」
 北崎の偉そうなつぶやきに苛立ちが加速した。
 拘束されたバーサーカーへとドラゴンオルフェノクは抱きつく。
「僕は最強なんだ。だから消えてよ。……早く」
 最後だけ低いつぶやきとなって、バーサーカーの体が灰へと変換されていく。
 抵抗しようともがいているが、クリムゾンスマッシュの拘束だけならまだしも、最強のオルフェノクに動きを制限されているのだ。
 逃れられようがなかった。いや、逃れられないはずだった。
「くっ!? まさか……」
 北崎の声音に初めて焦りが混ざる。バーサーカーは徐々にではあるが、北崎とフォトンブラッドの捕縛を解き始めていた。
 ゆっくりと、門をこじ開けるように。
 草加は右足を振り回し、一瞬だけ迷ったがポインターを敵へと向けた。
 再び赤い拘束具がバーサーカーの動きを縫いとめる。
「ハハッ、君は最高だよ!」
 北崎の賞賛もどこ吹く風で、両足に力を込めた。
 だが、膝が崩れて跳べない。悔しくて痛いほど唇を噛み締める。
「■■■、■■■、■■■■■!!」
「抵抗しても無駄だよ。僕は強いんだからっ!」
 一際北崎の声音が高くなる。灰化の速度が増して灰がファイズの仮面にかかった。
 足が力を取り戻したときには、バーサーカーの全身は灰へと変わっていた。

331憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:08:58 ID:yLPKO6/U



「あそこまでうまくいくとは思いませんでした」
 Lは口とは裏腹に、さほど動揺せず状況を分析していた。
 彼の作戦はただひとつ。草加にバーサーカーの動きを止めさせて、北崎で倒すというものだ。
 そういった技があることをまどかも初めて知ったが、驚くべきは草加の対応力か。
 もともと、仲が悪い相手とも戦闘時のみなら動きを合わせられる男だ。同行者である少女がまだ知ることはないが。
「あっはっはっは! ざま〜みろ、僕に勝てる奴はいないんだ」
 灰の山で北崎が変身を解き、機嫌良さそうに笑っている。
 二車線道路の真ん中で灰と戯れる少年と、変身を解かないファイズの姿は傍目から奇妙だった。
 その様子を見ていたまどかは不安になる。震えながら立ち上がるファイズの後ろ姿は今まで見たことがないものだからだ。
 胸に強い感情を秘め、魔女や強い相手に立ち向かう。その姿はまるで……
「まだ終わっていません! 北崎さん、草加さんはそこから下がってください!」
 左隣のLが急に大声を張り上げた。北崎は訝しげに首をかしげている。
 多少ではあったが、距離をとっていたためファイズのほうが先に気づいた。
「■■……」
 低い、獰猛な獣の唸り。少年が戯れていた灰を見る。
 砂山がうねりながら人の姿を型どった。砂ひとつぶひとつぶが骨を、筋肉を、皮膚を構成していく。
 信じられないことだが、再生をしているらしい。
「しつこい、もう一度灰にしてやる!」
 北崎はオルフェノクに変わって再生途中のバーサーカーへと触れた。
 すると、まどかは新たな絶望が訪れたことを理解した。
「なんで灰化しない……」
 伝説上の生き物を模したオルフェノクが戸惑い、隙が生まれる。
 横から再生途中の腕が叩きつけられた。人類の敵であるとはいえ痛々しい光景に、まどかは思わず息を呑む。
 ファイズが立ち上がって相対するが、戦端が開かれる前にLが呼び止めた。
「北崎さん、草加さん。いったん退いてください。予想外の事態ですので、体勢を立て直しますよ」
 草加は振り返り、Lからまどかへと視線を移した。
 少し迷ったように見える。だけど結局、こちらへと戻ってきた。
「北崎さん」
 うながす声に北崎は一度地面を蹴りつけた。顔には悔しさが刻まれている。
 変身を解いた草加もなにか言いたげだったが、まどかの腕をとってLたちの間に入った。
 やがて、再生途中の化物を置き去りに四人はその場から逃げた。

332憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:17 ID:yLPKO6/U



「なるほど、そういうことか」
 道中、一瞬即発の草加と北崎を前にLはすべてを説明終えた。
「事情はわかったし、夜神さんの件もあるから君は信じよう。だけどL、そいつを制御できるなんて思い上がらないことだ。こいつは殺す以外手はない」
「生意気だね、君。今相手してやろうか?」
 北崎の挑発に応えようとする草加の腕を、まどかは掴んだ。
 今の状態で勝てるとは思えない。草加はこちらを見ることもなく、ため息と共に腕を下げてくれた。
「まあ、現状だと私にも余裕がないので、あの怪物の対策を練りたいと思います」
「……あいつが命を複数持っていたなんてね。J君みたいに、三つなのかな」
「オルフェノクにも似たような能力者がいたのですか?」
「まあね。こちらの攻撃が通用しなくなるってのも、ちょっと意味が違うけど似ている」
「前回より強くなる、ということですか。厄介ですね」
「話はもうこれで終わりでいいかな。僕はあいつを始末したい」
「こちらもお前と長く一緒にいるつもりはない」
 敵対する二人は拒絶の意思を見せる。
 北崎には別の目的があり、草加は現状だと勝てないと理解して、まだ争いには発展しない。
 ただ、胃の痛くなる光景ではある。
「それでは我々はアレの情報を集めます。北崎さん、その方針でよろしいですか?」
「構わないよ。じゃあ僕はあっちに向かうから、追いかけてきて。面倒だしあとは任せる」
 北崎はそう言い残し、離れていった。
 姿が見えなくなり、まどかはLに尋ねてみる。
「Lさん、あの人は危険ですし、わたしたちと一緒にきませんか?」
「申し出はありがたいのですが、私にも目的がありましてね。そして、それは草加くん、あなたと利害が一致します」
 ほう、と草加がつぶやいたのを確認して、Lは頷いてから続けた。
「私はあなたに彼を倒して欲しいのです。それもただ倒すのではない。彼に罪を刻みこみ、後悔させてから倒してほしい。
そのための手段を私が考えます。ですので、合流場所を決めて協力し合いませんか?」
 Lの提案を受けて、彼は考えるように顎へと手を当てた。
 まどかはどう結論をつけるのか判断がつかなかったが、草加の返答は早かった。
「こちらこそ手を貸してほしい。あいつらは存在が罪だ」
「ふむ? まあ北崎さん個人に関しては同感です。それで、どこで合流しますか?」
「夜神さんとはすでに合流場所を決めているが、別の時間と場所がいいだろうな。なんの戦力もない状態で鉢合わせされるとまずい。
三回目、四回目の放送のどちらかにD−五の病院で会おう。禁止領域に指定されたなら、その上のエリア、遊園地に変更だ」
「了解しました。それではお互い無事で」
「行く前に忠告だ。おそらくあいつは全部聞いている」
「知っています。それで死ぬのなら、あの化け物を殺すことも、この儀式を潰すことも、北崎さんに敗北を刻み込むこともできないでしょう。それでは」
 飄々と答えながら彼は去っていった。
 その背中を見届ける草加の表情には苛烈な感情が浮かんでいる。おそらく北崎に対してだろう。
 しかし、とまどかは考える。
 初めて草加の激しい感情を目にした。オルフェノクを許せない、許しちゃいけないものがあるのだろう。
 踏み込んではいけないのかもしれない。だが以前、踏み込まなかった結果、一度さやかも杏子もマミも喪うことになった。
 ならば自分は拒絶されようと聞き出すべきだろうか。
 まどかは怒りを秘める青年を前に、結論をつけられずにいた。



【D-5/中央の丘/一日目 朝】

【草加雅人@仮面ライダー555】
[状態]:負傷(中)、疲労(中)
[装備]:ファイズギア@仮面ライダー555(変身解除中)
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜1(確認済み)
[思考・状況]
基本:園田真理の保護を最優先。儀式からの脱出
1:真理を探す。ついでにまどかに有る程度、協力してやっても良い
2:オルフェノクは優先的に殲滅する。そのためにLと組む
3:鹿目家に向かった後、流星塾に向かう。その後、Lとの約束のため病院か遊園地へ
4:佐倉杏子はいずれ抹殺する
5:地図の『○○家』と関係あるだろう参加者とは、できれば会っておきたい
[備考]
※参戦時期は北崎が敵と知った直後〜木場の社長就任前です
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました

333憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:33 ID:yLPKO6/U

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:擦り傷が少々
[装備]:見滝原中学校指定制服
[道具]:基本支給品、不明ランダム支給品0〜3(確認済み)
[思考・状況]
1:ひとまず自分の家へ
2:さやかちゃん、マミさん、ほむらちゃんと再会したい。特にさやかちゃんと。でも…
3:草加さんは信用できる人みたいだ。もっと踏み込むべきか?
4:乾巧って人は…怖い人らしい
[備考]
※最終ループ時間軸における、杏子自爆〜ワルプルギスの夜出現の間からの参戦
※自分の知り合いが違う人物である可能性を聞きました


【L@デスノート(映画)】
[状態]:右の掌の表面が灰化。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スペツナズナイフ@現実、クナイ@コードギアス 反逆のルルーシュ、ブローニングハイパワー(13/13)、
    予備弾倉(9mmパラベラム×5)、シャルロッテ印のお菓子詰め合わせ袋。
[思考・状況]
基本:この事件を止めるべく、アカギを逮捕する
1:北崎を用いて、バーサーカーを打倒する。まずは情報集め。
2:月がどんな状態であろうが組む。一時休戦
3:魔女の口付けについて、知っている人物を探す
4:3or4回目の放送時、病院または遊園地で草加たちと合流する
[備考]
※参戦時期は、後編の月死亡直後からです。
※北崎のフルネームを知りました。
※北崎から村上、木場、巧の名前を聞きました。


【北崎@仮面ライダー555】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、使用済RPG-7@魔法少女まどか☆マギカ、虎竹刀@Fate/stay night
[思考・状況]
基本:バーサーカーを殺し、Lに見せ付けた後で優勝する
1:バーサーカーへの対抗手段を探る。
2:バーサーカーには多少の恐怖を感じている。
3:村上と会ったときはその時の気分次第でどうするか決める
[備考]
※参戦時期は木場が社長に就任する以前のどこかです
※灰化能力はオルフェノク形態の時のみ発揮されます
 また、灰化発生にはある程度時間がかかります

334憤怒 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:09:50 ID:yLPKO6/U

【D-4/道路/一日目 朝】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り8、灰から再生中、灰化に抵抗可能
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています

335 ◆qbc1IKAIXA:2012/02/26(日) 19:10:09 ID:yLPKO6/U
投下終了します。
何かありましたら指摘をお願いします。

336名無しさん:2012/02/26(日) 21:31:28 ID:5HMQHqlU
投下乙です!ああ、これで北崎はバサカに対して完全な無力に……でもまあJさんって同僚の能力からバサカの特性に気付いただけ貢献はしたか?

337名無しさん:2012/02/26(日) 23:23:37 ID:pGvj/qN2

555本編のようなハラハラする絶妙なバランスで成り立っているすれちがいでした

338名無しさん:2012/02/27(月) 00:43:47 ID:pOqkfOvc
投下乙
Lが上手くさばいてる……!草加と北崎という最悪な相手によくぞここまでやったものだ
バサカさん、アウト1ー。スコア獲得はいつの日か……

339名無しさん:2012/02/28(火) 01:25:26 ID:vD.d7buE
投下乙です

Lはよく捌いてくれたぜw
最悪な相手同士の中でよくやった
素直に凄いと思えるよ

340名無しさん:2012/03/14(水) 15:26:41 ID:rOQr6zL.
乙です。
草加…使い慣れないファイズでココまで戦えるのはすごいな

341 ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:18:37 ID:ntcazsgI
暁美ほむら、アリス、ミュウツーを投下します

342外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:20:00 ID:ntcazsgI

 知っている人間の死をどう反応すればいいのか、ミュウツーは決めかねていた。
 サトシに対して良き感情は抱いている。同時に人間という種にはいまだ複雑な感情だ。
 ポケモンであるがゆえ、個人と種をわけて考えるのが難しかった。
 自分を生み出し、利用していた連中しか知らず、人間とは彼らのような存在しかいないと思い込んでいたのもある。
 それに優しき少年は亡くなったのに、悪の限りを尽くすロケット団の首領は生きていた。
 いずれ奴とも決着をつけないとならない。ただ、どう対応するかはいまだ迷っていた。
 人間という存在がわからないからだ。
 さて、とミュウツーは移動を再開する。ちょうど南は禁止領域に指定されるようだが、どうしたものか。
 公園に即した道路をゆっくり歩きながら、周囲の気配を探った。
 瞬間、銃声が聞こえる。続けて、ポケモンの鳴き声、いや泣き声が聞こえてきた。
 銃弾を打たれた恐怖の声ではない。悲哀に満ちた想いが込められていた。
 導かれるようにミュウツーは向かう。
 交差点を曲がると、目的の相手は簡単に見つかった。それもそうだ。
 彼はサイドカーと呼ばれる人間の乗り物に乗る少女の腕に抱かれて、泣いていたのだから。
 人間がいる可能性も考慮していたミュウツーは相手が気づくのを待った。結果、黒髪の少女のほうが反応する。
「動かないで」
 かすかにミュウツーは動揺する。あっさりと背後に回られ、銃器をつきつけられたのだ。
 とはいえ、より気にかかることがある。あくまでポケモンに話しかけた。
『誰かの死を悲しんでいるのか?』
 ミュウツーの問いかけに、ポッチャマが顔を上げた。
 彼を抱いている方の少女は驚いていたが、銃を持つ娘は微動だにしない。
『私は危害を加える気はない。ただ、彼と話がしたいだけだ』
 心からの訴えが風に乗る。黒髪を流すままにしている彼女は、無表情を保っていた。



「お互い、探している人は無事みたいね」
 目が覚めたほむらの言葉を聞きながら、ナナリーの無事をアリスは喜んだ。
 禁止領域と死者を記録している彼女の側で、サイドカーはやはり舗装された道路に限る、と感想を持った。
 このバイク(に変形するKMFもどき)の走破性は高いのだが、凸凹の道は腰にくる。
 できることなら、移動はちゃんとした道路に限定したいと内心文句をつけた。
 もっとも、そうはいかないだろうが。
「……なにか動いた」
 冷静な言葉にはっと意識を戻す。そこからはプロ意識も働き、周囲を警戒した。
 視界の端に何かが動く。グロッグの感触を確かめながら、次の展開を待った。
「ポッチャマ〜ポチャー……」
「ペ、ペンギン?」
 曲がり角から無謀に現れた存在に、アリスは驚いた。
 相手は生物というより、ペンギンのぬいぐるみのような愛らしい存在だ。
 思わずグロッグを下げ、無防備に近寄ろうとする。
「待ちなさい。何を仕掛けてくるかわからない。慎重に行動して」
「わ、わかっているって」
 反論しながらも、警戒態勢を崩さないほむらにやり過ぎだと感想を抱いた。
 目の前のペンギン? は涙を流し、悲しんでいる。今すぐにでも駆け寄って抱きしめてあげたい。
「喋れる、もしくはテレパシーが使える? 事と次第によってはあなたの命はないわ」
 冷徹な警告も無視して、ただ泣き伏せている。進展のない状況にほむらが苛立ったのか、一発足元に撃った。
 銃弾の乾いた音が晴天に響き渡る。
「ちょっと、いきなり発砲はないでしょ!」
「こういう生物が一番油断ならないことを、私は経験しているわ」
 無感情な瞳に甘いと責められているような気がして、アリスはむかっ腹を立てた。
 そもそもこの子は銃を撃たれても反応せず、ただ泣いているのだ。事情はわからないが、ほむらの行動は行き過ぎている。
 無言でバイクを降り、銃を収めてから近寄った。

343外見と心象の違い ◆qbc1IKAIXA:2012/04/16(月) 20:20:57 ID:ntcazsgI
「あなた……」
「ねえ、君。どうしたの?」
 アリスが優しい口調で聞き出そうとしても、相手はイヤイヤと首を振るだけだ。
 涙が止まらない生物をとりあえず抱き上げてバイクに戻るり、ほむらの咎めるような視線は無視した。
「ほら、泣いて吐き出せるものは全部吐き出して、すっきりしちゃいなさい」
「あなたは随分と余裕ね」
「皮肉? でも、こんなに無防備でいる相手を撃つのはちょっとね」
 「甘いわね」と吐き捨てるほむらを一瞬だけ睨んだが、もう一つの足音に反応せざるを得なかった。
 またも現れた来訪者は人間でなかった。ただ、愛らしい手元の動物と違い、2メートル近い身長の白い怪物だ。
 切れ目の大きな瞳がこちらに向けられ、口がへの字に曲げられている。意思の疎通が期待できそうにない。
「動かないで」
 なのにほむらはあっさりと後ろに回ってから警告した。答えを期待しているわけではないだろう。
 アリスも返ってくるとは思っていない。
『誰かの死を悲しんでいるのか?』
 しかし予想外の出来事は起きる。低い声の問いかけに答えるように、腕の生物が顔を上げる。
『私は危害を加える気はない。ただ、彼と話がしたいだけだ』
「信用できないわ。あなたはインキュベーターの知り合いかしら?」
『インキュベーター? 私はそのポッチャマと同じくポケモンの一種だ。ミュウツーという』
 アリスは腕の子がポッチャマという名前であることを、頭の片隅においておく。
 相手の言葉通り殺意がないため、ほむらにアイコンタクトを送った。
 だが、銃を収める気配がない。
「ほむら?」
 しかたなく話しかけるが、無視される。アリスはどうするか迷ったが、先にミュウツーが動いた。
 容赦無くほむらは引き金を引こうとするが、それより先に謎の光が彼女の腕を上に向けさせた。
 ポケモンの技、サイコキネシスを手加減した形だとまだわからなかった。
『先に言っておくが、私にその武器は通用しない』
「そう。なら……」
「やめなって。いざというときは私のギアスとあなたの魔法で逃げることができるし、ひとまず様子を見るわよ」
 こちらの指示に対し、不満気な態度を返されるが放置しておく。
 彼らの行動を見届けるのが先だ。
『感謝する。ポッチャマと言ったな。さきほど泣いていた言葉の中に気になる名前があった。ヒカリ、サトシ、と』
「ポ、ポチャ!?」
『私はヒカリという少女を知らない』
 ポッチャマが明らかに落胆したような態度を示す。
『だが、サトシという少年は知っている。彼の優しさに救われたし、その最期も偶然教えられた』
「ポチャ! ポチャポチャ、ポチャ!!」
『残念ながら、彼は殺されてしまった。ポケモンバトルの最中、不意を突かれた。手持ちのリザードンがそう教えてくれた』
「ポチャ……ポチャチャ……」
 またも涙ぐむポッチャマにアリスは焦る。どうやら、ヒカリやサトシと言った人物は彼にとって大切な人らしい。
 アリスにとってかつての妹や、ナナリーのように。
『サトシを殺した女は、因果が巡ったのか別の殺人者に殺された。しかし、私の胸は晴れない。お前もそうなのか?』
「ポチャ〜」
『言うまでもなかったな』
 それからしばらくは、ポッチャマの嗚咽があたりに響いた。
 アリスはゼロたちが追いつく可能性も、他の襲撃者に襲われる可能性も考えて警戒を続けた。
 彼らが大切な人を喪った、悲しみに浸る時間を作るために。


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