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臨時なのはクロススレ16

1名無しの魔導師:2013/06/21(金) 09:25:36 ID:tm2.SFooO
ここは種死&リリカルなのはクロスオーバー作品を取り扱う所です

シンが八神家やフェイトに餌付けされたり
レイがリリカルな魔法少年になったり
なのはさんが種死世界に行き、世直しをしたり
デバイス達がMS化したりその逆もあったり
キラがフルバーストでガジェットを一掃したり
アスランは相変わらず凸ていたり
他様々なIFが用意されています

・職人様はコテとトリ必須。
・職人様は荒れているときこそ投下強行。全裸wktkに勝る流れ変えなし。
・次スレ立ては950を踏んだ人が立てる事
・1000に達する前に容量オーバーになりそうな時は気づいた人が立ててください
・各作品の考察は該当スレにて宜しく頼みます
・煽り、荒らしは無視しましょう、反応した貴方も荒らしだ。

まとめサイト
ガンダムクロスオーバーSS倉庫
[arte.wikiwiki.jp]

2名無しの魔導師:2013/06/21(金) 09:27:15 ID:tm2.SFooO
新規さん大募集中や

3名無しの魔導師:2014/02/20(木) 19:03:39 ID:V3P/jyWw0
現行スレについたぞ!

4名無しの魔導師:2014/02/21(金) 22:44:22 ID:U/4wV.L.O
なのはの世直しは見てみたい気がする。

なのは 「世直しの事わからないの?」

なのは 「革命はいつもインテリが始めるの。」

なのは 「でも、革命の気高き心だって官僚主義と大衆に飲み込まれていくの。だからインテリはそれを嫌って世間からみを引いて世捨て人になるの。だったら…。」

ギル「私は世直しなど考えていない!!」

ラクス「>>5」(一度世捨て人になってます。)

5名無しの魔導師:2014/02/21(金) 22:57:36 ID:dfLUuGDUO
「なら貴方は、一体何を考えているのですかッ! 大衆に利用されようと、されまいと、貴方にも一つの望みがあったのではないのですか!?」


うーん、いまいちネタ振りがわからんぞい>>4さん。こんなんで良いの?

6名無しの魔導師:2014/02/22(土) 19:26:45 ID:RkM2.Q4EO
逆シャアねたですよ。>>5さん。

7名無しの魔導師:2014/02/22(土) 23:50:03 ID:ktdEjhWMO
あ、いや、逆シャアネタなのはわかったんだけれども、結局ここでは本来(?)なのはが「そうかい!」って返すところにラクス来たもんだからどうすればいいものかと…
一応それっぽい台詞を入れてはみたけどコレで正解なのかなって。出来悪くてスマソ

でもこうやってリレー? 安価? して一つ作ってみるのもいいかもしれないね

8凡人な魔導師:2014/03/05(水) 09:14:00 ID:lR/gFOdMO
Good morningです
明日の23時頃に投下する予定ですます

9魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:02:48 ID:C//NV/T2O

“でさ、結局シンは何をやったのよ? ちょっとキラ、アンタ教えなさいよ勿体ぶってないで”
“そうですわね、わたくしも気になりますわキラ。なんだか、このままでは有耶無耶になってしまいそうで”


え、えぇ?
ちょっ、いきなりなにさ二人とも!? そんな事言われたってこれから僕、なのはと接触するんだよ? このタイミングでそんな余裕……

“でもよ、それこそ今しかないんじゃね? 戦いに集中したいならアイツが何やったか説明するの、かなり後回しになるぜ”

うーん、確かに……
でもなぁ──……あ、そうだ。ならラウさんに訊いてよ。MSに詳しいし丁度いいじゃない。

“なに!? 私に振るのか!?”

だって仕方ないじゃないですか。この面子で状況わかってるのって、僕以外じゃ貴方だけなんだし。好きなんでしょ説明?
ね、お願いしますよ、ラクス達の為に簡潔に。ね?
じゃあ後はよろしくね。僕忙しいから!

“……有無を言わさず、か。成長したものだ。……仕方あるまい、貸しということにしようじゃないか。──ふむ、シン・アスカが何をしたか、だな。ならばよく聴きたまえ”

“はい”
“お願いします”
“あ。キラも言ってましたけどなるだけ簡潔にお願いしますよクルーゼさん”

“ぐ……、……努力はしよう。
──さて。単純に言うのであらば、シン・アスカのデスティニーはインパルスの後継機であるという点が、ここでは重要になる。インパルスが換装機というのは知っているな? そしてデスティニーはインパルスの装備を全て纏めた万能機として開発されたものだと”

“?”
“それが、あのなのはさんの超砲撃と青組の速さと何の関係が? というか凄いですよね、あんな短時間で12.5kmも”

“順を追って話す。
確かにギルバート・デュランダルが開発させたデスティニーは万能機だが、同時に換装機の特性をも受け継いでいるのだ。来るべき新世界の守護神として、あらゆる敵を屠る為にな。
もっとも、コンセプトとアプローチは随分と異なるが。従来の換装機……シンプルな素体が戦局に応じて装備を交換するのに対して、アレは一通りの機能を備えた万能機が戦局に応じて機能・装備を拡張する方式を採っている”

“それって、実はデスティニーには色んな武器が用意されてるってこと?”

“そうだ。対水中装備や後方支援用装備、機動補助装備等といったものがある。デスティニーのメインスラスター基に対艦刀や大型ビーム砲を懸架していた黒いパーツがあったろう。あれがバインダーとなってな。
しかしそれらはデータとして機内に存在しているだけであり、実際には生産されなかったのだよ。正確には、生産される前に戦争が終わったのだ。だから、キラ・ヤマトは失念していた”

“……なるほど。つまり、シンさんは再現してみせたのですね? システムG.U.N.D.A.Mを用いて”
“あ、そうか。データがあればなんとかなるものね、アレを上手く使えば……そういえばキラ誉めてたっけ。シンは冷静なら発想力と応用力が抜群だって。ちょっと妬けるかも”

“理解が速くて助かるなラクス嬢、フレイ嬢。
その通りだ。私が彼から得た情報と合致しているのなら、シン・アスカがあの量子論と並行世界論で構築されたシステムを用いて再現したものは後方支援用装備、デュートリオンビーム送電ユニットと簡易リニアカタパルトユニットだろう。
魔法用にコンバートして使用したそれらで高町なのは嬢に莫大な魔力を譲渡しつつ、青組前衛を射出したのだ。簡易といえどもその性能は赤組の即席カタパルトよりも上と考えて間違いあるまい。元がMS用なのだから。

10魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:04:32 ID:C//NV/T2O
……以上が、シン・アスカがとった行動だ。これで満足かね?”

“はい、概ね”
“わっかりました。……あー、けどまぁちょっと、やっぱ冗長だったんで80点ってトコですかねぇ”
“トールさんいけませんわ、そんな甘やかしては。60点が妥当でしょう”
“……ふん、好きに批評するがいいさ。これが私の生き様なのでな”


はい、以上ラウ先生の長い長いMS講義でした。お疲れ様、みんな。


“おい待て貴様忙しいのではなかったのか?”




『第十五話 彼女達の見解』




突然なのだけれど。
戦闘時の高町なのは戦技教導官ってどんなもの? と問えば、殆んどの人がこう答える。
「莫大な魔力によって運用される、鉄壁の防御と精密砲撃を兼ね備えた要塞である」って。それは決して過言じゃなく、最早なのはの代名詞だ。
でもそれが全てじゃないんだよね。派手な砲撃と防御に隠れてあんまり目立たないけど、そもそも彼女はあのフェイトと、リインフォースさんとタイマンを張れる程の空戦技能とセンスを持っているんだ。ってか、その空戦技能があってはじめて彼女の攻防技能が存分に発揮されるわけで。
天性の飛行の才覚。だからこそ、高町なのはは『管理局のエース・オブ・エース』と呼ばれるまでに至った。


けど、そんな彼女にも苦手なモノがある。それは自由に動けない状況と、非一撃離脱型との近接戦だ。
前者は屋内戦だったり、下手に持ち場を離れられない役割──司令官に就いていたりする状況。後者はシグナムさんとかザフィーラさんとか、遠距離攻撃手段を補助にして常に懐をマークしてくる敵との戦い。
こういう時のなのはは全力を出せない。もともと回避が苦手な人だし、デバイス‐レイジングハート自身もそんなに頑強な方じゃないから、延々と張りつかれるとどうしようもなくなって相手にいいようにされちゃう──相性の問題なんだ。


そこで彼女が開発したのが、レイジングハートのツインサーベル・モード。バスターライフル・モードとは真逆の発想で、中〜遠距離での攻撃手段を切り捨てて使用魔力を防御関連に特化させた近距離迎撃戦用形態。
このモードではレイジングハートは二振りの黄金の小太刀と、浮遊する白亜の巨盾に変型する。小太刀は丈夫さと重さを優先して構築された純粋な剣であり、AIユニットやカートリッジ・システムをはじめとするレイジングハートの主機関は巨盾『イージス‐シールド』に集約される。……イージスでシールドっていうと嫌な光景しか思い浮かばないけど、それは気にしないでいこう。
特筆すべきは圧倒的な防御性能と迎撃に優れた速射魔法、トリッキーな短射程砲撃の数々。剣で敵を討ち倒すんじゃなくて、敵に近距離戦を諦めさせる、若しくは疲弊させる事を目的とした近接防御を専門にしているってことだ。動かざること山の如し。
彼女の中での護りの象徴である小太刀二刀は、正にソレに相応しい姿だといえた。そして彼女の剣技も全く付け焼き刃なんかじゃないんだから、ホント恐ろしい女性だよね。


◇◇◇


「あのタイミングでのモードチェンジ、最初から判ってたんだ? やっぱり僕が来るって」
「そうなるの、かも。ああやって砲撃すればきっとフェイトちゃんとキラくんは強引に仕掛けてくるだろうし、だったらキラくんかなって」
≪こうして話す機会が、私達は欲しかったのですから≫

蒼太刀『シュベルトゲベール』による横薙ぎは『イージス‐シールド』に防がれて。
なのはが構える二振りの黄金の小太刀、その右手の垂直斬りを僕は逆手で持った折り畳み式戦闘ナイフ『アーマーシュナイダー』で受け止めてやった。

11魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:05:32 ID:C//NV/T2O
そのままギリギリと耳障りな金属音に構わずお互いの得物を押しつけ合っていたかと思えば、なのはは前触れも無く後方へステップ二回、瞬時に誘導制御型射撃『ディバイン‐シューター』を10つ生成しつつ短射程直射型砲撃『ぺネトレイト‐バスター』を撃ち込んできた。
これに対して選択するは前進の一言。『イーゲルシュテルン』で誘導弾を排除しながら『アグニ』で砲撃を相殺しながら滑るように彼女の懐をマーク、更に剣を打ち鳴らしていく。

「どうしてあんな攻撃を? いくら模擬戦だって、なのはらしくない……いや、普段なら絶対しないよ」

司令官な彼女に非一撃離脱型のパーフェクト・ストライクで全力の近接戦を挑み、ツインサーベル・モードを引き出した僕、キラ・ヤマトの任務は足止め。このまま強引に、低性能を誤魔化しながら執拗に近接戦を続ければ彼女はモードチェンジできない、遠距離砲撃をさせずに足止めできるという算段だった。
……うん、今シンと戦ってるフェイトのような一撃離脱型ってそもそもが足止めに向いてないんだよね。なのはもそれが解ってるからこそ僕が来ると判って、思惑を悟ってタイミングを合わせてきた、合わせざるを得なくなったんだろう。無事に僕がこうまでストライクなんかで渡り合えるのは、ある意味予定調和だったりもする。
さっきレイジングハートが言ってたように、根比べだ。予定調和だからこそ根性がものをいう。だから、互いに剣を振り回しながら僕らは会話を続ける──お互い負ける気がないから、その分長く話ができる。

「自分でも解ってるの。……でも、やらなきゃって思ったんだ。それしか、できないような気がしたから」
「……それは?」

ギャリンッ、と。一際強く振り抜いた刃同士の激突、その衝撃を利用して僕らは一旦大きく距離をとる。そのまま砲撃の準備をしながらジリジリと隙を窺いあって、その数瞬後にはまた剣撃と砲撃音が辺りに響き始める。

そんな繰り返しをしながらも僕は、なのはの顔色を分析していた。

いつもならこんな戦いをしてる時はちょっと楽しそうな表情をする彼女は、今日に限ってなんかシリアスな雰囲気。
そして戦技もどこか余裕がないような、どこか必死な様子が視てとれて。まさかストライクに苦戦してるワケはないだろうから、理由はまた別にあるんだろう。
焦りと、戸惑い、不安。それに類する感情が瞳に揺れていて、まるで心ここに在らずで剣が鈍い。


本当に、今日の彼女はらしくない。


それはなにもこうやって直接戦うばかりじゃなくて、青組の作戦にも如実に顕れていた。
教導官という仕事柄、よほど切羽詰まってない限り彼女は相手がクリアできるギリギリを見極めて、それを与える事ができる。対複数ならなおのこと、全員が力を合わせて全員が生き残れるシチュエーションを。模擬戦だとそれが顕著で、自ら進んで相手の力を引き出すように働きかける人間なんだ。
基本的に人を育てるのが好きなんだよね。


なのに、なのははソレを無視した砲撃をした。青組の司令官という立場で、最終的に今の作戦を採択した。


だってそうだ。
バスターライフル・モードによる『ストレイト‐バスター・クラスターモード』の連続攻撃だなんて、もしシンの暗躍に気づけてなかったら赤組は僕とフェイトを残して間違いなく全滅していた。気づけたとしても『素手で敵の術式に介入できる、魔力素の扱いに異常に長けるアインハルト・ストラトス』というイレギュラー要素がなければ、今頃散り散りになって各個撃破されていただろう。

12魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:07:53 ID:C//NV/T2O
成長する前に叩き潰されて、模擬戦が模擬戦という形をとる前に、終わってしまう。
他の青組メンバーが作戦に従事していることから、多分うまいこと言って誤魔化したんだろうけど……でなけりゃ反対多数で没確実だ。そんなマンパワーに任せて自分は何もしないまま終わるなんて、赦せないだろう。
そう、なのはの魔法はそれだけ一方的に戦局を進められる力があって、普段の模擬戦では封印している。
それを、何故? 怒りとかじゃなくて、ただただ疑問で不思議だった。


「教えて。なのは」
「……なんかね、すごく嫌な予感がするの。昨日からずっと」
≪そのことを貴方にも知って貰いたいのです≫


はい? なんだって?
嫌な予感?

「……予感って、どういう。レイジングハートも感じてるの? それがどうして……?」
「上手く言えないんだけど、このままじゃ何か大変な事が起きるんじゃないか、止められないんじゃないかって、そういう漠然とした予感……ごめんなさい。でも、確かにあるの」

……うん、まぁ。
これまで色々と現状とか反攻作戦とか魔法のこととかを説明してきたわけなのだけれど。
その説明をしなくちゃならない状況に至った理由がまさか、なのは個人の予感だとは。


予感。或いは勘。


いやぁそうきたかー!
これは予想外だし、それであの行動ってのもだよ。どうしてそうなった。

「だから、シンくんとスバルに相談してみて。……突飛なんだけど、『あの程度』の危機を乗り越えられないようじゃとても無理だと思って……おかしいよね。根拠も無いのに」
≪ロード‐カートリッジ。ハルシオン‐シューター、撃ちます≫
「いや、どうだろ……その予感ってつまり僕達に近い将来、何か大変なことが起きて……起きるハズだから、その対策を練れるように無茶苦茶してみたってこと?」
≪マイダスメッサー&ショルダーミサイル≫
「う、うん。聴いてみると本当突飛だし飛躍してるね我ながら。文脈も繋がってないし、博打だし」
≪マスターもまだ整理できていませんから。予想斜め上の行動ですが怒らないであげてください。……プロテクション起動、アイギス‐バッシュ≫
「いやさレイジングハート。その物言いは正直どうかと思うよ僕」
≪パンツァーアイゼン展開、回避成功≫

嫌な予感がして、多分あの砲撃程度をなんとかできなるレベルじゃなくちゃ話にならないと思って、実際に僕達を試してみたと。
実になんていうか、わからないな。
けど、ここでただの考え過ぎ、気のせいだと断じられない程には僕が能天気じゃなかったのは彼女にとって幸運か否か。えてしてそういったインスピレーションだとかフィーリングだとかいった第六感はバカにできないものだってのは、僕にも覚えがあるから。明確に能力を開花させる前にも誰かの存在を感じたり、閃きで死を回避したりとかさ。
それにユーノやフェイトから聞いた話によると、結構なのはの勘って当たるらしいし。過去の事件でも何かしらを感じ取って動いたことで進展を得たこともあったらしいし。今回のもそういうのなのか?
てかね、現在進行形でなのはと斬り合いながらも四方八方から飛来する桜色の誘導弾をノールックで、ほぼ勘だけを頼りに捌いてる僕に第六感を否定することなんてできないじゃないか。大抵悪い予感というのは当たるって、身に染みているよ。
良くも悪くも彼女も僕も直感で生きるタイプ、こればかりは例外にできないなぁ。

13魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:09:10 ID:C//NV/T2O
だから僕は、なのはが勘に従って「らしくない」行動を……僕達赤組にとっては悪夢のようだった遠距離砲撃をしたことを信じなくちゃいけないんだ。なら仕方ないよねぇって。

「あんまり当を得てるとは思えないけど、絶体絶命のピンチにどうやって対応するのか……もし突破してくれたらきっと、わたし達もピンチになるような策を使ってくれるんじゃないかって。確認したかったの」
「その起点があの砲撃ってことなんだ。模擬戦をもっと激化させる為に? ……滅茶苦茶だぁ」
≪フォトン‐サーベル起動。エール‐ブースター限界時間まで2分≫
「うぅ、反省してます……」
≪フラッシュ‐インパクト&ディバイン‐シューター≫

うん、事情はよくわかんないけど、わかった。とにかく信じてみよう。僕も昔はイロイロ無茶苦茶やってたわけだし、あんまりこういうので他人のこと言えないし。
つまり、なのはは激しい戦闘を望んだと。確かにそうやって色々策を練らなきゃこの模擬戦の性質上、終始それぞれが1対1をするだけになる可能性が高いみたいだから、キッカケとしてはあの砲撃は悪くない。おかげで皆が皆、当初の予定にない熾烈な戦闘行動を強いられたわけだ。
そして激化した戦場を、青と赤と関係なく更になんらかの手段で覆せる力があれば、きっと少しは嫌な予感にも耐えられる力を得られるのではと。
全ては、当たりやすい自らの勘を少しでも外す為に、正解かどうかも判らない強制レベルアップのキッカケを。

「大丈夫、だよね? ちゃんとみんな、力を合わせて私の全力を乗り越えてくれた。私の身勝手を止めてくれた。だから、大丈夫だよね?」
「……なのは」

何度目かも分からない攻防の間隙、小休憩の最中。
なのはの表情に、遂に隠しきれなくなった不安の色が浮かぶ。上目遣いで僕に是非を問い掛ける。
まるで悪夢を見た子どもが、こっそり親の布団に潜り込むように。
もちろん彼女は、こんなたった一回無茶苦茶をやったところであまり意味はないと理解している。けど、やらなくちゃと思ったみたいで。
それほどまでに、彼女の予感は大きかったらしい。それほどまでに、自分の行いに自信を持てないらしい。
その様子で僕は、なのはがシンとスバルに相談した内容と、レイジングハートが僕に「知って貰いたい」と言った理由を悟った。

「ねぇレイジングハート。なのはは結局、まだ甘え下手なんだ?」
≪御名答です。マスターがこの不安を吐露したのは、私を含めこれで二人目。やはり貴方に話して良かった≫
「そっか」
「ちょ、レイジングハートそれ秘密……!?」

相棒のまさかの暴露に慌てる高町なのはという人間は、甘え下手だ。彼女の幼少期がそうさせた。信頼がだとか利益がだとかそういうのじゃなくて、純粋に甘えるのが苦手だ。
そして今の彼女は時空管理局の戦技教導官で『エース・オブ・エース』。青組の中じゃ、いや今このカルナージという世界で、一番の地位を持った存在。同格の人間はフェイト・T・ハラオウン執務官ぐらいなもので、でも彼女は頼りにならないわけじゃないけど今は敵チーム、そのうえなのはに関しては暴走しがちなとこがある。
そうした甘えなど赦されない環境で、高町なのはとして、凛と振る舞わなくちゃいけない。

つまり、23歳の女の子がこの状況で不安を共有できる人間はいないんだ。


多分ただ一人、僕を除いて。


かつての僕は、『闇の書事件』の19歳の僕は、「キラお兄さん」だった。前線で戦う魔導師の中で一番の年長者で、当時小学3年生のみんなを知る存在だった。

14魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:09:59 ID:C//NV/T2O
思えばあの時は役立たずなりにも頑張ろうとして、色々と相談を受けたり相談したり、バックヤードを整えたりしていた。だからそれなりに皆の奥底の想いを知っていたりする。
そう、今は同い歳になってしまったけど、なのはにとってはやっぱり僕は、かつての頼りないけど頼れる「キラお兄さん」だったんだ。それに、魔導師だけどちょっと前まで魔法を知らなかった者同士として、なんだか共感するところもあって。
なのはにとってはある意味、本音を話せる存在だったのかもしれない。
……いや別に実際にお兄さんと呼ばれてたわけじゃないケド。

(その事実が、シンとスバルに嫌な予感だけを伝えて、僕だけに内心の不安を打ち明けさせた)

レイジングハートがいつになく饒舌なわけだよ。まったく、僕がいなかったらどうするつもりなのさ。自惚れてるわけじゃないけど。
彼女も僕も、ただの一人の人間なんだからさ。

(そういえば、いつかヴィヴィオちゃんが言った強くなりたい理由。あれって、いつかなのはを娘として支えたいってのも含まれてるのかも)

そこまで想いを巡らせて、溜め息一つ。

「ユーノにも頼ればいいのに。多分喜ぶよ?」
「あぅ、それは考えたんだけど──なんか、なんだろ、恥ずかしいっていうかなんていいますか。それに時間的に悪いかなーって思ったし……」
「彼なら時差なんて気にしないでしょ」
≪アグニ、ファイア≫
「それとこれとは話が違うの! ていうかなんでユーノくん出てくるの!」
≪ラウンド‐シールド。調子が出てきましたねマスター≫

ちょっとした軽口で場を和ませてみる。ユーノの名を聞いた途端ちょっと無意識に本音をポロッと言いかけていたのに気づいて、さっと頬を紅潮させた彼女相手に僕は少し演技をすることを決める。
今度こそ、頼りがいのある男を。

「……大丈夫だよ、なのは。みんな君が思ってるよりは強いと思う。お望み通り、この戦局をひっくり返す策も用意できてる」
「キラくん……」
「たとえそれが、誰もが想像しなかったアインハルトちゃんの技能に依存した強行突破作戦だったとしても。それを切り口に次に繋げることができるのは、君の教え子のティアナだよ。……大丈夫、なのはの予感は当たらせない。みんなで」
「……うん!」

そうして僕は、無意識でも頼られた「キラお兄さん」として、元歳上の意地で彼女を安心させるべく必死に言葉を選んで紡ぐ。
安心させて自信を持たせる為の、肯定の言葉を。僕も迷った時は何度も、そうした言葉で救われたのだから。
ここ最近はなにがなんでも、あらゆるものを自分の目的に利用しようとする「悪いオトナ」だったわけだし、似合わないけどたまには格好つけてみてもいいでしょ?


やっと笑顔を取り戻した彼女の瞳を視て、僕は戦いの中で一つの安堵を得たのだった。


◇◇◇


“さて、と……フェイト、ティアナ。そろそろストライクは限界だよ。首尾はどうなの?”
“こっちももう後がねぇぞ。特にコロナに余裕がない。どうなんだ?”
“後衛はもうチャージは終わってるわ。けどフェイトさんが……”
“うんごめん。シン、予想以上に強くなってる。でも負ける気はしないし、もう少しで押し込めそうだ”
“頼む!”
“了解!”

長いようで短かったなのはとの会話の途中で変わった戦局を纏めよう。

まずノーヴェさんとアインハルトちゃんとコロナちゃんのグループは、青組前衛と接触した時は中央区に入る一歩手前なポイントにいたのに、今は随分と中央区のそのまた中央に向かって押し込められていた。

15魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:11:57 ID:C//NV/T2O
僕は背を向けてて視えないから感じるしかないけど、このまま押し出されれば中央区は制圧されて作戦は失敗だ。
まぁこればかりは仕方ないよ。まず数が違うし、そもそも経験という点で不利だ。いくら格闘戦が強いといってもアインハルトちゃんとコロナちゃんにまともな戦闘経験はない。それは向こうのヴィヴィオちゃんとリオちゃんも同じだけど、そこはスバルとエリオがカバーしてるしね。
けど、年少組の動きが時間の経過に比例してどんどん良くなっていってるのにも注目したいところ。長引けば長引く程にあの戦域のレベルは高くなっていくだろうね。最初は拙かったフォーメーションやコンビネーションも両チーム共に様になってきてる。子どもって最高だな。
……赤組が押されてるのに変わりはないんだけどね。けどそんな状況でもあんまりライフを減らしてないのは流石と言うべきか。上手く後退しながら、位置も戦う相手も交代していって捌いてる。
ザッと確認してみたところ皆のライフポイントは……

アインハルトちゃん
     HP:3000 → 2106
ノーヴェさん
     HP:3000 → 2353
コロナちゃん
     HP:2500 → 2450

その他は大体無傷(というより僕とフェイトは一撃でも直撃もらったらヤバい)で、コロナちゃんも数値的にはほぼ無傷だけどもう魔力がもたないかな。
で、青組の数値は分からないけど見た感じじゃ、前衛は200前後のダメージを負っていそうで他はほぼ無傷のよう。
端的に言えば劣勢だ。

「ん。あれ……フェイトちゃん、シンくんを誘導してる?」
「え、気づいちゃった? ……そうだよ。シンがしぶといから時間かかったけど、もう終わりそうだって」

目敏い流石なのは目敏い。
本来の調子を取り戻してさっきよりも鋭さと勢いを増した彼女の剣捌きにちょっと苦心しながら、同時に戦場全体を眺めていたその瞳に感嘆する。親子なんだなぁ。
そう、実はフェイトとシンは戦いながら戦域を中央区付近まで移動させていたんだ。その距離は実に約10km。一撃離脱型で格闘戦を得意とするマルチレンジ‐ファイター同士、派手に飛び交いながら剣と砲を撃ち合ってる最中に【所定の位置】に相手を誘導なんて苦労しただろう。
けど、恐らくここで一番見応えのあるバトルももう終幕だ。
ならばと気合いを入れ直したフェイトが遂に最後の仕上げと畳み掛ける。斧であり鎌であり大剣であるデバイス‐バルディッシュを、細身片刃の黄金の魔力刃を形成する長剣へと変型。持ち味である圧倒的な加速と旋回でシンを責め立て始めた。作戦も大詰めだね。
これにシンも負けじと二本の『アロンダイト』と『ヴォワチュール‐リュミエール』で対抗するけど……流石に厳しいみたい。早くも防御に手一杯になってる。

「今のシンくんならなんとか耐えてくれるとは思うけど、これは阻止しないと、かな!」

シンも、ついでに僕も昨日よりずっと強くなっている。
昨日の訓練でシステムG.U.N.D.A.Mを発動させて一時でも身体と意識のズレ──違和感を無くすことができた僕らは、それを基準点にして意識に補正をかけられるようになったからだ。基準さえあればコーディネイターの学習能力を最大限発揮して、それをニュートラルに持っていくことができるからね。
そうしてようやく、僕とシンをずっと悩ませていた事項をスッキリ解消できたんだよ。動き自体に満足はしてないけど、もう躰に不自由を感じることはない。

16魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:13:52 ID:C//NV/T2O
そんなわけでもう僕らはシステムに頼らなくてもある程度の実力を取り戻して、昨日とは見間違える程に強くなった(じゃなけりゃ会話しながらなのはと戦うなんて絶対無理だし)のは確かなんだけど、やっぱり元々の実力差を埋めるには至らないね。
僕はなんとか相性で食らい付いていけてるけど、シンはまだ本気のフェイトに追いつけないようで。

「させ、ない!」

このままじゃシンが危ないと感じとったなのはの瞳に、強い炎が煌めく。明確な目的を定めた、獰猛な光だ。
こんな序盤にシンをリタイアさせるわけにはいかないと、本気で僕を排除してフェイトに攻撃をかけるつもりか。もうすぐなんだ、ここしかもう機会はないし時間もないんだから、フェイトの邪魔をさせるわけには。

「レイジングハート、アレいくよ!!」
≪了解、ロード‐カートリッジ。ヴォルテックス‐ラジェーション≫
≪警告。後方への退避を推奨します≫
「う、わ!?」


そう考えて、そうはさせるかと前進したのが、いけなかった。


『ヴォルテックス‐ラジェーション』──なのはを中心に、渦状に放出された圧縮魔力……桜色の吹雪に捲き込まれ、蒼太刀『シュベルトゲベール』もろとも大きく後方に弾き飛ばされてしまった。

(カウンター魔法!)

対近接の切り札とでもいうのか、さながら竜巻のように吹き荒れる魔力に成す術なく翻弄されて、あわや地面に激突寸前といったところでなんとか飛翔魔法を繰って柔らかく着地する。視れば太刀は随分と遠くまで飛ばされたようだった。
参ったな、これは。

≪短射程砲撃の一種と推定。あの魔力には破壊力があります≫
「……どうする!?」

初めて見る魔法だ。多分これは距離を取って、或いは時間を稼いでモードチェンジをする為の布石なのか? なのはみたいなタイプなら、こういった攻性防御は必要なんだろうな。
どちらにせよ、アンチマジック・コーティングが施され、魔力障壁を切り裂く特性を有するが故に、なのはにツインサーベル・モードを強要させてた唯一の武器を失った以上は……彼女はもう近接戦をする必要がない。
多分もう全力全開のエクシード・モードかなにかにチェンジして砲撃魔法をチャージ、僕かフェイトを竜巻の中から狙ってると考えていいだろう。あの魔法を発動してから僕が着地するまでの時間、それで十分な筈だ。

(ならストライクフリーダムを起動するか? いや違う先ずは)

状況から推測し、頭を高速回転させる。たった一手で圧倒的不利にされたんだ。考えろ。
やるべきは砲撃の阻止、なのはの足止めだ。ならデバイスを取り換えてる時間も惜しい……ここはストライクで強引に打って出て、砲撃させないように努めるべきだ。
即断即決、サーベルを右手に、大型実体シールドを左手に装備して残り時間の少ない『エール‐ブースター』でなのはに斬りかかろうと、桜色の竜巻に突進しようと力を込める。
そして、


なのは自らが、魔力嵐を突っ切って二振りの小太刀を手に、こちらに斬りかかってくる気配を感じた。


「な、に!?」
「やぁぁあ!」

刀で攻めて、きた!?
砲撃ではなく、全身に魔力光を纏わせて通常の3倍のスピード。身体強化魔法と加速魔法を用いて、遮二無二に突進してきた。
完全に出鼻を挫かれて咄嗟に掲げたシールドに襲いかかる、剣撃の嵐と射撃の雨霰。そのどれもが重く鋭く硬く、シールドはあっという間に砕かれてバラバラになって消滅した。くそっ、体勢を立て直す隙もない!

17魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:15:13 ID:C//NV/T2O
辛うじて代わりに顕したもう一本のサーベルと速射魔法で迎撃を開始するも、もう完全に主導権を握られて後手に回っていてどうにもできない。
そうして10号と打ち合った時には、なのはの袈裟斬りに連合制服を切り裂かれて。

「これでッ、決めるよ!」
≪覚悟してください。アクセル‐インパクト&レストリクト‐ロック≫
「しまっ……うぁ!?」
≪……申し訳ありません。打つ手がありません≫

20号を数えた時には力強い回転斬り上げで上空に打ち上げられて、桜色のリング──バインドで幾重にも固定されてしまった。『レストリクト‐ロック』はなのはが一番得意とする捕縛魔法、僕とストライクじゃどう頑張っても短時間じゃ外れないもんで、唯一自由に動かせるのは左腕と頭だけだった。
これは、完全に読み違え……いや油断してた。なまじっか拮抗してたのがいけなかったな。それで真っ先に僕を潰しにきたのもあるだろうし、こっちもこっちで勝ちを急いだしで。


まったく、やられた。詰んだよ。
僕の敗北だ。


「……綺麗だ」

でも負けたショックを感じないまま、間抜けに茫然と呟いたのには理由がある。
宙に固定された僕よりも遥か高みに、なのはがいる。呼吸を大きく荒らげながらも、さっき放出したばかりの魔力を背の大翼として集束しながら。
巨盾と小太刀を融合させて構築した二股の黄金の槍――エクシード・モードのレイジングハートを天に掲げ、白く清楚なロングスカートを翻し、四対の桜の翼を広げる姿はまるで戦乙女のようで。足元の魔法陣から立ちこめるオーラと、彼女を包み込み回転する複数の環状魔法陣も相まって、戦いの中で戦いを忘れるほど惚れ惚れするぐらいに美しい存在がそこにいた。

「受けてみて、キラくん。私の全力、私の奥義!」
「それが、あの時目指した完成形?」
「そうだよ。集めたの魔力をただ砲撃として放つスターライト‐ブレイカーのバリエーション、1対1用、対強敵用の集束型収束砲撃。やっと見せることができた」

なるほど、14年前の挑戦が形になったんだね。『闇の書事件』の時にはついぞ完成しなかったアレが。なら背の翼は飛翔ユニットじゃなくて、魔力の加速と圧縮を司る外部ユニットかな? 大気中に散った魔力を一度翼として取り込み、増幅させてから砲撃に利用すると……相変わらず面白い発想する。
うん。単純に言ってしまえば、これからなのはが撃つものは収束させて攻撃範囲──口径を極限までに絞りこみ、同時にチャージ時間も短縮した『スターライト‐ブレイカー』。詳細とかは違うけど、絶対的な一人を倒す為に無駄を削ぎ落とした必殺技だと思っていい。
自分の個性と特性を殺すことなく、長所を伸ばす形であらゆる環境に対応できるよう模索してきた彼女の完成形の一つだ。

(当たったら、痛いんだろうなぁ)

一緒に術式を考えたりしたアレで墜とされるのなら、そうだね、悔しいけど悪くはないかな。まだまだ僕も実力不足だしね。
色々と実力も奥の手も発揮できないままだけど、これからの戦いに参加できないけど、シンやヴィヴィオちゃんと戦えないのは口惜しけど、まぁ機会がないわけじゃない。
なんだか妙に清々しい気分だった。任務は半ば達せられたんだから痛み分け、かな。


≪いきますよ≫
「ニーベルン‐ヴァレスティ!!!!」


圧縮されすぎてもはや桜色を超えて紅色を輝かせる極細の光線が、おおよそ個人で扱うにはとんでもないエネルギーを秘めた魔法が。

18魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/03/06(木) 23:15:41 ID:C//NV/T2O
対象に直撃して飛散するであろう魔力をフィールドに封じ込めて、殲滅力を高める効果を有する複数の桜色の環状魔法陣に包まれた僕に向かって今、なのはの掛け声に従って、クルリと華麗に一回転させたレイジングハートから放出される──




──直前に。
もんの凄いスピードと質量を有する巨大に過ぎる【物体】が、轟音をバラまきつつ中央区のビル群を幾つか砕いて薙ぎ倒して崩壊させて、黄金のバインドで宙に固定されていたシン・アスカに向かって一直線スッ飛んでいって、

【物体】は滞りなくシン・アスカに直撃し、

物理法則だとか質量保存の法則だとかに従って、シン・アスカは見事な放物線を描いてブっ飛んだ。


それは、赤組反攻作戦の第三段階目の完了と、反攻達成を意味した光景だった。
南無。ごめんねシン。




──────続く

19凡人な魔導師:2014/03/06(木) 23:25:38 ID:C//NV/T2O
今回は以上です。
とりあえず我らがなのはさんを強化してみました。はい、神技をやらせてみたかっただけです。それとシンには今回犠牲になってもらいましたが、ちゃんと活躍する予定ですわ。
vividはもうすぐ23刊が発売なのにまだ3刊近くをウロウロしてる自分にげんなりしつつ、まだまだ続いていきます。ようやくイロイロと動き出しましたし。
……贅沢なようですけど出来れば何かアドバイスや観想が欲しいなーっと(チラ

明日は遂に種運命HDリマスターの最終日、果たしてどうなるのか……!

20名無しの魔導師:2014/03/06(木) 23:31:24 ID:vrwgyHnQ0
乙です
リマスター、リマスターね……うん
HGブラストインパルスを期待してたんだけどなあ

21名無しの魔導師:2014/03/06(木) 23:58:35 ID:C//NV/T2O
HGウィンダムとかも、まぁ……

22名無しの魔導師:2014/03/08(土) 09:32:28 ID:5DA4VpO2O
なのはさんはヴァルキリーだったのか…

23名無しの魔導師:2014/03/20(木) 07:04:43 ID:GIQUXbqM0
リマスターも結局キラ一行を持ち上げるだけの結果だったなぁ
ある意味今のなのはシリーズと同じだが

24名無しの魔導師:2014/05/24(土) 02:46:49 ID:E.5PG8u2O
実に2ヵ月ぶりである

25凡人な魔導師:2014/07/07(月) 07:54:46 ID:KmOX0Kr.O
もう誰もいないかもですけど、明日の23時に投下します

26凡人な魔導師:2014/07/07(月) 16:51:46 ID:KmOX0Kr.O
また、報告です
まことに勝手ながら、私は今回の投下を最後に2chの新人スレに移転することになりました。
完全な思いつきと独断です。すいません。
見ている人がいるかは分かりませんが、これからもSSは完結を目指して頑張っていくつもりです。ときどき此方の方も覗きにきます。

今までありがとうございました

27魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 22:58:54 ID:YRpPTBV6O

陽動作戦。
結局のところ奴ら赤組の採った作戦は、それだった。


「な、に!?」
≪警告。防御不能≫

そうと悟ったのは、バインドで固定されて身動きを封じられた俺目掛けて巨大な──約10m程の屈強な岩人形がすっ飛んできた時だった。漆黒の甲冑を着こんだゴーレムが、拳をかざして砲弾のように迫ってくる、悪夢のようなトリガー。
もしこのままぶつかれば、間違いなく俺のHPは容赦無く砕かれ、撃墜されてしまうだろう。


確信。
瞬間。


頭の中が急激にクリアになって、ドス黒いナニかが湧き上がると同時に悟りは確信に代わったと、何もかもを認識して支配できるのだと、決定できる……まるで神様にでもなったかのような感覚を覚えた。
時間の粘度が増す、空間の密度が増す。
何度も何度も危機を救ってくれた、頼もしくとも今は恨めしく思える甘美な感覚は、だけど完全に身を委ねるわけにいかないと俺はもう知っている。
知っているからコントロールする。
まずは第一に真っ先に、状況把握に努める。
あらゆる対象を同時に一瞬で視てやる。

前提。
この赤組と青組とで戦うチームバトルの肝は、一辺50kmの正方形なフィールドの中央にある一際目立つビル群の存在。魔法戦が「非物理破壊設定」を前提にしている都合上、物理的に在るビル群を先に制圧して拠点・要塞化すれば俄然状況は有利になると全員が認識していた。──故に争奪戦があって、そして俺ら青組はそれに勝ちかけていた。もう少しでティアナ率いる赤組を追い出せると。

直感。
そこに、奴らの作戦が仕掛けられていたのだ。
俺がフェイトに、キラがなのはにタイマンを仕掛け、残りは中央区ギリギリで混戦に持ち込んで。まるで必死に決死の防衛戦をやっているように「演出」した。囮だ。
なら本命は? 結局何を狙っていたのか?
それはいわば、ちゃぶ台返し。──なにもかも上手くいかないもどかしさに癇癪を起こした子どものように、前提を破壊してしまおうと。


確定した事態を羅列する。


一つ。おそらくコロナが事前に創っていたであろう高さ10m程のゴーレム『ゴライアス』を、魔法的レールカタパルトで射出して、ビル群の2割を破壊──ついでにフェイトが射線上に誘導、固定させた俺、シン・アスカにブチ当てる。
妥当な判断だ。青組の中核に携わっていると自負している俺を墜とせればバトルの流れは大きく変わるんだから。

もう一つ、ビル群のど真ん中まで後退させられていた20mの巨人『ゴライアスMK‐?U』が突如サヨナラ! といわんばかりに爆発四散、肉体(?)を構成していた岩塊を四方八方に撒き散らし、青組前衛もろとも更に2割を破壊した。

それらの相乗効果、ドミノ倒しでビル群は最終的にその6割を単なる瓦礫の山にしてしまったわけだ。もうそうなると要塞としての価値はなく、これからのバトルの様相も変わっていくだろう。
──奪われるぐらいなら、その前に破壊してしまえばいいってのか。
乱暴だが有効な戦術だ。

「──やらせるか」

スローモーションに見えても確実に俺に接近している『ゴライアス』と、それを射出したレールカタパルトはかなり目立つ筈なのに発見できなかったのは、予め用意してた上で使用ギリギリまでティアナの幻惑魔法で隠してたってことだ。そりゃただ射出しただけじゃ確実に撃ち落とされるしな。
悔しいのは、こんな単純な作戦を見抜けなかった己の瞳だ。ギリギリの綱渡りのような作戦にハマりにハマっちまってこの結果、誰よりも俺が看破しなくちゃいけなかったのに。じゃなきゃ昔と同じ、目先しか見えてなかったあの頃と同じだ。

28魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:00:16 ID:YRpPTBV6O
だから、こんなところで終われない。
ただただ闘志が湧いてきて、カッと全身が熱くなる。

「こんなんで! 終われるかぁぁぁ!!」

直撃すれば撃墜するゴーレムがなんだっていう。防御も回避もできない状況がなんだっていう。救援を期待できない状況がなんだっていう!


強くなると、もう一度決めたのは、望んだのは自分自身だから。
強くなければ、悪足掻きだってできやしないのだから。
ならば。




『第十六話 この道を選んだ、その理由の全て』




「──う、おおおぉぁあラァッ!!」
「な……んッ、シン!?」

己の意識がブラックアウトしかけていたんだと、他人のように思った。大質量に殴られた自身の肉体が、狂った独楽のように空を飛んではいないことを、逆に理路整然に蒼穹を翔ていることを実感として知った。
身体に襲いかかった凄まじい衝撃は確かに有った。しかし痛みは無く、それこそが魔法の恩恵と理解しているからこそ、まだ生きているんだって思える。
残りHP104、撃墜されてないし、戦闘不能でもない、余裕だと自然に考えられたのは全くもって自然なことだ。

「もう一本だ、デスティニー」
≪了解。アロンダイトを左手に顕現します≫
「……バルディッシュ」
≪ロード‐カートリッジ。ザンバー‐フォーム移行≫

アロンダイト二刀を構え、黄金の魔力刃を天に掲げたフェイトと対峙しているうちに、衝撃が抜けてだんだん意識が鮮明に戻ってきた。
──、そうだ。既に歪に【喰われて】いたゴーレムの残り半身を、吹き飛ばされながらでも右の大太刀で叩き切ってやったのが多分5秒前のことで、なら次はその操者自身に左の掌槍をぶつけてやろうと【菫色の霞】を抜けて進路を定めた瞬間に、フェイト・T・ハラオウンが立ち塞がってきたのが2秒前のことだ。しっかり思い出した。
そして互いの剣を弾き合って、睨み合いをしているのが今。信じられないものを前にしたような、驚愕と疑問の表情を貼りつけた彼女相手に、オートパイロット状態で距離をジリジリ詰めていた躰の制御をようやく取り戻す。
同時に、

(……! ……キラを仕留め損なったのか、なのは)

頭の片隅に、放ってはおけない事態があると感じては押し留める。

“ちょっと! 大丈夫なの!?”
「──ルーテシア。……大丈夫だ、離脱するから援護してくれ」
“なのはさんと、あと、キラさんがそっちに向かってます。そうすれば多分フェイトさんも”
「ああ」

タイマンならまだしも流石にこのHPで混戦は避けたいと思って、思ったところで通信をよこしてきた青組支援役ルーテシア・アルピーノに撤退の意を告げる。言われる前に感じとった感覚は正にその通りだったから。
何故か生き残っているキラが此方に向かって移動して、なのはが追っている感覚。
フェイトは圧倒的な速力と旋回能力を主戦力とした近接寄りのオールラウンダー、つまり俺のデスティニーと同タイプの手強い戦士で、当然片手間に戦える敵じゃない。今なら互角以上に戦えるのに、口惜しいが集団戦じゃ……ここで墜ちちゃなんにもならない。

「うん……うん、わかったティアナ。タイミングは任せる」

そんな彼女も似たような通信をしていたのか、少しずつ後退をし始めた。なのはが俺を保護するように、彼女もキラを保護して撤退する算段か。

「勝負はお預けみたい、シン」
「半分以上アンタが勝ったみたいなもんだろ」
「でも、まだ本気で戦ったらどうなるかは判らない……でしょ? 貴方も私も」

29魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:01:13 ID:YRpPTBV6O
「……次は勝つ」
「うん、楽しみだ」

強敵と戦える嬉しさというやつだろうか、自然に浮かべた力強く綺麗な微笑みに呆気にとられているうちに、フェイトは背中を向けて鮮やかな黄金を靡かせ颯爽と去っていった。これは、認めてもらったってことなのかね。
ただ動かずに見送ることぐらいしかできなかった俺には、少し眩しいぞ。

「まだ、弱い。まだ追いつけないなら、いつかは。……遠いんだな先は」

躰の外部まで拡大していた意識が通常まで縮み、【菫色】を取り込みさざめいでいた大翼も通常の紅一色に戻って。臨戦体勢を解除する。
……本音を言えば、そりゃ俺の中にも強敵と戦いたいって欲求はある。かつてはザフトのトップガン、唯一絶対のスーパーエースだったプライドもある。もっと全力で全力の彼女と剣を交えたかった。
でも彼我の実力差を分析できるぐらいには、糞正直に突っ込んでいきたくなる気持ちを抑えられるぐらいには、大人になったつもりだ。……それを少しだけ淋しく思えるのは、あの生意気に反発ばかりしていた生き方に、確かなアイデンティティを感じていた左証ってやつなのかもしれない。
それでも、いつかの熱を喪っても、もっと強くならなくちゃならない。フェイトにはまだ余裕があって、単純な実力では負けていたのは事実。
今は撤退して回復しなければ。
でなけりゃ──、──


──こんな俺を、ミネルバのみんなが見たらなんて言うんだろうか?


突拍子なく浮かんだその考えの答えは、当たり前のように一つで、その一つを想像するのが無性に怖かった。想像が、一瞬、俺の意識の一部を支配した。

避けては通れない思考だと、構えていたつもりだったのに。

あぁ、16歳の俺と今の俺は、きっと別人なくらい変わっているんだと自覚はしている。でも端的に言えば大人になったと評される変化も、果たして「あのミネルバ」のクルーが納得できる変化なのかと問われれば、自信はないのだ。
ifのことと解っていても。
冷静に状況を鑑み、独断暴走しないで、さらに自身を弱いと分析し、向上心を持つなど。
ありえない、最初からそうでいてくれたら──という想いが、聴こえてきそうで、それはどこまでいっても恐怖だ。
この道を譲るつもりもないが、俺達のような不出来な人間が果たしてこのまま「悪足掻きの為に強く」なっていいのかと、なんてことのない、それは弱気だった。
認めてくれる人がいないと、俺はこんなにも弱い。


“ヒトは変わっていくものだ、良くも悪くも。……変わっていける明日があるのなら、誰しも”


ふと、懐かしい声が、心に直接響いた。

「……、……レイ……」
“胸を張れ、シン。お前はお前の道を、今度こそ前を向いて歩いているんだ。それを否定することは誰にもできやしない”
「……サンキュ」

なんとまぁ、珍しくも俺を慰めてくれて。それだけで不思議と怖さは完全になくなっていた。……まったくこの親友は何時になっても、俺に優しい。
決して何の解決にもならないのかもしれないけれど。良くも悪くもかつて俺を導いた親友が、今は背を押してくれるというのなら、応えないといけないな。
いや、俺は応えたい。

「いつか絶対、なんとかしてやる。だから、待っててくれ」
“フッ……首を長くしているさ”
「それから……ステラ」
“なぁに?”
「さっきは助けてくれて、ありがとうな」
“ううん。ステラ、シンが元気だとね、嬉しいの。だから、シンが元気で良かった”
「……、あぁ。俺は元気だ」

背負っているものは限りなく多くて大きい。けど、立ち止まるわけにはいかない。

30魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:02:32 ID:UW8kQgd20
何があろうと、全て背負ってひたすら進むと決めたんだから。


さて。なのはが来る前に、涙、拭っとかないとな。




◇◇◇




「じゃ、そのティアナの狙撃でか?」
「そうなんですっ。わたしも遠目に観ただけなんですケド、ママの捕縛と、キラさんのバインド破壊を同時にしてました。ティアナさんの弾丸!」
「たいがいなバケモンだなアイツも……」

興奮覚めやらぬといった面持ちの高町ヴィヴィオが語る、いかに自分が目撃できた光景が凄かったのかという情報は、なんだか内容を聴くまでもなく何故か納得してしまえるような説得力に満ちていた。
視るもの総て、この娘の翠と紅のフィルターにかかってしまえばアっという間に鮮烈なものになってしまうのではないかと、少し羨ましく思えたりもするのは内緒だ。
恥ずかしいからな。

「見蕩れてたらイイの貰ってた……なんてこと、ないよな?」
「それはなかったですよー。アインハルトさんってとっても綺麗ですから」
「へ?」
「あ、わっ。わ、技がってことです! どうしたらあんな風に動けるのかなって!」

喉から手が出るほど欲しかったビル群の崩落から、既に3分が経過していた。
ルーテシアの転送魔法で青組本陣まで戻ってきた俺は、同じく転送魔法で戻ってきたヴィヴィオから、菖蒲色に輝く回復結界の中で前線の状況を教えて貰っていた。
おかげで大分全体が読めてきた。やはり直感よりも情報による認識と確認のほうが確実なんだなぁと、いつかレイに怒られた過去を棚に上げ頭のメモに追記していく。

「そうか……結局キラはギリ生き残って撤退済み、アインハルトも瀕死で撤退、コロナは魔力切れでリタイア……此方はエリオが撃墜、状況はイーブンか」
「手数で言えば、こっちがまだ優勢ですよね」

実際、この娘の観察眼は大したものだった。感受性にも優れ、それを素直に表現できる才覚もある。少々頑固で無茶をしやすいきらいはあるが、これは後学の為に子育てのイロハを母二人に教えて貰ったほうが良いかもしれない。
……ああ、でも、こう殴り合い上等なバトルマニアにはならないよう育てたいと思いますハイ。環境の問題かなのかなぁ。

「向こうも承知してるだろ。そろそろ何か仕掛けてくるかもしれない」
「ティアナさん、追い込まれた時に何をしでかすか分からないってママが言ってました。だとしたら……」

敵司令ティアナ・ランスターの気質は策謀家でなく、どっちかと言えば素直な武闘家だが、持ち前の射砲撃魔法と幻覚魔法への自信と発想は厄介だと聞いた。大抵デカイことをやってくるらしい。
ならアクションを起こした時に直ぐ様対応できるよう、俺もなるべくHPは多いほうが気兼ねなく突っ込めるってもんだが……、……まだ1700/2500か。こんぐらいまで回復していれば、近いうちに戦線復帰こそ可能だが足りない。それはヴィヴィオも同様のようで、ソワソワウズウズと全回復を心待ちにしているのだと見受けられた。回復結界は焦れったいなチクショウ。
……にしても、だ。
派手に魔法が飛び交っている戦場を遠目に、今度はどうやって戦おうかとも考えている様子の少女に、隠れて俺は安堵のため息をつく。……ふむ。ヴィヴィオのやつ、今朝はなんかちょっと様子が変なように思えたが、この分なら杞憂だったようだな。

「デスティニー。ミラージュ‐コロイドのオートコントロールどうなってる?」
≪現在隠蔽率87%。このペースを維持した場合、5分後には60%を切ります≫
「70%を切ったらマニュアルにしろ」
≪了解≫

いい頃合いだし、青組の被害を再確認するか。

31魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:03:37 ID:YRpPTBV6O
まず、主戦場はガレキ外周部へと移り、散発的な乱戦が続いているってのが今の前提条件だ。……あんまり歓迎できない戦況なのは否定できない。てか、こうならないように作戦を立てたってのに……いや、コレばかりは仕方ないことだがな。
環境は生き物だ。

つい2分前のこと、エリオは崩れるビルからリオを庇ってHP半減し、その直後フェイトと会敵してもなんとか互角に戦っていたが、しかしクリーンヒットを入れ彼女を半裸に剥いたところでノーヴェの介入パンチを喰らい気絶した。……うん、きっと刺激が強すぎたんだな。よくやったよ男エリオ・モンディアル。

また同時に、長いこと殴り合いをしていたヴィヴィオとアインハルトの戦いに決着がついた。互いの実力・スキルを知った上での戦いは、いつかの練習試合のものよりも高次元で見応えのある打撃痛撃の応酬となったが、これもまた地の強さで碧銀の覇王少女が制した。
『覇王‐断空斬』の直撃でヴィヴィオのHPは668まで低下、ルーテシアに回収されて今ここにいる訳だ。

「今回はもうちょっと粘れるかなって、思ったんですけどねー」
「いや上出来だろ、あれで。……次はもっとやれるさ」
「! はい、頑張りますっ!」

俺の知る限り、単純な格闘戦ならここのメンバーでも上位に入るアインハルト相手に、射砲撃を封じられた状態で何発かクリーンヒットを入れただけでも大した実力だ。カウンター戦法もかなり板についた。
まぁその後アインハルトも、前線に赴いて砲撃体勢に入っていたなのはを強襲、パンチでビームを相殺したりバインドを砕いたり一撃御見舞いしたりと謎技術でハチャメチャに善戦したけど、やはりというかなんていうか特大連繋砲撃『ストライク‐スターズ』の奔流に呑み込まれ戦闘不能となったわけだが。
これに応じて赤組司令のティアナが前進、幻覚魔法と狙撃でもって状況をブレイクしにかかった。
結果、前線の戦況は膠着状態に入り、現在は両陣共に落ち着いて戦闘継続者の整理に努めている。
とまぁこんなわけでだな、今のところの戦闘模様は、


赤組     青組

ノーヴェ   スバル
フェイト VS なのは
ティアナ   リオ
キャロ    ルーテシア

それぞれ戦闘不能(回復中)が二人、リタイアが一人。


こんな感じに随分と小規模になっている。その中でもローテーションで回復しながら戦っているのだから、支援役の二人はまだまだ大忙しだろうが。

最低、ずるずると消耗戦になるのは避けたい。できうるなら早急に此方からアクションを起こしたいとルーテシアも考えているだろう。
何故なら現状、懸念要素を抱えているのは青組なのだから。

「リオの戦力は正直、意外だった」
「炎熱と電撃の二重属性、結構対応するのは苦労するんです。それにリオ自身が力持ちさんですから」
「ああ。……おぉ、岩投げた」
「あれで三重属性ですね」

遠く離れた戦場で尚なかなかの存在感を見せつける炎龍と雷龍を使役する、中華拳法っぽい格闘術──春光拳といったか──と馬鹿力で前線を支えるリオ・ウィズリーの勇姿。他と明らかにジャンルが異なる少女はなるほど、慣れないと攻略は難しそうだ。
変身魔法で中学生っぽくなった小学生リオの、歴戦の猛者に負けず劣らずな獅子奮迅ぶりは目覚ましく、少しばかり過小評価していたことは認めざるを得ない。
だが……

「ルーテシア、俺を出してくれ」

出撃要請を打診する。
HPは1850まで回復した。せめて2000は欲しいが……仕方ない。無茶しなけりゃなんとかなる範囲だ。

“シンさん、まだそのライフじゃ”

32魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:04:47 ID:YRpPTBV6O
「リオは限界だろ、もうアレは」
“それは、解ってますけど。……でもここで出して、キラさんを釣るわけにもいかないんです”
「む……」

そうか、キラが生きてるってことはHPももう全快近いと。
あの戦況でリオだけがルーキー、いかに能力があろうと体力も技術も他メンバーに及ばず、スキルで誤魔化すにも時間的に限界な筈だ。誰かが加勢しないと確実に潰れるが、確かにこの混戦状態に俺とキラが参加したらそれどころじゃなくなっちまうのも正しい。
なんたってアイツの最も得意とするのは、混戦における高機動連続一斉精密狙撃なんだから……下手すりゃ形振り構わない全面衝突に発展する。
せめて状況をもう一度ブレイクしなければ、俺は出せないのかよ。
つくづくキラを討てなかったのが悔やまれる。

“ちょっといいかな、ルーテシアちゃん。いっそシンくんとヴィヴィオを出してみたらどう?”
“……囮にするって意味で、です?”
“そう。きっとキラくんは兎も角、アインハルトちゃんのHPはまだ安全域に入ってない筈だから”

そこで、俺とルーテシアの思念通信に青組司令なのはが割り込んできた。
ノーヴェ相手に思念誘導弾をしこたまブチ込みながらの提案は、キラ生存を逆手にとった内容で。確かに現状で敵に揺さぶりをかけるにはそれも一手だ。……けどそれ以上に、ヤツを倒せなかった彼女自身の失敗を雪ぐ手段みたいなもののようにも思えた。
当初の予定じゃ、最初に仕掛けた砲撃戦で、仲間を守る為に間違いなく突っ込んでくるであろうヤツをなのはが叩き潰すつもりだったから。
しかし、討てなかった。なのは自身は「ちょっと驚いちゃって、狙い逸れちゃった」と言っていたが……多分驚いたことって俺の【行動】そのものにだろうな。加えて、奇しくも俺と同じ状況だったキラの【行動】にもなんだろう。ピンチの時に同じことをしたってのは、妙に気分が悪いものだ。
次出てきたら、確実に墜とすといった意気らしい。強いってことは負けず嫌いってことだし妥当だよな。

“成程、いっそ私たちが誘導すると。……、……ルーテシアから青組各員へ! 総攻撃、集結して各個撃破を狙ってください。それから、シンさん、ヴィヴィオ!”
「おう」
「はいっ」

そして、ルーテシアは決断する。

“出撃、お願いします”
「「了解!」」

よしきた!
二人揃ってガッツポーズ。だったら善は急げ、行動は迅速にしなくちゃな。

「これって、ティアナさんを焦らせるってことですよね?」
「そーなる。俺とお前が参戦すれば次に危ないのはノーヴェかフェイトだ。だったら向こうが強引にブレイクしてくれる……それに乗ればいい」
≪リニア‐カタパルト、ヴォワチュール‐リュミエール、スタンバイ完了。射出します≫
「よし、行くぞ!」
「はい!」

背負ったヴィヴィオからの確認に答えながら、前線目指して加速を開始する。これが戦場でなけりゃ、背中に確かな存在感を主張する柔らかい物体にちょっとは何かしら思いを馳せらすんだが、ここは戦場だしな。つーか我ながら下品な思考をできるようになったもんだ……これも大人になったってことなのか。
それに相手は小学生なんだぞ。キラと違って俺はロリコンじゃねぇ。

“シスコンさんだもんね?”
「黙っとれ!」
「ふぇ!?」
「……あ、いや、悪い。独り言だ気にするな俺は気にしない」
「???」
≪クォーターライン通過≫

おっといかんいかん、つい口に出してツッコミしちまったぜ。……要らぬ茶々を入れてくれるな妹よ。

33魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:06:16 ID:YRpPTBV6O
っていやいや、そんなことはどうでもいいんだ、重要なことじゃない。問題は俺達が前線に確実に近づいてるってことだろ。流石にデスティニーの最大速度は凄まじく、あっという間に戦いの様子を目視できるようになる。
……どうやらノーヴェ相手に追撃戦を仕掛けているみたいだな。赤組は後退中だ。なら、もうアクションがあってもいい頃だが……

“スバル・ナカジマから青組各員へ。ティアが姿を消しました。多分一撃狙ってるものと思われます! 警戒を!”
“うん、報告ありがとうスバル。あと、キラくん出撃したみたい……ルーテシアちゃん?”
“ビンゴ! なのはさんは所定の位置へ、相殺お願いします。シフトE!”
“了解!”
“シンさんはそのまま上空に待機してください”
「わかった」

動いたか。
キッカケはティアナ……予想通りデカイのを撃ってくるようだ。そう、予想通りに。消耗した状態で敵の増援と敵の密集が重なれば、否が応でも距離をとりたい筈だから。
その為のシフトE、前線にいた青組全員が撹乱しながら四方八方に散り、なのはが後退して砲撃体勢、ルーテシアが前進して防御体勢をとる。これに対し赤組は追撃せず、同じように前線を離脱していく。
まるで、蜘蛛の子を散らずかのような一目散っぷり。ものの数秒でバトルステージから戦いの音が消え失せた。

「赤組のみんなも離脱していきますね」
「向こうも戦いっぱなしだった奴らを下がらせたいだろうし、狙いは一緒だ。けど」
「けど?」

嫌な気配が全身に纏わり付く。
錯覚でなく震える大気は、塵のように世界に遍在する魔力素と、今までの戦闘で戦場に散布されていた魔力の大移動を意味していた。二方向、なのはとティアナに向かっての。
かくして、状況はブレイクされた。このままなら、それでおしまいになる筈だ。
しかし、

「二人共あくまで、攻撃の手は緩めないと思う」
「……え──」

そう呟いた瞬間、


世界が光に包まれた。




◇◇◇




『スターライト‐ブレイカー』。
究極的な破壊力と攻撃範囲を有する集束型砲撃は、集束型の名の通り、大気に散らばっている魔力をも集めて取り込んで纏めて射出する必殺魔法。オリジナルは高町なのはのものであり、受け継いだのがティアナ・ランスター。
シフトEは、この二人のブレイカーが激突する展開を想定して実装されたフォーメーションであり、その後の行動指針を含有した計画表だった。

「やぁヴィヴィオちゃん、シン。久しぶり」
「吃驚しましたね」
「あ、キラさん。アインハルトさんも……、久しぶりですっ」
「そう、だな。まさかこうなるってのはなぁ」

だったのだが、ねぇ?

「いや、でも流石にびっくりしたよ。まさか前線にいたみんなが撃墜されるなんてさ」
「同感だよホント……なんで巻き込まれるかなぁ」
「あ、あはははは……」

予定なら。青組と赤組の予定なら、ブレイカー同士の激突にお互い人的被害はなかった。
だって同程度の魔法の激突がお互い判っていて、踏まえて仲良く離脱したんだから。んで俺はリオを保護し、なのはは最後の切り札の準備をするつもりだった。赤組も大体同じつもりだったろう。
しかし予定外なことに、ブレイカーの化学反応とでも言うべき現象が起きてしまったわけで……


混ぜるな危険。どこか所帯染みた注意文が脳裏を掠めた。


世紀末を彷彿させる、融合した桜と橙の光の塊はどこまでも膨らみ続け、離脱して待機状態だった者達を例外なく呑み込み、撃破してしまったのだ!

34魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:07:23 ID:YRpPTBV6O
撃った本人達も呆然、撃たれた者達も呆然、これなんて最終戦争? とぼやきたくなる惨状に暫く動ける者はいなかった。
誰にとっても予想外。生き残りはに全力で上方に逃避した俺withヴィヴィオとキラ。後方にいたアインハルトとなのは、フェイト、キャロとたった7人で、ついでに言うとキャロはたった今なのはに墜とされた。
状況、3対3。

[うぅ。そんなー]
[なんつー締まらない結末……!]
[完全不燃焼って感じねぇ]
[あと任せたわー、頑張ってー]

通信魔法を介して響く、完全に巻き添えを食った戦士達の嘆き(?)の声に思わず脱力してしまう。
光が収まった後にゆっくりと俺達のとこまで飛んできたザフト白服姿のキラと、キラに背負われていたアインハルトも同様、あんまりな光景にお手上げなようで。
実質戦闘中だというのにこうしてゆったりと話ができるぐらいには、なんとも気が削ぎれる間抜けな結果だった。戦闘ってのは不条理と不測の事態の連続であって、予定通りにことが運ぶことはないと解っていても、やっぱりこんなんじゃな。やるせない儚さに身を委ねちまっても仕方ないよなぁ。

「でも、関係ないか。俺達には」
「そうだね。僕達は戦うだけだから」
「シンさん……?」

ああそうだな、実はこんなの俺達には関係ないことだった。
キラの言う通り、目的達成に他のメンバーの状況などどうでもいいことで、お互いを高め強くなる為に、ただ戦うだけだった。
むしろこの状態は歓迎すべきことなのかもしれない。

「なぁ、ヴィヴィオ降ろしてきていいか?」
「勿論。てか僕も降ろしたいし。……二人もフェイトもそれでいい?」
「あ、はい」
「わかりました」

これ以上の作戦行動に意味はない。
子ども達の同意に、通信モニター越しにフェイトは困ったような笑顔で、なのはは何処かさっぱりしたかのような笑顔で賛同する。

[仕方ないよこれじゃあ。……結局、因縁持ち同士の1対1になっちゃったね]
[にゃはは、思い通りにはいかないものだねー。でも、久しぶりにフェイトちゃんとサシで戦えるのは良い機会かも]
[もう、なのはったら]

まったくだ。折角のチーム戦もここまでお互いがズタボロになっちゃ機能しない。みんな同じ考えだからこそ、個人戦に傾倒する。
俺だって本当に久しぶりに、他の邪魔もなくキラと1対1で戦えるのは願ったり叶ったりだ。意外かもしれないが、あのメサイア攻防戦以降にちゃんと戦ったことなど無いのだから。
想定外と言えど、この試合で最高の素材を見つけられたならば、あとは戦えるだけ戦うだけ。

「なのは達が動いた。僕達も」

言葉は交わさずに、なのはとフェイトは西の方へ飛んでいく。彼女らは彼女らの戦域を求めたのだろう。なら子ども達の戦域は中央、俺達は東だ。尤も、それが遵守されるわけじゃないけど、一応。
俺は先行くキラwithアインハルトに追従し、大地を目指す。

「どうでしたか、アインハルトさん?」
「え……?」
「この戦いです。まだ訊くには早いかもですけど」

唐突に、けど自然にヴィヴィオがアインハルトに質問した。端から聞けばなんてことないこと、しかし少女にとっては大事なことのように思えた。
初めてのことばかりだったけど、楽しかったですかって。敵である彼女に正面から訊いて。
対して彼女は、スッと瞳を閉じ、胸の前で何かを掴み取るかのように拳を握り、穏やかに答える。

「ああ……、……本当に、色々と勉強になりました。まだまだ至らぬこの身、未知の戦術、未知の領域……私の世界の可能性を知ることができました。本当に、ありがとうございます」

35魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:08:16 ID:YRpPTBV6O
「まだまだこれからですっ。そりゃ集団戦は終わっちゃいましたけど……、……アインハルトさん、わたしとの1対1、受けてくれますか?」
「はい。喜んで……!」

背負われたままのヴィヴィオとアインハルトの交わした微笑ましいやり取りに、思わず笑みが溢れる。初めて区民センターで会った時よりもずっとずっと良い表情をしていて、少女もまた一つ大人になったのだと思う。
その思いを、今は力に変える。
だから、大地に到達して、二人を降ろして。キラはヴィヴィオとアインハルトの頭を撫でて、俺は二人に拳を突き出して、そうして数歩離れて。
離れて、感傷を棄てた。

「じゃあ、俺達も」
「やろう。全力で」


【SEED】を覚醒させて、【極光の翼】を広げて、俺達は対峙する。


「……!」
「……綺麗……」

子ども達の驚く豹、ふと溢れた感想も、もはや届かない。既に他人は意識にない。
俺達の意識は唯の一つに。


俺の意識はキラの翼に。
赤色の粒子を吹き散らす、白色を滲ませた、底の見えない深い蒼色の魔力翼に。


キラの意識は俺の翼に。
菫色と白色を取り込み、鮮やかでありながら禍々しい、二重の紅色の魔力翼に。


俺達の。いや、人類の業を顕した罪深くも美しい翼に。どうしようもなく、釘付けにされる。
これは【人の魂を喰らった証】──複数のリンカーコアが織り成す奇跡なのだから。

「いくよ……!」
≪シュペール‐ラケルタ転送≫
「こいよ、キラ・ヤマトォ!!」
≪アロンダイト展開≫

逃れられないと解っているから立ち向かう。
俺達は、飛翔する。




◇◇◇




全てはエヴィデンスの掌の上で踊らされた、破滅へと向かう呪いなのだと、かつてクロノは評した。
キッカケは、ジョージ・グレンが地球に持ち帰った羽鯨の化石『エヴィデンス01』。これによって人類は暴走したのだ。
狂喜と狂気の果てに、鯨の遺伝子情報体を無作為に胎児に埋め込んでみるなどという、想像を絶した行いを実際にやってしまった科学者達のせいで産まれた者達──【SEED】を持つ者──が、種の存続を賭けた戦争の時代を戦い生き抜いて。その身に秘めた力を解放してしまって。
今やエヴィデンスの苗床として、次元世界から消え去ろうとしている世界で。


俺達の中には、自分のモノだけでなく、幾つもの魂が存在している。


それは【SEED】がエヴィデンスの能力を一部継承しているから。
エヴィデンスは、あらゆるモノを魔力に変換し、己の糧とする能力を持つ。それは物質だろうが霊的存在だろうが環境だろうが何だって問わない。そういうものだ。
この能力があったからこそ、俺達は戦争を生き抜くことができたと言ってもいい。特にキラの例が分かりやすいか。
考えてみろ。【SEED】の能力は長いこと、保有者の反応速度や演算能力といった神経系に関する能力を一時的に、飛躍的に上昇させる因子だと考えられていたが、つーかそんぐらいしか判らなかったのだが、それじゃ説明がつかない点が幾つもあった。


まず、そもそも、常識として。
そんな能力があるからといって先の大戦で、素人のキラ・ヤマトが4人のザフト赤服相手に生き残れた訳がないんだ。宇宙コロニー・ヘリオポリスが崩壊し、偶然連合のMS・ストライクに乗ることになって。それからずっとザフトのエリート部隊だったクルーゼ隊に追いかけられて何故無事なのかだ。
これは後の時代で検証したことだが、キラの母艦アークエンジェルが第八艦隊と合流する直前の戦闘の時点では、アスランらの実力は確実にキラの上をいっていたという。

36魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:09:20 ID:YRpPTBV6O
己の機体に慣れ、連合のストライクに対する油断を捨て、全力で襲いかかった。そして最高のコーディネイターといえども、素養があったと言えども、当時のキラにそれを退ける実力も運も仲間も無かった。
そんな状況を、たかだか頭の回転が速くなった程度で切り抜けられる訳がないんだ。しかし事実キラは【SEED】で乗りきった。のみならず、ソレをキッカケに操縦技術を大きく向上させた。敵の気配を少し感じられるようになったのも、この頃からだと言っていた。
つまり、真実は。


キラは【SEED】を利用して無意識に、敵パイロットの実力をコピー・吸収し、また四面楚歌を常とする戦場という環境も吸収したのだ。
吸収していって、強くなった。


俺にも似たような経験が幾つもある。頭の中がクリアになって、何故か急に強くなったような感覚は確かにあった。
これは仮説だが、リンカーコアとリンクしているエヴィデンスの遺伝子情報体が、身体的・精神的要因により保有者の生命活動が著しく低下した際に、自己保存の為に活動を開始したのではないかとデュランダルさんは推測している。
そして、己の意思で発現・制御しているうちは、吸収能力は抑られているのではと。


俺達は、エヴィデンスに生かされていた。


だからこそなのか、俺達は無意識に、死者の魂とそのリンカーコアを取り込んでしまっていた。
そして、取り込んだ魂の中でも特に近しく、強い意思をもつ者は自意識を形成した。
だから、


俺の中には、
レイ・ザ・バレルが、
ステラ・ルーシェが、
マユ・アスカが。


キラの中には、
ラクス・クラインが、
フレイ・アルスターが、
ラウ・ル・クルーゼが、
トール・ケーニヒが、


間違いなく、明確に存在している。
魂があって、意識があって、揺蕩っていた。
彼らと話せるようになったのは、彼らを認識した日からだった。あの日、ヴィヴィオとアインハルトの練習試合があって、キラとクロノに真実を教えられたあの日。
そうして一時塞ぎ込み、八神家のみんなに心配をかけてしまったのは記憶に新しい。
だってわけがわからない。
なんでそんなことに。
理不尽すぎて、頭がどうにかなりそうだった。自分の身体のことも、消滅する世界のことも、内に在る魂なことも、なにもかもが。


どうしようもなかった。


確かに、また逢えて言葉を交わせるのは嬉しいかった。
ステラやレイやマユには、どうしても謝りたかった。
だけどそれ以上に。人殺しである自分から死別すら奪われ、彼女らが未だこの世に縛られている現状が、どうしようもなく悲しくて。
なにより、あらゆるものを奪われた俺達から、死を奪われるのは我慢ならなくて。
戦争だから仕方無い、生命はいつか死ぬ。そんな言葉で片付けられるほど命は軽くない。そんな命が、戦争で死んだ命が、ココに在る。


止めてくれと叫びたかった。到底許せるものではなかった。


何故、昔の学者はこんな巫山戯たモノにSEED──種子──と名付けたのか、今となってはわからない。
もしかしたら単に、一時期学会で発表され議論されたSEED──優れた種への進化の要素であることを運命付けられた因子──理論に当てはめたかっただけなのかもしれない。
だけど、こんなモノが花咲く未来なんて、こんなモノで進化する人類なんて、俺達は認めない。
絶対に。
だから俺達は……


こんな運命は壊してやろうと決めた。


強くなって、あらゆる素材を利用して、システムG.U.N.D.A.Mを用いて最大限の悪足掻きをしてやる。
復讐みたいなものだ。意地みたいなものだ。

37魔導少女リリカルなのはVivid‐SEED:2014/07/08(火) 23:09:50 ID:YRpPTBV6O
はいそうですかと、せめて俺達が生きたあの世界だけは簡単に消させるものか。あんな糞みたいな世界でも。目標の為なら死者も利用する異常者になってでもだ。
幸か不幸か、【SEED】の内に在る強い魂のリンカーコアは利用可能で、力を解放すれば物質を【喰う】ことだってできた。
これを、純粋な力と見なして。今までの全てを棄てて。


俺達は、再び力を得ることを選んだ。
世界の為でもなく正義の為でもなく、見知らぬ誰かの為でもなく、自分自身の為に。






──────続く

38凡人な魔導師:2014/07/08(火) 23:13:09 ID:YRpPTBV6O
以上になります。

このSSは実は、作中にあった極光の翼をやりたいだけで始めたものでした。
フリーダムの赤い粒子や、デスティニーの青い残像を魔法で再現するにはどうしたらいいのだろうと考えていたら、複数のリンカーコアを持てばいいじゃないと思い至ったのです。
魔法光は一つのリンカーコアにつき一種類で、色偽装は実戦では大して使われないだろうなーと。その為になんだか壮大っぽい設定を造ってしまったのは中二病のなせる業でしょう

私は先に報告した通り、別スレにて続きを書かせてもらうことになりました。実質スレを独占化してる居心地の悪さのようなものもあり、どうにもモチベーションを保てなくなってしまったこともあるかもしれません。
今まで感想ありがとうございました。できればこれからもそれなりに読んでくれると嬉しいです

39名無しの魔導師:2014/07/11(金) 08:23:05 ID:efqGism60
GJ、またいつでも戻ってきてくださいね

40kiki ◆8OwaNc1pCE:2014/08/23(土) 18:41:59 ID:6w3GP8XE0
仕事を始めるとマジで時間ない…そんなわけで筆停止してたけど作者さんがいなくなるのは痛いな

41名無しの魔導師:2015/01/01(木) 22:36:20 ID:dqjz16Q60
皆さん行ってしまわれたのか。
とりあえず乙です!

42名無しの魔導師:2016/04/15(金) 20:37:58 ID:UILURpZ60
もう誰もいないのか!?
シンアスカ×魔法少女リリカルなのはがよみたい!よみたい!

43 ◆fXXPLD879U:2016/07/11(月) 20:39:34 ID:EUaCa3zU0
まだだれかいるんだろうか……
何事もなければ次の日曜あたりに投下します……
新人です

44 ◆fXXPLD879U:2016/07/17(日) 19:49:36 ID:VHZXILBk0
青がある。海だ。
その中に浮かぶ緑の点。
太平洋に位置するオーブ連合首長国だ。
ひときわ大きな本島、その外縁を走るグレーのライン。
オーブのルート25、島と海を分ける外縁車道だ。
朝の寂しげに空いた道を一台のバイクが走っている。
サイドカーのついたそのシルエットはこの国では珍しいが乗っている人間もまた異様なものだった。
青年がひとり、少女がひとり。
青年は軍人だ。ただしオーブの人間ではない。
宇宙に浮かぶコロニー国家プラントの軍人「ZAFT」の者だ。
少女は見た目こそ当たり障りが無く見える。栗色の髪、野葡萄色の瞳、バイクに乗るのにちょうどいい服装と装備をしている。
しかしこの少女こそが特異なのだ。
彼女こそは時空管理局所属の魔導士、ありていに言えば「異世界人」なのだ。

青年がバイクを止め、二人が長い階段の前に降り立つ。少女は慣れていないのか少しもたついた。
目の前の階段の先を二人が見上げる。木々が生い茂り見通すことは出来ない。
「あの向こうか?」
「はい」
青年の問いに少女が答えると、青年はそれきりどんどんと階段を登り出した。
少女は慌てたようにそれに続いた。

45名無しの魔導師:2016/07/31(日) 09:49:27 ID:qi15GV8U0
久しぶりに覗いてみたらまさかのSS投下とは
こんなに嬉しい事は無い・・・
出来たら続きをお願いします

46 ◆fXXPLD879U:2016/08/06(土) 20:04:18 ID:bK.yipe.0
「本当についてくるんですか?」
少女――高町なのはは半ば懇願するように青年――シンアスカに尋ねた。
シンは足を止めない。これは足場が急で立ち止まると危険だと思ったからであるが、なのははこれを拒絶と受け取った。
空気を察したのかシンは口を開く。
「今のところ君を一人で行かせるつもりはない」
シンは続ける。
「君、一人で突っ走るタイプだろう。俺がついてこなかったらそのまま自分だけで最後まで探そうとどっかに行くだろうと思ったんだ」
「一晩泊まるほどの金も持ってない女の子を放っておくほど人でなしじゃないぞ、俺は」
あくまで譲らないシンの態度に、なのはこの時は諦めたように小さく息を吐いた。
これまでもこのようなやりとりは何度も行われ、また今後も幾度も起こるのだが、それはまた別の話である。
ともかくこの時の言い合いはシンの粘り勝ちだった。

「この上には何があるんですか?」
なのはは意識をロストロギアに切り替える。
「確かハウメア神殿の分社だったっけな、詳しいわけじゃあないけど。ここからじゃ本島の神殿には遠いから季節の行事とかはここでやるとか」
なのはにも連想しやすい場所だった。しかし今上から感じる魔力の質は故郷を思い出し、懐かしんでいられるほど余裕をもてるものではない。

47名無しの魔導師:2017/02/25(土) 03:17:01 ID:75dc0RdwO
久しぶりにきたら…
最後の投下から半年以上たっていたのか
来るのが遅すぎたなぁ


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