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【オリスタ】Change a gear,Change THE WORLD【SS】
1
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/22(水) 21:31:44 ID:ZWWtRpvo0
あるきっかけでスタンドを発現させた不良高校生、汀一勝(みぎわ・かずかつ)
様々なスタンド使いに出会ううちに、彼は自分の住む街を包まんとする「悪意」に気付き。
仲間達と共に立ち向かって行く事になる。
一人一人のできることは些細な事。
でも、その些細な事が重なり、僅かでも世界を変える事が出来る……かも知れない。
これは、そんな物語。
【はじめに】
※作者はこれまでちまちま創作はしてましたが、ジョジョものは初めてです。
※ちまちま創作してた割に、文章や表現力は稚拙、語彙や発想が貧弱であろうかと思われます。
※勢い重視で書くために、作者も気付かない矛盾やミスが出てくるかもしれません。
※更新速度や更新量は不規則になるかと思われます(数日で1スレだけ、とか)
※感想などは(話の途中であっても)お好きなタイミングでぶっこんで貰ってもらって構いません。
……以上、異存が無いということでありましたら、よろしくお願いいたします。
2
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/22(水) 21:32:28 ID:ZWWtRpvo0
【プロローグ゙:汀一勝・「ギア」の覚醒】
「ぐ……あ、ああ……」
……鼻にまとわりつくような、甘ったるい匂い。
……立ち上がる事もできない程の眩暈と。
……腹の奥から込み上げる、吐き気の中。
『もし、君に素質があれば』
「あ、があぁ……」
腹と口を押え、うずくまる「彼」に。
彼を見下ろす「男」が、静かに声を投げかける。
『君は、スタンドという才能に目覚めるだろう』
(ス……タンド?)
『そして、その才能を、君の思うがままに使うといい』
学ランの下に着ていたシャツに、じっとりと、自分の汗が滲み貼りつく不快さを感じる中。
『その力が何であれ、君がその力をどう使うのであれ……』
目の前が暗くなり、男の声が遠くなり。
『私にとって、それは――』
最後、独り言ともとれる男の言葉を聞きながら。
彼の意識は、眠るように沈んでいく……
3
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/22(水) 21:34:27 ID:ZWWtRpvo0
>>2
K県の県都、K市の西に隣接する街、南風(なんぷう)市。
南に太平洋を望み、市街地の北には緑豊かな山岳地帯を控える、人口6万人ほどの地方都市。
K市との市境近くには空港を有し、自然が豊かなために海岸沿いや山の中に別荘地が存在し。
かつては国や県との共同で、海洋研究の新たな拠点として大規模な施設が建てられた事もあったが。
特に目立った産業が娯楽があるわけでもなく、K市への人口流出に頭を悩ませる、そんな街である。
――そんな街にも、朝はやってくるわけで。
「おはようございます、先生」
「おー、おはよう」
県立海鳴(かいめい)高等学校。
南風市の中心街から南西に位置する、工業科と普通科を併設する高校である。
登校してきた生徒たちが、校門前に立ついかつい顔と体つきの体育教師に挨拶して校舎へと向かって行く。
爽やかな喧騒が包みこむ、いつもの朝の光景。
「あ、おはよーす、センセー」
「おー、汀。今日は遅刻せんかったか」
「ええー……そんないっつも遅刻してるみたいに言わんでくださいよ」
「言われたくなかったら遅刻を減らせ、な?」
「う……ま、まぁ、努力はしますわ」
体育教師に呼び止められ、苦笑して頭を掻く、丈の長い学ランを着た生徒……汀一勝(みぎわ・かずかつ)。
工業科の機械コースに所属する2年生であり。
先の教師の言葉どおり……遅刻の常習者で、授業をサボることも多々。
他校の生徒と喧嘩をしたりもする、いわゆる「不良」である。
「努力するモンじゃねぇぞ。ま、気をつけろ。今日もしっかりやれよ」
「了解しました、先生! んじゃ!」
「……ははは、やれやれ」
び、と顔の横で人差し指と中指を立てて笑い、校舎に向かう汀の姿を。
体育教師は呆れた様子で、しかし、笑顔で見送っていた。
不良ではあるが、誰もが「どこか憎めない」と思っている――汀一勝はそういう奴なのである。
4
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/22(水) 21:36:27 ID:ZWWtRpvo0
>>3
「ふわあぁ……」
大きな欠伸をかましながら汀が向かったのは教室……ではなく、敷地のほぼ中央に立てられた食堂。
自販機の紙パックのバナナオ・レを買って飲むのが汀の朝の日課なのである。
自販機の前で、財布を取り出し、100円玉を投入口に持って行く――
「おはよーッス! 兄貴ぃ!」
「うを!?」
突然、真後ろで大きな声を出され、手にしていた100円玉を指から滑らせ。
「おっと」
慌ててキャッチしようと、左手を差し出す汀――
(……え?)
100円玉は、地面に落ちなかった。
しかし、汀の掌の上にもなく。
「なんだ……こりゃ?」
汀の左肘から現れた、黒っぽく半透明な腕が、100円玉を掌の少し上でキャッチしていた。
「え、えええ?」
驚き、目を擦る汀の前で。
その腕はすぅ、と消え、掌に100円玉が落下する。
「な、なんだ……今の?」
「あ、兄貴? どーしたんスか?」
心配そうに話しかける声がして。
「どうしたんすか、じゃねえよ。びっくりしたろ、沼ぁ」
「ひゃ、す、すいませんッス!」
振り向きながら、汀は背後に立っていた、背の低いツンツン髪の生徒――沼田岳人(ぬまた・たけひと)の頭を軽く小突いてから。
改めて、自販機に100円玉を投入する。
沼田は普通科の1年生であり、また、不良でもある。
かつて他校の不良に絡まれていたところを汀に助けられて以来、汀を兄貴と慕い付きまとっているのだった。
そんな沼田を、汀も「面倒臭い」とは言いつつも「沼」と呼んで可愛がっていた。
5
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/22(水) 21:41:01 ID:ZWWtRpvo0
>>4
「朝から元気だなー、おめーは」
「ははは、元気だけしか取り得ないッスから」
バナナオ・レの紙パックにストローを突き刺し、ずちゅー、と一気に半分ぐらい飲む汀。
「ところで兄貴、覚えてるッスよね。今日……」
「ああ、覚えてる……学校終わった後、美良川の河川敷、兎橋のとこだったな」
この日、汀はある男と『喧嘩』の約束をしていたのである。
もっとも、先にけしかけて来たのは相手の方であり。
これまでも何度か汀や海鳴高校の他の生徒にちょっかいをかけてきている……面倒臭い相手なのだった。
「あの馬鹿、何回俺にボコられりゃ気が済むのかねぇ」
「あー、あれッスね。馬鹿は死ななきゃ直らないって奴」
「進化すると死んでも直らない、ってなるけどな」
にやにやと笑い、言うところの『馬鹿』の顔を想像する2人。
「まぁ、またボコボコに痛めつけてやるよ、あの野郎は」
「さすが兄貴、頼もしいッス」
残りのバナナオ・レを一気に飲み干して、紙パックをぎゅっと握り潰したところで。
予鈴が鳴り響き、生徒たちが慌しく動き出す。
「じゃ、また後で、兄貴!」
「おう、後でな、沼。さて」
空の紙パックをゴミ箱に放り込み、
「俺もマジメに授業に行きますかねっと……」
面倒臭そうに背伸びをして教室に向かいながら。
(しかし、さっきの幻覚といい、昨日の『あれ』といい……なんなんだ)
自分の身に起きた奇妙な出来事を、ぼんやりと考えていた。
そして。
この日を境に、汀一勝の日常は変わっていく。
6
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/24(金) 21:11:49 ID:Gt75gLnE0
>>5
【1:ギア・チェンジャー、始動】
その日の放課後。
「あー、ちょっと遅くなったッスねー」
「構うもんか。待たせとけ」
美良川の河川敷を、汀と沼田が並んで歩いていた。
美良川は、南風市の北の山地から市内を縦断するように流れる二級河川であり。
河川敷には小さな公園やランニングコースがあったりして、市民の憩いの場となっている。
汀達の目指す兎橋は中心街のやや南に架かる小さな橋であり。
公園などからは離れ人通りも少ないことから、不良や暴走族達の溜まり場になっているのである。
(それにしても……)
川縁を歩き、沼田の声に相槌を打ちながら。
汀は、昨日の事を思い出していた。
学校からの行き帰り、特に用事が無ければ汀はいつも美良川沿いを通っている。
少しだけ遠回りにはなるものの、信号に引っかからないのがいいし。
なにより、子供の頃から遊び慣れ親しんだ河川敷や、そこから見える街並みがなんとなく好きだからである。
……昨日のこと。
学校で遅刻や授業のサボリなどなどで生活指導の教師と生徒会長に呼び止められ、注意を受けていた汀は。
いつもより遅く、川沿いの道を帰路についていた。
日が傾き、薄暗くなった川沿いの道に人気はなく。
それでも、勝手を知った道であり、何事も起きようもなく。
汀は家に帰りつく――筈だった。
「ちょっと、君」
「え!?」
7
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/25(土) 21:53:42 ID:1AKsv4L.0
>>6
突然声をかけられ、背後に人の気配を感じ、驚き振り向いた汀の目に。
夕日の逆光で顔や姿が影になった人物……おそらくは男である……と。
その者が右手に持った金属製の小さな『霧吹き』が飛び込んできて、直後……しゅっ。
「うぐぅ!?」
顔に、霧状の液体が噴きつけられ、汀はそれを吸ってしまう。
鼻にまとわりつくような、南国の果物の香にも似た甘ったるい匂いが鼻腔を襲い。
「て、てめぇ、何を……!?」
男の行為に怒り、掴みかかろうとするが。
突然に襲いかかる、立ち上がる事もできない程の眩暈と、腹の奥から込み上げる嘔吐感に。
「ぐ、うう……」
膝をつき、うずくまった汀に。
(そう言やぁ、よう分からんことを言ってやがったが……)
男は、素質だのスタンドだの、汀の理解できない言葉を投げかけ。
その全てを聞き終える前に、気を失ってしまった……のだが。
「ん、あ……あれ?」
その後、5分程度経った後、汀は目を覚ましていた。
多少鼻に甘い匂いは残っていたものの。
眩暈も吐き気も感じず、あれほど掻いていた汗も引き。
むしろ、不気味なぐらい身体が軽く、調子よく感じていた。
様子を見、早めに寝てはみたものの、起きた後の体調も良く。
漫画やゲームであるような所のゾンビ化、みたいな変な事も無く。
(なんだったんだろうな……本当に)
謎の男に対する疑問は有るものの、とりあえず「変な奴もいたもんだ」と、楽観的に片付けていた。
……それに。
「あ、居るみたいッスよ」
「ああ」
兎橋の下。
殴らないといけない『相手』を確認した汀と沼田が、足を速める。
「おらぁ、待たせたな! 長濱ぁ!」
それに、これから始める喧嘩の前では、自分の身に起こった事やその他の事など、汀にとっては些細なものだった。
8
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/26(日) 19:13:55 ID:UvB4Q8Cs0
>>7
名を呼ばれ、近づいてくる汀と沼田の姿を確認し。
「あ〜、おっせぇんだよ! 何様のつもりだぁ〜、汀ぁ〜!?」
長めの髪を後頭部の上の辺りでまとめた不良――長濱末吉(ながはま・すえきち)は咥えていた煙草を投げ捨て、汀を睨みつける。
長濱は、南風中央高校、通称「中央」の2年生であり。
1年の時に、海鳴の女子生徒にちょっかいをかけていたのを汀に止められ、ボコられて以来。
汀を敵視し、事ある毎に手を出しては……大抵の場合において反撃され、やりこめられていた。
今回の喧嘩も、長濱が海鳴の生徒に難癖をつけたのが発端である。
「てめぇこそ何様だ、ああ? 何度も俺や俺の高校の奴に手ぇ出しやがって……すまん、沼」
「ういッス、お預かりするッス」
汀も長濱に睨み返しながら、学ランを脱ぎ沼田に預け。
歯車の絵がデザインされたTシャツ姿になる。
「っていうかよ、長濱……今日はお得意の仲間連れや闇討ちは無しかい」
長濱との間合いを計り、指をポキポキと鳴らしながら、周囲の茂みや物影に気を配る汀。
過去の襲撃では数人がかりだったり、不意打ちだったりと卑怯な手も厭わない長濱だった。
まぁ、その複数が役に立たなかったり、不意打ちがあっさりバレたりと……上手く言ったためしは無いのだが。
「へ、へへへ。お得意、ね。言ってくれるじゃん……は、ははははは!」
汀の言葉に、何が楽しいのか、ケラケラと笑う長濱。
「悪ぃが、今日の俺様はこれまでとは全然違うんだぜぇ〜! そんなもん必要ないくらいによぉ〜!」
「へぇ……悪いが全然そうは見えないけどな。いつも通り見ててウザ暑苦しいぜ」
「へっ、俺にブチにめされた後でも言ってられっかよぉ〜? みぃ〜ぎぃ〜わぁ〜?」
「……ウゼぇ。が」
テンションが高いのは、いつも通りの長濱だが。
(なんだ、コイツの妙な自信は?)
いつもとは少し様子が違うのを感じ取り、警戒しつつ。
拳を構え、長濱と相対する汀。
「まぁいい。さっさと始めて終わらせるぜ!」
「俺の勝ち、でなぁ! うらぁ!」
長濱が先制で放ったパンチを、身を小さく反らしてかわし。
牽制するように、数度パンチを打ち返す汀。
その攻撃をさばき、じり、と一歩後退して間合いをとり。
「うらぁ!」
右のハイキックを放つ長濱、だが。
「だりゃぁ!」
「ふごぉっ!」
汀が腕で蹴りを受け、押し返し。
体勢が崩れた長濱の顔面に、ストレートを叩きこむ。
「よっし、このままカタつけてやる!」
「さすがッス、兄貴!」
沼田の声援を背に受けながら、顔を押え俯きながら後ずさる長濱に近づく直前――
――ぞっ。
(!?)
嫌な予感が寒気となって、背筋を走り……汀が思わず足を止めた。直後。
「ぐ……《チェンジ・イン・パワー》!」
長濱の叫びと共に、汀の目の前を「拳」が通過し。
顔に、その風圧が感じられ。
「な、なんだ、こいつは!?」
長濱の前。
その身を守るかのように、拳を構えた。
顔や身体に穴の開いた、人間――のようなものが現れていた。
9
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/28(火) 21:02:10 ID:xQEDwgzw0
>>8
突如現れた存在に、後退する汀。
その顔に、驚きと戸惑いがありありと浮かんでいた――だが。
「な、なんだとぉ〜!? 汀ぁ、てめぇ、見えるのかよ、俺の『スタンド』が!?」
長濱もまた、汀の反応に驚いていた。
「スタンド、だと? これが……?」
謎の男の言葉を思い出しながら。
汀は、長濱とそのスタンド……チェンジ・イン・パワーを交互に見比べる。
「ああ、そうだよぉ。てめぇも変な『霧吹き男』にやられて身に付いたんだろぉ?」
(――!? 俺と同じだ。だが、俺はこんなの、知らんぞ?)
自分と同じ経験をした長濱の言葉を聞きながら、また戸惑いを覚える汀。
「あー、凹むわー、マジ凹むわー……コイツで一方的にボコれるって思ったのによぉー……」
長濱も、相手にスタンドが見えているという誤算で。
自分の卑怯な企みが不発に終わった事を嘆きながら俯き、先までのテンションが噓のように静かになる。
そして、もう一人。
「な、何やってるんスか? 兄貴!? 何か居るんスか?」
「……沼ぁ、お前には見てないのか? こいつが」
「見えてないって……何がッスか?」
スタンドが見えていない沼田が、困惑した表情を浮かべ。
汀と長濱の間の空間を不思議そうに見ながら、近づいて来ようとするのを。
「……何が起きてるか、俺にもよう分からん。が、なんかヤバいぜ、これは。だから近づくな、沼」
「あ、う、ういッス」
険しい表情になった汀が止める……直後。
「あ、ああ……? あ、そうかぁ、あはははは!」
突然、長濱が何かを思いついたかのように指を弾き、顔を上げ、高笑いを浮かべる。
「汀ぁ、正直てめぇがスタンドが見えるってんで、ヤベぇと思ったぜぇ。で・も・よぉ〜」
ざっ。
長濱が一歩踏み出すと、合わせてチェンジ・イン・パワーも一歩進み。
「てめぇの驚きよう……もしかして、てめぇ、スタンド出したことが無ぇんじゃないのかよぉ〜!」
「……ぐ」
出すも何も、そんなもん知らねぇ……と言ってしまうと負けな気がして。
言葉を飲み込み、唇を噛む汀。
「ならよぉ、てめぇがスタンドを出す前にボコればいいだけじゃんよぉ〜!」
勝ち誇ったように笑い、チェンジ・イン・パワーと共に前進する長濱。
「覚悟しなぁ? みぃ〜ぎぃ〜わぁ〜!」
ビュオォ!
風を切る音と共にチェンジ・イン・パワーの拳が振られ。
「う……!」
辛うじて上体を反らしてかわす汀だが。
「うらぁ!」
「く――!」
拳に気をとられ、チェンジ・イン・パワーの足払いを受け。
尻餅をつくように倒れる汀。
「ははっ、良いザマだなぁ〜! 汀ぁ〜!」
目前に迫る、チェンジ・イン・パワーの姿。そして。
「こ・れ・で〜! お終いだぁ〜!」
振り上げられたチェンジ・イン・パワーの拳が、勢い良く振り下ろされる――
「……ざけんな」
……がちっ。
汀の頭の中で、歯車が噛みあうような音が聞こえた、気がした。
「お前ごときに、こんなワケの分からん物に……やられてたまるかぁー!」
汀の中の怒りが、闘争心が沸点に達し、叫びに変わった瞬間。
……ギャン!
「な、何いいぃ〜!?」
「こ、これは……」
汀の目の前に『それ』は現れた。
10
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/30(木) 17:53:28 ID:b03YRWrE0
>>9
それ、は。
汀と、チェンジ・イン・パワーの間に、片膝をつくような格好で現れた。
交差させた腕でその攻撃を止める、黒っぽい、ロボットのように無表情な顔をした人型の存在。
腹部や肩、さらには関節部には歯車やネジのような物が見え。
動きに合わせ、ギャリギャリと小さく音を立てて動いていた。
「な、なんだよてめぇ〜!? スタンド出せるんじゃんかよぉ〜! マジ凹むぜぇ〜!」
「うるせぇよ、この馬鹿!」
長濱が頭を抱え、絶叫するのに怒りを覚え。
殴ってやろうか、そう汀が思った刹那――ギャアン!
「ふおぉ!?」
汀のスタンドが、チェンジ・イン・パワーに拳を放つ。
「こ、この野郎! やってやれぇ! チェンジ・イン・パワー!」
その攻撃を咄嗟に捌き、拳の打ちあいを展開する、2体のスタンド。
「ぐ、は、早い! くっそぉ!」
パワーはほぼ互角、しかし、汀のスタンドの攻撃のスピードが早く。
長濱の顔に、焦りが浮かぶ。
その一方。
(すげぇな……これ)
現れた自分のスタンドを動かし、戦わせながら。
(俺が思う通りに、いや、思う前に動いてくれやがる。なんていうか、体の一部みたいだな)
自分や長濱に与えられた力……スタンドの凄さに感心していた。
「く、うらぁあ!」
カウンター気味に放たれた、チェンジ・イン・パワーの攻撃を己のスタンドで受け止めながら。
(まだよう分からん事も多いが、分かってきた事もあるな)
汀は、その性質を次第に、自分でも驚くほど冷静に分析していく。
(このスタンドって奴はスタンドを使える奴にしか見えない)
攻防の最中にも拘らず、ちら、と背後を見る汀。
後では、沼田が未だに困惑した様子で汀を見ていた。
「なに余所見してんだよぉ!」
(そして)
長濱の怒号と共に、チェンジ・イン・パワーが放つ回し蹴りを。
自分のスタンドの両腕で受け止めさせる汀――同時に自分の腕にも感じる、蹴りの衝撃。
(そして、スタンドが食らったダメージはそれを操る奴にも行く……なら!)
「うあぁ!?」
チェンジ・イン・パワーの足を掴みながら反対の足に足払いを放ち、その体勢を崩させ。
「だりゃぁあ!」
隙の出来た相手のボディに、汀のスタンドの拳が放たれ。
「ぐぶぅ!」
攻撃がヒットすると同時に、チェンジ・イン・パワーがよろよろと後退し。
「おっと、逃げるな!」
「ぐ、ぶ、ぐふぅ!」
汀のスタンドの追撃が更にチェンジ・イン・パワーのボディを捉え、吹き飛ばし。
「ぐ……な、なんだよ、凹むわ……スタンド使えるんじゃんかよ……」
長濱が腹を抑えてうずくまる。
「いや、俺も正直よう分からんわ。スタンドだっけか? 今初めて出した、てか出て来た」
「ふっざけんな……初めて出して、それだけ操れるわけが……」
「俺さぁ、ゲームとか家電とか、説明書見ない派なんだよ。それでもそこそこ上手くできるし、コイツも同じ事じゃねぇの?」
「なんだそれ……ワケ分からんわ……」
「それか、お前の要領が悪いだけだったんじゃねぇの? さぁて」
腕を振り回しながら、己のスタンドと共に、うずくまったままの長濱に近づく汀。
「二度と俺や他の連中に手出しできないよう、ボコらせてもらうかね」
「……ボコる? ボコるねぇ……あ、は、あははははははは!」
11
:
◆gdafg2vSzc
:2016/06/30(木) 21:45:01 ID:b03YRWrE0
>>10
「な、こいつ!?」
突如、顔を上げて笑う長濱に驚き、足を止める汀に。
「ボコるのはこっちだぁ!」
倒れこんでいたチェンジ・イン・パワーが起き上がりざま、拳を放つ。
「へっ、てめぇの遅い攻撃が、当た――!?」
その攻撃を先と同じ感覚で捌こうとした汀の目の前で……ビュゴォ!
先までより早い攻撃が、ガードするより早く汀のスタントの頬を捉え。
「うぐぅ!?」
(ば、馬鹿な!?)
ずしりとした攻撃のインパクトが汀の頬にも伝わり……じわり、と口の中に血の味が広がる。
「どうしたぁ〜!? 誰の攻撃が遅いってかぁ〜!」
(な、なんだ!? コイツのスタンドのスピードが、いや、パワーもさっきより上がってやがる!?)
チェンジ・イン・パワーの、先までより早く重い攻撃のラッシュが汀のスタンドを襲い。
ガードの間を掻い潜ったパンチや蹴りが、じわじわとダメージを与えて行き。
「ぐ、ぐうう……!」
遂に汀が片膝をついて座りこむ。
「あ、兄貴ぃ!?」
「大丈夫だ……沼ぁ」
背後で心配げに声をかける沼田に、汀は背を向けたまま手を振って答え。
ぺ、と口の中に溜まった血を吐き出し、長浜を睨む。
「へっへっへ〜、形勢逆転だなぁ〜、汀ぁ〜!」
「てめぇ……何をしやがった」
「汀ぁ、お前のスタンドが殴ってくれてよぉ〜、めっちゃ痛かったぜぇ〜、で・も・よぉ〜」
まだ痛そうに腹をさすりつつも、満面のドヤ顔を見せる長濱。
「お陰で、俺のスタンドの『能力』を発動できたぜぇ〜!」
「の、能力だと?」
「ああ! 俺のスタンド、チェンジ・イン・パワーは、俺自身がダメージを受けることでパワーアップするんだよぉ〜!」
「……!」
(……厄介だな。一気に仕留めないと、どんどん強くさせちまうか……どうする?)
長濱の言葉に小さく驚き、表情を強ばらせ、考え、沈黙する汀。
「てめぇがこっちを追い詰めれば追い詰めるほど、こっちが有利になるんだぜぇ〜! へへぇ、ビビって言葉も出ないかよぉ〜?」
その沈黙の意味を、自分に対する観念だと勝手に思い込み。
長濱が調子に乗ってまくしたてる。
「さぁ、さっき言った通り、俺がボコらせて貰うぜぇ〜!」
「は、ははは、なるほどねぇ……知らなかったぜ」
「な、何がだ!?」
拳を構え、再び攻撃の体勢を自分のスタンドに取らせながら。
汀が、長浜を指差し、小馬鹿にするような笑みを浮かべる。
「てめぇ、どMだったのかよ」
「な、なにいいいぃ!? 違うわぁ!」
「違うモンかよ、殴られてパワーアップとか。どMじゃねぇとそんな能力出てこねぇんじゃねぇかよ?」
「ぐ、ぐぐ、こ、この野郎……!」
あからさまな挑発に簡単に乗り、怒りを露にする長濱。
「野郎、ぬっ殺す! いけぇ、チェンジ・イン・パワー……」
「いいのか? そのまま突っ込んで来て?」
「はぁ!?」
そこに、汀の次の『一手』が放たれ。
チェンジ・イン・パワーの攻撃が止まる。
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