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決闘バトルロイヤル part4
671
:
激瀧神 『王者の調和』
◆EPyDv9DKJs
:2025/05/04(日) 15:52:51 ID:TY0Xnnho0
状態表に思いっきりミスがあったので修正です
【海馬瀬人@遊☆戯☆王】
[状態]:心身の疲労(中)、リゼを見捨てた後悔、フライング・ペガサスに乗車中
[装備]:海馬瀬人のデッキ(オベリスク入り)&新型デュエルディスク@遊☆戯☆王THE DARK SIDE OF DIMENSIONS、
[道具]:基本支給品×2(自分、無惨)
[思考・状況]基本方針:この決闘を粉砕したのち、アテムと決着をつける
1:檀黎斗と、あの異形(無惨)と闘うための方法を模索する。あの自称神はこのオレが粉砕してくれるわ!
2:首輪を解除したい。遊星とやらはどれほどのものか。
3:アテム及び共に存在しているであろう遊戯を探す。だが今は遊星とやらと合流だ。
そうそう死ぬとも思えないが、凡骨共が死んで心に隙が生まれれば万が一があるかもしれない。
器の遊戯の実力にも興味がある
4:残酷にも殺された少女(条河麻耶)のように闘う意志も牙も持たぬ参加者と遭遇した場合、保護も検討してやろう。
5:ジャック、冥王、貴様らを認めてやろう。貴様達も王だとな。
[備考]
※参戦時期は本編終了後から映画本編開始前のどこか。
※心意でオベリスクの巨☆神☆兵@遊☆戯☆王を手に入れました
【明石@艦隊これくしょん】
[状態]:ケッコンカッコカリによる強化(耐久や幸運以外意味なし)、両足に傷(走るのに少し苦労する程度に負傷)、疲労(大)、精神疲労(大)、フライング・ペガサスに乗車中
[装備]:指輪@艦隊これくしょん、大地鳴動『ヘヴィプレッシャー』@アカメが斬る!、神月アンナのデュエルディスクとデッキ@遊☆戯☆王ZEXAL
[道具]:基本支給品×5(自分・ジャック・しんのすけ・ポセイドン・うさぎ)、一斬必殺村雨@アカメが斬る!、454カスールカスタムオートマチック@HELLSING、オルタナティブ・ゼロのデッキ(サイコローグは消滅のためブランク状態)@仮面ライダー龍騎、ランダム支給品×0〜1(確認済み、治療系の類ではない)、ジャックのデュエルディスクとデッキ(心意カード+冥王結界波入り)@遊☆戯☆王5D’s
[思考・状況]基本方針:ハ・デスを倒して生きて提督の下(元の世界の方)へ帰る。
1:蛇王院さん……無事でしたけど、素直に喜んでいいのかなぁ。
2:九時間ほど散策して、指定の場所に遊星さんと合流。
3:帝具、ちょっと調べたくなってしまいますねー。
4:首輪を解除できるだけの装備を整えないと。首輪は確保できましたが。
5:特体生って艦娘余裕で超えてるじゃないですかやだー!
6:ジャンヌには最大限警戒。あれがゴロゴロいたら艦娘ですらかませなりますよ!
7:あの寺何怖いんだけど!?
8:ジャックさん、冥王さん、野原さん……
9:フライング・ペガサスで真っすぐ向かいましょう
[備考]
※改装後、ケッコンカッコカリ済み、所謂ジュウコンなし、轟沈経験ありの鎮守府の明石です。
※艤装はありませんが、水上スキーそのものは可能です。
時間制限については特に設けてませんが長時間は無理かなと。
※指輪は没収されていませんが、偽装がないため耐久以外ほぼ意味がありません。
※蛇王院、遊星と情報交換しました。
※ジャックのデッキで心意システムで生成できるカードはレッド・デーモンズ(或いはレッド・デーモン)関係のみで、
かつ必ずシンクロ素材にレッド・デーモンズ・ドラゴンを素材としたものでなければ発生しません。
必要なものが指定されてる代わりに、心意の条件は他の参加者よりも緩い条件になってます。
現在生成されたのは以下の通り
レッド・デーモンズ・ドラゴン・タイラント@遊戯王ARC-V
琰魔竜 レッド・デーモン@遊戯王OCG
琰魔竜 レッド・デーモン・アビス@遊戯王OCG
琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル@遊戯王OCG
琰魔竜王 レッド・デーモン・カラミティ@遊戯王OCG
※シグナーの痣がないため現時点では赤き竜の由来カード、
スカーレッド・ノヴァとセイヴァー・デモンは出せません。
※サイコローグはオベリスクの攻撃で消滅したため、
ブランク状態になっています
672
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/05/04(日) 17:35:35 ID:TY0Xnnho0
場所のこと忘れてました
【E-2/朝/一日目】
673
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 00:59:59 ID:VQtoL8aQ0
皆様投下お疲れ様です。自分も投下します
674
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:01:54 ID:VQtoL8aQ0
決闘と称した殺し合いで、会場に解き放たれたのは参加者だけではない。
ソリッドビジョンとも異なるシステムで実体化した、デュエルモンスターズのクリーチャー。
あらゆるライダー世界の記憶を元に再現された、仮面ライダーの敵である怪人。
主にプレイヤーの妨害へ動く、自我無きNPC達の種類は千差万別。
人型もいれば獣や虫に近い個体や、果ては機械タイプのものまで様々。
当然の如く飛行能力を有するモンスターもおり、空中から参加者を付け狙うようプログラムを受けている。
内の一体であるハーピィ・レディが首を断たれ、呆気なく役目を終えた。
10体近く配置されたものの、5分と掛らず全滅。
生物としての体液は一滴も流れず、最初から存在しなかったように死体は消失。
遮る者のいなくなったルートを進むは、蛍光イエローのボディを持った異形の参加者。
歪められた歴史を己が身に宿し、悪の帝王を追跡中の飛電或人だった。
「何処に行った……?」
万丈の制止を振り切り飛び立ち、正確に数えていないがそれなりの時間は経ったように思える。
だというのに一向にDIOの姿は見えず、現れるのと言えばNPCのみ。
アナザーゼロワンの飛行能力を駆使しても、追い付く様子が見られない。
難しく考えるまでもなく、DIOが逃げたのとは別の方へ来てしまった可能性が非常に高い。
或人を含め先の場にいた全員、目晦ましの妨害に遭い具体的にどの方角へ向かったか分かっていないのだ。
追い掛けるつもりがその実、無意味に空を飛び回っていただけ。
何とも間の抜けた事態も起こり得ないとは言い切れず、実際にそうなってしまっている。
いや、本当にそれが真実か?
DIOを追い掛けビルドドライバーを取り戻すのは口実に過ぎず、実は一人になる事が目的だったんじゃあないのか。
煩わしく善意を説く者達から離れ、復讐相手の捜索に時間を掛けられる。
悪意へ吹っ切れ、復讐を為す力を手に入れる。
その為に万丈達が共にいるのは都合が悪く、だからそれらしい理由を付けて離れて――
「……っ」
問い掛ける自分自身の声は、耳を塞いでも遮断出来ない。
そんなことはない、あってはならないと言い返すように速度を上げる。
全身を撫でる風は変化中の肉体越しにも冷たく、動揺で火照った頭を幾分冷やす。
善意か利己的な復讐心か、どちらが己の本心かも分からないまま飛ぶ。
675
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:02:31 ID:VQtoL8aQ0
『ご機嫌ようプレイヤー諸君』
やがて収穫の得られない空の旅は、神の声が響き渡り中断を余儀なくされた。
突然映し出された姿に驚くものの、6時間前と同じ光景故困惑は長続きしない。
流石に定時放送は無視出来ず耳を傾ける。
「そんなに大勢が……」
非常に喧しく腹立たしい内容だったが、怒り以上に衝撃が大きい。
1日にも満たない時間で、40人もの参加者が命を落とした。
自分が迷いを抱えたままあっちこっちへ動き回ってる間に、これだけの人数が殺されたのだ。
驚きと、次いで後悔にも似た苦々しさが湧き上がる。
ゼロワンに変身出来ずとも、戦う為の力はあった。
助けられる力があったのに、一体自分はこの6時間で何をやっていたのか。
同時にこうも考えた。
滅はまだ生きており、自分の手で破壊する機会は失われていない。
復讐を果たすのが不可能になっていない事実へ、安堵を抱いてしまった。
我が事ながら身勝手で嫌悪が襲い、しかし滅の生存に「良かった」と内心呟いたのも否定出来ない。
自分以外の者の手で滅が破壊されるという、到底納得のいかない事態は防がれた。
かといってストレートに暗い喜びを口にするには、善意を捨て切れていない。
泥がへばり付くように重い心で、一旦地上へ降り立つ。
良くも悪くも、放送は一度頭を整理する機会を与えた。
脱落者の発表に意識が向かいがちだが、禁止エリアも軽くは見れない。
機能するまで猶予があるとはいえ、確認もせず動き回った結果手遅れは御免だ。
「……ってか今俺がいるとこじゃん!?」
地図アプリを起動したところ、現在位置はF-3と判明。
つい今しがた指定を受けた三つの内の一つ。
脇目も振らず飛んで来たが、まさかピンポイントで禁止エリアに入り込んだのは予想外。
機能するまでの2時間をのんびり使う気はない。
支給品の放置されているらしいエリアでもなく、好んで訪れる者はまずいないだろう。
早急に離れようと羽を広げ、
676
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:03:20 ID:VQtoL8aQ0
「え……」
視界の端へ映るソレに気付いた。
地面へ横たわり、ピクリとも動かない。
路上に放置された自転車だとか、風で飛ばされて来たゴミだとか。
そういった日常で目にするものとは違う、明らかな異物。
心臓が掴まれるような、嫌な予感を覚え近付く。
早朝の寒風に吹かれ、艶を失った金の長髪が寂し気に靡いている。
元々白かったろう肌は今や、血の気を完全に失って青白く変貌。
光が宿らない瞳が最後に何を見たのか、或人は知らない。
「この子は……」
殺し合いが始まり間もない頃に会った、名も知らぬ少女。
ロクな自己紹介もせずに別れ、それから何が起きたのか。
目の前のソレが答えだとばかりに、骸と化し或人と再会を果たした。
ここでようやく気付いたが、F-3は自分と少女が別れた場所からそこまで離れていない。
つまり彼女は檀黎斗による最初の放送が行われた後、早い段階で殺された可能性が高い。
「じゃあ俺が、この子と一緒にいたら……」
殺されずに済んだんじゃないか。
口に出したのは所詮たらればだ、もし本当に少女に同行しても死を防げたかは実際の所不明。
第一あの時は、滅への復讐以外に思考を割く余裕なんてなかった。
仮に少女の方から同行を申し出たとしても、首を縦には振らなかったろう。
だが己の行動が彼女の死に影響を及ぼしたかもしれないのを、むざむざと見せつけられては。
一切の動揺を抱かず、過ぎた事だと割り切るのは困難を極める。
と、瞳が一点を捉える。
細い首に填められた、年頃の少女のアクセサリーにしては倒錯的なリング。
参加者共通で檀黎斗が送った、命を支配下に置かれている証。
支給品こそ周囲に見当たらないが、首輪は手付かずのまま。
いずれ主催者と直接対決に臨む為にも、解除の為のサンプルを手に入れる。
そういった目的以外にもう一つ、首輪の持つ価値を放送前に知った。
「首輪があれば、滅がどこにるかも……」
自分の声ながらいやに遠くに感じ、意識せぬまま手が伸びる。
掴んだ首は細く、僅かに力を籠めれば魚の小骨よりも呆気なくへし折れそうだった。
体温を失ったが故の冷たさが、異形の指越しにも伝わり、
「――っ!」
ようやっと自分が何をしてるのか理解し、慌てて腕を引っ込める。
首輪の必要性を承知の上だとて、躊躇なく死体を破壊しようとするなんて。
自分自身が俄かに信じられず後退るも、首を放した際の衝撃が原因だろう。
ガクンと少女の頭部が動き、光の宿らぬ瞳と視線が合った。
死体は何も語らない、少女を少女たらしめる魂はこの世の何処にも存在しない。
なのに或人には、まるで自分を責めているようにしか見えなかった。
「…………ごめん」
そよ風にすら掻き消され兼ねない、か細い声の謝罪と共に背を向ける。
ただの一度も振り返らず、逃げるように飛び立って行く。
そうして残ったのは数時間前と同じ、語る術を奪われた魂無き器。
少女を殺したのが憎きヒューマギアだと、知る由もなかった。
677
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:04:05 ID:VQtoL8aQ0
◆◆◆
デュエルモンスターズの利点、と言っても一言に纏めるのは難しい。
ルールを理解し相応のデュエルタクティクスこそ要求されるが、使いこなした際に得られるメリットは大きい。
主催者直々にデッキ以外の支給品を没収したのも、納得のいく応用性。
戦う力を持たない者であろうと、戦闘をモンスターに肩代わりさせられる。
魔法カードを使えば傷の治療が行え、装備カードで武器の実体化も可能。
中には海馬瀬人や天城カイトのように、移動手段としてモンスターを召喚する手もある。
「ンンン!足柄の鬼子は熊を乗りこなしたとの逸話がありますが、よもや拙僧にもその機会が巡って来るとは!いやはや、この世は何が起きるかとんと分かりませぬなぁ」
「乗り心地は微妙だけどねー。こーんなボロい見た目だし、しょーがないかもだけどー」
「ではでは、不満を忘れる程に拙僧との二人旅に身を委ねなされ!子女一人喜ばせずして、男子(おのこ)は名乗れますまい」
「乗り心地以上に最悪なのは、あなたが同乗者ってことなんだけどにゃー」
軽口、というには些か毒の強い返答だった。
ピカピカのランドセルが似合う少女と、日本人離れした長身の男。
灯花とリンボが跨るのは巨体を誇る狼、と言うには余りに異様な見た目の存在。
青い体のそこかしこに縫い目が走り、四肢から飛び出す生物にあるまじき綿。
大半が目を剥くだろう、胴と前足を繋ぐハサミ。
当然ながら自然界にこのような狼がいた記録は、歴史上のどこにもない。
それもその筈。
この狼はデストーイ・シザー・ウルフと言い、灯花が支給品のデッキを使って召喚したモンスターの一体。
継ぎ接ぎだらけの不安定な外見と裏腹に、発揮される走力はそこらの自動車顔負けの速さだ。
徒歩でチマチマ参加者を探すよりも、よっぽど効率が良い。
加えて、今の灯花には少しでも早く辿り着きたい場所があった。
「おや、あれは……」
逸る心を嘲笑うかの如く、移動へストップを掛けるモノが出現。
リンボの声に反応するまでもない、突如天空へ巨大なモニターが浮かび上がったのだから。
映し出された尊大な口調の男へ、定時放送だと即座に察した。
急いでる最中とはいえ、聞き逃すのはそれこそ馬鹿のやること。
不満気に頬を膨らませつつもシーザー・ウルフを止め、聞く体勢を取る。
喧しさで言ったらリンボと良い勝負の自称神を冷めた目で見ながら、必要な情報を頭に入れていく。
678
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:04:44 ID:VQtoL8aQ0
「へぇー…みふゆと傭兵さん、死んじゃったんだ」
モニターが消え数秒の沈黙を挟んだ後、ポツリと呟く。
死者への嘆きも憤りも宿らせず、ほんの少し意外そうに。
壊滅した今となっては過去の話なれど、マギウスの翼の構成員は非常に多い。
中でも能力に秀でた魔法少女は白羽として、黒羽達を纏め上げる地位を与えられた。
みふゆもまた白羽の一人。
マギウスを抜かせば、教育係の神楽燦と並ぶ屈指の実力者だ。
魔力減退が起きようと踏んだ場数は随一、やちよ同様にベテランの魔法少女。
そんなみふゆでさえ、たった6時間を生き延びられなかった。
ドッペルの暴走を命懸けで阻止した、生前の死とは違う。
実力勝負でみふゆを上回る者が、殺し合いには参加している。
多少の驚きこそ抱くも、当然かとすぐに納得へ早変わり。
協力者の陰陽師や、映像越しに見た異形の剣士達。
そういった存在を思えば、何も不可思議ではない。
生きてる内に会えれば色々問い詰めたかったけど、死んでしまったならまあ良いかであっさり切り替える。
フェリシアに関しても同様だ、脱落を知っても深く考える事は無し。
或人と別れた後で殺されたのかもしれないが、特別興味も抱かない。
それよりも、いろはとねむの無事を知れた方が大きい。
姉と呼び慕うあの人は自分を余り大事にする少女じゃなく、親友だって万が一下手を踏まないとも限らない。
最悪の事態にはならず安堵の想いが込み上げる、とはいえ同行者の手前面には出さない。
(あーでも、ベテランさんもまだ生きてるんだっけ)
死んでた方が都合の良い、面倒な魔法少女の生存という嬉しくないおまけ付きだが。
実力の高さ故に納得はあり、一方でフェリシア共々脱落になってないのへ不満を感じざるを得ない。
ドッペルに関しての実験に使う対象が失われてない、と考えれば悪い話でもないが。
僅かに眉を顰めれば、目敏く気付いた同行者がここぞとばかりに顔を覗き込んで来た。
679
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:05:30 ID:VQtoL8aQ0
「おやぁ?如何いたしましたかな?今の放送で何か気に食わぬものでも?」
「自称神様の無駄が多い放送を見たら、誰だってウザいって思うでしょ」
「いえいえ、拙僧はむしろ感心しました。遊戯盤の主…かの者の言葉を借りれば『げえむますたあ』ですか。ああも焚き付け煽る演出を呼吸の如く容易く行えるのも、一種の才能かと」
参加者を嘲笑い死者を冒涜し、たった数分で尋常ならざるヘイトを自らに集める。
大半のプレイヤーからすれば怒りを引き出される内容も、リンボには却って歓迎すべきもの。
殺戮遊戯を謳う以上、こうでなくてはと笑みを浮かべた。
「はいはい、趣味が合う相手が見付かって良かったねー」
リンボが“こういう男”だと既に知っている為、灯花は雑に返し話を打ち切る。
今の放送に自身の方針を揺るがす程の情報は無かった。
未回収の支給品や特殊なNPC等、有益な内容も一旦片隅に留めておく。
シザー・ウルフに指示を出し移動を再開、定時放送の前から目的地と定めた場所へ急ぐ。
結論から言うと、妨害を受ける等のアクシデントに見舞われることなく到着はした。
が、灯花の望んだ光景はそこに無い。
「ほぅ、これはまた派手に楽しまれたようで」
「……」
声色にも楽しさを籠めるリンボと反対に、険しい表情で一帯を視界に収める。
畳を無理やりに剥がしたような有様の地面。
白亜の宮殿へ入る為の場所は破壊の限りを尽くされ、そこかしこに瓦礫が散乱。
負傷や病の治療目的で訪れた者も、これでは揃ってUターン確定だろう。
聖都大学附属病院は今や、暴動が起きたかの惨状でプレイヤー達を待ち構えていた。
目の前の施設付近で戦闘があったのは、灯花も知っている。
ただこれ程では無かった筈だ。
自分達が到着するまでの間に何が起きたのか。
答えを教える者は見当たらず、目に映るのは破壊の痕跡ともう一つ。
地に二本足を着け息絶えた、学ラン姿の少年。
見覚えの無い顔であり、どういった経緯で死んだかも不明。
魂の抜け落ちた死体にも関わらず、威風堂々の四文字がピッタリ当て嵌まる。
最後まで戦い抜いた戦士だと、称賛を投げかける気質とは来訪者のどちらも程遠い。
物言わぬ少年を見つめるのも束の間、リンボへ振り返り口を開く。
680
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:06:26 ID:VQtoL8aQ0
「タイムテレビ、だっけ。それ貸して」
「宜しいのですか?過去の鑑賞を楽しめるのは残りあと四回。使い所に熟考を重ねた上での決定と、そう捉えても?」
「同じこと言わせないで欲しいんだけど」
回数制限の決められた支給品なだけに、念の為確認を取った。
などと合理的な理由は一割あるかどうかも怪しく、単に灯花を揶揄っただけ。
向こうもそれが分かっているので、有無を言わさぬ口調をぶつける。
幼さとは不釣り合いの威圧感が籠められており、黒羽達がいれば震え上がったに違いない。
生憎リンボには子猫が精一杯の怒気を放ってる程度に過ぎず、脅しの効果はゼロ。
とはいえおちょくるのも程々にし、「これは失礼」の一言を添え支給品を貸し出す。
一度使っている為、操作方法を今更確認する必要もない。
ダイヤルの調整と同時にボタンを押すと、画面の砂嵐が徐々に消える。
自分達が来る少し前の光景が映し出された。
放送からそう間を置かずに起きた、襲撃者達と病院内に留まった参加者達との乱戦。
全てを滅する刃と化した日輪の参戦を経て、黄金の精神が葬られるまでの一部始終。
(成程成程……そうなりましたか)
長い指で顎を擦り、リンボは映像から得られた情報を己が頭に浸み込ませる。
上質な砂糖菓子をゆっくりと舐るように、今後の楽しみへの期待を寄せて。
薄々察しは付いていたが案の定、火炎の痣を浮かべた男達は兄弟らしい。
様子を見るに大方の予想通り、弟の方は認識を弄られているのだろう。
英霊剣豪にも並ぶか或いはと、映像越しにも肝を冷やす絶技の使い手。
本来であれば弱き子羊どもの盾となるだろう筈が、今や等しく滅びを与える天災も同然。
あろうことか、悪鬼へ堕ちた兄の方がまだ守護者と呼べる動きに出ていた。
当人達にとっては悲劇であり、リンボには喜劇である。
継国縁壱以外に興味を引かれたのは、変幻自在の肉体を持つ奇妙な男。
泥や土に仮初の命を吹き込む術は珍しくもないが、あの者は排泄物から生み出されたのではと思わざるを得ない。
映像越しであっても、見ているだけで異臭が漂う錯覚を覚えた。
しかし持ち得る力は油断ならない、無法の極み。
単純な他者の異能の模倣や変身能力の類、とは言い切れない異様さだ。
681
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:07:07 ID:VQtoL8aQ0
他にも或人が探す絡繰人形、『でゅえるもんすたあず』なる札遊びを使いこなす青年、我が身を巨大獣へ変えた少女等々。
混沌(カオス)と言う他ない面子が繰り広げた祭りは、スタンド使いの死で幕を閉じた。
労せずして情報を大量にに得られたのは良い。
一方で自分が一枚噛む前に騒ぎが終息を迎えたのは、少々惜しいと思わなくもない。
(まあそれは次に取っておくとしましょう。拙僧が手を加えるまでもなく、孵化は早まりつつあるようですからなぁ)
笑い声が漏れぬよう努め、傍らの少女を童女を見やる。
映像の切れた黒い画面に視線を固定し、リンボには見向きもしない。
だがどんな顔をしてるかなど、背後からでも分かった。
「…………」
人間、不快感も度が過ぎれば分かり易く表情には出ないらしい。
鏡代わりの画面に映る、目の据わった自分の顔と見つめ合いながらどうでもいい事をふと思う。
冷静になれと言い聞かせるも、黒々とした火炎が渦巻き鎮火の兆しは一向に見せない。
神経を逆撫でする笑みの術師が横にいなければ、タイムテレビを蹴飛ばすくらいはやったかもしれない。
放送直後の戦闘で、いろはがどうなったかは全部知った。
この地で出会った浅い関係の連中の為に、己が身を削って戦う。
あの人ならそうするだろうなと、納得があって。
無茶ばかりする人だから、自分もねむも気が気でなくて。
四人で過ごした病室の頃から優しさは変わっておらず、他の魔法少女なんかよりも強く救いたいと願う姿に改めて決意が固まって。
682
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:08:05 ID:VQtoL8aQ0
そんないろはの隣に、さも当然のように立つ異形の剣士が無性に苛立たしかった。
たかだか数時間程度の付き合いでしかないくせに、何故あんな男がいろはの信頼を得ているのか。
ベテランの魔法少女すら超えるやもしれぬ力を持ちながら、いろはをロクに守れていないではないか。
いろはが両腕を細切れにされ斬首の手前までいった時、悲鳴が漏れたのは自分でも分かった。
ソウルジェムさえ無事なら死にはしないと分かっていても、惨たらしく傷付く様に平静を保ってなどいられない。
だというのにあの男は、いろはが斬られてからようやく動く始末。
(役立たずのくせに、お姉さまに触れないでよ……)
忌々しく吐き捨てるも、現状は灯花の手の届かない所へ行ってしまった。
目が腐りそうなくらいに汚い男が余計な真似をしたせいで、いろはは異形の剣士共々消息不明。
映像を見る限り、今どこにいるかの手掛かりは残されていない。
学ランの少年を斬った侍も映像の最後で去って行き、病院に集まった者は散り散りだ。
運良く近くのエリアにいろはが飛ばされた、と都合の良い展開に期待し留まるか。
論外だ、それで現れなければ結局時間をゴミ箱に捨てるのと同じ。
まだ動き回って虱潰しに探すか、情報の売買を行う特殊NPCでも見付ける方がマシ。
病院での顛末を知った以上、もうこの場所に用は無い。
待機させていたシザー・ウルフに再び乗るその前に、一つ用を済ませておく。
「ねえ、そいつの首輪」
「承知しております」
長ったらしく指示を出さずとも、即座に望み通りの行動に出る。
毎回こうなら良いのにと内心で愚痴る間に、リンボは一作業を終えた。
呪符が首を綺麗に断ち、頭部は地面を転がる。
死して尚不動の耐性を保っていたのもここまでだ、時間を置いて全身がアスファルトへダイブ。
戦士の生き様を穢す所業、そう憤る者は残念ながら不在。
死体には目もくれず灯花は首輪を拾い、自身のデイパックへ放る。
これでもう病院へ留まる理由は無くなった。
シザー・ウルフに跨り、戦場跡から見る見る内に遠ざかって行く。
無人の半壊した病院など眼中にない、それよりいろはを探す方が優先だ。
あの侍と二人きりと考えただけで、頭を掻き毟りたい衝動が湧き出る。
あんな奴より、自分の方がずっといろはの事を知っている。
あんな奴より、自分の方がずっといろはの救済を考えている。
いろはの隣は、自分の以外誰にも――
683
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:09:08 ID:VQtoL8aQ0
(…………あれ?)
冷風に顔を撫でられる最中、はてと首を傾げる。
今何か、妙な事を考えなかっただろうか。
魔法少女でもない男がいろはと共にいる不快感だけじゃない。
もっと別の、殺し合いでの方針に相反するものが頭に浮かばなかったか。
主催者の持つ力を奪って魔法少女の運命から、環いろはを救う。
たとえいろは本人に説得されようと、変えるつもりはない。
目的を果たした先で、自分の居場所がなくなるとしても構わない。
きっとねむも同じ想いで動いてる、だったら灯花だって必ずやいろはの救済を実現する。
(そうだよ、わたくしがお姉さまのお傍にいられなくなっても――)
いろはが救われてくれさえすれば問題無いと、そう決断した。
自分からいろはの隣という居場所を、捨てる覚悟だった。
なのにどうしてだろうか、胸が軋むような感覚を覚えるのは。
救われた未来のいろはの傍に、自分は存在しない。
それで良いと思っていた光景を思い浮かべると、揺るがぬ筈の決意へ途端に亀裂が生まれるのは。
いろはの隣に収まっている、自分ではない『誰か』が酷くに目障りなのは。
「灯花殿」
自分自身への言い知れぬ違和感が膨らむが、思考を沈ませるのは叶わない。
名前を呼ばれハッと振り向けば、リンボが進行方向とは異なる箇所を瞳で射抜く。
何か見付けたのか、ありきたりな質問をぶつける前に答えが返された。
「敵襲です」
四文字の内容を最後まで聞くまでもなく、灯花の動きは迅速だ。
「敵」と言われた時点で即、シザー・ウルフへ指示を飛ばし方向転換。
リンボもまた口以外に手も動かし、宙へ五芒星を描き結界を展開。
襲撃への備えを完了、タイミングをほぼ同じくして光弾が二人を狙い撃つ。
684
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:09:48 ID:VQtoL8aQ0
シザー・ウルフを回避へ動かした甲斐もあり直撃は避け、飛散する熱も結界が阻む。
無傷でやり過ごし、だが当然これだけで終わりじゃあない。
銃撃を行った張本人が、シザー・ウルフの前に飛び出て進路を妨害。
光弾の乱射を受け強制的に移動は中止、襲撃者と睨み合う構図が生まれた。
「これはこれは……最初に我らと会うのが貴殿ですか」
「どーせなら、社長さんのとこに飛ばされてれば良かったのにねー」
さも面白そうに言うリンボと正反対に、灯花は煩わしさを顔に出す。
真紅と黄金で彩られた装甲、星座盤を填め込んだ特徴的な頭部。
タイムテレビに映っていた者の一人であり、誰が変身者なのかも知っている。
或人が探し求める復讐相手、ヒューマギアの滅。
聖都大学附属病院からそう遠くないエリアに転移し、自分達を見付けたらしい。
何で会うのがこいつなのかと苛立ちながら、殺意に溢れる滅へ続けて言う。
「こんなところで油売ってないで、早く社長さんのとこに行ってあげたら?」
「なに…?お前達は飛電或人と会ったのか?」
自分を知っている口調に加え、「社長さん」の言い方で察しが付いたのだろう。
ただでさえ剣呑な声色を、更に鋭くし問い質す。
普通の子どもなら恐怖を感じるだろうプレッシャーを軽く受け流し、南東方面のエリアで会ったと伝える。
4時間以上も前の情報だが、急げば道中で見つかる可能性もゼロじゃない。
仮に或人を発見出来ず終いになっても、別にどうでもいいが。
「あなたたちのいざこざに興味なんてこれっぽちもないけどー、急がないと社長さんとは会えないんじゃないかにゃー?わたくしだって暇人じゃないんだから、早くそこ――」
どいて、そう言い切るのを遮り再度銃口が向けられた。
対マギアやライダーを想定した大口径は、小学生の体を焼き払うのに過剰な威力を持つ。
照準を合わせられ、いつ殺されても不思議は無い状況。
なれど灯花に慄く様子は見られず、睨み合う瞳が徐々に冷えていく。
685
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:10:37 ID:VQtoL8aQ0
「……わたくしのお話が理解出来なかったのかにゃー?もしかしてヒューマギアって、頭脳回路にじゅーだいな欠陥持ちなの?」
「飛電或人はお前に言われるまでもなく殺す。だが人類…特にお前達のような悪意を振り撒く者も排除対象だ」
「ンンンン!これは手厳しい。親切心で或人殿の情報を提供しましたのに、よもや恩を仇で返されるとは」
嘆く言葉と裏腹に、リンボは余裕の笑みを崩さない。
その態度に加え、機械生命体であっても強く警戒を抱かざるを得ない邪悪な気配。
強い悪意を持つ人間は多々あれど、こうも強烈に煮詰めた存在は滅多に見れない。
そんな男に平然と付き合う灯花共々、生かすべきでないと結論を下すのに時間は掛からなかった。
「あーもー、お馬鹿さんの相手ってほんといや!…ふーんだ、モタモタしてる社長さんが悪いんだもん。廃棄処分を手伝ってあげる」
手を煩わせる滅へうんざりしつつ、排除に動き出す。
瞳へ苛立ちのみならず、明確な敵意を宿しカードを引き抜く。
マギウスの翼を率いていた頃から、邪魔者を消すのに躊躇は抱かなかった少女だ。
何より、この男もいろはを殺そうとした参加者。
真紅の騎士や継国縁壱程の重傷を負わせたのでないにしろ、いろはを傷付けた一点で怒りを抱くのに十分な相手。
戦闘態勢に移った灯花が手札を切るのを、悠長に待ってはやらない。
ほんの少し引き金に力を籠めれば、少女の焼死体が完成。
「ンンンンン!いけませぬ!か弱い子女を付け狙う蛮行、このリンボの目が黒い内は許しませぬぞ!」
これ程に説得力を感じない言葉をペラペラ口走れるのも、一種の才能ではなかろうか。
呆れる灯花を尻目にリンボは呪符を投擲、光弾の矛先を自分へと変える。
紙切れを投げ付けられたとて、鎧越しでは痛くもかゆくもない。
だがリンボが放ったのは、生物を呪い殺すのに過剰な念を籠めた呪物。
一枚だけでも脅威のソレが、計四枚飛来。
心身の両方を侵し、苦悶に満ちた最期を与える凶器はヒューマギアにとっても油断ならない。
とはいえ、敵に届くかどうかはまた別の話。
滅が変身中のライダー、エボルが如何にハイスペックかは今更説明するまでもない。
真紅のオーラを片腕に纏わせ薙ぎ払い、呪符を四枚全て焼き潰す。
殺す順番が灯花からリンボへ変更、すかさず照準をセットしトリガーを引き絞る。
オーソライズバスターの銃撃が襲うも、ひらりと木の葉を思わせる軽やかさで回避。
次いで新たに呪符を数枚取り出し、再びエボルへと投げ放つ。
686
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:11:26 ID:VQtoL8aQ0
「踊れ踊れ、踊り狂いなされ」
先程と同じように、呪符を直接当てるだけでは芸がない。
自身の元から離れようと、一度リンボの手が加わった以上は遠隔で術式の発動も可。
符より墨汁めいた黒が溢れ出し、無数の毒虫へ変化。
蛇、蝦蟇、蜥蜴、蛞蝓、百足。
呪物生成において広く使われる、おぞましき群れが牙を剥く。
真っ当な感性の持ち主であれば鳥肌を抑えられぬ光景は、視覚的なダメージが全てじゃない。
一度噛み付かれれば最後、群がる毒虫らが腹を満たすまで食い潰されるだろう。
『Progrise key comfirmed. Ready to buster.』
怖気の走る光景にも一切の動揺を抱かず、流れる手付きでプログライズキーを装填。
毒針状のエネルギー弾を連射し、毒虫の大群を蹴散らす。
呪符の効果で生み出されたモノをどれだけ殺しても、術を放った本人はノーダメージ。
直接攻撃を当てるべく、得物を近距離形態に変え距離を詰める。
接近戦に身を興じるには、式神の身では力不足が否めない。
地を蹴り刃を躱しつつ、三度目となる呪符の投擲を実行。
エボルを痛め付けるより早く、腕の一振りで霧散するとは承知の上。
だからもう一手打つ。
「ン急急――如律令」
符に籠められた呪力が効果を増し、火炎が剛腕となって伸びる。
頭部を、四肢を、胴を掴み焼き殺す拘束具。
一度捕まれば最後、炭と化すまで決して逃しはしない。
『Progrise key comfirmed. Ready to buster.』
ならば五指が触れるよりも早く、掻き消せば良いだけのこと。
プログライズキーのデータがアビリティを付与、巨大な蠍の尾を生み出す。
更に反対の腕にはエボルの機能を使い、真紅のオーラを纏わせた。
両腕の動きに合わせて振るわれ、火炎の剛腕は呪符共々消滅。
当然これだけで終わりにはしない、勢いを殺さず術師を消し去らんと迫る。
間近で待ち構える死の気配を笑い飛ばし、人差し指が描くは五芒星。
毒針も鮮血色の光も結界の突破は叶わず弾け、なれど結界もまた相討ちの如く砕けた。
687
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:12:25 ID:VQtoL8aQ0
「目を見張る性能の腰巻きですなぁ。拙僧のような脆弱な者は、寸での所で死を躱すのが精一杯」
危機感を全く感じさせない口調だが、リンボとて相応に力の差は理解している。
本体ならまだしも式神、それも制限により大幅な弱体化を余儀なくされた身。
術の出力が削がれた状態でエボルを相手取るのは、流石に無謀と言う他ない。
それでも瞬殺を防ぎある程度食らい付けるのは偏に、支給品の恩恵があってこそ。
タイムテレビ以外に小倉しおんへ与えられた、複数本セットのアンプル。
ここに燕結芽がいたら、正体を察し露骨に顔を顰めただろう。
アンプルに入ったモノの名はノロ。
珠鋼の精製時に生み出される不純物であり、荒魂の正体。
折神家親衛隊がそうしたように、3本を自身へ投与し能力を引き上げた。
ノロの過剰投与は歴戦の刀使にとっても毒だが、リンボには無問題。
式神であるのに加え、負の神聖を母体にする呪術との相性も抜群だ。
尤も本体に匹敵する出力へは流石に届かず、数に限りがある以上無制限に打ち込めないが。
しかし足止めを行うには十分だ、本命は自分ではなくもう一人なのだから。
「灯花殿、そろそろ準備は整いましたかな?」
「今やってるんだから急かさないでよー!」
言い返しながらもカードを場に出す手は休めない。
エボルの力が如何程かは映像で確認済、率直に言ってデストーイ・シザー・ウルフで勝てる見込みは薄い。
灯花自身が魔法少女の力を振るい、大火力で一気に消し飛ばすのも一つの手。
但しドッペルに関して不可解な部分があり、グリーフシードも手持ちはゼロ。
そういった現状を考えれば魔力はなるべく温存し、代用可能なカードで切り抜けられるのに越したことはない。
「これ使ってー…はい、ちゃっちゃと出て来てねー」
デストーイ・シザー・ウルフ以上のモンスターを出すには、幾つかの工程が必要不可欠。
フィールドを整えねばならず、真っ先に使ったのは永続効果の魔法カード。
エッジ・ナイトメアは1ターンに一度、墓地のエッジインプモンスターを特殊召喚出来る。
滅との遭遇以前にシザー・ウルフを融合召喚した際、墓地へ素材となったカードが置かれたままなのが幸いした。
複数のハサミが連なったモンスター、エッジインプ・シザーが墓から蘇る。
自前で再生効果を持つが、手札をデッキトップに置かねばならずドローに制限が掛かるデメリットを持つ。
だから今回は永続魔法を使い召喚を行った。
無論この一枚に攻撃を任せる気はなく、素材の一つに過ぎない。
688
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:13:24 ID:VQtoL8aQ0
「それからこれと…あっ、効果も使っちゃおっと」
苺色のタコ焼きのような頭部のモンスターを通常召喚。
ファーニマル・オクトが場に出た事で、手札のカードの効果が発動可能となる。
綿あめに似てモコモコとした毛皮のモンスター、ファーニマル・シープを続けて場に出す。
場に自分以外のファーニマルモンスターがいる時、手札から特殊召喚が出来るのだ。
「この二枚を使ってしょーかんっ!出してあげたんだから、しっかり働いてよねー」
エッジインプ・シザーとファーニマル・シープ、そして手札の融合を使い融合召喚。
綿の飛び出た巨体に、鋭利な刃と化した背びれと尾びれ。
自然界に生息する個体とも、子供の喜ぶぬいぐるみとも違う不気味な鯱のモンスター。
デストーイ・クルーエル・ホエールの出現に、エボルも注意を引き付けられる。
カードを使ってモンスターを使役する参加者は、病院でも遠回しに見た。
それぞれ強さに差は有れど、放って置けば面倒になるに違いない。
光弾を撃ちリンボを牽制、動きが止まったのを見逃さずプログライズキーを叩き込む。
余計な真似に出る前に消し去るまで。
「だーめっ!おっきいシャチさんの効果をはっつどー!」
「なっ…!?」
引き金を引く寸前、オーソライズバスターが不可視の力で弾き飛ばされた。
手にあったグリップを握る感触が無くなり、エボルは困惑を隠せない。
異変はオーソライズバスターのみならず、灯花の近くにいたモンスターも一体消えたとは気付けなかった。
デストーイ・クルーエル・ホエールは召喚に成功した時、自分と相手の場のカードを一枚ずつ破壊する効果がある。
対象はファーニマル・オクトとオーソライズバスター。
放送前、遊星がサテライト・ウォリアーの効果で大尉のデイパックを破壊した時と同じだ。
カード効果の影響を与えられるのは、デュエルモンスターズのみではない。
衛星ゼア製が作り出す強化合金による耐久性故か、手から弾かれるに留まったが。
クルーエル・ホエールの効果を続けて発動。
エクストラデッキからデストーイモンスター一体を墓地へ送る。
単に墓地のカードを増やしただけで終わらない、先んじて召喚したシザー・ウルフの攻撃力を1000Pアップ。
攻撃力3000、かの青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)と同等の数値へ到達。
近年の環境では珍しくもないが、パワー勝負に出るならこれくらいは必須。
ハサミをカチカチと鳴らし疾走、エボルを噛み砕かんと大口を開ける。
689
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:14:11 ID:VQtoL8aQ0
『Ready Go!』
『EVOLTEC FINISH!』
だが獣一匹に討ち取られるようなら、殺し合いで多くの参加者を苦戦などさせていない。
レバーの回転数を速め、ボトル内部の成分を変身時以上に活性化。
地面に広がった星座盤が右脚へ収束し、必殺のエネルギーを纏う。
牙と回し蹴り、打ち勝ったのは後者だ。
布切れすら残らずに爆散、熱風が灯花の頬を撫で顔を顰める。
モンスターが破壊され、突然全身に鬱陶しい倦怠感が圧し掛かった。
ライフポイントを削られるとは、こういうことか。
念の為指輪状態のソウルジェムを見やるが、そっちは無傷なので問題無し。
「もー!使えないんだから!」
それはそれとして文句を言う間にも、エボルの攻撃は続く。
再びレバーを回し、エボルボトルのエネルギーを今度は腕に付与。
この地で魔法少女を屠った鉄拳で、フェリシアのみならず灯花にも滅びを齎す。
「なりませぬ!そのような非道はなりませぬぞ!」
微塵も心の籠っていない言葉を吐き、しかし灯花から死を遠ざける気でいるのは確か。
遊び甲斐のある玩具を、勝手に壊されては堪ったものじゃない。
善意が欠片も宿らない動機で呪符を複数枚展開、結界を生み出しエボルの一撃を防ぐ。
本体のリンボなら防御に成功しただろうが、悲しいかな式神故に結界の強度も低下。
突破され拳が突き進むも、ノロの強化を乗せた防御だけあって勢いは落ちた。
生じる僅かな隙で、クルーエル・ホエールに指示を飛ばし迎撃。
鎌のような尾びれと鉄拳が激突し、弾かれエボルが数歩後退。
勝った、と言い切れる結果でないのは悲鳴と共に爆散するクルーエル・ホエールを見れば明らかだ。
サイズ差があろうとエボルは並の枠に収まらないライダー、高レベルのモンスターと言えども打ち勝つのは難しい。
リンボの結界で勢いを落とされていなければ、クルーエル・ホエール共々灯花を拳が貫いた可能性とて低くはない。
「別に良いけどね、必要な手はもう打ってあるもーん」
年相応の普通の少女であったら、自身のモンスターが悉く破壊された事実に恐れ慄いただろう。
生憎と灯花はその普通の枠組みに属さない少女、けろりとした顔でドロー。
引いたカードのテキストをざっと確認、発動に何の躊躇も必要ない。
690
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:15:26 ID:VQtoL8aQ0
「ほーら、もう一回出番だよー」
ファーニマル・オクトの召喚時に効果を使って、墓地から回収済のモンスターを召喚。
天使の翼が生えたクマのぬいぐるみ、パッチワーク・ファーニマルがふよふよと浮かぶ。
モンスターゾーンに存在する限りデストーイとして扱われ、尚且つデストーイモンスターの融合素材の代用に使用可能。
場に他のモンスターがおらずとも問題なし、準備はとっくに終わっている。
「手札から魔法カード、魔玩具融合(デストーイ・フュージョン)を発動するにゃー」
フィールドと墓地に必要な素材が揃っている場合、それらを除外しデストーイモンスターの融合召喚を行う。
墓地の二体に加え場のパッチワーク・ファーニマルを代償に、より強大な僕を呼び出した。
「デストーイ・マッド・キマイラをしょうっかーん!」
歪と、それ以外にどう表すべきか。
綿やスプリングが飛び出し、最早ガラクタ同然の巨大なぬいぐるみ。
それら三つをアンバランスに繋ぎ合わせた姿は、名前通りのキマイラ(合成怪獣)。
可愛らしい肉球が付いただろう足先には、棘付きの土台。
トドメとばかりにミサイルまで搭載し、子供達の小さな友からは程遠い怪物に成り果てた。
本来のデッキ所持者、紫雲院素良が操る非情の玩具。
アカデミア所属の決闘者の本性を表し、黒咲隼相手に繰り出した切り札が降臨。
「これはこれは…ンン!悪くはありませぬが、ちと物足りない。このリンボめが戦化粧を施して差し上げまする」
上空に呪符を展開、エボルの頭上から雷を落とす。
容易く避けられたが目的はほんのちょっぴりの時間稼ぎ、少ない猶予でリンボの仕事は完了。
後方へ大きく跳び灯花の隣に降り立つや、マッド・キマイラの核たるカードへ祝福(呪い)を送り届けてやる。
やった事を説明するなら何も難しくない、自身の魔力を流し込んでの強化(バフ)。
但し強化を行ったのはリンボという大前提が付く。
本体のリンボが、吉田優子が持つまおうのぶきに施したのと同じだ。
足りない分の出力はノロで補い、マッド・キマイラをより禍々しい姿へと堕とす。
ぬいぐるの内側を突き破り、部品を散らして肉の突起物が複数生える。
蠢く眼球が張り付き、ギョロギョロと生ける者達を視界に閉じ込めた。
放たれるプレッシャーも膨れ上がり、外見のみならず持ち得る力も上昇。
テキストに記された攻守では計れない脅威へと生まれ変わった。
691
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:16:53 ID:VQtoL8aQ0
「そういえば、いろは殿のお傍におられる六眼の御仁。かの者の得物もこのような特徴をお持ちでしたな。何たる偶然!いえ偶然で片付けてよいものか!もしやいろは殿だけでなく、灯花殿ともあの御方は縁をお持ちで――」
「餌にされたいの?」
「ちょっとした拙僧の悪戯心ということで、どうかお見逃しを」
殺気立った瞳に睨まれ、にこやかに軽口を返す。
主にリンボのせいで微妙に緊張感が削がれるも、感じるプレッシャーは本物だ。
サイズこそ病院で戦った怪獣に劣るが、かといって油断を持ち込むのは大間違い。
『RABIT!RYDER SYSTEM!EVOLUTION!』
『Are You Ready?』
「変身」
『RABIT…RABIT…EVOL RABIT!』
『フッハッハッハッハッハッ!』
スピード特化のフェーズ3、ラビットフォームへ変身。
速攻で片付けるべく両脚にオーラを纏わせ疾走。
脚部装甲に備わった機能が走力を引き上げ、抵抗を許さず地獄へ叩き落とす。
マッド・キマイラを迎撃に動かすも遅い、巨体を引き裂く蹴りが飛び――
「な、に……?」
両脚のオーラが煙のように消え、急に走力が元へ戻った。
エボルドライバーに不調が出たんじゃあない、もしそうなら真っ先に気付く。
では何故という困惑から脱するまでに生まれた隙を、見逃してやる程敵は甘くない。
「灯花殿に倣い、拙僧もここに宣言しましょう。手札から魔法札を発動いたしまする!」
リンボが掲げた手には呪符ではなく、灯花が使うのと同じカードが一枚。
異変はすぐに起きた。
エボルドライバーが勝手に外れ、滅のデイパックへ突っ込んだのだ。
望まぬ変身解除に身が硬直するも、失態を悟った時には既に手遅れ。
692
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:17:42 ID:VQtoL8aQ0
「がぁっ!?」
巨体からは想像もつかない速さで、ぬいぐるみの一体が頭部を伸ばす。
スプリングの勢いを利用した強烈な打撃を受け、滅は地面から引き離される。
単なる頭突きならともかく、リンボの術の支配下にある一撃だ。
破壊こそ辛うじて免れたものの、掠り傷とは口が裂けても言えまい。
マッド・キマイラがバトルを行う時、相手は魔法・罠・効果をダメージステップ終了時まで使えない。
今回の場合、走力を上昇させたラビットエボルボトルの成分が効果と解釈されたのだろう。
更に付け加えるならリンボが使ったのは、小倉しおんの3つ目の支給品。
相手フィールドの魔法・罠を手札に戻すカード、ポルターガイスト。
エボルドライバーも謂わば装備魔法の一種と解釈を受けたらしく、デイパックへ自動で戻る形で効果が発揮された。
正規のデュエルでなく、灯花自身そういったデュエル時の流れに興味がない為効果の説明は行わない。
ついでに言うと、ベルトを再び使わせるのを許可だってしてやらない。
見逃したせいでいろはに何らかの害が及ぶ可能性を思えば、生かす理由がどこにあるという。
マッド・キマイラに破壊命令を下そうとし、協力者からストップが掛かった。
「お待ちくだされ灯花殿。始末はもっと相応しい者に任せるべきかと」
「もしかして、社長さんが見付かるまで放って置くって言いたいのー?」
「ご不満であられますかな?ですが、すぐにご納得頂ける筈です」
なにせ、その三文字で言葉を区切り一点を見つめる。
同じ方を見やり、確かに納得だと目を細めた。
魔法少女と式神、二人の視線が向かう先は滅の後方。
一体何を見ていると、問い質すまでもなく答えが向こうからやって来た。
693
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:18:23 ID:VQtoL8aQ0
「滅ィイイイイイイイイッ!!!」
「っ!?貴様は…!」
刺し貫くに等しい殺気と、忘れるなど有り得ない声。
目を見開き振り向けば、視界いっぱいに映り込むバッタを模した人型のナニカ。
人とヒューマギアを巡る死闘を生き延びて来た戦士に、近いようで明確に違う異形。
何故そんな姿になっているのか、疑問を声に出す余裕は消え失せる。
伸ばされた手が首を掴み、人工皮膚越しに内部パーツを軋ませたのだから。
「がはっ!?」
衝撃が走り、殴られたと分かった時には地面へ叩き付けられた後。
人間以上の頑強さを誇るヒューマギアとて、ライダーに匹敵する怪人の殴打をモロに受ければタダじゃ済まない。
文字通り火花を散らし、青い液体が地面を汚す。
完全破壊を免れたとはいえ、捨て置けるダメージではない。
立ち上がろうと腕に力を籠めるも、再び首を掴まれ無駄に終わる。
「飛電…或人……!」
憎々し気に名を呼べば、首に掛かる力が強まった。
少女の死体から逃げるように去り彷徨った末に、復讐の対象を見付けたのは何という偶然か。
記憶に焼き付くのと変わらない、許し難き姿を見た瞬間に頭の中は怒りで埋め尽くされた。
直前までに渦巻いていた、鬱屈とした迷いも最早些事。
自身を揺さぶった二人組の存在すら、まるで眼中にない。
「イズの仇だ…!お前だけはここで……!」
「仇、だと……」
ゼロワンになった時からずっと傍で支えてくれた、秘書型ヒューマギア。
彼女の名を出し憎悪をストレートに叩き付けると、向こうも眉を顰める。
表情が徐々に険しさを増し、或人に負けず劣らずの憤怒を浮かび上がらせた。
感情に振り回される人間そのものだと、思う余裕も無い或人を睨み返す。
694
:
リローデッド ─禁じられた遊び─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:19:32 ID:VQtoL8aQ0
「俺から迅を奪ったお前が…迅を破壊した貴様がそれをほざくか……!」
「は……?」
そっくりそのまま憎しみを突き返され、間の抜けた一言が零れ出た。
首をへし折り兼ねない程の力が、意識せずとも弱まる。
何を言われたのか、まるで意味が分からない。
「迅……?何言って……」
確かに以前、滅亡迅雷.netとの大規模な戦闘の際に迅を一度破壊したことはあった。
だがそれは過去の話、迅は復元されただろうに。
時にはイズの救出に手を貸し、人類滅亡以外の方法でヒューマギアを救おうとしている戦友のような男だ。
復讐心に囚われた今の或人でも、二度目の破壊に走る気は一切無い。
「惚ける気か貴様……!」
至極当然の困惑も滅から見れば、火に油を注ぐ行為に等しい。
答えらしい答えを返されず、何がどうなってるのか分からなかった。
埒が明かない空気は、意外な所からの助け舟で変化を齎す。
「その疑問には私から答えよう」
聞こえたのは或人でも滅でもないが、両者共に聞き覚えのある声。
いつの間にやら、自分達の方へ一人の参加者が歩み寄って来るのが見えた。
少なくない金を掛けたろうスーツの男を、今更見間違えはしない。
「天津さん……」
「また貴様か。迅の件といい、一体何を言っている?」
或人とは別ベクトルで因縁深い男の登場に、滅もまた訝しく問う。
聖都大学附属病院での戦闘時から、天津の言動には違和感が漂っていた。
もしや戯言で翻弄する気かと疑いを抱くのも、滅からすれば無理からぬこと。
口には出さないが或人もまた、天津が何を言う気なのか視線で問い掛ける。
復讐に燃える男達からの視線を一身に集め、なれど天津に怯む様子はない。
緊張感が張り詰めるのを感じながら、静かに口を開く。
悪意に打ち勝った先の未来を唯一知る人間として、伝えない選択肢は初めから無かった。
695
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:21:03 ID:VQtoL8aQ0
◆
『この音って……』
画面の向こうの彼女が言うまでもなく、天津も何者かの接近には気付いた。
心身共に軽くない傷を負い、仲間の犠牲を経ての逃走。
立ち止まり無力感に身を委ねたい衝動が、微塵もないとは言えない。
基本的に自信家の天津と言えど、信頼の置ける仲間を二度も失えば精神的に大きく響く。
一海も承太郎も、戻るべき居場所と帰りを待つ人々がいた筈。
もし自分がもっと上手く立ち回っていれば、力があれば彼らの死を防げたんじゃないか。
リオン・アークランドの策略を阻止できず、滅亡迅雷.netの全滅と不破諫の死という結末を招いた時と同じだ。
何故生きるべき者達が未来へ向けて歩めない、どうして大罪を犯した自分だけが死を免れる。
自死願望がある訳でなくとも、一度自責の念が浮かべば毒のように後悔が広まっていく。
残念ながらここは社長専用の私室ではなく、悪辣な殺し合いの会場。
天津が立ち直るまで、気を遣ってくれる程の優しさには期待出来ない。
こっちの事情を一切知らず、襲い掛かって来る輩も一人二人では済まないだろう。
病院から十分な距離を取り、何らかの支給品でも使われない限り耳飾りの侍と即座の再会は起こらない筈。
「全く……延々と自分を責める時間も寄越してはくれないか」
苦い表情でドライバーを装着し、慎重に近付く。
コンディションが良いとは言えず、場合によっては戦闘回避も視野に入れねばなるまい。
そう考えていたが、集まった面々を見た途端に隠れてやり過ごす選択は消滅。
モンスターを従える少女と、異様な風体の怪人物。
彼らも気になるが、それ以上に見知った二人の男を放っては置けない。
片方は異形の見た目と化しているものの、声から飛電或人と分かった。
おまけに言動から察するに、滅同様の悪い予感が当たったらしい。
放って置けば憎しみのままに争い合い、最後はどちらも命を落とす。
自分の知る過去とは異なる展開も、絶対に起こらないとは言い切れない。
ゲームを仕組んだ神ならば、これもまた一つの結末としたり顔で言うだろう。
生憎そのような三流以下の悲劇を、天津は断じて認めない。
696
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:21:49 ID:VQtoL8aQ0
「俄かには信じ難い部分もあるかもしれないが、1000%真実だと誓おう。今から話すのは正真正銘、君達二人が本来辿る筈だった未来だ」
前置きもそこそこに、己の知る全てを話す。
イズと迅の破壊、その先に一体何が起きたのかを。
「何だよ、それ……」
聞き終えた或人はわなわなと震え、乾いた声をどうにか絞り出す。
信じられないし、信じたくない。
意図した事でないとはいえ、自分が迅を手に掛けた。
滅の憎悪は勘違いでも何でもなく、恨んで当然の動機に根付いたものだったなど。
何よりも、天津の語る未来において自分は滅を赦している。
復讐の連鎖を断ち切り、もう一度ゼロワンとして高く跳んだ。
実感が全く湧かず、馬鹿げた夢物語と言っても過言ではない。
けれどデタラメと切り捨てるには、語る最中の天津はこれまで見たどんな顔よりもずっと真剣味を帯びていた。
ヒューマギアに敵愾心をぶつけた頃とは正反対の、言動一つ一つに重みがあったと認めざるを得ない。
「……」
天津が話し終え沈黙を貫く滅にも、表情からは動揺が見て取れた。
皮肉にも或人と同じ想いだ、自分が悪意を振り切る未来がまるで予想できない。
おまけに話を聞くに、滅亡迅雷.netは自分を含め悪意の監視者としてのスタートを切った。
人類滅亡の結論を覆し、ヒューマギアのみならず人類をもある意味守る立場になったのだという。
雷や亡、そして迅ならともかく自分までそうなるなど予想できる筈がない。
いやそもそも、これだけ憎悪を向け合う或人と手を取り合うのが――
「君達二人なら悪意を乗り越えられる。迅の言葉だ」
「迅が……?」
「ああ。自分自身でさえ止められない悪意に苦しめられる君達を見て、それでも彼は信じ続けた」
或人にとっては戦友であり、滅にとっては息子同然のヒューマギア。
破壊された恨みでも、自分の仇を取るよう促すでもない。
復讐に駆られ、殺し合いでも変わらなかった二人は二の句が継げない。
互いに紡ぐべき言葉を見付けられない中、天津は畳み掛けるように続ける。
彼らが引き返せない程の悪意に堕ちる前に、何としてでも連れ戻す為だ。
697
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:22:31 ID:VQtoL8aQ0
「滅、迅を破壊され君が抱いたのは本当に彼への憎しみだけなのか?」
「何が言いたい……?」
呻くような問い掛けは自覚がないからか、若しくは気付かない振りをしているのか。
どちらにせよ、天津が言葉を引っ込める気は無かった。
「迅を破壊され君は彼を恨んだ。同時に理解出来た筈だ、大切な存在を理不尽に奪われる痛みを」
「……っ」
「…私自身、偉そうに言える立場でないのは自覚している。だが今はあえて言わせてもらおう」
数多の悲劇の元凶となり、己が罪の重さを理解したからこそ伝えねばならない。
「イズを破壊した事が彼にとってどれ程の絶望か、本当は分かってるんじゃないのか?他ならぬ君自身が、許されざるアークになったと誰よりも理解してるんだろう?」
「馬鹿な……!何を言って……」
「いいや!こればかりは1000%の自信を持って言おう!君が彼に恨みを抱くのは、君にもイズや迅と同じ心が芽生えた証拠だ。
どれだけ否定しても、他ならぬ君自身が証明している!未来を知る者としてここに断言しよう。
君の心が生んだのは未知の感情への恐怖や、迅を奪われた憎しみだけじゃない。イズを破壊した事への罪悪感も、間違いなく存在している」
違う、そのたった二文字が喉の奥でつっかえ出て来ない。
否定したいのに考える、考えてしまう。
この地で一人の少女を殺してから、聞こえない筈の迅の声が度々聞こえたのは。
若しかすれば、己に宿る罪悪感がああいった形になったからなのではと。
「俺、は……」
「滅……」
目に見えて動揺する滅へ、或人も言葉に詰まりどうすべきか迷いが生まれた。
憎しみは消えていない、天津の言う未来を素直には受け取れない。
けれど、知ったことかと切り捨てられもしない。
自分の語った内容に各々思う所があるのは明らかと、少なくない手応えを天津は感じる。
すぐには納得出来なくとも、まずは互いに矛を収める展開へ持って行こうとし、
698
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:23:54 ID:VQtoL8aQ0
「不公平、と言う以外に語る内容が見つかりませぬなぁ」
何もかもを台無しにする、悪意を煮詰めた声が場の支配権を奪い取った。
「……私の話はまだ終わっていないのですがね。会話を遮るのがビジネスの世界でどれ程の無礼に当たるか、理解していないのでは?」
「これは失敬。拙僧としてもこのまま見物に徹しても良かったのですが、何分細かいことが気になる性分でしてな。口を挟まずにはいられなかったと、こういう次第故に」
ジロリと睨み付けるが、のらりくらりと受け流しまるで堪えた様子がない。
警戒を払いながらも、今は或人達を優先し視線を外していた。
だが今になって急に会話へ強引に参加し始め、一体何を言うつもりなのか。
仮定の話に過ぎないが。
もしこの場にカルデアのマスターや、 二天一流の女剣士。
或いはインド異聞帯の担当だったクリプター、そして機械人形の女忍。
辺獄を名乗る術師の、アルターエゴ・リンボの悪辣さを知る彼らがいれば揃って言うだろう。
それでは駄目だ、この男に喋らせる前に攻撃すべきだったと。
「貴殿が真実を、ええ、虚偽の宿らぬ真を口にしたとその前提を踏まえて言わせてもらいましょう。――――蘇生の恩恵に与れたのは迅なる絡繰人形のみ。或人殿の言ういず殿は、違うのでしょう?」
「え……」
ドクリと、心臓が強く跳ねたのが自分でも分かった。
或人の様子に気付いてか、猫のように目を細める。
「そこな滅殿は愛しき息子を取り返し、民衆の守り人たる地位を得て、気の知れた仲間達に囲まれた未来が待っている。
しかし、しかししかしィ……非常に残念でなりませぬがァ……ンンン、或人殿がいず殿を取り戻すことは叶わず終いと、そういう訳でありますか」
「待て、それは……!」
違うと言おうとするも、実際に言葉は出て来ない。
リンボが口にした内容に偽りがないのを、他ならぬ天津自身が分かっているからだ。
破壊される以前のデータを修復出来たのは迅だけ。
技術に秀でた刃唯阿をして、イズの復元はどうやっても不可能と断言せざるを得なかった。
699
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:24:41 ID:VQtoL8aQ0
「先に己からいず殿を奪った滅殿は取り戻し、なのに自分は失ったまま。実に不公平且つ理不尽極まると、そうは思いませぬかな?或人殿?」
「え、あ……」
問い掛けられた或人は言葉らしい言葉を出せず、パクパクと口を動かすだけ。
リンボの語る内容へ耳を貸すのは危険だ。
一度毒を植え付けられ、激しく揺さぶられただけに同じ目に遭うのは避けるべき。
そう分かって尚、考えるのを止められない。
迅は戻って来る、でもイズは戻って来ない。
皮肉にも天津の話が嘘とは思えなかっただけに、残酷な事実を否定出来ない。
「何で、イズだけ……」
喪った絶望はどちらも味わった、だというのに何故片方だけしか戻って来ないのだろうか。
迅の修復を間違っていると言う気は無い。
でもイズだって、あんな風に破壊されて良い筈が無かった。
なのにイズを奪った滅は取り戻せて、自分だけがイズを奪われたまま。
それは、それは、
「妬ましくて堪らないのありましょう?ンンンンン!その衝動を拙僧は歓迎いたします!」
悪意を乗り越えるよりも前、迅を手に掛けていない、復讐に燃えていた時間軸の或人だから抱いてしまった嫉妬心。
微かに鎮静しかけた憎悪が再び顔を出し、後はリンボの望むがまま。
負の感情を煽りぶくぶくと肥やすのは、呪術に精通した陰陽師にはお手の物。
ノロによる強化の後押しを受け、渦巻く怒りが或人の自我すらも飲み込んでいく。
「俺は…オレは…!アァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「なんだと…!?」
天津や滅の驚愕を余所に、或人…アナザーゼロワンから放たれるプレッシャーが爆発的に上昇。
外見に変化は見られずとも、先程までとは段違いの脅威へ生まれ変わった。
700
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:25:51 ID:VQtoL8aQ0
本来のアナザーゼロワンウォッチには存在しない特徴が、檀黎斗主催のゲームでは仕組まれている。
内の一つ、悪意に満ち溢れた者が使えば高位の力を得たアナザーライダーに変身が可能。
他者の介入が含まれるとはいえ、急激に憎悪を肥大化させた或人はこの条件を満たしてしまった。
加えて言うなら、現在の或人はリンボの術を受けほとんど暴走状態。
滅への憎しみは変わらずとも、見境なしで破壊を撒き散らす悪意の化身。
アナザーゼロワン・リアライジングホッパーが、最悪の形で誕生を果たしたのだ。
「ンンンンン!!!それで良い、良いのですよ或人殿。自らを解き放たなければ掴める者などありはしませぬ」
「貴様は…!何ということを……!!」
手を叩き復讐鬼の再誕を祝福するリンボを、射殺さんばかりに天津は睨む。
悪意に振り回されるまま、どちらかが力尽きるまで殺し合う。
そうならないよう説得を試みて、解決の兆しが見えて来た所が台無しだ。
ほんの数秒でも時間を戻せるなら、力づくでこの男の口を塞いでやりたい。
「そう憤りなさるな。拙僧はただ、復讐を望む或人殿の願いを叶えただけです。それに、貴殿は殺戮遊戯に否定的な立場。なれば滅殿がここで討たれた方が都合が宜しいと、そうではありませぬかな?」
「いきなりわたくしに振らないでよー」
男達のやり取りを黙って見ていた灯花だが、リンボの凶行を非難する様子は見られない。
むしろ、そうするだろうなという納得さえあった。
そして灯花自身、或人が滅を殺す事への反対は一切無い。
もし何らかの技能や知識、異能の類等々。
灯花が目的を果たすのに有益な力を持つと言うのであれば、怒りを一時的に引っ込めるくらいはした。
だが利用価値を全く見出せず、しかも一応敵対の意志は見せなかったリンボと違って誰彼構わず殺す方針の男を、
天津の説得を支援してまで生かそうと思える程、酔狂になった覚えはない。
何よりも、滅は既に一度いろはを殺そうとしたのだ。
元々抱く強い尊愛の情に加え、リンボから受けた『いろはを自分だけのものにしたい』という暗示の効果。
上気二つの影響もあり、滅を進んで生かしたいとは全く思えなかった。
「時にはリスクを背負うのも大事だけどー。背負い過ぎるのはお馬鹿さんのやることだし、スクラップが妥当ってとこじゃないかにゃー」
「ンンン!何やら拙僧が、そのリスクの内に入ってると言わんばかりの視線が気になりますが!まあそういう事ですので、或人殿が本懐を遂げる様を共に見守りましょうぞ」
「生憎だが、君達の悪趣味に付き合うつもりは1%もない!」
三流以下のバッドエンドに或人達を巻き込んだ怒りを露わにし、プログライズキーを装填。
黄金の装甲にブレード状の角を持つライダー、サウザーの変身を瞬時に終える。
701
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:27:09 ID:VQtoL8aQ0
或人達の元へ駆け出そうとし、聴覚装置が頭上から迫り来る脅威を察知。
飛び退き躱した直後、巨大なぬいぐるみの頭部が地面を粉砕。
BIG5とのデュエル時のクリボー同様、モンスターが勝手になどとそんな訳がない。
「余計なことしないで大人しくしててよー、千パーセントのおじさん」
「子供とはいえ、悪戯の度が過ぎる。環くんの礼儀正しさを少しは見習って欲しいものだ」
おじさん呼ばわりされ、若干の苛立ちを含めながらサウザンドジャッカーを構える。
一刻を争う事態故、いきなり手札を切らせてもらう。
大尉との戦闘で使ったライダモデルの一斉開放、これにより複数体のライダーを味方に付けた。
「キザで痛いおじさんのくせに、お姉さまを語らないでよ!」
「なに…?君は……っ」
いろはの名へ予期せぬ反応があり、驚くのも束の間。
召喚者の苛立ちへ呼応し襲い来るマッド・キマイラへ、聞き返す暇は消え失せた。
「壊シテヤル…!滅……!!!」
「くっ……」
傍らの喧騒に一切意識を割かず、或人は憎きヒューマギアへ剥き出しの憎悪をぶつける。
夢をひたむきに追い掛けた面影は砕け散り、復讐こそが全てと言わんばかりの殺意を発す。
滅とて大人しく破壊を受け入れる気は無いが、意志に反して動きは緩慢だ。
マッド・キマイラとアナザーゼロワンの一撃を、生身で受けたダメージは大きい。
正史では起こり得なかった、復讐の達成が現実と化すのも時間の問題。
しかし偶然か、或いは天が意図して引き寄せたのか。
数秒後に描かれる筈の未来が、新たな乱入者によって破り捨てられる。
大地を引き裂き現れる、赤いボディのスーパーマシン。
ネオ富実野シティの英雄の愛機を駆るは、或人が見失った善意で戦う仮面の戦士。
702
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:27:58 ID:VQtoL8aQ0
「或人!?どうなってんだよ…お前むちゃくちゃヤベェことになってんじゃねぇか!?」
馬鹿の二文字がマッチする語彙力だが、本心からの驚愕だ。
Dホイールを飛び降り、赤いスーツの戦士がアナザーゼロワンの前に立つ。
放送前に続き二度目の再会となる青年、万丈龍我が或人の復讐へ待ったを掛ける。
キャルと別れ、或人及びDIOの捜索にDホイールを走らせどれくらい経った頃か。
北上した先のエリアで喧騒を聞き取り、念の為にと龍騎に変身し来てみればこの状況だ。
アナザーゼロワンの姿は一度見ている為、すぐに或人と気付けた。
だが望んだ再会とは言い難く、安易に近寄る事を戸惑わせるプレッシャーが漂っている。
一体全体、自分の元を去ってから何が起きたのか。
近くにいる他の連中が関係あるのかと、質問を飛ばせる程呑気に構えてはいられない。
「滅ィ……!!」
「は?滅って……」
万丈の存在など視界に映っていないかの如く、瞳はヒューマギアに向けられたまま。
思わず振り返り或人と同じ方を見やれば、破損の激しい青年の姿。
この男がイズを破壊し或人を復讐へ走らせた元凶。
ということはつまり、今の状況は或人が望んだ展開に他ならない。
「……」
或人から話を聞いた時、万丈も滅は危険だと思った。
大切な人を理不尽に奪われた境遇を重ねたのを抜きにしても、人類滅亡の結論を受け入れるのは真っ平御免。
滅は倒した方が良いのと思ったのは、万丈なりに考えた末の答え。
であるならば、或人がこれからやる事に口を出すべきではないのかもしれない。
703
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:28:38 ID:VQtoL8aQ0
「……やっぱ駄目だ。今やっちまったら、後で絶対後悔するとしか思えねぇ」
しかし万丈が選んだ答えは、或人を止めること。
これに驚いたのは様子を見ているしかなかった滅だ。
突然現れた男が何者か知らないが、或人と接触済なら自分の情報も得ている筈。
何故強く警戒するべき相手を、守る気になったのか。
「貴様は何を考えている……飛電或人から俺の事を聞いていないのか……?」
「全部聞いた。正直俺だって、お前を何発かぶん殴ってやりてぇくらいには頭に来たけどよ――」
もう一度或人を真正面から見る。
恋人を人体実験に掛けた連中への、全ての元凶だった星狩りへの。
許してはおけない連中への怒りに燃えた時の自分と似ている、けれど決定的に違う。
「俺にはこいつが、止めてくれって泣いてるようにしか見えないんだよ」
確たる根拠は何だと問われたら、万丈自身言葉では上手く説明出来ない。
それでも、今の或人は最初に会った時より尚酷い。
復讐の事しか頭にないのではなく、復讐以外を無理やり考えさせられなくなったようだ。
理由を聞かれても、強いて言うなら勘としか答えられない。
馬鹿だ筋肉馬鹿だと呆れられるのは承知の上、けれど自分自身が感じたものを信じなくてどうする。
もしこのまま或人が滅を破壊すれば、きっと心に良くないものを残す。
もう二度と、イズが信じた飛電或人には戻れなくなるかもしれない。
その理由一つで、万丈が戦うには十分だった。
「ドケェエエエエエエエエッ!!!」
「うおっ!」
尤も、どれだけ或人を思っての行動も届くとは限らない。
最優先は滅だが、復讐を阻む者も等しく自身の敵。
一度は喝を入れてくれた相手であろうと、攻撃には躊躇を抱かない。
たとえ殺してしまう結果になっても、祝福(のろい)を受けた魂には響かないだろう。
704
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:29:33 ID:VQtoL8aQ0
絶叫を上げ蹴りを繰り出すアナザーゼロワンに対し、龍騎は咄嗟に防御の構えを取る。
両腕の交差で即席の盾を作れば、腕部装甲が攻撃を弾きダメージを最小限に抑えられる筈。
そんな予想を裏切り、殺し切れない衝撃に足が地面から離れた。
「がっ…!?」
吹き飛ばされたと、脳が状況を理解するのを待ってはくれない。
視界に一瞬黄色い光が映り、次の瞬間には背中に痛みが襲う。
龍騎の胸部及び背は特に強固なアーマーで覆われ、破壊は至難の業。
だというのに今受けたのは、装甲が意味を為したと思えない鈍痛。
「アアアアアアアアアアッ!!」
短く漏れた呻き声すら掻き消し、次から次へと龍騎の全身へ衝撃が走る。
何をされているのかを正確に理解出来ぬまま、辛うじて腹部に捻じ込まれる爪先を見た。
一瞬呼吸が止まる感覚を覚え、ゴミのように地面を転がる。
「クッソ……!遠慮も躊躇もなしかよ!期待してなかったけどな!」
『GUARD VENT』
サンドバッグのキツい洗礼を受けたが、ノックダウンには程遠い。
両肩に赤龍の腹部を模した盾、ドラグシールドを装備し防御力を強化。
猛攻へ備え距離を詰め、こちらから攻撃に出るもアナザーゼロワンを捉えらない。
蛍光イエローの脚部が消えたかと思えば、数十の蹴りが一斉に龍騎を叩いた。
「っ、何だこの速さ……!?」
常人を遥かに超える身体機能を以てしても、ロクな反応が許されない異常なスピード。
どうにか隙を見付けて反撃に移る、といった戦法がまるで取れず耐えるしか出来ない。
ドラグシールドを構えダメージを抑えるも、限界はすぐそこまで来ていた。
盾越しに伝わる衝撃で腕に痺れが襲い、僅かに力が弱まる。
705
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:30:13 ID:VQtoL8aQ0
「ぐあああああああっ!?」
防御が崩れた途端に叩き込まれる、機関銃さながらの蹴りの嵐。
数十の打撃を纏めて受けたかの勢いに、紙風船のように軽々と吹き飛ぶ。
地面へ激突し、カードデッキもバックルから外れてしまった。
万丈に力を齎したスーツは、鏡が砕け散るかの儚さで消失。
生身で痛みに呻く青年に心を揺さぶられる事無く、アナザーゼロワンの意識は滅へ逆戻り。
全体的なスペックの大幅な上昇に加え、超出力による高速戦闘。
基本形態であるライジングホッパーの正統進化と言うべき、仮面ライダーゼロワンの最終形態。
そのリアライジングホッパーの能力を付与されたのが、現在のアナザーゼロワンだ。
加えてアナザーライダーであるも、ベースとなったのは或人が元々変身するライダー。
使いこなせなかったメタルビルドと違い、十全の戦闘を行える。
初戦時と違い持ち得る力に差が大きく開き、万丈は手も足も出ない。
かといってアッサリ諦める気は皆無、痛む体に鞭打って立ち上がり、
「っ!?マジかよ……!」
見覚えのあるモノが地面へ投げ捨てられてるのを発見し、驚きながらも拾い上げる。
横部分に備え付けられたレバーと、二つのボトルを填め込むスロット。
自意識過剰な正義のヒーローが使う物と同じ特徴を持つも、決定的に異なる毒々しいカラーリング。
滅が殴り飛ばされた際に、ボトル共々デイパックから落ちたエボルドライバーだ。
まさか自分のビルドドライバーより先に、宿敵だった男の変身ツールを見付けるとは。
厳密に言うと内海成彰が使っていた複製品だが、今それを知る由はない。
「よりにもよってエボルトのかよ……」
顔を顰め露骨に拒否感を表す。
当然と言えば当然だ、自分達の星を滅ぼそうとした男の使う兵器なのだから。
強い武器が手に入って万歳などと、能天気に考えるにはエボルトとの因縁は非常に根深い。
思わず拾ったとはいえ、早くもそこらに放り捨てたい衝動に駆られる。
同時に因縁の男の力だからこそ、この状況でどれだけ役立つかも理解出来てしまう。
使用へ躊躇が大きいか否かと言ったら後者。
だがしかし、ぶん殴ってでも助けてやりたい相手がすぐ近くにいるなら。
自分の中の意地や葛藤のせいで、取り返しの付かない事態になるかもしれないなら。
706
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:30:55 ID:VQtoL8aQ0
「迷ってる場合じゃ、ねぇだろうが!!」
『EVOL DRIVER!』
腰へ巻きつけたドライバーが、腹立たしい男の声で起動を伝えた。
右手で複数のボトルの内の一本、龍を模したソレを強く握り締める。
嘗て自分の体を好き勝手に動かされた時、生み出されたドラゴンエボルボトルだ。
昂る戦意と、内に眠る力が引き出される感覚は覚えがある。
変身を不可能にされ、足掻き続けた果てに再び力を取り戻した時と同じ。
心意システムの影響も少なからず存在するだろう。
されど想いの力で可能性を切り開くのは、万丈にとってこれが初めてではない。
嘗ての己と同じく復讐に囚われ、自分自身ではどうにも出来ず苦しむ男を助けたい。
揺るがぬ意思を糧に、創造(ビルド)は今ここに現実のものとなる。
青いカラーリングから一転、ボトルが黄金に輝く。
グレートドラゴンエボルボトルを、もう一度己が手に掴み取った。
万丈の決意に呼応し、デイパックからクローズドラゴンが飛び出す。
小さな相棒もまた、馬鹿が付く程に真っ直ぐな青年と想いは同じだ。
言葉は無くとも通じ合い、クローズドラゴンへボトルを装填。
エボルボトル同様に進化を果たし、或人を閉じ込める悪意の檻を共に打ち砕く。
『覚醒!』
『グレートクローッzzzzzzzzuuuzuzuzuzzzzzz』
『CROSS-Z BLOOD!』
本来のドライバーでそうするように、星狩りの兵器と一体化させた。
豪快に叫ぶ電子音声にエラーが起こるも、次いで聞こえたのは万丈に聞き覚えの無い名前。
旧世界での死闘でも、新世界でのキルバスとの戦いでも存在しない。
正史においては有り得なかった力を、臆さずに受け入れる。
707
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:31:45 ID:VQtoL8aQ0
『Are You Ready?(覚悟はいいか?)』
「んなもんとっくにできてんだよ!変身!」
『Wake up CROSS-Z!Get GREAT DRAGON!with BLOOD!』
『フッハッハッハッハッハッ!!!』
レバーの急速回転によりファクトリーが展開。
今更覚悟を問われたとて、答えは初めて仮面ライダーになった日から完了している。
断ち切れぬ因縁で繋がれた青年の足掻きへ、だから人間は面白いと言わんばかりの高笑いが響き渡った。
青い光が晴れた時、現れたのは仮面ライダーエボルとは異なる戦士。
黄金と真紅で彩られた装甲を纏い、風に靡くは漆黒のマント。
星狩りと似た特徴を持ちながらも、頭部には正しき心を持つ戦士の仮面を装着。
蒼炎と龍を象ったパーツが、変身者の戦意を表すかの如く輝きを放つ。
名付けるならば、仮面ライダークローズブラッド。
旧世界でビルド殲滅計画を実行した、仮面ライダーブラッドとの類似点があれど同じに非ず。
ハザードトリガーとロストボトルを使わない代わりに、エボルドライバーとエボルボトルでブラッド族としての高スペックを付与。
更に変身者が万丈なのもあって、ラブ&ピースの戦士として戦う。
「今の俺は…負ける気がしねぇっ!!!」
湧き上がる膨大な力を実感し、なれど強さに酔いしれ目的を見失う本物の馬鹿にはならない。
新たな戦士の誕生にもアナザーゼロワンは見向きせず、復讐以外に何も考えられない。
上等だ、嫌でも自分の方を向かざるを得なくするまで。
脚部装甲に蒼炎が迸り、踏みしめた地面が溶け出す。
必ずや止めてやると、昂り続ける戦意に押し出され疾走。
急接近する気配へようやっ振り返った直後、頬へ突き刺さる拳。
銃弾を数十発浴びても、痒いとすら思えない肉体強度をアナザーゼロワンは誇る。
だがクローズの拳はどんな兵器よりも重く、奥底へ沈んだ魂にまで響く一撃だ。
意識が飛び掛ける程の衝撃が襲い、脳が激しく揺さぶられる。
708
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:32:50 ID:VQtoL8aQ0
「ガァッ…!?」
「うおらあああああああああああっ!!」
呻き体勢が崩れるも、クローズが止まる気配は欠片も見当たらない。
怯んだ隙へ拳の連打を叩き込むのは、ボクサー時代から変わらぬ戦法。
或人を縛る悪意という名の鎖を、一本残らず打ち砕くように。
決意の証たる蒼炎を纏わせ、アナザーゼロワンへ放ち続ける。
「邪魔ダ…!!」
無抵抗なサンドバッグになると言った覚えはない。
龍騎よりも力が増したからと言って、アナザーゼロワンが脅威でなくなった訳でもない。
数発目の拳が当たる寸前、残像を残しクローズの死角へ高速移動。
向こうの反応を律儀に待ってやらず、凶器と化した右脚を振るう。
「あっぶね…!」
頭部センサーにより強化した反応速度と、培った戦闘経験による危機察知能力。
それらを駆使し防御を間に合わせ、アナザーゼロワンの蹴りは腕部装甲を叩くに留めた。
尤も、この一発が攻撃の全てと言うなら大間違い。
つい数分前に龍騎を散々痛め付けた猛攻が、再度始まる。
「っ、やっぱ速ぇな……!」
一定方向のみからじゃない、全方位から一斉に襲い来るに等しい。
あらゆる抵抗を許されず、肉片に変えられるまで続く蹴りの嵐。
新たな姿になっても戦慄を抱かざるを得ない速さだが、諦める理由にはならない。
何より、先の光景の焼き直しを覆す力が今はある。
胸部を狙った蹴りに合わせ拳を放ち、互いに腕と脚が弾かれ合った。
「こんなもんじゃ俺は止まらねぇぞ!!」
「黙レ…!!」
悪夢の如き速度で迫る足底へ、クローズもまた拳速を急激に引き上げ迎え撃つ。
羽織ったローブは飾りに非ず、特殊推進ユニットの機能を発揮。
アナザーゼロワンにも引けを取らぬスピードを我が物とし、熱き鉄拳を幾度も叩き付けた。
頭部を狙った蹴りが防がれる、四肢を狙った蹴りが弾かれる、腹部を狙った蹴りが押し負ける。
悪意へ心を浸らせ手に入れた筈の圧倒的な強さに、徐々に追い付かんとしていた。
709
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:33:36 ID:VQtoL8aQ0
「アアアアアアアアアアッ!!!」
「おらああああああああっ!!!」
防ぎ漏らした蹴りが、クローズへ届く回数も少なくない。
優れた耐久性の装甲や肉体であっても、連続で受ければ捨て置けぬ傷と化す。
それが分からない筈はなく、されど「だから何だ」の一言で捻じ伏せる。
痛みには慣れている、仮面ライダーになる前からキツい目にばかり遭って来たのだから。
苦痛へ泣き叫び、戦いから逃げたいと駄々を捏ねる段階は遥か昔に通り過ぎた。
「それによぉ…お前の方がもっと痛い想いしてんだろ…!」
数十発目の蹴りを振り払い、自身の額を相手へ力の限りぶつける。
原始的な戦法にたたらを踏んだ復讐者へ、逃がさぬとばかりに踏み込む。
「或人…お前やっぱり前の俺にすっげぇ似てるわ。大事な相手をふざけた理由で奪われて、手が届く距離にいるのに何もしてやれなくて……!」
言葉を遮るように右脚が振るわれるも、返答を期待して口を開いたんじゃない。
相手同様、クローズの脚部が唸りを上げアナザーゼロワンと激突。
蹴りと蹴りの拮抗は長続きせず、揃って弾かれ間髪入れずに次撃を放つ。
持ち前の走力を存分に活かし、クローズの反応を許さぬスピードで以て襲来。
「仇を討つ以外、ロクに考えられないよなそりゃ。余裕なんて、全っ然あるわけねぇ」
脅威の度合いは変わらずとも、そう来る事はクローズにも予想出来た。
裏拳がアナザーゼロワンの脚を叩き、自身へは到達させない。
攻撃失敗による隙は致命的だが、敵の速さなら文字通りの一瞬でその隙を埋められる。
「俺もそうだった。ファウストの連中が許せなくて、おまけにやってもいねぇ殺人の濡れ衣まで着せられたんだぜ?一々変装しないと散歩にも行けねぇよ」
であるならば、この瞬間にクローズはアナザーゼロワンを上回ったのだろう。
怪物を倒し悪しき夢を終わらせる、魔弾の如き拳が胴を貫く。
並外れたスピードでも回避が叶わない、肉体のみならず目に見えぬ心にまで届く一撃。
ギシリと聞こえた軋む音は、果たしてどこからだったのか。
「仮面ライダーになってもそれは変わんなかった。自分の事以外、あれこれ頭回してられなかった」
短く悲鳴を上げ殴り飛ばされ、空き缶のように地面を転がる。
体と、体以外の部分が痛くて仕方ない。
常人だったら瞬く間に戦意を失い兼ねないが、アナザーゼロワンはその枠に入らない。
絶えず湧き上がり、自分自身でも止める術を知らない憎悪が戦闘続行を瞬時に選択。
滅を破壊しろ、その為なら邪魔者を消し去っても構わない。
復讐鬼に堕ちても本来の或人が決して考えなかった、無慈悲な指令に迷わず従う。
羽音を響かせ現れた大量のバッタが、農作物を食い荒らす害虫さながらにクローズへ群がる。
710
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:34:33 ID:VQtoL8aQ0
「けどなぁ……!口じゃ偉そうなことなばっか言うくせに、見てないとこで俺を助けようと…泣かせることしやがった奴がいてくれたんだよ!」
全身を食い荒らされた、哀れなヒーローの成れの果て。
惨たらしい予想を裏切り、バッタの大群が焼き払われる。
掴む得物は火炎と蒼炎の二つを纏いし聖剣、烈火。
物語の守り手とクローズ自身の異なる炎を一本に宿し、敗北を真っ向から否定。
助けねばならない男を放置して、勝手に死んでおさらばは御免だ。
「あいつのおかげで、俺は本当の意味で仮面ライダーになれた。取り返しのつかねぇことやって、香澄に顔向け出来ない馬鹿にならずに済んだんだよ。
だからよ或人…今のお前が道踏み外して、二度と仮面ライダーに戻れなくなる前に絶対ぇ連れ戻してやる!お前がイズを、裏切っちまわない為にも!」
「黙レェエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!」
妬みと憎しみで、滅への復讐以外どうでもいい筈なのに。
何故こんなにも、聞くだけで苦しくなるのか。
どうしようもない程に、泣きたくなってしまうのだろうか。
だったら壊せば、いいや殺して黙らせれば良い。
憎悪に突き動かされるまま、或いは逃避するかの結論へ辿り着く。
脚部へエネルギーを集中、眼前で聞くに堪えないモノを吐き出す男を仕留める。
マギアやレイダーに打ち勝ち、悲劇を食い止めて来たゼロワンの蹴り技。
此度は悪意を糧に標的を砕くという、自身のこれまでの戦いに泥を塗るに等しい。
たった今言われた通り、二度と仮面ライダーゼロワンに戻れなくなるだろう。
放たれんとしている力が如何に危険か、対峙中のクローズも勿論分かる。
何度言葉を投げかけても、悪意は深く根を張ったまま。
もし自分が殺されれば、きっと完全に手遅れになってしまう。
711
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:35:11 ID:VQtoL8aQ0
「だったら俺も、本気でぶつけて止めてやるよ!」
『Ready Go!』
『GREAT DRAGONIC FINISH!』
過去の戦いで幾度もして来たように、レバーを高速回転。
ボトルの成分とクローズドラゴンの機能が、最大まで活性化。
パイプオルガンの演奏に似た音声が鼓膜を激しく刺激し、エボルドライバーから右脚へとエネルギーが流れ込む。
示し合わせたかのタイミングで共に跳躍、飛び蹴りを叩き込む。
足底同士がぶつかり、それ以上は進ませまいと両者宙で拮抗。
発せられる悪意の波動がクローズの体力を削り取り、敗北へ一歩また一歩と近付けさせる。
「これが……どうしたぁっ!!!」
「ッ!?」
助けると、己が抱いた想いは決して裏切らない。
負ける気がしないんじゃない、負けられない。
戦意の高まりは留まる所を知らず、限界を超えて尚も昇り続ける。
土壇場でハザードレベルが急上昇、逸る鼓動がクローズを巨大な蒼龍に変え突き進む。
「戻って来い…或人ォッ!!!」
「ぁ――」
先の見えない暗闇の中で、取り残された子供を救い出すように。
憎悪という名の檻を木っ端微塵に粉砕し、善意の心を引っ張り上げる。
712
:
リローデッド ─Are you ready to burst─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:36:08 ID:VQtoL8aQ0
偽りの歴史を完全に砕くには、正しき歴史を歩んだ戦士の力が必要。
しかしアナザーウォッチの使用者の肉体が、限界以上のダメージを受ければ変身を保っていられない。
体内から弾き出されたウォッチは宙を泳いだ後、乾いた音を立てて地面に転がった。
「つっっっかれたぁ……!ってか、これ言うの二度目じゃねかよ……」
地面へ大の字に横たわり、疲労を思いっ切り声に出す。
一度目の或人との戦闘時と同じだが、消耗は確実に今回のが大きい。
打ち勝ったものの体力がどっと抜き取られ、堪らず変身解除。
慣れないドライバーを使った反動もあってか、額には汗がびっしょりと浮かんでいる。
「万丈さん……」
力無く呟かれた自身の名へ、顔を向ければ曇った表情でへたり込む青年が一人。
暴れ回ったアナザーゼロワンの面影はなく、正気に戻ったのは間違いない。
有言実行、或人を悪意から解放出来て安堵する。
万丈と違い、当の或人は喜べるような心境ではないが。
「暗い顔すんなって。俺は――」
重い体を起こし口を開き、視線の先で彼の表情が急に変わった。
どうしたと聞くのを待たず、立ち上がり駆け寄った或人が突き飛ばす。
背中から地面に倒れ、鈍痛が疲れた体に響く中、
「或人……?」
呼んだ名前に一言も返さず、夥しい血を吐き出す青年が見えた。
713
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:38:09 ID:VQtoL8aQ0
◆
「もー、無駄にしぶといおじさんだにゃー。中高年の体に負荷を掛けるのはオススメしないよー」
生意気極まる罵倒を耳で拾いながら、とんだ悪手だったと失敗に舌を打つ。
解放した戦士達のライダモデルに加え、天津自身がチューンナップを行ったサウザー。
これらが揃えば余程の敵、それこそ軍服の男や継国縁壱のような規格外でもない限り容易く敗れはしない。
早急な無力化は難しくないと、数分前の考えはものの見事に裏切られた。
「くっ、またか…!」
巨体を豪快に叩き付けるマッド・キマイラへ対抗すべく、得物にプログライズキーを装填。
アビリティを付与し技を発動する、慣れた動作が行えない。
何度トリガーを引いても、プログライズキーの認証が行われないのだ。
理由もなく故障は有り得ないが、現実にうんともすんとも言わない。
四苦八苦している間にも脅威は迫っており、迎撃を諦め回避へと移行。
この流れも今が初めてでなく、危ういながらもマッド・キマイラの体当たりを躱す。
但し敵はマッド・キマイラ一体のみじゃあない。
回避直後に呪符が飛来、サウザンドジャッカーを振るい数枚を斬り落とす。
それもまた予想通りと拳を突き出すのは、真紅の瞳を持つ戦士。
仮面ライダーアギトの放つ一撃を防ぎ、仮面の下で苦々しい表情を作る。
率直に言って、戦況はサウザーが圧倒的に不利だった。
ダメージステップ終了時まで相手の魔法・罠とモンスター効果を封じる。
マッド・キマイラの効果の一つはプログライズキーにも作用し、手数の大半を潰されたも同然。
更にマッド・キマイラ自体がリンボの強化を受け、時間を掛けずに出現させたライダー達をほぼ壊滅に追いやった。
気付けば残ったのはドライブのみ、しかも倒れたライダー達は全て敵に寝返る始末。
マッド・キマイラの二つ目の効果、破壊したモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。
力こそ減少しているも、数の差を完全に覆されたのだ。
トドメとばかりに、コントロールを奪った相手モンスター一体に付き自身の攻撃力を300Pアップ。
ライダモデルの一斉開放は、敵に塩を送るに等しい悪手だったのだ。
「データ再現されたに過ぎないとはいえ、良い気分ではないな……!」
自分の知らない仮面ライダー達が、灯花達の操り人形にされた。
意識は存在しないライダモデルと分かっても、嬉しい光景な訳がなく。
己の失態を恨みながら、地を駆けジオウの銃撃を躱す。
サウザンドジャッカーで斬り落としつつ、反対の手を向け光弾を発射。
タッチパネル型の可変武器、ガシャコンバグヴァイザーⅡはライダー・バグスターの両方に効果的なダメージを与える。
力を削がれたデータ体を消し去るのは難しくないが、妨害に出る者がいなければの話だ。
714
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:38:44 ID:VQtoL8aQ0
「元は味方でも敵に回れば容赦なし、と。ですが拙僧もいることをお忘れなく」
五芒星の結界が光弾を寄せ付けず、タイミングを同じくしてキバとブレイドが襲い掛かった。
拳と剣を捌くが、ライダー達だけに意識は割いていられない。
マッド・キマイラがミサイルを発射、煙を噴射し迫り来る。
光弾の連射で着弾前に消し飛ばすも、爆風で吹き飛ばされどうにか受け身を取る。
余計な足止めを食らう現状へ歯噛みし、
『ガイ!あの赤いライダーってガイの言う通りに動くの!?』
突然の問いに、思わず視線を左腕のパネルへ落とす。
状況は彼女も把握しており、苦戦中なのは説明されずとも分かっている。
「ああ、仮面ライダーのデータを記録した特殊なプログライズキーだからかもしれないが…ある程度は私の指示通りに動かせる」
『そっか……なら、今から私の言う通りにして!それと、上手くいったら――』
内容に思わず、本気かと聞き返しそうになった。
無茶だと言いたいが、自暴自棄故の発想でないのは顔を見れば明らか。
彼女なりに勝算があるからだろう。
「議論を重ねる時間は無いか……ポッピー、君を信じよう」
『うん!信じてもらったからには、期待を裏切らないよ!』
会話を延々と続ける余裕はない。
短剣で幾度も斬り付けるカブトを、反対にサウザンドジャッカーで突き刺す。
言葉無くよろけた赤い戦士には構わず、傍らへ駆け寄って来たドライブへ一つのアイテムを投げ渡した。
どうなるかは不明だがやる他ない、指示を出しポッピーから伝えられた行動を行わせる。
仮面ライダーにとって第二の心臓と言っても過言ではない、ドライブドライバーを外す。
ライダモデル故変身解除はされないが、これでは自分から消滅を選んだも同然。
だからそうなる前に、渡されたばかりのバグルドライバーⅡを装着。
一瞬の硬直後、ピンク色のエネルギーがドライブの全身を駆け巡った。
715
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:39:30 ID:VQtoL8aQ0
『ガシャット♪』
『BUGL UP!』
流れる動作でライダーガシャットを装填。
背後にセレクト画面が出現し、ドライブを全く別の戦士へと変える。
『ドリーミングガール♪恋のシミュレーション♪乙女はいつもときめきクライシス♪』
音声が鳴り止んだ時、ドライブシステムのライダーは最早そこに影も形も存在しない。
ボブカットのピンクヘアーや、ハートをあしらった装飾。
病院前での戦闘で環いろはも変身した、仮面ライダーポッピーがサウザーの隣へ立つ。
バグルドライバーⅡを通じてドライブのデータへ干渉し、自身が動かす仮の器に使用。
外見は本物の仮面ライダードライブと同じでも、あくまでライダモデル…自我を持たないデータの塊だから可能になった荒業。
生身の人間に相手には不可能であるし、出来たとしても倫理の面で拒否するだろう。
「よっし成功!じゃあガイ、あっちの相手は私に任せて!」
「分かった、だがくれぐれも無茶はしないでくれ」
会話もそこそこにサウザーはリンボへ得物を構え、ポッピーは見上げる程の巨体と対峙。
ゲムデウスを思い出させるサイズでも、臆さず真っ直ぐに見据える。
マッド・キマイラと、怪物を従える少女を。
「里見灯花ちゃん、だよね?」
「…ああ、お姉さまをそのヘンテコで美的センスが足りない恰好にさせたのは、あなただったもんねー。なら、わたくしのことも聞いてるか」
「酷っ!?何で!?この見た目可愛いじゃん!っていうか、何でイロハちゃんが変身したのを知って……」
「教えてあーげないっ」
ライダーのデザインを貶された上、至極当然の疑問には生意気な返答。
お転婆な子供の入院患者は慣れているが、ここまで大人を舐めたのは滅多にいない。
少々たじろぐも、すぐに真剣な顔を取り戻す。
716
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:40:13 ID:VQtoL8aQ0
「イロハちゃんが言ってたよ。あなたと、柊ねむちゃんっていう女の子を凄く大事に想ってるって。…もし、誰かを傷付けようとしてるなら、自分が絶対に止めてみせるって」
「…………そう」
予想通りの内容に、何も感じなかったと言えば嘘になる。
変わらない愛を向けてくれる事も、自分達のやり方を否定するのも。
分かっていても胸の奥から込み上げてくる。
会いたいけど会いたくない。
会って抱きしめて欲しい、自分とねむと、ういが大好きなあの人の笑みを見たい。
会ったら抱いた決意に、迷いが生じないとも限らない。
自分の幸福を捨てでもいろはを救わなければならないのに、いろはの傍にいる未練へ縋り付いてしまうかもしれないから。
そう己に言い聞かせても、いろはが聖都大学附属病院にいると分かった時、じっとしてられなくて。
取り繕い平静であるとの仮面を被るが、動揺はポッピーにも伝わった。
CRの一員として多くの患者と向き合って来たのだ、様子の変化に気付かない訳がない。
灯花なりにいろはへ思う所が多々あるのは分かった、だから余計に彼女を放っては置けない。
「今のトーカちゃんをイロハちゃんが知ったら、絶対に悲しむよ。あんなに心配して、会いたがってるイロハちゃんを傷付けて、それでトーカちゃんは良いって思うの!?」
「あーもー、うるっさいなー。わたくし、そういう知ったかぶりのお説教ってきらーい。低俗な学園ドラマの見過ぎじゃないのー?」
「イロハちゃんが今のトーカちゃんを見て喜ぶ女の子じゃないのは、私にだって分かるよ!」
「それジョーク?面白いことを言うにゃー、このショッキングピンクさんは」
貼り付けた笑みと裏腹に、瞳には不快感が宿る。
ほんの一時共闘しただけの分際で、いろはの何を知ると言うのだ。
奇妙な装甲…仮面ライダーの力を貸しておきながら、いろはが傷付くのを防げなかったくせに。
揃いも揃って役に立たず、こちらのストレスを煽ってばかり。
燻る苛立ちへ呼応し、マッド・キマイラがミサイルを発射。
加減の一切無い攻撃へ、ポッピーも会話を一旦打ち切り動き出す。
先程サウザーがやったのと同じく、ガシャコンバグヴァイザーⅡを装備し銃口を向ける。
勿論爆風を浴びないよう駆けながら、光弾を連射し着弾前に破壊。
吹き飛ばされる呆気ない終わりは退けるも、すかさずマッド・キマイラが自身の巨体を叩き付けた。
「よっと…!」
一般人なら身を竦ませ兼ねない光景にも動じず、シューズに搭載された加速スラスターを起動。
ステップを踏み華麗な動作で回避し、マッド・キマイラの死角へ立つ。
そのまま攻撃を行う、のではなく背を向け走り出した。
717
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:40:52 ID:VQtoL8aQ0
<高速化!>
戦闘放棄が目的に非ず、駆け寄った先に設置されたメダルを掴み取る。
振り返ったマッド・キマイラに叩き潰されるより早く、ポッピーの姿が消失。
正確に言うと、消えたとしか思えない速さで動いた。
<分身!>
マッド・キマイラには目もくれず別のメダルを入手。
響く電子音声が告げた通り、複数体の分身が生み出される。
巨体を取り囲んで飛び跳ね翻弄するポッピー達を、羽虫を叩き落とすように蹴散らす。
ノイズを走らせ消滅するが、それらは全てコピー体。
本物のポッピーは既に、マッド・キマイラから離れた場所へ駆け出していた。
<伸縮化!>
ゴムのように両腕を伸ばし、別の個所に設置されたメダルを二つ共引き寄せる。
と言っても自分の為に使うのではない。
片方は仲間である黄金のライダーへ、もう片方は対峙中の相手に投げ付ける。
マッド・キマイラ…ではなくモンスターを操る灯花自身にだ。
<混乱!>
「うにゃっ!?」
痛みは無いが、上手く言葉に表せない気持ち悪さが襲う。
何をされたか定かじゃなくとも、敵をこのまま調子付かせるのは避けたい。
マッド・キマイラへ攻撃の指示を出そうとし、
カードの表示形式を守備表示へと変えた。
「っ!?わたくしの体が……」
望んだのとは全く異なる行動を取ってしまった。
原因が何かを深々と考える必要はない。
たった今投げ付けられた、奇怪なメダルの影響なのは確実だ。
718
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:41:49 ID:VQtoL8aQ0
ポッピーの変身と共に配置されたこのメダルの正体は、CRの関係者やバグスターなら知っていて当然の存在。
ライダーガシャットの起動時に現れステータス変化を齎す、エナジーアイテムである。
使い方次第で戦況を有利に動かせるが、マッド・キマイラが相手ではそうもいかない。
魔法や罠、或いはモンスター効果として処理され、使用不可能になった可能性は非常に高いからだ。
詳細な原因は知らないが、プログライズキーが度々起動しなくなるのはポッピーも画面越しに把握。
何らかの特殊な技だったり装備が使えなくなると、察するのに時間は掛からなかった。
マッド・キマイラと戦おうとするとそういった不調が現れるなら、そもそもマッド・キマイラとの戦闘を避ければ良い。
半ば賭けにもなったが、回避に徹しマッド・キマイラから敵意を外した結果。
エナジーアイテムは効果を発揮し、ステータス強化の恩恵に与った。
更に正規のデュエルでない以上、モンスターを無視しプレイヤーへのダイレクトアタックも反則ではない。
混乱のエナジーアイテムを灯花へ直接ぶつけ、本人の意図しない行動を取らせたのだった。
猛威を振るおうと存在の核がカードである故、デュエルモンスターズのルールには逆らえない。
身を縮こまらせて受け身の耐性を取り、守備表示へと変更。
こうなれば再び表示形式を変えない限りは、自ら攻撃は不可能だ。
<マッスル化!>
一方でサウザーもエナジーアイテムの恩恵を受け、反撃の兆しを見せる。
パワー面を大幅に強化され、アギトとキバを薙ぎ払う。
斬り掛かって来たブレイドを逆に斬り付け、すかさず穂先を突き刺した。
『JACK RISE』
「手荒で申し訳ないが、あなたのデータを頂きました」
敵に回ったライダモデルを、再び自身の力として使わせてもらう。
稲妻を帯びた光刃を振り回し、ライダー複数体を纏めて撃破。
煙が覆い隠す中を突っ切り、唯一残ったジオウも同様に得物で刺す。
データは貰った、であれば何をするかは決まったも同然。
『JACKING BREAK』
時計の針を象ったエネルギー刃が二本出現、切り刻まれジオウも消滅。
歯止めを掛けるべく投擲された呪符をも掻き消し、投げた本人へ斬撃が襲う。
力を大きく削がれた式神には堪える威力だ、ノロの力を上乗せし火炎で相殺。
雲行きが怪しくなって来たのを実感し、丁度目に映ったのは借りて来た猫のように大人しくなったマッド・キマイラ。
719
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:42:30 ID:VQtoL8aQ0
「これは少々宜しくない流れと見ました!」
灯花目掛けて呪符を投げ放ち、念を籠める。
呪うのではなく祓う為にだ。
解呪の効果を受け、エナジーアイテムの混乱状態から脱する。
『CRITICAL CREWS-AID!』
『THOUSAND DESTRUCTION!』
しかし得られた最大のチャンスを前に、敵の立て直しをむざむざ許すお人好しはいない。
リンボの解呪を待たず、サウザーとポッピーがそれぞれドライバーを操作。
プログライズキーとガシャット、異なるキーアイテムからエネルギーが流し込まれる。
脚部へ纏わせた力を同時に叩き付け、決着とするべく共に跳躍。
「これで終わりとしましょう!」
「トーカちゃんにも、ここで止まってもらうから!」
非情の玩具は爆散し、次なる手を打たせず少女と術師を無力化。
思い描いた光景が現実に変わるまで、残り数秒もない。
「いーやっ。そんな要求は受け付けませーん」
即座に訪れるだろう敗北を、小馬鹿にするように笑って跳ね除ける。
この攻撃を受ければ、確かにマッド・キマイラも破壊は免れない。
だが一体いつ、こちらに打つ手が無いと言ったのか。
間一髪で混乱を脱し、デュエルディスクを操作。
「なんだと……!?」
「うえええ!?ピプペポパニック〜!?」
撃破の正に寸前、力を付与していたガシャットとプログライズキーが急に沈黙。
ライダー達が脚部に纏ったエネルギーが消え失せた。
異変はそれだけに留まらず、ドライバー部分へ衝撃が襲い反対に弾き飛ぶ。
変身ツールが外れ天津は生身へ逆戻りし、ポッピーの意識もバグルドライバーⅡへ再び閉じ込められる。
地面を転がり鈍い痛みに呻く天津の横には、不安定な状態と化した一体のライダモデル。
元はドライブのデータ体だったが、ポッピーの変身解除に伴い実態を上手く保てずにいた。
720
:
リローデッド ―Duelistを攻略せよ!─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:43:09 ID:VQtoL8aQ0
マッド・キマイラが倒されるだろうタイミングで一手早く、灯花は伏せていた罠カードを使用。
デストーイ・マーチ。
自分フィールドのデストーイモンスターが相手カードの対象となった時、発動を無効にし破壊するカウンター罠。
ドライバー本体の耐久性故壊れはしなかったが、衝撃を与え弾き変身を解くのには成功した。
おまけにデストーイ・マーチの効果はまだ残っている。
「はいはいご苦労さまー。じゃ、次はあなたの出番だよー」
対象となったモンスターを墓地へ送り、新たにデストーイモンスター一体を召喚する。
マッド・キマイラと入れ替わりで現れるは、これまた巨体を誇る不気味な玩具。
血に染まった体に黒々とした翼を生やし、手には鋭利な三又槍。
ギョロリと飛び出た目が獲物を捉えて離さない、悪魔そのものなモンスター。
デストーイ・デアデビルが、召喚と同時に槍を振り被った。
「くっ……!」
問答無用の一撃を見舞われるとあっては、おちおち寝転がってもいられない。
体が上げる悲鳴を噛み殺し、転がる二つのドライバーを掴んで後退。
天津もポッピーにも被害は及ばず、哀れ餌食となったのはライダモデルのみ。
放って置いてもすぐ消えるだろうに、三又槍で一刀両断の憂き目に遭う。
運の悪い事に、これがトリガーとなって天津の全身へ激痛が駆け巡った。
「がああああああっ!!!??!」
『ガイ!?どうしたの!?ねえガイ!?』
手の中で必死に呼びかけるポッピーの声も遠ざかり、天津の意識は落とされる。
病院での消耗を抱えたまま戦闘を行い、軽くないダメージを受け遂に限界が来たのだ。
眠っている場合じゃないと言い聞かせても、無駄な抵抗に終わる。
デストーイ・デアデビルは相手モンスターを破壊した時、プレイヤーに1000Pのダメージを与える。
万全と程遠い天津を気絶へ追い込むには、十分過ぎる痛みだった。
「おや……」
倒れ伏す男と、自力では悪足掻き一つやれない女。
敗北者二名から視線を外し、見つめた先の光景にリンボは短い呟きを漏らす。
声色に含まれるのは上機嫌とは言い難い、落胆や期待外れと言ったもの。
見たいと思っていたのはどこにもなく、あるのはリンボの嗜好と正反対。
過度な期待をし過ぎたか、乱入者が思っていたより面倒な手合いだったか。
のんびり見物を行うつもりだったが、こうなっては仕方ない。
芝居へ茶々を入れる無粋な者には、舞台から降りてもらうに限る。
紙飛行機でも飛ばすような気安さで、呪符を投げ付けた。
721
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:46:02 ID:VQtoL8aQ0
◆
或人がそれに気付いたのは偶然だった。
のっそりと体を起こした万丈の後方で、こちらをじっと見据える術師が視界に映った時。
猛烈な悪寒に急かされるまま、無我夢中で突き飛ばした。
自分のどこにまだこんな体力が残っていたのか、不思議でならない。
とはいえ、直に消え失せる些細な疑問に過ぎないだろう。
「がふ……げほっ……」
体の内側が燃え盛っているように熱い。
吐き出しても吐き出しても、血がせり上がるのが抑えられない。
ゼロワンとして戦い続け、時にはヒューマギア顔負けの打たれ強さで立ち上がって来た。
しかし或人はどこまでいっても、肉体的にはただの人間。
鬼やブラッド族、神ならば耐えられたろう呪符も命を刈り取るのに過剰な凶器。
内より腐らせ、溶かし、呪い殺される末路は避けられない。
「或人!おいしっかりしろ!」
大声で自分を呼ぶ青年を力無く見上げる。
朧気な視界の中でも、彼が焦燥を露わにしてるのが分かった。
「万丈、さん……」
悪い事をしたと、心から思う。
もしあのまま滅を破壊していたら。
きっと万丈が言うように、二度と仮面ライダーには戻れなかった。
イズを裏切り、本当の意味で取り返しが付かなくなっていた。
そうなる前に引き戻してくれたのに、こうも早く命を失ってしまうなんて。
万丈にも、自分と滅の争いを止めようとした天津にも、ただただ申し訳ない。
「ありがとう……俺を止めてくれて……」
伝えたい言葉を全部口にする時間も、もう残されていない。
だからせめて、感謝を告げたかった。
自分を二度もアークから引き戻した彼に。
決定的に道を踏み外すのを、止めてくれたヒーローに。
顔を動かし、呆然とこちらを見つめるヒューマギアと視線を合わす。
正直、完全に許す事は今も難しい。
けど天津が言った通り、自分の行いに後悔と罪悪感を抱いてるなら。
悪意から抜け出す方法が分からず、苦しんでいるなら。
彼の息子を未来で自分が奪ったなら、最後に放って置くのは出来ない。
「滅……お前の悪意を止められるのは……お前自身だけだ……」
復讐の連鎖は、悪意の支配は自分達で断ち切らねばならない。
どうか彼が恐怖した自身の心を受け入れ、間違った道をこれ以上行かないように。
強く願い、瞼が静かに閉じられる。
夢に向かってもう一度、高く跳んだ未来へ踏み出すことは叶わず。
己を蝕んだ悪意共々、異界の地で眠りに就いた。
722
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:46:53 ID:VQtoL8aQ0
「或人…?おい、或人……っ!」
命の熱さを失い、語る術を持たなくなったのが何を意味するか。
嫌という程覚えがあるから、万丈は強く悔やむ以外に出来ない。
悪意を振り切り、肩を並べて戦う仲間となれたかもしれない男を喪った。
「ンンン……これはちと予想外。或人殿にはまだ使い道を考えていたのですが…ま、過ぎた事を悔やんでも仕方ありますまい」
「ふざけんじゃねぇぞ……テメェ!!」
「まあまあ落ち着きなされ。やる気に溢れるのは結構ですが、随分とお疲れのご様子。折角拾った命を無駄にしては、或人殿も浮かばれないでしょうなぁ」
「うるせぇ!!テメェだけは、絶対に許さねぇ……!」
今殺した相手など、どうでもいいと言わんばかりの態度が逆鱗に触れる。
旧世界で人々の命を玩具同然に弄んだ、エボルトと同じ外道の類だ。
怒りに身を任せ再変身しようとするが、リンボの言うように体力的な余裕はない。
アナザーゼロワンから受けた傷が残る身体で戦うのは、無茶以外のなにものでもなかった。
『POISON』
「変…身……」
『FORCE RISE』
『STING SCORPION』
『BREAK DOWN』
負傷を無視し戦いを選ぶ万丈を諌めるように、暗く淀んだ電子音声が響く。
銀の体を持つサソリが現れ、尾の先端を滅に突き刺す。
広がるのは毒に非ず、対象を戦士に変えるエネルギーデータ。
バイオレットカラーのボディスーツで覆い隠し、拘束具状のアーマーを各部へ装着。
黄色く輝く瞳が術師を射抜き、豪快に左腕を振るう。
ひらりと跳び鋼鉄の鞭を躱すリンボから、まるで万丈を庇うかの姿で前へ出た。
天津のデイパックから転がり落ちたフォースライザーと、数時間前に戻って来たプログライズキー。
上気二つを使い変身した仮面ライダー滅は、振り返らずに自身の支給品を背後へ投げ渡す。
723
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:47:36 ID:VQtoL8aQ0
「天津垓を連れて去れ。足手纏いがいては満足に戦えん」
「は?お前何言って……」
「人類滅亡の結論を、間違いだったと言うつもりはない。だが、この場で真っ先に滅ぼさねばならないのは奴らだ」
「お前……」
何を言いたいのか、何をしようとしてるのか。
分かるからこそ反論を口に出しかけ、しかし口論を行える余裕がないと即座に察する。
気を失いピクリとも動かない男と、必死に呼びかける聞き覚えがあるような声。
まだ助けられる彼らを無視するのは、あの時と何が違う。
自分の事しか考えられなかった旧世界での過ちを繰り返し、馬渕由衣の前で言った全てを嘘に変える。
出来る筈がなく、故に不甲斐なさを押し殺してでも滅へ背を向けるしかなかった。
「……追い掛けて来いよ。或人が言ったこと、無意味にするんじゃねぇ」
無理だと分かっていても、そう言わずにいられない。
白スーツの男を背負い、奇妙な女が映っている機械を拾い上げDホイールに乗り込む。
気を失った相手を強引に後部へ乗せ、クローズドラゴンが小さな体を駆使し支える。
サイズに反しスマッシュを怯ませるパワーがあるだけに、振り落とされるのを防げる筈。
指を咥えて見ているリンボ達ではないが、滅が一歩も近付けさせない。
オーソライズバスターから毒針を乱射し牽制。
片や結界を展開し、もう一方はモンスターを盾に使いノーダメージで凌ぐ。
そうこうしてる内にDホイールが急発進。
ライディングデュエルでない以上、速度制限も掛からずあっという間に走り去って行った。
「なにそれ、一人で残ってヒーローごっこでもしたいの?それとも、データが完全におしゃかになっちゃった?」
「他者へ悪意を伝染させる大元の貴様らを、生かしてはおけん……!」
冷え切った目で問う灯花へ断言し、ドライバーに手を伸ばす。
トリガーを押し、高威力の技の待機状態へ入った。
724
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:48:22 ID:VQtoL8aQ0
『STING DYSTOPIA!』
プログライズキー内のデータを読み取り、エネルギーへと変換。
左腕の伸縮ユニットへ流し込み、先程と同じく鞭のように伸びる。
尤もそのまま攻撃に使うのではなく、右脚へ巻きつけた。
崩壊毒を蓄えた針を装着し高く跳ぶ。
標的を高く見下ろし蹴りを放てば、返り討ちにすべく悪魔の玩具が三又槍を振るう。
足底から伝わる衝撃は軽くない。
攻撃力3000のパワーに加え、滅自身もダメージが激しい。
押し返されスクラップに変えられる最期も、冗談では済ませらない。
「この程度がどうした……!」
力が足りないなら、強引に掻き集めてでも敵を滅ぼす。
制御ユニットの役割を持つ胸部パーツに指令を送り、パワー全てをこの一撃へ上乗せする。
安定性を捨て攻撃特化の代償が即座に襲い、各部が火花を散らす。
しかし滅が止まる理由にはならない。
三又槍を押し返すばかりか亀裂を生み、真っ向から砕いた。
「オオオオオオオオオオッ!!!」
足底がデストーイ・デアデビルの巨体を叩き、哀れ爆散。
召喚されて間を置かずに退場となったモンスターに、何の思いも浮かばない。
倒すべきはその先にまだ健在。
たとえ幼い人間だろうとここで滅ぼさねば、悪意が広まるのは間違いない。
奇怪な術を用いる男共々、自分が終わらせようと突き進み、
「……うっざ」
ボソリと、呟いたのを果たして滅が聞いたかどうか。
突如全身へ不可視の攻撃が襲い、血の雨の如く火花が散った。
止まる意志が無くとも、思わぬ衝撃へ強制的に勢いが落ちる。
それでも構うものかと蹴りを突き出し、滅は見た。
絶対零度の瞳で見上げる少女が、アークに勝るとも劣らないエネルギーを纏っているのを。
725
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:49:07 ID:VQtoL8aQ0
「バイバイ、ロボットさん」
吐き捨てた声は終わりの合図となって、滅へ終焉の刻が訪れる。
突き出した足から徐々に焼き潰され、胴体を熱が侵食。
頭部を飲み込み消し去るまで、一刻の猶予も無いだろう。
相手にとってではない、ここが自分にとっての果てだった。
(そうか……)
敗北を理解し、全く悔やんでないと言えば嘘になる。
己の足掻きは届かず、悪意を滅ぼせずに力尽きるのだから。
けれど不思議と、この結末に納得を抱く自分も存在した。
いいや何も不思議なんかじゃあない、至極当然の末路がようやく訪れたに過ぎない。
本当に滅ぶべきは或人でも天津でも、目の前の二人組でもない。
自分だ、他ならぬ滅自身が真っ先に滅びねばならなかった。
迅を奪った或人は許せない、だが根本的な原因を作ったのが誰かは言うまでもない。
奪われて初めて分かった。
いや若しかしたら目を背けて来ただけで、自分に心があると言われた時から分かっていたのかもしれない。
大切な存在を失う苦痛がどれ程か、或人に夢を捨てさせる程の絶望がどんなものかを。
或人と、それに、ああ、この地でも自分は奪ってしまった。
仲間を理不尽に奪われた環いろはと七海やちよへ、罪の重さを理解したと言っても今更だ。
届ける術はなく、仮に伝えられても全てが手遅れ。
あれだけ聞こえた迅の声も、いつまで待っても現れやしない。
己が心へ向き合うのが遅過ぎた、滅ぶべき悪が当然の如く消え去る。
抵抗の意志を示さず、自らの終わりを受け入れ、
(すまなかった……)
誰にも聞こえない懺悔を最後に、もう一つの悪意も眠りに就いた。
726
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:49:47 ID:VQtoL8aQ0
○
勝てた理由を説明するなら、何も難しいものはない。
デストーイ・デアデビルは戦闘で破壊された時、墓地のデストーイモンスターの数に応じて相手にダメージを与える。
効果を使って滅の勢いを削ぎ、後は灯花自身の力で消し飛ばした。
フリル付きのドレスを身に纏った、魔法少女としての姿。
これまで使わなかった力を解禁し、変換の固有魔法を使用。
周囲一帯の力を自身の魔力に変え固有武器の日傘へ収束、高威力の砲撃を先端から発射。
それで呆気なく片付いた。
「もー、あんまり無駄なことさせないでよねっ」
原型を留めていない、僅かに残った残骸へ愚痴をぶつける。
威力に反し低燃費なのが灯花の魔法だが、魔力を使わされたのは事実。
微量なれどソウルジェムに濁りを確認でき、全く最後までこちらの不快感を煽ってくれる。
ついでに首輪も砲撃に巻き込んだせいで、回収は不可能。
尤も、それは灯花の自業自得だが。
「ふぅ、一仕事した後に吹く風は心地良いものですな」
冷風を気持ち良さ気に浴びながら、いけしゃあしゃあと言ってのける。
逃げた連中が見たら、さぞ額に青筋を浮かべるだろうな。
そう内心で独り言ちる灯花の元へ、言葉通り仕事を終えたリンボが近付く。
放置されていた幾つかの支給品に加え、新たに首輪一つを入手。
リンボの後ろには、頭と胴体が別れた死体が転がっている。
倫理の面から抗議をぶつける気は一切ない。
役に立たないと判断すれば、桜田ネネのような幼稚園児でも殺す少女だ。
差し出された首輪を当然のように受け取り、デイパックへ放る。
殺し合いに乗った邪魔な輩の退場と、幾つかの支給品。
それに病院前で手に入れたのと合わせ、首輪が二つ。
収穫があったのは良いとして、ここからどう動くか。
727
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:50:23 ID:VQtoL8aQ0
「それにしても、いろは殿の現在位置は変わらず不明と。ですが運が良ければ、灯花殿のご友人であるねむ殿が先に見付けているやもしれませぬぞ」
「ふーん、ねむとお姉さまが……」
絶対ないとは言い切れない。
元々の知り合い同士である或人達が三人集まったように、他の者だってそういう事態は起こり得る。
きっとねむもいろはとの再会を望む気持ちと、同じく拒む気持ちの両方があるだろう。
いざ会えた時、コロッと考えを変え魔法少女救済を諦める。
そんな情けない事にはならない筈だ、ういとの間に誓ったいろはを救う約束を忘れるなんて有り得ないのだから
「ねむが、わたくしより先に……」
再会が叶ったら、いろはからはさぞ喜ばれるに違いない。
死に別れた相手ともう一度会える、夢や幻じゃなく現実で。
いろはがどれだけ自分達を想ってくれてるか分かるから、どう反応するかも予想は付く。
何もおかしくはない、いろはと自分達の関係を思えば当たり前の光景。
「……」
なのにどうしてだろうか。
涙を流し、もう二度と離すまいといろはに抱きしめられるねむを思い浮かべると。
こんなにも苦々しく感じるのは。
変わる事のないいろはからの愛が、自分より先にねむが受け取ると思うと。
どういう訳か胸が掻き乱されるのは。
理由は分からないけど、無性に気に食わなかった。
◆
どこから道を間違えたのだろうか。
敵として出会い、時に理解し合い、肩を並べ共通の敵へ挑み、憎しみをぶつけ合って。
その果てに得たソレゾレの未来を、掴み取ることは終ぞ叶わず。
死という絶対の結末だけが、人とヒューマギアへ平等に与えられた。
善意と悪意の闘争に、終わりはない。
【飛電或人@仮面ライダーゼロワン 死亡】
【滅@仮面ライダーゼロワン 破壊】
728
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:51:13 ID:VQtoL8aQ0
【E-5/一日目/午前】
【里見灯花@マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝(アニメ版)】
[状態]:疲労(中)、あり得ない思考に対する動揺(小)、リンボ(式神)による暗示の影響(中)、嫉妬と不快感(中)
[装備]:デュエルディスク+素良のデッキ@遊戯王ARC-V
[道具]:基本支給品一式×2、桜田ネネのランダム支給品×1〜3、首輪(ネネ、承太郎、或人)
[思考・状況]
基本方針:ハ・デスの力を奪い、魔法少女の救済を果たす。
1:使える人材は生かしておく。
2:首輪を外す。取り敢えずどこかで調べたい。並行してドッペルに関しても調べる。
3:出来ることならねむと合流。もしねむがわたくしより先にお姉さまと会っていたら……?
4:七海やちよは邪魔をしてくるなら容赦しない。
5:私は、いろはお姉さま、を――?
6:この陰陽師(リンボ)、信用はできないは実力はあるから今のところは保留。
7:六眼の侍(黒死牟)が気に入らない。なんであんな奴がお姉さまのお傍に……。
[備考]
※参戦時期は死亡後。
※首輪が爆発した時、ソウルジェムも同時に破壊されると考えています。
※リンボによる暗示の影響で、リンボに危害を加えることは不可能となっております。
【キャスター・リンボ(式神)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康(本体より弱体化)、魔力消費(中)
[装備]:
[道具]:小倉しおんの支給品袋及び支給品一式、タイムテレビ(残り使用回数3回)@ドラえもん、ノロの入ったアンプル×7@刀使ノ巫女(漫画版)、ポルターガイスト(6時間使用不可)@遊戯王OCG、オーソライズバスター@仮面ライダーゼロワン、アナザーゼロワンライドウォッチ@仮面ライダージオウ×ゼロワン 令和・ザ・ファーストジェネレーション
[思考]
基本:ただ、己の衝動と欲望の赴くままに
1:里見灯花に付き従う。何時彼女が爆発するか楽しみですぞ、ンンンンン―――。
2:あの侍達(黒死牟、縁壱)は……ンン。
3:飛電或人は少々期待外れでしたな。まあいいでしょう。
[備考]
『式神について』
※最大召喚数は1名
※他参加者から5メートル以上離れた場合自動的に消滅。
※性能は本体より著しく弱体化。
※自動消滅または撃破された場合、式神再召喚まで6時間のインターバルが必要。
※本体が撃破された場合、式神も同じく消滅する。
※式神が得た情報は本体に共有される。
※タイムテレビを使い黎明、朝の時間帯にD-6の病院前で起きた戦闘を見ました。
729
:
リローデッド ―コレがカレらの選ぶ道─
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:52:12 ID:VQtoL8aQ0
【万丈龍我@仮面ライダービルド】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、怒りと悔しさ、運転中
[装備]:エボルドライバー(複製)+エボルボトル(コブラ、ラビット、ライダーシステム)@仮面ライダービルド、グレートドラゴンエボルボトル+グレートクローズドラゴン@仮面ライダービルド、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎、遊星のDホイール@遊戯王5D's
[道具]:基本支給品一式×3、フルボトルバスター@仮面ライダービルド、火炎剣烈火&聖剣ソードライバー@仮面ライダーセイバー、ガトリングフルボトル@仮面ライダービルド、ランダム支給品×0〜2
[思考・状況]
基本方針:主催の奴ら全員倒して殺し合いを潰す。
0:或人……チクショウ……
1:今はこいつら(天津、ポッピー)を連れて逃げる。
2:遊戯って奴が心配。
3:檀黎斗はもう絶対に許さねぇ。
4:戦兎ならクレヨンの腕も直せる筈だ。
5:戦兎、玄さん、絶対生きてろよ。
6:エボルト、滅、DIOを警戒、特にエボルトは一度共闘したからって信用出来るわけねぇ
7:爆発頭野郎(パラダイスキング)は次に会ったら絶対に倒す。
8:他にも仮面ライダーがいるのか知りてぇな
9:俺のフルボトル(ドラゴンフルボトル)はどこいったんだ?出来たら知りてぇな
[備考]
※参戦時期は『ビルド NEW WORLD 仮面ライダークローズ』以降。
※キャルと情報交換しました。
※ドラゴンエボルボトルをグレートドラゴンエボルボトルに再創造しました。それに伴いクローズドラゴンも進化を果たしました。
※どの方角へ向かっているかは後続の書き手に任せます。
【天津垓@仮面ライダーゼロワン】
[状態]:疲労(極大)、ダメージ(極大)、無力感(大)、気絶中、同乗中
[装備]:ザイアサウザンドライバー&アウェイキングアルシノゼツメライズキー&アメイジングコーカサスプログライズキー@仮面ライダーゼロワン、バグルドライバーⅡ&ときめきクライシスガシャット@仮面ライダーエグゼイド
[道具]:基本支給品×2、プログライズキーホルダー×7@仮面ライダーゼロワン、ゲネシスドライバー(破損)+チェリーエナジーロックシード@仮面ライダー鎧武、みーたんの抱き枕(破損)@仮面ライダービルド、パンドラパネル@仮面ライダービルド、スクラッシュドライバー+ロボットスクラッシュゼリー@仮面ライダービルド、オレンジロックシード@仮面ライダー鎧武、一海の首輪
[思考・状況]基本方針:檀黎斗とその部下を倒し、罪を償う
0:……
1:何処かへ飛ばされた仲間達を探す。彼らの元々の目的地へ向かうのも手か?
2:CRの関係者らしい花家大我とも合流しておきたい。
3:ポッピーから聞いたガシャットを見付ける。本当にあれば良いのだがな…。
4:出来る限り多くの人を病院に連れて来て治療したい。が、今戻るのは危険か
5:飛電或人と合流したい。もしアークに囚われていた時にこの場に来ていたのならば必ず止める。
6:滅は次に会えば必ず止める。たとえ力づくでも。
7:これ等のプログライズキーに映っている仮面ライダー達は誰なんだ?知っている人に会えたらいいが…
8:猿渡一海の仲間達を探し彼の最期を伝える。氷室幻徳とは随分離れているか…。
[備考]
※参戦時期は仮面ライダーゲンムズ スマートブレインと1000%のクライシス終了後
※ハイパームテキガシャットなど主催者撃破・会場からの脱出を安易にする強力なガシャットは、ゲームに乗っており尚且つ上位の力を持つ参加者の支給品にあると考えています。(現在の有力候補はポセイドンと縁壱)
※殺し合いの会場が仮想現実の可能性を考えています。
※現在バグルドライバーⅡにはポッピーピポパポが閉じ込められています。
※滅亡迅雷フォースライザー@仮面ライダーゼロワン、スティングスコーピオンプログライズキー@仮面ライダーゼロワンは破壊されました。
『支給品解説』
【ノロの入ったアンプル@刀使ノ巫女(漫画版)】
珠鋼を精製する際に砂鉄から出る不純物が結合したモノが収められたアンプル。10本セットで支給。
主に折神家親衛隊が体内に投与し、身体能力の強化を行っていた。
但し余り大量に取り込むと制御が利かず、暴走を招く。
【ポルターガイスト@遊戯王OCG】
通常魔法
(1):相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。
その相手のカードを持ち主の手札に戻す。
このカードの発動と効果は無効化されない。
一度の使用後、6時間使用不可。
『NPC解説』
【ハーピィ・レディ@遊戯王OCG】
通常モンスター
星4/風属性/鳥獣族/攻1300/守1400
人に羽のはえたけもの。
美しく華麗に舞い、鋭く攻撃する。
730
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/08(木) 01:52:54 ID:VQtoL8aQ0
投下終了です
731
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/11(日) 00:09:02 ID:p3hkfsYM0
環いろは、黒死牟、エボルト、武藤遊戯、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、蛇王院空也を予約します
732
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:12:18 ID:???0
ゲリラ投下します。
733
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:14:04 ID:???0
某空間にて、デュエルのペンデュラムとリンクの件を話し、リリスの処遇を施した後、少し、時刻が経過して、ハ・デスはある支給品の話題に触れる。
「では、そのような考えなら、マジカルルビーも口封じも決定したと」
ハ・デスはまたも疑問をぶつける。
キバットとリリスにこのような処置を取るなら、直ぐに実行せずに放置するのは可笑しいからだ。
「彼女もリリス同様に神の恵みを与えたに過ぎない。マジカルルビーも午前8時になった瞬間に言語は遮断する」
「二時間も何故猶予を?」
「本来、情けなど言語道断。だが、上げて落とすやり方も悪くないと考えたのだ。精々足掻くがいいイリヤスフィール・フォン・アインツベルン!」
リリスの件もそうだが、あくまでゲームの主役はプレイヤー。
リリスも大概であったが、ルビーも意思持ち支給品の分際であらすじを行うなど調子に乗り過ぎ。
あくまでルビーの言語を封印するだけでマジカルステッキの変身機能は当然ながら剥奪しない。
ルビーの情報とアドバイスなしのイリヤがどう藻掻くか見物だ。
「まだデイパックに入っている意思がある者達も全て口封じも実行済みだ」
最早、プレイヤーとNPC以外の第三者が口を挟むのを端っから黎斗は気に入らなかった。
最初は予選とあって一部の者は見逃していた。
それでも、自分の理想としたゲームではないのは確かだ。
言葉すら話せないクローズドラゴンは別だが。
ついでに他にも意思持ち支給品が存在するかは黎斗のみ知る秘密。
いてもとっくに黎斗によって誰も彼も言語能力を封印している。
「言葉を話すNPCは例外だ。彼らはゲームを盛り上がる存在だ」
意思持ち支給品と違い、NPCは面白い働きをしてくれる。
NPCなくてはこのゲームは語れない。
お助けキャラだったり、女性だけ守るキャラ、武器や情報など売り渡すキャラなど彼らの存在により、より一層テンションが高まるだろう。
グレートアイもNPCに組み込んだが、当然ながら、主催を倒す、殺し合いからの脱出等明らかにゲームにおけるルール違反を侵す願いは無効で対策済みだ。
NPCの存在がバトルロワイアルを興奮出来ると言っても過言ではない。
「それから、全体の調整の再チェックも行う」
「冥王が心意でカード化したのが、気に入らなかったと」
「当たり前だ。心意で現象が起きようが私は楽しませればそれで良い。だが、こんな事は私の望んだゲームではない。今回だけは神を興奮させたから見逃してやろう。遊びすぎたが、もう次はないと思え」
ハ・デスは冥王の結末にモヤモヤ感を残している。
冥王とは幾度もなく争い、互いに相容れぬ関係だ。
彼を参加者にすると提案し、支給品の没収の発案したのはハ・デス本人。
最初こそは保身第一だったはずなのに覚醒してからあそこまで活躍するとは思っても見なかった。
なら、彼が這い上がって来たら、決着を付けるつもりでいた。
カード化して、勝ち逃げ同然の結果に内心は苛立っている。
「全く少々、自由にしすぎたな。心意を含む参加者のカード化の防止をしておくか。君はもう部屋に戻れ」
「そうさせて貰う」
遊びさえなければこんな事にはとハ・デスは本心では愚痴を零しながらも再び某空間から出て行った。
【意思持ち支給品について】
以下の要因により、全ての意思持ち支給品の言語能力は封印or口封じするものとします。
※マジカルルビーの言語能力の封印は午前8時を過ぎれば起こるものとし、二度と話せません。
※今後は意思持ち支給品が登場しても言語能力は封印or口封じされるものとします。
【その他の事項】
※今後は心意を含めて正規の参加者である遊戯王OCG勢による深淵の冥王のようなカード化現象は二度と起こらないものとします。それでも、起こってしまう場合はその参加者は強制的に首輪を爆破するものとします。(対象は閃刀姫-レイ、閃刀姫-ロゼ)
734
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 00:15:35 ID:???0
投下を終了します。
タイトルは閑話:神の整理PART2
735
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 01:41:03 ID:pRhK714U0
ハデスについての解釈が完全に一致していたり、ルビーがあらすじを語っていたり面白い話の投下をありがとうございます
ですが◆2fTKbH9/1氏の閑話:神の整理PART2について質問があります。
閑話:神の整理PART2におけるルール変更について、どのような意図があるのでしょうか?
また檀黎斗のキャラ性を考えると、心意によるカード化現象という想定外の展開を楽しむことこそあれど、問題視する気はしないと思います
また今後、ルールなど全体に影響力がある話は一度、本スレで相談してください
またこの相談については、企画主以外の書き手も意見を書くことが可能とします
736
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:33:44 ID:???0
>>735
先程の投下ですが、ルビーの口封じについてはリリスが口封じした回でゲームの主役はプレイヤーとハッキリと明言しています。
プレイヤー以外がいつまでも情報を話すのはフェアではないと断言までしています。
それならキバットとリリスが口封じしているのにルビーだけお咎めなしは不公平と思います。
今後も意思持ち支給品が出て来た場合も公平ではなくなってしまうのでこの処置を受けなければなりません。
確かに黎斗ならカード化現象は問題ないと考えますし、そこのくだりはカットして内容の一部を修正いたします。
737
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:55:18 ID:???0
修正版を投下します。
738
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:56:59 ID:???0
某空間にて、デュエルのペンデュラムとリンクの件を話し、リリスの処遇を施した後、少し、時刻が経過して、ハ・デスはある支給品の話題に触れる。
「では、そのような考えなら、マジカルルビーも口封じも決定したと」
ハ・デスはまたも疑問をぶつける。
キバットとリリスにこのような処置を取るなら、直ぐに実行せずに放置するのは可笑しいからだ。
「彼女もリリス同様に神の恵みを与えたに過ぎない。マジカルルビーも午前8時になった瞬間に言語は遮断する」
「二時間も何故猶予を?」
「本来、情けなど言語道断。だが、上げて落とすやり方も悪くないと考えたのだ。精々足掻くがいいイリヤスフィール・フォン・アインツベルン!」
リリスの件もそうだが、あくまでゲームの主役はプレイヤー。
リリスも大概であったが、ルビーも意思持ち支給品の分際であらすじを行うなど調子に乗り過ぎ。
あくまでルビーの言語を封印するだけでマジカルステッキの変身機能は当然ながら剥奪しない。
ルビーの情報とアドバイスなしのイリヤがどう藻掻くか見物だ。
「まだデイパックに入っている意思がある者達も全て口封じも実行済みだ」
最早、プレイヤーとNPC以外の第三者が口を挟むのを端っから黎斗は気に入らなかった。
最初は予選とあって一部の者は見逃していた。
それでも、自分の理想としたゲームではないのは確かだ。
言葉すら話せないクローズドラゴンは別だが。
ついでに他にも意思持ち支給品が存在するかは黎斗のみ知る秘密。
いてもとっくに黎斗によって誰も彼も言語能力を封印している。
「言葉を話すNPCは例外だ。彼らはゲームを盛り上がる存在だ」
意思持ち支給品と違い、NPCは面白い働きをしてくれる。
NPCなくてはこのゲームは語れない。
お助けキャラだったり、女性だけ守るキャラ、武器や情報など売り渡すキャラなど彼らの存在により、より一層テンションが高まるだろう。
グレートアイもNPCに組み込んだが、当然ながら、主催を倒す、殺し合いからの脱出等明らかにゲームにおけるルール違反を侵す願いは無効で対策済みだ。
NPCの存在がバトルロワイアルを興奮出来ると言っても過言ではない。
「折角、面白い物が見れたというのに面白くない顔をしてるな」
「何か。テンションが上がらない」
ハ・デスは冥王の結末にモヤモヤ感を残している。
冥王とは幾度もなく争い、互いに相容れぬ関係だ。
彼を参加者にすると提案し、支給品の没収の発案したのはハ・デス本人。
最初こそは保身第一だったはずなのに覚醒してからあそこまで活躍するとは思っても見なかった。
なら、彼が這い上がって来たら、決着を付けるつもりでいた。
カード化して、勝ち逃げ同然の結果に内心は苛立っている。
「君はもう、いい加減に部屋に戻れ」
「そうさせて貰う」
ハ・デスは本心では愚痴を零しながらも再び某空間から出て行った。
【意思持ち支給品について】
以下の要因により、全ての意思持ち支給品の言語能力は封印or口封じするものとします。
※マジカルルビーの言語能力の封印は午前8時を過ぎれば起こるものとし、二度と話せません。
※今後は意思持ち支給品が登場しても言語能力は封印or口封じされるものとします。
739
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/11(日) 02:59:10 ID:???0
投下を終了します。
反対意見や矛盾するルール変更がありましたら投下した話を破棄します。
740
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 04:22:20 ID:pRhK714U0
ご修正ありがとうございます
ただ今後の展開にかなり関わってくるルール変更ではあるので、ひとまず保留にします
他の書き手さんの意見も気になるので、1週間ほどの期間、意見を募集したいと思います
741
:
◆EPyDv9DKJs
:2025/05/11(日) 11:27:02 ID:eCpramF20
意見が募られてたので、
多少決闘ロワに書いてる書き手の意見を一つさせていただきますね
あ、因みに私はエグゼイドは一度全話見てますがキャラクターの解釈的に、
企画主様の方が説得力のある解釈がなされると思うので私はそこには言及しません
それと文章が滅茶苦茶長いのは私の悪癖ですので、すみませんがお付き合いください
いずれの制限も「そこまでやる必要性が余りにも薄い」と感じると言うのが個人的見解になります
意志持ち支給品は確かに主役ではありませんし、企画主様自身がリリスの言動を封じていたり、
リリスを書いた氏からすれば、納得できない扱いについては分からないわけではありません
特別問題はないはずなのに何故か封じられたわけですから
ただ、氏は自分で書いたキバットは意思疎通について殆ど封じられてる扱いでありながらも、
リリスは意思疎通ができたので、その不公平を自らが行ってしまってることにもなります
勿論これはまちカドまぞくは数人参戦、キバは見せしめポジションとしての退場ともあるため、
扱いの差が生まれるのは分かりますが、それって普通にロロワと言うところの特徴だと思います
全ての意志持ち支給品を均一に調整してまで得られるメリットが余りないというのもありますが、
一番個人的疑問として大きいのは「一書き手がルールに介入しすぎている」と言うのが少し気になります
特にルビーの場合は言動を封じられたら、解説は仕方ないにせよ戦闘時にも支障が出るレベルだと思います
(FGOで例えるならば、宝具ボイスでの疑似魔術回路変換の過程の確認ができないと同義なので)
そうなるとイリヤが一人であがくどころではなくなってしまい、かなり苦しい立場に置かれてしまいます
こういうイリヤが見たいか、と言われると個人的には漫才やってる方がよほど見たいという個人的理由もありますが
また、今後登場する可能性のある意志持ち支給品についても口出しできるほど、一書き手の権限ってそこまでないと思います
つかぶっちゃけ公平不公平なんていったら、マーダーに神器ばかり仕込む私の方がよほど不公平やってますがね(笑)
野獣先輩の話では確かにリンクモンスターの概念はおろか、エクストラモンスターゾーンについての言及は、
今まで何度もデュエルを書いていた癖に一切言及してなかった私の落ち度も結構あったりしますので、
そこについての調整の言及については特に何か言うことはないというか寧ろありがたいのですが、
(拙作のスカイ・ハンターで実はモンスターを合計で六体展開してた事実については、
漆黒の闘龍はデュエルディスクに置かずに召喚してるつもりで書いてたので気にしないでください)
流石に今回のは一書き手がルールに介入するには踏み込みすぎた領域だと思っています
これを許諾、許容すると「〇〇も〇〇では?」が罷り通ってしまう可能性も出てくるので
また冥王を退場させた身としましては、
冥王に関係するカードの登場はあくまで心意による産物であり、
当人をカード化ではなく、当人の力をイメージした冥王結界波にしています
冥王自身のカード化は(性能の強弱は別として)それは違うものだと思ったからです
彼はあくまでカードとは無関係のモンスター。フィクションではなく生きた存在ですから
これはレイとロゼも同様で、個人の考えですが死亡、
或いは心意でもレイとロゼの当人をカード化はしないと思います
(今後の展開次第で何が起きるか分からないし、他の書き手がするかもしれないので断定はしません)
長々と話しましたが、以上が私の見解となります
あ、因みに私もハ・デスがもやもやしてるところについては、
「あんだけヘタレで個人の恨みで不利な状況に置いた癖に何か覚醒して、
最終的に神殺しの一端を担ったのは、散々やりあった魔王としてはむかっ腹が立ってる」
と言うところに味が感じられてとてもいい解釈だと思ってるつもりです
742
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/11(日) 21:03:23 ID:pRhK714U0
橘朔也、鬼舞辻無惨で予約します
743
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/11(日) 22:20:33 ID:p3hkfsYM0
投下&修正お疲れ様です
さらっとビルド風のあらすじを観測してる神に笑いました。本人らは大真面目で運営してるのに、どことなくシュールさが漂ってて面白い
ハ・デス、あんだけ嫌がらせした相手に勝ち逃げされたらそりゃね。イラッとする
意見を募集中とのことで自分も書かせて頂きますが、概ね◆EPyDv9DKJs氏と同意見です
私自身ポッピーや魔導雑貨商人をNPCで出した手前、どうこう言える立場でないのは重々承知しております
それを踏まえてもルビーを含めた意志持ち支給品の制限という、企画全体に影響を及ぼすルールを企画主以外の書き手が行うのは控えるべきじゃないかと思いました
事前に企画主である◆QUsdteUiKY氏に相談した上で書いたならともかく、独断でのルール変更は一書き手がやべるべきではないと考えています
氏が出したリリスに制限を掛けられ、不満を感じる気持ちは理解出来ます
ただそれならまず、ゲリラ投下を行う前に「何故リリスを制限したのかちゃんとした理由を直接聞かせて欲しい」と、◆QUsdteUiKY氏に質問をすべきだったのではと思いました
無論、氏の納得のいく返答が得られるかは分かりません
しかし俺ロワの企画の最終決定権が企画主にある以上、事前に◆QUsdteUiKY氏へ確認を取った方が良かったと言うのが私の意見となります
否定的な意見と思われたなら申し訳ありません
ですが同じ企画で書いてる書き手として、氏の作品も毎回楽しく読ませて頂いています
一緒に企画を盛り上げたいからこそ、こうした方が良いのではないかと思い意見させて頂きました
744
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:52:49 ID:Zb77DTj.0
投下します
745
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:53:40 ID:Zb77DTj.0
――橘朔也は皆で協力してポセイドンを討伐した後、リゼを殺した化け物を独り待ち構えていた。
勝算はある。勝てる可能性は限りなく低いが、最悪でも相討ちには持ち込むつもりだ。
(剣崎。――俺はお前のようになれないのかな)
もしもあの場に居たのが橘ではなく、彼の後輩――剣崎一真だったなら。
あのヒーローという存在を具現化したような男なら。
誰よりも強く、誰よりも〝仮面ライダー〟に相応しい彼ならば。
もしかしたらリゼの命を守れたかもしれない。
リゼは死ななかったかもしれない。
ふと、そんな弱気なことを橘は考えてしまった。
しかしそれは同時に彼が剣崎をそれだけ信じる仲間だという証明でもある。
(……剣崎の代わりに戦えない人々を守ると決めたのに情けないな、俺は)
橘は殺し合いが始まってすぐ、剣崎の代わりに人々を守ると誓っていた。それが仮面ライダーだからだ。
「リゼ……」
リゼ専用スピアーを眺めると、思わずリゼの名前が口から零れ出てしまう。
……なんとも情けなく、不甲斐ない声だ。
「リゼ……君には仮面ライダーは大切な人を守れないと言ったが……まさか君まで守れないとは思わなかった……!」
小夜子、剣崎に続いてリゼまで失った。
今まで仮面ライダーギャレンとして数々のアンデッドと戦ってきたが――それでもリゼを守れなかった。
それにあの場には海馬や太我も居た。……だというのに、リゼという本来ならば戦う力を持たない少女に救われた。
その事実があまりにも悔しくもあり、苦々しくもある。
「リゼ……君は本来なら平和な日常で過ごすべきだったんだ。それなのに神を自称する男のせいで殺し合いに、巻き込まれた。……そして君は勇気を振り絞って俺達を助けてくれたが、その結果……命を落とした」
橘は檀黎斗と名前も知らない化け物――鬼舞辻無惨に怒りを抱いている。
檀黎斗がいなければこんなふざけた殺し合いは開かれなかったし、鬼舞辻無惨が居なければリゼが死ぬことはなかった。
ゆえにこの二人に対する怒りは凄まじい。
だからこそ単独でも無惨に挑む道を選んだ。
746
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:54:49 ID:Zb77DTj.0
「とりあえずリゼの友人を殺した金髪の男――ポセイドンは倒したが……肝心のリゼを守れないなんて、俺は師匠失格だな……」
もしもこの場にリゼや剣崎一真、上城睦月が居ればその言葉を否定していたかもしれない。
だが今の橘は独りきり。ゆえにこの場に彼の言葉を否定する者は存在せず、怒りと悔しさ。哀しみと自責の念が波のように押し寄せてくる。
橘朔也は仮面ライダーだ。
仮面ライダーとは、ヒーローのようなものだ。
剣崎一真がそうだったように。
闇を振り払った上城睦月が最終的にそうなったように。
橘とて立派な仮面ライダーだ。それは彼を知る誰もが認めることだろう。
しかし今の橘の心境としては自分が剣崎達のような仮面ライダーだと胸を張って言える自信がない。
そして自分は師匠としても不甲斐ないと考えてしまう。
(弟子のリゼに命懸けで助けられて、何が師匠だ――)
あの状況を乗り越えられたのは、間違いなくリゼの勇気のおかげだ。
きっと死ぬのは怖かっただろう。共に殺し合いに巻き込まれた友達のことも心配だったろう。
本当ならば――リゼがした役割は自分がするべきだった、と。橘は自分を責める。
しかしそんなことをしても現実は変わらない。
リゼが死んだという。化け物に殺されたという悲劇は何も変わらないのだ。
「リゼ……本当にすまない……」
――だから橘にはリゼに謝罪して、そしてリゼの仇を取ることしかもう出来ない。
それしかもう、出来ないのだ。
小夜子の時と同じように。
リゼ専用スピアーを暫く眺めた後、仕舞う。
相手はリゼの仇だ。せめてトドメはコレで刺したいが、どうしたものか。
あの化け物は日光が弱点の可能性が非常に高い。
そしてリゼは仮面ライダーに変身していた。……ということは日光を避けるためにリゼが変身していた仮面ライダーに変身してくる可能性が高い。
そうなれば必然的に相手の攻撃手段は限られてくる。あの化け物染みた強さは発揮出来ないだろう。
更に言えば日光が弱点ということは、バックルを破壊するか多大なダメージを与えて変身解除まで追い詰めれば勝機はある。
リゼ専用スピアーは、槍だ。貫通力が高く、バックルを破壊するのに向いている。
だから橘は師匠として弟子の形見もしっかりと使うつもりだ。……この槍は、リゼと自分が最初に邂逅した時のキッカケでもあり、何かと思い入れも深い。
……もっとも本来はリゼが使う予定だったのだが。
そして――ギャレンの複眼は。
橘朔也の目は、たしかに捉えた。
こちらに向かってやってくる仮面ライダースナイプが。
ゆえにギャレンは容赦なく仮面ライダースナイプに向けてギャレンラウザーで銃弾を連射する。
仮面ライダースナイプは銃弾を被弾して、火花を散らしながらもギャレンに迫る!
747
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:56:34 ID:Zb77DTj.0
運の良いことにスナイプもその名の通り、銃使いの仮面ライダーだ。ゆえに無惨もガシャコンマグナムを乱射するが――銃を使いこなすには当然、技術が必要だ。
しかし無惨にそんな技術はなく、ゆえに走りながら雑に乱射するだけではなかなかギャレンに被弾しない。
だが二人の距離は着実に近付いている。
そしてスナイプとギャレンの距離が一定まで縮まった瞬間――橘はギャレンラウザーを連射して牽制しながら、拳を握り走り出した
「ウワアアァァアア――!」
『UPPER』 『FIRE』
――それは、魂の咆哮
ギャレンの拳が燃え盛る
「ほう。この場にいるのはお前独りか」
相手から距離を詰めてきたことは好都合。無惨は慣れないガシャコンマグナムで戦闘することをやめ、ギャレンに殴り掛かる。
互いの腕が交差し、スナイプの拳がギャレンの仮面に。橘のファイアアッパーが無惨の腹に命中する。
だがスナイプのみが、一方的に吹っ飛ぶ。
何故、このような結果になっているのか。
何故、鬼を統べる鬼舞辻無惨が。先程はギャレンなんて虫けら程度に思っていた無惨が不利な状況に立たされてるのか。
その理由は至って単純。
まず、仮面ライダーとして戦ってきた長さが違いすぎる。橘は元々仮面ライダーギャレンとしてアンデッドと戦ってきたが、無惨は鬼としては驚異的な強さを誇るものの仮面ライダーに変身したのは今回が初めてだ。ゆえにその技量の差は大きい。
次に、橘の融合係数が非常に上昇していることがある。仮面ライダーギャレンは感情次第で融合係数が上下し、それによって強さが大きく変動する。そして――リゼの仇を前に、橘の融合係数は爆発的に上がっていた。
この爆発力こそが橘の強みであり、何故か強化フォームであるジャックフォームよりも基本フォームで強敵を倒してきた原因もこれだ。
次に、スナイプは普通のパンチだがギャレンはファイアアッパーという技を使ったこと。
当然だが、ただ拳で殴るより技のほうが強い。
そして無惨は仮面ライダーに変身していることもあり、本来の戦い方が出来ない。これがあまりにも大きすぎる。
仮面ライダーに変身することで装甲を纏い、日光は克服出来たが鬼としての強みを失った。そんな無惨は大した脅威にならない。
総じて言えることは、無惨はリゼを殺すことで日光の対策は出来たが、それが橘の逆鱗に触れてギャレンが先程よりも爆発的に強くなり。
逆に無惨は仮面ライダーとしての戦い方を強いられることで大幅に弱体化したようなものだ。
「ぐっ……!何故、私がたかだか人間一匹に……!」
「人間を無礼(なめ)るな!リゼを殺した化け物――貴様はここで俺が倒す、生かしてはおけない!」
言葉を互いに交わし、再び距離を詰めたギャレンは、今度はゲーマドライバーに向けて零距離で連射する。
748
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:58:22 ID:Zb77DTj.0
「お前はここで終わりだ!これ以上、リゼのような犠牲は出さない!きっとリゼもそれを望むはずだ!」
「グァァアアア!リゼリゼうるさいぞ、この異常者が!」
――異常者。
無惨にとって橘はそれ以外のなんでもなかった。
つい数時間前に数人掛かりで惨敗したというのに、今度は独りで挑もうとするなど狂っている。
そしてそんな異常者に、鬼舞辻無惨は追い詰められている。しかも最悪なことに継国縁壱の時のように自身の細胞を分解して逃げ去ることも出来ない。変身を解除したら、死あるのみだ。
そんな状況に無惨は苛立つ。
(何故だ。何故、こんな異常者如きに私が殺されねばならん!!!)
しかしどれだけ憤怒したところで、状況は変わらない。
このままだとゲーマドライバーを破壊されて無惨の変身は解除されることだろう――。
(!そういえばあの少女が、不思議な力を発揮していたな――)
無惨が思い出したのは、ハイパームテキガシャットを使い自分に喰らいついてきたリゼの姿。
あの時、何故か不思議と少女は一切の負傷を受けていなかった。
ならば――
無惨は零距離射撃を受けながらも、ハイパームテキガシャットを取り出し――ゲーマドライバーに挿入する。
『ガッチャーン!ムテキレベルアップ!バンバンシューティング!…アガッチャ!』
そして――スナイプが黄金に輝き、無敵になる。
(やはりこの道具が鍵だったか……)
リゼが異様な強さを発揮していたことに納得しながら、ハイパームテキガシャットをキメワザホルダーに入れた。彼女がその効果を発揮していた時間もわかっている。非常に短時間だ。
ゆえに無惨は慢心せず、安心して生き残れるように目の前の異常者をムテキの効果が切れる前に屠ることを迷わず選んだ。
『キメワザ!!ハイパークリティカルストライク!!!』
黄金に光り輝くスナイプが渾身のキックを繰り出す。何度も、何度も、怒涛の嵐のように連撃を加える。
「ぐわぁあああああ――!」
あまりもの激痛に橘が絶叫するが、それでも容赦なく連撃は続く。
対抗する手段は残念ながら――ギャレンにはない。
しかし地獄のような時間はほんの僅か。
橘の体感時間では凄まじく感じたが、たったの10秒で終わった。
そして無惨がギャレンを見ると――その仮面の半分が割れ、露出した顔から血を流し地に伏す橘が見えた。
――その光景はまるで、ギラファアンデッドと戦った時と同じ。
強いて違いを上げるなら、橘が大地に伏していることか。
749
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:59:31 ID:Zb77DTj.0
「どうやらお前の悪足掻きもここまでのようだな」
(リゼ……。俺は――)
スナイプは露出した橘の顔に向けて冷酷にもガシャコンマグナムの銃口を向けた。
当然だが、装甲を纏っていない部分は生身同然だ。
ゆえにこの一撃が決まれば橘は命を落とすだろう――
(俺は――君のことが大切だった)
不思議と橘に恐怖心はない。
この絶体絶命の窮地で――されども橘はすぐに立ち上がり。
「ウワアアァァアアアアア!」
「何!?」
左手でスナイプのガシャコンマグナムを叩き落とし、更に右手に握ったギャレンラウザーを無惨へゼロ距離で連射する。
「ぐぅぅうう!この異常者が!」
スナイプからバチバチと火花が飛び散り、無惨に着実にダメージを与える。
無惨は眼前の異常者(たちばな)に苛立ちを爆発させるが、このままではベルトが破壊されて日光を浴びてしまう。
ゆえに無惨は痛みを堪えながらも橘に背を向け、逃走を図る。
自分がピンチになればプライドも何もかなぐり捨て、逃走する。鬼舞辻無惨とはそういう男だ。
しかしそれは橘にとってはあまりにも突然であり、対応が遅れる。
ギラファアンデッド以上の化け物が逃げ出すなど、予想外過ぎる行動だった。
「待て!」
僅かに遅れてリゼ専用スピアーをデイパックから取り出し、握り締めたギャレンがスナイプを追跡する。
無惨は背後から迫る橘にガシャコンマグナムを乱射するが、その視線は前を向いたままなので素人であり、相手を見てもいない攻撃がまともに当たるはずもない。これはただの威嚇射撃だ。
しかし下手な鉄砲も数打ちゃ当たるという諺通り、ギャレンに当たる可能性は十分にある。
橘は弱点である露出した顔を片腕で隠しながら威嚇射撃を恐れることなく走る。無惨の銃撃がその腕に当たる。ギャレンの装甲がない生身の顔に命中していたら危険だっただろう。
750
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 10:59:58 ID:Zb77DTj.0
「しつこい異常者が……!」
「俺は貴様を倒す。リゼの仇は必ず取る!」
ギャレンは走りながらもギャレンラウザーを連射し、正確にスナイプに当てる。
スナイプの背中から火花が散り、無惨は痛みを受けるがそれでも止まらない。生に対する異様なまでの執着心が無惨の身体を突き動かしているのだ、痛みなど気にしている場合じゃない。
(何故だ。何故、あれほど負傷してもこいつは戦える……!)
橘はギャレンの仮面の半分が割れるほどの猛攻を受け、その負傷も大きいはずだ。
なのに何故か彼は普通に動けている。鬼舞辻無惨という脅威に臆することなく、恐怖することなく追跡してくる。
それは無惨からしたらあまりにも気が狂った異常者だ。
(……虫唾が走るが。このままでは埒が明かんな。こいつはここで仕留める)
このまま逃げ続けても、鬼ごっこのように橘は無惨を追い続けるだろう。
そうしていると道中で他の人間と遭遇し、手を組む可能性がある。もしもそんな展開になったらあまりにも厄介だ。
ゆえにこの異常者(たちばな)はここで潰す。
幸いにも無惨と橘はそれなりに距離が開いている。
無惨はガシャコンマグナムをライフルモードに変更。
そしてくるりと橘の方を見て、ガシャコンマグナムを構える。
(なんだ?急に逃げるのをやめた?)
無惨の行動を不思議に思う橘だが、ガシャコンマグナムの銃撃程度ならばギャレンの装甲で負傷を軽く出来ることは実証済み。
ゆえに走る足は止めず、無惨に接近する
そして無惨は――ガシャコンマグナムにバンバンシューティングガシャットを挿入。
『バンバンクリティカルフィニッシュ!』
――ガシャコンマグナムからエネルギーが一直線に放たれ、ギャレンのいる方向へ凄まじい速度で進む。
751
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:00:36 ID:Zb77DTj.0
(……これでようやく死んだか?)
攻撃の余波で砂埃が舞い、ギャレンの姿が見えないがこの一撃を受ければ流石に死ぬだろう。
無惨は安心して再びギャレンに背を向ける、と――
「まだだ!そうだろ?橘さん」
――槍と盾を手にした紫髮の少女が、橘の前に立っていた。
「リゼ……。君はたしか――」
「ああ、私は死んだよ。でも橘さんの〝想い〟と私の槍が少しだけ私に時間をくれたんだ」
「そうか……。俺の想いが、君を……」
「とにかく急ごう、橘さん。あいつはかなり危険だ!」
――それは土壇場で橘とリゼに起きた奇跡。
否。断じて、否。
これは奇跡などじゃない。師匠と弟子の絆による、必然の結果。
――橘の想いがリゼ専用スピアーに反応し、心意を引き起こした。
ちなみにリゼが盾でバンバンクリティカルフィニッシュを防げたのは、復活してすぐにスキル〝ここからが私の見せ場だな!〟を使っていたためだ。
「どうなっている!お前は私が喰ったはずだ!」
コメカミに青筋を立て、怒り狂う無惨。
なんなのだ、このわけのわからない展開は。死者が復活するなど有り得ない。
(まさか――)
無惨には一つだけ心当たりがあった。
彼が思い返すのは、神を自称する異常者による放送だ。
禁止エリアなど重要な情報を得るために無惨はこれをしっかり聞き、様々な情報を記憶していた。
『それと、だ。君達の中には既に奇妙な現象に遭遇した者もいることだろう。
本来なら使えない力やアイテムを、死闘を経験し手に入れた者達が、だ。
不安がる必要はない!それらも私が設定した、ゲームを盛り上げる要素の一つ!
たとえ格上とぶつかっても腐るな!一発逆転のチャンスは平等に転がっているゥ!』
(放送であの男が言っていた奇妙な現象とは、こういうことだったのか……!)
無惨はリゼが蘇ったことに納得すると同時にあまりもの理不尽に苛立ちを募らせる。
しかし無惨は、再び逃げ始めた。
本来ならば苦も無く倒せる相手だというのに、今の状態では逃げるしかない。
それが異様に腹正しいが、太陽さえ沈めば。夜になれば変身解除して、この異常者(たちばな)を瞬殺出来る自信がある。
それに死者の蘇生なんて滅茶苦茶なことは、永続的じゃないだろう。そうでなければこの殺し合いは終わらないからだ。
「逃がすか!」
リゼは自身のとっておきを使い、巨大な銃で仮面ライダースナイプこと無惨を撃ち抜く!
無惨は光の奔流に飲み込まれ――かなりの負傷を負った。
「しつ、こいぞ……。この、異常者共が……」
それでも無惨は一度倒れたものの、両手を地面に着けてゆっくりと立ち上がる。
そしてなんとか身体を動かし、逃走を図った。
752
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:01:27 ID:Zb77DTj.0
「今だ、橘さん!」
「ああ。ありがとう、リゼ!」
『DROP』 『FIRE』『GEMINI』
『バーニングディバイド』
電子音が鳴り響き――
「ウォォオオオオ!!」
橘の雄叫びが木霊すると共に、逃げ出そうとゆっくり動く無惨の背後から、宙を舞う二人のギャレンによる炎を纏った蹴りが炸裂する!
「グ、ァアアアアアアア――!」
立て続けに必殺技を受け、あまりもの激痛に無惨は絶叫する。
そして無惨の近くに降り立った橘の元にリゼがやってきた。
「この異常者共が!どうして私がこんな仕打ちを受ける必要がある!!私はただ生きたいだけだ!!!」
「それは――貴様がリゼを殺したからだ!」
「生きたいだけ?それならどうして私達を襲ったんだ。異常者はお前だろ!」
喚き散らす無惨に橘とリゼが一喝する。
「……それにしてもこいつかなりしぶといな、橘さん」
「ヤツの弱点はおそらく日光だ。アンデッドが封印しなければ不死身だったように、こいつも日光を浴びなければ不死身なのかもしれない」
「そのアンデッドっていうのはよくわからないけど、つまりベルトを壊せばいいのか?」
「そういうことだ」
「それなら――橘さん、私と一緒にこの槍を握ってくれ」
「……わかった」
二人が会話している間にも無惨は逃げ出そうとするが、度重なる負傷でその速度はあまりにも鈍い。
「いくぞ、リゼ!」
「任せろ、橘さん!」
そして二人は両手に槍を握ったまま走り出し――。
「橘さん、技名はダブルワイルドクラッシュなんてどうだ?」
「リゼと俺でダブルということか。いい技だな、リゼ」
そして――
「くらえ、化け物!」
「リゼの仇、取らせてもらう!」
「「ダブルワイルドクラッシュ――!!」」
二人で握り締めた槍を無惨の背後から腹を貫き、ベルトへ突き刺す。
「ガッ……!」
無惨は腹を槍が貫通した痛みに、うめき声をあげて――やがて変身が解除される。
「ア……ア……ア……!アアアアアア!!」
生身になった無惨は太陽に灼かれ、絶叫と共に無へと帰った。
カラン、カラン――。
無惨は肉体を失い、後に残った首輪の金属音と装着者を失ったベルトの音が鳴り響く。
橘はその首輪とバンバンシューティングガシャット、ハイパームテキガシャットを拾う
そして無惨のデイパックから基本支給品とボーちゃんの首輪を発見して、回収するのだった
753
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:02:00 ID:Zb77DTj.0
◯
「ふぅ……。終わったな、橘さん」
「ああ、そうだな……」
戦闘が終わった後、リゼの身体が僅かに透き通る。
「リゼ……。君の身体に何か異常があるようだが、大丈夫か!?」
「……ん?あぁ……そろそろお別れの時間なのかもな」
「……そうか。たしかにリゼは、少しだけ時間を与えられたと言ってたな……」
「そういうことだ。……私のためにがんばってくれてありがとな、橘さん」
「いや……感謝されるようなことはしない。むしろ俺を助けるためにリゼは命を落とした。俺は師匠として、君に何もやってあげられなかった……!」
「アレは私が選んだ道だ。橘さんやもぐもに死んでほしくなかったからな。それに橘さんは私の仇を取ろうと必死になってくれた」
――だから、さ。
「だから――橘さんは私にとって最高の師匠だったぞ!」
「ありがとう。……こんな俺にそんな言葉を掛けてくれるなんて優しいな、リゼは」
――橘さんは未だに暗い顔をしたままだった。まだ仮面ライダーに変身してるけど、マスクが割れてるから表情くらいわかるんだ。
私は本心から橘さんを最高の師匠だと思ってる。マヤの仇を取ってくれたのも、あの世からしっかり見てたし――だから私にはあまり悔いがない……なんて言ったら嘘になるけどさ。
ココアやチノやメグが心配だし、私が死んだらシャロや千夜も――みんな悲しむだろうし……。
だけど橘さんやもぐもを助けられて良かったと思うし、橘さんにも言ったけどこれは私が選んだ道だ。
だからそれで橘さんにこんな表情(かお)されたら――成仏してもしきれないじゃないか。
「別に優しさとかじゃないぞ。私は自分が選んだ道のせいで橘さんが落ち込むのが嫌なんだ――」
「……そうか。それは、すまない」
「だから、橘さんが謝る必要ないって。なんていうかさ――橘さんには笑顔でいてほしいんだよ。これが私の――弟子としての最期のお願いだ」
そうじゃなきゃ、橘さんが心配で死んでも死に切れないからな。
「わかった。ありがとう、リゼ!君は俺の最初に出来た弟子と並んで――最高の弟子だ!」
そんなことを言いながら、ぎこちなく笑う橘さん。
まあいきなり気持ちの整理をして、心から笑えっていうのは無理があるよな。
……でもそんな表情(かお)になるくらい、私を大切にしてくれたかとは嬉しいとも思う。
――なんて考えたら、周りが光に包まれてきた。
そろそろ本当にお別れ、か――。
「最高の弟子なんて嬉しい言葉をありがとな、橘さん。……そろそろ私にまたお迎えが来そうだ」
「……そうか。リゼは、また逝ってしまうのか……」
「ああ。でも私はいつまでも一緒だ、橘さん。最期に私の手を握ってくれ」
「……わかった」
そうすると私は橘さんと握手をして――。
「短い間だったけど、楽しかったよ。本当に橘さんの弟子になれて良かったと思ってる」
「ああ、俺も楽しかった。リゼ……君に会えて本当に良かった」
「……ありがとな」
またあの世に行くのは悔しくて、涙が出そうになるけど――私は気合いでグッとそれを堪えて、笑顔で告げる。
「――じゃあな、橘さん」
「ああ……。さよなら、リゼ」
754
:
rebirth ―魂の日々を、魂の意志を―
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:02:48 ID:Zb77DTj.0
◯
橘はリゼが消滅するのを、見送った。
その直後――ギャレンの変身を解除しようとする橘に変化が起きた。
「ぐ、ぅ……!?なんだこれは……!身体が……熱い!」
唐突に全身を焦がすような熱が襲い、ギャレンを焔が包み込む。
「何が起こって――」
そう口にして、変化に気付く。
「なんだこの声は?これは俺の声じゃない。まるでリゼの声だ!」
そう、橘の声はリゼそっくりになっていた。
そして焔から解き放たれると――そこで視線が低くなっていることに橘は気付いた。
「俺の身に何が起こっている……?」
不思議な体験を果たした橘は、少し歩くと偶然にも民家があった。
橘はそこへ入り、少し探索すると――目的のものはすぐに見つかった。鏡だ。
そして橘は鏡の前に立ち、自分の姿を確認すると――
「なに!?俺がリゼになってるだと!?」
そこには紫色のラビットハウスの制服を着用したツインテールの長身の美少女が映っていた。
というより――その姿は誰がどう見ても、天々座理世そのものだった。
橘は暫し困惑するが、元々研究者であった彼は意外と頭が良い。
この現象に、1つ心当たりがあった――。
『それと、だ。君達の中には既に奇妙な現象に遭遇した者もいることだろう。
本来なら使えない力やアイテムを、死闘を経験し手に入れた者達が、だ。
不安がる必要はない!それらも私が設定した、ゲームを盛り上げる要素の一つ!
たとえ格上とぶつかっても腐るな!一発逆転のチャンスは平等に転がっているゥ!』
――放送で神を名乗る男が話していたことを思い出す。
リゼが一時的に生き返ったのも、自分がリゼと同じ姿になったのも彼の言っていた〝不思議な現象〟なのだと察する。
つまり、これは橘の心意だ。
リゼと再び出会い、別れを惜しみ――〝いつまでも一緒だ〟という言葉を掛けられた橘は、このような形でリゼと同じ姿になった。
もっともこれはリゼが一時的に蘇った心意と同じく、橘だけでは発動しなかったであろう心意だ。
リゼ専用スピアーとリゼに再び出会ったから起こった心意といえるだろう。
「……それにしても、見た目が変わってもギャレンラウザーとラウズカードはそのままなんだな」
リゼの見た目になっても腰にホルダーがあり、そこにギャレンラウザーがある。ラウズカードも無事だった。
どういうわけかギャレンバックルは失ったが、戦闘は可能だろう。
なお橘は気付いていないがこの状態はギャレンの通常フォーム並のスペックを生身で誇り、融合係数によって強さが変動することも同じだ。
「俺がリゼになったということは……。試してみる価値はありそうだな」
そして橘はリゼ専用スピアーを手に取り――
「変身!」
――その掛け声と共に〝ナイト〟のクラスへと変身し、服装が変わると共に槍だけでなく盾を手にする
「なるほど……。やはりこの武器で〝変身〟出来るようになったのか」
確認を終えた橘は変身解除する。
すると、服装もラビットハウスのものに変わっていた。
「リゼ……。君の意志は俺が引き継ぐ。リゼの友達を助け、戦えない人々を守りながら――この殺し合いを打破してみせる」
その後、橘は民家を漁り包帯など治療に使えるものを発見。
包帯を巻いたり、ガーゼで傷痕を止血すると余った分をデイパックに詰め込んだ
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃 死亡】
【E-2(民家)/午前/一日目】
【橘朔也@仮面ライダー剣】
[状態]:ダメージ(大、包帯やガーゼにより止血済み)、疲労(大)、心意によりリゼの姿・声に変化
[装備]:ギャレンラウザー&ラウズカード@仮面ライダー剣、リゼ専用スピアー@きららファンタジア
[道具]:基本支給品×2、ランダム支給品×1、バンバンシューティングガシャット@仮面ライダーエグゼイド、ハイパームテキガシャット@仮面ライダーエグゼイド、首輪×2(ボーちゃん、鬼舞辻無惨)
[思考・状況]基本方針:剣崎とリゼの分まで人々やリゼの友達を助ける。ゲームマスターも倒す
1:ありがとう、リゼ。君は睦月と並んで最高の弟子だ
2:まさか俺自身がリゼになるとはな……
3:リゼの友達を探す。リゼの分まで俺が守る
[備考]
※参戦時期は最終回後。
※遊戯王OCGのルールを多少把握しました
※脚の負傷具合については少なくとも完治してます
※心意により見た目と声がリゼと同じになりました。生身でギャレンのスペックで、融合係数の変動で強さが変わるシステムを常に発揮しています。ギャレンラウザーを用いることでラウズカードやコンボ技も使えます
※リゼの姿になったことでリゼ専用スピアーで変身可能になりました
755
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 11:03:38 ID:Zb77DTj.0
投下終了です
756
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/12(月) 13:06:06 ID:Zb77DTj.0
閑話:神の整理PART2の件についてご連絡です
まずは皆様、ご意見ありがとうございます
ふと思ったのですが、◆2fTKbH9/12氏がリリスが口封じされたことを不公平に思っているなら、リリスを口封じしない方向で『fortissimo-the WeiβFlügel crisis- side:YUKI』を修正しようと思っています
まだリリス達のグループはこれが最新話なので、まだ修正が出来ると判断し、それでこの提案に至りました
しかしキバットだけが口封じされている状況もまた歪なので、キバットの口封じも解禁する方向での修正になると思います
ご検討よろしくお願いします
757
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/12(月) 18:07:50 ID:???0
意見を頂いた皆さまにお手数をおかけしてすみません。
初めに誤解がないよう言います。決してリリスの扱いが不満で書いた訳ではありません。
今後がどうなろうが文句はないです。
ペンデュラムゾーンとエクストラモンスターゾーンのような放置して対応がいい加減にしない為です。
それらの戦闘シーンがないお陰でその場をしのいで来ましたが、手を打って無事に済みました。
また上記のように繰り返さないようまた管理が甘く曖昧さをなくすために全ての意思持ち支給品が口封じの方針で対応しようとしました。
報連相もしないで先走ってしまい皆さまに誤解を生んでしまい、本当に申し訳ございません。
今後のリリスとキバットの処遇は♦QUsdteUiKYさんの判断に委ねます。
一書き手が口出しする権利はないです。どのように下すかはお任せします。
758
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/13(火) 00:35:02 ID:koWNE/hQ0
◆QUsdteUiKY氏投下お疲れ様です&◆2fTKbH9/12氏返答ありがとうございます
>>731
の予約に橘朔也を追加します
759
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/14(水) 19:34:26 ID:IraaUs.c0
◆2fTKbH9/12氏、ご回答ありがとうございます。
とりあえず皆様の意見を見て、考えた結果として閑話:神の整理PART2は不採用ということにしておきます
またリリスとキバットの口封じですが、もしもリリスの扱いが不公平だと思ったのならば強引にでもなんとか修正するつもりでした。
しかしキバットだけが先に口封じされている理由付けを考えるのが困難であり、また◆2fTKbH9/12氏がリリスの扱いを不満に思っていないとのことで、ひとまず修正は無しということにします。
ですが◆2fTKbH9/12氏は様々な話を書いて、当企画に貢献していただけてる書き手さんなのでもしも〝本当は不満〟だと思っているならば、遠慮なく言ってくださいね。
その場合、なんとかキバットのみが口封じされていた理由付けを考えて修正致します
760
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/17(土) 23:30:02 ID:9YHx6vdg0
延長します
761
:
◆2fTKbH9/12
:2025/05/18(日) 16:23:54 ID:???0
>>759
♦QUsdteUiKY氏のご決断をして頂き有難うございます。
こんなことでお手数をおかけして申し訳ありません。
教えろ!野獣先輩が学ぶデュエル教室 にて状態表の道具の欄に緑へものスタンガン@落ちこぼれフルーツタルト が書き忘れていたのでwikiで修正をお願います。
お詫びにキリト、空、宮川尊徳、ユキ、直見真嗣、クウカ、奈津恵、コッコロ、継国縁壱、肉体派おじゃる丸を予約と延長をします。
762
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/18(日) 18:31:17 ID:2lq4aURA0
>>761
ご予約ありがとうございます、該当箇所を修正致しました
763
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:52:27 ID:W.NkZqAI0
投下します
764
:
この残酷な世界の成り立ちを!
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:54:16 ID:W.NkZqAI0
――赤い装甲を身に着けた銀髪の男はジッとモニターを眺めていた。
幾多ものモニターがある中、彼が特に注目しているのはキリトのグループと直見真嗣のグループ、そしてジャック・アトラスのグループだった。
「ジャック・アトラスが脱落したか……」
ジャック・アトラス。
このデスゲームの重要な要素――心意を誰よりも。現段階ではキリト以上に使いこなし、数多の激戦を繰り広げてきた男。
そんな男の最期は、あまりにも呆気ないものだった。〝ボスクラスのレッドプレイヤー候補〟としてデスゲームに参加させたポセイドンを他の参加者と共に討ち取る姿には高揚したが――されどもジャック・アトラスは死んでしまった。彼の進化は、ここで止まってしまったのだ。
「これは、ゲームであっても遊びではない——。ジャック・アトラスの死亡は惜しいが、それを撤回することは出来ない……」
「その様子だと随分とジャック・アトラスを買っていたようようだなァ。ヒースクリフ。――いや、茅場晶彦ォ!」
「私は彼に期待していた。ラスボス戦まで辿り着くと確信すらしていたんだ。まさかの展開に動揺もするさ」
「だがジャック・アトラスは死んだァ。同じゲームクリエイターだからわかると思うが、このゲームでは基本的にコンテニューは出来ない!」
「そうだな。だが私にはまだ一戦を交えたいプレイヤーがいる」
「かつて君を一度倒したというキリトか?」
「ああ。それとあの時のキリト君と同じくシステムを上回る人間の意志を見せてくれる参加者――直見真嗣だな」
「直見真嗣か。彼には君と私が作り上げたMurder――〝マサツグ様〟もいるな。もっともマサツグ様の方はあまり上手くいってないようだが……」
「マサツグ様は単純に出会いが悪いのと、性格をあまりにも悪くし過ぎたようだ。だが彼は負の心意に目覚める可能性が高い。そういう意味では期待出来るさ」
「負の心意か。茅場晶彦、君が直見真嗣に注目しているのはオレイカルコスの結界に呑まれたプレイヤーをその呪縛から解き放ったからか?」
「そうだ。そういう意味ではコッコロ君やメグ君にも期待はしている。特にメグ君はコッコロ君の負の心意を振り払ったからな。それに罪と光を受け入れた彼女達がどういう行動をするかは、個人的に興味深い」
「……なるほど。やはり君は〝心意〟を重要視しているようだな」
765
:
この残酷な世界の成り立ちを!
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:54:36 ID:W.NkZqAI0
「私はキリト君のシステムを上回る人間の意志――心意に敗北した。拘るのも当然だろう」
「茅場晶彦。まさか君はキリトやマサツグ達に負けるのを望んでいるのか?」
「そういうわけじゃない。どんな理不尽を前にしても、ゲームマスターを前にしても――屈服せずに立ち上がる。そんな彼らの姿が見たいだけだ」
「だがキリトは全く戦闘をしていない。それについては君の期待外れか?」
「いや――キリト君達もいずれ戦闘する時が来るだろう。このデスゲームはソードアート・オンラインとはまた違う。バトル・ロワイヤル形式の仮想現実だ。否が応でもキリト君は剣を握り、レッドプレイヤーと戦わなければならない時が来る。そのために彼と因縁が深い人物も招待した」
「PoHか。たしかに彼の心意や経歴はなかなか面白い。このバトルロワイヤルにはうってつけのものだァ!」
「そしてもう一人、気になるプレイヤーは居るが――」
茅場はチラりと遊星が映されたモニターを眺める。
「――彼の相手は十代君に譲ろう。私より十代君が相手をする方が向いている」
「それは一理あるな。だから私は覇王の時代から遊城十代を連れてきたのだァ!だが茅場、君は武藤遊戯には興味がないのか?」
「今のところは武藤遊戯よりも心意で神のカードを再び手にした海馬瀬人に興味があるな。武藤遊戯にもこれから興味が湧くかもしれないが……現時点ではそれほど重要視していない」
それだけ言うと、今度は茅場が質問する番だ。
「そして1つ質問だ。NPCにボスクラスのキャラが潜んでいることを私は聞いていない。天ヶ崎恋――ラヴリカバグスターは能力も経歴も明らかに私が想定しているNPCの範疇を超えている」
「そこについては問題ない。ラヴリカ本人は気付いていないようだが、大幅に弱体化している」
「……弱体化させてまでNPCとして召喚する意味があったのか?」
「彼はなかなか面白い性格をしている。今回は性能よりもそこを買った。まあ一種のギミックのようなものだ。今後はボスクラスのキャラがNPCとして出てくることもないから安心したまえ!」
「なるほど。そういうことなら、私も納得しよう」
追加主催
【茅場晶彦(ヒースクリフ)@ソードアート・オンラインシリーズ(アニメ版)】
※この世界は茅場晶彦と檀黎斗が構築したものでした
※マーダー不足を懸念して、新たなマーダーがプレイヤーとして招かれる可能性があります。もしかしたらその関連人物も招かれる可能性もありますが、対主催とマーダーのバランスを考慮して茅場と檀黎斗が判断します
※茅場晶彦のアバターはヒースクリフです。キリト同様、ステータスなどもヒースクリフと同じです
※ルールに記載していなかったこちらの落ち度なのでラヴリカのみ特例ですが、今後は企画主以外は事前の相談なしにNPCでボスクラスのキャラが出ることを禁止します。ポッピーや魔導雑貨商人などのお助けNPCは大丈夫です
※ラヴリカバグスターは大幅に弱体化しています
766
:
◆QUsdteUiKY
:2025/05/19(月) 00:55:54 ID:W.NkZqAI0
投下終了です
767
:
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:46:31 ID:dyk1XPSI0
投下お疲れ様です。自分も投下します
768
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:48:27 ID:dyk1XPSI0
「強大なエネルギーを秘めたパンドラボックスを巡り…っていつの話だよこれ。台本チェンジだチェンジ」
『胡散臭さに手足が生えたような地球外生命体が去った後、わたしとイリヤさん達一行は仮面ライダー捜索の為に別行動を取りました。
見てますか皆さん!何故か喋れなくなったような気がしましたけど、ご覧の通りいつものルビーちゃんですよー!』
「急に何の話をしてんだよ。一方俺ことエボルトは七海やちよのお気に入りの魔法少女、環いろはとの接触に成功。
こいつを連れて行けば好感度アップも間違いなし。おいおいまさか、本当にハーレムルートに入っちまったか?」
『魔法少女に不埒な真似を目論む愚行、全ての可憐な女の子の味方であるこのわたしが許しませんよ!
それにしても環いろはさん、あんなピッチリスケスケ衣装とはけしからんですねぇ。ウチのイリヤさんとの素敵なショット(意味深)を期待したいですねぇゲフフ(汚い笑い)』
「一行前と即座に矛盾してんぞ。さぁて、どうなりますやら」
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「しっかし分からねぇもんだな」
エーデルフェルト邸を後にし、徒歩で移動の最中。
暫し続いた無言を打ち破ったのは、蛇王院が発した一言だった。
前触れなく出たその言葉に、同行者二名と一本は視線で続きを促す。
分からないと急に言われても、一体何の事かがこっちはサッパリなのだから。
「遊戯や遊星は自分のデッキを取られてんのに、凌牙は本人のを渡されてんだぜ?それにイリヤだって、相棒と引き離されなかった。
なんだってこうも支給品に差があるのか分からなくてよ」
「言われてみれば……そっか、わたしもルビーが一緒じゃなかったかもしれないんだ」
有り得た可能性を思い浮かべ、幼い肢体が微かに震える。
デイパックを開けたら真っ先に相棒のステッキが飛び出し、普段通りに戦えた。
しかし遊戯や遊星のみならず、イリヤもルビーの没収により戦闘手段を失う事態が起こらなかったとも限らない。
運が悪ければ、司共々斬り殺された末路があったかもしれないのだ。
平行世界への転移直後、ベアトリスから必死に逃げた時の事を嫌でも思い出す。
事情が重なり見逃され命拾いした、そういう幸運が二度も続くと楽観的には考えられない。
『うむむむ…むさ苦しくてあくどい男の手に渡った可能性もあるってことですねー……。何たる地獄!ルビーちゃんはイリヤさんに身も心も全て捧げ、染め上げられたと言うのに!』
「誤解を招くこと言わないでよ!?」
『えー事実じゃないですか。初めて会った晩、熱くてドロリとした液体をわたしに……』
「あ、あれは鼻血でしょ!」
半分事故、もう半分はこの面白ステッキが原因で義兄と入浴中バッタリになったのも今や懐かしい。
あの時見たモノが記憶から引っ張り出され、つい頬に朱が差す。
769
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:49:29 ID:dyk1XPSI0
「デッキを取られたのは確かに痛いが、コレが没収を免れたのは助かったぜ」
傍らの漫才染みたやり取りを尻目に、遊戯は首から下げた装飾品を見やる。
現代を生きる決闘者と名も無きファラオが人格交代を行うには、千年パズルが必要不可欠。
今こうして自分が表に出て話す事すら、現実に起こっていなかったのも有り得た。
主催者に感謝する気は微塵も無いが、没収を免れたのには安堵を抱く。
それはそれとして、デッキが他者の手に渡ったのはやはり頭の痛い問題だった。
「凌牙が最初から自分のデッキを持ってるってことは、別にデュエル自体を禁止してる訳じゃねぇんだろ?なら、遊戯達にだって支給しても問題ない筈なんだが」
「……若しかすれば、俺や遊星くんがデッキが無い状態でどう足掻くか見てみたい。なんてだけかもな」
険しい顔で立てた仮説はシンプルながら、絶対ないと否定も出来ない内容。
決闘都市準決勝の直前に巻き込まれた電脳空間での戦いが、一つの良い例になる。
首謀者の海馬乃亜はデュエルで勝てば肉体を与えると、BIG5をそそのかし遊戯達を襲わせた。
だが実際は最初から約束を守る気は無く、自身の娯楽に過ぎなかったのだ。
油断ならない強大な力の持ち主であっても、性根は傍迷惑な好奇心の悪童に等しい。
檀黎斗もそれに当て嵌まるなら、拍子抜けな動機であっても不思議はない。
『確かに、放送でのふんぞり返った態度を見ると逆に納得がいきますねー。ルビーちゃんに小細工までして、ふてぇ野郎ですよ!』
「あの人にとっては、本当に全部自分が楽しむ為なんだね……」
クラスカードの時間制限や治療魔術の効きの悪さなど、イリヤが不利になる為の細工を施された。
主催者にとってはバランス調整の一環であっても、こっちからすれば迷惑でしかない。
ふよふよ浮かぶ羽を拳に見立て振るい、魔術礼装なりに怒りを表す。
一方でイリヤは顔を曇らせ、怒りと悔しさを乗せ呟いた。
仲間である司と零、敵でも助けたい気持ちに嘘はなかった小さな魔女。
たった一つしかない命を失った彼らも、檀黎斗にはゲームを盛り上げたか否か以外に何も思わない。
ひょっとすれば自分達が知らないだけで、最初の想いは違ったのかもしれない。
ダリウスのように、長い年月の中で変わってしまったのが真実でないとも言い切れない。
だとしても、決闘と称し殺し合いを強要したのが許されるかは別。
司達の死を娯楽と扱い嘲笑ったのには怒りがあり、そのような男の元に親友が囚われているのは気が気でなかった。
770
:
EPISODE99.5『DUEL ROYALE SPECIAL①』
◆ytUSxp038U
:2025/05/19(月) 18:50:03 ID:dyk1XPSI0
『おや、この反応は……皆さんどうやら追い付いたようです』
若干空気が重くなりかけたが、ルビーの声で切り替えを余儀なくされる。
移動中も常に網を張っていた為、他参加者の探知は正確だ。
言い方からして、自分達三人が追い掛けている者が見付かったらしい。
トラブルが起きず目的達成に近付いたのは良いが、イリヤの表情はどこか硬い。
件の相手の人を食ったような、根本的な部分で相容れない雰囲気を思えば当然だが。
「心配すんな。俺も話で聞いただけだが、ふざけた態度続けるようならガツンと言っとくからよ」
「ああ。イリヤだけに気負わせはしないから、頼ってくれて良いぜ」
緊張を察し、軽く頭を撫で蛇王院が不敵な笑みを見せる。
魔界孔の出現に端を発した、群雄割拠の日本で一勢力を纏め上げた男だ。
アクの強い連中相手と斬った張ったは珍しくなく、今更滅多な事で動じる弱腰にも非ず。
魔法少女とはいえまだ小学生のイリヤ一人に、負担を強いるつもりはない。
遊戯も同じだ、奇人悪人相手の舌戦はデュエルを通じて幾度となく経験済。
エーデルフェルト邸の時同様、毅然とした態度で臨むまで。
「…うん、二人共ありがとうございます」
『頼れる殿方で安心しちゃいました。ルビーちゃんも人間ならコロッと惚れちゃったかもしれませんよ』
「惚れんのは別に構わねぇがな。俺の女どもなら、杖相手でも仲良くやれんだろ」
『ま、まさかの公式ハーレム王!?一体どこのア○ススフトのキャラなんですか!?』
「は?何言ってんだ?」
心強い仲間の存在に、幾分緊張も解れる。
ルビーの案内に従い移動を続け、5分も経っていない頃。
付近の民家より大きく、一際目立つ建造物が目に映り込んだ。
外観からして学校、ただ三人の記憶にあるどれとも一致しない。
数時間前にイリヤを庇って力尽きた、白鳥司の通う中学校とは知る由もなく。
反応が近いとの言葉に気を引き締め直し、
「えっ」
この場にいる筈のない親友が視界に飛び込み、イリヤから平常心を奪い取った。
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