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辺獄バトル・ロワイヤル【第3節】

1 ◆2dNHP51a3Y:2021/06/25(金) 21:22:55 ID:riCoyL6w0
―――ソラを見よ、血染めの月が、世界を侵食(おか)す

139誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:42:18 ID:UH/4h6Tc0
「何があったのかしら……」
(まるで、怪獣が暴れた後みたいだわ……)
「……」
(これは……魔力?いや、それとは別な力かな……1つ……いや、2つ?)

みさえとフェイトの瞳に映るのは廃墟と化したC-5。
絢爛豪華であった平安京の一画はみるも無残な街並みと化していることにみさえは呆然として眺めている。
片やフェイトは、廃墟と化した残骸に纏っている痕跡に魔力に近いのを感知し顔を顰める。

(あなた……しんのすけ……マサオ君。まさかここにはいないわよね?)
家族と息子の友達を探しているみさえだが、ここにいないことを祈っていた。
もし、この廃墟に愛する夫と息子または息子の友達がいたら?
そう―――
愛する者や見知った子の■■があったとしたら――――
みさえの心に影が落ちる。

その時―――

「なに、この悲鳴は……!?」
「みさえさん。あそこに人が!」
どことなく聞こえてきた悲痛な叫び。

そこに向かうと―――

―――少年が膝から崩れ落ちた格好で佇んでいた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

―――ザッ。

「……誰だッ!!!」
明は自分に近づく気配に警戒して振り向き、いつでも戦闘ができるように構えを取る。

「安心して。私たちは怪しい者ではないわ。私は野原みさえ。この子は……」
「フェイト・テスタロッサです」
(この男の人……先ほどの魔力らしき力の持ち主ッ!?)
みさえは警戒している明を安心させようと自己紹介する。
フェイトもみさえに続いて自己紹介をするが、明の身に纏う悪魔の力を感知した。

「……」
(守る価値もない有象無象の人間共か……だが、政たちのことを知っているかもしれない。話だけでも聞くとするか……)
最愛の人、牧村美樹を失った今、政たちを除けば守るべき人間は既にいない。
しかし、何か手がかりを得られるのではと思った明は怒りを抑えつつ、みさえ達と情報交換をした。

「何だと?……本当にあんたたちは悪魔を知らないのか!?」
「え……ええ。それに198X年に悪魔がいたなんて聞いたこともないわよ」
明は悪魔を知らないみさえとフェイトに驚きを隠せない。

「……おそらく、明さんは私やみさえさんとは違う世界の住人のようですね」
(……そう。つまり、先ほどのは、魔力ではなくて悪魔の力なのね。……だけど、もう1つの力は……?)
フェイトは明の話から残骸の残っていた2つの力の源は魔力ではなく、1つは悪魔の力だと結論付けた。

「どういうことだ?」
フェイトの言葉に明は首を傾げる。

フェイトは明に自身の推測を話す―――

―――かくかくしかじか。

「別の世界だって!?そんな……バカな話があるのか!?」

「私も最初は驚いたけれど、あなたの悪魔の話を聞いて、フェイトちゃんの推測の裏付けができたわ。それに、フェイトちゃんがいう魔法少女という存在はあなたの世界にはいるの?」

「……」
(たしかに俺は魔法少女なんて存在は知らない。……だとするならば、主催の奴らは死者を蘇らさせるだけでなく、異世界の住人まで拉致する力があるといのか―――)
想像していた以上の主催の力に明は動揺を隠せない。

「……みさえさん。向こうから人が」
新たな来訪者の気配に気づくとみさえに知らせるフェイト。

フェイトの知らせを受け、みさえと明は視線を向けると確かに女の子が歩いてきた。

―――地獄にさまよう血まみれの少女、
―――司城来夢。

☆彡 ☆彡 ☆彡

140誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:42:51 ID:UH/4h6Tc0
「ちょ……ちょっと、貴方大丈夫!?」
みさえは血まみれの少女に心配の声をかけながら近寄る。

「……」
(これは……返り血!」
フェイトは少女の服に付着している血痕が他人の血だと推測する。

すると、すぐさま―――

「みさえさん。離れてください!」
フェイトはみさえを少女から引き離すとバショー扇を構える。

「フェ……フェイトちゃん!?どうしたのよ!?」
みさえは訳が分からず、フェイトに理由を尋ねる。

「……」
(この女、誰か殺したな。こんな状況でも平気で殺し合う……やはり、人間は守る価値はないッ!)
明もフェイト同様、来夢が人を殺したと判断すると同時に牧村家での悲劇を想起したのか、抑えていた人間への憎悪があふれ出す。

―――その時。

「スト〜〜〜〜〜ップ!いい!とにかく一度、彼女の話を聞く!行動はそれからよ!」
みさえはフェイトと少女の間に立つと、フェイトを立ち留まらせる。
「でも、みさえさん……!」

「フェイトちゃん!!!」
焦りもあったのか、みさえは声を張ってしまう。

「……ッ!!」
みさえの張った声にフェイトは体をビクリと震わせる。

図らずも思い出したのだ―――

―――母、プレシア・テスタロッサから受けていた心に深い傷を残す虐待行為。むち打ちの痛さを。愛されなかった証を。

「……ッ!」
(しまったわ!?私としたことが……!)
その様子を見たみさえはすぐさまフェイトを抱きしめる。
今までのフェイトの言動からおそらく、実の母親から虐待、もしくはそれに近いことをされていたのではと、みさえは人の子を持つ母として察していたからだ。

「ごめんなさい、フェイトちゃん!嫌なことを思い出させて!……それと私のことを案じて起こした行動だとはわかるわ。でもね、訳も聞かずに争うなんて、嫌なのよ私は……」
「……みさえさん」
みさえの悲痛な言葉にフェイトは矛をしまい―――

フェイトを優しく抱きしめたみさえの行動に明も矛を自然と納めていた―――

「おねがい……何があったのか話してくれるかしら?」
みさえの優しい声に―――
それとも地獄から抜け出したいのか―――

「……実は」
来夢は3人にここまでの顛末を語りだした―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

「「「……」」」
みさえ達は来夢の話が終わるまで、黙って聞いていた。

「そ、そう……そんなことが……」
(そんな……ッ!来夢ちゃんは悪くないわッ!悪いのはメガネをかけた青肌女よ!それに……せつ菜ちゃんと同行していたらしき男の子も怪しいわね)
来夢の話を聞く限りでは、何も過失はないことは明らかだ。
悪いのは、催眠術らしきのをかけた女。
それと、疑惑の行動を起こした男の子も気になる。
だが、怪しい男の子のことについては、いったん隅に寄せる。
そして、みさえは来夢に何て声をかけたらいいか悩む。

「……」
話すことを終えて、無言で佇む来夢。

「で、でも来夢ちゃんは、もう意識を取り戻したのよね。そうだ!なら、私たちと行動をしない?」
「……はい?」
みさえの提案に来夢は聴き返す。

「来夢ちゃんも自分の世界を救うために、その原種というのとフェイトちゃんや彼……明君みたいに闘ってきたのでしょう?それは、心強いわ!リフレクターっていう力を見たら、きっとうちの夫や子も目を輝かせるし、来夢ちゃんが一緒に行動を共にしてくれたら100人力よ」
(おそらく、来夢ちゃんはせつ菜ちゃんというアイドルの子を殺してしまった現実に……彼女の同行者の捨て台詞に心が縛られている。……なら、あえてそれ(殺害したこと)を安易に否定しない。それが……私にできること)
気休みは来夢に響かないと判断したみさえは敢えて、気が紛れられるような提案を選択した。

「……」
沈黙の来夢

やがて―――

口を開く―――

「……どうして貴方はそんなに楽観的なことを言えるのですか?」
「……え?」
来夢の呟きにみさえは体を膠着させる。

141誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:43:08 ID:UH/4h6Tc0
「だってそうじゃないですか?話を聞く限り、今一番戦力にならないのは貴方なんですよ?そんな貴方がこの殺し合いに何の役が立つというのですか?大方、そこの少女や男の人の力を利用して家族を守ろうとしているんじゃないのですか?」
リアリストの来夢だからこそできる指摘。
それと、力を持つ者に庇護され、手を汚していないみさえに対する嫉妬……八つ当たりといった感情も含まれている。

「……」
みさえは黙って来夢の八つ当たりを……想いを受け止める。

「……」
(たしかに……あの女の言う通りだ。いくら、崇高な信念を掲げても力が伴わなければ、それは絵に描いた餅でしかない)
みさえの抱きしめると言うとっさの行動に明は呆気にとられて、行動を起こせなかったが、冷静を取り戻して話を聞くと、来夢の言い分の方に明は理解を示す。

―――そのとき。

(……ん?な、なんだ……?」
突如、明の脳裏に再び赤で染め上げられた大地が浮かぶ。
影たちが現れるまでは先ほどみた映像と大差ないが、違う映像も映し出した。
それは―――蠢く影たちに混じった見覚えがある影の追加―――

―――野原みさえ、フェイト、来夢の影が……

「あのね、来夢ちゃ「ッ!!!???う゛う゛ぉぉおおお!!!???」」
強烈な吐き気に明はえずく。

「明君!大丈夫!?」
来夢に応えようとしたが、明の苦しみにみさえは言葉を中断するとすぐさま、近寄る。

「……ッ!!??」
(な……今のは、何なんだ!?)
謎の映像に乱れ、息の動悸が止まらない―――

「大丈夫よ……落ち着いて」
みさえは必死に明の背中を優しく摩る。

☆彡 ☆彡 ☆彡

142誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:43:28 ID:UH/4h6Tc0
「どう明君?スッキリしたかしら?」
みさえはデイバックから水を取り出すと明に飲ませる。

―――ゴク……ゴク。

「ふぅ―――……ああ。すまない……心配をかけた」
明は申し訳なさそうにみさえに謝る。

「いいのよ。この中では私が年長者なんだから、遠慮なく頼りなさい」
みさえは明に優しく微笑む。

「それじゃあ、明君が落ち着いたから、改めて来夢ちゃんの想いに応えるわ」
みさえは神妙な面持ちで話し始める。

「確かに私は普通の主婦よ。……来夢ちゃんのリフレクターや明君のデビルマンといった力を持ってはいないし、フェイトちゃんのように魔法少女でもない。闘う力はこの中で1番下……でもね、愛する家族を守るためならどんな相手にだって立ち向かう。それが母親ってものなのよ!その想いは参加者の中でも1番と私は自負するわ!だから私は殺し合いなんかに負けないし、他人の力を利用するなんてこれっぽっちも考えたこともない!」

みさえは来夢、明の目線から目を背けず言い切るッ!

「みさえさん……」
フェイトは改めてみさえ……母親という存在の温かさを感じ取る。

「「……」」
来夢と明はみさえの熱のこもった啖呵に黙る。

「つらかったわね、来夢ちゃん」
「……え?」
みさえの不意の声かけに来夢はキョトンとする。

「大丈夫。殺してしまったアイドルの知り合いの子達はあなたを許さないかもしれない。でも、私は……来夢ちゃんの味方よ」
「ッ!?」
みさえの言葉に来夢は体を震わせる。

「せつ菜ちゃんは、最後まで君を助けようとしていたよ」

「な、なにを……ど、同情のつもりですか!?ライムはそんな憐れみを「ううん。そうじゃない」
来夢の言葉を優しく遮るみさえ。

「確かに、来夢ちゃんがしてしまったことをなかったことにはできないわ。でもね、貴方はまだ学生なのよ。やり直しのチャンスぐらいあっていいじゃない」
「ッ!?」
みさえは来夢を優しく抱きしめる。

「それと、せつ菜ちゃんはアイドルをしていたんだけど、もう二度とファンの前で歌えなくなったよ。……君のせいで」

「本当に……ライムにやり直しのチャンスがあると思いますか?」
「ええ、もちろんあるにきまってるじゃない。……ね。今は思いっきり泣きなさい。大丈夫、それを邪魔するのはここには誰もいないわ」

「み……みさえさん……う……うう……うわぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
(なんて……なんて温かいエーテルなの―――)

みさえの言葉に、来夢は普段のドライな一面を捨て、感情を露わに―――

―――みさえの胸で泣いた。

まるで本当の子のように―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

143誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:43:45 ID:UH/4h6Tc0
「あの……みさえさん。ありがとうございます。本当に」
来夢はみさえに感謝の言葉を述べた。
完全に吹っ切れたわけではない。
だが―――

その顔は阿修羅地獄から抜けだした顔だった。

「いいのよ、来夢ちゃん。また寂しくなったらいつでも私の胸を貸すわ」
「……はい」

「……」
(何なんだ?この女は……?)
明は信じられないという顔をしている。
さっきまで、心がほぼ死んでいた女が生き生きとした表情になっていた。

―――それも”力”といった手段を使わずに。

「じゃあ次は、明君の番ね」
みさえは明を抱きしめようとする。

「なッ!?や、やめてくれ!俺はもう子供じゃないんだ!」
明はみさえの行動を制止しようとする。

―――が。

「な〜に、恥ずかしがってるのよ。明君まだ未成年でしょ?なら充分子供よ!……ほら!遠慮しない」
(デビルマンのことを話ていた明君の表情に陰りが見えた。きっと明君も何か悲しい出来事があったみたいね。でも、無理に聞きだすのは止めておきましょう……)

「ちょっ……」
みさえは恥ずかしがる明を包み込むように抱く。

「……」
(なんて……暖かい。これが、人の……母親の愛情というものなのか……おれは……人間をもう一度信じたい……)
牧村家の悲劇を通して守るべき人間に絶望した明だが、みさえの母性を感じる。そいて今一度、悪魔人間(デビルマン)として戦いぬくという思いが生まれ、密かにケツイを深めた。

鬼の目にも涙ならぬ悪魔の目にも涙。
明の目から静かに一筋の涙がタラリと流れ落ちた―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

144誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:44:08 ID:UH/4h6Tc0
「みさえさん。これを受け取ってください」
牧村家の家族に話しかけるときのように多少柔らかい口調で、そう言いながら明がみさえに手渡したのは―――

―――猟銃だった。

「え?これって……猟銃じゃない!?どうして私に!?」
いきなり猟銃を渡され戸惑うみさえ。

「もし、俺が理性を亡くしたら迷わず、心臓を撃ち抜いてほしい」

「「「!!!???」」」
明の申し出に3人は驚愕する。

「おそらく、今の俺はやつ……アモンに意識を乗っ取られている可能性が高い。今は人間不動明としてあなたがたと接することができているが……いつアモンと意識が変わるのか分からない。そして……アモンとなったおれは、あなたがたを容赦なく殺すでしょう」
(そうではないと、願いたい……だが、あの脳裏に浮かぶ光景……あれが真実あたは現実となるのだったとしたら俺は……)

明の言葉に静寂の時が流れる―――

「そ……そんなの”ええわかったわ”と言えるわけないじゃない!」
みさえは、怒りつつも明から手わされた猟銃を突き返す。

「みさえさん。俺はあなたがたを殺したくない」
そう、悪魔人間としての純粋な想い。
もっとも正確には”野原みさえ”だが。

「だからって……!」
「それから、フェイト、来夢。2人もいざというときは、迷わず俺を殺せ」
悪魔人間として悪魔に堕ちることだけはなんとしてもさけたい。
明は納得していないみさえを余所にフェイトと来夢にも想いを託す。

「……」
来夢は即答できない。
ただ、今の来夢にとって野原みさえはユズやヒナちゃんと同じぐらい大切な人となっている。
故にみさえをみすみす殺させたくない感情が大きい。

「……わかりました。その時は私が」
(そうはいうものの、明さんの悪魔人間としての力は今の私では到底敵わない。せめて、バルディッシュがあれば……)
片やフェイトは了承した。
”野原みさえ”という人の温かさを感じた者同士だからこそ明のシンパシーに同調したのかも知れない。

「ありがとう」
明は承諾したフェイトに礼を言い頭を下げる。

「フ……フェイトちゃん!?……駄目よ!そんな……子供が殺しだなんて!」
まさかのフェイトの意思表示にみさえは戸惑いを隠せない。

「……みさえさん。私もできることなら、殺しなんてしたくありません。でも……明さんの想いを私は尊重したいです」
(きっと、私が殺しをしたら、アースラの皆は悲しむよね)
フェイトの脳裏に浮かぶのは巡航艦『アースラ』に搭乗している面々。
母が犯した事件の重要参考人となったフェイトを一日も早い社会復帰を手伝ってくれた。

(そして―――なのはも)
戦って―――
戦いながら触れ合って―――
伝え合ってわかりあった最高の親友。

だが、フェイトの親友である『高町なのは』も明同様に八神将とされていることを知らない。

「とにかく!この話はもうお終い!ネガティブなことばかり考えてたら本当に起こっちゃうものなの!いい!?わかったかしら!!!」
「「「……」」」

みさえはこの話題を無理やり打ち切った。
3人もみさえの剣幕に近い表情と声に話題を渋々ながらも打ち切るのに同意した。

(人が人を殺すなんて……絶対に間違ってるわ。アモンだかアンコだか知らないけれど、明君は人間よ!アンタなんかの好きになんてさせないわ!)

だが、みさえの想いと裏腹に現実は非常である。
既にこの舞台に居るデビルマンこと不動明は宿業を埋め込められ、魂を弄り回されている。
今は、元の人格である”不動明”が表に出ているが、既に”狂気”に落ち、”本来の有り方を捻じ曲げられている”。

不動明が八神将としての役割を放棄することは、ほぼ無いといっていいだろう。

近い内にみさえは決断を迫られる―――

――とても惨酷で悲痛な決断を選択するのかどうか。

145誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:44:41 ID:UH/4h6Tc0
【C-5/一日目/廃墟/早朝】

【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康 アモンに対する怒り
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、如意棒@ドラゴンボール、ランダム支給品1~2、飛鳥了の猟銃@デビルマン(漫画版)
[思考・状況]
基本行動方針:家族を探す
0:しんのすけ達はどこにいるのかしら...
1:フェイトちゃん・来夢ちゃん・明君と行動する
2:本当に魔法が存在するのね...
3:この世界はパラレルワールドなのかしら...?
4:たとえ、明君がアモンってやつに意識を奪われたとしても死ななくて済む方法があるはずだわッ!
5:たとえ、許してもらえなかったとしても、私は来夢ちゃんの味方をするわ……

【備考】
※映画の出来事を経験しています
※来夢の事情を知りました。(せつ菜を殺めた顛末)
※来夢からブルリフの世界について簡単な知識を得ました。
※明からデビルマンの世界について簡単な知識を得ました。(最愛の人である美樹を人間に殺されたことは知りません)

【如意棒@ドラゴンボール】
主人公の孫悟空の武器の一つで「伸びろ」や「縮め」というと如意棒がその通りに伸縮する物
※伸びる長さは最大25mまで

【飛鳥了の猟銃@デビルマン(漫画版) 】
デビルマンこと不動明に支給されていた猟銃。今の所有者は野原みさえ。
改造された猟銃でデーモンであるシレーヌの肉体を貫く威力を有する。
「ピストルは手に入りにくくてね。猟銃を改造したものです」by飛鳥了

【フェイト・テスタロッサ@魔法少女リリカルなのは】
[状態]:健康 みさえに対して安らぎの心情
[装備]: バショー扇@ドラえもん
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]
基本行動方針:みさえさんの家族を探す
0:みさえさん・来夢さん・明さんと行動する
1:家族って...良いものなんだね...
2:他の人達もそれぞれ別々の世界からつれてこられてるのかな...
3:みさえさんには申し訳ないけど……もし明さんが意識を奪われたら、私が―――.
4:バルディッシュ……誰かに支給されているのかな….

[備考]
※参戦時期は少なくとも第一期のプレシア事件の後です
※デバイスのバルディッシュは装備していません
※来夢の事情を知りました。(せつ菜を殺めた顛末)
※来夢からブルリフの世界について簡単な知識を得ました。
※明からデビルマンの世界について簡単な知識を得ました。(最愛の人である美樹を人間に殺されたことは知りません)

【バショー扇@ドラえもん】
どんな種類の風でもだすことのできる扇。握りの部分のダイヤルで風の吹き続ける時間、マイクで香りなどの風の種類、扇の振り方で風向きや強さを自在に操ることができる。

146誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:45:27 ID:UH/4h6Tc0
【司城来夢@BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣】
[状態]:疲労(小) 負傷(小) 罪悪感 服全身血まみれ みさえに対して安らぎの心情
[装備]:火車切広光@11eyes -罪と罰と贖いの少女-
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。そして、殺してしまったせつ菜さんの知り合いの子達を探し出して謝る
1:リフレクターの指輪を探したい
2:せつ菜を殺した事実を受け止めて、関係する人達に謝罪する※ユズとヒナにも事実を隠さず伝える。
3:もし、明がアモンに人格を乗っ取られたら……ライムは―――
4:みさえさんのエーテル……とても温かい

[備考]
※参戦時期は11章『ある姉妹の始まり Why Do People Believe in Ghosts?』、原種イェソド1戦目終了後から
※優木せつ菜を殺めたことで精神が不安定になっていましたが、みさえの愛情で頭痛は鳴りやみ、落ち着きました。
※みさえからクレヨンしんちゃんの世界について簡単な知識を得ました。
※明からデビルマンの世界について簡単な知識を得ました。(最愛の人である美樹を人間に殺されたことは知りません)

【火車切広光@11eyes -罪と罰と贖いの少女- 】
司城来夢に支給され分厚い刀身を持つ刀。
呪を唱えることで炎を纏うことができる
なお、付属の紙に呪が記されているため、この殺し合いの舞台のみ使用可能となっている。

【不動明@デビルマン(漫画版)/歳殺神】
[状態]『人間』への憎悪(若干薄れている)、精神不安定 みさえに対して安らぎの心情
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
[行動方針]
基本方針:仲間たちを探す。
0:政達との合流。最悪、あいつらだけでも逃がしたい。
1:この記憶が本物か確かめるために放送を待つ。
2:襲ってくる者がいたら容赦しない。
3:俺は...不動明なのか!?悪魔族のアモンなのか!?
4:みさえさん……俺にはまだ守るべき人間が残っている。なら、俺は……悪魔人間だ!
5:もし、俺が.アモンに人格を乗っ取られたら迷わず殺してほしい。

※参戦時期は牧村美樹死亡後
※八将神としての人格はアモンと統合されています。その為、アモンとしての人格と不動明としての人格が不定期に出たり引っ込んだりします。
※ドス六たちを殺した記憶が朧気ながらフラッシュバックされています。
※自分が八将神だと自覚していません。
※ドミノとの戦いはほとんど覚えていません。
※来夢の事情を知りました。(せつ菜を殺めた顛末)
※来夢からブルリフの世界について簡単な知識を得ました。
※みさえからクレヨンしんちゃんの世界について簡単な知識を得ました。

147誰が私を Who Called Me? ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:45:40 ID:UH/4h6Tc0
投下終了します。

148 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/08(日) 07:50:59 ID:UH/4h6Tc0
古波蔵エレン、高咲侑、間久部緑郎、ギャブロ、藤丸立香で予約します。

149 ◆2dNHP51a3Y:2021/08/08(日) 23:30:25 ID:mt5BgD5o0
再度予約延長します  ご迷惑をおかけして申し訳ございません

150 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:10:50 ID:i4QkZ6Zg0
投下します

151 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:11:12 ID:i4QkZ6Zg0
「二人とも何か見つかったか?俺は包帯とか集めておいた」
「アタシも包帯を、後は絆創膏とかを集められるだけ集めたよ!」
「僕は一応熱が出たときのために風邪薬と頭痛薬を」

あれからどれぐらい経っただろうか、しばらく歩いていたひろし、宮下、相場の三人は病院にたどり着いていた
そして病院内で使えそうな物をそれぞれ探して再び合流した

「にしても他に誰も来なくて良かったね、正直誰か来るんじゃないかとひやひやしたよ...」
「あぁ、確かにな...」

途中までバラバラで行動していたのもあり、殺し合いに乗った参加者と遭遇するかもと思ったと宮下は話し、ひろしもそれに同感した

「にしても結構探したけどしんのすけ達はここにはいなさそうだな」
「ゆうゆ達も見当たらなかったな...」

病院にきたのには他にも理由があり、ひろしと宮下の知り合いがいるかどうか確かめるためでもあった
しかし探してみたものの二人の知り合いはどこにも見当たらなかった

その時だった


ガチャ...


入り口の扉が開く音がした

「...誰かきたみたいですね...」
「ど、どうする?逃げた方がいい気が...」
「いや、ひょっとしたら怪我をして病院に来たのかもしれない...おれが様子を見てくるから二人はここで待っててくれ」
「わ、分かったわ...くれぐれも気を付けてね、ひろしさん」
「あぁ、任せろ!」

心配する宮下に対し笑って言葉を返すひろし...しかし実際は...

(とは言ったものの...いざとなると怖ぇな...)

一応銃は構えてるものの全く使ったことなどない...それに相手が殺し合いに乗った参加者で自分と同じように銃を持っている可能性もある、そんなことを思いながらもひろしはじりじりと入り口の方へ近づく
この角を曲がれば入り口が見える、ひろしは深呼吸をして飛び出した

「く、来るなら来い!俺は空手部のやつと友達だったんだぞ!後一応言っておくけど俺は殺し合いには乗っていない!」

空手部の友達だということを告げて相手をビビらせようと考えたひろしはそう言葉を発した
しかし、入り口の所にいたのはひどい怪我をした三人組だった

152 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:11:52 ID:i4QkZ6Zg0
◆◆◆



「ねぇお兄ちゃん、フェザーさん大丈夫かな...」
「...あぁ、あいつならきっと大丈夫さ...」
「うん......」

都古の質問にロックは渋々返した、正直大丈夫だとは言い難い状況だったからだ、恐らく都古も薄々気づいているだろう...
フェザーの傷はあまりにも酷かった、自分達を逃がしたということは...フェザーが身代わりになったということなのだろう...
絶鬼とかいう鬼は倒すことはできた...だがしかし、それで終わりな訳はなかった、今自分達がいる場所は殺し合いの場であり例え殺し合いに乗った者を一人倒してもまた別の殺し合いに乗った参加者が出てくる、気を抜く暇などないのだ...
そしてロックがふと思い出したのは...



───フッ……OK!このクソッたれな催しを開いた主催共をとっちめた後なら、相手してやるぜ!───
───本当か!よし......男と男の約束だぜ!───



フェザーとの約束だった...

(主催共をとっちめた後にフェザーと手合わせするはずだった...約束したっていうのに...くそ!)

フェザーと手合わせするという拳と拳を交わせて約束をしたロックは怒りの感情を露にしていた
間違いなくフェザーとは良い勝負ができただろうし気が合っていた...しかし殺し合いというデスゲームのせいでその仲間はもうこの世には...

(絶対に主催共は許さねぇ...この俺の拳で必ずぶっ飛ばす...!)

ロックは再び主催を倒すことを決意した
しかし先程の戦闘と襲撃で体力も身体もボロボロだ、今は一先ず休戦しなくてはならない

「何処かに休めそうな場所はねぇか...?」
「あ、お兄ちゃん!彼処に病院があるよ!」
「good...病院なら手当てもできるな...とりあえず其処に行くか」
(可奈美のこともあるしな...)
「......」

可奈美は今もまだ気絶したままだ...可奈美が今のフェザーのことを知ると間違いなくショックを受けるだろう...そうなると戦闘するのはますます厳しくなる...

「OK、着いたな...都古、扉を開けてくれ」
「うん!」

153 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:12:17 ID:i4QkZ6Zg0

そしてロック達は何とか病院にたどり着いた

「よし、一先ずは安心だな...後は手当てする物を探すか、都古は可奈美とここで待っててくれ、すぐ戻ってくるからな」
「うん、分かった!」

そう言いロックは他の参加者がいるかどうかの確認も兼ねて入り口から一番近くの病室に入った

「...ここには誰もいないみたいだな...手当てできるものは......包帯とか色々あるな」

とりあえず手当てに使えそうな物を全部持っていくことにした
そして直ぐに都古達の元に戻った

「手当てに使えそうな物持ってきたぞ」
「さすがお兄ちゃん!!」

しかし、その時だった

「!!」

足音が聞こえて振り返るとそこには一人の男が銃を構えて警戒していた
ロックも直ぐに身構える

「く、来るなら来い!俺は空手部のやつと友達だったんだぞ!後一応言っておくけど俺は殺し合いには乗っていない!」

男はそう叫んだ
ロックは一瞬唖然とした

(空手部のやつと友達だったって...何の関係があるんだ...?)

心の中でそう思ったが一先ず向こうが殺し合いに乗っていないことが分かり落ち着かせる

「あ〜...OK、一先ず落ち着くんだ、俺達も殺し合いに乗っていない」
「そ、そうなのか...?...って怪我してるじゃねぇか!大丈夫かよ...」

どうやら殺し合いに乗っていないということを理解してもらったみたいだ、男は銃を直しロック達の怪我の心配をした

「正直大丈夫ではないな...」
「まぁだろうな...別の病室で俺の仲間がいるからそこに案内するよ」
「あぁ、そうしてくれると助かる、あんた名前は?」
「俺は野原ひろし、サラリーマンで係長やってる」
「俺はロック・ハワード、格闘家だ」
「私は有間都古!んで今は気絶しちゃってるけどこのお姉ちゃんが可奈美お姉ちゃんだよ!よろしくねひろしおじさん!」

互いに自己紹介をし、ロックは再び可奈美を抱える

「ほら、都古ちゃんもおじさんがおんぶしてあげるから」
「大丈夫!私はまだ元気だよ!」
「無理すんな都古、お前も怪我してるんだからな」
「そうそう、別におじさんに気を使わなくていいから」
「...ほ、本当にいいの...?」
「あぁ、大丈夫だから、ほら」
「うん...///」

照れながらもひろしにおんぶしてもらう都古、普段は活発な子だが年齢を考えるとやっぱり甘えたい年頃なのだろう

「じゃあ今から案内するぞ」
「あぁ、頼む」

こうしてひろしはロック達を宮下と相場の待つ病室まで案内した

154 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:12:39 ID:i4QkZ6Zg0
◆◆◆



あれ...此処は...?皆は...


───カナミ...───


あ!フェザーさん無事だったんですね!良かったです!ロックさんと都古ちゃんは何処に行ったんでしょうか?


───カナミ、お前の気持ちに気づいてやれなくて本当にごめんな...───


まだ気にしてたんですか?そんなに気にしなくて良いですよ!言わなかった私も悪かったんですから!


───でも今のお前なら......俺がいなくても大丈夫だ───


え...?何言ってるんですか...?冗談言うなんてフェザーさんらしくないですよ!


───カナミ、最後にお前に告げておくぜ───


さ、最後だなんて...何言って...


───お前なら大丈夫だ、絶対に挫けるな!そして絶対に負けるな!お前なら必ずやり遂げられる!───


ふぇ、フェザーさん、そんなこと言わないでくださいよ...それじゃあまるで...本当にこれで最後みたいじゃないですか...!


───...そろそろお別れみたいだな...名残惜しいが仕方ねぇか...じゃあな、カナミ......頑張れよ!!!───


ま、待ってフェザーさん!!フェザーさあああああああん!!!!

155 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:13:16 ID:i4QkZ6Zg0
◆◆◆



「フェザーさん!!!」

可奈美が目を覚ますとベッドに横たわっていた

「お姉ちゃん大丈夫?」
「都古ちゃん...?此処は...?」

突然起き上がった可奈美に都古が心配して声を掛ける

「此処は病室だよ、ロックお兄ちゃんがお姉ちゃんを運んだんだ!」
「そうだったんだ...後...えっと...」
「あ、自己紹介がまだだったね!このお姉ちゃんは宮下お姉ちゃんだよ!お姉ちゃんの手当てを手伝ってくれたんだ!」
「よろしくね〜!」
「あ、そうだったんですね、ありがとうございます!衛藤可奈美です」
「そんな気にしなくていいよ!」

手当てをしてくれた宮下にお礼を言った、そして可奈美は都古に質問した

「あれ?でもロックさんは?私を運んでくれたんでしょ?」
「ロックお兄ちゃんはひろしおじさん達と隣の病室で手当てしてるよ」
「ひろしおじさん...?」
「ひろしさんとはあたしと一緒に行動してたんだよ、後相場晄っていう子も一緒にね、あたしはみっつーって呼んでるけど」
「そうだったんですね」

色んな人に助けられたんだなと可奈美はありがたく思った、しかし可奈美はハッとし再び質問する

「そうだ!フェザーさん!フェザーさんは何処に!?」
「フェザーさんは...」

都古の表情が曇った、まさかと思い可奈美の息が上がる



───じゃあなカナミ...頑張れよ!!!───



「!!」

ダッ!!

「お姉ちゃん何処行くの!?」
「フェザーさんを...助けに...!!」

フェザーを助けるために飛び出し病室から出た...すると...

156 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:13:28 ID:i4QkZ6Zg0
「何処に行くんだ?可奈美...」
「...ロックさん...」

病室から飛び出すとロックが壁に体を預けて立っていた

「決まってるじゃないですか!フェザーさんを助けに」
「可奈美...恐らくフェザーは...もう...」
「そ、そんな...」

可奈美は絶望し崩れ落ちた...フェザーは自分達を逃がすために犠牲になってしまった...可奈美は舞衣の時に支えてくれたフェザーを助けることができなかった自分に腹が立ち悔しがった
ロックはそれを黙って見ていた、しばらく沈黙が続きロックは口を開いた

「可奈美、何でフェザーが俺達を逃がしてくれたか分かるか?」
「......」

可奈美は今でも黙ったままだ...しかしロックは続ける

「あのままじゃ皆やられてたかもしれねぇ...だからフェザーが庇ってくれたんだ」

可奈美は少しだけ顔を上げる

「確かに辛いかもしれない...だが、本当にフェザーのことを思うなら絶対に生き残って主催のやつを倒すことがフェザーのためだと俺は思う、ここで挫けていたらフェザーに合わせる顔がないと思うぞ...」
「ロックさん...」

ロックの言葉に可奈美は考える

(生き残って主催を倒すことが...フェザーさんのため...挫けちゃいけない...)



───お前なら大丈夫だ、絶対に挫けるな!そして絶対に負けるな!お前なら必ずやり遂げられる!───



可奈美は夢の中でフェザーに言われたことを思い出しハッとする

(そうだ...夢の中でフェザーさんは私のことを応援してくれた...こんなところで挫けちゃいけない!!)

可奈美はフェザーの気持ちは無駄にはしてはいけないと思い立ち上がった

「ありがとうございますロックさん、そうですよね...私、フェザーさんのために挫けず頑張ります!そして必ず生き残ってこの殺し合いを打破して見せます!」
「...ふっ...OK!その意気だ!だが、一先ず今は体力の回復が先だ、今はゆっくり休んだ方がいい」
「はい、分かりました!色々ありがとうございます」

ロックにお礼を言った可奈美は再び病室に戻った

(にしても...可奈美のやつすげぇな...俺でも大分ダメージ残ってるっていうのに...俺も負けてらんねぇな!)

ロックも負けじと気合いを入れた、その時...相場がこっちを見ていることに気づいた

「どうした?晄?」
「いえ、別に何でもないです」

そう言って相場は再び病室に戻った...

(...晄のやつ...何だったんだ...?何だか嫌な悪寒を感じるぜ...)

しかし、ロックは相場から嫌な悪寒を感じていた





(やれやれ...この人達ときたら...手間が掛かる...)

相場は影で密かに怒りを露にしていた...

157 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:13:48 ID:i4QkZ6Zg0



そしてあれから六人は一つの病室に集まった

「これからどうするか...」

ひろしがそう口にだした

「とりあえず、ひろし達には申し訳ないが今はこの病院で休んでおきたいな...俺達はさっきの戦闘でかなり体力を消耗しちまっているからな...」
「仕方ないさ、そんなに怪我してたら俺達だって心配だしな」

こうして彼らは病院で休戦することを決めた
挫けずに頑張って生きる、それが庇ってくれた大切な人へのせめてもの恩返し...



【F―4 病院/早朝/一日目】
【野原ひろし@クレヨンしんちゃん】
[状態]:健康
[装備]:ハイドラ@バイオハザードシリーズ
[道具]:基本支給品、予備のショットガンの弾、ランダム支給品0〜2、包帯×5
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしない
1:しんのすけ達を探しつつ首輪も何とかしたい
2:とりあえず今はロック達と病院で休む
[備考]
※少なくとも「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」までの映画版での出来事は経験しています。


【宮下愛@ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】
[状態]:健康
[装備]:レッドカード@ポケットモンスターシリーズ
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2、包帯×3、絆創膏×5
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:ゆうゆ達を探しつつ首輪も何とかしたい
2:みんな...無事でいてね...
3:ロックさん達と病院で休む
[備考]
※参戦時期はアニメ最終回後。


【相葉晄@ミスミソウ】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(カメラ類は無い)、風邪薬、頭痛薬
[思考・状況]
基本方針:とりあえず首輪を解除したい
1:優勝するか脱出するかは首輪を解除してから可能性の高い方を選ぶ
2:俺には野崎がいる...それ以外はどうでもいい...
3:あまりにも足手まといな参加者は排除したい...が、今は我慢
4:全くこの人達は...
5:できれば自分のカメラが欲しい
[備考]
※参戦時期は14話以降〜最終話以前。

158 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:13:58 ID:i4QkZ6Zg0
【衛藤可奈美@刀使ノ巫女】
[状態]:精神疲労(小)、疲労(小)、左肩弾痕(処置済み)
[装備]:孫六兼元@刀使ノ巫女、白楼剣@東方project
[道具]:基本支給品、舞衣の支給品(基本支給品+ランダム支給品×0〜2)
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしない。姫和ちゃんやみんなを探したい。
1:姫和ちゃんは千鳥がないと……ううん。それでも私が止めないと!
2:舞衣ちゃん……私、生きるよ。
3:皆と早く合流しなきゃ
4:フェザーさん……私、頑張ります!
5:今は体を休める
[備考]
※参戦時期はアニメ版21話、融合した姫和と戦闘開始直後です。
※舞衣の理念の残滓との影響で孫六兼元で刀使の力が使えるようにはなりましたが、千鳥と比べたら半分以下の制限となります。(人外レベルの相手は難しい)
※荒魂のことはまだ話してないので、ロック・都古とは同じ世界だと思っています。


【ロック・ハワード@餓狼 MARK OF THE WOLVES】
[状態]:疲労(小)、左肩弾痕(処置済み)、あばら骨数本骨折
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済) スタミナドリンク100×4、黒河のPDA(機能使用可能回数:1回)@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage、包帯×3
[思考・状況]
基本行動方針:主催をとっちめて、さっさとここから脱出する
1:一先ず今は休戦する
2:ギース・ハワード、カイン・R・ハインラインの名前が気になる。
3:晄のやつから妙な悪寒を感じるぜ...
4:フェザーの気持ちを無駄にしない
5:俺も負けてられないぜ!
[備考]
※参戦時期はグラント戦後
※グラブルの世界を大まかに理解しました。
※可奈美から荒魂のことはまだ聞いていないため、同じ世界だと思っています。


【有間都古@MELTY BLOODシリーズ】
[状態]:疲労(小)、左肩貫通・弾痕(処置済み)
[装備]:スピリット・オブ・マナ@グランブルーファンタジー
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済)、ニュートンの林檎×4@へんなものみっけ!
[思考・状況]
基本:殺し合いなんてしない! 元凶は全員コテンパンに叩きのめしてやる!
1:とりあえず今は休戦する
2:フェザーさん……
[備考]
※身体能力はタタリ影響下の時の状態です
※グラブルの世界を大まかに理解しました。
※可奈美から荒魂のことはまだ聞いていないため、同じ世界だと思っています。

159 ◆.EKyuDaHEo:2021/08/09(月) 16:14:26 ID:i4QkZ6Zg0
投下終了します、タイトルは「生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ」です

160 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/10(火) 06:09:38 ID:Bz7lZzO.0
モッコス、アカメ、初音、琴美で予約します

161 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:37:56 ID:l82kFWZo0
投下お疲れ様です!

「生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ」
ひろし、みさえと同じようにグループ内の年長者として頼りがいがありますね!
「く、来るなら来い!俺は空手部のやつと友達だったんだぞ!後一応言っておくけど俺は殺し合いには乗っていない!」
↑正直、知らなかったので、驚きました!ですが、その後のロックの(空手部のやつと友達だったって...何の関係があるんだ...?)に笑っちゃいました。
夢の中でのフェザーとの別れ、とても丁寧に描写されていて凄く感動しました。
あと、タイトルにグッときました……!
ロワらしい不穏な引きもあり、今後の展開が気になります。

投下します。

162死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:38:32 ID:l82kFWZo0
死中に活を求めるーーーーーほとんど助からないような状態のなかで、なおも生きのびる道を探し求める。
デジタル大辞泉より引用。

―――したたたた

「……」
「……」

―――したたたた

「……」
「……」

―――したたたた

―――ぐう〜〜〜〜〜

「……お腹すいた」
「きりのいいところで一度休憩を取るから、今は我慢しろ!」

ギャブロと立香は京都を駆け足で駆けている。
間久部緑郎こと『ロック』を探しているためだ。

「……うん」
ギャブロに休憩を却下され悲しい目をする立香。

―――したたたた

―――チラッ

ギャブロは並走する立香に視線を向ける。

「……」
(……ったく、本当に緊張感を感じない男だな。でも……息も乱れず、ボクのスピードについてきてる。人は見かけに寄らないって、こういう意味なのかな?)
出会った時から相変わらず、掴みどころがないように見えるが、自分の脚力に追いついていることにギャブロは内心驚く。

―――モゾモゾ

「?、なんだろう。ごめん!ギャブロ君。デイバッグが動いているんだ。一度、中身を確認しても良い?」
背負っているデイバッグが動きだし、立香は一度、デイバッグの中身を確認しても良いか尋ねる。

「デイバッグが?……仕方がないな」
ギャブロは立香の要望を聞くと、一度移動を止めると立香に近づく。

―――ジィィィィィ

立香がデイバッグを開けると―――

―――キラキラキラ

虹色の蝶がひらりヒラリと舞いながら姿を見せたのだ。

「わ〜〜〜キレイ」
「あ、ああ……確かに」
蝶の綺麗さに立香のみならずギャブロも見惚れる。
立香とギャブロの周囲を舞っていた虹色の蝶はやがて―――

―――ひらりヒラリと別の場所へと飛んでいった。

「ど、どうしようどうしようどうし(汗)」
「追いかけるしかないだろ!いくぞ藤丸!!」
虹色の蝶が飛んでいったのを慌てる立香にギャブロは追いかけるぞと話すと急いで走り始める。

2人は虹色の蝶を見失わないように後を追いかけるように走り続けると―――

やがて、屋敷が見えてきた。

「わ!お屋敷だ〜」
「ああ……そうだ《チュド―ン!》」

なんと!屋敷が見えたと思ったら重々しい音と風が―――

「これは……ロックか!?藤丸!突入するぞ!」
(爆発だって!?もしかしてロックの仕業か!?)

「うん」

「ロック―――!!!そこにいるのか!?」

2人は熱気と煙に怯むことなく、屋敷の中へ突入していった―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

163死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:39:56 ID:l82kFWZo0
少し時間が遡り―――

「……エレンさん。無事かな……?」
屋敷のとある一室。
その部屋のソファーに座りながら侑はエレンの無事を祈っていた。

「雑魚は早々に失せろ。巻き添えになりたければ別だが。」
「ゆんゆん。流石に今回は離れた方がいいデス。」

(私にも戦う力があれば……エレンさんを一人にすることはなかったのに……!)
確かにあの金髪の男の人の言う通り、私は戦う力を持っていない。
エレンさんも言葉こそ私の為に言ってくれたことだけど、逆に考えればお荷物といってもいいのではないだろうか。
侑は自分の無力さにただただ落ち込む。

「……」
(レオーネさんといったっけ。見た感じとても強そうだったな……お願いします!エレンさんを助けてください……ッ!)

コツコツコツと時計の針の音が鳴り、ただ静寂の時が流れる。

―――ギィ……バタン!

出入り口の扉が開く音がした。誰かがやってきたのだろう。

―――ギィィィィ……

侑のいる部屋の扉が開く―――

「エレンさん?」
侑は期待を込めて顔を見上げると―――

「フフ、がっかりさせて申し訳ない。ぼくはエレンという人じゃないよ」
部屋の扉を開けたのは間久部緑郎。

☆彡 ☆彡 ☆彡

164死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:40:50 ID:l82kFWZo0
「あ、貴方は……」
「ぼくは間久部緑郎。……ロックとでも呼んでくれよ」
ロックは侑に名前を名乗ると握手しようと手を差し出す。

「私は高咲侑です」
侑も自己紹介をしつつ手を差し出して握手しようとするが―――

―――!?

とっさに握手するための手を引っ込める。

「?どうしたんだい?」
「い、いえ……そのなんでもないです」
ロックはキョトンとした顔で、侑は一瞬だが、青ざめた顔を見せた後、なんでもないといった顔を見せる。

「ふ〜ん。どうやら、ぼくを警戒しているみたいだね。いいよ、それじゃあ、互いの親密を深めてから握手をしようか」
ロックは対面するための反対側のソファーに座る。

それから、互いにしっている情報について話した。

―――かくかくしかじか。

「じゃあ、もし”みらい”という子に出会ったら伝えておいてくれるかい?」
「は、はい……」

「それにしても、スクールアイドル……一度、歌を聴いてみたいね」
「え、ええ……」

「大丈夫さ。エレンって子は強いみたいだし、レオーネって人も何だろ?だったら、君は遠慮せず、彼女らに庇護されると良いよ」
「……」

「フ、フ、フ、ウフフフーフフフ……」

突如ロックは笑い出した。

「……ッ!?」
侑は急いで部屋から出ようとするが―――

後一歩足りず、組み伏せられる。

「どうやら、その頭につけている支給品の効果なのかな!?ぼくの心の中を読んでいるのは」
「……」
ロックは侑の額のスペクテッドが心を読めたと指摘する。
ロックの指摘にドキリとしつつも侑はだんまりを決め込む。

「へぇ〜だんまりかい?悪いけど、ぼくは女だからといって手を抜いたりなんかはしないぜ?」

そう―――
間久部緑郎は―――
ヘビのようにざんにんな心の持ち主。

165死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:42:25 ID:l82kFWZo0
―――ゴキッ

「〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
ロックは侑の右肩を脱臼させる。
余りの激痛に声にならない悲鳴を上げる侑。
幸運といってもいいのか、気絶はしていない。

「ふん!とっととぼくの質問に答えないからだ」
ロックは多少イラつきながら侑のスペクテッドを奪い取る。

―――ギィ……バタン!

屋敷の出入り口が開く音がした。

「―――え?」
「おや?もしかして、君がいっていたエレンもしくはレオーネかな?なら、予定変更しよう」
ロックは侑を爆弾化するのを止めた」

「……え?」
侑はロックの意図が読めず、困惑する。

「どうして今まで君を爆弾化しようと考えていたのに不思議だろう?冥土の土産に1つ良い事を教えてあげるよ。キラークイーンは人を爆弾にして爆発させるだけじゃない。”爆弾化した物体に触れた者”も爆発することもできるんだ」
邪悪な笑みを浮かべながら侑に話すロック。

―――物体に触れた者を爆発させる……?

(……ッ!!??)
侑は血の気が引いた顔になる。

「ゆ……ゆんゆん……そこの部屋にいるの……デスかー?」
部屋の扉の向こうからエレンの声が聞こえてきた。

「エレンさん!!!!!!その扉開いちゃダメ!!!!!!」
扉を開こうとするのを大声で制止する侑。

「え―――――?」

「『キラークイーン』はすでにドアノブに触っている」
ロックは邪悪な笑みを浮かべる。

―――カチャリ

エレンがドアノブに触れた瞬間―――

カチッ

―――けたたましい爆音が鳴り響いた。

☆彡 ☆彡 ☆彡

166死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:45:52 ID:l82kFWZo0
爆風と煙が充満する―――

「げほッ……ゲホッ……」
(い……イタタ。腰をタンスにぶつけたみたい)
ドアノブを爆弾に変えられ、ロックの思惑通り、”それ”は最悪のタイミングで爆発した。
体ごと吹き飛ばされた侑は腰を痛める。

(けど、痛いだなんて……言ってられないよね)
何とか体を起こすと、粉々に破壊された扉の周辺まで歩く―――

「……エ、エレンさん!?大丈夫ですか!?」
侑は、破壊され粉々となった場所へ歩くと―――

そこには―――

爆弾で吹き飛ばされたであろう黒こげのエレンの左腕が―――

「あ、ああ……」
侑は体をガタガタと震わせて崩れ落ちる。

「君が弱いから、その子は死んだんだよ」
ロックは冷めた目で侑を見下す。
侑に絶望を与えるため、体の一部が残るようにわざと威力を調整したのだ。

「……どうして、貴方は平気で人を殺せるんですか?」
侑は今までのロックの心の声を想起する―――

(さて、この女をどうする?もしもの為に爆弾に変えておくか?……)

「?どうしたんだい?」
(何だ?この女……爆弾にすることに気づいているのか?)

「ふ〜ん。どうやら、警戒しているみたいだね。いいよ、それじゃあ、互いの親密を深めてから握手をしようか」
(やっぱり、この女……気づいてるな!まぁ、いい。とりあえず、情報交換だけでもしておくか……)

「じゃあ、もし”みらい”という子に出会ったら伝えておいてくれるかい?」
(やれやれ色々聞いたがほぼ無収穫か。時間の無駄だったかな……でも、この女はどうやってぼくの企みに気づいたんだ?)

「それにしても、スクールアイドル……一度、歌を聴いてみたいね」
(はっ!アイドル?くだらないね。馬鹿な群衆に媚びて歌って自己満足に浸る虚像に満ちた職業の人間じゃないか!)←アイドル並びにアイドルファンの読み手・書き手の皆様ごめんなさい。

「大丈夫さ。エレンって子は強いみたいだし、レオーネって人も何だろ?だったら、君は遠慮せず、彼女らに庇護されると良いよ」
(まるで弱かったからイジメられていた昔の自分を観ているみたいでムカつくな。……ん?そうか!)

「フ、フ、フ、ウフフフーフフフ……」
(わかったぞ!この女、心の中を読めるんだな!おそらく、あの額につけている眼みたいのヤツでだ!もう、この女は必要ない!)

「どうやら、その頭につけている支給品の効果なのかな!?ぼくの心の中を読んでいるのは」
(ははは!すっとぼけても無駄さ!!ずいぶんと手こずらせたな!!!お礼に爆弾に変えた後、エレンとかいう女と一緒にあの世に送ってやるよ!!!!)

ロックは今まで出会って来た中で怖ろしいと感じる男の人だ。
あの白服の男の人や金髪の男の人よりも―――
まるで悪魔の申し子だ―――

「はっ!つまらないことを……おれは、おれのやりたいことをやってるだけだーっ!!」

グワ―――

キラークイーンが姿を現すと侑を殴り殺そうとする。

そのとき―――

「ロック―――!!!そこにいるのか!?」

「……ッ!?」
(この声は……クソッ、ここは一旦、退却を……がッ!?」
窓の外からギャブロの声が聞こえたロックはキラークイーンを引っ込めてこの場を離れようとするが、頭を蹴られ、うめき声を漏らす。

ロックの頭を蹴り飛ばしたのは―――

―――ロックのキラークイーンにより左腕を無くした古波蔵エレン。

☆彡 ☆彡 ☆彡

167死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:46:30 ID:l82kFWZo0
「おまえ……生きてたのか!?」
頭を抑えつつ、エレンと対峙するロック。

「yes!……正義のヒーローは悪にまけまセンからネ♪」
(か……間一髪デシタ……)
エレンは不敵に笑う。

しかし、紙一重の奇跡。
屋敷の居間に、武士の鎧とその傍に日本刀が置かれていた。
支給品ではなく、おそらく屋敷の住人のだろう。
御刀ではなく無名の日本刀だが、刀使として念のためちょっとお借りした。
その行動が結果的にエレンの命を救った。
侑の叫び声を聞いたエレンは部屋の向こうが危険だと判断したため、ドアノブに触れた瞬間、左腕が異変したと同時に、とっさに腕を斬りおとしたのだ。

ロックの爆発の調整もあり、無名の日本刀は粉々に壊れ、左腕を失うこととなったが―――

怪我の状態から、間に合わなかったら死んでいたであろう―――

―――見事エレンは死中に活を求めた。

「だけど、その木刀……片手となった今、自由に扱えるのかな?」
ロックは余裕の態度を崩さない。
なぜなら、西洋の剣なら片手で扱うことはあるが、木刀や日本刀ならやはり”両手”が好ましい。
故に初手は油断を受けたが、問題なしと判断した。

「それに関しては問題ありまセン。私の流派、タイ捨流は、剣だけじゃなくて、パンチやキックも全部使って戦う流派デス。なんなら……その身で味わってみますか?」

―――ゾクッ

(このぼくが……震えている?)
エレンの身に纏う闘気にロックの体が身震いする。

(怯むな……所詮はハッタリだ……だが)
ロックはエレンの強がりだと感じるが、もしものことを考え―――

「だったら、”コイツ”の能力を試してみるか」
「あッ!?エレンさん!気を付けて!」
ロックは先ほど侑から奪い取ったスペクテッドを額に装着する。

(おい!この女の心を読み取れ!)

―――カッ!

ロックはスペクテッドの力を発動する。

(マズいデス……早く決着をつけないと……私の体力はもう限界……デス)

―――はは。やっぱりやせ我慢か!なら、とっととキラークイーンで仕留めてやるよ!
エレンの心を読み、やはり自分の読みは間違っていなかったと確信する。

―――が。

誤算が起きる―――

グラ―――

―――な、なんだ?体が急にダルくなった……?

168死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:47:15 ID:l82kFWZo0
ロックは全身に疲労を感じる。
その正体は”拒絶反応”。
帝具は持ち主との相性が悪ければ、扱うことはできない。

「チッ……コイツが原因か!使えない!」
ロックは疲労の原因に気づくと、スペクテッドを外すと放り投げる。

(不味い!予想以上に疲労が身体から抜けない。これでは、あの女を仕留めるには時間がかかるッ!それに……クソ!これ以上時間をかけるのは不味い!)

―――そう、このまま時間をかけるとアイツ(ギャブロ)が来る……!

ロックは次の一手をどうするか悩んでいると―――

ゆら―――

「……許さない」

ロックとエレンの間に侑が立つ。

その目には怒りや憎しみと言ったおよそアイドルが見せていい目ではない。

「ゆ……ゆんゆん?」
(侑の様子がおかしいデスねー……)
エレンは侑の身体から放つ雰囲気に息を呑む。

「許さないだって?ははは!キミに何ができる?そもそも、この女の腕が吹っ飛んだのはキラークイーンの能力を完全に読み取れなかったキミのマヌケさと戦う力を持っていない無力さの所為じゃないか!」
ロックは鼻で嗤う。

「……」

―――スチャ

侑は黙ったまま、先ほどロックが放り投げたスペクテッドを再び額に装着した。

「それで、ぼくの心の中を読んでどうするつもりだい?いっておくけど、”ソレ”はおススメしないぜ。君がもっと傷つくだけだから」
余裕ぶるロック。
”ソレ”の能力は既に把握している。
心の中を読むのは一転脅威だが、戦う術を持たない者が所有者なら怯えることはないからだ。

しかし、彼の表情は一転する。
なぜなら―――

「な……な……」

―――さ、西郷!!!!!?????

「?」
(変デスねー。男の様子がおかしい……?)
エレンは突然様子が変わったことに首を傾げる。
無理もない。ロックにしか見えていない人物の姿がいるのだから。
それも、最愛の人物。

―――西郷風介。

「ば……ばかな。おまえは……死んだ……はずだ?。……う……うわーッ!」
ロックは叫び声を上げると窓ガラスの方へ走り―――

―――ガッシャン!!!

なんと、ロックは、窓ガラスを突き破り、2階から飛び降りたのだ。

169死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:47:37 ID:l82kFWZo0
―――スタッ!

ロックは上手に着地に成功すると、一目散にこの場から離れた。

「ロック!」
運が悪い事にギャブロが部屋に到着したのは、そのときだった。

「きゃ!?」
「新たな敵デスかー!?」
(これは……不味いデスねー……そろ……そろ、限界デス)
ギャブロの登場に侑は驚き、エレンは必死に意識を保ちながら構える。

「お、おい。オマエ……その腕は!?」
ギャブロの目に映るのは左腕を失ったエレンの姿。
そして、それを行ったのは探しているロックの仕業だと直ぐに理解した。

「ッ!ロックのやろォォォ!!ゆるせねェェェ!!!」

「ねぇ、ギャブロくん」
「なんだ!!!いっておくけど、今はふざけている場合じゃ……!?」
この惨状を見れば、いつもの立香に付き合っている余裕はギャブロにはない。
声を荒げつつ、返事を返して振り返ると―――

「―――治療をするから、どいてくれるかな?」

その言葉は怒気が込められつつもとても低く冷静だった。

―――ゾクッ!

「あ、ああ……」
(おい……オマエ……本当にあの藤丸か?)
立香のただならぬ姿にギャブロはただ頷き、この場を任せることしかできない。

「……大丈夫。ボクに任せて」
「―――え……ええ。お願いシマス」
立香とは初対面だが、エレンはなぜかはわからないが、委ねても良いと判断し、立香に身を任せる。

「―――浄化回復」
立香はエレンに対してスキルを発動させる。

「……」
(温かい光……きもちよくて眠ってしまいそうデス……)
温かな光に包まれたエレナは身に任せ目を瞑る。

☆彡 ☆彡 ☆彡

170死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:48:14 ID:l82kFWZo0
ホワイト・ギースそしてロックと連戦に次ぐ連戦で受けたエレンの疲労と怪我はそうとうなものだった。

―――時間はかかったが、無事に治療が終わり。

「……ふぅ」
無事に治療を終えた立香は額の汗を腕で拭う。

「……エレンさん」
どうやら立香の治療により、大方の怪我は回復されたようだ。
だけど、侑は素直に喜べない。
なぜなら、視線の先にいるエレンさんは―――

―――左腕を失っているからだ。

―――ああ。エレンさんの雪のように白い手が。

そこにはもうない―――

「ごめんね。本当なら、腕の接合もできる筈なんだけど……」
(スキルが制限されている?……あの、双子ちゃん達の仕業かな?)
立香は、エレンに腕の再接合ができなかったことを詫びる。

「oh!私は気にしていません。それより、疲労や怪我が、この通り回復してもらったおかげでこんなにピンピンとなりました。治療……ありがとうございマス」
エレンは立香が自分の治療に全力であたってくれたことに感謝する。

「……」
(さっきの戦いでは見栄を張りましたが、戦い方を考えないといけませんネ)
ロックに少しでも優位に立とうと見栄を張ったが、やはり片腕では、刀での袈裟蹴りや間接技を完璧に極めるのは難しい。
とっさに自分の腕を斬りおとせたのも火事場の馬鹿力と奇跡が重なったからであり、同じことが続くとは限らない。

(ですが、タイ捨流は雑念を捨て去ること。これぐらいでヘコたれる私ではありまセン……!)
片手になろうと、タイ捨流を流派として持つ者として、荒玉を祓う刀使として、エレンの闘志はいまだ消えていない。

「……!」
(侑……?悲しい顔をしてマスね……ここはやはり私が)

エレナはそんな侑の視線に気づくと―――

「oh!別にゆんゆんはこれっぽっちも悪くありません。……仕方ありません。命があっただけでも儲けもの……こういうのを”日頃の行いが良い”というんデスよー♪」
エレナは侑を不安がらせないよう普段通りの陽気な声で大丈夫だと伝える。

「……はい」
(エレンさんは優しいから……私に気をつかってくれている……なら、その想いを私はしっかりと受け止めないと)
侑はエレンの気遣いを尊重して、頷く。

「……やっぱり、ゆんゆんは優しいデスネー☆」
またエレンもそんな侑の優しさに微笑む。

「それにしても……ちくしょォォォォ――!ロックのやつ。早くアイツを何とかしないと、被害が増える一方だ!」
ギャブロはロックの蛮行に怒りを隠しきれない。

「……そうだね」
ギャブロに同意する立香。
彼もロックの行った行動に憤りを感じている。

―――キラキラキラ

ちょうどそのとき、立香のデイバッグから飛び出た虹色の蝶が再び姿を現した。

「キラキラした……蝶?」
「oh!キレイな蝶デス」
侑とエレンも始めて見た時の立香とギャブロと同じ反応を見せる。

「皆さん……」

「「「!?」」」

なんと!虹色の蝶が人語を喋りはじめたのだ!

侑・エレン・ギャブロが驚く中―――

「わ、わ、ちょうちょが喋った……!」

立香は嬉しそうだ。

171死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:54:10 ID:l82kFWZo0
【D-2の境界線/一日目/早朝】

【高咲侑@ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会】
[状態]:疲労(大) 腰打撲 右肩脱臼 ロックに対する怒り エレンに対する自責の念(大)
[装備]:五視万能スペクテッド@アカメが斬る!
[道具]:なし
[思考・状況]
基本:みんなの事が心配。
1:みんな無事かな……レオーネさんも。
2:ごめんなさい、エレンさん……私のせいだ……
3:レオーネさんもエレンさんも、愛さんみたいな……
4:帝具……オーバーテクノロジーすぎない?
5:ロックさん……私は貴方を許しません。
6:え?蝶が喋った!?
[備考]
※参戦時期は少なくともアニメ版五話以降ですが、
 具体的なのは後続の書き手にお任せします。
→参戦時期は11話〜12話の間
※デイバックや基本支給品、ランダム支給品(×0〜2)は、
 侑が待機してる屋敷の中に放り出されてる状態です。
※ギャブロ・立香の世界について簡単に知りました
※ロックから零の妹について知りました。

【五視万能スペクテッド@アカメが斬る!】
元々は首切りザンクが所持していた帝具。
額に付ける巨大な瞳で、五つの視界に関する能力を有している。
心が読める洞視、霧でも夜でも関係なく遠くにいる相手が見える遠視、
筋肉の動きから動きを見通す未来視、服の上から中を確認できる透視、
唯一相手にかけるタイプとして幻覚を見せる幻視の能力を有している。
帝具には相性がある為相性次第では疲労や使用を受け付けなくするが、
侑は第一印象は悪くなかったので遠視、洞視は使用可能でそれなりの適性がある。
(ブラート曰く帝具とは、第一印象で相性が大体わかる模様)
また帝具は適性があれども精神や体力の摩耗が激し同時に使うのは厳しい。
ロックとの邂逅で幻視が使用可能となりました。

【古波蔵エレン@刀使ノ巫女】
[状態]:健康、左腕欠損
[装備]:神木・黒那岐丸@Re:CREATORS
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いに乗るつもりはありまセーン。
1:片腕でも私のやることはかわりまセン。
2:薫や可奈美達が心配デスが、特に不安なのは姫和デスね。
3:ゆんゆん……あのとき身に纏っていた雰囲気は一体?……ちょっと心配デスね
4:oh!蝶が喋りました!?
[備考]
※参戦時期はアニメ版21話、可奈美が融合した十条姫和との戦闘開始直後です
※御刀がないので写シ等の能力は使えません
※ギャブロ・立香の世界について簡単に知りました
※ロックの危険性について知りました。

172死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:56:10 ID:l82kFWZo0
【ギャブロ@大貝獣物語2】
[状態]:ダメージ(中) 疲労(中) MP消費(小) 左腕噛みつき跡
[装備]:メタルナックル@FINAL FANTASY VII
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2
[思考・状況]
基本方針:殺し合いには乗らない
1:ロックを探す(他の参加者にはロックの危険性を伝える) 北側ABCDを中心に
2:藤丸のおもりをする
3:伯爵さまに出会ったら、E3のかなでの森博物館で合流することを伝える
4:二日目の昼にはE3のかなでの森博物館へ戻り、キヨス達と合流して手にした情報を交換する
5:あの蝶、喋れるのか!
[備考]
※参戦時期は暴走するダークを命と引き換えに止めた直後
※ロックの爆発する能力は完全には把握できておりません。(侑から事情を聴き、少し把握が進みました)
※回復魔法で回復するのに時間がいつもよりもかかることを把握しました。
※キヨス・マネーラ・藤丸の世界について簡単に知りました。
※自分の世界の建物もあるのでは推測しています。
※侑・エレンの世界について簡単に知りました。

[メタルナックル@FINAL FANTASY VII]
ギャブロに支給されたグローブ。
腕にはめて使えば、物理攻撃力が上がる。頑丈だが、特にこれと言った性能はない。

【藤丸立香@藤丸立香はわからない】
[状態]:疲労(中) 若干の空腹 おめめスッキリ ウキウキるんるん ちょうちょが喋って嬉しい
[装備]:極地用カルデア制服@Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品、黒獣脂(まだまだあるよ)、アンナ@スーパーペーパーマリオ
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いの打破。特異点とかなら修正する。
1:とりあえずギャブロ君・侑ちゃん・エレンちゃんと行動を共にする。(特異点か調査)
2:マシュ〜〜〜どこ〜〜〜?
3:カルデアと通信できる方法が他にないか探す
4:お腹がすいた……でもちょうちょが喋りだした!嬉しい!
5:二日目の昼にはE3のかなでの森博物館へ戻り、キヨス達と合流して手にした情報を交換する
6:腕の接合ができなくてゴメンねエレンちゃん。そして、ロック君―――メラメラ。
7:わ、わ……ちょうちょが喋った!嬉しいな

[備考]
少なくともノウム・カルデアに着いた時よりも後から参戦です。
※ロックの危険性について知りました。
※キヨス・マネーラ・ギャブロの世界について簡単に知りました。
※寝ている間に誰か(ドレミー)と出会ったような記憶があります。
※侑・エレンの世界について簡単に知りました。
※スキルに制限がかけられていることを知りました。

【極地用カルデア制服@Fate/Grand Order】
魔術礼装の一種。
極限環境での活動を想定している。
使用できるスキルとして、浄化回復、幻想強化、予測回避というものがある。
浄化回復―――対象者の疲労と怪我を回復させる。時間をかければ全回復も可能だが、スキルを使用すると自身の疲労は溜まりスキルでの回復はできない。また、体の欠損などは接合できない。

【黒獣脂@Fate/Grand Order】
魂を喰らう獣の体表から採れるドロドロとした脂。
蒸留により生成を幾度も繰り返すことで、上質の魔術資源となる。
「触りたくない素材ナンバーワンだよ!」by藤丸立香

【アンナ@スーパーペーパーマリオ】
虹色の蝶の形をしたフェアリン。
正体はエマという人間の女性。ヤミ一族の族長の息子であるルミエールに恋心を抱くようになるが、人間とヤミ一族の者同士が恋をすることはタブーであった。それでも彼女は彼を愛し続けた。
しかし、ルミエールの父親によって強大な呪いをかけられ、2人は離れ離れとなってしまう。
彼女はハザマタウンに流れ着き、彼女を発見したデアールによって魂を転生され今の姿に至っている。記憶を失っていたが、物語が進むにつれて徐々に記憶を取り戻していく。
現在、どこまで記憶を取り戻しているのかは後続の書き手様に委ねます。

☆彡 ☆彡 ☆彡

173死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:57:03 ID:l82kFWZo0
―――すたたたた……どてっ

走りながら逃げている最中、小石に躓き転ぶロック。
これまた普段の彼を知る者ならば見られない醜態。

「西郷……フーッ……クソッ!してやられた!」
ロックは自身を躓かせた小石を爆弾に変えると苛立ちながら爆発させる。

「おそらく、あの支給品の効果だな」
(人の心を読むだけじゃなかったのか……!!)
しかし、そこはロックである。
乱れた息を整えると、先ほどの西郷の幻影?らしきの正体を推測する。

「それにしても、ウアッハハハハハハハ……よく考えれば、死んだ人間が蘇る筈がないじゃないか!そう、西郷はぼくが殺した。だから……生きてぼくの前に現れる筈はない……ないんだ……」
それは、どことなく乾いた虚しさがある独り言。

―――しばらく歩くと。

「……?。あれは学校か……」
正直、学校にはいい思い出はない。
”くに”をとびだして東京へ行った際、お別れと称して教室中……教壇からつくえ……クラスメイトの教科書までしょんべんをひっかけたほどだ。

「ん……あの木造校舎……!」
―――ぼくが、かよっていた学校じゃないか!?

そう、その年季の入った校舎は間久部緑郎が通っていた学校だった。

「……」
先ほどの西郷の幻影を見たのも影響したのか、ロックは学校へと足を向ける。

ロックの親友、西郷はロックに”おンしは悪魔でも気が狂ってもいないただの気のよわい人間だ”と言い放った。

果たして、ロックは”気のよわい人間”なのか”悪魔の皮を被った人間”なのか―――

紅き月が爛々と輝きながらロックを見下ろす。

【B-3/一日目/早朝】

【間久部緑郎/ロック@バンパイア】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)、汚れ、零に対して少しだけ同情 侑に対してイラつき(大)
[装備]:キラークイーンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:秩序なきこの場を楽しむ
1:とりあえず北を散策。殺しを唆すもよし、殺すもよし。
2:トッペイと出会ったときはどうしたものか。
3:アナムネシスとみらいに警戒。ただみらいは利用できるかも。
4:零、千は利用できるか?
5:……西郷……
6:学校……寄ってみるか
7:アイツ(ギャブロ)がうっとおしいな。
[備考]
※参戦時期はバンパイア革命に失敗し、西郷を殺害した後。
※クライスタの世界を(零視点から)大まかに把握しています。
※侑とエレンの世界を(侑の知識)大まかに把握しています。
※侑の額の支給品(エクステッド)の効果は洞視だけでなく幻視も使えるのだと思っています。

[キラークイーンのDISC@ジョジョの奇妙な冒険]
ロックに支給されたスタンドDISC。頭に挿入すると、このスタンドが使える
スタンドパラメータ
 破壊力:A
 スピード:B
 射程距離:D
 持続力:B
 精密動作性:B
 成長性:A
能力:触れたものを爆弾に変える

※このスタンドは原作と異なり、非スタンド使いでも見えます。
また、シアーハートアタック、バイツァ・ダストは使えません。

174死中の閃き ◆s5tC4j7VZY:2021/08/10(火) 10:57:14 ID:l82kFWZo0
投下終了します。

175 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/11(水) 22:20:13 ID:.QIe6/uI0
野原しんのすけ、アリサ・バニングス、宮藤芳佳、佐藤マサオ、日ノ元明、マシュ・キリエライト、アニ・レオンハート、白井日菜子、糸見沙耶香、ムラクモ、針目縫、服部静夏、植木耕助、カイン・R・ハインライン、ナスタシア、桐生で予約します。

176名無しさん:2021/08/12(木) 07:58:24 ID:g6CCbim.0
八将神を知るカインはいるが、トッペイは所在不明か

177 ◆2zEnKfaCDc:2021/08/12(木) 23:09:12 ID:oj8df.L60
幡田零、清棲あかり、マネーラ、パンドラボックス予約します。

178 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:24:36 ID:ccPlLFUY0
では再び感想を

>ひぐらしのなく頃に〜沙都子ワシ編〜
タイトルのネタ性能高めとは裏腹にしっとりとしたお話
しっかりとネットミームを混ぜ込んでどこかシリアスな笑いに
鉄平は安全圏、沙都子は中々地雷を踏み抜きそうなピリピリした編成、
と言うのも中々対になっている感じ。とは言え東にやべー奴らがいて、
果たして大丈夫でしょうか

>大好きを叫ぶ
貴真一人勝ち。さらりと精神的なとどめを刺して逃げる姿、
普通なら捨て台詞を吐いた小物がするムーヴなのにえげつなさがあります
生き残って無事洗脳は解けたものの、解けたことで寧ろ精神的にあれでしたね

>みんなの夢、わたしの夢
南のアーナス集団、北のノワール集団とでもいうべきやばい面子勢ぞろい
こんなの相手してたら命いくつあっても足りませんわと言うぐらいギスギスかつ戦力過多
そして支給された時点で、まあそうなるよね。悲しいけどこれがアンプルの役目なの
沼の鬼に癒されるときが来るとは思いませんでした

>笑顔のカタチ
なんてものが支給されてしまったんだ(苦笑)
使い方次第で無敵に至れる代物をしょうもないことに使うところはやはりドキュンサーガや……
ギリギリ事なきを終えましたが、女性多めの集団が多くてどこ行っても波乱待ったなし

>王道を歩む者、正道を歩む者、そして――
彰君はぶれませんね。正義感とかも勿論ですが、妹程アホではないにせよ割と天然
評価は高いけど失望と言うのは、正直出会えばそう言われるよなぁって感じがします
(まあ火ノ元の場合、このロワにおける参加者でお眼鏡にかなう相手は少なさそうですが)
ジャギ様弱くはないけど武器も本体も特別強キャラでもないので、かなりピンチ。大丈夫?

>灰色の世界の下で
まずは改めて大作お疲れさまでした
誰が生き残るか分からない群像劇、まさにクロスオーバーのバトロワって感じです
敵も味方も必死にあがいている、それぞれが生きていたと受け取れる展開に感じました
ただ、やはり薫は最初から最後まで不憫と言うか……いえ、殆ど手遅れに等しかったですけども
ちょいちょいワザップを挟みこんだりジョルノしたり、ネタとシリアスのメトロノームで謎の感動もあったり
プロシュート兄貴の『農家みてェに手が込んでねえからガーデニングには使えねえが』のくだり、
ジョジョ節たっぷりの台詞につい変な声でてしまいました
そしてタツミ、逃げろ!

>一緒にできること
無事潜り込むことに成功したものの、
胡散臭い奴には直感で気づけてしまう植木は天敵ですね
そして日ノ元パパ、一番喧嘩売っちゃいけない相手で悪いフラグ立ってるこの

>辺獄平安討鬼伝
強いけど徹底してこない、彼らしいと言えば彼らしい油断ムーヴ
でもそれ込みでも妙に強い。絶鬼の再現度が本当に高い
仇たる存在を(疑似的に)討つことができたものの、
フェザーとの別れ……可奈美の参戦時期も相まって、
次から次へと仲良くなれた人物が退場してるんですよね
更に放送で薫に美奈都と、彼女への追撃がすでに待ってると言う

本編とはあまり関係ないことですし誤植なので言うのもあれですが、
誤植のライネルには思わず「誰!?」と検索してしまいました(苦笑)

179 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:25:03 ID:ccPlLFUY0
>逃げるは恥だが役に立つ
予約の時点で「まあこうなるでしょうね!」となった、ある意味予定調和第二弾
地味にお父さんと距離近いですけど、こんな状態の娘見たらパパ複雑な心境でしょうて……

>ナイトレイドを斬る
悠奈さんはいつも通りですが、悪い意味でもいつも通り
徹底的してるわけでもないので、ギースを放置したことがどうなるか少し不安です
レオーネの説得は、死んだ後だったからこそ成立したものだと思いましたね
生きてるうちの参戦だと、そこは絶対割り切らないでしょうから

>誰が私を Who Called Me?
ドライな考えを持った来夢や悪魔たる不動明を受け入れられるのは、
二児の母親とも言うべきですね。母は強しを体現してるみさえがいいなと思いました
とは言え、見えてる地雷を持ってるのもまた確か。放送が来てからが本番です。

>生きて、生きて、生きて、生きて、生きろ
やってきた面々と比べれば明らかに頼りない強さのひろしですが、
父親と言う貫禄を見せていて、みさえとも合わせて大人をしてるなと思いました
とは言えこの集団、瓦解を起こしそうな要因や周囲もあって夫婦そろって不穏です

>死中の閃き
心を読まずとも人の心を誘導できるロックだと、
スペクテッドは合わないだろうなと思ってたので個人的に好きです
どれだけ参加者を振り回そうとも、一人の男に振り回され続けるのもまたロックらしいです
登場するとは思ってましたがついに来ましたかアンナ。伯爵にある意味で一番の特効ですが果たして?

以上で感想終わります

180魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:28:21 ID:ccPlLFUY0
投下します

181魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:29:49 ID:ccPlLFUY0
 先ほどの場所から距離をおいて、アカメは足を止める。
 と言うよりも、琴美の体力的な都合で止めざるを得ない。
 小柄とは言え初音を抱えても息を切らしてないアカメが、
 いかに鍛えられてるのかがよくわかる光景だ。

(あの少年、何をしたんだ?)

 最初はただ一般人が暴れてるだけ程度のものと思っていたが、
 あれほどまでの気配がフッと消える感覚は一般人では出せない。
 そういう能力があれば最初からやっているだろうに。
 調子に乗りすぎて使うのを忘れてしまったのか。
 なんにせよ、あの場は離脱せざるを得なかった。

(……教会か。)

 平安京の景観を無視したかのような、
 動物を飼ってたとみられる小屋が隣にある教会を見つける
 中を見ると教会の外観をした一軒家、と言った方が正しいか。
 人がいないことをアカメが先行して確認を終えてから、
 琴美は初音を手当てしたのちに、ベッドに寝かせておく。

(佐神善?)

 偶然見かけた家主と思しき私物。
 そこには名簿に記載されてた名前と同じものがある。
 参加者の家を模した場所、と見てもよさそうだ。
 景観を無視した出来なのも十分にわかる。

(私達の由来の施設もあるかもしれないな。)

 景観を無視している以上、
 ナイトレイドの拠点や帝国の施設もあるのかもしれない。
 あの双子達がどれほどの技術を持ってるかは分からないが、
 改めてその危険さを理解する。

「琴美。初音について聞いてもいいか。」

「初音ちゃんのこと、ですか?」

 このタイミングでピンポイントに彼女だけ聞く理由があるのだろうか。
 死体を見てない琴美にはそのことに疑問ではあったが正直に答える。
 話を聞けば、大祐とは特にいざこざはあったようではあるが、
 特別殺し合いを進んで行動するタイプではないのがアカメの見解になる。
 (そのいざこざの内容は口にしなかったが、反応からおおよそは察した。)
 もっとも、彼女の手持ちの武器を見るにボウガンがないことと、
 そもそも彼女もボウガンの矢を受けた傷痕からすぐに予想は出来た。
 奪い合いになってしまったとかの例外もあるかもしれないが。

(金づちの方にも返り血はある。)

 琴美の反応から悪い人物ではないようには思うし、
 やむを得なかった可能性だって十分にあるだろう。
 やはり現状は彼女が目を覚ましてから尋ねるしかない。
 命に別状はないので、このまま寝かせておけば特には問題はない筈。

(しかし……)

 どちらかと言えば気になるのは彼女達が巻き込まれたゲーム。
 仲を深めてから殺し合いをさせる、悪辣極まりない催し。
 しかもルールはあっても運営が守るかどうかは運営次第のさじ加減。
 技術さえあれば、帝国もやっていただろう悪魔の所業だ。
 どこに行っても、その手の輩はいるのだと実感させられる。

(だが妙だな。)

 行動を遠くから監視するカメラ。それは最早帝具に近しい程の技術力。
 帝国ならまず軍事利用は当然するだろうし、それほどの技術があればまず目立つ。
 ではなぜその技術がないのか。別の世界と言う概念に至るには、それだけでは足りない。

「琴美。一つ聞きたいが───」

 何か違和感があったので、齟齬を確認できるようなことを尋ねることにる。
 例えば百万は殺したとされるエスデスならば、何処の国にいても悪名高いのは知ってるはずだ。

「ちくしょおおおおおッ!!!」

 確認をしようとしたところ、突然の地鳴りと共に男の絶叫。 
 怒りに満ちた叫び声に琴美は強く反応し、アカメは即座に動いて外へと出て様子を伺う。
 まただ。人の気配もないのに突然フッと現れた気配に内心では戸惑いがある。

「ふざけやがってあのメスガキどもぉッ!!!」

 外へ出れば男が彼女から背を向けた状態で、一人クレーターを地面へと作ってる。
 二度、三度と殴ればさらに深く地面が抉れていく。
 何かを守れなかった無力さに悔やむ参加者、などとは思わなかった。
 あれは苛立ちや怒りこそあればそこに高尚さなどは何処にもない。
 ただ単に思い通りにならなかった、それだけの怒りである。
 事情を伺わずとも、溢れ出る殺気からそうだと察せられた。

「!」

 姿を見た瞬間、警戒心をさらに高めた。
 本来であれば危険な相手だと認識して攻撃と言った思考になる。
 しかし、今は普段なら考えないような興奮が脳を支配しようとしていた。

(まさか、帝具使いか。)

182魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:32:04 ID:ccPlLFUY0

 人の精神に干渉する帝具。タツミが回収したのもあったので身構える。
 煩悩に塗れた思考で鈍ってはいるが、そういう状況下でも戦えるのがアカメだ。

「どいつもこいつも……ぜってえ許さねえッ!!」

 目が合った。
 瞬間に、彼女はその場を逃げるようにサイドステップで避ける動作。
 その判断が正しかったと裏付けるように先程彼女がいたその位置には、
 既に右ストレートが迫っており、玄関のドアを派手な音と共に吹き飛ばす。
 中から琴美の悲鳴は聞こえたものの、玄関で待機させてたわけではないので無事だ。
 だから気にすることはなく相手と対峙する。

「あ? なんでオメー牝豚調教の才にかかってねえんだ?」

 モンスターに邪魔され、ガキはメガネと一緒に逃げられて、
 名簿は呼ばれたくない名前にされ、女子二人からも拒絶されて。
 怒りが限界を迎えたところにやってきたのはスタイルのいいアカメ。
 犯すにはもってこいの相手とも言えるが、美鈴たちと違って殆ど正常だ。

「? なんだそれは?」

「これのことだよ。」

 空白の才能をポケットから取り出し、印籠のように見せつける。
 文字が複雑だからか、人柄とは裏腹に存外読める文字だ。

「これがある限り女は全員発情した雌豚になるって検証済みだ。
 多少理性で自我は保てるみてーだが、お前冷静すぎだろ。マグロか?」

 先の二人と反応が明らかに鈍い。
 多少は頬が紅潮してるように見受けられるが、
 この赤い月下ではその程度は視認しづらいものだ。

「マグロ……? なんだかわからんが、いずれにせよ───」




「葬る。」

「あ? 消え───」

 瞬間、アカメが消える。
 この手の輩は帝国にはいくらでもいた。
 女を食い物にする外道など、何人いたか忘れた。
 手を取り合うのは無理だと判断するには十分だ。
 スイッチを入れると同時に、刀の間合いに入る。

「な、はえ───」

 思わぬスピードを前に、モッコスも対応が遅れた。
 少年法(プロテス)を使おうにも、空白の才を守ろうにも既に手遅れ。
 後は自分の鋼鉄並みの硬いとされる自分の肉体を信じる以外にない。
 その自慢の肉体も、ドドンタスに殺されかけて微妙に信じきれないものだが。
 刃は何にも遮られることはなく首を狙う。

「!?」

 はずだったが、明らかにおかしなことが起きた。
 振るった刃は逸れるように軌道を変えてしまう。
 変えてしまうというよりも、自分から外すようにしたとも言うべき現象。
 当てる攻撃を外し、ただでさえ煩悩塗れの状態で思考が更に鈍る。

「うっひょおぉ───ッ。これがある限り、女は俺に手が出せねえんだな!!」

 効果を理解しテンションを上げるモッコス。
 此処へ来る前の美鈴は欲情して動きが鈍ったから、
 と言う解釈をしたが今の攻撃の軌道を見れば空白の才の効果は絶大だ。
 あくまで空白の才から派生した代物であり、説明書も空白の才のもの。
 どのような効果が発揮できてるかの判断は全てがマスクデータであり、
 そも運営自体がこんな斜め上な使われ方をするとは想定しないだろう。

 少なくともモッコスにとって今わかるのは三つ。
 一つ、デイバックから出さないと効果が発動しないと言うこと。
 (でなければ、さっき出会った二人は最初から発情するはずだから。)
 二つ、女性である相手は強制的に発情すると言うこと。
 三つ、見てのとおり女性は自分に対して絶対に攻撃ができないことが分かった。
 (同時に認識してなければ先程の転移と言った害を与える行為は成立することも把握)
 つまり、アカメはあらゆる手段でモッコスへ攻撃できないと言うことだ。

「オラァッ!!」

 隙だらけの鳩尾へとボディブローを叩き込むも、
 即座に跳躍して腕に乗る形で難なく回避する。
 そこから今度は空白の才へ刃を奔らせてみるが、
 やはり自分から攻撃を外すような動きをしてしまう。

(あの木札そのものへ攻撃も難しいな。)

 向こうの発言から女性では手が出せない。
 となれば状況は最悪。今この場にいるのは女性だけだ。
 どうあっても攻撃できないのでは逃げる以外ないだろう。
 しかし、アカメだから容易に避けれた一撃ではあったが、
 常人ならあの速度はすぐに追いつかれてしまう。
 一人でならば逃げるのは難しくはないが二人は別だ。

(かと言って、逃げるように促すのも危険か。)

183魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:32:57 ID:ccPlLFUY0
 相手は女性であれば防御や迎撃の必要すらないなら、
 逃げる相手の方を優先すればそれで済んでしまう。
 下手に呼び掛けてしまえば、そっちに狙いを定めるだろう。
 (まあ先程の悲鳴から、複数人いるのは既に露呈してるのだが)

(琴美が逃げてればいいが……)

 流石に都合よく動いてくれるとは思えない。
 流石に初音と言う無防備な人物がいては別だと思いたいが、
 献身的な性格からすれば逃げずに留まってしまうのもありうる。

「ああああああああああッ!!」

「!?」

 彼女の認識は少し甘かった。
 突然の叫び声。少なくとも琴美の声ではなく、
 声は教会から聞こえてきた。つまり───


 ◇ ◇ ◇


 初音はある意味、最も一般的な参加者とも言えた。
 この殺し合いにおいてではなく、シークレットゲームにおいての話。
 キラークイーンと言うクリア条件が極めて厳しい立場になると同時に、
 強力な特殊機能を得られるハイリスク・ハイリターンな立場なのもあるが、
 いい意味でも悪い意味でも、ゲームをよく理解した上で立ち回っていた。

 悠奈達のような信念を貫き続けられるような秩序を保つことはできず、
 しかし大祐達のような平然と人を攻撃できる混沌に沈みきることもできずに。
 基本的に手を汚していたのは、自分を慕ってくれていたファンである充だ。
 追い詰められれば心が逆転しうる、自我のあやふやな少女、
 彼女がたどった道とは別の世界では、ある男がそう彼女を評した。

 だからこの場でも殺し合いについ順応しそうになった混沌を持ち、
 ユカポンと共にあれば殺し合いを打開しようと考えられる秩序も持つ。

「……ッ!」

 アカメとモッコスの戦いの騒音によって、初音は意識を取り戻した。
 肩の傷は止血されており、ベッドに寝かされている。
 支給品もすぐそばに置かれていて少なくとも敵ではないと判断できた。

(誰かが初音を運んでくれた、ですか……)

 血まみれの金づちを持って倒れていた自分を見て、助けてくれる。
 さぞいい人なのだと思いながら、初音は金づちを手に取った。
 何の変哲もない、何の異能すら存在しないただのハンマー。
 ユカポンのファンの吸血鬼の血を浴びて汚れたソレは、
 これが今となっては自分を象徴してるのではないかと。
 ただの、特別でもなんでもないものが血にまみれている。
 嘗て殺しと無縁だった普通の自分が殺しに汚れたのと重なってしまう。

「初音ちゃん!」

 戦いの音も忘れて金づちを見ていると、
 琴美が勢いよく部屋の扉を開けた。
 ドアの破壊時に何かの破片でも飛んだのか、頬に傷がある。
 玄関口だったから大した影響はなかったが、
 次もこのまま家を破壊しに来ないとは限らない。
 扉が簡単に壊されるような力を持っている相手に、
 この家で籠城してもなんの意味もないのは分かり切ったこと。
 まずは気絶してる初音を連れて此処を離脱すること。
 ……だったが。

「あ、え……?」

 運が悪かったとしか言いようがなかった。
 この短時間で殺して殺されそうになっての連続。
 そこに現れたのが、目の前で充に殺させたはずの人物。
 手には血に汚れた凶器を握ってしまった状態。

「ああああああああああッ!!」

 追い詰められれば行動を起こしてしまうのが初音と言う人物像。
 パニックを起こしたことで、咄嗟に金づちを投げてしまう。
 なまじ身長差があったことによって投げることに繋がった結果、
 投擲されたそれを避ける動作も間に合わず、琴美の額に直撃する。

「アグッ……!」

 血を流して倒れる琴美を見ると、
 すぐに近くの窓から逃げるように飛び出す。
 彼女の知る初音からは考えられない行動だった。
 だがどうしようもない。彼女が辿った道(ルート)は、
 琴美とは全く違った、殺伐とした道を歩んだ彼女なのだから。

184魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:33:18 ID:ccPlLFUY0
「待って、初音ちゃん……!」

 肩の傷もあって余計に力が余りなかったからか、当たり所がよかったか。
 見た目よりも軽傷で何とか立ち上がろうと声をかけるも、覚束ない。
 壁で身体を支えて、頭を押さえてないとまともに立てない彼女では、
 いくら身体能力が低い初音相手でも、とても追うことはできなかった。


 ◇ ◇ ◇


(悲鳴が気になるが、調べる暇がない。)

「ちょこまか逃げてんじゃねえぞおい!!」

 琴美のことが気掛かりではあったものの、
 モッコスの汚物消毒(ファイア)を何事もなく避け、
 動物を飼ってたところの木製の小屋は消し炭となっていく。
 室内で撃たれて火災になりかねないのでは、
 彼女の安否を確認しに行くことすらできない。

「先程から試して攻撃ができる見込みがないからな。
 どうにか攻撃できないかとずっと模索しているが、
 どうやらそれはすごい支給品だな。私の攻撃が一切入らない。」

 ありとあらゆる方角から攻撃を仕掛けてみた。
 正面、死角、無心……とにかく現状できる手段を。
 結果は何もなし。どうあっても攻撃を成立させない。
 完全な詰みであると言うことを実感させられる。

「だったらとっとと犯されやがれ! つか、
 発情してそこまで動けるのはおかしいだろうが!!」

「慣れてるからな。」

 嘗て捕虜になった際に同性愛者に目を付けられたの思い出す。
 波の女性では簡単に堕ちる程のものをアカメは耐え続けてきた。
 故に多少の耐性は付いているので、常人よりはずっと動けている。
 とは言え口にしたとおり、現状では勝ち目がないし、あくまで常人よりは。
 服の掠れだけでも段々と思考が鈍りつつあり、いつかは確実に敗北で決着がつくだろう。
 相手を煽って、二人が逃げるのを待つ以外の行動はとれないのも困っていたことだが。

「!」

 屋根へ飛び移って広がった視界の隅。
 走っている初音の姿をアカメは捉える。
 焦っている逃げ方でありつつも、琴美がいない。

(黒よりと見た方がいいかもしれない。)

 流石にセリューほど極端な思考ではないが、
 この状況下で琴美を放置して逃げる人物ではない筈。
 琴美が先程ので怪我をした、そういう可能性も十分にある。
 先の叫び声も彼女を見てパニックを起こしたとも受け取れる。
 そこから自分を背負うなんてことをさせずに逃げるよう琴美が促す。
 全てを見てない以上憶測でしかないが、故に判断材料が灰色。
 完全な黒と断定するには少し難しい所だ。

(他の参加者の助力……厳しいな。)

 琴美が死亡してるとはあまり思いたくない。
 しかし確認しようにも目の前の相手を引き付ける必要がある。
 加えて参加者を探す手段もなければ、殺しが目的ではないのは分かりきったこと。
 此方を狙わずとも、他の相手を狙うのでは自分は囮としても役に立たない。

 帝都の頃から助けられなかった命はいくらでもある。
 帝都の暗殺部隊も、ナイトレイドも任務の最中次々と命を落としていく。
 だが、これほどまでに戦うことさえもできず、自分が殿としても成立せず逃げるだけ。
 余りの無力さに武器を握る手により力が込められる。

185魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:34:29 ID:ccPlLFUY0
「よそ見してんじゃねえよ。」

 周囲には飼育小屋が燃えたにしては明らかに煙が多くなっていた。
 SEVENSTAR(ブライン)による煙幕の呪文。
 モッコスの声はしていたが、姿は煙のせいでよくは見えない。

(粗暴な性格の割に、気配は消せているな。)

 本来ならば魔王ですら逃げたことにすぐに気取られることなく、
 一時撤退ができるぐらいにモッコスと言うのは出来る人物でもある。
 ドキュンだが天災のような存在と同時に天才。

(だが肝心の部分で素人か。)

 迫ってきた瞬間の殺気は隠せなかった。
 本来なら迎撃だが、素直に避けの一択を選ぶ。
 背後から迫るモッコスの手が腕を霞めるだけに留まるが、

(掠るだけでも反応する……)

 少し指が足に触れただけで、
 メラにされたことと似た感覚がする。
 発生する快楽はあのとき以上で眉をひそめる。
 ほぼ無駄なく避けてはいるものの、避けるしかない。
 触れること自体がアウトのためよりシビアになっている。
 次第に煙は晴れて、お互いがいた位置が逆転した状況だ。
 屋根からモッコスが下卑た目で見降ろし、地上からアカメが睨む。

「……あほくさ。」

 鼻をほじりながらそうつぶやく。
 モッコスはついに考えてしまった。
 これ以上アカメを相手する必要があるのだろうかと。
 さっきの悲鳴からまだ中に人がいることは確定。
 ならそっちを犯してしまえばいいじゃあないか。
 ストレスを溜めてまで狙う理由もないだろうし、
 なんならその光景を見せつけるのも悪くはない。
 魔王には人質とかいう余計なことをやられたせいで、
 やりそこねたシチュエーションでもあることだ。

 無防備にアカメの前へと降り立つ。
 攻撃が成立できないなら構いはしない。
 事実、何かができるわけでもないのだから。
 目の前に相対しても、その刃は振るうことはしない。

「アカメ、さん……!」


「琴美! 今すぐ逃げ───!」

 壊れた玄関口から、琴美が姿を見せる。
 逃げるよう促そうにも、壁に手を当てながらやってきた姿を見て言葉を失う。

「初音ちゃんが、パニックを起こしてます……だから、追ってください!」

 息を荒げているのはダメージと興奮両方が入り混じっており、
 彼女の姿は出血してる状態はともかくとして、妙に煽情的だ。
 元より一般人。空白の才の効果はアカメのような抵抗力はない。

「うっひょー。悪くねえじゃねえか。」

 これまた悪くない相手に舌なめずりと共に手を伸ばす。
 制服に触れる寸前に、アカメが彼女を抱えて距離を取る。
 今は完全にモッコスが隙だらけだったお陰で難なく救出できたが、
 次は此方の存在を意識した上で彼女を捕まえようとするだろう。
 自分一人なあともかく琴美を抱えては逃げ切れる保証はない。
 もし逃げきれても、初音を追う可能性もありうる。

「こいつの支給品の影響で女性は全員抵抗できない。
 琴美。それはつまりお前を見捨てろと言うことになるぞ。」

 攻撃行動は一切取ることができない。
 これではたとえエスデスであろうとも抵抗は難しい。
 ましてや怪我をしたただの一般人に一体何ができるのか。
 どんな支給品であっても打開できるとは思えない。

「……『私』じゃなければ、いいんですよね。」

 妨害されたことにモッコスの額に青筋が浮かぶ。
 少なくとも彼の中でアカメはメフィスとフェレスとほぼ同格、
 犯しながら殺さなければ気が済まない相手になる。

「やるのか? 無駄だからやめとけって。処女ってんならちったあ優しくしてやっからよ。」

「私は『貴方を攻撃する』つもりはありません。ただ『お願いする』だけですから。」

「あ? 誰にだ?」

 此処には男は自分しかいない。
 一体何をどうすると言うのか。

「───これに。」

 彼女がポケットから出したソレに二人の反応は対照的だ。
 モッコスにとっては、ただ穴の開いた円盤にしか見えないので呆れ気味、
 一方アカメにとっては別だった。何故それが此処にあるのか。
 それはもう、あるはずがない。

186魔神降臨───魔族顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:35:54 ID:ccPlLFUY0
「琴美、まさかそれは!?」

(なにか! やべえッ!)

 アカメの反応から嫌な予感がした。
 今までマグロみたいな仏頂面だったのが初めて見せた顔。
 虫の報せを感じ、早急に破壊しようと右ストレートを掲げたそれを狙う。
 男女平等にはするが、あの程度の円盤なら破壊は容易だ。










 その寸前。その赤い円盤は光輝いた───










「───まさか、こんな時がくるとは思わなかったな。」

187魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:38:37 ID:ccPlLFUY0
 二人の間に一人の男性がモッコスの腕を掴む。
 がっちりと掴まれた腕は琴美に迫ることはない。
 琴美とモッコスだけでなく、アカメですら唖然とする。

「千年と長い時を生きた俺でも、この展開は初めてだ。」

 白を基調とした巫女装束を纏った巨躯。
 胸元には彼女が手にした円盤を付けており、
 青い髪の耳元からは人間離れした両角が目立つ。
 長柄の槌を背負っている彼は、見覚えのある存在だ。
 アカメにとってはもはや二度と見ることのなかった存在。
 彼女を見やれば、仏頂面にも見えた表情から笑みを浮かべる。

「生きてるようで何よりだ───アカメ。」

「───スーさん!」

 琴美の支給品の中に眠っていたそれの名はスサノオ。
 ナイトレイドの一人であり、生物型帝具電光石火『スサノオ』だ。
 支給品に臣具、あるいは帝具はあるのは想定してたつもりだ。
 だがスサノオはエスデスとの戦いで殿から帰ってはこなかった。
 どのような結末を迎えたかなど、最早語る必要はない。
 再会を喜ばしく思う反面、過去に見せられた幻覚もあることだ。
 クロメではなくスサノオでやる意義はともかく、偽物の類かと軽く疑う。 

「見当もつかないが、少なくとも俺はお前の知るアカメのつもりだ。
 アカメ、それはそうとその刀は何だ。無駄に削られた刃毀れが気になる!」

 几帳面を通り越して完璧主義者。
 左右非対称ですら気になってしまうところなど、
 再現しても隙を作るにしても必要のない行動だ。

「……本当にスーさんだ。」

 これはもう本物と断言してもいいだろう。
 肩の力が抜けてほっと安堵の息をつく。
 因みにアカメが持っている刀は一定の間隔で刃毀れした、
 刀なので当然だがより斬られると痛そうな形状をしている。
 とは言えこれは不良品と言うわけではなく、使用していたとある鬼殺隊の嗜好だ。

「おいミノタウロス。女とくっちゃべってねえでとっとと手ェ離せや。」

 感動の再会のところ水を差す。いや、当人は水を差すなんて認識すらないかもしれない。
 彼にとってはモンスターで、そんな奴に基本道徳を考える方がおかしいのだから。
 (元より基本道徳なんて殆どないだろうとは言ってはいけない)
 蚊帳の外にされていたモッコスは青筋をさらに浮かべながら、掴まれた左腕を引く。
 全力と言うわけではないにしても、スサノオの力でも引っ張られるだけの筋力は、
 並々ならぬと言うことが彼にも伝わるが、一瞥しただけでこれをスルー。

「だが俺は支給品としての扱いだ。主人が命じれば、
 アカメであっても攻撃せざるを得ない。今の主人は……」

 帝具としての繋がりで、
 言葉にせずとも誰が主人かはわかる。

「おいシカトしてんじゃねえぞ!!」

「少し待て。後、第二ボタンが外れそうなのが気になる。」

「んなこと知るか!」

 流石にやかましいので一言断ってから、再び琴美へと視線を向ける。

「命令を下せ。目覚めさせたお前にはその権限がある。」

「スサノオは自律行動で戦える帝具だ。大雑把な命令でも問題はない。」

 説明は既に読んでる。
 帝具の中でも自律行動できるのもあって、
 腕も関係ないし帝具使用時の負担も少ないとされる。
 一般人の琴美であっても十分使用に耐えうるものだ。

「───スサノオさんの思う通りに動いてください!」

 先ほどのやり取りから、
 少なくともスサノオはアカメの知り合いだ。
 殺し合いであっても進んでするような輩ではない。
 であれば、自分の命令と言う枷を与えるよりも、
 彼自身に自由に行動させる方が一番いいと判断した。

「承知した。」

188魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:40:22 ID:ccPlLFUY0
 そして、その命令はまさに最適解だ。
 モッコスを攻撃するように命じても空白の才の前では攻撃できない。
 だが自由にしていい、つまりスサノオの意志で戦うのであれば。
 性別の概念が(一応は)なく、琴美自身の意志とは無関係の行動。
 空白の才の状況下においても、何の隔たりもない動きができる。
 拳がモッコスの顔面へと直撃する。

「いいから手ェ放せつってんだろうが。モンスターは知能もねえのか?」

(硬いな。)

 人を殴ったような感触はせず、どちらかと言えば鋼鉄。
 流石に変化したDr.スタイリッシュの時ほどの強度ではなさそうだが、
 この状態の相手を生身で戦うには少し骨が折れる硬さなのは間違いない。

「生身では分が悪いか。」

 掴んでいたモッコスをそのまま投げ飛ばし、
 背中に背負った槌を手に左腕を殴り飛ばす。

「む。」

 鋼鉄であればと槌を使ってみたが
 明らかに殴った感触がさっきと違う。

「ヘヘヘ、効かねえな。」

 下卑た笑みと共に逆に槌を掴んで引き寄せる。
 尾田栄一郎(ラバーメン)の前に打撃は無力だ。
 そのまま接近したスサノオの額を、軽く顔面を掴む。

「燃えろ。」

 瞬間、全身が火達磨のようにスサノオが燃え上がる。
 根性焼き(フレア)は触れる必要はあれど、代わりに瞬時に燃やす。
 まず生きてはいられないだろう。

「スサノオさんッ!!」

「ハッ、モンスターがイキってんじゃねえよ。」

 火柱を尻目に、悠々とした歩きで二人へと迫る。
 身を強張らせる琴美に対して、アカメは何も動じない。
 寧ろ前に立ちはだかったりしようともしないので、逆に違和感があった。

「随分大人しいじゃねえか。」

「する必要がないからな。」

「あ? 何言って───」

 頬に伝わる衝撃。それに耐えきれず軽く数メートルは吹き飛ばされる。
 何が起きたかモッコスには分からないが、転がる中の姿を見て表情を変えた。

「モンスターではない、帝具だ。」

 そこにいたのは火達磨だったはずのスサノオ。
 火傷はおろか服すら元通りで、困惑せざるを得ない。
 生物型帝具は肉体を損傷してもすぐに再生して戦うことができる。
 肉体の半分近くを欠損しても問題なく再生してしまうのだから、
 全身が燃えた程度では殺せはしない。

「アカメ。先程からコアの状態でも話は聞いていた。
 お前はハツネと言う人物を探しに行け。」

「……分かった。だがスーさん。奴は下手な帝具使いよりも強い。」

「分かっている。頑丈さだけで言えばエスデス以上だろうな。」

 スサノオは帝具だけあってナイトレイドでも屈指の戦力。
 一方で相手は羅刹四鬼と同様、帝具なしでも帝具使いに匹敵する。
 エスデスほどどうしようもない相手ではないので十分に任せられるが、
 スサノオは時空を凍結させる、などと言う無茶苦茶な奥の手で倒された。
 僅かばかりに不安の表れのような忠告と共に、初音の逃げた方角へと向かう。

「琴美と言ったな。つかず離れずを保て。
 自律行動は出来るが俺は支給品。極端に離れることもできない。」

「は、はい!」

「テメエ、楽に死ねると思うなよ……生まれてきた事をを後悔させてやるぜ。」

「悪いが、俺は一度死んでいる上に帝具だ。楽に死ねると思ったことは一度としてない。」

 汚物消毒による牽制の炎。
 頭に血が上って琴美を完全に観点にいれてない攻撃で、
 スサノオは彼女を抱えながら射線を外れて攻撃を回避。
 余り遠距離攻撃をさせると彼女に流れ弾の可能性がある。
 そこを危惧してスサノオは降ろした後は接近して槌を振るう。

189魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:42:17 ID:ccPlLFUY0
「無駄だつってんだろうが!!」

 腕で防ぐが尾田栄一郎によって衝撃を吸収する。
 いかに帝具の腕力を以てしても、ダメージには至らない。

「そうか。『今は』柔らかいのか。」

「あ? 何言って───」

 槌の隙間から刃が展開と同時に回転。
 防いだ腕が切り刻まれて鮮血が吹き出す。

「ぎゃああああぁ!! ちょ、ま……!」

 いくら衝撃に強くとも今はゴム。
 斬撃には滅法弱い。本家もそう言っていた。
 自分から押さえつけてたのもあって引くのが遅れ、
 左腕が三つか四つほどに切り分けられた状態で周囲へと散らばる。

「畜生、やりやがったなテメエ……!!」

 シークレットゲームに参加したと言っても、
 此処までバラバラにされたものは見たことがない。
 仲間の死も全員それを見たわけでもないのもあり、
 凄惨な光景に血の気が引く。

「次は右腕か。」

「……有機溶剤(ケアル)。」

 腕から肉体がボコボコと再生していく。
 端から見れば異様な光景ともあり、より琴美の気分が悪くなる。
 趣味の悪いホラー映画か何かのように感じてしまう。
 対照的に同じような再生をするスサノオは動じることはない。

(あのメスガキ共、案の定やってやがったか。)

 有機溶剤による魔力の消耗が明らかに多い。
 この様子だと他の強力なのは制限されているとみていいだろう。

「お前、帝具なのか?」

「さっきからテイグテイグってなんだよ。貞操帯の仲間か?」

「……簡単に言えば兵器だ。俺もその兵器の人間になる。
 だが今の発言から、帝具人間と言うわけでもなさそうだな。
 同時にその再生力は人間ではなく危険種のようなものだと判断したほうがいいか。」

「ハッ、てめーに言われたくねえな、クソバケモンが!!」

 M93Rを抜いて即発砲。
 帝具ですらないただの拳銃。
 そのまま左目を貫通しても直進する。
 モッコスは逃げず、同じように接近。

「この距離ならその棒切れも使えねえなぁ?」

 下手に間合いを取れば槌か刃か、
 どちらか分からない択を取られるのは厄介だ。
 ならば至近距離で肉弾戦をしたほうがよほど懸命で、
 長い得物では接近された状態では使うことはできない。

「なら離れるだけだ。」

 棒高跳びの要領で槌を使っての跳躍。
 空中で旋回しつつ、再び顔面の側部へ叩き込む。
 斬撃か打撃か。完全な二択に本来は頭を抱えるものだ。

「だったら当たらなきゃいいんだろうが!」

 至極まっとうな理由と共に屈む。
 大ぶりな攻撃は盛大に外れたことで大きな隙を生む。
 屈んだ後跳躍し、鳩尾へと弾丸のようなストレートを放つ。
 叩き込むではなく放つ。もはやそれは大砲の弾に等しく、
 胴体は風穴を開け、空高く舞う。

「今度こそ燃え尽きやがれ!!」

 汚物消毒が空を舞うスサノオを焼き焦がす。
 念入りに、再生が追いつかないぐらいに。
 多少MP効率は悪いが、殺せればそれでいい。
 落下するまでの間、ずっと炎を放ち続けてスサノオが大地に伏せる。
 火達磨どころか、完全に炭化した焼死体の出来上がりだ。
 性別はおろか、それがスサノオだと言われても角以外で区別はつかない。

「ヘッ、いい花火だったぜ。」

190魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:44:35 ID:ccPlLFUY0
 炭化したそれを蹴り飛ばし、何度目か忘れた琴美へ歩み寄る。
 広々とした道は遮蔽物はなく邪魔するものは誰もいない。
 再び身を強張らせながらも後ずさりをするが、意味はなかった。

「少しは学習をしたほうがいい。」

 そんなことせずともなんとかなるのだから。
 冷徹な一言と共に、脳天へ槌が叩き込まれた。
 壊れた機械のようにぎこちなく首を向ければ、
 半裸で上半身の皮膚が再生途中のスサノオがそこにいる。

「再生力は落ちているが、あれでは俺は殺せない。」

「こんの、化け物が……ッ。」

 頭を叩き潰されて喋れたり認識できただけ大したものだが、
 それが限界。プツリと糸が切れた人形のように、逆にモッコスが大地に伏せた。

「大事はなさそうだな。」

 槌の刃で紐を切ってデイバックを回収しながら様子を伺う。
 制服に今の返り血を浴びた為スサノオとしては酷く気になってしまうが、
 今は手直しできるものがないためそれらについてはひとまず置いておく。

「……」

「どうした?」

「いえ。この人も助けられたら良かったなって。」

 空白の才の影響で、モッコスに対する感情がある程度歪んでるのはある。
 修平とは似ても似つかないのに、理由も分からず惹かれてしまってる状態だ。
 しかし、それを差し引いても殺し合いをしないと決めていた琴美にとっては、
 彼の死も決して心の底から喜べるものではなかった。
 可能なら共闘したくとも。

「甘いのは分かってます。でも……!?」

「? どうした。」

「スサノオさんう───」

 何かを察する前に先にスサノオは動いた。
 不気味な音と共にすぐそばで感じた殺気に反応し、
 迫る拳を受け止める。

「三人目だぜ……これを使うのはよぉ。」

 潰れたはずの頭部が元の形へと戻って行く。
 ギャグ補正(リジェネ)。モッコスが瀕死にならないと発動できないが、
 有機溶剤と違い魔力さえあれば自動的に発動するので、決して死ぬことはない。
 もっとも、消耗量はやはり明らかに多くされているが。

「魔力がある限り俺は死なねえ。今度は殺すまでテメエをぶっ殺してやる。」

「尽きれば死ぬと自白してるぞ。」

「いちいち突っ込んでじゃねえこのミノタウロスがッ!!」

 奪われたデイバックを奪おうとするが、
 寸前にスサノオが適当な方向へ投げて取っ組み合う。

「力比べと行こうじゃねえか……」





 ◇ ◇ ◇





 スサノオが戦ってる最中、もう一方では。

「ハァッ、ハァッ……」

 初音は必死に逃げていたが、
 それほどの距離は離れていなかった。
 運動が苦手な初音からすれば無理からぬことだが。

「!」

 空を駆ける炎。
 先ほどの場所は戦場と化してるのが目に見える。

(逃げないと───)

 このままだと自分も巻き添えを受けてしまう。
 息を切らした身体に鞭を打って歩くも、
 目の前の地面に突き刺さる刃毀れした刀。

191魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:45:42 ID:ccPlLFUY0
「え?」

 何処から来たのか。
 武器の向きから上以外にない空を見上げれば、
 赤い月をバックにアカメから目の前に降りてくる。
 吸血鬼と言う非日常的な存在を見たと言えども、
 人間離れした動きには不安の色は隠せない。

 咄嗟に何の考えもなしに初音は別の道へと逃げる。
 逃げたところで斬られるのは分かってるし、事実回り込まれた。

「聞きたいことがある。」

「な、なんですか……?」

 刀の凶暴さから不安がってるのもあってか、
 近くの地面に突き刺して無手の状態にしてから尋ねる。
 多少ではあるものの、緊張が解けたようにも見えた。

「お前を拾ったとき、近くに死体があった。
 女性と男性それぞれが一人いたが、何があったか教えてもらえないか。」

「き、聞いても初音を殺さないですか?」

 今行われようとしているのは尋問だ。
 身にまとう雰囲気は堅気の人間とは思えない。
 暴力的だった黒河でさえ比較にならない雰囲気がある。
 アイドルとして色んな演技に関わってきた彼女だから、
 そういうものに対する雰囲気は常人よりも一日之長がある。

「正直に答えれば害を与えるつもりはない。」

「えっと、初音はまず……」

 初音は始まってから起きた事を話した。
 ユカポンと共にファンと思しき参加者に襲われて撃退。
 共に行動しようとしたところを軍服の男にも狙われ、ユカポンが討たれたことを。
 自分が先に殺そうと武器を持ったことや琴美を攻撃した、ということは伏せたままで。
 少なくとも琴美とは協力関係。どんな話を聞かされてるか分からない。
 マイナス要素となりうるものは、できるだけ避けようと言わなかった。

(嘘、と言うわけではなさそうだな。)

 どこか委縮している様子は気掛かりだが、
 そもそも琴美と同じ殺し合いに巻き込まれた一般人。
 吸血鬼と出会って結果的に殺し、更に殺されそうになっての連続。
 割り切って振る舞える人間の方が少数派になるだろう。

「驚かせてすまなかった。私はアカメ、この殺し合いに反対の───」

 突如起きる爆発。
 派手な音に二人は強く反応する。

「今のはまさか……!?」

 此方にすら正垣が感じるほどの爆発。
 スサノオとて無事で済むかどうかは怪しく、

「私は一度琴美の安否を確認しに戻る。近くで隠れていてくれ。」

「は、はいなのです。」

「このカードも渡しておく。使い方はこれを。」

 四枚のカードと説明書を渡した後、
 アカメは爆発のあった場所へと走り出す。

「琴美! スーさん!!」

 爆発のあった場所へものの数分で辿り着くアカメ。
 そこには三人とも姿はあるが、その結末は───





 ◇ ◇ ◇





(千日手だ。)

 スサノオとモッコスの戦いは完全に持久戦だ。
 モッコスのMPか尽きるか、スサノオの供給が尽きるか。
 消耗が少ない帝具と言えどもあくまで元将軍のナジェンダであって、
 一般人の琴美では長時間の運用はとてもできないだろう。
 何時までもとはいかないので、一度蹴り飛ばして距離を取る。

192魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:47:22 ID:ccPlLFUY0
(奴の方に何かないか。)

 至近距離の間合いでは槌は使えず、
 肉体の強固さのせいで肉弾戦のダメージは今一つ。
 打開策はあるにはあるが、使うのを避けたいところ。
 蹴り飛ばしたのちに、モッコスの散乱したデイバックへ向かう。

「おい、人のモンとってんじゃねえぞ!!」

 すぐに反応して肉薄し、デイバックを蹴り飛ばしてスサノオは跳躍。
 空中で産卵する支給品の中で唯一取れた錠剤と、その説明書だけを空中でキャッチする。

「……薬物か?」

 説明書を見やれば中々にリスクのある危険物だ。
 相手が持っていながら使わなかったのはそう言うことだとも受け取れる。
 当然、これは自分にも言えることかもしれない危険物なことに変わりはない。

(奥の手を使っても、あの堅牢さは少し難しい。
 暴走の危険のリスクはあるが、やるしかないだろう。)

 カプセルを取り出し、飲み込む。
 効果が表れるのを待ちながら戦うことを想定するも、

「グッ!?」

 早くも来る疼きに目を見開く。
 こんなに効果が早い薬があってたまるか、
 などとは思うが、そもそもこれは人間用でもましてや帝具用ですらない。
 使用した瞬間効果を発揮するのは、これのあった世界では起きることなのだから。
 ───はかいのいでんし。最強を目指したポケモンの遺伝子が込められた薬で、
 攻撃性能が大幅に上昇する対価として混乱と言う名の暴走に陥る。
 幸い毒に耐性のあるスサノオのお陰で暴走はさほど起こしてはないが、
 見える者全てが敵に感じてしまう程の破壊衝動は起きており、
 琴美だけは視界に入れないように配慮して立ち回る。

「ぬおおおおおおおおおおッ!!」

 地面を陥没させる着地と同時に殴りかかる。
 モッコスも同じように殴りかかり、互いの拳がぶつかり合う。
 ぶつかり合った瞬間、凄まじい衝撃が周囲へと響き琴美が軽く吹き飛ぶ。

「キャアアアッ!」

 悲鳴の中、双方の腕に亀裂が入る。
 帝具に血はないので鮮血が噴き出すのはモッコスのみだ。
 殴る都合、拳だけはゴムよりも素の硬さの方が優れており、
 尾田栄一郎で柔らかい状態にするわけにはいかなかった。

「有機溶剤!」

(この頑丈さ、やっと貫けたようだな。)

 帝具にはかいのいでんしを使って、
 これだけ以てしてようやく生身でのダメージが通せるようになる。
 相手がいかほどの実力者かがよくわかる瞬間だ。
 ───だが、それでも足りない。

「勝ったと思ってんのかよ。」

 何度見たか分からない下卑た笑み。
 最初の数十回の拳のぶつかり合いは互いの拳が裂けつつも、
 互いに強引な回復を以って元に戻しながらの殴り合いを続けていた。
 だが途中から、スサノオだけが一方的にダメージを受けている。

(さらに硬くなっているだと。)

 元より鋼鉄並みの堅牢さは、少年法によってダイヤモンドに匹敵する。
 鋼鉄は貫けてもダイヤモンドを貫くには一歩だけ足りない。

「スサノオさん……!」

 何が起きてるか常人にはほとんど分からない。
 と言うよりまともに視認することも厳しい衝撃が襲ってくる。
 少なくともスサノオの方が劣勢なのはわかった。
 さっきから飛んできていたはずの血は飛んでこない。
 つまりモッコスの方はダメージを受けていないのだと。
 殴り続けていれば限界を迎えるのはどちらか。

 それを理解した瞬間、琴美は手を伸ばす。
 自分ができる最善は邪魔にならずにスサノオをサポートすること。
 そしてその一番の手段となる『奥の手』を彼女は使う。

「……禍魂顕現!!」

 手から気のようなものが彼女からスサノオへと伸びる。
 いくつかの帝具に存在する奥の手。スサノオは主からの生命力を糧に発動する。

193魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:48:58 ID:ccPlLFUY0
「その覚悟、受け取ろう。」

 できることなら彼女に使わせるのは避けたかった。
 ナジェンダは死を覚悟して反乱軍についていたが彼女は違う。
 守るべき民から貰うことに対して、相応の忌避感があったが故に避けた。
 だが彼女はそんなにやわな人間ではない。多くの人の命の上に助けられた彼女は、
 ナイトレイドと変わらない折れない志を持っていると。
 視界に入れると確実に攻撃しかねないので言葉だけに留める。

「おおおおおッ!!」

 スサノオが殴り合いの最中に姿を変えていく。
 上半身ははだけ、背中には光輪のようなものが現れ、髪は白髪に角は黒く変色。
 まさに禍々しい神へと変貌したとも言うべき風貌へと変わり果てた。
 これがスサノオの奥の手。ステータスを向上させる『禍魂顕現』だ。

「八尺瓊勾玉!!」

 能力以外にもさらに使用可能となるものが増える。
 八尺瓊勾玉は速度を向上させる効果を持っており、
 黄金のオーラを纏い、拳のラッシュは更に苛烈になる。

(お、押し切られる……!!)

 想像を超えるスピード。
 故にこれは負けるのではないか。
 なんてものがほんのちょっぴりだけ過った。
 そう、ほんのちょっぴりだ。負けるつもりはないし、
 勝てる気がしないと感じたわけではない。

「ヘ、ヘヘヘ……」

 劣勢になってるはずなのに謎の笑み。
 今までの下卑た物とは違う、どこか嬉しそうな。

「随分楽しそうだな。」

「あ? 今まで何もかもが簡単でつまらなかったんだよ。」

 誰も言わなかったし、理解されなかった。
 別に理解されたいとも思ったわけではない。
 子供の頃から思い続けてきたことだ。
 ドキュンたる彼の底に眠っていたルーツ。

「戦える奴(こういう)のも悪くねえってなぁ!!」

 ずっと思ってきたことだ。
 怪物を殺しても、警察をぶちのめしても、親父を殺しても。
 全てが簡単にできてしまい、全員が弱い。退屈で退屈で仕方がない世界。
 世界から色は消えた。イージーで退屈なモノクロの世界を彼は生き続ける。
 つまんないことをし続けるだけの世界かと思った時、彼はそれと出会った。

『そう? 私は退屈。』

 首を、頭を、股間を、全身を。
 いったい何度殺されるぐらいのダメージを受けたか。
 ただのガキと思えば、出鱈目に強い魔王と戦ったときのような。
 あの時抱いた感情のようなものが、今の彼にはあった。

 いや、魔王程の力はスサノオにはないとは思っている。
 一方的になぶり殺しにされた魔王と殴り合いがまだ成立するスサノオ。
 薬を使って、姿を変化させて、さらに強化して追いつくぐらいだ。
 どちらが強いかなんてことは、もはや語るまでもないことだろう。
 だがそれでもいい。あの時のように感じるあの瞬間の高揚感。
 苦境(こういうの)を彼は求めていた。

「……そうか。」

 漸く理解できた。
 元々スサノオは要人警護のため観察眼にも優れている。
 だから相手が、何処かつまらなさそうに感じることもあった。
 知ったところで所詮は敵だ、大した意味はない……だが。

「アカメ達の敵である以上お前を討つが、
 嘗て俺は戦士としてその名を下手人に覚えられた。
 故に俺も、お前を敵であると同時に名前だけは聞こう。」

 生前の影響のような彼女の真似事。
 はかいのいでんしを取り込んだことで、
 彼女と近しい間柄になっているのかもしれない。

「人間みてーなことくっちゃべってんじゃねえよ。
 だが名乗ってやるよ。俺様はエドワード・ハインリッヒだ。」

 モンスターである以上ぶっ殺す。
 それには変わりないものの、実力はある奴だ。
 気分も上がってたこともあって、珍しく名乗り返す。

「エドワードか……その名前、戦士として覚えておこう。」

194魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:49:30 ID:ccPlLFUY0
 互いに衝撃で距離を大きく取りながら拳のラッシュをやめる。
 全身全霊の拳を今から叩き込むべく、互いに拳を構えてからの肉薄。

≪うおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉッ!!!!≫

 殺し合いと言うよりも、
 戦いを楽しんでいるかのような光景だ。
 生き残ると言うよりも、勝つか負けるかの部分に重きを置いたかのように。

 互いの一番の拳が互いの身体に直撃する。
 爆発のような衝撃音が周囲へと広がっていく。
 嵐のような壮絶さがあった中に、突如静寂が周囲を包む。
 勝ったのは───




















「ゼー、ハー……老若男女平等拳(エクスカリバー)……!!」

 モッコスだ。
 胴体に風穴があく程の傷ではあったが、
 まだギャグ補正に回せる魔力は一回分は残っており治りつつあった。
 ではスサノオはと言うと、逆に身体が崩れつつある。

 モッコスが殴った箇所から、赤い欠片がボロボロと落ちていく。
 生物型帝具は何も無敵ではない。弱点は概ね二つ存在する。
 一つは使用者の死亡。これは単純だが、モッコスは選ばなかった。
 プライドの高い彼がそんなコスい手を使うはずがないのだから。
 もう一つは、核となるコアを破壊することだ。

 モッコスは違和感をずっと感じていた。
 琴美が翳した円盤。あれが胸元にあり続けたことを。
 燃やされて上半身だけになった時にもそれは形をとどめていて、
 消し炭になった時蹴り飛ばした際に胸元の円盤だけは炭化しておらず、
 変化した状態であってもそれが残り続けて、モッコスは気づく。
 知能は低い彼だが決して頭は悪くない。こいつにとっての心臓はそれなのだと確信した。
 故に殴り、砕いた。崩れていく姿を見て笑みを浮かべずにはいられない。

「スサノオだったか? まあ覚えておいてやるよ。」

195魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:51:37 ID:ccPlLFUY0
 崩れつつあるスサノオを見て今度こそ倒したと確信する。
 コアが砕かれた今や、再生することはできない。
 その上満身創痍の中で動けるものではなく倒れる。

「さ〜て、お楽しみの時間。」

 琴美へと視線を向けて歩き出す。
 流石に負傷のせいでゆっくりとした動きだが、
 長時間彼の近くにいすぎたことで雌豚調教の才の影響は強く、
 琴美は骨抜きに近い状態でまともに立って歩くこともできない。
 今度こそ守るものはいない。全てが終わった。








 だが琴美はそうは感じなかった。

「な───」

 背後の影を見てその存在に気付く。
 コアを破壊したはずのスサノオが再生を始めている。

「禍魂、顕現……カハッ!!」

 血反吐を吐きながらその生命力を差し出す。
 禍魂顕現は主人の生命力を奪って強化を施し、三回使用すれば使用者は死ぬ。
 だが、それはあくまでナジェンダが使った場合の話である。
 帝具には相性というものがあり、元々スサノオは将軍が使ってた帝具。
 琴美は守る為なら自分が傷つくことを厭わない精神を持ってると言えども、
 将軍やナジェンダと言った武人に並ぶ程の相性の持っているわけではなかった。
 加えてはかいのいでんしを取り込んだことでの消耗が跳ね上がったうえに重ね掛けの禍魂顕現。
 二度ですら血反吐を吐くことだって、決しておかしなことではない。

「天叢雲剣!!」

 復活したスサノオの手に握られるのは数メートルは余裕である長剣。
 琴美ぐらいなら簡単に組み伏せれると言えども、
 流石に奥の手を使った状態のスサノオを相手できる体力はもうない。

「ちょ、ま……!!」

 情けない遺言と共に、モッコスの上半身と下半身は分断された。
 ギャグ補正を生命力で賄おうとしても満身創痍の彼に当然なるはずもなし。
 搾り取るだけの分でさえなかった彼に、命の炎を燃やしつくすかのような一撃。
 どちらの命がまだ燃えていたか。言ってしまえばそれだけの結果に過ぎない。
 そして彼が死亡すること、即ち───










 メガンテのうでわはくだけちった!










「琴美、スーさん!!」

 三人の姿はあったが、凄惨な光景だった。
 上半身と下半身が分断されたモッコス。
 奥の手の姿でありながら右腕と左足を喪ったスサノオ。
 そして───四肢がバラバラにちぎれた状態の琴美。
 モッコスの死によってメガンテのうでわが発動した結果、
 スサノオは瀕死に、琴美は即死の結果を引き当ててしまった。

「アカメ、戻ったか……任された身でこの結果だ。すまない。」

 主からの供給がなくなった今、
 支給品であるスサノオは行動は許されなかった。
 次の主人と出会うまで、身体を動かすことはできない。
 それでも、アカメが戻って事情を説明するまで辛うじて意識だけは保っていた。

196魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:52:08 ID:ccPlLFUY0
「……私ではどうにもならなかった。スーさんに何か言える立場ではない。」

 言える立場だったとしても、何も言うつもりはなかった。
 これだけスサノオが負傷してようやく勝てた相手なのだから。
 犠牲なしで勝てと言えるわけがないし、自分でも成せるものではない。
 ナイトレイドの誰であろうとも言うことはないだろう。

「所有者が不在になったことで時期に俺は一時的だが眠りにつく。」
 核となる奴は持っていけ。琴美が自分の命を削って俺のを再生させた。
 無理のある形で復元したことで力は衰えてるかもしれんが……まだ使い道はあるぞ。」

「……分かった。」

 損壊してるとは言え大の男だ。デイバックに入れるのは難しく、
 コアの部分を日輪刀で抜き取り、スサノオは一度消滅する。

(これは琴美の遺志だ。)

 命を繋いでこれを残してくれた。
 守れなかった分、せめてこれを誰かに届けなければならない。

(そうだ。あの木札を……?)

 あの札が所有者で変わるのであれば、
 今のうちに破壊しておくべきだとモッコスの下半身を漁る。
 ポケットには確かにあったものの、そこに書かれてた文字はない。

(奴は自分の支給品の能力を把握しきれてなかった。
 と言うと、女性に対する効果は後付けか不明のまま支給されたか。)

 散乱していたデイバックを回収し、その中から空白の才の説明書を見つける。
 並の帝具を凌駕するそれは、使い方次第で千変万化の万能なものとなるだろう。

(『首輪解除の才』と書き込めば誰でも首輪解除が見込める、ということか。)

 万能な代物ではあるが、一先ずしまっておく。
 自分がするべきは敵の排除。首輪解除という重要なポジションでは、
 自身が前に出て戦うことができなくなってしまう恐れもある。
 誰かに信用のおける人物にこれを譲渡して其方へと優先するべきか。



 かくして勇者の肩書を冠した魔族と、
 神の名を冠した帝具の壮絶な戦いは終わりを迎える。
 仲間の遺志を継ぎ、アカメは一人その場から去った。

【モッコス@ドキュンサーガ 死亡】

【吹石琴美@リベリオンズ Secret game 2nd Stage 死亡】

【E-6/一日目 佐神善の家前/黎明】

【アカメ@アカメが斬る!】
[状態]:雌豚調教の才による興奮(現在回復中)
[装備]:嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃、灰皿×2@現実、スサノオの核@アカメが斬る!、空白の才@うえきの法則
〔道具]:基本支給品×6(自分、モッコス、琴美、充、ドドンタス、しお)、スサノオの槌@アカメが斬る!、閃光手榴弾×1、ランダム支給品×0〜10(琴美0〜1、ドドンタス0〜2、しお0〜2、モッコス0〜2、充0〜2、一部未確認)、M93R@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage(弾薬まだ余裕あり)、空白の才@うえきの法則

[思考・状況]
基本方針:主催を悪と見なして斬る。
0:初音のところへ戻る。
1:殺し合い阻止の為の仲間を募る。
2:エスデスを斬る。
3:あのおにぎり頭の少年を探し出し、悪ならば斬る。
4:レオーネと合流する。
5:琴美の関係者を探す。それと謝らなければならない。
6:主催はスーさんを復元できるのか……
7:参加者に縁のある場所があるのか?

※参戦時期は漫画版スサノオ死亡後〜エスデス死亡前の間。
※琴美視点でのリベリオンズ勢の関係を把握しました。
 ただしDルート基準の為、他ルートとは齟齬があります。
 (話が完全に一致するのは春菜、充のみ)
※雌豚調教の才はモッコス死亡により空白の才に戻りました。
 少なくとも現時点でアカメは書いていません

197魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:52:47 ID:ccPlLFUY0
※スサノオが無理な禍魂顕現をしたことで、性能が落ちてるかもしれません

※E-6にモッコス、琴美の死体があります










 ……しかし、やはりアカメの認識は甘かった。
 あの後、初音は札を一瞥した後に走り出す。
 隠れる為に走ってるわけではなく、逃げるためだ。
 近くどころかすでにエリアすら跨いでしまっている。

(初音の事がバレたら、初音は……ッ!!)

 先ほどアカメは『琴美の所へ戻る』と言った。
 となれば、琴美はあの時点では死んでいなかったと言うことだ。
 もしアカメに危害を加えたことを伝えられれば……想像したくない。
 だから逃げる。少しでも遠くへ逃げて充を探すために。

 アカメに落ち度があったかどうかで言えばないだろう。
 まだ異世界と言う概念すら理解しきれてない情報不足の中、
 平行世界と言うさらに別の概念もある場所にたどり着くのは。
 いち早く平行世界も関わってることに気づけているのは別世界のデビルマンを知った政、
 原型と言う概念があるワザップジョルノと割と限られた人物ぐらいだろう。
 ましてや、シークレットゲームの参加者は全員そのことに気づけてないのだから。

【D-7/一日目/黎明】

【阿刀田初音@リベリオンズ Secret Game 2nd stage】
[状態]:精神的疲労(大)、疲労(大)、出血(中)、全身にダメージ、不安(大)
[装備]:霊撃札×4@東方project
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0〜2(アカメ、琴美が確認済み。ボウガンや危険物以外)
[思考・状況]
基本方針:初音にどうしろというのですか……
1:充を探す。アカメから逃げる。
2:修平、はるな、大祐、アカメには要警戒する。
3:琴美……ユカポン……
[備考]
※参戦時期はBルート、充の死亡直後より。
※自分が琴美を殺したと思ってます。

≪佐神善の家@血と灰の女王≫
善の実家。教会でもあり捨てられた動物を飼ってるため、直ぐ近くに動物小屋がある。
現在は初音の支給品である金づち@現実が転がっていて、若干損壊。
善によるドミノですら噴き出すほどのまずい飯とかあるかも。

【嘴平伊之助の日輪刀@鬼滅の刃】
アカメが最初から使用していた支給品。
伊之助が那田蜘蛛山の後に新調した藍鼠色の日輪刀。
日輪刀の特性から太陽に弱い相手には有効な武器となる。
意図的に等間隔で刃毀れさせた。多分斬られるとすごく痛い。斬ると言うより裂けそう。
伊之助は二刀流だが一振りだけ。ひょっとしたらどこかにもう一振りあるかも。

【電光石火『スサノオ』@アカメが斬る!】
琴美の支給品。四十八の帝具の一つで意志を持った生物型帝具。齢1000歳。
高い戦闘能力に加え要人警護用の為料理を筆頭に、あらゆる家事どころか建築すらできる。
主を必要とする帝具だが従順ではなく、また自動で動くため帝具としては技術も消耗も少ない。
観察眼に優れ、動作による弱点も見抜ける(優れすぎて几帳面な性格が災いし集中できないことも)
生物型の帝具のため胸元の赤い円盤を破壊されない限りはあらゆる損傷から再生することが可能
長柄の槌を基本武器にしており、槌の隙間からは回転刃もでる。強化兵ですら余裕でスライス可能
奥の手『禍魂顕現』により、一定時間数メートルは余裕である超がつく長剣の『天叢雲剣』、
飛び道具反射できる鏡『八咫鏡』、基本能力を伸ばす『八尺瓊勾玉』が行使できる
使うには主人となる存在からの生命力を消費し、多くても三回使えば確実に主人が死ぬ
(相性やスサノオの状態次第で上限は下がる)
制限として
①使用者から離れられない(少なくとも使用者が認識してない範囲には出られない)
②禍魂顕現の使用回数は持ち主を変えても六時間に一回回復
③自我は残っているため進言も時にするが、主人の行動方針に絶対に従う。
④使用者が死亡した場合自動的に機能が止まる。
このスサノオが漫画版かアニメ版かは現時点では不明

198魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:53:23 ID:ccPlLFUY0
【はかいのいでんし@ポケットモンスターシリーズ】
元々はしおの支給品を、スサノオが使用したもの。
ポケットモンスターシリーズとは言うがマザーシップだと金銀のみの登場。
硬化のみで説明不要だったが、入手場所がハナダの洞窟があった場所であり、
名探偵ピカチュウでも登場したことから、ミュウツーの遺伝子を含んだ薬物。
使用すると攻撃力が非常に跳ね上がるが、ひんしになるまで混乱基暴走を起こす。
スサノオに使用した結果、ポケモンと同様に自分を攻撃する形で自制する形となった。
スサノオはコア=ひんしになったため再起動時は暴走しないが、攻撃力も戻っている。
原作では名前だけで形状は不明の為、名探偵ピカチュウに倣いカプセル型として扱う。

【霊撃札×4枚@東方project】
アカメの支給品を初音に渡したもの。
性能的には緋想天or非想天則よりで、掲げることで衝撃波が周囲の敵を吹き飛ばす防御向けのカード。
衝撃波によるダメージは雀の涙なので場所と組み合わせよう。

199魔神降臨───禍魂顕現 ◆EPyDv9DKJs:2021/08/13(金) 16:54:24 ID:ccPlLFUY0
投下終了です
意志持ち支給品でかつ人型とちょっとアレなので、
問題がありましたら破棄でお願いします

200 ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:41:45 ID:SskQYQoc0
投下します。

201星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:43:43 ID:SskQYQoc0
 心臓の音が聴こえるのではないか――そう思えるほどに、幡田零の身体は悲鳴を上げ始めていた。誰かと戦い、外傷を負ったわけではない。それでも、枯れた瞳が写す世界は滲み始め、足取りも次第におぼつかなくなっていく。

 これまで、二人の人と出会った。幸いにもそのどちらも、問答無用で襲いかかって来る相手では無かった。もしかしたらそっちの方が、罪悪感なく殺すこともできたかもしれないが、それは置いておくとしよう。重要なのは――そのどちらも最終的には優勝を狙っていたということ。その見解に、主にロックのスタンスについて推測が含まれているのは確かだ。それでも、これまで出会ってきた相手がことごとく自分やみらいを傷付けかねないという想像は、出会っていない他の参加者にまで拡大的に膨れ上がり、確実に零の心の平穏を脅かしていた。

 さらには、まだヨミガエリに至っていないはずなのに殺し合いの名簿に名前が載っているみらいが幽鬼なのではないかというロックの指摘も零の心を乱した要因だ。それ自体信じたくもない仮説だ。しかし、確かに死んだ――否、自分が殺したみらいが、殺し合いに参加することができている状況。それだけを見ても、どうしてもそう考えざるを得ないのは確かだった。

 例え幽鬼であったとしても、みらいが大切な妹であることに変わりはない。そのヨミガエリに理念ではなく生者の魂が求められるというのなら、自分の魂だって迷わず差し出せるだろう。或いは、いくつもの屍を彼女のために積み上げることもできるだろう。

 零にとってみらいが幽鬼であるか否かは、感情の上ではともかくその意味の上では些末な問題だ。だが、自分以外にとってはそうではない。みらいが幽鬼と化したのであれば、唯一殺し合いに乗っていないと信じられる千さんだってみらいを害することが有り得るのだ。

 そもそも、みらいと千さんは面識がなく、幽鬼であるというだけでみらいは千さんに狙われる対象となり得る。仮にみらいが自分の妹だと、何らかの出来事の末に千さんが分かったとしても――千さんの正義は身内と他人を区別しない。幽鬼と化し、人の魂を喰らう存在と化したのならば、千さんはきっとみらいを殺す。どこまでも公正な正義こそが、千さんが辺獄で剣を取って戦う理由だから。その信念を尊敬こそしているが――ここでは、ただただ邪魔なだけだ。

 焼き切れそうなほどに廻り続ける脳が、焦燥に歪んだ結論を提示した。ここでは、仲間であったはずの千を含め、誰もがみらいの敵なのだと。すなわち、自分の敵なのだと。

 そんな想像に囚われながら落ち着いていられるはずもなかった。誰も信用できない疑心暗鬼は、零の中で着実に膨らんでいく。

(もう、疲れました……だけど……)

 不安から、いつしか始まっていた息切れ。しかしそれでもなお歩みを止めるわけにはいかない状況。酸欠に陥りながらも、焦燥に身を委ねて零は走り続けた。

(そんなこと……言ってられない……。)

 ただでさえ、不摂生な食生活や生活習慣から運動を苦手とする零である。昂る気持ちに身体はついていかない。特に誰とも交戦することのないままに、その肉体は限界を迎えることとなった。それでも、前に進もうとする。未だ影さえつかめないみらいのことだけを、ただ一心に念じながら。

(あ……れ……? 待っ……私……息、できてな……い……?)

 煩い事に意識を追いやっていた零は、自分の体調の自覚すら忘れていた。気付いた時には、その身体はすでに動かない。

――どさり。

 そのまま、零の意識は闇へと沈んでいった。

202星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:46:00 ID:SskQYQoc0



 夢を、みていた。

 何かの間違いであってほしいと、何度も目を背け続けてきた記憶。しかしこうして、たまに現実を突き付けに夢に出てくる。

 何の前触れもなく、鳴り響いた着信音。画面に映し出される、唯一の友達――水無乃有理の名。有理から電話がかかってくるなんて珍しいな、なんて思いながら通話を開始して。


『――ねぇ、どういうこと?』


 初めて聞いた声だった。ただし知らない人、というわけではない。いつも陰気さを感じさせない明るい口調だった有理の、怒ったような低い声。常日頃から何かと萎縮しがちな私だったが、きっと私でなくても気圧されるだろう。


『――あいつ、言ってた。こうなったのは、全部あんたが理由だって……。なんで……なんで私が、こんな目に合わないといけないの!? あんたのせいなんでしょ!? 助けてよ、零! 私、こんなところで……。』


 有理が語る内容は、まったく意味が分からなかった。だけど必死に、私を責めていることだけは痛いほどに伝わってきて。あまりの困惑に、何かを尋ねることも、言い返すことも、できない。

 一言も発することができないままに、次に会った時に聞こうと、疑問の解決を保留して。そして、その”次”は二度と訪れなかった。翌日、あのバス事故の報道を見て、私は有理の死を知った。発表された事故のあった時刻から、あの電話が死に瀕した有理の最期のメッセージだったのだと、気づいた。

 有理の真意は、今も分からない。あのバス事故と私に、何の因果関係があるというのか。

 現実的に解釈するなら、きっと有理は死に瀕していて混乱していたのだとは思っている。だから、私を糾弾するあの不可解な電話が、私と有理の楽しかった思い出すべてを汚すものではないのだとも、理解している。だから、有理とは今も変わらず友達だ。そう、何の気がねもなく言える性分だったらよかったのだろうけど。有理を友達として語ろうとすると、どうしてもあの電話がよぎってしまう。あの電話が私の人生の中で、特別意味のあることだったから。アナムネシスに辺獄に引きずり込まれ、魂の欠損が起こった時に垣間見た記憶も、この電話だったのだろう。理性で何を理解していようとも、最後のあの瞬間に私と有理はもう『友達』じゃなくなったのだと。私はあの瞬間に真に独りになったのだと。感情がそう訴えてくるのだ。



203星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:46:43 ID:SskQYQoc0
 複雑な心境を胸に、零の目に光が入ってくる。涙は、流れていない。

「ん……夢……ああ。私、倒れ……」

 そんな零を待っていた光景は、眼前いっぱいに主張する青いものだった。見慣れない光景に、少しだけ視線を上に運んでみると――真っ黒な影の中から零をぎょろりと睨みつける二つの目玉。

「――ひゃあああああああっ!!!」

「おや。目が覚めたみたいよ。」

「まったく、こんな時に寝ていられてるなんてバカなのかしら。」

 零の悲鳴を聞きつけて、一人の女性と、女の子が駆け寄ってきた――女の子……女の子? 否、よくよく見れば全身が四角形で構成された、人とは思えない異形の類。だが曲がりなりにも人の形を模したそれよりも、恐れるに足る存在が目の前にある。箱状の形をした化け物――パンドラボックスを前に、零は狼狽する。

「き……斬って! ヘラクレイトス!! で、出ない……どうして!?」

 右手をぶんぶんと振り回すも、その手には思装もなければ、盾となる守護者もいない。

「いっ……いやぁぁぁぁ!」

「ちょっと、落ち着きなさいよ。」

「あはは、元気だねぇ。」

 まもなく、この人たちに寝ているところを保護されたのだと冷えた頭で理解し、零は恥ずかしそうに縮こまった。

「あ、悪趣味です……。保護してくれていたのは感謝していますが……起きて早々こんなのを見せなくてもいいじゃないですか。」

「えー、カワイイじゃん。エルピスっていうの。」

「……可愛いというところには同意しかねます。」

 不機嫌そうに、エルピスを差し向けた女性にじっとりとした視線を向けると、笑顔で返される。アウトドア系の軽装から推測できるおおよその性格から、苦手なタイプだと零は直感的に感じ取った。特に、初対面からぐいぐいと距離を詰めて来るその距離感からは、どうしても有理のことが思い出されてしまう。

「さて、まずは自己紹介かな。」

 さっそくと言わんばかりに、その女性は切り出した。

「私は清棲あかり。博物館職員をやっているんだ。キヨスって呼んでいーよ。」

 たぶん、呼ばない。そんなに神経は図太くない。

「次はアタシの番ね。アタシは伯爵さまに仕えるモノマネ師、マネーラよ。」

 伯爵さま……? モノマネ師……? 浮かんだ疑問は、とりあえず追究しないでおいた。

「そして改めて、この子はエルピス。まだ大規模な調査に至れているわけじゃあないんだけど、箱に擬態して獲物を狩る習性がある生物かな。先の戦いを見るに、睡眠を促す気体を排出する可能性もあってね。図鑑が反応したってことはポケモンと呼ばれている生物だと思うんだけど、まだまだ謎に包まれているね。」

 清棲さんの自己紹介より長い……というかまんま危険生物じゃないですか。頭に輪っかがないので幽鬼ではないようだが、だとすれば幽者だろうか。ただひとつ言えるのは、決して可愛くはないということ。

「……幡田零です。」

 正直なところ、居心地が悪い。無防備な姿を晒した自分がまだ生きていることから、二人と一匹?が殺し合いに乗っていないのは確かなのだろう。それならば、わざわざ急いで排除する理由もない。

 しかし、だからこそ優勝を狙っている自分と相容れない。助けられたことを理由に殺すのを躊躇し、馴れ合えば馴れ合うほど、彼女たちを殺す決心から遠ざかっていくだろう。ちょうど、みらいと天秤にかければどっちを取るのかは明らかであっても、この殺し合いに参加している千さんを殺したくないと思っているように。

 ただ、さっきまで囚われていた、誰も彼もが自分やみらいを害するのではないかという幻想から解き放たれ、少しばかりは冷静になれたのも間違いない。

204星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:47:33 ID:SskQYQoc0
「お二人は、何をしてるんですか?」

「伯爵さまを探しているの! ノワールという方と出会わなかった?」

 零の質問に率先して答えたのはマネーラ。元より悪の側に立つマネーラが、イケメンでもなければそもそも男ですらない零をわざわざ保護したのは倫理観ではない。あくまで、伯爵の情報を欲してのことだ。

「いえ、会っていませんね。」

「ぬい〜……それはザンネンなの……。」

 ここで嘘をつく理由もなく、零は正直に告げる。時間のムダだったと、少し不機嫌そうに返すマネーラ。

「……すみません。」

「まあ仕方ないわよ。ちなみに、アンタの知り合いは呼ばれていたりしないワケ?」

「実は私も、妹のみらいを探しているんです。私と同じ髪の色をしたツインテールの女の子なのですが……」

「こんな感じ?」

 ボンッ。

 瞬く間に、マネーラの姿は等身大の少女のものに変わった。顔かたちは零を模しつつ、その髪型だけをツインテールに変えたものだ。衣服も零の代行者の衣装そのままであり、違和感が拭い切れない。自分の、代行者の派手な衣装を改めて目の当たりにした恥ずかしさも同時に襲ってきて、少しばかり俯きがちになりながら零は口を開く。

「……驚きました。そんなこともできるんですね……。」

「つまんない。思ったより反応が薄いのね。」

「……すみません。似たことのできる幽鬼が身近にいるので。」

「アラ、アタシの専売特許だと思っていたわ。」

 人格が魂に宿るなら、肉体の方は変化させることも可能ということなのだろうか。何であれ、マネーラの変身能力も、紛れもなく驚愕に値するものだ。

 しかし衝撃の度合いで言えば、自分たちの姿が777のものに変えられていた時の方がよほど大きかった。

 何より、現状のマネーラはツインテールにした自分でしかなく、どこか鏡を見ているような気分だ。

「……とりあえず、もう少し目つきはやわらかく、口は緩ませて。あと服は普通のにしてください、絶対。そして赤いリボンを……」

「わぷっ! ちょ……何すんのよっ!」

「えーと、私たちもみらいっていう子には会っていないかなぁ。」

 マネーラの輪郭を力づくで弄り始めた零を制止しつつ、キヨスは答える。マネーラも、キヨスと出会う前には誰とも出会っていなかったらしく、同じ答えだった。

205星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:48:35 ID:SskQYQoc0
「そう……ですか。ありがとうございました。」

 それなら、この人たちに用はない。すぐにでも、みらいの捜索を再開しないと……。

 一礼を終えると、零はくるりと踵を返した。

「ちょっと待って!」

 そのまま立ち去ろうとした零を、キヨスは呼び止める。

「何ですか?」

 用件はなんとなく想像がつく。少しだけ苛立たしさを覚えながら振り返った。

「ほら、大人数だと安全だしさ、零ちゃんもよかったら一緒に行動しようよ。」

「…………。」

 面倒だと思う反面、そうなるだろうなという納得があった。先ほど同行を最後まで持ちかけてくることのなかったロックを殺し合いに乗っていると推測したが、その対偶の理屈だ。殺し合いに乗っていないのであれば、同行を提案するのは当然だろう。でも、そのスタンスを自分に期待されても、困る。

「……嫌です。」

 せめて変に期待を持たせることのないように、ハッキリと断った。これまで物怖じ気味だった零が突然見せたその毅然とした態度に、キヨスもマネーラもただ事でない雰囲気を感じ取る。

「どうして?」

 重苦しい雰囲気の中、口を開いたのはマネーラ。事情があるのを無理に踏み込もうとする性分ではないが、この世界でのワケアリは人死にに直結し得る。そのため、強く問い詰めるような口調だ。しかし零も、気丈な振る舞いを崩さない。

「……もし、貴方の探している伯爵さんと、私の妹が殺し合っていたとしたら。貴方はどちらを味方しますか?」

「それはもちろん、伯爵さまよ。」

 マネーラは即答する。そこに建前は押し出さない。天秤にかけるのが零の妹でなくとも――何ならキヨスだったとしても。その忠誠心は、依然として変わらない。

「そうですよね。それでいいと思います。だけどそれが、一緒に行けない理由です。生き残れるのは一人だけなのだから、その時は間違いなく来るんです。」

 小衣さんや千さん、そして777と組んでいたのは、その誰もが障害とならないからだ。アナムネシスへの復讐を誓う小衣さん。自分の正義を成したい千さん。私についてきたい777。その誰も、みらいを助けたい私の目的を邪魔しない。仮に千さんの正義が小衣さんの個人的な復讐を許さなかった場合。仮に777が何の役にも立たないどころかお荷物になる場合。寄せ集めの協力関係なんて、直ちに瓦解するだろう。

 そして、ここは生き残れるのが一人だけの殺し合い。私が何を犠牲にしてでもみらいを助けたいと思っている以上は、協力関係なんて築けるはずもない。

「つまりアンタは、殺し合いに乗るの?」

「……必要なら。いつでも覚悟はできています。」

「……そ。助けるんじゃなかったわね。ま、アカリが勝手に助けていただろうケド。」

 ここには零とマネーラの、最後の一人になるまで殺し合う必要性への認識の差が表れている。

 主催者であるメフィスとフェレスという悪魔たちを、理念を集めるために裏で行っていた”演出”までは知らずとも、それでも他の者たちに比べ最低限を零は理解している。人間をおもちゃとしか――或いはおもちゃとさえ、見ていないこと。そして、勿体ぶったり曖昧な物言いで煙に巻いたりすることはあっても、明確な嘘で人をからかったりはしないこと。だから、この殺し合いは本当に、最後の一人になるまで終わらない。辺獄での行動は奴らに監視されているのだから、反抗することも非現実的だ。それが、零の認識である。

 一方のマネーラ。主催者であるディメーンは、零にとってのメフィスとフェレスとは異なり、高位の存在でも何でもない。位を同じくする存在であり、素直に従うのは癪でしかない相手だ。また、『敵も含め』あらゆる者をパワーアップさせてしまうディメーン空間の一件など、存外抜けているところがあるということも知っている。伯爵に仕えていた本当の目的は知らないが――むしろ知らないからこそ、この殺し合い自体につけ入る余地すら見出している。

 もしも、対話を重ねていれば。この認識の差が埋まることも、或いはありえるだろう。しかし、そもそもマネーラに、零を無理に連れていく道理などありはしないのだ。伯爵さまと共に元の世界に戻ること、それこそがマネーラの譲れない行動原理であり、殺し合いに乗らないことはその手段でしかない。マネーラの夢は、零を排除した上でも叶い得るのだ。

206星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:49:50 ID:SskQYQoc0
「――まあまあ、二人ともいったん落ち着こ?」

 されど――キヨスの夢は、そうではない。皆の生きた証を、未来に届ける――その”皆”の中に、例外などあってはならない。

 生物である限り、捕食・被食の関係にせよ共生・寄生の関係にせよ、他の生物といかなる関わりをも持たずに生きることは不可能だ。そして、その繋がりの把握に先行して、個の理解がある。個の理解を繰り返して、いずれ生態系の理解へと結びついていく。キヨスの専攻する学問に、研究対象とならない生物など存在しない。

 キヨスの夢は、この殺し合いのありのままを風化させず、後世に伝えること。そのために、個である零と分かり合うことを諦める選択肢はキヨスにはない。

「私はね、この殺し合い、誰も死なずに終わるとは思わない。仮に、協力して殺し合いを脱出できるとしてもね。」

 エルピスと出会った時に起こった戦闘は、文字通り"殺し合い"と呼んで差し支えないものだった。どこかで何かが噛み合わなかったら、誰かが死んでいてもおかしくなかった。ここ辺獄では、いち生物の攻撃本能でさえ何人もの命を危険に晒し得るのだ。そんな戦いが100人規模で行われているこの場で、誰も死なずにいられると思うほどキヨスは楽観主義ではない。

「……本気で、脱出できると思っているんですか?」

「さあね。」

 具体的なアテはない。しかし、マネーラの変身能力といった、人知を超えた力はここにある。ギャブロという人語を話す蠅のような生き物もいた。まだ観測していない範囲に、ポケモンをはじめとし、どんな神秘が待ち受けているかもわからない。

 だから、まったくもって脱出の希望がないとも思えないのがキヨスの現状。

「さあねって……無責任です、そういうの。」

「確証もないものをできるって言っちゃう方が無責任だと思うけどなぁ……。まあでも、これだけはハッキリしてるよ。」

 零にとって、みらいが譲れないものであるように。キヨスにも譲れない一線がある。

「……生き残った人たちが死んだ人たちのことを忘れてしまえば、その人が生きた証はこの世界から消えてなくなってしまう。」

 保存に失敗して廃棄することになった標本を、幾つも見てきた。

 死してなお残るその姿が。100年後の未来に伝わるはずだった彼らの生きた証が。価値を失ったゴミと化して誰の目にも届かないところへ沈んでいく光景。仮にも命だったものを扱う者として、ただただ悲しいから。

 だから、忘れない。喪失された命の証を胸にしまいこんで、代替なり得なくとも、次の標本の保存に努めるため。記憶というのは、寄る辺を失った命の、最後の拠り所だから。

「それが、清棲さんのやりたいことですか?」

「そう。だから、零ちゃんには独りになってほしくないって思うの。探してる人がいるなら、協力するから。」

「生きた証、ですか……。」

 キヨス本人だって、後世に語り継がれたいと思うまでの英雄願望はないが、それでも誰かの記憶に残りたいと思うことはある。

 博物館に展示されるのは、いつかを生きた標本だ。さまざまな動物たちの生きた証にスポットが当てられ、訪れる者にその存在は主張される。その一方で、その裏でスポットを当てている職員たちは、博物館という世界の中で意識の外に追いやられる。それがキヨスたち、博物館職員の仕事。決して表に出てはならない。主役であってはならない。その生き様は、やはり誇りに思いつつも――同時に、その虚しさも分かっている。

 目立ちたいというタチでなくとも。功績を主張するタイプでなくとも。それでも、博物館の生き物の魅力に惹かれた子供たちに、知ってほしい時もある。博物館という舞台の、その裏側を。標本研究やその保存に、限られた人生の時間を尽くしている人たちがいることを。

「ねっ、お願い……!」

 庇護欲を掻き立てるような上目遣いと、されど決意の籠もった真剣な目で、キヨスは念を押す。もしもこの殺し合いが開かれなければ、事あるごとに別の青年に向けられていたであろう、勢いで押し切るかの如き懇願の言葉――

207星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:50:50 ID:SskQYQoc0




「随分と、都合のいい解釈をするんですね。」




――相手が零でさえなかったならば。きっと、絆されていただろう。

「命だったものを奪って。死者の生きた証に涙を流して――それで、死者は報われるんですか?」

 反論なんて、いらないはずだ。別に討論がしたいわけじゃない。話し合いも和解の余地も振り切って、すぐにでもみらいを探しに行けばいい。そうまでして去る者を、問答無用で追いかけるほどの執着ではないはずだ。

 分かっている。ここで軋轢を生むことの無意味さは。

「私は知ってるんです。死者の、私たちを妬む声も、恨む声も。苦しみも、嘆きも。目を瞑っても、耳を塞いでも、ずっとずっと心の奥に溜まってる。」

 だけど、言い返さずにはいられなかった。

 みらいの、生きた証――どれほどの時間が経っても、あの子を突き刺した手にずっと、いつまでも、残り香のようにまとわりつき続ける感覚。私を蝕み、苦しめ続けているのは、その記憶に他ならないから。

 その苦しみを持ってしても、足りない。あの子を殺した罰には、到底。それでも赤の他人に、まるでそれが美談であるかのごとく語られるのは、どうしても我慢ならないんだ。

「彼らの声を忘れないことは大事です。それが、生き残った側にできるただ一つの償いだから……。でも――」

 零の右手が、支給されているデイバックに伸びる。その”意味”を即座に理解した者が、二人。

「――そんなあなたの『エゴ』に……私を巻き込まないでっ!」

 デイパックの中から現れたのは、一本の剣。まるで涙のように蒼く透き通ったそれは、そのまま真っすぐにキヨスへと突き付けられる。

 驚愕に目を見開くキヨス。そして、それとほぼ同時。

「――それ、引っ込めな。これ以上は、ジョーダンじゃすまないわよ。」

 紅く煌めく宝石を掲げたマネーラと、体躯に似合わぬ砲台の照準を零に定めたエルピスが牽制に入っていた。

「……。」

「……。」

 一触即発のその雰囲気は、硬直したまま数秒間流れ続ける。

「……もう、いいです。手を引きますから……これ以上、私に関わらないで。」

 真っ先に武器を下げつつ沈黙を破ったのは、零。

 怒りに呑み込まれながらも、理性がそれを抑え込んだ上での判断だった。

 殺し合いの優勝は、確かに最終的に目指すところではある。だが、それはあくまでみらいを守る手段に過ぎない。相手の手札も見えず人数差もある内にみらいを害する可能性が低い相手との避けられる戦いを強行し、わざわざ死ぬリスクを負う必要などない。

 それに、このまま感情の暴走のままにキヨスを殺してしまったならば、みらいを死なせてしまった時と何も変わらない。仮にマネーラとエルピスの制裁から逃れられたとしても、きっと更なるトラウマに苦しむこととなる。

「……アカリがかなしむから今は見逃してあげるわ。でも、覚えときな。伯爵さまにその刃を向けようものならその身体、八つ裂きにしてあげるから。」

「……あなたたちがこの殺し合いに反逆していること。それだけは、心の底から信頼しています。私と違ってみらいには何の罪はありませんから……どうか、出会った時はあの子をお願いしますね。」

 大切な人がいる者たちの邂逅。ここで戦火を交えることが互いの想い人に与えるリスクを、共に承知している。戦いの意思がないことを確認すると、零はそのまま立ち去っていく。

 これでよかったんだ、と。ずきりと痛む胸を押さえ込みながら。

208星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:52:26 ID:SskQYQoc0
――有理を、”二つの意味で”失ったあの日は、瞳が焼き切れるくらいに泣き通した。

 狂いそうなくらいに押し寄せて来る悲しみを前にしても、何故かみらいに縋った記憶がない。喧嘩をしていた記憶もないけれど、あの時の心の支えは生まれた日からずっと共に生きてきたセレマだけだったはずだ。

 でも、私はもう壊れているから。みらいをこの手で殺し、セレマも衰弱死するまで放置して――それだけの離別を前にしてなお。涙が、流れないから。悲しみを、孤独を、浄化できないから。

 だから、怖いんだ。これ以上、誰かの手を取ろうとするのが。抱いた希望を砕かれるのが、怖いんだ。

 ヒビが入って、壊れた器。涙の雫が、それを満たすことはない。まだ――心は眠ったまま。

【E-3/一日目/黎明】

【幡田零@CRYSTAR -クライスタ-】
[状態]:健康、涙は流れない、精神不安定(大)
[装備]:代行者の衣装と装備ㅤオチェアーノの剣@ドラゴンクエスト7ㅤエデンの戦士たち
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0〜2
[思考]
基本:妹の優勝、或いは自身が優勝して妹のヨミガエリを果たす。
1:東でみらいを探す。みらいが私の知るみらいなのか不安。
2:千さんとはできれば会いたくない。
3:あの男(修平)とは、次にあった時は殺し合う事になる。
4:吹石琴美って、あの琴美さん?
5:立花特平のような参加者に化けた幽鬼に警戒。
[備考]
※参戦時期は第四章、小衣たちと別れた後です。
※武器は使用できますが、ヘラクレイトスは現在使用できません。
※参加者の一部は主催によって何か細工をされてると思っています。
 ただし半信半疑なので、確信しているわけではありません。

209星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:53:46 ID:SskQYQoc0
 零の背中を、キヨスは黙って見つめていた。夢が破れた――というと少し大げさかもしれないが――それでも、己の決意をエゴと一蹴されるのは堪えるだろう。

「アカリ。あんなヤツのことはもう忘れていいわ。だから元気を……」

 励ましなんて我ながららしくないと思いつつも、マネーラは黙ったままのキヨスに声をかける。

 それを受け、ようやく顔をマネーラに向けるキヨス。そして、細々と口を開いた。

「……ねえ、マネーラ。」

「な、なによ。」

 そして――たじろぐマネーラに、告げる。

「――ちょっとあの子のこと、こっそり追跡調査してきてくれない?」

「――はぁ?」

 ケロっとした顔でとんでもないことを言い出した。っていうか、さっきの気にしてないワケ? アタシの気遣い返しなさいよ。

「いやいや、アタシたちすっごい険悪だったじゃない!?」

「そこはほら、バレないよう変身してさ。」

「そもそも何であの子にそんなこだわるわけ!?」

 それを聞くと、キヨスの顔が少しだけ、曇って見えた気がした。

「剣を突きつけるあの子の手、震えてた。」

「え……?」

「たぶん、根は優しい子なんだと思うな。まあ、仕方ないよね。殺し合いの世界に独りだったら、私だって怖い。」

 殺し合いが始まってすぐにマネーラを文字通り”捕まえた”キヨス。何かと他人を巻き込みがちな彼女は、そもそもの生き方が違う零の孤独には触れられない。

「でも今は、私にはエルピスもいる。だからマネーラは、あの放っておけない子を見守ってあげて……お願い。」

 博物館職員として標本の保存やフィールドワークに生きる毎日。それだけでも、かなりの変わり者であるキヨスであるが――その前に、一人の大人である。ひと回り年下の零の言動に心を大きく乱されることもなければ、その非礼をことさら糾弾するつもりもない。

「はぁ……アカリ、人使いが荒いってよく言われるでしょ? まったく……仕方ないわね。」

 マネーラはぱっと見で警戒されない人物――ピーチ姫の姿へと変貌する。嫌いな相手であるが、その外面の良さは素直に評価するところだ。

 いつまでも零に付き添うわけにもいかないため、集合時間である昼には博物館に一旦戻ることを約束し――マネーラもまた、零の去った方向へと走って行った。

210星屑ロンリネス ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:53:56 ID:SskQYQoc0
【E-3/一日目/黎明】

【清棲あかり@へんなものみっけ 】
[状態]:健康
[装備]:ポケモン図鑑@ポケットモンスター モンスターボール×8 ひかりのドレス@ドラクエ7
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜1 Eー3かねでの森博物館から持ってきたフィールドワークや解体用の道具(双眼鏡・ハイヒール(大型動物解体・調理用刃物)など)
[思考・状況]
基本方針:参加者たちの生きた証を記しこの殺し合いの出来事を風化させない
1:伯爵さまを探しつつマネーラと行動を共にする※ 南側EFGHを中心に
2:参加者の生きた証を集め、もしもの時は”託す”※作業の中心はポケモン図鑑に登録
3:ロックに注意する
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ戻り、ギャブロ君達と合流して手にした情報を交換する
5:首輪の解除方法がないか、探しつつ考える
[備考]
※参戦時期は原作1話 事故死したカモシカを博物館に持って帰ったところ
※ロックの危険性について知りました。
※マネーラ・ギャブロ・藤丸立香の世界について簡単に知りました。
※パンドラボックス(エルピス)に戦闘の指示を出すことが可能となった。

【マネーラ@スーパーペーパーマリオ 】
[状態]:疲労(小) ピーチ姫の姿
[装備]:まじんのかなづち@ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 789ゴールド
[思考・状況]
基本方針:ノワール伯爵と合流して生きて帰る
1: 伯爵さまを探しつつ、零を追う。
2:とりあえず、あかりの夢に協力する
3:ロックには注意する
4:二日目の昼にはE-3のかなでの森博物館へ戻り、あかりやギャブロ達と合流して手にした情報を交換する
[備考]
※参戦時期は6-2ピーチ姫とバトルする前
※ロックの危険性について知りました。
※キヨス・ギャブロ・藤丸立香の世界について簡単に知りました。

【パンドラボックス(エルピス)@ドラゴンクエスト7】
[状態]:モンスターマスター(キヨス)に懐いている 健康
[装備]:壊砲ティシア@ファンタシースターオンライン2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2(強力な武具やアイテムです。)
[思考・状況]基本行動方針:マスターを守る
1:マスター(キヨス)と行動を共にして守る
※参戦時期は宝箱(パンドラボックス)を調べられる前
※キヨスの命名により”エルピス”と名付けられました。なお、名簿の記載に変化は起きません。
使える呪文 ザラキ マホトラ あまい息
※ザラキは参加者が”精神的に不安定” ”体力・気力が果てるような状況”などでないと効果が効きません。

211 ◆2zEnKfaCDc:2021/08/19(木) 03:55:21 ID:SskQYQoc0
投下完了しました。

212 ◆2dNHP51a3Y:2021/08/25(水) 19:45:57 ID:rlpCioJc0
予約を破棄します
長々と拘束した上でこのザマで申し訳ございません

213 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/25(水) 22:25:08 ID:YWoMXdUw0
投下お疲れ様です!
魔神降臨
モッコスに色々とめんどくさい支給品を渡してリレーに投げてしまいましたが、スーさんという対策へのアンサーはお見事の一言です!
お前冷静すぎだろ。マグロか?や「さっきからテイグテイグってなんだよ。貞操帯の仲間か?」
↑実にモッコスらしくて好きです。
腕で防ぐが尾田栄一郎によって衝撃を吸収する。
↑普通に意味を知っていても読んでいたら笑っちゃいました。
また、モッコスの最後も実にモッコスらしく感じました。
誰も言わなかったし、理解されなかった。
 別に理解されたいとも思ったわけではない。
 子供の頃から思い続けてきたことだ。
 ドキュンたる彼の底に眠っていたルーツ。
↑特にここがなんというか、感動を覚えました。自分もこうした文を書けるようになりたいと素直な気持ちです。
また、琴美の覚悟が勝利への貢献となって正にDルートの琴美でした。
放送後の修平の叫びがもう聞こえてきそうです……
初音……アカメと離れたことが吉となるか凶となるのか、楽しみです。

星屑ロンリネス
まずタイトルがとても、好きです……
次に触れたら砕け散ってしまいそうな心境の零が丁寧に描写されていて儚くも感じられ、なんというか……好きです。
零は、ぐいぐいと来るキヨスは苦手だよな〜と確かに自分も思ってました。
そして、エルピスを可愛いと感じるキヨスとそれを否定する零に生きた証を標本として残す仕事のキヨスと死者となったミライのヨミガエリを目指す零とでは、やはり相いれないようですね……
また、キヨスは目的を”エゴ”と指摘されても零の様子に気づき、マネーラにお願いする姿は大人の頼もしさをとても感じられました!
マネーラと零は現状、水と油の関係ですがどうなるのか……今後が楽しみとなります!
紅く煌めく宝石を掲げたマネーラと、体躯に似合わぬ砲台の照準を零に定めたエルピスが牽制に入っていた。
↑なんといいますか”へんなもの”に愛されているキヨスが感じられてとても好きです。
あと、個人的なのですが、初めてコンペで通ったキャラ(キヨス)をリレーしていただいてとても嬉しく思います。

予約した作品ですが、今日中に投下しますが、時刻が遅れてしまいました。
申し訳ございません。

214 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/25(水) 23:58:05 ID:YWoMXdUw0
投下します。

215 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/25(水) 23:59:23 ID:YWoMXdUw0
かすかべ防衛隊ーーーーー野原しんのすけがアクション幼稚園の級友を誘って結成した「春日部の愛と平和を守る」ことを目的とした組織。
Wikipediaより引用。

序章 ある日のかすかべ防衛隊でGO!

今日は休日の昼下がり、かすかべ防衛隊の5人は遊ぶために公園に集まっていた。

「ねぇねぇ!今日は何して遊ぶ?」
「う〜ん、カン蹴りとかどうかな」
「かく……れん……ぼ」

ふむふむ、皆、それぞれ遊びたいのが違うようですな。

「しんのすけ。お前は何して遊びたい?」
「う〜〜〜ん。んじゃ、オラ”さなぎごっこ”」
「しんちゃん。”さなぎごっこ”って何?」
「んとね〜。木や電柱にとまり、途中で殻を破って蝶に変身するの」
「……みんなでする遊びでもなんでもないし、そもそもどうやって、殻を破るんだよ(怒)」

んもう、風間君ったら、相変わらず冗談が通じないんだから〜

「じゃあ、リアルおままごとはどう?」

「「「「……」」」」

どよ〜〜〜〜〜ん……

これから楽しく遊ぼうという空気が一気に重くなった。
そう、それは鼻で吸う空気がとても美味しく感じられていたのが、急にどこからもなくやってきた人のオナラを吸ってしまったような……

う〜ん、ネネちゃんは相変わらず”リアルおままごと”が好きですな……

ネネちゃんのおままごとは余りにもリアルすぎるから気軽な遊びではない。
はっきり言って”不評”な遊びだ。

―――チラ。

「「「……」」」
ほら……やっぱり、風間君もボーちゃんもマサオ君も渋い顔をしているゾ。

さて―――どうやって違う遊びに誘導するとしますか……

「今回のリアルおままごとはね〜……」

(そうだ!ネネちゃんが、ちゃぶ台を出したところで”ちゃぶ台鬼ごっこ”を提案してみよう!)
(どうしよう。どうせ、僕はうだつが上がらない夫の役をさせられるんだろうな……はぁ、どっちみちリアルおままごとが避けられないならそれに近い遊びの”三角関係ベースボール”がいいな……)
(あみだ……くじ……で、上手く……回避する……イケそう)

オラ……いや、おそらく皆。ネネちゃんのリアルおままごとをどう回避するか考える中―――

「うわ〜〜〜〜〜ん(涙)」

―――子供の泣き声がした。

お?泣いている子がいるゾ!

「ねぇねぇ、君どうしたの?」
泣いている子に直ぐに駆け寄る風間君。うんうん、流石は風間君だゾ。

「えっぐ……えっぐ。風船が木の上に……」
ほうほう……確かに風船が木の枝に引っかかってますな。

「可哀想……」
「うん、可哀想だね……」
「どうやって、風船を取ろう?」
「肩……車……!」
「そうか!皆で肩車をすればいいんだよ!」
「流石はボーちゃんですな〜」
「ええ!それなら届くわ!」
「それ……ほどでも」
「え〜〜〜。でも、危険じゃないかな……」
「あら、マサオ君。じゃあ、泣いている子をそのままにするの!?」
「そ……それは……」
「ねぇ!言い合っていても仕方がないよ!それより早く肩車しよう!」

「それじゃあ、泣いている子のためにお助けするゾ!かすかべ防衛隊、ファイヤー!」

「「「「ファイヤー!」」」」

☆彡 ☆彡 ☆彡

216 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/25(水) 23:59:38 ID:YWoMXdUw0
無事に風船を救出できたかすかべ防衛隊。

「お兄ちゃん、おねえちゃんありがとう」
先ほどまで泣いていた子供ははじける太陽のような笑顔を見せる。

―――うんうん。やっぱり笑顔が一番だゾ!

「気にしないでいいよ!だって、僕たち」
「私たちは……」

お!これは……さて……やるとしますか!

「春日部の愛と平和を守るため!」
「勇気凛々!」
「悪と戦う!」
「そうだ、ぼくらは!」
「かすかべ防衛隊!」

ババ―――ン!!!!!とこれがTVだったら効果音が鳴っているであろう程の完成された決めポーズを披露する。

「……かっこいい」
それを観て子供は目をピカピカに輝かせる。

―――そして、それと同時に

―――わぁぁぁぁぁあああああ!!!!!
―――パチパチパチパチ!!!!!!

「か〜すかっべ、ぼ〜うえいたい!」
「「か〜すかっべ、ぼ〜うえいたい!」」
「「「か〜すかっべ、ぼ〜うえいたい!」」」
いつの間にか、公園に集まっていた他の子供たちから拍手とコールを浴びた。

夕日が沈み―――

「それじゃあ、また明日!」
「ええ、またね!」
「うん。さようなら!」
「バイ……バイ!」
「じゃ、そゆことで〜!」

晩御飯の時間が近づいてきたので、かすかべ防衛隊はそれぞれ自分の家へ帰宅する。

うんうん。今日もかすかべの平和を守ることができましたな。
……オラ、みんなと一緒に”かすかべ防衛隊”をやれて嬉しいゾ。
大人になっても、オラたちはいつまでも友達でいたいな―――

「おかえり〜♪」
「帰ったら”ただいま”でしょ!!」
「そうとも言う〜!」

しかし―――
そんな5歳児の望みは―――

「……自己紹介は、まあいいじゃろ。簡単な説明だけしておくなら……お主らは今から殺し合いをしてもらう為にここに呼び出させてもらった」

辺獄の悪魔により弄ばされる―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

217 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/25(水) 23:59:57 ID:YWoMXdUw0
第一章 歳破神『佐藤マサオ』 

―――はぁ……はぁ……

―――チラッ

―――あのお姉さん、まだ追いかけてくる……

―――でも、どうして僕のことが視えてるの!?

―――あの双子のお姉さんたちは、僕には”けはいしゃだん”という能力ができるから逃げてる時は、見つからないって言っていたのに

―――あの目……さっきの黒髪の女の人と同じぐらい怖いよぉぉぉ

(もし、あのお姉さんに捕まったら……!)
―――ゾクッ

考えただけで、背筋が凍るよ―――

「ひいいいいい!」

―――それだけは絶対に避けなきゃ!

―――やだやだやだよぉぉぉぉぉ

お姉さんと僕の鬼ごっこは続く―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

「はぁ……はぁ……」
(何とか撒いたかな?)
走り疲れた僕は一度水分補給を摂ろうとデイバッグから水を取り出すと飲む。

―――ゴクッゴク……プハァ〜

「生き返ったぜ〜!」
充分な水分補給も出来て、乱れた息が整った。

「……」
(そういえば、ジャングルで道に迷ったときはつらかったな〜)
僕は、水を飲めた喜びから水に纏わる過去の出来事を想起した―――

―――せっかく、水飲めると思ったのに〜
―――しょうがない!誰かが囮になって、その隙に水を飲もう!
―――頑張れ!マサオ君!

それは、猿に連れ去られた大人たちを救うためにジャングルを探査していたときのこと。
飲物担当のしんちゃんがコーラではなく”醤油”をもってくるという信じられないミスを犯した。
しかも、残りは”枕”に”トランプ”に”野球のグローブ”といった役立たない物ばかり、リュックに詰め込んでいたんだ!!!
喉が渇いた僕たちは、大きな池を発見したんだけど……皆!僕を囮にして!!う、うう…おかげでワニにあと一歩で食べられそうになり、肝心の僕の水は……しんちゃんの口からだったんだ!!!

(大体よく、考えればしんちゃんがコーラと醤油を間違えたんだから、しんちゃんが囮として行くべきだったよ!)
僕はしんちゃんに対する怒りを込み上げる。

(そうそう、しんちゃんと言ったらあのときも……)
次に想起したのはカンフーを習っていたときのこと。

―――バスガ!?……バァ!?……ガァ!?……
ブブ―――!!
―――へぇ!?えええ……
―――まだまだ技は荒いが、初めてにしては上出来じゃ
―――やったー♪
―――マサオ、カチカチじゃぞ?
―――はい……
―――師匠〜、早く次の技〜〜〜!

とある時期、僕は”ぷにぷに拳”という拳法を師匠から習っていた。
あいちゃんを守れる男になりたいという純粋に強さを求めていたという気持ちと、泣き虫な僕に拳法を教えてくれる師匠に認めてもらいたいという気持ちで一生懸命練習に励んでいた。
なのに、皆……しんちゃんは、後から習い始めた癖に兄弟子である僕をあっという間に抜かした。嫉妬や自分の情けなさに僕はしんちゃんに対して酷い事を言っちゃった……友達に対して凄く悪い事をしたと凄く気にした。
それなのに、しんちゃんは”キレイなお姉さんのことしか覚えられないから〜”って!!僕の苦悩した気持ちをちっともわかってくれていない!

「はぁ……」
―――しんちゃんは、友達である僕の事なんとも思ってないんじゃないかなぁ

僕の心にしんちゃんに対する不信と疑念が生まれると更なる怒りと憎悪が―――
そんなとき―――

「ん?そこの”おにぎり頭”は、マサオくんじゃありませんか?」
「し、しんちゃん!?」
確かに僕はついさっきまで、しんちゃんに対する不満を述べてはいたけど―――

まさか、ここで”しんちゃん”に出会うとは思わなかった

☆彡 ☆彡 ☆彡

218嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 序 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:01:25 ID:Yt8uW6Co0
「アリサちゃん。芳桂ちゃん。紹介するね!このおにぎり頭の男の子がオラの友達のマサオくんだゾ!」
「へぇ〜、あんたがしんのすけがいう”かすかべ防衛隊”の一人ね。あたしはアリサ・バニングス。よろしくね♪」
「私は宮藤芳桂。よろしくね!マサオくん」
「あ、よ……よろしくお願いします///」
(うわぁ〜。二人とも可愛くてキレイだな〜……って、しんちゃん。僕が一人で戦っていたのに、二人と呑気に過ごしてたんだ……)

―――本当、しんちゃんばっかり、いい思いしてズルいなぁ……

「ところで、マサオくんはこんなところで何してたの?」
僕が悶々としていたところ、しんちゃんが質問してきた。

「え?僕は……あッ!?」
詳しくは話さず濁そうと思っていた僕の目線の先に先ほどのお姉さんが―――

「ひぃぃぃぃ!!!!ど、ど、どうしよう!?お姉さん!ここまで追いかけてきた〜!」
「まぁまぁ、マサオくん。とりあえずデラックス、デラックス」
「しんちゃん。それをいうならリラックスじゃ……」
「お!そうともいう〜♪」

しんちゃんとそんなやり取りをしていると……

「……ようやく、追いつけた」
とうとう、お姉さんが目の前まで追いついてきた―――

―――どどど、どうしよぉぉぉぉぉ
追い詰められた僕はどう切り抜けるか必死に考えているのに―――

「お姉さ〜ん(ハート)」
しんちゃんは僕を追いかけてきたお姉さんの姿を見ると一目散に駆け寄って―――

「お姉さんは、納豆にネギ入れるタイプ〜?」
「な、何なんだ!?この幼稚園児は!?」
ナンパをしだした。

「……」
(し、しんちゃん……)

―――しんちゃん。あいちゃんからあんなに好かれてるのにどうして、他の女性に平気でああしたことをできるのかな……

「まったく、しんのすけったら……」
「あはは、しんのすけ君は面白いね」
しんちゃんのナンパじみた行動をアリサちゃんと芳桂ちゃんは笑って眺めている。

「……しんちゃんばっかり」
―――どうして、しんちゃんばっかり”ちやほや”されるのかな

―――どうして……
僕の心はドス黒いもやもやした気持ちに包まれる。

―――ドクン!

宿業が鼓動をした――――

☆彡 ☆彡 ☆彡

219嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 序 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:01:57 ID:Yt8uW6Co0
―――それから、僕がお姉さんに追われている理由を話した。

「ふんふん……マサオくん。いけないことをしたら謝らなくちゃいけないんだゾ」
「う……うん。あの……その、ご、ごめんなさい!」
僕はお姉さんに頭を下げて謝った。

「……まぁ、何だ。悪いのは、この下らないことを企むあの双子が諸悪の根源だ。その、次からは気をつけるように」
―――どうやら、許してもらえたみたい。

僕はお姉さん……日ノ元明さんに許してもらえたことにホッとする。

「これにて一件落着ですな!それにしても、んも〜、マサオくんったら、イモが焼けますな〜」
「それを言うなら”世話が焼ける”でしょ……」
「そうともいう〜♪」
「ふふふ……」

―――ほら!また、しんちゃんばっかりちやほやされている。

―――そもそも、僕が他の参加者に攻撃を仕掛けているのは、あいちゃんの元に戻るためなんだ!

―――ぼくは、あいちゃん一筋で今もこうして頑張っているのに……

メラメラと憤慨?それとも嫉妬?の炎が燃え上がる。

「それにしても、マサオ君と会えるだけでなく、明お姉さんとも知り合いになれてオラ嬉しいぞ!わっはっはっはっは!」
「何、そのポーズは?」
「これは、オラのヒーローのアクション仮面の決めポーズ!」
「へぇ……かっこいいね」
「ふむ……決めポーズか……」
しんのすけのアクション仮面の決めポーズに感心して眺める一同。

「……」
―――ッ!そうだ!こんなのはおかしいよ!大体、しんちゃんはアクション仮面が大好きみたいだけど、僕だってアクション仮面は大好きなんだ!

―――それなのに、まるでアクション仮面は自分だけのヒーローみたいに……

―――しんちゃんなんて……しんちゃんなんて……

―――”大嫌い”だ

―――ドクン!

あれ?なんだろう?……そうだ!……僕はやらなくちゃ……八将神として。

―――ドクン!!

参加者の理念(イデア)を集めなきゃ―――

スチャ―――

僕は刀を構えると、デレデレしているしんちゃんの背中へ向かって刀を振り下ろした―――

―――ザンッ
「ウ゛ッ!?……ァァ……」

「あ……」
しんちゃんを狙って斬ったつもりが、アリサちゃんが間に入ってきたから斬っちゃった……ま、いいか別に。

「え?」
はは、しんちゃんったら、ボーちゃんみたいにぼーっとした顔をしているよ!
うん!僕!あの子を斬ってよかった〜♪

―――ドサッ……

「アリサちゃん!」
「マサオ……くん?何をしたの……?」
しんちゃんは事態を呑み込めていないみたいで呆然としていた。

「何って……しんちゃんを斬ろうとしたのさ」
「ええええ!?そ、そんなキャラは、マサオ君らしくない……ゾ」
キャラって……どうして僕のキャラをしんちゃんが決めつけるの!?

「そんなキャラって……一体、しんちゃんに僕の何がわかるっていうのさ!」
「え?オラ……」
何だい、しんちゃんったら急にオドオドしたような顔しちゃってさ……そういえば、健さんのソースを運んだときだっけ。風間君に責められたら急に皆も悪いとかなんとかって言いだしたし……以外にしんちゃんって責めには弱いんだ。

「大体、しんちゃんは僕のこと”おサル大臣マッキッキ”とかふざけた渾名を命名したり、僕の描いた絵の事を”下手だね”といったり見下す言動が多いけど、僕のこと本当に友達だと思ってんの!」
「!?オラ……確かに言ったことがあるけど、でも別にマサオくんのことを見下したりなんか……」
はん!なんだい、なんだい!急に言い訳かい?ふん!とにかく僕はもうしんちゃんとは絶交だ!

「それと、はっきりさせておくけど!僕はしんちゃんや他の人達とは違って、ヒーローとしての素質があったからメフィスちゃんとフェレスちゃんに選ばれたんだ!!それにンンンおじさんが言ってたもん!!!八将神へと改造を終えた僕には、最強の力を備わったって!」

―――そうだ!
僕にはまだ、ンンンおじさんからもらった切り札がある―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

220嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 序 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:02:24 ID:Yt8uW6Co0
―――”ヒーロー”佐藤マサオ殿。貴殿にこれらをお渡し致しまする。

八将神とかいう改造が終わった後、ンンンおじさんが僕に道具を渡してきた。

「こ、これはなんですか?」
僕は正直、使い道がわからないから道具について質問をした。

「ンンンン!それでは僭越ながら拙僧が望むままに!説明してよろしいので?」
「う……うん。よろしくお願いします」
ンンンおじさんが本当によろしいのでと確認してきたが、とにかく説明してもらうこととした。
ところで、おじさんは何かのキャラづくりのつもりでンンンとかいっているのかな?
正直、ああいう大人には僕、なりたくないなぁ……

「まず、一つ目は空気砲。……ンンンッ!これは、『ドカン』と口に出せばあら不思議。目にも見えない空気の弾が貴殿の敵を鮮やかに仕留めるでしょう!正に気分は荒野のガンマン」
―――本当に!?目にも見えない弾なんて強すぎるよ。

「次に、二つ目は日輪刀。切れ味抜群の刀です。そしてなんと、この刀の持ち主は貴殿と同様に愛する者を守るためには命を張れる者が所持していた刀です。愛は何者にも勝りますぞ!ンン〜。いかがですマサオ殿」
愛に一途な人が使っていた刀だなんて……そんなの嬉しいにきまってるよ!……これなら、僕もあいちゃんを守れる男の子になれるかな。えへへ……

「そして、最後はこの―――」
ンンンおじさんがそういって紹介したのは―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

僕は最後の支給品を手に持つ。
これを注射すれば、無敵の肉体を手に入れて誰にも負けない最強の男になれると、ンンンおじさんは言っていた―――

「危険種イッパツ!!」
―――ズドッ!

―――ドクン!

あ……これは、幼稚園児の僕でもわかるよ。

――ドクン!!

僕は最強の男になるんだってことが―――

―――ドクン!!!

「マ……マサオくん?」
ふふ、しんちゃんったら僕の様子に驚いているみたい―――
だから、教えてあげなくちゃ!僕はもう”佐藤マサオ”ではないってことを―――

ゴゴゴゴゴゴ―――――

「しんちゃん。僕はもう、ただのマサオじゃないよ……」
僕を中心に地面のコンクリートが剥がされ、周囲の家が崩落するとその破片が僕の肉体を包み込んで肥大化していく―――
”空気砲”に”日輪刀”も取り込まれてボクの血肉としてなっていく―――

―――これなら、もうさっきみたいに泣いて逃げ回ることはしないで済む!
―――これなら、あいちゃんを守ることができて、あいの隣を奪われなくて済む!!
―――これなら、もうしんちゃんの後ろを歩かなくて……済む!!!

「僕は、歳破神・巨大危険種佐藤マサオだぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

―――歳破神・巨大危険種佐藤マサオ 爆誕

☆彡 ☆彡 ☆彡

221嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 序 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:02:46 ID:Yt8uW6Co0
第2章 辺獄の悪魔とのお約束条項

―――ここは、辺獄の最奥。

「ねぇ、メフィスちゃん。”あの子”使ったみたいだよ……」
「ほう……それは、面白いのぉ」

辺獄の管理者、メフィスとフェレスはクスクスと笑う。

「ねぇねぇ、あの子はいくつ”理念”を集められるかな〜」
「……どうじゃろな。そもそもアヤツは”逃げ回る”倒しにくい”が目的として選ばれた八将神のはずじゃからな」

そう、道満が選定した八将神の枠として選ばれた佐藤マサオの役割は”平然と逃げ回りひたすらに倒しにくい”ただそれだけなのだ。

「それなのに使ったということは、それだけ、”あの家族”に恨みがあるという訳か……」
「ああ〜。あの理念!そうとうあの家族に恨みを持っていたもんね〜。負け負け負け……負け犬、わんわん」

そう、デビルマンこと不動明を八将神に推薦した者がいたように、佐藤マサオが八将神に選ばれたのは、とある一家に敗れた理念の強い意思が関わっていた。

その理念の並ならぬ恨みは、特に一家の息子に向けられていて、その友達の一人を八将神にしたらどうかとメフィスとフェレスに持ちかけてきたのだ。
全ては一家の息子……野原しんのすけを苦しめるために。
阿修羅地獄へと叩き落とすために。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「あれ?ここ、どこ……?」
マサオは見知らぬ場所に戸惑いを隠せずオドオドしている。

「おかしいな。僕、いつものように皆とさよならをして、家に帰っていたはずなのに……なんだか暗くて、怖いよぉぉぉ!!ママ〜〜〜!!!」
マサオは余りの怖さに大声で泣く。

泣いていると―――
―――彼女らが姿を現した。

「ほれほれ、そんな大声で泣くんではない」
「泣き泣き泣き虫。ビエン、ピエン。クスクス……」
「ひっ!?お姉さん達は……誰?」

「ボクの名前はフェレス」
「ワシはメフィス。……良かったの、おぬしは選ばれた」
「え、選ばれた……?」
「そう、選ばれたの。マサオくんは”バトルロワイアル”に選ばれたんだよ〜パチパチパチ」
「バ……バトルロワイアル?」
フェレスが言った”バトルロワイアル”に首を傾げるマサオ。

「バトルロワイアルとは”殺し合い”という意味じゃ。つまり、おぬしが”ここ”から生きて帰るにはおぬしと同様に集められた者を全員殺すしか道はない」
「そ……そんなぁ。僕に人を殺すことなんかできないよ。ママ〜〜〜〜〜!!!」
バトルロワイアルの意味を知ったマサオは自分に出来るわけないと泣き喚く。

「可哀想なマサオくん。見るも無残にグチャグチャに殺されちゃうんだね。だけど、マサオくんは選ばれたの」
「え、選ばれた……?僕が?」
「そう、おぬしは選ばれた。なぜならお主にはヒーローの素質があるからじゃ」
「ぼ、僕にヒーローの素質が!?」
(ヒーローって……つまりアクション仮面のようなことだよね……)
「そう。ただし、ヒーローとしての素質を開花させるには八将神への改造を受け入れなければないない」

「改造……ヒーロー……」
(改造……何か、痛そうだなぁ……でも……僕……ヒーローになれる……アクション仮面のようなヒーローに……)

―――ズイ。

「では、選んでもらおうかの」

「ワシと」 「ボクと」

「「契約する?」」

「契約する」
「契約する」
「契約する」

「ぼ……ぼく……契約するよ!ヒーローになれば……八将神になれば、殺されないんでしょ!?だって、死にたくないもん!それに風間君やネネちゃんにボーちゃん。何より……”しんちゃん”とこれからも遊びたいから!!!

「「契約成立」」

―――パァァァ

「な……何?僕の手の平に変な模様が……?」

「契約が成立した証の紋章じゃ」
「あ、それもう、一生消えないから。うふふ。マサオちゃんの身体を僕が大人にしちゃった」

「さて……それでは、おぬしに会わせたい者がおる」
「僕に会わせたい人……?」
「そう。八将神への改造する担当はワシらではない。ワシらはあくまで、”契約”」
「うふふ……頑張って改造されておいで〜」

マサオはメフィスとフェレスに誘われると―――

―――コツコツ……

此度の儀式の協力者が姿を現した。

「え…えっと……」
「おお!”ヒーロー”マサオ殿!お初お目に掛かります。拙僧、キャスター・リンボ。真名を”蘆屋道満”と申す法師にて陰陽師。ンッフフフフフ……」

☆彡 ☆彡 ☆彡

222嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:03:41 ID:Yt8uW6Co0
第3章 日ノ元明の悔やみ

「ひいいいいい!」

私は今、目の前を走って逃げている幼子を追いかけている―――

―――が

―――ズキッ!

「……ッ!」
怪我の影響もあるのか、普通なら難なく追いつけるはずがなかなか追いつけない。

(再生も落ちている……双子の外道共の仕業か……ッ!)
普段なら直ぐに再生されるはずの体が回復するのに時間がかかっている。

(こんな様では、とうてい”あの男”を討つことなど―――)
憎い男の姿がおぼろげに浮かび上がる。

「……ムッ!?」
(しまった!余計な事を考えていた隙に―――)
ほんの一瞬だが、意識が別の相手に向かっていた隙を掻い潜られたのか、幼子の姿を見失ってしまう。

(不覚!!……なら、まずは回復に集中するとするか)
私は直ぐに気持ちを切り替えて、身体の回復を優先した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

―――シッ!シッ!
ダッ―――

「……よし!ひとまずはこれで大丈夫だろう」
軽いジャブとダッシュで身体の再生チェックを終えた。

「さて、後はあの幼子だが……ん!?」
正直、もう一度出会う確率は低いと読んでいた私だが、まさかの姿を再発見した。

「ふむ。どうやら天は私を見捨ててはいないようだ!」
公人としての立ち振る舞いの成果だと私は嬉しく思いつつ、幼子の元までダッシュした。

「……ようやく、追いつけた」
私がようやく追いかけていた幼子の下へ辿り着くと―――

「お姉さんは、納豆にネギ入れるタイプ〜?」
同じ年頃であろう幼子が身体をクネクネさせながら私に寄ってきた。

―――な、何だ!?今の幼稚園児はそういうものなのかッ!?

☆彡 ☆彡 ☆彡

「ふんふん……マサオくん。いけないことをしたら謝らなくちゃいけないんだゾ」
「う……うん。あの……その、ご、ごめんなさい!」
そういうと、幼子……佐藤マサオは私に頭を下げた。

事情を聞く限り、マサオは善良な民であった。
幼子……それも男の子が訳もわからず、この場へ連れられて銃のような筒や刀を支給されれば、暴力に走ってしまうのも無理はない。
やはり断罪されるべきはあの双子。

「……まぁ、何だ。悪いのは、この下らないことを企むあの双子が諸悪の根源だ。その、次からは気をつけるように」
マサオを軽く窘めた私はひとまずこの件は隅において、次にやるべきことは―――

―――”針目”と”あの男”への対処だ。

私はしんのすけ達を何処か安全な場所へ避難させてから行動へうつそうと考えていた。

しかし―――
すぐに―――
その考えが甘かったことを思い知らされる。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「僕は、歳破神・巨大危険種佐藤マサオだぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」

―――私は何しているんだ。

しんのすけとマサオの関係を知っていたから油断していた。

まさか、友人であるしんのすけを斬るとは予想できなかった。

公人として公正な目で見ていれば、マサオの二心に気づき、防げたはず。
私は自分の不甲斐なさに憤りを隠せない。

―――やはり、日ノ元の出来損ない。

(グッ……!)
葛の嫌味が頭をよぎる。

―――後悔は後回しだ。

「私が相手だッ!」
公人として無力な民を救う。
それは―――

吸血鬼になった身でも変わらぬ想い―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

223嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:04:04 ID:Yt8uW6Co0
第4章 私、守りたいんです!

「う……うわぁぁぁぁああああああ!!!!!」
マサオくんの変身を間近で見たしんのすけ君は恐怖かその場を走りだしてしまった。

「しんのすけ君!?」
「芳桂さん!私がしんのすけ君を追います!芳桂さんはアリサさんを!」
追いかけようとした私をミライマンさんが制止すると、私にアリサちゃんを診るようにと言ってきた。

(そうだ……今は、アリサちゃんの治療が先……ッ!)

「わかりました!ミライマンさん。しんのすけ君をよろしくお願いします!」
「ええ、任せて下さい!」
私はしんのすけ君の追いかけをミライマンさんに任せると、アリサちゃんを抱きかかえて移動した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「アリサちゃん……ッ!」
(……ッ!これは……!!)
私はマサオくんに斬られたアリサちゃんを治療するため、近くの民家に駆け込むとベッドに寝かす。

服を一度脱がして傷の確認をすると、斬られた傷は想像以上に深く、このままでは治療をしたとして、”死”は時間の問題に感じた。

(駄目ッ!私がそんな弱気でいたら!アリサちゃんは生きようと頑張っているのに私がそんな弱気でいたら救える人も救えないッ!)
たくさんの人を救いたい……だからこそ、医師を目指しているのだ!

―――パン

―――よし!気合入魂!

「まずは、治療に使えるのを探さないとッ!」

私は両方の頬を同時に叩くと、アリサちゃんを救う為に行動を開始した。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「……ッ!駄目!”アレ”が足りない」
あれから民家の中を漁るが、やはり病院でないため、置かれている治療に必要な物資に充分な量が無かった。

そして、何より今必要なのは”包帯”

包帯も多少は置かれてはいたが、アリサちゃんの傷を治療するには圧倒的に量が不足している。
今から他の民家や病院を探しに行っていたら間違いなく間に合わない。

(支給品にかけるしかないッ!)
私は支給品に望みを託す。

―――ガサッゴソッ

(お願い……!支給されていて……!!)
私は必死の想いでデイバッグの中身を漁った。
私の必死の想いが通じたのか、出てきたのは―――

「こ……これは!リーネちゃんが私にプレゼントしてくれた白衣!?」
支給品の一つにリーネちゃん手製の白衣があることに私は驚く。

なぜなら、その白衣は既に失ったはずだからだ―――

翼と魔力を失った私は、医師を目指す勉強に日々、励んでいた。
そんなある日、最新の医療技術を学ぶため随行員として同伴となった静夏ちゃんと欧州へ向かった。
途中に立ち寄った、パ・ド・カレーの港で私は親友のリーネちゃんと再会をして、別れの際に贈り物を受け取った。
贈り物は白衣であった。
しかし、そんな大切の白衣だったが、途中立ち寄った村で起きた崖崩れの事故による多数の負傷者を救う為、不足している包帯の代わりとして使用して失った。
それが今、手に持つ白衣である。

「ありがとうリーネちゃん。そして、ごめんね」
再び目にすることができた大好きな親友からの贈り物。
お礼と謝罪をこの場に居ない親友に送ると―――
芳桂は迷いなくその白衣を―――
破り、包帯としてアリサの治療に使用した。

「う、うう……」
「大丈夫だよ!アリサちゃん。絶対に私が助ける!」
斬られた傷の痛みに呻くアリサを必死に励ましつつ芳佳は治療する。

―――私、守りたいんです!

それは、翼を―――
―――魔力を失おうとけっして変わらない宮藤芳桂の勇気であり信念。

☆彡 ☆彡 ☆彡

224嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:05:06 ID:Yt8uW6Co0
第5章 巨大危険種マサオVS吸血鬼

「うらあああああ!!!!!」
「……」

―――ヒョイ。

巨大危険種と化したマサオはその剛腕で明を叩きつぶそうと腕を振るうが、明は難なく躱す。
やはり所詮は幼稚園児。
対する明は幼少の頃から武道を学んでいた。
たとえ、センスが無いと評されていても、マサオ相手に後れを取るわけがない。

「ようよう!姉ちゃん!!潰れちゃいなぁ〜!!!」
「……」
(無駄な動作が多い。大振りすぎる……)
マサオのハンマー・パンチは威力絶大。
だが、大ぶりな”ソレ”は明にかすりもしない。

「何だ〜〜〜!さっきから避けてばかりで、ビビってるんじゃ―――ボン!」

コンクリートで固められた巨腕が粉々に破壊される。

「え?え?」
マサオは何をされたのか分からず、戸惑う。

それは、空手の寸打。
体重移動を利用して自重をぶつける高等技術。
訳も分からないといった様子のマサオを余所に明は寸打を連打する。

―――ボン!

「わ!?わわ!?」

―――ボン!

「ひいいいい!!!???」

明のパンチでマサオの身体を覆う仮初めの肉体は次々と吹き飛ばされる。

―――が。

シュワシュワシュワ…………

マサオはそれ以上に速い再生力で身体の構築を再復元させる。。

(……周囲を巻き込んでの再生力が半端ないな。)
吸血鬼の身体とは違い、マサオは周囲を取り込んで再生する。

「は、はは……」
マサオが笑っている。
肉体の再生をこの目で見ると、不安が消え、心にゆとりが生まれたようだ。

「無駄!無駄!!無駄!!!無駄ァァァ!!!!僕は人間を越えた存在”八将神”なんだよ?お姉さんの攻撃程度で僕の”宿業”を破壊できる筈がないよッ!!!!!」
血気盛んな台詞を吐く。
しかし、類まれな再生力を身に着けたが実力差が縮まったことには気づけていない。
正に……マサオ!!!

(宿業か……私たちで言う遺灰物(クレメイン)のような物か?)
マサオの宿業という単語に明は考察する。

―――試してみるか。

―――タッ!タッ!タッ!
明はマサオの指先から膝、腹と巨大化した身体を駆けあがると―――

―――ボン!

明の寸打によりマサオの胸……心臓部分が吹き飛ばした。
しかし―――
そこにあるはずの”心臓”はなかった。

「!?」
(心臓がないだと!いや……別の場所に移動しているのか?)
どうやら、マサオがいう宿業は別の場所にあるようだ……

「よくも、やったなぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
自分の身体に止まったハエを叩くかの如く手を払う。

225嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:05:32 ID:Yt8uW6Co0
―――ヒョイ……スタッ!
明はそれを避けると地面に着地する。

「この!この!!この!!!この!!!!この!!!!!」
怒りからか先ほどよりも鋭くなったスピードでハンマー・パンチをモグラたたきのように何度も、何度も打ち続けるマサオ。

やはり、明はそれを避け続ける。

「……」
(認めたくはないが、宿業について分からない今、私の普通の攻撃ではマサオを止めることは不可能に近い……しかし、方法がまったく無いわけではない)

―――D・ナイト。

それは、一夜に一発のみだが、真祖級の一撃を放つことができる技。
明のD・ナイト”桜花一閃”を放てば”宿業”を貫き、滅することが可能であろう。

「だが……しかし―――」
場所が分からないという理由だけではない。

「ふんふん……マサオくん。いけないことをしたら謝らなくちゃいけないんだゾ」

ジャガイモ頭の幼子……しんのすけが悲しむのは必定。
それに、道を踏み外したとはいえ”幼稚園児”を矯正ではなく”殺害”する行為は果たして”公人”といえるのか?

一瞬、明は戸惑ってしまう。
その一瞬の躊躇いが勝敗を決した。

―――ガシッ!!!

「遠くへいっちゃえぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」
「なッしまッ……!!」
マサオはようやく捕まえて握りしめた明をハンマー投げのように振り回すと何処かのエリアへフルスイングのように投げ飛ばした。

流石の明も遠心力に逆らうこともできず、無抵抗のまま飛ばされる。

―――くッ!私は一体何をしているんだッ!

殺し合いに乗っているふざけた奴(糸目)を誅することもできず。
殺し合いの空気に呑まれた幼児(マサオ)を止めることもできず。

―――正に凡骨……日ノ元の面汚し。

「ぐッ……〜〜〜〜〜ッ!!!!!」
侮蔑と唾を吐かれた気持ちにされる。

私は―――
私は―――――

【??? /一日目/早朝】

【日ノ元明@血と灰の女王】
[状態]:吸血鬼状態、疲労(小)、
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0〜3
[状態・思考]
基本方針:公人として殺し合いに乗るつもりはない。主催を打倒する。
0:日ノ元士郎を斃す。
1:わたしは……わたしは!
2:針目縫とアーナスを警戒
3:善、ドミノとの合流。
※燦然党との決戦前からの参戦となります。
※明が飛ばされた先は後続の書き手様に委ねます。

☆彡 ☆彡 ☆彡

226嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:06:24 ID:Yt8uW6Co0
第6章 お助けする者との出会いなの!

私が突撃ロケット娘と出会ったのは、小学校1年生の頃だった―――

あの頃の自分は嫌なガキだったわ―――

実業家の両親が親であったあたしは、まぁ”ひねくれていた娘”だった。
執事の鮫島がいつも側にはいたけど、同年代の友達は一人もいなかった。

学校の授業も簡単でツマラナイ。
日々が暇で暇で退屈だったあたしは”いじわる”でクラスメイトとコミュニケーションを取ろうとしていた。

ある日、クラスメイトの一人だった同じ実業家の娘である月村すずかのカチューシャをあたしは奪った。

泣いているすずかをあたしは面白がっていた。
そんな嫌がらせをしていたあたしの頬を―――

―――パン!!!

思いっきりひっぱたいてきた娘がいた。

それが、”高町なのは”。

”なのは”は、あたしをひっぱいた後、こう言い放った。

「痛い? でも大事なものを取られた人はもっと痛いんだよ?」

―――と。
そして、思いっきりなのはと喧嘩をした。

☆彡 ☆彡 ☆彡

「バカじゃないの、なんなのあんた」
「いじわるを見ないフリするくらいならバカでいい」

「ちょっとふざけて遊んでただけじゃない。それを、そんな……」
「だけど、あの子泣いてた。あなたが取り上げて遊んでたアレはあの子にはすごく大事なものだったかもしれない」

「……ッ!?」
「大切なものを取られたり、汚されちゃったりしたらきっとすごく心が痛い。叩かれたりするのよりきっと、ずっと!」

「……」

そう―――
―――あたしに言った。

喧嘩をきっかけにあたしは、なのはとすずかと友達になれた。
もしあの時、なのはとぶつからなかったらあたしは今も友達が出来ていなかっただけでなく、とてつもなく嫌な自分へとなっていたと思う。

あたしは、なのはに”おたすけ”された―――

そして、私はなのはと同じく”おたすけ”を信条とする子に出会った。

「オラ、泣いてる女の子を見捨てるなんてできないゾ...男は女を守るものだってとうちゃんもよく言ってた...それに助け合うのがお仲間だゾ!オラは正義のヒーローだからアリサちゃんをお助けするゾ!」

それが、”野原しんのすけ”
5歳児の幼稚園児にも関わらず、しんのすけは不安に駆られていたあたしを元気づけてくれた。

もし、あたしの初めて会った参加者がしんのすけじゃなかったら、私は不安に押しつぶされて殺されていたかもしれない。
もしくは、死にたくないという気持ちが溢れて、誰かの命を奪っていたかもしれない。

そう―――
あたしはしんのすけに”おたすけ”してもらった。

しんのすけの”おたすけ”はあたしや芳桂さんだけじゃない。
もっと、他の参加者も”おたすけ”することができるはず。

しんのすけだけは死なせるわけにはいかない。
しんのすけはあたしが守る。
たとえ、あたしが死んだとしても―――

☆彡 ☆彡 ☆彡

227嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:06:58 ID:Yt8uW6Co0
第7章 カムヒャー!ニュー・メタルブラザー!

「ん……?私……?」
マサオに斬られた後、意識を失っていたアリサだが、芳桂の懸命な治療により、なんとか一命を取り留めた。

「アリサちゃん!よかった……」
芳桂はアリサが目を覚ましたことに安堵し、目に涙を浮かべる。

「芳佳さん……あれ……しんのすけは?」
周囲にしんのすけの姿が見えないため、アリサは芳桂に尋ねる。

「……」
芳桂は気まずそうな表情を見せ、心苦しいながらもアリサに伝える。

「その……しんのすけ君は友達の様子の変化に驚いて何処かへ走り出しちゃった……」

「ッ!!……そう」
(しんのすけ……)
芳桂の言葉にアリサは苦い顔を見せた後、顔を俯く。

「「……」」
気まずい空気が部屋に充満する。

「たしか……私のデイバッグに……」
「ア……アリサちゃん!?まだ、安静にしないと駄目だよ」
デイバッグの中身を漁りだしたアリサを芳桂はまだ、傷が完璧に癒えていないため、窘める。
しかし―――
アリサは芳桂の言葉に耳をかさず、支給品を探す。

「あった……!!」
一枚のカードを手に取ると―――

「はぁ……はぁ……えい!」
カードを放り投げると、その空間から道下師が姿を現す。

「ボンジュ〜ル!って、へぇ……これはこれは……なんとも面白い場面で呼び出してくれたね〜」
カードから出てきたのはディメーン。
ディメーンは窓から巨大危険種マサオを覗くと愉快そうな声を出す。

「貴方は……ッ!」
放送で聞いた声の主に芳桂は警戒する。

「フフフ、放送でも名乗ったけどボクの名前はディメーン。お見知りおきを……って、おやおや、そんなに警戒する必要はないよ」
ディメーンはアリサと芳桂に自己紹介をすると、警戒の必要はないと話す。

「挨拶はいいから……早く、支給しなさい」
アリサは支給品を渡すようディメーンに言う。

「なるほど……確かに”コレ”なら彼に対抗できるかも知れないね。……でも、本当にいいのかい?キミの体は見てもわかると思うけど、重傷の身だ。無理して操作すれば……おそらく死ぬよ?」
「……ッ!」
ディメーンは指摘する。
この状態での身体での奮闘は”死”だと。
そして、芳桂も苦々しい顔をする。
ディメーンの指摘を否定できないからだ。

「せっかく、芳桂くんの力でなんとか助かってるんだから、その命を大切にしたらいいんじゃないかな?」
ディメーンは安静にしなと忠告する。

しかし―――
それでも―――

「あたしの心配なんかどうでもいいわ!それよりいいから、さっさと私に支給しなさいッ!!」
怒声でディメーンに命令するアリサ。

「はぁ……はぁ……」
「落ち着いて、アリサちゃん」
無理に大声を上げたのか、息切れが激しいアリサ。
そんなアリサの背中を摩り、落ち着かせようとする芳桂。

「やれやれ、忠告はしたよ?」
ディメーンはフゥとため息をつき、支給品を渡す準備を行う。

―――バッ!

「カムヒャー!ニュー・メタルブラザー!」
ディメーンの掛け声が響くと、アリサ達の居る家の窓、すぐ外の空間が歪み―――

バ―――――ン!!!!!

228嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 承 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:07:14 ID:Yt8uW6Co0
なんと、巨大危険種マサオと同じ大きさといってもいいのではないかと思うほどの巨大な緑の帽子を被った顔型ロボットが登場した。

「このロボットの名前は”エルガンダーZ”。緑帽子を被ったチョーイカすロボさ!さぁ、そのボロボロの身体でどう足掻くのか辺獄で見届けさせてもらうよ!わはははは!!!!!」
ディメーンはひとしきり嗤うと姿を消す―――

「芳桂さん。ごめん、アタシ行くね。それと治療ありがとう」
「ア……アリサちゃん!?」

アリサはボロボロの身体で駆けだすとエルガンダーZに搭乗する。

そして―――

「遠くへいっちゃえぇぇぇぇぇえええええ!!!!!」
マサオは明を別のエリアへ投げ飛ばした。

「へ、へへ……やっぱり、この体は強靭!無敵!!最強だぜ〜〜〜!!!」
自らの勝利の美酒によったかのようなマサオ。

その前に―――
エルガンダーZが前に立ち塞がるッ!!!

「ん?あはは!そんな変なロボットで僕に敵うと思ってるの!?」
マサオは突如、姿を現したロボットにはじめは戸惑うが、その影が薄そうな顔のフォルムに嗤いだす。

「……Be quiet!!!」

その一言と同時にアリサはエルガンダーZのパンチをマサオの顔にお見舞いするッ!!!

「ブッ!!!!!?????」
顔は覆われた身体ではないため、直にくらう。
マサオは情けない声を上げた。

―――さぁ、行くわよ!おにぎり頭!!!

☆彡 ☆彡 ☆彡

229嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 鋪 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:07:58 ID:Yt8uW6Co0
第8章 考察する者たちは忙しい

時は少し遡り―――

「……ッ!おい!一度、隠れるぞ!」
「……え?」
猛烈なスピードで、自分達に近づいてくる気配に気づいた私はマシュに声を掛けるが、残念ながらマシュは呆気にとられている。

「ああ……!世話が焼けるな……ッ!」
私はマシュを引っ張ると街角に身を潜める。

すると―――

ブロロロロ―――!!!!!
物凄いスピードで鉄の乗り物が走行してきた。
それは、私達が潜む街角まで近づくと、停まった。

(なんだ……!?鉄の車力か……?)
私は明らかに自分の世界より発展している乗り物の存在に驚きを隠せない。

そんな私の驚きを余所に―――

―――バタン。

「……ふむ」
「……?あの、どうしてここで降りたのですか?」
「……」
(人の気配……?)

謎の乗り物から降りてきたのは3人組だった。

「……」
(この男がリーダー格か……)
私は3人組の中で一番強い人物は男だと即座に判断した。

―――どうする。

複数人を相手にする場合、一番強そうなヤツを倒して戦意を奪う。
それが最適の選択。

(しかし、再び巨人化するには、まだ時間が必要だ。手持ちの武器だけであの男を倒せるか……?)

マシュとの戦闘で当分、再び巨人化することができない。
そして、軍服の男が身に纏う雰囲気は只者ではないとは肌で感じる。
私はどうするか決めあぐねていると―――

「待て。こちらは敵対するつもりはない」
男は、私とマシュが潜む場所へ話しかけてきた。

「私はムラクモ。もし、可能ならば情報の交換を希望するが、いかがかな?」

「……」
(……情報はこちらとしてもほしい。あの男が話すであろう情報全てに信頼を寄せるのは危険だが、他の2人は策謀とは無縁そうな感じがする……ひとまずは、出るとするか……)

―――ザッ。

「私は、アニ・レオンハート。そしてこの子はマシュ・キリエライト」
私は男たちとの情報交換に応じることにした。

☆彡 ☆彡 ☆彡

230嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 鋪 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:08:19 ID:Yt8uW6Co0
「なるほど……巨人化にエルディア人……私や2人とも違う世界軸のようだな」

「……」
(随分と興味深い世界だ。この女が言うにはエレン・イェーガーもしくはエルディア人が関わってる可能性が高いというが、”船頭多くして船山に上る”ということわざがある。多連合は時は瓦解の原因になりやすい。考慮には入れてはおくが、今は片隅に置いといて構わんな。……そして、もっとも興味深いのはこのマシュとかいう女……見せしめの関係者。わざわざ見せしめで殺したのに、蘇らせて参加させましたでは、余りにもお粗末。名簿の藤丸立香は恐らく、同姓同名の別人の可能性が高いだろうが、今は伝える必要はないな。兎に角、この女の世界の関係者が最低一人は関わっているだろう。この女の持つ情報は、奴を相手にする上で大きなアドバンテージとなるだろう。もう少し詳しく聞きたいところ)

「……」
(私からの情報を精査しているってところかしらね。ま、それはこちらも同じ)
私もムラクモからの情報を精査していた。

(この男の考察を聞く限り、相当数の世界の人間が集められているということになるな……とすると、やはり双子だけの犯行とは考えにくい。エレン・イェーガーもしくはエルディア人が関わってる可能性はあるとみていいだろう。あの男はその可能性は低いと考えているようだが、わざわざ、死者であるはずのベルベルトを蘇らせてまでこの殺し合いに参加させているんだ。考慮はしとおくのがベストだ。見知らぬ支給品にも強力な威力があることから、それらの技術を手に入れようと考えているのか?それと、刀使にリフレクターか……私の世界に存在していたら、巨人とは別の意味で脅威になる存在だろう。と、なると自分の巨人化の能力だけに過信するのは危険だな。そして、このムラクモという男、一見主催に反抗を示すスタンスを装っているが、何か”企んでいる”確かな確証はないが、女の勘というヤツなのだろうか……私の身体がこの男に気を許すなと警告している。……警戒はしておくべきだろう)
互いに情報の精査が終わると同時に―――
突如、地響きが大きくなる。

ゴゴゴゴゴ!!!!!

「地響きか……」
「何、この音……」
「……あそこ」
沙耶香の指さした方向に一同、目線を向ける。

「あれは……!巨人!?」
(エレン・イェーガーにいる手の者か!?)

「アニさんの巨人化より大きい……」
先ほど、巨人化したアニと戦闘を交わしたマシュはその大きさに驚愕する。
そう、目視した巨人らしき生物は制限されたはいえ、先ほどアニが巨人化した姿よりも大きい。

「おい!そこの車で移動できるか!」
「何!?」
アニはムラクモに尋ねる。

「あの巨人らしき人物は、エレン・イェーガーによる手の者か巨人薬を使用した可能性が高い。どちらにせよ、捕らえれば大きな情報源になる」
―――そのどちらかでもなかったとしても、行く価値はある……!!

「ふむ……」
(あれほど目につく存在……恐らくは他の参加者達も集まってきている可能性は高い。帝具もあるから、日姫級が相手で無ければ充分に対処できるだろう。ここは、情報収集も兼ねて乗るとするか)
ムラクモはアニの提案に利があると判断する。

「よかろう。それでは、あの巨大生命体の場所まで連れていこう。2人もそれでいいいな?」
「はい」
「……うん」
日菜子、紗耶香も巨大生命体をそのまま放置しておくことは危険だと判断したため、ムラクモの判断に賛成する。

家紋タクシーに全員搭乗すると―――

「いくぞ、全速前進だ!」
アクセル全開で現場に向かう家紋タクシー。

☆彡 ☆彡 ☆彡

231嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 鋪 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:08:44 ID:Yt8uW6Co0
第9章 正義の法則

―――スタスタスタ
「……」
「……」
「……」

―――スタスタスタ
「……」
「……」
「……」

「……」
(う〜ん、何だか植木殿と針目殿はお互い警戒し合っているように感じるが、一体、どうしたのでしょう)

「……」
服部のヤツ。オレと針目の緊張感に違和感を感じてるのか……まぁ、無理もないけど。

(だけど、服部も針目もよく、オレに対してキレないよな……)
―――う〜ん?
何か、引っかかるな……よし!聞いてみるか!

「なぁ、そういえば服部や針目はオレに何にも感じないのか?」
「「?」」
オレの質問に服部と針目は首を傾げる。

「いや、その……オレの顔を見てムカムカするとか」
試しに例を挙げて確かめる。

「?いえ、別に植木殿の顔を見てイライラなどしませんが……」
服部はオレの例えに訳がわからず、戸惑いながら答えている風だ。

「何々?もしかして、耕介ちゃんって”M”なの?」
針目は……からかいながら答えた。

―――と、すると2人とも、特にオレに関してなんとも思っていないということか。

「……!!」
(そうだ……!!ここに来てから、服部も針目もオレに嫌悪感をもって接していねぇ!」
もっと早く気づくべきだった。
―――そうだよ。
オレは”女子に好かれる才”を失ってるから、基本的には女子に嫌われるはず!!!

そう、植木耕助ことオレは同級生の森を救う為、コバセンから言いつけられていたことを破った。
その言いつけとは―――
いかなる理由があっても、能力を非能力者に使用すればペナルティとして自らが保有する才を一つ失う。
オレは”女子に好かれる才”を失い、結果、クラスの女子のみならず”女性”から嫌悪感を抱かれるようになった←ま、オレは特に気にしていないが。

(……もしかしたら)
オレは意を決して―――

「花鳥風月(セイクー)」
「えっ!?」
「へぇ〜……」
予想通り、神器を発動することができた。
オレは花鳥風月の力で宙に浮く。

「う、植木さんも魔力を持っているのですか!?」
―――ん?うーん。魔力とは違うんだけどな。

「……」
(ふぅ〜ん、またまた作戦変更したほうがいいかも☆)
お!どうやら、針目にはいい牽制になったかも知れねぇな。
結果オーライとしておくか。

(服部達にはオレの世界については、軽く話してはいたが、やっぱり直に目の当たりにしちゃあ、驚くよな)

―――それから、オレは2人に神器のことについて話をした。

☆彡 ☆彡 ☆彡

232嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 鋪 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:09:09 ID:Yt8uW6Co0
「そうなのですか……植木さんから神器については聞いてはいましたが、やはり、実際に目の当たりにすると、こう、なんといいますか驚きました!」
「へぇ〜〜〜。ちなみに、出会った時の情報交換での際、ボクは神器について聞かされてなかったけど?もしかして、まだ秘密にしていることあるんじゃないかな」
「……それは、お互い様だろ?」
「あは!何のことかボク、分からないな〜〜〜☆」
そんなやり取りを交わしていると―――

突如―――

ゴゴゴゴゴ!!!!!

「なっ!?」
「……ッ!?」
「何、何、ワクワクするね♪」
地響きに3人は何事かと身構えた。
すると―――

「植木さん!針目さん!あれを!!!」
服部の指さした方角に巨大な生物(巨大危険種マサオ)が姿を現した。

「わ〜〜〜、と〜〜〜っても、大きいね☆」
「ええ……ッ!?植木さん!ポケットが光っていますよ!」
「ん?」
服部が驚いたようにオレのポケットを指さす。

「……何だ!?」
(たしか、こっちのポケットには人形が……)
オレはポケットの中に入れていた”アクション仮面人形”を取りだすと、人形が光っていた。

「人形が……」
「普通の人形じゃなかったみたいだね」
「ああ……」
全身が光っていた人形はあのデカい怪物(巨大危険種マサオ)の方角へ一筋の光を収縮させた。

「あそこへ行けっていうことか……」
人形がそこへ向かえと訴えかけているようだ。

「行きましょう。アレを放置したら、他の参加者に危害が被る可能性があります」
服部も向かうべきだと進言してきた。
そして、針目も。
正直、針目も賛同したのは意外だ。
……何か、良からぬことを考えてねぇといいんだが……

「……うし。それじゃあ、向かうか!」
オレ達は巨大な怪物が現れたエリアへ向かうこととした。

☆彡 ☆彡 ☆彡

233嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:10:03 ID:Yt8uW6Co0
第10章 それでも私は守りたい

「アリサちゃん……ッ!」
芳桂はアリサが操作するエルガンダーZと巨大危険種と化したマサオの攻防を家の屋根で眺めている。

(私……無力だ)
せめて魔力があれば―――

芳桂は何もできずにただ眺めることしかできない自分の不甲斐なさに苛立ちを隠せず、手をギュッと固く握ると体を震わせる。

(私にも何か……できることはないのかな)
必死にできることを思案していると―――

「み、宮藤さん!よかった……!無事で……」
「……え。し、静香ちゃん!?」
(それに、そのストライカーユニットは……って今はそんなことはいい!)
静香は探し人の宮藤に出会えて喜びを隠せない。

「ごめん、静香ちゃん!私をあのロボットのコックピットまで連れてって!」
一方、芳桂も静香との再会に喜ぶが、直ぐに自分をエルガンダーZまで連れていくよう頼む。

「え?は、はい。判りました!」
静香は状況をつかめてはいないが、敬愛する宮藤の頼みを聞き、抱きかかえると、指定した場所まで宮藤を連れていく。

「アリサちゃん!」
「……芳桂さん。来たのね」
アリサはコックピット内に入った芳桂をチラリと見ると、直ぐにまた前を向いて操作に没頭する。

「ありがとう、静香ちゃん。それと、何か武器みたいなのは支給されている?」
「え?は、はい……この”特殊棍棒”という武器ならありますが……」
静香は芳桂の問いに戸惑いつつも武器を提示して答える。

「ごめん!ちょっとそれ借りるね!」
「あ!?み、宮藤さん!」
芳桂は静香の特殊棍棒を手に取ると走り出し―――
再び、コックピットから出ると、緑の帽子のてっぺんに立ち、”つかった”

ガガガガガ!!!!!

「はぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
芳桂は必死の形相でとくしゅこんぼうの銃機能でマサオの腕の関節を集中して狙い撃つ。

―――ズド―――ン……
芳佳の集中砲火で腕や一部の身体のパーツが崩落するが―――

「ははは!そんな不安定な場所で攻撃するなんて、芳桂さんって意外と考えなしなんだね!」
もう片方の腕が芳佳を狙いに定め―――

―――ブオッ!

「……ッ!?きゃっあ!」
直撃は避けられたが、パンチの風圧により、芳桂はエルガンダーZの頭上から転落を―――

「宮藤さんッ!!!」
―――間一髪。静香が芳桂を空中で受け止めて大事に至らずにすんだ。

「あ、ありがとう。静香ちゃん」
芳桂は、助けてくれた静香にお礼の言葉を伝える。

―――が。

234嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:10:23 ID:Yt8uW6Co0
ポタ―――

「し、静香ちゃん……?」
(これって……涙?)
芳桂の頬に涙が零れ落ちた。
静香の瞳から零れ落ちた涙が―――

「宮藤さんは、もう少し自分の命を大切にしてくださいッ!!!」
「!?」
「宮藤さんの軍規に反してでも、周りの命を救おうとする姿勢は、昔は賛同できませんでしたが、今は理解できます!ですが、それで自分の命を失ったのでは元の子もないんですよッ!ですので、ご自身の命も……!お願いですから……」
「……静香ちゃん」
静香の魂の訴えが芳佳の魂に響いたのだろうか。
芳佳の身体に異変が起きるッ!!!

「……ッ!?」
(胸の奥が熱くなってきた!?」

―――カッ!!

芳佳の身体が光り輝く―――

「ま、魔法力が戻ってくる!?」

芳桂を中心に魔法陣が―――

そして、豆柴の耳としっぽが生える。

「え?え?」
(一体、これはどういうことなんでしょうか!?)
静香は芳佳が再び魔力を取り戻したかのような様子に戸惑う。

「……静香ちゃん」
「あ、は、はい」
芳佳は静香に顔を向けると笑顔で言い放った。

「ありがとう。静香ちゃんの言葉で私、目が覚めた。私はアリサちゃんの傍につくから、静香ちゃんは”コレ”での援護をお願い!」
そういうと、芳佳は静かのとくしゅこんぼうを返す。

「……分かりました!それと……”こちら”をどうぞ!」
静香は芳佳に支給品の一つを手渡す。

「これは?」
「これは”じわじわキノコかん”といって、体力を回復するキノコみたいです。私の手元にいくつか数がありますので、お一つ持っていってください!」
「ありがとう静香ちゃん。それじゃあ……行ってくるね!」
静香からうけとった”じわじわキノコかん”を手にエルガンダーZのコックピットの中へ戻っていった。

「……よし」
(正直、宮藤さんには聞きたいことが沢山ある。だけど……宮藤さんはやっぱり、私が憧れている宮藤さんだ!今は……前の敵に対処しよう」

敬礼をして芳佳を見送ると、静香は巨大生命体マサオに向かっていった。

☆彡 ☆彡 ☆彡

235嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:12:19 ID:Yt8uW6Co0
「しつ……こい……なぁ!」
マサオの巨体タックルはエルガンダーZを吹き飛ばす。
明ほどではないが、結構遠くの位置まで吹き飛ばされた。

「う……くッ!」
―――ズキン。

(傷が……まず、目が霞むわ……)
再び、悪化する痛みに意識を失いかけるアリサ。

そこへ―――

「……アリサちゃん、大丈夫!?」
「芳佳さん……往ったり来たりで忙しいわね……私は……大丈夫……よ」
アリサは芳佳の言葉にカラ元気で答える。

「……もう大丈夫だよ」

―――パァァァァ

「こ、これは……!?」
(もしかして魔法?だとすると芳佳さんってまるで、なのはやフェイトみたい……それにしても温かい)
芳佳がアリサの肩に手を添えた瞬間、アリサの体は温かな魔力に包まれる。

そう―――
これが、宮藤芳佳の固有魔法”治療魔法”。

「アリサちゃんの想い、伝わってるから!だから、安心して!!私が絶対にアリサちゃんを死なせたりはしないから!!!」
芳佳は、アリサに常時、治療魔法をかけ続ける。
そうすることで、アリサの消えかかる命の灯を保つ。
それが、芳佳が選んだ”守る”!

「それと……これを食べてみて!体力が回復するキノコみたいなの」
芳佳は先ほど静香から手渡されたじわじわキノコかんを開けるとアリサに食べるよう促す。

―――モグモグ。

「……ありがとう、芳佳さん。これなら……しんのすけが戻ってくるまで、持ちこたえられそうだわッ!!!」
アリサは芳佳の治癒魔法とじわじわキノコの効力でなんとか、失いかけた意識を少しだけ取り戻した。

(まだ、おにぎり頭と戦うことが出来るッ!)
アリサはマサオを睨みつける。

☆彡 ☆彡 ☆彡

236嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:12:35 ID:Yt8uW6Co0
闘いの場に戻ったアリサの目に映ったのはマサオに対峙している何人もの参加者の姿だった。

「……止めないと」
ーーーあの”おにぎり頭”の相手は私……いえ、”しんのすけ”よ

アリサはこの場を任せてもらうようスピーカーで呼びかける。

参加者とやり取りを交わしていると、マサオは―――

「あはは!しんちゃんが戻ってくるって!?
マサオはアリサの願いを嗤う。

「戻ってくるわけないじゃないか!アリサちゃんは僕に斬られて気を失っていたから知らないだろうけど、しんちゃんのあの情けない逃げた姿……本当に笑っちゃうよ」
「……ン」

「?。何、言ってんのか聞こえないよ(笑)」
マサオの巨大な手がマサオの耳に添えられて”聞こえなーい”とポーズをとる。

「バカチンって……言ってん……のよ!」
「ぶっ!?」
右フックがマサオの顔にめり込む。

「大体、貴方!しんのすけの友達なんでしょ!?それなのに友達を後ろから斬りかかろうとして!そんな卑怯な行動、男の子として恥ずかしくないわけ!?はん!調子に乗ってるんじゃないわ……よ!貴方は選ばれし者でもなんでもないわ!あんたはただの……裏切りおにぎりよ!!!」

「ぶぶっ!?」
今度は左フックがマサオの顔にめり込む。

「しんのすけは必ず戻ってくる!」
(そうよね?しんのすけ……あたしはあんたが戻って来るって信じるわ!)

☆彡 ☆彡 ☆彡

237嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:13:19 ID:Yt8uW6Co0
第11章 巨大危険種マサオVS大人たち

静香が宮藤をエルガンダーZへ運んでいくのを見届けると、耕介と針目はそれぞれ行動を開始する。

「いくぞ、針目!」
「えー、正直気乗りしないんだけどなぁ〜、ま、いいか!はいはーい☆」
耕介と縫はそれぞれ武器を構えると、左右に分かれてマサオに攻撃をしかける。

「ぶっとい体だね!でも、チンチクリンの君には似合ってないよ?」
縫は片太刀バサミでマサオの右膝を連続刺突する。

「言っておくけど、そこは僕の痛覚とリンクしてないから、いくら攻撃を仕掛けても無駄だよ!」
そう、先の明との戦闘実績からマサオは余裕綽々。

「え?別にキミに痛みが感じないとかどうでもいいんだけど?というか、この攻撃の意図が分からないなんて、キミってニブチンさんだね☆」
「へ?」
縫の言葉にポカーンとするマサオ。
そこへ―――

―――バシュゥゥ!!!
―――シュルルルル……
―――ザンッ!!!

立体起動装置を使った耕介が空中を右往左往に移動すると、付属しているブレードでマサオの左膝を切り刻む。

「わ!わわ!!??」
縫と耕介の攻撃の連携により両膝が破壊されたマサオはスッ転ぶ。

―――ズドンッ!!!

「よし!」
「今だね〜!」
2人はマサオの顔目掛けて突っ込む。

―――が。

「させないよ!!!!!」
マサオの背面から伸びたいくつものGペンの触手が二人の接近を防ぐ。

「く……ッ!これじゃあ、近づけねぇ!!」
「あは、これって人間ビックリ箱だね☆」
Gペンを破壊しても次のGペンが次々と生み出されては襲い掛かる。

襲い掛かってきては破壊!襲い掛かってきては破壊!
―――と膠着が続いている中、新たな動きが起こる。

→どうぐ
→とくしゅこんぼう
→つかう
 はずす

ガガガガガ!!!!!

触手のようにのびているGペンが破壊される。

「植木殿!針目殿!無事ですか!?」
芳佳とのやり取りを終えた静香の援護。
そして―――

再び、植木と縫はマサオの眼前まで近づく。
―――しかし、マサオもただ攻撃を黙って受けるつもりはない。

「あらよっと!!!!!」
マサオの背中から巨大な蝙蝠の羽根が生える。

―――バサバサバサ!!!!!

飛翔することにより、ムラクモの攻撃をマサオは避ける。

238嵐を呼ぶ辺獄平安大合戦 叙 ◆s5tC4j7VZY:2021/08/26(木) 00:13:53 ID:Yt8uW6Co0
「……!?」
(すげー……)

「あは!」
(この再生力に外見変化……まるで、生命戦維のように身に纏ってるって感じかな☆)

かつて、マサオは人類動物化計画を企む四膳守が開発した”人類動物化ドリンク”の失敗作により、半分蝙蝠化したことがある。
八将神への改造により、再びその能力を得たのだ。
家紋タクシーが現場に到着すると、各自、タクシーから下車して行動を開始した。

スタタタタ―――

「斬る……」
決して浅い傷ではないのだが、紗耶香は木から木へと飛び移りながらマサオの身体に飛び移ろうとするッ!

「ああ〜〜〜!俺を斬るだって!?上等じゃねぇか!日輪刀!!!」
マサオの声に応じ、再生された片腕が身体のサイズに合わせた巨大な日輪刀へと変化する。

「ナマスにしてやるぜ〜〜〜!!!」
―――ブンッ!

紗耶香の命を刈り取る一撃。

スッ―――

それを紗耶香は迅移で避ける。

「えええ!?お姉さんの姿……追いつけないよぉぉ!?」
マサオは紗耶香の迅移に追いつけずただただ困惑。

「……」
紗耶香はなんとか飛び移れたマサオの身体を駆けあがる。

そして―――

「私も……!」
リフレクターへと変身した日菜子も逆の方向からマサオの身体を駆けあがり―――

―――ザンッ!
―――ザンッ!

―――日菜子と紗耶香の両雄による斬撃は蝙蝠の羽を鋭く切断した。
「うわわわわ!?」

空を支配する翼を失い、マサオは哀れにも地面に堕ちる。

「よし、確保するぞ」
ムラクモ、アニ、マシュがマサオの動きを封じようと行動を開始しようと動いたその時―――

「痛いよぉぉおおお!〜〜〜〜〜#####」
「「「!!??」」」
(((み、耳が……)))

「ママ〜〜〜######」
マサオの口から強力な超音波を発生させた。

「これは……音波ですか!?」
「うるせー……」
「あはっ!?とっても耳障りな音だね☆」
「……まるで蝙蝠」
「これじゃ……あ、動くのもままならな……い」
超音波の反響により動きを一度、止められると―――

―――ニヤリ。
「へっ!チャンスだぜ〜〜〜!」

「ドカン」「ドカン」「ドカン」「ドカン」「ドカン」「ドカン」「ドカン」「ドカン」


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