したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

悪魔憑きバトルロワイアル

47戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:50:32 ID:nw1JLFF60

「そうだ。それでいい。俺を退屈させてくれるな」

ニイィと口角を歪め、ゾッドは嗤う。
その笑みに、炭治郎の腹部が煮えるように熱くなっていく。

「退屈...?お前はなにを言っているんだ」

この閉鎖空間で強制された殺し合いに怯え、己の命を守る為に神子柴の言葉に従うのならばまだわかる。
だが、この男は『退屈』などと宣った。炭治郎にはそれが理解できなかった。

「戦いこそが我が愉悦。強者の血こそが俺の渇きを埋めるのだ。容易く散る命であるならば、せめて微かにでも俺の渇きを埋めてみせよ」

放たれた言葉は私欲そのものだった。
一方的で、横暴極まりない我欲。
炭治郎の腹部に留まっていた感情は、一気に脳天にまで噴出した。

「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

響く怒声に、しかしゾッドは微塵も怯まない。
愉悦の笑みも止まらない。

「グハハハハハ!俺を許さない?ならば貴様は何ができる!?」
「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」
「ならばこれ以上の問答は不要。俺の屍を踏み越えてみせよ!」

ゾッドの口上が終わると同時に、弾けるように炭治郎が駆け出す。

ス ウ ウ ウ ゥ ゥ ゥ

炭治郎の呼吸が変わる。
放たれるは、水の呼吸ではなく、もう一つの呼吸。
持久力と引き換えに破壊力を手に入れた、父から授かった呼吸法から放たれるは、攻撃の威力を一点に集中させる突き技。

―――ヒノカミ神楽 陽華突

高速で迫る炭治郎の突きに、ゾッドは両腕を盾のように構えることで迎え撃つ。
剣が、ゾッドの右腕に突き刺さった。

48戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:50:55 ID:nw1JLFF60
(このまま型を切り替えろ!腕を斬るんだ!)

「ヒノカミ神楽―――」

炎舞。放たれる筈だったそれは、しかし剣が動かず。
ゾッドの筋肉は、貫かれてなお衰えず、炭治郎の剣を挟み込んでしまったのだ。

「この俺に守りの型を取らせるとは...貴様の命、渇きを埋めるに値する!」

ゾッドは空いた左腕で、炭治郎の腹部を狙う。

躱しきれない。炭治郎は己の死を覚悟する。

ドスリ、と鈍い音が響き炭治郎の腹部が赤く染まる。

が、しかし

「......!?」

ゾッドの手に、肉を割く感触は感じられなかった。当たったはずなのに、なぜ。
ドサリ、となにかが落ちた音がその答えを彼に伝えた。

落ちたのは、ゾッドの毛深く太い左腕だった。

ゾッドの腕の切断面から遅れて血が流れ、それを押し付けられた炭治郎は蹲り大きく息を吐く。

(いつの間に斬られた...?この小僧ではなく、あの小娘でもない。ならばこれは...)

ゾッドの視界の端で、バサリ、と白の外套がたなびいた。

(乱入者か。俺の意識外からとはいえ、斬られた感触すら与えんとはな)

ふらふらと立ち上がり、事態を遠目に見ていたかりんはぽつりと呟いた。

「ヒーロー...なの」

49戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:52:25 ID:nw1JLFF60



堂島正はヒーローに憧れていた。
子供の頃にテレビで見た、世のため人の為に戦うかっこいいヒーローに。
それに一番近いのは医者だと思っていた。
どんな人間の命も救う。そんな正義の象徴のような人間がいるだけで、きっと世の中は良くなると信じていた。
けれど、事はそんな単純ではなかった。
医者とは命を扱う仕事である。当然ながら、手術のひとつとっても全てが成功するとは限らない。
難病の治療に成功したところで、同じ治療法で全ての人が救えるわけではない。
99%成功する手術でも、予期せぬ出来事で残りの1%を引き当ててしまうこともある。
あと数秒早く手術を始められれば助かったというケースもある。
結局のところ、人が一生のうちに救える人間の数など数えられる程度だ。
だから、救える時があれば救えない時もあると割り切るしかなかった。
とある少年が抱えていた、手術の成功率が5割の病気を治した時だって、特別嬉しく思えなかった。

その少年、佐神善との出会いが、堂島の価値観を少しだけ変えた。

最初は彼に対してもなにも感じていなかった。
退院してからも、病弱の幼馴染、糸葱(あさつき)シスカに会いに病院に通っていたのを見かけた時だって、時期に来なくなると思っていた。
けれど、彼は何度も足を運んでいた。毎週必ず、雨の日でも雪の日でも。小学生から中学生に、高校生になってもずっとお見舞いに足を運び続けた。

そんな彼に次第に興味を持った。
どうしてそこまで気を配ってやれるのか、食事でもしながら話を聞いてみたかった。
聞けば、大層な理由もなかった。『シスカに元気になってほしい』。ただそんな優しさだけで彼女のもとへ足を運んでいたと分かった時、堂島は嬉しくなった。
優しさに溢れた命を救うことが出来たんだという、医者の喜びに改めて向き合えた。
シスカに対してもそうだ。
彼女の病気は何度手術をしても治らなかった。堂島自身、先も長くないとどこか諦めていた。今でも完治する確率は低いと見立てている。
けれど、確信していた。
善の優しさがシスカの支えとなっており、ある晴れの日に彼らが手を繋いで退院してくれることを。

割り切っていたはずの感情が、再び蘇ってきた。
彼のような優しい命を救いたい。その優しさで傍の人を救ってほしい。そんな者がいれば、きっと世の中は綺麗になるんだと。
それが医者である自分の本来の願いだったのだと。

その一方でこうも思う。
彼らと真逆の、その一人がいることで何人もの命を害する者がいる。
そんな者達がいなくなれば、どれだけの命が救われるだろうと。
医者である以上、そういった者たちが運び込まれてくれば手術もするが、これから悪党に奪われる命を見捨てていいものか。
否。
悪という病巣は野放しにできない。
一人で全てを狩りつくすのは無理だとしても、恐怖を植え付けることで抑制することはできる。
だから、堂島は偶然手に入れた吸血鬼(ヴァンパイア)の力を使い、悪人を切り殺してきた。
悪に奪われるであろう命を穢させないために。悪事を働けば殺されるという恐怖を病巣共に植え付けるために。

『医者』という正義と『悪党狩り』という恐怖。その二つを象徴する存在であり続けることこそが、彼の望む『ヒーロー』の在り方だった。

50戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:53:55 ID:nw1JLFF60


そしてそれは殺し合いに巻き込まれても変わらない。
老婆の語った報酬、死者の蘇生には微かに心が傾いた。愛する家族を取り戻せるんじゃないかと。
けれど、そんなものはまやかしだ。所詮は老婆の掌の人形でしかない。
だから堂島の方針は変わらなかった。『悪を斬る』。当然、その悪にはあの老婆も入っている。

名簿には知った名が幾つかあった。

ドミノ・サザーランド。狩野京児。加納クレタ。芭藤哲也。そして―――佐神善。

クレタと芭藤は確かに死んだはずだが、この殺し合いの為にわざわざ蘇らせたのだろうか。なんにせよ、彼らは間違いなく人々に危害を加える。斬り捨てておくべきだ。
ドミノと狩野京児は燃然党の中では残忍残酷と評判が悪いが、民間人には被害を及ぼしたという話は聞かない。あの老婆を討つ為に手を組むことも考えよう。
再三警告しても善を戦いに巻き込む以上、一時休戦、以上の関係は作ろうとは思わないが。

そして善。彼は死なせない。必ず生かして返してみせる。

方針を定めた堂島の耳に、ほどなくして戦闘音が届く。
彼はすぐに吸血鬼の姿に変身し、急いで現場へと足を進めた。
もしも善がそこにいれば必ず戦っているだろう。死なせる訳にはいかない。

やがてたどり着いた先に見たのは、巨大な怪物に刀を構え対峙する少年。その背には傷ついた少女が倒れている。


「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

声が聞こえた。怪物に臆することなく響く、少年の声が。

「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」

遠目に見ていてもわかる。少年と怪物には如何ともし難い実力差がある。
あのまま戦い続ければ、確実に少年は死ぬ。
けれど、彼は立ち向かうのだろう。
剣を振るうことで救える命があるのなら、彼はその身を傷つけても戦うのだろう。

彼のように―――佐神善のように。

「...ハッハッハッ」

思わず笑いがこぼれる。
果たして生涯のうちに、あそこまで他人の為に身体を張れる人間に何人が出会えるだろう。
自分は幸運だ。善のような少年に二人も出会えたのだから。

「だったら、死なせる訳にはいかないな」

堂島は駆け出した。己の正義を貫く為に。『善』を摘む悪を罰する為に。
そして彼は―――怪物の左腕を斬り落とした。

51戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:54:39 ID:nw1JLFF60



「素晴らしい剣技だ。俺の腕をこうも容易く断つとはな」

ゾッドは斬り落とされた左腕を拾い、切断面同士を合わせた。
すると、たちまち皮膚と筋繊維が修復され、左腕はあるべき場所へと戻った。

(ドミノと同レベルの再生能力か...吸血鬼ではないようだが)

堂島自身、吸血鬼という異端だが、ゾッドから発せられる禍々しい気配は今までに感じた類のモノではなかった。
ならば一体これは...

(なんにせよ、思ったよりも手強そうだ)


「ありがとうございました。俺は竈門炭治郎と言います」

突然の異形の来訪者に面食らった炭治郎だが、ひとまずは助けてくれた礼を言おうと頭を下げた。

「あの、あなたはいったい...?」

困惑する炭治郎の問いに、堂島は仮面の奥で笑顔と共に返した。

「ヒーローさ」

52戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:55:32 ID:nw1JLFF60

【F-6/1日目・深夜】

【ゾッド@ベルセルク】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、右腕に刺さった大柴ソウスケの日本刀@デビルマンG(炭治郎の支給品)
[行動方針]
基本方針:本能の赴くままに戦う
1:乱入者(堂島)と戦う

※参戦時期は15巻くらいからです


【堂島正@血と灰の女王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:悪を滅ぼし正義を生かす。
1:炭治郎たちを救う。
2:善を生還させる。ドミノと狩野とは積極的に争うつもりはない。

※参戦時期はドミノと内通の契約を結んだ辺りです。

【御園かりん@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]頭部出血(中)、全身にダメージ、気絶寸前、疲労(大)、煉獄杏寿郎の日輪刀@鬼滅の刃(ゾッドの支給品)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:アリナ先輩を探すの。七海やちよも恐いけど探すの...
1:炭治郎と行動するの。
2:ぼさぼさ筋肉おばけ(ゾッド)、恐いの...
3:ヒーローが現れたの...!

※参戦時期はアリナがマギウスに所属しているのを知る前からです


【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]出血(中)、全身にダメージ、打撲(中)、疲労困憊
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
0:ゾッドに怒り。被害が出る前に倒す。
1:善逸、伊之助、玄弥、時透、天元との合流。
2:かりんと行動し知人を探す。
3:鬼舞辻無惨を斬る。鬼を斬る。


※参戦時期は柱稽古の辺りからです
※鼻が利く範囲が狭まっています。

53 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:56:11 ID:nw1JLFF60
投下終了です

水野智己を予約します

54 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/20(金) 17:59:58 ID:klyhm37g0
延長させていただきます

55名無しさん:2019/12/20(金) 18:03:28 ID:5Qu9hmy.0
投下乙です
いきなりの全力バトル、やはりゾッドは強い

56 ◆/wJ/Apndog:2019/12/20(金) 19:31:50 ID:qyTkp.bg0
延長します

57 ◆Mti19lYchg:2019/12/21(土) 00:54:38 ID:gyG7/kk60
カチュア、善逸で予約します。

58 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:01:54 ID:ycXqfzKg0
投下します

59羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:02:31 ID:ycXqfzKg0
サイドチェスト。
ボディビルディングにおけるポーズで、一方の手首を他方の手でつかみ腕および胸に力を込めて際立たせる姿勢である。

鏡の前に立ち、全裸でこのポージングをとる禿げ頭の巨漢は水野智己。
天童組というヤクザの組長である。

「ん―――、今宵の己(おれ)の筋肉もキレておる」

次いで、10kgのダンベルを両手にそれぞれ持ち、肘を屈折させる。
彼はこの殺し合いに送られてからすぐに筋トレを開始していた。
筋肉と会話することで、己の身体の調子を確かめているのである。

(しかし思い出せん...尻(アス)を貫かれた後、己はなぜここに連れてこられておる...?)

豪華客船でのメデューサとの死闘の末、自分は四階から落され、立っていたポールに処女を奪われた。そこまでは覚えている。
だが、いつの間にかアスからポールは抜かれており、神子柴なる老婆に殺しあえと命じられていた。
豪華客船でのことを夢と片付けるにはアスを貫かれた感覚は現実的であり、薬物を投与されたにしても、あの状況で自分に手出しできるとは思えない。
もはや己の理解の範疇を超えている。

とにもかくにも、この会場にメデューサの内の三人が巻き込まれているのは有難い。
これで奴らに殺された組員(かぞく)の弔い合戦に臨めるというものだ。

それに、奴らに組員は皆殺し済みだと告げられ、生存を絶望視していた神崎の生存が知れたのも幸運だ。
彼女と出会えた時は無事を祝ってやるとしよう。

「さしあたって己のすべきことは奴らの捜索...否」

そっと己の臀部に手を添える。
水野は負けた。信仰していたアスを貫かれることで。
あの場面で耐えきれていれば、甘城千歌を殺し、残りのメデューサも殺せたはずだ。
だが耐えられなかった。水野の超人的な大殿筋と深層外旋六筋を以てしても、開脚した状態ではポールには勝てなかった。

敗因は何か。偏に水野の経験不足である。
誰よりもアスを愛し誰よりもアスを信仰してきた彼だが、その実彼は処女だった。
度胸が無かったわけではない。ただ、眼前のアスに没頭するあまり、己にもアスがあることを失念していたのだ。
もしもアスを既に貫通させておりなおかつ経験豊富になっていれば、あのような末期を迎えることはなかっただろう。

60羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:02:52 ID:ycXqfzKg0

「越えねばならんな。過去の己を...」

故に、水野は決意した。
眼前のアスだけに捉われるのではなく、己のアスも愛する真のナイスアスになろうと。
その為に必要な足掛かりは、鬼ヶ原小夜子。

通常、グリセリン浣腸液は10〜150mlに抑えるのが常識であり、その量でも注入されれば5分と排便は完了する。
これは到底耐えられるものではない。

だが、小夜子は300mlもの浣腸液を注入されてもなお我慢し、15分近く耐えて見せた。
それも、途中のスパンキングが無ければ記録はさらに伸びたかもしれない。

「奴は敵ではあるが惚れ惚れするアスを持っていた。優れたアスには敬意を払い学ぶべきだ」

では如何様に超えるのか。これまで通りたゆまぬ鍛錬を積むか?いや、それは筋肉のみを鍛えるだけであり、肝心のアスには結びつかない。
ならばどうやって鍛えるか―――その答えは、水野の足元に転がっていた。

(奇しくも己に与えられた支給品もこいつだ)

水野のデイバックに入っていたのは、グリセリン浣腸液の入ったボトルだった。
容量は2リットル。小夜子の耐えた量のおよそ7回分である。

(己のアスが告げている。『己を鍛えよ』と)

ここは殺し合いの場だ。生殺与奪の権を環境に握られている場だ。そんなことはわかっている。
だが、その極限状態での経験こそがなによりの実となり糧となる。

「首を洗って待っていろメデューサ共...己は人間の限界を超え、再び貴様らのもとへと相まみえようぞ」

それは新たなる領域への挑戦への期待か恐怖か。
水野のアスが、ヒクヒクと蠢いた。



【G-5/HELLSING本部/1日目・深夜】

【水野智己@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 グリセリン浣腸液@サタノファニ 
[行動方針]
基本方針:アスを鍛える。
0:浣腸...いくか。
1:神崎と合流する。
2:甘城千歌、鬼ヶ原小夜子、カチュア・ラストルグエヴァを殺す。その前に小夜子を超える(目標は浣腸耐久時間20分超え)。

※参戦時期は処女喪失した直後です。

61 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:03:37 ID:ycXqfzKg0
投下を終了します
巴マミ、神緒ゆいを予約します

62名無しさん:2019/12/22(日) 01:17:42 ID:6BhnhINM0
投下乙です
自分は尻を洗う訳ですね 分かります

63 ◆Mti19lYchg:2019/12/22(日) 21:54:53 ID:nivw8NYQ0
地図について質問があります。円についてですが、B-2みたいに黒い円に薄い円が重なっているのはどういう意味があるのでしょう。

64 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/23(月) 00:57:55 ID:MHEA93IU0
>>64
地図を描く際に円を使用して色塗りをしただけなので特に意味はありません。
また、円もここからここまでが草原、山、とキッチリ決まっているのではなくぼんやりとこのくらいかな、と色をつけただけなのであまり気にしなくても大丈夫です。
一応、緑は草原、薄水色は湖、黒っぽいところは山、周囲の青は海というイメージですが、SSを書く際に新しい山や崖、施設などを好きに追加して頂いても構いません。

65 ◆yliPrzUV3E:2019/12/23(月) 20:32:45 ID:vV8YoAm.0
>>28の予約を延長させていただきます

66 ◆PxtkrnEdFo:2019/12/24(火) 04:01:18 ID:TLl/YZuw0
今日中には投下できると思いますけど延長をお願いします

67 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:33:22 ID:75XJdN6M0
投下します

68内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:34:45 ID:75XJdN6M0

腰まで伸びた白く綺麗な長髪。
制服の上からでも主張を止めぬ豊満な胸。
そしてなにより見る者全てを虜にする美貌。

彼女の名は神緒ゆい。いま私立帝葉学園で最も話題の女子高生である。

そんな彼女だが、絶賛殺し合いに巻き込まれていた。

さて、彼女の様子はというと。

(恐い...助けて鍵人くん...奈央...!)

震えていた。
当然だ。運動神経抜群、成績優秀、人間関係良好な、優等生をそのまま絵にしたような彼女でも、この異常事態にすぐさま順応できるはずもなく。
恐怖に支配される彼女に出来ることは、なるべく目立たぬように隠れて震えることだけである。

「突然失礼...」
「ひゃうっ!?」

突如かけられた声に、ゆいはビクリと跳ね上がり思わず腰を抜かしてしまった。

「驚かせてごめんなさい。私の名は巴マミ。少しあなたに聞きたいことがあって声をかけさせてもらいました」

顔を上げたゆいの前に立っていたのは、ゆいと同じく豊満な胸を持ち、制服に身を包んだ、金髪ツインロールの少女だった。

「あ...あぅ...」
「立てませんか?よろしければお手をどうぞ」

スッ、と手を差し出す少女の挙動は、微塵も緊張や恐怖のようなモノは見えず、同性であるゆいですら見惚れてしまうほど凛々しく見えていた。

「あ、ありがとうございます」

立ち上がり、ぺこりと頭を下げお礼を述べるゆいに、マミは首を微かに傾け、にこりと微笑みを返した。

「このくらい当然です。それに...」

マミは左手で額から左側の縦ロールをさらりとかきあげる。

「困っている人は見過ごせませんから。ここではなんですし、もう少し見つかりにくい場所で話しましょうか」

69内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:35:15 ID:75XJdN6M0



「不思議ですね〜、お互い学校がここに飛ばされてるなんて」
「まったくです。知り合いに会う為の目印にはちょうどいいんですけどね」

空いていた教室を借り、互いの持つ情報を交換するマミとゆい。
最初のうちは怯えていたゆいも、マミの柔らかい物腰に緊張が解れ、会話が出来る程度には落ち着くことが出来た。

「それで...神緒さんはこれからどうしますか?知り合いも連れてこられてるとか...」

名を連ねられている中でゆいの知る者は園宮鍵人、淡魂炎火、橘城アヤ子の三名。
親友である恵比寿野奈央が巻き込まれていないのは不幸中の幸いと言えるだろうか。

では、親友がいないからといって、生きるために殺し合いに乗れるかといえば否。
生きるためとはいえ、友人である3人はもちろん、人を殺すなどできるはずもない。
それは他の三人も同じはず。ならばひとまず合流するべきだ。
幸いここには自分を含めた四人に共通する施設もあり、時間さえあれば合流は比較的し易いはずだ。

そして奇しくもゆいが飛ばされたのはここ、私立帝葉学園である。
ならば。

「...私は、ここに残ろうと思います。もしかしたら、皆さんも来てくれるかもしれませんし...」

暗がりの学園など恐いことこの上なしだが、おそらく知人たちは一度はここを訪れるだろう。
下手に動いて入れ違いになるよりは、多少時間がかかっても確実に会える場所に留まるべきという判断である。

「わかりました。なら、私も残ります」

マミの申し出にゆいはえっ、と声を漏らす。

「万が一にも、危ない人が来る可能性がありますし、二人でいれば心強いでしょう?」
「でも、申し訳ないです。巴さんだって後輩の子たちが...」
「大丈夫です。あの子たちはしっかりとした子たちですから」

微笑みのまま同行を提案してくれるマミに、ゆいは申し訳ない気持ちになる。
確かに一人では心細いし、マミが一緒にいてくれたらどれだけ安心できるだろうか。
けれど、大丈夫と本人は言っているが、本心では会いたいはずだ。
自分の考えで残ってくれるならまだしも、気を遣って残られるのは申し訳が立たない。

70内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:35:43 ID:75XJdN6M0

(ひとまず、私は大丈夫ということからアピールしましょう)

ゆいはデイバックをごそごそと探り、支給品を取り出す。

「私のことは大丈夫です。ほら、支給品に木刀と防弾チョッキが入ってましたから。これで攻撃も防御も万全です!」

武器と防具。
シンプルながらも、誰にでも使えるという点ではかなり当たりの部類だろう。

「...そうですね。確かに道具があれば自衛には役に立ちます。けれど」

言うが早いか、マミは木刀を手に取りゆいの首にトン、と当てた。

「こうやって武器を奪われたらどうしますか?」
「あっ」
「誰にでも使える武器は確かに便利ですが、相手の手に渡れば厄介なことこの上ない。もしそうなった場合、神緒さん一人で対処できますか?」

ゆいは思わず言葉を詰まらせる。
直接身に着ける防弾チョッキはともかく、木刀は己の手で握る物である。
素人相手ならいざ知らず、喧嘩慣れしているような輩相手なら苦労もなく取られてもおかしくない。
だが、二人いれば対処はいくらでもできる。ならば彼女が共に残らない理由がない。

「...参りました。不甲斐ないです。私の方が年上なのに教えてもらってばかりで」
「不甲斐なくなんかありませんよ。こんな状況でも人のことを気遣える、それだけでも立派じゃないですか」
「そ、そうでしょうか」

自身を頼りない、不甲斐ないと思いつつも、褒められて嬉しくないはずもなく。
ゆいの頬がほんのりと赤みがかった。

「...では、その、巴さん。不束者ですがよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それでは、校内を案内しますね。私に着いてきてください」

ゆいはマミに背を向け、意気揚々と歩き出す。

(最初に会えたのが巴さんでよかった。彼女みたいに、落ち着いてやれることをしっかりとやりましょう)

ゆいは決心する。

炎火の人形に恐れおののいた時のように、恐いからと震えているだけでは、ただ助けられるだけでは駄目だ。
一人で抱え込み解決しようとするだけでは駄目だ。
前を向こう。そうすれば、自分にできることもなにか見つかるかもしれない。
そうして、みんなで力を合わせて頑張ろうと。

だから。

パァン、という音と共に走った後頭部の熱さがなにかがわからぬまま、彼女は意識を手放した。

71内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:36:21 ID:75XJdN6M0

「......」


マミは、俯せに倒れる少女に歩み寄り見下ろした。

「ごめんなさい神緒さん...でも、これも救済のため...」

己の心臓が冷えていくのを実感する。

これまで魔女や魔法少女とは何度も戦い、銃で撃ってきたが、一般人を撃つのはこれが初めてだった。
マギウスの翼――魔法少女の運命からの脱却を願う者の集いの、事実上の幹部として行動していた時も、魔女やウワサを育てることはしても、直接人を殺したことはなかった。
けれど撃つしかなかった。魔法少女でない彼女よりも優先すべき者がいるから。

「本当ならこんなことはしたくなかった...けれど...」

神子柴が上空に投げ出された時、マミは神子柴を倒すことで殺し合いの開催を防ごうとした。
けれど失敗し、殺し合いは始まってしまった。
ではどうするべきか、マミは考えた。
脱出―――首輪がある限り不可能だ。解析しようにも機械の知識は乏しく、かといってほかの参加者が解除するのを待つなど希望的観測に等しい。
そんなに簡単に解除できる人間を参加者に混ぜる意味はない。それだけでこの殺し合いが成立しなくなるからだ。

それに、あの老婆は首輪を自在に爆発させることができる。逆らえば首が飛ぶ。
もしも、万が一、マギウスの計画の中枢たるアリナ・グレイを失うことになれば、マギウスによる魔法少女の解放が叶わなくなってしまう。
ならば―――乗るしかない。

参加者を殺し尽くし、最後に自害しアリナを優勝させるしかない。

だから、マミはゆいに苦しみや恐怖を与えぬよう背後から頭部を撃ったのだ。

「神緒さん...私のことはいくら恨んでも構いません。けれどあなたの犠牲は必ず多くの魔法少女の救いとなります。どうか安らかに...」

マミは落ちていた鎖を握りしめ、ゆいの冥福を祈るように片膝を着き両目を瞑った。

72内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:36:39 ID:75XJdN6M0

「人を撃った割にはずいぶんお優しいことだなーオイ」

かけられる声に、マミは反射的に目を開く。
同時に。
下あごから衝撃が走り、マミの身体が後方に吹き飛ぶ。

なにが起きた。

マミは己の居た位置を確認する。

足だ。
繊細な芸術のように綺麗な足が振り上げられていた。

(蹴られた...あんな無茶な体勢からあの威力で?それよりも、なぜ彼女が生きているの?)

マミは確かに殺すつもりでゆいを撃った。血も出ていたし確実に当たっている。なのになぜ生きている?

「―――!?」

目を凝らしているうちに異変に気が付く。
先ほどまでは髪から服まで純白だったゆいの身体が瞬く間に黒く染めあがっていくではないか!

「まさかこんな形で解かれるとは思ってなかったぜ」

立ち上がった彼女は、先ほどまでの白いゆいとはまるで別物だった。
おっとりとした佇まいと綺羅やかな白髪・白服は消え失せ、見る者を射殺すような鋭い目つきと漆黒の黒髪・黒服へと変貌していた。

「なんで立てるのかって聞きたそうだな。人間の頭蓋骨ってのは思ってるより硬いんだ。しかもたまたま撃った場所が髪飾りだったもんだから威力は半減以下。
お陰様であたしはかすり傷で済んだのさ」
「あなたいったい...!?」
「神緒ゆい(スケバン)だ。そういうお前こそタダ者じゃねーな。だからあんな余裕があったんだろ」
「っ...!」

マミは直感する。
神緒ゆいは魔法少女ではない。それは、先ほどさりげなく見せた指輪にも無反応だったことからわかる。
だが、彼女は魔法少女に類する脅威だ。侮れない。

ならば、出し惜しみなどしない。

マミの身体が発光すると同時に、黄金の装飾に彩られた衣装に包まれる。

魔法少女―――否。ただの魔法少女ではない。

これが魔法少女を超えた存在、神浜聖女の姿である。

「私たちの邪魔はさせない...私たちは必ず救済を成し遂げるわ!」
「よく吼えるじゃねーか...嫌いじゃないぜ、そういうの」

獲物を見つけた肉食獣のように、ゆいの口角がニヤリと上がった。

「久々に暴れがいがありそうだ。付き合ってもらうぜお嬢ちゃん」

73内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:37:05 ID:75XJdN6M0







――神緒ゆいの脳内世界にて――


『......』
「そんな落ちこむんじゃねーよ。裏切りなんてどこにでも転がってるもんだろ」
『違うんです。ただ、ちょっともやっとしてしまいまして...』
「あん?」
『どうして巴さんはあんな回りくどいことをしたのか...不思議なんです』
「そりゃ油断させるためだろ」
『必要でしたか?あなたならいざ知らず、私に対してですよ?木刀を持った時に叩きのめすことだってできたのに...』
「あー...言われてみりゃあな」
『殺すつもりはあったんだとは思います。でも、あそこまで徹底的に安らぎを与えられて...彼女の本心がわからない...だからもやっとしてしまって...』


「...あいつの本心、知りたいのか?」
『...はい。で、でも、それであなたが危険に晒されるのは』
「遠慮すんなよ。前も言ったろ、感情を発散するのはあたしの役目だって」
『......』


「そんな暗い顔するなよ。確かにあいつは強い。スケバンランクSにも届くかもしれねえ。けど勝ち目がないわけじゃない」
『え?』
「あいつからは蟲と似たような気配もする。そいつさえひっぺがしゃああんたも話くらいできるだろ。てか、あたしが出来るのはそこまでだ。あいつが何を思ってようがどうでもいいしな」
『つまり...そこからは、私の戦い...』
「そういうこと。まあ、あまり気負うんじゃねーぞ。どのみちあたしも殺し合いなんざするつもりはねえ。どう頑張ってもあたしに出来るのは、腹パンで腹の虫を出させるまでってことだ」
『...わかりました』

「そんじゃ、あたしらの肝も据わったところで―――行くとするか」

74内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:37:37 ID:75XJdN6M0




『スケバン』。それは人間。あるいは女王。あるいは―――戦士。

つまり。

世界が違えど戦う女は皆スケバンである!



いざ尋常にスケバン勝負!!

神浜市聖夜の最終射撃人造『魔法少女(スケバン)』巴マミ

VS

東京都蟲狩りの神緒ゆい!!





【B-5/私立帝葉学園/1日目・深夜】


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]下あごにダメージ(小)、ホーリーマミ化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
基本方針:魔法少女救済の為にアリナを優勝させる。
0:神緒ゆいを倒す。
1:アリナと合流、指示を仰ぐ。
2:鹿目さんと暁美さんと佐倉さんはできれば殺したくはないけれど...
3:環いろは、七海やちよ、二葉さなは排除する。

※参戦時期はマギアレコード本編八章でやちよと交戦前です。


【神緒ゆい@神緒ゆいは髪を結い】
[状態]頭部出血(小)、黒ゆい化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 大谷悟の木刀@サタノファニ、烏丸の防弾チョッキ@サタノファニ
[行動方針]
基本方針:ゲームからの脱出
0:巴マミをブッ倒す。
1:鍵人、炎火、アヤ子との合流。


※参戦時期は修学旅行前。

75 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:38:40 ID:75XJdN6M0
投下終了です

花京院、さなを予約します

76名無しさん:2019/12/26(木) 04:04:36 ID:kD26UroE0
投下乙
やっぱマミさんマギレコ参戦かあ
あっちじゃ誤解にホーリーにと色々あったからなあ

77 ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:12:53 ID:sAiOcwgQ0
一昨日の朝に今日中には投下できると言ったが、スマンありゃウソだった
本当に申し訳ないとりあえず感想から

>OP
神子柴って聞いた名前だな、誰だっけなとか思ってたら時女の里のクソババアで色んな意味でド肝を抜かれましたね……
お前……確かに殺し合いの主催くらいならやりそうだけどお前……
そこにさっそうと登場したサイコロステーキ先輩が相変わらず謎の大物感を出してて笑う
一回殺されて復活したところでまた即座に反抗できるのはすごいなこの人
そこから主役級の面々に囲んで叩かれそうになってる神子柴は笑い半分興奮半分でした

>チュートリアル
クソみてぇな旗なのは間違いない
なのに神子柴の顔がゲームで描かれてないからちょっと見たくてチクショウ!
禁止エリアに踏み込んでのリアクションが「ウソッ」とか日常染みてて彼岸島を感じる

>コイントス
桐山のコイン、バトルロワイヤル読者なら誰もが知ってるシーンをカナヲと重ねるのは上手いなぁと思わされましたね
それでも何もない桐山と違って人を守る善性が確かにあることも対比的に描いていていい
長男カウンセリングの前はちょっと不安だけど、それだけに今後が楽しみだとも思います

>戦う君よ
かりん、炭治郎と合流できて落ち着けて良かった
しかしそこそこやれる二人だけども初っ端ゾッドはキツイなあと思ってたらかりん意外と活躍するなあ
マギレコ勢、モーションが簡素だし魔女との戦闘描写も薄いから実力が測りにくいと個人的には思うんですけどハロウィンシアターや魔法少女ストーリーから持ってきててすごくいいなと思いました(謎目線)
ヒーローも合流したところで頑張ってほしい。アリナ先輩を信じるかりんに幸あれ

>羽ばたこう明日へ
ロワにきてトレーニングをするキャラは見たことがある。修行パートも含めるならかなりの数。
便意と戦った男も一人だけど覚えがある。
殺し合いのさなかに自ら便意に闘いを挑む男は初めて見る。なにやってんだこの人
長くとも20分後にはヘルシング本部でぶちまける気でいるの、旦那とか局長に怒られそうだ

>内秘新書
タイトルが知らない四字熟語だし一発変換で出ないぞ……というのが第一印象でした
調べたらワンオクの曲なんですね、四字熟語じゃなかった
で、本編なんですが不安が的中してうぐぅってなりましたね
「突然失礼」を見たとき笑いながらもあー……って
ホーリー化してアリナの奉仕マーダー化したマミさん、名簿の面子的にもマーダーの数的にもそんな悪寒はしてたけども!
てかこいつ神浜聖女のウワサだか毛皮神のウワサを支給品外で、没収もされずに纏ってやがる
明さんの義手枠かチクショウ
しかしゆいの髪飾りを射抜いてしまうバッドからのスケバン勝負とは空気の持ってきかたは並んでていい
スケバンVS神浜聖女は絵面も字面もすごいな


で、改めましてアリナ・グレイと不死川玄弥で投下します

78逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:14:05 ID:sAiOcwgQ0

殺しあえと命じられた地の、月明かりの下で少年が一人活動を始めていた。
少年の名は不死川玄弥という。
鬼を殺すべく集った組織、鬼殺隊の一員だ。
彼も当然鬼を殺すだけの怨みと実力を持ち合わせているのだが、他の隊士に比べて鬼を殺す才には恵まれない面があるため、業腹ながら与えられた武器や情報が他の隊士よりも重要な生命線となる。
そのため彼が鞄を開き、武器や名簿を確かめる姿は半ば祈るようであった。
その結果は悲喜こもごもではあったが。
武器は上等なものがあった。そして名簿には

(宇髄さん……やっぱり宇髄さんだった!)

神子柴なる老婆に斬りかかった男は鬼殺隊の『音柱』宇髄天元のものに見えた。
上弦の陸との闘いで重傷を負って引退したと聞いていたし、柱稽古でもそのようにしか見えなかったが……死者の蘇生を可能とするというならばそのくらいの傷は癒せるということだろうか。
いずれにせよ頼りになる名と姿を目にできたのは何よりだ。
他にも刀鍛冶の里で共闘した竈門炭治郎に『霞柱』時透無一郎、いけ好かないが宇髄と共に上弦の陸と戦い生還した嘴平伊之助に我妻善逸の二人も柱稽古の最終段階まで進んだ猛者だ。
そこまではいい。
鬼殺隊の怨敵、始まりの鬼である鬼舞辻無惨、上弦の参である猗窩座、そして宇髄たちに斬られたはずの上弦の陸――蘇生させられたのか――妓夫太郎と堕姫の名は様々な感情を玄弥の内に引き起こす。
殺し合いの場であるなら無惨を斬るまたとない機会になるだろう。
だが同時にこの鬼どもは大きな障害ともなる。
歓喜、怖れ、他にも様々なものを覚えたが……ともあれ動き出さねば何も始まらない。
荷物を纏め、玄弥はゆっくりと立ち上がる。

(にしても変なところに出たもんだ)

ひとまず目についた神子柴の顔が描かれた珍妙な旗を目指して歩いてみたが、すぐに首輪から警告音が響いたので慌てて引き返す。
そうして改めて周囲を見ても立ち並ぶのは玄弥にとって見慣れない建物だった。
旗はともかくとしてそこに建っているのはどれもこれも平成、令和の時代にもなればありふれた民家ではある。
それでも大正を生きる玄弥には奇異なものに映った。
しかし文明開化が順調に進みつつあるのもまた大正であり、多少の違和感は覚えても大きな驚きはない。
そして見目が多少変わったところで古今東西変わらぬものもある。
人が生活しているならばその痕跡があるということ……例えば明かりがついている、という。

夜の闇の中で一軒だけ、ぼんやりと光を漏らしている家があった。
気持ちは分からなくもない。
夜の活動に慣れた鬼殺隊の端くれである玄弥も、正直僅かな自然光だけで名簿などに目を通すのは面倒だったし、何より夜の闇は不安を駆り立てる。
しかし殺し合えと命じられた真っただ中で、それもどこかに鬼がいる状況でいたずらに自分の居場所を発信するのは賢明でない。
承知の上での振る舞いかもしれないが、ひとまず注意に向かおうと玄弥の足がそちらに向かう。

もちろん、あえて呼び寄せているのではという疑念もなくはない。
支給された武器をすぐ取り出せるように構えて。
他の隊士に比べれば意味は薄いが呼吸を落ち着けて。
明かりの漏れる家へ周囲を確かめつつゆっくり近づいていく。

79逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:14:55 ID:sAiOcwgQ0

(藤の花が一輪もないな……)

夜は、鬼の時間だ。
安心して眠りにつくためには鬼を遠ざけてくれる藤の花を植えるのが不可欠と言っても過言ではなかろう。
ましてやこの地には無惨もいる。
にもかかわらず家の周りは石塀で囲まれた程度で鬼相手の防備を考えているとは思えない。
塀の向こうに見える中庭からは十分な土と草木の匂いがするから環境的に出来ないというわけでもあるまいに。

(本当に変なところだ)

石塀につけられた格子戸を開けて庭に入り、入ってすぐの光の漏れる硝子戸の向こうに視線をやる。
案の定、硝子戸の向こうの妙にひらけた室内に人影があった。

「おーい、そこのあんた。ここらには鬼が出る。危ねえ、ぞ……」

中にいる誰かに聞こえるように、しかし無闇に響かせないように気持ち潜めて。
その声に反応して影が振り向いたことで玄弥の声が詰まる。

そこにいたのは美しい異人の少女だった。
相手の性別とその容貌に気付いた玄弥が少し気後れるが、状況が状況でそうも言っていられない。
光に気付いて鬼が寄ってくるかもしれない、自分が気付いたんだから近くに誰かいれば同じように気付くだろう、注意しろ、などと忠告染みた言葉を絞り出そうとすると

「ねえ。これ、すっごく……綺麗だと思わナイ?」

先に句を告いだのは少女の方だった。
言葉と共に指で指示された方向に自然と玄弥の視線も誘導される。
玄弥はそうと分からなかったが、外にまで漏れ出た光は少女の指さした物を照らしている光源の残照だった。
それはあたかもステージを彩るスポットライトのよう。
そして室内がひらけているのもそれを展示するミュージアムであるかのよう。
リビングにポツンと置かれたダイニングチェアの上に鎮座するそれは、逆になぜ今まで気づかなかったのかと思うほどに存在感を放っている。

周囲の環境と、少女の振る舞いに導かれ、玄弥はそれを認識し……そしてそれが何かを理解した。

「…ッンだよ、それ!!」
「綺麗でしょう?これがネ、アリナに支給するウェポンなんだって。いいセンスしてるよね」

自らをアリナと呼んだ少女は狂気を孕んだ笑みを浮かべてそれを手に取る。
手の中のそれを掲げると顔の高さにまで持ち上げて……するとそこにはアリナと並んだ、もう一人の美しい少女の顔が。

「首……!?」
「デーモンの生首だってさ、アハ。デーモンの元老院、冷元帥クルールが人間とのウォーに負けて首を撥ねられたんだって。魔女やウワサはたくさん見てきたけど、悪魔は初めて見るヨネ」

冷元帥クルール。
火星の魔力を使った大儀式によって産まれた正真正銘のデーモンの姿は死してなお、いや亡骸であるからこそより美しくアリナの目には映った。
魔女やウワサは死体を残さない。
『生と死』を自らの芸術テーマとするアリナにとって、それはあまりにも惜しく、だからこそ手の中に遺った怪物はあまりにも愛おしい。
これを素に、作品を作り上げるには―――

「アナタ、ヴァニタスって分かる?」
「ぶ、う゛ぁ…?」
「静物画のジャンルなんだけど。死をモチーフにしたアートだからアリナも少し勉強したワケ。髑髏とか腐っていくフルーツで死やそれに伴う無常を描く……アンダスタン?
 アリナはこれで九相図を作ったら面白いと思うんだよネ。綺麗なデーモンの亡骸と、真っ白な髑髏と、腐乱した生首と他にもたくさん。だから、サ」

アリナの左手中指に嵌められた宝石、ソウルジェムが輝く。
そこから半透明のキューブが現れ、続けてキューブから出てきたサイケデリックなカラーをした衣装がアリナを覆い、長袖のアンダーシャツとブラウス、茶色いチェック柄のスカートで構成された女制服から彩り豊かな憲兵風の装いへと転じた。
魔法少女アリナ・グレイ。
口元に微笑みを浮かべ。
掌にキューブを浮かべ。
彼女は続けて口にした。

80逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:16:11 ID:sAiOcwgQ0

「アナタの首を、アリナにちょーだい」

キューブから放たれた幾筋もの光線が玄弥へと襲い掛かる。
気圧され、混乱する玄弥だったがさほど苦はなく攻撃を回避することはできた。外れた光線が庭へと続く硝子戸と外のブロック塀を砕く。
玄弥のの予想外の速さにアリナの口から舌打ちがこぼれた。

「魔法少女……じゃないよネ。その見た目でガールはノーでしょ。アナタ、何?」
「鬼殺隊、不死川玄弥。テメェこそ、なんだ?」
「アリナは魔法少女ですケド。それともマギウスって言った方がいいワケ?
 ……あ、ジーニアスアーティストとしてなら適当な雑誌をリードすれば分かるから勝手に調べてよネ。ま、アナタにそんな今後は無いんだケド」

鬼だの鬼殺隊だのというのがアリナにはさっぱり見当もつかない。
ただの人間の男だろうと侮って放った一撃を回避されて、黒羽根よりはやり手だと評価を修正し改めて攻撃を放つ。

玄弥もまた魔法少女、マギウス、デーモンというのが何だかまるで分らない。
始めは鬼の首を刈った剣士かと思った。次に人の首を眺める鬼かと思った。
だがアリナも生首の方も鬼らしい気配は感じ取れず、別の悍ましい何かだと予想するにとどまる。
だがひとまずはそれで充分……目の前の女は敵である。
さすがにこの女に反撃したとて炭治郎に腕を折られはすまい。
再度放たれた光線を躱し、素早く態勢を立て直して武器を抜く。
飛び出したのは巨大な大筒―――純銀マケドニウム加工水銀弾頭弾殻、マーベルス化学薬筒NNA9、全長39㎝、重量16㎏、13㎜炸裂徹鋼弾、『ジャッカル』。
最強の吸血鬼がただ一人の人間と戦うために用意させた特注の逸品だ。
並の化物なら一撃で、尋常ならざる怪異殺しであろうと五体を満足に保たせぬ弾丸は、喰らえば魔法少女であろうと無事ではすむまい。
その引き金が玄弥の手に収まり、その砲口がアリナに向けられていた。

轟音。
銃声とも呼ぶにはあまりに大きな炸裂音でジャッカルが牙をむいた。

「ッガ……!」

だが短い悲鳴を上げたのは玄弥だった。
ジャッカルの弾丸は狙いからずれ、アリナの光線とはまた別のブロック塀を抉り飛ばして終わった。
さもありなん、ジャッカルは人が扱える武器ではない。
玄弥の身体能力も人並み外れてはいるが、それでも不死王アーカードの携える牙の一つを使いこなすには役者が足りないと言うざるを得なかった。
だがそれで諦めるような男が鬼殺隊に身を置くはずもない。

「舎衛国……祇樹給孤独園、与大比丘衆」

念仏を唱え、集中を極限まで高める。
すさまじい銃の反動ではあったが、手首も肘も肩も無事。
であれば今度は全身で放つ。

玄弥は片手で構えていたジャッカルを両手で構え、足腰も活用して衝撃に備える。
そして再び引き金を引き、銃声を轟かせた。
再度放たれる弾丸だが、今度はアリナは意図してそれを躱す。
鬼殺隊が鬼を殺すために人の力を極めるように、魔女を殺すために人ならざる域に踏み込んだのが魔法少女だ。
玄弥が血鬼術を躱すようにアリナの光線を躱せるように、アリナもまた玄弥の構える銃を魔女の攻撃のように知覚して回避する。

81逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:16:39 ID:sAiOcwgQ0

(クソが、とんでもねえ武器だな!)

玄弥でもジャッカルは両手で構え腰を落とさなければまともに撃てないが、それでは早撃ちなどできるわけもなく、照準をアリナに読まれてしまう。
かと言って無理に早撃ちをしようとすれば腕が折れてしまうのでないかというほどの反動が襲い掛かる。
最初は当たりの武器かと思ったが途轍もないじゃじゃ馬だ。
玄弥が狙い構えるまでの間に、アリナは立ち位置を変えることで銃弾を躱し、さらに光線を放ち徐々に玄弥を追い込もうとする。
初撃の的外れさや構え方、見て取れる銃の威容からすでにアリナはジャッカルが玄弥の手に余るものだと看破していた。
光線が壁を一部崩し、床を貫き、足場を乱して玄弥を敗北へと導こうとする。

(だったら!)

乾坤一擲、玄弥はアリナの攻撃を姿勢を低くして避け、乱れつつある足場を大きく踏み込んで距離を詰める。
ジャッカルを左手に握り、その重量を活かして鈍器として扱い、薙ぎ上げるように振るった。
だがそんな単純な一撃が通るはずもなく、アリナは左手にクルールの首を抱えて躱しつつ距離をとろうとするが

「ウオラァ!」

雄叫びを上げて左手だけでジャッカルのトリガーを引く。
狙いなど碌に定めたものではない。的外れなことに天井に放たれた弾丸が跳弾することもなく貫通し、砕いた欠片を二人にばら撒いた。

「キャ!?」

そのつぶてにアリナが僅かに怯んだ隙をついて玄弥が右手を伸ばし、クルールの首を奪い取って再び距離を置く。

「…何する気?アリナからそれを奪って、フリーズなんて言うとか?」

なるほどたしかにアリナから下手に手出しはできなくなった。
だが玄弥の状況はどうか。
無理にジャッカルを撃った反動だろう。彼の左腕は奇妙な方向に折れ曲がっていた。
その有り様で凄んだところで大した脅威になりはしない。
ゆっくりとアリナはキューブに魔力を込め、とどめを刺す準備を整えていく。

「……こいつ、悪魔?だっけ」
「そうだケド。貴重なアートになるんだから傷つけたらただじゃ―――」

82逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:17:00 ID:sAiOcwgQ0





ばりっ

      ごきっ

   ばきばき
ず           ず

ごくん

83逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:17:49 ID:sAiOcwgQ0

「…………ハ?」

肉を噛む音。骨を砕く音。血を啜る音。それら全てを嚥下する音。
――――――玄弥がクルールを食っている音。
さすがのアリナもこれは予想できなかったようで一瞬呆気に取られてしまう。
だが

「ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁ!!!
 作品をブレイクしていいのはアーティストだけなんですケド!!何勝手なマネしてくれてるワケ!?
 アナタ…アナタのハラワタをぶち撒けてその中からクルールを抉り出しやる!」

怒りに染まったアリナが叫びと共にキューブに込めた魔力を解放し、玄弥に向けて全力で放つ。
ドッペルには及ばないが全力の一撃で、これまで見た玄弥の身体能力では躱せるはずのないものだとアリナは自負していた。
だが玄弥はアリナの想定を大きく超えて速く高く跳び、アリナの攻撃を回避してみせた。
それだけではない。
つい先ほどまで折れていたはずの左手でジャッカルを構え、アリナに向けて放ったのだ。

(ウソ!?)

牽制だったのだろう。そこまで正確な一撃ではなかった。
だが先ほどまで使いこなせていなかった武器を突然使いこなし―――いやそもそも左腕は折れていたはず。魔法少女でもこんなに早く回復はしない。
何が起きたのか。
アリナが混乱の渦に叩き込まれているさなかにも玄弥は容赦しない。
ジャッカルの銃撃を正確に二発、三発と叩き込んでくる。

二発目は躱した。だが三発目がアリナの肩口をわずかに掠め、それだけで肉を大きく抉っていった。
多量の出血でアリナの頭に上っていた血が下りる。
間が悪くそこでジャッカルの弾が切れたようで、玄弥が即座に鞄から取り出した予備弾を込め治す。
その隙に痛覚を遮断したアリナが魔法で傷を塞ぎ、最低限出血を抑える程度には持ち直して向きなおる。

玄弥が構えなおすより速くアリナが光線を放った。
毒々しく輝く光線が床を一気に腐敗させて足場を乱し、毒と床が反応したのか煙も上げて照準のための視界を乱す。
それも今の玄弥には障害とはならない。

人並外れた咬合力と消化器官をもつ玄弥は、鬼を喰らい取り込むことでその力を得て鬼を殺してきた。
今は悪魔クルールの首を喰ったことで強靭な肉体を獲得し、五感もまた鋭敏になっている。
多少の煙幕などものともせず照準を定めようとするが

(…消えた!?いや下か!)

アリナは即座に自らの足元を魔法で砕くとそこに身を躍らせた。
ジャッカルならば床板くらい容易に貫通できるだろうが、狙いが定まらなくては無駄弾と装填の隙を招きかねない。
ならば自分も後を追って床下に飛び込むかと一瞬考えるが

「勘弁してよネ。デーモンを食べてデーモンの力を取り込むとかチートじゃナイ?
 ここ、神浜じゃないからアリナはドッペル使えないのに。魔女を利用する私たちマギウスと同じようなことやってるの他にもいるんだ。シニカルなフォーチュン……」

アリナの声が下から響いたことで狙いがつけやすくなった。
ぶつぶつと言葉を続けるアリナに向けてジャッカルの銃口をむけようと即座に



ぶつぶつ

闇の中から蘇りし者    ぶつぶつ
     リンプ・ピズキット
   我と共に来たれ
 ぶつ  ぶつ    



ドスッ!!!

84逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:18:15 ID:sAiOcwgQ0

「ぐあ…!」

玄弥の脇腹に鋭い何かが突き刺さった。
咄嗟に構えようとしていたジャッカルを振るい殴りつけようとするが、その一撃はむなしく空を切る。

(なっ!?ンだ今のは)

見えない。
何から攻撃されたのか分からないが、わき腹を抉られた。
それ自体は大した傷ではないが、敵が何をしたのか分からないのは大問題だ。

(上弦の肆みてえに見つからねえのか!?)

咄嗟に足元に視線を走らせるが鼠一匹見当たらない。
視力も強化されているからそれは間違いない。
そこへ続けて獣が駆けるような足音を響かせて見えない何かが突っ込んできた。
音に反応して玄弥もそれを受け止めるべく構えるが、クルールを喰って得た膂力でもってもその敵は抑えきれなかった。
敵の正体がつかめない。そして圧倒的な攻撃力の別固体らしきもの。ますます上弦の肆が玄弥の脳裏によぎる。

(同じなら…あの女をやれば!)

玄弥は突っ込んできた何か――見えないが毛が生えているようだ――と組み合い、押されながらもジャッカルを突き付け引き金を絞る。
銃声と共に硬い何か――おそらくは角だろうか――が折れる音が響き、それに怯んだか不可視の敵の力が緩む。
そこへ思い切り前蹴りを叩きこんで吹き飛ばし、その反動で玄弥も後ろに跳び、両者の間に大きな距離ができた。
アリナが乱した足場を今度は玄弥が利用する。獣の足では即座に距離を詰めれまい。
その間にジャッカルの照準を改め、アリナの声がした方へ。
上弦の肆と同じなら大元を仕留めれば不可視の攻撃は止むはずだとそちらを仕留めようとする玄弥の耳に、予想だにしなかった獣の足音が再び響いた。

(壁!?)

重力を無視したように、音は横方向、目線の高さから聞こえた。
たしかに壁には多少の銃痕は在れど移動に支障をきたす大きなものはない……そも壁というのは歩くことを想定するものでもなかろうが。
予想外に早い戦線復帰。それでも玄弥が引き金を引くより早いということはなかろうが、姿が見えず何をしてくるか予想できないのが恐ろしい。
射線に割り込み盾になろうとしてくるか。またこちらに突撃してくるのか。上弦の肆の分身やアリナとかいう女のように飛び道具でも撃ってくるか。
先に対処するにも見えない敵にジャッカルの照準を合わせるのは至難の業だ。
ならば、と。
ジャッカルを持つ右手はそのままに、玄弥は左手を足もとへ伸ばす。
そのまま傷ついた床を拳で打ち抜き

「おとなしく、してやがれェ!!」

床板を丸ごと引きはがしてその面で広範囲をぶっ叩く。
見えなくとも辺り一帯を攻撃すれば効果はあろう。
床板を大きな塊のまま振るえたのは幸いだった。

「手ごたえあり……!でもって見えたぜ……!」

剥がれた床板で獣は弾き、そして床下のアリナの姿もはっきりと捉えられるようになった。
これでトドメ、と玄弥が右手のジャッカルを放とうとする。


バリ
     バリバリバリ
  パキ   ボキン

肉を噛む音。骨を砕く音。
それが今度は玄弥の右腕から響いていた。

85逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:19:02 ID:sAiOcwgQ0

「うっ、おおおおおおおおおおおおおおお!?」

喰われる感覚。
玄弥がそれを味わう立場になることは珍しい。
鬼殺隊を相手にした大概の鬼は殺してから喰うもので、喰って殺すことはそうないからだ。
だがこれは噛み砕いているのではない、明らかに喰っている!戦場において鬼以上の悍ましさ!

(床板の向こうにさっきのは抑えてる!女は床下、ならもう一体出たのか!?)

増えた。
本気でこのアマ上弦の肆の親戚か何かじゃないかと混乱する玄弥は思うが、そんな呑気なことを考えている余裕はない。
一対一でも厳しいところに不可視の敵が二体出てきて、さらに増えないとも分からない。
もはや玄弥一人の敵う範囲ではなくなった。
刀鍛冶の里での戦いのように死の気配が満ちるのを肌で感じる。
右腕がさらに抉られ、ジャッカルが落ちた。
床板を破り、獣の匂いが近づいてくる。
対峙する少女も掌を輝かせ攻撃を放とうとしている。
今の玄弥ではそのどれにも対処はできない。

(もう…死ぬ)

また、兄ちゃんの顔と言葉が走馬灯のように


―――玄弥ーっ!!!諦めるな!!―――



浮かぶ前に仲間の顔と声を思い出した。
視界が晴れる。思考が晴れる。
…………悪魔を喰らい、発達した聴覚が足元に転がる何かに気付いた。
玄弥に貪られ、頬が抉れてもなお美しくあるクルールの首。
床板を振り回した際にこちらに転がってきたようだ。
…………アリナと玄弥の戦闘の余波で崩れた塀の向こうに、神子柴の顔がはためいていた。
ああ。それに、賭けよう。

「飛べーっ!!旗のとこまで!!」

強化された脚力で、クルールの首をクソみてえな旗目がけて蹴り飛ばす。
またしてもクルールの首に突然とった意味不明な行動にアリナは驚き、クルールへの無礼な振る舞いに怒り、しかしまた妙なことが起こるのではと警戒し、といったところだ。
一瞬どうしたものか逡巡するアリナだったが

「おい。あの旗の方、神子柴のヤツがいる禁止エリアだったぞ」

玄弥のその声で顔色を変える。
禁止エリア……神子柴が言っていた、立ち入り禁止の区域!

「ヴァァァアアアッッッ‼」

奇声を発しながら、もはや玄弥などどうでもいいと飛んでいったクルールをアリナは追いかけ始める。
悪魔を喰らった玄弥に蹴られた首は彼方まで飛び、強化された魔法少女の視力でもすでに視界ギリギリだ。
もし禁止エリアに入ってしまえばあの首を二度と手に入れることができないかもしれない。
優勝して回収するとしてもそれまで放置され雨風にさらされたり腐敗してしまったりすればただでさえ傷ついたのに、さらに希少な美が損なわれてしまう。

(許さナイ……!)

コイツの言葉が真実かどうかはこの際どうでもいい。
クルールの首を回収して、その後コイツは必ず殺してやる。
怨みの視線だけ残してアリナは急ぎこの場を離れていく。

86逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:19:25 ID:sAiOcwgQ0

「……ぐ、痛」

それを見送り、一瞬息をつくと抉られた右腕が回復していく。
いつもより回復が遅い気がするが、喰ったのが鬼じゃないからだろうか。
ジャッカルを持てる程度に回復したところで落ちたそれを回収し、アリナとは反対方向へ玄弥も駆けだした。
あの女の思想も、能力も、上弦に匹敵する危険さだ。
炭治郎や柱、他の仲間の協力もなければ倒すのは困難だろう。
屈辱だ。苦渋の選択だ。
だが脅威を喧伝しなければならない。何より敵はあの女だけではない。無惨や他の上弦もこの地にはいるのだ。
今は生き延びることを優先しなければならない。

(畜生……)

とはいえ無為な戦闘ではなかった。
ジャッカルの性能を試せたこと、デーモンなる存在をしれたこと。
一か八かで口にはしたが、本当に鬼と同様に力が得られるかは賭けだった。
最後の逃亡もあの首がなければなし得なかったし、首の少女には散々に助けられたと言える。

(あー、でもまた蝶屋敷ですげえ怒られそう……)

鬼だけではなく得体の知れないもの口にしたと知れば蟲柱は何と言うだろう。
おまけに今後また別のものも口にするかもしれないとなればなおのこと。
玄弥はすぐ取り出せるよう懐にもう一つの支給品を忍ばせる。

(正直悪魔の肉なんて疑ってたけど、あれが本物ならこれも多分……ん?何か動いたか?)

手にした肉片……『銃の悪魔の肉片』が玄弥の後方、アリナの駆けて行った神子柴の旗の方へ僅かに動いたのは玄弥が走り揺られていたせいか。それとも……



【C-4/1日目・深夜】

【不死川玄弥@鬼滅の刃】
[状態]ダメージ(小〜中、回復中)、クルールを喰って微妙に悪魔化
[装備]ジャッカル@HELLSING、銃の悪魔の肉片@チェンソーマン
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 ジャッカルの予備弾(残数不明)@HELLSING
[行動方針]
基本方針:悪鬼滅殺。人は守る。
1:今はアリナと距離をとる……今は。
2:炭治郎や無一郎のような仲間と合流し、無惨やアリナなど敵を滅殺する。

※参戦時期は柱稽古終盤〜無限城突入の間ごろです。



【ジャッカル@HELLSING】
不死川玄弥に支給。
対化物戦闘用13㎜拳銃
全長:39㎝ 重量:16㎏ 装弾数:6発
使用弾種:専用弾・13㎜炸裂徹鋼弾 弾殻:純銀製マケドニウム加工弾殻 装薬:マーベルス化学薬筒NNA9
弾頭:法儀式済み水銀弾頭
吸血鬼アーカードがアレクサンドル・アンデルセン神父と戦うために創らせた特注の銃。
もはや人類の扱える代物ではないらしい。


【銃の悪魔の肉片@チェンソーマン】
不死川玄弥に支給。
銃への恐怖が生み出した悪魔、その肉片。
この肉片を得た悪魔は大きく力を増すという。
肉片同士に引き合う性質がある。

87逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:20:02 ID:sAiOcwgQ0

「アイツ、本当にムカつくんですケド」

クルールの首はかろうじて確保できた。
もう少しで禁止エリアに転がり込むところで、本当に危なかった。

「ンー……」

手にした首を再度じっくりと眺めてみる……齧られはしたがこれはこれで美しい。
ミロのヴィーナスやサモトラケのニケは欠損ゆえの美があるというが、なるほどこれもまたそういうものだろう。
あらかた堪能したところで今度はアリナの周囲に集う透明なゾンビに手を伸ばした。
アリナにも見えない、リンプ・ピズキットによって産まれた二体のゾンビ。
その姿を確かめるために触れてみたいと思ったのだ。
まず一体目は、四足歩行の獣の背中から女体が生えているような形をしている。
その女体の肌にじっくりと指を這わせるうちに理解した……これはクルールのものだと。
てっきり首だけのゾンビになるのではと危惧していたが、デーモンには再生能力でもあるのだろうか。五体満足を通り越してもう一つ五体ができている……姿は見えないが艶めかしい肌触りに美しい毛並みだ。想像するしかないのが本当に惜しい。
そしてもう一つのゾンビに手を触れると、これはなんだかすぐに理解できた。
ベッドの上でもでもバスルームでも、何度も触れているなじみ深いもの。

「アイシー。アリナたちはもうゾンビみたいなものだったネ」

そう。
アリナ・グレイのソウルジェムに操られるだけの肉体も、リンプ・ピスキットは死体と認識してゾンビを産み出したのだ。
このゾンビたちにアリナは玄弥を殺させるつもりだったのだが、どうやら射程距離があるらしくアリナに着いてきてしまった。
魔女やウワサのようには扱えないらしい。

「あーあ。せっかくキープしてた魔女もウワサもなくなってるし……」

アリナの固有魔法は結界の作成で、その中に多くの魔女、使い魔、ウワサを飼って保管していたのだが、それは没収されていた。
では改めてこのゾンビやクルールの生首をしまおうかと考えるが、そうすると魔力の消費がいつも以上に凄まじい。
結界の中に引きこもったりしては殺し合いが円滑に進まないからだろうか。
本当にイライラする。

「ま、でも……」

このクルールの姿は本当に美しい。これ以上劣化しないようにひとまず大事にディパックにしまっておく。
おそらくこれだけではないだろう。
クルールが死んだのは戦争≪ウォー≫だという。
ならば悪魔も彼女一人ではあるまい。
玄弥もまさかやけっぱちで彼女を喰らったということもなかろう……何らかの確証があって口にしたのだ。
デーモンに近しい何かをアイツは知っている。そういえば鬼、とか言っていた気がする。

「すっっっっごく欲しいヨネ。アリナのとびっきりのアートのために」


【C-4、国会議事堂近辺/1日目・深夜】


【アリナ・グレイ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]右腕負傷(魔法で止血)、痛覚遮断、魔力消費(小)
[装備]リンプ・ピズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、クルールのゾンビ、アリナのゾンビ
[道具]基本支給品、クルールの生首(玄弥に齧られて頬などが欠損)@デビルマンG、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:レアなアートの材料が欲しい。
0:悪魔族クルール。とっても綺麗……
1:デーモンや鬼、アリナの知らなかった美しいアートの素材を探す。それを彩る絵の具やキャンバスも欲しい。
2:アイツ(玄弥)は鬼について口を割らせたら殺して赤い絵の具にしてやる……!


※参戦時期はマギウスが黒羽根ができる程度に組織を拡大して以降です。詳細な時期は後続の方にお任せします。
※結界内の魔女、ウワサ、使い魔は武装として没収されました。
※制限により結界を作成し中に人や物を入れようとすると魔力の消費量が大きく増大します。


【クルールの生首@デビルマンG】
アリナ・グレイに支給。
悪魔族元老院の両巨頭と謳われる最上位のデーモン、冷元帥クルール。
彼女の最期は原作漫画デビルマンの牧村美樹の最期をオマージュした凄惨なもので、デビルマン・フラムメドックに首を撥ねられ、狂喜に踊り狂う人間たちにその首や五体を晒されていた。
そのうちの生首だけがアリナに支給された。

【リンプ・ピスキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
アリナ・グレイに支給。
頭に挿入することでスタンド能力を身に着ける。
破壊力 - なし / スピード - B / 射程距離 - B / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - E
死んだ生物を見えない死骸として甦らせる能力を持っている。
蘇ったゾンビは、壁や天井を自由に歩くことができ、その本能から脳味噌を喰らおうとする。
死体の一部だけでも蘇生させることができなくはないが、うまくいくのか、どうなるかは持ち主にもこの能力を与えたホワイトスネイクにも分からなかった。

88名無しさん:2019/12/26(木) 21:20:53 ID:sAiOcwgQ0
投下終了です

89名無しさん:2019/12/26(木) 22:18:31 ID:iei9oqD20
投下乙です
なんか青髭を召喚してそうな趣味だなアリナ

90 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:41:44 ID:mZ8ZM18s0
大変遅くなって申し訳ございません!投下します!

91血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:43:08 ID:mZ8ZM18s0


一人の少年が街中を歩いていた。
味気ないレーションを時折噛りながら、周囲の気配を窺う。
そびえ立つビル群は墓標のように静まり返り、本来ならあるべき人混みのようなものは一切なかった。
建物のどこにも電気は点いていない、電源を入れれば点けられるのだろうか。
広い間隔で立つ街灯だけが淋しげな光を放っていた。

「殺し合いか、やべぇなぁ〜」
誰かが今にも少年を殺すかもわからぬ、そのような状況下で少年――デンジは呑気に呟いた。
「やべぇなぁ」
もう一度、デンジは呟く。
やはり、そこに悲壮感や恐怖、あるいは恐怖などの感情はなく、どこまでも脳天気なように思えた。

(どうすっかな、マジで)

デンジに殺人に対する忌避感はそれほど無い。
殺そうと思えば、知り合いでもなければ殺せるだろう。

知り合いがいた。
同僚であるパワー(彼は難しい漢字を読めなかったが、カタカナは読むことが出来た)
そして、職場の先輩である早川アキ
(少し悩んだが簡単な漢字なので、やはり読むことが出来た)

デンジは考えた。
――アイツの名字だろうと読めねぇ漢字は読めねぇ、
――川は三本線が引いてあるだけなので良い、早は日と十が合体していてややこしいんだよな。
――叶は口と十が横に並んでるのにな、早は日と十が縦だぜ。おかしくねぇか。
――気に食わねぇ名字だ、川川になればいいのに。

閑話休題。
デンジは名簿を読み、知っている人間の名を確認する。
同姓同名ということは考えられなかった、自分を呼んだんだから知っている人間を呼んだのだろうとシンプルに考えた。
何故、自分を呼んだのだろうか。
考えを巡らせたが、それはわからない。
デビルハンターという仕事をしている以上、どこで悪魔の恨みを買ってもおかしくはない。

「あ、そうか」
デンジは納得する。
悪魔の仕業なのだ、この殺し合いは。
なれば、わざわざ殺し合いなどしなくてもオババと名乗った悪魔を殺せば解決である。

「なんで悩んじまったのかな〜!最近生活が良くなっちまったもんで、変に色々考えちまったかぁ?」
(ニンジン食ってるもんなぁ俺、キャベツも食ってる、ビタミン取りまくってるしまぁ、しょうがねぇかぁ)
デンジの足取りは軽やかに、デイパックよりレーションの2個目を取り出し、咀嚼する。

「おっ、デンジじゃ」
「げっ、パワー」

冗談のように、あっさりとデンジは知り合いに再会した。
髪をセミロングにまで伸ばした少女。
イタズラっ子のように緩めた口元から伺える歯は鮫のように鋭利だ。
胸部は平らであり、その代わりであるかのように頭部からは角が2本生えていた。

その角が示すように、普通の人間ではなく、魔人であった。

「ちょっと、とまれ」
すたすたと自分の側に寄ろうとするパワーを制止するように、デンジは手を伸ばす。
「嫌じゃ!」
すたすた、すたすた、すたすた、その歩みは止まらぬ。
パワーがデンジに従う道理はない。

「お前、俺を殺すつもりだろ!」
「バカ!殺さんわ!」
「じゃあ、なんだよそれは!」
「関係ない!殺さん!」
パワーが片手に携えていたものは手斧であった。
片手で持てる程度の大きさであっても、人の頭などを砕くのに不足はない。

「ぜってぇ殺すだろ!」
「殺さんと言っているのがなぜわからん!これはたまたま持ってるだけじゃ!」
デンジが駆け足で逃げ出すのに、合わせてパワーも走り出す。
静かな夜の街に二人の靴音がやけにうるさく響き渡り、闇を染め上げるかのように荒く白い息が発せられた。

「この殺し合いに乗る気かテメェ!」
「乗らん!!」
「お前さっきからクソみてぇな嘘ついてんじゃねぇ!」
「わかった、乗ろうと思っておったが今は思っとらん!じゃから止まれ!」
「絶対殺すからやだ!」

二人は夜の街をひたすらに走り続けた。

92血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:43:39 ID:mZ8ZM18s0

(くっそ〜!キリがねぇ!!)
デンジは考える。
出来ればパワーのことは殺したくない。
死んでもしょうがない面はあるので、積極的に助けようとも思わないが、パワーを殺せば、
マキマ――彼の敬愛する女性が悲しむ。デンジはそう考える。

(ん、マキマさん……?)
マキマのミステリアスで憂いを帯びた顔をデンジが思い浮かべると同時に、脳に電撃が走った。
パワーを止める名案が閃いたのである。

「おい!パワー!名簿は読んだか!?」
デンジは立ち止まり、くるりと振り返って、大声で叫ぶ。

「名簿ォ?何か言うとったが、そんなもんは読まん!」

読まないのではなく、読めないのだろう。デンジはそう考える。
パワーはあまり、賢くない。

「マキマさんもこの殺し合いに参加してるぞ!」
「なんじゃとぉ!」

パワーが叫ぶと同時に、闇の中に白いものが浮かび上がった。
夜闇の中にあって、その全身が薄っすらと輝いているようである。
陽光に疎まれているかのような乳色の白い肌、色素のない銀の髪。
強膜は赤く、紅く、それは血の色だった。瞳孔が金色に妖しく輝く、魔性の証明だった。

雅と言う。吸血鬼と言う。

その雅の頭に手斧が突き刺さっていた。
デンジも、パワーも気づかなったが、雅はデンジの道の先に居た。
そして、今まさに姿を現そうとした瞬間に――パワーが衝撃のあまりに放り投げてしまった手斧が命中したのだ。

噴水のように血が溢れ出た。

「やっべぇ〜!殺っちまったな!」
「わ、わしは……わしは悪くないぞ!デンジが殺れって言ったんじゃ!」
「言ってねーよ!とにかく血だ!血ぃ止めろ!マキマさんに怒られんぞ!」
「いや……あのオババとか奴願いを叶えるとか言っておったな!今こそ下剋上のチャンスじゃ!
 悪いのデンジ!そこの男には死んでもらう!」
「そのオババとかいう奴がお前の願いを叶えると思ってるのかよ!この前言われたろ!」
「なっ……ワシの方が先に気づいておったが!?」
「いいから早く血ィ止めろ!」

わちゃわちゃと動き続け、
いざパワーが雅の元へ向かおうとした瞬間、雅は平然と立ち上がった。
手斧を引き抜き、地面へと放り投げる。

「……人間でも吸血鬼でも邪鬼でも無い気配、何なんだ、お前たちは」
「血の魔人、パワー様と愉快な下僕じゃ」
「あ〜〜死んでねぇ!!死んでねぇってことは多分殺して問題ねぇ奴だなぁ!」

突如として、彼らを包む闇が牢獄になったかのようだった。
吸血鬼の王、雅が発する雰囲気は鋭い。地獄とは、彼のいる場所なのだろう。
もしも、この場所にいるのが普通の人間ならば血を吸われるまでもなく失禁は逃れえぬ。

勿論、雅に対峙する者が普通の人間であるはずがなかったが。

93血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:44:23 ID:mZ8ZM18s0

「興味が湧いた」
すらりと、雅が銃剣を抜き払う。左に一、右に一。二刀流である。
その銃剣の本来の所持者の名はアレクサンド・アンデルセン、吸血鬼を殺す者である。
吸血鬼の王は両の手に吸血鬼殺しの武器を構え、悪魔と対峙する。

「俺は男に興味なんてねぇけどなぁ〜〜〜〜!!」
躊躇はない、そのような余裕はない。
デンジは本能的に、心臓から伸びるスターター・ハンドルを引いた。
重厚な音がした。始まりの音だった。

デンジの頭蓋を斬り裂き、内部からチェンソーの刃が現れる。
右腕を斬り裂き、左腕を斬り裂き、やはりチェンソーの刃が生じる。

激しい痛みと重厚なるエンジン音の中、彼は覚醒する。

雅を悪魔と呼ぶものもいる。
しかし、それは彼らが本物の悪魔を知らないだけのことだ。

チェンソーの機械を模した異形の頭部、両腕から突き出たチェンソーの刃。
チェンソーの悪魔はデンジであり、デンジはチェンソーの悪魔であった。

「先に言っとくけどよォ!俺の勘違いなら謝っとくぜェ〜!!」
「ハ、心配することはない……私はこの場の人間を皆殺しにするつもりだよ」
「そうか〜!だったら正当防衛って奴だなぁ〜〜〜!!!」

「ところで……先程の彼女はいいのか?」
雅が銃剣を構え、デンジが悪魔へと変じた時。
パワーの姿は既になかった。逃げていた。

「アイツに期待する奴ァ!バカってもんだぜ!!ハハッ!!つまりテメェは俺よりバカってことだな〜!!」
獣のごとく、デンジが雅へと迫った。
雅もまた、デンジに応じる。

(宮本明……私はずっと病に侵されていた。退屈だ、退屈というどうしようもない病だ。
 だが、この殺し合いに呼ばれ、お前がいると知った時……そして、今、この瞬間。宮本明、宮本明よ。)

雅は心の中で宮本明に語りかける。
吸血鬼の王は日本を滅ぼし、玉座へと座った。
しかし、玉座には何も無かった。ただ無限の退屈の日々だけがあった。

(私の退屈を殺しに来い、宮本明)

【F-2/1日目・深夜】

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]チェンソーの悪魔化
[装備]なし
[道具]基本支給品(食料消耗済み)、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:主催の悪魔をぶっ殺して全部解決だぜ〜!
1.目の前の雅を正当防衛でぶっ殺す

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【パワー@チェンソーマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:最強のわしが全員ぶっ殺して願いを叶えて下剋上じゃ!
1.デンジと雅の戦いから逃げる
2.マキマが怖い

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【雅@彼岸島】
[状態]健康(手斧による頭部粉砕)
[装備]アンデルセンの銃剣@HELLSING
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:宮本明を探す
1.デンジとの戦いを楽しむ

※参戦時期は部下が国会議事堂にクソみてぇな旗を立てた後(48日後の時系列)

94血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:44:37 ID:mZ8ZM18s0
投下終了します

95 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/28(土) 06:45:17 ID:fUPFk4kY0
早川アキ、ディオ・ブランドー予約します

96 ◆Mti19lYchg:2019/12/28(土) 19:12:42 ID:pL/iUc620
延長願います。

97 ◆yliPrzUV3E:2019/12/29(日) 02:06:13 ID:uujd92x20
間に合わないので予約を破棄します

98 ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:12:38 ID:KNzNhCgk0
投下します。

99 ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:13:31 ID:KNzNhCgk0
 島のとある地域。家が建ち並ぶが、そのどれもが真っ当な状態ではない。
 ここは既に人が住むのを放棄された村。
 壁に穴が開き、屋根が朽ちた板葺きの家が続く。
 その中を我妻善逸は歩いていた。
 強い意志を鋭い目に宿し、引き締まった顔で。
 
 善逸には、この場の殺し合いに乗る気は無いし、異形の人喰い――鬼がいるのなら討伐するのは当然と思い、弱い人がいるなら守る気でいる。
 だが、それらよりりどうしても優先すべき事がある。
 例えこの場に始まりの鬼であり、全ての鬼を生み出した鬼舞辻無惨がいて、善逸がその鬼を討伐する鬼殺隊の一員であるとしても。
 他の鬼殺隊隊士、炭次郎達には人々を守り無惨を討つという彼らの為すべきことがあり、善逸には善逸自身のやるべきことがある。それは無惨の討伐より優先される事だ。
 それは兄弟子の獪岳に対し会い為すべき事を為すため。名簿の中に名がなく、この場にいないのなら、必ず生き残って脱出する。
 覚悟は既に決めている。だが――

「俺はやるべきことがある……でもさ! やっぱり怖い物は怖いんだよ! なにあの婆さん、あっさり殺して生き返らせたり、変な馬鹿でかい手だしたり!」
 叫び、地面に四つん這いになってうずくまる善逸。鬼との戦いならまだしも、首輪といい、人の蘇生といい、虚空から現れた巨大な手といい未知の超常現象ばかりで善逸はすっかり普段通り自信の無い状態になっている。
 愛用の日輪刀も没収され、支給品は善逸の見る限り、武器に使えそうもない物ばかりだったのもそれを助長していた。
 救いは炭治郎たち鬼殺隊の仲間がいる事だが、近くにいない以上善逸の不安と恐怖が薄れる事も無い。
「せっかく禰豆子ちゃん日の光に出られるようになったのに、こんな事ってある!? ダメだきっと死ぬんだ俺死ぬ前に結婚したかった、夢であってくれよ、起きた時禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたらもうすごい頑張るから! だから悪夢から覚めてくれーーッ!!」
 自身の叫び声が空しく消えていく最中、善逸の耳は後ろから歩いてくる人の音を聞き取った。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」
 善逸が声の向きに振り向いた先には、後ろはふわりと量がある髪を首筋辺りまで切り揃え、こめかみの部位は肩まで長い、金髪碧眼の美女がいた。

100眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:14:09 ID:KNzNhCgk0
◇ ◇ ◇
 カチュア・ラストルグエヴァは、ぼろぼろに朽ち果てた集落の道を、支給品である地図とコンパスを手に歩いていた。
 来ている服はオレンジ色の両胸部分にポケットがあるそっけないデザインのシャツに、同じ色でやはりそっけないデザインのズボン。
 一見、作業服に見えるが左胸元には『LB0006』と番号が振られたプレートがある。
 これは作業服ではない、囚人服だ。
 カチュアは無期懲役の囚人である。それもただの犯罪者ではない。マスコミから『ワンナイトキラー』と渾名された、出会い系であった男を殺し続けた『殺人鬼』である。

「これは新しい実験……ってわけでもなさそうやなぁ」
 カチュアは周囲を眺め呟いた。
 ここは以前、男の死刑囚たちと殺し合いをさせられた時の廃村より、さらに萎びた村だ。

 実験。そう、カチュア・ラストルグエヴァはある実験の被検体である。
 それは、ミラーニューロンの共感性を応用し、後天的に実在した殺人鬼の人格を植え付けるというものだ。
 その実験が成功した人間は例外なく10代の女性であり、普通の女子が一晩で殺人鬼に豹変するその凄惨さからギリシャ神話の怪物に例えて変貌は『メデューサ症候群』、発症者は『メデューサ』と呼ばれる。
 カチュアもそのメデューサであり、性に奔放な『昼』の人格と、性欲とサディズムが融合した殺人鬼の『夜』の人格を合わせ持っている。

「コンパスからすると……南に小高い山があるっちゅうことは、ここはB-2地区か」
 カチュアは次に名簿を取り出してチェックする。
「千歌と小夜子がおるな。うわ、あの変態組長もわざわざ生き返らせてまで呼んだんか」
 甘城千歌、鬼ヶ原小夜子。
 二人は自分と同じ殺人鬼の人格を植え付けられ罪を犯したメデューサだ。
 カチュアが名前を見て心底うんざりした名前。天童組組長、水野智己。
 自分達メデューサ全員を相手取った筋肉達磨の猛者であり、男女問わずアナルにこだわる変態である。
 変態組長は千歌によって船のポールに串刺しにされて死んだはずだが、あの神子柴のことだ。殺し合いにはうってつけと判断して、生き返らせてまで参戦させたのだろう。
 人の蘇生という超常現象は未だカチュアの身になじまないが、実際目撃した以上信じるしかない。
「とりあえず山沿いに歩いて、羽黒刑務所目指すか」
 行動方針を決めた所で、支給品のチェックに入る。
「お、ラッキー♪」
 支給品の一つは、苦無のセットだった。ナイフでの刺突や投擲を主な戦法とするカチュアにはうってつけの武器である。
 もっとも人格が変貌しなければ意味がないが、今のカチュアは自分の『夜』の人格を知っている。
 おあつらえ向きにそのための薬と衣装まで入っている。

 支給品のチェックを続けようとした途中で、変な高音の叫び声が聞こえてきた。
 叫びの方向に行くと、そこでは黄色の黄物を羽織った少年が崩れるように両手両膝をついていた。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」

101眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:14:28 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

 話しかけられた善逸は、カチュアに向かって突進した。
 カチュアは焦った。しまった、殺し合いの場だというのに不用意に近づいてしまった。
 善逸は慌てるカチュアの胴に抱き付き。
「お願いしますお姉さん! どうか俺と結婚してください!」
 顔を上げ、カチュアに対しそんな台詞を言った。
「ハァ?」
 カチュアは頭が真っ白になった。この状況で助けならともかく結婚という言葉は、発想が飛びすぎている。
「意味分からへん。イカレてんのか、この状況で?」
「俺いつ死ぬか分からないんですよ! いやきっと九分九厘死ぬんですよここで! だから結婚してくれれば救われるんですよ俺のこと好きだから心配して声かけてくれたんでしょ頼みますよ!!」
 カチュアは思った。ここで結婚と言い出す意味は分からないが、混乱している事は分かる。
 それに、この少年が童貞だという事も分かる。
「結婚は無理やけど、一発ヤルなら別にかまへんで」
 そこでカチュアはさらに突拍子もない事を言って少年の意表を突くことにした。元々カチュアは性に奔放だ。実際にやって落ち着いてくれるなら安いものだ。
「……あの、やる、って……床の方で?」
「せや。そこの家に入って5分もあれば十分やろ」
 カチュアは親指で近くの家を指した。
「本当に?」
「ホンマに」
 数秒間、互いの動きが止まる。辺りは風が木の葉を揺らす音のみになった。
「違うんだって!! いや、違くはないよ!! 本音を言えば俺も確かに床入りしたいよ!! でもそういうんじゃないんだよ!!」
 善逸はカチュアの腰に顔をこすりつけた。
「俺、捨て子だったからさ! 家族の団欒とか温かい家庭ってやつを知らないんだよ!
 だから、きちんと結婚して所帯を持ってそういうのを作りたいんだよ!」
「こないなとこで所帯持ってどないすんねん! 次はあれか、子供でも欲しいってか!? 5分でヤって5分で産めちゅうんか!?」
「出来るんですか!?」
「できるかボケェッ!!」
「平手打ち!?」

102眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:15:19 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

 互いに言い合い、善逸の抱き付きをカチュアが突き放そうとし、それらを繰り返して数分後。
「すみません、ちょっと混乱してました……」
「混乱で結婚言い出すのもブッ飛びすぎてるけどな」
 ようやく落ち着いた、両頬が赤くなった善逸とカチュアが改めて向かいあった。
「俺には禰豆子ちゃんがいるのに、昔みたいにいきなり結婚を申し込むなんて禰豆子ちゃんに失礼な……」
「彼女おるんかい。それにどっちに対して失礼思うとるんや」
 はあ、とカチュアは息を吐いた。
「大体家族なんて、そんなええもんばかりちゃうで」
 そう言ってカチュアは苦い顔になった。
「そういえばお姉さん、外国人みたいだけど日本語お上手ですね」
「ワタシはお母んがロシア人やけど、生まれも育ちも京都の外れやさかい。お母んはワタシを生んですぐロシアに帰ったけどな」
「そんでワタシは日本生まれの日本人なのにお母んゆずりのこのなりやろ? 子供の頃はよくいじめられてな、泣いて帰るとお父んが釣りに誘って慰めてくれたんや」
 人差し指で胸を刺し、カチュアは善逸の表情を見る。善逸は羨ましそうに微笑んでいた。
「で、中学に入るころになると、そのお父んに無理やり犯されてな。それはもう毎晩毎晩」
 あっけらかんとしたカチュアに対し、善逸の表情は目に見えて変わった。
「結局耐え切れず、16の時に家を飛び出し、それ以降落ちに落ちて今ではこの通り、立派な無期懲役の囚人や」
 涼しい顔を変えず、カチュアは手首をひらひらと振った。

 カチュアはただで自分の身の上話を聞かせたかったわけではない。同情を寄せられることを期待していた。
 何しろカチュアは、ただの囚人ではない『殺人鬼』である。
 幸いなことに目の前の少年は知らなかったようだが、この状況で殺人鬼など信用されるはずもない。
 そのため、自分が犯罪者に堕ちた経歴で同情され、信用を買おうとした。

103眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:15:38 ID:KNzNhCgk0
 カチュアが思う以上に同情されたのか、善逸は暗い表情になった。
 しばし話が止まった後。
「俺は悪い事ばかりじゃなかったですよ」
 呟くように善逸が言った。
「俺は女の人に騙されて借金作って、それを払ってもらえる代わりに……ある剣術の内弟子になったんです」
 善逸はあえて鬼についての説明は避けた。信じてもらえるとは思わなかったからだ。
「師匠の爺ちゃんは怒るしよく殴りすぎだったし、兄弟子の獪岳は俺を嫌ってやめろと責めてたけど、爺ちゃんは決して俺を見捨てはしなかったし、獪岳は誰よりもひたむきな努力を続けてきたのを見てきました。
 そんな二人と囲む膳は、笑いとかはなかったけど、それでも悪い雰囲気じゃなかったです」
 それは遠い、届かない思い出のような口調だった。
「だから、俺はどうしても獪岳に会わないといけない。会ってやるべきことがある。この名簿の中にいない以上必ず生き残って脱出する」
 その言葉で善逸は覚悟を思い出したのか、目は硬い決意の込められた鋭い瞳に、表情も今までより固く引き締まった。
 表情が一変し、拳と強く握りしめ腹の据わった様子の善逸を見て。
『こいつ、アホでヘタレやけど使えるか?』
 そうカチュアは考えた。
「ワタシは多分同じ囚人の二人が向かうと思う羽黒刑務所へ行く気やけど、アンタはどないする?」
「俺も一緒についていきますよ。最初は仲間が全員知っている産屋敷邸に行こうと思ったけど、よく考えたら炭次郎は今頃人助けしてるだろうし、伊之助はそもそも漢字読めないんで二人とも行けないでしょうから」
 他の鬼殺隊隊士についても、善逸は考えていた。不死川玄弥は同期だけど、知っているのは炭治郎の方だし、時透無一郎は柱稽古で会ったきり。宇髄天元は強いけどあまり会いたくない。
 以上の理由で、善逸はカチュアと共に行くと決めた。
「いや、この地図だとワタシらがいるのはB-2地区やから、産屋敷邸を回ってから羽黒刑務所に向かった方がええんちゃう?」
 善逸が共に行くことに、カチュアは内心幸運に思いながら提案した。
「いいんですか? 俺は仲間と出会えるとしたら頼もしいですけど、お姉さんの方が遅れますよ?」
「まあ、大丈夫やろ。片方は身体能力高いし、もう片方は知恵が回るから二人とも強敵と出会ってもうまく逃げ続けるくらいできる思うで」
「結構知ってて信頼しているんですね。その人達って友達ですか?」
 丁度自分にとっての炭次郎と伊之助のように、と善逸は思って尋ねた。
「友達……? ……そうやね、うん、友達や」
 カチュアは意表を突かれたが、友達と言われればそうなのだろう、と思った。
 ここに呼ばれてはいない同じメデューサの槇村霧子のように大声で叫ぶ気は無いが、同じような経過を経て罪を負わされ、互いに殺し合い、殺しをさせられる。
 そんな同じ境遇を共有できる仲間だ。
「で、この名簿にある甘城千歌と鬼ヶ原小夜子がそうなんやけど……なんて言ったらええか……二重人格、というやつでな。
 おとなしい方が表に出てる間はええんやけど、凶暴な方やとアンタがどうなるかわからへんから、出会ったらワタシに話し任せてくれんか?」
「いいですよ。俺も仲間に会ったらカチュアさんを紹介する前にいくつか話しします」

 カチュアは内心ほくそ笑む。殺人鬼と知られずに信用を得る作業はある程度うまくいった。一緒に行動するおまけつきだ。これで善逸の行動を少しはコントロールできる。
 これで『夜』の殺人鬼にならなくてもひとまずは上手くいくだろう。

 支給品の中には、殺人鬼の人格の『スイッチ』を入れるための服がペン型注射器の発火剤と共にあった。
 発火剤は3本。1回で5時間は『夜』の人格になれるとある。打ち方はキャップを外し、底面を身体に押し当て上部を音が鳴るまで半回転させ、頂点のスイッチを押す、というものだ。
 千歌の方はよほど追い詰められない限り、自分からは打たないだろうが、小夜子は千歌を探し守るため、ほぼ間違いなく直に打っているだろう。
 カチュア自身は、支給品のチェックが終わった時点で打とうかと思っていたが、善逸との出会いで考えを変え、危険が迫るまでは取っておく方針に切り替えた。
 元々殺人鬼の人格になっても、カチュアの戦法は罠を用意して、仕掛けて嵌める殺り方だ。近接戦でもナイフで戦えないことは無いがそれほど強くは無い。
 善逸が一緒についてくるなら、最低でも囮には使えるだろう。強いのなら万歳だ。

104眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:15:56 ID:KNzNhCgk0
「じゃあ、ワタシちょっと着替えるで」
「あ、はい……え、ええ!?」
 カチュアは囚人服を善逸の目の前で脱ぎ、裸身をあらわにした。
 その姿のままデイバックから『スイッチ』であるケープコートのセットと薬、苦無を取り出し、薬を服の胸元に、苦無をレッグホルスターに仕込んでおく。
 続いてレッグホルスターを装着し、肌の上から直接コートを着込みベルトで止めて、ケープを羽織りブーツを履く。
 最後に毛皮の帽子、パパーハを被り着替えを終えた所で善逸を向き、そこで目を見開いた。
「ちょい待ち、何で泣いてるん!?」
 善逸は陶然とした表情のまま、はらはらと涙を流していた。
「……こんな夢のようなことが俺に起きるなんて……。
 ……そうか、俺はもうすぐ死ぬんだ……」
「ワタシのストリップ見て、なんでそないなネガティブ反応やねん!」
 善逸を利用するためのサービスのつもりだったのに、予想外の反応に驚いたカチュアは善逸の肩を掴んだ。
「さっきの決意はどないしたん!? もっと元気だしいや! う、あかん、余りのネガティブさで何かワタシまで泣けてきた!」
 泣き続ける善逸に対し、カチュアは目元を拭きながら善逸の肩を揺さぶった。

105眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:16:18 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

「すみません、ちょっと混乱してました……」
「それ、さっきも聞いたなぁ」
 数分後、ようやく泣き止んだ善逸に対し、カチュアはあきれ顔になった。
「まあ、落ち着いたなら次はアンタの武器に使えそうなもの、探してみよか」
 苦無を見た善逸によると、善逸には支給された武器が無いというので、家に入り何かを物色してみる事にした。
 剣士というならば、中に箒とか、囲炉裏の灰掻き棒でもあれば善逸も戦えるのでは、という理由だ。
 二人はまず入口の近くに傘立てがないかと思い、探してみると目当てのものはすぐ見つかった。竹で編んだ深い籠だ。
 ただし、それには傘ではなく一振りの日本刀が差さっていた。
「……刀ですよね、これ」
 善逸があまりにも想定外の物に確認を取るよう、カチュアに話しかける。
「……刀やな」
 それに対しカチュアは善逸の言葉を繰り返した。
「いやいや、ちょい待ち。何で家の入口に傘みたいに刀が差さってるんや。おかしいやろどう考えても」
 カチュアは家を出て、隣の家に入る。すぐ善逸にカチュアの声が聞こえた。
「こっちにもあったで。あの婆、本気で殺し合いさせる気なんやな」

 ここに来れば、まともな武器を支給されたかった参加者でも問題ないという事か。
『千歌と小夜子の為に二本持ってくか』
 カチュアはそう思い、籠から刀を取り出した。

 二本は重いな、一本にしとこか。と、カチュアが独り言をつぶやいている間、善逸は刀身を確認しながらカチュアのいる方を見て思った。

 彼女が俺に話す時に聞こえる『音』は、今まで俺を騙してきた女の人たちと同じ音がした。自分を利用しようとする音だった。
 だけど、彼女が『友達』と言った時は、少し寂しくて、そして楽しくて、それでいて悲しい音がした。
 彼女が生き残るために俺を利用するとしても、俺はその友達に会いたいという思いだけでいい。それだけで彼女を信じられる。

 探索を終えた二人は、腰に刀を差した状態で並んだ。
「ほな行こか。ええと……」
「はい、あ……そういえば、名前まだ聞いてませんでしたね」
「ああ、そやな。初対面の女に名前聞く前に結婚申し込むなんてどういう神経しとんねん」
 カチュアは善逸に向かって右手を差し出した。
「ワタシはカチュア・ラストルグエヴァや。カチュアでええで」
「俺は我妻善逸です」
 善逸が遅れて右手を上げたところ、カチュアはぐいと善逸の手を引き寄せ、両手で包んで笑顔を見せた。
「あんじょうよろしゅうな、善逸」
 善逸は見る見るうちに顔が真っ赤になり、カチュアの手を上から握り返した。
「ハ、ハイ―ッ!! よろしくお願いします、カチュアさん!!」
 カチュアは善逸の女好きにつけこむための行動とはいえ、予想以上の反応に思わずため息をついた。
「善逸、自分その童貞臭何とかせんと結婚できへんで。折角顔は悪うないのにその態度だと女から騙されるのも分かるし、好きな子からも嫌われるやろ、絶対」
「グハッ!」
 カチュアの言葉のナイフが善逸の胸に突き刺さり、善逸は思い切りのけぞった。

106眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:16:41 ID:KNzNhCgk0
【B-2北・集落/1日目・深夜】

【カチュア・ラストルグエヴァ@サタノファニ】
[状態]健康、『昼』の人格
[装備]日本刀、藤の花の毒苦無×20@鬼滅の刃、発火薬@サタノファニ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、発火薬×2
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:千歌、小夜子との合流。
2:そのために産屋敷邸を経由して羽黒刑務所を目指す。
3:生き残るため、そして殺人鬼の話を広められないよう、善逸を利用する。

※参戦時期は対天童組戦、懲罰房からの復帰の後です。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]日本刀
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3(善逸が見る限り武器に使えそうなものは無い)
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。鬼を倒し、人を守る。
0:脱出し、獪岳に必ず会う。
1:カチュアを守る。
2:善逸、伊之助を含めた隊士達との合流。
3:鬼を斬るための日輪刀を探す。

※参戦時期は柱稽古の最中です。

※B-2地区の集落は彼岸島の村なので、刀が一軒ごとに置いてあります。

107 ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:17:00 ID:KNzNhCgk0
投下終了です。

108名無しさん:2019/12/30(月) 19:08:43 ID:heVwUzhk0
投下乙です
善逸は気絶したらそっちの方も上手くなりそうだ

109 ◆Mti19lYchg:2020/01/01(水) 00:11:04 ID:jfgCppzU0
まとめに書き込む際に、いくつかおかしな点を修正しました。

110 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 00:56:55 ID:evCBF5g20
明けましておめでとうございます。
皆様投下乙です

>逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい
支給品が玄弥を追い詰めにかかってる...
クルールの生首にうっとりして齧られた後も「まあこれはこれで芸術的にあり」となるアリナ先輩が本当にアリナ先輩すぎる。少しはフールガールのことも思い出してあげてください。
早速活躍したクソみてえな旗や玄弥とアリナ先輩の熱いバトルにとてもワクワクしました。
クルールという仮にも美少女の顔を貪る玄弥、第三者の視点からみたらかなりおぞましい絵面になってそう。
しかし友好関係を築いた炭治郎とかりんに対してこちらは正面衝突とはなんとも皮肉な...先輩が原因でしかないけれど。


> 血と吸血鬼とチェンソー
こいつら本当にブレなくて完全にチェンソーマンの原作回みたいになってて凄い。
特にパワーちゃん、会って速攻デンジを騙して殺そうとするわ誤殺を押し付けようとするわ開き直って下克上宣言するわ相手が強そうだと速攻で逃げ出すわでやりたい放題すぎる。
「アイツに期待する奴ァ!バカってもんだぜ!!」デンジのこのセリフで今回のパワーちゃんの8割くらいが詰まってて笑う。
嫌でも存在感が強くなる雅様すら飲み込むこのバカコンビ、好きです。

>眠る蛇と眠れない鬼狩り
カチュアの下品エロムードに引っ張られず自分の空間に引き込んだ善逸、エライぞ(?)
「こないなとこで所帯持ってどないすんねん! 次はあれか、子供でも欲しいってか!? 5分でヤって5分で産めちゅうんか!?」「出来るんですか!?」
「できるかボケェッ!!」「平手打ち!?」
このくだり、鬼滅の簡単作画で脳内再生されて笑いました。
腹に一物抱えてるのを知りながら、友達に会いたいという思い一つがあるだけでカチュアを護ろうとする善逸がかっこいい。

投下します

111エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:00:00 ID:evCBF5g20

青年、花京院典明は困惑していた。

宿敵・DIOの部下であるテレンス・T・ダービーとの魂を賭けたゲーム対決で敗北し、急激な虚脱感に襲われたのは覚えている。
だが覚えているのはそこまでだ。
気が付けばあの妙な会場に呼ばれ、老婆に殺しあえと言われて。とにかく主催である老婆を倒そうとした途端、琵琶の音と共に意識が遠のいて。
情報が多すぎる。これで困惑するなという方が無理な話だ。

(いったん整理をしよう。たしかあの老婆は支給品を配るといっていたな)

キョロキョロと辺りを見回せば、小さなデイバックが落ちていた。
花京院は傍の木の陰に隠れてその中身の検分を始めた。

「これが僕の支給品...ん、これは名簿と地図か」

名簿を目にした彼に更なる困惑が降りかかる。

「承太郎にジョースターさん!それに...DIO!?」

空条承太郎とジョセフ・ジョースター。
花京院典明が初めて心より信頼した友人であり大切な仲間たち。

DIO。
承太郎たちの旅に同行したそもそもの目的。
植え付けられた屈辱を晴らすため、ジョセフの娘であり承太郎の母であるホリィの命を救うために倒すべき男だ。
名簿にはディオ・ブランドーと記載されているが、これはかつてジョセフから聞かされたDIOの本名だったはずだ。

(館で分断され、テレンス・T・ダービーと戦っていたメンバーだけがこちらに来ている。つまり、承太郎たちもゲームに負けたのか?
奴は人形に魂を入れられた者を自在に操れるのか?しかし、それではDIOまでもこちらにいるのが不可解だ)

テレンスに負けた者がこちらに飛ばされたと仮説を立ててみるが、しかしDIOがいる時点でこの説は不自然な点が多すぎる。
テレンスがDIOを裏切ったとしてもタイミングがおかしいし、そもそもあの慎重なDIOがゲームの達人であるテレンスとゲームで勝負などするだろうか?
人質をとったにしても、最も縁が深いであろうエンヤ婆にさえ、利用価値がなくなったと判断すれば、肉の芽を仕込み殺してしまうような男に通用するするとは思えない。
DIOほどの力があり、人質も意味を為さないのであれば、そのままテレンスが殺されるだけだ。
よって花京院は、この殺し合いとテレンスは無関係だと考える。あるとしても、それはテレンスが脅迫されて従っているという構図だろう。


(いや...気になる名はそれだけじゃない)

ジョナサン・ジョースター。ロバート・EO・スピードワゴン。

前者は、承太郎とジョセフの先祖にあたり、100年前に吸血鬼と化したDIOと戦った男だ。
確か彼はDIOに首から下、つまりは身体を丸ごと乗っ取られて死亡したと聞かされている。

ロバート・EO・スピードワゴン。
世界的に有名な財団の創始者の名前だ。ジョースター家に対して非常に協力的であり、花京院も目の治療や物資の支援などの恩恵を受けたこともある。
だが、彼もまた心臓発作で亡くなっていた筈だが...。

(神子柴は死人を蘇らせていたが、彼らも蘇らせられたのか?)

死者の蘇生は見せられた。
だが、見せしめの青年は身体がその場にあったから復活できたが、DIOに身体を乗っ取られているジョナサンが生き返られるのかはわからない。
スピードワゴンにしても、彼の享年は80歳を超えていた筈だ。
そんな彼を蘇らせてまで殺し合いに放り込むだろうか?順当にいけば、すぐに脱落してしまうだろう。

(わからないことだらけだ...とにかく情報を集めなければ!)

花京院は決して殺し合いに乗るつもりはない。
それどころか、二度とこんなバカげたことを起こさせないように神子柴を倒そうとすら考えている。

しかし、現状では神子柴の摩訶不思議な能力に対抗する術は思いつかない。
地図を信用するならば、奴は国会議事堂にいるようだが、あの巨腕や空間移動(?)の術を破る術がなければ恐らく無駄死にとなるだろう。
一人で向かうのは愚策。
まずは承太郎やジョセフと合流する。そして他の参加者にも協力を呼びかけ、奴を倒す手がかりを見つけ出さなければ!

花京院は荷物を纏め立ち上がろうとする。

―――そんな彼に被さる影。

112エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:00:19 ID:evCBF5g20

「っ!」

他の参加者の気配を察知した花京院は反射的に振り返る。

月光に照らされ、花京院へと影を伸ばしていたのは少女だった。

緑色の髪に、大きな盾と胸当てに身を包んだ、どこかメルヘン風味なRPGの戦士のような恰好だ。
少女は武器や盾を構えるでもなく、さほど距離をとっているわけでもなく、ただじっとこちらを見つめている。
敵意はない、とみていいのだろうか。

(罠を仕掛けているのなら僕が彼女の存在に気が付くような素振りを見せるはず...こちらから接触してみるか)

こちらの存在に気が付きながらもなにもアクションをしてこない彼女に、花京院も警戒心が高まるが、このまま黙っていたところでどうにもならないだろう。
花京院は意を決して声をかけた。

「そこのきみ、僕の名前は花京院典明。僕はこの殺し合いに乗っていない。少し話を聞かせてもらいたいのだが」
「っ!?」

少女は驚き慌てたように盾をかざしその後ろに身を隠し、上部にある覗き穴からこちらをじっと見つめ始めた。

(警戒されているな...仕方ない)
「...わかった。きみが落ち着くまで僕はここにいる。接触する気が起きたらなにか合図をくれないか。信用できなければそのまま立ち去ってくれても構わない」

こちらから譲歩し彼女に選択を委ねさせる。
こちらを見つめていたことから、彼女もなにかしらの情報を欲しているのは火を見るより明らかだ。
ならば警戒心さえ薄められれば情報交換は容易いはずだ。
その考えのもと、花京院は彼女の返答を待った。

十秒。二十秒。三十秒...

沈黙が場を支配する。

もうすぐ一分が経過するといったところで少女は口を開いた。

「わ、私、二葉さなといいます。あの、花京院さんも魔法少女なんですか?」

魔法少女。
殺し合いにそぐわぬそのファンタジーチックな可愛らしい単語に、花京院の困惑はますます深まるばかりだった。

113エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:01:20 ID:evCBF5g20



傍に立っていた城に身を隠し、花京院とさなは腰を落ち着け、互いの情報を交換していた。

さなは語った
己がキュゥべえという生物と契約し魔法少女となり、その願いが作用し、魔法少女以外には存在を認知できなくなっていることを。

「それで気付かれないはずだとああも無防備に見張っていたということか...」
「あの、すみません。私からどう接触すれば気付いてくれるか思いつかなかったので...」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。僕もきみと同じ立場なら同じ方法をとっただろう」


魔法少女―――俄かには信じがたいし、始めは自分やアヴドゥルのような天然のスタンド使いだと思った。
が、さなが変身を解除して制服の姿に戻るのも見せてもらったうえ、キュゥべえという他生物の名前も出てきている。
妄想と現実の区別がついていないにしては会話も成り立ち違和感を覚えるところもない。
となれば、自分やスピードワゴン財団が知らないだけでそういう存在がいると考えるべきだろう。スタンド使いにせよ、基本的に一般人が知ることはないのだから。

「あの、本当に魔法少女じゃないんですよね?」
「ああ。僕は御覧の通り男だし、魔法少女に関わったこともない」
「じゃあ、なんで私が見えたんでしょうか?」
「......」

花京院は己の口元に手を添え考える。
スタンドは基本的にスタンド使いにしか認識できない。これだけ見ればさなの魔法少女もスタンド使いの派生と捉えることもできる。
しかし、それはあくまでもさなに当てはまるだけ。他の魔法少女は誰にでも認識できるらしい。

(...確認してみるか)

花京院は、右手の甲をさなに向けて差し出した。

「いいかい、この手を見ていてくれ」

さなは、言われた通りに差し出された手を見つめる。


―――ブンッ

「!?」

さなは己の目を疑った。花京院の腕から緑色の別の腕が浮き出ているのだ。
そのまま彼の背中からぬるりと姿を現した像を見て、さなの警戒心はさらに高まる。

114エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:02:07 ID:evCBF5g20

「魔女...ウワサ...!?か、花京院さん、こっちに来て盾に隠れてください!」
「大丈夫。落ち着いてくれ。これは僕の力だ」
「えっ?」
「スタンド...精神エネルギーが作り出すパワーある像だ。僕以外にも使える者たちがいる」

スタンドを引っ込め、花京院は再び思案にふける。

(やはり見えていた...となると、僕のスタンドも彼女も、神子柴に干渉され他の参加者にも認識できるようにされているのだろう)

よくよく考えればだ。
スタンドやさなのように、他者に認識されず一方的に攻撃を仕掛けられる者は殺し合いにおいてアドバンテージが働きすぎている。
神子柴は、首輪は強い衝撃を与えれば爆発すると言っていた。
つまり、花京院が己のスタンド『ハイエロファントグリーン』を潜航させ、破棄力の高い必殺技であるエメラルドスプラッシュを近距離で首輪に向けて放てばそれだけで決着が着いてしまう。
そんなもので優勝する様を『殺し合い』というゲームにおいて観たいと思うだろうか?
もしもそんな映画があれば途中退席する者が後を絶たないだろう。

(どうやってその調整をしているかは...いまは置いておこう)

現状、さなと花京院の分の情報しかないため『これだ!』と断定するのは難しい。
それならば、いま必要なのは知人たちとの合流と首輪を如何に解除するかだ。
首輪さえ外してしまえば参加者たちのリスクは格段に減り、殺し合いをする必要も無くなるからだ。

「さて...ひとまず知人たちを探しに行こう。僕の知り合いはジョースター邸に向かうかもしれない。一応、名前が入っている施設だしね。君の知り合いの向かう場所に心当たりは?」
「えっと、確かまどかさんとほむらさんが見滝原中学校の出身だと言っていたので、そこに向かうかもしれません」
「見滝原中学校...ちょうどジョースター邸の近くにあるな。僕らの場所からもそこまで遠くはない。よし、まずは中学校から向かおう」

花京院に促されるまま、さなは荷物を纏めて彼についていく。
その背中を見つめつつ思う。

さなは本来ならば花京院とは会話すらできない筈だった。
誰にも知られず、触れ合えず、独り孤独に生きていく筈だった。
けれど、この殺し合いの場ならばこうして触れ合える。優勝すれば、もうあんな寂しさを味わわなくてよくなる。
そのことに悩み苦しんだことは確かにあった。

(でも、もういいの)

それでもさなは殺し合いを否定した。
例え『人』と触れ合えずに生きることになっても構わなかった。

彼女はもうとっくに救われていたから。

(アイちゃんは私を生かしてくれた。...その意味は、解ってるから)

人工知能のウワサ―――アイ。
人間でも魔法少女でもない彼女だが、さなの初めての友達だった彼女。
彼女は背中を押してくれた。自分を必要としてくれる人と共に生きてと。
そんな人はいないだろうと諦めていたけれど、それこそが幻想だと教えてくれた。
弱虫で、ダメな自分でもちゃんと見てくれる人たちが、必要としてくれる人たちはいてくれた。
その人たちはきっと理不尽で残酷な絶望にも負けないだろう。
もしも挫けそうになっても、自分が護ればいい。盾になればいい。
彼女たちと共にいられる日々を、彼女たち自身を護れればそれでいい。それが、さなの戦う理由だった。

(いろはさん、やちよさん。絶対に、絶対に守りますから!)

115エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:03:23 ID:evCBF5g20


ここに孤独な青年と少女があった。
青年は己の『異常』に気が付いて周囲への壁を作り独りになった。
少女は己の『劣等』に打ちのめされ周囲から己を切り離し独りになった。

互いに孤独であったのは同じだが、その原因は真逆。彼ら同士、真に互いを理解することは難しいだろう。

けれどそれでも共有する思いは同じ。だからこそ、同じ道へと進める。

それは、己にとっての『特別』を最期まで護ること。

仲間であり恩人。
友であり家族。

それを護る為に命を懸け、彼らは戦う。その全てに悔いはないだろう。





【B-7/ミッドランド城/1日目・深夜】

【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを破壊する。
1:承太郎、ジョセフと合流する。ジョナサン・ジョースター、スピードワゴンも気になる。
2:DIOを倒す。
3:さなの知り合い(いろは、やちよ、まどか、ほむら)を探す。

※参戦時期はテレンス・T・ダービーに負けて人形に魂を入れられる直前です。

【二葉さな@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
1:いろは、やちよ、まどか、ほむらと合流。
2:花京院の知り合い(承太郎、ジョセフ)との合流


※参戦時期はマギレコ本編8章以降です。

116 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/02(木) 01:09:53 ID:evCBF5g20
投下終了です

佐神善、ジョセフ、フロイドを予約します

>>23
の予約期限が延長分も過ぎていますので、1/4日の23:59までなにも反応が無ければ予約破棄という形になりますのでよろしくお願いします
予約を延長する場合は再延長の申請をお願いします

117 ◆3g7ttdMh3Q:2020/01/03(金) 12:33:46 ID:c8jR6U.o0
延長させていただきます

118 ◆IOg1FjsOH2:2020/01/03(金) 21:35:10 ID:8jd4sgPk0
鬼舞辻無惨を予約します

119 ◆A2923OYYmQ:2020/01/05(日) 00:21:58 ID:VYIEjnA20
佐倉杏子を予約します

120クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ:2020/01/05(日) 18:42:50 ID:VYIEjnA20
とうかします

121クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ:2020/01/05(日) 18:43:10 ID:VYIEjnA20
それは 武器と言うには あまりにもクソすぎた
大きく 不細工、 重く そして クソすぎた
それは 正に クソみてぇなシロモノだった

「何だ…コレ?」

佐倉杏子の口から、呆然とした呟きが漏れる。
佐倉杏子に与えられた武器、それは世間一般でいうところの【旗】だった。
旗竿の下部は切り取られたのか、鋭利な斜めの切断面をみせており、このままでも槍として使えそうだった。
しかし、そんな事は今はどうでも良い。肝心なのは旗である。

「ウワーイラネ」

旗にプリントされていたのは笑顔の男。一目見てクソみてぇだと思った杏子は、旗を外して捨てようとして、

「外れねえ!?」

外れない旗というクソみてぇな事態に悪戦苦闘していた。

「どうなってるんだよ!?チクショウ!!」

ポイっと捨てて行こうかとおもったが、襲われた事を想定すれば、やはり武器になるものは持っていきたい。
変身しておけば備えにはなるが、魔法少女の真実を知った今となっては、緊急時でも無いのに変身し続ける気にならない。
やはり持っていくしかないだろう。気は乗らないが。こんなものを振り回すのは、アラサーになっても魔法少女(?)やるレベルで恥ずかしいが。
杏子は溜息を吐いて、旗をクルクルと巻いて立ち上がると、ガサゴソと名簿を広げる。

「チッ…それにしても何だってんだ?インキュベーターの仕業か?」

奴なら…やるだろう。あの胸糞悪い顔で、「効率よくエネルギーを集める為」とか吐かして。
確かに殺し合いなんてシロモノ、魔法少女を効率良く絶望させるのには最適だ。ましてやあんな餌をぶら下げられれば。

「……….………………私が居て、マミが居て、ほむらが居て、まどかがいて………。さやかが居ないのはそういう事か………」

巴マミ。杏子の知らぬ所で、魔女に────魔法少女の成れの果てに殺された魔法少女。

美樹さやか。杏子の目の前で魔女となり、救おうとして果たせなかった魔法少女。

佐倉杏子。美樹さやかを救おうとして果たせず、諸共に死ぬことを選んだ魔法少女。

うち2人が、生き返って、此処にいる。

122クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ:2020/01/05(日) 18:44:19 ID:VYIEjnA20
杏子は嗤う。獣の様に、奴等の思惑を見破ったと言いたげに。

────さやかを餌にして、私に殺して回らせようってか!!

杏子は足元の石を勢い良く蹴り飛ばした。

「残念だったなぁ…。お前たちの思い通りになんてなるもんかッ!」

「このクソ忌々しい殺し合いを必ず止める。そして奴等にキッチリと落とし前を着けてやる。
私とさやかをこれ以上コケにすることを許してたまるかってんだ!」

しかし、である。決意と覚悟を決めたとはいえ、まず如何するべきか?闇雲に動いても仕方が無い。

「マミかまどかを探すか」

先ずはマミと合流する。ほむらはその後だ。性格的にも、能力的にも、信用できるマミと違って、ほむらは剣呑だ。どういうスタンスか分からない限り、うかつに近づくのは危険だろう。
だが、ほむらはバカでは無い。如何なるスタンスであれ、自分とマミが一緒にいれば、襲ってきたりはしない筈。
まどかは………、戦力にはならないが、ほむらが執着している相手だ。一緒に居れば、ほむらとの交渉に役に立つだろう。

それに、さやかの友達だ。放っては置けない。



杏子はクソみてぇな旗を携えて、適当な方角へ歩き出した。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]健康/ソウルジェムの濁り。無し
[装備]クソみてぇな旗(初代)@彼岸島シリーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
基本方針:殺し合いを止め、黒幕を倒す。
0:巴マミと合流
1:暁美ほむらとは、マミかまどかと合流するまで逢いたくない
2:現在適当な方角へ移動中です
3:必要時以外は変身したくない

アイテム紹介:
クソみてぇな旗(初代)
吸血鬼達が国会議事堂に立てていた雅様フラッグ。
現在立っている二代目を設置する際邪魔なので、ザンッ→ポイッとされたのをリサイクルしたもの。
なお旗をポールから外すことは絶対に出来ない。

123クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ:2020/01/05(日) 18:44:44 ID:VYIEjnA20
投下終了です

124名無しさん:2020/01/05(日) 19:38:19 ID:ZXpfnxOQ0
クソ人間のクソ書き手め…雅様の神々しい旗をクソみてぇだと?許せねェな……
それと正しくはクソみて「ェ」な旗だぜガハハハ!!

125 ◆PxtkrnEdFo:2020/01/05(日) 23:36:30 ID:q/WWKWII0
猗窩座、ウォルター・C・ドルネーズ予約します

126クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ:2020/01/06(月) 07:10:49 ID:Vv0s3yUk0
>>124
クソみてぇなを一括変換したからだよチクショウ!

御指摘ありがとうございます
wikiに修正して、書き忘れていた参戦時期追記して載せておきました

127 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:17:46 ID:JK2yaUdQ0
投下乙です
>クソみてぇな事態
切られてなお武器として戦おうとするなんて...雅様...なんて神々しいんだ...
原作よりも早くザンッされた神々しい旗の行く末や如何に。
ほむらと合流するのはマミとまどかと合流してからにしようと冷静に行動でき、対主催で決意を固めた杏子はほんと頼もしく思えますね。
合流しようとしてる一人は神浜聖女ですが。

投下します

128そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:19:48 ID:JK2yaUdQ0
許せない。

佐神善は胸中で怒りを燃やしていた。

彼は吸血鬼(ヴァンパイア)だ。殺し合いの経験は何度もある。
だが、慣れているからといって生物の殺害になんの躊躇いもないわけではない。

そもそも彼は戦いなんて嫌いだ。吸血鬼と戦うのも己の力を誇示する為でなく、親友が殺され悲しみを知り、もう二度と失わないと決意したからである。
故に善は誰も彼もに殺人を強要するこの殺し合いに、主催の老婆に憤慨していたのだ。

(いけない...冷静さだけは失うな)

深呼吸と共に、熱くなる思考を落ち着ける。
クリアになったその頭で、ひとまず名簿を取り出し確認する。

知った名前があった。

ドミノ・サザーランド、狩野京児、七原健。

この三名とはチームを組んでおり、皆、人の血を吸わずに戦う吸血鬼たちだ。

ドミノは絶対女王主義とでもいうべきか、傲慢な女王を人の形に留めたような女だ。ただ、それでも優しく、決して悪人ではないのも確かだ。
そんな彼女が、首輪を着けられ殺し合いを強制されればどうなるか―――意地でも乗らないのは想像に難くない。

七原は臆病で短気で現金な性格だが、信頼できる友達だ。
燃然党にいた時だって一般人に被害が出ないよう必死に立ち回っていたし、吸血鬼の力もいつだって力なき人々を護るために振るわれていた。
七原は殺し合いに乗らない。そう、断言できる。

京児...恐らくこの会場でもトップクラスに危険で立ち回りが読めない男だ。
暴力が好きで嫌がらせが好きで殺し合いが好きで拷問が好きで虐殺が好きな戦闘狂、もといサイコパス。
その反面、気持ちが昂ろうともいつだって冷静で、れっきとした仲間ではあるし、共闘すれば頼もしいことこの上ない。
そんな彼がこの殺し合いでどんな動きを見せるのか全く読めない。
ドミノを大好きだと公言する以上乗ることはないと思いきや、『あの綺麗な顔をどう歪ませて死ぬのかなぁ』などと宣ったこともある。
冷静に考えて神子柴が約束を守る筈がないと判断し、この殺し合いを止める方向に動くのか、この状況にかこつけて闘争と殺戮を楽しむのか。
本当に行動が読めない。とにかく真っ先に合流し真意を見極める必要がある。

129そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:20:13 ID:JK2yaUdQ0

加納クレタ、芭藤哲也。

芭藤とは七原と共に戦っただけで詳しくは知らないのだが、死に瀕してまでもより多くの命を消そうとした男だ。
彼はまず間違いなく殺し合いに乗る。実力も高く、非常に厄介な相手だ。

加納クレタ。彼女は確かにこの手で殺した。その彼女が名簿に載せられている...神子柴が蘇らせたのだろうか。
きっと彼女はこの殺し合いに乗るだろう。彼女は死の間際、穏やかな眼差しを向けてくれたが、それでも自分が声をかけたところで止まらないはず。
彼女は強い。強い人だから曲がらない。きっと彼女は―――姉/妹の為に戦い続ける。


そして、先生―――堂島正。

彼は命の恩人であり善が止めなければいけない宿敵という奇妙な関係だ。
彼はきっと殺し合いには乗らないだろう。だが、それが必ずしも味方になり得るとは限らない。
きっと、この会場には錯乱して人を傷つけてしまう者は出てくるはずだ。
先生は恐らくそのような人たちも『悪』とみなして断罪する。あるいは、自分が救う価値なしと判断すれば、誰一人とて逃がすことはないだろう。
もしも彼の正義が暴走しているなら止めなければならない。

(でも、そうじゃなかったら?)

不意に脳裏に過る、ひとつのIF。
もしも先生の正義が暴走せず、協力的に行動してくれたら。
もしかしたら...もしかしたら、嘘偽りない『ヒーロー』と肩を並べて戦うことが出来るのだろうか。

(...いま考えることじゃない)

仮に実現したとして、殺し合いを破壊すればもとの生活に戻るだろう。
そうすれば関係も今まで通り。互いに譲れないものがある以上、戦う他ない。そうなれば―――いまよりもキツくなるだけだ。
先生のことは会ってから考えよう。



とにかく今は誰かに出会うことが先決だった。
目印としては地図上に記された教会がいいだろう。少なくとも七原か先生は来てくれるはずだ。

130そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:20:54 ID:JK2yaUdQ0

善が教会へ向けて歩き出し、10分程度が経過したころだ。善は道中で奇妙なものを見つけた。
白く蹲ったソレは生き物だった。猫のような肢体に、長い耳毛と赤色の目が特徴的な小さな不思議生物だった。
臀部付近の毛が赤く染まり、時折切れる息遣いがひどく痛ましかった。

動物まで参加者として招いたのかとも思ったが、しかしよく見ればこの動物には首輪が無かった。
参加者じゃない...ならばなぜ傷つき倒れているのか。

『誰でもよかったんだよ』

不意に声が過った。
かつて野良猫を趣味の悪いアートのように仕立て殺してまわり、親友を殺した名前も知らぬ吸血鬼の声が。
そいつはドミノが殺したが、もしかしたら蘇生させられ呼ばれているのかもしれない。

あいつではなくても、あいつのようにとにかく己の力を発散させたい者がこの白い生物を傷つけたのかもしれない。

(とにかく手当をしてやらないと)

善は白い生物を抱きかかえ、教会へと急いだ。
幸い、ほかの参加者との接触もなく着けた善は、救急セットを取り出し応急処置を施した。

痛みが和らいだのか、気の抜けたような顔になった動物に、善はホッと胸を撫でおろした。

(これで良し...あとは落ち着いたら病院へ向かってちゃんと治療してやらないと)

白い動物の頭を撫でてやりながらキョロキョロと周囲を見回す。備品や内装は変わらない。
ならば生物はどうだろうか。善の家には捨て犬や捨て猫がたくさんいるが、まさかここまで連れてこられているのだろうか。
善は、白い動物に小さく「少し離れるよ」と囁き、いったん離れて庭の探索を始めた。

結果、善の家にいるはずの動物たちは一匹もいなかった。そこまで細かく再現するつもりはなかったのだろうか。

なにはともあれ、身内の犠牲が出なかったことにほっと胸を撫でおろし、庭から出た時だった。
教会の扉の前に立っていた男に気が付いたのは。

131そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:21:27 ID:JK2yaUdQ0




(OH!!MY!!GOD!!!)

テンガロンハットを被った屈強な老人、ジョセフ・ジョースターは両頬に手を当て心中で叫んだ。
実際に声に出さなかったのは幸運だと思えるほどの衝撃を受けたのだ。

彼は目覚めてすぐに支給品を確認した。
あんな老婆の言いなりになって人を殺すつもりはない。だが、生き延びる為の本能が自然と彼に行動を起こさせたのだ。
デイバックの中に入っていた紙――名簿と地図を見て、彼は冒頭の叫びをあげたのだ。

なんせその名簿の中に自分が知る名がわんさかと記載されていたのだから。

空条承太郎、花京院典明。

心より信頼し頼りになる仲間たちの名。
彼らもまた自分と同じように殺し合いに反目するだろうという確信があった。
できれば仲間の誰も巻き込まれてほしくはなかったが、心強い仲間がいるというのはやはり幾らか安心感を得ることができる。

ディオ・ブランドー。
自分たちが追っている巨悪、DIOの本名だ。
あのオババはDIOの仲間にしては遣り口が遠回しすぎると思ってはいたが、奴を参加者として扱っていることで疑念は確信に変わった。
オババはDIOの仲間ではない―――つまり、DIOはいま部下という部下を剥がされた状態だということ。
ならばこれはある意味チャンスと捉えることが出来るだろう。


そして、ジョセフはあってはならない者たちの名を知った。

ジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴン、ルドル・フォン・シュトロハイム
かつて祖母から語り継がれ、或いは共に戦った者たち。
ジョナサンはDIOに身体を乗っ取られ、スピードワゴンは病死した筈だ。シュトロハイムに関してはスターリングランド戦線にて散ったと風の噂で聞いたが...まあ、彼なら生きていてもおかしくはない。
神子柴は見せしめとなった青年を一度蘇生していたが、彼らもまた蘇らせられたのだろうか?

彼らの名もジョセフに動揺を与えたが、しかしそれ以上に大きな衝撃を与える名があった。

カーズ。エシディシ。
吸血鬼を生み出す石仮面を作り出した者たちであり、何千年も昔から、波紋の戦士たちと戦い続けてきた一族、通称『柱の男』。
ジョセフはかつて仲間たちと共に彼らと死闘を繰り広げ、犠牲を出しながらもどうにか倒すことが出来た。
その彼らが記載されていた。正直、死者も呼ばれている可能性を考慮した時から嫌な予感はしていたが当たってしまった。

132そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:22:46 ID:JK2yaUdQ0

「確かにこいつらは命令なんざしなくとも破壊と死を齎すだろうが...だからって限度があるじゃろうが!こんなもん『殺し合い』が成り立つはずもないわい!!」

百歩譲っても彼らの部下であるワムウならばまだよかった―――とジョセフは思うが、これは決してワムウを軽視しているわけではない。
カーズ、エシディシ、ワムウの三人と直に戦ったことのある彼だから言えることなのだが、戦闘の面でいえばワムウは部下でありながら他の二人よりもセンスが頭一つ抜けている。
それはおそらくカーズらも認めているだろう。
ただ、ワムウは決して残虐非道ではなく、正々堂々とした戦いを好み、己の力を惜しみなくぶつけ合える宿敵(とも)を求める武人である。
如何にこの場に闘争の種が巻かれていても、弱者や戦士でない者すら手にかける殺し合いに嬉々として臨むとは思えない。
希望的観測だが、うまく接触できれば休戦という形で協力してくれる可能性がある。
そう、まず起こらないだろうと予想できるほどの微かな望みだ。

呼ばれた二人ではその『微か』さえ期待できるものではない。

カーズはひたすら合理的に物事を捉えるため、戦闘に喜びを見出すタイプではない。
そもそも彼は既に太陽を克服し究極の生命体になっているため、共に競い合い高めあうような好敵手と呼べるような存在はいない。つまり、出会った人間を生かしておく理由はこれっぽちもない。

エシディシは好奇心旺盛で好戦的とはいうものの、ワムウのように勝負や敵の成長を楽しむのではなく、敵の裏をかいたり罠に嵌めたりすることで相手の反応を見て楽しむ...そういうタイプだ。
ジョセフ自身がそうなのだからなんとなく気持ちはわかる。彼も彼で、人間を見逃す道理はないだろう。

そして彼らの共通点は、殺人に対しての嫌悪感がまったくないということだ。
当然だ。彼ら柱の男からしてみれば、人間は食糧か或いは奴隷。人間相手にすら正々堂々とした決闘を重んじるワムウの方が特殊といえよう。

(奴らに会いたくはないが放っておけば確実に犠牲者は出るからのう...まったく、あのババアにはワシらのこれまでの全てを侮辱された気分じゃ)

胸中で神子柴への怒りの炎がめらめらと燃え上がっていく。
カーズとエシディシのことを抜きにしても、軽々と命を弄ぶ神子柴の所業が気に入らなかった。
『お前の死闘なぞ儂にとって暇つぶしの映画のワンシーンにしかすぎんのじゃよ』とでも言いそうなあのにやけ面に一発叩きこんでやりたくなった。

「さぁて、ぼちぼち行くとするかのう」

ジョセフはデイバックを担ぎ立ち上がる。
目指すは恐らく先祖の建物であろうジョースター邸―――なのだかその前に。

(せっかく近くに施設があることだし、まずはここから調べておくか)

ジョセフの眼前に聳え立つのは教会。
そこそこの広さがあり、地図にも『善』という人物の家の補足と共に記載されている施設だった。

「善、というのは参加者のこの『佐神善』という人物のことかのう。となれば、自分の家がここにあるのが気になり訪れるかもしれんな」


よくよく見れば、ジョースター邸とこの教会以外にも『早川アキ』や『魔鬼邑ミキ』という参加者の家もある。
まず気になるであろう個々人の家をまわり、他の参加者と接触を図るのもいいかもしれない。

133そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:23:33 ID:JK2yaUdQ0


「さて、では早速...ムッ」

扉に手をかけようとした時に気が付く。ドアノブには微かに血が着いていた。

「まだ乾ききっておらん...ということは、既に先客がいるようじゃな」

誰かと争ったのか、あるいは不注意で自傷してしまったのか。
建物に入ってすぐに出ていくとは考えづらい。
ゲームが開始してからさほど時間が経っていないため、なにがあったにせよ、先客はまだこの中にいると推測する。
ただ、先客は危険人物か否かは判断が難しい。
さて、どう接触すべきかとジョセフが考えていたときだ。

「あの、参加者の方ですか?」

横合いから不意に声をかけられたのは。


「!」

とっさに飛びのき右手を腰に当てた警戒態勢をとるジョセフに、声の主...青年はギョッとして動きを止めた。
青年の反応を見たジョセフは、青年がこちらを襲おうとしているわけではないと判断した。

「ワシの名はジョセフ・ジョースター。きみも参加者かね?」
「はい。佐神善と言います」

佐神善。ジョセフの推測通り、教会の家主であろう彼はここに訪れていた。

「ワシは殺し合いに乗るつもりは毛頭ない。少し話を聞きたいんじゃが」
「構いませんよ、僕も聞きたいことは色々とありますし...とりあえず中へ」

善に促されるまま、ジョセフは彼の家に上がり込んだ。

134そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:24:37 ID:JK2yaUdQ0



「これは...」

机の上に寝かされたソレを見たジョセフは言葉を失った。
白いソレは生き物だった。猫のような肢体に、長い耳毛と赤色の目が特徴的な小さな不思議生物だった。
臀部付近の毛が赤く染まり、時折切れる息遣いがひどく痛ましかった。

「僕が見つけた時には既にこうなっていました。本当は病院の方がよかったんですが、出血が酷かったのでひとまずうちに運んだんです」
「ドアノブの血はそういうことか...さっき出てきたのが入り口じゃなかったのは、なにか治療用の道具を探していた、というところかね?」
「いえ、応急処置は済んでました。さっきはうちのペット達がいないか確認してたんです。もしかしたらこの子みたいに傷を負わされてるんじゃないかと思ったんですが、取り越し苦労でした」
「ふむ。となると、施設の全てが再現されているわけじゃあ―――ああ、いや、いまはそこの白いのについて心配すべきじゃな」
「...はい」

この生物がなんなのかは気になるところだが、いま知りたいのはこの生物は『なぜこうなったか』だ。
ここまで大きな怪我を負わされている以上、ただのドジで自傷してしまったとは思えない。
確実に何者かがこの動物を痛めつけたのだ。
誰が。なぜ。なんのために。
命に別状はないようだが、逆にそれがこの動物の現状を不可解にさせていた。

(動物相手に使うのは初めてじゃが、やってみるか)
「善くん。少しテレビを借りるぞ」

ジョセフはテレビと動物のそれぞれに手を添えながら己のスタンド『ハーミット・パープル』を発現させる。

「っ!?」

それを見た善は思わず驚嘆してしまった。

「むっ、お前さん、ワシの『スタンド』が見えているのか?」
「『スタンド』...?」
「ふぅむ...ま、詳しい話は後で聞かせてもらおうか。とりあえずいまは...」

彼にもスタンドが見えているのが気がかりはあるが、一先ずこの動物を襲った下手人の手がかりを掴むのが先だ。

「善くん。ワシはこれからこのテレビに白いのの考えを念写する。ワシのこの手の茨はその為に必要なものじゃ」
「???」
「ま、百聞は一見に如かずとも言うじゃろう。いくぞ、『ハーミット・パープル』!」

ジョセフの茨と手が光り輝き、触れているテレビにノイズが走り出す。

「ふむ、人間相手にやる時よりもだいぶ精密さは劣るようじゃが...そうら、映り始めたぞ」

そして、テレビに映像が流れ始めた。

135そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:25:22 ID:JK2yaUdQ0



『オゥ、プリティアニマル!』

モッキュ。

『モッキュ、プリティ!んー、でもワタシが欲しいのアニマルじゃないの...せめてTENG〇...』

モキュキュ

『......』

モキュゥ

『......』

モキュゥ?

『もうマスターベーションじゃ物足りないんだ。穴があるなら同じことだよね』

モッ!?








『...モキュ。オナホになれ』

136そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:25:54 ID:JK2yaUdQ0




プツン。

映像は途切れていた。
というより、ジョセフが切断した。

ジョセフの目元は影で覆われ、善は汗を流しながら訝しげな眼でジョセフを見つめている。

「......」
「......」

沈黙に包まれる二人。
数秒。数十秒。
短くも長く、気まずい沈黙を破ったのはジョセフ。

「...さ。ひとまずお互いの情報を交換しようか。今後をどうするかはそれからじゃ」
「...はい」

―――いまの映像は見なかったことにしよう。

そこには奇妙な一体感があった。
言葉にこそ出さなかったが無言の男の訴えがあった。

137そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:27:01 ID:JK2yaUdQ0

【F-3/教会(善の家)/1日目・深夜】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
0:善と情報交換する。
1:承太郎、花京院、ジョナサン・ジョースター、スピードワゴン、シュトロハイムを探す。
2:DIOを倒す。カーズ、エシディシには要警戒...会いたくないのぉ...。
3:小動物を犯した男に警戒。

※参戦時期はダービー(兄)戦後です。

【佐神善@血と灰の女王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3、小さいキュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(フロイドの支給品)
[行動方針]
基本方針:殺し合いを破壊する。
0:ジョセフと情報交換する。
1:ドミノ、京児、七原との合流。
2:先生(堂島)は味方になってくれるかな...
3:クレタ、芭藤には警戒。ただ、クレタには複雑な想い。
4:小動物を犯した男に警戒。

※参戦時期は少なくとも七原が仲間になった後です。

【小さいキュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(フロイドの支給品)】
[状態]校門裂傷、出血(止血済み)、疲労(大)


【F-3から周囲1マスくらいのどこか/1日目・深夜】

【フロイド・キング@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:性欲を発散させる。
0:女を犯す。
1:ありがとモキュ、ちょっと収まったよ。次は女がいいな。
2:カズナリを見つけたらオナホにしよう。
3:神子柴を見つけたら犯す。

※参戦時期は霧子に伸し掛かった直後。



【小さいキュウべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
通称モキュ。マギアレコードにおけるユーザーの分身と呼べるキャラだが、通常のキュゥべえとは違い言葉を喋れず契約する能力もない。
その為か、本編や期間限定イベントでは度々空気と化し、悩むいろは達に助言をするも毎回「ううん違うよ」と否定される、普段なにを食ってるかもわからない、
終盤にてようやく活躍の場面が来たと思ったら幼女に叩きつけられ汚物扱いされ追い払われるなど、本家キュゥべえと比べてもぶっちぎりに不遇。
キュゥべえでありながらゲームキャラ達からは特に目立ったヘイトを向けられていないのは救いと言えるのだろうか。
そんな彼(彼女)の正体は...

138 ◆ejQgvbRQiA:2020/01/07(火) 01:28:30 ID:JK2yaUdQ0
投下終了です

不動アキラ、雷沼ツバサ(シレーヌ)を予約します

139 ◆A2923OYYmQ:2020/01/07(火) 04:03:42 ID:Uju/uuvQ0
アーカード
スピードワゴン
暁美ほむら
空条承太郎

予約します

140名無しさん:2020/01/07(火) 06:27:40 ID:vC8S2x2I0
投下乙です

モ、モキューーー!!

141名無しさん:2020/01/07(火) 11:25:03 ID:mLi8E1o.0
数多くのパロロワでキュゥべえがケツを犯されたのはこれが始めてですね…

142 ◆IOg1FjsOH2:2020/01/08(水) 19:41:54 ID:XF.DEU.I0
投下します

143地震雷火事無惨 ◆IOg1FjsOH2:2020/01/08(水) 19:43:01 ID:XF.DEU.I0
(なんだこれは……?なぜ私がこのような事に巻き込まれている?)

D-7 見滝原中学校

教室内に飛ばされた鬼舞辻無惨の脳内では多数の疑問と激しい怒りが泡のように溢れかえっていた。

なぜ私がこんな所にいる?
なぜ私が家畜や奴隷のような首輪を付けられている?
なぜ完璧な存在である私が一方的に指図されなければならない?
あんな枯れ木のような脆弱な老婆風情が何の権限があって私に命令を下しているのだ?
許されない、許されるはずがない、その罪はあの老婆に限らず身内や協力者全ての命を持ってしても償い切れない。

無惨が右腕を一振り薙ぎ払うと、机や椅子は次々と砕け散り
宙を舞った破片が窓ガラスを割り、校内の外へと投げされた。
無惨の顔は茹でタコの様に赤く紅潮し、目はかっと見開いて血走っており、全身の血管がぷっくりと浮き出る程に力んでいた。

なぜ死んだ上弦共が蘇っている?
なぜ鳴女は、あの老婆に従っている?
私が鬼にしてやった恩を忘れたのか?
人の身では手に入らない強大な力と永遠に生きる事が出来る寿命を与えてやった恩を忘れたのか?

無惨が左腕を振るうと、廊下側に貼られているガラスや天井が切り裂かれて砂埃を巻き上げる。
ピクピクと無惨の体が震えている、怒りがマグマの様に湧き上がり、理性が限界寸前であった。

なぜ私の意志に反して鳴女は死ななかった?
いつから私の支配から抜け出した?
他の上弦共も同じように細工をしたのか?
全員私を裏切ったのか?
それで私の裏を掻いたつもりか?

「よくも私を裏切ったなッ!!鳴女ェェ!!」

怒りの感情を爆発させた無惨は両腕の触手を振りまわり、周囲の破壊を繰り返す。
無惨の圧倒的な力によって振るわれた暴力はコンクリートすらも豆腐のように砕く。

「裏切り者は容赦しない。珠代と同じ末路を辿らせる。
 そして……もう十二鬼月も必要無い。鬼狩り共々、私一人で終わらせる」

ロクに柱の処理も出来ない役立たずは不要。
裏切っていようがいまいが関係無い。もう上弦共には何も期待しない。
繋がりを断ち、私の意志から離れた鬼に存在価値など無い。

「ふん、殺し合いだと?くだらない」

人間が刃物や銃器を持ち出した所で、地震や台風や津波や火事に太刀打ちできるのか?
答えは否、天災の前には人は無力、それが過ぎ去るまでただ蹂躙されるのみ。

「始まるのは一方的な虐殺だ。殺し合いではない」

まるで戦場跡の様に破壊し尽くされた校舎から出た無惨は尋常なる速度で駆け出した。
全ての参加者を殺害し、くだらぬ余興を少しでも早く終わらせるために。

【D-7見滝原中学校/1日目・深夜】

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、怒り(極大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:全ての参加者を殺害し、神子柴と鳴女も殺害する。
1:参加者を探し、見つけ次第に殺す。
2:役に立たない上弦は不要、解体する。

※参戦時期は傷が癒え、珠代を殺害した時期からです。
※見滝原中学校は癇癪を起こした無惨によって破壊されました。

144 ◆IOg1FjsOH2:2020/01/08(水) 19:43:27 ID:XF.DEU.I0
投下終了です

145名無しさん:2020/01/08(水) 21:17:44 ID:MFXrh7dA0
無惨様平常運転

146名無しさん:2020/01/08(水) 21:30:04 ID:lXmymXME0
乙です
こいつどのロワでもブチキレてんな


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板