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悪魔憑きバトルロワイアル

1 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:38:35 ID:SMcTq7iQ0


【鬼滅の刃】〇竈門炭治郎〇我妻善逸〇嘴平伊之助〇不死川玄也〇時任無一郎〇宇髄天元●塁に切り刻まれた隊士〇鬼舞辻無惨〇妓夫太郎/堕姫〇猗窩座〇黒死牟 10/11

【彼岸島】〇宮本明〇宮本篤〇青山龍ノ介(師匠)〇西山正一(若しくは徹)〇山本勝次〇鮫島(兄)〇斧神〇金剛様〇雅 9/9

【魔法少女まどか☆マギカシリーズ】 〇鹿目まどか〇暁美ほむら〇巴マミ〇佐倉杏子〇アリナ・グレイ〇御園かりん〇環いろは〇七海やちよ〇双葉さな 9/9

【ジョジョの奇妙な冒険】 〇ジョナサン・ジョースター〇ロバート・E・O・スピードワゴン〇ディオ・ブランドー〇ジョセフ・ジョースター〇ルドルフォン・シュトロハイム〇カーズ〇エシディシ〇空条承太郎〇花京院典明 9/9

【サタノファニ】 〇甘城千歌〇鬼ヶ原小夜子〇カチュア・ラストルグエヴァ〇坂上和成〇フロイド・キング〇水野智己〇神崎京子 7/7

【血と灰の女王】 〇ドミノ・サザーランド〇佐神善〇狩野京児〇七原健〇堂島正〇加納クレタ〇芭藤哲也 7/7

【神尾ゆいは髪を結い】〇園宮鍵人〇神緒ゆい〇淡魂ほのか〇松蔵院カーラ〇橘城アヤ子〇あしゅら寺あす香 6/6

【HELLSING】 〇アーカード〇アレクサンド・アンデルセン〇セラス・ヴィクトリア〇ウォルター・C・ドルネーズ〇ピップ・ベルナドット 5/5

【ベルセルク】 〇ガッツ〇グリフィス〇キャスカ〇ゾッド〇ファルネーゼ 5/5

【チェンソーマン】〇デンジ〇早川アキ〇パワー〇サムライソード 4/4

【デビルマンG】〇不動アキラ〇雷沼ツバサ(シレーヌ)〇魔鬼邑 ミキ 3/3

74(5)名


書き手枠
〇/〇/〇/〇/〇/〇


地図
ttps://imgur.com/a/kGk7xTG

2 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:41:57 ID:SMcTq7iQ0

>>1
神結いの漢字間違えてた
神尾ゆいは髪を結い→神緒ゆいは髪を結い

施設

・基本的にその名の通りです。現地からなにか調達はできるかもしれません。

・国会議事堂には主催本部のトレードマークとして神子柴の顔が載った旗が立てられています。
また、参加者が踏み込むと首輪の警告音があり、施設内には色々な仕掛けがあります。遠距離からの攻撃は全部無効化します。

・港には豪華客船があり、対面の港まで移動できます(移動時間は10分ほど)。ただし、陸地についてから10分以内に降りなければ首輪が爆発します。


基本ルール
〇最後の一人になるまでの殺し合い
〇参加者には首輪が付けられており、爆発すると人外でも死亡する。禁止エリアに踏み込み一定時間が経過するか、強い衝撃を与えることで爆発する。
〇優勝者には如何なる願いも叶える権利を与えられる。
〇一日以上脱落者が出ない、あるいは二日かけても優勝者が出ない場合は全員の首輪が爆発しゲーム終了。



持ち物
・参加者が予め持っている武器は没収される。ガッツや宮本明のように義手や義足持ちの参戦時期のキャラは武装している場合はそれだけを没収され、義手はそのまま。
・なんでも入るデイバックと1日分の食糧と水、名簿・ルールなどの基本情報が記載された用紙、鉛筆や消しゴムなどの文房具一式、参戦作若しくは現実の支給品がランダムに1〜3個支給される。

・禁止エリアは放送ごとにランダムに三つ指定される。



制限一覧(大まかに。後で付け足すかもしれません)。基本は原作に準拠。

【鬼滅の刃】
・無惨の呪いは解除されており、無惨は他の鬼とのリンクが途切れている。その為、無惨が死んでも他の鬼は消えない。

【彼岸島】
・特になし

【ジョジョの奇妙な冒険】
・非スタンド使いはスタンドの可視化及び干渉可能。
・スタンドDISCは原作に登場したもの以外使用不可。

【魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
・魔女化した場合、首輪は魔女にもつけられる。また、首輪が爆発すればソウルジェムが無事でも死亡する。
・魔女化からの参戦不可。
・ドッペルは使用不可。

【ベルセルク】
・特になし

【HELLSING】
・アーカードの命のストックは一から開始。

【血と灰の女王】
・夜にしか殺しあえない誓約の解除。ただし、変身は夜のみ可能。

【サタノファニ】
・特になし。メデューサに代わる為の薬は支給品だけでなく現地調達も可能。

【チェンソーマン】
・特になし。

【神緒ゆいは髪を結い】
・特になし

【デビルマンG】
・巨大化のサイズ制限。あと強いて言うなら大規模破壊の威力弱体化

3OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:42:49 ID:SMcTq7iQ0
【悪魔憑き】憑依の一種で、心身を悪魔に乗っとられたかのごとく周囲に害悪を及ぼす行動、またはそのような行動をとる人のこと。

4OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:44:06 ID:SMcTq7iQ0



(...ここはどこだ?)

突然の覚醒に堂島正は困惑する。
眠っていた覚えはない。疲れていた気配もない。
ただ、気が付けばいつの間にか目が覚めていた、という奇妙な感覚だけがそこにあった。

いや、奇妙なのはそれだけではない。
彼の周囲に人の気配がある。あるのだが、手を伸ばしても触れられず、目を凝らしても黒い靄が蠢いて見えるだけ。
声をかけてみるが、返ってくるのはノイズ染みた雑音だけ。
あちらの靄もこちらへと接触を図ろうとしているのだろうか。となれば、あちら側も自分と似たような状況なのだろうと推測する。

「刮目せよ、皆の衆」

突如響く、しわがれた老婆の声。
パッ、と照明が点いたと思えば、浮かび上がるのは壇上に佇む一人の老婆。

「わしの名は神子柴。覚え辛ければオババでもよいぞ。突然の収集に困惑しておる者もおるじゃろう。諸君らにはこれよりある催しに参加してもらう」

神子柴と名乗る老婆はコホン、と咳払いと共に言葉を切り、再び口を開いた。

「バトルロワイアル―――最後の一人になるまでの殺し合いじゃ」

殺し合い。その平穏とは無縁な単語に、堂島は―――動揺などはしなかった。それは周りにも当てはまることのようで、大げさに蠢いた靄は数少ない。

「ふむ。流石は幾多の戦を経験してきた者たちなだけはある。これなら落ち着かせる手間も省けるというものじゃ」

では、と言葉を切り神子柴は続ける。

「これよりそなたらにはとある孤島に向かってもらう。その孤島で己を守り、他者を殺し最後まで生き残る。そんな簡単なゲームじゃ」

他者を殺せ。その行為をあっけらかんと指示する神子柴に舌打ちをするも、しかし下手に逆らうべきではないと判断し耳を傾ける。

5OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:44:52 ID:SMcTq7iQ0

「基本的にルール違反などはない。縛りがあるとすれば、その首輪くらいじゃ」

首輪。その単語に反応し、そっと己の首に触れてみる。ひやりとした感触に、これは確かに首輪であると認識し、さらに耳を傾ける。

「その首輪はある条件で爆発することになっておる。ひとつは、禁止エリアに踏み込んだ時。ひとつは強い衝撃を与えた時。そして」
「そこまでにしとけ婆」

神子柴の声を遮り、黒服に身を包んだ青年が舞台袖から現れる。

「鴉に案内されて道を辿りゃあ丁度いい抜け道がありやがった。こんなヨボヨボの婆なら俺でも勝てるぜ」

やけに自信ありげな青年の物腰に、神子柴は言葉を止め、堂島含む靄たちが青年の挙動を見守っていた。

「俺はこんな面倒ごとに巻き込まれたくないんだよ。状況はよくわからねーが、とりあえず俺はてめえを仕留めて帰還するぜ」

青年は腰に下げていた刀を低く構え、神子柴へと斬りかかる。

「最後の一つは」

刀が振り下ろされると同時、神子柴が笑みを浮かべた。その瞬間

ボンッ

小気味よい音と共に首輪が爆発し、青年の首と胴が分かれ地に落ちた。

「...ワシに明確に逆らうこと。以上三点が首輪の爆発する条件じゃ」

鮮血に沈む青年の姿に堂島は息を飲み、神子柴は見向きもしなかった。

「...さて。一通りのルール説明は終わったかの。詳細はこれより配る鞄に入っておる用紙に記載されておる。わからないことがあれば読むといい」

堂島は考える。
先ほどの爆発は決して大規模なものではなかった。あれを見たままの威力で受けようとも、自分のような者に対してはあまり効果を為さない。
果たしてあの老婆はそんなもので自分を縛り付けられると思っているのか。

「断っておくが、限りなく不死身に近いからと首輪を弄るのはおすすめせんぞ。もしも爆発すれば如何な怪異とてひとたまりもないからのう」

思考を読んだかのように告げられた神子柴の言葉に、堂島は思わず歯噛みする。

6OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:46:46 ID:SMcTq7iQ0


(当然と言えば当然か...私を連れてきて殺し合いをさせるんだ。私のような存在を把握していないと考える方が難しい)

現状、自分たちは神子柴に命を握られている状況である。それは理解した。

(ただの殺し合いならいいが、まず間違いなくこの催しは私の『正義』に反することになる。どうにか足掻きたいものだが、さてどうするか...)

再び、堂島の思案を読んだかのようなタイミングで、神子柴が笑みを浮かべる。

「無論、殺し合いで優勝した者には褒美を与える。金銀財宝、不老不死、望む者の蘇生...如何なる願いも一つだけ叶える権利じゃ」

神子柴の語った褒美。それに対し、微かに堂島の周囲の靄が反応を示した気がした。

「とはいえ超常現象、ましてや死者の蘇生など信じられぬ者もいよう。然らば見せてしんぜよう。人命すら操るこの奇跡を!」

宣言と同時に神子柴が口元を掌で隠す。するとどうだろうか。
血だまりに沈んだ青年の身体と頭部が光に包まれ、瞬く間に元の身体に戻ったではないか。

「これが人体蘇生の奇跡じゃ。どうじゃ?お主らも一人や二人、再び会いたい者がいるのではないか?」

ズキリ、と堂島の胸が痛む。
かつて、彼には息子がいた。火砕流に家ごと飲まれ死んでしまった愛しい息子が。
その顔がよぎり、彼の『正義』の文字が微かに揺らぐ。

「ほれ。そなたもワシの力がわかったじゃろう。そのまま大人しく引き下がるがよい」

蘇り、意識を取り戻した青年は己の首元をペタペタと触っていた。
そして、神子柴の言葉通り、背を向け檀上から降りようとする―――が。

「馬鹿が!首輪がなけりゃあ殺しあう必要なんざねえんだよ!」

振り返り、凶悪な笑みを浮かべ、再び老婆へと斬りかかる青年。
そう。今この場で蘇らせられた青年には首輪が無かった。故に、彼は臆せず斬りかかれたのだ。

「ウオラァ!」

気合一徹、振り下ろされる刀。

バ ァ ン

その刀ごと、青年は頭上からの巨大な掌に潰された。

7OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:48:09 ID:SMcTq7iQ0

「馬鹿はお主じゃ。ワシが何の対策も打たぬはずがなかろうて」

巨腕はぬちゃり、と音を立て血だまりから離れ、神子柴の周囲を覆うように留まった。

(あれはああいう技なのか?それとも協力者がいるのか?いや、なんにせよだ)

あの破壊力とスピード、真っ当に太刀打ちするのは困難だ。
それに、あの口ぶりからして神子柴が用意したのはあの巨腕だけではないのだろう。
それらで足止めを食えば、その隙に首輪を爆発されるのは目に見えている。

(...やはり、従うしかないのか?)
「さて。それでは殺し合いを」

開始する。
その言葉は、突如爆発した巨腕の轟音で掻き消された。

「くっ、なんじゃ?」

立ち上がる砂ぼこりに咳込みつつも、老婆は目を見開き砂塵を見据える。
その中をかき分け、老婆目掛けて飛来する、刃渡りの欠けた刃。
神子柴は咄嗟に飛びのきそれをそれを回避した。

「チッ、外したか!」

ターバンのように頭に巻かれた布地に、宝石のような光物を多く付けた、絢爛豪華、端的に言えば『派手』な男は舌打ちと共に漏らした。

「まだ逆らう者が...ならば貴様も」

ヌッ

神子柴の飛びのいた先に、巨大な丸太が現れ、彼女目掛けて振り下ろされる。

パ ァ ン

丸太が神子柴を潰さんと迫るその寸前、巨腕とは別の何かが彼女を弾き飛ばし、丸太の射線上から逃れた。

「くっ、やはり太郎か!」

丸太を振り下ろした、フードを被った丸メガネの青年は悔しさを露わにした。

8OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:50:05 ID:SMcTq7iQ0

「なぜ大人しく受け入れん...まだ見せしめが足りんようじゃな!」

吹き飛ばされた先で、神子柴は怒りに顔を歪めた。

―――好機!

神子柴は空中へ投げ出され、不意打ちをかけた二人に意識が集中している。

堂島は駆け出しながら変身し、その周囲の靄もほぼ同時に動き出していた。



―――水の呼吸 漆ノ型

―――霞の呼吸 壱の型

―――月の呼吸 弐の型

―――血鬼術 黒血――

―――ガアアアア!!

―――ウオオオオ!!

―――なんだかわからんけどとにかくチャンス!うりゃああああああ!!

―――シイ イ ィ ィィィッッッ!!!

―――ティロ―――

―――女ァァァァァ!!

―――震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!!

―――スタープラチナ!

―――ハイエロファントグリーン!

―――あの舐め腐ったババアを殺すのはワシじゃあ!!

―――シィッ!

―――邪魔者よ...ここで死ね


意思疎通をしたわけでもない。互いの声が、姿が認識できたわけでもない。
他者のため、あるいは自分のため、殺し合いが起きる前に動いただけだ。
その結果―――彼らの怒りは、殺意は、欲望は、空舞う老婆へと集中した!

(斬る!このまま―――)

堂島の振るう剣が老婆の首元へと迫ったその瞬間―――老婆は、笑った。



ベ ん ッ

9OP ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:53:07 ID:SMcTq7iQ0


どこからか琵琶の音が鳴り、足元が浮遊感に包まれる。
堂島の剣は、周囲に集まっていた靄は、老婆の首に届くことなく離されていく。


「貴様らが幾ら足掻こうと無駄じゃ!逃れることなどできはせぬ!」

落ちていく自分たちとは対照に、神子柴は長く伸びた舌に攫われ上昇していく。

「再びワシに相まみえたくば勝ち残れ...勝者のみが、その権利を有する!バトルロワイアル、これより開始じゃ!」

―――ベん

(ハッハッハッ...悪辣が過ぎるなこれは)

琵琶の音が尚も鳴り響き、眼前に現れた襖が音に合わせて閉じていく。

落ちていく身体と共に、堂島の瞼も徐々に落ちていく。

――――ベん ベん 

薄れゆく意識の中、堂島は誓う。

――――べん べん べん べん べん べん べん

もしも自分があの老婆の前に立てた時、必ず斬ろうと。



――――べべん



そして、殺し合いは始まった。



【塁に切り刻まれた隊士@鬼滅の刃 死亡】



主催陣営

【神子柴@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
【太郎@彼岸島】
【鳴女@鬼滅の刃】


※各々の武器はOPではそのまま持っていましたが、会場に飛ばされた際に回収されました。
※現状、参加者に姿や声を確認されたのは神子柴と舞台上にいた宇髄天元・宮本篤・塁に切り刻まれた隊士だけです。

10 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 17:54:08 ID:SMcTq7iQ0
投下終了です。
なにか質問があればお願いします
予約解禁は明日の零時からです

11 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 18:25:46 ID:SMcTq7iQ0
制限に書き忘れてましたが
妓夫太郎/堕姫はどっちかの首輪が爆発して死んだ場合は二人とも死にます。

12名無しさん:2019/12/13(金) 20:35:40 ID:dGQQOuro0
企画建て乙です
好みの名簿なので応援します
確認と質問なのですが、双葉さなでなく二葉さなかと思われます
また彼女の能力である「魔法少女以外には見えない」はスタンドと違って制限の対象外でしょうか?
あるいは書き手に委ねる方向で?

13 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 21:14:02 ID:SMcTq7iQ0
>>12
うっかりしてました、ありがとうございます
双葉ではなく二葉さなですね

さなの「魔法少女以外に見えない」は制限されて通常時は他の参加者からも見えます。
魔法を使って透明になることはできますが、通常よりもかなり魔力を消費するため長時間は使えないという形でお願いします。

14 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/13(金) 23:49:04 ID:SMcTq7iQ0
予約期限は1週間、延長で+5日間です。もう少し時間をかけたい場合はその都度延長の申請をお願いします

ttps://w.atwiki.jp/20191213/
こちらがまとめwikiになります

15 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 00:00:20 ID:88WInKFQ0
鮫島を予約します

16 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 01:07:36 ID:88WInKFQ0
投下します

17チュートリアル ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 01:08:50 ID:88WInKFQ0
オ オ オ オ ォ ォ

旋風が吹き、バサッ、バサッ、と旗が靡き、旗の描かれた神子柴がこちらを見下すように笑みを浮かべている。

「クソッタレババアめ...こんなくだらねえこと考えた挙句クソみてぇな旗を立てやがって...」

眼帯を付けた偉丈夫、鮫島は、つい先ほどの惨劇を引き起こした元凶を忌々し気に睨みつける。

「帰しやがれ!俺ァてめえに構っているほど暇じゃねえんだ!」

怒りの叫びをぶつけるが、しかし当然ながら返答は無し。
このまま案山子のように立ち尽くしていても仕方ないと、鮫島はその巨大な身体を物陰に隠しつつ配られたデイバックを探り始めた。

「えーっと、飯に水に文房具に...おっ」

手に当たる固い感触に、鮫島は思わず頬を綻ばせる。
この感触、間違いない。武器だ。それも、鮫島の腕力を存分に活かせる鈍器の類だ。

「ハッ、ちょうどいい。武器がなくて心許ないところだったんだ」

フンッ、と勢いよく腕を引き抜くと、その勢いのまま鮫島の身体に乗しかかった。

「うおおおっ!」

すぐさま押しのけた鮫島は、デイバックから引き抜いたソレの正体を確認する。
棺桶だ。鮫島の巨体さえ入れそうな大きな棺桶だ。

「チッ、期待させやがってこのクソ桶が。まあ、こんなんでもないよりはマシか」

舌打ちし、棺桶に一度蹴りを入れつつも、これしかないのでは仕方ないと鮫島は棺桶を背負う。

「まあ重さもそこそこあるしバットの代わりくらいにはなるだろ。しかしワケがわからねえな、この鞄」

棺桶は到底デイバックに収まるサイズではない。にも関わらず、こうして棺桶は収納されていた。
疑問は尽きないが、使えるものは使うしかないだろうと頭を切り替え、再びデイバックを漁る。
取り出したのは2枚の紙だった。

18チュートリアル ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 01:10:36 ID:88WInKFQ0

「こいつは名簿と地図か?えーっと...なっ!」

鮫島は思わず息を飲んだ。名簿には己を除く、よく知る名が連ねられていたからだ。

「明に勝次!それに雅に...金剛...!?」

宮本明と山本勝次。
二人は彼よりも若いが、共に頼れる仲間たちだ。ただ、勝次は姑獲鳥に捕まっていた筈だが...これは幸運だと捉えるべきだろうか。
雅。
日本を壊滅状態に追い込んだ元凶にして、最強の吸血鬼、そして鮫島の弟でもある精二の仇でもある男だ。
金剛。
雅の側近の一人であり、吸血鬼の中でもより強い混血種、アマルガム。だが、彼は確かに明が倒した。小さい方も勝次と協力して倒したはずだが...

「そういやあのババア、死んだ奴を生き返らせてたな。てことは他にも生き返った参加者もいるかもしれねェのか」

俄かには信じ難いが、現にこの目で見てしまったのだ。金剛がこの名簿に乗っているのもそういうものだと納得せざるを得ないだろう。
だとすれば、だ。

これまでに明が倒してきた強敵たちも他に載っているかもしれない。

「ヤベェ!急いで明たちと合流しねェと!」

鮫島は何処か合流の目途が立ちやすい場所はないかと、慌てて地図に目を通す。

「俺のいるところは...は?マジかよ!!」

くるり、と振り返り眼前の建物を確認する。
国会議事堂。地図上のそれには、確かに主催本部と記載されていた。

「ツイてやがる。まさかいきなり黒幕の近くに飛ばされてたなんてな」

ハァ、ハァ、と息が荒くなる。

「殺し合いなんざする必要はねえ。今すぐてめえの頭をカチ割って終わらせてやるよクソババア」

鮫島は隠れることなく、堂々と正面から歩いていく。

19チュートリアル ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 01:11:21 ID:88WInKFQ0

ピーッ ピーッ

『警告します。あなたは危険地域に踏み込んでいます』

鮫島の首輪からアラームが鳴り響き、次いでアナウンスが流れる。

「ウソッ、警告!!」

慌ててもとの道を引き返せば、アラームとアナウンスはピタリと止んだ。

「クソッタレめ、これじゃあ近づけもしやしねえ」

憎々しげに神子柴の旗を見つめる鮫島だが、その傍らで今後の方針を冷静に考えていた。

(ロクに近づけねェとなれば遠距離しかねえな。ダイナマイトかなんかがありゃあいいんだが...)


生憎、自分のデイバックには遠距離攻撃の類が出来る代物は無かったが、他の参加者ならばそれに近いものを持っているかもしれない。
それに、自分ひとりではなにも思いつかないとも、協力者がいればなにか活路が見いだせるかもしれない。

(明たちもそうだが、あの時ババアに斬りかかった二人とも手を組めそうだ)

神子柴へと斬りかかった二人は、誰にも悟られず神子柴に近づけたその隠密性もさることながら、一挙一動足からしてかなりの達人だと見受けられた。
ともすれば、己が知る中で最強である宮本明と遜色ないのではと思えるほどに。
彼らは彼らで間違いなく神子柴に不満を持っているため、協力は容易だろう。

「そうと決まりゃあまずは仲間探しだ。待ってろよ明に勝次。俺ァ探すの上手ェからよ、すぐに見つけ出してやるぜ」

武器である棺桶を背負い直し、鮫島は決意を新たに駆け出した。



【D-4/1日目・深夜】

【鮫島(兄)@彼岸島】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 アーカードの棺桶@HELLSING
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出
1:明と勝次を探す。ついでに本部に攻撃を仕掛ける為にダイナマイトやバズーカのようなものを探す。
2:派手な男とフードの男はできれば味方につけたい
3:雅は殺す。

参戦時期はゆかぽんと知り合った時くらいです。

20 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/14(土) 01:13:31 ID:88WInKFQ0
投下終了です。
あと、西山の名前が徹か正一かは、最初に書いた書き手の方に従います。

竈門炭治郎、堂島正を予約します

21名無しさん:2019/12/14(土) 03:15:24 ID:QBbHn7t20
新ロワ&投下乙です
ハゲの台詞と行動が先生ェの絵で勝手に脳内再生されるからチクショウ!
旦那の棺はその内外伝みたいに手足が生えて来そう(こなみ)

22 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/14(土) 06:35:39 ID:97ZODZcY0
お、丁度いいくらいのロワが立ってるじゃねぇか
こんな名簿のロワなら俺でも予約できるぜ

というわけでスレ立て乙です
雅@彼岸島 デンジ@チェンソーマン パワー@チェンソーマン
予約します

23 ◆/wJ/Apndog:2019/12/14(土) 13:13:56 ID:SBpBgRDM0
>>1
立て乙です
国会議事堂にクソみてぇな旗立てやがってチクショウ!!

佐倉杏子
スピードワゴン
書き手枠

予約します

24名無しさん:2019/12/14(土) 18:53:07 ID:kNqic1E20
新ロワ乙です
違和感無く主を鞍替えしてる鳴女ちゃん
そりゃあっさり切り捨てられたらもう無惨様に従いたくないよね

25 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/15(日) 23:58:55 ID:ZMvYnegM0
予約と感想ありがとうございます

>>20の予約に御園かりんとゾッドを追加します

26名無しさん:2019/12/16(月) 09:02:25 ID:s6auRy.M0
書き手枠は参戦作品外からキャラ連れてくるのは有りでしょうか?

27 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/16(月) 18:07:00 ID:We/ULrH20
>>26
書き手枠は参戦作品内からお願いします

28 ◆yliPrzUV3E:2019/12/17(火) 02:37:53 ID:hz/F6s3g0
黒死牟、坂上和成 予約します

29 ◆PxtkrnEdFo:2019/12/17(火) 14:54:31 ID:HKdOwK1I0
アリナ・グレイ、不死川玄也予約します

30名無しさん:2019/12/17(火) 17:22:45 ID:mZXQHTJA0
質問なのですが、名簿に書き手枠は記載されてる扱いなのでしょうか?

31 ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 17:38:09 ID:mZXQHTJA0
書き手枠で予約します

32 ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 19:07:21 ID:mZXQHTJA0
投下します

33コイントス ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 19:08:28 ID:mZXQHTJA0
とある世界にて、ここと似たような殺し合いゲームが行われた。
その殺し合いの参加者は中学生42人だったのだが、この内12人を殺した恐るべき殺人鬼がいた。
その殺人鬼は、何故殺し合いに乗ったのか。
それは…


―そこで俺はコインを投げたんだ。表が出たら坂持と戦う、そして

―裏が出たら、このゲームに乗ると


コイントスである。
その男は、コインを投げて裏が出たというただそれだけの理由で殺し合いに乗り、12人もの参加者を殺してのけたのである。

34コイントス ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 19:09:05 ID:mZXQHTJA0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

さて、ここに一人の少女がいる。
その少女の名は、栗花落カナヲ。
彼女は、上記の男と似ていた。
両親の虐待を受けた末に苦しみから逃れるために心を閉ざし。
全てがどうでもいいから何も決められない。
故に、指示を受けた時以外で行動をする時は、義姉からもらったコインを投げて決める。
栗花落カナヲは、そんな少女だ。

そんな彼女は、デイバックの中に当然のごとく入っていたコインを取り出す。
殺人鬼と同じように殺し合いに乗るかどうかを決めるのか?
いや、そうではない。
彼女にとって、そんなことはコインなどで決めるものではないからだ。

栗花落カナヲ。
彼女は、鬼殺隊の一員である。
そして鬼殺隊の使命は、その名の通り鬼を殺し、人々を守ることであり、それは彼女の中にもしっかり根付いている。
それに、カナヲは義姉である胡蝶しのぶや今は亡き胡蝶カナエから温かな愛情と教育を受けており、上記の殺人鬼のように善悪や倫理観が崩壊しきっているわけではない。
そんな彼女が、殺し合いに乗って人を殺しまわるなどということを、そもそも選択肢に入れるはずがないのだ。
では、いったい彼女が何のためにコインを取り出したかと言えば、

「どっちに行くか、これで決める」

35コイントス ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 19:09:49 ID:mZXQHTJA0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

さて、現在カナヲがいるのはE-4北東部。
つまりはこの殺し合い会場のほぼ真ん中である。
ここから東西南北どちらに進むかを決める必要がある。
コインの裏表だけで決められるものなのか?と思うものもいるだろうが、問題ない。
これが3択とか5択なら難しかったかもしれないが、4択なら簡単な方法がある。
それは、「コインを2回投げる」ことである。
これならば、【2回とも表】、【2回とも裏】、【1回目表2回目裏】、【1回目裏2回目表】で4択になる。
今回カナヲは、下記のルールで行き先を決めることにした。

2回とも表→北
2回とも裏→南
1回目表2回目裏→西
1回目裏2回目表→東

そして、カナヲはコインを投げる。
指で弾かれ宙を舞い、そして彼女の手の中に戻ったコインが示した結果は…


「…西に行く」

【E-4北東/1日目・深夜】

【栗花落カナヲ@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 カナヲのコイン@鬼滅の刃
[行動方針]
基本方針:コインで決める(殺し合いには乗らない)
1:西へ進む

※参戦時期は53話の炭治郎との会話より前です。

36 ◆OmtW54r7Tc:2019/12/17(火) 19:10:20 ID:mZXQHTJA0
投下終了です

37 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/18(水) 00:07:35 ID:syPMvOIc0
>>30
書き手枠のキャラは名簿には記載されておらず、後で放送で口頭での紹介だけされます。

>>36

投下乙です
カナヲちゃん来た!これで炭治郎の同期が五人揃った!そういえばこのロワでの鬼殺隊は派手柱以外は皆若いや。
ただ、対主催とはいえ参戦時期が参戦時期なだけに同行者に恵まれてほしいところ。
オヤジとかフロイドとかと単独で出くわしたら大変なことになりそう(小並)

あと>>1の名簿の時透くんの名前を誤字してました。すみません。
×時任→〇時透

38 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:41:57 ID:nw1JLFF60
>>1
玄弥の漢字を間違えていました。すみません。
×玄也→〇玄弥

投下します

39戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:43:50 ID:nw1JLFF60
「そうか...かりんも知り合いが巻き込まれてるんだな」
「そうなの。アリナ先輩も連れてこられてるみたいなの。炭治郎もなの?」
「うん。神子柴に爆弾を投げて斬りかかった人がいただろう?あの人も俺の知り合いなんだ」
「あのきらきら筋肉男?」
(きらきら筋肉...宇髄さんのことか)


月光に照らされる路上に、少年少女の影が浮かんでいる。
竈門炭治郎と御園かりん。
この殺し合いで、互いに初めて会った者同士、行動を共にしていた。

かりんはこの殺し合いに恐怖を覚えていた。がたがたと、無意味に建物の隅で震え続けていたほどに。
彼女は魔法少女としてそれなりの修羅場は経験してきたが、それはあくまでも魔女という人外相手にだけ。
対人関係に関しての命のやり取りは皆無に等しい。
それも、魔法少女としてあまり強い部類ではない彼女だ。恐怖するのも無理はないといえよう。

そんな中、炭治郎と出会えたのは幸運だった。
彼がゲームに乗っておらず、彼女を気遣い優しく宥めてくれたお陰で、気持ちもどうにか落ち着かせることができた。
そしてようやく彼女は名簿に目を通し、知人もまた巻き込まれているのを知った。

七海やちよ。
かりんと同じく神浜市の魔法少女であり、7年の経験を有する超ベテランだ。
彼女とはグリーフシードの扱いにおいてひと悶着あり、険悪ではないものの苦手な人物だが、少なくとも言われたことは正しかったし、悪い人間ではないため合流しておくべきだ。

そして、アリナ・グレイ。
彼女もまた魔法少女であり、かりんの中学校の先輩でもある。
彼女は芸術思考の高い人間であり、良く言えば唯我独尊、悪く言えば自己中心的。傍から見れば、作品こそ素晴らしいものの、人格面に問題ありの狂人と烙印を押されることだろう。
けれどかりんは知っている。彼女が落書きと吐き捨てる絵を持ち込まれても、厳しい意見と共に納得も出来る評論を下してくれることを。
何度持ち込まれても、ただ見もせずに突っぱねることだけはあまりしなかったこと。
そして、なにより『怪盗少女マジカルきりん』を読み命の尊さを知ってくれていることを。

そう。誰に何を言われようとも、かりんにとってのアリナ・グレイは揺るがない。
例え世界がアリナを侮蔑の目で見ても、かりんはアリナを信じ続けるだろう。

絶対にアリナを死なせない―――かりんはこの殺し合いにおいてようやく前を向けるようになった。

40戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:44:31 ID:nw1JLFF60

一方の炭治郎もまた、かりんと出会えて幸運だと感じていた。
彼は全てに怒っていた。普段の彼らしくもなく、一目で怒っているとわかるほどに怒りの形相を浮かべていた。
こんな催しを開いた神子柴に。この会場に漂う血と怨念の匂いに。あの時、なにもできなかった自分に。
あのセレモニーで、どこかで見たことのある気がする鬼殺隊の青年が死んだ。
彼は無残にも首輪で爆死させられたが、しかし蘇生された後も勇敢に斬りかかってみせた。
その刃こそ届かなかったものの、死してなおこの殺し合いを止めたいという想いがあったのだろう。

宇髄と丸メガネの男もそうだ。
鬼殺隊の青年より遅れての到着ではあったが、彼らも己の命すら厭わず殺し合いを止めようとしていた。
それなのに自分はなんだ。
状況の把握で行動が遅れ、神子柴が隙を見せてようやく動くことができた。
判断が遅い。もしも自分も真っ先に檀上に上がれていたら、宇髄達よりも先に攻撃出来ていたら、彼らが神子柴を討ち、こんな催しも始まらずに済んだかもしれない。

ここに至るまでの全てが許せず、思考も冷静で無くなっていた。
そんな折に鼻孔をついたのが、建物の隅から漂ってきたかりんの恐怖の匂いだった。
炭治郎は鼻が利く。匂いを嗅げれば、その人がどういう感情なのかがある程度わかる。
その恐怖の匂いを嗅いだ時、一般市民までも巻き込んだのかと炭治郎の怒りは更に高まったが、一方でなんとしても守らねばとも思った。
それから一拍置き、『でもこんなに怒った人がいたらもっと怖がらせるんじゃないか』と彼の中の理性が働き、まずは自分が落ち着くように呼吸を整え、頭を冷やしてから彼女に接触することができた。

その甲斐もあり、こうしてかりんと和やかに接する時間が作れたのだった。

(かりんのお陰で名簿を確認できる余裕ができてよかった。ここにいるのは宇髄さんだけじゃない。善逸に伊之助、玄弥に時透君もいる。それに...鬼も)

この会場には鬼殺隊の面々が自分以外にも呼ばれている。
善逸はきっと寂しがっているだろうな、伊之助は無暗に強さを見せびらかしていないといいけれどと心配はするものの、誰も殺し合いには賛同していないのは確信していた。
一刻も早く合流し、共に剣を並べたいと思う。

そして、鬼舞辻無惨率いる『鬼』。

彼らの討伐は鬼殺隊の悲願であり存在理由だ。
例え己の五体が砕けようとも鬼を斬り悲しみの連鎖を断ち切る。それが、数多の隊士の共通の想いだ。
恐らく鬼たちはこの殺し合いでも人を殺すだろう。必ず倒さねばならない。

ある程度の方針が定まった二人は、荷物を纏め立ち上がり、歩き出す。
不安にならないように声を掛け合いつつ、しかし目立たぬように声を潜めつつ。

そんな折だった。

41戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:46:04 ID:nw1JLFF60
「―――っ!」

炭治郎の鼻をつく、強烈な異臭。
近づいてくる。
何者だ。
いや、覚えがある。
今まで嗅いできた、血と臓物の臭い。

これは

(―――鬼)

「貴様らもこの宴の贄か」

現れたのは、炭治郎の知る鬼、鬼舞辻無惨はおろか、妓夫太郎でも猗窩座でもなく。
しかし、彼らと遜色ない気配を放つ巨漢だった。

炭治郎は咄嗟に刀を構え、かりんを己の背に隠す。

「小僧。貴様は中々の手練れのようだな。そこの小娘とは面構えが違う」

男は炭治郎を見下ろし、愉悦に顔を歪める。

「ひとつ手合わせを願おうか。我が名はゾッド。不死者(ノスフェラトゥ)の通り名で呼ばれている」

男と視線が交差した瞬間、炭治郎は理解した。この男に、言葉は通用しないと。

「俺は鬼殺隊の一人、竈門炭治郎。...かりん。離れるんだ。俺がこいつを食い止めているうちに」

炭治郎は匂いで感じ取っていた。
この男は強い。少なくとも自分の知る柱の面々に匹敵し得るほどに。
戦えば、間違いなく自分はただでは済まないだろう。なんとしてもかりんだけでも逃がさねばならない。

「見くびるな小僧」

だがしかし、返答は今までの大人しめなものではなく。
今までとはうってちがい、強い語気だった。

「我はハロウィンが生んだ魔法少女、マジカルかりん。弱者の為に戦うのは我の役目!下がるのは貴様なのだ小僧!」
「駄目だかりん!その男は―――」

ずい、と前へと進み出たかりんに炭治郎は呼び止めようとするも憚られる。
変わっていた。かりんの姿は、いつの間にか摩訶不思議な衣装に包まれていたのだ。

(えっ?)

困惑する炭治郎を他所にゾッドはかりんへと目を向ける。

「その衣装...貴様、魔女か」
「魔女ではない。魔法少女だ!怪盗だがな」
「前線に出てくるのなら女子供といえど容赦はせんぞ」
「貴様こそ我が魔鎌、ジャックデスサイズの錆にしてやろう。それが嫌ならお菓子を渡して立ち去るがいい」
「よくぞ吼えた。ならばこれ以上の言葉は無粋!いざ、尋常に!」

ゾッドが駆け出し、炭治郎とかりんは覚悟を決める。

(恐いの...でも、私だって魔法少女なの。炭治郎を見捨てることなんてできないの!)
(かりんは強がっているだけだ!けど彼女を逃がしている暇はない!俺がどうにか彼女を助けつつ、ゾッドを倒す!)


ゾッドの刀と炭治郎の刀が交差し、戦いは始まった。

42戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:46:44 ID:nw1JLFF60



響き渡る金属音。
それは一度で終わらず、ゾッドが剣を振るう度に鳴り響き、早さを増していく剣劇はまるで小さな竜巻かの如く余波を広げていく。

「わわわっ」

その余波に押され、後退をよぎなくされるかりん。
一方の炭治郎は、ただひたすらにゾッドの剣風を捌きどうにか耐えていた。


やがて始まる鍔迫り合い。
技術のみならず、純粋な力も大きく左右するこの状況に、ゾッドはホゥ、と小さく感嘆の声を漏らし、炭治郎は汗を流しながら歯を食いしばる。

「やはり貴様は筋がいい。我が剣をよくぞここまで受けられたものだ」
(くあああああ!重い!手が震えて仕方ない!俺は守りに専念してやっとなのに相手はまだ余裕だ!それにこの男の刀は...!)

炭治郎の目に映る刀身は燃え滾るように赤く、『悪鬼滅殺』の四文字が刻まれていた。
間違いない。ゾッドの持つ刀は鬼殺隊の炎柱、煉獄杏寿郎の日輪刀だ。

とはいえ、炭治郎の刀とてただの刀ではない。

純粋な日本刀―――しかし、ただの日本刀ではあらず。
人の身でありながら、数体の悪魔族(デーモン)と戦い、その身と引き換えに討ち果たし、見事守るべき者を守った教職員、大柴ソウスケの刀である。

持ち主の五体砕けようとも原型を留め続けたその刀、間違いなく日輪刀に勝るとも劣らない業物であろう。

刀の差はない。あるのは使い手だ。

剣術とは腕力がすべてではない。しかし、片手でも余裕があるのと両手で受けるのがやっとでは、確実に前者が有利である。
それも、炭治郎のように達人の手解きを受けてはいなくとも、数多の戦場で培ってきた技術があるのなら猶更だ。

43戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:47:17 ID:nw1JLFF60

(考えろ!考えろ!俺がこの男に勝つには―――!)
「むぅん!」

ゾッドの筋肉に筋が走り、さらに力は籠められる。

(まずい、押される!このままじゃ―――)

「もらった!」

ゾッドの背後にまわったかりんが、跳躍し斬りかかる。
その速度こそ炭治郎とゾッドには及ばずとも、充分に人を超えている。

「ムゥン!」

ゾッドは剣から片手を放し、かりんへと裏拳を放つ。
跳躍しているため、後退することもできず、鎌でゾッドの拳を受けたかりんは、そのまま後方へと飛ばされ壁に衝突した。

「かりん!」
「大丈夫なの!」

すぐに返された返事に焦燥は消え、この隙に反撃の準備へと入る。

ス ウ ウ ゥ ゥ ゥ

炭治郎の呼吸が変わる。
呼吸。この動作が、鬼殺の剣士の『型』の根幹を為す。

44戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:48:44 ID:nw1JLFF60

(この状況から出せる型はこれしかない!)

刀の角度を逸らし、ゾッドの剣をわずかに滑らせ、身体を捩じることで僅かな空間を作る。

そこから放たれるは

―――水の呼吸、陸ノ型 ねじれ渦

渦巻のような太刀筋をゾッドは剣を逆手に持ち返ることで難なく受け止める。

(まだ終わるな!止められるのはわかっていたんだ!)

―――水の呼吸、弐ノ型 水車

刀を打ち付けた反動で浮かび上がり、宙返りからの回転斬り。それも防がれる。

―――水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き!

着地し、間もなく繰り出される、炭治郎の持つ型の中で最速の突き。尚も防がれる。

(何度防がれても構わない。何度も同じ個所に衝撃を与え続ければいつかは折れるんだ)

己より格上の相手にも武器破壊は有効である。剣士である以上、剣が無ければ殺傷力はどうしても落ちるからだ。

(折る。このまま攻め続けて)

『俺は俺の責務を全うする!!』

炭治郎の脳裏に不意に過った煉獄の影。
もしも彼がこの場にいれば、自分に構うことなく折れと断じるだろう。
だが、刀は持ち主の信念が込められたものだ。炭治郎の目に焼き付いたあの大きな背中に、信念に刃を振るうこと自体に一瞬だけ微かな拒否感を抱いてしまう。
そう。瞬きにも満たぬ一瞬だ。けれど、その一瞬が勝負の明暗を分けてしまう。

「―――ヒノカミ神楽」
「ヌゥン!」

ゾッドが身を捩じり、刀身の角度を変え炭治郎の突きを逸らす。
先の炭治郎と似たような受け流しだが、しかしゾッドは余力を充分に残していたのに対し、炭治郎は全力の突き。
それが逸らされれば嫌が応にも態勢は大きく崩れてしまう。

45戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:49:19 ID:nw1JLFF60

がら空きになった炭治郎の胴体目掛けて、ゾッドは刀を振り下ろした。

―――トリックアンドトリート

炭治郎の身体を切断するはずだった刀は、音もなく消え去った。

「ぬっ」
「ははははは!貰ったのだ!」

高笑いを上げるかりんの手には、ゾッドが握っていた筈の日輪刀があった。

魔法少女には個々の固有魔法がある。
魔法少女・御園かりんの固有魔法は窃盗。対象の意識さえ逸れていれば、大抵のものを盗めるのである。

(と...盗れたの...私、やれたの!)
「すごい...凄いぞかりん!」
「フハハハハハ!マジカルかりんに盗めないものなどないのだ!!」

魔法のことを知らない炭治郎は純粋に驚愕と称賛を抱き、それを受けたかりんはエヘンと胸を張る。

「さあ、ぼさぼさ筋肉お化けよ。もはや貴様に戦う術はない。大人しく我らに従うのだ」

高揚した気持ちのまま、かりんはゾッドに降伏を迫った。

「...なるほど。個々で劣ろうとも、貴様ら二人が合わされば、俺より剣士としては一枚上手というわけか」

淡々と、悔しさなど微塵も見せぬほど平静にゾッドは一人言ちる。

「然らば貴様らであれば我が渇きを埋めることが出来るのか...試させてもらう」

―――ゾワリ

炭治郎とかりんの全身に怖気が走り産毛という産毛が瞬く間に逆立つ。
彼らは感じ取っていた。
ゾッドから放たれる気配が今までとはまるで別物になっていくことに。
かりんは魔女の、炭治郎は上弦の鬼と相対した際の感覚を覚える。

メキメキとゾッドの身体が変化していく。

ただでさえ巨体だった身体が二回り以上大きくなり、全身が黒く硬い毛に覆われていく。
人間の様相を象っていた顔からは1対の巨大な角と牙が生え、臀部からは巨大な尻尾が生えていく。

その姿は、まさに悪魔。見る者全てに抱かせる感情は、恐怖。

「さあ...ここからが真の戦いだ。俺を失望させてくれるな」

46戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:49:54 ID:nw1JLFF60



メキメキと身体が軋む音がする。
振るわれた剛腕は獲物を捉え、勢いよく吹き飛ばしていく。

「炭治郎!」

吹き飛ばされた炭治郎に駆け寄る間もなく、ゾッドの巨腕がかりんへと振るわれる。

「わわっ」

咄嗟に回避するも追撃は止まらない。
休む間もなく振るわれる腕は、徐々にかりんを死へと近づけていく。

(このままじゃ駄目なの。どうにか反撃を...!)

痺れを切らしたかのように、ゾッドの両腕がかりんを挟み込むように振り下ろされる。
好機。
かりんは跳躍し、ゾッドの頭上を飛び越した。

(これなら振り返る前に間に合うの)
「キャンディーデススコ」

放とうとした魔法は、しかし腹部を襲う衝撃に中断される。
尻尾だ。ゾッドの鞭のように長くしなる尻尾がかりんの腹部を叩いたのだ。
かりんの身体は地面を跳ね、態勢を整える隙すら与えられず、ゾッドの殴打がかりんを襲った。

吹き飛ばされるかりんはそのまま立ち上がろうとしていた炭治郎へと衝突し、互いの骨を軋ませる。

「どうした。これまでか?これで終わりなのか貴様らは」

足音を響かせながら歩み寄るゾッドに、炭治郎はふらふらと身体をよろめかせながらも立ち上がる。
チラ、とかりんへと目をやれば、魔女っ子染みた衣装は元の服装に戻り、頭部と口端から血を流しくるくると目を回していた。
これ以上彼女を戦わせれば命に関わってくるだろう。
退くわけにはいかない。炭治郎は、刀を強く握りしめゾッドを見据えた。

47戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:50:32 ID:nw1JLFF60

「そうだ。それでいい。俺を退屈させてくれるな」

ニイィと口角を歪め、ゾッドは嗤う。
その笑みに、炭治郎の腹部が煮えるように熱くなっていく。

「退屈...?お前はなにを言っているんだ」

この閉鎖空間で強制された殺し合いに怯え、己の命を守る為に神子柴の言葉に従うのならばまだわかる。
だが、この男は『退屈』などと宣った。炭治郎にはそれが理解できなかった。

「戦いこそが我が愉悦。強者の血こそが俺の渇きを埋めるのだ。容易く散る命であるならば、せめて微かにでも俺の渇きを埋めてみせよ」

放たれた言葉は私欲そのものだった。
一方的で、横暴極まりない我欲。
炭治郎の腹部に留まっていた感情は、一気に脳天にまで噴出した。

「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

響く怒声に、しかしゾッドは微塵も怯まない。
愉悦の笑みも止まらない。

「グハハハハハ!俺を許さない?ならば貴様は何ができる!?」
「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」
「ならばこれ以上の問答は不要。俺の屍を踏み越えてみせよ!」

ゾッドの口上が終わると同時に、弾けるように炭治郎が駆け出す。

ス ウ ウ ウ ゥ ゥ ゥ

炭治郎の呼吸が変わる。
放たれるは、水の呼吸ではなく、もう一つの呼吸。
持久力と引き換えに破壊力を手に入れた、父から授かった呼吸法から放たれるは、攻撃の威力を一点に集中させる突き技。

―――ヒノカミ神楽 陽華突

高速で迫る炭治郎の突きに、ゾッドは両腕を盾のように構えることで迎え撃つ。
剣が、ゾッドの右腕に突き刺さった。

48戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:50:55 ID:nw1JLFF60
(このまま型を切り替えろ!腕を斬るんだ!)

「ヒノカミ神楽―――」

炎舞。放たれる筈だったそれは、しかし剣が動かず。
ゾッドの筋肉は、貫かれてなお衰えず、炭治郎の剣を挟み込んでしまったのだ。

「この俺に守りの型を取らせるとは...貴様の命、渇きを埋めるに値する!」

ゾッドは空いた左腕で、炭治郎の腹部を狙う。

躱しきれない。炭治郎は己の死を覚悟する。

ドスリ、と鈍い音が響き炭治郎の腹部が赤く染まる。

が、しかし

「......!?」

ゾッドの手に、肉を割く感触は感じられなかった。当たったはずなのに、なぜ。
ドサリ、となにかが落ちた音がその答えを彼に伝えた。

落ちたのは、ゾッドの毛深く太い左腕だった。

ゾッドの腕の切断面から遅れて血が流れ、それを押し付けられた炭治郎は蹲り大きく息を吐く。

(いつの間に斬られた...?この小僧ではなく、あの小娘でもない。ならばこれは...)

ゾッドの視界の端で、バサリ、と白の外套がたなびいた。

(乱入者か。俺の意識外からとはいえ、斬られた感触すら与えんとはな)

ふらふらと立ち上がり、事態を遠目に見ていたかりんはぽつりと呟いた。

「ヒーロー...なの」

49戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:52:25 ID:nw1JLFF60



堂島正はヒーローに憧れていた。
子供の頃にテレビで見た、世のため人の為に戦うかっこいいヒーローに。
それに一番近いのは医者だと思っていた。
どんな人間の命も救う。そんな正義の象徴のような人間がいるだけで、きっと世の中は良くなると信じていた。
けれど、事はそんな単純ではなかった。
医者とは命を扱う仕事である。当然ながら、手術のひとつとっても全てが成功するとは限らない。
難病の治療に成功したところで、同じ治療法で全ての人が救えるわけではない。
99%成功する手術でも、予期せぬ出来事で残りの1%を引き当ててしまうこともある。
あと数秒早く手術を始められれば助かったというケースもある。
結局のところ、人が一生のうちに救える人間の数など数えられる程度だ。
だから、救える時があれば救えない時もあると割り切るしかなかった。
とある少年が抱えていた、手術の成功率が5割の病気を治した時だって、特別嬉しく思えなかった。

その少年、佐神善との出会いが、堂島の価値観を少しだけ変えた。

最初は彼に対してもなにも感じていなかった。
退院してからも、病弱の幼馴染、糸葱(あさつき)シスカに会いに病院に通っていたのを見かけた時だって、時期に来なくなると思っていた。
けれど、彼は何度も足を運んでいた。毎週必ず、雨の日でも雪の日でも。小学生から中学生に、高校生になってもずっとお見舞いに足を運び続けた。

そんな彼に次第に興味を持った。
どうしてそこまで気を配ってやれるのか、食事でもしながら話を聞いてみたかった。
聞けば、大層な理由もなかった。『シスカに元気になってほしい』。ただそんな優しさだけで彼女のもとへ足を運んでいたと分かった時、堂島は嬉しくなった。
優しさに溢れた命を救うことが出来たんだという、医者の喜びに改めて向き合えた。
シスカに対してもそうだ。
彼女の病気は何度手術をしても治らなかった。堂島自身、先も長くないとどこか諦めていた。今でも完治する確率は低いと見立てている。
けれど、確信していた。
善の優しさがシスカの支えとなっており、ある晴れの日に彼らが手を繋いで退院してくれることを。

割り切っていたはずの感情が、再び蘇ってきた。
彼のような優しい命を救いたい。その優しさで傍の人を救ってほしい。そんな者がいれば、きっと世の中は綺麗になるんだと。
それが医者である自分の本来の願いだったのだと。

その一方でこうも思う。
彼らと真逆の、その一人がいることで何人もの命を害する者がいる。
そんな者達がいなくなれば、どれだけの命が救われるだろうと。
医者である以上、そういった者たちが運び込まれてくれば手術もするが、これから悪党に奪われる命を見捨てていいものか。
否。
悪という病巣は野放しにできない。
一人で全てを狩りつくすのは無理だとしても、恐怖を植え付けることで抑制することはできる。
だから、堂島は偶然手に入れた吸血鬼(ヴァンパイア)の力を使い、悪人を切り殺してきた。
悪に奪われるであろう命を穢させないために。悪事を働けば殺されるという恐怖を病巣共に植え付けるために。

『医者』という正義と『悪党狩り』という恐怖。その二つを象徴する存在であり続けることこそが、彼の望む『ヒーロー』の在り方だった。

50戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:53:55 ID:nw1JLFF60


そしてそれは殺し合いに巻き込まれても変わらない。
老婆の語った報酬、死者の蘇生には微かに心が傾いた。愛する家族を取り戻せるんじゃないかと。
けれど、そんなものはまやかしだ。所詮は老婆の掌の人形でしかない。
だから堂島の方針は変わらなかった。『悪を斬る』。当然、その悪にはあの老婆も入っている。

名簿には知った名が幾つかあった。

ドミノ・サザーランド。狩野京児。加納クレタ。芭藤哲也。そして―――佐神善。

クレタと芭藤は確かに死んだはずだが、この殺し合いの為にわざわざ蘇らせたのだろうか。なんにせよ、彼らは間違いなく人々に危害を加える。斬り捨てておくべきだ。
ドミノと狩野京児は燃然党の中では残忍残酷と評判が悪いが、民間人には被害を及ぼしたという話は聞かない。あの老婆を討つ為に手を組むことも考えよう。
再三警告しても善を戦いに巻き込む以上、一時休戦、以上の関係は作ろうとは思わないが。

そして善。彼は死なせない。必ず生かして返してみせる。

方針を定めた堂島の耳に、ほどなくして戦闘音が届く。
彼はすぐに吸血鬼の姿に変身し、急いで現場へと足を進めた。
もしも善がそこにいれば必ず戦っているだろう。死なせる訳にはいかない。

やがてたどり着いた先に見たのは、巨大な怪物に刀を構え対峙する少年。その背には傷ついた少女が倒れている。


「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

声が聞こえた。怪物に臆することなく響く、少年の声が。

「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」

遠目に見ていてもわかる。少年と怪物には如何ともし難い実力差がある。
あのまま戦い続ければ、確実に少年は死ぬ。
けれど、彼は立ち向かうのだろう。
剣を振るうことで救える命があるのなら、彼はその身を傷つけても戦うのだろう。

彼のように―――佐神善のように。

「...ハッハッハッ」

思わず笑いがこぼれる。
果たして生涯のうちに、あそこまで他人の為に身体を張れる人間に何人が出会えるだろう。
自分は幸運だ。善のような少年に二人も出会えたのだから。

「だったら、死なせる訳にはいかないな」

堂島は駆け出した。己の正義を貫く為に。『善』を摘む悪を罰する為に。
そして彼は―――怪物の左腕を斬り落とした。

51戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:54:39 ID:nw1JLFF60



「素晴らしい剣技だ。俺の腕をこうも容易く断つとはな」

ゾッドは斬り落とされた左腕を拾い、切断面同士を合わせた。
すると、たちまち皮膚と筋繊維が修復され、左腕はあるべき場所へと戻った。

(ドミノと同レベルの再生能力か...吸血鬼ではないようだが)

堂島自身、吸血鬼という異端だが、ゾッドから発せられる禍々しい気配は今までに感じた類のモノではなかった。
ならば一体これは...

(なんにせよ、思ったよりも手強そうだ)


「ありがとうございました。俺は竈門炭治郎と言います」

突然の異形の来訪者に面食らった炭治郎だが、ひとまずは助けてくれた礼を言おうと頭を下げた。

「あの、あなたはいったい...?」

困惑する炭治郎の問いに、堂島は仮面の奥で笑顔と共に返した。

「ヒーローさ」

52戦う君よ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:55:32 ID:nw1JLFF60

【F-6/1日目・深夜】

【ゾッド@ベルセルク】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、右腕に刺さった大柴ソウスケの日本刀@デビルマンG(炭治郎の支給品)
[行動方針]
基本方針:本能の赴くままに戦う
1:乱入者(堂島)と戦う

※参戦時期は15巻くらいからです


【堂島正@血と灰の女王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:悪を滅ぼし正義を生かす。
1:炭治郎たちを救う。
2:善を生還させる。ドミノと狩野とは積極的に争うつもりはない。

※参戦時期はドミノと内通の契約を結んだ辺りです。

【御園かりん@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]頭部出血(中)、全身にダメージ、気絶寸前、疲労(大)、煉獄杏寿郎の日輪刀@鬼滅の刃(ゾッドの支給品)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:アリナ先輩を探すの。七海やちよも恐いけど探すの...
1:炭治郎と行動するの。
2:ぼさぼさ筋肉おばけ(ゾッド)、恐いの...
3:ヒーローが現れたの...!

※参戦時期はアリナがマギウスに所属しているのを知る前からです


【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]出血(中)、全身にダメージ、打撲(中)、疲労困憊
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
0:ゾッドに怒り。被害が出る前に倒す。
1:善逸、伊之助、玄弥、時透、天元との合流。
2:かりんと行動し知人を探す。
3:鬼舞辻無惨を斬る。鬼を斬る。


※参戦時期は柱稽古の辺りからです
※鼻が利く範囲が狭まっています。

53 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/20(金) 17:56:11 ID:nw1JLFF60
投下終了です

水野智己を予約します

54 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/20(金) 17:59:58 ID:klyhm37g0
延長させていただきます

55名無しさん:2019/12/20(金) 18:03:28 ID:5Qu9hmy.0
投下乙です
いきなりの全力バトル、やはりゾッドは強い

56 ◆/wJ/Apndog:2019/12/20(金) 19:31:50 ID:qyTkp.bg0
延長します

57 ◆Mti19lYchg:2019/12/21(土) 00:54:38 ID:gyG7/kk60
カチュア、善逸で予約します。

58 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:01:54 ID:ycXqfzKg0
投下します

59羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:02:31 ID:ycXqfzKg0
サイドチェスト。
ボディビルディングにおけるポーズで、一方の手首を他方の手でつかみ腕および胸に力を込めて際立たせる姿勢である。

鏡の前に立ち、全裸でこのポージングをとる禿げ頭の巨漢は水野智己。
天童組というヤクザの組長である。

「ん―――、今宵の己(おれ)の筋肉もキレておる」

次いで、10kgのダンベルを両手にそれぞれ持ち、肘を屈折させる。
彼はこの殺し合いに送られてからすぐに筋トレを開始していた。
筋肉と会話することで、己の身体の調子を確かめているのである。

(しかし思い出せん...尻(アス)を貫かれた後、己はなぜここに連れてこられておる...?)

豪華客船でのメデューサとの死闘の末、自分は四階から落され、立っていたポールに処女を奪われた。そこまでは覚えている。
だが、いつの間にかアスからポールは抜かれており、神子柴なる老婆に殺しあえと命じられていた。
豪華客船でのことを夢と片付けるにはアスを貫かれた感覚は現実的であり、薬物を投与されたにしても、あの状況で自分に手出しできるとは思えない。
もはや己の理解の範疇を超えている。

とにもかくにも、この会場にメデューサの内の三人が巻き込まれているのは有難い。
これで奴らに殺された組員(かぞく)の弔い合戦に臨めるというものだ。

それに、奴らに組員は皆殺し済みだと告げられ、生存を絶望視していた神崎の生存が知れたのも幸運だ。
彼女と出会えた時は無事を祝ってやるとしよう。

「さしあたって己のすべきことは奴らの捜索...否」

そっと己の臀部に手を添える。
水野は負けた。信仰していたアスを貫かれることで。
あの場面で耐えきれていれば、甘城千歌を殺し、残りのメデューサも殺せたはずだ。
だが耐えられなかった。水野の超人的な大殿筋と深層外旋六筋を以てしても、開脚した状態ではポールには勝てなかった。

敗因は何か。偏に水野の経験不足である。
誰よりもアスを愛し誰よりもアスを信仰してきた彼だが、その実彼は処女だった。
度胸が無かったわけではない。ただ、眼前のアスに没頭するあまり、己にもアスがあることを失念していたのだ。
もしもアスを既に貫通させておりなおかつ経験豊富になっていれば、あのような末期を迎えることはなかっただろう。

60羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:02:52 ID:ycXqfzKg0

「越えねばならんな。過去の己を...」

故に、水野は決意した。
眼前のアスだけに捉われるのではなく、己のアスも愛する真のナイスアスになろうと。
その為に必要な足掛かりは、鬼ヶ原小夜子。

通常、グリセリン浣腸液は10〜150mlに抑えるのが常識であり、その量でも注入されれば5分と排便は完了する。
これは到底耐えられるものではない。

だが、小夜子は300mlもの浣腸液を注入されてもなお我慢し、15分近く耐えて見せた。
それも、途中のスパンキングが無ければ記録はさらに伸びたかもしれない。

「奴は敵ではあるが惚れ惚れするアスを持っていた。優れたアスには敬意を払い学ぶべきだ」

では如何様に超えるのか。これまで通りたゆまぬ鍛錬を積むか?いや、それは筋肉のみを鍛えるだけであり、肝心のアスには結びつかない。
ならばどうやって鍛えるか―――その答えは、水野の足元に転がっていた。

(奇しくも己に与えられた支給品もこいつだ)

水野のデイバックに入っていたのは、グリセリン浣腸液の入ったボトルだった。
容量は2リットル。小夜子の耐えた量のおよそ7回分である。

(己のアスが告げている。『己を鍛えよ』と)

ここは殺し合いの場だ。生殺与奪の権を環境に握られている場だ。そんなことはわかっている。
だが、その極限状態での経験こそがなによりの実となり糧となる。

「首を洗って待っていろメデューサ共...己は人間の限界を超え、再び貴様らのもとへと相まみえようぞ」

それは新たなる領域への挑戦への期待か恐怖か。
水野のアスが、ヒクヒクと蠢いた。



【G-5/HELLSING本部/1日目・深夜】

【水野智己@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 グリセリン浣腸液@サタノファニ 
[行動方針]
基本方針:アスを鍛える。
0:浣腸...いくか。
1:神崎と合流する。
2:甘城千歌、鬼ヶ原小夜子、カチュア・ラストルグエヴァを殺す。その前に小夜子を超える(目標は浣腸耐久時間20分超え)。

※参戦時期は処女喪失した直後です。

61 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/22(日) 00:03:37 ID:ycXqfzKg0
投下を終了します
巴マミ、神緒ゆいを予約します

62名無しさん:2019/12/22(日) 01:17:42 ID:6BhnhINM0
投下乙です
自分は尻を洗う訳ですね 分かります

63 ◆Mti19lYchg:2019/12/22(日) 21:54:53 ID:nivw8NYQ0
地図について質問があります。円についてですが、B-2みたいに黒い円に薄い円が重なっているのはどういう意味があるのでしょう。

64 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/23(月) 00:57:55 ID:MHEA93IU0
>>64
地図を描く際に円を使用して色塗りをしただけなので特に意味はありません。
また、円もここからここまでが草原、山、とキッチリ決まっているのではなくぼんやりとこのくらいかな、と色をつけただけなのであまり気にしなくても大丈夫です。
一応、緑は草原、薄水色は湖、黒っぽいところは山、周囲の青は海というイメージですが、SSを書く際に新しい山や崖、施設などを好きに追加して頂いても構いません。

65 ◆yliPrzUV3E:2019/12/23(月) 20:32:45 ID:vV8YoAm.0
>>28の予約を延長させていただきます

66 ◆PxtkrnEdFo:2019/12/24(火) 04:01:18 ID:TLl/YZuw0
今日中には投下できると思いますけど延長をお願いします

67 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:33:22 ID:75XJdN6M0
投下します

68内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:34:45 ID:75XJdN6M0

腰まで伸びた白く綺麗な長髪。
制服の上からでも主張を止めぬ豊満な胸。
そしてなにより見る者全てを虜にする美貌。

彼女の名は神緒ゆい。いま私立帝葉学園で最も話題の女子高生である。

そんな彼女だが、絶賛殺し合いに巻き込まれていた。

さて、彼女の様子はというと。

(恐い...助けて鍵人くん...奈央...!)

震えていた。
当然だ。運動神経抜群、成績優秀、人間関係良好な、優等生をそのまま絵にしたような彼女でも、この異常事態にすぐさま順応できるはずもなく。
恐怖に支配される彼女に出来ることは、なるべく目立たぬように隠れて震えることだけである。

「突然失礼...」
「ひゃうっ!?」

突如かけられた声に、ゆいはビクリと跳ね上がり思わず腰を抜かしてしまった。

「驚かせてごめんなさい。私の名は巴マミ。少しあなたに聞きたいことがあって声をかけさせてもらいました」

顔を上げたゆいの前に立っていたのは、ゆいと同じく豊満な胸を持ち、制服に身を包んだ、金髪ツインロールの少女だった。

「あ...あぅ...」
「立てませんか?よろしければお手をどうぞ」

スッ、と手を差し出す少女の挙動は、微塵も緊張や恐怖のようなモノは見えず、同性であるゆいですら見惚れてしまうほど凛々しく見えていた。

「あ、ありがとうございます」

立ち上がり、ぺこりと頭を下げお礼を述べるゆいに、マミは首を微かに傾け、にこりと微笑みを返した。

「このくらい当然です。それに...」

マミは左手で額から左側の縦ロールをさらりとかきあげる。

「困っている人は見過ごせませんから。ここではなんですし、もう少し見つかりにくい場所で話しましょうか」

69内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:35:15 ID:75XJdN6M0



「不思議ですね〜、お互い学校がここに飛ばされてるなんて」
「まったくです。知り合いに会う為の目印にはちょうどいいんですけどね」

空いていた教室を借り、互いの持つ情報を交換するマミとゆい。
最初のうちは怯えていたゆいも、マミの柔らかい物腰に緊張が解れ、会話が出来る程度には落ち着くことが出来た。

「それで...神緒さんはこれからどうしますか?知り合いも連れてこられてるとか...」

名を連ねられている中でゆいの知る者は園宮鍵人、淡魂炎火、橘城アヤ子の三名。
親友である恵比寿野奈央が巻き込まれていないのは不幸中の幸いと言えるだろうか。

では、親友がいないからといって、生きるために殺し合いに乗れるかといえば否。
生きるためとはいえ、友人である3人はもちろん、人を殺すなどできるはずもない。
それは他の三人も同じはず。ならばひとまず合流するべきだ。
幸いここには自分を含めた四人に共通する施設もあり、時間さえあれば合流は比較的し易いはずだ。

そして奇しくもゆいが飛ばされたのはここ、私立帝葉学園である。
ならば。

「...私は、ここに残ろうと思います。もしかしたら、皆さんも来てくれるかもしれませんし...」

暗がりの学園など恐いことこの上なしだが、おそらく知人たちは一度はここを訪れるだろう。
下手に動いて入れ違いになるよりは、多少時間がかかっても確実に会える場所に留まるべきという判断である。

「わかりました。なら、私も残ります」

マミの申し出にゆいはえっ、と声を漏らす。

「万が一にも、危ない人が来る可能性がありますし、二人でいれば心強いでしょう?」
「でも、申し訳ないです。巴さんだって後輩の子たちが...」
「大丈夫です。あの子たちはしっかりとした子たちですから」

微笑みのまま同行を提案してくれるマミに、ゆいは申し訳ない気持ちになる。
確かに一人では心細いし、マミが一緒にいてくれたらどれだけ安心できるだろうか。
けれど、大丈夫と本人は言っているが、本心では会いたいはずだ。
自分の考えで残ってくれるならまだしも、気を遣って残られるのは申し訳が立たない。

70内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:35:43 ID:75XJdN6M0

(ひとまず、私は大丈夫ということからアピールしましょう)

ゆいはデイバックをごそごそと探り、支給品を取り出す。

「私のことは大丈夫です。ほら、支給品に木刀と防弾チョッキが入ってましたから。これで攻撃も防御も万全です!」

武器と防具。
シンプルながらも、誰にでも使えるという点ではかなり当たりの部類だろう。

「...そうですね。確かに道具があれば自衛には役に立ちます。けれど」

言うが早いか、マミは木刀を手に取りゆいの首にトン、と当てた。

「こうやって武器を奪われたらどうしますか?」
「あっ」
「誰にでも使える武器は確かに便利ですが、相手の手に渡れば厄介なことこの上ない。もしそうなった場合、神緒さん一人で対処できますか?」

ゆいは思わず言葉を詰まらせる。
直接身に着ける防弾チョッキはともかく、木刀は己の手で握る物である。
素人相手ならいざ知らず、喧嘩慣れしているような輩相手なら苦労もなく取られてもおかしくない。
だが、二人いれば対処はいくらでもできる。ならば彼女が共に残らない理由がない。

「...参りました。不甲斐ないです。私の方が年上なのに教えてもらってばかりで」
「不甲斐なくなんかありませんよ。こんな状況でも人のことを気遣える、それだけでも立派じゃないですか」
「そ、そうでしょうか」

自身を頼りない、不甲斐ないと思いつつも、褒められて嬉しくないはずもなく。
ゆいの頬がほんのりと赤みがかった。

「...では、その、巴さん。不束者ですがよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それでは、校内を案内しますね。私に着いてきてください」

ゆいはマミに背を向け、意気揚々と歩き出す。

(最初に会えたのが巴さんでよかった。彼女みたいに、落ち着いてやれることをしっかりとやりましょう)

ゆいは決心する。

炎火の人形に恐れおののいた時のように、恐いからと震えているだけでは、ただ助けられるだけでは駄目だ。
一人で抱え込み解決しようとするだけでは駄目だ。
前を向こう。そうすれば、自分にできることもなにか見つかるかもしれない。
そうして、みんなで力を合わせて頑張ろうと。

だから。

パァン、という音と共に走った後頭部の熱さがなにかがわからぬまま、彼女は意識を手放した。

71内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:36:21 ID:75XJdN6M0

「......」


マミは、俯せに倒れる少女に歩み寄り見下ろした。

「ごめんなさい神緒さん...でも、これも救済のため...」

己の心臓が冷えていくのを実感する。

これまで魔女や魔法少女とは何度も戦い、銃で撃ってきたが、一般人を撃つのはこれが初めてだった。
マギウスの翼――魔法少女の運命からの脱却を願う者の集いの、事実上の幹部として行動していた時も、魔女やウワサを育てることはしても、直接人を殺したことはなかった。
けれど撃つしかなかった。魔法少女でない彼女よりも優先すべき者がいるから。

「本当ならこんなことはしたくなかった...けれど...」

神子柴が上空に投げ出された時、マミは神子柴を倒すことで殺し合いの開催を防ごうとした。
けれど失敗し、殺し合いは始まってしまった。
ではどうするべきか、マミは考えた。
脱出―――首輪がある限り不可能だ。解析しようにも機械の知識は乏しく、かといってほかの参加者が解除するのを待つなど希望的観測に等しい。
そんなに簡単に解除できる人間を参加者に混ぜる意味はない。それだけでこの殺し合いが成立しなくなるからだ。

それに、あの老婆は首輪を自在に爆発させることができる。逆らえば首が飛ぶ。
もしも、万が一、マギウスの計画の中枢たるアリナ・グレイを失うことになれば、マギウスによる魔法少女の解放が叶わなくなってしまう。
ならば―――乗るしかない。

参加者を殺し尽くし、最後に自害しアリナを優勝させるしかない。

だから、マミはゆいに苦しみや恐怖を与えぬよう背後から頭部を撃ったのだ。

「神緒さん...私のことはいくら恨んでも構いません。けれどあなたの犠牲は必ず多くの魔法少女の救いとなります。どうか安らかに...」

マミは落ちていた鎖を握りしめ、ゆいの冥福を祈るように片膝を着き両目を瞑った。

72内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:36:39 ID:75XJdN6M0

「人を撃った割にはずいぶんお優しいことだなーオイ」

かけられる声に、マミは反射的に目を開く。
同時に。
下あごから衝撃が走り、マミの身体が後方に吹き飛ぶ。

なにが起きた。

マミは己の居た位置を確認する。

足だ。
繊細な芸術のように綺麗な足が振り上げられていた。

(蹴られた...あんな無茶な体勢からあの威力で?それよりも、なぜ彼女が生きているの?)

マミは確かに殺すつもりでゆいを撃った。血も出ていたし確実に当たっている。なのになぜ生きている?

「―――!?」

目を凝らしているうちに異変に気が付く。
先ほどまでは髪から服まで純白だったゆいの身体が瞬く間に黒く染めあがっていくではないか!

「まさかこんな形で解かれるとは思ってなかったぜ」

立ち上がった彼女は、先ほどまでの白いゆいとはまるで別物だった。
おっとりとした佇まいと綺羅やかな白髪・白服は消え失せ、見る者を射殺すような鋭い目つきと漆黒の黒髪・黒服へと変貌していた。

「なんで立てるのかって聞きたそうだな。人間の頭蓋骨ってのは思ってるより硬いんだ。しかもたまたま撃った場所が髪飾りだったもんだから威力は半減以下。
お陰様であたしはかすり傷で済んだのさ」
「あなたいったい...!?」
「神緒ゆい(スケバン)だ。そういうお前こそタダ者じゃねーな。だからあんな余裕があったんだろ」
「っ...!」

マミは直感する。
神緒ゆいは魔法少女ではない。それは、先ほどさりげなく見せた指輪にも無反応だったことからわかる。
だが、彼女は魔法少女に類する脅威だ。侮れない。

ならば、出し惜しみなどしない。

マミの身体が発光すると同時に、黄金の装飾に彩られた衣装に包まれる。

魔法少女―――否。ただの魔法少女ではない。

これが魔法少女を超えた存在、神浜聖女の姿である。

「私たちの邪魔はさせない...私たちは必ず救済を成し遂げるわ!」
「よく吼えるじゃねーか...嫌いじゃないぜ、そういうの」

獲物を見つけた肉食獣のように、ゆいの口角がニヤリと上がった。

「久々に暴れがいがありそうだ。付き合ってもらうぜお嬢ちゃん」

73内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:37:05 ID:75XJdN6M0







――神緒ゆいの脳内世界にて――


『......』
「そんな落ちこむんじゃねーよ。裏切りなんてどこにでも転がってるもんだろ」
『違うんです。ただ、ちょっともやっとしてしまいまして...』
「あん?」
『どうして巴さんはあんな回りくどいことをしたのか...不思議なんです』
「そりゃ油断させるためだろ」
『必要でしたか?あなたならいざ知らず、私に対してですよ?木刀を持った時に叩きのめすことだってできたのに...』
「あー...言われてみりゃあな」
『殺すつもりはあったんだとは思います。でも、あそこまで徹底的に安らぎを与えられて...彼女の本心がわからない...だからもやっとしてしまって...』


「...あいつの本心、知りたいのか?」
『...はい。で、でも、それであなたが危険に晒されるのは』
「遠慮すんなよ。前も言ったろ、感情を発散するのはあたしの役目だって」
『......』


「そんな暗い顔するなよ。確かにあいつは強い。スケバンランクSにも届くかもしれねえ。けど勝ち目がないわけじゃない」
『え?』
「あいつからは蟲と似たような気配もする。そいつさえひっぺがしゃああんたも話くらいできるだろ。てか、あたしが出来るのはそこまでだ。あいつが何を思ってようがどうでもいいしな」
『つまり...そこからは、私の戦い...』
「そういうこと。まあ、あまり気負うんじゃねーぞ。どのみちあたしも殺し合いなんざするつもりはねえ。どう頑張ってもあたしに出来るのは、腹パンで腹の虫を出させるまでってことだ」
『...わかりました』

「そんじゃ、あたしらの肝も据わったところで―――行くとするか」

74内秘心書 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:37:37 ID:75XJdN6M0




『スケバン』。それは人間。あるいは女王。あるいは―――戦士。

つまり。

世界が違えど戦う女は皆スケバンである!



いざ尋常にスケバン勝負!!

神浜市聖夜の最終射撃人造『魔法少女(スケバン)』巴マミ

VS

東京都蟲狩りの神緒ゆい!!





【B-5/私立帝葉学園/1日目・深夜】


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]下あごにダメージ(小)、ホーリーマミ化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
基本方針:魔法少女救済の為にアリナを優勝させる。
0:神緒ゆいを倒す。
1:アリナと合流、指示を仰ぐ。
2:鹿目さんと暁美さんと佐倉さんはできれば殺したくはないけれど...
3:環いろは、七海やちよ、二葉さなは排除する。

※参戦時期はマギアレコード本編八章でやちよと交戦前です。


【神緒ゆい@神緒ゆいは髪を結い】
[状態]頭部出血(小)、黒ゆい化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 大谷悟の木刀@サタノファニ、烏丸の防弾チョッキ@サタノファニ
[行動方針]
基本方針:ゲームからの脱出
0:巴マミをブッ倒す。
1:鍵人、炎火、アヤ子との合流。


※参戦時期は修学旅行前。

75 ◆ejQgvbRQiA:2019/12/26(木) 00:38:40 ID:75XJdN6M0
投下終了です

花京院、さなを予約します

76名無しさん:2019/12/26(木) 04:04:36 ID:kD26UroE0
投下乙
やっぱマミさんマギレコ参戦かあ
あっちじゃ誤解にホーリーにと色々あったからなあ

77 ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:12:53 ID:sAiOcwgQ0
一昨日の朝に今日中には投下できると言ったが、スマンありゃウソだった
本当に申し訳ないとりあえず感想から

>OP
神子柴って聞いた名前だな、誰だっけなとか思ってたら時女の里のクソババアで色んな意味でド肝を抜かれましたね……
お前……確かに殺し合いの主催くらいならやりそうだけどお前……
そこにさっそうと登場したサイコロステーキ先輩が相変わらず謎の大物感を出してて笑う
一回殺されて復活したところでまた即座に反抗できるのはすごいなこの人
そこから主役級の面々に囲んで叩かれそうになってる神子柴は笑い半分興奮半分でした

>チュートリアル
クソみてぇな旗なのは間違いない
なのに神子柴の顔がゲームで描かれてないからちょっと見たくてチクショウ!
禁止エリアに踏み込んでのリアクションが「ウソッ」とか日常染みてて彼岸島を感じる

>コイントス
桐山のコイン、バトルロワイヤル読者なら誰もが知ってるシーンをカナヲと重ねるのは上手いなぁと思わされましたね
それでも何もない桐山と違って人を守る善性が確かにあることも対比的に描いていていい
長男カウンセリングの前はちょっと不安だけど、それだけに今後が楽しみだとも思います

>戦う君よ
かりん、炭治郎と合流できて落ち着けて良かった
しかしそこそこやれる二人だけども初っ端ゾッドはキツイなあと思ってたらかりん意外と活躍するなあ
マギレコ勢、モーションが簡素だし魔女との戦闘描写も薄いから実力が測りにくいと個人的には思うんですけどハロウィンシアターや魔法少女ストーリーから持ってきててすごくいいなと思いました(謎目線)
ヒーローも合流したところで頑張ってほしい。アリナ先輩を信じるかりんに幸あれ

>羽ばたこう明日へ
ロワにきてトレーニングをするキャラは見たことがある。修行パートも含めるならかなりの数。
便意と戦った男も一人だけど覚えがある。
殺し合いのさなかに自ら便意に闘いを挑む男は初めて見る。なにやってんだこの人
長くとも20分後にはヘルシング本部でぶちまける気でいるの、旦那とか局長に怒られそうだ

>内秘新書
タイトルが知らない四字熟語だし一発変換で出ないぞ……というのが第一印象でした
調べたらワンオクの曲なんですね、四字熟語じゃなかった
で、本編なんですが不安が的中してうぐぅってなりましたね
「突然失礼」を見たとき笑いながらもあー……って
ホーリー化してアリナの奉仕マーダー化したマミさん、名簿の面子的にもマーダーの数的にもそんな悪寒はしてたけども!
てかこいつ神浜聖女のウワサだか毛皮神のウワサを支給品外で、没収もされずに纏ってやがる
明さんの義手枠かチクショウ
しかしゆいの髪飾りを射抜いてしまうバッドからのスケバン勝負とは空気の持ってきかたは並んでていい
スケバンVS神浜聖女は絵面も字面もすごいな


で、改めましてアリナ・グレイと不死川玄弥で投下します

78逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:14:05 ID:sAiOcwgQ0

殺しあえと命じられた地の、月明かりの下で少年が一人活動を始めていた。
少年の名は不死川玄弥という。
鬼を殺すべく集った組織、鬼殺隊の一員だ。
彼も当然鬼を殺すだけの怨みと実力を持ち合わせているのだが、他の隊士に比べて鬼を殺す才には恵まれない面があるため、業腹ながら与えられた武器や情報が他の隊士よりも重要な生命線となる。
そのため彼が鞄を開き、武器や名簿を確かめる姿は半ば祈るようであった。
その結果は悲喜こもごもではあったが。
武器は上等なものがあった。そして名簿には

(宇髄さん……やっぱり宇髄さんだった!)

神子柴なる老婆に斬りかかった男は鬼殺隊の『音柱』宇髄天元のものに見えた。
上弦の陸との闘いで重傷を負って引退したと聞いていたし、柱稽古でもそのようにしか見えなかったが……死者の蘇生を可能とするというならばそのくらいの傷は癒せるということだろうか。
いずれにせよ頼りになる名と姿を目にできたのは何よりだ。
他にも刀鍛冶の里で共闘した竈門炭治郎に『霞柱』時透無一郎、いけ好かないが宇髄と共に上弦の陸と戦い生還した嘴平伊之助に我妻善逸の二人も柱稽古の最終段階まで進んだ猛者だ。
そこまではいい。
鬼殺隊の怨敵、始まりの鬼である鬼舞辻無惨、上弦の参である猗窩座、そして宇髄たちに斬られたはずの上弦の陸――蘇生させられたのか――妓夫太郎と堕姫の名は様々な感情を玄弥の内に引き起こす。
殺し合いの場であるなら無惨を斬るまたとない機会になるだろう。
だが同時にこの鬼どもは大きな障害ともなる。
歓喜、怖れ、他にも様々なものを覚えたが……ともあれ動き出さねば何も始まらない。
荷物を纏め、玄弥はゆっくりと立ち上がる。

(にしても変なところに出たもんだ)

ひとまず目についた神子柴の顔が描かれた珍妙な旗を目指して歩いてみたが、すぐに首輪から警告音が響いたので慌てて引き返す。
そうして改めて周囲を見ても立ち並ぶのは玄弥にとって見慣れない建物だった。
旗はともかくとしてそこに建っているのはどれもこれも平成、令和の時代にもなればありふれた民家ではある。
それでも大正を生きる玄弥には奇異なものに映った。
しかし文明開化が順調に進みつつあるのもまた大正であり、多少の違和感は覚えても大きな驚きはない。
そして見目が多少変わったところで古今東西変わらぬものもある。
人が生活しているならばその痕跡があるということ……例えば明かりがついている、という。

夜の闇の中で一軒だけ、ぼんやりと光を漏らしている家があった。
気持ちは分からなくもない。
夜の活動に慣れた鬼殺隊の端くれである玄弥も、正直僅かな自然光だけで名簿などに目を通すのは面倒だったし、何より夜の闇は不安を駆り立てる。
しかし殺し合えと命じられた真っただ中で、それもどこかに鬼がいる状況でいたずらに自分の居場所を発信するのは賢明でない。
承知の上での振る舞いかもしれないが、ひとまず注意に向かおうと玄弥の足がそちらに向かう。

もちろん、あえて呼び寄せているのではという疑念もなくはない。
支給された武器をすぐ取り出せるように構えて。
他の隊士に比べれば意味は薄いが呼吸を落ち着けて。
明かりの漏れる家へ周囲を確かめつつゆっくり近づいていく。

79逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:14:55 ID:sAiOcwgQ0

(藤の花が一輪もないな……)

夜は、鬼の時間だ。
安心して眠りにつくためには鬼を遠ざけてくれる藤の花を植えるのが不可欠と言っても過言ではなかろう。
ましてやこの地には無惨もいる。
にもかかわらず家の周りは石塀で囲まれた程度で鬼相手の防備を考えているとは思えない。
塀の向こうに見える中庭からは十分な土と草木の匂いがするから環境的に出来ないというわけでもあるまいに。

(本当に変なところだ)

石塀につけられた格子戸を開けて庭に入り、入ってすぐの光の漏れる硝子戸の向こうに視線をやる。
案の定、硝子戸の向こうの妙にひらけた室内に人影があった。

「おーい、そこのあんた。ここらには鬼が出る。危ねえ、ぞ……」

中にいる誰かに聞こえるように、しかし無闇に響かせないように気持ち潜めて。
その声に反応して影が振り向いたことで玄弥の声が詰まる。

そこにいたのは美しい異人の少女だった。
相手の性別とその容貌に気付いた玄弥が少し気後れるが、状況が状況でそうも言っていられない。
光に気付いて鬼が寄ってくるかもしれない、自分が気付いたんだから近くに誰かいれば同じように気付くだろう、注意しろ、などと忠告染みた言葉を絞り出そうとすると

「ねえ。これ、すっごく……綺麗だと思わナイ?」

先に句を告いだのは少女の方だった。
言葉と共に指で指示された方向に自然と玄弥の視線も誘導される。
玄弥はそうと分からなかったが、外にまで漏れ出た光は少女の指さした物を照らしている光源の残照だった。
それはあたかもステージを彩るスポットライトのよう。
そして室内がひらけているのもそれを展示するミュージアムであるかのよう。
リビングにポツンと置かれたダイニングチェアの上に鎮座するそれは、逆になぜ今まで気づかなかったのかと思うほどに存在感を放っている。

周囲の環境と、少女の振る舞いに導かれ、玄弥はそれを認識し……そしてそれが何かを理解した。

「…ッンだよ、それ!!」
「綺麗でしょう?これがネ、アリナに支給するウェポンなんだって。いいセンスしてるよね」

自らをアリナと呼んだ少女は狂気を孕んだ笑みを浮かべてそれを手に取る。
手の中のそれを掲げると顔の高さにまで持ち上げて……するとそこにはアリナと並んだ、もう一人の美しい少女の顔が。

「首……!?」
「デーモンの生首だってさ、アハ。デーモンの元老院、冷元帥クルールが人間とのウォーに負けて首を撥ねられたんだって。魔女やウワサはたくさん見てきたけど、悪魔は初めて見るヨネ」

冷元帥クルール。
火星の魔力を使った大儀式によって産まれた正真正銘のデーモンの姿は死してなお、いや亡骸であるからこそより美しくアリナの目には映った。
魔女やウワサは死体を残さない。
『生と死』を自らの芸術テーマとするアリナにとって、それはあまりにも惜しく、だからこそ手の中に遺った怪物はあまりにも愛おしい。
これを素に、作品を作り上げるには―――

「アナタ、ヴァニタスって分かる?」
「ぶ、う゛ぁ…?」
「静物画のジャンルなんだけど。死をモチーフにしたアートだからアリナも少し勉強したワケ。髑髏とか腐っていくフルーツで死やそれに伴う無常を描く……アンダスタン?
 アリナはこれで九相図を作ったら面白いと思うんだよネ。綺麗なデーモンの亡骸と、真っ白な髑髏と、腐乱した生首と他にもたくさん。だから、サ」

アリナの左手中指に嵌められた宝石、ソウルジェムが輝く。
そこから半透明のキューブが現れ、続けてキューブから出てきたサイケデリックなカラーをした衣装がアリナを覆い、長袖のアンダーシャツとブラウス、茶色いチェック柄のスカートで構成された女制服から彩り豊かな憲兵風の装いへと転じた。
魔法少女アリナ・グレイ。
口元に微笑みを浮かべ。
掌にキューブを浮かべ。
彼女は続けて口にした。

80逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:16:11 ID:sAiOcwgQ0

「アナタの首を、アリナにちょーだい」

キューブから放たれた幾筋もの光線が玄弥へと襲い掛かる。
気圧され、混乱する玄弥だったがさほど苦はなく攻撃を回避することはできた。外れた光線が庭へと続く硝子戸と外のブロック塀を砕く。
玄弥のの予想外の速さにアリナの口から舌打ちがこぼれた。

「魔法少女……じゃないよネ。その見た目でガールはノーでしょ。アナタ、何?」
「鬼殺隊、不死川玄弥。テメェこそ、なんだ?」
「アリナは魔法少女ですケド。それともマギウスって言った方がいいワケ?
 ……あ、ジーニアスアーティストとしてなら適当な雑誌をリードすれば分かるから勝手に調べてよネ。ま、アナタにそんな今後は無いんだケド」

鬼だの鬼殺隊だのというのがアリナにはさっぱり見当もつかない。
ただの人間の男だろうと侮って放った一撃を回避されて、黒羽根よりはやり手だと評価を修正し改めて攻撃を放つ。

玄弥もまた魔法少女、マギウス、デーモンというのが何だかまるで分らない。
始めは鬼の首を刈った剣士かと思った。次に人の首を眺める鬼かと思った。
だがアリナも生首の方も鬼らしい気配は感じ取れず、別の悍ましい何かだと予想するにとどまる。
だがひとまずはそれで充分……目の前の女は敵である。
さすがにこの女に反撃したとて炭治郎に腕を折られはすまい。
再度放たれた光線を躱し、素早く態勢を立て直して武器を抜く。
飛び出したのは巨大な大筒―――純銀マケドニウム加工水銀弾頭弾殻、マーベルス化学薬筒NNA9、全長39㎝、重量16㎏、13㎜炸裂徹鋼弾、『ジャッカル』。
最強の吸血鬼がただ一人の人間と戦うために用意させた特注の逸品だ。
並の化物なら一撃で、尋常ならざる怪異殺しであろうと五体を満足に保たせぬ弾丸は、喰らえば魔法少女であろうと無事ではすむまい。
その引き金が玄弥の手に収まり、その砲口がアリナに向けられていた。

轟音。
銃声とも呼ぶにはあまりに大きな炸裂音でジャッカルが牙をむいた。

「ッガ……!」

だが短い悲鳴を上げたのは玄弥だった。
ジャッカルの弾丸は狙いからずれ、アリナの光線とはまた別のブロック塀を抉り飛ばして終わった。
さもありなん、ジャッカルは人が扱える武器ではない。
玄弥の身体能力も人並み外れてはいるが、それでも不死王アーカードの携える牙の一つを使いこなすには役者が足りないと言うざるを得なかった。
だがそれで諦めるような男が鬼殺隊に身を置くはずもない。

「舎衛国……祇樹給孤独園、与大比丘衆」

念仏を唱え、集中を極限まで高める。
すさまじい銃の反動ではあったが、手首も肘も肩も無事。
であれば今度は全身で放つ。

玄弥は片手で構えていたジャッカルを両手で構え、足腰も活用して衝撃に備える。
そして再び引き金を引き、銃声を轟かせた。
再度放たれる弾丸だが、今度はアリナは意図してそれを躱す。
鬼殺隊が鬼を殺すために人の力を極めるように、魔女を殺すために人ならざる域に踏み込んだのが魔法少女だ。
玄弥が血鬼術を躱すようにアリナの光線を躱せるように、アリナもまた玄弥の構える銃を魔女の攻撃のように知覚して回避する。

81逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:16:39 ID:sAiOcwgQ0

(クソが、とんでもねえ武器だな!)

玄弥でもジャッカルは両手で構え腰を落とさなければまともに撃てないが、それでは早撃ちなどできるわけもなく、照準をアリナに読まれてしまう。
かと言って無理に早撃ちをしようとすれば腕が折れてしまうのでないかというほどの反動が襲い掛かる。
最初は当たりの武器かと思ったが途轍もないじゃじゃ馬だ。
玄弥が狙い構えるまでの間に、アリナは立ち位置を変えることで銃弾を躱し、さらに光線を放ち徐々に玄弥を追い込もうとする。
初撃の的外れさや構え方、見て取れる銃の威容からすでにアリナはジャッカルが玄弥の手に余るものだと看破していた。
光線が壁を一部崩し、床を貫き、足場を乱して玄弥を敗北へと導こうとする。

(だったら!)

乾坤一擲、玄弥はアリナの攻撃を姿勢を低くして避け、乱れつつある足場を大きく踏み込んで距離を詰める。
ジャッカルを左手に握り、その重量を活かして鈍器として扱い、薙ぎ上げるように振るった。
だがそんな単純な一撃が通るはずもなく、アリナは左手にクルールの首を抱えて躱しつつ距離をとろうとするが

「ウオラァ!」

雄叫びを上げて左手だけでジャッカルのトリガーを引く。
狙いなど碌に定めたものではない。的外れなことに天井に放たれた弾丸が跳弾することもなく貫通し、砕いた欠片を二人にばら撒いた。

「キャ!?」

そのつぶてにアリナが僅かに怯んだ隙をついて玄弥が右手を伸ばし、クルールの首を奪い取って再び距離を置く。

「…何する気?アリナからそれを奪って、フリーズなんて言うとか?」

なるほどたしかにアリナから下手に手出しはできなくなった。
だが玄弥の状況はどうか。
無理にジャッカルを撃った反動だろう。彼の左腕は奇妙な方向に折れ曲がっていた。
その有り様で凄んだところで大した脅威になりはしない。
ゆっくりとアリナはキューブに魔力を込め、とどめを刺す準備を整えていく。

「……こいつ、悪魔?だっけ」
「そうだケド。貴重なアートになるんだから傷つけたらただじゃ―――」

82逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:17:00 ID:sAiOcwgQ0





ばりっ

      ごきっ

   ばきばき
ず           ず

ごくん

83逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:17:49 ID:sAiOcwgQ0

「…………ハ?」

肉を噛む音。骨を砕く音。血を啜る音。それら全てを嚥下する音。
――――――玄弥がクルールを食っている音。
さすがのアリナもこれは予想できなかったようで一瞬呆気に取られてしまう。
だが

「ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁ!!!
 作品をブレイクしていいのはアーティストだけなんですケド!!何勝手なマネしてくれてるワケ!?
 アナタ…アナタのハラワタをぶち撒けてその中からクルールを抉り出しやる!」

怒りに染まったアリナが叫びと共にキューブに込めた魔力を解放し、玄弥に向けて全力で放つ。
ドッペルには及ばないが全力の一撃で、これまで見た玄弥の身体能力では躱せるはずのないものだとアリナは自負していた。
だが玄弥はアリナの想定を大きく超えて速く高く跳び、アリナの攻撃を回避してみせた。
それだけではない。
つい先ほどまで折れていたはずの左手でジャッカルを構え、アリナに向けて放ったのだ。

(ウソ!?)

牽制だったのだろう。そこまで正確な一撃ではなかった。
だが先ほどまで使いこなせていなかった武器を突然使いこなし―――いやそもそも左腕は折れていたはず。魔法少女でもこんなに早く回復はしない。
何が起きたのか。
アリナが混乱の渦に叩き込まれているさなかにも玄弥は容赦しない。
ジャッカルの銃撃を正確に二発、三発と叩き込んでくる。

二発目は躱した。だが三発目がアリナの肩口をわずかに掠め、それだけで肉を大きく抉っていった。
多量の出血でアリナの頭に上っていた血が下りる。
間が悪くそこでジャッカルの弾が切れたようで、玄弥が即座に鞄から取り出した予備弾を込め治す。
その隙に痛覚を遮断したアリナが魔法で傷を塞ぎ、最低限出血を抑える程度には持ち直して向きなおる。

玄弥が構えなおすより速くアリナが光線を放った。
毒々しく輝く光線が床を一気に腐敗させて足場を乱し、毒と床が反応したのか煙も上げて照準のための視界を乱す。
それも今の玄弥には障害とはならない。

人並外れた咬合力と消化器官をもつ玄弥は、鬼を喰らい取り込むことでその力を得て鬼を殺してきた。
今は悪魔クルールの首を喰ったことで強靭な肉体を獲得し、五感もまた鋭敏になっている。
多少の煙幕などものともせず照準を定めようとするが

(…消えた!?いや下か!)

アリナは即座に自らの足元を魔法で砕くとそこに身を躍らせた。
ジャッカルならば床板くらい容易に貫通できるだろうが、狙いが定まらなくては無駄弾と装填の隙を招きかねない。
ならば自分も後を追って床下に飛び込むかと一瞬考えるが

「勘弁してよネ。デーモンを食べてデーモンの力を取り込むとかチートじゃナイ?
 ここ、神浜じゃないからアリナはドッペル使えないのに。魔女を利用する私たちマギウスと同じようなことやってるの他にもいるんだ。シニカルなフォーチュン……」

アリナの声が下から響いたことで狙いがつけやすくなった。
ぶつぶつと言葉を続けるアリナに向けてジャッカルの銃口をむけようと即座に



ぶつぶつ

闇の中から蘇りし者    ぶつぶつ
     リンプ・ピズキット
   我と共に来たれ
 ぶつ  ぶつ    



ドスッ!!!

84逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:18:15 ID:sAiOcwgQ0

「ぐあ…!」

玄弥の脇腹に鋭い何かが突き刺さった。
咄嗟に構えようとしていたジャッカルを振るい殴りつけようとするが、その一撃はむなしく空を切る。

(なっ!?ンだ今のは)

見えない。
何から攻撃されたのか分からないが、わき腹を抉られた。
それ自体は大した傷ではないが、敵が何をしたのか分からないのは大問題だ。

(上弦の肆みてえに見つからねえのか!?)

咄嗟に足元に視線を走らせるが鼠一匹見当たらない。
視力も強化されているからそれは間違いない。
そこへ続けて獣が駆けるような足音を響かせて見えない何かが突っ込んできた。
音に反応して玄弥もそれを受け止めるべく構えるが、クルールを喰って得た膂力でもってもその敵は抑えきれなかった。
敵の正体がつかめない。そして圧倒的な攻撃力の別固体らしきもの。ますます上弦の肆が玄弥の脳裏によぎる。

(同じなら…あの女をやれば!)

玄弥は突っ込んできた何か――見えないが毛が生えているようだ――と組み合い、押されながらもジャッカルを突き付け引き金を絞る。
銃声と共に硬い何か――おそらくは角だろうか――が折れる音が響き、それに怯んだか不可視の敵の力が緩む。
そこへ思い切り前蹴りを叩きこんで吹き飛ばし、その反動で玄弥も後ろに跳び、両者の間に大きな距離ができた。
アリナが乱した足場を今度は玄弥が利用する。獣の足では即座に距離を詰めれまい。
その間にジャッカルの照準を改め、アリナの声がした方へ。
上弦の肆と同じなら大元を仕留めれば不可視の攻撃は止むはずだとそちらを仕留めようとする玄弥の耳に、予想だにしなかった獣の足音が再び響いた。

(壁!?)

重力を無視したように、音は横方向、目線の高さから聞こえた。
たしかに壁には多少の銃痕は在れど移動に支障をきたす大きなものはない……そも壁というのは歩くことを想定するものでもなかろうが。
予想外に早い戦線復帰。それでも玄弥が引き金を引くより早いということはなかろうが、姿が見えず何をしてくるか予想できないのが恐ろしい。
射線に割り込み盾になろうとしてくるか。またこちらに突撃してくるのか。上弦の肆の分身やアリナとかいう女のように飛び道具でも撃ってくるか。
先に対処するにも見えない敵にジャッカルの照準を合わせるのは至難の業だ。
ならば、と。
ジャッカルを持つ右手はそのままに、玄弥は左手を足もとへ伸ばす。
そのまま傷ついた床を拳で打ち抜き

「おとなしく、してやがれェ!!」

床板を丸ごと引きはがしてその面で広範囲をぶっ叩く。
見えなくとも辺り一帯を攻撃すれば効果はあろう。
床板を大きな塊のまま振るえたのは幸いだった。

「手ごたえあり……!でもって見えたぜ……!」

剥がれた床板で獣は弾き、そして床下のアリナの姿もはっきりと捉えられるようになった。
これでトドメ、と玄弥が右手のジャッカルを放とうとする。


バリ
     バリバリバリ
  パキ   ボキン

肉を噛む音。骨を砕く音。
それが今度は玄弥の右腕から響いていた。

85逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:19:02 ID:sAiOcwgQ0

「うっ、おおおおおおおおおおおおおおお!?」

喰われる感覚。
玄弥がそれを味わう立場になることは珍しい。
鬼殺隊を相手にした大概の鬼は殺してから喰うもので、喰って殺すことはそうないからだ。
だがこれは噛み砕いているのではない、明らかに喰っている!戦場において鬼以上の悍ましさ!

(床板の向こうにさっきのは抑えてる!女は床下、ならもう一体出たのか!?)

増えた。
本気でこのアマ上弦の肆の親戚か何かじゃないかと混乱する玄弥は思うが、そんな呑気なことを考えている余裕はない。
一対一でも厳しいところに不可視の敵が二体出てきて、さらに増えないとも分からない。
もはや玄弥一人の敵う範囲ではなくなった。
刀鍛冶の里での戦いのように死の気配が満ちるのを肌で感じる。
右腕がさらに抉られ、ジャッカルが落ちた。
床板を破り、獣の匂いが近づいてくる。
対峙する少女も掌を輝かせ攻撃を放とうとしている。
今の玄弥ではそのどれにも対処はできない。

(もう…死ぬ)

また、兄ちゃんの顔と言葉が走馬灯のように


―――玄弥ーっ!!!諦めるな!!―――



浮かぶ前に仲間の顔と声を思い出した。
視界が晴れる。思考が晴れる。
…………悪魔を喰らい、発達した聴覚が足元に転がる何かに気付いた。
玄弥に貪られ、頬が抉れてもなお美しくあるクルールの首。
床板を振り回した際にこちらに転がってきたようだ。
…………アリナと玄弥の戦闘の余波で崩れた塀の向こうに、神子柴の顔がはためいていた。
ああ。それに、賭けよう。

「飛べーっ!!旗のとこまで!!」

強化された脚力で、クルールの首をクソみてえな旗目がけて蹴り飛ばす。
またしてもクルールの首に突然とった意味不明な行動にアリナは驚き、クルールへの無礼な振る舞いに怒り、しかしまた妙なことが起こるのではと警戒し、といったところだ。
一瞬どうしたものか逡巡するアリナだったが

「おい。あの旗の方、神子柴のヤツがいる禁止エリアだったぞ」

玄弥のその声で顔色を変える。
禁止エリア……神子柴が言っていた、立ち入り禁止の区域!

「ヴァァァアアアッッッ‼」

奇声を発しながら、もはや玄弥などどうでもいいと飛んでいったクルールをアリナは追いかけ始める。
悪魔を喰らった玄弥に蹴られた首は彼方まで飛び、強化された魔法少女の視力でもすでに視界ギリギリだ。
もし禁止エリアに入ってしまえばあの首を二度と手に入れることができないかもしれない。
優勝して回収するとしてもそれまで放置され雨風にさらされたり腐敗してしまったりすればただでさえ傷ついたのに、さらに希少な美が損なわれてしまう。

(許さナイ……!)

コイツの言葉が真実かどうかはこの際どうでもいい。
クルールの首を回収して、その後コイツは必ず殺してやる。
怨みの視線だけ残してアリナは急ぎこの場を離れていく。

86逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:19:25 ID:sAiOcwgQ0

「……ぐ、痛」

それを見送り、一瞬息をつくと抉られた右腕が回復していく。
いつもより回復が遅い気がするが、喰ったのが鬼じゃないからだろうか。
ジャッカルを持てる程度に回復したところで落ちたそれを回収し、アリナとは反対方向へ玄弥も駆けだした。
あの女の思想も、能力も、上弦に匹敵する危険さだ。
炭治郎や柱、他の仲間の協力もなければ倒すのは困難だろう。
屈辱だ。苦渋の選択だ。
だが脅威を喧伝しなければならない。何より敵はあの女だけではない。無惨や他の上弦もこの地にはいるのだ。
今は生き延びることを優先しなければならない。

(畜生……)

とはいえ無為な戦闘ではなかった。
ジャッカルの性能を試せたこと、デーモンなる存在をしれたこと。
一か八かで口にはしたが、本当に鬼と同様に力が得られるかは賭けだった。
最後の逃亡もあの首がなければなし得なかったし、首の少女には散々に助けられたと言える。

(あー、でもまた蝶屋敷ですげえ怒られそう……)

鬼だけではなく得体の知れないもの口にしたと知れば蟲柱は何と言うだろう。
おまけに今後また別のものも口にするかもしれないとなればなおのこと。
玄弥はすぐ取り出せるよう懐にもう一つの支給品を忍ばせる。

(正直悪魔の肉なんて疑ってたけど、あれが本物ならこれも多分……ん?何か動いたか?)

手にした肉片……『銃の悪魔の肉片』が玄弥の後方、アリナの駆けて行った神子柴の旗の方へ僅かに動いたのは玄弥が走り揺られていたせいか。それとも……



【C-4/1日目・深夜】

【不死川玄弥@鬼滅の刃】
[状態]ダメージ(小〜中、回復中)、クルールを喰って微妙に悪魔化
[装備]ジャッカル@HELLSING、銃の悪魔の肉片@チェンソーマン
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 ジャッカルの予備弾(残数不明)@HELLSING
[行動方針]
基本方針:悪鬼滅殺。人は守る。
1:今はアリナと距離をとる……今は。
2:炭治郎や無一郎のような仲間と合流し、無惨やアリナなど敵を滅殺する。

※参戦時期は柱稽古終盤〜無限城突入の間ごろです。



【ジャッカル@HELLSING】
不死川玄弥に支給。
対化物戦闘用13㎜拳銃
全長:39㎝ 重量:16㎏ 装弾数:6発
使用弾種:専用弾・13㎜炸裂徹鋼弾 弾殻:純銀製マケドニウム加工弾殻 装薬:マーベルス化学薬筒NNA9
弾頭:法儀式済み水銀弾頭
吸血鬼アーカードがアレクサンドル・アンデルセン神父と戦うために創らせた特注の銃。
もはや人類の扱える代物ではないらしい。


【銃の悪魔の肉片@チェンソーマン】
不死川玄弥に支給。
銃への恐怖が生み出した悪魔、その肉片。
この肉片を得た悪魔は大きく力を増すという。
肉片同士に引き合う性質がある。

87逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo:2019/12/26(木) 21:20:02 ID:sAiOcwgQ0

「アイツ、本当にムカつくんですケド」

クルールの首はかろうじて確保できた。
もう少しで禁止エリアに転がり込むところで、本当に危なかった。

「ンー……」

手にした首を再度じっくりと眺めてみる……齧られはしたがこれはこれで美しい。
ミロのヴィーナスやサモトラケのニケは欠損ゆえの美があるというが、なるほどこれもまたそういうものだろう。
あらかた堪能したところで今度はアリナの周囲に集う透明なゾンビに手を伸ばした。
アリナにも見えない、リンプ・ピズキットによって産まれた二体のゾンビ。
その姿を確かめるために触れてみたいと思ったのだ。
まず一体目は、四足歩行の獣の背中から女体が生えているような形をしている。
その女体の肌にじっくりと指を這わせるうちに理解した……これはクルールのものだと。
てっきり首だけのゾンビになるのではと危惧していたが、デーモンには再生能力でもあるのだろうか。五体満足を通り越してもう一つ五体ができている……姿は見えないが艶めかしい肌触りに美しい毛並みだ。想像するしかないのが本当に惜しい。
そしてもう一つのゾンビに手を触れると、これはなんだかすぐに理解できた。
ベッドの上でもでもバスルームでも、何度も触れているなじみ深いもの。

「アイシー。アリナたちはもうゾンビみたいなものだったネ」

そう。
アリナ・グレイのソウルジェムに操られるだけの肉体も、リンプ・ピスキットは死体と認識してゾンビを産み出したのだ。
このゾンビたちにアリナは玄弥を殺させるつもりだったのだが、どうやら射程距離があるらしくアリナに着いてきてしまった。
魔女やウワサのようには扱えないらしい。

「あーあ。せっかくキープしてた魔女もウワサもなくなってるし……」

アリナの固有魔法は結界の作成で、その中に多くの魔女、使い魔、ウワサを飼って保管していたのだが、それは没収されていた。
では改めてこのゾンビやクルールの生首をしまおうかと考えるが、そうすると魔力の消費がいつも以上に凄まじい。
結界の中に引きこもったりしては殺し合いが円滑に進まないからだろうか。
本当にイライラする。

「ま、でも……」

このクルールの姿は本当に美しい。これ以上劣化しないようにひとまず大事にディパックにしまっておく。
おそらくこれだけではないだろう。
クルールが死んだのは戦争≪ウォー≫だという。
ならば悪魔も彼女一人ではあるまい。
玄弥もまさかやけっぱちで彼女を喰らったということもなかろう……何らかの確証があって口にしたのだ。
デーモンに近しい何かをアイツは知っている。そういえば鬼、とか言っていた気がする。

「すっっっっごく欲しいヨネ。アリナのとびっきりのアートのために」


【C-4、国会議事堂近辺/1日目・深夜】


【アリナ・グレイ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]右腕負傷(魔法で止血)、痛覚遮断、魔力消費(小)
[装備]リンプ・ピズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、クルールのゾンビ、アリナのゾンビ
[道具]基本支給品、クルールの生首(玄弥に齧られて頬などが欠損)@デビルマンG、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:レアなアートの材料が欲しい。
0:悪魔族クルール。とっても綺麗……
1:デーモンや鬼、アリナの知らなかった美しいアートの素材を探す。それを彩る絵の具やキャンバスも欲しい。
2:アイツ(玄弥)は鬼について口を割らせたら殺して赤い絵の具にしてやる……!


※参戦時期はマギウスが黒羽根ができる程度に組織を拡大して以降です。詳細な時期は後続の方にお任せします。
※結界内の魔女、ウワサ、使い魔は武装として没収されました。
※制限により結界を作成し中に人や物を入れようとすると魔力の消費量が大きく増大します。


【クルールの生首@デビルマンG】
アリナ・グレイに支給。
悪魔族元老院の両巨頭と謳われる最上位のデーモン、冷元帥クルール。
彼女の最期は原作漫画デビルマンの牧村美樹の最期をオマージュした凄惨なもので、デビルマン・フラムメドックに首を撥ねられ、狂喜に踊り狂う人間たちにその首や五体を晒されていた。
そのうちの生首だけがアリナに支給された。

【リンプ・ピスキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
アリナ・グレイに支給。
頭に挿入することでスタンド能力を身に着ける。
破壊力 - なし / スピード - B / 射程距離 - B / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - E
死んだ生物を見えない死骸として甦らせる能力を持っている。
蘇ったゾンビは、壁や天井を自由に歩くことができ、その本能から脳味噌を喰らおうとする。
死体の一部だけでも蘇生させることができなくはないが、うまくいくのか、どうなるかは持ち主にもこの能力を与えたホワイトスネイクにも分からなかった。

88名無しさん:2019/12/26(木) 21:20:53 ID:sAiOcwgQ0
投下終了です

89名無しさん:2019/12/26(木) 22:18:31 ID:iei9oqD20
投下乙です
なんか青髭を召喚してそうな趣味だなアリナ

90 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:41:44 ID:mZ8ZM18s0
大変遅くなって申し訳ございません!投下します!

91血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:43:08 ID:mZ8ZM18s0


一人の少年が街中を歩いていた。
味気ないレーションを時折噛りながら、周囲の気配を窺う。
そびえ立つビル群は墓標のように静まり返り、本来ならあるべき人混みのようなものは一切なかった。
建物のどこにも電気は点いていない、電源を入れれば点けられるのだろうか。
広い間隔で立つ街灯だけが淋しげな光を放っていた。

「殺し合いか、やべぇなぁ〜」
誰かが今にも少年を殺すかもわからぬ、そのような状況下で少年――デンジは呑気に呟いた。
「やべぇなぁ」
もう一度、デンジは呟く。
やはり、そこに悲壮感や恐怖、あるいは恐怖などの感情はなく、どこまでも脳天気なように思えた。

(どうすっかな、マジで)

デンジに殺人に対する忌避感はそれほど無い。
殺そうと思えば、知り合いでもなければ殺せるだろう。

知り合いがいた。
同僚であるパワー(彼は難しい漢字を読めなかったが、カタカナは読むことが出来た)
そして、職場の先輩である早川アキ
(少し悩んだが簡単な漢字なので、やはり読むことが出来た)

デンジは考えた。
――アイツの名字だろうと読めねぇ漢字は読めねぇ、
――川は三本線が引いてあるだけなので良い、早は日と十が合体していてややこしいんだよな。
――叶は口と十が横に並んでるのにな、早は日と十が縦だぜ。おかしくねぇか。
――気に食わねぇ名字だ、川川になればいいのに。

閑話休題。
デンジは名簿を読み、知っている人間の名を確認する。
同姓同名ということは考えられなかった、自分を呼んだんだから知っている人間を呼んだのだろうとシンプルに考えた。
何故、自分を呼んだのだろうか。
考えを巡らせたが、それはわからない。
デビルハンターという仕事をしている以上、どこで悪魔の恨みを買ってもおかしくはない。

「あ、そうか」
デンジは納得する。
悪魔の仕業なのだ、この殺し合いは。
なれば、わざわざ殺し合いなどしなくてもオババと名乗った悪魔を殺せば解決である。

「なんで悩んじまったのかな〜!最近生活が良くなっちまったもんで、変に色々考えちまったかぁ?」
(ニンジン食ってるもんなぁ俺、キャベツも食ってる、ビタミン取りまくってるしまぁ、しょうがねぇかぁ)
デンジの足取りは軽やかに、デイパックよりレーションの2個目を取り出し、咀嚼する。

「おっ、デンジじゃ」
「げっ、パワー」

冗談のように、あっさりとデンジは知り合いに再会した。
髪をセミロングにまで伸ばした少女。
イタズラっ子のように緩めた口元から伺える歯は鮫のように鋭利だ。
胸部は平らであり、その代わりであるかのように頭部からは角が2本生えていた。

その角が示すように、普通の人間ではなく、魔人であった。

「ちょっと、とまれ」
すたすたと自分の側に寄ろうとするパワーを制止するように、デンジは手を伸ばす。
「嫌じゃ!」
すたすた、すたすた、すたすた、その歩みは止まらぬ。
パワーがデンジに従う道理はない。

「お前、俺を殺すつもりだろ!」
「バカ!殺さんわ!」
「じゃあ、なんだよそれは!」
「関係ない!殺さん!」
パワーが片手に携えていたものは手斧であった。
片手で持てる程度の大きさであっても、人の頭などを砕くのに不足はない。

「ぜってぇ殺すだろ!」
「殺さんと言っているのがなぜわからん!これはたまたま持ってるだけじゃ!」
デンジが駆け足で逃げ出すのに、合わせてパワーも走り出す。
静かな夜の街に二人の靴音がやけにうるさく響き渡り、闇を染め上げるかのように荒く白い息が発せられた。

「この殺し合いに乗る気かテメェ!」
「乗らん!!」
「お前さっきからクソみてぇな嘘ついてんじゃねぇ!」
「わかった、乗ろうと思っておったが今は思っとらん!じゃから止まれ!」
「絶対殺すからやだ!」

二人は夜の街をひたすらに走り続けた。

92血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:43:39 ID:mZ8ZM18s0

(くっそ〜!キリがねぇ!!)
デンジは考える。
出来ればパワーのことは殺したくない。
死んでもしょうがない面はあるので、積極的に助けようとも思わないが、パワーを殺せば、
マキマ――彼の敬愛する女性が悲しむ。デンジはそう考える。

(ん、マキマさん……?)
マキマのミステリアスで憂いを帯びた顔をデンジが思い浮かべると同時に、脳に電撃が走った。
パワーを止める名案が閃いたのである。

「おい!パワー!名簿は読んだか!?」
デンジは立ち止まり、くるりと振り返って、大声で叫ぶ。

「名簿ォ?何か言うとったが、そんなもんは読まん!」

読まないのではなく、読めないのだろう。デンジはそう考える。
パワーはあまり、賢くない。

「マキマさんもこの殺し合いに参加してるぞ!」
「なんじゃとぉ!」

パワーが叫ぶと同時に、闇の中に白いものが浮かび上がった。
夜闇の中にあって、その全身が薄っすらと輝いているようである。
陽光に疎まれているかのような乳色の白い肌、色素のない銀の髪。
強膜は赤く、紅く、それは血の色だった。瞳孔が金色に妖しく輝く、魔性の証明だった。

雅と言う。吸血鬼と言う。

その雅の頭に手斧が突き刺さっていた。
デンジも、パワーも気づかなったが、雅はデンジの道の先に居た。
そして、今まさに姿を現そうとした瞬間に――パワーが衝撃のあまりに放り投げてしまった手斧が命中したのだ。

噴水のように血が溢れ出た。

「やっべぇ〜!殺っちまったな!」
「わ、わしは……わしは悪くないぞ!デンジが殺れって言ったんじゃ!」
「言ってねーよ!とにかく血だ!血ぃ止めろ!マキマさんに怒られんぞ!」
「いや……あのオババとか奴願いを叶えるとか言っておったな!今こそ下剋上のチャンスじゃ!
 悪いのデンジ!そこの男には死んでもらう!」
「そのオババとかいう奴がお前の願いを叶えると思ってるのかよ!この前言われたろ!」
「なっ……ワシの方が先に気づいておったが!?」
「いいから早く血ィ止めろ!」

わちゃわちゃと動き続け、
いざパワーが雅の元へ向かおうとした瞬間、雅は平然と立ち上がった。
手斧を引き抜き、地面へと放り投げる。

「……人間でも吸血鬼でも邪鬼でも無い気配、何なんだ、お前たちは」
「血の魔人、パワー様と愉快な下僕じゃ」
「あ〜〜死んでねぇ!!死んでねぇってことは多分殺して問題ねぇ奴だなぁ!」

突如として、彼らを包む闇が牢獄になったかのようだった。
吸血鬼の王、雅が発する雰囲気は鋭い。地獄とは、彼のいる場所なのだろう。
もしも、この場所にいるのが普通の人間ならば血を吸われるまでもなく失禁は逃れえぬ。

勿論、雅に対峙する者が普通の人間であるはずがなかったが。

93血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:44:23 ID:mZ8ZM18s0

「興味が湧いた」
すらりと、雅が銃剣を抜き払う。左に一、右に一。二刀流である。
その銃剣の本来の所持者の名はアレクサンド・アンデルセン、吸血鬼を殺す者である。
吸血鬼の王は両の手に吸血鬼殺しの武器を構え、悪魔と対峙する。

「俺は男に興味なんてねぇけどなぁ〜〜〜〜!!」
躊躇はない、そのような余裕はない。
デンジは本能的に、心臓から伸びるスターター・ハンドルを引いた。
重厚な音がした。始まりの音だった。

デンジの頭蓋を斬り裂き、内部からチェンソーの刃が現れる。
右腕を斬り裂き、左腕を斬り裂き、やはりチェンソーの刃が生じる。

激しい痛みと重厚なるエンジン音の中、彼は覚醒する。

雅を悪魔と呼ぶものもいる。
しかし、それは彼らが本物の悪魔を知らないだけのことだ。

チェンソーの機械を模した異形の頭部、両腕から突き出たチェンソーの刃。
チェンソーの悪魔はデンジであり、デンジはチェンソーの悪魔であった。

「先に言っとくけどよォ!俺の勘違いなら謝っとくぜェ〜!!」
「ハ、心配することはない……私はこの場の人間を皆殺しにするつもりだよ」
「そうか〜!だったら正当防衛って奴だなぁ〜〜〜!!!」

「ところで……先程の彼女はいいのか?」
雅が銃剣を構え、デンジが悪魔へと変じた時。
パワーの姿は既になかった。逃げていた。

「アイツに期待する奴ァ!バカってもんだぜ!!ハハッ!!つまりテメェは俺よりバカってことだな〜!!」
獣のごとく、デンジが雅へと迫った。
雅もまた、デンジに応じる。

(宮本明……私はずっと病に侵されていた。退屈だ、退屈というどうしようもない病だ。
 だが、この殺し合いに呼ばれ、お前がいると知った時……そして、今、この瞬間。宮本明、宮本明よ。)

雅は心の中で宮本明に語りかける。
吸血鬼の王は日本を滅ぼし、玉座へと座った。
しかし、玉座には何も無かった。ただ無限の退屈の日々だけがあった。

(私の退屈を殺しに来い、宮本明)

【F-2/1日目・深夜】

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]チェンソーの悪魔化
[装備]なし
[道具]基本支給品(食料消耗済み)、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:主催の悪魔をぶっ殺して全部解決だぜ〜!
1.目の前の雅を正当防衛でぶっ殺す

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【パワー@チェンソーマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:最強のわしが全員ぶっ殺して願いを叶えて下剋上じゃ!
1.デンジと雅の戦いから逃げる
2.マキマが怖い

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【雅@彼岸島】
[状態]健康(手斧による頭部粉砕)
[装備]アンデルセンの銃剣@HELLSING
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:宮本明を探す
1.デンジとの戦いを楽しむ

※参戦時期は部下が国会議事堂にクソみてぇな旗を立てた後(48日後の時系列)

94血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/27(金) 01:44:37 ID:mZ8ZM18s0
投下終了します

95 ◆3g7ttdMh3Q:2019/12/28(土) 06:45:17 ID:fUPFk4kY0
早川アキ、ディオ・ブランドー予約します

96 ◆Mti19lYchg:2019/12/28(土) 19:12:42 ID:pL/iUc620
延長願います。

97 ◆yliPrzUV3E:2019/12/29(日) 02:06:13 ID:uujd92x20
間に合わないので予約を破棄します

98 ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:12:38 ID:KNzNhCgk0
投下します。

99 ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:13:31 ID:KNzNhCgk0
 島のとある地域。家が建ち並ぶが、そのどれもが真っ当な状態ではない。
 ここは既に人が住むのを放棄された村。
 壁に穴が開き、屋根が朽ちた板葺きの家が続く。
 その中を我妻善逸は歩いていた。
 強い意志を鋭い目に宿し、引き締まった顔で。
 
 善逸には、この場の殺し合いに乗る気は無いし、異形の人喰い――鬼がいるのなら討伐するのは当然と思い、弱い人がいるなら守る気でいる。
 だが、それらよりりどうしても優先すべき事がある。
 例えこの場に始まりの鬼であり、全ての鬼を生み出した鬼舞辻無惨がいて、善逸がその鬼を討伐する鬼殺隊の一員であるとしても。
 他の鬼殺隊隊士、炭次郎達には人々を守り無惨を討つという彼らの為すべきことがあり、善逸には善逸自身のやるべきことがある。それは無惨の討伐より優先される事だ。
 それは兄弟子の獪岳に対し会い為すべき事を為すため。名簿の中に名がなく、この場にいないのなら、必ず生き残って脱出する。
 覚悟は既に決めている。だが――

「俺はやるべきことがある……でもさ! やっぱり怖い物は怖いんだよ! なにあの婆さん、あっさり殺して生き返らせたり、変な馬鹿でかい手だしたり!」
 叫び、地面に四つん這いになってうずくまる善逸。鬼との戦いならまだしも、首輪といい、人の蘇生といい、虚空から現れた巨大な手といい未知の超常現象ばかりで善逸はすっかり普段通り自信の無い状態になっている。
 愛用の日輪刀も没収され、支給品は善逸の見る限り、武器に使えそうもない物ばかりだったのもそれを助長していた。
 救いは炭治郎たち鬼殺隊の仲間がいる事だが、近くにいない以上善逸の不安と恐怖が薄れる事も無い。
「せっかく禰豆子ちゃん日の光に出られるようになったのに、こんな事ってある!? ダメだきっと死ぬんだ俺死ぬ前に結婚したかった、夢であってくれよ、起きた時禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたらもうすごい頑張るから! だから悪夢から覚めてくれーーッ!!」
 自身の叫び声が空しく消えていく最中、善逸の耳は後ろから歩いてくる人の音を聞き取った。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」
 善逸が声の向きに振り向いた先には、後ろはふわりと量がある髪を首筋辺りまで切り揃え、こめかみの部位は肩まで長い、金髪碧眼の美女がいた。

100眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg:2019/12/30(月) 17:14:09 ID:KNzNhCgk0
◇ ◇ ◇
 カチュア・ラストルグエヴァは、ぼろぼろに朽ち果てた集落の道を、支給品である地図とコンパスを手に歩いていた。
 来ている服はオレンジ色の両胸部分にポケットがあるそっけないデザインのシャツに、同じ色でやはりそっけないデザインのズボン。
 一見、作業服に見えるが左胸元には『LB0006』と番号が振られたプレートがある。
 これは作業服ではない、囚人服だ。
 カチュアは無期懲役の囚人である。それもただの犯罪者ではない。マスコミから『ワンナイトキラー』と渾名された、出会い系であった男を殺し続けた『殺人鬼』である。

「これは新しい実験……ってわけでもなさそうやなぁ」
 カチュアは周囲を眺め呟いた。
 ここは以前、男の死刑囚たちと殺し合いをさせられた時の廃村より、さらに萎びた村だ。

 実験。そう、カチュア・ラストルグエヴァはある実験の被検体である。
 それは、ミラーニューロンの共感性を応用し、後天的に実在した殺人鬼の人格を植え付けるというものだ。
 その実験が成功した人間は例外なく10代の女性であり、普通の女子が一晩で殺人鬼に豹変するその凄惨さからギリシャ神話の怪物に例えて変貌は『メデューサ症候群』、発症者は『メデューサ』と呼ばれる。
 カチュアもそのメデューサであり、性に奔放な『昼』の人格と、性欲とサディズムが融合した殺人鬼の『夜』の人格を合わせ持っている。

「コンパスからすると……南に小高い山があるっちゅうことは、ここはB-2地区か」
 カチュアは次に名簿を取り出してチェックする。
「千歌と小夜子がおるな。うわ、あの変態組長もわざわざ生き返らせてまで呼んだんか」
 甘城千歌、鬼ヶ原小夜子。
 二人は自分と同じ殺人鬼の人格を植え付けられ罪を犯したメデューサだ。
 カチュアが名前を見て心底うんざりした名前。天童組組長、水野智己。
 自分達メデューサ全員を相手取った筋肉達磨の猛者であり、男女問わずアナルにこだわる変態である。
 変態組長は千歌によって船のポールに串刺しにされて死んだはずだが、あの神子柴のことだ。殺し合いにはうってつけと判断して、生き返らせてまで参戦させたのだろう。
 人の蘇生という超常現象は未だカチュアの身になじまないが、実際目撃した以上信じるしかない。
「とりあえず山沿いに歩いて、羽黒刑務所目指すか」
 行動方針を決めた所で、支給品のチェックに入る。
「お、ラッキー♪」
 支給品の一つは、苦無のセットだった。ナイフでの刺突や投擲を主な戦法とするカチュアにはうってつけの武器である。
 もっとも人格が変貌しなければ意味がないが、今のカチュアは自分の『夜』の人格を知っている。
 おあつらえ向きにそのための薬と衣装まで入っている。

 支給品のチェックを続けようとした途中で、変な高音の叫び声が聞こえてきた。
 叫びの方向に行くと、そこでは黄色の黄物を羽織った少年が崩れるように両手両膝をついていた。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」


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