したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

悪魔憑きバトルロワイアル

1 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:38:35 ID:SMcTq7iQ0


【鬼滅の刃】〇竈門炭治郎〇我妻善逸〇嘴平伊之助〇不死川玄也〇時任無一郎〇宇髄天元●塁に切り刻まれた隊士〇鬼舞辻無惨〇妓夫太郎/堕姫〇猗窩座〇黒死牟 10/11

【彼岸島】〇宮本明〇宮本篤〇青山龍ノ介(師匠)〇西山正一(若しくは徹)〇山本勝次〇鮫島(兄)〇斧神〇金剛様〇雅 9/9

【魔法少女まどか☆マギカシリーズ】 〇鹿目まどか〇暁美ほむら〇巴マミ〇佐倉杏子〇アリナ・グレイ〇御園かりん〇環いろは〇七海やちよ〇双葉さな 9/9

【ジョジョの奇妙な冒険】 〇ジョナサン・ジョースター〇ロバート・E・O・スピードワゴン〇ディオ・ブランドー〇ジョセフ・ジョースター〇ルドルフォン・シュトロハイム〇カーズ〇エシディシ〇空条承太郎〇花京院典明 9/9

【サタノファニ】 〇甘城千歌〇鬼ヶ原小夜子〇カチュア・ラストルグエヴァ〇坂上和成〇フロイド・キング〇水野智己〇神崎京子 7/7

【血と灰の女王】 〇ドミノ・サザーランド〇佐神善〇狩野京児〇七原健〇堂島正〇加納クレタ〇芭藤哲也 7/7

【神尾ゆいは髪を結い】〇園宮鍵人〇神緒ゆい〇淡魂ほのか〇松蔵院カーラ〇橘城アヤ子〇あしゅら寺あす香 6/6

【HELLSING】 〇アーカード〇アレクサンド・アンデルセン〇セラス・ヴィクトリア〇ウォルター・C・ドルネーズ〇ピップ・ベルナドット 5/5

【ベルセルク】 〇ガッツ〇グリフィス〇キャスカ〇ゾッド〇ファルネーゼ 5/5

【チェンソーマン】〇デンジ〇早川アキ〇パワー〇サムライソード 4/4

【デビルマンG】〇不動アキラ〇雷沼ツバサ(シレーヌ)〇魔鬼邑 ミキ 3/3

74(5)名


書き手枠
〇/〇/〇/〇/〇/〇


地図
ttps://imgur.com/a/kGk7xTG

2 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:41:57 ID:SMcTq7iQ0

>>1
神結いの漢字間違えてた
神尾ゆいは髪を結い→神緒ゆいは髪を結い

施設

・基本的にその名の通りです。現地からなにか調達はできるかもしれません。

・国会議事堂には主催本部のトレードマークとして神子柴の顔が載った旗が立てられています。
また、参加者が踏み込むと首輪の警告音があり、施設内には色々な仕掛けがあります。遠距離からの攻撃は全部無効化します。

・港には豪華客船があり、対面の港まで移動できます(移動時間は10分ほど)。ただし、陸地についてから10分以内に降りなければ首輪が爆発します。


基本ルール
〇最後の一人になるまでの殺し合い
〇参加者には首輪が付けられており、爆発すると人外でも死亡する。禁止エリアに踏み込み一定時間が経過するか、強い衝撃を与えることで爆発する。
〇優勝者には如何なる願いも叶える権利を与えられる。
〇一日以上脱落者が出ない、あるいは二日かけても優勝者が出ない場合は全員の首輪が爆発しゲーム終了。



持ち物
・参加者が予め持っている武器は没収される。ガッツや宮本明のように義手や義足持ちの参戦時期のキャラは武装している場合はそれだけを没収され、義手はそのまま。
・なんでも入るデイバックと1日分の食糧と水、名簿・ルールなどの基本情報が記載された用紙、鉛筆や消しゴムなどの文房具一式、参戦作若しくは現実の支給品がランダムに1〜3個支給される。

・禁止エリアは放送ごとにランダムに三つ指定される。



制限一覧(大まかに。後で付け足すかもしれません)。基本は原作に準拠。

【鬼滅の刃】
・無惨の呪いは解除されており、無惨は他の鬼とのリンクが途切れている。その為、無惨が死んでも他の鬼は消えない。

【彼岸島】
・特になし

【ジョジョの奇妙な冒険】
・非スタンド使いはスタンドの可視化及び干渉可能。
・スタンドDISCは原作に登場したもの以外使用不可。

【魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
・魔女化した場合、首輪は魔女にもつけられる。また、首輪が爆発すればソウルジェムが無事でも死亡する。
・魔女化からの参戦不可。
・ドッペルは使用不可。

【ベルセルク】
・特になし

【HELLSING】
・アーカードの命のストックは一から開始。

【血と灰の女王】
・夜にしか殺しあえない誓約の解除。ただし、変身は夜のみ可能。

【サタノファニ】
・特になし。メデューサに代わる為の薬は支給品だけでなく現地調達も可能。

【チェンソーマン】
・特になし。

【神緒ゆいは髪を結い】
・特になし

【デビルマンG】
・巨大化のサイズ制限。あと強いて言うなら大規模破壊の威力弱体化

3 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:42:49 ID:SMcTq7iQ0
【悪魔憑き】憑依の一種で、心身を悪魔に乗っとられたかのごとく周囲に害悪を及ぼす行動、またはそのような行動をとる人のこと。

4 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:44:06 ID:SMcTq7iQ0



(...ここはどこだ?)

突然の覚醒に堂島正は困惑する。
眠っていた覚えはない。疲れていた気配もない。
ただ、気が付けばいつの間にか目が覚めていた、という奇妙な感覚だけがそこにあった。

いや、奇妙なのはそれだけではない。
彼の周囲に人の気配がある。あるのだが、手を伸ばしても触れられず、目を凝らしても黒い靄が蠢いて見えるだけ。
声をかけてみるが、返ってくるのはノイズ染みた雑音だけ。
あちらの靄もこちらへと接触を図ろうとしているのだろうか。となれば、あちら側も自分と似たような状況なのだろうと推測する。

「刮目せよ、皆の衆」

突如響く、しわがれた老婆の声。
パッ、と照明が点いたと思えば、浮かび上がるのは壇上に佇む一人の老婆。

「わしの名は神子柴。覚え辛ければオババでもよいぞ。突然の収集に困惑しておる者もおるじゃろう。諸君らにはこれよりある催しに参加してもらう」

神子柴と名乗る老婆はコホン、と咳払いと共に言葉を切り、再び口を開いた。

「バトルロワイアル―――最後の一人になるまでの殺し合いじゃ」

殺し合い。その平穏とは無縁な単語に、堂島は―――動揺などはしなかった。それは周りにも当てはまることのようで、大げさに蠢いた靄は数少ない。

「ふむ。流石は幾多の戦を経験してきた者たちなだけはある。これなら落ち着かせる手間も省けるというものじゃ」

では、と言葉を切り神子柴は続ける。

「これよりそなたらにはとある孤島に向かってもらう。その孤島で己を守り、他者を殺し最後まで生き残る。そんな簡単なゲームじゃ」

他者を殺せ。その行為をあっけらかんと指示する神子柴に舌打ちをするも、しかし下手に逆らうべきではないと判断し耳を傾ける。

5 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:44:52 ID:SMcTq7iQ0

「基本的にルール違反などはない。縛りがあるとすれば、その首輪くらいじゃ」

首輪。その単語に反応し、そっと己の首に触れてみる。ひやりとした感触に、これは確かに首輪であると認識し、さらに耳を傾ける。

「その首輪はある条件で爆発することになっておる。ひとつは、禁止エリアに踏み込んだ時。ひとつは強い衝撃を与えた時。そして」
「そこまでにしとけ婆」

神子柴の声を遮り、黒服に身を包んだ青年が舞台袖から現れる。

「鴉に案内されて道を辿りゃあ丁度いい抜け道がありやがった。こんなヨボヨボの婆なら俺でも勝てるぜ」

やけに自信ありげな青年の物腰に、神子柴は言葉を止め、堂島含む靄たちが青年の挙動を見守っていた。

「俺はこんな面倒ごとに巻き込まれたくないんだよ。状況はよくわからねーが、とりあえず俺はてめえを仕留めて帰還するぜ」

青年は腰に下げていた刀を低く構え、神子柴へと斬りかかる。

「最後の一つは」

刀が振り下ろされると同時、神子柴が笑みを浮かべた。その瞬間

ボンッ

小気味よい音と共に首輪が爆発し、青年の首と胴が分かれ地に落ちた。

「...ワシに明確に逆らうこと。以上三点が首輪の爆発する条件じゃ」

鮮血に沈む青年の姿に堂島は息を飲み、神子柴は見向きもしなかった。

「...さて。一通りのルール説明は終わったかの。詳細はこれより配る鞄に入っておる用紙に記載されておる。わからないことがあれば読むといい」

堂島は考える。
先ほどの爆発は決して大規模なものではなかった。あれを見たままの威力で受けようとも、自分のような者に対してはあまり効果を為さない。
果たしてあの老婆はそんなもので自分を縛り付けられると思っているのか。

「断っておくが、限りなく不死身に近いからと首輪を弄るのはおすすめせんぞ。もしも爆発すれば如何な怪異とてひとたまりもないからのう」

思考を読んだかのように告げられた神子柴の言葉に、堂島は思わず歯噛みする。

6 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:46:46 ID:SMcTq7iQ0


(当然と言えば当然か...私を連れてきて殺し合いをさせるんだ。私のような存在を把握していないと考える方が難しい)

現状、自分たちは神子柴に命を握られている状況である。それは理解した。

(ただの殺し合いならいいが、まず間違いなくこの催しは私の『正義』に反することになる。どうにか足掻きたいものだが、さてどうするか...)

再び、堂島の思案を読んだかのようなタイミングで、神子柴が笑みを浮かべる。

「無論、殺し合いで優勝した者には褒美を与える。金銀財宝、不老不死、望む者の蘇生...如何なる願いも一つだけ叶える権利じゃ」

神子柴の語った褒美。それに対し、微かに堂島の周囲の靄が反応を示した気がした。

「とはいえ超常現象、ましてや死者の蘇生など信じられぬ者もいよう。然らば見せてしんぜよう。人命すら操るこの奇跡を!」

宣言と同時に神子柴が口元を掌で隠す。するとどうだろうか。
血だまりに沈んだ青年の身体と頭部が光に包まれ、瞬く間に元の身体に戻ったではないか。

「これが人体蘇生の奇跡じゃ。どうじゃ?お主らも一人や二人、再び会いたい者がいるのではないか?」

ズキリ、と堂島の胸が痛む。
かつて、彼には息子がいた。火砕流に家ごと飲まれ死んでしまった愛しい息子が。
その顔がよぎり、彼の『正義』の文字が微かに揺らぐ。

「ほれ。そなたもワシの力がわかったじゃろう。そのまま大人しく引き下がるがよい」

蘇り、意識を取り戻した青年は己の首元をペタペタと触っていた。
そして、神子柴の言葉通り、背を向け檀上から降りようとする―――が。

「馬鹿が!首輪がなけりゃあ殺しあう必要なんざねえんだよ!」

振り返り、凶悪な笑みを浮かべ、再び老婆へと斬りかかる青年。
そう。今この場で蘇らせられた青年には首輪が無かった。故に、彼は臆せず斬りかかれたのだ。

「ウオラァ!」

気合一徹、振り下ろされる刀。

バ ァ ン

その刀ごと、青年は頭上からの巨大な掌に潰された。

7 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:48:09 ID:SMcTq7iQ0

「馬鹿はお主じゃ。ワシが何の対策も打たぬはずがなかろうて」

巨腕はぬちゃり、と音を立て血だまりから離れ、神子柴の周囲を覆うように留まった。

(あれはああいう技なのか?それとも協力者がいるのか?いや、なんにせよだ)

あの破壊力とスピード、真っ当に太刀打ちするのは困難だ。
それに、あの口ぶりからして神子柴が用意したのはあの巨腕だけではないのだろう。
それらで足止めを食えば、その隙に首輪を爆発されるのは目に見えている。

(...やはり、従うしかないのか?)
「さて。それでは殺し合いを」

開始する。
その言葉は、突如爆発した巨腕の轟音で掻き消された。

「くっ、なんじゃ?」

立ち上がる砂ぼこりに咳込みつつも、老婆は目を見開き砂塵を見据える。
その中をかき分け、老婆目掛けて飛来する、刃渡りの欠けた刃。
神子柴は咄嗟に飛びのきそれをそれを回避した。

「チッ、外したか!」

ターバンのように頭に巻かれた布地に、宝石のような光物を多く付けた、絢爛豪華、端的に言えば『派手』な男は舌打ちと共に漏らした。

「まだ逆らう者が...ならば貴様も」

ヌッ

神子柴の飛びのいた先に、巨大な丸太が現れ、彼女目掛けて振り下ろされる。

パ ァ ン

丸太が神子柴を潰さんと迫るその寸前、巨腕とは別の何かが彼女を弾き飛ばし、丸太の射線上から逃れた。

「くっ、やはり太郎か!」

丸太を振り下ろした、フードを被った丸メガネの青年は悔しさを露わにした。

8 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:50:05 ID:SMcTq7iQ0

「なぜ大人しく受け入れん...まだ見せしめが足りんようじゃな!」

吹き飛ばされた先で、神子柴は怒りに顔を歪めた。

―――好機!

神子柴は空中へ投げ出され、不意打ちをかけた二人に意識が集中している。

堂島は駆け出しながら変身し、その周囲の靄もほぼ同時に動き出していた。



―――水の呼吸 漆ノ型

―――霞の呼吸 壱の型

―――月の呼吸 弐の型

―――血鬼術 黒血――

―――ガアアアア!!

―――ウオオオオ!!

―――なんだかわからんけどとにかくチャンス!うりゃああああああ!!

―――シイ イ ィ ィィィッッッ!!!

―――ティロ―――

―――女ァァァァァ!!

―――震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!!!

―――スタープラチナ!

―――ハイエロファントグリーン!

―――あの舐め腐ったババアを殺すのはワシじゃあ!!

―――シィッ!

―――邪魔者よ...ここで死ね


意思疎通をしたわけでもない。互いの声が、姿が認識できたわけでもない。
他者のため、あるいは自分のため、殺し合いが起きる前に動いただけだ。
その結果―――彼らの怒りは、殺意は、欲望は、空舞う老婆へと集中した!

(斬る!このまま―――)

堂島の振るう剣が老婆の首元へと迫ったその瞬間―――老婆は、笑った。



ベ ん ッ

9 OP ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:53:07 ID:SMcTq7iQ0


どこからか琵琶の音が鳴り、足元が浮遊感に包まれる。
堂島の剣は、周囲に集まっていた靄は、老婆の首に届くことなく離されていく。


「貴様らが幾ら足掻こうと無駄じゃ!逃れることなどできはせぬ!」

落ちていく自分たちとは対照に、神子柴は長く伸びた舌に攫われ上昇していく。

「再びワシに相まみえたくば勝ち残れ...勝者のみが、その権利を有する!バトルロワイアル、これより開始じゃ!」

―――ベん

(ハッハッハッ...悪辣が過ぎるなこれは)

琵琶の音が尚も鳴り響き、眼前に現れた襖が音に合わせて閉じていく。

落ちていく身体と共に、堂島の瞼も徐々に落ちていく。

――――ベん ベん 

薄れゆく意識の中、堂島は誓う。

――――べん べん べん べん べん べん べん

もしも自分があの老婆の前に立てた時、必ず斬ろうと。



――――べべん



そして、殺し合いは始まった。



【塁に切り刻まれた隊士@鬼滅の刃 死亡】



主催陣営

【神子柴@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
【太郎@彼岸島】
【鳴女@鬼滅の刃】


※各々の武器はOPではそのまま持っていましたが、会場に飛ばされた際に回収されました。
※現状、参加者に姿や声を確認されたのは神子柴と舞台上にいた宇髄天元・宮本篤・塁に切り刻まれた隊士だけです。

10 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 17:54:08 ID:SMcTq7iQ0
投下終了です。
なにか質問があればお願いします
予約解禁は明日の零時からです

11 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 18:25:46 ID:SMcTq7iQ0
制限に書き忘れてましたが
妓夫太郎/堕姫はどっちかの首輪が爆発して死んだ場合は二人とも死にます。

12 名無しさん :2019/12/13(金) 20:35:40 ID:dGQQOuro0
企画建て乙です
好みの名簿なので応援します
確認と質問なのですが、双葉さなでなく二葉さなかと思われます
また彼女の能力である「魔法少女以外には見えない」はスタンドと違って制限の対象外でしょうか?
あるいは書き手に委ねる方向で?

13 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 21:14:02 ID:SMcTq7iQ0
>>12
うっかりしてました、ありがとうございます
双葉ではなく二葉さなですね

さなの「魔法少女以外に見えない」は制限されて通常時は他の参加者からも見えます。
魔法を使って透明になることはできますが、通常よりもかなり魔力を消費するため長時間は使えないという形でお願いします。

14 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/13(金) 23:49:04 ID:SMcTq7iQ0
予約期限は1週間、延長で+5日間です。もう少し時間をかけたい場合はその都度延長の申請をお願いします

ttps://w.atwiki.jp/20191213/
こちらがまとめwikiになります

15 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 00:00:20 ID:88WInKFQ0
鮫島を予約します

16 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 01:07:36 ID:88WInKFQ0
投下します

17 チュートリアル ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 01:08:50 ID:88WInKFQ0
オ オ オ オ ォ ォ

旋風が吹き、バサッ、バサッ、と旗が靡き、旗の描かれた神子柴がこちらを見下すように笑みを浮かべている。

「クソッタレババアめ...こんなくだらねえこと考えた挙句クソみてぇな旗を立てやがって...」

眼帯を付けた偉丈夫、鮫島は、つい先ほどの惨劇を引き起こした元凶を忌々し気に睨みつける。

「帰しやがれ!俺ァてめえに構っているほど暇じゃねえんだ!」

怒りの叫びをぶつけるが、しかし当然ながら返答は無し。
このまま案山子のように立ち尽くしていても仕方ないと、鮫島はその巨大な身体を物陰に隠しつつ配られたデイバックを探り始めた。

「えーっと、飯に水に文房具に...おっ」

手に当たる固い感触に、鮫島は思わず頬を綻ばせる。
この感触、間違いない。武器だ。それも、鮫島の腕力を存分に活かせる鈍器の類だ。

「ハッ、ちょうどいい。武器がなくて心許ないところだったんだ」

フンッ、と勢いよく腕を引き抜くと、その勢いのまま鮫島の身体に乗しかかった。

「うおおおっ!」

すぐさま押しのけた鮫島は、デイバックから引き抜いたソレの正体を確認する。
棺桶だ。鮫島の巨体さえ入れそうな大きな棺桶だ。

「チッ、期待させやがってこのクソ桶が。まあ、こんなんでもないよりはマシか」

舌打ちし、棺桶に一度蹴りを入れつつも、これしかないのでは仕方ないと鮫島は棺桶を背負う。

「まあ重さもそこそこあるしバットの代わりくらいにはなるだろ。しかしワケがわからねえな、この鞄」

棺桶は到底デイバックに収まるサイズではない。にも関わらず、こうして棺桶は収納されていた。
疑問は尽きないが、使えるものは使うしかないだろうと頭を切り替え、再びデイバックを漁る。
取り出したのは2枚の紙だった。

18 チュートリアル ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 01:10:36 ID:88WInKFQ0

「こいつは名簿と地図か?えーっと...なっ!」

鮫島は思わず息を飲んだ。名簿には己を除く、よく知る名が連ねられていたからだ。

「明に勝次!それに雅に...金剛...!?」

宮本明と山本勝次。
二人は彼よりも若いが、共に頼れる仲間たちだ。ただ、勝次は姑獲鳥に捕まっていた筈だが...これは幸運だと捉えるべきだろうか。
雅。
日本を壊滅状態に追い込んだ元凶にして、最強の吸血鬼、そして鮫島の弟でもある精二の仇でもある男だ。
金剛。
雅の側近の一人であり、吸血鬼の中でもより強い混血種、アマルガム。だが、彼は確かに明が倒した。小さい方も勝次と協力して倒したはずだが...

「そういやあのババア、死んだ奴を生き返らせてたな。てことは他にも生き返った参加者もいるかもしれねェのか」

俄かには信じ難いが、現にこの目で見てしまったのだ。金剛がこの名簿に乗っているのもそういうものだと納得せざるを得ないだろう。
だとすれば、だ。

これまでに明が倒してきた強敵たちも他に載っているかもしれない。

「ヤベェ!急いで明たちと合流しねェと!」

鮫島は何処か合流の目途が立ちやすい場所はないかと、慌てて地図に目を通す。

「俺のいるところは...は?マジかよ!!」

くるり、と振り返り眼前の建物を確認する。
国会議事堂。地図上のそれには、確かに主催本部と記載されていた。

「ツイてやがる。まさかいきなり黒幕の近くに飛ばされてたなんてな」

ハァ、ハァ、と息が荒くなる。

「殺し合いなんざする必要はねえ。今すぐてめえの頭をカチ割って終わらせてやるよクソババア」

鮫島は隠れることなく、堂々と正面から歩いていく。

19 チュートリアル ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 01:11:21 ID:88WInKFQ0

ピーッ ピーッ

『警告します。あなたは危険地域に踏み込んでいます』

鮫島の首輪からアラームが鳴り響き、次いでアナウンスが流れる。

「ウソッ、警告!!」

慌ててもとの道を引き返せば、アラームとアナウンスはピタリと止んだ。

「クソッタレめ、これじゃあ近づけもしやしねえ」

憎々しげに神子柴の旗を見つめる鮫島だが、その傍らで今後の方針を冷静に考えていた。

(ロクに近づけねェとなれば遠距離しかねえな。ダイナマイトかなんかがありゃあいいんだが...)


生憎、自分のデイバックには遠距離攻撃の類が出来る代物は無かったが、他の参加者ならばそれに近いものを持っているかもしれない。
それに、自分ひとりではなにも思いつかないとも、協力者がいればなにか活路が見いだせるかもしれない。

(明たちもそうだが、あの時ババアに斬りかかった二人とも手を組めそうだ)

神子柴へと斬りかかった二人は、誰にも悟られず神子柴に近づけたその隠密性もさることながら、一挙一動足からしてかなりの達人だと見受けられた。
ともすれば、己が知る中で最強である宮本明と遜色ないのではと思えるほどに。
彼らは彼らで間違いなく神子柴に不満を持っているため、協力は容易だろう。

「そうと決まりゃあまずは仲間探しだ。待ってろよ明に勝次。俺ァ探すの上手ェからよ、すぐに見つけ出してやるぜ」

武器である棺桶を背負い直し、鮫島は決意を新たに駆け出した。



【D-4/1日目・深夜】

【鮫島(兄)@彼岸島】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 アーカードの棺桶@HELLSING
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出
1:明と勝次を探す。ついでに本部に攻撃を仕掛ける為にダイナマイトやバズーカのようなものを探す。
2:派手な男とフードの男はできれば味方につけたい
3:雅は殺す。

参戦時期はゆかぽんと知り合った時くらいです。

20 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/14(土) 01:13:31 ID:88WInKFQ0
投下終了です。
あと、西山の名前が徹か正一かは、最初に書いた書き手の方に従います。

竈門炭治郎、堂島正を予約します

21 名無しさん :2019/12/14(土) 03:15:24 ID:QBbHn7t20
新ロワ&投下乙です
ハゲの台詞と行動が先生ェの絵で勝手に脳内再生されるからチクショウ!
旦那の棺はその内外伝みたいに手足が生えて来そう(こなみ)

22 ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/14(土) 06:35:39 ID:97ZODZcY0
お、丁度いいくらいのロワが立ってるじゃねぇか
こんな名簿のロワなら俺でも予約できるぜ

というわけでスレ立て乙です
雅@彼岸島 デンジ@チェンソーマン パワー@チェンソーマン
予約します

23 ◆/wJ/Apndog :2019/12/14(土) 13:13:56 ID:SBpBgRDM0
>>1
立て乙です
国会議事堂にクソみてぇな旗立てやがってチクショウ!!

佐倉杏子
スピードワゴン
書き手枠

予約します

24 名無しさん :2019/12/14(土) 18:53:07 ID:kNqic1E20
新ロワ乙です
違和感無く主を鞍替えしてる鳴女ちゃん
そりゃあっさり切り捨てられたらもう無惨様に従いたくないよね

25 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/15(日) 23:58:55 ID:ZMvYnegM0
予約と感想ありがとうございます

>>20の予約に御園かりんとゾッドを追加します

26 名無しさん :2019/12/16(月) 09:02:25 ID:s6auRy.M0
書き手枠は参戦作品外からキャラ連れてくるのは有りでしょうか?

27 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/16(月) 18:07:00 ID:We/ULrH20
>>26
書き手枠は参戦作品内からお願いします

28 ◆yliPrzUV3E :2019/12/17(火) 02:37:53 ID:hz/F6s3g0
黒死牟、坂上和成 予約します

29 ◆PxtkrnEdFo :2019/12/17(火) 14:54:31 ID:HKdOwK1I0
アリナ・グレイ、不死川玄也予約します

30 名無しさん :2019/12/17(火) 17:22:45 ID:mZXQHTJA0
質問なのですが、名簿に書き手枠は記載されてる扱いなのでしょうか?

31 ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 17:38:09 ID:mZXQHTJA0
書き手枠で予約します

32 ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 19:07:21 ID:mZXQHTJA0
投下します

33 コイントス ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 19:08:28 ID:mZXQHTJA0
とある世界にて、ここと似たような殺し合いゲームが行われた。
その殺し合いの参加者は中学生42人だったのだが、この内12人を殺した恐るべき殺人鬼がいた。
その殺人鬼は、何故殺し合いに乗ったのか。
それは…


―そこで俺はコインを投げたんだ。表が出たら坂持と戦う、そして

―裏が出たら、このゲームに乗ると


コイントスである。
その男は、コインを投げて裏が出たというただそれだけの理由で殺し合いに乗り、12人もの参加者を殺してのけたのである。

34 コイントス ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 19:09:05 ID:mZXQHTJA0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

さて、ここに一人の少女がいる。
その少女の名は、栗花落カナヲ。
彼女は、上記の男と似ていた。
両親の虐待を受けた末に苦しみから逃れるために心を閉ざし。
全てがどうでもいいから何も決められない。
故に、指示を受けた時以外で行動をする時は、義姉からもらったコインを投げて決める。
栗花落カナヲは、そんな少女だ。

そんな彼女は、デイバックの中に当然のごとく入っていたコインを取り出す。
殺人鬼と同じように殺し合いに乗るかどうかを決めるのか?
いや、そうではない。
彼女にとって、そんなことはコインなどで決めるものではないからだ。

栗花落カナヲ。
彼女は、鬼殺隊の一員である。
そして鬼殺隊の使命は、その名の通り鬼を殺し、人々を守ることであり、それは彼女の中にもしっかり根付いている。
それに、カナヲは義姉である胡蝶しのぶや今は亡き胡蝶カナエから温かな愛情と教育を受けており、上記の殺人鬼のように善悪や倫理観が崩壊しきっているわけではない。
そんな彼女が、殺し合いに乗って人を殺しまわるなどということを、そもそも選択肢に入れるはずがないのだ。
では、いったい彼女が何のためにコインを取り出したかと言えば、

「どっちに行くか、これで決める」

35 コイントス ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 19:09:49 ID:mZXQHTJA0
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇

さて、現在カナヲがいるのはE-4北東部。
つまりはこの殺し合い会場のほぼ真ん中である。
ここから東西南北どちらに進むかを決める必要がある。
コインの裏表だけで決められるものなのか?と思うものもいるだろうが、問題ない。
これが3択とか5択なら難しかったかもしれないが、4択なら簡単な方法がある。
それは、「コインを2回投げる」ことである。
これならば、【2回とも表】、【2回とも裏】、【1回目表2回目裏】、【1回目裏2回目表】で4択になる。
今回カナヲは、下記のルールで行き先を決めることにした。

2回とも表→北
2回とも裏→南
1回目表2回目裏→西
1回目裏2回目表→東

そして、カナヲはコインを投げる。
指で弾かれ宙を舞い、そして彼女の手の中に戻ったコインが示した結果は…


「…西に行く」

【E-4北東/1日目・深夜】

【栗花落カナヲ@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 カナヲのコイン@鬼滅の刃
[行動方針]
基本方針:コインで決める(殺し合いには乗らない)
1:西へ進む

※参戦時期は53話の炭治郎との会話より前です。

36 ◆OmtW54r7Tc :2019/12/17(火) 19:10:20 ID:mZXQHTJA0
投下終了です

37 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/18(水) 00:07:35 ID:syPMvOIc0
>>30
書き手枠のキャラは名簿には記載されておらず、後で放送で口頭での紹介だけされます。

>>36

投下乙です
カナヲちゃん来た!これで炭治郎の同期が五人揃った!そういえばこのロワでの鬼殺隊は派手柱以外は皆若いや。
ただ、対主催とはいえ参戦時期が参戦時期なだけに同行者に恵まれてほしいところ。
オヤジとかフロイドとかと単独で出くわしたら大変なことになりそう(小並)

あと>>1の名簿の時透くんの名前を誤字してました。すみません。
×時任→〇時透

38 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:41:57 ID:nw1JLFF60
>>1
玄弥の漢字を間違えていました。すみません。
×玄也→〇玄弥

投下します

39 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:43:50 ID:nw1JLFF60
「そうか...かりんも知り合いが巻き込まれてるんだな」
「そうなの。アリナ先輩も連れてこられてるみたいなの。炭治郎もなの?」
「うん。神子柴に爆弾を投げて斬りかかった人がいただろう?あの人も俺の知り合いなんだ」
「あのきらきら筋肉男?」
(きらきら筋肉...宇髄さんのことか)


月光に照らされる路上に、少年少女の影が浮かんでいる。
竈門炭治郎と御園かりん。
この殺し合いで、互いに初めて会った者同士、行動を共にしていた。

かりんはこの殺し合いに恐怖を覚えていた。がたがたと、無意味に建物の隅で震え続けていたほどに。
彼女は魔法少女としてそれなりの修羅場は経験してきたが、それはあくまでも魔女という人外相手にだけ。
対人関係に関しての命のやり取りは皆無に等しい。
それも、魔法少女としてあまり強い部類ではない彼女だ。恐怖するのも無理はないといえよう。

そんな中、炭治郎と出会えたのは幸運だった。
彼がゲームに乗っておらず、彼女を気遣い優しく宥めてくれたお陰で、気持ちもどうにか落ち着かせることができた。
そしてようやく彼女は名簿に目を通し、知人もまた巻き込まれているのを知った。

七海やちよ。
かりんと同じく神浜市の魔法少女であり、7年の経験を有する超ベテランだ。
彼女とはグリーフシードの扱いにおいてひと悶着あり、険悪ではないものの苦手な人物だが、少なくとも言われたことは正しかったし、悪い人間ではないため合流しておくべきだ。

そして、アリナ・グレイ。
彼女もまた魔法少女であり、かりんの中学校の先輩でもある。
彼女は芸術思考の高い人間であり、良く言えば唯我独尊、悪く言えば自己中心的。傍から見れば、作品こそ素晴らしいものの、人格面に問題ありの狂人と烙印を押されることだろう。
けれどかりんは知っている。彼女が落書きと吐き捨てる絵を持ち込まれても、厳しい意見と共に納得も出来る評論を下してくれることを。
何度持ち込まれても、ただ見もせずに突っぱねることだけはあまりしなかったこと。
そして、なにより『怪盗少女マジカルきりん』を読み命の尊さを知ってくれていることを。

そう。誰に何を言われようとも、かりんにとってのアリナ・グレイは揺るがない。
例え世界がアリナを侮蔑の目で見ても、かりんはアリナを信じ続けるだろう。

絶対にアリナを死なせない―――かりんはこの殺し合いにおいてようやく前を向けるようになった。

40 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:44:31 ID:nw1JLFF60

一方の炭治郎もまた、かりんと出会えて幸運だと感じていた。
彼は全てに怒っていた。普段の彼らしくもなく、一目で怒っているとわかるほどに怒りの形相を浮かべていた。
こんな催しを開いた神子柴に。この会場に漂う血と怨念の匂いに。あの時、なにもできなかった自分に。
あのセレモニーで、どこかで見たことのある気がする鬼殺隊の青年が死んだ。
彼は無残にも首輪で爆死させられたが、しかし蘇生された後も勇敢に斬りかかってみせた。
その刃こそ届かなかったものの、死してなおこの殺し合いを止めたいという想いがあったのだろう。

宇髄と丸メガネの男もそうだ。
鬼殺隊の青年より遅れての到着ではあったが、彼らも己の命すら厭わず殺し合いを止めようとしていた。
それなのに自分はなんだ。
状況の把握で行動が遅れ、神子柴が隙を見せてようやく動くことができた。
判断が遅い。もしも自分も真っ先に檀上に上がれていたら、宇髄達よりも先に攻撃出来ていたら、彼らが神子柴を討ち、こんな催しも始まらずに済んだかもしれない。

ここに至るまでの全てが許せず、思考も冷静で無くなっていた。
そんな折に鼻孔をついたのが、建物の隅から漂ってきたかりんの恐怖の匂いだった。
炭治郎は鼻が利く。匂いを嗅げれば、その人がどういう感情なのかがある程度わかる。
その恐怖の匂いを嗅いだ時、一般市民までも巻き込んだのかと炭治郎の怒りは更に高まったが、一方でなんとしても守らねばとも思った。
それから一拍置き、『でもこんなに怒った人がいたらもっと怖がらせるんじゃないか』と彼の中の理性が働き、まずは自分が落ち着くように呼吸を整え、頭を冷やしてから彼女に接触することができた。

その甲斐もあり、こうしてかりんと和やかに接する時間が作れたのだった。

(かりんのお陰で名簿を確認できる余裕ができてよかった。ここにいるのは宇髄さんだけじゃない。善逸に伊之助、玄弥に時透君もいる。それに...鬼も)

この会場には鬼殺隊の面々が自分以外にも呼ばれている。
善逸はきっと寂しがっているだろうな、伊之助は無暗に強さを見せびらかしていないといいけれどと心配はするものの、誰も殺し合いには賛同していないのは確信していた。
一刻も早く合流し、共に剣を並べたいと思う。

そして、鬼舞辻無惨率いる『鬼』。

彼らの討伐は鬼殺隊の悲願であり存在理由だ。
例え己の五体が砕けようとも鬼を斬り悲しみの連鎖を断ち切る。それが、数多の隊士の共通の想いだ。
恐らく鬼たちはこの殺し合いでも人を殺すだろう。必ず倒さねばならない。

ある程度の方針が定まった二人は、荷物を纏め立ち上がり、歩き出す。
不安にならないように声を掛け合いつつ、しかし目立たぬように声を潜めつつ。

そんな折だった。

41 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:46:04 ID:nw1JLFF60
「―――っ!」

炭治郎の鼻をつく、強烈な異臭。
近づいてくる。
何者だ。
いや、覚えがある。
今まで嗅いできた、血と臓物の臭い。

これは

(―――鬼)

「貴様らもこの宴の贄か」

現れたのは、炭治郎の知る鬼、鬼舞辻無惨はおろか、妓夫太郎でも猗窩座でもなく。
しかし、彼らと遜色ない気配を放つ巨漢だった。

炭治郎は咄嗟に刀を構え、かりんを己の背に隠す。

「小僧。貴様は中々の手練れのようだな。そこの小娘とは面構えが違う」

男は炭治郎を見下ろし、愉悦に顔を歪める。

「ひとつ手合わせを願おうか。我が名はゾッド。不死者(ノスフェラトゥ)の通り名で呼ばれている」

男と視線が交差した瞬間、炭治郎は理解した。この男に、言葉は通用しないと。

「俺は鬼殺隊の一人、竈門炭治郎。...かりん。離れるんだ。俺がこいつを食い止めているうちに」

炭治郎は匂いで感じ取っていた。
この男は強い。少なくとも自分の知る柱の面々に匹敵し得るほどに。
戦えば、間違いなく自分はただでは済まないだろう。なんとしてもかりんだけでも逃がさねばならない。

「見くびるな小僧」

だがしかし、返答は今までの大人しめなものではなく。
今までとはうってちがい、強い語気だった。

「我はハロウィンが生んだ魔法少女、マジカルかりん。弱者の為に戦うのは我の役目!下がるのは貴様なのだ小僧!」
「駄目だかりん!その男は―――」

ずい、と前へと進み出たかりんに炭治郎は呼び止めようとするも憚られる。
変わっていた。かりんの姿は、いつの間にか摩訶不思議な衣装に包まれていたのだ。

(えっ?)

困惑する炭治郎を他所にゾッドはかりんへと目を向ける。

「その衣装...貴様、魔女か」
「魔女ではない。魔法少女だ!怪盗だがな」
「前線に出てくるのなら女子供といえど容赦はせんぞ」
「貴様こそ我が魔鎌、ジャックデスサイズの錆にしてやろう。それが嫌ならお菓子を渡して立ち去るがいい」
「よくぞ吼えた。ならばこれ以上の言葉は無粋!いざ、尋常に!」

ゾッドが駆け出し、炭治郎とかりんは覚悟を決める。

(恐いの...でも、私だって魔法少女なの。炭治郎を見捨てることなんてできないの!)
(かりんは強がっているだけだ!けど彼女を逃がしている暇はない!俺がどうにか彼女を助けつつ、ゾッドを倒す!)


ゾッドの刀と炭治郎の刀が交差し、戦いは始まった。

42 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:46:44 ID:nw1JLFF60



響き渡る金属音。
それは一度で終わらず、ゾッドが剣を振るう度に鳴り響き、早さを増していく剣劇はまるで小さな竜巻かの如く余波を広げていく。

「わわわっ」

その余波に押され、後退をよぎなくされるかりん。
一方の炭治郎は、ただひたすらにゾッドの剣風を捌きどうにか耐えていた。


やがて始まる鍔迫り合い。
技術のみならず、純粋な力も大きく左右するこの状況に、ゾッドはホゥ、と小さく感嘆の声を漏らし、炭治郎は汗を流しながら歯を食いしばる。

「やはり貴様は筋がいい。我が剣をよくぞここまで受けられたものだ」
(くあああああ!重い!手が震えて仕方ない!俺は守りに専念してやっとなのに相手はまだ余裕だ!それにこの男の刀は...!)

炭治郎の目に映る刀身は燃え滾るように赤く、『悪鬼滅殺』の四文字が刻まれていた。
間違いない。ゾッドの持つ刀は鬼殺隊の炎柱、煉獄杏寿郎の日輪刀だ。

とはいえ、炭治郎の刀とてただの刀ではない。

純粋な日本刀―――しかし、ただの日本刀ではあらず。
人の身でありながら、数体の悪魔族(デーモン)と戦い、その身と引き換えに討ち果たし、見事守るべき者を守った教職員、大柴ソウスケの刀である。

持ち主の五体砕けようとも原型を留め続けたその刀、間違いなく日輪刀に勝るとも劣らない業物であろう。

刀の差はない。あるのは使い手だ。

剣術とは腕力がすべてではない。しかし、片手でも余裕があるのと両手で受けるのがやっとでは、確実に前者が有利である。
それも、炭治郎のように達人の手解きを受けてはいなくとも、数多の戦場で培ってきた技術があるのなら猶更だ。

43 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:47:17 ID:nw1JLFF60

(考えろ!考えろ!俺がこの男に勝つには―――!)
「むぅん!」

ゾッドの筋肉に筋が走り、さらに力は籠められる。

(まずい、押される!このままじゃ―――)

「もらった!」

ゾッドの背後にまわったかりんが、跳躍し斬りかかる。
その速度こそ炭治郎とゾッドには及ばずとも、充分に人を超えている。

「ムゥン!」

ゾッドは剣から片手を放し、かりんへと裏拳を放つ。
跳躍しているため、後退することもできず、鎌でゾッドの拳を受けたかりんは、そのまま後方へと飛ばされ壁に衝突した。

「かりん!」
「大丈夫なの!」

すぐに返された返事に焦燥は消え、この隙に反撃の準備へと入る。

ス ウ ウ ゥ ゥ ゥ

炭治郎の呼吸が変わる。
呼吸。この動作が、鬼殺の剣士の『型』の根幹を為す。

44 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:48:44 ID:nw1JLFF60

(この状況から出せる型はこれしかない!)

刀の角度を逸らし、ゾッドの剣をわずかに滑らせ、身体を捩じることで僅かな空間を作る。

そこから放たれるは

―――水の呼吸、陸ノ型 ねじれ渦

渦巻のような太刀筋をゾッドは剣を逆手に持ち返ることで難なく受け止める。

(まだ終わるな!止められるのはわかっていたんだ!)

―――水の呼吸、弐ノ型 水車

刀を打ち付けた反動で浮かび上がり、宙返りからの回転斬り。それも防がれる。

―――水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き!

着地し、間もなく繰り出される、炭治郎の持つ型の中で最速の突き。尚も防がれる。

(何度防がれても構わない。何度も同じ個所に衝撃を与え続ければいつかは折れるんだ)

己より格上の相手にも武器破壊は有効である。剣士である以上、剣が無ければ殺傷力はどうしても落ちるからだ。

(折る。このまま攻め続けて)

『俺は俺の責務を全うする!!』

炭治郎の脳裏に不意に過った煉獄の影。
もしも彼がこの場にいれば、自分に構うことなく折れと断じるだろう。
だが、刀は持ち主の信念が込められたものだ。炭治郎の目に焼き付いたあの大きな背中に、信念に刃を振るうこと自体に一瞬だけ微かな拒否感を抱いてしまう。
そう。瞬きにも満たぬ一瞬だ。けれど、その一瞬が勝負の明暗を分けてしまう。

「―――ヒノカミ神楽」
「ヌゥン!」

ゾッドが身を捩じり、刀身の角度を変え炭治郎の突きを逸らす。
先の炭治郎と似たような受け流しだが、しかしゾッドは余力を充分に残していたのに対し、炭治郎は全力の突き。
それが逸らされれば嫌が応にも態勢は大きく崩れてしまう。

45 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:49:19 ID:nw1JLFF60

がら空きになった炭治郎の胴体目掛けて、ゾッドは刀を振り下ろした。

―――トリックアンドトリート

炭治郎の身体を切断するはずだった刀は、音もなく消え去った。

「ぬっ」
「ははははは!貰ったのだ!」

高笑いを上げるかりんの手には、ゾッドが握っていた筈の日輪刀があった。

魔法少女には個々の固有魔法がある。
魔法少女・御園かりんの固有魔法は窃盗。対象の意識さえ逸れていれば、大抵のものを盗めるのである。

(と...盗れたの...私、やれたの!)
「すごい...凄いぞかりん!」
「フハハハハハ!マジカルかりんに盗めないものなどないのだ!!」

魔法のことを知らない炭治郎は純粋に驚愕と称賛を抱き、それを受けたかりんはエヘンと胸を張る。

「さあ、ぼさぼさ筋肉お化けよ。もはや貴様に戦う術はない。大人しく我らに従うのだ」

高揚した気持ちのまま、かりんはゾッドに降伏を迫った。

「...なるほど。個々で劣ろうとも、貴様ら二人が合わされば、俺より剣士としては一枚上手というわけか」

淡々と、悔しさなど微塵も見せぬほど平静にゾッドは一人言ちる。

「然らば貴様らであれば我が渇きを埋めることが出来るのか...試させてもらう」

―――ゾワリ

炭治郎とかりんの全身に怖気が走り産毛という産毛が瞬く間に逆立つ。
彼らは感じ取っていた。
ゾッドから放たれる気配が今までとはまるで別物になっていくことに。
かりんは魔女の、炭治郎は上弦の鬼と相対した際の感覚を覚える。

メキメキとゾッドの身体が変化していく。

ただでさえ巨体だった身体が二回り以上大きくなり、全身が黒く硬い毛に覆われていく。
人間の様相を象っていた顔からは1対の巨大な角と牙が生え、臀部からは巨大な尻尾が生えていく。

その姿は、まさに悪魔。見る者全てに抱かせる感情は、恐怖。

「さあ...ここからが真の戦いだ。俺を失望させてくれるな」

46 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:49:54 ID:nw1JLFF60



メキメキと身体が軋む音がする。
振るわれた剛腕は獲物を捉え、勢いよく吹き飛ばしていく。

「炭治郎!」

吹き飛ばされた炭治郎に駆け寄る間もなく、ゾッドの巨腕がかりんへと振るわれる。

「わわっ」

咄嗟に回避するも追撃は止まらない。
休む間もなく振るわれる腕は、徐々にかりんを死へと近づけていく。

(このままじゃ駄目なの。どうにか反撃を...!)

痺れを切らしたかのように、ゾッドの両腕がかりんを挟み込むように振り下ろされる。
好機。
かりんは跳躍し、ゾッドの頭上を飛び越した。

(これなら振り返る前に間に合うの)
「キャンディーデススコ」

放とうとした魔法は、しかし腹部を襲う衝撃に中断される。
尻尾だ。ゾッドの鞭のように長くしなる尻尾がかりんの腹部を叩いたのだ。
かりんの身体は地面を跳ね、態勢を整える隙すら与えられず、ゾッドの殴打がかりんを襲った。

吹き飛ばされるかりんはそのまま立ち上がろうとしていた炭治郎へと衝突し、互いの骨を軋ませる。

「どうした。これまでか?これで終わりなのか貴様らは」

足音を響かせながら歩み寄るゾッドに、炭治郎はふらふらと身体をよろめかせながらも立ち上がる。
チラ、とかりんへと目をやれば、魔女っ子染みた衣装は元の服装に戻り、頭部と口端から血を流しくるくると目を回していた。
これ以上彼女を戦わせれば命に関わってくるだろう。
退くわけにはいかない。炭治郎は、刀を強く握りしめゾッドを見据えた。

47 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:50:32 ID:nw1JLFF60

「そうだ。それでいい。俺を退屈させてくれるな」

ニイィと口角を歪め、ゾッドは嗤う。
その笑みに、炭治郎の腹部が煮えるように熱くなっていく。

「退屈...?お前はなにを言っているんだ」

この閉鎖空間で強制された殺し合いに怯え、己の命を守る為に神子柴の言葉に従うのならばまだわかる。
だが、この男は『退屈』などと宣った。炭治郎にはそれが理解できなかった。

「戦いこそが我が愉悦。強者の血こそが俺の渇きを埋めるのだ。容易く散る命であるならば、せめて微かにでも俺の渇きを埋めてみせよ」

放たれた言葉は私欲そのものだった。
一方的で、横暴極まりない我欲。
炭治郎の腹部に留まっていた感情は、一気に脳天にまで噴出した。

「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

響く怒声に、しかしゾッドは微塵も怯まない。
愉悦の笑みも止まらない。

「グハハハハハ!俺を許さない?ならば貴様は何ができる!?」
「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」
「ならばこれ以上の問答は不要。俺の屍を踏み越えてみせよ!」

ゾッドの口上が終わると同時に、弾けるように炭治郎が駆け出す。

ス ウ ウ ウ ゥ ゥ ゥ

炭治郎の呼吸が変わる。
放たれるは、水の呼吸ではなく、もう一つの呼吸。
持久力と引き換えに破壊力を手に入れた、父から授かった呼吸法から放たれるは、攻撃の威力を一点に集中させる突き技。

―――ヒノカミ神楽 陽華突

高速で迫る炭治郎の突きに、ゾッドは両腕を盾のように構えることで迎え撃つ。
剣が、ゾッドの右腕に突き刺さった。

48 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:50:55 ID:nw1JLFF60
(このまま型を切り替えろ!腕を斬るんだ!)

「ヒノカミ神楽―――」

炎舞。放たれる筈だったそれは、しかし剣が動かず。
ゾッドの筋肉は、貫かれてなお衰えず、炭治郎の剣を挟み込んでしまったのだ。

「この俺に守りの型を取らせるとは...貴様の命、渇きを埋めるに値する!」

ゾッドは空いた左腕で、炭治郎の腹部を狙う。

躱しきれない。炭治郎は己の死を覚悟する。

ドスリ、と鈍い音が響き炭治郎の腹部が赤く染まる。

が、しかし

「......!?」

ゾッドの手に、肉を割く感触は感じられなかった。当たったはずなのに、なぜ。
ドサリ、となにかが落ちた音がその答えを彼に伝えた。

落ちたのは、ゾッドの毛深く太い左腕だった。

ゾッドの腕の切断面から遅れて血が流れ、それを押し付けられた炭治郎は蹲り大きく息を吐く。

(いつの間に斬られた...?この小僧ではなく、あの小娘でもない。ならばこれは...)

ゾッドの視界の端で、バサリ、と白の外套がたなびいた。

(乱入者か。俺の意識外からとはいえ、斬られた感触すら与えんとはな)

ふらふらと立ち上がり、事態を遠目に見ていたかりんはぽつりと呟いた。

「ヒーロー...なの」

49 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:52:25 ID:nw1JLFF60



堂島正はヒーローに憧れていた。
子供の頃にテレビで見た、世のため人の為に戦うかっこいいヒーローに。
それに一番近いのは医者だと思っていた。
どんな人間の命も救う。そんな正義の象徴のような人間がいるだけで、きっと世の中は良くなると信じていた。
けれど、事はそんな単純ではなかった。
医者とは命を扱う仕事である。当然ながら、手術のひとつとっても全てが成功するとは限らない。
難病の治療に成功したところで、同じ治療法で全ての人が救えるわけではない。
99%成功する手術でも、予期せぬ出来事で残りの1%を引き当ててしまうこともある。
あと数秒早く手術を始められれば助かったというケースもある。
結局のところ、人が一生のうちに救える人間の数など数えられる程度だ。
だから、救える時があれば救えない時もあると割り切るしかなかった。
とある少年が抱えていた、手術の成功率が5割の病気を治した時だって、特別嬉しく思えなかった。

その少年、佐神善との出会いが、堂島の価値観を少しだけ変えた。

最初は彼に対してもなにも感じていなかった。
退院してからも、病弱の幼馴染、糸葱(あさつき)シスカに会いに病院に通っていたのを見かけた時だって、時期に来なくなると思っていた。
けれど、彼は何度も足を運んでいた。毎週必ず、雨の日でも雪の日でも。小学生から中学生に、高校生になってもずっとお見舞いに足を運び続けた。

そんな彼に次第に興味を持った。
どうしてそこまで気を配ってやれるのか、食事でもしながら話を聞いてみたかった。
聞けば、大層な理由もなかった。『シスカに元気になってほしい』。ただそんな優しさだけで彼女のもとへ足を運んでいたと分かった時、堂島は嬉しくなった。
優しさに溢れた命を救うことが出来たんだという、医者の喜びに改めて向き合えた。
シスカに対してもそうだ。
彼女の病気は何度手術をしても治らなかった。堂島自身、先も長くないとどこか諦めていた。今でも完治する確率は低いと見立てている。
けれど、確信していた。
善の優しさがシスカの支えとなっており、ある晴れの日に彼らが手を繋いで退院してくれることを。

割り切っていたはずの感情が、再び蘇ってきた。
彼のような優しい命を救いたい。その優しさで傍の人を救ってほしい。そんな者がいれば、きっと世の中は綺麗になるんだと。
それが医者である自分の本来の願いだったのだと。

その一方でこうも思う。
彼らと真逆の、その一人がいることで何人もの命を害する者がいる。
そんな者達がいなくなれば、どれだけの命が救われるだろうと。
医者である以上、そういった者たちが運び込まれてくれば手術もするが、これから悪党に奪われる命を見捨てていいものか。
否。
悪という病巣は野放しにできない。
一人で全てを狩りつくすのは無理だとしても、恐怖を植え付けることで抑制することはできる。
だから、堂島は偶然手に入れた吸血鬼(ヴァンパイア)の力を使い、悪人を切り殺してきた。
悪に奪われるであろう命を穢させないために。悪事を働けば殺されるという恐怖を病巣共に植え付けるために。

『医者』という正義と『悪党狩り』という恐怖。その二つを象徴する存在であり続けることこそが、彼の望む『ヒーロー』の在り方だった。

50 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:53:55 ID:nw1JLFF60


そしてそれは殺し合いに巻き込まれても変わらない。
老婆の語った報酬、死者の蘇生には微かに心が傾いた。愛する家族を取り戻せるんじゃないかと。
けれど、そんなものはまやかしだ。所詮は老婆の掌の人形でしかない。
だから堂島の方針は変わらなかった。『悪を斬る』。当然、その悪にはあの老婆も入っている。

名簿には知った名が幾つかあった。

ドミノ・サザーランド。狩野京児。加納クレタ。芭藤哲也。そして―――佐神善。

クレタと芭藤は確かに死んだはずだが、この殺し合いの為にわざわざ蘇らせたのだろうか。なんにせよ、彼らは間違いなく人々に危害を加える。斬り捨てておくべきだ。
ドミノと狩野京児は燃然党の中では残忍残酷と評判が悪いが、民間人には被害を及ぼしたという話は聞かない。あの老婆を討つ為に手を組むことも考えよう。
再三警告しても善を戦いに巻き込む以上、一時休戦、以上の関係は作ろうとは思わないが。

そして善。彼は死なせない。必ず生かして返してみせる。

方針を定めた堂島の耳に、ほどなくして戦闘音が届く。
彼はすぐに吸血鬼の姿に変身し、急いで現場へと足を進めた。
もしも善がそこにいれば必ず戦っているだろう。死なせる訳にはいかない。

やがてたどり着いた先に見たのは、巨大な怪物に刀を構え対峙する少年。その背には傷ついた少女が倒れている。


「命はお前の玩具じゃない。失われれば二度と戻らないんだ。ゾッド、俺は命を踏みつけにするお前を絶対に許さない!!」

声が聞こえた。怪物に臆することなく響く、少年の声が。

「お前に誰も奪わせない!罪なき命がお前の欲に踏みつけられる前に、俺がお前の首を斬る!!」

遠目に見ていてもわかる。少年と怪物には如何ともし難い実力差がある。
あのまま戦い続ければ、確実に少年は死ぬ。
けれど、彼は立ち向かうのだろう。
剣を振るうことで救える命があるのなら、彼はその身を傷つけても戦うのだろう。

彼のように―――佐神善のように。

「...ハッハッハッ」

思わず笑いがこぼれる。
果たして生涯のうちに、あそこまで他人の為に身体を張れる人間に何人が出会えるだろう。
自分は幸運だ。善のような少年に二人も出会えたのだから。

「だったら、死なせる訳にはいかないな」

堂島は駆け出した。己の正義を貫く為に。『善』を摘む悪を罰する為に。
そして彼は―――怪物の左腕を斬り落とした。

51 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:54:39 ID:nw1JLFF60



「素晴らしい剣技だ。俺の腕をこうも容易く断つとはな」

ゾッドは斬り落とされた左腕を拾い、切断面同士を合わせた。
すると、たちまち皮膚と筋繊維が修復され、左腕はあるべき場所へと戻った。

(ドミノと同レベルの再生能力か...吸血鬼ではないようだが)

堂島自身、吸血鬼という異端だが、ゾッドから発せられる禍々しい気配は今までに感じた類のモノではなかった。
ならば一体これは...

(なんにせよ、思ったよりも手強そうだ)


「ありがとうございました。俺は竈門炭治郎と言います」

突然の異形の来訪者に面食らった炭治郎だが、ひとまずは助けてくれた礼を言おうと頭を下げた。

「あの、あなたはいったい...?」

困惑する炭治郎の問いに、堂島は仮面の奥で笑顔と共に返した。

「ヒーローさ」

52 戦う君よ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:55:32 ID:nw1JLFF60

【F-6/1日目・深夜】

【ゾッド@ベルセルク】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、右腕に刺さった大柴ソウスケの日本刀@デビルマンG(炭治郎の支給品)
[行動方針]
基本方針:本能の赴くままに戦う
1:乱入者(堂島)と戦う

※参戦時期は15巻くらいからです


【堂島正@血と灰の女王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:悪を滅ぼし正義を生かす。
1:炭治郎たちを救う。
2:善を生還させる。ドミノと狩野とは積極的に争うつもりはない。

※参戦時期はドミノと内通の契約を結んだ辺りです。

【御園かりん@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]頭部出血(中)、全身にダメージ、気絶寸前、疲労(大)、煉獄杏寿郎の日輪刀@鬼滅の刃(ゾッドの支給品)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。
0:アリナ先輩を探すの。七海やちよも恐いけど探すの...
1:炭治郎と行動するの。
2:ぼさぼさ筋肉おばけ(ゾッド)、恐いの...
3:ヒーローが現れたの...!

※参戦時期はアリナがマギウスに所属しているのを知る前からです


【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]出血(中)、全身にダメージ、打撲(中)、疲労困憊
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
0:ゾッドに怒り。被害が出る前に倒す。
1:善逸、伊之助、玄弥、時透、天元との合流。
2:かりんと行動し知人を探す。
3:鬼舞辻無惨を斬る。鬼を斬る。


※参戦時期は柱稽古の辺りからです
※鼻が利く範囲が狭まっています。

53 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/20(金) 17:56:11 ID:nw1JLFF60
投下終了です

水野智己を予約します

54 ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/20(金) 17:59:58 ID:klyhm37g0
延長させていただきます

55 名無しさん :2019/12/20(金) 18:03:28 ID:5Qu9hmy.0
投下乙です
いきなりの全力バトル、やはりゾッドは強い

56 ◆/wJ/Apndog :2019/12/20(金) 19:31:50 ID:qyTkp.bg0
延長します

57 ◆Mti19lYchg :2019/12/21(土) 00:54:38 ID:gyG7/kk60
カチュア、善逸で予約します。

58 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/22(日) 00:01:54 ID:ycXqfzKg0
投下します

59 羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/22(日) 00:02:31 ID:ycXqfzKg0
サイドチェスト。
ボディビルディングにおけるポーズで、一方の手首を他方の手でつかみ腕および胸に力を込めて際立たせる姿勢である。

鏡の前に立ち、全裸でこのポージングをとる禿げ頭の巨漢は水野智己。
天童組というヤクザの組長である。

「ん―――、今宵の己(おれ)の筋肉もキレておる」

次いで、10kgのダンベルを両手にそれぞれ持ち、肘を屈折させる。
彼はこの殺し合いに送られてからすぐに筋トレを開始していた。
筋肉と会話することで、己の身体の調子を確かめているのである。

(しかし思い出せん...尻(アス)を貫かれた後、己はなぜここに連れてこられておる...?)

豪華客船でのメデューサとの死闘の末、自分は四階から落され、立っていたポールに処女を奪われた。そこまでは覚えている。
だが、いつの間にかアスからポールは抜かれており、神子柴なる老婆に殺しあえと命じられていた。
豪華客船でのことを夢と片付けるにはアスを貫かれた感覚は現実的であり、薬物を投与されたにしても、あの状況で自分に手出しできるとは思えない。
もはや己の理解の範疇を超えている。

とにもかくにも、この会場にメデューサの内の三人が巻き込まれているのは有難い。
これで奴らに殺された組員(かぞく)の弔い合戦に臨めるというものだ。

それに、奴らに組員は皆殺し済みだと告げられ、生存を絶望視していた神崎の生存が知れたのも幸運だ。
彼女と出会えた時は無事を祝ってやるとしよう。

「さしあたって己のすべきことは奴らの捜索...否」

そっと己の臀部に手を添える。
水野は負けた。信仰していたアスを貫かれることで。
あの場面で耐えきれていれば、甘城千歌を殺し、残りのメデューサも殺せたはずだ。
だが耐えられなかった。水野の超人的な大殿筋と深層外旋六筋を以てしても、開脚した状態ではポールには勝てなかった。

敗因は何か。偏に水野の経験不足である。
誰よりもアスを愛し誰よりもアスを信仰してきた彼だが、その実彼は処女だった。
度胸が無かったわけではない。ただ、眼前のアスに没頭するあまり、己にもアスがあることを失念していたのだ。
もしもアスを既に貫通させておりなおかつ経験豊富になっていれば、あのような末期を迎えることはなかっただろう。

60 羽ばたこう明日へ ◆ejQgvbRQiA :2019/12/22(日) 00:02:52 ID:ycXqfzKg0

「越えねばならんな。過去の己を...」

故に、水野は決意した。
眼前のアスだけに捉われるのではなく、己のアスも愛する真のナイスアスになろうと。
その為に必要な足掛かりは、鬼ヶ原小夜子。

通常、グリセリン浣腸液は10〜150mlに抑えるのが常識であり、その量でも注入されれば5分と排便は完了する。
これは到底耐えられるものではない。

だが、小夜子は300mlもの浣腸液を注入されてもなお我慢し、15分近く耐えて見せた。
それも、途中のスパンキングが無ければ記録はさらに伸びたかもしれない。

「奴は敵ではあるが惚れ惚れするアスを持っていた。優れたアスには敬意を払い学ぶべきだ」

では如何様に超えるのか。これまで通りたゆまぬ鍛錬を積むか?いや、それは筋肉のみを鍛えるだけであり、肝心のアスには結びつかない。
ならばどうやって鍛えるか―――その答えは、水野の足元に転がっていた。

(奇しくも己に与えられた支給品もこいつだ)

水野のデイバックに入っていたのは、グリセリン浣腸液の入ったボトルだった。
容量は2リットル。小夜子の耐えた量のおよそ7回分である。

(己のアスが告げている。『己を鍛えよ』と)

ここは殺し合いの場だ。生殺与奪の権を環境に握られている場だ。そんなことはわかっている。
だが、その極限状態での経験こそがなによりの実となり糧となる。

「首を洗って待っていろメデューサ共...己は人間の限界を超え、再び貴様らのもとへと相まみえようぞ」

それは新たなる領域への挑戦への期待か恐怖か。
水野のアスが、ヒクヒクと蠢いた。



【G-5/HELLSING本部/1日目・深夜】

【水野智己@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2 グリセリン浣腸液@サタノファニ 
[行動方針]
基本方針:アスを鍛える。
0:浣腸...いくか。
1:神崎と合流する。
2:甘城千歌、鬼ヶ原小夜子、カチュア・ラストルグエヴァを殺す。その前に小夜子を超える(目標は浣腸耐久時間20分超え)。

※参戦時期は処女喪失した直後です。

61 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/22(日) 00:03:37 ID:ycXqfzKg0
投下を終了します
巴マミ、神緒ゆいを予約します

62 名無しさん :2019/12/22(日) 01:17:42 ID:6BhnhINM0
投下乙です
自分は尻を洗う訳ですね 分かります

63 ◆Mti19lYchg :2019/12/22(日) 21:54:53 ID:nivw8NYQ0
地図について質問があります。円についてですが、B-2みたいに黒い円に薄い円が重なっているのはどういう意味があるのでしょう。

64 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/23(月) 00:57:55 ID:MHEA93IU0
>>64
地図を描く際に円を使用して色塗りをしただけなので特に意味はありません。
また、円もここからここまでが草原、山、とキッチリ決まっているのではなくぼんやりとこのくらいかな、と色をつけただけなのであまり気にしなくても大丈夫です。
一応、緑は草原、薄水色は湖、黒っぽいところは山、周囲の青は海というイメージですが、SSを書く際に新しい山や崖、施設などを好きに追加して頂いても構いません。

65 ◆yliPrzUV3E :2019/12/23(月) 20:32:45 ID:vV8YoAm.0
>>28の予約を延長させていただきます

66 ◆PxtkrnEdFo :2019/12/24(火) 04:01:18 ID:TLl/YZuw0
今日中には投下できると思いますけど延長をお願いします

67 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:33:22 ID:75XJdN6M0
投下します

68 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:34:45 ID:75XJdN6M0

腰まで伸びた白く綺麗な長髪。
制服の上からでも主張を止めぬ豊満な胸。
そしてなにより見る者全てを虜にする美貌。

彼女の名は神緒ゆい。いま私立帝葉学園で最も話題の女子高生である。

そんな彼女だが、絶賛殺し合いに巻き込まれていた。

さて、彼女の様子はというと。

(恐い...助けて鍵人くん...奈央...!)

震えていた。
当然だ。運動神経抜群、成績優秀、人間関係良好な、優等生をそのまま絵にしたような彼女でも、この異常事態にすぐさま順応できるはずもなく。
恐怖に支配される彼女に出来ることは、なるべく目立たぬように隠れて震えることだけである。

「突然失礼...」
「ひゃうっ!?」

突如かけられた声に、ゆいはビクリと跳ね上がり思わず腰を抜かしてしまった。

「驚かせてごめんなさい。私の名は巴マミ。少しあなたに聞きたいことがあって声をかけさせてもらいました」

顔を上げたゆいの前に立っていたのは、ゆいと同じく豊満な胸を持ち、制服に身を包んだ、金髪ツインロールの少女だった。

「あ...あぅ...」
「立てませんか?よろしければお手をどうぞ」

スッ、と手を差し出す少女の挙動は、微塵も緊張や恐怖のようなモノは見えず、同性であるゆいですら見惚れてしまうほど凛々しく見えていた。

「あ、ありがとうございます」

立ち上がり、ぺこりと頭を下げお礼を述べるゆいに、マミは首を微かに傾け、にこりと微笑みを返した。

「このくらい当然です。それに...」

マミは左手で額から左側の縦ロールをさらりとかきあげる。

「困っている人は見過ごせませんから。ここではなんですし、もう少し見つかりにくい場所で話しましょうか」

69 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:35:15 ID:75XJdN6M0



「不思議ですね〜、お互い学校がここに飛ばされてるなんて」
「まったくです。知り合いに会う為の目印にはちょうどいいんですけどね」

空いていた教室を借り、互いの持つ情報を交換するマミとゆい。
最初のうちは怯えていたゆいも、マミの柔らかい物腰に緊張が解れ、会話が出来る程度には落ち着くことが出来た。

「それで...神緒さんはこれからどうしますか?知り合いも連れてこられてるとか...」

名を連ねられている中でゆいの知る者は園宮鍵人、淡魂炎火、橘城アヤ子の三名。
親友である恵比寿野奈央が巻き込まれていないのは不幸中の幸いと言えるだろうか。

では、親友がいないからといって、生きるために殺し合いに乗れるかといえば否。
生きるためとはいえ、友人である3人はもちろん、人を殺すなどできるはずもない。
それは他の三人も同じはず。ならばひとまず合流するべきだ。
幸いここには自分を含めた四人に共通する施設もあり、時間さえあれば合流は比較的し易いはずだ。

そして奇しくもゆいが飛ばされたのはここ、私立帝葉学園である。
ならば。

「...私は、ここに残ろうと思います。もしかしたら、皆さんも来てくれるかもしれませんし...」

暗がりの学園など恐いことこの上なしだが、おそらく知人たちは一度はここを訪れるだろう。
下手に動いて入れ違いになるよりは、多少時間がかかっても確実に会える場所に留まるべきという判断である。

「わかりました。なら、私も残ります」

マミの申し出にゆいはえっ、と声を漏らす。

「万が一にも、危ない人が来る可能性がありますし、二人でいれば心強いでしょう?」
「でも、申し訳ないです。巴さんだって後輩の子たちが...」
「大丈夫です。あの子たちはしっかりとした子たちですから」

微笑みのまま同行を提案してくれるマミに、ゆいは申し訳ない気持ちになる。
確かに一人では心細いし、マミが一緒にいてくれたらどれだけ安心できるだろうか。
けれど、大丈夫と本人は言っているが、本心では会いたいはずだ。
自分の考えで残ってくれるならまだしも、気を遣って残られるのは申し訳が立たない。

70 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:35:43 ID:75XJdN6M0

(ひとまず、私は大丈夫ということからアピールしましょう)

ゆいはデイバックをごそごそと探り、支給品を取り出す。

「私のことは大丈夫です。ほら、支給品に木刀と防弾チョッキが入ってましたから。これで攻撃も防御も万全です!」

武器と防具。
シンプルながらも、誰にでも使えるという点ではかなり当たりの部類だろう。

「...そうですね。確かに道具があれば自衛には役に立ちます。けれど」

言うが早いか、マミは木刀を手に取りゆいの首にトン、と当てた。

「こうやって武器を奪われたらどうしますか?」
「あっ」
「誰にでも使える武器は確かに便利ですが、相手の手に渡れば厄介なことこの上ない。もしそうなった場合、神緒さん一人で対処できますか?」

ゆいは思わず言葉を詰まらせる。
直接身に着ける防弾チョッキはともかく、木刀は己の手で握る物である。
素人相手ならいざ知らず、喧嘩慣れしているような輩相手なら苦労もなく取られてもおかしくない。
だが、二人いれば対処はいくらでもできる。ならば彼女が共に残らない理由がない。

「...参りました。不甲斐ないです。私の方が年上なのに教えてもらってばかりで」
「不甲斐なくなんかありませんよ。こんな状況でも人のことを気遣える、それだけでも立派じゃないですか」
「そ、そうでしょうか」

自身を頼りない、不甲斐ないと思いつつも、褒められて嬉しくないはずもなく。
ゆいの頬がほんのりと赤みがかった。

「...では、その、巴さん。不束者ですがよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
「それでは、校内を案内しますね。私に着いてきてください」

ゆいはマミに背を向け、意気揚々と歩き出す。

(最初に会えたのが巴さんでよかった。彼女みたいに、落ち着いてやれることをしっかりとやりましょう)

ゆいは決心する。

炎火の人形に恐れおののいた時のように、恐いからと震えているだけでは、ただ助けられるだけでは駄目だ。
一人で抱え込み解決しようとするだけでは駄目だ。
前を向こう。そうすれば、自分にできることもなにか見つかるかもしれない。
そうして、みんなで力を合わせて頑張ろうと。

だから。

パァン、という音と共に走った後頭部の熱さがなにかがわからぬまま、彼女は意識を手放した。

71 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:36:21 ID:75XJdN6M0

「......」


マミは、俯せに倒れる少女に歩み寄り見下ろした。

「ごめんなさい神緒さん...でも、これも救済のため...」

己の心臓が冷えていくのを実感する。

これまで魔女や魔法少女とは何度も戦い、銃で撃ってきたが、一般人を撃つのはこれが初めてだった。
マギウスの翼――魔法少女の運命からの脱却を願う者の集いの、事実上の幹部として行動していた時も、魔女やウワサを育てることはしても、直接人を殺したことはなかった。
けれど撃つしかなかった。魔法少女でない彼女よりも優先すべき者がいるから。

「本当ならこんなことはしたくなかった...けれど...」

神子柴が上空に投げ出された時、マミは神子柴を倒すことで殺し合いの開催を防ごうとした。
けれど失敗し、殺し合いは始まってしまった。
ではどうするべきか、マミは考えた。
脱出―――首輪がある限り不可能だ。解析しようにも機械の知識は乏しく、かといってほかの参加者が解除するのを待つなど希望的観測に等しい。
そんなに簡単に解除できる人間を参加者に混ぜる意味はない。それだけでこの殺し合いが成立しなくなるからだ。

それに、あの老婆は首輪を自在に爆発させることができる。逆らえば首が飛ぶ。
もしも、万が一、マギウスの計画の中枢たるアリナ・グレイを失うことになれば、マギウスによる魔法少女の解放が叶わなくなってしまう。
ならば―――乗るしかない。

参加者を殺し尽くし、最後に自害しアリナを優勝させるしかない。

だから、マミはゆいに苦しみや恐怖を与えぬよう背後から頭部を撃ったのだ。

「神緒さん...私のことはいくら恨んでも構いません。けれどあなたの犠牲は必ず多くの魔法少女の救いとなります。どうか安らかに...」

マミは落ちていた鎖を握りしめ、ゆいの冥福を祈るように片膝を着き両目を瞑った。

72 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:36:39 ID:75XJdN6M0

「人を撃った割にはずいぶんお優しいことだなーオイ」

かけられる声に、マミは反射的に目を開く。
同時に。
下あごから衝撃が走り、マミの身体が後方に吹き飛ぶ。

なにが起きた。

マミは己の居た位置を確認する。

足だ。
繊細な芸術のように綺麗な足が振り上げられていた。

(蹴られた...あんな無茶な体勢からあの威力で?それよりも、なぜ彼女が生きているの?)

マミは確かに殺すつもりでゆいを撃った。血も出ていたし確実に当たっている。なのになぜ生きている?

「―――!?」

目を凝らしているうちに異変に気が付く。
先ほどまでは髪から服まで純白だったゆいの身体が瞬く間に黒く染めあがっていくではないか!

「まさかこんな形で解かれるとは思ってなかったぜ」

立ち上がった彼女は、先ほどまでの白いゆいとはまるで別物だった。
おっとりとした佇まいと綺羅やかな白髪・白服は消え失せ、見る者を射殺すような鋭い目つきと漆黒の黒髪・黒服へと変貌していた。

「なんで立てるのかって聞きたそうだな。人間の頭蓋骨ってのは思ってるより硬いんだ。しかもたまたま撃った場所が髪飾りだったもんだから威力は半減以下。
お陰様であたしはかすり傷で済んだのさ」
「あなたいったい...!?」
「神緒ゆい(スケバン)だ。そういうお前こそタダ者じゃねーな。だからあんな余裕があったんだろ」
「っ...!」

マミは直感する。
神緒ゆいは魔法少女ではない。それは、先ほどさりげなく見せた指輪にも無反応だったことからわかる。
だが、彼女は魔法少女に類する脅威だ。侮れない。

ならば、出し惜しみなどしない。

マミの身体が発光すると同時に、黄金の装飾に彩られた衣装に包まれる。

魔法少女―――否。ただの魔法少女ではない。

これが魔法少女を超えた存在、神浜聖女の姿である。

「私たちの邪魔はさせない...私たちは必ず救済を成し遂げるわ!」
「よく吼えるじゃねーか...嫌いじゃないぜ、そういうの」

獲物を見つけた肉食獣のように、ゆいの口角がニヤリと上がった。

「久々に暴れがいがありそうだ。付き合ってもらうぜお嬢ちゃん」

73 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:37:05 ID:75XJdN6M0







――神緒ゆいの脳内世界にて――


『......』
「そんな落ちこむんじゃねーよ。裏切りなんてどこにでも転がってるもんだろ」
『違うんです。ただ、ちょっともやっとしてしまいまして...』
「あん?」
『どうして巴さんはあんな回りくどいことをしたのか...不思議なんです』
「そりゃ油断させるためだろ」
『必要でしたか?あなたならいざ知らず、私に対してですよ?木刀を持った時に叩きのめすことだってできたのに...』
「あー...言われてみりゃあな」
『殺すつもりはあったんだとは思います。でも、あそこまで徹底的に安らぎを与えられて...彼女の本心がわからない...だからもやっとしてしまって...』


「...あいつの本心、知りたいのか?」
『...はい。で、でも、それであなたが危険に晒されるのは』
「遠慮すんなよ。前も言ったろ、感情を発散するのはあたしの役目だって」
『......』


「そんな暗い顔するなよ。確かにあいつは強い。スケバンランクSにも届くかもしれねえ。けど勝ち目がないわけじゃない」
『え?』
「あいつからは蟲と似たような気配もする。そいつさえひっぺがしゃああんたも話くらいできるだろ。てか、あたしが出来るのはそこまでだ。あいつが何を思ってようがどうでもいいしな」
『つまり...そこからは、私の戦い...』
「そういうこと。まあ、あまり気負うんじゃねーぞ。どのみちあたしも殺し合いなんざするつもりはねえ。どう頑張ってもあたしに出来るのは、腹パンで腹の虫を出させるまでってことだ」
『...わかりました』

「そんじゃ、あたしらの肝も据わったところで―――行くとするか」

74 内秘心書 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:37:37 ID:75XJdN6M0




『スケバン』。それは人間。あるいは女王。あるいは―――戦士。

つまり。

世界が違えど戦う女は皆スケバンである!



いざ尋常にスケバン勝負!!

神浜市聖夜の最終射撃人造『魔法少女(スケバン)』巴マミ

VS

東京都蟲狩りの神緒ゆい!!





【B-5/私立帝葉学園/1日目・深夜】


【巴マミ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]下あごにダメージ(小)、ホーリーマミ化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
基本方針:魔法少女救済の為にアリナを優勝させる。
0:神緒ゆいを倒す。
1:アリナと合流、指示を仰ぐ。
2:鹿目さんと暁美さんと佐倉さんはできれば殺したくはないけれど...
3:環いろは、七海やちよ、二葉さなは排除する。

※参戦時期はマギアレコード本編八章でやちよと交戦前です。


【神緒ゆい@神緒ゆいは髪を結い】
[状態]頭部出血(小)、黒ゆい化
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 大谷悟の木刀@サタノファニ、烏丸の防弾チョッキ@サタノファニ
[行動方針]
基本方針:ゲームからの脱出
0:巴マミをブッ倒す。
1:鍵人、炎火、アヤ子との合流。


※参戦時期は修学旅行前。

75 ◆ejQgvbRQiA :2019/12/26(木) 00:38:40 ID:75XJdN6M0
投下終了です

花京院、さなを予約します

76 名無しさん :2019/12/26(木) 04:04:36 ID:kD26UroE0
投下乙
やっぱマミさんマギレコ参戦かあ
あっちじゃ誤解にホーリーにと色々あったからなあ

77 ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:12:53 ID:sAiOcwgQ0
一昨日の朝に今日中には投下できると言ったが、スマンありゃウソだった
本当に申し訳ないとりあえず感想から

>OP
神子柴って聞いた名前だな、誰だっけなとか思ってたら時女の里のクソババアで色んな意味でド肝を抜かれましたね……
お前……確かに殺し合いの主催くらいならやりそうだけどお前……
そこにさっそうと登場したサイコロステーキ先輩が相変わらず謎の大物感を出してて笑う
一回殺されて復活したところでまた即座に反抗できるのはすごいなこの人
そこから主役級の面々に囲んで叩かれそうになってる神子柴は笑い半分興奮半分でした

>チュートリアル
クソみてぇな旗なのは間違いない
なのに神子柴の顔がゲームで描かれてないからちょっと見たくてチクショウ!
禁止エリアに踏み込んでのリアクションが「ウソッ」とか日常染みてて彼岸島を感じる

>コイントス
桐山のコイン、バトルロワイヤル読者なら誰もが知ってるシーンをカナヲと重ねるのは上手いなぁと思わされましたね
それでも何もない桐山と違って人を守る善性が確かにあることも対比的に描いていていい
長男カウンセリングの前はちょっと不安だけど、それだけに今後が楽しみだとも思います

>戦う君よ
かりん、炭治郎と合流できて落ち着けて良かった
しかしそこそこやれる二人だけども初っ端ゾッドはキツイなあと思ってたらかりん意外と活躍するなあ
マギレコ勢、モーションが簡素だし魔女との戦闘描写も薄いから実力が測りにくいと個人的には思うんですけどハロウィンシアターや魔法少女ストーリーから持ってきててすごくいいなと思いました(謎目線)
ヒーローも合流したところで頑張ってほしい。アリナ先輩を信じるかりんに幸あれ

>羽ばたこう明日へ
ロワにきてトレーニングをするキャラは見たことがある。修行パートも含めるならかなりの数。
便意と戦った男も一人だけど覚えがある。
殺し合いのさなかに自ら便意に闘いを挑む男は初めて見る。なにやってんだこの人
長くとも20分後にはヘルシング本部でぶちまける気でいるの、旦那とか局長に怒られそうだ

>内秘新書
タイトルが知らない四字熟語だし一発変換で出ないぞ……というのが第一印象でした
調べたらワンオクの曲なんですね、四字熟語じゃなかった
で、本編なんですが不安が的中してうぐぅってなりましたね
「突然失礼」を見たとき笑いながらもあー……って
ホーリー化してアリナの奉仕マーダー化したマミさん、名簿の面子的にもマーダーの数的にもそんな悪寒はしてたけども!
てかこいつ神浜聖女のウワサだか毛皮神のウワサを支給品外で、没収もされずに纏ってやがる
明さんの義手枠かチクショウ
しかしゆいの髪飾りを射抜いてしまうバッドからのスケバン勝負とは空気の持ってきかたは並んでていい
スケバンVS神浜聖女は絵面も字面もすごいな


で、改めましてアリナ・グレイと不死川玄弥で投下します

78 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:14:05 ID:sAiOcwgQ0

殺しあえと命じられた地の、月明かりの下で少年が一人活動を始めていた。
少年の名は不死川玄弥という。
鬼を殺すべく集った組織、鬼殺隊の一員だ。
彼も当然鬼を殺すだけの怨みと実力を持ち合わせているのだが、他の隊士に比べて鬼を殺す才には恵まれない面があるため、業腹ながら与えられた武器や情報が他の隊士よりも重要な生命線となる。
そのため彼が鞄を開き、武器や名簿を確かめる姿は半ば祈るようであった。
その結果は悲喜こもごもではあったが。
武器は上等なものがあった。そして名簿には

(宇髄さん……やっぱり宇髄さんだった!)

神子柴なる老婆に斬りかかった男は鬼殺隊の『音柱』宇髄天元のものに見えた。
上弦の陸との闘いで重傷を負って引退したと聞いていたし、柱稽古でもそのようにしか見えなかったが……死者の蘇生を可能とするというならばそのくらいの傷は癒せるということだろうか。
いずれにせよ頼りになる名と姿を目にできたのは何よりだ。
他にも刀鍛冶の里で共闘した竈門炭治郎に『霞柱』時透無一郎、いけ好かないが宇髄と共に上弦の陸と戦い生還した嘴平伊之助に我妻善逸の二人も柱稽古の最終段階まで進んだ猛者だ。
そこまではいい。
鬼殺隊の怨敵、始まりの鬼である鬼舞辻無惨、上弦の参である猗窩座、そして宇髄たちに斬られたはずの上弦の陸――蘇生させられたのか――妓夫太郎と堕姫の名は様々な感情を玄弥の内に引き起こす。
殺し合いの場であるなら無惨を斬るまたとない機会になるだろう。
だが同時にこの鬼どもは大きな障害ともなる。
歓喜、怖れ、他にも様々なものを覚えたが……ともあれ動き出さねば何も始まらない。
荷物を纏め、玄弥はゆっくりと立ち上がる。

(にしても変なところに出たもんだ)

ひとまず目についた神子柴の顔が描かれた珍妙な旗を目指して歩いてみたが、すぐに首輪から警告音が響いたので慌てて引き返す。
そうして改めて周囲を見ても立ち並ぶのは玄弥にとって見慣れない建物だった。
旗はともかくとしてそこに建っているのはどれもこれも平成、令和の時代にもなればありふれた民家ではある。
それでも大正を生きる玄弥には奇異なものに映った。
しかし文明開化が順調に進みつつあるのもまた大正であり、多少の違和感は覚えても大きな驚きはない。
そして見目が多少変わったところで古今東西変わらぬものもある。
人が生活しているならばその痕跡があるということ……例えば明かりがついている、という。

夜の闇の中で一軒だけ、ぼんやりと光を漏らしている家があった。
気持ちは分からなくもない。
夜の活動に慣れた鬼殺隊の端くれである玄弥も、正直僅かな自然光だけで名簿などに目を通すのは面倒だったし、何より夜の闇は不安を駆り立てる。
しかし殺し合えと命じられた真っただ中で、それもどこかに鬼がいる状況でいたずらに自分の居場所を発信するのは賢明でない。
承知の上での振る舞いかもしれないが、ひとまず注意に向かおうと玄弥の足がそちらに向かう。

もちろん、あえて呼び寄せているのではという疑念もなくはない。
支給された武器をすぐ取り出せるように構えて。
他の隊士に比べれば意味は薄いが呼吸を落ち着けて。
明かりの漏れる家へ周囲を確かめつつゆっくり近づいていく。

79 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:14:55 ID:sAiOcwgQ0

(藤の花が一輪もないな……)

夜は、鬼の時間だ。
安心して眠りにつくためには鬼を遠ざけてくれる藤の花を植えるのが不可欠と言っても過言ではなかろう。
ましてやこの地には無惨もいる。
にもかかわらず家の周りは石塀で囲まれた程度で鬼相手の防備を考えているとは思えない。
塀の向こうに見える中庭からは十分な土と草木の匂いがするから環境的に出来ないというわけでもあるまいに。

(本当に変なところだ)

石塀につけられた格子戸を開けて庭に入り、入ってすぐの光の漏れる硝子戸の向こうに視線をやる。
案の定、硝子戸の向こうの妙にひらけた室内に人影があった。

「おーい、そこのあんた。ここらには鬼が出る。危ねえ、ぞ……」

中にいる誰かに聞こえるように、しかし無闇に響かせないように気持ち潜めて。
その声に反応して影が振り向いたことで玄弥の声が詰まる。

そこにいたのは美しい異人の少女だった。
相手の性別とその容貌に気付いた玄弥が少し気後れるが、状況が状況でそうも言っていられない。
光に気付いて鬼が寄ってくるかもしれない、自分が気付いたんだから近くに誰かいれば同じように気付くだろう、注意しろ、などと忠告染みた言葉を絞り出そうとすると

「ねえ。これ、すっごく……綺麗だと思わナイ?」

先に句を告いだのは少女の方だった。
言葉と共に指で指示された方向に自然と玄弥の視線も誘導される。
玄弥はそうと分からなかったが、外にまで漏れ出た光は少女の指さした物を照らしている光源の残照だった。
それはあたかもステージを彩るスポットライトのよう。
そして室内がひらけているのもそれを展示するミュージアムであるかのよう。
リビングにポツンと置かれたダイニングチェアの上に鎮座するそれは、逆になぜ今まで気づかなかったのかと思うほどに存在感を放っている。

周囲の環境と、少女の振る舞いに導かれ、玄弥はそれを認識し……そしてそれが何かを理解した。

「…ッンだよ、それ!!」
「綺麗でしょう?これがネ、アリナに支給するウェポンなんだって。いいセンスしてるよね」

自らをアリナと呼んだ少女は狂気を孕んだ笑みを浮かべてそれを手に取る。
手の中のそれを掲げると顔の高さにまで持ち上げて……するとそこにはアリナと並んだ、もう一人の美しい少女の顔が。

「首……!?」
「デーモンの生首だってさ、アハ。デーモンの元老院、冷元帥クルールが人間とのウォーに負けて首を撥ねられたんだって。魔女やウワサはたくさん見てきたけど、悪魔は初めて見るヨネ」

冷元帥クルール。
火星の魔力を使った大儀式によって産まれた正真正銘のデーモンの姿は死してなお、いや亡骸であるからこそより美しくアリナの目には映った。
魔女やウワサは死体を残さない。
『生と死』を自らの芸術テーマとするアリナにとって、それはあまりにも惜しく、だからこそ手の中に遺った怪物はあまりにも愛おしい。
これを素に、作品を作り上げるには―――

「アナタ、ヴァニタスって分かる?」
「ぶ、う゛ぁ…?」
「静物画のジャンルなんだけど。死をモチーフにしたアートだからアリナも少し勉強したワケ。髑髏とか腐っていくフルーツで死やそれに伴う無常を描く……アンダスタン?
 アリナはこれで九相図を作ったら面白いと思うんだよネ。綺麗なデーモンの亡骸と、真っ白な髑髏と、腐乱した生首と他にもたくさん。だから、サ」

アリナの左手中指に嵌められた宝石、ソウルジェムが輝く。
そこから半透明のキューブが現れ、続けてキューブから出てきたサイケデリックなカラーをした衣装がアリナを覆い、長袖のアンダーシャツとブラウス、茶色いチェック柄のスカートで構成された女制服から彩り豊かな憲兵風の装いへと転じた。
魔法少女アリナ・グレイ。
口元に微笑みを浮かべ。
掌にキューブを浮かべ。
彼女は続けて口にした。

80 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:16:11 ID:sAiOcwgQ0

「アナタの首を、アリナにちょーだい」

キューブから放たれた幾筋もの光線が玄弥へと襲い掛かる。
気圧され、混乱する玄弥だったがさほど苦はなく攻撃を回避することはできた。外れた光線が庭へと続く硝子戸と外のブロック塀を砕く。
玄弥のの予想外の速さにアリナの口から舌打ちがこぼれた。

「魔法少女……じゃないよネ。その見た目でガールはノーでしょ。アナタ、何?」
「鬼殺隊、不死川玄弥。テメェこそ、なんだ?」
「アリナは魔法少女ですケド。それともマギウスって言った方がいいワケ?
 ……あ、ジーニアスアーティストとしてなら適当な雑誌をリードすれば分かるから勝手に調べてよネ。ま、アナタにそんな今後は無いんだケド」

鬼だの鬼殺隊だのというのがアリナにはさっぱり見当もつかない。
ただの人間の男だろうと侮って放った一撃を回避されて、黒羽根よりはやり手だと評価を修正し改めて攻撃を放つ。

玄弥もまた魔法少女、マギウス、デーモンというのが何だかまるで分らない。
始めは鬼の首を刈った剣士かと思った。次に人の首を眺める鬼かと思った。
だがアリナも生首の方も鬼らしい気配は感じ取れず、別の悍ましい何かだと予想するにとどまる。
だがひとまずはそれで充分……目の前の女は敵である。
さすがにこの女に反撃したとて炭治郎に腕を折られはすまい。
再度放たれた光線を躱し、素早く態勢を立て直して武器を抜く。
飛び出したのは巨大な大筒―――純銀マケドニウム加工水銀弾頭弾殻、マーベルス化学薬筒NNA9、全長39㎝、重量16㎏、13㎜炸裂徹鋼弾、『ジャッカル』。
最強の吸血鬼がただ一人の人間と戦うために用意させた特注の逸品だ。
並の化物なら一撃で、尋常ならざる怪異殺しであろうと五体を満足に保たせぬ弾丸は、喰らえば魔法少女であろうと無事ではすむまい。
その引き金が玄弥の手に収まり、その砲口がアリナに向けられていた。

轟音。
銃声とも呼ぶにはあまりに大きな炸裂音でジャッカルが牙をむいた。

「ッガ……!」

だが短い悲鳴を上げたのは玄弥だった。
ジャッカルの弾丸は狙いからずれ、アリナの光線とはまた別のブロック塀を抉り飛ばして終わった。
さもありなん、ジャッカルは人が扱える武器ではない。
玄弥の身体能力も人並み外れてはいるが、それでも不死王アーカードの携える牙の一つを使いこなすには役者が足りないと言うざるを得なかった。
だがそれで諦めるような男が鬼殺隊に身を置くはずもない。

「舎衛国……祇樹給孤独園、与大比丘衆」

念仏を唱え、集中を極限まで高める。
すさまじい銃の反動ではあったが、手首も肘も肩も無事。
であれば今度は全身で放つ。

玄弥は片手で構えていたジャッカルを両手で構え、足腰も活用して衝撃に備える。
そして再び引き金を引き、銃声を轟かせた。
再度放たれる弾丸だが、今度はアリナは意図してそれを躱す。
鬼殺隊が鬼を殺すために人の力を極めるように、魔女を殺すために人ならざる域に踏み込んだのが魔法少女だ。
玄弥が血鬼術を躱すようにアリナの光線を躱せるように、アリナもまた玄弥の構える銃を魔女の攻撃のように知覚して回避する。

81 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:16:39 ID:sAiOcwgQ0

(クソが、とんでもねえ武器だな!)

玄弥でもジャッカルは両手で構え腰を落とさなければまともに撃てないが、それでは早撃ちなどできるわけもなく、照準をアリナに読まれてしまう。
かと言って無理に早撃ちをしようとすれば腕が折れてしまうのでないかというほどの反動が襲い掛かる。
最初は当たりの武器かと思ったが途轍もないじゃじゃ馬だ。
玄弥が狙い構えるまでの間に、アリナは立ち位置を変えることで銃弾を躱し、さらに光線を放ち徐々に玄弥を追い込もうとする。
初撃の的外れさや構え方、見て取れる銃の威容からすでにアリナはジャッカルが玄弥の手に余るものだと看破していた。
光線が壁を一部崩し、床を貫き、足場を乱して玄弥を敗北へと導こうとする。

(だったら!)

乾坤一擲、玄弥はアリナの攻撃を姿勢を低くして避け、乱れつつある足場を大きく踏み込んで距離を詰める。
ジャッカルを左手に握り、その重量を活かして鈍器として扱い、薙ぎ上げるように振るった。
だがそんな単純な一撃が通るはずもなく、アリナは左手にクルールの首を抱えて躱しつつ距離をとろうとするが

「ウオラァ!」

雄叫びを上げて左手だけでジャッカルのトリガーを引く。
狙いなど碌に定めたものではない。的外れなことに天井に放たれた弾丸が跳弾することもなく貫通し、砕いた欠片を二人にばら撒いた。

「キャ!?」

そのつぶてにアリナが僅かに怯んだ隙をついて玄弥が右手を伸ばし、クルールの首を奪い取って再び距離を置く。

「…何する気?アリナからそれを奪って、フリーズなんて言うとか?」

なるほどたしかにアリナから下手に手出しはできなくなった。
だが玄弥の状況はどうか。
無理にジャッカルを撃った反動だろう。彼の左腕は奇妙な方向に折れ曲がっていた。
その有り様で凄んだところで大した脅威になりはしない。
ゆっくりとアリナはキューブに魔力を込め、とどめを刺す準備を整えていく。

「……こいつ、悪魔?だっけ」
「そうだケド。貴重なアートになるんだから傷つけたらただじゃ―――」

82 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:17:00 ID:sAiOcwgQ0





ばりっ

      ごきっ

   ばきばき
ず           ず

ごくん

83 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:17:49 ID:sAiOcwgQ0

「…………ハ?」

肉を噛む音。骨を砕く音。血を啜る音。それら全てを嚥下する音。
――――――玄弥がクルールを食っている音。
さすがのアリナもこれは予想できなかったようで一瞬呆気に取られてしまう。
だが

「ふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁ!!!
 作品をブレイクしていいのはアーティストだけなんですケド!!何勝手なマネしてくれてるワケ!?
 アナタ…アナタのハラワタをぶち撒けてその中からクルールを抉り出しやる!」

怒りに染まったアリナが叫びと共にキューブに込めた魔力を解放し、玄弥に向けて全力で放つ。
ドッペルには及ばないが全力の一撃で、これまで見た玄弥の身体能力では躱せるはずのないものだとアリナは自負していた。
だが玄弥はアリナの想定を大きく超えて速く高く跳び、アリナの攻撃を回避してみせた。
それだけではない。
つい先ほどまで折れていたはずの左手でジャッカルを構え、アリナに向けて放ったのだ。

(ウソ!?)

牽制だったのだろう。そこまで正確な一撃ではなかった。
だが先ほどまで使いこなせていなかった武器を突然使いこなし―――いやそもそも左腕は折れていたはず。魔法少女でもこんなに早く回復はしない。
何が起きたのか。
アリナが混乱の渦に叩き込まれているさなかにも玄弥は容赦しない。
ジャッカルの銃撃を正確に二発、三発と叩き込んでくる。

二発目は躱した。だが三発目がアリナの肩口をわずかに掠め、それだけで肉を大きく抉っていった。
多量の出血でアリナの頭に上っていた血が下りる。
間が悪くそこでジャッカルの弾が切れたようで、玄弥が即座に鞄から取り出した予備弾を込め治す。
その隙に痛覚を遮断したアリナが魔法で傷を塞ぎ、最低限出血を抑える程度には持ち直して向きなおる。

玄弥が構えなおすより速くアリナが光線を放った。
毒々しく輝く光線が床を一気に腐敗させて足場を乱し、毒と床が反応したのか煙も上げて照準のための視界を乱す。
それも今の玄弥には障害とはならない。

人並外れた咬合力と消化器官をもつ玄弥は、鬼を喰らい取り込むことでその力を得て鬼を殺してきた。
今は悪魔クルールの首を喰ったことで強靭な肉体を獲得し、五感もまた鋭敏になっている。
多少の煙幕などものともせず照準を定めようとするが

(…消えた!?いや下か!)

アリナは即座に自らの足元を魔法で砕くとそこに身を躍らせた。
ジャッカルならば床板くらい容易に貫通できるだろうが、狙いが定まらなくては無駄弾と装填の隙を招きかねない。
ならば自分も後を追って床下に飛び込むかと一瞬考えるが

「勘弁してよネ。デーモンを食べてデーモンの力を取り込むとかチートじゃナイ?
 ここ、神浜じゃないからアリナはドッペル使えないのに。魔女を利用する私たちマギウスと同じようなことやってるの他にもいるんだ。シニカルなフォーチュン……」

アリナの声が下から響いたことで狙いがつけやすくなった。
ぶつぶつと言葉を続けるアリナに向けてジャッカルの銃口をむけようと即座に



ぶつぶつ

闇の中から蘇りし者    ぶつぶつ
     リンプ・ピズキット
   我と共に来たれ
 ぶつ  ぶつ    



ドスッ!!!

84 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:18:15 ID:sAiOcwgQ0

「ぐあ…!」

玄弥の脇腹に鋭い何かが突き刺さった。
咄嗟に構えようとしていたジャッカルを振るい殴りつけようとするが、その一撃はむなしく空を切る。

(なっ!?ンだ今のは)

見えない。
何から攻撃されたのか分からないが、わき腹を抉られた。
それ自体は大した傷ではないが、敵が何をしたのか分からないのは大問題だ。

(上弦の肆みてえに見つからねえのか!?)

咄嗟に足元に視線を走らせるが鼠一匹見当たらない。
視力も強化されているからそれは間違いない。
そこへ続けて獣が駆けるような足音を響かせて見えない何かが突っ込んできた。
音に反応して玄弥もそれを受け止めるべく構えるが、クルールを喰って得た膂力でもってもその敵は抑えきれなかった。
敵の正体がつかめない。そして圧倒的な攻撃力の別固体らしきもの。ますます上弦の肆が玄弥の脳裏によぎる。

(同じなら…あの女をやれば!)

玄弥は突っ込んできた何か――見えないが毛が生えているようだ――と組み合い、押されながらもジャッカルを突き付け引き金を絞る。
銃声と共に硬い何か――おそらくは角だろうか――が折れる音が響き、それに怯んだか不可視の敵の力が緩む。
そこへ思い切り前蹴りを叩きこんで吹き飛ばし、その反動で玄弥も後ろに跳び、両者の間に大きな距離ができた。
アリナが乱した足場を今度は玄弥が利用する。獣の足では即座に距離を詰めれまい。
その間にジャッカルの照準を改め、アリナの声がした方へ。
上弦の肆と同じなら大元を仕留めれば不可視の攻撃は止むはずだとそちらを仕留めようとする玄弥の耳に、予想だにしなかった獣の足音が再び響いた。

(壁!?)

重力を無視したように、音は横方向、目線の高さから聞こえた。
たしかに壁には多少の銃痕は在れど移動に支障をきたす大きなものはない……そも壁というのは歩くことを想定するものでもなかろうが。
予想外に早い戦線復帰。それでも玄弥が引き金を引くより早いということはなかろうが、姿が見えず何をしてくるか予想できないのが恐ろしい。
射線に割り込み盾になろうとしてくるか。またこちらに突撃してくるのか。上弦の肆の分身やアリナとかいう女のように飛び道具でも撃ってくるか。
先に対処するにも見えない敵にジャッカルの照準を合わせるのは至難の業だ。
ならば、と。
ジャッカルを持つ右手はそのままに、玄弥は左手を足もとへ伸ばす。
そのまま傷ついた床を拳で打ち抜き

「おとなしく、してやがれェ!!」

床板を丸ごと引きはがしてその面で広範囲をぶっ叩く。
見えなくとも辺り一帯を攻撃すれば効果はあろう。
床板を大きな塊のまま振るえたのは幸いだった。

「手ごたえあり……!でもって見えたぜ……!」

剥がれた床板で獣は弾き、そして床下のアリナの姿もはっきりと捉えられるようになった。
これでトドメ、と玄弥が右手のジャッカルを放とうとする。


バリ
     バリバリバリ
  パキ   ボキン

肉を噛む音。骨を砕く音。
それが今度は玄弥の右腕から響いていた。

85 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:19:02 ID:sAiOcwgQ0

「うっ、おおおおおおおおおおおおおおお!?」

喰われる感覚。
玄弥がそれを味わう立場になることは珍しい。
鬼殺隊を相手にした大概の鬼は殺してから喰うもので、喰って殺すことはそうないからだ。
だがこれは噛み砕いているのではない、明らかに喰っている!戦場において鬼以上の悍ましさ!

(床板の向こうにさっきのは抑えてる!女は床下、ならもう一体出たのか!?)

増えた。
本気でこのアマ上弦の肆の親戚か何かじゃないかと混乱する玄弥は思うが、そんな呑気なことを考えている余裕はない。
一対一でも厳しいところに不可視の敵が二体出てきて、さらに増えないとも分からない。
もはや玄弥一人の敵う範囲ではなくなった。
刀鍛冶の里での戦いのように死の気配が満ちるのを肌で感じる。
右腕がさらに抉られ、ジャッカルが落ちた。
床板を破り、獣の匂いが近づいてくる。
対峙する少女も掌を輝かせ攻撃を放とうとしている。
今の玄弥ではそのどれにも対処はできない。

(もう…死ぬ)

また、兄ちゃんの顔と言葉が走馬灯のように


―――玄弥ーっ!!!諦めるな!!―――



浮かぶ前に仲間の顔と声を思い出した。
視界が晴れる。思考が晴れる。
…………悪魔を喰らい、発達した聴覚が足元に転がる何かに気付いた。
玄弥に貪られ、頬が抉れてもなお美しくあるクルールの首。
床板を振り回した際にこちらに転がってきたようだ。
…………アリナと玄弥の戦闘の余波で崩れた塀の向こうに、神子柴の顔がはためいていた。
ああ。それに、賭けよう。

「飛べーっ!!旗のとこまで!!」

強化された脚力で、クルールの首をクソみてえな旗目がけて蹴り飛ばす。
またしてもクルールの首に突然とった意味不明な行動にアリナは驚き、クルールへの無礼な振る舞いに怒り、しかしまた妙なことが起こるのではと警戒し、といったところだ。
一瞬どうしたものか逡巡するアリナだったが

「おい。あの旗の方、神子柴のヤツがいる禁止エリアだったぞ」

玄弥のその声で顔色を変える。
禁止エリア……神子柴が言っていた、立ち入り禁止の区域!

「ヴァァァアアアッッッ‼」

奇声を発しながら、もはや玄弥などどうでもいいと飛んでいったクルールをアリナは追いかけ始める。
悪魔を喰らった玄弥に蹴られた首は彼方まで飛び、強化された魔法少女の視力でもすでに視界ギリギリだ。
もし禁止エリアに入ってしまえばあの首を二度と手に入れることができないかもしれない。
優勝して回収するとしてもそれまで放置され雨風にさらされたり腐敗してしまったりすればただでさえ傷ついたのに、さらに希少な美が損なわれてしまう。

(許さナイ……!)

コイツの言葉が真実かどうかはこの際どうでもいい。
クルールの首を回収して、その後コイツは必ず殺してやる。
怨みの視線だけ残してアリナは急ぎこの場を離れていく。

86 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:19:25 ID:sAiOcwgQ0

「……ぐ、痛」

それを見送り、一瞬息をつくと抉られた右腕が回復していく。
いつもより回復が遅い気がするが、喰ったのが鬼じゃないからだろうか。
ジャッカルを持てる程度に回復したところで落ちたそれを回収し、アリナとは反対方向へ玄弥も駆けだした。
あの女の思想も、能力も、上弦に匹敵する危険さだ。
炭治郎や柱、他の仲間の協力もなければ倒すのは困難だろう。
屈辱だ。苦渋の選択だ。
だが脅威を喧伝しなければならない。何より敵はあの女だけではない。無惨や他の上弦もこの地にはいるのだ。
今は生き延びることを優先しなければならない。

(畜生……)

とはいえ無為な戦闘ではなかった。
ジャッカルの性能を試せたこと、デーモンなる存在をしれたこと。
一か八かで口にはしたが、本当に鬼と同様に力が得られるかは賭けだった。
最後の逃亡もあの首がなければなし得なかったし、首の少女には散々に助けられたと言える。

(あー、でもまた蝶屋敷ですげえ怒られそう……)

鬼だけではなく得体の知れないもの口にしたと知れば蟲柱は何と言うだろう。
おまけに今後また別のものも口にするかもしれないとなればなおのこと。
玄弥はすぐ取り出せるよう懐にもう一つの支給品を忍ばせる。

(正直悪魔の肉なんて疑ってたけど、あれが本物ならこれも多分……ん?何か動いたか?)

手にした肉片……『銃の悪魔の肉片』が玄弥の後方、アリナの駆けて行った神子柴の旗の方へ僅かに動いたのは玄弥が走り揺られていたせいか。それとも……



【C-4/1日目・深夜】

【不死川玄弥@鬼滅の刃】
[状態]ダメージ(小〜中、回復中)、クルールを喰って微妙に悪魔化
[装備]ジャッカル@HELLSING、銃の悪魔の肉片@チェンソーマン
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 ジャッカルの予備弾(残数不明)@HELLSING
[行動方針]
基本方針:悪鬼滅殺。人は守る。
1:今はアリナと距離をとる……今は。
2:炭治郎や無一郎のような仲間と合流し、無惨やアリナなど敵を滅殺する。

※参戦時期は柱稽古終盤〜無限城突入の間ごろです。



【ジャッカル@HELLSING】
不死川玄弥に支給。
対化物戦闘用13㎜拳銃
全長:39㎝ 重量:16㎏ 装弾数:6発
使用弾種:専用弾・13㎜炸裂徹鋼弾 弾殻:純銀製マケドニウム加工弾殻 装薬:マーベルス化学薬筒NNA9
弾頭:法儀式済み水銀弾頭
吸血鬼アーカードがアレクサンドル・アンデルセン神父と戦うために創らせた特注の銃。
もはや人類の扱える代物ではないらしい。


【銃の悪魔の肉片@チェンソーマン】
不死川玄弥に支給。
銃への恐怖が生み出した悪魔、その肉片。
この肉片を得た悪魔は大きく力を増すという。
肉片同士に引き合う性質がある。

87 逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい ◆PxtkrnEdFo :2019/12/26(木) 21:20:02 ID:sAiOcwgQ0

「アイツ、本当にムカつくんですケド」

クルールの首はかろうじて確保できた。
もう少しで禁止エリアに転がり込むところで、本当に危なかった。

「ンー……」

手にした首を再度じっくりと眺めてみる……齧られはしたがこれはこれで美しい。
ミロのヴィーナスやサモトラケのニケは欠損ゆえの美があるというが、なるほどこれもまたそういうものだろう。
あらかた堪能したところで今度はアリナの周囲に集う透明なゾンビに手を伸ばした。
アリナにも見えない、リンプ・ピズキットによって産まれた二体のゾンビ。
その姿を確かめるために触れてみたいと思ったのだ。
まず一体目は、四足歩行の獣の背中から女体が生えているような形をしている。
その女体の肌にじっくりと指を這わせるうちに理解した……これはクルールのものだと。
てっきり首だけのゾンビになるのではと危惧していたが、デーモンには再生能力でもあるのだろうか。五体満足を通り越してもう一つ五体ができている……姿は見えないが艶めかしい肌触りに美しい毛並みだ。想像するしかないのが本当に惜しい。
そしてもう一つのゾンビに手を触れると、これはなんだかすぐに理解できた。
ベッドの上でもでもバスルームでも、何度も触れているなじみ深いもの。

「アイシー。アリナたちはもうゾンビみたいなものだったネ」

そう。
アリナ・グレイのソウルジェムに操られるだけの肉体も、リンプ・ピスキットは死体と認識してゾンビを産み出したのだ。
このゾンビたちにアリナは玄弥を殺させるつもりだったのだが、どうやら射程距離があるらしくアリナに着いてきてしまった。
魔女やウワサのようには扱えないらしい。

「あーあ。せっかくキープしてた魔女もウワサもなくなってるし……」

アリナの固有魔法は結界の作成で、その中に多くの魔女、使い魔、ウワサを飼って保管していたのだが、それは没収されていた。
では改めてこのゾンビやクルールの生首をしまおうかと考えるが、そうすると魔力の消費がいつも以上に凄まじい。
結界の中に引きこもったりしては殺し合いが円滑に進まないからだろうか。
本当にイライラする。

「ま、でも……」

このクルールの姿は本当に美しい。これ以上劣化しないようにひとまず大事にディパックにしまっておく。
おそらくこれだけではないだろう。
クルールが死んだのは戦争≪ウォー≫だという。
ならば悪魔も彼女一人ではあるまい。
玄弥もまさかやけっぱちで彼女を喰らったということもなかろう……何らかの確証があって口にしたのだ。
デーモンに近しい何かをアイツは知っている。そういえば鬼、とか言っていた気がする。

「すっっっっごく欲しいヨネ。アリナのとびっきりのアートのために」


【C-4、国会議事堂近辺/1日目・深夜】


【アリナ・グレイ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]右腕負傷(魔法で止血)、痛覚遮断、魔力消費(小)
[装備]リンプ・ピズキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、クルールのゾンビ、アリナのゾンビ
[道具]基本支給品、クルールの生首(玄弥に齧られて頬などが欠損)@デビルマンG、ランダム支給品0〜1
[行動方針]
基本方針:レアなアートの材料が欲しい。
0:悪魔族クルール。とっても綺麗……
1:デーモンや鬼、アリナの知らなかった美しいアートの素材を探す。それを彩る絵の具やキャンバスも欲しい。
2:アイツ(玄弥)は鬼について口を割らせたら殺して赤い絵の具にしてやる……!


※参戦時期はマギウスが黒羽根ができる程度に組織を拡大して以降です。詳細な時期は後続の方にお任せします。
※結界内の魔女、ウワサ、使い魔は武装として没収されました。
※制限により結界を作成し中に人や物を入れようとすると魔力の消費量が大きく増大します。


【クルールの生首@デビルマンG】
アリナ・グレイに支給。
悪魔族元老院の両巨頭と謳われる最上位のデーモン、冷元帥クルール。
彼女の最期は原作漫画デビルマンの牧村美樹の最期をオマージュした凄惨なもので、デビルマン・フラムメドックに首を撥ねられ、狂喜に踊り狂う人間たちにその首や五体を晒されていた。
そのうちの生首だけがアリナに支給された。

【リンプ・ピスキットのDISC@ジョジョの奇妙な冒険】
アリナ・グレイに支給。
頭に挿入することでスタンド能力を身に着ける。
破壊力 - なし / スピード - B / 射程距離 - B / 持続力 - A / 精密動作性 - C / 成長性 - E
死んだ生物を見えない死骸として甦らせる能力を持っている。
蘇ったゾンビは、壁や天井を自由に歩くことができ、その本能から脳味噌を喰らおうとする。
死体の一部だけでも蘇生させることができなくはないが、うまくいくのか、どうなるかは持ち主にもこの能力を与えたホワイトスネイクにも分からなかった。

88 名無しさん :2019/12/26(木) 21:20:53 ID:sAiOcwgQ0
投下終了です

89 名無しさん :2019/12/26(木) 22:18:31 ID:iei9oqD20
投下乙です
なんか青髭を召喚してそうな趣味だなアリナ

90 ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/27(金) 01:41:44 ID:mZ8ZM18s0
大変遅くなって申し訳ございません!投下します!

91 血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/27(金) 01:43:08 ID:mZ8ZM18s0


一人の少年が街中を歩いていた。
味気ないレーションを時折噛りながら、周囲の気配を窺う。
そびえ立つビル群は墓標のように静まり返り、本来ならあるべき人混みのようなものは一切なかった。
建物のどこにも電気は点いていない、電源を入れれば点けられるのだろうか。
広い間隔で立つ街灯だけが淋しげな光を放っていた。

「殺し合いか、やべぇなぁ〜」
誰かが今にも少年を殺すかもわからぬ、そのような状況下で少年――デンジは呑気に呟いた。
「やべぇなぁ」
もう一度、デンジは呟く。
やはり、そこに悲壮感や恐怖、あるいは恐怖などの感情はなく、どこまでも脳天気なように思えた。

(どうすっかな、マジで)

デンジに殺人に対する忌避感はそれほど無い。
殺そうと思えば、知り合いでもなければ殺せるだろう。

知り合いがいた。
同僚であるパワー(彼は難しい漢字を読めなかったが、カタカナは読むことが出来た)
そして、職場の先輩である早川アキ
(少し悩んだが簡単な漢字なので、やはり読むことが出来た)

デンジは考えた。
――アイツの名字だろうと読めねぇ漢字は読めねぇ、
――川は三本線が引いてあるだけなので良い、早は日と十が合体していてややこしいんだよな。
――叶は口と十が横に並んでるのにな、早は日と十が縦だぜ。おかしくねぇか。
――気に食わねぇ名字だ、川川になればいいのに。

閑話休題。
デンジは名簿を読み、知っている人間の名を確認する。
同姓同名ということは考えられなかった、自分を呼んだんだから知っている人間を呼んだのだろうとシンプルに考えた。
何故、自分を呼んだのだろうか。
考えを巡らせたが、それはわからない。
デビルハンターという仕事をしている以上、どこで悪魔の恨みを買ってもおかしくはない。

「あ、そうか」
デンジは納得する。
悪魔の仕業なのだ、この殺し合いは。
なれば、わざわざ殺し合いなどしなくてもオババと名乗った悪魔を殺せば解決である。

「なんで悩んじまったのかな〜!最近生活が良くなっちまったもんで、変に色々考えちまったかぁ?」
(ニンジン食ってるもんなぁ俺、キャベツも食ってる、ビタミン取りまくってるしまぁ、しょうがねぇかぁ)
デンジの足取りは軽やかに、デイパックよりレーションの2個目を取り出し、咀嚼する。

「おっ、デンジじゃ」
「げっ、パワー」

冗談のように、あっさりとデンジは知り合いに再会した。
髪をセミロングにまで伸ばした少女。
イタズラっ子のように緩めた口元から伺える歯は鮫のように鋭利だ。
胸部は平らであり、その代わりであるかのように頭部からは角が2本生えていた。

その角が示すように、普通の人間ではなく、魔人であった。

「ちょっと、とまれ」
すたすたと自分の側に寄ろうとするパワーを制止するように、デンジは手を伸ばす。
「嫌じゃ!」
すたすた、すたすた、すたすた、その歩みは止まらぬ。
パワーがデンジに従う道理はない。

「お前、俺を殺すつもりだろ!」
「バカ!殺さんわ!」
「じゃあ、なんだよそれは!」
「関係ない!殺さん!」
パワーが片手に携えていたものは手斧であった。
片手で持てる程度の大きさであっても、人の頭などを砕くのに不足はない。

「ぜってぇ殺すだろ!」
「殺さんと言っているのがなぜわからん!これはたまたま持ってるだけじゃ!」
デンジが駆け足で逃げ出すのに、合わせてパワーも走り出す。
静かな夜の街に二人の靴音がやけにうるさく響き渡り、闇を染め上げるかのように荒く白い息が発せられた。

「この殺し合いに乗る気かテメェ!」
「乗らん!!」
「お前さっきからクソみてぇな嘘ついてんじゃねぇ!」
「わかった、乗ろうと思っておったが今は思っとらん!じゃから止まれ!」
「絶対殺すからやだ!」

二人は夜の街をひたすらに走り続けた。

92 血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/27(金) 01:43:39 ID:mZ8ZM18s0

(くっそ〜!キリがねぇ!!)
デンジは考える。
出来ればパワーのことは殺したくない。
死んでもしょうがない面はあるので、積極的に助けようとも思わないが、パワーを殺せば、
マキマ――彼の敬愛する女性が悲しむ。デンジはそう考える。

(ん、マキマさん……?)
マキマのミステリアスで憂いを帯びた顔をデンジが思い浮かべると同時に、脳に電撃が走った。
パワーを止める名案が閃いたのである。

「おい!パワー!名簿は読んだか!?」
デンジは立ち止まり、くるりと振り返って、大声で叫ぶ。

「名簿ォ?何か言うとったが、そんなもんは読まん!」

読まないのではなく、読めないのだろう。デンジはそう考える。
パワーはあまり、賢くない。

「マキマさんもこの殺し合いに参加してるぞ!」
「なんじゃとぉ!」

パワーが叫ぶと同時に、闇の中に白いものが浮かび上がった。
夜闇の中にあって、その全身が薄っすらと輝いているようである。
陽光に疎まれているかのような乳色の白い肌、色素のない銀の髪。
強膜は赤く、紅く、それは血の色だった。瞳孔が金色に妖しく輝く、魔性の証明だった。

雅と言う。吸血鬼と言う。

その雅の頭に手斧が突き刺さっていた。
デンジも、パワーも気づかなったが、雅はデンジの道の先に居た。
そして、今まさに姿を現そうとした瞬間に――パワーが衝撃のあまりに放り投げてしまった手斧が命中したのだ。

噴水のように血が溢れ出た。

「やっべぇ〜!殺っちまったな!」
「わ、わしは……わしは悪くないぞ!デンジが殺れって言ったんじゃ!」
「言ってねーよ!とにかく血だ!血ぃ止めろ!マキマさんに怒られんぞ!」
「いや……あのオババとか奴願いを叶えるとか言っておったな!今こそ下剋上のチャンスじゃ!
 悪いのデンジ!そこの男には死んでもらう!」
「そのオババとかいう奴がお前の願いを叶えると思ってるのかよ!この前言われたろ!」
「なっ……ワシの方が先に気づいておったが!?」
「いいから早く血ィ止めろ!」

わちゃわちゃと動き続け、
いざパワーが雅の元へ向かおうとした瞬間、雅は平然と立ち上がった。
手斧を引き抜き、地面へと放り投げる。

「……人間でも吸血鬼でも邪鬼でも無い気配、何なんだ、お前たちは」
「血の魔人、パワー様と愉快な下僕じゃ」
「あ〜〜死んでねぇ!!死んでねぇってことは多分殺して問題ねぇ奴だなぁ!」

突如として、彼らを包む闇が牢獄になったかのようだった。
吸血鬼の王、雅が発する雰囲気は鋭い。地獄とは、彼のいる場所なのだろう。
もしも、この場所にいるのが普通の人間ならば血を吸われるまでもなく失禁は逃れえぬ。

勿論、雅に対峙する者が普通の人間であるはずがなかったが。

93 血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/27(金) 01:44:23 ID:mZ8ZM18s0

「興味が湧いた」
すらりと、雅が銃剣を抜き払う。左に一、右に一。二刀流である。
その銃剣の本来の所持者の名はアレクサンド・アンデルセン、吸血鬼を殺す者である。
吸血鬼の王は両の手に吸血鬼殺しの武器を構え、悪魔と対峙する。

「俺は男に興味なんてねぇけどなぁ〜〜〜〜!!」
躊躇はない、そのような余裕はない。
デンジは本能的に、心臓から伸びるスターター・ハンドルを引いた。
重厚な音がした。始まりの音だった。

デンジの頭蓋を斬り裂き、内部からチェンソーの刃が現れる。
右腕を斬り裂き、左腕を斬り裂き、やはりチェンソーの刃が生じる。

激しい痛みと重厚なるエンジン音の中、彼は覚醒する。

雅を悪魔と呼ぶものもいる。
しかし、それは彼らが本物の悪魔を知らないだけのことだ。

チェンソーの機械を模した異形の頭部、両腕から突き出たチェンソーの刃。
チェンソーの悪魔はデンジであり、デンジはチェンソーの悪魔であった。

「先に言っとくけどよォ!俺の勘違いなら謝っとくぜェ〜!!」
「ハ、心配することはない……私はこの場の人間を皆殺しにするつもりだよ」
「そうか〜!だったら正当防衛って奴だなぁ〜〜〜!!!」

「ところで……先程の彼女はいいのか?」
雅が銃剣を構え、デンジが悪魔へと変じた時。
パワーの姿は既になかった。逃げていた。

「アイツに期待する奴ァ!バカってもんだぜ!!ハハッ!!つまりテメェは俺よりバカってことだな〜!!」
獣のごとく、デンジが雅へと迫った。
雅もまた、デンジに応じる。

(宮本明……私はずっと病に侵されていた。退屈だ、退屈というどうしようもない病だ。
 だが、この殺し合いに呼ばれ、お前がいると知った時……そして、今、この瞬間。宮本明、宮本明よ。)

雅は心の中で宮本明に語りかける。
吸血鬼の王は日本を滅ぼし、玉座へと座った。
しかし、玉座には何も無かった。ただ無限の退屈の日々だけがあった。

(私の退屈を殺しに来い、宮本明)

【F-2/1日目・深夜】

【デンジ@チェンソーマン】
[状態]チェンソーの悪魔化
[装備]なし
[道具]基本支給品(食料消耗済み)、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:主催の悪魔をぶっ殺して全部解決だぜ〜!
1.目の前の雅を正当防衛でぶっ殺す

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【パワー@チェンソーマン】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:最強のわしが全員ぶっ殺して願いを叶えて下剋上じゃ!
1.デンジと雅の戦いから逃げる
2.マキマが怖い

※参戦時期は永遠の悪魔以降

【雅@彼岸島】
[状態]健康(手斧による頭部粉砕)
[装備]アンデルセンの銃剣@HELLSING
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:宮本明を探す
1.デンジとの戦いを楽しむ

※参戦時期は部下が国会議事堂にクソみてぇな旗を立てた後(48日後の時系列)

94 血と吸血鬼とチェンソー ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/27(金) 01:44:37 ID:mZ8ZM18s0
投下終了します

95 ◆3g7ttdMh3Q :2019/12/28(土) 06:45:17 ID:fUPFk4kY0
早川アキ、ディオ・ブランドー予約します

96 ◆Mti19lYchg :2019/12/28(土) 19:12:42 ID:pL/iUc620
延長願います。

97 ◆yliPrzUV3E :2019/12/29(日) 02:06:13 ID:uujd92x20
間に合わないので予約を破棄します

98 ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:12:38 ID:KNzNhCgk0
投下します。

99 ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:13:31 ID:KNzNhCgk0
 島のとある地域。家が建ち並ぶが、そのどれもが真っ当な状態ではない。
 ここは既に人が住むのを放棄された村。
 壁に穴が開き、屋根が朽ちた板葺きの家が続く。
 その中を我妻善逸は歩いていた。
 強い意志を鋭い目に宿し、引き締まった顔で。
 
 善逸には、この場の殺し合いに乗る気は無いし、異形の人喰い――鬼がいるのなら討伐するのは当然と思い、弱い人がいるなら守る気でいる。
 だが、それらよりりどうしても優先すべき事がある。
 例えこの場に始まりの鬼であり、全ての鬼を生み出した鬼舞辻無惨がいて、善逸がその鬼を討伐する鬼殺隊の一員であるとしても。
 他の鬼殺隊隊士、炭次郎達には人々を守り無惨を討つという彼らの為すべきことがあり、善逸には善逸自身のやるべきことがある。それは無惨の討伐より優先される事だ。
 それは兄弟子の獪岳に対し会い為すべき事を為すため。名簿の中に名がなく、この場にいないのなら、必ず生き残って脱出する。
 覚悟は既に決めている。だが――

「俺はやるべきことがある……でもさ! やっぱり怖い物は怖いんだよ! なにあの婆さん、あっさり殺して生き返らせたり、変な馬鹿でかい手だしたり!」
 叫び、地面に四つん這いになってうずくまる善逸。鬼との戦いならまだしも、首輪といい、人の蘇生といい、虚空から現れた巨大な手といい未知の超常現象ばかりで善逸はすっかり普段通り自信の無い状態になっている。
 愛用の日輪刀も没収され、支給品は善逸の見る限り、武器に使えそうもない物ばかりだったのもそれを助長していた。
 救いは炭治郎たち鬼殺隊の仲間がいる事だが、近くにいない以上善逸の不安と恐怖が薄れる事も無い。
「せっかく禰豆子ちゃん日の光に出られるようになったのに、こんな事ってある!? ダメだきっと死ぬんだ俺死ぬ前に結婚したかった、夢であってくれよ、起きた時禰豆子ちゃんの膝枕だったりしたらもうすごい頑張るから! だから悪夢から覚めてくれーーッ!!」
 自身の叫び声が空しく消えていく最中、善逸の耳は後ろから歩いてくる人の音を聞き取った。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」
 善逸が声の向きに振り向いた先には、後ろはふわりと量がある髪を首筋辺りまで切り揃え、こめかみの部位は肩まで長い、金髪碧眼の美女がいた。

100 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:14:09 ID:KNzNhCgk0
◇ ◇ ◇
 カチュア・ラストルグエヴァは、ぼろぼろに朽ち果てた集落の道を、支給品である地図とコンパスを手に歩いていた。
 来ている服はオレンジ色の両胸部分にポケットがあるそっけないデザインのシャツに、同じ色でやはりそっけないデザインのズボン。
 一見、作業服に見えるが左胸元には『LB0006』と番号が振られたプレートがある。
 これは作業服ではない、囚人服だ。
 カチュアは無期懲役の囚人である。それもただの犯罪者ではない。マスコミから『ワンナイトキラー』と渾名された、出会い系であった男を殺し続けた『殺人鬼』である。

「これは新しい実験……ってわけでもなさそうやなぁ」
 カチュアは周囲を眺め呟いた。
 ここは以前、男の死刑囚たちと殺し合いをさせられた時の廃村より、さらに萎びた村だ。

 実験。そう、カチュア・ラストルグエヴァはある実験の被検体である。
 それは、ミラーニューロンの共感性を応用し、後天的に実在した殺人鬼の人格を植え付けるというものだ。
 その実験が成功した人間は例外なく10代の女性であり、普通の女子が一晩で殺人鬼に豹変するその凄惨さからギリシャ神話の怪物に例えて変貌は『メデューサ症候群』、発症者は『メデューサ』と呼ばれる。
 カチュアもそのメデューサであり、性に奔放な『昼』の人格と、性欲とサディズムが融合した殺人鬼の『夜』の人格を合わせ持っている。

「コンパスからすると……南に小高い山があるっちゅうことは、ここはB-2地区か」
 カチュアは次に名簿を取り出してチェックする。
「千歌と小夜子がおるな。うわ、あの変態組長もわざわざ生き返らせてまで呼んだんか」
 甘城千歌、鬼ヶ原小夜子。
 二人は自分と同じ殺人鬼の人格を植え付けられ罪を犯したメデューサだ。
 カチュアが名前を見て心底うんざりした名前。天童組組長、水野智己。
 自分達メデューサ全員を相手取った筋肉達磨の猛者であり、男女問わずアナルにこだわる変態である。
 変態組長は千歌によって船のポールに串刺しにされて死んだはずだが、あの神子柴のことだ。殺し合いにはうってつけと判断して、生き返らせてまで参戦させたのだろう。
 人の蘇生という超常現象は未だカチュアの身になじまないが、実際目撃した以上信じるしかない。
「とりあえず山沿いに歩いて、羽黒刑務所目指すか」
 行動方針を決めた所で、支給品のチェックに入る。
「お、ラッキー♪」
 支給品の一つは、苦無のセットだった。ナイフでの刺突や投擲を主な戦法とするカチュアにはうってつけの武器である。
 もっとも人格が変貌しなければ意味がないが、今のカチュアは自分の『夜』の人格を知っている。
 おあつらえ向きにそのための薬と衣装まで入っている。

 支給品のチェックを続けようとした途中で、変な高音の叫び声が聞こえてきた。
 叫びの方向に行くと、そこでは黄色の黄物を羽織った少年が崩れるように両手両膝をついていた。
「ちょっと坊ず、うずくまって大丈夫か?」

101 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:14:28 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

 話しかけられた善逸は、カチュアに向かって突進した。
 カチュアは焦った。しまった、殺し合いの場だというのに不用意に近づいてしまった。
 善逸は慌てるカチュアの胴に抱き付き。
「お願いしますお姉さん! どうか俺と結婚してください!」
 顔を上げ、カチュアに対しそんな台詞を言った。
「ハァ?」
 カチュアは頭が真っ白になった。この状況で助けならともかく結婚という言葉は、発想が飛びすぎている。
「意味分からへん。イカレてんのか、この状況で?」
「俺いつ死ぬか分からないんですよ! いやきっと九分九厘死ぬんですよここで! だから結婚してくれれば救われるんですよ俺のこと好きだから心配して声かけてくれたんでしょ頼みますよ!!」
 カチュアは思った。ここで結婚と言い出す意味は分からないが、混乱している事は分かる。
 それに、この少年が童貞だという事も分かる。
「結婚は無理やけど、一発ヤルなら別にかまへんで」
 そこでカチュアはさらに突拍子もない事を言って少年の意表を突くことにした。元々カチュアは性に奔放だ。実際にやって落ち着いてくれるなら安いものだ。
「……あの、やる、って……床の方で?」
「せや。そこの家に入って5分もあれば十分やろ」
 カチュアは親指で近くの家を指した。
「本当に?」
「ホンマに」
 数秒間、互いの動きが止まる。辺りは風が木の葉を揺らす音のみになった。
「違うんだって!! いや、違くはないよ!! 本音を言えば俺も確かに床入りしたいよ!! でもそういうんじゃないんだよ!!」
 善逸はカチュアの腰に顔をこすりつけた。
「俺、捨て子だったからさ! 家族の団欒とか温かい家庭ってやつを知らないんだよ!
 だから、きちんと結婚して所帯を持ってそういうのを作りたいんだよ!」
「こないなとこで所帯持ってどないすんねん! 次はあれか、子供でも欲しいってか!? 5分でヤって5分で産めちゅうんか!?」
「出来るんですか!?」
「できるかボケェッ!!」
「平手打ち!?」

102 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:15:19 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

 互いに言い合い、善逸の抱き付きをカチュアが突き放そうとし、それらを繰り返して数分後。
「すみません、ちょっと混乱してました……」
「混乱で結婚言い出すのもブッ飛びすぎてるけどな」
 ようやく落ち着いた、両頬が赤くなった善逸とカチュアが改めて向かいあった。
「俺には禰豆子ちゃんがいるのに、昔みたいにいきなり結婚を申し込むなんて禰豆子ちゃんに失礼な……」
「彼女おるんかい。それにどっちに対して失礼思うとるんや」
 はあ、とカチュアは息を吐いた。
「大体家族なんて、そんなええもんばかりちゃうで」
 そう言ってカチュアは苦い顔になった。
「そういえばお姉さん、外国人みたいだけど日本語お上手ですね」
「ワタシはお母んがロシア人やけど、生まれも育ちも京都の外れやさかい。お母んはワタシを生んですぐロシアに帰ったけどな」
「そんでワタシは日本生まれの日本人なのにお母んゆずりのこのなりやろ? 子供の頃はよくいじめられてな、泣いて帰るとお父んが釣りに誘って慰めてくれたんや」
 人差し指で胸を刺し、カチュアは善逸の表情を見る。善逸は羨ましそうに微笑んでいた。
「で、中学に入るころになると、そのお父んに無理やり犯されてな。それはもう毎晩毎晩」
 あっけらかんとしたカチュアに対し、善逸の表情は目に見えて変わった。
「結局耐え切れず、16の時に家を飛び出し、それ以降落ちに落ちて今ではこの通り、立派な無期懲役の囚人や」
 涼しい顔を変えず、カチュアは手首をひらひらと振った。

 カチュアはただで自分の身の上話を聞かせたかったわけではない。同情を寄せられることを期待していた。
 何しろカチュアは、ただの囚人ではない『殺人鬼』である。
 幸いなことに目の前の少年は知らなかったようだが、この状況で殺人鬼など信用されるはずもない。
 そのため、自分が犯罪者に堕ちた経歴で同情され、信用を買おうとした。

103 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:15:38 ID:KNzNhCgk0
 カチュアが思う以上に同情されたのか、善逸は暗い表情になった。
 しばし話が止まった後。
「俺は悪い事ばかりじゃなかったですよ」
 呟くように善逸が言った。
「俺は女の人に騙されて借金作って、それを払ってもらえる代わりに……ある剣術の内弟子になったんです」
 善逸はあえて鬼についての説明は避けた。信じてもらえるとは思わなかったからだ。
「師匠の爺ちゃんは怒るしよく殴りすぎだったし、兄弟子の獪岳は俺を嫌ってやめろと責めてたけど、爺ちゃんは決して俺を見捨てはしなかったし、獪岳は誰よりもひたむきな努力を続けてきたのを見てきました。
 そんな二人と囲む膳は、笑いとかはなかったけど、それでも悪い雰囲気じゃなかったです」
 それは遠い、届かない思い出のような口調だった。
「だから、俺はどうしても獪岳に会わないといけない。会ってやるべきことがある。この名簿の中にいない以上必ず生き残って脱出する」
 その言葉で善逸は覚悟を思い出したのか、目は硬い決意の込められた鋭い瞳に、表情も今までより固く引き締まった。
 表情が一変し、拳と強く握りしめ腹の据わった様子の善逸を見て。
『こいつ、アホでヘタレやけど使えるか?』
 そうカチュアは考えた。
「ワタシは多分同じ囚人の二人が向かうと思う羽黒刑務所へ行く気やけど、アンタはどないする?」
「俺も一緒についていきますよ。最初は仲間が全員知っている産屋敷邸に行こうと思ったけど、よく考えたら炭次郎は今頃人助けしてるだろうし、伊之助はそもそも漢字読めないんで二人とも行けないでしょうから」
 他の鬼殺隊隊士についても、善逸は考えていた。不死川玄弥は同期だけど、知っているのは炭治郎の方だし、時透無一郎は柱稽古で会ったきり。宇髄天元は強いけどあまり会いたくない。
 以上の理由で、善逸はカチュアと共に行くと決めた。
「いや、この地図だとワタシらがいるのはB-2地区やから、産屋敷邸を回ってから羽黒刑務所に向かった方がええんちゃう?」
 善逸が共に行くことに、カチュアは内心幸運に思いながら提案した。
「いいんですか? 俺は仲間と出会えるとしたら頼もしいですけど、お姉さんの方が遅れますよ?」
「まあ、大丈夫やろ。片方は身体能力高いし、もう片方は知恵が回るから二人とも強敵と出会ってもうまく逃げ続けるくらいできる思うで」
「結構知ってて信頼しているんですね。その人達って友達ですか?」
 丁度自分にとっての炭次郎と伊之助のように、と善逸は思って尋ねた。
「友達……? ……そうやね、うん、友達や」
 カチュアは意表を突かれたが、友達と言われればそうなのだろう、と思った。
 ここに呼ばれてはいない同じメデューサの槇村霧子のように大声で叫ぶ気は無いが、同じような経過を経て罪を負わされ、互いに殺し合い、殺しをさせられる。
 そんな同じ境遇を共有できる仲間だ。
「で、この名簿にある甘城千歌と鬼ヶ原小夜子がそうなんやけど……なんて言ったらええか……二重人格、というやつでな。
 おとなしい方が表に出てる間はええんやけど、凶暴な方やとアンタがどうなるかわからへんから、出会ったらワタシに話し任せてくれんか?」
「いいですよ。俺も仲間に会ったらカチュアさんを紹介する前にいくつか話しします」

 カチュアは内心ほくそ笑む。殺人鬼と知られずに信用を得る作業はある程度うまくいった。一緒に行動するおまけつきだ。これで善逸の行動を少しはコントロールできる。
 これで『夜』の殺人鬼にならなくてもひとまずは上手くいくだろう。

 支給品の中には、殺人鬼の人格の『スイッチ』を入れるための服がペン型注射器の発火剤と共にあった。
 発火剤は3本。1回で5時間は『夜』の人格になれるとある。打ち方はキャップを外し、底面を身体に押し当て上部を音が鳴るまで半回転させ、頂点のスイッチを押す、というものだ。
 千歌の方はよほど追い詰められない限り、自分からは打たないだろうが、小夜子は千歌を探し守るため、ほぼ間違いなく直に打っているだろう。
 カチュア自身は、支給品のチェックが終わった時点で打とうかと思っていたが、善逸との出会いで考えを変え、危険が迫るまでは取っておく方針に切り替えた。
 元々殺人鬼の人格になっても、カチュアの戦法は罠を用意して、仕掛けて嵌める殺り方だ。近接戦でもナイフで戦えないことは無いがそれほど強くは無い。
 善逸が一緒についてくるなら、最低でも囮には使えるだろう。強いのなら万歳だ。

104 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:15:56 ID:KNzNhCgk0
「じゃあ、ワタシちょっと着替えるで」
「あ、はい……え、ええ!?」
 カチュアは囚人服を善逸の目の前で脱ぎ、裸身をあらわにした。
 その姿のままデイバックから『スイッチ』であるケープコートのセットと薬、苦無を取り出し、薬を服の胸元に、苦無をレッグホルスターに仕込んでおく。
 続いてレッグホルスターを装着し、肌の上から直接コートを着込みベルトで止めて、ケープを羽織りブーツを履く。
 最後に毛皮の帽子、パパーハを被り着替えを終えた所で善逸を向き、そこで目を見開いた。
「ちょい待ち、何で泣いてるん!?」
 善逸は陶然とした表情のまま、はらはらと涙を流していた。
「……こんな夢のようなことが俺に起きるなんて……。
 ……そうか、俺はもうすぐ死ぬんだ……」
「ワタシのストリップ見て、なんでそないなネガティブ反応やねん!」
 善逸を利用するためのサービスのつもりだったのに、予想外の反応に驚いたカチュアは善逸の肩を掴んだ。
「さっきの決意はどないしたん!? もっと元気だしいや! う、あかん、余りのネガティブさで何かワタシまで泣けてきた!」
 泣き続ける善逸に対し、カチュアは目元を拭きながら善逸の肩を揺さぶった。

105 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:16:18 ID:KNzNhCgk0
 ◇ ◇ ◇

「すみません、ちょっと混乱してました……」
「それ、さっきも聞いたなぁ」
 数分後、ようやく泣き止んだ善逸に対し、カチュアはあきれ顔になった。
「まあ、落ち着いたなら次はアンタの武器に使えそうなもの、探してみよか」
 苦無を見た善逸によると、善逸には支給された武器が無いというので、家に入り何かを物色してみる事にした。
 剣士というならば、中に箒とか、囲炉裏の灰掻き棒でもあれば善逸も戦えるのでは、という理由だ。
 二人はまず入口の近くに傘立てがないかと思い、探してみると目当てのものはすぐ見つかった。竹で編んだ深い籠だ。
 ただし、それには傘ではなく一振りの日本刀が差さっていた。
「……刀ですよね、これ」
 善逸があまりにも想定外の物に確認を取るよう、カチュアに話しかける。
「……刀やな」
 それに対しカチュアは善逸の言葉を繰り返した。
「いやいや、ちょい待ち。何で家の入口に傘みたいに刀が差さってるんや。おかしいやろどう考えても」
 カチュアは家を出て、隣の家に入る。すぐ善逸にカチュアの声が聞こえた。
「こっちにもあったで。あの婆、本気で殺し合いさせる気なんやな」

 ここに来れば、まともな武器を支給されたかった参加者でも問題ないという事か。
『千歌と小夜子の為に二本持ってくか』
 カチュアはそう思い、籠から刀を取り出した。

 二本は重いな、一本にしとこか。と、カチュアが独り言をつぶやいている間、善逸は刀身を確認しながらカチュアのいる方を見て思った。

 彼女が俺に話す時に聞こえる『音』は、今まで俺を騙してきた女の人たちと同じ音がした。自分を利用しようとする音だった。
 だけど、彼女が『友達』と言った時は、少し寂しくて、そして楽しくて、それでいて悲しい音がした。
 彼女が生き残るために俺を利用するとしても、俺はその友達に会いたいという思いだけでいい。それだけで彼女を信じられる。

 探索を終えた二人は、腰に刀を差した状態で並んだ。
「ほな行こか。ええと……」
「はい、あ……そういえば、名前まだ聞いてませんでしたね」
「ああ、そやな。初対面の女に名前聞く前に結婚申し込むなんてどういう神経しとんねん」
 カチュアは善逸に向かって右手を差し出した。
「ワタシはカチュア・ラストルグエヴァや。カチュアでええで」
「俺は我妻善逸です」
 善逸が遅れて右手を上げたところ、カチュアはぐいと善逸の手を引き寄せ、両手で包んで笑顔を見せた。
「あんじょうよろしゅうな、善逸」
 善逸は見る見るうちに顔が真っ赤になり、カチュアの手を上から握り返した。
「ハ、ハイ―ッ!! よろしくお願いします、カチュアさん!!」
 カチュアは善逸の女好きにつけこむための行動とはいえ、予想以上の反応に思わずため息をついた。
「善逸、自分その童貞臭何とかせんと結婚できへんで。折角顔は悪うないのにその態度だと女から騙されるのも分かるし、好きな子からも嫌われるやろ、絶対」
「グハッ!」
 カチュアの言葉のナイフが善逸の胸に突き刺さり、善逸は思い切りのけぞった。

106 眠る蛇と眠れない鬼狩り ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:16:41 ID:KNzNhCgk0
【B-2北・集落/1日目・深夜】

【カチュア・ラストルグエヴァ@サタノファニ】
[状態]健康、『昼』の人格
[装備]日本刀、藤の花の毒苦無×20@鬼滅の刃、発火薬@サタノファニ
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、発火薬×2
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:千歌、小夜子との合流。
2:そのために産屋敷邸を経由して羽黒刑務所を目指す。
3:生き残るため、そして殺人鬼の話を広められないよう、善逸を利用する。

※参戦時期は対天童組戦、懲罰房からの復帰の後です。

【我妻善逸@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]日本刀
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3(善逸が見る限り武器に使えそうなものは無い)
[行動方針]
基本方針:ゲームから脱出する。鬼を倒し、人を守る。
0:脱出し、獪岳に必ず会う。
1:カチュアを守る。
2:善逸、伊之助を含めた隊士達との合流。
3:鬼を斬るための日輪刀を探す。

※参戦時期は柱稽古の最中です。

※B-2地区の集落は彼岸島の村なので、刀が一軒ごとに置いてあります。

107 ◆Mti19lYchg :2019/12/30(月) 17:17:00 ID:KNzNhCgk0
投下終了です。

108 名無しさん :2019/12/30(月) 19:08:43 ID:heVwUzhk0
投下乙です
善逸は気絶したらそっちの方も上手くなりそうだ

109 ◆Mti19lYchg :2020/01/01(水) 00:11:04 ID:jfgCppzU0
まとめに書き込む際に、いくつかおかしな点を修正しました。

110 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 00:56:55 ID:evCBF5g20
明けましておめでとうございます。
皆様投下乙です

>逸材の花より挑み続け咲いた一輪が美しい
支給品が玄弥を追い詰めにかかってる...
クルールの生首にうっとりして齧られた後も「まあこれはこれで芸術的にあり」となるアリナ先輩が本当にアリナ先輩すぎる。少しはフールガールのことも思い出してあげてください。
早速活躍したクソみてえな旗や玄弥とアリナ先輩の熱いバトルにとてもワクワクしました。
クルールという仮にも美少女の顔を貪る玄弥、第三者の視点からみたらかなりおぞましい絵面になってそう。
しかし友好関係を築いた炭治郎とかりんに対してこちらは正面衝突とはなんとも皮肉な...先輩が原因でしかないけれど。


> 血と吸血鬼とチェンソー
こいつら本当にブレなくて完全にチェンソーマンの原作回みたいになってて凄い。
特にパワーちゃん、会って速攻デンジを騙して殺そうとするわ誤殺を押し付けようとするわ開き直って下克上宣言するわ相手が強そうだと速攻で逃げ出すわでやりたい放題すぎる。
「アイツに期待する奴ァ!バカってもんだぜ!!」デンジのこのセリフで今回のパワーちゃんの8割くらいが詰まってて笑う。
嫌でも存在感が強くなる雅様すら飲み込むこのバカコンビ、好きです。

>眠る蛇と眠れない鬼狩り
カチュアの下品エロムードに引っ張られず自分の空間に引き込んだ善逸、エライぞ(?)
「こないなとこで所帯持ってどないすんねん! 次はあれか、子供でも欲しいってか!? 5分でヤって5分で産めちゅうんか!?」「出来るんですか!?」
「できるかボケェッ!!」「平手打ち!?」
このくだり、鬼滅の簡単作画で脳内再生されて笑いました。
腹に一物抱えてるのを知りながら、友達に会いたいという思い一つがあるだけでカチュアを護ろうとする善逸がかっこいい。

投下します

111 エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:00:00 ID:evCBF5g20

青年、花京院典明は困惑していた。

宿敵・DIOの部下であるテレンス・T・ダービーとの魂を賭けたゲーム対決で敗北し、急激な虚脱感に襲われたのは覚えている。
だが覚えているのはそこまでだ。
気が付けばあの妙な会場に呼ばれ、老婆に殺しあえと言われて。とにかく主催である老婆を倒そうとした途端、琵琶の音と共に意識が遠のいて。
情報が多すぎる。これで困惑するなという方が無理な話だ。

(いったん整理をしよう。たしかあの老婆は支給品を配るといっていたな)

キョロキョロと辺りを見回せば、小さなデイバックが落ちていた。
花京院は傍の木の陰に隠れてその中身の検分を始めた。

「これが僕の支給品...ん、これは名簿と地図か」

名簿を目にした彼に更なる困惑が降りかかる。

「承太郎にジョースターさん!それに...DIO!?」

空条承太郎とジョセフ・ジョースター。
花京院典明が初めて心より信頼した友人であり大切な仲間たち。

DIO。
承太郎たちの旅に同行したそもそもの目的。
植え付けられた屈辱を晴らすため、ジョセフの娘であり承太郎の母であるホリィの命を救うために倒すべき男だ。
名簿にはディオ・ブランドーと記載されているが、これはかつてジョセフから聞かされたDIOの本名だったはずだ。

(館で分断され、テレンス・T・ダービーと戦っていたメンバーだけがこちらに来ている。つまり、承太郎たちもゲームに負けたのか?
奴は人形に魂を入れられた者を自在に操れるのか?しかし、それではDIOまでもこちらにいるのが不可解だ)

テレンスに負けた者がこちらに飛ばされたと仮説を立ててみるが、しかしDIOがいる時点でこの説は不自然な点が多すぎる。
テレンスがDIOを裏切ったとしてもタイミングがおかしいし、そもそもあの慎重なDIOがゲームの達人であるテレンスとゲームで勝負などするだろうか?
人質をとったにしても、最も縁が深いであろうエンヤ婆にさえ、利用価値がなくなったと判断すれば、肉の芽を仕込み殺してしまうような男に通用するするとは思えない。
DIOほどの力があり、人質も意味を為さないのであれば、そのままテレンスが殺されるだけだ。
よって花京院は、この殺し合いとテレンスは無関係だと考える。あるとしても、それはテレンスが脅迫されて従っているという構図だろう。


(いや...気になる名はそれだけじゃない)

ジョナサン・ジョースター。ロバート・EO・スピードワゴン。

前者は、承太郎とジョセフの先祖にあたり、100年前に吸血鬼と化したDIOと戦った男だ。
確か彼はDIOに首から下、つまりは身体を丸ごと乗っ取られて死亡したと聞かされている。

ロバート・EO・スピードワゴン。
世界的に有名な財団の創始者の名前だ。ジョースター家に対して非常に協力的であり、花京院も目の治療や物資の支援などの恩恵を受けたこともある。
だが、彼もまた心臓発作で亡くなっていた筈だが...。

(神子柴は死人を蘇らせていたが、彼らも蘇らせられたのか?)

死者の蘇生は見せられた。
だが、見せしめの青年は身体がその場にあったから復活できたが、DIOに身体を乗っ取られているジョナサンが生き返られるのかはわからない。
スピードワゴンにしても、彼の享年は80歳を超えていた筈だ。
そんな彼を蘇らせてまで殺し合いに放り込むだろうか?順当にいけば、すぐに脱落してしまうだろう。

(わからないことだらけだ...とにかく情報を集めなければ!)

花京院は決して殺し合いに乗るつもりはない。
それどころか、二度とこんなバカげたことを起こさせないように神子柴を倒そうとすら考えている。

しかし、現状では神子柴の摩訶不思議な能力に対抗する術は思いつかない。
地図を信用するならば、奴は国会議事堂にいるようだが、あの巨腕や空間移動(?)の術を破る術がなければ恐らく無駄死にとなるだろう。
一人で向かうのは愚策。
まずは承太郎やジョセフと合流する。そして他の参加者にも協力を呼びかけ、奴を倒す手がかりを見つけ出さなければ!

花京院は荷物を纏め立ち上がろうとする。

―――そんな彼に被さる影。

112 エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:00:19 ID:evCBF5g20

「っ!」

他の参加者の気配を察知した花京院は反射的に振り返る。

月光に照らされ、花京院へと影を伸ばしていたのは少女だった。

緑色の髪に、大きな盾と胸当てに身を包んだ、どこかメルヘン風味なRPGの戦士のような恰好だ。
少女は武器や盾を構えるでもなく、さほど距離をとっているわけでもなく、ただじっとこちらを見つめている。
敵意はない、とみていいのだろうか。

(罠を仕掛けているのなら僕が彼女の存在に気が付くような素振りを見せるはず...こちらから接触してみるか)

こちらの存在に気が付きながらもなにもアクションをしてこない彼女に、花京院も警戒心が高まるが、このまま黙っていたところでどうにもならないだろう。
花京院は意を決して声をかけた。

「そこのきみ、僕の名前は花京院典明。僕はこの殺し合いに乗っていない。少し話を聞かせてもらいたいのだが」
「っ!?」

少女は驚き慌てたように盾をかざしその後ろに身を隠し、上部にある覗き穴からこちらをじっと見つめ始めた。

(警戒されているな...仕方ない)
「...わかった。きみが落ち着くまで僕はここにいる。接触する気が起きたらなにか合図をくれないか。信用できなければそのまま立ち去ってくれても構わない」

こちらから譲歩し彼女に選択を委ねさせる。
こちらを見つめていたことから、彼女もなにかしらの情報を欲しているのは火を見るより明らかだ。
ならば警戒心さえ薄められれば情報交換は容易いはずだ。
その考えのもと、花京院は彼女の返答を待った。

十秒。二十秒。三十秒...

沈黙が場を支配する。

もうすぐ一分が経過するといったところで少女は口を開いた。

「わ、私、二葉さなといいます。あの、花京院さんも魔法少女なんですか?」

魔法少女。
殺し合いにそぐわぬそのファンタジーチックな可愛らしい単語に、花京院の困惑はますます深まるばかりだった。

113 エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:01:20 ID:evCBF5g20



傍に立っていた城に身を隠し、花京院とさなは腰を落ち着け、互いの情報を交換していた。

さなは語った
己がキュゥべえという生物と契約し魔法少女となり、その願いが作用し、魔法少女以外には存在を認知できなくなっていることを。

「それで気付かれないはずだとああも無防備に見張っていたということか...」
「あの、すみません。私からどう接触すれば気付いてくれるか思いつかなかったので...」
「いや、責めてるわけじゃないんだ。僕もきみと同じ立場なら同じ方法をとっただろう」


魔法少女―――俄かには信じがたいし、始めは自分やアヴドゥルのような天然のスタンド使いだと思った。
が、さなが変身を解除して制服の姿に戻るのも見せてもらったうえ、キュゥべえという他生物の名前も出てきている。
妄想と現実の区別がついていないにしては会話も成り立ち違和感を覚えるところもない。
となれば、自分やスピードワゴン財団が知らないだけでそういう存在がいると考えるべきだろう。スタンド使いにせよ、基本的に一般人が知ることはないのだから。

「あの、本当に魔法少女じゃないんですよね?」
「ああ。僕は御覧の通り男だし、魔法少女に関わったこともない」
「じゃあ、なんで私が見えたんでしょうか?」
「......」

花京院は己の口元に手を添え考える。
スタンドは基本的にスタンド使いにしか認識できない。これだけ見ればさなの魔法少女もスタンド使いの派生と捉えることもできる。
しかし、それはあくまでもさなに当てはまるだけ。他の魔法少女は誰にでも認識できるらしい。

(...確認してみるか)

花京院は、右手の甲をさなに向けて差し出した。

「いいかい、この手を見ていてくれ」

さなは、言われた通りに差し出された手を見つめる。


―――ブンッ

「!?」

さなは己の目を疑った。花京院の腕から緑色の別の腕が浮き出ているのだ。
そのまま彼の背中からぬるりと姿を現した像を見て、さなの警戒心はさらに高まる。

114 エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:02:07 ID:evCBF5g20

「魔女...ウワサ...!?か、花京院さん、こっちに来て盾に隠れてください!」
「大丈夫。落ち着いてくれ。これは僕の力だ」
「えっ?」
「スタンド...精神エネルギーが作り出すパワーある像だ。僕以外にも使える者たちがいる」

スタンドを引っ込め、花京院は再び思案にふける。

(やはり見えていた...となると、僕のスタンドも彼女も、神子柴に干渉され他の参加者にも認識できるようにされているのだろう)

よくよく考えればだ。
スタンドやさなのように、他者に認識されず一方的に攻撃を仕掛けられる者は殺し合いにおいてアドバンテージが働きすぎている。
神子柴は、首輪は強い衝撃を与えれば爆発すると言っていた。
つまり、花京院が己のスタンド『ハイエロファントグリーン』を潜航させ、破棄力の高い必殺技であるエメラルドスプラッシュを近距離で首輪に向けて放てばそれだけで決着が着いてしまう。
そんなもので優勝する様を『殺し合い』というゲームにおいて観たいと思うだろうか?
もしもそんな映画があれば途中退席する者が後を絶たないだろう。

(どうやってその調整をしているかは...いまは置いておこう)

現状、さなと花京院の分の情報しかないため『これだ!』と断定するのは難しい。
それならば、いま必要なのは知人たちとの合流と首輪を如何に解除するかだ。
首輪さえ外してしまえば参加者たちのリスクは格段に減り、殺し合いをする必要も無くなるからだ。

「さて...ひとまず知人たちを探しに行こう。僕の知り合いはジョースター邸に向かうかもしれない。一応、名前が入っている施設だしね。君の知り合いの向かう場所に心当たりは?」
「えっと、確かまどかさんとほむらさんが見滝原中学校の出身だと言っていたので、そこに向かうかもしれません」
「見滝原中学校...ちょうどジョースター邸の近くにあるな。僕らの場所からもそこまで遠くはない。よし、まずは中学校から向かおう」

花京院に促されるまま、さなは荷物を纏めて彼についていく。
その背中を見つめつつ思う。

さなは本来ならば花京院とは会話すらできない筈だった。
誰にも知られず、触れ合えず、独り孤独に生きていく筈だった。
けれど、この殺し合いの場ならばこうして触れ合える。優勝すれば、もうあんな寂しさを味わわなくてよくなる。
そのことに悩み苦しんだことは確かにあった。

(でも、もういいの)

それでもさなは殺し合いを否定した。
例え『人』と触れ合えずに生きることになっても構わなかった。

彼女はもうとっくに救われていたから。

(アイちゃんは私を生かしてくれた。...その意味は、解ってるから)

人工知能のウワサ―――アイ。
人間でも魔法少女でもない彼女だが、さなの初めての友達だった彼女。
彼女は背中を押してくれた。自分を必要としてくれる人と共に生きてと。
そんな人はいないだろうと諦めていたけれど、それこそが幻想だと教えてくれた。
弱虫で、ダメな自分でもちゃんと見てくれる人たちが、必要としてくれる人たちはいてくれた。
その人たちはきっと理不尽で残酷な絶望にも負けないだろう。
もしも挫けそうになっても、自分が護ればいい。盾になればいい。
彼女たちと共にいられる日々を、彼女たち自身を護れればそれでいい。それが、さなの戦う理由だった。

(いろはさん、やちよさん。絶対に、絶対に守りますから!)

115 エメラルドの眩しい決意 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:03:23 ID:evCBF5g20


ここに孤独な青年と少女があった。
青年は己の『異常』に気が付いて周囲への壁を作り独りになった。
少女は己の『劣等』に打ちのめされ周囲から己を切り離し独りになった。

互いに孤独であったのは同じだが、その原因は真逆。彼ら同士、真に互いを理解することは難しいだろう。

けれどそれでも共有する思いは同じ。だからこそ、同じ道へと進める。

それは、己にとっての『特別』を最期まで護ること。

仲間であり恩人。
友であり家族。

それを護る為に命を懸け、彼らは戦う。その全てに悔いはないだろう。





【B-7/ミッドランド城/1日目・深夜】

【花京院典明@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを破壊する。
1:承太郎、ジョセフと合流する。ジョナサン・ジョースター、スピードワゴンも気になる。
2:DIOを倒す。
3:さなの知り合い(いろは、やちよ、まどか、ほむら)を探す。

※参戦時期はテレンス・T・ダービーに負けて人形に魂を入れられる直前です。

【二葉さな@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
1:いろは、やちよ、まどか、ほむらと合流。
2:花京院の知り合い(承太郎、ジョセフ)との合流


※参戦時期はマギレコ本編8章以降です。

116 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/02(木) 01:09:53 ID:evCBF5g20
投下終了です

佐神善、ジョセフ、フロイドを予約します

>>23
の予約期限が延長分も過ぎていますので、1/4日の23:59までなにも反応が無ければ予約破棄という形になりますのでよろしくお願いします
予約を延長する場合は再延長の申請をお願いします

117 ◆3g7ttdMh3Q :2020/01/03(金) 12:33:46 ID:c8jR6U.o0
延長させていただきます

118 ◆IOg1FjsOH2 :2020/01/03(金) 21:35:10 ID:8jd4sgPk0
鬼舞辻無惨を予約します

119 ◆A2923OYYmQ :2020/01/05(日) 00:21:58 ID:VYIEjnA20
佐倉杏子を予約します

120 クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ :2020/01/05(日) 18:42:50 ID:VYIEjnA20
とうかします

121 クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ :2020/01/05(日) 18:43:10 ID:VYIEjnA20
それは 武器と言うには あまりにもクソすぎた
大きく 不細工、 重く そして クソすぎた
それは 正に クソみてぇなシロモノだった

「何だ…コレ?」

佐倉杏子の口から、呆然とした呟きが漏れる。
佐倉杏子に与えられた武器、それは世間一般でいうところの【旗】だった。
旗竿の下部は切り取られたのか、鋭利な斜めの切断面をみせており、このままでも槍として使えそうだった。
しかし、そんな事は今はどうでも良い。肝心なのは旗である。

「ウワーイラネ」

旗にプリントされていたのは笑顔の男。一目見てクソみてぇだと思った杏子は、旗を外して捨てようとして、

「外れねえ!?」

外れない旗というクソみてぇな事態に悪戦苦闘していた。

「どうなってるんだよ!?チクショウ!!」

ポイっと捨てて行こうかとおもったが、襲われた事を想定すれば、やはり武器になるものは持っていきたい。
変身しておけば備えにはなるが、魔法少女の真実を知った今となっては、緊急時でも無いのに変身し続ける気にならない。
やはり持っていくしかないだろう。気は乗らないが。こんなものを振り回すのは、アラサーになっても魔法少女(?)やるレベルで恥ずかしいが。
杏子は溜息を吐いて、旗をクルクルと巻いて立ち上がると、ガサゴソと名簿を広げる。

「チッ…それにしても何だってんだ?インキュベーターの仕業か?」

奴なら…やるだろう。あの胸糞悪い顔で、「効率よくエネルギーを集める為」とか吐かして。
確かに殺し合いなんてシロモノ、魔法少女を効率良く絶望させるのには最適だ。ましてやあんな餌をぶら下げられれば。

「……….………………私が居て、マミが居て、ほむらが居て、まどかがいて………。さやかが居ないのはそういう事か………」

巴マミ。杏子の知らぬ所で、魔女に────魔法少女の成れの果てに殺された魔法少女。

美樹さやか。杏子の目の前で魔女となり、救おうとして果たせなかった魔法少女。

佐倉杏子。美樹さやかを救おうとして果たせず、諸共に死ぬことを選んだ魔法少女。

うち2人が、生き返って、此処にいる。

122 クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ :2020/01/05(日) 18:44:19 ID:VYIEjnA20
杏子は嗤う。獣の様に、奴等の思惑を見破ったと言いたげに。

────さやかを餌にして、私に殺して回らせようってか!!

杏子は足元の石を勢い良く蹴り飛ばした。

「残念だったなぁ…。お前たちの思い通りになんてなるもんかッ!」

「このクソ忌々しい殺し合いを必ず止める。そして奴等にキッチリと落とし前を着けてやる。
私とさやかをこれ以上コケにすることを許してたまるかってんだ!」

しかし、である。決意と覚悟を決めたとはいえ、まず如何するべきか?闇雲に動いても仕方が無い。

「マミかまどかを探すか」

先ずはマミと合流する。ほむらはその後だ。性格的にも、能力的にも、信用できるマミと違って、ほむらは剣呑だ。どういうスタンスか分からない限り、うかつに近づくのは危険だろう。
だが、ほむらはバカでは無い。如何なるスタンスであれ、自分とマミが一緒にいれば、襲ってきたりはしない筈。
まどかは………、戦力にはならないが、ほむらが執着している相手だ。一緒に居れば、ほむらとの交渉に役に立つだろう。

それに、さやかの友達だ。放っては置けない。



杏子はクソみてぇな旗を携えて、適当な方角へ歩き出した。


【佐倉杏子@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]健康/ソウルジェムの濁り。無し
[装備]クソみてぇな旗(初代)@彼岸島シリーズ
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
基本方針:殺し合いを止め、黒幕を倒す。
0:巴マミと合流
1:暁美ほむらとは、マミかまどかと合流するまで逢いたくない
2:現在適当な方角へ移動中です
3:必要時以外は変身したくない

アイテム紹介:
クソみてぇな旗(初代)
吸血鬼達が国会議事堂に立てていた雅様フラッグ。
現在立っている二代目を設置する際邪魔なので、ザンッ→ポイッとされたのをリサイクルしたもの。
なお旗をポールから外すことは絶対に出来ない。

123 クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ :2020/01/05(日) 18:44:44 ID:VYIEjnA20
投下終了です

124 名無しさん :2020/01/05(日) 19:38:19 ID:ZXpfnxOQ0
クソ人間のクソ書き手め…雅様の神々しい旗をクソみてぇだと?許せねェな……
それと正しくはクソみて「ェ」な旗だぜガハハハ!!

125 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/05(日) 23:36:30 ID:q/WWKWII0
猗窩座、ウォルター・C・ドルネーズ予約します

126 クソみてぇな事態 ◆A2923OYYmQ :2020/01/06(月) 07:10:49 ID:Vv0s3yUk0
>>124
クソみてぇなを一括変換したからだよチクショウ!

御指摘ありがとうございます
wikiに修正して、書き忘れていた参戦時期追記して載せておきました

127 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:17:46 ID:JK2yaUdQ0
投下乙です
>クソみてぇな事態
切られてなお武器として戦おうとするなんて...雅様...なんて神々しいんだ...
原作よりも早くザンッされた神々しい旗の行く末や如何に。
ほむらと合流するのはマミとまどかと合流してからにしようと冷静に行動でき、対主催で決意を固めた杏子はほんと頼もしく思えますね。
合流しようとしてる一人は神浜聖女ですが。

投下します

128 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:19:48 ID:JK2yaUdQ0
許せない。

佐神善は胸中で怒りを燃やしていた。

彼は吸血鬼(ヴァンパイア)だ。殺し合いの経験は何度もある。
だが、慣れているからといって生物の殺害になんの躊躇いもないわけではない。

そもそも彼は戦いなんて嫌いだ。吸血鬼と戦うのも己の力を誇示する為でなく、親友が殺され悲しみを知り、もう二度と失わないと決意したからである。
故に善は誰も彼もに殺人を強要するこの殺し合いに、主催の老婆に憤慨していたのだ。

(いけない...冷静さだけは失うな)

深呼吸と共に、熱くなる思考を落ち着ける。
クリアになったその頭で、ひとまず名簿を取り出し確認する。

知った名前があった。

ドミノ・サザーランド、狩野京児、七原健。

この三名とはチームを組んでおり、皆、人の血を吸わずに戦う吸血鬼たちだ。

ドミノは絶対女王主義とでもいうべきか、傲慢な女王を人の形に留めたような女だ。ただ、それでも優しく、決して悪人ではないのも確かだ。
そんな彼女が、首輪を着けられ殺し合いを強制されればどうなるか―――意地でも乗らないのは想像に難くない。

七原は臆病で短気で現金な性格だが、信頼できる友達だ。
燃然党にいた時だって一般人に被害が出ないよう必死に立ち回っていたし、吸血鬼の力もいつだって力なき人々を護るために振るわれていた。
七原は殺し合いに乗らない。そう、断言できる。

京児...恐らくこの会場でもトップクラスに危険で立ち回りが読めない男だ。
暴力が好きで嫌がらせが好きで殺し合いが好きで拷問が好きで虐殺が好きな戦闘狂、もといサイコパス。
その反面、気持ちが昂ろうともいつだって冷静で、れっきとした仲間ではあるし、共闘すれば頼もしいことこの上ない。
そんな彼がこの殺し合いでどんな動きを見せるのか全く読めない。
ドミノを大好きだと公言する以上乗ることはないと思いきや、『あの綺麗な顔をどう歪ませて死ぬのかなぁ』などと宣ったこともある。
冷静に考えて神子柴が約束を守る筈がないと判断し、この殺し合いを止める方向に動くのか、この状況にかこつけて闘争と殺戮を楽しむのか。
本当に行動が読めない。とにかく真っ先に合流し真意を見極める必要がある。

129 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:20:13 ID:JK2yaUdQ0

加納クレタ、芭藤哲也。

芭藤とは七原と共に戦っただけで詳しくは知らないのだが、死に瀕してまでもより多くの命を消そうとした男だ。
彼はまず間違いなく殺し合いに乗る。実力も高く、非常に厄介な相手だ。

加納クレタ。彼女は確かにこの手で殺した。その彼女が名簿に載せられている...神子柴が蘇らせたのだろうか。
きっと彼女はこの殺し合いに乗るだろう。彼女は死の間際、穏やかな眼差しを向けてくれたが、それでも自分が声をかけたところで止まらないはず。
彼女は強い。強い人だから曲がらない。きっと彼女は―――姉/妹の為に戦い続ける。


そして、先生―――堂島正。

彼は命の恩人であり善が止めなければいけない宿敵という奇妙な関係だ。
彼はきっと殺し合いには乗らないだろう。だが、それが必ずしも味方になり得るとは限らない。
きっと、この会場には錯乱して人を傷つけてしまう者は出てくるはずだ。
先生は恐らくそのような人たちも『悪』とみなして断罪する。あるいは、自分が救う価値なしと判断すれば、誰一人とて逃がすことはないだろう。
もしも彼の正義が暴走しているなら止めなければならない。

(でも、そうじゃなかったら?)

不意に脳裏に過る、ひとつのIF。
もしも先生の正義が暴走せず、協力的に行動してくれたら。
もしかしたら...もしかしたら、嘘偽りない『ヒーロー』と肩を並べて戦うことが出来るのだろうか。

(...いま考えることじゃない)

仮に実現したとして、殺し合いを破壊すればもとの生活に戻るだろう。
そうすれば関係も今まで通り。互いに譲れないものがある以上、戦う他ない。そうなれば―――いまよりもキツくなるだけだ。
先生のことは会ってから考えよう。



とにかく今は誰かに出会うことが先決だった。
目印としては地図上に記された教会がいいだろう。少なくとも七原か先生は来てくれるはずだ。

130 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:20:54 ID:JK2yaUdQ0

善が教会へ向けて歩き出し、10分程度が経過したころだ。善は道中で奇妙なものを見つけた。
白く蹲ったソレは生き物だった。猫のような肢体に、長い耳毛と赤色の目が特徴的な小さな不思議生物だった。
臀部付近の毛が赤く染まり、時折切れる息遣いがひどく痛ましかった。

動物まで参加者として招いたのかとも思ったが、しかしよく見ればこの動物には首輪が無かった。
参加者じゃない...ならばなぜ傷つき倒れているのか。

『誰でもよかったんだよ』

不意に声が過った。
かつて野良猫を趣味の悪いアートのように仕立て殺してまわり、親友を殺した名前も知らぬ吸血鬼の声が。
そいつはドミノが殺したが、もしかしたら蘇生させられ呼ばれているのかもしれない。

あいつではなくても、あいつのようにとにかく己の力を発散させたい者がこの白い生物を傷つけたのかもしれない。

(とにかく手当をしてやらないと)

善は白い生物を抱きかかえ、教会へと急いだ。
幸い、ほかの参加者との接触もなく着けた善は、救急セットを取り出し応急処置を施した。

痛みが和らいだのか、気の抜けたような顔になった動物に、善はホッと胸を撫でおろした。

(これで良し...あとは落ち着いたら病院へ向かってちゃんと治療してやらないと)

白い動物の頭を撫でてやりながらキョロキョロと周囲を見回す。備品や内装は変わらない。
ならば生物はどうだろうか。善の家には捨て犬や捨て猫がたくさんいるが、まさかここまで連れてこられているのだろうか。
善は、白い動物に小さく「少し離れるよ」と囁き、いったん離れて庭の探索を始めた。

結果、善の家にいるはずの動物たちは一匹もいなかった。そこまで細かく再現するつもりはなかったのだろうか。

なにはともあれ、身内の犠牲が出なかったことにほっと胸を撫でおろし、庭から出た時だった。
教会の扉の前に立っていた男に気が付いたのは。

131 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:21:27 ID:JK2yaUdQ0




(OH!!MY!!GOD!!!)

テンガロンハットを被った屈強な老人、ジョセフ・ジョースターは両頬に手を当て心中で叫んだ。
実際に声に出さなかったのは幸運だと思えるほどの衝撃を受けたのだ。

彼は目覚めてすぐに支給品を確認した。
あんな老婆の言いなりになって人を殺すつもりはない。だが、生き延びる為の本能が自然と彼に行動を起こさせたのだ。
デイバックの中に入っていた紙――名簿と地図を見て、彼は冒頭の叫びをあげたのだ。

なんせその名簿の中に自分が知る名がわんさかと記載されていたのだから。

空条承太郎、花京院典明。

心より信頼し頼りになる仲間たちの名。
彼らもまた自分と同じように殺し合いに反目するだろうという確信があった。
できれば仲間の誰も巻き込まれてほしくはなかったが、心強い仲間がいるというのはやはり幾らか安心感を得ることができる。

ディオ・ブランドー。
自分たちが追っている巨悪、DIOの本名だ。
あのオババはDIOの仲間にしては遣り口が遠回しすぎると思ってはいたが、奴を参加者として扱っていることで疑念は確信に変わった。
オババはDIOの仲間ではない―――つまり、DIOはいま部下という部下を剥がされた状態だということ。
ならばこれはある意味チャンスと捉えることが出来るだろう。


そして、ジョセフはあってはならない者たちの名を知った。

ジョナサン・ジョースター、ロバート・E・O・スピードワゴン、ルドル・フォン・シュトロハイム
かつて祖母から語り継がれ、或いは共に戦った者たち。
ジョナサンはDIOに身体を乗っ取られ、スピードワゴンは病死した筈だ。シュトロハイムに関してはスターリングランド戦線にて散ったと風の噂で聞いたが...まあ、彼なら生きていてもおかしくはない。
神子柴は見せしめとなった青年を一度蘇生していたが、彼らもまた蘇らせられたのだろうか?

彼らの名もジョセフに動揺を与えたが、しかしそれ以上に大きな衝撃を与える名があった。

カーズ。エシディシ。
吸血鬼を生み出す石仮面を作り出した者たちであり、何千年も昔から、波紋の戦士たちと戦い続けてきた一族、通称『柱の男』。
ジョセフはかつて仲間たちと共に彼らと死闘を繰り広げ、犠牲を出しながらもどうにか倒すことが出来た。
その彼らが記載されていた。正直、死者も呼ばれている可能性を考慮した時から嫌な予感はしていたが当たってしまった。

132 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:22:46 ID:JK2yaUdQ0

「確かにこいつらは命令なんざしなくとも破壊と死を齎すだろうが...だからって限度があるじゃろうが!こんなもん『殺し合い』が成り立つはずもないわい!!」

百歩譲っても彼らの部下であるワムウならばまだよかった―――とジョセフは思うが、これは決してワムウを軽視しているわけではない。
カーズ、エシディシ、ワムウの三人と直に戦ったことのある彼だから言えることなのだが、戦闘の面でいえばワムウは部下でありながら他の二人よりもセンスが頭一つ抜けている。
それはおそらくカーズらも認めているだろう。
ただ、ワムウは決して残虐非道ではなく、正々堂々とした戦いを好み、己の力を惜しみなくぶつけ合える宿敵(とも)を求める武人である。
如何にこの場に闘争の種が巻かれていても、弱者や戦士でない者すら手にかける殺し合いに嬉々として臨むとは思えない。
希望的観測だが、うまく接触できれば休戦という形で協力してくれる可能性がある。
そう、まず起こらないだろうと予想できるほどの微かな望みだ。

呼ばれた二人ではその『微か』さえ期待できるものではない。

カーズはひたすら合理的に物事を捉えるため、戦闘に喜びを見出すタイプではない。
そもそも彼は既に太陽を克服し究極の生命体になっているため、共に競い合い高めあうような好敵手と呼べるような存在はいない。つまり、出会った人間を生かしておく理由はこれっぽちもない。

エシディシは好奇心旺盛で好戦的とはいうものの、ワムウのように勝負や敵の成長を楽しむのではなく、敵の裏をかいたり罠に嵌めたりすることで相手の反応を見て楽しむ...そういうタイプだ。
ジョセフ自身がそうなのだからなんとなく気持ちはわかる。彼も彼で、人間を見逃す道理はないだろう。

そして彼らの共通点は、殺人に対しての嫌悪感がまったくないということだ。
当然だ。彼ら柱の男からしてみれば、人間は食糧か或いは奴隷。人間相手にすら正々堂々とした決闘を重んじるワムウの方が特殊といえよう。

(奴らに会いたくはないが放っておけば確実に犠牲者は出るからのう...まったく、あのババアにはワシらのこれまでの全てを侮辱された気分じゃ)

胸中で神子柴への怒りの炎がめらめらと燃え上がっていく。
カーズとエシディシのことを抜きにしても、軽々と命を弄ぶ神子柴の所業が気に入らなかった。
『お前の死闘なぞ儂にとって暇つぶしの映画のワンシーンにしかすぎんのじゃよ』とでも言いそうなあのにやけ面に一発叩きこんでやりたくなった。

「さぁて、ぼちぼち行くとするかのう」

ジョセフはデイバックを担ぎ立ち上がる。
目指すは恐らく先祖の建物であろうジョースター邸―――なのだかその前に。

(せっかく近くに施設があることだし、まずはここから調べておくか)

ジョセフの眼前に聳え立つのは教会。
そこそこの広さがあり、地図にも『善』という人物の家の補足と共に記載されている施設だった。

「善、というのは参加者のこの『佐神善』という人物のことかのう。となれば、自分の家がここにあるのが気になり訪れるかもしれんな」


よくよく見れば、ジョースター邸とこの教会以外にも『早川アキ』や『魔鬼邑ミキ』という参加者の家もある。
まず気になるであろう個々人の家をまわり、他の参加者と接触を図るのもいいかもしれない。

133 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:23:33 ID:JK2yaUdQ0


「さて、では早速...ムッ」

扉に手をかけようとした時に気が付く。ドアノブには微かに血が着いていた。

「まだ乾ききっておらん...ということは、既に先客がいるようじゃな」

誰かと争ったのか、あるいは不注意で自傷してしまったのか。
建物に入ってすぐに出ていくとは考えづらい。
ゲームが開始してからさほど時間が経っていないため、なにがあったにせよ、先客はまだこの中にいると推測する。
ただ、先客は危険人物か否かは判断が難しい。
さて、どう接触すべきかとジョセフが考えていたときだ。

「あの、参加者の方ですか?」

横合いから不意に声をかけられたのは。


「!」

とっさに飛びのき右手を腰に当てた警戒態勢をとるジョセフに、声の主...青年はギョッとして動きを止めた。
青年の反応を見たジョセフは、青年がこちらを襲おうとしているわけではないと判断した。

「ワシの名はジョセフ・ジョースター。きみも参加者かね?」
「はい。佐神善と言います」

佐神善。ジョセフの推測通り、教会の家主であろう彼はここに訪れていた。

「ワシは殺し合いに乗るつもりは毛頭ない。少し話を聞きたいんじゃが」
「構いませんよ、僕も聞きたいことは色々とありますし...とりあえず中へ」

善に促されるまま、ジョセフは彼の家に上がり込んだ。

134 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:24:37 ID:JK2yaUdQ0



「これは...」

机の上に寝かされたソレを見たジョセフは言葉を失った。
白いソレは生き物だった。猫のような肢体に、長い耳毛と赤色の目が特徴的な小さな不思議生物だった。
臀部付近の毛が赤く染まり、時折切れる息遣いがひどく痛ましかった。

「僕が見つけた時には既にこうなっていました。本当は病院の方がよかったんですが、出血が酷かったのでひとまずうちに運んだんです」
「ドアノブの血はそういうことか...さっき出てきたのが入り口じゃなかったのは、なにか治療用の道具を探していた、というところかね?」
「いえ、応急処置は済んでました。さっきはうちのペット達がいないか確認してたんです。もしかしたらこの子みたいに傷を負わされてるんじゃないかと思ったんですが、取り越し苦労でした」
「ふむ。となると、施設の全てが再現されているわけじゃあ―――ああ、いや、いまはそこの白いのについて心配すべきじゃな」
「...はい」

この生物がなんなのかは気になるところだが、いま知りたいのはこの生物は『なぜこうなったか』だ。
ここまで大きな怪我を負わされている以上、ただのドジで自傷してしまったとは思えない。
確実に何者かがこの動物を痛めつけたのだ。
誰が。なぜ。なんのために。
命に別状はないようだが、逆にそれがこの動物の現状を不可解にさせていた。

(動物相手に使うのは初めてじゃが、やってみるか)
「善くん。少しテレビを借りるぞ」

ジョセフはテレビと動物のそれぞれに手を添えながら己のスタンド『ハーミット・パープル』を発現させる。

「っ!?」

それを見た善は思わず驚嘆してしまった。

「むっ、お前さん、ワシの『スタンド』が見えているのか?」
「『スタンド』...?」
「ふぅむ...ま、詳しい話は後で聞かせてもらおうか。とりあえずいまは...」

彼にもスタンドが見えているのが気がかりはあるが、一先ずこの動物を襲った下手人の手がかりを掴むのが先だ。

「善くん。ワシはこれからこのテレビに白いのの考えを念写する。ワシのこの手の茨はその為に必要なものじゃ」
「???」
「ま、百聞は一見に如かずとも言うじゃろう。いくぞ、『ハーミット・パープル』!」

ジョセフの茨と手が光り輝き、触れているテレビにノイズが走り出す。

「ふむ、人間相手にやる時よりもだいぶ精密さは劣るようじゃが...そうら、映り始めたぞ」

そして、テレビに映像が流れ始めた。

135 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:25:22 ID:JK2yaUdQ0



『オゥ、プリティアニマル!』

モッキュ。

『モッキュ、プリティ!んー、でもワタシが欲しいのアニマルじゃないの...せめてTENG〇...』

モキュキュ

『......』

モキュゥ

『......』

モキュゥ?

『もうマスターベーションじゃ物足りないんだ。穴があるなら同じことだよね』

モッ!?








『...モキュ。オナホになれ』

136 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:25:54 ID:JK2yaUdQ0




プツン。

映像は途切れていた。
というより、ジョセフが切断した。

ジョセフの目元は影で覆われ、善は汗を流しながら訝しげな眼でジョセフを見つめている。

「......」
「......」

沈黙に包まれる二人。
数秒。数十秒。
短くも長く、気まずい沈黙を破ったのはジョセフ。

「...さ。ひとまずお互いの情報を交換しようか。今後をどうするかはそれからじゃ」
「...はい」

―――いまの映像は見なかったことにしよう。

そこには奇妙な一体感があった。
言葉にこそ出さなかったが無言の男の訴えがあった。

137 そして沈黙が支配する ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:27:01 ID:JK2yaUdQ0

【F-3/教会(善の家)/1日目・深夜】

【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:殺し合いを止める。
0:善と情報交換する。
1:承太郎、花京院、ジョナサン・ジョースター、スピードワゴン、シュトロハイムを探す。
2:DIOを倒す。カーズ、エシディシには要警戒...会いたくないのぉ...。
3:小動物を犯した男に警戒。

※参戦時期はダービー(兄)戦後です。

【佐神善@血と灰の女王】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3、小さいキュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(フロイドの支給品)
[行動方針]
基本方針:殺し合いを破壊する。
0:ジョセフと情報交換する。
1:ドミノ、京児、七原との合流。
2:先生(堂島)は味方になってくれるかな...
3:クレタ、芭藤には警戒。ただ、クレタには複雑な想い。
4:小動物を犯した男に警戒。

※参戦時期は少なくとも七原が仲間になった後です。

【小さいキュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(フロイドの支給品)】
[状態]校門裂傷、出血(止血済み)、疲労(大)


【F-3から周囲1マスくらいのどこか/1日目・深夜】

【フロイド・キング@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:性欲を発散させる。
0:女を犯す。
1:ありがとモキュ、ちょっと収まったよ。次は女がいいな。
2:カズナリを見つけたらオナホにしよう。
3:神子柴を見つけたら犯す。

※参戦時期は霧子に伸し掛かった直後。



【小さいキュウべえ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
通称モキュ。マギアレコードにおけるユーザーの分身と呼べるキャラだが、通常のキュゥべえとは違い言葉を喋れず契約する能力もない。
その為か、本編や期間限定イベントでは度々空気と化し、悩むいろは達に助言をするも毎回「ううん違うよ」と否定される、普段なにを食ってるかもわからない、
終盤にてようやく活躍の場面が来たと思ったら幼女に叩きつけられ汚物扱いされ追い払われるなど、本家キュゥべえと比べてもぶっちぎりに不遇。
キュゥべえでありながらゲームキャラ達からは特に目立ったヘイトを向けられていないのは救いと言えるのだろうか。
そんな彼(彼女)の正体は...

138 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/07(火) 01:28:30 ID:JK2yaUdQ0
投下終了です

不動アキラ、雷沼ツバサ(シレーヌ)を予約します

139 ◆A2923OYYmQ :2020/01/07(火) 04:03:42 ID:Uju/uuvQ0
アーカード
スピードワゴン
暁美ほむら
空条承太郎

予約します

140 名無しさん :2020/01/07(火) 06:27:40 ID:vC8S2x2I0
投下乙です

モ、モキューーー!!

141 名無しさん :2020/01/07(火) 11:25:03 ID:mLi8E1o.0
数多くのパロロワでキュゥべえがケツを犯されたのはこれが始めてですね…

142 ◆IOg1FjsOH2 :2020/01/08(水) 19:41:54 ID:XF.DEU.I0
投下します

143 地震雷火事無惨 ◆IOg1FjsOH2 :2020/01/08(水) 19:43:01 ID:XF.DEU.I0
(なんだこれは……?なぜ私がこのような事に巻き込まれている?)

D-7 見滝原中学校

教室内に飛ばされた鬼舞辻無惨の脳内では多数の疑問と激しい怒りが泡のように溢れかえっていた。

なぜ私がこんな所にいる?
なぜ私が家畜や奴隷のような首輪を付けられている?
なぜ完璧な存在である私が一方的に指図されなければならない?
あんな枯れ木のような脆弱な老婆風情が何の権限があって私に命令を下しているのだ?
許されない、許されるはずがない、その罪はあの老婆に限らず身内や協力者全ての命を持ってしても償い切れない。

無惨が右腕を一振り薙ぎ払うと、机や椅子は次々と砕け散り
宙を舞った破片が窓ガラスを割り、校内の外へと投げされた。
無惨の顔は茹でタコの様に赤く紅潮し、目はかっと見開いて血走っており、全身の血管がぷっくりと浮き出る程に力んでいた。

なぜ死んだ上弦共が蘇っている?
なぜ鳴女は、あの老婆に従っている?
私が鬼にしてやった恩を忘れたのか?
人の身では手に入らない強大な力と永遠に生きる事が出来る寿命を与えてやった恩を忘れたのか?

無惨が左腕を振るうと、廊下側に貼られているガラスや天井が切り裂かれて砂埃を巻き上げる。
ピクピクと無惨の体が震えている、怒りがマグマの様に湧き上がり、理性が限界寸前であった。

なぜ私の意志に反して鳴女は死ななかった?
いつから私の支配から抜け出した?
他の上弦共も同じように細工をしたのか?
全員私を裏切ったのか?
それで私の裏を掻いたつもりか?

「よくも私を裏切ったなッ!!鳴女ェェ!!」

怒りの感情を爆発させた無惨は両腕の触手を振りまわり、周囲の破壊を繰り返す。
無惨の圧倒的な力によって振るわれた暴力はコンクリートすらも豆腐のように砕く。

「裏切り者は容赦しない。珠代と同じ末路を辿らせる。
 そして……もう十二鬼月も必要無い。鬼狩り共々、私一人で終わらせる」

ロクに柱の処理も出来ない役立たずは不要。
裏切っていようがいまいが関係無い。もう上弦共には何も期待しない。
繋がりを断ち、私の意志から離れた鬼に存在価値など無い。

「ふん、殺し合いだと?くだらない」

人間が刃物や銃器を持ち出した所で、地震や台風や津波や火事に太刀打ちできるのか?
答えは否、天災の前には人は無力、それが過ぎ去るまでただ蹂躙されるのみ。

「始まるのは一方的な虐殺だ。殺し合いではない」

まるで戦場跡の様に破壊し尽くされた校舎から出た無惨は尋常なる速度で駆け出した。
全ての参加者を殺害し、くだらぬ余興を少しでも早く終わらせるために。

【D-7見滝原中学校/1日目・深夜】

【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、怒り(極大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:全ての参加者を殺害し、神子柴と鳴女も殺害する。
1:参加者を探し、見つけ次第に殺す。
2:役に立たない上弦は不要、解体する。

※参戦時期は傷が癒え、珠代を殺害した時期からです。
※見滝原中学校は癇癪を起こした無惨によって破壊されました。

144 ◆IOg1FjsOH2 :2020/01/08(水) 19:43:27 ID:XF.DEU.I0
投下終了です

145 名無しさん :2020/01/08(水) 21:17:44 ID:MFXrh7dA0
無惨様平常運転

146 名無しさん :2020/01/08(水) 21:30:04 ID:lXmymXME0
乙です
こいつどのロワでもブチキレてんな

147 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:42:06 ID:dFOg.fW20
皆さん投下乙です

> 血と吸血鬼とチェンソー
デンジくんとパワーちゃん。学も倫理もろくにない二人だけど方針の違いがくっきりでてていいなあと。
殺人に忌避感はそんなにないけどでも殺しちゃまずいと考えるデンジはやっぱり根はいい子だなあ
それに比べてパワー!お前はなんだ!通りがかりの人(人ではない)に手斧ぶち込んでそれをデンジのせいにするとは!
騙されかけて地頭の良さもデンジの方が優秀なの示されちゃうし……
その後の会話の流れも含めて雅様が一番真面目に殺し合いをやってるの、カタログスペックだけならおかしくないのになんか面白いからチクショウ!
キャラ再現すごかったです

> 眠る蛇と眠れない鬼狩り
実験っぽいなあとやっぱ最初は思うよなカチュア
そして善逸、お前クズのこと知ってかっこいいモード参戦かと思ったらお前……
まあそんなとこも善逸だよな
前にも書かれてましたが、平手打ち喰らうまでの一連の流れがすごい鬼滅っぽくてめっちゃ上手いなって思いました。善逸が玄弥に殴られるシーンで再生される
そして互いの家庭環境を対比したり、善逸の耳を通じてシリアスやってていいなあと思ったら彼岸島の民家で笑わされて、情緒のジェットコースターがやばかった
前話で雅様がシリアスやってた反動かと思わんばかりに話の空気を犯しやがって……
色んな意味で背景の描写が秀逸だったと思います。投下乙でした

> エメラルドの眩しい決意
よそでも緑色のコンビを組んでた花京院がここでも緑色の女の子と組んでて微笑ましい
お互いに認識されない系統のコンプレックスと異能持ちでいいですね
そしてスタンドを通じて二人の良さが出ていて綺麗でした
法皇をウワサかと思って咄嗟に前に出る強さを見せるさな、見えない筈のものが見えるところから思考を広げる花京院
参戦時期次第では危ういものがあるかなーと思っていたので、よさげな対主催になっていて先が楽しみです

> クソみてぇな事態
なんかもう書いてる感想の5分の3で彼岸島に触れていて、うち二つは彼岸島キャラ出てないのに世界観を汚染していてすげえなって
クソみてェな旗を支給されて、旗は外れないとかいうクソみてェなことになって、盤外ではクソみてぇじゃなくて「ェ」だと指摘されて本当にクソみてぇな事態だ……
で、杏子はマギレコ時空のことは知らない時期の参戦。彼女も時期次第では荒れるタイプではありますが、穏やかな時期からで対主催の未来は明るそうかな
さやかの名がないことをそう読むか、というのはなるほど面白いと思わされました

> そして沈黙が支配する
も、モキューーーーー!!!!
お前、フロイド……桜子に殺されるぞ
いろはちゃんはこいつを撃ち殺してもいいんじゃないかなマジで
ジョセフの参戦時期からくる諸々とか色々あるのに全てを持っていくボクサー、ツヨイネ

>地震雷火事無惨
まずタイトルで笑いました
「私のことは天災と思え」っていうから天災と同列にしてあげたよ!すごいね!ってタイトルなのに、オヤジの後釜に据えられてるのが絶妙
書き手は煽りの呼吸の使い手か?柱か?
半天狗の回想風なセリフから案の定キレてて、そして言ってることは相変わらず身勝手の化身でそんなだから頭無惨とか言われるんですよ無惨様
横綱相撲といいますか、予想通りの展開に案の定の流れでも面白かったです

私もウォルター・C・ドルネーズと猗窩座で投下します

148 ●●の話をすると鬼が笑う ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:43:25 ID:dFOg.fW20

ウォルター・C・ドルネーズは忠実な執事にして殺し屋であった。
60年間、父娘二代に渡ってヘルシング家によく仕え、平時の世話はもちろんのこと敵(ゴミ)を片づける汚れ仕事にも広く活躍してきた。
老い、体の冴えを失ってからも執事としての務めは十全に果たし、後継の育成にも専心した良き従者であった。

『老いぼれ(ロートル)と新人(ルーキー)、二人足して一人前でしょう?』
『老いすら楽しむものさ、我々英国人(ジョンブル)は』

衰えてなおそう嘯く強さと信義には数百年の時を超えて生きる怪物、不死王アーカードも敬意を払うほどで。
だからこそ、彼の裏切りには誰もが驚いた。

『まだだ!!まだ僕の勝負は…ついていない!』

ウォルターは全てを捨てた。
人生も、主君も、信義も、忠義も、全て賭け(オールイン)。
まだ足りない。
死にたがりの死にぞこないから、決死の覚悟で不死身の体を法外な利息で借り受けて。
まだ足りない。
1000人の軍人、3000人の狂信者、13人の背徳者、1頭の怪物、1騎の英傑、自らの半生その全てを犠牲にして。
それでもなおこの糸は、剥いた牙はアーカードに届かなかった。

ウォルターは悔やんでいた。
60年の忠誠を誓ってきたヘルシング家を裏切ってしまったことを?ちがう。
人として美しく老いさらばえてきた人生を捨ててしまったことを?ちがう。
ナチスなぞに自らの体を弄らせて吸血鬼になってしまったことを?ちがう。
全て納得して叛逆した。全て納得して無様を晒した。

―――だから、宿敵アーカードを殺せなかったことのみを悔やむ。

『気張れよ、あとたった何万回くらいだ』
『アンデルセンで勝てなかったこの私を、お前みたいな顔色の悪いクソガキが50年や500年思い煩って、勝てるわきゃあねえだろう!!』

嗤っていた。傲岸に。
哂っていた。不遜に。
口にしているものが毒酒であると気づくことなく、高らかに。
その顔がここに招かれる前の最後の記憶だ。その果ては見ていない。
アーカードの最期は、見ていない。
だからウォルターもまた笑った。

149 ●●の話をすると鬼が笑う ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:44:14 ID:dFOg.fW20

「く…はは…ははははははは!」

その次に見た光景は神子柴と名乗る老婆の狼藉だ。そんなものはどうでもいい。
目的?意味?知ったことではない。
そんなもの、今目の前にあるものに比べれば路傍の石ころほどのものでもない。

アーカード。
名簿に書かれたその名がウォルターの目にくっきりと映る。

「ははッ…はははははは!無様だなぁアーカード!僕もお前も首輪に繋がれて、猟犬から闘犬に格下げか!あはははははは!」

自らの首に巻かれた首輪に手をやり、ウォルターは笑い続ける。
殺し合えと。
標的を殺せと猟犬に命じるでもなく、傍で守れと狛犬に下知するでもなく、全ての狗に食い合え殺し合えとあの老婆は命じた。

「ああ、いいさ。殺してやるとも」

アーカードがいるなら是非もない。
あの怪物を殺すためだけに全てを捧げたのだ。
探し出して、殺してやる。
―――障害があるのならばれも含めて叩いて、潰す。それが例え何であっても。誰であっても。
立ち塞がるなら諸共に、殺す。

配られたディパックにウォルターが腕を突っ込み、中から取り出したものを全力で振るう。
握っているのはギターだが、当然ただの楽器ではない。
絞殺魔アルバート・デサルボの人格を植え付けられた殺人鬼槇村霧子が用いるそれは弦がワイヤーソーになっているとびっきりの凶器だ。
ウォルターの絶技で振るわれることでその一本一本が肉を裂く刃となり空を奔った。
まるで蜘蛛の糸の如く。
そう、まさにそれは蜘蛛の糸であったろう。
ワイヤーソーの向かった上方には、ウォルターに向けて攻撃を放つ一人の男が飛来してきており、丁度蜘蛛の巣に飛び込む蟲のように男の拳は絡めとられた。

「はッ、気付いていたか小僧!」

だが男は羽虫のように捉えられる弱者ではなかった。
放った拳を切り裂かれながらも糸を脱し、その負傷も即座に再生してみせる。
そうして着地した襲撃者はウォルターの迎撃を讃えて呵々と笑い、真っすぐにウォルターと向き合った。

「そこをどけ。貴様などにかまっている暇はない」

対するウォルターはどこまでも冷淡だ。
殺し損ねたのは業腹だが、といってわざわざくたばるまで殺してやる義理も必要性も、なにより猶予が彼にはない。
邪魔立てするなら叩いて潰すが、去るならば追いはしないとはっきり示すが、襲撃者は拳闘の構えをとり、立ち去るつもりはないとこちらもまたはっきり示す。

「そう無碍にしてくれるな。俺とて弱者相手ならば割く時間は惜しいが、これほどの相手なら話は別だ。日輪刀もなく傷を負わされるなど久しいぞ」

逃げるつもりはない。逃がすつもりもない。

「俺は猗窩座。さあ、宴を始めようじゃないか」

腰を落とし、変形の熊手と掌底を向けた戦闘態勢から一歩踏み込む。
それが戦闘開始の合図だった。

150 ●●の話をすると鬼が笑う ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:45:33 ID:dFOg.fW20

―――術式展開、破壊殺・羅針

猗窩座を中心として地面に雪の結晶が描かれた。
鬼舞辻無惨の血を分けられて生まれた鬼は不死性や再生、食人や日光に弱いなどの特徴を持つが、中でも食人を重ねた強大な鬼は『血鬼術』という異能を行使するようになる。
猗窩座もまたその術を行使する鬼、その中でも最上級の一体だ。
開戦と共に放った術式は彼の戦闘の基底となる闘気の探知術。
猗窩座にとっては己の手足こそが敵を殺す最大の武器であり、術はあくまで敵の出方を知る手段でしかない。

ウォルターの放った五つのワイヤーを全て紙一重で躱しながら即座に距離を詰め、両の拳を打ち放つ。

―――破壊殺・乱式!!!

産まれたてでも岩を砕く鬼の膂力をさらに鍛えた猗窩座の剛腕、その両腕による拳の連打。
ウォルターはそれを、手元に残したワイヤーを束ねて盾とし受け止める。

「吼えるな、駄犬が」

腕が伸び切ったその瞬間にワイヤーをほどき、躱されたワイヤーと合わせて切り裂かんと挟み撃つが、猗窩座は横へ大きく跳んでそれを躱した。

「吼えるとも!猛るとも!お前は滾らないのか小僧!強者とぶつかるこの時ほど、武人として生を実感することはあるまい!!
 違うか小僧!?ああ、いや小僧ではなんだ。何より無礼だ、名乗れ強者よ!」

―――破壊殺・空式

距離をとりながらも猗窩座は空を殴り、その衝撃波をウォルターへ向けて飛ばす。
たしかな殺意を込めた攻撃と、確かな親しみを秘めた語り掛けと、その二つを同時に行うのは鬼の歪みか武人の嗜みか。
吸血鬼(ウォルター)もまた呼吸をするように攻撃を躱しながら言葉を返す。

「死者(デッド)が生を実感することなどあるかよ、逝き損ない」

吸血鬼など動いているだけのただの死体だ。泣きたくなくて、涙が枯れて、妄執にとらわれて、なって果てたザマに甲斐などあるものかよ。

そこまで紡ぐ余裕はないが、猗窩座の言葉など無意味だと、猗窩座ごとに斬って捨てようとワイヤーを振るう。
だが猗窩座の肉は断てても骨までは至らず、ウォルターにとって目障り耳障りな戦闘は続く。

「生きているとも!俺たち鬼は人とは違う。老いぬ、朽ちぬ、衰えぬ、死なぬ!
 数百余の年を超えて鍛え続けたのがこの俺だ!人の身では至れない至高の領域に踏み込む、その第一歩こそが鬼の力だ!」

空式の速度に負けぬ勢いで猗窩座も踏み込み、ウォルターの首に迫る。
ワイヤーで右腕を裂かれながらも、筋肉の締めでそれを食い止め、逆にウォルターを縛る枷にした。
痛みも出血も無視した外法の攻め。そこから起こる左の手刀がウォルターの首目がけて放たれた。
咄嗟にワイヤーを引き、猗窩座の右腕を盾にしようとするが、猗窩座がそれをさせるはずもなく。
やむなくウォルターは屈んで前転し、手刀をくぐるようにして猗窩座の背後へ抜けて躱す。

「逃がさん!」

手刀に伴う体の回転を活かして猗窩座が右腕を引く。
食い込んだワイヤーが当然それに引っ張られる。
そして右腕を引く回転に連動させて左の中段蹴りを放った。
手応えあり。
足刀の直撃で真っ二つにへし折れて……

151 ●●の話をすると鬼が笑う ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:45:58 ID:dFOg.fW20

(楽器…いや奴の武装!?)

砕いたのはウォルターの持っていたはずのギターだった。
まさか武器を捨てて逃走に転じたか、と視界に舞うギターの欠片を猗窩座は見やるが。
ぞわり、と。
いつ以来かになる寒気を覚える。

銀色の線が猗窩座の首を目がけて走っていた。
その出本はウォルターが右手に握る鍔から伸びた、鞭のような蛇腹剣のような……

(日輪刀!隠し持っていたか!)

日輪刀、それは鬼を殺すことのできるほぼ唯一の武器である。
通常の刃物などであっても鬼を傷つけることはできるが、命を奪うには太陽に晒すか、あるいは日輪刀で頸を斬るかしなければならない。
ウォルターに支給されていたのはその中でも特に奇怪なる一振り、“恋柱”甘露寺蜜璃が帯びるものである。
極めて薄く、極めて柔らかい布のような刀身で、ともすれば振るう者を切り裂きかねない扱いの難しい刀だ。
甘露寺の鍛錬と経験と才能あって初めて使いこなせるそれを、ウォルターは無理矢理に振るう。
経験と鍛錬は半世紀にわたり吸血鬼退治に執心してきたウォルターとて劣らぬ。
されど才能は。甘露寺に備わった女性特有の柔らかな関節と筋肉、そして常人の八倍の密度の筋繊維、それをウォルターは吸血鬼の体質で補った。
吸血鬼の膂力は常人の八倍などでは収まらない。そして今のウォルターは不完全な吸血鬼化で少年期のもの……柳の枝のように柔らかな関節を備えている。

その腕で、日輪刀を振るった。
鋼線を主武装としてきた経験を活かして刃を猗窩座に飛ばす。
それでも不慣れな武装で十全とはならず、心臓目がけて放った突きは首元にそれてしまったが、ビギナーズラックというべきか。
吸血鬼の急所と、猗窩座たち鬼の急所は違うのだが、ウォルターは偶然にも猗窩座に向けて致命の一撃を放っていたのだ。

上体を逸らし猗窩座がそれを必死に躱す。
逸れた刃が僅かに喉元を裂いた。
伸びきった刃を猗窩座が殴る。
柔らかな鋼はたわんで衝撃を逃がし、折れることなくウォルターの元へ。
続けざまにもう一太刀。
今度は余裕をもって躱して、二人の間に距離が空いた。
命の危機に追い込まれたことで、猗窩座はより高振ったか笑みを浮かべて称賛を述べる。

「見事だ!剣技にも覚えがあったか!鬼殺の剣士だったか?いやそうであってもなくても構わん!
 嗚呼、殺すには惜しいぞ……どうだ、お前も鬼にならないか?」

それは猗窩座にとっては何のこともない呼びかけだった。
何故だかは彼自身にもよく分かっていないのだが―――門下に誘うことに無意識下に執着でもあるのか―――強い者がいれば闘い、そして鬼に誘う。
鬼殺の柱にも何度も呼びかけ、そのたび断られてきた。
しかし此度は趣きが違う。
ウォルターの闘気が目に見えて凪いだ。

「……鬼とは。吸血鬼とは違うのか」
「知らん。あのお方は我らを鬼と呼んでいる」

この男より上の者がいる。
そういう体系も吸血鬼に近いものにウォルターには思える。

「僕も鬼になれるのか?」
「…稀に。鬼にならない体質の者がいるとは聞いているが。見極めるすべは俺には分からん。試すしかあるまいよ」

吸血鬼も、血を吸われた者が非処女非童貞ならばグールになる。
だがこの言い分だと根本的に変じないように聞こえる。
僅かにウォルターも逡巡するが、体の内から悲鳴のような軋みが上がり、ウォルターの背中を押した。
文字通り一刻の猶予もウォルターには残されていない。
猗窩座との戦闘で一撃も受けていないに関わらず肉体の崩壊は進んでいる。
このままではアーカードと戦うどころか出会う前に残された灯火は尽きてしまうだろう。
外法に手を伸ばさない限りは。

「名乗れと言っていたな。ウォルター・C・ドルネーズ……」

続ける言葉に詰まってしまう。
かつての自分はこの後に所属を誇らしく朗々と名乗り上げた。

『ヘルシング家執事(バトラー)。元国教騎士団(ヘルシング)ゴミ処理係』

だが今はもう、裏切者の自分にその名を掲げる資格はない。

「しがないゴミ処理屋だよ。これから鬼になる、な」

人生も、主君も、信義も、忠義も、全て捨てた。
まだテーブルに乗せられるものが残っているとは思わなかった。
鬼になれるか否か。勝負(コール)だ。

152 ●●の話をすると鬼が笑う ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:46:34 ID:dFOg.fW20

【C-2/1日目・深夜】

【ウォルター・C・ドルネーズ@HELLSING】
[状態]:吸血鬼化、それに伴う若化と肉体崩壊(中)
[装備]:槇村霧子のワイヤーソー(ギター部分破損)@サタノファニ、甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0〜1
[思考]
基本:アーカードを殺す
0:鬼になる
1:アーカードを殺す。邪魔するものも殺す

※参戦時期はアーカードがシュレディンガーを飲み干すのを見た直後です。

【猗窩座@鬼滅の刃】
[状態]:健康、高揚
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1〜3
[思考]
基本:無惨のために殺戮を進める。神子柴も殺す
0:ウォルターに血を分け与えて鬼にする
1:無惨に尽くす
2:強者と戦い、強くなる。
3:役に立たないものは殺す

※参戦時期は後続の方にお任せします。

153 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/09(木) 22:49:26 ID:dFOg.fW20
投下終了です
黒死牟、ジョナサン・ジョースター、七海やちよで予約します

154 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/10(金) 22:49:28 ID:E.kIdGlY0
すいません、支給品を書き忘れたので一応
wikiの方にも加えておきます


【槇村霧子のワイヤーソー@サタノファニ】
ウォルター・C・ドルネーズに支給。
ギターの弦に仕込まれた超高分子量ポリエチレン製のワイヤーソーで、ギターを振ることで投擲・捕縛・切断などが可能。
ギター自体を鈍器として用いることもできたが、すでに猗窩座に蹴り壊されてしまったので難しいか。

【甘露寺蜜璃の日輪刀@鬼滅の刃】
ウォルター・C・ドルネーズに支給。
この日輪刀は、刀匠の里の長である鉄地河原鉄珍が打った特殊な『変異刀』であり、その薄鋼は布のようにしなやかでありつつも、達人が扱えば決して折れる事の無い「傑作」の一刀である。
斬断できるのはあくまでも刃の部分だが、本来の持ち主である甘露寺はこの変異刀をあたかも新体操のリボンのように、軽やか且つ高速で振るう事で、鬼を取り囲んでのオールレンジ攻撃、或いは広範囲全周囲防御を実現する。

155 ◆wsjaB5KUdQ :2020/01/11(土) 14:32:34 ID:TkAXfVFU0
申し訳ございません、一度予約を破棄させて頂きます

156 ◆A2923OYYmQ :2020/01/11(土) 18:35:32 ID:WxaqPi.20
予約の延長お願いします

157 名無しさん :2020/01/13(月) 12:05:03 ID:W7oF18lI0
ナチュラルにさやかちゃんを省いてるんじゃあ
ないよ!

158 名無しさん :2020/01/13(月) 21:37:10 ID:wgOug8OQ0
>>157
予約でも感想でもない下らないコメすんなようぜえ…

159 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:38:43 ID:rS5n0Bxc0
投下乙です
>地震雷火事無惨
>ロクに柱の処理も出来ない役立たずは不要。
裏切っていようがいまいが関係無い。もう上弦共には何も期待しない。
繋がりを断ち、私の意志から離れた鬼に存在価値など無い。
この思考、無惨イズムがキレにキレてますね。
八つ当たりで校舎をぶっ壊したり、取捨選択が迅速すぎたり、その場の感情で動く無惨様がすごく無惨様で面白かったです。


> ●●の話をすると鬼が笑う
上のキレ散らかしてる上司とはうってかわってすごく楽しそうな猗窩座殿。
彼がイキイキとして戦ってると見てるこっちも楽しくなりますよね。
ウォルターのワイヤーだけでなく日輪刀もフルに使いこなしての戦い方がスタイリッシュでカッコいい。
スペックだけなら吸血鬼よりも高そうな鬼になれそうならまあそっちを選びますよね。
肝心の無惨様が上弦含めてサーチ&デストロイになっているが、彼らの運命はどうなるのやら...


投下します

160 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:41:47 ID:rS5n0Bxc0
―――ほたーるのーひかーりーまどのゆーきー


「アニキ〜〜〜ッ、やめてくれ〜っ!」

あいつの声が木霊している

―――ふみーよむーつきーひーかーさーねーつーつー


「もうやめてくれよぉ〜〜〜っ!!」

口腔に広がるのは生臭い血、肉、臓物、骨の味、臭い。


―――いつーしかーとしーも、すぎーのーとーをー

それらを咀嚼する度に身体は喜びに震え、思考能力さえも彼方に吹き飛んだ。

―――あーけーてぞーけーさーはー


我に返った時にはもう遅い。

―――わかーれゆーくー

辺りに散らばるのは、かつて命だった友達と先生。

みんなを殺したのが誰なのか。それを理解してしまったオレは、ただ泣き叫び、怒りと絶望に身を委ねるしかなかった 。

161 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:43:43 ID:rS5n0Bxc0



ばさり、と旗がたなびいている。
記念写真のように貼り付けられた老婆の笑顔が彼を見下ろしていた。

彼の名は不動アキラ―――否。勇者アモン。
不動アキラの身体を触媒とし、現世に蘇った悪魔(デーモン)である。

「ククッ...」

彼は両の口端を極端に釣り上げ笑う。

「殺しあえ...あいつらを殺したこのオレに!殺し合えだと!?」

それは歓喜でも愉悦でもなく、怒り。一周回った怒りがかえって彼に笑みをもたらしたのだ!

「ふざけんじゃねえ、ミキまで巻き込みやがって!友達だけじゃなくアイツまでオレに殺させるつもりか!!」

魔鬼邑 ミキ。不動アキラが家族として愛し、アモンもまた一人の女として愛した少女。
その彼女が、この殺し合いに巻き込まれている。
許せない。このアモンの手でミキを殺させようとするその狙いが、なによりも許せない。

「てめえらだけは道連れにして死んでやる。オレを再びけだものに戻したこと...地獄で後悔するがいい!!」

脳裏に浮かぶ憎き仇敵の顔。


シレーヌ。
雷沼ツバサの身体を密かに乗っ取り今までいけしゃあしゃあと過ごしてきた女。
ミキの前ではお互いに悪魔であることを隠すという約束もすぐに破られた。

ヴィルフェ―――もとい、守城ケイ。
悪魔の力を手に入れながら人の人格を保ち悪魔と戦う存在、悪魔人間(デビルマン)でありながら、悪魔族に人類を売った裏切り者。
その理由も「デビルマンでヨーヨーの世界王者である自分がちやほやされないのが嫌だ」というクソのようなものだった。

クルール。
悪魔族の元老院の実質的トップの女。
恐らく、悪魔族による人類への一斉攻撃はこいつの主導だ。あれさえなければ...オレはあいつらを食わずに...!!

そして―――神子柴と名乗った老婆。
覚えがない顔だが、新たに生まれた悪魔なのだろうか―――どうでもいい。どのみち殺すだけなのだから。


目尻に涙が浮かび頬を伝う。怒りでガチガチと牙が鳴る。

感情の赴くまま、アモンは駆け出した。
目指すは、憎き老婆の描かれたクソみてェな旗。

「勝負だ!元老院!!」

162 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:44:24 ID:rS5n0Bxc0



ピピピ

国会議事堂へと踏み込もうとしたアモンの首輪から警告音が発せられる。
さしもの頭に血の登ったアモンでも、これには警戒心が高まり警告音の射程圏外へと離れる。

「近づけねぇ...そうだよなぁ、臆病なてめえらならそういう仕組みにするよなぁ」

わざわざ首輪をつけたのだ。殺し合いをさせたい連中からすればこの程度は当たり前の備えだ。
アモンもそんなわかりきっていることで諦めるはずもない。

「なら建物ごと燃やし尽くしてやる!」

アモンが飛び上がり、その口から灼熱の炎が放たれる。その勢い、まさに地獄の業火!しかし

「なにっ!?」

業火は壁に弾かれた。石造りの為に火が燃え移り難いだとかそんな話ではなく、そもそも触れる寸前に四散してしまったのだ。

「防壁かなんかを張ってやがるのか...遠距離からは壊させねえってハラか。だったらよぉ〜」

―――断空翼(スラッシャーウィング)!!!

アモンは背中の翼を広げ、高速で国会議事堂へと突撃する。

「中からぶっ壊すだけだ!」

外から壊すのが無理なら中から。無論、首輪の警告音が流れるが、そんなものは関係ない。1分。それだけあれば勇者アモンの力を持ってすれば、内部を荒らし回り破壊できる。
仮に間に合わずとも、国会議事堂にダメージを与え、ミキの助けになれればそれでいい。
彼女は強い女だ。脱出の足がかりさえあればきっと生き残れるだろう。

163 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:44:48 ID:rS5n0Bxc0

―――六十秒。

ベンっ

琵琶の音が鳴り、部屋の景観がまるきり変わる。
庭園だ。草木生い茂る室内庭園だ。
突然の出来事に、アモンの動きが一瞬止まる。

ボゴッ

そのタイミングを狙っていたかのように、地面が盛り上がり弾けるように飛び出す。
人の顔にすね毛の生えた足がついた、ほぼ丸形の異形がアモンの右腕に噛みついた。

「チッ、こんなもの」

異形を払おうとした瞬間、異形の身体が茹で蛸のように赤く染まっていく。

パ ァ ァ ァ ン

そして爆発!四散した異形の破片と爆風はアモンの身体を傷つけ削り取っていく!

「ぐあっ!!」

苦悶と共にのけぞるアモンの身体。
それに合わせて、同じ形の異形が地面を突き破り次々に飛び掛かっていく。

「なめるんじゃねぇ!!」

激昂と共に、アモンの額、1対の触覚がピンと張り、大気を震わす。

―――震空音檄(ソニックアロー)!!!

アモンが頭を袈裟懸けに振り下ろせば、触覚から放たれる真空の刃が異形を纏めて両断した!!

「ホーホホホ!!!」

一息着く間もなく、間髪入れずの襲撃。
巨大な鳥のような形状をした異形が、アモン目掛けて高速で飛来した!!
その体当たりをアモンは両腕を交差し防ぐ。

「悪魔族の勇者アモン!お初にお目にかかる、私は吸血鬼の」
「邪魔だ!!」

名乗りを上げようとした吸血鬼の顔目掛けて拳を振るう。
高速で動いていた吸血鬼は防御の構えすらとれず、あわれその顔面を陥没させた!

164 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:45:54 ID:rS5n0Bxc0

―――四十秒

ベンッ

アモンが拳を引き抜くと同時、再び鳴る琵琶の音。
変わる光景。
今度は松明だけが頼りの薄暗い部屋だった。

鼻をつんざく腐臭。ああ、うぅ、ともがくようなうめき声。
ゾンビ。グール。アンデッド。
呼び方は人それぞれだが、死にぞこないの屍たちが蠢いていた。

「ウヒヒヒヒヒ!あったけー血がすいてェーぜ!悪魔族の血はどんな味がすんだろぉなぁ〜〜〜!!」

一人だけ流暢に言葉を発する屍生人が、異様に長い舌と共にアモンに飛び掛かり、それを合図に四方八方から屍たちも飛び掛かる!
常人ならば悲鳴を上げ失禁し一目散に逃げだすこの場面。
しかし、それに臆するアモンではない。

「今更こんなもので怖気づくと思ってんのか」

口内に充満する屍肉の臭いに構わず、息を大きく吸い込む。

―――焼滅光線(ターミネーション・ビーム)!!!

「地獄へおちろ屍ども!」

放たれるは炎。敵を地獄へと送る浄化の炎!!

「ギャアアアアアア!!!」

湧き上がるのは悲鳴、悲鳴、悲鳴。
屍生人とて生き物。それを焼けばこうなるの必然。
アモンはそんなことを気にも留めない。それに、彼らも。

「ぐっ!」


降りかかる矢の嵐。
武装した獣人共がボウガンを構え、アモン目掛けて一斉に射撃したのだ!
さしものアモンもこの物量の攻撃には防御に回るほかなし。

165 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:46:34 ID:rS5n0Bxc0

―――二十秒。

(あのゾンビ共は囮で、本命はこっち。なかなか考えているが...だが!)

そんなもので勇者アモンは止まらない。留まらない。
防御に回ったままでも放てる技はある。
コオォ、と小さな音が鳴り、アモンの腹部が光だす。

「くらえ!斬肉―――」

目を見開き、獣人共を一掃しようとしたその瞬間だ。
アモンの眼前に奇妙な液晶画面が舞い降りた。
小型のテレビ。アモンは構わず獣人諸共破壊しようとする。が

『―――――』

声が聞こえた。
ノイズが混じり、しかし確かに聞き覚えのある声が。

『――――キ』

画面の砂嵐が収まっていくにつれ、声も鮮明になっていく。

『――アニキ!』

砂嵐も消え、ノイズは取り除かれ。画面にはその正体がはっきりと映った。

「あ...ああ...」

それは悪夢だった。

爪を、牙を振るい暴れ狂う自分。
恐怖と困惑に包まれても、自分を止めようとしてくれる友人たち。
大切な人を護ろうと立ちはだかった先生。

それらを。愛しい者の、なにより自分にとっても大切な日常を。
引き裂いた。消し飛ばした。バラバラに引きちぎり、中に詰まっていたものを嬉々として引きずりだし貪った。

悪夢だった。
既に起きた現実が、再び悪夢として襲い掛かってきた!


「わ あ あ あ あ あ あ あ あ あ !!!」

あの時の光景がアモンの脳内を支配する。
皆の悲しみが。苦しみが。怨嗟の声となりアモンの精神を侵食する。
例え見せられているのが幻覚だとわかっていても、アモンに抗う術はない。
矢の嵐が、いつの間にか収まっていたことにすら気が付かない。

そして―――

―――零。


ホ ホ ホ ホ ホ ホ ホ ホ

堕ちていく意識の中、最後に聞いたのは、どこかで聞いた高笑いだった。

166 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:48:40 ID:rS5n0Bxc0




「―――という顛末ですよ」
「なるほど。よぉくわかった。そこの馬鹿がなぜ沈んでいるのかもな」

月光の下で四つの影が浮かんでいる。

ひとつは、水色の髪の小柄な少女、雷沼ツバサ。
ひとつは、半裸で白目を剥き倒れ伏しているアキラ。
ひとつは、大柄なジャマイカ人の男、ウサミミン。彼がアキラを連れ出してきた。
最後のひとつは―――大きな手に妖艶な顔を合成した奇妙な姿の怪物。

「サイコジェニー、幾つか質問があるがいいか」

ツバサ―――否、鳥人族シレーヌは、怪物、サイコジェニーをジロリと見下ろした。

「ちょっと待ってくださいね、主に許可を貰うので」

主。その言葉に、シレーヌの眉根がピクリと動いた。

(主だと?神子柴の裏を引いているのはクルール達ではないのか?)

もしも神子柴やサイコジェニーを操っているのがクルール達なら、わざわざ『主』などと遠回しな言い方はしない。
奴らなら神子柴のような替え玉を立てず、元老院の名の下に勅命を下すはずだ。
いや、そもそも今の悪魔族は最終戦争に向けて準備を進めている。だが、気を抜けばダンテ率いるデビルマン軍団に殲滅されるほどに綱渡りなのが現状だ。
そんな中で、貴重な一大戦力である自分になんの通達も無しに切り捨てるだろうか。否、奴らも流石にそれほど阿呆ではない。
ならば、この殺し合いの裏に潜んでいるのは奴らではない―――のだろうか。

「お待たせしました。『同郷のよしみとして、殺し合いに関わること以外で簡潔手短に済ますならば良い』だそうですよ」

ニヤニヤと笑みを浮かべるサイコジェニー。
恐らく念話で『主』とやらに確認をとったのだろう。

「...この殺し合いから生還するにはやはり優勝しかないのか?」
「はい。優勝者以外にその権利は渡しません」
「首輪は優勝すれば外せるのか」
「外します」
「貴様はなぜ私と接触した?」
「偶然です。本当なら誰にも会うつもりはありませんでした」
「この殺し合いを開いたのは悪魔族か?」
「答えられません」
「私は元老院に切り捨てられたのか?」
「答えられません」


こちらを小ばかにするようなサイコジェニーの笑みにも、しかしシレーヌは怒りも見せず淡々と受け流す。

「時間です。これが最後の質問です」


「サイコジェニー...貴様は、悪魔族を裏切ったのか」

シレーヌの問いに、それを待っていたと言わんばかりにサイコジェニーの笑みは更に深まった。

「知ったことじゃありませんよ。私は今が楽しければそれでいいんです」

ホ ホ ホ ホ ホ ホ ホ ホとひとつ高笑いをあげると、サイコジェニーはウサミミンを連れ闇夜に消えていった。

167 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:49:10 ID:rS5n0Bxc0
「......」

シレーヌは考える。

(開始数分で本拠地に殴り込みに行く。そんなタブー中のタブーを犯したこいつがなぜ五体満足で放り出された?)

サイコジェニーの話が本当ならば、アキラの身体にはもっと怪我があるはずだ。
それが今のアキラの身体には湿布ひとつすらない。わざわざ治療までしたのか。
なぜか。国会議事堂の恐ろしさを伝え、踏み入る輩を減らすためだろう。
確かに、アモンのように死なば諸共、あるいは考えなしで国会議事堂に攻め込む輩も他にいるかもしれない。
そう考えれば、アモンほどの悪魔でもなすすべも無かったという広告塔にはうってつけだ。

(あるいはそうせざるを得なかった、か。奴らはあくまでも殺し合いを見たがっている。極力、禁止エリアに踏み込んで自爆、なんて展開は望まないだろうよ)


シレーヌは、傍らで失神しているアキラにチラ、と視線を移した。

「アモン、お前は変わらんな。昔も今も衝動に任せて暴れるばかりで、自分が勝てる戦を作ろうともしない」

アキラの目元は赤く腫れ、涙の痕が微かに残っている。
彼が無謀にも主催の本部に殴り込みをかけたのは、つまりはそういうことなのだろう。

「だが、そのままじゃ誰と何べん戦おうがなにも守れんぞ。一度アタマ冷やすんだね。...さよなら」

シレーヌはアキラのデイバックに手をつけず、かといって彼を起こすのでもなく、自分の荷物だけを纏めて背中を向けた。
アモンと協力は難しいだろう。恐らくアモンはこの殺し合いに元老院が絡んでいると思い込んでいる。
いまの奴の状態で冷静に話し合うなど、とても出来たものじゃない。
だから、放っておき好きにやらせておけばいい。その果てに途中で力尽きるも自分と決着を着けるのも、一人で決めさせればいい。

「殺し合い、か」

シレーヌは己の首に手をあて、ぽつりとひとりごちる。

首輪を嵌められてのこの殺し合い。数多の殺戮と虐殺を経験してきた彼女にとっても気に入らないものだ。
自分の意思でなく、顔も知らない誰かさんの命令で殺す。そんなもの気分がいい筈がない。
無論、己の命が脅かされるようなら殺し合いに乗ることも辞さない。が、結論を出すにはまだ早い。
アモンのお陰で主催側にも相応の戦力が揃っているのがわかった。神子柴含む主催陣を殺すにしても、今回ばかりは一人では不可能だろう。

優勝か、主催の打倒か。

なんにせよ、彼女の方針で確かなものはひとつ。

―――生き残るのは、私だ。

168 IDENTITY CRISIS ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:50:35 ID:rS5n0Bxc0


【D-3/1日目・深夜】


【不動アキラ(アモン)@デビルマンG】
[状態]肉体的には健康、精神的疲労(大)、気絶中
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:元老院(主催)を殺す。
0:......
1:ミキは死なせない。

※参戦時期はチェーン万次郎、カミソリ鉄、アオイを食い殺した直後。
※主催を元老院だと思っています。



【雷沼ツバサ(シレーヌ)@デビルマンG】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:生き残る。手段は択ばない。主催陣は殺したい。
1:殺し合いに乗ってやってもいいが...どうするかな
2:アモンとは次に会った時に決着をつける。次があれば、だがな。

※参戦時期は18話以降。


※国会議事堂に

【噛みつき爆弾型吸血鬼@彼岸島】
【善が初めて殺した吸血鬼@血と灰の女王】
【トロール@ベルセルク】
【アダムスさん@ジョジョの奇妙な冒険】
【グール@HELLSING】
【ゾンビ@チェンソーマン】
【ハコの魔女@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
【サイコジェニー@デビルマンG】
【ウサミミン@神緒ゆいは髪を結い】

の存在が確認されました。国会議事堂に踏み入った者に襲い掛かります。殺された者が復活するかは不明です。

169 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/14(火) 00:52:09 ID:rS5n0Bxc0
投下終了です

師匠、勝次、カーズ、シュトロハイムを予約します

170 名無しさん :2020/01/14(火) 14:12:57 ID:59IfkreU0
投下乙です
アモンの参戦時期がクッソ鬼畜ですねクォレハ…
国会議事堂には他にも色々防衛役の敵がいるのかな?

171 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/15(水) 00:55:59 ID:DD1/Zp9Y0
延長お願いします

172 ◆A2923OYYmQ :2020/01/15(水) 17:41:25 ID:U1HdWWTQ0
再延長お願いします

173 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/20(月) 23:44:26 ID:3ecWWxcU0
予約を延長します

174 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/22(水) 18:51:06 ID:Fot.xVss0
すいません再延長おねがいします

175 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 17:59:23 ID:u7AC/3320
投下します

176 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:01:52 ID:u7AC/3320
ハァ、ハァ。

少年の口から吐息が漏れる。
帽子を被った小柄な少年の名は山本勝次。吸血鬼に支配された絶望の孤島・日本においても恐怖に屈せずたくましく生きる少年である。

「明とハゲも来てるのか...それに、金剛...」

名簿を確認した勝次は、思わずくしゃりと力を籠め握ってしまう。

知り合いがいた。
明と鮫島。共に、かけがえのない仲間たち。

金剛。
許せない敵だった。母ちゃんを強姦し、吸血鬼にした挙句、わざと血を与えず亡者にした男だった。
だが、彼は間違いなく死んだはずだ。小さな者と大きな者がいたが、小さい方は皆で協力して、大きな方は明が倒した。
あのセレモニーで見せたようにオババが蘇らせたのだろうか。

「...関係ねえ。あいつがまた蘇って、また悪さするつもりなら何度でも殺してやる」

勝次は決して忘れない。
大好きな母親を弄ばれた恨みを。
母の手で復讐を完遂したとて、金剛を許すなど到底できるはずもない。

そして、同時に思い返すのは母のこと。

母・ゆり子は亡者と化した己の身体に耐えきれず、自我が無くなる前にその命を断った。
あの老婆は殺し合いで優勝すればなんでも願いを叶えると言った。
ならば、老婆に従い参加者を殺し尽くせば母もきっと蘇らせてくれるだろう。

「なめんなよクソババァ」

そんな縋りつくような弱い思いを勝次は蹴飛ばした。

勝次は母のことが大好きだ。今でも家族で暮らしたあの日々を忘れられずにいる。
けれど、勝次はゆり子の死際に誓った。母ちゃんがいなくても頑張って強く生きていくと。
例え手を伸ばせば届く奇跡であっても、あの時の誓いを反故にしたくない。

それに、この会場には明と鮫島も連れてこられている。
彼らを殺して母を蘇らせるなど、それこそ母ちゃんに殺されても仕方がない。

そして、主催―――それに、雅や金剛のように息をするかのように他者を害する悪党は許せなかった。

だから勝次はこの殺し合いに反目すると決意した。

177 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:02:33 ID:u7AC/3320

勝次が荷物を纏め、仲間たちを探す為にその場をあとにしようとしたその時だ。

ザ バ ァ

勝次の背後の海からなにかが上がってきた音がした。
彼は慌てて振り向き、その姿を確認する。

そこにいたのは、巨大な魚を握りしめる巨人だった。
能面を被った、人間離れした巨漢だった。

勝次は驚愕しつつも、慌てて支給品である拳銃を構えた。

(で、デケェ...ハゲより半身ぶんデケェ)

驚愕する勝次とは対照的に、男の感情は読み取れない。
仮面で顔を隠しているからではなく、拳銃を突き付けられているというのに一切の動揺もしていないのだ。
まるで、拳銃など屁でもないと言わんばかりに無反応だった。

ハァ、ハァ、ハァ。
ぴちぴちぴち。
互いの呼吸音が魚のもがく音共に空気へと溶ける。
数秒ほどの沈黙が続くと、男はくるりと踵を返し、海沿いに歩いていく。

拳銃に怯えた様子もない。敵意はないのだろうか。だったら、と勝次はゴクリとつばを飲み込んだ。

「あっ、あの、おっちゃん!」
「案ずるな。ワシはこんな殺し合いになぞ乗らん。ましてや脅しの為にしか武器を構えられぬ小僧など相手にもしてられん」

意を決しての呼びかけに、男は冷たく言い放った。勝次など取って足らぬ相手だと。
そこは少々頭にきた勝次だが、感情任せに引き金を引くほど愚かではない。
そもそも勝次は男を脅す為に呼びかけた訳ではないのだから。

「ごめんよおっちゃん。俺、アンタを脅したかったわけじゃないんだ。明って男と鮫島ってデケェハゲ知らないかな。あんたからしたらハゲも小せェかもしれないけどさ」

ピタリ、と男の歩みが止まる。

「小僧、貴様、明の知り合いか」
「おっちゃん、明のこと知ってんのか!?」

思わぬ食いつきに、勝次の顔は綻んだ。
よもやこんなところで明の知り合いに会えるとは。

「小僧。向こうにワシの着替えがある。そこで腰を落ち着け話を聞かせてもらおう」

そんな勝次に思うところがあったのか、男は勝次についてくるように促した。

178 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:03:01 ID:u7AC/3320




木造の小屋の中、勝次は服を着た男と共に食事を取っていた。
先ほど、男が海で獲った巨大な魚である。

「ウメェよおっちゃん!魚はやっぱり焼くのに限るぜ!」

勝次は満面の笑みで焼き魚にかぶりつく。
勝次はすっかり男に気を許していた。男の名は青山龍ノ介といった。

龍ノ介の話は勝次にとって非常に惹かれるものだった。
なんでも龍ノ介は明の師匠らしく、あのオババに丸太で殴り掛かった男も明の兄貴らしい。

(そりゃ、こんなスゲェ奴らに囲まれたらああなるよなぁ)

勝次は、明がなぜあそこまで強くなれたかを理解した。
同時に、そんな明たちでも倒しきれない吸血鬼たち―――ひいては、雅の強大さを思い知らされる。

(明...)

勝次は思う。自分は肝心な時にはいつも明の力になれていない。
金剛の時だって、姑獲鳥の時だって、ここにいる師匠や兄貴のような強く頼れる者たちがいれば明ももう少し楽に戦えたはずだ。
自分が、明のように強くなれれば...

ゴクリ、と唾を飲み込み、その勢いのまま、勝次は膝を地につけた。

「なっ、なァおっちゃん!」
「むっ」
「この殺し合いから抜け出たらさ、俺を鍛えてくれよ!俺も明みたいになりたいんだ!頼むよ!」
「......」


がばり、と身体を丸め、勝次は額を地に着けた。
土下座。彼なりの全力の誠意である。

龍ノ介は、勝次を見下ろしたまま沈黙する。
十秒。二十秒。
その数秒が、勝次にとっては非常に重苦しいものだった。

179 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:03:39 ID:u7AC/3320

「...顔をあげろ」

その言葉に、勝次は顔を綻ばせた。

「おっ、おっちゃ」

パ ン ッ

顔を上げたその瞬間、勝次の頬に衝撃が走った。
頬を叩かれたのだと、遅れて気が付いた。

「...こんなのを躱せない人間に教えることなどあるものか」

それだけ言って、龍ノ介は座り直し、再び焼き魚にかぶりつき始めた。

その姿を見ていた勝次は、ヨロヨロと立ち上がり―――龍ノ介に飛びついた。

「離れい、小僧!」
「ヘッ、クソ坊主、俺が叩かれただけで諦めると思うなよ!!」
「ワシは素質のない奴には教えん」
「関係ねェ!俺は強くなるんだ。強くなって、明の力になるんだよ!!」
「......!」

勝次を引き離そうと藻掻いていた腕を止め、龍ノ介は改めて勝次へと向き合う。

「小僧。貴様はなぜ強さを求め、明の力になろうとする。吸血鬼の撲滅のためか?あるいは親族の仇か?」
「明は俺の友達だ。友達の力になりたくてなにが悪ィんだよ」

ハァ、ハァ、ハァ。
再び見つめあい沈黙する二人。ややあって、口を開いたのは龍ノ介。

「...わかった」
「おっ、おっちゃ」

ブンッ。

振るわれる右の張り手を、勝次は飛びのき躱す。

180 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:04:17 ID:u7AC/3320
「へっ、何度も同じ手は食わね」

言い終わる前に振るわれる左の張り手。
体勢の崩れたいま、勝次にそれを躱すことはできない。

パ ァ ン

その威力に勝次の身体は宙を舞い、壁に背中を打ち付けた。

ヨロ ヨロ

が、受けた痛みに歯を食いしばり耐え、すぐに立ち上がった。

「...いまのを食らってすぐに立ち上がるとは、決意は本物のようだな」
「何遍も言わせんなよ。俺は殴り殺されるまで諦めねェぞ」

龍ノ介は息を呑む。
勝次は明や篤のように心底吸血鬼を恨んでいる訳ではない。
母を亡者にされたと言っていたが、その仇も殺したため、彼らほどの恨みはない。
だが、それでもなお彼は明の力になるため戦うと決意を固めている。
明を、友達を助けたいと強く願っている。

「小僧。ワシに出来ることは全て教えてやるが、それでも雅に勝てるとは限らんし、明のようになれる保証もない。それでもよいな」
「!ありがとうおっちゃん...いや、師匠!!」

満面の笑顔を見せる勝次に、龍ノ介は思う。

勝次の話してくれた、明の様子。
恐らく、勝次と明が出会っている頃には自分はもう死んでいるのだろう。

そして、雅が本土にいるということは、彼岸島における吸血鬼と人間の戦争は吸血鬼が勝ったのだろう。
自分には死んだ記憶などないが、近い将来にどこぞで殺され、神子柴による蘇生の際に記憶を弄られたのだと推測した結果、そう仮説を立てることができた。

その仮説は勝次には話していない。所詮仮説は仮説であるし、彼には自分に妙な気を遣わず、明の友であってほしかったからだ。

「飯も食い終わったことじゃ。そろそろ明たちを探しに行くとするか」
「おう、師匠!」

火を消し、明たちを探しに行こうと二人が小屋を出たちょうどその時だった。

暗闇の中、一人の男が歩いてきたのは。

181 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:04:40 ID:u7AC/3320




歩み寄ってきたのは、紫のターバンとコートが特徴的な大男だった。
男は勝次たちを見つけるも、走りも動揺もせず、ただ淡々と歩いてきた。

「止まれ!ワシらはこの殺し合いには乗っておらん!」

龍ノ介の静止の声に、しかし男は歩みを止めない。
殺し合いに乗る参加者か―――龍ノ介は、デイバックから支給品である鉄のハンマーを取り出し構える。
それに対しても男に変化はない。まるで龍ノ介たちのことなど見えてもいないかのように悠々と歩みを続ける。

「『殺し合い』か。全くもってくだらん」

ポツリと男が呟いた。

「神子柴とか言ったか...貴様は許せん。我らへの侮辱、その命で償ってもらう」

男は龍ノ介の言葉への返答ではなく、独り言をぶつぶつと呟いていた。

「なァ師匠、あの男、オババを許せないって言ったよな?なら協力してくれるんじゃないかな」

勝次の問いかけに、龍ノ介は小さく首を振ることで否定の意を示す。

龍ノ介は、この男の不遜な態度と異様な気配に宿敵・雅の影を見ていた。
人を人とも思わぬ外道。人間を遥かに超越した、吸血鬼の王の影を。

龍ノ介の警戒心とは裏腹に、男との距離はどんどん縮まっていく。

男からの殺気は未だに感じていない。それ故に恐ろしい。

「――――ッ!!」

龍ノ介の予感は当たっていた。
男が彼らの横を通り過ぎ、その数瞬後―――龍ノ介の胸が裂け、血が噴き出した。

182 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:05:57 ID:u7AC/3320

「し、師匠!」

困惑しつつも、龍ノ介の身体に手をやろうとする勝次を、龍ノ介は制する。

「心配はいらん。薄皮一枚じゃ」
「今のを防いだか。多少は腕に覚えがあるようだな」

男はここにきてようやく『会話』をし始めた。

「てめーなにしやがる!殺し合いなんざくだらねェって言ったじゃねェかよ!!」
「その通りの意味だ。このカーズと貴様ら下等種族が『殺し合い』などという対等な立場に立てる訳がなかろう」

震えつつも激昂する勝次の言葉に、男―――カーズはフン、と鼻を鳴らした。

「貴様...何者じゃ」
「死にゆく者に答える必要はない」

会話をするのも面倒だと言わんばかりに、カーズは腕から刃を生やし龍ノ介へと斬りかかる。

ガキン、と金属音が鳴り、龍ノ介のハンマーの柄とカーズの刃が競り合う。

「ほぉう、パワーだけならサンタナに匹敵し得るか...だ・が、その程度ではこのカーズを倒せんなァ」
「勝次...すぐのこの場から離れろ。こいつのことを明にも知らせるんじゃ」

カーズから目を離すことなく、龍ノ介は言葉を投げる。
自分が食い止めている間にここから逃げろ。長くはもちそうにない。
勝次は、龍ノ介のいわんことを既に理解していた。

だからこそ。

「離れやがれこの紫色ォ!」

警告と共に、発砲。
パァン、パァン、と甲高い銃声と共にカーズの腹部に銃弾が着弾する。

「なにをしておる!」
「うるせェクソ坊主!あんた明の師匠なんだろ!だったら会わなきゃダメだろ!こんなところで死ぬみたいなこと言うんじゃねェよ!!」
「勝次...!」

「小僧...その躊躇いのなさは評価してやろう。だが、おれにこんな玩具が通用すると思うなよ」

鍔迫り合いの最中、カーズは仰け反り上体を逸らす。
急な脱力に対応できず、龍ノ介の上体は前のめりに突き出してしまい、無防備な腹部を晒す。

そこに放たれるカーズの蹴撃、加えて。

ドスリ。

カーズの足から生えた剣が龍ノ介の腹部を貫いた。

「がふっ」

その衝撃に吐血し、宙に浮かぶ龍ノ介の身体。

「てめええェェェ!!」

怒りのままに発砲する勝次。
しかし、その弾はあっさりとカーズの掌に収まった。

「そぅら、返してやるぞ小僧」

口角を吊り上げながら、カーズは銃弾を握った手を突き出し、親指と人差し指の間に銃弾を挟み込む。

「避けろ勝次!カーズはお前目掛けて銃弾を弾くつもりじゃ!!」

龍ノ介の警告も時すでに遅し。
カーズの指は弾かれ―――


ギャンッ!!

183 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:07:08 ID:u7AC/3320


突如、横合いからカーズの首元に食らいつくような衝撃が走り、小屋の壁へと叩きつけられる。
その衝撃に押され、カーズの照準がブレ、弾も明後日の方角へと飛んでいく。

「ぐあっ、こ、これは...!」

カーズの首元を圧迫するモノの正体。
それは、赤く大きな蟹の腕だった。

「カーズ...それが貴様への地獄の手向けよ」

現れたのは、顔の右半分を機械で覆い、軍服を着た大男だった。


「こんなものでこのおれを...」
「ふんっ!」

龍ノ介の振るったハンマーがカーズの頭部を潰し血液が飛び散る。

「ごあっ」

カーズの口からうめきがあがるも、しかしその身体はなお健在。突き出された両腕は龍ノ介の身体を掴もうと力強く蠢く。

「むっ、これでも生きておるか」
「そこの日本人、追撃はいらん!!すぐにカーズから離れろォォォォォォ!!!」

軍人の叫びに龍ノ介が振り返り、言われた通りにカーズから距離をとる。


「喰ウゥゥゥゥらえィィィィィィィカァァァァァァァズゥゥゥゥゥゥ!!我がナチスと同盟国日本の科学が産んだ最高知能の結晶ォォォォォォ!!!」

軍人の雄たけびと共に軍服がはだけ、その鍛え上げられた肌色の胸部と異様な腹部が露わになる。
砲門だ。赤く雄々しい砲門が彼の腹部から露出していたのだ!!


「新兵器、まどキャノン!!これで貴様を地獄に送ってやるぜェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!」

軍人の砲門から放たれる小型のミサイル。
それは、コン、とカーズの身体を一度跳ね―――辺りを覆うほどの爆発を引き起こした。


眼前の光景にあんぐりと口を開ける勝次。
彼が我に返るよりも早く、軍人は勝次にかけより脇に抱きかかえた。

「日本人、俺についてこい!あの程度でカーズがくたばると思うなッッ!!」

龍ノ介は、軍人の言葉に従いあとに続く。

「あの船に乗るぞ!出航さえしてしまえばしばらくの時間稼ぎにはなる!!」

軍人が指さす先には、確かに巨大な船があった。
ルールに書いてあった、参加者用の豪華客船だ。

「お主はいったい...」
「俺の名はルドル・フォン・シュトロハイム!詳しくは船に乗ってからだ!」


かくして自己紹介の暇すらなく、彼ら三人は船へと飛び乗った。

その三人の背を、カーズは確かに睨みつけていた。

184 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:07:58 ID:u7AC/3320



「大丈夫かよ師匠!」
「案ずるな。この程度ではワシは死なんよ。...奴をあそこで仕留めるわけにはいかなかったのか」
「奴を侮るなァ!奴は柱の男!あの程度でくたばるなら苦労は無いわァ!」
「柱の男?」

勝次の質問に、シュトロハイムは険しい顔で語り始める。
柱の男と吸血鬼の関係性、人類側からの対抗勢力・波紋の戦士達、彼らとの永きに渡る因縁...
簡易的ではあるが、大まかな事柄を二人に伝えた。

(あいつが吸血鬼を...それに、明たち以外にもあいつらに抗う人間がいたなんて!明にも伝えねェと!)

吸血鬼に脅かされど、そのルーツを知らなかった勝次は素直に感嘆する。

一方の龍ノ介は、仮面の下で神妙な表情を浮かべていた。
彼は彼岸島で生まれ育ち、吸血鬼の成り立ちについてはよく知っている。
その陰に『柱の男』の存在など影も形もなかったし、元々は吸血鬼も容易く増やせるようなものではなかった。
だが、実際に『柱の男』はいた。シュトロハイムが語った吸血鬼と自分たちの知る吸血鬼はまた別の存在なのだろうか。

「ところで...先ほど、あのカーズに退かず立ち向かったあの勇気に私は敬意を表する。
先ほどの戦闘で奴の脅威はわかっただろう。ここは同盟国同士、手を取り合い奴ら柱の男に目にもの見せてくれようではないかァ!!」
「そりゃいいけどさ、この殺し合いはおっちゃんはどうするんだ?」
「フンッ、しれたこと...確かにあの老婆の語った報酬はチト気になる...が、しかし!俺は誇り高きドイツ軍人!!
俺が従うのは偉大なる総統閣下のみ!!あの愚物に殺せと言われてホイホイと従うほど恥知らずではない!
この殺し合いを潰したうえで、あの婆の言った報酬とやらを奪い取ってみせるわァ!!」

ワハハハ、と豪快に笑い飛ばすシュトロハイムに、勝次は思わず耳を塞いだ。

「して、龍ノ介とやら。お前の言葉通り、その腹の傷は致命傷ではないのかもしれんが、一応応急処置だけはしっかりしておくべきだ。
戦場において傷口の放置はあらぬ失敗を引き寄せるからな。まだこの船を調べきれていないのでなんともいえんが、消毒や包帯くらいはあるだろう。探してくるといい」
「探してくるといいって、おっちゃんは?」
「俺はもう少し後方を見張っておく。カーズが別の船を用意せんとも限らんからな」
「わかった。師匠、少し我慢しててくれよ」

階段を降りていく勝次を見送り、甲板にはシュトロハイムと龍ノ介が取り残される。

「...時に龍ノ介、ひとつ聞きたいことがある」

先ほどまでの大声とは打って変わって、シュトロハイムは神妙な声音で語り掛ける。

「その腹の傷...確かに致命傷ではない。が、しかし、我慢してどうにかなるモノでもなかろうに」
「なにが言いたい」
「その人間離れしたタフさ...明らかに人間のものではない。お前の身体の特性も不老不死の手がかりになるやもしれん。龍ノ介よ、神子柴を倒した後、お前にも我がナチスの医科学班に協力してもらいたい」

協力―――この軍人の言う『協力』とは、要するに人体実験のことだろう。
既に日本軍に似たような建前で一族郎党、実験体にされていた為、龍ノ介は彼の真意を解っていた。

そして、やはりかと思う。
彼らは自分たち『吸血鬼』についてはなにも知らない。
先ほどの柱の男やらが生み出す吸血鬼と、彼岸島の吸血鬼はまるで別物だと。

ならばこそ、だ。

185 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:08:39 ID:u7AC/3320

「『協力』するのはいいが、条件がある」
「なんだ?」
「ワシと共にこの会場に来ている吸血鬼『雅』を共に殺してくれ。そうすれば、ワシは思い残すことはなにもない」

そう。彼岸島の常識に囚われている自分では雅を倒せずとも、異なる異形を研究しているこの男や波紋の戦士とやらの協力があれば今度こそ雅を倒せるかもしれない。
無論、雅を殺した後は自分も自害し研究などに使わせる余地すら与えないつもりでいる。
長寿を望む研究者の行き着く先は同じだ。もしも自分が素直に研究に協力すれば、第二の雅が生まれることは想像に難くない。
約束を破ることになるのは気が引けるが、それでもこれ以上『雅』を増やすわけにはいかなかったのだ。

「吸血鬼か...安心しろォ!この身体になった俺ならば吸血鬼など恐るるに足らん!なァァァァァァァぜならァァァァァ!!!我がナチスの科学はs」
「大変だ師匠、おっちゃん!!」

世界一、と普段からの口上を叫ぼうとしたシュトロハイムを遮り、勝次が慌てて駆け上がってきた。

「どうした勝次」
「この船動いてねェんだよ!これじゃあ師匠を病院に連れていけねェ!」
「馬鹿を言うな。我らがこうしてカーズを撒けたのはこの船に乗れたから―――ッ」

チラ、と時計に目をやり、シュトロハイムは絶句した。

「...おいお前たち。この船は確か10分程度で向かい側の港に着くと書いてあったな」
「ウム。そろそろ件の港に着いてもよい頃じゃが」
「そう。10分程度...多少の前後はあるだろう。だが、俺たちはこの船に乗って既に15分以上が経過している!!なのに陸地はあんなにも遠い!!この船の行程は半分程度までしか進んでおらんのだ!!」

一同に戦慄が走る。
この船は停滞している―――なぜ。

「こ、壊れたのかよ」
「わざわざルールブックに載っているようなものが作動15分で壊れるなんて馬鹿なことがあるかァ!故障だとしても人為的なミスとしか思えん!」
「じゃがこの船は無人で動いているのは確認した。乗組員はワシら三人...しかし、つい先ほどまで一切離れておらんし、勝次が離れたのもものの数分...そもそも勝次に壊す動機がない」
「ああ。俺はなにも触ってねェ」
「と、なると、まさか...」

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

三人の背に冷や汗が滴る。

―――いる。
この船を、悪意を持って壊し、三人を陥れようとする何者かが。
そして本能が警鐘を鳴らす。ここに留まるのは危険だと。

186 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(前編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:09:03 ID:u7AC/3320

「マズイ...非常にマズイぞ。この船は広いとはいえ限られた空間。相手が俺たちを捕捉するのも時間の問題だ!いや、すでにされているのかもしれん!!」
「どうするんだよおっちゃん!!」
「う、うろたえるんじゃあない!ドイツ軍人はうろたえない!!なにか策を練らねば...!」
「いや...その余裕はなさそうじゃ」

ズ ン ッ
三人の足元から地響きのような衝撃が走り、足元は浮遊感に襲われる。
勝次は尻もちをつき、シュトロハイムと龍ノ介もぐらりと上体を崩してしまう。

「うわっ、なんだこれ気持ち悪ィ!!」
「ま、まさか...まさか敵は...!!」
「ウム。恐らく、この船のエンジンを壊し、船の一部も壊したのだろう。この船が沈むのも時間の問題じゃ」
「待てば藻屑、待たずとも藻屑...選択肢は最初から『この船から脱出する』以外にはなかったということか。ええい、味な真似を!!」
「急いで脱出しねーと!」

くるりと踵を返す勝次。

瞬間。

ボッ

「―――えっ」

床下から、一筋の閃光が走る。

同時に、勝次の足元へと垂れる赤い雫。

遅れて、ドチャリ、と音がした。

そして、地面に落ちたソレを認識してようやく理解した。

あの閃光の刹那、自分の左腕が切断されたことを。

「うわああああああああああ!!」

勝次の絶叫が響き渡り、切断面からじわじわと痛みが滲んでくる。

「ンンンンいい声だ...実にいい響きだぞ小僧」

それを嗤う者が一人。芸術のように磨き上げられた肉体が床下から這い出てくる。

そう。そいつの名は。ソイツの名は!!

「カァァァァァァァァァズゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」

187 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:10:05 ID:u7AC/3320




「オオオオォォォオオオオ!!!」

雄たけびとともにシュトロハイムがカーズへと躍りかかる。

フン、と鼻を鳴らし、カーズは右腕から生えた刃―――『輝彩滑刀の流法(モード)』を振るう。
それに対し、シュトロハイムは、組み合わず、身をかがめ地面を転がった。

その先には、激痛に蹲る勝次。
シュトロハイムは勝次を抱きかかえ体勢を立て直す。彼の狙いは勝次の救出だったのだ。

「ほう。組み合わず躱すとは...おれのこの『輝彩滑刀の流法』の恐ろしさは理解しているらしい」
「この身を以ての経験を無下にするほど俺は愚か者ではない。...悔しいが、ジョジョがいない今!俺たちは圧倒的に不利な状況にいる!!
しかしどうやって!カーズ、貴様はどうやってこの船に乗り込んだのだ!!」

シュトロハイムは出航後も不審なボートや小舟が追ってきていないか見ていたが、そんな影は微塵もなかった。
如何に柱の男といえども、素潜りでは船ほどのスピードでは泳げない。
ならばなぜここにいる。

「シュトロハイムよ。貴様のくれた手向け、中々イイ代物じゃあないか」

カーズの左掌に乗せられるのは、シュトロハイムが彼に撃ち込んだまどキャンサー。
その後部から伸びるロープを見て、シュトロハイムは彼がこの船に乗り込めた理由を知った!

「き、貴様カーズっ!ロープを繋いだまどキャンサーを船に打ち込み、そのロープを辿ってきたというわけか!道理で追手の船が見当たらぬはずだ!!」

常人ならば、それでも追いつけはしないだろう。だが、柱の男の身体能力があればそれが可能!!

「...どうやら逃げ場はないようじゃな」
「龍ノ介、迂闊に『輝彩滑刀の流法』を受けようなどと思うなよ。カーズがその気になればお前のハンマーも容易く切られてしまうだろう」
「おっちゃん、師匠、俺...」
「小僧、這ってでもいい。なるべく壁に背を預けておけ」


シュトロハイムは勝次を下ろし、龍ノ介はハンマーを構えながらじり、じり、とカーズとの距離を詰めていく。

「「オオオオオォォォォォ―――!!!」」

二人の雄たけびが重なり、同時にカーズへと殴り掛かる。
龍ノ介のハンマーが、シュトロハイムの機械仕掛けの剛腕がカーズへと振るわれるが、しかしカーズは寸でのところで回避、返す刀で両者への反撃。
二人もまた、必死に身を捩りどうにか躱す。

カーズも二人も、互いの攻撃が芯を捉えることがないまま1分程度が経過するが、わずかその間だけで彼らの"差"が顕著になり始める。

未だ傷一つついておらぬうえ、息も乱さぬカーズ。

徐々にかすり傷が増え、微量ながらも出血し始め、呼吸も荒くなる龍ノ介とシュトロハイム。

どちらが有利かは火を見るよりも明らかだ。

そして、均衡はあっさりと崩れ去った。

188 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:10:42 ID:u7AC/3320
ドスリ。

再び、龍ノ介の腹部にカーズの足から生えた刃が刺さる。

「がふっ」
「このまま」
「させぬぞォォォ!」

両断させまいと、シュトロハイムは龍ノ介の腹部より貫通した刃を掴もうとするが、しかしカーズは龍ノ介を斬るのではなくそのまま足で持ち上げた。

「なっ」
「フンッ!」

まるでプロサッカー選手のように足を振るえば、龍ノ介の身体がシュトロハイムへと勢いよく飛んでいく。
回避の間に合わぬシュトロハイムは、正面から龍ノ介の全体重と衝突し、後方へと吹き飛ばされた。

その衝撃で吐血し、臀部を地に着ける二人。
改めて思い知らされる。いま戦い続ければ間違いなく敗けると。

「お、おのれ〜〜...こうなれば...」

シュトロハイムはこそこそと龍ノ介へと耳打ちをする。
それを見たカーズはフン、と鼻を鳴らしせせら笑った。

「なにをこそこそしている。どちらが先に死ぬか相談でもしていたか?」
「カーズ...この俺に完全勝利を収めたと思うなよ。我がナチスの科学は世界一ィィィィィ!!!」

ウィンウィンと作動音が鳴り、シュトロハイムの機械仕掛けの右目が蠢き開く。

「紫外線照射装置作動ォォォ!!」

そこから放たれるは光。柱の男が唯一苦手とする紫外線!
紫外線はカーズが咄嗟に翳した手を貫き通した!さすがのカーズもこれには動揺した!!

「WONUUUUUU!!」
「そしてェェェェェくらえまどキャノン!!」

発射される砲弾はまたしてもカーズを爆発に飲み込み、その火は船上に燃え移った。

189 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:12:17 ID:u7AC/3320
「いまだお前たち!この船から脱出するぞ!」

シュトロハイムが指さす場所は、海面。
ここから飛び降りる。そう告げているのを、二人は理解した。

チャンスはカーズの視界が塞がれているこの瞬間しかない。
龍ノ介は勝次を抱き抱え走った。

「飛べェェェェェェェェェェ!!」

甲板を蹴り、海へと飛び出す二人。
そう。二人―――シュトロハイムと勝次。

二人は共に「えっ」と声を漏らす。

「勝次よ。お前は生きろ。生きて、明と会え」

龍ノ介は、勝次を放り投げ船に留まっていた。

「シュトロハイム!勝次を頼んだぞ!!」
「キッ、貴様、龍ノ介!!...その覚悟、受け取ったぞ!!」

龍ノ介の行動に面を食らったシュトロハイムだが、その意図を汲み、勝次を引き寄せ、可能な限り勝次への衝撃を減らすように抱き抱えながら着水する。
水面から顔を出し、ぷはぁと息を大きく吐く二人は即座に次の行動に移した。
シュトロハイムは陸地へと向かうよう方角を確かめ、勝次は龍ノ介のもとへ行こうと船の方へ。

「テメェクソ坊主!!言ったじゃねェかよ!!あんたも明と会わなきゃ駄目だって!!」

叫ぶ勝次。その勝次の襟を掴み、シュトロハイムは抱き寄せ陸地へと泳ぎ始める。

「離せクソ軍人!!俺ァ師匠を見捨てねェぞ!!」
「甘ったれるな小僧ォ!戻ったところで今の貴様になにができる?腹を刺された奴以下の戦力の、片手落ちの貴様がカーズの相手が務まるとでも?
奴の覚悟を無駄にしたいのかァ!?」

シュトロハイムの言っていることは勝次でも解る。あの目くらましは一時的なもので、三人纏めて泳いで逃げるよりは、一人が残り時間を稼いだ方が誰かが生存する確率が高いと。
それでも納得できなかった。納得するには、勝次はまだ幼かった。

「いやだ!いやだ師匠ォォォォォォ!!」

シュトロハイムに引っ張られ、徐々に船から遠ざかっていく。
勝次の叫びに返ってくるのは、燃え盛り崩れていく船の音だけだった。

190 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:13:10 ID:u7AC/3320



ハァ ハァ ハァ

「よもや一人で残るとはな...」

龍ノ介のハンマーを持つ手に力が籠る。
眼前に立つその姿は、爆撃を受けても尚も健在。そして美的。
カーズは、先ほどまでと変わらぬ姿で立っていた。

「ひょっとして、一人で充分な時間が稼げると...本気で思っていたのか?」

龍ノ介を意にも介さないかのように、すたすた、とカーズは歩を進める。

「うおおおおおお!!」

吠える。吠える。傷ついた己の身体を鼓舞するように。
カーズはそれを冷ややかな目で眺めている。
無駄だ。どれだけ頑張ろうと結果は変わらんと。

龍ノ介がハンマーを振り下ろす。
寸前に迫ってもカーズはソレから目を逸らさない。寸でのところで躱し、最小限の動きで龍ノ介の懐に入り込む。

―――シャッ

右腕の刃による二振り。
一撃目は、龍ノ介の腹部を真横に裂き、上半身と下半身を両断。
二撃目は、彼の仮面を割りその素顔を晒した。

戦いは、余りにも静かに決してしまった。

191 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:14:04 ID:u7AC/3320
「ただの人間ではないと思ってはいたが...そうか貴様は吸血鬼だったか」

露わになった龍ノ介の素顔を見て、カーズは小さく鼻を鳴らした。

「我らの餌の中ではそこそこの使い手だったが所詮餌は餌。このカーズに立ち向かうなどおこがましいわ」

ギラリ、と眼光と共にカーズの右腕の刃が光る。
龍ノ介の首を刎ねるため、カーズは刃を振り下ろした。

「ッ!」

刃が龍ノ介へと届く寸前、ビタッとカーズの腕が止まる。
その原因は、カーズの腕を掴む腕。
上半身だけになった龍ノ介が、残された両腕でカーズの腕を掴み止めたのだ。

「貴様...どこにそんな力が...」

振り切れない。柱の男の身体能力を以てしても龍ノ介の両腕は剥がれない。
死の淵に瀕した火事場のバカ力とでも言うのか。

「無駄な抵抗をする...大人しくしていれば早々に楽になれたものを」

カーズの左腕から刃が生える。
龍ノ介が腕を離すのを待つ間もなく、切断するつもりだ。

もはや動けぬ龍ノ介に打つ手はない。このまま達磨にされ、首を斬られて死ぬのを待つだけだ。

(...いや、まだ終われん!!)

いま死ねば間違いなくカーズは勝次たちに追いついてしまう。
カーズが彼らを見失うまで、なにがなんでも止めなければならない。

(なにか手段はないか。なにか―――)

カーズの刃が振り下ろされる。瞬間、龍ノ介の思考は彼方に吹き飛んだ。
それは本能か意地か。彼は無意識下に口を大きく開き、カーズの右腕に噛みついた。

そして。

シャッ

光の線が走り、龍ノ介の頭部と身体が切断された。

192 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:17:59 ID:u7AC/3320

「最後の最後までしつこい餌だ」

カーズは未だ腕に食らいつく龍ノ介の頭部をはがそうと手をかける。

―――ガクリ。

カーズの視界がブレる。足場が揺れたのか?違う。彼の足が笑い膝をついたのだ。

「な...なんだコレは...?」

突然だった。
未だかつてない寒気と脱力感、痺れが身体に一気に押し寄せてくる。

それだけではない。

「ムゥッ!?」

―――プシュー ドボドボドボ

カーズの褌を突き破らん勢いで股間より小便が放出される。

「KUAAAAA...こ、こんな...!!」

ふらふらと覚束ない足取りで尻餅を着くカーズ。
それを見た龍ノ介は心中で嗤った。

(まさか貴様の血で助けられるとはな、雅)

龍ノ介は吸血鬼の混合種(アマルガム)。
その生命力は並の吸血鬼を遥かに凌駕し、また、雅同様、普通の吸血鬼としての力も有している。
彼の吸血は、カーズにすら例外なく効果を齎したのだ。

(勝次...ワシのことは気にするな。ワシは所詮過去の亡霊よ。未来を紡ぐべきはワシではない。お前たちじゃ)

龍ノ介の瞼が重くなっていくにつれ、生命の灯が消えていくのも実感する。
彼の並外れた生命力でも、首を断たれてはもはやどうしようもなかった。

(明...篤...雅を倒してくれ...勝次...どうか...我が愛弟子たちの心を救ってやってくれ...お前たちが...ワシらの希望...)

『龍ノ介殿』
『お頭』


沈んでいく意識の中、思い浮かぶは仇敵ではなく彼岸島で散っていった住民たち。

『お父さん』
『師匠』

そして、家族と家族のように慕ってくれた者たちの笑顔。
かつて過ごした幸せだったあの日々に微睡むように、龍ノ介の瞼はそっと閉じられた。


【青山龍ノ介(師匠)@彼岸島 G-8、海上にて散る】
※師匠の参戦時期は少なくとも明が弟子入りした後でした。
※師匠の支給武器であるピピンのハンマー@ベルセルクは海に沈みました。

193 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:18:55 ID:u7AC/3320



地図にしてG-7に位置する港。
シュトロハイムは、10分以上泳ぎ続けようやくここまで辿り着いた。

「ゼェ――ゼェ――ッ、つ、着いたぞ小僧」

上陸したシュトロハイムが己の背に縛り付けた勝次に声をかけるが、返事はない。
慌てて勝次を下ろし、呼吸を確認する。
異常はない。が、失血による疲労は顔にも表れている。
ある程度の応急手当を施し、まどキャンサーを装着させることで止血は済ませた為、失血死はないだろうが、落ち着き適切な処置を行える場所を探すのが先決だろう。

「輸血のことを考えれば病院へ向かうべきか。しかし殺し合いに輸血パックが置いてあるとも限らんし、殺し合いに乗った参加者が待ち伏せしている可能性もある...ここはやはりJOJOを探し波紋を頼むか?しかし奴がジョースター邸の近くにいるかもわからん...ええい、どうすればよいのだっ!!」

シュトロハイムは考える。
どちらへ進むべきか。勝次を、青山龍ノ介に託された命を救える場所はどちらなのかを。

振り返り、先ほどまで乗っていた船が燃え盛り崩れ落ちていくのを見つめる。
右手を掲げ、敬礼と共に勇敢なる戦士への賛美と勝利への誓いを立てる。

「迷っていたところで仕方あるまい...こちらに進むとしよう」

くるりと振り返り、方針を定め、歩き出すシュトロハイム。
その背で眠る勝次の目から、スゥ、と一筋の涙が流れ落ちた。




【G-7/1日目/黎明/港】


【山本勝次@彼岸島】
[状態]身体にダメージ(中)、師匠を喪った悲しみ、左腕切断(止血済み)、疲労による睡眠。
[装備]14話で堂島正が殺したヤクザが撃った銃@血と灰の女王、まどキャンサー@魔法少女まどか☆マギカシリーズ×1(左腕の止血用)、切断された左腕
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2
[行動方針]
基本方針:オババをぶっ倒す。
0:......
1:シュトロハイムと行動する。
2:明、鮫島との合流。師匠の知り合いの宮本篤、西山も探す。
3:金剛、カーズへの絶対的な敵対心。

※参戦時期は母ちゃんが死んだ後。

【ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(大)、全身にダメージ(中)
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1、、まどキャノン@魔法少女まどか☆マギカシリーズ
[行動方針]
基本方針:このくだらんゲームを止め、主催共を粛正する。
0:病院かジョースター邸か...
1:同志を集める。
2:ジョセフ・ジョースター及びロバート・E・O・スピードワゴンと合流する。
3:柱の男及び吸血鬼(いるのなら)を倒す

※参戦時期はカーズに身体を両断された直後。
※腹部に仕込まれている機関銃は没収されました。代わりにまどキャノンが装着されています。


※支給品解説

【まどキャンサー@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
マギアレコード紹介漫画、マギア☆レポートに登場するまどか先輩の武装のひとつ。
因果を断ち切るVサイン、もとい蟹の手の形をしている。
こう見えて斬撃も衝撃も与えられる万能武器。
手先は案外起用で犬のフンをつまんだ後におにぎりを握ったこともあるほど。



【まどキャノン@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
同上。
最大の火力を持つキャノン砲に加え、ミサイル、レーダーを装備し、長時間の作戦行動では膝にも爆弾を抱える重装備。
砲撃時には自前の双眼鏡で照準を合わせるよ。

194 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて(後編) ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:20:22 ID:u7AC/3320

ザバァ。
シュトロハイム達とは対岸側の港。
船の崩落と共に海に沈み、波にさらわれたカーズは近場の陸に上陸していた。

「おのれ神子柴とやらめ...この身体の異変も貴様の仕業か」

地に背を預けながら、カーズは空を忌々し気に睨みつける。
異変に気が付いたのは戦いの最中だった。

全力で動こうとすれば、なにかに抑えられるような違和感と共に動きは想定よりも鈍くなり。
輝彩滑刀の威力は明らかに落ち。
柱の男の普遍的な能力のひとつである吸収も、自動で吸収できるのではなく、意識して使わなければ発動せず、流法との併用も気軽にはできない。
もちろん吸収速度も落ちている。

その所為で、龍ノ介の最期の抵抗に不覚をとる羽目になったのだ。

「エシディシ...」

休憩のため身を隠しつつ、ここに連れてこられている男の名前をつぶやく。

彼は死んだ。波紋戦士であるジョセフ・ジョースターとの闘いで死んだ筈だった。
その彼が名簿に載っている。死んだふりをして身を潜めていたのか?あの見せしめで殺され蘇らせられた男のように生き返らせられたのか?

なんだっていい。生きているのならば合流するしかあるまい。
生きて、共にワムウのもとへと帰還する。必ずだ。

そしてジョセフ・ジョースター。
あの男は始末する。
奴との再戦を心待ちにしているワムウには悪く思うが、エシディシを倒した男を放っておくわけにはいかない。

(神子柴...貴様の目的がなにかは知らん。だが勝利するのは我らだ。我ら二人が貴様ごときに頭を垂れると思うな!!)




【F-1/1日目/黎明/港】

【カーズ@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]疲労(中)、失禁
[装備]なし
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、頑丈なロープ@現実、青山龍ノ介の首輪×1、まどキャンサー×1@魔法少女まどか☆マギカシリーズ(シュトロハイムの支給品)
[行動方針]
基本方針:エシディシと共に生き残る。
0:少し休憩をとる。
1:首輪のサンプルを集め、解析する。
2:ジョセフ・ジョースター及びシュトロハイムは始末しておきたい。


※参戦時期はエシディシ死亡以降。
※吸収能力は制限されています。自分で使おうと意識しなければ使えず、流法との併用はかなり体力を消耗します。


※港間を渡る豪華客船が燃え尽きました。第一回放送までに新しい船が主催側より配置されます。

195 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/24(金) 18:22:48 ID:u7AC/3320
投下終了です

魔鬼邑ミキ、不死川玄弥を予約します

196 名無しさん :2020/01/25(土) 00:27:31 ID:aA0WfJJE0
投下乙です

し、師匠…!!かっちゃんを鍛え明さんと再会して欲しかったが脱落して辛ェなぁ…
さらっとまどか先輩の武装が登場して草が生えたからチクショウ!

197 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/29(水) 00:42:02 ID:/A5OuY3M0
>>195の予約から玄弥を外して投下します

198 マイペースで進めばいい ◆ejQgvbRQiA :2020/01/29(水) 00:43:09 ID:/A5OuY3M0
「だぁ〜〜〜っ、仕留められなかった!!」

あたし、魔鬼邑ミキは悔しさで地団太を踏んだ。

最後の一人になるまでの殺し合い。
そんな人道外れたゲームの主催者、オババこと神子柴が乱入者たちのお陰で隙だらけになったのでとっ捕まえようとしたら琵琶が鳴って、意識が飛んで、気が付いたらこのザマよ。
情けない。こんな有様じゃ今は亡き大柴先生に喝を入れられちゃう。

スゥッ、と息を吸い、パンパン、と顔をたたく。

「うしっ!闘魂注入!!」

死人が出てしまったとはいえ、恐怖に屈してオババの言いなりになる訳にはいかない。
...もちろん、すぐに頭を切り替えられるかって言われたら、まあ、無理だけどさ。
でもここで足を止めたところで、悔やみまくったところでなにか解決するわけでもない。
辛くても苦しくても、前に進まなくちゃいけないんだ。

「さてさて、配られた名簿とやらをチェックしてみようかな」

絶対に嫌だけど、もしかしたらあたしの知り合いも誰か巻き込まれてるかもしれない。
で、チェックしてみたところ、やっぱりいましたわ。
あたしの幼馴染兼居候の恋人でデビルマンアモンのアキラくん。
もう一人、我が義理の妹にしてテレパシー使いの秀才美少女、ツバサ。

その名前を見つけた時、あたしは思わず膝を抱えへたり込んだ。

あぁ〜もう、なんで連れてこられちゃうかなぁ〜。

そりゃこんな場所に一人放り込まれたら不安だし心細いよ。
実際、あの二人と一緒だったら敵なしだし頼もしいし。もちろん、二人とも殺し合いなんざ賛成しないってわかってる。
でも、でもだよ?
大切な人たちがあたしの知らないところで殺されてるかも、とか、アキラくんこの空気にあてられてヤンキーモードになってないかなとか、不安の方が大きくなっちゃうのは仕方ないでしょ。
戦う力がない学校の人たちやら家族が連れてこられてないのはまだよかったけどさ。
ぐぬぬぬぬ...あのオババめ、悪魔族(デーモン)じゃないとは思うけど、あんたが人間でも許せない範囲ってのはあるんだよ。
次に会ったら絶対にグーパン叩きこんでやっからね!

199 マイペースで進めばいい ◆ejQgvbRQiA :2020/01/29(水) 00:44:46 ID:/A5OuY3M0

で、アキラくんたちと合流して殺し合いをブッ壊そうって意気込むのはいいけど、どこで合流するかだよね。

「地図、地図っと...は?あたしの家があんじゃん!!」

地図に記されていたあたしの家。
なんだこれ。あたしの家を引っこ抜いて持ってきたの?パパたち困ってない?
ムキー!勝手に人様の家を引っ越しさせおって!グーパンに加えて慰謝料ないしは損害賠償も徴収決定だ!


まあ、なんにせよ知ってる施設があったのは幸いだ。
ここならアキラくんもツバサも楽に合流できるだろう。

んじゃあ、目下あたしの家まで向かいますか!


あたしがそう方針を決めた時だった。





―――ズウン

何かが崩れる音が、どこか遠くない場所で響き渡った。





【E-7/1日目・深夜】


【魔鬼邑ミキ@デビルマンG】
[状態]健康
[装備]魔女っ子の衣装
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:打倒主催者。殺し合いには絶対に乗らない!!
0:ひえっ、なんの音!?
1:アキラ、ツバサと合流する。


※参戦時期は14話のあたりです。
※無惨が見滝原中学校を破壊した音を聞きました。

200 ◆ejQgvbRQiA :2020/01/29(水) 00:45:21 ID:/A5OuY3M0
投下終了です

201 名無しさん :2020/01/29(水) 20:28:16 ID:GbPfwSe.0
乙です
ミキも御子柴に対しアクション起こしてたんだよなぁ、それが吉と出るか凶と出るか
参戦時期がアキラと同じじゃないのも一見幸いだけど無惨様が近くにいるのがヤバい

202 ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:13:16 ID:vYKtjpqc0
遅くなって本当に申し訳ない。
ひとまず感想から


> IDENTITY CRISIS
やはりそこから来たかアキラ……
一番きつい時期からの参戦で天を仰ぐ思いです
そして案の定いるよなサイコジェニー
刹那主義という意味ではアモンもジェニーも同類で、それを眺めるシレーヌの方がむしろ悪魔らしからぬなんですかねえ
そしてなんか国会議事堂に色々いる!最近流行りの噛みつき爆弾型吸血鬼まで!蟲の王もびっくりの国会議事堂で、主催陣混沌だなあ

> 浮き上がる消えない誇りの絆、握りしめて
師匠と勝次、時を超えた明さんの仲間の邂逅!彼岸島も随分やってるからなあ
シリアスに彼岸島の空気感を再現しててこのへん好きです
そこからカーズとシュトロハイムが現れてお、空気がジョジョになったかなって思ったらまどキャノンは笑う
フレーバーを信じるとすげえ兵器だし実際この戦闘で活躍してるんだけど出展的に草不可避
そして師匠ォォォォォォ!!さすがだよ、邪鬼になっても消えない正義は健在だよ
カーズを噛んでアマルガムがさらに進むか?とドキドキしたけどそうはならず、二人を助けられてよかった
あとはカーズとシュトロハイム、数少ない首輪解除候補だからここから進展してくれるかな……

> マイペースで進めばいい
ミキちゃん、シレーヌのことをまだ知らない時期から参戦でさらりと不安……
アキラもやべえ時期参加だし、デビルマン勢どうなるやら
真っ先に気にする家のことはなんか所帯じみたというかミキちゃんってそういうとこある
で、無惨様
開幕拡声器紛いのことやらかしてたわ……てか今更気付いたけど日が昇ったら隠れられる建物壊して目立ってどうすんだあの鬼
でもまあ脅威ではあるからアレが近くにいるのはやべえという
この近辺がまず日の出までの山になりそうかなあ

改めまして黒死牟、ジョナサン・ジョースター、七海やちよ投下します

203 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:14:16 ID:vYKtjpqc0

焦燥と混乱が七海やちよの中で激しく渦巻いていた。
突如殺し合いに巻き込まれたといっても、平時であればもう少し平静でいられたかもしれない。
魔法少女……願いを叶える代価に魔女という怪物を退治する戦士になってもう7年にもなる。
自他ともにベテランと認める彼女の経験からくる冷静さは、異常事態においても即座に対応を試みるだろう。
しかし彼女とて木石の塊というわけではなく、当然冷静さを失うこともある。

魔法少女となった自分の魂が宝石に変えられてしまっていると知った時。
今まで倒していた魔女が自分たち魔法少女の成れの果てだと知った時。
大切に思っていた仲間の死に立ち会ってしまった時。
その仲間の死の原因が自分の願いのせいではないかと思い至った時。
何より、それらの記憶を一度にフラッシュバックさせられた時。

記憶キュレーターのウワサという怪異に立ち会った彼女は、それらの過去を共有する親友の記憶を見せられ、動揺のさなかにいた。
そこに神子柴の狼藉を叩きつけられ、理性的な行動をとれる人物の方が稀であろう。
……かろうじて揺らがなかった彼女の根幹にある倫理観・正義感が今の彼女を幽鬼のようにゆっくりとだが動かしている。
支給されたバッグを漁り、まず目についた名簿を確かめる。

(環さん、二葉さん、御園さん……それに鹿目さんに暁美さん、佐倉さん……巴さんまで)

見知った名前がいくつかある。もう仲間ではない…仲間ではないが、それでもこんな事態に共に巻き込まれてしまったことに何も感じないというほど冷淡にはなれなかった。
無事に生き延びてほしいと少しだけ想う。
続けて名簿を隅々まで何度も見渡して、つい親友の名前を探してしまう。

(みふゆはいない……)

その事実に安堵の息がホッと漏れるが、いくつかの疑問は浮かんでくる。

(二葉さんはいるけれど、鶴乃とフェリシアはいない。アリナはいるけれど、みふゆともう一人のマギウス…里見灯花はいない。
 あの場にいた全員が連れられてはいないけど、どういう基準で?)

マギウスが関わっているのかと少しばかり考えたが、それならアリナがいるのもせっかく洗脳した二葉さながいるのも奇妙な話だ。
いくらなんでも切り捨てるには早すぎるだろう。
とはいえ考えたところでここにいる理由もいない理由も分かるはずもなく、詳しい事情を知りたければ本人たちに会って聞くしか―――

(いえ、それはダメ。一人で戦わないとまた私の願いで人が死んでしまう)

七海やちよは大多数の者がそうであるようにかつてキュウべぇという白い妖精と契約し、願いを叶えられたことで魔法少女となった。
託した願いは≪リーダーとして生き残りたい≫というもの。
生き残りたいというのは文字通りの意味ではなく、読者モデルをやっている彼女が芸能界で活動しているユニットで生き残りたい、という意味であった。
しかし彼女が実際に口にした願いは上記のものであり、そして魔法少女の固有魔法は願いから派生して成立するものである。
後の魔法少女としての戦いの日々で、彼女を庇うような形で命を落とした仲間が二人いた。

『未来へ進んで』
『守れてよかった』

最期に二人がそう言い残して彼女を守るように逝ってから、彼女には一つの疑念がついて離れない。
リーダーとして生き残ることを願った自分は、周囲の全てを犠牲にしてでも自分だけは生き残る魔法を身に着けてしまっているのではないかと。

そのため彼女はこの殺し合いにおいても一人で戦おうとしている。
誰も巻き込まないために。誰も死なせないために。
苦難の道ではあるが、進むことを七海やちよは決めた。

名簿には目を通した。
続けてルールも熟読する。
そして支給品を取り出して検めると

204 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:14:46 ID:vYKtjpqc0

「笛……?」

まず最初に出てきた物は木を削って作っただけの簡素な笛だった。
笛を武器にする魔法少女に心当たりはあるが、この笛は別段特別なものでもないらしい。
非常時に備える笛というのに心当たりはある。
災害に巻き込まれた時や遭難した時などに大声を出して助けを求めているとすぐに喉がつぶれてしまうので、自分の居場所を発信するためにこうした笛やあるいは鈴などを用いるというものだ。
災害時の避難グッズなどにも導入されているらしいが、殺し合いという状況で濫りに自分の居場所を知らせたいとは思わない。
軽く吹いてみると一応音は出るが、そう使うこともなさそうで、ハズレを掴まされたなとバッグにしまおうとするが

「女……なぜお前が…それを持っている……!?」

持ち主としてふさわしくないという意味で、その笛はやちよが想定する以上のハズレであった。



◇ ◇ ◇



黒死牟



名簿に書かれた自分の名前はすぐに見つかった。
人間であった頃は別の名であったが、主君の手によって鬼に転じてこの名となってから久しい。
人間時代の名で書かれていたら見つけるのにむしろ余計な時間がかかったかもしれない。
続けて近くに並べられた見覚えのある鬼の名が目に入る。




鬼舞辻無惨 妓夫太郎 堕姫 猗窩座



どれもここにあるのは少しばかり悩みの種になる名だ。

(無惨様は…解毒はすまれたのか……
 猗窩座……つい先刻鬼狩りめらに…討たれたはずだ……
 妓夫太郎に堕姫……この者らも……
 あの老婆……鬼まで…黄泉還らせたか……)

鬼舞辻無惨は裏切者の作った人間化薬を盛られ、その分解の時間を稼げと黒死牟たち鬼に命じていた。戦場に立てる状況ではないはず。
猗窩座はその戦いの中で、妓夫太郎と堕姫はそれ以前に命を奪われた。ここにいるわけがないのだが、神子柴のしたことを信じるならば真の猗窩座たちが蘇生しているのだろう。

(確かに…猗窩座の気配を感じた……今は分からんが……
 妓夫太郎も…いたやもしれん……)

右手にの刀を握る力を強め、神子柴に斬りかかろうとした瞬間のことを思い出す。
たしかにいくつか覚えのある感覚がした。鬼と鬼殺の剣士何人か、自らの子孫の気配も。

(あの者を…鬼に誘いはしたが…猗窩座と妓夫太郎が戻ったのならば…不要であろうか……
 いや…また討たれぬとも…限らぬか……)

玉壺を斬った柱、それに妓夫太郎を斬った柱もいるとあっては鬼の百戦百勝を妄信できるほど黒死牟は楽観できない。
一度は自分と鳴女以外の十二鬼月は全滅したのだ。さらにその鳴女が離反したとあっては、もはや前任の上弦であろうと信用しきれない。

(私が…動かねばなるまい…)

考えることは多い。
鳴女の裏切り。
黒死牟の推挙した新参の陸はともかくとしても、なぜ童磨に半天狗、玉壺でなく猗窩座と妓夫太郎がここにいるのか。
首輪が爆発すれば死ぬというが、鬼まで殺すということは日輪刀に近似したものなのか。
何より憂慮すべきはここに飛ばれてからまったく無惨の声が聞こえないこと。
この調子で鳴女も珠代なる鬼と同様にこれ幸いと離反したのか。
黒死牟自身がまだ生きているのだから無惨の命は無事ではあるのだろうが、毒から回復していたとしても万全であるとは限らない。
自らの足で動かねばならなくなったが、無惨に仇なすもの―――裏切った鳴女や神子柴なる狼藉者も含めて―――を全て斬り捨てるべく闇の中に一歩を踏み出そうとする。

………………発達した鬼の聴覚が小さな笛の音を捉えた。
跳ぶ。
その音を知っていた。その音が二度と鳴るはずがないことを知っていた。
懐に、あるべきものがないことに今気づいた。
………………音の出どころにはすぐに辿り着いた。

「女……なぜお前が…それを持っている……!?」

205 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:15:15 ID:vYKtjpqc0

神子柴を斬るべく抜き放っていた刀を衝動的に振るう。
矮小な小娘などその一太刀であっけなく首が地に落ちる、黒死牟はそう考えていた。
だが現実はそうはならない。
刀を振るわれたやちよは黒死牟の異様な風体と殺気に一瞬驚きはするものの、攻撃範囲からは即座に離脱していた。
その予想外の速さに黒死牟は六つある目をわずかに見開き仰天する。

(背丈は…女にしてはある……肌艶もいい…栄養状態は…上々……
 しかし…細い……手足も…筋も…
 鍛えては…いるようだが…武人の体つきとは違う…あれほどの速さには…ならない筈だが……)

黒死牟の視線がやちよの体の上を走り抜けた。
透き通る世界、無我の境地、至高の領域―――呼び方は様々だが、弛まぬ努力の果てに辿り着く武人の究極に黒死牟は至っている。
肉体のあらゆる感覚を完全に掌握・認識し、世界も見て感じとれる領域にまで至った者は人体を透き通って見ることができるようになるのだ。
その力で七海やちよの体の組成を観察した結果が黒死牟には珍しい困惑だった。

平成の日本に生まれ育ったやちよは、黒死牟の経験してきた戦国から大正の世に比べて食や生活の環境が発展しており、女にしては恵まれた体躯をしているように黒死牟には映った。
モデルとしての美意識や、日常的に行われる魔女や使い魔との戦闘経験がその体を肥やすことなく美しく保っており、それも健康体であるという最低限の形ではあるが読み取れる。
だがその程度の肉体で、黒死牟の剣閃を躱せるのはおかしい。
眼筋かそれを補う何かが鍛えられていなければ攻撃を認識できるはずもなく、認識したところで反応する肉体が未熟では回避が間に合うわけもない。
明らかに目の前の女の肉体は黒死牟に対処するだけの性能を備えていない。

(仕掛けがあるな…外法…血鬼術のような…
 あるいは装備…からくりの類は…さすがに分からぬ……)

胸に一瞬燃え上がった焦げ付くような感情はいつの間にやら初撃を生き延びた奇怪な存在への興味で鎮火されている。
ゆっくりと剣を構えなおし、愉しむように、されど慎重に次の動きを練る。

対する七海やちよは余裕をもって躱したようだが、実際のところ九死に一生であった。

(見えなかった……全く)

魔女のような怪物退治なら百戦錬磨、魔法少女同士で戦った経験もあり対人であってもそうは遅れはとらないとやちよは自負していた。
しかしこれはどうだ。
不意に現れた怪物の攻撃をからなぜ生き延びたのかはやちよ自身理解できていない。
まるで背後霊なるものがそこにいてやちよの手を引いて守ってくれたのではないか、そう思うほどにやちよは何が起きたか認識できていなかった。

(……勝てないわね)

向き合う怪物の外観はほぼ侍のそれで、多少の錯誤感はあるが魔女などに比べればよほど人間に近い。
ただし三対に並んだ六つの眼を持ち、そのうち中央の左眼に上弦、右眼に壱の文字が浮かんでおりその僅かなれど確かな差異が怪物性を際立てている。
あまりにも速く、熟練された剣技はやちよがこれまで戦った魔法少女とは比べ物にならず、怪物としての存在感はこれまで倒してきた魔女やウワサ全てを搔き集めても及ばない。
逃げる以外に彼女が生き延びるすべはない。だがただで逃げられるような相手ではない。
それゆえに、彼女が選んだ行動は

(死中に活!)

やちよの左手に嵌められた指輪、彼女の魂を結晶化させた宝石、ソウルジェムが輝く。
青く輝く魔力が身体を一瞬で包み、彼女を魔法少女の姿へと転じる。
そして涙の如く流れ落ちた一筋の魔力を槍へと変え、怪物へと即座に踊りかかった。

一瞬だった。
まばたきよりも早く、達人の抜刀もかくやという刹那でやちよは魔法少女への変身と攻撃を終えていた。
しかし黒死牟にはそれすら児戯。
全身の突撃まで乗せた槍の刺突を、彼は片手の刀で容易く受け止める。

206 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:15:40 ID:vYKtjpqc0

(何が…起きた…)

黒死牟の目の前で女の衣装が戦支度へと変わり、どこからともなく槍も取り出して仕掛けてきた。
まさに鬼が姿を変えたり武器を作り出すのと同じように。妓夫太郎や玉壺、そして黒死牟自身も似たようなことができるが、ただの人間にはできようはずもない。
得体の知れなさを増した女の正体を見極めようと反撃よりも防御を優先し、観察を深めていく。

(やはり…重いな…見た目よりも)

刺突自体は黒死牟なら受けるどころか先んじてやちよの腕を斬りおとすことすら可能な程度の速度だった。
しかし受けてみてはっきりと確信する、女の細腕で出せる威力ではないと。
やちよが即座に続けて放った薙ぎの数閃も軽く払いながら探りを入れていく。

「術師のたぐいか…血鬼術とは異なる…何者だ女」
「あなたこそ、何?」
「私は…鬼だ。さる偉大なお方の…御手により…人を超えた……」

その先の問答を打ち切るようにやちよが交錯する槍と刀を弾くようにして跳び距離を置く。
魔女と違って問答ができるならばそれで時間を稼ぐこともできるだろうが、やちよはそれを選ばない。
魔法少女のことを下手に知られれば、自分が逃げ延びた後に別の魔法少女に不利益となるかもしれないからだ。

(オニ、ってあの鬼?どういうものかはよく分からないけど、コイツ一体ではないでしょう。
 上弦以外に下弦とか朔とか……あとは十七夜なんているかもしれないし。壱というなら弐や参も……?)

槍の間合いで、二人無言で睨み合う。
剣道三倍段という言葉の通り、距離が離れればリーチに優るやちよに有利に働く。
だが黒死牟の腕前はやちよの三倍では効くまい。
鍛え方が違う。経験が違う。種族が違う。何より彼の本来の射程は剣の届く範囲に収まるものではない。
赤子の手を捻るどころか花を手折るように勝利できようが、その花がまるで赤子の這うような速度で動いているため些か不気味に思い警戒しているだけのこと。
だがそのための観察も終わりを迎えようとしていた。

(指輪が消え…新たに胸に宝石が現れている……恐らくこれが力の根幹か…
 支給されたか…自前かは分からんが…斬りおとせば常人に戻るか……
 口を割らせるにしろ…鬼にするにしろ…命さえあればよい…)

六つの目と透き通る世界を通じてやちよの変化を見抜く。
それが彼女の能力なのか、道具頼りなのかは判別できないがそれゆえに黒死牟の関心を惹く。
鬼であっても使える技術なのか。あるいはこの女を鬼とすれば全集中の呼吸や猗窩座の武術のようにより強大なものになるのか。
ひとまず指輪をしていた腕でも落とそう、と刀を中段に構えなおし横薙ぎの一撃を浴びせんとする。

その瞬間、眼の一つが新たな脅威の飛来を捉えた。
巨大な鉄球が轟と宙を翔け、黒死牟へ猛然と迫っている。
いつの間にか接近しつつある大男がこちらへ放ってよこしていたのだ。
やちよとは比べ物にならない強大な乱入者に黒死牟は振るう刃の行方を変える。

(日輪刀か…)

速度、重量、どちらも黒死牟の頸を落とすに足る一撃。
もっとも直撃すればの話だが。
投げられた鉄球をいなし、そのまま鉄球に繋がる鎖の向こうの使い手を斬り捨てる程度、黒死牟なら容易い。
はずだった。

黒死牟の刀と鉄球が交わった瞬間、刀の方が塵となり崩れていく。
まるで日の光にさらされた鬼を想起させる現象にさすがの黒死牟も肝を冷やす。

(なに…!?)

さらにその塵化は伝染するように刀の切っ先から鍔、柄へと流れ始めた。
それを握る黒死牟の腕も塵に還さんとするように。



―――月の呼吸 伍ノ型 月魄災渦



咄嗟に放ったのは黒死牟の扱う呼吸・剣技・血鬼術を合わせた奥義の型の一つ。
自身を中心に三日月状の斬撃を一斉に放ち、周囲一帯を斬り刻む技だ。
攻撃範囲も優れるが最大の長所は刀を振るうことなく放てる、剣技にあるまじき速射性と利便性にある。
朽ち、刀身の半分も残されていない刀ではこれを放ち鉄球を弾くのが精いっぱいだったとも言える。
不完全な刀での行使だったのに加え、放たれた斬撃の多くも鉄球とそれに繋がる鎖によって塵に帰り、やちよにも鉄球の担い手にも一切のダメージはない。
鉄球と血鬼術が相打ちに終わったその猶予で男は黒死牟からやちよを守るように立ち塞がっていた。

207 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:16:17 ID:vYKtjpqc0

「波紋をいなしたかッ!怪物!」
「は…もん……?」

現れた男を前に黒死牟の警戒が強まる。
長く戦いに身を置いてきたが、さすがの黒死牟も西洋人の剣士とは初めて相対する。
未知の人種に未知の技術。
そんな男が両の手に携える武装は当代最強の鬼殺の剣士、悲鳴嶼行冥のために鍛えられた日輪刀だ。鎖鎌を巨大化させたようなとでもいうべきか。片手斧と巨大な鉄球が鎖でつながれた、刀の粋を逸脱した最高峰の個人兵装である。
それを振るう2m近い体躯、100㎏を超えるほどに積み上げられた筋肉は括りつけたディパックが小さく見える。
本来の担い手である悲鳴嶼には僅かに劣るが、それでも十分な巨躯と言えよう。そしてその差異も人種の違いが埋めていた。

(素晴らしい…三百年の間…斯様な剣士は見たことがない…日ノ本の民とは根源からして異なる筋と骨格…それを鍛えるとこうまで至るか……
 これより幾百の年月を重ねようとも…この者を超える男児は日ノ本では産まれまい……)

足の長さ、背筋や腸腰筋のつき方、骨盤の傾きをはじめとした骨格、その全てが東洋人以上の力を発揮する形になっている。
種は同じでも猫と獅子でまるで異なる強さであるような決定的な違いがそこにはあった。

「異国の剣士…それとも術師か…?鬼殺隊ではないな…その女の仲間か?」
「怪物などに誇りある我が名を教えたくはないが―――」

一瞬やちよの方へと意識を向け、男は堂々と名乗りを上げる。

「イギリス貴族ジョースター家党首、ジョナサン・ジョースター。彼女とは初対面だが、僕にはお前と戦う理由がある」

右手に斧、左手に鉄球、そして呼吸を整えジョナサンが構えた。
だが

「助けてくれたのには礼を言うけれど」

水を差すようにやちよがジョナサンに並ぶように前へ出て黒死牟に切っ先を突き付ける。

「これ以上私にかまわないで。それに刀を失った今が好機。あなたは退いて」

自分のために犠牲になる仲間はいらない。それがやちよのした決意だ。
万に一つもジョナサンのような、初対面の相手のために武器をとれる善き人を失うわけにはいかない。
刀のない相手ならば相打ちになってでも一人で仕留める、とやちよが槍を握る手に力をこめるが

「武器を失った?」

黒死牟から失笑とともに声が上がる。
そして事実、刀が一振り折れたことなど些末事であったと証明するように新たな刀を己の能力で精製して見せる。

「先刻までは…抜いた剣の納めどころがなく…提げていただけだったが…」

今度抜き放った刀は三支刀とでも言おうか。
七支刀は段違いの枝刃が七つ刀身についた祭具であるが、新たな黒死牟の刀は三つの枝刃のついた刀であった。
すなわち、これこそが彼の全力の武装。

「これよりは敬意をもって…貴様らを…我が剣の錆としてくれよう…」


―――月の呼吸 漆ノ型 厄鏡・月映え


振り下ろされた刀から幾筋もの斬撃が放たれた。
礫を伴う激流のように、小さな三日月状の刃を纏って進む斬撃の波がジョナサンとやちよを諸共に呑み込まんと迫る。


―――鋼を伝わる波紋 銀色の波紋疾走(メタルシルバー・オーバードライブ)!


迎え撃ったのはジョナサンの呼吸法だった。
太陽に一番近く、一年中陽の射すという陽光山で採れる猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石から打たれた日輪刀は、偶然にも太陽の性質を持つ波紋の呼吸との相性は抜群だった。
隅々まで日輪刀として鍛えられた悲鳴嶼の日輪刀に波紋を纏わせて振るい、黒死牟の斬撃をことごとく撃ち落とす。

(やはり…呼吸…しかし…知らぬ型だ……
 我流にしても…縁壱のものとは…まるで似つかぬ…)

透き通る世界によって黒死牟はジョナサンの動きを臓腑に至るまで見切る。
真っ先に着目した肺の活動からその戦闘方法はやちよのものより自分たち、否かつての自分たち鬼殺の剣士に近しいものだと推察できた。
一つ数えるうちに十を超える呼吸をしたかと思えば、常人の数十倍の空気を一瞬で取り込みまた吐き出し……血中の酸素濃度を操る全集中の呼吸とは異なる、波を発生させるような特殊な呼吸法だ。

(波…そうか波紋か……波紋の如く伝播する…
 雷の呼吸と血鬼術の複合も…そうなっていたか……なら一太刀でも受ければ…厄介だ…)


―――月の呼吸 捌ノ型 月龍輪尾


続けざまに黒死牟は次の型を披露した。
形状としてはシンプルな横薙ぎの斬撃を一振り。
ただしまさしく龍が尾を振るう如く巨大な一撃で、そして鱗のように満遍なく纏っている三日月状の刃が受けることを大きく困難にしている。
ジョナサンが波紋を帯びた鉄球を振るっても纏う刃に阻まれ掻き消しきれない。
目前まで攻撃が迫る。

208 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:17:26 ID:vYKtjpqc0

(跳んで避けることも、伏せて躱すことも叶わないッ!ならばせめて!)

二つの攻撃に反応しきれずにいるやちよに向けてジョナサンが手を伸ばす。
すると彼女の体が引き寄せられるようにジョナサンの元へ。
生命磁気への波紋疾走。
それによって彼女を引き寄せ、即座に攻撃範囲の外へと送りものも添えて放り出す。

(僕は波紋で防御を!)

最も強力な太陽の波紋と、弾く波紋を纏い耐える姿勢に入るが

「ミスター!」

やちよがそれを助けるべく動く。
彼女はジョナサンに波紋による肉体の強化を送られたのだ。
この波紋を受ければただの少女であっても2m近い大男を投げ飛ばせるほど。ジョナサンは知らない話だが、後にジョナサンの孫ジョセフはこれに手こずる羽目になる。
熟練の魔法少女であるやちよがその恩恵を受ければ、最強の鬼である黒死牟相手でも戦線に立てるほどのものであった。

複数の槍を魔力により生成し、空中にずらりと並べる。
即座にその意図を察したジョナサンは並ぶ槍を足場にして黒死牟の奥義を跳び越えた。
それを黙って見ている黒死牟ではないのだが、足場の役割を終えた槍が即座に向かってくるためその対処に追われる。
透き通る世界はあくまで人体の起こりを見極めて先の先をとる技術であり、肉体的変化を伴わない魔法による攻撃には黒死牟自身の技術で迎え撃たねばならないからだ。
当然、ジョナサンは槍に波紋を纏わせていたため迎撃した刀は大きなダメージを受け、その再生にも追われる。
そこへ跳んだジョナサンが鉄球を振るって追撃をかけ、黒死牟がそれを躱して隙が生じたことで戦場のイニシアチブが移る。

(これなら私にも……!)

コネクトという魔法少女間で力を共有する戦術を行使してきたため、ジョナサンが施した波紋による強化にもやちよは即座に順応した。
……仲間として認めるつもりはないが、この戦況を一人で切り抜けられると思うほど愚かにも傲慢にもやちよはなれない。
難敵相手に協力するのは必要なことだと自分をだましながら、見ることも能わず、歯噛みするしかなかった戦場に追いついたやちよが全力の一撃で黒死牟の命を狙う。


―――アブソリュート・レイン


撤退を考えての牽制などではない、渾身の奥義(マギア)。
足場にしたもの以上に強大な槍を六本生み出し、黒死牟を封ずるべく取り囲む。
さらに自らも七本目の槍をつがえ、その全てを急所へ向けて放つ。

「これ以上、出し惜しみするつもりはないから!」

捉えた!
切っ先が黒死牟の肌に触れた瞬間やちよはそう思った。

「斯様な…児戯で…鬼は殺せぬ…」

四方より飛来する槍の全てを黒死牟は掴み、止めていた。いくつかは肌を裂き血を流させていたが、致命には程遠い。
無刀取りという技法がある。
柔術や合気などに端を発する、徒手にて剣を防ぐ超絶技巧だ。
刀に比べれば触れられる箇所の多い槍であったことも黒死牟に幸いしたのは事実だが、それでも容易くなせることではない。
そしてその本質は後の先をとる反撃の技法にある。

続けざまに鉄球を叩きつけようとしているジョナサンに掴んだ槍を二つ投げつけて牽制を入れる。
流れるように残った槍をやちよに突き立てようとするが、やちよは咄嗟に掴まれた槍を放して距離を置きそれを躱す。
だがその間隙で黒死牟は再び刀を握っていた。


―――月の呼吸 参ノ型 厭忌月・銷り


大刀では追撃に間に合わぬと判断して、再度通常サイズの刀を作り即座に斬撃を放つ。
間断なく放たれたとは思えぬほどの数の横薙ぎの斬撃がやちよへと襲い掛かる。
それを阻むのは投げられた巨大な戦斧。
ジョナサンは自らに向かった槍の迎撃に武装は不要とし、波紋を纏わせた斧を黒死牟に投げていたのだ。
大規模な型でなかったのも幸いし、その一撃は黒死牟の攻撃をすべて呑み込んだ。

209 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:17:55 ID:vYKtjpqc0

(手放したな…日輪刀を…)

だがそれも黒死牟の掌の上。
一度突いた槍は引き戻さなければ次を打てぬように、投擲された鉄球や斧も回収しなければ攻防どちらにも使えない。
手元の鎖で槍をいなし、もう一つをかろうじて躱しはしたが黒死牟の技に比べればなんと無様なことか。
ジョナサンが鎖を引くより速く、黒死牟が踏み込む。


―――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮


雷の呼吸もかくやという神速の抜刀術が無数の斬撃を纏いジョナサンに襲い掛かる。
直撃すれば首か腕かいずかは間違いなく落ちるだろう。
だが黒死牟は一つ致命的な勘違いをしていた。
ジョナサン・ジョースターは剣士ではないということを。


―――太陽の波紋 山吹き色の波紋疾走(サンライトイエロー・オーバードライブ)!!


なるほどジョナサンは槍を使い、鎖を使い、剣を使った戦士である。波紋使いはそんな武装はもちろんのこと、シャボンやクラッカー、マフラーすらも武器にする。
されど最も強いとされる波紋は拳から放たれるものである。
騎士ブラフォードの剣戟を受けたように、ジョナサンの拳が黒死牟の刀を迎撃する。

「ぐ……!?」

湿った重い、何かが地に落ちる音がどさりと響く。
落ちたのは逆に黒死牟の腕の方だった。
太陽の波紋を纏った拳は傷つきながらも血鬼術を打ち破り、さらには刀身をへし折りそのまま黒死牟の左腕に届く。
その一撃が上腕を砕き、肘から先が地に落ちたがそれもすぐに塵に還る。
さらに波紋が残った腕を駆けのぼろうとするが

「がァァァ!」

咄嗟に肩口から先を引きちぎり、それ以上の拡大を防ぐ。
ちぎった肉片はジョナサンに投じた。
鬼の肌は鋼鉄の硬度を誇るゆえ、それもまた十分な殺傷力を秘めるのだが、ジョナサンが拳ではじくと即座に蒸発する。

(拳で…我が剣を無力化など…猗窩座にもできんぞ…)

動作自体は透き通る世界で読めていたが、さすがに月の呼吸を素手で破られるのは思いもよらず、痛打を受けてしまった。
それも上弦の鬼ならば即座に回復するはずだったが

(再生が…遅い…これは…まさか…)

即座に生えるはずの腕が未だに欠けたまま、少しづつ癒えるだけ。
鬼の再生を遅らせる手段に黒死牟は一つだけ心当たりがある。
そして今ジョナサンが放った呼吸は【太陽】の波紋であるというのも引っかかる。

「まさか貴様…異国に流れた…日の…」
「オォォォォォ!!」

黒死牟の発する言葉にジョナサンは耳を貸さず追撃する。
再生する怪物に大きなダメージを与えたのだから当然と言えよう。
片腕を失い重心が狂ってなお武術自体は黒死牟が優るため、放たれた拳を躱すのは容易い。
腕をくぐるようにジョナサンの脇を抜け、背後をとるがそこでジョナサンの首筋にあるものが目に付いた。

(痣…!)

左肩首筋の付け根に浮かぶ星型の痣。
波紋を練り上げ脈も体温も昂ったジョナサンに浮かぶそれと、太陽の波紋という類似性が黒死牟の胸を焦がす炎になった。

「その…痣は…」

背後に回った優位を活かすでもなく黒死牟の口からは言葉が突いて出ていた。
その言葉には、背後の黒死牟と向き合い、さらに日輪刀の鎖を手繰るために僅かながらジョナサンも応じる。

「父に聞いた。一族の者には皆この痣があると」
「…………生まれついての…痣者か…」

210 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:19:13 ID:vYKtjpqc0

黒死牟の胸の炎が強まる。
そして同時に、主より自分だけに賜った厳命も思い出す。
故にこの者は何としても殺さなければならないと。


―――月の呼吸 弐ノ型 珠華ノ弄月


残った右腕の中に刀を生み出しながら振るい、不格好ながら斬撃を高速で黒死牟が繰り出す。
本来なら巨大な三日月状の斬撃を三つ放ち、衛星のように伴う斬撃も併せて敵を刻む技だが、片腕で振るったために二つしかなく、伴う斬撃も少ない。
それでも常人なら十人仕留めて余りある奥義であった。
だが相手はジョナサン・ジョースターである。波紋を纏わせ振るった鉄球で迎撃に成功する。
不完全とはいえ黒死牟の絶技相手にその戦果は十分に誇れるものであるのだが

(なにッ!?こいつ自らの攻撃に飛び込んで!)

それだけでは終わらず、続けざまに月の呼吸の斬撃を追い抜くような勢いで黒死牟が飛びかかる。
鬼の脚力に縮地の歩法も加え、自らの斬撃で身を削られるのも厭わず襲い来る怪物の姿がそこにあった。


―――月の呼吸 壱ノ型 闇月・宵の宮
―――鋼を伝わる波紋 銀色の波紋疾走(メタルシルバー・オーバードライブ)!


鉄球を放り、戦力が半減したジョナサンに改めて最速の月の呼吸を見舞う。
ジョナサンはそれを今度は波紋を纏った斧を振り下ろして撃ち砕く。
交錯により刀身を波紋が駆けのぼろうとするが、腕へと至る前に刀を捨てて黒死牟は徒手でジョナサンに迫る。
対するジョナサンもまた、伸び切った日輪刀を手放し拳から波紋を放って迎え撃とうとする。

次の瞬間、ジョナサンの拳は黒死牟を捉えていた。
だがそれによるダメージを黒死牟は一切受けていない。
対する黒死牟は、再生した左腕に生成した刃を握り、ジョナサンの胸に突き立てていた。
吸って、吐く一呼吸。それさえあれば波紋は練られ、黒死牟に引導を渡していただろう。
だがそれは叶わなかった。

黒死牟もまたジョナサンとは異なるが呼吸の名手であり、そして彼は透き通る世界を見通す武人であった。それゆえの先の先。
二つの月の呼吸を迎撃し、体内の波紋を吐き出したジョナサンは必ずや呼吸によって新たに波紋を練る必要がある。
その瞬間を黒死牟は透き通る世界によって見抜き、ジョナサンが息を吸うまさにその直前に牙を立てるような距離で息を吸い……ジョナサンが吸うはずの空気を奪った。
人間ほどの大きさの巨大で硬い瓢箪を破裂させるほどのすさまじい肺活量、さらに鬼となって300年余で強化された心肺での全集中の呼吸はまさしく大気の略奪ともいえるもの。
そして人体は酸素濃度の薄い空気を吸ってしまえば、即座に意識障害が発生する。
呼吸を奪われ、正気も奪われたジョナサンの拳は無為に終わり、全集中“常中”によって失った腕と刀を即座に再生した黒死牟は決定打を放った。

「終わり…だ…!」

肺と横隔膜を裂いた刀を滑らせ、とどめを刺さんと黒死牟の腕に力が籠もる。

「はぁぁぁぁぁ!!」

だがそれを阻む乱入者。
七海やちよの槍が黒死牟の刀を止める。

「無駄なことを…娘…」
「やらせない!もうこれ以上、私のためなんかに誰も死なせるなんて……!」

波紋で強化されたやちよの膂力はかろうじてだが黒死牟の進行を遅らせることはできている。
だが刀が止まった程度で、最強の鬼の進撃は止むことはない。
黒死牟が息を、吸って吐く。


―――月の呼吸 伍ノ型…

「VAAOHHHHHHHHH!!!」

この戦闘の始まり、ジョナサンの鉄球をいなした伍の型で二人を諸共に切り裂こうとしたが、突如響いた獣の嘶きがそれに待ったをかける。
ジョナサンが体に括りつけていたディパックに腕を突っ込むと、巨大な二頭の馬とそれに曳かれる戦車が飛び出した。
ただの馬ではない。
偶然にもジョナサンが研究し、宿敵ディオを生み出した石仮面と同じ原理で吸血馬となった怪物だ。
150馬力を誇るそれが突如現れ蹴りを見舞ったとなれば、さすがの黒死牟も怯むざるを得ない。
そうして生じた僅かな隙で、ジョナサンは胸の刀を引き抜き、やちよも抱えて戦車に飛び乗り黒死牟から離れていく。
時速60km以上の速さで駆ける戦車の操作は容易くないが、手綱は波紋が通るようにできており僅かな呼吸で吸血馬を操ることができる。
透き通る世界でそれを見た黒死牟は訝しむ。

211 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:19:42 ID:vYKtjpqc0

(損傷した…臓器で…なぜ呼吸ができている…!?)

肺を動かす横隔膜は断ち、肺にも刃が通って血が溜まりまともに機能するはずがない。それにもかかわらずジョナサンは波紋を練っている。
その疑問の答えを透き通る世界によって黒死牟は知ることになる。

(傷口から…手で直接肺を操作するとは…なんという…)

刀で突かれた穴をさらに広げて腕を突っ込み、肺を握る指が繊細に動いていた。
息を吐くたびに肺に溜まった血も吐き出している。
息を吸うたびに肺から血を流している。
それでも構わずジョナサンは波紋を練り続ける。そして黒死牟にとって恐るべきことに、呼吸のたびに波紋により傷が癒えているのか出血が少なくなりつつあった。
それを見た黒死牟の内で逃がさぬ、殺さねばならぬの念が強まる。
その殺意に呼応するかのように握る刀が巨大化していき、再び三支刀の形をとった。
なるほど吸血馬は速かろう。されどいかな俊足も剣聖の一太刀に優る道理無し。
追撃の構え。
背後から迫る死そのものと言っても過言ではないその殺気を遠ざけるべく、戦車上で真っ先にジョナサンが構えた。
すぐに続くようにやちよも反転して槍をとる。

その瞬間、ジョナサンの繰り出した貫き手がやちよに食い込む。

「がはっ…な、にを……?」

乱心としか思えない行動にやちよは困惑を隠せない。
だが次の瞬間の自分の行動にやちよはさらに戸惑うことになる。
再度反転して前方をむき、手綱をとって馬の足を速めたのだ……やちよの意に反して。
ジョナサンが貫き手とともに行ったのは横隔膜を刺激してやちよに波紋を練らせることと、身体操作の波紋を打ち込むこと。
それにより今のやちよは微弱な波紋で吸血馬を操る御者に徹するざるを得なくなった。
そしてジョナサンが体に括りつけていたディパックを戦車の上に置いたことで、何をしようとしているのか誰もが察せられてしまう。
致命になりかねない胸の傷に対して行っている自傷としか思えぬ行動も、彼の戦意の証明。
一人で残り、死ぬまで……いや死んでも戦うつもりなのだ。

「待って……待ちなさい!ダメよ!」

制止の言葉がやちよの口をついて飛び出る。
また自分の願いのせいで誰かが死んでしまう。そんなことは許せない。生きるために抗え。
そう止められるのもジョナサンは察してやちよに波紋を流したのだろう。
傷ついた呼吸器では喋るのも厳しいのか、ジョナサンは何も発さず静かに微笑むだけだった。
口の端から血を流しつつもあまりに美しく、気高く、強壮な笑みにやちよの言葉がはっと止む。
それで別れの挨拶は済んだということだろう。
ジョナサンの顔が戦士の相に戻る。

胸に突き立てていた腕を引き抜くと、そこから波紋を手綱に流した。
答えるように馬は嘶き、体を沈める。
そこにジョナサンが跳ぶと合わせるように蹴足を放った。
吸血馬とジョナサンの脚力、カタパルトのように二つを合わせて男は死地へと翔けた。



―――月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月
―――波紋乱渦疾走(トルネーディ・オーバードライブ)!!


これまでに放った月の呼吸のどれよりも巨大な螺旋状の斬撃が、月輪を纏ってやちよとジョナサンに襲い掛かる。
対してジョナサンは残った波紋を足先に集中し、黒死牟の奥義に真っ向から挑む。
先の衝突とは違い今回はジョナサンが不利だ。
太陽の波紋で刀身を折ったのは技が発動しきるより前に拳を繰り出せたのが大きい。
それで破ったのも基礎となる壱の型で、此度向かい合うのは磨きに磨かれた拾肆ノ型。
呼吸器のダメージもあり、まともに挑めばジョナサンは敗北は必定であった。

212 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:21:05 ID:vYKtjpqc0

そこに神の視座でのみ気付き得る奇跡があった。
放った技に回転を伴うものを選んでいたこと。
ジョナサンが馬の力を受けて跳んでいたこと。
馬の走るフォームが【黄金長方形】を描いていたこと。

ジョナサンの波紋が黒死牟の斬撃と接した瞬間、黄金の回転の後押しを受けた一撃で全てを薙ぎ払い、黒死牟よりわずかに離れた地に降り立つ。

「馬鹿な…!?」

満身創痍の男が自らの奥義を打ち破り、自らに迫っている。
その現実が黒死牟には信じがたい。そして何より耐えがたい。このようなものが生きていてはこの世の理が狂いかねない。
主命が、義務感が、何より怒りが黒死牟に剣を振るわせる。
ジョナサンの命脈を今度こそ断たん、と剣技において最大の威力を発揮する大上段からの振り下ろしが見舞われる。

時に、剣道三倍段という言葉は徒手の者が剣を帯びた者に挑むときにも用いられることがある。
徒手のジョナサン、剣を振るうのに加えて呼吸による圧倒的な射程を誇る黒死牟。
大技を用いずともその差は大きく、そのままではジョナサンの勝機は皆無であっただろう。
だが戦士はもう一人いる。
黒死牟が技を放つその瞬間に、放り捨てたはずの鎖斧が運ばれていた。
七海やちよは身体の自由を失くしたが、魔法まで封じられてはいない。
生み出した槍をミラーのようにして戦況を見る。
そしてマギアで放っていた槍を操り、日輪刀をジョナサンに届けたのだ。

(これがッ、最後のチャンス!)

右手で鎖を、左手で肺を握る。
最期の波紋を絞り出し、黒死牟の斬撃と頭部を諸共に砕かんと日輪刀を横薙ぎに振るった。

(ッ!呼吸が……!)

だが溢れる血による嗚咽か、武器を振るう反動か、そもそも指で呼吸を制御するのに無理があったか、僅かに呼吸を乱してしまう。
放たれる呼吸のリズムは鋼を伝わるものでも、太陽の如きものでもなく、炎の波紋 緋色の波紋疾走(スカーレット・オーバードライブ)となってしまった。
だとしても、と万力の如き力を込めて日輪刀に走らせた。
それがジョナサンに微笑んだ二つ目の幸運。

炎の波紋の熱により日輪刀が色を【赫】く染める。
鬼を殺すべく、ジョナサンの意思に応えるように変化した日輪刀と波紋の併せ技。


―――月の呼吸 拾陸ノ型 月虹・片割れ月
―――炎と刃の波紋 赫色の波紋疾走(スカー・レッド・オーバードライブ)!!


黒死牟の振り下ろす刃にに呼応するように数多の斬撃が、神の杖の如く降り注ぎ大地を抉らんとす。
その斬撃に赫く染まった鉄球が叩きつけられ、そして斬撃の波を抜けて軌道を変えることなく黒死牟へと向かう。
屈辱に黒死牟の奥歯が音を立てて軋む。
だがそれを想定しないほど愚かではない。
黒死牟とジョナサンの位置関係は僅かに鎖の長さが足りず鉄球の届かない距離で―――


ゴギン


小さな音と、小さな違和感を黒死牟を覚えた。
そしてその予兆は結実する。





ゴギィ





(関節をッ!)






メギッ





(外して腕を伸ばすッ!その激痛は波紋エネルギーで―――)

和らげる?そんな些事に残りわずかな波紋を?

213 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:22:26 ID:vYKtjpqc0

(無用ッ!この程度、耐えられずして何が紳士か!)

肩と肘の関節を外してリーチを伸ばす。
その差が黒死牟の目測を誤らせた。
鉄球が黒死牟へと迫る。

(味な…真似を…)

だが関節を外すのも透き通る世界ならば見通す。
感知できれば僅かな長さだ。少し体を逸らすだけで躱すことが


ざくり

と黒死牟のうなじあたりに何かが食い込む音がした。

(こ…れ…は…!)

七海やちよの槍。
彼女がマギアで放った魔力で操る槍は一本ではない。
視界の外から音もなく迫った刺客が、黒死牟の頭部をその場に縫い付けるように固定した。

「斯様な…児戯で…私を…!!」

躱せない。
黒死牟の視界が日輪刀の赫で埋まる。
そして流れる血の赤に染まり、次の瞬間には暗闇へと転じた。

同じようにジョナサンの視界も、黒死牟の斬撃で埋め尽くされていた。
赫刀の一振りは強力であった。
しかし無数に迫る斬撃全てを撃ち落とすことと、鬼を殺すことを両立させられるほど万能ではなかった。
斬撃が迫るにつれ、視界と脳裏が走馬灯に占められていく。

(騎士タルカス。君とのチェーンデスマッチがなければこうまで鎖を使うことはできなかったろう。感謝を。
 エレナ。すまない。どうか幸せになってほしい。
 スピードワゴン。心苦しいが、この事態の後を頼む。君ならば託せると信じている。
 そしてディオ。君の野望は人々の意思が必ずやそれを挫くだろう)

紡いだ絆を胸に、ジョナサン・ジョースターは目を閉じた。





◇ ◇ ◇

「……ぅぅぅぅううう」

戦車の上で一人、七海やちよは涙に濡れる。
シャフトを握りしめるゾンビのように、波紋によってただ手綱をとるしかない彼女は泣き崩れることもできず戦車を走らせるしかなかった。
それでも生きてほしい、と小鳥が嘴を突っ込むように槍を入れはした。
その結果鬼は倒れた。しかし、鬼が残した斬撃に戦士も倒れた。
その兵たちの戦場もすでにはるか後方。名残と言えば戦車にジョナサンが遺していったディパックだけ。
また、守られてしまった。

(やっぱり……私の魔法で!願いで!私は仲間を殺してしまう!)

突き放すべきだった。
こんな戦車があったなら最初から無理矢理にでも彼を乗せて逃がすべきだったのだ。
生き残るべきはどう考えたって、鬼一匹に苦戦する七海やちよはなくて鬼を打ち滅ぼす強者ジョナサン・ジョースターだった。
湧き上がる後悔が胸のソウルジェムも穢しかねないほどに湧き上がるが

(まだ……!まだ、ダメ。それじゃあかなえも、メルも、ジョースタさんの遺志まで穢してしまう。魔女になったら、それこそ直接死を振りまいてしまう……)

歯を食いしばり、涙を堪え、軋む心を無理矢理に奮わせる。

(もう、誰にも頼らない。私は孤独でいい。
 魔女も、ウワサも、マギウスも、鬼も、神子柴も!私が一人でも倒すから)

だから、放っておいて…………



その美しくも哀しいやちよの決意に、答えるようにソウルジェムが少しだけ輝きを増す。

『レディ。僕の最期の波紋だ。受け取ってくれ』

一人ではない。
一人にはさせない。
三人目の亡霊が、これより彼女の傍らに立つようになる。

214 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:24:21 ID:vYKtjpqc0

【E-3(戦車で移動中)/1日目・深夜】

【七海やちよ@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
[状態]精神ダメージ(中)、魔力消費(小)、一時的な波紋の呼吸、波紋で体機能を操られている
[装備]二頭の吸血馬と戦車@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]基本支給品×2、木彫りの笛@鬼滅の刃、ランダム支給品0〜3
[行動方針]
基本方針:一人で戦う。もう誰も死なせたくない。
0:ジョナサンを死なせてしまった悲しみと罪悪感。
1:誰も死なせないため、一人で敵を倒す。神子柴も私が倒す。

※参戦時期はゲーム本編6章5話で記憶キュレーターのウワサに撃退された直後です。
※仲間の希望を受け継ぐ固有魔法により、ジョナサンの力を一部受け継ぎました。詳細は後続の書き手にお任せします。
※戦車がどこへ向かって走っているかは後続の書き手にお任せします。


【木彫りの笛@鬼滅の刃】
七海やちよに支給された。
それ自体は何の変哲もない、むしろ不格好な笛。
始まりの呼吸の剣士継国縁壱が兄から幼少期に送られた手製の笛。
縁壱はそれを大切にし、戦場で最期を迎えるその時まで持ち歩いていた。
縁壱の死後は笛を作った兄が持つようになり、彼もまた最期までその笛を手放すことはなかった、様々な想念の籠もった笛。

【二頭の吸血馬と戦車@ジョジョの奇妙な冒険】
ジョナサン・ジョースターに支給された。
柱の闇の一族ワムウとジョセフ・ジョースターが決闘に用いたもの。
石仮面と同様の原理で脳に骨芯を打ち込まれた吸血馬が二頭。
古代ローマのものを模した戦車が一台。
それを繋ぐ手綱が一本。手綱は波紋を通すようにできており、波紋で馬を操れる。
力で従えるのは柱の男をして至難の業らしい。
馬力は150馬力、二頭で戦車を引いて速度は時速60㎞程度。





◇ ◇ ◇

ジョナサン・ジョースターは黒死牟との戦いにおいて二つの大きな幸運に恵まれた。
黄金の回転。
赫刀の目覚め。
没百の鬼や吸血鬼どころか始まりの鬼たる鬼舞辻無惨や、柱の闇の一族であっても致命を狙える布陣であった。
だが、欠けているものもあった。いや、むしろ潤沢であったがゆえに生じた致命的なすれ違い。
彼の倒してきた吸血鬼や屍生人は、石仮面という脳に影響をもたらす道具によって生まれたもので、脳を破壊することで命尽きた。そう経験してきた。
だが黒死牟たち鬼は少し違う。
彼らは日輪刀で頸を斬られることで命を落とすのだ。
狙うべき部位の僅かなずれ。ゆえに

「…………ようやく…再生したか…」

黒死牟は生きていた。
ジョナサンの狙った通り、吸血鬼ならば致命になるほどに脳を抉り飛ばされたが、鬼である彼はそれでは死ななかったのだ。
鉄球を叩きつけられた肉片は飛散し、波紋傷が致命になることもなく。
赫刀による損傷は治癒を遅いが、それでも癒えない訳ではない。
脳髄を抉られ、諸共に眼球も吹き飛ばされ、意識も視界も暗闇に落ちていたが、それでも最強の鬼はここに健在である。

歩き始める。
その歩みは後遺症など微塵も感じさせない。
重厚さを感じさせる足取りでゆっくりとジョナサンに近づき、決着を確かめた。
心臓は止まっている。呼吸も止まっている。関節の外れた右腕はそのまま、あり得ない角度にひん曲がっている。振り回した鉄球が遠心力で戻ったのだろう、鎖が肉体を縛り上げ苛むように巻き付いていた。
透き通る世界を通してでなくともそれがただの肉塊になっているのが分かる。

「強者であった…よもやと思わされたぞ…あの日以来に…」

かつて己が敗北した日。その時黒死牟は死んでいるはずだった……最強の侍が目前で天寿を全うしなければ。
この戦いでも黒死牟は迫る死を感じた。されどジョナサンは黒死牟の剣に敗れ命を落とした。
黒死牟は思わない。もしジョナサンが鬼殺の知識を得ていたなら、躯となったのは自分かもしれないなど。
その慢心が埋伏の毒を―――

215 月は昇り、日は沈む ◆PxtkrnEdFo :2020/01/31(金) 03:24:57 ID:vYKtjpqc0

「…いや…未だ死なぬか…」

積み重ねた知識と技が望外の毒に気付く。
弱肉強食、鬼は人を喰らうもの。戦闘での消耗を補うために肉を求めるのは当然と言えよう。
されど今のジョナサンは亡骸と化してなお抗い続けていた。

(日輪刀が…赫いまま…波紋を…残している…!)

日輪刀の材料となる猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石は太陽の性質を秘める。故に太陽の性質を持つ波紋が流れやすく、そして今も赫刀となってその性質を残していた。
亡骸に絡む鎖は始め戒めのようだと思った。
されど今は違う。
これは遺体を守る棺なのだ。
そして同時に、ジョナサンは死してなお赫刀という武装を守る墓守となっている。

呼吸を用いれば引きはがすことはできるだろう。
しかしその消耗に見合うほどの甲斐はあるのか。万一口にした肉に波紋の性質が残っていれば骨折り損ではないか。
そのために要する時間も惜しい。
今の黒死牟には一刻も早く殺さなければならない標的がいる。

(一族の者が…痣を持つと…言っていたな…)

隅から隅まで名簿は見た。そのため、見慣れない異人の名前であっても記憶している。

(ジョセフ・ジョースター…おそらくは…同族……こやつと同じ…痣者であろう…
 この者も…日の…波紋の呼吸の使い手ならば…根絶やしにせねばならん…異人であろうと…逃がしはせん…)

日ノ本の日の呼吸の使い手は殺し尽したはずだった。傍流か、あるいは縁壱と同じ呼吸を用いる化け物が産まれたのか、異国に残っているなど思いもよらなかった。
探し出して殺さなければならない。
そして他にも。
ここにきて黒死牟は名簿より前に確かめていた支給品を取り出し確かめる。
一枚の写真と一冊のファッション雑誌だった。
写真に写っているのは

(D、I、O、B、R、A、N、D、O…羅馬字も…異人の名も…よくは分からぬが…こやつも…首筋に星の痣がある…
 ジョセフかは不明だが…こやつも…ジョナサンの一族ならば…殺さねば…)

もう一つのファッション雑誌にも黒死牟が狙う者の姿が映っていた。
ファッション雑誌というものが黒死牟には何なのかこれもまた分からないのだが、文字と写真の情報は読み取れる。
七海やちよという名の女が八頁にもわたって乗っている……笛を持ち、先ほど黒死牟から逃げたあの女が!

(鳴女が…私に…意味もなく…これを渡すはずもあるまい…
 何を考えてるかは知らぬが…どのみち殺すのだ…いいだろう…貴様の首の隣に…こやつらの首を並べてやろう…)

改めて、最強の鬼が闇の中へ一歩を踏み出した。


【ジョナサン・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
※E-3にジョナサンの死体と、それに巻き付いた悲鳴嶼行冥の日輪刀(赫刀になっている)@が残されています。


【E-3/1日目・深夜】


【黒死牟@鬼滅の刃】
[状態]ダメージ(小〜中、回復中)
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜1 ファッション雑誌BiBi@魔法少女まどか☆マギカシリーズ、DIOの写真@ジョジョの奇妙な冒険
[行動方針]
基本方針:無惨に忠義を尽くす
1:七海やちよを探し出し、殺して笛を奪い返す
2:星の痣と日の呼吸に関わりがありそうなジョセフ・ジョースターと写真の男(DIO)を殺す
3:無惨に仇なすものを殺す
4:欠番の増えた上弦の後釜を探す

※参戦時期は時任無一郎を鬼に誘った直後です。
※波紋の呼吸を日の呼吸に近いものと認識しました。


【ファッション雑誌BiBi@魔法少女まどか☆マギカシリーズ】
黒死牟に支給された。
普通の女性用ファッション誌。環いろはや七海やちよの活動する神浜ではよく見られている。
七海やちよの特集がぶち抜き8ページ組まれた特集号。
あと神浜の魔法少女である阿見莉愛も載っている。1ページだけ。

【DIOの写真@ジョジョの奇妙な冒険】
黒死牟に支給された。
ジョルノ・ジョバーナが写真に入れているDIOの写真。
彼にとって唯一父親を知る数少ない資料と思われる。
星の痣もくっきりと映っており、自信の首元と比べてジョルノは父とのつながりを感じたりしていたのだろうか。




【悲鳴嶼行冥の日輪刀@鬼滅の刃】
ジョナサン・ジョースターに支給された。
鬼殺隊最強の剣士悲鳴嶼行冥のための武装。
太陽に一番近く、一年中陽の射すという陽光山で採れる猩々緋砂鉄と猩々緋鉱石から打たれた刀が日輪刀であるが、これは刀の域を逸脱している。
、片手用の戦斧に鋼球鎖をつないだ鎖鎌ならぬ「鎖斧」とでも呼ぶべき特殊な形状で、鎖の一片に足るまで鬼を殺す力を秘めている。

216 名無しさん :2020/01/31(金) 03:26:07 ID:vYKtjpqc0
投下終了です

217 ◆As6lpa2ikE :2020/01/31(金) 14:03:55 ID:QE7S7.tI0
空条承太郎、妓夫太郎/堕姫、橘城アヤ子で予約します

218 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 17:31:15 ID:DZWRar3A0
アーカード予約します

219 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:42:21 ID:DZWRar3A0
投下します

220 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:42:38 ID:DZWRar3A0
礼拝堂に、1人の男が佇んでいた。
長身の身体を黒い拘束衣に包む、血の気の無い。白蠟の如き肌の端正な顔立ちの男だった。
しかし、この男の本質はそんなところには無い。
見るが良い。食いしばった歯の間から覗く乱杭歯を。眼差しの先にあるものを焼き尽くさんばかりの、鮮血色の瞳から放たれる凄まじい眼光を。
なによりも、男が発散する礼拝堂に満ちる、常人ならば総毛立つ────どころか気死するであろう妖気よ。
男の名はアーガード。王立国教騎士団(Hellsing)の鬼札(ジョーカー)。
夜闇に無敵の怪物(フリーク)として君臨する吸血鬼(ヴァンパイア)。

「糞共が!!」

罵声と共に振るわれた脚が、礼拝堂の長椅子を破壊する。
舞い飛んだ長椅子の残骸を腕の一振りで塵と砕く。
アーカードは激怒していた。
あの夜。ミレニアムと十字軍がロンドンを地獄と変えた夜。
アンデルセンが、己が心臓をくれてやっても良いとまで思った男が。
死の河を斬り裂き、アンデルセンと共に死の河に身を投じた、第十三課の者達に支えられて。
あの男が、アレクサンド・アンデルセンが、己が心臓に、銃剣(バイヨネット)を突き立てるのを心躍らせながら待っていた。あの時間。
至福であり、至高である瞬間へと続く時間。

────それを奴等は奪い去った!!

許せない。許せるはずがない。必ず殺す。必ず報いをくれてやる。
それに何だ?殺し合え?この私に!?
主人であるヘルシング家当主、インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングの従僕であり、主人の殺意のもと振るわれる凶器であるこの私に。

「ふざけやがって……」

あの女は私の主人にでもなったつもりか。
所詮化物(フリーク)。獲物を与えれば、考える事なく悦んで狩って回ると思ったか。
そんな事、出来るはずがない。
そんな事をすれば、己は狗になってしまう。
人であることに耐えられず。化物となり、不死身の身体と人を超えた身体能力を得て思い上がった糞供と同じになってしまう。
そんな事は耐えられ無い。そんな事は許容できない。
この身はインテグラの従僕。
この身はインテグラの猟犬。
この身はインテグラの凶器。
この身はインテグラの命令(オーダー)で、インテグラの意志で動く存在。
断じてあの様な女の命令(オーダー)や、意志ではない。

221 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:44:03 ID:DZWRar3A0
「何様のつもりだ………!」


己の在り方を徹頭徹尾コネにされて、アーカードの怒りは際限なく高まっていく。
腕が、脚が、縦横に躍動し、礼拝堂内部を破壊していく。

「誰が貴様らの思惑など乗るものかよ!!」

殺戮に興じることを望んでいるのだろうが、生憎とそんなことなどしてやらない。
殺し合いに乗った者たちは殺し返してやるが、そうで無ければ放置する。
気に入った人間がいれば、其奴の意志に従ってやるのも良いだろう。

内部を破壊し尽くしたアーカードは、礼拝堂の扉を開けると、他の参加者を求めて歩き出した。

「クハハ…そうだった。インテグラも此処に居るか、確認するのを忘れていた」

怒りのあまり、従僕として最も基本的な事を忘れていたことに気づく。

「これは………!!?」

〇アーカード〇アレクサンド・アンデルセン〇セラス・ヴィクトリア〇ウォルター・C・ドルネーズ〇ピップ・ベルナドット 

名簿にある見知った者達の名前

「インテグラは居ない………か」

真っ先に主人の不在を確認したアーカードは、改めて名簿を見つめる
セラスに吸われた、ベルナドットが生きている事に疑問点を持つが、その辺は当人に直に問いただせばわかるだろう。
化物と成り果てていれば………その時は塵として処理するだけだ。

そして………。

「『ジョナサン』・ジョースター………」

あの男達の1人、ミナ・ハーカーを奪い合った男と同じ名を、アーカードは名簿に見出した。

「これから殺し合うかも知れん相手に、あの男達の名を見るとはな」

これも運命か。この『ジョナサン』とやらは、ジョナサン・ハーカーに比する男だろうか?

だが、それらはどうでも良いと言えばどうでも良い。

何よりも重要なのは。

「お前がいるのか、アンデルセン!!」

真っ直ぐに、真っ直ぐに、死の河を切り裂いたあの男が。人の身でありながら己(フリーク)と互角にまで練り上げたあの男が。心臓をくれてやっても良いとすら思ったあの男が!!

「良いだろう、アンデルセン。俺とお前、2人がいれば、決着はつけられる」

悪鬼の様に、乱杭歯を剥き出しにして笑ったアーカードは、今度こそ他の参加者を求めて歩き去った。

222 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:44:33 ID:DZWRar3A0
現在地/F−3(教会)

【アーカード@HELLSING】
[状態]健康
[装備]不明
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜2
基本方針:殺し合いには乗らないが、襲ってくる奴は殺す。黒幕は絶対殺す
0:アンデルセンを探す
1:他の参加者と接触する
2:現在適当な方角へ移動中です
3:ベルナドットが化物になっていたら塵として処理する
4:ジョナサン・ジョースターに興味

※参戦時期はアンデルセンが死の河越えてくるのをウッキウキで待ってた時です。

※礼拝堂内部はアーカードに完全に破壊されました

223 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:49:10 ID:DZWRar3A0
吸血鬼と戦う話で主人公『ジョナサン』っていったらよぉー
普通吸血鬼ドラキュラの『ジョナサン・ハーカー』からとったと思うじゃねえか
なのにヨォー。何でファミレスなんだよ!!訳わかんねーだろチクショウ!!!

ジョナサンの名前の由来を思い出すたび心の中のギアッチョが暴れだす


投下を終了します

SSタイトルは【夜の続き】でお願いします

224 ◆DWykRcNsUE :2020/01/31(金) 20:50:36 ID:DZWRar3A0
佐倉杏子と書き手枠で予約します

225 名無しさん :2020/02/01(土) 08:32:53 ID:JnMtaK760
投下お疲れさまでした。
アーカードが対主催のロワって初めてかも

226 名無しさん :2020/02/01(土) 18:35:23 ID:KBQrBTjY0
投下乙です
鬼は八つ当たりで建物を壊していく習性でもあるのか

227 ◆As6lpa2ikE :2020/02/06(木) 11:49:47 ID:X2FtzzM.0
すみません。間に合わなさそうなので予約を取り消します

228 ◆As6lpa2ikE :2020/02/06(木) 11:50:19 ID:X2FtzzM.0
すみません。間に合わなさそうなので予約を取り消します

229 ◆DWykRcNsUE :2020/02/07(金) 19:44:35 ID:ji5AaqM.0
予約を破棄します

230 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/07(金) 22:30:23 ID:V5B.uMNc0
投下乙です
>月は昇り、日は沈む
ジョ、ジョースターさん!!笛に呼ばれ、出会って間もない女性の為に身体を張って悪鬼と戦うその姿、まさに紳士!
持ち前の爆発力を余すことなく発揮するジョナサンにところどころ人間やめてる彼に軽く引きつつも圧倒的な強さを見せた兄上、やちよさんも力及ばず、病み気味な時期からの参戦ながらも兄上にも退かない姿勢やナイスアシストなど、ベテランの風格が感じられる立ち回り。
終盤の黄金の回転+赫刀+波紋、これ終盤の戦いだっけと思えるほど熱く、最後の最後まで互角でどちらが勝つかわからず凄くワクワクしながら読んでました。
やちよさんは承ったものを正しく引き継げるのか、ジョセフやDIOにも狙いをつけた兄上の今後はどうなるのか。
三人が三人とも強さと魅力を引き立てあう力作の投下、ありがとうございました

>夜の続き
ロワでは珍しいブチ切れ対主催の旦那。よりにもよってあの時期から呼んでくるとは、そりゃキレる。
興味を持ったジョナサンは散ってしまいましたが、彼の家系の男がすぐそばにいるのはなんという巡りあわせか。
ブチ切れ無惨様、イライラカーズ様、ブチ切れ旦那ととことんボス格の人外たちの地雷を踏んでいるオババ、いいですね。


キャスカ、松蔵院カーラを予約します

231 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/14(金) 16:00:29 ID:jdwymZxY0
すみません、予約からカーラを外して投下します

232 迷いの森 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/14(金) 16:01:20 ID:jdwymZxY0
気が付けばここに飛ばされていた。
老婆に殺しあえと言われて。見せしめに一人が殺されたかと思えばまた生き返って。
二人の男が不意をついて老婆に斬りかかったと思ったらまた意識が飛んで。
その果てがこの様だ。これで困惑するなという方が難しい。

しかし、殺しあえ、か。確かに私たち鷹の団は傭兵で、戦を生業としているし、斬ってきた敵の屍は数えることができないほど築きあがっている。
殺し合いという分野にはこれ以上なく向いている人材だろう。
けれど、私たちは血の気は多くとも、一部を除けば戦闘狂ではないし、無駄な争いもしない。
報酬を得るための戦だから、仕事だから剣を抜くのであり、会ったばかりの奴にタダ働きで人を殺せと言われて喜んで勤しむ奴はそうはいない。

できるなら、さっさとあの老婆を斬って殺し合いから脱出し、帰りたいところだが...

私のそんな望みは、配られた名簿を見ればかき消されてしまった。

知った名前があった。

グリフィス。ガッツ。
私の属する鷹の団のリーダーと懐刀だった男。

ゾッド。
かつて敵対した男...否、化け物。その理不尽なほどの強さに、鷹の団は苦汁を嘗めさせられた。

なんということだ。
いまのグリフィスはウィンダム国王に捕らえられ、1年以上も拷問を受け続けている。
そんな衰弱しきった彼が、あんな怪物と出くわせば一たまりもない。
それはガッツがいたところで同じだ。あいつは強い。私が知る人間の中でも一番かもしれない。だが、ゾッドは強さという水準では測れぬ怪物だ。

「探さなくちゃ...グリフィス!」

233 迷いの森 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/14(金) 16:01:47 ID:jdwymZxY0

荷物を纏め立ち上がる。
彼がいるのはどこだ?手がかりになりうるのはミッドランド城。
ミッドランドは国の名前だが、もしかしたら『ミッドランドにあるどこだかの城』ということだろうか?
グリフィスはミッドランド王国のひとつであるウィンダムの城に捕らえられていた。もしこの地図の城が本物のウィンダム城ならば、グリフィスも捕らえられたままかもしれない。
いや、殺しあえというのだから、彼も既に解放されているかもしれない。
だとしたら、わざわざ自分が拷問されたような忌まわしき城へと戻るだろうか?
いや、グリフィスならそれすらも心に隠して、私やガッツと合流するための目印にするかも...

わからない。この場で、グリフィスがどう行動するかが全くわからない。

なんにせよ、だ。ミッドランド城へ向かうのは悪くない方針だと思う。
そこにいればそれでいいし、いなくともここにはいないという情報だけでも進展といえる。

とにかく、グリフィスを探し、保護して、それで...

―――それで、どうする?

グリフィスは満身創痍の身だ。
恐らく、今の彼では人ひとり殺すことすら難しいだろう。
ならばこそ、揃って脱出...どうやって。

私たちには爆発する首輪が嵌められている。
ガッツも私もそんじょそこらの人間には負けない。だが、この衝撃を与えれば爆発する首輪を外せるような技術は持っていない。
首輪を外す技術を持つ人間を探す...そんなゲームの根底を覆すような参加者、あの老婆が招くだろうか。
ならば、グリフィスを優勝させる。
ああ、それが一番確実かもしれない。...あの老婆が約束を守るという前提があってだが。
それに、グリフィスが人を殺せないかもしれない現状、彼の剣になるのは私かガッツになる。
仮に私たち三人が残った場合、私がガッツを、あるいはガッツが私を殺した後に自害する形になる。

(昔の私なら迷わずそうしたかもしれない...けど...)

234 迷いの森 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/14(金) 16:02:05 ID:jdwymZxY0

全てに疲れ切って、ガッツに後を任せて身を投げ出したあの時。あいつに助けられ、互いにさらけ出して、交わりあったあの時。
気づいてしまった。
私はグリフィスの剣であろうとしたけれど、心のどこかで女として彼という男を追い求めていたこと。
同時に。
それ以上に、憎み妬んでいた筈のガッツにすらも、グリフィスへの想い以上に惹かれていたこと。

昔ならガッツを斬れたかもしれない。でも、もう無理だ。
私はガッツを斬りたくない。あいつを殺すのも殺されるのも、もうできそうにない。

かといってグリフィスを見捨てることが出来るかと問われれば、間違いなく無理だ。
私はあの人の女になれずとも、あの人が私にとって代えがたい存在であるのには変わりない。

「私はどうすればいいんだ。どうすれば...」

いまの私にはわからない。

とにかくいまはできることだけをやろう。なにかを考えるのはそれからだ。

私には、迷いを抱えたままその足を動かすことしかできなかった。


【E-2/一日目・深夜】

【キャスカ@ベルセルク】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:とにかくいまはグリフィスとガッツを探す。
0:ミッドランド城(ウィンダム城?)へと向かう。
1:グリフィス、ガッツと合流した後は...?
2:ゾッドには要警戒。できれば倒しておきたいが...

※参戦時期はガッツと交わり、グリフィスを助けに行くまでの間です。

235 ◆ejQgvbRQiA :2020/02/14(金) 16:02:28 ID:jdwymZxY0
投下終了です

236 名無しさん :2020/02/14(金) 18:05:48 ID:NezqsMKQ0
乙です
キャスカは鷹の団時代の参戦かぁ。ガッツとグリフィスの参戦時期によっては面倒な事態になりそう

237 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 20:46:49 ID:ECRlNjLU0
阿修羅寺あす香、宮本明、甘城千歌を予約します

238 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:05:15 ID:ECRlNjLU0
投下します

239 後光 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:06:08 ID:ECRlNjLU0
オ オ オ ォ ォ ォ

見る者を委縮させる鋭い双眸。
額から斜めに入った一筋の傷。
さほど手入れされていない無精ひげ。

青年―――宮本明は先刻の光景を脳裏で反芻させ、グッと目を瞑る。

(間違いない...あの時、ババアに斬りかかったのは兄貴だ)

宮本篤。明の敬愛する兄。
彼は死んだはずだった。それが、傷一つなく再び姿を見せたのだ。如何に歴戦の戦士である彼とて、動揺が生じるのも仕方のないことだろう。

ごそごそごそ。

明は、デイバックから名簿を取り出し、恐る恐る参加者を確認する。

知った名前があった。
鮫島。山本勝次。
二人とも、吸血鬼に蹂躙された日本本土で出会った仲間たちだ。
雅。
日本を壊滅に追い込んだ張本人であり、明にとって、多くの仲間たちの命を奪った怨敵。

そして、宮本篤、青山龍ノ介、西山、斧神。
皆、吸血鬼蠢く彼岸島で共に戦い、あるいは刃を交え、散った戦友たち。
そう。
彼らは死んだのだ。龍ノ介の最期はこの目で見届け、ほかの三人もこの手で命を散らしている。

普段の明ならば、主催からの嫌がらせか、あるいは同姓同名の別人だと考えただろう。
だが、彼は見てしまった。果敢にも主催に斬りかかった兄の姿を。そして、老婆が死んだ人間を生き返らせる場面も。
故に、明は名簿に載っている者たちが自分の知る彼らだと疑う余地もなかった。

ハァ、ハァ、ハァ。

自然と息は荒くなり、額には脂汗が滲みだす。

(チクショウ、あのババァなんてことしやがる!)

本音を言えば、散ったはずの彼らともう一度会えるなど夢のような話だ。共に帰ることが出来ればこれ以上に嬉しいことはない。
だが、ここは殺し合いの場だ。
制限時間が二日と短いうえに、再び彼らと殺しあわなければならない可能性もある。
もしも彼らが自分を殺しに来れば、再び彼らを斬るしかない。

240 後光 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:06:30 ID:ECRlNjLU0

もう一度、彼らをこの手で葬ることになる。それは宮本明にとっては酷く辛いことだ。

ならば自分が優勝して彼らを本当に蘇らせるか?

もしも呼ばれた参加者がみんな吸血鬼であればその方法をとったかもしれない。
だがここには鮫島と勝次がいる。
本土からの大切な仲間たちを犠牲にすることはできない。

思い悩む明。
その耳に届く、微かな足音。
誰かが走っている。走って、こちらに向かってきている。

(悩んでいる暇もない、か)

明はひとまず知人たちのことは頭の片隅に置き、足音の主へと意識を向ける。

物陰に姿を潜め息を殺す明。その手に握られるのは、鉈のように刀身が沿り返った巨大な刀。そして

ばっ。

姿を見せた来訪者に、死角から刀の腹を向け、動きを牽制する。

「ひっ!」

突然、角から出てきた凶器に来訪者は小さな悲鳴を上げる。
来訪者は、制服に身を包んだ少女だった。


恐怖からか、身を震わせる少女。それが本心か演技かは明にはわからない。
ただ、どうにもこちらの存在に気づいていなかった素振りとこの怯えようから察するに、彼女はなにかから逃げてきたのだと判断する。
ならば情報が必要だ。彼女が逃げ出したのは、あの雅である可能性があるのだから。

「聞きたいことがある。あんたは逃げてきたようだが、向こうに誰かいるのか?」

剣をあてがい警戒心を保ったまま、明は少女へと問いかける。

ハァ、ハァ、と息を切らしつつ、少女はぽつりと言葉を漏らす。

「お釈迦様...」
「なに?」
「こ、校舎が崩れたから様子を見に行ったら、お釈迦様が...」

明の頭に疑問符が浮かぶ。
お釈迦様といえば、奈良にある仏像だ。
一瞬、参加者の一人である金剛の姿を連想するが、彼の姿はお釈迦ではなく金剛力士像だ。
そんなものが学校に置いてあったというのか。ならばなぜ人を救うというお釈迦様から逃げているのか。

その答えはほどなくして思い知らされる。

241 後光 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:07:20 ID:ECRlNjLU0

―――カッ

突如、明の背後のビルが発光する。
背中越しにも伝わるあまりの眩しさに明は思わず腕で目を隠しながら振り返る。

「あ、危ないっ!」

その明を、少女は背後から被さるように倒した。

シ ャ ア ア ア ア ア

光は明たちの頭上を通り過ぎ、民家の壁を貫通し、発光のもとであるビルの壁面がドロドロと溶かされていく。

「なっ」

眼前の光景に、明は思わず絶句する。

「後光である。人ごときがあびれば...無へと還るぞ」

明の動揺に答えるかのように、ビルから言葉が発せられる。
眩しさに耐えつつ、明は目を凝らす。
人影だ。眩しすぎてハッキリとはわからなかったが、確かに人影がそこにある。


「あれはいったい!?」
「だから、お釈迦様なんです!崩れた校舎から急に出てきて色んなものをおしゃかにしてきて!」

ふっ、と光が消え、人影は明たちのもとへとビルへと降り立つ。

「私はあの方のもとへと帰還せねばならん...故に邪魔者達よ...ここで死ね...」

月光に照らされ、影の正体が露わになる。

この世の全てを憂う右目と薔薇の眼帯で隠された左目。
腰にまで届く長く美しい黒髪。
左右の肩口から生えた2対の腕。
すらりと長い、組まれたおみ足。
浮遊し、セーラー服に包まれた芸術のように整った肢体。

その姿、まさに仏像のソレ。

彼女こそ、奈良県怪光線お釈迦スケバン阿修羅寺あす香である。

明の額から冷や汗が伝い、自然とかみ合わせた歯にも力が入る。

(あれが、お釈迦様!)

★面妖なる敵現る!かつてない神技を前に、明たちの運命は!?

242 後光 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:07:50 ID:ECRlNjLU0


【D-6/1日目・深夜】

【宮本明@彼岸島】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品0〜2、 十咎ももこの刀@魔法少女まどか☆マギカシリーズ
[行動方針]
基本方針:雅を殺す。
0:眼前の怪物(阿修羅寺あす香)に対処する。
1:雅を殺す。
2:鮫島、勝っちゃんとの合流。
3:兄貴、師匠、西山、斧神と合流。対処は彼らの様子を見てから判断する。

※参戦時期は少なくとも鮫島を知っている時期からです。

『十咎ももこの刀@魔法少女まどか☆マギカシリーズ』
マギアレコードに登場する魔法少女、十咎ももこの刀。大きさは身の丈ほどもある。
チャンスを逃さない鉈に近い形状をしている。




【天城千歌@サタノファニ】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:生き残る。
0:お釈迦様に対処する。
1:???

※参戦時期は組長との対決以降です。
※千歌の人格がどちらかは後の書き手の方にお任せします。


【阿修羅寺あす香@神緒ゆいは髪を結い】
[状態]健康
[装備]
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:主催の老婆を殺す。
0:主催を殺し帰還する。その邪魔者たちよ、ここで死ね。

※無惨が倒壊させた見滝原中学校におり、生き埋めになっていましたがほぼ無傷です。

243 ◆ejQgvbRQiA :2020/03/02(月) 23:08:31 ID:ECRlNjLU0
投下終了です

244 名無しさん :2020/03/03(火) 10:40:20 ID:uP0KHVdE0
投下乙です
話はシリアスなのに彼岸島特有の擬音芸で吹いたからチクショウ!
サラっと無惨様の癇癪の被害に遭ってるあす香で草。

245 名無しさん :2020/03/04(水) 13:00:59 ID:qLZdtgAs0
どう考えてもピンチなのに負けるイメージが沸かねえ辺りスゲェよ明さんは

246 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 19:34:33 ID:LbhWGnaU0
斧神、金剛様で予約します

247 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 21:58:48 ID:LbhWGnaU0
投下します

248 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 22:00:54 ID:LbhWGnaU0
ズシン……ズシン……

大地を小さく揺らしながら歩き続けるのは10メートルは超える巨人だった。
雅の片腕にして混血種吸血鬼(アマルガム)であり、参加者の中でも巨体を誇る大男、それが金剛であった。
まだ殺人ゲームが始まったばかりなのに関わらず、彼の目的は既に決まっている。

(雅様を除く全ての参加者を殺害し、自決する。それが私の役目)

自分の主である雅の生存こそが第一であり、その為なら喜んでわが身を差し出す。
金剛は雅の狂信者であった。このゲームに呼ばれてから既に己の生存を諦めている。

(こんな首輪如きで雅様を殺せるとは思えん。だが万が一のリスクを雅様に背負わせるわけにはいかん。
このゲームから優勝して確実に生還してもらわなければ……)

考え事をしながら歩き続けて数分後の事だった。
腰巻にディバックが引っ掛けてあるのに金剛は気付いた。

「これは私に用意された支給品か?こんな小さな入れ物に入ってる武器等、役に立つとは思わんが……。
 もしかしたら雅様の役に立つ者が入っているかもしれん。一応、調べておこう」

ディバックは他の参加者に配られたのと同サイズであり
金剛は四苦八苦しながら何とかディバックを開ける事に成功した。

――ォォ  ――ォォ

「……?声が聞こえる。生き物でも入っているのか?」

ディバッグの中から響き渡る声を聞いた金剛は指をディバックの中に突っ込む。
容量を超える範囲まで指が入っていくのは何か仕掛けが施されているのか。
そう疑問に感じながらも音を発する正体をつまんで持ち上げた。

「……お前は」
「グゴーー!!グゴ――!!」

それは金剛と全く同じ顔をしていた。
金剛はその正体を知っている。
何度目かの脱皮の時に分裂したもう一人の自分だった。
なぜそれが自分のディバックに入っている?
まずは本人に問い質すとしよう。

「おい、起きろ」
「グゴ――!!グゴ――!!」
「起きろ!」
「ん、んん……」
「起きたか?」
「へへっ……なかなかいい締まり具合だぜ……むにゃむにゃ」

痺れを切らした金剛は手に持つもう一人の金剛をブンッ!と投げた。
眠っている金剛は地面に叩きつけられ、何度もバウンドしながら転がり続けて
木に激突した所でようやく勢いは止まった。

「いててて、私に攻撃したのは誰だっ!?出てこい!!」
「ようやく起きたか」
「なんだ?もう一人の私ではないか。何のつもりだ?」
「お前……今の状況を理解していないのか?」
「そう言えばここは一体どこだ?」
「やれやれ……何も知らんのか」

249 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 22:01:35 ID:LbhWGnaU0


「……つまりこの島で雅様以外の参加者を皆殺しにしなければならないのか」
「ああ、そうだ。お前にも働いてもらうぞ」
「それは構わないさ。しかし何者かは知らないがよくもまぁクソみてぇなゲームを考える物だな」
「何を目的にしているかは知らぬ。しかし死者を蘇らすその力は決して侮る事は出来ん」
「確かにそうだ。下手に反抗するよりもここは素直に従うべきではあるな」
「ん?……誰かが来る」

二人の金剛に向かって近づいてくる者の気配に気づく。
金剛のサイズからして向こうはすでに視認出来る位置なのにも関わらず
迷わずこちらへと近づいてくる。

メエエエエエエエエエエ!!  メエエエエエエエエエエ!!

それはヤギのような鳴き声を発し、ヤギの被り物を被った大男であり。
金剛と同じく混血種吸血鬼(アマルガム)の一人であり
金剛と共に雅の片腕として力を振るっていた誇り高き戦士、その名も斧神である。

「その声、斧神か……」
「金剛……なのか?そこまで大きくなっていたとは……」
「なんだ。お前、生き返ったのか。ガハハ」
「それに金剛がもう一人いる……一体どういう事だ?」
「教えてやろう。お前の死後に何があったか」



「そうか。既に本土は我ら吸血鬼が支配したのか」
「ああ、だが明も彼岸島にいた頃よりも更に力を得ているだろう。
 私も明を殺すためにひたすら己を鍛え上げた」
「おかげで現状を知る事が出来た。感謝する」
「斧神よ。かつて私とお前は共に雅様の片腕だった。
 その忠誠心は今でも残っているか?」
「愚問だぞ。俺が使える主は雅様ただ一人、例え死後でもそれは永久に変わることは無い」
「その言葉を聞いて安心した。ならばお前も雅様を優勝させるために他者を殺害して回れ」
「ああ……心得た。それで行先はどうする?」
「私はここから時計回りに島を移動して参加者を殺す。お前は反時計回りに移動して殺せ」
「では俺は西にある廃村から捜索するとしよう」
「この金剛も連れていけ。私なら一人で十分だ」
「えっ?私がこいつと一緒か?」
「不服か?戦力的にはそれが丁度よかろう」
「確かにそうだが……」

これからの方針を決めた参加者二人&支給品一人は行動を開始することになった。
金剛は東へ、斧神ともう一人の金剛は西へ、雅様を優勝させるべく他の参加者を皆殺しにするために。

【B-4/1日目・深夜】

【金剛様@彼岸島】
[状態]健康
[装備]なし
[道具]なし
[行動方針]
基本方針:雅様の優勝
1:斧神と協力して雅様を除く、全ての参加者を殺害後に自害する。

参戦時期は明と対決する前です。

250 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 22:03:00 ID:LbhWGnaU0
俺は明との戦いの中で確かに友情を感じていたのだ。
彼は人間の中でもとてつもなく強く、心を躍らせた。
強さだけでない、その気高き精神は戦士としても敬意に値する男だった。
戦いに敗れた後、吸血鬼達が俺の姿を見て罵る中で明だけが俺に手を差し伸べてくれた。
もし出会いが違っていたなら敵同士では無く、友として……。

一度は明と協力する道も考えた。
だが俺は吸血鬼であり、雅様の忠誠を捨てる事は出来ない。
ならば俺の取るべき道は――。

「おい、聞いているか斧神!」
「すまない。考え事をしていた」

斧神と共に行動しているもう一人の金剛は参加者名簿を見ながら斧神と絡んでいた。
金剛の支給品は全てもう一人の金剛へ渡した。
私にはこんな物が無くても戦う事が出来る、と自信があっての判断だった。
もう一人の金剛が喋る内容は低俗極まり無い話だった。

「参加者を見る限り、それなりに女も参加しているようだが、どうだった?」
「『どうだった』とは?」
「そんなもの決まっているではないか!若い女だったか?かわいい女が多いかって話に決まっているだろ」
「……それほど把握はしていないが若い女が多かった。中には少女と呼べる程にまだ幼い子も混じっていた」
「そうかそうか!!成長しきった大人の女も味わい深いが未成熟の女とヤるのもたまんねえよな!!ギャハハハ!!」

品行下劣極まりないこんな男が金剛の片割れとは……。
分裂した金剛は煩悩の塊と言っていたが
まるで思考を全て下半身にゆだねたような俗物だ。

「最初は私が道具として扱われているのにカチンときたが
 参加者では無く、道具なら雅様が生存するのに私は死なずとも良いということ。
 ならば私だけ雅様と一緒に生き残る事が出来る訳だ。グハハハハハ!!」

もう一人の金剛の言う通り、彼には首輪を付けられていない。
道具は刀や銃といった武器だけじゃなく生物も含まれているのか。

「安心しろよ斧神、お前が死んでも私が生き証人になって武勇伝を語ってやろう」
「……それはありがたい」
「それと何か着る物が無いか?女とヤった後に全裸で寝てる内に連れてこられたから着る物がねえんだ」
「持って無い。廃村に着いてから探せ」

彼岸島を出てから金剛は更に強くなった。
明も本土にて更に力を付けている。
俺は……どうする?

「おっと忘れる所だった。斧神、一つ言っておく。女は殺すなよ?殺すのは私が飽きるまで犯し尽くしてからだ」
「金剛……」
「なんだ斧神?」
「俺は、明ともう一度戦いたい」
「話を聞いていたのか?お前が破れた後も明は更に強くなっているんだぞ。明ならもう一人の金剛に任せておけばいい」
「知っている。……だから俺も更に力を付ける。金剛のように……」

斧神から発する空気が変わっている事にもう一人の金剛は気づいた。
視線、動き、そして殺意が己を殺すべく向けられている事を。

「金剛、お前を喰らって俺は更なる高みを目指す」
「……本気で言ってるのか?」
「そうだ……」

しばしの沈黙の中、もう一人の金剛はディバッグから大剣ドラゴン殺しを取り出すと。
斧神に向かって飛びかかり、大剣を振るった。

「ふざけやがって!!ぶっ殺してやらアアア!!」
「どうした?その程度の力なのか?」
「なっ!?」

大剣は斧神の右肩に浅く刺さった所で動きを止めた。
斧神の能力である硬質化によって体の両断を防いだ。

「こっちの金剛はそれほどの強さを持っていないらしいな。ならば次はこちらから行くぞ」
「ひっ……待ってくれ!話を聞いてくれ!!」
「どうした?それでもアマルガムか?見苦しいぞ」
「吸血鬼ならそこらの参加者を吸血鬼化させてから食えばいい!協力者である私を食べる必要など無いではないか!」
「悪いが時間は無い。明と出会う前に一刻も早く力を付けねばならない」

斧神が肩に刺さった大剣を抜くと、もう一人の金剛へと近づく。
後ろへ一歩下がる金剛に向けて大剣を掲げ、振り下ろそうとした瞬間。

ポイッ コツン

金剛は何か小さな物を投げつけて、それが斧神の頭部へと当たった。

「何の真似――ぐっ!?」

投げた物が爆発と共に強烈な光を放ち、斧神を包んだ。
視界が封じられる中、金剛の逃げ足が耳に鳴り響く。

「スタングレネードか!くそっ……逃がさんぞ金剛っ!!」

メエエエエエエエ!! メエエエエエエエエエ!!

勝ち目が無いと悟った金剛は最後の支給品であるスタングレネードを使用。
斧神の視力を奪い、その隙に逃げる作戦へと移ったのだった。

(ちくしょう!!ゆっくり女を犯しながら雅様と脱出するつもりだったのに斧神の奴め!!
 なんで支給品の私までが殺されそうにならなければならんのだ!?)

このクソみてぇなロワの中では全てが殺し合いに巻き込まれている。
生きているならば例え参加者ではなくても、それは殺し合いの対象足りえるのであった。

251 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 22:03:26 ID:LbhWGnaU0
【B-3/1日目・深夜】

【斧神@彼岸島】
[状態]視力低下(時期に回復)、右肩に斬り傷(小)
[装備]ドラゴン殺し
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:雅様の優勝
1:更なる力を身に着けて、明ともう一度戦う。
2:雅様の優勝の為に他の参加者は皆殺し。
3:逃げる金剛を追う。

【もう一人の金剛様@彼岸島】
[状態]健康、全裸
[装備]なし
[道具]基本支給品、M84スタングレネード@現実×4
[行動方針]
基本方針:雅様の優勝
1:斧神から逃げる。
2:雅様の優勝の為に他の参加者は皆殺し。
3:ただし女は飽きるまで犯し尽してから殺す。

【ドラゴン殺し@ベルセルク】
金剛様に支給。
名工ゴドーが製作した、人の身の丈を超えるほどの巨大な黒剣。
曰く、「竜を殺せるような剣を作れ、と仰せつかったから、言われるとおりに作ってやった」
その重量は凄まじく、常人では持ち上げることも困難。
剣幅も広く、盾のように使われることも多い。
魔の者を無数に斬る内に、『魔の者を斬るための剣』としての性質を持ちつつある。

【もう一人の金剛様@彼岸島】
金剛様に支給。
金剛が何度目かの脱皮を行った際に、本体とは別に生まれてきた個体。
本体と違い、煩悩の塊のような性格で性欲のみを求める。
通称:エロ金剛。

252 ◆IOg1FjsOH2 :2020/03/15(日) 22:10:34 ID:LbhWGnaU0
投下終了です
タイトルは三者三葉です

253 名無しさん :2020/03/15(日) 22:38:39 ID:lONAREKU0
投下乙です
あったよ支給品にエロ金剛が!でかした!凄ェ!
斧神はやはり明さんとは殺し合う宿命なのか…辛ェなぁ…

254 ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 09:55:05 ID:yJQ0HNJw0
宇髄天元、書き手枠予約します。

255 ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 22:48:29 ID:yJQ0HNJw0
投下します。

256 Poison Parent ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 22:49:45 ID:yJQ0HNJw0
「ほーお。するってーとおっさんは、ド派手に死んだってワケか。」
「その通りでごぜえます。ウズイさんとやら。話が早くて何よりです。」
「なるほど。生き返った命だ。大切にして生きろよ。おっさん。」

ここはとある一軒家の中。
老年のひげ男の話を一通り聞くと、元・音柱の宇髄天元は家の外へ向かって、風のような速さで走り出した。

「ま、待ってくだせえ!!」
「ん〜?まだ何かあるのかよ。話が地味に遅えぞ。」

天元がひげ男の目の前に再度現れる。それもまたつむじ風のようだった。

「ウズイさんの強さは最初の場所で見ました。
おねげえしやす。おれを守って下せえ。こんなおっそろしい所に一人でいたら、アリンコのフンみてえに死んでしまいやす。」

姿が見えるとひげ男は急に頭を深く下げ始めた。
地味で、卑屈で、ダサくて、みっともない。
天元だけではなく、他人が見てもそう感じただろう。

「派手に守ってやりてえのはやまやまだが、俺にはこの戦いでド派手に殺さなければならねえ奴がいるのよ。」


天元としてはこの戦いで、疑問に思ったことが二つあった。
一つは、自分の体のこと。
彼はこのバトルロワイヤルに参加させられる前に、遊郭で鬼の兄妹と戦った。
強大な力を持つ彼らを、同じ鬼殺隊の力を借り、何とか撃破するも、片腕と片目を失ってしまった。
しかし、今の自分は五体満足だ。

最初は御子柴に勢いで飛び掛かって行ったから気づかなかったが、今こうしていると奇妙に思えてきた。

結局のところどうして失った体が戻っているかは分からないが、音柱としてもう一度活躍するチャンスだと派手に割り切った。


そしてもう一つの疑問は、参加者にあった。
倒したはずの鬼、妓夫太郎兄妹がこの参加者名簿に載っていた。
どんな形で復活したのかは知らないが、生き返ったのなら犠牲者が出る前に倒さなければならない。

「俺は「鬼狩り」を派手にやってるんだが、この妓夫太郎と堕姫っていう、派手にいけ好かねえ顔した奴らとな……」
天元が首を狙っている相手は、妓夫太郎兄妹や主催者だけではない。
彼の同僚で会った煉獄杏寿郎を殺したという鬼、猗窩座。
そして、彼だけではなく、全ての鬼殺隊がその首を求めている鬼の首領、鬼舞辻無惨。

257 Poison Parent ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 22:50:10 ID:yJQ0HNJw0

無力で卑屈なひげ男を、敵の手から守りたいという宇髄の発言は、嘘ではない。
だが、一般人一人を守るのに全力を尽くすあまり、他者大勢を犠牲にしてしまっては、本末転倒だ。
そのため、ひげ男をどこかに隠して、鬼や他の殺し合いに積極的な相手を退治しようと考えていた。

「ゲッ!!こいつは……。」
しかしひげ男が濁った目を見開いたのは、宇髄が指さした鬼ではなかった。
金髪で、腹をすかせた所で獲物に出会った猛禽類のように鋭い目つきの男が写っている。
名前欄には、「ディオ・ブランドー」と書いてあった。


「何だか派手な見た目の割に地味に嫌な感じの奴だな……。似た名前だから、家族か何かか?」
「コイツは、おれの息子だ!おれはコイツに毒を盛られて……殺されたんだ!!」
「毒……か……。親子ってやつは、どうしてこうも上手くいかないのかねえ……。」

かつては忍であった宇髄が思い出したのは、父親のこと。
彼は忍が時代から消え去ることを恐れ、自分と兄弟に虐待に近い修行を強いた。
その考えに嫌気がさした宇髄は死んでいく兄弟を後ろに忍を辞め、鬼殺隊に入った。
しかし、彼としては、自分の選択が父親を、引いては忍そのものを殺すのではないかという葛藤が常にあった。


「ウズイさん、コイツにだけは気を付けてくだせえ……?」
気が付くとひげ男、ダリオ・ブランドーは宇髄天元の広い背中の上に乗っていた。



「ちょっ……どんだけ足早いんですかい?」
「地味に遅え足に付き合ってる暇はねえからな!」
手練れの鬼殺隊でさえ、気が付いたら見逃している彼は、常人とは比べ物にならないほどの脚力を持っていた。
その速さは、ロンドンの馬車さえも超えていた。


「そのディオってガキを探すんだろ?鬼退治ついでに、俺様がド派手に手伝ってやるよ!!」


一人の父親を乗せた音柱は、颯爽と夜の闇へ向かって走り出した。

【B-1 早川アキの家入り口/1日目・深夜】



【宇髄天元@鬼滅の刃】
[状態]健康
[装備]いつもの音柱の服
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3
[行動方針]
基本方針:打倒主催者。
1.知っている敵(鬼舞辻無惨、猗窩座、妓夫太郎兄妹)を倒す
2.ついでにダリオ・ブランドーをディオと和解させる。

※参戦時期は少なくとも妓夫兄妹戦後です。
※ただし、失った片腕と片目は戻っているため、それまでと同じ戦いができます。

258 Poison Parent ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 22:50:27 ID:yJQ0HNJw0


(ウズイさん。最初に会えたのがアンタでよかったぜ。こいつは、おれにもツキが巡ってきやがった。)

初めて会えた相手が、最初の会場で主催者に対する敵意をはっきりと示した相手だということは僥倖だった。
別の時代の言い方をすれば、マイク・タイソン並みにラッキーだったといえるほど。
相手の邪魔をしない程度についていけば、それなりに命の保証はあるからだ。


(ディオ……まだまだてめえの好きにはさせねえぞ。)


天元の目が届かない場所で、ダリオの老婢な目が煌々と輝いた。
彼を背負って走っている男はまだ知らない。
ダリオは息子から盛られた毒以外に、心にもまた毒を含んでいたことを。

彼自身、死因は息子に憎まれ、毒殺されたことだとは知らなかった。
だが、宇髄天元に同情を買うためにでっち上げた話が、たまたま真実へと繋がった。


最期に息子に後を託し、自分がかつて助けた貴族の養子へのコネを紹介した。
だが、そんなものは最早どうでもいい。道端の石ころと大差ないくらい。
生き返ってしまえばこっちのもの。
自分を目の敵にしてきた、ディオも同じことだ。



(それにあいつの変な帽子……きんきら綺麗な飾りがついてるぜ。売ったら何本の酒を買えることやら。)
そしてもう一つ。彼には絶対に止められないものがあった。


「ありがとうごぜえます。ところでウズイさん。酒、持ってねえですかい?」
「はあ?あるわけねえだろ。それより、俺が敵に出会ったら、すぐに逃げるんだぞ。」

自分を背負って走っている相手は、ディオと和解させようとしているらしいが、それもまたどうでもよかった。
彼に関心があったのは、自分の生還と、そして酒、あるいはその酒を買うための金だけだったから。


【ダリオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]健康
[装備]いつもの服
[道具]基本支給品、ランダム支給品1〜3 (酒の類はない)
[行動方針]
基本方針:生還。どのような形でも構わない。
1.宇髄天元を頼りにし、自分の邪魔をする相手は殺してもらう。
2.ついでに何か金目の物、あるいは酒を手に入れる。

※本編死亡後の参戦です。

259 Poison Parent ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 22:50:43 ID:yJQ0HNJw0
投下終了です。

260 名無しさん :2020/05/31(日) 22:59:41 ID:PXXzL2yY0
投下乙です
DIO曰く、ダリオが吸血鬼化していたら相当強くなると推測してたな

261 Poison Parent ◆vV5.jnbCYw :2020/05/31(日) 23:29:56 ID:yJQ0HNJw0
感想ありがとうございます。
吸血鬼・鬼化けしてもしなくても毒親として面倒ごと起こしそうですね。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

■ したらば のおすすめアイテム ■

STEEL BALL RUN 15 ジョジョの奇妙な冒険 Part7 (集英社文庫 あ 41-71) - 荒木 飛呂彦


この欄のアイテムは掲示板管理メニューから自由に変更可能です。


掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板