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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆
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魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。
『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
前スレ ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1341065580/
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貧乳同士がつるんつるんも良いのではないかね?
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いいです、でもおっぱいはもっといいです!
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静かな夜を、聖なる夜を
すっかり過ぎてからようやく読み終えたけど、どちらもGJ!
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投下します。
シグナム×アインスのSSシリーズの三話目、二人の初めての話、エロ、百合。
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しぐ×あい! はじめて
「なあ、リインフォース顔なんか赤くない?」
と、八神はやては問うた。
海鳴、八神家、ちょうど皆が夕食を済ませて一段落した頃合である。
使い終わった食器を流しに片付けていたリインフォースは、自分の仕える主の質問に、少しだけ困ったような顔をして、ふっと笑顔を浮かべた。
「そう、でしょうか。少し部屋の暖房が効きすぎているせいかもしれませんね」
確かに、真冬の今時分はエアコンなど暖房機器で室内をよく暖める。
居間の気温もやや高めにセットされていた。
ミルクを溶かしたように真っ白な肌をしているリインは、血の巡りも良く分かるので、なるほど、それは理屈の通った答えだった。
はやてはそれに納得したのか、こくんと小さく頷いた。
「うん、それならええんやけど。もしかして具合悪くなったんやないかって心配したから」
「お気遣いありがとうございます、主。でもそのような事はありませんから」
にっこりと、花が咲き誇るように微笑み、はやてを安心させるリインフォース。
果たして、その時の彼女が笑顔の奥で早まる鼓動を隠していると、知る者が居ただろうか。
はやても、二人の様子を横目で見ていた守護騎士たちも気付きはしなかった。
□
「しょ、将……ちょっと良いか?」
ちょうど自室に入る直前、消え入りそうな声がシグナムの耳朶に響いた。
振り向けば、夜半の廊下に立つ、銀髪の美女の姿。
リインフォースが、どこか恥ずかしそうに頬を染めて、そこに居た。
何事か言いたげな様子から察するに、シグナムに相談事でもあるのだろうか、というのは想像するに易い。
「どうかしたのか?」
「ああ、その……少し話したい事があるんだ……良いだろうか」
「うむ。まあ構わんが。では私の部屋でするか?」
「い、いや……わ、私の部屋で頼む」
「ああ、別に良いが」
特に理由を聞く事もなく、シグナムはリインの提案に頷き、彼女の部屋へと向かった。
八神家で最後にこの家にやってきたリインフォースの部屋は、二階の一番奥、昔は物置代わりに使っていたのを改装した部屋だ。
ドアを開け、部屋に入ると、暖房を掛けたばかりで暖まりきっていない冷たい空気が出迎えた。
室内の調度は簡素で、必要なもの以外はあまりない。
シグナムはとりあえず、手近なところにあった椅子に腰掛ける。
リインフォースはそんなシグナムの正面、ベッドの端に座った。
「で、用とはなんだ?」
烈火の将は、すかさずそう切り出した。
が、肝心のリインフォースは頬を染めて俯いてしまう。
言葉が聞こえていない、などというわけはない。
眉根を寄せて困ったような表情を浮かべて、頬は先ほど以上に赤く染まっていた。
恥じらい……いや、それもあるが、冬場にうっすらと汗を浮かべている様子は別のことを連想させた。
「顔が赤いな、本当に風邪でも引いているのではないか?」
「そんな事はない、んだが……その……えと……ぁ、あの……」
怪訝な顔で問いかけるシグナムを前に、リインフォースはぎゅっと縮こまって、消え入りそうな声でぼそぼそと何か呟いた。
だが、エアコンの音に掻き消されるほどの声が届くわけもない。
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しばらく返事を待っていたシグナムだが、いつまでもそんな調子が続くのを見て、ため息をついた。
「おいリインフォース、お前から話があると言ったんだろう、もっとはっきり言ってくれ」
「……」
そう促されて、リインは余計顔を赤くし、一瞬硬直する。
そして小刻みに震えながら、ようやく決心したのか、すっと顔を上げた。
「……そ、その……だな……最近……か、体が熱いんだ」
「なんだ、やはり調子が悪いのか?」
「い、いや……違うんだ……そういう意味じゃなくて……か、体が……ほ、火照るんだ」
「火照る? 微熱があるという意味だろ?」
「違う、その……だから」
「ん?」
首を傾げるシグナムに、リインフォースは目尻に涙を溜めて、すぅっと息を吸い込み、そして――言った。
「だから……せ、性的な興奮で体が熱いという意味だ!」
と。
「…………え?」
ぽかんと、シグナムは呆けたように口を開けて硬直した。
そしてたっぷり数秒かけて、ようやくリインフォースの言った言葉の意味を把握する。
「せ、性的にって……つまりその……そういう意味か?」
「……」
恥ずかしい事を言わされて、若干涙目のリインは無言のままこくりと頷いた。
そして正しく意図を把握したシグナムもまた、顔に熱く血がめぐるのを感じた。
「ええと……何か理由は在るのか?」
「おそらく、プログラムのバグか何かだと思う。こんな事は……正直初めてだが」
そう、リインフォースは語った。
彼女の身を蝕むプログラムの異常はいわば不治の病のようなもの、それを完全に除去する事は不可能である。
色々と体の不調はあると聞いてたが、しかしまさかそのような形の症状が出るとはシグナムも想像していなかった。
「リインフォース、それで私にどうしろと言うんだ。私には身体プログラムを操作する技術はないぞ……」
「もちろんそれは分かっている、将……それに、この種のプログラムの異常はもう誰の手を借りても直らないと思う」
「ではなおの事、私に出来る事はないんじゃないか?」
「い、いや……それが、その……」
顔を俯け、今まで以上に顔を真っ赤に染めて恥らうリインフォース。
二の句を待つシグナム。
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そんな将の顔をちらちら見上げながら、リインはぎゅっとその豊かな体を屈めて、ぽつりと言った。
「しょ、将に……解消してほしい」
「え」
「だから、将に……その……性的に」
「ええッ!?」
驚きのあまりシグナムは飛び上がった。
いついかなる時、どのような死線を前にしても冷静沈着であった守護騎士の将が、もしかすると、その時生まれて初めて真に驚いたのかもしれない。
額からだらだらと汗を流しながら、シグナムは顔を真っ赤にしてあたふたとする。
「ちょ、ちょっとまて! どど、どうして私が、そんな、おお、お、お前を性的に満たせと!?」
普段の理知的な様相が嘘のようにパニックを起こして、若干おかしな日本語を喋るシグナム。
だがそんな将に、リインフォースは何事かを秘めた目でじっと見つめ返す。
「すまない将……でも、やっぱり守護騎士で一番信頼できるのは将だし」
「そう言ってくれるのはありがたいが……わ、私は女だぞ? そういうのは男に頼むのが筋ではないのか? ザフィーラとか」
と、シグナムは反論した。
しかしリインはうなじまで真っ赤になって、顔を伏せる。
「だ、男性にそんな事言う方が恥ずかしい……」
「ああ、そうか……」
確かに言われてみれば、異性にそういう事を頼むのは幾ら信頼関係のある守護騎士といえど抵抗感があるだろうか。
だからといって自分に振られるのは、それはそれで困るのだが。
シグナムはほとほと困り果てたといった風にため息をつき、リインを見つめた。
「しかし、だからといって私というのは……一体何をしろと言うんだ。せ、性的な欲求を解消と言われても」
そう言うと、リインフォースは「……ぁぅ」と弱弱しい声音をもらし、潤んだ瞳で助けを求めるように見上げてきた。
背も高く、凛とした美しさを持つ彼女の、なんとも可憐で、庇護欲を掻き立てる仕草、愛くるしさ。
思わずシグナムは胸の奥が締め付けられるような気になった。
そしてしばらく無言で考えた末、答えを見つけ出す。
「……わ、分かった……じゃあ、その……なんとかしてみよう」
□
「んッ」
かすかな息を零し、リインフォースはベッドの上に横たわった。
ふわりと広がる長い銀髪から、なんとも言えない甘い香りが漂う。
上に覆いかぶさり、シグナムはその芳香に思考が麻痺し始めたような錯覚さえ覚えた。
「ぬ、脱がすぞ……」
将の言葉に、リインはこくりと小さく頷く。
柄になく緊張しきった震える指が、セーターを上にめくり上げた。
伸縮性のリブ生地から解放されてぶるんとたわわな果実が揺れた。
服の内側で濃縮された汗と皮脂の混ざり合った匂いがなんともミルクめいていて、それがまた官能を誘う。
鼻腔をくすぐるフェロモンにくらくらしながら、シグナムはそっと顔を寄せた。
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唇が静かにウエストをなぞる。
「……んぅ」
ミルクのように白い肌を愛撫された瞬間、鼻にかかった吐息を漏らし、リインフォースは快感に打ち震えた。
下腹から上に舌先を向けて、たっぷりと肉の詰まった乳房を、ブラを外しながら舐め上げた。
肌を波打たせながら晒される真っ白な肌、ぷっくりと膨らんだ桃色の乳首。
軽くその先を舐め口に含んで甘噛みすると、反応は今まで以上に劇的だった。
「はぁ!!」
艶やかな声を張り上げて、ぶるりと震えるリインフォース。
計らずも、シグナムの心臓もいつの間にか興奮で早鐘のように鳴っていた。
リインの艶かしい痴態に息を呑みながら、シグナムは今度はスカートに手を掛ける。
同性のスカートを脱がせるなど初めてのことだったが、自分もいつも穿いているものなので、脱がすのに苦労はなかった。
ホックを外し、ファスナーを下ろして、するすると脱がせる。
露になったのは、ニーストッキングと黒い下着が作り出す、白い肌とのエロティックな光景だった。
むっちりと肉を乗せた扇情的なリインフォースの太股の内は、既にじっとりと濡れていた。
汗、だけではない。
言葉では語り尽くせない甘酸っぱい、フェロモンめいた蒸れた香りは、明らかに汗以外の淫らな水分を孕んでいた。
ただ嗅いでいるだけでも性欲を、それも同じ女であるシグナムの欲望を刺激してしまうような、極上の芳香。
将はまるで吸い込まれるように舌先を這わせた。
濡れた内腿をちろちろと舐めると、汗と蜜の混ざり合った汁気が舌の上に溶ける。
とても言葉にできる味ではなかった。
ただリインフォースの香りに圧倒されて、頭の芯がぴりぴりと痺れていく。
肉付きの良い太股を愛撫しながら、次に下着を脱がしにかかった。
ベッドのシーツに引っかかるのも無視して、半ば強引に力ずくで脱がすと、黒いショーツの生地が肌との間に糸を引いた。
うっすらと銀色の茂みを蓄えたリインの秘所との間に、何か粘着質な液体が橋を繋げていた。
びしょびしょのシーツを手に、思わずシグナムはその生々しい熱と湿り気に唾を飲んだ。
「濡れているな」
「……」
当然といえば当然の、分かりきった事を指摘されて、リインフォースは真っ赤な顔をそっと横に伏せて恥らった。
改めて彼女の体が本当に性的に火照っていると知り、思わず言ってしまった。
なんとはなしに、シグナムもまた気恥ずかしい気持ちになる。
疼く体を慰めてやろうと、こうして相手をしているわけだが、シグナムだってその手の経験が豊富なわけではない。
ましてや相手は異性ではなく同性ともなれば、緊張もなおの事だ。
だが女同士であるほど、分かる事もある。
そう――体のどこをどう触れれば感じるか。
「――開くぞ」
一言そう告げて、シグナムは目の前の二本のすらりとした脚を掴むや、力を入れて左右に開いた。
その瞬間、むわぁ、と熱気が将の頬を撫でた。
湯気が立つのではないかと思うほど熱を帯びた、リインフォースの濡れた入り口は、たっぷりと愛液を滴らせて熟れ切っていた。
まるで爛熟と実った桃を縦に割ったかのように、粘性の高い蜜を垂らした秘所はこれ以上ないくらい濡れていた。
普段ならば絶対他人に見せない場所をまじまじと見られ、リインフォースは羞恥心の極みを感じ、それが無意味と知りながらつい顔を手で隠す。
「しょ、将……あまり、みないでくれ……」
消え入りそうな切ない声が懇願する。
部屋の中はあまり痴態をはっきり見せ過ぎぬよう薄明かりに落されてはいるが、既に二人は薄い闇に慣れきっていた。
おまけに肉薄するほど互いの距離は近く、シグナムの目にはまざまざと管制人格の全てが曝け出されていた。
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もしシグナムが男だったなら、いきり立った肉竿を力のままにぶちこんだところである。
その代わりとばかりに、シグナムは細くしなやかな指先を向けた。
入り口を軽く一撫でして滴る蜜を馴染ませると、ゆっくり、粘膜を傷つけないように挿入していく。
「ぁあああ……」
か細くも甘い、リインフォースの声が切なげに零れた。
狭い穴の中、きゅう、と指を締める肉ヒダの感触が絡みつく。
指をかすかに動かすだけでも、リインの吐く吐息は甘く震えた。
もう少し奥へ、奥へと、シグナムがじっくり指先を沈めていくと、何か抵抗感がまとわり付いた。
膣そのものよりも狭い穴、ぴんと張った膜、そこに指を挿入する。
(これは……処女膜か)
当たり前の話だが、異性との性交渉を行う前の女性には膣内に膜が存在する。
しかしまさか、古代の魔法技術で作られたリインフォースにもそれがあるとは思わなかった。
彼女に在るという事は、自分にもあるのだろうか。
漫然とそんな詮無き事を考えてしまう。
膜の穴のふちをなぞるように指を動かしつつ、シグナムはそっと顔を上げて、リインフォースの反応も見てみた。
「んぅ……ふ、ぅ……はぁぁ……」
うっすらと目に涙を溜め、快感に漏れる甘い声を、指を軽く甘噛みして耐える。
もう一方の手でシーツを握り締め、たわわな乳房をたぷたぷを揺らす様は、例えようもなくエロティックだった。
背筋にぞくぞくと、痺れるような、電気みたいなものが走るのをシグナムは感じた。
心臓の鼓動が高鳴る。
快感に打ち震えるリインフォースの姿に、生まれて初めて感じるものが体の芯に生まれるようだった。
もっと、この姿を見たい。
白い肌を汗で濡らし、快感の一つ一つに純粋に反応する、その愛らしい姿を。
まるで熱病に浮かされたように、シグナムは思慮を忘れ、求めるままにリインフォースの肌に触れていた。
丁寧に膜を傷つけないよう指を深く挿入し、ストッキング越しに太股をちろりと舐める。
「……リイン、フォース」
ぽつりと名前を呼んだ。
意味などない、ただ呼びたかったから。
茫洋と、涙でとろんと潤んだ瞳で見下ろすリインもまた、そっと唇に相手の名前を乗せる。
「……しょぅ」
蕩けきった甘い声、それはただの響きだけで、官能を揺さぶるような音色だった。
耳朶に伝わる声に促されるまま、シグナムは軽く指を捻る。
「ひぅ!」
唐突な刺激にぶるりと体を戦慄かせるリインフォース。
だがそれだけでは終わらせない。
シグナムは指で膣口を弄りながら、薄い茂みに口を近づけた。
舌を伸ばし、求める先は割れ目の頂点で自己主張をしていた、ぷっくりと膨らんだ肉豆だった。
女の体の中で最も敏感な性感帯に数えられるクリトリスを、舌先で包皮の上から潰すように舐める。
二重の刺激を前に、いよいよリインフォースの快感は昂ぶっていく。
プログラムのバグで性的興奮を起こしやすくなった体は、平素の何倍にも快感を跳ね上げて脳髄に送り込むのだ。
「あぁぁあ! 将、だめ……はぅ! もう……だめ……ああぁ……い、イく!!」
クリトリスを舌先でぴんと弾いた瞬間、ついにそれは訪れた。
銀の髪を振り乱し、一際大きくリインフォースの豊かな肢体がベッドの上で跳ねた。
びくっ、びくっ、と大きく、何度も痙攣する白い肌。
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あまりに唐突に呆気なく絶頂したそのさまに、驚いてシグナムも体を硬直させてしまう。
「わッ、と!」
それがいけなかった。
つい、その拍子に将の指は力加減を間違えてしまった。
鋼鉄の塊である重い長剣を、羽毛より軽やかに振るうシグナムの指。
その指が何かを引っ掛けて、何かを破いた感触を覚えた。
気付いた時にはもう遅かった。
「いッ!!」
明らかに快楽とは違う色に染まったリインフォースの声音。
シグナムは背中に氷水を掛けられたような心地になった。
恐る恐る、引き抜いた指を見る。
粘液でべっとりと濡れた白い指先には、薄く紅色が付着していた。
「大丈夫かリインフォース!? わ、私は……そんな……すまない」
取り乱し、慌てて顔を上げるシグナム。
破瓜、処女膜の喪失。
女として生きる者なら、決して安く扱ってはいけないものを、意図せぬ行為で傷つけてしまった。
痛みを与えられたリインフォースより、むしろ与えたシグナムの方が半ば泣きそうな顔をする。
だが当のリインフォースは、痛みも破瓜もそれほど気にした風ではなかった。
「ああ……将、何を、そんな……少し痛かったが、凄く気持ちよかった……一度思い切り達して、体の火照りも引いてきたぞ」
うっすら涙を浮かべて、はぁはぁ、と切なく息を切らしながら、リインはそう嬉しそうに言う。
脱力した体をベッドのシーツに投げ出して、気だるげな顔はしかし満ち足りていた。
シグナムは呆然としながら、すまなそうに問いかける。
「い、良いのか……?」
「ああ」
濡れた髪を掻き上げて整えながら、それに、とリインフォースは続けた。
囁いた声音は、小さく、自然で、そして甘美だった。
「将になら上げても良い、むしろ嬉しい」
と。
リインフォースからすれば、特に何の気もなしの、ただ素直にシグナムへの好意を言っただけだったのかもしれない。
どこまでも無垢な愛情。
だがその微笑みは眩しく、あまりにまっすぐで、将の無防備だった心に深く突き立った。
「なぁ!? ちょ……お、おま……へ、変な事を言うな!」
「え? へ、変か……?」
「知らん!!」
シグナムの顔は真っ赤に染まり、リインフォースはそんな彼女をきょとんと見つめた。
「それより将、体もシーツも汚れてしまった。洗うのを手伝ってくれないか」
「……ああ、そうだな」
脱がされた衣服を体に引っ掛けながら、立ち上がろうとするリインフォース。
しかし極度に力の抜けてしまった脚はうまく力が入らず、そんな彼女をシグナムは横から支えた。
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体を再び寄せ合うことで、鼻腔に再び満ちるリインフォースの背徳的な香りと体温。
将の顔がより赤く染まる。
どくんどくんと胸の奥で踊る心臓の脈動、体の芯に生まれる熱。
自分の中に芽生えつつある気持ちに、シグナム自身が受け入れる事ができなかった。
(ま、まさか……この気持ちは……いや、いやいやいや! そんな筈は……そんな……お、女同士で、しかも……相手はリインフォースで、だぞ……)
肩を貸して、ぎゅっと触れ合うリインフォースの体。
先ほど魅せた痴態や、表情、声、そして無垢な愛を思い返し、一層シグナムの中で生まれた脈動は熱を帯びる。
だがそんな彼女の内心など露知らず、リインは無遠慮に体を押し付け、顔を寄せるのだった。
「将、顔がなんだか紅いぞ?」
「なんでもない!」
ぷいと顔を逸らし、シグナムは頭の中から邪念を追い払う事に専念した。
そう、別にやましい気持ちなどない。
リインフォースへの想いは、ただ単に家族へ向ける愛情に過ぎない。
自分に言い聞かせる。
(そうだ、そんな筈がない……)
何度も心の内でそう呟きながら、シグナムはリインフォースの体を抱きながら歩いた。
その時の彼女には、これから二人の関係が深まって行く事など、まだ想像さえしなかった。
終幕
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投下終了。
本当はクリスマスに投下するつもりだったんだけど風邪ひいて体調崩して無理になってしまったという。
なんとか今年中に終わってよかった・・・
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アインスがかわいすぎてモエシヌ(´ω`*)
GJ!!
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ども今年も冬の湾岸基地外騒ぎ開幕ですね
闇と時と本の旅人 15話を投下します
今回はすこしシリアスでえろはちょっとおやすみ・・・
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■ 15
リビングの方から突然大きな物音がして、八神はやては目を覚ましてベッドから跳ね起きた。
何回かまばたきして残っていた眠気を抜き、部屋の中を見回すと、いつもベッドのサイドテーブルに置いていたはずの闇の書がなくなっていることに気が付いた。
さらに階下から魔力の気配がおぼろげながら感じられ、はやては闇の書がまた勝手に散歩に出かけて、何かを拾ってきたのだと察した。
今年の6月4日、はやてが9歳の誕生日を迎えて以降、新しい家族の増えた八神家は遅ればせながら、にぎやかで楽しい家庭の情景を手に入れたかに見えていた。
2階にある自分の居室から、ホームエレベータで1階のリビングへ降りる。
外はまだ暗く、日は昇っていない。この季節、1日のうちで明るい時間は日に日に遅くなってきている。
魔力光を放っている物体が見える。
この光が魔法の力のあかしだということは、ヴォルケンリッターたちから教わった。そして、はやてが小さいころから家にあったこの古ぼけた本が、闇の書という、魔法の力を持ったアイテムであることも聞いた。
ヴォルケンリッターたちは、闇の書の中から出てきた。闇の書が持つ、人工人格プログラムだ。
そして闇の書も、人間の姿こそしていないが、動力を持ち、自分で動き回れる。
闇の書の魔力光に照らされて、二人の人影が見えた。大人が一人と子供──はやてよりは年上のようだが──が一人。よくよく背格好を見ると、どうやら彼らは、日本人ではなく、地球の人間でもないようだ。
ヴォルケンリッターたちと同じく、魔法の世界の住人たち。
どういうつもりか、闇の書が連れてきた。
「あ……っ」
目が合い、声を出しかけて、クロノは息をのんで言葉を止めてから思考を日本語に切り替えた。なのはやフェイトはともかく、今目の前にいる少女──闇の書の主には、ミッドチルダ語は通じないはずである。
歳は幼い。クロノは、それでも警戒を解いていなかった。何しろ相手は闇の書の主である。たとえ見かけがどんなに幼くても、いや幼いからこそ、強大な魔力をふるうおそれがある。
リビングのなめらかな床の上を、車椅子をゆっくりと前へ進めつつ、はやてはテーブルの横を抜けるように移動した。
とにかく、声をかけられる距離まで近づかなければならない。しかし、はやてにとってもクロノたちは未知の相手である。今までは特に気に留めていなかったが、ヴォルケンリッターたちが初めて現れた時、闇の書の力を狙う者もいると聞いていたのを思い出した。
もしや、闇の書を狙ってやってきた輩なのか。その場合、攻撃魔法を使ってくるのか。
闇の書は空中で向きを変え、はやての方に表紙を向けた。裏側には特徴的な金十字の紋章はなく、小さなベルカ式魔法陣の意匠がカバーの四隅にあしらわれている。
「あの──っ、だ、大丈夫ですか?」
はやては車椅子から身を乗り出すようにして声をかけた。声に反応し、男の少年の方──クロノがかすかに身構えるのを見て取る。
大人の女の方は、この夜の闇にもきらめく、見目麗しい長い銀髪をしている。シグナムに似た怜悧で凛々しい、そしてシグナムよりもずっと逞しく力強さを感じさせる、背の高い女だ。
二人の纏っている、騎士甲冑──というのか、服は、少なくとも現代日本のそれとは明らかに異なる。
魔法を用いる兵士、魔導師が装備する戦闘服だ。太い糸で編まれた厚手の布、もしくはよくなめした革を縫い合わせ、要所要所には金属プレートを使い防御力を高める。もちろんこれらは魔法によって形作られる。
車椅子を窓辺まで進め、ガラス戸を引き開ける。闇の書ははやてに寄り添うように浮遊しつつ室内に入ってきて、少年と女性はその行方を油断なく見つめている。
やはり、この本は恐ろしいものなんだ。ヴォルケンリッターたちが目覚めた翌日の朝、話を聞いたときは、正直なところあまりぴんときていなかった。魔法なんておとぎ話だと思っていて、そこまでおおごとになるとは思っていなかった。
しかし、今の闇の書は、はやてにもはっきり感じ取れるほどの強い魔力を放っている。それが音か、光か、熱や電波によるものかはわからないが、とにかく何かを放射し自分がそれを浴びているという感覚がある。
闇の書はやがてリビングのテーブルの上に着地し、魔力光を弱めて待機状態へと移行した。
それとともに、はやての感じていた強い魔力もおさまった。少年と女性は、それを認めて少し警戒を解いたように見えた。
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ごく短時間の、コンマ数秒の暗号化された念話でアインスはクロノに、魔法の使用を控えろと伝えた。
念話は、無線通信の宿命でもあるが傍受の危険が常につきまとう。闇の書の主の前で、不用意な行動はできないということだ。暗号化なしでは、はやてに聞かれてしまうおそれがある。
クロノは意を決し、リビングから庭へ出るテラスのコンクリート床に足を踏み出した。
この少女の自宅に、すなわち闇の書の主の城に、足を踏み入れる。一見幼い、無垢な少女、足の不自由な少女。それさえもが、非常な威圧感と恐怖感をもたらす。
そしてそれは、一歩、一歩を踏み出すにつれ、抗いがたい魅力となってクロノの意識をとらえる。
車椅子をわずかに斜めに後退させ、はやてはクロノとアインスを迎え入れた。
どうぞ、と小さく言い、二人を床へ上がらせる。クロノもアインスも、バリアジャケットを装備した状態で履いている靴は底面に薄いゴムソールを張った金属ブーツなので、フローリングの床を踏むのには気を使う。
はやても、二人が日本人でないことは見るからにわかっていたので、あえて言わず、とにかく二人を室内へ入れることを優先した。
「すみません、失礼します」
軽く頭を下げ、クロノはアインスの前に立って進み出た。
はやてに近づく前に、バリアジャケットの装着を解除する。ひとまず、ここでの戦闘は起きないと思われた。はやてが命令しなければ、闇の書はこれ以上動き出さないはずである。
心臓が激しく脈打ち、呼吸が速まりつつある。
アインスが右手をそっとクロノの背にあて、さする。クロノは明らかに緊張状態にあり、意識が混乱しかけている。はやてを前にして、思考がゆらいでいる。
自分の中の衝動と、理性が衝突して、激しい感情が生まれている。
はやてに近づけず、目の前にして足がすくんでしまっているクロノを、アインスはそっと抱きかかえた。
「あのっ、なんやこの本が、ご迷惑をおかけして……」
「大丈夫、です……われわれは、理解しています……」
それだけをなんとか言葉に出し、クロノはその場にへたり込んだ。
はやてを直視できない。この少女を前にして、自分はまるで無力だ。どうしてこうなった?いったい何が自分のこの状態をもたらしている?
わずかに面を上げ、心配そうに見上げるはやての表情が見えた。
視界がぼやけた。涙が、こぼれていた。
「あ……っ、ど、どうしたんですか!?だいじょうぶですか!?」
くずおれたクロノに、はやてがあわてて車椅子を寄せる。
そこでようやく、守護騎士たちが駆けつけてきた。
はやてはまだ知る由もなかったことだが、蒐集活動のためにシグナムとザフィーラは外出しており、待機していたシャマルからの連絡を受けて戻ってくるのに時間がかかっていた。
「主、なにごとですか」
「わからんっ、闇の書が勝手に動いて、人をつれてきたみたいで……、シグナム、毛布もってきて!この人らひどくつかれとる、休ませなあかん」
「──はっ……──はい。承知しました」
はやてに命じられ、シグナムと呼ばれた騎士──長い髪をポニーテールにして束ねた長身の女は、クロノたちを一瞥していったん2階へ引っ込んでいった。
アインスには分かる。彼女は守護騎士ヴォルケンリッターの頭領、烈火の将だ。この世界では、シグナムという名を貰い受けたようだ。
おそらくほかの3人も、同様にそれぞれの名を賜っているだろう。
自分は、どうだ。
もはや今の自分は、闇の書とは名乗れない。ただの、ヒトにもデバイスにもなりきれない半端者だ。
切ない。
自己の認識が狂うことは、精神に強大な負荷をもたらす。
それに耐えられる者などそう多くはない。クライドも、自分でさえも。年若いクロノならなおさらだろう。
クロノはひたすら問う。今の自分は何者なのか。管理局執務官、クロノ・ハラオウン。その名は本当に自分のものなのか。
この少女を前にして、自己の認識が揺さぶられている。それは心ではない別のどこかから生まれてくる衝動だ。
はやてはそっと腕を立てて身体を支え、車椅子から降りる。
床に座り、動かせる腰から上だけでクロノにすり寄り、屈みこんで、下から見上げた。
アインスはクロノの肩を抱き、さすっている。
-
「お騒がせして申し訳ありません──われわれはすぐに、元の世界へ帰る手立てを探します」
テーブルの上で横になっている闇の書を横目に、アインスは言葉に出した。
このまますんなり闇の書がアインスたちを見逃すはずはないだろうことはわかる。
ここへ連れてきた以上、はやてに、何かしらのかかわりを持たせるということだ。
「今、寝るとこを準備します、きっと疲れてるでしょうから、ゆっくりやすんでください」
クロノに語りかけるように、はやてはそっとてのひらを差し伸べた。
なぜかは分からないが、この少年はとても混乱しているように見える。自分よりも少し年上に見えるが、だとしてもまだ10代、それでこのような目にあえば、平静を保ってなどいられないと思う。
「はやてっ!はやて、大丈夫か!?」
シグナムと入れ代わりに、赤毛を三つ編みにした少女がリビングに駆け込んできた。
家人以外の人間がいることを見て取り、走ってきた勢いのまま、はやてとクロノの間に割り込もうとする。
少女には、はやてが車椅子を降りているのが、無理やり引きずりおろされたように見えていた。
座り込んでいたクロノの胸を突き上げるようにしてはやての前に立ち、両手を広げてはやてをかばうしぐさをする。
虚を突かれたクロノは思わずのけぞり、アインスの膝に背中をもたれた。てのひらを肩に当てて受け止め、アインスはクロノを抱きすくめる。
「おまえっ、はやてになにをした!どっから来た!?」
大声を張り上げ、クロノに詰め寄るヴィータ。
これにはさすがのはやても驚く。
確かに見知らぬ人間ではあるが、はやてはこの少年と女性が闇の書に連れられてきたということがわかっており、少なくとも彼らに不法侵入の意思がないことは理解していた。
それに少年は見るからに疲弊して異常な状態であり、安静にさせる必要があると思っていた。
はやては一瞬のけぞるが、すぐに体勢を戻し、胸でヴィータの背中を押しながら、気勢を張っているヴィータの頭をぺし、とはたいた。
「こらヴィータ、なにしとるん!おきゃくさんにしつれいやろ!」
「ふえぇ!?」
血気盛んでも年若い少女、いや、幼女といった年齢か。ヴィータは気の抜けた声を出して、両手で頭のてっぺんを押さえた。
はやてにとって、ヴィータやシグナムを含めたこのベルカ人たちは──その自覚があるかどうかはともかく──従者である。闇の守護騎士たちは、闇の書の主となった人間を守り、彼に従い尽くす。
闇の書が起動した際に、書の役目、守護騎士の役目とその機能について説明するようプログラムされており、そのタスクは少なくとも実行され完了フラグが立てられたことを、アインスの持っているログには記録されている。
その後、はやてがどのように守護騎士を扱っていたかまでは見えなかったが、少なくとも、普通の家族のように接していたようだ。
「き、客だって!?こいつら──」
「ほーら、そんな乱暴な言葉つかわんの!闇の書が、また出かけとったみたいで、それで連れてこられたみたいなんや。
男の子の方がびっくりして大変みたいやから、少し上がって休んでいってもらうんや。今シグナムが用意しとるよ」
ヴィータの言葉に、アインスはふとクロノの服装を見やった。
ここ数日本局での勤務だったので、おそらく今日もそうだっただろう、管理局の制服を着ている。それ自体はミッドチルダで一般的なビジネススーツのように仕立てられているが、管理局員であることを示すワッペンが、胸と肩に縫い付けられている。
これを見れば、自分やクロノが管理局の人間であることは、見るものが見ればわかるだろう。
アインスは意を決し、はやてに言葉をかけた。
意識の中で、無垢の思考がベルカ語、ミッドチルダ語、日本語の三種類に同時に変換される。
「はやてさん──われわれは、ミッドチルダという次元世界から来ました。取り急ぎ、ミッドチルダへの連絡を取る手段をわれわれは持っています。
われわれがミッドチルダへ帰るために、はやてさんのお手を煩わせることはありません」
「ほんまに、もうしわけないです……こんな、闇の書が、勝手に出歩いても人連れてくるなんて今までなかったんですけど」
闇の書は八神家のダイニングのテーブルの上で、まるで昼寝でもするかのように表紙を上にして横たわっている。
クロノはどうにか呼吸が落ち着いてきて、おそるおそる、はやてを見上げた。
-
闇の書の主。
そういえば、前回の闇の書事件での主がどのような人物だったのか──ということは、クライドは出撃前には語っていなかった。
現地次元世界で主を確保した武装隊からの通報を受け、グレアム率いる艦隊が出撃したが、そのときには、当代の主の人相やプロファイルなどは、クライドには知らされていなかった。
知ることがあったとしたら、彼を確保し、闇の書を艦に積み込んだ後だっただろう。
聴取をして、しかし、その主もまた、警護の局員の目を盗んで自害し、結果、闇の書が暴走した──アインスの話によれば──という惨事を招いている。
過去の事件の経緯を検証していくと、闇の書の行動原理とは主に選ばれた人間を守る──ただし社会的な善悪を問わず──という点で一貫していることが分かった。
善悪を問わず。
守護騎士ヴォルケンリッター、そして闇の書は、たとえ姿かたちが人間と同じであろうとも、その価値観を人間とは異にしている。
いや、人間同士でさえそうだ。この現代でも、紛争当事者である次元世界は、互いにそれぞれの価値観がありその相違が、争いをもたらす主な理由の一つである。
守護騎士は、闇の書が作り出すプログラム生命体であり、必ずしも魔導師としての能力を持っているとは限らない闇の書の主を守り補佐する戦闘端末である。
これに対して、普通の人間と同じように刑法を適用できるか──部屋の用意ができたと告げられ、シグナムとザフィーラに付き添われて2階の空き部屋へ上がるまで、朦朧とした意識でクロノは考えていた。
いかなることがあろうとも自分は管理局執務官である。闇の書がクラナガンに現れ、戦闘が起きた。
その結果、第97管理外世界へ飛ばされてきた。
危急の事態であり、現場にいる執務官として事件の捜査を行う必要がある。
そして今、この家にいる者たちはまさにその事件の当事者である。
闇の書の主──八神はやての言葉が真実ならば、ヴォルケンリッターたちとは別に、闇の書自身もまた、自らの意思で行動することができるということになる。
必ずしも主の命令を──はやての話しぶりを信じるならば──忠実に聞くとは限らず、自己の判断で行動することがある。
「すみません……もう、大丈夫です」
ベッドにどうにか腰を下ろし、深呼吸をして心臓の鼓動の具合がおさまってきたことを確かめながら、クロノは言葉に出した。
彼らは、何者だ。闇の書の手駒、といえばそれまでだ。
しかし、それ以上ではない。彼らの言動、立ち居振る舞い、そのわずかなしぐさのひとつひとつに、抗いがたい感傷がある。
なぜ今の自分にそのような感情が生まれているのか──クロノは、その心が大きく埋められつつあった。
「われわれはリビングにいます。主はやては、隣の部屋に。何かあればわれわれを呼んでください」
「──ありがとうございます」
シグナムが用意したベッドにクロノを運んできて、毛布をかける。
退出しようとするザフィーラの後ろに、ヴィータがついてきて、恨めしそうにクロノをにらんでいた。
おそらくヴィータは、クロノの服装を見て管理局員だと気付いているだろう。闇の書は、これまでに何度も管理局と交戦している。ヴォルケンリッターとも何度も戦闘を行っている。
その当時の記憶を持っていると考えられる。
そして、前回の事件の時にエスティアに乗り組んでいたアインスも、彼らの姿を見たことがあるはずだ──と、クロノは考えていた。
管理局員が闇の書に接触する目的──それは闇の書の破壊に他ならない。ヴィータはクロノとはやての様子を見て、管理局がはやてを逮捕しに来たのだと思い込んだ。
はやては管理局の存在を知らないので、単に闇の書の活動に巻き込まれた異国の人間、としか認識していないだろう。
今更のように、自分がこれからどうすべきかということが、頭からすっぽり抜け落ちてしまっている。
クロノはベッドに寝かされて毛布をかけられ、アインスはとりあえず座椅子に腰かけている。
クロノを寝かせるのにはザフィーラが手伝ってくれた。彼の手は、少なくとも普通の人間と同じように感じられた。プログラム生命体だからといって、体温がないとか、動きがぎこちないとかいうような不自然さは感じられなかった。
魔法技術のない世界の人間からすれば、人工物とは思えず、まったく同じ人間のように見えるだろう。
-
部屋の照明は落として、窓はカーテンも引いているので、再び、暗闇に戻っている。
八神家があるあたりは広い庭付きの一戸建てが多い閑静な高級住宅街なので、この時間帯では道路端の街灯以外には照明はない。
明かりをつけるかどうかアインスは尋ねたが、クロノは暗いままの方がいい、と答えた。
目が慣れてくると、カーテン越しに差し込む月明かりで部屋の中が青くぼんやりと浮かび上がってくる。
本当に平和な、平穏な市民の家。
同じ家の中に、同じ屋根の下に、世界を震え上がらせるロストロギアがいる。そのことがにわかに信じられないようだ。
今、自分が寝ているベッドは、闇の書の主が用意したものだ。
しかし、自分は処刑台に乗せられているわけでも、霊安室に入れられているわけでもない。
生きている。クロノは、ひたいに腕を載せて自分の存在を確かめようとする。
アインスが、そっと手のひらをかざしてクロノの頬を撫でる。それは深い慈しみを持っていた。
「──僕は、何をすればいいんでしょうか」
口をついて出てしまった。あるいはクロノの中で、アインスが管理局員としての同僚から、より近しい関係になったという認識の変化かもしれない。
執務官として、部下にあるいは同輩に、迷いは絶対に見せてはならないと誓っていた。
アインスになら、頼れる。頼ってもいい。すがっても、いい。
自分の出した言葉に、クロノは喉がつまるような感覚を味わう。
「闇の書がすぐそばにあるのに、いざ面と向かってみると何をしていいのか……今更のように、僕でさえ……いや、僕だからこそ、闇の書を偏った見方でとらえていたと気付いたんです。
絶対の悪だと思い込んでいた……管理局員として、中立的な立場を守るようにしていたのに、どこかで、思い込みがあった」
「どういうものだと思っていた?」
アインスは静かに問う。クロノは、静かに言葉を積み重ねる。
「転移させられて、ここの庭に落ちた時、──正直、戦闘を覚悟していました。市街地で、二次被害を避けるためにどう戦えばいいかを考えていました──
闇の書がまだ蒐集を始めていないのは、闇の書の主が機会をうかがっているからだと思い込んでいました──本当に何も知らない、ということに考えが及ばなかった──
巧妙な作戦を立てられる人間、あるいは大っぴらに動きにくい社会的立場のある人間、という可能性が高いと考えていて──、まさか小さな女の子だなんて」
「八神はやてというそうだ──彼女の年齢では、ロストロギアの概念を理解しきることは難しいだろう」
「しかも、闇の書が必ずしも彼女に忠実に従うわけではない──命令を無視して動き出す可能性もある──それが一番ショックです」
「クロノ」
「僕でさえ……っ!理解しようとしていた、理解できていたつもりだったんです……!」
歯を食いしばり、腕をかぶせて目を伏せる。
この悔し顔を、アインスに見られたくない。
「感情に負けて……僕は、まちがっていた……!」
「落ち着け、クロノ」
頬を撫でていた手を、わずかに握りを強めてあごを押さえる。ひきつけを起こさないよう、そっと落ち着かせるように顔をさする。
クロノの言葉が止まったことを確かめ、アインスは座椅子を降り、ベッド横の床にひざまずいた。
ベッドに寝かされているクロノに、顔の高さを合わせ、そっと語りかける。
「そう自分を責めるな……。自分の感情は、否定するな。お前は間違ってなどいない──」
「アインスさん──」
部屋が暗いので、表情は見えないだろう。
わずかに腕を上げ、アインスの方を見る。
ベッドに肘をつき、クロノのそばに、子供を寝かしつける母親のように。クラナガンの自宅で、幼いころ、リンディがこうやって枕元でみていてくれたことがあるような気がする。
赤ん坊のころのことだ、と思って、忘れそうになっていたが、それは大切な思い出だ。
健全な成長には、母親に愛されることが必要だ。
クロノはそれを、自分から遠慮してしまっていた節があった。はやく一人前の管理局員になって、母のために働きたい、母に心配はかけられない、そういう思いがあった。
それはかえってリンディを寂しがらせることになってしまっていた。
後悔は、してはいけないということはないが、しっ放しでもいけない。
大切なことは今、そして未来。
これから先どうしていくかということだ。
-
アインスと共に。
具体的なビジョンはまだおぼろげだが、クロノは確かに意識し始めていた。
このまま管理局でキャリアを積んでいくにしても、どこかのタイミングで民間に転職するにしても、いずれにしてもこの自分の未来を、アインスと共に歩んでいきたい。
彼女はそれを求めているし、自分もその希望にこたえられる、と思う。
「われわれがやらなければならないことは、闇の書の実態をつかむことだ。闇の書とはいかなるもので、どのように主に扱われ、どのような仕組みで動作し、どのような魔法術式を用いて行動しているか──
それらを知ることはグレアム提督の計画する封印作戦に必要で、その目的に合致したものだ。あの少女を監視すれば、闇の書の活動の様子を観察できる」
「このまま──この第97管理外世界での捜査を?」
「成り行きだが、それは好都合でもある」
「あの子を監視──八神はやて、彼女が闇の書の主──彼女は、フェイトやなのはともそんなに歳が変わらないくらいに見えましたが──」
「なのは、とは?」
「PT事件で、協力してくれたこの世界出身の魔導師です。偶然かもしれませんが彼女もこの町に住んでいて、おそらくこの近くに──いるはず、です」
「そうか……」
遅ればせながら、クロノも危惧していたことに気付いた。身体を起こそうとして、力が入らずに頭を枕に落とし、アインスに宥められる。
もし闇の書が自分を狙っていて、そして闇の書自身に連続した記録が残されているならば、闇の書はクロノが管理局員だと気付いているはずである。
少なくとも外見は通常の魔導書型で、ミッドチルダで一般的に普及している大容量ストレージデバイスと大きく変わらない。
あの闇の書が、今の主──八神はやてに何らかの情報を伝達する手段を持っているかどうかは分からない。
しかし、現在この八神家の、壁一枚を隔てた隣の部屋で眠っているはず闇の書が、クロノたち管理局の正体と目的を知っていることは確実である。
いわく、次元世界の治安維持を任務とする強力な魔法を持つ組織であり、闇の書は広域災害に指定され対策が取られる対象である。
闇の書は現代ではすでに、管理局の存在を認知し自己の行動指針にとりいれているとみられていた。
すなわち、魔法を蒐集するにも管理局による取り締まりをなるべく回避するように作戦を立てるということである。
だがあの少女、八神はやてがそのような作戦を理解するとは考えにくい。
かといって、いきなり闇の書のことを切り出すわけにもいかない。守護騎士たちは──特にヴィータの例を見るに──最初から管理局に不信感を持っているだろう。
こちらもあくまでも気取られないようにしなければならない。
「これまでの管理局の見解としては──、闇の書はあくまでも魔導書型デバイスであり、闇の書による被害の責任はデバイスの使用者である闇の書の主にある、というものでした。
しかし、今回、闇の書が独自に動いていることがわかって──主でさえもそれを制御しきれない事態が起こりうるということが分かった──
現在の、少なくともミッドチルダの法律では、あの少女に刑事責任を問うことはできません」
クロノはだいぶ落ち着いて、はやてと闇の書に対する現時点での分析を述べる。アインスも、黙ってそれを聞いている。
「アインスさん──前回の事件では、このような闇の書の行動は観測されていたんですか?エスティアに積まれる前のことは、報告などは」
「……少なくとも私が知る限りでは無い。前回の事件で逮捕された主は、地元ではそれなりの実力者だったが素行は悪く、積極的に闇の書の完成を望んでいた。
周辺住民からも、常に書を持ち歩いていて、書に命じてさまざまな魔法を撃っていたという証言が得られている」
「もっと前の事件の記録も当たってみないといけませんね……11年前のだけではなく、それ以前の出現の記録を」
「あの少女以外にも、厄介ごとを好まない主がいたとしてもおかしくない」
「ええ」
頃合いを見て、本局へ現在の状況を報告する。
しかしそのためにはデバイスを起動し、次元間念話通信術式を発動する必要があり、これはかなり強力な魔法なので相応の魔力反応が出る。
少なくともこの家の屋内で使用すれば、守護騎士たちには間違いなく探知されてしまう。
管理局へ連絡を取っていたことが知られれば、言い訳はできない。その時点で敵とみなされ攻撃を受けるだろう。
現状、あくまでもイレギュラーな次元漂流者として八神家に身を寄せた民間人、という体裁を取るほかない。
-
「グレアム提督は──父さんの、クライド提督の死に、責任を感じていたと思います。僕が修行をしていた頃も、そうでした。僕のために──という感情が、あると思います」
「お前は、どうだ。リンディ提督は」
妻と、息子。アインスはどれだけ親しかったとしても他人で、部下の一人だった。グレアムにしても、クライドは部下の一人で、クライドにとってグレアムは上司で、それは他人だ。
家族ならどうか、という。
どう思っているか、と聞かれて、クロノはふと、自分の気持ちにぽっかりと穴が開いているような感覚を味わった。
闇の書を追うことは管理局の任務だ。それは治安維持という職務として全うしなければならないことであるが、それゆえに自分の感情が抜け落ちてしまっていた。
確かに、クライドの命は闇の書によって奪われたのかもしれない。
しかし、それに対して自分が何を思っているか、ということが、とてもあやふやでおぼろげになってしまっていた。
仇、なのか。果たすべき復讐なのか。
感情が、薄れている。
闇の書を封印すれば平穏が訪れる。それだけなのか。他に、心配すべきことは本当にないのか。自分は、クロノ・ハラオウンという人間はそれでいいのか?
自分はグレアムではないし、クライドでもない。父がどういう思いでエスティアと運命を共にしたのか、グレアムがどういう思いでアルカンシェルの引き金を引いたのか、クロノには分からない。
願うことはなんなのか。数十秒の沈黙の後、クロノは、静かに言葉を出した。
「僕は……真実を、知りたい、です……。父さんの、本当の、気持ちを……」
ゆっくりと、ひとことずつ、平易な文をしゃべった。もしはやてがそばで聞いていれば、単語くらいはヒアリングできたかもしれない、という程度の。
「正直言って、……僕は何もわかっていなかったんです。ただ悲しい出来事があって、母さんが悲しんでいて、僕が何をすれば母さんは喜んでくれるのかと思っていたんです。
管理局員という仕事が世間でどれくらいに位置するものなのかもはっきりわかっていなくて、ただ、そうすることが当たり前のように執務官を目指していて……
今こうして振り返ると、僕は、父さんと同じところに行きたかったんだと思うんです。執務官になって、そして海(次元航行艦隊)に行って自分の艦を持てば、父さんのことがわかるかもしれない。
もしタイムマシンでもあれば、父さんの生きていた頃に行って、話を聞くことができたのかもしれませんが、それは僕の本当にやりたいことじゃなくて……、ただ、言葉が聞きたかった。
いくつか覚えている断片的な思い出が、父さんが本当に願っていたことは、実は母さんやレティ提督や他の人たちが考えていることと違うんじゃないかって、執務官になればそれがわかるんじゃないかって思っていました……
確か3歳くらいだったはずです、あのころの僕はそう思っていた、と、今ならそうだったんだという気がします。僕は、父さんが本当に願っていたことを知りたいんです。
闇の書を自分の目で見て、その真実を知りたい……そのために、執務官になった」
アインスはそっと、クロノの頬を撫でる。
「クライド提督は……、先代の主に対する聴取で、闇の書の実態がこれまで管理局に認知されているものとは異なる可能性を見出していた。
エスティアから乗組員を脱出させたとき、われわれにそれを託し、管理局首脳部に伝えるよう、最後の命令を下された」
「異なる可能性……ですか?」
「闇の書は転生を行い復活する。書を破壊した後の転生先を、事前に探知できた例はこれまでに無い。すなわち、主となる人間がみずからの意思で闇の書を呼び寄せているわけではないということだ」
「ということは……どんな破壊活動を行った主も、闇の書が現れて、その力を知ってから、その後に行動を起こしている……?」
さすがに疑問が生じる。世の中には様々な人間がいる。もし闇の書が転生先を、魔力資質の有無のみで選んでいるとするなら、転生先として闇の書の主を選ぶ際に、その人格までは考慮していないということになる。
八神はやてのように、戦いとは無縁で、蒐集といわれてもそんな、という反応を返す人間が主に選ばれる可能性だって決して低くはないはずだ。
普段の生活を続けていくことが大事で、いきなり世界をわがものにできる力がありますと言われてもぴんとこないし興味もない、という人間の方がむしろ多いだろう。
-
それでも、次元世界のこよみが新暦に替わってからの60年余りの間で、闇の書は少なくとも5回の活動とその破壊を観測されている。
少なくとも、とは、管理局の目を逃れて活動し、辺境の管理外世界などで現地魔導師に人知れず破壊されたケースもありうるからだ。
「問題は、これまで管理局が確認できたすべての事件では、捜査官が主に接触した時点ですでに自発的な蒐集行為を行っていたということだ」
「故意に蒐集を止めた場合に何らかのペナルティが存在する可能性──を以前、話しましたよね」
なぜ、闇の書の主となった人間は蒐集をしなければならないのか。いわゆる闇の書事件と呼ばれる管理局と闇の書との一連の戦いは、蒐集行為に端を発する傷害致死事件や脅迫事件がその構成要素となっている。
蒐集を行えば、当然抵抗される。争えば、戦闘に発展する。戦闘であれば当然、現地世界の法律に抵触し刑罰の対象となる。刑を受ければ、社会的に不利な立場になり、日々を暮らしてゆくことが困難になる。
そうまでしてなぜ、リンカーコア蒐集を行わなければならないのか。
あの八神はやてという幼い少女も、いずれ自らそういった命令を守護騎士たちに下さなければならなくなる状況に追い込まれるというのだろうか。
「闇の書の動きを監視する必要がある」
「この家に身を寄せつつ……ですか」
念話を使わず、小声で話し合う。念話では、傍受される危険がある。また魔導師であるとなれば警戒されるおそれがある。
「現状それが最も妥当だ……。クロノ、お前の年齢なら、この世界で行動しても警戒されにくいだろう」
高町なのはと同年代であれば、9歳だ。ユーノやフェイトとも同い年ということになる。年齢が近ければ、それだけ親近感を抱きやすいだろう。
クロノとしては、実年齢より年下に見られるのは複雑な気分ではあるが、仕方がない。
ようやく、顔を覆っていた腕をおろして、枕の上で、アインスに顔を向けた。
暗がりに目が慣れて、カーテン越しに差し込むわずかな月明かりに、アインスの銀髪がほのかに見える。
ベッドのそばにひざまずいて、見守ってくれている。
安心感と、愛おしさが湧き上がる。
目頭が熱くなる感覚が生まれて、それがアインスにも分かったのだろう、表情を切なげに緩め、クロノに顔を近づける。
「アインスさん……」
「大丈夫だ、私がついている。これまでに調べた闇の書の情報も持っている、私がいれば大丈夫だ」
「すみません……僕が頑張らなければいけないのに、アインスさんに頼るばかりで」
起き上がろうとするが力が入らず、再びベッドに沈む。
アインスはベッドの敷き布団に手のひらをついて上半身を乗り出し、片膝立ちの姿勢になってクロノに覆いかぶさるようにした。
クロノを抱き寄せ、胸にかかえこむようにして抱きすくめる。
ゆっくりと、優しく、髪を手指ですくようにして撫でる。
局員制服のジャケットの内側から、アインスの匂いをたっぷりと含んだ空気が、抱きしめられた腕によって吹き出され、クロノを包む。
やわらかなアインスの乳房が、クロノの口元を艶めかしく挟みこむ。
感情がわきおこり、それゆえに肉体の反応が悔しい。こんな状況で、勃起してしまっている自分がはがゆい。
今は、冷静に状況に対処しなければならないのに。
「離してください……」
「クロノ……!私は、お前が好きなんだ……お前を愛したいんだ。だから、お前が苦しんでいる姿を見るのはつらい、だからお前を慰めてやりたいんだ……
お前のことは私が守る、だから私に心をゆだねて安心してくれ、あの少女もかならずわかってくれる、私を……」
絞り出すように言葉をかける。クロノに、何と言葉をかければいいか迷ってしまう。
自分は闇の書の管制人格である、などと名乗れるわけがない。ましてや闇の書の主と守護騎士が周囲にいる中では不可能だ。
烈火の将はアインスを見て何か引っかかるものを感じているようだが、しかし疑っている。守護騎士ならば闇の書の意思の姿を知っている。その記憶と、実際に目にしたアインスの姿を見て、それが同一かどうかを疑っている。
そのような状態で名乗ってしまうわけにはいかない。さらに状況が混乱してしまう。
-
今のアインスにできることは、ひたすらクロノに語りかけ、クロノを助けることだ。そのためには、闇の書と戦わなくてはならないかもしれない。
そうなったとき、八神はやてをもがアインスを恐れてくるかもしれない。
闇の書の主に不信を抱かれることは、アインスにとっては耐え難い苦痛と恐怖だ。
自分の存在意義さえもがおびやかされてしまう。
クロノと、アインスと、はやてと、守護騎士たちと。
自分たちが生きていくためにどうすればいいのかとアインスは願う。
はやてが、クロノを受け入れてくれるならば。
少なくとも、安全な寝床を用意してくれた。
ミッドチルダに戻れるようになるまで、という条件はあるが、身寄りを求めることができる。
闇の書の主たるはやてを、クロノが信頼してくれるならば、闇の書の真実を、解き明かすことができるかもしれない。
クロノに、はやてを愛してほしい。
だから、クロノを説得し、どうか、心を交わしたい。
アインスは今更のように、クロノを遠い存在に感じていた。
何度も身体を重ね、交わったというのに、ここにきて急激に心を遠く感じた。所詮肉体だけの関係だったのか、などとは思いたくない。
心から、彼を愛しているはずだ。
だからはやてに伝えたい、クロノを恐れる必要はないと。
そしてクロノも、はやてを恐れる必要はない、闇の書を恐れる必要はない。
アインスの頬をこぼれ落ちた涙が、クロノの瞼に落ちた。
アインスの涙が、クロノの睫をくぐり、クロノの涙と混じって瞳を濡らす。
「泣いてるん……ですか……?アインスさん……」
意外にも、涙を流すことが多い、とクロノは思っていた。
戦いに関しては技術もすぐれ、冷徹な戦術をとるが、しかし、クロノと二人きりでは感情的になることもある。
自分よりもずっと大人であろう彼女が、まるで子供のように、無垢なふれあいを求めてくる。
「すまない……でも、今の私には……お前にしてやれることが、思いつかない……」
「大丈夫です……。僕は、大丈夫です。アインスさんのこと、大切に思ってます……。だから……、心配しなくて大丈夫です。必ずこの事件を解決します。
そして、平和な世界を……。この世界の人々、ミッドチルダの人々を、みんな、守っていきましょう……。僕と、一緒に」
「クロノと……一緒に……」
「……ええ。アインスさんは、僕の大切な人です」
本心、だろう。確かにPT事件の裁判、そして聖王教会でのミッションで、協力してきた。
それは管理局員としての職務ではあったが、それ以上の信頼を結んだ。
「だから、アインスさんには、笑顔でいてほしいです。アインスさんが笑顔だと、僕もうれしいです」
暗くても、体温の熱でわかる。すぐそばに、アインスの素肌がある。
ブラウスの胸元からのぞく肌に、クロノはそっと口づけた。アインスに抱かれたまま、顔を動かさずに唇を触れた。
かすかにアインスがふるえたのがわかる。ぎゅっと、クロノを優しく抱いてくれる腕が、あたたかい。
ぬくもりを、心地よく思う。数か月前まで、リンディに抱かれたときに感じていた気恥ずかしさはない。
アインスとなら、いつまででも、触れ合える。
「ありがとう──クロノ……」
涙を腕で拭い、鼻をすすって、アインスは再びクロノを抱きしめた。
もはや悲しんでばかりではいられない。腹を括ろう。
今の自分は、闇の書を新たな段階へ持ち上げるために、前に進まなければならない。
闇の書の主、八神はやて、そして、守護騎士たち。ただプログラムされた任務を遂行することしかできない彼らでは、闇の書そのものの修復を行うことはできない。
壊れかけた闇の書のシステムを修復し、彼らを救うことができるのは自分だけだ。
そして、クロノを、救う。
父親への不安定な感情に心を囚われている彼を救い、そして、心から、向き合えるようになろう。
闇の書は完成する。そして、今度こそよみがえる。
そのとき、はやてとクロノは、自分と共に生き続けることになるだろう。
クロノをしっかりと胸に抱きしめ、アインスはそう決意した。
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投下終了です
アインスさんとヴォルケンズの微妙な間合い・・・ドキドキ
そしてザフィーラさんによるクロノ君お姫様抱っこ疑惑
アインスさんは涙もろくてそれがかわいいのですよ
泣いて泣いて悲壮感に酔うのです・・・はふぅん
このまま告白して好きすき大好き愛してるーといえないくるしさ
はやてちゃんにこれからクロノ君がどう接していくかですね
ではー
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今までの流れからしてやはりヴォルケンもクロノハーレムに・・・・い、いやらしい!
いいぞもっとやれ
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はやてちゃんまでクロノくんに手込めにしかもリインフォース公認!?
け、結婚式はいつでつか仲人やりたいでつ
初夜はいや婚前交渉うひゃああはやてちゃんかわいいかわいい頭おさえるヴィータちゃんかーいーよー!!!
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いっきにシリアスになりそうだ
ヴォルケン対アインスとなると原作よりも悲しい戦いだな…
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あ
け
お
め
-
ありさと
けっこんして
お
めこ
-
あさおきて
けっきさかんな
おちんぽの
めんどうみるのは
こ、これでさいだからな塵芥!
とツンレデて
よろしくやってる
ロード・ディアーチェ
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アインス姫初め
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>>111
ウマイwwww そして実にすべ王っぽくて良いwww
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トリップ忘れたけど、まあ、もう別にいっかって気分でお邪魔します。
クリスマスだの、正月だののイベントとか関係なくひとつ。
クロノとシュテルであーだこーだです。
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「闇の欠片事件」から約3ヶ月。
冬から春へと変わり始めた季節の中、平和な時を過ごしていたエース達に降り注いだひとつの騒動。
それは砕け得ぬ闇を巡り、現在に留まらず過去と未来の人物すら交錯した事件。
「砕け得ぬ闇」事件。
これは、そんな事件を越え、紫天の一党が未来へ飛ぶまでの、しばしの時の話。
◇
かけられたシーツに目を醒ます。
「…ああ、なのはか。ありがとう」
いささか寝ぼけた視界には、二つくくりを揺らしてびっくりした表情で固まる少女がひとり。
つい居眠りをしてしまったらしい。
アースラのブリッジでのこと。
座ったまま舟をこいでいる途中、優しい重みを感じて起きたらシーツをかけてもらっていたという顛末。
頂戴したシーツを纏いながら、再びコンソールへ指をかける。
「クロノくん、ちょっとは休憩した方が…」
「その休憩を、今しがたまで取っていたところだ」
あくびをかみ殺しながら、今回の事件における事後処理を再開する。
執務官として、現場作業だけでは終わらないのがつらいところだ。
短い時間ながら濃密な戦闘を経ての事務作業は、若い体力を以ってしてもいかんともしがたい。
「…言っておくがなのは。君が僕の休憩の邪魔をしたというわけでは、ないからな」
居眠りを見られて、見栄を張ろうとした部分もあるだろう。
ふと己の言動を振り返り、少し取り繕う物言いがつい口から出てしまう。
くすくすと失笑を返されて、さらにクロノは居心地が悪くなった。
「優しいね、クロノくん」
「僕は優しくなんてない。僕に比べれば、君たちの方がよっぽどだ…よっぽどすぎて、お人好しもいいところだろう」
「そ、そうかな」
「PT事件からこっち、特に君の踏み込み方は感心するよ」
優しさも、お人好しも。
そこまで強固であればもう武器なのだろう。
高町なのはの、鋼鉄の優しさ。
巌のような、お人好し。
そしてそれでもなお、こうやってシーツをかけてくれる細やかな心遣いもできるんだから感心もする、とクロノは内心で独白した。
「だが、それで僕たちも大いに助けてもらっている。今回の「砕け得ぬ闇」事件にしたってそうだ。改めて礼を言わせてもらう」
「そんな、私は私にできる事をしただけだよ…」
はにかんで照れる様子に、戦場でまっすぐに自分を貫く気高さはどうにも窺い知れない。
それでもそんな謙虚さを、幼いエースは持っている。
得難い事だとクロノは思う。
「できる事をすべき時にやってのける。それが難しいんだ」
「私には…みんながいたから、できたんだと思うな」
「それは誰もが同じだ」
「クロノくんも?」
「当たり前だ」
「ふふ、嬉しいな。クロノくんは何でもひとりでできちゃう人だから」
「そんな事はないよ。ひとりの力なんて、小さいものだ。だからチームを組む。君たちに支えられる」
感慨深い思いを込めてクロノが言う。
会話と平行して動かしていた指が止まる。
ひとりで何でもしようと思っていた。
幼い頃の目標である。
誰かの手助けなく戦えるようになりたくて、涙ひとつ流さずリーゼ姉妹の修行に耐えた。
-
結局。
ひとりでいる事の馬鹿らしさは教導センター時代に悟った。
救われたのだろう、エイミィに。
そう思うとつい穏やかな微笑が零れるのをクロノは自覚する。
「僕の報告書なんて、見てて面白いものじゃないだろう?」
「そんな事ないよ。邪魔かな?」
「いや、面白くない書類作りをしている最中、話をしてくれる誰かの存在は有り難い」
「クロノくんのマルチタスク、すごいよね…」
「ストレージデバイス持ちならできて当然だ。何か飲むか?」
「あ、いいよ、私が淹れてくるよ」
「シーツの礼だ。たっぷりの砂糖を茶に入れてやろう」
◇
最初から最後まで、結局クロノ憎悪を殺し切れなかった。
はやてに罪はない。
ヴォルケンリッターは傀儡だ。
リインフォースの名の下に、闇の書のプログラムは救われた。
マテリアルたちもまた、改変され続けた闇の書の被害者である。
万の言葉を以ってただの一念から目をそらす。
そう、ずっと目をそらし続けただけだ。
目を瞑っただけ。
それでもふと執務から目を離して私的な時間に、我に返るような心地で憤怒がそこにあると再認する。
鎌首をもたげる怨念の深みに複雑はない。
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
絶対に誰かの耳に届く事のないように呟きを漏らした夜は、もう数え切れない。
それでも己を理詰めで殺す。
感情を殺す。
はやての善性を是とする。
ヴォルケンリッターの忠誠を是とする。
リインフォースの運命を是とする。
マテリアルの絆を是とする。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウンが下すべき決は公平の一文字だ。
闇の書に殺された者と同じく、八神はやてにも命はある。
すべての命は平等だからこそ、殺された者よりも、今命つなぐはやては私怨に殺戮されるべきではない。
法は強く堅く人の命を救い、護る。
それが時に残酷な冷たさを持つのは知っている。
クロノ自身、死ぬるが正しいと思う者が法に命をつながれている事件の結末に何度も立ち会っている。
そして、立ち会うでなく、直面したのはこれが初めてだった。
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
ハラオウン家長子クロノ・ハラオウン。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウン。
このふたつの己は切り離せないのだろうか?
クロノは何度も何度も自問する。
その都度、母に話し聞かされ、そして幼すぎた頃に見た父の顔が、最後の最後ではやてたちを許してやれと微笑むのだ。
理想と夢と、何よりも父を追うようにクロノは時空管理局へ飛び込んだ。
そして今、身を挺して被害を最小限に食い止めた父の死に様が己を縛り、苦しめる。
暴走した闇の書に対し、エスティアの艦長として、時空管理局局員として、人間として、クライドは完璧すぎた。
クロノが夢見た父は、きっとはやてを許した。
ヴォルケンリッターを許した。
リインフォースを許した。
マテリアルたちを許した。
きっと。
きっと。
きっと。
だから、クロノもまた許さねばならぬ。
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それでも、
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
それでも彼は今日もつぶやく。
明日もまた、時空管理局執務官であろうとするのだろう。
◇
「とてもためになりました」
ゆっくりと瞼を閉じ、万感を込めてシュテル・デストラクターは吐息をついた。
そこには彼女が常に纏う、潔い熱風の気勢はない。
まるで解き方を知らない難題へ、どう手を出せばいいのか分からぬよう。
きっと凡百の障害など焼き尽くして罷り通るシュテルが、燃えぬ何かと直面したような。
「あの…シュテル…」
慰めるように、シュテルの肩へなのはがおずおずと手を伸ばし、結局中空をさまように留まる。
ふたりきりの部屋。
重い沈黙がしばし流れた。
ある日シュテルがなのはへ語ったのは、己の恋心についてであった。
冷静でありながら、裡に激情を内包するシュテルの事。
ふと気づけば芽生えていたその感情に、ただただ切なく悶え苦しんだ。
そしてその想いの丈を解き放つのに、そして想い人であるクロノ・ハラオウンを深く知るため、自身のオリジナルであるなのはを訪ねたのは自然な成り行きであった。
「気遣いは無用です」
開眼したシュテルが、穏やかになのはへ微笑んだ。
吹っ切れたかのようなシュテルの様子に、むしろなのはが困った面持ちになってしまう。
「ごめんね、あんまり力になれなくて…その…私も、恋愛相談は…」
「いいえ、いいのです。彼の事を、詳しく話してくれただけで十分な私への助力です」
「でも、具体的にどうすればいいかは…やっぱりもっと大人の人に…」
「私がきちんとした恋愛を望むのは、おかしな事なのでしょう」
「そんなこと、ないよ!」
シュテルの両肩を掴んで、まっすぐに向き合ってなのはが断ずる。
力強く、ひとかけらの躊躇なく。
しかし貫くようなその視線に、シュテルは頭をふるばかりだ。
「ありがとうございます。ですが、……私は彼に踏み込めずに終わのでしょう。あなた光の槍のような直情も、今回ばかりはどうしようもないのです」
「そんなのって……」
「そんな顔をしないでください。私は、あなたに姿を映させてもらう許可を頂き、これまでにない嬉しみを感じているのですから」
「そんな喜びは、きっと間違ってる…」
「違っていても、臆病でも、卑怯でも、偽りでも、束の間であれ……私は、彼のぬくもりに触れたい」
いっそシュテルよりも苦悩に眉根を寄せるなのはに、もう言葉はない。
他言無用もすでに約してしまった。
いや、あるいは光明ある事情であるならば、きっとなのははその約束を破るさえしただろう。
しかし恋愛事情だけは、繊細が過ぎる。
シュテルの相談をなのはがしてしまうべきではない。
「そんなのって……ないよ…」
今にも泣き出してしまいそうななのはの肩を、シュテルは抱いた。
◇
どこまでも上へ上へと伸びる本棚は、いつ来ても壮観だった。
高く高くへ昇りながら、クロノは見知った後姿を捉える。
「なのは」
「あ、クロノくん」
開いた本を閉じがてら、身を捻った少女が笑顔をこぼす。
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「なんだ、君も調べものか?」
「うん、これ」
嬉しげに表紙をクロノへ差し向ければ、炎熱魔導に関する魔術書である。
「火炎の魔術?」
「そう、シュテルと模擬戦の約束をしたから、その対策になるかなって」
「ああ、彼女か…」
得心しながら、クロノはその表情に少しばかり渋みを差す。
「切磋琢磨するのはいい事だが、ちょっとは控えてくれ。君たちレベルの模擬戦に合わせた結界は、毎回構築に手間がかかる」
「にゃはは…善処します」
「そうしてくれ。ところで、ユーノを知らないか?」
「ユーノくんなら、さっき出て行ったよ」
「入れ違いか。やれやれ、あいつがいれば欲しい書類がすぐに出てきて便利なんだがな」
きっと軽い棘でも交えてクロノが検索を依頼して、ぶつくさと文句まじりにユーノが書類を抽出するのだろう。
そんなビジョンを己で描いて、ふとクロノに笑みがこぼれた。
「ね、クロノくん、今時間あるかな?」
「時間くらい作れるが…それについてか?」
指すのは炎熱の魔術書。
「そうなの。読んでみたんだけど…分からない所が多くって…」
「君はフェイトのように、学問として魔法を習得したわけではないから仕方ないだろう。分かった、僕でよければ少し教えよう」
「ありがとうクロノくん! クロノくんに教えてもらえるときっとはかどるよ」
「ただ戦闘を想定してまでは、僕も口が出せない。そこらへんは、シグナムにでも聞いてくれ」
「うーん、でもシュテルも収束砲撃型だから、やっぱりミッド式のクロノくんとお話したいな」
「…ま、デュランダルでの変換は冷気だが、それでもどこかでアドバイスできる事はあるだろう」
曖昧にうなずくクロノの手が、ふわりと引かれる。
「それじゃあ、クロノくん優しく教えてね」
爛漫な笑顔に連れられながら、クロノは少し格好つけすぎたと思う。
流石に冷気と炎熱では勝手が違いすぎるだろう。
魔術体系としては説明できても、戦闘レベルではやはり難しいはず。
それでもやはり、頼られればそれに応られるだけ応えようとするから、クロノはクロノなのだ。
◇
「エイミィ・リミエッタとは、どういった人物なのでしょう?」
順繰りの流れであった。
決して出し抜けにシュテルが切り出したわけではない。
リンディ・ハラオウンとは、どういった人物なのでしょう?
クロノ・ハラオウンとは、どういった人物なのでしょう?
そんな、予想すべき流れでありながら、即答や一言での表現に窮してフェイトは首をひねってしまった。
「うーん…そうだね」
決して悪感情を排する言動をこしらえようとしているわけではなく、むしろ逆だ。
多くの褒め言葉が湧き出て、その取捨選択に手間がかかる。
「縁の下の力持ち、かな」
きっと、もっと上手な表現があっただろうとフェイト自身思いながらの、最初の返答。
「縁の下の力持ち、ですか」
「エイミィがオペレータなのは、見て分かるよね?」
「ええ」
「それだけでなくて、執務官補佐っていってねクロノの仕事面でのサポーターでもあるんだ」
そこまでは、なのはから聞いている。
故に、今回フェイトを訪ねたのはその先を知りたいからだ。
アースラスタッフに、クロノに踏み込みたいからこそ、クロノについて深い言及をせず。
エイミィに焦点を当てて今回フェイトへ尋ねたのだった。
想い人の母であり、やはり闇の書の被害者であるリンディではなく。
想い人本人でもなく。
そんなハラオウン親子にひどく近しいエイミィ本人でもなく。
そこまで選択しを排してしまうと、もうアースラスタッフへ紹介を請うのは共同戦線を張ったフェイトにするしか自然ではなくなってしまう。
聞けば、フェイトもまたアースラスタッフと出会った時期はなのはと大差ないらしい。
それでもPT事件での裁判や、私的な事情を経てなのは以上に、フェイトは知る事は多いはずだ。
そう言ってなのはに勧められたのである。
そして何よりも、己の恋心が漏れたとして、きっとフェイトもまたなのはと同じく口を噤んでくれると信じられた。
「クロノ執務官と、エイミィ執務官補佐は長いのでしょうか?」
「そうだね、士官教導センターの同期で、ずっとだって聞いてる」
「呼吸の分かる相手と同じ配属にし、上首尾を期待するのは分からぬことではありません」
「そうだね。それにクロノって真面目だから人当たりが強いところがあるんだ。エイミィがいると、それを緩和してくれる」
胸に灯る嫉妬を、シュテルはなお何一つ表面に出すことはなくフェイトの話に耳を傾ける。
エイミィの話に耳を傾ける。
クロノにつながる話に耳を傾ける。
-
「そもそもそういう性格なんだ。柔軟で、機転が利く人だよ」
「故に、縁の下の力持ちなのですね」
「それにいろんなところを見てるんだ。ちょっとした変化にも気づいちゃう」
「そこは、オペレータの適正ですね」
「本人は、闇の書事件でシグナムたちを、今回の事件でシュテルたちを追い切れなかって落ち込んでたけどね」
「…我々とて必死でしたから」
「ふふ、そうだね。柔軟で、いろんなところを見て、それに気さくだから。みんなの精神的なところも、上手に支えてくれる。私も、よく励まされたんだ」
裁判の時に。
なんて言葉を飲み込んで、安らかにフェイトは微笑む。
姉を自慢するかのように。
「艦内で信頼されているのは、見て取れていました」
「でしょ?」
「女性が強いのですね、アースラは」
ぱちくりとフェイトが目をしばたかせ、それから吹き出した。
「ふ、ふふ、ふふふ! そうだね、リンディ艦長や、エイミィはクロノよりも強い」
「あなたもです」
「私は違うよ。クロノよりずっと弱い」
「そうですか…クロノ執務官とあなたを見る限り、例えばあなたが我侭を言えば、クロノ執務官が折れる。そんな空気を感じました」
そうかな、なんてフェイトが返事に困って苦笑するのを、シュテルはやはり燃える想いで眺めていた。
クロノのそれは、まるで妹と接するかのような。
そんな空気であったから。
己がそうであったとすればと、妄想をせずにはいられないから。
狂おしいほど甘い赤熱が胸中を焼く。
それでもなお、いつものごとく、平静で冷静の仮面をかぶってシュテルは質疑を続ける。
エイミィに関する話が終われば、アレックスとランディについても尋ねるだろう。
クロノと、エイミィについて渦巻く感情を押し付けながら。
きっとシュテル自身では気づかぬうちに、エイミィに対する話は長引いた。
◇
「あ、クロノくん」
「なのはか」
ふと行き会ったのは本局でのことだ。
はやてが足の状態の経過を診てもらう時、できる限りなのはもフェイトも付き添っている。
もう、なのはとこうして本局で見るのも珍しくなくなってしまった。
「この間の模擬戦、残念だったな」
「ごめんね、せっかく教えてもらったのに」
結局、模擬戦でなのははシュテルに白星を譲ってしまった。
シグナムも感心の熱戦だったが、上手く火炎を操りきったシュテルに軍配が上り、幕を閉じた。
「生兵法を下手に僕が教えたのがまずかったかな」
「ううん、そんな事ないよ! …教えてもらったからこそ、つい気になって対応が遅れた砲撃なんかもあるけど、それで見えるようになったものもあると思うんだ」
「そうか。ならそれは、次にきっと活かせる」
「うん! レイジングハートに練習のプログラムを早速組んでもらったんだ」
「…君とフェイトは本当に熱心だな」
「それに、シュテルも。負けられないよ」
ぐぐっと握り拳に瞳に炎。
とても年頃の女の子らしからぬ仕草だが、これもなのはなのだろうとクロノは思う。
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「もう少しで、お別れだから…」
拳を解いて寂しげに遠くを眺める眼差しに、ついクロノもうつむいた。
アミタとキリエと共に、紫天の一党もまたエストリアへと旅立つと決定したのは、事件後すぐの事だ。
それからしばらく、未来へ移動するまでの束の間の時間。
そんな、隙間のような時間なのだ。
そんな、隙間のような時間だから。
今を、今だけを、凌げばとシュテルは思った。
クロノと己を阻む時間の壁に、きっと諦観で微笑める。
もう届く事がない時間にいるのだからと、恋心を灰にできたはずだからと、シュテルは考えはしたのだ。
――そして、駄目だった。
シュテルは焦熱の激情を堪え切る事ができなかった。
なのはに語った。
語り尽くした。
灼熱の感情を、吐き出した。
「…君とシュテル。ずいぶんと仲がいいな」
「まっすぐに私とぶつかってくれるから」
「似てるよ、君たち」
「フェイトちゃんとレヴィちゃん、はやてちゃんと王様と比べると、私たちは似てるよね」
「ああ、戦闘マニアな所がそっくりだ」
「あ〜、その言い方ひどい!」
「将来、シグナムと血みどろの真剣勝負を演じても不思議ではないな」
「そ、そこまではしないよ〜。私とシグナムさんじゃ、まるで畑違いっていうか…」
「フェイトの戦闘スタイルだからかみ合ってるところはあるな」
「ますます鋭くなってるよね、フェイトちゃんの魔法」
「ああ、怖いくらいだ」
うかうかしてられないよ。
そんな心情をありありとクロノは滲ませる。
「…クロノくんは、シュテルたちあの四人は苦手?」
そして、ふと問われたその言葉につい殺意と憎悪と怨念が胸に去来する。
それを一笑に付すような仕草でかみ殺し、
「ああ、やかましくて適わないんだ」
完全に冗談めかして返せたこの一言を、クロノは脳の冷めた部分で自賛した。
「レヴィが特にな。その点を言えば、シュテルはまだマシだな」
「! …レヴィちゃん、一緒にいて楽しいんだけどな」
「あと少しの間だけだから、我慢はするさ。君からも、もっと行儀よくしてくれと言っておいてくれ」
「ね、じゃあ王様とユーリちゃんは?」
「嗚呼、そのふたりは…」
――全員等しく、虫唾が走る。
「…やはりディアーチェも騒がしいな。ユーリを見習って、もっと静かに過ごしてもらいたいものだ」
「あ、閃いた! ユーリちゃんに王様を諌めてってお願いするの」
「名案だな。ディアーチェの過保護は、よく分かる」
「砕け得ぬ闇事件の最終局面の王様、少年漫画の主人公みたいだったもんね」
「ああ、そうだな。もう結婚すればいい」
あるいは、どれだけ幸せそうにしていても、見えないところであればこの負の感情は薄まるだろうか。
少なくとも今は、八神家に本当の意味で負の感情を断ち切れる目を見出せない。
それでも彼女たちを、降りかかる不当と認識すべき悪念から守ってやらねばならぬ。
彼女たちを保護する形式で見届けねばならぬ。
クライドを失って涙を流した己を殺して。
クライドを目指して執務官となった己を以って。
-
◇
ひとつ確信している事がある。
クロノ・ハラオウンがシュテル・デストラクターに微笑みかける事は、ないのだろう。
「あれ、シュテル?」
指導してもらった文書や魔術式をなぞるのを止めて、本を閉じる。
振り返ればユーノがいた。
「ああ、師匠。借りていた本を返しに参りました」
「うん、預かるよ」
少しだけその本を手渡す事が名残惜しかった。
その想いもすぐに焼却する。
「師匠はナノハと出会いました」
――クロノはエイミィと出会いました
「な、なんだい急に? うん、もうすぐなのはと出会って、一年になるかなあ…」
――私はクロノに出会い、数日の間でした
「一年前に出会い、一年が経ち、さらに一年を重ねるのでしょう。師匠とナノハは、ずっと……一緒なのでしょうか?」
――クロノとエイミィは、ずっと一緒なのでしょうか?
…嗚呼、言葉にするならば、もっと何か聞くに相応しい話しようがあったろうに。
効率と理論は、解答があってこそだと思い知らされる。
彼我の愛憎に、いったいどんな効率を重視すればいいというのか。
正解の無い問答に、どんな理論を用いればいいというのか。
シュテル自身が困惑する問いかけだ。
クロノ・ハラオウンに対する激情が溢れただけ。
当のユーノが難しい顔をするのは、至極当然なのだろう。
「分からないよ、そんなの。でも僕は、ずっとなのはと一緒にいたいと思うよ」
「師匠は、ナノハを魅力的だと思いますか?」
――クロノは、私を魅力的だと思ってくれるでしょうか?
さっとユーノの頬に朱が差した。
聞いたシュテルが一切の心情の揺らぎ無く、一直線に切り出したのもまた羞恥を煽る。
しどろもどろに、ユーノが眉をひそめてしまう。
「ど、どうしたの、シュテル? なんでそんな事聞くのさ?」
「…私たちは紫天の名の下にずっと一緒です。ヴォルケンリッターもまた、ずっと一緒にいる。フェイト・テスタロッサとアルフもずっと一緒。フローリアン姉妹も、ずっと一緒です。ただこれらと比べて、師匠とナノハのつながりは違います。ならば、」
――ならばクロノとエイミィが一緒であるのは、愛であるのだろうか
「ならば、これを愛と呼ぶのだろうか、と」
「あー…」
シュテルの真剣さを察したのだろう。
ユーノもまた真剣さを含んで応じようと考え込む。
「僕は…なのはに恋してるんだと、思う」
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それから、周囲に誰もいない事を確認して。
思い切りながら、どこか照れを捨てきれずにそう言った。
「恋ですか」
「うん。なのはに助けてもらって、なのはを助けて…気づいたら惹かれてた」
――私もまた、気づけば
「大切な友達だとも思うんだ。ただ、それだけじゃない気持ちも、…僕にあると思う」
「それをナノハには?」
「言えないよ、こんなあやふやな気持ち…正直な話、恋であるかどうかも自分で分かってないんだ。だから、それを確かめるためにも、僕はもっとなのはと一緒にいたいと思うよ」
真摯な言動だった。
疑いようなく、正直な話をしてくれていると分かる。
本心を隠してこそこそとしている己と真逆だ。
「…私は、ナノハを好ましく思います」
「僕もだよ。あんな風に、誰かの思いに対してまっすぐ向き合えるのは、すごい事だと思う」
「思いに、向き合う…」
ぎゅっと胸元を掴んでシュテルが反芻する。
フローリアンン姉妹に対しても、己に対しても、現れる闇の残滓に対しても、ユーリに対しても、いつも彼女は己をさらして一抹の翳り無く真っ向から相対した。
ただひたむきに。
ただひたすらに。
そう存在する事が最強なのだろう。
最高でも、最善でもなく。
最強。
まるで太陽のように心に闇なく、彼女は人の思いに向き合っているのだろう。
己の光で、どうか誰かの悲しみを照らし枯らせるようにと。
そしてそんな自覚もないからこそ、最強のなのはが在る。
高町なのは自身は、きっと大きな恒星。
星の光のように、数多流れんとする涙が零れぬように。
己を燃やして掬い続けるのだろう。
明星よりも、熱く。
「…私にもナノハのように思いと向き合う事ができるでしょうか」
「…僕がなのはに恋か、友情かという感情を持ってる事を打ち明けたじゃないか」
赤子のような無垢さで、シュテルはユーノの顔を覗き込んだ。
バツ悪そうな、なんとも言えない表情を認めて、慈母じみて、そして少しばかり茶目っ気を含んで微笑むんだ。
「…内密に、しておきましょう」
乙女のように悩み、苦しんだ。
しかし結局のところ、己にできる事などただのひとつだったのではないだろうか。
清廉な湧水のごとく裡より溢れる、達観じみた想いがシュテルを満たす。
なのはが思いを受け止めるように。
己もまた。
-
◇
「茶番は終わりか?」
底冷えする声で、クロノが問うた。
クロノの自室である。
密室にはふたり。
クロノと、シュテル。
なのはの格好をした、シュテルである。
いつもどおり。
なのはを演じてクロノへ声をかけたある時の事。
話があると、自室へと誘われた。
その時点で薄々シュテルには看破されている事に気づいたし、諦めもついていた。
「はい、終わりです」
「…いつからなのはと入れ替わって僕と接していた」
「事件が終わって、すぐにです」
テーブルを挟んで相対するシュテルは、なのはと同じ顔の能面じみた表情で受け答えをする。
しかしそれでもクロノには何故か分かってしまった。
シュテルは真剣だと。
「…理由は?」
「あなたを愛しています」
「…ふざけるな」
ふざけているわけではないと、十全に肌で感じながら言わずにはいれなかった。
「本心です」
「好かれる理由が無い」
「一目惚れというやつです」
「信じろと?」
「…伝わりませんか? 私の想い」
陰気も陽気も一切が焼失した、純心のみが凝る視線がクロノを射抜く。
なのはと同じ容姿で、まるで違うシュテル。
だというのに、こうして一直線に思いをぶつけてくる様はなのはを彷彿して止まない。
「もっと深くお話をしましょう」
静かにシュテルは口火を切った。
もう必要ないとばかりに、髪止めをはずし、二つくくりを解く。
「私はマテリアル。理を司ります。しかしただのプログラムではないと自負しています」
「……君にも心はある」
「そうです。故に高みを目指し、戦いに昂ぶる。勝利して満たされる。敗北して雪辱を晴らしたいと願いもする」
「恋もする、か」
「はい。誰かに惹かれもしましょう」
「……なぜ僕だ?」
鏡のようなシュテルの瞳にクロノが問いかける。
「あなたは闇の書を憎んでいる」
「……」
「あなたは八神はやてが生きている事を理不尽だと思いませんか?」
「……」
「ヴォルケンリッターが家族を持った事が不条理だと思いませんか?」
「……」
「未だ闇の書を引きずって現れた我々を破壊し尽したいと思いませんか?」
「……」
シュテルの問いかけのすべては、闇の書の災害を被った誰かであれば抱いて当然の思い。
当然すぎて、もはや自分の一部である問い。
ずっと自問している事だ。
それでもクロノは理を説いた。
「闇の書の暴威は、もう終わった。闇の書の闇を破壊して、リインフォースも短い命を終える。ヴォルケンリッターは罪を償う。そして……はやても被害者だ」
「そうやって、」
ふと儚げに悲しげにシュテルは微笑みをクロノへ傾けた。
「あなたは理に生きている。情に流される事なく。完璧です。…私は、そんなあなただから惹かれたのです」
「よせ」
「肉親を殺された憎悪は、理路整然と割り切れるものですか?」
「やめろ…」
「あなたが完璧であればあるほど、その怨念は計り知れない」
「口を閉じろ」
「理想の人間じみて振舞っているあなたほど、理を意の元においた人間を、私は知らない…」
「僕は、そんな人間じゃない」
言葉ひとつひとつに苦痛を伴う。
そんなクロノを見守るシュテルの眼差しはどこまでも憂い、そして優しい。
「八神はやてが生きている事を理不尽だと思う気持ちだってある。その思いが理不尽だと思いもする。グレアム提督の策もひとつの手だったと思う。もっと別の手段を模索すべきだったとも考える。父を殺された怒りもある。それをヴォルケンリッターたちに向けたいとも思う。誰にも向ける相手がいないとも知っている…! どうしようもないって、分かりきってしまっているから! 僕は指針を理にしたんだ!」
「指針を理にして、そう在る。できる事をすべき時にやってのける事が難しいと、あなたに教わりました」
「戯れるな!」
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テーブルを叩いてつい立ち上がる。
クロノの感情が激してゆく。
冷静さ旨とするクロノが、際限がないように加熱していく
「戯れてなどいません。あなたはそうやって心に鬱屈を抱えてなお、たゆまず理知を振舞う。それは正しすぎて歪んでいる。そんな強さと優しさに惹かれたと、私は言っているだけです」
「黙れ!」
きっと、ただ闇の書に対する恨みを尋ねられたら、いつもの冷静なクロノで受け答えをしただろう。
――ああ恨みはある、だがはやてたちに向けるのはお門違いだ
なんて、むっつりとした仏頂面で返事して終わりだったろう。
好きだと告白された。
一切の虚飾もなく、真っ向から。
そして、その好意の因子こそが己の心の闇だと言う。
なのはの形をして。
クロノの心が千々に乱れてゆく。
闇の書を憎む。
この否定すべき感情は、普通は肯定されるべきだとは理解している。
しかしそのさらに向こう。それに惹かれる誰かなんて、思いもよらなかった。
「…どうしてなのはの格好をして僕に話かけた?」
幾許かの間を置いて、少しだけ激昂を抑えたクロノが着席しなおしながら聞いた。
「あなたは闇の書を憎んでいる。そんなあなたが私に優しさを向けてくれるとは思いませんでした」
「だからなのはのふりをして僕と話したと言うのか?」
「そうです」
真剣に、偽りであろうとも己の優しさに触れたかったのだろうとクロノには信じられる。
だってこんなにもシュテルに対して忌んでいる。
こうして対峙して、語り合うのも嫌悪すべき事。
それを理性を以って続けているのに。
続けているのに、その理知の裏さえもシュテルは踏み込んでくる。
踏み込んで、愛しいと言う。
なんなのだ。
この、なのはの姿かたちをしたものは、なんなのだ。
「嘘でもいいと思いました。理に従って完璧なクロノ・ハラオウンと語るよりも、少しでもナノハたちへ向ける素顔の優しさを分けて欲しいと思いました」
「そんなコミュニケーションに何の意味がある」
「自己満足です。私はあなたに踏み込めずに終わのでしょうと、分かっていましたから」
諦めずに接していれば己がシュテルへ、本当の慈しみを覚えたかと自問する。
答えは否だとすぐに出た。
それが自然だとクロノは思う。
それが不平等だともクロノは思う。
だが、己の心の中だけは、己の心に従わねば、いったい人間である意味があるだろうか。
「そして今日、あなたに偽りをさらす必要がなくなりました」
「どういう意味だ?」
「考えていたんです。あなたへの愛で、何をすべきか。私はあなたを愛したから、あなたからの優しさを欲しました」
「嘘でもか」
「嘘でもです」
-
喜びと、嬉しみをたたえて、溢れる想いを込めてシュテルが緩やかに頷き。
席を立つ。
「君を救いたいと願っている人がいる」
「…それは」
「君を助けたいと願っている人がいる」
それは、システムU-D戦の最終局面。
クロノがユーリへと、放った言葉。
「ではあなた自身は何を願うのですか?」
誰かが願ったでなく、クロノ自身が願った想いは?
クロノの傍らにシュテルが立つ。
その手を取って、シュテルは己の胸へと押し付けた。
「私を焼いて」
優しく微笑んだ。
「あなたからの優しさは、要りません。あなたの憎しみをください。あなたが理不尽で、不条理で、どうしてだと自問し続けてきた負の感情をどうか私にぶつけてください。あなたが闇の書に叩きつけたかった黒い想いをどうか私で散らして。刺して、貫いて、砕いて、潰して、千切って、破いて、私をめちゃくちゃにして。理にずっと隠れていた、目を瞑っていた、心底に溜まった膿を私に吐き出して」
甘やかに語りかける言葉と共に、封鎖領域を展開する。
それと同時にクロノがシュテルを押し倒す。
泣き出しそうな顔は、どうすればいいのか分からない子供の顔。
「あなたにしてもらう事を、ずっと考えていました。そして、あなたにしてあげられる事も、ずっと」
クロノの頬を撫ぜるシュテルの手は柔らかく、暖かい。
「私を殺して」
どっと押さえつけていた汚泥のような想いが堰を切って、クロノの咆哮へ変わる。
「なんで父さんが死んで!」
「闇の書が殺した!」
「なんでお前たちが生きている!」
「あなたたちが生かした!」
「死ねばよかった!」
「殺せ! クロノ・ハラオウン! 私を殺せ! 私を焼け! 焼けえええええ!」
きっと。
封鎖領域を察してくれるのはエイミィだとシュテルは不確実な確信があった。
エイミィにできなくて、己にできる事。
クロノにしてあげられる事。
これしかないと思った。
想いを、ぶつける、受け止める。
地獄の業火じみてクロノが与えてくれる暴威の中、シュテルは幸福な心で思う。
どうか来世では、彼が愛を向けてくれるように生まれますように。
-
終わりです。
遅すぎるけど非エロとここでお知らせ。
読んでくれた方がハートフルな気持ちになってくれると嬉しいです。
-
素晴らしい!
ナイフで抉られるしか手段のない愛情が素敵すぎる
乙
-
おつです
このあとエイミィが踏み込んで来るんだろうけど、
抉り出した闇をエイミィ委ねて旅立つのだろうか、シュテルは
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泣くしかできない、俺がいる。GJ
ところでそのタイトルは巷で評判のタイトル詐欺ってヤツですか?
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GJです。見事なハートフル(ボッコ)でしたね。心が(業火で)温かくなりました
シュテルんが健気可愛い……
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なんかクロノが劣化してる気がする
アンチものは受けないよ
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そもそもクロノ物がイマイチ
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話はよかった、GJ
闇にこそ惹かれたというその発想が素晴らしい
しかしクロノがモテてるのを立て続けに読むとなんか軽くむかつくなw
ユーノでもヴァイスでもそうだけどw
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ふと思ったのですが、
なのはがシュテルが入れ替わっていたというのなら、
ユーノと話していたのはどっちなのだろうか
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>>126
実にGJ
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これはいい・・・ああ、うん、いい・・・すごく
上手く言葉に出来ないんだが理知的なクロノくんの闇を引きずり出すのが素晴らしい
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どうもおはようございます
はやくえろシーンがでてくるまですすみたいーとばかりに16話をかきあげました
今回も引き続きはやてちゃんのおうちで、えろはちょっとおやすみです
クロアイの精神を広めてゆきたい(・∀・)
闇と時と本の旅人 16話です
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■ 16
自室に戻った八神はやては、車椅子からベッドに乗り移り、座ったままため息をついてから、枕もとの時計を手にとって改めて現在時刻を確かめた。
闇の書の起動と、突然の異世界人の訪問は、はやての意識をすっかり覚醒させていた。
紙と革でできているはずの本が、自力で浮遊し移動し光を放つという現象。
あらためて目にすると、現実離れした異常な光景である。
ヴォルケンリッターたちも、出現した瞬間そのものははやては目撃していない。気づいたら目の前にいて、しかもすぐに気を失ったので、はっきりとは覚えていない。
しかしよく考えてみれば、彼らは人工生命体である以上、通常の人間のように母親の胎内から生まれるのではなく、魔法の力で空間に最初から現在の姿を持って生成されるのである。
どのような原理と技術でそれが可能なのだろうか。人体は、骨と肉でできている。カルシウムや、タンパク質、炭素や水素、窒素などが主成分のはずである。それらの元素はどこから調達するのか。
それとも、見た目は人間でも違う材料からできているのか。
魔法で、とはいうが、あらためて考えると、はやての頭ではとても想像しきれず気が遠くなってしまう。
図書館で今度、生物学や物理学の本を探してみようか、とも連想した。
「次元世界……って、ゆうとったよね」
うろ覚えだがヴォルケンリッターたちもそのようなことを言っていた気がする。
確か、ベルカ、という名前だった。
思えばいかにも外国人のような──少なくとも日本人には見えない──風体なのに、最初から言葉が通じた。それはともかくとして、あの銀髪の女性が言っていたミッドチルダという世界では、魔法があるということなのだろう。
おそらくその世界に闇の書が出かけて行って、あの二人を連れてきたのだ。
外はまだ暗い。時計の針は、午前3時45分を少し過ぎたあたりを指している。
これから、もう一度床に就いたら、もしかしたら明日の朝は寝過ごしてしまうかもしれない。
それ以前に、先ほどの出来事の驚きが大きすぎて、眠れそうにない。やけに目がさえてしまっている。
「なんやろ……あのひとのこと、初めて見たんやない気がする……?」
そういえば名前を聞くのを忘れた。言葉が通じるかどうかも分からなかったし、おそらく向こうが配慮して日本語を使ってくれたが、こちらからいろいろ尋ねることはできなかった。
あの少年は大丈夫だろうか、とはやては思案を巡らせる。
ザフィーラとシグナムに、隣の空き部屋にベッドの用意をするように言って、はやてはヴィータを宥めながら2階に戻った。
ドアをノックする音がして、はやては入ってええよ、と返事をした。
「はやてちゃん……」
-
現れたのは、湖の騎士シャマル。先ほどのクロノたちとの応対では出てこなかったが、念のため、家の外を警戒していた。
深夜なので、物音をたてないよう静かにドアを閉める。
「シャマル、どないしたん?」
「さっき来た二人のことだけど」
シャマルは神妙な表情を見せている。はやての前では、穏やかな大人のお姉さんといった印象の表情をするようにしているが、彼女とて古代ベルカ時代から戦い続けてきた守護騎士だ。
昨日の夕食の時までは、普段どおりだった。でも今は、今のはやてには、シャマルのわずかな顔立ちの違いがわかるような気がする。
血の匂いを感じさせる、いくさびとの表情になっている。
「ミッドチルダから来た……と、言っていたのよね」
「う、うん……あの銀色の長い髪の女の人、歳はたぶんシャマルよりちょい上くらいやとおもうけど……」
「はやてちゃん、前に少し言ったと思うんだけど、わたしたちが生まれたベルカと、ミッドチルダは、それぞれ──“次元世界”というところの、国の名前なの。
大昔の戦争で、ベルカが滅んで、その後、ミッドチルダが次元世界を統一したのが……およそ、70年前」
「敵の国なん?」
おそるおそる問うはやてに、シャマルはあわてて首を横に振る。
「ううん、今は、ミッドチルダが次元世界の中心という感じで、人々は平和に暮らしているはずだわ。今は、管理局という組織が、次元世界ごとの仲立ちをして、戦争が起きないように守っているし──」
「管理局──国連、みたいなもんやろか?」
ヴォルケンリッターたちは地球における国家の仕組みには知識が乏しい。はやても特に説明しなかったしする必要もないと思っていた。
はやての理解はおおむね早かった。次元世界は、地球でいう惑星ひとつがひとつの世界をあらわし、いくつもの世界が国家連合を作っている。その中で最も大きな国がミッドチルダという。
シャマルたちの生まれた世界であるベルカは、数百年前に滅亡し、生き残った人々は少数民族としてミッドチルダの辺境地域に暮らしている。
「冒険SFみたいやね」
とはいえ、闇の書が強力な魔法を実際に持っていることは現実であり事実だ。それは認める必要がある。
たとえば、宇宙人のUFOは光線で人間を空中に持ち上げてさらったり、という体験談が語られることがあるがこれは飛行魔法やバインド魔法の応用かもしれない。
そして実際に闇の書は、何万光年離れているのか知らないがそのミッドチルダから地球まで、二人の人間をさらってきてしまった。
-
「ほんに困った子やなあ……」
「ごめんなさいね」
「ううん、シャマルがあやまることやないよ。闇の書は、きっとなんかやりたいことが、あったんやとおもうから」
「……そう、ね……」
はやての言葉に、シャマルはわずかに返事が遅れた。
闇の書がやりたいこと。それは唯一つしかない。
リンカーコアを蒐集し、ページを埋め、覚醒することである。闇の書は、人間の魔導師のリンカーコアから魔力と魔法術式を読み取ることによってデータを蓄積し、それが規定の容量を達成することで戦闘モードでの起動が可能になる。
現在、闇の書はすでに480ページを埋めており、闇の書が自身でミッドチルダに移動できたのもこれによると思われた。
次元間航行魔法を入手し、蒐集行使によって使用することができる。
そして、闇の書が連れてきたという少年と女性──女性の方は、シャマルたちにとってはよく、とてもよく──見覚えのある姿だった。
彼らを休ませている部屋のベッドメイクを終えたシグナムと、はやての部屋に来る前に話した。
少年の方は、時空管理局の局員、そしておそらくかなり高い階級の執務官である。
女性の方は、シグナムたちの記憶が確かならば──、闇の書の、管制人格、本の旅人である。
闇の書の守護騎士たちは固有の名前を持っている。シグナムは烈火の将、シャマルは風の癒し手、ヴィータは鉄槌の騎士、ザフィーラは盾の守護獣。
これはベルカ時代の古風な雅名とでもいうような表現方法で、シグナムやシャマルというのははやてがつけた名前だ。
同様に、闇の書の管制人格は、本の旅人という名前を持っている。ただし、あの少年とのやりとりでは、「アインス」と呼ばれていた。少年の名前は、クロノ。ファミリーネームは不明だ。
アインス、という名前。ベルカ語の人名として、全く使われないわけではないが珍しい。大抵は、アインシュタイン(Einstein)、アインハルト(Einhard)など、他の単語と組み合わせられる。アインス(Eins)だけだと、数字の1、という意味になる。
偽名だろうか。彼女と、少年は、その身なりはほぼ間違いなく管理局員である。
はやてに、闇の書の主に危険が迫っていることをシャマルは危惧する。
「……ねえはやてちゃん、今夜は、私も一緒に寝るわ。はやてちゃんも突然のことでびっくりしたでしょうし」
もし。シャマルが危惧する最悪のケースとは、守護騎士である自分たちの気づかないうちに、闇の書がハッキングを受け制御が乗っ取られていることである。
はやてを守らなくてはならない。シグナムは、あの銀髪の女は確かに本の旅人だと言っていた。しかし、もし本当に彼女が闇の書の管制人格であるならば、主であるはやてを前にしてなんの行動もしないというのはおかしい。
彼女が既に、管理局の手に堕ちている可能性──シャマルはその可能性を考えた。
シグナムは今夜の蒐集を中止し、リビングで警戒を続けている。
「うん。ありがと、シャマル」
はやては微笑み、毛布をあけてシャマルを招き入れた。
すでにパジャマに着替えていたシャマルは静かにベッドに入り、身体を横たえる。はやてはいつものように、シャマルの胸に顔を寄せてきた。
健気で、気丈なようでいて、それでいて儚い、闇の書の主。
これまでにも年若い主はいた、しかし、はやては本当に優しく強い。
はやての幸せを願う、その気持ちをどうか、本の旅人が失っていないことを祈る。
-
クロノたちに割り当てられた部屋は、ベッドはダブルサイズだったので、クロノが落ち着いてからアインスも上着を脱ぎ、一緒にベッドに入った。
一緒に寝たことは何度もあるが、今回は他人の家に上がらせてもらっている状態なので、やや緊張する。
管理局の制服のままで寝巻きを持ってきていないので、クロノはとりあえず上着を脱いでシャツだけになり、下はズボンを履いたままに、アインスは上着とスカートを脱いでブラウスだけになった。
月明かりに、アインスのよく肉の張った太ももが青く浮かび上がる。
季節は冬、空調と保温を考慮された住宅の屋内とはいえ、アインスが寒くないように、クロノは毛布を深くかけなおし、アインスの身体を抱き寄せた。
心なしか、アインスの表情が潤んでいるように見える。
「大丈夫です、アインスさん」
男として、彼女を愛したい。自分には話せないつらいことがあるかもしれなくて、それを自分が追及するのは彼女にとって苦痛かもしれないけれど、それでもできる限りのことをしてあげたい。
「クロノ、私は……」
「今は眠りましょう。明日、朝になってから、あの子──八神はやてにあらためて挨拶をして、それから──本局に連絡を取りましょう」
今だけは。今だけは、つらいこと、苦しいことを忘れたい。
眉根を寄せ、何かを堪えているような表情のアインスに、クロノはそっと口付ける。
顔の位置を合わせると、クロノのつま先はアインスの脛あたりにくる。アインスは身体をやや丸めているので、太ももの間あたりにクロノの膝を挟む格好になる。
小さなクロノの身体、しかし、それは彼が弱いということではない、男として、確かに強さを持っている。
「闇の書が本当に動き出して、また闇の書事件が起きるのなら、あの子も、救わなくてはなりません」
しっかりと向き合い、仄かな月明かりの蒼い空気の中、アインスの目尻に大粒の涙が浮かんだ。
「アインスさん」
「すまない……お前の力になれなくて」
「……アインスさん、僕は……あなたと初めて出会った時とは──少し、考えが変わりました。
確かに僕は管理局員として、法律を運用する立場にありますが……それにまったく縛られていてもいけない、ということです。
──もし、アインスさんを苦しめるものがいたら、僕はアインスさんを助けることを第一にします。他にどんな障害があってもそれをはねのけます」
「クロノ……しかしそれでは、お前や、お前の家族はどうするんだ──?私だけが消えるのならいい、しかしお前が消えたら、悲しむ人がたくさんいる」
アインスを抱きしめる手のひらに、震える身体の拍動を感じる。声が、怖れを含んでわずかに途切れるのが、背中に伝わる肺の震えとして感じる。
クロノは何度も繰り返し、アインスの背中を撫で、安心させるように愛撫する。
「私は……独りなんだ。私には、家族はいない、私は、誰にもかかわりを持っていない……グレアム提督も、クライド艦長も、所詮は管理局という職場の中での同僚というだけだった……
私が死んでも私を弔ってくれる者などいない、私がいなくなっても誰も悲しむ者はいない……
──だから、私は……お前に最初に出会った時、言った通りに……お前に逮捕されて、処刑されてしまうかもしれない、そうなっても私は悔いはない……お前と結ばれることは許されないんだ」
-
「違いますよ」
静かにアインスの言葉を遮る。浮ついて、焦点が定まらなくなっていた瞳がきゅっと絞られ、アインスの肩が震えあがったのがわかる。
シーツにぽたぽたとしずくが落ちて、染みをつくりつつある涙を、クロノは顔を近づけ、そっと腕を毛布から抜いて、指先で拭う。
「確かに僕は管理局員です、執務官です。でも法律は絶対じゃない、法律を作るのは人間なんです。そして人間は、自分で自分を作り替えることができるんです。
未来のために、これから生きていくために、僕は、アインスさんを助けたいんです」
「う……あ、クロノ……でも、私は……」
「僕が願うのは、自分の気持ちに整理をつけることです。けして、闇の書を叩き壊してそれでせいせいした、というような解決の仕方をするつもりは全くありません。
そんなことをしても、天国の父さんが喜ぶはずは……すみません、陳腐な言い方ですね。とにかく、僕は僕の意志で、アインスさんを助けたいと思っているんです。
これは僕の本当の気持ちです。もし闇の書のせいでアインスさんが苦しんでいるのなら、それを救うことも、闇の書事件の解決方法のひとつです」
抱き合っている距離をいったん離し、腕を動かすスペースを空けてから、アインスは右腕を毛布から抜いて、腕で顔を拭った。
涙でくしゃくしゃに濡れ、崩れているだろう表情を、クロノに見られることがまた悲しい。
クロノに、自分の弱い姿が見られてしまうことが情けない。自分は、何もできない。ただ図体が無駄に大きいだけで、頭の中は、心の年齢は駄々をこねている子供と同じだ。
そう思うとますます涙があふれて止まらない。
あまり声を上げてしまうと、はやてたちに聞こえてしまう。夜遅い時間だし、大きな物音はたてられない。
クロノはベッドの上で身体の姿勢を仰向けから横向きになおし、アインスと抱き合えるようにする。
「来てください……」
「クロノ……」
腕を掲げ、アインスを抱き寄せる。クロノの胸に、アインスが抱かれる。アインスを抱きしめる。自分よりもずっと大きな大人の女性を抱く。
精いっぱいの慈しみを持って。
たとえ彼女にどんな身の上があろうとも、クロノはアインスを愛する。
その意志を貫き通そうとしたとき、管理局員という身分が足枷になるならば──、そのときは、自分の命をアインスに委ねよう。
一蓮托生、アインスがきっと願っているであろう、クロノと共に生きることを、自分も願う。
「今の管理局の部隊で使われている“先代の主”という呼び名は正確ではない……彼の後、もう一人、闇の書の主に選ばれた人間がいた……それが、クライド提督だった……」
クロノの胸の中で、アインスは言葉を絞り出す。
最初に会った日、あの霧雨の舞っていた橋の上で、一緒に傘をさして川の水面を見ながら聞いた言葉。
闇の書が破壊されるよりも先に主が死んだ場合、闇の書はその場で即座に新たな主を探す。
11年前、闇の書の主に選ばれたのは、クライド・ハラオウン管理局提督その人であった。
「私は、クライド提督を救えなかった……」
「父さんは闇の書を……どう、しようとしていたんですか?主に一時的にでもなっていたのなら、さまざまなことがわかったはずです」
-
クロノの推理。たとえ自分の父親であっても、危急のときであっても、それは理性を失っていい理由にはならない。
父がどんな気持ちでいたか、それを知りたいのだ。もし父が闇の書の主に選ばれたのなら、息子である自分も、闇の書の主に選ばれるとはどのようなことなのかを理解できるかもしれない。
そうすれば、あの少女を、八神はやてを救える方法が見つかるかもしれない。
「……アインスさん……」
唇がふるえているのがわかる。言葉に出すことが恐ろしくて、悲しい。
きっと父に恋していた。アインスは、クライドを愛していた。たとえ既婚者で、家庭を持っていたとしても、その頃の彼女にとってはエスティアの艦内だけが彼との世界のすべてだった。
再びクロノの胸に顔を埋め、嗚咽を漏らすアインスを、クロノは腕いっぱいに優しく抱いた。
アインスがなぜ、話すことをためらっているのか、クロノは考える。自分に話すことができない理由、教えることができない理由。それを口に出せば、自分に嫌われてしまうかもしれないという恐怖。
それを口に出すことは、自分への裏切りであるかもしれないという恐怖。これを話したら、クロノを裏切ってしまう。
アインスはそう考えているのかもしれないとクロノは思った。
「アインスさん、僕は……どんなことがあっても、アインスさんを受け入れます」
そう口に出すこと自体にも、クロノにも不安はある。いくら覚悟していても、自分の予想外のことを打ち明けられるかもしれなくて、そうしたら自分はショックを受けるかもしれない。
だけど、それでアインスのことを知らないままでいる、知ろうとしないままでいることは、これもまたアインスに対する裏切りであるとクロノは考えていた。
クロノが考えうる最悪の事態、エスティア乗組員に総員退艦が下命されたとき、クライドを見捨ててしまったのだという事実──それが事実としてあったかはともかくアインスはそう認識しているのかもしれない。
父親を見捨てておいて、その息子にのうのうと近づく、それは糾弾されることだ。
自分が、アインスを嫌いになってしまうことが怖いのだ──そうクロノは思った。
だから、どんなことがあってもアインスを嫌わないと約束する。そう言葉に出して、アインスを安心させる。
アインスが打ち明けなければならないこと、それはほかでもない自分が闇の書であるということだ。
管制人格、という部品ではあるが、それはあくまでも闇の書内部でのプログラムの分類なので、外から見たときにはその区別はあまり意味をなさない。
自分がクライドを殺したようなものだ。闇の書の暴走は、管制プログラムである自分に責任がある。
クライドを、守りたかった。
守らなければならなかった。クライドを、死なせてしまったのは自分の責任だ。
クロノにとって、もはや感情の大部分を占めているのはアインスを愛したいという想いだった。家族、両親、幼馴染、それらは心の中で薄れていく。
本局で仕事をして、自宅に帰った夜と、無限書庫に泊まった夜と、どちらが多いだろう。
自宅に帰っても、夕食の時間は過ぎていたし、リンディやエイミィとも言葉を交わさなかった夜のほうが多かった。
もしアインスが、かつての闇の書事件の時にクライドとの間に何を経験していたとしても、自分は受け止めなければならないとクロノは思っていた。泣いている彼女を見るとその思いは強まっていく。
闇の書が直接にクライドを殺したのではない。クライドは、闇の書の真実を知り、そしてその真実と、人類の平和とを秤にかけて、そのまま生きていくこともできたはずだが、それでもなお自らの消滅を願った。
自分が生きていたら、それは人類の破滅をもたらす。
-
アインスが言う、クライドを救えなかった、というのは、すなわち闇の書の真実に耐えられなかったということである。
「父さんのことを、本当に……大切に思っていたんですね」
「……うん……」
小さく、子供のようにか弱い声。アインスを、助けたい。それは、心の重荷を取り除くことである。アインスを苦しめている罪の意識を取り除いてやることだ。
そしてそれができるのは自分しかいないと、クロノは思っていた。
クロノの腕の中で、アインスは涙を流して言葉を振り絞る。喉が詰まるような呻きと、ぎゅっと縮こまった肩。クロノの胸にすがりついている。
「止めたんだ、止めようとしたんだ……でも止められなかった、クライドは、自らも道連れに闇の書を」
アインスの声が一段と悲痛さを増し、クロノが抱く力をわずかに強めたとき、アインスの身体の向こう、部屋の壁の向こう側に、巨大な魔力が発生したのが感じ取れた。
クロノはとっさに身体を起こし、アインスも言葉を途切れさせる。
強大な魔力反応だ。待機状態にしていたS2Uと、アインスの持ってきていたブレスレット型デバイスがそれぞれに警告アラームを発している。
この付近にあるもので、魔力を発することのできる装置はひとつしかない。
「闇の書──!」
魔力反応の源が移動しているのをクロノは感じ取った。魔力光は可視光線領域以外にも全波長領域にわたる電磁波を放出するため、たとえ遮蔽物の向こうでも感覚の鋭い人間なら感知できる。
さらに空振が起き、窓ガラスがチリチリと震える音が聞こえた。
「はやてさんが──!」
クロノはベッドから飛び降り、S2Uを手に取った。もし闇の書が戦闘モードで起動したのなら、なんらかの脅威が迫っていることが予想される。
自分たち以外の管理局部隊が独自に──あるいはグレアムやリンディの命令を受けて──やってきたか、それとも、別に闇の書と戦っている勢力や、野生の魔法生物が引き寄せられてきたか。
どちらにしても市街地である。民間人への被害を避けなければならない。
「クロノ、こっちに来る──!」
アインスが声を上げ、部屋のドアが開いた。ドアの向こうから漏れ出す魔力光が上下に移動している。
闇の書が浮遊して、自らドアノブを押してドアを開けた。
闇の書はゆっくりと、表紙の金十字をこちらへ向けて、クロノとアインスに向かって空中を進んでくる。
「ちょっ、ま、待つんや!止まるんや、闇の書!」
「はやてちゃん!」
車椅子に乗り移る暇もなかったのか、床を這いずってはやてが、それからシャマルが走って後を追ってきた。明らかに強い魔力を放っている闇の書に、二人も手出しできない。
闇の書はさらにクロノに向かって移動し、距離およそ1.5ヤードまで接近した。
-
S2Uはまだ待機状態にしている。この場でデバイスを戦闘モードに切り替えれば室内の破損は免れない。
「どうしてや!あかんって、こんなとこで、ん、わっ!!」
手のひらでフローリングの床をつかみ、這ってきたはやてはすがるように空中の闇の書に腕を伸ばす。
はやての手が触れた途端、闇の書はシールド魔法を展開させ、本の表紙をつかもうとする動きをしていたはやての手がぶつかった。
シールド魔法が展開する防壁は、壁面そのものは透明で実際に目に見えているのは魔法陣が放つ魔力光のため、魔法の感覚を持っていなかったはやては何もない空中のつもりで勢いよく手を突き出し、シールドにもろにぶつかってしまった。
「はやてちゃん、いけない!」
「あたっ……!」
シールドにぶつかって虚を突かれたはやてがしりもちをつき、シャマルがあわてて背中を押さえる。ザフィーラとシグナムも駆け付けたが、この間合いでは攻撃できない。
「くっ──うあっ、あああっ、うわあああああっっ!!」
クロノの斜め後ろで、アインスは床に取り落としていた自分のデバイスを掴み、起動させた。
間髪を入れず闇の書がそれに反応する。ばっと音を立ててページを開き、拘束魔法の術式を起動させる。
闇の書自身の詠唱動作は本を開いてから使う魔法が記録されているページを検索し、さらに行と桁にカーソルを合わせる動作が入るため、詠唱開始から発射までのタイムラグが比較的大きいが、アインスの持っているデバイスも携行型としては起動速度が遅かった。
右腕に装着したブレスレットが紫色の触手を空間に形成すると同時に、闇の書のページ上に展開された魔法陣から黒色のリングバインドが放たれた。
「うがッ……くっ……!!」
リングバインドはアインスの右手首のあたりに命中し、腕を空中に固定して押さえ込んだ。
みしり、と骨がきしむ嫌な音をクロノは聞いた。バインド魔法は、通常は警察や法執行機関において被疑者捕縛用として使われるが、出力を上げていけば文字通り人間を絞め殺すことも原理としては可能である。
「アインスさん!くそっ、闇の書が自分で!?──っ、は、はやてさん!今、魔法の制御は……」
クロノはとっさに叫んだ言葉がミッドチルダ語になってしまった。かぶりを振り、思考を切り替え、日本語ではやての名前を呼ぶ。
「どっ、どうしようシャマル、これ、どうにか止まらんの!?このままじゃ……」
シャマルも困惑している。闇の書が、アインスを攻撃している。リングバインドはさらに張力を高め、魔力光の向こう側でアインスの手首を締め付けている。
「くっ……クロノ、離れろ……!は、やて、さん……離れて、ください……!!」
「主、下がってください!ここはわれわれが!」
「シグナム気を付けて!」
駆けつけてきたシグナムがレヴァンティンを起動させ、シュベルトフォルムで構える。
闇の書の突然の行動に、守護騎士たちは動揺を隠せない。仲間であるはずの闇の書が、自分たちのいうことをきかない状態。闇の書の主であるはやての命令をすら、闇の書は無視しているように見える。
ザフィーラとシグナムは念話回線による闇の書の制御回路への介入を試みていたが、アクセスは受け入れられず、権限が不足しているという意味のエラーが返された。
-
レヴァンティンはもともと、刀剣型アームドデバイスの中でも地球でいうファルシオンに近い特性を持ち、刃よりもその重量による打撃が攻撃力の多くを占め、手元での細かい制御がしにくい。
どちらにしても室内では、他のモードは使えない。このまま振りかぶって闇の書を叩き落とすしかない。
「がッ……く、この……Wachter der Rache, wahr freiheit……!!」
リングバインドで拘束されたまま、アインスはデバイスへ術式詠唱トリガーを打ち込む。
ブレスレットから生えた触手が4本に増え、バインドの圧力を振り切って押し返し始める。闇の書は魔法陣を拡大するが、バインドの出力が一定以上に上がらないらしく魔法陣の直径が1メートルほどになったところで止まった。
広がる触手は半透明で、部屋の壁や天井に濃い紫色の影を投げている。
アインスの右腕から放たれる触手がうなりをあげて闇の書に殺到し、展開されたシールドを貫いて、本を四方から串刺しにした。
後ろ上方からの触手が背表紙を砕き、下前方からの触手が中紙を払いのけ、革の表紙を貫通して固定する。
砕けたシールドが魔力残滓を散らし、急速に魔力反応が弱まるのをS2Uのセンサーが観測した。
はやてとシャマルが目を見開いて息をのみ、シグナムは慎重にレヴァンティンを構える。直後、リングバインドが砕け、アインスの右腕が解放された。
触手は闇の書をがっちりと捕まえたまま、床へ押さえつける。
闇の書はしばらくの間、触手に逆らって浮上を試みていたが、やがて数秒して、あきらめたように魔力光を停止した。
部屋は、再び静寂に包まれた。
闇の書が完全に停止したことを確かめ、アインスはゆっくりと触手を引き抜く。クラナガン上空の時のように、捕まえられたまま抜けなくなることはなかった。
4本の触手は再びアインスの右腕のブレスレットに戻り、手甲部分に埋め込まれたクリスタルに格納された。
背中から倒れかかったアインスをクロノが支え、抱き起こす。
はやてはおそるおそる、床に落ちた闇の書に近づいた。シグナムはレヴァンティンの切っ先を闇の書に向けて警戒する。
「止まっ……たん……?」
闇の書は表紙を上にして、真ん中あたりのページを開いた状態で床に伏している。
背表紙の上端は破けて糊が露出しており、表と裏それぞれの表紙はほぼ中央に穴が開いて、革がちぎれたように延びている。表紙の材質は薄い銅板をボール紙と革で覆っており強度を持たせているようにみられた。
「アインスさん、大丈夫ですか!?」
駆け寄ったクロノは、アインスの右手をとった。バインドで締め付けられた手首は内出血を起こしていたが、骨へのダメージはなんとか避けられたようだった。腱や靭帯が傷んでいないかどうかを、指を当てて確かめる。
手を伸ばそうとするはやてを制し、シグナムがまず闇の書に触れて安全を確かめる。
少なくとも自分たち守護騎士が生きているということは、書が完全に破壊されたわけではないということだ。
-
「闇の書は……コアを叩いた、か……」
「シグナム、どういうことなの?」
「内部の──魔術回路のみを切断された状態だ。意識はあるが、魔法の行使だけができない状態だ──」
「──わたし、たちは」
「守護騎士システムそのものはダメージはない。闇の書自身が魔法を使う機能だけが停止された」
シグナムの言葉に、シャマルは慎重に、はやてとアインスとクロノとを交互に見やっている。
これほど的確な攻撃をできるとは、何者だ。やはりこの銀髪の女は、闇の書の管制人格、本の旅人。でなければ、闇の書のほかの部分にダメージを与えずに魔法だけを止めるなどできるはずがない。
「Starten Besserung」
続けて打ち込まれたアインスの詠唱トリガーに、闇の書の破損部分に再び黒色の魔力光が灯る。
通常のデバイスコールドブート手続きが開始され、あらかじめ設定されたBIOSコンフィギュレーションに基づいてシステムチェックが行われる。
魔法陣に浮かび上がったベルカ語のメッセージから、魔術回路の破損を認識して標準出力回路へ切り替えたことがシャマルには読み取れた。
闇の書の、デバイスとしての構造をも理解して攻撃ポイントを絞ったということである。
あの触手型デバイスによって破壊したのはあくまでも筐体たる紙のページであり、内部に格納されていた、蒐集済みのリンカーコアや術式のデータは無傷である。破損個所のスキャンが始まり、エラー未検出、ベリファイ完了という結果が出力された。
すべての起動処理が終わり、闇の書は通常稼動状態になって魔力光をアイドリングさせている。
はやてはそっと、闇の書を持ち上げる。
ページには、何かわからない文字──ベルカ語、というらしい──が印刷されており、ほのかに蛍光を放っている。
もう、シールド魔法は展開されていないようで触っても大丈夫だ。さっき手を伸ばしてシールドにぶつかったときに手首をすこしくじいたらしく、曲げようとすると若干痛みがあるが、湿布を貼っていればすぐ回復しそうだ。
「──貴女は、何者だ」
「シグナム──?」
レヴァンティンを鞘に収めず、そのままアインスに向ける。クロノはとっさにアインスの前に腕をかざし、かばう姿勢を取る。
「少年よ──きさま、この女が何者かわかっているのか」
「ちょ、し、シグナム!?なにするん!?」
「主は黙っていてください!この男は、危険です」
「い、いきなりなにをいいだすんや!?このひとらは闇の書に連れてこられて……」
レヴァンティンの刀身が、月明かりを浴びて青白く輝いている。
デバイスを待機状態から起動状態に切り替えただけであり、魔力付与はしていないが、それでもアームドデバイスはその筐体自体が武器になる。刀剣としての打撃能力、切断能力を持っている。
クロノも待機状態のS2Uを持ったまま、これを起動させるか思考を巡らせる。ここでデバイスを起動すれば、それは交戦の意思があると取られるだろう。
しかし、このシグナムという女が、明らかにアインスに敵意を向けていることが見て取れる。
管理局員だと気付かれたのか。だとして、こちらから名乗るか、それとも。
-
「クロノ──」
意を決し、クロノはS2Uを床に置いた。デバイスを手放すということは、魔法を撃てなくなるということだ。それは武器を捨て、丸腰であることを示すということだ。
「おまえ──っ、やっぱり、あたしの思ってた通りだ!はやてには近づけさせねえ!はやてはあたしたちが守るんだ!」
シグナムの後ろで、遅れてやってきたヴィータもウォーハンマー型のデバイスを構えている。
クロノは膝をついて身体を起こし、アインスをかばう位置で、シグナムの前に立って、両手を挙げた。
これは次元世界でも、降伏の意思を示す。シグナムは油断なくクロノの眼前にレヴァンティンを突きつける。
「管理局──の人間だな」
シグナムの言葉の方が早かった。クロノは何とかこらえたが、背後で、アインスが狼狽える表情を見せたのがわかった。
これでもう言い逃れはできない。
事情がどうあれ、管理局が闇の書に対峙する──その目的を、彼らヴォルケンリッターは自分たちの推測を疑いはしないだろう。
「く、クロノ……わたし、は……」
「やめえや!!」
アインスの震える言葉と、はやての怒りと悲しみが混じった言葉がほぼ同時に響いた。クロノは心臓がすくむ感覚を味わい、シャマルが困惑の表情を、ヴィータが驚愕の表情を浮かべている。
「シグナム、剣をしまえ!」
「しかし、主」
「しまえゆうとるんや!!わたしのいうことがきけんのか!!なんで、なんでいきなり剣だして、こんな乱暴して、なんでなんや!!
あやまれ!!シグナム、クロノさんにあやまれ!!」
「主──っ」
はやては泣いていた。何も事情を知らない、愚かな人間の子供であっても、守護騎士は闇の書の主に逆らえない。
車椅子を部屋に置いてきてしまったので、はやては腕を使って身体を動かし、足を横に折って、クロノの前に手をついた。
-
「ほんまに、もうしわけありませんでした……みんな、私が悪いことです……」
ヴィータももはや詰問できなかった。およそ半年弱の間、この八神家で共に暮らしてきて、はやてがここまで激昂したことなど初めてだった。
いつも、9歳とは思えないほど落ち着いた、優しい振る舞いをしていたはやてが、怒声を張り上げてシグナムを叱った。
シグナムは、レヴァンティンを待機状態に戻し、そのまま放り投げるように床に落とした。
部屋の外の廊下でヴィータも、ザフィーラに促されてグラーフアイゼンを待機状態に戻した。
頭を下げ──ミッドチルダではその作法がないが、日本でいうところの土下座である──じっと恭順の意思を示しているはやてに、クロノは膝をついて身体をかがめ、両手を挙げた状態のまま、そっと語りかけた。
「こちらこそ、事情を説明せずにすみませんでした──彼女の、シグナムさんの言うとおり、僕らは、管理局という組織の人間です。
ミッドチルダという世界に、闇の書が現れ、戦闘になりました。その最中に、闇の書によって、ここへ飛ばされてきたのです」
今夜、この部屋のベッドで眠りについた時よりも、クロノの感情はずっと落ち着いている。
恐怖と待望。待ち望んでいたはずの、それはしかし不安。
アインスの求めていた想いが──それは心を塗り替えていくものかもしれない──自分の胸の中に確かに生まれているのをクロノは感じていた。
「クロノ──だめだ、私たちは──」
「アインスさん──僕も、今ならわかります。アインスさんは、僕のために、闇の書を止めてくれたんですよね。
僕も今、同じ理由で、はやてさんの気持ちがわかります──」
「あ……クロノ」
「僕は、父さんとは違います。父さんの背中を追いかけるだけじゃあ、いずれ足を踏み外して三途の川に落ちてしまいます。
僕は、僕だけの意思を、自分の意思を持って生きていくんです。それは、アインスさんも、同じですよね──
はやてさんに会いたかった。ある意味で、父さんの跡を継いでいる人なんですから。アインスさんのおかげで、僕は自分の本当の気持ちを整理できました。
だからここに来たこともきっと、いいことだったと思っています。はやてさんに会えて、僕はうれしいです」
「は……わ、わたしに、ですか」
クロノの語った言葉の意味。はやては顔を上げ、きょとんとしている。闇の書を大事に抱え、クロノに向き合っている。
アインスは、理解した。
クロノが自分自身を、自分自身に起きていることを自覚した。そしてもう、クロノが引き返せない一歩を踏み出してしまったことに、喜びと安堵に混じった、かすかな悲しみを覚えていた。
to the next page...
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投下終了です
ドイツ語(ベルカ語)のせりふについてはウムラウトが入力できないので省略しています
クライドかんちょぉぉぉ
アインスさんはパパと息子を親子丼ですかウヒッ
そしてはやてちゃんの激怒は萌えるはやてさんもっとなじってハァハァ
ところでアインスさんのデバイスは防衛プログラムとはいちおう別もののつもりですが
まだ名無しなのでどうしようかな
もしかしたら名前をぼしゅうするかも・・・
じ、次回こそはエロスを!
ではー
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GJ!
クロノくんの心情が丁寧に書かれていて良い
男の子はいつしか家族から気持ちが離れていくものなんだ
クロノはこれで5番目のヴォルケンリッター時の騎士になるのかな
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泣いちゃうアインスがせつない・・・
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ヴォルケンズとの対決…!
管理局の執務官だとばれたクロノにシグナムたちはどう対応するのか
調教ルートか純愛ルートかここが分岐フラグのある場所だ
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1/30にユーノ祭を開催します
例によってユーノがメインならエロでもグロでもラブでもなんでも投下していいよ、って感じで。
書き手のみなさまはふるってご参加ください。
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>>154
参加させてもらい「たい」!!間に合うかはわかんないが
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昔の掲示板見たらここではそもそもトリップ使ってなかった・・・だと・・・
名前変える意味がなかった。まあ、私が私を私だと証明する必要とかないけど。
上でシュテル書く参考にGODやり直した副産物をひとつ
レヴィのオナニー
完全にオリジナルの主人公語り注意
漫画のマテリアル娘的な
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ぼくには父親がいない。
いや、他界したとかそういうのではなく、単身赴任である。
高校生二年になる時期のことだった。
ぼくには母親がいない。
こっちは他界していた。
そのおかげでぼくが家事を一手に担っていた手前父親も安心して赴任している。
そのせいで、ひとりではどうにも広すぎる一軒家にぽつねんと残されるわけだが寂しさはそう長い時期続かなかった。
おとなりさんができたのだ。
それも両隣。
向かって右隣にはテスタロッサさんが引っ越ししてきた。
えらく気難しそうなプレシアさんという妙齢の女性と、
リニスさんという家事手伝いさんらしい女性が住んでいる。
挨拶に行くとプレシアさんには凍えそうなまなざしで見下ろされたが、リニスさんがその場を取り持ってくれたおかげでその場は凌げた。
それからも、なにかとプレシアさんに朗らかに話しかけて、もあまり反応は芳しくない。
たまにテスタロッサ家から「アリシア…アリシア…」と切々としたか細い声が聞こえて怖い。
あとふたりでしょっちゅう口喧嘩をしているらしいが、リニスさんはそんな様子をおくびにも出さずに溌剌と明るいものだった。
向かって左隣には、小さな女の子が四人住んでいる。
挨拶に行くと威風堂々とした、ディアーチェちゃんなる女の子がずいと前に出てきた。
「うむ、拝謁の栄を許す。我ら紫天の一党を存分にかしずくがよい」
「王の御言葉です。『どうもご丁寧にご挨拶ありがとうございます。近所付き合いよろしくお願いしますね』とのこと」
「言うておらんわ!」
中二病らしいディアーチェちゃんの言葉を、シュテルちゃんが翻訳してくれるのが常である。
さて、この紫天一家であるが、テスタロッサ一家と出会うことでえらいケミカルスパークが起こった。
というのも、紫天一家のレヴィちゃんがプレシアさんの死んでしまった一人娘にそっくりらしい。
そしてその一人娘がアリシアちゃんという名前だった。
夜な夜なプレシアさんは、死んだ一人娘を偲んでいるのだ。
それを聞いてプレシアさんにきゅんときた。
最初にプレシアさんがレヴィちゃんを見た時、幽霊を目の当たりにした悲喜こもごもの悲鳴を上げた。
半狂乱になってしまったプレシアさんをなだめるリニスさんもまた、落ち着いていたわけではなかったのを覚えている。
「世の中には似た人が三人いますし」」
と、後になってぼくはリニスさんに慰めだかなんだか分からない声をかけた。
「それでは三人コンプリートですね」
と、リニスさんは返した。
どうも、プレシアさんの一人娘に妹がいるらしい。
名前はフェイトちゃん。
一人娘なのに妹がいるんですか、と聞くとリニスさんは曖昧に苦笑するだけだった。
そして、実はレヴィちゃんはアリシアちゃんと遠縁にあたるだとかなんとか。
えらい複雑だ。
しかしきっと世の中に似た人間が三人というのは、多分姉妹はカウントされまい。
ならば、アリシアちゃん、フェイトちゃん、レヴィちゃんそれぞれに三人似ている人がいるのだろうか。
つまりレヴィちゃんみたいなかわいい子が合計9人いるというわけである。
ひとりくれと思ったが、アリシアちゃんはすでに他界しているので8人だったので、そんな事を考えるのも不謹慎だと思ってちょっと自己嫌悪に陥った。
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さて、当のレヴィちゃんであるが、とても奔放だ。
好奇心旺盛の塊のような女の子である。
故に、探検と称してぼくの家に、竜巻のように遊びに来て(勝手に上がりこんで)嵐のように去っていく。
ディアーチェちゃんとシュテルちゃんにたしなめられてもへこたれずに遊びに来るのだ。
たまにテスタロッサ家へも突入しているらしい。
「アリシアー! アリシアー! いやあああああ! フェイト! フェイトーーー!」
「ボクはレヴィ! レヴィ・ザ・スラッシャー!」
と、絶叫と自己紹介が聞こえてくる事がある。
その都度リニスさんに叱られて紫天家に帰されてる。
それをリニスさんは、完全に悪い事ではないと思っている節がある。と、思う。
プレシアさんは、鬱々と引きこもり気質であるので、レヴィちゃんをきっかけに何かしら変化を起こして欲しいらしい。
両隣にご近所さんができてしばらくしてからのことだ。
その日もレヴィちゃんが遊びに来たので、一緒に対戦格闘ゲームをした。
レヴィちゃんはキャラクターを飛んだり跳ねたりさせて戦うのが好きなので、ぼくのガイルをずっと崩せないでいる。
癇癪を起こして床にコントローラを投げ出した。
「分かったよ、もうガイルは使わないから」
と、ザンギエフでレヴィちゃんの甘い間合いを打ち漏らしなく吸い込み続けた。
レヴィちゃんはコントローラをぼくに投げてきた。
後日、シュテルちゃんにもやってみるが、あっという間にぼくは彼女のダルシムに手も足も出なくなってしまった。
パーフェクトゲームを決められたとき、流し目のような勝ち誇ったまなざしと口元に浮かぶ薄い笑みはここ最近のぼく一番の屈辱だった。
上で「私を焼いてえええええ!」とか言ったくせに。平行世界だけど。
ところでレヴィちゃんがぼくの家に遊びに来るのにはわけがある。
エロ本目当てだ。
探検が好きなレヴィちゃんは、もちろんの事ぼくの家を物色しまくっていた。
そこでぼくが隠していたエロ本を発見するという流れは、運命の必然であっただろう。
レヴィちゃんが帰った後、荒らされた部屋の中で唯一きれいなままだったエロ本ゾーンに、ぼくはなんとも言えない気持ちになったものだった。
外で遊ぶのも好き。ゲームで遊ぶのも好き。
そんな少年然としたレヴィちゃんが、エロ本に興味を示さずにはいられるか?
否である。
それからである。
レヴィちゃんが遊びに来てゲームをしている最中なんかに、
「ちょっとコンビニ行ってくる」
なんて適当な理由をつけて出て行った振りをして、エロ本を読みふけるレヴィちゃんを眺めるのが楽しみになってしまっていたのは。
「わ、わ、すごい…こ、こんな…!」
ぼくの部屋で、レヴィちゃんの声。
ベッドの上にちょこんと座って、紙面に食い入っているのを、ぼくはドアの隙間から視姦する。
いや、見守っているだけだ。
ぼくの視界には、レヴィちゃんの背中しか見えないが、その顔が真っ赤で、その胸が早鐘を打っているのはありありと分かる。
「…ここにこんなのが入るのかぁ」
レヴィちゃんがスカートをまくり、ショーツを半脱ぎにしたのが見えた。
本は片手で持っている…今、おそらくもう片方の手で、その幼い女性器を広げているのではないだろうか。
ぼくのベッドの上で。
……、……、……うむ!
-
「おっぱいも、いつかこんなにおっきくなるといいな……」
真剣な様子でエロ本中の大人の女性の胸部に羨望の眼差しを送っているレヴィちゃんの声に、幾分しっとりとしたものが混じる。
そして、下半身だけでなく上半身もレヴィちゃんははだけだした。
あらわになった雪のように白い背に、さらりと長い青髪が零れている様子はどこか非現実的な美麗さがある。
そしてぼくからでは見えない向こう側では、まだまだふくらんでいない胸をきっとレヴィちゃんはいじっているのだろう。
「ぅん…」
自身をまさぐる腕と連動して、耐えるような声が漏れる。
何かを指で弾くたび、背が震えているのが分かる。
無論、胸部で敏感な部分であろう事はもはや言うまでもない。
ちろりと、指をなめる仕草をレヴィちゃんがはさむ。
唾液により円滑に性感帯をなぞる目的だろう。
案の定、レヴィちゃんから漏れる声のトーンが高くなった。
「吸って欲しい…」
ぼくでよければ!
と、心の中だけで返事をする。
胸をいじるだけでは、物足りないのだろうか。
甘くか細くレヴィちゃんがつぶやいて、ぽふりとうつぶせになった。
それでありながら、おしりを浮かせた格好。
ショーツが足にひっかかったまま、丸々として健康的なおしりを突き出すレヴィちゃんの媚態は絶景だった。
それは、ぼくに対して秘所を突き出している格好でもあった。
そしてレヴィちゃんはそろり指を股間に持ってゆく。
ふっくらぷにぷにしているおいしそうな恥丘をマッサジージする動きは、まずはおそるおそる。
それが淫靡ななめらかさを得るには時間をかけなかった。
枕に顔を埋め、うめきながらレヴィちゃんが震えている。
見えないが、きっと胸の突起もいじっているのだろう。
すでにしとどな秘所の愛液が指に絡まり、いよいよいやらしく蠢く指が陰核に触れた。
「ひぅ!」
びくりとおしりがひときわ持ち上がる。
それはまるで指から反射的に逃げるよう。
だが指もおしりもどちらもレヴィちゃんのものだ。
淫らに激しく、中指が陰核を包皮越しに押しなでる。
扇情的なレヴィちゃんの鳴き声が、ぼくの枕にうずめた口から漏れているのが聞こえる。
ひときわ乱暴に中指が動いた。
途端、レヴィちゃんのその身が硬直した。
達したのは明らかだ。
二度、三度レヴィちゃんの身が痙攣してから脱力する。
秘所から滴るしずくは、上手い具合にショーツが受け止めてぼくのベッドはきれいなままである。
それからしばし、ぴくりともしなかったレヴィちゃんがぼくの枕から顔を上げる。
ほうけた顔をしているのか、とろけた顔をしているか、それともぼくたち男性のように賢者の境地にいるのか。
「わ、しまった!」
それからレヴィちゃんが、あわてて枕をひっくり返す。
後で確認したが、よだれがたっぷりしみこんでいたのだ。
噛み跡もあった。
ぼくの枕が宝の価値を付与された。
それから、ほほえましい気持ちで音もなく玄関まで足を運び、ちょっとだけ間を作ってドアを開閉するのがもうパターンとなっている。
…ふと、抜き足差し足で後にするぼくの部屋から、レヴィちゃんの声が聞こえた。
「ゲームだけじゃなくて、この本みたいなことをボクとしてくれないかな…」
ごめんねレヴィちゃん。
ぼくは熟女派で、プレシアさん狙いなんだ。
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終わりです。
紫BBAと紫天家が隣とか想像しただけで垂涎。
そんな私的な趣向100%
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貴方だったのか……
レヴィ可愛いよ、レヴィ
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紫ババアやめれwプレシアかあさんから少女臭がしてしまうw
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処女厨と売れ残り、これいいわ
かなり抜ける
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熟女派だと自分に言い聞かせて理性を保っているんだな、きっと
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プレシアさんが若返って復活、というネタどっかで見たような…ユーノスレだったかな?
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風呂入って冷静に考えたが、
レヴィなら覗き見てる気配くらいすでに察知しているに違いない
つまりわざと見せているのでは
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タピオカさんの筆致は毎度毎度本当に冴えておられる。
読むたびに嫉妬の情を禁じえない。
このような面白い作品の後では気が引けますが、1/30のユーノ祭の前哨戦代わりに投下します。
短編、壊れギャグ、キャラ崩壊、ユーなの、タイトル『如何にして高町なのははユーノ・スクライアと結婚したかについて』
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如何にして高町なのははユーノ・スクライアと結婚したかについて
「ねえユーノくん、これはどういう事かな」
「……」
般若の如き憤怒の顔をした高町なのはは仁王立ち、肉食獣を前にしたフェレットの如く萎縮したユーノ・スクライアは正座していた。
果たして何事があったのだろうか。
両者の立ち振る舞いからして、怒る側怒られる側はきっちり分かれていた。
巨乳を強調するかのように腕を組み、般若のオーラを滲み出すなのはは、視線をユーノの足元に送る。
そこには数枚の写真が鎮座していた。
映っているのはヴィヴィオだ。
学校での画らしく、校舎らしき場所で制服姿であった。
しかし問題はそこではない。
ふわりと風に舞うスカートの裾の下にもぐりこみ、あられもない下着を覗いていると思われる不埒者の姿も映っていた。
それは人の姿ではなかった。
フェレットだった。
「ねえ、これってユーノくんだよね? そうなんだよね?」
「……」
沈黙は肯定の表れと言えた。
つまり彼はフェレット姿となってヴィヴィオのぱんちゅを見ていたというのである。
いや、そこにある写真は一枚ではない。
他の写真にはサンクトヒルデ魔法学院における、女子と、その周囲に『たまたま』居るフェレットの姿があった。
これらの事を別個に完結したものと考える事は理論的に不可能である。
極めて冷静に、そして客観的に憶測するならば、結論は一つ。
「ねえ、ユーノくん……」
なのはがユーノを見下ろす視線は、実に冷ややかだった。
氷のように冷たく、かみそりのように鋭い。
これから屠殺場に連れて行かれる豚を見るような目だった。
いや、ユーノくんはフェレットなのだが。
それはともかく、場をしばし沈黙が支配した。
重く、全身にのしかかるような空気。
それを破ったのはユーノだった。
「なのは」
「なに?」
「もう、この際だからはっきり言うよ」
「うん」
「僕はね、僕は……僕は」
すぅ、と空気を肺へ送り込み、一拍、ユーノは声を大にして叫んだ。
「ロリコンなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ぉぉぉぉ、と、伸ばされた語尾が部屋に木霊した。
それは魂の暴露であった。
ロリコン、ペドフィリア、幼児性愛者。
呼び方は数多あれど、その意図するところは一つである。
その種の性癖の持ち主とはつまり、子供に欲情する類の変質者だ。
そしてユーノもまぎれもなくその一党に属する真性のロリペド野郎だったのだ
「つまり、ユーノくんはヴィヴィオに」
「そうだよ。あのかわいい……純真無垢な幼女を見ていたらとても我慢できなくなって……ぱんちゅとかお着替えとかを見につい、昔の変身魔法を使って、ね」
どこか遠いところを見つめ、ユーノは切々とそう語った。
まるで掴めぬと知りながら太陽に手を伸ばすイカロスのように悲しく、女子高生の尻をまさぐる痴漢オヤジのように情けなかった。
「こんな僕を、軽蔑するかい?」
「ううん、別に」
「……え?」
意外な答えに、ユーノが声を裏返す。
-
当然なのはは自分を罰する為に来ていると考えていたから当たり前だ。
しかしなのはの二の句はさらに驚くべきものだった。
「ユーノくんがロリコンだっていうのは大体あたりをつけてたから、それほど驚いてはいないんだ」
「ええ!? い、いったいどうして僕がペド趣味だって知ってるんだい!?」
「だってユーノくんの書庫のデータって小さい女の子の写真ばっかじゃない」
「ななな、なんでそのトップシークレットを!」
「教導官の権限を使って」
「ひ、ひどいよ……いったい、どうしてなのはが僕のプライベートをそんな詮索するのさ」
「分からない?」
ふふ、と蠱惑的に微笑み、なのははユーノに顔を近づけ……そっと頬にキスをした。
「うわ!」
ユーノは驚きのあまり飛びのく。
そんな彼を見ながら、なのはは微笑んで告げた。
「私、ずっとユーノくんの事が好きだったんだよ? だから、ユーノくんの事色々調べたの。ずっと傍にいるのに、ぜんぜん私に興味ないみたいだから、そしたら案の定そんな趣味で」
「それを知っているなら話が早い。僕は無理だよなのは。僕は……僕はもう成人してBBAになったなのはを愛する事はできないんだ! せめて十二歳までなら!!」
血涙を流さんばかりの勢いでBBAは嫌だと叫ぶユーノ。
もはや彼は完全な社会不適合者と呼べるだろう。
愛するべきは幼女のみなのだ。
斯様なHENTAIさんを、普通の人間ならば即ポリスへぶちこむところだが、しかしなのははユーノを愛していた。
愛は盲目、とは言うものの実際なのはも少し彼の性癖には引き気味だったが、愛する者を救いたいという想いはあった。
「もう、ユーノくんったら本当にどうしようもないドロリコンで治療の余地はない不治の病だね」
「病とは失敬な! 若く瑞々しい子に引かれるのは自然の本能と言って欲しいね」
「そういうところが余計に頭おかしいよね。でも安心してユーノくん、私すごく良い解決策を見つけたから」
「か、解決策……?」
果たしてこの世にロリコンとまっとうな人間社会に折り合いをつけさせる方法などあるのだろうか。
もしあったとしたらそれは世紀の大発見な気もする。
なのはは自信満々といった顔ををして、すっと手を上げた。
指先に仄光る淡いピンクの輝き、魔力の閃光が陣を生み、術式を構築する。
体を包み込む魔法が、一瞬にしてなのはの姿を変えた。
ぱぁ、と光り輝きながら現れたのは、先ほどまでよりずっと小さくなったシルエットだった。
「な、ななな、なのはぁ!?」
「ふふ、どうかなユーノくん。似合う?」
ぱちりと挑発的なウインクをして微笑むなのはの、その姿は幼かった。
ユーノと初めて出会った時と同じくらいの、九歳ごろの容姿。
ツインテールに髪を結い、未発達な肢体を白いバリアジャケットに包んだ魔法少女。
あまりの可愛さにユーノは勃起せざるをえなかった。
股間の前をぱんぱんにしながらユーノはしりもちをつく。
「か、がわいいいい」
「えへへ、ありがと。おちんちんをびんびんにして感動のあまり涎を垂らしながら言われてもちょっとキモいけどいちおうお礼は言っておくね」
その顔のあどけない笑顔とは裏腹にずびずば鋭い本音を言うなのは。
きっとマゾッ気の強い御仁ならばこれだけでご飯三杯はいけるだろう。
かくいうユーノももろにマゾマゾなのでさらにチンコが大きくなった。
しかし彼の脳裏に恐るべき想像が過ぎる。
「ねえなのは、ちょっと聞いていいかな」
「なに?」
「もしかして君はその宇宙一素敵な幼女姿で僕を篭絡しようという魂胆じゃぁないだろうね」
「うん、正にその通りだけど」
「NOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」
ユーノは叫んだ、それは魂の慟哭であった。
「なんでそんなに拒絶したそうな声を上げるの?」
「当たり前だよ! いいかい? 僕たちロリコンってのはね、真にロリな……正真正銘の幼女が好きなんだ。君みたいに外見だけ魔法で子供になったBBAになびくなんて邪道だよ!!」
「ふぅん、それは難儀な事だね。でもユーノくん」
「な、なんだい?」
「私とエッチしたいよね?」
「〜ッッ!!」
次の瞬間目にした光景にユーノは思わず我慢汁を溢れさせた。
あろう事かなのはは純白のバリアジャケットをするりと肌蹴て、その瑞々しい肌を晒したのだ。
眩い肩口が見せ付けられ、さらには下に着ていた衣装まで。
-
それは紺色の水着、いわゆるスク水というやつだった。
「きゅきゅきゅ、旧スク水うううううううう!!!」
血涙を流さんばかりに歓喜の咆哮を上げるユーノ。
ロリコンにとって幼女とスク水という組み合わせは、前田慶次と松風くらい最強の組み合わせに等しいのだ。
もちろんなのははそれを知っていてそんな格好をしている。
「はは、ユーノくんのちんちんさらにおっきくなってるよ。ほんとヘンタイさんだなぁ。でもいいよ、そのヘンタイなところもまとめて愛してあげるから」
「ぐ、ぐぬぬぬ……」
「我慢しないで、ね? 私のこと好きにしていいよユーノくん」
「い、いやしかし……中身がBBAだし……いくら幼女でも」
「もう、ヘンタイのくせに頑固だなぁ。じゃあ、最終兵器使っちゃうよ」
「さ、最終兵器?」
ふっと微笑み、なのはは一歩ユーノににじり寄って、そっと唇を開いた。
「私とエッチな事しよ? ユーノ・お・に・い・ちゃん♪」
「〜〜〜〜ッッッ!!!!」
一語一語を区切るように告げられた、お兄ちゃんという言葉。
そう、お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
全宇宙のロリコンにとってロリから言って欲しい言葉ナンバーワンに輝くアルティメットワード。
しかもCV田村ゆかり。
純白の魔法少女で。
これに抗えるロリコンなどこの世に存在しなかった。
「うっひょおおおおおおおおおおおおお!!!!! ウィイリイイイイイイイイイイ!!!!!!!!! もう中身BBAでも関係ねエエエエええええええええ!!!!!!」
血走った目でとうとう理性をかなぐり捨てたユーノはついでに服もかなぐり捨てて細っこいロリボディへとダイブした。
「きゃぁ〜! いけないお兄ちゃん♪」
そんな彼に組み伏せられ、なのはの楽しげな悲鳴が響く。
こうしてユーノはなのはを手に入れた、というか既成事実によりなのはの所有物となるのであった。
それが事の経緯であった。
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投下終了。
まともなユーなの好きのかたがたごめんなさい!!!!!
ユーノ祭にはまともなのを投下します。
たぶん。
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これは「まともなユーなの」好きには噴飯もののヒドイ作品ですね。
え、ユーノがなのはに掘られる話を書いたお前が言うな?
「まともじゃない」ユーなの好きなのでモーマンタイです。
そんなわけでシガー氏にはGJを送らせていただきます。
さて、祭に間に合うよう私もヒドイ話を書くとしよう。
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GJ!!
ロリ淫獣
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GJ!
むしろ俺はショタユーノくんをがっつんがっつん堀たいです
権力者になってユーノくんを性的な意味でも政治的な意味でもバックアップしたいです
けつまんこで俺の子を孕めユーノ!
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こりゃひどい(褒め言葉
めっちゃGJ
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こりゃなのはさんが実は極度のショタコンで変身魔法をユーノきゅんに使わせる未来もあるでぇ…
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なのはさんフェレコン説だって!?
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フェイト・レズビアン・コンプレックス!?
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ユーノに男子更衣室の盗撮写真を要求するなのはさんか…
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なのはさんとヴィータが空戦魔導師なのにスカートのままなのは、見られて興奮する性癖だから
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