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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆

1名無しさん@魔法少女:2012/12/13(木) 00:09:44 ID:6hLPLV4A
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。


『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

前スレ ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1341065580/

275タイトル『星光さんがやってきて』:2013/02/02(土) 13:09:47 ID:WePCPrRA
 その日、ユーノは久しぶりに我が家へと帰ってきていた。
 エクリプス関係の問題はあれど、ユーノの努力の結果、無限書庫は相当整理が行き届くようになっており、よほどのことがなければ司書長であるユーノが出張る必要もなくなってきた。
 それに、重要参考人が何人も連行され現在六課も一段落したため、余裕も出てきたのもあるだろう。
「ん〜、今日はゆっくりとお風呂に入って、たっぷり寝よう」
 ふっふっふ、とユーノは笑う。久しぶりの休みの間に存分に羽を伸ばそうとしていたら、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「はーい?」
 折角の休みなのに、誰だろうと思ってユーノは応対のために玄関へ向かう。そして、ドアを開ければ……
「お久しぶりですね師匠」
 落ち着いた声。茶色いショートカットに蒼い瞳以外は自分のよく知る幼馴染と殆ど変らない姿。
「シュ、シュテル?」
 そこに遥か遠き地に旅立った星光の殲滅者、シュテル・ザ・デストラクター(大人.ver)が立っていた。

 とりあえず、シュテルの登場にユーノは混乱しながらも彼女を部屋に招き入れた。
「へえ、エルトリアからこっちに来ることができるようになったんだ」
「ええ、まだ長い時間は無理なのですが」
 そう、エルトリアの環境もだいぶ環境改善が進んできた。おかげで彼女たちも少しの間ならエルトリアから離れることができるようになった。といっても長くて数日程度ではあるが。
「他のみんなは?」
「今は特務六課にいますよ」
 みんな元気ですとシュテルは笑った。

 一方特務六課。
「へイト、僕と勝負だー!」
「だから、私はフェイト!」
 相も変わらずアホの子なレヴィに突っ込むフェイト。
「あ、もしかして、フェイトさんの生き別れの妹さん?!」
「違うよ?!」
 半泣きになってフェイトはエリオの勘違いを否定する。まあ、そっくりではあるからそんな勘違いをされても仕方ないこともないが。
「久しぶりですねトーマ、リリィ」
 そして、ユーリは数少ないこっちの知人の一人であるトーマとリリィに挨拶していた。
「えっと、ごめん、だれだっけ?」
 だが、あの出来事を夢として処理されてしまっていたトーマにとってユーリは見覚えはあるものの、名前も知らない女の子としか捉えられなかった。
 誰だったかなと必死に思い出そうとするものの、霞がかっていていてしまい思い出せない。
「そんな、私のこと忘れちゃったんですか?」
「そ、そんなこと言われても……」
 うるうるとトーマを見つめるユーリにトーマは罪悪感で右往左往してしまう。
「おのれ、あの塵芥、いつの間にユーリを籠絡したのだ?!」
「雛鳥はいつか巣出つもんやで」
 誤解し歯軋りするディアーチェにはやてはにやにやと勘違いを助長させるような発言をする。
 もしかしたらおもろいことになるかなあとはやてはほくそ笑む。
「あれ? シュテルどこいったのかな?」
 そして、一人相手がどっかに行ってしまったなのはは少し寂しそうだった。
 六課は賑やかだった。いろんな意味で。

276タイトル『星光さんがやってきて』:2013/02/02(土) 13:10:39 ID:WePCPrRA

 ふーんと相槌を打ちつつユーノはコーヒーを飲む。
「ところで、その姿は?」
「これは、私たちも成長するようでして、それでいつの間にかここまで大きくなっていました」
 えへんと自慢げに、いつの間にか大きくなったなのはと同じくらい豊かな胸を張る。
 へえっとユーノは驚いてから、そういえばヴィータも闇の書の呪縛から解き放たれてからちょっとだけ背が伸びたと喜んでいたことを思い出した。
「エルトリアの状況はどうかな?」
「少しずつですが、人の住める環境は整ってきています。死蝕に関してもだいぶ対策が進んできていますね」
「そっか、ちょっと安心した」
「みんなの努力の成果です。ところで師匠、約束を覚えていますか?」
 と、唐突にシュテルはそんなことを言いだした。
「約束?」
 果てなんだったろうかとユーノは記憶の糸を辿る。だが、あの時の記憶はなぜだかはっきりとは思い出せない。ユーノは覚えてないが、
 それも記憶操作の弊害だった。時間操作という超技術を隠蔽するために、大まかな記憶は残っているものの、細部は曖昧にされている。
 いつかの再会ではなく、なんかあっただろうか?
「手合わせの約束です」
「あー!」
 シュテルの言葉にユーノはやっと思い出した。かつてシュテルはユーノに負けたときにいつか師匠越えを果たすと宣言していたのを。
「できればすぐにでもお願いしたいのですが」
 今度は負けませんとシュテルは自身満々に宣言する。
「僕、実戦を離れてだいぶ経つんだけど……ま、いっか」
 せっかくエルトリアくんだりからやってきたのだ。無碍にするわけにもいかない。
 それに、シュテルにとってどうやら自分は越えるべき山のようであるし、それなら果たさせてあげようとユーノは電話を取る。
「もしもし、僕なんだけど、ちょっと訓練室貸してくれないかな? うん、ありがとう。この埋め合わせはいつか精神的に」
 と、昔馴染みに頼んで、訓練室をユーノは借りたのだった。

 翌日、久しぶりのバリアジャケットの感触を懐かしみながらユーノは準備運動をする。普段から遺跡探索などで体は動かしているものの、こういうのは久しぶりだから念入りに。
 そして、準備を終えた二人は向かい合って構える。
「師匠、戦う前に一つ提案があります」
「提案?」
 はい、とシュテルは頷いてその提案を述べた。
「負けたら勝った方の言うことを聞くなんてどうでしょうか?」
「はは、それはいいね。楽しみだよ」
 答えながらもユーノは自分が勝つ姿を想定していない。故にシュテルがどんなことを言うのかを想像した。
 真面目な彼女はいったいどんなことを言うのだろうか? なんとなくイメージ的に本を読んでそうだからなにか本を貸してほしいと頼むのか。それともエルトリア関係か。
「では、いざ!」
 そして、ユーノがいろいろと想像を膨らませていたら、シュテルが飛び出す。
「ブラストファイアー!」
「プロテクトスマッシュ!!」
 シュテルvsユーノ、次元を超えて師弟対決の火蓋が切って落とされた。

277タイトル『星光さんがやってきて』:2013/02/02(土) 13:11:37 ID:WePCPrRA

「真・ルシフェリオン・ブレイカー!!」
「うわあ!!」
 ブレイカーの炎にユーノは飲み込まれる。
 結局、ユーノの想像通りにこの戦いはシュテルの勝利であった。
 ユーノの十年以上のブランクもあるだろうが、それ以上にシュテルの成長が大きかった。
「はは、負けちゃったね」
「ですが、流石は師匠です。容易には勝たせてくれませんでした。本当に十年間前線から退いていたなんて思えませんよ」
 楽しそうにシュテルは答える。その顔には爽やかな笑顔が浮かんでいる。
 やっぱり、シュテルの表情は大きく変わらないものの割りとコロコロ変わる。そこらへんも常に笑顔のなのはとの違いかななんてユーノは観察する。
 そう言う意味では外見は似ているけど、なのはとはまた違った魅力を持った女の子なんだよなあとユーノは思っていた。
「じゃあ、約束だね。どんなお願いかな。僕にできることならなんでもするよ」
 ユーノの言葉にシュテルは考えて、それからちょっとだけ頬を赤らめる。
「で、では師匠の自宅に戻ってからでお願いします」
 なんで家に? それに、なんで頬が赤くなったのかな? とユーノは不思議に思った。
 この時、もう少しその理由を踏み込んで考えていれば……いや、すでにシュテルの提案に頷いた時点でユーノは手遅れだったのだ。

「では、師匠、お願いがあります」
「うん、なにかなシュテル?」
 自宅に戻ったユーノはシュテルからのお願いを聞こうとしていた。
 そして、ちょっとだけシュテルは躊躇してから、
「そ、その、私と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?」
「うん、わかった」
 シュテルのお願いにユーノは普通に承ってから……固まった、
 今、シュテルはなんていったかな? 結婚を前提にお付き合い? あまりに唐突な言葉にユーノは混乱する。
 いや、まてその前に今自分はそれを受け入れる発言をしてしまっていたよね?
「あ、あの、シュテル、それはちょ、ちょっと……」
 慌ててユーノはシュテルの発言に待ったをかけようとしたが、
「なんでも聞くといいましたよね?」
「うっ」
「それに頷きましたよね?」
「ううっ!」
 シュテルが一個一個ユーノの逃げ道を塞ぐ。さらには、
「ルシフェリオン」
『All right. 〈負けたら勝った方の言うことを聞くなんてどうでしょうか?〉〈はは、それはいいね。楽しみだよ〉 〈そ、その、私と結婚を前提にお付き合いしていただけませんか?〉〈うん、わかった〉』
 しっかりとデバイスのルシフェリオンに録音されていた。
「はい、謹んで承ります」
 逃げ道を塞がれたユーノは粛々とシュテルに頭を下げた。

278タイトル『星光さんがやってきて』:2013/02/02(土) 13:12:24 ID:WePCPrRA
 そして、シュテルとユーノのお付き合いが始まった。残念ながらまだ二人とも責任のある仕事を預かっている身であるために一ヶ月に一度会える程度ではあったが、ゆっくりとお互いのことを知っていった。
 ごくたまに魔王様が二人の襲撃を行ったものの、それもユーノとシュテルによってなんとか撃退されている。
「実は、初めて会った時からお慕いしていたのです」
「そうなの?」
 はいとシュテルは頷く。
「恐らく、ナノハが最初から持っていた好意に引きずられてしまったのもあるのでしょうが、あなたが私を撃ち落とした時からはっきりとあなたのことを意識しました。『この人しかいない』と」
 シュテルのまっすぐな告白にユーノは恥ずかしそうに頬をかく。あの時点でシュテルが自分のことを思っていてくれたなんて想像すらできなかったのだ。
「僕はシュテルほどはっきりとした思いはなかったと思うな。最初は君にとって失礼なことだろうけど、『なのはによく似た女の子』程度の認識だったと思う」
 そのユーノの告白にそうですかとシュテルは頷く。
 人間の第一印象は良くも悪くも容姿に左右されてしまうのだから、自分の姿がナノハを基にしている以上仕方のないことだとシュテルは納得する。
「だけど、また会って、君と付き合うようになってから変わっていったかな。なのはとは違う魅力あふれる女の子だってわかったんだ。君がそばにいてくれて今の僕は幸せだよ」
 そっとユーノはシュテルの手を掴む。
「ありがとうシュテル」
「私こそありがとうございます。師匠……いえ、あなた」
 きゅっとシュテルがユーノの手を握る。
 そしてユーノは空を仰ぎ見る。ああ、いい青空だなあと。エルトリアの空を。
 ユーノ・スクライア二十八歳、三年間のお付き合いの末にシュテルと結婚。無限書庫司書長を辞任した後にエルトリアに移住する。そして、エルトリア復興に尽力する。

Fin.
 


「Fin.じゃないのー!!」
「だ、誰かなのは抑えるの手伝ってーーーー!!」

279空の狐:2013/02/02(土) 13:13:35 ID:WePCPrRA
以上です。駄文失礼しました。
よろしかったら感想とかコメントを頂きたいなと思います。

280黒天:2013/02/02(土) 13:16:15 ID:WrfcSAt6
シュテルん、大勝利。GJですた。
なのはさんと何処で差がついたんだろう。

281夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:23:57 ID:WrfcSAt6
字数減らして投下してみます。


「・・・こんなに大きいのに、かわいいサクランボやなぁ、凄く感じてるんやね・・・硬く尖ってるで、リインフォース」
「わ、わざわざ・・・仰らなくても、あ、主・・・ひあぁぁっ!!」
「・・・意地を張らずに素直になっちゃえばいいと思うんだけど、ねぇ・・・」

282夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:25:20 ID:WrfcSAt6
シャマルは笑いながら、リインフォースの淫口に入れる指を二本に増やすと、クチュクチュと掻き回す。
それに反応して腰を浮かせる様な動きで、リインフォースは肢体を敏感に反らせた。
更にシャマルは、指で淫核を擦りあげてやるとーー

283夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:26:00 ID:WrfcSAt6
あぁん、や、やめ、シャ、シャマル、そ、そこは・・・ぁあ、んあぁっ・・・」
太腿の付け根の柔肉を痙攣させ、リインフォースは甘い声で喘ぎ、鳴いた。
秘所から溢れ出す蜜の量が増した。
その儚げな美貌には、狂おしい程に発情の色が浮かび上がっている。
体内を灼熱の様に炙ってくる火照りに抗う術はリインフォースには無い。

284夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:26:52 ID:WrfcSAt6

「・・・あ、主、そ、そこを舐めては・・・シャ、シャマル、ゆ、指を入れるな・・・ひぅ、あふぁん・・・あ、んあぁ、だ、駄目ぇ・・・ひ、はあぁん・・・」
はやてには乳房を揉まれ、その頂点の突起を吸われ、チュパチュパと舐められる。
シャマルには淫核を擦られ、淫穴に指を突っ込まれ、ズボズボかき回される。
一方的に身体をもてあそばれ、リインフォースは成す術無く、快楽の頂点に押し上げられていく。豊満な肢体の表面に汗が浮かび、甘い匂いが振りまかれる。
「も、もう・・・イ、イク、あ、んああぁぁーーーーーーー!!」
やがて限界に達したリインフォースが甲高い嬌声をあげて、絶頂に達した。
ビクビクと身体を震わせ、リインフォースは荒い息を吐き、意識を手放した。

285夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:27:26 ID:WrfcSAt6
湯上りの、薄っすらと朱に染まった美女の裸身がバスタオル一枚を巻きつけただけで布団の上に横たわっている。
海鳴市の旧家として名高い月村家長女、月村忍。
豊満な肢体と、艶やかな紫黒の髪が実に魅力的だ。
「・・・恭也ってば、落ち着いちゃって。もう、慣れちゃったのかしら?」
「あくまで見かけだけだ。本当は早くお前を味わいたくて昂ぶっているんだ」
「じゃあ、遠慮せずに・・・味わって」
忍に巻きついたバスタオルを、彼女の恋人たる高町恭也は、優しくそっと剥ぎ取る。
「あっ・・・」
眼を逸らした忍の顔が羞恥の色に染まる。
2つの豊かな膨らみが、恭也の眼前に晒される。
薄く青白い血管が浮き出ている魅惑の果実。
その頂点に浮いている、桜色の突起。あまりの妖艶さに見ているだけで喉が渇き、頭の奥が燃える様に熱くなってくる。

286夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:29:07 ID:WrfcSAt6
「んっ・・・ふあぁ、きょ、恭也ぁ・・・ん、んあぁ・・・」
自然と手が伸びて、豊かな膨らみに触れると、忍の口から甘い声が漏れた。
そのまま、ゆっくりと掌で捏ねる様に、忍の胸を揉みしだく。
感じているというよりも、マッサージされて心地良さそうな吐息。
「・・・何だか余裕が出てきたわね」
「これでも、かなり抑えているんだが」
揉みしだく内に、忍と恭也の呼吸が徐々に荒くなってくる。
それを自覚しながらも、恭也は恋人の大きな胸に指を埋める度に、自らの自制心が溶けていくのを感じた。
「ねえ、恭也、キスして・・・」
求めに応じ、忍に覆い被さり、唇を重ね合わせる。
まずは軽く唇同士を触れ合わせて、唇を割る様に舌を差し込む。
咥内の温かさと,甘い唾液の味に興奮しながら、暫しの間、恭也は忍の唇を貪る。
「んちゅ・・・ぴちゅ、れろ、ちゅぱっ、れろっ・・・んむぅ・・・」
長い口付けを終えて、唇を離す。
恭也と忍の舌が、光る銀色の糸で結ばれていた。
何処か陶然とした表情の忍は、とてつもなく妖艶だった。
その妖艶さに惹きつけられ、恭也は片方の膨らみに顔を寄せて、桜色の先端に舌を這わせる。忍の声が上擦り、より激しく悶え始める。
「んんっ・・・そ、そこは・・・」
忍がより敏感に反応する場所を探して、ゆっくりと責めあげる。
同時にもう片方の手では、豊かな胸を捏ねながら中指で頂点の桜色を軽く擦りつつ、円を描く様に弄くる。忍の息が徐々に荒く、甘くなる。
恭也の動きに合わせて、豊満な肢体が震える。
胸に伸ばしていた手を、恭也は下へと這わせる。
肋骨、括れた腰、肉付きのいい太腿。そして太腿の付け根。
「んあ、そ、そこは・・・あふぁっ・・・」
恭也の指が湿った感触を感じ取る。
口を半開きにして、忍が切なそうに身体を揺する。
「胸を揉まれて、感じていたのか・・・」
「い、嫌ぁ・・・態々、い、言わないでぇ・・・」
そう言われても、指は止められない。
そのまま股間の縦筋に沿って、淫蜜の絡んだ指を上下にゆっくりと動かした。
「ん・・・はぁっ、ちょ、ちょっと、きょ、恭也・・・ふあぁ、ひぅん・・・」
指を往復させる度に、白い太腿の付け根から漏れ出す淫蜜の量が増し、指の動きがスムーズになっていく。そのまま勢いに任せて、割れ目の上にある小さな淫核を指で強く押してみる。忍の体が弓の様にしなった。
「・・・やり過ぎたか?」
「んん・・・はぁ、んん・・・ふあぁっ・・・」
身体中を駆け巡っていた快感と痛みの大波は去ったらしく、忍は焦点の合っていない視線を天上に彷徨わせつつ、熱い息を漏らした。
「・・・ちょっと痛かったけど、気持ちよかった・・・ねえ、もっとして・・」
忍の微笑みに頷きつつ、恭也は再び胸と下半身に手を伸ばす。
慎重に指を動かしながら、淫核を撫で上げる。
「んん・・・あぁん、んはぁん・・・そ、そこ・・・」
強い刺激を感じるらしく、焦らす様に軽く触れていく。
拒む様に、太腿がギュッときつく閉じられる。

287夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:29:49 ID:WrfcSAt6
「・・・さ、触り方がいやらしいんだから・・・ど、何処で覚えたのよ、んあぁ・・・」
「それは企業秘密だな」
恭也とて健全な日本男子である。
本だとか、DVD(一部、父の秘蔵品含む)だとかから得た知識だと言えるものか。
返事の代わりに、胸の先端を口に含み、舌の上で転がしてみると、一段と激しく忍の身体が震えた。もう顔だけではなく、忍の肌全体が熱を帯びた様に熱く染まっていく。
徐々に高まって行く忍の反応を見て取り、恭也もペースを上げていく。
身体を弄り回される度に、忍は小刻みに痙攣した。
「はぁ、も、もう身体がおかしくなり・・・そう、ふあぁ、んふぁッ・・・」
荒い息をつきながら、忍が切羽詰った声を上げーーー
「きょ、恭也ばっかり、ずるい・・・」
「おい?」
呼吸を整えながら、忍が恭也の股間に顔を埋めてくる。
殆ど抵抗する間もなく、恭也はズボンを下ろされ、一物を引っ張り出された。
「今度は私の番なんだから・・・」
艶かしい仕草で唇を舐め、忍は両手を使って、恭也の肉棒を扱き始める。
痛いほどに屹立した肉棒越しに、火照った笑みが見えて恭也の背筋にゾクリと快感が走り抜けた。既に先走りの汁で濡れていた肉棒は、卑猥に濡れ光っていた。
「本当に大きくなってる・・・素敵」
爛々と瞳を輝かせる忍の指が輪を作って、上下に軽く肉棒を扱き上げる。
たったそれだけで、凄まじい快感が走り抜けて恭也の声が上擦った。
その反応に気をよくしたのか、妖しいな笑みを浮かべつつ、忍は指を動かす。
「どんどん溢れてくるわよ・・・恭也のお汁・・・」
媚薬でも飲んだ様な陶酔した表情で、忍は肉棒を只管に扱き続ける。
彼女の手に、先端から溢れる先走りが付着して、卑猥な音が奏でられる。
「それじゃ・・・そろそろ、こうしてあげる・・・ん、ちゅ・・・」
忍の更なる攻撃。舌がゆっくりと肉の幹をなぞり上げてきた。
先端から根元までを丹念に、大胆に、舐めあげてくる。
「どう、気持ちいいかしら?・・・んむ、ちゅぱ、れろぉ・・・ん、れろ、はむ・・・」
口が動いているその下で、指が唾液と先走りを掻き混ぜて、節くれだった肉幹を執拗に刺激してくる。何度も肉棒の先端に、口付け、レロレロと舐めまわす。
「んん・・・もっと、刺激してあげる・・・んちゅ、れろぉ・・・はむぅ、んちゅる・・・」
先の方に息を吹きかけ、指と舌で緩急をつけて刺激を加えてくる。
恭也は思わず、声をあげそうになるが、男の意地で何とか堪える。
忍の方も、恭也の感じるポイントを的確に捉え、集中的に責めてきた。

288夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:31:03 ID:WrfcSAt6

「はぁ・・・んむ、ぺろ、ちゅぱっ・・・れろ、れろ・・・はむ・・・」
「くっ・・・忍、もう・・・」
下腹部の辺りに甘い痺れが走り、恭也は自らの限界が近い事を悟った。
彼の様子を見て取り、忍はさっきよりも激しく顔と手を動かしてくる。
「んちゅっ・・・いいわよ、好きなだけ出して・・・」
「くぅっ・・・出るぞ・・・」
張り詰めていた理性の糸が限界を迎え、断ち切られる音が恭也の脳内に木霊した。
肉棒の先端が爆発する様な感覚に襲われたのと同時。
「・・・んんぅっ!?」
忍の顔と手に、恭也は自らの欲望の全てを吐き出していた。
迸る白濁の樹液を避けようともせず、忍は正面から受け止めた。
脈動が完全に収まるまでは、数十秒を要した。
「ふふっ・・・一杯出たわね」
熱に浮かされた様な表情で微笑み、忍は身体に付いた汚れを拭き取り、寝台の上に薄っすらと紅潮した身体を横たえる。
「ねえ、まだ頑張れる?」
投げ出された手足と、嫣然とした微笑み。
誘う様に揺らめく忍の瞳に、心臓が高鳴る。
恭也は心を射抜かれた様な錯覚を覚えた。
「ああ、まだまだいけるぞ」
相当の量を吐き出したばかりだと言うのに、恭也の一物は硬度を失っていなかった。
忍の流麗な髪を指で梳き、その身体を抱き寄せた。
「んっ・・・」
「上からの眺めはどうだ?」
忍は恭也に言われるがまま、寝台の上に寝転がった恋人の肉棒をまたぐ。
すらりと肌触りのいい太腿を恭也の無骨な手が撫でると、甘い声が漏れた。
微かに恥ずかしそうな笑みを浮かべながら、忍の腰が落ちてくる。
忍の淫筒が、恭也の肉棒を加え込んだ。
潤っていて、挿入は思った以上にスムーズだ。
「んふぁぁん、お、奥まで来てるぅ・・・んあぁ、はふぁん・・・」
切ない喘ぎ声を漏らしながら、忍の女穴は肉棒を奥へ奥へ引きずり込み、ズリズリと擦り、ネットリと締め付けてくる。
包み込む様に柔らかく、締め付けられる度に、恭也の全身に甘い疼きが広がる。
「くっ・・・忍っ!!」
上に圧し掛かる忍は、ゆっくりと腰を前後させ始める。
あまりの心地よさに、下に居る恭也の腰までもが無意識に動き出してしまう。
忍の充実した尻肉を引き寄せる様にして、恭也はよりお互いの身体を密着させる。
そして押し付けつつ、時折、捻りも加えつつ、肉棒の先端で最奥部を抉り、弄くる。
「んっ、は、はぁん・・・お、奥の方、そんなに・・・突かれたら・・・」
「ここが感じるのか、本当に淫らだな」
言葉で辱め、同時に肉棒で深い部分を穿る度に、忍はより激しく敏感に跳ねる。
愛しい女性を感じさせている嬉しさと、もたらされる快感で腰が溶けそうになる。
徐に恭也は、忍の白魚の様な手を取り、ぺろりと舐めてみた。
それだけの刺激でも感じるのか、忍は小さく震え、悩ましく喘いだ。

289夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:31:36 ID:WrfcSAt6

「ん、や、やめ・・・そ、それ、お、おかしくなるぅ・・・はぁん・・・」
夢中になって、愛しい彼女の指を愛撫しながらも、恭也は腰を突き上げる。
「も、もう駄目、そ、そろそろ・・・」
腰を打ち付ける時の水音が大きくなり、切羽詰った喘ぎが聞こえてくる。
人を乗せたまま、下から上に突き上げるという重労働な体位で結合しているが、御神の剣士として鍛えられた恭也にとっては、別に問題は無い。快感で昂ぶっているのならば、尚更だ。結合部から音が鳴り、淫蜜が弾け跳ぶ度に、恭也は自らの下腹部から熱い絶頂の衝動が滾々と沸きあがってくるのを感じた。
「・・・く、忍、俺もそろそろ・・・限界だな」
余裕の無い声が漏れる。
自らの荒い吐息が目障りに感じ、恭也は何故か可笑しくなった。
「・・・いいわよ、来て、私の中に全部・・・!!」
忍も絶頂に向けてのカウントダウンが始まっているのだろう。
恭也の上で身体を支えている脹脛が、引き攣った様に固まる。
「くぅ、もう・・・!」
射精の衝動を我慢できない。
飲み込んだ肉棒が抜けそうになるギリギリまで忍は腰を上げ、その次の瞬間、何の合図も無く、忍が勢い良く腰を下ろすのに合わせて、恭也は勢い良く忍の一番奥まで突き入れた。これがお互いにとって、最後の一押し。
「はん・・・んふあぁーーーーーーーー!!」
甲高い絶頂の喘ぎを漏らした瞬間、忍の締め付けが一段ときつくなり、恭也の脳髄をくすぐった。恭也の眼前にある豊麗な肢体が、背骨が折れ曲がるのではと錯覚する程の勢いで仰け反り、激しく痙攣する。
「・・・う、おぉぉ・・・!!」
恭也の頭の奥も真っ白になり、弾ける様な射精が始める。
噴水の様に吹き出た精は、忍の淫壷を隙間無く埋めていく。
「ん、んあぁ・・・ま、まだ出てる・・・はぁん・・・ひあぁん・・・」
快感の大波に身体を幾度も震わせながらも、恭也は忍の尻を強く掴み、絶頂の余韻に堪える。やがて絶頂の余韻が去り、両腕から力を抜く。
「んっ・・・ふぁぁん・・・」
夢現の様な表情で、忍が吐息を漏らす。
唇の端から垂れた唾液が、恭也の引き締まった胸板の上に滴り落ちる。
「凄く気持ちよかったわよ、恭也」
顔を寄せ、穏やかに微笑む忍。
上気して、しっとりと濡れた忍の身体。
抱きしめると、何とも言えない、いい匂いがする。
「でも、この程度では終わらないでしょう?」
舌なめずりをしながら、恭也の股間に身体を寄せた忍は未だに固いままの肉棒を、豊満な胸の間に挟み込み、涎を垂らして潤滑油にして、両手で乳房を揺らし始めた。
深い胸の谷間でニチュニチュと卑猥な音が鳴った。

290夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:32:10 ID:WrfcSAt6
「ビクビクと脈打って・・・暴れん坊さんね」
「・・・そういえばユーノを引っ張って来る様に、リインフォースを唆したのはお前か」
「唆したとは人聞きが悪いわね。彼女は、元々、ワーカーホリック君だったユーノ君の事を心配してたの。だから私の提案は『渡りに船』だったわけよ」
乳房で痛いほどに屹立した肉棒を扱き上げながら、忍は悪戯っぽく笑う。
どうやらユーノは、忍の眼から見て、愛妹すずかの花婿候補のトップらしい。

「すずかとユーノ君の距離を縮める試みに協力してくれるわよね、恭也?」
「ああ、別に構わん。ユーノはなのはに執心らしいが、こちらの方は望み薄だからな」
『なのはが欲しくば、私を倒して』云々と気炎を上げる父の姿を脳裏に思い浮かべながら、恭也は神妙な面持ちで頷いた。もっとも、士郎とて半分は冗談だろう。
言い換えれば、もう半分は本気という事だが。
それを抜きにしても、なのはがユーノの気持ちに全く気付いていない上に、フェイトが同性ながら、なのはにアタックしている現状から鑑みるに、ユーノの恋が実る確率は限りなく低い。それ以前に、ユーノのなのはに対するアプローチは積極性に欠ける。
もっとハッキリ言うならば、フェイトや士郎と遣り合ってまで『なのはと結ばれたい』という意欲が感じられなかった。より正確には『なのはと結ばれなくても仕方ない』と言った方が適切かもしれなかった。

「・・・というより、ユーノの年頃で色恋沙汰は時期尚早と思うんだが」
「そうだけど、いい花婿候補は早くから確保しておいた方がいいでしょ?」
両手で乳房を左右から圧迫して、肉棒に刺激を与えながら忍が笑う。
乳房の谷間から突き出た先端に舌を這わせ、快感を送り込む。
「それに、すずかがユーノ君をゲットできるかはあの娘次第・・・ユーノ君って、多分、天然のジゴロの匂いがするのよね」
「・・・うくっ、そうか?」
「そうよ、現にリインフォースが引っ掛かっているじゃない。今は弟みたいに想っていても、これからどうなるか解らないわよ?」
熱い吐息を肉棒に拭きかけ、忍はチュパチュパと意識的に音を立てて先走りを吸う。
その間も、左右の乳房を忙しなく動かし、肉幹に擦りたて、扱くのも忘れない。
「・・・ふふっ、こんなに熱くて・・・逞しい、胸の間でビクビクしてるわ・・・んちゅぅ・・・」
陶然とした表情を浮かべ、忍は奉仕に集中し始めた。
絶妙な弾力と柔らかさ。とてつもなく心地よい感触が、限界まで膨張している肉棒を余す所無く包み込む。白く滑らかな肌が張り付き、肉幹の表面が引っ張られる。

291夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:32:46 ID:WrfcSAt6
「ん・・・はぁ、こんな感じでいいかしら?」
「あぁ・・・凄くいいぞ」
こうして双乳の温もりを感じているだけでも、恭也の中で射精の欲求が高まってくる。
我ながら敏感すぎると思ってしまうくらいだ。
「ん、恭也、もっと、気持ちよくなって・・・んむ、ちゅぅ、れろ、ん、はぁむ・・・」
麗しい唇から伸びた舌先が、張り詰めた肉棒の先端を嘗め回す。
その一方で忍は焼けそうな程に熱い吐息を漏らし、身体を前後に揺らす。
「んあぁ・・・な、何だか私も身体が熱くなって・・・あ、ん、んちゅっ・・・」
「はぁっ・・・もう、俺ももう出そうだぞ・・・くっ!!」
火照りの増してきた柔肌が、唾液塗れになった肉棒を素早く何度も擦る。
射精が近い事を悟った、忍が乳房を潰さんばかりの勢いで寄せ、肉棒を圧迫する。
腰まで痺れる様な快感が広がり、包み込む柔肌を押し返す程の勢いで、肉棒が熱く痙攣した、その刹那。
「んん・・・はぁ・・・恭也の熱いのが、んあ、あふぁぅっ!!」
左右から圧迫してくる乳房に促される様に、熱い迸りを解き放っていく。
火照りった忍の顔が白濁に染まっていく。
「・・・はぁ、こんなに一杯、出して・・・素敵」
顔に張り付いた精液を舐め取り、忍はうっとりと呟いた。
その余りの妖艶さに、恭也は衝動的に忍を布団の上に組み伏せていた。
「あんっ・・・もう恭也ってば、いいわよ。思う存分、私を貪って」
妖しく揺らめく瞳。それに誘われる様に、恭也は淫蜜を溢れさせる恋人の淫穴に肉棒を押し込んでいた。緩急をつけて、突き始める。
「・・・ん、あふっ、い、いい・・・気持ちいい、あん・・・ひぁうん・・・」
部屋の中に女の蕩けきった声が木霊した。




「ここが『深海旅団』の本拠地か」
「正確には、本拠地“だった”だね」
クロノは周りを見渡し、その横を歩く猫耳に茶色の短髪の女性リーゼロッテはクロノの言葉を訂正した。
「それにしても本当にここが『深海旅団』の本拠地だったのか?」
「無限書庫の情報では、そうなってるけどねえ」
今、彼らが居るのは、とある無人世界。
世界の殆どを海が占め、クロノ達が立っているのは浜辺に近い陸地の部分だ。
以前から捜査していた、周辺の世界から女子供を浚っていた邪教集団『深海旅団』の本拠について無限書庫から確実な情報を得て向かってみれば、生贄を捧げていたであろう石造りの祭壇は、周りに立てられていた鋼鉄の柱数本諸共に溶け崩れ、無惨な姿を晒している。


「恐らくここで物凄い天変地異が起こって『深海旅団』は壊滅したのかね」
「そういえば、『深海旅団』の物と断定できる事件が最後に起きたのはいつだったか。エイミィ、記録を調べて貰えるか?」
『OK,ちょっと待ってね』
リーゼロッテの意見に頷きながら、クロノは上空に待機している艦船アースラに向けて、通信を送った。程なくして答えが返ってくる。

292夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:33:20 ID:WrfcSAt6
『クロノ君、解ったよ。時期はえーと、丁度、ジュエルシード事件が起きる少し前だね』
「もしかしたら、その時、既に『深海旅団』は実質的に壊滅していた可能性もあるな」
エイミィからの報告を受け、眉間に皺を寄せてクロノは考え込む。
この邪教集団に関しては、彼とて全ての情報を把握している訳ではない。
現時点で、この『深海旅団』に関して解っている情報を纏めると、次の様になる。
・複数の次元世界に跨る、大規模な組織であった事。
・生贄として、女子供を浚い、海の祟り神デイゴンに捧げていた事。
・組織の構成員には、魚や蛙の様な容姿をした者が多かった事。

「組織そのものは潰れても、幹部が生き残っている可能性も検討しないとね」
リーゼロッテの言う通り、生き残りの幹部が新たに組織を復活させる可能性も視野に入れる必要がある。組織復活の為、今まで鳴りを潜めていたというのもあり得る線だ。

そもそも今回、クロノ達が動いたのは『深海旅団』の首領だと目されていた男の腐乱死体が、一週間程前に、奇妙な像と共にミッドチルダの首都クラナガンの海辺の砂浜に打ち上げられたのが切欠だ。


これからどう動くべきか、クロノが眼を瞑って思考を巡らせていると、懐にしまっていた次元間通信機が振動している。通信機のスイッチを入れると、空中にディスプレイが展開され、リーゼロッテと良く似た、但し、髪は長い女性の姿が映し出された。
リーゼロッテの姉、リーゼアリアだ。
『クロノ、ロッテ・・・首尾はどう?』
「『深海教団』の本拠地は壊滅。恐らくはコレでこの案件は、ケリがつきそうだ。一抹の不安は消せないが」
『とりあえず、一旦、本局に戻ってきて』
「そうだね、これ以上、ここに居ても仕方無さそうだし」
アースラの方に連絡を入れ、クロノとリーゼロッテは歩き出す。
その途中、クロノは実に奇妙なーー‘ガラスの大地’とでも形容すべき場所がある事が幾つかある事に気がついた。特に大きな ‘ガラスの大地’の中心に、巨大な黒い影が焼きついている。姿は人間の物に近いが、数十メートルにも及ぶ大きさは怪獣と言った方が相応しい。恐らく、この影の持ち主こそが『深海旅団』が崇める海の祟り神デイゴンとやらか。

祭壇に捧げられた生贄を求め、海から上がってきた所を、超高熱を受け、この世に影だけを残して蒸発したといった所か。
「・・・それにしても、これ程の熱を生み出す物とは何だ」
クロノの頭に浮かぶ疑問符。
影の大きさを見ても、デイゴンは相当の巨体。
それを跡形も無く、消滅させられる程の熱量を生み出す物とは。

293夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:36:12 ID:WrfcSAt6



第一に連想するのは核爆弾。幾つかの次元世界は保有しているが、それが流出したという話は聞かない。もし流出したならば、噂くらいは聞いてもいい筈だ。
第一、核爆弾ならば、放射能は検出されないのは奇妙だ。
アースラの機器でも放射能反応はゼロだ。

第二の可能性は火山の爆発。
だが、この無人世界の火山活動は活発とはいえず、近くに火山も無く、溶岩が噴出した形跡も無い。


「まさか小型の太陽が出現し、デイゴンを葬ったとでも」
自分ながら、何とも馬鹿馬鹿しい意見だ。
とにかく答えの出しようが無い。まだ知られていない自然現象と結論付けて、クロノは空中に待機しているアースラに向けて飛翔した。



「んん・・・私は気を失っていたのか」
意識を失っていたリインフォースは眼を瞬かせ、薄暗い部屋に視線を巡らせた。
寝息が2つ聞こえてくる。はやてとシャマルの物だ。
彼女達を起こさない様に、リインフォースは身体を起こした。
「寝付けないな・・・少し辺りをぶらついて来るか」
布団の上で安らかな寝息を立てている、はやてとシャマルを起こさない様に、とリインフォースは立ち上がると、部屋を出た。

淡い灯りが照らす廊下を歩いていると、向こうから小柄な影が近付いてくる。
紫黒の長く、軽いウェーブがかかった髪の少女、月村家次女。
月村すずかだ、リインフォースと同じ緋色の襦袢を纏っている。
「あ、リインフォースさん、どうしたんですか?」
「寝付けなくてな。お前こそどうした?」
「ユーノ君とお話がしたくて、部屋に行ったんですけど、居なかったんです。もう夜も遅いから、寝ようかと思って」
確かに廊下の壁に備え付けられた、年代物の時計の針は夜の10時。
こんな時間帯にユーノは何処に行ったのか、気になるが、ユーノならば、心配ないだろう。後でユーノの部屋に様子を見に行ってみよう。
「それじゃ、リインフォースさん、おやすみなさい」
「ああ、お休み。我が主とシャマルはもう寝ているから、起こさない様に頼む」
「はい」
すずかと別れて、リインフォースは『鷹樹庵』の部屋割りを頭に思い浮かべた。

一階「大部屋:はやて、すずか、リインフォース、シャマル」

二階
「二人部屋:恭也、忍、」
「二人部屋:ザフィーラ、アルフ」

三階
「二人部屋:ユーノ」
この旅館は三階建てで、彼らが使っている部屋以外はまだ改装中だった筈だ。
二階に上がってみると、恭也と忍の部屋からは、艶かしい嬌声、男の雄叫びが微かに漏れ聞こえてくる。邪魔しては悪いので、気配を殺して通り過ぎる。

294夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:36:51 ID:WrfcSAt6
その1つ部屋を挟んだ、ザフィーラとアルフの部屋は静かな物だ。
というよりも気配を感じない。
窓に視線を向けてみると、並んで歩いている、黒の甚平を着込んだ褐色の肌の男とGパンにタンクトップを身につけた赤毛の女が見えた。
夜風にあたりながら、夜の街の散策を楽しんでいるらしい。
以前は自分もザフィーラと一緒に、夜の海鳴市を散策したものだが、この頃はその回数も激減した。その分、無限書庫に行く回数が増えたのだが。
「・・・三階に行ってみるか」
もしユーノが寝ていたら、引き返して布団に入って寝てしまおう。
起きていたら、少し雑談に付き合って貰おう。
そんな事を考えながら、三階に上がると、ユーノの部屋の明かりがついている。
「ユーノ、入ってもいいか?」
「リインフォース? うん、いいよ」
了承を受け、リインフォースは障子を開け、部屋に足を踏み入れた。
一方、ユーノは寝巻き姿で、布団の上に胡坐をかき『夜刀浦の歴史』という本を開いていた。その他にも彼の周りには、本が数冊散らばり、雑然とした雰囲気を形成している。厚さも様々、文庫本だったり、ハードカバーだったりするが、それらの本には、ある共通点があった。
「・・・この都市の歴史に関する書物か?」
「古本屋さんで買って来たんだ。結構、遅くまで開いてるんだね」
成程、すずかがこの部屋を訪ねた時、ユーノは古本屋に行っていたのか。
何となく興味を引かれ、リインフォースは一冊を手に取った。
「私も読んでみていいか?」
「うん、いいよ」
『夜刀浦に潜む、海の祟り神』というタイトルの本を手に取り、開く。
内容は古来より、夜刀浦には豊漁や金塊と引き換えに、生贄を要求する海神の伝承が伝えられており、その海神の呪われた血を受け継ぐ人外の怪物が闇の中を跋扈しているという物だった。
「・・・悪魔崇拝に近い物を感じるな」
流し読みしただけだったが、リインフォースはそんな印象を抱いた。
地球に限らず、次元世界を見渡せば、似た様な事例は割と多い。
次元世界最大規模の宗教である聖王教会の異端派が、主流派の弾圧を受け、生贄を悪魔に捧げて、主流派の滅亡を祈願したという記録が無限書庫に残されている。

「人間の考える事は、何処か共通する物があるという事かもね」
「ふむ、成程」
ユーノに相槌を打ちながら、リインフォースは身を乗り出し、別の本を手に取った。
その際に、緋襦袢の前が肌蹴けてしまい、豊満な胸の谷間がこぼれ出た。
「・・・ちょ、ちょっと、だ、駄目だよ、それ・・・」
「ん、ああ、すまない」
正直、白い肌と黒いブラジャーのコントラストは凶悪だと思う。
眼前の魅惑の‘果実’から眼を逸らすユーノが可愛く思えて、リインフォースは更に追い討ちとも言える言葉を口にしていた。

295夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:37:29 ID:WrfcSAt6
「お前のそこ、随分と大きくなっているな」
「あ、あぁ・・・お、お願い、見ないで」
ユーノの股間は寝巻きの上からでも解るほどに、雄雄しく“テント”を張っていた。
恥ずかしくて隠そうとするユーノだったが、リインフォースは気にした様子も無く、微かに唇の端を釣り上げながら、耳元に唇を寄せてくる。
耳朶に熱い吐息がかかって、ユーノの鼓動が速くなる。
「私がお前のここ・・・扱いてやろうか?」
「え、そ、そんな・・・」
「遠慮するな。お前のおかげで、私はこの世に残れた、そのお礼がしたいんだ。男は女にコレを扱かれると気持ちがいいのだろう? それとも・・・私では不服か?」
不服な訳が無い。リインフォースの様な美女にそんな事をされれば、大抵の男は舞い上がるだろう。それはユーノとて例外ではなく、理性で誘惑を振り払おうと試みるが、上手くいかない。そうしている内に、リインフォースの手が寝巻きのズボンを勢いよくパンツ諸共にズリ降ろし、勃起した一物を引っ張り出していた。
「駄目、駄目だって・・・」
「気にするなと言っている・・・それにこんな状態では収まりがつかんだろう?」
リインフォースの方も幾らか興奮しているのか、息が荒く、その息が肉棒の先端に降りかかる。細く白い指が、血管が走る肉幹を優しく扱いてくる。
「う、はぁっ・・・太いな、それに凄く固いし、熱い・・・皮も向けていて、可愛い顔に似合わず、逞しいな・・・お前のここは、とても立派だ、ふぅ・・・・」
「可愛いって・・・う、嬉しくない」
「気にしているんだったな、すまない・・・何なら、ショーツで扱いてやろうか?」
湖の騎士が購読している、怪しげな雑誌――好奇心に駆られて読んだ――に載っていた試みを提案してみる。その魅力的な提案に、ユーノの理性は太刀打ちできない。
「お、お願いします・・・」
微かに頬を染め、リインフォースは頷き、一旦ユーノから離れる。
緋襦袢の中に手を突っ込み、前屈みする様に黒いショーツを脱いだ。
シュルリと聞こえた布が肌を滑る音が、とてつもなく淫靡に聞こえた。
リインフォースが左・右の順番で脚からショーツを抜き取る時に見せた、銀色の薄い茂みが一瞬だけ見えて、ユーノの心臓の鼓動が速まった。
「さあ、足を開いてくれ」
「う、うん・・・」
黒いショーツが肉棒を覆い、その上から指で優しく包まれる。
女性の下着の柔らかな質感と、リインフォースの指先に、肉棒はビクビクと震える。
リインフォースの温もりが残るショーツに肉棒を包まれ、ユーノはとてつもなく興奮していた。スリスリと指を滑らせ、リインフォースがショーツ越しに肉棒を優しく扱く。

296夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:38:07 ID:WrfcSAt6
「はっ・・・ん、んん・・・」
ビリビリと意識を痺れさせる様な快感が続き、ユーノの口からは快感に翻弄される息が漏れる。リインフォースの指に少し力がこもり、その刺激を受けて先走り汁が滲み、ショーツに卑猥な染みを作る。
「あふっ・・・この匂い、いやらしいな。頭がくらくらしてくる・・・」
「う、そ、その・・・」
「気にするな、寧ろ雄の匂いで嫌な匂いでは・・・ん、はぁん・・・」
紅い瞳を興奮に潤ませ、リインフォースは手の動きを加速させた。
それにより、肉棒がますます太さと硬度を増す。
「お前の汁で私のショーツ、ヌルヌルになってしまったぞ。気持ちいいんだな」
「す、凄く・・・気持ちいいです」
ユーノの顔を観察しながら、リインフォースは先走り汁で滑りの良くなったショーツで先端を擦ってくる。更にカリを指の腹で扱かれ、肉棒が断続的にビクビクと脈打った。
「こんなにビクビクと脈打って・・・もう出そうなのか、遠慮なく出していいんだぞ」
「あっ・・・ひぅ、あぁ、リ、リインフォース・・・・・」
せり上がる快感に思わず身体が震え、ユーノは歯を食いしばる。
尿道を熱の塊が込み上がってくる。それを察知したリインフォースの手の動きに溜め込んだ物が突き抜ける様に飛び出した。
濃厚な白濁の樹液が黒いショーツと、細い指をベトベトに汚して行く。
「・・・凄い匂いだな、ん、はぁ・・・・」
そう言いながら、リインフォースは手を動かし、残っていた精液を搾り出そうとする。
ニチュニチュと卑猥な音が響き、肉棒から白濁が溢れ出る。
「ふふっ・・・私の下着がお前の精液で、こんなに汚れてしまったぞ」
「ご、ごめん・・・」
「気にしなくていいとい言っただろう? 私が自らの意思でしたことだ」
白濁液で汚れたショーツを手の中で弄びながら、リインフォースは切れ長の紅い瞳を微かに潤ませ、ユーノに気付かれない様に太腿をもどかしそうに擦り合わせた。
「それにしても・・・随分と溜まっていたらしいな。無限書庫の仕事で処理している暇が無かったのか?」
「う、うん・・・」
精への目覚めも早いユーノは、精通もかなり早かった。とはいっても、いつもは自分で“処理”をしていたのだが、女性に、ましてリインフォースの様な素晴らしい美人に、手で肉棒を扱かれるのは、初めてだった。
「溜め込みすぎるのはよくないぞ・・・言ってくれれば、私が・・・いや、何でもない。仕事の疲れを取る為にも速く寝てしまえ。邪魔して悪かったな」
「あ、うん・・・お休みなさい」
途中まで言いかけた言葉を引っ込め、リインフォースは立ち上がり、部屋を出て行く。
立ち上がる際に、緋襦袢の裾が捲れ上がり、白い太腿がチラリと見え、ユーノの心臓を高鳴らせた。流麗な長い銀髪の後姿を見送り、ユーノは布団の上に寝転んだ。

297夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:38:37 ID:WrfcSAt6
「・・・眠れそうにないや」
あの白い太腿や胸の谷間が、なのはとの想い出に上書きされ、脳裏に焼きついてしまった。それくらいの強烈さがあった。
部屋の明かりを消しても、一向に眠気は訪れない。
それどころか、暗闇の中で、眼を閉じるとリインフォースの白磁の様に透き通った肌が鮮明に浮かび上がって来る。股間のフェレットがまた鎌首をもたげてくる。
「・・・なんて節操なしなんだ、僕は」
結局、もう一回、ユーノは股間の滾りを自分で鎮める事になった。





「ふぅ・・・水が冷たいな」
部屋に戻る途中、リインフォースは女性用大浴場に行き、冷たいシャワーの水を全身に浴びた。冷たい水が珠となり、皇かな肌の上を滑り落ちていく。
「・・・あ、んふぁ、火照りが消えない・・・」
切なげに熱い吐息を漏らし、リインフォースは脚の付け根に右手を触れさせた。
指先に伝わるのは、熱く湿った感触。
「濡れてしまってるのか、私は・・・」
ユーノの肉棒を手で扱いている時、その熱さと硬さ、そしてむせ返る様な濃厚な雄の匂いによって、火照った身体の奥がジンジンと疼く。リインフォースは恐る恐る指を、蜜を漏らし始めている淫穴に突っ込み、かき回してみた。
「はぅんっ!?・・・あ、んあ、ひぅん・・・・」
指先を軽く突っ込んだだけなのに、全身を稲妻の様な刺激が駆け抜け、思わず左手に持っていたショーツを握り締めてしまう。
その刺激によって、リインフォースは大浴場の床に崩れ落ちた。
「はぁ、んぅぅ・・・だ、駄目・・・ゆ、指が止まらない・・・・」
這いつくばる様な姿勢のまま、下肢の付け根で指が妖しく蠢く。
指先は花弁を弄り、幾重にも重なった肉襞をなぞっていく。
彼女自身意識していないのに、指先が勝手に心地いい場所を探り当ててしまう。
淫穴に再び指を差し入れると、思わず嬌声が漏れ出て、大浴場全体に反響した。
「あ、んあ、あぁん・・・こ、こんな恥ずかしい声を上げるなんてぇ・・・身体が火照って、
疼きが収まらない・・・・あん、んん・・・」
この世の男達の股間をいきり立たせる嬌声を漏らしつつ、リインフォースは一層激しく股間を弄り回す。手首のスナップを利かせ、律動的に淫穴を穿る。
中で指を折り曲げ、ある部分を強く擦ると、鋭い快感が奔り、身体が引き攣る。
更なる快感を求めて、右手は敏感な淫核を探り当て、激しく擦り上げる。
声を抑えようとしても、鼻にかかった甘い声が漏れ出てしまう。
豊満な極上の女体が、薄っすらと朱に染まり、甘い香りを振りまく。
身体の奥から熱い物がこみ上げてくる。
リインフォースの右手は、別の生物の様に自らの秘所を弄り回す速度を上げていく。

298夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:39:10 ID:WrfcSAt6
「・・・熱い、身体が熱いぃ・・・あむ、ちゅぱ、この匂い、興奮するぅ・・・・れろ、んむ・・・」
いつの間にか、リインフォースは左手に持っていたショーツに舌を這わせていた。
猫がミルクを舐める様に、ユーノの精液の匂いを嗅ぎ、舐め取る。
「はぁ・・・はぁ、んちゅ・・・ぴちゃ、こんな浅ましい・・・でも、んむ・・・・」
節制の美貌を誇る魔導書の化身は、肉付きのいい尻を左右に軽く振りながら、無我夢中で股間を刺激する。激しい淫穴穿りに淫蜜が飛沫となって飛び散る。
「・・・は、んん・・・な、なんて浅ましい、でも美味しい・・・・はぁん・・・・」
数百年の流浪の時、リインフォースは散々男達の獣欲の餌食になった。
意識や人格を移し変えても、男の肉棒がもたらす快楽の凄まじさは彼女の根幹たる部分にしっかりと刻み込まれている。
そして、一際大きな快楽の大波がリインフォースを襲い、彼女を絶頂に押し上げた。
「・・・んあ、あ、あぁーーーーーーー!!!」
自らの秘所を弄りながら、リインフォースはうっとりとした表情で舌を伸ばすと、精液を美味しそうに舐め取った。
股間を弄くり回す指は更に激しく、更に卑猥な音を立てて、淫口をひしゃげさせ、同時にむっちりとした尻が跳ね上がりーーーー

「ひあっ!! んあぁーーーーーーー!!」
エクスタシーにのたうちながら、股間から透明な潮が噴きだした。
力なく崩れ落ちるリインフォースは頬を上気させ、満足げな息を吐いた。
弛緩した身体を気だるげに起こそうとした、その時――――



「随分、色っぽく乱れてたわね」
「・・・――――・・・!?ッ」
後ろから聞こえた声に、リインフォースは背中に氷柱を突っ込まれた気分になった。
慌てて振り向くと、そこには一糸纏わぬ姿の忍が人の悪い笑みを浮かべていた。
硬直しているリインフォースを見遣りながら、忍が近付いてくる。
「ど、どうして・・・」
「恭也と楽しんでたんだけど、汗をかいちゃったからシャワーでも浴びようかと思って来たんだけど・・・貴女のそんな姿を見せられたら、もう我慢できなくなっちゃったわ」
不穏な気配を纏い、忍は怯える極上の“獲物”を前に舌なめずりすると、一気に襲い掛かった。水音が大浴場に響いた。




「ん、あ、あぁっ・・・・や、止めてくれ、ん、んん・・・」
「そんな事を言っても、貴女のここはもう大洪水じゃない。それに乳首だって、こんなに・・・ん、私のと擦れあって、私もたまらない気分になってくるわ」
一糸纏わぬ豊満な女体が2つ、艶かしく絡み合う。

299夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:39:52 ID:WrfcSAt6
リインフォースと忍の、豊かな乳房が重なり合って、動く度に形を変えていた。
更に忍は、時折、自らの股間をリインフォースの股間に押し付け、擦り合わせる様に腰を動かしていた。
「そ、そんな・・・擦られたら、あ、んん・・・・」
「私も、あん・・・凄くたまらない気分になってくるわ」
忍が上で動く度、リインフォースの口からは甘い吐息が漏れる。
「いい声で鳴くわね。もっと聞かせて欲しいわ、その声・・・」
「も、もう止め・・・は、恥ずかしい・・・」
「でも、中途半端でやめたら、火照った身体を持て余しちゃうでしょう、貴女って一度火がついたら止まらないタイプみたいだし」
妖しく笑いながら、忍はリインフォースの首筋を舐め、身体をうねらせる。
重なり合っている乳房が淫靡に変形し、リインフォースの口から甘い喘ぎが漏れた。
いつしかリインフォースは自分から腰を動かし始めていた。
「ん・・・あぁん、いい、いいわ・・・」
「あふっ、んん・・・あ、あぁ・・・擦れて、あふっ・・・・」
唐突に忍はリインフォースの唇を奪い、逃げようとする舌を絡めとる。
ぺチャぺチャと舌が絡みつく音と、二人の熱い吐息が浴場内に響き渡る。
「も、もう私・・・熱くて、そろそろ・・・・」
「わ、私も、駄目ぇ・・・はぁん・・・・」
気持ちが高まってきたのか、リインフォースと忍の動きが加速していく。
その動きに連動して、二人の乳房はぶつかる様に揺れ、絡めた足にお互いの股間を押し当てて腰を振り続けた。
「んん、も、もう・・・い、イク、あ、んあ、ふあぁっ・・・・い、イクーーーー!!」
「わ、私も、も、もう・・・んん、あ、あぁーーーー!!」
一際大きな声を上げて、リインフォースの身体が仰け反った。
リインフォースの後を追う様に、忍の身体も弓なりに反った。
「・・・あ、ふぁ、はぁ・・・・」
「ん、はふっ・・・ん、ふぅ・・・」
二人は荒い息を吐きながら、どちらともなく唇を軽く重ね合わせた。
絶頂の余韻を楽しむかの様に、舌を絡ませあう。
十分に堪能した後、忍はリインフォースを抱き起こすと、ゆっくりと離れていく。
そして不意打ち気味に、後ろから抱きつき、その乳房を揉みしだいた。
「あっ、な、何を・・・」
「私よりも少し大きいかしら? それよりも、この透ける様な肌、それでいて人としての温もりも備えてるって・・・反則じゃない」
豊かな膨らみをこね回しつつ、紅くなった首筋に口付ける。
唐突な刺激に声を裏返し、リインフォースは切なそうに身体を捩らせた。
尚も忍は、手に余る双丘を執拗に揉み、その先端を指先で弾く。
忽ち、リインフォースは甘い鼻声を響かせた。

300夜刀浦奇譚:2013/02/02(土) 13:40:28 ID:WrfcSAt6
「ふふっ・・・固くなってる、それに」
忍の視線は、リインフォースの左手に注がれた。
左手から奪い取られるショーツ。
「たっぷりと濃厚な精液がこびり付いたショーツ、ユーノ君のオチンチン、これで扱いてあげたのかしら? そして、これの匂いを嗅いで興奮してたなんて・・・」
「そ、それは・・・・」
「あら、隠さなくてもいいわよ。この旅館に居る男性は三人だけ、恭也とザフィーラさん、ユーノくん。恭也は除外、ザフィーラさんはアルフと散歩に出たわ。消去法で残るのはユーノくんだけ。私も、恭也に同じ事してあげた事あるし」
言いながら、忍はリインフォースの耳朶を軽く噛んだ。
同時に、右手をリインフォースの秘所に伸ばし、淫核を抓り上げた。
「!?・・・あ、あぁ、や、やあぁ・・・ん、はう・・・」
「もしかしてユーノ君に惚れちゃったかしら?」
「ち、違う、ユ、ユーノは弟みたいな物で、む、無理をするから放っておけないだけで・・・あ、だ、駄目ぇ、弄り回さないでえ・・・」
「弟みたいな相手のオチンチン弄り回して、興奮するなんて・・・それとも自分好みに染め上げて、食べ頃になったら“頂きます”をするつもり?」
「ち、違う・・・わ、私は・・・・あ、ん、んん・・・ひあぁっ!!?」
言葉を濁すリインフォースの乳房の先端と、淫核を忍は同時に抓り上げた。
とてつもない刺激がリインフォースの脳髄を貫き、豊満な肢体が悩ましく身悶える。
その後も忍はリインフォースの性感帯を執拗に弄り回し、苛烈に責め立てる。
「ほらほら・・・いっちゃいなさい」
「あ、んあぁ・・・ひ、ひあぁ・・・んあぁーーーー!!」
程なくリインフォースは二度目の絶頂に達していた。
切れ長の眼に大粒の涙を溜め、力の入らない身体を動かし、必死に逃れようとする、リインフォースの姿は実に嗜虐心をそそる。
荒い息を吐きながら、忍はリインフォースを床に押し倒す。
「・・・も、もう許してぇ、お願い・・・・」
「ああ、こんなにたまらない気持ちになるなんて・・・」
眼をぎらつかせ、忍はリインフォースの肢体に舌を這わせていく。
舌が這いまわる感触に、リインフォースは敏感に反応し、か細い喘ぎを漏らす。
「・・・く、くすぐったい、あ、んあ、ふうぅ・・・」
眼をぎらつかせ、忍はリインフォースの乳房の先端に吸い付き、淫蜜を滴らせる脚の付け根に手を伸ばし、指を淫穴に差し入れ、緩急をつけて掻き回す。
その刺激にリインフォースの脳内は女の快楽に塗りつぶされ、その唇からは悩ましく蕩けきった嬌声が漏れ出し、浴場内に木霊していった。

301黒天:2013/02/02(土) 13:42:02 ID:WrfcSAt6
字数少し減らしてみたら投下できました。
何故だろう。とりあえず今日の投下は終わりです。
アインスさんは弄れる方だよね。

302SandyBridge ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 22:32:19 ID:VZuGbxak
なんか突貫で書けたのでもうちょっとしたら投下するかもです


(・ω・)

303空の狐:2013/02/02(土) 23:04:58 ID:WePCPrRA
黒天さんのアインスはエロくていいです!!

304SandyBridge ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:17:51 ID:JMMS8toY
ぁーぃ

では投下します

タイトルは 「肉食系女子」

305肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:18:39 ID:JMMS8toY
 時空管理局における情報部門の重要性は、闇の書事件、JS事件そしてマリアージュ事件を経てより強く認識されるようになっていった。
 無限書庫を単なる資料室としてでなく、本格的な諜報部門として活用するということである。
 その任務に最適である人材は、おそらく管理局のどの提督に尋ねても同じ答えが返ってくるだろう。

 最初に彼の名前を聞いたのは、妹からだった。
 ギンガ・ナカジマは、妹が一時所属していた特務部隊の隊長がかつて師事した魔法の師匠、として彼を知った。当時の妹はまだ見ぬその師匠に、とても憧れたのだという。
 その時は、彼女の話をそのまま聞くならば学者肌の勉学青年、という、清潔さはあるが少し気難しそうな男、というイメージだった。
 のちに、考古学会ではそれなりに名の知られるスクライア一族の出身で、現在は無限書庫での資料捜索を主に行っているということを、ニュース番組の報道やドキュメンタリー番組でのインタビュー映像といった形で知った。
 まさか自分がそこに配属されることになるとは、当時は思ってもみなかった。

 しかし奇遇というべきか、ギンガが所属する地上本部捜査局では、魔法を用いた事件の特殊性から、特に古代文献などの資料が重要な位置を占めるという一部の捜査魔導師たちからの声によって立ち上げられた秘密部署がすでに存在していた。
 そしてギンガはその秘密部署に、縁あって配属されることになった。

 ギンガの記憶の中では、彼、ユーノ・スクライアは、かつて自分も関わったJS事件で、いくつかの助言をしたというものである。
 ミッドチルダに伝わる伝承、聖王の秘密の一端を無限書庫から探し当てた。

 雑然とした執務室、というかただの空き部屋に机を置いただけのユーノの部屋で、ギンガは彼に面通しをした。

「ギンガ・ナカジマ陸曹です」

「軍曹(サージェント)さんが何の用かな」

「地上本部捜査局からの辞令をお持ちしました」

 いきなりの言葉に、ギンガはやや憮然として答えた。
 机の上に乱雑に広げた書類を指でつまむようにして眺めながら、傍らに出した検索魔法のウインドウを左手でブラインドタッチしている。
 高速でスクロールしているウインドウの文字は、ギンガにはまるで内容が読み取れないほどの速さだ。

 何を調べているのだろうか。

 数刻後、ギンガは驚愕の事実を知ることになる。

306肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:19:40 ID:JMMS8toY
 





 そういえば彼女の顔を見るのは何日ぶりだっただろうか、とユーノは思った。
 ついでに、普段の成人女性の姿をとっている彼女も久しぶりだ。
 ここ数年はこいぬフォームや少女形態でいることが多かったが、さすがにハラオウン家の子供たちも大きくなって、力仕事がふえて、大人の姿でないと手がかかるようになってきたのだろう。

 アルフは、念話ウインドウ越しでもわかるほどの青ざめた顔で、おそるおそるユーノに問うた。

「たたり、って……信じるかい?」

 数日前、たまたま夜中にトイレに起きたアルフは、誰かがダイニングで冷蔵庫をあさっているのを見つけた。
 またカレルかリエラがこっそりアイスを食べようとしているのかと思い、注意するつもりでダイニングに入った。

 冷蔵庫の庫内を照らす黄色い照明に、果たして浮かび上がった彼らの貌。

 それは明らかに人間のものではなかった。





 最初は見間違いだと思った。夜中だったし、自分も寝ぼけていて、そのように見えただけかもしれないと思った。
 しかし、あわてて二人をベッドに押し込んですぐ寝るように言いつけ、自分もすぐさま自室のベッドに入って、それから片づけと掃除をしようと朝起きてダイニングに入ったとき、それは確かに昨夜の状態のままで残されていた。

 床に散らばった白い炭酸カルシウムの破片。凝固してフローリングの床にこびりついたタンパク質。
 無造作に引きちぎられたPET樹脂パックの中に、殻に穴の開いた状態で残っていたものもあった。
 カレルとリエラが、殻ごと生卵を食べていた──。

 いたずらか、とも思った。
 卵は割れやすくて、扱いに注意がいるので、それを割って遊ぼうとしていたのかもしれない、と思った。
 しかし床に散らばった生卵は、明らかに食べかけの状態と、手づかみで食べたときにこぼれたもの、という様相を呈していた。
 朝になって起きてきた二人の顔には、白身の粘りが乾いた状態でこびりついていた。
 二人は昨夜の出来事を覚えていないようだった。

 アルフはエイミィとも相談し、無限書庫にいるユーノに何か手がかりになる情報がないかと訪ねることにした。

 ユーノも含みを持たせた口調で、それを承諾した。

307肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:20:26 ID:JMMS8toY
 




 案件のあらましを聞かされたギンガは、これまで所属していた捜査局から送られてきた荷物をほどく間もなく、すぐさまユーノと共に調査を開始することになった。
 無限書庫に収められている資料から、過去に同種の事件がなかったかどうかを精査していく。

 とはいえ、ユーノが渡してくるたたき台を見ると、ギンガにはその意図がすぐに読めた。

「もう目星はついているんですよね?」

 目線を端末に落としたまま、ユーノは短くうなずいた。

「心当たりが?」

「あいつの子供たちにってとこでピンときた」

「あいつ?」

「クロノだよ」

 この司書長は、現在の管理局上層部にも知り合いが多い。それだけに、無限書庫を活用するための人脈として有用だと判断された。

「クロノ──クロノ・ハラオウン提督ですか」

 管理局次元航行艦隊提督、クロノ・ハラオウン。
 ギンガの身柄が直接関わったJS事件以外にも、執務官時代にPT事件、闇の書事件を指揮し解決に導いている。
 そのクロノの家族に何が起こったのか──

 ユーノは端末をいったん閉じ、書庫の本棚を動かして隠し扉を開いた。

「見せてやるよ」

 訝しみとわずかな恐れを含みながら、ギンガは従う。
 ユーノの眼鏡のレンズに、拡散する魔力光のスペクトルがプリズムのように映し出されている。





 冷たい鋼鉄の檻に、彼女は閉じ込められていた。
 四本の足には鉄球が鎖で結びつけられている。
 口には枷がはめられ、目は、荷役馬が着けるような布のマスクで覆い隠されている。
 けもの、だ。
 猛獣を、人間に危害が加わらないように閉じ込めている。

 耳が塞がれていても、気配は感じられる。

 誰かが、入ってくる。

「これは……っ」

 ある程度覚悟はしていたが、間近に現実に見せつけられたその光景に、ギンガは息をのんだ。
 無限書庫にはこのような場所もある。
 もともと、闇の書に対抗するために建造されたシステムである。収集される書物は普通の紙でできた本とは限らず、中には本の姿をした魔法生命体が紛れ込むこともある。
 そういった生き物を入れておく部屋も無限書庫にはあらかじめ用意されている。

「今別のチームに分析をさせているが、これも闇の書の残滓だ」

「ひと……人間……なんですか……?それとも……」

308肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:21:20 ID:JMMS8toY
 ギンガが見下ろす先には、段差の付けられた牢獄の鉄格子の向こう、赤い体毛に覆われた何者かの姿があった。

「残滓……闇の書が、蒐集していた……?」

「収集して、ただため込むだけじゃなく、実際にそれを用いた戦闘端末を生み出す。防衛プログラム自身もそうだった」

 ユーノは口元をゆがめ、嘲笑するように口に出す。
 それは自分に向けられた言葉でもあるのかもしれない。

「あの夜、防衛プログラムを転送するために触れた……“彼女”“も”そのひとりだった」

 アルフ。彼女がユーノのもとを訪れたとき、“それ”は既に手の施しようがないレベルまで彼女を侵食していた。
 どうにか話を伝え終えたとき、力尽きたように彼女の意識は乗っ取られた。
 ユーノはかろうじて彼女を無限書庫に封印し、そしてそのまま書庫の業務を続けていた。

 もはやヒトでは、いや、もともとの姿であった魔狼ですらなくなってしまっている。

 彼女の姿を、ギンガは管理局の映像資料でしか見たことがないが──海鳴市沖に現れた、闇の書の闇──自動防衛プログラムと、似た姿をしている。
 取り込んだ生物や魔法を抽象化した肉体を持ち、複雑に絡み合い、際限なく成長していく腫瘍細胞のような生命装置。
 ひたすらに増殖していくこと。それが生きる目的は、ある意味では純粋とさえいえる。

 感覚神経の機能はまだ残っているのだろう、自分のそばに現れた存在に対して反応しているような動きを見せている。
 鉄球のついた枷の内側にはスパイクが打ちつけてあり、肉に食い込むようになっている。さらに鉄球には別の鎖が取り付けられ、壁に打ち込まれたアンカーボルトにつながれている。

「どうしてこんなことを……」

「ほかにこれほどのものを置いておける場所がないからね」

 こともなげにユーノは答える。

 しかしそれは事実でもある。
 強力な魔法生命体を封印する機能を持つ施設、軌道拘置所は少なく、無限書庫であればその機能がある。
 監視のための人員も最低限ですみ、物理的な距離も近い。
 また取りあつかいのノウハウもある程度は備わっている。

 無限書庫は、闇の書と表裏一体のシステムであった。

「君がもらってきた辞令に同封されてたと思うけど──もし、僕にもしものことがあったらギンガ、君が僕を封印するんだ。
そのための術式は添付されているから後で確かめておいてくれ。カード型だからトリガーを打ち込むだけでいい」

 そのもしものこととは遠からず、必ず訪れ、もしも、とはただ正確な時期が不明であるという意味だ。

 アルフを封印した後、ユーノはすぐに自分自身を調べた。
 結果は予想通りだった。
 闇の書の残滓は、ユーノをも蝕んでいた。そしておそらくはシャマルも同様に、他の騎士たちよりも早くシステムの劣化が進行し、いくらもしないうちに行動に支障をきたすだろう。
 そしてシャマルだけではない、シグナムもヴィータもザフィーラも、共通のリンクを闇の書に持っている以上、同様に影響を受ける。
 シャマルへは別ルートで連絡を取り、守護騎士システムのシャットダウン、プロセスキルが可能かどうかを打診している。

「八神司令や、フェイト執務官は、このことを……」

「事後報告になってしまったけれど」

 ギンガはさらなる問いかけをすることができなかった。
 アルフとフェイトは、幼いころからずっといっしょに過ごしてきた家族だった。プロジェクトFによって人造魔導師として生み出された彼女のたった一人の家族だった。
 それが、今……。

309肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:22:20 ID:JMMS8toY
 闇の書の消滅が、完全ではなかった。
 もしかしたら、闇の書自体を破壊しても、それだけでは不完全で、闇の書に触れた人間が残っているだけでもいけなかったのかもしれない。
 アルフやシャマルだけではない、はやても、なのはも、フェイトもクロノも──彼らのうち、誰の中に闇の書の残滓が残っていないとも限らない。

 そこでふと、ギンガは思い出す。

「あの、ユーノさん……エイミィ、さんは……?もう、海鳴に戻られて……」

 ユーノは振り向き、ギンガはユーノの顔を見たが、眼鏡の向こうの目が見えなかった。あるいは、見たくなかった。
 翠の瞳が、もうすでに濁りはじめている。

「いや。一緒に来たんだけどね、一緒に来させた。そこにいるよ」

「そこ……って」

 親指で示した先は、アルフしかいないはず。毛むくじゃらになってしまってはいるが、かろうじて四つ足の動物のような姿が見える。他に誰かがいるようには見えない。

「腹の中にね」

「──!……し、失礼しますっ」

 さすがに状況に耐えられなかった。
 顔を伏せ、踵を返し、口元を押さえたギンガは書庫の中央回廊への扉を開け、唾液と胃液をこぼしながら逃げるように出て行った。

 開け放たれた扉がばね仕掛けで自動的に閉まり、その様子をしばらく眺めてから、ユーノはため息をついた。

 振り返り、見下ろす。顔がどこについているのかもわからないが、ユーノには、アルフが会話を求めていることがわかる。

「さて……。僕としても正直困っているよ。いや、後始末が面倒だという意味でね」

 枷でわずかしか動かせない前足を差し出すようにして、アルフはユーノの声にこたえる。
 このような姿では、言葉が通じるようには見えないだろう。しかし、意識は保たれているようである。
 粘ついた膿が呼吸につれて震える、湿った音が繰り返される。

「なのはには何て言うのかって?勘違いしないでもらいたいんだけど今の僕と彼女は特別な関係ではないんだよ、ただ旧知の友人ってだけでね。
僕はさしあたって無限書庫の業務を後任の司書長に引き継がなきゃいけない、それくらいの猶予は何とか稼いだ。
おそらく本局のほうでもプランは練っているはずだ、この無限書庫をみすみす失うような選択肢はとらないはずだ。
はやてもフェイトもそれは理解している。なのはは、まあ二人が何とか説得するだろう」

 これまでに調べられた情報で、闇の書の残滓はまずはやての手元に遺されていたシュベルトクロイツに、テキストになおしてわずか数行にすぎない程度の小さなプログラムコードが含まれていたことが判明していた。
 それ単体では何の機能も持たない小さなプログラムだったが、それがブートストラップローダのような役割を果たし、次元空間に散らばっていた闇の書のデータを集め、結合させた。

 闇の書は、もはや抹殺することが不可能な存在となっていた。

310肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:23:41 ID:JMMS8toY
 




 目を閉じると、初めて海鳴市で出会った頃のアルフの姿が見えた。
 まだ互いをよく知らず、どこか微妙な距離感があって、完全に心を許していなくて、並んでいても心のどこかで警戒しあっていた。アルバムを見せると、それをはやてたちにからかわれたこともあった。
 それからいくつかの出来事を経て、付き合いが長くなり、自然と近づいていった。
 最初はフェイトの姉のように見えて、すぐに使い魔だと気付き、それでも主人と従者というよりは、幼い王を補佐する侍女のように、自分を追い詰めがちなフェイトを助けている、姉妹の契りを交わした女学生のような不思議な魅力があった。

 胸が痛んでいる自分を、どこかで認めたくない感情がある。
 感傷に負けてしまうのはよくないことだという考えがある。

 とはいえ、本当に何も感じなかったとしたらそれはそれで人として冷酷すぎる、ともいえる。

 スクライアの一族に生まれ、遺跡を掘り、出土品の調査をして、そして管理局で働く、改めて考えてみると、自分のこれまでの人生の中で、誰か特定の人間に入れ込む、ということがなかった。
 相手にするのは土や岩、それから化石、といった無機物。人、といえば、学会や教育機関、研究機関などの人間ばかりで、自分とは住む世界が違う、と思った。
 今は本当に、違う世界へ引っ越そうとしている。

「フェイトのことなら心配しなくていい。今は、仲間がいる、友達がいる。ひとりじゃないんだよ。
同じように僕たちもひとりじゃない」

 本能に従う。姿は、見えないが、それでも手触りから、粘液に覆われた肉が触れているのがわかる。
 硬いじょうぶな皮膚の構造ではなく、敏感な粘膜がむき出しの部位。

「ユーノ……あたしのことが見えるのかい?」

「僕はそばにいるよ」

「怖いんだ、あたしは、忘れそうになってたけどあたしは所詮使い魔なんだよ……子供だって産めないはずなのに、闇の書の、機能がくっついて、後付けの子宮がぶら下がって、みっつ、いや、よっつもある……
どんなにフェイトが家族として扱ってくれていても、魔法が切れたらあたしは消えてしまう、フェイトは、使い魔の契約を解いてあたしを消すっていう解決方法を、気づいてないのか、それとも知ってるけど選びたくないのか」

 手を差し伸べる。指先に、ぬくもりが伝わる。

「指だけだとくすぐったいな。もっと思い切って」

「あたしの中に来てほしい、そうしないと不安でどうにかなっちゃいそうだよ」

 アルフの口に、鋭い犬歯がのぞき、もぎ取られたユーノの指先から手の甲、二の腕までへ肉を切り裂いていく。獣形態では不便なので、人間形態で、両手でユーノの肩を押さえ、前歯で肉を掴み、骨に引っかけて腕をとる。
 舌に乗るあたたかい肉と、喉に流れ落ちていく血液が、どこまでもいとおしい。
 弾力のある皮膚を奥歯ですりつぶし、体温でとろけた脂肪とよく咀嚼した筋肉を舌でこね、飲み込む。
 この年齢の男性としては無駄毛の少ないユーノの肉はとても美味しい、とアルフは思っていた。

「僕がこの姿でよかったね。フェレットだったら、食べる部分が少なくなってしまう」

 腕にしゃぶりつくアルフを、残った左手で頭を撫でながらユーノは抱きすくめる。筋肉が切れた状態でどうして関節が動くのかはわからない。
 血も、流れ出てはいるが尽きる様子はない。意識は残っている。

311肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:24:33 ID:JMMS8toY
「しっぽ、あぁ、撫でて……あたし、夢だった、うれしくて、気持ちよくて、イッちゃう……」

 ひじから先の、二本の骨が交差しているところの隙間を舐めている。犬歯で骨端の固くなっている部分に小さな穴を穿ち、漏れ出てくる髄液を口をつけて吸う。ひと舐めで、絶頂してしまうほどに気持ちいい。
 尻尾を振って、尻を振って、タンクトップの肩ひもがずり落ちて胸がこぼれ出る。
 乳房は、人体の他の部位と違って中にたくさんの乳腺が詰まっている。アルフのは特に多いだろう。
 独特の歯ごたえと舌触りがする。身体を折り、口をつける。アルフの味が、ユーノの口の中に広がる。

「ひぁぁ!おぉっ、そこ、そこぁぁっ、かんじるぅ……!」

「可愛いよ、アルフ。気持ちよくなってくれ……」

 最初に横乳をひと噛みし、それから、乳首を口に含んで噛み潰す。前歯に引っかけて乳腺を引きずり出し、舌と唇で挟んで内部の漿液を絞り出す。
 かすかにほろ苦さを含む血液の味。あたたかく、濃厚で、喉が鳴るほどのたまらない味。
 陰核をつまんで引っ張りながら、乳房に喰らいついている。
 乳腺がひっこ抜けた跡の孔をまっすぐまさぐり、脂肪を舐めとって、筋肉を噛みちぎり、肋骨にたどり着く。
 胸だけを攻めるのもいじらしいので、いったん顔を起こして、首元にも歯型をつけてやる。

「ひとつになれるよね」

「ああ。いっしょだ、いつまでも」

「フェイトや、なのはは……」

「すぐにこっちに来るよ」

 浮遊感と多幸感に包まれて、アルフとユーノは安らかに眠る。
 ハラオウン家の育児がひと段落したら、司書の資格を取って働くつもりだった。

 でも、これからなら、また違った形で書庫で仕事ができるだろう。

 ユーノはそのように作業指示書をつくり、無限書庫に構築するデータベースシステムの仕様要件を策定している。
 書き遺された後任の司書たちへの本を読めば、彼らはユーノがいなくても、自分たちで無限書庫の業務をやりくりし、システムを作り、運用を始めるだろう。
 それはユーノがそのように仕組んだのだ。こうなることを見越して。

 自分たちが姿を変えて生きていく、この未来のために。

312肉食系女子 ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:25:43 ID:JMMS8toY
 




 定期整備のためにドック入りしたヴォルフラムの艦長室で、はやてはギンガからの報告書を受け取った。
 無限書庫で新しい蔵書検索システムがカットオーバー(稼働開始)したという。
 今後、全局員がそれぞれのアカウントと権限で必要に応じて捜査資料にアクセスできるようになり、管理の一本化と、より迅速かつ円滑な業務の遂行が可能になるだろう、ということだ。
 そして管理局人事部は昨日付で、無限書庫前司書長ユーノ・スクライアの退官届を受理した。
 フェイトは今、ある事件の捜査で他の次元世界に出張している。
 なのはは、相変わらず教導隊で、各地の部隊を飛び回る生活だ。

 解決したと思われていた闇の書事件が再燃しかけた今回の事件は、はた目には未然に防がれた、という認識だろう。
 その影で何人かの人間が姿を消していても、ミッドチルダの一般市民のほとんどは、それを知る機会がない。

 艦長室のドアをノックする音が聞こえて、はやては艦隊士官の用語で、入れ、と返事をした。

「失礼します」

「うん、急に呼び出してすまんかったなリイン」

 リインフォース・ツヴァイも、すっかり参謀としての働きぶりが板についてきたところだ。
 まあ、それはここで云々することではない、とはやては思いなおす。

「さっそくでごめんやけど……リインにはこれからしばらく、新しい職場に行ってもらうことになる」

「新しい職場、ですか?」

「そうや……」

 跳ねる前髪ときらめく髪飾りが、無邪気に揺れる。ツヴァイは、この数秒後に発せられたはやての言葉に、それがトリガーとなって、人格プログラムを停止させられる。
 これ以降は、文字通りの管制人格として、ハードウェアたるデバイスを制御するだけの存在になる。

「先にユーノくんとアルフが行っとるから……くわしい話は向こうで聞いてな」

 蒼天の書と夜天の書を、無限書庫に転送し、所定の棚に装着しておく。この作業の手順は既に書庫の司書たちに伝えてある。
 ヴォルケンリッターがいなくなった今、はやてひとりが戦うためには、シュベルトクロイツ一本だけがあればいい。

 あとは、自分だけだ──。





Sackgasse.

313SandyBridge ◆UKXyqFnokA:2013/02/02(土) 23:26:29 ID:JMMS8toY
おわりです

ギン姉ってゲロ役が定着してる感ありですが気のせいでしょうか

闇本18話も進めておりますですよー

ではー

314名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 00:01:48 ID:4T8nMSMI
あばばばば・・・ま、まさかの関係者全員あぽーん?
GJでした

315名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 00:06:16 ID:3IQZnfLw
ナイス欝

316名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 00:57:37 ID:PVEBl5Bo
なんという鬱。こうなっては性的な意味での肉食系女子を妄想せざるを得ない。

317名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 00:57:42 ID:iCPWEehM
鬱な終わりでしたがGJです。さすがは呪われし闇の書、易々と消されはしませんか。
ってかユーノもアルフ喰っちまってる!ウロボロスよろしく食べて食べられての無限連環ですか?

318名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 01:11:31 ID:Pq45WruE
時代はぐちょぬちょと一つになる肉の悦びなのか…

319名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 10:21:35 ID:T0RR3ErM
このまま、何かのきっかけで『無関係』なヒトが来ても同じ事・・・かな
意識残るままというのは幸福か、不幸か  なのは達がこうなった時、管理局内の人達がどう対応するのか
そのカタストロフィを見てみたいと思う鬱スキーな自分
初音ミクの「かこめかこめ」を聞いた時と近くて遠い印象のSSでしたナイス鬱

320名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 10:32:19 ID:QGBvug/s
>>301
エロ可愛いよアインスさん!
もっとゆーのにいじられてくれ(ぉ

>>313
のぉーなんつーSAN値直葬SSだ!
GJ!

321黒天:2013/02/03(日) 10:34:49 ID:vyxPW4vM
それは世界を侵す愛ですね。
私の夜刀浦奇譚もクトゥルフテイストだけど。ここまでグロではないし。
ともあれ欝だけど、読まずにはいられなかったです。

322名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 18:50:14 ID:40lQvbmk
乙ですが、注意書きが必要な内容だったと思います。
シリーズが進むごとに出番が少なくなっているとはいえ、好きなキャラが
クリーチャー化な上にカニバるのを心構えなく見せられるのは辛いっす

323名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 22:21:20 ID:yLTmaaLY
世界はいつだってこんなはずじゃなかったことばかりだよ!

324ヤギ使い ◆p2QA1mcDKM:2013/02/03(日) 22:42:14 ID:PKoMd5jA
凄まじい破壊力だ・・・・・・

そんな流れをぶった切るギャグSSを投下

タイトルは「おとり捜査」

325ヤギ使い ◆p2QA1mcDKM:2013/02/03(日) 22:46:45 ID:PKoMd5jA
 珍しいことが起きていた。
「やあ、ユーノ」
 クロノが無限書庫にやってきていた。
「珍しいね」
「今日は君自身にお願いがあってね。実は隊舎周辺に最近、痴漢が出るようなんだ。そこで、君が女装して囮になってもらう事になった」
「なんで!!」
「被害者はみな金髪で身長は君と同じぐらいでね。関係各位との調整で、君が最適だと白羽の矢がね」
「すでに決定済み!!というか、フェイトは!!」
「うちの超絶可愛い妹におとり捜査をさせれるか!!諦めろ。すでに予算も下りて衣装もあるから。さぁ、みなさん。ユーノを連れて行って」
「「「はーい」」」
クロノの声に、女性局員がユーノに襲い掛かり、奥の更衣室に引き吊り込まれる。
時折、ユーノの悲鳴が聞こえるが、クロノは無視することにした。



管理局隊舎近くの路地。
日傘をさし、ピンクのワンピースを着た少女の目の前に、トレンチコートを着た男が現れる。
驚いたように傘がピクンと動くのを見て、男はトレンチコートの前に手を掛ける。
「大人しくしていたら命まではとらない」
そういうとガバッと前を開けようとする。
しかし、男は前を開けることは出来なかった。
「ストラクルバインド」

ガキンッ

「なに?」
「残念だけど、僕は男だ」
「嘘だ、こんな可愛い娘が男のはずが……」
「おまえみたいなヤツのせいで女装する羽目になった僕の怒りを受けろ」

キュッ

「グハッ」
捕縛された男が空中に吊り上げられる。
「ユーノ、そこらへんにしておけ」
ユーノからの連絡で駆け付けたクロノが止める。
「どこからどうみても美少女がパンツ丸見えで荒ぶってるようにしか見えないぞ」
その言葉に、ユーノの目がキュッと細まる。
「治安課の人に聞いたんだけど、中高生を狙った引ったくりが増えてるらしいじゃないか。しかも被害者はみな黒髪でクロノぐらいの身長だってね……」
ユーノの言葉が終わる前に、クロノにバインドが掛かる。
「すでに話はつけてあるから」
「ちょ、ちょっと待っ」
「待たない。転送っ!!」

数時間後、連続ひったくり犯が捕まったが、現場にはセーラー服を着た管理局の執務官がいたという。


その後、両者の間にて話し合いがもたれたという。

おわり

326空の狐:2013/02/03(日) 23:14:19 ID:LZ/mMNn2
>>313
うわあお。
なんていう鬱展開。だけどそこがいい!!

>>325
哀れなりユーノ、クロノ……

327名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 23:25:20 ID:kPsCG3dU
>>325
>残念だけど、僕は男だ」
>「嘘だ、こんな可愛い娘が男のはずが……」
ユーノの場合はStsの時代でもこれがまかり通るから怖いな。
人を呪わば穴2つって言葉が似合うクロノのオチでした。

話し変わって、0:00ごろから小説を投下したいのですがよろしいでしょうか?

328名無しさん@魔法少女:2013/02/03(日) 23:30:00 ID:fHmosFAw
良いと思いますよ

329名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:03:47 ID:N.Cd9kWE
327の書き込みをした者です。これから投下させていただきます。
初めての投下なので不手際もあるかもしれませんがご容赦ください。

タイトルは「ゆのゆり」。
CPはユーノとGODのユーリ。設定の変更あり。
エロあり。

ではよろしくお願いします。

330ゆのゆり 1:2013/02/04(月) 00:04:54 ID:N.Cd9kWE
 時間の流れと周囲の空間。それらから切り離され封鎖された薄暗い空間。そこに少女のあえぎ声がこだまする。
「はうぅ、は、アアッ!アンっ!」
 ウェーブのかかった長い金髪があえぎに併せて大きく揺れる。白を基調とした上着は汗にぬれ、腰から下は、普段身に着けているズボンのようなスカートのような、不思議な形状の衣装は無く、裸身を晒している。
 少女の名はユーリ・エーベルヴァイン。つい先日までアースラが事態解決に奔走していた『砕け得ぬ闇事件』の、ある意味で中心にいた人物だ。
 その身体はまだ少女と呼ぶにも幼い。男に馬乗りになり、下からヴァギナをペニスで貫かれるその様は本来なら冒涜的であるのだが、
「ひゃぅぅっ!い、イイッ!あっはぁ!」
 表情には痛みと共に快楽が混ざる。声にも艶があり、幼女の姿とはひどくギャップがあった。また、彼女の胎内を蹂躙している相手もこの情景とはそぐわなかった。
 蜂蜜色の髪の、ユーリより少しだけ年上のような、こちらもセックスとはまだ縁遠い年頃の少年だ。女の子と見間違えられることもある顔つきは、ここでも男らしい獣欲の色は薄かったが、代わりにユーリの内側ではペニスが膨れ上がり、少女の内側を満たしていた。
「うあ、ユーリ。僕、もう――っ」
「は、はい!ユーノさん、わたし、また、またぁぁぁ!」
 すでに幾度目かの絶頂へと達したユーリの締め付けに自身もまた快感の頂点に突き上げられて。
 熱い射精感と共に、ユーノはこうなった経緯を思い返していた。

331ゆのゆり 2:2013/02/04(月) 00:07:38 ID:N.Cd9kWE
 第97管理外世界、青い星を眼下に捉えながら宇宙に浮かぶ次元航行艦アースラの内部のとある一角。
 元は犯人拘置用のスペースを――主に入れられた者たちが――改装したその部屋は、随分と明るい色調となり、最低限とはいえ家具もおかれたせいか元の姿を感じさせないくらいには変貌していた。
 その一角で、ユーノはユーリに自身がまとめた資料を手渡していた。
「――で、これが荒地の開墾方法についての資料。こっちは環境変動に対して改善というアプローチで対処した各世界についてのレポート集。あとは、一般的に過酷な環境に強いとされる植物の一覧表。今用意できるのはこれくらいかな」
「あ、ありがとうございますッ」
 つい先日までアースラが事態解決に奔走していた『砕け得ぬ闇事件』。事件自体は解決し、ユーリと、『紫天の魔導書』から生まれたマテリアルたちは、エルトリアという未確認世界で現地の環境復活を行うこととなっている。魔道生命体とはいえ強大な能力を持つ彼女らを管理局にスカウトする動きも無いではなかったが、様々な思惑と諸般の事情でエルトリアへの転移はOKとなった。
 ユーノも事件の際には「理のマテリアル」シュテルと一戦交えたり決戦時の結界構築に参加したりはしていたが、彼の仕事は解決後が本番だった。
 上層部ではユーリやマテリアル達が環境復活に“失敗”した時、また今回のような時間軸を遡ったり未確認世界へ転移したりという方法で事態解決を図るのではないかという恐れがあった。今回のように管理外世界や、強力な魔導師と知識豊富なバックヤードが1つどころに揃っていれば対処は可能だが、そうでなければ現地で大混乱を起こしかねない。
 そこで、「調べれば何でも見つかる」とも言われる『無限書庫』に司書として勤めるユーノに、事件解決にあたったついでに、環境復活に関する資料を取りまとめるように指示が出たのだ。もっともユーノは言われるまでも無く作業には着手していて、今日はそれを手渡しに来たのである。
「……これで、もっとエルトリアを助けることが出来ると思います。なんとお礼を言えばいいか」
「気にしないでよ。こういった手助けが僕の仕事だからね」

 資料を抱えてそう言うユーリに、ユーノは微笑みながら――内心ではかなり舞い上がっていた。
(か、かわいいっ……これが俗に言う『年下萌え』?)
 スクライアの集落でも最年少の世代だったユーノである。魔法学院でも無限書庫でも当然の如く自分が一番年下な状況に慣れていたユーノにとって、自分よりも幼い少女に素直に感謝されるというのはかなり珍しい経験となる。
 まして、宿した力「無限結晶エグザミア」こそ強大でも、その力に振り回された経験からどこか儚い印象を持ち、しかし確固とした意思で未来へ進もうとするその健気さは、ユーノのハートにどストライクだった。
 以前、クロノから「フェイトにお兄ちゃんと呼ばれてむずがゆい」と相談された時にはよく分からなかったが、確かにこのシチュエーションはツボに嵌ると抜け出せない。

 とはいえ、そういった素直な心情を表に出せば色々と問題があるのも理解している。煩悩めいた思考をマルチタスクの隅に追いやり、「頼れるお兄ちゃん」っぽい態度を心がける。
「それじゃあ、僕はこの辺で。追加で何か資料とかが必要なら遠慮なく声をかけてね」
 そう言うと、ユーリはふと思い出したように。
「そ、それなら。もう1つよろしいでしょうか?」
「なんだい?」
「私、ユーノさんの魔法を覚えたいんです!」
 そう言われて、ユーノは首をかしげた。こと魔法の力で言えば自分はユーリの足元にも及ばないはずだが。
「その、これから行くエルトリアでは、戦う為の魔法を使うことは無いはずです。ディアーチェやシュテル、レヴィに、アミタさんやキリエさんもいますから」
 ユーリに同道するマテリアル3人と、エルトリアから時間を超えてやってきた姉妹を思い出せば、なるほど納得だ。
「戦い以外の魔法を身につければ、みんなをもっと助けられると思うんです」
「それは、確かに」
「そしてユーノさんは、戦闘用以外の魔法をたくさん知っている。そうですよね?」
「うん。まあ他の人たちよりはその手の魔法は知っているつもりだけど――」
 言うまでも無く、今回の事件で解決にあたった魔導師はユーノを除けば全員が戦闘を前提とした魔導師だ。元から局員のクロノや『夜天の守護騎士』ヴォルケンリッター、戦闘魔導師として英才教育を受けたフェイトは言うに及ばず。なのはやはやてといったイレギュラーな形で魔導師となった2人も、むしろ戦闘に巻き込まれて魔導師となったせいか戦闘前提の魔法がほとんどだ。

332ゆのゆり 3:2013/02/04(月) 00:09:01 ID:N.Cd9kWE
「でも、エルトリアに転移するのはもうすぐなんでしょ?教えるにしても、まあ基礎の基礎だったら何とか、ってところだね」
 ましてデバイスを使わないユーノの魔法は、彼自身の調整もかなり加えられている。魔法形式の違いもあるし、なかなか時間が掛かりそうなことではある。
「はい。一から教わる時間はありません。だから、魔法を覚える最終手段を使うんです」
「最終手段?」
 なんとなく嫌な予感を覚える。それは、『闇の書事件』でリインフォース――あの頃は『闇の書の意志』だったが――がなのはのスターライトブレイカーを使った事とその理由が頭に浮かんだからだった。
「・・・・・・ユーノさんのリンカーコアから直接教わろうと」
 想像通りの解答に頭を抱える。『闇の書事件』でなのはやフェイトもリンカーコアを抜かれているが、その時は回復にそれなりの時間が掛かった。ユーノの回復力も2人ほどずば抜けていないし、何より無限書庫の整理開拓はまだまだ始まったばかりだ。
「う〜ん、さすがにリンカーコアを抜かれるのは……」
 ユーノの言葉に、今度はユーリが首をかしげた。
「いえ?リンカーコアを抜いたりはしませんよ?」
「?それじゃあ、どうやって」
「その、性交です」
 あまりにあっさりとしたユーリの答えに、ユーノはしばし活動を停止した。確かに古い文献などで、高難度の魔法を教授するにあたり身体を交えて行うという記述は散見されるが。
「えと、ユーリ?自分が何言ってるか、分かるよね?」
「勿論です!」
「じゃあ、そういうことをしたら、きっとシュテルたちが大騒ぎするって言う事も、分かるよね?」
 マテリアルの3人にとってユーリは同胞であり家族だ。そんなユーリを傷物にしようものなら、それこそ確実に命がない。だが、ユーリはといえば。
「あ。そういえばみんなからユーノさん宛に手紙を預かっています」
「――もしかして、もう彼女らに話ししてる?」
「はい。――これです」
 手渡された手紙を見ると。
『師匠、信じています。――よもやあなたが、我らの盟主、ユーリの願いを無碍にしない事を。シュテル・ザ・デストラクター』
『見てみたいな。ユーリが君みたいな魔法を使うところ。レヴィ・ザ・スラッシャー』
『我らが助けたユーリが今度は我らを助けたいと願っているのだ。我のユーリを一時預ける。不敬な真似はするな。P.S。思うところはあるが我もユーリに説得された身。気にするな。花畑で走馬灯を見るのはもうこりごり――や、やめよユーリ!ああ!弾幕が、弾幕が! ロード・ディアーチェ』
 ディアーチェの文の最後からおぞましいオーラを感じるが、それはともかく。
(断る方が命に関わるって――)
 何故だか青い空が見たくなった。見上げても無機質な天井が見えるだけだったが、瞼を閉じて青空を幻視する。
 覚悟を決めてユーリに向き直ると、すでにユーリの顔はすぐ間近だった。
「ちょ、待って。最後の覚悟を――ユ、ユーリ!」
 呼びかけに、ユーリは顔をユーノに寄せ、
「っ?!」
 有無を言わせず、唇を奪った。

333ゆのゆり 4:2013/02/04(月) 00:12:37 ID:N.Cd9kWE
 ユーノの唇を割り入って侵入したユーリの舌が、ユーノのソレを絡め取る。半ば本能的にユーノは舌を解こうとするが、それは却ってお互いの舌を絡ませることになった。そうしてしばらく。ユーリがようやく唇を離すと、お互いの唾液が銀の糸を引いて垂れた。
「あ、もしかして初めてでしたか?」
「……ゆーりははじめてではないのかな?」
「私も、初めてですよ」
 その割には上手だった、と思うユーノだったが、ユーリが呼吸を整える様子を見て、今度はユーノからユーリにキスをする。
「んんっ……ふぅ」
 そのまま背中からうなじ、腰と指を這わせる。ユーリも応じるようにユーノの背中に腕を回してより密着する。ユーノの指が蠢くごとに、少女からは甘い吐息が漏れた。
「――ユーリ、そろそろ」
「――はい」
 一度離れて、ユーリは下半身の衣装を脱ぎ捨てる。ユーノは、このままの空間ではマズイと思い封時結界を展開。外から異常を感知できないようにすると、自分も服を脱ぎ捨てた。
 鍛えていないので筋肉がガッチリしているわけではないユーノの身体だが、その股間のペニスにユーリが「え、」と声を漏らす。ユーノという少年の外見印象には似つかわしくない大きさの男根がそこにあった。
「す、すごいです……」
「正直な話、ココだけ立派でも恥ずかしいだけなんだけどね」
 そういいながら半裸のユーリを観察する。肌は白く透き通るようで、見た目の印象と同様に幼く可憐だった。が、その秘裂から、トロリと愛液が漏れているのが見える。
「で、では早速。教わらせていただきます!」
(これは教えるに入るのかなぁ)
 最後の最後に浮かんだ疑問は、馬乗りになったユーリにペニスが挿入された時、その快感で消えうせた。

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆

 ユーリは、最初から自身の快感を深めるような魔法を使っていたようだった。最初の挿入でユーノの男根に子宮口をノックされた時にはあっさりと絶頂してしまった。後はユーリ自身が快感に従ってピストンし、再び絶頂へと達する。
 そしてユーリの中に最初の射精をした時、ユーノは自分の魔力もまたユーリの中に抜けていく感覚を覚えた。
「ユーリ、今のが?」
 力尽きたのか胸元に倒れこんできたユーリに尋ねると、彼女はコクリと頷いた。
「は、はひぃ。これをくりかぇすと、ユーノさんの魔法をぉ身につけられるんです」
 息も絶え絶えの様子のユーリに、ユーノはふと劣情を覚えた。今しがた射精したペニスに、再び血流が集まっていくのが感じられる。
「じゃあ、ユーリ。今度は僕が攻めるよ」
「え?ああ?!」
 力の入らないユーリの体を起こして今度はユーノが上になる。上着に手を掛けて剥ぎ取ると、平らな胸で2つの突起が自己主張していた。
「かわいい」
 乳首をつまみ、弾き、薄い胸肉を寄せ集めるようにしてこねる。その度にユーリは甲高くあえぎ、ユーノを更に高ぶらせた。
 三度キスを交わしながらペニスを更に激しくピストンすると、ユーリは身体全体で跳ねるように反応した。
「むぐぅ、む、ウウンッ!ハァッ、アウゥゥッヒイ!は、はげしいっ!」
「ユーリ、すごくきれいだ!全身濡れて、いやらしいよ!」
 ユーノの限界もすぐに訪れる。ユーリが激しく膣を締め付けると、ユーノもそれに合わせて再びユーリの胎内を精液で満たす。
「ア、ア、アアッ。ま、またきたっぁ」
「ハ、ハァ、ハァ、ハァ。ご、ごめんねユーリ。まだ、収まらないや」
 ユーノも息絶え絶えなのだが、ペニスはその硬さを失いきっていない。まだユーノのペニスはユーリの柔肉を貪れる。

334ゆのゆり 5:2013/02/04(月) 00:14:10 ID:N.Cd9kWE
「はひぃっ!ふか、さっきよりも深いぃぃぃ!」
「これ、が。ユーリの一番奥ッ!あう、凄い感触……!」
 今ユーリは跪いた姿勢でユーノに犯されていた。その体勢ではユーリは更に奥深くまでユーノを迎え入れ、ユーノも招きに応じるように、子宮口の更に奥、最奥の秘所を味わっていた。
 両手は背後からユーノに掴まれ、背中に浮かび上がった魔力の翼、魄翼もチェーンバインドとストラグルバインドの混成拘束で縛り上げられ。
 それは少女と少年のまぐわいという域を超え、淫靡で背徳的な儀式とさえ映る。
 そしてその儀式も終わりが近づいてきていた。
 ユーリの背中から覆いかぶさるようにユーノが身体を密着させる。うなじに唇を這わせ、両手で胸元をいじくり、そしてヴァギナをこれまでにない勢いで抉りぬく。
「あ、ア、ア、ア、ア、ア、ア、アッ、アアッ!」
「い、イク、イク。全部、だすよぉ!」
 射精と合わせて魔力も注ぎこむような感覚。ユーリを奥底から蹂躙するという欲望と、この少女をこれ以上痛みにも性感にも犯したくないという気持ち。
 それらをない交ぜにして。
「ユーリ、受け取って!全部、ぜんぶぅ!」
「はい、ください!わたしにいっぱいぃぃぃぃ!」
 ドクン、という音が耳に聞こえた。そんな気がする程に。
 ユーリの中に注がれた精液は、少女の腹部を軽く膨らませるほどだった。ユーノがペニスを引き抜けば、ゴボリと白濁液が少女の秘裂からあふれ出した。
「はう、はぁ、はぁ……。おなか、あつい、です」
「……ごめん、途中から抑えが効かなくなった」
 四肢から力の抜けたユーリを優しく抱えて謝ると、ユーリはゆるゆると首を振った。
「お誘いしたのはわたしです。それに――」
「それに?」
「ユーノさんにも、エッチになる魔法をかけましたから」
 疲れきって、しかし悪戯に成功した子供の顔で笑うユーリに、ユーノはやれやれと苦笑し、ユーリを抱きかかえた。
 とりあえずは、人目につく前に2人とも身体を清めなければならなかった。


 闇に包まれたとある1室。照明の無いその部屋でも、モニターは明るく映像とそれを見ている人物を照らしている。
 『紫天の盟主』から一時アースラの人払いをお願いをされたその女性は、お願いを快諾する代わりに彼女に内緒でちょっとした仕掛けを施していた。モニターに映っているのはその「仕掛け」によって映された空間の映像だ。
 先ほどまで映像の中で少年少女が繰り広げていた痴態を一部始終眺めて、その人物はこう呟いた。
「若いっていいわねぇ」
 

 後日、某甘党提督の菓子のグレードが上がるのと同じ頃合で、管理世界の一部裏社会に、少年少女のハードSEX映像が流通することになるのだが。
 因果関係の真相を知るのは、きっとこの世で1人だけだろう。

(終わり)

335名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:19:28 ID:N.Cd9kWE
以上です。
当初はユーノ祭りに出そうと思っていたのですが、なかなかまとまらずに時期を外れてしまいました。
せっかくゲームに参加できたけどラスボスと関われなかったユーノですが、ドンパチの後でもしかしたら活躍できたかも、と妄想しながら書きました。

作中でユーノがユーリを「かわいい」と言ってますが、なのはは「漢前」、フェイトは「凛々しい」、はやては「お母」という印象が強いので特にユーリに対してそう意識した、というつもりです。

ありがとうございました。

336名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:21:01 ID:YFUPPTwk
>>334
珍しい組み合わせだけどなるほど納得、GJ!
……ってリンディさん何やってんだw

337名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:22:42 ID:3oyHxeuo
これは実にいいロリショタエロGJ!

338名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:36:29 ID:Vd9VU1a2
>>335
ごちそうさまでした。でもオチがひどいw

ちなみに時期は外れてないぜよ、今がまさにユーノ祭り期間中
祭りは開始宣言して、その後投下が途切れて終了宣言が出るまで。でも終了宣言出た後の飛び入りもおk
これまでの祭りは大体数日〜1週間前後くらいの期間だったんで、そんぐらいを目安としていただければ

339名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:47:16 ID:0Vp1KgXo
何やってんすか、リンディさんwww

乙でした

340名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 00:59:17 ID:BvRvasag
良いなぁ、ユーリとユーノのカップル
というか、マテリアルとユーリ達はエルトリアにユーノ連れてけば良い様な…
シュテルには夫(?)、レヴィには兄、ディアーチェには頼りになる配下(ディアーチェ視点)
ユーリに…何になるんだろう?エルトリア組に男性いないけど全員人外だよね?殖えないかな…
そしたら3期でヴィヴィオ消えちゃうかもだけど…まあ、何とかなるでしょ、きっと

341名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 22:07:34 ID:G1eULQ9k
>>335
実にエロいぞ!!GJ!!

342名無しさん@魔法少女:2013/02/04(月) 22:09:42 ID:3oyHxeuo
>>335
読み直して思ったんだが、やたら長い行があるのでもうちょっと改行した方が良いと思う
余計なお世話かも知れないが

343 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:26:58 ID:3OgJsu9s


どうも、ユーノ祭りにやってきました。

注意事項
 ・ユノフェです
 ・欝じゃありません

タイトル「女の子と男の子」

344野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:27:56 ID:3OgJsu9s
 
 侵入者に向かって、部屋の主は酒の入ったグラス片手に笑いかける。

「おや、これはこれは珍しい」

「……お酒臭いよ?」

「そりゃあ、飲んでいるからね」

「珍しいね」

「ん? 僕が飲んでいるところ? それとも、僕が酔っぱらっているところ? それとも、僕が振られたと認めたところ?」

「どれでもないよ」

「じゃあ、なんなのさ」

「ユーノが自棄になっているところだよ」

 フェイトの言葉に、ユーノはグラスを傾ける手を止める。
 そして、ああ、と苦笑気味に呟くと、グラスを置いた。
 空になったグラスの中で氷がかちゃりと音を立てて砕けたところで、ユーノはグラスから手を離し、自分の額をぴしゃりと叩いた。

「そうか。僕は自棄になってるのか」

「そうだね」

「うん、自棄になってる。そうだね」

345野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:28:27 ID:3OgJsu9s
 
 フェイト相手に繕ったところで仕方ない。
 これがヴィヴィオやヴィータ、スバルなら、何が何でも隠し通すところだ。
 はやてやクロノ、ザフィーラなら、もっと空気を読んで最初からここへは来ない。
 だけど、フェイトは特別だ。
 自分にとっても、彼女にとっても。

「昨日だったね」

 フェイトは、椅子を引きずるとユーノとテーブルを挟んで座り込む。

「うん。昨日だ」

 ユーノは新しいグラスを魔法で引き寄せると、フェイトの前に置き、グラスに酒を注いだ。

「なのはの結婚に乾杯」

「乾杯」

 二つのグラスが音を立てる。
 飲み干されるグラスの中身、新たに注がれる酒、空になるビン。
 瞬く間に空になる数本のビン。
 途中、呆れ顔でツマミを持ってきた使い魔がいたような気がしたけれど、よく覚えていない。

「それで、ユーノ?」

 ガラスのテーブルの頬をつけるとひんやりして気持ちいいことをフェイトは発見していた。

「どうして、なのはと結婚しなかったの?」

346野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:29:03 ID:3OgJsu9s
 
「付き合ってなかったから」

 きっぱり、とユーノは答える。

「だけど、ヴィヴィオのお父さんやってたよね」

「だったら、僕はフェイトとも結婚することになるわけだけど?」

「う」

 気まずい返事のフェイトは、テーブルに頭を寝かせたまま器用に余所を向く。

「付き合ってると、みんな思ってたよ」

「フェイトも?」

「なのはに聞くまでは、そう思ってた」

「異性であることさえ無視すれば、一番の友達だったよ。口幅ったいけど、なのはの魔法の師匠は一時期僕でもあったわけだし」

「だから、みんなそう思ってたんだよ。なのはが一番仲のいい男の人は、ユーノたったんだし」

 ユーノは椅子の背もたれに預けた身体ごと後ろに倒れた。
 低重力の室内では背中を強打することもなく、ユーノの身体はふわりと浮いたように漂う。
 空中であぐらをかいたような姿勢になると、ユーノは身体ごとくるりと回る。

347野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:29:40 ID:3OgJsu9s
 
「僕だって、なのはのことは好きだったよ」

「だったら……」

「好きだからと言って結婚には結びつかないさ」

 身体を起こしたユーノは再びグラスを掴む。

「僕には、なのはを縛り付けることしかできないから」

 空往く者を地に縛り付ける権利など自分にあるのか。とユーノは問うていた。
 それも、もっともっと昔に。
 もしかしたらなのはは、喜んで縛り付けられるのかも知れない。
 だとすれば……

 最悪だ。

 そんなユーノ・スクライアを、ユーノ・スクライアは許せない。
 高町なのはを地上に引き留める自分を、自分は許せない。
 愛し合うことで縛り付けてしまうのなら、いっそ愛さなければいい。

 それなら、とフェイトは言う。
 飛ばし続けてあげることは出来なかったのか。
 なのはを見守ることは出来なかったのか。
 飛び続ける彼女を待つことは出来なかったのか。

348野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:30:19 ID:3OgJsu9s
 
「無理だね」

 簡潔に、ひどくあっさりとユーノは答える。
 自分の性格は自分が一番よくわかっている。
 そんなことが出来る性格なら……
 黙って見守ることが出来るような性格なら、自分はそもそもなのはと知り合っていないだろう。
 そんな自分なら、ジュエルシードを追って地球に降りたりはしていないだろうから。

「なのはと適度に付き合うなんて、僕には無理だ」

 いっそ離れるか、それとも束縛するか、二つに一つ。
 自分が出来るのはそのどちらかだけだ。
 だから、離れることを選ぶ。
 束縛したとしても、なのはは受け入れてくれるだろう。だけど、それはもう、なのはじゃない。

「だから、これでいいんだよ」

「本当に、いいの?」

「うん」

 自棄でも放棄でもない。これは自分で考えた結論だ。
 何処にも文句は言えない、誰にも繰り言は言えない。自分が、自分のために出した結論なのだから。

「君なら、できるんだろうね」

349野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:30:58 ID:3OgJsu9s
 
「そうだね」

 素直にフェイトは答えた。
 放置でも束縛でもない、自分なら適度になのはを愛することが出来ると。
 放置も束縛も適度な距離も、愛情の深さとはなんの関係もない、ただの性格や立ち位置の問題だ。
 それは、共に戦ってきて、背中を預けたことすらある魔道師としての距離感であり、安心。そして信頼。

「だけど、私は女だよ?」

 ミッドチルダにもさすがに同性婚はない。ある意味では、地球の一部国家の方が進んでいるのだ。

「それに、私だけだしね」

 悲しげに、それでも何処か吹っ切れた調子で笑うフェイトを見つめるユーノの視線は優しい。
 別の意味で、フェイトの想いが決して成就しないことをユーノも知っている。
 フェイトはなのはが好きだ。どちらの意味でも。
 なのははフェイトが好きだ。一つだけの意味で。
 その差は永久に埋まらないことを、フェイトは知っている。そして、その差が存在することをなのはに知られてはならないことも。

「本当ならユーノにも、知られたくなかったんだけど」

「わかるさ」

「そうだね」

 同じ場所を、同じ場所から、同じ視線で見ていた二人だからこその言葉。
 だからこそ、二人にしかわからないもの、二人にしか通じ合わないものがある。

350野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:31:34 ID:3OgJsu9s
 
「僕たちにもう一度」

 二人はグラスを持ち上げる。

「乾杯」

 即座に干されるグラスの中身。

「時々思うんだ」

 お代わりを注ぎながら、フェイトは言葉を続けた。

「私がユーノだったら良かったのかなって」

「え? よく、わからないよ、フェイト」

「私が男だったら、なのはとの関係はどうなってたのかなって」

 地球にいた頃であれば、二人の関係はさほど変わらなかったかも知れない。
 だけど、六課に入ってからはどうだろう?
 少なくとも、ルームシェアはあり得なかっただろうことは、容易に想像できる。

「うん。フェイトなら、僕も安心だよ」

「あれ? いまのなのはの旦那様じゃ駄目なの?」

 肩を竦めてノーコメントのユーノ。駄目も何も、なのはの結婚相手が何処の誰なのか、それすらユーノは知ろうとしなかったのに。
 だからなのか、ユーノはフェイトの問いを無視していた。

351野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:32:26 ID:3OgJsu9s
 
「残念ながら、フェイトは女の人だから」

 あはっ、とフェイトは笑った。

「認めてくれるんだ、ユーノは」

「何を?」

「私が女の子だって」

「認めるも何も、現に女の子じゃないか」

「ユーノにとって、〝女の子〟はなのはだけなのかと思ってたよ」

 なにやら、おかしな方向に舵がきられているような気がする。

「そうかもしれないよ」

 だから、護りを固めたつもりだった。

「僕にとっては、なのはが唯一無比なのかも知れないよ」

「それならそれでいいよ」

 気のせいか、とユーノは思う。

352野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:32:57 ID:3OgJsu9s
 
 気のせいか、とユーノは思う。

「私にとっても、なのはは唯一無比だもの」

 良かった、とユーノが気を抜いた瞬間、

「気が合うね」

 フェイトがニヤリと笑ったように見えた。

「……ねえ、フェイト」

「なにかな?」

「お互いに、みっともない真似を晒すのだけは止めようよ」

 フェイトの目が細められる。
 
「わかってるよ」

 それなら、と言いかけたユーノを制するように、

「だけど、これがみっともない真似だってわかるのは、はやてとエイミィぐらいじゃないかなぁ?」

 おいちょっと待て、と立ち上がりかけたユーノの肩を素早く掴み、座り直させるフェイト。

「あの二人なら、黙っててくれるんじゃないかな?」

「……クロノとロッサも気付くんじゃないかな?」

「クロノは無理だよ」

353野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:33:32 ID:3OgJsu9s
 
 あっさりと義兄は切り捨てられた。
 じゃあヴェロッサはどうなのさ、と言いかけたユーノの口は塞がれる。フェイトの唇で。
 すぐに離れた唇が、ユーノの耳元で怪しく囁いた。

「なのはが一番だけど……ユーノは二番じゃ嫌?」

 その瞬間の動きを、ユーノは後に語った。
 自分は馬鹿で、どうしようもなく男だったと。

 








 翌朝、ユーノは改めてフェイトに尋ねる。

「なのはが一番だけど、フェイトは二番じゃ嫌かな?」

 しばし間を空けて、たっぷりの溜息と共にフェイトは答えた。

「……サイテーだね、男の子のユーノは」

 だけど、いいよ、と付け加えるのを忘れずに。

354野狗 ◆NOC.S1z/i2:2013/02/05(火) 22:35:06 ID:3OgJsu9s

 以上お粗末様でした





 








 構想段階では、なのはの結婚でなく、クロノとエイミィの結婚だった……

 つまり、ホモとブラコンの話だったことは内緒にしておこうと思います

355名無しさん@魔法少女:2013/02/06(水) 02:04:30 ID:qvq3L65o
>>354
GJ、ニヤリとできるいいユノフェだった
だが後書きで再び突っ込まずにはいられない。ホモとブラコンの話って何やねんw
しかも口に出した時点で内緒じゃないww

356名無しさん@魔法少女:2013/02/06(水) 03:20:49 ID:UEKKpovA
でもホモとブラコンの話だった方がエロい気がする

357黒天:2013/02/06(水) 16:08:22 ID:x2.F.qT6
ホモとブラコンの話って何よ。おいどんも気になるでごわす。
あと、なのはさんって他人の心の機微を読み取る能力低そうな気がするのは気のせい?
何というか、表面的な部分しか読み取れて居ないというか。
それはさて置き、少ししたら夜刀浦奇譚投下するです。

358夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:10:04 ID:x2.F.qT6
「・・・心地よい風だな」
「そうだね」
自らの身体を優しく撫でていく夜風の心地よさにザフィーラは眼を細め、アルフも相槌を打った。禍々しい空気が立ち込める街だと思っていたが、この夜風は悪くない。
夜風のおかげで、街に漂う漠然とした生臭さも幾らか和らいでいる。
暫くの間、街を見て回っていたが、不意にアルフの腹から音が鳴った。
「腹が減ったか」
「悪かったね、焼肉を十枚食ったのにアタシの腹はもう食い物を要求してるよ」
「気にするな、折角だから、近所の店で何か腹に詰めてから帰ろう」
適当な店が無いか、ザフィーラは辺りを見渡す。
彼らが居る場所は、個人経営の喫茶店が立ち並ぶ一画。
程なく、手頃そうな店を見つけた。
「あそこなんかどうだ?」
「時間的にあんまりお客さんが居ないみたいだし、あそこにするかね」


その喫茶店煉瓦造りで中々にモダンな外観をしており、扉を開けると、軽快なベルの音が出迎えてくれた。
「とりあえず、アタシは焼きソバとオレンジジュース」
「私はミネラルウォーターに、サイコロステーキを頼む」
二人用の席に着き、ザフィーラとアルフは店員にそれぞれメニューを頼んだ。
厨房に引き返していく店員の後姿を見送ると、ザフィーラは店内を見渡した。
ザフィーラとアルフ以外に客の姿は数人――恐らくは地元の若者達だろう。
距離的にそれ程、離れていないので、彼らの会話の内容が耳に入ってくる。


「という訳で、お姫様が居た場所には、後には魚が腐った様な匂いと、人間の物とは思えない様な足跡が残ってたんだと」
「うーん、何か眉唾物の話だな」
「でも、この頃、魚みたいな顔の連中を見かけたって話、よく聞くよな」
「ああ、特にあの“海神の森”の近くでだろ?」
「・・・あの森の地下には祭壇があって、この街の周辺から浚われてきた連中が生贄として海の神様に捧げられてるとか」
「イメージダウンだよなあ、只でさえ産業が無い街なのに」



その後、若者達は店を後にし、店内に居る客はザフィーラとアルフだけになった。
焼きソバを頬張りながら、アルフは向かいの席に座ったザフィーラに話しかけた。
「どう思う?」
「今の若者達の話か? あながち出鱈目でも無さそうだな。この街全体を取り巻いている陰惨な空気を見る限りではな」
サイコロステーキを食するのを中断したザフィーラは、重々しい口調で言った。
人外が跋扈しているという意味では、海鳴市もそうだが、この夜刀浦は更にその上をいっている。何というか、何百年にも渡って積もりに積もった怨念めいた物が渦巻き、得体の知れぬ圧迫感、閉塞感を感じる。まるで暗い海の底に居る様だった。
「というか海鳴市は、ここまで生臭い匂い漂ってないからね」
「この生臭さは原型が狼である我々には、少々きついな」
食事を続けながら、ザフィーラとアルフは顔をしかめた。
夜風が止んだのか、生臭い匂いが店の窓から入ってきて気持ちが悪い。
人間の嗅覚でも不快さを感じるのに、彼らにとってはこの生臭さはたまらない。
窓を閉めても、匂いは店内に残り、加速度的に食欲が失せてくる。
それでも根性で食え終え、店を出る。

359夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:10:52 ID:x2.F.qT6
「・・・この街に月村家が出資するらしいけど、それで少しはマシになるのかねえ」
「それは我々が関知する所ではないな。もう夜も遅い。旅館に戻ろう」
店を後にし、ザフィーラとアルフは『鷹樹庵』に続く道を歩き始めた。





そこは生臭い魚の臭いと潮の臭いで満ちていた。
薄暗く湿気を帯びた空間の中心には、満々と水を蓄えた巨大な地底湖があり、そこに夜刀浦の地下全体に広がる水脈から水が流れ込んできている。
その地底湖の手前には、不気味な装飾を施された祭壇があった。

空間の彼方此方から、嬲られる女達の嬌声が聞こえてくる。
女達を嬲っているのは、人間とはかけ離れた異形――半魚人だった。
瞬きしない眼を動かし、呪文の様な言葉を呟き、彼らは女達を穢している。
長時間に渡る陵辱の果て、限界に達した女の1人の精神が遂に崩壊した。
それを悟った半魚人達が、女を祭壇の上にあげ、その喉笛を刃で切り裂いた。
噴き出した鮮血は、祭壇を滴り落ち、地底湖に流れ込み、それに呼応する様に水面が不気味に泡立った。まるで地底湖その物が生贄を欲している様だった。
「ワレラが神の目覚めの時ハチカイ・・・」
半魚人の中でもリーダー格と思われる者が呟くと、残りの半魚人達が雄叫びをあげ、ドンドンと足を踏み鳴らす。



「神様か、連中が崇めとる神様やから、真っ当な神様やないんやろなあ」
「確かな恵みをもたらす神であるのは確かだ」
半魚人達から少し離れた所で、二人の男が言葉を交わしている。
1人は上等なスーツに身を包んだ、小太りな中年の男。
もう1人は中国風の衣を纏い、顔に奇怪な仮面をつけた男。
「確かな恵みか、確かにワシに、生贄と引き換えに黄金をくれるんやから悪い神様やないな。世の中は所詮、金や」
中年の男の背後には、黄金の装飾品―ー配下の連中を使って浚った女達を生贄に差し出して手に入れたーーーが山積みにされている。
「薄気味悪い装飾が施されとるが、溶かして鋳潰してしまえば問題は無いで」
「それは結構・・・私も神を復活させ、‘組織’の再興を図れるという物だ」
仮面の男がくぐもった声で哂い、視線を祭壇の方に向けた。
祭壇の上には、二人目の女――無論、陵辱の末、精神崩壊しているーーが乗せられ、喉笛を引き裂かれ、噴き出した鮮血が地底湖に流れ込み、それに呼応する様に湖の底からは得体の知れない唸り声が響き、空間内に反響した。


「‘神’の復活も間もなくだが、やはり完全なる覚醒には極上の生贄が必要だな」
「それなら、アテはあるで。丁度、ワシと同じ一族で、ワシよりも血の濃い奴がこの街に来ているんや。アイツなら申し分無いやろ。それで神様が復活した暁にはーー」
「勿論、貴方に特大の黄金を差し上げるとも」
祭壇の所で行われている惨劇を眺めながら、彼らは‘契約事項’を確認する。

360夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:12:19 ID:x2.F.qT6

「とはいっても‘神’の復活までに、油断は出来んがね」
「御神の小僧や退魔機関の連中なぞ恐れるに足らんやろ。こっちには本物の化物がついとるんやで。まして神様が復活してしまえば、人間風情に何が出来るんや」
下卑た笑みを浮かべる中年の男を、内心で侮蔑しながらも、仮面の男は適当に相槌を打った。とりあえず神の復活までは、協力体制をとっていた方が得策だった。

仮面の男が恐れているのは、この身体の‘持ち主’が所属していた組織を壊滅に追い込んだ青年剣士の事でも、下級の妖魔を討伐する退魔機関の事でも無い。


本来の‘自分’が率いていた‘組織’を滅ぼした者。
忌々しいーー偽りの‘神’である<光の巨人>を信仰する一族の少年。
その少年の気配を近くに感じる。向こうはこちらに気付いていない様だが。
「・・・念には念を入れておくか」
黄金の装飾品を愛でている中年の男を横目で見ながら、仮面の男は手で印を組み、忌まわしい術を行使し始めた。







忍は清楚な白のワンピースに身を包み、朝から夜刀浦の海辺の砂浜――昨夜、ユーノが居た場所の近くーーを恭也を引きつれて、散策していた。

「朝からテンションが高いな」
忍と反対の、黒一色の服装の恭也は眼を擦りながら苦笑した。
このテンションの高さは、いつもなら朝は動きが鈍い忍にしては珍しい事だ。
「だって、リインフォースが可愛くて・・・それで興奮して眠れなかったの」
「そうか」
「そうなのよ!! お風呂場でちょっと苛めすぎちゃったけど、あの可愛さは反則よね。おまけに朝食の時、ユーノ君の方をチラチラ見て、あれはユーノ君を強く意識してるわね。すずかに超強力なライバル出現ね」
訳知り顔で頷く忍を横目で見ながら、恭也は辺りの気配を探る。
魚が腐った様な生臭い臭いが漂い、何処と無く余所者を拒む空気がある。
何となく恭也は、視線を海とは反対側に向けた。

「・・・ザフィーラ達が昨日言っていた“海神の森”とやらか・・・」
鬱蒼と茂った木々不気味な存在感を放つ、黒い森。
朝陽を拒むかのような陰鬱な気配を放っている。
「海の神様を祀っていたから“海神の森”・・・土着宗教の一種といった所かしらね」
そんな恋人に何となく相槌を打っていた恭也だったが、背後に視線――それも明確な敵意が籠ったーーを感じ、その場に立ち止まり、振り向く。

視線の主は、夜刀浦の地元住人だが、その姿はかなり異様だった。
丸く大きな眼に、張り出した鰓。
肌はツギハギしたかの様に斑模様で、鮫肌。
不思議な事に彼らは子供の頃は普通の顔をしているが、年を経るにつれて徐々に顔が人間と魚を掛け合わせた物に変わっていくという。
夜刀浦の住民の半分近くにこの様な特徴が見られ、彼らは月村家の進出を快く思っていないらしい。

361夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:13:01 ID:x2.F.qT6
「インスマス面だったか」
事前にこの土地について、調べる過程で知った米国の港町インスマスでも似たような特徴の見られる者が居る事を恭也は思い出した。
インスマスの住人も排他的で、余所者に対しては敵意をむき出しにするという。
「恭也、何してるの、置いていくわよ」
「ああ、今行く」
敵意の籠った視線を背後に感じながら、恭也は駆け出した。
程なくして追いつくと、さり気なく忍を庇う様な位置を確保する。
「どうしたの、そんなに気を張り詰めなくてもいいじゃない。きっと余所者が自分達の土地に入り込んできたから不愉快に思っているだけよ。この街が活性化して、交流が深まれば、溝も無くなっていくわよ」
呑気な忍と並んで歩きながら、恭也は気を全身に張り巡らせる。
鍛え上げられた、御神の剣士としての直感が告げている。

―――‘この土地は危険だ。一刻も速く離れるべきだ’



未だに背後から粘ついた敵意の籠った視線を感じ、
「速く、ここから離れるぞ」
「え、ちょ、ちょっとっ!?」
恭也は自らの直感に従い、忍の手を掴み、足早に立ち去った。











飯綱製薬はそれなりの規模を持つ企業であり、その敷地内にある飯綱大学は医学部と薬学部が有名である。大学内には新旧2つの図書館があり、特に旧図書館は貴重な本の宝庫として有名であり、時には人外の侵入者もいるという。

「・・・余り大した情報はのってないな」
新図書館の閲覧コーナーの長机の上に本を積み上げ、その中の一冊を開き、ざっと眼を通してみるが、内容の大半はある意味で、ユーノが求める物ではなかった。
本当に必要な情報は、旧図書館にある。
だが旧図書館の蔵書を閲覧するには、特別の許可が要るらしく一般の利用者は入室すら出来ない。この辺りの仕組みは無限書庫の禁書区画と同じだ。
「現地の“専門家”に任せておいてもいいかな・・・」
本来、自分はこの世界では部外者だ。
異界より迫る怪異に対抗する機関は、この世界にも存在する筈。
彼らがこの地に蔓延る怪異を取り除いてくれるなら、それに越した事は無い。
だが、もし怪異が自分に近しい人々に忍び寄って来ていたらーー

何となく、ユーノはズボンのポケットに手をやり、軽く叩いた。
確かなーー怪異に対抗する為の‘力’――を秘めた物の手応えが伝わってくる。
「とりあえず、本を返してこよう」
借りていた本を返しに、ユーノは受付の方に向かい、司書の女性に手渡した。
司書の女性は長い黒髪に、ブルーグリーンの瞳が実に魅惑的で、動作の一つ一つが淑やかだ。地味な黒いスーツを着ていても、彼女が持つ気品が伝わってくる。
ユーノの周りの女性は美人揃いだが、彼女達とは質の違う美しさだ。
「・・・どうしましたか?」
「いえ、何でもありません」
平静を装い、ユーノは本の返却手続きを済ませる。
ふと背後に視線を感じると、黒いワンピース姿のすずかが頬を膨らませ、不機嫌そうな表情で立っていた。
「すずか、どうしたの?」
「・・・ユーノ君、葉弓さんに見とれちゃって・・・」
不穏な気配を醸し出す、すずかだったが不意にユーノの手を掴み、そのまま有無を言わせずにズンズンと引っ張っていく。
その様子を司書の女性は穏やかな笑みを浮かべ、軽く手を振りながら見送っていた。

362夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:13:45 ID:x2.F.qT6
「・・・葉弓さんに見とれて、ユーノ君たら鼻の下を伸ばしてだらしないよ」
「えーと、すずか、あの葉弓さんって、あの司書さんの事? 知り合いなの?」
「私というよりも、お姉ちゃんの知り合いかな。神咲葉弓さんって言うの。この大学の図書館で司書さんをやってるとは知らなかったけど」
不機嫌そうな表情は変わらずだが、すずかは律儀に答えてくれる。
すずかに引っ張られながら、ユーノは思考の海に沈む。
ユーノとしては、ただ単に葉弓に見とれていただけではない、彼女の立ち振る舞いは何らかの武術を修めているのか、全くの自然体でありながら、隙が無かった。
それに魔力とは違う力を感じさせた。妖魔と闘う機関の人間かもしれない。


いつの間にか、二人は図書館の入口近くまで来ていた。
「ユーノ君・・・葉弓さんの事考えて鼻の下伸ばしてる」
「え、すずか・・・何で怒ってるの?」
「・・・鈍感、ほら、私、お気に入りのワンピース着てるんだよ。ねえ、似合う?」
黒いワンピースの裾を翻し、すずかはその場で軽くステップを踏んだ。
軽やかに踊る姿は可憐で、将来が楽しみだと思わせてくれる。
「うん、似合ってるよ」
「それだけ?」
だがユーノの反応は実に淡白だった。
がっくりと肩を落とし、すずかはジト目でユーノを見遣る。
「やっぱり・・・リインフォースさんがいいの?」
「何でリインフォースが出てくるの?」
疑問符を浮かべるユーノに対し、すずかは溜息をついた。
内面外面共にリインフォースに匹敵する女性はそうは居ない。
だからこそ、すずかは危機感を感じているのだ。
もし、彼女がユーノを一人の男として意識してしまったら。
―――――最強の、なのはさえ凌駕する‘敵’になる。
すずかの女としての勘は告げていた。
――――今の段階でも、リインフォースは相当、ユーノを意識し、好意を持っている。

「だってリインフォースさん、凄い美人じゃない。あれ程の美人に気にかけて貰って、嬉しくなったりしないのかなって」
「嬉しいけど気にかけて貰わなくても僕は生きていけるし、リインフォースは八神家の皆との時間を大事にして欲しいんだ。消滅を免れたんだから僕なんか気にせずに」
何の感慨も抱かず、ユーノは言った。気にかけて貰えるのは嬉しい。
だが、それでリインフォースにとっての八神家の団欒の時間を奪ってはならない。
ずっと1人で生きてきたのだから、孤独は慣れている。
所詮、自分は高町家、八神家、ハラウオン家の団欒の輪に入っていけないのだから。

「無限書庫で仕事に没頭していれば、寂しさも気にならないしね」
「・・・でも寂しい事は確かなんでしょ。そうやって自分を押し殺していてもいい事無いんだよ。ほら、もうすぐお昼だからご飯食べよ」
ユーノの手を掴み、すずかは再び有無を言わせずに引っ張っていく。
その勢いの前に、ユーノは成す術なく引き摺られていった。

363夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:14:28 ID:x2.F.qT6
一方、リインフォースは窮地に立たされていた。
場所は夜刀浦にオープンしたブティック店。
その一角、女性用の下着が陳列されたーー要するに男性お断りのコーナーにて。
「さあ、リインフォース、この下着なんてどうかしら?」
「シルクでピンクでレースか・・・どうせなら、こっちの真紅の方が似合うんやないか?」
試着するリインフォース本人の意見そっちのけで、下着について議論する夜天の主と湖の騎士。暫し呆然としていたリインフォースだったが、おずおずと声をかける。
「あ、リインフォース、色はどんなんがええ?」
「え、色ですか? 出来れば、黒系の色がーー」
「黒か・・・それなら、この黒と紫を組み合わせた奴なんてどうや?」
「透かしが多くて、色っぽくて、かつ、お洒落なデザイン。はやてちゃん、もうどうせなら黒いストッキングもつけましょう」
「成る程、スラリと長い脚が際立つで、これでユーノ君もイチコロや。この組み合わせで陥落せん男はおらん!!」
妙に熱っぽく力説する夜天の主。
リインフォースの方は、呆気に取られた様子で眼を瞬かせている。
そんな彼女の手を、シャマルが掴み、試着室に引き摺っていく。

「あ、シャ、シャマルっ!!」
「さあ、この下着を着けて、この服に着替えなさい」
下着と服を手渡され、実にいい笑顔のシャマルによって試着室に有無を言わさない勢いで放り込まれる。
「・・・全く、我が主とシャマルは・・・」
渋々といった感じでリインフォースは下着を身につけ、服に袖を通していった。










「あれ、ユーノ君とすずかちゃんやないか」
近くのパン屋で買ったパンを頬張り、適当に二人でぶらついていると、白いワンピース姿のはやてと出くわした。
「・・・すずかのワンピースと似てるね。白と黒で色は違うけど」
「向こうの方にあるお店でしょ? 私もあそこでこのワンピース買ったんだ」
「そういえば、忍さんも白のワンピースやったね」
「えーと、はやてちゃんだけ?」
「いいや、シャマルとリインフォースも居るけど・・・」
はやてが視線を向けた方向には、二人の女性が何やら揉めているのが見える。
青いワンピース姿で親しみやすい近所のお姉さんといった雰囲気のシャマル、そして、リインフォースがシャマルに連れられてユーノの前にたった。
「あ・・・リ、リインフォース」
「そ、その、ユーノ、どうだ、私の格好はおかしくないか?」

頬を薄っすらと染め、リインフォースはおずおずといった感じで尋ねてきた。
黒のハイネックのシャツに、黒と緑のスカート、黒いストッキング、茶色のブーツ。
全体的に黒系統で纏めてあるが、それが彼女のクールさを際立たせ、大人の魅力を存分に引き出している。不安そうに指をつき合わせる仕草が実に可愛らしい。
「う、うん・・・凄く似合ってるよ」
「そ、そうか」
リインフォースに見惚れながら、ユーノはどうにか感想を口にし、リインフォースの方も嬉しそうに顔を綻ばせ、流麗な銀髪がサラサラと揺れる。

364夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:15:01 ID:x2.F.qT6
「何やらいい雰囲気ですな、シャマルさん」
「ええ、そうですね、はやてさん」
ユーノとリインフォースの様子を眺めながら、はやてとシャマルはゴシップ好きの近所のおばちゃんの如く話し込みーー


「ユーノ君・・・リインフォースさんといい雰囲気になってる」
フォースの暗黒面に堕ちた騎士の様な眼で、リインフォースを見るすずか。
近くの自販機で買っていたトマトジュースの缶が凄まじい怪力で握り潰され、中身が地面にポタポタと滴り落ちている。

「リインフォースさんのあの服・・・選んだの、はやてちゃん?」
底知れぬ重圧を秘めたすずかの声に、はやては背筋に冷たい物を感じ、息を飲む。
気のせいか、すずかの瞳が紅くーー血の色の様にーーなっている様な気がする。
「凄く・・・似合ってるよねぇ・・・大人の魅力満載で、胸も大きいし・・・」
「いや、すずかちゃんも将来はきっと、グラマーになると思うで、忍さんを見る限り」
「そうかなあ・・・」
「そうやって。んで将来、グラマーになったら、胸揉ませて」
「嫌、私の胸はユーノ君専用なの」
はやてのお願いを微塵の容赦も無くバッサリと斬り捨て、闇のオーラを纏ったすずかはトマトジュースの缶をゴミ箱に放り込んだ。










その後、ユーノ達は夜刀浦市内の博物館を訪れていた。
「この博物館も月村家の資本が入ってるんだよ」
誇らしげに語りながら、すずかはユーノの手を掴み、博物館の内部を案内する。
余り広くないが、掃除は行き届いて不潔という印象は無いのだが、陳列されているのは得体の知れない物が多く、博物館の内部の空気を澱ませている。
陳列されている品の中でーー1m前後の高さの石像がユーノの目に留まった。
「この像は?」
「この辺で信仰されている、豊漁を約束する海の神様の像だって」
すずかの答えに頷きながら、ユーノはガラスケース越しに、その像を見詰めた。
その像は実に奇妙で薄気味悪かった。分厚く弛んだ唇、ドンヨリと濁った眼、水かきのついた手足。それなのに、全体的な印象は忌々しいほど、人間に似ている。
石像の横には、像についての簡単な説明が書かれた札が置いてあった。
「・・・何々、この神像の名前はダゴン。古代ぺリシテ人に崇拝された海の神様と同じ名前だね。確か旧約聖書『士師記』第16章だったかな」
「凄い、すずか、よく知ってるね」
「えへへ、ありがとう、ユーノ君」
ほんのりと頬を染め、すずかが嬉しそうに笑う。
思わず、その笑みに見惚れるユーノだったが、背後に重圧を感じて振り返った。
「な、何、リインフォース」
「いや古代ベルカでも、似た様な神の話を聞いた事があったんでな」
「海の祟り神デイゴンの事かい? やっぱり世界を隔てても人間の意識には、共通するイメージがあるという事かな」
「昨日も似た様な事を言っていたな」
「そ、そうだったっけ・・・」
リインフォースの言葉に、昨夜、彼女のショーツと手で肉棒を扱かれた一件を不意に思い出したユーノの顔が赤くなり、その理由を察したリインフォースも頬を染めて眼をそらした。

365夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:15:46 ID:x2.F.qT6
むー、二人とも、昨日、何かあったの?」
「べ、別に何も無かったよ」
「そ、そうだぞ・・・別に何も無かった」
ジト眼を向けてくるすずかに対し、ユーノとリインフォースはきっぱりと否定するが、すずかは尚も疑惑の視線を向けてくる。

すずかの追及の視線から逃れ、数m移動したユーノの視界にガラスケースの中に納まった冠が飛び込んできた。この冠も実に奇妙で不気味だった。
金の様な材質で出来ており、その表面には幾何学模様や海を顕す模様が見事な技術で浮き彫りにされ、冠の天辺には蛸の様な怪物の飾りが不気味な躍動感を伴って据えられている。
「――ダゴンの冠か」
「知っているのか?」
「いや、説明が書いてあるから」
いつの間にか、横に並んで立っていたリインフォースに対し、ユーノは視線を解説が記された札に向けた。
「この冠は古来より、夜刀浦の宗教団体『堕魂教団』の司祭が祭事に用いてきた物であり、通称『堕魂の冠』と呼ばれる。要するに土着宗教の一種か」
「こっちの方に祭事の様子が描かれた掛け軸が掛かってるよ。かなり血生臭い宗教だったみたいだけど」
すずかが指差した壁に掛かった掛け軸には、確かに凄惨な光景が描かれている。

海に面した砂浜に設けられた祭壇の上に生贄として乗せられた女子供。
暗い海の底から現れ、生贄を丸呑みにしようとする巨大な怪物。
ひれ伏して怪物を拝む半魚人や人間の漁師達。

「・・・黒魔術の儀式みたい」
「本質は同じ事だよ。生贄を捧げて相応の対価を得る。これは何処の世界でも見られる。この掛け軸に描かれている通り、崇拝者達はダゴンに生贄を捧げ、その見返りとして、豊漁や黄金を得る。要するに『堕魂教団』は邪教の集団であり、夜刀浦は邪神崇拝者の拠点だったんだ」
掛け軸を眺めながら、ユーノは淡々と、だが確信を込めた口調で言った。
まるで全く同じ‘事例’を知っているかの様な口ぶりだ。
「随分とハッキリ言い切るのだな」
「・・・次元世界を見渡せば、似た事例は割とあるからね」
ユーノの言った事は正しい。古代ベルカでも大きな城や橋を造る時や、戦争で勝利を祈願する時、生贄を捧げる事があり、リインフォース自身、記憶は曖昧ではあるが、そういった場面を目撃した記憶は残っている。
だが、ユーノにそういう血生臭い場面に出くわす機会があったのだろうか。
陳列物を見て回るユーノを何となく見詰めながら、そんな事を考える。


「リインフォース、ユーノ君の事じっと見詰めて・・・そんなに気になるの?」
「ち、違うぞ。ただ、私達はユーノの事を何も知らないと思ってな」
「確かにそうね。ユーノ君の事を知らなくても、日常生活に支障は無いものね。知りたいと思うのは、彼に対して一定以上の好意を寄せてる場合よね」
意味深なシャマルの視線を受け、リインフォースの頬が朱に染まる。
雪の様に白い肌が、仄かに色付き、並の男なら、これで撃沈できそうだ。
「貴女が本気になれば、ユーノ君も落せると思うけど、もっと自信持ちなさい」
「―――そ、そんな事を言われても・・・」
「こういう時はユーノ君にお土産の1つでもねだって、自分の事を意識させるのが重要なんやで」
「わ、我が主、あ、あの・・・」
動揺するリインフォースの手を掴み、はやてはそのまま強引にユーノの所まで引っ張っていった。

366夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:17:04 ID:x2.F.qT6
「リインフォース、よかったやないか。ユーノ君にお土産買ってもらえて」
「わ、我が主、カ、からかわないで下さい・・・」
頬はおろか、耳まで真っ赤にしたリインフォースの豊かな胸元を飾っているのは、黒い長方形のペンダントだ。
ペンダント自体は夜刀浦の外れの土産物屋で売っていた物だが、造りそのものは悪くない。
長方形のそれぞれの面には、炎の柱を囲む五芒星が刻まれている。
ちなみにユーノは、すずかにも同じ物を買っている。

「邪悪な者の干渉を跳ね除けられる御守りらしいけど・・・中々お洒落よね」
「そういえば、五芒星が刻まれた御守りを身につけてる人、この辺り結構多い気がするんやけど」
シャマルの言葉に頷き、はやてが辺りを見渡すと、確かに五芒星をあしらったアクセサリーを身につけている人々が多い。
それだけでなく、彼方此方に五芒星が刻まれている。
家の軒先に木の棒で作られた五芒星がぶら下がっていたり、古い神社の鳥居に五芒星が刻まれていたりする。魔除けの様な物かもしれない。
「この辺りに住んどる人達の顔は普通やね。あの魚が腐った様な臭いもあまりきつくないし」
辺りを見渡すはやての言う通り、行き交う人々はあの魚や蛙の様な容姿をしておらず、生臭い臭いもそれ程強くは無い。
「やっぱり、五芒星が関係してるのかしら?」
丁度、シャマルの視線が向けた先――巨大な石碑が幾つも立っており、それら全てに五芒星が刻まれ、この石碑群は夜刀浦北部を囲む様に配置されている。

具体的には比較的、発展した北部に『鷹樹庵』や飯綱大学、夜刀浦博物館があり、廃墟だらけの寂れた南部に海神の森がある。
ちなみに魚や蛙の様な容姿をした者達が居住しているのも南部である。
「薄気味が悪い光景だな」
石碑群の向こうに広がる廃墟――人間の気配はしないのに、物音が響く――は魔導書の化身であるリインフォースの感覚からしても、実に薄気味が悪かった。


何処からか、潮風と共に異形が蠢く音が聞こえてきた。






「何で君がここに居るの?」
「初っ端からご挨拶だな」
夜刀浦の彼方此方を見て回り、夕刻に差し掛かる頃になって『鷹樹庵』に戻ると、一階ロビーで黒尽くめの執務官が仁王立ちしていた。
眉を顰めるユーノに対し、クロノも、ついこの前、模擬戦で敗北を喫した屈辱を表面上は隠して仏頂面で応じる。
「何らかの天変地異によって『深海教団』は壊滅していた」
「これで、この案件は一応、終了という事で、クロスケは休暇を取ってアタシ達はそれに便乗した訳、迷惑だった?」
「別に僕は迷惑じゃありませんよ。他の皆はどうか知りませんけど・・・」
クロノとユーノの会話に割り込んできたのは、リーゼロッテだった。
猫耳と尻尾は隠しているが、彼女自身が纏う気紛れな猫といった感じの快活な雰囲気は隠しきれていない。

367夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:17:37 ID:x2.F.qT6
「ユーノ、夕食の用意が出来たそう、あっ・・・!!」
「・・・そう、アンタもここに居たんだっけ」
夕食の準備が出来た事を告げに来たリインフォースの姿を視界に収めた途端、リーゼロッテの気配が剣呑な物に切り替わった。
「リーゼロッテ、止めろ」
「・・・・くっ!!」
クロノの静かだが、強い意志を秘めた声に、リーゼロッテは忌々しそうに顔を伏せた。それでもリインフォースに向けられる、明確な敵意。
『闇の書』の暴走によって愛弟子であるクライドを喪った事は、リーゼロッテにとって忘れられない傷なのだ。
「リインフォース、ちょっと、僕に付き合って」
「え、ユ、ユーノ・・・お、おいっ!?」
自らの過去に苛まれるリインフォースを見かねて、ユーノは彼女の手をとり、一気に走り出す。自然、リインフォースも引っ張られる形で走る羽目になる。


「て、手が・・・」
繋がれている手から伝わってくる温もりを感じ、リインフォースの胸が高鳴る。
走っている途中、シャマルとすれ違った気がしたが、よく覚えていなかった。







「はい、緑茶でよかったかな?」
「ああ、すまない」
『鷹樹庵』三階のユーノの部屋。
ユーノと向かい合う形で、卓袱台の前に行儀よく正座したリインフォースは、湯飲みに入った熱いお茶を啜り、深い息をついた。
「落ち着いた?」
「・・・その、気を使わせてしまったな」
リインフォースにとってはリーゼロッテ、リーゼアリアと夕食の席で顔を合わせる事は正直言って拷問に等しい。
「彼女達にとって『闇の書』そのものであった私の存在は忌まわしい物でしか無いのだな・・・」
絶世の美貌に暗い影を落とし、リインフォースは手の中の湯飲みを見詰める。
やはり『闇の書』の罪を背負って、自分は消えるべきだったのではないか。
『闇の書』の悪名は歴史に埋もれつつあるとはいっても、『闇の書』の暴走によって、人生を狂わされ、消えない憎しみを宿す者は確かに存在する。
リーゼロッテの憎悪に満ちた眼は、それを思い知らせるのに充分だった。
「君が消えた所で、罪は消える訳じゃないよ。仮に君が消えれば、『闇の書』の罪は、夜天の王であるはやてが背負うのだから」
「――――・・・!!」
ユーノの淡々とした言葉は深々とリインフォースの心を抉った。
「『闇の書』の罪を1人で背負い込んで行ける程、はやては強くない。きっと何処かで歪みが生じて壊れてしまう」
「つまり我が主が歪まない様に支えるのが、私の役目であり贖罪だと・・・?」
「別に難しく考える必要は無いよ。生きていれば、誰だって罪を背負うんだ。僕だって、なのはを魔法の世界に引き込んだ罪を背負ってるから」
自嘲する様にユーノは言う。
魔力の不適合で死に掛けていた時、未練がましく自分が助けを求めなければ、なのはは魔法を知らずにすんだ。自分などと関わらずにすんだ。

368夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:18:08 ID:x2.F.qT6
「僕が居なくても・・・フェイトはクロノが何とかしてくれたと思う。はやては難しかったかもしれない。でも、なのはは戦いを知らずに平和な生活を送る事が出来た筈だよ」
「魔法で戦う術を持たない高町は、ほぼ間違いなく、ヴィータの蒐集の餌食になっていたぞ。あれ程の魔力を秘めていれば、狙われない方がおかしい」
「それでもヴィータは、はやての未来を穢さない為に死人を出さない様にしていたし、フェイトやクロノもなのはを助けに来ただろう」

そこで言葉を切ったユーノは自分の湯飲みにお茶を注いで一気に飲み干す。

「仮にこの先、なのはが魔法を使って戦い続け、生命に関わる大怪我をしない保障が何処にある? そして大怪我を負った場合、僕との出会いを後悔して・・・僕の事を憎んだりしないのかな? アリサやすずか、それに高町家の人達は僕に『死んで償え』と言うのかな?」


「・・・お前の問いは、正直、答え様が無いな。高町が生命に関わる大怪我を負うかどうか現時点では解らないし、周りの者達がお前に憎しみを向けるかも定かではない。敢えて答えるならば『可能性としてはあり得る』という所か」
卓袱台の上に空になった湯飲みを置き、鞄の中からDVDと携帯型PCを取り出すユーノに対して、リインフォースは慎重に言葉を選んで答えた。

「そうだよね。ところで暇つぶし用に何枚かDVD持ってきたけど、見る?」
苦笑しながらユーノはDVDをリインフォースの前に並べた。
話題を切り替える意図は明らかだったが、敢えてリインフォースはそれに乗る事にした。夕食は後でいいとユーノがシャマルに伝えてあるので、問題は無い。
今、階下に降りていくとリーゼ姉妹と鉢合わせるだろう。
それは避けたい。彼女達と向き合うには、それなりに心の準備が必要だった。
眼前に並べられたDVDにリインフォースは視線を走らせる。

『戦場の戦乙女 超劇場版:壊』
『円盤王女ヴァルキリー 十二月の狂想曲』
『魔導機神マドカ・マギカ ホムホム復活編』
『装甲戦神ネクサス 金神群獣襲来』 




「私としては『戦場の戦乙女 超劇場版:壊』を希望する」
「うん、じゃあ、それから観よう」
リインフォースのリクエストに答えユーノはケースを開け、DVDをドライブにセットし、携帯型PCに接続した。



『世界の事なんて知るか、だが大佐だけは絶対に助けるんだ――!!』
『邪龍の群れが一撃で・・・機工天使にこんな力がっ!?』
『アザゼルは人の域を超えている・・・!!』
『あぁ、翼が、アザゼルの翼が広がって・・・!!』
『世界が終わるのね』

369夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:19:23 ID:x2.F.qT6
「面白かったな、続きが楽しみだ」
「う、うん・・・」
食い入る様に鑑賞していたリインフォースは、画面から眼を離すと満足そうに頷いた。気のせいか、ヒロインに対して異常に感情移入していた様な気もする。
ヒロインの外見は銀髪に紅眼で長身、巨乳とリインフォースと共通する要素が多かったので、それが原因かもしれない。
というよりもユーノとしては、いつもは物静かなリインフォースが握り拳まで作ってまで興奮する様子に唖然としていた。
「お前はどうだ、面白かったか?」
「う、うん、そういえばヒロインの軍服姿凛々しくてかっこよかったね。君が着たら似合いそうだよね」
「な、何を言っている・・・そ、そんな世迷言を」
唐突に話を振られたユーノは率直に思った事を口にするが、一方で話を振ったリインフォースはというと、ユーノの“世迷言”に思い切り動揺していた。
耳まで真っ赤にして、口をパクパクさせている。
「君って凄い美人でシグナムさんと一緒で軍服とか似あいそうだし」
「しょ、将の事を話題にするな、ば、馬鹿・・・」
不機嫌そうに呟くと、リインフォースは座布団を抱きしめ、密かに深い溜息を付いた。
年の離れた弟の様な少年の事で一喜一憂している自分が情けない。
とはいってもユーノの事が気になって放っておけない。
自分の気持ちを持て余しながら、リインフォースはユーノの方に視線を向けた。
彼は幾つかの部品――デバイスの部品だろう――を手に持っている。
「・・・デバイスの組み立てか?」
「無限書庫の司書達が使う、検索用のデバイスを作ってる」
実に簡潔な答えだ。確かに、ユーノの横にデバイスの部品が無造作に放り込まれた箱が置いてある。
部品の数は50個程だろうか。
質のいい物もあれば、悪い物もある。
「玉石混合だな」
「そうだね、デバイスショップでもジャンク品扱いの奴が半分くらいだから」

無限書庫は稼動したばかりの部署である。
当然、金も人も回ってこない。
それに関して、ユーノは文句を言わず、人事権を欲した。
『予算はいらない。その代わり局内外から自分がスカウトする人物を司書として採用する許可を頂きたい』
リンディやレティといった身近な高官達――所謂、ハラウオン閥――の力をユーノは当てにせず、独自のルートから司書となりうる人材を発掘した。
例えば、局内部からは実力はあるが、素行に問題がある者や見栄えのいい攻撃魔法は使えず、地味な補助魔法しか出来ない者。
局外部からはスクライア一族の若手、本が大好きな本の虫など。

現在の無限書庫の司書の大半は、ユーノが引っ張ってきた者達である。
局側が定めた採用基準――犯罪歴の有無などーーによる審査はあったが。
彼らの為に、ユーノはポケットマネーをはたいて、設計図と睨みあいながら、参考書を片手に持ち、デバイスを造っているのだ。

370夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:19:56 ID:x2.F.qT6
「ラミエル司書は、デバイスの基本形態は正四面体型にして、検索魔法の展開規模に応じて、変化する機能をつけよう。それから彼女は砲撃魔法の素養もあるから、自衛用の術式も組み込んでと・・・」
「確か、その司書は武装隊にも誘われていなかったか?」
「うん、それなのに『私は無限書庫で働きたいんです!!』と言われちゃった。彼女は僕がスカウトした訳でもないのに、無限書庫に来たんだ。凄い変わり者だね」
「きっと、彼女は無限書庫で検索魔法を駆使するお前に“英雄”の姿を見たのだろう」
いつの間にか、顔が触れ合う距離まで来ていたリインフォースに詰め寄られ、ユーノは思わずたじろぐ。少し目線を下げれば、彼女の圧倒的なボリュームを誇る胸が視界に飛び込んでくる上、微かに甘い香りが漂ってきて心臓に悪い。

「・・・それにしても、お前は司書の適性に合わせてデバイス作りをしているのか?」
「うん、待機形態も各人の好みに合わせてるんだ」
「1人では手間がかかって、大変だろう。私も手伝ってやる」
遠慮するユーノを強引に説き伏せ、床に広げられた設計図の一枚に目を通しながら、リインフォースは部品を組み合わせていく。
出来上がったのは、表紙に十字架を刻んだデザインの手帳型デバイス。
試しに起動させてみようと、魔力を送り込むが、起動しない。
「あ、それ、魔力をコアに送り込む回路が切れてるみたい。取り替えないと無理」
「成程、そうか」
ユーノの助言どおり、確かに回路を取り替えてみると、起動した。
このデバイスはとりあえず問題無さそうだと判断して、リインフォースは次のデバイスの組み立てに取り掛かった。
その後、二人でデバイスを組み立てていくのだが、現時点で無限書庫には数十人の司書が勤務しているのだ。彼ら全員の分となると、流石に時間がかかる。
「お前は数十人分のデバイスを一人で組み立てる気だったのか?」
「以前からコツコツとやってたし、司書の皆も手伝ってくれてたから、何個かは出来てるんだ。あと残ってるのは二十個程だよ。まぁ・・・徹夜すれば、大丈夫かなと」
あっけらかんと言い放つユーノに、リインフォースは改めて確信する。
ユーノは基本的に自分自身を大事にしないのだ。
強迫観念にも似た使命感や義務感で動き、常に他人を優先し、自分を省みない。
そんなユーノの在り方がリインフォースは無性に気に入らなかった。







英国の地方都市ブリチェスター。
グロウスターシャー州セヴァン川流域に広がる、見渡す限りの田園地帯に囲まれたのどかな都市であるが、バニングス家の資本投入によって、古きよき景観を残しつつ急速な発展を遂げつつあった。

371夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:20:28 ID:x2.F.qT6
「ふえー、色々なお店があるねえ」
「うん、お土産買って行かないとね」
なのはとフェイトは、古風な煉瓦造りの店が立ち並ぶ街中を散策していた。
その中でフェイトが特に個性的な店を見つけた。
店の前に黒い山羊の絵が描かれた看板が立っていて、店の中には年代物の食器や絵画が並べられている。どうやら骨董品を扱う店らしい。
「・・・『BLACK Goat Shop(黒山羊の店)』 だって。なのは、素敵な絵柄の食器があるよ。翠屋で使えないかな」
「ほんとだ、とりあえずお店の中に入ってみよう。通訳はレイジング・ハートお願いね」

相棒からの了解の返事を貰い、なのはは店の扉を開けた。



「いらっしゃい」
店の中に入ると、日本語での出迎えがあった事になのはとフェイトは驚き、その声があった方角に視線を向けた。
「そう驚く事はないだろう。そっちのお嬢さんはともかく、少なくとも君は日本人、母国の言葉がそんなに耳慣れないかい?」
豪華な装飾が施された机の上に悠然と腰掛けているのは、妙齢の女性だった。
長い黒髪を靡かせ、黒いスーツの上から白衣を無造作に羽織り、いかにも高級そうな葉巻を燻らせている。
「あ、いえ・・・外国で日本語を聞くとは思わなかったので」
「ふむ、この辺りは日本人観光客も割と来るのでね。私も言葉を覚えてしまったよ」
葉巻を咥えたまま、女性は立ち上がり、悠然とした足取りで、なのはとフェイトの方に近付いてくる。どうやら彼女がこの店の主らしい。
「見た所、土産物を買いに来たのかな?」
「は、はい・・・実はあそこに並べられている食器が気に入っちゃったんですけど、その具体的な値段が書いてないのが気になっちゃって」
言葉が通じる事に安堵したなのはが、店の一角の棚に置かれた食器に目を向けた。

「ほう、あの食器に目が向くとは大した物だ。あれはヴィクトリア王朝時代、貴族が使っていた物だよ。それなりの値段だが・・・持ち合わせはあるかね?」
「えーと、フェイトちゃん、お金貸してくれる?」
「うん、いいよ。これで足りるかな?」」
「少し足りないかも・・・」
なのはとフェイトの持ち合わせを全部足しても、女主人から提示された金額には少し足りなかった。あの食器がどうしても欲しいのに、届かない。
「ご、ごめんね・・・なのは」
「ううん、気にしないで、フェイトちゃん」
「・・・中睦まじいお二人さん、恋人同士かね」
二人の間に漂う百合百合しい空気を鋭く感じ取ったのか、女主人は紫煙を吐き出し、唐突に問いを投げてきた。
「え、そ、それはその・・・」
「わ、私とフェイトちゃんは・・・た、確かにそういう関係になりたいとは思っていますが」
「恋愛の形は人それぞれ。遠慮する事は無い。周りに受け入れられるかはさて置き」
最後に不穏な言葉をつけたし、女主人は短くなった葉巻を携帯用の灰皿に入れると、二本目の葉巻に火を灯した。
「・・・よし、ここはお二人の前途を祝福して、特別に半額にしてあげよう」
「え、本当ですか?」
「うむ、あの食器の価値を見抜いたお客さんは久しぶりだからね」
なのはから紙幣と硬貨を受け取り、女主人は手際よく食器を棚から移し、頑丈そうな木箱に入れ、食器の周りに綿を詰めていった。

372夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:21:00 ID:x2.F.qT6
「そういえばお昼近くなんだ」
「何処かのお店で食べていこうか」
『BLACK Goat Shop(黒山羊の店)』を後にしたなのはとフェイトは、キョロキョロと辺りを見渡してみると、黒い龍の看板がかかった中華料理店の前で手を振っている、大親友である金髪碧眼の少女の姿が目に入った。
「アリサちゃんだ」
「あそこのお店にしようか」
なのはとフェイトは頷きあい、親友が待っている中華料理店に向けて駆け出した。





「はい、ユーノ君、こっちの方の回路修復は終わったよ」
「ありがとう、すずか」
和気藹々といった感じで、デバイスの組み立てをしているユーノとすずか。
そんな彼らを、リインフォースは部品の錆を紙やすりで落としながら見詰めていた。
夜食を持ってきたシャマルとすずかが、デバイスの組み立てを手伝ってくれる事自体はいいのだが、何故、ユーノの隣をすずかが占拠しているのだろう。

「リインフォース、そんなにユーノ君とすずかちゃんが気になる?」
「・・・別にそこまで気になっているわけじゃない」
横で部品を雑巾で磨き上げているシャマルに対し、リインフォースは微かに頬を赤らめながら、顔を伏せた。紙やすりを動かす手は休めず、横目でユーノ達を観察する。
そう、別に気にしている訳ではないのだ。
ただ、すずかとユーノの距離は近すぎではないかとか、必要以上にすずかはユーノの手を握りすぎではないかとか、ユーノはデレデレしすぎではないかとか・・・そういった事について、少し物申したいだけだ。
「リインフォース、その部品、もう錆び全部落ちてるわよ」
「む、そうだな・・・次の部品を磨こう」
錆が落ちて新品同然に光輝く部品をシャマルに手渡し、リインフォースは次の部品を手に取った。当然の様に視線はユーノとすずかに向いたままで。



無言の眼差しによる圧力にユーノは顔を引き攣らせるしかない。
元々感情が顔に表れにくいリインフォースだが、今は明らかに不機嫌そうだ。
とはいっても、ユーノの方に思い当たる事は無く、何か起こらせる事でもしたのだろうかと不安になってくる。

一方、すずかはリインフォースの視線の意味を理解していた。
理解した上で、すずかはリインフォースの方に勝ち誇った様な笑みを向けた。
「・・・―――!! おや、こんな所に亀裂が・・・どうやら不良品が混じっていた様だな」
“真新しい亀裂”が入った部品を床に置き、リインフォースは目を瞑って深呼吸した。
落ち着け、自分は古代ベルカが誇る魔導書、この程度の挑発に乗ってはいけない。
そんな彼女に対し、すずかは更に第二撃を放つ。

373夜刀浦奇譚:2013/02/06(水) 16:21:32 ID:x2.F.qT6
「あ、ユーノ君、口の周りにスパゲッティのソースがついてるよ」
リインフォースに見せ付ける様に、すずかが手に持ったハンカチでユーノの口の周りを拭い、夜食で食べたスパゲッティのソースを拭き取った。
「もう・・・ユーノ君てば、だらしないんだから。やっぱりユーノ君には身の周りの世話をする人が必要だよね、うんうん」
わざとらしく頷きながら、すずかが意味ありげな視線をリインフォースに向ける。
その視線を受け、リインフォースの切れ長の紅瞳から光が消える。
彼女から禍々しい瘴気が吹き出し、その手の中の歯車が真っ二つになった。
リインフォースの横に座っているシャマルとしては、もう生きた心地がしない。
魔界の入口に踏み込みかけている同胞を何とかして貰おうと、シャマルは縋る様な瞳でユーノを見た。医務室でお世話になっている湖の騎士の視線に晒されるユーノだが、リインフォースの機嫌が悪い理由について考える。

―――きっとデバイスの組み立てを手伝っているのに、僕がデレデレとしていたから怒ってるんだ。謝らないと駄目だよね。


「ごめん、リインフォース」
「え、ナ、何を言っている、ユーノ?」
「デバイスの組み立てを手伝ってくれてたのに、だらしない態度取っちゃってごめん。きちんとするから許してください」
「あ、そ、その・・・そういう訳ではなくて・・・」
何処かピントのずれた解釈をしてデバイスの製作に没頭するユーノに対し、先程までの不機嫌そうな様子とは一転して、リインフォースはオロオロと視線を彷徨わせた。
そして、そんな彼らを眺めていた、シャマルとすずかは顔を見合わせ、重苦しい溜息をつき、蛍光灯が備え付けてある天井を見上げた。






「だから地球は狙われているのよ、蟹頭の異星人に!!」
「アリサ、お願いだから正気に戻って」
中華料理店『黒龍飯店』の席で、昼食の蟹炒飯を頬張りながら意味不明の事を言う、親友の金髪令嬢の奇行に、フェイトは麻婆豆腐を食す手を休め、頭を抱えた。

街の外れにある「悪魔の階」と呼ばれる岩山を見に行っていたらしく、アリサはきっとそこで幻覚を見たんだろう。この街は不穏な噂は確かに多いが、フェイトの印象ではのどかな田舎町。怪異が蠢いているなんて都市伝説に決まっている。
「アリサちゃん、異星人なんている訳無いよ。きっと疲れてるんだよ。この杏仁豆腐が凄く美味しいよ、アリサちゃんもどう?」
「もう、いいわ・・・」
魔法を使えるくせに、異星人の存在を信じないなのはに対し、アリサは溜息をつくと様々な国籍、人種の人々で混雑する店の喧騒をBGMに残りの蟹炒飯を掻きこんだ。
そんなアリサの横では、なのはとフェイトが百合百合しい空気を漂わせ、いちゃついている。アリサとしては、正直、果てしなくウザイのだが、友達のよしみで黙っていた。

それは彼女達にとって、なんてことは無い、日常。


―――例え、その薄皮一枚隔てた裏側で怪異が蠢いていたとしても。

374黒天:2013/02/06(水) 16:23:24 ID:x2.F.qT6
今日の投下、ここで終了です。
敵側にとらは組から出張してもらいました。
あと、アリサさんが見た物は一体何でしょうか。




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