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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第115話☆
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魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。
『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
前スレ ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第114話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1341065580/
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アインスと共に。
具体的なビジョンはまだおぼろげだが、クロノは確かに意識し始めていた。
このまま管理局でキャリアを積んでいくにしても、どこかのタイミングで民間に転職するにしても、いずれにしてもこの自分の未来を、アインスと共に歩んでいきたい。
彼女はそれを求めているし、自分もその希望にこたえられる、と思う。
「われわれがやらなければならないことは、闇の書の実態をつかむことだ。闇の書とはいかなるもので、どのように主に扱われ、どのような仕組みで動作し、どのような魔法術式を用いて行動しているか──
それらを知ることはグレアム提督の計画する封印作戦に必要で、その目的に合致したものだ。あの少女を監視すれば、闇の書の活動の様子を観察できる」
「このまま──この第97管理外世界での捜査を?」
「成り行きだが、それは好都合でもある」
「あの子を監視──八神はやて、彼女が闇の書の主──彼女は、フェイトやなのはともそんなに歳が変わらないくらいに見えましたが──」
「なのは、とは?」
「PT事件で、協力してくれたこの世界出身の魔導師です。偶然かもしれませんが彼女もこの町に住んでいて、おそらくこの近くに──いるはず、です」
「そうか……」
遅ればせながら、クロノも危惧していたことに気付いた。身体を起こそうとして、力が入らずに頭を枕に落とし、アインスに宥められる。
もし闇の書が自分を狙っていて、そして闇の書自身に連続した記録が残されているならば、闇の書はクロノが管理局員だと気付いているはずである。
少なくとも外見は通常の魔導書型で、ミッドチルダで一般的に普及している大容量ストレージデバイスと大きく変わらない。
あの闇の書が、今の主──八神はやてに何らかの情報を伝達する手段を持っているかどうかは分からない。
しかし、現在この八神家の、壁一枚を隔てた隣の部屋で眠っているはず闇の書が、クロノたち管理局の正体と目的を知っていることは確実である。
いわく、次元世界の治安維持を任務とする強力な魔法を持つ組織であり、闇の書は広域災害に指定され対策が取られる対象である。
闇の書は現代ではすでに、管理局の存在を認知し自己の行動指針にとりいれているとみられていた。
すなわち、魔法を蒐集するにも管理局による取り締まりをなるべく回避するように作戦を立てるということである。
だがあの少女、八神はやてがそのような作戦を理解するとは考えにくい。
かといって、いきなり闇の書のことを切り出すわけにもいかない。守護騎士たちは──特にヴィータの例を見るに──最初から管理局に不信感を持っているだろう。
こちらもあくまでも気取られないようにしなければならない。
「これまでの管理局の見解としては──、闇の書はあくまでも魔導書型デバイスであり、闇の書による被害の責任はデバイスの使用者である闇の書の主にある、というものでした。
しかし、今回、闇の書が独自に動いていることがわかって──主でさえもそれを制御しきれない事態が起こりうるということが分かった──
現在の、少なくともミッドチルダの法律では、あの少女に刑事責任を問うことはできません」
クロノはだいぶ落ち着いて、はやてと闇の書に対する現時点での分析を述べる。アインスも、黙ってそれを聞いている。
「アインスさん──前回の事件では、このような闇の書の行動は観測されていたんですか?エスティアに積まれる前のことは、報告などは」
「……少なくとも私が知る限りでは無い。前回の事件で逮捕された主は、地元ではそれなりの実力者だったが素行は悪く、積極的に闇の書の完成を望んでいた。
周辺住民からも、常に書を持ち歩いていて、書に命じてさまざまな魔法を撃っていたという証言が得られている」
「もっと前の事件の記録も当たってみないといけませんね……11年前のだけではなく、それ以前の出現の記録を」
「あの少女以外にも、厄介ごとを好まない主がいたとしてもおかしくない」
「ええ」
頃合いを見て、本局へ現在の状況を報告する。
しかしそのためにはデバイスを起動し、次元間念話通信術式を発動する必要があり、これはかなり強力な魔法なので相応の魔力反応が出る。
少なくともこの家の屋内で使用すれば、守護騎士たちには間違いなく探知されてしまう。
管理局へ連絡を取っていたことが知られれば、言い訳はできない。その時点で敵とみなされ攻撃を受けるだろう。
現状、あくまでもイレギュラーな次元漂流者として八神家に身を寄せた民間人、という体裁を取るほかない。
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「グレアム提督は──父さんの、クライド提督の死に、責任を感じていたと思います。僕が修行をしていた頃も、そうでした。僕のために──という感情が、あると思います」
「お前は、どうだ。リンディ提督は」
妻と、息子。アインスはどれだけ親しかったとしても他人で、部下の一人だった。グレアムにしても、クライドは部下の一人で、クライドにとってグレアムは上司で、それは他人だ。
家族ならどうか、という。
どう思っているか、と聞かれて、クロノはふと、自分の気持ちにぽっかりと穴が開いているような感覚を味わった。
闇の書を追うことは管理局の任務だ。それは治安維持という職務として全うしなければならないことであるが、それゆえに自分の感情が抜け落ちてしまっていた。
確かに、クライドの命は闇の書によって奪われたのかもしれない。
しかし、それに対して自分が何を思っているか、ということが、とてもあやふやでおぼろげになってしまっていた。
仇、なのか。果たすべき復讐なのか。
感情が、薄れている。
闇の書を封印すれば平穏が訪れる。それだけなのか。他に、心配すべきことは本当にないのか。自分は、クロノ・ハラオウンという人間はそれでいいのか?
自分はグレアムではないし、クライドでもない。父がどういう思いでエスティアと運命を共にしたのか、グレアムがどういう思いでアルカンシェルの引き金を引いたのか、クロノには分からない。
願うことはなんなのか。数十秒の沈黙の後、クロノは、静かに言葉を出した。
「僕は……真実を、知りたい、です……。父さんの、本当の、気持ちを……」
ゆっくりと、ひとことずつ、平易な文をしゃべった。もしはやてがそばで聞いていれば、単語くらいはヒアリングできたかもしれない、という程度の。
「正直言って、……僕は何もわかっていなかったんです。ただ悲しい出来事があって、母さんが悲しんでいて、僕が何をすれば母さんは喜んでくれるのかと思っていたんです。
管理局員という仕事が世間でどれくらいに位置するものなのかもはっきりわかっていなくて、ただ、そうすることが当たり前のように執務官を目指していて……
今こうして振り返ると、僕は、父さんと同じところに行きたかったんだと思うんです。執務官になって、そして海(次元航行艦隊)に行って自分の艦を持てば、父さんのことがわかるかもしれない。
もしタイムマシンでもあれば、父さんの生きていた頃に行って、話を聞くことができたのかもしれませんが、それは僕の本当にやりたいことじゃなくて……、ただ、言葉が聞きたかった。
いくつか覚えている断片的な思い出が、父さんが本当に願っていたことは、実は母さんやレティ提督や他の人たちが考えていることと違うんじゃないかって、執務官になればそれがわかるんじゃないかって思っていました……
確か3歳くらいだったはずです、あのころの僕はそう思っていた、と、今ならそうだったんだという気がします。僕は、父さんが本当に願っていたことを知りたいんです。
闇の書を自分の目で見て、その真実を知りたい……そのために、執務官になった」
アインスはそっと、クロノの頬を撫でる。
「クライド提督は……、先代の主に対する聴取で、闇の書の実態がこれまで管理局に認知されているものとは異なる可能性を見出していた。
エスティアから乗組員を脱出させたとき、われわれにそれを託し、管理局首脳部に伝えるよう、最後の命令を下された」
「異なる可能性……ですか?」
「闇の書は転生を行い復活する。書を破壊した後の転生先を、事前に探知できた例はこれまでに無い。すなわち、主となる人間がみずからの意思で闇の書を呼び寄せているわけではないということだ」
「ということは……どんな破壊活動を行った主も、闇の書が現れて、その力を知ってから、その後に行動を起こしている……?」
さすがに疑問が生じる。世の中には様々な人間がいる。もし闇の書が転生先を、魔力資質の有無のみで選んでいるとするなら、転生先として闇の書の主を選ぶ際に、その人格までは考慮していないということになる。
八神はやてのように、戦いとは無縁で、蒐集といわれてもそんな、という反応を返す人間が主に選ばれる可能性だって決して低くはないはずだ。
普段の生活を続けていくことが大事で、いきなり世界をわがものにできる力がありますと言われてもぴんとこないし興味もない、という人間の方がむしろ多いだろう。
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それでも、次元世界のこよみが新暦に替わってからの60年余りの間で、闇の書は少なくとも5回の活動とその破壊を観測されている。
少なくとも、とは、管理局の目を逃れて活動し、辺境の管理外世界などで現地魔導師に人知れず破壊されたケースもありうるからだ。
「問題は、これまで管理局が確認できたすべての事件では、捜査官が主に接触した時点ですでに自発的な蒐集行為を行っていたということだ」
「故意に蒐集を止めた場合に何らかのペナルティが存在する可能性──を以前、話しましたよね」
なぜ、闇の書の主となった人間は蒐集をしなければならないのか。いわゆる闇の書事件と呼ばれる管理局と闇の書との一連の戦いは、蒐集行為に端を発する傷害致死事件や脅迫事件がその構成要素となっている。
蒐集を行えば、当然抵抗される。争えば、戦闘に発展する。戦闘であれば当然、現地世界の法律に抵触し刑罰の対象となる。刑を受ければ、社会的に不利な立場になり、日々を暮らしてゆくことが困難になる。
そうまでしてなぜ、リンカーコア蒐集を行わなければならないのか。
あの八神はやてという幼い少女も、いずれ自らそういった命令を守護騎士たちに下さなければならなくなる状況に追い込まれるというのだろうか。
「闇の書の動きを監視する必要がある」
「この家に身を寄せつつ……ですか」
念話を使わず、小声で話し合う。念話では、傍受される危険がある。また魔導師であるとなれば警戒されるおそれがある。
「現状それが最も妥当だ……。クロノ、お前の年齢なら、この世界で行動しても警戒されにくいだろう」
高町なのはと同年代であれば、9歳だ。ユーノやフェイトとも同い年ということになる。年齢が近ければ、それだけ親近感を抱きやすいだろう。
クロノとしては、実年齢より年下に見られるのは複雑な気分ではあるが、仕方がない。
ようやく、顔を覆っていた腕をおろして、枕の上で、アインスに顔を向けた。
暗がりに目が慣れて、カーテン越しに差し込むわずかな月明かりに、アインスの銀髪がほのかに見える。
ベッドのそばにひざまずいて、見守ってくれている。
安心感と、愛おしさが湧き上がる。
目頭が熱くなる感覚が生まれて、それがアインスにも分かったのだろう、表情を切なげに緩め、クロノに顔を近づける。
「アインスさん……」
「大丈夫だ、私がついている。これまでに調べた闇の書の情報も持っている、私がいれば大丈夫だ」
「すみません……僕が頑張らなければいけないのに、アインスさんに頼るばかりで」
起き上がろうとするが力が入らず、再びベッドに沈む。
アインスはベッドの敷き布団に手のひらをついて上半身を乗り出し、片膝立ちの姿勢になってクロノに覆いかぶさるようにした。
クロノを抱き寄せ、胸にかかえこむようにして抱きすくめる。
ゆっくりと、優しく、髪を手指ですくようにして撫でる。
局員制服のジャケットの内側から、アインスの匂いをたっぷりと含んだ空気が、抱きしめられた腕によって吹き出され、クロノを包む。
やわらかなアインスの乳房が、クロノの口元を艶めかしく挟みこむ。
感情がわきおこり、それゆえに肉体の反応が悔しい。こんな状況で、勃起してしまっている自分がはがゆい。
今は、冷静に状況に対処しなければならないのに。
「離してください……」
「クロノ……!私は、お前が好きなんだ……お前を愛したいんだ。だから、お前が苦しんでいる姿を見るのはつらい、だからお前を慰めてやりたいんだ……
お前のことは私が守る、だから私に心をゆだねて安心してくれ、あの少女もかならずわかってくれる、私を……」
絞り出すように言葉をかける。クロノに、何と言葉をかければいいか迷ってしまう。
自分は闇の書の管制人格である、などと名乗れるわけがない。ましてや闇の書の主と守護騎士が周囲にいる中では不可能だ。
烈火の将はアインスを見て何か引っかかるものを感じているようだが、しかし疑っている。守護騎士ならば闇の書の意思の姿を知っている。その記憶と、実際に目にしたアインスの姿を見て、それが同一かどうかを疑っている。
そのような状態で名乗ってしまうわけにはいかない。さらに状況が混乱してしまう。
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今のアインスにできることは、ひたすらクロノに語りかけ、クロノを助けることだ。そのためには、闇の書と戦わなくてはならないかもしれない。
そうなったとき、八神はやてをもがアインスを恐れてくるかもしれない。
闇の書の主に不信を抱かれることは、アインスにとっては耐え難い苦痛と恐怖だ。
自分の存在意義さえもがおびやかされてしまう。
クロノと、アインスと、はやてと、守護騎士たちと。
自分たちが生きていくためにどうすればいいのかとアインスは願う。
はやてが、クロノを受け入れてくれるならば。
少なくとも、安全な寝床を用意してくれた。
ミッドチルダに戻れるようになるまで、という条件はあるが、身寄りを求めることができる。
闇の書の主たるはやてを、クロノが信頼してくれるならば、闇の書の真実を、解き明かすことができるかもしれない。
クロノに、はやてを愛してほしい。
だから、クロノを説得し、どうか、心を交わしたい。
アインスは今更のように、クロノを遠い存在に感じていた。
何度も身体を重ね、交わったというのに、ここにきて急激に心を遠く感じた。所詮肉体だけの関係だったのか、などとは思いたくない。
心から、彼を愛しているはずだ。
だからはやてに伝えたい、クロノを恐れる必要はないと。
そしてクロノも、はやてを恐れる必要はない、闇の書を恐れる必要はない。
アインスの頬をこぼれ落ちた涙が、クロノの瞼に落ちた。
アインスの涙が、クロノの睫をくぐり、クロノの涙と混じって瞳を濡らす。
「泣いてるん……ですか……?アインスさん……」
意外にも、涙を流すことが多い、とクロノは思っていた。
戦いに関しては技術もすぐれ、冷徹な戦術をとるが、しかし、クロノと二人きりでは感情的になることもある。
自分よりもずっと大人であろう彼女が、まるで子供のように、無垢なふれあいを求めてくる。
「すまない……でも、今の私には……お前にしてやれることが、思いつかない……」
「大丈夫です……。僕は、大丈夫です。アインスさんのこと、大切に思ってます……。だから……、心配しなくて大丈夫です。必ずこの事件を解決します。
そして、平和な世界を……。この世界の人々、ミッドチルダの人々を、みんな、守っていきましょう……。僕と、一緒に」
「クロノと……一緒に……」
「……ええ。アインスさんは、僕の大切な人です」
本心、だろう。確かにPT事件の裁判、そして聖王教会でのミッションで、協力してきた。
それは管理局員としての職務ではあったが、それ以上の信頼を結んだ。
「だから、アインスさんには、笑顔でいてほしいです。アインスさんが笑顔だと、僕もうれしいです」
暗くても、体温の熱でわかる。すぐそばに、アインスの素肌がある。
ブラウスの胸元からのぞく肌に、クロノはそっと口づけた。アインスに抱かれたまま、顔を動かさずに唇を触れた。
かすかにアインスがふるえたのがわかる。ぎゅっと、クロノを優しく抱いてくれる腕が、あたたかい。
ぬくもりを、心地よく思う。数か月前まで、リンディに抱かれたときに感じていた気恥ずかしさはない。
アインスとなら、いつまででも、触れ合える。
「ありがとう──クロノ……」
涙を腕で拭い、鼻をすすって、アインスは再びクロノを抱きしめた。
もはや悲しんでばかりではいられない。腹を括ろう。
今の自分は、闇の書を新たな段階へ持ち上げるために、前に進まなければならない。
闇の書の主、八神はやて、そして、守護騎士たち。ただプログラムされた任務を遂行することしかできない彼らでは、闇の書そのものの修復を行うことはできない。
壊れかけた闇の書のシステムを修復し、彼らを救うことができるのは自分だけだ。
そして、クロノを、救う。
父親への不安定な感情に心を囚われている彼を救い、そして、心から、向き合えるようになろう。
闇の書は完成する。そして、今度こそよみがえる。
そのとき、はやてとクロノは、自分と共に生き続けることになるだろう。
クロノをしっかりと胸に抱きしめ、アインスはそう決意した。
to the next page...
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投下終了です
アインスさんとヴォルケンズの微妙な間合い・・・ドキドキ
そしてザフィーラさんによるクロノ君お姫様抱っこ疑惑
アインスさんは涙もろくてそれがかわいいのですよ
泣いて泣いて悲壮感に酔うのです・・・はふぅん
このまま告白して好きすき大好き愛してるーといえないくるしさ
はやてちゃんにこれからクロノ君がどう接していくかですね
ではー
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今までの流れからしてやはりヴォルケンもクロノハーレムに・・・・い、いやらしい!
いいぞもっとやれ
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はやてちゃんまでクロノくんに手込めにしかもリインフォース公認!?
け、結婚式はいつでつか仲人やりたいでつ
初夜はいや婚前交渉うひゃああはやてちゃんかわいいかわいい頭おさえるヴィータちゃんかーいーよー!!!
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いっきにシリアスになりそうだ
ヴォルケン対アインスとなると原作よりも悲しい戦いだな…
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あ
け
お
め
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ありさと
けっこんして
お
めこ
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あさおきて
けっきさかんな
おちんぽの
めんどうみるのは
こ、これでさいだからな塵芥!
とツンレデて
よろしくやってる
ロード・ディアーチェ
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アインス姫初め
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>>111
ウマイwwww そして実にすべ王っぽくて良いwww
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トリップ忘れたけど、まあ、もう別にいっかって気分でお邪魔します。
クリスマスだの、正月だののイベントとか関係なくひとつ。
クロノとシュテルであーだこーだです。
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「闇の欠片事件」から約3ヶ月。
冬から春へと変わり始めた季節の中、平和な時を過ごしていたエース達に降り注いだひとつの騒動。
それは砕け得ぬ闇を巡り、現在に留まらず過去と未来の人物すら交錯した事件。
「砕け得ぬ闇」事件。
これは、そんな事件を越え、紫天の一党が未来へ飛ぶまでの、しばしの時の話。
◇
かけられたシーツに目を醒ます。
「…ああ、なのはか。ありがとう」
いささか寝ぼけた視界には、二つくくりを揺らしてびっくりした表情で固まる少女がひとり。
つい居眠りをしてしまったらしい。
アースラのブリッジでのこと。
座ったまま舟をこいでいる途中、優しい重みを感じて起きたらシーツをかけてもらっていたという顛末。
頂戴したシーツを纏いながら、再びコンソールへ指をかける。
「クロノくん、ちょっとは休憩した方が…」
「その休憩を、今しがたまで取っていたところだ」
あくびをかみ殺しながら、今回の事件における事後処理を再開する。
執務官として、現場作業だけでは終わらないのがつらいところだ。
短い時間ながら濃密な戦闘を経ての事務作業は、若い体力を以ってしてもいかんともしがたい。
「…言っておくがなのは。君が僕の休憩の邪魔をしたというわけでは、ないからな」
居眠りを見られて、見栄を張ろうとした部分もあるだろう。
ふと己の言動を振り返り、少し取り繕う物言いがつい口から出てしまう。
くすくすと失笑を返されて、さらにクロノは居心地が悪くなった。
「優しいね、クロノくん」
「僕は優しくなんてない。僕に比べれば、君たちの方がよっぽどだ…よっぽどすぎて、お人好しもいいところだろう」
「そ、そうかな」
「PT事件からこっち、特に君の踏み込み方は感心するよ」
優しさも、お人好しも。
そこまで強固であればもう武器なのだろう。
高町なのはの、鋼鉄の優しさ。
巌のような、お人好し。
そしてそれでもなお、こうやってシーツをかけてくれる細やかな心遣いもできるんだから感心もする、とクロノは内心で独白した。
「だが、それで僕たちも大いに助けてもらっている。今回の「砕け得ぬ闇」事件にしたってそうだ。改めて礼を言わせてもらう」
「そんな、私は私にできる事をしただけだよ…」
はにかんで照れる様子に、戦場でまっすぐに自分を貫く気高さはどうにも窺い知れない。
それでもそんな謙虚さを、幼いエースは持っている。
得難い事だとクロノは思う。
「できる事をすべき時にやってのける。それが難しいんだ」
「私には…みんながいたから、できたんだと思うな」
「それは誰もが同じだ」
「クロノくんも?」
「当たり前だ」
「ふふ、嬉しいな。クロノくんは何でもひとりでできちゃう人だから」
「そんな事はないよ。ひとりの力なんて、小さいものだ。だからチームを組む。君たちに支えられる」
感慨深い思いを込めてクロノが言う。
会話と平行して動かしていた指が止まる。
ひとりで何でもしようと思っていた。
幼い頃の目標である。
誰かの手助けなく戦えるようになりたくて、涙ひとつ流さずリーゼ姉妹の修行に耐えた。
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結局。
ひとりでいる事の馬鹿らしさは教導センター時代に悟った。
救われたのだろう、エイミィに。
そう思うとつい穏やかな微笑が零れるのをクロノは自覚する。
「僕の報告書なんて、見てて面白いものじゃないだろう?」
「そんな事ないよ。邪魔かな?」
「いや、面白くない書類作りをしている最中、話をしてくれる誰かの存在は有り難い」
「クロノくんのマルチタスク、すごいよね…」
「ストレージデバイス持ちならできて当然だ。何か飲むか?」
「あ、いいよ、私が淹れてくるよ」
「シーツの礼だ。たっぷりの砂糖を茶に入れてやろう」
◇
最初から最後まで、結局クロノ憎悪を殺し切れなかった。
はやてに罪はない。
ヴォルケンリッターは傀儡だ。
リインフォースの名の下に、闇の書のプログラムは救われた。
マテリアルたちもまた、改変され続けた闇の書の被害者である。
万の言葉を以ってただの一念から目をそらす。
そう、ずっと目をそらし続けただけだ。
目を瞑っただけ。
それでもふと執務から目を離して私的な時間に、我に返るような心地で憤怒がそこにあると再認する。
鎌首をもたげる怨念の深みに複雑はない。
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
絶対に誰かの耳に届く事のないように呟きを漏らした夜は、もう数え切れない。
それでも己を理詰めで殺す。
感情を殺す。
はやての善性を是とする。
ヴォルケンリッターの忠誠を是とする。
リインフォースの運命を是とする。
マテリアルの絆を是とする。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウンが下すべき決は公平の一文字だ。
闇の書に殺された者と同じく、八神はやてにも命はある。
すべての命は平等だからこそ、殺された者よりも、今命つなぐはやては私怨に殺戮されるべきではない。
法は強く堅く人の命を救い、護る。
それが時に残酷な冷たさを持つのは知っている。
クロノ自身、死ぬるが正しいと思う者が法に命をつながれている事件の結末に何度も立ち会っている。
そして、立ち会うでなく、直面したのはこれが初めてだった。
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
ハラオウン家長子クロノ・ハラオウン。
時空管理局執務官クロノ・ハラオウン。
このふたつの己は切り離せないのだろうか?
クロノは何度も何度も自問する。
その都度、母に話し聞かされ、そして幼すぎた頃に見た父の顔が、最後の最後ではやてたちを許してやれと微笑むのだ。
理想と夢と、何よりも父を追うようにクロノは時空管理局へ飛び込んだ。
そして今、身を挺して被害を最小限に食い止めた父の死に様が己を縛り、苦しめる。
暴走した闇の書に対し、エスティアの艦長として、時空管理局局員として、人間として、クライドは完璧すぎた。
クロノが夢見た父は、きっとはやてを許した。
ヴォルケンリッターを許した。
リインフォースを許した。
マテリアルたちを許した。
きっと。
きっと。
きっと。
だから、クロノもまた許さねばならぬ。
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それでも、
「なぜ父さんが死んで、彼女たちは助かったのだろう」
それでも彼は今日もつぶやく。
明日もまた、時空管理局執務官であろうとするのだろう。
◇
「とてもためになりました」
ゆっくりと瞼を閉じ、万感を込めてシュテル・デストラクターは吐息をついた。
そこには彼女が常に纏う、潔い熱風の気勢はない。
まるで解き方を知らない難題へ、どう手を出せばいいのか分からぬよう。
きっと凡百の障害など焼き尽くして罷り通るシュテルが、燃えぬ何かと直面したような。
「あの…シュテル…」
慰めるように、シュテルの肩へなのはがおずおずと手を伸ばし、結局中空をさまように留まる。
ふたりきりの部屋。
重い沈黙がしばし流れた。
ある日シュテルがなのはへ語ったのは、己の恋心についてであった。
冷静でありながら、裡に激情を内包するシュテルの事。
ふと気づけば芽生えていたその感情に、ただただ切なく悶え苦しんだ。
そしてその想いの丈を解き放つのに、そして想い人であるクロノ・ハラオウンを深く知るため、自身のオリジナルであるなのはを訪ねたのは自然な成り行きであった。
「気遣いは無用です」
開眼したシュテルが、穏やかになのはへ微笑んだ。
吹っ切れたかのようなシュテルの様子に、むしろなのはが困った面持ちになってしまう。
「ごめんね、あんまり力になれなくて…その…私も、恋愛相談は…」
「いいえ、いいのです。彼の事を、詳しく話してくれただけで十分な私への助力です」
「でも、具体的にどうすればいいかは…やっぱりもっと大人の人に…」
「私がきちんとした恋愛を望むのは、おかしな事なのでしょう」
「そんなこと、ないよ!」
シュテルの両肩を掴んで、まっすぐに向き合ってなのはが断ずる。
力強く、ひとかけらの躊躇なく。
しかし貫くようなその視線に、シュテルは頭をふるばかりだ。
「ありがとうございます。ですが、……私は彼に踏み込めずに終わのでしょう。あなた光の槍のような直情も、今回ばかりはどうしようもないのです」
「そんなのって……」
「そんな顔をしないでください。私は、あなたに姿を映させてもらう許可を頂き、これまでにない嬉しみを感じているのですから」
「そんな喜びは、きっと間違ってる…」
「違っていても、臆病でも、卑怯でも、偽りでも、束の間であれ……私は、彼のぬくもりに触れたい」
いっそシュテルよりも苦悩に眉根を寄せるなのはに、もう言葉はない。
他言無用もすでに約してしまった。
いや、あるいは光明ある事情であるならば、きっとなのははその約束を破るさえしただろう。
しかし恋愛事情だけは、繊細が過ぎる。
シュテルの相談をなのはがしてしまうべきではない。
「そんなのって……ないよ…」
今にも泣き出してしまいそうななのはの肩を、シュテルは抱いた。
◇
どこまでも上へ上へと伸びる本棚は、いつ来ても壮観だった。
高く高くへ昇りながら、クロノは見知った後姿を捉える。
「なのは」
「あ、クロノくん」
開いた本を閉じがてら、身を捻った少女が笑顔をこぼす。
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「なんだ、君も調べものか?」
「うん、これ」
嬉しげに表紙をクロノへ差し向ければ、炎熱魔導に関する魔術書である。
「火炎の魔術?」
「そう、シュテルと模擬戦の約束をしたから、その対策になるかなって」
「ああ、彼女か…」
得心しながら、クロノはその表情に少しばかり渋みを差す。
「切磋琢磨するのはいい事だが、ちょっとは控えてくれ。君たちレベルの模擬戦に合わせた結界は、毎回構築に手間がかかる」
「にゃはは…善処します」
「そうしてくれ。ところで、ユーノを知らないか?」
「ユーノくんなら、さっき出て行ったよ」
「入れ違いか。やれやれ、あいつがいれば欲しい書類がすぐに出てきて便利なんだがな」
きっと軽い棘でも交えてクロノが検索を依頼して、ぶつくさと文句まじりにユーノが書類を抽出するのだろう。
そんなビジョンを己で描いて、ふとクロノに笑みがこぼれた。
「ね、クロノくん、今時間あるかな?」
「時間くらい作れるが…それについてか?」
指すのは炎熱の魔術書。
「そうなの。読んでみたんだけど…分からない所が多くって…」
「君はフェイトのように、学問として魔法を習得したわけではないから仕方ないだろう。分かった、僕でよければ少し教えよう」
「ありがとうクロノくん! クロノくんに教えてもらえるときっとはかどるよ」
「ただ戦闘を想定してまでは、僕も口が出せない。そこらへんは、シグナムにでも聞いてくれ」
「うーん、でもシュテルも収束砲撃型だから、やっぱりミッド式のクロノくんとお話したいな」
「…ま、デュランダルでの変換は冷気だが、それでもどこかでアドバイスできる事はあるだろう」
曖昧にうなずくクロノの手が、ふわりと引かれる。
「それじゃあ、クロノくん優しく教えてね」
爛漫な笑顔に連れられながら、クロノは少し格好つけすぎたと思う。
流石に冷気と炎熱では勝手が違いすぎるだろう。
魔術体系としては説明できても、戦闘レベルではやはり難しいはず。
それでもやはり、頼られればそれに応られるだけ応えようとするから、クロノはクロノなのだ。
◇
「エイミィ・リミエッタとは、どういった人物なのでしょう?」
順繰りの流れであった。
決して出し抜けにシュテルが切り出したわけではない。
リンディ・ハラオウンとは、どういった人物なのでしょう?
クロノ・ハラオウンとは、どういった人物なのでしょう?
そんな、予想すべき流れでありながら、即答や一言での表現に窮してフェイトは首をひねってしまった。
「うーん…そうだね」
決して悪感情を排する言動をこしらえようとしているわけではなく、むしろ逆だ。
多くの褒め言葉が湧き出て、その取捨選択に手間がかかる。
「縁の下の力持ち、かな」
きっと、もっと上手な表現があっただろうとフェイト自身思いながらの、最初の返答。
「縁の下の力持ち、ですか」
「エイミィがオペレータなのは、見て分かるよね?」
「ええ」
「それだけでなくて、執務官補佐っていってねクロノの仕事面でのサポーターでもあるんだ」
そこまでは、なのはから聞いている。
故に、今回フェイトを訪ねたのはその先を知りたいからだ。
アースラスタッフに、クロノに踏み込みたいからこそ、クロノについて深い言及をせず。
エイミィに焦点を当てて今回フェイトへ尋ねたのだった。
想い人の母であり、やはり闇の書の被害者であるリンディではなく。
想い人本人でもなく。
そんなハラオウン親子にひどく近しいエイミィ本人でもなく。
そこまで選択しを排してしまうと、もうアースラスタッフへ紹介を請うのは共同戦線を張ったフェイトにするしか自然ではなくなってしまう。
聞けば、フェイトもまたアースラスタッフと出会った時期はなのはと大差ないらしい。
それでもPT事件での裁判や、私的な事情を経てなのは以上に、フェイトは知る事は多いはずだ。
そう言ってなのはに勧められたのである。
そして何よりも、己の恋心が漏れたとして、きっとフェイトもまたなのはと同じく口を噤んでくれると信じられた。
「クロノ執務官と、エイミィ執務官補佐は長いのでしょうか?」
「そうだね、士官教導センターの同期で、ずっとだって聞いてる」
「呼吸の分かる相手と同じ配属にし、上首尾を期待するのは分からぬことではありません」
「そうだね。それにクロノって真面目だから人当たりが強いところがあるんだ。エイミィがいると、それを緩和してくれる」
胸に灯る嫉妬を、シュテルはなお何一つ表面に出すことはなくフェイトの話に耳を傾ける。
エイミィの話に耳を傾ける。
クロノにつながる話に耳を傾ける。
-
「そもそもそういう性格なんだ。柔軟で、機転が利く人だよ」
「故に、縁の下の力持ちなのですね」
「それにいろんなところを見てるんだ。ちょっとした変化にも気づいちゃう」
「そこは、オペレータの適正ですね」
「本人は、闇の書事件でシグナムたちを、今回の事件でシュテルたちを追い切れなかって落ち込んでたけどね」
「…我々とて必死でしたから」
「ふふ、そうだね。柔軟で、いろんなところを見て、それに気さくだから。みんなの精神的なところも、上手に支えてくれる。私も、よく励まされたんだ」
裁判の時に。
なんて言葉を飲み込んで、安らかにフェイトは微笑む。
姉を自慢するかのように。
「艦内で信頼されているのは、見て取れていました」
「でしょ?」
「女性が強いのですね、アースラは」
ぱちくりとフェイトが目をしばたかせ、それから吹き出した。
「ふ、ふふ、ふふふ! そうだね、リンディ艦長や、エイミィはクロノよりも強い」
「あなたもです」
「私は違うよ。クロノよりずっと弱い」
「そうですか…クロノ執務官とあなたを見る限り、例えばあなたが我侭を言えば、クロノ執務官が折れる。そんな空気を感じました」
そうかな、なんてフェイトが返事に困って苦笑するのを、シュテルはやはり燃える想いで眺めていた。
クロノのそれは、まるで妹と接するかのような。
そんな空気であったから。
己がそうであったとすればと、妄想をせずにはいられないから。
狂おしいほど甘い赤熱が胸中を焼く。
それでもなお、いつものごとく、平静で冷静の仮面をかぶってシュテルは質疑を続ける。
エイミィに関する話が終われば、アレックスとランディについても尋ねるだろう。
クロノと、エイミィについて渦巻く感情を押し付けながら。
きっとシュテル自身では気づかぬうちに、エイミィに対する話は長引いた。
◇
「あ、クロノくん」
「なのはか」
ふと行き会ったのは本局でのことだ。
はやてが足の状態の経過を診てもらう時、できる限りなのはもフェイトも付き添っている。
もう、なのはとこうして本局で見るのも珍しくなくなってしまった。
「この間の模擬戦、残念だったな」
「ごめんね、せっかく教えてもらったのに」
結局、模擬戦でなのははシュテルに白星を譲ってしまった。
シグナムも感心の熱戦だったが、上手く火炎を操りきったシュテルに軍配が上り、幕を閉じた。
「生兵法を下手に僕が教えたのがまずかったかな」
「ううん、そんな事ないよ! …教えてもらったからこそ、つい気になって対応が遅れた砲撃なんかもあるけど、それで見えるようになったものもあると思うんだ」
「そうか。ならそれは、次にきっと活かせる」
「うん! レイジングハートに練習のプログラムを早速組んでもらったんだ」
「…君とフェイトは本当に熱心だな」
「それに、シュテルも。負けられないよ」
ぐぐっと握り拳に瞳に炎。
とても年頃の女の子らしからぬ仕草だが、これもなのはなのだろうとクロノは思う。
-
「もう少しで、お別れだから…」
拳を解いて寂しげに遠くを眺める眼差しに、ついクロノもうつむいた。
アミタとキリエと共に、紫天の一党もまたエストリアへと旅立つと決定したのは、事件後すぐの事だ。
それからしばらく、未来へ移動するまでの束の間の時間。
そんな、隙間のような時間なのだ。
そんな、隙間のような時間だから。
今を、今だけを、凌げばとシュテルは思った。
クロノと己を阻む時間の壁に、きっと諦観で微笑める。
もう届く事がない時間にいるのだからと、恋心を灰にできたはずだからと、シュテルは考えはしたのだ。
――そして、駄目だった。
シュテルは焦熱の激情を堪え切る事ができなかった。
なのはに語った。
語り尽くした。
灼熱の感情を、吐き出した。
「…君とシュテル。ずいぶんと仲がいいな」
「まっすぐに私とぶつかってくれるから」
「似てるよ、君たち」
「フェイトちゃんとレヴィちゃん、はやてちゃんと王様と比べると、私たちは似てるよね」
「ああ、戦闘マニアな所がそっくりだ」
「あ〜、その言い方ひどい!」
「将来、シグナムと血みどろの真剣勝負を演じても不思議ではないな」
「そ、そこまではしないよ〜。私とシグナムさんじゃ、まるで畑違いっていうか…」
「フェイトの戦闘スタイルだからかみ合ってるところはあるな」
「ますます鋭くなってるよね、フェイトちゃんの魔法」
「ああ、怖いくらいだ」
うかうかしてられないよ。
そんな心情をありありとクロノは滲ませる。
「…クロノくんは、シュテルたちあの四人は苦手?」
そして、ふと問われたその言葉につい殺意と憎悪と怨念が胸に去来する。
それを一笑に付すような仕草でかみ殺し、
「ああ、やかましくて適わないんだ」
完全に冗談めかして返せたこの一言を、クロノは脳の冷めた部分で自賛した。
「レヴィが特にな。その点を言えば、シュテルはまだマシだな」
「! …レヴィちゃん、一緒にいて楽しいんだけどな」
「あと少しの間だけだから、我慢はするさ。君からも、もっと行儀よくしてくれと言っておいてくれ」
「ね、じゃあ王様とユーリちゃんは?」
「嗚呼、そのふたりは…」
――全員等しく、虫唾が走る。
「…やはりディアーチェも騒がしいな。ユーリを見習って、もっと静かに過ごしてもらいたいものだ」
「あ、閃いた! ユーリちゃんに王様を諌めてってお願いするの」
「名案だな。ディアーチェの過保護は、よく分かる」
「砕け得ぬ闇事件の最終局面の王様、少年漫画の主人公みたいだったもんね」
「ああ、そうだな。もう結婚すればいい」
あるいは、どれだけ幸せそうにしていても、見えないところであればこの負の感情は薄まるだろうか。
少なくとも今は、八神家に本当の意味で負の感情を断ち切れる目を見出せない。
それでも彼女たちを、降りかかる不当と認識すべき悪念から守ってやらねばならぬ。
彼女たちを保護する形式で見届けねばならぬ。
クライドを失って涙を流した己を殺して。
クライドを目指して執務官となった己を以って。
-
◇
ひとつ確信している事がある。
クロノ・ハラオウンがシュテル・デストラクターに微笑みかける事は、ないのだろう。
「あれ、シュテル?」
指導してもらった文書や魔術式をなぞるのを止めて、本を閉じる。
振り返ればユーノがいた。
「ああ、師匠。借りていた本を返しに参りました」
「うん、預かるよ」
少しだけその本を手渡す事が名残惜しかった。
その想いもすぐに焼却する。
「師匠はナノハと出会いました」
――クロノはエイミィと出会いました
「な、なんだい急に? うん、もうすぐなのはと出会って、一年になるかなあ…」
――私はクロノに出会い、数日の間でした
「一年前に出会い、一年が経ち、さらに一年を重ねるのでしょう。師匠とナノハは、ずっと……一緒なのでしょうか?」
――クロノとエイミィは、ずっと一緒なのでしょうか?
…嗚呼、言葉にするならば、もっと何か聞くに相応しい話しようがあったろうに。
効率と理論は、解答があってこそだと思い知らされる。
彼我の愛憎に、いったいどんな効率を重視すればいいというのか。
正解の無い問答に、どんな理論を用いればいいというのか。
シュテル自身が困惑する問いかけだ。
クロノ・ハラオウンに対する激情が溢れただけ。
当のユーノが難しい顔をするのは、至極当然なのだろう。
「分からないよ、そんなの。でも僕は、ずっとなのはと一緒にいたいと思うよ」
「師匠は、ナノハを魅力的だと思いますか?」
――クロノは、私を魅力的だと思ってくれるでしょうか?
さっとユーノの頬に朱が差した。
聞いたシュテルが一切の心情の揺らぎ無く、一直線に切り出したのもまた羞恥を煽る。
しどろもどろに、ユーノが眉をひそめてしまう。
「ど、どうしたの、シュテル? なんでそんな事聞くのさ?」
「…私たちは紫天の名の下にずっと一緒です。ヴォルケンリッターもまた、ずっと一緒にいる。フェイト・テスタロッサとアルフもずっと一緒。フローリアン姉妹も、ずっと一緒です。ただこれらと比べて、師匠とナノハのつながりは違います。ならば、」
――ならばクロノとエイミィが一緒であるのは、愛であるのだろうか
「ならば、これを愛と呼ぶのだろうか、と」
「あー…」
シュテルの真剣さを察したのだろう。
ユーノもまた真剣さを含んで応じようと考え込む。
「僕は…なのはに恋してるんだと、思う」
-
それから、周囲に誰もいない事を確認して。
思い切りながら、どこか照れを捨てきれずにそう言った。
「恋ですか」
「うん。なのはに助けてもらって、なのはを助けて…気づいたら惹かれてた」
――私もまた、気づけば
「大切な友達だとも思うんだ。ただ、それだけじゃない気持ちも、…僕にあると思う」
「それをナノハには?」
「言えないよ、こんなあやふやな気持ち…正直な話、恋であるかどうかも自分で分かってないんだ。だから、それを確かめるためにも、僕はもっとなのはと一緒にいたいと思うよ」
真摯な言動だった。
疑いようなく、正直な話をしてくれていると分かる。
本心を隠してこそこそとしている己と真逆だ。
「…私は、ナノハを好ましく思います」
「僕もだよ。あんな風に、誰かの思いに対してまっすぐ向き合えるのは、すごい事だと思う」
「思いに、向き合う…」
ぎゅっと胸元を掴んでシュテルが反芻する。
フローリアンン姉妹に対しても、己に対しても、現れる闇の残滓に対しても、ユーリに対しても、いつも彼女は己をさらして一抹の翳り無く真っ向から相対した。
ただひたむきに。
ただひたすらに。
そう存在する事が最強なのだろう。
最高でも、最善でもなく。
最強。
まるで太陽のように心に闇なく、彼女は人の思いに向き合っているのだろう。
己の光で、どうか誰かの悲しみを照らし枯らせるようにと。
そしてそんな自覚もないからこそ、最強のなのはが在る。
高町なのは自身は、きっと大きな恒星。
星の光のように、数多流れんとする涙が零れぬように。
己を燃やして掬い続けるのだろう。
明星よりも、熱く。
「…私にもナノハのように思いと向き合う事ができるでしょうか」
「…僕がなのはに恋か、友情かという感情を持ってる事を打ち明けたじゃないか」
赤子のような無垢さで、シュテルはユーノの顔を覗き込んだ。
バツ悪そうな、なんとも言えない表情を認めて、慈母じみて、そして少しばかり茶目っ気を含んで微笑むんだ。
「…内密に、しておきましょう」
乙女のように悩み、苦しんだ。
しかし結局のところ、己にできる事などただのひとつだったのではないだろうか。
清廉な湧水のごとく裡より溢れる、達観じみた想いがシュテルを満たす。
なのはが思いを受け止めるように。
己もまた。
-
◇
「茶番は終わりか?」
底冷えする声で、クロノが問うた。
クロノの自室である。
密室にはふたり。
クロノと、シュテル。
なのはの格好をした、シュテルである。
いつもどおり。
なのはを演じてクロノへ声をかけたある時の事。
話があると、自室へと誘われた。
その時点で薄々シュテルには看破されている事に気づいたし、諦めもついていた。
「はい、終わりです」
「…いつからなのはと入れ替わって僕と接していた」
「事件が終わって、すぐにです」
テーブルを挟んで相対するシュテルは、なのはと同じ顔の能面じみた表情で受け答えをする。
しかしそれでもクロノには何故か分かってしまった。
シュテルは真剣だと。
「…理由は?」
「あなたを愛しています」
「…ふざけるな」
ふざけているわけではないと、十全に肌で感じながら言わずにはいれなかった。
「本心です」
「好かれる理由が無い」
「一目惚れというやつです」
「信じろと?」
「…伝わりませんか? 私の想い」
陰気も陽気も一切が焼失した、純心のみが凝る視線がクロノを射抜く。
なのはと同じ容姿で、まるで違うシュテル。
だというのに、こうして一直線に思いをぶつけてくる様はなのはを彷彿して止まない。
「もっと深くお話をしましょう」
静かにシュテルは口火を切った。
もう必要ないとばかりに、髪止めをはずし、二つくくりを解く。
「私はマテリアル。理を司ります。しかしただのプログラムではないと自負しています」
「……君にも心はある」
「そうです。故に高みを目指し、戦いに昂ぶる。勝利して満たされる。敗北して雪辱を晴らしたいと願いもする」
「恋もする、か」
「はい。誰かに惹かれもしましょう」
「……なぜ僕だ?」
鏡のようなシュテルの瞳にクロノが問いかける。
「あなたは闇の書を憎んでいる」
「……」
「あなたは八神はやてが生きている事を理不尽だと思いませんか?」
「……」
「ヴォルケンリッターが家族を持った事が不条理だと思いませんか?」
「……」
「未だ闇の書を引きずって現れた我々を破壊し尽したいと思いませんか?」
「……」
シュテルの問いかけのすべては、闇の書の災害を被った誰かであれば抱いて当然の思い。
当然すぎて、もはや自分の一部である問い。
ずっと自問している事だ。
それでもクロノは理を説いた。
「闇の書の暴威は、もう終わった。闇の書の闇を破壊して、リインフォースも短い命を終える。ヴォルケンリッターは罪を償う。そして……はやても被害者だ」
「そうやって、」
ふと儚げに悲しげにシュテルは微笑みをクロノへ傾けた。
「あなたは理に生きている。情に流される事なく。完璧です。…私は、そんなあなただから惹かれたのです」
「よせ」
「肉親を殺された憎悪は、理路整然と割り切れるものですか?」
「やめろ…」
「あなたが完璧であればあるほど、その怨念は計り知れない」
「口を閉じろ」
「理想の人間じみて振舞っているあなたほど、理を意の元においた人間を、私は知らない…」
「僕は、そんな人間じゃない」
言葉ひとつひとつに苦痛を伴う。
そんなクロノを見守るシュテルの眼差しはどこまでも憂い、そして優しい。
「八神はやてが生きている事を理不尽だと思う気持ちだってある。その思いが理不尽だと思いもする。グレアム提督の策もひとつの手だったと思う。もっと別の手段を模索すべきだったとも考える。父を殺された怒りもある。それをヴォルケンリッターたちに向けたいとも思う。誰にも向ける相手がいないとも知っている…! どうしようもないって、分かりきってしまっているから! 僕は指針を理にしたんだ!」
「指針を理にして、そう在る。できる事をすべき時にやってのける事が難しいと、あなたに教わりました」
「戯れるな!」
-
テーブルを叩いてつい立ち上がる。
クロノの感情が激してゆく。
冷静さ旨とするクロノが、際限がないように加熱していく
「戯れてなどいません。あなたはそうやって心に鬱屈を抱えてなお、たゆまず理知を振舞う。それは正しすぎて歪んでいる。そんな強さと優しさに惹かれたと、私は言っているだけです」
「黙れ!」
きっと、ただ闇の書に対する恨みを尋ねられたら、いつもの冷静なクロノで受け答えをしただろう。
――ああ恨みはある、だがはやてたちに向けるのはお門違いだ
なんて、むっつりとした仏頂面で返事して終わりだったろう。
好きだと告白された。
一切の虚飾もなく、真っ向から。
そして、その好意の因子こそが己の心の闇だと言う。
なのはの形をして。
クロノの心が千々に乱れてゆく。
闇の書を憎む。
この否定すべき感情は、普通は肯定されるべきだとは理解している。
しかしそのさらに向こう。それに惹かれる誰かなんて、思いもよらなかった。
「…どうしてなのはの格好をして僕に話かけた?」
幾許かの間を置いて、少しだけ激昂を抑えたクロノが着席しなおしながら聞いた。
「あなたは闇の書を憎んでいる。そんなあなたが私に優しさを向けてくれるとは思いませんでした」
「だからなのはのふりをして僕と話したと言うのか?」
「そうです」
真剣に、偽りであろうとも己の優しさに触れたかったのだろうとクロノには信じられる。
だってこんなにもシュテルに対して忌んでいる。
こうして対峙して、語り合うのも嫌悪すべき事。
それを理性を以って続けているのに。
続けているのに、その理知の裏さえもシュテルは踏み込んでくる。
踏み込んで、愛しいと言う。
なんなのだ。
この、なのはの姿かたちをしたものは、なんなのだ。
「嘘でもいいと思いました。理に従って完璧なクロノ・ハラオウンと語るよりも、少しでもナノハたちへ向ける素顔の優しさを分けて欲しいと思いました」
「そんなコミュニケーションに何の意味がある」
「自己満足です。私はあなたに踏み込めずに終わのでしょうと、分かっていましたから」
諦めずに接していれば己がシュテルへ、本当の慈しみを覚えたかと自問する。
答えは否だとすぐに出た。
それが自然だとクロノは思う。
それが不平等だともクロノは思う。
だが、己の心の中だけは、己の心に従わねば、いったい人間である意味があるだろうか。
「そして今日、あなたに偽りをさらす必要がなくなりました」
「どういう意味だ?」
「考えていたんです。あなたへの愛で、何をすべきか。私はあなたを愛したから、あなたからの優しさを欲しました」
「嘘でもか」
「嘘でもです」
-
喜びと、嬉しみをたたえて、溢れる想いを込めてシュテルが緩やかに頷き。
席を立つ。
「君を救いたいと願っている人がいる」
「…それは」
「君を助けたいと願っている人がいる」
それは、システムU-D戦の最終局面。
クロノがユーリへと、放った言葉。
「ではあなた自身は何を願うのですか?」
誰かが願ったでなく、クロノ自身が願った想いは?
クロノの傍らにシュテルが立つ。
その手を取って、シュテルは己の胸へと押し付けた。
「私を焼いて」
優しく微笑んだ。
「あなたからの優しさは、要りません。あなたの憎しみをください。あなたが理不尽で、不条理で、どうしてだと自問し続けてきた負の感情をどうか私にぶつけてください。あなたが闇の書に叩きつけたかった黒い想いをどうか私で散らして。刺して、貫いて、砕いて、潰して、千切って、破いて、私をめちゃくちゃにして。理にずっと隠れていた、目を瞑っていた、心底に溜まった膿を私に吐き出して」
甘やかに語りかける言葉と共に、封鎖領域を展開する。
それと同時にクロノがシュテルを押し倒す。
泣き出しそうな顔は、どうすればいいのか分からない子供の顔。
「あなたにしてもらう事を、ずっと考えていました。そして、あなたにしてあげられる事も、ずっと」
クロノの頬を撫ぜるシュテルの手は柔らかく、暖かい。
「私を殺して」
どっと押さえつけていた汚泥のような想いが堰を切って、クロノの咆哮へ変わる。
「なんで父さんが死んで!」
「闇の書が殺した!」
「なんでお前たちが生きている!」
「あなたたちが生かした!」
「死ねばよかった!」
「殺せ! クロノ・ハラオウン! 私を殺せ! 私を焼け! 焼けえええええ!」
きっと。
封鎖領域を察してくれるのはエイミィだとシュテルは不確実な確信があった。
エイミィにできなくて、己にできる事。
クロノにしてあげられる事。
これしかないと思った。
想いを、ぶつける、受け止める。
地獄の業火じみてクロノが与えてくれる暴威の中、シュテルは幸福な心で思う。
どうか来世では、彼が愛を向けてくれるように生まれますように。
-
終わりです。
遅すぎるけど非エロとここでお知らせ。
読んでくれた方がハートフルな気持ちになってくれると嬉しいです。
-
素晴らしい!
ナイフで抉られるしか手段のない愛情が素敵すぎる
乙
-
おつです
このあとエイミィが踏み込んで来るんだろうけど、
抉り出した闇をエイミィ委ねて旅立つのだろうか、シュテルは
-
泣くしかできない、俺がいる。GJ
ところでそのタイトルは巷で評判のタイトル詐欺ってヤツですか?
-
GJです。見事なハートフル(ボッコ)でしたね。心が(業火で)温かくなりました
シュテルんが健気可愛い……
-
なんかクロノが劣化してる気がする
アンチものは受けないよ
-
そもそもクロノ物がイマイチ
-
話はよかった、GJ
闇にこそ惹かれたというその発想が素晴らしい
しかしクロノがモテてるのを立て続けに読むとなんか軽くむかつくなw
ユーノでもヴァイスでもそうだけどw
-
ふと思ったのですが、
なのはがシュテルが入れ替わっていたというのなら、
ユーノと話していたのはどっちなのだろうか
-
>>126
実にGJ
-
これはいい・・・ああ、うん、いい・・・すごく
上手く言葉に出来ないんだが理知的なクロノくんの闇を引きずり出すのが素晴らしい
-
どうもおはようございます
はやくえろシーンがでてくるまですすみたいーとばかりに16話をかきあげました
今回も引き続きはやてちゃんのおうちで、えろはちょっとおやすみです
クロアイの精神を広めてゆきたい(・∀・)
闇と時と本の旅人 16話です
-
■ 16
自室に戻った八神はやては、車椅子からベッドに乗り移り、座ったままため息をついてから、枕もとの時計を手にとって改めて現在時刻を確かめた。
闇の書の起動と、突然の異世界人の訪問は、はやての意識をすっかり覚醒させていた。
紙と革でできているはずの本が、自力で浮遊し移動し光を放つという現象。
あらためて目にすると、現実離れした異常な光景である。
ヴォルケンリッターたちも、出現した瞬間そのものははやては目撃していない。気づいたら目の前にいて、しかもすぐに気を失ったので、はっきりとは覚えていない。
しかしよく考えてみれば、彼らは人工生命体である以上、通常の人間のように母親の胎内から生まれるのではなく、魔法の力で空間に最初から現在の姿を持って生成されるのである。
どのような原理と技術でそれが可能なのだろうか。人体は、骨と肉でできている。カルシウムや、タンパク質、炭素や水素、窒素などが主成分のはずである。それらの元素はどこから調達するのか。
それとも、見た目は人間でも違う材料からできているのか。
魔法で、とはいうが、あらためて考えると、はやての頭ではとても想像しきれず気が遠くなってしまう。
図書館で今度、生物学や物理学の本を探してみようか、とも連想した。
「次元世界……って、ゆうとったよね」
うろ覚えだがヴォルケンリッターたちもそのようなことを言っていた気がする。
確か、ベルカ、という名前だった。
思えばいかにも外国人のような──少なくとも日本人には見えない──風体なのに、最初から言葉が通じた。それはともかくとして、あの銀髪の女性が言っていたミッドチルダという世界では、魔法があるということなのだろう。
おそらくその世界に闇の書が出かけて行って、あの二人を連れてきたのだ。
外はまだ暗い。時計の針は、午前3時45分を少し過ぎたあたりを指している。
これから、もう一度床に就いたら、もしかしたら明日の朝は寝過ごしてしまうかもしれない。
それ以前に、先ほどの出来事の驚きが大きすぎて、眠れそうにない。やけに目がさえてしまっている。
「なんやろ……あのひとのこと、初めて見たんやない気がする……?」
そういえば名前を聞くのを忘れた。言葉が通じるかどうかも分からなかったし、おそらく向こうが配慮して日本語を使ってくれたが、こちらからいろいろ尋ねることはできなかった。
あの少年は大丈夫だろうか、とはやては思案を巡らせる。
ザフィーラとシグナムに、隣の空き部屋にベッドの用意をするように言って、はやてはヴィータを宥めながら2階に戻った。
ドアをノックする音がして、はやては入ってええよ、と返事をした。
「はやてちゃん……」
-
現れたのは、湖の騎士シャマル。先ほどのクロノたちとの応対では出てこなかったが、念のため、家の外を警戒していた。
深夜なので、物音をたてないよう静かにドアを閉める。
「シャマル、どないしたん?」
「さっき来た二人のことだけど」
シャマルは神妙な表情を見せている。はやての前では、穏やかな大人のお姉さんといった印象の表情をするようにしているが、彼女とて古代ベルカ時代から戦い続けてきた守護騎士だ。
昨日の夕食の時までは、普段どおりだった。でも今は、今のはやてには、シャマルのわずかな顔立ちの違いがわかるような気がする。
血の匂いを感じさせる、いくさびとの表情になっている。
「ミッドチルダから来た……と、言っていたのよね」
「う、うん……あの銀色の長い髪の女の人、歳はたぶんシャマルよりちょい上くらいやとおもうけど……」
「はやてちゃん、前に少し言ったと思うんだけど、わたしたちが生まれたベルカと、ミッドチルダは、それぞれ──“次元世界”というところの、国の名前なの。
大昔の戦争で、ベルカが滅んで、その後、ミッドチルダが次元世界を統一したのが……およそ、70年前」
「敵の国なん?」
おそるおそる問うはやてに、シャマルはあわてて首を横に振る。
「ううん、今は、ミッドチルダが次元世界の中心という感じで、人々は平和に暮らしているはずだわ。今は、管理局という組織が、次元世界ごとの仲立ちをして、戦争が起きないように守っているし──」
「管理局──国連、みたいなもんやろか?」
ヴォルケンリッターたちは地球における国家の仕組みには知識が乏しい。はやても特に説明しなかったしする必要もないと思っていた。
はやての理解はおおむね早かった。次元世界は、地球でいう惑星ひとつがひとつの世界をあらわし、いくつもの世界が国家連合を作っている。その中で最も大きな国がミッドチルダという。
シャマルたちの生まれた世界であるベルカは、数百年前に滅亡し、生き残った人々は少数民族としてミッドチルダの辺境地域に暮らしている。
「冒険SFみたいやね」
とはいえ、闇の書が強力な魔法を実際に持っていることは現実であり事実だ。それは認める必要がある。
たとえば、宇宙人のUFOは光線で人間を空中に持ち上げてさらったり、という体験談が語られることがあるがこれは飛行魔法やバインド魔法の応用かもしれない。
そして実際に闇の書は、何万光年離れているのか知らないがそのミッドチルダから地球まで、二人の人間をさらってきてしまった。
-
「ほんに困った子やなあ……」
「ごめんなさいね」
「ううん、シャマルがあやまることやないよ。闇の書は、きっとなんかやりたいことが、あったんやとおもうから」
「……そう、ね……」
はやての言葉に、シャマルはわずかに返事が遅れた。
闇の書がやりたいこと。それは唯一つしかない。
リンカーコアを蒐集し、ページを埋め、覚醒することである。闇の書は、人間の魔導師のリンカーコアから魔力と魔法術式を読み取ることによってデータを蓄積し、それが規定の容量を達成することで戦闘モードでの起動が可能になる。
現在、闇の書はすでに480ページを埋めており、闇の書が自身でミッドチルダに移動できたのもこれによると思われた。
次元間航行魔法を入手し、蒐集行使によって使用することができる。
そして、闇の書が連れてきたという少年と女性──女性の方は、シャマルたちにとってはよく、とてもよく──見覚えのある姿だった。
彼らを休ませている部屋のベッドメイクを終えたシグナムと、はやての部屋に来る前に話した。
少年の方は、時空管理局の局員、そしておそらくかなり高い階級の執務官である。
女性の方は、シグナムたちの記憶が確かならば──、闇の書の、管制人格、本の旅人である。
闇の書の守護騎士たちは固有の名前を持っている。シグナムは烈火の将、シャマルは風の癒し手、ヴィータは鉄槌の騎士、ザフィーラは盾の守護獣。
これはベルカ時代の古風な雅名とでもいうような表現方法で、シグナムやシャマルというのははやてがつけた名前だ。
同様に、闇の書の管制人格は、本の旅人という名前を持っている。ただし、あの少年とのやりとりでは、「アインス」と呼ばれていた。少年の名前は、クロノ。ファミリーネームは不明だ。
アインス、という名前。ベルカ語の人名として、全く使われないわけではないが珍しい。大抵は、アインシュタイン(Einstein)、アインハルト(Einhard)など、他の単語と組み合わせられる。アインス(Eins)だけだと、数字の1、という意味になる。
偽名だろうか。彼女と、少年は、その身なりはほぼ間違いなく管理局員である。
はやてに、闇の書の主に危険が迫っていることをシャマルは危惧する。
「……ねえはやてちゃん、今夜は、私も一緒に寝るわ。はやてちゃんも突然のことでびっくりしたでしょうし」
もし。シャマルが危惧する最悪のケースとは、守護騎士である自分たちの気づかないうちに、闇の書がハッキングを受け制御が乗っ取られていることである。
はやてを守らなくてはならない。シグナムは、あの銀髪の女は確かに本の旅人だと言っていた。しかし、もし本当に彼女が闇の書の管制人格であるならば、主であるはやてを前にしてなんの行動もしないというのはおかしい。
彼女が既に、管理局の手に堕ちている可能性──シャマルはその可能性を考えた。
シグナムは今夜の蒐集を中止し、リビングで警戒を続けている。
「うん。ありがと、シャマル」
はやては微笑み、毛布をあけてシャマルを招き入れた。
すでにパジャマに着替えていたシャマルは静かにベッドに入り、身体を横たえる。はやてはいつものように、シャマルの胸に顔を寄せてきた。
健気で、気丈なようでいて、それでいて儚い、闇の書の主。
これまでにも年若い主はいた、しかし、はやては本当に優しく強い。
はやての幸せを願う、その気持ちをどうか、本の旅人が失っていないことを祈る。
-
クロノたちに割り当てられた部屋は、ベッドはダブルサイズだったので、クロノが落ち着いてからアインスも上着を脱ぎ、一緒にベッドに入った。
一緒に寝たことは何度もあるが、今回は他人の家に上がらせてもらっている状態なので、やや緊張する。
管理局の制服のままで寝巻きを持ってきていないので、クロノはとりあえず上着を脱いでシャツだけになり、下はズボンを履いたままに、アインスは上着とスカートを脱いでブラウスだけになった。
月明かりに、アインスのよく肉の張った太ももが青く浮かび上がる。
季節は冬、空調と保温を考慮された住宅の屋内とはいえ、アインスが寒くないように、クロノは毛布を深くかけなおし、アインスの身体を抱き寄せた。
心なしか、アインスの表情が潤んでいるように見える。
「大丈夫です、アインスさん」
男として、彼女を愛したい。自分には話せないつらいことがあるかもしれなくて、それを自分が追及するのは彼女にとって苦痛かもしれないけれど、それでもできる限りのことをしてあげたい。
「クロノ、私は……」
「今は眠りましょう。明日、朝になってから、あの子──八神はやてにあらためて挨拶をして、それから──本局に連絡を取りましょう」
今だけは。今だけは、つらいこと、苦しいことを忘れたい。
眉根を寄せ、何かを堪えているような表情のアインスに、クロノはそっと口付ける。
顔の位置を合わせると、クロノのつま先はアインスの脛あたりにくる。アインスは身体をやや丸めているので、太ももの間あたりにクロノの膝を挟む格好になる。
小さなクロノの身体、しかし、それは彼が弱いということではない、男として、確かに強さを持っている。
「闇の書が本当に動き出して、また闇の書事件が起きるのなら、あの子も、救わなくてはなりません」
しっかりと向き合い、仄かな月明かりの蒼い空気の中、アインスの目尻に大粒の涙が浮かんだ。
「アインスさん」
「すまない……お前の力になれなくて」
「……アインスさん、僕は……あなたと初めて出会った時とは──少し、考えが変わりました。
確かに僕は管理局員として、法律を運用する立場にありますが……それにまったく縛られていてもいけない、ということです。
──もし、アインスさんを苦しめるものがいたら、僕はアインスさんを助けることを第一にします。他にどんな障害があってもそれをはねのけます」
「クロノ……しかしそれでは、お前や、お前の家族はどうするんだ──?私だけが消えるのならいい、しかしお前が消えたら、悲しむ人がたくさんいる」
アインスを抱きしめる手のひらに、震える身体の拍動を感じる。声が、怖れを含んでわずかに途切れるのが、背中に伝わる肺の震えとして感じる。
クロノは何度も繰り返し、アインスの背中を撫で、安心させるように愛撫する。
「私は……独りなんだ。私には、家族はいない、私は、誰にもかかわりを持っていない……グレアム提督も、クライド艦長も、所詮は管理局という職場の中での同僚というだけだった……
私が死んでも私を弔ってくれる者などいない、私がいなくなっても誰も悲しむ者はいない……
──だから、私は……お前に最初に出会った時、言った通りに……お前に逮捕されて、処刑されてしまうかもしれない、そうなっても私は悔いはない……お前と結ばれることは許されないんだ」
-
「違いますよ」
静かにアインスの言葉を遮る。浮ついて、焦点が定まらなくなっていた瞳がきゅっと絞られ、アインスの肩が震えあがったのがわかる。
シーツにぽたぽたとしずくが落ちて、染みをつくりつつある涙を、クロノは顔を近づけ、そっと腕を毛布から抜いて、指先で拭う。
「確かに僕は管理局員です、執務官です。でも法律は絶対じゃない、法律を作るのは人間なんです。そして人間は、自分で自分を作り替えることができるんです。
未来のために、これから生きていくために、僕は、アインスさんを助けたいんです」
「う……あ、クロノ……でも、私は……」
「僕が願うのは、自分の気持ちに整理をつけることです。けして、闇の書を叩き壊してそれでせいせいした、というような解決の仕方をするつもりは全くありません。
そんなことをしても、天国の父さんが喜ぶはずは……すみません、陳腐な言い方ですね。とにかく、僕は僕の意志で、アインスさんを助けたいと思っているんです。
これは僕の本当の気持ちです。もし闇の書のせいでアインスさんが苦しんでいるのなら、それを救うことも、闇の書事件の解決方法のひとつです」
抱き合っている距離をいったん離し、腕を動かすスペースを空けてから、アインスは右腕を毛布から抜いて、腕で顔を拭った。
涙でくしゃくしゃに濡れ、崩れているだろう表情を、クロノに見られることがまた悲しい。
クロノに、自分の弱い姿が見られてしまうことが情けない。自分は、何もできない。ただ図体が無駄に大きいだけで、頭の中は、心の年齢は駄々をこねている子供と同じだ。
そう思うとますます涙があふれて止まらない。
あまり声を上げてしまうと、はやてたちに聞こえてしまう。夜遅い時間だし、大きな物音はたてられない。
クロノはベッドの上で身体の姿勢を仰向けから横向きになおし、アインスと抱き合えるようにする。
「来てください……」
「クロノ……」
腕を掲げ、アインスを抱き寄せる。クロノの胸に、アインスが抱かれる。アインスを抱きしめる。自分よりもずっと大きな大人の女性を抱く。
精いっぱいの慈しみを持って。
たとえ彼女にどんな身の上があろうとも、クロノはアインスを愛する。
その意志を貫き通そうとしたとき、管理局員という身分が足枷になるならば──、そのときは、自分の命をアインスに委ねよう。
一蓮托生、アインスがきっと願っているであろう、クロノと共に生きることを、自分も願う。
「今の管理局の部隊で使われている“先代の主”という呼び名は正確ではない……彼の後、もう一人、闇の書の主に選ばれた人間がいた……それが、クライド提督だった……」
クロノの胸の中で、アインスは言葉を絞り出す。
最初に会った日、あの霧雨の舞っていた橋の上で、一緒に傘をさして川の水面を見ながら聞いた言葉。
闇の書が破壊されるよりも先に主が死んだ場合、闇の書はその場で即座に新たな主を探す。
11年前、闇の書の主に選ばれたのは、クライド・ハラオウン管理局提督その人であった。
「私は、クライド提督を救えなかった……」
「父さんは闇の書を……どう、しようとしていたんですか?主に一時的にでもなっていたのなら、さまざまなことがわかったはずです」
-
クロノの推理。たとえ自分の父親であっても、危急のときであっても、それは理性を失っていい理由にはならない。
父がどんな気持ちでいたか、それを知りたいのだ。もし父が闇の書の主に選ばれたのなら、息子である自分も、闇の書の主に選ばれるとはどのようなことなのかを理解できるかもしれない。
そうすれば、あの少女を、八神はやてを救える方法が見つかるかもしれない。
「……アインスさん……」
唇がふるえているのがわかる。言葉に出すことが恐ろしくて、悲しい。
きっと父に恋していた。アインスは、クライドを愛していた。たとえ既婚者で、家庭を持っていたとしても、その頃の彼女にとってはエスティアの艦内だけが彼との世界のすべてだった。
再びクロノの胸に顔を埋め、嗚咽を漏らすアインスを、クロノは腕いっぱいに優しく抱いた。
アインスがなぜ、話すことをためらっているのか、クロノは考える。自分に話すことができない理由、教えることができない理由。それを口に出せば、自分に嫌われてしまうかもしれないという恐怖。
それを口に出すことは、自分への裏切りであるかもしれないという恐怖。これを話したら、クロノを裏切ってしまう。
アインスはそう考えているのかもしれないとクロノは思った。
「アインスさん、僕は……どんなことがあっても、アインスさんを受け入れます」
そう口に出すこと自体にも、クロノにも不安はある。いくら覚悟していても、自分の予想外のことを打ち明けられるかもしれなくて、そうしたら自分はショックを受けるかもしれない。
だけど、それでアインスのことを知らないままでいる、知ろうとしないままでいることは、これもまたアインスに対する裏切りであるとクロノは考えていた。
クロノが考えうる最悪の事態、エスティア乗組員に総員退艦が下命されたとき、クライドを見捨ててしまったのだという事実──それが事実としてあったかはともかくアインスはそう認識しているのかもしれない。
父親を見捨てておいて、その息子にのうのうと近づく、それは糾弾されることだ。
自分が、アインスを嫌いになってしまうことが怖いのだ──そうクロノは思った。
だから、どんなことがあってもアインスを嫌わないと約束する。そう言葉に出して、アインスを安心させる。
アインスが打ち明けなければならないこと、それはほかでもない自分が闇の書であるということだ。
管制人格、という部品ではあるが、それはあくまでも闇の書内部でのプログラムの分類なので、外から見たときにはその区別はあまり意味をなさない。
自分がクライドを殺したようなものだ。闇の書の暴走は、管制プログラムである自分に責任がある。
クライドを、守りたかった。
守らなければならなかった。クライドを、死なせてしまったのは自分の責任だ。
クロノにとって、もはや感情の大部分を占めているのはアインスを愛したいという想いだった。家族、両親、幼馴染、それらは心の中で薄れていく。
本局で仕事をして、自宅に帰った夜と、無限書庫に泊まった夜と、どちらが多いだろう。
自宅に帰っても、夕食の時間は過ぎていたし、リンディやエイミィとも言葉を交わさなかった夜のほうが多かった。
もしアインスが、かつての闇の書事件の時にクライドとの間に何を経験していたとしても、自分は受け止めなければならないとクロノは思っていた。泣いている彼女を見るとその思いは強まっていく。
闇の書が直接にクライドを殺したのではない。クライドは、闇の書の真実を知り、そしてその真実と、人類の平和とを秤にかけて、そのまま生きていくこともできたはずだが、それでもなお自らの消滅を願った。
自分が生きていたら、それは人類の破滅をもたらす。
-
アインスが言う、クライドを救えなかった、というのは、すなわち闇の書の真実に耐えられなかったということである。
「父さんのことを、本当に……大切に思っていたんですね」
「……うん……」
小さく、子供のようにか弱い声。アインスを、助けたい。それは、心の重荷を取り除くことである。アインスを苦しめている罪の意識を取り除いてやることだ。
そしてそれができるのは自分しかいないと、クロノは思っていた。
クロノの腕の中で、アインスは涙を流して言葉を振り絞る。喉が詰まるような呻きと、ぎゅっと縮こまった肩。クロノの胸にすがりついている。
「止めたんだ、止めようとしたんだ……でも止められなかった、クライドは、自らも道連れに闇の書を」
アインスの声が一段と悲痛さを増し、クロノが抱く力をわずかに強めたとき、アインスの身体の向こう、部屋の壁の向こう側に、巨大な魔力が発生したのが感じ取れた。
クロノはとっさに身体を起こし、アインスも言葉を途切れさせる。
強大な魔力反応だ。待機状態にしていたS2Uと、アインスの持ってきていたブレスレット型デバイスがそれぞれに警告アラームを発している。
この付近にあるもので、魔力を発することのできる装置はひとつしかない。
「闇の書──!」
魔力反応の源が移動しているのをクロノは感じ取った。魔力光は可視光線領域以外にも全波長領域にわたる電磁波を放出するため、たとえ遮蔽物の向こうでも感覚の鋭い人間なら感知できる。
さらに空振が起き、窓ガラスがチリチリと震える音が聞こえた。
「はやてさんが──!」
クロノはベッドから飛び降り、S2Uを手に取った。もし闇の書が戦闘モードで起動したのなら、なんらかの脅威が迫っていることが予想される。
自分たち以外の管理局部隊が独自に──あるいはグレアムやリンディの命令を受けて──やってきたか、それとも、別に闇の書と戦っている勢力や、野生の魔法生物が引き寄せられてきたか。
どちらにしても市街地である。民間人への被害を避けなければならない。
「クロノ、こっちに来る──!」
アインスが声を上げ、部屋のドアが開いた。ドアの向こうから漏れ出す魔力光が上下に移動している。
闇の書が浮遊して、自らドアノブを押してドアを開けた。
闇の書はゆっくりと、表紙の金十字をこちらへ向けて、クロノとアインスに向かって空中を進んでくる。
「ちょっ、ま、待つんや!止まるんや、闇の書!」
「はやてちゃん!」
車椅子に乗り移る暇もなかったのか、床を這いずってはやてが、それからシャマルが走って後を追ってきた。明らかに強い魔力を放っている闇の書に、二人も手出しできない。
闇の書はさらにクロノに向かって移動し、距離およそ1.5ヤードまで接近した。
-
S2Uはまだ待機状態にしている。この場でデバイスを戦闘モードに切り替えれば室内の破損は免れない。
「どうしてや!あかんって、こんなとこで、ん、わっ!!」
手のひらでフローリングの床をつかみ、這ってきたはやてはすがるように空中の闇の書に腕を伸ばす。
はやての手が触れた途端、闇の書はシールド魔法を展開させ、本の表紙をつかもうとする動きをしていたはやての手がぶつかった。
シールド魔法が展開する防壁は、壁面そのものは透明で実際に目に見えているのは魔法陣が放つ魔力光のため、魔法の感覚を持っていなかったはやては何もない空中のつもりで勢いよく手を突き出し、シールドにもろにぶつかってしまった。
「はやてちゃん、いけない!」
「あたっ……!」
シールドにぶつかって虚を突かれたはやてがしりもちをつき、シャマルがあわてて背中を押さえる。ザフィーラとシグナムも駆け付けたが、この間合いでは攻撃できない。
「くっ──うあっ、あああっ、うわあああああっっ!!」
クロノの斜め後ろで、アインスは床に取り落としていた自分のデバイスを掴み、起動させた。
間髪を入れず闇の書がそれに反応する。ばっと音を立ててページを開き、拘束魔法の術式を起動させる。
闇の書自身の詠唱動作は本を開いてから使う魔法が記録されているページを検索し、さらに行と桁にカーソルを合わせる動作が入るため、詠唱開始から発射までのタイムラグが比較的大きいが、アインスの持っているデバイスも携行型としては起動速度が遅かった。
右腕に装着したブレスレットが紫色の触手を空間に形成すると同時に、闇の書のページ上に展開された魔法陣から黒色のリングバインドが放たれた。
「うがッ……くっ……!!」
リングバインドはアインスの右手首のあたりに命中し、腕を空中に固定して押さえ込んだ。
みしり、と骨がきしむ嫌な音をクロノは聞いた。バインド魔法は、通常は警察や法執行機関において被疑者捕縛用として使われるが、出力を上げていけば文字通り人間を絞め殺すことも原理としては可能である。
「アインスさん!くそっ、闇の書が自分で!?──っ、は、はやてさん!今、魔法の制御は……」
クロノはとっさに叫んだ言葉がミッドチルダ語になってしまった。かぶりを振り、思考を切り替え、日本語ではやての名前を呼ぶ。
「どっ、どうしようシャマル、これ、どうにか止まらんの!?このままじゃ……」
シャマルも困惑している。闇の書が、アインスを攻撃している。リングバインドはさらに張力を高め、魔力光の向こう側でアインスの手首を締め付けている。
「くっ……クロノ、離れろ……!は、やて、さん……離れて、ください……!!」
「主、下がってください!ここはわれわれが!」
「シグナム気を付けて!」
駆けつけてきたシグナムがレヴァンティンを起動させ、シュベルトフォルムで構える。
闇の書の突然の行動に、守護騎士たちは動揺を隠せない。仲間であるはずの闇の書が、自分たちのいうことをきかない状態。闇の書の主であるはやての命令をすら、闇の書は無視しているように見える。
ザフィーラとシグナムは念話回線による闇の書の制御回路への介入を試みていたが、アクセスは受け入れられず、権限が不足しているという意味のエラーが返された。
-
レヴァンティンはもともと、刀剣型アームドデバイスの中でも地球でいうファルシオンに近い特性を持ち、刃よりもその重量による打撃が攻撃力の多くを占め、手元での細かい制御がしにくい。
どちらにしても室内では、他のモードは使えない。このまま振りかぶって闇の書を叩き落とすしかない。
「がッ……く、この……Wachter der Rache, wahr freiheit……!!」
リングバインドで拘束されたまま、アインスはデバイスへ術式詠唱トリガーを打ち込む。
ブレスレットから生えた触手が4本に増え、バインドの圧力を振り切って押し返し始める。闇の書は魔法陣を拡大するが、バインドの出力が一定以上に上がらないらしく魔法陣の直径が1メートルほどになったところで止まった。
広がる触手は半透明で、部屋の壁や天井に濃い紫色の影を投げている。
アインスの右腕から放たれる触手がうなりをあげて闇の書に殺到し、展開されたシールドを貫いて、本を四方から串刺しにした。
後ろ上方からの触手が背表紙を砕き、下前方からの触手が中紙を払いのけ、革の表紙を貫通して固定する。
砕けたシールドが魔力残滓を散らし、急速に魔力反応が弱まるのをS2Uのセンサーが観測した。
はやてとシャマルが目を見開いて息をのみ、シグナムは慎重にレヴァンティンを構える。直後、リングバインドが砕け、アインスの右腕が解放された。
触手は闇の書をがっちりと捕まえたまま、床へ押さえつける。
闇の書はしばらくの間、触手に逆らって浮上を試みていたが、やがて数秒して、あきらめたように魔力光を停止した。
部屋は、再び静寂に包まれた。
闇の書が完全に停止したことを確かめ、アインスはゆっくりと触手を引き抜く。クラナガン上空の時のように、捕まえられたまま抜けなくなることはなかった。
4本の触手は再びアインスの右腕のブレスレットに戻り、手甲部分に埋め込まれたクリスタルに格納された。
背中から倒れかかったアインスをクロノが支え、抱き起こす。
はやてはおそるおそる、床に落ちた闇の書に近づいた。シグナムはレヴァンティンの切っ先を闇の書に向けて警戒する。
「止まっ……たん……?」
闇の書は表紙を上にして、真ん中あたりのページを開いた状態で床に伏している。
背表紙の上端は破けて糊が露出しており、表と裏それぞれの表紙はほぼ中央に穴が開いて、革がちぎれたように延びている。表紙の材質は薄い銅板をボール紙と革で覆っており強度を持たせているようにみられた。
「アインスさん、大丈夫ですか!?」
駆け寄ったクロノは、アインスの右手をとった。バインドで締め付けられた手首は内出血を起こしていたが、骨へのダメージはなんとか避けられたようだった。腱や靭帯が傷んでいないかどうかを、指を当てて確かめる。
手を伸ばそうとするはやてを制し、シグナムがまず闇の書に触れて安全を確かめる。
少なくとも自分たち守護騎士が生きているということは、書が完全に破壊されたわけではないということだ。
-
「闇の書は……コアを叩いた、か……」
「シグナム、どういうことなの?」
「内部の──魔術回路のみを切断された状態だ。意識はあるが、魔法の行使だけができない状態だ──」
「──わたし、たちは」
「守護騎士システムそのものはダメージはない。闇の書自身が魔法を使う機能だけが停止された」
シグナムの言葉に、シャマルは慎重に、はやてとアインスとクロノとを交互に見やっている。
これほど的確な攻撃をできるとは、何者だ。やはりこの銀髪の女は、闇の書の管制人格、本の旅人。でなければ、闇の書のほかの部分にダメージを与えずに魔法だけを止めるなどできるはずがない。
「Starten Besserung」
続けて打ち込まれたアインスの詠唱トリガーに、闇の書の破損部分に再び黒色の魔力光が灯る。
通常のデバイスコールドブート手続きが開始され、あらかじめ設定されたBIOSコンフィギュレーションに基づいてシステムチェックが行われる。
魔法陣に浮かび上がったベルカ語のメッセージから、魔術回路の破損を認識して標準出力回路へ切り替えたことがシャマルには読み取れた。
闇の書の、デバイスとしての構造をも理解して攻撃ポイントを絞ったということである。
あの触手型デバイスによって破壊したのはあくまでも筐体たる紙のページであり、内部に格納されていた、蒐集済みのリンカーコアや術式のデータは無傷である。破損個所のスキャンが始まり、エラー未検出、ベリファイ完了という結果が出力された。
すべての起動処理が終わり、闇の書は通常稼動状態になって魔力光をアイドリングさせている。
はやてはそっと、闇の書を持ち上げる。
ページには、何かわからない文字──ベルカ語、というらしい──が印刷されており、ほのかに蛍光を放っている。
もう、シールド魔法は展開されていないようで触っても大丈夫だ。さっき手を伸ばしてシールドにぶつかったときに手首をすこしくじいたらしく、曲げようとすると若干痛みがあるが、湿布を貼っていればすぐ回復しそうだ。
「──貴女は、何者だ」
「シグナム──?」
レヴァンティンを鞘に収めず、そのままアインスに向ける。クロノはとっさにアインスの前に腕をかざし、かばう姿勢を取る。
「少年よ──きさま、この女が何者かわかっているのか」
「ちょ、し、シグナム!?なにするん!?」
「主は黙っていてください!この男は、危険です」
「い、いきなりなにをいいだすんや!?このひとらは闇の書に連れてこられて……」
レヴァンティンの刀身が、月明かりを浴びて青白く輝いている。
デバイスを待機状態から起動状態に切り替えただけであり、魔力付与はしていないが、それでもアームドデバイスはその筐体自体が武器になる。刀剣としての打撃能力、切断能力を持っている。
クロノも待機状態のS2Uを持ったまま、これを起動させるか思考を巡らせる。ここでデバイスを起動すれば、それは交戦の意思があると取られるだろう。
しかし、このシグナムという女が、明らかにアインスに敵意を向けていることが見て取れる。
管理局員だと気付かれたのか。だとして、こちらから名乗るか、それとも。
-
「クロノ──」
意を決し、クロノはS2Uを床に置いた。デバイスを手放すということは、魔法を撃てなくなるということだ。それは武器を捨て、丸腰であることを示すということだ。
「おまえ──っ、やっぱり、あたしの思ってた通りだ!はやてには近づけさせねえ!はやてはあたしたちが守るんだ!」
シグナムの後ろで、遅れてやってきたヴィータもウォーハンマー型のデバイスを構えている。
クロノは膝をついて身体を起こし、アインスをかばう位置で、シグナムの前に立って、両手を挙げた。
これは次元世界でも、降伏の意思を示す。シグナムは油断なくクロノの眼前にレヴァンティンを突きつける。
「管理局──の人間だな」
シグナムの言葉の方が早かった。クロノは何とかこらえたが、背後で、アインスが狼狽える表情を見せたのがわかった。
これでもう言い逃れはできない。
事情がどうあれ、管理局が闇の書に対峙する──その目的を、彼らヴォルケンリッターは自分たちの推測を疑いはしないだろう。
「く、クロノ……わたし、は……」
「やめえや!!」
アインスの震える言葉と、はやての怒りと悲しみが混じった言葉がほぼ同時に響いた。クロノは心臓がすくむ感覚を味わい、シャマルが困惑の表情を、ヴィータが驚愕の表情を浮かべている。
「シグナム、剣をしまえ!」
「しかし、主」
「しまえゆうとるんや!!わたしのいうことがきけんのか!!なんで、なんでいきなり剣だして、こんな乱暴して、なんでなんや!!
あやまれ!!シグナム、クロノさんにあやまれ!!」
「主──っ」
はやては泣いていた。何も事情を知らない、愚かな人間の子供であっても、守護騎士は闇の書の主に逆らえない。
車椅子を部屋に置いてきてしまったので、はやては腕を使って身体を動かし、足を横に折って、クロノの前に手をついた。
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「ほんまに、もうしわけありませんでした……みんな、私が悪いことです……」
ヴィータももはや詰問できなかった。およそ半年弱の間、この八神家で共に暮らしてきて、はやてがここまで激昂したことなど初めてだった。
いつも、9歳とは思えないほど落ち着いた、優しい振る舞いをしていたはやてが、怒声を張り上げてシグナムを叱った。
シグナムは、レヴァンティンを待機状態に戻し、そのまま放り投げるように床に落とした。
部屋の外の廊下でヴィータも、ザフィーラに促されてグラーフアイゼンを待機状態に戻した。
頭を下げ──ミッドチルダではその作法がないが、日本でいうところの土下座である──じっと恭順の意思を示しているはやてに、クロノは膝をついて身体をかがめ、両手を挙げた状態のまま、そっと語りかけた。
「こちらこそ、事情を説明せずにすみませんでした──彼女の、シグナムさんの言うとおり、僕らは、管理局という組織の人間です。
ミッドチルダという世界に、闇の書が現れ、戦闘になりました。その最中に、闇の書によって、ここへ飛ばされてきたのです」
今夜、この部屋のベッドで眠りについた時よりも、クロノの感情はずっと落ち着いている。
恐怖と待望。待ち望んでいたはずの、それはしかし不安。
アインスの求めていた想いが──それは心を塗り替えていくものかもしれない──自分の胸の中に確かに生まれているのをクロノは感じていた。
「クロノ──だめだ、私たちは──」
「アインスさん──僕も、今ならわかります。アインスさんは、僕のために、闇の書を止めてくれたんですよね。
僕も今、同じ理由で、はやてさんの気持ちがわかります──」
「あ……クロノ」
「僕は、父さんとは違います。父さんの背中を追いかけるだけじゃあ、いずれ足を踏み外して三途の川に落ちてしまいます。
僕は、僕だけの意思を、自分の意思を持って生きていくんです。それは、アインスさんも、同じですよね──
はやてさんに会いたかった。ある意味で、父さんの跡を継いでいる人なんですから。アインスさんのおかげで、僕は自分の本当の気持ちを整理できました。
だからここに来たこともきっと、いいことだったと思っています。はやてさんに会えて、僕はうれしいです」
「は……わ、わたしに、ですか」
クロノの語った言葉の意味。はやては顔を上げ、きょとんとしている。闇の書を大事に抱え、クロノに向き合っている。
アインスは、理解した。
クロノが自分自身を、自分自身に起きていることを自覚した。そしてもう、クロノが引き返せない一歩を踏み出してしまったことに、喜びと安堵に混じった、かすかな悲しみを覚えていた。
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投下終了です
ドイツ語(ベルカ語)のせりふについてはウムラウトが入力できないので省略しています
クライドかんちょぉぉぉ
アインスさんはパパと息子を親子丼ですかウヒッ
そしてはやてちゃんの激怒は萌えるはやてさんもっとなじってハァハァ
ところでアインスさんのデバイスは防衛プログラムとはいちおう別もののつもりですが
まだ名無しなのでどうしようかな
もしかしたら名前をぼしゅうするかも・・・
じ、次回こそはエロスを!
ではー
-
GJ!
クロノくんの心情が丁寧に書かれていて良い
男の子はいつしか家族から気持ちが離れていくものなんだ
クロノはこれで5番目のヴォルケンリッター時の騎士になるのかな
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泣いちゃうアインスがせつない・・・
-
ヴォルケンズとの対決…!
管理局の執務官だとばれたクロノにシグナムたちはどう対応するのか
調教ルートか純愛ルートかここが分岐フラグのある場所だ
-
1/30にユーノ祭を開催します
例によってユーノがメインならエロでもグロでもラブでもなんでも投下していいよ、って感じで。
書き手のみなさまはふるってご参加ください。
-
>>154
参加させてもらい「たい」!!間に合うかはわかんないが
-
昔の掲示板見たらここではそもそもトリップ使ってなかった・・・だと・・・
名前変える意味がなかった。まあ、私が私を私だと証明する必要とかないけど。
上でシュテル書く参考にGODやり直した副産物をひとつ
レヴィのオナニー
完全にオリジナルの主人公語り注意
漫画のマテリアル娘的な
-
ぼくには父親がいない。
いや、他界したとかそういうのではなく、単身赴任である。
高校生二年になる時期のことだった。
ぼくには母親がいない。
こっちは他界していた。
そのおかげでぼくが家事を一手に担っていた手前父親も安心して赴任している。
そのせいで、ひとりではどうにも広すぎる一軒家にぽつねんと残されるわけだが寂しさはそう長い時期続かなかった。
おとなりさんができたのだ。
それも両隣。
向かって右隣にはテスタロッサさんが引っ越ししてきた。
えらく気難しそうなプレシアさんという妙齢の女性と、
リニスさんという家事手伝いさんらしい女性が住んでいる。
挨拶に行くとプレシアさんには凍えそうなまなざしで見下ろされたが、リニスさんがその場を取り持ってくれたおかげでその場は凌げた。
それからも、なにかとプレシアさんに朗らかに話しかけて、もあまり反応は芳しくない。
たまにテスタロッサ家から「アリシア…アリシア…」と切々としたか細い声が聞こえて怖い。
あとふたりでしょっちゅう口喧嘩をしているらしいが、リニスさんはそんな様子をおくびにも出さずに溌剌と明るいものだった。
向かって左隣には、小さな女の子が四人住んでいる。
挨拶に行くと威風堂々とした、ディアーチェちゃんなる女の子がずいと前に出てきた。
「うむ、拝謁の栄を許す。我ら紫天の一党を存分にかしずくがよい」
「王の御言葉です。『どうもご丁寧にご挨拶ありがとうございます。近所付き合いよろしくお願いしますね』とのこと」
「言うておらんわ!」
中二病らしいディアーチェちゃんの言葉を、シュテルちゃんが翻訳してくれるのが常である。
さて、この紫天一家であるが、テスタロッサ一家と出会うことでえらいケミカルスパークが起こった。
というのも、紫天一家のレヴィちゃんがプレシアさんの死んでしまった一人娘にそっくりらしい。
そしてその一人娘がアリシアちゃんという名前だった。
夜な夜なプレシアさんは、死んだ一人娘を偲んでいるのだ。
それを聞いてプレシアさんにきゅんときた。
最初にプレシアさんがレヴィちゃんを見た時、幽霊を目の当たりにした悲喜こもごもの悲鳴を上げた。
半狂乱になってしまったプレシアさんをなだめるリニスさんもまた、落ち着いていたわけではなかったのを覚えている。
「世の中には似た人が三人いますし」」
と、後になってぼくはリニスさんに慰めだかなんだか分からない声をかけた。
「それでは三人コンプリートですね」
と、リニスさんは返した。
どうも、プレシアさんの一人娘に妹がいるらしい。
名前はフェイトちゃん。
一人娘なのに妹がいるんですか、と聞くとリニスさんは曖昧に苦笑するだけだった。
そして、実はレヴィちゃんはアリシアちゃんと遠縁にあたるだとかなんとか。
えらい複雑だ。
しかしきっと世の中に似た人間が三人というのは、多分姉妹はカウントされまい。
ならば、アリシアちゃん、フェイトちゃん、レヴィちゃんそれぞれに三人似ている人がいるのだろうか。
つまりレヴィちゃんみたいなかわいい子が合計9人いるというわけである。
ひとりくれと思ったが、アリシアちゃんはすでに他界しているので8人だったので、そんな事を考えるのも不謹慎だと思ってちょっと自己嫌悪に陥った。
-
さて、当のレヴィちゃんであるが、とても奔放だ。
好奇心旺盛の塊のような女の子である。
故に、探検と称してぼくの家に、竜巻のように遊びに来て(勝手に上がりこんで)嵐のように去っていく。
ディアーチェちゃんとシュテルちゃんにたしなめられてもへこたれずに遊びに来るのだ。
たまにテスタロッサ家へも突入しているらしい。
「アリシアー! アリシアー! いやあああああ! フェイト! フェイトーーー!」
「ボクはレヴィ! レヴィ・ザ・スラッシャー!」
と、絶叫と自己紹介が聞こえてくる事がある。
その都度リニスさんに叱られて紫天家に帰されてる。
それをリニスさんは、完全に悪い事ではないと思っている節がある。と、思う。
プレシアさんは、鬱々と引きこもり気質であるので、レヴィちゃんをきっかけに何かしら変化を起こして欲しいらしい。
両隣にご近所さんができてしばらくしてからのことだ。
その日もレヴィちゃんが遊びに来たので、一緒に対戦格闘ゲームをした。
レヴィちゃんはキャラクターを飛んだり跳ねたりさせて戦うのが好きなので、ぼくのガイルをずっと崩せないでいる。
癇癪を起こして床にコントローラを投げ出した。
「分かったよ、もうガイルは使わないから」
と、ザンギエフでレヴィちゃんの甘い間合いを打ち漏らしなく吸い込み続けた。
レヴィちゃんはコントローラをぼくに投げてきた。
後日、シュテルちゃんにもやってみるが、あっという間にぼくは彼女のダルシムに手も足も出なくなってしまった。
パーフェクトゲームを決められたとき、流し目のような勝ち誇ったまなざしと口元に浮かぶ薄い笑みはここ最近のぼく一番の屈辱だった。
上で「私を焼いてえええええ!」とか言ったくせに。平行世界だけど。
ところでレヴィちゃんがぼくの家に遊びに来るのにはわけがある。
エロ本目当てだ。
探検が好きなレヴィちゃんは、もちろんの事ぼくの家を物色しまくっていた。
そこでぼくが隠していたエロ本を発見するという流れは、運命の必然であっただろう。
レヴィちゃんが帰った後、荒らされた部屋の中で唯一きれいなままだったエロ本ゾーンに、ぼくはなんとも言えない気持ちになったものだった。
外で遊ぶのも好き。ゲームで遊ぶのも好き。
そんな少年然としたレヴィちゃんが、エロ本に興味を示さずにはいられるか?
否である。
それからである。
レヴィちゃんが遊びに来てゲームをしている最中なんかに、
「ちょっとコンビニ行ってくる」
なんて適当な理由をつけて出て行った振りをして、エロ本を読みふけるレヴィちゃんを眺めるのが楽しみになってしまっていたのは。
「わ、わ、すごい…こ、こんな…!」
ぼくの部屋で、レヴィちゃんの声。
ベッドの上にちょこんと座って、紙面に食い入っているのを、ぼくはドアの隙間から視姦する。
いや、見守っているだけだ。
ぼくの視界には、レヴィちゃんの背中しか見えないが、その顔が真っ赤で、その胸が早鐘を打っているのはありありと分かる。
「…ここにこんなのが入るのかぁ」
レヴィちゃんがスカートをまくり、ショーツを半脱ぎにしたのが見えた。
本は片手で持っている…今、おそらくもう片方の手で、その幼い女性器を広げているのではないだろうか。
ぼくのベッドの上で。
……、……、……うむ!
-
「おっぱいも、いつかこんなにおっきくなるといいな……」
真剣な様子でエロ本中の大人の女性の胸部に羨望の眼差しを送っているレヴィちゃんの声に、幾分しっとりとしたものが混じる。
そして、下半身だけでなく上半身もレヴィちゃんははだけだした。
あらわになった雪のように白い背に、さらりと長い青髪が零れている様子はどこか非現実的な美麗さがある。
そしてぼくからでは見えない向こう側では、まだまだふくらんでいない胸をきっとレヴィちゃんはいじっているのだろう。
「ぅん…」
自身をまさぐる腕と連動して、耐えるような声が漏れる。
何かを指で弾くたび、背が震えているのが分かる。
無論、胸部で敏感な部分であろう事はもはや言うまでもない。
ちろりと、指をなめる仕草をレヴィちゃんがはさむ。
唾液により円滑に性感帯をなぞる目的だろう。
案の定、レヴィちゃんから漏れる声のトーンが高くなった。
「吸って欲しい…」
ぼくでよければ!
と、心の中だけで返事をする。
胸をいじるだけでは、物足りないのだろうか。
甘くか細くレヴィちゃんがつぶやいて、ぽふりとうつぶせになった。
それでありながら、おしりを浮かせた格好。
ショーツが足にひっかかったまま、丸々として健康的なおしりを突き出すレヴィちゃんの媚態は絶景だった。
それは、ぼくに対して秘所を突き出している格好でもあった。
そしてレヴィちゃんはそろり指を股間に持ってゆく。
ふっくらぷにぷにしているおいしそうな恥丘をマッサジージする動きは、まずはおそるおそる。
それが淫靡ななめらかさを得るには時間をかけなかった。
枕に顔を埋め、うめきながらレヴィちゃんが震えている。
見えないが、きっと胸の突起もいじっているのだろう。
すでにしとどな秘所の愛液が指に絡まり、いよいよいやらしく蠢く指が陰核に触れた。
「ひぅ!」
びくりとおしりがひときわ持ち上がる。
それはまるで指から反射的に逃げるよう。
だが指もおしりもどちらもレヴィちゃんのものだ。
淫らに激しく、中指が陰核を包皮越しに押しなでる。
扇情的なレヴィちゃんの鳴き声が、ぼくの枕にうずめた口から漏れているのが聞こえる。
ひときわ乱暴に中指が動いた。
途端、レヴィちゃんのその身が硬直した。
達したのは明らかだ。
二度、三度レヴィちゃんの身が痙攣してから脱力する。
秘所から滴るしずくは、上手い具合にショーツが受け止めてぼくのベッドはきれいなままである。
それからしばし、ぴくりともしなかったレヴィちゃんがぼくの枕から顔を上げる。
ほうけた顔をしているのか、とろけた顔をしているか、それともぼくたち男性のように賢者の境地にいるのか。
「わ、しまった!」
それからレヴィちゃんが、あわてて枕をひっくり返す。
後で確認したが、よだれがたっぷりしみこんでいたのだ。
噛み跡もあった。
ぼくの枕が宝の価値を付与された。
それから、ほほえましい気持ちで音もなく玄関まで足を運び、ちょっとだけ間を作ってドアを開閉するのがもうパターンとなっている。
…ふと、抜き足差し足で後にするぼくの部屋から、レヴィちゃんの声が聞こえた。
「ゲームだけじゃなくて、この本みたいなことをボクとしてくれないかな…」
ごめんねレヴィちゃん。
ぼくは熟女派で、プレシアさん狙いなんだ。
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終わりです。
紫BBAと紫天家が隣とか想像しただけで垂涎。
そんな私的な趣向100%
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貴方だったのか……
レヴィ可愛いよ、レヴィ
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紫ババアやめれwプレシアかあさんから少女臭がしてしまうw
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処女厨と売れ残り、これいいわ
かなり抜ける
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熟女派だと自分に言い聞かせて理性を保っているんだな、きっと
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プレシアさんが若返って復活、というネタどっかで見たような…ユーノスレだったかな?
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風呂入って冷静に考えたが、
レヴィなら覗き見てる気配くらいすでに察知しているに違いない
つまりわざと見せているのでは
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タピオカさんの筆致は毎度毎度本当に冴えておられる。
読むたびに嫉妬の情を禁じえない。
このような面白い作品の後では気が引けますが、1/30のユーノ祭の前哨戦代わりに投下します。
短編、壊れギャグ、キャラ崩壊、ユーなの、タイトル『如何にして高町なのははユーノ・スクライアと結婚したかについて』
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如何にして高町なのははユーノ・スクライアと結婚したかについて
「ねえユーノくん、これはどういう事かな」
「……」
般若の如き憤怒の顔をした高町なのはは仁王立ち、肉食獣を前にしたフェレットの如く萎縮したユーノ・スクライアは正座していた。
果たして何事があったのだろうか。
両者の立ち振る舞いからして、怒る側怒られる側はきっちり分かれていた。
巨乳を強調するかのように腕を組み、般若のオーラを滲み出すなのはは、視線をユーノの足元に送る。
そこには数枚の写真が鎮座していた。
映っているのはヴィヴィオだ。
学校での画らしく、校舎らしき場所で制服姿であった。
しかし問題はそこではない。
ふわりと風に舞うスカートの裾の下にもぐりこみ、あられもない下着を覗いていると思われる不埒者の姿も映っていた。
それは人の姿ではなかった。
フェレットだった。
「ねえ、これってユーノくんだよね? そうなんだよね?」
「……」
沈黙は肯定の表れと言えた。
つまり彼はフェレット姿となってヴィヴィオのぱんちゅを見ていたというのである。
いや、そこにある写真は一枚ではない。
他の写真にはサンクトヒルデ魔法学院における、女子と、その周囲に『たまたま』居るフェレットの姿があった。
これらの事を別個に完結したものと考える事は理論的に不可能である。
極めて冷静に、そして客観的に憶測するならば、結論は一つ。
「ねえ、ユーノくん……」
なのはがユーノを見下ろす視線は、実に冷ややかだった。
氷のように冷たく、かみそりのように鋭い。
これから屠殺場に連れて行かれる豚を見るような目だった。
いや、ユーノくんはフェレットなのだが。
それはともかく、場をしばし沈黙が支配した。
重く、全身にのしかかるような空気。
それを破ったのはユーノだった。
「なのは」
「なに?」
「もう、この際だからはっきり言うよ」
「うん」
「僕はね、僕は……僕は」
すぅ、と空気を肺へ送り込み、一拍、ユーノは声を大にして叫んだ。
「ロリコンなんだよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ぉぉぉぉ、と、伸ばされた語尾が部屋に木霊した。
それは魂の暴露であった。
ロリコン、ペドフィリア、幼児性愛者。
呼び方は数多あれど、その意図するところは一つである。
その種の性癖の持ち主とはつまり、子供に欲情する類の変質者だ。
そしてユーノもまぎれもなくその一党に属する真性のロリペド野郎だったのだ
「つまり、ユーノくんはヴィヴィオに」
「そうだよ。あのかわいい……純真無垢な幼女を見ていたらとても我慢できなくなって……ぱんちゅとかお着替えとかを見につい、昔の変身魔法を使って、ね」
どこか遠いところを見つめ、ユーノは切々とそう語った。
まるで掴めぬと知りながら太陽に手を伸ばすイカロスのように悲しく、女子高生の尻をまさぐる痴漢オヤジのように情けなかった。
「こんな僕を、軽蔑するかい?」
「ううん、別に」
「……え?」
意外な答えに、ユーノが声を裏返す。
-
当然なのはは自分を罰する為に来ていると考えていたから当たり前だ。
しかしなのはの二の句はさらに驚くべきものだった。
「ユーノくんがロリコンだっていうのは大体あたりをつけてたから、それほど驚いてはいないんだ」
「ええ!? い、いったいどうして僕がペド趣味だって知ってるんだい!?」
「だってユーノくんの書庫のデータって小さい女の子の写真ばっかじゃない」
「ななな、なんでそのトップシークレットを!」
「教導官の権限を使って」
「ひ、ひどいよ……いったい、どうしてなのはが僕のプライベートをそんな詮索するのさ」
「分からない?」
ふふ、と蠱惑的に微笑み、なのははユーノに顔を近づけ……そっと頬にキスをした。
「うわ!」
ユーノは驚きのあまり飛びのく。
そんな彼を見ながら、なのはは微笑んで告げた。
「私、ずっとユーノくんの事が好きだったんだよ? だから、ユーノくんの事色々調べたの。ずっと傍にいるのに、ぜんぜん私に興味ないみたいだから、そしたら案の定そんな趣味で」
「それを知っているなら話が早い。僕は無理だよなのは。僕は……僕はもう成人してBBAになったなのはを愛する事はできないんだ! せめて十二歳までなら!!」
血涙を流さんばかりの勢いでBBAは嫌だと叫ぶユーノ。
もはや彼は完全な社会不適合者と呼べるだろう。
愛するべきは幼女のみなのだ。
斯様なHENTAIさんを、普通の人間ならば即ポリスへぶちこむところだが、しかしなのははユーノを愛していた。
愛は盲目、とは言うものの実際なのはも少し彼の性癖には引き気味だったが、愛する者を救いたいという想いはあった。
「もう、ユーノくんったら本当にどうしようもないドロリコンで治療の余地はない不治の病だね」
「病とは失敬な! 若く瑞々しい子に引かれるのは自然の本能と言って欲しいね」
「そういうところが余計に頭おかしいよね。でも安心してユーノくん、私すごく良い解決策を見つけたから」
「か、解決策……?」
果たしてこの世にロリコンとまっとうな人間社会に折り合いをつけさせる方法などあるのだろうか。
もしあったとしたらそれは世紀の大発見な気もする。
なのはは自信満々といった顔ををして、すっと手を上げた。
指先に仄光る淡いピンクの輝き、魔力の閃光が陣を生み、術式を構築する。
体を包み込む魔法が、一瞬にしてなのはの姿を変えた。
ぱぁ、と光り輝きながら現れたのは、先ほどまでよりずっと小さくなったシルエットだった。
「な、ななな、なのはぁ!?」
「ふふ、どうかなユーノくん。似合う?」
ぱちりと挑発的なウインクをして微笑むなのはの、その姿は幼かった。
ユーノと初めて出会った時と同じくらいの、九歳ごろの容姿。
ツインテールに髪を結い、未発達な肢体を白いバリアジャケットに包んだ魔法少女。
あまりの可愛さにユーノは勃起せざるをえなかった。
股間の前をぱんぱんにしながらユーノはしりもちをつく。
「か、がわいいいい」
「えへへ、ありがと。おちんちんをびんびんにして感動のあまり涎を垂らしながら言われてもちょっとキモいけどいちおうお礼は言っておくね」
その顔のあどけない笑顔とは裏腹にずびずば鋭い本音を言うなのは。
きっとマゾッ気の強い御仁ならばこれだけでご飯三杯はいけるだろう。
かくいうユーノももろにマゾマゾなのでさらにチンコが大きくなった。
しかし彼の脳裏に恐るべき想像が過ぎる。
「ねえなのは、ちょっと聞いていいかな」
「なに?」
「もしかして君はその宇宙一素敵な幼女姿で僕を篭絡しようという魂胆じゃぁないだろうね」
「うん、正にその通りだけど」
「NOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!」
ユーノは叫んだ、それは魂の慟哭であった。
「なんでそんなに拒絶したそうな声を上げるの?」
「当たり前だよ! いいかい? 僕たちロリコンってのはね、真にロリな……正真正銘の幼女が好きなんだ。君みたいに外見だけ魔法で子供になったBBAになびくなんて邪道だよ!!」
「ふぅん、それは難儀な事だね。でもユーノくん」
「な、なんだい?」
「私とエッチしたいよね?」
「〜ッッ!!」
次の瞬間目にした光景にユーノは思わず我慢汁を溢れさせた。
あろう事かなのはは純白のバリアジャケットをするりと肌蹴て、その瑞々しい肌を晒したのだ。
眩い肩口が見せ付けられ、さらには下に着ていた衣装まで。
-
それは紺色の水着、いわゆるスク水というやつだった。
「きゅきゅきゅ、旧スク水うううううううう!!!」
血涙を流さんばかりに歓喜の咆哮を上げるユーノ。
ロリコンにとって幼女とスク水という組み合わせは、前田慶次と松風くらい最強の組み合わせに等しいのだ。
もちろんなのははそれを知っていてそんな格好をしている。
「はは、ユーノくんのちんちんさらにおっきくなってるよ。ほんとヘンタイさんだなぁ。でもいいよ、そのヘンタイなところもまとめて愛してあげるから」
「ぐ、ぐぬぬぬ……」
「我慢しないで、ね? 私のこと好きにしていいよユーノくん」
「い、いやしかし……中身がBBAだし……いくら幼女でも」
「もう、ヘンタイのくせに頑固だなぁ。じゃあ、最終兵器使っちゃうよ」
「さ、最終兵器?」
ふっと微笑み、なのはは一歩ユーノににじり寄って、そっと唇を開いた。
「私とエッチな事しよ? ユーノ・お・に・い・ちゃん♪」
「〜〜〜〜ッッッ!!!!」
一語一語を区切るように告げられた、お兄ちゃんという言葉。
そう、お兄ちゃん。
お兄ちゃん。
全宇宙のロリコンにとってロリから言って欲しい言葉ナンバーワンに輝くアルティメットワード。
しかもCV田村ゆかり。
純白の魔法少女で。
これに抗えるロリコンなどこの世に存在しなかった。
「うっひょおおおおおおおおおおおおお!!!!! ウィイリイイイイイイイイイイ!!!!!!!!! もう中身BBAでも関係ねエエエエええええええええ!!!!!!」
血走った目でとうとう理性をかなぐり捨てたユーノはついでに服もかなぐり捨てて細っこいロリボディへとダイブした。
「きゃぁ〜! いけないお兄ちゃん♪」
そんな彼に組み伏せられ、なのはの楽しげな悲鳴が響く。
こうしてユーノはなのはを手に入れた、というか既成事実によりなのはの所有物となるのであった。
それが事の経緯であった。
-
投下終了。
まともなユーなの好きのかたがたごめんなさい!!!!!
ユーノ祭にはまともなのを投下します。
たぶん。
-
これは「まともなユーなの」好きには噴飯もののヒドイ作品ですね。
え、ユーノがなのはに掘られる話を書いたお前が言うな?
「まともじゃない」ユーなの好きなのでモーマンタイです。
そんなわけでシガー氏にはGJを送らせていただきます。
さて、祭に間に合うよう私もヒドイ話を書くとしよう。
-
GJ!!
ロリ淫獣
-
GJ!
むしろ俺はショタユーノくんをがっつんがっつん堀たいです
権力者になってユーノくんを性的な意味でも政治的な意味でもバックアップしたいです
けつまんこで俺の子を孕めユーノ!
-
こりゃひどい(褒め言葉
めっちゃGJ
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こりゃなのはさんが実は極度のショタコンで変身魔法をユーノきゅんに使わせる未来もあるでぇ…
-
なのはさんフェレコン説だって!?
-
フェイト・レズビアン・コンプレックス!?
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ユーノに男子更衣室の盗撮写真を要求するなのはさんか…
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なのはさんとヴィータが空戦魔導師なのにスカートのままなのは、見られて興奮する性癖だから
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>>180
なのは「違うの! あれはアンダースコートなんだよ!」
ヴィータ「鉄槌の騎士はスカートの中も鉄壁なんだよ!」
フェイト「みられてる……ちょっとくいこんでるのみんなにみられてるよぉ……ふぁっ!」
なのヴィ「「おまえのせいだーーーーッ!!!」」
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シグナム「ヴィータのスカートの中? 鉄槌の騎士の下は貞操帯に決まっているだろう」
はやて「動かすとええ声聞かせてくれるんやで?」
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>>171
畳み掛けるようにスク水→お兄ちゃん呼びは卑怯すぎる。ロリコンには致命傷。
ひどすぎて面白い話、GJでした!
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>>177 つまり
なのは「体中をフェレットさんになめられて……気持ちいヨォ」
なのは「あっ、ユーノ君?私としたいなら変身して出直してきてね♪」
ってことですね
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それって結局「私はユーノ君専用だよ」っていってるようなもんじゃないですかやだー
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フェレットに変身する魔法を習得して鏡にうつりながら毛づくろいをすれば安上がりですよ教導官さん
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なのはをフェレットに変身させます
ケツ穴にぶちこみます
ピストンします
フィニッシュ!
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>>181
騎士さんたまにまる見えになってませんでしたか
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ヴィータ「見せパン」
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ぱんつ見せると凄くドキドキしちゃう、いけないヴィータちゃんがいると聞いて
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ヴィータ「触手パンツだから恥ずかしくねーです」
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闇の書の闇ってどんなパンツはくの?
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ナハトヴァールなら拘束されてるんでバイブ付き貞操帯だろjk
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防衛システムなのだし南京錠付きで尻をまるごと覆う金属製貞操帯が似合いそうだな
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どうもー
闇と時と本の旅人 17話を投下します
やっと!やっとえっちシーンにたどり着けました!
アインスさんの正体も明かされます
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■ 17
デバイスを待機状態に戻し、アインスは放心したように座椅子にへたり込んだ。
クロノはゆっくりとひざまずき、はやてに面を上げさせる。
はやてはおそるおそる、身体を起こし、クロノの顔を見た。
ミッドチルダという魔法の世界の人間。地球人ではない。それでも、表情は、同じ人間に見える。言葉を交わし、気持ちを伝えあうことができる。
そして、あのアインスという銀髪の女性は、突然動き出してはやてのいうことを聞かなくなった闇の書を、止めてくれた。
闇の書は、表紙が少し破けてしまったが、しだいに治っていくようだ。
「クロノ、さん……」
自分より少し年上に見える、異世界の少年。それでも、先ほどのシグナムたちの話しぶりから、それなりの力と身分を持っていると思われる。
そんな彼が、あたかも自分に傅くようなしぐさを見せている。
これはいったい何を意味しているのか、とはやては自分の感情に尋ねた。
クロノという名のこの少年は、はやてを、知っていた。おそらくは、闇の書とは次元世界においては広くその名が知られている存在である。強力な魔法を持ち、畏れられ、あるいは憧れられる対象である。
彼はきっと、自分よりも闇の書のことを知っている。はやては確かに闇の書の主ではあるが、はやてが自分自身で知っている闇の書のことは限りなく少ない。
ただ、シグナムたち守護騎士が、家族として共に八神家で暮らしているということだけだ。
彼らの本当の力、具えた能力、そして、デバイスというからにはその目的があるはずである。
それを知らないままでいることは、問題の先送りだ。
自分の命令さえ、この小さな古ぼけた本は無視した。それは、闇の書には何かどうしてもやり遂げなければならない目的があるということだ。
それはきっと、その目的はきっと、闇の書自身にしかわからないことだ。
本の姿では、言葉はしゃべれないし、身振り手振りもできない。
このクロノという少年と、アインスという女性は、自分にはない闇の書の真実を知る手段を持っているのだとはやては気づいた。
「──……闇の、書が……、……蒐集を──して、いたんですね」
「!!」
「……あ──っ」
おそるおそる、発したはやての言葉に、シグナムは思わず肩を震わせて声を上げかけ、シャマルは手で口元を押さえて絶句した。ザフィーラはじっと俯き、ヴィータは唇を噛んで涙を浮かべている。
当然だ。
守護騎士たちは、闇の書が起動した直後、はやてに自分たちを名乗り闇の書の目的を教えたとき、『リンカーコア蒐集をしない』という誓いを立てていたのだ。
蒐集は、それ自体は非破壊の作業だが、あらかじめ対象を制圧する必要があることから、魔導師に戦闘を仕掛け、倒す必要がある。この時に、結果として殺してしまうこともある。
そのために──といってもはやては、その時点ではそこまでリアルに状況を想像できていなかったが──はやては、自分の家族となりうる守護騎士たちが、他人との争いを生まないよう、蒐集をしないと約束させた。
しかし、蒐集をしなければ闇の書は魔力を自身で調達できないので動けず、システムを維持するために消費する魔力を、主であるはやてから吸い取っていくことになる。
通常の携行型デバイスと違い、闇の書はシステムの規模が非常に巨大であり、その魔力消費量は想像を絶する。
闇の書が消費する魔力は、主となった人間のリンカーコアに強い負担を強いる。はやては、魔力資質そのものは高レベルであったが、自身のリンカーコアの存在を知らず、その扱いを制御できなかった。
そのために、際限なくリンカーコアが稼働し続け、肉体が常に負荷に曝される状態であった。
「はやてちゃんっ……あの」
「黙れ、シャマル……」
シャマルを制し、シグナムははやての隣に膝をついた。
主の意向に、これ以上逆らえない。はやての思うようにする。
「話は、シグナム……いえ、守護騎士──から、聞きました……闇の書は、リンカーコアゆうのを集めて、とっても強い力をだす……って」
クロノははやての前に膝を折って座り、ゆっくりと腕を下ろした。
彼女が、闇の書の主、八神はやて。
-
今夜初めて会ったはずなのに、なぜか、懐かしいような顔。
そういえば、アインスにも同じような印象を抱いていた。
彼女に会うためにここに来た。闇の書の目的は、クロノとはやてを引き合わせること。
「でも、わたしは、そんなのはいらないって……そんなことしなくても、生きていける思たんです、でも……」
「大丈夫です……はやてさん。──僕は、いえ、僕も、彼女たちと同じく──あなたに笑顔でいてほしい。そう心から思っています」
「クロノさん……」
アインスと過ごすうち、何度かの夜に見ていた夢。ずっと過去のことで、その当時自分はそこにはいなかったはずなのに、まるで思い出を振り返るように懐かしく思い出せる。
父親と、彼女の、ささやかなそして大切な思い出。
妻であるリンディも、息子である自分も知らなかった、秘めたひととき。
そして今、その思い出を受け継ぎ守り続けているのは、彼女、アインスだけ。
アインスと、クライドのわずかなしかし確かなひとときを、大切に守りたい。
その思い出は、自分やアインスだけでなく、はやてをも、これから生きていくために必要になるとクロノは思っていた。
自分の心の中に生まれる意思の原動力は、今や、アインスと共にある。
「ありがとう……会いたかった」
はやての手を取り、抱き起こす。足の動かないはやてを、しっかり、ていねいに、抱き留める。
きっと父も、こんなふうに、彼女を愛した。
愛したからこそ、消えてしまった。
今は、今の自分は、もう父の後を追いかけたりはしない。
アインスがいるから。彼女が、父の遺志を受け継ぎ、自分を待っていてくれたから。
夢に見た思い出は、クライドの、そしてアインスの果たせなかった絆。
今は、自分とはやてが、それを成し遂げられる。
警報が鳴り響き、艦橋スタッフにも勤務終了と総員退艦が下令された。
通信士、航法士、それぞれの部署の士官たちが、乗組員を誘導して脱出艇へ乗せる。
エスティアは既に艦の制御を失っており、盲目航行の状態にあった。レーダー類は機能せず、魔力炉も出力最大に張り付いたまま止められない。
格納庫内では、太い蔓植物のような躯体を顕現させた闇の書が、巨大な魔力光を放ち荒れ狂っていた。
艦を放棄する。
このままいけば、エスティアの持つ次元航行能力と次元空間海図を入手した闇の書がミッドチルダへ侵攻を始めるだろう。
その前に何としても止めなければならない。
エスティア艦長クライド・ハラオウンは、次元破壊波動砲アルカンシェルの使用を、艦隊司令ギル・グレアムに要請した。
その最後の通信を打電したとき、クライドは、最後にまだ残っていた彼女の足音を聞いた。
「わが主」
よく聞き覚えのある声。
自分を慕い、心を通わせ癒してくれた、可愛い部下の少女の声。しかし今は、そのトーンがぐっと下がり、同じ声のはずなのに、低く押し殺した、闇のような声になって、クライドを打ち据えている。
「まだ間に合います。私の中ならば、宇宙空間でも」
「だめだ」
彼女の声を聴くと、身体が狂ってしまう。心までも、犯されてしまいそうだ。
激しく熱を持って拍動する心臓を、胸を押さえてクライドは声を振り絞る。
腰が抜けてしまったように、しがみついた艦橋の艦長席の背もたれから、動けない。自分が自分でなくなっていくような感覚と、変化した自分をなお自分だと認識しようとする感覚がせめぎ合う。
自我を失うのではなく、変化した自分を自分だと認めたくないという感情が働くのだとクライドは理解した。
銀の魔力光を放つ彼女は、その左腕に携えた蛇のような触手をうごめかせ、クライドを見つめている。
目を見てはだめだ。彼女の目を見つめてしまったら、逃げられない。取り込まれてしまう。
もう、彼女は自分の知っている彼女ではない──
「わが主、クライド艦長」
「違う!!」
「私はいつでもあなたのためになりたいんです!わかってください……」
「こんな……こと、なんて……だめだ……」
立っていられず、へたり込んでしまったクライドに、彼女は──闇の書の意志はそっと歩み寄る。
もはやこのエスティア艦内には、蒐集できるリンカーコアは残っていない。あとは自分たちだけだ。
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闇の書の意志は装備していた触手型デバイスを停止させ、騎士甲冑を解除する。原始的な無地の黒い一枚布からなる騎士服の姿に戻り、クライドをそっと抱きすくめる。
もはやクライドには抵抗する力は残っていない。
「艦長──」
「僕は君を……止めなければ、ならない……使命、なんだ」
「どうしてですか!?それは、いったい誰があなたに強制しているんですか!あなたが、どうして、あなたの命を懸けなければならないほど」
「もう戻れないんだよ……!僕は、もう、戻れない」
「なぜ、ですか……私は、やっと……艦長、あなたが私の主になってくれると願っていて──クライド艦長、私はあなたのために尽くしたいと思っていて、今までも、これからもその思いは変わりません!
リンディさんや、クロノくんにも、会いたいです!私と、共に生きていきましょう!」
艦内の配管やダクトなどを伝って伸びる闇の書の防衛プログラムが、エスティアの艦のフロア全体を細かく震動させている。
防衛プログラムとエスティアをリンクさせ、もともと特定の姿を持っていない防衛プログラムに、次元航行艦の肉体を与える。
この鋼鉄の巨体をもってすれば、内部に管制人格や守護騎士、闇の書の主を乗せたまま、次元の海を旅することができる。
「だめ、だよ……アインス、僕は、人間のころの記憶を持っている……このまま、じゃ、たくさんの、ひとを、悲しませる……」
「艦長……わが、あるじ……」
クライドを、抱きしめる。抱いても、抱いても、どれだけ抱かれても、彼を自分のものにできない。
どれだけ愛しても、愛されても、彼の心は手に入らない。
騎士服を脱ぎ、裸になって、翼をいっしょに使って、クライドを抱く。
結ばれたい。限りなく結ばれたい、ひとつになりたい。クライドは、自分の理性で、希望を抑え込んでいる。
アインスとひとつになる、闇の書の主として闇の書とひとつになることを、ぎりぎりで抑え込んでいる。
力に飲み込まれる、強い力があるからといって何をしてもいいわけではない、必ず周囲の人間たちとの折り合いがある。
それを無視して自分たちだけいいというのではいけない、とクライドは考えていた。
しかし、もはやそれをアインスに説得するには時間も、体力も気力も足りない。
もうまもなく、アルカンシェルによって自分たちは跡形もなく、原子も残さず消滅する。
だから、せめて。
クライドは、倒れた自分の上で、大粒の涙を流しながら腰を振るアインスの──闇の書の意志の──姿を見た。
叶わない想いを、命を捨てても何をしても成就することのない恋を、愛を、狂ったように求める闇の書。
理性では、これを受け容れてはならないと考えている。受け容れることは許されないと考えている。
しかしクライドの感情は、心は、アインスを今でも愛している。愛の表現の仕方はそれぞれ、クライドは、アインスを、愛していた。彼女と共に添い遂げたいと思った。
だから、彼女に、自分の気持ちを託す。
吹き荒れる魔力素の奔流と、増大していく重力の中で、肉体が潰れていく感覚が伝わる。
もはや今のクライドの肉体は常人をはるかに超える生命力と耐久力をそなえ、それこそ守護騎士たちのように、手足がちぎれても、胴体に風穴があいても機能を損なわず、痛みによって動けなくなることもなく、意識を覚醒させ続ける。
自分の肉体が、男として、オスとして、闇の書の意志と結合しているのがわかる。
もはや五体満足ではなく手足がちぎれてしまったのに、ペニスはますます硬さを増して闇の所の意志の膣に食い込み、舞い落ちる黒い羽根が、自分の意志で動かせ、闇の書の意志の、腕や肩や乳房をさすり愛撫している。白い肌に、紅潮した乳首が舞っている。
彼女の姿は、美しい。怜悧に強く、しかしどこか儚く、冷たい、そして熱い、闇の書の意志の裸身。
ふわふわと熱に浮かされたように、天国にいるかのように心地よく、痛みもなく、心がすうっと澄んでいくかのようだ。
しかし今、すでにエスティアはアルカンシェルの照準に捕捉され、攻撃準備をされている。
生きていくことは叶わない。
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退避する乗組員たちを乗せた脱出艇が艦を離れ、離脱時のスラスター噴射がエスティアの艦体をかすかに揺らした。
「アインス、気持ちいいよ──愛してる」
「クライド艦長……私にとって、あなたはやっと見つけた主なんです……ずっと、ずっと、気の遠くなるような年月を、たくさんの人々が絶望とともに消えていったのを見ているんです……
あなたまで、彼らと同じ運命をたどってしまうのは、私はとても悲しいんです、私の悲しみはあなたの悲しみです……」
「ありがとう──だけどアインス、わかってくれ。僕は何よりも君のために、この魔導書を、救いたい──今この艦を覆っている彼女が、泣いているのが僕にもわかる──
彼女は君の家族──同じ闇の書の管制人格というだけじゃない、仲間というだけじゃない、仲間よりもずっとずっと深い絆、家族なんだ。
家族を傷つけられることはこの世でいちばん悲しくてつらいことなんだ──だから、僕は僕と君だけじゃない、互いの家族も守らなくちゃいけないんだ」
闇の書の意志は、わが主という呼びかけを堪えた。名前で、今まで通りの名前で呼び合うことを、それが二人の絆の証と考えた。
闇の書の意志にとっては、単にベルカ語で、自分が闇の書の持つプログラム番号1番を割り振られていたから1と、アインスと名乗っただけで、それ自体に深い意味は、最初はなかった。
しかし今は、そのアインスという名前こそは、クライドが自分を呼ぶときの名前であり、クライドにとって彼女に結び付けられた名前とはアインスであり、闇の書の意志という形容名詞ではない。
同様に、アインスにとっても、わが主という呼びかけはクライドにとって慣れないものであり、彼をあらわす呼びかけとはクライドという、彼の自身の、固有の名前である。
名前で呼び合うことで、人は絆を確かめる。
クライド。グレアム。リンディ。クロノ。彼らは皆それぞれの名前を持つ。闇の書の意志は、アインスという名前をもはや手に入れた。
それは確かに単なる便宜上の符号だったかもしれないが、今や闇の書の主たるクライドの心の中では、アインスという名前が、闇の書の意志そのものである。
「僕は消える、でも、僕の思い出は消えない。ずっと君の中で生き続ける。わかるはずだよ、これまでに、君と共に消えていったみんなの、心が見える──今の僕なら見える。
アインス、君にも見えているはずだ、彼らの想いが──確かに酷い人間もいたかもしれない、君たちを手荒に扱ったり、誤解から敵意を向けていた人間もいたかもしれない。
でも、君たちを本当に大切にしてくれた人間も確かにいたんだ、それはアインス、君の思い出の中に残ってる──そして僕は、君の中で生き続けられる──
今の君になら、僕の気持ちがわかるはずだ。いや、わかってほしい──君が本当に、闇の書の主の幸せを願うならわかるはずだ──僕の気持ち、平和を願うってことは家族の幸せを願うってことなんだ。
そのためには家族だけじゃない、家族が暮らす世界のひとびとみんなが幸せじゃなきゃいけない。僕はそう願ってこの艦に乗っている──アインス、君にも、わかるはずだよ」
もはや腕が動かない、しかしその代わりに、艦内に張り巡らされた防衛プログラムの触手を、自分の意志で動かせることをクライドは理解していた。
手近にあった触手を手繰り寄せ、平たい先端で、闇の書の意志の頬をそっと撫でる。
とめどなく流れる涙を、優しく拭ってやる。頬に浮かんだ2本の赤い魔導紋章が、かすかに穏やかな魔力光を放っているのが、電源の落ちた艦橋内でわかる。
「家族の……幸せ……」
「そうだよ、僕たちは家族だ──僕も、リンディも、クロノも大切な家族だ。そして君も、君の騎士たちも、君の大切な、愛すべき家族だ──」
自分が今やどのような存在になったのかわかる。もはや、人間として生きていくことは叶わない。
覚醒のために、多くの命を犠牲にしてしまった。
エスティアから生きて脱出できた乗組員は、当初、本局を出港した時よりもずっと減ってしまった。
そんな自分が、このまま闇の書を携えていくことはできない。
闇の書の危険を少しでも減らすために、今、できることをする。
クライドは、自分ごと、闇の書の機能を、できる限り制御を自分に移したうえで、アルカンシェルによって破壊させる心づもりだった。
闇の書の制御を困難にしている、独立した防衛プログラム。
これはユーザー認証の機能を内包し、しかしその認証機構に不整合を抱え、正しく操作ができない状態になっていた。
このまま次の主のもとへ向かったとき、再びプログラムの暴走を引き起こさないように──
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エスティアの搭載機器のうち、艦隊内データリンク用の機能を破壊し、システム全体を外部に接続できない、クローズドの状態にする。
限られたシステムのみを有効にできる状態で、防衛プログラムの持つ認証機能を、自分と関連付ける。
デバイスのメンテナンスを行うシステム管理者として、クライド・ハラオウンの名前を覚えさせたままの状態にしてロックする。
たとえこの場で自分が宇宙の塵と消えても、自分の生きた証は、闇の書の中に生き続ける。そして、いつの日か闇の書が本当に、目覚めるために。
枷を振り切り、真の自由を手に入れるために。
「wahr Freiheit──覚えていてくれ。僕は君と共にいる──」
「クライド艦長……わたしの……わが、主……」
顔を伏せ、手を床について、闇の書の意志の身体が、クライドに触れる。
優しい、男だった。本当に恋していた。彼ならきっとわかってくれると思っていた。しかし、それは自分の思い込みにすぎなかった。どんな思いも、伝えなければ届かない。
クライドだけではない、闇の書の主となる人間に対しても、守護騎士たちに対してさえも。
彼らに伝えなければならないことは、自分たちのありのままの姿と、それを認識する方法。
「君が生きていれば、僕は救われる──」
クライドは、そうアインスに言い遺した。
エスティア艦内から、脱出艇の中へ、転送魔法を発動する。同時に、闇の書の機能はいったんシャットダウンされる。アルカンシェルによって破壊され、一時的にでも止まる。
再び動き出すまでには、わずかの猶予がある──
そして確かに、闇の書は、第97管理外世界への転生を果たし、それはクライドの遺言どおりであったことを、この2年後、ギル・グレアムは自ら調べて確かめた。
すでに時刻は午前4時を回り、夜明けが近づいていた。外はまだ暗いが、冬でもいつも通り、じきに人々が動き始める。
はやてはクロノたちを、自分の部屋へ入れさせた。シグナムとシャマル、ザフィーラも、今夜はずっとはやてのそばにいる。
ベッドの上にははやてのほかに、クロノとアインスが座り、ヴィータとシグナムは枕元に、シャマルとザフィーラはそれぞれはやての勉強机とドアのそばの床に腰を下ろす。
年頃の、幼い少女のベッドに入ることで、クロノは今更のように少し緊張気味だ。
はやては優しく微笑み、クロノとアインスを迎える。
「アインスさんは最後まで、父さんの想いを守り助けていた──だから、僕は、今こうしてここにいられる」
鼻をすするアインスは、はやてにハンカチをもらって、涙を拭いている。
「もしかしたら、闇の書の主に、私やなくてクロノさんが選ばれていたかもしれへんとゆうことです……か」
「ええ。同時に、その場合、はやての足も麻痺せずに……代わりに、僕に何かの影響が出ていたかも──」
「私の足が動かないのは闇の書が……魔力、を、吸い取っているからゆうわけですね……」
パジャマの裾を握りしめ、はやては確かめるように言葉に出した。
闇の書とは、現実にこの世に存在し、現実に強大な力を持ち、存在するだけで多くの人々に影響を及ぼす。それははやてひとりが言葉で命令したからといってどうこうできるものではない。
闇の書を、その有様を正しく見つめ知ることが必要になってくる。
はやてはアインスにも、手を差し伸べた。
「闇の書のことをいちばんよく知ってはるんですよね」
「……はい。私は、前回の事件の──とき、そばにいました。闇の書を、持つ者として」
「闇の書の、管制融合騎──管制人格、マスタープログラム」
おそるおそる、目線を伺うようにしてシグナムが言葉に出す。
予想と、その確認。
アインスが、真に何者であるかを問いただす。
「アインスさんは、はやてだけでなく、皆を救うための手段をずっと探していた」
「クロノ──」
シグナムと、アインスと、クロノと、そしてはやて。4人の視線が瞬間、交錯する。
「──ああ。そうだ──私は、闇の書の真の覚醒を促す手立てを探し続けていた──管理局にある、無限書庫の中で」
「管理局……」
ヴィータが、呻くように押し殺した声でつぶやく。
守護騎士の中でも稼働時間の短い彼女はその外見通りにもっとも若輩で、やや気性の荒いところがある。戦闘力は高いが、精神的にはムラっ気が強い、といったところだ。
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