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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第107話☆

95胡蝶の夢・前編/9 ◆vyCuygcBYc:2010/08/17(火) 22:54:26 ID:rhB2Esw2
「なのは、小包が届いてるよ。誰からかな……えっと、Dr.Sさん?」
「あ、いいよ、フェイトちゃん。後で開けるから、その辺りに置いといて」

 ……来た。
 私はさり気無い仕草で、まるで何でもないないようなものを扱うように、あの男からの小包を受け取った。
 中身は、薄い一台の端末と、小箱。
 端末は誰もがデスクワークで使っているごく普通の機種だが、その中には時空管理局を揺るがすことさえ出来る情報が詰まっている。
 これは、あの暗い小部屋で、私が不眠不休で接続していた、あの回線へと繋がる接続端末。
 この向こうには、レジアス・ゲイズ中将とあの男が今まで交わした密約や交渉の記録があり。 
 時空管理局設立以来、私達が裏側から干渉して行った様々な水面下の行為の存在を示すものでもある。
 私は、慎重にパスコードを入力させ、端末を起動させる。この向こう側には、この世界の最暗部がある。
 肉に包りこの世界を謳歌するのはいいが、私の本分はこの暗部への介入だ。あまり怠るわけには行かない。
 手動入力の速度は、脳をダイレクトに接続する場合には比べるべくもないが、重要な部分は押さえて置かなければ。
 コンソールを叩く指が、次第に加速していく。
 速く、もっと速く。
 高町なのはの本業はデスクワークではないからか、彼女の指を使ったタイピングは少しまどろっこしい感がある。
 あの部屋に入る前、老いて前線から退いた後は、こうして黙々とデスクワークに勤しんでいたものだ。
 情勢や経済の変化、刻一刻と変化する世界の情報を頭に流し込み、自分達が描く絵に沿う形に導くように介入を行う。
 目指したもののために。
 ふと、眼前の窓に自分の顔が映りこんでいるのが見えた。
 口元を真一文字に結び、眉根を寄せながらも、瞳を爛と輝かせながら一心不乱にコンソールを叩く女。
 その貌は、断じて高町なのはのものではない。
 この貌を、私は何度も目にしてきた。鏡で、ワイングラスで、血溜まりで。
 ……ああ、これは私の貌だ。
 一日にも満たない短い期間だが、この機動六課に身を置き、高町なのはの脳を使用して、まるで自分が高町なのは自身だと錯覚するような瞬間さえあった。
 否。私は、矢張り私だ。何者にも成らないし、何者にも成れない。
 仮令他人の肉に包ろうと、私は私なのだ。

 作業に区切りをつけ、端末に同封されていた小箱に視線を落とした。
 これは一体なんだろう。
 開けると、赤い宝珠が転がり落ちた。見覚えがある。
 これは―――レイジングハート・エクセリオン。高町なのはの愛用のインテリジェントデバイス。
 しかし何故。レイジングハートは、今も私の胸元に光っている。では、このデバイスは一体。
 丁度いい。彼女の、魔導師としての能力には興味があった。ここで、一度起動してみるのもいいかもしれない。

「レイジングハート、セットアップ」

 胸元の宝珠を、何百回と繰り返した滑らかな手つきで持ち上げ、起動させる。しかし―――。
 
「レイジングハート?」

 胸元の宝珠は、輝かない。
 デバイスは小さく明滅し、応えた。

『It refuses. You are'nt my master. Who are you?』
「何を言っているのかな? わたしだよ、なのはだよ?」

 これがインテリジェントデバイスの面倒な所だったかな、と思いながら一応説得を試みる。
 武器は、肉体が使い慣れたものがいちばんいい。

『You are a liar. Where did my master go?』
「だから、わたしがなのはだってば、どうしちゃったの、レイジングハート?」

 無駄にカンのいいデバイスだ。恐らく説得は無理だろう。

「ね、また一緒に空を飛ぼうよ、レイジングハート」
『Please return my marster』
「レイジングハート……」
『Please return my marster!』
「……はぁ。面倒だからもういいわ、貴方」
『Please―――』

 レイジングハートを強制的に停止させて、あの男が送ってきた小箱に投げ込んだ。




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