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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第107話☆
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魔法少女、続いてます。
ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所です。
『ローカル ルール』
1.他所のサイトの話題は控えましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
・オリキャラ
・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)
『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。
【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
読み手側には読む自由・読まない自由があります。
読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。
前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第106話☆
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1278585652/
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>>105
一般人にしてみれば、平和に楽しく過ごせれば上が何であろうが別に大した問題じゃない
評議会があろうがなかろうが、レジアスがいようがいまいが、ましてや6課があろうがなかろうが
その連中が正気だろうが狂ってようが、自分達にとって「良いもの」なら、後は些細な事
世界が100人の村だったら、なんてちっぽけな世界じゃあるまいし、直接関わる事のない相手に対する意識なんてそんなもん
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アルカディア氏新作キタアア!
ぐっじょぶ!ぐっじょぶ!
なんだかもう、なにこれもう、メチャクチャ面白いじゃない。
続きに期待せざるをえない!
んすけど、ちと目立った誤字を発見。
>>89の
これぞ体だ。この足で駆け、この手で握り、この目で見て、この舌で味わい、この耳で見て、この鼻で嗅ぎ。
って箇所。
耳で聞いて、だよね?
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>>110
誤字報告ありがとうございます!
推敲の段階でも馬に食わせるぐらいの誤字脱字があったのですが、まだまだ残りがありそうで大反省中です。
では、昨日の続き投下します。
非エロシリアス中編 『胡蝶の夢・中編』
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「ママー、ごっはん、ごっはん♪」
聖王のクローン体―――ヴィヴィオと名付けられた少女が、早くもフォークを握り締めて飛び跳ねている。
「駄目だよヴィヴィオ、お行儀悪いから止めなさい」
苦笑を浮かべながら少女を嗜める。
いかにも、『慈愛を持って、微笑ましく少女を見守る保護者』という表情を浮かべているのだが、今一つ性に合わない。
難しくは無い。高町なのはが以前浮かべていた通りの表情を浮かべればいいのだから。
だからと言って、内心の違和感までは拭えない。
仮初めの仲良し親子の真似事を続けるなんて、私の趣味ではない。……尤も、この関係も長くは続かないだろう。
この子が聖王として覚醒すれば、高町なのはとこの子の蜜月は呆気なく終焉を迎える筈だ。
もうじき訪れるだろう破局までの、僅かな間の他愛ない家族ごっこだ。
我慢することには慣れている。あの混乱の時代の忍従を思えば、少々性に合わない程度の子育ての真似事など、苦労と呼ぶにも値しない。
「ほら、ヴィヴィオ、今日はサンドイッチ作ってあげたから、お外で食べようよ!
お天気もいいし、きっと気持ちいいよ♪」
「うん、ママと一緒にお外で食べる〜!」
レジャーシートと、サンドイッチの詰まったバスケット。ジュースのペットボトルを抱えて準備完了だ。
食事は私の大きな楽しみでもある。
あの狂人の言い分ではないが、折角、再度肉を得たこの世界だ、楽しめることは楽しんでおきたい。
鼻歌を歌いながらスキップするヴィヴィオに手を引かれ、私は隊舎の中庭に出た。
雲一つない、見事な晴天。
最近は見事な晴れの日続きだ。こんな青空を仰ぐと、清涼なものが胸を吹き抜けるようだ。
それは、私にとっても、高町なのはにとっても―――きっと誰にとっても共通の認識。
0と1で構成された世界では味わえない爽快感。
それにしても。空の青も、花の赤も、私が以前に目にしていたものより、遥かに濃くて、鮮烈に胸を打つ。何故だろう?
得心した。これはきっと、高町なのはの世界観。
豊かに育ったものだけが、心に余裕のあるものだけが見つけられる、世界の美。
砲火に脅え、四六時中、眠る時さえも見えない敵の姿に警戒していた私には、見つけることの出来なかったものだ。
この時代の人間達は、皆、こんな風に世界を見ているのだろうか?
「ママ、ママー、―――ほら、タンポポの綿毛ー。ふー、しよ! 一緒にふー、しよ!」
きっとそうだ。どうしようも無く残酷な方法で生み出された筈のこの子が、こんなにも世界を楽しんでいるのだから。
私は、微笑を形作り、ヴィヴィオの差し出したタンポポの綿毛に唇を寄せた。
中庭を駆け抜ける仄かな風に乗って、白い光が零れるように綿毛が宙に舞い散っていく。
ふと、我に返り、目を逸らす。……似合わない。
「さあ、お弁当にしよう!」
私には、似合わない真似だ。
感傷を切り捨てるのに時間はかからなかった。
高町なのはの笑みを顔にはりつけ、ヴィヴィオへと向き直る。
思い切って、楽しい楽しい母子のランチタイムを演出しよう。
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「……ママ、たまねぎ辛い〜」
うー、と少しだけ涙目になりながら、ヴィヴィオはサンドイッチを開き、挟まっていた玉葱のスライスを除けようとした。
子供らしい、無邪気な好き嫌い。しかし、私はその手をそっと押さえた。
「我慢して食べちゃくちゃ駄目だよ、ヴィヴィオ」
「でも、たまねぎ辛いもん」
ささやかな、本当にささやかな幼い我侭だ。
それに、私は憤懣とも羨望ともつかぬ、言葉に出来ぬ感情を覚えた。
別段何ということもない、聞き流してしまえばいい筈の、取るに足らない子供の戯言。
それなのに、私はヴィヴィオの手を握り、諭すように語りかけていた。
「好き嫌いは駄目。ご飯はちゃんはちゃんと全部食べなければ駄目よ、ヴィヴィオ。
私が小さい頃ね、食べたくてもご飯が食べれないことなんて、何度もあったの。
美味しいものなんて全然食べられないのが、当たり前だった。
食べ物は不味い不味い黒いパンしか手に入らなくて―――。
それでも、お腹が空いてたまらない時には、何かを食べられるだけで嬉しくて、夢中になってガツガツ食べたものだったわ……」
語りかける私の瞳をヴィヴィオはじっと見つめ、口調の違和感を感じたのか、小鳥のように首を傾げた。
「あれ? ママ、なのはママのお家はお菓子屋さんで、なのはママのママが、美味しいパンやケーキをいっぱい焼いてくれたんじゃなかったの?」
「―――……」
苦笑が零れた。そうだった。私は高町なのはだった。
こんな小さな子供を相手に、私は一体何を語っていたのだろう。
「そうだったね。ごめんなさい、ヴィヴィオ、変なこと言っちゃったね。
……これはただ、そういう人も昔はいっぱい居たんだよっていう―――。ただ、それだけのお話だよ」
ヴィヴィオは小さく頷くと。はむはむと再びサンドイッチに取り掛かかる。
少女が「お腹いっぱい」と言って横になったとき、バスケットの中身は綺麗に平らげられていた。
◆
この世界を見てまわるのもいいかもしれない。そう思い立って、休日にふらりと街に出かけた。
ヴィヴィオは仕事だと言ってアイナに預けてきた。
普段ならば、時間が空けば端末に向かって「本業」に勤しむところだが、ふと、この時代のこの世界が見たくなったのだ。
経済状況、文化宗教の分布、国際的政治的動向、必要な事項は全て把握している。
意味無く散策に出かけるなど時間の無駄遣いに他ならないが、別段、一日程度なら問題視するような浪費でもない。
そして、私はこの世界に圧倒されて、眩暈にも似た感覚に襲われて道端に立ち尽くしている。
軽くクラナガンの周辺を散策するだけのつもりだったのに。
澄み渡る空に立ち並ぶビル群、どれも清潔で眩い光を放っており、美しく舗装された道には、交通ルールを遵守しながら見たことも無い形の車が行き交う。
高町なのはの記憶に頼らずとも、地図を見るだけで迷うこと無く目的地に向かうことのできる、見事な都市計画に基づいて作られた町並み。
―――あの頃の町並みとは、何もかも違う。
……破壊と、緩慢な再建を無秩序に繰り返した混沌の街並みとは。
……そこかしこに銃弾の痕が残り、難民達が粗末なテントを並べていたあの街並みとは。
地獄にも似た、あの時代を思い出した。
燃え盛る炎。そこかしこで立ち上る黒煙。ぶすぶすと焦げた死体は数えるだに意味はなく、漂う香りはただ死臭のみ。
ふと、こんなにも青い空の下で、鉛色の空の下の黒煙と、焼け焦げた死臭を嗅いだ気がした。
目を開けると、この時代のごく当然な平和な光景が。
苦労などなに一つ知らぬといった顔の若者達が、休日の街を闊歩していく。
派手なメイクで着飾った女性達が、黄色い声を上げながら、私の横を通り過ぎていく。
むっとする程強い香水の香り。これが―――今のミッドチルダの街の香り。
暢気な顔でへらへらと笑いながら街を歩く現代の人間達。
私は、その足元に、びっしりと敷き詰められた、山なす死体達の姿を見た気がした。
くらりと、目が眩む。
一瞬の幻視。
暑気にでもあてられたのだろうか。
頭を振って幻想を振り払い、次なる目的地に向かった。
フィリーズにマリンガーデンといった、スバル達から聞いたこの街の遊び場だ。
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……JJスイーツで買ったアイスを片手に、私は額を押さえながら公園のベンチに座り込んだ。
一通り回ってみたのもいいが、何とも目まぐるし過ぎる。
感覚の全てを高町なのはのそれに預けてしまってもいいが、こればかりは自分で味わっておきたかった。
極彩色で、刺激的な娯楽施設の数々。昔なら、例え王女であっても味わうことの出来なかった極上の快楽。
トロリと緑の雫を流すアイスを軽く舐めると、ペパーミントの幽かな刺激と心地よい甘みが舌の上で踊る。
こんなものを、貴族でもない行きずりの人間達が僅か数枚のコインで味わうことができる。
それが一体どれ程の贅なのか、誰も知らずにただ日常の一コマとして享受している。
ぺろりと、緩慢にアイスの雫を舐め上げる。
……そして今は、私もそれを享受する一人なのだ。
不意に、今もあの水槽の中で計算を続けているだろう同士達の事が頭を過ぎった。
狂人は言った。彼らには、要求に応じてあらゆる快楽を電子的に提供していると。
彼らは、果たして知っているのだろうか? この、新しく鮮烈な美味のことを。
「……あの、もしかして、高町なのはさんですか?」
ぼんやりと思索に耽っていたそんな時、不意に見知らぬ声がかかった。
「うん、そうですけど……なにか、ご用ですか?」
若い数人の男女が、そこに居た。どの顔も高町なのはにも見覚えがない。
通りすがりの若者達のようだ。
「うわ、やっぱり本物だ、本物の高町なのは空尉だよ」
「あの、私、ずっとお会いしたかったんです!」
彼らは所謂、高町なのはのファンのようだ。
高町なのはの華々しい活躍は以前から各種メディアでも取り上げられ、エースオブエースと呼ばれる程である。
浮ついた底の浅いファンの類がつくのも当然だろう。
鬱陶しい、すぐさま追い払って静かにこの休息を楽しみたいところだが、高町なのはの人格からして邪険に扱うわけにもいくまい。
「高町空尉のご活躍は、いつもお聞きしています! 私、ずっと憧れてたんです!」
「……ありがとう、ずっと応援してくれてたんだね。嬉しいよ」
いかにも頭が悪そうな少年が、主人を見つけた駄犬のようにへらへらと擦り寄ってくる。
「俺、今後の進路は管理局に入って航空武装隊を目指すつもりです!
今の成績じゃあ正直厳しいんじゃないか、って先生には言われたんですが、どうしても高町空尉みたいな立派な魔導師になりたくて―――」
良くいるタイプの馬鹿だ。
現実を知らぬ若き頃に大言壮語を語り、無謀な猪突猛進の末に現実の前に挫折する。
一顧だにする必要も無い愚者。
その彼に、私は柔らかく微笑みかけた。
「それじゃあ駄目だよ。『私みたいな』じゃ、なくて、あなたはあなたとして、本当にあなたらしい夢を探さなくちゃ。
でも、空隊という大きな目標に向かって努力してるのは、本当に偉いと思う。
ちょっとの成績やテストの結果じゃない、大事なのは諦めないことだよ。
頑張って努力を続ければ、きっと夢は叶うんだから!
そうすれば、あなたはきっと、わたしなんて目じゃない、本当に凄い魔導師になれるよ!」
「はいッ!、ありがとうございますッ!」
少年は顔を紅潮させ、最敬礼でもするように深々と頭を下げた。
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「高町空尉っ、私は救助隊を目指してるんです―――」
「俺は陸士部隊に―――」
堰を切るように、我先にと始まる青少年達による『ぼくたちわたしたちのゆめ』の主張大会。
一つ一つに、ありきたりの台詞で、彼らが望む通りに夢を肯定し、優しい言葉で背中を後押しした。
彼らの無能は、私の責任ではない。この言葉を鵜呑みにして破滅に向かおうがどうなろうが、知ったことか。
日中の日差しに溶けてアスファルトに滴り落ちる私のアイス。
そんなことより、このペパーミントの方が余程重要だ。
「でも、本当に凄いですね。私達とは幾つも違わないのに、『エース・オブ・エース』と呼ばれているなんて」
会話も落ち着きを取り戻し、無事アイスを食べ終えた頃に、少女の一人がそう漏らした。
「そんなこと無いよ。最近なんだか大げさに言われてるけど、わたし一人で出来ることなんで、ほんと僅か。
助け合う大勢の仲間の、支えてくる沢山の人々によって管理局の仕事は成り立ってるから。
みんなもそう。みんなのように応援してくれる人たちがいるから、わたし達は頑張れるんだよ。
今日は、応援してくれるみんなに会えて、凄く嬉しかったよ。
これでまた、毎日頑張ろう、って気持ちになった。
―――ありがとう、みんな」
「はいっ!!」
適当に歯の浮くような台詞を並べ立てたが、少年達は感極まったように尊敬の眼差しで私を見つめる。
鬱陶しいことこの上ない。
アイドル的な扱いをされているのは知っている。
ここ数年めざましい活躍をしているのも知っているが、高町なのは、たかが一魔導師ではないか。
これ程までの尊敬と憧憬を受けるだけの何があるというのか。
……知っているのだろうか。現在の管理局の存在が、数多の屍の上に在ることを。
「みんな、管理局に携る仕事に就きたいんなら、管理局の歴史も知らなくちゃね。
時空管理局黎明期の功労者、伝説の三提督の方々は知ってるかな?」
割合聡明そうな少女が首を捻る。
「ええと、レオーネ・フィルス法務顧問相談役とラルゴ・キール武装隊栄誉元帥。
それから……ミゼット・クローベル本局統幕議長、でしたっけ?」
「そうだね。よくできました」
管理局の黎明期を支えた彼らの功績は計りきれない。
彼らの言動は、一線を退いた現在も各界に多大な影響力を残している。
私の続けていた演算の中で、彼らの行動は現在も重要な監視対象だ。
そういえば、ミゼット女史には私も昔―――。
「あの、それで……」
「じゃあ、旧暦の時代に、質量兵器根絶やロストロギア規制を掲げて、時空管理局を立ち上げたのはどんな人か、知ってる?
もう、150年ぐらい前の話になるのかな―――?」
口の端が、僅かに歪む。
「あ、この前の授業で習ったよ俺、サイコウヒョウギイン、だったかな?」
「最高評議会、だよ、馬鹿。えーと、メンバーの名前とか教科書に載ってたっけ?」
「どうだったかな……? 議長とか書記とかいたのは覚えてるけど、名前までは面倒だから覚えてないな〜」
堪え切らない笑いを、噛み殺した。
「いいのいいの、ちょっとした歴史のクイズだから」
きょとんと首を傾げる彼らに優しい視線を送りながら、私は腹の底で大笑していた。
そうか。そうなのか。これが現在のミッドチルダなのか。
―――私達の努力の果て、あの鉄火の日々は、この街を作るためにあったのか。
◆
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騒々しい彼らも去り、私は公園の木陰のベンチに深く腰を下ろした。
酷く、疲労をしたようだ。
軽い眩暈を感じた。もぞりと腰を動かし、もう一度深くベンチに腰を下ろす。
息を細く吐きながら、目を閉じた。吹き込む風が心地よい。
あの狭い部屋の中では、休息も睡眠も必要なく、ただ不眠不休で計算に没頭していた。
しかし、この肉の檻に居を移した以上、肉体の求める程度の休息は必要だ。
……否。高町なのはの肉体は、この程度で疲労を訴えるほど軟弱ではない。
ならば、これは私の精神的疲労。高町なのはの感覚を極力使用せず、自身でこの時代を味わった反動だ。
非合理な行動だったが、有益な時間だ。
休息が済んだら、もう少しこの時代を―――。
私の意識は、泥に埋もれるように暗転していった。
……―――
……―――――
……―――――――あの部屋には、私の全ての幸福が詰まっていた。
そこは、ただ一人の少女に与えられるには、余りに広すぎる部屋だった。
天蓋付きの柔らかなベットもあったし、月と星が望める大きな出窓があった。
床は毛足の長い上等な絨毯が敷きつめられていて、そこでお友達のお人形達と遊ぶのが毎日の私の楽しみだった。
礼儀作法やお勉強の時間はちょっぴり窮屈だったけど、一日の大半は私の自由時間。
そりゃあ、もうちょっと沢山の御菓子を食べたいと思う日もあったけど、私の毎日は満ち足りていた。
お父様がその地方の領主なのは小さい頃から知っていた。
魔導師の素養があったにも関わらず、何の教育もしなかったのは、私を戦いを教えたくなかったからだとか。
その当時を考えれば、一人娘など政略結婚の道具に扱われて当然なのに、お父様はどうしても私を手放したくなかったのだとか。
そういったことが解ったのは、ずっとずっと後のことだ。
お母様を早くに亡くした私は、お父様とお屋敷のメイドさん達に囲まれて、文字通り蝶よ花よと育てられた。
外の世界に出ることの無かった私は、貴族や名家の子供達が幼い頃から巻き込まれる、泥のような権謀作術の渦に飲まれることなく、ただのほほんとその幸福を享受していた。
今日は、お庭で花輪を作った。
今日は、親衛隊長さんが式典儀礼用の白馬の背中に乗せてくれた。
今日は、メイドのみんなとお歌を歌った―――。
私は、皆からフロイラインと呼ばれ、閉じた楽園の中で大切に大切に育てられたのだ。
栄枯盛衰はこの世の常。
誰も知っているはずのそんな簡単なことを、私は身に味わうことまで知らなかった。
楽園の崩壊は速やかだった。
お父様の領地が戦争に巻き込まれ、圧倒的な勢力の侵攻を受けて壊滅したのだ。
確かに、お父様は地方の絶対的権力者である領主であったが、王族の配下の大軍勢には到底敵う余地は無かった。
崩壊は一瞬だった。
いや、今思えば予兆はあったのだろう。
地図を挟んで誰かと口論するお父様の姿や、暗い顔をして忙しなく走り回る親衛隊の人たちを、幾度も目にしてはいたのだが。
どれも大人のお話と、私はいつもの通りの毎日を過ごしていた。
その当日でさえ、それらの前兆をあの凶事と結びつけて考えることさえ出来なかった。
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突然の轟音に震えたお屋敷。
魂までバラバラになるような砲音と、銃声。私は、嵐の夜の風より恐ろしげな音というものを、産まれて初めて聞いた。
怖い。
部屋の中でお気に入りの人形を抱きしめて震えていたが、独りでいるのが恐ろしくなり、そっと部屋の扉を開けた。
人形をぎゅっと掻き抱き、おずおずと一歩を踏み出す。
―――そこには、初めて見る戦場があった。
『いけません、フロイライン』
部屋から顔を出した私に血相を変えて、柱の陰に隠れていたメイド達が駆け寄ってきた。
たちまき銃声と速射砲撃が金切り声を上げ、4人が薙ぎ倒された。
3人は元の姿も解らないぐらいぐちゃぐちゃで、1人はお腹から血を流して倒れながら、びくびくと痙攣していた。
みんな、私と仲良く遊んでくれた、優しいメイドさん達だった。
黒ずくめの異国の兵士の1人が駆け寄り、ナイフでまだ生きていたメイドの服を引き裂き、覆い被さった。
一体何をしているのかは解らなかったが、それがとても怖いことだということだけは、はっきりと解った。
『フロイライン、早くこちらに』
メイド長さんが駆けつけてきて、私の目を塞いで手を引いた。
彼女が優秀な魔導師で、私の身辺警護を任されていたと知ったのも、後の話だ。
部屋に帰りたい、私の、お部屋に―――。
とうに冷静な判断を失っていた私は、部屋に向かって駆け出そうと咄嗟に振り返った。
それも叶わない。メイド長さんは私を抱き上げてすぐさま戦火の中を走り出した。
離れていく私の部屋、揺籃の日々を過ごした私の楽園。もう届かないことを承知で手を伸ばす。
その指の隙間の向こうに、砲撃を打ち込まれ半壊して炎上した、私のお部屋を見た。
燃えてしまう。フリルのついたふかふかのベッドも、大好きなお人形たちも、星と月の見える大きな出窓も。
―――涙は、出なかった。
『フロイラインをこちらへ! 御館様の最後の命です。我ら一命を持って、必ずフロイラインを―――』
『はい、お任せしましたよ』
メイド長さんは、胸に抱いていた私を、壊れ物でも扱うように、そっと親衛隊長さんに手渡した。
親衛隊長さんは、私を少しだけきつく抱きしめ、一礼をした。
メイド長さんは、いつも私に見せるくれる、ふんわりと優しい笑顔で手を振った。
『フロイライン、どうか、お健やかに―――』
彼女の体を光が包み、腕には煌くデバイスが握られ、メイド服は何時の間にか戦装束へと変わっていた。
メイド長さんはそのまま振り返り、追いかけてくる兵士達の中へと独り駆け出して行った。
だから、私は彼女の笑顔しか知らない。彼女がどんな顔で私を守り、どんな顔で戦い散っていったのか。
想像しようとしても、私の思い出せる彼女は、いつも優しく微笑んでいる。
お屋敷の中は、どこも彼処も火の海だった。
綺麗だったステンドグラスも、厳しかった廊下の彫像も、全て砕けて炎に包まれていた。
親衛隊長さんに抱きしめられて周りの様子は見えなかったが、親衛隊の隊員さんが、一人、また一人と減っていくのが解った。
いつもメイドさんに囲まれてお食事をした食堂は、屋根が丸ごと吹き飛ばされてテラスのようになっていた。
脇腹から血を流しながら、隊長さんが膝をついた。足元でも、チロチロと蛇の舌の様に火の手が上がっていた。
私のお洋服も顔も煤だらけで、隊長はそんな私を見て悲しそうに笑い、顔をハンカチで拭ってくれた。
生き残った隊員さん達の残り僅か。どこにも行けない。逃げ場も無い。
目の前には、壊れた彫像の破片が散らばっていた。
お食事の前にお祈りを捧げた聖者の彫像だ。欠け落ちた掌には、杭が刺さっていた。
聖者は偉い人なのに、どうして杭を打たれたのかお父様に尋ねたことがある。
あの時お父様は、何て答えたっけ?
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ずっと、胸に抱きしめていた縫いぐるみ、お父様に頂いた一番のお気に入りのウサギのお人形が燃えていく。
ぽっ、と炎がお人形を包み、ボロボロと灰となって、聖者の彫像の破片の上に崩れ落ちた。
その中から、キラリと光る雫が一粒。
杭を打たれた掌に零れ落ち、輝きを放った。
祈願型のインテリジェントデバイス。どうしても娘に戦いを教えたくなかったお父様の未練。
聖者の掌が、それを私に差し出した。
ああ、お父様は何て答えただろう。
―――許すため。
悪い人を許すために杭に打たれたんだよ。
きっと、私にはまだ難しいことだったのだろう。お父様は言葉を濁しながら、そんなことを話してくれた。
絵本に出てくる悪魔のような敵の兵士達が、石臼を回すような緩慢な速度で私達を取り囲む。
親衛隊のみんなが、一斉に銃やデバイスを構えた。
背筋の震えるような恐怖は、憶えている。心の器から溢れる程の悲しみも、憶えている。
ただ、私の楽園を奪った敵への憎悪だけが、ごっそりと欠け落ちていた。
メイド長さんも言っていた。『大事なのは、人を許す寛容の心です』と。
敵の兵士の一人が、突如壁に叩き付けられた。その胸には、魔力刃で生成された杭が深々と突き立っていた。
また一人。腕を壁に貼り付けられた。その杭を抜こうとした瞬間、次の杭が頭蓋骨を壁に打ち付けた。
『……帰って』
『―――フロイライン』
敵の兵隊も、親衛隊のみんなも、呆然と私を見ていた。
『許してあげるから、帰って。私のお家から、出て行って! これで許してあげるから、もう帰って!』
私は、狂ったように―――否、後から思い出してみれば、あの時の私は正しく狂っていたのだろう。
許してあげるから、これで許してあげるから、と。
すすり泣きながら、目に付く敵を、片端から杭で壁に貼り付けた。
祈願型のデバイスの起動。至極単純な術式。
杭形の魔力刃の作成と射出、ただそれのみ。
陵辱されきった世界を拒絶する、本能的なシールド。
それは、携行用の質量兵器では到底突破できない、シンプルにして強固な城砦。
私は、増援が訪れて敵を撤退させるまでの三時間、頭を出す敵を鴨撃ちに壁に張り付け続けた。
戦術などまるで頭になく―――これが戦闘だという自覚もなく、敵を殺し続けた。
……無論、生き残れたのは私一人の力ではない。
圧倒的物量差を前に士気高く戦ったお父様の配下の奮戦と。
私達を追撃せんとする魔導師を全て道連れにした、メイド長さんの助けがあっての事だった。
―――全て、無くなってしまった。私を包んでいた優しい楽園は。
殻を破った雛のように、初めて私は外の世界を見た。
天蓋付きのベッドの星が望める出窓、薄皮を隔てたその向こう側は、破壊と混沌で満ち溢れていた。
無明の、絶望。
あの部屋に戻りたかった。しかし、破壊尽くされた屋敷に戻ることなど出来ず、私達はすぐに拠点を移した。
もう、優しかったあの世界は無い。炎と砲弾に跡形も無く粉砕されてしまった。
全て失ってしまったのだと思った。
しかし。
それでもまだ、私はこの世界に於いて、十分に幸福と呼ばれる部類の人間だったのだ。
数少ないが、親衛隊の生き残りの皆や、父の生前の仲間や部下の人々が、私達を支援してくれた。
粗末ではあったが、餓え死ぬことは当分無いだけの食料はあった。
寝床も行動拠点も確保されていた。
何より、私は五体満足で、魔力という巨大な武器まで持っていたのだから。
戦乱で倒れた数え切れない死体より、千切れて腐っていく手足をぼんやりと見つめている老人より、ガリガリに痩せてもう立ち上がれない少女より―――。
私は、遥かに幸福で満たされた人間であった。
―――それこそが、本当の絶望だった。
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私は知ってしまった。眠れない夜が続いた。
ある日、とある紳士が、相談を持ちかけてきた。
生前父には世話になったので、せめてもの恩返しとして、私を引き取りたいというのだ。
あの屋敷のような贅沢な暮らしはできないが、不自由ない生活は約束すると、紳士は私に言った。
いずれ戦いに巻き込まれて死ぬか、野党の類に襲われて陵辱されて路頭に迷うか、という未来しか無かった私には、願ってない好機。
戻れる? あの部屋ではないにしろ、優しく静かな暮らしへ?
誰もが羨む、二度とは無いその話に、私は首を振った。
戻れない。もう、戻れない。私は、窓の向こう側に何があったのかを知ってしまった。
私がどんな世界を生きていたのかを知ってしまった。
例えあの部屋に戻ることができたとしても、もう二度と安眠は訪れないだろう。
悪夢に悲鳴を上げて飛び起き、過敏になりすぎた神経を諌めながら、耳を押さえて自分を眠らせる日々が続くのだ。
どうすれば、あの部屋に戻れるだろう。
どうすれば、もう一度安らかな眠りが訪れるだろう。
それには―――。
それは、途方も無い考えだった。
自分を包んでいた殻から這い出し、世界の本質を垣間見た私だが、その全体象は把握できてはいなかった。
今いる世界が、数多の次元世界の一つの端であることさえ、はっきり解ってはいなかっただろう。
この世界の本質を知らずに、幼少の頃を無菌室のような楽園で人間だけができる発想。
産まれ育ったこの世界を疑わず、従容とその渦に飲み込まれていく数多な人間には決して出来ない、あまりにも突飛な発想。
私は決めたのだ。
―――この世界を、戦乱に脅かされないような世界へ変えようと。
数多な苦難は当然だった。
大義を叫ぶ前にその日の糧を得なければならない日々が続いた。
無秩序な殺戮。向けられた銃口には死を持って返さねば殺される日々。
多くのものを失った。時に同士を得た。殺した。仲間を殺された。
数えるだに馬鹿馬鹿しい数の殺意を向けられ、多くの裏切りにあった。
それでも。私は、憎悪という感情が今一つ理解できず、杭を持って許した。それで、終わりにした。
デバイスは幾つも壊した。私は安価で処理が楽なストレージを愛用するようになる。
魔法は曖昧性を嫌い、徹底的に理論立てて運用した。
杭の形の魔力刃はシンプルで扱い易く、基本戦術として固定化することにした。
私はもう領主の娘ではなく、おかしな題目を掲げる1レジスタンスの頭目だった。
それでも、過去の仲間は私を『フロイライン』と呼んだ。
やがて、それは人々に伝播し、私はやがて、『聖杭のフロイライン』と呼ばれるようになった―――。
……―――――――
……―――――
……―――
ぱっと、弾かれたように私は覚醒した。
音を立てて椅子から立ち上がると、暢気に足元で地面を突いていた鳩が驚いて飛び立った。
少し休憩するだけのはずが、まどろみへと落ちていたのか。
「……夢」
随分と、懐かしい、夢。
もう思い出すことも無かったのに。
おかしな感覚だ。幼い自分の心情と、それを俯瞰する今の自分の醒めた心情が入り混じっていた。
何故か、誰かに夢を覗かれたような感じがした。
―――あれから、長い時間が経った。本当に長い時間が。
数え切れない出来事があった。
私の幼年期は、重く圧し掛かった膨大な時間の中に跡形も無く溶けて消えた。
暴力と猜疑の中を生き延びた私に、あの屋敷でフロイラインと呼ばれていたころの面影はもう無い。
感情で物事を判断することは無くなった。理性的であろうと努力した。ただ、目標だけが変わらなかった。
己の生き方を決めたあの日から、私はただ一日も休むこと無く邁進してきた。
進み続ければ、不可能も可能なると。
幾つもの幸運に恵まれ、それはやがて現実に近づいた。
世界の和平を目的とした組織の設立。
ベストとは行かぬまでの、現時点でのベターな選択をすることができる演算機関。
世界へ干渉し、バランスを保つことのできる強力な権力。
私は確実に、夢想も同然だった理想へ近づいた。そして、今なお実行し続けている。
……そうだ。ふと思い立った。
ミッドチルダの周遊はこれで終わりにする予定だったが、最後にもう一箇所だけ。
-
◆
血のように赤い夕焼けの下、影法師が伸びる。日中の日差しが嘘のようで、冷たい風が項を撫でた。
周囲に人気はない。ただ、薄く苔むした墓石が静かに並んでいる。
ミッドチルダ北部の聖王教会墓地公園。
第一次元世界としてのミッドチルダの創設に尽力した偉人達が葬られている場所だ。
花は捧げられているが、真実、故人を偲ぶためにここに参る人間はごく僅かだろう。
何しろ、この墓石の下にいる人間は勿論、その知己や子供達も既に墓の下にいるべき年齢だ。
もう、この墓は墓ではない。過去の偉人の功績を示すためだけの、記念碑だ。
緩慢に忘れ去られていくその業績を、記憶の端に留めておくための目印。
「久しぶりね、貴方達」
その中の幾つかの名に目を細め、私は墓石を撫でた。
故人は何も語らない。この墓石は只のモノだ。私は霊魂の類など信じない。
「お久しぶり。ちゃんと貴方の好きなお酒が供えられているじゃない。誰が持ってきてくれたのかしら?」
くすくすと笑う。勿論返事など無い。これは私の一人遊びだ。幼い頃の人形遊びと同じ意味なき遊戯。
一際大きな墓石が並ぶ一角、そこで、私は口の端を吊り上げた。目当ての名前が刻まれた墓石を見つけたのだ。
軽快に、その墓石に飛び乗り、墓地に並ぶ墓石の群れを俯瞰した。
偉人の墓石に対して、何たる不敬。
だが、詫びる必要など微塵もないだろう。
詫びるべき墓の主は、墓の下ではなく、今ここに、この墓石の上にいるのだから。
夜気を含んだ風を存分に鼻腔から吸い込む。何という爽快感。
今私は生きている。肉を纏ってここに立っている! それだけで、墓の下に潜った全ての人間に立てない地平に私はいる。
私は、私は―――絶対に私の夢を叶える。叶え続けるんだ。
軽い足取りで、墓石から飛び降りる。と。
「なのはさんじゃないですか! いらしてたんですか?」
びくり、と背筋が震えた。
振り返ると、教会の修道騎士シャッハ・ヌエラが笑顔で手を振っていた。
どうやら、墓石に上っていたのを見咎められたのではないようだ。胸を撫で下ろす。
「お体はもう大丈夫ですか? 言って下されば、お迎えに上がりましたのに……。
……今日は、どうしてこちらに?」
「うん、この間のこともあるし、ちょっと自分を見つめなおそうかな、って。
わたしが今してる、この管理局のお仕事の本質を見失わないように、草創期の功労者の方々のお墓にお参りして―――。
何のためにわたし達は戦ってるのか、その芯の部分がぼやけないように、気合を入れようと思ったんです。
……あはは、似合いませんかね?」
シスター・シャッハは目を丸くしていたが、心底感心したというかのように頷いた。
「流石、高町なのは一尉です。そのご殊勝な心がけ、私は敬意を表します」
「そ、そんな大げさなこと言わないで下さいよ! 休養がてらのことですから!」
「いえいえ、普通の人には出来ないことですよ。
そうだ、折角ですからお茶を飲んでいかれませんか? きっと、騎士もお喜びになるでしょう!」
「では、お言葉に甘えて―――」
面倒だが、成り行きだから仕方が無い。
シスター・シャッハの後に続いて墓地を後にした私は、最後にもう一度振り返った。
夕日に染まる墓石。
『何のためにわたし達は戦ってるのか、その芯の部分がぼやけないように―――』
自分が口にしたばかりの言葉が、頭の中で反響する。
ぼんやりとしたものが、渦を巻いて形を成す。
「あ……―――そうか、そういうことだったのね」
ふと、自分の中の何かが落ちたような気がした。
解ったのだ。
そうだ、私は―――。
◆
-
端末を使っての仕事と、狂人への定時報告。
先日こそ丸一日休暇に費やしたが、これが私の本領だ。
情報を牛飲し、グラフからその向こうにある真の流れと意思を分析し、適切に介入する。
コンソールを叩く速度は機械のように一定を保つ。
「ねぇねぇ、ママぁ、遊んで、遊んで―――」
「ごめんね、ヴィヴィオ、ママは今大切なお仕事をしているから、もう少しだけ待ってね―――」
いいように、邪魔になったヴィヴィオを言い包めて部屋の外に追い出した。
まるで水と油のように、私には合わないと思っていた高町なのはの思考ロジックだったが、日常の些事や雑談には便利なので意図して切り替えて使えるようになった。
彼女の人格は、この時代の社交性では確実に私より上だ。
私はプライベートの人間関係というものがどうにも苦手だから、模倣する相手がいるというのは有り難い。
そんなことより、今は仕事の方が重要だ。
今日はデータの転送だけじゃない。あの狂人と通信を行うことになっている。
そういえば、この体であの狂人と顔を合わせるのは初めてのことだ。
『ご機嫌麗しゅう、フロイライン。新しい体での生活は如何でしょうか?
存分に、空を飛ぶことはできたでしょうか?』
モニターに現れた金眼の狂人の顔を覗き込んだ瞬間、私の内なる直感が告げた。
私ではない、これは、わたしの、高町なのはの感性による直感だ。
「悪くないわ。機動六課の戦力も、この目で把握できることだし―――」
高鳴る鼓動を抑え、あくまで平静を装ってふるまった。
おお、何てこと。
どうして、私は、私達は、真っ当な感性をもった人間であるなら気付く筈の、こんな簡単なことに気付かなかった。
『そうですか。それは結構。私も骨を折った甲斐があるというものですよ』
くっ、くっ、っと狂人が嗤う。
わたしは、高町なのはの瞳で彼を見つめる。彼女の直感が告げる。
―――この男は、信用ならない。
そう、信用できない。全てを預けるような全幅の信頼など置ける筈が無い。
それはこの男に限ったことではない。あの戦乱の時代、同盟を持ちかけようという人間のほぼ全てが敵だった。
多くの疑惑や猜疑の中を、狡猾さを持って生き延びた。
誰かと手を組む際は、必ず裏切られた時のリスクを計算し、最悪の場合に相手を裏切って生き延びるプランを用意した。
それがどうして、この男に対して、あのヴィヴィオが私に抱いているような、雛が初めて見たものを親と慕うような、完全無欠の信頼を置いているのか!?
私は知っていた筈だ。
この男が、本心では私達に蔑意を抱き嘲笑していることを。
何故、どうしてそれが人間的疑惑に繋がらなかったのか?
優秀な道具として全面的な信頼は置いていた、しかしそれは、裏切らないという保障とは別個のものであるはずなのに!
『いかがしました? フロイライン?』
様々な可能性が脳裏を過ぎる。その中で最悪の可能性が、最も期待値の高い結論だった。
私達は、この男に操作されていた。
無限の欲望としてこの男を作製した段階では、この男が我々から離反する可能性も確かに想定していた。
だが、今はそれがすっぽりと抜け落ちている。
つまりそれは、この男がロックをしたのだ。我々に干渉し、自分に疑念を抱く思考ルートを閉じたのだ。
ポッドで成長し、就労したこの男がまず手始めに行ったことは、自分が真に自由に行動するように創造主の掌を脱することだった―――。
なんという知能、なんという才気、なんという狡猾さ―――。
「ええ、報告を始めましょう。手持ちの端末では分析しきれない部分があるから、そちらに演算を任せるものをまわすわ」
その狂人がお膳立てした手術によって、私は今ここにいる。
これだけの狡猾さを持った私だ、私が高町なのはの影響を受け離反するという可能性も当然想像しているだろう。
即ち―――私一人では、絶対にこの男には勝てないのだ。
報告や今後の方針などを告げながらも、内心の動揺と警戒心を気取られないように、凛として狂人を見据える。
-
狂人はくつくつとおかしげに嗤った。
『面白いものですね、顔貌は全く変わらないのに、貴女は機動六課のエース・オブ・エースたる高町なのはとは全くの別人だ。
フロイライン。隊員達のコミュニケーションなどに不自由はありませんか?』
「無いわ、高町なのはの記憶と行動パターンを流用すれば、何の問題も無いわ」
『それが貴女の命取りになるやもしれませんよ。
忠告致しましょう、フロイライン。機動六課の幾人かは、既に貴女に疑惑を抱いている筈。
貴女達があの水槽の中で削ぎ落としてしまった人間性は一見無駄なようでもありますが、時に何物にも変えがたい輝きを放つ。
機動六課の隊長陣を相手に、いつまでも高町なのはの芝居を続けられると思わぬことです』
そう私に忠告し、通信は切れた。
あの男は言っている。
飯事を続けても仕方が無い、戦いを起こせと。
高町なのはの完全な真似なら構わない。そこに僅かでも私の色を混ぜることは自殺行為だと。
成る程、それは正論だ。全くの正論だ。
けれど。あの男の言葉には、一点の誤謬があった。
「人間性か。そんなもの、あの部屋の中ですっかり無くなったと思ってたわ。
でも、意外と残ってるものよ。こんな私の中にも、そんな詰らないものが」
◆
・
・
・
『―――誰のことも助けてあげられなかった……』
『―――どうやったら、勝てるの?』
『―――悪魔でもいいよ、悪魔なりのやりかたで、お話を聞いてもらうから』
『―――レイジングハートが応えてくれてる!』
『―――名前を呼んで』
『……――――――友達に、なりたいんだ』
・
・
・
「また、夢……」
朝日に目を細めながら、呟いた。―――もう幾度目か。高町なのはの夢。
夢の中では、私は確かに高町なのはだった。
幾度も、私は彼女の人生を追体験した。夢の中で、彼女になった。
彼女と同じように感じ、想い、悩み、泣き、笑った。
最初は全く理解できないと思っていた高町なのはの思考ロジックだったが、彼女の記憶に潜り夢で彼女となる度に、少しづつ解釈ができるようになってきた。
相容れないのは間違いない。私と違い、直感的・感情的判断に重きをおく部分が多いのも確かだ。
しかし、彼女は幼い頃から、一貫した目標と意志をもって魔導師として己を磨き続けた、確かに賞賛されてしかるべき人間だった。
それにしても、この目覚めは、まさしく―――。
「ママ、おはよ〜」
ヴィヴィオが、大きなウサギの人形の耳を掴んで引き擦るようにしてやってきた。
少しだけ微笑ましい。
遠い昔、確かに私にもこんな頃があった。
愛し、愛され、小さな幸せの日々の中を生きていた頃が。
……だが、それも長くない。
「ヴィヴィオ、おはよう! ほら、顔を洗っておいで! 朝ごはん食べに行くよ!」
「うんっ!!」
ヴィヴィオはとてとてと洗面所へと駆けていった。
……丁度いい、少しだけ、彼女の顔を直視するのが辛かったのだ。
彼女の中に流れる血が、彼女を利用とする勢力が、この平穏を許さない。
この少女を一武力として、計画の歯車として利用するだろう。
少しだけ、同情する。
それでも、今更止めるわけには行かない。
私こそ、この聖王の血筋を引く少女を利用しようとしている人間だ。
世界の均衡を保つためには、表の世界からだけではできないことが幾らでもある。
より効率的な手段を求めて、本来なら禁忌である技術や危険なロストロギアを幾度も使用してきた。
どれだけ善なる人間を虐げようとも、心は痛まなかった。
それで、世界がより磐石で安定した方向に向かうのだから。
個人の人格というものに目を向けなくなって親しい。
私の犠牲になった人間達にも、善なる者が沢山いるだろう。友となれた者も沢山いただろう。
こうやって、人として人の中に紛れると、つまらない感傷が湧く。
それでも。
―――その時がくれば、私はヴィヴィオを聖王の揺り籠という祭壇に捧げるのに、微塵の躊躇もしないだろう。
-
「おはようございますっ! なのはさん!」
「スバル、朝練上がり? 精が出るね!」
「はいっ、もう、お腹ぺこぺこです!」
隊舎の食堂に向かう。
いつもの朝。フォワードやロングアーチの面々との挨拶。雑談。
ふと、違和感に気付く。
「あれ、フェイトちゃんは? はやてちゃんもいないし……あ、ヴィータちゃんもシグナムさんも……」
隊長陣がいない。自分を除いた隊長陣の姿がない。
「何か、会議でもしてるのかな?」
隊長である、自分一人を除け者にして?
「さあ、そういう話は聞いてませんけど……たまたま、遅れてるんじゃないですか?」
まさか。いや、十分有り得る話だ。あの狂人の忠告は正しかったのか?
このフォワードの新人達は何も気付いていない? だが、あの一筋縄ではいかない隊長達は?
高町なのはとしての偽装が板につくまでボロを出さないように、高町なのはの幼い頃からの知己である彼女達とは接触を控えていたのだが、仇となったか。
一瞬で数多くの可能性と、その対応策が脳裏を駆け巡った。
「おはようさん、なのはちゃん」
しかし、あっけなく八神はやては食堂に姿を見せた。その後ろには、何時ものようにヴィータとシグナムも控えている。
「どないしたん? 困ったような顔した? 何や、不都合なことでもあったん?」
「いや、何でもないよ。それより、今日ははやてちゃん達はどうしたの? ちょっと遅かったけど?」
「何もあらへんよ。あはは、今朝は寝癖が酷うてな、直すのに時間かかってしもうたんや」
何気ない、会話のキャッチボールの応酬。
歳若いが、八神はやては管理局の子狸と呼ばれる程の人材だ。
気付いていても、内心はどうあれこの程度の会話ならばポーカーフェイスを貫いて見せるだろう。
シグナムも何時もの通りだが、心持ちヴィータの表情が固い気がする。疑い出すと、キリが無いが―――。
「あの……お、おはようなのは」
「あ、おはよう、フェイトちゃん」
振り返ると、青褪めた表情のフェイトがいた。
まずいぞ、これは―――。
隊長陣の中で、一番精神面で脆い面があるのはこのフェイトだ。
特に、彼女の精神的支柱である高町なのはに異変があったとするなら、動揺は隠せまい。
きっと。フェイトは迷っている。私が高町なのはではないかもしれない、という可能性を信じまいとしている。
彼女になら、上手くつけこめるかもしれない―――。
―――私の失策だった。
意図せず、値踏みするような『私』の目でフェイトと一瞬だけ視線を交えた。
びくり、とフェイトの肩が震えた。
青ざめた顔を更に蒼白に変えながらたたらをふみ、「あ、やっぱり……」とフェイトが呟くのを確かに聞いた。
まずい、これは、完全にばれている。
-
「なのはちゃん、夕方6時にミーティング、ええかな?
練習後と夕飯前のギリギリの時間になってしもうてごめんやけど―――」
この女。
新人達には知らせていないのは間違いない。先走った行動を取って返り討ちになるかもしれないからだ。
魔力ランクの制限があるとはいえ、複数のSランク魔導師が戦えば大惨事になりかねない。
隊長陣で囲んで、被害を最小限にとどめて私を捕縛するつもりか―――。
「うん、解った。夕方の6時だね」
にこやかに手を振りながら、まだ用事があるというはやて達と別れて食卓に着いた。
さらば、私の平穏の日々。短いが、決して悪いものではなかった。私の目的は既に達成した。
新たな目標―――と言うべきほどのものではない、次に成すべきことも、朧げながら見えてきた。
「はあー、やっぱりお忙しいんですね、隊長の方々は」
感心したように声をあげるスバルに、声をかけた。
「ねえ、スバル。あなたはこれからどうするの? これからの人生」
「え、これから?―――う〜ん、あたし馬鹿だから、あんまり先のことは解りませんけど。
この機動六課でなのはさんにバリバリ訓練してもらって、一人前になって、救助隊に入ってバリバリ働きたいと思ってます!」
スバルらしい、真っ直ぐな答え。
ふと、数日前に街で出会った若者達を思い出した。彼らと同じ、若さ故に語れる大きな夢。
それを、彼女は弛まぬ努力で着実に実現へと近づけていく。
六課に残るなら、彼女達新人達を全滅させるのも手だと思っていたが、この期に及んでその必要はない。
「そうね。頑張って叶えなさい、その夢を。それで、貴女達のことは許してあげるわ」
普段とは違う私の口調に違和感を覚えたのか、スバルは一瞬きょとんとした顔を見せたが、鼻息荒く大きく頷いた。
「はいっ、頑張ります! ありがとうございます、それから、これからも宜しくお願いしますっ!」
さて、―――この六課の隊舎の朝食は実に気に入っていた。それが少し心残りだ。
ゆっくりとこの食事を味わい、……それから狂人に連絡、撤退の準備だ。
◆
-
以上で、中編終了です。
次回投下の後編で終わりとなります。
投下は明日か、時間がなければ明後日あたりに〜
-
あばばばば! ぐっじょぶぅ、あばばばば!
大概の二次では単なる悪の親玉にされがちな三脳を、よくもまあこんな味わい深いキャラに……
過去回想マジ巧み。
そして遂に訪れる終幕の予感にゾクゾクするわい。
で、またしかしちょい目立つ誤字を。
>>122
個人の人格というものに目を向けなくなって親しい。
親しい→久しい、だよね
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なに? 俺、こんな凄まじいモノ読んでるの?
次回で簡潔というのがにわかには信じられない
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すげえ・・・GJすぎるぜ
なんか俺もSSが書きたくなってきやがった
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>>128
ああ、次はおめえさんの番だぜ、わけぇの。
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今日来た。凄いな。
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いいねぇ、なのはさんメインのシリアスは最近見てなかったし嬉しい限り
もっともこれはなのはさんメインとは言えないか?w
ともあれGJ
-
うぉーすげーとしかいいようが
この手のジャンルは苦手な筈が飲まれたぜ
ただ少し気になったのが、シャッハからなのはの呼称は「高町一尉」じゃなかったっけ?
-
フェイト(幼少期)ネタお願いします
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>>アルカディア氏
お久し、そしてGJ
前編から通して読ませて貰ったが、相変わらず貴兄は凄まじい
どういう形で締めるのか。完結の形を楽しみにしています
>>132氏
多少、フランクな間柄になったのかも知れないじゃないか
一人称ミスってるわけでもなし、あんまりギスギスしてると楽しめるモノも楽しめねぇぜ?
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>>125
GJすぐる
>>134
最後の一行は余計だろ
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>>125
どういう結末に向かうのか目が離せません
ていうか、ドクターが一貫して「狂人」と呼ばれ続けて、シリアスなのにちょっと笑ったw
>>134
ギスギスしてるのは貴兄の方に見えるのだが?
-
投下待ちなのはわかるが、静かすぎて怖いぜ。
なのはさん絡みのシリアスが投下された後だから、夏だし、なのはさんが海辺でキャッキャウフフとはしゃいだり、ラブしたり、恋するが故のエロとか読みたいぜ。
-
でも陵辱がないでしょ!(なのはさん攻め的な意味で)
星光さんでも可
オリジナルのせいか、統べ子はヘタレ受けのイメージあって攻める感じじゃないし・・・
雷刃は本性mでも無邪気に責める感じもある
-
>>138
じゃあ自分は、仕事終わったら某夫婦のイチャラブエロを書こうと思ったが、星光さんと雷刃に二穴責めされる統べ子さんを書くぜいw
いつ書き終わるかわからんがw
-
こんばんは、それでは、完結編投下したいと思います。
『胡蝶の夢・後編』
シリアス中編/半転生・半憑依・半オリ主
NGはトリップでお願いします。
では。
-
『二人で会って話がしたい。あの時の約束、憶えてる?』
フェイトに送ったメールだ。
時刻はミーティングという名目の、私の捕縛計画より幾分前。
新人達への訓練を早めに切り上げた私は、訓練場でフェイトを待っていた。
日は随分傾いてきているが、まだ没するまでには余裕がある。午後の爽やかな青空だ。
ギイ、と背後でドアの軋む音がした。
「良かった、来てくれたんだね、フェイトちゃん」
極上の高町なのはの笑みを浮かべて、軽やかに振り返る。
フェイトは、視線を地に落とし、迷子の子供のように所在なさげに立ち尽くしていた。
どんよりと曇った虚ろな瞳。こんな目をしたフェイトを、高町なのははかつて見たことがある。
まだ二人が敵同士だった頃。プレシア・テスタロッサ事件の最中に母から捨てられた時の彼女の瞳だ。
「どうしたの? 顔色が悪いよ」
うーん? とペタリ、とフェイトの額に手をあて、親友を気遣う柔らかい笑みをその顔を覗き込み。
真一文字に結ばれた、フェイトの唇が震えた。
私は、彼女を元気付けるように、ポケットから細い紐を引き出した。
黒いリボン。高町なのはの宝物。フェイトとの友情の証。
「わたし、久しぶりに思い出したんだ、フェイトちゃんと出会った頃のこと。
あれから、もう10年だよ? 色々あったけど、あっという間だったよね。
ユーノ君と出会ったことで魔法の世界に巻き込まれて、フェイトちゃんと出会って、戦って、友達になって。
それからも、たくさん、たくさんの出会いがあって。
みんなと出会えて、本当に良かったと思ってるんだ―――」
一切の嘘偽りのない、高町なのはの気持ち。
今の私なら。高町なのはという人間を理解できた今の私なら、完璧に彼女を模写することができる。
フェイトは、答えない。
彼女は両手で顔を覆うと、「ああ」と身を裂かれるような悲痛な声を漏らした。
「今になって、やっと、母さんの気持ちが解った―――」
顔を覆った指の間から、搾り出すような涙の雫が滴り落ちていく。
「―――思わなかった。
皮を被っただけの偽者が、ただそこにいるだけでこんなにも許せないなんて―――。
同じ顔で、同じ声で、大切な思い出を汚されることがこんなに悔しいなんて―――。
愛するものと同じ顔をしただけの偽者が、自分の大切な思い出を笑顔で語ることが、こんなにも憎たらしいなんて―――。
思わなかった、考えても見なかったっ!
母さん、私を愛してくれなったはずよね、憎かったはずよね。
やっと、今になって、解った―――」
フェイトの全身を、金色の魔力光を包んでいく。
「あなたは、なのはじゃない。一体、なのはをどうしたの……?」
血のように赤い瞳が、底冷えする程の殺意を持って私を貫いた。
全身からは高密度の魔力が迸り、突きつけられたバルディッシュから紫電が光を放っている。
それは、紛れも無く機動六課最強の一角、フェイト・テスタロッサ・ハラウオンという魔導師の本気の戦意だった。
しかし。
彼女は、全く恐れるに足らない。
「フェイトちゃん、いきなりどうしたの!? 何言ってるのか、全然わからないよ!
変だよフェイトちゃん、まずはお話しようよ―――」
動揺して上げる不安げな声は、高町なのはのそれと全くの同一だ。
僅かに、フェイトの戦意が緩む。
「その顔で、その声で、もう喋らないで! なのはを返して!!」
涙の筋で頬を汚しながらの悲痛な絶叫。
バルディッシュの先端に収束していく魔力の輝き。
魔力制限は既に解除されている。卓越した魔力を保有するオーバーSランク魔導師の威容。
しかし、私も高町なのはの体は任意で魔力制限を解除できるように、狂人によって調整されている。
戦力的には五分の筈だ。
―――勿論、五分の勝負なんて馬鹿馬鹿しいことはしないんだけど。
「フェイトちゃん、最初に出会った時、わたしは全然フェイトちゃんに敵わなかったよね。
フェイトちゃんに勝ちたいな、って思ってたけど、友達になりたい、って気持ちの方がずっと強かったんだよ」
高町なのはの記憶に刻まれた、紛れもない真実の言葉。
「友達になれた時、本当に嬉しかったんだよ―――」
「……黙れ、もう黙って!」
-
武器を手にしながらも、フェイトは指一本動かすことができなかった。
憎み抜いて余りある筈の怨敵を目の前に、得意の高速機動で切りかかることすら出来なかった。
彼女のことは―――知りすぎる程知っている。
機動六課の隊長陣の中で、最もメンタル面が脆弱なのは彼女だ。
気高き意志の強さもった女性だが―――その、心の礎を引っこ抜けば脆くも崩れ去る。
「これからも、フェイトちゃんが傍にいてくれれば、わたしはずっと頑張っていけると思うんだ」
「……もう、やめてよ、お願いだから、なのはみたいな喋り方をしないで―――」
バリアジャケットの展開もしていない丸腰の敵を前に、デバイスを突きつけている筈のフェイトは哀願した。
彼女は、自分の親友を撃つ事など、できない。
「フェイトちゃん、プレシアさんの気持ちが解ったって言ったよね。
……それは違うよ、フェイトちゃん。フェイトちゃんはプレシアさんじゃない。
だって、フェイトちゃん、あなたは優しいから。とても優しいから―――」
さりげなく、微笑んだ。いつも、高町なのはが彼女に微笑んでいるように。
無邪気で、軽快で、親愛に溢れた、掛け値なしの微笑を送った。
「……だから、貴女は絶対に私には勝てないわ、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン」
「―――あ」
彼女は、塗れた瞳で自分の腹部に視線を落とす。
そこには、桃色の魔力刃で形成された杭が深々と突き刺さっていた。
―――ストレージの速度を生かした高速発動による抜き打ち。これといった突出した技能をもたない私の得意技だった。
フェイトはぼんやりとした瞳で私を見上げると、そのままゆっくりと膝から地に伏せた。
血溜まりが、広がっていく。
「命までは取らないわ。これで許してあげる」
正面から戦えば、オリジナルの肉体の持ち主ではない私に勝ち目は薄かっただろう。
しかし、これでまずは一人。
◆
―――突如、機動六課全館に警報が響き渡った。
彼方から押し寄せるガジェット群。私の迎えだ。
「遅かったか。高町と二人きりになることなど無いように忠告はしたんだがな―――」
凛と響く声。ただ一声で、私を討ち倒すことに何の躊躇もないことが判る。
双眸には炎のような美しい怒りを滾らせながらも、殺意は氷のように冷たい。
できれば刃を合わせるのは勘弁したいと思っていた最悪の敵、烈火の将シグナムが、静かに下り立った。
「……シグナムさん」
高町なのはの仕草で、驚愕の声を上げる。
「―――なるほど、その高町の猿真似でテスタロッサを陥れたのか。
確かに、吐き気がするほど堂に入った猿芝居だ。
正直言って、我々も貴様が敵か味方か随分決めあぐねていた。あまりにも、高町らしい行動が多すぎたからな。
だが、もう明確だ。
―――貴様は、敵だ。
テスタロッサは行動は確かに軽率だった。
だがあいつが身を以って確かめたお陰で、私は微塵の躊躇なくお前を両断できる」
その瞳に、フェイトのような揺るぎは欠片もない。
不味い。この相手は私と同じ―――否、私よりも以前から、戦乱の時代を闘ってきた数少ない存在だ。
どうする?
-
「だが、一応聞いておこう。
一体、貴様は誰……いや、何だ?
変身魔法の類ではないようだな。高町なのはが捕縛された時に入れ替わったのは間違いない。
まあ、新手の戦闘機人の類なんだろうが―――」
もう、隠す必要も無い。私は小さく首を傾げて、瞳を細めた。
「さあ、一体だれでしょう? 私に勝ったら、教えてあげる」
「ならばいい。貴様を両断し、死体をシャマルにでも調べさせよう。
―――レヴァンティン!」
『Jawohl. Nachladen!』
シグナムの愛刀が、早々にカートリッジをリロード。これは。一気呵成に攻めてくる。
「一人でいいの? お友達の守護騎士さんたちと主のはやてちゃんを待たなくて」
「皆は主はやてと貴様が呼んだガジェットの群れの迎撃中だ。
ヴィータもお前を叩き潰したがっていたが、あいつも絡め手に弱いところがあるからな。
一刻も早く貴様を刻みたいところだが、最後に聞いておく。
高町なのはは無事か? あいつの人質としての価値を考えると貴様らが殺すとは考えにくいが」
「生きていたらどうするの? 私を殺すと人質交換が成り立たないかもよ」
「そうか、なら命だけは残しておいてやろう。―――後の保障はできんがな」
「貴女一人で勝てると思って?」
「本物の高町ならいざしらず、その皮を被った偽者如きに私が敗れる道理は無い」
そう。一言呟いて、私はバリアジャケットを展開した。
ざらりと流した髪。貫頭衣のような、シンプルで白いバリアジャケット。
手には、レイジングハートを模したストレージ。
高町なのはの魔力量は生前の私を上回っている。高圧力の魔力は制御が難しく、まだ完全には扱いきれない。
だが、やるしかない。
この相手は、魔導師として倒す。
命を賭けた実戦など、どれだけぶりだろう。私から欠け落ちた部分は、高町なのはのスキルを流用する。
私には、まだすべき事がある。どんなことをしても、絶対に逃げ延びる。
「行くぞ」
とん、とシグナムの足が地を離れた瞬間、首筋に怖気が走り大きく空に飛び退いた。
首の皮を掠めるレヴァンティンの刃先。
避けなければ即死だった! 命だけは残しておこう、なんて言いながら!
宙を切った刃を翻し、続けざまに袈裟から斬り下ろす二の太刀を、魔力刃で受け止めた。
フェイトの腹を貫いたのと同様の、桃色の魔力杭。
軋り、と鍔迫り合いの形に入る。
剣技ではシグナム、速度ではシグナム、力ではシグナム。
私が勝る点は―――。
鍔迫り合いの状態、刃と刃を合わせた剣技の勝負。その最中に、今まさに敵と切り結んだ魔力刃を勢い良く射出した。
仰け反ってそれを回避するシグナムに、ここぞとばかりに魔力杭を連射して弾幕を張る。
近接、中距離、遠距離を同じ術式で戦うことこそ、私の戦闘骨子。
それぞれの距離では、専門の魔導師には敵わないだろう。
だが、適切に相手の最も苦手な間合いを見切り、シンプルで速度に優れる攻撃で相手を圧倒する。
しかし、中距離から放たれる魔力杭の連射を斬り弾き、シグナムは餓狼の貪欲さで私の首を狙う。
刹那、ギリギリで展開したシールドがレヴァンティンの刃の圧力に軋みをあげる。
何という達人だ。
次に私が形成した魔力杭は7本、扇形に展開して一気に射出、ここで退かせなければ取られる!
果たして、シグナムは退いた。
魔力杭が掠めた頬から流れ落ちる血をペロリと舐め取りながら、不敵に笑う。
「この戦法、見たことがある、確かに見たことがあるぞ―――何代前の主の時か。
主の命でシャマルが探った敵の映像に、お前が映っていた。
姿形こそ高町のものを真似ているが、間違いない―――。
これは、……聖杭のフロイライン」
「ご名答。嬉しいわ。この時代で憶えてる人が居てくれなくてがっかりしてたところよ。
貴女の事は随分前から知ってるわ。闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッター。
直接的に剣を交えたことは無いけど、貴方達を使役した領主の栄光と凋落は語り草になっていたわ」
「その口ぶり。貴様はフロイラインの亡霊か?
高潔な聖女だったと伝え聞くが。ならば、フロイラインを騙る痴れ者か?」
「亡霊は未練を叫んで人に憑くのが慣わしというもの。
聖釘のフロイラインと呼ばれた聖女はもういない。
ここに居るのは、高町なのはの体に取り憑いた怨霊の類よ」
その一言に、シグナムの表情が一変した。
-
「そういうからくりか。どんなロストロギアを使ったのかは知らんが悪趣味な真似をする。
だが、人に憑いた悪霊は祓われるのが倣いというもの。
私の全霊を持って、貴様から高町なのはを取り返す―――。
……まさか、私がその体が高町のものと知って、剣を止めることでも期待しているのか?
友だからこそ、貴様の凶行は今ここで止めてみせる」
つい、と視線を逸らした彼方には、念話で呼び寄せたのだろう、懸命にフェイトの処置をする救護班の姿があった。
『Schlangeform』
レヴァンティンが形態変化する。ぞろりと鎌首を擡げるガラガラヘビの威容の連結刃。
点と線の斬撃から、縦横無尽に宙を駆け巡り、触れたもの全てを鑢り削る面の攻撃へ。
ピンポイントな面攻撃を主体とする私では分が悪い。
魔力杭の連射。
初速と発射角度を変え、一部には加速設定を施す。
外見は全て同一の魔力杭、しかし魔力濃度はそれぞれ違い、撃墜し易い角度のものは魔力が薄く、最本命には炸裂設定をかけてある。
撃墜しようとしてもその軌道に幻惑され、いつかは心臓を貫く決殺の弾幕。
しかしそれを、
「それで仕舞いかっ!」
鞠のような綾目を描いて回転する連結刃が、全て虚空で消滅させた。
感嘆する程の凄まじい絶技だ。単純戦闘力では、彼女は間違いなく今の私の上を行く。
更に、遠距離から必殺のシュツルムファルケン、あれを撃たせてはいけない。
魔力を全てシールドに回せば、撃墜は免れるかもしれない。だが、その後間合いを詰められてしまえばお仕舞いだ。
高町なのはとレイジングハートなら、あるいは拮抗が可能かもしれない。
彼女の魔法の術式は解読済み、模倣することなら可能だ。
しかし、高町なのはの劣化戦術では確実に取られる。
ならば―――。
「流石、噂に名高い烈火の将シグナム。ならば、私も奥の手を見せてあげる」
この手の決闘馬鹿を打ち倒すには、奇策に限る。
「―――ギガンチウム」
魔力刃が、ぱっくりと裂けた。二本、四本とデバイスの先端で魔力杭が増殖する。
やがて、巨大な栗のイガのようにびっしりと増殖した魔力杭がずらいとデバイスの先端を取り囲んだ。
猛毒の海栗のように刃先に魔力をみなぎらせ発射を待つ。
上下前後左右360度、一切合切を破壊する魔力杭の全方位射撃。私の切り札だ。
「散りなさい」
空に咲く花火のように、魔力杭が一斉に飛び散った。
柔靭にしなる連結刃でさえ、その全てを撃墜することは不可能。
生き残るには、強固なシールドの中に身を包み、亀のように耐えるしかない。
―――筈、だった。
「成る程、全方位射撃か。しかし、厳密な意味での全方位攻撃は存在し得ない」
声が。
背後から、首筋が粟立つほど底冷えするような声が投げかけられた。
首筋に、冷たい刃の感触。
「全方位360度と銘うっても、使用者の背後だけは、必ず空白になる」
攻撃形態を見てとるや否や、一瞬で連結刃を解除し、高速機動で背後に回りこんだのだ。
なんという速度と決断力。
揺ぎ無い首筋に突きつけられた刃が、指一本動かすことを許さない。
シグナムは冷酷に告げた。
「詰みだ」
私は安堵の溜息を一つ。
「―――貴女のね」
「……ッ!?」
背後故、シグナムの表情を見ることは出来なかった。
それでも、その驚愕と衝撃は十分に感じ取れた。
背後から、地獄の底から響くような怨嵯の声が。
「……貴様、高町の体に―――」
首筋からレヴァンティンの刃がずれる。
私は、己の腹部を貫通して背後のシグナムを串刺しにした魔力杭を、ずるりと引き抜いた。
私とシグナム、二人分の血に塗れた魔力刃が消滅していく。
-
「痛い、痛い、ああ痛いわ……」
シグナムが私に刃を突きつけた時、既に魔力杭の構成術式は完成していた。
ストレージを使用しての高速発動こそ、何よりの私の切り札。
勿論、シグナムがあのまま有無を言わさず私の頭を切り落としていれば、私は何一つ出来ずに敗北していただろう。
……重要臓器は避け、傷口は最小限にしたのだが、どうにも耐え難い激痛だ。
こんな時は、肉の体が少し恨めしい。
「……よくも、高町の体を―――」
振り返る。シグナムは、心臓付近を突かれて瀕死の重傷に喘ぎながら、憎悪の瞳で私を睨み付けた。
「貴様、恥ずかしくないのか……そんな、誇りの無い戦い方をして」
「貴女にこそ判らないわ。最初から戦いの道具として作られ、誇らしげに剣を振るった騎士サマには。
どんなことをしても、生き延びるために戦わなければいけなかった弱者の想いなど。
―――弱くなったものね、ヴォルケンリッター。
闇の書の騎士をして悪名を馳せた貴女なら、躊躇なくこの首を刎ねていたでしょうに」
血を吐きながらも、唇を吊り上げシグナムは壮絶に笑った。
「貴様に解るまい。友を得て、我らがどれだけ強くなったかを―――……」
静かに、烈火の将は墜ちていった。
遥かな過去、闇の書の守護プログラムとして創造され、八神はやてという主を得て人としてこの時代を生きることを得た彼女。
その壮絶な歩みは想像して余りある。
高町なのはは彼女の友であった。しかし、なまじ同じ時代を知ったものだからか。
私は、彼女とは相容れない。きっと、向こうもそうだろう。
分かり合えることの出来ない相手。それでも。
「私の、勝ちよ。この一刺しで許してあげるわ」
シグナムはまだ生きている。次は念入りに私を取りにくるだろう。
だが、とどめを刺すより、離脱の方が先決だ。すぐに、次の追っ手がかけられる。
次に来るのは紅の鉄騎辺りか。到底、今の状態で戦える相手ではない。
喉元に逆流しそうになる血液を飲み込む。
随分大きな代償を支払ったが、彼女を打倒するにはこれしかなかった。
高町なのはの肉体を前に、彼女は撃墜に先んじて投降を呼びかける、一度は必ず刃を止める。
その確信があったから可能な、危うい賭けだった。
「……行かないと」
傷口の応急処置をして、痛みに顔を歪めながらも空を飛ぶ。
狂人の元に帰還する前、もう一箇所だけ行っておきたい場所があった。
激痛と嘔吐に襲われ、眩暈さえ感じながらの決死の飛行。
太陽は随分と傾き、空の青はくすみを見せている。
何故だろう。
その中で、私はかつてまどろみで見た夢のように、奔放に、縦横に、爽快感さえ感じながら空を翔けていた。
◆
寝室に入ってきた部屋の主は、開け放たれた窓を目にして足を止めた。
確かに施錠してあったはずの窓は全開になり、薄いレースのカーテンが夜風に頼りなく揺れている。
まぎれも無い、賊の侵入の証。それを目にして眉一つ動かさないとは。
一線を遥か昔に退いたとしても、元高ランク魔導師としての貫禄は健在のようだ。
彼女は、ゆっくりと冷静に状況を判断している。
賊が他の部屋に移った様子は無い。この寝室を物色した様子も無い。
ならば、賊は侵入してきた窓から、そのまま遁走したのか?
否だ。
彼女は、翻るカーテンの向こうの闇を―――否、私を見据えて、静かに口を開いた。
-
「何方かは存じませんが、出てこられてはいかがかしら?
ご用があるなら玄関からおいで下さりたいのだけど。改めて表に廻るのもご面倒でしょう?」
老いてなお矍鑠とした仕草、良く通る声。
彼女の胸に光る一粒の宝珠に、私は目を細めた。
「ええ。こんな時間にこんな場所から失礼するなんて。非礼をお詫びするわ。
のっぴきならない事情はあったのだけど、貴女とはどうしてもお話したかったの。
―――そのお守り、まだ持っていてくれて、嬉しいわ」
首筋から下げられたペンダント。亀裂が入ったデバイスコア。私が始めて手にしたインテリジェント。
私はゆっくりと、カーテンの陰から姿を現す。
「―――貴女は……、どうして……?」
時空管理局黎明期の功労者として伝説になっている三人の一人。
本局統幕議長、ミゼット・クローベルは、今度こそ驚愕に目を丸くした。
「ごめんなさいね。本当はもう随分違う姿をしているんだけど、この姿が一番話し易いと思って。
お久しぶり、ミゼットお嬢ちゃん。何十年ぶりかしら?」
窓ガラスに映る私の姿は、彼女に勝るとも劣らない皺くちゃの老婆のそれだ。
即席の変身魔法はいつまで保つか分らないが、まあ、彼女と昔話をする程度は保てるだろう。
ミゼットの表情が、驚愕から猜疑の色を帯びる。
当然だろう。死人が墓穴から這い出して目の前に現れれば、誰だろうと存在を疑うのは当然のことだ。
「……私が在職中に、根も葉もない流言飛語を幾度も耳にしたわ。
管理局の運営に、貴女達が裏から関与しているって。
事実、管理局の歴史の中で、何か計り知れない大きな意志が働いているとしか思えないような出来事は幾つもあった。
―――でも、まさかそれが本当だったなんて」
「あら? そんなに簡単に私が本物だって信じてくれるの?」
「ええ。まだ半ば信じられないことだけど。
貴女の姿は、私が初めてお会いした時のまんま。
まるで、私の思い出の中から抜け出してきたかのようだわ。
初めてお会いした時、貴女はもう随分のお歳の筈だったのだけど。
それでも、美しかったわ。しゃんと背筋は伸び、目は真っ直ぐ前を見据え、ゆっくりだけど足取りは確かで。
貴女のような気高く美しい女性を、初めて見たの」
ミゼットは、胸元のペンダントを撫でながら、遠い目で開け放たれた窓の外を見た。
少しだけ、照れくさい。
「私も、貴女の事は良く憶えてるわ。
キラキラ輝く綺麗な目をした小さな女の子。お転婆で、負けん気が強そうで、にっこり笑う顔が可愛くて。
あの時は可笑しかったわ。まだ乳歯も生え変わっていない女の子が駆けてきて、
『どうしたら、お婆さんみたいになれるんですか』って聞いてきたんですもの」
「そしたら、貴女は笑いながら頭を撫でてくれて言ったわね。
『小さい女の子がお婆さんみたいになりたい、なんて言っちゃいけない』って。
『まずは立派な大人になることを目指して、やりたいことを好きなだけやりなさい』って。
『お婆さんになったら、楽しかった昔を思い出すことしかできないんだから、今を思い切り楽しみなさい』って。
そうして、お守りだと言って、このペンダントをそっと首にかけて下さったのよね」
ミゼットの指先で、もう動かないデバイスコアの残骸が輝く。
お父様が私に残した未練の欠片。
「やりたいことは、好きなだけできた? 思い切り楽しめた?」
ミゼットは、老いた顔を皺くちゃにして笑った。その昔見た、少女のような笑顔だった。
「ええ。やんちゃばかりしましたわ。
上手くできたことも、失敗したことも、楽しかったことも辛かったことも沢山あったけど、私のやりたいことは好きなだけやったわ。
ここまでやっていいのか、ってぐらい、それはもう好き放題やったわ」
「満足してる?」
「ええ。まだやりたいことが無い、と言えば嘘になる。思い残すことが無いと言えば嘘になる。
でも、私の出来る限りのことはやりきったっと思ってるわ。
……後の事は、次の世代を担う子供達がやってくれるでしょう。
貴女の言った通り、今はもう、こうやって楽しかった昔を思い出して余生を過ごしてるわ」
その言葉が、聞きたかった。
「貴女はどうなさるの、フロイライン?
これからも、誰にも知られずに戦いを続けるのかしら?
……嘘つきね。貴女はお婆さんになっても、何一つ投げ出すことなく、今までずっと続けていたなんて」
-
「私は……さて、どうしようかしらね」
「ふふ。いつまでもこんな所で立ち話というのも何でしょう。
そこに座って下さいな。今、お茶を淹れてきますから」
「残念だけど、もう行かなければならないの。ごめんなさいね、お休みの邪魔をしてしまって」
「……フロイライン」
「さようなら、ミゼット。貴女が優しい夢の中で眠れることを祈ってるわ―――」
窓枠に手をかけ、一気に宙に身を投げ出した。最後まで無作法ではあるが、勘弁してもらおう。
たちまちにミゼットの屋敷が遠ざかっていく。
ミゼットは、窓際で静かに手を振っていた。
疑わしいところもあっただろう。尋ねたいこともあっただろう。
それらを押し殺して、ただ昔話に興じてくれたミゼットに、心の中でそっと礼を言う。
変身を解除、私は腹部から血を流す高町なのはの姿に戻り、一直線に加速する。
さあ、私の最後の仕事だ。私のやりたいことを、やりきろう。
◆
『お帰りなさい、フロイライン。どうです、休暇は楽しんで頂けましたか?』
狂人の通信が私を出迎えた。
「ええ、存分に」
『ところでフロイライン、お気づきですか? 貴女をつけて六課の魔導師が迫っていることを』
とっくに気付いている。まだ追いつかれる気配は無いが、紅の鉄騎が鬼の形相で私を追撃してきている。
このまま帰還すれば、数多くの施設や私達の本体が存在するラボの位置が丸裸にされるだろう。
「ええ、でも倒してしまえばいいことじゃない?
そちらでも、この間高町なのはに破壊された機人の修復が進んでいるんでしょう?」
『頼もしいお言葉ですね、流石はフロイライン。
沢山の情報だけではなく、計画の障害となるSランク魔導師を二人も排除していただけるなんて。
いやはや、これが歴戦の兵の力かと感服しておりますよ』
「詰らない世辞はいいわ。それよりも、私、もう一つやり残したことがあるのだけども」
『おや、何か心残りがお有りですか? 空を存分に飛べたのではなくて?』
「ええ、存分に空は飛べたわね。―――もう一つ、出来てしまったのよ。やりたいことが」
通信機越しの狂人の声が喜色を帯びる。
『ほほう、それは興味深い。欲望こそ人を人たらしめる原動力。
さて、フロイライン、貴女の新たな欲望とは一体何でございましょう?』
通信を断絶する。鬱陶しい狂人の声が消える。
私はぽつりと呟いた。
「―――大暴れ」
狂人にから預けられていた端末を取り出し、用意していたプログラムを走らせて投げ捨てる。
既に、私と高町なのはの肉体リンクを断絶する手段を狂人が持っているのは確認済みだ。
あの狂人は間違いなく稀代の天才、それはそのようにあの男を作製した私達が誰よりも知っている。
しかし、私達本体への介入権限は何重ものプロテクトに守られている。
狂人はそれすらも通過して、自分に疑惑をかけないように私達を操作していたが、完全に制御できるわけではない。
私は、一時的に肉体リンクのプログラムを奪取する準備を行っていた。
勿論あの男の技術を持ってすれば、奪い返されるのは時間の問題だが、一定時間は持つ筈だ。
……私達の本体が物理的に破壊されてしまえば手も足も出ないが、そんな暇はないだろう。
私と、紅の鉄騎という二人を相手どるには、現在の狂人のラボは些か戦力不足の筈だ。
「起きなさい、レイジングハート」
『―――Please return my marster』
呆れてしまう。起動して早々にこれとは、随分と主想いなデバイスだ。
「いいわ、貴方のご主人様を返してあげる」
『……Really?』
「ええ。その代わり、少しの間でいい。私の指示に従いなさい」
『……All right. I'll follow your instructions』
「決まりね。少しの間だけど宜しくね、レイジングハート。
早速だけど、大きいの行くわよ」
『Divine Buster』
-
腕にびりびりとくる、強力な砲撃魔法の反動。
狂人のラボの横腹に大穴を空け、一直線に飛び込んだ。
警戒装置やガジェットの配置は熟知してある。
―――腹部の傷が痛む。簡単な治癒魔法は施してあるが、長くは戦えまい。
それまでに、ガジェットの製造プラントやデータバンクなどの重要拠点を、破壊できるだけ破壊する。
と。私の突入点よりいくらか離れた場所で、大きな破壊音が。
「何処に行きやがったタコ野郎! 出て来やがれ、なのはの体返しやがれ!
ここがテメエのアジトってわけか! いいぜ! テメエが見つかるまで滅茶苦茶にぶち壊してやる、真っ平らにしてやるぜ」
有り難い援軍が来た。現在の戦力としては彼女の方がより脅威だ。
ガジェットの多くはあちらに向かい、こちらが手薄になる。あとは、限界までこの破壊道中を繰り返すだけだ―――。
◆
「ただいま、我が同志達」
そうして、私はこの旅の終着点に辿り着いた。
暗く湿った地の底、管理局の最暗部。
暗闇に並ぶ三本の筒状の培養槽。思えば、情報としては知っていたが、この目で見るのは初めてなのだ。
これが、今思考している私自身なのだ。……少しだけ、新鮮な感じがする。
スピーカー越しに、同胞達の声が響いた。
『お帰り、我が同士。ふむ、肉体を得て休暇に出かけていたとは聞いたは、これは何の真似かね?
君が我らの理想を裏切るとは、にわかには信じ難いがね。
何しろ、君は我らの中でも最も純粋に、小さな快楽さえ拒絶してただ只管に理想へと邁進していたのだから』
『理由をお聞かせ願いたい。貴女が何の理由もなくこんな暴挙に出るとは考え難い』
予想していた通りの問いかけ。彼らとは長い、途轍もなく長い時間を過ごしてきた。
互いの思考ルーチンなど、とうに知り尽くしていた。相手がどんな場合に何を考えどのような結論に達するか。
その全てを自分のことのように想像できる。そう、丁度今の私が高町なのはの記憶を自在に覗けるように。
「大いなる誤謬に気付いたからよ」
『誤謬?』
「そう。貴方達、あの狂人、ジェイル・スカリエッティが離反するという可能性を考えたことがある?」
一拍おいて、呵呵大笑する声がスピーカーから流れた。老朽化したスピーカが音割れしてノイズが混じる。
『そうか、そういうことだったのか。操作していたつもりが、我々はあの男に操作されていたというのか』
『これは由々しき問題だ。我々の判断基準は入力される電子情報のみ。
その初期値が誤っていたのなら、我々の演算の結果は全て無意味なノイズと化す』
「その通り。あの狂人はかなり早い段階から私達の演算の判断基準のなる情報を改変していた。
アインヘリアル構想、聖王のゆりかご、私達の進めてきた計画も、全て何の保障も無い子供の夢想と同様なものに墜ちた」
『して、君はどうするのかね?』
『この通り、我々は入力される電子情報しか判断基準を持たない。
しかし、貴女は違う。今肉の体を持って世界を見た貴女のみが、我々とは違う判断を下すことができる』
その通り。それが解っていたこそ、ここに戻ってきた。
長年連れ添ったきた同胞達に、その答えを告げ、実行することこそ、私の最後の務め。
「終わらせようと思うの。私達の計画は、私達の役目は、これで終わりよ。
今、一時的に私は狂人の支配を脱しているわ。でも、それも時間の問題。
私の離反が明らかになった今、狂人は私達を始末するでしょう。
―――あるいは、完全な傀儡として操作するかもしれない。
だから、私の手できっちりと幕を下ろそうと思うの」
『ふむ、して、その根拠は?』
「勘よ。肉を持った人間ができる究極の判断。憶えているでしょう?
どんな綿密な計画を立てていたとしても、最後のギリギリの部分、どうしようもなく切羽詰った時には、誰でも直感で判断を下していたわ」
スピーカーから漏れる、くく、と楽しげな笑い声。
思えば、彼らの笑い声など、どれだけぶりに聞いただろう。
ただ延々と演算を続けるのみの日々だった。計画に必要ない雑談など、一切行いはしなかった。
『なるほど、それも一興か。ああ、懐かしい。何かに興が乗るなどという感覚を思い出したよ』
「賛成してくれるの? 貴方はどうかしら、議長?」
『最早我々にできることはない。貴女に従おう。全会一致で可決とする』
計画遂行の意志こそあったが、私達からは単純な生存欲求というものは消え失せている。
彼らはあっけない程簡単に、私の荒唐無稽な提案に賛成してくれた。
大切な同志達に、伝えておかなければいけないことがあった。
-
「肉の体を以って、現在のミッドチルダの街を歩いたわ」
『ほう?』
「誰もが平和に現を抜かしていたわ。
高々100年前の戦乱の世など何一つ知らずに、のうのうと暮らしていた。
美食に耽り、荒唐無稽な夢を語って平和ボケして生きていた。
誰一人、私達の名前を言えるものさえいなかった」
『くくっ、それで、君はどう思ったのかね?』
「歯痒かったわ。口惜しかったわ。でも―――嬉しかったわ。
これでいいのよ。こんな何気ない平穏の日々を求めて、私達は戦ってきたのだから」
―――そう。そうだった。
戦乱の日々の中、ふと空を見上げることがあった。
もう、遥か彼方の私のお屋敷。きっと、もう跡形もないだろう私の楽園。
でも、この空の向こうが、あの優しかった日々に繋がっている気がして、私は空を見上げたものだった。
空を飛ぶ夢を見た。でも、私は空を飛びたかった訳ではなかった。
ただ、あの日々に戻りたかっただけなのだ。
平穏で幸せな一日を過ごし、静かで安らかな眠りにつくという日々に。
『真の健康とは、病が癒えた状態ではなく、病を意識しなくなった状態であるということか』
『日出而作 日入而息 鑿井而飲 耕田而食 帝力何有於我哉。
―――無為の政治こそ、我々が目指した終着点だったな。あの頃は、到底実現不可能な夢物語だったが』
「鼓腹撃壌という奴ね。高町なのはの出身世界の故事だわ」
そう、悪夢と敵に怯えて眠ることさえ出来なかった私は、この世界で高町なのはとして安眠することができた。
朝日に目を擦りながら夢に想いを巡らし、時に娘を胸に抱き、公園のベンチの上でさえ―――願ったとおりの眠りに就く事ができた。
私の願ったことは、とうに叶っていたのだ。
『それにしてもいいのかね。機動六課の側につくという選択肢もあっただろう。
スカリエッティの企みに気付いて尚、我々の有用性を誇示して交渉することも可能だっただろう。
あの頃とは比較にならないほど平和になったとはいえ、この次元世界はまだ多くの戦乱の火種を残している。
君は、ここで終わりにして心残りは無いのかね』
「いいのよ。私達は出来る限りのことはやった。後は―――次の世代に任せましょう。
正しいか間違っていたかを裁くのは、後の人間の仕事。
この世界は、今この時代に生きている人間が作るべきだわ」
『それにしても、貴女の行動には今一つ一貫性を感じられない。
機動六課の魔導師を倒したと思えば、このラボを徹底的に破壊したりする。
貴女は、一体どちらが正しいと思っていたのかな?』
「どちらでもありませんわ、議長。
最初から決まっている正しさなんてない。
それは、双方が互いの信念をぶつけあって作ればいいだけの話。
―――もっとも、この両者がぶつかれば、悲惨な闘争となるのは間違いないわ。
だから、戦いの規模が小さくなるように、両者の戦力を適度に間引いておいたのだけど。
勿論、それも正しいという保障は全く無い。言ってしまえば、全くの思いつきね」
フェイトとシグナムを倒した時、高町なのはの記憶をもつ私の一部に痛みを感じた。
長い時間と手間をかけて用意してきた施設を破壊してきた時も同様だ。
しかし、最後ぐらいは派手に行こうと思って。
『酷い人だ、君は全く酷い人だな、フロイライン。
私は、そもそも君の理想の賛同者でも何でもなかったのだ。
ただ、君の活動が私の利になるからと近づいた商人だったのに。
それが、何時の間にか君の同士に引き入れられ、こうして最高評議会の書記などをやっている。
君は聖女だの救世主だの呼ばれていたが、随分と我侭で傲慢な女の子だったよ』
「あら、傲慢じゃなければ、世界を変えようなんて、馬鹿げたことを始めようとは思いませんわ。
強引に引っ張りこんでしまって、随分ご迷惑をおかけしましたわね。でも、貴方がいてくれて良かった」
『何、私も青かった頃は君たちの起こす奇跡のような進撃に心躍らせたものだよ。
私こそ礼を言おう。この奇妙な人生も悪くなかった』
「貴方にも心からの感謝を。随分と永い間私に寄り添って支えてくれましたね。
議長―――いや、親衛隊長さん」
『貴女がこうして人生の終わりに安らぎを得ることが出来たことを喜ばしく思います。
私の全ては、それで報われました』
レイジングハートの先端に光が灯る。
ここは狂人の違法研究のラボの深奥だ。濃密な魔力がそこかしこから漏れ出している。
収束された光は、薄暗い光の底を真昼のように照らし出した。
桃色の魔力光、なんて美しい―――。
「―――ありがとう」
『Starlight Breaker』
そうして、全てが光に呑まれて消える刹那の狭間―――。
-
……――――――
……―――――
……―――
……お布団の中で、私はぱちりと目を開いた。
お手洗いに行きたくなったわけでもない、怖い夢を見た訳でもない。
ただ、何となく目が覚めてしまった。
夢は―――見ていた気がする。ええと、どんな夢だったっけ?
目蓋が重い。もう一度、眠ろう。
あんまり夜更かししているのをメイド長さんに見つかったら、大変なことになってしまう。
お布団は今日も暖かいし、隣には大好きなお人形さんもいる。
明日も、きっと楽しい一日が待っているだろう。
出窓のカーテンの向こう側には、綺麗な月と星が輝いている。
胸元までお布団を引き上げ、そっと目を閉じた。
あ、夢の内容を思い出した。
高町なのはという魔導師に私がなった夢だ。
不思議な夢だった。
そこでは、私はエース・オブ・エースよ呼ばれ、沢山の仲間に囲まれて戦いの日々を過ごしていた。
沢山の出会い、沢山の別れ。激しい戦いの中で理想を目指す日々。
目を閉じる。
意識が、優しいまどろみに落ちていく。
次は、どんな夢が見れるだろう。
眠りに落ちるその瞬間、ふと私は思った。
高町なのはも見たのだろうか。
―――古の最高評議会の一人、聖杭のフロイラインと呼ばれた女になった夢を。
―――胡蝶の夢・END
-
投下終了です。急ぎ足で面倒くさい話でしたが、お付き合い頂いた皆様、ありがとうございました。
突発的な思いつきで書いた話なので、次こそ伊達眼鏡に戻りたいと思います。
余談ですが、フロイラインの魔力杭は、某サキエルっぽいイメージで考えてます。
ついでに。シガー氏が紹介されていた、
>>59のIRCチャット、私もたまに参加させて頂いてますので、便乗してお勧めしておきます。
ではでは。
-
>>151
GJでした。
脳味噌三人衆を好きになりかけたぜ……。
っていうか大好きだああぁぁぁ!
そして伊達眼鏡も楽しみにしてます。
-
>>151
乙でありました。
ミゼット婆ちゃんに心奪われましたw伊達眼鏡もお待ちしております。
-
うん、やっぱり面白かった
ちょっとこれから保管庫に行ってアルカディア氏の作品を貪り読んでこよう
-
>>151
お疲れ様でした、そしてGJ!!
いやもう、目が潤んでしかたない。この筋道なら彼らも救われることでしょう……
贅沢を言うなら後日談が見てみたいところですがっ
-
投下しても良いですかね?
はじめてなので、やり方を確認した後に30分後にテキスト落とします。
-
投下大歓迎
-
では、投下させていただきます。
『スイートホーム』
超短編、ライトエロ、グリ×ルキです。
-
『あ、グリフィスくん、お帰り』
『ただいま、ルキノ』
『ちょっと待っててね、いま夕食作ってるから』
『今夜はシチューか。おいしそうだね。でも……』
『やんっ』
『こっちの果実を食べたいかな』
『ちょ、グリフィスくん。待っ、あんっ』
『待てないよ』
『あんっ、ちょ…コッ、コンロの…ひっ、火を消さなきゃんっ』
カチン
『これで僕だけに集中してくれるね、ルキノ』
『あんっ、グ、グリフィスくん、強引なんだから』
『ルキノが可愛いのが悪い』
『そう言って誤魔化すんだから……』
『本当のことだから仕方ないだろ。ちょっと可愛がっただけで、こんなになっちゃうんだから』
『それは……グリフィスくんに触られると気持ちいいんだもん……』
『じゃあ、もっと気持ち良くなってもらいましょうか』
『あんっ、ちょっと待って。後ろからはイヤ』
『ふふふ。確かにディナーは食卓で味わうものだよね』
『…来て、グリフィスく……グリフィス』
『ああ、行くよ。ルキノ……ぐっ』
『あふっ、おっ…きい……グリフィスでいっぱい……』
『ああ、ルキノのナカも温かくて気持ちいいよ』
『アンッ』
『もっと行くよ』
『アッ、アッ、アッ、アンッ………』
『ルキノ、ルキノ、ルキノ、ルキノ』
『グリフィス、グリフィス、グリフィス、グリフィス』
『いくよ、ルキノ』
『きて、グリフィス』
『『あっ』』
「グリフィスくんも、なかなか立派になったわね」
「そうね。クロノくんとエイミィちゃんみたいに、体の相性も良いみたいよ。初めてで、最後までいけたみたいだし」
「それは安泰ね、レティ」
「うーんと孫バカになるんだから。リンディ、あなたみたいにね」
「なぁ、ヴェロッサ査察官。これって盗聴やんな。ええんか?」
「十分に盗聴だけど、僕は管理局の女傑二人を敵に回したくはないね」
おわるよ
-
>>159
管理局の女怪恐るべし…
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>>159
甘クサイセリフを吐くグリフィスに噴いたw
>>160
女怪いうなwあの老けなささは化けも………あれ?外が水色だったり、金色だったり、濃いピンクなのは何(ry
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アルカディア氏ぐっじょぶ、超ぐっじょぶ。
まさかこういうオチがくるとは……
前編の〆方から絶対にバッデエンドになると思ってたから良い意味で裏切られました。
しかし、そうか……本当に欲しかったのは失ったあの安らぎの日だったのかフロイライン。
最後に見た情景が夢にしろ現にしろ、幸せな安らぎを得て良かったな、フロイライン。
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>>151
本当に後編で終わるんだろうか・・・・と思っていたらこうきましたか。GJ
ただしいて言うならなのはさん(本物)やフェイトさんたちがこの後どうなったのかの後日談などが読みたかったです。
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全裸待機していたらガチシリアスなお話が来て、慌てて服を来たでござる。
>>151
GJ。ただただGJ。
お疲れ様だったフロイライン、それに親衛隊長さん。
股関ではなく目頭が熱くなったのも久々な気がするよ。
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誰もいないな……
なのはさんとフェイトさんの部屋に仕掛けた盗撮用カメラを回収するならなら今の内…………
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おいおい、俺にも見せろよ?
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>>165
止めろ! それは罠だ!!w
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たまたま人質にできたイクスやヴィヴィオ達を使って聖王教会のシスターや騎士達で様々なプレイをしたい
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1000年以上蓄積されてきたベルカ式調教術のヴェールが明かされるわけだな
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>>165
なのはさんに踏まれてアンアンしているフェイトさんが映っていた場合>周囲が金色に
フェイトさんに後ろを攻められてアンアンしているなのはさんが映っていた場合>周囲が桃色に
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>>165
二人がユーノに攻められてアンアン言ってた場合>チェーンバインド
二人がユーノとクロノに攻められてた場合>バインド+エターナルコフィン
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ユーノがなのはの制服(下着込み)でザッフィー(ビーストモード)にアンアンいわされてたら…
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>>165
股間に何か生やしてママたちをアンアンさせている聖王陛下が映っていた場合>周囲が虹色に
愛娘(幼女)をアンアンさせているママたちが映っていた場合>周囲が桜色と金色に
>>172
しかも、それが聖王陛下なヴィヴィオの命令だとしたら………胸が熱くなるな
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>周囲が虹色
モルボル?
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そういえば聞いたことがある
ヴィヴィオのパンチは魔力が溢れ出て、その魔力光の軌跡が虹をえがくと
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>>171
ユーノが二人に攻められてたら?
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周りが桃色とかでふと疑問に思ったんだけど、アインハルト・リオ・コロナ・トーマの魔力光は何色なんだろ?
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>>177
個人的に
リオ→赤か緑
コロナ→ピンク
なイメージ
アインハルトは魔力行使するシーンがないが、髪色と同じイメージが何故かある
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サイファー姐さんに筆おろしされるトーマはまだか
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トーマの能力が魔力結合や生命活動エネルギーの分断とわかったけどエロには役立たんな。
今日ブレイブルーの小説と一緒に買ったせいか俺の中のトーマ像が段々ラグナみたいに擦れていってるんだが、今後的にはトーマが一人旅で管理局と対立しそうだし
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>>171
二人とユーノがクロノに……
と素で読んでいたorz。
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業務連絡です。
遅くなりましたが105スレの保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。
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>>182
乙です
いつもありがとうございます
>>181
一瞬自分もそう読んだがw
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>>176
ユーノ「や、やだ、二人とも止めてよ!離して!」
なのは「ぐへへへへwここは強力な結界が張られてるからいくら助けを求めても無駄なの♪」
フェイト「ハァハァ・・・可愛いよユーノ・・・私、もう我慢出来ない!」
な・フ「いっただっきま〜す♪」
ユーノ「い・・・いやぁああああああッ!!」
こうですか?わかりますん
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>>182
おつかれさまです
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>>184
はやて「………………………………」
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>>186
相変わらずサブキャラ扱いの八神部隊長であった。
いや、ホントどこでもそんな感じ。
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>>187
あつかい的に星光・雷刃と闇統に通じるものがあるな
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クロノやユーノもサブキャラ扱いだがここでは輝ける……
はやては口調も扱いにくい原因ではなかろうか。一人称トラップとかあるし
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>>189
でも、そんなはやてちゃんが大好きです
いじめたくなる程度に
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ユーノとクロノはただ単にわかりやすい、女キャラをアンアン言わせる棒役なだけだがなw
部隊長は口調が難しい上、鉄板扱いされる男キャラがいないからな………
絡む男キャラの数はなのはとフェイト以上に多い
だが、大概他の女性キャラが鉄板扱いのキャラばかり
ザフィーラ→お犬様扱い
クロノ→公式で妻がいる上に、フラグ乱立でフェイト・なのは・カリム等の相手として目される
グリフィス→仕事上での付き合いしか描かれない上に、相手はシャリオかルキノという扱い(最終的にルキノと結婚)
エリオ→グリフィス同様
ヴェロッサ→中の人が他作品で演じているキャラのせいでガチホモ臭がしないでもない
ゲンヤ→男やもめな上、娘たちの相手役として人気
原作では仕事と結婚している状態だし…………仕方なくもなくもない…
>>188
星光&雷刃と統べ子さんじゃなくて、星光さんと雷刃&統べ子さん状態じゃね?
星光さんはビジュアル面でもキャラクター面でもわかりやすく、創作しやすいが、
雷刃はビジュアル面で描くのがめんどくさい、統べ子さんは口調が気を抜くとどこぞの慢心英雄王になったりとで………
ということで、八神部隊長と統べ子さんはいただいていきますね
-
はやての鉄板ネタは枕営業ネタだと思うんだが、同人でも、ここでもあんまりないよなぁ…
stsで変身シーンがなかったのは身体に「牝犬」だの「淫売」だのエロい入れ墨があるとか
下の毛永久脱毛されてて、ピアスとか入れ墨入ってるとか
いろいろとあるのに勿体ない
-
>>192
車椅子「……」
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>>191
ヴァイス「・・・」
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>>192
枕営業ネタはエロが目的じゃなくて手段だからメインにはしにくいというか…
はやての口調は少しこてっとしてるからなあ
ネイティヴな関西人でもかなり迷うと思う
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>>192
見かけに関しては変身魔法がある世界だからなぁ……
しかも、ここでや小説同人誌ならともかく、マンガ同人誌で刺青ネタとなると、ミッド文字かベルカ文字を書くことになっちゃうし
そういった刺青やら何やらを変身魔法で隠しているところをクロノ提督にストラグルバインドで無効化され
言葉でも身体でも淫らに責められるはやて………なんて電波を受信した気がするがきっと気のせい
>>194
ヴァイスハブを気にするなら、はやてのデバイス作成に関わったのにハブにされた司書長を気にしてやれw
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>>195
はやては大阪弁やなくて、植田弁やからねぇ。
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京都弁に近いと聞いたことがるような
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しかし管理の方は大変だ… 今回まとめに登録出来たのって前スレじゃなくて前々スレなんだよな
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はやてと統べ子はなんだかんだで立ち位置は近いような気がする。
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管理局幹部「君は、理想の実現の為なら何でもできるよね?」
はやて「つまり、私が脱げばええんですか?」
管理局幹部「嫌なら、別に構わんのだが?」
はやて「分かってます、やれば、やればええんでしょ………」
レジアス「貴様ら、何をしてる!?」
管理局幹部「レジアス中佐!?いや、これは………」
レジアス「言い訳無用!八神貴様も貴様だ!何をやってるか!?」
はやて「ごめんなさい、ありがとうございます…………」
レジアス「馬鹿が!こんなことで泣くぐらいなら、そんな無理をするんじゃない!」
なんか唐突に思い出したんだけど、昔こんな感じのSSがあったなぁ………
この続きは投下されなかったと記憶してるが、続きがあったなら見てみたかったな
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今こそ立ち上がれ自称7人目(リインⅠ、Ⅱもカウント)のヴォルケンリッター(詰まる所、おれら)ってことか、この流れは?
何作品か後にははやて祭りがくるとちょっと予言してみる。
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レジなの、ならぬ、レジはやとな!?
いやいや、さすがにない……と思わせておいて、あり?
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さて、なぜ俺の脳にオーリスを陥落させるはやてという図が浮かんだのか
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はやて「公開意見陳述会までに墜とすんや!たのむでシャマル!」
シャマル「はい。クラールヴィントを用いたベルカ式捕縛調教術の冴え、とくとご覧ください」
(2日後)
ヴィータ「シャマルが敗れたか・・・」
シグナム「しかしシャマルは我らヴォルケンリッターの中では一番の未熟者」
ザフィーラ「よかろう。次はこの俺がベルカ式バタードッグの技で墜としてみせよう」
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>>205
全w滅wフwラwグw
最終的に後見人まで駆り出して、未亡人、聖職者、妻帯者、眼鏡美人まで
オーリスに落とされていく様が頭を過った
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>>205
は「こんな危ない所にはおられん!!私は自分の部屋に戻る!!」
死亡フラグのネタだけでSS書けないかな
全員死ぬから「そして誰もいなくなれ」みたいなタイトルで
・・・SSどころか1レスか
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>>207
把握した。
ティアナ「なのはさんが、何かお話があるって言うから、行ってきます」
スバル「……なんだろう、なのはさん。わざわざ呼びだしてお話って」
シグナム「主、高町がなにやら話があるとのことで、出かけてきます」
シャマル「はやてちゃん、ちょっと出かけてきますね。なにかしら、なのはちゃんのお話って」
ヴィータ「なのはのやつ、改まって話ってなんだろ……」
ザフィーラ「ふむ……高町の話か。ヴィヴィオのことか?」
ヴァイス「あ、なのはさん、お話って何スか?」
ユーノ「……な、なんだろう、話って……なのは……あ、もしかして……アレがばれ……い、いや……あれは不可抗力だよね、うん」
エリオ&キャロ「あの、お話って何ですか?」
フェイト「あ、なのは。話って何かな?」
はやて「なのはちゃん、どしたん、えらい真面目な顔で。それで、私には折り入って話ってなんやろ?」
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