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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話

1名無しさん@魔法少女:2009/08/05(水) 20:14:08 ID:7A.0xa9.
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の2スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第99話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1243670352/

361名無しさん@魔法少女:2009/09/02(水) 01:42:16 ID:y7AsKGPE
乙!
最後昭和のゴジラwww

キャロが死んで竜から人間にもどるという王道かとおもったけど、こういう行方不明エンドもこれはこれでいいですね。

362名無しさん@魔法少女:2009/09/02(水) 22:49:07 ID:R.e/7q3s
GJ!!です。
こんな設定は思いつかないw
楽しかったです。

363名無しさん@魔法少女:2009/09/03(木) 21:21:25 ID:n6ysFqtw
まぁ、辺境地方の部族ってことなら
異種交配やら近親ないあいあインスマウスしてたりもしそうだよね

364名無しさん@魔法少女:2009/09/03(木) 23:09:25 ID:7UqDV.2o
凄いSSだwww 乙ですw

365名無しさん@魔法少女:2009/09/04(金) 02:54:13 ID:y23nXx26
ちょwwwこれはww
しかし、ちょうど初代ウルトラマン見ながら見てたから、すごい物哀しさが出た
ジャミラ…


GJ

366名無しさん@魔法少女:2009/09/04(金) 23:13:50 ID:.6lIvgII
そろそろストラディさんの新作来ないだろうか……

ヴァイシグ見てぇ

367名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 15:37:01 ID:lNU1Iw6Q
そろそろ以前に読んだヴァイス×セッテの続きが読みたい

368名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 18:11:32 ID:zAcx.OY6
>ヴァイス×セッテ
ちょww あれの続きってwww
あれは続けられないんじゃないのか?ww

そもそも、どう見てもフラグが立てられるような相手じゃなかったぞ、あのセッテはww

369名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 18:17:37 ID:/WXtgWlw
ヴァイスメインなら、久々にトラブルメーカー的なヴァイスが見たいな。
エリオに悪い遊びを教えたりとか。

370名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 18:21:57 ID:zAcx.OY6
>遊び

いけない一人遊びか

371名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 19:45:38 ID:Oj6i1Q.o
んー、なんかなあ
…が多すぎないか?それに文章が単調に思える
野球のボールそのままの爆弾とかふざけ過ぎてて萎えるしスカが協力する理由もいい加減すぎだろ
展開も速すぎてついてけないし場面と場面の間も急で余韻に浸ることもできない
おまけも完全に蛇足だろ、ギャグのつもりなんだろうけど寒いだけ
俺は新参だけど保管庫の作品のクオリティより明らかに劣ってるぞ、これをマンセーしてる奴はちょっとは考えろよ…
管理人さんへ
これは俺が持った感想なんだけど不適切ならこのレスは削除してください

372名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:02:23 ID:sraUviL6
いちいち管理人の手を煩わせるようなレスするなよ。知障。

373名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:18:08 ID:dQyis2Pg
言いたい放題言って邪魔なら消せとか自分勝手も甚だしいだろ
どんな文章だろうが見る側がマンセーしてるならそれでいいじゃん
本当に詰まらん文章ならそもそもレスすら付かんよ
つーかSSなんて基本素人が作るもんなんだからしょうがないだろ

文句言う位なら自分で面白いと胸張れる作品投下しろ
それを出来もしないのに他人を非難とか何様のつもりだよ

374名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:20:16 ID:SstPlhOI
>>373
流石に最後の理屈は無茶だと思うが

375名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:38:18 ID:EwwomINg
まあまあ、このスレですら、この手の奴が、削除しても良いですよと捨て台詞して書き込むんだから
エロパロに戻ったら、やりたい放題されるだろうね。

376名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:41:04 ID:dQyis2Pg
>>374
そうか?
文章自体は規約に違反してるわけでも無し、詰まらなかったらスルーすればいいだけなのに
わざわざ他の保管庫引き合いに出して頼んでもいないのに勝手に批評するわ
挙句に読み手にまで「もうちょっと考えろ」とか何様のつもりだよと

そこまで偉そうなこというなら自分でお手本になるようなのを書いて欲しいと思う
口だけなら誰だって言えるわけだからな

377名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 20:48:02 ID:SstPlhOI
>>376
過剰反応だと思うけど

378名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 21:31:28 ID:/WXtgWlw
ここは久々にエロい話をしよう。
ノーヴェのBJはナンバーズ服よりエロいと思うんだ。

379名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 21:43:53 ID:zAcx.OY6
主に股のところですね? 分かります


あれは誰がデザインしたんだろうか……まさか本人!?ww

380名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 22:01:05 ID:N2tZTf.s
>>374
>文句言う位なら自分で面白いと胸張れる作品投下しろ
>それを出来もしないのに他人を非難とか何様のつもりだよ

これはさすがにムチャ言い過ぎ。信者が罵倒するときに
よく使ってるけど、書けなきゃ批評できないんじゃ自分らも
当てはまるがな

それこそお前さんがスルーすべき。熱くなっても通じない
からなぁ

381名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 22:03:08 ID:N2tZTf.s
ミスたw >>380のは>>373宛な

382名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 22:19:58 ID:Fbis9owc
興味ないならスルー。これでおkかと。
わざわざつまらんと思う作者・作品を読んでレスする必要もねーし。
何のための鳥や事前注意事項かと。

383名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 22:39:47 ID:JZrCtco6
昔、俺の好きな書き手さんがボコボコにされていたが
あのとき擁護は入らなかった

384名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 22:58:12 ID:lNU1Iw6Q
>>368
えーそれでも続きが読んでみたいのです
あとヴァイスとルーテシアのクリスマスの話の続編もね

385名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 23:10:33 ID:zAcx.OY6
>ヴァイスとルーテシア
ああ、アルカディア氏のあれか
あれは良かったなぁ……凄いほのぼのしてて、面白かった

386名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 23:17:47 ID:/WXtgWlw
ほのぼのしてて切なくて笑えて。
あれ1個に色んなエッセンスが詰まっていたな。

38744-256:2009/09/05(土) 23:21:30 ID:N3S0cn5M
すみません。purple holy nithtで盛り上がっているところ申し訳ない
ですが、投下してもいいでしょうか?

388名無しさん@魔法少女:2009/09/05(土) 23:23:29 ID:k0JCHVfg
オーケー来い

38944-256:2009/09/05(土) 23:24:48 ID:N3S0cn5M
それでは投下します。
・非エロです。
・時系列は3期6話〜7話のあいだです。
・登場人物2名はオリキャラの非魔導師です。
・前編、後編に分けます。

・後編で3期の登場人物が出てきます。

390ナイトクルーズ前編1/9:2009/09/05(土) 23:26:14 ID:N3S0cn5M
『30ヤード・・・20ヤード・・・YEAH!!エルセア・レイカーズ112点目です!どうしたアルトセイム・クライマーズ!?
相次ぐミスプレーに歯止めがかかりませ・・・(ブツッ!)』

「くそ〜・・・」



運転席の20代前半の青年はいらだちながら実況や声援の入り乱れた車のラジオを切った。

外は雨。ラジオを切った途端、車の中は天上を打つ雨音と時折ワイパーがフロントガラスをぬぐう音だけに包まれる。



「・・・だから出る前に言ったろ?故郷のホームチームとはいえ、落ち目のクライマーズはやめとけって」
助手席に座っていた50代後半くらいの黒人の男は、笑いながら年季の入った薄青色の制帽のホコリをはらった。


「俺たちレッドネッキー(南部野郎)は追い詰められてから本気を出すんスよ!!明日こそは・・・」
運転席の青年は反論を続けようとしたが、それを制するように無線連絡が入った。



『(ガガ・・・)巡回中の各車。定時連絡をお願いします』



黒人の男性は無骨な手でやれやれ・・・と面倒臭そうにハンドマイクを持ち上げて応答する。
「こちらサードアベニュー10。廃棄都市区画沿いの5号線を北部12地区へ移動中。異常なし」



『了解しました・・・あれ?2人とも、今月は昼勤務じゃなかったかしら?』
通信先のオペレーターの若い女性に運転席の若い男性はこたえる。


よくぞ聞いてくれましたとばかりに若い警ら隊員は話す。
「ボスに9月にある地上本部の公聴会で3日間マスコミのバン記者と質量兵器禁止の市民団体のデモ警備につくか、6月まで2週間
夜勤するか決めろっていわれたんスよ。んでこっちを選んだんス」

『あなたは?』
助手席の黒人の男性にもたずねた。

391ナイトクルーズ前編2/9:2009/09/05(土) 23:26:53 ID:N3S0cn5M
黒人の初老の男性は言った。


「・・・午前中に、ロストロギアを違法に収集していた機械兵器たちを首都防空隊の空戦魔導師と合同捜査で押えてな。その報告
で地上本部に出頭してたら、思った以上に長びいちまったもんで、夜番の人間に変わってもらった穴埋めだ」



「ええ!?マジっスか!?首都防空隊にコネがあるなんてすごいじゃないですか!」
『・・・・・』


運転していた若い男性は羨望のまなざしを向ける。対してオペレーターは何ともいえないといった感じで黙ってしまった。
その微妙な空気を楽しむように、初老の男性は笑って送信機の相手と若者に釈明する。



「冗談だ。半年前、ステーションで『妹を魔法学院にやりたいんだよ!!』とかほざいて、慣れない手つきでクラック切り刻んで
売ってたヴァイゼン(第3管理指定世界)のクソガキをやっと捕まえてよ。あいつの仮釈証人と、ガキもできる仕事の世話を
ジャン・シャルティエにお願いしてな・・・それで夜番の人間に通常業務を代わってもらった穴埋めってわけだ」


「それってオールド・コルス・ハスラーズのジャン!?」


「さあな?そんなすぐにでも軌道拘置所にブチこまれるコルス組織は知らねえな。俺はクラナガン清掃業協会の筆頭理事で地上本部
のお偉いさんとも“仲良し”の“善良”な高額納税者のジャン・シャルティエ会長のことを言ったつもりだけどな」



「・・・・・・・・」
「まっ、俺らと追っかけっこする体力あるなら、もっと別のところで活かしてこいってことだ」


○ロストロギアを狙う強力な機械兵器⇔ストリートチルドレンにヴァイゼン・コルスが牛仕るゴミ収集清掃員の仕事の世話をする。
○地上本部高官への報告⇔下級裁判の保釈申請


ダイナミックとはとてもいえない、そのギャップに今度は青年が閉口した。

392ナイトクルーズ前編3/9:2009/09/05(土) 23:27:38 ID:N3S0cn5M
オペレーターの女性は微笑んだ。


『“警らの聖王様”も相変わらずね』
「何言ってやがる。こんなジジイと比べられると、教会の司祭さんや尼さん達に失礼すぎるだろ」


黒人の初老の男は自分のメタボリックの腹をポンポンたたいて自嘲気味に笑う。


「俺はただ、クラン(ミッドチルダ中央区画の略称)でクラックさばくルールやディーラー同士のナワバリをよく知らない
リトル・ジョン(身元不明の少年の遺体)を毎回、港湾地区のダストシュートで発見するのが面倒くさいだけだ」


『そんな事言って・・・ホントご苦労様。それと運転席で苦い顔してる坊やに言っといてね。今夜のレイカーズ戦は私の勝ちよって』


「・・・だとよ」
“坊や”呼ばわりされた青年は何ともいえない顔から一気に苦い顔になった。




クラナガン北部の臨海第8空港跡、廃棄都市区画とそれらを囲む臨海地区、レールウェイ・ステーションを中心としたオフィス街。
その一角を管轄するサード・アベニュー警ら隊。



初夏の5月。

しかし夕方からの時雨により、満月と雨雲が交互に流れる変な天気という点をのぞいて
アーノルド・ベイカー警ら隊員とサルバトーレ・ルッソ警ら隊員の2名が乗車する10号パトロール車はいつもと変わらず
普段通りの行程でナイトクルーズ(夜間巡回)に出かけた。



「魔法少女リリカルなのはStrikerS  sub story〜ナイト・クルーズ〜」

393ナイトクルーズ前編4/9:2009/09/05(土) 23:28:29 ID:N3S0cn5M
運転席の若い警ら隊員は、さっきの試合をすぐに忘れたいのか、気分転換をしようと別の話題に切り替えた。


「この廃墟。4年もこのままっスけど、いつかぶっ壊して再開発したりしないんスかね?」



「そうさな・・・地上本部の意向で、陸戦魔導師のランク試験会場になっちまってるからな」
「空間シミュレータ使って訓練してるところもあるんだから、試験もそっちでやりゃいいのに・・・」


空港の大火災で放置されたススだらけのビル。それを横目でみながら初老の警ら隊員は言った。


「シュミレータをプログラムしたり、赤字で採算取れない再開発の計画組むより、こっちの方が安上がりなんだろう」


「『ここは魔法やビルを飛び回る陸戦魔導師たちが出入りして危険だ』ってミッド語があまり通じない不法居住者
を説得するこっちの身にもなってくれってもんですよね」



火災で完膚なきまでに破壊された第8空港周辺はともかく、ビルの下は地下水路や水道が通っており電気以外のライフライン
が来ているところもあった。


治安がグリーンゾーンの職と金にありつける中央区画のすぐ隣、放逐されたとはいえ、密航するにはうってつけのまだ使える
滑走路や埠頭。


そんな立地条件の良い無料物件を求めてやってくるホームレス、発展途上次元世界の移民、ワケあり人間への立ち退きや説得や
バリケードの封鎖。


そういった雑務は全て警ら隊がやっていた。

394ナイトクルーズ前編5/9:2009/09/05(土) 23:29:24 ID:N3S0cn5M
結界魔法システムを張るという手もあったが、魔法使用制限の高く、魔力感知センサーが中央区画のいたるところに設置してある
中央区画ではそのようなビル街を丸ごと包むような魔法は行使できない。


ゆえにランク試験や戦技教導の際に、生命反応を感知したら、即座に警らが対応するのが常であった。


ホームレスや低所得者の中でもなれた人間は試験の行われるときだけ外に逃げて、試験が終わると同時に住処に戻るという手を
使っているようだが。




青空のもとで、地上本部の陸戦魔導師達が廃棄都市区画を縦横無尽に走り、華麗に魔法を放つ。


青空のうえで、上空から地上本部のキャリア局員や本局の執務官が最新型のヘリコプターに乗りこんで、前途有望な魔導師達
の査定をする。


そして青空すらおがめない汚い高架道路跡のアンダーパスでは、警棒を携え、バリケードを持った警ら隊員が地味な仕事をしていた。



初老の警ら隊員は、自嘲気味に笑って言った。


「まあ、オルセアみたいに、年がら年中ドンパチやってる次元世界から移民してきたヤツらにとっちゃ、歩道橋が槍の一閃で
ナマス切りされたり、小さいハンドガンタイプの魔力弾一発でトレーラーが大爆発したり、パンチ一発でビルが倒壊されたり
するところ見ても大したこと無いんだろうよ」


助手席の窓から見える廃棄都市区画の3オン3コートにいた黒人の若者らが車の2人に気づいて親指を下に向けた。
「Fuck you,Five-O.(クソったれ警らども!!)」というサインだ。

この前の魔導師試験でストリートボールを中断させられたことを根に持っているらしい。


インテリジェントデバイスやアームドデバイスで強力な武装をしている陸士部隊の魔導師と違い、警ら隊員の装備は9mmの実弾型
デバイスと実弾型デバイス用の防弾チョッキ、強力な質量兵器はトランクに積んでるショットガンくらいだ。


よって、廃棄都市区画の中でも治安がすこぶる悪いコンプトンハイツ地区やイーストリバー地区ではまっ昼間から警ら隊員を狙った
襲撃事件が少なくなかった。

395ナイトクルーズ前編6/9:2009/09/05(土) 23:31:30 ID:N3S0cn5M
車は廃棄都市区画沿いの道を左折し、再び中央区画に程近いオフィス街へ入った。
すると、目の前で青信号だというのに停車して、タクシーの運転手が若い女性二人に声をかけている。


「なあ、美人の管理局員さん特典ってことで地上本部までの料金は半分でいいから、乗ってくれって。この雨の中じゃ大変だろ?」


2人の女性のうち、地上本部の整備士のツナギをきた栗色の髪の女性は“べー”っと舌をだした。
「あんたみたいに無精ひげ生やしたヤニ臭い車なんか乗れないっての!」


「そんな事言わずにさ、そっちの金髪の姉ちゃんはどうよ?」
「えっ!?」
栗色の髪の女性は強気だが、控えめにしていた金髪の黒い制服の女性は突然のことに戸惑っているようだった。



それを見ていた警ら隊員の2人は“ウ〜、キュッキュッ”というサイレンを2回軽く鳴らしで注意をひきつけた。

「セルゲイ。白タクから足洗わせたら、今度はナンパか?そんな事してカミさんまた愛想つかされないのか?」
「け、警らの旦那!」



「なかなかの勇気だと思うぜ。お前さんにはただの管理局員に見えるだろうが、俺にはお二人、特に黒い制服の人は本局の執務官様に
見えるんだがな」

「「し、執務官!?」」
タクシー運転手と若い警ら隊員は驚いた。


オーバーAランク以上の超一線級のエリート魔導師。大都市すら破壊する魔力。以前『次元犯罪24時』で紹介してされてたの
を思い出した。しかし、若い女性は見たところまだ10代くらいだ。



「あんましつこいと、俺が道交法違反と追随罪でキップ切るより早く、サンダーフォールでイエローキャブごと消し炭にされちまうぞ」
「し、失礼しましたぁ!!」


タクシーは全速力で消えた。女性は敬礼をして礼を言った。
「ふぅ〜、助かりました。遺失管理部機動6課のアルト・クラエッタ一等陸士です」
「同じく本局から機動6課に出向していますフェイト・ハラオウン執務官です。ありがとうございました」


若い警ら隊員は緊張でガチガチであった。
下級警ら隊員にとって本局の人間はまさに話しかけられないくらい遥か雲の上の人物だからだ。
それに対して黒人の初老の警ら隊員は、40以上も歳が離れている若い執務官にしっかり敬礼を返した。
「いえ、本官は職務を行ったにすぎませんから、気にせんでください。よろしければ隊舎までお送りしますが」


執務官相手に物怖じせずに話す。下級警ら隊員にしては珍しい。


それに対してツナギを来た整備員の女性は手を振って断った。
「いやいや、大丈夫です」
「ええ、地上本部の屋上にヘリを待たせてますから」


「そうですか。わかりました。それでは本官はこれで失礼します」
そう言って2人の警ら隊員は車に乗り込んだ。


「『屋上にヘリを待たせてますから・・・』さすが本局の執務官、さらりと言うところがすげーな」
若い警ら隊員は感心して口笛を吹いた。

396ナイトクルーズ前編7/9:2009/09/05(土) 23:32:15 ID:N3S0cn5M
執務官の女性2人がたちさってから、若い警ら隊員は嘆息する。

「最初は『ミッドチルダの首都を防衛し、市民の平和と安全を守る!!』って熱い思いを胸にこの仕事選んだはずなんスけどね〜。
結局はこんな事ばっかの毎日ですもんね」


初老の警ら隊員はバックミラー越しに移る巨大な尖塔。


予算を余すところ無く、ありったけつぎこんだんじゃないかと思われるおかげで、雨露とサーチライトの反射によってよりいっそう
きらびやかに輝く、管理局ミッドチルダ地上本部の中央議事センターを一瞥する。


特別警戒で応援を求められない限り、自分達みたいな下級警ら隊員は行く事すらできない場所である。


「だったら、こんなD's(安月給の公務員=警ら隊員の蔑称)やめてさっきのカワイイ姉ちゃん方のいる地上本部とかに行けばいいだろ。
お前さんの年齢ならヤード(訓練校)の入学試験もギリギリ受けれる年齢じゃないのか?あそこなら首都防衛とかテロ対策とか
高ランクのロストロギアの保守管理とか事件らしい事件扱ってて、給料も倍違うだろ」



管理局地上本部は演習や訓練、大規模災害の防止やテロ等の大規模な犯罪や戦闘、ロストロギア管理というまさに『事件らしい事件』
を管轄している。



地上本部の首都防衛部門の職員や治安を預かるものにとっては花形、まさにエリート集団だ。



対して、表通りでのパチ物ロストロギア・海賊版ビデオの売買の取り締まり、交通整理、バーでのケンカ、パーキングメーター
を壊す窃盗犯とのイタチごっこ。レールウェイでのスリ、芸術家気取りでパークロードのアイスクリーム屋にタギングをする
ギャングの対処など軽犯罪に関わる事案は全て警ら隊の範ちゅうで対応していた。


更に犯罪率の高いミッドチルダでは、そんな軽犯罪の発生件数がべらぼうに多い。


「そんな仕官学校や陸士訓練校行けるほどリンカーコアも無いっスよ、だからといってヤッピーやキャリア試験通る程の脳ミソも
ないし。警らなんて割に合わない職業ですけどね」
「そうか・・・確かにな・・・」


そう。割に合わないはずなのに、クラナガンで40年以上もこんな警らの仕事を続けているんだよな・・・
黒人の初老の警ら隊員はそう思った。

397ナイトクルーズ前編8/9:2009/09/05(土) 23:33:05 ID:N3S0cn5M
雨足は一向に弱まる気配が無い。


車は中央市街の通りを右折してまた廃棄都市区画沿いに向かって走った。


「んっ?」
初老の警ら隊員はそう言うと、すぐ横廃棄都市区画の路地裏で何かが人影が動いたのに気づいた。

「ちょっと車を止めろ」
「どうしたんスか?」


「向こうの路地で人影が見えた」
「ネズミじゃないですか?最近温かくなってきたから、地下水路から引っ越して来たとか・・・」


「一応、確認するぞ」
そう言って、白髪混じりの頭に制帽をかぶりなおす。


「こんな雨の日は外に出たくないんスけど・・・」
若い警ら隊員は嘆息しながら車を止めた。


2人の警ら隊員は車から降りてレインコートを着た。
そして腰のホルスターから9mmオートマチックの実弾型デバイスを抜いて安全装置を外す。


そして警棒を兼ねた懐中電灯で廃棄都市区画の路地の奥を照らした。


「確認したんですけど、不審な反応はないみたいっスよ」
センサーをあやつる若い警ら隊員の言葉を聞くと、うなずいて大きな声で路地にむかって叫んだ。


「おい、誰だ?このエリアは立ち入り禁止だぞ!」
「チェ、キエン・エス?クイー・ノン・デーベ・エントラーラ! (おい!誰かいるのか?ここは立ち入り禁止だ!)」


この通りの付近はパチューコ系(主に第349管理指定世界エルパソからミッドチルダへ移民してきた低所得者層)住民が
コミュニティーを形成している区域なので、若い警ら隊員はパチューコ語で呼びかけた。


しかし2人の声は雨の中、暗い路地の奥へと吸い込まれていった。

398ナイトクルーズ前編9/9:2009/09/05(土) 23:34:10 ID:N3S0cn5M
警ら隊員はお互いに顔を見合わせて、おそるおそる奥へ進んでいく。すると不意に懐中電灯の先に影が突如として現れた。
そのくらい相手は気配を感じさせなかったのだ。


2人は驚いて身構えた。


すると今まで降っていた雨が突如としてあがり、2つの月に照らされた路地は懐中電灯がなくともすぐに相手の姿を映し出す。


路地の奥にいた人物。それは8,9歳くらいの少女であった。
雨の中、カサもさしておらず、まとったローブから雨露がこぼれる。


ローブの下から黒か紫色のドレスがのぞいている。
うつむいているため少女の顔はよく見えないが、正面から肩くらいまで伸びる長く豊かな紫色の髪が見えた。



2人は相手を確認するなりすぐに緊張を解いた。
ローブという変わった格好であったが、まだ小さい子供であった。


先週フィフス・アベニュー警ら隊のウォンが裏通りにあるリトル・クーロンの買収宿を摘発したときに、わずかな金で用心棒に
雇われた子供が、デバイスを発砲して瀕死の重症を負ったばかりだったが、相手はまったくそんな「廃棄都市区画の子供」とは
全くといっていいほど雰囲気が違う。



危険な雰囲気を全くただよわせていない。むしろ静かな、今ここにいる存在すら消えてしまいそうな虚無的な感じだ。

初老の警ら隊員はホっとして、実弾型デバイスを腰のホルスターにおさめると、相手の顔を確認しようと少女の目線までしゃがみ
こんで優しく話しかけた。




「お嬢ちゃん、こんなところでどうしたんだい?」
「・・・・」




少女はこたえなかった。夜風の中、冷たく光る月明かりの中で沈黙だけが流れる。


初老の警ら隊員が確かめたローブの下に隠れた顔立ち、そこにはぱっちりとした眼、整った顔立ちがローブから少し見える。


その表情に全く変化がない。
赤みを帯びた、光さえも吸い込んでいきそうなその黒い眼でじっと初老の警ら隊員の方をみつめていた。


そしてローブに隠していた右手を静かに、目の前でしゃがんでいる初老の警ら隊員の顔面に突き出した。


「!?」
「・・・」


黒人の初老の警ら隊員の顔の前で、少女の右手が一瞬、黒く光輝いた気がした。

39944-256:2009/09/05(土) 23:35:52 ID:N3S0cn5M
以上です。

後編は明日、もしくは明後日に投下予定です。


引き続き、ルー×ヴァイス兄貴の話をどうぞ。
それでは失礼しました。

400名無しさん@魔法少女:2009/09/06(日) 01:17:33 ID:6eSD4KdE
返って話題にしにくいです

401名無しさん@魔法少女:2009/09/06(日) 08:57:29 ID:G6mrWloA
そこまで漢な投下されて、どうやって元の話題に戻れと?w

次の投下お待ちしております。

402名無しさん@魔法少女:2009/09/06(日) 11:14:14 ID:0Rv7cTUo
渋すぎるだろ……
だがもう大好きです、こういう雰囲気。
続き待ってます。

403名無しさん@魔法少女:2009/09/06(日) 17:08:00 ID:iL3UvDFA
いつかの運び屋の話書いた人?
死体袋二つの前でフェイト辺りが知った口、とかになりそう

404名無しさん@魔法少女:2009/09/06(日) 17:14:23 ID:rwyqegCI
投下乙っすー
毎度リリなのとは思えない硬派な話、GJですww


ところで、ヴァイス×ルーテシアなんだが。
あれはむしろ、カプ的にはヴァイス×メガーヌの可能性も捨て難いんじゃあるまいか?

405名無しさん@魔法少女:2009/09/07(月) 01:37:56 ID:7/Mec3IE
そういや3期男性陣サブキャラでロッサだけ主役のSSがない気がするな。
ラッドでさえあるというのに……

406名無しさん@魔法少女:2009/09/07(月) 01:47:08 ID:qstfwWlU
裏で汚い仕事をロッサはしてそうですよね。
犬を使い、敵を食い殺して、残った血痕は炎熱魔法で消して証拠をなくすとか。

408名無しさん@魔法少女:2009/09/07(月) 20:44:39 ID:3t7OZNeM
今日あたり続編投下してくれるかな?

409名無しさん@魔法少女:2009/09/07(月) 22:31:38 ID:RmX6CU/.
>>408
>>399
催促は止めておこうや。正座して待つ分には構わないのだが

410名無しさん@魔法少女:2009/09/07(月) 22:36:52 ID:3t7OZNeM
>>409
ああすまない
そんなつもりはなかったんだ

41144-256:2009/09/08(火) 00:18:22 ID:2z1qXFXk
・非エロです。

・時系列は3期6話〜7話の話です。

・登場人物2名はオリキャラの非魔導師です。

・前編、後編に分けます。

・後編で3期の登場人物が出てきます。

41244-256:2009/09/08(火) 00:19:20 ID:2z1qXFXk
すみません。投下します。

413ナイトクルーズ後編1/14:2009/09/08(火) 00:21:04 ID:2z1qXFXk
「ゴホっ!!」
「!!」

2人の警ら隊員と今、まさに2人を「消滅」させようとしていた少女は後ろの声に気づき路地の奥を見る。
そして衝撃魔法の発動をキャンセルした。


少女がローブの下に隠していた右手から魔力光が消えた。


奥には30〜40代くらいの男性が、壁に寄りかかってへたり込んでいるのが見えた。
少女と同じようにローブをまとっていたが、少女以上に黒く汚れている。


さらに男のローブの下には無骨なアーマーが見えた。自分達が身に着けている防弾チョッキではない。
まぎれもなく騎士甲冑である、


しかも、その騎士はどこか具合が悪いのか吐血しているようだ。
負傷している騎士、ただ事ではない。



「おい、大丈夫か?あんた!!」
2人の警ら隊員は、男にかけよりたずねた。


「れ・・・連絡しましょう!」


若い警ら隊員はあわてて、通信端末を起動させた。
「こ、こちらサードアベニュー10!!」



『サードアベニュー10、どうしましたか?』
先ほどの若い女性のオペレーターの声が聞こえてくる。


「廃棄都市区画E37通路で“コード58・・・”」
若い警ら隊員の言葉をさえぎり、それを初老の警ら隊員が送信機を握って代わりに話す。


「おお、“コード587(路上ストリップ)”があったから、付近の陸戦魔導師の応援がどうしてもほしくてな」


「また・・・新暦始まって以来、一番ひどいジョークよ。そんなの陸士部隊に報告したらオペレーターのみんなのイイ笑いものよ」
オペレーターの若い女性はあきれたように通信を切った。

414ナイトクルーズ後編2/14:2009/09/08(火) 00:21:41 ID:2z1qXFXk
「・・・いい・・のか?」
若い警ら隊員が驚いていると、今まで吐血して気を失っていた男が気づき、警ら隊員たちに話しかける


「普通・・・俺みたいなヤツを見かけたら“コード582(違法魔導師の死傷)”で報告するはずだろ」


「なんだ?あんた知ってたのか?」
「・・・」


男はこたえなかった。もともと詮索するのもされるのも嫌いなのだろう。
初老の警ら隊員は言葉を続けた。



「・・・別に何もしてない人間を報告する理由はないだろ。それとも地上本部に報告されたかったのか?」


吐血して倒れている騎士。明らかにただ事ではない。
一般的な管理局員や陸士部隊員なら医療センターで手当てを受けさせ、同時に男と少女から詳しい事情を聞く必要がある。


しかしこの警ら隊員は違った。


「少なくとも、俺にとってはただのケガ人だ。それにこの街には、あんたみたいなワケありの人間がわんさかいるからな」
「それなら・・・俺にかまわずここから立ち去れいいだろ」



「そういうワケにもいかんだろ」
「!!」

415ナイトクルーズ後編3/14:2009/09/08(火) 00:22:20 ID:2z1qXFXk
そう言って初老の警ら隊員は、男に肩を貸した。その行動に騎士は驚いた。

管理局員や陸士部隊員でないにしろ、負傷した物騒な雰囲気をかもし出す騎士の姿を見て近寄る人間はさすがにいない。

それを見ていた若い警ら隊員もあわてて手を貸して、2人で負傷した騎士をかかえて、車に向かって歩き出した。


「騎士の旦那、あんた、ここらは初めてなんだろ。だからといって、医療センターにも堂々と出入りできそうにないだろうし。
いいとこに案内してやるよ」


初老の警ら隊員がそう言うと、力なく騎士は言う。
「・・・俺のケガは医療センターで直せるモンじゃない」
「リンカーコアに絡むもんか?それだったらなおさらだ」



「おい!!」
「?」

突然呼び止められると、さっきの紫色の髪の少女が立ちふさがり、隣に小さな人形みたいな者がいた。


紫の髪の少女は相変わらず、感情を全く見せない無表情ではあったが、しかしほんのわずかだが瞳にはかすかに困惑と不安が
あるように思えた。


赤い髪の人形のほうは少女とは逆に怒りの感情をあらわにして、警ら隊員に食ってかかった。
「お前ら誰だ?旦那をどこにも連れて行かせないぞ!!」
そうして小さな炎の弾を回りにともす。


最初は驚いていたが、初老の警ら隊員は物珍しげに赤い
「これは、またずいぶん小さい使い魔だな。コウモリが素体なのか?」
「なっ!?あ・・・あたしはれっきとした融合騎だ!」



「ユウゴウキ?何スかそれ?」
「さあな?『アニマルプラネット』見てるが、初めて聞く動物の名前だな」


「だぁ〜、そんなんじゃねえあたしは・・・」
赤髪の融合騎は、このとぼけた2人のやりとりに頭を抱えて怒る。



「よお、バービー(女の子に人気の着せ替え人形)安心してくれ。別にこの旦那をどうこうするわけじゃ無い。医療センターほど
高級なトコじゃないが手当てできる場所へ案内するだけだ。それに、手負いとはいえこんな屈強な騎士さんなら、すぐに俺たち
みたいな警ら隊員をぶっ倒していつでも逃げられるだろ?」


下手したら殺されるかもしれない。若い警ら隊員はそう思った。


少女は赤い髪の融合騎と騎士に顔を向けて、アイコンタクトをとる。
おそらく魔導師や騎士同士の念話を交わしているのだろう。


自分達のようにトランシーバ無しで、できるんだから相変わらず安上がりなもんだと若い警ら隊員は思った。


赤髪の融合騎は不満そうながうなずくと、前をどいて騎士や2人の警ら隊員を見守った。

416ナイトクルーズ後編4/14:2009/09/08(火) 00:23:26 ID:2z1qXFXk
車に付くと騎士はその巨体を倒れこむように一気にシートに傾けた。

騎士の方は吐血や咳はだいぶ収まってきたようで、まぶたを閉じてシートに体を預けた。しかし依然として苦しそうだ。
運転席に初老の警ら隊員が乗り込み、エンジンをかける。


ここから先は自分のほうが道順を知っているということで、若い警ら隊員と運転を交替したのだ。


「ほら」
若い警ら隊員は助手席に座り、騎士の隣に座った少女にタオルを2枚渡す。


「・・・」




少女はローブのフードを目深に下げたまま、全く受け取ろうとしなかった。
しかし、身体は正直なもので、寒さのためか小刻みに震えているのがローブの上からでもわかる。


運転席から笑い声が聞こえる。
「嬢ちゃん、そのセクハラみたいにクドい顔が怖くてタオル受け取ないとよ」
「あんたのその真っ黒い仏頂面の間違いじゃないですか・・・」


「旦那はともかく、あたしらは、あんた達の世話にはならねえからな!」
そうして少女のために暖をとろうと、車の中で炎をともそうとした。


「おいおい!車内で炎系の魔法使うのは勘弁してくれ!それに暖をとるんだったら暖房かけてやるから」

「・・・ふん!」
そうして空中に浮かんでいた赤髪の融合騎はぶっきらぼうにタオルを掠め取り、少女に渡した。



そんな賑やかかつ、うるさいやり取りを聞いていた少女はタオルを若い警ら隊員受け取りローブを下ろした。
そして自分の紫色の髪をすくようにふくと、苦しそうな騎士の顔を健気にふき始めた。


それにより、いくばくか苦しそうな騎士の顔が落ち着きを取り戻した。


紫の豊かな髪、整った顔立ち、赤みを帯びたぱっちりした瞳。そして透き通るような肌。
路地裏の暗がりで見るより、なかなかの美少女だとわかった。


そして少女はドレス調のバリアジャケットを着ていた。

黒と紫を基調としたそれは、警ら隊員が着込む防弾チョッキや陸戦魔導師や首都防空隊の無骨なバリアジャケットと違い
どうにも外見から実用性を感じさせなかった。


しかし、何ともいえない幻想的な雰囲気を感じさせた。

417ナイトクルーズ後編5/14:2009/09/08(火) 00:24:08 ID:2z1qXFXk
タオルで身体を拭き終わった少女に向かって、初老の警ら隊員はダッシュボードを開けた。
中には

「ダッシュボードに入ってるドーナッツとエスプレッソ、これ飲んでてもいいからよ」
「ちょ!?それ俺のっスよ!?」


「どうせ、ダンキン・コーヒーで警らの銀バッジちらつかせて、無料でもらったもんだろ?」


「・・・」
赤髪の融合騎はまだ警戒してるのか、タオルと同様受け取ろうとしなかった。しかし・・・
『ぐぅぅぅぅぅ〜ぎゅるるるる〜』


黒人の警ら隊員は大声で笑った。
「ぷっ、あっはっはっは。小さい体でも、なる音だけは大したもんだ!」
「う、うるせぇ!」


「すまない。でも我慢するのはカラダに毒だ」
すると、紫の髪の少女が手を伸ばしてドーナッツの箱を受け取りちぎって赤髪の融合騎に渡した。
先ほどと変わらず、表情が少なかったが融合騎を見つめる眼は、どことなく優しさを感じさせた。


融合騎はドーナッツを見たことが無いらしく警戒するように口に運んだ。
「う、うまい。うまいぜ!ルールーも食べなって」


そうして少女も促されて食べる。少女も融合騎と同じように、相当に空腹だったのかパクパクドーナッツを食べ始めた。
そして融合騎は差し出されたコーヒーの蓋を器用に取り、カップの中に顔を突っ込んで一気にすすった。


しかし、苦かったのか苦い顔をして「ぐぇ〜〜〜何だこれ?」と言って舌を出す。

「お前、いつものシナモン・ローストじゃないのか!?」
「ちょっと眠かったんで、きつめのモカを・・・ドーナッツを食った後にコーヒーを飲む、こいつがうまいやり方なんだぜ」

若い警ら隊員はそう言うと、融合騎はコーヒーを飲みながら、ドーナッツを食べた。


そうして食べ終えると、車の窓から外を少女は黙ってぼんやりとみつめていた。

418ナイトクルーズ後編6/14:2009/09/08(火) 00:25:59 ID:2z1qXFXk
車はサイレンこそ鳴らさないものの、回転灯をつけて夜の廃棄都市区画を駆けて行く。
しかし廃棄都市区画のとある場所に入った途端、車のスピードを落とし回転灯の明かりを消した。


「もしかしてここって・・・あそこっスか?」
「コンプトンハイツだ。ここを通らないと遠回りに迂回しなきゃいけなくなるからな」


車両銃窃盗、強盗、B,C級違法ロストロギアの売買。クラナガンの廃棄都市区画のスラムでも5本の指に入るくらい治安の悪い区画
である。


しかも、2年前にリトル・ジョン(名称不明)という廃棄都市区画出身の非魔導師の少年やミッドチルダ市民が、管理局魔導師と違法
魔導師との戦闘に巻き込まれて死傷する事件が起きた。しかし重体で生きていたにも関わらず災害担当部の救助隊員は軽症のミッド
チルダ市民の救助を優先した為に死亡した。


また、本局の査察官は被害者は戸籍の無い、違法移民な黒人系犯罪者(=ストリートチルドレン)であるとの理由で、戦闘を行った
空戦魔導師を甘い口頭注意処分としたことから暴動が発生し、その中心地となった場所でもある。


よって住民の多くは管理局員や警ら隊員に恨みを持つ。
「普段は真昼間でも空戦魔導師の上空援護と、陸戦魔導師や重武装の警らが装甲車で乗り付けなきゃいけないところっスよ!」


赤髪の融合騎は回転灯を消した事にあわてた。
「おい、何で赤い光を消すんだよ!?旦那が持たないかもしれないだろ!?早くそいつを付けろよ!」
「あっ!バカ!?」


赤い融合騎は警ら隊員が制止するのを聞かずに回転灯をつけた。
そうすると、回転灯の光に気づき、警ら隊の眼の前に黒人の若者達が集まり始める。


黒人の若者らはニット帽やバンダナにピアス、タンクトップやパーカー、ボロボロのジーンズにカーゴパンツと服装はバラバラだが、首筋に
タトゥーを入れており、ホルスターもつけずにズボンのベルトに各々実弾型デバイスを抜き身のまま無造作に突っ込んでいる。


「見ろよ、警らの連中だぜ。俺達のシマに乗り込んできやがった」
「首都防空隊の白ブタ共はいねえ!ヤッちまえ!」


一人の黒人がそう言うと車にむけて実弾型デバイスを発砲した。

「ちっ、みんな伏せろ!」
そう言って、初老の警ら隊員は伏せながら車を急発進させた。


「あわわわわ!」
赤髪の融合騎は車のシートを回転しながら眼を回して転げた。


「逃がすんじゃねえ!」
かけ超と共に、目の前を大きなトラックがとまり前方をふさぎ、急ブレーキをかけた。
途端に追い込まれ、車に容赦ない実弾型デバイスの発砲が加えられた。

419ナイトクルーズ後編7/14:2009/09/08(火) 00:27:45 ID:2z1qXFXk
しかし、車に鉛弾が穴を開ける金属音はまるで聞こえなかった。
すると鉛玉は黒紫の魔力光に覆われ空中に静止している。


警ら隊員2人が後ろを振り向くと、紫の髪の少女が目の前に手をかざしている。
グローブ型のブーストデバイスのクリスタルには“Protection”という行使魔法の文字が浮かび上がっている。


そして、魔力光を失った弾は豆みたいにパラパラと地面に落ちた。
「(これが、魔導師の力・・・!?でも、無数の実弾型デバイスを瞬時に防御するなんてこいつは一体?)」
少女の魔導師としての力を間近で見て若い警ら隊員は、驚いた。


実弾型デバイスが効かずにあわてていた者達をのけるように、黒人中年の男が現れた。
しかし、若者らと雰囲気が大きく違う。

BMGが買えるくらいの高級ブランドスーツに、夜にもかかわらずレイバンをつけていた。
周りの反応から、若者らと一線を画す凄みがあった。


しかも手には質量兵器の中でも違法ギリギリといわれるRPG型スティンガーを持っている。


「お嬢ちゃん、あんたが強いのはわかるが手出さないでくれ。俺に何か合ったら、俺達が行こうとしていたところへ転送魔法で逃げる
んだ。わかったな」



初老の警ら隊員はそういって転送先の座標を少女に教えると観念したかのように、車を降りた。
若者達は初老の警ら隊員に発砲しようとするが、中年の黒人はそれを制した。


「レイモンドすまねえ。アンタのシマで騒ぎを起こしちまった」

「アンタの?ここはオレのシマじゃねえ。オレ達のシマだ。デバイスぶっ放して“お話”する魔導師連中と違って、警らは、特にあんた
はもう少し賢いと思ってたんだがな」
「ケガ人を乗せててな。医療センターには連れて行けない。あんたらも世話になっただろうが、婆さんのところに行こうとしてあせっち
まったんだ」


「・・・理由はわかった。ケガ人ならしょうがねえと思うが、オレ達にもメンツってものがある。何かを要求する場合はパーターが
必要なんだよ」
そう言って中年の黒人はスーツから実弾型デバイスを抜いて初老の警ら隊員の頭に当てた。



「・・・」
夜の廃墟ビル街に不気味な沈黙がながれた。



「あんたはリトル・ジョン、いや俺たちにとってはロドニーっていう立派な名前があったんだ。廃棄都市区画のビル裏に放り去られ
てたあいつの遺体をちゃんと埋葬してくれた」
「・・・」
「誰にも気づかれずに忘れ去られて死んじまったあいつを、おれ達の心の中で生き返らせてくれた」



黒人の中年男性は実弾型デバイスのハンマーをゆっくりと外して、デバイスで車を指差した。
「行けよ。オレ達の気の変わらないうちに」

420ナイトクルーズ後編8/14:2009/09/08(火) 00:30:09 ID:2z1qXFXk
車はコンプトンハイツを通り抜け、車はどんどん北へと進んでいった。
「さっきは、その、ゴメン・・・あたしのせいで死ぬところで」

赤髪の融合騎は申し訳なさそうに泣いて言った。
初老の警ら隊員はそれをなだめる。

「あんまり気にするな。ここじゃ日常茶飯事だ。それに騎士の旦那のことが本当に心配だったんだろ?」
「あ、ああ。旦那はあたしの命の恩人だから」


そうしているとススだらけのビルに囲まれた通りが一気に開け、森に囲まれた小さな街が現れた。
さっきまでの空を覆い隠していた廃墟のコンクリートジャングルや汚い路地裏と大違いである。


粗末な作りだが、がっしりしており年代を感じさせた。
そして奥に、木造の古い建物が建っている。


車は森の手前で止まった。
初老の警ら隊員が、振り返って言った。

「着いたぜ。クラナガンのアルハザードへ・・・」



若者の警ら隊員は先に降りて、木造の建物の前のドラム缶で暖をとっていたホームレス達に自分達の車を指差して話しかける。
そうしていると、包帯を巻いた仲間が建物の中から現れ、ドラム缶で暖をとっていたホームレス達は担架にのせ始めた。


その様子をみて若い警ら隊員は自分の財布から何枚か、紙幣をぬいてホームレスに渡した。
しかし、ホームレスはそれを受け取らずに、丁寧に謝辞をのべて暗闇の中に消えていった。


若い警ら隊員は何ともいえない顔で戻ってきた。
「あいつら・・・薄給の公務員がせっかく出してやるって言ったのに」
「奴さん達にも“地上本部”の世話になってないっていう自負心があるんだろ」


初老の警ら隊員は説明する。
「ああやって話して仁義きっとかないと、警らの車だろうが、陸士のヘリだろうが関係なく片っ端から持って行って、ナット一本まで
きっちり売られちまうんだ」


初老の警ら隊員は車から降りて後部座席のドアを開けた。
「付いて来な。いくらお嬢ちゃんがとんでもなく強い魔導師だとしても、こんな場所に小さい子供を一人にはできんしな」

そうして戻ってきた若い警ら隊員と2人で騎士をまた抱きかかえると、古い建物に向かって歩いていった。


「ここは・・・いったいどこだ?」
騎士はあたりをみわたした。
「廃棄都市区画の端っぽ、まさにクラナガンのアルハザードさ」



扉を開けると、老朽化で破損したステンドグラス、そして雨漏りが座席に水溜りをつくっている。
どうやら破棄された聖王教会跡らしい。


「4年前に近くの臨海空港を中心にして大火災になっちまってな。そのとばっちりを、ここら辺は見事にうけちまったのさ」

421ナイトクルーズ後編9/14:2009/09/08(火) 00:30:49 ID:2z1qXFXk
クラナガンの旧市街、かつてそう呼ばれた場所であった。
古代ベルカの戦乱からミッドチルダの住民文化を連綿と受け継ぎ、旧暦の頃から低所得者層が静かに暮らしてきた場所であった。


街の上にも聖王教会の礼拝堂があり、人々はそこを中心に生活していた。
しかし、次元世界の政治・経済の中心地になるにつれ、それに伴い港湾区沿いの平野部をクラナガンの中央区画として開発・拡大
するにつれて新たな問題が発生した。


人口の増加による犯罪率の上昇が問題となったのだ。
そのため犯罪率を低下させて市民の支持を上げようと考えた地上本部は“分母を減らす”作戦に出た。


廃棄都市区画化である。


犯罪の高い地域を違法居住地として、電気、水道、道路整備のインフラや災害担当課、警ら隊員の巡回や陸士部隊の保護をさせない
ことでミッドチルダから“消した”のだ。



中央区画から離れているため地価の安い旧市街は貧困層が多く住み、犯罪は多い方だったが、車両窃盗やケンカといった軽犯罪が
ほとんどであり、魔導師や機械兵器によるテロ・大量殺傷、ロストロギアによる都市崩壊など重犯罪とは無縁の場所であった。


更に、昔ながらの建物もおおく、長い歴史を感じさせる古き良き街並みを残す建造物も多いため地上本部としてはなかなか『廃棄都市
区画化』できなかったのだ。


しかし、近隣の臨海空港が謎の火災に見舞われたことで状況が一変した。



『ミッドチルダの市民の安全と地上の防衛強化のために、災害により多大な被害を受けたのを期に旧市街を廃棄都市区画として
隔離し、住民を強制退去とする』


管理局の災害担当課は臨海空港の被害エリアを拡大させ、隣接する旧市街も対象としてしまったのだ。


最初はここの住民も地上本部のこの方針に反発した。


しかし、旧市街とは無縁の中央区画に住む大半の市民は犯罪地区の排除を支持し、地上本部による強制執行により追い立てられ、次第に
この旧市街は忘れ去られていった。
「おおかたゲイズ防衛長官に犯罪率低下を報告して、ポイントを稼ごうとした人間の入れ知恵だろ」

422ナイトクルーズ後編10/14:2009/09/08(火) 00:31:21 ID:2z1qXFXk
「すまんな。あんたらには関係の無い話だったか」

騎士は驚いているようだった。
「ミッドチルダにこんな場所があったとは・・・」


「あんた、本局か首都防空隊の人間か?」
「・・・」
「ここを知らないってことは、管轄にしてないってことだからな・・・この旧市街はたまにこうやって巡回に来てるのさ」
「毎度毎度巡回してもミッドチルダの防衛向上や犯罪率低下の役にはたたないですけどね」

「・・・それなら、犯罪が低下しないのに何故クルーズ(巡回)を続ける?」



「場所がスラムだろうと、犯罪者であろうとクラナガンに住んでるヤツがいれば俺はそいつらを守る義務がある。確かに防空隊や
陸士部隊ほど大した事ができるわけでもないがな」


「・・・」
そうして初老の警ら隊員は奥の扉をノックした。



「ばあさん!!いるんだろ?」
しかし、返事は無い。


「俺だ。クラナガンの愛と平和を守る“偽善者”だ!」
「・・・」

そうすると音もなく、扉が開く。
すると、出あったばかりの少女と同じようにローブですっぽりかぶった老婆が出てきた。


「夜遅くすまないな。こいつを手当てしてやってくれないか?」

「さっきここから出て行くもの達を見たじゃろ?ずっと起きてたわ。でも“偽善者”の頼みなら断れまいて・・・」
老婆は干からびた手で、騎士の甲冑にさわっていく。


その間に若い警ら隊員は少女に説明した。

「さっきも言ったとおり、ここらに住む連中は低所得すぎて社会保障番号や保険証がなくてな、医療センターに行く代わりに、ここの
教会跡に住んでる婆さんの世話になってるんだよな」


少女は教会の周辺に出てきたホームレス達がケガをしていた仲間を連れて、帰っていく様を思い出した。


「もともとは、聖王さんの御殿医が先祖だって噂だが、そんなのどうでも良くなるくらいに、かなりのブラックジャック
なんだぜ。基本、安いだけが取り柄の後発ドラッグや野草で作った怪しい薬湯を使うんだけどな」

423ナイトクルーズ後編11/14:2009/09/08(火) 00:32:53 ID:2z1qXFXk
「お主・・・まさか・・・」
騎士を見ていた老婆は、少し驚き。声をこわばらせた。
そして2人の警ら隊員に言う。



「この方を奥のベッドへ運んだら、皆は出ておくれ」
狼狽する老婆の様子を珍しいと思いながら、警ら隊員は騎士を寝かせて少女を伴って部屋を後にした。



「お主・・・“生きて”いるのか?」
老婆は驚いて聞いた。


騎士は看破した老婆に驚きながらも、静かにこたえた。
「レリック・・・そう言えばわかるだろ?」
「・・・う〜む」

老婆は納得したようだが、うめいた。
「聖王の血族ではない、そなたが使うのはかなりの代償。死以上の苦痛しか伴わないものじゃ・・・」


「よくわかっている。しかし、自分で選び受け入れた道だ」

オーバードライブをすると、身体中に走る激痛。
しかし、それによって手に入れた力も生前の自分に比べたらとんでもないものであった。


そして老婆は静かに薬湯を作り始める。
「これを飲めば一時的だが、痛みがやわらぐはずじゃ。すまないが寿命のほうはどうにもならん」



騎士は何も言わずに薬湯を飲み干した。さっきまでの激痛が若干収まり、ベッドから立ち上がった。
「レリックを使いし者に会えたのも何かの縁。また、具合が悪くなれば薬湯を作ってやろう」
「感謝する」

「礼なら、そなたをつれてきた者に言うが良い」


「俺がこれないときは、そこに隠れてる融合騎をよこす。薬湯の材料をそいつにわたしてほしい」
薬ビンの陰に隠れてた赤髪の融合騎がおずおずと出てきた。
「さっき一緒に出て行くよう言ったはずだ」



「大丈夫だよ。それより・・・旦那がどうしても心配で」
「俺のことはいい。あいつの事を心配してやってくれ。今のあいつにはお前と召喚虫しかいないんだ」


赤髪の融合騎はそんなこと言うなよ!とでも言いたそうな非常に悲しい眼をしたが、小さな声でつぶやいた。
「・・・わかった」
そうして二人して扉へ向かおうとする背中に老婆は問いかけた。


「“死者”よ・・・そこまでして何故生きる?」
「俺には、まだやるべきことがある」

そう言って振り返った。騎士の眼には、力強い信念が宿っていた。

424ナイトクルーズ後編12/14:2009/09/08(火) 00:33:26 ID:2z1qXFXk
少女は廃教会から少し離れた丘に立っていた。
丘陵地帯である旧市街の廃棄都市区画のため、ここからクラナガンの中央市街、地上本部、港湾地区まで一望できた。


雨雲は完全に晴れており空に輝く2つの月や星、そして地上からの高層ビル群の照明やスポットライトでライトグリーンに輝いていた。


「きれいだろ?ここには電気が来ないから月明かりが頼りなのさ。余計にクラナガンが栄えて見える」
初老の警ら隊員は、少女の横に並んで話しかけた。
「大丈夫だ。あんな立派な騎士の旦那だ。すぐに良くなる」



「・・・どうして」
「んっ?」


「どうして、私達を助けてくれるの?」
少女がしゃべったことに初老の警ら隊員は驚いた。今までずっと行動していながら初めて声を聞いたからだ。



「騎士の旦那が負傷していたって事もあったが・・・」


初老の警ら隊員は少し考えてから答えた。
「さっき言ったよな。廃棄都市区画は中央区画から忘れさられた街だって。お嬢ちゃんの眼がどうにもこの街とダブっちまってな。
何も感じさせないこの世に存在しているのかわからなくなるくらい儚い眼がな・・・」


「私は、この街みたいに忘れ去られてしまうってこと?」
「俺は忘れないぜ」

「こんな廃棄都市区画だって生きているヤツらがいる。そんなヤツら俺は簡単には忘れたくない。暗闇みたいに汚い部分もあるが、
クラナガンを俺は気に入ってるのさ。だからお嬢ちゃんのためにも何かしてやりたかった」



警ら隊員がそう言って少女を見下ろした。
「ハハ、余計なおせっかいだったかな?」


2人がいなくなったら私はもう一人になるだから、誰にも知られなくていいと思ってた。
空っぽの心は誰からも忘れ去られても痛まないと思ってた。


少女はそう思い、初老の警ら隊員を見上げた。
「・・・でも、そんな私にも忘れないってあなたは言ってくれた」


儚げな雰囲気は変わらずであったが、少女は優しい眼差しであった。

425ナイトクルーズ後編13/14:2009/09/08(火) 00:34:27 ID:2z1qXFXk
若い警ら隊員が、騎士と融合騎を伴って二人の側に来た。


「婆さんの薬湯、たまには効果あるみたいっスね。騎士の旦那の具合も良くなったみたいっス!」
「そうか!良かった。お嬢ちゃん騎士の旦那の具合が・・・」


初老の警ら隊員はそう言いかけたが、自分達の周りに黄金色の蝶がチラチラ飛んでいるのが眼に止まった。
それも1羽ではない。丘の周囲をたくさんの蝶が舞った。


黒人の初老の警ら隊員は少女の周りに正方形の魔法陣が展開されているのを見た。
彼女が召喚魔法を行使していた。


少女に話しかけようとしたが、何故か蝶を追わずにいられなかった。
若い警ら隊員が、草原の上に倒れた。


「き、きれい・・・だ・・・」
夜空に舞う蝶を見て、初老の警ら隊員はうつろな眼でそう言って倒れてしまった。



赤髪の融合騎は少女に話しかけた。
「こいつら殺しちゃったのか?」

少女はかぶりを振った。
「殺してない。記憶の忘却効果を持った虫を召喚しただけ」

それに対して融合騎はほっとした。
目的を達成する必要があったが、召喚師の少女にはできるだけ人を殺めたり傷つけるという行為を、あまりしてほしくなかったからだ。
「そうか、しょうがないとしてもせめてドーナッツとコーヒーのお礼言えなかったな」

騎士は融合騎に向かって言った。
「“忘れてしまった者”に対して礼を言っても意味が無い」



「2人とも心配かけてすまなかった。あとはスカリエッティやウーノに処理をまかせよう」
少女はうなずくとそのまま振り返らず、騎士や融合騎と一緒に再び暗闇の中へと消えていった。


覚えてもらえなくていい、忘れられる存在だというのも理解している。
母さんのためにも・・・私はまたこの暗闇の道をひたすら進んでいく。

426ナイトクルーズ後編14/14:2009/09/08(火) 00:35:37 ID:2z1qXFXk
翌日、機動6課のもとに、重要事案が1件報告された。


クラナガンの北部郊外でレリックを密輸していた違法魔導師達が襲撃を受けたというものだ。

あたりには襲撃により死傷した違法魔導師達やカートリッジが散乱しており、双方ともにオーバードライブの激しい魔法戦が
展開されたとのことであった。


生存者の話では金髪の巨漢の騎士と不気味な黒衣の召喚師であり、陸戦オーバーAで更正される違法魔導師を殲滅させてレリックを
奪うと即座に逃走したという。


ドクター・スカリエッティが率いるガジェットドローンの機械兵器以外にもレリックを狙うもの達がいる。
近々行われるホテルアグスタでのロストロギア・オークションを目の前にして、敵の影が徐々に鮮明になってきた。




そして機動6課に報告されない、大したことない事案が1件あった。


ナイトクルーズ(夜間巡回)に出たまま行方不明になっていたアーノルド・ベイカー警ら隊員とサルバトーレ・ルッソ警ら隊員の2名
が乗車するサードアベニュー警ら隊の10号パトロール車が翌朝、ホームレスからの通報で廃棄都市区画の北部旧市街地で発見された
というものだ。


中では警ら隊員の2名が気絶していたが命に別状は無かったという。
両警ら隊員は何故、廃棄都市区画の旧市街地域にいたのか、また何故途中で自分達が寝ていたのか、上着を脱いでいたのか
『全く覚えていない』とのことだった。


端末も昨晩の巡回記録に異常は無く、一言短いメッセージが残されていたという。



警ら隊員2名はその言葉が何か引っかかるようだったが、結局は気にする事はなく、管轄する陸士部隊は警ら隊員が無傷であった
ことや巡回記録も残っていた事から地上防衛に係る事件性は薄いと判断し、半日職務放棄を行ったことによる5ヶ月間の減給処分
と内勤への異動処分が下されたという。



巡回記録には記されていた言葉はこうであった。



−ありがとう−

42744-256:2009/09/08(火) 00:37:35 ID:2z1qXFXk
以上になります。

Sランク召喚師ご一行と下級警ら隊員2名の物語でした。
それでは失礼しました。

428名無しさん@魔法少女:2009/09/08(火) 01:12:49 ID:oiCHynis
>>427
GJ

429名無しさん@魔法少女:2009/09/08(火) 21:09:15 ID:vlY4VYV2
>>427
 GJ 内勤とはスカとウーノは良い仕事したなw

430 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:03:02 ID:zqa3gFdc
「日付が変わったので書くぞー!」
と言う事で書きます。

・フェレットユーノ×リインフォースⅡ
・獣姦ユニゾン注意
・↑がダメな人は今の内に退避を
・エロ

431名無しさん@魔法少女:2009/09/09(水) 00:03:02 ID:eVSdcZhY
渋い、本当に渋い。
魔法少女たちが華やかに舞う空の下、地べたを歩み続ける男たちの物語、といった感じ。
素敵でした。

432本当は恐ろしいフェレットさん 1 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:05:03 ID:zqa3gFdc
 皆はフェレットと言う動物を知っているかな? そう、フェレットはイタチの仲間。
イタチ科の動物の歴史は他の哺乳類と比べても長い方で、イタチの仲間は他にも様々な種があるのだけど
その中でもフェレットは野性が存在せず、人間に飼われる事による品種改良で誕生した種。
だから他のイタチ科の動物と比べても小柄で、賢くやんちゃな反面人にも懐き易く、またあまり鳴き声を
発したりしない事もあって、最近はペットとしても人気が高くなって来た動物なんだ。

 そんなとても可愛らしいフェレットだけど………実は……とても恐ろしい動物でもあったのです……
それを…これから順を追って説明して行きましょう………………


 時空管理局の本局。それは次元空間上に浮かぶ巨大なステーション基地にして時空管理局の総本山
と説明すれば分かり易いのだが、厳かそうなイメージとは対照的に娯楽施設等もかなり存在していた。

 何しろ本局は本当に広く巨大。次元空間の広大さに比べれば豆粒の様な物であるが、それでも人間にとっては
次元船が幾つも収容可能と言うかなりの巨大さを持つ。それ故に戦闘員・非戦闘員に関係無く数多くの
人々が働き、または生活をしており、それ故に人間の生活において必要な物は大抵が揃っていた。
当然娯楽関係の施設等も例外では無かったのだった。

 そんな中、本局内を飛びまわる一人の美少女の存在があった。彼女の名はリインフォースⅡ。
身長30センチと小柄で、青い瞳に銀髪が特徴の可愛らしいユニゾンデバイス。
管理局内での階級は曹長で、人は彼女をちっちゃな上司と呼ぶ。今日は非番と言う事で
本局内の娯楽施設等で遊んでいたのだが、そこで彼女はある物を目にする事になるのだ。

「あ、フェレットさんです。」

 リインは本局内の通路を一匹のフェレットがトコトコと歩いている所を発見していた。
薄黄土色の毛並みに翠色の円らな瞳、そして頭の上に逆立つ二本のアホ毛と言うとても可愛らしいフェレット。

「わ〜フェレットさん凄く可愛いです。」

 何を隠そうリインはフェレットが大好きなのである。リインの背は前述の通り30センチと小柄で
それ故に同じ位の体格のフェレットには親近感を感じるのであろう。

433本当は恐ろしいフェレットさん 2 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:05:56 ID:zqa3gFdc
「でもフェレットさんフェレットさん。どうしてこんな所を歩いているんですか?」

 ここは地上では無く、あくまでも本局と人工的に作られたステーション内部。その通路内を
フェレットが一匹でトコトコと歩いていると言う光景は不自然極まりなく、リインも気になる所であったが、
そのフェレットは構わう事無くトコトコと歩き続けていた。

「フェレットさんフェレットさん? 何処へ行くんですか?」
「きゅっ!」

 リインの質問にフェレットは一声鳴くだけでなおも歩き続ける。その際にモサモサと尻尾を揺らしながら
歩くフェレットの姿がまた可愛らしく、思わずリインはその後を付いて行ってしまうのであった。

「フェレットさんは今何処へ向かっているんですか? フェレットさんはやっぱり誰かに飼われてるんですか?」
「きゅきゅっ!」
「フェレットさんの言葉は分からないです。」
「きゅ。」

 リインが質問しても、フェレットは少し鳴くだけで喋りはしない。それは当然の事なのだが、
だからなおさらリインはフェレットが何をしたいのか凄く気になっていた。

 そうしてリインはフェレットの後を付いて歩いていたのだが、そのフェレットが向かった先は
辺り一面に沢山の書物の並ぶ広大な施設。俗に無限書庫と呼ばれる場所だった。

「フェレットさんフェレットさん。ここ無限書庫ですよ。フェレットさん入っても大丈夫なんですか?」
「きゅっきゅっ!」
「フェレットさん、聞いて下さいよ。こんな所に勝手に入って怒られたら大変ですよ。」

 構わず無限書庫の奥へ歩いて行くフェレットの後をリインは恐る恐る付いて行く事しか出来ない。
するとどうだろう。無限書庫内の壁にとある看板を見付けたのである。それはなんと『猛獣注意』と言う
無限書庫には似つかわしくない代物だった。

「え!? 猛獣注意!? フェレットさん! やっぱり引き返した方が良いですよ!
猛獣が出るって書いてあるじゃないですか! フェレットさん!」
「きゅっきゅきゅ。」

 猛獣注意の看板によほど驚いたのか、リインは涙目になってフェレットを止めようとするも、
フェレットは構わず書庫の奥の奥へ歩き続けていた。

434本当は恐ろしいフェレットさん 3 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:07:11 ID:zqa3gFdc
 そうしてフェレットは無限書庫の奥へ奥へと進み、リインはその後をただただ
付いて歩く事しか出来ずにいたのだが、そんな時だ。突然フェレットが歩みを止めたのである。

「良かった。フェレットさんやっと引き返す気になったんですね?」

 リインは安心しかけるが、その時だった。突然フェレットがリインの方にふり向き…

「良いのかいホイホイと付いて来て。僕はユニゾンデバイスでも構わずに食べちゃうフェレットなんだよ。」
「!!」

 リインは絶句した。先程まで耳を澄ましてようやく聞こえる程度と言うフェレット独特の
小さな声で鳴いていたフェレットが突然人間の言葉を話しはじめていたのであるから。

「フェレットさん喋れたんですか!?」
「うん実はそうなんだ。」

 やっぱり喋った。間違い無い。これは幻聴でも何でもなく、紛れもなくこのフェレットは
人間の言葉を話す事が出来、知能も人間と同等にあろうと思われる凄まじい物。
そして何より…このフェレットは明らかにリインを狙っていると言う事である。

「それにね、あの猛獣注意って看板、あれ実は僕の事なんだ。」
「え!? フェレットさんの何処が猛獣なんですか!?」
「残念だけど君は一つ勘違いをしている。僕達フェレットも立派な肉食獣。猛獣なんだよ。」

 リインはまたも絶句した。リインはフェレットを大人しく人懐っこい小動物としか考えていなかった。
しかし、実際のフェレットはイタチの仲間。つまり立派な肉食獣で猛獣。今でこそペットとして
人気の動物であるが、元々は狩猟用の動物として扱われていたのだ。確かに今リインの目の前にいる
フェレットは円らな瞳をしてとても可愛らしいが、口から覗く鋭そうな牙が全てを物語っていた。

「じゃ…じゃあ…フェレットさん……リインを…本当に…食べちゃうんですか…?」
「うん。だって僕肉食獣だからね。だから獲物を捕らえて食べないと生きていけないんだ。」

 フェレットはリインにトコトコと歩み寄ってくる。その時の動作はとても可愛らしい物であったが
フェレットは紛れも無くリインを食べようとしており、リインは恐れる事しか出来なかった。

「嫌…嫌です……そんなの嫌です…リイン食べられちゃうの嫌ですぅぅぅぅぅ!!」

 リインは思わずその場から飛び立ち、逃げ出してしまった。当然彼女だって食べられるのは嫌だ。
例え相手が可愛らしいフェレットでも、自分の命までは捧げられない。

435本当は恐ろしいフェレットさん 4 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:07:54 ID:zqa3gFdc
「とっとにかく一刻も早くここから逃げるです! 出口は何処ですかー!?」

 リインはひたすら逃げようとしていたが、無限書庫は伊達に無限では無いと言わんばかりに広大で
まるで出口らしい物が見当たらなかった。おかげですっかりリインも疲れ果て、書庫の一角で
息も絶え絶えの状態で休憩を余儀無くさせてしまう程だった。

「どうして…どうしてですか…どうして出口が見付からないんですか…?」
「うん。だって無限書庫だからね。」
「ええ!?」

 突然リインの背後に現れたフェレットに思わず飛び退いてしまった。リインとて全速力で
飛び続けていたつもりだ。だと言うのに何事も無かったかの様に追い付いていたフェレット。
やはりフェレットはただのペットとして人気の小動物では無く、伊達に狩猟用として古くから
重宝されてはいなかった。

「ど…どうして私の居場所が分かるんですか…?」
「知らないのかい? 僕達フェレットは犬と同じ様に鼻が利くんだよ。特に君みたいな可愛い娘はね…。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 フェレットに可愛いと言われたリインだが、やはり食べられようとしている今においては嬉しくない。
しかし、かと言って逃げようにもリインは既に体力を使い果たしていたし、フェレットに対しての
恐怖心が彼女の脚をすくませ、その場に立ち尽くさせていた。と、その時だ。突然フェレットが
リインのけしからん太股をペロリと嘗めたでは無いか。

「ひゃう!」

 フェレットの口から伸びた舌がまるで品定めでもしているかの様にリインの太股を嘗め回していく。
それがまた生暖かくくすぐったくて、リインは思わずその場に跪いてしまう。そしてそれがいけなかった。
フェレットがリインを上から覆い被さる様に押し倒してきたのだから。

「キャッ! やめてくださいー!」

 リインは抵抗しようとしたが、フェレットは可愛らしい外見に反して力が強く、またリイン自身が
疲れ果てていた事もあって直ぐに動けなくなってしまった。

436本当は恐ろしいフェレットさん 5 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:08:41 ID:zqa3gFdc
「あ…ああ…リイン…このまま食べられちゃうって事ですか…?」

 リインは動けなくなってしまい、このままフェレットによって揉みくちゃにされてしまうと思われたが、
意外にもフェレットは優しくリインをその場に寝かせていた。そして、前脚の爪を見せ付けていたのである。
フェレットのその可愛らしい姿からは想像も出来ない程にまで鋭く研ぎ澄まされたその爪を…

「ああ…その爪で…リインの体が切り裂かれちゃうんですか…?」

 フェレットはその鋭い爪でリインの柔肌を切り裂くと思われていたが、意外な事にフェレットが
切り裂いたのはリインの着ていた服だった。フェレットはリインの肌を傷付けない様に
丁寧に慎重にリインの服を切り裂き脱がし、その白い柔肌を露とさせていく。

「あ…リインの服が脱がされちゃうです……そうですよね……フェレットさんでも…リインの服までは
食べられないですものね…。それに…フェレットさんは最初から裸です…。」

 リインはフェレットの成すがままに服を切り裂き脱がされ、あっという間にその全裸体を露とさせていた。
そして裸にされて初めて気付く。例えユニゾンデバイスであろうとも、人間と変わらないのだと。
それだけリインの裸体は美しいものだった。

「ああ…ついにリイン…裸にされちゃったです…。このままフェレットさんに食べられちゃうんですか…?」

 リインはこの後の展開に恐怖しながらも、覚悟した。しかし、このまま噛み付いてくると思われた
フェレットの取った行動はやはり意外な物だった。

「ひゃう!」

 思わずリインはのたうった。何故ならばフェレットは再びその舌を伸ばし、リインの乳首を
嘗め回していたのであるから。リインは一見幼そうな容姿に反して意外にも良い乳をしていたりする。
その為、フェレットに乳首を嘗め転がされる度に上下左右にプルプルと、まるで別の生き物の様に揺れていた。

「フェレットさん! 何を…何をするんですかー!? ひゃぁ!」

 何と言う事だろう。今度は舌で乳首を嘗め回すのみならず、フェレットがリインの体に圧し掛かり
乳首に直接吸い付いて来たでは無いか。その刺激は舌で乳首を嘗め回されるのに加え、口で咥えられる
と言う物が加わり、さらにフェレットが動く度にモサモサの毛並みがリインの敏感な柔肌をくすぐると言う
想像を絶した物だった。

「ひゃっ! フェレットさん! やめ! ひゃぁぁ!」

 乳首を吸われ、モサモサの毛並みで肌をくすぐられ、リインは思わず笑ってしまわずにはいられなかった。
その為リインの体は大きくのたうつのだが、フェレットはその勢いを利用してリインをうつ伏せに倒してしまった。

437本当は恐ろしいフェレットさん 6 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:09:36 ID:zqa3gFdc
「あ…何をするんですか!? キャァ! そんな! お尻触らないで! 恥ずかしいですー!」

 リインがうつ伏せにされた後、フェレットはそんなリインの尻だけを掴んで持ち上げていたのである。
既に説明されている通り、今のリインは着ていた服を全て切り裂き脱がされた裸の状態である。
そんな状態でフェレットに後から尻を持ち上げられたら、リインの股間が丸見えになるのは必死だった。

「君に一つ良い事を教えてあげよう。一般的にペットショップに売られているフェレットは
既に去勢された状態の事が多いけど、僕はそうじゃないんだ。」
「え…去勢って……確かオチンチンをちょん切ったりする事ですよね……それをしてないって事は……あ…。」

 リインが今と言う状況を理解した時には全ては遅かった。フェレットの発情し固く怒張した生殖器は
リインの股間へと押し当てられ、その閉じられていた膣口を強引に押し広げて行ったのである。

「ひゃぁぁ!!」

 直後、リインの全身が大きくのたうった。そしてリインの下半身に目を向けて見ると、フェレットの
モサモサの毛並みで覆われた腹がリインの尻に密着し覆い尽くす形となっていた。そしてこれは
フェレットの固く巨大に怒張した生殖器がリインの処女膜を貫き、その処女を奪い去った事を意味していた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 フェレットに挿入された直後に大きくのたうったリインではあるが、それ以降はまるで嘘の様に
全身を硬直させると共に、ビクビクと痙攣させていた。そしてフェレットの生殖器が深々と食い込んだ
リインの非処女からは真っ赤な処女血が流れ出ており、リインの太股とフェレットの毛並みをそれぞれに
真っ赤に染め上げていた。

「あ……か………あ………。」

 リインは動けなかった。フェレットに処女を奪われた痛みは、泣き叫ぶ余力さえも奪う程の物だったのだから。
だがそれも所詮はこれから始まる大いなる情事への序章に過ぎなかった。

「あっ……あっ……あっ……。」

 フェレットはゆっくりと腰を動かし、リインの奥の奥まで押し込んでいた怒張を抜けないギリギリの所まで
ずるるっと引き抜き、そこから再び一気に押し込んだ。そしてまたその押し込んだ怒張をやはり再び引き抜くのである。
その引き抜かれる度に、押し込まれる度ににリイン自身の体もまたのたうち、尻は震え、リインの喘ぎよがる
美声が響き渡って行く。

438本当は恐ろしいフェレットさん 7 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:10:37 ID:zqa3gFdc
「あっ………リイン………フェレットさんに………初めて……奪われちゃった……奪われちゃったです……。」
「きゅっきゅっ。」

 フェレットに何度も突かれ、尻を突き動かされて行く中、リインの目からは一筋の涙が流れ落ちた。
リインはユニゾンデバイスではあるが、そのメンタルは人間の女性と変わらない。それが無理矢理初めてを
奪われて、しかもその相手がフェレット、つまり獣姦による物だったのだから……

「あっ………やめ……やめてくださ………あぁぁっ……せめて……せめて休ませくだ………あぁ!」
「きゅっきゅっきゅっ。」

 リインは目から涙をボロボロと流しながら哀願するが、フェレットはやめなかった。リインは既に
フェレットから逃げ出した際に体力を使い果たしていたと言うのに、フェレットは構う事無く
リインを何度も何度も何度も何度も突き上げ続けていたのである。

「あっ………きっとこれも準備なんです………こうしてリインを疲れ果てさせて…抵抗も何も出来なくさせてから
食べる気なんです………そんな…嫌です………こんなの生き地獄です………どうせ食べちゃうなら一思いに
食べてくださいよぉ〜…………。」
「きゅっきゅっきゅっきゅっ。」

 ああ何故こんな事になってしまったのだろう。そこでリインはかつて言われたある言葉を思い出した。
それは…

『リイン、知らん人には付いて行かんようにしよな?』
『ハイ分かりましたマイスターはやて。』

 知らない人に付いて行ってはならない。誰もが子供の頃に親や学校の先生にそう教えられたであろう。
しかし、リインはそれを忘れてフェレットが可愛らしいというだけの理由でその後に付いて行ってしまった。
その結果がこれである。リインはフェレットに襲われ、今こうして食べられようとしていた。
そう。つまりこれは約束を破ったリインにも責任があると言う事なのである。

「きゅっきゅきゅきゅっ。」
「あ…あぁ……あぁん…。ごめんなさいはやてちゃん…リイン…約束破っちゃったです…。」

 フェレットはなおもリインを突き上げ続けた。リインの上半身は起き上がる体力すら無く床に
倒れこんだ状態であったが、下半身の特に尻の部分だけはフェレットによって強引に持ち上げられ、
何度も何度も突き上げられた。そうしている内にリインは体力のみならず頭の中さえも…

439本当は恐ろしいフェレットさん 8 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:12:26 ID:zqa3gFdc
「あ…もうダメれす……もう何も考えられないれす……嫌なのに……こうしてリインが何も
考えられない様にしてから食べちゃうって事れすか…………ああもうどうだっていいれす……。」

 フェレットの突き上げはリインから体力のみならず思考力さえ奪い去り、リインのその目からは
ハイライトさえもが消え去るに至っていた。するとその時だ。フェレットがリインの尻をさらに
高く持ち上げると共に全身をブルブルと痙攣させ始め………

                 どびゅっ びゅびゅびゅっ

「んぁ……。」
「きゅ〜。」

 ついに出した。フェレットの大量かつ濃い精液がリインの膣と子宮を満たし、フェレットが
出し終えて萎えた生殖器を引き抜いた後も、リインの開きっぱなしの膣口から溢れこぼれだしてしまう程であった。

「あ……もうこれで……終わりですね……きっとこの後……リイン…フェレットさんに食べられちゃうです…。」

 もはやここまで来たのなら仕方が無いとばかりに覚悟を決めていたリインだが、フェレットが取った行動は
意外な事にもリインの前から立ち去ると言う物だった。

「なっ! 何処へ行くんですかフェレットさん! リインを食べちゃうんじゃないんですか!?」
「きゅっ。」

 リインはフェレットに食べられる覚悟を決めたと言うのに、フェレットはリインを食べなかった。
それが逆に悔しくて、リインは思わず怒り出してしまっていた。

「嘘吐き! フェレットさんの嘘吐き! 食べるって約束したじゃないですか!
どうして食べてくれないですか!? リインそんなに不味いんですか!?
答えて下さい! 答えて下さいよフェレットさぁぁぁぁぁぁん!!」
「きゅっ。」

 リインが何度叫ぼうともフェレットはただ軽く一鳴きするだけであり、そのままフェレットは無限書庫の
奥へと消えて行くのみであり、リインもまたそのフェレットをただ黙って見送る事しか出来なかった。

「うう…悔しいです…。フェレットさんどうしてリインを食べてくれないんですか? でも………リイン……
腰が抜けて……追い駆けられないです…………。」

 リインはフェレットに食べられる事はなかった。つまり命が助かったと言う事なのだが、
今のリインには逆に自分の価値を貶められたと感じられ、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
かと言ってフェレットを追い駆けようにも、腰が抜けて立ち上がる事さえ出来ない。


 それから数日後、リインは再び無限書庫にやって来た。そして『猛獣注意』の看板を前にして立つ。

「フェレットさん。リインはまたここまで来ちゃいましたよ。今度こそ…今度こそはフェレットさんに
食べてもらうです。フェレットさん! フェレットさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 
 こうしてリインは今度こそフェレットに食べてもらうべく、無限書庫の奥へと消えて行った。
何かもう滅茶苦茶な事になってる気もするが、本人にとってはこれが喜びなのだろう。

                      おしまい

440 ◆6BmcNJgox2:2009/09/09(水) 00:13:48 ID:zqa3gFdc
当初はフェレットがリインを少しずつ少しずつ追い詰めて行く(猛獣的意味で)
ホラーっぽい路線をやろうとか思ってたんですけどね…結局獣姦ユニゾン…
でもこのカップリング好きなんですよ。アギト×フェレットユーノとかも面白そうだけど。

441名無しさん@魔法少女:2009/09/09(水) 01:08:22 ID:i0HhONcU
結局やり逃げかよw サイズ的にも獣姦的にも確かに実にいいカップリングなんだがw


442名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 19:06:15 ID:OxEP7It.
スレが止まってるんで話題振り。
マイナーでもメジャーでもトンデモでもいいから読んでみたいカップリングってあるかね。
俺はカリム×ヴェロッサが見たい。義弟をいけない道へ引きずり込むカリム攻めで。

443名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 19:26:17 ID:M/Jh.5R.
相思相愛前提でスカ×ルーと言っておこう

444名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 19:50:54 ID:pdpv/352
覇王様×ノーヴェ
レジィ坊やの筆おろしをするミゼット女史
などといってみる

445名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 21:40:20 ID:12K0jiJw
4期組みはまだキャラが掴めてないんだよな。
この娘はこういう時にこうする、こんなことするとこう反応するっていうのが把握できれば覇王やvivid3人娘で書いてみたいが。

446名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 22:50:23 ID:2UDdVOn2
>>442
アルフ×ユーノ
エイミィ×クロノ
一期の頃から俺の中での公式カプだね

447名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 23:22:32 ID:kgVXIu0o
ヴァイス×ティアナが久々に見たい

448名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 23:47:04 ID:OqzRWjFE
ユーノ×ウーノ

名前が似てるだけじゃんとか言うな。

449名無しさん@魔法少女:2009/09/11(金) 23:51:03 ID:/WrCBSAc
ヴァイシグ! ヴァイシグ!

姐さん女房とか最高じゃないか。

450名無しさん@魔法少女:2009/09/12(土) 00:28:48 ID:V2XkqceA
ユーノ×シャーリで

451名無しさん@魔法少女:2009/09/12(土) 00:32:20 ID:suO2oGMQ
はじめまして。
このたび、しょうもないSSを完成させまして、恥ずかしながらお披露目にまいりました。
わずかでもスレッドの滋養になれば幸いです。よろしくお願いします。

452名無しさん@魔法少女:2009/09/12(土) 00:33:55 ID:suO2oGMQ
・お読みになる前に

このSSはキャラクターの崩壊が激しく、さらには、下ネタ・お下劣なネタが絡んできます。
stsの後、ティアナとヴァイスのフラグが成就した状況から話がはじまります。
あらかじめご了承ください。




「小さいことはいいことだ」

 ん?今何を考えた?
 おまえだ。そこのおまえ。
 まさかやましいことを考えていないだろうな。
 私を見て私の外見から、私の言葉を聞いて私の外見から、何を想像した?

 当ててやろう。
 おまえはロリコンだ。
 おまえはちちゃい娘が大好きだ。
 おまえは貧乳あるいはつるぺたが大好きだ。
 おまえはつま先立ちをしても唇が相手に届かずムキになる程度の身長が大好きだ。
 おまえはくりんとした眼を無垢に輝かせるぷにぷにした頬ときらきらさらさらの髪を持つ頭部が大好きだ。
 おまえは未成熟でスレンダーというにも肉付きの足りない身体が――

 そこまで喋ったところで、チンクはギンガに小突かれた。

「あう」

 ギンガはチンクを小突くにあたって移動する必要すらなかった。
 なぜならば、チンクは自分の大腿の間におさまっていたからであり、ついでに言うとその下半身は二人ともコタツの中なのである



「ギンガ、なぜ叩く」
「何を一人ではしゃいでるのよ」

453しょうもない話:2009/09/12(土) 00:36:45 ID:suO2oGMQ
 ナカジマ家のコタツは大きい。そうでなければならなかった。
 昔は小さかったのだが、なにしろ家族が倍以上に増えてはこたつを大きくする以外の方便はなかった。
 4人用のコタツも、母がいないといえ育った娘二人プラス父でおおむねいっぱいだったのだ。
 しかもTVなど見ようものなら必然的に座る位置はかぎられる。TV側の面は使えない。

 あれ以来、家族は7人に増えたので、ゲンヤは家電量販店に足をはこび、コタツを買い求めた。
 しかし7人入れるほど巨大なコタツなどそうは置いていない。今までの倍のサイズだから当然だ。
 そのうえ娘たちは例外一人をのぞいて、どいつもこいつも立派に育ったボディの持ち主である。

「私がギンガの膝の上におさまったとき、あいつは一瞬だがいやらしい目で私を見たんだぞ、まちがいない」
「それは貴女が問題発言をするからよ」

 ましてや客人などあろうものなら大変である。
 スバルと仲の良いティアナはよく来る。アルトは来なかった。原因はヴァイス。詳細はこのさい棚に上げておけ。
 客が来るとさらに狭い。ぎゅうぎゅう詰めである。そのため料理担当か元気の子、前者はギンガとかディエチ、
 後者はノーヴェとかスバルがコタツの外部に出たりするのだが、それでも足りない場合は最期の手段が用いられる。

『機人合体!』『コタツフォーム!!』

 の掛け声と共にどっこいせとチンクが誰かの膝の上に納まるという寸法である。
 ちなみに機人合体なのでゲンヤさんのとこには来てくれない。残念。
 ティアナ?ヴァイス?あいつら人間だし。

 とりあえずコタツの話はこのへんにしておこう。
 要するに、コタツフォームと叫んでは、いそいそとギンガの膝の上におさまって、ちょこんと鎮座したチンクが幸せそうに冒頭の台

詞を吐き、それに対するヴァイスの反応を目ざとく見つけて、セクシャルハラスメントだと扱っているのである。
 それは隣のティアナの顔を憮然としたものにさせるには充分であったし、ギンガが突っ込むのも無理からぬ話。

「だいたいね」

 だが、ギンガの突っ込みで事態は収束を向かえるだろう。誰もがそう思った。

「ヴァイス陸曹がロリコンだったら、ティアナの保険に私にツバつけとくわけがないじゃない」

 そのような皆の想いは容赦なく打ち砕かれる。

454しょうもない話:2009/09/12(土) 00:38:22 ID:suO2oGMQ
 場の空気が凍て付いた。否、宇宙船の気密が破れたような状態であった。
 突然の減圧で視界は霧に覆われホワイトアウトし、耳はキンキンして何も聞こえず、凄まじい激痛が身体を襲うような。

 一方のギンガとチンクは飄々としたものである。
 その言葉は嘘か真か、チンクの頭の小突いた部分を優しく撫でる彼女からは邪なものは見られない。

「なるほど、では誰でも良かったのだな。ロリコンではなく女の敵だ」

 チンクもチンクである。驚くでもなく、かような発言で火に油を注ぐのだ。
 隣のティアナの表情は憮然を通り越して、ひきつっている。
 たまらず彼女はのたもうた。

「ねぇ二人とも、冗談はほどほどにしてよ」
「まぁ冗談だけどね。二人の愛がどれほど確かなものなのか試すのはいけないことかしら?」

 ギンガの返事は優美な流し目を伴い戻ってくる。

「私だって将来有望な素敵な殿方を前に座しているほど女を捨ててないの。安心して緩んでると、貴女――」

 長い髪をかきあげる仕草、獲物を前にした肉食獣の眼。そしてその口から妙に妖艶な響きを含ませた言葉が放たれるのであっ

た。

「盗っちゃうわよ?」

 ぞくり。一瞬、ティアナはこの女がギンガの姿をしたドゥーエなのではないかと疑った。

「そうだそうだ、とってしまうぞ」

 なぜかチンクも一緒にそんなことを言うのである。

455しょうもない話:2009/09/12(土) 00:39:42 ID:suO2oGMQ
「ふ、ふん。そんなことできるもんですか。彼と私は恋人同士なんだからもう」
「一体その自信はどこからわいてくるのかしら?」
「……いつもキスしてるもん」
「ハん、お子様ね。キスくらいで自分の男にできるほど恋愛は甘くないの」
「じゃあ貴女はどうなの?まさか横恋慕してどうこうするつもり?」
「まさか。でもあれくらい狡猾にはなりたいわね」

 そこまで話したところで、ティアナははっと気がついた。
 チンクがギンガの膝の上から姿を消しているのである。
 そして一瞬ギンガがちらっと視線を向けた先では、ヴァイスが、膝の上におさまったチンクに困った様子で、救いを求めるような眼

差しを、ティアナに向けていたのである。

「ちょっとチンク!貴女!」
「やっぱりヴァイスはロリコンだったぞ、ギンガ。ぜんぜんイヤがらない」
「子守り気分だけどな」

 ヴァイスの言葉は余裕に満ちているものの、冷や汗が伝う顔から見て、心中が平静でないのは明らかである。
 なにしろプチ修羅場が演じられている状況、ゲンヤとの会話に逃げていたところで、コタツの中を通ってチンクが強襲してきたの

だ、彼は問答無用で戦いの場に引き込まれた。

「私の妹にセインというのがいてな、今は聖王教会のほうにいるが、あれの得意技だ」

 コタツもぐりをディープダイバーになぞらえるチンクの視線は、ティアナに向けられている。
 ヴァイスは知るよしもないが、その表情はというと、勝ち誇ったような、格下を見下すような、嘲ったものなのである。
 ティアナが怒ったのも当然であろう。

「ちょっとヴァイス!貴方!」
「仕方ないだろ、三佐の前でむげに扱うわけにもいかないし……」
「お父上、また家族が一人増えるけど、良いかな」

 ヴァイスは噴出し、ティアナは絶句し、ギンガは抑えきれないらしく顔をにやにやとゆがめている。ゲンヤさんは呆れ顔。
 他の姉妹は「ああ、またはじまったよ」とでも言いたげな顔か、あるいは我関せずといった状況だ。

 孤立無援のティアナは、自らの親友に助けを求めた。

456しょうもない話:2009/09/12(土) 00:41:24 ID:suO2oGMQ
「スバルー、あなたのお姉さんが苛める……」
「しらないよ」
「え」

 やけにそっけない返事が聞こえたのは気のせいだろうか。
 見ればスバルは、ティアナたちに背を向け、TVの前で正座しながら映画を鑑賞していた。
 そういえば話がはじまってからずっと蚊帳の外だったような。

「えーと、スバルー?」

 再度の催促に、今度こそ振り向くスバルだが、さきほどの返事は聞き間違いや面倒くさいの類のものではなかった。
 ティアナは絶望することになる。
 答えはこうだ。

「……だからしらないよ。ティアは私やアルトよりヴァイスさんのほうが大事なんでしょ?勝手にしてよ」

 うわぁ。
 スバルも相手をこんな冷たく睨むことができるのか、その事実に愕然とするティアナであった。

「私の妹がこんな傷ついてるのに気づかないなんて、ひどい友人よね」
「くっ!」

 追い討ちをかけるかのようにさめざめと泣く仕草がわざとらしいギンガ。
 チンクは漁夫の利のごとくヴァイスのお腹を枕がわりにして寝ているし。
 それを攻撃しようとティアナがコタツの中で足を伸ばして蹴ってみればヴァイスが顔をゆがめて痛いと申す。

「ティアナ、それ俺の脚だ」
「あ、ごめん」
「ひどい女だぞ」
「あんたはうるさい」
「ひどい女ね」
「うるさいわよ」
「ひどいよねティア」
「ごめんなさい」

 親友には弱いティアナであった。

457しょうもない話:2009/09/12(土) 00:42:28 ID:suO2oGMQ


「すいませんすいません、うちの姉たちが」

 玄関先で帰る二人を見送りつつ、ぺこぺこと謝るのはナンバーズ屈指の良識者ディエチ。
 キッチンで夕食を作りつつも、ずっと居間の様子が不安だったのでした。
 姉たちよりずっとよくできた子なのです。

「よくできた妹だとぉぉお!!」

 なにやら怒拳四連弾されそうな地獄すら生ぬるい声が聞こえたが、皆シカトを決め込む。
 おそらく今頃、第六無人世界の軌道拘置所2番監房あたりでは、いまいち萌えないメガネっ娘が吼えているだろう。

「いえ、私も大人気ないことをして、お恥ずかしいです」

 ティアナも頭を下げているのは、玄関先でゲンヤさんが一緒であることもあったが、それ以上に、親友に帰宅することを告げたと

きのスバルの反応が彼女の腰を低くしていた。
 帰宅する旨を告げられたスバルは、映画も終わってテープ巻き戻し中の、いわゆる砂嵐画面をずっと凝視しながら、振り返りもせ

ずにこう言ったのである。

「ぁ。そ。じゃーね」

 そんな具合なものだったから心に隙間風が通るのも当然だ。
 まさか自分の親友が、男っ気のないことをここまで気にしていたことに気づかず、恋人を連れ込むとは友人失格である。
 レバー入れ大ピンチ。くすん。

「まぁ、ほとぼりが冷めたらまた来いよ……スバルは最近スれてるが、経験がないからな。男のひとつでもできれば考えが変わる

だろ。それより心配なのはギンg「お父さんそれ以上言ったらドリル」……悪ィな、気をつけて帰ってくれ」
「……すいません」

 年頃の娘ばかり6人も抱え込んだゲンヤの気苦労が垣間見える訪問を終えた二人は、ナカジマ邸を後にした。
 ディエチが、こちらの姿が見えなくなるまでずっと玄関先に立って見送ってくれていたことに、彼女の優しさを垣間見た気がした

が、家の中からドリルの回転音と怒声と爆音が響 いてきたのには閉口したものである。

458しょうもない話:2009/09/12(土) 00:43:30 ID:suO2oGMQ


 一番フェイト
 二番チンク
 三番ギンガ
 四番スバル

 野球なら満塁ホームランも不可能ではない面子である。燃えよドラゴンズ新暦76年版があったらそのまま歌にできそうだ。
 しかし、その面子でもって以下のようなことを叫んでいるのだから手に負えない。

「男漁りしよう」
「うむ、男漁りだ」
「男漁りよ」
「男漁りだね」

 だめだこいつら、はやくなんとかしないと……



 今をさかのぼること一週間前。

「本作戦の目的は、我ら"魅力的だがなぜかフラグが立たない女性陣の会"が男漁りをすることを目的とした男狩りでありジェント

ルメン・ハンティングである」

 四畳半のブリーフィングルームでギンガが熱弁をふるっていた。詳細はあまりに醜悪なので省かざるを得ない。

459しょうもない話:2009/09/12(土) 00:44:52 ID:suO2oGMQ
「こんな綺麗で公務員で気立てが良い私になんで男はなびかない!私になびかない男なんてみんなクズだ!」

 ギンガさんそんなこと言ってるから男どもが逃げるんですよ。

「ティアとアルトは奪いっこする仲なのに私だけ蚊帳の外。こんなの不条理だ。いいよ私あんなのよりもっと良い……ブツブツ」

 スバルさん目が死んでますよ大丈夫ですか何があったんですか。

「最近なのはがヴィヴィオにばっかりかまけて私の相手をしてくれないの。寂しいから浮気してやるんだから」

 フェイトさんそんな倦怠期の主婦みたいなこと言わないでください。

「更正組最年長として妹たちの手本とならねばならない!」

 なんとなく動機不純ですよチンク姉。

 そんなこんなで周辺に連絡を取り合って合コンのセッティングを推し進める一同は、作業に一週間をついやした。
 最終的な日程が決定したときは拍手喝采、四畳半のブリーフィングルームでは発泡酒で乾杯が行われ、ゲンヤさんに今何時だと思ってるんだと怒られたのである。



 結果から言うとこの合コンは失敗に終わった。
 コンパだと聞いて旧知のみんなが、あるだけ大勢集まってきてしまったからだ。

「え!?違うの!」

 シャマルさんは四人が自分へ向ける怒りと失望の眼差しにそう答えるよりなかった。
 流石は管理局屈指の天然である。

460しょうもない話:2009/09/12(土) 00:46:28 ID:suO2oGMQ
 だが真の地獄はそこからだった。
 なにしろ酒の勢いである。酒の勢いとは恐ろしい。ひょっとすると酒こそ最大のロストロギアかもしれない。

 たとえば酒の回ったティアナとアルトが泣き上戸でヴァイスを奪い合っていたら、キレたスバルが振動破砕を放ち、危うくヴァイスが男性でなくなるところだったり。
 自分にしなだれかかって言い寄るフェイトに「小娘に興味は無い」とかキツいことを言っちゃったザフィーラが主におしおきされ、
 泣いて走り去ったかに見えたフェイトは酔った状態で全力疾走したものだから(血が滲んで読めない)。
 ヴェロッサに近寄ろうとすればシャッハさんカリムさんに猫っ可愛がられてそのままお持ち帰りされるギンガがあったり。

 あと司書長は、なんか教導官がくだ巻いてるのに付き合わされてたり。
 シャマルさんがウィスキーをストレートであけながら「殿方なんてつまらないわ、みんな先に死んでしまうんだもの」とか普段のほんわかな雰囲気からは考えられぬことを言っていたり。
 エリオがキャロとルーテシアにトイレに連れ込まれたまま戻らなかったり。
 ヴィータがリィンとユニゾンしては分離を繰り返して紅白めでたい宴会芸を披露してるうちに赤と白の縞模様になってしまい道頓堀川に投げ込まれたり。
 ゲンヤさん腹踊りしてー!なんて誰かが言ったもんだから上半身を脱ぐと隆々たる筋肉と傷跡だらけの肉体が出てきたりなんてことは流石になかった。

 ところでチンク姉は一味違った。
 なにしろ姉である。姉とは恐ろしい。ひょっとすると姉こそ最大のロストロギアかもしれない。

「最初にガンガン飲ませてあることないこと口走らせて弱みを握ったあとでおもちかえりするのだ」

 この作戦は見事に当たった。
 スバルとティアナとアルトが三人で喧嘩して泣いて羽交い絞めになってぐるぐる巻きにして泥酔してつぶれたのを見計らって、や

っぱり泥酔して寝ているヴァイスを機人のパワー でひょいと持ち上げて、スタコラもっていってしまったのである。

 ちなみにお持ち帰り以外は実話である。
 女とは恐ろしい。ひょっとすると(以下略)。




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