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☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第100話

1 名無しさん@魔法少女 :2009/08/05(水) 20:14:08 ID:7A.0xa9.
魔法少女、続いてます。

 ここは、 魔法少女リリカルなのはシリーズ のエロパロスレ避難所の2スレ目です。


『ローカル ルール』
1.リリカルあぷろだ等、他所でのネタを持ち込まないようにしましょう。
2.エロは無くても大丈夫です。
3.特殊な嗜好の作品(18禁を含む)は投稿前に必ず確認又は注意書きをお願いします。
  あと可能な限り、カップリングについても投稿前に注意書きをお願いします。
【補記】
1.また、以下の事柄を含む作品の場合も、注意書きまたは事前の相談をした方が無難です。
  ・オリキャラ
  ・原作の設定の改変
2.以下の事柄を含む作品の場合は、特に注意書きを絶対忘れないようにお願いします。
  ・凌辱あるいは鬱エンド(過去に殺人予告があったそうです)

『マナー』
【書き手】
1.割込み等を予防するためにも投稿前のリロードをオススメします。
  投稿前に注意書きも兼ねて、これから投下する旨を予告すると安全です。
2.スレッドに書き込みを行いながらSSを執筆するのはやめましょう。
  SSはワードやメモ帳などできちんと書きあげてから投下してください。
3.名前欄にタイトルまたはハンドルネームを入れましょう。
4.投下終了時に「続く」「ここまでです」などの一言を入れたり、あとがきを入れるか、
   「1/10」「2/10」……「10/10」といった風に全体の投下レス数がわかるような配慮をお願いします。

【読み手 & 全員】
1.書き手側には創作する自由・書きこむ自由があるのと同様に、
  読み手側には読む自由・読まない自由があります。
  読みたくないと感じた場合は、迷わず「読まない自由」を選ぶ事が出来ます。
  書き手側・読み手側は双方の意思を尊重するよう心がけて下さい。
2.粗暴あるいは慇懃無礼な文体のレス、感情的・挑発的なレスは慎みましょう。
3.カプ・シチュ等の希望を出すのは構いませんが、度をわきまえましょう。
  頻度や書き方によっては「乞食」として嫌われます。
4.書き手が作品投下途中に、読み手が割り込んでコメントする事が多発しています。
  読み手もコメントする前に必ずリロードして確認しましょう。

『注意情報・臨時』(暫定)
 書き込みが反映されないトラブルが発生しています。
 特に、1行目改行、且つ22行以上の長文は、エラー表示無しで異次元に消えることがあるそうです。
 投下時はなるべく1レスごとにリロードし、ちゃんと書き込めているかどうか確認をしましょう。

前スレ
☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説第99話
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12448/1243670352/

2 名無しさん@魔法少女 :2009/08/05(水) 20:14:57 ID:7A.0xa9.
【本スレ@エロパロ板】
 ☆魔法少女リリカルなのは総合エロ小説_第97話☆
 http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1237292660/l50

【エロパロ板全体の避難所】
 エロパロ避難所
 http://jbbs.livedoor.jp/movie/2964/

【クロスものはこちらに】
 リリカルなのはクロスSS倉庫
 ttp://www38.atwiki.jp/nanohass/
 (ここからクロススレの現行スレッドに飛べます)

【書き手さん向け:マナー】
 読みやすいSSを書くために
 ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/5301/1126975768/

【参考資料】
 ・Nanoha Wiki
  ttp://nanoha.julynet.jp/
  (用語集・人物・魔法・時系列考察などさまざまな情報有)
 ・R&R
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/data_strikers.html
  ttp://asagi-s.sakura.ne.jp/date_SSX.html
  (キャラの一人称・他人への呼び方がまとめられてます)

☆魔法少女リリカルなのはエロ小説☆スレの保管庫
 ttp://red.ribbon.to/~lyrical/nanoha/index.html  (旧)
 ttp://wiki.livedoor.jp/raisingheartexcelion/   (wiki)

3 名無しさん@魔法少女 :2009/08/05(水) 20:15:31 ID:7A.0xa9.
したらばでの投下関連メモ

【エロパロ板】(参考)
容量が500kbを超えるか、書き込みが1000レスを超えると1スレッド終了

【避難所】
容量は関係なし。レス数1000を超えると1スレッド終了(現時点での設定)
管理人によるピンポイント規制可
・投稿間隔 30秒
・本文の最大行数 200行
・一回の投稿本文の最大文字数 4096文字

4 名無しさん@魔法少女 :2009/08/05(水) 20:16:14 ID:7A.0xa9.
■Jane Doe Styleからしたらばを見る方法。
板一覧のカテゴリの右クリックメニューから「新規カテゴリを追加」して、
新しくできたカテゴリに「ここに板を追加」でおk。

■ギコナビでのしたらばの見方
「表示」→「キャビネット」→「したらばJBBS」→「同人・コミケ・二次創作」
※入れ替わりが激しいので全ての板が登録されているわけじゃない。つまり、そのままではこの板は見れない。
◎この板の追加の仕方
「ヘルプ」→「ギコナビフォルダを開く」→「config」→「Board」→「したらばJBBS.txt」の順に開く。
カテゴリ[同人・コミケ・二次創作]の一番下に
好きな名前(「なのはエロパロ避難所」とか)=http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12448/  
を入力して上書き保存。一端ギコを閉じて、再起動。
このスレが「したらばJBBS」内に出現するはず。あとはお気に入りに登録するなり何なり。

5 名無しさん@魔法少女 :2009/08/05(水) 22:23:53 ID:4SYggZgQ
>>1乙 祝100スレ!!

6 名無しさん@魔法少女 :2009/08/06(木) 14:46:29 ID:pGPWTAJU
記念すべき100スレ目が避難所とはな……
本家に戻って盛大に祝いたかったな。
ともあれ祝100スレ!

7 名無しさん@魔法少女 :2009/08/06(木) 18:22:44 ID:Gl/F5b6I
>>1

8 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:28:27 ID:VkrGWwSc
>>1乙です。

と言う事でまた書かせていただきます。

・ちっちゃなヤンデレリインフォースⅡがフェレットユーノ君をペットにしようとする。
・キャラ崩壊注意
・非エロ

9 ちっちゃなヤンデレは好きですか? 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:30:33 ID:VkrGWwSc
 無限書庫司書長のユーノ=スクライア。彼はとある大掛かりなプロジェクトで
数日徹夜で検索作業を続けていた。そしてやっとそれも完了し、疲れた身体を癒す為に
体力・魔力の消耗の少なく回復速度の速いフェレット形態になって眠りに付いていたのだが…
それがいけなかった……………

「ふあ〜良く寝た〜…。」

 ユーノが目を覚まし、再びフェレットから人間の姿へ戻ろうとしていた時に突然呼び止められた。

「待ってくださいユーノさん! そのまま人間に戻っちゃったら大変な事になっちゃいますよ?」
「え? リイン!」

 そこに現れたのはリインフォースⅡ。そして彼女の言う人間に戻ったら大変な事になるとは
どういう事だろうかと考えていた時…彼は首に妙な圧迫感を感じた。

「ん? 何だいこれは…って…首輪!?」
「そうです。ユーノさんが寝ている隙にリインがこっそりその金属製の首輪をはめさせてもらいました。
もしその状態で人間に戻っちゃったら…ユーノさんの首が絞まって大変な事になっちゃいますよ。」

 何と言う事だろう。リインはユーノの首に首輪を付けていた。しかもただの首輪では無い。
フェレット形態のユーノの首にピッタリフィットする様にセットされた金属製の首輪。
もしこの状態で変身魔法を解除し、人間に戻ったとしたら…ユーノの首が絞まって……窒息死は必至。

「リイン! 何でこんな事をするんだい!? 変な冗談はやめて早くこれを外してよ!」
「何を言っていますか。ユーノさんは今日からリインのペットになるんですよ?」
「え………。」

 優しく微笑み言うリインの言葉にユーノは絶句した。

「リ…リイン…何を言ってるんだい…? 変な冗談はやめてよ…だから…早く…これ…外してよ…。」
「冗談なんかじゃありませんよ。今日からユーノさんはリインのペットになるんです。
大丈夫ですよ。リイン、ユーノさんを大切に飼ってあげますから。」
「………!!」

 フェレット形態のユーノのモサモサの毛並みを優しく撫でながら言うリインの目からは
アクセントが消え明らかにイッており、ユーノはまたも絶句するしか無かった。

「や…やめてよ…リイン…僕は君のペットなんかには…なれないよ…。」
「ダメですよ。ユーノさんに拒否権なんて無いんです。だって今日からリインが飼い主で
ユーノさんがリインのペットなんですよ。」
「………………!!」

 リインの表情と口調はこの上なく優しい。しかし、その瞳からはアクセントが消えており…
優しさが感じられない。それがユーノにとってこの上なく恐ろしく見えた。

10 ちっちゃなヤンデレは好きですか? 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:31:29 ID:VkrGWwSc
「怖がらなくても大丈夫ですよ。ユーノさんはリインが守ってあげるです。それが飼い主の務めですよ。」

 リインは本気だった。本気でユーノをペットにするつもりだった。確かに高町家でお世話になっていた時も
フェレットの姿でペットとして暮らしていたユーノではあるが、あくまでもそれは非常時の話。
しかし、リインはこれからずっとペットとして暮らせと言うのだ。ユーノにそんな事が出来るはずが無い。

「い…嫌だ…嫌だよ…。やめようよリイン…こんなの…。君が僕に遊んで欲しいって言うなら遊んであげる…。
でも…こんな事をするのはやっぱりダメだよ。だから…これを外してよ…。」
「だ〜か〜ら〜何度言ったら分かるんですか〜? ユーノさんはリインのペ・ッ・トなんです〜。」
「〜〜〜〜〜〜〜!!」

 今のリインには何を言っても無駄だった。明らかに狂っている。明らかにイッている。
確かにユーノの事が好きだという意思は感じられるが…こんなやり方は間違っている。
そう考えたユーノは…思わずその場から逃げ出していた。

「い…嫌だぁぁぁぁ!! 誰か! 誰かぁぁぁぁぁぁ!!」
「あ! ユーノさん待って下さいよー!」

 恐怖の余りその場から逃げ出したユーノはとにかく誰か助けてくれる人を求めて駆け出した。
そして無限書庫から外に出て本局の廊下をひたすら走って走って走り続けた。もしここで動きを
止めれば後から追って来るリインに捕まってしまう。そんな事になってはならない。

「ハァハァ! 誰か! 誰かぁぁぁぁ!」
「アハハハハハ! ユーノさ〜ん! 待ってくださいよ〜!」

 必死に逃げるユーノだが、リインにとっては鬼ごっこをしている感覚なのだろう。
明らかにイッた目で笑いながらユーノを追って来る。それがまたユーノには恐ろしかった。
しかしここで思わぬ助け舟。ユーノの目の前になのはの姿があったのである。

「あ! なのは! なのはぁぁぁぁ!」

 ユーノはなのはに助けを求めるべく披露した身体に鞭打って必死に駆け寄るが…………

「な…………なのはぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 ユーノが見た物。それは全身が氷付けにされた状態で立っているなのはの姿だった。
それにはユーノも思わずその場に立ち尽くしてしまう。

「な…なのは…な…何で…? い…一体誰が…こんな事…。」
「なのはさんが悪いんですよ。リインがユーノさんの事ペットにするって言うのを反対するから…。」
「リイン!?」

 ユーノの背後にはリインが立っており、その手でユーノの頭を優しく撫でていた。
思わずユーノはビクッと震え上がってしまう。

11 ちっちゃなヤンデレは好きですか? 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:33:11 ID:VkrGWwSc
「リ…リイン…まさか…君が…。」
「だってそうじゃないですか。なのはさんにはヴィヴィオがいるし、それにフェイトさんと
百合ってばかりいるじゃありませんか。なのはさんがそんなだからユーノさんも寂しい思いしてると思って…
今のユーノさんの傷付いた心を癒せるのはリインしかないって思ってたのに…なのはさんが邪魔するんですよ。
本当欲張りにも程がありますよね?」

 リインはユーノの頭を優しく撫でながら語り始めた。しかし、ユーノは恐怖の余りその場から
動く事が出来ず、ただただ震えながらリインに頭を撫でられ続けるしか無かった。

「なのはさんはフェイトさんと百合ってるからもうユーノさんはいらないんですよね? ならリインが貰っても
構いませんよね? って言ったら…なのはさんは何って言ったと思いますか? フェイトちゃんとの百合は
○嶋プロデューサーさんの命令でファン向けの営業として仕方なくやってるパフォーマンスであって、
いずれ時がくればユーノ君と〜とか言っちゃうですよ!? 言い訳にも程がありますよ! って言うか
三○プロデューサーって一体何者なんですか!? まったく見苦しい…見苦しすぎます! だから………
凍らせちゃいました! カチコチに凍って行く時のなのはさん、何て言ってたと思います?
ユーノくーんユーノくーんって、ユーノさんの名前をずっと呼んでたんですよ。まったく見苦しいですよね。
フェイトさんの名前を呼ぶのならまだしも…。ユーノさんはリインのペットなのにね。」
「リ………リイン……………。」

 ユーノの頭を撫でるリインの手はこんなにも優しいと言うのに…リインの言葉からはなのはに対する
この上ない程の憎悪の様な物が感じられた。しかし、リインはなおも続ける。

「例えなのはさんでも所詮は人間…蛋白質やカルシウムの塊ですよね…。リインがちょっと凍らせただけで
直ぐにカチンコチンに動かなくなっちゃいました。こんなだらしの無い女にはやっぱりユーノさんを
任せておく事は出来ませんね。こんな体たらくじゃユーノさんと一緒になったとしても直ぐに死んじゃって
ユーノさんを悲しませる事になるのがオチに決まってます。」
「あ………リ……リイン…………やめて………もう……やめて………。」

 確かになのはとフェイトの百合はユーノとしても見苦しくはあったが…だからと言ってこんな事を
する事も無いだろう。やりすぎだ…とユーノは考えていたが…恐怖の余り上手く伝える事が出来なかった。
しかし、先程までユーノの頭を撫でていたリインが突然ユーノに抱き付き、そのモサモサの毛並みに
顔を埋め始めていた。

「だから…ね…ユーノさんはリインのペットとしてリインと一緒に暮らした方がずっと幸せになれるんですよ。
なのはさんなんて直ぐにヨボヨボにお婆ちゃんになるに決まってるじゃありませんか。でもリインはそんな事には
ならないんですよ。そういう意味でも…ユーノさんはリインと一緒に暮らした方が絶対幸せになれますよ。」
「あ……あ………あ……ああ………。」

 リインに優しく抱かれ、ユーノは震える事しか出来なかった。だが、リインはその間も
ユーノの毛並みを優しく撫でていた。

「なのはさんもヴィヴィオやフェイトさんとの百合だけで満足していればよかったんですよ。
ユーノさんにまで手を出そうとさえしていなければ…こんなカチンコチンにならずに済んだのに…。
でも…もうこれで大丈夫です。ユーノさんはリインがずっとず〜っと大切に飼ってあげますからね〜。」
「あ…あ…あ…あ…。」

 瞳からアクセントが消え…明らかにイッた目で優しくユーノの身体を抱き、毛並みを撫でるリインが
怖くて…恐ろしくて………ユーノは……考えるのを………止めた………。

12 ちっちゃなヤンデレは好きですか? 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:34:25 ID:VkrGWwSc
「うああああああああああ!! って………ここは………。」

 ユーノが目を覚ました時、そこは自室のベッドの上だった。

「もしかして…夢………? よ…良かったぁぁぁ〜………。」

 今までの事は全て夢だったと認識したユーノはほっと胸を撫で下ろした。現に今のユーノはフェレットでは無く
人間の姿であったし、その首に首輪もはめられてはいなかった。

「何だ…何だ夢か〜……。そうだよね……リインがあんな酷い事をするはずが無いじゃないか。」

 と、再びほっと胸を撫で下ろしていた時だった。突然ドアの向こうから足音が聞こえて来て…
誰かがドアを開けて入って来た。

「ユーノさん! もうこんな時間ですよ! いい加減早く起きないとお仕事遅刻しちゃいますよ!」
「え!? あの…君…誰…?」

 突然ユーノの自室に入って来た女性。明らかに見覚えが無く、誰なのだろうと考えていたが…
逆にその女性に呆れられてしまった。

「何をとぼけた事を言ってますか! リインですよ! リインフォースⅡ! まだ寝ぼけているんですか!?」
「ええ!? リ…リイン!?」

 確かに…その女性は初代リインフォースを髣髴とさせるボンッキュッボーンな体型ではあったが、
その顔付き、瞳の色等はリインフォースⅡのものだった。

「で…でも…何で君が…こんな所にいるんだい?」
「何を言ってますか!? 私達結婚して何年になると思ってますか!? その歳でもうボケが来たんですか!?
困りますよそういうの!」
「え………ええ!?」

 リインいわく、ユーノとリインは結婚しているのだと言う。これにはユーノも状況が理解出来ずに
困惑するが、自室の机の方に目をやると確かにユーノとリインの結婚式の写真が飾られていたし、
リインもまたどこからともなくアルバムを取り出していた。

「ほら、これが証拠ですよ。ユーノさんとリインが結婚してから撮った色んな写真!」
「た…確かに……。」

 アルバムにはユーノとリインの結婚式の写真を初め、新婚旅行やその他様々な写真が収められていた。
そう考えれば確かにそんな事もあった様な気がしない事も無いとユーノも頷いてしまう。特に結婚式の写真で
ユーノとリインを祝ってる人の中になのはが混じっていたりなんて事もあったし、そういう意味でも
先にユーノが見たリインがなのはを氷付けにした件はユーノが見た悪い夢に過ぎなかったと言う事になる。

「あ! もうこんな時間じゃないですか! 早く用意して出かけないと遅刻しちゃいますよ!」
「ご…ゴメン…。」

 ユーノは大急ぎで出かける準備をして、出勤して行く。

「ユーノさん行ってらっしゃ〜い!」
「う…うん! でも…何か変だな……。」

 何か違和感を感じながらも仕事場へ向かって行くユーノであったが、そんな彼の姿を見つめながら
リインは優しく見送りながらもニヤリを微笑んでいた。

「ユーノさん…これからもずっと…ず〜っと一緒に暮らして行きましょうね〜…終わらない夢の中で…。」

                    夢は……終わらない…

13 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/06(木) 21:35:16 ID:VkrGWwSc
最後の展開がヤンデレと言うより不思議系っぽい(?)かな〜なんて…
当初は氷付けにされたなのはをユーノの目の前でヤンデレリインが砕くみたいな事もやろうと思いましたけど
それは流石にグロ杉なのでやめました。

14 名無しさん@魔法少女 :2009/08/06(木) 22:30:36 ID:mrmu1zHA
んー、何ちゅうかコメントし辛いなこの作品・・・
とりあえず乙でした。次回作に期待してますよ。

15 名無しさん@魔法少女 :2009/08/06(木) 22:37:41 ID:6/KD0CVk
変わらない作風ですねぇ
もっと視野をひろげてみると、参考になるものが見つかるかもしれませんね

>>1

16 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 00:03:38 ID:dSaOxYyE
GJ!
さすが闇の書直系、と思わせるラストでしたね。

17 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 01:02:52 ID:M66J5gHY
GJでした

初陣投下も乙です!

18 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 01:08:39 ID:VxJEdsgQ
ひとつ気になったんだが、アクセントじゃなくてハイライトじゃね?

19 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 01:42:46 ID:efIbWXiI
GJ!
ヤンデレとはこうやって書くものなんだな。スッゲー参考になった。
一本ヤンデレモノを考えてたんだが、書き方が解らなくて困ってたんだ。
ところでこれはギャグなんだろうか?
三○とか出てる次点でヤンデレ特有のダーク感が消えたぞw

20 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 07:51:42 ID:2X5axPbQ
なんだ、これ回りくどい本編批判なのw?

21 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 08:43:08 ID:/jZpQnhg
ネタにマジレスされても作者さん困ると思うぞ。

22 名無しさん@魔法少女 :2009/08/07(金) 23:05:59 ID:2xwCaq5k
ゲーム化おめ

23 名無しさん@魔法少女 :2009/08/08(土) 20:57:26 ID:maimzOo2
来週はもうコミケか
今年もなのはブースは混みそうだ……

24 名無しさん@魔法少女 :2009/08/09(日) 00:57:22 ID:5x6wxg0I
ははは、ここは、なのはさんが砕けてこそヤンデレ完成
不思議系のラストは、オカルトチックですね。

25 B・A :2009/08/10(月) 00:26:36 ID:W1/rb8EY
土日に間に合わなかった。
ううむ、残念。
投下いきます。


注意事項
・sts再構成
・非エロ
・バトルあり
・続々続くよオリ展開
・基本的に新人視点(例外あり)
・はやて好きは気をつけろ、今日はレジアスのターン
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

26 Lyrical StrikerS 第3話① :2009/08/10(月) 00:27:20 ID:W1/rb8EY
第3話 「集結」



憧れの人との再会から、3週間が過ぎ去った。
無事に再試験を突破し、晴れてBランク魔導師となったスバルとティアナは、
八神はやてからの誘いを承諾し、機動六課への入隊を決めた。
そして、共に2年間働いた陸士386部隊の先輩達に別れを告げ、新たな職場となる機動六課の隊舎を訪れていた。
今日からいよいよ、新部隊での生活が始まるのだ。

「大きいね、ティア…………………」

目の前に建つ隊舎を見上げ、スバルは驚嘆の声を漏らした。
大きい。
建物自体は少し古いが、湾岸地区故か面積は相当なものだ。
4階建ての建物は端から端まで走るだけでも良い運動になるだろうし、
その向こうには中庭らしき緑の空間がこれでもかと広がっている。
パッと見た感じでは、機動六課の隊舎は管理局の施設というより私立の学校のようだ。

「そうね……………けど、ちょっと中央から遠すぎない、ここ?」

肩に担いだボストンバッグの重みで背中を曲げながら、ティアナは愚痴を零す。
実際、昨日まで利用していた隊員寮からここまでかなりの時間を有していた。
何しろ最寄駅への直通の便がなく、レールウェイも走っている本数が少なくて乗り継ぎが悪い。
駅から隊舎までもかなりの距離があった。或いは、中央から距離のある湾岸地区だから、
これだけの敷地面積を確保できたのかもしれないが。

「あ、ヘリだ……………ヘリポートがあるんだね、ここ」

「どうせなら、ヘリで迎えに来てくれれば良いのに」

「やっぱり、先輩からバイク借りた方が良かったんじゃない? ティア、免許持っているんだし」

「後から返すのが面倒でしょ。武装隊なんだから、いつ休暇が貰えるかもわからないんだし」

「あ、それもそうか」

ティアナの指摘にスバルは邪気のない子どものような笑みを返し、機動六課の隊舎をもう一度見ようと頭を上げる。
見上げると、やはり感慨深いものがあった。
自分が魔導師を目指すきっかけとなった、憧れの魔法使いと同じ職場。
女神のようなあの人と共に前線に立ち、彼女から教えを受ける日々。
漠然とではあるが、自分を変えることができるような気がした。
今よりも強く、もっと高く。
ほんの少しだけ、万分の一でもあの人に近づけるかもしれない。

(あんな力に頼らなくても、誰かを守れる力が…………………力があれば……………)

自分の不注意から傷つけてしまった運び屋の青年のことを思い出し、スバルは握り締めた拳に視線を下ろす。
彼は現在、地上本部の医療施設に入院している。命に別状はないが背中の火傷が酷く、
治療にはそれなりの時間を要すると担当の医師は言っていた。
あの時、自分がもっと注意深く警戒していれば、彼は傷つかずに済んだ。
彼の奥さんは夫の命を救ってくれたと感謝していたが、自分の未熟さから傷つかずに済んだかもしれない人を
傷つけてしまったことに対して、スバルは強い自責の念を抱いていた。

「スバル…………ちょっと、スバル!?」

「………えっ?」

「考え事? 知恵熱が出ても知らないわよ」

「ちょっ!? 幾らなんでも言い過ぎ!」

「なら寝不足? 新部隊の発足式で居眠りしても、起こしてあげないからね」

「ちょっと、ティア! 待ってよぉ!」

ひらひらと手を振りながら先に進もうとするティアナに頬を膨らませながら、スバルは自分のバッグを担ぎ直す。
その時、隊舎の入口から10歳くらいの少年と少女を伴った薄い紫色の髪をした青年が姿を現した。
青年はこちらの姿を認めると、後ろを歩く2人に断りを入れるように片手を上げ、駆け足気味にやってくる。
どうやら、彼も機動六課の隊員のようだ。

27 Lyrical StrikerS 第3話② :2009/08/10(月) 00:28:17 ID:W1/rb8EY
「スバル・ナカジマ二等陸士とティアナ・ランスター二等陸士だね?」

「えっ、はい………………」

「初めまして、僕はグリフィス・ロウラン准陸尉。機動六課の部隊長補佐です」

「准りっ………し、失礼しました。ティアナ・ランスター二等陸士であります。ほら、スバルあんたも…………」

「えっ、ふぇっ!?」

半ば無理やり後頭部を押さえられ、スバルは戸惑いの声を上げる。
だが、すぐにティアナが慌てている理由に気づき、スバルも居住まいを正して敬礼をし直す。
準陸尉という階級は尉官の1つ下に位置する階級で、自分達よりもずっと上の階級である。
しかも、部隊長補佐ということは機動六課の№2であり、八神はやての右腕ということになる。
初日から上司の心証を悪くしてはならないと、ティアナは焦っていたのだ。
だが、グリフィスと名乗った青年はこちらの慌てぶりを見て苦笑すると、謙遜するように右手を振ってみせた。

「そんなに畏まらなくて良いよ。これから一緒に仕事をする仲間なんだし、年もそんなに離れていないしね。
あっ、紹介するよ。エリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ、君達と同じフォワードメンバーさ」

グリフィスが手を振ると、隊舎の入口で待っていた2人が駆け寄って敬礼する。

「初めまして、エリオ・モンディアル三等陸士であります」

「同じく、キャロ・ル・ルシエ三等陸士であります」

「丁度、2人を隊員寮に案内するところだったんだ。君達も自室に荷物を運ぶと良い、ついておいで」

そう言って、グリフィスは4人を先導するように歩き始める。
初対面ということもあってか、互いの距離を測り合う微妙な沈黙が漂っていた。
ティアナは元々、率先して友人を作るタイプではないし、エリオは真っすぐにグリフィスの背中を見つめたまま口を閉ざしている。
キャロはキャロで何だかオドオドしていてこちらを警戒しているようで、3人が3人とも余り喋りたがっていないように思える。
だが、スバルはそんな空気など物ともせず、好奇心全開のトーキングモードを発動させてちびっ子2人を標的に定める。

「ねえねえ、エリオって年はいくつ? 前もどこかの部隊にいたの?」

「えっ、はい。年は10歳です。今年に入局したので、機動六課が初めての職場になります」

「へぇ、ならあたしやティアは先輩になるんだ。キャロは?」

「えっと…………自然保護隊に……………」

「きゃふぅ」

「わぁっ、何その白いの? 鳥? 犬?」

「いえ、わたしの竜…………」

「凄い凄い。ティア、竜だよ竜、本物の竜!」

「スバル、静かに」

「キャロって召喚師なんだ、初めて見たよ。あっ、2人の所属分隊は? あたし達と一緒?」

「いえ、僕とルシエさんはライトニング分隊です。ナカジマ二等陸士やランスター二等陸士とは別の分隊になります」

「あっ、同僚なんだし、他人行儀なのは止めよう。名前で良いよ、『スバル』と『ティア』!」

「ま、別に良いけどね、あたしは」

「もう、ティアってば照れているの?」

「暑っ苦しい!」

「す、すごっ………」

「仲良いんですね」

「君達…………………前言撤回、もう少しだけ畏まって」

頭痛を堪えるように額を小突きながら、グリフィスは呟く。
結局、その後もスバルの質問タイムは続き、その勢いに呑まれたエリオとキャロは
自身のプライベートを洗いざらい告白するのだった。
尚、上官故に標的とならなかったグリフィスが少しだけ傷ついていたのは、ここだけの話である。







「機動六課課長、そしてこの本部隊舎の総部隊長、八神はやてです」

壇上に上がった八神はやてがスピーチを始め、隊員達が整列したロビーの空気が張り詰めていく。
いよいよ、機動六課での仕事が始まるのだなと思うと、エリオは興奮を隠せなかった。
エリオにとって、機動六課は初めての職場なのである。
彼が学校への転入を断ってまで管理局に入局したのは、一重に恩人であるフェイト・T・ハラオウンに恩返しをするためだ。
自分に生きる希望と、誰かを慈しむ心を教えてくれた女性。
気高く美しい彼女は自分の遙か先にいて、手を伸ばしても影すら掴むことができない。
それでも、追いかけたいと思ったからここにいる。
機動六課で槍と魔法を磨いて、1日でも早く、彼女の背中に追いつくのがエリオの目標であった。

28 Lyrical StrikerS 第3話③ :2009/08/10(月) 00:29:35 ID:W1/rb8EY
(そういえば、この娘はどうしてここにいるんだろう?)

傍らに立つ少女を横目で見て、エリオはそんなことを考える。
自分と同じくフェイトの保護児童だが、彼女と会うのはこれが初めてだ。
出会った時に一通りの自己紹介は済ませているが、それ以上のことは何も知らない。
どこの生まれなのかも、どんな経緯で管理局に保護されたのかも、何を思って機動六課に参加したのかも。
知っているのは名前と保有スキル、そしてフォワードとして与えられた役割だけだ。

「………ここまで、機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした」

はやてがスピーチを締め括ったところで、エリオは現実へと引き戻された。
発足式が滞りなく終了し、張り詰めていた空気が弛緩していく。これから、隊員達は各自の持ち場で仕事の割り振りを確認した後、
業務に移ることになっている。新人である自分達も例外ではなく、分隊長と教導官を兼ねているなのはが早速、訓練を始めると呼びかけていた。
本格的な武装隊の訓練は、これが初めてになる。いったい、どのようなプログラムが組まれているのだろうか?
そんな風に考えながら先を行くなのは達を追おうとすると、背後からこちらを呼び止める声が聞こえた。

「エリオ、キャロ」

「フェイトさん!?」

振り返ると、陸士隊制服に身を包んだフェイトが手を振っていた。
フェイトは柔和な笑みを浮かべながら近づいてくると、自分とキャロの頭を優しく撫でる。
子ども扱いされているみたいで恥ずかしかったが、フェイトは好んでこのスキンシップを行うため、
いつの間にか自分達の挨拶代わりとなっている。実際、母と慕う女性と触れ合うのは悪い気がしなった。

「これから訓練? いきなりで大丈夫かな?」

「はい、大丈夫です。見ていてください、きっと立派なベルカの騎士になってみせます」

「わ、わたしも…………がんばります」

エリオの力強い返答に釣られるように、隣のキャロが小さく頷く。
フェイトはそんな2人に対して我が子を慈しむ慈母のように目を細めると、頭を撫でる手にいっそう慈愛の念を込めていく。
親子と呼ぶには少しだけ物足りず、他人としては少しだけ過剰なスキンシップ。
ぎこちなくて曖昧かもしれないが、それが3人の在り方だった。

「そのくらいにしておけ、テスタロッサ。あまり2人に構っていると、いつまで経っても訓練が始まらん。
それに、お前も主………八神部隊長と共に地上本部へ赴くのではなかったのか?」

どこからか現れた緋色髪の女性が、フェイトの後頭部を軽く叩く。
見覚えのある顔に、エリオとキャロは慌てて居住まいを正した。
彼女が自分達の所属する分隊の副隊長だったからだ。

「お、おはようございます、シグナム副隊長!」

「ああ、おはよう。会うのは久し振りだが、2人とも息災か?」

「はい、問題ありません」

「それは何よりだ。言っておくが、本局機動課はお前達が考えている以上にハードな部署だ。
こちらが要求するハードルもかなり高い。甘えられる間に甘えておけ、直に泣き言も言えなくなる」

「はい、望むところです!」

「その意気だ。エリオ、同じベルカの騎士として期待させてもらうぞ。キャロもさっきの言葉を忘れるな」

「「はい」」

シグナムの発破に、2人は声を揃えて返答する。
だが、勢いに呑まれたのか、キャロの言葉が少し震えているようだった。
見かねたフェイトはその場に跪いてキャロの小さな体をそっと抱き締めると、優しい声音で慰めの言葉を囁く。

「大丈夫、私もシグナムもいるし、キャロの隣にはエリオがいる。だから、怖がらなくて良いよ。
自信を持って、自分にできることから始めよう。大丈夫、キャロはできる娘だから」

「フェイトさん…………」

「エリオ、君はキャロのお兄さんなんだから、何かあったらよろしくね」

「は、はい。わかりました、フェイトさん」

不意に矛先を向けられ、エリオは背筋を強張らせる。
けれど、口を開いて出た言葉は出始めこそ震えていたが、迷いの念は些かも感じさせなかった。
自分でも意外だったが、どこか不安そうにこちらを見つめるキャロと目が合うと、その疑問もすぐに氷解した。

29 Lyrical StrikerS 第3話④ :2009/08/10(月) 00:30:47 ID:W1/rb8EY
(キャロ・ル・ルシエ、飛竜フリードリヒを使役する竜召喚師。保有スキルは召喚行使と竜使役。
僕が知っているのはこれだけ…………………これだけなんだ)

いつまで経ってもキャロを話そうとしないフェイトに苛立ったシグナムが、強引に2人を引き離してフェイトを連れて行こうとする。
さすがにフェイトもこれ以上、自分達を引き留めてはいけないと思ったのか、シグナムに首根っこを引きずられながら片手を振り、
激励の言葉を投げかけながら遠のいていく。
そんな愉快な2人を見送りながら、エリオはそっとキャロの手を取ろうと左手を伸ばすが、指先がぶつかったところで躊躇してしまう。
不安と好奇心が入り混じった瞳が、ジッとこちらを見つめてくる。
気恥ずかしさを覚えたエリオは、誤魔化すように自分の頭をかくと、離れたところで自分達のことを待っているなのは達を指差し、
先導するように一歩踏み出した。

「行きましょう、ルシエさん。皆さんが待っています」

「はい………よろしくお願いします、モンディアル三士」

交わされたのは、いつもと同じぎこちないやり取り。
どこか余所余所しい、他人行儀な語らい。
自分達もいつかフェイトやシグナムのように、気の置けない関係になれるのだろうか。
2人のように、気心の知れた友人に。
遠慮の要らない、家族のような関係に。

(知りたい……………僕はこの娘のことを…………この人のことを、もっと………………)

彼女のことが知りたいと、エリオは切に願った。







訓練をする。
なのはにそう言われて、訓練着に着替えたスバル達が連れて来られたのは、大型のトラックが何台も通れるような足場で隊舎のある敷地と
繋げられた埋立地であった。どうやら、ここが機動六課の訓練スペースらしい。港湾区という立地を活かし、
海上に拡張するように造られているため、広さはかなりのものがある。
これなら、かなりの人数がぶつかり合っても余裕があるはずだ。
けれど、訓練スペースには障害物らしいものが見当たらなかった。
昨日まで、災害現場を想定した荒れ地やセットを使って訓練に励んでいたため、殺風景な風景が何だか物足りなく感じてしまう。

「ティア、何だか寂しいところだね」

「黙って、なのはさんがこっち向いている」

ティアナに忠告され、慌てて口をつむぐ。
一瞬だけ目があったが、なのはは小さく微笑んだだけで傍らの女性に向き直る。
どうやら、見逃してくれたようだ。

(次からは気をつけないと)

憧れの人の手前、みっともない姿は見せたくなかった。
それでなくても、なのはは自分のことを「スバルちゃん」と子ども扱いしているのだ。
ここは訓練で実力を示し、自分もみんなと肩を並べて戦える魔導師であるということを証明しなければならない。

「さてと、訓練を始める前に復習するね。あたしが分隊長を務めるスターズ分隊とフェイト隊長が分隊長のライトニング分隊。
そして、ライトニングのシグナム副隊長が隊長を務める交替部隊。この3つが、機動六課の前線部隊なの。
スバルとティアナはスターズ、エリオとキャロはライトニング。任務中は4人一緒か分隊ごとに行動することになるから、
それぞれのコールサインや作戦コードはちゃんと把握しておいてね」

「はい、問題ありません」

「一通りの自己紹介と情報交換は済ませています」

ティアナとエリオが、それぞれの分隊を代表するように返答する。
するとなのはは、2人の勤勉さを喜ぶように頷くと、傍らで仮想ディスプレイを操作していた女性を呼び寄せた。

「シャーリー、何か一言」

「えー、メカニックデザイナー兼通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。 みんなはシャーリーって呼ぶので、みんなもそう呼んでね。
みんなのデバイスを改良したり調整したりするので時々訓練を見せてもらったりします。デバイスについての相談があったら遠慮なく言ってね」

「訓練の監修は、主にわたしとシャーリーが行います。フェイト隊長やヴィータ副隊長が合同訓練に参加するのは、
もう少し後になってからかな。それまでは基礎訓練でしっかり足腰を鍛えて、模擬戦で現場の感覚を掴んでもらうことになるから、
みんな精一杯がんばろうね」

「「「「はい」」」」

「じゃ、訓練を始めるね。シャーリー」

「はーい」

なのはの言葉に陽気な返事を返し、シャーリーは先程まで弄っていた仮想ディスプレイに指を走らせる。
心なしか、目の奥が輝いているように見える。そういえば、仮想ディスプレイを操作する姿もどこか楽しそうである。
メカニックデザイナーと名乗っていたが、機械だけでなくソフトウェアを弄るのも好きなのかもしれない。

30 Lyrical StrikerS 第3話⑤ :2009/08/10(月) 00:32:25 ID:W1/rb8EY
「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦シミュレーター。ステージセット!」

シャーリーがとどめとばかりに人差し指で仮想ディスプレイのボタンを押すと、埋立地全体が眩い発光に包まれていく。
どこからか聞こえる駆動音と歪んでいく視界。思わず目を擦るが、錯覚ではなかった。
目の前の空間が歪んでいき、まるで蜃気楼のように何もなかった平地に幾つもの建造物が現れていく。
これは街だ。
シャーリーは訓練の場として、海上に巨大な廃墟を作り出したのである。

「プログラムを組めば、密林から廃墟まで造り出せる陸戦シュミレーター。
立体映像と言ってもこの訓練スペースの中でならちゃんと質量もあるから、
ビルを壊したり瓦礫を持ち上げたりすることもできるよ。設定次第で現場に近い、
立体的な訓練ができるね」

自慢げに語るなのはや得意満面のシャーリーの思惑通り、スバル達は口をポカンと開けたまま呆けることしかできなかった。
海上に生み出された虚像の街。その迫力は圧巻の一言であった。ここからだとかなりの距離があるにも関わらず、
精巧に作り出された建造物の群れは本物と寸分変わらないように見える。
こうして、彼女達の機動六課での最初の訓練が始まった。







発足式を終えたはやてが機動六課部隊長として最初に行う仕事。
それは、地上本部の幹部達に機動六課設立の通達と、捜索対象であるロストロギアの危険性を説明することであった。
最も、こういったプレゼンテーションは本来、部隊を設立する前に行うものなのだが、本局と地上本部の軋轢から今日まで引き伸ばさざるえなかった。
そもそも、時空管理局の本局と地上本部は予てから折り合いが悪く、事ある毎に衝突を繰り返している。
次元世界の安寧と秩序のために危険なロストロギアの捜索や広域次元犯罪者を取り締まる本局と、
管理世界の治安維持を主任務とする地上本部。それぞれの立場や与えられている権限は同等であるにも関わらず、
事件の規模や危険性から本局に優秀な魔導師や予算が回されることが多い。しかし、それでも魔導師の絶対数の不足や巨大な組織故の
小回りの利かなさから後手に回らざるえないことも多く、事件を未然に防げず地上に被害が出ることもある。
そういった経緯もあって、本局と地上本部はお互いを反目し合っている。特に武闘派として有名なレジアス・ゲイズ中将が防衛長官に就任してからは
その傾向が強く、穏健派からの歩み寄りすら『越権行為』、『不当な介入』と敵愾心を剥き出しにする始末だ。
結果、本局が地上で捜査を行う場合はこのように全ての手筈を整えた後に、事後報告をせざる得ないのだ。
いくら不満があるとはいえ、使われた予算や人的資源を鑑みれば、それをなかったことにはできないからだ。

(とはいえ、何だかこっちが悪者みたいや)

こういった組織間の軋轢も、変えていかねばならない課題の1つだ。
そのためには、本局がどれだけ次元犯罪への対策に尽力しているのかを示さねばならない。
自分達が真摯な態度で任務を遂行し、結果を残していけば本局への不満や懐疑心も薄れ、
共に平和のために戦う仲間だと認めてくれるはずだ。
そして、その上で本局と地上部隊の協力を説き、素早い連携と身軽なフットワークで事件に対応できる組織改革を目指す。
自分達、高ランク魔導師が何の制限もなく実力を発揮し、自由に戦うことのできる組織。
それこそがはやての理想であった。

「お集まりの皆さん、お忙しい中、時間を作ってくださってありがとうございます。
これより、本局古代遺物管理部機動六課のプレゼンテーションを……………………」

会議室に集まった高官達を一瞥し、プレゼンテーションの始まりをはやては告げようとする。
その時だった。会議室の扉が勢いよく開き、栗色の髪の女性を従えた恰幅の良い中年男性が現れたのは。
その姿を見てはやては言葉を詰まらせ、隣にいたフェイトも目を丸くする。
高官達も皆一様に驚愕の表情を浮かべており、中には資料を取り落として慌てている者もいた。

「失礼、驚かせてしまったようだな。私のことは気にせず、続けてくれたまえ」

まるで自分のことは観賞用の壺か家具のように扱えとばかりに、その男はどこからか引っ張り出してきたパイプ椅子を広げて
壁際に腰を下ろす。だが、それを是とする者はここにはいなかった。何故なら、彼は実質的な地上本部のトップであり、
自分達の指導者であるからだ。そう、彼こそレジアス・ゲイズ。地上の平和を司る法の番人にして正義の守護者だ。

31 Lyrical StrikerS 第3話⑥ :2009/08/10(月) 00:33:33 ID:W1/rb8EY
「ちゅ、中将!? こちらに………私の椅子を!」

「構わん。時間が惜しい、お前達も席に着け…………着けと言っておるんだ!」

レジアスの一喝に、高官達も黙るしかなかった。
誰も面と向かって、彼に文句を付けられる者などいない。
彼に意見する者がいるとするならば、それは即ち地上本部以外の人間。
本局の局員以外にあり得ないのだから。

「レジアス中将、今日は別件で出張だと伺っていたのですが………………」

「それならば、急用で先方から断りが入った。だから、こうして出向いてやったのだ。
貴様の部隊は陸士隊として登録しているのだろう? なら、地上本部中将である私には知る義務がある。
例えそれが、設立後の事後報告であったとしてもな」

はやてとレジアス、両者の視線がぶつかり合って火花が散る。
こうして向かい合うのは初めてだが、はやては本能的にこの男に対して苦手意識を抱いた。
レジアス・ゲイズは確かに本局を毛嫌いしているかもしれない。だが、この男にはそれとは別の何かがある。
その何かが、自分への嫌悪となって瞳に表れているのだ。でなければ、あんな怖い目をするはずがない。

「さあ、説明してくれたまえ。ご自慢の機動六課とやらを」

「…………わかりました」

悟られぬように深呼吸をし、気持ちを落ち着かせる。
気圧されてはいけない。今の自分は機動六課の部隊長。
上に立つ者として、こんなこところで挫けていては最後の夜天の王の名の名折れだ。
怖れることはない。自分は正しいことをしているのだから。

「我々機動六課が設立された理由の1つ。それは、第一種捜索指定ロストロギア“レリック”の捜索です」

気を取り直して、プレゼンテーションが再開される。
しかし、先程までの空気は既になく、室内をピリピリとした緊張が包んでいる。
たった1人の男の存在が、この部屋の空気を変化させた。
それこそ、この男の存在感の成せる業であった。
地上をたった1人で守り抜いてきた豪傑。
レジアスのシンパの中には、彼をそう称える者もいる。
だが、ここで臆していては管理局の改革など不可能である。
はやてはレジアスの迫力に圧されそうになる自身の心を必死で鼓舞し、予定していたプレゼンテーションを消化していく。
レリックの危険性とそれを悪用しようとする謎の存在について。
レリックを始めとするロストロギアを探索と回収を行う自動機械“ガジェット・ドローン”。
そして、それらに対処するためという名目で設立された機動六課。
それらをわかりやすく、丁寧な言葉で説明し、高官達を説き伏せていく。

「………以上が、機動六課設立の経緯です。緊急を要する事態故に報告が事後となってしまったことを、ここにお詫びします。
ですが、レリックやガジェットが市民の安全を脅かす恐れがあるのは事実です。何卒、ご協力のほどをお願いします」

想いの全てを込めて、はやてはプレゼンテーションを締めくくる。
それに対して、レジアスは無言であった。他の高官達も苦虫を噛み潰したような表情を浮かべており、
どこか納得していない節が見て取れる。だが、こちらの意図は伝わったのか、機動六課の設立に対して異議を唱える者はいなかった。
それは決して喜ばしいことではなかった。何故なら、機動六課の設立を歓迎する者もいなかったからだ。
高官達は予定されていた質疑応答の時間を半ば強引に省略させ、口々に次の予定があるからと会議室を退室していく。
あからさまな嫌がらせに、隣で控えていたフェイトが拳を強く握り締める。
はやても奥歯を強く噛み締めたが、2人とも取り乱すような真似はしなかった。
これが現状なのだ。
どんなに真摯な言葉を投げかけても、結果が伴わなければ見向きもしてくれない。
今日ほどそれを強く痛感したこともない。

「ふん、とんだ茶番だな」

その呟きは、鋭いナイフのようにはやての胸に突き刺さった。
頭を上げると、部屋の隅に恰幅の良い中年男性が、不釣り合いなパイプ椅子に腰かけている。
レジアス・ゲイズ。本来ならばこの場にいないはずの、地上本部の事実上の指導者だ。

32 Lyrical StrikerS 第3話⑦ :2009/08/10(月) 00:34:14 ID:W1/rb8EY
「茶番でなければままごとか。どのようなお題目を並べようと、所詮は世間知らずの小娘の戯言」

「っ………レジアス中将、今の言葉は………」

「ええんや、フェイトちゃん」

反論しようとした親友を制し、はやてはレジアスに向き直る。
すると、レジアスはパイプ椅子からゆっくりと立ち上がり、威圧するようにこちらへと近づいてくる。
間近で見たレジアスは巨人のように大きく、顔も彫りが深くてヤクザのようだ。
ただでさえ強い苦手意識が、その迫力も相まって強い恐怖心を掻き立てる。

「小娘、どうしてお前がこうまで邪険にされるか、考えたことはあるか?」

「それは…………私が、まだまだ経験の浅い若造やからで……………」

「違う。経験の有無、年齢の有無で局員を蔑ろにするほど、我々は器が小さくないつもりだ。
わからぬのなら教えてやる。八神はやて、お前は闇の書の……………」

「中将」

感情のままに言葉を紡ごうとしたレジアスを、控えていた秘書官が制する。
さすがに失言だと思ったのか、レジアスは自分の言葉を誤魔化すように咳払いをすると、
わざとこちらに聞こえるように嫌味の含んだ呟きを漏らした。

「小娘は小娘らしく、お人形と共に故郷で静かにしていれば良いものを」

「……レジアス中将!」

今度ばかりは、はやても我慢ならなかった。
自分のことはどうでも良い。犯罪者と後ろ指さされることも、教会の傀儡と蔑まれることも覚悟の上だ。
だが、大切な家族であるヴォルケンリッター達を冒涜されることは無視できない。

「中将、ヴォルケンリッターは私の大切な家族です。お人形なんかとは違う、ちゃんとした心があります」

「所詮は、あの忌まわしい書物の付属物。危険な存在であることに変わりはない。違うか、夜天の王?」

「その称号を背負っていることが、私の覚悟です。あの子らの仕出かしたことも、私より以前の主達の罪も、
みんな私が背負う。私がこの生涯を賭けて償う。そう決めました」

2人とも、後ろに控えるフェイトと秘書官のことなど目に入っていないかのように睨みあい、激しく火花を散らす。
ここに来て、はやての中に初めて敵愾心と呼べるものが生まれた。
退いてはいけない。ここで退けば、自分だけでなく大切な家族や親友達まで侮辱されてしまう。

「…………………」

「……………償いか」

どれほど睨みあっていたであろうか。
不意にレジアスは、これまでに見せたことのない悲しみを浮かべ、僅かに唇を引き結ぶ。
だが、すぐに元のしかめっ面に戻ると、親の仇の腸を抉るかのようにはやてを詰問する。

「貴様が自らの部隊を持った理由は、償いのためか?」

「それは…………………」

「言えぬことか?」

「…………夢のためです。みんなが自分の信じる正義と信念を貫ける、本当に正しいことができる組織を作る。
それが私の夢……………私達の理想です」

それは偽らざる本心であった。
4年前に痛感した、時空管理局の組織としての弊害。
誰もが正しいことをしたいと思っているのに、それができないことへの不満。
それらを改善し、少しでも理不尽に泣く人々を救うこと。
それこそが、時空管理局のエンブレムに掲げた自分達の夢であった。

「夢………理想…………ふん、やはり小娘か。その言葉だけで、どんな結果が出せる? 
何を犠牲にし、何と戦う? 時に自分の意にそぐわぬ回り道がお前にはできるか?」

「それは…………」

レジアスの問いに、はやては即答することができなかった。
確かに、自分は機動六課の設立のためにコネクションや多くの裏技を駆使してきた。
叩けば色んなところから埃が出てくるし、何とでも言いがかりの付けられるところも多い。
だが、レジアスが口にしているのはそんな生易しいものではない。
もっと切迫していて、抜き差しならない状況で、己の信念を貫けるのか。
泥水を啜ってでも星を見ることができるのか。
その覚悟を問うているように思えてならなかった。
だから、はやては答えることができなかった。
償いのために、信念を曲げることなどできない。
夢のために、大切なものを犠牲になどできない。
かけがえのないものを捨てる覚悟など、自分にはないのだから。

「1つ、教えてやる。まずは筋を通せ…………綺麗事と英雄願望だけで動くほど、世の中は甘くはない」

突き放すように言い捨て、レジアスは秘書官と共に退室する。
それは一見すると、レジアスが一方的にはやてを非難しているように見えた。
だが、はやては立ち去り際のレジアスの言葉を聞き逃さなかった。

33 Lyrical StrikerS 第3話⑧ :2009/08/10(月) 00:35:58 ID:W1/rb8EY
『私のようには…………』

それ以上は聞き取ることができなかったが、その言葉にはとても悲しい響きが込められていた。
彼は何と言いたかったのだろうか?
こんな若造である自分に、彼は何を伝えたかったのであろうか?

「はやて、気にすることないよ。はやては何も、悪いことなんてしてないんだから」

フェイトが震える肩を撫でながら、慰めの言葉をかけてくる。
だが、はやては小さく首を振ると、自嘲気味な笑みを浮かべながらレジアスが消えた扉へと目を向ける。

「1個だけ、悪いことしてた……………夢ばかり追いかけて、筋なんて1つも通してなかった。
そりゃ、邪険にもされるわ。人の土俵に勝手に上がりこんだんやから」

後日、はやては機動六課課長として正式な捜査協力の依頼を地上本部に申請し、
指揮系統の一部を地上本部に受託させるなど、かなり地上本部寄りな組織案を提案したが、レジアスはそれを棄却。
結果、機動六課は従来通りの本局直轄という形で落ち着いたが、情報交換のためのパイプの構築など、
最低限の協力体制は取りつけることができた。また、今後のことを踏まえてレジアスにはある制約に関して
進言することができる権限が与えられるなど、はやてなりに筋を通したことで、
機動六課は想定していたよりもほんの少しだけ融通の利かない部隊となった。







狭い路地や瓦礫の山を駆けながら、スバルとエリオは左右から浮遊する自動機械に射撃魔法を叩き込む。
しかし、自動機械は赤いケーブルを触手のように波打たせながらそれを回避、
こちらを翻弄するように速度を上げながら、距離を引き離していく。

『ダメだ、ふわふわ避けられて当たらない』

通信機越しに聞こえたエリオの呟きに、ティアナは軽い苛立ちを覚えた。
スバルもエリオも近接型のせいか突撃思考で、敵を追いかけて前に突出しやすい。
しかも、目の前の標的を見失えば次の目標を探すという非常に場当たり的な索敵と、馬鹿正直なまでに直線的な動きしかしていないため、
すぐに翻弄されて隊列を乱してしまう。互いの距離がこうも離れていたのではいざという時にフォローし合うことができない上、
前衛を突破されてしまった時は、後衛である自分達まで敵を遮るものが何もないという危険な状態に陥ってしまう。

「前衛2人、分散しすぎ! ちょっとは後ろのこと考えて!!」

怒鳴ってから、ティアナは自分の愚かさに気がついた。
戦況の把握に集中し過ぎて、2人に援護射撃をすることを失念していたのだ。
敵の動きが素早いのならば、弾幕を張って動きを制限するなり誘導弾で前衛と挟み討ちすれば良い。
通用するかどうかわからないが、幻術を試してみるという手段もあった。
自分の役目はセンターガード。いち早く戦場のコントロールを握り、自分達に有利な状況を作り出すのが役目。
ならば、自分のしていることは言いがかり以外の何ものでもない。
スバルもエリオもそこまで深く考えていないのか、どちらも連携を崩した自分達の責任だと謝罪して、
逃走するターゲットの追撃を再開している。
それがいっそう、ティアナに歯痒さを痛感させた。
わかっている。
自分はアレに対して、苦手意識を抱いている。
ガジェット・ドローン。
模擬戦の相手としてなのはが用意した相手は、3週間前に自分達が遭遇した謎の自動機械のレプリカであった。
ガジェットはロストロギアを強奪するために現われるので、ロストロギアの保守管理が任務である機動六課に所属していれば、
否でも戦わねばならない相手であるとなのはは言っていた。
不規則で読み辛い動きと見た目に反して鋭い攻撃。
確かに厄介な相手だ。
だが、自分はそれ以上にガジェットを恐れている。
自分が今まで、信じて疑わなかった魔法の力。どんなに遠くの標的も、厚いバリアも撃ち抜くランスターの弾丸。
それがあいつらには通用しない。
ガジェットが身に纏っている特殊なフィールドが、魔法をかき消しているのだ。

(っ…………怯えるな、あたし。魔法が消される? それがどうしたっていうのよ!
お兄ちゃんなら、ティーダ兄さんなら、こんなことで挫けたりしない。
考えるの、考えるのよティアナ・ランスター)

心の中で自分に発破をかけ、ティアナはアンカーガンの照準を逃走するガジェットへと向ける。
距離は遠いが、カートリッジを使えばほぼ減衰なしで魔力弾を叩き込むことができる。
そこに補助魔法によるブーストをかければ、或いはフィールドを突破できるかもしれない。

34 Lyrical StrikerS 第3話⑨ :2009/08/10(月) 00:37:47 ID:W1/rb8EY
「ちびっ子、威力強化お願い」

「は、はい。ケリュケイオン」

《Boost Up. Barret Power》

桃色の光がアンカーガンに吸い込まれ、足下の魔法陣が輝きを増していく。
すると、アンカーガンを握る手に焼け付くような熱さが込み上げてくる。
デバイスが腕の延長になったかのような一体感。自分は今、素手で星を掴んでいるのだ。
生みだされた流星はいつもよりずっと大きく、眩い輝きを放っていた。

「シュートッ!!」

立て続けに放たれる橙色の直射弾。
弾速と破壊力に重点を置いた流星の雨が、さながら逃げる羊を狩り立てる狼のように大気を引き裂き、
ガジェットの装甲を抉らんと迫る。だが、着弾の寸前でガジェットの周囲に空間が蜃気楼のように歪み、
必殺を信じて放った4発の魔力弾は儚い飛沫をまき散らしながら霧散していく。
これにはティアナも驚きを隠すことができなかった。
今もまだ腕に残る痺れから、自身が撃った魔力弾が尋常ならざる威力を秘めていたことはわかる。
なのに、例の力場はそれすらも無効化し、ガジェットの装甲には傷一つついていない。

「威力を強化してもダメ…………やっぱり、普通の障壁と違う」

「バリアじゃない…………魔力を消す……フィールド系?」

後ろにいた少女が、驚きながらも推論を述べる。
それはティアナに別の意味で驚愕を抱かせた。
魔法を消す力場。そんなものを目にすれば、大抵の魔導師は驚きの余り混乱してしまう。
事実、3週間前の自分は魔法が消されたことで動揺し、まともに戦うことができなかった。
フェイトが駆けつけてくれなければ、自身の負傷だけでなく民間人に被害が出ていたかもしれない。
入局2年目の自分ですらそうなのに、まだ局員に成り立ての彼女は動揺を必死で抑えながら、
冷静に状況を分析しようとしている。しかも、保有スキルの違いからか、一度見ただけであの力場が
フィールド防御の類であると見抜いていた。この少女、ひ弱そうに見えるが、一皮剥ければ化けるかもしれない。

(フェイトさんの秘蔵っ子に竜召喚師。それにスバル……………凡人なのはあたしだけか)

後ろ向きな思考が鎌首をもたげ、ティアナは慌てて首を振る。
雑念はミスの素だ。成果を残したいのなら、常に落ち着いた心で魔法を行使せねばならない。
それに、さっきの出来事で1つわかったことがある。
あの力場を突破するには、魔力弾そのものの破壊力はそれほど関係がないということだ。
恐らく、魔力結合を阻害することで魔法を無効化しているのだろう。
その時、離れたビルから何かが激突するような音が轟く。
ウィングロードを展開してガジェットを追跡していたスバルが、足場から落下して向かいのビルにぶつかったようだ。

『ガジェットドローンには、ちょっと厄介な性質があるの。攻撃魔力をかき消すアンチマギリングフィールド………AMF。
普通の射撃は通じないし、AMFを全開にされると飛翔や足場作り、移動系魔法の使用も困難になる。スバルちゃん、大丈夫?』

『……なんとか。まだやれます』

『OK、なら訓練は続行。対抗する方法はいくつかあるから、どうすれば良いか素早く考えて、素早く動いて!』

こちらがいつまで経っても攻撃を当てられないことに見かねたのか、なのはからの念話が全員に飛ぶ。
些かヒントを出し過ぎている感も否めないが、貰えるのならありがたく頂いておこう。
或いはこれが、本局教導隊のやり方なのかもしれない。

「ちびっ子。名前なんてったっけ?」

「キャロであります。」

「キャロ、手持ちの魔法とそのチビ竜の技で、何とかなりそうなのある?」

「試してみたいのが、いくつか」

「あたしもある」

そう、落ち着いて考えれば対抗するための手段はいくらでも思いつく。
大切なのは常に冷静でいることだ。
戦況を把握し、己と敵の能力を把握し、持てる技能の全てを駆使して任務を遂行する。
自分にはそれができる。
何故なら、ランスターの弾丸に撃ち抜けぬものなどないのだから。

35 Lyrical StrikerS 第3話⑩ :2009/08/10(月) 00:38:32 ID:W1/rb8EY
『スバル』

『OK……………エリオ、あいつら逃がさないように、先行して足止めできる? ティアが何か考えているから、時間稼ぎ!』

『やってみます』

スバルからの念話を受け、眼下にいたエリオが加速魔法を発動させてガジェットの進行方向へと回り込む。
スバルも陸戦魔導師の中では高機動な方だが、エリオはそれに輪をかけて速かった。
それこそ、稲光のように虚構の廃墟を駆け抜け、不規則に逃げ回るガジェットの群れを追い抜いて
今にも崩れ落ちそうな橋の上に着地し、手にした蒼い槍を一閃させる。
直後、轟音と砂埃を上げながら橋が崩れ落ち、2機のガジェットが瓦礫の下敷きとなって機能を停止する。
更に追いついたスバルが崩落を免れたガジェットの1機を蹴り落とし、そのままマウントポジションを取って
強引に拳を減り込ませて爆散させる。頑強なアームドデバイスだからこそ可能な力技だ。

「連続いきます。フリード、ブラストフレア」

背後のキャロが使役竜に命令し、幼竜が小さな火炎弾を吐き出す。
動きは非常に緩慢であったが、橋の崩落で逃走経路を塞がれたガジェットはそれを避けることができない。
更に火炎弾は着弾と同時に周囲一帯を包み込む劫火へと姿を変え、その熱量でもって内部機械を破壊していく。
魔法を無効化するAMFも頑強な装甲も、これにはひとたまりもなかった。

(魔法に依らない瓦礫や打撃による破壊。それに炎のような自然現象…………やっぱり、
AMFも万能じゃない。これなら……………)

キャロが奇妙な拘束魔法で3機のガジェットを拘束したのを見届け、ティアナは残る2機を殲滅せんと隣のビルに飛び移る。
スバル達が引っかき回してくれたおかげでガジェットとの距離は余り離れていない。
後は、標的が射程距離内にいる間に奥の手を切るだけだ。

「こちとら射撃型、無効化されてはいそうですかって下がってたんじゃ、生き残れないのよ」

炸裂音と共にカートリッジが2発ロードされ、膨大な魔力が体内を駆け回る。
即席で組み上げた術式は穴だらけで、大よそ実用的な代物ではないとわかるものであった。
だが、四の五の言っていたのでは他の3人に遅れを取ることになる。
自分が機動六課を訪れた理由は、足手まといになるためではない。
自分の実力を証明するためなのだから。

(攻撃用の弾体を、無効化フィールドに消される膜状バリアで包む。フィールドを突き抜けるまでの間だけ外殻が保てば、
本命の弾はターゲットに届く。AAランク技能…………多重弾殻射撃……………)

全身の血を絞り出されているかのような負荷が圧しかかり、意識が飛びそうになる。
今の自分よりも2ランク上の魔法。普通ならば、失敗して当然の離れ業。
けれど、自分のような凡人が夢を掴むためには、この程度の奇跡くらい起こしてみせねばならない。
自分にはこれだけの実力があるのだと、みんなに認めさせねばならない。

「ヴァリアブルッ、シュゥゥゥトッ!!」

裂帛の気合と共に引き金が引かれ、流星の魔弾が唸りを上げる。
限界を超えて練り上げられた多重弾殻弾はガジェットを追走するスバルの真横を駆け抜け、
地面を這う蛇のように波を描きながらガジェットに着弾。そのままAMFを突き抜けて装甲を破り、
その勢いのまま残る1機にも風穴を開ける。
一拍遅れて爆発音が轟き、スバルが浮かれた歓声を上げる。
ターゲット8機の撃破。
無事に任務達成だ。

「こ、これくらい……………当然よ…………」

強がってみせるが、ティアナはそのまま床の上に座り込んでしまう。
多重弾殻射撃。予想以上に魔力と体力の消耗が激しい技能だ。
こんな弾を何発も撃っていたのでは、こっちの体が保たない。

36 Lyrical StrikerS 第3話⑪ :2009/08/10(月) 00:41:59 ID:W1/rb8EY
(やっぱり凄いや、お兄ちゃんは………………)

どこか誇らしげに微笑みながら、ティアナは上半身を支える力を失って倒れてしまった。







「へぇ、みんなよく走りますね」

各自のデバイスから送られてきた情報を整理しながら、シャーリーは感嘆の声を漏らした。
なのはからすれば、4人ともまだまだ危なっかしくて見ていられないところもあるが、
それでも要所要所での動きや発想力、胆力は中々に見込みがある。
鍛えていけば、きっとどんな困難にも負けないチームに育ってくれるだろう。

「デバイスのデータ、どんな感じ?」

「良いのが取れてます、4機とも良い子に仕上げますよ。レイジングハートさんも協力してくださいね」

《All right》

胸元のレイジングハートが、自身を赤く光らせながら返答する。
まだ4人には秘密にしているが、今後の戦いに備えて専用のデバイスを用意することになっている。
シャーリーは各自のデバイスに組み込まれた記憶チップを解析し、それらのデバイスを制作する役目も担っているのだ。
元々、機械好きということもあってか、本人はかなり乗り気でいる。
それが却って不安ではあるが、実力は折り紙付きなので問題はないであろう。

「どうですか、特に見所のある子とかいます?」

「うん? えーっとねぇ…………」

シャーリーの何気ない質問に、なのはは訓練時の4人の動きを思い返しながら考える。
スバルは3週間前に単身でガジェットを撃破していたが、今回はその実力を発揮し切れていないようであった。
ティアナはかなりの無茶をしていたが、AAランクの技能を使いこなしたところを見ると思っていた以上に潜在能力は高そうだ。
他の3人への指示はそれほど褒められたものではなかったが、4人の性格を考えると彼女のリーダーシップは貴重だ。
エリオはまだ自分の魔力変換資質を上手く戦法に組み込めていないようだが、フェイト譲りの高速機動や瓦礫を利用するという発想力は及第点である。
キャロは4人の中で最も自分の力を活かした戦い方をしていたが、ティアナに指示されるまでは自分からの行動を控えていた。
もう少し積極的に動いてくれれば、戦略の幅もかなり広がるだろう。
4人ともそれぞれに持ち味があり、改善点もまた多い。それでも、誰か1人を選べと言うのなら、彼女しかいないだろう。

「ティアナかな。危なっかしさは一番だけど、かなり伸び白があると思うよ。
わたしと同じ射撃型だし、この1年で色んなこと教えられそうかな」

「なのはさんの弟子ってことですか?」

「にゃはは、4人とも大切な生徒だよ。だから、あの子達がちゃんと自分の道を戦っていけるように育ててみせる。必ずね」

服の上から自身の胸元を擦りながら、なのはは答える。
風が少しだけ強くなってきたのか、古傷がほんの少しだけ痛んだ。
意識すれば我慢できる小さな痛み。けれど、それはなのはの焦燥感を煽るには十分な痛みであった。
育てなければならない。
自分が今日まで想いを貫けたように、不屈の心を持つ魔法使い達を。






                                                          to be continued

37 B・A :2009/08/10(月) 00:42:43 ID:W1/rb8EY
以上です。
本編と同じタイミングで登場していたら、レジィの出番はこれでもかと少なくなるのでこの回で登場となりました。
レジィは原作よりも少しだけ良い人です。それでも口は悪いし怖いし融通利かないし頑固だし非道な行いなんてバンバンしているし。
彼を扱う時は言動に一番気を使いますね。良くも悪くもはやてと両天秤なもんで。

38 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 08:56:42 ID:f1dDTxKk
>>37
乙乙。
ま、元からはやてと真反対側の人間だしねぇ。魔力0・先天技能なし・叩き上げの現場主義と。
これからも色々楽しみですよ。

39 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 18:39:10 ID:1PPM4606
>>37
乙です。改めてStsを振り返れていい感じです。

40 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 21:44:56 ID:kE8oa0UQ
投下乙、これからどうなるか気になります

41 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 22:13:27 ID:YFHauQ4A
よっしゃー、じゃあ本スレで投下されたやつを転載するぜ

42 僕の大好きなはやてちゃんへ1/11 :2009/08/10(月) 22:14:40 ID:YFHauQ4A
『はー、はー!は、はやてちゃん可愛いよぉ。』
俺は目の前の車椅子少女に伸し掛かると、重いだけがとりえの
この体を活かして腰を進め、彼女の両足を開かせる。
『お、おじさん止めて!わ、私みたいな子供にイタズラしても
何もイイことあらへん。』
なきながら許しを請うはやてを見ると、俺は
金玉から精液がムラムラとにじみ出てくるのを感じた。
はやての可愛らしい顔に、俺の気持ち悪くくさい顔を
近づけ、まだ誰も触れていない無垢の唇にむしゃぶりつくと、
口の中を臭い唾液と舌で犯した。
『う、うぅぅ・・・(いやぁ、いやや。気持ちわるぃ。)』
涙を流しながら俺のキスを耐えるはやて。俺はそんな9歳の
美少女を見下ろしながら、腰をがくがく動かし、汚い短小包茎
ペニスを、服の上から彼女の股に向かって何回もこすり付ける。
俺の下着とズボン、そして彼女のスカートとパンティーという4重の
障壁があってなお、この幼い美少女の穢れない秘所を侵略しているという
興奮は、童貞キモオタの俺にとってたまらないものだった。
『そ、そろそろ、や、やっちゃうよはやてちゃん。しょ、処女喪失
だ!』
そういって俺は片手を自分のズボンに伸ばすと、ひざの辺りまでずり下げた。
悪臭を放つ出来物だらけの尻と、
包茎短小のマイクロペニスが姿をあらわす。俺ははやての腰をよりいっそう
抱き寄せ、ペニスをはやての腰の上に走らせた。
ぬらぬらとした粘液がはやてのスカートを汚していく。目の前で
踊る男の一物は、はやてにとってはあまりにもグロテスクで醜悪だった。

43 僕の大好きなはやてちゃんへ2/11 :2009/08/10(月) 22:15:44 ID:YFHauQ4A
(あれが、あれが今から私のなかに入る・・・もう終わりや。最悪や、
こんなキモいおっさんに、エッチなことされるなんて。)
小学校3年生ともなれば、もう淡い恋愛への憧れを抱く年頃である。
八神はやても、本屋で少女向けの漫画を立ち読みし、少しだけエッチなシーンを見て、
顔を赤らめつつも、
『いつかは私もこんな素敵な人と出会って・・・こ、こういうこと
してしまうんやろか?でも、こんな車椅子の私を、好きになってくれる人なんて
おるんやろか?』
と、胸の奥にキュンとなるような感情を抱く普通の少女だった。
だが、そんな幼い淡い妄想は、今目の前で荒々しい息を吹きかけ、
臭い舌でキスを奪い、汚いペニスを擦りつけている童貞キモオタ
によって、無残に打ち砕かれようとしていた。
はやてへの擦りつけで、すでに金玉に精液がみなぎり、今にも
ほとばしる劣情をはやてに向かって撒き散らしたい思いに駆られている
キモオタには、もう一刻の猶予もなかった。
キモオタは、下半身不随の為に足に力を入れることのできないはやて
が、抵抗などできないことを見越して、スカートの中に片手を突っ込むと、
そのままあっさりとショーツを下ろしてしまう。
水色の、ふちにレースのついた、幼いながらも可愛らしいショーツは、
主はやての秘所を守る役目を果たせず、するすると膝の辺りまで下ろされてしまった。

44 僕の大好きなはやてちゃんへ3/11 :2009/08/10(月) 22:16:31 ID:YFHauQ4A
『はーはー、さ、最高に可愛いよはやてちゃんのショーツ。そ、
それにしても、け、結構大人っぽいのはいてるんだね。さ、最近の
小学生はみ、みんなこ、こんなエッチな下着を履いてるのかな?』
童貞キモオタの俺にとって、いくら美少女であるとはいえ、
はやてちゃんのような車椅子で内気
であるはずの小学生が、水色とはいえレースつきのショーツを
履いているのは、そのギャップからすさまじい劣情を喚起する
事実だった。
俺はだらしなく俺の前に屈服したはやてちゃんのスカートの中を
覗き込む。そこには、毛一本生えていない、ピンク色を
した無垢の縦筋一本の聖域があった。
『うー、んうー!(やめてぇ・・・もう、もう堪忍してぇ。)』
俺のようなキモオタに、秘所をまじまじとさらす屈辱から
だろうか、はやてちゃんは涙を流しながら目を閉じ、体を震わせている。
俺ははやてちゃんの縦筋に指を伸ばすと、陰唇を横に広げ、
ついにその乙女の門を見た。
『あああああああ、は、は、は、は、はやてちゃんのオマンコ、
き、きれいなピンク色だ。し、しかも間違いなく処女だ。処女
マンコだ!』
俺ははやてちゃんが間違いなく処女であることに感謝した。本当に
ありがとう神様。今、この可愛らしい9歳の無垢な少女の純潔を
ぶち抜き、その穢れない胎内に汚らしい精液を注ぐのは、55歳
童貞キモオタのこの俺なのだ。
俺ははやてちゃんの処女門にいきり立つ、6センチの包茎短小
ペニスを押し当てた。

45 僕の大好きなはやてちゃんへ4/11 :2009/08/10(月) 22:17:03 ID:YFHauQ4A
(あたってる。このおっさんの気持ち悪いものが、私の大切な
所にあたってる。)
はやては、もう何もかも諦めていた。
どんなにあがいても、小学校3年生の少女、しかも下半身麻痺の自分の
力では、この太った中年男性の体をはじき返すことなど不可能だった。
それに口をふさがれた今、助けを求めることもできない。そもそも
ここはめったに誰も通らない公園の隅にある死角となった茂み、
たとえ叫ぶことができても、助けがくる可能性は低い。
(あーあ、ついてへんなぁ私も。もう少し大きくなって、
素敵な男の子と恋に落ちて、それでファーストキスをして・・・
でももうそれも終わりや。私のバージン、今この場でこのキモいおっさんに
奪われて終わるんや。それでもって、ずっと飽きるまでイタズラ
されつづけるんや・・。)
はやては己の不運をのろった。呪いつつも受け入れる他なかった。
下半身の麻痺を、己の定めとして受け入れる他なかったように。
両親の死を、抗いようのない現実として受け止めるほかなかったように。
そして、ついにその時はやってきた。

46 僕の大好きなはやてちゃんへ5/11 :2009/08/10(月) 22:17:34 ID:YFHauQ4A
俺は、はやてちゃんの可愛らしい処女門に、いきり立つ包茎短小
ペニスを押し付けた。
はやてちゃんの秘所は、小学校3年生というだけのこともあり、
とても狭く、俺のような細く柔らかい弱チンではとても突き破れそうに
ないほどで、現にこの俺のペニスを侵入を拒み続けている。
このままでは、狭くてぬらぬらしたはやてちゃんの割れ目の感触の
せいで、入り口を突破する前に射精してしまいそうだった。
(体重をかけて、ぶち抜くしかないな。)
そう考えた俺は、よりいっそうはやてちゃんの上に覆いかぶさって
体重をかけると、ここ一番とばかり勢いをつけて腰を突き出した。
ズジュッ!
そう擬音が聞こえてくるかのような錯覚を俺は感じた。
俺の惨めで情けないカリが、はやての狭い入り口をこじ開ける
感覚を感じた。そしてそのまま、少し広いトンネルへと導かれていく。
ふと目の前を見ると、はやては幼い顔を屈辱と痛みに染めながら、
大粒の涙を流している。今にも泣き叫びそうなのを、必死にこらえている
様子だ。
それが、八神はやての処女を、この55歳童貞キモオタの俺が
奪った瞬間だった。
(ああ、やった、やったよ神様!ありがとう!55年の人生の中で
、始めて女の子とセックスできた。それも、こんな可愛らしい
小学校3年生の女の子の、八神はやてちゃんの、
処女オマンコをぶち抜けるなんて!神様本当にありがとうございます!)

47 僕の大好きなはやてちゃんへ5/11 :2009/08/10(月) 22:18:05 ID:YFHauQ4A
思い起こせば、俺は団塊の世代に生まれ、中学生や高校生のときは、
受験勉強と純潔思想に染め上げられた学校生活だった。
美少年美少女で、お互いに好きあって猶、思いを遂げ交接することは
かなわない、そんな時代に、俺のような気持ち悪い根暗デブが、
セックスをすることなど、到底かなわない夢のまた夢。俺の恋人は、
いつも右手だった。
必死に勉強して、なんとか3流私大に二浪で合格したものの、
大学でも一人ぼっち、卒業すら危うく、2留した末
何とかお情けで卒業させてもらった。当然彼女なし。
いくら好景気とはいえ、そんな俺によい職場など回ってくる
はずもなく、ようやく見つけた3流会社で、下っ端事務員として
こき使われる毎日。
バブル景気のときも、俺のような屑の気持ち悪い男と、付き合ってくれる
女などいなかった。
丁度世間は『オタク』というものが、市民権を得始めていたころだった。
彼女のいない童貞の俺は、たちまち幻想の中の、現実を越える
容姿とやさしさを持つ少女たちの虜となった。
彼女たちを見ていると、自分もあの中学生や高校生の頃、
セックスがしたくてたまらなかった、女の子を見てときめいていた
頃に戻ったような気分だった。
アニメやゲームにのめりこんだ俺は、いつしかロリコンへと変わっていた。
毎日、仕事から帰ってきたら、アニメやゲームの中の幼い美少女
たちでオナニーをする毎日。
最初のうちは、それで十分満足だった。
だが、いつしか、それだけでは満足できなくなっている自分がいた。

48 僕の大好きなはやてちゃんへ7/11 :2009/08/10(月) 22:19:09 ID:YFHauQ4A
(ヤリタイ、本当にあんな美少女たちとやりたい。セックスして、
穢れない処女オマンコに俺の精液をぶちまけたい!)
俺はいつしか、二次元のような可愛らしさを持つ少女を、
三次元で探すようになっていた。
公園や図書館をうろつき、目にかなった少女を探す。
そんなときだった、彼女、八神はやてに出会ったのは。
半身不随の車椅子の少女、両親もなく天涯孤独のはかなげな
美少女。
彼女を始めて見た時、俺は恋に落ちた。
彼女の可愛らしい体を抱きしめ、その胎内に俺のペニスを
差し込んで、精液を吐き出したいと、切に願った。
ああ、だがどうして、俺のようなすでに人間としての
盛りを過ぎた中年の、そしてなにより醜く、金もなく、臭く、
汚い童貞キモオタが、彼女のような少女と付き合えるだろうか、
そもそも彼女は小学生だ。
俺には、レイプ以外道はなかった。
俺は公園を車椅子で散歩していた彼女に近づくと、そのままナイフを突きつけて脅し、誰も見ていない公園の隅まで連れ込んだ。
そして今、俺と彼女はここにいる。

【上の二番目の5/11は6/11の誤り。】

49 僕の大好きなはやてちゃんへ7/11 :2009/08/10(月) 22:19:42 ID:YFHauQ4A
はやては、男のペニスが自分の処女膜を押し広げて、無理やり
入り込んできたことを感じた。
そしてその瞬間、自分が抱いていた淡い恋へのあこがれ
は無残に打ち砕かれたことも。
いかに短小とはいえ、小学校3年生のはやてにとっては、充分すぎる
ほどの凶器である。現に挿入口は破瓜だけでなく、膣自体が
傷ついたために出た血で、赤く染まっている。
男はそのまま挿入の余韻に浸っていたが、やがて腰を引くと、
そのまま体重を乗せ、体ごと思いっきりはやてめがけて腰を
打ち付けてきた。幼いはやての小さな体は、何度もたたきつけられる
衝撃に、つぶれそうになる。
何度も男のペニスが幼い胎内を蹂躙し、傷口をえぐっていく痛みと、
レイプの屈辱に耐えながら、はやてはただ一刻も早くこの地獄が
終わることを祈っていた。
まだ彼女が学校に通っていた頃に受けた性教育や、少女マンガの
読みかじりで得た乏しい知識からして、男の人が『精子』
という、白いおしっこのようなものを、ペニスの先から出せば、
それでえっちな事は終わるはずだった。

50 僕の大好きなはやてちゃんへ9/11 :2009/08/10(月) 22:20:30 ID:YFHauQ4A
だからはやては、一刻も早く、この男がその『精子』を吐き出して
くれることを祈った。
『精子』を出されてしまうと、赤ちゃんができてしまうことも
はやてはおぼろげながら知っていたが、自分はまだ小学生
だから、たぶん大丈夫なんだろうと、乏しい知識で結論付ける。
(とにかく、このおっさんが、おしっこみたいなものを私の
中でだしてしもうたら、それで終わりなんや。そしたら大声で助けを
呼ぶか、隙を見てケータイで110番すればいいんや。)
そう考えて、はやては必死にたたき付けられる衝撃と、
腹の中をえぐられる痛みと、犯されている屈辱をこらえた。
そして、ついに、男が情けないうめき声を挙げた。
『ううっ、出るよ!出るよはやてちゃん!』
そういって、男ははやての中に、気持ち悪い生暖かい
液体を吐き出すと、そのままはやての体を解放し、
ぐったりと地面にへたり込んだ。
はやてのスカートの中からは、男の黄ばんだ臭い精液と、
はやての血が混じった茶色っぽいオレンジの液体が垂れており、
男の小さなペニスからも、放出の余韻の汁が垂れていた。

【上の二番目の7/11は、8/11の誤り。】

51 僕の大好きなはやてちゃんへ10/11 :2009/08/10(月) 22:21:05 ID:YFHauQ4A
(ああ、気持ちよかった!)
俺ははやてちゃんの中に射精したという満足感に浸り、
そのままドスンと地面に倒れこんだ。
今思えば、それがいけなかった。
はやてちゃんは、俺の拘束を逃れた隙を逃さなかった。
彼女がすかさずポケットからケータイを取り出し、
すばやく指で110番を押すのを、俺は馬鹿のように見つめるほかなかった。
『助けて!おじさんにエッチな事されました!場所は○○公園の北端の
茂みです!早う助けて!』
あわてて腰をあげ携帯を奪おうとしたが、セックスの後で気力を
消耗し、しかもデブで中年の俺は、いったんしゃがんでしまった以上
うまく立ち上がることができず、はやてちゃんが警察に通報するのを
とめることができなかった。
(ああ、終わった・・・)
目の前には、先ほどまでの涙目から一転して、勝ち誇ったような
顔と、汚らわしい虫けらを見るような目で俺を見るはやてちゃんの
姿があった。
『・・・どうや、おじさんもうおしまいや!すぐに警察の人が
きて、おじさんが私にえっちな事したって捕まえてしまうんや。
観念しぃ!』
拳を握り締めて、車椅子から俺を見下ろすはやてちゃんと
向き合いながら、俺は自分の敗北を実感した。
ゲーム・オーバー。

52 僕の大好きなはやてちゃんへ11/11 :2009/08/10(月) 22:21:43 ID:YFHauQ4A
結局、俺は裁判で、幼い、天涯孤独で障害者でもある少女を、その弱みに
漬け込んで、欲望のままに襲ってレイプした、冷酷卑劣な性犯罪者として断罪され、懲役12年を言い渡された。
八神はやてちゃんは今、リハビリセンターで体のリハビリをしつつ、カウンセリングを受けて心の傷を癒しているらしい。
正直、今振り返ってみれば、俺のやったことは確かに少し強引だった。9歳の幼い少女の初めてのセックスに、あんな激しいプレイをしてしまったのはやりすぎだったかも知れない。
でも、全体として俺は後悔などしていない。
あの日、俺は55年間の生涯で、いやこれから死ぬまで絶対に、もう二度と出会えないだろう最高の美少女を抱きしめ、その可愛らしい体と甘い香りを味わい、このペニスですべての思いを彼女の中に伝えたのだから。
俺は今でも、俺に女の子とのセックスのすばらしさを教えてくれた、八神はやてちゃんを愛している。
だから、俺が生きて出所できたら、またはやてちゃんに会いたい。その時はやてちゃんはロリではなく、もう大人になっているだろう。そして、俺のことを汚らわしい、悪魔でも見るような目で見つめるだろう。
だけど、そんな事はかまわない。
会って、そして伝えたい。『ありがとう』と。
そしてまた、彼女の体を抱きしめ、セックスがしたい。俺の思いを伝えたい。
愛してるよ。八神はやてちゃん。

【これで完結】

53 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 22:22:39 ID:YFHauQ4A
続いて、本スレに投下された別のSSを投下するよ。

54 ムスリムですが、なのはたんに遭遇しました1/2 :2009/08/10(月) 22:23:28 ID:YFHauQ4A
俺は高町なのはたんの可愛らしいスカートを捲り上げると、
そのままピンクのレースつきの可愛らしいショーツをまじまじと
見つめる。
『いや、やめて!やめてなの。フェイトちゃん、おとうさん、おかあさん!
お兄ちゃん、お姉ちゃん!助けてぇぇ!』
泣き叫ぶなのはたんの首をグーパンチして黙らせると、俺はそのまま
なのはたんの唇にキスをして、もう叫び声を上げれないようにした。
『う、うぐうう』
必死に俺の唇から逃れようとじたばたするなのはたんを尻目に、
俺はなのはたんのショーツに手をかけると、そのまま一気にひざまで
ずりおろした。
『%&#$%!』
声にならないうめきをあげて、首をいやいやとふり、体を捩じらせるなのは
だが、所詮9歳の小学生が、大人の俺の力に勝てるはずもなかった。
そのまま足を開かせ、無毛の性器をまじまじと見つめる。

55 ムスリムですが、なのはたんに遭遇しました2/2 :2009/08/10(月) 22:24:02 ID:YFHauQ4A
『はぁはぁはぁ、お、おじさんはムスリムだから、なのはちゃんみたいな
可愛らしい小学生の女の子の、毛の生えていない処女おまんこに
、おじさんのおちんちんを差し込むのが、大好きなんだよ。よ、
預言者ムハンマド様(彼の上に平安あれ)も、な、なのはちゃんと
同じくらいの年の女の子と、セックスしたんだよ。』
目の前の少女にディーヌ=ル・ハッキであるアル・イスラームを宣教しながら、俺はズボンを下ろし、
15センチはあるだろうペニスを取り出すと、それをなのはの処女の証へと
つきたてた。
『はぁはぁ、行くよぉ!』
俺は大きく腰を振ると、全知全能の創造主アッラーフへのドゥアー
とともに、一気にその腰をなのはちゃんのあそこへとつきこんだ。
『うううううっっっっ!!!!!』
瞳を絶望に染めながら、蟻に集られた芋虫のようにじたばたと
挿入を逃れようとするなのはだが、俺ががっしりと体をつかんでいる
以上逃れようもない。
俺のペニスは、硬く閉じられたなのはの処女の門を無理やり、
突き破り、そのまま膣内に侵入した。
『ああ、アッラーフに感謝します。こんな可愛らしい女の子と
セックスさせてくださるなんて。本当に、アッラーフのほかに
神はなく、ムハンマド様はその使徒です!』
俺はアッラーフへの感謝をささげる。
そして何回か腰を幼い美少女の体にたたきつけると、そのまま
その奥へと精液を解き放った。
すべてを終えて、ぐったりと地面に横たわるなのはちゃんの顔を
見ると、俺は深い満足に包まれた。
このときほど、イスラームに改宗してよかった、と思った
瞬間はなかった。

【これですべておしまい。】

56 名無しさん@魔法少女 :2009/08/10(月) 22:24:45 ID:YFHauQ4A
以上、転載でした

57 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:01:24 ID:f2QQJ2UU
シンプルでモノすげーのが来たな…とりあえずお疲れ様

58 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:13:28 ID:WMLW4cjg
ムスリムであるのと強姦できることとの因果関係がわからんのだが。
「男を魅了するような体の女が悪い」なんて極端なイスラム国はさすがに稀だろ。

59 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:18:32 ID:Ma62jfCE
つーかイスラムネタは危険じゃね?

60 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:26:29 ID:aBVy5ffo
いや、預言者モハメッドが9歳の幼女とセックスしたから、
実際イスラムじゃ小学生とセックス可能なのは事実だよ。

61 名無しの蔓 ◆qfcOM193l6 :2009/08/11(火) 00:32:34 ID:ElCdfLo2
まあイスラムネタはいかんと思うよ。
で話題を変えて殺し屋”名無し”の続きを行きます。

・エロ、ハード、陵辱あり
・オリ主嫌いはスルー推奨
・ラグナ、ヴァイス好きに先に謝罪
・救いはありません
・いやぁーお金って良いものですね(水野春男調)
・タイトルは殺し屋”名無し”

仕事の一 兄妹狩り(8)

 協会のルートを通じて入手したステルススーツを調節して、祭礼日以外、司祭が来るこ
とはない無人の聖王教会第348聖堂の屋上の壁と同化した俺は、ヴァイスが指定された
標的を狙撃するためにやってくるのを待つことにした。

 昨日の夜8時、レジアスに化けた002を使って、八神はやて暗殺作戦をヴァイスに承
知させた俺は、ミッドキャット宅配便の業者を装ってヴァイスに狙撃用の質量兵器バレットM82
の入った箱をさりげなく手渡すことにした。

 バレットM82を奴に使わせることにしたのは、八神はやての防御を貫くには奴のストームレーダー
では力不足なのが一つと、後の始末を考えると奴のデバイス、ストームレーダーを今回の狙撃に
使わせるわけにはいかなかったのだ。

「ヴァイス・グランセニックさんですか? お届け物を配達に上がりました。サインをお 願いします〜♪」
「ああ〜 ここで良いのかい? 」
「ありがとうございます〜♪」

 どことなく暗いヴァイスの顔を確かめた俺は、奴の生体パターンを時計に偽装させたデ
バイスに記録させると彼のアパートを後にした。
 
バレットM82を入れたケースに仕掛けたセンサーで、万一の場合に備えて彼の行動をモ
ニターすることにしたが、妹のラグナを人質に取られているのが効いたのか、バレットM82の調整作業
を終えた後、そのままベッドに入って寝てしまった。。

 その後のヴァイスの行動は、指定されたとおりのコースを通って、彼の死場所である此
の教会の屋上に向かっているのを、バレットM82のケースに仕掛けられたセンサーからの情報を受信
していた002から連絡を受けた
 
 俺は、最初の予定を変更して、ようやく完成を見たワンウェイ方式のAMFスラグ弾のみ
でヴァイスを仕留めることにした。
 
 此の教会の屋上を彼の死に場所に選んだのは、もう一つの標的、八神はやてを仕留める
ためにヴァイスを利用するためだった。

 協会落札の仕事の他に、別の筋から持ち込まれたのが八神はやての一件である。
 できたら殺して欲しいという曖昧かつ時期も未定で、料金も300という低額な依頼だ
から、俺自身がやるつもりは毛頭無かった。

 金だけ貰って、放置しても問題ない仕事だったが、協会で落札したヴァイス殺しの手順を考えるうちに、
奴を利用して八神はやてを殺すのも面白いと考えたのだ。

 最も失敗しても、こっちは痛くもかゆくもない。なにせ依頼人は3か月前に死んでいるのだから・・・・・・

62 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:35:54 ID:jzeI1LQs
疑心暗鬼なせいか、荒らしに見えてくるなぁ。
でもSSとしての体裁は守っているし、かといって注意事項ないし、明らかに携帯電話だし。

駄目だ、心が汚れちゃったよ。
モフモフして禊ぎをしてくる。

63 名無しの蔓"yhnyuiytr :2009/08/11(火) 00:37:11 ID:ElCdfLo2
仕事の一 兄妹狩り(9)

 八神はやてを殺す日を今日にしたのは、しごく単純な理由だった。
 1年前に起きた地上本部陥落事件に際して、壊滅した六課の死者を
追悼する式典が、此の教会の墓地で行われる日だ。

 なんでも六課の備品補給係に務めていた青年が、恋人の女性職員
を助けようとして死亡し、両親の埋葬されたこの墓地に合葬されたことを
知った八神はやてが、青年の唯一の親族である妹に管理局奨学金の証書を手渡す式だそうだ。

 闇の書の主としてヴァイスの親父の人生を狂わせ、家庭を崩壊させた女にしては
殊勝な心がけだが、実際は、JS事件後、権威失墜も甚だしい管理局のイメージを
少しでもアップしようという魂胆が透けて見えるイベントの主役を演じるつもりだろう。

 まったく自分の過去の行いを顧みない馬鹿女らしい振る舞いだ。そんな標的を殺すのに
自分の手を汚すなど、損も良いところだと思っている俺にとって、今日、死んで貰うヴァイスは
はやて殺しの為の最適の駒なのだ。

 そんなことを考えているうちに八神はやてが式典の会場の控え室に入ったとの連絡が、
式典会場の設営係のバイトに化けた002からあった。

<<ヴァイスは何処まで来てる>>
<<マスターの下に来てるよ>>
<<そうか、後は気取られないようにタイミングを見て現場を離れろ>>
<<わかったよ>>
 
人格プログラムを今回の任務に合うように調整したが、元が調教用プログラムだっただ
けに、どうも喋り方のぎごちなさが抜けないようだ。

 002との暗号念話を打ち切った俺の耳が、教会の木製の階段を上がってくるヴァイス
の足音を捕らえた瞬間、ステルススーツが自動的に隠蔽結界の強度を最大レベルまで上げた。

 俺の目の前でバレットM82をケースから出し、手早く組み立てたヴァイスの背中から立ち上る
気迫を感じた俺は、予想以上に事が上手く運んでいることに満足した。
(背中ががら空きだぜ、ヴァイス・グランセニック)
 
親の仇の首領である八神はやてを殺すことに集中するあまり、周囲への注意を一通り済
ませた後のヴァイスの背中は隙だらけだった。
 組み立てバレットM82の調整を終えたヴァイスが、スコープに目を当てて照準を合わせ
るのを見ながら、俺はベネリM4を奴の背中に向けた。

<<標的が指定位置に来たよ>>
<<よし、様子を知らせろ>>
<<了解したよ>>

「・・・・・・隊長、ラグナのためにも、死んで貰うぜ」
 
スコープに目を当て、そうつぶやきヴァイスは、静かに引き金を引いた。
 12,7mm弾の凄まじい発射音と共にマズルブレーキから噴出する発砲煙が射手のヴァイスを
覆った瞬間、002の暗号念話が届いた。

<<殺った!? いや、左腕がちぎれただけね>>
<<よし!>>

 1500m先の標的である八神はやての左腕が12,7mm弾で持って行かれたと002から報告を
受けても、ここまでは式典場の悲鳴や怒号は届かない。
 かっての六課隊長を打ち抜いたヴァイスが2発目を撃とうと引き金に指を掛けた瞬間、
俺はステルススーツの機能を解除した。

「ヴァイス・グランセニック! 」
 
いきなり姿を現した俺を見て、一瞬、動きを止めたのが奴の運の尽きだった。
 ベネリM4の発砲音と共に奴の身体がバレットM82ごと吹っ飛び、屋上の床に血の川が流れる。
 AMFスラグ弾の効果はスナイパー仕様のバリアジャケットを見事に無効化したようだ。

「ラ、ラグナァァァァ」

 バレットM82を杖代わりに立ち上がったヴァイスが、ゴボッと血の塊を吐きながら妹の名を叫ぶ。

「仕事の終わりだ!」

 2発目のスラグ弾を奴の胸に撃ち込んだ俺は、胸から大量の血を流して断末魔の痙攣を繰り返す
ヴァイスの首筋に仕事の仕上げに3発目のスラグ弾をぶち込んだ。
 
以上、仕事の一(8)(9)です。
次回、(10)で第一話完結です。

64 名無しの蔓"yhnyuiytr :2009/08/11(火) 00:38:20 ID:ElCdfLo2
>>62
俺も荒らし扱いか?

65 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 00:58:21 ID:jzeI1LQs
>>64
すみません、リロードミスです。
今後はこんなことがないように気をつけます。
これからも頑張ってください。

66 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 01:20:38 ID:8mNSUOUk
鳥が割れてますよ・・・

67 名無しの蔓 ◆iMaPpDzG3E :2009/08/11(火) 05:35:15 ID:ElCdfLo2
>>66
鳥変えました。

68 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 12:15:34 ID:WMLW4cjg
>>60
それは見かけた少女全員を犯していいって意味じゃないぞ?
それと復讐法って知ってるかな〜。今でも本当に目潰したら潰し返す刑罰とかあるから怖いぜ。

>>63
GJ!

69 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 12:30:44 ID:vWZOHD4Y
イスラム圏にはレイプされた女は死刑って事例も普通にあるからなw
だからレイプして自爆テロ予備軍に仕立て上げるテロリストもいるわけで……

>>63


70 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 17:31:26 ID:fkztlz0A
保管庫でキャラの名前が間違ってたりスペルミスがあったりしたら勝手に編集していいんかな?
それともここで編集人さんに言った方がいい?

71 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 18:17:29 ID:90DrcSvQ
ここで司書さん(保管庫編集者さん)にお願いすれば大丈夫かと

72 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 21:52:41 ID:/4THYLTU
>>64
でもなんでここではやてが出てきたんだろ。
以前の事件とヴァイスの親父との年数が合わないような。

73 44-256 :2009/08/11(火) 22:33:24 ID:XrczA5m.
投下します。

・小ネタです
・非エロです
・オリキャラです
・3期13話〜14話の間です

74 聖王医療院詰所にてPM22:30 (1/2) :2009/08/11(火) 22:35:55 ID:XrczA5m.
ミッドチルダ、北部ベルカ自治州、聖王教会本部医療院、司祭詰所
夜間受付窓口の事務室である


「聖王が復活した〜?」
「ああ、あの聖王陛下がよみがえったんだとよ」

深夜、ポーカーに興じる司祭2名。


「マジかよ?」
「ああ、何でも本部の聖骸堂に安置してある遺体は真っ赤なニセモンで、本当はどっかへんぴなトコで眠ってたんだとさ」


カードを吟味しながら、適当に話をする司祭A


「・・・んで、どうした?」
そんな話を適当にを惰性で聞く司祭B


「早速、次元世界を一つ消し飛ばしちまったらしいぜ・・・」
「なんだそりゃ?」


「何でも『400年間眠っててナマってたカラダを軽くトレーニングしたいのよ〜♪』とか言ってよ」
「そいつはすげぇや」


「聖王陛下っていやぁ最凶最悪の騎士、歩いた後には崩壊した次元世界の砂粒か虚数空間しか残らないってわけさ・・・よっしゃ〜
レイズだ!」
「ちっ、どうせ明日のミサまでにはスッテンテンにしてやるぜ。んで?」



「何だよ?」
「今その聖王さんってどこにいんだよ?」



ドロップするカードを選びながら適当にこたえる。

「ん〜、実はここ、聖王医療院にいたりするんだな・・・」
「!?」

75 聖王医療院詰所にてPM22:30 (2/2) :2009/08/11(火) 22:38:19 ID:XrczA5m.
「患者の一人にまぎれて、この医療院で体力と魔力を回復させつつ、次元征服の計画を立ててるらしいぜ・・・」
「ほ〜ぉ、おっかねえ」


「最後の聖王さまってかなりの美人だったんだろ?だったらそんなベッピンさんだったら俺も直に会って、お近づきになりたい
もんだぜ。いつも美人なだけで気が強いシスター・シャッハ達尼さん相手にすんのも勘弁だしよ」
「確かにな・・・ダッハッハッハ!!」


「アッハッハッハ・・・ハァ・・・」

ため息をつく。
「聖王さまがこんなとこにいるわけねえだろ。もし俺達の近くにいたら、俺やお前みたいに勤務中に賭けポーカーやってる破戒僧は
一瞬で消し炭にされちまうぜ」



「あの・・・」
「「んあ?」」


2人の司祭の前にウサギのぬぐるみを持ったオッドアイの少女が現れた。
さっき想像していた美人とは違うが、かなりの美少女だ。

「おトイレ、どこ?起きたらママいなくて・・・」
少女は心細いのか泣きそうになっていた。


「お、おお。案内するな!ママ少し用事で出かけてるんだよ、そこのおじさんが案内してくれるから」
「この子は?」


「今日の夕方搬送されたんだ。何でも本局のエリート教導官さまのお嬢さんらしいぜ」

昼間に管理局の制服をきた2名の人間がシスター・シャッハと一緒に来てるのを思い出した。
相当な美人なので覚えていたのだ。


「そいつは丁重に案内しないとな。幻の聖王さんより、俺らに交付金の現ナマ恵んでくれる本局様々ってところだ」
「確かにな・・・すまねえこっちだ。付いてきな」


そうして司祭はオッドアイの少女を案内した。

平和な夜はこうしてふけていった。

76 44-256 :2009/08/11(火) 22:40:59 ID:XrczA5m.
以上になります。
それでは失礼します。

77 名無しさん@魔法少女 :2009/08/11(火) 22:59:18 ID:FL9W/G.Y
>>76
GJです。
きっと患者達の間では気さくな司祭様で通っているんだろうなぁ。

78 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 01:04:58 ID:7BrQZYSY
ちょwww その子聖王だよwww

GJでした、良い小ネタですね

79 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 01:13:42 ID:.WblemvU
GJでした!聖王ったら化け物と同義語なんだね。
破戒僧さんたちの会話が某脳みそを欲しがるゾンビ映画の冒頭でドラム管を空けた人達の声で再生されてしまった。

80 アルカディア ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:24:58 ID:5MOmEFKE
読みきり短編を投下しますー
セッテ&ヴァイス、18禁仕様ですがエロSSではありません。

81 I, Robot その1 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:28:36 ID:5MOmEFKE
 目指せ、詞ツツリ氏のようなハードボイルド!

―――“I, Robot”――― 




 Y o u  L o s e !

 画面の右一杯に赤い文字が表示された。
 ぽーい、と緩い弧を描いてカーペットに軟着陸するコントローラ。

「やった、これで私の三連勝!」

 頭痛を抑えるように額を押さえる青年と、コントローラ片手にガッツポーズを突き上げる少女。
 ルールは明解、画面から相手を吹き飛ばすだけのご家族向け格闘ゲーム、スマッシュシスターズである。
 グランセニック家の長閑な休日、そこには仲睦まじき兄妹の姿があった。
 あれから2年。一度は離れた兄妹のわだかまりは、少しずつだが確実に氷解し、今では休日に気を置かずゲームを楽しむ程になっている。
 ごろん、とカーペットに横になり、降参と手を上げて天井を仰いだ。

「喉渇いたねー。お兄ちゃん、カルピスでいい?」
「おーう。濃いめでよろしくな〜」

 軽快な足取りでラグナが台所へ駆けて行く。
 不意にチェックのミニスカートが翻り、露わになった白い太腿が視界に飛び込んできた。
 見てはいけないものを見てしまったような後ろめたい気分になり、慌てて首を横に傾げる。
 勿論、ヴァイスはラグナを単なる妹としか見ていない。
 しかし、数年間顔を合わせなかった間に妹は予想外の成長を遂げ、どう接すれば良いか解らずヴァイスを悩ませるのだ。
 先の開けっ広げな態度といい、ラグナのヴァイスに対するわだかまりはほぼ解けたと言っていい。
 否。―――ラグナには最初からわだかまりなど無かった。
 ヴァイスのラグナに対するわだかまりこそ兄妹を隔てた壁であり、今も尚ヴァイスを悩ませている。
 ヴァイスの左側に投げ出されたラグナのコントローラ。
 彼女の見えない左目を気遣って、ヴァイスは必ず2P側のコントローラを手にする。
 二人で遊ぶゲームは格闘、レース、スポーツ、落ちものと多岐に渡るが、ガンシューティングは一つも無い。
 ラグナはシューティングゲームのソフトを持ってはいるようだが、それを一緒に楽しんでプレイできる勇気は、まだ、ヴァイスには無い。
 全ては杞憂なのに。未だ腫れ物に触るようにラグナに接する自分がいて、その度にラグナの顔を曇らせれる自分がいる。
 気晴らしと、連敗しているゲームのリベンジのために再びコントロールを手にし、画面に向かった。

 Y o u  L o s e !
  
 画面一杯に赤文字が表示された。
 惨敗だった。連敗だった。ボロ負けだった。
 勝負はあっという間だった。ぽこんぽこんと弾き飛ばされて、息をつく間もなくバットで場外ホームラン。
 
「……こんにゃろ」

 勝ちポーズをとるCOMキャラの緊張感無い表情が、妙に神経を逆撫で、リベンジ、再敗北。
 ムキになって勝負を挑むも、気迫だけでそうそうゲームの結果が変わる筈もなく、黒星を重ねること数回。
 こうなったら勝てるまで挑戦しようと、自棄を起こして再びRETRYを、

「―――あれ、お兄ちゃん、まだやってたの?」

 背後から、お盆に二つのカルピスのコップを載せたラグナが覗き込んでいた。
 一気に、頭が冷めた。たかがゲームに何をムキになっていたのだろう。
 礼を言ってカルピスを受け取り、コップ半分程まで一気に飲み干す。
 心地よい酸味と、独特の粘りを帯びた冷たい液体が、不必要に熱くなっていた頭をクールダウンさせてくれた。
 ラグナは画面を見て、ころころと鈴のような笑い声を上げた。

「お兄ちゃん、コンピュータの設定がVeryHardになってるよ!
 これじゃあ、絶対に勝てる筈無いよ!」
「勝て、ないのか?」

82 I, Robot その2 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:32:43 ID:5MOmEFKE
「うん。これのVeryHardは凄く強いっていうんで有名なの。
 大会に出るような人じゃないと勝てないんだよ。
 私もEasyにやっと勝てる位だから、お兄ちゃんのような下手っぴさんだったら100年かかっても無理かもねっ」

 自分が徒労に力を費やしてきたことが判り、がっくりと肩の力が抜けた。

「そういえば―――チェスだってオセロだって、全部コンピュータの方が強いもんな」
「そうだよー。やっぱり、機械には勝てないよ」

 人の単純計算能力が演算機に追い抜かれてどれだけ経っただろう。
 少なくとも、自分の知るこのミッドチルダの世界では、人は機械無しには生きることは出来ない。
 コンピュータに自動車にバイク、昼食を作る調理器具に至るまで、高度な機械な恩恵を受けている。
 ミッドチルダは魔法文化を持ち文明レベルAに分類される。
 ―――その魔法行使も、デバイスという補助機器に支えられて行うのが一般的だ。

 知らず、その手が首に掛けられたドッグタグに重なった。
 愛用のインテリジェントデバイス、ストームレイダー。常に傍らに置き続けたヴァイスの相棒。
 任務の度、ヴァイスはいつもこの相棒と己を重ね合わせてきた。
 ―――スコープ越しに標的を狙う瞬間。
 銃床は肩に根を生やし、指はとうに銃杷と癒着している。
 瞳孔は照門から照星を貫き、宙に一筋の道を描く。黒鉄のストームレイダーが心臓の鼓動に合わせて脈動する。
 己の肢体と同様に血が通い、風を聞き、敵を睨む。
 引き金を絞ったのは、果たして己の指か、それとも銃自身なのか。
 銃という機械の部品の一つになりきれる。それがヴァイスの才能であり、ロングレンジからの狙撃に於いてエースと呼ばしめた因だった。
 ……あの日までは。

 人質が己が妹である。ただそれだけの事で、ヴァイスは千々に乱れた。
 冷や汗を流し、腕は震え、かちかちと歯は噛み合わず、腕に握った相棒の事など意中から消え失せた。
 妹越しに標的を狙う緊張感から逃れようとするかのように、祈りを十字架に捧げるかのように引き金を引くも―――。

 己は、機械になりきる事は出来なかった。

「ああ。そうだな。機械には勝てないな」

 ぼんやりと、膝の上のコントローラを見つめながらラグナに胡乱な返事を返す。
 カルピスを飲み干すと、握り締めすぎたせいか少しだけ温く、氷が溶けて気の抜けた味がした。


     ◆


 妹とごろごろ居間を転がるばかりの週末を終え、月曜日の日常へと帰還した。
 武装隊へ復帰して2年ばかり。六課時代に古巣と呼んだそこは、元通りすっかり馴染みの職場である。
 ストームレイダーの整備をしながら、心落ち着く自分がいる。
 銃を握り、戦闘ヘリを戦火の中で飛ばすことこそ日常で、妹と実家で過ごす休日が非日常―――。
 ヴァイスはそんな自分に思わず苦笑する。
 ……自分には、人間としてどこか故障している部分があるのかもしれない。
 ふと、そんな不安感が脳裏を過ぎる。
 それが、単に一時の杞憂に過ぎなかったことを、すぐにヴァイスは思い知った。
 ―――その女に遇って、問答無用に思い知らされざるを得なかったのだ。

「今回の任務を担当する、ユニットN2Rのセッテです。よろしくお願いします」

 彼女は、完璧な礼法で一礼した。角度はきっちりと30度、ヘッドギアで纏められた赤い髪が微かに揺れた。
 モデルのような長身と、完璧な均整のとれた肉体。
 無駄なく鍛え上げられたしなやかな五体は、どこかイルカを連想させる。
 ヴァイスは慌てて軽い会釈を返し、面を上げると眼前に彼女の顔があった。
 ぎょっとした。
 目鼻立ちはくっきりとしている筈なのに、感情というものが一切感じられない白皙の貌。
 美しい。端整なその顔立ちは十分に美女と呼べるレベルだ。

83 I, Robot その3 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:34:41 ID:5MOmEFKE
 だが、そこはかとなく感じるこの不安はなんだろう。
 あれはいつだったか。そうだ、武装隊でのあの事件の後、ショッピングモールの夜間警備を引き受けた事がある。
 その時、ショーウィンドウの中のマネキンに、得体の知れない恐怖を感じたことがあった。
 暴漢、強盗の類などには大した恐怖は感じないが、人ならぬ人型に本能的な不気味さを感じたのだ。
 似たような悪寒が一瞬だけ背筋を走りぬけた。
 ……きっと、杞憂だ。大柄ではあるが、よくみれば年下の、自分好みの美しい女性ではないか。
 ヴァイスは、そう自分を納得させることにした。
 彼女は、そんな彼の心情など知るはずもなく、では。と簡素に一礼をして出発の準備に取り掛かった。
 居心地悪げに立ち尽くしているヴァイスの肩を、つんつん、と細い指がつついた。

「どうも、ご無沙汰してます、ヴァイスさん」
「―――ああ、ギンガか。久しぶりだな」

 ギンガ・ナカジマ。スバルの姉であり、ヴァイスも知らない相手ではないが、特に親交が深い訳でもなかった。
 敏腕の捜査官として名を馳せているとは聞いたが、その美しい容貌にも磨きがかかり、落ち着いた大人の女性としての色香を漂わせている。
 豊満な胸元に視線を送ったのも一瞬。気まずげに頭を掻きながら、

「それで、今日はどうしてこんな所に?」
「うちの問題児がお世話になるそうなので、ご挨拶をと思いまして」
「問題児?」
「ええ。ユニットN2R、一番の問題児なんですよ、あの子は」

 ユニットN2R。二年前にミッドで起きた空前の大災害、JS事件の実行犯である戦闘機人の子供達が更正して勤めている部隊である。
 ヴァイスも彼らのうちの幾人かと仕事をしたことがある。
 多少騒がしくて辟易させられた娘もいたが、能力面でいうなら何一つ問題ない―――否、極めて優れた子供達である。
 陸士部隊の中には彼女達に遺恨をもつものもあるというが、ヴァイスには別段怨むような事情もない。
 セッテも自己紹介を聞いた時も、今回の仕事は順調にいくだろうと思っていた。

「問題児というと……独断専行が多いとか、命令違反をするとか、そんな感じか?」

 漠然と、以前同じ任務で戦ったウェンディという娘を思い出す。
 あれを上回る暴走を見せるのなら、確かに問題児というしかないだろう。
 しかし、ギンガは強い口調できっぱりと断言した。

「いえ、独断専行や命令違反などは、あの娘に限っては『絶対に』あり得ません」
「そ、そうか? じゃあ、問題児というのはどんな―――?」
「コミュニケーションの問題です。命令には必ず従いますし、社会で必要な礼法も一通り教えてはいますが……。
 あの子は、本質として、人間関係というものを理解していません。
 無礼を働くことは無くても、あの子の異質性は周囲から見れば明白です。
 それで、周囲との軋轢を招くことが幾度かありまして……。
 普段なら取り繕って誤魔化すのですが、ヴァイスさんならあの子を許容して頂けるかと思って、ご挨拶に伺いました」
「おいおい、俺は女の子の気持ちなんか分らないぞ」
「あの子の内面を理解してくれ、なんてことは申しません。あの子は、裏表ない、見たままの子です。
 それを、そのままのあの子を許容して頂ければいいんです」
「……はあ、そのまま、ね」

 ギンガの説明は漠然としていて、ヴァイスにはよく理解出来なかった。
 空返事を返す彼に、ギンガは軽く会釈してセッテの元へ向かった。


     ◆
 
 
 今回の任務は単純明快。
 山中にある、とあるテログループの一派の潜伏地に赴き、降伏勧告を行い、従わない場合は捕縛する。
 彼等の所属するグループが降伏勧告に従った例はなるので、ほぼ間違いなく、捕り物となるだろう。
 小規模なグループであり、有力な魔導師の保有数も少ないので、空戦前衛・対人殲滅戦に優れた能力をもつ戦闘機人、セッテにとって捕縛は簡単だろう。
 ―――身も蓋も無い言い方をするなら。
 ヘリで空から彼女をテログループの潜伏地に投下し、彼女が全滅させたテロリストをヘリに詰め込んで、然るべき場所に引き渡すのが今回の仕事。
 戦闘は、セッテ一人で十分と判断された。無論必要ならば援護も行うが、ヴァイスが銃を撃つことは恐らく無いだろう。
 連絡事務とヘリの操縦が彼の役割だ。

84 I, Robot その4 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:36:23 ID:5MOmEFKE

 ヘリの操縦室、無言。
 午後の平坦な青空だけがどこまでも続き、新型ヘリの控えめなローター音だけが機内に響いていた。
 あと数十分もすれば、現地の宿泊施設に到着するだろう。
 今日は作戦の最終的な打ち合わせを行い、早めに就寝し、決行は明日の早暁となる。
 ヘリの操縦室、無言。
 ヴァイスは、この懈怠な同乗者を扱えばいいのか、未だに判じかねていた。
 独りでヘリを飛ばすのは気楽なものである。
 輸送任務などの時には、ストームレイダーに登録したお気に入りのジャズでも流しながら空を楽しむのだが……。
 後部座席に座る同乗者の前では、そんな気分など微塵も起こらなかった。
 彼女は背筋を伸ばしてシートに腰掛け、拳を太腿の上に定めて身じろぎ一つしない。
 機械のカメラじみた瞳は、油断なく前方の大空に向けられている。
 ヘリの操縦室、無言。
 沈黙が、辛い。宿泊施設に向かっているだけの今この瞬間でさえ、セッテは臨戦姿勢である。
 それは、行住坐臥すべてを戦場と心得る戦士としては、この上なく正しい在り方なのだろう。
 だが、ヴァイスにとって―――否、魔導師達の大半を占める凡夫達にとっては狂気の沙汰だ。
 華々しく輝くエース達を影で支えながら、締めるべき時は締め、戦いの中でも緩めるべき時は緩めて己に休息を与える。
 そうでもしなければ、精神を磨り減らして潰れてしまうのが凡夫の常だ。
 己のスペックを見定め、それを最も効率良く運用できるの者こそ優れた兵士と言えよう。
 しかし、彼女は常にフルスロットル。戦いの場にある事こそ己の常とばかりに、冷たい瞳で青空を見つめている。
 ヘリの操縦室、無言。
 ヴァイスは、背後からの圧迫感に耐えかねて、セッテに語りかけた。

「な、なあ、聞きたい音楽とかあるか? 最近のから古いのまで色々揃えてるんだが……」
「結構です。音楽を鑑賞する趣味はありません」
「…………」

 会話終了まで、実に10秒足らず。
 気合を入れて、リトライすることにした。

「なあ、好きな食べ物とかは……」
「食物に対する嗜好はありません」
「…………」

 会話終了まで、実に5秒。
 まだまだ。心が折れそうになるが、ヴァイスは気合を入れて更にリトライをする。

「なあ、どんな男がタイプなんだ? 美人だしスタイルもいいから、男に声掛けられること多いんじゃないのか?」
「異性との交際に興味はありませんし、交際を求められたこともありません」
「…………」
 
 ……嘆息をひとつ零して、ぐしゃぐしゃと頭を掻いた。確かにギンガの言う通り、これは随分な問題児だ。
 溜め息をもう一つ重ねて、ヴァイスは面を掌で覆って、初めて、己の心からの問いを彼女にぶつけた。

「なあ、セッテ、お前が優秀な戦士だというのは見てりゃ分る。
 けどよ、その機械みたいなぶっきらぼうなものの言い方はどうにかならないのかよ?
 作戦は一人でやるもんじゃねえんだ。何より、部隊のチームワークってもんが大切なんだよ。
 正直言うとだな、お前みたいなのが部隊にいると迷惑なんだ。部隊の不和を招きかねねぇ。
 今回は俺とお前の二人だけの任務だからいいけどよ。
 ―――大人数での作戦だったら、俺は絶対にお前のような奴とは戦いたくねえ」

 半ば愚痴だった。「そうですか」とでも言うような、素っ気無い返事が返ってくるだろうと思っていた。
 しかし、セッテは意外な程饒舌に返答をした。

「承知しています。
 作戦行動に於いて、隊員間の円滑な連携を保つためには、一定のコミュニケーションが必要な事は存じています。
 通常時はコミュニケーションを求められた場合、定められたテンプレートに基づいて適切な返答を行うよう設定しています。
 先ほどのご質問ならば、嗜好する音楽はクラシック、嗜好する食物はストロベリーアイス、好みの異性は長身でやや筋肉質の男性です。
 今回、ナカジマ陸曹より、グランセニック陸曹と会話を行う場合に限り対人設定をOFFにするよう指導が有りましたので、それに従っています。
 ご要望ならば、対人会話設定を通常モードに戻しますが」

85 I, Robot その5 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:38:30 ID:5MOmEFKE
 何て奴だ。筋金入りにも程があるだろう。
 今更、対人会話設定とやらで流暢な対応をされても、余計に気が滅入るだけだ。
 頭を抱えて、

「いや、このままでいい……。
 それにしても、どうしてギンガは俺には素で話せなんて言ったんだ?
 最初から知らなきゃ普通に話せたものを―――」
「情操教育の一環として、私という存在をご理解頂けている方に対しては、普段通りの話法で会話するように指導を受けています。
 特に、姉妹や元機動六課の方に対してはその傾向が顕著です」
「……俺ぁ、別にお前と親しい訳でもないのになぁ」

 親しくないどころか、ヴァイスは彼女と今日知り合ったばかりだ。

「ナカジマ陸曹からは、グランセニック陸曹はコミュニケーション能力、特に女性に対する順応性が高く、大まかな説明も済んでいるので通常通りの話法で構わないと伺いました」
「……あんにゃろ」

“ヴァイスさんならあの子を許容して頂けるかと思って、ご挨拶に伺いました”

 ギンガの言葉が脳裏に蘇る。どうやら、随分と厄介なものを押し付けられたようだ。
 と、言っても、別段実務上の差し支えがある訳ではない。
 どうせ一泊二日の付き合いだ。ヴァイスは腹を据えてセッテの相手をすることに決めた。
 おおよその付き合い方も見えてきたし、何より異質すぎる「セッテ」という女の存在に、若干の興味も湧いてきたのだ。

「セッテ、俺はお前のほかの姉妹―――ノーヴェやチンク達も少しは知ってるんだが、あいつらもいつもはお前みたいな喋り方をしてるのか?
 あの騒がしいウェンディの性格とかも、全部その、『対人設定』ってやつなのか?」

 想像して、寒気がした。
 楽しげにはしゃいで、笑って、じゃれあっていた彼女達。
 それが全ては仮面と同じ作り物で、部屋に居る時は一言も喋らず、無表情で人形のようにただ在るだけの彼女達の姿を。
 だが、それは杞憂だったらしい。

「いえ、私以外の姉妹達は、矯正施設での指導の結果、人間として生きることを選択しました」
「……まるで、自分が人間じゃないような言い方だな」

 セッテは、正面を見据えたままきっぱりと断言した。
 
「私は、自分を戦闘のための機械として認識しています。
 グランセニック陸曹も、私のことは陸士部隊に納品された兵器の一つとお考え下さって結構です」
「…………?」

 彼女の言葉に、微妙な引っかかりを覚えた。些細な違和感。小さな誤謬。

「見えたぞ、目的地だ」

 前方を指差して、自分の愚かさに気付いた。
 人間以上の身体機能を持つ戦闘機人たる彼女は、そんなこと、とうに把握していたに違いないのに。
 セッテは頷くでもなく、ただ静かに、じっと正面を見据えている。
 ヴァイスは何度目になるか分らない嘆息をし、手入れの悪い髪をぐしゃぐしゃと掻いた。
 

     ◆
 

 目的の本拠地まで適当な施設がなかったため、宿泊は現地の民間施設となっている。
 僻地の安宿だが、周囲が荒地なので、ヘリを着陸させるスペースが確保できる貴重な場所だ。
 何より、明日の早朝までの仮宿。どんな環境でも別段文句を言うに当たらない。 
 別段、ヘリの中でも寝泊りしても構わないのだが、ささやかな贅沢といったところか。
 
「甘かった……」

 頭を抱えるヴァイスの視線の先には、ダブルベッドの鎮座するラブホテルの一室があった。

86 I, Robot その6 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:39:59 ID:5MOmEFKE
「目的地に近く、最も安価なのがこの宿泊施設でしたので」

 セッテは澄ました顔で解説をし、煩悶するヴァイスを一瞥してシャワー室に入った。
 今回の任務の主体は、セッテなのである。
 階級や彼女の監視という理由から、ヴァイス指揮の名目になっているが、実質的な裁量はほぼ彼女に任せている。
 実質的な仕事はヘリの運転のみなので、作戦の個別具体的な部分についてはセッテの計画案に任せていた。
 彼女の計画案は、一読するに微塵の隙もなかった。最短距離で目的を達成するためのシンプルで効果的な作戦。
 宿泊施設のような些事は、気に留めてすらいなかった。 

「身体洗浄、終了致しました。宜しければお次をどうぞ」

 女性にしては短すぎるシャワータイム。頭を抱えた姿勢でフリーズしていたヴァイスは面を上げる。
 そこには、全裸のセッテの姿があった。
 モデルのような長身には一分の贅肉も無い。総身は野生動物のようにしなやかな筋肉が薄く包んでいた。
 伸びた背筋、立っているだけで判る身体バランスの良さ。まるで、海中を泳ぐカジキのよう。
 美しい、と素直に思った。
 だが、それは普段女性の裸身を見て感じるような肉感的な意味で美しさではない。
 CGでモデリングされた図形を見て感じるような、幾何学的な美しさだ。
 人間は生物である以上、どんなに整っているように見えても、完全な均整を取れた肉体というのは存在しない。
 人の顔の中心に鏡を置き、完全に左右対称な表情というものを作成すると、元の表情と全く異なったものへ変化する。 
 骨格、筋肉の発達、歩行時の重心の変化、全て左右で微妙に異なっているのだ。
 しかし、完全な均整をもった肉体がそこにある。それはもはや神の産物たる人の子ではなく―――。

「はぁ、いいけどよ、目の毒だから早く何か着てくれ」
「はい」
 
 セッテは手早く下着を身につけた。まるで色気のない、スパッツのような下着とスポーツブラである。
 『裏表ない、見たままの子です』というギンガの言葉は本当だった。
 短い付き合いに過ぎないが、セッテのことは大体把握できたとヴァイスは感じていた。
 その上で、無駄と思いながら彼女に愚痴る。

「全く、男と女が一つ部屋なんてどうかしてるぜ。一発抜きたくなったらどうすりゃいいんだ、俺は?
 こんな部屋に二人きりなんてさ、ムラムラきた俺が襲い掛かってもいいのかよ?」

 腐れ縁のアルト辺りに聞かせたならば、即座にセクハラで訴えられるような台詞だったが、彼女に限ってそんな可能性は0である。
 加えていうなら、ヴァイスが全武装を投じて彼女に襲い掛かったところで、指一本触れることすらできまい。
 そんな考慮にすら値しない言葉を垂れ流すヴァイスの台詞は、どこまでも唯の愚痴でしかなかった。

「一発抜きたくなる、というのはどのような状況でしょうか? ムラムラくる、という表現も理解不能です」
「へ?」
「対人能力の向上のために、知らない単語や慣用表現は積極的に学習するように設定しています」
「あー、それは、だな……。俺の口からはちょっと説明しにくいんで、知ってそうな奴がいる時にでも聞いてくれ」
「了解しました」

 すちゃ、と取り出したのはシンプルな銀色の通信デバイス。彼女は迷わず短縮ダイヤルをプッシュし、それを耳に当てた。

「クアットロですか? ……はい、またお聞きしたいのですが、『一発抜きたい』と『ムラムラくる』という言葉の意味を―――」
「おい、ちょっと待て―――」

 流石に想像の斜め上を飛んだセッテの行動に、ヴァイスは叫び声を上げるが時既に遅し。
 
 数分後。

「諒解しました。『一発抜きたくなる』とは、射精を行いたくなる、『ムラムラくる』とは、興奮を覚えるという意ですね」

 彼女は項垂れるヴァイスを見つめ、歯切れの良い口調でキッパリと告げた。
 バサリ、とセッテが差し出したのは、ラブホテルの机の上に置かれたいた古いポルノ雑誌だった。
 金髪の美女があられもない姿で、赤いヒールを履いた両足をぱっくりと広げている。

「どうぞ、一発抜きたくなられた時は、お好きなようにマスターベーションなされて下さい」
「…………違うぅ」

87 I, Robot その7 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:41:59 ID:5MOmEFKE
 諦観の表情で呆と視線を宙に彷徨わせながら、弱々しい手つきでヴァイスは煙草に火を付けた。
 セッテは一瞬だけ思案するように動きを止めたが、淀みなく続ける。

「男性が能動的に射精を行う場合、手段は自慰行為と性行為の二種類に大別されると学びました。
 自慰行為でないということは、性交を行いたいという意でよいでしょうか。
 では、ムラムラきて一発抜きたくなられた時は、私の肉体をお使い下さい」
「―――は?」
「それでは、私は全裸で待機しておきますので、何時でもお申し付け下さい」

 そう言って、彼女は身に付けたばかりの下着をするすると脱ぎ捨てた。
 この女は、一体、何を言っているのだろう。
 ヴァイスは蝋人形のような白皙の肉体を見つめながら、頭を捻る。
 目を背けるだの、大慌てで彼女の行動を制止するだのといったタイミングは、とうに通り過ぎてしまった。
 あまりに常識からかけ離れた彼女の行動に、ただぽかんと口を開けるばかりだ。
 ヴァイスは知りえぬことだったが、セッテに対して性的なジョークをぶつけたのは彼が初めてだった。
 彼女は、性的常識に関しては、ほんの最低限のプリインストールも同然の状態だったのだ。
 
「えーと、どうすりゃいいんだ、俺は……?」

 セッテは、無言でヴァイスを見つめている。
 やめさせなければ、というごく真っ当な理性の判断と、女性に性交を許された男としての本能。
 それが脳内で鬩ぎあって、言葉が出ない。
 優勢なのは理性だ。彼女は男に抱かれるということの本質を何一つ理解していない。
 性交を、呼吸や歩行と同じ生理的行為、動物の交尾と何ら変わらないものとして把握している。
 人間の行う性交が、どれだけ深い意味と感情を孕んでいるのか、全く知らないのだ。
 そんな彼女を抱くことは、年端もいかない少女に性的な悪戯をするのと同様の、卑劣で罪深い行為だと理性は断ずる。
 だが。
 そんな彼女だからこそ、抱いてみたいという黒い衝動が、腹の底でぐるりと蠢いた。
 性欲というより、好奇心に近いものがある。
 こんな機械のような女が、人が最も動物に近づく瞬間であるセックスの際にどんな顔を見せるのか、興味が湧いたのだ。
 否、好奇心というのは誤りか。ヴァイスは―――彼女に、一種の畏怖に近い感情を抱いていた。
 こんな女が、こんな、人間性の剥落した人間が居る筈ないと、彼の中で常識が警鐘を鳴らしている。
 だからこそ―――セックスの際ならば、彼女にも僅かな人間らしさが見られるのではないかという、そんなか細い希望を感じていたのだ。  
 ヴァイスは、自分の衝動に従った。

「ああ。ムラムラしてきた。一発抜きたくなったぜ。一丁、宜しくたのむわ」 

 口元を吊り上げ、煙草を灰皿に押し付ける。立ち上がると同時に、セッテはベッドの上に仰向けに横たわった。
 これから情交を始めようとする女性の姿ではなく、解剖を待つ検死台の上の死体のようだった。
 ヴァイスは彼女にそっと覆いかぶさり、彼女に静かに口付けた。セッテは、目を閉じすらしなかった。
 求めれば、彼女はどんなことにも応じてくれるだろう。
 そんな予感はあったが、ヴァイスはセッテに何一つ求めなかった。静かに、彼女に尽くすことに没頭した。
 ―――唇を離す。セッテの真一文字に結ばれた唇は、最初から最後まで固く閉じたままだった。
 ヴァイスはついばむようなキスを繰り返しながら唇を下げる。首筋に、項に、胸元に、そして尖った先端に。
 セッテの肌はやや冷たく、陶器のように滑らかだった。
 均整のとれた乳房を緩々と揉みしだき、先端をそっと口に含む。
 彼女は顔色一つ変えなかった。それどころか、行為が始まってから身じろぎ一つしていない。
 無論、緊張や羞恥のせいではない。彼女はそれが自然体であるが故に、ただ人形のように為されるがままにされていた。
 ヴァイスの丹念な愛撫に、セッテは何一つ反応を示さなかった。快楽も、歓喜も、好意も、嫌悪も。
 最初から、予想できていたことだった。
 それでも、ヴァイスは徒労でしかない愛撫を続け、彼女の秘所に辿り着いた。
 己の最も秘された部分を男に弄われようとも、セッテは眉一つ動かさなかった。
 ヴァイスはそっと指を挿し入れる。彼女の内部は、口中のような自然な湿り気を帯びていた。彼の愛撫など関わりなく、あるがままの状態だった。
 自然体の仰臥の姿勢の彼女の両足を、そっと手で押し開く。こればかりは、動かさなければ行為に及ぶことが出来ない。
 遂に、彼女の中にヴァイスが進入した時も、彼女は冷たく宙を見据えていた。

「……やべぇな、これは」

88 I, Robot その8 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:43:36 ID:5MOmEFKE
 一方、挿入したヴァイスは、千々に乱れる呼吸と鼓動を抑えるのに必死だった。
 背筋をゾクリと戦慄が駆け上っている。セッテの内部は、別段他の女と変わるところは無かった。きつくもなければ緩くもない。
 しかし、死体のように五体を投げ出している彼女を抱くことは、人形でも抱くような背徳的で倒錯的な行為だった。
 抽送を開始する。
 セッテは動かない。
 ただ、ヴァイスの動かす腰の動きに合わせて、小さく体が跳ね続ける。
 屍姦という言葉が脳裏を過ぎる。
 この期に及んでさえ、彼女の挙措には人間らしさの欠片さえ存在しなかった。
 ダッチワイフでも抱くかのように、ヴァイスはただ己を満足させるためだけに抽送を続ける。
 か細い期待は、ついに途切れた。彼女は、どこまでも機械だった。もう、愛撫をする必要すらない。
 これは、ヴァイスのマスターベーション。セッテという女の肉体を使った自慰行為に過ぎなかった。
 それでも、雄の本能は容赦なく背筋を駆け上り、ヴァイスは静かにセッテの中で果てた。
 それなりに、持続力には自信のある彼にとって、随分早い終焉だったが、何の問題もない。そこには、見得を張る相手も嗤う女も居ないのだから。
 果てしない疲れを感じた。
 ヴァイスは、ぐったりとセッテの上に崩れ落ちた。
 豊満な乳房の上に頭を預ける。
 ドクン―――。
 心音が聞こえた。彼女が生きてここにあるという証。息を長く吐き出し、その音に耳を傾ける。
 セッテの心音は、力強く、時計の針の音のように正確だった。
 ……ヴァイスは息も脈も乱れきっているというのに、彼女は鼓動はどこまでも平常を保っていた。
 と、彼女はヴァイスを自分の体の上から退けると、すっと立ち上がった。

「これで、終了ということで良いでしょうか?」

 余韻も何もあったもんじゃねぇな、とヴァイスは苦笑しながら頷く。

「今の間に明朝の作戦案を微修正しておきました。具体的には―――」
  
 気が入ってなかったと思ったら、そんなこと考えてやがったのか。
 呆れるよりも、感心した。長く長く息を吐く。
 ヴァイスは、完璧な作戦を更に完璧に修正するプランを全裸で講釈する彼女に、胸中で拍手を送った。
 

     ◆

  
 眠りに落ちる前に、ヴァイスは一つだけ問うた。
 ヘリの中での会話で覚えた、ほんの些細な違和感を。

「なあ、お前、機械として生きることを選択した、って言ったような。
 お前の姉妹達はみんな人として生きることを選んだんだろ? 何でお前は機械として生きようなんて思ったんだ?」

 彼女は、淀みない口調で答えた。

「施設で保護司の方は、私達に、自分がどのように生きるかは自分で選択するようにと仰いました。
 自分で生きる道を選択することが、真に人間として生きるための第一歩となるのだと。
 他の姉妹は人間として生きることを選択しましたが、私は機械として生きることを選択しました。
 私は戦いの為の兵器として製造されました。ならば、その目的に沿って生きるべきであると判断した結果です」

 ぼんやりとしていた違和感の正体が、今はっきりとした。

「―――ははっ」

 彼女は言った。自分は、機械として生きることを選択したのだと。
 それは、誰に指示されたものでもなく、彼女自身が選び取った己の生き方。
 定められたプログラムしか実行できない機械には、決してできない魂の選択だった。

89 I, Robot その9 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:45:12 ID:5MOmEFKE
     ◆


「現場はもうすぐだ、準備はいいか?」

 尋ねる必要が無いことなど承知の上で、ヴァイスは問うた。

「はい、問題ありません、いつでも行けます」

 高度数百メートルから地上を見下ろしながら、彼女は静かにそう答えた。
 その目に、興奮や緊張の色はない。電子カメラのような瞳で、つぶさに目的地を見つめている。

「もうじきだ。細かい判断はお前に任せる。自分でいいと思ったら飛んでくれ」
「了解しました」

 言うが早いか、彼女は大空へ身を投げ出した。鷹のように両腕を広げ、気流に任せて大空を滑空する。
 なんて見事なスカイダイビング。獲物めがけて直滑降する隼の偉容だ。
 自由落下運動によって、彼女は速度を上げて地面へと近づいていく。それに合わせて、彼女の総身を桜色の魔力光が包んでいく。
 空の殲滅者と呼ぶのが相応しい偉容を伴って、彼女達はテロリスト達の潜伏地の中央に下り立った。
 無法者達は、ただぽかんと口を開けて、その姿を眺めていた。
 セッテは、彼等の驚愕に何の頓着も示さず、高らかと告げた。

「時空管理局地上部隊のセッテと申します。貴方がたは指名手配されいます。投降を―――」

 彼女の言葉は、呆気に取られていたテロリスト達に現実を正しく認識させた。
 台詞を聞き終えるまでもなく、真正面から砲撃が打ち込まれる。
 爆音、爆煙。
 一陣の風がたなびき、爆煙を吹き散らすと、そこには当然のように傷一つ無いセッテの姿があった。
 その左手には、彼女の固有武装、ブーメランブレードが握られている。
 爆音の残響の中、彼女の口は何事かを告げるかのように動いていた。きっと投降勧告の続きだったのだろう。
 勧告を無視した上での、殺傷目的の攻撃。彼女は、予定調和の最終手段に着手する。

「―――それでは、強制捕縛を実行いたします」

 彼女の言葉に応えるかのように、一斉に射撃や砲撃が加えられ、違法魔導師達のバリアジャケットが展開される。
 殲滅戦の、始まりだった。
 ヴァイスは、ストームレイダーのスコープ越しに、彼女の挙措をつぶさに見つめていた。
 ブーメランブレードを握っていた左腕が、消失するかのような勢いで振るわれる。
 同時に、彼女の左側のテロリスト達が暴風にでも薙ぎ倒されたかのような勢いで弾け飛んだ。
 右腕にはもう一本のブーメランブレードが出現し、彼女は相当な質量があるであろうそれを機敏に振るい、一斉射撃を全弾撃墜した。
 懲りることなく加えられる一斉射撃。
 その弾幕を目くらましに、剣、斧、槍といった近接戦闘用のデバイスを備えた魔導師が一斉に頭上から襲いかかる―――。
 セッテはそれに目を向けることもなく、盾として使用していた右手のブーメランブレードを射手に向かって投擲した。
 そのまま、身一つを低く沈め、ブレイクダンスの要領で頭上からの攻撃を全て回避。
 襲撃者が驚愕したのも束の間、両手で戻ってきた二本のブーメランブレードをキャッチし、その勢いを利用し三人を一気に薙ぎ倒す!
 第一線のベルカ騎士の一撃に匹敵するという彼女の一撃は、バリアブレイクによる防御魔法無効すら備えている。
 有象無象の違法低級魔導師によるテロリストの群れなど、端から勝負が成立する筈がない。

 ヴァイスは、ただ彼女に見惚れていた。
 戦闘に際した彼女は、思いもよらないほど苛烈で一途だった。
 その姿を、ヴァイスは美しいと感じた。何よりも美しいと感じた。
 性交の際の裸身など比べ物にならない。今この瞬間こそ、彼女の姿は何よりも輝いている。
 戦いの為の機械として生きることを選択した彼女。
 そんな彼女が、今正にその本懐を果たしているのだ。美しくない筈がない。
 一つの機能を極限まで追求したものは総じて美しい。
 例えるなら、数百年間形状が変わっていない弦楽器。
 例えるなら、水中を時速数100キロで飛ぶように泳ぐ魚。
 例えるなら、現在の技術ではもう復元できない古刀。
 例えるなら、音速を超えて飛翔する戦闘機。
 そんな、何かを究極としたものだけに得られる美しさを、彼女は持っていた。

90 I, Robot その10 ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:47:04 ID:5MOmEFKE
 彼女は今、戦っている。
 それだけで、彼女は満ちている。
 それだけで、彼女は足りている。
 まるで、祈りに全てを捧げて生きる教会の聖女のようだとも思った。
 そう、彼女に余分なものは何もない、純粋なる戦機―――。
  
 決着は速やかだった。
 瞬く間に過半数が戦闘不能に陥ったテロリスト達は、最も安易な道、投降を選択したのだった。
  

     ◆


「今回の任務、ご指導ありがとうございました」

 ―――靴の踵を揃え、きっちりと30度。
 彼女は形式ばった一礼をし、颯爽と踵を反した。
 出会った時と同じ、あっさりとした別れだった。
 ヴァイスは小さく手を振って、その背中を見送った。
 
「……さて、ラグナの土産に何買って帰るかな?」
 
 凡夫である自分にとっては、人生など悩んで行き詰ることばかりである。
 ―――彼女なら、自分が苦しむ雑多な物事で頭を悩ませたりしないだろう。彼女は機械なのだから。
 
『彼女は、自分の生き方を自分で選びとった、だから、彼女は人間だ―――』

 などと、無粋なことを言うつもりは微塵も無い。
 彼女は機械だ。彼女自身がそう定めた時点で、定義付けは済んでいる。
 彼女は、それだけで満ちている。それだけで、足りている。
 人である自分は、人生の些細な選択の度に迷ってばかりだ。
 それを、彼女はたった一度の選択で全てを決定してしまった。
 ……少しだけ、セッテが羨ましい。
 彼女ならば、あの時に誤射をすることなど無かっただろう。
 例え自分の肉親が人質にとられようと、冷静なその瞳を揺らすことなく敵を射抜いただろう。
 機械の部品になりきれなかった自分と違って、彼女は本当の機械なのだから。

「―――と」

 思考が陰鬱な方向に傾いたのを振り払うように、ヴァイスは顔を上げた。
 短い任務だったが、随分精神的な疲労が溜まっているようだ。

「ラグナの土産買って、さっさと家に帰ろう。帰って―――」

 鞄を漁る。一冊の雑誌が目に止まった。セッテに渡されたポルノ雑誌だった。
 古びた表紙では、金髪の美女が赤いハイヒールを履いた足を扇情的に広げている。 

「帰って、せんずりでもこくか……」

 そうだ。妄想の中なら、あのセッテも存分に乱れてくれることだろう。
 今回はあの女に己を掻き乱されてばかりだ。その程度の役得は―――許されるはずだ。
 こき、こき、と首を鳴らしながら、ヴァイスはゆるゆると帰途についた。

                                  END

91 アルカディア ◆vyCuygcBYc :2009/08/12(水) 02:50:23 ID:5MOmEFKE
18禁だけど、実用性が微塵も無いとは、こはいかに。
機械として生きることを選択したセッテを書いてみましたが、難産でした。
読後にちょっぴりもやもやしたものを感じて頂ければ幸いです。

92 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 10:07:57 ID:YgDul2YU
GJ! 
後日、任務の詳細報告を求められて 全 部 喋るセッテの姿が……w

>>想像して、寒気がした。
>>楽しげにはしゃいで、笑って、じゃれあっていた彼女達。
>>それが全ては仮面と同じ作り物で、部屋に居る時は一言も喋らず、無表情で人形のようにただ在るだけの彼女達の姿を。
ここになんかぞくっと来た。

93 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 13:36:16 ID:HCZS9iSg
記憶違いならスマソが、更正組って5、6、8〜12で
セッテはムショじゃなかったか?

94 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 15:19:15 ID:PXddkruo
>>93
ムショやね。
セッテも更正していたら、というifストーリーじゃないかな。

>>91
エロくないけど、その分だけ空虚さが出ていてよかったです。
こういうエロシーンの使い方もあるんだな。

95 ザ・シガー :2009/08/12(水) 18:06:33 ID:7BrQZYSY
おお、これは凄い……
完全に機械な存在に、人の悩みや思慮など及ぶところではないのか。
正に戦機、ある意味セッテという存在への真なる理解ある作品なのかも知れませんな。
ただ心配なのは……

――これで妊娠したら半端なくヤバイwww

ほんともう、かなり心配ww


ともあれGJっした!
伊達眼鏡も半裸で待ってますぜ?



そして、感想ついでに気晴らしで書いたSS投下します。
エリオ×キャロ、非エロ、短編、『エリオとキャロのファ〜ストキッス♪』です。

96 エリオとキャロのファ〜ストキッス♪ :2009/08/12(水) 18:09:28 ID:7BrQZYSY
エリオとキャロのファ〜ストキッス♪


 逆立った赤毛の少年、エリオ・モンディアルは息を飲んだ。
 目の前の少女の姿に魅入られて。
 少年の対面には一人の少女がいる。
 ふわりと肩まで伸ばされた桃色の髪を持つ女の子、ライトニング分隊でエリオの相棒を務める召喚師、キャロ・ル・ルシエだ。
 キャロは落ち着きなく自分の指を絡め合わせて、モジモジと動かし。
 そして顔は僅かに俯き気味で、上目遣いにこちらを見ている。
 眉は困ったように下がり、頬は真っ赤に染まっていた。
 そこにあるのは羞恥の二文字。
 恥じらう少女に、少年は問う。


「あ、あのさ……キャロ、その……良い?」


 問われ、乙女は答える。
 言葉はなく、小さく顔を頷かせて。
 それは堪らなく愛らしかった。
 ほんのりと紅潮した頬で、まるで小動物のように身体を小刻みに震わせる様は見る者の保護欲を狂おしいほどにそそる。
 エリオは胸の内で鼓動がワルツのように踊るのを感じた。
 いつも見慣れた少女の筈なのに、近くで恥らう姿を見ただけでときめく心が抑えられなくなりそうだ。
 少年はもう一歩、目の前の少女に近寄り、そっと手を伸ばした。
 触れるのは、小さな少女の小さな肩。
 儚さすら感じるキャロの両肩に、少年は自分の両手を重ねる。
 触れた瞬間、小さく震える乙女の身体。
 そしてゆっくりとキャロは顔を上げる。
 少し潤んだ、濃いインディゴの瞳がこちらを見つめる。
 綺麗だ。思わずそう言いそうになった。
 この色を見ていれば、それだけで心が満たされる。
 と、少年は思う。
 いつまでも曇りなき双眸で見つめて欲しい、そんな事まで考えた時だった。
 少女の表情に動きが生まれた。
 エリオを見つめていた瞳がそっと細められ、閉じられる。
 この意が分からぬ彼ではない。
 これからせねばならない事を思い、頬が熱くなってきた。
 恥ずかしい、だが引く事はできない。
 キャロが決意を決めているのだ、男の自分が怖気づいてどうする? そう自責する。
 そして、おもむろに自分の顔を彼女に寄せていった。

 瞬間、横合いから野次馬の声。


「おらおらぁ〜! はやくチューしろぉ〜!」


 酒臭いスバル・ナカジマの声。
 それに続くように他の女性陣、ティアナやシャーリー、ロングアーチの面々から、そうだそうだ、とはやし立てる声も続く。
 これら外野の声に、エリオは辟易とした顔をする。


「あぁ……なんでこんな事に」


 と、嘆きを呟きながら。





 事の始まりはシャリオ・フィニーノ、通称シャーリーという少女の言葉だった。
 明日は休日だし、久しぶりに皆で集って騒ごうよ。
 と、彼女は言った。
 集ったのは6人の少女と1人の少年、機動六課のフォワードメンバーとアルト・ルキノ・シャーリーといったロングアーチの面々。
 とりあえずスバルとティアナの部屋に集った7人は、お菓子やジュースを手に姦しく騒いだ。
 日常のささいな事を話したり、ゲームをしたり、年相応の少年少女らしい事を。
 そんな中、混沌をもたらしたのはアルトの持って来た飲み物だった。
 曰く、ヴァイス先輩から貰った、というそれはどこかアルコール臭がした。
 というか、実際にアルコールだった。
 甘めのリキュールの為、全員はそれを単なるジュースと思い込んでいたようだったが。
 酒が入った瞬間、状況は一変した。
 酔っ払い、理性のタガの外れた面々は王様ゲームを始めたのである。
 最初のわきあいあいとした雰囲気はどこへやら、一気に場はカオスとなった。
 スバルがティアナの足を舐めしゃぶったり、シャーリーがアルトの微乳をモミクチャにしたり。
 ともかくカオスだった。
 そして、その命令は発令された。
 2番と5番がキスをしろ、と。
 エリオが持っていたのは2番で、キャロは5番だった。
 かくして今に至る。


「ぐずぐずしないでチューしろー!」

「それでもおとこかー!」

「ヴァイスせんぱいとちゅーしたーい!」


 と、少女らは姦しく囃し立てる。
 若干自分の願望を叫んでいるだけの人もいた気がするが、きっと気のせいだ。
 ともかく、囃し立てられた方は堪ったもんじゃない。
 なにせ、二人はまだ手を繋ぐだけでも恥ずかしがるようなお年頃だ。
 それをいきなりキスである。
 そう簡単にできる訳がない。


(うう……恥ずかしいよ)


 目を瞑り、口付けを待つ少女の様を前に少年は思う。
 頬が燃えているかのように熱く、頭の中は羞恥心でグチャグチャだ。
 目の前に差し出されたキャロの唇に目が釘付けになる。

97 エリオとキャロのファ〜ストキッス♪ :2009/08/12(水) 18:10:51 ID:7BrQZYSY
 薄い桃色の、柔らかそうな乙女の唇。
 異性との口付けなど一度も経験した事のない、穢れなき聖域だ。
 そこに自分が触れるという事が、酷く罪深いような気さえする。
 少年は躊躇し、羞恥し、戸惑う。
 そんな風にエリオが硬直していると、おもむろに少女の瞳がそっと開かれた。


「エリオ君」

「ふえ!? な、なに?」


 いきなり声を掛けられ、思わず調子の外れた声を漏らすエリオ。
 慌てる少年に、キャロはふわりと微笑んだ。
 恥ずかしげに、でもそれ以上に優しげに、柔らかい微笑を浮かべる。
 ほんのりと朱色に染まった顔で見上げながら、乙女はそっと囁いた。


「私も、その……恥ずかしいけど……大丈夫だから」


 天使の笑顔と共に、心地良い残響は続く。


「エリオ君となら、全然嫌じゃないから」


 とくん、と胸の奥で鼓動が一つ高鳴るのをエリオは感じた。
 今までの緊張とは違う、甘やかな旋律を心臓が奏でた。


「キャロ……」


 少女の肩に置いた手に、僅かに力が込められる。
 もう迷う事無く少年は目を瞑り、顔を寄せた。
 少女も彼に習い、また瞳を閉じる。
 静かに、音もなく近づき合う唇と唇。
 今正に、少年と少女の初めての口付けは成され……


「あうッ!?」

「いたッ!」


 ゴチンッ、と音を立てた。


 まあ、仕方ないだろう。
 なにせ生まれて初めてキスをするという二人だ。
 目を瞑り、顔を寄せ合って唇を重ねる。
 たったそれだけの事でも、エリオとキャロにとっては未知にして至難極まる行為だった。
 ならばこうなるのは自明の理。
 歯と歯がごっつんこ、するのもまた然り。
 突然のハプニングに、あうあう、と口元を押さえて痛がる微笑ましい二人に周囲は笑う。


「ハハハ! かわいー♪」

「初々しいわねぇ」

「二人とも大丈夫?」


 問われ、二人はコクコクと頷く。
 だがしかし、そこでエリオは一つの事実に気付いた。


「キャロ! 口元から」

「ふえ?」


 少年の声に、疑問符を浮かべるキャロ。
 エリオに指摘された通り、そっと口元を指でなぞる。
 すると、指先には一筋の朱色が付いていた。
 鮮やかな乙女の鮮血だ。


「あ、ちょっと切れちゃったみたい」


 良く見れば、キャロの桃色の唇には縦に裂けた小さな傷が出来ていた。
 歯と歯がぶつかった際に切れてしまったのだろう。
 可愛い唇が傷を負う姿は、見ていて少し痛々しい。
 少年はこれに即座に動いた。


「大丈夫? 痛くない!?」


 口付けに恥らっていた事が嘘のように、顔を寄せて問うエリオ。
 彼の勢いに少しびっくりしたのか、目を丸くしながらキャロは答えた。


「だ、大丈夫だよ。そんなに痛くないし……」


 そう言うが、案外に傷が深いのか血は止まらない。
 さて、ところで小さな傷を負った際どうするだろう。
 状況にもよるだろうが、多くの人はその場合、傷口を舌で舐めるのではないだろうか。
 エリオもそうだったし、ならば今もまたそうだ。
 故に少年は、考える事もなくそれを成した。
 言葉もなくキャロに顔を寄せたかと思えば、朱色の鮮血を流す唇にチロリと舌を這わせる。


「ひゃぁッ!?」


 愛らしい乙女の、半ば悲鳴染みた声が上がる。
 だがそんな事などお構いなしに少年は続けた。
 桃色の唇に出来た赤い傷口を、まるで子犬がミルクでも飲むように何度も何度も舌で舐め上げる。
 こそばゆい、されど心地良い唇への愛撫に、幼い少女は甘やかな声を上げ、細やかな肢体を震わせた。
 流血の残滓が消え去った頃、ようやくエリオは舌の奉仕を止めた。
 後には愛らしい桃色の唇と、そこにうっすらと残る傷跡だけがあった。


「もう大丈夫かな。痛くない?」

「……うん」


 恥じらいに頬を真っ赤っかにしながら、キャロは小さく頷いて答える。

98 エリオとキャロのファ〜ストキッス♪ :2009/08/12(水) 18:11:24 ID:7BrQZYSY
 まるでリスかなにか、小動物のような愛くるしい所作。
 少女の答えに、エリオは優しげな微笑を浮かべて、良かった、と漏らした。
 微笑ましく、初々しく、愛らしい。無垢なる少年と少女のやり取り。
 それは、見ている方が恥ずかしくなるような甘さだ。

 そして、それを間近で見た者達は死んでいた。

 いわゆる一つの糖死である。
 あまりの……空前絶後の甘すぎるストロベリーワールド。
 思わず背中がむず痒くなり、悶絶したくなるような世界。
 それが目の前で織り成されたのである。
 耐性のない少女らが耐え切る事ができよう筈もない。
 彼女らは次々に口から砂糖やハチミツを吐き、悶絶し、倒れたのであった。

 翌日からしばらくの間、機動六課隊舎の食堂では激辛メニューが大人気だったという。



終幕。

99 ザ・シガー :2009/08/12(水) 18:14:08 ID:7BrQZYSY
投下終了。

私は思うんだ、エリキャロは下手にエロい事するよりも甘酸っぱいストロベリー展開のが可愛いんじゃないか、とね。
仲良く手を繋いだりキスとかチュッチュしてれば良いよ!

100 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 19:04:24 ID:ak73HXXA
夕食がカレーだったからいい具合に中和されますた

101 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 19:19:56 ID:EA1qQ5D.
青春万歳!これは糖死せざるを得ない
さて、担担麺でも食ってくるか

102 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 19:40:58 ID:oqZ3Ecbc
⊂⌒~⊃。Д。)⊃

このスレでこのAAを使うことになろうとは・・・。

103 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 19:55:52 ID:s2FOEcCE
ハバネロさえも中和しそうな甘さですな

104 名無しさん@魔法少女 :2009/08/12(水) 22:04:29 ID:svI3/lbE
劇甘万歳!
これは、天の恵みかな。
次の仕事が、ちょうどこの二人だったのも運命ですね。

105 CRR :2009/08/13(木) 00:13:33 ID:uz.N3BFQ
>>99
無垢ゆえに秘めたる猥褻さがたまらんです……

こんばんは。
100スレ目おめでとうございます。感慨深いです……
でもネタSSですみません

【キャラ崩壊注意、特にはやて・レジアス】【他作品パロ要素多数注意】
・脱ぐけど非エロ
・はやてが麻雀最強な前スレ作品の続編
・10割ネタ。元ネタ探しクイズ的な作品

ではどうぞ。

106 CRR :2009/08/13(木) 00:16:12 ID:uz.N3BFQ
海鳴市中央部にある商店街には、『翠屋』と言う名の喫茶店兼洋菓子店がある。
平日でも自慢のスイーツを求めて人が絶えない超有名店だ。
しかし翠屋には、一般の客には知られていないもうひとつの顔があった……。

「はいはやてちゃん、ツメシボとアリアリね」

「ありがとうございますー、桃子さん」





ムダヅモ無き管理局改革 〜ミッドチルダ電撃作戦〜





「ローン!! ホンイツ2000てーんっ!!」

翠屋の奥から、かわいい声でアガりを宣言する声が聞こえる。
店の奥にひっそり設置された全自動麻雀卓。
それを囲む女性たち。一人はこの店のオーナーの娘、残り三人は常連客。

「くっ、またアリサちゃんにバカホンされた……」

眼鏡を頭に乗せた美由希は、タコスのメキシカンな香り漂う麻雀ルームで悔しそうにつぶやいた。
その香りの発生源であるアリサは東場ですでにノリノリである。

「まぁまぁ美由希さん、あとで捲くったればええんですよ」

「あらはやて、そんな事許さないわよ? この半荘はアリサ・バニングスが頂きます!!」

金髪のショートヘアーを揺らし、点棒を数本指に挟みポーズを決めながらアリサは高々とぶっちぎり宣言をした。
その様を見て、はやてとすずかと美由希が燃えないわけが無い。
17牌2段の麻雀牌が現れると共にすぐに次の局の準備が始まる。

「アリサちゃんばかりに勝たせるのも何だか悔しいな……」

なぜかノエルのメイド服を借りて気合を入れたすずかが、山から牌を取る。
しかし、その九萬は残念ながら望んだものではない。

(あー、これはちょっと……捨てよう)

一瞬で判断したすずかは、そのまま牌を卓へと静かに置いた。
しかし牌を捨てた瞬間に声が上がる。

「すずかちゃん、それロン」

「ええっ……!?」

「チャンタや」

にっこり笑って手元の牌を開き、はやてはご満悦である。
振り込んでしまった悔しさに軽く目に涙を浮かべたすずかとは対照的に、
はやては嬉々として卓のスイッチを押して牌を混ぜる。
その時、現代日本にはおよそ似つかわしくない空間モニターがはやての前に展開した。

107 CRR :2009/08/13(木) 00:19:09 ID:uz.N3BFQ
『はやてちゃん! ごめん、フェイトちゃんに大変なことが起きたの!』

「あれ、なのはじゃない! 管理局の仕事がんばってる?」

『え、あ、うんお姉ちゃん。まぁそれなりに……じゃなくて!!』

モニターの中には、陸士の制服を着たなのはが映っていた。
今日ははやてが休みで、なのはとフェイトはどうしても仕事があって地球に来れなかった。
機動六課がらみで何か事件でもあったのか。はやての顔色が一瞬で仕事モードに変わる。

「なのはちゃん、まず状況説明や。何があったん?」

「あのね、……………という訳なの」

「あー、それマジなん? かなり厄介やな……」



―――――時空管理局地上本部、レジアス・ゲイズ中将がいるその部屋に、
ミッドに急いで帰ってきた制服姿のはやてが乗り込んだ。
ドアが自動で開くと、部屋の奥にはレジアスとその副官オーリス、それに別の女性局員が一人。
対峙するのは高町なのは一人だけ。

「なのはちゃん」

「はやてちゃん、フェイトちゃんが……っ!!」

はやてが声をかけると、なのははすぐに反応して振り向いた。
よく部屋の奥を見ると、レジアス中将の足元には黒い下着姿でなぜか縛られているフェイトがいた。
その姿は、フェイトの成長しすぎと言っても過言ではない胸や尻をさらに扇情的に……
いやそんなことは今はどうでもいい。

「はやてっ!!」

「フェイトちゃん!? どないしたんその格好!?」

「レジアス中将が『私に勝ったら六課の予算に幾らか回してやる』って言うから、少しでもはやての役に立ちたくて……」

半裸のフェイトはそこまで叫ぶと、悔しげに唇を噛んだ。
どうやらフェイトはレジアスと『政治的取引』をした挙句、スカンピンになったようだった。
しかし政治的取引に麻雀を持ってくるくらいなら、フェイトは相当な腕前の雀士なはず。
幾らなんでもここまでぼろ負けと言うのはおかしいと思われるが……

「でもレジアス中将の麻雀、ジャ○アンもの○太くんもいないんだ! こんなルールわからないよ!! ノーテン罰符って何!?」

「……フェイトちゃん、それ麻雀やなくてドンジャラや」

どうやら根本的にゲームを間違っていたらしい。
半裸のフェイトを足蹴にしかねないレジアスは、表情を変えずにはやてに告げる。

「八神、お前のところの部隊はどういう教育をしているんだ? この執務官、一ミッドも持たずに鉄火場に来よったぞ」

ちなみに一ミッドは現代日本の一円相当の金額である。
レジアスの台詞には、表情には出ていない嘲笑の感情がやや含まれていた。
はやてはそれを感じ取り、拳をぎゅっと握り締める。

「レジアス中将、フェイトちゃ……いや、ハラオウン執務官をどないするおつもりですか」

「どうしようと私の勝手だ。すっこんでろ八神」

108 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 00:20:20 ID:MSwxW9Fo
タイゾーwwww

109 CRR :2009/08/13(木) 00:20:30 ID:uz.N3BFQ
その物言いで、はやての導火線に火が点いた。
元々楽しい休暇がお流れになって少々イライラしていたのだ。それにレジアスとは、ある因縁がある。
表情そのままで静かに闘志を燃やすはやては、レジアスの挑発にこのまま乗ってしまうことにした。

「……わかりました。麻雀を打(ぶ)ちましょう。なのはちゃん、入ってくれへん?」

「え、でも私……家族麻雀くらいしか打ったこと」

「ええから!! 部隊長命令やっ!!」

「は、はい!!」

はやての尋常ならざるオーラを感じ取り、なのはは自分でも驚くほど素直にはやてに従っていた。
これが数々の交渉を乗り越え、齢十九で一部隊を築いた少女の『気』なのだ。
東・オーリス。南・なのは。西・はやて。北・レジアス。
部屋の真ん中から全自動卓と椅子が自動的にせり上がり、局が始まった。

「ハラオウンだけでは物足りんな……レートはどうする、八神」

「そうですね、点アインへリアル(1000点につきアインへリアル一機分相当の予算)でどないですか?」

「……よかろう。お前が負ければ六課は当然予算不足で削減対象だがそれでいいのか?」

「かまいませんよ? 負けへんかったらええわけですし」

「その減らず口、いつまで続くかな」

局が始まり、皆卓に意識を落とす。
なのは以外の三人は牌の捨て動作からして洗練されている。
フェルト張りの卓から、ビシビシと牌を捨てる乾いた音がしていた。

「ロン。1000は1300です」

東二局、オーリスは二フーロの後にアガり。
オーリスが手牌を晒すために牌を指で撫でた瞬間、触った牌に光が点ったような幻想をなのはは見た。
魔法が使えないはずのオーリスの見せた芸当に、つい反応してしまう。

(ほ、蛍返しだ……!!)

思わずなのはは息を呑む。通常の勝負の枠を超えた麻雀だけが魅せる光景。
牌を掴むなのはの手に気持ち悪い汗が伝った。
一方のはやては冷静に局を薦めていく。
オーリスやレジアスの打ち方を見ながら、二人のクセの研究を続ける。

「ロンだ。七対子で裏ドラも乗ったな」

次の局は早めに勝負がついた。なのはが捨てた牌を見てレジアスがアガりを宣言。
レジアスに点数が追加され、逆になのはの点数が下がる。
なのはは責任を感じ、半分涙目になって上家のはやての顔を見た。

「はやてちゃん、ごめん……!!」

「大丈夫。なのはちゃんはなーんも心配せんでええ」

そんななのはを見てもはやてはまったく動じない。むしろ余裕さえ感じる。
はやてはいつもの通りのスロースタート。
時にはオーリスに振り込み、時にはなのはを助ける。
そうこうしているうちに調子が上がってきた。

(ほな、行こか! リインフォース!!)

110 CRR :2009/08/13(木) 00:21:59 ID:uz.N3BFQ
はやての気配が一気に変わる。
はやての体からオーラが吹き出し、真っ黒い翼が背中から生えたような幻想をレジアスもオーリスもなのはも見た。
オーリスはその様子にたじろぎながらも、はやての手を封じようと牌を打つ。

(八神二佐の得意手は嶺上開花でのツモアガり。それだけは阻止する!)

レジアスとオーリスによるコンビ打ち。
これに先ほどは局員を加えてフェイトを狙っていたのだ。
オーリスが回し、レジアスが決める。まさにゲイズ親子の阿吽の呼吸がなせる技だ。
今回もそれではやてを撃破するつもりだった……のだが。

「甘いわオーリス三佐。ロン」

「え?」

はやてはオーリスが捨てた牌に即座に反応した。
オーリスが警戒していたリンシャンツモなどはやては端から狙っておらず、
出来た役には東牌が3個、北牌が2個。

「東北新幹線や!」

「そ、そんな役聞いたことがないわ!! 認められませんっ!!」

「しゃあないですね、ローカル役やしなぁ。ほんなら一気通貫と混一色と……」

「くうっ……!」

はやてに振り込んだオーリスが唇を噛む。
しかしこの程度でへこたれる様では百戦錬磨の副官は務まらない。
さっきよりも警戒を強め、徹底的にはやてにアガらせない。

(あー、さすがにちょおキツいなぁ……オーリス三佐、なかなか絞るの上手いやん)

さらに、オーリスは一計を案じる。
指でトントンと数回卓を何気なく叩き、レジアスにサインを送る。

(父さ……中将、あれで行きましょう)

オーリスの手には牌が握られていた。
それは、レジアスの河から予想した『レジアスの欲しい牌』だった。
通称・エレベーターと呼ばれるれっきとしたイカサマ。
気づかれないように表情も変えず目線も一瞬だけ合わせ、それを伝える。

(待て、幾らなんでも)

(方法はどうあれ撃ち落とせばいいんでしょ、八神二佐を!)

(そうか、お前が言うなら……)

レジアスはそっと卓の下に手を伸ばした。
幾多の勝負どころで使ってきたイカサマである。その動作は洗練されており、後ろから見ない限りまず気づかれない。
オーリスから渡された牌を、なのはやはやてに気づかれないように自分の手牌に混ぜた。
その後は何事も無かったように繕い、ゲームを進める。

(今年度の予算の件、忘れたとは言わせんぞ八神!)

イカサマをしてでも勝ちたい理由がレジアスにはあった。
数ヶ月前に行われた今年度の地上本部予算争奪麻雀大会で、はやては見事に優勝。
対するレジアスは、よりによって決勝戦ではやてに狙われて点数と予算をごっそり奪われた。
長年管理局に勤めてきてキャリアも人望も厚かったレジアスにとって、
みっともない負け方をしたと言うことは面目にかかわる。

111 CRR :2009/08/13(木) 00:23:25 ID:uz.N3BFQ
「ロン。大三元だ」

レジアスが自慢げに手牌を倒し、役を見せた。
にやりと歯を見せながらはやてに向かって笑い、はやての動揺を誘おうとする。

「おー、役満やないですか。いいなぁ……」

当のはやては、きれいに揃ったレジアスの手牌を見て素直な感想を漏らす。
そして、動揺する代わりにややうつむきながらぽそりと一言付け加えた。

「でも、今度からは牌はちゃんと山から取ってくださいね♪」

「っ!?」

はやての台詞に、逆にレジアスの精神が揺らぐ。
はやてがどんな表情をしているのかは、前髪の陰に隠れてよく見えない。
しかし、明らかにはやての意識が変わったのだけは感じ取れた。

(失敗は無かったはず……でもそれを見抜きながら、しかもあえて見逃したですって!?)

オーリスも当然その一言が耳に残って離れない。
イカサマに気づいたならば、その瞬間腕をつかんでしまえば当然無条件ではやての勝ちである。
しかしはやては何も言わなかった。獲物を狙う肉食獣のようにその影を潜めている。

(かましてくれるやんか……ほんならこっちもやったろかな、イカサマ。覚悟しいや……!!)

一度流局した後、はやてが牌を引く番がやってきた。
はやてが親指と人差し指と中指を使い、包むように牌を持ってくる。
その時、なのはははやてから違和感を感じた。

(この気配……!?)

オーリスやレジアス達は気が付かない様だが、どう考えても魔力だった。
しかし牌をすり換えるために仮に転移魔法を使ったとしても、一瞬だけではどうしようもない。
魔法陣が派手に出て、幾らなんでも視覚的に即バレてしまうだろう。
だが先ほどのはやてから感じた魔力は一瞬で消えた。
いったいはやて何を考えているのかわからないまま、なのはも牌を捨てた。

(ん、あの捨て方はまさか)

レジアスはふとはやての捨てた牌がある河に目線を落とした。
字牌と老頭牌があからさまに無い。
それらを狙って集めているのが容易に見て取れる。

(国士無双……? 万が一アガられるとさすがにまずいな。オーリス、白を集めてくれ。あるんだろ?)

(わかりました)

はやての手を封じるために、慎重に通しサインが交わされる。
卓の下での一瞬のやり取りの後、オーリスの手元に白牌が四枚揃った。
しかしオーリスはカンをかけずにそのまま四枚を集めて持つ。
この局が終わった時にオーリスの手牌を見て悔しがるはやての顔が、レジアスには容易に想像できた。
緊張感からやや開放されたレジアスは、一筒を場に捨てる。

「ロン」

「なにっ!?」

しかし、はやてはレジアスの捨てた牌にすぐ反応した。
パタパタとはやての手牌が倒れ、はやての役が晒される。

112 CRR :2009/08/13(木) 00:24:19 ID:uz.N3BFQ
「御無礼。ダブル役満でええですか? これ」

一・九萬、一・九筒、一・九索、東・西・南・北・白・發・中。
それにレジアスが放った一筒を加えれば唯一無二の役が出来上がる。
発祥の地である地球の国では『天下に並ぶ者の無い優れた人物』を表す言葉となるその役を見た瞬間、
レジアスの額から冷や汗が噴き出した。

「ばっ……ばかなっ!? 国士無双十三面(ライジング・サン)だと……!?」

にこやかなと言うよりは奥に何かどす黒い感情を秘めたような、冷たい笑み。
手牌を開いた時のはやての表情はいつもとは違っている。
はやては右手を卓に、左手を腰に当ててレジアスに詰め寄った。

「何ですか? まさか白が五枚あるんですか? そんなオカルトありえへんですよねー♪」

イカサマだろうと分かってはいても、現行犯で指摘できなかった時点でどうしようも出来なかった。
はやてのその目線に、レジアスは苛立ちと同時に19歳の少女らしからぬ凄みへの恐怖も感じていた。
その後数局打ったが既にはやてを止める術は無い。
希少な役も飛び出しながら、レジアスをどんどん突き放す。

「御無礼。門前清一色平和でドラは……あー、裏ドラ乗らんかったか」

「御無礼。嶺上開花断幺九対々和三暗刻三槓子ですね」

「御無礼ですー。リーチ一発門前混一色チャンタ二盃口にドラドラっと」

はやてが点数と予算をごっそりとかっさらい、部屋から出て行った後。
レジアスはデスクで絶望に打ちひしがれながら頭を抱え、オーリスはそんな父に詰め寄っていた。

「どうするんですか父さん!? アインへリアル何機分の予算を八神二佐に……!!」

「わからん……ワシにも、わからん……っ!!」

動揺した姿の父を見て、オーリスは唇を噛んだ。
窓の外の夕日を見つめれば、深層心理が自然と口からあふれ出す。

「八神はやて……まるで人の姿をした鬼だわ……」



無事開放され、三人は足早に地上本部を後にした。
執務官の制服を取り戻したフェイトと陸士の制服姿のなのはが、はやてと並んでミッドの街中を歩く。
レジアスをコテンパンにしてすっきりしたのか、はやての顔色はすこぶる良い。
と、なのははふとさっきの対局で疑問に思ったことをはやてに聞いてみた。

「はやてちゃん、さっき魔法使ってた気がしたんだけど……何かしたの?」

「あーあれな。なのはちゃん、ちょおコレ見て。こっそり途中ですり替えといたんよ」

上着のポケットから、はやてがタバコチョコと共にある物を取り出した。
それはさっきまで使っていたはずの麻雀牌。
はやてはその牌を、なのはの手の上に置いた。

「これはさっきの局で使ってた牌……あれっ!? け、削れてる……!?」

なのははその白牌の異常にすぐ気づいた。
中央部分が異様にえぐれている。
まるで何かで削り取ったかのように、新たな面が出来上がっていた。

「『轟盲牌』や。私の力じゃ握り削るのは無理やしな。魔法使わざるをえんかったんや」

113 CRR :2009/08/13(木) 00:25:52 ID:uz.N3BFQ

この牌をツモった時にはやてはちょっとした魔力を手の先にこめていた。
その魔力で魔力刃を生成し、牌の表面を削り取ることによって白牌を作り出す。
魔力の無いレジアスとオーリス相手だったからこそ出来たイカサマであった。

「あ……ありえない、あの局面で……」

フェイトは目を丸くして、はやての大胆なイカサマに驚いていた。
確かにレジアスもオーリスも魔法の素質は無いものの、それなりに部屋にセキュリティを敷いている可能性はある。
何らかの形でイカサマがバレれば、今頃どうなっていたかなどわからない。

「さて、フェイトちゃんも無事帰ってきたし、今から六課メンバーと打(ぶ)たへんか?」

「え、ええっ!? でも私……」

「だーいじょうぶ。フェイトちゃんには私が麻雀とドンジャラの違いをしっかり教えたるさかい」

咥えていたタバコチョコをパキンと歯で割り、はやてはにこっと微笑んだ。



―――――同時刻。

『……ドクターですか? ……ええ、『八神はやて』はなかなかの玄人、いや雀士です』

「そうかそうか。ありがとうドゥーエ」

局員としてレジアスの傍で諜報活動をしているドゥーエからの通信を切ると、スカリエッティはまた卓へと体を向けた。
対面にウーノ、上家にトーレ、下家にクアットロ。
全自動卓によって牌が混ぜられ、17牌2段の山が現れる。

「どうしました? ドクター」

「いや、これから始まる宴に思いを馳せていただけさ……」

クアットロの問いに、スカリエッティはそれだけ答えた。
ビシィッ!! と音を立て、スカリエッティの手から卓へ一筒が捨てられる。
貨幣の形を象ったと言われるその大きな丸が、卓の真ん中で自己主張していた。

114 CRR :2009/08/13(木) 00:27:10 ID:uz.N3BFQ
以上です。
はい、フェイトさんは某タイゾーです。

何だか楽しくなってきたぞ?
ではさようなら!

115 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 00:46:31 ID:3NqQ/GtQ
まさかのムダヅモ無き! 先のトライガンネタといい、ここの懐は随分深いですね……

116 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 00:57:57 ID:9ninstT2
>>99
ひさしぶりのエリキャロGJ!!
チュッチュしてHまではいかなくてもベッドに押し倒してお互いのキスの虜になるのは見てみたいです

117 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 01:07:29 ID:Vn9h82Yk
>>99
あんっっまぁ〜〜〜〜い!!
甘すぎてさらに糖死続出すること間違いなし!
ごっつぁんでしたw

>>114
タイゾーwwwww
して聖王教会法皇の出番はまだですかw?

118 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 06:06:11 ID:Gpg5vbxc
>>114
なんというムダヅモwww
そういやこれもアニメ化されるんでしたっけ。
GOサイン出したやつだれだよと思わず突っ込んでたなwww

119 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 09:06:09 ID:2JZ7lwkM
>>114
白いほうが勝つわ(キリッ

いがいと皆知ってるんだな

120 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 10:53:06 ID:Gpg5vbxc
↑D・U牌(劣化ウラン牌)ならぬレリック牌で天地創世(ビギニング・オブ・ザ・コスモス)をかましたら脱ぐのか…?
と考えた濡れは末期なんだろうな。

121 ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 12:58:47 ID:v8gLoR9A
 マターリ夏休みなので久々に投下。
キャロ陵辱モノ。超鬼畜・救い無し・死にネタなので、そういうのが嫌な人はスルー汁!
生半可な覚悟で読むと気分を害する可能性が高いので気をつけて。

★閲覧にあたって★
・全部で26レス分あるので、前中後編に分割しています。今回は前編
・美しく成長したキャロタソを想像してください(つーか新作のキャロの画像見た人いる?)
・カッコよく成長したエリオ君を想像してください
・最後はキャロがお亡くなりになりますのでご注意ください
・最後はフェイトそんが狂うのでご注意ください

122 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 12:59:52 ID:v8gLoR9A
「はあっはあっ、はあっ、はあ……」

 真っ暗な森の中を、少女――キャロ・ル・ルシエは一人で必死に走っている。
いや、それは走っているというには程遠い速さだった。体力も、魔力も、ほとんど底を尽いていた。
何とか呼吸を整えようとしても、限界に近づいている彼女の身体は、それを許してくれない。
それでも、今の彼女は、少しでも遠くに逃げなくてはならなかった。

「あうっ!」

 足元の蔓に足を引っ掛けて、ベシャッと派手にすっ転ぶキャロ。

「う、う……」

 疲労のあまり、そのまま地面に張り付いてしまいそうになる身体を必死に叱咤し、立ち上がろうとする。
死の恐怖に後ろから追い立てられ、なんとかキャロは立ち上がった。
が、一歩踏み出した途端、脚がガクガクして動けなくなった。いよいよ限界だった。
膝が崩れ、傍に生えていた木に、身体を預けるようにして倒れ込むキャロ。

「ひあっ、はあっはあっ、はっ、はあ……」

 ぼんやりと霞がかった頭で、呆然と彼女は考えた。


――どうして、こんなことに……

123 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:00:40 ID:v8gLoR9A
 いわゆる『ジェイル・スカリエッティ事件』の後、それまで所属していた機動六課の解散に伴って、
キャロは自然保護隊へと移ることになった。
機動六課時代からずっと共に戦い、今では最も信頼できる少年、エリオ・モンディアルも一緒だ。

 自然保護隊とは密猟者の摘発や自然保護業務など行う部隊で、機動六課所属前のキャロはここにいた。
つまり、自然保護隊に復帰したわけだ。それに対して、エリオは自然保護隊の経験がない。
最初は仕事の要領がわからず、随分と戸惑うことも多かった彼だが、そのうち慣れてきた。

 そして――なんやかんやで3年が経って二人は13歳になり、今や自然保護隊のエース的存在である。

 その頃、キャロ達が管轄する森で大問題となっていたのが、密猟である。
今、キャロ達が管轄する森、と一口に言ったが、『森』はとてつもなく広い。
銀の龍の背に乗って上空から見渡す限り、森は森森森森森森森林森森森森森森森……。
管轄するキャロ達でさえ、その全貌を把握することなど不可能なほど、森は広く、深いのである。
そんな広くて深い森には、生態がハッキリと解明されていない、珍しい動植物がたくさん存在する。
ひとたび、真夜中の森に足を踏み入れれば、

「あひ゜ゃぁー」
「アバババハ ゙ババババ!!」

と、奇怪な鳴き声や物音が聞こえる。もっとも、真夜中に一人で森なんかに入ってしまったら人生終了だが。

 最近、森の珍しい動植物が密猟者達によって捕獲され、裏世界で高値で取引されていた。
エリオ・キャロ達は今まで何十という数の密猟者組織を突き止めては壊滅させていたが、
どうも今回問題になっている組織は、今までと比べてかなり大規模な組織らしい。

 さて、地道な追跡調査の結果、自然保護隊は組織のアジトがあると思しき範囲を絞ることに成功した。
この広い森の中に、動植物捕獲のための現場というか、最前線の拠点があるらしい。
そしてこの度、準備万端、いよいよ密猟者組織を壊滅させるために大掛かりな遠征が行われることになった。
自然保護隊のエース格であるエリオとキャロが同行しないはずはない。

124 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:01:28 ID:v8gLoR9A
 アジトがあると思しき場所まではかなり遠く、初日は森の中でキャンプをして一晩過ごすことになった。
そんな中、テントで一人、エリオは異様な感覚に襲われていた。

(この辺りの森……なんだか変な感覚がする……)

 言葉ではハッキリと言い表せないが、何か一つ感覚が抜け落ちるような、そんな感じがした。
機動六課解散から3年、エリオは以前にも増して、着実に実力を上げてきている。
その実力は、かつての保護者であり、時空管理局のエース級魔導師であるフェイト・T・ハラオウンに
勝るとも劣らない領域……とまではいかないが、それに近いレベルまで達していた。
そして、このレベルになると、小手先の技術だけではなく、いわゆる『第六感』的な感覚が、
戦いにおいて非常に大きなウェイトを占めてくることになる。

「…………」

 その第六感が、夕方辺りからどうも無くなってしまったような、変な感じが続いている。

「ね、エリオ君、ちょっといい?」

 釈然としない感じのエリオのテントに、夕飯を終えたキャロが訪ねてきた。

「き、キャロ、どうしたの?」
「ん、ちょっと……」

 少しドキドキしながらも、ランタンの薄暗い明かりに照らされたテントにキャロを迎え入れる。
この3年間でキャロは美しく成長していった。それは間違いなく、『女の子』から『女性』への成長だった。
2ヶ月差とはいえ、歳上であることもあって、少し前までは妹みたいな感覚だった。
だが最近、まだ幼いながらもキャロが見せる女性としての仕草に、エリオは何度もドキッとさせられた。

 さすがに以前のような過剰なスキンシップや、一緒にお風呂に連れて行かれるということはなくなったが、
キャロは昔とあまり変わらない態度でエリオと接していた。
それが、エリオにより一層、『女性としてのキャロ』を意識させることになった。
もっとも、キャロの方はエリオのそんな事情には気付いていないわけだが。

 紛れも無い、キャロへの恋心は、エリオだけの秘密である。

125 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:02:32 ID:v8gLoR9A
「えっと、その……エリオ君は何か変な感じがしない……?」

 テントに入ってきたキャロが開口一番、こう言った。

「え……? キャロも?」

 違和感を感じていたのは自分だけではなかったらしい。
なんだか一つ感覚が抜け落ちるような……、そんな感じだよね……、などという
結論の出ない会話がしばらくの間続いたが、結局違和感の原因はわからずじまいだった。

 自然保護隊のキャンプが密猟者組織の奇襲攻撃を受けたのは、その日の真夜中のことである。

 エース級の二人を擁していたにも関わらず、自然保護隊は壊滅して散り散りに敗走した。
寝込みを襲われるという、全くの不意打ち。真っ暗闇の中での戦闘、混乱、同士討ち。
だが、魔導師の質で圧倒的に勝る自然保護隊が敗れた決定的な理由は、他にあった。

――戦闘用の魔法を、ほとんど使うことができなかったからだ。

 エリオとキャロが感じた違和感は、彼らの勘違いでもなんでもなかった。
自然保護隊が足を踏み入れたエリアは、磁場の激しく乱れた場所であったのである。
AMF、という技術がある。かつて、ジェイル・スカリエッティ事件を機に世界中に流出した技術だ。
平たく言えば、AMFは魔法の力を弱体化・無効化させる技術である。
自然界にもごく稀にだが、磁場などの影響でこのAMFに近い環境が発生することがある。
自然保護隊のキャンプは、そんな魔の場所に足を踏み入れてしまったのである。

 もちろん、密猟者組織の奇襲部隊はそのあたりの事情を織り込み済みで襲ってきたのである。
森こそがメシのタネなのだから、あるいは彼らは自然保護隊以上に森のことを知っているのである。
密猟者、というよりはむしろ戦闘のセミプロ集団でもある彼らは(密猟だって危険な生物相手で命懸けだ)、
魔法に頼らない武器を持ち出して縦横無尽に暴れまわり、エリオ達を敗走せしめた。

126 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:03:33 ID:v8gLoR9A
(エリオ、君……)

 いつも自分のことを守ってくれた少年は、暗闇での激戦の最中、はぐれてしまった。
彼は無事なのだろうか、それとも……。頭によぎった最悪のシチュエーションを、キャロは必死に否定した。

(フリード……)

 使役竜・フリードリヒとは途中まで一緒に逃げてきた。フリードも、無事ではなかった。
辛うじて飛翔はできる状態だが、身体中からボタボタと真っ赤な鮮血を噴き出させていた。
とても、キャロを乗せて一緒に飛んで逃げられる状態ではない。
だからキャロは、最後の望みをこの使役竜に託した。私のことはいいから、一人で飛んで逃げて、と。
自分から離れようとしないフリードを半ば追い払うかのようにして行かせるまで、相当時間がかかった。

 とにかく、自然保護隊の本部に誰かが逃げ戻ってこの状況を伝え、救援を要請する必要がある。
もちろんフリードは人間の言葉など喋れないが、仲間の元へ辿り着きさえすれば――

 がさっ

「――――ッ?!」

 心臓が止まるかと思った。音のした方向を弾かれるように振り返るキャロ。見つかったのか。
歯が、ガチガチと鳴った。怖くて怖くてたまらない。それでも、必死に息を詰めて気配を絶とうとする。
だが、予想に反して、音のした方向からは真夜中の森の静寂が伝わってくるだけだった。
ふうっ……と、キャロが安堵のため息をついて肩の力を抜いた、その瞬間だった。


「 み ー つ け た 」


 耳元で、低く、甘ったるい声がした。

127 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:04:37 ID:v8gLoR9A
「…………!!」

 蛇のような視線――それも、一つや二つではない――に背後から晒され、金縛りにでもあったかのように、
キャロは動くことができない。血の気が引いていくのが、はっきりとわかった。

「鬼ごっこはもう終わりだぜ?」
「おいおい、女じゃねぇか。こりゃあ『らっきー』だな、フヒヒ」

 捕まったら、殺される……。逃げなくては……。頭ではそうわかっているのに、身体が動いてくれない。
この状況から逃れる手を考えなくてはいけないのに、頭が真っ白で何も考えることができない。
冷たい汗が、背中を伝っていく。

「それじゃ、お嬢ちゃん。俺たちと一緒に 来 て も ら え る か な ぁ ? 」

 へたり込んでガタガタ震えているキャロの肩を、猫なで声の男が掴んだ。
途端、恐怖が最高潮に達し――キャロの中で何かが弾けた。


「……いっ……いやああああアアァァアアァ――――ッッッッ!!!!」

128 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:05:34 ID:v8gLoR9A
 かつてない恐怖が、キャロの身体をバネのように勢いよく突き動かした。
逃げようとした。が、この状況でそれが叶うはずもなく、あっさり地面に押し倒される。
パニック状態に陥ったキャロが、手足をバタつかせながら絶叫した。

「いやあああっっっ!!やめてぇっ!放してえっ!!」
「鬱陶しいな。おい、大人しくさせろ」
「はいはいっと、ほれ」

 男達に押さえ付けられて大暴れするキャロの身体に、何かが押し当てられた。

「!!ぁぎゃっ……!!」

 ばぢ、という嫌な音と共に、キャロが普段の可愛らしい声からは想像もつかないような濁った叫び声をあげる。
一瞬ビクッと強張った身体からは力が抜け、白目を剥き、一瞬で気絶するキャロ。
気絶してしまったキャロを抱きかかえてアジトへと戻っていく男達の顔は、これから行われる『宴』への期待で、
そのどれもが醜い欲望丸出しの下卑た笑いを浮かべていた……。

129 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:06:35 ID:v8gLoR9A
      ※                        ※

(……………………)

(……う……?…………ここ、は……)

 鈍痛の残る頭で、キャロはうっすらと目を開ける。灰色の無機質な天井が目に映った。
どこかの部屋の中に仰向けで寝かされているようだ。湿気を帯びた埃っぽい空気が気持ち悪い。

「よぉーやくお目覚めかい? お・嬢・ちゃん♪」
「……ぅぁ……?」

 その声のする方向に首を動かして視線を向けるキャロ。
そこには――自分をいやらしい目でニヤニヤと見下ろす男達の姿があった。
男の一人が唇の両端を吊り上げ、これ以上ないであろう下卑た笑みを顔一杯に浮かべて言う。

「 よ う こ そ 、 我 々 の ア ジ ト へ 」
「……え……! あ、ああああっ?!」

 気絶する前の出来事。意識を取り戻してみれば、見知らぬ部屋に見知らぬ男が大勢というこの状況。
全てを悟ったキャロの表情が、一瞬にして恐怖に染まる。この男達に、捕まった……。
そう、ここは密猟団のアジトの地下室で、時折催される『宴』の開催地でもあった。

「……ッ! ――えっ?!」

 思わず逃げようとして身体を動かそうとしたが、それができないことに、キャロはようやく気が付いた。
パイプベッドの上に仰向けに寝かされた彼女の身体は、四つの手錠で拘束されていた。
両手首と両足首、それぞれに嵌められた手錠が、ベッドの四隅のパイプにしっかりと繋がれている。
つまり、キャロは仰向けX字の状態でベッドの上に拘束されているというわけだ。

130 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:07:44 ID:v8gLoR9A
「……ッッ!! ぐぅっ! なにっ、これぇっ!」

 力ずくで手錠を引き千切ろうと全力で手足をバタつかせた。
が、そんなことで千切れるヤワな手錠があるわけないだろ、常識的に考えて……。
男達は、そんな『獲物』の様子を実に楽しそうな目でじっくりと眺めている。
続いて、キャロは魔法で手錠を破壊しようと試みたが……

(……っ?! な、なんで……?)

 キャロの意図に気づいた男達は、ニヤニヤと笑いながら、からかうような口調で教えてやった。

「魔法は無駄だぜ、お嬢ちゃん」
「その手錠は特注品でな、嵌められた人間の魔法の力を無効化しちまうのよ。クカカカッ」

 そう、ご想像の通り。この手錠には、AMFの技術が使用されていた。
魔法の力を無効化されたキャロなど、ただの無力な少女でしかない。逃げられない……。
そう悟った途端、初めて男達のゾクリとするような視線が身体中に突き刺さっていることに気が付く。

「……っ!…………っ!」

 指一本、動かすことができない。急速に喉がカラカラになり、声も出せない。
全身から嫌な汗がジワジワと噴き出すのがわかった。

「お〜? なんだなんだぁ、ガタガタ震えちゃって。カワイイねぇ」

 その時、ギィィィィ……という重い音を立てて、部屋の扉が開いた。

「おい、連れてきたぜ」

 後ろ手に手錠――無論、AMF仕様の――を嵌められた誰かが、引きずられるようにして部屋に入ってくる。
その人物を見た途端、キャロは我知らず叫んでいた。

131 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:08:51 ID:v8gLoR9A
「――――!! え、エリオ君?!」

 それは間違いなく、キャロがもっとも身を案じていた少年だった。
キャロのその声に反応したのか、エリオがゆっくりと顔を上げる。
死んだかもしれない、と思っていたエリオが、生きていた。少しだけ、希望が見えた気がした。

「ぅ、ぅぁ、あ……キャ、ロ……? ――ッッ!! ぅぐあ……!」
「エリオ君?! エリオ君どうしたの!!」

 だが、ホッとしたのも束の間。エリオの声は、苦痛に満ち満ちていた。
酷い暴行を受けたのだろうか、顔は真っ赤に腫れ上がっている。
バリアジャケットはボロボロになり、剥き出しになった肌には痛々しいアザがいくつもできていた。

「このガキ、何にも答えてくんねーから、ちぃーっとお仕置きしてやったんだわ」
「ぷはっ、これでちぃーっとか」
「おう、ちーっとな。ま、今のやりとりでこのガキ共の名前はわかったな」

 名前を知られたから別にどうなるわけでもないが、自分達の情報が相手に知れ渡ってしまったような気がして、
エリオとキャロはさらに精神的に劣勢に追い込まれた。
エリオの脇に立っていた男が、エリオの前髪を乱暴に掴んで顔を上げさせる。

「さぁて、エリオ君に来てもらったのは他でもない。ぜひ、見てもらいたいものがあってなぁ」
「見てもらいたいもの、だと……?」
「ああ。『男』の君なら、きっと喜んでくれると思うがね。……さて、始めちまってくれ」

 目で合図を受け、ベッド脇に立っていた男が懐から立派なナイフを取り出す。
ニタニタしながら怯えるキャロの頭を押さえ付け、左の頬に浅く刃を突き立てた。
キャロの身体が一気に硬直した。その光景に、自分の身体の痛みも忘れ、エリオは獣のように叫ぶ。

「お嬢ちゃん可愛いねぇ。でもさ、赤ぁ〜いお化粧してあげたら、もっと可愛くなるんじゃないかなぁ?」
「なっ?! キャロに手を出すな!! やめろっ、やめろおおぉぉ――――ッッッ!!」
「ひっ?!ひぃぃっ!!痛っ、痛い!やめてぇ!」
「くそおぉっ! やめろっ、やめグブウッ?!」

 絶叫するエリオに、たちまち数発の鉄拳が見舞われた。
スーッと滑るようにナイフが引かれ、糸のように引かれた傷から、真っ赤な血液が溢れ出す。
目を固く閉じ、恐怖に震えるキャロを見て、男達の嘲笑が室内に渦巻いた。

「あーあ……もう嫁にいけねぇわ、このコ」
「けっこう可愛い顔なのに、キズモノじゃあな〜貰い手がいないだろ」
「でもよ、それだったら……」


「 俺 ら が 嫁 に も ら え ば い い ん じ ゃ ね ? 」

132 ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2009/08/13(木) 13:10:26 ID:v8gLoR9A
前編終わり。残りも書き上がってますけど、まあゆっくりいきませう。

133 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 14:15:01 ID:6khqBFr2
ヒャッハー!ぬるぽ氏の陵辱物待ってたんだぜw キャロの拘束ktkr 
今回は結構ハードそうだけど期待
全裸待機しとく

134 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 14:15:12 ID:WdW1AZ8g
早く続きを頼む!

新作でエリオは若干大人っぽくなったかな。キャロはそんなに変わってない感じ。
身長差が結構開いてた。

135 名無しさん@魔法少女 :2009/08/13(木) 19:56:24 ID:3R5iVPT2
GJ! できれば早く続きをwww

136 ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:31:46 ID:zXDCCr5c
 さて、ぼちぼち次行きますか

★閲覧にあたって★
・全部で26レス分あるので、前中後編に分割しています。今回は中編
・美しく成長したキャロタソを想像してください
・カッコよく成長したエリオ君を想像してください
・最後はキャロがお亡くなりになりますのでご注意ください
・最後はフェイトそんが狂うのでご注意ください

137 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:33:01 ID:zXDCCr5c
「……となると、嫁にする女にすることなんざ、決まってるよなぁ?」
「……え? あっ?!いやあああぁぁあっっ?!」

 ざくっ

 ナイフの男が、薄汚れたキャロのバリアジャケットに刃を入れ――一気に切り裂いた。
強固なバリアジャケットがこんなもので切れるはずはない。
おそらく、魔法を使って刃に何か特殊な加工を施しているのだろう。
男達が数人で、キャロの手を、脚を、頭を、ガッチリと押さえ込んだ。

「いやだっ、ぃゃあっ!!やめてやめてぇ!!やめてェェ――――ッッッ!!」

 バリアジャケットを切り裂かれて素肌を剥き出しにされる度、キャロは泣き叫んだ。
いつの間にか溢れ出した涙が、ボロボロと目尻から落ちていく。
バリアジャケットの残骸がベッドの周りにばらばらと散らばり、比例してキャロの肢体が顔を覗かせる。
男達の期待と股間が、爆発的に膨らんでいく。
ついに、キャロの大事な部分を守る、最後の砦に手が掛けられた。

「そこはっ、そこだけはやめてぇ……お願い……!」
「さぁて、一番最後のここはどうなってるのか、なっ!」
「――――ッッ!」
「……おおお、このコのアソコにはうっすらと毛が生えてるぜ!」
「髪の毛と同じピンク色だわ。ぴ・ん・く・い・ろ。ひゃっはー、萌えるなぁオイ!」

 鉄拳制裁で悶絶しているエリオに聞こえるように、男達はわざと大きな声で言う。
振り乱されたピンクの髪が汗と血で頬にぺったり張り付くと、それはまた男達の欲情を爆発的に煽った。
13歳の、子供から大人へと成長しつつあるキャロの若々しい肢体に、男達の手が一斉に伸びた。

138 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:34:00 ID:zXDCCr5c
「ヒッ!?やだぁっ、やめてぇっ!!助けてぇ!助けてエリオ君!」

 ごつごつした手が、無遠慮にキャロの身体を蹂躙していく。
発育途上でまだ硬い乳房を乱暴に揉みしだかれ、薄桃色の乳首に歯を立てられ、苦痛に喘ぐ。
誰にも穢されていない聖なる茂みを、乱暴に掻き回される。
女の子らしく真っ白でむちむちした太腿は、涎でべとべとに汚された。

「ああああちくしょう、もう我慢できねえ! 今日は俺が一番手だったよな?!」
「クソッこんな可愛いコ、俺がヤりたかったのによぉ」
「おいおい、てめーはこの前トップバッターだったろ?」
「あんときゃひどい『ハズレ』だったじゃねぇか」

 そう言いながら、『一番手』の男は穿いているものを脱ぎ捨てる。

「――――ッ?!い、いやあっ!」

 男性器への認識が『ちんぽ』ではなく、未だに『おちんちん』であるキャロは、目の前の光景に恐怖した。
もうキャロはお子様ではない。男性器が持つもう一つの顔を、知識では知っている。
だが、実際に目にしたことなどない。初めて見る、知らない、ということがキャロの恐怖心をさらに煽った。

「た、助けて……!」

139 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:35:02 ID:zXDCCr5c
 90°以上の角度でそそり立って腹にピッタリとくっつき、先端からは粘液が溢れている。
女の淫液を吸い尽くし、どす黒くなっているそれは、まるでビール瓶が股間にそびえ立っているようだった。
この槍でキャロを串刺しにし、突き殺すまで男は満足しないだろう。

「ぐ、はっ……ちく、しょう……キャ、ロ……!!」

 キャロが助けを求めて泣き叫んでいるのに、エリオは地べたに這い蹲って見ることしかできなかった。
その声でエリオの存在を思い出し、ふと悪魔の業を思いついた男がエリオの下半身に手を掛ける。
バリアジャケットを、強引に引き摺り下ろす。驚きの声が上がった。

「なっ?! 何をするっ、やめろおっ!!」

 抵抗むなしく、数秒後にエリオは下半身を全て曝け出されていた。そこには――

「ハッハッハ、おい見てみろ! このナイト君の槍はなかなか立派なもんだぜ!」
「うっわすげえなあ! いっちょまえにおっ勃ててやがる、クカカカカ!」

 悲しいかな、大好きな少女が目の前で裸に剥かれて悲鳴を上げているという状況にも関わらず、
エリオの下半身は三大欲求の一つである性欲に忠実であろうとしていたのである。

「あのコのハダカ見て興奮してんだろ? なあそうだよなぁ!」
「ち、違う!」
「ひでぇなあ! 仲間の女が素っ裸に剥かれて助けてぇ〜って泣いてんのに、それ見てチンポデカくしてんのか」
「違うッッ!! やめろぉっ……!」

140 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:36:46 ID:zXDCCr5c
 エリオが今までで一番苦痛に満ちた声を上げた。確かに――キャロの裸体を見たくなかったといえば嘘になる。
キャロの泣き叫ぶ声を聞いて興奮しなかったといえば、それも嘘になる。
だがそれは、全てキャロへの裏切りであった。
そして、そんな裏切りを無情にもキャロに知られた瞬間――エリオの心に修復できない決定的なヒビが入った。
信じられない、といったキャロの視線に気付き、エリオは目を逸らして必死に叫んだ。

「……ッ! 違うんだキャロ! 違う……っ!」
「ははっ何も違わねぇよガキィ! てめーはこのコが俺達にヤられるところ見て興奮してんだよ!」
「マジ最低だわコイツ。同じ男の風上にも置けねぇ……なーんてな、な〜んてなぁ。アヒャヒャ」

 必死に首を横に振り、違う、違うと力なく繰り返していたエリオだったが、やがてがっくりとうなだれた。
心が、砕けたのだ。男達に暴行を受けて体力を失い、弱気になっていたこともある。
が、それ以上に、キャロに自分の裏切りを知られたという精神的ダメージの方が大きかった。
エリオとキャロ。お互いを支える心の絆が一つ、崩壊した瞬間だった。

「そんじゃあ全然濡れてないところ悪いけどよぉ、早速挿れさせてくれよなあ!」

 行為をしやすくするために、キャロの足首の手錠を外すや否や、男は獲物にむしゃぶりついた。
身体をこすりつけ、汗ばんでしっとりとした幼い肌の感触をしばし楽しむ。
褐色と白の肌のコントラストが、なんともいえない卑猥さを醸し出していた。

「ひいぃっ?!」

 男がキャロの割れ目に肉棒の先端をあてがった。
必死に身体をよじり、上へ上へと逃げ、なんとか肉棒のロックオンから逃れるキャロ。
その様子を面白がり、男は逃げるキャロの割れ目を執拗に追い回し、タテスジを肉棒で上下になぞる。
その感触にキャロが再び悲鳴を上げ、身体をよじって上に逃げようとする。男はそれをまた追いかける。
キャロの割れ目と男の肉棒の鬼ごっこが、しばらくの間続いた。

141 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:37:46 ID:zXDCCr5c
「いやっ!」
「ほれほれっ、このままじゃ俺のちんぽがグサリ! だぜ。クククッ」
「やあっ!」

 キャロを拘束している手錠が、ジャラジャラと目障りな音を立てる。
なんとか手錠を外そうと必死にもがくキャロの両手首には、痛々しい傷が次々と刻まれ、赤く染まっていく。
しばらくすると、キャロが動かなくなってしまった。抵抗を諦めたのか、それとも純粋に体力が尽きたのか。
はあはあと息を切らせてぐったりしたキャロの様子に、いよいよ男が犯る気になった。

「クヒヒ。さぁて、そろそろ挿れるか」
「さっさとフィニッシュしてくれよ。後がつかえてんだからよぉ」
「あーはいはい、わかってますって」

 キャロの太腿をがっしりと力を込めて握り直し、男は腰を一気に押し進める。
もう逃がすつもりは無い。太すぎる亀頭が、キャロの未知の領域をグイッと押し拡げる。
股間に押し当てられた熱い肉の感触に、キャロは裏返った悲鳴を上げた。

「あ、いやあぁ……っ!」

 反射的に、助けを求める視線を必死に向ける。
だが、視線の先の少年は、虚ろな瞳でこちらを見ているだけだった。

「みっ見ないでエリオ君ッ!! 見ちゃダメえええェェ――――――ッッッ!!」

 もう犯されるのが避けられないと悟ったキャロが最後にした抵抗――それは、自分の大好きな少年に、
自分の犯される姿を見ないでと叫ぶことだった。
キャロの絶叫と共に、男の肉棒がキャロの割れ目を強引にめくり上げ、ピンクの茂みへと埋没していく。
ずぢゅっぐぢゅうっという粘着質な音を立てて、そそり勃った剛直がキャロの胎内にめり込んだ。

 め゛りっ

 その瞬間――キャロは自分の身体が真ん中から引き裂かれる無惨な音を、確かに聞いた。



「あっあ゛あっ?!!いやああっ!ぐぎゃあぁあァアア゛ァア゛ァ――――ッッッッッッ!!!!!!!」

142 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:38:48 ID:zXDCCr5c
 未知の領域を、侵される。まだピッタリと閉じていた割れ目を無理矢理こじ開けられる、激痛。
一気に押し寄せる、圧倒的な圧迫感。キャロにできることは、泣き叫ぶことだけだった。

「いたい!!やめっ?!ぎぃぁあぁぁあぁぁ――――ッッ!!」

 大きく身体を仰け反らせ、一際甲高い悲鳴を上げるキャロ。紅い純潔の証がゆっくりと流れ落ちていく。
キャロの、処女喪失の瞬間……。一糸纏わぬキャロの素肌には、脂汗が滲んでいた。

「ひぎゃっ!!は、うっ、っはあー……っはあー……」
「奥まで全部入ったな。よし、動くぞ」
「ひっ、いやぁ!っあ、がぎゃ、痛いいッ!ひぎゃあぁッ、やべでぇっ!!!抜いて゛っ、がああぁ……!!!」
「っおっうおぉぉっ、すげっ、さすが……っ、ガキのまんこはよく締まるっ……!」

 ぱん、ぱん! ぬぢゅっ、ぐじゅっ! キャロの狭い処女の膣道を抉る、無惨なピストン運動が始まった。
そこには愛情など欠片も無く――あるのはただ、男側が欲望を満たすためだけの一方的なセックス。
結合部がたちまち赤く染まっていく。胎内に肉槍を串刺しされる度に、キャロの膣は血の涙を吐き出した。
その血が新たな潤滑油となり、男の蹂躙をさらに誘発する。
あまりの激痛に、獣じみた、といったら獣の方が気を悪くしそうな濁った叫びを上げるキャロ。

「はぐぅあぁあっ、いぎゃっ!!いやっ、あがあぁああ!!」
「ははっすげえな! ぶってえチンポがよぉ、キャロちゃんの中をぐちゃぐちゃに掻き回してんだぜ!」
「むっちり太腿がプルプル震えてんのがそそるなぁ!」
「身体中汗だくになってよお、女の匂いがぷんぷんするわ!」

 もはや抵抗する気など完全に失せているエリオにも、容赦なく卑猥な言葉が浴びせられた。
エリオを嬲るため、男達はわざと大袈裟にレイプの実況中継を行う。
結合部から飛び散った血がベッドに赤い花を咲かせ、レイプショーと実況中継に彩りを添えた。
明瞭だったキャロの悲鳴が、次第に力なく途切れたものになっていく。

「………――……ぁっ!……が……ッ――ぁ……!!」
「やべっ……そろそろっ、出るッ!」

 切羽詰った男の声が、限界の近いことを如実に知らせていた。
肉棒が、キャロの一番奥深いところにグイッと突き込まれる。
その瞬間、多少慣れていた痛みが激痛として再認識され、キャロは白目を剥きながら声にならない叫びを上げた。

「――――……!!」
「うぐぉっ……!!」

 胎内の肉棒が大きく膨れ上がり――頂点を迎えた男は射精を開始する。
灼熱の白いマグマがキャロの胎内で一気に弾ける感触に、男は征服欲が心から満たされるのを感じた。

143 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:39:48 ID:zXDCCr5c
 ずぼっ

 キャロの胎内から、男の肉棒が引き抜かれる。破瓜の血と混ざり合ったピンク色の精液が、ごぽりと溢れ出る。
その光景に、周りで見ていた男達から歓声が上がった。この『女を汚した』という決定的瞬間がたまらない。
だが皮肉なことに、当事者であるキャロが、自分の胎内に注がれたものが何なのかをわかっていない。

「ハアッハアッ、ハァ、……ぅ、あぁ……なに、これ……あ、つい……」

 13歳だけに最低限の性知識は持っていたが、それと目の前の現実を結び付けられなかった。
知ってはいるが、わかってはいない状態、とでも言えばいいのだろうか。
キャロの戸惑ったような呟きに、男達は一様に、はあ? というような顔をした。

「おいおい、もしかしてわかってないのかぁ? 身体ン中に何を注ぎ込まれたのか」
「…………」
「ったく、親は何を教えてたんだか……。まあいい、教えてやるよ。それはなぁ……」
「…………」

 こりゃあいい、と男は密かに悦んで舌なめずりをした。
自分の胎内に注ぎ込まれたものの正体を知ったとき、この娘は一体どんな反応をしてくれるのだろうか。

「――精液だよ。わかんねぇかな、これで」
「せい……えき……? ……ッ!! それって、まさか……」

 見ていてはっきりわかるほど、キャロの困惑の表情が、みるみるうちに恐怖のそれへと変貌していく。
どうやら、自分の持っている性知識の中で思い当たるものがあったらしい。
そう認識したとき、男達は笑いがこみ上げてくるのを抑えられなくなった。

「もっとストレートに言ってやろうか? 赤ちゃんのもとだよ。子種だ」
「こ、子種って、そん、な……いっ……いやあああぁああぁあぁあああああああぁぁ――――――ッッッ?!!」

 見ている方が哀れになるぐらいの引きつった顔で、キャロは絶叫した。
胎内に溜まっているのが男の子種だと認識した途端、どうしようもない気持ち悪さと強烈な吐き気に襲われた。

(ぃゃ……気持ち、悪い……誰か、助け……)

 恐怖と絶望の余り、キャロの意識が急速に遠のいていく。
ブラックアウトする寸前、キャロの脳裏に浮かんだのは、目の前の赤髪の少年の笑顔と、そして――

『えっと、キャロ、その、そのっ……元気でねっ、元気で……っ!』

 もう随分前、別れの時、「あの人」は気丈に笑おうとしてたけど、結局泣いていたっけ……。
そんな懐かしい光景を思い出しつつ、ついにキャロはその意識を手放した――

144 ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 00:44:25 ID:zXDCCr5c
 中編オワタ。少しでも楽しんでくれる人がいたら嬉しい。

前編 >>122-131
中編 >>137-143

145 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 01:05:32 ID:wcQ9GAPs
>>144
GGGGJ!モブの鬼畜振りが良い
まさかキャロより先にエリオが折れてしまうとは
失神間際のキャロの回想が・・・(´・ω・`)

146 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 01:31:46 ID:MyR4DuXk
後編はいつになるのかね? この臨戦モードのストラーダどうしてくれよう

147 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 02:01:30 ID:2KSzIJc6
フェイトそんが狂ってしまうのか。一体どんな結末なんだ…ゴクリ

148 ぬるぽ ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:33:08 ID:L2tJ1.bo
 あと3時間でパソコンが使えなくなる……
夏休み特別企画ということで、3連発を許してくれ!

★閲覧にあたって★
・全部で26レス分あるので、前中後編に分割しています。今回は後編
・最後はキャロがお亡くなりになりますのでご注意ください
・最後はフェイトそんが狂うのでご注意ください

149 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:34:42 ID:L2tJ1.bo
 2日目。朝から容赦なく、キャロは男達に輪姦されている。

「――っ、げぅ、んぐぅ……!――ッ!」

 キャロの小さな身体は前後から屈強な男二人にサンドイッチ状態にされ。
とうの昔に処女を失った前の孔だけではなく、後ろの孔――尻穴までもが男達の毒牙にかかっていた。
二穴同時挿入……。薄い肉壁を隔てて、2本の肉棒が圧倒的な圧迫感を伴い、キャロの体内でぶつかり合う。

「んん゛っ、む、っ、ぅげぅっ……!」

 もう、キャロは自由に叫ぶことすらままならない。突如、強烈な吐き気を催した。
激しく勃起した肉棒がキャロの口一杯に押し込まれ、彼女の呼吸を著しく困難なものにしている。
空いている両手には強引に男のモノを握らされ、手コキを強要されていた。
キャロは、実に5本のちんぽを同時に相手させられていた――……。

「うぅ出るッ!」
「おっ俺もだ、うおっおっおっ……」
「ふぐうっ?!んっぐんんんんぅ――――っッ!!」

 キャロの前の孔と後ろの孔を犯していた2本が、同時に達した。
その先端から粘液が吐き出され、胎内に、腸内に、強制的に注ぎ込まれていく。
沸騰していると錯覚するような熱い白濁の感触に、キャロは目尻から涙を溢れさせて呻いた。

「んっんんんぅっ……!!」
「ははっ、涙が出るほど嬉しいか! そんなに喜んでもらえると、俺達も嬉しいぜっ!」

 続いて、手コキの二人も絶頂を迎える。肉棒をビクボクと震わせながら、キャロの身体中に粘液をぶっかけた。
髪に、肩に、背中に、尻に……容赦なく精液を浴びせかけられ、シャンプーボトルをひっかぶったような有様。
ピンク色のきめ細かかった髪の毛は、まるで糊でも塗りたくられたかのようにベトベトになっている。

「良かったなあいっぱいかけてもらって! おぅ、こっちもフィニッシュだ! 全部飲めよ雌犬!」

 最後のトドメといわんばかりに、膨れ上がったモノが無遠慮に喉まで押し込まれる。
その先端から、生温かい粘液が発射された。

「っぐぅ……ッげ、げぶうぅっ……!!」

 限界だった。もう、飲めなかった。ゼリー状の生臭いネバネバが喉に引っかかり、行き場を失う。
呼吸困難に陥ったキャロは、げぅっげぅと喉を鳴らしながら、たまらず男の精を吐き戻した。
唇の端の僅かな隙間から、精液が零れて床に落ちていく。

「ハアハアッハアッ、ハアッ……きゃっ?!」

 ようやく口を解放されたキャロが必死に酸素を求めるのも束の間、
自分の精液のほとんどを吐き出された男が、目の前で鬼の形相になっていた。
乱暴に頭を掴んで、零れた精液の池へキャロの顔面を押し付ける。

「てめぇなに吐き出してんだ!! 舐めろやゴルァ!!」
「ぎゃぶっ?!へぶっ!あぶぅっ!やめっ……!なめっ、ッ、ます、からあっ……!!」

 まるで犬のように舌をペロペロと出し、必死になってキャロは床に溜まった精液を舐め取る。
その姿は、犬のように、ではなく、まさしく雌犬。男達の欲望を処理するだけの精液便所だった。
昼夜休み無く、キャロは一日中何組もの男達にマワされる。
永遠とも思える地獄の中で、彼女の限界は確実に近づいていた……。

150 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:35:32 ID:L2tJ1.bo
 3日目、4日目……。ピンク髪の少女のレイプショーは際限なく続いている。
睡眠も食事もとらせてもらえず、与えられるのは男達の精液だけ。キャロは著しく衰弱していた。
そして、これはそこにいる全員が知り得ないことではあったが――なんとも残酷なことに、
キャロの胎内では既に新しい命が誕生してしまっていた。

「オラアッ」

 どぴゅっ どびゅっどびゅびゅるぅ……
今もまた、キャロの一番奥深い部分で、男の欲望が勢いよく弾けた。
膣内に収まり切らなかった精液が、白い飛沫を上げて結合部から溢れ出す。

「…………!」

 僅かに身体を震わせるだけのキャロは、もう呻き声一つ上げなかった。
溜まりに溜まった性欲を吐き出し尽くした男達は、ようやくキャロを解放する。
誰かが酒を持ち込み、車座を組んでいつしか酒宴が始まった。

「プハアッ、クウゥゥゥ――ッッ……ヤッた後の一杯はたまんねぇなあ!」
「あー疲れた。さすがにそろそろキツイな」
「俺もう、しばらくは一滴も出ねぇわ。クカカカッ」

 素っ裸の男達が、精液まみれの少女を肴に、笑いながら酒を飲み交わしている。
なんとも異様で、滑稽な光景であった。入り口から、仲間の一人がひょっこりと顔を出した。

「おうお前ら、楽しんでるなあ」
「遅かったじゃねぇか」
「こっちは仕事だぜ? お前らばっか先に楽しみやがって……。それじゃ、俺も早速ヤらせてもらうかな」
「もう下はガバガバだわ。口でしてもらった方がよさそうだぜ?」
「そうなの? ならそうするわ」

 男はズボンをいそいそと脱ぎ捨て、期待で既にそそり立っている肉棒を露わにする。
キャロの髪の毛を乱暴に掴み、フェラチオをさせようとした瞬間――男はギョッとしたように呟いた。

「お、おい……! こいつ、息してねぇぞ」
「はあ? なんだって?」
「いやいやいや……あー……マジで死んどるわ……」

151 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:36:47 ID:L2tJ1.bo
 酒を飲んでいた男達が俄かにザワザワし始め、立ち上がってキャロの身体に群がる。
しばらくの間、頬をペチペチしたりして反応しないか確かめていたが、キャロの身体が動くことはない。
……4日間の徹底的な陵辱で、肉体的にも精神的にも、キャロは力尽きてしまっていた。

「あーあ、勿体ねぇなあ。もうちょっと楽しみたかったんだけどなあ……」
「さすがに死体じゃヤる気になんねぇわ。ハハッ。おい、誰か外に捨ててこいや」
「ちょい待ち」

 一人の男がニヤリと笑うと、部屋の隅で拘束されて転がされているエリオに近づいていく。
4日間、目の前でキャロが、自分の大好きな少女が犯されるところを、まざまざと見せつけられた。
自身も、苛烈な陵辱を受けた。散々嬲られ、男としての、人間としての尊厳をズタズタにされた。
希望。そんなものはとうの昔に潰えていた。

「起きろや」
「……ぐっ、ぁ……?」

 腹に蹴りを入れられ、エリオは呻きながら意識を取り戻す。

「おいおい、今さらコイツをどうしようってんだ?」
「俺達だけ楽しんだってのもこのガキに悪いからよぉ、最後に一回ぐらい犯らせてやろうじゃねぇか」
「うっわ〜お前マジ鬼畜だわぁ〜、ははははっ!」
「まっ、好きな女の子と一回もヤれないまま死ぬってのも悲しい話だろ」

 そういうことか、と理解した男達は、エリオを抱えてキャロの元へ運ぶ。
身体の節々から発せられる痛みに、苦悶の声を上げて顔を歪めるエリオ。
そんな彼に、男達は最も残酷な形の最後通告を突きつけた。

「最後にお前に一回だけヤらせてやるわ」
「…さい……ご、に……? キャ、ロは……?」
「死んだ」
「…………え?」
「……聞こえなかったのか? 死・ん・だ」

152 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:37:33 ID:L2tJ1.bo
 この男は、一体何を言っているのだろう。キャロなら、目の前で、ちゃんと――……

「キャロ……? う、そだ、キャロおッ! キャロおおぉぉ――――ッッッ!!」

 キャロ“だった”モノが、光を失った半開きの瞳で、虚空を見つめていた。
吼えるように何度も絶叫するエリオ。だが、彼の呼びかけにキャロが応えることは、二度と、ない。

「いい加減やかましいわ。ほら、ちゃんと勃てろ」

 一人が、エリオのモノを乱暴にしごきだす。驚いて抵抗するエリオをものともせず。
それが男の悲しい性なのか、刺激を受けたエリオの肉棒がたちまち膨らんでいく。
少し勃ったエリオのモノを、無残に拡張してしまったキャロの膣内に強引に押し込んだ。

 めち゛ゅう……

「ふっ、ぐあっ?! やめろっ、くああぁぁ、やめ、ろおぉっ……!」
「はははっ、それそれイケイケ! ぎゃははははははは!!」
「童貞卒業おめでとう、エ・リ・オ・君♪」

 男達は、エリオの身体をキャロに押し付け、激しく揺さぶる。
まだ温もりが残るキャロの膣は、絡みつくようにエリオの怒張を責め立てた。
次第に、エリオの声が切羽詰まったものへと変わっていく。

「やめ、ろ、ッ、はっ、ぐっ、アアッ!!……ぁッ……――ッッ…!」

 エリオが今までとは違う呻き声を上げ、ブルッと身体を震わせる。
男達はそれを見逃さず、おっほぉーう!という歓声を上げながらキャロの中からエリオを引き抜く。
エリオの肉棒はビクビク震えながら、先端から白濁の欲望を吐き出している真っ最中だった。

「ハハッ、こいつもう出しやがった! 1分持たなかったじゃねぇか、早漏野郎」
「好きな女の死体でヌく気分はどうだ? あぁん?」
「も……やめ……!ぐぁっ……!!」

153 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:38:29 ID:L2tJ1.bo
 エリオの蚊の泣くような懇願は、男達の歓声にかき消される。
エリオの絶望の表情を見て、男達は改めて盛大に笑う。悪魔のような、いや、悪魔の笑いだった。
――慌てふためく男が息を切らして地下室に飛び込んできたのは、その真っ最中だった。

「やっやべぇっ! 馬鹿お前らっ、何やってんだ!」
「はあ? なんだよ、どうした?」
「かっ管理局っ! 時空管理局の奴らがきやがっぎゃああぁぁああああっっっ?!!」

 部屋に飛び込んできた男が、突然の血しぶきと絶叫を上げながら床に崩れ落ちる。

「管理局?!」
「おい! なんなんだよ!」

 事情がよく飲み込めない状況で、目の前の仲間が血しぶきをあげて倒れたのだ。
それは、強制交尾に興じていた男達を我に帰らせ、恐怖と混乱に陥れるには充分だった。
抱きかかえていたエリオを放り出し、慌てて身構える。
そこに現れたのは――大鎌のようなデバイスを掲げる、黒いバリアジャケットを身に纏った金髪の女性。
……そう、エリオとキャロのかつての保護者で、時空管理局が誇るエース魔導師、
フェイト・テスタロッサ・ハラオウンその人だった。

「エリオ! キャ――」

 そこまで叫んだフェイトは、部屋に充満する牡の匂いに、うっと顔を歪ませた。

「ロ……?」

154 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:39:16 ID:L2tJ1.bo
 視線の先には、力なく無造作に転がされているエリオ。そして……全身白い粘液まみれのキャロ。
全員が混乱して喚いている中で、二人だけが死んだようにピクリとも反応しない。
そして――大人の女性であるフェイトには、この部屋で何がされていたのか、はっきりとわかった。

「…………っ!!」

 フェイトの背筋を、悪寒が貫いた。ブルッと身体を震わせたかと思うと、彼女を取り巻く空気が、変わった。
今まで感じたことのないどす黒いものが、たちまちのうちにフェイトの中に充満していく。
フェイトの中で、何かが音を立てて――

  こ  わ  れ  た 

「くそっ……このやろっ!」

 フェイトに背中を斬られて悶絶していた男がノロノロと立ち上がり、背後から彼女に襲い掛かる。
……だが、次の瞬間――男は世界が回転するのを見た。
跳ね飛ばされた『それ』は、悪趣味な偶然によって、切断面を床にして綺麗に着地した。

「……へ……?」

 噴水のように血を噴出させ、あさっての方向にヨロヨロと倒れ込むのは、自分の身体だった。
パクパクと口を開いていたが、その唇はたちまち真っ白になり、やがて目を閉じて男の生首は絶命した。

「――…………」

 しばしの沈黙――。首が、飛んでた。崩れ落ちるダンサーのように、仲間の身体が紅を纏って倒れ込んだ。
フェイトに襲い掛かった仲間が、首を斬り飛ばされて殺されたのだとようやく理解した男達は、
揃いも揃って一様に絶叫した。

「……う、ぅわ…ぁ…!!!うわぁあぁぁあああぁあああああああああぁああああぁああああああ!!!」

 もとより、部屋の中にいた男達は全員素っ裸だ。当然、武器など持っているはずもなく――……

155 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:40:11 ID:L2tJ1.bo
 
      ※                        ※

 その日、高町なのはは親友であるフェイトが拘置されている一室へと足を向けた。
なのはを案内しているのは、彼女の機動六課時代の教え子で、現在は執務官になったティアナ・ランスター。
救出隊に同行していたティアナから、なのはは事の顛末を全て聞かされた。彼女は、耳を疑った。

 あの後――フェイトはその場にいた男達を全て――一切の躊躇無く――殺した。
ティアナ達がアジトの上部を制圧して部屋に踏み込んだときには、全てが終わっていた。
血の匂いと男のむせ返る匂いが溢れた地下室で、フェイトは立ち尽くしていた。
今まで一度も血に染まったことの無いバルディッシュが真っ赤になって、彼女の手に携えられていて……。

 いくら犯罪者といえども、法にかけずに皆殺しなどということはあってはならない。
それが法治社会というものだ。当然――フェイトには処分が下されることになった。

 ティアナに案内されて訪れた部屋は無機質で薄暗く、フェイトはその部屋の片隅にうずくまっていた。
ここまで案内してくれたティアナに、ありがとう、と声を掛けて下がらせる。
部屋には、なのはとフェイトの二人だけになった。

「フェイトちゃん……」

 『あんなこと』をしてしまったフェイトの気持ちは充分理解できる。
だが同時に、フェイトが『あんなこと』をしたとは信じられなかった。
……会ってどうにかなるわけでもないが、それでもなのははフェイトに会わずにはいられなかったのだ。
が、結局、なのはは目の前のフェイトに掛ける言葉が見つけられないままだった。

「フェイトちゃ――」
「あのね、なのは」

 顔を伏せていたフェイトから、唐突に低い声が発せられ、なのははビクッとした。
ゴクリ、と息を呑んだ一瞬の後、なのはは努めて冷静に聞き返す。

「なに?」
「今回の事でね、私、よくわかったんだ」
「……何が?」
「この世の中にはね、死んで当然の人間がたくさんいるんだって」

156 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:41:00 ID:L2tJ1.bo
 フェイトの口から何の躊躇もなしにサラリと発せられたその言葉に、なのはの身体が凍った。
フェイトがゆっくりと顔を上げる。そこにあった彼女の表情は――

「……っ!!」

 そこには聡明な執務官の澄んだ表情などなく――明らかな狂気の光が真紅の瞳を濁らせていた。
その瞳に恐怖を覚えたが、なのはは退きたい気持ちをグッと堪え、奥歯を噛み締める。
怯んで押し黙ってしまったなのはに、抑揚のない口調でフェイトがベラベラと喋り始めた。

「あのねぇ、なのは。あいつらね、酷いんだよぉ。フフッ、キャロを殺してね、キャロを殺して。
 エリオが、フギッ、! キャロの死体で、ハアッ、犯させて、それをッ見て笑ってたんだって!!
 そんな奴、死んで当然だよね?! 当然だよね? あいつらは死ねばいいんだよね?!!」
「フェイトちゃん!!」

 怒っているのか、笑っているのか、泣いているのか――フェイトの目は、完全にイッてしまっている。
そんな彼女の表情に耐え切れなくなったなのはが、フェイトの両肩を掴んで激しく揺さぶった。

「フェイトちゃん! フェイトちゃんっ、落ち着いて!」
「命乞いッ、してきたのお! キャロを、ッ、殺したくせに自分はッ、死にたくないんだってぇ! あははは!!」
「フェイトちゃんもうやめて!!」
「ッうるさいぃぃぃ――――ッ!!」

 うずくまっていたフェイトが何かに弾かれたように立ち上がると、猛烈な勢いでなのはの首を鷲掴みにした。
勢いそのまま、フェイトはなのはを壁に叩きつける。ものすごい音と共に、なのはの悲鳴が上がった。
濁った真紅の瞳から溢れ出る涙を撒き散らしながら、フェイトはなのはの首に爪を食い込ませる。

「ぐ、……が……! フェ、ィ……!」
「死ね、死ね!死ね死ね死ねえぇっっ……!!」
「……ッ!……!ゃ、め……!」

 フェイトを押し返そうとするなのはの手が、空しく空を切る。

157 あばばばばばば!エリオキャロ徹底陵辱 ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:41:52 ID:L2tJ1.bo
 室内の異変に気が付いたティアナ他室外の数人が飛び込んできて、必死に二人を引き剥がした。
狂った咆哮を上げながら取り押さえられるフェイトの脳裏には、惨劇がフラッシュバックしていたに違いない。
やがてフェイトは糸が切れた人形のようにぷっつりと動かなくなった。

「はあっはあっ、フェイ、ト……ぢゃ……」

 ひゅーひゅーと喉を鳴らしながら酸素を求めるなのはの目は、怯えていた。
あの大人しくて優しかった親友が、目の前で信じられない豹変を見せたのだ。
……いや、もしかしたら、これが争えない血の宿めだったのかもしれない。
先ほどのフェイトの表情に、なのはは記憶から薄れつつある13年前の女性の姿を見た。
死んだ我が子を蘇らせようとして狂気に走った、フェイトの母親・プレシア・テスタロッサを……。

「……クク、ハハハ、あは、あはははっ! アハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」

 ひとしきり狂った笑いをあげた後、フェイトは力無い眼を虚空に惑わせ――おそらく、
彼女にはそこに自分の殺した男達の彷徨う姿が見えていたのだろう――薄ら笑いで呟いた。


「……ざまあみろ」



BAD END

158 Nurupo ◆6W0if5Z1HY :2009/08/14(金) 07:42:41 ID:L2tJ1.bo
自分で書いててフェイトそん怖すぎワロタ。では ノシ

159 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 08:21:58 ID:O.uGYSvk
>>158
素早い完結嬉しかったです&お疲れ様でした&GJ!
フェイト良かった。エリオ描写薄。キャロも時間経過に対して描写薄。って印象。
貴重なピンク髪長期間陵辱エロスをもっとじっくりねっとりお願いしたかったような。
あ、でもそうすると冗長になってラストの方が薄く感じられちゃうかもか。困ったな。
フェイトの問題行動をなんでもプレシアに帰結させるっていうまとめかたはどうなんだろう。
前にあった死んだ/死にゆくエリキャロのクローン作ろうとするオチの話ならともかく。
でも面白かったのでGJでした。容赦のない話には独特の輝きがあっていい。

160 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 09:12:16 ID:2KSzIJc6
ぎゃあああフェイトそんkoeeeeeeeeeeeeee!!!!

161 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 12:20:19 ID:AQn7UiGI
>>158
鬼畜GJ!あああああ、プレシアママンの血が・・・・
なのはもトラウマ-になりそうな悪寒

162 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 19:57:52 ID:aDqTxUa2
GJ!!です。
フェイトがロールシャッハみたいになってしまいそうだw
犯罪者は皆殺しや過剰に凹って刑務所送りだぜ!!www

163 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 22:40:18 ID:DpWCCDgw
GJ
なんていうか非殺傷設定を切ったのにバルディッシュの抵抗がないってことは彼もぶちキレたんだな・・・・
しかし、やりたい放題やっておきながら、命乞いする悪党はフェイトじゃなくても殺したくなるな

164 名無しさん@魔法少女 :2009/08/14(金) 23:27:54 ID:D1wWuJ5s
これは中々のダーク作品・・・乙でございますよ。
フェイトそんでなくてもブチギレるだろなぁ。

165 名無しさん@魔法少女 :2009/08/15(土) 01:16:16 ID:iW6E8i5g
うわ、うわあああああ!orz

GJ!!!

166 名無しさん@魔法少女 :2009/08/15(土) 11:52:38 ID:5y1G8n2w
GJ
 こういうプロじゃない連中は、嬲り殺されて当然!
 本当のプロは、殺しの相手を陵辱などしません。
 さくっと殺して煙のように消えるものです。

167 名無しさん@魔法少女 :2009/08/15(土) 13:06:59 ID:PgwaWCQE
なのはさんあたりならぶちギレても殺さなそう

もっとエグいことをやりそうだ

168 名無しさん@魔法少女 :2009/08/15(土) 18:51:48 ID:DBnsWjFY
死よりも重い罰ですねヒャッホーイ

169 ザ・シガー :2009/08/15(土) 21:19:42 ID:Ha6LtPl.
これはひでぇ陵辱、だがGJ。
以前自分が書いたキャロ陵辱が霞むわww


そして書きあがったので投下。
長編・非エロ・『偽りの恋人』です

170 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:20:16 ID:Ha6LtPl.
偽りの恋人7


 しくじった。シグナムの脳裏はその思考で埋め尽くされた。
 対峙した少女二人の狙いが自分ではなく、最初からヴァイスだったとどうして気付けなかったのか。
 ティアナの援護の、普段からは想像もできない粗雑さ。ソフィアの剣筋から伝わる焦り。
 気付くべき要素は幾つもあった。
 だが自分はまんまと彼女達の策に嵌り、後方援護に回したヴァイスを見事に落とされた。
 言い訳などできない、これは己が非によって招いた醜態だ。
 シグナムは美しい顔を苦々しく歪め、心中にて恥じる。
 ヴァイスの射撃支援を失った以上、もはや孤剣にて奮闘するより他は無い。
 手中の愛剣、炎の魔剣レヴァンティンを強く握り締め、烈火の将は眼前の少女らに鋭い眼差しを向けた。
 炎熱変換資質により通常の術式プロセスを無視して燃焼される猛き炎が、魔剣の刀身を這う。
 それはさながら彼女自身の闘志の如く、轟々と燃え盛り、鮮やかに美しい。
 戦場に吹く風に舞う緋色の髪を相まって、さながら古いおとぎ話に登場する戦場の女神。
 だがそれに見惚れる事もなく、彼女と対峙した少女らは駆けた。
 橙色の光弾、ティアナの誘導弾が。
 薄青色の刃、幾筋も出現したソフィアの氷刃が。
 シグナムの艶めく女体を求めて飛び交った。





 スターライトブレイカー、オリジナルのなのはのものとは違い、ティアナの魔力光であるオレンジ色をした砲撃の残滓が大気を焦がしつつ終息し、消え行く。
 砲撃の余韻に震えるティアナに、喜色を溶かした念話が響いた。


《やりましたね、ティアナさん!》


 シグナムとの剣戟戦によって得たダメージが嘘のように、ソフィアは笑顔を浮かべて視線と念話を相棒に向ける。
 ティアナもまたこれに応えるように、戦意に満ちた不敵な笑みを見せた。


《ええ、大気中の魔力素がまだ少なくて威力はオリジナルの比じゃなかったけど、ちゃんと当てられた。これで戦況は》

《2対1》


 もはや揺ぎ無い圧倒的なまでの数的優位性を得た。
 確かにシグナムは強い、純粋空戦S−という高ランク騎士、ヴォルケンリッターの将である。
 その強さは恐らく最強の、現存する全魔道師の中でも指折りのものだろう。
 まともにやり合えば勝ち目は希薄極まりない。
 だが今、それは瓦解の呈を成す。
 2対1という単純な数の有利を得て、そして何より二人が編み出した“秘策”と相まって。
 この日の為に、この戦いの為だけに技と心を磨き抜いてきた乙女達は、口元に微笑を浮かべた。
 不敵な、それでいてどこか、悪戯が成功した子供みたいな愛らしい笑顔だった。
 さあ行こう。勝つ為に、大好きな人に大好きと言う為に。
 二人の乙女がまったく同じ事を思うのと、攻撃を仕掛けたのはまったく同じタイミングだった。
 ティアナの誘導弾、今度はヴァイスへの索敵を行っていない為に本気で行ったそれが群れを成す。
 ソフィアの氷結刃、彼女の先天技能である氷結変換資質により生み出された氷の刃が幾筋もの軌跡を描く。
 二つの相反する光が織り成す破壊の二重奏、妙なる調は空気を引き裂く鋭い合唱を伴い、眼前の艶めく女体を求めた。
 直線的な氷結刃の軌道、曲線的な誘導弾の軌道、二つの対照的な軌跡は都合23の連撃と成ってシグナムに襲い来る。
 が、それを銀閃と鮮やかな炎が阻む。
 瞬く間に実体を得て顕現した鞘とレヴァンティンの刃が炎熱変換によって生み出された灼熱を纏い、神速の斬撃によって迫る脅威を造作もなく薙ぎ払う。
 結われた緋色の髪を揺らし、爛熟と実った肢体が踊るように刃を繰る様はある種幻想的ですらあった。
 されど見惚れる者もなく、次なる戦手筋は成される。
 風が舞った。
 青い衣を纏い、黄金の髪を揺らした乙女の瑞々しい身体が吹きすさぶ風と舞う。



「アクセル、サードッッ!!」


 言葉と共に行使される加速、ソフィアの得意な肉体の運動速度を爆発的に上昇させる魔法術式。
 アクセルシリーズの三つ目だ。

171 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:20:51 ID:Ha6LtPl.
 急加速したソフィアの肉体は一瞬でトップスピードに乗り、魔力の加護を受けた二つの剣閃を振るう。
 シグナムの真正面に斬り込む二筋の刃は、一つは首を、一つは脇腹を、左右から抜くように薙いだ。
 次なる刹那に踊ったのは、甲高い金属音と眩い火花、刃と刃が織り成す契り。
 猛る炎を纏った炎の魔剣が、超低温の冷気を纏った二つの剣閃を斬り上げた。
 凄まじい温度差の剣戟により生じた小規模な水蒸気爆発の炸裂が大気を震わし、駆け抜ける。
 頬を撫ぜる爆風を物ともせず、烈火の将は振り上げた愛剣の刃を斬り返した。
 正中線を上から下に、鋭く断ち斬る真っ向からの振り下ろし。
 刃に纏った魔力炎をブースターと化し、生じた速度は秒速500メートル、神速の領域である。
 まともな魔導師ならば反応する事すら出来ず、鋭き斬撃に意識を奪われるだろう。
 されどソフィア・ヴィクトリア・ルイーズとは凡百の魔導師など比べ物にならぬ天才だった。
 そして、今彼女が行使している加速魔法、アクセル・サードの力ならばこの程度の窮地など物の数ではない。
 シグナムに斬り掛かった際の前方への慣性を捻じ伏せ、ソフィアの肢体が左側方へ跳ぶ。
 一瞬で最高速度に達したうら若き美少女騎士の女体は、次なる刹那には烈火の将の背後へと移動。
 これがソフィアの加速魔法の三つ目、アクセル・サードの特性である。
 トップスピードは敢えて抑え、急加速と急制動により移動する、変幻自在の高速移動術式だ。
 動体視力や反射速度に優れぬ者ならば、その不規則な移動や生じた残像によってさながら分身したかと思う程の妙技である。
 その高速移動により瞬く間にシグナムの後ろを取ったソフィアは、迷う事無く掌中の愛剣を一閃。
 魔力強化の筋力により足元のアスファルトを踏み砕く程の踏み込み、黄金に輝く髪と青い騎士服を揺らして少女はシグナムの無防備な背に刃を振るう。
 両の剣を平行にして、平行に右へと流す横薙ぎの斬撃だ。
 左方から右方へと振り抜く一撃、シグナムからすれば背後から脇腹へと駆け抜ける刃。
 瞬間、生じたのは超硬質な金属同士が衝突する音。
 空気が火花を伴い爆ぜた後には、ソフィアの双剣とシグナムの持つ鞘の鍔競る様がある。
 先ほどの剣戟で顕現したレヴァンティンの鞘、左手に持つそれで背後からの一撃を烈火の将は防いだのだ。
 振り向く事もなく、おそらくは半分近くを“勘”という非科学的にして信頼性は折り紙つきの感覚で。
 一騎当千の凄まじい強さ。烈火の将、剣の騎士の名は伊達ではない。
 ポニーテールに結われた緋色の髪を振り乱し、シグナムが振り返る。
 切れ長の蒼き双眸が鋭く少女を射抜くように睨めば、右手の魔剣が唸った。
 雄の淫心をくすぐって止まぬ罪な女体を踊らせるように捻り、将が踊る。
 左の鞘でソフィアの双剣を弾き飛ばし、同時に右方向への旋回と共にレヴァンティンの斬撃を見舞う。
 さながら咎人を屠る断罪の断頭刃の如く、炎を孕んだアームドデバイスの刃は少女の首を横一文字に薙いだ。
 引き裂かれるソフィアの美しく白い首筋。
 されど、その像はすぐに掻き消える。
 シグナムに裂かれたのは瞬間的な加速によって生み出された残像だ。
 アクセル・サードの急加速により、既にソフィアの実体は遥か後方、ティアナのいる場所まで退いていた。
 現状での双方の戦力は互角だった。
 数的な優位を持つソフィアとティアナ、その二人を魔力と戦闘経験で圧倒するシグナム。
 戦闘力において拮抗する双方は、緊迫の二文字を以って対峙する。
 が、そこで一方が笑んだ。
 ソフィアとティアナの口元に、不敵な色を孕んだ笑みが浮かぶ。


(ほう……どうやらまだ何か一手隠しているようだな)


 眼前で笑む二人の少女の様に、シグナムは胸中で感嘆を込めて思う。
 スターライトブレイカーによるヴァイスへの狙撃も見事だったが、ここに来て二人はまだ奥の手を隠しているのだ。
 それほどまでに修練を積み、それほどまでに鍛え磨いた。
 果たして彼女らは短い間にどれだけの研鑽を重ねてきたのか。
 その全ては自分に勝つ為、恋の為。
 ヴァイスと偽りの恋人を演じて騙しているという事実がチクリと心を刺す。
 自分は不誠実だな、とシグナムは思う。

172 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:21:33 ID:Ha6LtPl.
 動いたのは蒼き騎士服と金髪を揺らした少女。
 先ほどと同じ術式、アクセル・サードの残像付きの超加速だ。
 前後左右上下に不規則な残像の群れ、飛行魔法も交えた乙女の舞は様々な方向からシグナムへと迫る。
 それだけなら、彼女と何度も戦った事のあるシグナムにとっては珍しい事ではない。
 アクセル・サードの能力を用いて最大10の分身を伴って行う攻撃はソフィアの十八番だ。
 だが、その認識は即座に否定される。


「なッ!?」


 舞い踊る剣姫の姿は、10どころではなかった。
 双剣を振りかざしたソフィア・ヴィクトリア・ルイーズの姿、都合30の残像。
 ありえない、それは彼女の能力の限界値を遥かに超えた技だった。
 種は簡単に割れた。
 後方で魔法陣を多重展開している少女、オレンジ色の髪をツインテールに結ったガンナー、ティアナ・ランスター。
 彼女の得意とする魔法の一つ、幻術に他ならない。
 ソフィアが残像によって作り出した分身と、ティアナが生み出した幻術の映像はさながら舞い踊るようにシグナムへと襲い来る。
 幾重にも輝く刃の煌めきを前に、将は己を律した。


(いや、焦るな……どれだけ幻術で姿を眩まそうとも実体は一つ。魔力や質量は隠しきれん筈だ)


 目を鋭く細め、掌中の愛剣を握りながら感覚を研ぎ澄ます。
 鋭敏に、鋭敏に、五感と魔力による探知力を極限まで上げていく。
 どれだけ巧妙に幻術を駆使しようとも、決してソフィアの五体が霧散する訳ではない。
 接近し、攻撃する段階になれば必ず反応できる。
 シグナムにはその自信があった。
 刃を持ちて舞い踊る幾つもの乙女の姿、そのほとんどはこちらの意識を撹乱する為のフェイントだ。
 視覚だけではない、五感と魔力によるサーチの全ての感覚の全てを以ってシグナムは集中する。
 極限まで高まる緊張。
 そして数瞬の時を経て、時は来る。
 前方から迫る青い騎士服の少女と、手に握られた双剣の銀光。
 だがそれはフェイントだ。
 シグナムの、五感・経験・魔力サーチ、そして勘がそう告げる。

173 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:23:13 ID:Ha6LtPl.
 ならば、陽動に隠れた本命は、


「こちらだッ!!」


 将の発した澄んだ残響が大気に響き渡った時、既に彼女の身体は動いていた。
 緋色の髪を、美しく引き締まった肢体を、銀色の刀身を、刃を包み込む業火を。
 円舞の如く華麗に舞わせ、燃え盛る魔剣の剣閃を振るい抜く。
 狙うは後方、シグナムの背後に接近し、双剣を構えた金髪の少女。
 一切の無駄を省かれた横薙ぎの斬撃は右方へ駆け抜け、今度こそ真一文字にソフィアを絶つべく閃いた。
 勝った。将はそう確信した。
 青い騎士服の少女は背後に回った慣性を完全に殺しきれず、双手の刃を振るうまでに一瞬のタイムラグがある。
 一瞬、それはこの勝負を決めるのに十分過ぎる時間だ。
 魔力により高速化された思考と動きの中、そんな事を考える。
 そしてレヴァンティンの刃は、シグナムの考えた通りにソフィアの身体を薙いだ。
 正確に、迅速に、荒々しく。
 青い騎士服、ロングスカートのドレスのような華麗な衣装の乙女を、炎の刃が引き裂く。
 だが、


(な、に?)


 将の胸中に湧く不可思議な感覚。
 愛剣を通して手に伝わった違和感に、シグナムは胸の底がざわめくのを感じた。
 レヴァンティンの鋭い刀身に生じたのは、防護衝撃を破壊する硬質な感触でもなく、騎士服を裂く衝撃でもない。
 粘り気を持ったような、どこか柔軟なモノを絶つ感触だ。
 視覚もまた異常を捉えた。
 目の前の少女の像が歪んだかと思えば、それは爆ぜるように霧散した。
 散った像の残滓は、オレンジ色の魔力光となって大気に溶ける。
 まるで色を持った淡雪の如く、美しい様。
 そして、風と共に風が去り行く。
 蕩けるような甘い残り香を持った金糸が、美しく輝く金髪が舞う。
 シグナムの横をふわりと風が抜け、頬を撫ぜた。
 同時に、剣を振り抜いて無防備となった女のを脇腹に凄まじい衝撃が生まれる。
 冷たく、鋭く、重く、速い、強烈な一撃。
 脳天に痛みを伝える電気信号が駆け抜けた後、一拍の間を置いて将は咽ぶ。


「がッッ!」


 魔力ダメージを受けた時特有の、痺れるような痛み。
 そして冷たい感触が脇腹に生じた。
 視線をそこに向ければ、引き裂かれた騎士甲冑から自身の白い柔肌が晒されている。
 戦闘時に常時展開しているフィールド系防護障壁と強靭な騎士甲冑は脆くも破壊され、騎士甲冑から覗く肌には淡い傷跡。
 霜の降りた騎士甲冑の断片から、これがソフィアの斬撃だと分かる。
 極低温の魔力を帯びた刃で障壁と防護服を破壊し、その下に隠された相手の肉体にダメージを与えるのが彼女の得意技。
 “フリージング・ブラスト”と呼ばれる剣戟だ。
 そんな思慮の最中にもシグナムの身体は動く。
 足元を踏み砕くほどに力を込め、魔力により生み出した推進力と重力ベクトルの操作で飛翔。
 体勢を立て直すべく一直線に空へと舞う。
 だが、それを遮る物があった。
 金糸を棚引かせた青い影、双剣を構えた氷結の剣姫、ソフィア・ヴィクトリア・ルイーズ。
 両の手に握られたアームドデバイス、アルズ・ファルトの二振りの刃が眩い陽光を受けて輝く。
 咄嗟に、本能的とも呼べる防衛本能がシグナムの手を動かした。
 今度は左手の、鞘を持つ手が突きを繰り出してソフィアの美貌を貫いた。
 魔力強化によって神速を得た至高の刺突だ。
 が、またしても結果は同じ。
 奇妙な感触を伴い像が爆ぜ、霧散し消える。
 そして、咄嗟に鞘を繰り出した左手に衝撃。
 フリージング・ブラスト特有の冷気を伴った痛みと共に、左前腕を覆う装甲が破壊されてしまう。
 その反動で鞘を手放し、将の顔は苦痛に歪む。
 痛みやダメージとは切り離された騎士の本能が身体を動かし、空中で急制動をかけて制止する。
 そしてここに至り、ようやく理解した。
 今相手にしている絶技の正体を。


「なるほど、そういう訳か……幻術とアクセル・サードの合体技……それに幻術で作り出した像には魔力弾のフレア(欺瞞装置)付きとは……」


 と、シグナムは一人呟く。
 それは、ソフィアとティアナの作り出した芸術的な技だった。
 アクセル・サードの高速移動で作り出して残像と、ティアナの作り出した幻術との乱舞。
 だがそれだけではなく、幻術で生まれた像の全てには魔力の反応を撹乱する欺瞞用魔力弾を内蔵している。

174 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:25:03 ID:Ha6LtPl.
 幻術の映像と誘導弾を同時に操るだけでもティアナに掛かる負担は並大抵の事ではない、しかもその全てが高速で移動するソフィアの動きをトレースしているのだ。
 またそれはソフィアも同じであり、ティアナの幻術と足並みを揃えなおかつシグナムの虚を突く形での高速移動を絶えず続けるのは魔力的・肉体的に見てもかなりの負荷があるだろう。
 なんという高度な技能、なんという高度な連携。
 正に絶技の名を冠するべき絶妙なる技。
 これが二人の編み出した必勝の合体技“アクセル・ミラージュ(加速幻影)”である。
 シグナムの漏らした言の葉を聞き取ったのか、彼女に答えるように幾重にも分かれたソフィアの像が口を開いた。


「どうやらお気づきになられたようですね。ですが、私たちの編み出した技、“アクセル・ミラージュ”に死角はありません」


 そう言い放つソフィアの言葉に、シグナムの美貌が歪む。
 不敵な笑みの、どこか妖しげですらある微笑だ。


「面白い。その自信、正面から打ち砕いてくれる。さあ来い!」


 二つの斬撃の痛みも忘れ、将が裂帛の気合を以って吼えた。
 相手が強い程、繰り出す技が凄絶である程、シグナムの中の戦意は燃え盛る。
 心中の気迫と呼応するように、リンカーコアが唸りを上げて空気中の魔力素から魔力を生成。
 さらにその生まれ出でた魔力を炎熱変換により炎へと変える。
 炎を纏った妙なる剣の騎士はさながら戦女神のように美しく、歴戦の英雄のように勇ましい。
 対する少女らもまた然り。
 幾重にも残像と幻術で姿を増やして舞う、双剣の美少女騎士。
 その遥か後方で、幻術と誘導弾の制御による疲労に汗を流す双銃の少女。
 美しく勇ましい少女らは、将の言葉に応えた。
 自分たちの編み出した絶技によって。





 ヴァイスが目を開けたら、そこには輝く雲と青い空があった。
 彼の肉体は先ほど立っていたビルの部屋ではなく、その階下の道路に横たわっていた。
 全身を走る痺れと痛み、視界がぼやけ、四肢が上手く言う事を聞かない。
 だが、それでも意識は途切れていないし、気力を振り絞ればなんとか立ち上がる事が出来た。
 近くに転がっていた愛銃、ストームレイダーの銃床を杖代わりに、ふらつきながらもヴァイスは立つ。


「ああ……いてぇ」


 口から漏れたのは痛みへの訴え。
 倒れる前に見た光、鮮やかな橙色の閃光を思い出す。
 ティアナがなのはから修得した収束魔力砲撃、スターライトブレイカーの一撃。
 防護服はおろか防御障壁すら構築できないヴァイスが受ければ、間違いなく一発で終わる魔法の筈だった。
 だがしかし、彼は今も健在である。


「ティアナのやつ……収束に頼りすぎだっつうの……」


 言いながら、ヴァイスの視線は遥か遠方に立つ少女へと向けられた。
 スターライトブレイカーとは、収束魔力砲撃である。
 使用者自身の魔力だけでなく、周囲の大気中に拡散した魔力をも収束・集積する。
 それによって得られる魔力は凄まじい破壊の力を持ち、エースオブエース高町なのはの有する最大・最高の絶技として存在している。
 されど、今しがたティアナの放ったものは所詮その模倣に過ぎなかった。
 ヴァイスを探し出す為の索敵魔法、そして後に残るシグナムとの戦闘を想定し、少女は敢えて砲撃に回す自分の魔力を抑えた。
 代わりに用いたのは収束砲撃の収束砲撃たる所以、周囲から集積した魔力だ。
 そこに問題があった。
 いくら前線で戦っているソフィアとシグナムの持つ魔力が強大極まりないとは言えど、戦いにより周囲に散らされた魔力はそれほど濃くはない。
 つまり、ティアナの放ったスターライトブレイカーの威力はオリジナルとは比べられぬほどに弱かった。
 それが活路。
 先の砲撃、迫り来る閃光にヴァイスはティアナを狙う為にチャージした狙撃を放った。
 貫通特化のスナイプショットを一発一発の威力を減らして連射、バーストショットで以ってなんとか相殺を狙う。
 僅かに威力を減じた砲撃から逃れるように、ヴァイスはビルの窓から飛び出した。
 それでも極大の砲撃の全てを回避できる訳ではない。

175 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:26:30 ID:Ha6LtPl.
 防護服すら纏えない彼の肉体を、魔力ダメージを伴う強烈な閃光が包み込んだ。
 身を焼く痛みと喪失感が、狙撃しか能のない彼を苛む。
 だが、それでもヴァイス・グランセニックの五体はしっかりと着地を果たす。
 ほとんど反射的に衝撃を受け流し、転がる。
 意識の寸断はなんとか免れたが、それでも着地の衝撃と砲撃の余韻から容易に立ち上がる事は出来ず、しばし彼の肉体は倒れたままとなった。
 そして、今に至る。


「さぁて……やられっぱなし、ってのは後味悪いよなぁ……ストームレイダー」


 よろめきながら、ヴァイスは手の愛銃に問うた。
 愛機、狙撃特化のライフル型デバイスは言葉の代わりにコアを軽く明滅して応答する。
 それは言わずもがな、肯定の意。
 狙撃手としての、遠距離射撃のエースと呼ばれた者としての意地があった。
 どんな時でも、どんな状況でも必ず最前線に弾を撃ち込み、敵を倒す。
 ちっぽけな狙撃手の誇り。
 だが決して譲れず、曲げられない、貫き通すべき男の筋だ。
 ヴァイスは顔を上げ、視線を遥か前方へと向ける。
 そこには一つの演舞があった。
 それは美しく激しい、剣の舞。
 緋色の髪を揺らして、蛇の如くうねる炎の魔剣、連結刃の刀身を薙ぎ払う烈火の将。
 輝く金髪を揺らして、無数の幻影と共に氷結の双剣を振るう美しい少女。
 幻想的な、時を忘れて魅入ってしまいそうな光景だ。
 しかし男は惑わない。
 彼はその場で膝を突く。立つ力を失った訳ではない、反撃の為にだ。
 右の膝を地につけ左の膝は立てる、左の肘をその立てた左膝の上に乗せ、銃を構える。
 右手による膝撃ちの構えだ。
 今にも崩れそうな身体に気力を振り絞り、ヴァイスは狙撃手としての己を洗練させていく。
 銃を固定する為に魔力強化された筋肉が、万力の如き力を発揮。
 僅かな揺れも殺された構えは、静止画さながらの様。
 そして狙撃手がスコープの先に捉えるのは、一人の少女だ。


「行くぜティアナ、こいつが俺の返礼だ」


 呟くと同時、炸裂音と衝撃を伴い金色の薬莢が弾けた。





 大地の上に吐き出された薬莢が舞い落ち、小気味良い金属の音が鳴る。
 だが次なる刹那、その残響は爆音に刻まれた。
 音の主は波打ちうなる、長大な刃の蛇。
 炎の魔剣レヴァンティンの二つ目の形態、シュランゲフォルムの燃え盛る連結刃である。
 しなる炎の刃はさながらのたうつ蛇の如き動きで大気を引き裂き、焦がす。
 高熱の炎を孕み、剣蛇は眼前の少女に襲い掛かる。
 描き軌跡は複雑にして、その動きは神速の域。
 だが、蛇が少女の青い騎士服を裂くことは叶わず、虚しく大気を薙ぐに止まる。
 レヴァンティンの刃が断ったのは、ティアナの幻術で生み出された幻のソフィアだ。


「くッ!」


 自慢の愛剣の一撃が空振りに終わり、シグナムの表情が苦く歪む。
 これで幾度目なのだろうか、もはや数え切れない。
 幻術と残像の織り成す無数のソフィアの影を追い、カートリッジの消費を対価に第二形態であるシュランゲフォルムを彼女は解放した。
 長剣から連結刃へとその姿を変えたレヴァンティンは恐るべき圧倒的な射程と威力を発揮する。
 烈火の将が持つ必勝の戦法。
 だが、それは功を成さない。
 唸りを上げた刃が斬り裂いたのは全て魔力で練り上げられた幻であり、本物のソフィアには1ミリとて触れなかった。
 そして、剣蛇の一撃を空ぶらせたシグナムの身体に二筋の銀閃が駆ける。
 残像と幻術が織り成した華麗な舞踏と共に奔る、アームドデバイスの斬撃だ。
 先ほどの攻撃後の、無防備なシグナムの脇腹目掛けて迫る刃。
 寸前で身を翻すが、完全に回避する事は叶わず。


「ぐあぁッ!!」


 苦痛への叫びと苦悶の表情。
 騎士甲冑の腹部に二つの斬撃により、二つの傷が穿たれたのだ。

176 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:27:59 ID:Ha6LtPl.
 シュランゲフォルムのレヴァンティンは、射程距離と破壊力を爆発的に増す代わりに使い手の動きを著しく制限する。
 攻めに回るならば無双の魔剣だが、受けに回れば実に脆い。
 だからといって、シュランゲフォルムの間合いの内側に踏み込むなど普通ならば不可能だ。
 並みの使い手どころか、熟練のベルカ騎士でも容易には踏み込めない、のたうつ剣蛇の腹の中。
 そこに敢えて飛び込むなど、シグナムと十年来の友にして好敵手であるフェイト・T・ハラオウンとて躊躇するだろう。
 それはほとんど愚行。
 されど、今正にその愚行をうら若き少女騎士は遂行している。
 ティアナの作り出した幻術の囮、そして何より、振り乱される連結刃の軌跡を掻い潜る軽やかな身のこなしと動きを見切る動体視力。
 それらが、本来覆し難い実力差を凌駕しようとしていた。
 先の一撃に飽き足らず、青い騎士服の少女が刃を手に幾重もの幻影を従えて舞い踊る。
 前後左右、加えて上方、都合5方向からの波状攻撃だ。
 どれが残像で、どれが幻術で、それが本物なのか。
 それを考慮する暇など与えず、高速で迫る刃の煌めき。
 シグナムは反射的に反応する。
 存在する全てのソフィアの像目掛けて、燃え盛る連結刃を見舞った。
 しなやかな腕が振るわれ、そこから連なる刃の蛇が踊る。
 剣蛇は淀みない、そして無駄のない動きで大気を焼き刻み、迫るソフィアの像を全て引き裂いた。
 が、シグナムの手に乙女の身体を刃が捉えた感触は伝わってはこなかった。
 代わりに肌が感じたのは、危機を察知した時の粟立つ心地悪さ。


(……しまった!)


 将は心中でそう叫ぶ。
 が、時既に遅し。
 彼女の思考と肉体が反応する事すらできぬ、超高速の領域で閃く斬撃。
 刃に輝きは、吸い込まれるようにシグナムの背中を撫ぜた。
 瞬間、脳天まで突き抜ける痛みと衝撃。
 だが、痛みに叫ぶ声を噛み殺し、連結刃を通常の長剣へと戻しつつ将は跳躍して追撃を逃れる。
 緋色の髪を振り乱し、艶やかに実った肢体を大地の上に転がして、シグナムはなんとか距離を取った。


「はぁ……はぁ……」


 濡れた唇からは、ただ荒い息だけが零れた。
 体力、魔力、そしてカートリッジ、全てを消耗していた。
 まさか、ここまでの苦戦を強いられるとは想像もできなかっただろう。
 相手の少女らを舐めてかかった訳では断じてない。
 しかし、ソフィアとティアナの連携はシグナムの想像を遥かに凌駕していた。
 もはや余力はほとんどなく、将の顔は苦く歪む。

「さて、どうしたものか……」


 と。
 ここにきて後悔するのは、真っ先にティアナを潰しにかからなかった事だ。
 二人がアクセル・ミラージュを解放してから、幻術の元を断とうとティアナを狙ったがそれは徒労に終わった。
 ソフィアの剣戟がそれを許さず、何より距離を取られ過ぎていた。
 全ては少女二人の策略通りか。
 後がないな、と将は思う。
 だが、それは彼女だけではなかった。

《ティアナさん、そろそろ……》

《……はい》


 どこか弱弱しい念話の声を、二人は交わす。
 余力がないのは彼女らも同じだった。
 急加速と急制動を続ける加速魔法と、高性能な幻術魔法の同時行使。
 体力的にも魔力的にも負荷は果てしなく強い。
 二人の合体技、アクセル・ミラージュを続けられる時間はあと僅か。
 決着の時だ。

177 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:29:38 ID:Ha6LtPl.
 もはや言葉や意思を交わす必要もなく、その結論は導き出された。
 ならば迷う必要もなく、動く。
 これで全てを終わらせるべく、今までよりもさらに数を増した幻影が舞った。
 シグナムは己の敗北をすら覚悟した。
 だが決して心は挫けまいと、燃え盛る愛剣を構え、将は視線に力を込めた。
 そして――それらの全てを一発の銃弾が撃ち砕いた。





 射線が生まれ、そして消えるのは一瞬。
 後方に控えたティアナと、ソフィアの身体が重なる瞬間だ。
 針穴よりもか細いようなその一点を、浅葱色の魔力弾が駆け抜ける。
 狙撃というただその性能のみを求め、極められた至高の一発。
 恐るべき狙撃手の慧眼、ストームレイダーの高感度スコープと合わさったそれは無数の幻術の中からパターンを識別する。
 そして、引き金は絞られる。
 大気を引き裂く鮮やかな緑の閃光が、必勝の軌跡を描いた。
 魔弾の射線がまず撃ち抜いたのは、青い騎士服の少女の腕。
 次いで着弾したのはオレンジ色の髪をした少女の額。
 双剣の一つを振り上げた細やかな乙女の左腕を撃ち、そのまま後方に駆け抜けてもう一人の少女の頭部に命中した。
 高速で舞い踊る騎士の少女ごと後方の銃手の少女を射止める。
 貫通効果を極限まで高めた一条の閃光は、一撃にて二人を撃ち抜く。
 神がかったどころか悪魔染みた、超絶の狙撃の一弾だった。
 もはや形成は逆転する。


「ティアナさんッ!?」


 魔力ダメージを被り、自由の利かぬ左手から剣を取り落としながらもソフィアが叫んだ。
 だが無意味だ。
 幻術は掻き消え、後方にいた双銃の使い手は倒れている。
 気を失い、もはや戦意も戦力もなく、ティアナの身体は力なく横たわった。
 撃破された仲間の姿に、ソフィアの顔が苦く歪む。
 先ほどの射撃が誰の者か考えるまでもない。
 ヴァイス・グランセニック。
 まだ倒れていなかったのか、まだ立ち上がるのか、まだ戦うのか、まだ立ちはだかるのか。
 ならば、今度はこの刃を見舞おう。
 少女の脳内で、アクセル・セカンドの術式とヴァイスを倒す戦術の流れが淀みなく構築される。
 が、それより早く閃く刃。


「くうッ!!」


 迫る炎の魔剣を、少女は片手の愛剣で受けた。


「どこを見ている、お前の相手は私だぞ?」


 少し顔を動かせば唇が触れ合いそうな距離で、シグナムが告げた。
 その将に、乙女は答える。


「そろそろお休みになられては? 剣が震えてますよ?」

「そういうお前も、だ。強がりは似合わんな」


 もはや二人の剣に力強さはなかった。
 今までの消耗が、一瞬の鍔競りで露呈する。

178 偽りの恋人 :2009/08/15(土) 21:30:47 ID:Ha6LtPl.
 双方の刃に生じた炎も冷気も、そして剣を握る力も、今は酷く弱弱しい。
 ソフィアもシグナムも、剣を振るえる限界が近いのだ。
 余力などなく、顔に浮かぶのは冷や汗と苦悶。
 されど、シグナムの顔には不敵なる笑みが浮かぶ。


「悪いが、この勝負は私の勝ちだ」

「何を根拠にそう仰るのですか?」

「根拠ならある。あいつは倒れなかった、だからお前はあいつの、ヴァイス・グランセニックの銃弾に倒れる」


 まるでそれが既に決定している事項であるかのように、彼女は言う。
 投げ掛けられた言葉に、ソフィアの眉根が歪んだ。
 少女は否定の言葉を返す。


「それはありえません。これだけ隊長と密着した状態で、まさか私だけを撃ち抜く事は彼に不可能です」


 なにせ、と加えながら言葉を続ける。
 嘲笑染みた残響を以って。


「かつて誤射をしたあの方が、この状況で当てられる訳がありませんわ」


 と。
 ヴァイスの過去の汚点を知る少女は言う。
 しかし、それへの否定は即座に成された。
 どこか口惜しそうに、寂しそうに、されどそれ以上に嬉しそうに。


「それはない。残念だったな、お前との決着はちゃんと私の手でつけたかった。だが最早それはない……」


 絶対の自信を、信頼を込めて、将は語る。
 まるでそれが永遠不滅の事項であるかのように。
 そして将は言葉を続けた、力強く。


「ヴァイスは、どんな時でも、どんなに離れていても必ずその銃弾を届ける――必ずだ」


 言の葉の残響と、閃光は同時だった。
 シグナムの緋色の長髪を僅かにかすめ、針の穴を通すような軌道を縫って、光の魔弾が駆け抜ける。
 精密狙撃のスナイプショットがソフィアの意識を刈り取るのは一瞬の事だった。



続く。

179 ザ・シガー :2009/08/15(土) 21:32:33 ID:Ha6LtPl.
投下終了。
戦闘決着の回でした。

いやぁ、前回『次回で最終回』とか申しましたが、いかんせんバトル描写がやたら長くなったのでとりあえずここで投下しました。
そう遠くないうちに最終回は投下しますです。

180 名無しさん@魔法少女 :2009/08/15(土) 23:32:59 ID:rwBsGuT2
うひょー!
ヴァイスファンの自分としてはカッコ良すぎて悶絶しそうだぜ!

乙です
最終回期待してますよ

181 名無しの蔓 ◆PVEksKylgI :2009/08/16(日) 02:34:38 ID:tcUu.JZk
鳥を変えました。
・エロ、ハード、陵辱あり
・オリ主嫌いはスルー推奨
・ラグナ、ヴァイス好きに先に謝罪
・救いはありません
・いやぁーお金って良いものですね(水野春男調)
・タイトルは殺し屋”名無し”

仕事の一 兄妹狩り(10)

 陸士隊共同墓地13号。13という聖王教会にとって縁起の良い数字が冠せられたこの
墓地は、陸士隊隊員でも殊勲勲章級の功績を挙げた者しか埋葬されないのが慣例だった。
 この墓地にヴァイス・グランセニックが埋葬されたのは、私の偽装工作が成功したこと
を意味している。
 八神はやて暗殺に失敗したヴァイスをベネリM4で始末した俺は、陸士狙撃部隊の隊員
が、常時携帯している実態弾デバイス”コルトVx”を腰のホルスターから引き抜くと、
バレットM82を置いていたあたりに向かって3発撃つと、私は死んだヴァイスの手に握
らせバレットM82を分解しケースに収め、その場を立ち去った。
 教会の屋上でヴァイスの死体を発見した所轄の武装隊の結論は、八神はやて狙撃犯を
追跡していたヴァイスが、狙撃犯との戦いの末に射殺されたであった。
 狙撃犯の素性については、ヴァイスの自宅のパソコンに残されていた資料から、”陸”の
レジアス派残党がはやて暗殺に動いているとの情報を”クラナガンでも3本の指に入ると
言われている情報屋”から得たヴァイスが、時間的制約から単独行動した事が明らかになり、
かっての上司を救うために、リスクを冒さざる得なかった彼の事情が、”海”上層部に評価された結果が、
殊勲勲章級の働きと認められ、この共同墓地に埋葬されることになっただ。
「来たようだな」
 共同墓地が見下ろせる丘の上に駐車たランドクルーザーの助手席に座った私は、双眼鏡で
ヴァイスの埋葬に立ち会っている八神はやてとヴォルケンリッターの3人と1匹、それにティアナ・ランスター、
スバル・ナカジマ、陸士狙撃班の同僚数名とラグナという寂しいものだった。
 参列者が少ないのは、ヴァイスが、”陸士のくせに海に魂を売った下衆野郎”と陸士で嫌われている
からだった。
ヴァイスと親しかった上司の高町なのはやフェイト・テスタロッサは、キャンセルできない仕事が入った
ため参列していなかった。
「始まったよ。マスター」
 双眼鏡を使う必要もない人工眼で、聖王教会の司祭が祭文を読み上げている様子を実況中継する002
の軽口を閉じさせようとした私は、ちらりと奴の顔を見たが、あえてやめさせなかった。
 優先すべきは、これからラグナに行わせること、”今回の仕事の仕上げ”であった。
「ラグナの盗聴器をオンにしろ」
「スイッチオンね」
 その声と共に002の口から土盛りされたヴァイスの墓の前で、ラグナが演じる茶番劇のライブが始まった。
「気ぃ落としたらあかんよ。ラグナちゃん」
「はい・・・・・・ 」
 小声で答えたものの、それっきり沈黙したラグナの暗い姿に耐えきれなくなったのか、はやてが沈黙を破った。

182 名無しの蔓 ◆PVEksKylgI :2009/08/16(日) 02:39:27 ID:tcUu.JZk
仕事の一 兄妹狩り(11)

「これから、どうするん? 」
「親戚の叔父が、働くところを紹介してくれるそうです。お金がないですから」
「な、なんやて!? 遺族年金とか特別弔慰金とかは、でえへんの? 」
「あ、あの・・・・・・」
「残念ですがヴァイス陸曹は、陸士として今回の狙撃犯を追ったのではなく
個人で行動し たというのが地上本部総務課の見解です。ですから特別弔慰金
の対象となりません。更 に付け加えますとラグナさんは、ヴァイスの配偶者では
ないので遺族年金も支給されま せん! 」
 噛みつくように無言のラグナに代わってはやてに答えた狙撃班の男の声は、怒りに震えていた。
「そ、そんなん無いわ。理不尽すぎる・・・・・・ 」
「主、はやて興奮してはいけません。傷に響きます」
「はやてちゃん、落ち着いて」
「はやてよ〜。せっかく繋いだ腕が落ちたらヴァイスが犬死にだぜ」
 鉄槌の赤騎ヴィータの皮肉のこもった言葉で周囲の空気が凍り付いたのが盗聴マイクを、
通じても感じられた。
「わーってるよヴィータ、ヴァイス君のおかげで拾った命とこの腕、大事にせんとね。
 でも、この腕の落とし前はきっちりつけたる」
 冷たく言い放ったはやてを双眼鏡で確認した俺は、夜天の書の主というより、かって
幾多の次元世界を破滅に追い込んだ闇の書の主を思わせる顔を見てニヤリとした。
 これで”陸”と”海”の対立と軋轢が、ますますヒートアップしていくだろう。 
「ラグナちゃん、家が良い働き口探したる。今からうちに来ない? 」
「でも、叔父と話し合わないと、今日の夜、兄のマンションに・・・・・・来るんです」
 そこまで言うとラグナは、筋書き通り、涙を流して嗚咽を始めた。
「そうやね。急な話やものね。ええよ、明日にでも、私が行くから」
「そんな・・・・・・悪いです」
「ラグナちゃんは、気にせんでええの。あなたのことは、八神はやてが責任もって引き受
 けたる。大船に乗ったつもりでええよ」
 いくら機動六課の隊長を務めていたとはいえ、所詮は二十歳そこそこの小娘である。
ラグナの涙と嗚咽に見事に引っかかったはやての言葉を聞きながら、私は含み笑いを
こらえるのに苦労した。
 これで、準備は完了した。
 後は、仕上げを明日のミッドチルダ犯罪報道チャンネルで確認するだけだ。私は、00
2にランドクルーザーを発進させるよう命じた。
 次元航行旅客船”ペイルライダーⅢ”の二等客室B402のシートに腰を下ろした私は、
ルームサービスの来るまでの間、客室備え付けのモニターをオンにするとミッドチルダ犯
罪報道チャンネルにチャネルを合わせた。
「本日のミッドチルダ犯罪報道をお知らせします。本日、8時20分、陸士隊専用アパー
 ト”スプリングフィールドA11”401号室で爆発事故が発生しました。爆発現場か
 ら中年男性の死体が発見されました。なおこの爆発に巻き込まれ、隣室の403号室の
 ハリー・フラップさんとその妻ペニーさん、長男のジムちゃんが死亡しました。ガス爆
 発が原因と思われますが、部屋の所有者であるラグナ・グランセニック嬢の行方がわか
 りません・・・・・・ 」
 そのニュースを聞きながら、ルームサービスが持ってきたモーニングサービスのクロワッサン
を取り上げた私は、数ヶ月後、次元世界の闇ルートに流出するであろうラグナの裏ディスクを
見たはやての顔を想像して、含み笑いをこらえるのに苦労した。

                  了

相変わらず遅筆ですが、ご勘弁ください。
次の仕事は「エリキャロ」。
題名は仕事の二「首はいらない」です

183 B・A :2009/08/16(日) 10:06:25 ID:RACz4itw
投下からだいぶ経っているし、もう良いかな?
投下行きます。


注意事項
・sts再構成
・非エロ
・バトルあり
・オリ展開あり
・基本的に新人視点(例外あり)
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

184 Lyrical StrikerS 第4話① :2009/08/16(日) 10:07:25 ID:RACz4itw
第4話 「ファースト・アラート」



機動六課が正式に稼働を開始して、2週間が過ぎ去った。
その間、スバル達は厳しい訓練に明け暮れていたが、それ以上のことは何も起きていない。
事件らしい事件も起きず、模擬戦と団らんが繰り返される平穏な日々。
最初はぎこちなかったフォワード4人も段々と固さが抜けていき、日常生活の中で各自の個性が出てくるようになった。
同期のキャロが相談を持ちかけてきたのは、そんなある日の早朝のことであった。

「ふぇ? 何て言ったの、今?」

「男の子と仲良くなる方法を教えてください」

「男の子って……………エリオのこと?」

「はい」

表情を固くしたまま、キャロは小さく頷く。
話は数日前まで遡る。
新人同士ということもあり、特に用事がなければ4人は行動を共にすることが多かった。
昼食や終業後の団らんも席を共にすることが多く、自然と互いを知り合う機会は増えていく。
そして、いつものように昼食の席を囲んでいたある日、スバルが不意に思いついたことを口にしたのだ。

『そういえば、エリオとキャロってフェイト隊長の保護児童なんだよね?』

『はい』

『兄妹みたいなものなんだよね……………うぅん、それにしては固いようなぁ』

『そ、そうですか?』

『2人とも、苗字や階級で呼び合っているしなぁ。そんなんじゃ肩が凝るよ。同期なんだし、もっと気楽にいこうよ』

『き、気楽って…………』

『話半分で良いわよ。どうせ、スバルのいつものお節介なんだから』

『兄妹なら尚更仲良くしなやダメだよ。『行くよキャロ!』、『うん、エリオくん!』みたいな感じにさ』

『な、名前………で……………』

『あれ、エリオってば顔が赤い。照れているのぉ?』

『そ、そんなこと…………失礼します!』

『あっ、行っちゃった………ねぇ、キャロはどう?』

『えぇっ!? えっと……………頑張ります』

それからキャロは、事ある毎にエリオのことを名前で呼ぼうとしたらしい。
だが、後一歩というところで萎縮してしまい、今日まで呼べず仕舞いなのだそうだ。
対するエリオは接し方こそ丁寧だが、その態度にはどこか壁があるように思えてならないらしい。
だから、普段から仲の良い自分とティアナに相談を持ちかけたのだそうだ。

「お願いします、お二人のように、仲良くなる方法を教えてください」

「な、仲良くなる方法って……………言われても……………どうしよう、ティア?」

「さあ? 名前を呼ぶなんて、そこまで難しく考えるものじゃないし」

「ティア、訓練校時代のこと、忘れたとは言わせないよ」

訓練校でコンビを組み始めた当初、ティアナは「慣れ合う気はない」と言って自分と距離を取ろうとしていた。
最初の頃はプライベートでも他人行儀な態度を崩さず、互いに名前で呼び合うようになるまで3ヶ月もの時間がかかったものだ。
最も、具体的にどうやって彼女の心を開かせることができたのかはわからない。
気がつけばティアナは自然と自分のことを「スバル」と呼んでいて、そのお返しに自分は彼女のことを「ティア」と呼んでいる。
本当にただそれだけで、特別なことなど何もしていない。積み重ねた時間以外に友情を育むものなどないのだから。

185 Lyrical StrikerS 第4話② :2009/08/16(日) 10:08:04 ID:RACz4itw
「ねえ、協力してあげようよぉ」

「はいはい。まったく、お節介なんだから」

ため息を吐きながら、ティアナは梳かした髪の具合を確かめるように自分の頭を撫でる。

「別にエリオは、キャロのこと嫌っているわけじゃないんでしょ? 寧ろ、仲良くしたいって思っているように見えるけど?」

「それはそうなんですが…………その、同い年の男の子とお話したことって、ほとんどなくて………………」

「恥ずかしいってわけ?」

「どんな風に接したら良いのか、わからないんです」

それは2人を見ていて、スバルが常々思っていることと同じであった。
どうも2人は、同年代の異性と接した経験が少ないようなのだ。
他人行儀で大人びた言動も、年上の大人とばかり接してきたからで、年相応の子どもらしい一面を見せることはほとんどない。
だから、同い年の異性を前にしてどのように振る舞えば良いのかわからず、無意識の内に距離を置いてしまっているのだ。
2人とも遠慮がちな性格であることも、後押ししているはずだ。
ならば、ここは強引にでもこちらからアプローチを仕掛けなければ、現状を打開することはできないかもしれない。

「キャロ、とにかくまずは当たって砕けろだよ。友達作りは怖がったらダメ。
相手にぶつかっていくつもりで話しかけるの。勇気だよ、キャロ」

「ゆ、勇気………」

「そう、難しく考える必要なんてない。『エリオくん、おはよう』って言うだけ。やってみて」

「エ、エリ………エリオくん………」

「そう、その調子。もう1回」

「エリ…オくん」

「そうだよ、その感覚を忘れないで。ほら、次は実践だ。当たって砕けろ!」

「は、はい!」

意を決して、キャロは女子寮のロビーを走り去っていく。
恐らく、フリードと共に外で自分達を待っているエリオのもとに向かったのだろう。

「ねえ、何となく嫌な予感がするのって………あたしの気のせい?」

「ごめん、あたしもそんな気がしてきた」

発破をかけた手前、無責任に放り出すこともできない。
言い様のない不安を抱いた2人は、テーブルの上で磨いていた自分のデバイスを無造作に抱えてキャロの跡を追う。
案の定、寮の玄関を出た先ではこちらが想像していた通りの光景が繰り広げられていた。

「ルシエさん、ルシエさん、しっかり!」

「は、はひぃ………だ、だいじょうぶれす。だいじょ………」

「急に飛び出すから足を滑らせたんだ。医務室に行こう、打ち身の跡が残ったりしたら大変だから」

痛そうにお尻を押さえるキャロに肩を貸しながら、エリオは隊舎の方へと歩いていく。
去っていく2人の後ろ姿を見送りながら、スバルは2人に聞こえないよう小さな声で、傍らに立つ親友に囁いた。

「これは、前途多難だね」

「あんたのせいでしょ、全部」

ちなみにキャロのケガは大したことなかったが、この一件のせいで早朝訓練の時間が10分だけ短くなってしまい、
慌てずに落ち着いた行動を取ることをなのはに窘められたのは言うまでもなかった。







機動六課での訓練は基礎訓練である体力作りや基本スキルの反復が主で、それらと並行する形で模擬戦闘訓練が盛り込まれている。
大抵の場合は任務上の障害となるであろうガジェットを仮想敵としているが、最近では教導官であるなのはが
直々に対戦相手を務める弾丸回避訓練(シュートイベーション)も頻繁に行うようになった。
なのは曰く、演習での仮想敵は戦技教導隊の十八番であり、教導任務で何度も実施してきたらしい。
実際、誘導操作弾の扱いに長けたなのはを相手にするのは4人がかりでも厳しく、最初はすぐに撃墜された始めからやり直しということも多かった。
それでも繰り返す内に傾向と対策は少しずつ確立されていき、なのはの動きにもついていけるようになった。
そして、今朝もいつものように、早朝訓練の締めとして弾丸回避訓練が行われていた。

186 Lyrical StrikerS 第4話③ :2009/08/16(日) 10:09:33 ID:RACz4itw
「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」

《Boost Up. Acceleration》

キャロの厳かな詠唱と共に、両手に装着したブーストデバイス“ケリュケイオン”から放たれた光が、エリオの持つストラーダへと吸い込まれていく。
頭上では、なのはが操る誘導弾を引きつけるために水色のレールを駆け回るスバルの姿があった。
ほんの数日前は10秒と保たなかったなのはの集中砲火を、スバルはティアナの援護を受けて必死に避け続けている。
2人がなのはを引きつけている間に、加速を強化したエリオが回避不能の一撃を叩き込む。
それがティアナの立てた作戦であった。
そのため、キャロはエリオと共に物陰に隠れていたのだが、ふとスバルの動きに違和感を覚えて眉間に皺を寄せる。
こうして離れたところから見ているとわかるのだが、今朝のスバルは跳躍や着地の際に体のバランスを崩しやすく、機動もどこか大回りだ。
ティアナも援護射撃のタイミングがずれており、スバルが何度か窮地に陥る場面が見られた。
ひょっとしたら、2人とも疲労が溜まっていて動きが鈍っているのかもしれない。
ならば、速攻で決めなければどんどん後が辛くなっていく。

「あの、かなり加速がついちゃうから…………気を付けて…………」

「大丈夫、スピードだけが取り柄だから」

頼もしげに笑みを浮かべ、エリオはストラーダの矛先を頭上のなのはへと向ける。
弾丸回避訓練は、制限時間を被弾なしで逃げ切るか、相手にクリーンヒットを入れることで終了となる。
エリオの機動力ならば、なのはに攻撃される前に懐に潜り込むことができる。
問題があるとすれば、堅牢な彼女の防御をエリオの一撃で貫くことができるかどうかという点だ。
恐らく、エリオは残った全ての力をこの一撃に注ぎ込むだろう。
勝負を決するのはやはりスピード。
なのはがバリアを張るよりも早く接近し、槍を叩き込むしかない。

(でも、失敗したら…………なのはさんなら、きっと動けなくなった三士を狙う。いくら速く動けても、
あんな至近距離で攻撃されたら………………そうだ、応援。応援しよう。『頑張って、エリオくん』って。
そうだ、これはチャンスなんだ。スバルさんが言っていたように、当たって砕けるんだ)

武芸者ではない自分には、直接刃を交える時の際どさは大よそ理解の範疇を逸脱している。
だが、どんな状況であろうと声援は力となるはずだ。初めて補助魔法を習得した時や、
卵から孵ったばかりのフリードを育てていた時も、周囲の人からの声援があったから自分は挫けずにいられたのだ。
たった一言で良い。
頑張ってと言えれば、きっと彼の力になれる。
それがきっと、彼と心を通わせる第一歩になれる。

「あ、あの………エリ…………」

『エリオ、今!』

「いくよ、ストラーダ!」

《Speerangriff》

白煙をまき散らしながら、エリオはなのは目がけて突撃していく。
ストラーダの魔力噴射機構を利用した突撃戦法だ。
直線方向に限定されるが、これを使えば空を飛べないエリオでも飛行することができる。
できるのだが、どうしてこんなにも間の悪いタイミングで突貫してしまうのだろうか?

(ティ、ティアさん……………)

あそこでティアナが号令をかけなければ、エリオに一声かけることができた。
ご丁寧にもなのはの気を引くためにフリードが火球まで吐いて、エリオが飛び出す隙を作っていた。
戦術としては決して間違っていない。寧ろ、余計なことを考えていた自分の方が悪いのだが、
やはり釈然としないものがあった。

(止そう、わたしがいけないんだし)

轟音と爆発が轟き、吹っ飛ばされたエリオが廃ビルの窓枠に捕まって落下を逃れる。
黒煙の向こうから現れたなのははどこか嬉しそうな笑みを浮かべながら、訓練の終了を告げた。
エリオの攻撃は、ほんの僅かではあるが彼女のバリアジャケットまで届いていたらしい。

「じゃ、今朝はここまで。一旦、集合しよう」

呼びかけながら着地したなのはが、バリアジャケットを解除して元の制服姿に戻る。
キャロも気持ちを切り替え、足下に降り立ったフリードを抱えてなのはのもとへと駆け寄る。
整列したスバルやティアナの顔色を伺うと、疲労の色こそあったがそれほど堪えているようには見えなかった。
こちらの杞憂だったのだろうか?

187 Lyrical StrikerS 第4話④ :2009/08/16(日) 10:10:08 ID:RACz4itw
「さて、みんなもチーム戦に大分慣れてきたね。ティアナの指揮も筋が通って来たよ。指揮官訓練、受けてみる?」

「いや、あの…………戦闘訓練だけで、いっぱいいっぱいです」

褒められたことに戸惑いながら、ティアナは首を振って遠慮する。
彼女はああ言っているが、チーム戦における戦績はティアナの指揮に助けられている部分が多い。
2週間前は指示も抽象的で動き辛かったが、最近は先の先を見越した戦術を披露し、
連携のタイミングもちゃんと計って合図を送ってくれる。エリオへの突撃の合図も、
自分にはほぼ完璧なタイミングであったように思えた。
もしもティアナがチームから抜けてしまったら、自分達はもっと無様な姿を晒していたかもしれない。

「きゃふ? きゅくるー?」

不意に、足下のフリードが鼻をヒクつかせながらキョロキョロと首を回す。

「フリード、どうしたの?」

「何か、焦げくさいような……………」

そう言われてみれば、何かが焦げた匂いが漂っている。
それも、そう遠くない場所から。
しかし、周囲を見回しても何かが燃えているような気配はない。
気のせいだろうか? そう思った刹那、ティアナが匂いのもとを見つけ出して声を上げる。

「スバル、あんたのローラー!」

「うわっ、やばっ!」

見ると、車輪と靴の接続部分がスパークしていて、僅かではあるが黒煙を噴いている。
慌ててスバルはローラーの具合を確かめるが、落胆した表情から損傷がかなり深刻であることを物語っている。

「しまった、無茶させちゃった」

「オーバーヒートかな? 後でメンテスタッフに診てもらおう。ティアナのアンカーガンも、結構厳しい?」

「はい、騙し騙しです」

申し訳なさそうに、ティアナは頭を垂れる。
どうやら、2人ともデバイスにかなりの負担がかかっていたようだ。訓練中の不調も、きっとそれが原因なのだろう。
聞いた話では、2人が使っているデバイスは訓練校時代に自作したものらしい。
いくらメンテナンスを繰り返しているとはいえ、3年も酷使し続ければ不具合の1つくらい出てきてもおかしくない。
だが、そうなってくると修理が完了するまで代わりのデバイスを用意する必要がある。
銃型はともかく、ローラー型のデバイスなんて珍しいものがすぐに用意できるだろうか?
そんな風に考えていると、何気ないなのはの言葉が耳に刺さった。

「みんな、訓練にも慣れてきたし、そろそろ実戦用の新デバイスに切り替えかな?」

「新デバイス?」

不意打ち染みた呟きに、新人達は目を丸くする。
新しいデバイス。
そんなものが用意されていたことに、4人とも驚きを隠せなかった。
そもそも、自分達が使っているデバイスは、一般的な近代ベルカ式アームドデバイスであるストラーダを除けば
手製の特注品と使い手の少ないブーストデバイスである。
そんなものを一から組み立てて、人数分用意するなんて太っ腹も良いところだ。
海上訓練施設なんていうものは他の陸士部隊では余り見ない代物らしいし、改めて機動六課という部隊の気合いの入りようが実感できる。

「じゃ、一旦寮に戻ってシャワー浴びて、みんなで朝ご飯にしようか? 新デバイスのことは、その後でね」

悪戯を企てている子どものような笑みを浮かべながら、なのはは陸戦シュミレーターの立体映像を消して隊舎へと歩き出す。
その後姿に疲労している気配は一切なく、彼女の基礎体力の高さを改めて思い知らされる。
善戦してはいても、やはり自分達は教導官であるなのはの足下にも及ばないのだろう。
他の3人も似たようなことを考えているのか、互いの目が合うと疲れた笑みを浮かべて先頭を歩くなのはの後を追いかけた。
やがて、隊舎の正面玄関まで戻ってくると、前方から見覚えのある黒塗りの自動車が走って来るのが見えた。
普段、六課の駐車場に停めてあるものだ。持ち主は誰かわからないが、六課の隊員の誰かなのだろう。

188 Lyrical StrikerS 第4話⑤ :2009/08/16(日) 10:10:47 ID:RACz4itw
「ルシエさん、こっち」

車に引かれては危ないと思ったのか、こちらの腕を取ったエリオに引き寄せられる。
僅かにバランスが崩れて肩がぶつかるが、エリオは特に気にする素振りを見せなかった。
ただ、頬が少しだけ赤くなっているのが印象的だった。

「あ、こっちに来る」

スバルの言葉に、全員が近づいてくる黒い車に注目する。
車はゆっくりとした速度で自分達の目の前に停止すると、運転席側の窓とルーフが開いて搭乗者の姿が露になる。
そこにいたのは良く見知った顔ぶれで、キャロも思わず驚きの声を上げてしまった。

「フェイトさん、八神部隊長!?」

「これ、フェイト隊長の車だったんですか?」

「うん、地上での移動手段なんだ」

「許可がなかったら、空は飛ばれへんし転送魔法も使われへんからね。
それより、練習の方はどないや? みんな頑張っている?」

はやてに訓練について話を振られ、スバルとティアナが言葉を濁す。
無茶のし過ぎでデバイスが不具合を起こしたことを気にしているのだろう。
はやてが不審がる前になのはが助け船を出し、訓練が順調であることを告げると、
はやては満足そうに笑みを浮かべた。

「そうか、それは頼もしいな」

「エリオ、キャロ、ごめんね。私は2人の隊長なのに、訓練を見てあげられなくて」

「いえ、そんな………」

「大丈夫です」

いつものように頭を撫でながら、申し訳なさそうな笑みを浮かべるフェイトに、
キャロとエリオは満面の笑みを浮かべて自分達は大丈夫だとアピールする。
一緒にいられないのは寂しいが、彼女にだって仕事はある。
自分達が訓練に明け暮れている間も、フェイトはある犯罪者を必死で追いかけているのだ。
それに集中できるように、自分達のことで心配などかけてはならない。

「わたし達は大丈夫ですから」

「フェイトさんはお仕事、頑張ってください」

「うん、ありがとう。お昼前には戻るから、お昼は一緒に食べよう」

「私は夕方になるから、それまではグリフィス君に任せている。何かあったら、その時はよろしくなぁ」

はやてが陽気に手を振りながら、フェイトの運転する車は中央に向けて走り去っていく。
穏やかで何気ないやり取り。
新人達の誰もが、今日も何事もなく終わっていくと思っていた。
それが甘い考えだと、心のどこかで思いながら。







目の前に積まれたパンの山がもの凄い勢いで崩されていき、キャロは唖然とした表情を浮かべていた。
早朝訓練があるため、フォワード部隊が朝食を取るのは他の隊員達よりも少しばかり遅い。
大体の場合、みんなが食事を終えてオフィスに向かう時分に食堂を訪れるため、
食堂はガランとしていて食事をしているのは自分達だけである。
だが、テーブルの上に並べられている料理の量は4人分を遙かに逸脱している。
山と積まれたパンに特大ボールに盛られたサラダや大鍋で煮込まれたスープ。
これらをたった2人の男女が食べ切るなどと、果たして誰が信じるだろうか?

189 Lyrical StrikerS 第4話⑥ :2009/08/16(日) 10:11:35 ID:RACz4itw
「気にしたら負けよ。スバルの大食いは今に始まったことじゃないし」

「いえ、そういうわけじゃ……………」

どちらかというと、スバルとほとんど同じペースで大量の料理を平らげていくエリオに対して驚いているのだ。
あの小さい体のどこに、あれだけの料理が入っていくのだろうか?
何か特別な魔法やロストロギアで、口の中に入った料理が虚数空間に消えていると説明されても、
何の疑問も抱かずに納得してしまうかもしれない。

(そんなものがあるのなら、わたしも使いたいな………………)

小皿に残った角切りのニンジンをフォークで突きながら、キャロは眉間に皺を寄せる。
好き嫌いは少ない方ではあるが、ニンジンだけはどうしても食べられないのだ。
あの独特の歯応えと甘みが苦手で、匂いも余り好きではない。
前に所属していた自然保護隊でも、ニンジンが食事に出された時はいつも残していた。

(けど、わたしだって武装局員になったんだから、ニンジンくらい…………………)

そうだ、このニンジンが何か酷いことをしただろうか?
自分を傷つけるような真似をするだろうか?
熱線を乱射しながら向かってくるガジェットに比べれば、こんな有機物の塊など怖くもなんともない。
意を決して、キャロは手にしたフォークの先端をニンジンに突き刺し、ゆっくりとした動作で口へと運ぶ。
瞬間的に広がる甘い芳香。
温野菜特有の蕩けるような舌触りと繊維が歯に絡まる独特の感覚が口の中に広がり、思わず息が詰まりそうになる。
飲み込めない。
どんなに噛み砕いても、舌がニンジンを喉の奥へと運んでくれない。
分泌された唾液はニンジンだった残骸をグチャグチャに溶かし、ペースト状のそれは顎の上下運動によって掻き回されて
更に口一杯に広がっていく。

「うっ!」

半ば反射的にコップを掴み、勢いよく水を飲み干す。
原型を留めなくなるまで噛み砕いたことが功を征したのか、ニンジンは水を嚥下する勢いに押されて食道へと流されていった。
何とか食べることはできた。だが、たった1個のニンジンを食べただけで息が上がり、冷や汗が全身を伝っている。
労力だけを見るなら、なのはの教導を受けている方がよっぽどマシかもしれない。

(ど、どうしよう………………)

まだ小皿の上には、苦手なニンジンが4つも残っている。
これを全て食べ切るまで、果たしてどれだけの時間を要するだろうか?
急いで平らげてしまわねば朝の業務が始まってしまうのに。

「ルシエさん?」

「ふぇっ!?」

少年の呼びかけが、キャロの落ち込み始めた意識を揺さぶり起こす。
振り向くと、夢中でパンを頬張っていたエリオがジッとこちらを見つめていた。
彼の視線は、自分が手を出したくても出すことのできない小皿の上の赤い悪魔に注がれている。
彼はそれだけで、自分がニンジンを食べられないことに気づいたようであった。
キャロの胸中で、焦りがどんどん増していく。
キャロにとって、ニンジンを食べられないことをとても恥ずかしいことであるため、
なるたけみんなには秘密にしておきたかった。なのに、あろうことか同じ分隊の同い年の男の子に知られてしまった。
この後、彼はどうするのだろうか?
見て見ぬ振りをするのか、励ましの言葉をかけるのか、自分の好き嫌いをからかうのか。
緊張が頂点に達し、キャロの矮躯がガチガチに固まっていく。
だが、エリオが取ったのは意外な行動であった。
彼はそっと周囲に目を配り、スバル達がこちらを見ていないこと確認すると、自分が使っていた空っぽの小皿と、
ニンジンが乗った小皿を素早くすり替えたのである。

(えっ?)

エリオは無言だった。
穏やかな笑みを浮かべ、さも当然のようにニンジンを口へと運んでいく。
キャロが呆然としている中、小皿の上のニンジンはあっという間になくなっていった。

190 Lyrical StrikerS 第4話⑦ :2009/08/16(日) 10:12:28 ID:RACz4itw
『後でエリオにお礼、言っておきなさいよ』

『えっ、ティアさん?』

不意に頭に響いた念話に戸惑いながら、キャロは自分の反対側に座るティアナの顔を見る。

『ちびっ子にも子どもらしいところがあったのねぇ』

『うっ…………す、すみません』

『別に責めているわけじゃないわ。あたしだって、小さい頃は嫌いなもの、みんな兄さんに食べてもらっていたし』

『ティアさん、ご兄妹がいたんですか?』

『兄が1人ね。こうして見ていると、まるで自分が子どもの頃を見ているみたい。
まあ、あんた達は兄妹にしてはちょっとだけ、遠慮し過ぎているけどね』

そう言って、ティアナは自分の分のパンを平らげて食事の後片付けを開始する。
ティアナがこんな風に話しかけてきたのは意外だった。
自分達に分け隔てなく接してくれるスバルと違い、ティアナはあくまで同期のフォワードというスタンスを崩さなかった。
もちろん、愚痴を零したり他愛もない談笑をすることは多いが、そういう時も大抵はスバルに話しかけることが多く、
自分達と話をする時は聞き手に回ることが多い。だから、彼女の方から念話を使ってまで話しかけてきたことが、
とても意外だったのだ。念話が切れる前の苦笑が、どこか昔を懐かしむような切ない響きだったのも強く印象に残っていた。

(兄妹…………か……………)

ティアナに言われた言葉を意識しながら、傍らで美味しそうにソーセージに噛り付くエリオの横顔を見る。
ティアナは言っていた、自分達は兄妹のようだと。
ひょっとしたら、彼も同じように考えていたのかもしれない。
自分の方がほんの少しだけ年上だから、兄として接しようとしてくれているのかもしれない。
だから、自分は彼に距離感を抱いていたのだ。
たった2ヶ月分の距離感。兄妹なら決して埋まることのない時間という壁。
もしも、本当にそうなのだとしたら、それはとても嬉しいことであった。
彼の中には、既に自分の居場所ができているのだ。
自分を家族として受け入れてくれているから、彼は兄であろうとしてくれているのだ。

(お兄ちゃん…………で良いのかな?)

ふと目が合い、どちらからというでなく笑みを浮かべる。
エリオが兄だとか異性だとか、そんなことはどうでも良くなっていた。
ただ、ちゃんとした繋がりがそこにあるということに、キャロは喜びを禁じ得なかった。







朝食を終えて通常業務が始まると、スバル達はリインに連れられてシャーリーの根城とも言える整備室を訪れていた。
そこで待ち構えていたシャーリーは、まるで自慢の子どもを紹介する母親のように、意気揚揚と4つのデバイスを並べていく。
一見するとただの宝石やカードのように見えるこれらが、自然界に働きかけて秘蹟を起こす魔法の杖などと、
いったい誰が思うであろうか?
まだ魔法という存在を知らなかった子どもの頃、小さな宝石が杖に変化する光景に目を輝かせたのは、
今でも色褪せない思い出だ。

「うわぁ………これが…………」

並べられたデバイスの内、蒼い宝石と白いカードを見下ろしながら呟く。
宝石の方が“マッハキャリバー”という名前で、自分に合わせて調整されたローラー型のインテリジェントデバイスらしい。
カードの方は“クロスミラージュ”というティアナ専用のインテリジェントデバイスで、アンカーガンと同じ機能を持った
銃型デバイスなのだそうだ。どちらも、今まで使っていたデバイスの延長として使えるよう、
形状などはできるだけ似せるように作ったのだそうだ。しかも、マッハキャリバーはリボルバーナックルとの同調機能が付けられていて、
収納と瞬間装着の機能も組み込まれているらしい。これで今まで手で持ち運んでいたリボルバーナックルを、
デバイスの中に収納して運ぶことができる。

191 Lyrical StrikerS 第4話⑧ :2009/08/16(日) 10:13:19 ID:RACz4itw
「あたし達の、新デバイス………ですか?」

「そうでーす。設計主任、私。協力、なのはさん、フェイトさん、レイジングハートさんとリイン曹長」

嬉しそうに片手を上げたシャーリーが、さりげなく自分の優秀さをアピールしてくる。
お喋り好きのメカフェチだとばかり思っていたけど、ただのメカフェチではなかったようだ。

「ストラーダとケリュケイオンは変化なしかな?」

「うん、そうなのかな?」

隣で待機状態である腕時計と羽根飾りのデバイスを見つめながら、エリオとキャロは首を傾げる。
すると、リインが待ってましたと言わんばかりにエリオの頭上に着地し、
両手を広げながら2機のデバイスについて説明する。

「違いまーす。変化なしは外見だけですよ」

「リインさん」

「はいですぅ。2人はちゃんとしたデバイスの使用経験がなかったですから、
感触になれてもらうために基礎フレームと最低限の機能だけで渡してたです」

「あ、あれで最低限?」

「本当に?」

「みんなが扱うことになる4機は、六課の前線メンバーとメカニックスタッフが技術と 経験の粋を集めて完成させた最新型。
部隊の目的に合わせて、そしてエリオやキャロ、スバルにティア。個性に合わせて作られた文句なしに最高の機体です。
この子達はみんなまだ生まれたばかりですが、いろんな人の思いや願いが込められてて、いっぱい時間をかけてやっと完成したです。
ただの道具や武器と思わないで大切に、でも性能の限界まで思いっきり全開で使ってあげて欲しいです」

「うん。この子達はね、きっとそれを望んでいるから」

魔法使いの中にはしばしば、デバイスに心があると語る者もいる。
特にインテリジェントデバイスは魔法の発動の手助けだけでなく、搭載されたAIによる状況判断を行い、
状況に合わせて魔法を自動詠唱したり主の性質に合わせて自身の機能を微調整することができる。
特に高度なものは自我ともいえる個性を持ち、会話や質疑応答だけでなく日常生活のサポートまでこなすことができる。
そんな鋼の相棒を手にする魔導師達は、共に過ごした経験を振り返って手にしたデバイスを友と呼び、
家族と親しむことが多い。彼らは一様にして、デバイスはただの道具ではなく、苦楽を共にする大切なパートナーなのだと語る。
自分も、彼らのようにデバイスと絆を育むことができるであろうか?
なのはとレイジングハートのように、固い絆で結ばれたパートナーに。

「ごめんごめん、お待たせ」

整備室の扉が開き、所用で遅れてきたなのはが姿を現す。
彼女の姿を見て、スバルは慌てて頭を振って思考をニュートラルな状態に戻した。
こちらの考えを見透かされて、変に思われたら堪らない。

「もう、すぐに使える状態なんだよね? シャーリー、説明を頼める?」

「はい」

そんなに自分の手がけたデバイスのことを話すのが嬉しいのか、シャーリーは浮き浮きと手を合わせながらなのはに微笑み、
背後の端末を操作してディスプレイに4機の新デバイスの画像を映し出す。
そこには、『出力リミッター』という単語と各デバイスの簡単なスペックが表示されていた。

「まず、この子達はみんな、何段階に分けて出力リミッターをかけているわけね。一番最初の段階だと、
そんなりびっくりするほどのパワーが出る訳じゃないから、まずはそれで扱いを覚えてみて」

「で、各自が今の出力を扱い切れるようになったら、あたしやフェイト隊長、リインやシャーリーの判断で解除していくから」

「丁度、一緒にレベルアップしていくような感じですね」

レベルアップ。
そう言われると何だかゲームみたいな感じがするが、何を目標にして鍛えていけば良いのかわかれば
訓練はずっとやりやすくなる。マッハキャリバーがどれだけ凄いデバイスなのかはわからないが、
それを使いこなせればきっと自分は強くなれる。そうすれば、もう誰も傷つけずに済むはずだ。

192 Lyrical StrikerS 第4話⑨ :2009/08/16(日) 10:14:42 ID:RACz4itw
(あれ、出力リミッター?)

聞き覚えのある単語に、スバルは眉をしかめる。
確か、いつかの食事の席でなのはやフェイトのデバイスにもリミッターがかけられていると聞いた覚えがある。
隣のティアナもそれを思い出したのか、自分に代わってなのはに質問をしてくれた。

「出力リミッターっていうと、なのはさん達にもかかっていますよね?」

「ああ、あたし達はデバイスだけじゃなくて、本人にもだけどね」

「リミッターをですか?」

「能力限定って言ってね、うちの隊長と副隊長はみんなだよ。あたしとフェイト隊長、ヴィータ副隊長とシグナム副隊長」

「はやてちゃんもですね」

「ひょっとして…………能力制限、ですか?」

いつだったか、なのはが部隊における魔導師ランクの保有制限について話していたことを思い出す。
あの時は、各部隊の業務遂行能力の均一化を図るために定められた制度だと言っていたが、
よくよく考えれば機動六課はその制限を大きく逸脱している。
何しろ、部隊長がSSランク、隊長陣も4人中3人はニアSランクで固められていて、
更に交替部隊や医務官にまで魔導師が在籍している。普通に考えれば、明らかに既定違反だ。

「1つの部隊にたくさんの優秀な魔導師を保有したい場合は、そこにうまく収まるよう出力リミッターをかけるですよ」

「うちの場合だと、はやて部隊長が4ランクダウンで、隊長達はだいたい2ランクダウンかな。
あたしの場合は元々S+だから、2.5ランクダウンでAA。だからもうすぐ、
1人でみんなの相手をするのは辛くなってくるかな」

それはつまり、今まではこっちより2ランク上の魔力しか出せない状態で模擬戦の相手をしていたということになる。
なのはは謙遜していたが、満足に力を振るえない状態で自分達4人の相手をしていたことに、スバルは驚嘆を禁じ得なかった。
そして、同時に些細な疑問が胸中を過ぎる。
こんな風に能力を制限してまで優秀な魔導師を集めて、はやてはいったい何をしようとしているのだろうか?
それだけレリックが危険度の高いロストロギアなのかもしれないが、ひょっとしたらそれだけではないのかもしれない。
何か、とてつもなく重大な任務が機動六課にはあるのかもしれない。
何れにしても、隊長陣が本来の力を発揮できないというのなら、それだけ自分達に負わされる責任が重くなるということである。
任務にあたる際は、気を引き締めて挑まねばならない。

「あの………そのリミッターって、ずっとかけたままなんですか?」

「良い質問だね、エリオ。リミッターだけど、解除自体は上司の許可さえあればできるよ。最も、回数制限があるけどね」

「隊長さんははやてちゃんの。はやてちゃんは直接の上司のカリムさんか、部隊の監査役クロノ提督の許可がないと……………」

言いかけ、リインは何かを思い出したように目を見開く。
隣に立つなのはもため息のようなものを吐いていて、シャーリーも表情を曇らせていた。
いったいどうしたのかと戸惑っていると、言い淀んでいたリインが3人を代表して口を開き、
中断していた説明を再開する。

「カリムさんとクロノ提督…………それと、地上本部防衛長官レジアス・ゲイズ中将の許可がないと、
リミッターを解除できないです」

「ゲイズ中将? あの、ゲイズ中将ですか?」

地上本部の権力者の名に、ティアナが驚きの声を上げる。
レジアス・ゲイズがレアスキルを毛嫌いしていて、本局を敵視していることは有名である。
なのに、そのレジアスが本局直属の部隊である六課の関係者として名を連ねている。
これは正に、天地が引っくり返ったかのような衝撃であった。

「厳密には、中将にリミッターを解除する許可は与えられていないだけどね。
あの人が持っているのは、リミッターを解除する許可を与える許可を出す権利」

「はい?」

言葉がこむら返りを起こしているような発言に、スバルは思わず聞き返す。
すると、なのはは更に盛大なため息を吐き、親友と地上本部中将が交わした約束について説明し始めた。

193 Lyrical StrikerS 第4話⑩ :2009/08/16(日) 10:15:40 ID:RACz4itw
「色んな裏技使って強引に部隊を設立したから、せめて筋だけは通すんだって。
ほら、うちって身内人事でしょ。だから、体面的にも無関係な人が抑止力でいてくれた方が良いって」

はやてだけでなく、なのはやフェイト達隊長陣のリミッターを外す際も、
レジアスに伺いを立てなければいけないらしい。
迅速な対応をモットーとする機動課において、これは非常に大きな足枷であった。
しかも、これはあくまで妥協案であり、場合によっては機動六課の指揮権を地上本部に
帰属するというプランも出ていたらしい。

「まあ、この話は心の片隅くらいで良いよ。それよりもみんなのデバイスのこと。
午後の訓練で使ってみて、微調整を………………」

なのはがそう言いかけた時、不意に機動六課隊舎内に耳障りなまでの音が鳴り響く。
周囲のディスプレイが赤く染まり、表示される“ALERT”という文字。
これは、一級警戒態勢を告げる信号だ。

「グリフィス君!」

『はい、教会本部からの出動要請です』

『なのは隊長!』

グリフィスとの通信に割り込むように、別のディスプレイにはやての姿が映し出される。
先ほど、グリフィスが教会本部と言っていたが、どいうやら彼女はそこにいるようだ。

『教会騎士団の調査部で追っていた、レリックらしきものが見つかった。場所は鋭利の山岳丘陵地区。対象は山岳リニアレールで移動中。
内部に侵入したガジェットのせいで、車両の制御を奪われている。リニアレール内のガジェットは最低でも30体。
大型や飛行型の未確認タイプも出てくるかもしれへん。いきなりハードな初出動や、いけるか?』

「山岳地帯のレールウェイ。まずいな、交替部隊隊長のシグナムさんを動かすことはできないし、
ヴィータちゃんも今日はいない……………それに新人達もスバルちゃんとティアナのデバイスを壊れていて、
とても出動できる状態じゃ……………」

「いえ、大丈夫です」

自分でも驚くくらい、ハッキリとした声を出すことができた。
全員が何事かとこちらを注視する中、スバルはまっすぐになのはの瞳を見つめ、
意を決して懇願する。

「デバイスなら、この子達がいます。やらせてください、なのはさん」

「けど、まだテストもしていないんだよ。疑う訳じゃないけど、もしもがあったら……………」

「大丈夫です。あたしなら………あたし達とこの子達なら、きっとできます。
それに、もう何もできずにジッとしているのは嫌なんです。戦えるチャンスと守れる力があるのなら、
使わせて下さい。お願いです、なのはさん」

ここで自分達が出動しなかったとしても、なのは達ならきっとうまく立ち回るだろう。
けれど、だれかが代わりに戦ってくれるからといって、戦いから逃げて良い理由にはならない。
目の前のチャンスを逃して後悔するのはたくさんだ。

「なのはさん、あたしからもお願いいます」

「ティア?」

「僕からもお願いします」

「ちゃんと………やりますから」

「エリオ、キャロ?」

次々と名乗り出る新人達に押され、なのはは困惑の表情を浮かべる。
だが、すぐに心を決めると、頼もしい隊長としての顔になって通信の向こうにはやてに向き直った。

「はやて部隊長、高町なのは一等空尉とフォワード4名、いつでも出動できます」

「なのはさん!?」

スバルの言葉に、なのはは茶目っ気のあるウィンクで返答する。
はやては一連のやり取りを見てどこか楽しそうな笑みを浮かべると、一度だけ咳払いをして居住まいを正し、
厳かな声で機動六課の出動を告げる。

194 Lyrical StrikerS 第4話⑪ :2009/08/16(日) 10:16:10 ID:RACz4itw
『シフトはAの3。グリフィス君は隊舎での指揮、リインは現場管制。なのはちゃんは現場指揮、
フェイトちゃんも呼ぶから現地で集合や。みんな、これが初出動や、気合い入れていくで。
機動六課フォワード部隊出動!!』

「はい!」

初めての出動、初めてのデバイス、初めての実戦。
不安や緊張がないとは言えない。なのはの前で啖呵を切ったが、内心ではかなりガチガチに緊張している。
移動中のヘリの中でも無言のままで、隣のティアナや反対側に座るエリオとキャロを気にかけることもできなかった。
エリオに励まされているキャロが、今だけは少し羨ましい。
だから、なのはが激励の言葉をかけてくれなければ、ひょっとしたこの出動で手痛い失敗をしていたかもしれない。

「危ない時は、わたしやフェイト隊長、リインがちゃんとフォローするから、おっかなびっくりじゃなくて思いっきりやってみよう」

そう、自分は1人ではないのだ。
隣にははティアナがいるし、エリオやキャロもいる。
空にはなのはやフェイトがいる。
そして、手の平の上にはこれから共に戦うことになる相棒がいる。
背中を守ってくれる人達がいて、共に力を合わせる仲間がいる。
これほど心強いことはない。

「初めましてで、いきなりになっちゃったけど、一緒に頑張ろうね、相棒」

握り締めたマッハキャリバーに話しかける声音は、既に震えを感じさせなかった。






                                                            to be continued

195 B・A :2009/08/16(日) 10:17:22 ID:RACz4itw
以上です。
レジアスパートまで持っていきたかったなと思う今日この頃。
書けば書くほど味が出てくるあの親父はスルメかw
後、キャロ可愛いよキャロ。
ラストバトルは時間加速能力を手に入れたスカが一巡後の世界でキャロと戦うんだね(マテ

196 名無しさん@魔法少女 :2009/08/16(日) 21:52:24 ID:Q.GgysFk
投下乙です

エリオとキャロが良い感じですねぇ
というか、最近この二人がやけに人気あるようなwww
GJでした、次回も待ってます!

197 名無しさん@魔法少女 :2009/08/16(日) 22:24:09 ID:BQXqlnXA
>>179
GJ!
職人的なヴァイスがかっこいいです。

198 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:04:27 ID:D8HHPAeg
じゃあそろそろ書きまっせ。

・毎度おなじみなのは×ジェイル系シリーズのバリエーションとしてウーノにもスポットを当ててみたり
・またおまえかとか言わないでorz
・今度はウーノに百合なんかもされちゃうなのは
・百合→3Pエロ
・キャラ崩壊注意
・毎度のごとくなのは孕まされENDなのでご了承注意
・このシチュ嫌いな人はここで引き返した方が良いと思いまする

199 悪鬼ウーノの狂乱 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:05:24 ID:D8HHPAeg
 この世界は『こんなはずじゃない事ばかりだ』と誰かは言ったが、男女の関係においてもそう。
『この人が何故あんな奴と結婚しちゃうかね?』と言う状況も過去の歴史においても決して少なくは無い。

 『高町なのは』と『ジェイル=スカリエッティ』 片や『時空管理局のエース』片や『大時空犯罪者』
一体どうすればこんなのが成立するのか? なんて突っ込みたくなる超異色のカップリングもまた
その歴史の一つに加えられる事となるであろう。

「良くぞ頑張ったななのは君。私に似て実に良い面構えをした子供では無いか。」
「お願い…皆には私の事は死んだって事にしておいて…。こんな姿…フェイトちゃん達には見せられないよ…。」

 父親と同じ紫色の頭髪と金色の瞳、そして悪そうな目付きの赤子を抱くなのはの目には一滴の涙が流れ落ちていた。
なのはは別に好き好んでこんな男と結ばれ、その子供を産んだわけでは無かった。

 管理局のエースと呼ばれ教導官を務める程のなのはであったが、その実力と美貌が逆に仇となり
ジェイルに見初められて捕らえられ、無理矢理結婚させられ子供まで産まされてしまったのである。


 ……とまあここまでは今までも何度か書いた良くある話(?)なのだが…ここに至るまでの一幕に
やや異なる所があったりもしたのである。


 なのはがジェイルに捕らえられて間も無く、ジェイルの研究室にてジェイルと彼の秘書でありナンバーズの
長女に当たるウーノの姿があった。

「ドクターのお考えにケチを付けるわけでも無いのですが…あの管理局魔導師を捕らえてどうするおつもりですか?」
「私は…高町なのは君を…妻として迎えようと思う。」
「は…?」

 ジェイルの言葉にウーノは絶句した。

「あの…ドクター? それは勿論ただの冗談ですよね?」
「冗談では無い。私は彼女が欲しいから態々捕らえる様に命じた。」
「そ…そんな事の為に…そんな事の為にあれだけのガジェットを犠牲にしたんですか!?
ガジェットだって決してタダでは無いんですよ!?」

 これには流石のジェイルに忠実なウーノでも思わず反論してしまいたくなるって物だ。
全く正気の沙汰では無い。が…ジェイルの目は真剣だった。

200 悪鬼ウーノの狂乱 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:06:26 ID:D8HHPAeg
「ああその通りだ。彼女を捕らえる為に投入し破壊されたガジェットの数が相当な物である事は承知。
彼女も我々に囚われこそしたが、我々の被った被害を考慮すればその実力は本物と言う事が出来るだろう。
あれだけの力を持った魔導師を管理局の犬で終わらせるのは実に勿体無い! 味方に引き込んだ方が
遥かに良いとは思わないかね!?」
「……………。」

 自信満々に語るジェイルにウーノは半ば呆れていたが…そこで彼女はある事に気付いた。
それはジェイルの股間がズボンの上からでも見て分かる程にまで勃起していたと言う事である。

「(え…? ド…ドクター!?)」

 ジェイルの勃起。それはウーノにとって衝撃的な事だった。確かに他の者からすればどうと言う事は無く
男なら仕方の無い生理現象だと思える事かもしれないが、長年ジェイルの秘書として最も近くから
彼を支えて来た彼女にとってはそうでは無い。何故ならば、ジェイルは今まで勃起をした事が無かったからだ。
美女揃いのナンバーズに囲まれる環境にいながら、ジェイルは彼女達に欲情はおろか勃起すらした事が無い。
だが、高町なのはに対しては違った。それどころか、なのはについて語るジェイルの姿は何処か
興奮している様にも見えていたのである。

「私とて不老不死では無いのだ。いずれは老いる。だからこそ私の後と継ぐ者を作る必要性がある。
それに見てみたくは無いかね? 最高の魔導師と最高の科学者とでどんな子供が生まれて来るかを…。」
「そ…それは………。」

 果たしてなのはが最高の魔導師なのか否かはともかくとして、ジェイルにとってはなのはが最高の魔導師なのだろう。
今にも別室に軟禁しているなのはに向けて突撃をかけんばかりに興奮したジェイルにやはりウーノは引いていた。

「お言葉ですがドクター、あのプレシア=テスタロッサとその娘のアリシアの例を見る通り、
親が優れているからと言って必ずしもその子供も優れているとは限りませんよ。それにドクター自身に
何かあった時に備えてドクターのクローンだって既に用意出来ているじゃありませんか。」
「だからだよ。既に私のクローンが計十二体、君達それぞれの身体の中に入っているんだ。
ならば一人位普通に産ませた子供がいても良いとは思わないかね?」
「しかし、そんな事をすればドクターの高貴な血が薄れてしまいます。」
「だがその分なのは君の血が混ざるのだ。そこから新たな可能性が生まれるかもしれない。」

 ああ言えばこう言う。今のジェイルの言動はウーノにとって眉を細める程だった。
ウーノを筆頭とするナンバーズは皆ジェイルの手によって作られた、いわば娘とすら呼べる存在である。
しかし、そんなウーノ達にとって父と言えるジェイルがなのはを妻として迎えようとする姿は
例えるならば娘よりも年下の女と再婚しようとする父も同然であり、もしこのままジェイルが本当に
なのはと籍入れちゃおう物なら、なのははウーノにとって年下の義母になってしまうわけで…
そこがやや気まずい物だった。しかし、ジェイルと真っ向から対立する様な事もやりたくは無い。
と言う事で…ウーノはある事を考えた。

「分かりました。ですが、その前に私なりに彼女が本当にドクターの妻に相応しい女性かどうか
試させてはいただけないでしょうか?」
「そ…それは別に構わないが…手荒な事だけはするなよ。何しろ私の子を産む大切なカラダだ。」
「ハイ…分かりました。では失礼します。」

 ウーノの考え…それは彼女なりになのはを試す事。それに関してジェイルからの許可も貰った。
後は行動に移すのみであった。

201 悪鬼ウーノの狂乱 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:07:20 ID:D8HHPAeg
 一方、なのはは厳重なAMFによって魔法が使用不能な状態になった別室に軟禁されていたのだが
そこにウーノがやって来た。

「私をここに捕らえて一体どうするつもりなの? 身代金目的? 私を何かの実験台にでもするの?」

 平静を装いつつもウーノに質問するなのはだったが…ウーノは一切答える所かその直後、
有無を言わせずになのはに抱き付きそのままベッドへ押し倒していたでは無いか!

「え!? んぶぅ!!」

 ウーノはなのはをベッドへ押え付けつつ、唇を奪った! 忽ちなのはの頬が赤くなる。
なのはは必死に手足をバタ付かせて抵抗していたが…ウーノはなおもなのはの唇を奪い続け、
まるで力が吸い取られ崩れ落ちる様に動かなくなってしまった。

「ぷはっ!」
「んぁ………んぶ…。」

 ウーノが呼吸の為に一度なのはの唇から離しても、なのはは抵抗する力も無くグッタリとベッドに
横になるのみであり、なすがままに再びウーノに唇を奪われるのみだった。

「ん…ん…ん…んんん〜〜〜〜〜。」

 一体何を考えたかウーノはひたすらになのはの唇を貪る様に奪い続け、抵抗出来ないなのはの
頬は赤く目からは一滴の涙が零れ落ちていた。

「んっ!」

 全身の力が抜けて動けないと思われていたなのはの身体が思わずビクッと震えた。
ウーノがなのはの唇を奪う事によって注意を唇に向けた隙に、ウーノの右手がなのはの股間へと伸び、
スカートは愚かパンティーの中にまで潜り込み…そのクリトリスを指で摘んでいたのである。

「んっ! んっ! んんんんん〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 ただでさえウーノに唇を奪われ、舌までねるねると絡まされていると言うのに、
さらにクリトリスを弄られるという身体的・精神的な衝撃は説明し難い物があり、
なのははただただ身体をビク付かせて喘ぎよがるしか無かった。

「ぷはっ!」
「んぁ………ハァ……ハァ……ハァ……。」

 やっとウーノの唇がなのはの唇から離れた後も、二人の舌と舌の間には唾液の架け橋が伸びており、
またクリトリスを弄られた事によってなのはのパンティーは愛液でグッショリと濡れていた。
そうあってもなのはは頬を赤くし、目から涙を流しながら倒れこんでいるだけ。
そんな彼女の姿をウーノは見下すように見つめていた。

202 悪鬼ウーノの狂乱 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:08:05 ID:D8HHPAeg
「(何が管理局のエース? 如何に優れた魔導師とて性感帯を弄られればこの有様…。
やはりこの女はドクターの妻となる器では無い…………。)」

 これならばジェイルも一時の気の迷いとしてなのはを諦めてくれるだろうと、ウーノはその場から
立ち去ろうとしていたのだが…その時だった。突然なのはが蘇生し逆にウーノをベッドに押し倒して来たのだ!

「いきなり何をするの!? ビックリしちゃったじゃない! もしかして態々こんな嫌らしい事を
する為だけに私を捕まえたわけ!?」
「え!? ええ!?」

 ウーノは困惑した。先程までの愛撫によって喘ぎよがり、もうダメになったと思われていたなのはが
何事も無かったかの様に蘇生し、逆にウーノを押し倒して来たのだから…

「フェイトちゃんと言い貴女と言い…どうして女の子なのに皆私に対してそんな事するの!?
最近は同性愛がブームなの!? それとも私ってそんなに男の人みたいに見える!?
キィィィィィィ!! 悔しい! ならやってやる! 私もやってやるからぁぁぁぁ!!」
「んぶぅぅ!?」

 何と言う事だろう。今度はなのはが逆にウーノの唇を奪って来たでは無いか。
先程まではなのはを一方的に愛撫していたウーノだが…逆に愛撫される事には慣れていないのか
今度は逆になのはの思うがままにされてしまう。

「ほらほら、どうしたの? どうしたの?」
「え!? 何で!? どうして!? あああ!!」

 なのははウーノの唇を奪うのみならず、無理矢理に服を脱がしてその素肌を撫でて行くのである。

「あら、意外と良い肌触りしてるじゃない? 戦闘機人もこういうの感じちゃうの?」
「あ…ダメ……嫌ぁぁ………。」

 すっかり立場が逆転し、なのはのに一方的に愛撫されていたウーノだが…
彼女にも負けられない理由があった。

「わ…私だって…私だって…貴女なんかにぃぃぃぃ!」
「んっ!!」

 形勢逆転に持ち込むべくウーノはなのはの唇に吸い付いた。しかしなのはとて負けじと
ウーノの唇を吸い付き返す。ここから壮絶な百合合戦が始まった。

「んっ! んっ! んっ! んっ!」
「んん! んんん! んん〜〜!」

 なのはとウーノはお互いの唇を奪い合い舌を絡ませ合いつつ、乳房を揉み合い、膣口同士を擦り合い
とにかくお互いの性感帯を弄り合う。こんな事をして何になるのかは恐らくやっている当事者すら
もはや分からないのだろうが…今更引く事は出来なかった。そして………

203 悪鬼ウーノの狂乱 5 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:09:00 ID:D8HHPAeg
「アッああああああああ〜〜〜〜〜!!」

 ついにウーノは絶頂を向かえ、イッてしまった。そして膣口から潮を吹きながらベッドへ倒れこんでいた。

「ま…参りましたわ…私の負けです……。」
「やった! 勝ったー!」

 とりあえず勝利を喜ぶなのはであったが…………そこでウーノが頬を赤くしながらなのはの手をギュッと握った。

「今ならドクターが貴女を気に入るのも分かる気がします。管理局魔導師にしておくには惜しいですわ。」
「え…? それって…どういう事…?」

 ウーノの言葉になのはは一時困惑するが、そこへ突然ドアを開けて現れたのがジェイル本人。

「話は聞かせてもらった。ならばもう別に構わないのだな?」
「ハイ! ドクター!」
「え!? な…何をする気なの!?」

 ジェイルが現れるや否や、ウーノは素早くなのはの背後に回りこみ羽交い絞めにした。
それには慌てバタ付かせるなのはだが、そんな彼女の太股をジェイルが両手でガッシリと掴んでいた。

「フフフフ…なのはさん…いやこれからはあえて奥様と呼ばせて頂きます。貴女はドクターと結婚するのです。」
「け…結婚!? だっ誰が貴方みたいな犯罪者なんかと!!」
「良いでは無いか。管理局にいた所で君を抱いてくれる男などいまい? それに住めば都と言う言葉もあるでは無いか。」
「い…嫌ぁぁぁぁ!! 離して! 離してよぉぉぉ!!」

 なのはは囚われの身となってはいるが、一応は管理局のエースなのだ。それが何が悲しくて時空犯罪者である
ジェイルと結婚させられなければならないのだろう。必死に抵抗するなのはだが、ウーノに羽交い絞めにされる
のみならず、さらにジェイルに太股をつかまれ大きくM字開脚までさせられてしまった。

「健康診断の結果過去に大怪我をした形跡がありますが、何の問題もありません。」
「そうか。ならば心置きなく抱く事が出来るな。」
「え!? 健康診断って…………。」

 ここであえて説明するとするならば、先にウーノが行ったなのはに対する百合行為。
あれこそ百合&なのはがジェイルの嫁に相応しいか否かのテストを兼ねた健康診断でもあったのである!

204 悪鬼ウーノの狂乱 6 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:09:51 ID:D8HHPAeg
「ですからドクター、安心して奥様にお子を産ませてあげてくださいませ。」
「いっ嫌ぁ! やめて! 離して! 誰が貴方なんかの子供を! 産んでたまるもんですかぁぁぁ!」
「管理局に未来など無いよ。後々の事を考えればここで私と一緒になった方がずっと幸せかもしれないぞ。」

 もはや今のなのはに逃げ場等無かった。百合に対しては百戦錬磨と呼んでも過言では無い程にまで
百合慣れはしていても、未だ男を知らぬ処女であったなのはにとってジェイルに抱かれる事は一溜まりも無かった。

 ましてやジェイルはドクターの肩書きは伊達では無いとばかりに医学知識をフルに活用した愛撫を
情け容赦無く行って来るのだ。これもやはりなのはが今まで体験して来た百合とは勝手の違う物であった。

「あ…あ…あぁ…んぁぁぁ…。」

 母・桃子の股から生れ落ちて約十九年。生まれて初めて味わう男の味は、十年前に体験した
魔法との出会い以上の衝撃であり、未だ男を知らなかった処女の身体を少しずつ穢して行った…。
それのみならず、背後からなのはを押え付けていたウーノまでもがその乳房を鷲掴みする始末。

「見て下さいドクター! 奥様のこの胸を!」
「うむ。確かにお前の言う通りだ。これならば良き子を育てる事が出来よう。」
「嫌! やめて! 離して! そんな強く握らないで! オッパイパンクしちゃうぅぅ!」

 ジェイルに見せ付ける様になのはの乳房を揉み解すウーノになのははビクビクと痙攣してしまう。
これがただ単にウーノと一対一の状態ならば物ともしなかったであろうが、ジェイルに
愛撫されている最中であった今は違う。ジェイルとウーノのチームワークがなのはをさらに
追い詰めていたのである。

 そしてついにこの時が来た。ジェイルの勃起した肉棒がなのはの処女膣口に押し当てられたのだ。

「あ……こ…これが…男の人の……おちんち………。」
「フッフッフ…なのは君…私をここまで勃起させたのは君が始めてだ。だからこそ君は私の妻となる資格がある!」

 未だ男を知らぬ処女であるなのはにとって父・士郎、兄・恭也を除く男の肉棒を見るのは初めてであり、
しかもジェイルの肉棒はなのはの記憶に残る士郎・恭也のそれよりも遥かに巨大で固そうだった…。
さらに言うならば、ジェイルの肉棒をそこまで勃たせた要因はなのは自身であると言う事。
そして、その先端の固いカリがなのはの処女を強引にこじ開けて行くのである。なのはは必死に
処女を締めて侵入を防ごうとするが…無駄だった…。

「さあ行くぞなのは君! この一発こそ君の運命を変える一発となろう!」
「え!? それ挿れるの!? 無理無理! 挿らな………いぃ!!」

 次の瞬間、なのはの未だ男を知らぬ処女を……ジェイルの男が…貫いた!! 穢した!!

205 悪鬼ウーノの狂乱 7 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:11:50 ID:D8HHPAeg
「うっ………くっ…………。」

 今まで女同士の交わりしか知り得なかったなのはにとって…彼女の処女を奪った一撃は想像を絶する物だった。
女同士の百合とは根本的に違う……これが男……。そしてなのはが男を知ると同時にジェイルもまた己の肉棒で
なのはの処女を貫き、切り裂き、抉る。それはなのはの足先から脳髄まで稲妻が走るかの様な衝撃を与え、
その処女であった肢体を女へと改造して行くのである。

「あっ……うっ……あっ……。」
「ほらほら、どうしたどうしたなのは君?」
「奥様しっかりしてくださいな。」

 前からジェイルが、背後からウーノがなのはを煽る中…なのはは必死に耐えた。いや耐えようとした。
なのははまだ処女でいたかった。例え時空犯罪者であるジェイルに処女を奪われようとも、心の処女だけは守り通す。
その為にはこの痛烈な愛撫にも耐え抜く他は無い。

「あっ…あっ…あっ…。」

 しかし、ジェイルはその間も情け容赦無くなのはの膣を突き続けていたし、ウーノは背後からなのはの
乳房を揉み解し、その頬に口付けを繰り返していた。この二人の息の合ったチームプレイにもなのはは
必死に耐えようとするが…ジェイルが突けば突く程なのはの処女は穢されて行く。

「うっ……くっ……おちんちんが………私の膣内を………ゴリゴリ…ビクビクって…………あっ……。」
「最初は痛かった様子だが、そろそろ感じて来たかな?」
「構わないんですよ? 奥様…。正直におっしゃっても…。」

 ジェイルとウーノは一応はなのはに優しく話しかけていたが、だからこそ逆に信用出来ない。
だからこそなのははなおも必死に耐え続ける。しかし、そうあってもジェイルとウーノの愛撫が終わるはずが無く、
なのはの肢体もまた処女から女へと改造されて行く………

「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。」

 二人の愛撫に耐え続けるなのは。しかしその頬は真っ赤にそまっていたし、全身は汗だく。さらには口から唾液が
垂れ流れてしまう程にまで…なのはの肢体は追い詰められていた。例え心では処女でいたくとも…身体の方が
その心に付いていけない…。むしろ身体がなのはの心の足を引張って行く…。何故なら…なのはの肢体は既に
処女では無く………女になってしまったのだから………。

「あっ……ああああ………も……我慢…………でき……な………あぁぁ……。」

 ウーノに乳房を揉まれ、ジェイルに突き上げられる中、なのはの身体が反り返った。そして顔を天井へ向け
小刻みにブルブルと身体を痙攣させ始める。虚ろとなったその両目からは一筋の涙が流れ落ち………
口からはまるで犬の様に唾液にまみれた舌が垂れ伸び……………

206 悪鬼ウーノの狂乱 8 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:13:00 ID:D8HHPAeg
「んはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 なのはの喘ぎよがる美声が部屋中に響き渡った。そしてこれこそがなのはの降伏宣言。
なのはがその身のみならず心までもが処女を失い…女にされてしまった事を示す証明。
これでもうなのはは管理局には帰れない。当然教導官も廃業。これからはジェイルの望む通り
彼の妻としての生き方を余儀無くされてしまった。もう彼女は処女では無い。女になってしまったのだから…

「はっはっはっはっ! 美しい! 美しいぞなのは君! 私はこうまで美しい女性を今まで見た事が無い!
まして君は人為的な操作を受けずに自然な方法で誕生した人間であるからなおさらだ!
やはり君こそ私の妻となり、その子を産むに相応しい女性だ!」
「ドクターの言う通りです! 私はドクターのみならず奥様にも付いて行く決意ですわ!」

 この一発が…文字通りなのはの運命を大きく変えたと言って良いだろう。この一発さえ無ければ
なのはは今も管理局で百合好きの者達の顔色を窺う生活を続けていたのかもしれないが…………
そんな彼女の運命を大きく変えたジェイルの一発が………………

 なのははジェイルに抱かれ処女を失った。しかし…得た物もあった。それは母性。
かつてなのはが持っていた処女性とはまた異なる物。そしてもう一つ…。

 ジェイルの精液がぶちまけられなのはの膣・子宮を満たした後、その内の一つの精子がなのはの卵子と
結合し…二人の血を受け継ぐ新たなる命が芽生える事となる。かつてなのはの父・士郎と母・桃子が愛し合い、
二人それぞれの精子と卵子が結合する事によってなのはと言う命が生まれた様に…………なのはもまた
ジェイルの子供を……産んだ………。なのはとジェイルの子供もまたいずれ大人になれば
誰かと子供を作ったりするのだろう……。その子もまたやはり大人になれば………………。
人の歴史とはこの繰り返し。人はこうして世代を重ね続けて今日まで生き続けて来た。そしてこれからも…

 とか何とか格好良い事書いてはみたものの…要するにこうして冒頭部分に続くわけである。


「私も管理局のエースなんて呼ばれて持ち上げられてたりしたけど…所詮は女だったって事だね。
女だから…犯罪者の子供だって産めちゃうんだ……。これじゃあ管理局には帰りたくても帰れないよ…。
せめてこの子が…私似なら…何とかして誤魔化す事も出来たかもしれないけど……ジェイルと同じ
紫の髪と金色の瞳…そして悪そうな目付き……これじゃあどうやっても誤魔化せないよ……。」

 自身の乳房に吸い付く息子の顔を見つめながらなのはは悲しげに呟く。そして同じく部屋にいた
ウーノに目を向け、悲しげな目で訪ねた。

「ねぇ……私の事……管理局には死んだって事にしておいてよ! 私…怖いの…ここでジェイルの
子供産んじゃった事が皆に知られたら……フェイトちゃん…どんな顔をするか…。怖い…怖いよ…
物凄い形相で私に迫ってくるフェイトちゃん………嫌だよ……そんなの嫌……。」
「大丈夫ですよ。ドクターが奥様の事を大切にしていらっしゃるのは奥様が良く分かっている事では
ありませんか? ましてやそんな事はドクター自身の首を絞める事にもなるんですから。」

207 悪鬼ウーノの狂乱 9 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:14:26 ID:D8HHPAeg
 これはなのはがジェイルに女にされて…その子供を産んで以来の悩みだった。
今の姿を管理局の皆が見たらどう思うだろう。裏切り者として責められるに違いない。
それが怖くてたまらない……と…ジェイルの子を産んでしまった罪悪感からか、この様に
時折情緒不安定になる事もまた度々あり、そんななのはを支えるのもまたウーノの役目だった。

「ジェイルだって何時も怪しい研究ばかりやってるけど…まさかこの子まで実験台にしないよね!?
私嫌だよ! 痛い思いして産んだこの子が変な実験台にされて体弄られるなんて……。」

 なのははジェイルの子供を産んでしまった事に強い罪悪感を感じながらも…
一方で自身が苦しい思いをして産んだ我が子を憎む事が出来ず、むしろ愛してさえおり…
その矛盾がまた彼女を情緒不安定にさせる要因の一つでもあったのだが、
そんななのはを支えるのもやはりウーノ。

「それも大丈夫ですよ。ドクターは奥様がお産みになったお子様に関しては普通に育てると
仰っていましたから。」
「本当なの…? でもウーノさんは良いの…? 私がここに来る以前からウーノさんは
ずっとジェイルと一緒にいたんでしょ? 私の事…嫉妬してるんじゃないの?」

 あの日以来、ウーノはずっとなのはに優しくしてくれる。だからこそなのはは
何故こうまでウーノがなのはに尽くしてくれるのかが分からなかった。むしろジェイルに一方的に
やられたとは言え、ジェイルの子を産み妻にまでなってしまったなのはを恨んでも良いはずなのに…
しかし、ウーノは優しく微笑むのみだった。

「それは……ドクターだけじゃなく、私もまたなのはさんの事が好きになったからです。
だからこそ私は貴女にも付いて行けるのです。ささ、そろそろ落ち着いて下さいな。
奥様がその様ではお子様も不安になってしまいますわ。」
「そ…そうだね…。」

 とりあえずなのはは落ち着いたが、この後も何かの拍子で情緒不安定になるのかもしれない。
その時なのはを落ち着かせる事が出来るのはウーノだけだ。頑張れウーノ。負けるなウーノ。
君こそは世界の希望だ。


 ちなみに、百合っぽい健康診断は今でも行われているそうな。

                        おしまい

208 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/16(日) 23:15:37 ID:D8HHPAeg
全然悪鬼でも狂乱でもありませんね…。後半のウーノは殆ど空気だしorz

実は、ウルトラファイトに「悪鬼ウーの狂乱」ってサブタイトルの回がありましてね…
それをタイトルだけパロってウーノを題材に何かやろうと考えていたんですけど
内容が中々思い付きませんでね…なのはをどうするか? を巡ってジェイルとウーノが
マジバトル(ただしプロレスで)とかも考えてたんですけどw

209 名無しさん@魔法少女 :2009/08/17(月) 21:34:21 ID:puYr.l66
>>208
なんか偉いことなのかエロイことなのかよくわからんがとりあえず
なのは×ウーノもありだと思える今日この頃w
GJした

210 亜流 :2009/08/18(火) 01:57:29 ID:h2bKYLkE
投下行きます。
土〜日曜に投下予定でしたが、色々あって遅れました。


一応注意事項

・当分非エロです。
・ユーノ×アルトです。ユーアルと略するとアルフと区別つかない・・・
・細かいところを捏造してますが、本編には特に影響はありません。
・一人称が交代するごとに話数が進みます。
・モノローグとかくどいですが勘弁してください。
・NGワード(ピポーン)『こんなはずじゃなかったふたり。』

211 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 01:58:41 ID:h2bKYLkE
「確か六課宿舎がアースラにあったとき、廊下ですれ違ってご挨拶したはず……ですよね?」
「は、はい! そうです!」
「よかった……お会いしてご挨拶も交わしたはずなのに、忘れててすみませんでした」
「いいいいえいえ!? あたしみたいな下っ端陸士のことをお見知り置き下さっただけでも光栄ですっ」
アルトさんは恐縮したのか、いきなりブンと頭を下げる。
しかし勢い余ったのか、頭をハンドルのクラクションのところにぶつけてしまった。
プッと鳴るホーンの音と共に、額からゴンという景気のいい音がした。
見てみると、ぶつけたところが少し赤くなっている。
ぶつけた衝撃で急ハンドルにならなかったのは不幸中の幸いかもしれない。
「だ……大丈夫ですか? 治療魔法、かけますか?」
「ぁ痛たた……へ、平気です」
ベルトを弛めて近づこうとするのを彼女に手で制される。
そうは言うけど、額を押さえた状態で涙目になっていたら説得力が無い。
っていうか片手でハンドル操作は危ない。
「それに、この程度のことでスクライア司書長のお手を煩わせたらあたしが周りから怒られます」
「いやあの……ボクはそこまで畏まられるほどの地位なんて無いですよ」
事実、ボクの使える権限なんて書庫業務以外では高が知れている。
管理職待遇ではあるけど、基本的に民間協力者なんでフットワークは軽くても権力と給与は多くない。
「でも、あたしが聞いたお話だとあのクロノ・ハラオウン提督とタメ口で話せる友人だとか」
「そりゃあまぁ、その……一応アイツとボクは10年来の付き合いですから」
あいつとは10年近くそうやって来たし、今更意識してもしょうがないとお互いに認識していた。

……それにしても。
「でも、アルトさんはどこからそんな話を聞いたんですか?」
やっぱりシャマルさんだろうか。
「えっとですね……六課時代、前所属が次元航行隊だったあたしの友人からです」
「なるほど」
出所はエイミィさんだな、きっと。
なぜか断言できる。
アルトさんの御友人がどこの艦の所属なのかは知らないけど。
「えっと……ここを右に曲がるっと」
交差点の標識を見て、アルトさんはモービルを減速させてウィンカーを出した。
ぐいっと大きく切られるハンドルを見て、ボクは慣性に備えるべく踏ん張ったが
しかし、予想していたような慣性力はあまり感じなかった。
雑に曲がったように見えて、彼女の運転技術は意外と上手い。
たぶんアクセルの踏み方が丁寧なんだ。

「あ、その……スクライア司書長にひとつお願いがあるのですが」
曲がりきったところで、不意にアルトさんが声をかけてきた。
「なんでしょうか」
「はい。あたしのことは『さん』付けじゃなくて、どうか呼び捨てでお願いします。
 子供達とかならまだいいんですけど、目上の方から言われるのはどうにも違和感が」
「いやあの、それはちょっと……ボクもそういうのは苦手でして」
ボクはまだ会って間もない人を呼び捨てできるような神経の太さは持ってない。
司書長に就任して随分経つけど、職場の部下に対して基本的には今でも『さん』付けで、
呼び捨てに出来るのはせいぜい同年代の古い友人達くらいだろうか。
「そうなんですか?」
「はい。でも、そのくせ名前で呼ばれることに対して全然違和感覚えないんですよ。
 我ながら難儀な性格してるなぁって、思うことがたまにあります」
アルトさんの問いに思わず苦笑いになる。
ボクはいつも『ユーノ君』『ユーノ』『司書長』と、名前か役職のみで呼ばれている。
『スクライア』で呼ばれることは公式の場や局内での資料依頼の場くらいだ。
「それじゃあ、スクライア司書長は全てのお知り合いに名前で呼ばせているんですか?」
「ええ。年下とか年上とか、名前で呼ばれることに関して特に意識したことはありません」
考えてみれば、母親のマネなのかヴィヴィオもボクのことを『ユーノくん』って呼んでいるけど
それに違和感を覚えないのも、そういった環境で長い間過ごしてきたせいなのかもしれない。

212 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 01:59:34 ID:h2bKYLkE
「とりあえずそういう事なので、ボクを呼ぶときは出来れば名前のほうでお願いします。
 それに、自分でこう言うのもなんですけど『スクライア司書長』って言いにくいですよね?」
別に今は公式の場というわけでもないし、彼女に対して命令権限もない。
それになにより、ああいう風に畏まられるのは苦手だ。
そんなボクの提案にアルトさんは慌てて、
「い、いえ! そんな事は……スクライア司書長、スクライア司書長、スクライアししょしょ……はぅ」
必死に否定しようと早口言葉みたいにまくし立てるものの、途中で噛んでしまったようだ。
失敗したといった感じの表情で顔をしかめ、小さく舌を出している。
その様子にボクは思わず吹き出して、
「遠慮することはありませんよ。さっきも言いましたけど、ボクは気になりませんから」
そう言うと彼女はうーんと唸るような声を出して、
「それじゃあ…考古学の先生ってことですから、間を取って『ユーノ先生』でいいですか?」
「いいですよ。ボクの知人の査察官もそう呼んできますし」
数少ない例外は今でもたまに『フェレットもどき』と呼ぶアイツくらいだろう。
「わかりました。それじゃあユーノ先生も、あたしのことを『アルト』って呼び捨てで」
「いやあの、その……あー、努力します」
「むー……それズルいです」
「す、すみません……」
膨れっ面になるアルトさんに対し、ボクは頬を掻いて苦笑するしかなかった。


そんなやり取りしているうちに、ボクの家があるマンションの前に着いた。
ボクとアルトさんはシートベルトを外し、モービルから降りた。
彼女のほうは運転していて身体が凝ったのか、腕を伸ばして伸びをしている。
「今日は送っていただきまして、ありがとうございます」
「いえ、お構いなく。でもシャマル先生のセリフじゃありませんが、無理はしたらダメですよ?
 週単位の連徹で仕事なんて、タフネスでならした武装局員でも引きますよフツー」
アルトさんは腕を組んだ姿勢で眉間にしわを寄せている。
毎度この手の話題は耳の痛い話ではあるけど、ボクはこのペースを落とす気はない。
今ボクが必死に働いているのは、自分で望んでやっていることだから。



 ◇



ボクはあの日以来、ひとつのジレンマを抱えていた。
シャマルさんを始めとする、色々な人に心配をかけるから無理をしてはいけないのはわかっている。
だけど、無理をしないとまともでいられる自信がなかった。
今も引きずっているなのはへの想いが、ボクから平常心を奪っているから―――


なのはにフラれた直後、ボクは意外とショックを感じていなかった。
半ば予想されていた答えが返ってきたから。
しかし、そのショックは自分でも予想しきれないほど大きかったんだと思う。
あの日の事を思い出す度、胃が痛んで吐き気や下痢といった症状が表れるようになった。
このままでは胃に穴が開くのも時間の問題かもしれない。
医者に診てもらわずとも、これがストレス性の神経症だというのは容易に見て取れた。
ボディーブローのようにじわじわと身体を蝕んでいくストレスの原因はとっくにわかっている。
放置して入院沙汰にならないように、ボクは策を練った。
要は、なのはのことを考えられないような状態にしておけばいいのだ。
ボクにとって一番手軽に出来そうだったのが、大量の仕事を抱えて忙殺されることだった。
だけど持ち前の持久力は負荷に比例して増えるわけじゃない。
事実、過剰なまでの疲労はボクの身体を違う意味で蝕んだ。
仕事中は精神面が落ち着くものの、疲労で繰り返し繰り返し倒れるようになったからだ。
それでもボクはこの状態をやめることが出来ず、ただひたすら働いた。
胃に穴が開きそうなストレスに苛まれるよりずっとマシだったから。
忙しさにかまけていれば、否が応でも辛いことを忘れていられる。
表情と心に仮面をかぶせられる。

213 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 02:00:29 ID:h2bKYLkE
ただ、最近では少しでもボクを休ませようとシャマルさんがあの手この手を使ってきた。
ドクターストップという名目で飛翔魔法の使用許可を出させないなんてのは序の口。
ある日ボクが仕事中に気絶して目を覚ますと、自宅のベッドの上だったことがあった。
管理人さんに話を聞いたところ、古くからの友人がボクを部屋に担ぎ込んだらしい。
そこから書庫に戻るまでの間は胃痛との戦いだったのは言うまでも無い。
それがシャマルさんの差し金だというのはすぐにわかった。
今ボクがここに居るのも、その延長だろう。

シャマルさんが糸を引いていることを知って以来、ボクも相応の対抗策を講じることにした。
策といっても、お向かえが来る前に目が覚めたら何も言わずエスケープするだけ。
間に合わなければ、その場はとりあえずおとなしくしておく。
そしてうまく書庫まで逃げ切れれば、後はひたすら篭城。
シャマルさんには書庫内に入るためのIDを発行してないので、中に入ればこっちのもの。
IDを発行することや入室の許可に関する権限には、基本的にボクが握っている。
これはボクが書庫内で揮える、数少ない権限のひとつだ。

これを突破する方法があるとすれば、既にIDを持った他の人間に代理を頼むことくらいだ。
たとえば、昔から会うことが多かったなのは。
彼女の娘のヴィヴィオに、騎士カリムに近い聖王教会関係者など。
教会関係者は干渉してこないし、ヴィヴィオは舌先三寸で丸め込んでしまえばいい。
だけど、なのは相手ではそうはいかない。
たとえボクが何を言っても、問答無用で首根っこを掴んで書庫からボクを引き摺り出すだろう。
幸い教導官としての仕事が忙しいのか、なのはが出張ってきたことは今のところ一度も無い。
安心している反面、ボクへの関心が薄くなっているんじゃないかという疑念も湧いてくる。
でも、それを思うと胃の痛みが強くなるからあえて考えない。
逆に言えば、それさえ考えなければボクの精神状態は概ね平和だった。

それでも時折、仕事をしている時に負の妄想が頭を過ぎって苛立ちを覚えることが何度かある。
そうなる度にいっそのこと何もかもぶちまけて楽になろうか、ということとか。
しかし、それはボクの人間関係の袋小路になる可能性が高かった。
周りに心配をかけてまで働く理由が『女の子にフラれたから』なんて知られたらどうなるか。
間違いなく周囲から軽蔑されるだろう。
きっと、なのはだって例外じゃない。
そう考えることでどうにか踏み止まれてはいたけど、今でも水際であることに変わりない。
このまま無駄な時間を過ごせば、いつかボクはストレスに押しつぶされて壊れるだろう。
それが明日なのか来年なのか、自分自身でもわからなかった。
でも、ボクは何があっても決して壊れてはいけない。
仕事に対する責任がある。
部下の司書たちに対する責任がある。
それになにより、ボクはなのはを支えなくちゃいけない。
彼女が辛そうにしていたら全て受け止める義務がある。
あの日以来、魔法を教えたことに対して責任を感じているから。
たとえなのはに思いが届かなくても、これだけは果たそうと思っている。
自分でも変な矛盾を抱えているのはわかっているが。

結局のところ、ボクの精神をギリギリまで支えているのはこれだけだった。
ただ、それも外因要素で話がこじれればあっという間に崩壊する。
そういう意味でボクが一番危惧しているのはアルフの存在だ。
彼女はたまに手伝いに来ることもあり、書庫の運営事情にはそこそこ詳しい。
忙しいからとか、生半可な言い訳は通用しない。
ましてや彼女にはあの日、なのはへ告白することを遠まわしに伝えてある。
うまく丸め込んで有耶無耶にしないと、すぐに感づかれる。
そして間をおかずに避けたかった事態へ発展するだろう。
悩みの種、という意味では先のジレンマ以上にボクの悩みの種だった。
うまく誤魔化し続けられれば、いつか記憶が風化して思い出になって解決するだろう。
だけど、このままいつまでもうまくいくとも思えない。
どうしたものだろうか。


―――っと、今はそんな事を考えている場合じゃなかった。
目の前の問題に対処しなくてはいけない。

214 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 02:01:32 ID:h2bKYLkE
アルトさんは元六課の人だから、迂闊に漏らせば知られたくない関係者に全て伝わる可能性がある。
ここは冷静に対処しなくてはいけない。
ボクは脳をフルに働かせ、この場を乗り切るための言い訳を口にした。

「でも、これがボクに与えられたやるべき仕事で、責任がありますから」
「あたしも無限書庫の忙しさはシャマル先生から何となくですが聞いています。
 ですが、少しはお休みになったほうがいいと思います。ユーノ先生は明らかに働き過ぎです」
「よく言われます」
なんだかいきなり雲行きが怪しくなってきた。
ボロを出す前に、強引にでも話を切り上げよう。
さも今気づいたかのようにボクは時計を見た。
「今日はもう遅いですし、お互いこの辺で解散しましょう」
「……わかりました。ユーノ先生、今日はこれで失礼いたします」
「今日は、どうもありがとうございました」
腕を解いて一礼した彼女に見送られ、ボクは自分の部屋に入ろうと踵を返した。
足は高層階に上がれるエレベータがあるフロアへと向かう。



「あ、あの……ユーノ先生」
「はい?」
不意にアルトさんに呼び止められた。
ボクは足を止めて何事も無いかように振り返ると、彼女がこっちを見ながら
自分の胸のところで両手を組み、何か言いたそうにモジモジしていた。
「なんでしょう?」
ボクが話を促すと、彼女はやや間をおいて口を開いた。
「あの、もしかしたら的外れなことを言ってしまうかもしれませんけど」
「?」
アルトさんの意味深な前置きに、ボクは首を傾げる。
「その……ユーノ先生が倒れるほど働くのは、失恋の辛さを忘れたいからなんでしょうか?」
「……っ!」



 ◇



部屋にたどり着いたボクは、シャワーもそこそこにカッターシャツとスラックスに
着替えたが、部屋の電気を消したまま身体をベッドに投げ出していた。
時刻はそろそろ真夜中だ。
いい加減起きてハイヤーを呼ぼうと思ったけど、どうも身体が気だるい。
と言うより、何もする気が起きない。
早く無限書庫に戻って仕事しなくちゃいけないのに、やけに気が重い。

『失恋の辛さを忘れたいからなんでしょうか?』

じっとしていると、アルトさんの言葉が頭の中で何度もリフレインする。
ボクは両手で顔を覆って目を閉じ、大きく溜息をついた。

―――どうして、わかったんだろう。

あの後、アルトさんとはあの場で別れた。
不意打ちを食らった形で、ボクは心の準備が出来ていなかった。
一応はぐらかしてはおいたけど、反応からもう既にバレてるかもしれない。
もう皆に話が伝わったんじゃないかと、気が気でなかった。

「……何か、小腹が空いたな」
不意に、お腹に物足りない感覚が差し込んだ。

215 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 02:02:50 ID:h2bKYLkE
考えてみれば昨日から何も口にしていない。
ボクは気分転換も兼ねて、空腹を満たそうとベッドから降りた。
そのままキッチンまで歩いて、冷蔵庫を開ける。
「……何もないや」
一人暮らしには不要と言っていいくらい大型の冷蔵庫には、以前から買い置き
しておいた、保存がきくゼリー状の栄養食品しか見当たらなかった。
ボクは扉を閉めた。

別に、貧に迫るほどお金がないというわけじゃない。
ここのところ家に帰らない日が多く、自炊する機会がなかったから材料に
なりそうな食材を買い込んでなかったからだ。
戸棚やカゴの中も探したけどレトルト食品すら見つからない。
仕方がないので、ボクはもう一度冷蔵庫の扉を開けて栄養食品を手に取ることにした。
一個ではお腹が足りそうにないから、適当に手近にあったものを二個取った。
そのうちの一個を掴み、容器のキャップをクルクルと回し取ってから
吸込口の部分をカリカリと咥える。

―――こうしてると、タバコを吸っているような気分になる。
ボク自身はタバコは吸わない人間だけど。

心の中で独りごち、溜息をついたボクはベッドに戻ろうとして振り返ると
ベランダに通じる窓から蒼い光が差し込んでいるのに気づいた。
ふと気になったボクは窓のところまで歩み寄ると、サッシに手をかけて
窓を開け放ち、広々としたベランダに降りた。
「わぁ……」
ボクは栄養食品の容器を咥えたまま、思わず感嘆の溜息を漏らした。
蒼々と輝くミッドの二つの月がボクを明るく照らしたからだ。
なんだか、久しぶりに美しいものを見たような気がする。
ボクは手すりに身体を預けると、ベランダから見える景色を眺めながら
ちゅーちゅーとゼリー状の中身を吸い上げ始めた。
合成甘味料の甘さがボクの疲れた脳を刺激していく。
「下は暖かくなってきたけど、ここはまだまだ寒いね」
服越しに身体に差し込んでくる寒気に、ボクはポツリと独りごちた。

都市部とは大きな山一つを隔てた、ベッドタウンと言える郊外の住宅地。
この部屋は一画にそびえ立つ、高層マンションの34階にある。
流石にこの高さになると、山の稜線越しから地上本部のビルが見えた。
視線を少しずらせば、海の水平線が見える。
快速レールウェイの始発駅が最寄駅で、地上本部駅まで約1時間ちょい。
仕事で連続で徹夜しなくちゃいけないような無理なスケジュールを立てなければ
ここから通勤だって出来るし、ザンクト・ヒルデ学院へのアクセスも良好。
近くには大型のショッピングセンターもあるから、買い物にも困らない。
決して安くはなかったけど、家族で暮らす事を考えたらいい買い物だと思う。
しかし、今となってはそれも夢のまた夢。

ボクは中身が出なくなった容器にキャップをして、もう一つの容器に口をつけた。
さっきのはライムのような味がしたけど、今度はチェリーのような味がした。
「チェリー……かぁ」
チェリー(さくらんぼ)とは、チェリーブロッサム=桜から取れる実。
桜はこの世界には存在しないけど、よく似た味の果実は昔から一般的にある。
そのことを知って以来、この味はボクになのはの事を連想させるようになった。
「なのは……」
ボクは容器をぐっと握り潰し、中のゼリーを一気に喉に流し込んだ。

―――この際、味なんかどうだっていい。
お腹が満たされれば、それでいいじゃないか。

ボクはもう一つの容器もキャップをして、部屋に戻るなりゴミ箱にそれを捨てた。
「そういえば、あといくつあったっけ……?」

216 こんなはずじゃなかったふたり。第6話 YUNO View :2009/08/18(火) 02:04:30 ID:h2bKYLkE
ふと在庫が気になったボクは、そう呟きながら三度冷蔵庫の扉を開けて
中に残っているストックの総数と味の種類を数え始めた。
「1、2、3……1、2、3、4、5、6、7、8、9……あはは」
ボクの口から乾いた笑い声が漏れた。
だって、おかしいでしょ?
全在庫のうち4分の3は、無理矢理流し込んだチェリー味だったんだから。

溜息をついたボクは扉を閉め、ポケットに入れておいた情報端末を取り出した。
「さて、当面の予定は……っと」
端末を操作し、スケジュール帳を開いたボクは直近の予定を調べた。
講演会とかロストロギアの鑑定とか、何か出かける予定があるようなら
その前日くらいは寝ておかないといけない。
徹夜続きでいつ寝てしまうかわからない状態では、人前には出られない。
「えっと……今週中は特になし」
つまり、向こう一週間は無限書庫に引きこもり決定。
「来週は……週明けにロストロギアのオークションっと」
そういえば去年の今頃にも行ったっけ。
前回の会場は郊外のホテル・アグスタだったけど、今回はミッドじゃなくて
第三管理世界ヴァイゼンのホテル・ウンゲホーアとなっている。
ここもホテル・アグスタと同じように、自然に囲まれた立地に建っているらしい。
というのも、仮に危険度の高いロストロギアが持ち込まれてそれが暴走しても
人口密度の高い都市部にすぐ被害が及ばないよう、交通の便が悪くてもこういった
辺鄙な場所が会場として選ばれる。


―――閑話休題。


時期も近いし、そろそろ主催側のほうから資料が届くはずだ。
資料請求に書庫の整理に加え、オークション主催者との打ち合わせが入る。
どうやら今週は忙しくなりそうだ。
今のボクにとっては、忙しいのは願ったり叶ったり。
すぐにでも書庫に戻って、仕事の進捗状況を確かめなきゃ。
そうと決まればぼーっとしている場合じゃない。
ボクは電話の受話器に手を伸ばし、馴染みのハイヤー会社の番号を叩いた。

217 亜流 :2009/08/18(火) 02:05:39 ID:h2bKYLkE
第6話ここまで。
まもなく第7話ですが、長いです。

218 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:08:17 ID:h2bKYLkE
ユーノ先生と医務室で初めて会ったあの日から、かれこれ一週間近く経った。
あの時目にした、失恋したあとの重いものを背負い込むようなユーノ先生の目はまさに
失恋した時のあたしの目そっくりで、なんというか……他人を見てる気がしなかった。
余計なお節介というのは覚悟で話がしたいと思ったあたしは、その翌日に顛末の報告を
兼ねて、シャマル先生にどうすればユーノ先生と会えるか思い切って聞いてみたものの
、あたしの期待に反してシャマル先生は残念そうに首を横に振った。

なんでも、最近までは連絡すれば誰でも面会に応じてたのに、ある日を堺に無限書庫に
引き篭ってしまい、主治医と言っても良いほど親しいシャマル先生ですら、働き過ぎで
倒れて書庫から担ぎ出される時以外会う事も出来ないって話を溜息混じりに聞かされた。
シャマル先生ですらそんな状況なんじゃ、ぶっちゃけ部外者でしかないあたしの話に
耳を傾けてくれる……わけないよね。



 ◇



今日はヴァイス先輩が朝から居ない事もあって、今日行う予定だったヘリの操縦訓練は
いつものように先輩とじゃなく、あたしより遅くに運輸部に配属された新人パイロット
との訓練になった。
よくよく考えると初めて先輩以外の人と組むことになるわけだけど、一応あたしだって
それなりに経験積んできたんだから、新人のカバーくらい楽勝だと思ってた。
でも、今日の事で自分は先輩に比べたら正直まだまだだって痛感させられちゃった。
初めて先輩と組んだ時は何事もなくあっさり終わったから、こういうのはそんなに心配
しなくてもどうにかなるものと思ってた、数時間前のあたしを叱りたい。
だって、今まで培ってきて染み付いた身体の動きとか感覚はなかなか自分の思った通り
に動いてくれないし、パートナーと呼吸を合わせなくちゃいけないのにうっかり先輩の
呼吸に合わせちゃった結果、失敗した事が何度かあっちゃったし。

先輩の凄さと自分の未熟さを痛感したあたしが軽くへこんでいる一方で、肝心の先輩は
どこに行ったのかと言うと、人質と一緒に市街地の一画へ立て篭もった武装テロ集団の
鎮圧の為に武装局員として地上部隊に出向してるみたい。
ちなみに、先輩からじゃなくてあたしの上司にあたる班長から聞いた話。
急な事だったからロクに連絡が行かなかったのはわかるけど、せめてあたしには一言で
いいから直接連絡してほしかったと思う。
でもこれってきっと、まだ諦め切れてないあたしのエゴなんだよね。
先輩と長い間パートナーとしてずっとやってきたと言っても、結局は仕事上での話。
個人的に密に連絡取るとか、プライベートに近い領域まで踏み込みあった事はない。
別にそこまで踏み込んでいかなくても、職場に行けば何時でも会えたから。
でも、これからもずっとお互い同じ場所にいられる保証はない。
恋人同士や夫婦じゃ無い以上、何時かは離れ離れになる日がやって来る。
その時になってから、先輩がいないと仕事が出来ないというのは非常に問題だと思う。
一人前のパイロットとしてやっていくために、そろそろ先輩から独り立ちしなきゃ。
未だに想いを引きずっている、過去の自分と決別する為にも。



結局、午前中予定してた訓練メニューを全部消化しきるのに予想以上の時間がかかった
事が影響して、パイロットスーツから内勤用の制服に着替え終わる頃にはお昼休みが
半分近く過ぎてしまっていた。
「あーあ……やっぱもうこんな並んでる。これじゃもうたいしたの残ってないよねぇ」
せっせと着替えを済ませて近場の食堂の入り口に着いたあたしは、目の前で延々と続く
長ーい行列を目にし、一人肩を落として溜息をついた。
こりゃもう良さ気なメニューはもう無理だろうなと半ば諦め、トボトボとした足取りで
長蛇の列に並ぼうとした矢先、ポケット内の通信端末が着信を知らせる為にブルブルと
震え出した。
「っとと……アレ?」
あたしは慌ててポケットの中から通信端末を取り出し、ひとまず発信者を確認しようと
サブディスプレイに目を落としたところで、その文字列に一瞬自分の目を疑った。

219 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:10:17 ID:h2bKYLkE
「……あたしに急用かな?」
端末のサブディスプレイのパネルには『シグナム副隊長』と表示されていた。

こちらから連絡することなんてないかなって放置してたけど、もう機動六課はないから
副隊長というのは後で修正しなきゃ……って、それどころじゃないって。

あたしは慌てて二つ折りになっている通信端末の匡体をパカッと開け、相手との回線を
開くボタンを押すと、半年前までは同じ機動六課所属だったシグナム副た……もとい、
シグナム空尉の顔が通信画面に表示された。
『ああ、やっと出たな』
ようやく回線が繋がった事で、画面の中のシグナム二尉が安堵の溜息を漏らした。
「すみません、ちょっとボーっとしてたので」
画面に向かって苦笑いしながら首根っこの後側を掻いていると、
『それで、今どこにいるのだ?』
「あ、えっと……第6食堂の前で列に並ぼうとしてたところです」
あたしは周りを見渡し、大部屋の入り口に掲げてあったプレートを確認した。
『集合までもうあまり時間がないぞ? 呑気に食事してる場合ではないと思うのだが』
「ぅえ?!」
唐突なシグナム二尉の言葉に、あたしは思わず驚愕の声を上げた。

この口ぶりだと、今から仕事が始まるみたい。
でも、一緒の仕事するようなスケジュールなんてなかったような……?

「すみません……何の話でしょうか?」
出来るだけ当たり障りの無いように尋ねてみると、シグナム二尉の額に皺が寄った。
『ヴァイスから話は聞いてないのか?』
「先輩ですか? 先輩は朝から――」
『テロ集団の鎮圧に駆り出されてるのだろう? その話は私も本人から聞いている』
シグナム二尉は『おまえは何を言っているんだ』と言わんばかりの表情でため息をつき、
胸の前で腕組みしていたのを解いて両手首を腰に当てた。

本人から……ってことは先輩だよね?
どういうことだろ。

「あたしは今日は居ない事に気づいて、詳しくは直属の班長に聞いて知りました」
『ん、本人からではないのか?』
そう答えるあたしの言葉に、シグナム二尉は小首を傾げた。
多分、あたしも先輩から直接聞いているものだって思ってたのかな。
「はい。今日は何も話しはしてないです」
なんだったら、今あたしのお腹の中で鳴いてる虫を証人にしてもいい。
『一言もか? メールとかもチェックしたのだろうな』
「メールですか? ちょっと待ってください」
あたしは端末の動作タスクを増やし、メールの受信ボックスの中を確認してみた
ものの、今日の時点で自分宛のメールは特に届いてないみたいだった。
「やっぱり無い……ですね」
『では、ヴァイスから申し送りは受けてないというのだな?』
「多分そういうことになりますね」
そう結論付けると、シグナム二尉は溜息をついて頭の横に指を当てた。
『まったく、あの慌て者が……あれほど連絡しておけと言っておいたはずなんだが』
あたしはどう反応していいのか分からず苦笑いをしていると、
『それでは急ですまないんだが……私から改めてアルトに頼みたいことがある』
『あたしにですか?』
そう尋ねると、シグナム二尉は『ああ』と言ってこくんと頷いた。
『今日明日にかけて行われる、とあるミッションにヴァイスの代わりにメンバーとして
 参加してほしい』
「その……あたしにですか?」
突然の出動要請に、あたしはマヌケな声を出しながらピッと自分を指差した。
『我々時空管理局局員の活動において、治安維持の優先度が高い事は知ってるだろう?
 ヴァイスに声をかけたのはこちらのほうが先だったんだが、ミッション内容の都合で
 比較されると、向こうのほうが優先度が高かったのでな……』
そう言ってシグナム二尉は残念そうに肩を落とし、小さくため息を漏らした。

220 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:12:06 ID:h2bKYLkE

えーっと……ちょっと整理してみよ。
つまり、そのミッションにおいて何かしら重要そうな役を先輩にやってもらおうと声を
かけたのはいいけど、直前になって優先度の高い出動要請がかかっちゃったと。
で、要請はあくまでも他部署からの要請だから、一応断ることも可能なはず。
でも結局先輩は先に声のかかった、ある意味では身内と言っていいシグナム二尉の依頼
じゃなくて、セオリー通りに武装隊からの出動要請を受諾してしまったと。

リイン曹長曰く『説明不足さ』な点をあたしの勝手な脳内補完で補ってみた感じでは
多分こんなんだと思うけど、これが正しいとしてもまだいくつか疑問が残る。
「先輩の代わりって……あたしは武装局員でもなんでもないですよ?」
あたしもそうだけど、運輸部に所属しているのは基本的に非武装局員。
武装局員の資格も持っている先輩は、ある意味例外中の例外。
シグナム二尉が先輩に直接頼んだってことは、イコール武装局員が必要な任務であって、
あたしが魔導師じゃないことを知ってる人なら当然この疑問にたどり着くはず。
その事をあたしが口にすると、シグナム二尉はブンブンと首を振った。
『いや、必要だったのはヘリパイとしてであって、スナイパーとしてではないのだ』
「ヘリのパイロットとして……ですか?」
『ああ』
それだったら、確かにあたしでも代理が務まるかもしれないけど……。
「でもあの、あたしまだB級しか持ってなくて……先輩の代わりになるかどうか」

真っ先に先輩が呼ばれるくらいの任務なら、あたしなんてお呼びじゃないと思う。
A級ライセンスを持ってるだけあって、先輩の操縦技術はかなり凄い。
BとAの差はかなり大きく、専門職としてやっていくにはいずれ取らなくちゃならない。
あたしもいつかA級を取ろうと頑張ってるけど、なかなかうまくいかないんだよね。

そんなあたしの心中を察したのか、シグナム二尉は軽く笑みを浮かべて、
『ミッションの性格上、機動飛行及び戦闘飛行が可能な腕利きのパイロットを必要と
 している事は否定しないが、その点に関しては私は全く問題ないと思っている。
 それに、代役としてアルトを推薦してきたのは他でもないヴァイスなんだぞ?』
「先輩がですか?」
シグナム二尉は『うむ』と小さく頷き、言葉を続けていく。
『お前のパイロットとしての腕は、私も我が家の末っ子からなかなか良いという評判を
 聞いているし、それにあのヴァイスから直々に指名されてるのだ。少しは自分の実力
 に自信を持ってもいいと思うぞ』
「あはは……ども、ありがとうございます」
先輩やリイン曹長からの又聞きとは言え、シグナム二尉にパイロットとしての腕を
褒められてしまったあたしは、なんとなく照れくさいやらなんやらで頬を掻いた。

この話に興味が湧いてきたあたしは、ミッションの内容を詳しく聞いてみたいと思った
けど、昼休み明けからの予定を思い出してハッとなった。
「あの……実は、班長に提出してある訓練メニューが明日まで続く予定になってまして」
『その点は心配ない。もし参加してもらえるのなら、その辺りのことに関しては状況を
 きちんと詳しく確認したうえで、私が運輸部のほうにうまく話を通しておく』
「ふぇ?」
問題ないと自信満々に答えるシグナム二尉に、あたしは首をかしげた。

週が開けた時に班長へ提出したアクションアイテム(行動予定表)によれば、明日まで
機動ヘリの操縦に関するプラクティス(実地訓練)が続くことになっている。
操縦のシミュレーターと違って、実地となれば色々物資を動かさなくちゃいけないから
実戦とは程度の差はあれどうしてもコストがかかってしまう。
訓練を中断する場合、班長の許可に加えて他の局員や総務と調整が必要になるんだけど
六課みたいな身内の部隊じゃない今、一存で指揮命令に口出し出来る権限あるのかな?

シグナム二尉はあたしの疑問を察してくれたのか、少し考える様子を見せて口を開いた。
『詳しくは後で説明する。機密の関係上、通信回線上ではちょっと口に出来ないのだ』
機密と言われ、あたしは慌てて周囲をキョロキョロと見渡した。

221 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:14:11 ID:h2bKYLkE

今はもう全く使わなくなっちゃったけど、あたしだって通信士の資格及び経験の保持者。
多くの人が往来する食堂手前の通路で通信を受けたから、今のを誰かに聴かれなかったか
心配で条件反射的に周囲を警戒しちゃったけど、行列を成していた人の群れはいつの間に
全て食堂の中に吸い込まれていた後だった。
出口から出てくる人はまだまばらで、入口からはそれなりに離れている。
とりあえず、今は安全。
安堵したあたしは、思わずため息を漏らした。
それなりに暗号化されているとは言え、一般的に使用されている通常回線で会話してたら
機密も何もないと思うけど、最低限気を使っておいたほうがいいとは思う。

ドタバタと慌てふためいたあたしに、シグナム二尉は不敵な笑みを浮かべると、
『他人に知られても支障のない範囲で話すが、今回のミッションは本局で比較的上層の
 役職の方が立案された計画で、その方が私を部隊の最高責任者として指名したのだ。
 だから、いざという時には私が出向いてその方の名前を出せば多少の無理は通せる』
「でも、それでしたら先輩を引き留めておくことも出来そうですよね」
その話が本当なら、この件に関しては佐官以上の権限を持ってる事になるはずですよ?
もし先輩がセオリー通りの優先度に気使っただけだったら、簡単に解決しそうですけど。
ついポロリと出てきたあたしの疑問に、
『……理由はよくわからないが、本人の希望だ』
先程までとは打って変わって渋い表情になり、残念そうな口調でそう言った。

先輩の希望……かぁ。
いったい何だろ。
入局以来それなりにお世話になったって先輩が言ってた、シグナム二尉からの頼みを
蹴っちゃうくらいなんだからそれなりの理由なんだと思うけど。

一瞬ちょっと妙な空気になり、気まずくなったあたしは話を変えるべく口を開いた。
「それで、そのミッションの事なんですけど……何か大きな機動作戦とかなんですか?』
重い話なのかなと考えるあたしの言葉に、シグナム二尉は首を振って、
『いや、ミッションと言っても内戦の仲裁に行くとか、戦闘が発生するものではない。
 どちらかと言えば特別警戒体制時における警らといった具合の、日常業務に若干毛が
 生えたような、少々特殊な部類のものと考えてもらいたい』
そう言って一旦時計を確認するような仕種で視線を逸らし、真剣な表情で再び口を開いた。
『それでアルトはこの件、引き受けて貰えるだろうか? 別の管理世界での一泊二日の
 予定になるから、もし何かアルトのほうで都合が悪いなら断ってくれて構わない。
 ただ予定が今日の夕方出発という事もあって、もう間もなく直前ミーティングが始まる。
 急で申し訳ないが、引き受けるにせよ断るにせよ、出来れば今すぐ返事が欲しい』

シグナム二尉は断ってもいいと言ったけど、あたしの心はすでに決まっていた。
もう先輩から独り立ちしなくちゃって誓ったばかりだし、一人前になるためにはもっと
経験を積まないと、って思ってたところで指名がきたんだから、これを見送る手はない。
意を決したあたしは、ゆっくりと口を開いた。

「その件、お引き受けします」



 ◇



ミーティングが行われる場所を教えて貰い、二言三言の挨拶を交わして通信回線を切った
あたしは、その場で踵を返して急ぎ打合せが行われる第一ミーティングルームに向かった。
正直お腹はペコペコで仕方なかったけど、今から食堂で食べる余裕なんかない。
仕方ないのであたしは道すがら売店に立ち寄り、そこで買った惣菜パン二個を口の中に
押し込んでから紙パックのジュースで強引に喉に流し込むことにした。
「もぐもぐ…んぐ……あむ、んむ……はふーっ」
ひとまずお腹が落ち着いたあたしは、時計に目をやって経過時間を計算してみた。
「んー……だいたい、1分ちょいかなぁ」
予想よりも少し時間がかかっていたみたいで、あたしの額にシワが寄った。

222 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:16:13 ID:h2bKYLkE

えーっと、あれは何時の頃だっけ……あ、そうそう。
あたしが先輩やスバル、ルキノ達と一緒に六課に配属されてしばらく経った頃かな。
ある日、昼食で一緒になった先輩が物凄いペースで食べていたのをあたしが注意したら

『この先パイロットで食ってくんなら、飯くらい何時でも1分以内で食えるようになれ。
 仮に時間内に全部食えなくても、満腹にならない程度に食えてりゃそれで充分だ』

って言ってたのを今でも覚えている。
その時はいくらなんでも慌て過ぎじゃあって思ってたけど、こうして先輩と一緒に
パイロットとして働いてみて、あたしは最近ようやくその意味を理解した。
ヘリのパイロットって緊急性の高い任務で呼ばれる事が多いから、そういう時はもし休憩中
だろうと食事中だろうと、任務があればすぐにでも来いって呼び出される。
そういえば前に先輩が話してくれた体験談では、作戦待機中の場合だと1秒を争わなくちゃ
いけないくらいシビアな話になるって言ってたっけ。

「……っと、いっけない。急がなきゃ」
ボーっとしていたことに気づいたあたしは服についたパン屑を払い、食べたモノのゴミを
片付けてから改めて駆け足でブリーフィングルームに向かった。



ようやく部屋についたあたしが扉を開けると、部屋の隅に置かれたホワイトボードの脇に
あたしのよく知る顔―――航空隊の制服に身を包んだシグナム二尉が立っていた。
「遅れてすみませんでした。運輸部第2班所属、アルト・クラエッタ一等陸士です」
あたしは開けた扉を閉め、慌てて礼を執った。
「ああ、構わない。上の方々の事情で開始時間が30分ほど延びたからな」
微動だにしないあたしをシグナム二尉は手で制すると、着席を促した。
「失礼します」
礼を解いて空いてる席を目で探していると、奥のほうで見覚えのある女の子と目があった。
所属している班は違うけど同じ運輸部に在籍する同期で、顔見知り程度には面識がある。
彼女は自分の隣が開いているよ、といった具合にイスを指差していたので、あたしは彼女の
厚意に甘えることにして、そさくさと歩み寄って着席した。
その様子を伺っていたシグナム二尉は、あたしが腰を落ち着けた頃合を見て各部屋に据付て
ある時計を一瞥し、おもむろに口を開いた。
「間もなく本件の打合せの為に本局から担当者が来られる。なお、ミーティング終了後には
 すぐ行動開始になるので、もし手洗い等済ませてない者は今のうちに行っておくように」
その呼びかけに反応する人は誰もいなく、シーンとしていた。
あたしは水分を取ったばかりで正直言って不安だけど、今のところ出そうな気配なし。
シグナム二尉は周りを見渡してウンと頷くと、それからゆっくり口を開いた。
「ではまずミーティングの前に、今回のミッションの概要を私の知る範囲で説明しておく。
 基本路線として、本局ロストロギア情報関連部署に所属されている民間協力者の護衛及び
 護送という事になっていて、日程的には概ね一泊二日の予定だ」
凛とした声がミーティングルームに響き渡った。

ロストロギア情報関連の部署に所属している民間協力者の護送……かぁ。

言われてみれば、この周辺に座っている人達の着ている制服は地上とか海とか大きな枠組み
においての所属は全然違うけど、皆あたしと同じく前線のバックアップ部署のものばかり。
現に、隣の女の子含め運輸部では顔見知り程度の局員も何人かいる。
前のほうを見てみると、主に航空武装隊所属の局員と思われる人の制服姿もあった。

「先方はロストロギアに関して多くの知識を有している故、それを狙い犯罪者に襲撃される
 可能性がある。我々はそれの抑止または阻止のために動くことになるだろう」
そう言ってシグナム二尉は手持ちの資料に目を落とすと、
「詳しいスケジュール等に関しては、追って本局から来られる方からの話がある。現段階で
 私が言えるのは、今回の任務の概略と主たる責任者の発表だけだ」
シグナム二尉の目があたしのほうをチラリと一瞥した。

223 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:18:22 ID:h2bKYLkE
「護衛チーム及び部隊全般の行動に関しては、私が総責任者として指揮を執ることになって
 いる。護送チームは本来、運輸部所属のヴァイス・グランセニック曹長に班長を担当して
 もらう予定になっていたが、本日未明に発生した武装テロ鎮圧の要員として武装隊から
 出動要請がかかった為に来られなくなってしまった。そういう訳で、彼からの推薦された
 のもあったため、同部署に所属するアルト・クラエッタ一等陸士に代役を頼む事にした」
「って、ええぇぇぇええ?!」
あまりにと言えばあまりにも唐突な話に、あたしは素っ頓狂な声を上げた。
「どうした、クラエッタ一等陸士」
シグナム二尉が不思議そうな表情で尋ねてくる。
「だ、だだだだって聞いてないですよそんな話!?」
今の言い回しだと、あたしに護送チームのリーダーやれという風にしか聞こえませんよ?
「すまない。護衛対象の安全を考えると、先程の通信でそれを言うのは少々憚られてな」
そこを持ち出されては何も言え無く、感情の行き場を無くしたあたしは渋々と着席した。
「そういう訳で、護送を担当する他のスタッフは彼女の指示に従って行動するように。
 もしこの配置に関して質問及び異論等があるようなら、私のほうで受け付けるぞ」
そう言って周囲を見回すシグナム二尉に対して、特に口を挟む人間はいなかった。

ま、普通はそうなんだよね。
相手が現場ではトップクラスの権限がある尉官ということに加え、あのどこか他人には
有無言わせない迫力がある相手に対して意見なんて、逆立ちしたって無理に決まってる。
でも、シグナム二尉って見た目の凛々しさやいかにも騎士といった感じの言動のせいで
どこか近寄りがたい雰囲気持ってるけど、意外と気さくに話せる人なんだよね。
と言ってもあたしがシグナム二尉の人と成りを詳しく知った環境が、身内で固まってて
割と気楽に過ごせていた機動六課だったから、あんましアテにならないと思うけど。

「……よし。それでは、今から皆にも改めて任務の概略を説明する」
皆の沈黙を了承と判断したのか、シグナム二尉はホワイトボード用の黒ペンを手に取り
、真剣な表情で何かを書きはじめた。

なんだか思いっきり場に流されてる気もするけど、今更どうこう言っても仕方ないか。
どのみち任務に参加するって決めたんだし、六課に居た時みたいな大事件なんて
そうそう起こらない……よね?

自分で不安を煽ってちょっぴりブルーになったあたしを尻目に、ようやく何か書き終えて
一息ついたシグナム二尉は、手近のコンソールを叩いて空間プロジェクタを操作した。
空間投影用の光学デバイスが、どこかの森林地帯らしき映像を虚空に映し出す。
よく見ると画面の端にはアウトバーンと思われる太い道路が走っていて、そこから例の
森林地帯の中へ延びていく道路が分岐している。
観光用と思われる峠道みたいなグネグネとした道路を道なりに進むと結構開けた場所に
出られるみたいで、水源に使えそうなくらい大きな湖畔が顔を覗かせていた。
「これが舞台となる地域の3Dマップだ。見ての通り、鬱蒼とした森林に覆われている。
 私の手持ちの資料によれば、ここはミッドチルダではなく第3管理世界ヴァイゼンの
 アレナというところで、現地ではいわゆる避暑や観光の地として有名な地域らしい」

あ、ここってアレナだったんだ……懐かしい名前だなぁ。
あたしの生まれ故郷の世界では結構有名な場所で、10年以上前に家族でキャンプ旅行に
行ったことを覚えている。
あの頃はまだ自分が男の子だと思い込んでて、木によじ登ったり泥だらけで走り回ったり
兄さん達や弟達に混じって素っ裸で湖を泳いだり……今となっては恥ずかしい思い出。

あたしが子供の頃の思い出に浸ってる間に、シグナム二尉は空間プロジェクタを操作して
いたのか3Dマップの表示がカラフルに変化していた。
道路が分岐する付近の開けた区域が赤い点線で、そこからかなり離れたあの湖畔がある
区域が青い点線で囲まれていて、なおかつ二つの区域の間が白い点線で結ばれている。
「ん?」
よく見ると白い点線は一直線で結ばれていて、マップ上の道なりに描かれてない。
最短距離を通ることを考えると、これは空路で行くということなのかな?
「この赤と青の点線区間を結ぶ白い点線が今回の任務において肝となる要人護送ルートだ。
 次元港から赤い点線の区間までは大型輸送モービルで向かう事になるが、この白の点線
 のルートに関しては機動ヘリを使用して、最短距離を駆け抜ける予定になっている」

224 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:20:22 ID:h2bKYLkE
今の説明に、あたしを含めた全てのメンバーが一瞬ざわついた。

あの、いくらなんでもちょっと仰々しくないですか?
ゆりかご決戦でリイン曹長を現場に送り届けたときみたいな状況だったらまだしも。

「皆もマップを見て想像は付くと思うが、この地域は生い茂る植物や背の高い樹木の多い
 こともあって見通しが悪い。仮に地上ルートでゲリラ的に奇襲された場合、戦闘の局面
 次第では今回の護衛対象がドサクサに紛れて犯罪者達に拉致される可能性があるからだ」
シグナム二尉は脅すような論調で話したものの、突然フッと口元を緩めた。
「無論、犯罪者相手に遅れをとる我々ではないが、リスクは少ないに越した事はない」
一呼吸置いたシグナム二尉は、先程自分で書き込んだホワイトボードを前面まで動かした。
ホワイトボードには四角い物体から4本の棒が生えている図と、丸と棒線だけで描いた
人間っぽい落書きみたいなのが幾つかあった。
「判りにくくてすまない。私に絵心が無いゆえに、こういうポンチな絵しか描けなかった」
そう言って軽く頭を下げたシグナム二尉は、胸ポケットから伸縮可能な指示棒らしき物を
取りだ……そうとしてどこかで引っ掛かっているのか、取り出すのに苦戦していた。
「む……」
何度引っ張っても先っぽの部分がひたすらニョキニョキ伸びるだけで、グリップ部分が
なかなか出てこない状態になっている。
このちょっとしたハプニングに、周囲から笑いを堪える鼻息と感嘆の溜息が漏れた。
ちなみに、あたしは溜息派。

「ここに挿しておいたのは失敗だったな」
ようやくポケットから取り出せた安堵感からか、シグナム二尉は軽くため息をつくと
一度中途半端に伸びた棒を手の平で押し込んで縮め、改めて先っぽを摘んで引き伸ばした。
「とりあえず説明すると、これは隊形を下から見上げた仰瞰図だ。四角形に棒が生えた
 のは機動ヘリのつもりで、この丸と棒の絵は私を始めとする航空武装隊のつもりだ」

……あ、あの髭みたいなのってヘリのブレードなんだ。

シグナム二尉のその後の説明で、あたしはようやく隊形の概要が掴めてきた。
えっと、多分機動ヘリを中心として前方以外をすべてカバーする布陣。
「基本的には左右、後方、上側はツーマンセルで担当してもらう。下側は地対空砲撃で
 狙撃されることを想定している故、私を含めて6人以上で担当することになるだろう」
どんなに少なく見積もっても、総勢14人。
今この部屋には30人近い局員が詰めているから、交替要員やその他スタッフの人数を
考慮すると、だいたい16〜7人くらいの武装局員が護衛に当たる計算ってとこかな。
なのはさんやフェイトさんが付くぐらいだから、案外これくらいが妥当なのかも。

……でも、よくよく考えたらシグナム二尉も実力はなのはさん達と肉薄してるらしいし
こんな大所帯を引き連れなくても、お一人で充分のような気がします。
六課時代に誰が一番強いかで色々あったことを思い出し、あたしは内心苦笑いになった。



この後遅れてやって来た本局の人というのは、本局の次元航行隊に所属してる男性の
執務官さんで、フェイトさんやティアナとは違う部署の人だった。
てっきり企画した上層部の人が来ると思っていたあたしは、念のためにどういう事か
ミーティングが終わった後でこっそりシグナム二尉に聞いてみたものの、
「実は、彼はその方の代理なのだ。と言うのも、色々事情があってその方の名前が外に
 漏れると少々まずい事になる可能性があって明かせないのだ」
と言われてしまい、結局誰だったのか聞けずじまいになってしまった。
何か機密があるらしいミッションの事前ミーティングは、その全貌を明かされないまま
その執務官の男性から正式発表されたプランを元に粛々と進められていった。
当初の予定通り、シグナム二尉は護衛チームの班長兼部隊の総責任者という事になった
ため、今回のミッションにおいては部隊長という事になっている。
そしてコールサインはシグナム二尉……もとい、部隊長が『イージス000』になり、
あたしが『イージス100』に決まった。
3ケタ目の数字は自分が所属するチームを示す親番号で、下2ケタの数字は自分が所属
しているチームでの識別番号となる子番号、という比較的単純なルールで決まった。

225 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:22:42 ID:h2bKYLkE

部隊のトップたるシグナム部隊長が00っていうのは当然として、なぜか護送チームの
班長にされてしまったあたしの子番号もそれにならって00になっている。
まだまだぺーぺーに近い一等陸士のあたしが班長だなんて……くすぐったいなぁ。

まぁそれはおいといて、重要なところはここから。
本格的にミーティングが始まって護送する人の詳細を知り、あたしは今日ほど偶然って
恐ろしいってことを感じた日はなかった、と思いたくなるくらい驚いた。
これほどの絶好のチャンスってもう二度と来ないかもしれない。
だって、ミッションの大筋は先にシグナム二尉……もとい、部隊長が説明してた通りの
内容だったんだけど、その護衛をする相手っていうのがあの―――



 ◇



シグナム部隊長の率いる護衛・護送部隊は、今回の護衛対象の方一緒に次元航行隊の
パトロール船に同乗して、今日明日滞在予定の第3管理世界『ヴァイゼン』に着いた。
護衛対象の方が乗るモービルに同乗するシグナム部隊長以外の護衛チーム、あたしの
管轄の護送チーム、両チームの予備として控えている予備チームは、すぐさまチーム
ごとに人輸送用大型モービルに乗り込み、今回あたしがパイロットとして運用予定の
ヘリが待機しているはずの、現地常駐の地上部隊との合流地点に向かった。


「この辺りの景色って、こんなんだったかな……?」
窓から見える故郷の景色はあたしの中の記憶と幾ばくか食い違っていて、何となしに
感じた違和感は、もう5年以上帰省していないあたしに時間の経過を覚えさせる。
「……って、いけないいけない」
つい感傷に浸りそうになったあたしは頭を振り、気を取り直して今回あたしが運用する
予定になっている、機動ヘリのスペックシートに目を落とした。

今回の任務で使用する機動ヘリは『JF505式』という旧世代のもので、機動六課時代に
先輩とあたしが使ってた『JF704式』はこれの4世代くらい後の後継モデル。
実際に乗ってからその後で知ったことだけど、JF7シリーズが高性能と言われてる由縁は
その高い運動性能もさることながら、JF5シリーズと違って自動操縦をインテリジェント
デバイスの制御下に置くことが出来る機能が標準で備わっているからなんだって。
前に先輩がやってたみたいに空中で狙撃が出来たり、許可が出るかどうかはさておいて
やろうと思えば陸戦魔導師でも空戦魔導師との空中戦が可能らしいんだけど、あたしは
先輩と違ってデバイスなんて持って無いし、別になくてもいいけどね。
どちらかと言えば余計な機能だし。
でも、ヨーコントロール方式が704式と同じノーター型とはいえ、製造された世代の差
からかスペックを見る限り、数字上では機動性能が明らかに劣っている。
とはいえ、配備されてそこそこ年月が経ってることもあって保守部品や整備ノウハウが
たくさんあるみたいだし、メンテナンスがやりやすそうな点では助かるかな。

その他細かいところはJF704式とほぼ同じっぽいし、特に問題はないと思ったあたしは
今度はミッションのスケジュール確認を始めた。



そのまま30分くらい荷台の上で揺られ、現地常駐の地上部隊と合流する予定の地点に
着いたあたしは、向こうのメカニックの人との引き継ぎもそこそこに、エンジンの起動
キーを受け取るなり飛行前の最終点検を自分の視点で始めた。
やっぱ、わかる範囲内については自分で点検しておきたいからね。

ぐるっと見て回った感じ、とりあえず機体そのものに目立った損傷は無し。
「機体損傷確認よーし」
声出し、指差し確認は整備士として基本中の基本……今はパイロットだけど。

226 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:24:38 ID:h2bKYLkE

続けて機体に添えつけられているタラップをよじ登り、エンジン−ローター間のギア用
のオイルタンクをカバーを外し、フタを開けて中から確認用の試棒を引っ張りあげる。
「油量及びオイルの汚れ、問題なーし」
とりあえず油脂系の安全は確認出来たので、あたしはコックピットドアを開けて右側の
機長席に座り、コックピットの真ん中に設置されているコンソール群にぽつんと置かれた
鍵穴に起動キーを差し込んでヘリのメインシステムを起動させる。
『System Start.』
起動ボイスと共に全システムが立ち上がり、それに合わせて各計器類が反応し始めた。
電源投入時のセルフテストの結果は問題ないようなので、あたしは燃料計を見た。
「ほぼ……満タンって感じかな」
これだけ燃料があれば、今日明日の運行には問題ないと思う。
水素相手じゃさすがに直接見れないから、燃料の確認はメーターを信じるしかない。

今度は駆動系を見るため、窓越しに見えるメインローターのブレードをじっと見ながら
左手でピッチレバーをしっかり握り、そのまま何度も上げたり下げたりしてみる。
「……うん。おっけーおっけー」
あたしの動きに合わせてブレード角が真っ直ぐ(フルダウン)になったり、目一杯
傾いたり(フルアップ)してくれるし、操縦桿を倒せばその方向に追従して傾くのが
確認出来る。
ラダーペダルはヨーモーメントをコントロールするスラスターのスロットルとして
使われていて、エンジンが止まってる状態じゃ検証不可能だから後回し。

最後に後部キャビンに鎮座している座席のシートベルトの確認のため、コックピットを
立ったあたしは座席の前に立ち、ベルトを握って何回も素早くかつ強めに引っ張った。
「シートベルトも正常っと」
何回引っ張っても途中で引っかかって止まるし、手を離せばちゃんと巻き戻っていくから
ベルトのロック式巻き取り装置は問題なく動いてると思う。
ここの機構が死んでると安全装置のプリテンショナーやフォースリミッターはまともに
動いてくれないから、今日みたいな使用においては動作確認がかかせない。

「ま、こんなもんかなぁ」
とりあえず、現段階のチェックでは問題無さそうな感じ。
本来ならここで動力部や機構部をバラして、きちんと隅々まで機体の状態を点検して
おきたいんだけど、いくら人手があってもそこまでやると時間かかるんだよね。
「ミッション開始までにそこまでやれるほどの時間ないし、しょうがないかなぁ」
ひとまずこちらのメカニックの人の腕を信用することにしたあたしは、一息つこうと
いったんヘリから降りることにした。



「部隊長、護送ヘリの一般点検作業が終了しました」
あたしは直立不動の姿勢で礼を執り、一般点検が終わったことを報告した。
「……ああ、アルトか。ご苦労だった」
シグナム部隊長はいつでも現場に出られるように、といった具合に武装隊甲冑のアンダー
ウェアを着ていた。
でも、肝心の自身がどこか上の空というか……何か考え込んでいるような感じがする。
「あの……シグナム部隊長、考え事ですか?」
礼を解いて思い切って訊ねてみると、シグナム部隊長は意外そうな表情になった。
「む……そういう風に見えたか」
「はい」
あたしが正直に答えると、小さく苦笑いを漏らして、
「我々の家族にも関わる私事だ。仕事場に持ち込んでしまったか……すまなかった」
「あ、いえ……そんな」
ぺこりと頭を下げたシグナム部隊長に、あたしは思わず両手を振って慌てた。
だって、あたしも先輩の件があるから人のこと言えないし。

「ところで、ヘリはいつでも出られる状態なのか?」
「えっと……まだ燃料や油脂系や電装系とかの簡単な点検だけで、エンジンを動かした
 状態での動作とかは見てないです」
状況を説明すると、シグナム部隊長は急にあきれたような表情を見せた。

227 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:26:47 ID:h2bKYLkE
「一応ヘリ関連はお前がトップなのだから、点検くらい部下に任せても良いのだぞ?」
「……あ」
指摘された意味に気づき、あたしは今思い出したような声を出した。
いつもの癖で自然にやってたけど、あたしって一応それくらいの権限あるんだっけ。
「あ、でもあれは自分が操縦するわけですから、自分で確かめておきたいかなーって」
慌てて弁明をするあたしを、シグナム部隊長はため息と手で制した。
「出発の時刻までまだ時間はあるし、スケジュール通りに事が運ぶのならばそれでいい」
「すみませんでした」
「いや……そういうところがあるからこそ、私はお前を班長として据え置いたのだからな」
その意味深な言葉に、あたしは頭を下げるのを忘れて首をかしげた。
「確かに、今回の班長選抜に関して身内びいきがあることは否定しない。ついこの間まで
 機動六課で同じ釜の飯を食べ、あのヴァイスの元で色々なものを吸収してきたであろう
 お前になら安心してこの要人護送という仕事を任せられそうだ、と思ったのはある」
「でも、あたしは人を引っ張っていくとかそんな――」
「話は最後まで聞け」
そんな才能は無い、と言おうとしてシグナム部隊長に言葉を遮られた。
「これは私個人の考えであり、全てのケースに当てはまるわけではないのは承知してる」
シグナム部隊長はそう前置きすると、
「私としては、上に立つ者は部下に対して自らお手本を示してほしいと常に考えている。
 たとえそれがドライな仕事だけの仲間であっても、仲の良い友人同士であってもだ」
「はぁ」
あたしはまだ今ひとつ要領が飲み込めず、小さく生返事を返した。
「何せ六課の時とは違い、今日明日で解散することが決まっている急ごしらえの部隊だ。
 変に現役の者を連れて来ると、所属していた部署の日常業務に支障が出て問題になる
 可能性も有るし、裏方を統率した経験があるフリーの仕官というのはなかなかいない」
「裏方の統率経験者……って八神二佐のような方ですね」
パッと頭に浮かんだあたしの例えに、シグナム部隊長は『うむ』と頷いて、
「そこで私が出した結論が、部下を仕事で引っ張っていけるだけのスキルを持っている
 のに加えてなおかつ人当たりが良く、気がつくと仲間の輪の中心にいるような人物を
 班のリーダーとして据えてみたらどうか……というわけなのだ」
「それが先輩であり、あたしだって事なんですか?」
「ああ。最初はスキルを優先していて、かつ自分が良く知っていて信用に足る人物を……
 と考えてヴァイスを選んだが、私はどうやらアイツにフラレてしまったようだ」
そう言ってシグナム部隊長はフフッと自虐気味に笑った。
何気に出た『フラレてしまった』の言葉が、ズンとあたしの心に圧し掛かる。
「だが勘違いするなよ? 推薦があったとは言え、人選の基準で妥協したつもりはない。
 だからお前は何も気にせず、大手を振って自分の班を指揮すればいい」
多分さっきの言葉で心に負荷がかかった時に顔に出ちゃってたのを、シグナム部隊長に
実際に上に立った時の不安から来るものと勘違いされてしまったみたい。
でも、確かに今のとは別にあたしにはその手の不安もあった。
「仮にあたしに相応の能力があったとして、部下となっている皆はそれだけでついてきて
 くれるんでしょうか?」
自信の無さから生まれた言葉に、シグナム部隊長は少し考えるそぶりを見せると、
「ふむ……100%の保証は出来ないが、私の周りに一人それを実現出来た者がいるからな」
シグナム部隊長はそう口にすると、何かを決心したように頷いた。
「よし、この際良い機会だ。参考になるものがあるだろうし、彼をお前に紹介するとしよう」
未だに戸惑っているあたしをよそに、何かを確認するかのように後ろを振り返った。
その視線の先には、金髪系の栗色の長髪を薄緑色のリボンで束ねた特徴的な後姿があった。
「実は、今回の護送対象は私の古い友人でな……彼は全くの0から部署を構築して、今から
 数年ほど前に己の実力とその人当たりで全ての部下を纏め上げた、私が理想と考えている
 モデルケースを体現しきった男だ」
そう言って自身の副官と話をしている、今回の護衛対象で本局のロストロギア情報に関する
情報を管理する無限書庫の司書長さんである男性―――ユーノ・スクライア先生に声をかけた。

「あー、取り込み中済まない。今日明日乗ってもらうヘリのパイロットを紹介したいのだが」



 ◇

228 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:29:11 ID:h2bKYLkE
前を見渡せば、夕焼けでどこまでも紅く染められた雲一つない広い空。
下の地面を見下ろせば、青々と密林の如く生い茂っている木々。
耳を澄ませてみれば、聴こえてくるのは唸るエンジン音とブレードが空気を叩く音。

今回のミッションは要人護送という事もあり、機動ヘリの操縦桿を握りしめるあたしの
右手は緊張しているせいかいつも以上に力が入ってしまう。


輸送部でいつものようにしていた二人一組の訓練と違い、今日は一人で操縦している。
護送対象のユーノ先生を除いて、隣のコパイシートはおろか後部キャビンの座席にすら
余人はいない。
同じ班のチームメイトはこのヘリの整備が主な仕事なので、こうやって飛んで移動して
いる間は空港からの道のりと同じように大型輸送モービルで追いかけてきてるはず。
シグナム部隊長を始めとする航空武装隊の方々は、当初の予定通りヘリの周辺で隊形を
組んでついてきているから、事実上あたしとユーノ先生はこの狭い空間に二人っきりだ。

『イージス000よりイージス100へ。状況を報告されたし』
不意に、装着したインカムのスピーカーからシグナム部隊長の声が風切音と共に響いた。
定期報告の要請がきたみたいなので、あたしは思考を一時中断して計器に注目した。

高度、速力、共に予定通りのペースで巡航中。
メインローター用エンジンの回転数、前方後方共に異常無し。
油温、水温、タービン内部圧力、後部スラスター出力、共に正常範囲内。
ドップラーレーダー、特に反応は無し。
気象衛星からのデータ、低気圧や突風の情報無し。
制御システムのリアルタイムセルフテストは……今のところ、特に異常無し。
コンディション、オールグリーンっと。

「こちらイージス100。現在、特に異常ありません」
あたしは上にどけていたインカムマイクを口に近づけ、状況を報告した。
『こちらイージス000、了解した。そのまま安全運転で頼むぞ』
「イージス100からイージス000へ、任務了解しました。オーバー」
定期報告の通信の終了を告げてマイクを口元から遠ざけたあたしは、バックミラーを
調整して後部席に座っているユーノ先生をそっと見やった。
ユーノ先生は明日の仕事の準備に余念がないのか、資料と思われる紙の束をまるで
憎ったらしい相手を睨みつけるかのような表情で眺めている。


シグナム部隊長に紹介され、振り向いた先にあったあたしの顔を見て何だかもの凄く
気まずそうな渋い顔になったユーノ先生に対し『なんだ、知り合いか?』とシグナム
部隊長が不思議そうな表情で尋ねてきたので、あたしとユーノ先生はまるでお互いに
申合わせておいたかのように、ぎこちない挨拶を交わし合うことになった。

ユーノ先生がそんな顔をしちゃう原因は……多分アレ。
本人から聞いたわけじゃないから断定は出来ないんだけど、あたしが先週ユーノ先生が
失恋からくる傷心でブルーになってるということをダイレクトに突いちゃったから。
あたしが思うに、きっとユーノ先生はシャマル先生を始めとした身内の人達にも自分の
おかれている状況を隠していて、あたしとうっかり口を聞いたらその弾みで内緒にして
いることが他の人に漏れるかもって考えているんじゃないかな。

ヘリの中でユーノ先生とふたりっきりの状況下、あたしとしては話したいことが山ほど
あるんだけど、今は気軽に話を切り出せそうな雰囲気じゃなかった。
なんていうかこう……ユーノ先生におもいっきり避けられているっていうか。
何故そう思うのかってと言われると……たとえば今ユーノ先生が読んでいる資料の束。
時々自動操縦にしてチラチラ様子を伺っただけでしか見てないけど、それでも全く同じ
ページっぽいところを、さっきから二度三度どころかもう5回くらい読んでいるを確認
出来た。
誤字脱字のチェックにしてはしつこ過ぎる気がしなくもないし、熟読して内容の確認を
するにしては読むのが何か早過ぎる気がする。

229 こんなはずじゃなかったふたり。第7話 ALTO View :2009/08/18(火) 02:32:02 ID:h2bKYLkE
もしかしたら、読むフリだけしてちゃんと読んでないんじゃないかなって。
可能性として考えられるのは、真剣に仕事しているフリをしていればあたしからの声を
遮ることが出来るからじゃないかなって思うんだけど、あたしが思い違いをしてるって
可能性も完全には否定出来ない。

……うーん、どうしよ?


結局、あたしは現地の宿泊先兼目的地であるホテルに到着するまでの間、何一つとして
ユーノ先生と言葉を交わすことは出来なかった。



 ◇



ヘリが現地に到着し、部隊のメンバーが全員合流したのを確認したあたしは、自分の管轄
である護送チームのメンバーを全員集め、いつでも飛べるよう総がかりでメンテナンスに
入った。
昼間のうちは不慣れな事もあってギクシャクしていたけど、手や顔が油まれになるうちに
皆とすっかり打ち解け合い、その流れで一緒に夕食を取ったり、同性のスタッフと一緒に
仮設のシャワールームでシャワーも浴びたりした。
「みんな、先に上がってるね」
『あ、はーい。お疲れ様でーす』
ようやくその日の汗や汚れを全部洗い流し終え、着替えを済ませて仮設シャワールームを
後にしたあたしは、気分転換と夕涼みを兼ねて外に散歩に出かけることにした。
ホテルの周辺で警備の任務に就いている護衛チームと違って、あたし含めた護送チームは
明日まで仕事がないため、キャンプ周辺を散歩する程度の自由行動は許されていた。
「あ……ここって結構涼しいかも」
クラナガンと違って自然が多く、初夏とは言えまだまだ気温が低いみたい。
おかげで、シャワー上がりの火照った身体を冷ますのにはちょうど良い冷房になった。


観光地だけあって街の灯かりが無いこともあって、満天の星空が広がっている。
しばらく歩き続けて、ようやくそのことに気がついたあたしは立ち止まって空を見上げた。
「わぁ……」
夜空に広がっている綺麗な光景に、あたしは思わず感嘆の息を漏らした。
地上本部周辺は基本的に夜でも明るく、なかなかこういったのは見られない。
今のうちに目に焼き付けておこうとしばらく見上げ続けていたものの、だんだん首が痛く
なったあたしは、首すじを揉みほぐそうと頭を真っ正面に戻した。
「……ん?」
視線が下がった刹那、あたしは視界に見覚えのある人影が通り過ぎていくのを捉えた。
「今通り過ぎてった人……ユーノ先生?」

230 亜流 :2009/08/18(火) 02:35:01 ID:h2bKYLkE
以上です。
次で話のヤマが一つ終わります

<チラシ裏>

宿題になってたユーノ×セイン×ヴィヴィオを完成させたいです

</チラシ裏>

231 名無しさん@魔法少女 :2009/08/18(火) 19:37:06 ID:OHssh1Zc
投下させていただきます。

・全4レス
・SS後日談、オリジナル色強め
・シグナム無双、バトルメイン
・エロなし
・ウーノ、トーレ、クアットロのファンの方、ごめんなさい

232 紫炎剣客奇憚 ACT.01 2/4 :2009/08/18(火) 19:37:58 ID:OHssh1Zc
「クアットロ、私が追っ手の足を止める。その隙に逃げろ……いいな?」
「トーレ姉様、でもそれでは……」
 歩み出た長身をシグナムは見上げた。見上げる距離まで無造作に近付いていた。
 脱走者が一人、ナンバーズのトーレがシグナムの前にそびえていた。そのしなやかな体躯が今は、シグナムには難攻不落の城砦にも感じる。彼女は相手に不退転の決意を読み取った。
 その背後で、よろよろと姉の背へ手を伸べるのが、同じくナンバーズのクワットロ。特徴的な丸眼鏡が形良い鼻からずり落ち、憔悴しきった顔で不安げに視線を彷徨わせいている。
 トーレは収監時の拘束具を着ていたが、魔法処理された拘束ベルトが無残にも引き千切られている。その背後で地面にへたりこむクアットロは、全身を毛布にくるんでいた。
「いいから逃げろ。逃げるんだ、クアットロ! ……ほう、強いな」
 腰に手を当て嘆息を零して、トーレがシグナムを前に目を細めた。
 はからずもシグナムは、全く同じ感想をトーレに対して抱いていた。報告にあったスペックよりも、眼前に佇む戦闘機人は強い……肌を粟立たせるプレッシャーが、無言でそう告げていた。
 シグナムは半ば無駄と知りつつ、警告を与えた。
「主はやての命により、お前達二人を保護する。悪いようにはしない、一緒に戻ろう」
 主を第一と奉じるシグナムには解る。解るつもりだった。ジェイル=スカリエッティの死が、目の前の二人にとってどれだけショックだったかを。悪いようにはしない……その言葉に偽りなく、持てる権限の全てを駆使して善処するつもりだった。
 だが、トーレは悟ったような寂しい笑みに唇を歪めた。
 シグナムは対峙するトーレの瞳を真っ直ぐ見詰めた。交差する視線が互いの念を相手へと伝える。激突は必定であると、悲痛なまでに清冽なトーレの目が訴えていた。
「二人? では駄目だ。やるしかない……走れっ、クアットロ!」
 言い終わらぬうちにトーレが光の羽根を纏う。それは明日へと舞い飛ぶ翼ではなく、眼前の敵を切り裂く刃。
 シグナムは意を決してレヴァンティンを構え直すと、胸の疼痛を心の手で押さえて言い放った。
「抵抗するのであれば、容赦はしない……剣の騎士シグナム、参る」
 凛として、清々と。静謐に燃え滾るシグナムの血潮に呼応して、レヴァンティンが刀身に注ぐ雨を蒸発させて水煙をあげる。
 ひとたび対すると決めれば、シグナムに迷いはなかった。ただ、しんしんと身を切り心を刻む……それは切なさ。眼前の敵は、トーレは覚悟を決めている。姉にならって命を賭し、捨石となって妹を逃がすつもりだ。
 そのことを悟らせぬよう、トーレが吼える。その気勢に気圧されることなくシグナムは地を蹴った。

233 紫炎剣客奇憚 ACT.01 4/4 :2009/08/18(火) 19:38:44 ID:OHssh1Zc
 降りしきる雨が、闘争の余熱をシグナムから奪ってゆく。闘いの愉悦も興奮も、全てが虚しさへと転じてゆく。それでも己の義務を果すため、シグナムは最後の一人へと歩を進める。強敵と書いて友と呼べる、トーレの身体を両手に抱きながら。
「もう逃げられんぞ。せめてお前だけでも無事に……むっ」
 半裸で尻を大地に擦りながら後ずさる、クアットロの身体の異変にシグナムは気付いた。
 下腹部が大きく膨らんでいる。
 シグナムの注視する目に気付くや、まるで己の命より大事な物を庇うようにクアットロが身を翻した。シグナムに背を向け両手で下腹部を覆い、肩越しに射るような視線を投じてくる。
 二人? では駄目だ。やるしかない……トーレの言葉をシグナムは理解した。
 二人ではなく、逃亡者は三人だったのだ。
 同時に、嘗て機動六課で轡を並べた仲間達の言葉が脳裏を過ぎる。今ではJS事件として語られる災厄の元凶、ジェイル=スカリエッティが戦闘機人達に残した悪夢の芽を。それは全て、母体に悪影響がないように処理された筈だった。
「……いつからだ?」
「ひっ! あ、あのお方が、ドクターが亡くなってからすぐお腹が急激に……」
「違う、いつからだと……私達の目を、いつからすり抜けていたのかと聞いている」
 怯えるクアットロが身を硬くして縮こまった。弱まる雨に混じる雷光が、シグナムの痩身を映し出す。姉を倒し我が子を脅かす、その姿はさぞかし恐ろしかろうとシグナムは思った。
 だが、それが手心を加える理由にはならない。
「ナンバーズが全員、堕胎処置を受けるときに……ウーノ姉様が管理局のデータを書き換えて」
 油断だったとシグナムは溜息を一つ。身重の体を考えれば、逃げ足の遅さにも説明がつく。
 JS事件はその規模故に誰もが解決に必死となり、その反動で事後処理が僅かに綻んだのだろう。僅かに、確かに。だが、ナンバーズの長姉にとって、その僅かな隙で充分だったのだ。針に糸を通すような緻密さで、ウーノは囚われの身で能力を制限されながら、情報操作をやってのけたのだった。
「それが……いや、その子がスカリエッティの」
「違うっ! 違うわ、違うの……最初はそうだった、ドクターそのものだった」
 襲い来る脱力感と戦いながら言葉を紡ぐ、シグナムの手にトーレが重かった。死して尚、最後の好敵手に訴えてくる思念を確かに感じる。
 震えながらクアットロは、切々と途切れ途切れに呟いた。
「最初は、あの方だった、けど……だんだん私の中で違うモノに、新しいモノに育っていったの」
 眼鏡の奥に大粒の涙を溜めながら、クアットロが身を切るような声を搾り出す。
「時々動くの……ここから出して、って。私、どうしていいか解らなくて、姉様に相談したら……」
 そこにもう、ナンバーズの四番体の姿はなかった。冷血で残忍なクアットロはいなかった。
「……思わぬ強敵に手こずり、逃がしてしまうとはな」
 シグナムはトーレを抱いたまま、踵を返してクアットロに背を向けた。
 何が起こったのか解らず、呆けたままボロボロと泣き出すクアットロ。
「恐らく辺境に逃げたか? 取り逃がした責は私が負うとしよう」
 雨が止んで、夜風が雲に切れ間を作った。差し込む月明かりが、剣の騎士の背中を照らす。
「どこかの片田舎で、新しい命が生まれる……我が主はやてが、それを許さぬ筈がない」
 それだけ言い残すと、シグナムは地を蹴った。颯爽と華奢な身が月夜へと舞い上がる。
 その手に抱かれたもの言わぬ好敵手が、空の夜気と妹の無事に安堵するように軽くなった。

 ――シグナムと《宿業の子》が再会するのは、これより三年後の初夏だった。

234 紫炎剣客奇憚 ACT.01 1/4 :2009/08/18(火) 19:40:10 ID:OHssh1Zc
 JS事件収束より時はうつろい季節はめぐり……冬。
 ジェイル=スカリエッティが軌道拘置所にて自殺した。
 ヴォルケンリッターが一人、剣の騎士シグナム。彼女が主はやてに、脱走したナンバーズを追うよう懇願されたのは、事件が発覚してより少し後だった。
 当局側は気付けなかった。JS事件の捜査に関して非協力的だった、三人のナンバーズ……一騎当千の戦闘機人達が、スカリエッティの死を契機に一致団結して脱走していたなどと。
 そう、脱走して"いた"のだ……今や過去形なのだと、シグナムは奥歯を噛み締める。
 ナンバーズ長姉、ウーノのIS(インヒューレントスキル)である《フローレス・セクレタリー》がもたらすロジックトラップが、事件に対する初動を鈍らせていた。己の全てを振り絞って妹達を逃がし、ウーノはスカリエッティの後を追い命を絶った。
 時空管理局は後手に回らざるを得ず、その対応は遅かった。だが……
 ――遅過ぎはしない。
 そう心に結んで、シグナムは雨天の闇夜を引き裂き空を馳せた。
 不思議と、圧倒的な時間的アドバンテージ――高レベルの魔導士や戦闘機人にとって、半日という時間は永遠にも等しい――があるにも関わらず、トーレとクアットロの逃げ足は遅く鈍かった。
 慌てて後を追うシグナムが、容易にその痕跡を発見し、隠れる場所を突き止められる程に。
 軌道拘置所の眼下に広がる大地の、深い森の海に脱走者は潜んでいた。シグナムはすぐに目標の潜伏する山小屋を見つけて中空に停止する。
「妙だ……何故逃げない? 半日あればもう、察知不能な距離に逃げ切れる筈だが」
 独りごちてシグナムは、足元の小さな建物を見下ろす。丸太で組んだ簡素な山小屋が、雨の夜に温かな明かりを灯している。それはおおよそ、人ならざる逃走者には似つかわしくない光景にも思えた。
 だが、その温もりは誰にでも許されるのだと、シグナムは己の分身を構える。そう、誰にでも安住の地が、安らげる場所が許される……例えば、自分のような守護騎士システムの産物でも。そしてそれは、戦闘機人でも同じだった。
 ただし、罪を償い贖って生きる意志があれば。
 シグナムは構えたレヴァンティンから剣気を解放し、自らの存在を周囲に発散した。追っ手として放たれた自分が、敵である二人の戦闘機人を捉えたことを夜空に静かに宣誓する。それは騎士としての彼女の流儀だった。
 雨音を時折雷鳴が遮る中、シグナムの闘気に応える様に山小屋の扉が開け放たれた。
 シグナムは油断無くレヴァンティンを構えながら、静かに大地へと降り立った。

235 紫炎剣客奇憚 ACT.01 3/4 :2009/08/18(火) 19:41:00 ID:OHssh1Zc
 自在に天を駆け、自由に宙を舞う二人が大地を踏み締める。まるで、互いに望まぬ戦いで空を汚さぬように。
 遠雷の音を聞きながらシグナムは、まるで輪舞を踊るようにトーレと斬り結んだ。
 斬り、払い、突く。その合間に無手の体術を捌き、いなし、避けてかわす。トーレは向けられる切っ先を紙一重で回避し、その何割かに身を引き裂かれながらも……蹴りを繰り出し、拳を突き出してくる。気迫に満ちたそれは何度もシグナムを掠め、ゆらめく光の羽根が剃刀のように騎士甲冑を溶断して肌を切った。
「これほどの腕を持ちながら……惜しい。何故に?」
 シグナムは問うた。その間もせわしく、繰り出される連撃をよけながらステップを踏む。
「既に我が身、我が命……惜しいとは思わない。言葉は不用っ」
 トーレの攻勢が加速する。二人は雨の闇夜に稲光で陰影を刻んで、常軌を逸したスピードでぶつかり合った。その身体を光が包み、接触の度に激しく火花を散らして血と汗を噴き上げる。
 トーレのIS、《ライドインパルス》が限界を超えて発動し、その負荷に全身から悲鳴を叫ばせて……それでもトーレは、静かに微笑んでいた。その顔にシグナムは、鏡写しの自分を見る。
 シグナムもまた、命を懸けた死合に言い知れぬ興奮と高揚感を自覚していた。
 直近に落雷が轟いた。その眩い光に互いの姿を見て、シグナムとトーレは全力で削り合い潰し合う。既に言葉を必要としない両者は、たった一つの単純で明快な理に支配されていた。
 ――すなわち、どちらがより強いか。とちらがより、強い想いを秘めているか。
「フッ、できるな……できれば空で会いたかった」
「同感だ。今なら間に合う、と言っても無駄か」
 トーレの全身に散りばめられた光の翼が、一瞬消失した。否、一箇所に集まった。爆光の十二翼を煌かせて、トーレが全身全霊で拳を繰り出す。その一撃をレヴァンティンで受け止める、シグナムの足が大地を大きく抉った。
 押されている。相手が切り札を切ってきた。そう察するや、シグナムは瞳を見開き勝負に出る。
「レヴァンティン! カートリッジ、リロードッ!」
「Jawohl Nachladen!」
 レヴァンティンが魔力を凝縮したカートリッジを立て続けに飲み込んだ。
 シグナムは両手で支える相棒から離した左手を翳す。魔力光が紫炎を漲らせて集束し、その手に剣の鞘を現出させた。
 驚愕に瞳孔を縮めるトーレを気迫で圧して押し返すと、シグナムは鞘をレヴァンティンの柄に接続する。次々と排莢されたカートリッジが宙を舞い、その最初の一つが地に転がるより速く……ボーゲンフォルムへと変形したレヴァンティンの零距離射撃がトーレを穿った。
 シグナムの思惟が、意思が、闘志が――哀しみがトーレを貫いた。
 身体の中心を貫き天へと昇る光に引っ張られて、トーレの長身が一瞬だけ空へと還った。闇夜で豪雨で、それでも空で……確かに空で命を散らして、やがて重力につかまる。シグナムはレヴァンティンを鞘から分離させるや納剣して、落下するトーレへ両手を広げた。
「……いい、勝負だった、な。シグナム」
 ああ、と短く応えてシグナムは好敵手を抱きしめる。その冷たい身体から、無情にも雨と死が体温を奪っていった。
「クアットロは……ちゃんと逃げたか? 腹黒ぶってても、あいつは臆病で弱虫だからな」
 ちらりとシグナムは視線を、トーレの背後へと放る。
 毛布をはだけさせた下着姿のクアットロは、地面にへたりこんで竦んでいた。
「まんまと逃げられたようだ。私一人での追跡は、これ以上は無理だな」
「そうか……そうか。では、私の、勝ちだ……ありがとう、シグナム」
 トーレが突然重くなった。その身を横に抱き上げ、シグナムは無言でクアットロへと歩み寄った。

236 名無しさん@魔法少女 :2009/08/18(火) 19:41:47 ID:OHssh1Zc
あわわ、順番に書き込んだはずが奇数話だけUPされなかった…
お目汚し申し訳ありませんです。

237 名無しさん@魔法少女 :2009/08/18(火) 22:53:42 ID:OcLEb67I
>>195
B・A氏乙です。
考えてみると、六課は敵役の重要人物を内部に引き入れてしまう格好になったような。
筋を通せとそれらしい事を言いながら、実はそれを意図していたと思うと、レジィも悪い奴やでぇ

>>236

シグさん主役でバトル物とかとっても楽しみだ。
弱気なクアも中々可愛い。

>>230
亜流氏GJ
アルト分を補給できて満足。
話もかなり練られているようでいい感じ。

238 名無しさん@魔法少女 :2009/08/19(水) 00:11:04 ID:fKndnGg2
亜流氏GJです
ユーノの鬱屈した感じがいいです

239 名無しさん@魔法少女 :2009/08/19(水) 01:11:34 ID:yR.hDpAU
GJ!!です。
保護か……テロに走った彼女らが正しいとは言わないが、
元はといえば管理局のTOPが諸悪の根源だからちょっと複雑。
そして、子供に関しては下手に情けをかけると平清盛のようにやられるぞw
ちゃんと、教育の過程で洗脳方面だろうが道徳観を植えつけなきゃ。

作品の感想とは別に気になった所を。
クアットロのISのシルバーカーテンならどうにかできるのではとちょっと思ってしまいました。

240 名無しさん@魔法少女 :2009/08/19(水) 17:17:36 ID:kmaM7gJw
>>239
GJ
綿密に組み立てられた話ってのはやっぱ読んでて面白いです。
未だに二人は自分の好きな人に引きずられている状態だけど、こっからどうやってユーノ×アルトに持っていけるのかが楽しみ。

241 240 :2009/08/19(水) 17:18:42 ID:kmaM7gJw
アンカミスったorz
>>239>>230

242 名無しさん@魔法少女 :2009/08/19(水) 21:41:16 ID:knWNF.qY
>>230
亜流氏良い仕事してるなぁ
次回も期待してますが、それ以上にミズハス祭りも期待してます。

243 名無しさん@魔法少女 :2009/08/20(木) 00:27:20 ID:LVB6g0oU
>>236
素晴らしい! 弱気気味なクアットロが可愛くて仕方ありません!
次回も楽しみにしています!

245 シロクジラ ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:50:52 ID:7WQpjzOQ
さて、お久しぶりの方すいません、初めての方こんにちは。
ユーノが実は女の子でクロノとくっつきました(超要約)の最終話、投下いたします。
NGはトリか「司書長は女の子」で。
鬱要素在ります。

246 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:51:46 ID:7WQpjzOQ
「司書長は女の子 その5」

夢とは脳が見る記憶の整理――本人が望まぬ光景すらも、再生してしまうもの。
だから、そんな夢を見ることもあるのだろう。それは遠いようで近い過去。失われたセピア色の風景。
五感が覚えている恐怖と痛み、怠惰と脳で弾ける白い色、快楽という感覚。
はぁはぁ、と荒い息づかい――アルコールのすえた匂い。
ぱんぱん、と腰を打ち付ける際に生じる肉が肉を叩く音。
少女の幼い肢体を、獣のように男が犯す。

「んぅ……あ、あ、あ……」

薄汚れた男が、清楚な少女を犯す、侵す、冒す。
口に生えた無精髭、目の下に出来た大きな隈、酒臭い吐息。
まるで薬物中毒患者の末路のような酷い顔だった。

対して少女は何処までも無表情に――まるで卵の殻に閉じこもる雛鳥のように――感情も何もかも閉ざして、人形のように抱かれていた。
煮える。煮える。煮える。暖められず腐ってしまう雛鳥の風情――腐敗した感情を抱え、重く、重く、重く――沈んでいく檻に閉じ込められた自我。
蜂蜜に似た色の金髪は長く伸ばされ、汗でびっしょりと背中に張り付いている。びくり、と男の腰が震えた。
厭で厭で仕方がない行為――半ば強制的な性行為――にも関わらず、犯し抜かれた少女の肉体は早熟に芽吹き、男をくわえ込んで離さない。
これが自分なのだと、穢れてしまった身体、汚されてしまった淡い夢を想って、少女は深い闇の其処で泣き叫び続ける。
無表情は張り子の仮面。何が悲しかったのかすらわからない。ただ、もう二度と救われることなんて無いのだと、壊れた真っ白な脳味噌が思う。
腰の動きがピッチを増し、やがて男根が幼い未発達な肉を貫きながら、灼熱の精を放った。
男は何時もそうするように娘の細い腰を掴み、子宮口にぴったりと亀頭を擦り付ける。
そのせいで少女の子宮には男の精液が溢れかえり、小さなお腹が膨らんでいた。
熱い、熱い、熱い――胎内に侵入する“入ってはいけないもの”。
これはいけないものだ。吐いてしまいたいくらい、気持ち悪い。
でも吐くとまた悲しそうな顔をするから、されるがままの人形でいよう。
この人は少女を撲ったりしないけど、行為が引き延ばされるのは苦痛だから。

嬉しいのか。

悲しいのか。

寂しいのか。

わからない。

ただどうしようもない現実に、絶望に溺れきった女の子は、何も映さぬ空虚な瞳で天井を見つめ、
意味を成さない呻き声を上げながら、どくどく注がれ続ける男の――実の父親の精子を受け止め続けた。
暗い、暗い、暗い――目も耳も潰れしまえばいいのに。遠くから聞こえた「ユーノは何処だ?」という声に、この後起こるであろうことがわかってしまう。
きっと、何もかも終わる。今は亡き妻と重ねて娘を犯すこの人も、彼に為すがままにされていた自分すらも。
もう、どうでもいい――――――終わるのならば、せめてこの苦しみが無くなるように。
無表情を保っていた仮面が、ぐにゃり、と歪んだ。

「やだよ、もう――――」

父の顔も、ぐにゃり、と――歪んでいる気がした。
何もかも歪んでいく――思い出も、記憶も、感情も、身体も、心も。




247 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:52:36 ID:7WQpjzOQ
何が現実で何が夢なのか――薄く儚い境界線。
悪夢という回廊から逃れる術はない――単純に目が醒めてしまう以外に。
深く閉じられていた目蓋を、一刻も早く悪夢から逃れたくて開きかけたけれど、
もしも、目を開けた先に、夢と代わり映えしない“現実”があったらどうしようと。


―――想像してしまった。


例えば、だ。今、ベッドの隣、背中をこっちに向けて寝息を立てている“彼”が、あの男だったら?
それは恐ろしい想像で、年相応に女性らしく成長した少女が泣いてしまうくらい、怖かった。
薄く灯が付いた寝室。ベッドの上に全裸で横たわる少女は、ただ恐怖に震えて涙を流した。
ポロポロと流れ続ける涙を、止める術なんて無いように思われ――

「ユーノ? どうしたんだ?」

少女、今年で十九歳になるユーノ・スクライアは、その声にひっ、と上擦った声を上げた。
もう何もかも恐ろしくて、どうしようもなく、これが悪夢の続きでないという確証が持てなくて、震える。
彼女の様子がおかしいことに気づいたのか、半裸の青年はユーノの肩に手を当てて、そっと顔を覗き込む。
塩辛く生温い雫で汚れた少女の顔は――ひどく脅えていた。視線は虚ろで、何か青年ではない誰かを見ているかのようだった。
彼に出来たのは、ユーノの身体をぎゅっと優しく抱き締めることだけだった。

「大丈夫だ……クロノ・ハラオウンは、此処にいるから」

「ク、ロ、ノ?」

「そうだ、僕だ。ずっと君を護るって誓ったから、君の側にずっと居る。
もう、怖い目にユーノを合わせたりなんかしないから、何も恐れなくて良いんだ――」

涙を流していた翡翠色の瞳が漸く、怯えの色を薄くしてクロノの顔を見た。
微笑みかけよう。少しでも長く彼女の傍にいよう。何故なら、クロノはユーノ・スクライアが大好きだから。
死が二人を別つまで。せめて、魂まで穢れていると、彼女が思わないように。
永遠というものが存在しなくても、愛し合ったことだけは死後に抱えていけると信じ、共に生きたい。

だから――力強くユーノを抱き締めて、翡翠の瞳を見つめた。照れくさいことなんて無いのに、ユーノが少し恥ずかしそうに呟いた。

「……キス、して。ボクに」

二人の唇はゆっくりと近づき――優しく触れ合った。
それだけが真実、そこに存在する証なのだと言わんばかり、甘く蕩かす接吻。
やがてそれは深い交わりとなり、舌と舌が絡む情熱的キスへ変わる。互いを求め合うが故の、切なさを埋めるが如き行為。
粘度の高い唾液と唾液がねちゃねちゃと口中で混ざり合い、二人の喉奥へ流れ込んで飲まれていく。
頭の中が真っ白になっていく感覚に、何処か惚けた表情で愛する人の顔を見た。
ぬちゃ、と舌が引き抜かれ、クロノは愛しそうに彼女の蜂蜜色の髪を梳き、ふっ、と表情を緩ませて言う。
同時に全裸のユーノの胸へ伸びる手が、最近、増量されて自己主張している乳房を撫でた。
敏感な性感帯の乳首を摘まれて、少女の声が上擦った。

「んぁっ!」

「しかしまあ、随分と育ったものだ」

火照り始めた肌。相変わらず感度も良いようで、少し触れただけでユーノは感じている。
これならば――と思ったクロノは、さらに乳肉を捏ねくり回し、いやらしく尖った乳首を抓り、引っ張る。

「んぅ……それ、は、クロノ、が、たくさん触るから……ひゃぅっ!」

蜜を溢れさせている秘所、その上部で充血し膨れている陰核を指で潰す。
青年は何処か黒い笑顔、愉悦を感じさせる笑みで、女性の性感帯を徹底的に責める。
その度にビクビクとユーノの身体は震え、「あぁ」と「うぅ」とも付かない喘ぎ声が上がった。

「僕のせい? 君がいやらしいだけだろう、こんな風に」

クロノが指を秘所へ伸ばすと、明らかな水音が立った。
少女の股ぐらは愛液で濡れ、太股は既にびしょびしょだ。ましてや二人の情事は一ヶ月ほどご無沙汰――クロノの仕事の都合だ――であり、
その間ユーノは貞淑に彼を待ち続け、クロノも溜めに溜めていたのだから、互いに幾ら交わっても足りると言うことはない。
ましてやふっくらと円熟した、雌の肢体を持った女性に成長したユーノにとって、クロノとの情交は肉欲を吐き出す数少ない機会だった。
だから、次に待っていた彼の言葉は、到底受け入れられるはずもない。

248 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:53:10 ID:7WQpjzOQ
「それとも、僕とするのが嫌になった? なら金輪際しないけど、それでも良いの?」

少女の目に、明らかな情欲の炎が灯った。翡翠色の瞳に爛々と妖しい光が宿り、吐息は熱く粘つく。
豊満と言って差し支えない乳房を、青年の胸板に押しつけながら、雄を刺激するように色気を孕んだ声で、呟いた。

「……いぢわる……ボクの身体をこんな風にした責任、取ってよ……」

「元々の素質だと思うけどね……まったく、我が儘なお姫様だ」

そう言うと、クロノはもう一度少女の唇を奪った。
甘く囁く代わりに宝石のようなユーノの瞳を見つめ、かつての告白から経った月日に思いを馳せる。
深く、吸い込まれそうなくらい澄んだ翡翠色の瞳。彼女が自らの過去を語り、クロノが初めて愛を交わしてから、もう四年も経った。
その間に、ユーノの本当の性別を巡って色々なことが起きた。フェイトは義兄の相手がいきなり決まったことに吃驚していたし、はやてはすんなりと受け入れた。
なのはは……何か思うところがあるようだったが、二人の幸せを祈る、と言って微笑んでくれた。
一番驚いたのは、母であるリンディ・ハラオウンがあっさりと、ユーノとの交際を認めてくれたことだった。

曰く、

『ずっと前から気づいたわ』

とのことだった。これにはクロノも吃驚したが、ユーノは何故か逆に納得していた。
何でも、

「リンディさんだけは誤魔化せなかった」

と思っていたらしい。よくわからないが、彼女がそう言うならそうなんだろう。
一番大変というか、苦労したのはエイミィにこのことを知られたときだった。
そりゃあもう、酷いものだった。茶化されすぎて、その前後の記憶が曖昧になってしまうくらいに。
ただまあ、

「ユーノ君が女の子で本ッ当に良かったねー、ボーイズラブとかに成らなくて良かったよ、クロノ君」

という台詞は覚えている。人をなんだと思っているんだ。

「お幸せにー」と気楽に言っていた彼女は、先月辺りに確か寿退職した。
相手は……アースラ時代の正規クルー、アレックスと言ったか。


スクライア族の長老とは直接会って、話を付けた。
幼い彼女を虐待していた父親は部族から追放され、今ではもうユーノのことを探している様子はない、と風の便りで聞いたそうだ。
交際自体も二人の中が清いとわかったのか、割合すぐに認めてくれた。
とにかく、万事――丸く収まった、のだろうか。

ユーノとの接吻を終えると、唾液の橋が唇と唇の間に出来た。
それを舌で舐め取り、少女の面影を残しながら女性へ変わりつつある、ユーノ・スクライアへ言った。
きっと、彼女なら頷いてくれるんだろう、と思いながら。

「……その、して、いいか。君も疲れているとは思うが――」

くすり、と微笑んだユーノは、ハニーブラウン、金に近い髪を揺らして。

「いいよ。いっぱい、いっぱいボクの中に出して。クロノの気持ちが嬉しいから」

249 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:53:56 ID:7WQpjzOQ
今度こそぎゅっと抱き締め、そそり立った肉の槍を、パクパクと男を心待ちにしている秘所へ一息に突き込んだ。
熱く絡みつく柔らかな膣壁、数の子天井の奥、快楽を引き出す腰の動き、愛液したたり男根に良く馴染む穴。
本当に――抱いてしまったら、これほど愛しくて淫らな雌はいない。

「んぁぁぁっ!」

「……くっ、相変わらず、すごい、な」

君の中は、と伝えると、真っ赤な顔でユーノは反論した。

「そ、んな、いきな、り突き入れる、なん……ふぁぁ!」

台詞では抗っているが、身体は正直。一息に突き込んだことで愛液が泡立ち、膣壁は雄を悦ばせようと収縮を繰り返す。
だからほんの少し腰を動かすだけで、その何倍もの力できゅうきゅうと少女の肉は男をくわえ込み、熱く反応する。
それでもクロノは腰を引き、一旦ピストンを止めてタメを作ると、疼く身体が切ないと顔で表している彼女の最深へ深く突き進む。
ずぶずぶと肉を蹂躙される感覚に、ユーノは切ない声を上げた。

「んひぃあぁぁぁ!」

「う、く……わかるか、ユーノ。お前の子宮口、下がって来てるぞ?」

何を言われているのかも理解出来ていないのか、彼女の横顔は惚けている。

「あ、あへぇ…………」

「子宮口も精子飲みたそうに開いてるじゃないか、いやらしい子宮だ」

ぴくぴくと快楽によって震え、蕩けていた表情が驚きに歪められる。
嗜虐の黒い悦びを灯したクロノの碧眼を見つめ、ちょっとした事実に気づいた。
そう、単純な事実――透視魔法の術式が、彼の両目に掛けられていることに。

「ぃやぁ! ボクの中見ないでぇ!」

きゅうっ、と肉の締まりが良くなる。その感覚にクロノは驚いたように呻き、高まる射精感に震えた。
ユーノの細い腰を掴み、指跡が付きそうな程の力引き寄せ、亀頭をぱっくりと開いた子宮口に打ち付ける。
食い付いてくる肉穴の感触が決定的だった。

「――出すぞ!」

「ん、まっ」

待てるはずもなく、下半身を突き出していた。
びゅるびゅると吐き出される白濁液、真っ白に染め上げられる子宮、収縮して精子を搾り取ろうとする雌の身体。
それを透視魔法でちょうど断面図の如く見ていたクロノは、通常のセックスでは得られない充実感、言い換えれば征服感を満たされていた。
己の子種を雌の胎内へ注ぎ込む様を直接見るのは、何とも言えない満足感を彼に与えたのだ。

250 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:54:34 ID:7WQpjzOQ
「ぁぁああ……」

透視魔法を解除してユーノの白い肌を見れば、何時もにもなく赤く火照っている。
あるいは、彼女も見られて興奮していたのだろうか。その表情を確認したクロノは、悪戯っぽく微笑んだ。

「すごく良い表情になったね、ユーノ。そんなに良かった?」

「……え、ふぇ?」

蕩けきった表情を曝しているユーノの、ボリュームのある乳房がひどく蠱惑的で、堪らず彼はむしゃぶりついた。
敏感に尖ったそこを吸われ、次いで甘噛みされた少女は、何とも言えない甘やかな声を上げた。

「んんぅ、や、あ!」

この四年で何度となく身体を重ねた二人は、お互いの弱いところを熟知しているにも関わらず、
未だに“飽き”というものを知らない。だから、クロノの責めは濃厚で、逃げ場がなかった。
雌の歓喜の悲鳴が木霊する……。





「……結婚?」

喫茶店での突然の問い掛けに、クロノは間抜けな声で応じた。
向かいに座っているのは姉貴分のエイミィで、つい最近結婚したばかりのはずだ。
しかし二十七歳のはずなのに、未だ若々しい姿には驚くしかない。
向かいの席に座る彼女が、どうしてか溜息をついて珈琲のカップをスプーンで掻き混ぜた。

「あのねぇ、まさか四年間付き合ってユーノくんが嫌いなわけじゃないんでしょ?」

「そりゃあ、まあ好きだけど……」

「じゃあ、そろそろ覚悟も決めておかないと。クロノ君もいい加減、二十五歳で歳なんだから」

む、とクロノは黙り込むしかない。今まで考えたことはあっても、「まだ早い」と先延ばしにしてきたことだったからだ。
自分のことは良い。何時かは所謂“人生の墓場”に辿り着くことも漠然と了承している身だし、それほど高望みしているわけではない。
けれど、ユーノは違う。彼女はつい最近になって漸く素の自分になれたが、未だにかつてのトラウマを引き摺っているのだという。
少女がか細い身体をクロノと重ねているのは、あるいは依存の一種なのかも知れないと、そう青年が予測するのも無理からぬことだ。
そんな状態のユーノに「結婚」という人生において重要な儀式を突きつけるのは、ひどく酷なことのような気がした。
ユーノの過去は伏せつつ、しかし彼女が自分に依存して生きていることをエイミィに告げると、

「それじゃあ、なに? クロノ君は自分より良い相手がいるはずだって、そう思うわけ?」

何故か問い詰められた。微妙におっかないエイミィに戦々恐々としつつ、小声で言った。

「……それはそうだ。僕は彼女が好きだけど、ユーノくらいの美人なら、もっといい人が――」

「何その惚気。それにね、私はクロノ君も優良物件だと思うよ?」

「…………へ?」

青年が生真面目な顔に疑問符を浮かべると、エイミィは愉快そうに微笑む。

251 司書長は女の子 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:55:20 ID:7WQpjzOQ
「だってクロノ君、エリート一家の長男でルックス良くて、人当たりも良いし、嫌われる要素無いよ?
そりゃあもう、“彼女さん”が出来なかったらエイミィお姉さんが付き合ってあげようかと思ったくらい」

「なっ……ば、バカ言うなって!」

顔を真っ赤にしてそう言うクロノが可愛らしく、彼女はクスクス笑った。
結局からかうのか、と青年が問うと、違うよ、とエイミィが言う。

「でもね、クロノ君は自分を過小評価しすぎ。ユーノさんのことだって、責任取ってあげなきゃダメでしょ?
男の子なんだからしっかりするの、いい?」

……結局のところ、クロノ・ハラオウンは彼女に頭が上がらないらしかった。
だから―――。





次の週明けまではクロノが一緒に居てくれる。それだけでユーノの心は安らいでいた。
であるからして、妙に緊張した顔でクロノが来訪したときは、何事かと思ったのだ。
どうしたのか、という問いにも彼は答えてくれないし、何故だかユーノまで妙に緊張してきた。
そうして居心地の悪い午後を過ごしていると、不意にクロノが言う。

「その、ユーノ」

珈琲を煎れていたユーノが不思議そうに顔を上げる。

「……なに?」

懐から取り出されるのは、漆黒の小箱。
小物を入れるのにちょうど良さそうなその中には、

「…………受け取って、くれないか」

――眩く輝いている指輪があった。
その輝きに見取れているユーノへ向けて、青年がぽつりぽつりと語る。

「ええと、一応僕の貯金で買える中では最上級のもののはずだ……受け取ってくれるなら――」

「く、ろ、の?」

すうっ、と息を吸い込む。
ああ、言えるよなクロノ・ハラオウン。
いいや、言わなきゃ嘘だ。
“だから”、

「―――“結婚しよう”」

その言葉には魔法が掛かっている。
これはきっと、あり得ない物語。
誰も望まない苦難と幸福の物語。
それでも、ハッピーエンドを望むなら、


「うん、―――ありがとう」


花開くような笑顔とともに。
願わくば、彼と彼女に幸福があることを。



終わり。

252 ◆9mRPC.YYWA :2009/08/20(木) 16:59:40 ID:7WQpjzOQ
後書き
というわけで、「司書長は女の子」本編はこれにて完結です。
完結するまでにたかだか五話のSSで時間かけ過ぎ……かもですが。
戦闘(バトルシーン)がない長編はこれが初めてだったりしますが、
もう少しラブコメっぽくしても良かったかなあ、などと思ったり。
少しでもお楽しみいただけたなら幸いです。

次は親父キャラと少年の激突とかやりたいなあ、と思ったり。
では。

253 名無しさん@魔法少女 :2009/08/20(木) 17:39:20 ID:RFZyanOo
完結おめええええええ!!! そして内容は甘ええええええ!!!

最初読んだ時は、ユーノの女体化という事象に若干引いたなんて事もあったのですが。
いやはや、その設定をするりと読ませる出来に感服です。
というか、金髪・眼鏡っ子の美少女で、さらに巨乳? 最高じゃないか? ええ、最高ですよ。
かつて実父から性的虐待を受けたという過去が、単純なイチャラブに終わらせない深みを生んでいる所も素晴らしかったです。
うん、可哀想な女の子は全力で幸せにするべきだよね!

まあ、ともあれ、エロいわ可愛いわ悶えるわ、本当に美味しゅうございました。
ご馳走様です。
GJ!


そして、他作品の続きも全力でお待ちしております。

254 名無しさん@魔法少女 :2009/08/20(木) 18:26:05 ID:QT9V3PBM
完結おめでとうです!!
イヤー、いい話だった。
最後までエロイし、ユーノきゅんが素晴らしい!!

次回作も期待してます!

255 名無しさん@魔法少女 :2009/08/21(金) 01:39:10 ID:tJWxYoWA
亜流さんの屈折したのも、 ◆9mRPC.YYWAの小心でエロいのもGJでしたー

256 名無しさん@魔法少女 :2009/08/21(金) 09:33:36 ID:dMduREJE
ユー子来てたあぁぁぁ!
GJ!&完結乙でした!
次回作も楽しみに待ってます!

257 名無しさん@魔法少女 :2009/08/21(金) 12:41:31 ID:VhzbYHNk
完結おめでとーございます、お疲れ様!
ユーノとクロノの絡みがド直球ストライクだった自分には神がかった作品だったぜ。
友情物ならともかく、恋愛物となるとやっぱTSしなきゃまずいからね、この二人はw
いやまあ、しなくてもいける人もいるんだろうけどもっ

>>253
>金髪・眼鏡っ子の美少女で、さらに巨乳? 最高じゃないか? ええ、最高ですよ。
その上ボクっ子なんだぜ?
完全無欠じゃないか。

258 Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2009/08/21(金) 23:52:59 ID:.vFRfgc6
>◆9mRPC.YYWA氏
えいえんは あるよ… ここに あるよ…

というかKanonネタにAIRネタまで見えてしまったがこれは気のせいか?
いや、気のせいだな……
どちらにせよGJでした!
最初の方は震えが止まらないほど怖かったけど、
最後は甘々でカタルシスを感じたぜっ!
完結おめでとう!! 次回作も期待してますぜ。

***

という訳で完全陵辱タイムがやって参りました。
仕事の修羅場と夏コミの修羅場で2ヶ月放っておいたものが出来上がりました。

・ヴィヴィオ10歳
・公式+今まで作ったユーなの短編集の設定は全部ガン無視
・ガチエロ。保管庫搬入の際は「凌辱」タグをお願いします。
・耐性のない人は読まないで下さい(重要)

それでは、始まります。

259 鏡の中の狂宴 第3話 1/10 :2009/08/21(金) 23:53:44 ID:.vFRfgc6
──二階から落ちて怪我をするのと、三階から落ちて大怪我をするのと。
二階から落ちた方がマシに決まっている、その後『何もない』のなら──

ヴィヴィオの脳裏では、あらゆる堂々巡りが渦巻いていた。
母親のこと、魔法のこと、ここから逃げ出すありとあらゆる手段を。
だが、それら全てが封じられたものだということに思い当たっては、悲しい絶望に沈むのだった。
ママ、どこにいるの? ママ、何してるの?
ママ、ヴィヴィオを助けに来てよ。いつか、「ゆりかご」の時みたいに……

約束は守られ、ヴィヴィオの処女は純潔を保っている。だが、唇の方はそうもいかない。
毎日毎日、入れ代わり立ち代わりに何ダースという人間がやってきて、ヴィヴィオを犯していく。
最初の男――確か、シラーロスといっていたか――には容赦なく口中に子種の混じった汁を飲まされたが、
それからの連中はそうでもないのが少なからずいた。
手で擦ったり、髪を巻き付けたり、ソックスを履いた足でしごいたり、素足だったり。
脇や膝に挟むなんてのもいた。……が、それらの全ては射精の前に口へと挿入されるか、
床に飛び散った白濁を舐め取らされるかの二択だった。
「そうそう、ヴィヴィオちゃんは偉いねえ」
下卑た目を細められる屈辱すらも、次第に薄れていく。
一週間も経たずに、それは一種のルーチンワークと化していた。
当年10歳、初等部に在席しているヴィヴィオは、もう精液の味を理解し始めていた。
それはまるでカレーのようで、人によって微妙に違う味があった。
もっとも、そんなソムリエじみた真似をする気にはなれず、
むしろ脳天がグラグラする強烈な青臭さと生臭さの前では、
僅かな違いなどどうでもよかった。
こんな行為、未来永劫まで慣れたくはなかった……が、それも時の流れ。
いや、それは恐怖がなしえたことかもしれない。

男たちの精を飲み始めてからこの方、確実に待遇が悪くなった。
良くなったことといえば寝床があるくらいだ。
狭い空間に閉じ込められていた時との変化は、周りでせわしなく男や女が『無言で』動いていることだけだった。
食事は、一度豪華なものになまじっか触れてしまっただけ、質素なものの惨めさが増した。
一杯のジュース、一かけらのバター、それだけでも渇望したが、与えられることはなかった。
ところが、日に一度だけ「おやつ」の時間がある。
唯一の楽しみは、その瞬間だけだ。
「ほーらヴィヴィオ、おやつの時間だよ」
「おやつ」とは、ずばり蜂蜜。
極限状態に置かれた身体に、信じられないほど甘い一時をもたらしてくれる。
但し、この時間は朝食の後か、それとも昼か、夜か、特に一定していなかった。
「さあ、コイツも一緒に舐め舐めしようね」
「……はい」
蜂蜜は、いつも誰かの肉棒に垂らされてやってくる。
舐めたくはない。けれど舐めたい。
ヴィヴィオの葛藤は、いつも食欲に負けた。

260 鏡の中の狂宴 第3話 2/10 :2009/08/21(金) 23:54:46 ID:.vFRfgc6
「ははは、この娘本当に小学生か? 信じられねえ、むしゃぶりついてくるぜ」
嘲笑に近い笑い声を受けながらも、ヴィヴィオは男の怒張を舐め、一滴残らずしゃぶり尽くす。
運がよければ、蜂蜜のお代りを貰えた。
「出るぞっ、しっかり飲めっ!」
どぷっ、と空気に晒されないままの白濁が、口の中で跳ね回る。
口直しとして、これ以上酷い代物を思いつけなかった。
「これで初物だって言うんだから、カルマー中尉もよくやるぜ」

──そう、未だ誰にも秘所には触れられていないのだ。
運命の男の人に出逢う前に、唇を奪われてしまったけれど。
しかも、唇ではなく、固くそそり立った怒張で。
それも、初めてのキスだったのに、精液まで舌に打ち付けられて、飲まされた。
「私、汚れちゃったんだ……」
鏡へ映った自分の姿は、どこまでも惨めだった。

***

そんなある日、「パブロフの犬」という言葉を聞かされた。
犬に食事を与える時、一緒に時計のベルを鳴らす。
これをしばらく繰り返した後にベルだけを鳴らすと、
犬は食べ物にありつけるものと思って涎を垂らし始めるというものだ。
そしてもう一つ、興味深い実験結果があった。
ボタンを押すと餌が確実に出る機械と、ランダムに出たり出なかったりする機械。
餌の残量は外からは分からない。
これらを別々の檻に入れ、犬や猿で実験すると、
ランダムに出たり出なかったりの方は、餌がなくなっても延々ボタンを押し続けていたという。
同じことがヴィヴィオにも起きつつあった。
「はぁ、はぁ……」
男の一物を見ると、口の中に唾液が沸いてくるのだ。
萎びたままのそれであっても、懸命にねぶる。しごく。
覚え始めた上目遣い──これをやると男たちが優しくなるのだ──で見上げると、
「いい子だね」と頭さえ撫でてくれる。
蜂蜜を塗っていないと分かっていても、止められない。
男たちの肉棒を射精させて精を求める姿は、ボタンを押して餌を求める犬そのままだった。
「んっ……おおおおっ……」
強烈に吸い上げた鈴口からは、大量の粘液があふれ出す。
苦さと臭さだけの味が、ほんの僅かに甘みを帯び始めていた。

「ヴィヴィオ、良いニュースだよ。今日はビッグチャンスだ」
昼前──起きて、朝食を取って、そして二度目の食事が運ばれてきたタイミングだ──、
カルマーは憎々しいまでの笑顔を湛えたまま、姿を現した。
このところ、シラーロスを始めとした20人ほどの男たちに囲まれる生活を送っていたから、
監禁生活とも相まって危うく顔を忘れるとことだった。
「いい、ニュース?」
途切れ途切れに聞くと、ニコニコ顔を崩さずに彼は頷いた。
「そう。これだよ」
カルマーが指をパチンと鳴らすと、コック姿の男女が次々と研究室の中に入ってきた。
次々に取り出したるは、目も眩まんばかりの豪華豪勢を極めた料理の数々。
濃厚な香りが鼻に入った瞬間、ヴィヴィオの口の端からはダラダラと涎が出始めた。
拭うこともせずポタリと床に落ち、それが開始の合図だった。

261 鏡の中の狂宴 第3話 3/10 :2009/08/21(金) 23:55:27 ID:.vFRfgc6
「三日に一度の、ご奉仕大会〜!」
ヴィヴィオはキョトンとした。友達同士で映画を見に行くような気軽な乗り。
テンションの異常さに、ついていけなかった。
「さぁ、ヴィヴィオちゃん、今日は二つの選択肢を選べるよ!」
いつもの食事が乗った盆と、豪華な食事の乗った沢山の皿を指差して、カルマーは言った。
「そっちの、いつものご飯は無償だよ。何も対価はいらないし、リスクもない。スパッと今すぐあげるよ」
そしてもう一つのこっち……と、彼はフルコースの料理を指差した。
「これを貰えるか、それとも貰えないか? いざ、命運を賭けて勝負!」
ひとしきり叫んだあと、カルマーはヴィヴィオに向き直って聞いた。
「で、ヴィヴィオはどっちを選ぶ? 確実な50%か、それともオールオアナッシングか
負けた時はどうなるか、もちろん分かってるね?」
ヴィヴィオの答えは、最初から決まっていた。
スッ……と指を差した先は、フルコース。
「勝負を受けるんだね? 後戻りはできないよ?」
ヴィヴィオは、コクリと頷いた。
リスクなくして、見返りはありえない。
意思を確認したカルマーは後ろで控えている女に指示すると、彼女はドアの向こうに消えていった。
そうして戻ってきた時、色素の薄い、赤毛の女の子が連れてこられた。
ヴィヴィオと同い年か、あるいは一つ下か。
胸の膨らみはヴィヴィオよりも大きい。両目は青く、髪を軽くウェーブさせていた。
自分以上に怯え切っている姿を見て、ヴィヴィオは一瞬冷静に、そして冷酷になった。
――この子が相手なら、勝てるかもしれない。
屈辱を味わい、長く陽を見ない生活を送ってきたヴィヴィオにとって、処女とその証は最後の牙城だった。
絶対に、負ける訳にはいかない。
「さて、勝負を説明しよう。ここにいる5人の男に奉仕して、先に精液を全部飲んだ方が勝ちだ。
但し、手は使ってはいけない。口だけ。これはいつも通り」
カルマーは一人を見やり、にやりとヴィヴィオへ笑いかけた。
「強いて言うなら、その可愛いあんよだけかな?」
どういう意味か、と聞く必要もなかった。
既に何人もの男たちを、足で扱いてきたのだから。
赤毛の女の子とヴィヴィオの前に男が立った。
二人とも中肉中背。最初はどちらが特に有利ということもなさそうだった。
「それじゃ……スタート!」
ゴングが鳴らされ、非情の勝負が始まった。
だが、この時ヴィヴィオは軽視していた。相手の、名も知らぬ少女がその身に秘めている実力を……

我先にと、ヴィヴィオは先頭の男にしゃぶりついた。
小さいままだった肉棒が、力を得て急激に膨らんでいくのが分かる。
臭みが鼻を突くいつもの感触にも、いい加減麻痺してきた。
「もっときつく扱けんのか」
頭の上から命令が来る。
ヴィヴィオは素直に従い、口をきゅっと窄めてストロークを始めた。
舌全体と口蓋を使って亀頭を舐るが、彼はそれで満足しないようだった。
急に後頭部を掴まれ、グイと前に押し込まれる。
喉の奥まで汚らしいペニスが挿入され、呼吸が一瞬で苦しくなった。
「んむっ、んぐぅっ!!」
「これくらいじゃないといけないんだよ、分かるか?」

262 鏡の中の狂宴 第3話 4/10 :2009/08/21(金) 23:56:16 ID:.vFRfgc6
鼻から出る息と、肉棒のストロークが一致しない。
吸うのも吐くのもできない時間は、しかしすぐに終った。
一番奥の奥──もう気管支をも塞ぐ勢いだった──に
無言のまま、どくりと脈動。精液が舌にもどこにも触れることなく、
ヴィヴィオのことは、射精するための道具程度にしか考えていないかのような扱い。
味も臭いも分からぬまま、白濁だけが胃の中にぶちこまれていった。
呼吸とトレードオフではあったが、その分五感の一つは苦しまずに済んだ。
「ほら、まだ二人目だぞ。こんなところでへばってたらいつまでも終らねえぜ」
ゲホゲホ、と咽込むヴィヴィオの前に、更なるペニスが立ちはだかる。
一方、対戦相手の少女はまだ一人目だ。この勝負、一気に決められるかもしれない。
オッドアイに決意を込めて、ヴィヴィオは次なる戦いを始めた。

***

カルマーは間近で二人の対決を見ていた。
状況はヴィヴィオの方がやや優勢か。だがどちらに転ぶのか、誰にも分からない。
「面白い光景だとは思わないか? この勝負、受けなかった女は未だに一人もいない。
ヴィヴィオもまた例外ではなかったという訳だ」
まさに高みの見物。檻の外から淫らな奉仕を見ているカルマーは、そばの研究員に言った。
「ええ。私らも面白いデータが沢山集まるので、珍重しています」
「ほう? お前もいつかあの輪の中に入るかもしれないんだ、精々腹上死しないように鍛えておけよ」
「は、はい」
ヴィヴィオはキスすらも果たせぬまま、肉棒をひたすら舐め、精を飲み続けている。
一方、秘唇は男を受け入れたことがないまま、淫核だけをひたすらに弄っていた。
直に、あの敏感な突起を徹底的に凌辱する日も来よう。
「あるべきバランスではない。だが、それ故に美しい」
普通の人間に「三角形を描け」と言うと、ほとんどが底辺を下に描く。
一部の数学者は尖った場所を下にするという。
ヴィヴィオは丁度、そんな三角形だ。
カルマーという手を経て、どこにでもあるつまらない三角形は、数学者の手によって美しく生まれ変わる。
「俺も、生まれ変わっちまったよ。お前の『ママ』のせいでな……」
彼は椅子に深く座り込み、過去を思い出した。
忌まわしきものを振り払う手段ができた今では、それは格好の肴だった。

カルマーはなのはが来るまで、ずっと教導官を担当していた男だった。
物心ついたときから血反吐を吐くような、いや実際に何度も吐いてそれでも努力し続け、
ついに上り詰めた管理局職員の地位。
だが、キャリア組として入局した職場では競争なぞ終らず、ようやく落ち着いた頃には20を半分以上過ぎていた。
これでも当時は最速で勝ち上がったのだ。次々と取り残されていく同僚を、彼は冷めた目で見ていた。
彼らには努力が足りない。そう、ずっと思っていた。
それが、名も知れぬ管理外世界から突然かっさらわれた。まだ10代の小娘に、だ。
聞けば、提督クラスの人間と懇意にしていて、コネを使いあっという間にカルマーの地位を奪っていったのだという。
これが純粋な世代交代なら、或いはなのはが一番下から順当に上がってきたのなら、まだ納得もできよう。
だがそうではなかった。一度落ちれば二度と這い上がれない競争を、なのはは経由しなかった。
はらわたが煮え繰り返るほどの憎悪が心を支配し、カルマーは復讐を誓い、仲間を集めた。

263 鏡の中の狂宴 第3話 5/10 :2009/08/21(金) 23:56:54 ID:.vFRfgc6
結果、反ハラオウン同盟が出来上がった。現在は大提督にまで昇進したクロノはもちろん、
年寄り連中の中にはその父であるクライドに恨みを持つ者まで、派閥は膨れ上がった。
最上位の幹部にさえ、プレシア・テスタロッサへの類い稀なる反感を抱えている人間がいた。
高町なのはの失態と共に機は熟し、なのは、引いてはハラオウンの血筋を管理局から追放する手立てが整った――
「ま、まさか会議室のジジイどもが本当の目的に気づいてるとは思わないがな」
追放では飽き足らないとカルマーは考え、その結果がこの凌辱劇だった。
最近の食事も睡眠も、信じられないまでに甘美に感じられる。

ヴィヴィオを聖王陛下とは決して呼ばなかったのは、認めたくなかったからではない。
一人の少女と対等に向き合うことで、彼女の安心を買いたかったからだ。
そしてそれは成功し、ヴィヴィオを絶望の底へと叩き込むことができた。
今少女が抱いているのは、「あんなにいい人が悪いことをするはずがない、
何か特別な原因があるか、さもなくば黒幕がいるに違いない」とう臆面もない心だ。
笑いが止まらないとはまさにこのこと。
闇の中で生きさせ、光と引き換えに地獄を供する。
人の心はどこまでも脆い。一度崩れた場所に手を差し伸べると、それが何であっても掴んでしまう。
死んだ方がまだ救われるかもしれないのに、それでも生に執着する。
「あぁ、ヴィヴィオ、早く終るといいな」
誰にも聞こえないように、カルマーはそっと呟いた。
冷たくなった目をヴィヴィオに向ける。幼い聖王はオッドアイを煌かせながら、まだ見知らぬ男と闘っていた。

***

「んちゅ、じゅぷ、んくっ、ちゅっ、んーっ……」
ゴングが鳴ってから三十分が経過した。
勝負は既に四人目。この脂ぎって腹の飛び出したような中年男から精液を搾り取れば、
大体勝負は決まったようなものだ。
というのも、相手はまだ一人目のままだ。
これが僥倖かどうかは分からないが、とにかく優位に立っているのは確かだ。
「お、お嬢ちゃん、そろそろ出るよ」
至福そのものの下卑た顔でヴィヴィオを見下ろし、頬の裏を突くように抽送を強める。
程なくして、その体躯よろしく脂の多い白濁が、ヴィヴィオの口内を占めた。
「んむっ! ……んくっ、こくっ、じゅちゅっ……」
飲み下す時よりも、舌に触れる精液の感触が我慢できないほど不快だ。
汚されている。穢されている。我慢できないほど苦しいのに、逃げ出すことができない。
どろりと、おぞましい味と粘度が口内を満たした。
こくり、こくりと飲み下していくが、吐きそうなくらい気持ち悪かった。
いや、目の前にぶら下げられたご馳走が目の前になかったら、絶対に胃の中のものを残らずぶちまけていただろう。
「頑張れよ、お嬢ちゃん。儂の次で最後だからのう」
ぶよぶよした手で髪を撫でられ、後ろの人間と交代していく。
ちょっぴり自慢だった金色の束さえも、今は慰み物の一つと化してしまっている。
泣きたくなるのを堪えて、ヴィヴィオは最後の男に──
「え?」
ヴィヴィオは驚きに目を見張った。
五人目の男というのは、まだ年端も行かぬ少年だった。
概ね、ヴィヴィオと同い年だろう。
シルバーブロンドの髪に黒い瞳。びくびくと怯えながらも、その肉棒はガチガチに固まっていた。
これから何をされるのかまったく分からないけれど、身体だけは反応している。そんな少年だ。
「ほら、この少年で最後だぞ。しっかりやれよ」

264 鏡の中の狂宴 第3話 6/10 :2009/08/21(金) 23:57:31 ID:.vFRfgc6
ジャッジが冷酷にせっつく。ビクリと身体を縮ませた少年は、ヴィヴィオにおずおずと言った。
「よ、よろしくお願い、します……」
ヴィヴィオの方はといえば、まったくの拍子抜けだった。
いつもなら逆らえないような男たちに囲まれて、強制的に奉仕という名の凌辱をしてきたのに、
今度ばかりは違う、いかにも純真そうな少年だ。
もしかすると、ヴィヴィオと似たような理由でここに来たのかもしれない。
「お名前は?」
ただ、ただならぬ興味が沸いたのも事実だった。
びくびくおどおどと震えていた少年は、ぽつりと答えた。
「ク、クラウス……」
「クラウス君、か。いい名前だね」
ようやく相手は二人目に突入したばかりだ。
もう勝負は決まったようなもの、ゆっくりやったって勝てる。
ご褒美とばかり、ヴィヴィオはクラウスのペニスに口づけた。
まだ皮被りの肉竿に、ゆっくりと舌を這わせる。
だが、ヴィヴィオは知ることはない。
最後に一つでも与えられる救いがあれば、人はどんな運命にも抗わないということを……

「おっと、やっぱり来たようだな」
寸刻、カルマーが感慨深く言ったのも無理はない。
相手の少女が、猛烈な勢いで追い上げ始めたのだ。
赤毛を振り乱し、青い目を欲望に輝かせながら、じゅるじゅると美味そうに肉棒を啜る。
下手になってからが強くなるのだとは、ヴィヴィオは当然知らなかった。
あっという間に二人目を平らげ、三人目に取り掛かる。ペースとしては相当早い、下手を打つと負けてしまう。
「ぺろ、んちゅ、んんっ、んむぅ……」
クラウスの包皮を、舌先で剥きあげる。
ぺりぺりとはがれるような感覚の後、鼻に来たのは猛烈に濃厚な牡の匂い。
ペースト状の何かが舌先に触れ、匂いはそこから放たれていた。いわゆる、恥垢というやつだ。
よほど吐き出したくなったが、そんなことをした日にどんな目が待っているのか、
今のヴィヴィオには一瞬で想像できる。
必死の思いで唾液を分泌し、勢いに任せて飲み込んだ。
舌に残る嫌な嫌な感覚以外、何もない。胃がムカムカするような気がするが、気のせいだと思い込むことにした。
少年は初めての性的快感なのか、甲高い声で啼き喘ぐ姿は少女そのままだ。
今まで、奉仕という名の被虐を受け続けてきたヴィヴィオにとって、それはあまりにも新しすぎる刺激だった。
ちゅるり、と亀頭を舐る。くちゅくちゅ、じゅぷじゅぷと、
大きな飴玉を口いっぱいに頬張るがごとく、クラウスの肉棒に奉仕する。
「あっ、あっ、ああっ……」
少年の声は裏返り、明らかな性感を帯びて、もうすぐ勝負は決するものと思われた。
だが、そこで事件が起きた。
隣で頑張っていた少女が、いつの間にか四人目を飛び越えて最後の一人に到達してしまったのだ。
優しく、舌と唇で愛撫していたヴィヴィオは、時間の経過に気付かなかったのだ。
不味い、このままでは負けてしまうという焦りが、もう一つの事件を生んだ。
「痛ッ!!」
少年の肉茎に、誤って歯を立ててしまったのだ。
顔を歪める少年。零れ落ちる涙。誰だって一番の弱点に噛み付かれたら泣きたくもなる。
が、泣きたいのはヴィヴィオの方だった。

265 鏡の中の狂宴 第3話 7/10 :2009/08/21(金) 23:58:04 ID:.vFRfgc6
左右で色の違う目を上目遣いにしてクラウスを見上げ、『ごめんね』と労わるように優しくペニスを舐める。
だが、一度硬度を落とした怒張を再び勃起させるまでに、どれだけの時間がかかるだろう。
相手の少女は順調に進んでいる。アレは下になってからが強いと言うべきか、それとも勝利者の余裕と呼ぶべきか。
負けじと、ずずずと音を立てながら肉棒を吸い込み、口全体を使って全力でしごく。
すると、クラウスの肉棒が力を取り戻してきた。それでも、まだ半勃ちといったところだが。
「ありがとう」
クラウスは、言った言葉の意味が分からないかもしれない。でも構わない。
凄惨な凌辱劇に巻き込まれるか、それとも生き残るか。
文字通り生き死にを賭けた闘いに於いては、敵側の事情など一切構っていられないのだ。
じゅるり、じゅぷり。わざと音を立てて、なるべく少年の性欲を刺激するように動く。
これは、男たちへの奉仕で手馴れたものだ。
「手を使うな」とは言われたが、目線や鼻、喉まで使ってはならないと命じられた覚えはないし、
それらの行為で変な反則を取られたこともなかった。
だが、相手もまた熟知している。少女のストロークが強く、速くなっていき、相手ももう長くなさそうだ。
負けていられない、とヴィヴィオも強気に出た。ほとんどギャンブルになる。
さっき強く噛んでしまったところ──亀頭と裏筋の間を、今度は甘噛みし始めた。
やわやわと、傷口に軟膏を塗るかのような動きで、舌と歯を巧みに使って癒していく。
隣の男も、表情から見て射精が秒読みだ。いよいよのっぴきならない。
一度引いた苦い我慢汁が、もう一度ダラダラと流れてきた。
「んちゅ、じゅぷ、んぷっ、んくっ、ふぅっ、んんっ……」
休憩もへったくれもない。苦しい呼吸は全部鼻に任せて、ヴィヴィオの口はストロークを繰り返す。
もう、自分がどんな理由でフェラチオをしているのかなどということは忘れた。
この勝負に負ければ死よりもおぞましいことが待っている。それだけで十分だ。
「頑張って……クラウス、君……」
負ける訳にはいかない。絶対に負けられない闘いだ。
全身全霊、持てるだけの力を注ぎ込んで、少年の肉棒にむしゃぶりつく。
「あ、ああっ、ああああっ……あああああああああああああーっ!」
来た。これだ。ドロドロの精液、そう今まで今まで一度も射精したことがないかのような粘度だ。
匂いが恐ろしく強くなる。でも、それは男臭さというよりはまだ足りない。
これは、言うならば青臭さ。新鮮な野菜の匂い、今まさに土から引き抜いた野菜の匂いだ。
後から後から溢れ出てくる濃密な精は、舌に絡み付いて全く離れていく気配がない。
誰の唇にも触れず、ただ男性器だけに口づけを繰り返してきたヴィヴィオの口腔へ、
白濁は容赦なく流れ込んでくる。呼吸困難になるほど、口の中は少年の精液で一杯になった。
「んくっ、んぐっ、ごくっ……」
飲めば飲むほどに、頭が侵食され、冒されていく幻想。
『苦痛が霞み、消えて行く』という苦痛と戦いながらも、ヴィヴィオは精を飲み干した。
口の中が空いた段階で、すぐに鈴口から精液の残滓を吸い上げる。
これをやらないと痛い目に遭うことは、既に身体が──特に後頭部が知っていた。
ちゅぽん、と唇を離すと、ジャッジに肩を叩かれた。
口を開けて中を見せると、女のジャッジはヴィヴィオの手を高く掲げた。
「え? え?」
勝ったのか? 凌辱の宴で、敵を薙ぎ倒したのか?
隣の少女を見ると、まだ五人目と戦っていた。いや、もう彼は射精した後で、残りは飲み込むだけだったのだろう。
額に脂汗が浮かんでいる。敗北を認めたくない時の目だった。
喉が少し動いて、少女の口が男のペニスから離れた。
立ち上がってジャッジの許へ行き、口を開けるも、ジャッジは目を閉じて首を横に振るだけだった。
「ねえ、あの娘よりあたしの方が早かったでしょ!? どうなの、あたしの勝ちでしょう!!」
ジャッジはただ『違う』と首を振り、後ろを振り向いて手を挙げた。
すると、屈強な男たちが少女の身体を取り押さえ、手枷足枷に首輪までつけ始めた。
「あ、あの娘……どうなるの?」
恐る恐るヴィヴィオが聞くと、ジャッジの女はさもつまらなそうに言った。

266 鏡の中の狂宴 第3話 8/10 :2009/08/21(金) 23:58:44 ID:.vFRfgc6
「知ってるだろ? 死ぬまで男の慰み者になるか、でなきゃ何かの実験台になるか。どっちかだよ」
ということは、一歩間違えればヴィヴィオ自身がそうなっていたことになる。
人体実験の材料にされて切り刻まれる自分を想像して、身体をぶるりと震わせる。
しかし、次第に喜びが心を占めてきた。
私、勝ったんだ! 酷いことされずに済む、おいしいご飯が待ってる!
心神喪失にも等しい瞳をした少女が、まるで現行犯逮捕された強盗みたいに連行されていく。
一度、ヴィヴィオの方を振り向き、そして、大きく目を見開いた。
怯えた表情だった。少女が、幽霊か猛獣でも見た時の目をした。
「助けて、殺さないで」と、訴えかけているかのようだった。
それでも声は出ないらしく、彼女は口をパクパクしているだけだった。
「おい、行くぞ」
連れて行かれるその足に、一切力が入っていない。
やがて、チロチロと太ももに水が流れていった。
「や……いや……」
最初、少女はこれから起こる凌辱──今まで勝利し続けることで守ってきた、乙女の純潔を失うこと──への
恐怖から失禁したものだとばかり思っていたが、事実はそうではなかった。
ふと、何気なく、頬に手を当てた。顔の筋肉が引きつっているかのように強張っている。
両手で触れてみて、ようやく分かった。

ヴィヴィオは笑っていたのだ。
自分だけが助かり、相手を谷底に突き落としたことに、どこまでも喜んでいたのだ。

不気味だった。でも嬉しさと楽しさは後から後から湧き出て、止まらないのだ。
これから待つ快楽。相手を蹴落とした悦び。
その両方が、ヴィヴィオを高揚させてどうしようもさせなくなるのだった。
「あは、あはは、あはははははははははははははははははははは……」
高笑いはどこまでも止まらなかった。そう、その姿は気違いそのもの。
名も知らぬ赤毛の少女は、ヴィヴィオの顔を見て失禁したのだった。

勝利の後、娑婆でだって食べられないような豪勢な食事が、所狭しとテーブルに並べられた。
カルマーの宣言通り、一切合財が無条件で、だ。
その全てが麻薬のように美味で、ヴィヴィオは明らかに胃の容積を遥かに超える量を食べた。
腹が破裂するほど食べ尽くしたいところだったが、そんな欲求に反して身体は限界を迎えた。
何せ、食道まで食べ物で一杯に溢れかえっていたのだ。
あと一口でも……というラインをギリギリまで見極めて、ヴィヴィオはナイフとフォークを置いた。
「どうだい、この勝負。満足頂けたかな?」
ナプキンで口を拭うヴィヴィオに、カルマーが問いかける。
聖王は、薬物依存症患者そのままの顔で笑いかけた。
「うん、とっても」
この後、ヴィヴィオはことあるごとにこの『勝負』を受け、またことごとく勝利してゆくことになるのだが、
それはまた別の話。

***

ヴィヴィオは狭い檻の中で、王者に君臨していた。
一つ一つの「奉仕」は息を吸うこととと同化し、ファーストキスを奪われた想い出は遠くに消えかけていた。
三日に一度、提示される勝負をヴィヴィオは受け続け、そして連戦連勝だった。
が、しかし。
ヴィヴィオの頭には、強烈な二つの欲望が衝突を起こしていた。

267 鏡の中の狂宴 第3話 9/10 :2009/08/21(金) 23:59:25 ID:.vFRfgc6
『この辺りでそろそろ止めないと、そのうち負けちゃう。そうなったら……』
『でも、あのご飯は物凄く美味しい。麻薬とかが入ってる訳でもないのに。
ダメ、アレを食べられないままここで過ごすなんて、我慢できない……』
豪勢な食事への欲望に抗うだけの力は、とうの昔にヴィヴィオから消え去っていた。
でも、どこかで誰かが警告を続けている。「そのままではいけないのだ」と。
そんな声を無視し続けることも辛かったが、砂漠にたった一つ残されたオアシスを無視して先に進むなんて、
どうしても、どうやっても、どんなに努力しても、無理だった。
そういえば、とヴィヴィオは思い出す。
フィルムはあと何時間残っているのだろう。あとどれだけの苦痛を帯びればここから出られるのだろう。
答えは誰も教えてくれない。
確か、○○月××日だと教えると、その日まで気力を保とうとするらしいからだ──と無限書庫で読んだ記憶がある。
いや、逆か。期日を指定すれば、人はそれまで気を張り続ける。
試合の日がいつまでも来ないまま練習だけしていると、どうしてもモチベーションが落ちる。そんな話だった。
今のヴィヴィオは、いつ解放されるか分からない無期禁固の中で、それでもひたすら耐えている状態だった。
出られるという希望は、もう挫けていた。
たまに与えられる享楽から逃げ出すことのできない、餌に釣り上げられたモルモット。
『敵ながら天晴れ』という言葉が一番似合うくらいの、綺麗に決まった一本釣りだった。

「おはよう」
冷たく光る鉄の棒。外には忙しなく動き回る研究者たち。いつもの光景だ。
カルマーが来る時は、決まって悪いことが起きる。
けれど、彼は「勝負」と引き換えに、「享楽」を提供してくれる、唯一の人間だ。
現状を認め、受け入れる限り、彼はヴィヴィオにそう酷いことはしない。
……だが、ヴィヴィオはもう気付けない。
自分が現在置かれている状況そのものがまさに悪夢であり、常人には耐えられない凄惨さであるということに、
少女の侵食された頭ではもう思い出せなかった。
抵抗の意思をも、同じ光、同じ景色、同じ無音の世界の中でどんどん削られ風化し、今では雲散霧消していた。
「おはよう、ございます」
声色を失った、疲れきった響きで答えると、カルマーはにやりと笑った。
「どうしたの、そんな元気のない顔。……そうだ、今日は面白いところに連れて行ってあげるよ」
何とも白々しい。
「何、いつもヴィヴィオちゃんだけが気味の悪い思いをするというのは流石に酷いだろう?
だから、今日はヴィヴィオちゃんを気持ちよくさせてあげる日にしたのさ」
訳が分からない。そんな一瞬の混乱を突いて、カルマーはヴィヴィオの死線に入ってきた。
すっかり軽くなった身体をいとも簡単に持ち上げられて、
今まで謎のヴェールに包まれていた、部屋中央にある椅子へと座らせられる。
椅子には大量のベルトが仕舞いこんであった。
男の手で押さえつけられたまま、両手両足を動かないように固定される。自力で外すこともできない。
それが終ると、シートベルトみたいなものを腰にも結わえられる。
カルマーが手元のリモコンを押すと、ゆっくりと椅子は後ろに倒れていった。
同時に、両手と両足が少しずつ開いていく。これが寝ている姿なら、いわゆる「大の字」と呼ばれるものだ。
だが、足の方はそれで終らない。膝のところでカクリと曲がり、Mの字型に足を開かれる。
ほんの少しでも腰を落とせば、短めのスカートから、ショーツが見えるまでに大きく、股を割られた。
「え、何、これ……?」
手近なパイプ椅子を使って天井に手を伸ばし、カメラを括りつける。どうやらそれで完了のようだ。
全てが突然で、何一つ訳の分からぬまま唖然としていたヴィヴィオだったが、
ようやく自分が拘束されたことに思い至ると、途端に錯乱した。
「なに、これ!? ねえ、離して! お願い、これ取ってよぉ!
どうしてこんな酷いことするの、ねえ、早く取ってえええっ!!」
いつものニヤニヤ笑いを崩さないカルマーは、三月ウサギよりよっぽど性質が悪かった。

268 鏡の中の狂宴 第3話 10/10 :2009/08/21(金) 23:59:55 ID:.vFRfgc6
「勘違いはいけないよ、ヴィヴィオちゃん。僕は君に気持ち良くなって貰うためにコレを企画したんだ。
ま、ちょっとやり方は強引だったけどね。あと、例のフィルムもこれで埋めるから、
ヴィヴィオちゃんはちょっぴり楽をできるって訳だ。どうだい、魅力的な選択肢だろう?」
いつの間にか、部屋からはカルマーと一人の女研究員を除いては誰もいなくなっていた。
カルマーが話を終らせると、不気味なまでの重たい沈黙が部屋を支配した。
その直後、かすかに聞こえるコンピューター類の駆動音。全部水冷式なのか、ほとんど何も聞こえない。
「それじゃ、僕はこれでいなくなるよ。あとのことは、このメアリー・オーヴィル博士がやってくれるよ」
軽く会釈した縁なし眼鏡の女は、三十歳前後のいわゆる研究一筋な人間だった。
カルマーが立ち去った後、メアリーは眼鏡を無造作に外し、白衣の裾で軽く拭いた。
もう一度掛け直したその瞳で、ヴィヴィオの顔をまじまじと覗き込んでくる。あまりにも無遠慮な視線だった。
それから、手元にあるボードに目を落とし、「なるほど、この娘は……」と何事か呟いてから、
おもむろにしゃがみ込んで椅子の下に手を差し込んだ。そうして出てきたのは、どうやらキーボード。
数十秒間、メアリーは無言のままキーボードを叩き続けた後、それを元に戻した。
彼女はモニターを見ていたに違いないが、拘束された身体ではそこまで見えない。
すると、細いワーム状の触手が大量に椅子の側面から躍り出た。
それぞれの頭には、何に使うか分からないが、各々複雑な形に別れていた。
繊毛のようなもの、明らかに鋏のような鋭いもの、スポイトのような穴、指が十本もある奇妙な手。
後のは形容するのは無理だった。しかも、それぞれ何本もうねっていてとても数え切れない。
それらが突然、ヴィヴィオに襲い掛かった。
「きゃぁっ!」
霧吹きのようなものが顔の前で噴霧される。
アルコールでも入っているのか、それはあっという間に乾いていったが、それが何だかは分からない。
分からないまま、次のワームが迫る。それは、パチパチと制服のボタンを器用に外していった。
無機質な機械が服を脱がしていく光景に、ヴィヴィオは悲鳴を上げた。
けれど、無慈悲なワームへは決して祈りなど届かない。あっという間に、上半身は下着姿になった。
いっそ全部脱がしてしまえばいいのに、中途半端に肌蹴ているのが恥ずかしい。
すると、首元と裾から二本の触手が身体の中に入っていった。背筋に悪寒が走る。
ワームはヘソの辺りで握手をすると、突然上に向かって動き、シャツを押し上げた。
そのまま鋸のように引き抜くと、哀れにも下着は真っ二つに裂けてしまった。
サッ、サッと服をまとめて広げると、淡く膨らんだ二つの丘も、その先でちょんと尖っている蕾も、
全てが曝け出されてしまった。
「あ……あ……あ……」
予想できていたこととはいえ、言葉が麻痺して口から出てこない。
この後、何が起きるのか──二本のワームが出し抜けに乳首に食いついた。
「きゃぁっ!」
機械らしいごつごつした見た目の割には、先端部分だけは生体そのものだった。
イソギンチャクのような繊毛を大量に備えている触手からは、
潤滑液のようなぬるぬるしたものが、それはもう無意味だと感じるくらいにだらだらと分泌されている。
触手たちは、ヴィヴィオから乳を啜る気でもいるかのようだ。
きゅむきゅむと乳首を揉み、上下に扱く。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
おかしい。乳首をちょっと捏ねられただけなのに、身体が熱くなってきた。
吐息が甘い。ぷっくりと膨らんできた蕾が、自分でも分かる。
それでも尚、乳首だけを執拗に繊毛で撫で続ける触手たち。
粘液のぬめりも手伝って、一度突かれた性感は容易く異形の姿にもむず痒さを覚え始めていた。
「そろそろ頃合のようね……」
メアリーは手にしたリモコンを操作した。
その瞬間、更に多くの触手が沸いて出て、それらは全てヴィヴィオの股間へと迫った。

269 Foolish Form ◆UEcU7qAhfM :2009/08/22(土) 00:01:01 ID:udfh2Ggc
次回、幼女に触手攻め。
凌辱OKな人はお楽しみに。

では。

270 名無しさん@魔法少女 :2009/08/22(土) 18:49:42 ID:lQJtvow2
うひょおおww 陵辱GJ!
なんとも素敵なヴィヴィオ攻め、良いですねぇ。
次回もお待ちしておりますよー。

271 名無しさん@魔法少女 :2009/08/22(土) 23:30:44 ID:XnU56Gvs
投下させていただきます。

・全4レス
・SS後日談、オリジナル色強め
・オリキャラ(男の娘)が出ます
・厨二病だと思う
・シグナム無双、バトルメイン
・エロなし

272 紫炎剣客奇憚 ACT.02 1/4 :2009/08/22(土) 23:33:58 ID:XnU56Gvs
 JS事件より三年が過ぎ、世界は一応の平和を享受していた。
 シグナム自身、この三年程は目だった動乱もなく、主はやてや仲間達との穏やかな日々を送っていた。多少は退屈もしたが、剣の騎士は己を戒める術を心得ていた。
 しかし"戒め"を"止める"と書いて、"武"……今、シグナムは久々に武人として腕を振るえる任務に悦びを感じている。
 ――筈だった。
「シグナム、元気ないぜー? 久々の出張なんだ、もっとシャバの空気を楽しまないと」
 頭上を飛び回る相棒、アギトの声もどこか上の空で、シグナムは少ない手荷物を片手に空港を歩く。辺境、静かな田舎の世界ゆえか人影は少ない。一週間に何本も無い定期便が、頭上で魔法陣の輝きに消えていった。
「それはそうと、そろそろ教えてくれよシグナムー! あたし達は今回、何を叩っ斬ればいいんだ?」
「……子供だ」
 アギトの無邪気な問いに、シグナムの心中は陰惨とした憂鬱な気持ちで澱んだ。
「子供? 危険なロストロギアとか、時空犯罪者の巣窟とかじゃなく……ガキかよー」
 アギトの羽ばたきから力が抜けていった。己の肩にへたりこむ相棒の姿に、僅かに頬を緩めるシグナム。
「だから付いてこなくてもいいと言った。こんな仕事は私一人で沢山だ」
「いーやっ! そりゃ駄目だねシグナム。大体アンタに子供が斬れるもんか」
 シグナムの肩にあぐらをかいて、アギトが頬を膨らませる。その不器用な信頼に感謝しつつ、シグナムは内心呟いた。主はやての命とあらば、子供でも斬れると。
 ただ、今回ばかりはシグナムも気が滅入っていた。自ら見逃した命を、己の手で刈り取るハメになるのだから。もしも主はやての危惧する通り、その子が世界の敵ならば尚更……よしんば、そうでなくても。
「あっ、シグナム副隊長。お待ちしておりました、お疲れ様です」
 不意に懐かしい名で呼ばれて、シグナムは視界の中央で口を押さえる少女を見つけた。上司と部下は三年前までだが、それでも少女は脱帽して身を正す。桃色の髪がふわりと揺れた。
「久しいな、ライトニング04……と、今は自然保護隊だったな、キャロ」
 うっかり自分まで間違えてしまい、キャロ・ル・ルシエの変わらぬ愛らしさにシグナムは懐かしさを感じた。僅かにだがキャロは背が伸びており、その身体は少しずつだが女性らしい曲線を帯びはじめている。何より魔導士としての成長が見るだけで感じ取れ、素直にシグナムは嬉しかった。
「バスでの移動になります。フリードリヒは今エリオくんが……」
「済まないな、キャロ。お前達辺境の魔導士達に、私の不始末を押し付ける形になってしまって」
「いえ、私達なら頻繁に顔も出せますし。副隊……シグナム二等空尉は中央でお忙しいですから」
「ライトニング03は……エリオは元気にしているか?」
 はい! と、元気な笑顔を見せるキャロにアギトが挨拶もそこそこに絡む。どうやら交際関係は健全かつ順調なようで、シグナムは何故か安心した自分を不思議に思った。
「フッ……パートナーか」
「あんだよシグナムー、シグナムにはあたしが居るじゃんかよー」
「そうだったな。ではキャロ、案内を頼む」
「はい、こちらへどうぞ」
 嘗ての部下に連れられて、シグナムは辺境の地へと踏み出した。嘗て己が見逃し、現在世界を脅かしているかもしれない《宿業の子》が生まれ育った土地へと。

273 紫炎剣客奇憚 ACT.02 2/4 :2009/08/22(土) 23:37:00 ID:XnU56Gvs
 それは時空管理局が辺境の各地に持つ、要人避難用施設の一つだった。この手の施設は特権階級が私物化して別荘になっているものがある反面、管理名簿に記載が忘れられた老巧施設も多い。
 目の前の山荘が正に後者で、それを三年前に素早く手配した主はやてに、シグナムは感服する他無い。
「わたしも時々、様子を見に来てるんです。この世界に来ること、意外と多いですから」
 そう言ってキャロがドアを開く。簡素な山荘は部屋数も少なく、すぐに台所に立つ女性が振り返った。その姿を視界に捉えるや、アギトが火の玉となって飛び込んでゆく。
「手前ぇ、4番目っ! こんなところで何やってやがる! 確か三年前脱走したって……おーし」
「ま、待ってアギトさん。これには深い訳が」
 驚き慌てて止めに入るキャロの前で、アギトの纏う空気が沸騰して炎熱化する。動じず静かにシグナムは手を伸べ、逸る相棒をむんずと右手に捕まえた。
「放せよシグナ……解った、ユニゾンだな! っしゃあ、ぶった斬ってやんぜ!」
「アギト、主はやてに許しを得て、私がこの地にかくまっているのだ」
「なるほど、シグナムがかくまっ……はぁ!?」
 どうにか炎を収めたアギトに、キャロが説明を始める。その姿越しにシグナムは、三年ぶりにクアットロと再会した。目と目が合うや、クアットロは深々と頭を下げる。
「御無沙汰しております、騎士シグナム。長年に渡る非礼をお許し下さい」
「そう畏まるな。……少し痩せたな」
 頭を上げたクアットロは、以前の刺々しさを感じさせぬ静かな笑みを僅かに浮かべた。少しどころかかなり痩せ細っており、時折苦しそうに咳き込む。
 何とかアギトを納得させたキャロが、崩れ落ちるクアットロを支えて寝室へと連れ立った。自然とシグナムも、むくれたアギトを伴い続く。
「クアットロさんは……戦闘機人としてのメンテナンスをずっと受けていないので」
 ベットに寝かしつけて、キャロが切なげに呟く。憔悴しきって衰弱したクアットロはしかし、気にした様子もなくシグナムの来訪を迎えた。その意味するところを察していた。
「あ、貴女が来たということは……最近中央で悪い、噂を聞き、ゴホゴホッ」
「流石は情報処理に特化したナンバーズ、耳が早いな」
 表情一つ変えぬものの、シグナムは胸の疼痛に奥歯を噛んだ。目の前にいるのは、嘗て自分が見逃したナンバーズ……それ以前に、病に臥せった一人の母親だった。
「ドクターのガジェットが現れた……今はまだ、当局は巧妙に事態を隠しているみたいですね」
 クアットロの言葉に、キャロとアギトは驚き互いを見合わせた。シグナムだけが黙って頷き、起き上がろうとするクアットロを手で制する。
「つまり、時空管理局は……ドクターの、生存を、疑ってる」
「率直に聞こう、クアットロ。お前の子は……ジェイル・スカリエッティだったのか?」
 クアットロは力なく、しかしはっきりと首を横に振った。
「あの子は……私の子です。ふふ、ガラにもなく懸命に育てました。僅か三年であんなに大きく」
「会わせて貰う。今、何処へ?」
 その問いに応えたのはキャロだった。
「空です、きっと……エリオくんがいつも、特訓してるんです」
 空と聞いてシグナムは、寝室の窓に目をやる。突如その時、ガラスがカタカタと揺れて空気が震えた。
 轟! と大気を沸騰させて、巨大な飛竜が上空を通過する。一目でキャロのフリードリヒだと知れたが……それを駆るエリオの後を追って、蒼穹を疾駆する小さな影があった。
「クアットロ、お前の身体のこともある。私を信用して貰えるか?」
 頷く気配を背中に感じて、シグナムは玄関へと静かに躍り出た。

274 紫炎剣客奇憚 ACT.02 3/4 :2009/08/22(土) 23:40:01 ID:XnU56Gvs
 吹き渡る風は強く、天空の雲脚は驚く程速い。穏やかな陽光に反して、空は荒れているとシグナムは見上げた。その晴れ渡る嵐の中、二人の魔導士が火花を散らしていた。
 片方はキャロのパートナーである竜騎士のエリオ。嘗ては部下で、珍しく戦技の手解きをした事もある少年だった。そしてもう片方が問題の……
「疾いが、軽いな」
 正式な魔導士ですらない、小さな影をエリオのアスラーダが捉えた。シグナムにはエリオの目覚しい成長が、手に取るように伝わった。同時に、相手の未熟さも。基礎がまるでできていない、ただスピードがあるだけの剣だった。
 その振るい手は空中でバランスを崩し、手放したアームドデバイスが落下してくる。それはまるで、狙い済ましたかのようにシグナムの足元に突き立った。
「よくぞ一人でここまで……やはり天才、血は争えぬか」
 大地に突き刺さるレイピアを引き抜き、軽く振ってみる。凍れる碧き刀身が僅かに撓って、剣の軌跡を霜が舞った。珍しい氷属性……それも、たった一人の子供が作ったハンドメイドのデバイス。
「カートリッジシステムは……搭載されていないな。やはり土地柄、部品も手に入らぬか」
「お怪我はありませんでしたか? ごめんなさい、それ僕のです」
 ふわりとシグナムの目の前に、一人の少女が舞い降りた。
 腰まで伸びたストレートの髪は紫色で、透ける様な白い肌とのコントラストが眩しい。整った顔立ちはあどけなさが残り、エリオやキャロと同年代に見える。しかし実年齢では、三歳に満たぬ筈……件の《宿業の子》であれば。
「……これは、お前が一人で?」
「は、はい。設計上はもっと色々盛り込める予定だったんですけど、部品が手に入らなくて」
 少女は黄昏色の瞳を輝かせた。その姿は無邪気だが、シグナムには良く知る時空犯罪者を髣髴とさせる。アンダーシャツにキュロットスカートという姿では無く、もし白衣を着ていたら……間違いなく、あの男の面影を誰もが感じ取るだろう。
「名は?」
「エリシオンです。挨拶して、エリシオン。お客様だよ」
「Buon giorno!」
「……デバイズの名ではない、お前の名だ」
「それは、ええと……困ります、あの、知らない人に名乗っちゃいけないって母様が」
 困ったように俯く少女へと、レイピアを……エリシオンを放って返すシグナム。彼女は相手が受け取るより早く、懐よりレヴァンティンを引っ張り出すや、高らかにその名をコールした。
 眩い光が紫炎となって集い、ヴォルケンリッターが一人、剣の騎士シグナムを象った。
「凄い、騎士だ……あ、あのっ」
「この方は騎士シグナム、私と貴方の命の恩人です」
 不意にシグナムの背後で扉が開いて、クアットロが現れた。ショールを羽織るその姿は弱々しいが、毅然とした瞳を眼鏡の奥に輝かせている。
「母様、ではこの方が……」
「名乗りなさい……貴方の真の名を。そして挑みなさい。貴方が目指す『真の騎士』を知るのです」
 それだけ言って咳き込み、クアットロは後から現れたキャロに支えられた。
 シグナムは警戒しつつ背後に寄り添うアギトに目配せし、降下してくるエリオにも無言で視線を放ると。静かにレヴァンティンを構えて少女へと突きつけた。
「僕は……僕はプリジオーネ。プリジオーネ・スカリエッティ」
 初夏の空に雪華が舞い、少女の纏う衣服が弾けて消え失せた。

275 紫炎剣客奇憚 ACT.02 4/4 :2009/08/22(土) 23:42:50 ID:XnU56Gvs
「エリシオン、バリアジャケット展開」
「Va bene!」
 冷たく光る細い刀身に、光の紋様が走る。刹那、氷の結晶が乱舞してプリジオーネの身体を覆った。それは瞬時にくびれた腰から下をスカートで包み、平坦な胸を覆ってネクタイをあしらう。翡翠色を基調とした着衣に、柑色のラインが走った。
「ふむ、素人がここまで……フッ、剣を交えれば解ること。来い、プリジオーネ」
「は、はいっ!」
 シグナムとプリジオーネが同時に地を蹴る。見守る者達の視線すら追いつけぬスピードで、瞬く間に二人は戦闘に支障のない空域へと躍り出た。
 シグナムは先ず、プリジオーネが間違いなくジェイル・スカリエッティの血筋だと断定した。三年でここまで成長し、あまつさえ辺境のド田舎でアームドデバイスを一人で組み立ててしまう……天才の再来を感じさせる神業だった。
 だが、同時に戦闘に関してはエリオが少し稽古をつけていたらしいが、稚拙の一言に尽きた。
「どうした? 来ないのなら私からゆくぞ」
 シグナムはレヴァンティンを引き気味に構えて空を裂く。空戦における基本は、相手の軌道を削ぐこと。常に先手を打ち、相手の動きをコントロールして追い詰める……プリジオーネにはまだ、その基礎が備わっていなかった。
「疾いだけではっ!」
「嘘っ、僕が追いつかれた!?」
 甲高い音を響かせて、中空で両者は斬り結んだ。プリジオーネは夢中で剣を振るい、時にみえみえのフェイントを混ぜて刺突を繰り出すが……シグナムは難なくそれを捌きながら、相手の実力を読む余裕があった。
 スピードはある。加速もトップスピードも申し分ない。しかし、その剣は余りにも軽かった。
「こ、これが騎士の剣……エリオさんには通じたのにっ!」
「自惚れるな、少年。竜騎士を相手に、それで闘えていたつもりか……甘いな」
 ――今、私は少年と言ったか?
 先程から感じる違和感に、シグナムは口をついて出た言葉を反芻した。先程から少女だと思っていたが、体格的にギリギリ……思惟を巡らせるシグナムの、その僅かな隙をプリジオーネが衝いて来た。
「届け、僕の剣っ!」
 凍気を纏った一突きがシグナムを掠める。意識を眼前の相手へと戻したシグナムはしかし、それを容易く回避するや、レヴァンティンの刃を返して峰で胴を薙いだ。
 身体をくの字に曲げて、失速したプリジオーネが落下してゆく。
 迷わずシグナムは後を追って声を張り上げた。
「何故、騎士を目指す……少年っ!」
 応えるプリジオーネが姿勢を制御し、震える切っ先をシグナムに向けてきた。そこには確かに、交戦の継続を求める意思があった。まだ、闘志があった。
「母様を助けたいから! 母様の話してくれた、大恩ある騎士に……貴女に憧れたからっ!」
「ならば見るがいい、全力で相手をしよう。――紫電一閃っ!」
 青空に鮮血が舞った。眼下に顔を覆うクアットロを、エリオやキャロを見た。
 シグナムはその日、主はやてにこう報告した……昨今世間を騒がせる『第二のジェイル・スカリエッティ』を処理した、と。

276 名無しさん@魔法少女 :2009/08/22(土) 23:43:59 ID:XnU56Gvs
以上、投下終了です。
お目汚し失礼いたしました。

277 名無しさん@魔法少女 :2009/08/22(土) 23:58:55 ID:XSJpyMA2
>>276
乙だが一つ突っ込みを 
× アスラーダ → ○ ストラーダ
うん。それじゃどこぞのモータースポーツアニメの車だw

278 276 :2009/08/23(日) 07:37:38 ID:MbzButF.
>>277
うわっ、やってしまいました…大失敗(汗)
何かストラーダの名前、いっつも間違えてしまいます。
エリオファンの方、すまぬ…すまぬ…

何はともあれ、ご指摘感謝!今後気をつけます。

279 名無しさん@魔法少女 :2009/08/23(日) 16:19:10 ID:TJJM3YzA
そこでロッソストラーダですよ

280 名無しさん@魔法少女 :2009/08/23(日) 16:52:59 ID:.mn3cyvU
乙!
なんかかっこいいな!
定型の話だけど面白いな!

あと一つ突っ込み。
戒を止めるじゃなくて、矛を止めると書いて武だよw

もっとも、昔は矛と盾の意だったらしいけど。

281 名無しさん@魔法少女 :2009/08/23(日) 19:03:21 ID:ZPiQGyAc
>>276
GJ!

282 B・A :2009/08/23(日) 19:54:18 ID:pR2DO.I6
よし、日曜日に間に合った。
投下いきます。

注意事項
・sts再構成
・非エロ
・バトルあり
・オリ展開あり
・基本的に新人視点(例外あり)
・レジアスのはやて(と本局と教会)批判はまだまだ続く
・ライトニング分隊大活躍
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

283 Lyrical StrikerS 第5話① :2009/08/23(日) 19:55:28 ID:pR2DO.I6
第5話 「星と雷」



レジアス・ゲイズの一日は多忙である。
朝は送迎車の中でスケジュールを確認し、出勤するなり各部署から回ってきている山のような書類に目を通す。
定例会議では治安維持について各部署の代表者や陸士部隊の部隊長と議論を戦わせ、
必要とあらば各方面への電話や直接の訪問も怠らない。無論、自分を支援してくれている財界や政界の支援者への便宜も忘れない。
他にも陸士部隊や管理局の関連施設の視察、式典などの行事への参加、広報のための取材や会見など様々な仕事が待ち構えており、
腰を落ち着けている暇などほとんどないため、酷い時は満足に食事を取る暇もないことがある。
今日も先程まで会議に参加し、近年の検挙率上昇に関して熱弁してきたところである。
レジアスが愛娘にして副官であるオーリスから、機動六課に出動要請が入ったことを告げられたのは、
自身の執務室に戻って来てすぐのことであった。

「山岳レールウェイにガジェットだと? 何故、こちらに情報が入っていない? 
レリックがミッドに運び込まれていたことも、初耳だぞ」

「教会本部が独自に追っていたようです。同時に新型のガジェットも発見されたため、
慎重な対応を要するために報告を控えていたと」

「差し詰め、子飼いの機動六課に手柄を立てさせる魂胆なのだろう。忌々しい、聞けば六課の設立も、
聖王教会の小娘が主導で行っていたというではないか」

「カリム・グラシア少将です、中将。公式の場ではお控えください」

「わかっている」

融通の利かない愛娘の言葉に、レジアスは苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。
カリム・グラシアは次元世界で最大規模を誇る宗教組織“聖王教会”教会騎士団に所属する騎士であり、
時空管理局にも理事官として在籍している。そのため、両組織において影響力が非常に強く、
機動六課の後見人としての顔も持っている。捜査官として多少の実績はあるとはいえ、
部隊長の経験がない八神はやてが自身の部隊を持つことができたのは、彼女の働きかけが大きいと言える。
また、彼女は他に類を見ない稀少技能の持ち主でもり、レアスキル嫌いのレジアスに取っては二重の意味で気に入らない相手であった。

「教会も本局も地上を軽く見過ぎている。その癖、こちらが行動を起こせば口を出して妨害し、
挙句、当てつけのように本局指揮下の地上部隊の設立だ。我々が泥と血に塗れて地上を守護してきたというのに、
あいつらはそれを鼻で笑うかのように好き放題をしてくる。勝手に部隊を作り上げ、潤沢な予算で人員を集め、
何をするにも事後報告。腹立たしいにもほどがある。今回も八神はやてが知らせて来なければ、
このことを我らが知ったのは事件が終わった後のはずだ」

「そこまで言うのでしたら、何故、機動六課の指揮権を放棄されたのですか? 形式的とはいえ、
あれだけの戦力をある程度自由に使えるのならば、引き込んでおいて損はないと思われますが?」

「犯罪者の部隊など必要ない。それに機動六課の目的がレリックやガジェットへの対応であるのならば、
間違いなくあの男へと辿り着く。それを最高評議会が黙認しているというのなら、
恐らくは牽制の意味合いがあるのだろう。泳がせておいて問題ない」

レジアスの口から最高評議会という言葉が出ると、オーリスは僅かに眉を釣り上がらせた。
最高評議会。
それは時空管理局設立の立役者である3人の人物が立ち上げた組織であり、次元の海と陸を守護する時空管理局の最高意思決定機関である。
退役した身であるため、平時は運営方針に対して口出しなどせず成り行きを見守るに徹しているが、
必要と判断した際は本局と地上本部の両方を動かすことのできる権限を有している。
レジアスは彼らからの信任を得ており、時空管理局の未来を左右するあるプロジェクトを一任されている。
地上軽視の風潮が強い本局を相手に豪気な態度で挑めるのは、レジアス自身の手腕もさることながら、
最高評議会の後ろ盾が影響していることも大きい。

「最高評議会は、あの男を御し切れていないというのですか?」

「或いは、対外的なパフォーマンスか。何れにしろ、小娘は生贄だ。見ろ」

そう言って、レジアスは仮想ディスプレイを愛娘の前に展開する。
そこには、オーリスが事前に集めてレジアスに報告した機動六課の事細かな情報が映し出されていた。
レジアスはその中から写真入りの組織図を呼び出すと、画面全体に拡大させて自らの推論を述べる。

284 Lyrical StrikerS 第5話② :2009/08/23(日) 19:56:52 ID:pR2DO.I6
「指揮官としての実績は皆無の小娘が部隊長を務め、主力である2名の分隊長は移籍ではなく本局からの貸し出し扱い。
小娘の私的戦力たる闇の書の騎士どもを除けば、後は経歴の浅い新人や縁故者ばかり。更には期間限定の実験部隊扱い、
詰まりは切り捨てようと思えばいつでも切り捨てられる仕様だ」

それはつまり、部隊が想定していた成果を上げられなかったり、取り返しのつかないミスを仕出かした際は、
部隊長である八神はやてに全ての責任を押し付けて部隊を解散させることができるということだ。
無論、多少なりとも本局の責任問題として槍玉に上がることはあるだろうが、少数精鋭の特殊部隊のテストケースであったためと
押し通すこともそう難しくはない。

「奴を牽制できればそれで良し、駄目なら部隊を解散。責任は最高でも本局が負うため、彼らに不利益な点を一切ない。
ならば、これを利用しない手はないだろう。腹立たしいが、六課に捜査協力することで情報を得るつもりだ。
最近の奴は派手に動き過ぎていて、こちらでも対処し切れぬことがある。無論、それ以外にも使い道はあるがな。
情報を得れずとも、適当な理由をこしらえて本局や教会どもを黙らせることができればそれで良い。
これだけ違法スレスレのやり方で作り上げたのだ、材料には事欠かんだろう」

「では、機動六課の査察を?」

「日程の調整を頼む。査察は、わし自ら行おう」

背後の窓の向こうに広がるクラナガンの全景を振り返り、レジアスは皮肉めいた笑みを浮かべる。
自嘲しながらも何かを期待するような笑み。
彼はここにはいない誰かに語りかけるように、誰にも聞こえない小さな声で呟いた。

「精々、足掻け。狸めが…………どこに堕ちるか見届けてやる」







空を駆けるヘリの揺れが、お尻を伝って全身に響き渡る。
操縦手を務めるヴァイス・グランセニック陸曹の運転技術によるものか、速度の割に揺れは少なく、
気分を害するようなこともない。だが、初の実戦を前にしてキャロの緊張は最高潮に達しようとしていた。
繰り返してきた訓練を思い返し、今日まで必死で覚えた4人での連携を頭の中で反芻する。
明確に生まれるイメージは勝利。
なのに、上手くやれるという自信が持てない。
完璧なシュミレーションを何度も繰り返すが、その度に不安は折り重なるように比重を増していき、
気持ちが堕ち込んでいく。魔導師に取って基本といえる、魔力生成のための呼吸のリズムも崩れつつあった。

「わぁっ、何あれ!?」

ヘリの窓から外の様子を伺っていたスバルが、視界を埋め尽くすガジェットの群れを見て驚愕する。
隊列を組んで飛翔してくるのは、最近になって存在を確認されたばかりだという飛行型のガジェットⅡ型だ。
白い雲の浮かぶ青がガジェットの灰色で染められ、Ⅰ型に占領された列車へと迫っている。
ヴァイスも必死でヘリを飛ばしているが、ここからではⅡ型の方が先に列車へと辿り着いてしまう。
そうなってしまえば、レリックの確保は非常に難しくなるだろう。
成り行きを見守っていたなのはは、通信でグリフィスやフェイトと二、三言話をすると、
決意のこもった眦を上げてヴァイスが座る操縦席へ呼びかける。

「ヴァイスくん、わたしも出るよ。フェイト隊長と2人で空を抑える」

「うっす、なのはさん。お願いします」

ヴァイスの返答は短かった。
信頼しているからこその応答。
激励も声援もそこにはなく、ただ無言の信頼だけが2人の間にはあった。
なのははヴァイスのサムズアップに無言で頷き返し、くるりと踵を返して開き始めたハッチに向き直る。
彼女の手には、普段は胸元に下げられている深紅の宝石が握られていた。

「じゃ、ちょっと出てくるけど、みんなも頑張って、ズバッとやっつけちゃおう」

「「「はい」」」

「…はい」

緊張の余り、返事が他の3人よりも遅れてしまう。
すると、外に飛び出そうとしていたなのはが向き直り、こちらを安心させるように微笑みを浮かべる。
訓練では見せたことのない穏やかな笑みに、キャロだけでなく他の者もどこか意外な表情を浮かべていた。
唯一、スバルだけが彼女の笑みに覚えがあるかのように頷いているが、それに気づいた者はいなかった。

285 Lyrical StrikerS 第5話③ :2009/08/23(日) 19:59:02 ID:pR2DO.I6
「キャロ、大丈夫、そんなに緊張しなくても。離れていても、通信で繋がっている。1人じゃないから、
ピンチの時は助け合えるし、キャロの魔法はみんなを守ってあげられる、優しくて強い力なんだから」

緊急の事態でありながら、なのははゆっくりと噛み締める様に言葉を紡ぐ。
こちらを安心させるために。
緊張を解き解し、ベストを尽くさせるために。

「それじゃ、いってくるね」

最後に微笑んだなのはの姿が、フッと空へと堕ちていく。
直後、眩い桃色の閃光が迸り、強い魔力の波動がヘリの壁をビリビリと揺さぶった。
窓から覗くと、バリアジャケットに身を包んだなのはが一直線にガジェットⅡ型の群れへと飛翔している。
もの凄いスピードで迫るなのはの存在に気がついたガジェットの群れは、下部に設置された2門の砲塔を迫り来る敵へと向ける。
一方のなのはは、スピードを緩めることなく突撃を続け、左手で持っていたレイジングハートをまっすぐに構えていた。
刹那、雨のような熱線の弾幕を搔い潜りながら、なのはは桃色の閃光を放つ。
編隊を組んでいた数機のガジェットは、たったそれだけで跡形もなく焼き払われていく。
一瞬の内に陣形を崩されたガジェットは、それでも目の前の障害を排除しようと散発的な攻撃を続けている。
だが、なのはは砲撃の反動を利用して既にガジェットの射程距離外まで後退しており、カートリッジの消費と共に生み出した
無数の誘導操作弾をまるで手足のように操りながらガジェットを撃墜していく。
この間、僅か数分。
たったの数分で、敵の足並みは滅茶苦茶に乱されていた。
ここに至って、ガジェット達はなのはを最大の敵と認識して襲いかかって来る。
運の悪いことに、今のなのははアクセルシューターを発動していて動くことができない。
しかも、シューターは半分以上を攻撃に使ってしまったため、このままでは迎撃が間に合わない。
万事休すかと、キャロ達4人は息を呑む。
その時、一筋のきらめきが、なのはの背後に迫っていたガジェットを一刀に両断した。

「フェイトさん!」

回転する金色の刃がガジェットを一掃し、なのはの隣に黒と白のバリアジャケットを纏ったフェイトが並び立つ。
市街にいたため、出動の遅れたフェイトが間に合ったのだ。いや、ひょっとしたらなのはは、
フェイトからの援護があることをわかっていて、動かなかったのかもしれない。

(凄い…………何て息の合ったコンビネーション)

まるで一心同体であるかのように、2人は言葉も交わさぬまま背中合わせに立ってガジェットの群れを蹴散らしていく。
なのはの砲撃がガジェットをまとめて吹き飛ばし、フェイトの斬撃が確実に鉄の塊を生みだしていく。
正に一騎当千。4人の誰もがその戦いに見惚れ、言葉を失っていた。
そして、その隙にヴァイスはヘリを加速させ、一気に暴走する列車の上部へと機体を近づけていく。

「新人ども。隊長さんたちが空を抑えてくれているおかげで、安全無事に降下ポイントに到着だ!!」

ヴァイスの言葉で我に返り、4人はバリアジャケットに身を包んだリインへと向き直る。
彼女が語った作戦は、非常にシンプルなものだった。
全てのガジェットを破壊し、レリックを安全に確保する。
レリックは列車の真ん中辺りに位置する貨物室に保管されているため、分隊ごとに分かれて
車両の前後から貨物室へと向かう。
ガジェットⅡ型はなのはとフェイトが押さえてくれているため、今ならば安全に降下できるらしい。
まずはスターズ分隊の2人が支給されたばかりのデバイスを手に、力強く空へと躍り出る。

「スターズ03、スバル・ナカジマ!」

「スターズ04、ティアナ・ランスター」

「「いきます!!」」

2人の姿がヘリから消え、なのはの時と同じように閃光が空を染める。
2年間、レスキューで働いていただけあって、2人は高所からの飛び降りにも恐怖は感じていないようだった。
胸の内にある確固たる自信。
自分は上手くやれると、2人は強く信じているのだ。
羨ましいと、キャロは思った。
土壇場に来て、自分はまだ自身が持てていない。
列車の上に飛び置いて、戦う覚悟ができていない。

「次、ライトニング! チビども、気を付けてな!」

激励の込められたヴァイスの怒声が、ヘリの中を木霊する。
半ば促されるまま、キャロはヘリの後部へと移動した。
主の不安を敏感に感じ取ったフリードが、心配そうにこちらを見つめている。
しかし、今のキャロには彼を労わる余裕すらない。
急がなければ、急いで飛び下りなければと、気持ちばかりが焦って空回りしている。
その時だ。
傍らに立つ少年の言葉が、ほんの少しだけ恐怖を振り払ってくれたのは。

286 Lyrical StrikerS 第5話④ :2009/08/23(日) 20:01:56 ID:pR2DO.I6
「一緒に降りようか?」

ただ静かに、エリオは微笑みながら右手を差し出す。
言葉は短かったが、そこには強い思いが込められている気がした。
大丈夫だから。
何かあっても、僕が守るから。
フェイトのように抱きしめてくれたわけではない。
なのはのように、励ましてくれたわけでもない。
ただ実直に、無言で労わるだけ。けれど、他の人にはない無条件の信頼がそこにあった。
一緒にいられる、側にいてくれる。
自分が孤独ではないという実感。
自分は今、この世界で祝福されている。

「うん」

握り締めた手は暖かく、安堵が胸中に染み渡る。
今なら飛べると、キャロは強く思った。

「ライトニング03、エリオ・モンディアル」

「ライトニング04、キャロ・ル・ルシエとフリードリヒ」

「きゃふぅ」

「「いきます」」

飛び降りた。
力強く、はっきりと。
手はしっかりと繋いだまま。
繋がった場所から、勇気が伝わってくる。
澄み渡った心は、自分の体を一個の機械へと組み替えていく。
魔法という超常の力を振るうための、神秘の回路。
戦いの始まりが、高々に告げられる。

「セットアップ!」

そして、4人の魔法使いは戦場へと降り立った。







着地の衝撃を膝で吸収し、スバルは戒めを解くかのように姿勢を正す。
顔を上げると、列車の反対側にエリオとキャロが着地したのが見えた。
初めてのバリアジャケットの生成は、うまくいったようだ。
今まで使ってきた着脱式の簡易ジャケットとは違う、全身に薄い重りを巻きつ付けたかのような感覚。
重さは感じなかったが、一呼吸する間に魔力が消費されていき、負荷がリンカーコアを蝕んだ。
少し辛いが、きちんと魔力を錬れば問題ない。緊急時でも、呼吸のリズムは崩すなという戒めには丁度良い。
新しい相棒となるマッハキャリバーも、履き心地は自作したローラー以上だ。

「あれ、このジャケットって?」

ふと目に飛び込んだ自身のバリアジャケットの意匠に、スバルは目を丸くする。
青の色彩が施された白いジャケット。少し盛り上がったような肩のシルエットは、
今も空で戦っているなのはのバリアジャケットと非常によく似ている。

「デザインと性能は、各分隊の隊長さんのを参考にしているですよ。ちょっと癖はありますが、高性能です」

管制のために降りてきたリインが、茶目っ気を含んだ笑みを浮かべる。
なのはと同じデザインの防護服を着ているということが、スバルを強く感動させた。
防護服を通じて、憧れの人の力強さが伝わってくる。
彼女と一緒に戦っているのだという確かな実感が込み上げてくる。
彼女は空、自分は地上。
戦うフィールドは違うけれど、同じ場所で戦っている。

287 Lyrical StrikerS 第5話⑤ :2009/08/23(日) 20:02:45 ID:pR2DO.I6
「スバル、感激は後」

ティアナの言葉で、スバルは我に返る。
直後、車両の天井を不自然に盛り上がり、数本の光が金属の屋根を突き破る。
内部のガジェットが、こちらの存在を感知したようだ。
浮かれていた気持ちが一瞬の内に引き締まり、思考が光よりも早く疾走する。
まるでスイッチが入ったかのように精神が昂ぶり、2人は弾かれるように戦闘態勢を取った。
リンカーコアが活性化するままに、スバルが拳を作り、ティアナがクロスミラージュを構える。

《Drive ignition》

厳かに発せられたデバイスの音声が合図となった。
立て続けに放たれるティアナの魔力弾が、車体に取りついていたガジェットを葬り去る。
今までは生成に時間を要した対AMF弾も、新デバイスの補助によって連射が可能なほど素早く作り出すことができる。
それどころか、有り余る破壊力はガジェットの装甲を貫通しても尚止まらず、遙か後方の車両の天井にぶつかるまで消滅しなかった。
今までに使っていたアンカーガンとは段違いの性能に、ティアナは驚愕の表情を浮かべる。
だが、彼女はすぐに冷静さを取り戻すと、こちらが突入しやすいように弾幕を張ってガジェットを牽制する。
その隙にスバルは、いつものようにローラーのギアを最大にまで叩き上げ、視界の端に流れ弾を映しながら熱線によって開いた穴に飛び降りる。
雄叫びと共に右腕のリボルバーナックルが軋みを上げ、視界が眼下のガジェットを捉えた。
迎撃のために列車の制御を奪っていたケーブルを引き抜くが、スバルの拳は赤い鞭が振るわれるよりも早く、
ガジェットの固い装甲を粉砕する。
濛々と上がる黒煙の向こうから、空気が動く気配を感じ取る。
即座に後退しながら反転し、背後にいたガジェットの攻撃を回避、自身が破壊したガジェットの残骸を
力任せに投げつけてもう1機を破壊する。
視界に映るガジェットは残り3機。
やたら滅多に乱射させる熱線を搔い潜りながら、スバルはマルチタスクで次の一手を組み立てる。
その瞬間、こちらの意図を汲み取ったマッハキャリバーが、自身に登録されていた魔法を自動で詠唱する。

《Absorb Grip》

(えっ?)

戸惑いながらも、スバルは強化されたローラーのグリップを駆使して壁を疾走し、
ナックルスピナーに魔力を凝縮していく。
いつものように、相手を牽制するための射撃魔法。
だが、撃ち出されたのはこちらの想像を遙かに超えた破壊の嵐であった。
懐に潜り込むまで、相手の攻撃を防げればいい。そう思って放った風の弾丸は凄まじい風圧を巻き起こし、
車内のガジェットのみならず魔法を放った自分をも巻き込んで、列車の天井を破壊したのである。

「ううっ、わあぁぁぁぁぁっ!?」

何の前触れもなく空中に体が投げ出され、スバルの思考が乱れる。
列車はまだ暴走しており、左右は断崖絶壁。急いで足場を作らなければ地面に叩きつけられてしまう。
しかし、焦りで構成がまとまらず、慣れ親しんだはずの魔法をうまく詠唱できない。
すると、またしてもマッハキャリバーが自動詠唱を行い、見慣れた蒼いレールが生みだされる。
スバルは無我夢中でマッハキャリバーが造り上げたウィングロードを駆け抜けると、自分が放り出されたのとは別の車両に飛び降りた。
勢い余って倒れ込むと思ったが、マッハキャリバーは着地の慣性も見事に相殺してくれる。
こちらの予想を遙かに上回る出力と高性能AIによる魔法の自動詠唱、そして何より、自分と姉にしか使えないはずのウィングロードを
マッハキャリバーが詠唱したことに対し、スバルは驚愕を禁じ得なかった。

「マッハキャリバー、お前って、もしかしてかなり凄い? 加速とかグリップコントロールとか? 
それにウィングロードまで……………」

《私はあなたをより強く、より速く走らせるために造り出されましたから》

スバルの驚嘆に、マッハキャリバーは淡々と答える。
レイジングハートのような温かみとは違う、どこか無機質で冷たい合成音。
それだけが自分の役目だと言わんばかりの、身も蓋もない返答。
道具としてのアイデンティティは、正にデバイスの鑑なのだろう。
けれど、今の自分達の関係は主従のそれだ。
主である魔導師を補佐し、守るために力を振るう。
それは決して間違いではないけれど、自分の求めるものとは少し違っていた。
あの2人のように、深い部分で繋がった関係。
頼れる相棒であり、気の置けない友人であり、かけがえのない家族。
ただの主従で終わらせる気など、スバルにはなかった。

288 Lyrical StrikerS 第5話⑥ :2009/08/23(日) 20:03:18 ID:pR2DO.I6
《Master?》

「ああ、ごめん……………ありがとう。けど、ちょっと言い換えよう。マッハキャリバーには、AIとはいえ心があるんでしょう?」

リボルバーシュートの余波で破壊された車両を見ながら、スバルはどこか感慨深げに呟く。
これは自分1人の力でやったことでも、マッハキャリバーがやったことでもない。
自分とこの娘、2人で振るった力なのだ。
今はまだ危なっかしくて、うまく扱えないけれど。
いつか、この力をきちんと使えるようになりたい。
いや、なるんだ。

「お前はね、あたしと一緒に走るために、生まれてきたんだよ」

《同じ意味に感じます》

「違うんだよ、色々と」

いつか、空で戦うあの人のように。
彼女と戦うあのデバイスのように。
エースと呼ばれるあの2人のように。
想いをまっすぐに貫くことのできる魔法使いになるんだ。

《考えておきます》

「うん」

微笑みを返し、思考を切り替える。
なのはとフェイトが空を抑えてくれていることで、Ⅱ型の増援はない。
運転席を占拠していたガジェットもティアナが全て破壊しており、エリオとキャロも順調に貨物車両へ向かっている。
列車の中にはまだ多くのガジェットが残っているようだが、この調子ならば問題なく任務を完了できそうだ。

『スバル、車両の停止は私が引き受けるです。ティアナと合流して、レリックの確保を!』

「了解」

リインからの指示に従い、再びガジェットの待つ車内へと飛び降りる。
待ち構えていたかのような手厚い歓迎は、鋼の拳で以て返礼するつもりだ。

「いくよ、マッハキャリバー!」

《All right, my master》

頼もしい返事が、スバルに勇気を与えてくれる。
新型のガジェットが出現したと報告が入ったのは、その直後であった。







巨大なアームが振りかぶられ、エリオとキャロは弾かれるように床を蹴る。
2人が対峙しているのは、Ⅱ型と同じく発見されたばかりの大型ガジェット“Ⅲ型”だ。
目的地である貨物車両を前にして現われたこの新型は、その巨体とパワーを遺憾なく発揮してエリオとキャロを追い詰めていく。
エリオの斬撃もフリードの火球も通用せず、伸縮自在のアームが振るわれる度にキャロを庇うエリオの体に傷が増えていった。

「三士! フリード、ブラストフレア!」

無駄とわかりつつも、ブーストを施した火球をガジェットへと放つ。
だが、Ⅰ型をいとも容易く融解させた竜のブレスをⅢ型はアームの一閃で薙ぎ払い、
弾かれた火球が背後の崖にぶつかって轟音が轟く。
エリオも果敢に斬りかかるが、Ⅲ型の装甲は電流への耐性も強化されているようで、機能障害どころか
表面に傷一つ付けることができなかった。

289 Lyrical StrikerS 第5話⑦ :2009/08/23(日) 20:04:26 ID:pR2DO.I6
(攻撃が利かない……………今のままじゃ、今の力じゃ……………勝てない…………)

AMFの濃度が増していき、徐々に体への負担も大きくなってくる。
慌ててキャロは後退すると、ガジェットを抑え込んでいるエリオを援護しようと詠唱を始める。
だが、今の自分達の力で強力なAMFを誇るⅢ型を破壊できるであろうか?
エリオにしろフリードにしろ、生半可なブーストではあの装甲は破れないだろう。
攻撃手段を使役竜に依存している自分など以ての外だ。

(フリードなら…………竜魂召喚なら……………)

自身が保有する奥の手の1つ、竜魂召喚。
それは飛竜フリードリヒに施されているリミッターを解除し、真の力を引き出す魔法である。
しかし、真の力を取り戻したフリードの精神は非常に不安定であり、制御に失敗すれば周囲を見境なく攻撃する暴走状態に陥ってしまう。
そもそも、キャロはその強すぎる力故に故郷を追い出されたという過去を持っている。
彼女の故郷は第6管理世界アルザス地方。彼女の性である“ル・ルシエ”は一族の名であり、
使い手の少ない召喚魔法を伝える部族であった。
一族はみんな家族であり、誰もが何らかの形で召喚魔法に関わる集落。
召喚魔法を学ぶ者、召喚獣を育てる者、召喚魔法を理論化し残そうとする者、召喚師を育てる者。
その中でもキャロは、一際異質な存在であった。
彼女は生まれながらに“竜使役”の技能を有し、竜と心を通わせる能力を持っていた。
それ自体は決して珍しいことではない。キャロの才覚は些か突出していたが、
ル・ルシエは竜の使役を最も得意としていたため、才能溢れる彼女の誕生を大いに祝福していた。
彼女が真に異質であったのは、言い伝えに名を残すアルザスの巫女と同じ加護を受けていたからであった。
アルザスの森に生息する真竜クラスの稀少古代種。
黒き火竜と呼ばれる竜と、キャロは心を通わせることができたのである。
ル・ルシエ一族はその竜を神として称え、畏敬の念を抱いていた。
もしもアルザスの巫女が有り触れた存在ならば、キャロが故郷を追い出されることはなかったかもしれない。
だが、不運にもアルザスの巫女は言い伝えや昔話に登場すだけの存在であり、最年長である長老ですら実物を見たことがなかった。
それ故にキャロは伝説の復活と一族から褒め称えられ、そしてその強過ぎる力を恐れられた。
彼女が窮地に陥れば、火竜が全てを灰塵と化した。
森で大型動物に襲われた時、暗い洞窟で迷子になった時、鳴り響く雷鳴に恐怖を駆り立てられた時、
火竜は巫女を危機から守ろうと次元の壁すら引き裂き、周囲を火の海へと変えていった。

『僅か6歳にして白銀の飛竜を従え、黒き火竜の加護を受けた。お前は真に素晴らしき竜召喚師だ』

『じゃが、強過ぎる力は災いと争いしか呼ばん』

『すまんな、お前をこれ以上、この里に置く訳にはいかんのじゃ』

故郷を追われた夜のことは、今でもハッキリと覚えている。
里で一番の賢者である長老が見せた悲しい表情。
怯えているようにも悔やんでいるようにも見えた長老の眼差しが、今でも忘れられない。
見送ってくれる者は誰もいない。
引き留めてくれる者もいない。
魔法を教えてくれた両親すら、満足に口も利いてくれなかった。
災いを呼び寄せる呪われた竜召喚師。
フリードと共に世界を旅して周りながら、いつしかキャロは自分をそう思うようになった。
無論、竜召喚の力を人々のために役立てようと思ったことは何度かあった。
だが、その度にキャロはフリードの制御に失敗し、惨劇を目の当たりにしてきた。
燃え盛る劫火、砕かれる大地、鳴り響く悲鳴と絶望の怨嗟。
自らの怯えを敏感に感じ取ったフリードはこちらの命令すら無視して暴れ回り、この世に地獄を作り出すのだ。
その中心にいるのは、恐怖で震えているだけの自分。
フリードはどんなに破壊の限りを尽くそうと、主である自分だけは傷つけようとしない。
ただ守るために振るわれる暴力。それを延々と見せつけられるだけの弱い自分。
管理局に保護されてからもそれは変わらず、フェイトに引き取られるまでは心を凍てつかせた日々を送っていた。
だから、自分を受け入れてくれている機動六課を、今もこうして自分を守ろうとしてくれているエリオを傷つけてしまうかもしれないことが怖い。
また全てを破壊してしまうのではないのかという恐怖が、彼女の心を竦ませる。
その躊躇がガジェットに好機を与え、重圧として圧し掛かっていたAMFが糊のように四肢に纏わりついてくる。
同時に、足下に展開していた魔法陣も消えていった。AMFの濃度が更に増したのだ。

290 Lyrical StrikerS 第5話⑧ :2009/08/23(日) 20:05:03 ID:pR2DO.I6
「こんな遠くまで?」

「うわああぁぁぁぁぁあっ!!」

「三士!?」

魔法による肉体強化が消えたことで、力負けしたエリオの体が車体に叩きつけられる。
耳にこびり付くような苦悶の声。
騎士甲冑のおかげで致命傷は防げたようだが、かなりのダメージを負っているのは明らかだ。
助けなければと飛び出すが、思うように体が動いてくれない。
みんなを傷つけてしまうかもしれないという恐怖が彼女を縛っているのだ。
そして、戦場で震え上がる戦士は敵にとって格好の獲物であった。

「下がって!」

エリオが突き出した槍が、キャロ目がけて振り下ろされたアームをギリギリのところで防ぐ。

「大丈夫、任せて」

自分を押し潰そうとするアームを何とか受け流し、エリオは自らを囮にするかのように跳躍する。
すかさず、ガジェットは剃刀のような熱線で焼き殺そうとするが、エリオは紙一重でそれを回避して背後に着地、
そのまま攻撃せんとストラーダを振りかぶる。だが、ガジェットはその見た目よりも遙かに素早い動きで反転すると、
しなりの利いたアームでエリオを壁に叩きつける。
一瞬、エリオの纏っていた騎士甲冑が明滅する。
ダメージが大きくて呼吸ができず、魔力の生成が間に合っていないのだ。

『エリオ!?』

ケリュケイオンから、フェイトの悲鳴が聞こえる。
通信のために繋ぎっぱなしにしていたオープン回線で呼びかけているようだ。

「フェイトさん、三士が、モンディアルさんが!」

『待っていて、すぐに………くっ、このぉっ!!』

空の彼方で爆音が轟く。
金色の閃光の異名を持つ彼女でも、リミッターをかけられた状態ではガジェットⅡ型の群れを振り切るのは難しいらしい。
かと言って、なのはの砲撃ではレリックを巻き込む恐れがあるし、リインやスバル達も自分のことで手一杯のはず。
今、動けるのは自分だけだ。
自分の竜召喚だけが、エリオを救うことができる。
なのに、勇気が持てない。
ここへ飛び降りる時にあった力強さが、自分の中のどこを探しても見つからない。
手を繋いでいないから。
一人ぼっちだから、勇気が持てない。

「ううわぁぁぁぁぁぁぁっ!!! くはっ…………」

「っ!?」

アームに巻き上げられたエリオの体が動かなくなる。
抗う力を失った少年騎士は、子どもに飽きられた玩具のように投げ飛ばされ、崖下へと堕ちていく。
騎士甲冑があるとはいえ、この高さでは無事では済まない。
落下のダメージを防ぐことはできても、地面に叩きつけられた衝撃までは消せないからだ。
このままでは、間違いなくエリオは死ぬ。
小さな体がトマトみたいに潰れて、あの優しい笑みを二度と浮かべなくなる。

(モンディアル………三士…………)

キャロの脳裏に、ここ1ヶ月の間のエリオとの思い出が蘇る。
ターミナルでの出会い。
ベンチで交わした会話。
初めての模擬戦。
スピードだけが取り柄だと言った時の笑顔。
転んだ自分を労わってくれた優しさ。
嫌いなニンジンを、無言で食べてくれた不器用さ。
出動の前に分け与えてくれた勇気と、共に空を飛んだ時の安心感。

『キャロは、どこへ行って、何をしたい?』

フェイトに引き取られた時の問いかけが、脳裏を掠める。
いつだっていてはいけない場所がいて、してはいけないことがあった自分。
災厄を呼ぶだけだった竜召喚師としての自分。
けれど、そんな自分でも守れるものがあるのなら。
呪われた力でも、救える命があるのなら。
我が身の不幸を呪わず、胸を張って生きていける場所があるのなら。
いつかの問いかけに答えても良いのなら、自分はここにいたい。
機動六課で、大切な家族や友達と一緒に笑っていたい。

291 Lyrical StrikerS 第5話⑨ :2009/08/23(日) 20:05:38 ID:pR2DO.I6
「エリオくん………………エリオくーん!」

自分でも、どうしてそんな行動に出れたのか不思議でならなかった。
気がつくとキャロは、列車から飛び降りて落下していくエリオの後を追いかけていたのだ。
空を飛べぬ陸戦魔導師にとっては自殺行為としか言いようのない暴挙。
しかし、無我夢中のキャロはそこまで冷静な考えが及ばなかった。
ただ、このままエリオを一人ぼっちにしてはいけないという思いと、あの手の温もりをもう一度繋ぎたいという思いが、
彼女の内側から失敗に対する恐れを消し去っていた。そして、結果論ではあるがガジェットから距離が空いたことで、
魔法を無効化するAMFの効果範囲から逃れることができた。
それは、キャロがフルパフォーマンスの魔法が使えることを意味していた。

(守りたい。優しい人、わたしに笑いかけてくれる人達を、自分の力で……………守りたい!)

《Drive ignition》

ケリュケイオンがシステムの起動を告げ、キャロの体から膨大な魔力が迸る。
2人を包み込んだ桃色の魔力は球体のような形へと変化し、重力という鎖を引き千切って局地的な無重力空間を生み出した。
その中心に座するキャロは、抱きしめた少年の体を優しく労わると、傍らに降り立った自らの使役竜に目を向けた。

「フリード、不自由な思いさせててごめん。わたし、ちゃんと制御するから…………いくよ!」

腕の中で目を覚ましたエリオが、自身の置かれた状況に唖然とした表情を浮かべる。
厳かに紡がれる詠唱。
それは、フリードに秘められた真の力を解放する祝詞だ。

「蒼穹を走る白き閃光、我が翼となり天を駆けよ。来よ、我が竜フリードリヒ、竜魂召喚!」

魔力の渦が一際膨れ上がり、卵の殻が破れる様に1匹の巨大な竜が顕現する。
全長10メートルほどの赤き瞳の白竜。それこそ、白銀の飛竜と呼ばれたフリードの真の姿であった。







大気を震わせる魔力の波は、気を失っていたエリオの意識を覚醒させるほど凄まじいものであった。
信じられないことに、その中心点にいるのは自分を抱きしめている小さな少女なのだ。
戦うことに怯え、震えあがっていた少女。
どこか抜けていて、転んでばかりいる妹みたいな女の子。
実際に彼女が巨大化したフリードを使役している姿を垣間見ても、夢を見ているのではないのかと錯覚してしまう。
それほどまでに、目の前の出来事は現実離れしていた。

「フリード、ブラストレイ! ファイア!」

キャロの号令で、フリードの口から今までと比較にならないほどの強烈な炎が吐き出される。
空間ごと燃やし尽くさんと迫る飛竜のブレス。その破壊力たるや、平均的なAAランク魔導師の砲撃にも匹敵するだろう。
膨大な熱量は安全圏にいるはずのこちらにまで及んでおり、玉のような汗が額を伝う。
だが、炎の向こうから現れたガジェットは腕やケーブルが焼き切れてはいるが、健在であった。
Ⅰ型よりも強固な装甲と、丸い形状が幸いして攻撃を耐え抜いたようだ。

(何とか内部に電気を流せれば……………)

AMFは自然現象まで無効化できない。
エリオの持つ魔力変換資質「電気」はガジェットにとって正に天敵と呼べる能力ではあるが、
未熟なエリオでは直接相手に触れなければ電気を流し込むことができない。
AMFの効果範囲内にいては電気魔法も使えないため、今のエリオには打つ手がなかった。
だが、震えを必死で堪えながらフリードを使役するキャロを見て、弱気な考えを改める。
自分が何とかしなければならない。
キャロは恐怖と戦いながら、自分を危機から救ってくれた。
今度は、自分がキャロを守る番だ。

292 Lyrical StrikerS 第5話⑩ :2009/08/23(日) 20:06:12 ID:pR2DO.I6
「砲撃がダメなら物理攻撃だ。今度は僕とストラーダがやる」

「うん」

フリードの上に立ち上がり、ストラーダを両手で構える。
呼吸を整え、リンカーコアを静かに活性化させる。
背中に感じる温もりは、キャロが側にいることの安心感だ。
彼女からの支援が、今は何よりも心強い。

「我が乞うは、疾風の翼。若き槍騎士に、駆け抜ける力を」

《Enchanted Field Invalid》

「我が乞うは、清銀の剣。若き槍騎士の刃に、祝福の光を」

《Boost Up. Strike Power》

「いくよ、エリオくん!」

「了解、キャロ!」

力強くフリードの背を蹴り、列車の中から姿を現したガジェットⅢ型に向かって飛び降りる。

「ツインブースト、スラッシュ&ストライク!」

《Empfang》

一拍遅れてキャロの補助魔法がストラーダに吸い込まれ、金色の魔力刃が桃色へと染まる。
訓練の時と同じく、自分の中で膨れ上がる強い力のうねりにエリオは顔を歪ませながらも、
襲いかかるガジェットのアームとケーブル目がけて振り上げたストラーダを一閃する。
フリードの火炎から逃れた触手達はその一撃で細切れに千切れ飛び、爆発しながら崖下へと落ちていく。
丸裸となったガジェットの盾となるものは、もう何もない。
だが、AMFの効果圏内に入ったことで魔力結合が急速に失われていき、
ストラーダの先端の魔力刃も儚く明滅する。キャロにフィールド魔法を無効化するブーストを施してもらっているため、
今は辛うじて形作っているが、そう長くは保ちそうにない。

「一気に勝負をかけっ…………えぇっ!?」

ストラーダを振りかぶった瞬間、ガジェットの巨体が迫っていたことに気づいて大きく後退する。
攻撃手段を失ったガジェットは、あろうことかその巨大な胴体でエリオを押し潰そうとしているのだ。
エリオが必殺の一撃を放つためにはどうしても助走をつける間合いが必要なため、エリオは後退することを余儀なくされる。
そして、そうしている間にもキャロの補助魔法は加速度的に効果を失っている。
キャロが新たにブーストを施そうとするが、AMFが邪魔をしてストラーダに届く前にかき消されてしまうので、
後数十秒もすれば完全に魔法が消えてしまう状態にまで追い詰められていた。。

「エリオくん!」

「大丈夫、ヒントは君がくれた!」

不敵な笑みを浮かべ、エリオは槍投げの要領でストラーダを真上に放つ。
そして、自身はガジェットを踏み台にして跳躍し、AMFの効果圏内から飛び出たストラーダに手を伸ばした。

「キャロ!」

「エリオくん!」

再びブーストを施されたストラーダが、エリオの手の中に戻ってくる。
重力にストラーダの重みが加わり、落下の勢いが増す。
すかさずエリオは2発のカートリッジをロードし、魔力噴射を噴かせながら眼下のガジェットへと向き直った。

《Explosion》

「一閃、必中ッ!」

稲妻と化したエリオの一撃が、ガジェットの巨体に迫る。
その一撃は一直線。ほんの少しだけ前後に移動すれば、回避することは造作もない。
しかし、ガジェットは動くことができなかった。ボールのような球体の体が、金色の糸によって列車に縛りつけられていたからだ。

293 Lyrical StrikerS 第5話⑪ :2009/08/23(日) 20:12:22 ID:pR2DO.I6
「ライトニングバインド…………エリオ、とどめを!」

「うううおおおおおぉぉぉぉぉぉっ! ぶちぬけぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

一際輝きを増した魔力刃が、ガジェットの装甲を貫く。
刀身から放たれた電撃は、フェイトが施したライトニングバインドの副次効果によって威力を強化されており、
キャロのブーストと合間って凄まじい威力の斬撃を生み出していた。
エリオはその有り余る破壊力に導かれるように反転し、両断されたガジェットを真一文字に薙ぐ。
十字に切り捨てられたガジェットはそのまま機能を停止させて大爆発を起こし、エリオの矮躯が黒煙に飲み込まれる。
黒煙が晴れた時、手にしたストラーダは本来の蒼い槍へと戻っていた。

「やった、エリオくん!」

「エリオ、よくやったね」

いつの間にか戦闘が終わっていたのか、フェイトが列車の上へと降りてくる。
リインも列車のコントロールを取り戻せたようで、暴走していた列車は徐々に減速を始めていた。

「キャロもちゃんとフリードを制御できたんだね。2人とも偉いよ、本当によく頑張った
後でご褒美、あげないとね」

「えっと、フェイトさん…………その…………」

手放しで褒め称えるフェイトに照れ臭さを感じ、エリオを頬を赤く染めて視線を逸らす。
すると、回収対象であるケースを抱えたスバルとティアナがヘリへと機関する姿が目に入った。

(レリックはスバルさん達が回収したのか。ガジェット1機に手こずるなんて、僕達もまだまだだな。
けど、キャロが無事で良かった………………あれ?)

自分が今まで、ごく自然にキャロのことを名前で呼んでいたことに首を傾げる。
そういえば、キャロも自分のことを名前で呼んでいた。
いつの間に自分達は、互いを名前で呼び合うようになったのだろうか?
エリオはしばし首を捻った後、誰にも気づかれないように笑みを浮かべて考えるのを止める。

(まあ、良いか。家族なんだし、こっちの方が)

ちょっとだけ、自分達の距離が縮まった気がする。
多分、これが家族としての最初の一歩だったのだろう。
そんな風に、エリオは思っていた。







どことも知れぬ闇の中で、機動六課の戦いを観察していた者がいた。
その男はヨレヨレの白衣を纏った研究者風の人物で、眼前の巨大ディスプレイを見つめる瞳は狂気に彩られた金色だ。
ギラギラと熱のこもったその瞳に覗かれた者は、誰もが彼の正気を疑うだろう。
夜行性の動物を思わせるその風貌が端正なだけに、瞳に宿る狂気がより異様な気配を醸し出している。

『刻印ナンバーⅨ。護送体勢に入りました』

「ふぅむ」

『追撃戦力を送りますか?』

「やめておこう。レリックは惜しいが彼女達のデータが取れただけでも十分さ」

顔を向けることなく通信の向こうにいる女性に言い、男は映し出される映像を興味深げに見聞する。
機動六課。
手元の資料では本局の特殊部隊としか記載されていないが、その戦力は予想以上に大きなもののようだ。
しかも、ほとんどのメンバーが何らかの稀少技能を有しており、若い隊員の潜在能力も高い。
どれもが弄りがいのある素晴らしいサンプル達ばかりだ。

294 Lyrical StrikerS 第5話⑫ :2009/08/23(日) 20:12:52 ID:pR2DO.I6
「この案件はやはり素晴らしい。エース・オブ・エース、タイプゼロ、竜召喚師。
初の管理局製融合デバイスがいるということは、あの闇の書の主とヴォルケンリッターもいるはずだ。
みんな、私の研究にとって興味深い素材だよ。データがないこの娘が少し気になるが、まあ人数合わせのための凡人だろう。
非凡なものは持っているようだが、サンプルとしては役不足だな。良いさ、こんな馬の骨の存在など気にならないくらい、
稀少な存在がそこにいるのだから」

画面が切り替わり、金色の髪の魔導師と赤い髪の少年騎士が映し出される。
ガジェットを相手に奮戦する2人の映像を前にして、男は唇の端を吊り上げる。
三日月のように裂けた笑みは、まさに悪魔の微笑であった。

「この子達を、生きて動いているプロジェクトFの残滓を手に入れるチャンスがあるのだから」

薄暗い闇の中で、男の笑い声が木霊する。
一しきり笑った後、男は思い出したように通信の女に向けて問いかけた。

「そういえば、ルーテシアはどうしているかな? レリックがあったのなら、あの娘も動いているはずだ」

『いるよ』

最初からやり取りを聞いていたと言わんばかりに、紫紺の髪の少女が回線を割り込ませる。

「やあ、可愛いルーテシア。今回は残念だったね」

『あれは11番のレリックじゃないから、気にしてないよ』

「そうだったね。けれど、覚えておくと良い。君が間に合わなかったためにレリックを奪われてしまった。
これが意味することがなんなのか、賢い君にならわかるだろう?」

『私が戦わなきゃ、11番のレリックもあいつらに取られちゃうの?』

「君の頑張り次第だろうね。けど、あのピンクの女の子は君と同じ召喚師、色々と気を付けねばならないんじゃないかな?」

『大丈夫、私にはガリューがいる。だから…………あんな幸せそうな奴らに、負けたりしない』

無感情ながらもどこか迫力こもった呟きを最後に、少女からの通信が切れる。
面白いことになってきたと、男はほくそ笑んだ。
機動六課、レリック、ガジェット、そして自分達。
これは本当に、面白い祭りになりそうだ。






                                                              to be continued

295 B・A :2009/08/23(日) 20:13:26 ID:pR2DO.I6
以上です。
タイトルは「星と雷」。けど、実質ライトニングが主役。
追放されるくらいだから、ヴォルちゃんはきっと手が付けられなかったんじゃないかなと。
如何にも生き字引ですって感じの長老が自分のところの巫女を追放なんて決断するくらいだから。
ちなみに、これを書くために5話を見返してキャロの回想で泣いちゃったのはここだけの秘密だ。

296 名無しさん@魔法少女 :2009/08/24(月) 17:57:19 ID:Q27xho7U
投下乙、次回も待ってます。

297 名無しさん@魔法少女 :2009/08/24(月) 21:17:31 ID:DEC4lrCI
乙です。
期待してまっせ

298 シロクジラ ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:28:04 ID:qghMEkD6
>>295
これは……エリキャロなのかエリルーなのかが気になるところです。
そしてドクターのティアナ評ひでぇw
陰謀渦巻いてますが、ゼストさんとかどういう立ち位置なのやら……と今後が気になります。
GJでしたー


さて、だいぶご無沙汰ですが、シリアス鬱長編「嘆きの中で」7話、いきます。

作品概要というかあらすじ
一部のメンバーを除いて死屍累々の機動六課。
STSバッドエンドからの分岐、IFアフターストーリー。
新暦79年、STSから四年後の時空です。

・生存者の相違点
スバル・ナカジマ=主人公で執務官。
ゼスト・グランガイツ=ルーテシア父。存命し捜査に協力。
エリオ・モンディアル=スカリエッティ側につく。家族の復活が望み。
高町なのは=海鳴市の数少ない生き残り。

スカリエッティ側
ナンバーズが一部裏切り、死者も出ている。
スカリエッティは逃げのびており、陰謀中。

NGは「嘆きの中で」かトリで。

299 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:29:18 ID:qghMEkD6
嘆きの中で 第7話


――嘆こうと思えば、何時でも出来た。
だが私達は既にそれすら許されないのだ。
殺し続けた記憶……新暦75年……四年前の地球で、私と妹達は殺戮を行った。
悲鳴を上げる人々がいた。家族を護るために剣を手にした者達がいた。
主を逃すために、捨て身で挑んできた人形があった。
娘の名を叫び続ける親が存在した。
そのすべてが――犠牲者だった。
いいや、虐殺される肉塊だった。

「……ノーヴェ。ドクター……いいや、スカリエッティに従うな。もうすべて終わったんだ……!」

「……あのさ、チンク姉。何言ってるんだよ貴方は――」

四年前がすべてを変えた。

私も、妹達も、なにもかも――変わってしまったのだ。
無垢なる者など記憶の中にしかない。誰もが手を穢し、血の臭いに溺れた。
目の前の妹――ノーヴェは、漆黒のプロテクターを泥で汚して、ギチギチと歯を鳴らした。
金色の瞳から零れる涙を拭おうともせず、呟いた。

「――たっくさんぶっ殺したじゃんか。タカマチの家族はバラバラに吹っ飛んで、ウミナリとか言う街は火の海。
ディエチとオットーはよく働いたよな……留守番してたあたしだって、データ共有で“何を殺したか”ぐらいはわかるっ!」

海鳴市殲滅戦――広域殺戮兵器ガジェットドローンⅤ型の初めて投入された作戦。
管理外世界への大儀なき武力行使、否、虐殺だった。
一般市民、無関係な管理外世界へ向けた攻撃。
火の海で死んでいく人々と、笑い転げる創造主……ジェイル・スカリエッティ。
自らが作りだした地獄の風景を見て、私は決めたのだ。
あの男からの離反を。

「……消せない罪だ。だが決めた、せめてお前達を止めてから死ぬと」

ノーヴェの顔に浮かぶものは悲哀、憎悪、歓喜。
唇から紡がれるのは、引き返せないという決意。

「遅いんだよ……何もかもっ! 今更戻れるかよっ!」

構えられるガンナックル――生成された粒子弾頭、二百七十発が射出されるも、私の身体はそのすべてを予測演算していた。
すべては想定したとおりだ。そう、ノーヴェの引き返せないという嘆きすらも、戦闘機人チンクにはわかっていたから。
体内のリンカーコアを活性化させると、私は防護コートの重力素子によって跳んだ。
跳躍――手の中に出現する投擲ナイフ=六本の電磁加速――レールガン。
ノーヴェの展開した積層シールドに深々と食い込んだそれら。

「そうか。ならば」

ISの発動――金属を爆発物とする異能の発現。

「せめて一撃で逝け」

銀色の閃光。

その中でノーヴェは、幽かに笑っていた。

300 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:29:51 ID:qghMEkD6
「……なに?」

否、“嗤っている”。
嘲るように暴力的に、されど一筋の悲しみを残して。

「なぁんにも知らねぇんだな、貴方は……アレが、アレがなんなのかを!」

爆発――。





理想は捨てた。
心に残るのは壊れた夢。
“英雄”に成るには、夢を捨てる必要があった。
自分はもう、憧れた存在になることは出来ないだろう。
夢を捨てることもせず、心に抱え込んだ結果、壊してしまった。

――ああ、でも僕は……キャロとフェイトさんが生きていれば、良かったんだ。
救いなどいらなかった。彼女達が生きてさえいれば、エリオ・モンディアルという存在は満足だ。
そう言う単純な構図、なのにどうして――“あの人”は道を阻む?
激情のままに叫ぶ。

「――邪魔をするなぁ、高町なのはァァァ!!」

あはは、と掠れた笑い声。かつて自分達の上官だった女性は、白い法衣を揺らして、おぞましい笑みを浮かべていた。
金色の魔杖たるレイジングハート・エクセリオンを構え、幾つもの障壁を展開、フリードリヒのブレスからエリオを護りながら。
彼女はこちらを一瞥すると、どうしようもなく掠れた声で言った。

「エリオ、想像してみて御覧? 家族が、ある日、どうしようもない悪意によって“壊された”瞬間を。
二度とその人達の顔を見ることが出来ないくらい、とっても、とっても酷い殺され方をして――」

ぐにゃり、と笑顔が歪む。
おおよそ形容しがたいもので満たされたその表情は――“憎悪”“悲哀”“狂気”。
燃え上がる負の感情。煉獄で鍛え上げられたようなそれに、エリオは恐怖した。

「――貴方は耐えられるの?」

「……う、ぁ」

彼の端正な顔が負け犬のように恐怖に歪む中、高町なのはは酷く透き通った表情で“微笑む”。
レイジングハートの先端を白龍フリードリヒの真っ正面へ突きつけ、カートリッジシステムの機構が排莢、排莢、排莢。
三発分の大口径カートリッジの魔力――バカ魔力と云うに相応しいオーバーSランクの魔力制御技能により、
重力制御で白い悪魔の身体が音速を超過して飛び立つ。エリオは何とか身体制御で跳ね起き、
その戦技舞踏に気圧されながら木立の中へ逃げ込んだ。
ガチガチと歯が鳴り続ける。

「怖い」

ぼそり、と呟くと、エリオの中でその感情は爆発しそうになっていた。
恐怖――戦うことへの、或いは命を奪うことへの恐れ。
そうだ。エリオ・モンディアルは臆病だ。
臆病だから魔法の行使には必ずリミッターを付けていたし、そうすることで“人殺し”という狂気から逃げていた。

301 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:30:58 ID:qghMEkD6
少なくとも、フェイト・テスタロッサやキャロ・ル・ルシエを殺されてなお――彼には“仇討ち”という選択肢がない。
ただ、二人の復活という望みだけが彼の希望で、生きる活力だった。
遠くで鳴り続ける巨竜と魔導師の激闘の音、それすらも怯えしか産まぬほどに――弱い。
木立を抜けた。山道にエリオは転がり出て――“だから”。

「時空管理局です……っ! エリオ?」

その紫の少女によって、闘志は掻き消された。
漆黒のドレスと紫の艶やかな髪、紅い瞳と白い肌。
人形じみた少女の姿が目に飛び込んだ瞬間、何もかも吹き飛んだ。

「……ルーテシア・アルピーノ……どうして、君が此処にいるっ!」

「どうし――」

その先に続くのは「どうして?」か「どうしたの?」か。
そんなこともどうでも良い。ただひたすらに世界が憎かった。
何故ならば、キャロが命を賭けて助け出したはずの女の子が、戦場にいるのだから。
脳裏を駆け巡る感情/情報の波――合致する事実の輪郭。
嗚呼――漸く理解出来た。

「……“そういうことか”」

「――て此処に――」

ガチリ、とエリオの中の大切なものが焼き切れる音。
何時だって世界は、こんなはずじゃなかったことばかりだ。
せめて君だけは、こんな血の臭いがする場所に居て欲しくなかった。
だというのに――現実は、彼女を争いに駆り出している。
しかもよりによって、時空管理局という敵として。

――それが世界の選択ならば、

「ガリューを喚んで、ルー。君と僕は敵同士だ」

――誰かを救うことなど、エリオ・モンディアルには許されていない。
抑えきれない脆い心の罅が、ビキビキと広がっていく。
何もかも、無駄だったんだ。

「でないと――」

ギ、ギギギギギギギギギ、ギ!
突撃槍ストラーダの嘶き。リンカーコアが軋みを上げるほどの過剰魔力。
心が甘くひび割れていく。この残酷な巡り合わせすらも、運命だというのなら。

「――僕は!」

―――呪われてやる!
ダークブルーの外殻槍、ストラーダが蒸気を吐き出して加速。
その無慈悲で暴力的で激情的な刺突は、確かに少女を穿とうとしていた。
だが、

「ならば世界に背くか、小僧」

刹那、凄まじい暴風とともに黒金の刃がエリオに向けて打ち込まれる。
エリオはこの刺突を突撃槍の腹で受け止め、弾き飛ばされることで受け身を成立させる。
そして対峙する敵の姿に、改めて吼えた。

「死人が今更! 土塊に還れぇ!」

その騎士は白銀を四肢に纏い、矛で少年の激情を受け止める。

「死んでばかりいられんさ――ゼスト・グランガイツ、受けて立つ」

302 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:31:43 ID:qghMEkD6



エリオ・モンディアルが去ったあとの高町なのはとフリードリヒの戦域。
戦場となった森林地帯の遙か上空に、それは存在した。
高々度輸送機――大型偵察機をベースにカーゴキャリアを取り付けた代物だ――の機内に在るモノ。
それは無数の兵器だった。無数の兵器達だった。無数の機械であり、人にあらざるものだった。
その中に、戦闘機人ナンバーズの投降者――No.10ディエチはいた。
技術復興部奇兵師団。超法規的に質量兵器の保持を認められた、時空管理局の暗部にしてカウンターフォース。
消せぬ罪の烙印に喘ぎ、心を焼く過去――既に何度となく反芻した行為だ。
砲撃。砲身より解き放たれる偉大な破壊の王。彼女に出来る唯一の償い。
殺して殺して殺して殺して殺して……その果てに許される永久の眠り。
カーゴキャリアのハッチが開放され、低空で暴風のように荒れ狂う白龍を見下ろす。
ディエチはイノーメスカノンⅡ――黒鉄の塊をゆっくりと構えると、機関部の外殻を展開しコネクターに外部冷却装置とパワーセルを接続、
速射砲の体を成した巨砲を全身の人工筋肉によって保持し、白龍フリードリヒの右翼へ狙いを定めた。

「……ごめんなさい」

引き金を引く。機関部が唸りを上げて砲弾を生成、砲身から連続で吐き出し、フリードリヒの翼を貫く。
着弾、着弾、着弾――バランスを崩した白龍の巨体が、地面へ落下し始め――代わって桜色の閃光。
それは業火の如き憎悪の刃。四年前、ディエチが恐怖を感じた女性の砲撃魔法。
飛行機を掠めたそれは物理破壊設定、確実に殺すための威力。
天へ向けて解き放たれた砲撃は、確かに“ディエチを狙っていた”。
ぞくり、と肌が泡立つのを感じながら、それでも戦闘機人たる少女は通信を試みた。

「投降してください――ナノハ・タカマチ」

通信ウィンドウが開く。現れたのは栗色の髪を纏めた女性。
かつての溌剌とした様子は無いが、未だ衰えぬ美貌の高町なのはだった。

「貴方の行動は上層部も問題視し始めています……これ以上は――」

《よく喋る人殺しだね。私の家族を殺しておいて》

「……四年前のことは――罪に問われようと問われまいと、いずれ償います」

高町なのは――何処か澄んだ笑顔。

《なら――死んで》

鳥肌が立つほどの殺意が乗った砲撃が膨れあがり、遙か彼方より光の槍が飛来する。
イノーメスカノンⅡの防御機構発動――数キロメートル先からの砲撃を予測、弾道算出を完了。
大容量パワーセルのエネルギーを使い、オーバーSランクの砲撃を弾く強固な半球状のシールドを形成。
光が障壁と衝突する中、ディエチは通信モニターへ向けて叫んだ。

「まだ死ねないっ! あの奈落の底で藻掻く妹達が居るから――!」

《文字通り、冥府へ逝ったお父さん達は! そんなことすら云えなかった!》

パワーセルの出力を上回らんとする砲撃に驚嘆しながらも、戦闘機人は抗う。
少なくとも死ねない――“あの化け物”を壊すまでは。
ガリガリガリガリガリ、と障壁が削れていく中、悪魔のような声が聞こえた。
それは呪いのようにディエチの心を蝕む、あの日の悪意そのものだ。

《あーあーあー、マイクテスト。うん、しっかり繋がっているね》

ザザザ、と空間モニターに砂嵐が走るが、そんなことはどうでもいいと思えるほど“悪意”に満ちていた。
モニターに映る高町なのはの顔が、どうしようもない感情に塗れ、憎々しげに声が吐かれる。

303 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:32:32 ID:qghMEkD6
《お前は……!》

紫の長髪に餓鬼のような笑顔、爛々と輝く金色の瞳――白衣の狂科学者(マッドサイエンティスト)の姿。
“彼”は踊るようにお辞儀をすると、ケラケラと甲高く笑う。

《ご機嫌ようミッドチルダ、いや全世界の諸君。私は世間ではテロリストなどと言われる身分だ。
世界中でガジェットドローンが観測されて何やら大騒ぎのようだが、悲嘆も恐怖も必要無い、何故なら――》

放送はありとあらゆる回線帯をジャックし、塗り潰そうと笑い続ける。

《――君たちは知るのだよ、真の“歓喜”を!》

砲撃が鳴り止み、

「ジェェエイルゥ、スカリエッティィィィ!!」

一人の女人の声が雷鳴の如く天を裂いた。





《いやはや、私が憎いかね? 怖いかね? 
ああいいぞいいぞ、もっとのたうって“彼女”の起動を早めてくれ。
私はオモチャが弄りたい性分でね。なに、怖いことはない》

ドクターの声。
ノーヴェは目を開いた。自身を粉微塵に砕いてくれるはずの爆撃は掠り傷も与えてくれず、
代わりと言わんばかりに他人の血臭と機械のスパークが五感を塗り潰した。
金色の瞳が映すのは白いコートを纏った影。
決して背が高いとは言えない女性が、痛みに痩せ我慢して歯を食い縛っている。
納得できない光景故に、ノーヴェは叫ぶ。

「セカンド、なんのつもりだ!」

「……せるもんか」

「あぁ?」

タイプゼロセカンド――スバル・ナカジマは魔法障壁で爆撃のダメージを防ぎ、その代償として左腕を失っていた。
バリアジャケットごともぎ取られた腕は駆動骨格を剥き出しにし、神経ケーブルを断裂させてぶら下げている。
人間ではない。紛れもない異形の証たる機械化された肉体は、しかし暖かな血の通う“ヒト”だった。
それを見てノーヴェは思う。なんだってあたしなんかを庇うんだ、と。
スバルが吼えた。

「死なせるもんか、もう誰もッ!」

ああ、こいつはバカなんだ。正真正銘のバカなんだと、ノーヴェは思い知った。
仲間を殺されてなお、こんなことを何故言っていられる? 普通ならぶち殺しても飽き足らないはずだ。
少なくとも自分はそうだった。ティアナ・ランスターは、ろくな状態ではなかったと思う。
だけど、こいつは。

チンクが虚を突くようにナイフを投擲する。電磁誘導によりレールガンの初速を持つ兵装である。
人間の反応速度ではどう足掻いても防御など不可能。故にチンクの意志はただ一つだ。

304 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:33:08 ID:qghMEkD6
―――スバルごとノーヴェを処理する。

なんと冷酷でわかりやすい方法だろう。
こっちのほうが理解出来るな、とノーヴェは嘆息した。
だがしかし、高初速のナイフ十数本よりも兇悪な光が奔った。

「……やっぱり死ねないなァ、迎えが来たよ、チンク姉」

そう彼女が呟いた刹那、すべてのナイフが砕け散る、否、――粉砕された。
電光石火の殺人機動を前にして、チンクは防護コートの機構を作動させる。
巨大な光刃が発生し、一迅の暴風――いや人影――が小柄な少女に襲いかかる。
銀髪が爆風に揺れ、その金色の隻眼が驚愕に見開かれ――幽かに驚きを浮かべた。

「……トーレ!」

対する影は無言だ。手足から蜻蛉の羽根にもブレードにも見える光翼を展開し、全身に強靱な装甲外骨格を装着した戦闘機人。
長身ながら女性らしいプロポーションを外骨格と仮面で覆ったその人は、紛れもなくナンバーズの戦闘部隊を束ねる者だった。
仮面から零れた青紫の髪が、さわりと揺れた。不意に言葉がチンクへ投げかけられる。

「退け。今宵はドクターの意向故、見逃そう――チンク」

チンクは咄嗟の判断で、腰のハードポイントから荷電粒子カッターを抜き放った。
触れたものを容赦なく焼き切る機甲刃を前に、トーレは嗤う。

「狗を演じてまで私たちを殺したいか。それほどの価値が――」

背が低いことを利用し、短刀ほどの大きさのカッターを突き出す――トーレのしなやかな美脚が蹴撃にてこれを迎え撃ち、
駆動骨格が軋むほどのダメージをチンクへ与えていた。痛み――右腕の骨格に深刻な損傷。
思わず低い悲鳴が洩れる。

「っ!」

「――“この世界”にあるのか?」

その表情を隠す漆黒の仮面故に、チンクはトーレの真意を量りかねた
ただ一つ理解出来たのは、自分は命を奪われないと言うこと、そして今の装備では決して勝てないと言うことだ。
身体もバリアジャケットもボロボロのスバル・ナカジマは、朽ちた左腕が握っていたクロスミラージュを右手で構え発砲するも、

「邪魔だ」

弾丸を超える加速――トーレの拳を腹へ打ち込まれ、血を吐きながら大木へ叩きつけられた。
咄嗟に腹筋部の筋肉と体術を駆使してインパクトの衝撃を殺すが、内臓へ浸透したダメージは深い。
吐き気を覚えながらも立ち上がろうと湿った土の上を這い、口中に広がる血に溺れかかるスバルはそれでも、ノーヴェへ手を伸ばしていた。

「……ダメ……ノーヴェ……あたしたちは、きっと……」

305 嘆きの中で ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:34:32 ID:qghMEkD6
まだ戻れる――そんな言葉/希望。

「……黙れよ。あたしは違う、ただの兵器だ」

その姿から目を逸らすと、ノーヴェはチンクへ視線を投げかけ、まるで餓鬼のように笑いながら言う。
チンクは視線を痛みに耐えながら受け止め、息を吐いた。

「なァ、チンク姉。貴方は知っているのかよ、ドクターたちの掘り起こしたロストロギアがなんなのかさ」

「……なに?」

ああ――何も知らないんだ、とノーヴェは笑う。
発色の良い赤毛を揺らして笑い、ガンナックルを嵌めた右腕で天を指さした。
スカリエッティの声が何処からか聞こえる。

《――さぁて、準備が出来た。先史人類アルハザード人が残せし命の卵――古代の叡智<アカシャ・コア>のお披露目だ!》

大地が爆ぜ、融解した隔壁がマグマのように噴き出し、メキメキと地面を割る機動兵器――ガジェットドローンⅤ型の群れが、何かを牽引している。
全長三十メートルの飛行船型の巨躯、全身に無数のレーザー発射口を備えた浮遊砲台三機が地下から引き摺るものは、

「なに、これ……?」

―――有機的に蠢き、無数の目蓋を持つ漆黒の心臓。
どれほどの巨獣の臓器だというのか、その直径は目視で五十メートルはあるだろう。

「……これが貴様の望みか」

―――それは黄金色の瞳を見開き、眼下の地上を見下ろした。
その瞳の色はアルハザードの遺児、ジェイル・スカリエッティと等しい。

「嘘だ……こんな、こんな!」

―――まるで神が降りたが如く、すべてを包み込む畏敬。
思わず拒絶したくなるような、禍々しい気配である。

スバルが、チンクが、ヴァイスが、ゼストが、エリオが、ルーテシアが、なのはが、ディエチが―――戦場の誰もが視認する悪夢。
それを首を傾げて眺め、蒼白の装甲を纏ったトーレが呟いた。

「刮目し待つがいい――祝祭の時を」


第7話 了。

306 シロクジラ ◆9mRPC.YYWA :2009/08/24(月) 21:38:53 ID:qghMEkD6
と、以上でございます。
ここまでくるのに極めて個人的都合により一年……時間かけ過ぎた……

オリ展開バリバリになる&オリキャラも少数ですがご登場願うかも、ですが、
お付き合いいただければ幸いです。なお、鬱展開は仕様になる予定

307 名無しさん@魔法少女 :2009/08/24(月) 22:58:24 ID:2.tIJDnU
欝は大好物です。GJ!

308 名無しさん@魔法少女 :2009/08/24(月) 23:47:10 ID:mnEvTKCg
GJ

309 名無しさん@魔法少女 :2009/08/25(火) 20:29:24 ID:/yF2YA2E
おお久しぶりにこの作品きてたか。保管庫で読み直してくるぜ。

310 ザ・シガー :2009/08/25(火) 23:09:32 ID:1xHvx2UM
おお、更新乙です。
ハードなストーリーは良いですねぇ、次回も楽しみにしてます。

しかし、氏のSSはギャグとシリアスの差が激しすぎるwww



そして私も投下するとしよう。
非エロ・長編・『偽りの恋人』、今回で最終回だ。

311 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:11:20 ID:1xHvx2UM
偽りの恋人8


「んぅ……あ、あれ?」


 閉じた瞳に感じた眩しさに、ソフィアは身をよじり、目を覚ました。
 視線の先には白の一色がある。
 白色の電灯にが照らす、シミ一つ無い真っ白な天井。
 そして鼻腔をツンと突く消毒液の匂いに、身体を覆う純白のシーツの感触。
 考えるまでも無く、そこは医務室のベッドの上だった。
 痺れるような痛みがあり、体力と魔力を著しく消耗した肉体が重い。
 少女はその痛みを堪えながら、一度ベッドの上で身体を起こす。
 疲労で鈍る脳を懸命に働かせて記憶を探った。
 彼女の聡明な頭脳が自分の状況を理解するのに、そう時間はかからなかった。


「ああ……負けたんですね、私は」


 完敗だった。
 出せる技は出し尽くし、あらゆる力を使い尽くした。
 それでも負けた、完膚なきまでに。
 しかも、最後の一手は慢心から招いたものだった。
 あの時、自分は完全にヴァイスを舐めていた、見下していた。
 もしあそこでシグナムと対峙せず、彼の狙撃をもっと警戒していれば、あるいは状況は変わったかもしれない。
 だが、そうはならなかった。
 ティアナと自分を撃ち抜いた一弾も忘れて、自分は彼を否定した。
 それは理性的な帰結ではなく、感情的な拒絶だった。
 愚かだ。
 あまりにも、愚かだった。
 もはや取り返しなどつかない事を思い、少女は唇を噛み締める。


「あら、もう起きたの?」


 唐突に声がかけられ、ソフィアは視線をそちらに向けた。
 そこに立っていたのは白衣の美女。
 ふわりと舞う、短く切りそろえられたボブヘアの金髪。
 白衣とブラウンの制服に覆われたたおやかな肢体。
 そして、優しげな笑みを浮かべた美貌。
 機動六課の主任医務官、湖の騎士シャマルである。
 ソフィアも顔だけは知っている、故に、少女は問うた。


「シャマル先生、でよろしかったですよね?」

「ええ、初めましてルイーズさん。身体はどう? 大した傷はなかったけれど」

「大丈夫です……まだ少し調子が戻りませんけど」


 少女の答えに、美しい医務官は嬉しげに柔らかく笑んだ。


「良かった。純粋な魔力のダメージで昏倒しただけだから、これなら何も問題ないみたいね」


 心底安堵した、といった声でシャマルは言う。
 相手を心から労わり、肉体だけでなく心も癒す。それは正に慈母のようだった。
 まあ、母であるどころか伴侶や恋人もいない彼女にそんな事を言えば、機嫌を悪くするかもしれないが。
 そんな事を思考の片隅で思いながら、ソフィアは問いを口にする。


「あの……ティアナさんはどうなさいましたか?」

「ティアナなら、一足先に出て行ったわ。あの子も怪我はほとんどないから、心配いらないわよ」

「そうですか。良かった……」


 今度はソフィアが安堵の溶けた声を漏らす。
 短い付き合いとはいえ、ティアナはもう彼女にとって掛け替えのない親友だった。
 ティアナの無事を聞き、思わずソフィアの表情は綻ぶ。


「ねえ、ルイーズさん」


 そんな少女に、シャマルがそっと声を掛けた。

312 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:12:58 ID:1xHvx2UM
 顔を俯かせ、どこか憂いを帯びたような残響で静かに。


「その……あまり気を落とさないでね? シグナムの事……残念だったけど……」


 と、告げた。
 模擬戦に敗れ、もはやソフィアの初恋は完全に潰えた。
 シャマルの言葉は、そんな少女を労わろうという優しさだろう。
 ソフィアを慰めようと白衣の美女は色々と言葉を重ねた。
 どこかたどたどしい口調で言葉を繋げる様は、純真な健気さを感じさせる。
 見ていて微笑ましく、思わずソフィアの口元に微笑が浮かんだ。


「お気になさらないでください。私は大丈夫ですから」


 答えた少女の言葉は、僅かに涙の残滓があった。





 医務室を後にしたソフィアは、力ない足取りで六課隊舎を歩いていた。
 全てが終わったという虚脱感が身体を支配し、心もまた空虚の中にある。
 フラフラと、まるで夢遊病者のように少女は歩く。
 夕焼けの、燃えるような茜色が眩い。
 郷愁を誘う赤色は心に染み入り、酷く寂しさをそそった。
 ぼんやりと空を見上げ、ぼんやりと歩く。
 ただ、歩く。
 物憂げな眼差しで美貌と黄金の髪を夕日の茜色に染めるソフィアのその様は、どこか浮世離れした影のある美しさをかもし出していた。
 見る者の心を、どこか遠い地平に誘うような儚げな美貌。
 そんな少女の美貌が表情を変えた、驚愕へと。


「隊長……」


 半ば自然に、少女の薄桃色の唇から残響が零れた。
 ソフィアの心に驚きをもたらした原因は、目の前の女性。
 ポニーテールに結われた緋色の髪を揺らす、艶めく美女、烈火の将と二つ名を持つ騎士がいた。
 二人の間に、沈黙が流れる。
 言葉もなく、動きもなく、ただ視線だけを交錯させた時間が場を支配した。
 それを最初に破ったのは、黄金の髪の少女だった。


「隊長……その……一つよろしいですか?」


 アイスブルーの瞳に不安を溶かし、声を震わせて、乙女は問う。
 ソフィアの問いに、シグナムは小さく首を立てに振り、答えた。
 了承の意だ。
 彼女の答えを受け、少女は言葉を紡ぎ続けた、切なげな残響で。


「私は負けました、もう……あなたへの想いを遂げる事は叶いません」


 酷く悲しみに満ちつつも、されど朗々と歌うような、甘くひび割れた響き。
 その響きを以って、少女は言葉を紡いだ、


「でも……もう一度だけ……もう一度だけ言わせてください、伝えさせてください」


 愛の言葉を。


「私はあなたを――愛しています」


 簡潔な言葉の中には、どこまでも果てしない恋慕の情が篭っていた。
 大気に響き、溶け行く音の名残が全て消え去るまで、数拍の間が生まれた。
 ソフィアの言葉を聞き届け、シグナムはその意味を深く噛み締める。
 そして、静かに答えた。


「すまない、私は……応えられない」


 いつもは凛然と輝く瞳をどこか憂いげに細め、シグナムの口から出でたのは拒絶の意。
 それはかつて、もう随分と昔に感じるほんの少し前に少女から告げられた恋慕の思いへ、ようやく出した返事だった。

313 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:14:16 ID:1xHvx2UM
 自分を慕う少女を傷つけたくないが為に、偽りの恋人を用いて先延ばしにしてきた答え。
 拒まれると知りつつ、もう一度想いを伝えてきた少女の姿に将はこれ以上欺きを成す事ができなかったのだろう。
 もはや飾る事無く、シグナムの唇は言葉を吐き出した。


「ルイーズ、お前は私にとって大事な存在だ。でもそれは……やはり部下として、仲間としてだ。本当に……すまない」


 拒絶とは、それが決して悪意なくとも、告げる者にも告げられる者にも等しく心に痛みが訪れる。
 今のシグナムもまた然り、彼女の心には棘が刺さるような鋭い痛みがあった。
 告げられたソフィアの心はいかばかりか。
 だがしかし、少女の顔に浮かんだのは苦しみのそれではなかった。


「いえ、いいんです」


 ふわりと、まるで可憐な花が咲くように、


「ありがとうございます……お返事していただけて」


 笑っていた。
 愛らしく、美しく、そしてそれ以上に切なく。
 澄んだ青の瞳から一筋の涙を流しながら、乙女は失恋を受け入れた。





 ずっとそれが聞きたかった。
 本当は心の隅で、勝負なんかであの人と結ばれるとは思ってなかった。
 ただ、私は答えて欲しかったんだ。
 私の言葉に、私の想いに、あの人の声で答えて欲しかった。
 それが例え拒絶だったとしても。
 シグナム隊長の言葉を受けた私は機動六課の中庭で一人、暮れなずむ空を見上げながら、泣いていた。
 目尻から溢れ、頬を伝う水の感触、涙の感触。
 そっと拭うと、心地良い冷たさが指先を濡らす。
 こんなに泣くのは、いつ以来なのか。
 静かに流れる涙はなかなか止んでくれなかった。


「ソフィ、か?」


 掛けられた声は男性のそれだった。
 振り返れば、そこには長身の引き締まった男性、私を撃ち倒した狙撃手。
 ヴァイス・グランセニック陸曹が立っていた。
 みっともない姿を見せたくなくて、私は目尻と頬を濡らしていた涙を乱暴に拭い去る。
 

「な、なにか用ですか?」


 涙に濡れ、少しかすれた声で問う。
 彼は一拍の間を置いて、答えた。


「いや、まあ、用って程の事はないんだけどな。ただお前さんの姿を見かけたから」

「そう、ですか」


 私を見つめる、ヴァイス陸曹の澄んだ瞳。
 そこにあるのは、憐憫、同情の色だった。
 彼は、恋破れた私を哀れんでいるのだろうか。
 一瞬そう思ったが、少し違和感を感じた。
 向けられる眼差しの色は、ただ人を哀れむものではない。
 その眼はまるで、自身を相手に重ねるような……


「ヴァイス陸曹」


 ふと、私はある事実に気付いた。


「あなたも……あなたも私と同じなんですね?」


 それは気付いて然るべきものだった。

314 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:15:40 ID:1xHvx2UM
 瞳から感じる、胸の内に秘めた淡い思いの鼓動が、私とよく似ていたから。


「あなたもあの人を愛しているんですね?」


 と、私は問うた。
 問い掛けの言葉に、彼は一瞬目を見開き、次いで顔を苦く歪める。
 そして帰ってきたのは小さく首を縦に振る、肯定の意を込めた首肯。


「やっぱり、そうなんですね」

「……分かるか?」

「ええ、私もあの人を愛してますから」

「そうか」

「そうですよ」


 ヴァイス陸曹はまるで悪戯が見つかった子供みたいに苦笑すると、もう一度だけ、そうか、と呟いた。
 なんでだろう、難い恋敵の筈なのに、私は彼のそんな表情がとても愛らしく思えた。


「ヴァイス陸曹」


 だから私は告げる、嘘偽りのない言葉を。


「想いは、ちゃんと告げた方が良いですよ。後悔しないように」


 言えば、また目尻から涙の水滴が滲むのを感じた。
 自分の初恋が破れた事が哀しい、でも不思議と口元は自然と笑む。
 その私に、ヴァイス陸曹が問いの言葉を掛けた。


「なあ、お前は後悔してねえのか? 結局、こういう風に終わっちまってさ」


 問う言葉の意は、私に後悔の有無を確かめるものだった。
 馬鹿馬鹿しいな、と思う。
 そんな質問に答える言葉は一つしかないのだから。


「もちろん、してないに決まってるでしょう?」


 言い切った。
 それ以外の言葉なんてありはしない。
 尽くせる事はして、そして終わった。
 だからもう後悔なんて欠片もない。
 私の言葉を聞き、彼の目が一瞬丸くなる。
 そしてすぐに表情は苦笑に変わり、瞳は優しげに細められた。


「……そうか」


 もう一度だけそう言うと、ヴァイス陸曹は踵を返す。
 そして彼は、それじゃあな、とだけ言い残すと淀みない足取りで、一度も振り返る事無く去って行った。
 立ち去る背中に何かもう一言くらい言葉を投げようと思ったけれど、上手く言葉が出てこない。
 やっと口が開いた時には、ヴァイス陸曹の背中は随分と遠くにあった。


「頑張ってください、ね」


 ただ一言、そう呟いた。





 夕日が半ばまで沈み、茜色が消え行き、星と月と共に艶やかな紫の残滓を空に描く。
 夕と夜との境目が織り成す夜空の情景は見る者の心を否応なく引きつけ、魅せる。
 だがそれをさらに超えるものがあった。

315 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:16:51 ID:1xHvx2UM
 女だ。
 絶世の美女が、その夜景の下に佇んでいた。
 冷たく心地良い夜風に流れるのは、燃えるような艶のある緋色の髪。
 女性にしてはやや高い身長、抜群のプロポーションの肢体は凹凸の激しいラインを持ち、凄まじく扇情的だ。
 凛々しい美貌に輝く双眸、深いインディゴブルーの切れ長の瞳はどこか切なげな眼差し。
 それは一個の美の完成形だった。

 
「シグナム姐さん、こんな所にいたんですか?」


 名を呼ばれ、美女が振り向く。
 視線の先には、シグナム、と自分の名を呼んだ男が立っていた。
 今日一つの戦いを共に戦った相棒であり、数年来の部下、ヴァイス・グランセニックだ。


「まあな。少し空を見ていた」


 ここは機動六課隊舎の屋上、六課で一番空に近く、一番綺麗な空が見える場所だ。
 シグナムは屋上で一人佇み、静かに夜空を眺めていた。
 手すりに背を預けて立つ彼女の横に、ヴァイスはゆっくりと歩み寄り並ぶ。
 そしてただ、静かに夜空を見上げた。
 そよぐ風がときおり耳を撫でる以外に音はなく、静寂が場を支配する。
 美しい夜天の輝きの下で、涼やかな風を感じる、心地良い無音。
 それを最初に破ったのはシグナムだった。


「今日はすまなかったなヴァイス。礼を言うぞ」


 風が悪戯に弄ぶ髪を手で掻き揚げながら、そっと囁くように告げる。
 言葉を受け、ヴァイスの視線が夜空からシグナムへと下ろされた。
 彼は一度頬を掻くと、苦笑を浮かべた。


「気にしないでくださいよ、俺も久しぶりに良い運動になりましたから」

「スターライトブレイカーを受けるのが良い運動か? 随分激しいな」

「はは、そうっすね」


 シグナムの投げた冗談にヴァイスは小さな笑いを漏らした。
 二人の零した笑い声が、冷え始めた夜の空気を僅かに震わせる。
 しかしその余韻を、次いで紡がれた言葉が塗り替えた。


「ヴァイス」


 狙撃手の名を呼ぶ声は普段とは比べられないほど力ないものだった。
 どこか切なげな残響で、烈火の将は囁く。


「私は、酷い事をしたな」

「何がですか?」

「あの子を騙した」


 あの子、とは言うまでもなく、今日戦いを演じた少女ソフィア・ヴィクトリア・ルイーズの事だろう。
 ヴァイスの問いに、将は静かに言葉を紡ぐ。


「偽の恋人を仕立てて、あの子が向けた恋心から逃げようとした……酷い事だ、私はあの子から逃げたんだ」


 恋に不得手で、それも相手が同性という状況で、シグナムはどうして良いか分からずつい嘘を吐いてしまった。
 恋人がいる、と。

316 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:18:11 ID:1xHvx2UM
 元はといえばそれが全ての原因で、最初からはっきりと断っておけば何も話はこじれなかっただろう。
 偽りの恋人を延命したとして結局は失恋を叩きつけねばならなかった。
 今にして思えば愚かであり滑稽である。
 それを、シグナムは悔やんでいた。
 だが、その悔やむ言葉を遮るものがあった。


「姐さん」


 いつもより少し低く、そしてどこか耳に心地良い残響、ヴァイスの囁く声だった。


「そんなに気にしなくても大丈夫っすよ。あいつは、そんな事で姐さんを恨んだりしませんから」


 先ほど出会ったソフィアの顔を思い出し、彼はそう告げる。
 ソフィアはヴァイスとシグナムの関係が偽りであると見抜きながらも、それを責めようとはしなかった。
 そして例え恋破れても、その果てに悲しみがあったとしても、少女はそれを受け入れていた。
 だからこそヴァイスは言い切る。
 その言葉に、シグナムは問いを投げた。


「やけに自信たっぷりだな?」

「まあ、俺とあいつは結構似た者同士、って事ですよ」


 似た者同士、と彼は言う。
 その言葉の意図を図りかね、シグナムは小首を傾げて疑問を浮かべた。
 まあ、同じ相手を好いた者同士の共感、などとは知る由もないだろう。
 そしてヴァイスは、ところで、と言葉を続ける。


「一個だけ頼みがあるんですけど、良いですかね?」


 今までにないほど、もしかしたら先の模擬戦時よりも真剣味を帯びた声でヴァイスが問うた。
 自分に向けられる、鋭くそれでいて暖かい眼差しに、シグナムは心臓の鼓動が僅かに高まるのを感じる。
 一体、何を頼もうというのか。
 思慮を数瞬巡らせるが答えは出ず、されど拒否する理由もない。
 将の口からはすぐさま了承の意が出た。


「ああ、良いぞ。今日は色々と助けられたからな、何でも聞いてやる」


 と。
 彼女の答えを聞き、ヴァイスは一度息を飲む。
 緊張の二文字が顔に張り付き、額を一筋の汗が流れた。
 今から始まるのは、出会ってからの数年間溜め込んだ想いの丈をぶちまける一世一代の正念場だった。
 だが彼は怯む事無く、進む。
 一歩を大きく詰め寄り、シグナムの正面、それこそ吐息のかかる距離まで近寄る。
 そして告げた。


「ちょっとだけ、目瞑ってもらえますか?」


 彼の要求に、シグナムはまた小首を傾げて疑問符を浮かべる。
 どういう意図があるのか、今度こそ図りかねた。

317 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:19:39 ID:1xHvx2UM
 だが拒絶はなく、受け入れる。


「ああ、構わんぞ」


 言葉と共にそっと目を細め、瞑る。
 凛々しい美貌に輝いていた濃い寒色の瞳が閉じられ、目を瞑った彼女の表情は美の色彩を変えた。
 鮮烈な美しさがどこか儚さを帯び、見る者を惹き付けて止まない。
 そう瞳を閉じたまま、シグナムは問うた。


「で? これでなんだと?」

「ありがとうございます、姐さん。すぐ済みますから」

「済む? 済むとはいった」


 一体何だ? と、問おうとした。
 だが出来なかった。
 肩にそっと手が、狙撃手の固く大きな手が重ねられたかと思えば、口を塞がれた。
 唇に何かが触れる、それはヴァイスの唇だった。
 優しく甘いキスだった。

 昔から言われている、愛を告げる方法。
 何の複雑さもない、単純で完璧な方法。

 ――キスをして愛してると囁く――

 たったそれだけの事だった。





 ティアナ・ランスターは、手首に巻いたお気に入りの腕時計を見た。
 時刻は15時45分、約束の時間の15分前だった。
 場所はクラナガンでも有名な待ち合わせスポット、駅の銅像前。
 今日は休日で、ティアナは友人との待ち合わせの最中だ。
 そして、いつも通り相手は約束時間の15分前に現れる。


「お待たせ、ティア」


 涼やかな心地良い声がそう投げ掛けられた。
 ティアナが視線を向ければ、そこには金髪の少女、ソフィア・ヴィクトリア・ルイーズの姿。
 先日演じた模擬戦以来、二人はすっかり仲良くなった。
 今ではもう親友と呼んで差し支えない間柄。
 この日は、あの模擬戦での敗退の悔しさをショッピングで発散しようという意味合いでのお出かけだ。
 いつもの制服姿ではない、白いワンピースに紺のパーカーという落ち着いた私服姿だった。
 しかし、服装の事よりも大きな変化にティアナは気付く。


「ソフィあんた……髪、切ったの?」

「あ、えっと……うん」


 少し恥ずかしそうに、頬を淡く染めて頷く。
 以前は腰元まで伸ばされていた輝く金髪は、今はもう首のあたりまで切りそろえられていた。
 言わずもがな、そこにあるのは失恋の意である。


「私ふられてしまいましたから、昔の思いごとばっさり。と」

「もったいないわねぇ……凄く綺麗だったのに」

「また伸ばせば良いだけの事ですよ」


 残念がるティアナに答えた言葉にもはや悲しみはなく、表情は眩い笑顔だった。

318 偽りの恋人 :2009/08/25(火) 23:20:32 ID:1xHvx2UM
 恋破れた過去をもはや悔やまない、失恋を乗り越えた少女の顔は明るい。
 ソフィアのその表情に、ティアナは自分の髪にそっと触れる。


「ふーん。じゃあ、私も切れば良かったかな」

「え?」

「いや、私もさ……ふられちゃったし」


 誰に? と、問うまでもない。
 ティアナが恋した男はあの狙撃手で、ならば少女は彼に愛を告げたのだろう。
 だが、それは実らなかった。


「そう、ですか」

「そうよ。なんでも“惚れた女がいる”だって」


 少しだけ寂しそうに、ティアナはそう言う。
 しかし彼女もまた、恋を失った悲しみを吹っ切ったのだろうか、表情は苦笑だ。
 こんな美少女をふるなんて、と冗談を言うくらいには元気だった。
 そして、ティアナは悪戯っぽい口調でソフィアに問う。


「ねえ、ヴァイス陸曹の好きな相手って分かる?」

「ええ、たぶん」

「じゃあ、今二人がどうなってるかは?」

「うーん、それはどうでしょう」


 二人ともその答えは知っていた。
 戯れに、好きだった相手の事を語らいたいから出した質問であり答えだった。


「じゃあ、それはお茶でもしながら話しません?」


 ソフィアの唇から零れたのは、質問への答えではなく提案。
 その言葉に、ティアナもまた似たような言葉を紡いだ。


「それよりまずは服でも見に行かない? 話しながら」

「そうですね。じゃあそうしましょうか」


 ソフィアが了承を伝えると、決まりね、とティアナは呟く。
 そうして二人は歩き出した、楽しい休日の始まりだ。

 その日の二人の話題は、本当の恋人同士になったある男女の話だった。



終幕。

319 ザ・シガー :2009/08/25(火) 23:24:08 ID:1xHvx2UM
はい、投下終了。

本当は前回投下と合わせて一度に投下しようと思ったのですが、予定より長くなって二分割しました。
ともあれ無事完結、今まで応援ありがとうございましたです。
この話はまだガチエロの番外編やら考えてるのですが、とりあえず今はここで終わらせておきます。

というか、そろそろ鉄拳をちゃんと進めますww

320 名無しさん@魔法少女 :2009/08/25(火) 23:56:18 ID:KUniBgbc
完結おめでとうございます!
狙撃手なのに真っ向勝負のヴァイスが格好良すぎました!
ソフィアとティアナがくっつくのではないかとこっそり予測してましたが、良い友人関係のようで安心しています。
ではでは、鉄拳の続きも楽しみしています、乙でした!

321 名無しさん@魔法少女 :2009/08/26(水) 19:42:46 ID:yCJp7ez6
この間のドラマCDで「伝説の司書長byなのは(クロノ経由)」という発言を見て
『穏やかな心を持ちながら、激しい怒りによって目覚めた伝説の司書長、スーパースクライア』
というネタがここにあったことを思い出した

322 名無しさん@魔法少女 :2009/08/27(木) 00:35:41 ID:lhaSpqdw
完結乙です
次回作も待ってます

323 名無しさん@魔法少女 :2009/08/27(木) 19:27:33 ID:3iOfN/cs
>>322
次回作より現在進行形の奴を完結させてもらうほうがいいんじゃね?

324 名無しさん@魔法少女 :2009/08/27(木) 22:43:28 ID:Jtf4ZDYQ
>>322
先に鉄拳待ちだろJK
っても筆がのらん様だからゆっくり待つのが吉だが

325 名無しさん@魔法少女 :2009/08/28(金) 01:02:07 ID:6ThGHwvo
>>295
ライトニング好きな私にとってはキャロとルー、どちらとエリオがくっつくのかも楽しみです。
GJ!

326 名無しさん@魔法少女 :2009/08/29(土) 11:18:41 ID:ydIT/vu6
なのはが火病で半万年捏造のレイプ民族チョンにレイプされるssまだー。

327 名無しさん@魔法少女 :2009/08/29(土) 13:59:52 ID:PJsJsBkQ
なのはの四肢切断して達磨にして
なのはの目の前でヴィヴィオをレイプしながらその両手両足を貪り喰いたい

328 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:14:38 ID:tz.Wew7I
久々にユノキャロ書きます。

・ルーテシア台頭によるエリキャロの不成立をきっかけにして始まるユノキャロ
・一見寝取りっぽいけど、冷静に事を判断して見ると寝取りにならない複雑な状況注意
・キャロ崩壊もといキャラ崩壊注意
・今回はあえてユーノを淫獣っぽく描こうかな〜と
・キャロはある程度大人のレディーになってると思ってください
・以前やってたユノキャロシリーズとは何の関連も無し(当然エリオがルーを選ぶ理由も異なる)
・エリキャロ派はここで引き返した方が良いかも
・微エロに近い非エロ

329 嫌よ嫌よも好きの内ってか 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:15:41 ID:tz.Wew7I
 キャロ・ル・ルシエ。彼女は幼き頃に生まれ育った村を追い出されると言う悲運に苛まれるも、
フェイト・T・ハラオウンとの出会いによって救われ、また同じく両親に捨てられると言う悲運に苛まれていた
エリオと苦楽を共にした事もあって、一切グレもせずにとても良い娘に育ったそうな。

 それからさらに数年後、幼子だったキャロは美しき大人のレディーに成長していた。
大人になれば恋だってする。キャロは恋するお年頃。その恋のお相手とは……

「今日こそはエリオ君に告白するんだから。そして兄妹の様な関係から恋人にステップアップしなきゃ!」

 キャロが幼き頃から共に苦楽を共にして来たエリオ・モンディアル。彼がそうだった。
確かに今まではフェイトの下で兄妹の様な関係として暮らして来たエリオとキャロだったが、
時の流れがキャロにエリオに対する本当の恋心を抱かせるまでに至っていたのである。

「エリオ君だってきっと私と同じ気持ちのはず。だって今までだって一緒に暮らして来たんだもの。
私もエリオ君だって何時までも子供じゃないんだから。そろそろ…良い頃だよね?」

 これからエリオに対して告白をする為、キャロは不安と興奮の入り混じった感情を何とか
落ち着かせ、安心させようとしつつ歩いていたのだが……そんな彼女にも悩みの種はあった。

「やあこんにちわキャロ。今日も可愛いね。」
「ユッ…ユーノさん!?」

 キャロにいきなり馴れ馴れしく話しかけて来たメガネの優男。彼こそキャロの悩みの種であった。

「キャロ、今日は丁度良い事に休日だから一緒に何か食べにいかないかい?」
「ユーノさん! いい加減にして下さい! 私はこれから大切な用があるんです!」

 優しい表情と口調でキャロを誘う優男に対し、キャロは迷惑と言わんばかりの表情で怒鳴っていた。
彼の名はユーノ・スクライア。彼はキャロをいたく気に行っているようで、何時の頃かこうして
ちょくちょくキャロの前に現れては何かと誘って来る様になっていたのだった。

 確かに表向きには時空管理局・本局にある無限書庫の司書長で、キャロの尊敬するフェイトさえ
一目置いていると言うキャロとは比べ物にならない程の大人物。むしろそんな大物から気に入られる事は
凄く栄誉な事なのだろうが、キャロの前では司書長と言う肩書が嘘の様にチャラチャラした優男然の態度で
キャロを誘って来る為、キャロにとってはエリオとの恋を邪魔する淫獣でしか無かった。
そのしつこさはちょくちょく夢に出てきてしまう程であり、またその夢の中では無理矢理に
抱かれると言う事も多々あったりし、それがキャロを嫌わせる要因となっていた。

「もう本当いい加減にしてください! これ以上私に近寄るとヴォルテールを召喚しますよ!」
「手厳しいな〜。可愛い顔が台無しだよ。」

 普段からキャロにとってユーノは邪魔者でしか無いのに、今と言う状況下においては
存在そのものが忌わしい存在。その為キャロは顔を真っ赤にして召喚体勢を取りユーノを
威嚇するが、ユーノはまるで堪えていない。それがキャロには馬鹿にされている様で腹立たしかった。

「こんな人の相手してる場合じゃありません! 私は行きますよ!」
「あ、キャロ!」

 何時までもユーノの相手はしていられないとばかりにキャロはその場を走り去った。無論行く先は
エリオのいる場所。本来の目的であるエリオに対する告白を成す為にキャロは走った。

 けれど………まさか……あんな事になってしまうなんて……………

330 嫌よ嫌よも好きの内ってか 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:17:28 ID:tz.Wew7I
「ん………。」
「んん…………。」

 エリオはキャロとは別の紫色の髪の美女と抱き合い愛し合っていた。彼女の名はルーテシア・アルピーノ。
過去に起こったとある事件をきっかけにエリオ・キャロと出会い、友達になった彼女は
今こうしてエリオと恋仲になり、口付けを交わし、肢体同士を重ねあう仲にもなっていたのだが………

「え!? エリオ………君………?」

 そこには愛し合う二人を前にして失意の表情で立ち尽くすキャロの姿があった。
無理も無い。意中の相手が別の女と愛し合っている光景を目の当たりにしてしまったのだ。
そのせいか、キャロの目から徐々にハイライトが消えて行く………

「エリオ…君…何を…してるの…?」
「キャロこそこんな所で何をしてるんだい?」

 キャロはエリオの取った行動が信じられなかった。何故ならばキャロは、自分がエリオを愛している様に
エリオも自分の事が好きに違いないと信じていたのだから。しかし現実は違った。エリオはキャロとは
また別の女を愛していたのだ。そして何よりも、その事をキャロに悟られてしまった事に罪悪感を
感じないエリオの態度がキャロには耐えられなかった。

「どうして!? どうしてエリオ君とルーちゃんが!? どうして!?」
「どうしてって……僕達は愛し合っているんだ。恋愛は自由だろう?」
「私達は何時までも子供じゃないんだよ。」

 目から涙を飛び散らせ叫ぶキャロだが、エリオとルーテシアはやはり足並みを揃えて悪びれもしない。
まるで二人が愛し合う事が当然の様な態度で、やはりそれがキャロには気に入らなかった。

「私は!? 私はどうなの!? ねぇ! 私はどうなっちゃうの!?」
「当然じゃないか。キャロだって大事だよ。だって僕達兄妹みたいなもんじゃないか。」
「私にとってもキャロは大切な友達…。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」

 ここに来てキャロは真の現実を思い知った。エリオを愛していたキャロと違い、エリオはキャロを
恋愛対象として見てはいなかった。兄妹みたいなものと言う表現がまさにそれ。確かにエリオは
決してキャロを嫌っているわけでは無く、むしろ充分に好いているのだろう。しかしそれはあくまでも
『LIKE』としての好きであって、『LOVE』では無い。キャロにはそれが苦しくて苦しくて…………

「あぁぁぁぁひゃひゃひゃひゃぁぁぁ!! あぎゃむぎゃめぎゃぽてぇぇぇぇ!! あきゃきゃきゃぁ!!」
「わー! キャロが狂ったー!」
「どうしたの!? しっかりして!?」

 キャロはショックの余り意味不明の奇声を張り上げ、その場を走り去ってしまった。

331 嫌よ嫌よも好きの内ってか 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:18:31 ID:tz.Wew7I
 それからキャロは、一人自室で蹲って泣き崩れていた。

「う…う………私………寝取られちゃった………ルーちゃんに……エリオ君……寝取られちゃったよ……
いや……そもそもエリオ君は…私を恋愛対象として見て無かったんだ……ただの兄妹の様なものでしか無い…
と言う事は……………エリオ君にとっては…………寝取られたって自覚さえ無いって事じゃない!
惨め過ぎる………惨め過ぎるよ………私……ただの道化じゃない………ルーちゃんとエリオ君を
引き立てる……ただの道化………噛ませ犬…………私って何なの……私ってぇぇぇぇぇぇ!!」

 キャロの目からはハイライトが消え、そして溢れんばかりの涙が流れ出ていた。そう。彼女の言った通り。
確かにエリオとキャロが両思いの関係にあり、その状況下でルーテシアがエリオを取って行くと言うのなら
寝取りになったのであろう。しかし実際はエリオはキャロを恋愛対象として見てはいなかった。それならば
彼がルーテシアとどんなに愛し合おうとも、寝取りは成立しない。自分が恋人を寝取られた……と言う事に
すらならない。そもそも相手は恋人では無かったのだから……と言う状況がキャロをますます惨めにさせ、
その悲しさの余り…………

「アハハハハハハハハハハ………アァァァァヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャッヒャ!!」

 キャロは笑った。奇声をあげ、狂った様に笑い始めてしまった。目からはハイライトが消え、
目から大量の涙を滝のように流し、飛び散らせながら狂った様に笑い続けていたのだが………

「やあこんにちわキャロ。そんなに笑って何か良い事でもあったのかい?」
「!!」

 そこへ突然現れたのは誰でも無いユーノ。キャロが辛い目にあった事も知らず、何時もの調子で
さわやかな笑顔でキャロを何かしらに誘いに来ており、今のキャロに対しては火に油どころか
大量の火薬を投げ込む様なものであり…………

「うぉわたぁぁぁぁ!!」
「んべ!!」

 次の瞬間キャロは一切有無を言わせる事無くユーノを殴り飛ばしていた。そんな事をするなんて
明らかにキャロらしくない。しかし、キャロの悲しみは彼女に彼女らしく無い事をさせる程だったのである。
しかし…それだけだった。キャロに殴られた事によって怖気付いて逃げ出すと思われたユーノは
構わず近寄って来たのである。

「キャロ? いきなり殴りかかって来るなんてどうしたのかい? 何かあったのかい?」
「うるさい! 何でもありませんよ! 貴方が邪魔なだけです! 帰ってください! 帰れよぉぉ!!」

 キャロの怒りはユーノに乱暴な言葉を吐かせるまでに至っていた。と言うのに、ユーノは帰らない。
それどころかキャロの身を心配しているかの様な真剣な目で見つめていたのである。

332 嫌よ嫌よも好きの内ってか 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:19:58 ID:tz.Wew7I
「いいや、その調子じゃ何か嫌な事があったはず。それで僕に八つ当たりをしているんだろう?
何なら話してごらん? 相談に乗ってあげるよ。」
「何でも無い! 何でも無いんです! エリオ君がルーちゃんとラブラブイチャイチャしていようと
何でも無い事なんですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「そういう事か。」
「うっ!!」

 キャロは怒りの余り、つい本心を暴露してしまった。それにはキャロも思わず顔が真っ赤になってしまうが
ユーノは真剣な目で彼女を見つめていた。

「そっそうですよ! 私はエリオ君好きだったんですよ! でもエリオ君は私じゃなくルーちゃんが
好きで、私なんか眼中に無かったんですよ! それってどういう事だと思いますか!?
つまり寝取りにすらなってないって事なんですよ! だってそうでしょう!? エリオ君は最初から
私を好きですら無かったんですから! なのに一方的にエリオ君も私を好きに違いないって思い込んでた
私が情けなくて情けなくて…これはもう笑うしかないでしょうわははははははははは!!」

 本心を暴露された事によって開き直ったのか、キャロはユーノに怒鳴り付ける様にそう叫び、
あろう事か再び笑い始めてしまった。そして今度はキャロがユーノを見つめるのである。

「そうですよ。やっぱり私は一人身。昔村を追い出されてからずっと一人だったって事なんですよ!
フェイトさん? エリオ君? 誰ですかそれは!? 私は最初から今にいたるまでずっと一人ですよ!
さあユーノさん! 何をしているんですか!? ここにいるのは後ろ盾も何も無いただの一人の女ですよ!
好きなだけ押し倒せば良いじゃないですか! 抱けば良いじゃないですか! 犯せば良いじゃないですか!
さあユーノさん! どこからでもかかって来てくださいよ!!」

 もはやキャロはヤケクソだった。この場合ヤケクソとしか表現する事は出来ない。
キャロの目からはハイライトが消え、涙を飛び散らせながら憎んでいたはずの相手に
自身を抱く事を乞う。信じていた相手に裏切られた事実はキャロをこの様な行動を
取らせてしまう程だったのだ……が……男らしく鼻息荒くさせて飛びかかってくるかと
思われたユーノの表情は意外にも冷静だった。

「いや…遠慮しておくよ。」
「え!? 何でですか!? ユーノさんは私の事好きじゃないんですか!? 冗談じゃないですよ!
今まで散々ユーノさんの方から一方的に訪ねておいて…これは無いですよ!!」
「勿論好きだよ。断言する。僕は心の底からキャロ…君を愛している。でもね……それはキャロ、
君もまた心の底から僕の事を好きになってくれなければ意味が無いんだ。失恋した腹立ち紛れに
僕に迫ってくる様な半端な気持ちの君を抱いても…意味は無いんだ…。」
「え………。」

 キャロが呆然とする中、ユーノはそっと部屋を後にする。

333 嫌よ嫌よも好きの内ってか 5 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:21:45 ID:tz.Wew7I
「悪いけど今日はここで出直させてもらうよ。それじゃあまた…。」
「なっ…ちょっと待って下さいよユーノさん! ユーノさぁぁぁぁぁん!!」

 キャロが呼び止めようとするのも構わずユーノは帰ってしまい、部屋にはキャロ一人が残された。
その日以降だ。夢に出て来る程にまでしつこく訪ねて来たはずのユーノがキャロの前に姿を現さなくなったのは。
今までユーノにしつこく迫られていた頃は腹立たしかったのに…こうして迫られなくなると…何か寂しい。

「ふ…フフ…そういう事ですか……ユーノさんも所詮はその程度の男だったと言う事ですね…?
私の事愛してるとか言っておいて…この体たらく…。今頃私の事も忘れて他所の女の子の尻でも追い駆けて
いるんでしょうね? エリオ君と一緒……男なんてみんなそんな下らない生き物じゃないですかぁぁぁ!!」

 再びキャロの目からはハイライトが消え、彼女は何かを悟った。

「もう良いですよ私は。私に男の子なんていりません! 私は仕事に生きます! 仕事に生きて…
生涯処女を貫いてみせます!! もう男なんて………男なんてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


 その日以来キャロは何かが変わった。エリオとルーテシアの結婚式にも最後まで顔を出さず、
二人が新婚旅行に出かけた後もただただ一人淡々と仕事をこなすだけの日々を暮らす毎日。
今までの辛い境遇が彼女を変えたのだ。

「行くよ…フリード……。今まで通りの保護区周辺のパトロール…。」

 ハイライトの消えた目でフリードに歩み寄るキャロの姿はフリードすら怖気づかせてしまう程で
あったが…その時だった。

「やあこんにちわキャロ。久し振りだね。元気してたかい?」
「ゆっ…ユーノさん!?」

 そう。そこへ現れたのはユーノ。その意外すぎる再開は思わずキャロの目を通常に戻してしまう程だった。

「いっ今更何の用ですか!?」
「ごめんよキャロ〜。実は無限書庫の仕事の関係で他所に出張なんかも入ったりしていたんだ。
でも大丈夫。それも全てきっちり終わらせて来たから以前と同じ様に君とお付き合い出来るよ。」

 彼が突然キャロの前に姿を見せなくなったのは、キャロに飽きたとかそういう問題では無く、
単に仕事の関係による出張が入っていただけの事だった。しかし、キャロにとってはそう割り切れる物では無い。

334 嫌よ嫌よも好きの内ってか 6 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:22:39 ID:tz.Wew7I
「な…何を今更…そんな言い訳したって遅いですよ! 私はもう男の人なんて信じない事に決めたんです!」
「そっか…そうだよね。仕事で出張が入ったからとは言え君に寂しい思いをさせてしまったのは事実だもんね。
でももう大丈夫! 大丈夫だからね! これからは僕が君に寂しい思いをさせない位に沢山愛してあげるよ。」
「だからそういう問題じゃないんです!」

 キャロが取り乱していた時のシリアスな様相からは一転してヘラヘラしたキャロを誘うモードのユーノに
キャロはほとほと困り果てていたが、キャロは逃げるようにフリードの背に跨った。

「私はこれから仕事があるんです! 用があるなら今度の休日に訪ねて来て下さい!」

 キャロは顔を赤くしながら吐き捨てる様にそう言い放ち、彼女を乗せたフリードは天高く飛び立つのだが…
フリードの背の上でキャロはある思いに馳せていた。

「皮肉な事だよね…。私の事を一番想っていたのは…エリオ君でも何でも無く…ユーノさんだったなんて…。
でも私に一番酷い事をしたのもユーノさんなんだよね…。何が酷いって…今になって私にこの際ユーノさんでも
良いかな〜なんて思わせてしまった事…。きっとユーノさんがしつこく私にアタックして来たのは
サブリミナル効果を狙ったと言うか…私を洗脳する為だったんだろうな…。でももうそれでも良いや。
どうあがいたってエリオ君の心はルーちゃんに向いてて、私が手に入れる事は不可能なんだし…
私も何時までもくよくよせずに新しい恋を探さなきゃね! 今度ユーノさんが訪ねて来たら………
ユーノさんがどうしてもって言うならお茶の一杯位は一緒に飲んであげよっかな…。」

 今この瞬間から…二人の物語は新たなステップへ進む………のだが………それはまた別のお話である。
おいおい男はもう信じないって言ったのは何処の誰ですか? と言う突っ込みは一まず置いといて…。

                       おしまい

335 ◆6BmcNJgox2 :2009/08/29(土) 14:23:23 ID:tz.Wew7I
嫌よ嫌よも好きの内と言う事で最初は凄い嫌ってたのに徐々に〜なんて感じの恋愛をやろうと思ってたけど
(だからユーノをあえて淫獣っぽくしたり、キャロに真っ向からユーノを嫌う様に描いたり)
実際やってみるとこれが中々難しいね。鳥山明先生が恋愛を描くのは苦手と仰っていた気持ちが分かる。

ちなみに続編の予定はありませんので。

336 名無しさん@魔法少女 :2009/08/29(土) 16:36:45 ID:V8bTtlCw
GJ
しかし、ハイライトの消えたキャロを想像すると
某夢見がちな従姉妹が思い浮かんでしまう。

337 名無しさん@魔法少女 :2009/08/29(土) 20:30:50 ID:tKKk2Oag
なぜかあおいちゃんとヤマトくんを思い出した。

338 名無しさん@魔法少女 :2009/08/30(日) 01:55:47 ID:SCyazVy2
このユーノはキャロに会うためにフェイトさんのザンパーとかをかわしたことがありそうで困るw

339 B・A :2009/08/31(月) 23:02:42 ID:krqFdWfs
投下いきます。


注意事項
・sts再構成
・非エロ
・オリ展開あり
・基本的に新人視点(例外あり)
・レジアスとはやての仲が悪い(のかな?)
・スカリエッティ狂い気味
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

340 Lyrical StrikerS 第6話① :2009/08/31(月) 23:03:54 ID:krqFdWfs
第6話 「夢の先に」



向かい合った少女の矮躯が、僅かに低くなる。
来るか、とスバルは拳を身構え、リンカーコアから汲み上げた魔力をマッハキャリバーの魔力回路へと注ぎ込んだ。
全身のバイパスを異物が駆け抜け、自身と愛機が一つになる感覚。
思考はどこまでも冴え渡り、全能になったかのような高揚が自身を支配していく。
次の瞬間、少女の姿が視界からかき消えた。
ビリビリと震える第六感。
一呼吸の間もなく眼前に迫る鉄槌に対して、余りに遅い自分の反応に焦りが生まれる。
砕かれる。
そう思った刹那、スバルは脳裏に鉄槌を弾き返す盾のイメージを作り出した。
そのイメージを汲み取ったマッハキャリバーは、即座に自身に登録されている魔法の中から的確なものを選択、
綻びを纏った歪な盾が現実に形を成し、ギリギリのタイミングで振り下ろされた鉄槌を受け止める。

「痛ぅ………くぅ……………」

「でやぁぁぁぁぁぁっ!!」

衝撃で体が僅かに揺らぎ、踏ん張りの利かなくなった足が数歩分後退する。
バリア越しに伝わる負荷が腕を軋ませ、スバルの表情は見る間に険しくなっていった。
そんなスバルに対し、少女は駄目押しとも言える一撃をお見舞いする。
力任せの一撃を食らったバリアは砕けこそしなかったものの、その衝撃で吹っ飛ばされたスバルは後方の樹木に背中をぶつけ、
小さな悲鳴を漏らした。

「い、痛たぁ……………」

「なるほど、やっぱバリアの強度自体はそんなに悪くねぇな」

「あ、ありがとうございます………ヴィータ副隊長」

自分の攻撃を受け止めてバリアを消滅させなかったことに感心する上司の言葉に、スバルは頬を引きつらせながら答える。
平静を装ってはいるが、右腕は指先まで痺れていてもう少しの間、使いものになりそうにない。
頑丈さにはかなり自信があっただけに、衝撃も大きかった。
小柄な彼女の体のどこに、これだけの力があるというのだろうか?

(さ、さすがは三等空尉。職歴10年は伊達じゃないか)

一見するとエリオやキャロよりも年下に見えるが、ヴィータは10年近くも管理局で働いているベテランらしい。
その話を聞いた時は耳を疑ったが、こうして手合わせしてみるとそれが嘘偽りではないことが痛いほど実感できる。
踏み込みの速度、突進力、頑強さ、一発の重さ。自分と同じ戦闘スタイルでありながら、その技能は未熟な自分よりも遙かに上を逝っている。
わざわざ相手が合わせてくれなければ、攻撃を受け止める間もなく撃墜されていただろう。

「どうした?」

「え、いえ…………副隊長は凄いなと」

「煽てても何も出ねえぞ。それに、凄いって言うならお前の方だ。初回であたしの攻撃を受けた新人で、
気を失わなかったのはお前が初めてだからな。全く、頑丈さはある意味なのは以上だ」

「いえ、それは……………」

一瞬、勘ぐられたかと背筋に冷や汗が伝う。
だが、ヴィータはそれ以上の詮索はしようとしなかった。
単純にこちらの頑丈さに感心しているだけで、体の秘密に気がついたわけではないようだ。

「あたしやお前のポジション“フロントアタッカー”はな、敵陣に単身で切り込んだり、最前線で防衛ラインを守ったりが主な仕事なんだ。
防御スキルと生存能力が高いほど、攻撃時間が長く取れるし、サポート陣にも頼らねぇで済むって、これは訓練校で教わったな?」

「はいっ! ヴィータ副隊長」

「受け止めるバリア系、弾いて逸らすシールド系、身に纏って自分を守るフィールド系。この3種を使いこなしつつ、ぽんぽん吹っ飛ばされねぇように、
下半身の踏ん張りとマッハキャリバーの使いこなしを身につけろ」

「はいっ! がんばります!」

《学習します》

こちらの言葉に合わせるように、マッハキャリバーも応答する。
最初は機械的な娘だと思っていたが、これが意外と多弁で好奇心旺盛な性格だと気づくのに時間はかからなかった。
まだ起動してから数日しか経っていないのに、AIの成長が他の3機よりも著しいのがその証拠だ。
ちなみにクロスミラージュは無口で実直な性格、ストラーダは実直だが情緒的で、ケリュケイオンは母性的で控えめな性格らしい。
シャーリー曰く、各自の個性に合わせてAI自体が成長していくように造られているらしいが、
それは言い換えればデバイスが持ち主の映し鏡であるということにもなる。
これから先、デバイスがみんなとどんな関係を築いていくのか、スバルは密かに楽しみで胸を膨らませていた。

341 Lyrical StrikerS 第6話② :2009/08/31(月) 23:06:00 ID:krqFdWfs
「…っ!?」

不意に爆音が背後で轟き、エリオとキャロの感嘆の声が耳に届く。
ここからでは何が起きたのかよくわからないが、向こうでも訓練が盛り上がっているようだ。
家族水入らずで訓練だなんて、何だか少し羨ましい。

(良いなぁ、ティアはなのはさんに教われて)

離れた場所でなのはから手ずから教導を受けているティアナを思い、スバルは軽い嫉妬心を覚える。
個別スキルの訓練は、まず得意分野からというなのはの方針で同じポジションであるヴィータが担当教官に抜擢されたらしいが、
やはり憧れの人からの教導も受けてみたかった。

「おい」

「えっ………」

どすの利いた声で我に返ると、ヴィータが持つ鉄槌の先端が突きつけられていた。
その向こうでは、どこか不機嫌そうな表情を浮かべたヴィータがこちらを睨んでいる。

「そうか、あたしの訓練は退屈で詰まんねぇってか……………」

「い、いえ、そんなことは……………」

「同じことだ! 目の前のことに集中しろ! よそ見してたらケガするのは武装隊もレスキューも同じだ、馬鹿!」

苛立たしげにカートリッジを取り出したヴィータが、相棒であるグラーフアイゼンのチャンバーに装填していく。
そこはかとなく嫌な予感に、スバルは頬を引きつらせる。
これはひょっとして、かなり不味い展開なのでは?

「あたしはなのはみたいに優しくないからな。グラーフアイゼンにぶっ叩かれたくなかったらしっかり守れよ……………明日からな」

「明日!? 今日は!? 今日はどうなるんですか!?」

「ダーイ!」

鬼のような形相でグラーフアイゼンを振りかぶるヴィータの姿が視界に焼きつく。
スバルは思った。
この人を怒らせちゃいけない。
何があろうと、絶対に。







遠くから聞こえてきた怒声に、エリオとキャロは何事かと振り向く。
スバルがヴィータに訓練を受けている方角から聞こえてくるが、かなりハードな訓練を受けているようだ。
散発的に聞こえる轟音は、まるで土木工事をしている杭打ち機のようで耳を覆いたくなる。

「す、凄い音………10tトラックが正面衝突したような……………」

「スバルさん、大丈夫かな?」

「うぅん、ヴィータのことだから大事にはならないと思うけど……………」

教官資格を取得する際、研修で憎まれ役を演じるためにわざと怒鳴ったり無茶な要求を突きつけたりしていたらしいが、
その姿が酷く堂に入っていたとフェイトは言う。
確かに、彼女は怒りっぽいし好悪の感情の差が極端な面もあるので、鬼教官という言葉がしっくりくる。
最も、普段の彼女は非常に面倒見の良いお姉さんなのだが。

「一応、後でシャマルに診てもらうように言っておいてもらえるかな? 打ち身の跡とか、残ってたらいけないし」

「はい」

「うん。それじゃ、基本のおさらいといこうか。エリオ、さっき私がしたみたいにやってみて」

「は、はい!」

少し緊張した声音で答え、訓練スペースの中心へと足を運ぶ。
周囲には障害物となる柱が設置されており、こちらを自動追尾する訓練用オートスフィアの群れが宙を漂っている。
回避訓練の第一段階は、低速で撃ち出される弾を正確に回避すること。
基本は動き回って狙わせず、攻撃が当たる位置に長居しない。
フェイトから教わった回避の心得を思い返し、深呼吸で気持ちを落ち着ける。

342 Lyrical StrikerS 第6話③ :2009/08/31(月) 23:06:47 ID:krqFdWfs
「いきます!」

合図を送り、オートスフィアからエネルギー弾が発射される。
低速に設定しているので、一発一発の速度は遅い。
スフィア自体の動きも疎らで統一性がなく、避けることはそれほど難しくなかった。

「良い調子。でも、これならどうかな?」

フェイトがそう言うと、スフィアの動きが途端に素早くなり、こちらの進行方向を塞ぐように攻撃してくる。
どうやら、外部からフェイトが操作しているようだ。弾速は相変わらず低速だが、
スフィアの動きが変則的でフェイントのような挙動も見られる。

(けど、まだ避けられない動きじゃない。速度を上げて、一気に!)

地を踏んだ瞬間、エリオは加速魔法を発動させてエネルギー弾の雨を搔い潜る。
加速した時の中では、ただでさえ遅い弾が止まって見えるため、それを避けることは造作でもなかった。
フェイトは撃ち出す弾の数を増やし、こちらの動きに攻撃を合わせようとするが、
着弾の前に駆け抜けてしまうためエリオを捉えることができない。

(やった、僕にもできっ…………っ!?)

不意に、身の丈ほどある捩じれた柱が視界に飛び込んでくる。
咄嗟にエリオはブレーキをかけて柱を避けようとするが、勢いのついた足は止まらずに地面を蹴り続け、
減速する間もなく柱が眼前へと迫って来る。
直後、エリオは顔面を強かにぶつけて転倒し、その上からオートスフィアの集中砲火を受けて悶絶する。

「かはっ!?」

「エリオくん!」

キャロの悲鳴が聞こえ、エネルギー弾の雨が止む。
訓練用なのでケガはないが、全身に鈍い痛みが残っている。
だが、それ以上に障害物にぶつかるという初歩的なミスを犯してしまったことが悔しかった。
フェイトはあんなにも上手く攻撃を避けていたのに、自分は調子に乗って目も当てられない失敗をしてしまった。
こんなことでは、一人前のベルカの騎士になるなんて夢のまた夢だ。

「エリオ、大丈夫?」

「は、はい…………すみません、もう一度………」

「ううん、今ので十分。エリオ、どうして柱にぶつかったのかわかるかな?」

「え、えっと…………前をちゃんと見てなかったから?」

「ちょっと違うかな。エリオ、さっき避けようとしても体が言うこと聞かなかったでしょ? 
あれは加速がつき過ぎて頭に体が追いつかなくなったからなんだ。私やエリオみたいな高速戦闘主体の魔法使いが
常に気をつけなきゃいけないことは、自分と周りの動きを先読みして行動すること。エリオは気づいていなかったかもしれないけど、
さっきはエリオが柱にぶつかるように私が誘導していたんだよ。ごめんね、エリオ」

そう言って、フェイトはこちらに目線を合わせるように跪くと、詫びる様に頭を撫でてくる。

343 Lyrical StrikerS 第6話④ :2009/08/31(月) 23:08:00 ID:krqFdWfs
「けど、動きは悪くなかったから、落ち着いて動けばちゃんと避けられるようになるよ」

「フェイトさん…………はい、ありがとうございます」

「キャロも、後ろにいるからって油断しちゃダメだよ。キャロはチームの要だからね」

「はい、フェイトさん」

「良い、防御と違って回避は誰でもできること。極端な話、背中を向けて全力疾走しても攻撃は避けられるの。
けれど、ちゃんと周りを見ていなかったら、さっきみたいにぶつかって隙を作っちゃうし、
仲間の連携を崩したり誤射の標的になるかもしれない。スピードが上がれば上がるほど、
勘やセンスに頼って動くのは危ないの。だから、反応速度とフィールドの動きを先読みした回避ルートの構築が大切なんだよ。
“ガードウイング”のエリオはどの位置からでも攻撃やサポートができるように。“フルバック”のキャロは素早く動いて
仲間の支援をしてあげられるように確実で有効な回避アクションの基礎、しっかり覚えていこう」

「「はい!!」」

力強い返事が重なり、フェイトは嬉しそうに眼尻を細める。
その笑顔が、何よりの励みとなった。
母親代わりの恩人が喜んでくれている。
強くなれば、彼女が認めてくれる。
今は、それだけが嬉しかった。
今はまだ、それだけが強くなる動機であった。







無数の魔力弾が視界を飛び回り、こちらを翻弄するように不規則な動きで襲いかかって来る。
飛来する魔力弾は7発。
赤が3に青と黄色が2。
炸裂反応型と誘導操作型と囮用のブラフだ。
ならば、迎撃するのは5発だけで良い。

「バレット! レフトV、ライトRF」

《Alert》

指示を下すや否や、クロスミラージュから警告が発せられる。
大気を引き裂く音が背後から聞こえる。
迫り来る魔力弾は2発。
前方の7発は囮で、本命は後ろの2発だったのだ。

(迎撃………ダメ、後ろを撃てば前にやられる)

咄嗟に地面を転がって回避するが、魔力弾は転がった先へ先へと追いかけながら地面を抉っていく。
思考に体が追いついてくれない。
対応策が思いついても、それをこなすだけの余裕が今の自分にはないのだ。

「ティアナみたいな精密射撃型は、いちいち避けたり受けたりしていたんじゃ仕事ができないからね。
そうやって動いちゃうと後が続かないよ!」

(そんなこと、言われなくてもわかっている!)

わかり切ったことを改めて告げるなのはに内心で毒づきながら、ティアナは両手のクロスミラージュを構える。
癪だが、今の自分ではクロスミラージュの補助を受けなければ全方位から襲いかかって来る魔力弾を迎撃できない。
使えるものは使うしかない。
自分の夢のために。
成すべき理想のために。

《Barret V and RF》

「シューット!」

次弾の装填が完了するなり、銃口を標的へと向けて引き金を引く。
まず先に撃ち出されたバレットFが誘導操作弾の熱量を感知して自動追尾を始め、
弾幕に穴ができた隙に用意しておいたヴァリアブルバレットで炸裂反応弾を撃ち落とす。
だが、教導官の弾幕は途切れることがない。
今度は左右から、弧を描くように3発ずつ魔力弾が迫る。

「バレットCF!」

《Cross Fire Shoot》

瞬時にカートリッジをロードし、左右の魔力弾を迎撃する。
耳をつんざく様な爆音が至近距離で炸裂するが、それでも集中を解くことはない。
一瞬でも気を抜けば、集中砲火を浴びることになる。
マルチタスクをフル活用しなければ、この訓練は乗り切れない。

344 Lyrical StrikerS 第6話⑤ :2009/08/31(月) 23:09:35 ID:krqFdWfs
「足は止めて視野は広く。射撃型の真髄は!?」

「あらゆる相手に正確な弾丸をセレクトして命中させる。判断速度と命中精度!!」

使い果たしたカートリッジを銃身ごと捨て去り、新たなカートリッジを装填する。
地面には訓練で使用した空のカートリッジが大量に転がっているが、それに頓着している暇もない。
足を取られないように気を使うのが精一杯だ。

「チームの中央に立って、誰よりも早く中・長距離を制す。それがわたしやティアナのポジション“センターガード”の役目だよ」

「はい」

返事をする暇さえも惜しい。
もっと強く、もっと早く動かなければ。
いつしかティアナは言葉を発するのも忘れ、向かってくる魔力弾を迎撃することに集中する。
この日、ティアナが使用したカートリッジの本数はこの訓練だけで延べ60本にも及んだ。







新デバイスを受理し、個別のスキルの訓練が始まってから、なのはの教導は一段と厳しいものになっていった。
やっていること自体は基本の繰り返しなのだが、その密度が半端でなく濃い。
しかも日毎に要求するハードルは高くなっていくため、勤務が終わればすぐに寮に戻って就寝するのがパターンとなりつつあった。
そのため、自然と団らんの時間は食事の場へと集中していき、他の隊員との交流も食堂で行われるようになった。
今日も、ここに来るまでに一緒になったシャーリーと共に昼食の席を囲んでいる。
ティアナが何気ない疑問を口にしたのは、そんな楽しいお昼時であった。

「しかし、うちの部隊って関係者繋がりが多いですね。隊長達も幼馴染同士なんでしたっけ?」

そう言われて部隊の相関図を頭に思い描くと、確かに身内人事が多いなとキャロは思った。
部隊長以下3人は幼馴染で、内2人は同じ世界出身。副隊長も部隊長とは家族同然の間柄で、
スバルはその部隊長が指揮官研修を受けていた部隊の部隊長の娘。自分とエリオも隊長であるフェイトの保護児童で、
部隊長補佐のグリフィスもはやて部隊長とは旧知の仲。メカニックのシャーリーはその幼馴染で、
ヘリパイロットのヴァイスはというとシグナム副隊長のかつての部下で、ロングアーチのアルト・クラエッタとは
同部隊のパイロットと整備士の関係だったらしい。
数日前になのはが言っていたように、確かに機動六課は身内人事だ。
ここまでメンバーを身内で固めているのには、何か理由があるのかもしれない。
だが、シャーリーはその辺に関してよくわかっていないのか、余り多くを語らずに話の矛先を隊長達の出身世界へと向けてしまう。

「なのはさんと八神部隊長は同じ世界出身で、フェイトさんも子どもの頃はその世界で暮らしてたとか」

「えっと、確か管理外世界の97番でしたっけ?」

エリオの言葉に、シャーリーは正解だという意の笑みを返す。
第97管理外世界。
地球という名前らしいが、自分も行ったことがない。
フェイトの話では文明レベル以外はミッドチルダとそう変わらないらしいが、自然ばかり見てきた自分では上手くイメージできなかった。

「97番ってうちのお父さんのご先祖様がいた世界なんだよね」

「そうなんですか?」

「そういえば、名前の響きとか何となく似てますよね、なのはさん達と」

顔つきがそんなに似ていないのは、母親の血筋が濃いからなのだろうか?
一度だけ見せてもらった写真の父親とは、本当に親子なのかと疑いたくなるくらい似ていなかった。
逆に母親とは生き写しというくらい似ていたので、地球人の資質は遺伝しにくいのかもしれない。

「そっちの世界には、あたしもお父さんも行ったことないし、よくわかんないんだけどね」

「へぇ…………」

「そういえば、エリオはどこ出身だっけ?」

「僕は本局育ちなんで」

何気なく答えたエリオの言葉に、質問したスバル以外の表情が険しくなる。
本局育ち。
その言葉が意味することは2つある。
1つは本局勤務の局員の子供で、局内の住宅エリアで生まれ育った者。
そして、もう1つは。

345 Lyrical StrikerS 第6話⑥ :2009/08/31(月) 23:10:13 ID:krqFdWfs
「本局の特別保護施設育ちなんです。8歳までそこにいました」

施設育ちと聞いて、スバルが済まなそうに顔を俯かせる。
エリオは呆気らかんと笑っているが、自分が知る限りでも彼の経歴は酷なものだった。
実の両親からも存在を否定され、薄汚れた暗闇の中で孤独を噛み締めた1年間。
いつしか人間そのものを嫌うようになり、近づく者全てに牙を剥いていた時期があったらしい。
エリオは言っていた。
夜中に窓の外で輝く星を見るのが好きだと。
フェイトに保護されるまで、あんなに綺麗な星を見たことがなかったと。
ル・ルシエの里を追放された自分には、まだ気持ちを共有できるフリードがいた。
言葉を交わすことのできる動物達がいた。
けれど、エリオには誰もいなかった。
星を見ることのできた自分と違い、彼は泥を見続けるだけの過去を背負っている。
あの笑顔の向こうで、いったいどれだけの涙と絶望を滾らせたのだろうか?

「あ、あの、気にしないでください。優しくしてもらってましたし、全然普通に、幸せに暮らしてましたんで」

「そうそう、その頃からずっと、フェイトさんがエリオの保護責任者なんだもんね」

「はい」

重い空気を吹き飛ばそうと、シャーリーが助け船を出す。
フェイトの名前を出されると、エリオは本当に嬉しそうに笑顔を見せる。
エリオは、自分よりも多くの時間をフェイトと過ごしてきた。
自分が彼女の温かさに救われたように、彼もまた彼女と過ごした時間で今の笑顔を取り戻せたのだろう。
本当、フェイト・T・ハラオウンは自分達のお母さんだ。
あの人がいたから、今の自分達がいるのだ。

「色々とよくしてくれましたし、色んなところに遊びに連れて行ってもらいましたし、時々ですけど魔法も教えてくれて。
本当に、いつも優しくしてくれて……………僕は今も、フェイトさんに育ててもらっているって思ってます。
フェイトさん、子どもの頃に家庭のことでちょっとだけ寂しい思いをしたことあるって。だから、寂しい子どもや悲しい子どものこと、
放っておけないんだそうです。自分も、優しくしてくれる温かい手に救ってもらったからって」

それが誰のことを指すのかは、自分達は知らない。
けれど、フェイトが2つのファミリーネームを持っていることと、縁も所縁もないはずの地球で子ども時代を過ごしたことが、
答えになっているのかもしれない。
彼女も出会えたのだ。
自分達が出会ったように、安らぎを得られる家族や友人と。







機動六課が初出動を無事に成功させたという知らせは、良くも悪くも地上本部を騒がせていた。
血気盛んな若手は憧れの本局が設立した部隊の功績を称え、本局を快く思わない幹部連中はある者は露骨に嫌悪感を示し、
ある者は対抗するように自分の部隊の強化に走り、ある者は本局に取り入ろうとする動きを見せ始めている。
それらの騒ぎを、レジアスは「下らない」と一蹴していた。
鳴り物入りで投入されたのだ、たかが暴走列車の停止くらい成功させてもらわなければ費やした予算と時間が無駄になるというものだ。
憎たらしい相手ではあるが、それくらいの分別はレジアスも持っていた。
最も、件の部隊の長である狸と出会うまではだが。

「むぅ………………」

「うっ………………」

天敵同士である互いの存在を認め、2人の表情が険しくなる。
ここは渡り廊下の一本道。隠れられる場所はどこにもない。
そして、互いにこの廊下の先に用があるようなので、後戻りすることもできない。
そもそも、周り道などすれば相手に負けを認めるように思えてならなかった。

(何故だ、あの狸めが何故、ここにいる?)

捜査情報のやり取りなどは通信かメールで事足りる。
自分や幹部連中に直接出向いて報告するようなこともないはずだ。
ならば、何の目的があってここに来たのだろうか?
しばし考えた後、レジアスは少し前にオーリスから教えられたことを思い出した。

346 Lyrical StrikerS 第6話⑦ :2009/08/31(月) 23:10:57 ID:krqFdWfs
(こちらの捜査網を利用しに来た訳か)

そもそも機動六課はレリック事件への対応を目的に設立された部隊であり、リソースのほとんどを武装戦力に回している。
はやてから提出された組織図を見てみても専属の捜査員は皆無であり、執務官であるフェイト・T・ハラオウンが
分隊長と兼任で捜査主任をすると明記されていた。
言わば、火消しはできても火の素を絶つことができないのである。
きっと、地上本部に協力を要請してレリックの密輸ルートを特定しようという魂胆なのだろう。
だが、地上本部に対してコネクションが皆無であるはやてが捜査協力を取り付けることに苦労していることは想像に難くなかった。
他所の縄張りの事件に手を貸せるほど、地上本部は暇ではないのだ。

(最も、その他所の縄張りが地上だということが腹立たしいがな)

こうして考えると、指揮系統が独立していることが六課にとっては長所であると同時に短所にもなっている。
地上本部の命令を待たずに行動できるという点で他の部隊に勝っている半面、横の連携を必要とする捜査や情報戦では遅れを取ってしまう。
機動六課の最大の弱点。何れは補ってもらわねば、こちらの狙い通りの働きが期待できなくなる。

「これはゲイズ中将、ご機嫌麗しゅう」

「ふん、小娘が気取りおって。初出動を成功させて調子づいているようだが、あの程度の任務なら地上の陸士は半分の時間で解決できるぞ」

「なら、勉強させてもらわなあきまへんね。何分、まだまだ若輩な身ですので」

「半人前を部隊長に据えるほど、本局は戦力が切迫しているようだな。何なら、何人か貸し出そうか?」

「そちらこそ、武装局員の教導が必要ならいつでも言ってくださいね。教導隊にも顔が利きますので」

「白々しい。そちらこそ捜査の人手がいるなら紹介してやるぞ」

嫌味の応酬を繰り広げ、真っ向からぶつかり合った視線が火花を散らす。
レジアス自身は前々からはやてのことを毛嫌いしていたが、最近でははやてもそれに応じるように嫌味を述べるようになった。
表向きは共闘関係にある2人ではあるが、こうして顔を合わせると決まって舌戦を繰り広げるのが半ば定番となっているのだ。

「中将、八神二佐も謹んでください。ここは公共の場です」

見かねたオーリスが止めに入るが、2人は尚も何か言いたそうに睨みあっている。
そんな睨み合いが十数秒ほど続いた後、2人は居住まいを正して形ばかりの挨拶を済ませて歩みを再開する。
だが、数歩も行かぬ内にレジアスは立ち止まると、どこか非難めいた声音で背後の娘に話しかけた。

「捜査協力を募っているそうだな。こちらから陸士108部隊に話を通しておこう。
あそこは密輸専門で、お前とも既知の間柄なはずだ」

「中将?」

父親の突然の提案に、オーリスが驚愕の表情を浮かべる。
一方、はやては特に驚いた様子など見せず、澄ました声で聞き返してくる。
長年、管理局の高官を相手にやり合ってきたレジアスには、年若い小娘が必死に冷静を装っているように思えた。

「見返りは?」

「2週間後にホテル・アグスタでロストロギアのオークションが開かれる。お前達の専門だ、警備しろ。
あの小生意気なガラクタどもが出てくるかもしれないからな」

「了解しました、ゲイズ中将。必ずやご期待に添えて見せます」

少しの間を置き、足音が遠ざかっていく。
すると、オーリスがいつも以上に険しい顔をしてこちらを睨んできた。
その形相足るや、歴戦の魔導師も裸足で逃げ出してしまいたくなるほどの迫力だ。

347 Lyrical StrikerS 第6話⑧ :2009/08/31(月) 23:11:41 ID:krqFdWfs
「中将、捜査協力だけならばわかります。ですが、ホテルの警備は……………」

「言葉を慎め、人の目もある」

「……………汚点を残さぬためですか?」

「八百長などして堪るか。それに、機動六課はお前が考えているほど柔な部隊ではない。
精々、あの娘には踊ってもらおう。奴を引きずり出すためにな」

「では……………」

「研究の難航を理由に黙り込んでいる奴らに焦ってもらわなければな。
ガラクタ如きでは相手にならない強者が、こちら側にはいるのだから」

毒蛇のように凄惨な笑みを浮かべながら、レジアスは再び歩き出す。
彼の望みは唯一つ、地上の絶対正義を貫くこと。
この取り引きもまた、彼にとって理想を果たすために被る泥に他ならなかった。







どことも知れない闇の中で、1人の男が暗い通路を歩いていた。
左右に立ち並ぶのは琥珀色の溶液で満たされた培養槽。その中に浮かんでいるのは紛れもなく生きた人間だ。
男はその情景をまるで絵画を愛でる芸術の信徒のように舐め回し、通路の果てにある開けた区画へと辿り着く。
すると、男の到着を待ち侘びていたかのように巨大な仮想ディスプレイが展開し、薄紫色の髪の女性が映し出された。
その瞳は男と同じ金色で、作り物めいた彼女の表情も相まって酷く不気味な人形に見える。

「ウーノ、クライアントからの指示は?」

『例の物は予定通り、ホテル・アグスタへ運び込まれるそうです。警備は一個部隊のみで行わせるとのことで、
強奪はさほど難しくないかと。また、ゼストとルーテシアに対して、無断での支援や協力はなるべく控えるようにとメッセージが届いています』

「自律行動を開始させたガジェット・ドローンは、私の完全制御下という訳じゃないんだ。
勝手にレリックのもとへ集まってしまうのは、大目に見て欲しい」

『お伝えしておきます。ですが、そのガジェットをこのまま放置しておいて宜しいのですか? 
既に何体かのガジェットが管理局に捕獲・解析されているようです』

「放っておくと良い。あんなもの、何百体壊れようと代えが利く。寧ろ、私が認めたメッセージに気づく機会が増えるというものだ。
いい加減、こそこそと隠れ続けるのにも飽きていたところでね。そろそろ愛しの娘との鬼ごっこを再開したいとも思っていたところだ。
あの宝石とメッセージを見れば、彼女はどんな顔をするだろうね? 喜んでくれるかな? ああ、それとも憎悪に胸を焦がすかな?」

狂ったように胸を搔き毟りながら、男は醜く体を歪ませる。
狂気に満ちたその瞳を恐れる者はここにはおらず、彼の奇行を咎める者もいない。
だから、男はずっと笑い続けていた。
自分を傷つけるように、ひたすら胸を搔き毟りながら。

「はははっ、楽しいな。彼女の遺した作品と私の作品。愛しい愛しい娘達と貴重で大切なレリック・ウェポンの実験体がFの残滓とぶつかるんだ。
どっちが勝つかな? どっちが優れているかな? ウーノ、私は今から楽しみでどうにかなってしまいそうだ」

『では、何れはルーテシアを?』

「ああ、働いてもらおう。優しい優しいルーテシア。私のためにしっかりと働いておくれ。
覚めない夢を見続けられるようにね」

男の哄笑は止まらない。
ウーノ(1番)と呼ばれた女性からの通信が切れ、広間が静寂に満たされても男は笑い続ける。
狂気に彩られた笑い声で満たされた暗闇はどこまでも深く、果てがない。
それはまるで、この男の狂気そのものを表しているかのようであった。







その夜、スバルは寝つくことができずに隊舎の周りをグルグルと散歩していた。
気晴らしにと思って外に出てみたのだが、これが思っていた以上に気持ちがいい。
夜風は冷たくて時折頬を切り、潮の香りが鼻腔をくすぐって眠気を吹き飛ばす。
気分が高揚したスバルは、訓練のおさらいをしようとシューティングアーツの型を取っていた。
マッハキャリバーを起動させようとも思ったが、折角なので素手のまま一人稽古を始める。
姉に初めて突きを教わった時のように、無心になって基本の突きを繰り返し、突きが終われば次は蹴り、
そして手刀や肘打ち、裏拳と基本動作を繰り返した後、それらを組み合わせたコンビネーションへと発展していく。
突きから蹴りへ、回し蹴りから踵落としへ。目まぐるしく変わる型は全て、姉から教わったものだ。
幼い頃に死んだ母から教わったものもあるが、小さかったのでよく覚えていない。
だから、自分にとってシューティングアーツの師匠は姉であるギンガだ。

348 Lyrical StrikerS 第6話⑨ :2009/08/31(月) 23:13:22 ID:krqFdWfs
(やっぱり、殴った感触は良い気分じゃないや。けど、拳が空を切る度に何かが込み上げてくる。
とても熱くて胸がギュッとなるような感覚。この興奮、張り裂けるような緊張感。
あたしの中で、もう1人の自分が訴えている。強くなりたい、もっと強く……………もっと…………………)

繰り出した拳が飛び散った汗を吹き飛ばし、小さな虹が暗闇に浮かぶ。
どれくらい一人稽古をしていたのだろうか? 全身が汗でびしょ濡れで、パジャマ代わりのシャツまで真っ黒に濡れている。
小さな拍手が聞こえたのは、丁度スバルが一呼吸置いたその時であった。

「熱心だね。けど、遅くまで起きているのはあんまり感心しないな」

「な、なのはさん!?」

いつからそこにいたのか、花壇に腰かけたなのはがこちらを見つめていた。
勤務明けなのか、私服ではなく陸士隊の制服のままだ。

「す、すみません。その、寝付けなくて……………」

「良いよ、まだ10時だし。私も遅くまで残業していたから、おあいこかな。
けど、夜更かしは明日に響くから、程ほどにね」

悪戯っぽく苦笑しながら、なのははこちらに近づいてくる。
憧れの人と2人っきりという状況に、スバルの鼓動は自然と早鐘を打った。

「シューティングアーツだっけ? こうして改めて見てみると、基本の型から普通のストライクアーツと違うんだね」

「は、はい…………ローラーとナックルを使うことが前提ですから、色々と」

「久し振りに、わたしもやってみようかな。スバルちゃんとの個別訓練も、そう遠くない内にすることになるんだし。
今の内にカンを取り戻しておくのも悪くないかも。付き合ってくれるかな?」

「え、えぇっ!?」

突然の提案に、スバルは素っ頓狂な声を上げる。
憧れの人と組み手をする。それはつまり、思い描いていた1対1の教導を受けられるということだ。
だが、舞い上がった思考はすぐに冷静さを取り戻した。知っての通りなのはは射撃型。
遠距離からの砲撃が基本的な戦闘スタイルであり、クロスレンジで戦うことは皆無である。
久し振りにと発言していたが、いったい彼女はどれほどの腕前なのだろうか?

「あ、疑っているな。ちゃんと格闘型の魔法使いに教導できるように、一通りの型はマスターしているんだからね。ほら!」

言うなり、なのはは拳を突き出してくる。
咄嗟に右手でそれを払い、反射的に左拳を打ち込む。
拳速は少し遅め、射撃型のティアナに初めて演武を披露した時と同じ速度だ。
なのははそれを危なげなく受け止めると、今度は右足で顔面を狙ってくる。
反応や動きは悪くない。基本はマスターしているという言葉は伊達ではないようだ。
ならば遠慮は無用と、スバルは拳を打ち込む速度を速めていく。
最初はゆっくりと。徐々に加速をつけ、フェイントも織り交ぜる。
すると、なのはの目が忙しなく動くようになり、動きにも乱れが見られるようになった。
あのエース・オブ・エースを翻弄している。
調子に乗ったスバルは、更に複雑なコンビネーションを使ってなのはの防御を崩しにかかった。
瞬間、なのはは桃色の盾を編み上げて拳を逸らし、地面から幾本もの鎖を伸ばしてこちらを絡め取ろうとする。

「あっ、ずるい!」

地面を蹴ってバインドを回避し、スバルは叫ぶ。
実戦ならばともかく、組み手でシールドやバインドを使うのはご法度だ。

「ずるくない、これがわたしの応用なの」

「そっちがその気なら、こっちだって」

少しだけ本気を出し、バインドの雨を搔い潜ってシールドに拳の連打を叩き込む。
なのはも全力を出していなかったのか、シールドは思っていたよりも簡単に砕け散った。
取った、と伸ばした手刀をなのはの首筋へと突き出す。だが、背筋を走る悪寒に引き留められ、スバルは攻撃の手を止める。
こちらの後頭部に、なのはが生み出した桃色の魔力弾が一発、静かに狙いをつけていたからだ。

349 Lyrical StrikerS 第6話⑩ :2009/08/31(月) 23:14:24 ID:krqFdWfs
「ずるいです、なのはさん」

「にゃははは、今のはわたしの反則負け。でも、これだとクロスでスバルちゃんに教えられることってあんまりないかも」

「そんなことないです。シューティングアーツは駄目でも、もっと色んなことを教われます。
あたし、もっと強くなりたいんです。なのはさんみたいに、負けない強さが欲しいんです」

「ありがとう。負けない強さか……………ねえ、まだ理由を聞いていなかったよね。スバルちゃんが強くなりたい理由。
強くなって、何をしたいのかなって」

「強くなって………あたしがしたいこと?」

なのはの真っ直ぐな瞳で問われ、スバルは自分の心に問いかけるように呟く。
4年前になのはに助けられて、理不尽を前に泣くことしかできなかった自分を変えたくて、
無我夢中で魔法とシューティングアーツを習って。
いつだって、自分の中にはまず強くなりたいという思いがあった。
だから、訓練校で次の進路を決めるその時まで、自分が何をしたいかなんて考えたことがなかった。
けれど、今は違う。
明確な思いと夢が、この胸にはある。
戦うのは好きじゃない。だから、この力を戦い以外の形で社会に役立てたい。
かつて、目の前の恩人が自分にそうしてくれたように。
原点に立ち返るといつも思う。
あんな辛い目に遭うのはご免だ。
自分ですらそう思うのだから、きっとみんな同じ気持ちだ。
だから、みんなをそんな苦しみから助け出したい。
誰かが傷つく姿なんて、見たくないし認めたくもない。
みんなに笑っていて欲しい。
そのために、自分は戦うのだ。
笑顔を奪おうとする理不尽と。
みんなから幸せを奪おうとする、災害と。

「災害とか争いごととか、そんなどうしようもない状況が起きた時、苦しくて悲しくて、
助けてって泣いている人を助けてあげられるようになりたいです。自分の力で、安全な場所まで、一直線に」

「それ、誰の受け売りかな?」

「すみません、どうしても使いたくて」

どちらからというでなく笑みを零し、フェンスにもたれかかりながら夜空を見上げる。
いつかのように眩い星達が煌く、静かで何もない夜の空。
伸ばした手は未だ届かないけれど、この手の先に彼女がいると確信することができる。

「あたし、もっと強くなります。マッハキャリバーと一緒に、もっと」

《Yes, my master》

首から下げたマッハキャリバー明滅し、主の言葉を肯定する。
頼もしい教え子とそのデバイスの微笑ましい光景を見守りながら、なのはは静かに笑みを浮かべていた。






                                                                          to be continued

350 B・A :2009/08/31(月) 23:15:34 ID:krqFdWfs
以上です。
レジアスもスカも書いていて楽しいこと楽しいこと。
特にレジィは出番増えまくりですからね、はやてに嫌がらせするために。
ツンデレな年ごろですかね、これは。

351 名無しさん@魔法少女 :2009/09/01(火) 23:20:43 ID:t6DolLOg
GJ!

これは良い再構成、次回も待ってます。

352 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:31:16 ID:KWoi0vKY
それでは行きます。

・エリオとキャロ結婚後と言う設定
・キャロが村を追い出された理由に関しての独自解釈(本編との矛盾)注意
・バットエンド注意
・非エロ
・本編終了後にもれなく全てを台無しにするおまけが付いてきます。

353 これが災いだと言うのか… 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:32:30 ID:KWoi0vKY
 エリオとキャロは結婚をしたものの、仕事が忙しい関係もあって未だ新婚旅行に行けずにいた。
その上さらにエリオは出張でしばらくの間ミッドに単身赴任しなければならなくなったのである。

「ごめんねキャロ。僕達結婚したばかりだって言うのにこんな事になって。」
「お仕事の都合なら仕方が無いよ。気にしないで。」
「ありがとうキャロ。今回の単身赴任が終わった後で何とか休暇を取れないか上に掛け合ってみるよ。
上手く休暇が取れたら…その時は新婚旅行に行こう?」

 エリオは何時の日かキャロと新婚旅行に行く事を約束し、ミッドへの出張へ出かけた。
キャロもまた笑顔でエリオを見送っており、二人は本当に幸せな夫婦……と思われていたのに………

            まさか………あんな事になってしまうなんて……

 エリオがミッドへ行ったその日の夜、キャロは一人入浴していたのだが……そこである事に気付いた。

「あれ…? これ…何…?」

 キャロの皮膚から何かが生えている。それは桃色で固く、まるで竜のウロコの様な物だった。
それも一箇所だけでは無い。キャロの体中の所々に固いウロコの様な物が生えて来ていたのだ。
しかも…それだけでは無かった………

「あ…ウロコが…また増えて……ええ!?」

 キャロの柔肌の彼方此方に桃色のウロコが目立ち始めた時、キャロはさらなる異変に気付く。
それは角。頭から二本の角が生えて来ていたのである。

「え!? これ角!? 何で!? 何でこんな事になっちゃうの!?」

 キャロは戸惑った。これは明らかに可笑しい。自分の体に異変が起きつつあるのは確実。
しかし、だからと言ってキャロは自分の身体を医者に見せる事は無かった。何故ならば…怖かったのである。
ウロコや角の生えた自分のこの体が他の物に知られてしまえば…どこか変な研究所に連れて行かれて
変な人体実験等をされてしまうに違いないと…キャロは考えていたのである。

 だがそうしている間にもキャロの柔肌は固いウロコへ姿を変え、角はおろか口からは鋭い牙が生えて…
明らかに人間とは違う…別の何かへと変貌を遂げて行った……

 そして数日後…全ての窓が閉じられ、カーテンによって日の光も差さず薄暗くなった部屋の奥で
全身を布団で覆った何か蠢いていた………

「嫌…嫌だよ……怖い…怖いよ…私…私………。」

 この数日の間にキャロの体は完全に人間のそれでは無くなってしまっていた。全身の柔肌は
完全に桃色の固いウロコへ姿を変え、頭には鋭い角、手足の先には鋭い爪、口には鋭い牙…
言うなれば……それは竜。キャロは……竜になっていたのである。

354 これが災いだと言うのか… 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:33:22 ID:KWoi0vKY
「何で…何で…? 私…何で竜になっちゃったの…?」

 何故自分がこんな事になってしまったのか…キャロにはわけが分からなかった。明らかに医学の
常識を無視している。かといって変身魔法の類とも違う。ただ一つ分かるのはキャロが人間では無く
竜になってしまったと言う事実のみ。

 布団から出て…鏡を見てますます絶望に打ちひしがれるキャロ。鏡に映った自分の姿は、
美しい娘であったキャロの顔、体が完全に人間のそれでは無く、竜の姿になってしまった事を
改めて実感させ絶望させるに充分だった。

「このままじゃ私……体だけじゃなく…心まで竜になっちゃうかも……そんなの嫌だよ…。
エリオ君…エリオ君に会いたい……私が人の心を失う前に…せめて最後に一度だけ…エリオ君に会いたい!!」

 そう考えたキャロは思わず駆け出した。

「エリオ君! エリオ君! エリオく…ぐぎゃろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 キャロが玄関を飛び出した直後、彼女の背中からは翼が開き、その体そのものも巨大化していく。
そのサイズたるやヴォルテールの数倍と言う巨大な物であり…

「ギャァァァァァァロォォォォォォォォ!!」

 その口から発せられる物は人間の言語では無く、巨竜の咆哮。キャロは完全に…人ではなくなっていた…。

 そして巨竜と化したキャロは次元さえ超越し、ミッドへ向けて飛翔して行く。目的はエリオ。
エリオと再び会う事。

 間も無くしてキャロはミッド首都クラナガンに降り立つのだが…そんな所にヴォルテールの数倍の
サイズの巨竜が降り立てばパニックになる事は当然の事だった。

「うああああ!! 巨大なドラゴンだぁぁぁぁ!!」
「助けてぇぇぇぇぇ!!」

 突然の事態に人々は泣き叫び、散り散りになって逃げ出して行く。しかしそんな彼等に気付く事無く、
キャロはエリオを求めて歩き始めるのだ。

355 これが災いだと言うのか… 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:34:18 ID:KWoi0vKY
『エリオ君! エリオ君は何処!? 何処にいるの!?』

 キャロはエリオを求め、何度もエリオの名を呼び続ける。しかし、それも人間には
巨竜の咆哮にしか聞こえないのである。そして巨竜と化したキャロが歩くだけで道路のアスファルトは砕け
住宅は踏み潰され、ビルは破壊されて行く。

 その後もキャロはクラナガンの街を闊歩しエリオを探して行くったが…やがて時空管理局武装隊からの
攻撃を受けた。街の彼方此方に武装隊の戦闘魔導師達が展開し、キャロに攻撃魔法を撃ち込んで行くのである。
だがしかし、その桃色に輝く強固なウロコにはまるで通じず…あろう事か逆にその大きな口から発せられる
火炎によって街もろともに焼かれて行く。

 僅か数十分としない内にクラナガンの街は火の海と化した。そしてその火の海の中を何事も無かった
かの様に悠々と歩く巨竜と化したキャロの姿があるのみ。


 ああ何故この様な事になってしまったのだろう。まさに災い。これはもはや災いとしか呼ぶ他は無い。
そうだ。これこそが災いだったのだ。

 かつてキャロは災いをもたらすとされ、生まれ故郷であるアルザスを追われている。それに関して
強すぎる竜召喚の力を恐れられての事であると考えられていたのだが…実際はそうでは無かった。
よく考えても見て欲しい。キャロはアルザスにおいて大地の守護者と信仰の対象にさえなっている
真竜ヴォルテールを召喚する事の出来る巫女的な要素を持っている。この場合、キャロがただ単に
強い力を持っているだけで故郷を追われなければならないと言うのは矛盾が生じるだろう。
そう。キャロが故郷を追われた理由は決して強すぎる竜召喚の力による物では無かったのである。

 その実体。キャロが故郷を追われた理由…その真相…その答えは今のキャロの異形なる姿が物語っている。
何故キャロがあの様な姿になったのかは分からない。しかし、アルザスのル・ルシエの里の者達は
何らかの方法でキャロがいずれヴォルテールの数倍とも言える巨竜になる事を察知し、それを恐れて
キャロを故郷から追い出したのであろう。


 巨竜と化したキャロが火の海、瓦礫の山と化したクラナガンの街を闊歩し、エリオを探し回っていた頃、
時空管理局の本局ではその事件の対策に追われていた。

「ミッド地上クラナガンに巨大な竜が現れたなんて…今時怪獣映画じゃないんだぞ!」
「ミッド地上本部との通信繋がりません!」
「負傷者死傷者計測不能!」

 などなど、彼方此方で罵声のごとき人々の声が響き渡る。無理も無い。確かに次元世界には
巨大生物の類はいるが、大半は害獣駆除の範疇で現有戦力による対処が充分に可能である。
しかし巨竜と化したキャロの桃色のウロコはゴムの様なしなやかさと金属のごとき強固さを
併せ持ち、時空管理局の誇る多彩な魔法を弾き返してしまっていたのである。
そして火力もまたヴォルテールの数倍であり、本局といえども攻め難い物だった。

356 これが災いだと言うのか… 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:35:32 ID:KWoi0vKY
 この未曾有の異常事態に、軌道拘置所に収監されいたとある囚人が特例的に牢から出された。
彼の名はジェイル=スカリエッティ。

「管理局に手を貸すのは癪だが、我が都を壊されてしまうのは困るからな。君等がそこまで言うのなら
手を貸さない事も無い。」

 住めば都と言う言葉もあるが、何故かジェイルは軌道拘置所暮らしに愛着を持つ様になり
我が都とすら呼ぶ程にもなっていたのだが、そのお陰で力を貸してくれて良かった良かった。
と言う事で、早速彼はある物を作っていた。

「ほら。とりあえずあり合わせの材料で作ってみたぞ。」
「作ってみたって…野球のボールやん。」

 ジェイルが勝手に何かしない様にと言う監視も兼ねて彼と同行していた八神はやては
彼が作ったどう見ても野球のボールにしか見えない白いボール状の物体に呆れていたのだが…

「おっと慎重に扱いたまえ。一見ただのボールにしか見えないが、中身は超高性能爆薬が詰まっている。
起爆させてしまえばあっと言う間に本局ごとドカーンだぞ。」
「ば…爆薬!?」

 ジェイルの言った爆薬と言う言葉に皆は凍り付いた。無理も無い管理局はこの手の質量兵器の
使用は基本的に禁じているからだ。おまけにこのボール型爆弾は爆発すれば本局も吹き飛ばせる程の
爆発力があると言うのだからなおさらである。

「爆薬って…管理局は質量兵器の使用を禁止してるのは知っとるよね!?」
「今と言う状況でその様な事を言っている場合では無かろう? それとも他にあの竜を
倒す手段があると言うのかね?」
「くっ……………。」

 今と言う状況では質量兵器禁止もへったくれも無く、彼の言う通りにせざるを得ない。

「とは言え、これを持ってしてもあの竜の固い外皮を破る事は容易な事では無いだろうな。
とすれば方法は一つ。何とかしてこれをあの竜の口の中に放り込み、内側から爆破するのだ。」
「でも…それはかなりの危険が伴う…。」

 確かに彼の言うとおり、外部からの攻撃では通じない巨竜も内側からなら倒す事も出来るだろう。
しかし、実際にその爆弾を巨竜の口の中に放り込むのは容易な事では無い。それ以前に近寄る事も
ままならずその火炎に焼かれてしまう可能性も高い。

357 これが災いだと言うのか… 5 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:36:30 ID:KWoi0vKY
 その結果考え出された作戦はこうだ。四方八方から巨竜に対し攻撃魔法の雨アラレを撃ち込み、
巨竜がどちらに対処すれば良いか困惑している隙にジェイルの作ったボール型爆弾を巨竜の
口の中に投げ込み内側から爆破する。この様な作戦で果たして本当に上手く行くのかは分からないが
今この瞬間にも巨竜による被害は増え続けている。よって一刻も早く何とかしなければならない。

 作戦は早速決行され、巨竜の闊歩する瓦礫の山と化したかつてクラナガンの街であった場所の彼方此方に
武装隊魔導師が展開した。巨竜の注意を引き、ボール型爆弾を巨竜の口の中へ投げ込む為の決死隊が
接近しやすくする為である。そして……その彼方此方に展開する武装隊魔導師の中にはエリオの姿もあった。

「まさかこんな事になってしまうなんて…。でも僕は必ず生きて帰るぞ。キャロが待っているんだ!」

 ヴォルテールの数倍の体躯と火力を誇る巨竜と相対するのはエリオと言えども怖気づかずには
いられなかったが、家で帰りを待つ妻キャロの事を思い出す事で勇気を奮い立たせた。

「砲撃はじめぇぇぇ!!」
「今の内に突撃だ!」

 砲撃が始まった。武装隊の各魔導師達が陸と空、四方八方から巨竜へ攻撃魔法を撃ち込み
多種多様な攻撃魔法の雨アラレが巨竜の巨体を包み込んで行き、その隙にボール型爆弾を
抱えた決死隊が巨竜へ接近して行く。

『痛い! 痛いよ! エリオ君助けて!』

 流石にこれは痛かったのか、キャロはエリオに助けを求めた。しかし、エリオを含め
人間にはその叫びも巨竜の咆哮にしか聞こえ無かったのである。

『エリオ君! エリオくぅぅぅぅぅ!!』
「いかん! 回避ー!」

 人間には巨竜の咆哮にしか聞こえないキャロの泣き叫ぶ声と共に火炎が放たれた。
それが決死隊のいる方向へ向けられており、決死隊は回避行動を取っていたのだが
完全には間に合ったとは言えなかった。

「あ! 決死隊が!」

 全滅では無い。確かに全滅では無い。しかし、全員が動けないも同然の状態であり
なおかつ回避行動時の拍子にボール型爆弾が地面へ落ち転がっていたのだ。

「くっ! こうなったら!」

 偶然現場の一番近くにいたエリオがそのボール型爆弾を拾い抱え巨竜へ向けて突撃した。
決死隊がやられてしまった以上もう自分がやるしか無い。

358 これが災いだと言うのか… 6 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:38:02 ID:KWoi0vKY
「うあああああ!! キャロ! 僕を守ってくれぇぇぇぇぇ!!」
『あ! エリオ君! エリオくぅぅぅぅん!』

 キャロは自分に向けて駆け寄ってくるエリオの存在に気付いた。それはそれは喜んだであろう。
何しろずっと探していたエリオが自分から駆け寄って来ていたのだから。キャロは
嬉しさの余り同じ様にエリオへ向けて駆け寄っていたのだが……………

「今だ! 今しかない! 頼む! 口の中に入ってくれぇぇぇぇ!!
僕はまだ死ぬわけには行かないんだ! キャロを残して死んでたまるかぁぁぁぁ!!」

 エリオはストラーダの先端にボール爆弾を装着し、そこから魔法を推力にして
97管理外世界の兵器で言う所のパンツァーファーストの様な形でぶっ放した。
そして……ボール型爆弾は巨竜の口の中に入り込み…その喉の奥へと吸い込まれて行き…

 次の瞬間………巨竜の体は木っ端微塵。文字通り木っ端微塵に砕け散った。
特撮ヒーロー番組でヒーローの必殺技を受けた怪獣が粉々になるシーンを思い浮かべると
分かり易いのかもしれない。それくらい綺麗な吹き飛び方だったのである。
流石の頑強な外皮を持つ巨竜も内側からの大爆発には一溜まりも無かった。

「やった! やったぞ! キャロ! 僕は生き残った! 僕は生き残ったぞー!」


 やられてしまった決死隊に代わって巨竜の口の中へ爆弾を撃ちこんだエリオは忽ち英雄となった。
勲章のみならず、特別有給休暇さえ与えられたのだ。

「あの時はもう何もかも無我夢中でやってた事だけど…僕は凄い事をしたんだな〜。
いずれにしてもこの特別有給休暇があればキャロと一緒に新婚旅行へ出かける事が出来るぞ。」

 こうしてエリオは悠々と家に帰って来たのだが、家の中にキャロの姿は無かった。

「なるほど。キャロはどこか出かけているんだな。ならここで待っていよう。
帰ってきたら驚くぞ〜。何ってったって特別有給休暇だもんな。キャロとの新婚旅行は
何処へ行こう…。」


 エリオはキャロの帰りを待つ事にしたのだが…キャロが帰って来る事は無かった。
何故ならば…キャロはエリオが殺したのだから。その事を知る者は…死したキャロを除き…誰もいない。

                     END

359 全てを台無しにするおまけ ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:39:06 ID:KWoi0vKY
        IFストーリー『もしもこれがユノキャロSSだったら』

 突如として巨大な竜に姿を変えてしまったキャロは口から火炎を吐いてクラナガンの街を破壊して行くぞー。
しかしそこへ現れる一人の男の姿がー。

「キャロー! 君が体だけじゃなく心まで竜になってしまったと言うのなら…僕も人間をやめるぞー!」

 巨竜と化したキャロに向かって走る男・ユーノが翠色の光を放った瞬間、彼は巨大なフェレットに姿を変えた。

「キューキュー!」
「ギャロォォォォ!」

 巨竜と巨フェレの怪獣大決戦だ。

「巨大なフェレットがドラゴンに向かって行く。一体どうなるのでしょう?」
「さあ? 勝った方が私達の敵になるだけや。」

 巨竜と巨フェレの対決を時空管理局はただ見守る事しか出来ない。人間とは何と無力な存在なのだろうか…

「キューキュー!」
「ギャロォォォ!!」

 長きに渡る死闘の結果、巨竜と巨フェレは共に高い絶壁から海へと転落し行方不明となった。
あれだけの生命力を誇った巨竜と巨フェレが海に落ちただけで死ぬはずは無いと時空管理局は
捜索を始めたが、懸命の捜索にも関わらず巨竜と巨フェレは忽然と姿を消した。

 それから時が流れ、巨竜と巨フェレに破壊された都市の復興の兆しが見え始めていた頃、
今度は何と時空怪獣なる巨大生物が襲来しまた破壊を始めてしまったのだー。

 時空管理局が立ち向かうが時空怪獣は強力で歯が立たない。するとその時だ。

「キューキュー!」
「ギャロォォォ!」

 そこに現れたのは何と行方不明になっていた巨フェレと巨竜。そう。この二体は死んではいなかった。
あの後なんか色々あって何処かの島で暮らしていたんだそうな。それはともかくとして、時空怪獣だけでも
厄介なのにこの二体にまで暴れられたらもう大変と誰もが絶望するが、何と二体は時空怪獣に立ち向かって
行ったでは無いか。

「キューキュー!」
「ギャロォォォ!」

 この後、巨フェレと巨竜は次々と襲来する時空怪獣からミッドを守る正義の怪獣へ変貌して行くのだが…
それはまた別のお話って言うか昭和のゴジラじゃねーんだから。

                        おしまい

360 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/02(水) 00:40:56 ID:KWoi0vKY
キャロが竜に変貌して、誰にもキャロだと気付かれる事無く駆除されると言う鬱展開は
かなり前から考えていたネタなんですが…最後の全てを台無しにするおまけが
せめてもの口直しになる事を祈ってます。

361 名無しさん@魔法少女 :2009/09/02(水) 01:42:16 ID:y7AsKGPE
乙!
最後昭和のゴジラwww

キャロが死んで竜から人間にもどるという王道かとおもったけど、こういう行方不明エンドもこれはこれでいいですね。

362 名無しさん@魔法少女 :2009/09/02(水) 22:49:07 ID:R.e/7q3s
GJ!!です。
こんな設定は思いつかないw
楽しかったです。

363 名無しさん@魔法少女 :2009/09/03(木) 21:21:25 ID:n6ysFqtw
まぁ、辺境地方の部族ってことなら
異種交配やら近親ないあいあインスマウスしてたりもしそうだよね

364 名無しさん@魔法少女 :2009/09/03(木) 23:09:25 ID:7UqDV.2o
凄いSSだwww 乙ですw

365 名無しさん@魔法少女 :2009/09/04(金) 02:54:13 ID:y23nXx26
ちょwwwこれはww
しかし、ちょうど初代ウルトラマン見ながら見てたから、すごい物哀しさが出た
ジャミラ…


GJ

366 名無しさん@魔法少女 :2009/09/04(金) 23:13:50 ID:.6lIvgII
そろそろストラディさんの新作来ないだろうか……

ヴァイシグ見てぇ

367 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 15:37:01 ID:lNU1Iw6Q
そろそろ以前に読んだヴァイス×セッテの続きが読みたい

368 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 18:11:32 ID:zAcx.OY6
>ヴァイス×セッテ
ちょww あれの続きってwww
あれは続けられないんじゃないのか?ww

そもそも、どう見てもフラグが立てられるような相手じゃなかったぞ、あのセッテはww

369 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 18:17:37 ID:/WXtgWlw
ヴァイスメインなら、久々にトラブルメーカー的なヴァイスが見たいな。
エリオに悪い遊びを教えたりとか。

370 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 18:21:57 ID:zAcx.OY6
>遊び

いけない一人遊びか

371 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 19:45:38 ID:Oj6i1Q.o
んー、なんかなあ
…が多すぎないか?それに文章が単調に思える
野球のボールそのままの爆弾とかふざけ過ぎてて萎えるしスカが協力する理由もいい加減すぎだろ
展開も速すぎてついてけないし場面と場面の間も急で余韻に浸ることもできない
おまけも完全に蛇足だろ、ギャグのつもりなんだろうけど寒いだけ
俺は新参だけど保管庫の作品のクオリティより明らかに劣ってるぞ、これをマンセーしてる奴はちょっとは考えろよ…
管理人さんへ
これは俺が持った感想なんだけど不適切ならこのレスは削除してください

372 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:02:23 ID:sraUviL6
いちいち管理人の手を煩わせるようなレスするなよ。知障。

373 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:18:08 ID:dQyis2Pg
言いたい放題言って邪魔なら消せとか自分勝手も甚だしいだろ
どんな文章だろうが見る側がマンセーしてるならそれでいいじゃん
本当に詰まらん文章ならそもそもレスすら付かんよ
つーかSSなんて基本素人が作るもんなんだからしょうがないだろ

文句言う位なら自分で面白いと胸張れる作品投下しろ
それを出来もしないのに他人を非難とか何様のつもりだよ

374 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:20:16 ID:SstPlhOI
>>373
流石に最後の理屈は無茶だと思うが

375 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:38:18 ID:EwwomINg
まあまあ、このスレですら、この手の奴が、削除しても良いですよと捨て台詞して書き込むんだから
エロパロに戻ったら、やりたい放題されるだろうね。

376 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:41:04 ID:dQyis2Pg
>>374
そうか?
文章自体は規約に違反してるわけでも無し、詰まらなかったらスルーすればいいだけなのに
わざわざ他の保管庫引き合いに出して頼んでもいないのに勝手に批評するわ
挙句に読み手にまで「もうちょっと考えろ」とか何様のつもりだよと

そこまで偉そうなこというなら自分でお手本になるようなのを書いて欲しいと思う
口だけなら誰だって言えるわけだからな

377 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 20:48:02 ID:SstPlhOI
>>376
過剰反応だと思うけど

378 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 21:31:28 ID:/WXtgWlw
ここは久々にエロい話をしよう。
ノーヴェのBJはナンバーズ服よりエロいと思うんだ。

379 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 21:43:53 ID:zAcx.OY6
主に股のところですね? 分かります


あれは誰がデザインしたんだろうか……まさか本人!?ww

380 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 22:01:05 ID:N2tZTf.s
>>374
>文句言う位なら自分で面白いと胸張れる作品投下しろ
>それを出来もしないのに他人を非難とか何様のつもりだよ

これはさすがにムチャ言い過ぎ。信者が罵倒するときに
よく使ってるけど、書けなきゃ批評できないんじゃ自分らも
当てはまるがな

それこそお前さんがスルーすべき。熱くなっても通じない
からなぁ

381 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 22:03:08 ID:N2tZTf.s
ミスたw >>380のは>>373宛な

382 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 22:19:58 ID:Fbis9owc
興味ないならスルー。これでおkかと。
わざわざつまらんと思う作者・作品を読んでレスする必要もねーし。
何のための鳥や事前注意事項かと。

383 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 22:39:47 ID:JZrCtco6
昔、俺の好きな書き手さんがボコボコにされていたが
あのとき擁護は入らなかった

384 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 22:58:12 ID:lNU1Iw6Q
>>368
えーそれでも続きが読んでみたいのです
あとヴァイスとルーテシアのクリスマスの話の続編もね

385 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 23:10:33 ID:zAcx.OY6
>ヴァイスとルーテシア
ああ、アルカディア氏のあれか
あれは良かったなぁ……凄いほのぼのしてて、面白かった

386 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 23:17:47 ID:/WXtgWlw
ほのぼのしてて切なくて笑えて。
あれ1個に色んなエッセンスが詰まっていたな。

387 44-256 :2009/09/05(土) 23:21:30 ID:N3S0cn5M
すみません。purple holy nithtで盛り上がっているところ申し訳ない
ですが、投下してもいいでしょうか?

388 名無しさん@魔法少女 :2009/09/05(土) 23:23:29 ID:k0JCHVfg
オーケー来い

389 44-256 :2009/09/05(土) 23:24:48 ID:N3S0cn5M
それでは投下します。
・非エロです。
・時系列は3期6話〜7話のあいだです。
・登場人物2名はオリキャラの非魔導師です。
・前編、後編に分けます。

・後編で3期の登場人物が出てきます。

390 ナイトクルーズ前編1/9 :2009/09/05(土) 23:26:14 ID:N3S0cn5M
『30ヤード・・・20ヤード・・・YEAH!!エルセア・レイカーズ112点目です!どうしたアルトセイム・クライマーズ!?
相次ぐミスプレーに歯止めがかかりませ・・・(ブツッ!)』

「くそ〜・・・」



運転席の20代前半の青年はいらだちながら実況や声援の入り乱れた車のラジオを切った。

外は雨。ラジオを切った途端、車の中は天上を打つ雨音と時折ワイパーがフロントガラスをぬぐう音だけに包まれる。



「・・・だから出る前に言ったろ?故郷のホームチームとはいえ、落ち目のクライマーズはやめとけって」
助手席に座っていた50代後半くらいの黒人の男は、笑いながら年季の入った薄青色の制帽のホコリをはらった。


「俺たちレッドネッキー(南部野郎)は追い詰められてから本気を出すんスよ!!明日こそは・・・」
運転席の青年は反論を続けようとしたが、それを制するように無線連絡が入った。



『(ガガ・・・)巡回中の各車。定時連絡をお願いします』



黒人の男性は無骨な手でやれやれ・・・と面倒臭そうにハンドマイクを持ち上げて応答する。
「こちらサードアベニュー10。廃棄都市区画沿いの5号線を北部12地区へ移動中。異常なし」



『了解しました・・・あれ?2人とも、今月は昼勤務じゃなかったかしら?』
通信先のオペレーターの若い女性に運転席の若い男性はこたえる。


よくぞ聞いてくれましたとばかりに若い警ら隊員は話す。
「ボスに9月にある地上本部の公聴会で3日間マスコミのバン記者と質量兵器禁止の市民団体のデモ警備につくか、6月まで2週間
夜勤するか決めろっていわれたんスよ。んでこっちを選んだんス」

『あなたは?』
助手席の黒人の男性にもたずねた。

391 ナイトクルーズ前編2/9 :2009/09/05(土) 23:26:53 ID:N3S0cn5M
黒人の初老の男性は言った。


「・・・午前中に、ロストロギアを違法に収集していた機械兵器たちを首都防空隊の空戦魔導師と合同捜査で押えてな。その報告
で地上本部に出頭してたら、思った以上に長びいちまったもんで、夜番の人間に変わってもらった穴埋めだ」



「ええ!?マジっスか!?首都防空隊にコネがあるなんてすごいじゃないですか!」
『・・・・・』


運転していた若い男性は羨望のまなざしを向ける。対してオペレーターは何ともいえないといった感じで黙ってしまった。
その微妙な空気を楽しむように、初老の男性は笑って送信機の相手と若者に釈明する。



「冗談だ。半年前、ステーションで『妹を魔法学院にやりたいんだよ!!』とかほざいて、慣れない手つきでクラック切り刻んで
売ってたヴァイゼン(第3管理指定世界)のクソガキをやっと捕まえてよ。あいつの仮釈証人と、ガキもできる仕事の世話を
ジャン・シャルティエにお願いしてな・・・それで夜番の人間に通常業務を代わってもらった穴埋めってわけだ」


「それってオールド・コルス・ハスラーズのジャン!?」


「さあな?そんなすぐにでも軌道拘置所にブチこまれるコルス組織は知らねえな。俺はクラナガン清掃業協会の筆頭理事で地上本部
のお偉いさんとも“仲良し”の“善良”な高額納税者のジャン・シャルティエ会長のことを言ったつもりだけどな」



「・・・・・・・・」
「まっ、俺らと追っかけっこする体力あるなら、もっと別のところで活かしてこいってことだ」


○ロストロギアを狙う強力な機械兵器⇔ストリートチルドレンにヴァイゼン・コルスが牛仕るゴミ収集清掃員の仕事の世話をする。
○地上本部高官への報告⇔下級裁判の保釈申請


ダイナミックとはとてもいえない、そのギャップに今度は青年が閉口した。

392 ナイトクルーズ前編3/9 :2009/09/05(土) 23:27:38 ID:N3S0cn5M
オペレーターの女性は微笑んだ。


『“警らの聖王様”も相変わらずね』
「何言ってやがる。こんなジジイと比べられると、教会の司祭さんや尼さん達に失礼すぎるだろ」


黒人の初老の男は自分のメタボリックの腹をポンポンたたいて自嘲気味に笑う。


「俺はただ、クラン(ミッドチルダ中央区画の略称)でクラックさばくルールやディーラー同士のナワバリをよく知らない
リトル・ジョン(身元不明の少年の遺体)を毎回、港湾地区のダストシュートで発見するのが面倒くさいだけだ」


『そんな事言って・・・ホントご苦労様。それと運転席で苦い顔してる坊やに言っといてね。今夜のレイカーズ戦は私の勝ちよって』


「・・・だとよ」
“坊や”呼ばわりされた青年は何ともいえない顔から一気に苦い顔になった。




クラナガン北部の臨海第8空港跡、廃棄都市区画とそれらを囲む臨海地区、レールウェイ・ステーションを中心としたオフィス街。
その一角を管轄するサード・アベニュー警ら隊。



初夏の5月。

しかし夕方からの時雨により、満月と雨雲が交互に流れる変な天気という点をのぞいて
アーノルド・ベイカー警ら隊員とサルバトーレ・ルッソ警ら隊員の2名が乗車する10号パトロール車はいつもと変わらず
普段通りの行程でナイトクルーズ(夜間巡回)に出かけた。



「魔法少女リリカルなのはStrikerS  sub story〜ナイト・クルーズ〜」

393 ナイトクルーズ前編4/9 :2009/09/05(土) 23:28:29 ID:N3S0cn5M
運転席の若い警ら隊員は、さっきの試合をすぐに忘れたいのか、気分転換をしようと別の話題に切り替えた。


「この廃墟。4年もこのままっスけど、いつかぶっ壊して再開発したりしないんスかね?」



「そうさな・・・地上本部の意向で、陸戦魔導師のランク試験会場になっちまってるからな」
「空間シミュレータ使って訓練してるところもあるんだから、試験もそっちでやりゃいいのに・・・」


空港の大火災で放置されたススだらけのビル。それを横目でみながら初老の警ら隊員は言った。


「シュミレータをプログラムしたり、赤字で採算取れない再開発の計画組むより、こっちの方が安上がりなんだろう」


「『ここは魔法やビルを飛び回る陸戦魔導師たちが出入りして危険だ』ってミッド語があまり通じない不法居住者
を説得するこっちの身にもなってくれってもんですよね」



火災で完膚なきまでに破壊された第8空港周辺はともかく、ビルの下は地下水路や水道が通っており電気以外のライフライン
が来ているところもあった。


治安がグリーンゾーンの職と金にありつける中央区画のすぐ隣、放逐されたとはいえ、密航するにはうってつけのまだ使える
滑走路や埠頭。


そんな立地条件の良い無料物件を求めてやってくるホームレス、発展途上次元世界の移民、ワケあり人間への立ち退きや説得や
バリケードの封鎖。


そういった雑務は全て警ら隊がやっていた。

394 ナイトクルーズ前編5/9 :2009/09/05(土) 23:29:24 ID:N3S0cn5M
結界魔法システムを張るという手もあったが、魔法使用制限の高く、魔力感知センサーが中央区画のいたるところに設置してある
中央区画ではそのようなビル街を丸ごと包むような魔法は行使できない。


ゆえにランク試験や戦技教導の際に、生命反応を感知したら、即座に警らが対応するのが常であった。


ホームレスや低所得者の中でもなれた人間は試験の行われるときだけ外に逃げて、試験が終わると同時に住処に戻るという手を
使っているようだが。




青空のもとで、地上本部の陸戦魔導師達が廃棄都市区画を縦横無尽に走り、華麗に魔法を放つ。


青空のうえで、上空から地上本部のキャリア局員や本局の執務官が最新型のヘリコプターに乗りこんで、前途有望な魔導師達
の査定をする。


そして青空すらおがめない汚い高架道路跡のアンダーパスでは、警棒を携え、バリケードを持った警ら隊員が地味な仕事をしていた。



初老の警ら隊員は、自嘲気味に笑って言った。


「まあ、オルセアみたいに、年がら年中ドンパチやってる次元世界から移民してきたヤツらにとっちゃ、歩道橋が槍の一閃で
ナマス切りされたり、小さいハンドガンタイプの魔力弾一発でトレーラーが大爆発したり、パンチ一発でビルが倒壊されたり
するところ見ても大したこと無いんだろうよ」


助手席の窓から見える廃棄都市区画の3オン3コートにいた黒人の若者らが車の2人に気づいて親指を下に向けた。
「Fuck you,Five-O.(クソったれ警らども!!)」というサインだ。

この前の魔導師試験でストリートボールを中断させられたことを根に持っているらしい。


インテリジェントデバイスやアームドデバイスで強力な武装をしている陸士部隊の魔導師と違い、警ら隊員の装備は9mmの実弾型
デバイスと実弾型デバイス用の防弾チョッキ、強力な質量兵器はトランクに積んでるショットガンくらいだ。


よって、廃棄都市区画の中でも治安がすこぶる悪いコンプトンハイツ地区やイーストリバー地区ではまっ昼間から警ら隊員を狙った
襲撃事件が少なくなかった。

395 ナイトクルーズ前編6/9 :2009/09/05(土) 23:31:30 ID:N3S0cn5M
車は廃棄都市区画沿いの道を左折し、再び中央区画に程近いオフィス街へ入った。
すると、目の前で青信号だというのに停車して、タクシーの運転手が若い女性二人に声をかけている。


「なあ、美人の管理局員さん特典ってことで地上本部までの料金は半分でいいから、乗ってくれって。この雨の中じゃ大変だろ?」


2人の女性のうち、地上本部の整備士のツナギをきた栗色の髪の女性は“べー”っと舌をだした。
「あんたみたいに無精ひげ生やしたヤニ臭い車なんか乗れないっての!」


「そんな事言わずにさ、そっちの金髪の姉ちゃんはどうよ?」
「えっ!?」
栗色の髪の女性は強気だが、控えめにしていた金髪の黒い制服の女性は突然のことに戸惑っているようだった。



それを見ていた警ら隊員の2人は“ウ〜、キュッキュッ”というサイレンを2回軽く鳴らしで注意をひきつけた。

「セルゲイ。白タクから足洗わせたら、今度はナンパか?そんな事してカミさんまた愛想つかされないのか?」
「け、警らの旦那!」



「なかなかの勇気だと思うぜ。お前さんにはただの管理局員に見えるだろうが、俺にはお二人、特に黒い制服の人は本局の執務官様に
見えるんだがな」

「「し、執務官!?」」
タクシー運転手と若い警ら隊員は驚いた。


オーバーAランク以上の超一線級のエリート魔導師。大都市すら破壊する魔力。以前『次元犯罪24時』で紹介してされてたの
を思い出した。しかし、若い女性は見たところまだ10代くらいだ。



「あんましつこいと、俺が道交法違反と追随罪でキップ切るより早く、サンダーフォールでイエローキャブごと消し炭にされちまうぞ」
「し、失礼しましたぁ!!」


タクシーは全速力で消えた。女性は敬礼をして礼を言った。
「ふぅ〜、助かりました。遺失管理部機動6課のアルト・クラエッタ一等陸士です」
「同じく本局から機動6課に出向していますフェイト・ハラオウン執務官です。ありがとうございました」


若い警ら隊員は緊張でガチガチであった。
下級警ら隊員にとって本局の人間はまさに話しかけられないくらい遥か雲の上の人物だからだ。
それに対して黒人の初老の警ら隊員は、40以上も歳が離れている若い執務官にしっかり敬礼を返した。
「いえ、本官は職務を行ったにすぎませんから、気にせんでください。よろしければ隊舎までお送りしますが」


執務官相手に物怖じせずに話す。下級警ら隊員にしては珍しい。


それに対してツナギを来た整備員の女性は手を振って断った。
「いやいや、大丈夫です」
「ええ、地上本部の屋上にヘリを待たせてますから」


「そうですか。わかりました。それでは本官はこれで失礼します」
そう言って2人の警ら隊員は車に乗り込んだ。


「『屋上にヘリを待たせてますから・・・』さすが本局の執務官、さらりと言うところがすげーな」
若い警ら隊員は感心して口笛を吹いた。

396 ナイトクルーズ前編7/9 :2009/09/05(土) 23:32:15 ID:N3S0cn5M
執務官の女性2人がたちさってから、若い警ら隊員は嘆息する。

「最初は『ミッドチルダの首都を防衛し、市民の平和と安全を守る!!』って熱い思いを胸にこの仕事選んだはずなんスけどね〜。
結局はこんな事ばっかの毎日ですもんね」


初老の警ら隊員はバックミラー越しに移る巨大な尖塔。


予算を余すところ無く、ありったけつぎこんだんじゃないかと思われるおかげで、雨露とサーチライトの反射によってよりいっそう
きらびやかに輝く、管理局ミッドチルダ地上本部の中央議事センターを一瞥する。


特別警戒で応援を求められない限り、自分達みたいな下級警ら隊員は行く事すらできない場所である。


「だったら、こんなD's(安月給の公務員=警ら隊員の蔑称)やめてさっきのカワイイ姉ちゃん方のいる地上本部とかに行けばいいだろ。
お前さんの年齢ならヤード(訓練校)の入学試験もギリギリ受けれる年齢じゃないのか?あそこなら首都防衛とかテロ対策とか
高ランクのロストロギアの保守管理とか事件らしい事件扱ってて、給料も倍違うだろ」



管理局地上本部は演習や訓練、大規模災害の防止やテロ等の大規模な犯罪や戦闘、ロストロギア管理というまさに『事件らしい事件』
を管轄している。



地上本部の首都防衛部門の職員や治安を預かるものにとっては花形、まさにエリート集団だ。



対して、表通りでのパチ物ロストロギア・海賊版ビデオの売買の取り締まり、交通整理、バーでのケンカ、パーキングメーター
を壊す窃盗犯とのイタチごっこ。レールウェイでのスリ、芸術家気取りでパークロードのアイスクリーム屋にタギングをする
ギャングの対処など軽犯罪に関わる事案は全て警ら隊の範ちゅうで対応していた。


更に犯罪率の高いミッドチルダでは、そんな軽犯罪の発生件数がべらぼうに多い。


「そんな仕官学校や陸士訓練校行けるほどリンカーコアも無いっスよ、だからといってヤッピーやキャリア試験通る程の脳ミソも
ないし。警らなんて割に合わない職業ですけどね」
「そうか・・・確かにな・・・」


そう。割に合わないはずなのに、クラナガンで40年以上もこんな警らの仕事を続けているんだよな・・・
黒人の初老の警ら隊員はそう思った。

397 ナイトクルーズ前編8/9 :2009/09/05(土) 23:33:05 ID:N3S0cn5M
雨足は一向に弱まる気配が無い。


車は中央市街の通りを右折してまた廃棄都市区画沿いに向かって走った。


「んっ?」
初老の警ら隊員はそう言うと、すぐ横廃棄都市区画の路地裏で何かが人影が動いたのに気づいた。

「ちょっと車を止めろ」
「どうしたんスか?」


「向こうの路地で人影が見えた」
「ネズミじゃないですか?最近温かくなってきたから、地下水路から引っ越して来たとか・・・」


「一応、確認するぞ」
そう言って、白髪混じりの頭に制帽をかぶりなおす。


「こんな雨の日は外に出たくないんスけど・・・」
若い警ら隊員は嘆息しながら車を止めた。


2人の警ら隊員は車から降りてレインコートを着た。
そして腰のホルスターから9mmオートマチックの実弾型デバイスを抜いて安全装置を外す。


そして警棒を兼ねた懐中電灯で廃棄都市区画の路地の奥を照らした。


「確認したんですけど、不審な反応はないみたいっスよ」
センサーをあやつる若い警ら隊員の言葉を聞くと、うなずいて大きな声で路地にむかって叫んだ。


「おい、誰だ?このエリアは立ち入り禁止だぞ!」
「チェ、キエン・エス?クイー・ノン・デーベ・エントラーラ! (おい!誰かいるのか?ここは立ち入り禁止だ!)」


この通りの付近はパチューコ系(主に第349管理指定世界エルパソからミッドチルダへ移民してきた低所得者層)住民が
コミュニティーを形成している区域なので、若い警ら隊員はパチューコ語で呼びかけた。


しかし2人の声は雨の中、暗い路地の奥へと吸い込まれていった。

398 ナイトクルーズ前編9/9 :2009/09/05(土) 23:34:10 ID:N3S0cn5M
警ら隊員はお互いに顔を見合わせて、おそるおそる奥へ進んでいく。すると不意に懐中電灯の先に影が突如として現れた。
そのくらい相手は気配を感じさせなかったのだ。


2人は驚いて身構えた。


すると今まで降っていた雨が突如としてあがり、2つの月に照らされた路地は懐中電灯がなくともすぐに相手の姿を映し出す。


路地の奥にいた人物。それは8,9歳くらいの少女であった。
雨の中、カサもさしておらず、まとったローブから雨露がこぼれる。


ローブの下から黒か紫色のドレスがのぞいている。
うつむいているため少女の顔はよく見えないが、正面から肩くらいまで伸びる長く豊かな紫色の髪が見えた。



2人は相手を確認するなりすぐに緊張を解いた。
ローブという変わった格好であったが、まだ小さい子供であった。


先週フィフス・アベニュー警ら隊のウォンが裏通りにあるリトル・クーロンの買収宿を摘発したときに、わずかな金で用心棒に
雇われた子供が、デバイスを発砲して瀕死の重症を負ったばかりだったが、相手はまったくそんな「廃棄都市区画の子供」とは
全くといっていいほど雰囲気が違う。



危険な雰囲気を全くただよわせていない。むしろ静かな、今ここにいる存在すら消えてしまいそうな虚無的な感じだ。

初老の警ら隊員はホっとして、実弾型デバイスを腰のホルスターにおさめると、相手の顔を確認しようと少女の目線までしゃがみ
こんで優しく話しかけた。




「お嬢ちゃん、こんなところでどうしたんだい?」
「・・・・」




少女はこたえなかった。夜風の中、冷たく光る月明かりの中で沈黙だけが流れる。


初老の警ら隊員が確かめたローブの下に隠れた顔立ち、そこにはぱっちりとした眼、整った顔立ちがローブから少し見える。


その表情に全く変化がない。
赤みを帯びた、光さえも吸い込んでいきそうなその黒い眼でじっと初老の警ら隊員の方をみつめていた。


そしてローブに隠していた右手を静かに、目の前でしゃがんでいる初老の警ら隊員の顔面に突き出した。


「!?」
「・・・」


黒人の初老の警ら隊員の顔の前で、少女の右手が一瞬、黒く光輝いた気がした。

399 44-256 :2009/09/05(土) 23:35:52 ID:N3S0cn5M
以上です。

後編は明日、もしくは明後日に投下予定です。


引き続き、ルー×ヴァイス兄貴の話をどうぞ。
それでは失礼しました。

400 名無しさん@魔法少女 :2009/09/06(日) 01:17:33 ID:6eSD4KdE
返って話題にしにくいです

401 名無しさん@魔法少女 :2009/09/06(日) 08:57:29 ID:G6mrWloA
そこまで漢な投下されて、どうやって元の話題に戻れと?w

次の投下お待ちしております。

402 名無しさん@魔法少女 :2009/09/06(日) 11:14:14 ID:0Rv7cTUo
渋すぎるだろ……
だがもう大好きです、こういう雰囲気。
続き待ってます。

403 名無しさん@魔法少女 :2009/09/06(日) 17:08:00 ID:iL3UvDFA
いつかの運び屋の話書いた人?
死体袋二つの前でフェイト辺りが知った口、とかになりそう

404 名無しさん@魔法少女 :2009/09/06(日) 17:14:23 ID:rwyqegCI
投下乙っすー
毎度リリなのとは思えない硬派な話、GJですww


ところで、ヴァイス×ルーテシアなんだが。
あれはむしろ、カプ的にはヴァイス×メガーヌの可能性も捨て難いんじゃあるまいか?

405 名無しさん@魔法少女 :2009/09/07(月) 01:37:56 ID:7/Mec3IE
そういや3期男性陣サブキャラでロッサだけ主役のSSがない気がするな。
ラッドでさえあるというのに……

406 名無しさん@魔法少女 :2009/09/07(月) 01:47:08 ID:qstfwWlU
裏で汚い仕事をロッサはしてそうですよね。
犬を使い、敵を食い殺して、残った血痕は炎熱魔法で消して証拠をなくすとか。

408 名無しさん@魔法少女 :2009/09/07(月) 20:44:39 ID:3t7OZNeM
今日あたり続編投下してくれるかな?

409 名無しさん@魔法少女 :2009/09/07(月) 22:31:38 ID:RmX6CU/.
>>408
>>399
催促は止めておこうや。正座して待つ分には構わないのだが

410 名無しさん@魔法少女 :2009/09/07(月) 22:36:52 ID:3t7OZNeM
>>409
ああすまない
そんなつもりはなかったんだ

411 44-256 :2009/09/08(火) 00:18:22 ID:2z1qXFXk
・非エロです。

・時系列は3期6話〜7話の話です。

・登場人物2名はオリキャラの非魔導師です。

・前編、後編に分けます。

・後編で3期の登場人物が出てきます。

412 44-256 :2009/09/08(火) 00:19:20 ID:2z1qXFXk
すみません。投下します。

413 ナイトクルーズ後編1/14 :2009/09/08(火) 00:21:04 ID:2z1qXFXk
「ゴホっ!!」
「!!」

2人の警ら隊員と今、まさに2人を「消滅」させようとしていた少女は後ろの声に気づき路地の奥を見る。
そして衝撃魔法の発動をキャンセルした。


少女がローブの下に隠していた右手から魔力光が消えた。


奥には30〜40代くらいの男性が、壁に寄りかかってへたり込んでいるのが見えた。
少女と同じようにローブをまとっていたが、少女以上に黒く汚れている。


さらに男のローブの下には無骨なアーマーが見えた。自分達が身に着けている防弾チョッキではない。
まぎれもなく騎士甲冑である、


しかも、その騎士はどこか具合が悪いのか吐血しているようだ。
負傷している騎士、ただ事ではない。



「おい、大丈夫か?あんた!!」
2人の警ら隊員は、男にかけよりたずねた。


「れ・・・連絡しましょう!」


若い警ら隊員はあわてて、通信端末を起動させた。
「こ、こちらサードアベニュー10!!」



『サードアベニュー10、どうしましたか?』
先ほどの若い女性のオペレーターの声が聞こえてくる。


「廃棄都市区画E37通路で“コード58・・・”」
若い警ら隊員の言葉をさえぎり、それを初老の警ら隊員が送信機を握って代わりに話す。


「おお、“コード587(路上ストリップ)”があったから、付近の陸戦魔導師の応援がどうしてもほしくてな」


「また・・・新暦始まって以来、一番ひどいジョークよ。そんなの陸士部隊に報告したらオペレーターのみんなのイイ笑いものよ」
オペレーターの若い女性はあきれたように通信を切った。

414 ナイトクルーズ後編2/14 :2009/09/08(火) 00:21:41 ID:2z1qXFXk
「・・・いい・・のか?」
若い警ら隊員が驚いていると、今まで吐血して気を失っていた男が気づき、警ら隊員たちに話しかける


「普通・・・俺みたいなヤツを見かけたら“コード582(違法魔導師の死傷)”で報告するはずだろ」


「なんだ?あんた知ってたのか?」
「・・・」


男はこたえなかった。もともと詮索するのもされるのも嫌いなのだろう。
初老の警ら隊員は言葉を続けた。



「・・・別に何もしてない人間を報告する理由はないだろ。それとも地上本部に報告されたかったのか?」


吐血して倒れている騎士。明らかにただ事ではない。
一般的な管理局員や陸士部隊員なら医療センターで手当てを受けさせ、同時に男と少女から詳しい事情を聞く必要がある。


しかしこの警ら隊員は違った。


「少なくとも、俺にとってはただのケガ人だ。それにこの街には、あんたみたいなワケありの人間がわんさかいるからな」
「それなら・・・俺にかまわずここから立ち去れいいだろ」



「そういうワケにもいかんだろ」
「!!」

415 ナイトクルーズ後編3/14 :2009/09/08(火) 00:22:20 ID:2z1qXFXk
そう言って初老の警ら隊員は、男に肩を貸した。その行動に騎士は驚いた。

管理局員や陸士部隊員でないにしろ、負傷した物騒な雰囲気をかもし出す騎士の姿を見て近寄る人間はさすがにいない。

それを見ていた若い警ら隊員もあわてて手を貸して、2人で負傷した騎士をかかえて、車に向かって歩き出した。


「騎士の旦那、あんた、ここらは初めてなんだろ。だからといって、医療センターにも堂々と出入りできそうにないだろうし。
いいとこに案内してやるよ」


初老の警ら隊員がそう言うと、力なく騎士は言う。
「・・・俺のケガは医療センターで直せるモンじゃない」
「リンカーコアに絡むもんか?それだったらなおさらだ」



「おい!!」
「?」

突然呼び止められると、さっきの紫色の髪の少女が立ちふさがり、隣に小さな人形みたいな者がいた。


紫の髪の少女は相変わらず、感情を全く見せない無表情ではあったが、しかしほんのわずかだが瞳にはかすかに困惑と不安が
あるように思えた。


赤い髪の人形のほうは少女とは逆に怒りの感情をあらわにして、警ら隊員に食ってかかった。
「お前ら誰だ?旦那をどこにも連れて行かせないぞ!!」
そうして小さな炎の弾を回りにともす。


最初は驚いていたが、初老の警ら隊員は物珍しげに赤い
「これは、またずいぶん小さい使い魔だな。コウモリが素体なのか?」
「なっ!?あ・・・あたしはれっきとした融合騎だ!」



「ユウゴウキ?何スかそれ?」
「さあな?『アニマルプラネット』見てるが、初めて聞く動物の名前だな」


「だぁ〜、そんなんじゃねえあたしは・・・」
赤髪の融合騎は、このとぼけた2人のやりとりに頭を抱えて怒る。



「よお、バービー(女の子に人気の着せ替え人形)安心してくれ。別にこの旦那をどうこうするわけじゃ無い。医療センターほど
高級なトコじゃないが手当てできる場所へ案内するだけだ。それに、手負いとはいえこんな屈強な騎士さんなら、すぐに俺たち
みたいな警ら隊員をぶっ倒していつでも逃げられるだろ?」


下手したら殺されるかもしれない。若い警ら隊員はそう思った。


少女は赤い髪の融合騎と騎士に顔を向けて、アイコンタクトをとる。
おそらく魔導師や騎士同士の念話を交わしているのだろう。


自分達のようにトランシーバ無しで、できるんだから相変わらず安上がりなもんだと若い警ら隊員は思った。


赤髪の融合騎は不満そうながうなずくと、前をどいて騎士や2人の警ら隊員を見守った。

416 ナイトクルーズ後編4/14 :2009/09/08(火) 00:23:26 ID:2z1qXFXk
車に付くと騎士はその巨体を倒れこむように一気にシートに傾けた。

騎士の方は吐血や咳はだいぶ収まってきたようで、まぶたを閉じてシートに体を預けた。しかし依然として苦しそうだ。
運転席に初老の警ら隊員が乗り込み、エンジンをかける。


ここから先は自分のほうが道順を知っているということで、若い警ら隊員と運転を交替したのだ。


「ほら」
若い警ら隊員は助手席に座り、騎士の隣に座った少女にタオルを2枚渡す。


「・・・」




少女はローブのフードを目深に下げたまま、全く受け取ろうとしなかった。
しかし、身体は正直なもので、寒さのためか小刻みに震えているのがローブの上からでもわかる。


運転席から笑い声が聞こえる。
「嬢ちゃん、そのセクハラみたいにクドい顔が怖くてタオル受け取ないとよ」
「あんたのその真っ黒い仏頂面の間違いじゃないですか・・・」


「旦那はともかく、あたしらは、あんた達の世話にはならねえからな!」
そうして少女のために暖をとろうと、車の中で炎をともそうとした。


「おいおい!車内で炎系の魔法使うのは勘弁してくれ!それに暖をとるんだったら暖房かけてやるから」

「・・・ふん!」
そうして空中に浮かんでいた赤髪の融合騎はぶっきらぼうにタオルを掠め取り、少女に渡した。



そんな賑やかかつ、うるさいやり取りを聞いていた少女はタオルを若い警ら隊員受け取りローブを下ろした。
そして自分の紫色の髪をすくようにふくと、苦しそうな騎士の顔を健気にふき始めた。


それにより、いくばくか苦しそうな騎士の顔が落ち着きを取り戻した。


紫の豊かな髪、整った顔立ち、赤みを帯びたぱっちりした瞳。そして透き通るような肌。
路地裏の暗がりで見るより、なかなかの美少女だとわかった。


そして少女はドレス調のバリアジャケットを着ていた。

黒と紫を基調としたそれは、警ら隊員が着込む防弾チョッキや陸戦魔導師や首都防空隊の無骨なバリアジャケットと違い
どうにも外見から実用性を感じさせなかった。


しかし、何ともいえない幻想的な雰囲気を感じさせた。

417 ナイトクルーズ後編5/14 :2009/09/08(火) 00:24:08 ID:2z1qXFXk
タオルで身体を拭き終わった少女に向かって、初老の警ら隊員はダッシュボードを開けた。
中には

「ダッシュボードに入ってるドーナッツとエスプレッソ、これ飲んでてもいいからよ」
「ちょ!?それ俺のっスよ!?」


「どうせ、ダンキン・コーヒーで警らの銀バッジちらつかせて、無料でもらったもんだろ?」


「・・・」
赤髪の融合騎はまだ警戒してるのか、タオルと同様受け取ろうとしなかった。しかし・・・
『ぐぅぅぅぅぅ〜ぎゅるるるる〜』


黒人の警ら隊員は大声で笑った。
「ぷっ、あっはっはっは。小さい体でも、なる音だけは大したもんだ!」
「う、うるせぇ!」


「すまない。でも我慢するのはカラダに毒だ」
すると、紫の髪の少女が手を伸ばしてドーナッツの箱を受け取りちぎって赤髪の融合騎に渡した。
先ほどと変わらず、表情が少なかったが融合騎を見つめる眼は、どことなく優しさを感じさせた。


融合騎はドーナッツを見たことが無いらしく警戒するように口に運んだ。
「う、うまい。うまいぜ!ルールーも食べなって」


そうして少女も促されて食べる。少女も融合騎と同じように、相当に空腹だったのかパクパクドーナッツを食べ始めた。
そして融合騎は差し出されたコーヒーの蓋を器用に取り、カップの中に顔を突っ込んで一気にすすった。


しかし、苦かったのか苦い顔をして「ぐぇ〜〜〜何だこれ?」と言って舌を出す。

「お前、いつものシナモン・ローストじゃないのか!?」
「ちょっと眠かったんで、きつめのモカを・・・ドーナッツを食った後にコーヒーを飲む、こいつがうまいやり方なんだぜ」

若い警ら隊員はそう言うと、融合騎はコーヒーを飲みながら、ドーナッツを食べた。


そうして食べ終えると、車の窓から外を少女は黙ってぼんやりとみつめていた。

418 ナイトクルーズ後編6/14 :2009/09/08(火) 00:25:59 ID:2z1qXFXk
車はサイレンこそ鳴らさないものの、回転灯をつけて夜の廃棄都市区画を駆けて行く。
しかし廃棄都市区画のとある場所に入った途端、車のスピードを落とし回転灯の明かりを消した。


「もしかしてここって・・・あそこっスか?」
「コンプトンハイツだ。ここを通らないと遠回りに迂回しなきゃいけなくなるからな」


車両銃窃盗、強盗、B,C級違法ロストロギアの売買。クラナガンの廃棄都市区画のスラムでも5本の指に入るくらい治安の悪い区画
である。


しかも、2年前にリトル・ジョン(名称不明)という廃棄都市区画出身の非魔導師の少年やミッドチルダ市民が、管理局魔導師と違法
魔導師との戦闘に巻き込まれて死傷する事件が起きた。しかし重体で生きていたにも関わらず災害担当部の救助隊員は軽症のミッド
チルダ市民の救助を優先した為に死亡した。


また、本局の査察官は被害者は戸籍の無い、違法移民な黒人系犯罪者(=ストリートチルドレン)であるとの理由で、戦闘を行った
空戦魔導師を甘い口頭注意処分としたことから暴動が発生し、その中心地となった場所でもある。


よって住民の多くは管理局員や警ら隊員に恨みを持つ。
「普段は真昼間でも空戦魔導師の上空援護と、陸戦魔導師や重武装の警らが装甲車で乗り付けなきゃいけないところっスよ!」


赤髪の融合騎は回転灯を消した事にあわてた。
「おい、何で赤い光を消すんだよ!?旦那が持たないかもしれないだろ!?早くそいつを付けろよ!」
「あっ!バカ!?」


赤い融合騎は警ら隊員が制止するのを聞かずに回転灯をつけた。
そうすると、回転灯の光に気づき、警ら隊の眼の前に黒人の若者達が集まり始める。


黒人の若者らはニット帽やバンダナにピアス、タンクトップやパーカー、ボロボロのジーンズにカーゴパンツと服装はバラバラだが、首筋に
タトゥーを入れており、ホルスターもつけずにズボンのベルトに各々実弾型デバイスを抜き身のまま無造作に突っ込んでいる。


「見ろよ、警らの連中だぜ。俺達のシマに乗り込んできやがった」
「首都防空隊の白ブタ共はいねえ!ヤッちまえ!」


一人の黒人がそう言うと車にむけて実弾型デバイスを発砲した。

「ちっ、みんな伏せろ!」
そう言って、初老の警ら隊員は伏せながら車を急発進させた。


「あわわわわ!」
赤髪の融合騎は車のシートを回転しながら眼を回して転げた。


「逃がすんじゃねえ!」
かけ超と共に、目の前を大きなトラックがとまり前方をふさぎ、急ブレーキをかけた。
途端に追い込まれ、車に容赦ない実弾型デバイスの発砲が加えられた。

419 ナイトクルーズ後編7/14 :2009/09/08(火) 00:27:45 ID:2z1qXFXk
しかし、車に鉛弾が穴を開ける金属音はまるで聞こえなかった。
すると鉛玉は黒紫の魔力光に覆われ空中に静止している。


警ら隊員2人が後ろを振り向くと、紫の髪の少女が目の前に手をかざしている。
グローブ型のブーストデバイスのクリスタルには“Protection”という行使魔法の文字が浮かび上がっている。


そして、魔力光を失った弾は豆みたいにパラパラと地面に落ちた。
「(これが、魔導師の力・・・!?でも、無数の実弾型デバイスを瞬時に防御するなんてこいつは一体?)」
少女の魔導師としての力を間近で見て若い警ら隊員は、驚いた。


実弾型デバイスが効かずにあわてていた者達をのけるように、黒人中年の男が現れた。
しかし、若者らと雰囲気が大きく違う。

BMGが買えるくらいの高級ブランドスーツに、夜にもかかわらずレイバンをつけていた。
周りの反応から、若者らと一線を画す凄みがあった。


しかも手には質量兵器の中でも違法ギリギリといわれるRPG型スティンガーを持っている。


「お嬢ちゃん、あんたが強いのはわかるが手出さないでくれ。俺に何か合ったら、俺達が行こうとしていたところへ転送魔法で逃げる
んだ。わかったな」



初老の警ら隊員はそういって転送先の座標を少女に教えると観念したかのように、車を降りた。
若者達は初老の警ら隊員に発砲しようとするが、中年の黒人はそれを制した。


「レイモンドすまねえ。アンタのシマで騒ぎを起こしちまった」

「アンタの?ここはオレのシマじゃねえ。オレ達のシマだ。デバイスぶっ放して“お話”する魔導師連中と違って、警らは、特にあんた
はもう少し賢いと思ってたんだがな」
「ケガ人を乗せててな。医療センターには連れて行けない。あんたらも世話になっただろうが、婆さんのところに行こうとしてあせっち
まったんだ」


「・・・理由はわかった。ケガ人ならしょうがねえと思うが、オレ達にもメンツってものがある。何かを要求する場合はパーターが
必要なんだよ」
そう言って中年の黒人はスーツから実弾型デバイスを抜いて初老の警ら隊員の頭に当てた。



「・・・」
夜の廃墟ビル街に不気味な沈黙がながれた。



「あんたはリトル・ジョン、いや俺たちにとってはロドニーっていう立派な名前があったんだ。廃棄都市区画のビル裏に放り去られ
てたあいつの遺体をちゃんと埋葬してくれた」
「・・・」
「誰にも気づかれずに忘れ去られて死んじまったあいつを、おれ達の心の中で生き返らせてくれた」



黒人の中年男性は実弾型デバイスのハンマーをゆっくりと外して、デバイスで車を指差した。
「行けよ。オレ達の気の変わらないうちに」

420 ナイトクルーズ後編8/14 :2009/09/08(火) 00:30:09 ID:2z1qXFXk
車はコンプトンハイツを通り抜け、車はどんどん北へと進んでいった。
「さっきは、その、ゴメン・・・あたしのせいで死ぬところで」

赤髪の融合騎は申し訳なさそうに泣いて言った。
初老の警ら隊員はそれをなだめる。

「あんまり気にするな。ここじゃ日常茶飯事だ。それに騎士の旦那のことが本当に心配だったんだろ?」
「あ、ああ。旦那はあたしの命の恩人だから」


そうしているとススだらけのビルに囲まれた通りが一気に開け、森に囲まれた小さな街が現れた。
さっきまでの空を覆い隠していた廃墟のコンクリートジャングルや汚い路地裏と大違いである。


粗末な作りだが、がっしりしており年代を感じさせた。
そして奥に、木造の古い建物が建っている。


車は森の手前で止まった。
初老の警ら隊員が、振り返って言った。

「着いたぜ。クラナガンのアルハザードへ・・・」



若者の警ら隊員は先に降りて、木造の建物の前のドラム缶で暖をとっていたホームレス達に自分達の車を指差して話しかける。
そうしていると、包帯を巻いた仲間が建物の中から現れ、ドラム缶で暖をとっていたホームレス達は担架にのせ始めた。


その様子をみて若い警ら隊員は自分の財布から何枚か、紙幣をぬいてホームレスに渡した。
しかし、ホームレスはそれを受け取らずに、丁寧に謝辞をのべて暗闇の中に消えていった。


若い警ら隊員は何ともいえない顔で戻ってきた。
「あいつら・・・薄給の公務員がせっかく出してやるって言ったのに」
「奴さん達にも“地上本部”の世話になってないっていう自負心があるんだろ」


初老の警ら隊員は説明する。
「ああやって話して仁義きっとかないと、警らの車だろうが、陸士のヘリだろうが関係なく片っ端から持って行って、ナット一本まで
きっちり売られちまうんだ」


初老の警ら隊員は車から降りて後部座席のドアを開けた。
「付いて来な。いくらお嬢ちゃんがとんでもなく強い魔導師だとしても、こんな場所に小さい子供を一人にはできんしな」

そうして戻ってきた若い警ら隊員と2人で騎士をまた抱きかかえると、古い建物に向かって歩いていった。


「ここは・・・いったいどこだ?」
騎士はあたりをみわたした。
「廃棄都市区画の端っぽ、まさにクラナガンのアルハザードさ」



扉を開けると、老朽化で破損したステンドグラス、そして雨漏りが座席に水溜りをつくっている。
どうやら破棄された聖王教会跡らしい。


「4年前に近くの臨海空港を中心にして大火災になっちまってな。そのとばっちりを、ここら辺は見事にうけちまったのさ」

421 ナイトクルーズ後編9/14 :2009/09/08(火) 00:30:49 ID:2z1qXFXk
クラナガンの旧市街、かつてそう呼ばれた場所であった。
古代ベルカの戦乱からミッドチルダの住民文化を連綿と受け継ぎ、旧暦の頃から低所得者層が静かに暮らしてきた場所であった。


街の上にも聖王教会の礼拝堂があり、人々はそこを中心に生活していた。
しかし、次元世界の政治・経済の中心地になるにつれ、それに伴い港湾区沿いの平野部をクラナガンの中央区画として開発・拡大
するにつれて新たな問題が発生した。


人口の増加による犯罪率の上昇が問題となったのだ。
そのため犯罪率を低下させて市民の支持を上げようと考えた地上本部は“分母を減らす”作戦に出た。


廃棄都市区画化である。


犯罪の高い地域を違法居住地として、電気、水道、道路整備のインフラや災害担当課、警ら隊員の巡回や陸士部隊の保護をさせない
ことでミッドチルダから“消した”のだ。



中央区画から離れているため地価の安い旧市街は貧困層が多く住み、犯罪は多い方だったが、車両窃盗やケンカといった軽犯罪が
ほとんどであり、魔導師や機械兵器によるテロ・大量殺傷、ロストロギアによる都市崩壊など重犯罪とは無縁の場所であった。


更に、昔ながらの建物もおおく、長い歴史を感じさせる古き良き街並みを残す建造物も多いため地上本部としてはなかなか『廃棄都市
区画化』できなかったのだ。


しかし、近隣の臨海空港が謎の火災に見舞われたことで状況が一変した。



『ミッドチルダの市民の安全と地上の防衛強化のために、災害により多大な被害を受けたのを期に旧市街を廃棄都市区画として
隔離し、住民を強制退去とする』


管理局の災害担当課は臨海空港の被害エリアを拡大させ、隣接する旧市街も対象としてしまったのだ。


最初はここの住民も地上本部のこの方針に反発した。


しかし、旧市街とは無縁の中央区画に住む大半の市民は犯罪地区の排除を支持し、地上本部による強制執行により追い立てられ、次第に
この旧市街は忘れ去られていった。
「おおかたゲイズ防衛長官に犯罪率低下を報告して、ポイントを稼ごうとした人間の入れ知恵だろ」

422 ナイトクルーズ後編10/14 :2009/09/08(火) 00:31:21 ID:2z1qXFXk
「すまんな。あんたらには関係の無い話だったか」

騎士は驚いているようだった。
「ミッドチルダにこんな場所があったとは・・・」


「あんた、本局か首都防空隊の人間か?」
「・・・」
「ここを知らないってことは、管轄にしてないってことだからな・・・この旧市街はたまにこうやって巡回に来てるのさ」
「毎度毎度巡回してもミッドチルダの防衛向上や犯罪率低下の役にはたたないですけどね」

「・・・それなら、犯罪が低下しないのに何故クルーズ(巡回)を続ける?」



「場所がスラムだろうと、犯罪者であろうとクラナガンに住んでるヤツがいれば俺はそいつらを守る義務がある。確かに防空隊や
陸士部隊ほど大した事ができるわけでもないがな」


「・・・」
そうして初老の警ら隊員は奥の扉をノックした。



「ばあさん!!いるんだろ?」
しかし、返事は無い。


「俺だ。クラナガンの愛と平和を守る“偽善者”だ!」
「・・・」

そうすると音もなく、扉が開く。
すると、出あったばかりの少女と同じようにローブですっぽりかぶった老婆が出てきた。


「夜遅くすまないな。こいつを手当てしてやってくれないか?」

「さっきここから出て行くもの達を見たじゃろ?ずっと起きてたわ。でも“偽善者”の頼みなら断れまいて・・・」
老婆は干からびた手で、騎士の甲冑にさわっていく。


その間に若い警ら隊員は少女に説明した。

「さっきも言ったとおり、ここらに住む連中は低所得すぎて社会保障番号や保険証がなくてな、医療センターに行く代わりに、ここの
教会跡に住んでる婆さんの世話になってるんだよな」


少女は教会の周辺に出てきたホームレス達がケガをしていた仲間を連れて、帰っていく様を思い出した。


「もともとは、聖王さんの御殿医が先祖だって噂だが、そんなのどうでも良くなるくらいに、かなりのブラックジャック
なんだぜ。基本、安いだけが取り柄の後発ドラッグや野草で作った怪しい薬湯を使うんだけどな」

423 ナイトクルーズ後編11/14 :2009/09/08(火) 00:32:53 ID:2z1qXFXk
「お主・・・まさか・・・」
騎士を見ていた老婆は、少し驚き。声をこわばらせた。
そして2人の警ら隊員に言う。



「この方を奥のベッドへ運んだら、皆は出ておくれ」
狼狽する老婆の様子を珍しいと思いながら、警ら隊員は騎士を寝かせて少女を伴って部屋を後にした。



「お主・・・“生きて”いるのか?」
老婆は驚いて聞いた。


騎士は看破した老婆に驚きながらも、静かにこたえた。
「レリック・・・そう言えばわかるだろ?」
「・・・う〜む」

老婆は納得したようだが、うめいた。
「聖王の血族ではない、そなたが使うのはかなりの代償。死以上の苦痛しか伴わないものじゃ・・・」


「よくわかっている。しかし、自分で選び受け入れた道だ」

オーバードライブをすると、身体中に走る激痛。
しかし、それによって手に入れた力も生前の自分に比べたらとんでもないものであった。


そして老婆は静かに薬湯を作り始める。
「これを飲めば一時的だが、痛みがやわらぐはずじゃ。すまないが寿命のほうはどうにもならん」



騎士は何も言わずに薬湯を飲み干した。さっきまでの激痛が若干収まり、ベッドから立ち上がった。
「レリックを使いし者に会えたのも何かの縁。また、具合が悪くなれば薬湯を作ってやろう」
「感謝する」

「礼なら、そなたをつれてきた者に言うが良い」


「俺がこれないときは、そこに隠れてる融合騎をよこす。薬湯の材料をそいつにわたしてほしい」
薬ビンの陰に隠れてた赤髪の融合騎がおずおずと出てきた。
「さっき一緒に出て行くよう言ったはずだ」



「大丈夫だよ。それより・・・旦那がどうしても心配で」
「俺のことはいい。あいつの事を心配してやってくれ。今のあいつにはお前と召喚虫しかいないんだ」


赤髪の融合騎はそんなこと言うなよ!とでも言いたそうな非常に悲しい眼をしたが、小さな声でつぶやいた。
「・・・わかった」
そうして二人して扉へ向かおうとする背中に老婆は問いかけた。


「“死者”よ・・・そこまでして何故生きる?」
「俺には、まだやるべきことがある」

そう言って振り返った。騎士の眼には、力強い信念が宿っていた。

424 ナイトクルーズ後編12/14 :2009/09/08(火) 00:33:26 ID:2z1qXFXk
少女は廃教会から少し離れた丘に立っていた。
丘陵地帯である旧市街の廃棄都市区画のため、ここからクラナガンの中央市街、地上本部、港湾地区まで一望できた。


雨雲は完全に晴れており空に輝く2つの月や星、そして地上からの高層ビル群の照明やスポットライトでライトグリーンに輝いていた。


「きれいだろ?ここには電気が来ないから月明かりが頼りなのさ。余計にクラナガンが栄えて見える」
初老の警ら隊員は、少女の横に並んで話しかけた。
「大丈夫だ。あんな立派な騎士の旦那だ。すぐに良くなる」



「・・・どうして」
「んっ?」


「どうして、私達を助けてくれるの?」
少女がしゃべったことに初老の警ら隊員は驚いた。今までずっと行動していながら初めて声を聞いたからだ。



「騎士の旦那が負傷していたって事もあったが・・・」


初老の警ら隊員は少し考えてから答えた。
「さっき言ったよな。廃棄都市区画は中央区画から忘れさられた街だって。お嬢ちゃんの眼がどうにもこの街とダブっちまってな。
何も感じさせないこの世に存在しているのかわからなくなるくらい儚い眼がな・・・」


「私は、この街みたいに忘れ去られてしまうってこと?」
「俺は忘れないぜ」

「こんな廃棄都市区画だって生きているヤツらがいる。そんなヤツら俺は簡単には忘れたくない。暗闇みたいに汚い部分もあるが、
クラナガンを俺は気に入ってるのさ。だからお嬢ちゃんのためにも何かしてやりたかった」



警ら隊員がそう言って少女を見下ろした。
「ハハ、余計なおせっかいだったかな?」


2人がいなくなったら私はもう一人になるだから、誰にも知られなくていいと思ってた。
空っぽの心は誰からも忘れ去られても痛まないと思ってた。


少女はそう思い、初老の警ら隊員を見上げた。
「・・・でも、そんな私にも忘れないってあなたは言ってくれた」


儚げな雰囲気は変わらずであったが、少女は優しい眼差しであった。

425 ナイトクルーズ後編13/14 :2009/09/08(火) 00:34:27 ID:2z1qXFXk
若い警ら隊員が、騎士と融合騎を伴って二人の側に来た。


「婆さんの薬湯、たまには効果あるみたいっスね。騎士の旦那の具合も良くなったみたいっス!」
「そうか!良かった。お嬢ちゃん騎士の旦那の具合が・・・」


初老の警ら隊員はそう言いかけたが、自分達の周りに黄金色の蝶がチラチラ飛んでいるのが眼に止まった。
それも1羽ではない。丘の周囲をたくさんの蝶が舞った。


黒人の初老の警ら隊員は少女の周りに正方形の魔法陣が展開されているのを見た。
彼女が召喚魔法を行使していた。


少女に話しかけようとしたが、何故か蝶を追わずにいられなかった。
若い警ら隊員が、草原の上に倒れた。


「き、きれい・・・だ・・・」
夜空に舞う蝶を見て、初老の警ら隊員はうつろな眼でそう言って倒れてしまった。



赤髪の融合騎は少女に話しかけた。
「こいつら殺しちゃったのか?」

少女はかぶりを振った。
「殺してない。記憶の忘却効果を持った虫を召喚しただけ」

それに対して融合騎はほっとした。
目的を達成する必要があったが、召喚師の少女にはできるだけ人を殺めたり傷つけるという行為を、あまりしてほしくなかったからだ。
「そうか、しょうがないとしてもせめてドーナッツとコーヒーのお礼言えなかったな」

騎士は融合騎に向かって言った。
「“忘れてしまった者”に対して礼を言っても意味が無い」



「2人とも心配かけてすまなかった。あとはスカリエッティやウーノに処理をまかせよう」
少女はうなずくとそのまま振り返らず、騎士や融合騎と一緒に再び暗闇の中へと消えていった。


覚えてもらえなくていい、忘れられる存在だというのも理解している。
母さんのためにも・・・私はまたこの暗闇の道をひたすら進んでいく。

426 ナイトクルーズ後編14/14 :2009/09/08(火) 00:35:37 ID:2z1qXFXk
翌日、機動6課のもとに、重要事案が1件報告された。


クラナガンの北部郊外でレリックを密輸していた違法魔導師達が襲撃を受けたというものだ。

あたりには襲撃により死傷した違法魔導師達やカートリッジが散乱しており、双方ともにオーバードライブの激しい魔法戦が
展開されたとのことであった。


生存者の話では金髪の巨漢の騎士と不気味な黒衣の召喚師であり、陸戦オーバーAで更正される違法魔導師を殲滅させてレリックを
奪うと即座に逃走したという。


ドクター・スカリエッティが率いるガジェットドローンの機械兵器以外にもレリックを狙うもの達がいる。
近々行われるホテルアグスタでのロストロギア・オークションを目の前にして、敵の影が徐々に鮮明になってきた。




そして機動6課に報告されない、大したことない事案が1件あった。


ナイトクルーズ(夜間巡回)に出たまま行方不明になっていたアーノルド・ベイカー警ら隊員とサルバトーレ・ルッソ警ら隊員の2名
が乗車するサードアベニュー警ら隊の10号パトロール車が翌朝、ホームレスからの通報で廃棄都市区画の北部旧市街地で発見された
というものだ。


中では警ら隊員の2名が気絶していたが命に別状は無かったという。
両警ら隊員は何故、廃棄都市区画の旧市街地域にいたのか、また何故途中で自分達が寝ていたのか、上着を脱いでいたのか
『全く覚えていない』とのことだった。


端末も昨晩の巡回記録に異常は無く、一言短いメッセージが残されていたという。



警ら隊員2名はその言葉が何か引っかかるようだったが、結局は気にする事はなく、管轄する陸士部隊は警ら隊員が無傷であった
ことや巡回記録も残っていた事から地上防衛に係る事件性は薄いと判断し、半日職務放棄を行ったことによる5ヶ月間の減給処分
と内勤への異動処分が下されたという。



巡回記録には記されていた言葉はこうであった。



−ありがとう−

427 44-256 :2009/09/08(火) 00:37:35 ID:2z1qXFXk
以上になります。

Sランク召喚師ご一行と下級警ら隊員2名の物語でした。
それでは失礼しました。

428 名無しさん@魔法少女 :2009/09/08(火) 01:12:49 ID:oiCHynis
>>427
GJ

429 名無しさん@魔法少女 :2009/09/08(火) 21:09:15 ID:vlY4VYV2
>>427
 GJ 内勤とはスカとウーノは良い仕事したなw

430 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:03:02 ID:zqa3gFdc
「日付が変わったので書くぞー!」
と言う事で書きます。

・フェレットユーノ×リインフォースⅡ
・獣姦ユニゾン注意
・↑がダメな人は今の内に退避を
・エロ

431 名無しさん@魔法少女 :2009/09/09(水) 00:03:02 ID:eVSdcZhY
渋い、本当に渋い。
魔法少女たちが華やかに舞う空の下、地べたを歩み続ける男たちの物語、といった感じ。
素敵でした。

432 本当は恐ろしいフェレットさん 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:05:03 ID:zqa3gFdc
 皆はフェレットと言う動物を知っているかな? そう、フェレットはイタチの仲間。
イタチ科の動物の歴史は他の哺乳類と比べても長い方で、イタチの仲間は他にも様々な種があるのだけど
その中でもフェレットは野性が存在せず、人間に飼われる事による品種改良で誕生した種。
だから他のイタチ科の動物と比べても小柄で、賢くやんちゃな反面人にも懐き易く、またあまり鳴き声を
発したりしない事もあって、最近はペットとしても人気が高くなって来た動物なんだ。

 そんなとても可愛らしいフェレットだけど………実は……とても恐ろしい動物でもあったのです……
それを…これから順を追って説明して行きましょう………………


 時空管理局の本局。それは次元空間上に浮かぶ巨大なステーション基地にして時空管理局の総本山
と説明すれば分かり易いのだが、厳かそうなイメージとは対照的に娯楽施設等もかなり存在していた。

 何しろ本局は本当に広く巨大。次元空間の広大さに比べれば豆粒の様な物であるが、それでも人間にとっては
次元船が幾つも収容可能と言うかなりの巨大さを持つ。それ故に戦闘員・非戦闘員に関係無く数多くの
人々が働き、または生活をしており、それ故に人間の生活において必要な物は大抵が揃っていた。
当然娯楽関係の施設等も例外では無かったのだった。

 そんな中、本局内を飛びまわる一人の美少女の存在があった。彼女の名はリインフォースⅡ。
身長30センチと小柄で、青い瞳に銀髪が特徴の可愛らしいユニゾンデバイス。
管理局内での階級は曹長で、人は彼女をちっちゃな上司と呼ぶ。今日は非番と言う事で
本局内の娯楽施設等で遊んでいたのだが、そこで彼女はある物を目にする事になるのだ。

「あ、フェレットさんです。」

 リインは本局内の通路を一匹のフェレットがトコトコと歩いている所を発見していた。
薄黄土色の毛並みに翠色の円らな瞳、そして頭の上に逆立つ二本のアホ毛と言うとても可愛らしいフェレット。

「わ〜フェレットさん凄く可愛いです。」

 何を隠そうリインはフェレットが大好きなのである。リインの背は前述の通り30センチと小柄で
それ故に同じ位の体格のフェレットには親近感を感じるのであろう。

433 本当は恐ろしいフェレットさん 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:05:56 ID:zqa3gFdc
「でもフェレットさんフェレットさん。どうしてこんな所を歩いているんですか?」

 ここは地上では無く、あくまでも本局と人工的に作られたステーション内部。その通路内を
フェレットが一匹でトコトコと歩いていると言う光景は不自然極まりなく、リインも気になる所であったが、
そのフェレットは構わう事無くトコトコと歩き続けていた。

「フェレットさんフェレットさん? 何処へ行くんですか?」
「きゅっ!」

 リインの質問にフェレットは一声鳴くだけでなおも歩き続ける。その際にモサモサと尻尾を揺らしながら
歩くフェレットの姿がまた可愛らしく、思わずリインはその後を付いて行ってしまうのであった。

「フェレットさんは今何処へ向かっているんですか? フェレットさんはやっぱり誰かに飼われてるんですか?」
「きゅきゅっ!」
「フェレットさんの言葉は分からないです。」
「きゅ。」

 リインが質問しても、フェレットは少し鳴くだけで喋りはしない。それは当然の事なのだが、
だからなおさらリインはフェレットが何をしたいのか凄く気になっていた。

 そうしてリインはフェレットの後を付いて歩いていたのだが、そのフェレットが向かった先は
辺り一面に沢山の書物の並ぶ広大な施設。俗に無限書庫と呼ばれる場所だった。

「フェレットさんフェレットさん。ここ無限書庫ですよ。フェレットさん入っても大丈夫なんですか?」
「きゅっきゅっ!」
「フェレットさん、聞いて下さいよ。こんな所に勝手に入って怒られたら大変ですよ。」

 構わず無限書庫の奥へ歩いて行くフェレットの後をリインは恐る恐る付いて行く事しか出来ない。
するとどうだろう。無限書庫内の壁にとある看板を見付けたのである。それはなんと『猛獣注意』と言う
無限書庫には似つかわしくない代物だった。

「え!? 猛獣注意!? フェレットさん! やっぱり引き返した方が良いですよ!
猛獣が出るって書いてあるじゃないですか! フェレットさん!」
「きゅっきゅきゅ。」

 猛獣注意の看板によほど驚いたのか、リインは涙目になってフェレットを止めようとするも、
フェレットは構わず書庫の奥の奥へ歩き続けていた。

434 本当は恐ろしいフェレットさん 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:07:11 ID:zqa3gFdc
 そうしてフェレットは無限書庫の奥へ奥へと進み、リインはその後をただただ
付いて歩く事しか出来ずにいたのだが、そんな時だ。突然フェレットが歩みを止めたのである。

「良かった。フェレットさんやっと引き返す気になったんですね?」

 リインは安心しかけるが、その時だった。突然フェレットがリインの方にふり向き…

「良いのかいホイホイと付いて来て。僕はユニゾンデバイスでも構わずに食べちゃうフェレットなんだよ。」
「!!」

 リインは絶句した。先程まで耳を澄ましてようやく聞こえる程度と言うフェレット独特の
小さな声で鳴いていたフェレットが突然人間の言葉を話しはじめていたのであるから。

「フェレットさん喋れたんですか!?」
「うん実はそうなんだ。」

 やっぱり喋った。間違い無い。これは幻聴でも何でもなく、紛れもなくこのフェレットは
人間の言葉を話す事が出来、知能も人間と同等にあろうと思われる凄まじい物。
そして何より…このフェレットは明らかにリインを狙っていると言う事である。

「それにね、あの猛獣注意って看板、あれ実は僕の事なんだ。」
「え!? フェレットさんの何処が猛獣なんですか!?」
「残念だけど君は一つ勘違いをしている。僕達フェレットも立派な肉食獣。猛獣なんだよ。」

 リインはまたも絶句した。リインはフェレットを大人しく人懐っこい小動物としか考えていなかった。
しかし、実際のフェレットはイタチの仲間。つまり立派な肉食獣で猛獣。今でこそペットとして
人気の動物であるが、元々は狩猟用の動物として扱われていたのだ。確かに今リインの目の前にいる
フェレットは円らな瞳をしてとても可愛らしいが、口から覗く鋭そうな牙が全てを物語っていた。

「じゃ…じゃあ…フェレットさん……リインを…本当に…食べちゃうんですか…?」
「うん。だって僕肉食獣だからね。だから獲物を捕らえて食べないと生きていけないんだ。」

 フェレットはリインにトコトコと歩み寄ってくる。その時の動作はとても可愛らしい物であったが
フェレットは紛れも無くリインを食べようとしており、リインは恐れる事しか出来なかった。

「嫌…嫌です……そんなの嫌です…リイン食べられちゃうの嫌ですぅぅぅぅぅ!!」

 リインは思わずその場から飛び立ち、逃げ出してしまった。当然彼女だって食べられるのは嫌だ。
例え相手が可愛らしいフェレットでも、自分の命までは捧げられない。

435 本当は恐ろしいフェレットさん 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:07:54 ID:zqa3gFdc
「とっとにかく一刻も早くここから逃げるです! 出口は何処ですかー!?」

 リインはひたすら逃げようとしていたが、無限書庫は伊達に無限では無いと言わんばかりに広大で
まるで出口らしい物が見当たらなかった。おかげですっかりリインも疲れ果て、書庫の一角で
息も絶え絶えの状態で休憩を余儀無くさせてしまう程だった。

「どうして…どうしてですか…どうして出口が見付からないんですか…?」
「うん。だって無限書庫だからね。」
「ええ!?」

 突然リインの背後に現れたフェレットに思わず飛び退いてしまった。リインとて全速力で
飛び続けていたつもりだ。だと言うのに何事も無かったかの様に追い付いていたフェレット。
やはりフェレットはただのペットとして人気の小動物では無く、伊達に狩猟用として古くから
重宝されてはいなかった。

「ど…どうして私の居場所が分かるんですか…?」
「知らないのかい? 僕達フェレットは犬と同じ様に鼻が利くんだよ。特に君みたいな可愛い娘はね…。」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 フェレットに可愛いと言われたリインだが、やはり食べられようとしている今においては嬉しくない。
しかし、かと言って逃げようにもリインは既に体力を使い果たしていたし、フェレットに対しての
恐怖心が彼女の脚をすくませ、その場に立ち尽くさせていた。と、その時だ。突然フェレットが
リインのけしからん太股をペロリと嘗めたでは無いか。

「ひゃう!」

 フェレットの口から伸びた舌がまるで品定めでもしているかの様にリインの太股を嘗め回していく。
それがまた生暖かくくすぐったくて、リインは思わずその場に跪いてしまう。そしてそれがいけなかった。
フェレットがリインを上から覆い被さる様に押し倒してきたのだから。

「キャッ! やめてくださいー!」

 リインは抵抗しようとしたが、フェレットは可愛らしい外見に反して力が強く、またリイン自身が
疲れ果てていた事もあって直ぐに動けなくなってしまった。

436 本当は恐ろしいフェレットさん 5 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:08:41 ID:zqa3gFdc
「あ…ああ…リイン…このまま食べられちゃうって事ですか…?」

 リインは動けなくなってしまい、このままフェレットによって揉みくちゃにされてしまうと思われたが、
意外にもフェレットは優しくリインをその場に寝かせていた。そして、前脚の爪を見せ付けていたのである。
フェレットのその可愛らしい姿からは想像も出来ない程にまで鋭く研ぎ澄まされたその爪を…

「ああ…その爪で…リインの体が切り裂かれちゃうんですか…?」

 フェレットはその鋭い爪でリインの柔肌を切り裂くと思われていたが、意外な事にフェレットが
切り裂いたのはリインの着ていた服だった。フェレットはリインの肌を傷付けない様に
丁寧に慎重にリインの服を切り裂き脱がし、その白い柔肌を露とさせていく。

「あ…リインの服が脱がされちゃうです……そうですよね……フェレットさんでも…リインの服までは
食べられないですものね…。それに…フェレットさんは最初から裸です…。」

 リインはフェレットの成すがままに服を切り裂き脱がされ、あっという間にその全裸体を露とさせていた。
そして裸にされて初めて気付く。例えユニゾンデバイスであろうとも、人間と変わらないのだと。
それだけリインの裸体は美しいものだった。

「ああ…ついにリイン…裸にされちゃったです…。このままフェレットさんに食べられちゃうんですか…?」

 リインはこの後の展開に恐怖しながらも、覚悟した。しかし、このまま噛み付いてくると思われた
フェレットの取った行動はやはり意外な物だった。

「ひゃう!」

 思わずリインはのたうった。何故ならばフェレットは再びその舌を伸ばし、リインの乳首を
嘗め回していたのであるから。リインは一見幼そうな容姿に反して意外にも良い乳をしていたりする。
その為、フェレットに乳首を嘗め転がされる度に上下左右にプルプルと、まるで別の生き物の様に揺れていた。

「フェレットさん! 何を…何をするんですかー!? ひゃぁ!」

 何と言う事だろう。今度は舌で乳首を嘗め回すのみならず、フェレットがリインの体に圧し掛かり
乳首に直接吸い付いて来たでは無いか。その刺激は舌で乳首を嘗め回されるのに加え、口で咥えられる
と言う物が加わり、さらにフェレットが動く度にモサモサの毛並みがリインの敏感な柔肌をくすぐると言う
想像を絶した物だった。

「ひゃっ! フェレットさん! やめ! ひゃぁぁ!」

 乳首を吸われ、モサモサの毛並みで肌をくすぐられ、リインは思わず笑ってしまわずにはいられなかった。
その為リインの体は大きくのたうつのだが、フェレットはその勢いを利用してリインをうつ伏せに倒してしまった。

437 本当は恐ろしいフェレットさん 6 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:09:36 ID:zqa3gFdc
「あ…何をするんですか!? キャァ! そんな! お尻触らないで! 恥ずかしいですー!」

 リインがうつ伏せにされた後、フェレットはそんなリインの尻だけを掴んで持ち上げていたのである。
既に説明されている通り、今のリインは着ていた服を全て切り裂き脱がされた裸の状態である。
そんな状態でフェレットに後から尻を持ち上げられたら、リインの股間が丸見えになるのは必死だった。

「君に一つ良い事を教えてあげよう。一般的にペットショップに売られているフェレットは
既に去勢された状態の事が多いけど、僕はそうじゃないんだ。」
「え…去勢って……確かオチンチンをちょん切ったりする事ですよね……それをしてないって事は……あ…。」

 リインが今と言う状況を理解した時には全ては遅かった。フェレットの発情し固く怒張した生殖器は
リインの股間へと押し当てられ、その閉じられていた膣口を強引に押し広げて行ったのである。

「ひゃぁぁ!!」

 直後、リインの全身が大きくのたうった。そしてリインの下半身に目を向けて見ると、フェレットの
モサモサの毛並みで覆われた腹がリインの尻に密着し覆い尽くす形となっていた。そしてこれは
フェレットの固く巨大に怒張した生殖器がリインの処女膜を貫き、その処女を奪い去った事を意味していた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 フェレットに挿入された直後に大きくのたうったリインではあるが、それ以降はまるで嘘の様に
全身を硬直させると共に、ビクビクと痙攣させていた。そしてフェレットの生殖器が深々と食い込んだ
リインの非処女からは真っ赤な処女血が流れ出ており、リインの太股とフェレットの毛並みをそれぞれに
真っ赤に染め上げていた。

「あ……か………あ………。」

 リインは動けなかった。フェレットに処女を奪われた痛みは、泣き叫ぶ余力さえも奪う程の物だったのだから。
だがそれも所詮はこれから始まる大いなる情事への序章に過ぎなかった。

「あっ……あっ……あっ……。」

 フェレットはゆっくりと腰を動かし、リインの奥の奥まで押し込んでいた怒張を抜けないギリギリの所まで
ずるるっと引き抜き、そこから再び一気に押し込んだ。そしてまたその押し込んだ怒張をやはり再び引き抜くのである。
その引き抜かれる度に、押し込まれる度ににリイン自身の体もまたのたうち、尻は震え、リインの喘ぎよがる
美声が響き渡って行く。

438 本当は恐ろしいフェレットさん 7 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:10:37 ID:zqa3gFdc
「あっ………リイン………フェレットさんに………初めて……奪われちゃった……奪われちゃったです……。」
「きゅっきゅっ。」

 フェレットに何度も突かれ、尻を突き動かされて行く中、リインの目からは一筋の涙が流れ落ちた。
リインはユニゾンデバイスではあるが、そのメンタルは人間の女性と変わらない。それが無理矢理初めてを
奪われて、しかもその相手がフェレット、つまり獣姦による物だったのだから……

「あっ………やめ……やめてくださ………あぁぁっ……せめて……せめて休ませくだ………あぁ!」
「きゅっきゅっきゅっ。」

 リインは目から涙をボロボロと流しながら哀願するが、フェレットはやめなかった。リインは既に
フェレットから逃げ出した際に体力を使い果たしていたと言うのに、フェレットは構う事無く
リインを何度も何度も何度も何度も突き上げ続けていたのである。

「あっ………きっとこれも準備なんです………こうしてリインを疲れ果てさせて…抵抗も何も出来なくさせてから
食べる気なんです………そんな…嫌です………こんなの生き地獄です………どうせ食べちゃうなら一思いに
食べてくださいよぉ〜…………。」
「きゅっきゅっきゅっきゅっ。」

 ああ何故こんな事になってしまったのだろう。そこでリインはかつて言われたある言葉を思い出した。
それは…

『リイン、知らん人には付いて行かんようにしよな?』
『ハイ分かりましたマイスターはやて。』

 知らない人に付いて行ってはならない。誰もが子供の頃に親や学校の先生にそう教えられたであろう。
しかし、リインはそれを忘れてフェレットが可愛らしいというだけの理由でその後に付いて行ってしまった。
その結果がこれである。リインはフェレットに襲われ、今こうして食べられようとしていた。
そう。つまりこれは約束を破ったリインにも責任があると言う事なのである。

「きゅっきゅきゅきゅっ。」
「あ…あぁ……あぁん…。ごめんなさいはやてちゃん…リイン…約束破っちゃったです…。」

 フェレットはなおもリインを突き上げ続けた。リインの上半身は起き上がる体力すら無く床に
倒れこんだ状態であったが、下半身の特に尻の部分だけはフェレットによって強引に持ち上げられ、
何度も何度も突き上げられた。そうしている内にリインは体力のみならず頭の中さえも…

439 本当は恐ろしいフェレットさん 8 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:12:26 ID:zqa3gFdc
「あ…もうダメれす……もう何も考えられないれす……嫌なのに……こうしてリインが何も
考えられない様にしてから食べちゃうって事れすか…………ああもうどうだっていいれす……。」

 フェレットの突き上げはリインから体力のみならず思考力さえ奪い去り、リインのその目からは
ハイライトさえもが消え去るに至っていた。するとその時だ。フェレットがリインの尻をさらに
高く持ち上げると共に全身をブルブルと痙攣させ始め………

                 どびゅっ びゅびゅびゅっ

「んぁ……。」
「きゅ〜。」

 ついに出した。フェレットの大量かつ濃い精液がリインの膣と子宮を満たし、フェレットが
出し終えて萎えた生殖器を引き抜いた後も、リインの開きっぱなしの膣口から溢れこぼれだしてしまう程であった。

「あ……もうこれで……終わりですね……きっとこの後……リイン…フェレットさんに食べられちゃうです…。」

 もはやここまで来たのなら仕方が無いとばかりに覚悟を決めていたリインだが、フェレットが取った行動は
意外な事にもリインの前から立ち去ると言う物だった。

「なっ! 何処へ行くんですかフェレットさん! リインを食べちゃうんじゃないんですか!?」
「きゅっ。」

 リインはフェレットに食べられる覚悟を決めたと言うのに、フェレットはリインを食べなかった。
それが逆に悔しくて、リインは思わず怒り出してしまっていた。

「嘘吐き! フェレットさんの嘘吐き! 食べるって約束したじゃないですか!
どうして食べてくれないですか!? リインそんなに不味いんですか!?
答えて下さい! 答えて下さいよフェレットさぁぁぁぁぁぁん!!」
「きゅっ。」

 リインが何度叫ぼうともフェレットはただ軽く一鳴きするだけであり、そのままフェレットは無限書庫の
奥へと消えて行くのみであり、リインもまたそのフェレットをただ黙って見送る事しか出来なかった。

「うう…悔しいです…。フェレットさんどうしてリインを食べてくれないんですか? でも………リイン……
腰が抜けて……追い駆けられないです…………。」

 リインはフェレットに食べられる事はなかった。つまり命が助かったと言う事なのだが、
今のリインには逆に自分の価値を貶められたと感じられ、悔しくて悔しくて涙が止まらなかった。
かと言ってフェレットを追い駆けようにも、腰が抜けて立ち上がる事さえ出来ない。


 それから数日後、リインは再び無限書庫にやって来た。そして『猛獣注意』の看板を前にして立つ。

「フェレットさん。リインはまたここまで来ちゃいましたよ。今度こそ…今度こそはフェレットさんに
食べてもらうです。フェレットさん! フェレットさぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 
 こうしてリインは今度こそフェレットに食べてもらうべく、無限書庫の奥へと消えて行った。
何かもう滅茶苦茶な事になってる気もするが、本人にとってはこれが喜びなのだろう。

                      おしまい

440 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/09(水) 00:13:48 ID:zqa3gFdc
当初はフェレットがリインを少しずつ少しずつ追い詰めて行く(猛獣的意味で)
ホラーっぽい路線をやろうとか思ってたんですけどね…結局獣姦ユニゾン…
でもこのカップリング好きなんですよ。アギト×フェレットユーノとかも面白そうだけど。

441 名無しさん@魔法少女 :2009/09/09(水) 01:08:22 ID:i0HhONcU
結局やり逃げかよw サイズ的にも獣姦的にも確かに実にいいカップリングなんだがw


442 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 19:06:15 ID:OxEP7It.
スレが止まってるんで話題振り。
マイナーでもメジャーでもトンデモでもいいから読んでみたいカップリングってあるかね。
俺はカリム×ヴェロッサが見たい。義弟をいけない道へ引きずり込むカリム攻めで。

443 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 19:26:17 ID:M/Jh.5R.
相思相愛前提でスカ×ルーと言っておこう

444 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 19:50:54 ID:pdpv/352
覇王様×ノーヴェ
レジィ坊やの筆おろしをするミゼット女史
などといってみる

445 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 21:40:20 ID:12K0jiJw
4期組みはまだキャラが掴めてないんだよな。
この娘はこういう時にこうする、こんなことするとこう反応するっていうのが把握できれば覇王やvivid3人娘で書いてみたいが。

446 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 22:50:23 ID:2UDdVOn2
>>442
アルフ×ユーノ
エイミィ×クロノ
一期の頃から俺の中での公式カプだね

447 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 23:22:32 ID:kgVXIu0o
ヴァイス×ティアナが久々に見たい

448 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 23:47:04 ID:OqzRWjFE
ユーノ×ウーノ

名前が似てるだけじゃんとか言うな。

449 名無しさん@魔法少女 :2009/09/11(金) 23:51:03 ID:/WrCBSAc
ヴァイシグ! ヴァイシグ!

姐さん女房とか最高じゃないか。

450 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:28:48 ID:V2XkqceA
ユーノ×シャーリで

451 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:32:20 ID:suO2oGMQ
はじめまして。
このたび、しょうもないSSを完成させまして、恥ずかしながらお披露目にまいりました。
わずかでもスレッドの滋養になれば幸いです。よろしくお願いします。

452 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:33:55 ID:suO2oGMQ
・お読みになる前に

このSSはキャラクターの崩壊が激しく、さらには、下ネタ・お下劣なネタが絡んできます。
stsの後、ティアナとヴァイスのフラグが成就した状況から話がはじまります。
あらかじめご了承ください。




「小さいことはいいことだ」

 ん?今何を考えた?
 おまえだ。そこのおまえ。
 まさかやましいことを考えていないだろうな。
 私を見て私の外見から、私の言葉を聞いて私の外見から、何を想像した?

 当ててやろう。
 おまえはロリコンだ。
 おまえはちちゃい娘が大好きだ。
 おまえは貧乳あるいはつるぺたが大好きだ。
 おまえはつま先立ちをしても唇が相手に届かずムキになる程度の身長が大好きだ。
 おまえはくりんとした眼を無垢に輝かせるぷにぷにした頬ときらきらさらさらの髪を持つ頭部が大好きだ。
 おまえは未成熟でスレンダーというにも肉付きの足りない身体が――

 そこまで喋ったところで、チンクはギンガに小突かれた。

「あう」

 ギンガはチンクを小突くにあたって移動する必要すらなかった。
 なぜならば、チンクは自分の大腿の間におさまっていたからであり、ついでに言うとその下半身は二人ともコタツの中なのである



「ギンガ、なぜ叩く」
「何を一人ではしゃいでるのよ」

453 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:36:45 ID:suO2oGMQ
 ナカジマ家のコタツは大きい。そうでなければならなかった。
 昔は小さかったのだが、なにしろ家族が倍以上に増えてはこたつを大きくする以外の方便はなかった。
 4人用のコタツも、母がいないといえ育った娘二人プラス父でおおむねいっぱいだったのだ。
 しかもTVなど見ようものなら必然的に座る位置はかぎられる。TV側の面は使えない。

 あれ以来、家族は7人に増えたので、ゲンヤは家電量販店に足をはこび、コタツを買い求めた。
 しかし7人入れるほど巨大なコタツなどそうは置いていない。今までの倍のサイズだから当然だ。
 そのうえ娘たちは例外一人をのぞいて、どいつもこいつも立派に育ったボディの持ち主である。

「私がギンガの膝の上におさまったとき、あいつは一瞬だがいやらしい目で私を見たんだぞ、まちがいない」
「それは貴女が問題発言をするからよ」

 ましてや客人などあろうものなら大変である。
 スバルと仲の良いティアナはよく来る。アルトは来なかった。原因はヴァイス。詳細はこのさい棚に上げておけ。
 客が来るとさらに狭い。ぎゅうぎゅう詰めである。そのため料理担当か元気の子、前者はギンガとかディエチ、
 後者はノーヴェとかスバルがコタツの外部に出たりするのだが、それでも足りない場合は最期の手段が用いられる。

『機人合体!』『コタツフォーム!!』

 の掛け声と共にどっこいせとチンクが誰かの膝の上に納まるという寸法である。
 ちなみに機人合体なのでゲンヤさんのとこには来てくれない。残念。
 ティアナ?ヴァイス?あいつら人間だし。

 とりあえずコタツの話はこのへんにしておこう。
 要するに、コタツフォームと叫んでは、いそいそとギンガの膝の上におさまって、ちょこんと鎮座したチンクが幸せそうに冒頭の台

詞を吐き、それに対するヴァイスの反応を目ざとく見つけて、セクシャルハラスメントだと扱っているのである。
 それは隣のティアナの顔を憮然としたものにさせるには充分であったし、ギンガが突っ込むのも無理からぬ話。

「だいたいね」

 だが、ギンガの突っ込みで事態は収束を向かえるだろう。誰もがそう思った。

「ヴァイス陸曹がロリコンだったら、ティアナの保険に私にツバつけとくわけがないじゃない」

 そのような皆の想いは容赦なく打ち砕かれる。

454 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:38:22 ID:suO2oGMQ
 場の空気が凍て付いた。否、宇宙船の気密が破れたような状態であった。
 突然の減圧で視界は霧に覆われホワイトアウトし、耳はキンキンして何も聞こえず、凄まじい激痛が身体を襲うような。

 一方のギンガとチンクは飄々としたものである。
 その言葉は嘘か真か、チンクの頭の小突いた部分を優しく撫でる彼女からは邪なものは見られない。

「なるほど、では誰でも良かったのだな。ロリコンではなく女の敵だ」

 チンクもチンクである。驚くでもなく、かような発言で火に油を注ぐのだ。
 隣のティアナの表情は憮然を通り越して、ひきつっている。
 たまらず彼女はのたもうた。

「ねぇ二人とも、冗談はほどほどにしてよ」
「まぁ冗談だけどね。二人の愛がどれほど確かなものなのか試すのはいけないことかしら?」

 ギンガの返事は優美な流し目を伴い戻ってくる。

「私だって将来有望な素敵な殿方を前に座しているほど女を捨ててないの。安心して緩んでると、貴女――」

 長い髪をかきあげる仕草、獲物を前にした肉食獣の眼。そしてその口から妙に妖艶な響きを含ませた言葉が放たれるのであっ

た。

「盗っちゃうわよ?」

 ぞくり。一瞬、ティアナはこの女がギンガの姿をしたドゥーエなのではないかと疑った。

「そうだそうだ、とってしまうぞ」

 なぜかチンクも一緒にそんなことを言うのである。

455 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:39:42 ID:suO2oGMQ
「ふ、ふん。そんなことできるもんですか。彼と私は恋人同士なんだからもう」
「一体その自信はどこからわいてくるのかしら?」
「……いつもキスしてるもん」
「ハん、お子様ね。キスくらいで自分の男にできるほど恋愛は甘くないの」
「じゃあ貴女はどうなの?まさか横恋慕してどうこうするつもり?」
「まさか。でもあれくらい狡猾にはなりたいわね」

 そこまで話したところで、ティアナははっと気がついた。
 チンクがギンガの膝の上から姿を消しているのである。
 そして一瞬ギンガがちらっと視線を向けた先では、ヴァイスが、膝の上におさまったチンクに困った様子で、救いを求めるような眼

差しを、ティアナに向けていたのである。

「ちょっとチンク!貴女!」
「やっぱりヴァイスはロリコンだったぞ、ギンガ。ぜんぜんイヤがらない」
「子守り気分だけどな」

 ヴァイスの言葉は余裕に満ちているものの、冷や汗が伝う顔から見て、心中が平静でないのは明らかである。
 なにしろプチ修羅場が演じられている状況、ゲンヤとの会話に逃げていたところで、コタツの中を通ってチンクが強襲してきたの

だ、彼は問答無用で戦いの場に引き込まれた。

「私の妹にセインというのがいてな、今は聖王教会のほうにいるが、あれの得意技だ」

 コタツもぐりをディープダイバーになぞらえるチンクの視線は、ティアナに向けられている。
 ヴァイスは知るよしもないが、その表情はというと、勝ち誇ったような、格下を見下すような、嘲ったものなのである。
 ティアナが怒ったのも当然であろう。

「ちょっとヴァイス!貴方!」
「仕方ないだろ、三佐の前でむげに扱うわけにもいかないし……」
「お父上、また家族が一人増えるけど、良いかな」

 ヴァイスは噴出し、ティアナは絶句し、ギンガは抑えきれないらしく顔をにやにやとゆがめている。ゲンヤさんは呆れ顔。
 他の姉妹は「ああ、またはじまったよ」とでも言いたげな顔か、あるいは我関せずといった状況だ。

 孤立無援のティアナは、自らの親友に助けを求めた。

456 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:41:24 ID:suO2oGMQ
「スバルー、あなたのお姉さんが苛める……」
「しらないよ」
「え」

 やけにそっけない返事が聞こえたのは気のせいだろうか。
 見ればスバルは、ティアナたちに背を向け、TVの前で正座しながら映画を鑑賞していた。
 そういえば話がはじまってからずっと蚊帳の外だったような。

「えーと、スバルー?」

 再度の催促に、今度こそ振り向くスバルだが、さきほどの返事は聞き間違いや面倒くさいの類のものではなかった。
 ティアナは絶望することになる。
 答えはこうだ。

「……だからしらないよ。ティアは私やアルトよりヴァイスさんのほうが大事なんでしょ?勝手にしてよ」

 うわぁ。
 スバルも相手をこんな冷たく睨むことができるのか、その事実に愕然とするティアナであった。

「私の妹がこんな傷ついてるのに気づかないなんて、ひどい友人よね」
「くっ!」

 追い討ちをかけるかのようにさめざめと泣く仕草がわざとらしいギンガ。
 チンクは漁夫の利のごとくヴァイスのお腹を枕がわりにして寝ているし。
 それを攻撃しようとティアナがコタツの中で足を伸ばして蹴ってみればヴァイスが顔をゆがめて痛いと申す。

「ティアナ、それ俺の脚だ」
「あ、ごめん」
「ひどい女だぞ」
「あんたはうるさい」
「ひどい女ね」
「うるさいわよ」
「ひどいよねティア」
「ごめんなさい」

 親友には弱いティアナであった。

457 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:42:28 ID:suO2oGMQ


「すいませんすいません、うちの姉たちが」

 玄関先で帰る二人を見送りつつ、ぺこぺこと謝るのはナンバーズ屈指の良識者ディエチ。
 キッチンで夕食を作りつつも、ずっと居間の様子が不安だったのでした。
 姉たちよりずっとよくできた子なのです。

「よくできた妹だとぉぉお!!」

 なにやら怒拳四連弾されそうな地獄すら生ぬるい声が聞こえたが、皆シカトを決め込む。
 おそらく今頃、第六無人世界の軌道拘置所2番監房あたりでは、いまいち萌えないメガネっ娘が吼えているだろう。

「いえ、私も大人気ないことをして、お恥ずかしいです」

 ティアナも頭を下げているのは、玄関先でゲンヤさんが一緒であることもあったが、それ以上に、親友に帰宅することを告げたと

きのスバルの反応が彼女の腰を低くしていた。
 帰宅する旨を告げられたスバルは、映画も終わってテープ巻き戻し中の、いわゆる砂嵐画面をずっと凝視しながら、振り返りもせ

ずにこう言ったのである。

「ぁ。そ。じゃーね」

 そんな具合なものだったから心に隙間風が通るのも当然だ。
 まさか自分の親友が、男っ気のないことをここまで気にしていたことに気づかず、恋人を連れ込むとは友人失格である。
 レバー入れ大ピンチ。くすん。

「まぁ、ほとぼりが冷めたらまた来いよ……スバルは最近スれてるが、経験がないからな。男のひとつでもできれば考えが変わる

だろ。それより心配なのはギンg「お父さんそれ以上言ったらドリル」……悪ィな、気をつけて帰ってくれ」
「……すいません」

 年頃の娘ばかり6人も抱え込んだゲンヤの気苦労が垣間見える訪問を終えた二人は、ナカジマ邸を後にした。
 ディエチが、こちらの姿が見えなくなるまでずっと玄関先に立って見送ってくれていたことに、彼女の優しさを垣間見た気がした

が、家の中からドリルの回転音と怒声と爆音が響 いてきたのには閉口したものである。

458 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:43:30 ID:suO2oGMQ


 一番フェイト
 二番チンク
 三番ギンガ
 四番スバル

 野球なら満塁ホームランも不可能ではない面子である。燃えよドラゴンズ新暦76年版があったらそのまま歌にできそうだ。
 しかし、その面子でもって以下のようなことを叫んでいるのだから手に負えない。

「男漁りしよう」
「うむ、男漁りだ」
「男漁りよ」
「男漁りだね」

 だめだこいつら、はやくなんとかしないと……



 今をさかのぼること一週間前。

「本作戦の目的は、我ら"魅力的だがなぜかフラグが立たない女性陣の会"が男漁りをすることを目的とした男狩りでありジェント

ルメン・ハンティングである」

 四畳半のブリーフィングルームでギンガが熱弁をふるっていた。詳細はあまりに醜悪なので省かざるを得ない。

459 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:44:52 ID:suO2oGMQ
「こんな綺麗で公務員で気立てが良い私になんで男はなびかない!私になびかない男なんてみんなクズだ!」

 ギンガさんそんなこと言ってるから男どもが逃げるんですよ。

「ティアとアルトは奪いっこする仲なのに私だけ蚊帳の外。こんなの不条理だ。いいよ私あんなのよりもっと良い……ブツブツ」

 スバルさん目が死んでますよ大丈夫ですか何があったんですか。

「最近なのはがヴィヴィオにばっかりかまけて私の相手をしてくれないの。寂しいから浮気してやるんだから」

 フェイトさんそんな倦怠期の主婦みたいなこと言わないでください。

「更正組最年長として妹たちの手本とならねばならない!」

 なんとなく動機不純ですよチンク姉。

 そんなこんなで周辺に連絡を取り合って合コンのセッティングを推し進める一同は、作業に一週間をついやした。
 最終的な日程が決定したときは拍手喝采、四畳半のブリーフィングルームでは発泡酒で乾杯が行われ、ゲンヤさんに今何時だと思ってるんだと怒られたのである。



 結果から言うとこの合コンは失敗に終わった。
 コンパだと聞いて旧知のみんなが、あるだけ大勢集まってきてしまったからだ。

「え!?違うの!」

 シャマルさんは四人が自分へ向ける怒りと失望の眼差しにそう答えるよりなかった。
 流石は管理局屈指の天然である。

460 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:46:28 ID:suO2oGMQ
 だが真の地獄はそこからだった。
 なにしろ酒の勢いである。酒の勢いとは恐ろしい。ひょっとすると酒こそ最大のロストロギアかもしれない。

 たとえば酒の回ったティアナとアルトが泣き上戸でヴァイスを奪い合っていたら、キレたスバルが振動破砕を放ち、危うくヴァイスが男性でなくなるところだったり。
 自分にしなだれかかって言い寄るフェイトに「小娘に興味は無い」とかキツいことを言っちゃったザフィーラが主におしおきされ、
 泣いて走り去ったかに見えたフェイトは酔った状態で全力疾走したものだから(血が滲んで読めない)。
 ヴェロッサに近寄ろうとすればシャッハさんカリムさんに猫っ可愛がられてそのままお持ち帰りされるギンガがあったり。

 あと司書長は、なんか教導官がくだ巻いてるのに付き合わされてたり。
 シャマルさんがウィスキーをストレートであけながら「殿方なんてつまらないわ、みんな先に死んでしまうんだもの」とか普段のほんわかな雰囲気からは考えられぬことを言っていたり。
 エリオがキャロとルーテシアにトイレに連れ込まれたまま戻らなかったり。
 ヴィータがリィンとユニゾンしては分離を繰り返して紅白めでたい宴会芸を披露してるうちに赤と白の縞模様になってしまい道頓堀川に投げ込まれたり。
 ゲンヤさん腹踊りしてー!なんて誰かが言ったもんだから上半身を脱ぐと隆々たる筋肉と傷跡だらけの肉体が出てきたりなんてことは流石になかった。

 ところでチンク姉は一味違った。
 なにしろ姉である。姉とは恐ろしい。ひょっとすると姉こそ最大のロストロギアかもしれない。

「最初にガンガン飲ませてあることないこと口走らせて弱みを握ったあとでおもちかえりするのだ」

 この作戦は見事に当たった。
 スバルとティアナとアルトが三人で喧嘩して泣いて羽交い絞めになってぐるぐる巻きにして泥酔してつぶれたのを見計らって、や

っぱり泥酔して寝ているヴァイスを機人のパワー でひょいと持ち上げて、スタコラもっていってしまったのである。

 ちなみにお持ち帰り以外は実話である。
 女とは恐ろしい。ひょっとすると(以下略)。

461 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:47:41 ID:suO2oGMQ


「とったどー!」

 お留守番だったディエチ――詳細に言うと水色のシャツに膝下までカットオフのデニムの上からピンクのエプロンという完璧な姿のディエチである――は、そんな姉の帰宅に頭を悩ませていた。

「チンク、なんでまたこんなややこしい男性を好き好んで持ってくるの」
「そこはそれ、この男がいなくなればスバルとティアナの仲も元通りだ。あと私が入籍すればギンガの姉様も焦燥感を募らせてイヤがっているお見合いに前向きに」

 どこからともなくドリルが飛んできて壁を貫いたので、チンクはそこで発言を停止せざるをえなかった。

「私にはずいぶん乱暴な発想に思えるのだけど……」
「まぁ見ていろ、既成事実さえ作ってしまえばこちらのものだ」

 なんて言いながら部屋にヴァイスを連れて行くチンクである。
 しかしディエチはどうにもいい予感がしなかった。



「うぅ、飲みすぎた……」

 八神はやてはザフィーラに背負われて帰宅の途上にあった。
 普段のストレスのせいかやりすぎたらしい、その表情は青ざめている。

「気分悪ぅ……」
「もう、はやてちゃんは身体が小さいんだから飲みすぎるなっていつもいってるのに……」

 並んで歩くシャマルは呆れ半分心配半分といった顔であった。
 傍らには寝てしまったヴィータを同じく背負って歩くシグナムの姿があるが、あちらもだいぶ酔っているのか言葉数が少ない。

「うぅ、あかん、シャマル、戻しそう……」

 いよいよ限界になってきたはやてである。
 はやてはザフィーラの背中から降りると、周囲に茂みとか公衆便所とかが無いか探したのだが見当たらず、絶望的な気分になった。
 シャマルがはやての背中をさすりながら問う。

「ほんとにだめ?吐いちゃう?」
「……もうだめ、おねが……」

 シャマルはものすごく渋い顔をしながら、"旅の鏡"を展開した。A'sでなのはのリンカーコアを抜こうとしたアレ。
 今回の使い方はなるべく聞かないほうがいい。推して知るべしである。
 はやての嗚咽と共にマジカルミストがほとばしり、それらは"旅の鏡"の向こうへ消えていった。

462 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:48:56 ID:suO2oGMQ


 うふふ、なんで自分がここにいるかという顔をしているな。
 おっと動こうとしてもむだだぞ、お前の身体は既に拘束している。
 なに、別にとって食おうというわけではない、私に協力してくれればいいんだ。
 お前がティアナとわかれて私とくっついてくれればそれでいい。
 そうかそうか、こころよく引き受けてくれるというのだな。それはありがたい。
 ところでその手段だが、確実を期するためにお前と私の子供が必要だと思うのだ。
 そうかそうか、こころよく引き受けてくれるというのだな。ありがたいありがたい。
 大丈夫、心配することはない。私はこれでも初潮がきているから妊娠できる体だ。
 うれしいだろう、こんな可愛い子とできるのだからな。もっと喜べ。
 えーと、まず脱がないことには話がはじまら……

 仰向けに寝かせられているヴァイスは、自らの上にまたがっている銀髪の少女の頭上に、何か緑色の光の渦が出現したのに気づいていたが、
 口にガムテープを貼られているので指摘することができなかった。

463 しょうもない話 :2009/09/12(土) 00:52:00 ID:suO2oGMQ
おしまいです。

申し訳ございません、うっかりしていたもので
最初のところで名前欄に題名を入れ忘れてしまいました・・・
内容の見苦しさとあわせて、お詫び申し上げます。

それでは皆様、よい週末を。

464 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:54:55 ID:QeON0d42
乙。
なんてカオスな話なんだ……。男あさりとか言うフェイトさん(25?)とギンガ(xx)の切実さが感じられるようだ。
最後のチンクは因果応報なのか……シャマルさんヒドス

465 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:55:41 ID:l717PwBw
どう考えてもシャマル確信犯だろ……きたない流石シャマルきたないな
とても楽しまさせてもらいました

466 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:56:01 ID:Yo.OMaE2
初投下乙です!

いやぁ、姉が可愛いですねぇww
こういうほのぼのした話は大好きなので嬉しかったです。
しかし、ヴァイスは受難する話が似合うなぁ。
そして、さらりと北斗なネタなんかが入っていて笑えましたw


次回作などもお待ちしております。

467 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 00:56:21 ID:SPY09b8o
wwwww
なにこれ、面白すぎだろ!
チンク姉可愛す。
ジェラってるスバル可愛す。
シャマルさんマジ策士

468 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 01:40:48 ID:RvNZPp2g
乙です! カオスってる状況が素敵!

469 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 03:16:09 ID:xF7I4eUo
>>463GJ!
久しぶりに心から笑える作品だった。

しかしギンガさん、あんたはフラグ立ってる男性は一応いるだろwww
たしか、ラッコだかラットだか……
いや、違うな。やっぱりいなかったかな?

470 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 05:01:47 ID:1qvFhyUc
トイレに行ったっきりのエリキャロルー…修羅場なのか三人よろしくやってるのか気になる

471 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 08:06:03 ID:fL0GCYUE
以前あった、フェイトのお見合いSSの続きが読みたい。

472 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 10:33:53 ID:H3KrxN6g
>>463
GJ!面白かったですwwww
できればこれからもジャンジャン投下して常連の職人さんになってください

473 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 12:16:33 ID:vvxLCwco
>>463
GJ よかったです

474 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 18:39:58 ID:gXaIOrJ2
>>473GJ
教導官に管を巻かれる司書長
このごろフェイトのテクが単調でつまらない。なっか良いレズテクの本、見つけてくれないかなユーノくん?に1000ダウト

475 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 19:44:53 ID:cblq9GYA
最近サイヒさん見ないなぁ。どうしたのだろうか?
ファンの戯言

476 69スレ264 :2009/09/12(土) 22:15:58 ID:uVOKr70E
業務連絡です。
99スレの保管完了しました。
職人の方々は確認お願いします。

477 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 22:24:03 ID:I1WIzZ4c
大変乙でございます orz

478 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 22:34:17 ID:Biqalv0s
いつも感謝です、乙

479 名無しさん@魔法少女 :2009/09/12(土) 22:40:28 ID:bYbCD.ek
いつもいつもご苦労様です。
乙です。

480 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:02:22 ID:ulrb7k9g
>>476
保管ありがとうございます。

では今度は需要があるか否かは別として、フェレットユーノ×アギトを書きます。

・フェレットユーノ×アギト
・「本当は恐ろしいフェレットさん」とは関連無し
・エロ
・獣姦ユニゾン注意

481 真フェレット 衝撃!アギト編 1 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:03:57 ID:ulrb7k9g
 アギトはフェレットに意地悪をしてやろうと決めた。かつてはリインに対する意地悪の第一人者、
世界的権威とさえ言われた彼女ではあったが、最近はどうも乗り気がしなかった。
何故ならば今のアギトは立派な八神家の一員であり、リインともすっかり仲良くなっていた故
リインに意地悪をするのは何か申し訳ないとさえ思えて来ていたのである。

「よし決めた。今日からリインの代わりにフェレットに意地悪するぞ。」

 リインに意地悪をするのは何か申し訳ないからと、アギトは代わりに何故かフェレットに照準修正する
決意を固めた。理由はやはりサイズ的にフェレットが一番丁度良いからだ。犬や猫はアギトと比較して
大き過ぎて負けてしまいそうであるし、逆にネズミやハムスター等は小さすぎて何か面白く無い。
そして虫類はグロテスクで意地悪どころの騒ぎでは無い。それ故にアギトとほぼ同体格のフェレットに
白刃の矢が立ったのであった。

「けど…フェレットって何処にいるんだ?」

 フェレットに意地悪するのを決めたものの、アギトは周囲を見回しながら困った。
何故ならば、その肝心のフェレットが見当たらないのであるから。

 それからアギトはフェレットを求めて彼方此方探し回ったり、それに関しての情報収集を始めた。
何かすっかり目的と手段が入れ替わっている様な気もするが、本人はまるで気にしてはいなかった。

「フェレットはいたけど……どこも変な問題起こりそうな所ばかりだな〜。」

 アギトの情報収集の結果、フェレットの居場所を幾つか掴む事は出来た。しかし、だからと言って
本来の目的を実行する事は出来なかった。何故ならば、アギトの見付ける事が出来たフェレットは
ペットショップの商品だったり、また誰かに飼われている物が大半だったのだから。

 ペットショップのフェレットに意地悪をすれば、その店との問題に発展するし、
誰かに飼われているフェレットに意地悪をすれば、その飼い主との問題に発展する。
故にアギトは行動に移す事が出来なかった。

「は〜…どこかに野良フェレットとか転がって無いかな〜。」

 さんざ歩き回ってすっかり疲れた為に本局に戻って来たアギトは失意のまま本局通路をトボトボと
歩いていたのだが、そんな時に彼女は後の運命を大きく変える事となる出会いを果たすのである。

482 真フェレット 衝撃!アギト編 2 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:05:07 ID:ulrb7k9g
「あ………フェレット…………。」

 アギトは見た。本局の通路をトコトコと歩く一匹のフェレットの姿を。薄黄土色の毛並みと翠色の瞳をし、
頭に二本のアホ毛が生えているとても可愛らしいフェレット。

「ゆ…夢じゃないのか…? ここ本局の中だぞ。何でフェレットが歩いてるんだよ…。」

 先に説明されている通り、ここはミッド地上では無く本局と言う人工的に作られた施設の通路内。
そこをフェレットが歩いていると言うのは実に不自然であったが、今のアギトにとっては好都合。

「よ…よし。何でこんな所にフェレットがいるのかは分からないけど、コイツなら…コイツなら
意地悪しても大丈夫だ。」

 何を根拠として大丈夫なのか分からないが、アギトはこのフェレットに意地悪をする事を決めた。
そしてまず意地悪の第一段階として、歩いているフェレットの後を付いて行く手を取っていた。

「おいフェレット。お前何処へ行くんだ?」
「きゅっ。」

 同じく意地悪の一環として話し掛けてみたアギトであったが、フェレットはかすかに聞こえる程度の
小さな声で一鳴きするだけであり、構わず歩き続ける。それがアギトには面白くない。

「おい。聞いてんのかよ。何処へ行くんだって言ってるんだよあたしは。」

 アギトはフェレットの頭を小突いた。こうすればフェレットは情け無い泣き声を発して痛がると
アギトは考えていたのだが、フェレットは意外にも冷静であり、ゆっくりとアギトの方にふり向いていた。

「きゅ〜。」
「お! やんのかこら!」

 アギトを睨み付け威嚇を始めたフェレットに対しアギトはファイティングポーズを取った。
こうして襲い掛かって来たフェレットを軽くあしらってどちらが上か思い知らせてやろうと考えていたのである。

483 真フェレット 衝撃!アギト編 3 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:06:09 ID:ulrb7k9g
「きゅ〜!」
「遅い!」

 勢い良く跳びかかって来たフェレットの突撃をアギトは華麗にかわし、腹部にカウンターの蹴りをお見舞いした。
アギトはこの後フェレットは腹を押さえてのた打ち回るはずだからそこを笑ってやろうと考えていたのだが…

「きゅっ。」
「あれ…? 確かに腹蹴ったはずなんだが…。打ち所間違えたか?」

 腹を蹴られたのにも関わらずケロリとしているフェレットにアギトは若干驚いた。
フェレットはその外見の通り胴が長い故、腹部への蹴りは当てやすいし、実際アギトの蹴りは
フェレットの腹部に命中していたはずなのだが…

「ならもう一度蹴り飛ばしてやるよ。」

 アギトは今度こそフェレットをのた打ち回させようと今度は自分からフェレットを蹴りに行こうとしたのだが、
その時だった。アギトの着ていた服に僅かな切れ目が生じ、その切れ目がまるでたった一つの穴からダムが
崩壊して行くかの様に衣服全体にまで広がり細かく切り裂かれ、忽ちの内に全裸にされてしまったのだ。

「キャァァァァァ!! な…何が起こったんだよぉぉ!」

 アギトは思わず顔を真っ赤にさせ、両手でそれぞれ胸と股間を押さえて蹲ってしまった。
アギトには何故自分の着ていた衣服が突然全て細かく切り裂かれ、全裸にされてしまったのか
ワケが分からなかった。が、その時にアギトは見た。フェレットの前足の指先から伸びている
爪が照明の光を反射して光っていた所を…

「ま…まさか…お前がやったのか…。」
「きゅっ。」

 如何にも人懐っこそうな可愛らしい声で一鳴きするフェレットだが、アギトは逆に真っ青になった。
アギトの衣服を切り裂いたのは他の誰でも無いフェレット。ここに来て初めてアギトは自分の行いの
間違いに気付いていた。

「あ! あああ………。」

 次の瞬間アギトのとった行動。それはフェレットの爪で細かく切り裂かれた衣服を掻き集め、
それで何とか胸と股間を隠しながら逃げ出す事だった。自分はとんでもない相手に喧嘩を売ってしまった。
勝ち目が無い。アギトが自分の間違いに気付いた時には既に遅く、今度はフェレットがアギトを
追い駆ける番だった。

484 名無しさん@魔法少女 :2009/09/13(日) 00:06:13 ID:MgahPhNQ


                              ● < 69_264氏乙!
(⌒⌒⌒⌒⌒⌒)                 / /|
 ))))))                    /  / |

                    (⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
                     ))))))

          Λ_Λ   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         ( ´∀`)  < 残暑見舞い、潮風と共に君に捧ぐ
         ⊂    つ  \_______________
          \ \/ ̄\
           \/ 涼/
           /納 /
           \_/

(⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒)
 ))))))))

485 真フェレット 衝撃!アギト編 4 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:08:35 ID:ulrb7k9g
「きゅっきゅっ。」
「だっ誰か! 誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!!」

 フェレットが可愛らしい声で鳴きながら追い駆けて来る中、アギトは必死に助けを求めながら
本局の通路を駆けた。だが不思議な事に、何時もなら多くの人が歩いているはずの通路は
人っ子一人いなかったのだ。

「え!? 何で!? 何で誰もいないんだよぉぉぉぉ!!」
「きゅっきゅっきゅっ。」

 通路は愚か本局全体が完全に無人化してしまったかの様に無音だった。アギトが必死に助けを求め
叫んでも、ただそれが響くのみ。そしてアギトが後ろを向くと、フェレットが舌を出して追い駆けて来る。
そのフェレットの口から覗く牙がまた鋭く、照明の光を反射して輝いており、アギトの恐怖感を掻き立てた。

「うっうああああああ!!」
「きゅっきゅっ。」

 誰も助けの来ない孤独と言う名の恐怖の余り、アギトの目からは涙が流れ飛び散り、あろう事か
失禁までしてしまっていた。必死にフェレットから逃げるアギトの股間から尿が流れ落ち通路を汚して行く。

「きゅっ!」

 フェレットに対する恐怖の余り失禁したアギトの尿が全て流れ落ちた次の瞬間だった。フェレットが
勢い良くアギトに飛び付き押し倒していたのである。そしてアギトに組み付いたままゴロゴロと
通路の床を勢い良く転がって行く。

「きゃぁぁぁぁ! いやぁぁぁぁぁ!」
「きゅっきゅっきゅっ。」

 アギトは思わず悲鳴を上げてしまった。例えるならば、素人が柔道の達人から何パターンもの寝技を
連続で仕掛けられているかの様なイメージ…いやそれよりももっと酷いと言わんばかりな状況であった。
それだけフェレットの猛攻に対し、アギトは何も出来なかったのだ。

486 真フェレット 衝撃!アギト編 5 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:09:39 ID:ulrb7k9g
「(こ…コイツ…力強……何で!? フェレットってこんな強かったのかよぉぉ…………。)」

 アギトはフェレットに何度も転がされる中で己の愚かさを悔やんだ。当初アギトはフェレットについて
鳴き声をあまり発する事は無く、ペットとして飼いやすくと言う評判から、大人しくて弱々しい小動物であると
考えていた。しかし実際は違う。フェレットがペットとして家庭で飼われる様になったのは比較的近年に
なってからであり、元々はウサギやネズミを狩る狩猟用動物として扱われていたのである。そしてペットとして
家庭に飼われる様になった後も、フェレットが自分より大きな猫や犬に襲い掛かった等と言う事例も
さり気無く存在する。そう。つまりフェレットは決してアギトの考えていた様な甘い動物ではなく、
れっきとした肉食獣。猛獣だったのである!

「きゅ〜。」
「うあああああ!!」

 眼前で大きく開かれた口から覗くフェレットの鋭い牙を目の当たりにして、アギトは思わず悲鳴を上げた。

「くっ食われる………あたしフェレットに食われちまうぅぅぅぅぅぅ!!」

 アギトの目からは大量の涙が飛び散り、残った体力を振り絞って必死に逃れようともがいた。
確かに一連の事態に関して非があるのはアギトの方であるが、だからと言って食われてしまうのは嫌だ。
うつ伏せにされていた状態から何とか起き上がり、フェレットから脱出しようとするが………

「うっ!!」

 次の瞬間アギトの全身が硬直した。そして股間部に何か固く巨大な異物が押し込まれた感触と激痛が彼女を襲う。

「あ……あぁぁ………。」
「きゅっ。」

 アギトが全身をプルプルと痙攣させ、己の身に起こった事態を把握した時には既に遅かった。
うつ伏せ状態から起き上がろうとしていた途中の四つん這い状態の際、フェレットが背後から
アギトの背に覆い被さっており、その拍子にフェレットの固く怒張した肉棒がアギトの処女を奪っていたのだから。

「いっいやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゅ〜。」

 何故かアギトとフェレットを覗いて人っ子一人いなくなった本局通路内にアギトの悲鳴が響き渡った。
それは偶然か、はたまた必然かどうかは分からない。しかし、フェレットの怒張した肉棒がアギトの
膣口に深々と突き込まれ、その処女膜を容易く貫いていた事は紛れも無い事実であった。

487 真フェレット 衝撃!アギト編 6 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:10:42 ID:ulrb7k9g
「いったぁぁ………。」
「きゅっ。」

 アギトはフェレットによって処女を奪われた。それはすなわち獣姦。アギトは当初サイズ的に丁度良い
と言う事でフェレットを狙ったが、それが逆に仇となってしまった。そう。アギトの膣は、フェレットの
怒張した肉棒を挿入するのにも丁度良いサイズであったのだ。

「きゅっきゅっきゅ。」
「あっ! あっ! あ〜っ!」

 そして次に始まった事。それはフェレットの激しい突きであった。まるでピストン運動の様にフェレットは
勢い良く腰を振り、抜いては突き、抜いては突きを繰り返す。それはアギトの体さえも無理矢理に突き動かす程の
激しい代物であった。

「きゅっきゅっきゅっきゅっきゅ。」
「あっ! もうっ! ダメッ! やぁっ!」

 疲れを知らないと言わんばかりに突き続けるフェレットに対し、アギトの全身は汗だくとなっていた。
そしてフェレットが突けば突く程アギトの膣はフェレットの肉棒によって開発されて行く。

「きゅ〜。」
「あっ……………。」

 今度はフェレットの体がプルプルと震え始めた。アギトが何か嫌な予感を感じたその時だった。

                   どびゅっ びゅびゅびゅっ

「んぁ…………。」

 出した。フェレットがアギトの膣内に勢い良く射精していた。濃く大量の精液がアギトの膣と子宮に
満たされ、フェレットが肉棒を引き抜いた膣口からもそれが溢れ出て来る程であった。

488 真フェレット 衝撃!アギト編 7 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:11:41 ID:ulrb7k9g
「やられちまった………あたしは………何もかも奪われちまった………。次は……あたし……本当に
食われちまって………命も奪われるんだな…………。ゼストの旦那……あたしが旦那の所に付いたら…
迎えてくれな………。」

 アギトは己の死を覚悟した。この後フェレットの鋭い牙によってアギトの体は噛み千切られる……
と思われていたのであったが、意外な事にフェレットはこれ以上の事は何もせず、去って行く事であった。

「え…? 何でだよ……何で食わねぇんだよ………約束が違うじゃねぇか………あたしは覚悟したのに……
なんでお前はあたしを見逃すんだよ………何でだよぉぉぉ………。」

 普通なら命が助かったと言う事で、見逃してもらえた我が身喜ぶべきなのだが、アギトには
それが逆に自身の価値を貶められた様に感じられ、悔しかった。そしてアギトはその場に倒れたまま、
かすれた声でフェレットに呼びかけるも空しく、フェレットはそこからトコトコモサモサと去って行くのみであった。

「何で…何でなんだよ…フェレット…フェレットォォォォ…………。」


 それから数日後、本局の通路を一人彷徨うアギトの姿があった。

「何処だ? 何処にいるんだよ…フェレット〜………。」

 アギトはフェレットを探していた。フェレットに対する復讐の為にフェレットを探していると
思われていたが、その目はどこか違っていた。まるで離れ離れになった想い人を探している様な
その様な雰囲気が感じられた。

「一体何処に行っちまったんだよ〜…。」
「やあアギト。一体誰を探しているんだい?」

 そんなアギトに問い掛けたのは、たまたまそこを通りがかった無限書庫司書長のユーノ=スクライア。
しかし、アギトは相手をする暇は無いとばかりにそっぽ向いていた。

「うっせぇよ! お前なんか関係無いだろ!」
「手厳しいな〜。」

 アギトはユーノに構わずフェレットを探し続けた。フェレットは本局の通路を歩いていたのだから
本局内を探していれば再びフェレットに会えるに違いない。再びフェレットに出会う日を求めて
アギトは探し続ける。

「フェレット〜…一体何処へ行っちまったんだよ〜…。また出てきてくれよ〜…。」

                      おしまい

489 ◆6BmcNJgox2 :2009/09/13(日) 00:13:45 ID:ulrb7k9g
以前フェレット形態のユーノの可愛らしさを前面に押し出した(つもりの)話を書いたら
「フェレットは猛獣だぞ」「フェレットは肉食獣だぞ」ってレスが返って来ました。

この時の経験が今回フェレット形態のユーノを猛獣的に描く際に大いに役立ったのですから
世の中何が幸いするか分かった物ではありませんね。

490 名無しさん@魔法少女 :2009/09/13(日) 00:14:09 ID:MgahPhNQ
◆6BmcNJgox2氏、すみませんでした
投下中に、割り込んでしまって本当に申し訳ない
油断してリロードしてなかった・・・吊ってきます

491 名無しさん@魔法少女 :2009/09/13(日) 00:14:28 ID:j1uoLIms
うーむ。ベルカのミニユニゾンデバイスはフェレットと身体の相性が抜群なのか? 一発で虜になっていやがる。


492 名無しさん@魔法少女 :2009/09/13(日) 15:38:46 ID:hWVhzS.6
乙です! カオスってる状況が素敵!

493 名無しさん@魔法少女 :2009/09/16(水) 23:19:19 ID:P3tRy8Xo
また書き込みがなくなったな。
まぁ投下もないし話題になる話もないからな。

という訳で復活して欲しい職人さんを挙げてみる。
俺は640氏

494 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 00:17:22 ID:d3ylDVPk
なのはさんの教導の続きを待っているんだが

495 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:25:14 ID:i6/mDVG6
さて、記念すべき100スレ目での初投下行きます。

 タイトル「自分探し」

 救い? ハッピーエンド? なにそれ美味しいの?

 非エロ 欝?
 全7レス

 あぼんはコテか鳥で

496 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:25:49 ID:i6/mDVG6
        1

 絶え間ない違和感が、フェイトの身体を覆っていた。
 もう、その原因はわかっている。
 世界そのものが異なるのだ。違和感を感じない方がどうかしている。

 そして――
 世界が消えていく。
 母さんのいた世界が。
 姉さんのいた世界が。
 リニスのいた世界が。

「さよなら、フェイト」

 フェイトは目を覚ました。
 そして、違和感が消えたことを知る。

 違う。この世界は違う。
 自分の中の何かが告げる。この世界は違う世界なのだと。
 限りなく優しく、限りなく温かく、そして限りなく異なる世界。

 それが、ついさっきまで存在していた違和感。

 優しい母のいる世界。
 元気な姉のいる世界。
 決して存在してはならない世界。
 とても存在して欲しかった世界。

 それが、ついさっきまで自分のいた異世界。

 闇の書の幻により生み出された世界。自分の中の記憶と願望により生み出した世界。
 
 世界は消えた。自分は幻の誘惑に打ち勝った。

 フェイトは、なのはの姿を探していた。
 なのはがいてくれたから。
 なのはが名前を呼んでくれたから。
 だから、自分はこの世界に帰ってくることができた。
 だから、なのはの姿を探す。

 闇の書を倒し、はやてを救う。それが今のなのはの望み。そして、なのはの望みは自分の望みでもある。

497 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:26:24 ID:i6/mDVG6
   2



 ……強いな。
 ……ええ、思ったより障壁は強いようですね。
 ……レベルを上げるとどうなるかね?
 ……フェイトお嬢さまに恒久的な障害が残る可能性があります。
 ……ふむ。肉体的な障害かね?
 ……それならば、ドクターの前では何の心配もないでしょう。しかし、この場合は精神的な障害です。
 ……ああ、それは少々困る。仕方ない、もう少し様子を見ようか、ウーノ。
 ……はい。ドクター。





 フェイトは、どこからか聞こえてきた小さな声に耳を澄ます。
 ドクター?
 ウーノ?
 一体誰なんだろう……。
 心当たりなど……いや……これは……
 違う。何故自分はそんな名前を知っているのだ。

 無限の欲望
 ナンバーズ長女
 
 どこからそんな言葉が出てくるのか。
 どうしてそんな言葉を知っているのか。

「フェイトちゃん!」

 なのはが呼んでいる。そうだ、じぶんはなのはに必要とされている。それ以外、何が重要だというのだろう。

「なのは! 今行くよ!」

 ……本当に?

 疑惑がフェイトの足を止める。
 自分はなのはに呼ばれている。本当に?

「フェイトちゃん、どうしたの?」

 闇の書の夢から抜け出したところ?
 そう、闇の書の見せる幻から抜け出したところ。

 ただし、二回目。
 すでに闇の書はない。ここにあるのは、いや、はやてが所持しているのは闇の書ではない。
 リインフォースもいない。そこにいるのはリインフォースツヴァイ。

498 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:26:55 ID:i6/mDVG6
      3

 この世界そのものが見せかけ。
 この世界は、フェイト自身の記憶から捏造された偽りの世界。
 だから、フェイトはドクターを知っている。
 ドクターと呼ばれる者の正体を。
 ウーノと呼ばれている者を。
 ならば。

 ……ドクター、精神活動が異常活性しています
 ……面白い。外部からの干渉に堪える精神力か。リンカーコアから力を引き出しているのか?
 ……AMF濃度を上げますか?
 ……いや、私も見てみたくなった。フェイト嬢の精神力とやらを。
 ……では、トーレとセッテに待機させます
 ……用意がいい。さすがウーノだね
 ……ありがとうございます。

 夢だ。
 これは幻の世界、と自分に言い聞かせる。
 あの時、闇の書の呪縛から抜け出した自分なら。
 今も同じ。きっと、なのはが待っている。エリオが、キャロが、はやてが、シグナムが。
 だから、抜け出してみせる。
 スカリエッティの作り出した世界から。
 この世界を脱出する。幻を破壊し、現実を構築し、再帰する。

 ……面白い。これほどの抵抗値を示すとは。さすがは、あのプレシア・テスタロッサがその叡智を懸けて作り出した存在、と言うべきかな?
 ……ドクター、このままでは理論計測値を超えます。
 ……そこまでか……。仕方ない、

「フェイト……ちゃん?」

 なのはが呆然と自分を見ている。
 フェイトは微かに胸の痛みを感じていた。それでも、そこにいるのは幻影のなのは。
 アジトに潜入した自分を捕らえたスカリエッティが、自分の記憶から構築した幻影。  
 少しずつ戻り始めるフェイトの記憶。
 はこぶね破壊に出向いたなのは。
 スカリエッティ逮捕に出向いた自分。
 そして、トーレとセッテを相手取り、いったんは勝利を収めるものの、ルーテシアと闘うキャロとエリオの姿に注意を奪われ、捕らえられてしまった。
 それが、今の自分。
 スカリエッティに幻覚を見せられているのだ。その理由は未だわからない。
 しかし、闇の書と対峙した際の記憶を微妙に改竄されているところを見ると、偽りの記憶で自分を操るつもりなのかとも思える。

 ……無駄だ

 とフェイトは呟く。

499 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:27:27 ID:i6/mDVG6
     4

 偽りの記憶など、真実の前では色あせる。どれほどの甘言に溢れた世界であろうとも、現実の前では色褪せるだろう。
 幻は現実に敗れる。それはすでに、過去の自分たちが証明してきたことではないか。
 だからこそ、フェイトは目前のなのはを黙殺した。

「フェイトちゃん?」

 なのはではない。どれほど似ていたとしても。それはなのはではない。
 フェイトはも、微かに心に浮かぶスカリエッティの声を探していた。
 まるでノイズのように薄く、ランダムに発生しては消えていく言葉。それが現実の言葉。

 ……気付くのは、時間の問題かな。
 ……どうされます? ドクター。
 ……ナニ、気付いたところで拘束している事実は変わらない。慌てる必要はないさ。

 今にもかき消えそうな囁き声ほどの音量に、フェイトは精神を集中する。
 自分の中に生み出す、確固とした指標。

 ……私は、私の世界に。
 ……私のいるべき世界に。
 ……私が厳と存在する世界に。
 ……導となる錨を撃ち込む。
 ……確固たる我のある世界。
 ……導き、固着せよ。
 ……世界へと。
 ……我の世界へと。

 一瞬、フェイトの瞳に映るなのはの姿がぶれた。まるで、壊れかけたディスプレイの映像のように。
 フェイトはその現象に意を強くする。
 
「フェイイイイイイトトトトトトちゃああああんんん」

 音声までがぶれはじめ、フェイトは嫌悪に表情を歪める。

「フェイト・テスタロッサ! 君は自分が何をしているのかわかっているのか!」

 なのはの姿に重なる白衣の男。
 ジェイル・スカリエッティ。

「やめたまえ! 君はわかっていない! これは、君一人の……」

500 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:27:58 ID:i6/mDVG6
    5

 ぶつん、という音が聞こえたような錯覚。それとともになのはの姿が消え、周囲の景色も消えていく。
 フェイトは身構えた。
 そこにいるのはナンバーズウーノとスカリエッティのはず。
 二人を確保し、すぐにはやてに連絡しなければならない。

 ……否
 ……否

 心の中の錨が唱える。ここは自分の世界ではないと。もっと確固たる世界があるのだと。

 否!
 否!

 心は叫ぶ、ここは違うと。

 もう、闇の書との戦いは終わったのだ。今は、ナンバーズとの戦いなのだ。

 否!
 否!

 心はさらに叫ぶ。
 フェイトは心の叫びに戸惑う。

 否!
 否!

 何故、否定する? ナンバーズとの戦いを否定する?
 ここが自分の世界ではないのか。
 ここは、自分の世界ではないのか。

 否!
 否!

 風が吹いた。
 フェイトは目を閉じる。

501 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:28:33 ID:i6/mDVG6
     6

 ……嘘だ。

 吊り下げられた腕が痛む、それでも、痛めつけられた身体の各所の上げる悲鳴の前では腕の痛みなどは些少なことだろう。

「貴方は、どうして私を失望させるの?」

 お母さんがいる。プレシア・テスタロッサが。

「フェイトぉっ!」

 アルフの叫びが聞こえる。

「何をぼうっとしているの? 人の話を聞いているの? それとも考え事!?」

 ああ。
 いっそ懐かしい想いに、フェイトは笑い出したいのを堪えた。
 ここは時の庭園。そして、母親に折檻を受ける自分。
 闇の書事件のさらに前。どうして、こんなところまで。
 さらなる、幻覚なのだろうか。
 こことて、自分の世界ではない。

 否!
 否!

 ほら、心が叫んでいる。
 ここは自分の世界ではないと。

 ここは違う。

 否!
 否!

 そして、闇の書との戦いも違う。

 否!
 否!

 ナンバーズとの戦いは?

 否!
 否!
 否!
 否!

 一体、どれが幻影なのか、何処が真実なのか。
 全ての世界に、フェイトの心は否を唱えている。

 戻らなければならない。
 自分の世界へ。
 自分の本当の世界へ。

 否!
 否!
 否!
 否!
 ……

 否定が止まる。
 ああ、ここが自分の世界。
 幻影を全て失った自分の世界。
 本当の自分の世界。
 幻影を見せていたのは……

 全てに気付いたときには、悲鳴を上げることすらできなかった

502 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:29:40 ID:i6/mDVG6
    7






 研究室に入ると、使い魔のリニスがモニターを睨みつけてゲームをしていた。

「また、そんなことやってるの?」

 言葉とは逆に、プレシアの表情は笑っていた。

「あら、また培養モニターの方に繋いで遊んでるのね」

 プレシアは、モニターに映っているゲームに目を向ける。そこでは、魔道師や半機械の戦闘員が画面狭しと闘っていた。
 画面に「スカリエッティ」「ナンバーズ」「なのは」「アルフ」などと書かれているのは使用キャラの名前だろうか。

「ああ。すいません。しかし、こちらの方がモニターが大きいのです。それに、定時のチェックは怠っていません」
「この部屋の管理は貴方に任せているから、やり方に口は出さないわ」
「ま、培養ポッドを弄らなければ構わないけれど」
「勿論です。ですが」

 リニスが笑った。

「この者にもゲームくらいさせてもいいかもしれませんよ? お嬢さまのお役に立つという任務を果たしているのですから」
「自意識もない、ただの献体に?」
「冗談ですよ、プレシア」

 そこにあるのは、娘アリシアのクローン体。一応脳はあるが、機能はしていないはず。
 病弱な娘のために、臓器パーツの提供元として母親が製造したクローンの身体。
 戯れに「フェイト」という名前を付けられたそれは、いつものように培養液の中で静かに浮いている。

「……これも、夢を見たりするのかしら?」

 プレシアは誰にともなく呟くと、実験室を後にした。

503 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/17(木) 00:30:57 ID:i6/mDVG6
以上、お粗末様でした。


……次こそはエロエロ書きたいな。

無論はやてちゃん○才(with車椅子) で。

504 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 01:04:38 ID:ZdbPTeU2
鬱というか、ホラー?
世にも奇妙な物語な感じですな。

途中の、スカリエッティが止めろと制止してきた辺りの件が、読解力のない自分にはよく分からなかったです。
ジュエルシードで、変な風に願い、というか念じていた思いを叶えてしまった、ということなのだろうか。

505 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 01:08:40 ID:I2yauRjs
スカリエッティやなのは、闇の書の出来事全てが最後のゲーム中の世界ってことなんだろか
で、それを幻だと決めつけたフェイトの思い込みでスカ達を道連れにその世界もぶっ壊れたってことなんんかね

それはさておきGJっしたー

506 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 09:47:21 ID:WOUFQ2Gc
>>503
GJ

507 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 10:17:37 ID:pI2kJi0E
>>493
彼は今でも書いてるじゃまいか。個人サイトだし、エロもないけど。

>>503
GJ!

508 名無しさん@魔法少女 :2009/09/17(木) 12:49:55 ID:bupPgyX2
GJ、これ見てたらフォールアウト3のトランキルレーン思い出したよ…

509 名無しさん@魔法少女 :2009/09/19(土) 08:06:50 ID:aI8mDOjg
Cursed lilyの続きマダー?

510 名無しさん@魔法少女 :2009/09/19(土) 17:11:39 ID:FE0C0J6Y
野狗氏GJ
相変わらずこういう短編は上手いですね


そして俺は、ておあーさんのSSの続きも見たい!!

511 名無しさん@魔法少女 :2009/09/19(土) 21:31:09 ID:XzL4BmhA
リリカルフェイトを……

512 名無しさん@魔法少女 :2009/09/19(土) 22:46:29 ID:DTb1.oLk
>>509
俺もずっと全裸で待ってる

513 名無しさん@魔法少女 :2009/09/19(土) 23:47:00 ID:hHNcjOXc
サイヒさんのあの日見上げた空へってもう終わりましたっけ?

514 サイヒ :2009/09/20(日) 06:28:25 ID:B/l9yPjg
>>513
色々あって連載中断。
再構成して復活の可能性は消費税ぐらいのパーセントだと思っといてください。
中途半端なことしてすいません。


データ吹っ飛んで数十kb分がパーになったりリアルで職が変わったりして
モチベが下がってたんですがぼちぼち復帰予定。

515 名無しさん@魔法少女 :2009/09/20(日) 06:59:44 ID:BI7gC9Xg
>>サイヒ氏
楽しみに待ってます。

個人的にはクロはや「しんじるものはだれですか?」も気になってる。
あの作品って確か第7話まで書かれてましたよね?
そこで中断していて…。
保管庫には第6話までしかアップされてないですけど…

516 名無しさん@魔法少女 :2009/09/20(日) 15:17:00 ID:vMWZUZVo
>クロはや
最新話までちゃんと更新されてない?

517 名無しさん@魔法少女 :2009/09/21(月) 18:28:50 ID:j93fZdLM
>>サイヒ氏
ご帰還をお待ちしております。
>>「しんじるものはだれですか?」
あれはいい作品だ。壊れたクロノが魅力的過ぎて他のキャラとのSSも読みたくなる。
ぜひとも復活してほしい。

518 名無しさん@魔法少女 :2009/09/21(月) 22:19:03 ID:o1/K8iU.
4の422氏とさばかん氏の復活を願う私

519 名無しさん@魔法少女 :2009/09/21(月) 23:00:28 ID:11DWNkv.
っつうか、凌辱がないでしょうッ!

520 名無しさん@魔法少女 :2009/09/21(月) 23:39:38 ID:B5gXYpIM
陵辱、つまりぬるぽ氏のヴィヴィオSSか

521 名無しさん@魔法少女 :2009/09/22(火) 02:10:31 ID:rld8opdI
ユーノマニア氏とシナイダ氏の復活を待ち焦がれてる

522 名無しさん@魔法少女 :2009/09/22(火) 20:42:31 ID:8r1V9YmE
ディフェンスに定評のある池上
陵辱に定評のあるぬるぽ氏

523 名無しさん@魔法少女 :2009/09/22(火) 21:37:42 ID:CCX6FAC6
燃えに定評のあるB・A氏
鬱に定評のある246氏
ソープに定評のあるシガー氏

524 名無しさん@魔法少女 :2009/09/22(火) 23:16:18 ID:yYYN4am.
アンチに定評のありすぎる( ゚д゚)氏

525 名無しさん@魔法少女 :2009/09/23(水) 11:41:32 ID:g0FMbBvA
>>524
あの人個人ブログサイトに移ったんだが…因みに全年齢な。
俺は、ユノギンスバという類を見ないシチュでエロ・完成度共に高かったKogane氏。

526 名無しさん@魔法少女 :2009/09/23(水) 14:51:01 ID:XBZBIWps
俺は伊達眼鏡のアルカディア氏。

527 名無しさん@魔法少女 :2009/09/23(水) 15:12:18 ID:bGX8AOG.
復活して欲しい作者なのか
好きな作者なのか

はっきりするんだ

528 525 :2009/09/23(水) 18:32:57 ID:g0FMbBvA
個人的にまた来てほしいな。

529 名無しさん@魔法少女 :2009/09/24(木) 13:14:39 ID:EnlrkxMA
4の422氏にはチョッピリ「私をクロなの好きにした責任、とってもらうんだからね!」的な感情ががが
原作クロスが途中なんだよなあ…

531 名無しさん@魔法少女 :2009/09/24(木) 22:00:59 ID:bLt6gF32
魔法少女リリカルふぇいとが、このスレを見つけた発端で、未だに続きを待ってるなぁ。
そろそろ一年経つのか。

532 CRR :2009/09/24(木) 23:08:15 ID:v8sJQzmw
こんばんは。
ふとした思い付きから始まったネタSSも最後。

【キャラ崩壊注意、特にはやて・スカリエッティ】【他作品パロ要素多数注意】
・脱ぐけど非エロ
・はやてが麻雀最強な作品のオーラス
・10割ネタ。元ネタ探しクイズ的な作品。全部分かったら多分幸せになれるかも。

ではどうぞ。&nbsp;

533 CRR :2009/09/24(木) 23:10:32 ID:v8sJQzmw
「古い結晶と無限の欲望が集い交わる地、死せる王の下、聖地よりかの翼が蘇る……カン」

「レリック事件」の起こる数年前、ベルカ自治領にある聖王教会本部の中の一室。
カリム・グラシアは、ぶつぶつと言葉をつぶやきながら鳴く。
カン材を放ってしまったのは、カリムの上家にいる八神はやて。

「死者達が踊り、なかつ大地の法の塔はむなしく焼け落ち」

(あ……あかん、その嶺上牌は……!!)

カリムの手が王牌に伸びる。
それだけなのにはやての顔の血の気は引き、体の震えが止まらない。
はやての直感が、先ほどの一瞬の気の緩みがとんでもないゲームセットを引き起こすことを予見していた。

「それを先駆けに数多の海を守る法の船もくだけ落ちる……」

カリムは、引いてきた牌を思い切り卓のエッジまで叩きつけるように引き寄せた。
乾いた音が部屋に響き渡り、同時にカリムの役が皆に晒される。

「ツモ。大三元ね、騎士はやて」

(ぐ、は……やってもうた……わ……)

はやての視界がぐにゃあと歪んでいく。役満にしかも責任払いありのルール。
はやては久しぶりにハコを被り、そのショックで頭から卓に崩れ落ちた。
盛大に牌が全自動卓の上にばら撒かれ、惨めさをより引き立てていた。





ムダヅモ無き管理局改革 〜「響け終焉の笛!」勃発! ラグナロク大戦〜





―――――その半荘一回戦での負けから、すべてが始まった。
はやてはカリムの予言を信じざるを得なくなり、機動六課の設立に奔走する。主に麻雀で。
同時に、魔導士としての素質と雀士としての素質を併せ持った人間も探していたが、
そちらの方はあまり結果が芳しくなかった。

「……だからといって、私たちがこんな所に居るなんて」

「しゃあ無いやんかカリム。唯一打ち筋が好きやったティアナは前線に送り込んでもうたし」

はやては当時をしみじみ懐かしみながら、全自動卓のボタンを押す。
一方、『こんな所』になぜか連れてこられたカリム。
カリムの対面には、今回の事件の要である戦闘機人・トーレが座っている。
そして、はやての対面には。

「思い出話はそのくらいにしたまえ、私は早く君と麻雀がしたくてたまらないのだ。八神はやて」

純白の白衣に身を包んだ、ジェイル・スカリエッティの姿。
彼の『無限の欲望』は誰もが思いもしなかった形でその真の姿を表した。
スカリエッティ本人が、自分の研究所にはやてとオヒキ一人を無防備に招待したのだ。

「ミッド一麻雀が強いと言われている君を、私のこの手で早く捻りつぶしたいよ……!」

534 CRR :2009/09/24(木) 23:13:17 ID:v8sJQzmw
研究所の一角にあった全自動麻雀卓。
17牌2列の山が雀卓からせり上がってくる前から、スカリエッティの興奮は最高潮である。
胡桃の殻があったらメキメキと粉砕してしまいそうなほどに手をぎゅっと握り、準備は万端のようだ。
東・スカリエッティ。南・カリム。西・はやて。北・トーレ。
全員慣れた手つきで、ビシビシとフェルト地の卓に不要な牌を捨てていく。
その姿を、はやての護衛も兼ねて進入してきたフェイトと、それを遮るセッテが見守っていた。

(ジェイル・スカリエッティ。違法研究者でなければ、間違いなく歴史に残る雀士……やなかった、天才)

……麻雀がミッドチルダに持ち込まれたのは、新暦が始まって間もない頃。
ほぼ地球の麻雀と同じような進化を遂げていたが、最大の違いはその待遇。
管理局最高評議会の面子が暇を持て余したときに嵌ったのがきっかけで、特に管理局内では絶大な人気を誇っていた。
評議会の面子の嵌りっぷりは尋常でなく、『アンリミテッドデザイア』についうっかり、
『管理世界最強の雀士になる』という夢を刷り込んでしまったほどであった。

「おっとツモだ。チャンタ・白・發にドラ6、12000オール」

「お、親っパネ!?」

スカリエッティの上がり役を見た瞬間、カリムは思わず大きな声を上げてしまった。
噂には聞いていたが、これはスカリエッティの実力の片鱗でしかない。
はやてはそれを知っているのかどうなのか、食らっても何食わぬ顔である。

「これくらいで驚いたらあかんよ。教会の騎士の名が泣いてまう」

「そ、そうね……ごめんなさいはやて、最近すっかり打ってなかったものだから」

軽く頬を叩き、カリムは気合を入れなおす。
とは言え事件が大きくなってからは本当に打つ機会が少なくなっていた。
はやての小四喜の気配を察知し、大明カンからリンシャンツモで大三元をぶち当てた、全盛期の頃の勢いは取り戻せていない。
おまけに、はやての腕にくくりつけてある手錠のようなデバイスが気になって仕方ない。

「くくく……八神はやて、あまりゆっくり仕掛けているとリンカーコアが無くなってしまうぞ?」

スカリエッティの出した条件はこうだ。
スカリエッティは自分の研究成果・ナンバーズ12人を賭け、全員奪われた上でスカリエッティがハコを被れば無抵抗で逮捕。
その代わり半荘を終えた時点ではやてが負けていれば、負けた点数に応じて等分されたリンカーコアを吸収されてしまう。
これをスカリエッティが逮捕されるか、はやてが倒れるまで続けるのだ。
しかもかつてレジアス戦で披露した魔法轟盲牌を封じるために、牌の一つ一つに防御のための術式が編みこまれている。
名づけて『スカリエッティ麻雀』。地球にも似たような麻雀を考えた閻魔の闘牌をする老人が居たがあまり関係ない。

「はやて、大丈夫? 確かに貴方はスロースターターだけど、そろそろ南二局よ?」

一回目の半荘が始まってからずっと焼き鳥(アガっていない)状態のはやてを、さすがにカリムは心配していた。
しかし当の本人はと言えば騎士甲冑の胸元からタバコチョコを取り出して口に咥え、
あからさまに余裕を見せ付けている。

「だーいじょうぶやて、任しとき。ポン」

局が始まって間もなく、南牌が勢いよく三枚除けられる。
次の順ではやては山から牌を引き、指先の感触だけでアガりを確信。

「カン」

(これでアガって点棒を取り戻せば、南場二局もあれば捲れるやろ)

もう一枚牌を寄せ、さらに手を王牌へと伸ばす。
思わずはやての頬が緩む。
アガり牌はそこにある。はやては本能的に察知していた。

535 CRR :2009/09/24(木) 23:15:39 ID:v8sJQzmw
「……ロン、槍槓」

「ぶっ!?」

察知していたのだが……。
スカリエッティにしっかりと狙い撃ちされ、珍しい役でアガられてしまった。
さすがにはやてもタバコチョコを吹いてしまい、何度もスカリエッティの役を確認する。

(しかもドラが7やて!? あかん、ゆっくりしすぎた結果がこれや……!!)

「御無礼、早速トビだ八神はやて。ではリンカーコアを1/12頂こうか」

手錠型のデバイスがぼんやりと光り、はやての騎士甲冑の胸の辺りに光の玉が現れる。
リンカーコアが一回りほど小さくなるまでに、はやては歯をぎりっと噛んでその苦痛に耐える。
まさか元・闇の書の主が魔力蒐集を食らう羽目になってしまうなどとは、今日のこの瞬間まで思ったことが無かった。

「う……くああぁっ、ぅ……はぁ、何や……まだ大したことないやん」

「そう言ってられるのも何時までかな? さて、次の半荘を始めようではないか」

そこからのスカリエッティの麻雀は、最初のはやての予想をはるかに超えていた。
あっという間にはやての点棒とリンカーコアが奪われていく。

「ロン。リーチ面前断幺九平和三色ドラ1」

「くっ!!」

「ツモ。四暗刻の親っ被りだな」

「ぐぅ……っ!!」

半分以上リンカーコアを削られ、段々はやての顔色が悪くなっていく。
目の前がくらくらしてくる。
かつて闇の書事件のとき、なのはやフェイトや守護騎士たちはこんな状態だったのか。

(あ……あかん……これは)

盲牌できない。
手の先の感覚がもう無くなってきた。
はやての頭がくらくらと揺れ、がくんと垂れ下がる。
辛うじて卓の牌をぶちまけるような事態は免れたが、はやてが動かなくなってしまった。

「はやて……? はやて!! はやてっ!?」

上家のカリムが思わず立ち上がる。
騎士甲冑の帽子がはらりと落ち、まるではやての力が潰えたことを暗示しているかのようだった。

「はやて―――――っ!!」

536 CRR :2009/09/24(木) 23:17:28 ID:v8sJQzmw
「……ん、眠い……」

はやてが目を覚ますと、そこは真っ暗な闇の中だった。しかし自分の姿は見えていて状態が確認できる。
今まで騎士甲冑に身を包んでいたはずが、なぜか陸士の制服に着替えておりしかも車椅子に座っていた。

「何や……? 私、生きてるんか?」

アームレストに肘をかけ、背もたれに体重を預けて座っていると自然と眠気が襲ってくる。
かつてはやてはこんな状態を味わったことがある。そう、闇の書事件のときの状況に限りなく近い。
そうなれば、当然『彼女』がはやての前に現れる。

「リイン、フォース……?」

「お久しぶりです、主」

あの冬の日に消えていった、当時の姿のまま。
銀色の鮮やかな長髪も、黒一色の服を自ら拘束具で戒めた特徴的な格好も。

「何や、私このまま負けるんかな……?」

はにかみながら、はやてがそんな言葉を口にした。
スカリエッティの闘牌に付いていけず、リンカーコアも風前の灯。
弱気になったはやてに、リインフォースは厳しい目を向けた。

「……主、諦めたらそこで試合終了ですよ」

「っ!!」

その真紅の瞳の奥にはやてへの強い思いを秘め、リインフォースがはやてと視線を合わせる。
ぎゅっと手を握り、はやてにまるで何か力を送り込んでいるかのようだ。
きっと送り込んでいるのは魔力でも体力でもなく、雀力だろう。

「狂気の沙汰ほど面白い、と先人は言っているではありませんか。このまま引いてどうするのですか?」

今まで諦めかけていた自分が情けなくなった。
さっきまでの死にそうな顔や諦めの感情が出ている顔をすべて振り払い、
はやては顔をきりっと引き締めた。

「……せや、あきらめたら終わりやったね。ありがとう、リインフォース」

そう。まだ諦めてはいけない。
そういえば、卓の上のはやての味方はカリムだけではなかったのだ。
はやては目を閉じ、口ずさみ始めた。




「……あきらめたーら おーわーりー 気もーちを リセットしてー……」

「はやて……!? 大丈夫!?」

はやての意識が戻り、顔が上がった。
心配して声をかけ続けていたカリムに応えると、帽子を拾ってまた深く被る。
帽子と前髪に隠れたはやての目が、一瞬光ったような幻想を対面のトーレが見た。

「大丈夫やカリム、任しとき」

「はやて……!!」

537 CRR :2009/09/24(木) 23:19:52 ID:v8sJQzmw
思わずカリムの目に涙が光る。
もうこの半荘も南三局だが、やっとはやてが本領を発揮してくれるのだ。

「ん〜…おっしょ―――――い!!」

気合を入れるためなのか、はやては謎の掛け声を研究所の天井目掛けて叫んだ。
その声はあまりに大きくかつ内容は意味不明。
少なくとも、か○ぐち○いじの漫画が読めないミッドの人間にとっては。

「……咆号、か?」

「あまりの点差にネジが飛んだのでしょうか、ドクター」

「さぁ……? でも彼女が相当追い詰められているのは確かだ」

トーレとスカリエッティは首を傾げるが、局はそのまま続行される。
はやての上家のカリムは、はやての復活にほっと胸をなでおろしていた。
点数云々はまだ問題山積ではあるが、とにかくやる気だけは復活してくれた。
カリムは場を見ながら、索子を捨てる。
萬子と筒子の多いはやての河から、索子の染め手狙いではないかと察しを付けての判断だ。

「ロン」

「っ!? しまった!!」

一瞬の気の緩みだったのだろうか。スカリエッティの事をまるで考えていなかった。
笑みを浮かべながらロンアガりを宣言するスカリエッティ。
これでもうほぼ終わり。はやてはスカリエッティに追いつけない。負け確定。
振り込んだカリムの視界がぐにゃあと歪んだ。

「ロン!! ロン!! ロンロン!! ロンっ!! ふはあはははははははははっ!!」

スカリエッティを駆け巡る脳内物質。
β-エンドルフィン。チロシン。エンケファリン。
バリン。リジン、ロイシン、イソロイシン。

「たまらないよこの感覚!!」

思わず椅子から立ち上がり、スカリエッティが咆号を上げる。
狂気の表情、狂気の思考、狂気の麻雀。
ついにスカリエッティははやてを突き放し、見事にはやてのリンカーコアを破壊しつくした。

「ロン」

「は……?」

……と思っていた。
伏せていたはやての目線がいつの間にか上がり、スカリエッティに刺さる。
さっき起き上がるまでの力の無い表情などどこへ行ったのか。
明らかに何か企んでいるような瞳を向けていた。

「聞こえんかったんか? ジェイル・スカリエッティ、頭ハネや。『湖の騎士・シャマル(緑一色)』!!」

「や、役満……っ!?」

「カリム、ごめんな直撃してもうて」

「いえ……はやてが、これでスカリエッティを捲くってくれたから……どうってこと無いわ」

はやての復活に、カリムはつい口に手を当てて嗚咽を漏らしながら涙を流す。
死ぬかと思っていた。ずっと一人で戦っているような気がして怖かった。

538 CRR :2009/09/24(木) 23:21:20 ID:v8sJQzmw
その結果が今やっと開いたのだ。まるで嶺の上に咲き誇る一輪の花のように。

「さーて……まだや。まだ終わらんよ」

はやては騎士甲冑の腕を捲くり、タバコチョコを咥え、卓へ意識をダイブさせる。
仕掛けるタイミングが早くなる。完全に自信も点棒も取り戻した。
緑一色を機に役も作りやすくなり、ナンバーズをどんどん手の中に収めていく。

「ロン。『鉄槌の騎士・ヴィータ(紅一色)』、オットー頂きや」

「ツモ。『剣の騎士・シグナム(紅朱雀)』、ウェンディを貰うで」

「ロン。『盾の守護獣・ザフィーラ(青洞門)』、ウーノと引き換えようか」

はやてがアガる役はローカル役ばかり。
今回のルールでは役満になるわけでもなく、あまり意味の無いことの様にも映る。
しかし、はやてはその役一つ一つに自らの守護騎士にちなんだ名前を個人的に付けて打っている。
それだけではやての後ろに騎士たちがいるかのような安心感。強運……いや、豪運。
完全にはやては場のペースを操っていた。

「……ははっ」

数回目の半荘、はやての親が回ってきた。
すでにナンバーズは全員はやての物になっており、最後はスカリッティの逮捕のみ。
しかも既に一回跳満をぶち当てており、逮捕まであと一手……いや、テンパイ状態。
いつものように牌を集め手元で目を通すと、はやての口から笑みがこぼれた。

「なぁスカリエッティ。この牌、イカサマでけへんように作ってあるんよね?」

「ああ、この牌にはどんなすり替えも削り取りも無意味だ」

「……そうか。ならこの牌は不良品やね。カン」

はやてが牌を山から取ってくると、直ぐにその牌を含めた四枚の白牌を寄せる。
体力の限界に近づいてきた体に鞭を打ち、嶺上牌へと手を伸ばす。

「カン」

珍しく引いてきた牌でまた鳴けるようだ。
しかし、ここではやての指先に明らかに異変が見て取れた。
カリムもトーレも、思わず声を上げた。

「え?」

麻雀牌の防御壁と、はやての手の先の魔力刃がぶつかり合う。
まるで全開バトルの時のような火花がはやての手先から散り、ギチギチと麻雀牌が音を立てる。
そして、バキンという大きな音と共に真っ白い『五枚目の白牌』が現れた。

「え、ちょ、ま、はやて!?」

続いてフェイトも声を上げる。
はやての騎士甲冑は、リンカーコアの小ささに比例して防御力が下がっている。
防御壁とぶつかったことによる火花だけで、少しづつ甲冑がぼろぼろと剥がれていった。
それでもはやては気にしない。手先に力と魔力を込め、牌に白い命を吹き込んでいく。
甲冑の上着が無くなりアンダーウェアだけになっても、はやては止まらない。
そのまま六枚、七枚、八枚と白を作り、牌を寄せた。

「もいっこカンや!」

アンダーウェアに火が点いた。
その火はやがて大きな炎となり、まるではやて自身ががレヴァンティンにでもなったかのよう。
紅蓮の炎に身を焦がし、歯を食いしばりながら、なおもはやては鳴き続ける。

539 CRR :2009/09/24(木) 23:23:40 ID:v8sJQzmw
「はやて!? やめてっ!! そんな事したら、はやてが塵になっちゃう!!」

あまりに痛々しい姿になっても闘牌を続けるはやてに、思わず後ろのフェイトが叫んだ。
目には涙を浮かべ、今にもはやてに駆け寄り麻雀を止めてしまいそうだ。
しかしはやてはフェイトに顔を向け、その闘志に満ち溢れた目でフェイトを制した。

「塵……? ならその時は。フェイトちゃん、その塵を集めてスカリエッティの前に置いてくれんか?」

「えっ」

「たとえこの身が塵芥に成り果てようとも……私はこの世界を守るんや!! カン!!」

遂にアンダーウェアも燃え尽きた。
形の整った美しい肢体のすべてを晒しながら、はやての腕は嶺上牌へともう一伸び。
乳房を揺らしながら椅子から立ち上がり、思い切り振りかぶる。
はやては力の限り卓にツモった牌を叩きつけ、場に稲妻を叩き落した。

「……リンシャンツモ。字一色、三暗刻、四槓子、白4。青天井ルールで無いだけ安心しいや」

すでに炎は消え、はやては全裸で卓の前に仁王立ちしていた。
右手を卓の真ん中に置き、左手は腰に添え、スカリエッティににじり寄る。
はやては自分の麻雀力だけでは無く、ベルカの騎士としての力、魔法の底力を見せ付けたかった。
だからあえてイカサマ手でトばしたのだ。

「び……『天地創造(ビギニング・オブ・ザ・コスモス)』……だと?」

「せや。 『御無礼、トビですね。スカリエッティ』」

機動六課に魔物は二人いた。
一人は、どんなに打ちのめされても最後には必ず勝利をモノにする不屈のエース・オブ・エース、高町なのは。
もう一人は、麻雀牌に愛され麻雀卓の上でその黒い翼を広げる夜天の主、八神はやて。

「待て! 明らかに轟盲牌を使ったイカサマ……!!」

「いや、良いんだよトーレ」

言い掛かりをつけようと席を立ったトーレを、スカリエッティが手で遮る。
完全にハコを被ったスカリエッティは椅子に背中を預け天を仰ぎ、そして高らかに笑い始めた。

「くっくっく……あっはっはっはっ!! そうか、私の欲望はこれでは達成できるわけが無いな」

「ミッドチルダにこんな魔導士、いや、雀士が居るなどとは!! 負けたよ……」

完全敗北。自ら作り上げた可愛い戦闘機人たちが捕まっていく知らせもモニターに映し出されている。
笑いが止まり、スカリエッティはがくんと首をうなだれた。
そして静かに両手首を差出し、はやての後ろに居るフェイトに向かって呟く。

「約束だ。私は逃げも隠れもしない」

「ジェイル・スカリエッティ……貴方を逮捕します」

フェイトは淡々とスカリエッティを拘束し、次にトーレとセッテを拘束しようとするが、
ガシャンと牌をぶちまける音がして思わず卓を見た。

「は、はや……て……?」

はやての真っ白い背中と卓のグリーンの対比が鮮やか過ぎて、なぜか恐怖を覚える。
ぎりぎりまでリンカーコアをすり減らして闘ってきた集中力が、ついに切れてしまった。
まさに全力全開で、はやてはきっちり力を使い切ったのだ。

540 CRR :2009/09/24(木) 23:27:08 ID:v8sJQzmw
「ブラスタースリー!! ディバイン……バスタ―――――っ!!」

「きゃあああぁぁあぁっ!!」

スカリエッティがハコを被ったのとほぼ同時刻。
なのはの全力全開が、逃げ惑うクアットロに直撃した。
瓦礫の中で空間モニターを開くと、フェイトに無抵抗で連行されるドクターの姿が見える。
満身創痍の体で虚空をつかむように手を伸ばしたクアットロ。
いったい、自分たちには何が足りなかったのだろうか? その答えが、モニターに映っていた。

「八神はやて……!&nbsp;お前の運をワタシにくれや、ドクターに……くれや……」

それだけ力なく呟くと、クアットロの視界が暗転した。




―――――数ヵ月後。
すっかりピンフ、ではなくて平和を取り戻した機動六課の指揮官のデスクで、はやてがモニターを開いている。
スカリエッティ麻雀で削られたリンカーコアも無事全快。またいつもの様に仕事に戻る……

「ロン。メンタン三色やで、クアットロ」

「くぅ……っ!!」

……わけが無かった。
空間モニターは軌道拘置所の三つの部屋につながっている。
スカリエッティの監房、トーレの監房、クアットロの監房。
はやては仕事の合間を縫って、よくこの三人とネット対戦麻雀をするようになった。

「しっかし、あの時で一生分の勝負運を使い果たしてしまったような気もするわ……あ、カン」

モニターをタッチして牌を四枚寄せる。
それだけで画面にミッドチルダ語で『和了(アガリ)』と表示され、役が画面に晒された。

「お、リンシャンツモや」

『くっくっく、嶺上開花だけでも十分強運だと思うがね』

囚人服を纏ったスカリエッティが、はやての愚痴に苦笑する。
軌道拘置所に入りはやてと麻雀を打ち始めてもう2ヶ月。
モニター越しとは言えトリオ打ちになっているはずの拘置所組は、未だトータルでだれもはやてに勝って終わったことが無い。
さすがに地下施設内での闘牌のような悪魔じみたオーラはもう出ないが、それでも十分やっていけるはず。

「それがあかんのよ。これじゃ来年の予算を『ごっそり』取れへんもん……」

(確かにドクターの言った通りです。この狸……じゃなかった。この女、底が知れない……!!)

モニター越しにくねくねと体をくねらせながら、親指を咥えて愚痴をこぼすはやて。
その姿を見て、トーレはいろんな意味で背筋がぞくっとした。
自分はこんな人間と戦っていたのか。戦力と言うより、器の違いが感じられる。

「せやから、今のうちにこうやって勝負勘を……お、リー」

「あ―――――っ!! はやてちゃんがまたサボってるですっ!!」

リーチボタンに手をかけようとしたはやての耳に、甲高い声がビリビリ伝わってくる。
ふよふよと浮かびながらはやてに近づくのは、我等がちっちゃい上司・リインフォースⅡ。
はやての目の前に現れ、腰に手を当ててプリプリと頬を膨らませている。

「全く、今は勤務中ですよっ! 幾らマイスターでもこれだけはガツンと言わないと気が済まないですっ!!」

「あ、あはははは……トイレの窓から逃げたるっ!!」

「何でトイレなんですかっ!! 許しませんよはやてちゃんっ!!」

一瞬の隙を突き、はやてが部屋のドアまでダッシュ。
リインはその後を追いかけ、燃費も気にせず高速ではやてを目掛け飛んでいく。
残されたのは、開きっぱなしの空間モニター。

「……どうします? ドクター」

「まぁ、今日はこれでお開きだろうな。それともサンマ(三人麻雀)に切り替えるかい?」

「ぜひともやりましょう!」

トーレとクアットロが、スカリエッティの案に乗る。
となると、今の局は強制リセットで閉じられてしまう。
はやての画面が消える前に最後に映っていたのは、筒子の一気通貫・東二枚・北二枚の『東北新幹線』シャボ待ちテンパイ。
なんとも『はやて』らしい役が、麻雀という底の知れない闇に舞い降りていた。




終了。

541 CRR :2009/09/24(木) 23:35:59 ID:v8sJQzmw
以上、お付き合いありがとうございました。
おかげで麻雀のいい勉強になりました(?)

司書様へ。
前々作・「ヤガミ 〜闇に降り立った夜天の主〜」と
前作「ムダヅモ無き管理局改革 〜ミッドチルダ電撃作戦〜」と今作の三作を、
「夜天牌 〜リリカル麻雀飛竜伝説〜」のタイトルでまとめていただけますでしょうか。

では、またお会いしましょう!


おまけ
―――闘牌指導(嘘)―――

○永 咲様
原○ 和様
片岡 優○様
池○ 華菜様
東横 ○子様

○木 し○る様
鷲○ 巌様

○泉 ジュ○イチ○ー元総理大臣様
麻○ タ○ー総理大臣様
ジ○ージ・W・○ッシュ大統領様
ベ○ディ○ト1○世教皇聖下様

阿○田 ○也様
○南 善一様

爆○ 弾○郎様

人鬼様

哭きの○様
雨○ 賢様

植○ 佳奈様
小山 ○志様



―――スペシャルサンクス(本当)―――

n氏
G氏

542 CRR :2009/09/24(木) 23:39:04 ID:v8sJQzmw
修正
>>541
「〜のタイトルでまとめて」→「〜のタイトルで長編3作扱いに」
よろしくお願いします。

543 名無しさん@魔法少女 :2009/09/25(金) 15:55:26 ID:kkAEKS1o
投下乙っした!

相変わらず氏のSSは面白いっすねww

544 名無しさん@魔法少女 :2009/09/25(金) 19:06:48 ID:UOXzpprs
なんという超人麻雀

545 名無しさん@魔法少女 :2009/09/27(日) 20:51:43 ID:F2Yneeeg
>>541
麻雀よく知らないけどワラタwwww
GJ!!

546 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/28(月) 23:49:59 ID:NgkHSIe2
ども。また欝だけど、まあ思いついてしまったのだから。
二レスです。
欝・グロ注意 あぼんはコテかIDで

 タイトル「無知は危険」

547 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/28(月) 23:50:45 ID:NgkHSIe2
     1

 ごぼっごぼっ
 嫌な音。
 息が漏れている。漏れたところから血が出てる。漏れた息と流れる血が混じって、血の泡がもこもこと。
 
 痛いよ、痛いよ、痛いよ。
 助けて、助けて、助けて。

 助けが来ないことは、自分が誰よりもよく知っている。
 誰も来ない。自分がここにいることは誰も知らないのだから。
 誰にも内緒で、一人だけでここまで来たのだから。

 囓られているお腹。割れた皮を左右から引っ張られて、内圧で臓物がはみ出ている。
 もう、手も足も動かないから、抵抗はできない。柔らかいところから食べられていくだけ。
 お腹を囓られて、開かれて、内臓を引きずられて。
 それは温かい臓物を食べている。血にまみれて、体内から漏れ出す独特の臭気に包まれて。

 ねえ、美味しいの? と聞きたくなった。せめて、そうであって欲しい。
 だって、食べられているのに。
 この自分の命を奪っているのに不味いだなんて、それはあまりにも酷すぎる。せめて、美味しく食べて欲しい。
 何でこんなになって自分は生きているんだろう、という疑問はなかった。
 当たり前だけれど、死ぬなんて初めてのことなのだ。だから普通なんてわからない。皆が皆、こんな風になるのかと考えている。
 痛みはない。もう麻痺している。痛いというより、辛くて苦しい。

 可愛らしい子供を見つけたから。だから、お友達になろうと思っただけ。
 親がいるなんて思わなかった。いや、親がいても別に構わないと思った。だから、気にしなかった。
 子供と一緒に遊んでいると、親が来た。
 親に、牙をむかれた。
 喉笛を噛みきられた。
 手足の関節を噛み砕かれた。
 それでもう、動けなくなった。
 痛かったのは最初だけ、すぐに痛覚が麻痺してしまった。

 違うんだ、と最初に思った。
 これが本物なんだ、と何故か思った。
 教えてくれれば良かったのに。
 これが本物なんだと、教えてくれれば良かったのに。
 ママは、なんてうっかりさんなんだろう。
 ママはきっと泣くんだ。とっても、とっても泣くんだ。
 ごめんね、ママ。私、賢くなかったんだよ。
 皆が言うほど賢くなかったんだよ。
 ごめんね、なのはママ、フェイトママ。
 だって……だって……






 ヴィヴィオは、ザフィーラしか知らなかった。
 狼とは、皆ザフィーラのようなものなのだと思ってしまった。
 だから、野生の狼を見つけてもすぐに分かり合えるのだと信じた。
 それは、大きな間違いだった。

548 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/28(月) 23:51:23 ID:NgkHSIe2
    2







「って言うことがないように、ちゃんとヴィヴィオにザフィーラのことを教えておいた方が良いと思うんだ。なのはもそう思うよね?」
「うん。わかったけどフェイトちゃん、ちょっと落ち着こう、怖いよ?」


    終

549 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/09/28(月) 23:52:16 ID:NgkHSIe2
以上、おそまつさまでした。



アルフ? 彼女は、ヴィヴィオには人間モードで接していいると思うんだ。

550 名無しさん@魔法少女 :2009/09/29(火) 16:47:50 ID:EB7w65F.
>>549
んー……
何だかなぁ…、オチが有るとは言えやり過ぎとしか言い様がない気が…

551 名無しさん@魔法少女 :2009/09/29(火) 20:49:48 ID:D8VOzYpE
GJ!

酷いオチだなぁwww
ギャップが凄かったですww

552 名無しさん@魔法少女 :2009/09/30(水) 02:47:05 ID:SI8vy9zY
GJ!!です。
フェイトさんグロイです。具体的過ぎるw

553 名無しさん@魔法少女 :2009/10/02(金) 22:55:13 ID:vvFzrwzw
むしろ誰かガチでグロもの書いて欲しい

554 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 20:27:06 ID:xrXFAEl.
はやゲンが読んでみたい。
つか、誰がこの二人にフラグが立ってるって思ったんだw?

555 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 20:52:35 ID:XEekfiFI
はだしのゲンかと思った

556 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 21:25:23 ID:P.P4TYwc
なのはさん拷問なら書けないこともない。

557 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 21:53:59 ID:4pLry46.
戦闘を
一心不乱の戦闘ssを

558 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 21:59:29 ID:DrqmU2PA
ジャンルは何でもいいからエロいのが読みたい。
最近は実用性があまり無い

559 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 22:30:21 ID:aKrMtaFQ
>>554
呼ばれた気がする。ちょっと待っててくれ。

560 名無しさん@魔法少女 :2009/10/03(土) 22:39:28 ID:Js4frGlQ
>>559
よろしく頼む。正座して待ってる。

561 名無しさん@魔法少女 :2009/10/04(日) 09:49:35 ID:Fp.cg8pk
↑全裸でが抜けているぞ、当然ネクタイ着用は言うまでも無いな?

562 名無しさん@魔法少女 :2009/10/04(日) 19:05:55 ID:98VRXUfg
>>560
そろそろ寒くなってくるから靴下も忘れずにな

俺も>>557の要望に応えられるようちょっくら頑張ってくるぜ

563 名無しさん@魔法少女 :2009/10/04(日) 23:14:20 ID:UZ.xZFvE
ネクタイだの靴下だの身に着けてたら全裸じゃないような気がするけどどうでもいいぜ

564 B・A :2009/10/05(月) 00:00:31 ID:tvt3mlKQ
久々です。
非エロですが投下いきます。


注意事項
・sts再構成
・非エロ
・バトルあり
・オリ展開もあり
・基本的に新人視点(例外あり)
・ガリューは近距離パワー型、インゼクトは群体型の遠隔操作型。
・タイトルは「Lyrical StrikerS」

565 Lyrical StrikerS 第7話① :2009/10/05(月) 00:01:18 ID:tvt3mlKQ
第7話 「ホテル・アグスタ」



徐々に多忙を極めるスケジュールの合間を縫い、はやては古巣である陸士108部隊の隊舎を訪れていた。
ここは彼女が指揮官研修を受けた陸士部隊であり、スバルの父親であるゲンヤ・ナカジマ三等陸佐が部隊長を務めている。
レジアス中将の口添えで陸士部隊の協力を扱ぎつけることができたはやては、旧知であるゲンヤにレリックの密輸ルートの調査を依頼していた。
そのため、機動六課設立後に彼女が恩師と会うのはこれで二度目である。
強面の顔に似合わず寛容で話のわかる彼は、急な来訪にも快く応じてくれた。
だが、教え子の訪問で頬に浮かんでいた微笑は、はやてがレリック事件の捜査状況を語ったことで表情を一変させた。

「ジェイル・スカリエッティか……………噂だけなら俺も聞いたことがある」

老け気味の顔を更にしかめながら、ゲンヤは呟く。
六課の初出動から2週間が過ぎ去り、レリック事件の幾つかの進展を迎えていた。
その1つが、事件の影に見え隠れする重要参考人の判明である。

「ロストロギア関連事件を始めとして、数え切れない罪状で広域指名手配されている、第一級捜索指定の次元犯罪者。
うちのテスタロッサ・ハラオウン執務官が、数年前から独自に追い続けている男です」

どこの世界にも、異端と呼べる者は存在する。
ジェイル・スカリエッティという男もその1人だ。
出身・経歴全てが不明。歴史に名を刻む程の天才と称されながらも、生命操作や生体改造等の違法研究に手を染めたことで管理局に追われており、
数多くの世界で彼が利用していたと思われる違法研究施設が見つかっている。
だが、その知名度や足跡の多さに反して、管理局は彼に関する情報をほとんど掴めていない。
そのため、ジェイル・スカリエッティの名を公の場で語ることは局内でタブー視されており、一般局員の中には彼の存在を知らぬ者もいる。
フェイトからその存在を教えられなければ、自分が彼を認知するのはもう数年は先になっていただろう。

「そいつがレリック事件に絡んでいるってわけか?」

「破壊されたガジェットの残骸から、彼のものと思われる署名が見つかりました。
騙りの可能性もありますが、状況を考えれば7分というところです。
彼ほどの天才なら、機動兵器にAMFを仕込むのもそう難しいことではないはず。
ガジェットがレリック目当てで場当たり的に動いているところから見て、恐らくは単独犯」

「そいつはちと早計じゃないか? スカリエッティは俺達の目を逃れながら異世界に高度な研究施設を建設しているんだろう? 
言い方は悪いが、こいつは密輸や強請りみたいな真っ当な犯罪は犯しちゃいねぇ。なのに、短期間で幾つもの施設を
複数の世界に建設できるだけの資金を持っている。ガジェットに大工の真似事をさせているとしても、
色々と辻褄が合わないと思わないか? 黒幕かスポンサーか知らないが、少なくとも大物が1人は絡んでいると俺は思うな」

ゲンヤの言葉に、はやては神妙な表情で頷き返す。
はやて自身、管理局が何年も追いかけていながらスカリエッティの指紋1つ採取できていないことに疑問を抱いていた。
いくら身軽な単独犯といえど、個人で組織を相手にすることには限界がある。だが、捜査に影響を及ぼせる者がバックに付いていたとしたら? 
そう思わせる状況証拠は、実は既に見つかっている。署名とは別に、破壊されたガジェットの残骸からジュエルシードと呼ばれるロストロギアが見つかったのだ。
当事者ではないため、余り詳しいことはわからないが、ジュエルシードはかつてなのはとフェイトが出会うきっかけとなった
プレシア・テスタロッサ事件(PT事件)において騒動の中心となったロストロギアであり、2人にとってはとても因縁深い代物であるらしい。
回収されたジュエルシードはその後、本局の保管庫で厳重な管理体制に置かれていたが、数ヶ月ほど前に研究目的で地方の施設に貸し出され、
そのまま何者かに強奪されている。状況からして、スカリエッティがフェイトやなのはへの挑戦状としてガジェットに埋め込んでいたと思われるが、
問題なのは強奪されたことを当事者である2人はおろか、その事件の対応に当たったかつての提督達すら与り知らなかったことだ。
同じ第一級捜索指定ロストロギアでありながら、ジュエルシードはレリックよりも遙かに危険度が高い。
場合によっては幾つもの次元世界が次元震によって消滅する危険すらあるロストロギアが紛失していながら、
それに関する情報が出回っておらず、遺失物管理部も目立った動きを見せていない。
何者かがジュエルシードを外部に持ち出す算段を付け、強奪の情報を隠ぺいして捜査妨害を行っているという推論は十分にできる。

566 Lyrical StrikerS 第7話② :2009/10/05(月) 00:02:22 ID:tvt3mlKQ
「とにかく、密輸ルートの洗い出しと監視を強化する必要があるな。片手間でできる仕事じゃなくなったぞ、これは」

「すみません、お手数おかけします」

「気にするな、捜査の主導権はそっちにあるんだからな。寧ろ、こんなでかいヤマに2人しか人員を割けなかったうちの方が謝るべきだ」

「ギンガとカルタス主任だけでも、十分に心強いです。ハラオウン執務官も彼女と合同捜査ができて喜んでいましたし」

「ああ、あいつもハラオウンの嬢ちゃんの下で働けるって喜んでいたよ。まったく、ギンガといいスバルといい、
うちの娘はお前んとこの嬢ちゃん達とつくづく縁があるな。うちのもう1人は元気にやっているか? 
見ての通り喧しい奴だからな、迷惑になってないと良いが」

「スバルも頑張ってますよ。あの娘がいると、部隊が凄く明るくなります。
魔導師としても、かなり伸び白の人材ですし」

「そうか? そいつは良かった。けど、お前が新部隊を作るって聞いて不安だったが、
なかなかうまく回っているみたいだな?」

「レジアス中将が色々と便宜を図ってくれてますから。最も、見返りで扱き使われていますけど。
今日だって、うちのフォワード総出でホテル警備なんかさせられて………………」

「なるほど、それで捜査主任の執務官殿が今日は不在という訳か。まあ、組織なんざそういうもんさ。
しかし、お前も変わったな。昔のお前は、何て言うか正しいことのためなら法律や組織の枠なんか知ったことかって感じだったのによ。
部隊長になってからは根回しやら打ち合わせやら、きっちり筋を通すようになったじゃないか」

「それ、褒めているんですか?」

「好きに受け取ってくれ。ま、大人になったってことじゃないか?」

意地の悪い笑みを浮かべながら、ゲンヤは冷め始めた湯呑みを静かに啜る。
ふとはやては、自分の大切な家族である緋色の剣士を思い出した。
こうして教え子をからかうゲンヤの姿に、好敵手であるフェイトをからかうシグナムの姿がダブって見えたのだ。

「うん? どうした?」

「いいえ、別に」

首を傾げる恩師に対して、はやては澄まし顔で答える。
程なくして、捜査会議の準備が整ったとカルタス捜査主任から通信が入り、2人は応接間を後にした。
向かった会議室では、既に両部隊の主要な捜査メンバーが席に着いており、彼らと向かい合うように並べられた奥の机には、
第108部隊の捜査主任であるカルタスが左端の席に座っている。いつもはフェイトが座っている反対側は空席だ。
その中央、空席となっていた中央の椅子に腰かけたはやては、隣にゲンヤが着席するのを待って、厳かに口を開く。

「それでは、今週の捜査会議を始めましょうか」







機動六課に与えられた今回の任務は、ホテル・アグスタで行われるオークションの会場警備であった。
アグスタの周辺の土地はクラナガンの中央区に位置しながらも自然が多く、ホテルの周囲にも深い森が広がっていて視界が悪い。
風光明媚と言えば聞こえは良いが、実際のところ攻めるに易く守りに難い場所だ。
身を隠せる障害物も多く、有視界での戦闘は非常にやり辛くなる。
最も、それは部隊長である八神はやてもわかっていることなので、今回は戦力に出し惜しみをしなかった。
オークションの前日から副隊長2名と交替部隊に夜間警備をさせ、当日は交替部隊と入れ替わる形で
隊長2人と新人4人を警備に宛がう。事実上、これが機動六課の全戦力といっても過言ではなかった。

(改めて見ると、本当に過剰戦力ね。けど、これだけの力をたかがオークションの警備に持ち出すなんて、
部隊長は何を考えているのかしら? 上からの命令って言葉だけじゃ説明できない。
このオークションに何かがあるってことかしら?)

ホテル裏手の警戒を任されていたティアナは、周囲の様子に気を配りながら、そんなことを考えていた。
機動六課はロストロギア関連の事件に対処するための部隊であり、レリックの回収と封印を主目的として設立されたと明言されている。
無論、その過程で調査や探査は行う訳だが、基本的には事件が起きてから対応する火消しとしての役割が大きい。
酷な言い方だが、事件が起きない限り機動課は動くことができないはずなのである。
なのに、今回の会場警備は機動六課が行うことになった。それも、六課単独での任務である。
大規模オークションは密輸などの隠れ蓑になりやすいとはいえ、必ずしも全てのオークションで密輸が行われるとは限らないし、
そもそも複数の部隊を同時展開した方が遙かに効率的に周囲を警戒できるはずだ。
量より質の機動六課では、どうしても手の届かない警備の穴ができてしまう。

567 Lyrical StrikerS 第7話② :2009/10/05(月) 00:02:59 ID:tvt3mlKQ
(まあ、六課が異常なことなんて、今に始まった訳じゃないけれど)

ニアSランクとAAランクで構成された固有戦力“ヴォルケンリッター”を個人で所有している八神はやてを筆頭に、
オーバーSランクの隊長2人と未来のエリート候補達で固められたロングアーチ。
幼年でありながらも自分と同じBランクを取得しているエリオに、レアスキルである竜使役を持つキャロ、
危なっかしくはあっても潜在能力と可能性の塊であり、色んな意味で規格外なスバル。
機動六課の戦力は、無敵を通り越して明らかに異常だ。
そんな中で、凡人は自分だけ。
新人の中では断トツで魔力が低く、大した技能も保有していない射手。
エリオのように立ち回りを演じることはできず、キャロのようにレアスキルを持っている訳でもなく、
スバルが持っているような力もない。
得意の射撃にしても命中率は決して高いものではなく、必死で習得した幻術も実戦では決め手に成りえない。
突出したものを何一つ持たない凡人、それが自分だ。

(スバルには悪いけど、あの娘といると考えさせられるのよね。努力しても越えられない壁があるんじゃないかって。
Bランク試験の時も、スバルがいなくちゃゴールできなかったし。なのはさんから教導を受けても、
本当に強くなれたのか実感が持てない。誰よりもあの人と一緒にいる時間が長いのに、あたしは他の3人の才能に追いつけていない。
あたしが、誰よりも長くあの人に教えを受けているのに)

ティアナは無意識に、奥歯を噛み締めていた。
強くなりたい。
強くなって、夢を掴みたい。
なのに、自分には才能がなくて、天才達の背中を追いかけるのがやっと。
ひょっとしたら、追いかけることでさえできていないのかもしれない。

「もっとだ、もっと頑張らないと……………あたしは………………」

握り締めた指の爪が手の平に食い込み、ジンワリとした痛みが広がる。
ロングアーチからガジェット襲来の通信が入ったのは、その直後のことであった。







『陸戦Ⅰ型、機影30……35……』

『陸戦Ⅲ型、2…3…4………はっ、空戦Ⅱ型、18! 22!』

『前線各位、状況は広域防御線です。ロングアーチ01の総合管制と合わせて、私シャマルが現場指揮を執ります。
各フォワードはホテル前に集結し、防衛ラインを形成。隊長、副隊長はガジェットの迎撃をお願いします』

『ライトニングF、了解』

『スターズ04、了解!』

「スターズ01、了解」

緊迫したやり取りが通信で交わされ、スバルの緊張は否が応にも高まっていく。
震える手の平は汗に塗れ、舌が異様に乾いていた。返事もいつもより固い声音になっていた気がする。
思えば、防衛戦を経験するのはこれが初めてだ。
火事場の炎や崩れたビルに飛び込み、熱さや暗闇に苦しむ要救助者を安全な場所まで運ぶことはあっても、
無傷の人々を脅かす脅威と戦ったことはない。
今、自分の後ろにいるのは何も知らずに朝を迎えた無垢な命達だ。
昨日と同じ今日が来ると信じ、何事もなく平和な一日が終わると願う人々だ。
自分達が仕損じれば、背後にいる彼らが危険に晒されることになる。
その認識は、レスキューとはまた違う緊張をスバルに与えていた。

「緊張している?」

「えっ………なのはさん?」

傍らで共に警戒任務に当たっていたなのはが、優しい笑みを浮かべながら肩に手を置いてくる。
強張った体が僅かに跳ね上がり、背筋を寒気にも似た震えが走る。
意味もなく吐かれたため息は重く、まるで現場に出たての頃のようだ。

「大丈夫、スバルちゃんなら上手くやれるよ。君の魔法は、大切なものを守れる力。
自分の思いを貫ける力。自分を信じて、思いっきりやってみよう」

「は、はい」

「前にも言ったけど、わたし達は通信で繋がっている。周りが敵だらけでも、私達は1人じゃないの。
何かあれば互いにフォローし合えるし、力を合わせれば困難にも打ち勝てる。
戦うのはスバルちゃんだけじゃない。みんなが一緒だってこと、みんなに守ってもらえるってこと、忘れないで」

なのはの言葉が、スバルの緊張を1つ1つ解き解していく。
自分は1人じゃない、気負う必要はない、一緒に戦えば困難にも打ち勝てる。
そんな当たり前のことを忘れていた自分が情けなかった。
結局、自分はまだ未熟な新人なのだ。
初出動を成功させ、毎日の辛い訓練をこなしていることで少し調子に乗っていたようだ。
自分は1人で戦っている訳ではない。それぞれに果たすべき役割があり、力を合わせることで理不尽に抗う。
それがチームだ。
それが機動六課だ。

568 Lyrical StrikerS 第7話③ :2009/10/05(月) 00:04:00 ID:tvt3mlKQ
「なのはさん、ありがとうございます。あたし、やれそうです」

「うん、地上は任せたよ。わたしはフェイト隊長と一緒に空を抑えるから、一緒にはいられないけど、
ティアナの指示に従っていれば、きっとうまくいくよ」

「はい!」

力強い返事に満足したのか、なのははバリアジャケットを展開して空へと舞い上がる。
その背中を見送ることなく、スバルは踵を返して自分の役目を果たすために駆け出した。
背中に感じる距離感が、そのまま今の自分達の実力差を表しているように感じた。
この地上と空を隔てる距離を、いつかは埋めたい。少しずつでも良い、自分の力で、
あの人のように空を羽ばたきたい。揺るがない力で命を守り、優しい言葉で心を救いたい。
今は無理でも、いつか必ず。
だから、今は自分に課せられた役目を果たそう。
その道の先に、あの人の背中があると信じて。







どことも知れない暗闇の中で、1人の男が禍々しい金目を輝かせていた。
ジェイル・スカリエッティ。
レリック事件の陰で暗躍する広域次元犯罪者。
彼の瞳が見据える先には、巨大な仮想ディスプレイが展開しており、そこには森林を押し倒しながら進軍するガジェットと、
それらを迎撃する魔導師達の姿が映し出されていた。

「ふむ、警備は一部隊のみと聞いていたが、まさか機動六課を宛がってくるとは……………これは私へのプレゼントか、
それとも彼なりのジョークと見るべきか。何れにしろ、余り宜しくない展開だね」

今のところ、戦況は相手側が優勢である。
ガジェット達は物量でこそ圧倒できているものの、それを撃ち落とす面々は何れも一騎当千の古兵達ばかり。
ある者は苛烈な剣戟で大型ガジェットを切り刻み、ある者は正確な射撃で小型ガジェットを撃ち抜き、
ある者は鉄壁の守りでガジェットの進軍を足止めする。空でも2人の魔導師が防衛ラインを形成し、
地上への侵攻を抑え込んでいるようだ。
如何に強力なAMFを有していても、プログラム通りに行動し、無秩序に破壊を振りまくだけの木偶では手に余る相手である。

「さて、アレを連中より先に確保できれば、マテリアルを手に入れる取引がやりやすくなるのだが。
やはり、ここは彼女に助力を請うべきかな。都合の良いことに、相手にはアルザスの竜召喚師がいる。
それに人造魔導師であるFの少年、ルーテシアの相手としてこれ以上に相応しい者達はいない」

狂気に彩られた笑みを浮かべながら、スカリエッティは通信回線を開く。
程なくして、前方のディスプレイに幼い少女と薄汚れた壮年の男が映し出された。
ルーテシア・アルピーノとゼスト・グランガイツ。
愛しい友人にして自分が心血を注いで造り上げた実験体達だ。

「ごきげんよう、騎士ゼストにルーテシア」

『ごきげんよう』

『何の用だ?』

こちらの挨拶に対して、両者の反応は対照的であった。
無表情ではあるが友好的な返事をするルーテシアと違い、ゼストの声音にはあからさまな敵意が込められている。
それはそのまま、彼の自分への不信の度合いを表していた。

「冷たいね、近くで状況を見ているんだろう? あのホテルにレリックはなさそうだが、
私の研究にどうしても必要な骨董が1つあるんだ。少し、協力してはくれないかね? 
君達なら、実に造作もないことなのだが……………」

『断る。レリックが絡まぬ限り、互いに不可侵を守ると決めたはずだ』

静かに、だが有無を言わせぬ調子でゼストは答える。
予想通りの答えに、スカリエッティは内心で笑みを禁じ得なかった。
そもそも、スポンサーから彼らへの協力を控えるようにと命じられているが、スカリッティからすればそんな命令など守る義理もなく、
必要とあらば適宜援助の手を差し伸べている。金銭の援助こそしていないが、衣食住はきちんと保障しているし、定期的な健診も行っているのだ。
しかし、ゼストはそれを甘受することを是とせず、ルーテシアを伴って不憫な放浪生活を送っていた。
彼がこちらの助力を断るのは、何も盟約だけが理由ではない。
あろうことか、古き騎士であるゼスト・グランガイツは犯罪者たる自分から幼いルーテシアを遠ざけようとしているのだ。
それでいて、自身の目的のために自分達と同盟を結び、互いに利用し合う関係を築いている。
燃えカスのような正義感と目的のために手段を選ばぬ悪意。
光と闇、2つの心の狭間で揺れ動くこの男は、胸の奥底でどれだけの葛藤を描いているのだろうか? 
それを想像しただけで、自然と笑みが零れてしまう。
だが、今はその楽しみに浸っている時間はない。
元より彼を説得するなどという選択肢はこちらにないのだ。彼はあくまで傍らの少女の護衛。
真に必要なのはルーテシアの召喚魔法だけだ。

569 Lyrical StrikerS 第7話④ :2009/10/05(月) 00:04:36 ID:tvt3mlKQ
「ルーテシアはどうだい? 頼まれてくれないかな?」

『良いよ』

被っていたフードを下ろし、ルーテシアは静かに頷く。
ゼストと違って、彼女は自分達に好意的な感情を抱いている。
最も、彼女はそれを感情として認識することはできない。長い時間をかけて、自分は心を持たない人形であると刷り込んでいるからだ。
これはゼストが自分達を快く思わない要因の1つでもある。

『良いのか、ルーテシア?』

『私はドクターのこと、嫌いじゃないから』

「ありがとう。今度、お礼にお茶とお菓子でもご馳走させてくれ。君のブーストデバイス“アスクレピオス”に、
私が欲しいもののデータを送ったよ。貴重なものだから、ケースは開けないでくれたまえ」

『うん。じゃ、ご機嫌ようドクター』

「ああ、ご機嫌よう。吉報を待っているよ」

その言葉を最後に、スカリエッティは通信を切った。
だが、映像と音声は適当なガジェットを経由してディスプレイに映し続けている。
画面の向こうではルーテシアが厳かな声音で詠唱を紡ぎ、紫色の魔力光を伴って無数の蟲達が呼び出していた。
インゼクトと呼ばれる極小の蟲達は、一匹一匹が自律行動可能な機械を制御し、操る力を有している。
彼女はまずそれをガジェットに取りつかせ、劣勢を覆すつもりのようだ。

「素晴らしい。だが、これすらも彼女の能力のほんの一端。さて、今回はどんなデータを取らせてくれるのかな、機動六課の面々は?」

悪魔のような哄笑を上げながら、スカリエッティはディスプレイ上で展開される戦いに注視する。
禍々しい金色の瞳は、まるで新しい玩具を与えられた子どものようにおぞましくも純粋な光を宿していた。






その時、キャロは左手に燃えるような熱さを覚えた。
見下ろした左手のケリュケイオンの宝石が眩い輝きを放ち、何かに共鳴している。
それはここからずっと向こうにいるはずなのに、まるで手に取るように存在を感じ取ることができた。
本能的にキャロは感じ取った。誰かが、そう遠くない距離で召喚魔法を行使している。

「キャロ、どうしたの?」

「わからない。けど、わかるの。誰かが召喚を使っている…………シャマル先生!」

『クラールヴィントのセンサーにも反応。この魔力反応…………オーバーS!?』

「遠隔召喚、来ます! エリオくん、跳んで!」

「っ!」

エリオが跳躍した刹那、先程まで彼が立っていた場所に無数の熱線が撃ち込まれる。
舞い上がった砂埃の向こうから現われたのは、11機ものガジェット達だ。
どこからともなく転送されてきたガジェット達は、前回の戦いよりも遙かに機敏な動きで散開し、
こちらの防衛ラインを突き崩さんと襲いかかって来る。

「召喚魔法での、奇襲攻撃!?」

「優れた召喚師は、転送魔法のエキスパートでもあるんです」

「何でも良いわ、迎撃いくわよ」

ティアナの号令でこちらも散開し、向かってくるガジェット達へ攻撃を開始する。
だが、撃ち込まれた魔力弾は尽く回避され、今までよりも遙かに強力なAMFがこちらの魔法を打ち消してくる。
ティアナが張り巡らせた橙色の弾幕はまるで意味を成さず、スバルやエリオも本来の力を発揮できずに苦戦を強いられてしまう。

「こいつら、前よりずっと速い!?」

「エリオ、右から来るよ!」

「スバル、そのまま走って! エリオ、スバルが引きつけている間に各個撃破。
キャロはエリオとあたしにブーストかけて!」

「は、はい!」

『待って、補助は私とクラールヴィントがするわ』

『キャロは私に協力してください。作戦があるです』

「シャマル先生、リイン曹長?」

『時間がありません、手短に説明するですよ。まずは……………』

リインの説明を聞き、キャロは反射的に自身の右手を見下ろした。
難しい作戦だ。失敗すれば、全員の命を危険に晒すことになる。
けれど、この役目は自分にしかできない。
震える拳を握り締め、力強い頷きで決意を固める。
目の前では、敵をこちらに近づけまいと必死で槍を振るう少年の姿があった。
危なっかしくも力強い槍捌きを目に焼きつけると、熱い思いが胸の内から込み上げてくる。
あの子のためにも、この作戦は成功させねばならない。

570 Lyrical StrikerS 第7話⑤ :2009/10/05(月) 00:05:15 ID:tvt3mlKQ
「いきます、リイン曹長」

『はいです』

『防衛ライン、ヴィータ副隊長を戻すから、もう少しだけ持ち堪えていてね』

「待って下さい、この戦力で防衛戦を続けると息詰まります。時間が必要だって言うなら、あたしが作ります!」

『ちょっと、ティアナ………………』

シャマルが何か言おうとするが、ティアナは一方的に念話を遮断して手近な遮蔽物の陰に隠れる。
空手だった左手には、いつの間にか二丁拳銃となったクロスミラージュが握られていた。
何をするつもりなのかと考えるよりも先に、小さな光が頭上を飛び越えていく。
リインが敵の召喚師の探索に向かったのだ。
ならば、自分も課せられた役目を果たさねばならない。
ティアナへの疑問を振り払い、キャロは自身を己の意識の底へと埋没させた。







苛立ちが募っていく。
当たらない射撃。
撃ち抜けないAMF。
結果を残せない自分。
自分を頼りとしない指揮官。
今まで、上手く回っていた歯車が噛み合わなくなり、不快な不協和音を奏でている。

(こんなところで、足を止めてちゃいけないんだ。何のために、毎日朝晩練習しているの? 
強くなるためでしょう? 自分の強さを、ランスターの強さを証明するためでしょう? 
だったら、あたしがやらなくちゃいけないんだ。あたしの力で、お兄ちゃんの強さを認めさせなきゃいけないんだ)

空になった銃身を投げ捨て、新たな銃身を装着してカートリッジを補充する。
敵がどんなに強くても関係ない。
証明するんだ。
特別な才能や凄い魔力が無くとも、一流の隊長達のいる部隊であろうと、どんなに危険な戦いであったとしても、
自分の魔法が困難に打ち勝てると。ランスターの弾丸が、敵を撃ち抜けると。

「エリオ、センターに下がって! あたしとスバルのツートップでいく!」

「は、はい」

「スバル!! クロスシフトA、いくわよ!!」

「おう!!」

キャロを守りやすいようにエリオを下げ、スバルを敵陣に突撃させてガジェットの注意を引きつける。
睨みつけた敵の数は11。いや、もっと増えている。
撃ち抜けるか?
倒せるか?
答えはイエスだ。
それ以外の答えなんていらない。
炸裂する4発のリロードがその証明だ。
兄の魔法が、自分達兄妹の魔法が、あの鉄の塊を完膚無きまでに破壊する。

『ティアナ、4発ロードなんて無茶だよ!! それじゃティアナもクロスミラージュも!!』

「撃てます!!」

《Yes》

ロングアーチからの言葉を無視し、魔力を練り上げる。
両手の相棒の肯定が、今は何よりも心強い。
まだいける。
もっと魔力を。
もっともっと力を込めれば、あの強力なAMFだって撃ち抜ける。
臨界にまで達した魔力は紫電を迸らせ、張り裂けそうな痛みが全身に襲いかかった。
その苦痛に耐えながら、ティアナは撃発音声を告げる。

571 Lyrical StrikerS 第7話⑥ :2009/10/05(月) 00:05:54 ID:tvt3mlKQ
「クロスファイアァァァァァァッ、シュートッ!!!」

撃ち出された16発の誘導弾が一斉にガジェットドローンに襲いかかる。
こちらの攻撃に気がついたガジェットが回避を試みるも、既に誘導弾の雨は標的を捉えている。
一発で駄目なら二発、二発でも倒せないなら三発。相手がこちらの魔力をかき消すよりも先に、
フィールドに空いた穴を突き抜けて鋼の装甲に魔力弾を叩き込む。
撃つ。
射撃つ。
連射つ。
立て続けにトリガーを引いたことで指の皮が剥け、鮮血が手の平を伝う。
それでも、ティアナは引き金を引き続けた。
クロスファイアシュートが撃ち終われば、追撃とばかりにショートバレットを連射。
被弾を免れたガジェットに狙いをつけ、叫び声を上げながらスクラップの山を築いていく。
そう、敵を狙ったはずだった。
ちゃんと制御していたはずだった。
ガジェットの動きだって読んでいた。
なのに、どうしてその一発がスバル目がけて飛んでいる?
自己嫌悪する暇すら与えられない。
背後に迫る魔力弾を見て、凍りついた親友の表情。
自分はそれを、生涯忘れることはないだろう。

「っ…………スバルぅっ!!」

瞬間、虚空より放たれた桃色の砲撃が魔力弾をかき消し、白衣の魔導師が地上へと降り立つ。
なのはが気づいて、魔力弾を撃ち落としてくれたのだ。

「なのはさん!?」

「ティアナ、これは…………どうして、こんな……………」

「あ、あたしは……………」

表情を強張らせるなのはを前にして、ティアナは何と答えれば良いのかわからなかった。
言いたい言葉はたくさんあった。だが、口を開こうとする度に弁明の余地がない誤射の光景が瞼の裏に蘇った。
煙を上げながら瓦礫と化したガジェット達。それらに背中を撃ち抜かれたスバルの姿がダブり、
ティアナの腕が力なく垂れ下がる。

「あたしは…………あたし、は…………」

「ティア、危ない!」

撃ち漏らしたガジェットの一機が、呆然と佇むティアナへと迫る。
動かなければやられる。
わかっていても、彼女は動くことができなかった。
誤射の衝撃の余り、思考が戦うことを拒否している。

「ティア!」

「レイジングハート!」

《Protection》

「でやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

ギリギリのところでなのはのバリアが間に合い、弾かれたガジェットが鉄槌の一撃で粉砕される。
ヴィータが戻って来たのだ。余程急いで戻ってきたのか、呼吸は乱れていてデバイスを提げる肩も震えている。
道中、彼女が如何に自分達の身を案じてくれていたのかが痛いほど読み取れる。

572 Lyrical StrikerS 第7話⑦ :2009/10/05(月) 00:06:53 ID:tvt3mlKQ
「ヴィータ副隊長!!」

「黙っていろ!」

スバルを一喝し、ヴィータは怒りに揺れる三白眼でこちらを睨んでくる。

「ティアナ、この馬鹿!! 無茶やった上に味方撃ってどうすんだ!!」

「あの…………ヴィータ副隊長、今のもその…………コンビネーションのうちで……………」

「スバルちゃん!」

「ふざけろタコ!! 直撃コースだよ、今のは!!」

「ヴィータちゃん、今は言い合いしている場合じゃ……………」

「お前が撃たれていたのかもしれないんだぞ! 良いから2人とも下がらせろ! 後はあたし達でやるぞ!!」

『なのは、もう空は私1人で大丈夫だから、ヴィータの言う通りに。子ども達をお願い』

「……………了解。スターズ03、04はバックへ後退。以後はライトニング03と合流し、ライトニング04の護衛をするように」

隊長達の言葉が、空っぽになった頭の中を通り抜けていく。
ちゃんと復唱できたのかも定かではない。けれど、気付くと体は勝手に命令を実行していた。
ただ、1つだけ確かなことがある。
自分は、覆しようのない致命的な失敗を犯してしまったということだ。







「そう、見つけたのね」

単身で出撃させた召喚蟲からの念話を聞き、ルーテシアは無感情な声音で呟く。
インゼクト達が警備の注意を引きつけてくれたことで、彼は何の障害に遭遇することもなく目的の物を回収することができた。
スカリエッティから強奪を依頼された物が何かはわからないが、彼の言葉を借りると魔法と物理の両方で施錠された厳重なケースらしい。

「ガリュー、ミッションクリアー。良い子だよ。じゃ、そのままドクターのところまで届けてあげて」

これで自分の役目は終わった。
後は適当な頃合いを見計らってこの場を去り、管理局の追跡を逃れるだけだ。
一時は覆った戦況も、再び押し返され始めている。余り、長居はできそうにない。

「品物は、何だったんだ?」

「わかんない。オークションに出す品物じゃなくて、密輸品みたい」

「そうか。では、そろそろお前の探しものに戻ろう」

「うん……………あれ?」

周囲の警戒をさせていたインゼクトから連絡が入り、ルーテシアは首を傾げる。
何かが近づいてきている。とても小さいけれど、確かな魔力反応。
恐らくは、Aランク魔導師。
ホテルを警備している連中の仲間だろうか?

「ゼスト、変なのを倒してからにするね」

「あまり時間はかけるなよ。今、連中と事を構えるのはまずい」

「うん、わかっている」

小さく頷き、意識を集中させる。
極細の魔力の糸で繋がったインゼクト達は、主の命に従って謎の魔導師を迎え撃つ。
戦いはすぐに終わる。
その時、2人は何の疑いの余地もなく、そう信じ切っていた。







突如として飛来した小型の蟲達に腹部を切りつけられ、鋭い痛みにリインは険しい表情を浮かべる。
飛散した騎士甲冑の破片が溶けるように無色の魔力へと帰していき、傷口からは一筋の赤い鮮血が走っていた。

573 Lyrical StrikerS 第7話⑧ :2009/10/05(月) 00:07:36 ID:tvt3mlKQ
「これが、敵の使役獣……………こんなに素早いなんて……………」

接近は感知できていたのに、残像を捉えるのがやっとだった。小さな爪による攻撃も、人間相手には大した脅威とは成り得ないが、
サイズの小さな自分には恐ろしい殺傷力を秘めた凶器となる。
相手もそれを感じ取ったのか、こちらを嘲笑うように空中でステップを踏み、余裕を見せつけてくる。
ネジのような形をしているが、れっきとした生き物のようだ。或いは、自分のように人工的に生み出された機械生命体なのかもしれない。

「言葉、わかるですね? あなたとあなたの主がしていることはとても悪いことなのですよ。
大人しくこちらの言うことを聞いてくれるのなら、こちらにもお話をする用意があるです」

腹部の出血を押さえながら告げるも、蟲達は大人しくするどころか半透明の羽根を激しく羽ばたかせながらこちらを威嚇し、鋭い爪を振り回してくる。
咄嗟にリインはシールドで身を守ると、氷の短剣で左右に迫る虫達を牽制しながら距離を取る。
どうやら、彼らの主はこちらと交渉する気など最初からないようだ。

「いきなり攻撃するのは、傷害罪ですよ!」

振り下ろされる爪の連撃を避けながら、リインはバインドと短剣で蟲達を攻撃する。
しかし、蟲達は小刻みに動き回りながら攻撃を回避し、逆にこちらの死角から鋭い一撃を打ち込んでくる。
ただでさえ素早い上に、集団で囲い込まれてしまうと致命傷を避けるのが精一杯であり、瞬く間に赤いラインがリインの柔肌に刻まれていった。
しかし、リインの表情には勝利を確信する笑みが浮かんでいた。まるで、傷つくことが自身の狙いであるかのように。

「キャロ、見つけたですね。なら、もう痛いのをガマンしなくても良いですね」

傷だらけの体を労わりながら、リインは撤退を開始する。
彼女は初めから、彼らの注意を引きつけるための囮だったのである。
本当の狙いは、ケリュケイオンと敵の召喚師の共鳴を逆手に取った召喚経路の逆探知。
それがリインの立てた作戦であった。
そして、その目論見は見事に達せられ、敵の位置を掴み取ったキャロがロングアーチを介してフォワード全員にその情報が送信している。

「お話はお仕置きに変わったです。頼みましたよ、シグナム」







不意に右手が焼けるような痛みを覚え、ルーテシアは眉間に皺を寄せる。
理由はわからないが、誰かに見られているようだ。
アスクレピオスがその何者かと共鳴し、相手はこちらの存在を正確に感じ取っている。

「どうした?」

「来る、短距離転送……………左」

「っ!」

ゼストが槍を振るうのと、炎を纏った斬撃が繰り出されたのはほぼ同時であった。
一瞬、目の前の相手と視線が交わる。
透き通るような白い肌と緋色の髪。
血臭の漂う戦場にいても尚、その美しさを損なわない天女のような女だ。
だが、その美貌とは裏腹に剣戟は華麗にして豪快。
立て続けに叩きつけられる炎の剣はそのどれもが一撃必殺であり、背後のルーテシアを庇うゼストは防戦を余儀なくされた。

「警告もなしに攻撃とは、それが管理局のやり方か!?」

「一般人なら後ほど謝罪もしましょう。ですが、そこの少女が従えている蟲は我々に敵対行動を取っている。
今回のホテル襲撃の重要参考人として、ご同行願えませんか?」

「断る。どうしてもというのならば、その剣で俺を捩じ伏せてからにするんだな」

「気は進みませんが、そうしなければ話が出来ぬと言うのならば仕方がありません」

一陣の風が吹き抜け、両者は踏み込みは神速の領域へと加速する。
先手を取ったのはゼストだった。数合の打ち合いで、敵が尋常ならざる相手であると感じ取ったが故に先制攻撃である。
だが、裂帛の気合と共に打ち込んだ斬撃が紙一重で受け流され、逆にカウンターで首筋を狙われる。
咄嗟に体を捻ったゼストは耳元を掠めた刃を避けるように距離を取り、遠心力を加えた払いで相手の防御を切り崩さんとする。
全盛期に比べれば見る影もないが、それでもその一撃は容易く岩を砕く。しかし、女は今度も最小の動作で槍を受け流し、
今度は脇腹と足を狙ってくる。危ういところでバリアを張って凌ぐが、今度は女に反攻の機会を許してしまい、
燃え上がる幾本もの炎の軌跡が襲いかかってきた。
こちらの重い一撃を弾きつつも緩まぬ速度と正確な斬撃。
僅かな隙も見逃さぬ嗅覚と鬼神の如き迫力。
鍛練の量もさることながら、潜り抜けた修羅場の数が尋常ではない。
この若さにしてこれだけの剣気、如何ほどの死線を体験すればこのような騎士となるのであろうか?

574 Lyrical StrikerS 第7話⑨ :2009/10/05(月) 00:08:16 ID:tvt3mlKQ
「その太刀筋、あなたも古代ベルカ式のようですね。これほどの達人が、まだ存命していたとは……………」

「それはこちらの台詞だ。その若さでその技量、ただの娘ではあるまい」

「時空管理局本局機動六課、シグナム二等空尉です。あなたは?」

「最早、名乗るべき名もない。俺は残骸にして亡霊、ただの屍だ」

「では、その屍の身で何故、このようなことを?」

「語ると思うか? ふっ、因果なものだ。このような状況でなければ、心躍る死合となれたものを」

「ええ、非常に心苦しい。ですが、大人しく投降してくださるというのなら、再戦の機会もありましょう」

「残念だが、それはできない。我々には果たすべき目的がある。それに、おっかない従者が主に呼びつけられたようだ」

「なに?」

刹那、背後に迫る殺気にシグナムは剣を一閃させた。
鈍い音が鼓膜に響き、漆黒の刃が炎の魔剣を押し返す。
突如として襲いかかって来たのは、甲冑のような外骨格を纏った二足歩行の昆虫だった。
左手には一抱えほどのケースが提げられていて、右腕からは鋭利な爪が伸びている。
2対の瞳は血のように紅く、風になびく紫紺のマフラーは野性的なフォルムと合間って、
言い様のない迫力を醸し出していた。

「2匹目の、召喚蟲だと!?」

「ガリュー、ケースを投げろ!」

ゼストの命令でガリューは手にしていたケースを投げ渡し、右手を拳へと戻して強烈なラッシュをシグナムへと叩き込んだ。
右から左から、疾風の速度で繰り出される打撃の嵐はシグナムの剣戟よりも苛烈で容赦がなく、
身軽さは好敵手であるフェイトにも匹敵する。
不意を突かれる形となったシグナムは、ガリューの攻撃を受け止めるので精一杯であった。

「くっ、このパワーとスピードは……………!」

「KYSYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!」

怒涛の勢いに押され、シグナムの体が大きく後退する。
すかさず、ゼストは衝撃波を飛ばして砂埃を巻き上げ、シグナムの視界を塞ぐ。
そして、ガリューと共にルーテシアのもとへと後退すると、事前に彼女が用意していた転送魔法で戦域を離脱した。
どこでも良い、とにかくあの騎士が追って来れぬ場所に逃げなければ。
自分にはまだ、果たさねばならない目的がある。こんなところで、地に屈する訳にはいかない。

(しかし、あの炎と魔力光。ふっ、何か因縁を感じるな、シグナムとやら)

何の根拠もないが、確信めいた予感があった。
自分はまた、あの騎士と殺し合うことになる。
恐らくは、自身の全身全霊を賭けた死合となることだろう。
その時は、きっと彼女も傍らにいるはずだ。
この不甲斐ない、未熟な主の最期を看取るために。







敵の召喚師が撤退した途端、ガジェット達の連携は崩れ去り、AMFも弱体化した。
統制を失った烏合の衆などエース達の敵ではなく、視界を埋め尽くすほどの機動兵器は山のような残骸と化して地面に横たわっている。
特に熾烈な戦いが繰り広げられた正面玄関前は周辺に幾つものクレーターが広がっていて、薙ぎ倒された木々や砕かれた岩が無残にも転がっていた。
その中心で、愛用のグラーフアイゼンを肩に担いだヴィータが静かに告げる。

575 Lyrical StrikerS 第7話⑩ :2009/10/05(月) 00:08:58 ID:tvt3mlKQ
「よし、全機撃墜」

『こっちもだ。召喚還師は追いきれなかったがな』

『だが、いると分かれば対策も練れる。それにどうやら、キャロは敵の存在を感じ取れるようだ。
こちらの存在も知られているかもしれないが、接近がわかるのは大きな利点だ』

「ああ…………あれ、ティアナは?」

シグナムやザフィーラとの思念通話に夢中で気がつかなかったが、さっきまで側にいたはずのティアナの姿がどこにもなかった。
そういえば、通信越しに聞いていた彼女の声音はどこか固く、苛立ちと焦りを感じ取ることができた。
あれとよく似た感覚を、自分はよく知っている。
目指す目的と守りたいものがハッキリとしているのに、それを達成することができない時の歯痒さ。
かつて、はやてのために闇の書の蒐集を行っていた自分とよく似ているのだ。

「なあ、ティアナはどうしたんだ?」

「はい、裏手の警備に…………」

「スバルさんも一緒です」

エリオとキャロの報告を聞き、ヴィータは無言で傍らに立つなのはの顔を見やる。
彼女の表情もいつもと違って暗く、何かを考え込んでいるようだった。
十中八九、さっきの誤射のことだ。
彼女のことだから、自分の教導がうまく行き届いていないせいだとでも思っているのだろう。

(全く、どいつもこいつも1人で抱え込みやがって。フォローする身にもなれってんだ)

とにかく、今はまだ様子を見るしかない。
あんな風に怒鳴った手前、自分が慰めの言葉をかければ却って相手をつけ上がらせることになりかねない。
まずはティアナに自分がしてはいけないことをしたのだとちゃんと理解させ、それから改善させていけば良い。
そう難しいことではない。
難しくは、ないはずだ。







誰もいないホテルの裏手に佇みながら、ティアナは自分が仕出かしてしまったことを思い出していた。
背後に親友の気配を感じるが、今は彼女の優しさが却って辛い。
1人でいたい。
1人で思いっきり泣いて、何もかも頭の中から洗い流してしまいたい。

「ティア、向こう終わったみたいだよ? そろそろ、みんなのところに戻ろうか?」

「あたしはここを警備している。あんたはあっちに行きなさいよ」

自分でも嫌になるくらい、冷たい声音だった。
情けないことに、自分は彼女に八つ当たりしている。
怒鳴ったところで何も解決しないのに、口調は自然とぞんざいなものとなり、
大切な親友の存在すら疎ましく感じてしまう。

576 Lyrical StrikerS 第7話⑪ :2009/10/05(月) 00:09:34 ID:tvt3mlKQ
「あのね、ティア」

「良いから、行って」

「ティア、全然悪くないよ。あたしが、もっとちゃんと……………」

「行けって言っているでしょ!」

決定的な亀裂が心に走った。
背後のスバルが言葉を失い、呆然と立ち尽くしているのが見なくてもわかる。
親友を傷つけていることに、ティアナは後悔を禁じ得なかった。
何もかも弱い自分が悪いのだと、奥歯を噛み締めながらスバルを傷つけてしまった己を自己嫌悪した。

「行ってよ……………1人にして」

「っ…………ごめんね、また後でね、ティア」

力ない呼びかけの後、スバルの気配が足音と共に遠退いていく。
そこまでが限界だった。
ティアナは堪えていた嗚咽を唇から漏らし、握り締めた拳を固いコンクリートの柱へと叩きつける。
拳に鈍い痛みが走ったが、味方に誤射されたスバルの心の方がずっと傷ついているはずだ。

「あたしは…………………あたしは……………」

こんなはずじゃなかった。
自分の強さを証明して、夢を追いかけるはずだった。
なのに、どうして自分はこんなところで泣いている?
どうして、自分はこんなにも弱いのだろう?
力が欲しい。
誰にも負けない力が。
努力が足りないならこの命を差し出しても良い。
悪魔と契約しなければならないのなら、喜んで魂を捧げよう。
だから、仲間を誰1人傷つけない力が欲しい。
みんなを守れる強い力が。






                                                             to be continued

577 B・A :2009/10/05(月) 00:10:41 ID:tvt3mlKQ
以上です。
シグナムがガリューに不意打ちされた後、「こいつ近距離パワー型か」と言わせたかった。
それにしてもエリオが空気。ガリューと対決するまで、もう少し出番はお預けになるかな。
しかし、遂にあの回まで来てしまった。
次回と次々回は序盤の山場みたいなもんなんで、じっくりと考えながら書かないと。

578 名無しさん@魔法少女 :2009/10/06(火) 08:54:18 ID:pQzuiOmU
GJ! 次回も待ってます!

579 名無しさん@魔法少女 :2009/10/06(火) 19:15:27 ID:A44TWAYw
いいよいいよ〜、続きが楽しみだ。

580 名無しさん@魔法少女 :2009/10/06(火) 20:08:46 ID:pwcX/x2s
ちょっと質問させてください。
昨年5月に野狗 ◆gaqfQ/QUaU氏が作成された『お好み焼きの世界』なのですが…
勝手に続編みたいな物を作ってもよろしいでしょうか?

581 名無しさん@魔法少女 :2009/10/06(火) 20:14:06 ID:EDI536T.
作者さん次第じゃね?
ある職人が書いた話を、他の職人さんが別の展開になる話を書いたってケースもあったし。

582 名無しさん@魔法少女 :2009/10/06(火) 20:21:47 ID:rNBa0fxk
勝手には駄目だろ…
とりあえず聞いてみればいい、まぁ既に聞いているようなもんだが

583 野狗 ◆NOC.S1z/i2 :2009/10/06(火) 22:45:38 ID:LhJojOHY
>>580
良い良い良い良い良い良い(ブラスター残響音)

楽しみにしてます。

584 名無しさん@魔法少女 :2009/10/07(水) 06:57:50 ID:kLIETR/E
>>577
GJです!ガリューVSシグナムをもう少し見たかったです。
続きをきたいしてますよ〜

585 580 :2009/10/07(水) 18:18:34 ID:/ZqJjIRI
>>583=野狗 ◆NOC.S1z/i2様
執筆の承認、ありがとうございます。
非才の身ではありますが、精一杯がんばります。

なお、タイトルは『魔法少女リリカルなのはEaterSⅡ(セカンド)〜御当地グルメ大激突〜』。
中の人ネタを一部交えた魔法クッキングバトルネタを予定しています

586 ザ・シガー :2009/10/07(水) 22:09:23 ID:uIl6BZaM
B・A氏GJー!
姐さん、かっけえよ姐さん。



という訳で、いや、全然関係ないのだけれどもw 投下します!
ヴァイス×シグナム、エロ、尻。
タイトルは『ヴァイシグお尻編』です。

587 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:12:11 ID:uIl6BZaM
ヴァイシグお尻編



「これはまた……どうしたんですか?」


 青年、機動六課部隊長補佐官を務める眼鏡の美男子、グリフィス・ロウランはいささかの憐憫を込めた言葉を吐いた。
 それは目の前にいる一人の男性、彼より幾分か年上の男の姿を見ての感想だ。


「いや、まあ色々とな……」


 ツナギ姿の男、機動六課ヘリパイロットにしてエース級狙撃手でもある、ヴァイスグランセニックは言葉と共に自身の頬を撫でる。
 そこには、それはもう見事なまでの紅葉があった。
 手、恐らくはそのフォルムから女性のそれと分かる平手打ちの痕。
 真っ赤なその手形は実に痛々しく、強い力で打たれたと容易く想像できる。
 思わず見ているこっちが痛くなりそうだ。
 そしてグリフィスは当然の疑問符を問うた。


「誰にやられたんですか?」

「ああ……その、シグナム姐さんに」

「シグナム隊長に? 一体どうしたんですか?」

「いや、まあ……なんだ……」


 ヴァイスは周囲にチラチラと視線を巡らせ、誰かに聞き耳を立てられていないか確認する。
 そして確認し終えると、グリフィスにそっと顔を寄せて耳打ちした。
 ボソボソと、彼以外の誰にも聞こえぬ声量で。
 話し終えると、ヴァイスはそっと顔を離す。
 聞き終えたグリフィスは、何故かその表情を冷ややかに引きつらせていた。


「はあぁ……なるほど。それで……」

「ああ、困ったもんだ。どうしたら良いと思う?」

「……」


 グリフィスの顔から一気に表情が消える。
 漂う空気、身体からかもし出される雰囲気は絶対零度を思わせる冷たさを孕んだ。
 もし六課の他の隊員、ロングアーチやフォワードの人間が見れば背筋を凍えさせるだろう。
 グリフィスは凍てつく空気を持ったまま一拍の間を置くと、表情を無から微笑に変えた。
 そして一言。
 満面の、それこそ数多の女性を虜にしそうな程の涼やかで優しげな笑顔と共に言った。


「死ねば良いんじゃないですか♪」


 きっぱりと言い切るその言葉の残響には少しの淀みもない。
 つまり結構本気で言っていた。
 彼のそんな様に、無論ヴァイスは大いに顔を引きつらせる。


「お前……ほんと容赦ねえなぁ……」

「そんな事ないですよ。常に理性的かつ常識的かつ慈しみのある人間である事を心掛けてますから」


 グリフィスは微笑と共に眼鏡を掛け直しつつ、静かな語調で言う。
 先ほどの冷ややかな空気から、今度は呆れ果てたようなものに変わる。
 そして青年は問うた。


「ところで、ヴァイス陸曹はいつもそんな事言ってるんですか? シグナム隊長に」

「そ、そんな訳ねえだろ! 昨日はその……たまたま、な……試しに聞いてみたんだよ」

「はぁ〜、そうですか」

「おい、なんだよその目は」

「はぁ……いえ別に」


 どこか呆れた、そして嘲笑めいたような顔でグリフィスは溜息を吐く。
 そしてポツリと、隣りのヴァイスにも聞こえない程度の声で呟いた。

588 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:14:02 ID:uIl6BZaM
 心の内に秘めた本音を零す為に。


「まあ、男として気持ちは分からなくもないんですけどね」





 機動六課隊舎の屋上で、二人の女性が話していた。
 金と緋色の髪をした素晴らしいプロポーションの美女二人、ライトニング分隊の隊長二人だ。
 そして、二人は何故か顔を赤らめ会話をしていた。


「お尻、ですか」

「ああ、尻だ」


 自分に問う金髪の美女、10年来の友人であるフェイトにシグナムはそう簡潔に答えた。
 表情は一見いつもの凛とした鋭いものに見えるが、頬が淡く朱色に染まり、羞恥心に燃えているのが分かる。
 まあ、話題が話題なのでそれは仕方ない事だろう。


「そうですか……お尻で、ですか」

「うむ、もう一度正確に言うならばアナルセックスだな」


 と、烈火の将は顔を真っ赤にして言った。
 そりゃ赤くもなるだろう。
 誇り高きベルカ騎士の口から、あろう事か“アナルセックス”である。
 普段から凛としているシグナムだって真っ赤っかにもなるさ。
 で、まあシグナムは続けて言った、胸の内に溜めた愚痴を。


「まったく……あのバカ……どうしてこういう事ばかり頼むのか」


 シグナムは真っ赤になった顔を俯け、呟く。
 昨日、将は恋仲にある男性、ヴァイス・グランセニックからある事を頼まれた。

 “アナルセックスさせて欲しい”

 と。
 夜の、恋人同士の情事の最中、最初の口付けの後にだ。
 聞いた瞬間は意味が分からず、数秒を要して理解した時、シグナムは彼の顔面に思い切り平手打ちを見舞っていた。
 そしてそのまま逃げるように部屋を後にし、今日こうしてフェイトに相談しているという次第である。
 そんな彼女に、フェイトもまた顔を赤くしながら問うた。


「その調子だと、他にも何かあるんですか?」

「ああ……やれ胸でしてくれだの、騎士甲冑のままが良いだのと……へ、変態的な事ばかりせがむんだ」


 今まで彼と行った情交を思い出しながら、頬の朱色をより赤く染めてシグナムは言う。
 烈火の将とて熟れた女体を持つ一人の女、人並みに情事を交わせば恥じらいもする。
 さらに加えて要求が肛門性交ときてはなおの事だ。
 が、そんな彼女にフェイトは告げた。


「そう、なんでしょうか」

「なに?」

「いえ、そういうのって案外普通なのか、なって思ってましたから」

「う、後ろでするのがか!?」


 フェイトの爆弾発言に素っ頓狂な声を上げるシグナム。
 そんな彼女に金髪美女執務官は続けて言う。


「ええ、クロノとかそういう要求ばっかりですから」


 クロノ・ハラオウン、フェイトの義兄であり恋人の名が出た。
 彼は姉貴分の女性と結婚したような気もするが、本SSでは一切関係はない。
 クロノ×フェイトは正義なのである。
 と、それはさておき。
 シグナムは驚愕した、なにせクロノがそういう行為を欲すると言うのだ。
 少なくとも彼女の認識からいってクロノ・ハラオウンとは常識的で素晴らしい人柄である。
 そのクロノが致すというのであれば、それはもしかして一般的な嗜好の範疇なのではないか。
 そんな疑念が過ぎる。

589 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:17:40 ID:uIl6BZaM
 自分の無知(勘違いではあるが)を知り、シグナムの胸中に一つの決意が生まれた。


「ではテスタロッサ……その、教えてくれないか? う、後ろで“する”やり方とか……」





「失礼しますよー」


 そう告げてヴァイスは部屋に入った。
 場所はクラナガン市内のとあるホテルの一室である。
 入室すれば、室内には彼をここに呼んだ人物であるシグナムが既にベッドに腰掛けて待っていた。


「あ、ああ……よく来てくれたな」


 どこか恥ずかしそうに頬を赤らめているシグナムは手をモジモジと弄っている。
 その様にヴァイスは、なるほど、と思う。
 既に何度も身体を重ねている間ではあるが、彼女は自分から誘う際はいつもこうして恥らうのだ。
 普段の凛々しい様からは想像もできない初々しさに、ヴァイスは微笑ましさを覚える。
 が、しかし。


「で、ではヴァイス……」


 次なる言葉にその微笑ましさは打って変わる。


「う、後ろを使って良いぞ!」


 顔を真っ赤にした烈火の将は、尻を向けスカートをまくり上げてそう告げた。


「ちょ、はい?」

「はい? ではない! ちゃんと……そ、掃除して、ほぐして準備したから大丈夫だ! すぐ入れて良いぞ!」


 普段の凛とした様が嘘のように、シグナムはどもりながら尻を向けてそう誘う。
 目の前の光景が、そして放たれる言葉が一瞬理解できず、ヴァイスは呆然とする。
 まさか目の前の愛する女性が、肛門性交の熟練者の教えで菊の穴を準備万端にしたなど想像もできない。
 先日アナル使用を求めた際など、強烈な張り手を喰らったというのに……今の状況はどうだ?
 彼女は尻を向けて自分から肛門での性交を求めているではないか!
 夢のようである。
 ヴァイスは自分の頬をつねってみるが、痛い。
 どうやら夢でなく現実のようだ。
 ならば迷う事はないだろう。
 どういう理屈でシグナムが尻で致す気になったか分からないが、彼女の気が変わらない内に行為を成すべきである。
 故にヴァイスは淀みなく歩んだ、目の前の美尻へと。
 まずは触れてみる。
 めくり上げられたスカートから覗く尻を、彼は満遍なく撫でた。
 下着越しでもしっかりと分かる、むっちりとした肉付きながらも引き締まった国宝級の尻であろう。
 尻こそはヴァイスがシグナムに惹かれた要素の一つでもある。
 少し不器用だがまっすぐな心、おっぱい、凛とした振る舞い、おっぱい、ポニーテール、実は可愛い性格、太股、おっぱい、尻。
 その他、シグナムの魅力は語り尽くせない程にあるが、尻は彼女の密かな魅力ランキング上位保持者である。
 目の前の美尻に、ヴァイスは私的脳内ランキングを再認識した。
 なんて素晴らしい尻なのか、と。
 とりあえず下着を一気にずり下ろす。
 シグナムが、ひゃー、だか、ひゃん、だか叫んだが気にしない。
 露になった尻は、想像を遥かに超えた美観であった。
 透き通った、されど艶と張りを持つ肌はどれだけ触っていても飽きない。
 しばらく剥き出しの尻を撫で、頬ずりして……時を忘れて浸る。


「は! いかん!」


 だが彼は我に返った。
 そうだ、こんな事をしている場合ではない。
 標的は二つの尻肉にあらず、そのふもとに設けられた菊門である。
 狙撃手の慧眼はすかさず視線を下げ、ターゲットを確認。
 がっしりと尻を掴み、顔を寄せる。
 そこにはすぼまった一つの穴が、肛門があった。

590 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:18:51 ID:uIl6BZaM
 ヴァイスは本日の性的なる狙撃目標に迷う事無く手を伸ばし、そして指先を入れた。


「ひゃあいぃッ!?」


 いきなり肛門に指を挿し入れられ、シグナムの口から素っ頓狂な声が漏れる。
 が、ヴァイスはその嬌声すら聞かずに目前の尻穴に魅入る。
 指でほじくりながら隅々まで尻を吟味。
 なるほど、掃除してほぐしたというだけあって中々の尻穴であった。
 見事な尻を前に、ヴァイスは思わず感嘆を漏らす。


「宿便もなく、程好くほぐれて――正に掘り頃っすね姐さん。流石ですよ」


 申し分ない、最高の尻だった。
 ヴァイスは心から眼前の尻穴への賛辞を零す。
 次いで、彼は本格的な愛撫を行う。
 挿し入れた指をゆっくりと、だが確かに動かし始めた。


「んぅ……はぁぁ……はぅん」


 菊座を指で弄られ、シグナムの口から妙なる調が漏れた。
 ヴァイスの指は、超遠距離のターゲットを狙撃する際のような繊細さと正確さで以って彼女の肛門を撫ぜるのだ。
 丁寧に丁寧に、決して痛みを感じさせぬ絶妙な力加減で菊の穴を押し広げ、入り口をやんわりと引っ掻く。
 今まで排泄にしか用いた事のない器官への愛撫はどこかむず痒い、だが確かに喜悦の色を孕んだ感覚を女騎士の体に刻む。
 背筋から脳天までゾクゾクと走る快感に、シグナムは堪らず甘やかな声を漏らして身悶えした。
 耳に響く淫らな音楽、指先に感じるアナルの締まり具合。
 これにヴァイスはどこか遠くを見るような眼差しで――芸術的なまでにエロいな――などと思った。
 彼がしばらく時を忘れて愛撫に興じていれば、キュっと締まった肛門の下、膣口はまるで洪水のように果汁を溢れさせていた。
 太股を伝って淫靡に濡れ光るそれに、ヴァイスは、頃合か、と判断する。


「ひゃあッ!?」


 またしてもシグナムの素っ頓狂な声が漏れる。
 今度は何が成されたかと思えば、彼女の濡れる秘所に熱く硬い肉の凶器が押し付けられたのだ。
 ヴァイスの猛々しく隆起した肉棒は決して目の前の膣を貫く事無く、そこから溢れる蜜だけを求めて擦りつく。
 いつもならここで一気に犯されるのだが、ただ接触するだけに止まる行為にシグナムは切なさを感じた。
 が、それも一瞬の事だ。
 存分に雌の果汁を得た肉棒は標的を膣からその上の菊座に移し、キュッとすぼまったそこに先端を押し当てる。
 そしてヴァイスは、彼女の耳元に静かに呟いた。


「じゃあ、いきますよ」

「へ? いや、ヴァイス……ちょっと待って、ひああああぁぁあッッ!!!」


 言い終わるより前に、彼女の声は悲鳴に変わった。
 まあ、いきなりアナル処女を奪われれば無理もあるまい。
 十分な程に濡れていたとはいえど、凶器の二つ名を冠して余りあるヴァイスの肉棒に貫かれたのだ。
 シグナムは唐突に成された初めての肛門性交に、ありえないくらいの圧迫感を感じた。
 普段排泄に用いる際とは比べる事もできない程に菊座は押し広げられ、ゴツゴツとした肉棒に蹂躙される。
 これに、勇ましい女騎士は普段の凛々しい顔とは打って変わった悩ましい表情を見せた。
 眉根を苦しげに歪め、目元には涙さえ浮かべ、口は酸欠の魚のようにパクパクと開く。
 何度か荒く息をすると、シグナムは背後の恋人に哀願を告げた。


「ヴァ、ヴァイス……少し待って……これ、思ったより苦しくて……ふぁあうぅッ!?」


 が、それもまた言い切られる事はなかった。
 なにせこの狙撃手ときたら、貫通したてでようやくアナルが馴染んできたかと思えば、早速ピストンを始めたのである。
 ゆっくりと、ストロークは短く、されどしっかり根本まで挿入して腰を打ち付ける。
 繊細さの中にも荒々しさを孕んだ姦通であった。

591 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:20:15 ID:uIl6BZaM
 まだ慣れぬ肛門性交に、シグナムは普段からは想像もできない弱弱しい声で鳴く。


「ひゃぅうッ……ま、まって、もう少し……はぁッ……ゆっくり……」


 艶やかに濡れた声でそう請うシグナムだが、彼女の哀願に対してヴァイスは少しも腰の動きを弱める事無く、むしろ徐々に強くしていきながら言う。


「何言ってるんすか姐さん。そういう姐さんの声、どんどんエロくなってるじゃないっすか。本当はもっと激しくされたいんでしょ?」


 嗜虐に色の溶けた声が囁かれる。
 彼の言葉にシグナムは、違う、と言おうとした。
 だが次なる刹那、今までにない力で肉棒が尻穴に突き刺さり、深い結合が成される。


「ひゃあんッ!」


 甘く高い声が溢れた。
 否定しようのない、快楽に溺れた雌の声だった。
 徐々にほぐされ、姦通に慣れた菊座は確実に彼女に快楽を刻み込んでいた。
 最初はただの排泄器官だった穴は、今正に一つの性感帯への変化を成している。
 ならばこの狙撃手が逃す筈もない。
 彼は迷う事無くターゲットを狙い撃つ。
 犯し貫く穴の下方、膣と子宮のある方向に強烈な一突きを喰らわせた。
 瞬間、シグナムは背筋が折れんばかりに身をよじる。


「はああぁぁぁああぁッッ!!」


 頭の芯まで駆け抜ける快感。
 もはや騎士でなく、そこにいるのは快楽に酔い痴れる一匹の雌だった。
 ヴァイスはこの反応を見定めるや、いよいよ容赦もなく腰を振り始める。
 力強く、一突き一突きを的確に性感帯を探り、抉るように。
 彼が突き刺す度に、シグナムの声は甘くなり、肢体は悩ましく蠢いた。
 彼女がよがればよがるだけ、ヴァイスもまた快感を得る。
 肉棒を受け入れる尻穴は、まるで自身を貫く凶器を咀嚼するかのように緩急を以って締め付ける。
 膣とはまた違う穴の感触、そして強烈な快感、ヴァイスは耐え難い射精感を感じ始めた。
 もっともっとこの菊座を犯していたいという欲求とは裏腹に、その感覚は強まり、そして決壊する。


「姐さん! そえそろ出しますよッ!」


 言葉と、今までで一番強い突き上げは同時だった。
 姦通できる一番深いところまでヴァイスの肉棒は侵入し、そして絶頂を迎える。
 ドクドクと、外まで音が聞こえそうな程の音を立てて注がれる精液。
 脈動と共に吐き出される大量の熱い白濁液は、貫かれた肛門から僅かに溢れ出してシグナムの艶めかしい太股を濡らした。
 体内に注ぎ込まれる精液の熱に、淫らな騎士は恍惚と震える。


「はぁぁ……すごぉ……せーし、でてるぅ」


 尻穴から前進を駆け巡る快感と熱に彼女もまた絶頂を迎えており、その瞳は涙に濡れて蕩けていた。
 初めての肛門性交でここまでの快楽を得るとは、烈火の将シグナム、彼女の尻の才能は実に素晴らしいものである。
 キュウキュウと締まる肛門の感触と、絶頂の余韻に浸りながら、ヴァイスはそう思った。





「いやぁ、良かったっすねぇ」

「は、激しすぎだ……もうちょっと優しくできないのか……」


 あれからたっぷり六回は後ろに射精し、くんずほぐれつエロけしからん行為を堪能した二人はそうベッドで語らった。
 ぶつくさ文句を言うシグナムも、なんだかんだで初めてのアナルセックスの具合が良くまんざらではない様子。

592 ヴァイシグお尻編 :2009/10/07(水) 22:20:55 ID:uIl6BZaM
 幾度となく達した絶頂、そして愛する男の体温に頬をほんのりと赤らめていた。
 行為を終えた後の気だるい倦怠感と相まって、シグナムは至福を感じる。
 が、それは破壊された。傍らの愛する男によってだ。


「ああ、そうだ姐さん」


 ヴァイスは自分の胸板の上で幸せそうにしている美女に、能天気極まる顔で告げた。


「今度は是非とも足コキとかしてもらえませんかね?」


 と。
 彼がその言の葉を発した刹那、壮絶な音が生まれる。
 それは炎熱変換能力によって炎を纏った強烈な平手打ちが、ヴァイスの顔を打ちのめした音だった。



終幕。

593 ザ・シガー :2009/10/07(水) 22:26:29 ID:uIl6BZaM
投下終了!
アナル! アナル! 姐さんの尻ッッ!!


いやね、なんだか最近パロで感想や雑談が少ないなぁ、と思うのです。
エロパロ民の熱が冷めた? とも思わなくもないのです。
が、しかし思えば、昨今あまり短編のエロやギャグが少ないんじゃないのかな、と。
読み手側に感想や雑談の入れ易い作品で場を和ませるのも職人の使命。
と感じ、今出来うる限りの最高速度でエロギャグ書いた次第であります。


まあ分かりやすく言うと、もっと感想入れたりバカなエロ話しようぜ!
とねw
シグナム姐さんは乳やポニテや太股だけじゃないんです! 尻だって素晴らしいんです!
偉い人にはそれが(ry

594 名無しさん@魔法少女 :2009/10/07(水) 22:57:10 ID:l8ZGUZcM
アナル拡張してレバ剣でオナらせるとか?
シャマルにフィストファックされるでも良いな

あと、アナルといえばサイクロン
840は最高でしたわ
凌辱読みたいなぁ…

595 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 01:16:44 ID:MuZSEvIU
GJ!!です。
シグナムがアナルか……フェイトが上級者ってのがまたw
リリなの界ミスターアブノーマルはフェイトに決定ですねwww

596 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 19:45:30 ID:ykqlA4r2
フェイトはなのはやはやてと猥談したりはしなかったのだろうか

597 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 21:19:14 ID:EsVD80lw
はやてがめっちゃその手の話好きそう
というか猥談そのものよりなのフェイやアリすずの反応を見て楽しむイメージ

598 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 21:57:53 ID:DePw3Bko
なのは→にこにこ笑ってはぐらかす
フェイト→真っ赤になってしどろもどろ
スバル→意味分かってない
ティアナ→恥ずかしながらもツッコミは入れる

こんな感じかね。

599 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 22:07:01 ID:LiWpQrv.
>>598
意味わからないのはキャロではないかと。
スバルはアホっぽいけど中身は乙女だからなぁ(そのくせ、ティアナの乳を揉むという冗談もする)。

羨ましいな、女の子のスキンシップって。

600 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 22:14:02 ID:gvFICz.c
ザ・シガーさんってあの「烈火の将は狙撃手がお好き」を書いたあのひと?
だとしたらまた見れてとてもうれしいな

601 名無しさん@魔法少女 :2009/10/08(木) 23:39:40 ID:CHham8mg
ザ・シガー氏は「烈火の将は〜」以降も「鉄拳の老拳士」など頻繁に投下されてますよ〜
氏の御作はまとめで沢山読めますよ〜。

602 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 00:50:03 ID:ouQiYkaE
あれだ、なのはが今回のシグナムのような相談をフェイトとはやてにして、
はやては、はしゃいで下ネタに走り、なのはがもう!と怒って、
フェイトちゃんはどう思う?と聞いたら、それはおかしいことなのかな?と、
菩薩のような優しい雰囲気と微笑で潤沢なプレイ経験からのアドバイスをして、
なのはは真っ赤になりあわあわ、はやては赤くなるのは一緒だが恐るべしと戦慄する気がする。
フェイトの立ち居地をヴィータに変えても、面白そうだがwお前、ロリコン彼氏とどんなプレイしてんだよとwww

603 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 01:40:19 ID:8ekuz.e6
テスタロッサの血筋恐るべし、で良いのか?
まさか、プレシアの旦那の性癖が遺伝したとかw

でも、何故かエリオに遺伝していても違和感ないという今日この頃w

604 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 01:55:21 ID:oVxyBGEk
そりゃ今でもエリオとフェイトそんは後ろ所か
二プルファックするほどのアブノーマルな関係ですもの

605 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 13:04:18 ID:TDSfX5AQ
ライトニングは変態だらけかよww

606 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 15:25:07 ID:hw4tOBcw
ていうか六課が変態の巣窟だww
これに比べたらナンバーズはサドメガネとおじさん好きなロリ姉とついてる疑惑なオットーぐらいでおとなしいもんだな。

607 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 19:13:43 ID:xVESLQCE
なのはは割りと普通なので楽しんでいそう

608 名無しさん@魔法少女 :2009/10/09(金) 22:06:00 ID:ouQiYkaE
>>603
旦那は、頭も容姿もいいがド変態でう○こしている所をビデオ撮影されて、
もう、ついていけない!とプレシアは離婚かw
アリシアもあの年齢ながら、保育園で縄跳びを鞭にして男の子を奴隷化していたとwww

610 名無しさん@魔法少女 :2009/10/10(土) 10:55:27 ID:8ge0FYlc
>>605
キャロは?キャロはー!?

611 名無しさん@魔法少女 :2009/10/10(土) 12:42:46 ID:22ljJa8I
>>610
唯一の良心だ。
純真無垢なオアシスだ。
もしも現場を見られたら、ママとお兄ちゃんと副隊長はプロレスごっこしているんだよ、と言うしかない。

612 名無しさん@魔法少女 :2009/10/10(土) 13:35:05 ID:qeJON5KY
>マとお兄ちゃんと副隊長
提督自重、そして
キャロ「プロレスごっこですか?…ああ、カマキリが相手を食べちゃうあの本格的なやつですね。18禁指定ですね、失礼しました」

18禁であることに変わりはないがなにか壮絶な勘違いが

613 名無しさん@魔法少女 :2009/10/10(土) 15:06:28 ID:1TyiuMds
実は痴女

614 SAGE :2009/10/10(土) 23:51:56 ID:WWvKed7A
>610
エリオによって前も後ろも貫通済
「はじめはあんなに痛かったのに、今はエリオくんのがないと私、3日も持たないの」
「僕もだよ、キャロ」

知らないのは金髪執務官だけだったりして…

615 M2R ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:19:12 ID:V5Iz/4Hc
初めて、投下します。

注意事項
・時間軸 SSX トラック17.5
・オリ設定は多少あり
・タイトルは「駐機場にて」
・非エロです。
・登場人物はアルトとティアナです。
・8レスを予定してます

616 駐機場1 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:22:45 ID:V5Iz/4Hc
 いつものように、格納庫のシャッターを下ろそうとした時だった。
 夕陽の逆光の中、屋上のフェンスにもたれかかるように佇む少女の影がアルトの眼に入った。
 涼しくなった夕風がオレンジ色に輝く少女の長い髪を揺らしていく。
 沈みかけた太陽が、黒い制服を着た少女のシルエットを金色に縁取っている。
 一枚の絵画を見ているような風景に、アルトは声をかけるのを躊躇し見入ってしまった。
 しかし、相手はよく知っている後輩だ。このまま無人になる屋上に一人残していくわけにもいかない。

「ティアナ、夕陽を眺めて黄昏れるなんて、十年早いよ」
 アルトの声に少女は振り向くと、驚きに空色の眼を丸くする。夕陽に照らされた顔が赤く染まる。
「アルトさん、どうしてここへ?」
「どうしてって、ここは一〇八隊。私の部隊だし、屋上はヘリポート。私の職場よ」
「それはそうだけど、その、……会うなんて思いもしなかったから。何か恥ずかしいところ見られてしまって……」
 少女は微笑む。少し寂しそうな物憂げで大人びた笑顔。
 自分に心配をかけないように無理に作ったものであろう、そうアルトは思った。だから、余計に気になる。
「どうしたの? 浮かない顔しているよ。……、まあ、これでも飲んで元気出しなよ」
 アルトが放り投げた缶ジュースを、黒い執務官の制服に身を包んだ少女は慌てて受け止める。
 その仕種が予想以上に幼かったので、思わずアルトは笑ってしまう。
 本来ヘリパイとして一〇八隊に採用されているのだが、アルトはJX705の整備は自分でやることにしている。
 これは地方部隊の人員が限られていて、特に一〇八隊のメカニック陣はナカジマ捜査官が頻繁に壊す部隊車の修理など他に仕事が沢山あるという理由もあるが、基本的にアルトが整備の仕事自体を好きだというせいもある。
 ヘリ整備の仕事が終わるとアルトは、整備室の中の共用冷蔵庫から缶ジュースを取り出し、街の灯りを眺めながら飲むのを日課にしていた。今日もヘリの整備を終え、屋上から西の山に沈む太陽を眺めに出てきたところだった。
「でも、これアルトさんのじゃない? 悪いよ」
「気にしない、気にしない。まだ沢山あるから。遠慮する方が失礼だよ」
 アルトは再び整備室に駆け込み、小型の冷蔵庫からストックしてあるジュースを取り出し、再び少女の元へ駆けた。
 走ったのは、あまりにも少女が儚く見えたせい。
 でもアルトが少女の元へ戻っても、少女はもらったジュースを開けようともせず、ただ溜息をつくだけだった。
 仕方なくアルトは自分の持ってきたジュースの口を開けると、少女の持っているジュースと取り替える。
 少女は心ここにあらずといった面持ちで、ただアルトのなすがままにされている。
 自分の手にしたジュースを開け、一口飲むとアルトは尋ねた。

617 駐機場2 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:29:12 ID:V5Iz/4Hc
「ルネッサのこと?」
 アルトの質問に、空を眺めていたオレンジ色の頭が小さく肯く。
「あのね、私はティアナには責任はないと思うよ。ティアナが推薦したといっても正当な手続きを踏んで執務官補佐になった訳だし、あの時点で事件の黒幕だなんて誰も予測できなかったんだから」
 努めて明るい声で慰めてみる。そんなアルトの言葉に少女は頭を振る。
「そうじゃなくて……、いや、もちろん、それもあるのだけれど、そう、ルネのしたことは間違ってる。それは確か。多くの人命を奪い、マリアージュを使い破壊活動を行ったわ。でも、ルネの目指したことを、オルセアの内戦に世界の関心を向けさせ停戦させるということを、あたしは完全に否定はできないの。こんなことを感じている時点で執務官失格ね、あたし」
 ティアナのどこか自嘲気味な話し方がアルトは気になった。でも、どのように言葉を掛けていいかがわからない。
 そんなことはない、と口に出すことは簡単だが、そんな言葉でこの生真面目で考えすぎる傾向のある友人は納得してくれるだろうか? 

 ただ、このまま沈黙が続けば、透明な夕焼けの空に少女の姿が溶けていってしまう気がした。
 そんな不安を払うように、アルトは頭の中に浮かんできた言葉を口に出した。
「ティアナはよくやっているよ。私も、スバルも、そして六課で一緒にやって来た連中はみんな知っているよ。血も通わない涙の重さも知らない、そんな冷酷な執務官の方が問題ある。私はそう思うよ」
「ありがとう。でもね、うーん、うまく言えないんだけれど、あの子、そう、ルネとあたしはよく似ているの。
どちらも孤児で、そして、育ててくれた大切な人を奪われて、……。その人の見ていた夢を引き継ごうと努力して、努力しているうちに周りが見えなくなって」
「考えすぎよ」
「あの子は頭も良くて、仕事も良くできて……。もしあの子が、ルネがミッドチルダに生まれていたなら……、考えても仕方のないことなんだけど、どうしても、そう考えてしまうの。そして、友達に囲まれて、きちんとした教育を受けていたなら、あるいは逆に私がオルティアに生まれていたなら……」
 ぽつりぽつり、ティアナが語り出す。ゆっくりと、言葉を探しながら。
 まるで見つからない答えを探しているかのように。
「……そんなことを考えてたら、どうして、あたしが執務官をやっているのかなって。あたしなんかが執務官なんかやってていいのかなって不安に思うの」
「何を言ってるの、今回だってティアナがいなかったらどれだけの人がマリアージュの犠牲になっていたか? わかる? スバルも危なかったのよ」
 そんなアルトの慰めの言葉にも、少女は小さく頭を振るだけ。
 再び沈黙が続く。
 少女は夕陽がゆっくりと沈んでいくのを見ている。
 アルトは少女の苦悩が思った以上に深いことに心を痛めた。だから、少女と真剣に向き合うことに決めた。

「座って。そして、もし良かったら、私の話を聞いて」
 少女はこくんと肯くと、アルトの言葉に素直に従い段の上に腰を下ろす。それを見届けてからアルトはゆっくりと話し始めた。

618 駐機場3 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:33:35 ID:V5Iz/4Hc
「あのね、私、7歳まで自分のこと男の子だと思って育ってきたの。その話しはティアナも知っているでしょ。初めて自分が女の子だって知った時、やっぱりショックだった。だって、その頃はやっぱり女の子って、いろいろできないことが多いと思っていたし。まあ、六課のフォワード陣見ているとそんなこと全然ないんだなって思うけど、その時は何で自分が男の子に生まれなかったのかなって悩んだんだよ、本当」

残っていたジュースを一気に飲み干すとアルトは話を続ける。

「それから、六課に入る時、シグナム副隊長に誘われた時はただ嬉しいだけだったけれど、決まってからやっぱり不安になって。昇進と魔力資質は表向き関係ないけれど、それでもやっぱり、前線に出て大きな功績を挙げるのは魔力資質のある人なんだよね。特にレアスキルを持っている人たち、スタンドアロンタイプの。
そんなわけで入隊するまでの間、本当に一生懸命に資格をかき集めたんだ。魔力ゼロでも取れる資格はできるだけ取るように頑張った。やっぱり後輩の魔導士チームには負けたくないって言う気持ちがどこかにあったんだと思う。今考えるとおかしいんだけどね」

「でも、……」
 口を挟もうとする少女の機先を制するようにアルトは話を続ける。
「航空隊ではほとんどの人が魔導士だったし、それも空戦関係の。
同期に入った人や、後輩たちがどんどん先に進んでいく、階級も上がっていくのに私だけが取り残されていくような気がしていたのね。その頃は、私もね、整備員をやりながら、魔法の方も努力すればきっと強くなるって思ってたの。でも、あれってやっぱり天性の部分が大きくてね。正直、航空隊だけじゃなくて、管理局自体やめちゃおうかなって思ったこともあったんだ」

 アルトは軽く目を閉じて昔のことを思い出す。きっと、シグナム副隊長に出会って声をかけてもらっていなかったら、たぶん管理局を辞めてヴァイゼンに帰っていたはず。

 だから、今、一〇八隊の屋上でこうして、少女と出逢ったことにも何かの意味がある。アルトは、そう思った。
「そんな、だってアルトさんはいつも明るくて、スバルと一緒に六課を盛り上げて。それに、私が落ち込んでいる時は、いつも明るい笑顔で慰めてくれたじゃないですか。隊舎の給湯室で、寮の休憩室で。本当に、本当に感謝しているんですよ」
 むきになって話す生真面目なところは昔と少しも変わらないな、とアルトは懐かしく感じる。
 同時に、この自分と同じ歳の少女は出会ってから、ずっと「アルトさん」という呼称を変えてはいなかったことに改めて気が付いた。

 入局はアルトの方が先だが、今ではティアナは本局執務官、三尉扱いになる。対するアルトは一〇八隊のヘリパイロット、階級は三つ下の陸曹である。
 逆に、自分も出会った時のまま、「ティアナ」という呼び方を変えていない。階級が三つも上の上官に向かって呼び捨てもどうかと思うが、呼称を変える機会を逃してしまったと言うのが正直なところだった。

619 駐機場4 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:40:34 ID:V5Iz/4Hc
「だから、それは六課に入ってからのことなんだ。六課では、何て言うか、みんな本当に家族みたいだったからね。
それにね、やっぱりフォワード陣が、端で見てても辛そうな訓練とかも本当に頑張っていたから。
私も、ただ張り合うんじゃなくて、何が自分にできるのか、もう一度原点に帰って考えてみたの。
だから、ティアナ達のお陰よ。本当に真っ直ぐに目標に向かうあなたたちが可愛かったんだから」
 驚いたように大きく目を見開き、少女はアルトを見つめる。

「あの頃のあたし、可愛かった? 生意気で周りが見えず意固地で、スバルを巻き込んで迷惑を掛けて、
シグナム副隊長やヴィータ副隊長に怒られて。今、思い出すと、顔から火が出るほど恥ずかしいわ」
 言葉に嘘はないのだろう。頬が赤いのは夕焼け空に染まっただけではなさそうだ。
 そんなティアナはやっぱり可愛いなとアルトは思ってしまう。

「まあ私とティアナとは同じ歳だから可愛いというのはおかしいのかも。だけどね、それでも私の方が少しだけ先輩だったから」
 でも、やはり、執務官になったティアナに可愛いというのは少し問題がある気がして、話しの方向を修正する。

「私は六課解散後、地上本部にヘリパイとして採用されて、その後、ちょっといろいろあって、ここ一〇八隊に移ったんだけど、
父さん、あ、これはゲンヤ・ナカジマ三佐のことね。一〇八隊では部隊長のことを親しみを込めて『父さん』て言うの、あるいはちょっとふざけて『パパリン』とか。
でも、そう、今の私の憧れかな? 父さんも魔力資質が全くないの。
えーと何だけ、そう、他の部隊にはハラオウン派、本局のコネとか、レジアスの弱みを握って出世したんだとか、陰口をたたく連中も確かにいるよ。でもね、一〇八隊にいれば、そんなのまるっきりデタラメってすぐわかる。
父さんは魔力ゼロだけど、適確な状況判断と明確な指示、そして人間としての温かさで、部隊長として一〇八隊を引っ張っていってるんだから」
 
 ティアナがアルトを真剣な眼で見つめているのに気が付き、熱くなっていたアルトはふと我に返る。

「えっと、何の話ししてたんだっけ。そう、人間は生まれた環境や天性の資質の部分で一見不公平に思えるかもしれない。でもね、きちんと生きることの意味を考えることによって、それぞれ長所を伸ばすこともできるし、例え間違っても正すことができると思うんだ。何か、私ばかり喋っているみたいだし、身内びいきみたいなんだけどね」
 何かを考えるようにオレンジ色の頭がうつむく。長くなった髪がさらさらと胸に流れ落ちる。そんなティアナを眺めながらアルトは話を続けた。

620 駐機場5 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:48:44 ID:V5Iz/4Hc
「今ね、私、デバイスマイスターの資格も取ったんだ。まだB級だけど。ストームレイダーも私がメンテナンスや調整をしているの。シャーリーさんが言うにはデバイスの調整者は、使用者の魔法に余計な干渉をしない分、魔力が無い方が、いいんだって。
時間があったら、ティアナのクロスミラージュも見てあげられるんだけどな」
 アルトがティアナを見上げる。沈黙が続くことに耐えきれずアルトが何か言おうと口を開けた途端、叫ぶようにティアナが声を出した。

「どうして? どうして、アルトさんは、そんなに、そんなにあたしのこと気に掛けてくれるんですか?」
「友達だからってだけじゃ、駄目かな?」
 アルトの言葉にティアナは顔を上げる。

 逆にしばらくアルトは考え込む。実はティアナに秘密にしていたことがあったからだ。
 この場で言ってしまっていいものか、ほんの少し躊躇する。
 でも、この機会を逃したら、たぶん一生言えなくなってしまうだろう。それはそれで何か心苦しい。
 少しの間逡巡した後、切り出すことに決めた。
「ティアナは縁って信じる? これ、ヴァイス先輩からもシグナム副隊長からも口止めされていたんだけどね。
まあ、いっか、もう六課じゃないし。
実はね、私の一番上の兄とね、ヴァイス先輩とそれから、ティーダ・ランスター一等空尉、あなたのお兄さんね、空隊訓練校で同期だったの。
ヴァイゼンまで遊びに来たこともあったんだ。首都航空隊の中で、あなたのお兄さんは誇りだったからね。
そんなこともあって、私もヴァイス先輩もあなたのことを386隊にいた頃から知っていたの。」
 アルトが話を始めた途端、時が止まったようにティアナの動きが全て止まった。

 陽の沈んだ空の下、身動ぎ一つせず、大きな空色に瞳でアルトを見つめている。
ほんのわずかな間、アルトは、まだ話すべきではなかったかと思い巡らしたが、ここまで言ったのだから最後まで言わないと気を取り直す。
「それにね、あなたのお兄さんを墜とした魔法犯罪者を捕縛したのはシグナム副隊長だったのよ。だから、だからね、シグナム副隊長とヴァイス先輩、それにその話しを兄から聞いていた私にとって、あなたは本当の妹のように感じてた。本気でね」
 ティアナの肩が小さく震える。静かな一〇八隊の屋上で小さな嗚咽がだんだんと大きくなる。

 やはり、まずかっただろうか。アルトは少し考えてしまう。
 ティアナは激しく肩を振るわせながら両手で顔を隠している。指の間から涙が溢れ、少女の頬を伝い雫となって落ちる。
「アルトさん」
 嗚咽が泣き声に変わり、一気に膨らんだ。

621 駐機場6 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 07:55:42 ID:V5Iz/4Hc
 アルトがティアナの執務官試験合格の知らせを聞いたのは六課時代の直属上司シャーリーからだった。

 映像通信に映るシャーリーは、トップの成績で合格という後輩の快挙に対しても、どこか手放しで喜べない、そんな浮かない顔をしていた。

「どうしたんですか? 主任。後輩の執務官試験の合格なんですから、もっと明るい顔しなきゃ。さては後輩に先を越されて落ち込んでるんですか?」
「主任はやめてよ。もう六課じゃないんだし。シャーリーでいいよ。それからね、私はもともと試験を受けなかったの」
「そりゃまあ、どうして?」
「あのね、執務官になったら、時には武装した魔法犯罪者と一対一で向き合わなきゃならないこともあるのよ。もちろん戦闘になることも。通信科卒業の私にそんなスキルあると思う?」
「それは、どうもすいません」
 お湯を掛けられた菜っ葉のようにしゅんとなってしまう。そんなアルトに対し、シャーリーがわずかに微笑む。

「私はね、エイミィさんみたいな執務官補佐を目指しているの。それにね、フェイトさんを見たら分かると思うけど、執務官の仕事は激務よ。デバイスいじる時間もとれなくなっちゃうわ。一度なってしまうと退職まで降りることも難しいし」
「そうですか」
「執務官は権限も広がるけど、責任の方が洒落にならないぐらい重くなるのよ」
「じゃあ、ティアナは責任感の強い子だし、執務官に向いているんですね」
 明るい声で言うアルトと対照的にシャーリーは再び厳しい顔をした。

「だから心配なのよ」
「えっ?」
「あの子は責任感が強くて、むしろ強すぎて、今までも何かにとりつかれたように仕事をしてきたの」
「シャーリーさんも大変ですね、フェイトさんとティアナの両方、似たようなタイプで」
「どっちかというとティアナは、フェイトさんと言うより、なのはさんに似ていると思う。心に決めたら絶対に曲げない、どこまでもまっすぐに突き進んでいく。どこまでも、私たちの手の届かないところまで」
 そう言うと、シャーリーは軽く溜息をついた。

 アルトも、シャーリーが不安に思っている理由が理解できる。でも、一〇八隊でヘリパイをしている自分には手が届かない世界。だから、シャーリーに頼むしかない。
 以前の、頼れる直属上司に。

「そう言われればそうですね。きっとそうだ。……だから、お願い、大変だと思うけれど、何かの時は、ティアナのことよろしくお願いします」 
「わかってますって」
軽く自分の胸をたたき、やっと微笑みを見せてシャーリーがうなずく。
 シャーリーも、アルトがティアナのことをどれだけ心配しているのか知っている一人だった。

622 駐機場7 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 08:03:01 ID:V5Iz/4Hc
「大丈夫だよ。ティアナは、強い子だから。それに、いつかきっとルネッサもわかってくれる時が来るよ。そしてそういう不幸な子供たちを作らないようにするのがあなたの仕事でしょ。違う?」
 そうアルトが言った瞬間、いきなり抱きしめられた。強い力で。

「だめだよ、私の服、グリスやオイルで汚れているから、ティアナの制服、染みになっちゃうよ」
 反射的にアルトは身を捩って抵抗した。自分の整備用の服は先程のヘリの作業で汚れている。
 ティアナの執務官制服にシミを作ったらまずいなと思うが、ますます強い力で抱きしめられる。
 そうされると背の低いアルトはどうすることもできない。

「アルトさん、あたしは、あたしは、あたしは、やっぱり、……」
 ティアナは何かを言葉にしようとするが全てが泣き声になってしまう。アルトの胸にも熱いものが溢れてくる。
 いつまでも泣き止まない少女の背中にアルトは手をまわして優しく撫でた。

 明日から、自分を抱きしめ泣きじゃくっている少女には、また過酷な仕事が始まるのだろう。
 ティアナは自分の副官だったルネッサに向き合って取り調べを行い、全ての感情を取り払い公平な調書を作るために努力するに違いない。

 この少女の肩に掛かっている責任の重さを想像し、アルトは一つ溜息をついた。
 同時に少女を切なくなるぐらいに愛おしくも思った。
 アルトは、想像する。

 きっと自分が知らないような悲惨な事件現場で、このどこか不器用な少女は、「死者の思い」や「生者の思い」に向き合い、その度に傷ついて来たのだろう。
 もちろん、アルトも地上本部や一〇八隊のヘリパイとして、幾たびか大きな事故現場から、苦痛にうめく重傷者を病院へ搬送したことはある。
 それでも、それは感謝されることはあれ、何らかの感情に巻き込まれることは少ない。

 そんなことを思い、自分よりも遙かに高い位置にあるティアナの頭を優しく撫でているうちに、アルトは、ティアナが執務官試験に合格した時のことを思い出していた。

623 駐機場8 ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 08:08:38 ID:V5Iz/4Hc
 どれくらいの時間が経ったのだろう。気が付くと、当たりはすっかり夕闇に包まれていた。
 すでに遠くに見えるエルセアの中心市街地には光が灯り始めている。
 見上げると、いつの間にかティアナの嗚咽も止まっている。アルトは少し身を離し、改めてティアナを見上げた。

「どう、落ち着いた?」
 オレンジ色の頭が今度はこくりと静かにうなずく。 

「そう言えばシャーリーさんからのメール、ティアナのことが六割以上なんだよ。あとの三割がフェイトさんのこと。変だよね、私たち、それなりに年頃なんだけどなー」
 その言葉に、やっと、アルトを見下ろすティアナの顔に微笑みが戻った。
 だから、アルトは言うことができたのだと思う。

「フェイトさんにもシャーリーさんにも相談できないこと、スバルにも言えないことがあったら、私にも相談して欲しいな、とずっと思っていたんだよ。いい? ティアナ、約束だよ」
 そうしてアルトが小指を差し出すと、ティアナもおずおずと小指を絡ませる。

「懐かしいね。なのはさんやフェイトさんがよくやっていた管理外97世界の誓いの儀式。それじゃ、ティアナ、ゆびきりげんまん、ゆーびきった」
 アルトは妙な節をつけて、誓いの儀式をする。ティアナも涙を袖でぬぐいて笑いかけてくる。辺りはすっかり闇に包まれている。

「さて、今夜はどうするの? グラナガンに戻るの? もう、遅いし、急ぎのことが無いんなら私の家に来ない? ティアナの明日の予定は?」
「明日は10時30分に一〇八隊でギンガさんと打ち合わせ」
「じゃ、なおさら私の部屋に来なさいよ。グラナガンに帰るだけ時間の無駄よ。そうだ、明日の朝、少し早く起きてポートフォール寄って……。私も明日のシフト、遅番で午後からだし。どうせ、ティアナ、まだ行ってないんでしょ」

「でも、そんな突然、悪いわ。これ以上アルトさんに迷惑を掛けるわけには……」
「水くさい。大丈夫よ。少し散らかっているけど。それに、そんな顔してこのままスバルに会うと、余計な心配するよ。あの子、意外とそういうところ敏感だから。私から連絡するわ。大切なティアを一晩借りるって」
 ティアナは少しだけ迷ったような顔をする。

「じゃ、決定ね」
「うーん、じゃあ、今夜は甘えさせてもらおうかな。でも、本当にいいの?」
「じゃ、ちょっと待ってて、ていうか、エレベーターで先に下に行ってて。整備記録と部品発注書を出したら私もあがるから」
 そう言うとアルトは慌てて書類を手にして階段を駆け下りた。
 自分がこの少女のために少しでもできることをするために。

(おわり)

624 M2R ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 08:16:47 ID:V5Iz/4Hc
投下を終わります。

625 M2R ◆XSaYC6Ux.U :2009/10/11(日) 08:45:14 ID:V5Iz/4Hc
ごめんなさい。6と7が逆になっています。
7を読んでから6を読んでくれればいいのですが
初めての投下で大失敗です。

626 名無しさん@魔法少女 :2009/10/11(日) 13:08:03 ID:7c7UMYBA

ところでアルトとティアナってどっちが年上だっけ?

627 名無しさん@魔法少女 :2009/10/11(日) 13:34:53 ID:9FAW6jNw
>>626
正確にはわからない。
入局はティアナより先で、本編の3年前の時点でシグナムやヴァイスと同じ部隊。
その時点で入局最低5年以上のヴァイスよりは後輩で新米の整備員だったらしい。
でもってスバルとはよく行動する仲。友人のルキノは4年前には既にアースラの乗組員だった。

年齢を連想させるキーワードはこれくらいかな。
後は見た目と口調で想像するしかないけど、そんなに離れていないと思う。
ちなみにティアナはstsの時点で16歳。

628 ザ・シガー :2009/10/11(日) 21:50:56 ID:oS4Am6K2
>M2R氏

GJ!
SSX時間軸でのSSとはなんと希少な。
そしてアルトメインというだけでご飯三杯はいけます。
ただ、作中で呼称してたかどうかは分かりませんが、ティアナはアルトにさん付けはしないかとw

ともあれ、ご新規の職人さんに投下していただけて嬉しいかぎりです。
これからもパロを存分に盛り上げていきましょう。


>>600
そう言っていただけると嬉しいですw
ヴァイシグは大好きなカプなんでこれからもちょくちょく書きたいと思っております。



で、そろそろオレも投下しましょう。
鉄拳の最新話いきます。

非エロ、長編、鉄拳の老拳士・拳の系譜最新十話。
いきます。

629 鉄拳の老拳士 拳の系譜 :2009/10/11(日) 21:52:48 ID:oS4Am6K2
鉄拳の老拳士 拳の系譜 10



「ねえおかあさん」


 ベランダで洗濯物を干していたクイントに投げ掛けられたのは、足元から響いた少女の声だった。
 聞き慣れた声に視線を向ければ、そこには案の定、娘らがいた。
 自分と良く似た顔立ちと髪の色をした少女が二人立っている。
 彼女の愛する娘である、ギンガとスバルだ。
 二人はクイントが腹を痛めて産んだ子ではない。
 戦闘機人を開発する違法な技術者が、どこから手に入れたのか彼女の細胞をベースに作り上げたクローン。
 夫との間に子を設けていなかったクイントは、捜査の過程で救助したこの二人の少女を養子として引き取り、存分に愛した。
 手に持った洗濯物を手早く干し終えると、彼女は腰をかがめて目線を下げ、首を傾げる。


「どうしたの二人とも?」


 ふわりと優しげな笑みを以って問う。
 母の問い掛けに、ギンガとスバルはチラと視線を合わせる。
 そして、二人一緒に口を開いた。


「あ、えっとね」

「ちょっと聞きたいことがあるの」

「なぁに?」

「私たちのおじいちゃんのこと」

「へ? お爺ちゃん?」


 唐突な質問だった。
 今まで娘らの前で彼女らの祖父母、つまり自分の父母の話をした事はほとんどない。
 夫のゲンヤの両親は既に他界しており、自分の母もこの世にはいない。
 必然的に残るのはクイントの父、アルベルト・ゴードンただ一人である。
 クイントと父ゴードンとの仲は、正直に言ってあまり良くはない。
 ゲンヤとの結婚を反対された事があり、ここ数年はろくに顔も合わせていなかった。
 クイントは困ったように苦笑を浮かべ、娘らに質問の訳を問う。


「い、いきなりどうしたの?」

「あのね、きょうスバルが学校でおともだちに聞かれたんだって」

「うん、“スバルちゃんのおじいちゃんとおばあちゃんってどんな人?”って。ねえおかあさん、わたしのおじいちゃんってどんな人?」


 屈託のない澄んだ碧眼で、娘がそう言った。
 これに、クイントは心底困る。
 父の事を話して、二人が会いたいと言ったらどうしようか、と。
 だがいつかは話さなければいけない事だとも思う。
 逡巡は一瞬だった。


「よし、じゃあちょっとおいで」


 言うや、クイントはベランダから家に上がる。
 目指すのは居間で、そこにある大きな本棚だった。
 上から三段目の左から四冊目の本、大きなアルバムを手に取る。
 そしてソファに腰掛けると、娘二人を隣りに座るように言い、アルバムを開いた。


「ほら、これを見て」


 開いたページに載っていたのは、幾つかの写真。
 どれも経年劣化でやや色褪せている。
 クイントが指差したのは、そんな中の一枚だった。
 写真に映るのは三人の人間。
 中央に青い長髪の女性、若き日のクイント。
 その両隣に二人の男性がいる。

630 鉄拳の老拳士 拳の系譜 :2009/10/11(日) 21:54:39 ID:oS4Am6K2
 右には黒髪の偉丈夫、左には老人。クイントは、左の老人を指す。


「この人が私のお父さん、つまり二人のお爺ちゃんね」


 クイントの言葉に、二人の少女は、へぇー、と眼をぱちくり開いて写真に見入る。
 隣りに立つ母と比べるとよく分かる長身と逞しい体躯、そして鋭く力強い眼差し。
 幼い子供には、少し迫力が過ぎる。


「ちょっとこわいかも……」


 と、スバルが母に身を寄せて言う。
 ギンガは黙っているが、妹と同じ心境なのか、小さく首を縦に振った。
 二人の様に、クイントは思わず苦笑を零す。


「まあ、お父さんは確かにちょっと迫力あるかもね。でもすっごく優しい人なんだよ?」

「ほんとう?」

「もちろん。だってお母さんのお父さんなんだから」


 自信満々と、クイントは自分の豊かな胸を叩いて言った。
 確かに頑固なところがあるが、父の優しさは知っている。
 母を亡くしてから男手一つで自分たちを育ててくれた父を、心から愛しているし尊敬しているから。
 彼女は二人の娘に、お母さんの言葉は信じれない? と念を押す。
 ギンガとスバルは首を横に振り、肯定の意を伝える。
 二人の反応に、クイントの顔には満足げな笑みが浮かんだ。
 と、そこでスバルが一つの問いを漏らす。


「おかあさん、もういっこ聞いて良い?」

「なにスバル?」

「こっちの人がおじいちゃんなのは分かったけど、こっちの人は?」


 問い掛けと共に少女の小さな手が指差すのは、写真のクイントの右に立つ男性だ。
 短い黒髪をした、服越しにも屈強な五体が伺える偉丈夫。
 そして、クイントの父ゴードンと同じく、鋭い眼差しをした男だった。


「ああ、この人は、ね……」


 クイントの表情に、どこか悲壮な色が浮かんだ。
 思い起こされるのは彼との最後の記憶、別れの思い出。
 自然と悲しみが小さな針を胸に穿つ。
 一拍の間をおいて、クイントは告げた。


「二人の伯父さん、になるのかな」


 かつていわれなき罪で日の光の当たる場所から消えた、兄であるギルバートの事を彼女はそう言った。
 スバルとギンガは、叔父という聞き慣れない言葉にきょとんと首を傾げる。
 

「オジさん?」

「そう、伯父さん。私のお兄さんなの」

「へ〜、お母さんにお兄ちゃんいたんだ」

「そうよ。兄さんもちょっと恐そうだけど、凄く優しい人なの」


 クイントの言葉に娘二人は、へぇ、と言いながら写真に見入る。

631 鉄拳の老拳士 拳の系譜 :2009/10/11(日) 21:55:54 ID:oS4Am6K2
 ふと、スバルが小さな言葉を告げた。


「おじいちゃんとおじさん、かぁ……あってみたいなぁ」


 無垢な少女の望みが吐露される。
 それは難しい話だった。
 父ゴードンとの間に生まれた亀裂なら、まだ修復の余地はあるだろう。
 だが兄ギルバートは管理局に追われる犯罪者だ。
 例えそれが冤罪だとしても、法廷から逃げた者には相応のペナルティが課せられる。
 スバルの望みは、あまりに儚いものだった。
 だがそれをクイントは否定する。


「大丈夫よスバル、いつかきっと会えるわ」

「ほんとう?」

「ええ、お母さんが嘘ついたことある?」


 母の柔らかな微笑に、スバルは首をフルフルと横に振る。
 娘の反応に、クイントは、良し、と頷き言葉を続ける。


「いつか、お爺ちゃんや伯父さんにちゃんと会えるわ。だからその時は皆一緒にご飯食べたり、お話したりしよ」


 母の言葉にスバルとギンガは目を見合わせる。
 そして、元気一杯に答えた。


「「うん!」」


 愛らしい娘の答えに、自然とクイントの顔は笑みに綻ぶ。
 幸せだった。
 例え全てが満たされずとも、家族が心をすれ違わせて、不条理な咎に追われていようとも。


「それじゃあ、二人にお爺ちゃんと伯父さんの事を色々教えてあげるね」

「ほんとう?」

「ききたい、ききたーい!」


 抱きつく娘二人の頭をそっと撫でながら、クイントは優しく語りだした。
 父や兄、そして今は亡き母との過去の話を。
 いつしか彼らと過ごせる未来があると信じて。


 だがそれは永遠に叶わない夢だった。
 娘らに優しく語った三日後、ゼスト隊の全滅という悲劇によって彼女は死ぬのだから。





 襲撃により破壊と殺戮の宴に燃えるフランク・モリス収容所で、一つの出会いがあった。
 それは血縁者同士の初対面だった。
 実の、ではないが、少なくとも血を分けた伯父と姪の産まれて初めての対面。
 ただしそこにあるのは、決して好意ではない。


「早く武装を解除して投降してください」


 青い髪を揺らした美少女が、ギンガ・ナカジマが明確な戦意と敵意を以って告げる。
 鋭い言の葉を投げ掛けた相手が自分の伯父だと知らずに。
 ただ目の前に相手が、父であるゲンヤを傷つけているという怒りのみに満ち。
 少女の吐いた残響に、対面の男、ギルバートの眉根が僅かに歪んだ。
 妹の為に訪れた殺戮の場において妹の残滓とも言うべきギンガから突きつけられる敵意は、心に冷たく鋭い痛みを生む。
 だがその痛みを捻じ伏せる。
 例え誰に憎まれようと、この道は譲れない、譲るわけにはいかない。
 無残に殺されたクイントへの、自分にできるたった一つの弔いを譲る道理など、この世のどこにもありはしない。
 故に、愛しい筈の家族へ、彼は悪意を向けた。


「嫌だ、と言ったらどうする?」


 言葉と共に、ギンガが向ける眼差しが一層鋭さを増した。

632 鉄拳の老拳士 拳の系譜 :2009/10/11(日) 21:57:10 ID:oS4Am6K2
 クイントの血を引く少女から投げ掛けられる敵意の込められた視線がギルバートの心を刻む。
 本当にクイントにそっくりだと、彼は思う。
 澄んだ碧眼の瞳、青く艶やかな髪、さらには体型や顔立ちに至るまで。
 クイントの遺伝子を用いて作られたのだから当たり前と言えば当たり前だろう。
 その少女から浴びせかけられる敵意は、まるで死んだ妹から向けられるような錯覚すら感じる。


「……なら、無理にでもしてもらいます」


 少女が構えた。
 半身を引き、左腕に装着した鉄の拳、アームドデバイスをギルバートへと向ける。
 廊下の蛍光灯を受けて鈍く輝く鋼の拳、それはかつて彼が愛する妹の誕