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SS妄想・没ネタ投下スレ

1名無しさん:2008/05/31(土) 09:43:22
先に予約を越されてしまった…死んでしまったけどこんなSS予定していた…
この二人を合わせるつもりだった…こんな展開書きたいけど自分には文章力が…

そんな悩める人たちが投下するスレです。
使えるネタがあったら書き手さんの参考になると思うのでぜひ書きましょう。

61ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2008/10/22(水) 22:15:45
多重スマンorz

62ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/01/24(土) 23:06:52
コッソリ暴露
実は鉄塔話の初期プロットではサーレーじゃなくて神父が死ぬはずだったし
更に、F・Fとダービーも死んで後に残ったジョルノとエシディシの対峙で次にブン投げる気だったww

プロットを変えた理由はナイショ

63ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/01/28(水) 18:19:10
恐らくフラグ関連・・・ただ殺すよりFFの黴フラグと天国ファミリーの魅力に負けたと見ますが・・・

64ネッシー  ◆0ZaALZil.A:2009/01/28(水) 23:07:48
>>62
テレンス「なん・・・だと・・・?」
オエコモバ「大した奴だ・・・」

65ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/02/17(火) 19:49:53
トニオさん組が放送行っちゃったからもういいかな…
ホルホースとスピードワゴンをトニオさん組と絡ませる気だった

戦闘を避けたホルホース組が来店、見張りに出てたマックイーンと遭遇
パニックに陥りながらも店内にいるトニオさんを思い、スタンド発動
話を聞かずにハイウェイ・トゥ・ヘルで三人死のうとする
間一髪の所でトニオさん登場、自殺を止める

場面変わって店内
ポルの様子を見に行くマックイーン
にこやかに話し情報交換をするトニオさんにスピードワゴンがぽつりと一言
「奴に気をつけたほうがいい…」

場面変わり店外
見張りという口実のもと、煙草をくわえ思案にふけるホルホース
ポルの存在を消すためにマックイーンのスタンドを利用することを考える
マックイーンがトニオさんに頼りきりなのはわかった
エンペラーで襲撃者を装いトニオさんを殺害、その際自分は襲撃者を追うふりをする
後は拠り所をなくしたマックイーンが自殺するのを待つだけ
やる、やらないは放送次第にするか、と判断

「ククク…」
必死で高笑いを堪えるホルホースで話終了

66 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:51:00
放送が先着順だったそうで。
まぁ「やべぇ乗り遅れる」って1時間ちょいで書き上げた作品ですので投票にしても先着にしても没だったと思いますがw
とりあえず投下

67蜘蛛の糸〜第一回放送〜 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:51:41
一日目、朝五時四十五分。

そろそろ放送を行う時間だ。
正直、緊張している。何を話せばいいだろうか。

……と言っても、僕が話さなければならない内容なんて大して無い。
死者のリストと禁止エリア、後はせいぜい皆への挨拶程度だろう。

だが、今とても緊張している。
途中で噛んでしまわないだろうか?声は裏返らないか?不安は募るばかり。
どうすればこの緊張をほぐす事が出来るだろうか?

そうだ。話すことをメモしておこう……いや、台本を書いてしまう方がいいだろうか?
うん、そうしよう。それを読めばいいし、後で読み返すこともできる。

―――そういう訳で、以下に第一回放送で話す内容を記述する。

68蜘蛛の糸〜第一回放送〜 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:52:11
(少し緊張した素振りで。咳払いを入れてもよい)
あ、あー、皆聞こえてるかな?
おはようの挨拶も兼ねて、ここで第一回の放送を始めまーす。


(少し楽しそうに)
君達はこの一晩、どんな心境で過ごしたのかな?
震えて眠れなかった?怒りに打ち震えた?楽しさで笑いが止まらなかった?
僕はとてもいい気分だ!今なら何だって出来る気がするよ!そんな僕の気持を皆が少しでも受け取ってくれたら幸いだ。


(一呼吸置いて落ち着いた口調で)
でも、これだけは覚えておいてほしい。
君達がこのゲームに、そして僕にどんな気持ちを抱こうとも……この“バトル・ロワイヤル”は動き出した。いや、動き出している。
ブレーキが効かないトロッコ、とでも表現しようか?そう。もう止められないんだよ。この僕自身でもね……


(淡々とした口調で)
それじゃあこれから、そんな“トロッコ”から振り落とされてしまった人たちを紹介しよう。
ジャック・ザ・リパー、ロメオ、ラング・ラングラー、ダイアー、スージーQ、
ケンゾー、トリッシュ・ウナ、エリザベス・ジョースター、オエコモバ、エルメェス・コステロ、
ワンチェン、モハメド・アヴドゥル、ギアッチョ、ストレイツォ、サンタナ、
ベンジャミン・ブンブーン、矢安宮重清、東方仗助、ドノヴァン、エンポリオ・アルニーニョ、
マライア、サーレー、ンドゥール、広瀬康一、ワムウ、
ウィル・A・ツェペリ

……二十六人。いいペースじゃあないか。
僕の言った意味が分かったろ?このゲームは確実に動いているのさ。案外……隣に立っているそいつが動かしてるかもしれないよ?
(少し笑う、そのあと一呼吸置く)


それじゃあ、禁止エリアだ。いくよ?
まず今から一時間後の七時、G−4。
その二時間後、九時にC−9。
最後に十一時、A−6。

最初の放送だから特別にもう一度言ってあげよう。G−4、C−9、A−6だ。覚えるなりメモするなりしたまえ。


(胸を張って大きな声で)
さぁ、放送はこれでお終いだ。皆の健闘を祈るよ!それじゃあ、また十二時に会おう!



―――以上を放送の内容とする。

69蜘蛛の糸〜第一回放送〜 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:52:42
……どうだろうか。みんなはこれを聞いてどう思うだろう?
興味と不安は尽きない。この“放送”と言う僕からのコンタクトは参加者に“対荒木挑戦権”を与えているようなものだ。
その可能性を汲みとってくれる人が現れる事をどこか心の中で期待してしまう。
なぜだろう?開催者である僕には障害以外の何物でもないのに?……それはこの後の六時間で考えることにしよう。

最後に禁止エリア設定の理由も書いておこう。
街中、郊外、そして“何もない場所”これがいいと思う。
「なぜ何もないところをわざわざ設定するのか?」これは皆の頭に大きな疑問符を浮かべる要因となるだろう。
禁止エリアそのもので殺す気もない。あくまでも恐怖と疑念を植え付けられればそれで良いのだ。



最後に、このページを読み返す僕へ。
第一回放送の時、僕はこんな事を考えていた。
今の僕の考えに、少しでも参考になればと思う。
過去を知ることは未来を望むより大事なことだと思うからね。それじゃあ。

70蜘蛛の糸〜第一回放送〜 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:53:14
* * * * *

ペンを置き、ふうと息をつく荒木飛呂彦。
肩をぐるぐると回して凝りをほぐす。が、その手、そして指先は震えっぱなしだった。
疲労でも寒さでもない。緊張……とも違う。武者震いと言うやつだろうか。

「後でこの事も書いておこう……と、やばいやばい。もう放送の時間だな」

スッと立ち上がりその“台本”を手に取る。
何度か深呼吸し、咳払いをひとつして……少し緊張した素振りで―――
「あ、あー、皆聞こえてるかな?おはようの挨拶も兼ねて、ここで第一回の放送を始めまーす。」

―――放送を開始した。


To Be Continued ...

71 ◆yxYaCUyrzc:2009/03/22(日) 22:54:14
以上で終了です。
タイトルの由来は本文中にも意味として出てきた【絶望の中での一つの可能性】というところから。

日記に台本やら何やら書いていた、と言う事を読み取ってもらえたら幸いです。
【直接(セリフとして)放送しない放送SS】ってどうなんだろう?と思いますが……皆さんの意見を待ちますw
禁止エリア設定の理由も本文中の通りです。あえて密集地にも関わらず人が少ないところ、動かしたいキャラの隣エリアとしてみました。


まぁ没でも読んでくれたら幸いです。ではでは

72 ◆xrS1C1q/DM:2009/03/22(日) 22:56:26
放送前の原稿と言うアイディアはなかった!
これは没ネタじゃなくて第二回放送辺りでも流用すればよかったんじゃないっすか?
()の部分で何故か笑ってしまったww


もうちょっと間を置くべきだった気がするけどまぁいいやww
勢いに乗って俺も放送案を投下します

73第一放送〜主催偏屈伝〜:2009/03/22(日) 22:58:18
やぁ六時間ぶりだね、元気にしてた人も元気じゃない人も……死んだ人はいいや。
とにかく僕の放送をよ〜く聞いておくんだぞ?
さっきまで僕とお喋りを楽しんでた人もいるんだけどね。
いやぁ、内緒の話なんだけど僕と会いたいならまだ幾つか方法が残ってるから頑張って探してみるんだぞ。
ちなみに今僕の後ろで流れているのはピンク・フロイドの『狂気』ってアルバムさ。
狂気……まさにこの殺し合いを象徴していると思わないかい?
ピンク・フロイドかぁ〜。そういえば関係者が二人ほどいたねぇ。
残念ながらこのアルバムには入ってないんだけど、機会があればゆっくり流したいところさ。
本当に長い曲だからかなり時間があるときにしか流せそうにないのが欠点なんだけどね。
今後からも放送時は僕のお気に入りのアルバムから無作為にいくから楽しみに待ってほしいな。


さて、そろそろ本題と行こうか。
君たちも一体誰が死んで誰が生き残っているかは知りたいだろう?
この殺し合い、バトルロワイヤルに乗っている人も……乗っていない人もね。
思った以上に諸君が優秀すぎるせいで既に四分の一以上が死んじゃってるんだ。
たくさん死んじゃう事を見越して多めに連れて来たのに関わらずだよ!
主催者の僕としては嬉しくて嬉しくてしょうがないや。
みんながこんなにも頑張ってくれるとついつい放送にも力が入るってヤツだね。
いくらでも言葉が出てきそうだよ。
だけどやっぱり早く情報が聞きたいだろう?
家族、友人、恋人、仇敵、主君、誰が死んででもおかしく無いからね。
でも、あえて今回は禁止エリアから先に紹介させてもらうよ。
禁止エリアについては最初の舞台で説明したはずだけどおさらいで言っておくからよ〜く確認しておくんだぞ。
一人や二人くらいなら爆死しても面白いかもしれないけど、そう何人も死なれたら流石に興ざめだからさ。
聞こえようが聞こえないが一回ぽっきりで終わりにするぞ〜。
爆弾の威力は既に分かっているはずだしね。
あっと、自分や他人の防御能力や再生能力に期待してる人がいるかもしれないけど全部無駄だからお勧めしないよ。
気付いた人もいるようだけど、爆発したら絶対に死ぬように対策はしてるからね。
……一人くらいならやっても面白いかもなぁ。
自信がある人は是非ともチャレンジしてくれないかな?
ニヤリと笑えるような事はたくさんあったけど大爆笑しちゃったのは一回しかないんだ。
命と引き換えに僕に笑いを提供してくれる人。
勇気さえあればいつでもやってくれてオッケーだよ。
ダイアー君みたいな面白い死に様を晒す人が放送ごとに一人はいてもありだし。
支給した僕もあの支給品の使われ方には笑いが止まらなかったよ。
あっ、ヤバイヤバイ。
いきなり死んだ人の情報をばらしちゃったよ。
まっあんまり影響が無さそうな人だしいいかな。
ゴメンね、中々本題に入れないみたいだ。
六時間そこらで性格が何とかなるわけないけど次の放送までには何とかできるように考えとくよ。
あくまでも考えとくだけだけどさ。


じゃあ気を取り直して説明に入るとしよう。
まず、禁止エリアに制定されたエリアに入ったら首輪が爆発する。
警告は〜あるかもしれないしないかもしれない。
命を賭けることにはなっちゃうけど確かめてみるのもありだね。
禁止エリアが効力を発揮するのはこの放送の終了後からキッチリ2時間づつ。
近くにいる人は逃げたほうがいいよ。
いや、逃げられなくなってじわじわと追い詰められてくってのも面白いけどね。
一応忠告しとくのが僕の優しささ。
では発表しまぁ〜す。
今回の禁止エリアは


今から2時間後にF-2

次の4時間後にはB-8

次の放送と同時にA-8


の三つでいいかな?

74第一放送〜主催偏屈伝〜:2009/03/22(日) 22:59:01
個人的感情ははないよ、いや本当に。
僕がこの六時間で必死に頭を捻った結果がこの三つのエリアなんだ。
怨むなら僕じゃなくて、自分の行いを怨むんだね。
それに僕はとても優しいんだ。
大切な人が死んだって動揺で禁止エリアの告知を聞き逃さないように先に言ってあげたんだぜ?
焦らしてるのかと思われるかもしれないけど、これはあくまでも僕なりの配慮なんだから勘違いしないでくれよ。
善意が誤解される。
これは実に実に悲しいことだ。
分かってたつもりだけど、やっぱりこういう状況になって改めて分かることもあるよね。
当人達にとっては悲劇であり……そして、僕にとっては喜劇のような状況がね。
さて、もう死者の発表まで秒読みになってきたよ。
君たちはどうするのかな?
さっきから楽しみで楽しみでしょうがないんだ。
大体の様子は分かってるんだけどさ……やっぱり実際に体験したほうがわかりやすいだろう?
人数を先に言おうかな? 名前から先に言おうかな?
とりあえず人数を言っておいちゃおうか。
26人だよ26人!
僕が興奮するのも分かってもらえたんじゃない?
ちなみに一人で三人も殺した猛者が三人もいるよ。
現在は君たちがトップだから誇るべきだね。
で、どうだい? さっきまでは他人事のように放送を聞いてた君も少しは焦りだしたんじゃないかな?
四分の一と聞いてもピンとこないだろうけど、実際の数字を聞いちゃうと何故だか鮮明にイメージできちゃうからね。
じゃあ、死んでいった26名の名を発表しよう。
諸君! 遠くへ去っていた彼らに敬礼!
なんちゃって。
ゆ〜っくり言ってくから聞き逃さないようにね。


ジャック・ザ・リパー、ロメオ、ラング・ラングラー、ダイアー、スージーQ
ケンゾー、トリッシュ・ウナ、リサリサ、オエコモバ、エルメェス・コステロ
ワンチェン、モハメド・アヴドゥル、ギアッチョ、ストレイツォ、サンタナ
ベンジャミン・ブンブーン、矢安宮重清、東方仗助、ドノヴァン
エンポリオ・アルニーニョ、マライア、サーレー、ンドゥール、広瀬康一
ワムウ、ウィル・A・ツェペリ


もう一度言っておくけど、以上26名がこの腐りきった殺し合いで尊い命を散らせたメンバーだよ。
こんなにたくさんいたのに噛まずに全員分言えた自分を褒めてやりたいね。
特にオコモエバかオエコモバか悩んだ時は冷や汗すら出てきちゃってさ。
ほら、僕の貴重な見せ場だろ?
ここで噛んじゃったりしたら最高に恥ずかしいからね。
しかし、あの四人が真っ先に死んだメンバーに入ったってのは意外だったよ。
やっぱり実力だけじゃなくて運の要素が大きく絡むのがバトルロワイヤルの醍醐味だね。


じゃあ、そろそろお別れの時間だから最後に一つだけ言っておくね。
なんだか僕を倒そうと考えている連中が一人二人じゃなくてかなりいるようなんだけど……あえて止めたりはしないよ。
足掻いて足掻いて結果的には絶望しながら死んでいくのを見るのも乙だしね。
それに、万が一会場に残った全員が僕に反逆したとしても僕は君たちを簡単に殺すことが出来る。
しばらく様子を見てるから、殺し合いに積極的な人もそうでない人も頑張ってくれれば幸いさ。

おっとすまない、一つ言い忘れてたことがある。
これが本当の最後だから聞いておくれ。
優勝した人には僕の出来る限りのことで願いを叶えてあげよう。
あくまでも僕に出来る範囲のことだけだからあまり高望みはしないようにね。
では、大多数の諸君は六時間目にまた会おうじゃないか〜。
運よく僕にあう方法を見つけた人は今すぐにでも再会するかもしれないけどね。



★  ☆  ★


「日記にも書いてあったけど、放送というのは本当に緊張するね」

嬉々とした様子で大仕事を終えた荒木飛呂彦は部屋の隅に立つ人影に話しかける。
返事は――――――ない。

75第一放送〜主催偏屈伝〜:2009/03/22(日) 23:02:04
まぁ、あれです。音楽のところが本放送と被ったりしたのに多少凹んだのは仕様ですww
それとネタに走りすぎた部分があるのは反省していない。没ネタでは徐倫のマスターb(オラァ のことでも暴露させる気でした
どう考えてもやりすぎです

元ネタは荒木飛呂彦が原案協力した『奇人偏屈伝』からです

76ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/03/23(月) 15:12:56
放送多すぎwww
そしてすべてにおいて荒木自重しろwww
どれも魅力的なほうそうだな…投票いったら逆に票が割れてそうだったな、これは!

77 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:36:51
仮投稿に誤爆した者です・・・

前回のジョジョロワで「バトル・ロワイヤル(スタンドの方)」
の描写がすくなかったのが残念だったので
その事をメインに書いてます。

78 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:37:26
ーーーー四方を汚れ一つ無い真っ白な壁に閉ざされた空間ーーーー
その空間には棚や机と椅子、それと窓が一つあったが、淡い青色のカーテンがかけられ、
外の世界をうかがい知ることはできなかったーーーー

   
・・・・・・・・外の世界?


くつくつと「彼」は笑った。
   
「外の世界」『外の世界』なんて面白い言葉なんだろう!
「彼」は窓の近くまで歩いてゆき、カーテンをめくりあげようとして
手を止めた。
・・・・そしてゆっくりと思い出す。
自分達がこの空間を作り上げた時の会話を。
このゲームを開始する前の話を。

大好きな自分の主の言葉を。






「机と椅子・・・・う〜ん、棚もいるかな?」


       ーかしこまりました。これでよろしいでしょうか?


「うんそれでいい・・・あ。だめだ机はもっと大きいのがいい、
 書類とか積めるくらいのを。」


       ーこれはいかがですか?


「おお!これこれ!
 いやーこれから忙しくなるしね〜、
 参加者の能力どこまで制限できるとかさー、地図の縮尺とかさ、
 頑張って色々決めたはいいんだけど、決めたことが多くって
 自分でもちょっと覚えきれていないんだよね。
 だから紙に書いて手元に置いとこうと思ってね。

       
        ーなるほど。


「あ、そうだ窓も作ろうよ。カーテンの色は・・・
 青がいいな。薄い青。」


        ー窓?


「そう窓!カーテンは閉めた状態で作ってね。可能性は残しておきたいから。」
 

        ー可能性?
(なんだかたずねてばっかりだな自分・・・)


「シュレディンガーの猫って知ってるかい?」
      

         ーはい。


(たしか箱に猫を閉じ込めて、箱の中の猫は生きているのか、死んでるのか
思考するとかいった哲学だったはず。)


   ーそれではこのカーテンを開くとシュレディンガーの猫が
    生きてたり、死んでたりする可能性が見えるのですね。


「いいや違うよ『バトル・ロワイヤル』」


モナ・リザ似の男はニヤリと笑うとこう続けた。




              ・・・
「シュレディンガーの猫は僕達だ。」

79 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:41:10

「この部屋にいるのは僕と君だ。
そしてあのカーテンの奥にいるのも僕と君だ。
その部屋のカーテンの奥にいるのも僕と君だ。
その部屋の奥の奥にいるのも僕と君、その奥の奥の奥の部屋にいるのも
・・・・・・・僕と君だ。」


       ー・・・・・・・・・。


「このカーテンが閉まっているかぎり、その可能性は消える事が無い。」
「だから、もし僕と君が今から行われるゲームに敗北し死亡したとしても・・・。」
いつのまにかモナ・リザ似の男の手には本があった。
かなり古いものなのだろう、表紙は色あせ角は降り曲がっていた。
所々破れたり、濡れて乾いたかのような箇所も見られた。


       ー・・・・・・・・・。


「あのカーテンの向こうでは僕と君が『バトル・ロワイヤル』を続けてる。」

「そしてカーテンの向こうにいる僕はこう思うんだ。
 『ああ、あのカーテンの奥の外の世界では
  僕と君がゲームを楽しんでいるんだ。』」

「それってとても素敵な事だと思わないかい?」

80 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:42:13

 「えー皆聞こえてるかな?それじゃあただいまから一回目の放送を行いま〜す。」

バトル・ロワイヤルは、はっと声のした方を振り返った。
もうそんな時間になっていたらしい。


 「う〜ん……どうしようかな。
 最初の放送とはいえ実はそんなに話すことなんてないんだ。
 そうだな、まず死んだ参加者から話そうか。
 君たちだっていの一番に知りたいだろう?
 ………誰の『運命』が潰れたのかを。 」


荒木飛呂彦はよほど楽しいらしい、
声も高らかに手元の原稿を読み上げている。


 「死亡者を発表するよ。死亡したのは――――
ジャック・ザ・リパー、ロメオ、ラング・ラングラー、ダイアー、スージーQ、
ケンゾー、トリッシュ・ウナ、リサリサ、オエコモバ、エルメェス・コステロ
ストレイツォ、サンタナ、ベンジャミン・ブンブーン、ワンチェン、
モハメド・アブドゥル、ギアッチョ、矢安宮重清、東方仗助、ドノヴァン
エンポリオ・アルニーニョ、マライア、サーレー、ンドゥール、広瀬康一、
ワムウ、ウィル・A・ツェペリ。」


楽しそうな主の手には一冊の本。
表紙は色あせ角は降り曲がってる本。
「荒木飛呂彦」の日記。


「 ……26人。およそ四分の一か。
 なかなかどうして頑張るねぇ。この分だと今日中に終るかもしれないな。」


バトル・ロワイヤルは「荒木飛呂彦」の日記に憎憎しげな目を向けた。
こんな物があるから主はあんな弱気な発言をしたのだ。
自分と主がゲームに敗北するなどという・・・・・。


「 そして、もう一つの重要事項、禁止エリアについて話すよ。
 一度しか言わないからよく聞いて欲しい。該当するエリアは――― 」


『だから、もし僕と君が今から行われるゲームに敗北し、死亡したとしても・・・。』
そう言った時の主の表情が忘れられない。



「 まず7時からA-8
  次に9時に B-8
  最後に…11時にF-2
  とりあえずこの3箇所にしたよ。 」



あんな・・・あんな顔をさせてはいけない。




 「もちろんその時間までに禁止エリアに留まっていたら、首輪の仕掛けが発動する。
  自分自身のせいで『生命』を奪わないように注意してくれ。 」


泣き出しそうな子供のような顔。



 「予想以上の進行具合に私は非常に満足している。 
  これからもゲームを余すことなく楽しんで欲しい。
  とはいえ……妙な考えはあまり関心しないな。例えばそう――――ゲーム台無しにしようとするなんて、ね。
  言い忘れていたけど、このゲームを頑張った人には何かプレゼントを差し上げようと思う。 」


このゲームが終わったらあのカーテンを開けよう。
バトル・ロワイヤルはそう思った。
そして指し示すのだ、カーテンの外の世界には主が不安がるものなど何も無いのだと。
自分たちは箱の中の猫では無い。
箱の中に猫を入れる側の者なのだと。

81 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:42:46

 「何とまでは言えないけど、とても『素晴らしいもの』であることは約束しよう。
  巨万の富?最強の種族になれる処世術?あるいは……ブラフ?なんてね。
  まあいいさ。どう解釈するかは君たち次第だから。 」



あのカーテンの奥は可能性で満たされている。




 「生き残っている61人の参加者のみんな、おめでとう。やっと夜が明けた。
 最後になるかもしれない『朝日のあたたかさ』を充分に味わっておくといい。
 次の放送は……正午かな。」


このゲームをとどこおりなく終了させた暁には、
きっと主も自信を取り戻し・・・あんな日記の事など忘れてくれる。



 「じゃあ、おおむねそうゆうことでよろしくね――― (カチッ)
  ・・・・あぁ〜〜、こんなもんでイイッすかねェェェェェーーーーと。」

放送は終わったらしい。荒木飛呂彦はコキコキと首を鳴らしながら近付いて来た。


               −上出来です。我が主。


「ざっとこんなもんよ。つーか君は何してるのそんな所で。」

カーテンの裾をつかんだままのバトル・ロワイヤルに興味を持ったらしい。
荒木飛呂彦はバトル・ロワイヤルに近づくと後ろから抱き締め、肩ごしに手元を覗き込んだ。

属に言う「ジョジョ立ち」状態である。

主の体の重みを幸福に感じながらバトル・ロワイヤルは答えた。
                

                

            ー箱の中に猫を入れているんです。



その言葉と態度に、彼が何を言わんとしているのか気づいた荒木飛呂彦は
きょとんとした後、次の瞬間には顔中に満面の笑みを浮かべ、
バトル・ロワイヤルを抱きしめる腕に力を込め、
・・・しかし口調だけはそっけなくつぶやいた。

「ああ、あったねぇそんなの」


【謎の小部屋(?-?)/一日目/早朝】

82 ◆bAvEh6dTC.:2009/03/24(火) 08:45:32
御目汚し失礼しました。
勢いで書いたから所々おかしいと思います。

83 ◆0ZaALZil.A:2009/04/23(木) 18:14:16 ID:???
今回の話は最初デイパックを入れ替えない方向で考えていましたが、
青酸カリと変身能力という最高の相性を持つ組み合わせにひかれてあのようにしました。
変身能力持ちに服を支給すんのも都合良すぎるよなってのもありましたが……

84ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/06/27(土) 22:17:54 ID:???
近々ここに没プロットを書くことになるかもしれない……

85ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/06/28(日) 14:01:58 ID:???
承太郎とディオを戦わせてディオを時の世界に入門させる、とか考えてた。

あとボスを承太郎やリンゴォと組ませて時止めやマンダム発動直後にキンクリで時をふっ飛ばして能力連続使用とかもありかと思った。

86ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2009/07/27(月) 22:09:32 ID:???
ディアボロのキャラがあまりにも変わってないので
ジョセフがディアボロに対し「お前あれか? 厨二病ってやつか? 邪気眼が共鳴すんのか?」
と言うネタを考えていたが、狙いすぎな気がしてやめた

87ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/03/25(木) 08:00:10 ID:???
棺桶ディオとジョナサンを鉢合わせるつもりだったなんてそんなこと……

88ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/24(土) 22:40:22 ID:???
打ち寄せる波が潮の匂いを運び、島にいる三人の鼻腔をくすぐる。
それを感じることができるのはただ一人。『ゲームマスター』ダービー。
ダービーは潮風が運んだテーブル上の砂粒に気付くと顔をしかめた。そそくさと収納棚に向かうと布巾はなかったかな、と独り言をポツリ。

穏やかな南国を思わせる島は鮮やかな植物が植え込まれ、見渡す限りどこまでも広がる海に囲まれている。
極楽を想像させるこの場所はその印象通り、最も天国に近い楽園。
天まで昇る、を文字通り体験することができる唯一の場所でダービーは参加者を導く天使の役目を果たしていた。

エリナ・ペントルドンを始め、シーザー・アントニオ・ツェペリとの一戦。そして岸辺露伴との激闘。
いずれもダービーは己の仕事をせっせとこなし、既に二人の男をあの世一歩手前まで案内済み。岸辺露伴にしても今は休戦中なだけであり、再戦は遠くない。

だがそれでもダービーは暇をもて余していた。ギャング・ペッシの来店にしてもちょっとした顔合わせみたいなもの。
ダービーからしたら少しばかりの休息と言ったところだろうけれども、『見てる側』としてはその数時間も無駄使い。
ゆっくり精神を休める暇も与えてはくれない。バカンスに終わりはつきものだ。
なんせ閻魔大王、荒木飛呂彦はエンターテイナー。無茶な要求、イヤでも通す。
天使だからといって休暇をとりっぱなしにできるほどあの世は暇ではない、と言うに違いない。

胸ポケットに振動を感じるとテーブルを磨いていた手を止める。思いっきり舌打ち一つ。こき使われるもののささやかな抵抗だ。
ポケットから出した携帯電話を睨み付ける。止まるはずのない振動、とらなくてはならない電話なのだがすぐにとるのは癇に障る。
だがいつまでもそうしてるわけにはいくまい。ため息を一つ、盛大に。
絶対的な力の差。ゲームマスターとしての役割。使う側、使われる側。首のヒンヤリとしたブツ。
仕方がない。嫌々ながらもコールボタンをダービーは押した。




「………もしもし」





     ◇   ◆   ◇

89ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/24(土) 22:40:54 ID:???
「…マンマミヤー………」

目が覚めたらそこは島国でした、ってか?
試しに足元の砂をすくってみる。パラパラとした感触、ちょっと傾いた太陽の温かさがまだ残ってる。
ザザーンと音をたて近づいてきた波、軽くさわってみる。ヒンヤリとしていて気持ちいい。舐めたらちょっぴり塩辛かった。
オーケー、とりあえず夢じゃない。幻覚でもなけりゃ俺の妄想でもないってわけだ。
…となると決まってる。

「何の用だ、ダービーさんよォ?」

椅子を引くのも億劫で軽く蹴飛ばし華麗に座る。四人座りのテーブルには既に二人の影。
右手にはそのダービー。カードには自信のある俺でもその手さばきにはビックリだ。今も目にも止まらぬ、って言っても大袈裟じゃないスピードでカードシャッフルを続ける。
左手には俺がカードゲームを仕掛けた時からいた中年紳士。すっかり血色もよくなっている。それどころか、ダービーが出したのか?ちゃっかりコーヒーを口にしてくつろぎムードだ。

さて、自分から聞いたはいいものの、状況はヘビー、俺の心はブルー一色。
今の今までほったらかしだった俺を目覚めさせたってことは十中八九俺にとっちゃ悪い話に決まってる。
しかも俺は一度コイツに完璧と言っていいほどに叩きのめされた。敗北の瞬間を忘れた、なんて都合のいい頭を俺は持っちゃいねぇんだな。

じんわりと手のひらに汗をかくのを感じた。さりげない感じでズボンで汗をふき取る。なんでもないはずのダービーの仕草がやけに気になった。
ダービーは黙ったままシャッフルを続ける。紳士はコーヒーを飲み干すとダービーに視線を向けた。
カチンと置き皿とカップがぶつかり合う音が聞こえた。
そしてそのタイミングを見計らったかのようにダービーが一言。

「タイムオーバーです」

…あん?

「どういうことだ、それは?」
「言葉通り受け取って頂ければ結構…そのままの意味です」
「私達にわかるように説明してくれるかな?」

ああ、もっともだ。タイムオーバーだなんて言われたってこっちはお前にあんな状態されてたんだ。
察しろなんて言われたって無理に決まってる。
だがダービーは動じない。黙ったままシャッフルを続け綺麗にカードを弾いていく。その様がやけに鼻にかかる。俺のイライラに拍車をかける。

「ジョージ・ジョースター様、そしてシーザー・アントニオ・ツェペリ様。あなた方は『休みすぎた』」

天気の話でもするかのように不意にダービーは話を始めた。手は止めずシャッフルしたカードを円のように広げる。

「その結果放送を越え、強者との戦いも避け、ただ日光浴に励むだけでこうして『生き永らえた』…おわかりでしょうか?」

ピンッ、と端のカードを指で軽く弾く。まるで生き物かのようにカードが立ち上がっていく。
そして綺麗なカードの円の完成だ。ニコリと笑顔のダービー。

「荒木氏はお二人が数時間もここに寝転がってるだけの状態に我慢ならないのです」
「そういう意味でのタイムオーバーってことかね?」
「焦れってぇな、ハッキリいいな、ダービー。それで荒木は俺たちになにをさせてぇんだ?」
「いえいえ、簡単な話です」

90ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/24(土) 22:41:47 ID:???
一枚のカードを手に取ると見せびらかすように俺たちに向ける。手に取ったカードはジョーカー。
プリントされてるのは荒木飛呂彦、その人。
ダービーに負けないぐらいの満面の笑み。男二人の笑顔なんて誰が見たいもんか。

「もう一勝負です、お二人方。勝てば殺し合いの地獄へ真っ逆さま、負ければ身体と生き別れ天国へまっしぐら」

ビビってるかって?ああ、ビビっちまうさ。魂を賭けた、じゃねぇ。命を賭けたギャンブル。
正真正銘のジャンキーだ。何が天国地獄だ。救いもクソもないくせによ、クソッタレ………ッ!

「やりますか?やりませんか?尤も断ればボンッ!ですが………どうしますか?」

それに対して俺は………

「YES、とで答えると思ったのか?生憎俺は―――「いいだろう、やろうじゃないか、ダービー君」

ん………?

「その代わり私が勝ったら即刻君にこのギャンブルゲームをやめてもらおうか」
「ジョースター様、その場合貴方は二度勝たなければなりませんが?」
「構わない。この殺し合いを計画した荒木もだが、ダービー君ッ!君のこの行為も断じて許されるものではないッ!」
「………どう言われても結構。それでは貴方自身の口から直々に宣言していただきましょうか」
「いいだろう。この勝負、命を賭けようッ!」

…あん?

「グッドッ!」
「その代わり条件が二つある。まず競技はこちらで決めさせて貰おう。そしてもう一つ、シーザー君と相談しても構わないかね?」
「どうぞ。私はゲームマスター。そして同時に『こっち側』である以上私が競技を決めるのはナンセンスでございます。いかなるゲームも受けてたちます」
「じゃシーザー君、此方に来てくれないかい?」

ちょっ………は………?






     ◇   ◆   ◇

91ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/24(土) 22:43:32 ID:???
的はずれもいいところだ。この私が許せない?許せないだと言ったのか?ジョージ・ジョースターよ。
舌打ちをしたくなるような気分を必死で抑える。どいつもこいつも鈍い連中だ。こっちの身にもなってみろ。
エリナ・ペンドルトンにしてもそう。このシーザー・アントニオ・ツェペリにしてもだ。
どいつもこいつもまるでわかってない。だから『騙される』…『見抜けない』…この私のトリック…イカサマ…そして荒木飛呂彦の狙いが。

この私が悪?いったい何がだ?被害者面するのはいい加減にしてもらおうか、ジョージ・ジョースター。魂を抜かれなければ死んだ分際が…恥を知れッ!
『ただの参加者』であることを感謝しろッ!貴様の浅はかな考えをこの私に押し付けるなッ!
胸糞悪くなるような声が脳裏でガンガン響く。頭痛がする。吐き気もだ。
首輪を巻かれ命を脅される。自由に動くことも敵わなければ首輪を存分にチェックすることも敵わない。
私とてこの舞台のひとつの駒。そして貴様達参加者より圧倒的に自由は少ないのだ。そんなこともわからないのかッ?!

勝つ。必ず勝ってやる。この私を侮辱したことは高くつくぞ、ジョージ・ジョースターよ!
………それにしても今更作戦会議など無意味、無駄。どんな競技であろうともこの私は負けない。
尤もあまりに一方的ではつまらないがな。どれ、それでは………

「お決まりになられましたか?」
「ああ、充分だ」
「ジョースター卿、どうも俺はその案に…」
「頼む、シーザー君。私を信じてくれ」
「………そこまで言われたら俺は何も言いません」
「それでは聞きましょう。ゲームは何に致しましょうか?」


「うむ、我々が勝負を申し込むのは『じじ抜き』だ」





     ◇   ◆   ◇

92ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/24(土) 22:44:15 ID:???

―――以下、ジョージ・ジョースターⅠ世、シーザー・アントニオ・ツェペリの会話

「さあ、シーザー君、こちらへ」
「ちょっ…ちょっと待ってくれ。えーと、ジョージさん…って言ったか?」
「…?どうかしたかね?」
「あー…アンタがどうやってダービーに魂を取られたとか、どうしてこうなったとか気になる事はいろいろあるが…」
「…」
「とりあえずまず最初にひとつ質問させてくれ。『ジョセフ・ジョースター』という名前に聞き覚えは?」
「ジョセフ………いや、すまないが心当たりはないな」
「そうか。すまねぇ。それで話は戻るが………アンタは本当にダービーに勝てると思ってるのか?」
「どういう意味だね?」
「どうって…当然アンタも一回負けてんだろ?
「いや、私は直接ダービー君とは戦ってないのだよ」
「え………?」
「詳しく話したいが時間がない。とにかく私に協力してくれないか、シーザー君。お願いだ。ジョースター家当主として、ジョージ・ジョースターとしてお願いする」
「ジョースター卿、勇気と無謀は違いますよ。明らかに負ける戦いに挑むのは馬鹿がやることだ」
「当然策はあるさ。そしてそれには、シーザー君、君の度胸と不思議な力が必要だ。セキュリィテーシールを貼りなおすような、シャボン玉でレンズを作ってしまう、そんな力が」
「なんでそれを知って………?!」
「先の戦いを見てただけさ。君も露伴君の戦いを見てただろ?」
「いや、俺はあの棚の中にいたから外はなにも見えませんでしたよ…?」
「………とにかくだ。頼む、シーザー君。お願いだ。どっちみダービー君は宣言どおり我々が戦わなかった場合首輪を爆破するだろう。やるしかないんだよ、シーザー君!頼む!」
「…わかりましたよ。その代わりまずは貴方の作戦を聞かせてくださいよ」
「ありがとう。まず第一に『ギャンブル』で彼に勝つのは不可能だ」
「…」
「彼は『プロ中のプロ』。対して私はたしなむ程度、真っ向勝負じゃ相手にもならないだろう。イカサマを仕掛けようにも君も見たとおりダービー君には通じない。それにイカサマというのは種を仕掛ける時間が必要だがそれもない
では露伴君のように『駆け引き』や『心理戦』を越えた競技?いや、それも通用しまい。露伴君でさえ引き分けがやっとだ。シーザー君も敗北前ならまだしも今の精神状態じゃ敵わないだろう」
「ジョースター卿、今のは聞き捨てなりませんよ。俺がブルッてるように見えるんですか?」
「気を悪くしたらすまない。だがあらゆる可能性を考えると私の作のほうが確率が高そうなんだ。それに君が勝てたとしても私は勝てないんだ」
 さっきも言ったとおり私の策には君が必要なんだ。『私』と『シーザー君』のふたりが死なないための策にはね」
「それは…?」
「最近飲み仲間のひとりの教えてもらったゲームでね…Old Maid、ババ抜きを少し変えたゲーム、『じじ抜き』さ」





     ◇   ◆   ◇





シーザーは気づいていた。それでもジョージを信じるしかなかった。どれだけ作戦に穴があろうとも今のシーザーにはジョージの策に縋るしかなかった。
ダービーに敗北し命を握られシーザーはいつもの自分を見失う。

93ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/26(月) 00:42:09 ID:???
この後本当は
→手札を捨てる時波紋で一枚適当にトランプをくっつける
→余りが二枚で来て終わりがないのが終わり
→シーザー上がりでジョージ「ディオとジョナサンを頼む」
→ダービーズアイランドから戻るシーザー「ディオだって…?」
→とにかくジョージを助けるためにも凄腕のギャンブラーを見つけねーと&露伴探すぜ!で状態表

→戻ってアイランド。電話は荒木からのものでダービーに二人をどうにかしろ的な内容だった。それを聞いてたジョージの策は終わりがないのが終わり。
→でも肉体は限界だった。だからダービーは見え見えのいかさまを見送った。シーザーが帰りジョージが死ねば荒木からの任務は達成できるから。
→ジョージ「私の体はあとどのぐらいもつかね?」ダービー「さあ?」
→ジョージ「一人の男として君にギャンブルを申し込むッ!」 カードをめくってのハイ&ロウ

→場面変わって荒木とダービーの携帯会話 「それで結局君は負けてしまったわけだ」
→机の上で笑顔で死に果てるジョージ 手にはトランプカード だんまりのダービー
→「仕方ないね、ルールだから」次の参加者に情報を渡すよう指示 同時にダービーにくぎを刺す
→「別に負けてもか構わないさ。でもね君ならスタンド使えば勝てたんじゃないの?」
→だんまりのダービー 構わず電話を切る荒木
→ギャンブラーとしてのプライドをとったのだ。悔いはない。だが確かにジョージは立ち向かった。
 力に屈さず自分を信じた。そんな相手に負けたのだ、私は…
→机で逝ったジョージを見て唇をかみしめるダービーで終了

って予定だった。やれやれ、的外れだぜ…

94ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:18:03 ID:???
さらに↑にはプロトタイプとも呼べるものがある
ついでに投下してみる

95ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:21:25 ID:???
右端にスペードのクイーン………中央に3が重ねられる………残りの手札は僅か………ここが勝負どころッ!
岸辺露伴も同じく僅かッ…ここは畳み掛ける時………ッ!

残り五枚…三枚………そしてラストッ!


「「決着ゥーーーッ!」」


   バシィイイーーーーッ!

またもや、だった。私と岸辺露伴は互いにカードを叩きつけたままの体勢で身動ぎしない。
一秒、二秒と沈黙が流れる。
そして私のスタンドは…動かないままだった。
これは岸辺露伴が知らぬことだが、仮に…仮に私が敗北していたら。敗北を少しでも、髪の毛一本ほどでも感じ取っていたら。
言うまでもない。公平(フェア)に私のスタンドは動き出し、魂が弱まった私の手元からジョージ・ジョースターとシーザー・ツェペリの精神を取り上げてしまうだろう。
そして同様に…仮に岸辺露伴が敗北を悟っていたとしたら。彼の体は今頃物言わぬ者となり、机に突っ伏したままであろう。

岸辺露伴が何事もなかったかのようにカードを集め始めた。
かさばるカードを一まとめにし、軽やかにカードをシャッフルしていく。
つまりは互いに敗北を認めなかった。シンプルな結論が今の現状を表している。

彼からカードを手渡され、私もシャッフルを行いながらも思案を続ける。
どうしたら勝てるのか…なにをしたら良いのか…この拮抗をどうやって打ち破ればいいのか…。

「余計なお世話だとわかってはいるし…なによりも生粋のギャンブラーのあんたにこう言うのも不躾だとはわかってるんだが………」

テーブル越しに岸辺露伴が声をかけてきた。私はほとんど無意識に手を動かしながらも目を向ける。
手の中でカードが跳ね回る。

「一つだけ気になったことがあるんで言わせて貰おうか」
「どうぞ…ミスター・岸辺………」

これは仮定の話だが、私の対戦相手があの空条承太郎であったらこの勝負、どうなっていただろうか?
最強のスタンド、スター・プラチナ…その精密機械かのような動き、銃弾をも掴む素早さ。
そして何よりも、承太郎という人間………

「ショットガンシャッフルはカードを痛めるぜ」
「…これはご丁寧にご忠告ありがとうございます」

ビシィッ!と私に指を突き付け岸辺露伴は軽口を叩いた。その表情には幾度も魂を賭けた戦いをしたとは思えない程の余裕が伺える。
顔には汗一つ浮かべず、それどころか笑みを浮かべている。
ダービー君、この戦いは僕にとっちゃただのコーヒーブレイクにも等しい遊戯なんだ、そう言いだしかねないほど今のこの男には絶対的自信が満ち溢れていた。

シャッフルを終えた私はカードを岸辺露伴に返した。
二、三度カードを混ぜ返した彼は丁寧にその山を二分していく。
自分の場に一枚、私に一枚、自分の場に一枚、私に一枚………。

96ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:22:48 ID:???
おっと、さっきの仮定の話に答を出してなかったな…。そうだな、これはあくまでも私の主観だが…
勝負はその時になってみないとわからない…そんな単純なものが答えだろう。

スター・プラチナは確かに強力なスタンドだ。だがその使い手がイカレポンチな奴だったら…?
馬は乗り手の恐怖を感じとるらしい。公道を運転する一般人がF1車に乗ると最初のカーブを曲がりきれずに激突してしまうらしい。
乗り物がモンスターならば乗り手もそれに振り回されない程の精神がなければならない。
スター・プラチナは空条承太郎という男だからこそ操れるモンスターエンジンなのだ。
だから勝負はその時になってみないとわからない。
こちらの精神状態、向こうの精神状態、気候、体力、気力、感情………

配り終わったカードを整える。カードの枚数は確かに一緒であった。枚数を告げると同じ数が岸辺露伴の口から告げられた。
その点でこの男はブレることがないッ!勝負に最も影響を与える精神力を既にこの男はコントロールしているッ!
試合中にフィジカルが向上することはあり得ない。だからこそ精神力、集中力で100%の力を発揮してくるこの男は………ッ!

「私も一つ訪ねるべきことがありました…ミスター・岸辺………」
「…なんだい?」

だがッ!このテレンス・T・ダービー!二度も負けるわけにはいかんのだッ!

「そろそろ十二時を向かえます…。つまりは放送があるということなのですが…」
「………」
「いかがなさいますか?このまま私とスピード勝負を続けるのも良し。一度帰って放送後に来るのも良し」
「…フン」
「貴方には選択の権利がございます」

この砂浜、そして舞台…広がるテーブルに用意されたゲーム機。
私は…悔やんでいた!
あの時、承太郎との勝負で…なぜ私は負けを考えてしまった?
確かにスタンドは通用しない。だが承太郎はゲームの『素人』だ…私には『誇り』があったはずなのだッ!
土壇場で自分を信じきれなくなった自分!スタンドが通用しない?それがなんだって言うんだ!
…そう私は考えれなかったのだ。

そう、あの時自分がすべきだったことは…そして最も難しかったことは!


   『自分を乗り越える事』だったのだ!


「それってつまりここには放送が流れないってことかい?」
「さあ?」
「ここでお開きにしたら勝負はどうなる?」
「お答えできません」
「フン…愚問だね…勝負は続行だ、テレンス・T・ダービー」
「放送を聞かなくてもかまわないと?」
「今僕が一番に考えないといけないことはどうやったらこの目の前にいるやつの自信をへし折ることができるか、さ」

97ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:23:36 ID:???
荒木がなにをしようが構わない。私は強制でここに来たのではないッ!
一人のテレンス・T・ダービーとして、『ダービー・ザ・プレイヤー』の名を冠するため!
そして、過去の自分に打ち勝つためにここに来たのだッ!

「承りました…それでは………」
「ああ、やろうか、ダービー…」

そうだ、これは『試練』だ…。

「いえ、お待ちください。まだ話は終わっていません…」
「…?」

未熟な過去に打ち勝ち成長するため…

「私には『レイズ』の権利がある」
「…『レイズ』」

誇りを取り戻し弱い自分を乗り越えるため…

「『レイズ』を宣言!次の勝負に私がベットするのは…」

そのために、このテレンス・T・ダービー、一世一代の………!

「私の魂と荒木飛呂彦の情報だ」





倍プッシュだ。






   ◇   ◆   ◇

98ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:24:13 ID:???
「荒木飛呂彦の情報だと…?」
「ミスター・岸辺…もしも貴方がコールするというのなら…貴方にもそれと同等のものを支払っていただきます…」

僕が一番知りたかった情報。僕がここに残った目的が今目の前に転がり混んできた。
とは言えラッキー!とは素直に喜べないヘビーな状態が今の現状だ。
どう背伸びしたって僕の魂は一つしかない。奴は荒木の情報なんて強力なカードを切ってきたんだからな。
ビビってはいないが負けた時のことを考えるとなにをやらされることか…それを知らなければ。

「ダービー…正直な話僕は負けるとは微塵も思ってない。だからこんなことを聞くのもあまり気が進まないんだが…」
「…」
「荒木飛呂彦の情報…大歓迎さ。まさに魂を賭けるに相応しい。けど残念ながら釣り合わないんだ。
コール!…と宣言したくても生憎僕の魂は一つでね…君の魂と僕の魂じゃ価値が違うってなら納得できるんだが?」

ダービーは黙ったまま、殆ど習慣のようにカードを弄んでいた。
スゥと円のようにカードを広げたり、シャッフルを無駄に重ねたり…。
もしかして何か『仕込み』があるのか?それが奴の狙い?
だとしたらやけにチンケな相手と勝負してるものだな…。

「簡単な話です…仲間も賭ける…そう言ってくださればそれで済む話でございまして…」
「おいおい、ダービー…魂を賭けるにしてもシーザーはもうお前が持っていっちまったんだぜ?今さらどうしろって言うんだ?」

シャッフルがピタリと止まった。空気が変わり、緊張感が高まるのを肌で感じる。
ダービーは僕の目を見るとどこまでも無表情に言った。

「次に賭けるのは魂じゃない…正真正銘あなた方の『命』です…。
魂、それはこの私、テレンス・T・ダービーが敗北を認めた瞬間に解き放たれてしまいます。つまりは誰かが私を倒せば『生き返る』ことが可能なのです…。
しかし次は違うッ!見えるか、岸辺露伴…この私にもかせられた、この首輪がッ!」

ゴクリ、と唾を呑み込むために僕の喉が動いた。一瞬前まで汗一つかいていなかった額にうっすらと滲むものがあるのを意識せざるを得なかった。
恐怖しないわけはなかった。でもそれだけだ。軽口を叩くような余裕があるわけじゃないが何も変わらない。
少なくとも僕にはそう思えた。

「ダービー…魂を奪われたら、敗北したら死ぬも同然。その覚悟でやって来たんだ。今更それが本物の命になったからって僕が動揺するとでも?」
「そうでしょうね…だが二人分…他人の命を背負って戦う貴方が依然と同じように動くことができるか…。分が悪い賭けではないと思ってます。」

指をビシィイッと僕に突きつけるとダービーはニヒルな笑みを浮かべる。
勝てる、とたかをくくってるわけじゃない。絶対な自信があるわけでもない。
こいつは『勝つつもり』なんだッ!自分の命を同時に賭けたのは背水の陣としてでも僕に勝つという覚悟ッ!
こいつはやると言ったらやるだけの…凄みがあるッ!

「さぁ、コールか…ドロップか…宣言をお願いします…ミスター・岸辺…」

だが…実際に戦うにしても『誰』の魂を賭ければいい?
シーザーは駄目だ。それは即ち彼の『運命』に干渉してしまう。ウエストウッドも論外。
となると僕の時代の知り合いとなるが…本人の許可なしに宣言するのもどうだろうか。
クソッタレの仗助の魂ぐらいなら…と思わないわけでもないがアイツに借りを作らないといけないのは僕のプライドが許さない。
さて、どうしたものか…

『私の魂でよければ…ぜひとも使ってくれないか?岸辺…露伴君…』

そんな僕の思考を遮る声が一つ。
音源に首を向けると青白い顔をした老人がそこに倒れていた。



   ◆

99ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:24:51 ID:???
『寝そべったままで名乗らせてもらう失礼を許して貰いたい。私の名前はジョージ・ジョースター。荒木の言葉を借りるなら参加者ってところだ…』
「ジョースター卿…ありがたい話なんですがこれは僕とダービーとの戦いでね…貴方の命を賭けるべきじゃないと僕は思いますよ。それにダービーが許すとでも?」
『駄目かね…ダービー君?』
「私は構いません」
『ありがとう』
「おいおい、ダービーいくら君が決めてもこの僕はウンとは言わないぜ?身も知らない誰かに借りを作るなんて真っ平だ。それだったら康一君にでも頼むね」
「…そうですか。とのことですが、ジョースター卿?」
『私の息子二人がこの殺し合いに参加させられてる言ったら…君はどう思う?』
「…!」
『どっちみち私の身体は血を失いすぎた…魂が帰って来た所で私は死んでしまうだろう。
だったら!それだったら!せめて見える範囲で、できる範囲でこの殺し合いをどうにかしたい!主催者荒木に繋がる道があるならばそれを進む!
お願いだ…岸辺露伴君。時間があまりない…。こうやって話している今でも息子たちが危険な目にあってるかもしれないんだッ!』
「……いかがいたしますか、ミスター・岸辺?」
「………」
『重荷を背負わせてしまって申し訳ないとは思ってる。だか私は君を信じる。
君が負けたとしても…私は一切悔いなく逝けるだろう…私は一度死んだ身なんだから。ただ元に戻るだけなんだよ、露伴君』
「………聞き捨てなりませんね、ジョースター卿…。負ける?この僕が?いや、そんなことにはなりませんよ…。
僕は同情から動いたわけじゃない。極端な話、貴方の息子がどうなろうが…勿論助けれるならほっときはしませんが…知ったこっちゃないんだ」
『…』
「…」
「でもね、僕が負けるなんて…僕の精神がこの男に打ち負けるなんて真っ平ですよ。いいだろう、ダービー!二つの命をベット!僕は『コール』だッ!」
『露伴君…』
「グッド!その言葉が聞きたかった!」
「ただしダービー…君はゲームマスターだし、この提案を持ちかけたのも君だ。対戦形式は僕が指定させて貰おうか…」
「構いません。何が来ようと…このゲームマスター…私は負ける気がしません」
「それじゃ勝負はこれで決めさせて貰おうか…」
『…?』
「…これ?」
「おいおい、僕はもう構えてるんだぜ。君も早く勝負に備えなよ…」
『…まさか』


「勝負はじゃんけん三回勝負だ。いいだろ?シンプルで」





   ◆   ◇   ◆

100ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:25:40 ID:???
『じゃァアンンけェエエーーーーーーーンン……………!』
じゃんけんは2人以上の参加者によって行う。参加者は向き合い(あるいは円になり)、片腕を体の前に出す。
参加者全員で呼吸を合わせ、「じゃん、けん、ぽん」の三拍子のかけ声を発し、「ぽん」の発声と同時に出した腕の先に「手」を出す。
この「手」の組み合わせによって勝者と敗者を決定する。
勝負が決定しなかった場合を「あいこ」と言う。あいこのときは「あい、こで、しょ」のかけ声を同様に行い、「しょ」で再び「手」を出す。
「あいこでしょ」は勝敗が決定するまで繰り返される。


「さて、最初は何で行こうか…迷ってるんだが、やはり最初はグー、の言葉通りで行こうかな」
「では私もそれに従いましょうか。ミスター・岸辺のグーに対してパーで一先ず一勝を頂きましょうか」
「ジョースターさん、見届けの準備はいいですか?」
『ああ、頼むよ、露伴君…プレッシャーをかけるつもりはないが…勝ってくれ』
「それでは…ミスター・岸辺………」
「ああ、やろうか…」

   
   「「じゃーんけーん ポンッ!」」


△岸辺露伴 パー   △テレンス・T・ダービー パー


「引き分けでございます」
「ちょっと予想外だったな。まさか君がそんなに素直だったとは思わなかったよ」
「そうですか。では…次の勝負に私は続けてパーを出す、と宣言させてもらいます」
「ふぅん…」


○岸辺露伴 パー   ●テレンス・T・ダービー グー


「まずは一つ」
「…続けましょう。次は私はグーを出さない、そう宣言します」
「おいおい、そう勝負を急ぐなってダービー…。この短い時間が勝負の醍醐味、駆け引きの時間だろ?」
「…その通りでございます。ミスター・岸辺、貴方の性格からして三回目もパーを出すとは思えません。」
「どうして?」
「」
「」
「」


(中略)






   ◆   ◇   ◆

101ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:26:37 ID:???
私は今から死ぬ。そうわかったのに不思議と恐怖はしなかった。
ただもう息子たちに会えないという寂しさと露伴君に対しての申し訳なさがどうしようもなく沸き上がる。

『ダービー君、具体的には私をどうやって殺す気なのかね?』
「さぁ、答えかねます…。なにせ方法まで考えるほどの余裕がありませんでしたので…」
『できれば…逝く前に露伴君に話したいことがあるんだが…いいかね?』
「どうぞ」

ありがとう、と言う私の言葉に律儀にダービー君は頭を下げる。
ゆっくりと顔を露伴君に向けると青ざめた顔の青年がそこにいた。
私は励ますことができなかった。いや、しなかった。
彼は私にたいして負い目を感じている。私から提案を持ちかけたとしても最後に了承したのは彼自身。露伴君は今、罪悪感にうちひしがれている。
それは…なんて素敵なことなんだろう。私に肉体があったとしたらきっと今の私はさぞかし穏やかな笑みを浮かべてるに違いない。

彼は自分の行動の善悪がわかっている男だ。自分の行動に責任を持つことができる大人だ。そしてなにより人の痛みを理解できる人間だ。
簡単なことだがなかなか難しいこと…特にこんな状況じゃ、容易くこうはなれないだろう。

私は露伴君の中に『黄金の輝き』を見た。
そしてそんな彼がいればきっと私なんかがいなくても大丈夫だろう、そう思えた。

『露伴君、“二つ”頼まれてくれないか?』
「…なんでしょう」
『私の息子を…息子たちを助けてほしい。ジョナサン・ジョースター、ディオ・ブランドー。二人とも私の立派な息子なんだ。
お願いだ…どうか彼らを…助けて欲しい』
「…お任せください」

困難から逃げることなく立ち向かう。そう、今だってそうだった。私の視線を一切反らすことなく、真摯に受け取ってくれた。
彼のこの精神力ならきっと…。

『もう一つは…君に十字架を背負わすことになってしまうかもしれないが…』
「…」
『君の手で私を殺してくれないかね?』
「………!?」
『首輪を爆発されるのも、海に浮かべられるのも嫌なんだ。私はジョースター家の男だ。
死に方だって、最後ぐらい誇り高く、自らの手で選びたい。
強制された死で、そんなのは嫌なんだ』
「………」
『………』
「………わかり…ました」

死に方ぐらい選ばせろ、なんてカッコつけたわけじゃない。
本音を言うとどこかで怯えていたのかもしれない…死の苦痛に。

「―――ヘブンズ・ドアー………――――――――!」

露伴君の声がやけに遠くに聞こえた。ひょっとしたら露伴君に手を下してもらわなくても私の魂はもう既に抜けていたのかもしれないな…。
だとしたら露伴君には悪いことをしたな…申し訳ない。最後にありがとうの一言も言えなかったのも心残りだ。

だが………

…ディオ、そしてジョナサン。

…そうだな、思い残すことはない。
私は十二分に生きた…生き抜いて…そして死ぬんだ。



ずいぶん待たせたな…今そっちに行くよ………

「メアリー………」




【ジョージ・ジョースターⅠ世 死亡】





   ◇   ◆   ◇

102ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:31:22 ID:???
「どういうつもりだ…?」
「なんのことでしょうか?」
「惚けるな…僕は確かに命を『二つ』賭けた。ジョースター卿のと僕のだ。すぐに死なないにしても敗北を認めた僕の体になにも起きないのは…どうしてだ?」

複雑に入り交じった感情を押し殺すと僕はダービーに訪ねた。
だが、奴はこちらにチラリとも視線を向けずに椅子やらなんやらの整頓に気を向けるばかり。
敗者である僕はそれを見てもなにもできない。ただ黙って返事を待つばかりだ。
返事はすぐには帰ってこなかった。そして返された言葉も素っ気ないものだった。

「ただの気まぐれです…ゲームマスターは時の運というものを信じていましてね…風向きが変わった、ただそれだけですよ」
「それで納得できるとでも?」
「まるで自分から命を取ってくれ、と言いかねない口調でございますね。
拾った命をもう一度投げ込むというなら、いいでしょう、相手になりますよ…。
尤も今の貴方には、ミスター・岸辺露伴、まるで負ける気がしない」

僕は何も言わなかった。言えなかった。
悪態をつくのも自暴自棄になるのにも今の僕に、その権利はない。
例えそれが生かされている、そんな状況だとしても僕には死ぬわけにはいかない。もうこの運命は僕だけのものではないのだから。
惨めな負け犬に成り下がろうとも、泥をすすることになろうとも、僕は必ず―――

「そうですね、強いていうならば…一度苦汁を舐めた男がどうなるか、気になっただけと言っときましょうか」
「貴様………ッ!」
「…貴方様への期待の裏返しでもあります。今命を取るのは惜しい…リベンジに燃える、この相手と勝負したいと私の中の魂が震えてしまった結果でごさいます。
ご納得して頂けたでしょうか?」

握りしめた車椅子のひじ掛けがミシミシと音をたてる。
倒す。必ずだ。
テレンス・T・ダービーは必ずこの岸辺露伴が倒す。
二度と勝負したくない、僕の名前を聞くだけで泣いて謝るほどにその頭に敗北を刻み込んでやる…ッ!

「僕を見逃したことを後悔することになるぞ…テレンス・T・ダービーッ!」
「私はいつでも、誰でも歓迎の用意をしております。無論団体様でも結構ですので…。ああ、それと………」

背を向けた僕の耳に指を鳴らした音が入る。
同時に僕が乗っていた車椅子が突然の重しに呻きを漏らした。
重しの正体はシーザーだった。

「せっかくの約束が無下になってしまうのは興ざめでして。ボーディーガードはお返しします」

砂浜に車輪が沈む。
さざ波に包まれていた僕は突然の浮遊感に襲われた。

「それでは、岸辺露伴様、シーザー・アントニオ・ツェペリ様、幸運をお祈りしております。See you again………」

馬鹿丁寧なお辞儀と見送りの言葉を最後に僕はその島を後にした。






    ◇   ◆   ◇

103ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:34:24 ID:???


椅子の位置が傾いていたのは既に元通りにしていた。
散らばっていたカードも番号順、種類順に並べてあり、箱の中だ。
そして私はこれ以上綺麗になるはずのない机から既に落ちた汚れを落とそうと悪戯に手を動かしていた。
虚しさから手を止めた。布巾を放り投げると私は椅子に座り顔を覆った。

私は卑怯者なのだろうか。自問自答を繰り返す頭脳に停止の言葉を呼び掛けても止まりはしない。

だが答えは出ずとも心は正直だった。結果は嘘をつかなかったのだから。
勝利したはずの私のスタンドは岸辺露伴の魂を掴まなかった、掴めなかった。

躊躇いがあったのだ。
魂を賭けながら恐怖を微塵を見せずに立ち向かってくる男だった。
敗北から逃れることなく、それを乗り越えて勝利を掴もうとした男だった。

そんな岸辺露伴に対して私はどうすれば良かったのか。
全力勝負の彼に敬意を表し打ちのめすためにスタンドを使ったのは正しかったのか。
ミスター・岸辺…私のスタンドの能力ではじゃんけんではフェアでありません、そう言えば良かったのか。

結局私はスタンド能力を使った。
正しかったのか、間違っていたのか。正しくなかったのか、間違ってなかったのか。
終わりがない問答を私は問い続ける。
さざ波も潮風も、馴染みの電子音もカードの手触りも今は私を落ち着かせてくれなかった。

ため息が一つ、口から漏れた。

104ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:36:51 ID:???
続いてラジオでちょろっと言った没ネタをついでにこっそり投下してみる

105ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:37:51 ID:???
追伸 没ネタ<カーズ、アナスイ、ティム、ティッツァーノ、ヴェルサス>

目的地目の前にした四人
→地下からカーズの襲撃
→ティム真っ二つで三人慌てる中、スタンドで『掘っていて』カーズの存在を知ってたヴェルサス三人を囮にして逃亡
→ところが挙動不審のヴェルサスに気づいてたティツァーノ、ペットボトルを摩り替えて『既に』スタンドをつけていた
→不意に特別懲罰房の入り口が開いていく。
→襲撃者からの『挑発』と受け取るアナスイ。どっち道彼一人じゃ地下から的確に目標を捕らえる敵には敵わないが扉を開けたことで何かしらの目的があるだろうと推測。挑発に乗り特別懲罰房に入る。
→ティッツァーノ、『けじめ』をつけさせると宣言。直後に響くヴェルサスの大声
→ヴェルサスを追っかける。


→一方アナスイ、建物内でカーズに遭遇。カーズの目的、それは首輪の解除
→物体に潜行するスタンド能力、地下配管を探った際に気づいてカーズはティム達を見逃すことを条件に従うよう命じる。
→了承。カーズの実力を悟り首輪解除が自分を守る唯一の枷であることに気づく
→首輪解除が早すぎても自分は用済み。遅すぎても成果を出せず役立たずで消される。
→アナスイ「やれやれ、だな」


ようやく『縫い終わった』ティム。出血が多く動きにくいが一応行動可能
→足手惑いの俺はどうする?空を見上げ雨が顔を打つ
→ヴェルサスは任せ、仲間を探しに身体に鞭打ち、目的地もわからず走っていく

とそんな感じで
・イマイチ活躍のなかった四人を分散→ヴェルサスの小物、ティツァーノの誇りの対比
・首輪解除をカーズに手に & ギリギリのアナスイの扱いの面白さ
・対主催の分散

106ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:41:10 ID:???
探したらまだあった。ついでに投下しt(ry

107ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:42:01 ID:???
生じた遠心力に逆らうことはできなく体は傾むく。
頬にあたる風が弱まったことで速度が落ちたことをバイクに乗っていて感じる。

「ぬぅ…!」

プロシュートを亀のなかにいれバイクにまたがる男、シュトロハイムはかつてない困難に直面していた。
バランス感覚をとろうにもそもそも平衡を手に入れる視覚を彼は片側失っている。
さらに体重移動の際に体の中心線を支えようにも右足の代用品に机の足では心もとない。
彼自身が二輪車に乗ることに慣れてないのもあり、結果現在の彼の移動速度は………。

「ぬううううう!前進前進ンンッ!」

およそ時速5kmッ!これはヒドイ。

最もシュトロハイムとてそんなことがわからない阿呆でもない。
二人の宿敵、柱の男のワムウとサンタナ。
柱の男達に唯一対抗しうる『波紋呼吸法』の達人、リサリサ。
いずれも猛者と言えるものたち!
それこそ誇り高きゲルマン魂を有する彼の祖国の兵士たちが10人…いや、30人いても勝てるか否かほどの!
そんな三人に死を与えたほどの殺戮者がいる。この事実に誰よりも衝撃を受け、また誰よりも危機感を抱いているのは他ならぬ彼自身であった。

「うおおおおッ!」

これ以上犠牲者を増やさないためにもッ!憎き宿敵の生き残り、カーズとエシディシを打ち倒すためにもッ!
いち早く今の任務、『カーズを探しだす』、それを遂行せねばならないッ!

「おおおおおーーッ!」

バンドルを握りしめる拳に力がはいる。徐々にスピードをあげていく車体に一抹の不安を感じながらもそれでも彼はその手を緩めない。
彼の中で燃え上がる使命感が体を突き動かす。自然と口から漏れた叫びに彼自身も呼応し、更にスピードを上げていく。

後方に吹き飛ぶ風景。風圧で止まらない涙。逆立った髪がさらに後ろ側になびいていく。

「フフフ………」

しかし使命感がもたらしたスピードアップは予期せぬものも彼に手渡した。
いつの間にか燃え上がってきたのはスピードを求める男としての本能とスリルをギリギリで楽しむ興奮だった。

「ふははははァーーー!速い、速いぞォ!我が国、ドイツの技術力は世界一ィイイーーーーッ!!
イーーーーハァーーーーッ!」

しかしそんな高揚感に浸る彼は現実に引き戻された。
緩やかなカーブを加速を強めながら、プロ顔負けのドリフトで曲がりきったシュトロハイム。
笑みを浮かべていた彼の顔が青ざめたものに変わる時間はそうかからなかった。
進行方向、真っ正面。脇道は両側になく、あったとしてもとてもじゃないがバイクが入るには幅が足りないほどのもの。
込み入った食屍鬼街には珍しいほどのこれとない加速ロード。
先ほどまでのシュトロハイムならテンションに身を任せ更にハンドルを捻り、その身を高速の世界に連れ込んでいたに違いない。
その道路が行き止まりでなければ。

108ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:43:36 ID:???
「なぁにィイイーーーーーッ!?」

不運は重なるものである。
食屍鬼街は朝にも関わらずどこか薄暗く、視界がはっきりとしていない状況であった。
加えて劣悪な下水道設備からか、いたるところからなにともわからない汚水があちこちに水溜まりやらを作り出していた。
つまり、滑りやすい。

シュトロハイムを現実に引き戻すのに有した時間は僅か五秒ッ!その間進んだ距離およそ150メートルッ!
残りの距離を目測ながら定め、ギリギリまで減速しながら亀に入ろうと決断したのは衝突およそ七秒前ッ!

だが、意外ッ!それは直角カーブッ!

光が窓に反射し、その先にある道を映し出す。行き止まりでなく直角カーブであることにシュトロハイムがきづいたのは衝突およそ五秒前ッ!
決断に用いることができる時間は十分の一秒以下。まさに生死をわける決断の時!
その瞬間は紛れもなくシュトロハイムの脳内では戦争であった。一瞬でも判断が遅れたら…判断を間違えたら…。
弾丸を掻い潜り、爆風の中を駆け抜け、幾つもの修羅場を潜り抜けてきた男はやはり撤退を選ばなかった。

「我が国、ドイツの技術力は世界一ィイイーーーーッ!!
そしてェエー、ならばぁその技術力の結晶の俺の運転技術も世界一ィイイーーーーッ!!」

強引にハンドルを右に傾ける。スピードを落とすことなくそのままの状態で勝負に挑む!
体はもはや地面と平行と言ってもよいほどになりぐらついた体が何度も地につきそうになる。そんな状態で直角カーブなど曲がりきれるはずがない。
しかしそれはシュトロハイムも承知のこと!
彼が選んだ手段とはいったいなにか?更なる加速?強引なドリフト?壁を使ったびっくり走法?

いたってシンプルッ!崩れたバランスを支えるため、二点の車輪に更に一点を加え三点で支える。それは正しく彼が誇る祖国の技術、サイボーグ化した彼の左腕!

「このォオオシュトロハイムに不可能はなァアーーーいッ!」
ガリガリと地を削る嫌な音、それは確かな摩擦エネルギーを生む。
男一人を乗せたバイク、それも猛スピードで翔ぶその運動エネルギーが生んだ摩擦熱は膨大!
シュトロハイムは火花を散らす己の左手に顔をしかめるものの、迫り来る曲がり角を視界に納め躊躇うことなくさらに左手にかかる圧力を強める。

「ぬおォオーーーッ!まさかァアこのシュトロハイムがァアーーーッ!?」

目前に迫る壁。ガクガクと倒れ込むバイク。散る火花。
そして轟音と砂ぼこり。




数分後そこにはバイクをひきずりプロシュートに激怒されている元気なシュトロハイムの姿がッ!

109ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:45:11 ID:???
「このマンモーニがッ!いいか、シュトロハイム…。俺はてめぇなら『仕事』を任せれる、そう思ったから『やった』んだ。
そのザマがこれだっていうんだったら…心底がっかりだぜッ!」
半眼の見上げるように睨みをきかせる。その鋭さ!さすがに自分に非があると理解してるシュトロハイムも参った!
しどろもどろになりながらでも、それでも彼は言葉を返した。
「だがプロシュートよッ!バイクは無事だ、それに俺もちいとは怪我をしたがそれでも行動に支障はないィイイ!ならばなにをそんなに………」

「いいか、テメェ!」

静まりかえった食屍鬼街プロシュートの怒鳴り声が響く。
今の今まで怒りを示すと言っても決して声を荒げることなく冷静に感情を押さえてきたプロシュートのその剣幕にシュトロハイムは黙り込む。
そんなシュトロハイムの胸ぐらを掴むようにプロシュートは顔を近づける。
瞳の中に燃えるようななにかを宿してプロシュートは諭すように相方の機械機人に語りかける。

「俺が言いてぇのはな…なにもテメェのなにもかもを否定しようってわけじゃねぇ。」
「そんなことは決してしねぇ…、できねぇ。」
「こんな舞台に放り込まれたっていうのにテメェはいっつも『まっすぐ』に走ってきた。」
「それはすげぇことだ。誇りに思っていいほどだ。」
「だがな、お前はどこかに『覚悟』がありすぎるッ!軍人を誇りに思ってお前は『死』を覚悟しすぎなんだよッ!」

「無謀と勇気は違うッ!戦場で死ねば殉職だッ!だがな、だがな、しかしだッ!」
「ここは戦場じゃねぇ!殺し合い、シビアな生存をかけた喰い合い…不特定多数によって争われるな。」
「確かにリスクを恐れてはリターンを得ることはできない…。それでも天秤にかかってるお前の命は『軽』すぎるんだ。」
「もっと『生きる』ことに執着しやがれ、シュトロハイムッ!『生』にしがみつけ、決して離すなッ!」

「生きてねぇと…『栄光』は掴めねぇからな」

走る電流!雷に撃たれたような衝撃がシュトロハイムを襲うッ!
その言葉は低く囁かれ彼の鼓膜を揺らす。聴神経を通して大脳まで届いたその音は言葉として意味をなしシュトロハイムに語りかける。

誰よりも軍人として誇りを持っていたシュトロハイム。
彼の底抜けの明るさとプラス思考は戦場で生き抜くため彼が自然とたどり着いたものであった。
大声で叫ぶのは自らを鼓舞するため。
いつだって不敵な態度を貫き、傲慢とまでいっていい行動とるのは部下に自分が走る道を信じさせるため。
死者の弔いに重きを置くのは彼の周りにはいつも死が隣合っていたから。

だからこその驚愕!
プロシュートの言葉にハッと目を見開くとシュトロハイムは愕然とした。

如何に死ぬか、覚悟を持って生きてきたシュトロハイム。
如何に生きるか、覚悟を持って生きてきたプロシュート。
常に死ぬ覚悟で、そして死ぬ時は少しでも役に立とう、何かを残そうという心。
常に命を狙われるという覚悟で、そしてだからこそ自らの仕事に誇りと責任を持ち生き続けようという心。

どちらが良いというわけではない。重要なのは今どちらが必要なのかということにシュトロハイムは衝撃を受けたのだ!

「プロシュートッ!お前の魂、この身にしかと刻み込んだッ!」

だからシュトロハイム叫ぶ!
それが彼のなかでの敬意であり礼儀であり、それがシュトロハイムがシュトロハイムである理由なのだから。
プロシュートはその叫びを聞いて再び拳を振り上げるようなこともため息を吐くようなこともしなかった。
叫ぶ、と言ってもその声は先ほどまでとは幾分か抑えられ、シュトロハイムが確かに自分の話を聞いてくれたのがわかったから。

110ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:47:13 ID:???
背中をバンと一度だけ叩くとそれっきりだった。
再びバイクでの移動とカーズの居場所調査をシュトロハイムに託すと彼は亀の中に引っ込んだ。

シュトロハイムは気を引き締め直す。改めてバイクに股がりエンジンを吹かしていく。
転倒の際に何処にも影響が出なかったのは不幸中の幸いか。
眼光鋭くハンドルを握りしめる。今度は先ほどのような愚行をおこさないことを肝に命じる。

「目標はカーズの捜索ッ!及び俺が知る猛者を打倒した者たちは誰なのかという情報収集ッ!
いざ行かん!待ってろ、カーズゥウーッ!前進前進ンンンッ!」

向かう進路はまっすぐ。
土埃とエンジン音だけを残し颯爽と去って行った。
向かう先に暗雲が立ち込めるもののその心にはこれっぽっちも不安を感じなかった。

      ◇   ◆   ◇


「すまない、ブラックモア…少しだけ雨を弱めさせてくれ」

宙を浮く同行者がこちらを振り向く。
ソイツが何か口を開く前にスタンドを傍らに出現させると広げていた雨の範囲を狭めていく。同時に肩の荷が降りたかのようにどこか俺を拘束していた疲労感とダルさが引いていくのを感じた。

やはり、だったか……。
顔に当たる小雨が額を伝い首まで流れ、回転する脳を冷やし俺に冷静な思考を与えてくれた。
この地に放り込まれてから感じていた違和感が形となって露になり俺はふぅと息をひとつ吐いた。

雲を見上げる。いつものようにそいつは灰色で無愛想なしかめ面を見せている。
自分にとって見慣れたはずのその姿が荒木によって手を加えられているという事実。
自分の分身と言っても過言ではないコイツの変化に今の今まで気づかなかったことに呆れる。
きっかけは雨の範囲を更に広げようとしたことだった。
意識をスタンドに集中し、雨の範囲を広げた瞬間俺を襲ったのは脱力感と疲労感だった。
この能力を身につけてから一度もなかったその感覚に俺は違和感以上のものを感じた。

同時に意識した疲労感。
それがブラックモアに放った俺の言葉の原因であった。
テンポよく下降し、上空より傍らに降り立ったブラックモアはスタンドのビジョンである仮面を引っ込めると首を傾げる。

「どうかしたんですか?」
「いつもなら感じないはずの疲労感がある…。俺が思うに荒木の仕業だ。」

水溜まりにボチャンと靴を沈み込ませる。ズボンにかかった水滴にブラックモアは顔をションボリさせた。

「範囲も先程までが限界だ…。いつもだったらもっと広げることが可能なのだが…俺が思うにこの様子じゃ激しい天候の操作も難しいようだ…。」
「ふぅむ…」
「疲労の溜まり具合からいってもしかしたら天候を操るだけでも影響があるのかもしれない…」
「なんと!」
「無意識下で、…この八時間ほどか、溜まった疲労が一気に今になって出てきたのは何でか…わからないが、とにかくこれからは少し自重していく方向でいきたいのだが…駄目か?」
「ああ…悲劇。そんなァ…」


相変わらず人の話を聞いてるのか、つかみ所のないヤツだ。
飛び散った水滴に気を取られたブラックモアは必要以上に動き回り更なる被害を被っていた。

111ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:48:28 ID:???
その姿からは狡猾な策略家の一面も一切恐怖を見せずに殺戮者たちと交渉した戦略家の面も見えない。
…いったいコイツの本性ってやつはあるのか?

「ブラックモア…?」

水溜まりで暴れるようにじたばた動く男。本人からしたら必死だろうが、その滑稽さに俺は思わず呆れてしまった。

だが俺の心配もどこ吹く風、次の瞬間には俺の目を見て口を開いたヤツの言葉にはさっきまでの雰囲気はいっさいなくなっていた。

「そうなると…私としては随分と困った話になりますね。
雨粒がない私は役立たずの以上でもなんでもない。それに私たちの後ろをついている何処かのあの殺人二人組に不満がたまる可能性もある…」

懐に入れている拳銃をヤツが握りしめたのがわかった。それは何を意味するか。
俺に対しての圧力…ではない。そう、俺が思うにこれはヤツの覚悟の現れだ。

「雨がなくなった、そんなことで彼ら二人は言いがかりをつけて襲いかかって来る可能性がある…。ウェザー・リポート、厳しいかもしれませんが私としてはアナタにはずっと雨を降らしていて欲しいものです…。」

アンジェロ、J・ガイル。
二名の殺戮同盟者は今でも何処か俺たちの近くを徘徊しているかもしれない。
目的はもちろん殺し。そして知っての通りヤツらの能力上が俺のと相性がいい以上…狙われるのはブラックモアになる。

それをわかってのこの組分け、それこそがコイツの覚悟だったわけだ。
握りしめた拳銃に一切の震えはない。表面上とはいえ六人を相手にすることに躊躇いさえないのか…。

「いや、狭い範囲ならば…それこそ半径200mほどなら大丈夫だ。小雨に変えたのは疲労を考えてだが、大丈夫だ」

やはりコイツは頼りになる。
現状なにか引っ掛かると言ってもその程度だ。早人の件もある以上、ここで手を切るわけにはいかない。

それどころか…こいつとは長い付き合いになるかもしれないな…。
俺の言葉に安心したのか、はたまた計算通りだったのか、わからないがブラックモアはいつもの顔に戻すと卑屈な口調に戻る。

「すいませェん…ここに来てから結局の所、私はなんにもしてないですから。情けないばかりです…。」

緩やかな風と降る水滴。
隣を歩くブラックモアがこっちの顔を伺い口を開くなか、俺は柄にもなく平和だと思った。
早人のことは確かに不安だ。心配でもあるし一刻も早く合流したいとも思った。
ブラックモアに完全に信頼を寄せるわけにはいかない。しかし魅力的な協力相手ではある。
やはりここは…。

「ブラックモア、移動時間も無駄にはできない…。ヴァニラ・アイスについてのお前の考えを聞こう…。」
「そうですね…正直苦しいところですね。先程の情報交換からもわかった通りあの方はあまりに強すぎる」
「………」
「こう言ってはなんですが…まず当面の目的のひとつに他の参加者と遭遇、を入れませんか?」
「要するに他人のスタンド能力を当てにすると?…甘くないか?考えが」
「言いたいことはわかります。遭遇した相手がこの殺し合いに乗ってないというのがまず最低限の条件。加えて正義感の強いのも条件。さらに実力も伴ってないといけない、と」
「不確定な戦力を計算するのを俺は無謀だと感じたが…」

顎に手をあてるブラックモア。
ふぅむとまたも唸り声をひとつもらすと、しばらくの間黙り込むものもそれも一時ですぐに言葉が返ってきた。

「そうは言っても私たち二人の戦力じゃたかが知れてますからねェ…。
策もなしに挑むのは無謀としか言いようがないんですけどねェ…」
「だからその策についてだ。ヤツの弱点、早人を人質にとってるその俺たちにとって不利な……」
「策ならいま一つ思いつきました」

112ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/04/28(水) 23:50:35 ID:???
カクッと首を切れのある動きで俺の方向に向けるとブラックモアはズイッと顔を近づける。
俺がその唐突な行動に戸惑いを感じてるのに満足したのか、ブラックモアは弱くなった雨に飛び乗っていく。

その策はなんなのか、そう俺が訪ねるのを焦らすかのようにやけにのんびりとした歩調を共に刻む。
ちょうど俺の身長ほどの高さまで上昇したところでブラックモアは止まる。
講義を開く教授か何かのようにやけに仰々しく咳払いをひとつすると、やっと口を開いた。

「条件を同じにしてしまえばいいんですよ!我々がなぜこうもヴァニラ・アイス暗殺に苦労しているのか…そもそもなぜ『暗殺』でなければならないのか?」
「…俺は暗殺とは言ってないが」
「では正面きってヴァニラ・アイスを殺すことができない最大の理由は?」
「………?」
「…そう、早人さんの存在なんですよッ!」

話は進む。雨粒をBGMにブラックモアは芝居かかった態度で話を進めていく。

「人質、早人さんはそんな扱いを受けていますッ!
私達が不用意に反乱を起こそうものならその場で早人さんは…」

グイッと首をかっきるリアクション。
言われて見ればそうだ。俺たちの目的はヴァニラ・アイスを殺すことではない。早人を助けることだ。
その意味では必ずヤツは『暗殺』で消さなければならない。改めて突きつけられたハードルはあまりに、高い。

「尤も当の本人はそれがわかっていたからこそあの状況でも同盟を組んでくれたのでしょう。ウェザー・リポート、貴方との敗戦がよっぽど堪えたのでしょうねェ……」








この後
ウェザー組みと兄貴組み遭遇

→ブラックモアが交渉開始した正にその時、アンジェロが急襲 狙われたのはシュトロハイム
→プロシュート、水蒸気のスタンドを ウェザーのものと勘違い 亀にシュトロハイムを突っ込むとバイクで逃走
→その際すれ違い様にウェザーを殴打 背後をJ・ガイルに浅く切りつけられていたウェザーは直撃 頭を打ち意識不明
→ブラックモア、水滴であるアクアネックレスは固定して回避 ハングドマンは三次元的に逃げ回り何とか直撃を避けつつウェザーを担ぎ逃走
→ここは…どこだ?暗闇…どこだ? 俺は、確か………――ズキン 誰だ?この女の子は?いや、おれは知っている。この子は―――
→目覚めたら不細工な男二人がニヤニヤしながらこちらを見ている 捕まったと言うことか…
→俺はなにか大切なことを忘れてる気がする… とりあえずはJ・ガイルとアンジェロについて行くウェザー
→そのころブラックモア 価値があるウェザーは殺されないと判断 タイヤ後を追い兄貴達に接触
→「貴様ァア〜〜〜!い「待て、シュトロハイム」
→ブラックモア 裏切りを堂々と行った二人を殺す『建前』はできた 反逆するならもう不要
→残りの三人を納得させるため、この二人を抱きこみ『新生悪魔の虹』を作る!

以上

ブラックモア=策士としての成長性 イマイチゲーム乗ってるらしさがなかったのでここらでシビアな一面を
ウェザー  =記憶フラグ DISCなしでも…厳しいけどフラグだけは立てとく

113 ◆yxYaCUyrzc:2010/10/31(日) 18:52:59 ID:???
バトル・ロワイアルというゲームにおける“勝利”とは何か?
これを決定するのは意外と難しい。
その理由は――優勝を狙おうが主催者の打倒を誓おうが、皆が『元の世界に帰ること』を前提としているから。
となれば“どうやってこの会場で過ごしたか”が勝利の条件と言えるだろう。無論、その条件も時間とともに変動する場合もあるが。
たとえば快楽殺人者が獲物を見つける。あるいは脱出組が仲間を見つける。これはどちらも“勝利している”だろう。
そういった観点で見ると……今の俺は間違いなく“敗者”である。

DIOの館ははっきり言って“ハズレ”だった。
遠目から、そして窓越しにも関わらず俺の目に映る人間はどれもが殺人を肯定している、生臭い男たちだった。
唇の動きを読む訓練なんかしていないが、どうも会話をしているらしい。つまり俺が見えない位置にも似たような生臭い、あるいはドス黒い人間が何人かいるということ。
館を中心に円を描くように別の窓が見える位置まで回りこむ――やはり正解だった。
人数は  人。表情から察するに、殺人者ばかりが集まって同盟を組んだか休戦しているといったところだろう。
“勝者の条件”で言うならば奴らはどれもそれを満たし、立派な“勝者”であると言える。悔しい気は起きないが複雑な気分だった。
唯一気にかかったのはディエゴ・ブランド―に似た金髪の男。おそらくディオ・ブランドーなのだろうが……これも見送る。
他の場所で見かければ声をかけていたかもしれないが状況が状況。彼もまた好戦的な参加者と判断するのが賢明だろう。
となればこの場所に長居する事は無意味。そろそろ気配に気付かれるかも知れないし、下手をしたら“知っていて手を出さない”のかも知れない。
いずれにせよこんな連中に情報を渡せば研究所で必死になっている皆や、そこに集まろうとする者を殺しに行きかねない。
俺は踵を返し――と言っても館からはゆうに50mは離れているが――その場を後にした。


* * * * *


次に見つけた男――と言うよりも少年であるが、これも“ハズレ”。
彼はどうしようもない“敗者”だった。もっとも、敗者と言う点においては現在の俺もそうなのだが。
そして俺が一番気に障ったのは、それが“勝者の条件”を自分の中に定義していないという点だった。
歩き方と表情で分かる。恐怖した足取り、過剰なほどの周囲の確認……それでいて俺を見つけられない程度の集中力のなさ。
ここで聞こえてくる荒木の声にも飛び跳ねるほどの反応をし、震える手にペンを握らせていた。
この時何か呟いているのが見えたが、俺は唇の動きは読めないし、放送だってメモしたい。そんな訳で目の前の敗者をとりあえずうっちゃって、民家の屋根でメモを取った。
新たな参加者や禁止エリア、死亡者に関する情報等々、考えたい事は山ほどあるが、今はまず目の前の少年の処理をどうするか、である。
放送が終了し、少年が立ち上がり……相変わらず無目的な足運びで歩き始める。

多分――死にたくない、それだけが頭を支配しているのだろう。
それは誰だってそうである。俺もその一人だ。
死んでしまえば故郷に帰る事が出来なくなる。逆に言えば故郷に帰るために生きている。
これはつまり目標であり、“勝利”の結果に自分がどうするか、と言う事である。
少年にはそれが見受けられない。元の世界に帰り自分がどう過ごすかと言う事も曖昧であり、終いには“元の世界に帰れなくても構わない”と言う雰囲気さえ感じ取れる。
要するに“帰っても何もすることがないが、かといってここで死ぬのもいやだ”と言う我儘。
そう言う見方をすれば、たとえ人を殺そうが故郷に帰って幸せになってやるという方がまだ理にかなっているだろう。しかし、それすらない。
そんな人間に情報を渡す訳にはいかないが、かといって放置しておけばいずれ障害になる。
引導を渡してやる、という気分にはならないが――それがこの場で俺がすべき務めなのだろう。


* * * * *

114 ◆yxYaCUyrzc:2010/10/31(日) 18:57:20 ID:???
ザッ、という音が背後から聞こえた。今来たのか、あるいは尾行されたのか知らないがこれはまずい!僕の事を殺そうと近付いてきやがった!
振り向きざまに引き金を絞る。音の位置からしてパープル・ヘイズの射程外だという事は分かっていたし、随分暗くなった以上はやたらと拳を振り回せない。
三発の銃弾が性格に目の前の男(インディアン?)の胸を目指して走る。あと一秒もしないで彼は死ぬだろう。彼が悪いんだ。僕を殺そうと近づいてきたんだから。
インディアンは――何か知らないがデイパックを肩のあたりまで持ち上げた。投げてくるのか?と思い腕を交差させて防御の姿勢に入る。
が、次の瞬間にインディアンは野球のオーバースローの要領で、しかし握った手を開かないまま思いきり腕を振り下ろした。
つまりただ鞭のようにデイパックを振り回しただけ。ブウン、と言う音が暗闇に響き渡る。
なんだ、見かけ倒しか……と感じる事が出来たのはほんの一瞬だった。
「ハッ?」
ブウン、と言う音がインディアンの目の前で大きなブロック状になり、僕の銃弾をガードしたのだ。
三発の銃弾はそれぞれが細かく砕けて大きく逸れ、そのままどこかに消えてしまった。
距離を詰められる、という不安からパープル・ヘイズを防御の姿勢で発現させる。が、インディアンは走るどころか、歩きもせずにこちらを見つめている。
その目はすべてを悟ったような……僕を憐れむような目だった。

なぜ?なぜみんなそういう目で僕を見る!?僕が悪いってのかッ!
そう心に思った瞬間、何かがカチリと音を立てて外れたような気がした。
それがベルトの留め金なのか、心のタガなのかは知ったこっちゃあない。とにかくその音で僕の何かが外れた。その事実があるだけ。

顔の前で腕をクロスさせていた僕の分身がその腕を大きく振りかぶる。
と同時に思いきりパンチを繰り出す。渾身の右ストレート。
もちろんその拳は届かない。だがすべての物体には“慣性”と言う法則がある。狙いはそれだった。
手の甲についている三つのカプセルの内、二つがボロッという音とともに外れ、インディアンのもとに飛んでいく。
先ほどの銃弾よりは遅いが、届かなくたって、弾かれたって――紫の煙は誰にも負けない。

そんな僕とカプセルを静観していたインディアンは、何を思ったか息を吸い込み始めた。両頬が膨らむのがわかる。
そんなもので吹き返そうというのか?スタンドの戦いのルールをはき違えてるんじゃあないかッ!?
口元が緩むのがわかる。数瞬後に静観しているのはこっちだ、そう確信して僕は構えを解いた。


* * * * *


飛び道具はイン・ア・サイレント・ウェイにはほとんど効果がない、と言うのは俺自身が良くわかっている。
俺の反射神経が追い付けばあとは音のこと。音が遅れて聞こえてくるなど、遠雷を見た時くらいにしか無い話だ。

吸い込んだ息を思いきり吐き出す。
フッ、と言う音が先と同様の塊となり、相手の玉を受け止める。スタンドの一部を切り離した様だからおそらくは切り札なのだろう。
その“とっておき”を音が相手に投げ返す、いや、厳密に言えば吹き飛ばしたとか、あおいだとか言うべきなのだろうが。
もちろん、いくら肺活量に自信があるといえど相手の懐までまっすぐ届かせる自信はない。しかし、結果的にはそれで充分だった。

ぼとりと路上に落ちた玉が割れ、中から紫色の煙が立ち上る。
それに驚いたのは煙の発生源である少年の方だった。小さく息をもらした後慌てて後ずさる。
それが次第に走るような速度になり、対峙していた距離からさらに5メートルほど離れた位置で立ち止まった。
月明かりが民家の屋根を掠めて地面を照らすその位置に行って、初めて少年が安堵の息をもらす。
その事が何を意味するのか、理解するのにそう時間はかからなかった。
鞄の中から筒を取りだし、それを弄って光を放つ。目標は立ち上る煙。その先にいた少年が光を直視して目を細めるのが見えた。
パァッ、と言う音が煙を白く変える。予想は当たっていた。この煙は光に弱い。
それにしても、光る音なんていうものがこの世に存在したとはな。この時俺は目の前の状況に対するよりもむしろそんなことを考えていた。
無論、その音さえもスタンドで取り込み、腿に張り付けておいた。これで俺が煙を浴びる事はなくなったと言う訳だ。

115 ◆yxYaCUyrzc:2010/10/31(日) 18:57:52 ID:???
路上に光を撒いている数十秒間、不思議と少年は逃げなかった。次の手がある訳でもなく呆然と目の前の光景を眺めている。
暫くすると煙は完全に消え去り、それを生み出していた殻もどこかに崩れていってしまったようだ。
用心のために光る筒を少年に向けながら、俺は歩を進めた。
少年の方はすっかり腰も砕けて戦意を喪失しているようだった。が、用心に越したことはない。サイレント・ウェイを傍らに立たせたまま近付く。
光を不意に少年の眼もとにやった。彼が顔をそむけた瞬間を狙い光の筒をいじった。その筒から放たれる光は途切れ、月明かりが二人を照らす形になる。
俺の方に顔を戻した少年の目を見据え、俺は言い放った。
「ナチス研究所へ行け」
と。少年が言葉をつづける前にもう一言付け加える。
「お前はそこで死ね」


* * * * *


目の前のインディアンが何を言っているのか理解できなかった。僕に死ねといったのか?
言葉が見つからず口をパクパクさせる僕を見かねて相手の方が解説してきた。

「首輪を外す方法を模索している人間がいる。
 お前はそこで実験台に志願しろ。
 成功すれば全員脱出の鍵になる」

……言っている事は分かった。だけど、それで何故僕なんだ?
失敗して爆発したら死ぬんだぞ?僕じゃなくたっていいじゃないか!僕は死にたくないんだッ!

それを僕が口にしていたかどうかは分からなかった。でも目の前の男はその事を理解したように言い放った。

「お前には死ぬ言われもないが生きる道理もない。
 俺は故郷の土を踏むためなら足をもがれようが腕を切られようが構わない。お前にはそれがない。
 何もせず怯えていれば全てが済むなどと思うな。
 それともまたさっきの煙で俺に攻撃してくるか?そんなもので俺を倒す事は出来ない」

言い終わるや否やインディアンは僕の横を通り過ぎ、数十メートル離れたあたりで走り出した。
彼に攻撃を加えれば僕は“今”死んでいただろう。それは、それだけはしたくなかった。
ガチガチとなる歯、震える手を抑え込んでデイパックを手繰り寄せる。
地図を取り出して研究所の位置を確認した。決して行けない距離ではない。
死にたくはない。が――上手くいけば脱出もできる。
それに、行った先の人が僕が実験台に志願することを優しく止めてくれるかもしれない。
いや、そうに違いない。みんな死にたくはないんだ。僕だった死にたくない。行けば僕の安全は保障されてるんだ。
悪いことなんて何もない。行かなかったら彼に殺される。行けば生き延びれる。
頭の中を生きると言う単語で埋め尽くして、ゆっくりと僕は立ち上がった。

116 ◆yxYaCUyrzc:2010/10/31(日) 18:59:35 ID:???
書いてる内にフーゴが予約されてしまったので投下。予約の重要性が良くわかるw
サンドマンのパートは使いまわし出来そうだが……
予約ラッシュを見送った後に改めて書き直そう。。

117ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/05(金) 19:25:39 ID:???
こっちもいい出来!サンドマンかっこえー!!
停滞している彼のパートにどうにか流用できないでしょうか…

118ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/25(木) 02:30:43 ID:dB2xa53Y
FFの次の身体に柱の男を使って最強マーダーを増やしてやろうかと思ったが、
サンタナ:消滅
ワムウ:消滅および禁止エリア
カーズ:異空間
死体が残ってなかったでござる
次点のヴァニラも消えちゃったし、だれかFFに次の肉体をプリーズ!!

119ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/25(木) 02:31:36 ID:???
しまった上げてしまった
すんません

120ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/25(木) 18:08:42 ID:???
本体の耐久力はスタンド使い最強と噂のワキガ先輩の身体とかどうよ

121ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/25(木) 19:59:45 ID:???
柱の男は消滅以外難しいからなあ・・・
頭部ピンポイントで吹き飛ばしてて始末するしか無い

122ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/25(木) 22:25:02 ID:???
2ndは1stに比べて復活の方法が残ってないような死に方が多い気がする
いや、1stは1stでその復活方法はない(笑)ってのも多かったけどね。

123ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/11/26(金) 00:15:15 ID:???
参加者の4分の1が消滅してるか人としての原形とどめてないかだもんな……

124ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/02(木) 21:04:15 ID:???
耐久度的には1・2・3部メンツがいいね
ウェザーとかどうだと思ったけどちょっと遠いかな

125ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2010/12/02(木) 21:59:05 ID:???
FFがウェザー使うのはどうだろう?
昔の自分を捨てると言っておきながらも、徐倫アナスイに会った時は若干もどってたからな
ジョセフは老体、承太郎も仗助も粉微塵か…

スピードワゴンはどうだ?
超能力がないから弱く見られがちだが、肉体はなかなかマッチョだぞ

126ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/17(月) 01:17:18 ID:???
FFが僅かに残っていたティッツァの思念で覚醒し、
ヴェルサスをなぶり殺しする話を考えていました
…仕方ないねw

127 ◆0ZaALZil.A:2011/01/17(月) 22:58:57 ID:???
あのまま問題なく通しだろうから言っておこう

花京院とティム組ませたのは「ハイエロファントグリーンが紐状になればオー!ロンサムミー使えないかな」と思ったからなんだ
人妻萌えは言われてから気づいたことで、意図してなかった

128ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 16:38:08 ID:???
ディオの犯行を白日の元に晒したかったが、
記憶を掘るヴェルサス
記憶を読む露伴
尋問できるテレンス
全員死んでしまったw

あとはブチャラティが汗を舐めるくらいしかないぞw

129ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/01/20(木) 22:19:27 ID:???
でもなんか今の感じだと晒されても開き直りそーじゃね?w

130ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/06(日) 14:39:03 ID:???
没案を1つ。ジョルノ&グェスにJガイルとアンジェロぶつけようとしてた

アンジェロがグェスの体内に侵入して人質に取りJガイルがジョルノをフルボッコにしようとするけど
グェスはグーグードールズでアクアネックレスを小さくし体内で両スタンドがバトル。ジョルノもJガイルと戦う。
最初はジョルノ達が優勢なんだけどアクアネックレスがグェスの血管に水注入してそっから逆転されグェス死亡。
Jガイルは無駄無駄ラッシュ食らって殺られるも悪あがきに首輪の反射利用してジョルノの首輪爆破。でアンジェロ一人勝ちみたいな。
地図上の位置とかその他のプロット考え付く前に没になっちまったorz

131ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/11(金) 14:29:00 ID:???
>>130
そういう目にあわずに、銃弾一発で死ねた所が
グェスの幸運っぽいなwwwww

132ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/12(土) 06:38:04 ID:???
石仮面がエシディシのもとに辿り着いても
「ふん、こんな物に頼らずとも」と踏み砕く案があったなー。
問題ある支給品は処分しようという(犬とか)安直な発想になるダメ書き手だな俺w

133ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/12(土) 20:32:30 ID:???
星の痣持ちの奴らを一カ所に集めさせたかった。
あとはジョルノ、ヴェルサスとディオの親子も会わせたかったな

134ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/12(土) 21:04:07 ID:???
>>132
俺は、
石仮面と赤石組み合わせて、エシディシがつけたはいいものの、増幅した生命エネルギーに耐えられず首輪が爆発

荒木「興冷めな結末だけど仕方ないね……あれ?」 エシディシの生存確認

イエローテンパランスを装備したことで生命エネルギーは既に増幅していたので、石仮面をつけた時点で頭部の爆弾につながっているコードが供給過多で焼き切れていた

究極生物にはなれなかったものの、頭部の爆弾が爆発しなかった + イエローテンパランスで身を守っていた のでギリギリ生存

とりあえず外傷が凄まじいので、人間を捕食して回復を図ろう

という流れにするつもりだった

135ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/12(土) 21:56:55 ID:???
それならば俺の超展開ルートも晒そうッ!
究極生物誕生

ヤバイと思った荒木が首輪爆破するも死なない、ナチス勢皆殺し

「フハハハァ!最早このゲームに価値はない!荒木よかかってこい!」

荒木と対峙、究極生物化した事によりエシディシ本来のスタンドが発現、バトルロワイアルと殴り合い

荒木敗北するが荒木or???の能力でエシディシを異世界に追放、考えるのをやめる。荒木の死で会場が徐々に崩壊

???「マップ中央部だけはなんとか残すから、僕に辿り着きたいなら生き延びてみせるんだね」

これ採用されてたら後5話ぐらいで完結してたな…。

136ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/12(土) 22:45:18 ID:???
俺は地下鉄を使ってみたかった
スティッキーフィンガーズでナチ研の地面を連続であける

エシディシ地下鉄構内に停車中の地下鉄に落下

地下鉄発車、禁止エリア内に進入

リトルフィートで地下鉄を小さくさせて脱線

ジョルノが地下鉄の残骸をカエルに

ブチャラティがエシディシを足止め

禁止エリア内に取り残されたエシディシ、ブチャラティ、ジョルノ、ホルマジオ死亡
リゾット一人が残って終了

地下鉄を利用した話を1つ書こうと思っていて、悩んだ末F・Fvs音石の方を選択した。
今ではエシディシを◆Y0氏に託してよかったと思っている

137ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/02/13(日) 00:55:28 ID:???
まあ、誰の案を採用しても、エシディシは永くは無かったみたいだな

138ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/02(水) 11:53:43 ID:???
「どういうつもりだ?」

何故立っているのがこの俺で、倒れているのが吉良なんだ?俺は訳が分からなかった。
俺が住んでいた世界では、裏切りなど日常茶飯事だ。今更驚きはしない。
だが、そういった行為を実行に移すには、よっぽどの私怨やメリットが存在しなければならない。
俺達と奴等の考えは相容れないようだし、口惜しいがこのまま戦い続けていれば俺は負けていた。
この状況で爆弾を操れる強力な仲間を切り捨ててまで、俺に一体何の見返りを求めると言うのだろうか。

「ちょっとした交換条件だ。貴様は俺のおかげで命を拾った。俺はジョルノと合流したい。
知ってるんだろう?奴の居場所を。ここは一旦、お互い協力関係を結ぼうじゃあないか。」

吉良の頭から抜き出した2枚のDISCを弄びながら、ディオはニヤニヤとディアボロに笑いかけた。
顔は笑っていたが、目には有無を言わせぬ強い光が宿っている。

139ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/02(水) 12:03:14 ID:???
ここでディアボロが首を縦に振らなければ、すぐさま吉良にDISCを戻すぞと言わんばかりだ。
彼の真意を測りかね疑念と警戒の視線を向けるディアボロに、ディオは更に話を続ける。

140ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/02(水) 12:04:39 ID:???
「色々と事情があって吉良とジョジョに手を貸していたが、元々乗り気じゃあなかった。実際俺の左手が
こんな風になったのはコイツの仕業だしな。まぁ信じるか信じないかは自由だが。」

そう言って吉良の懐に手を突っ込むと、ディアボロに見せつける様に人間の左手を取り出す。
血色を失い蝋人形のように冷たく硬くなった手首を一瞥し、ディオは不快そうに目を細めた。
まさか自分の左手と握手を交わす機会が訪れるとは。そして乱暴にディパックに押し込む。

「おいおい、なんだその目は、まだ疑ってるのか?さっきまで殺そうとしていたのは事実だ、謝罪しよう。
それよりもさっきジョルノの名を口に出したな?訳あってはぐれたが、俺は奴とも行動を共にしていたんだ。」

ジョルノの名を出され、ディアボロは逡巡していた。正直言ってディオの言っている事は全く信用していない。
生きる為に仕方なく協力していたのであり、いずれ吉良に復讐するつもりでいた。
そこへディアボロがジョルノの味方である事が判明し、一転、吉良を始末しこちらの側に付こうと決心した…。
いかにも取って付けたような理由であり、信じる方がどうかしている。
嘘だと思うなら直接本人に訊いてみろと言いたいのだろうが、そもそもそこに行き着くまでに
ディアボロを葬る心算かも知れない。だが、それならわざわざこんなまどろっこしい手段を取るとも思えないが。

「いやむしろ、貴様が俺の言った事を素直に信じるお人好しだったとしたら、
ここまで生き残っている筈も無いか。いいだろう、これでどうだ?俺が気に食わないなら今ここで殺せばいい。」

敵意の無さをアピールすべく、ディオは持っていたDISCとサブマシンガンを地面に置いて一歩退き、
さらにディパックをも捨てて、両手を挙げて降参のポーズを取った。
鋭く睨みつつ、スタンドを傍らに呼び、ディオの所持品を拾い上げたディアボロ。
彼が口を開きかけた瞬間、南の空から突如、真っ赤に燃えた隕石が飛来し、闇夜を裂きながら轟音を響かせる。

「今のは何だ?かなり近い!シーザーの能力…いやジョジョのか?とにかく奴等を止めないとマズイ事になるぞ!」

先程までの胡散臭い、へりくだった態度とは打って変わって、ディオが焦った声を出す。
まだディオに対する疑念が晴れた訳ではないが…。数秒悩んだ後に、ディアボロは忌々しげに言い放った。

「…今はお前の口車に乗ってやろう、だが忘れるな。少しでも妙な真似をしてみろ、
後悔する間もなくあの世に送ってやる。ところでこいつはどうする気だ?」
「決まりだな。月並みな言葉だが…これから宜しく頼む。そいつの事は心配ない。」

演技ではなく心底安堵した表情を浮かべたディオは、記憶とスタンドを抜かれ人形の如く地に倒れ臥した吉良の頭を、
スタンドの足で渾身の力を込めて蹴り上げる。骨の砕ける嫌な音と共に、彼の首は真逆の方向を向いてしまった。

「これで文句はないだろう?行くぞ!」

呆気に取られるディアボロを尻目に、ディオは隕石の軌道を頼りにシーザーとジョナサンの元へと急いだ。

141ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/02(水) 12:10:12 ID:???
どうやら>>139の原文に問題があったみたいです。もしかしたら『畳みかける』かな?

と言う訳で203話のお蔵入りパートの一部です。読み返してみたら隕石降るタイミングが遅すぎだし、
心理描写とかも適当なのでまだまだ手直しする必要があったでしょうが、
それよりも戦闘が長くなりそうで、メインに据える筈のシーザーとジョナサンのパートが弱くなるので泣く泣く没に。

プロットとしては、三人戦う→吉良は自分と同じにおいがするのに対主催なディアボロに興味を持ち、
それぞれが自分の意見を語る→ディオ、ディアボロが受け継いだ意志云々とジョルノとの接点を匂わせる発言に反応→
手首を治す為に不意打ちで吉良のDISCを抜き、ディアボロと共闘を宣言→実はキラークイーンのDISCを隠し持ち、
フェイクを渡す→徐倫パートと繋がってディアボロ達は徐倫が二人を殺した?と勘違いし、
徐倫は元々敵視していたディアボロとディオが現れたので容赦なく襲いかかる…。という展開にする予定でした。

対主催が少ないのでディオが対主催に回ったら面白いだろうな。って考えてました。
原作では正義だったジョナサンがマーダーに、原作でも二次創作でも悪役しか見た事がないディオが正義の側に、
という対比の形もいいなと。ただこの時点でディオは純粋な対主催ではなく、自分が得して利用出来る人間に
付いて荒木(とディアボロ達?)のスタンドを集められたら。というのが本心だと状態表に書くつもりでした。

142ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/03/02(水) 12:12:08 ID:???
違ったw何が原因だったんだろう…?

143ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/19(火) 21:41:14 ID:???
遅くなっちゃったが投下乙。
そうだよなあ、対主催ラスボス勢VSマーダー主人公勢、これほど滾るものがあるだろうか!?

本編が良質なだけに、もし違う展開だったら……って想像が膨らむ。
また何か没ネタがあればお願いしますw もちろん本編も!

144ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:43:11 ID:???
では失礼して没ネタを。

※始めに――正直言ってロワで一番重要なはずの戦闘シーンがキンクリされております。没案なのでなまぬるく大目に見てやってください。



 ◇   ◇   ◇



 錯乱こそ私の墓碑銘となろう
 
 ひび割れ荒廃した道を私は這い進む
 
 なんとかなるというのなら腰を下ろし笑ってもいられよう

 しかし 私は明日が怖い 私は叫び続けるだろう


 ◇   ◇   ◇


【杜王町・とある小道】


 僕はこれから、一つの覚悟を台無しにしに行こうと思う。

 何よりもそれが、あの人の為であり――そうしなければ、あの人は死んでしまうのだ――僕の為でもあるんだ。
 自分がどのような存在かわかった今、僕にはもう怖い物なんかない。
 
 ここは『見えない小道』だ。
 気が付いたら僕はここにいて……日本人の女の子が同じように閉じ込められていた。
 近くにはヨーロッパ風の館があって、僕たちはそこでおとなしく留まることを強要されていた。
 その女の子とはあまり話をしなかった。何より『あいつ』がそれを許さなかったし、僕たちにはお互いに何の共通点もなかったからだ。
 ここはどこかと尋ねる僕に、彼女は「モリオウチョウ」だと言った。
 それから『あいつ』は嫌な笑い顔で僕達の末路、僕が何者であるか、今ここで何が行われようとしているのかを話して聞かせた。
 
 僕はあの日、死んだそうだ。
 なんとなく予感はあった。死ぬ瞬間は、そうたいしたものじゃあなかった気がする。
 確かに降っていた雨はすごく冷たくて、骨に染み込みんで心をえぐった。
 でも死ぬことなんて怖くはなかった、ただちょっと寂しかっただけだ。
 あの人が「行く」と言った時、その声に僕たちの勝利を確信していたんだ。

145ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:43:47 ID:???
 
 それなのに、それなのに、あの裏切り者どもが……あの人の絶頂を砕いてしまったなんて。
 こいつはここへ連れてこられた人達同様、死んだ瞬間の僕をこの場所へ引っ張り出して来たと言った。ゲームの補助駒として。
 神気取りの忌々しい、目の前にいる男――荒木。

「さあ、いってらっしゃい。どのみち君は、体が無いから……ここから出ちゃうとしばらくたって消えてしまうよ? それでもいいのかな」

 だんまりのまま頷く。
 反抗的な態度を隠さない僕を、荒木は楽しんでる。
 目を細めて、どこか嬉しそうにさえしながら特等席の赤い箱――日本のポストのようだ――から、僕を見ている。
 こいつは嫌いだ。
 こいつさえいなければ、あの人はこんな目に合わなくて済んだんだ。
 そのニヤついた顔、ぶっ飛ばしてやりたい。

「いい顔だねえ〜。その意志、ほれぼれしちゃうな。あ、なんで今になって僕が君を行かせるかって? ――分かってるはず。おもしろいからだよ」

 でも、こいつがいなければ僕は一生自分が何者なのか知りえなかったし、あの人が裏切り者のスタンド能力から解放されることもなかったんだろう。
 なんて皮肉なんだ。笑えるほどに、くだらない運命。

「これからどうして欲しいとか、何かをやって来いとか、そういうことを僕は強制しない。君の好きにしたらいい……ま、大体君が何を考えてるか分かっちゃうけど」

 ああ、これから、あの人のところへ行く。
 これは単純な賭けなぞじゃあない。
 体を持たないこの忠誠心は、何か透明なものへ向かって投げられて、意味もなく消えてしまうのかもしれない。
 だけど、僕はあの人の為にこの魂が粉々に砕け散ることなんかなんとも思わない。
 こいつは一体何者なんだろうとか、どんなスタンド能力か考えてもみたけれど。
 もう他のことなんてどうでもいい。

 あの人が変わってしまった。そしてそのせいで、死んでしまうかもしれない。
 
 何よりもあの人に、正気に戻ってもらわなくちゃいけない。
 きっとちょっとばかり弱気になっているだけだ。
 僕だって、ずっと死という結果にたどり着けない――なんて羽目になったら、頭がおかしくなっちまうもんな。
 仕方のない事だ、僕はそれをよくわかってる。だから少し話をすれば、昔のように戻ってくれるさ。
 それから参加者の連中をみんなやっつけて、荒木もぶっ殺してすべて終わりだ。
 
 僕は消えてしまうけれど、あの人の栄光は再び世に保たれるんだ。

「僕は君をあのフィールドに放り込むだけだけど、何せ君たちは同一人物だ。引かれ合うだろうよ、魂の導きを信じていればね」

 当たり前だ、僕はあの人の右腕だ。
 言ってやろうと思って、すぐに口を噤む。
 その意図を察してか、荒木はなおも楽しそうに乾いた笑い声をあげた。
 すぐに表情を読まれてしまうなんてギャングとして恥ずかしい。僕は本当に半人前の甘ちゃんなんだ。
 こいつが何か恐ろしい物の塊でできていることは分かってる。
 僕じゃあどうにもできない。だから、自分にできることをしなくちゃ。

「じゃあね。彼に最も有効なのは、君の存在だよ。それを自覚して、頑張って……僕を楽しませて欲しいな」
 
 余計なお世話だと毒づくよりも早く、奇妙な浮遊感に包まれながら小道の外へ放り出される。
 同時に、荒木に渡された電話機を握りしめた。突然、『ゲロッ』と言う音が――変な発信音だ。
 手触りもベタついてるし、足みたいな飾りもついてる……妙な携帯電話。
 君達ならそれで問題ないよね、なんて意味の分からないことを言ってやがったが、あいつは見た目だけじゃなく、考えてる事も気味悪いや。
 
 ふわりと浮かんだまま、とりとめのない事を考えつつ。
 足下の景色には目もくれず、僕はあの人の気配を探った。
 携帯電話を耳に当てる。目を閉じて、集中する。

 どうか、応えてください。

 あなただけは、生き残るために。

146ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:44:20 ID:???

※   ※   ※


【地下鉄・DIOの館駅】


『――…………――』

 うす暗がり。
 
 湿った空気。
 
 澱んだ水のにおい。

 見上げれば頭上にある安電灯が、弱々しい光を投げかけその存在を気怠そうに示す。
 亡羊とした光が一定の間隔で灯り、辛うじて駅のホーム、その全景を見渡すことができるようになっていた。
 眼前にはどこへ続くのかあらぬ想像をかきたてて止まない、黒い黒い線路が頓挫している。
 それを吸い込む様に存在する地下鉄のトンネルからは、気味の悪い音が絶え間なく響いていた。
 ただ空気の流れによって偶発的に生ずる音と理解はしていても、迫り来る不安は少しも減りはしない。
 その光景に辟易して視線を下ろせば、湿気でべたついた埃が靴に纏わり付き。

平常時であればネズミやその他の陰鬱な生き物たちの巣窟であろうその駅に、男はいた。

『――……る……――』

 薄汚れた簡易ベンチに腰をかけ、男――ディアボロは懊悩に苛まれている。
 じくじくと、足先からは這い上がるように痛みが襲い。
 参加者名簿を見つめ、彼は途方に暮れていた。
 震える手に掴まれたペンが軋み、そのフォルムを微小に歪める。

 吉良吉影とディオ・ブランドーが逃げ去った南東とは逆方向、シーザーと共に調査を行ったDIOの館に、その身を滑り込ませたのが数十分前。

 先の戦闘でつま先に負った傷は些細なダメージとは言い難く、片足を引きずるようにして移動すれば、血の跡が己の存在を否が応でも他者に知らしめる。
 出来てしまった血の道標を誤魔化すため、彼は一度館を通り過ぎ、その血痕をデコイとした。
 止血を施してから踵を返し、再び館へと向かう策略。
 その執拗なまでの用心深さは、病的と表現して差し支えない。
 
 彼が今、身を潜めている駅――地下へと至る通路は館の入り口のすぐ横、隠し扉から侵入できるようになっていた。
 意表を突く場所であったことと、シーザーと行ったのは索敵であった為、建物の形状まで気が回らなかったのだった。
 館にたどり着いた時、傷の痛みによろめいた彼は入り口横の壁へと身を寄せ、僅かに周囲と質感を異にする壁面を訝しむ。
 少し力を込めてその部分を押すと、あっけなく地下への階段が姿を見せた。

 こうして、隅々まで調べ上げたと思い込んでいたこの館に、地下鉄のホームを見つけたのが数分前。

『――……るる……――』

 地下通路からホームへと向かいながら、彼は強い予感に眉を眇めていた。
 
 シーザー・ツェペリは戻らなかった。
 つまり、それの意味するところは――

 野外にて待つべきだったかもしれない。
 探しに行くべきだったかもしれない。
 しかし、あの二人の間に割って入ることは断じてできないと考えていたし、身を潜めもせずに待っていれば良い的になるだけだった。
 加えて自身のダメージ、放送が迫っていることを鑑み、無人と判明している館へ退避することを選択したのだ。
 ナチス研究所へ向かうことを決定しかけていたため、上手くいけばそこで落ち合えると踏んでいた。
 しかし今やそんな打算も、無意味なものとなり果てて。

「悪い予感は本当に、本当に良く……当たるものだ」

 見通しがよく、奇襲を受けにくい駅のホームで第五回目の放送を迎えたのが、たった今だ。
 彼の顔が悲痛に歪む。
 まるで心をいくつにも引き裂かれるような、かつて無いほどの痛み。

147ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:45:06 ID:???

 ことごとく、ことごとく死んだ。

 出会った希望――天にある星のようだった仲間達、すべて。

『――……るるる……ん――』

 先刻目に焼き付けた星の光一つ一つに、彼らの顔が重なる。
 
 ジョセフから受け継いだ鉄球の熱。
 早人を背負った時の柔らかな感触。
 音石への小心ゆえのかすかな共感。
 ポルナレフの今わの際の笑み。
 シーザーの目じりに浮かんだ涙。
 露伴の傍若無人な、人好きのする瞳。
 億泰の若々しい危うさ、その純度の高い心。

 彼らを死なせたくなかった。
 それが『王宮下の人々とともに未来を選ぶことができる』帝王のあるべき姿だと、純粋な自分の望みだと今、彼は理解した。
 それなのに死んだ、死んだ、死んでしまった。
 各々が辿ってきた日々を分かち合うことも――なく。

「本懐を遂げたか? シーザー。ならばきっとジョセフの鉄球も……報われる」 
 
 ペンを両手で包み込むように持ち、握った拳を額に当て。
 苦しさで顔がゆがむ。食いしばった歯はきしみ、小刻みな震えは収まることを知らず。

(死んだ……皆死んで逝った)

 終わりなき死をもってその身の罪を贖っていた彼は、誰よりも死に近く、その本質を知っている。
 死とは救済ではなく、終わりでもなく、苦しみでも喜びでもなく、ただ何もない、無へとひたすらに落ちていく感覚なのだと。

『――と……るるる……ん――』

 罪――因果という言葉が思考の隅をかすめた。
 絶頂のゆりかごからあまりにも鮮やかな失墜は、彼の心を今だ闇の底へとしばりつけている。
 屍の上に築かれた帝位は亡霊となって、今なお彼の足をからめ捕らんと、そこかしこにうごめいているかのよう。

『――とお……るるるるるるん――』

(……ああ、そしてこの『音』は――)

 放送が終わって間もなく、己の耳の奥より湧き上がるように響いてきた懐かしい声。
 今や失ってしまった筈の半身が呼ぶ声を、彼は聞いていた。

『――とおるるるるるるるるるん――』

 あの最後の日に、置き去りにしていった精神の片割れと彼を繋ぐ『音』。
 何が媒介であっても、絶対に繋がっていられたあの頃の記憶が、鮮やかにディアボロの脳裏に甦る。
 
 彼は握りしめていたペンを耳に当て、眼を閉じた。

『――がちゃ』

「……お前なのか」

 かすかに息をのむ気配。
 ついで嬉しそうな返事が聞こえ、彼は驚愕もそのままに相手の名を呼ぶ。


「私の、ドッピオ」

148ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:45:41 ID:???
※   ※   ※

【F-2 ナチス研究所の庭】
 
 
「俺を殺してくれ」

 くぐもった声に応える者はいない。
 流れ出すのは、とある組曲の三番手を務めるごく静かなピアノ曲、『月光』。
 細やかなリズムは、庭に降り注ぐ月光に絡みつくように。か細く、センチメンタルな旋律は流れていく。
 心を癒すようなその曲調が、今はむしろ彼らの精神をむしばむのだった。
 
 ブチャラティは震える左腕を懸命に押さえつける。右手の爪が食い込み、血が滴るほどに。
 
 沈黙の中で、リゾットは緩やかに腕を振り上げた。
 その周囲にはメスの群体が従い、彼の意志、その決定を待つ。
 彼は思う。
 勝ったはずの敵が、まだ生きていた。ならばホルマジオの死はなんだったのかと。
 犬畜生にも劣るような体の器官、その残骸だけでへばりついて、そんなところで何をしているのだと。
 
 湧き上がるのは、またしても度し難い怒り。
 灰色の髪の毛が逆立つほどにあふれ出る憎悪に裏付けられた、甘美にさえ感じられるような痛み。
  
 動かないリゾットの顔は怒りと狂いをはらんで、苦々しく――笑っていた。
 
 しかし一人の少年が、彼とブチャラティの間に立ちはだかる。少年、ジョルノの傍らには、彼のスタンドが。
 その瞳に戦意はない。あるのは哀願だけだった。

「待って……待って下さい。まだ何か、方法が」

 すがるようなその瞳の揺らめき。

 リゾットは煮えたぎるような笑みを消した。
 心臓を突かれるような感覚を覚え、大きく表情を歪ませて片手を額に当てる。
 無表情を取り繕うことは、もはや不可能だった。
 歯を食いしばって、漏れ出そうな呻きをこらえるのみ。

 後悔?
 恐怖?
 絶望?
 
 殺す事。

 殺される事。

149ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:46:19 ID:???

 リゾットの仲間はもう居ない。
 仲間を失った自分。
 今から失おうとしている彼ら。   
 今にも泣きだしそうな少年に、死んでいった部下の面影を重ねてしまう。 

 ――俺が憎いのは、敵ではない。自分自身の弱さだ。

「……どうだ。絶望しただろう? 人間ども」

 ブチャラティの唇から、彼のものでは無い声色で言葉が紡がれた。
 その重低音は、場にたたずむ三人の心を踏み潰すように撫でる。
 エシディシは生きている。
 その心臓からブチャラティの体内に根を張り巡らせ、執念によって精神を征服せんと。

「……早く、しろ! もう正気を保てない……ッ。手遅れになるぞ! 殺せ!」

 ついで、ブチャラティが彼自身の声でリゾットを急き立てる。
 ジョルノとフーゴは 同時にブチャティに気遣わしげな視線を送った後、彼の胸元の心臓をにらみつけた。

 ――この逡巡は何だ。ブチャラティを始末すれば……反逆を一歩、先へ進められるというのに。

 リゾットの黒に満たされた瞳が惑い、揺れている。
 あり得ない筈だった敵方との共同戦線に、救われたのは自分。
 勝利は喪失と共に、怒りは絶望と共に、その心を幾万回引き裂かれても、尚も試練にさらされ続け。
 得たものは何もなく、他人の犠牲の上に立っていた自分。

 しかし、それでも。
 ブチャラティが出会いによって生き返ったというのならば、自分もまた――

 リゾットの中で、今や何もかもが判別あたわざる混沌と化した。
 それでもただ一つだけ、分かっていることがある。
 

 誰にも、何にも屈しはしない。


 服従はない。
 降伏もない。
 敗北も、陥落もない。

 それらを認めることは、生きるための意志を放棄することになる。


 ならば、反逆あるのみ。

 
 そんな事をして失った仲間が戻るわけではないと知ったふうな口をきくやつもいるだろう。
 許すことが大切なのだという者もいる。
 だが彼は身内を殺されたことを無理やり忘れて生きるなんてまっぴらごめんだし、いつもその覚悟をして生きていた。
 
 この化け物に屈服するなどという選択は、あろうはずがない。
 
 もはや自明だ。
 
 リゾットの瞳に、再び焔が灯った。
 

「――絶望? フン……絶望だと? そんなものはとっくの昔に、犬にでも食わせたぞッ!!」

150ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:46:49 ID:???
※   ※   ※

「終点、DIOの館駅〜。この列車はここで折り返します、次の停車駅はコロッセオ、ナチス研究所……次なんだっけ?あーあれだ、サンタ・ルチア駅〜。
 発車は一五分後です。忘れ物と命に気をつけてご乗車くださ〜い」

 線路を滑るように、列車が姿を現した。
 人の神経を逆撫でする声色で、口調で、アナウンスは終わる。

 目の前で停止した電車は、空気の抜けるような独特の音と共にドアが開き、同時にディアボロはゆっくりと腰を上げる。
 側面にあの戦闘の時の大きな亀裂が入ってはいるが、走行に支障はないらしい。
 ペンを耳に当てたまま、荷物を仕舞い込むと車両の中へと足を踏み入れる。  
 先の放送でこの館が禁止エリアに指定されてしまった今、早く離れるに越したことはない。 

『ボス、またお話しできましたね。……嬉しいです』
 
 彼は金網の上、座席の下、列車の連結部の空間、ガラス窓の一枚一枚に至るまで丹念に調べながら、懐かしい片腕と通話を続けた。

「それは私もだ。しかしドッピオよ、一体今どこにいる?」

『ボスのいる場所に、向かっています』

 その発言と共に、ディアボロはある疑念にたどり着く。
 濁すような答えを受けて、自分たちの特殊な存在のしかたを問い質した。

「お前、私の外に存在しているということは……まさか知ってしまったのか? 私たちが何なのか……」

『はい……。でも僕は、ヴィネガー・ドッピオはいつだって、ボスの一番の部下ですッ』

 決然とした言葉の後には、照れたような笑い。
 ディアボロは検分の手を止め、その言葉を噛みしめる。
 かつて同一の身体にあった二つの人格――パッショーネの統括者と、その腹心という特殊な立ち位置でその精神達は共存し、バランスを保って来た。
 しかし彼は、己の腹心として忠誠を尽くすものの存在を、あまりにも意識していなさすぎた。
 彼は孤独に馴染みすぎていたのだ。
 
 ただ一人で時を飛ばし苦難を超えて来たと思っていた。
 ただ一人で絶頂を求めて来たと思っていた。

 自身の利己的な生き方に、己を捧げ続けてくれた者がいる。
 体を持たなくなってもなお、自分の身を案じてくれている。
 仲間全てを失ったディアボロにとって、その事実は救いだった。
 
「ドッピオ……感謝する」

151ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:48:39 ID:???
シルバー・チャリオッツ・レクイエムによる魂の分断の時、彼らは分かれたはずだった。
 だが置き去りにしたはずの腹心の心は、肉体を離れてもいつも組織の頂点、帝王へと向けられていたのだ。 
 電話の向こうでは『と、当然のことですから!』と慌てたような、面食らったような返答があった。
 
 彼は笑みを浮かべる。
 あらかたの安全を確認し終え、座席へと腰を掛けた。 
 同時に、疲労と痛みが全身を駆け巡る。

 変わりすぎた心と、使いすぎた肉体。
 徐々に弱体化していくスタンド能力。
 たった一人の自分。
 露伴たちに託したメッセージさえ、伝わったかどうかわからなくなってしまった。

 シートへと深く身を沈める。

 無限に続く死の中での記憶。自分に尽くす事が至上の喜びだと語ってくれたドッピオが、己の境遇に心を痛めてくれている。
 ここへ来て出会った仲間を全て失った彼の心に、かつて最も心を許した者の言葉が沁みる。

「お前には、苦労をかけた」

『いいえ、それが僕の喜びですから!』

 ドッピオはそういった後、少し沈黙する。そしてひとつ、大きく呼吸音。

『ボス……時間がありません。ごめんなさい、僕の言いたい事を話します』

 ディアボロは何か大きな決意を感じとり、何も言わずに片割れの言い分を待つ。
 
 その時控えめな振動と共に、列車のドアが閉まった。
 車体ががたんと揺れ、ぼやけた蛍光灯の光が後方へと流れだす。
 
 目的地は、ナチス研究所。

『ボス、生きて下さい。そのためにはゲームに――乗って下さい』

 ディアボロは頭を垂れ、沈黙で答える。彼を殺人へと誘う声にこたえることも叶わず、視線は膝の上をさまようばかり。
 轟音と共に暗い穴の中を駆け抜ける列車の、断続的な振動が躰を伝ってくる。

152ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:49:13 ID:???

 間もなくコロッセオだ。眼を固く閉じる。

『ボスが今までどんな目にあってきたか……僕は知っています! 裏切者のスタンド能力のせいで、ひどい目にあったって……』

 ゴミにも等しいチンピラに撃ち殺されたり、生きたまま肝臓を摘出されたり――考え得る限りで最も悲惨な、終わりのない終わり。
 ドッピオは珍しく荒い口調でまくしたてる。悲しそうな声色で、心から痛そうな声色で。

『ここにいる奴らなんて、どうだっていいじゃないですか!? 僕、見てました。ジョセフとかいう老いぼれが、恐怖がどうとかあなたに変なこと吹き込んで――』

「ドッピオ」

 重く、低い声がはらんだ感情は何によるものか。
 ドッピオは言葉を飲み込む。
 そこに漂っているのは紛れもなく、イタリア一帯を取り仕切ったギャング、その帝王たる彼の威厳。

「例えお前でも、ジョセフ達を侮辱することは許さん」

『そんな、ボス……ッ』

「私は理解したのだ。他人を害すれば、ついには自らが血の代償をもってその支払いを義務付けられる。それに気が付かなかった私の絶頂は、空虚だった」

『パ、パッショーネでの僕たちの努力を、あなたの栄光を否定するんですか!? なら……僕達のあの日々は一体何だったのか、僕があなたのためにやってきたことは、一体なんだったのか……』

「それは……」

 沈黙と、うろんな空気。

 二人の思惑をよそに列車は進み続けた。
 欠損のある不安定な車体は、不快な音を常に響かせディアボロの思考を邪魔していた。
 ペンを耳に当てたまま唇を引き結び、彼は何を思うのか。

 やがて列車はコロッセオ駅へとたどり着く。
 開いたドアの向こう、参加者らしきものの人影は一切なかった。
 DIOの館駅と同じ、暗鬱な電灯が灯す光を見つめる。
 電灯もまた、まどろんだ獣の瞳のように怠惰な光で列車を見下ろしていた。

 ドッピオも、ディアボロにとっては過去なのだ。
 それが今再び彼の袖をとらえ、後ろへと引く。

 そう、過去からは誰も逃げられない。
 だが、彼は『なぜか?』と問う。
 
 過去は恐怖であり、同時に今までの彼、全てでもある。
 つまり、過去が切っても切れないのは――ミミズのように這い出てくるのは、過去が彼だからだ。
 自分が過去を否定する限り、永久に自分自身を否定し続けることになる。

「『見ていた』と言ったな? ドッピオ。つまりそれは、お前が参加者ではない状態で、このフィールドに存在していたということだな……」

 ドッピオは過去だが、ディアボロ自身でもある。
 一つの肉体を共有した、二つの精神。何よりも自分に近く、誰よりも自分から遠い存在。
 何があってもドッピオが彼を裏切ることはないと分かってはいても、彼は試すようなことを聞く自分を止められない。

「お前、荒木に与しているのか」

『いいえ、いいえ! 僕はあんな奴嫌いなんですッ。でも、荒木は得体が知れない……僕はあなたに生きてほしいんです!』

153ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:50:05 ID:???

 ディアボロが思った通り、ドッピオは彼の味方であり続ける。しかしそれがまた自分の心を苦しめることになるとは、ついぞ考えもしなかった。
 列車は進み続ける。蛇の腹の中のような真っ黒い闇を這い進む。
 ナチス研究所はすぐそこに。

『差し出がましいのは分かってます。でも、死んだらどうしようもないでしょう!? お願いします。今から行くナチス研究所には――』

「やめろ! やめてくれ……」
 
 かぶりを振り、両手を髪の中に埋める。ペンが軽い音を立てて床へと落ちた。
 相も変わらず痛みが体中を突き抜けていく。

 分かっていた。

 参加者はすでにおよそ八分の一。
 荒木に立ち向かう術は全くない。
 他の参加者の情報も少なく、殺し合いに乗り気の人物は身長二メートルの怪物なのだという。
 くわえて、『キング・クリムゾン』の弱体化。および首輪の爆発条件に指定されている『飛ばす時間の上限』が残りわずかであること。

 不利だ、不利すぎた。

 何をどうあがこうとも死ぬ。
 それは紛れもない恐怖であり、それを乗り越える術を自分は持たない。
 彼は己を恥じた。結局のところ、自分はジョセフの気高さを継ぐに値しないのか。


 ――『恐怖を自分のものとする』事……と、『恐怖を力に変える』事は、違う。
 

 嗄れ声が力強く頭の中を満たし、喉の奥から苦しげな呼気が漏れた。

 そして、彼の思考を遮るかのように列車の速度が徐々に緩められ、ついには完全に停車した。
 ドアが左右に開き、ディアボロはゆっくりと顔を上げる。
 開いたドアの前に、彼にだけ見える半ば透けた少年の姿。
 少年――ドッピオははじめて目にする帝王の姿に感動を隠せない様子で瞳を輝かせ、笑う。 
 同時に彼の手から緑色のカエルが滑り落ち、何事もなかったかのように飛び跳ね、闇へと吸い込まれていった。

「やっと、会えた」

 ディアボロは立ち上がり、少年の元へと歩きだす。
 狭い列車内を横断し、ホームへと降り立ち――遂に、二人は向かい合った。

 ドッピオにも時間はわずかしか残されてはいない。
 彼は可能な状況であれば精神をディアボロの中へと再び同化させ、然る後に儚く消えゆく定めと決まっていた。
 それは荒木が予備駒に課した制限であり、ドッピオに配られた手札の全てだった。

 ドッピオは固く拳を握りしめ、唇を突っ張るように引き結んだあと、しっかりとディアボロの瞳を見据えた。

「ボス、優勝しましょう。皆殺しにしましょう。すべてお任せください! 僕の外見ならばどうとでも言って、敵をはめることができます」

「ドッピオ……私は」

 彼らはいつも、選択を迫られている。

154ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:51:18 ID:???
※   ※   ※

「ふふ、やはり諦めなかったな……忌々しい人間どもよ、見事だ」

 ブチャラティに張り付いた心臓部分を狙い、放たれたメス。
 だがそれらはじゅうと重い音を立てて空中で焼け落ちた。
 ブチャラティの体内を這い進むエシディシの血液が放出され、攻撃は一つも命中することが無かったのだ。
 リゾット歯噛みするしかなかった。
 悔しまぎれに唾を吐き捨てる。奴の心臓にナイフを突き立て、時間を稼いでいる間に鉄分を操作し血管をすべて塞ぐつもりだったのに。

「さァ、ラスト・ワルツだぜ……。今の俺なら簡単に殺せる。だが当然、ブチャラティの命も助からない。お前らの選択する未来はなんだ?」

「ぐ……――スティッキー……フィンガーズ」

 肉体を失ってもなお執拗なエシディシの攻撃に、かすかに残ったブチャラティの意志が反抗する。
 少しでもリゾットたちの有利になるように、スティッキー・フィンガーズを自らの肉体に放たんと手を動かす。
 己の手足をすべてもぎ取り、動きを封じるために。
 
 しかし、その弱々しい腕の動きは、逆の腕によって荒々しく叩き落とされた。
 彼の苦痛にゆがんだ顔が失望へと色を変え、ついで凶悪な笑みがその血まみれの顔に宿った。
 めまぐるしく変わる彼の表情は、二つの魂が激しくせめぎ合っている証。
 しかし明らかにエシディシは、その闘争心でもってブチャラティの心をかき消さんとしていた。
 今や誇り高きギャングの精神は、風前の灯。

「ほらァ、どうする? 俺はもう動き出しているぞ……この灼熱の血液でもって、ブチャラティの体を焼き焦がす」

 どこか誇らしげにさえしながら、エシディシの声が闇夜に響く。
 血液が熱を持ち始めたのだろうか、液体が沸騰する音が微かに響きだしていた。
 
「無論、それだけじゃあないぜ? ブチャラティが死ぬ時、俺の血液は周囲に飛び散る。500度の血液だ……貴様らは全員、焼け爛れて死ぬ」

  
※ 戦闘シーンは割合、途中でディアボロ・ドッピオ研究所に到着&乱入 用心のため外見はドッピオで素性は明かさず ボスは優勝狙いになるかどうか悩みつつ……という感じ※ 
※ ドッピオ&ボス、リゾット、ジョルノ、フーゴ、エシディシで戦闘 追い詰められたエシディシが、怪我だらけのブチャラティから近くにいた軽傷のフーゴに乗り移る(逃げるために)※

155ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:52:40 ID:???

「フーゴ! 今……」

 ジョルノはエシディシの心臓が飛び出したと同時に、くずおれたブチャラティの体を受け止めた。
 フーゴは異物を腹に抱え込み、うめき声を発して膝をつく。
『ゴールド・エクスペリエンス』を従え、駆け寄ろうとした彼にかけられた言葉は。

「来るな!」

 意外、それは拒絶。
 ジョルノはいつの間にか発現された『パープル・ヘイズ』が、フーゴの体へ押しつけるようにエシディシの心臓を掴んでいることに気が付く。
 幾分弱り始めてはいても確かに脈打つ心臓が、彼の剥き出しの腹に存在している。
 ついでフーゴへと目を向けると、彼はじっとりと滲み始めた汗を額に浮かべながら唇の端を歪め、笑っているようだった。

「僕が自分の命可愛さにこのまま逃げ出すとでもと思いましたか? ――残念だったな、怪物め。そうはいくか……いくもんか」 

 視線を巡らせ、立ち尽くす黒衣の男を見やる。
 フーゴは、熱い石を飲み込んだように爆発的に怒りをあらわにした彼の『黒さ』を信頼できると思った。

「どうです、リゾット……僕は何の罪もない参加者を自分だけの利益のために殺したゲス野郎だ。――ここで死なせてくれませんか」

 フーゴは生をあきらめる『恐怖』を克服した。
 そして仲間を守り、愚劣な畜生として死ぬ事をその意志で選んだ。
 苦しく、何も生み出さないこの決意を人は笑うだろうか。

 他方でこの言葉が、罪に服するこの言葉が、ディアボロにすべてを決意させた。

(ドッピオ……私はやはり、以前の私には戻れない。たとえ、スタンドを手放すとしても)

「ボス……」

 今、最期の変革の時。

 着用していた厚手のセーターの裾に手をかけ、緩慢な動作でめくり上げる。
 肩から首にかけてウールの生地が通過すると同時に、少年の体形が徐々に男性のそれへと変わっていく。

 罪と戦う為に。

 罪に抗う為に。

 戦え!
 抗え!
 屈するな、誓え!

 スタンドはただ、か弱い精神の表れではない。
 弱さを攻撃に向けただけで、あのように多種多様な異能が存在する筈はない。
 それは生命の根源への希求――宇宙の果てまでを貫き通すような、激越な欲望にして希望。
 欲望無くして希望はなく、希望無くして成長はあり得ない。

「私は私の罪を肯定する。そして打ち砕くのは我が過去……その罪科。たとえ精神が崩れて落ちても、先へつなげる意志を、もう一度――」

 ここで出会えた仲間たち。その意志を。

 脱いだセーターを床へと落し、ゆらりと視線を宙へ投げ出した。憧れに輝く瞳は細められる。
 
「失って気付いた……今、誓いを立てる」

「あんたは――……」

156ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:53:24 ID:???
 苦しそうな呼吸の狭間に呟かれた言葉に、ディアボロは振り返りった。
 突然の奇異な現象すら気にする余裕がないのだろうか、フーゴはさほど驚いた様子を見せない。
 
 もっとも、ディアボロにとっても体裁を気にする余裕も理由ももはや皆無だった。
 今更、何におびえるというのだろう。

「パンナコッタ・フーゴ……貴様、死ぬ気か」

 ポルナレフを間接的に死に追いやった敵であるはずのフーゴに、彼は罵声を浴びせるでもなく、軽蔑を示すでもなく、ただそれだけを聞く。

 フーゴは、罵詈雑言以外の言葉が相手の口からこぼれたことに驚いた顔をした。
 ディアボロの瞳を一瞬見つめると床に視線を落とす。同時に落ちる、自嘲的な笑み。
 そしてすぐに顔を上げた。そこにある表情は、いつもの彼の挑戦的な笑いだ。
 
 罪も、思い出も、もう見ることはない希望への諦めも。
 すべてを含めた瞳が、どこか悲しそうに細められ――彼はゆっくりと唇を開く。


「はい」


 ただ一言、それだけでことは足りた。
 突然の事態についていけない様子で口をつぐんでいたジョルノは、彼の決意を心で理解しながらもなお、絞り出すように言う。

「そんな、それじゃあ、同じだ。フーゴ、君が死んで――」

「同じじゃないぜジョルノ。僕は人殺し、お前たちは違う。死ぬのは悪いやつからって、決まってるのさ」

 フーゴの腕が痙攣し始めた。
 パープル・ヘイズが地面に膝をつく。弱っているようだ。口の端から滴る涎が膝へと落ちるが、気付く様子もなく低いうなり声をあげている。
 フーゴは自分の分身を憐れむような視線で見やり、再び襲ってきたらしい苦痛に呼気を漏らす。 

「生き、るんです。あんたたちは。僕は――もう」

 リゾットが動いた。
 つかつかとフーゴの傍へと歩みより、傲然と彼を見下ろす。双眸はただの石のように静かな光を湛えている。
 フーゴはその瞳を縋るように見つめ、泣きそうな顔で言った。

「疲れた」

 リゾットは軽く頷いたようだった。安心しろ、すべて終わらせてやる。
 そして脈動する心臓へと目を向ける。こんな無様な姿をさらしてでも生へとしがみつく『意志』に畏怖すら感じながら。
 だが、そんな畏怖は何ほどのものでもない。何が怪物だ? 何が人間だ? こいつは部下を殺した。それだけで、もはやすべてが十分すぎる。

「……ぶっ殺した、と言っただろう? もう遅いんだぞ……お前はすでに、死ぬ運命にあるのだから」

「そう……エピタフにより――その未来はすでに決定した」

 ディアボロは残りわずかな制限時間を削っても、この行く末は確認しなければならなかった。自らの意志に啓示を与えてくれた者たちの為にも。

「KUWAAAAAAA……! 貴様ら、貴様らァァァァ……」 

 心臓を抱え込むようにうずくまったフーゴの唇から、重い声がこぼれた。
 フーゴは心臓が再び誰かに飛び移ることの無いように、さらに強く腹部を抱え込み。
 リゾットとディアボロは並び立った。
 
 裁かれるべきものなどいない。
 死ぬべきものなどいない。
 彼らはただ、意志に殉ずる覚悟ある者たちだった。ただそれだけだった。

「殺せ、リゾット。それが我々の……勝利の証明となる」

「貴様は何者だ? ――納得のいく説明をしてもらおう。だが今は」

 リゾットが腕をつと上げると、散乱していたメスが周りに再び集まってくる。
 フーゴは眼を閉じる。パープル・ヘイズはエシディシの心臓に手刀を突き付けたまま、微動だにしない。
 ジョルノは意識の無いブチャラティを抱えながらただ、眼を見開いて。

157ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:53:57 ID:???

(さようなら――ありがとう)



 音にならず、フーゴの唇の上でだけ紡がれた別れの言葉を、青い瞳で捕えていた。

 リゾットは狙いを定め、眼を細めた。
 この、終わりの時に添えるのは――ありったけの憎悪と、かすかな憐れみ。 

「くらえ――『メタリカ』!!」

 銀色の刃は何よりも速く徹底的に無慈悲に、星のように鋭く光り――幾本も幾本も、



 降り注いだ。



※   ※    ※


 ――ふん。此度の戦い、なかなか面白かったかもしれん。しかし、こんな疲れは何万年振りかなァ……。

 リゾットの放ったメスによって床に縫い付けられたフーゴの体。
 彼の血の気の引いた体の表面、胸のあたりに、すでにその活動を追えようとしているもう一つの心臓があった。
 そこに、エシディシの知性は宿っている。
 彼は徹底的に戦い尽くした。髪の毛一本に至るまで、すべてを闘争に捧げた。

 彼の視点――それは一つの抽象観念の集まりだった。
 
 一族、血、闘争、精神、誇り。
 あそこにいる一つの命とか、あの人物の命とか、そういった考えは彼には――おそらく朋友であるカーズにも――存在しなかった。
 いつも問題にしてきたのは、ある一人に備わった名誉ではなく、名誉そのもの。
 
 『観念』を通して現実を見、行動してきた。
 今ここにいる自分自身を見ることすらなく、彼は闘った。闘争――その彼方にある巨大な黒い深淵、不変のものを望みながら。
 
 だが、その不変を求めることそのものが、すでに一個の生命にとって破滅的なのだ。
 
 そして勝ち負けすら問題にならないような戦いの果てに、彼は散る。
 分り合えるか合えないかではなかった。決して、分り合ってはいけなかったのだ。 


 
 死の間際の彼は夢想する。


 
 見上げた視界、いっぱいに広がった蒼穹。

 日光は肌を焼き焦がさず、あえかな温かみで柔らかい抱擁のように彼を包んでいる。
 視線を巡らせた先には、彼と同じように惜しげなく太陽に身をさらす一族の姿。
 長い黒髪を風に散らせるカーズと、その後ろにつき従うワムウ、人間にはサンタナと呼ばれていた、あのひよっこまでも。

「――ふ。こういう時はなんと言うのだったかな? ……おお、そうだ」

 エシディシは笑い、朋友たちに追いつくために緩やかな動作で、だが確かな足取りで――



「感謝いたします、か」




 歩き出した。

158ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/21(木) 21:54:58 ID:???
※ 蛇足 ※ エシディシ倒してから、ドッピオが力尽きて消滅するくだり ※

『最期に聞きたいんです。僕はボスの、良い部下でしたか?』

 立ち尽くすディアボロの影から溶け出るように、ドッピオが宙へと浮き上がった。
 二人は離れていく。

『はは、何聞いてんだろ、僕……』

「お前は私の部下ではない」

 ドッピオは諦観と共にその言葉を聞く。
 ディアボロにとっての足枷としかなれなかった己の身を呪い、意識を虚空に散らそうとした、その時。

「友だ」

 慈しむような言葉が、消えゆく魂の中へとにじむ。  
 その瞬間に、存在しないはずのドッピオの肉体の感覚が、鮮やかに蘇った。
 存在しないはずの頬に、暖かな液体の温度。
 存在しないはずの瞳から、流れ出る涙だ。

 ドッピオは手を上げる。そこには実感のある、肉体の感覚。 

『グラッツェ――ボス』

 彼は夜空に溶けるように、あいまいな輪郭を揺らめかせ。

 最期に力いっぱい――


 笑った。


※   ※   ※


 恐怖とは何?

 それを克服した時に見えるものは何?

 そして全てが過ぎ去った後、最後に立ち尽くしているのは誰?


 今ここに、物語を綴りたい。


 終わり続けるだけだったはずの物語、その一端を。





  ジョジョの奇妙なバトルロワイアル2nd 




 
          『死せる者たちの物語』     




    
※   ※   ※



……ってかんじでした。アラだらけなのは分かってはおるのですが……
エシディシがなんでフーゴを選んじゃったのかとか、なんでフーゴが突然死ぬ覚悟決めちゃってたのかとか……w 
まあ、先の大作の戦闘で心変わりしたみたいな説明を入れようとは思っておりました。
あとはここ花京院も入れないと間違いなく動かせなくなるという……。

そしてドッピオに諭されて乗るか乗らないかで揺れてしまうボスとかもっと書きたかったが、お蔵入りになりましたw 
あとはここで飛ばす時間の制限超えちゃって首輪爆破も入れようとしていたです。

これをきちんと人様に見ていただける形にしたかったですが、もろもろ上手くいかず断念しました。
お粗末さまでしたん。

159ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/22(金) 02:22:24 ID:???
投下乙!面白かった

ドッピオが登場するとは意外ッ!いい意味で期待を裏切らないストーリーだった。
なんて綺麗なフーゴ…本編の結末は救いがないだけ泣ける…。でもボスが死ぬのは嫌だぁぁぁぁ

160ゲロ以下のにおいがプンプンする名無しさん:2011/04/22(金) 13:57:14 ID:???
投下乙ゥ!!
多分この人だと思うからいうけど、俺はあんたの作品が好きなんだ。
こうしてボツネタでも投下してくれると狂いもだえるぜ!


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