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【ミ】『黄金町の夕闇』 その2

416『婚約期間』 ─5日目─:2015/08/08(土) 00:24:48
>>414(ウィル)
超高速のスピード──
もし事実なら、それはあらゆるスタンドを凌駕する『最強』の能力だ。

だが、女の口ぶりからするに、
腕力は元の女性のままのようだ。
だとすれば、そこに付け込む余地がある。

ウィルはそう考え、背後に回った並苗の両足の間に、
足を滑り込ませ、引っかけようと試みる。
背中に目がなければ、ウィルの攻撃に気付けようはずはない・・・・

          ガッ

確かに理屈ではその通りだが、盲点はある。
自分にも背中に目がないことを、ウィルが失念している点だ。
突き出した足は並苗の脚に当たり、そこで止まった。
足の配置まで把握しなければ、間に通すことは出来ない。

「日本では、主人を縁の下で支えるのが
 『良妻』とされているんですよ、ウィルさん」

    ──ビシィ!!
                     キィン!
          フシュ!

並苗の気配が、背後から消える。

>>411(瀬良野)
周囲を抜け目なく観察する瀬良野。
ざっと見まわした限り、スプリンクラーは見当たらない。
だが、これほど大規模な設備だ。『存在しないというはずはない』。

消火器は見当たす範囲にはなく、
窓も中庭が近いため、設けられていないようだ。

ズギュギュ!
両手に複数枚のコインを握りこむように発現。
何枚かを取りこぼすように床にばらまくと、

    ──ビシィ!!
                     キィン!

再度、『指弾』による跳弾を行う。
蛍光灯の角度を計算して放ったそれは、
今度も間違いなく看護婦・並苗の頭上に跳ね返るが──

          フシュ!

女は、跳弾と同時に『消えた』。
跳弾を見切っているのではない。
瀬良野の動きと同時にスタートしている──
その証拠に、跳弾はまだ到達すらしていない。
これでは、跳弾をさらに飛ばそうにも、対象の位置すら把握できない!

           チク

首筋に走る、かすかな痛み。

「──ちょっと『チクッ』としますよ、瀬良野さん」

穏やかな『看護婦』の声は、瀬良野自身の背後から。

「あまりルンクス様の邪魔をなさると、
 入院してもらわないといけなくなりますよ〜〜?」


      ゴ  ゴ 
              ゴ ゴ   ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

>>412(アウレア)
並苗の言葉を検証しながら、アウレアは看護師から目を離さない。

      ズズズ・・・・

『ラヴ・ランゲージ』が右拳を床に流し込み、
拳大の『黄金』に変化させた。

看護師の足元は、はっきりと確認は出来ていない。
ほとんど消えるように移動していたからだ。

だが──まさにその時、
アウレアは並苗の『超高速』を目の当たりにした。

    ──ビシィ!!
                     キィン!
          フシュ!

瀬良野の跳弾が天井で弾かれた瞬間、
再度、看護婦が動く──至近距離であれば、
まず『消えた』と見えるであろう『神速』。
驚くべきことに、看護師の脚に強い踏み込みの類はほとんどない。
そもそも靴は市販品のパンプスだ。
陸上選手のような『脚力』に頼った速度というよりは、
『達人』のような『身のこなし』による動きらしい。
ともあれ──並苗は全く無理なく『人外の域』に到達する。

                  バ ッ !

『コイン』の狙撃手の視界を掻い潜るように弧を描いて、
看護師は瀬良野の左側面に肉薄し、生の首筋に『注射』した。
一切の躊躇がない、滑らかな動き。
──注射する動作さえも『超高速』。

・・・・しかしまだ、注射器を押し込んではいない。
中の液体は、注入されてはいない。

「──そうですとも。
 貴女もきっとまた、別の素敵な誰かに巡り合えます」

アウレアとスタンドを前に、並苗は優美に微笑する。
互いの距離は──『2m』。


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