したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。

【ファンキル】SSスレ

1ゆるりと管理人:2019/07/21(日) 01:13:38

ファンキルの二次創作SSを投稿するスレです。

・18禁の内容はNGです
・原作のキャラクター性を著しく損ねる内容はご遠慮下さい、
また損ねている可能性がある場合は注意書き等でご配慮下さい
・複数レスに跨る場合は投稿者名(いわゆるコテハン)を利用しましょう
・投稿に対する暴言は規制対象になります
・ダモクレスばかり登場させるのは控えましょう

※物は試しのスレなので需要が無く過疎った場合は放置でOKです

571EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:51:56

「えっと、今日はトレイセーマとの会談でしたよね、お疲れ様です」

ギルはラグナロク王国の外交官として毎日頑張ってくれている。

「はは、ありがとうございます……。それよりティルフィングさん、こんなところでどうしたんですか?」

「それは……」

他の人に話すようなことじゃない。

そう思って、話を濁そうと考えたけど。

「やっぱり俺じゃ力になれませんか?」

「いえ、そんなことは……」

私の考えはギルに見透かされていた。

「アルマス達と旅をしてた頃は、足を引っ張ることが多くて……」

「外交官を務めてる今でも失敗することはあるけど、それでも色んな国の癖の強い斬ル姫達と話してきたんです」

「だから……」

「ギル……」

私がティルフィングとなってから、ずっとギルとは気まずいままだった。

それでもギルは困ってる私を見て、声をかけてくれた。

「ギルは優しいですね」

「へ?」

弟のように接していたギルの成長が嬉しくて微笑む。

ギルは照れて、頭をガシガシと掻いていた。

「と、とにかく!」

「困ってることがあるなら、せめて話し相手ぐらいは務めさせてください!」

ギルの真っ直ぐな気持ちが嬉しかった。

572EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:52:35

「私には、好きな人がいるんです」

「マスターでしょ」

「…………」

「ど、どうしてギルが知ってるんですか?」

「いや、俺がっていうか……。多分皆分かってます」

あまりの恥ずかしさに顔を手で覆う。

「あ、いや、大丈夫ですよ!昨日今日とかの話じゃなくて、とっくの昔に知れ渡ってたことなんで!」

「それはちっとも大丈夫じゃありません……」

ギルのフォロー(という名の追い討ち)が胸に刺さる。

「ティルフィングさんは何であいつのことをそんなに……?」

「……ずっと前から、あの人のことを見てきたんです」

何百年も前から。

「少し、長い話になります」

天上世界でのこと。

地上世界でのこと。

この世界でのこと。

そして、私のキラーズのこと。

ギルは、私の話を最後まで聞いてくれた。

「……すみません。俺には、ティルフィングさんがどうするべきか分からないです」

「いえ、ギルが話を聞いてくれたおかげで少し楽になりました」

ギルが話しかけてくれなかったら、きっと私は塞ぎ込んでいたままだったから。

「……俺には、何が正しいかは分からないけど、でも」

「俺がもしマスターの立場なら、独りで抱え込んで欲しくないって思います」

「……え?」

573EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:53:16

「もー!!ギル遅い!!」

「げ!モラベガのこと忘れてた!」

「えっと……」

確か今日のトレイセーマとの会談では、モラベガにギルの護衛を頼んでいた。

「トレイセーマの帰りにティルフィングさんを見かけて、その時に待って貰ってたんです」

もう既に日は落ちている。

モラベガは結構な時間ギルのことを待っていたハズだ。

「ギル、行ってあげてください」

「で、でも……」

「また今度話を聞かせてください。今日みたいに、私がナディアだった頃のように」

「は、はい!」

嬉しそうに手を振り、モラベガのもとへ戻るギルを見送る。

「ありがとう、ギル」

ーーー独りで抱え込んで欲しくないって思います。

私は、自分のことばかりでマスターのことを考えてなかった。

彼に打ち明けないといけない。

これは私の問題だけど。

私だけの問題ではなく、私と彼の問題なのだから。

「会いたい……」

そんな私の願いは、神様に聞こえていたのかもしれない。

「ティルフィング!」

最愛の人の声が耳に届いた。

574EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:54:09

息を切らしながらティルフィングのもとへ駆けていく。

「ハァっ、ハァっ!や、やっと見つけた……」

「ま、マスター?どうしたんですか?」

「ハァっ……君を探してたんだけど……、ハァっ…、どこを探しても、中々見つからなくて」

その言葉に彼女は目を丸くした。

「もしかして国中を走り回ってたんですか?」

「どうしても君と話したいことがあったから」

「……アルマスは?」

「ラグナロク王国を出るときは護衛としてついて貰ってるけど、今日は先に戻って貰ったよ。あまり他の人には聞かせたくない話だから」

「……はい」

そう答えたティルフィングの表情は暗かった。

僕の考えていることに、彼女は気づいているのだろう。

「僕を避けてるのは、ティルフィングのキラーズが関係してるのかな」

「やっぱりお見通しだったんですね」

「付き合いが長いからね」

ティルフィングは、僕を避けてることを否定しなかった。

「私のキラーズのことはマスターもご存知ですよね?」

「持ち主の願いを3つまで叶える剣、だよね」

「そして3つめの願いを叶えた時、持ち主は命を落とすと言われています」

「マスターは天上世界と地上世界を救うために、願いを既に2つ叶えています」

「もし3つめの願いが叶ってしまったら、マスターは……」

「……そっか」

彼女は、ずっと悩んでくれたのだろう。

「話してくれて、ありがとう」

「……マスター」

よく見ると、彼女の目元は少し赤くなっている。

「…………」

許せなかった。

何もしてこなかった自分の不甲斐なさを。

「ティルフィング」

だから僕は決意した。

「行きたい場所があるんだ」

もうこれ以上、君の表情を曇らせたくはないから。

「ま、マスター!?」

彼女の手を取り、僕はある場所へと向かった。

575EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:54:55

「ここは……」

「うん、展望台だよ」

マスターと一緒に備え付けられたベンチへ座る。

「わぁ……」

雲一つない夜空には、幾つもの星が瞬いていた。

「ラグナロク王国にこんな場所があったんですね」

星空に向けて手を伸ばしてみる。

「いつか、君と二人でこの夜空を眺めたいと思ってた」

「そ、それは、私をデートに誘うつもりだったと思ってもいいんですか……?」

「うん。……初めてデートをしたときのこと、覚えてる?」

「も、勿論です!」

それは天上世界で旅をしてた頃の思い出。

「剣の特訓に明け暮れていた私を、街に連れ出してくれました」

洋服を試着したり、買い物をしたり、2人でお茶をしたり。

「皆で海に行ったりもして」

適当な理由をつけて、アナタを1人占めして。

「バレンタインにチョコレートをくれたこともあったよね」

「う……」

徹夜でチョコレート作りに励んだこともあった。

「料理が苦手だったなんて知らなかったな」

「そ、そのことは忘れてください」

アナタの前だと、私は普通の女の子でいられた。

それだけで、もう満足だ。

やっぱり私は、どうしようもない程に彼が好きで。

だからこそ傷ついてほしくないと想えるから。

576EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:55:33

「……マスター、お願いをしてもいいですか?」

「……うん」

例え、マスターの傍に居られないとしても。

マスターが誰を選んでも。

「また、私を連れ出して……」

こうして時々話してくれるなら、私は……

「今日みたいに、話をして貰えませんか?」

「そんなことでいいの?」

「はい、私にはもったいないくらいです」

「こうして私を普通の女の子として見てくれるのは、マスターだけですから」

これでアナタを諦めることができる。

「ティルフィング……」

マスターと正反対の方の夜空を眺める。

泣いてる姿を見られたくなかった。

「……綺麗な星空ですね」

「うん、月が綺麗だね」

ーーーえ?

マスターが呟いた言葉の意図を理解できず、彼の方へ振り向く。

彼は夜空ではなく、私を見つめていて。

「ん……!」

気がつけば、唇を奪われていた。

優しく触れ合うだけのキス。

「ま、マスター……?」

唇を離したマスターは、私の頬に伝っていた涙を指先で拭った。

「……僕は、君を普通の女の子として見ることなんてできない」

「僕にとって、君は特別だから」

彼と触れ合った場所が熱い。心臓がうるさい。

「で、でも、私が傍にいると、マスターは!」

「僕の願い事はずっと前から叶ってたんだ。3つの願いを叶えても、こうして僕はここにいる」

だから、もう心配しなくていいんだ、と彼は告げた。

「マスターの願い事って……」

「君と、その、両想いになれたらなって……。僕の自惚れじゃなければだけど」

もう堪えきれなかった。

嬉しくて、ホッとして、幸せで。

「自惚れな訳っ、ありません……」

「何百年も前から、ずっと、ずっと好きでした!」

優しく抱きしめられ、彼の腕の中で涙を流し続けた。

577EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:56:26

数十分程して。泣き止んだ私は、彼に寄り添い再び夜空を眺めていた。

「……マスターは大胆ですね」

「うっ、ご、ごめん……」

「ち、違うんです!その、キスされたことを咎めてる訳じゃありません!」

「3つめの願いを叶えて、もし何かあったらどうするつもりだったんですか……?」

私がナディアだった頃、ティファレトは「願いを3つ叶えた時何が起こるか分からない」と言っていた。

「考えてなかったな……、3つめの願いは地上世界を救うことだったから」

「え?そ、それって……」

「君と両想いになれたらなっていうのは、1つめの願いなんだ」

それが本当なら、

「ま、マスターはずっと前から」

「うん、君のことがす……」

「私の気持ちを知ってたんですか…!」

「あ、あ〜〜……」

マスターの目が泳いだのを私は見逃さなかった。

「ごめん、天上世界にいた頃に……。エロースに相談したら、きっと両想いだって教えて貰って」

「も、もうあの子は……」

「ま、まあ、良かれと思って教えてくれたんだと思うよ」

「それは、分かってますけど……」

納得がいかない。自分だけ何百年もヤキモキしてたと思うと尚更。

「マスターはエロースのことを庇うんですね」

「え、えーっと…、どうしたら許してくれるかな…‥?」

だから、これぐらいのワガママは許してほしい。

「……私のこと、ティルって呼んでください。それと」

彼の首に腕を回して顔を寄せていく。

「ん……」

愛しい人と唇を重ねた。

「……ティル」

「ん!んぅ……」

背中に手を回され、きつく抱き締められながら互いに何度も唇を求め合った。

今夜のことを忘れないように。

彼の腕の中で幸せに浸った。

578EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:56:58

マスターと手を繋いで、帰路につく。

「えっと、私達って恋人同士になったんですよね……?」

「そうだよ。……どうしたの?」

「こうしていると、恋人同士というより親子という感じがしてしまって……」

今は自分の身長が恨めしい。

女性として、彼に意識して貰えるかも心配になってくる。

「僕には、今も昔も君が魅力的に見えるけどな」

「あ、ありがとうございます……」

そんな不安を彼は吹き飛ばしてくれた。

「……でも、もしティルが恋人になった実感が湧かないっていうなら」

「恋人同士でしかできないことを、これから沢山していきたいな」

恋人同士ですることを想像して、顔が熱くなる。

「あ、あの……」

「ま、マスターさえ、良ければ……」

俯いて、蚊の鳴くような声で呟いた。

もしかしたら、今夜は眠れないかもしれない。

579EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:57:41

ーーーーーー

ーーー

「ティル……」

「ん……、マスター?」

「違うわ……」

目を覚ますと、レーヴァが私の寝顔を覗き込んでいた。

「あ、あれ…………?」

もしかして、さっきまでのことは……夢?

「マスターなら、さっきまでティルの横で一緒に寝てたわ……」

「そ、そうですか……」

昨日のことが夢じゃなかったことにホッとする。時計を見るともうお昼を回っていた。

「……あ!」

とんでもないところを親友に見られたことに今更気づく。

「あ、あの!ま、マスターと一緒に寝てたのは!!」

「マスターから聞いたわ。恋人になったって」

ちゃんとマスターが弁明してくれてたみたいだ。

「ティルに手を出したのかと思って、最初は思わずビンタしそうになったわ……」

「…………」

昨夜のことを思い出し、顔を赤らめてしまう。

それがいけなかった。

レーヴァはすぐに察してしまった。

「グーで殴るべきだったみたいね……」

「ち、違うんです!私はこんな身体のままですし、最後まではしてません!」

「ふふっ……」

優しく笑みを浮かべた親友を見て、からかわれてたのだと遅れて理解する。

「最近のレーヴァはイジワルです」

「私が寝室に入った時、マスターがティルの額にキスしてたわよ」

「も、もう!!」

恥ずかしさに堪えられず、毛布を頭から被る。

「ティル、ごめんってば」

「もう苛めたりしませんか……?」

「うん、約束する」

そう言ってるレーヴァはまだクスクスと笑ってるようなので、抵抗の意味も示すために毛布からちょっぴりだけ顔を出す。

「今日はコマンドキラーズの動向の報告に来たんだけど、ティルが珍しく寝坊してるって聞いたから様子を見に来たの」

「……レーヴァ、面白がってませんか?」

「最初は心配してたんだけどね……。ティルが寝込んでるところなんて、今まで見たことがなかったから」

実際は寝込んでた訳ではなく、朝まで寝かせて貰えなかっただけ……とは言えない。

580EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:59:18

ずっとベッドにいるのも悪いので、レーヴァに断り着替えを済ませた。

「もうちょっと、かな……」

「……?」

「こっちの話。……そういえば」

「ティル、この間私に会いに来た時、本当は何か相談したいことがあったんじゃないの?」

「……レーヴァには敵いませんね」

もしかしたら、それが今日私に会いに来てくれた本当の理由なのかもしれない。

「レーヴァは、私のキラーズについてどう思いますか?」

「……願い事を叶えるんだっけ?」

「そうです」

「…………」

レーヴァは悩んでいるというより、質問の意図が分からないといった感じだった。

「ティルには悪いけど、どうも思わないわ……」

「私のキラーズはレーヴァテインだけど、世界を9回焼き尽くせる力なんて出せた試しはないし……。ティルのキラーズの力で願い事が叶ったなんて思ってない」

「天上世界も地上世界も、この世界だって。皆で勝ち取った平和だから」

「それに、キラーズが何であってもティルはティルだし」

「レーヴァらしいですね」

素敵な親友を持てたことに感謝した。

「おーいレヴァ!マスターが戻ってきたぜ!」

「もう、待たせすぎ……。それじゃ私は帰るから」

「また遊びにいってもいいですか?」

「……うん、またね」

581EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:59:56

レヴァはティルフィングに甘いよなー、うるさい……と小言を言い合ってレーヴァ達は帰っていった。

レーヴァと入れ替わりでマスターが寝室に入ってくる。

「おはよう、ティル」

「おはようございます、もうお昼ですけどね」

「「…………」」

会話が続かず、何となく見つめあってしまう。

「何だか照れくさいね」

「そうですね」

でも、決して気まずい訳ではなくて。

「ティル、目を閉じて……」

「は、はい……」

目を閉じて、顎を上げる。

きっと、この時が一番幸せを感じられると、そう思っていたのだけれど。

「…………?」

いつまで経っても、待ち望んだ感覚は訪れなかった。

「もう目を開けていいよ」

そういって、マスターは私の手に何かを握らせた。

「これは……」

目を開けると、掌の中には指輪が光っていた。

よく見ると、自分の首にはネックレスが掛けられていて。

そのネックレスに指輪が通されていた。

「指輪のサイズは、身体が元に戻ったら合うように作って貰ったんだ」

「それまではネックレスとして使ってくれたら嬉しいな」

…………ズルい。

昨日、これ以上ないくらい幸せだと思っていたのに。

「もし、その時が来なかったら……?」

「変わらないよ。ずっと傍にいる。だから」

ネックレスに通された指輪を、両手で優しく握りしめる。

「僕と結婚してほしい」

マスターと出会って、私は泣き虫になったのかもしれない。

「……はい!」

涙を瞳いっぱいに溜めながら、彼と歩む道を笑顔で選んだ。

582EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 20:00:35

いろんなことがあった。

天上世界でのこと。

地上世界でのこと。

この世界でのこと。

数え切れない程の困難と、幾つもの試練に心が折れそうになることもあった。

でも、辛い時には必ずアナタが傍に居てくれた。

挫けそうな時には必ずアナタが支えてくれた。

誰よりも、何よりも信じてくれた。



ティルフィング。

持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。

でも、関係ない。

斬ル姫ティルフィングではなくティルとして、彼は私自身を見てくれるから。

「ティル!」

愛しい人の声が耳に届く。

名前を呼ばれただけで嬉しいと思ってしまうのは、惚れた弱味なのかもしれない。

好き、大好き。

心の中でそう呟く。

「ーーー」

彼の名を呼ぶ。

アナタも同じことを考えてくれてたら嬉しいな。

幸せはここにある。

胸元で指輪が優しく輝いていた。


Fin

583名無しさん:2019/08/15(木) 20:05:26
アルマスLOVEを書いてくれた人だな!
今回はティルか!良いぞ〜これ!

584EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 20:07:08

最後まで目を通して頂いた皆様、ありがとうございます。

ゆるり管理人様、R-18描写はカットしてますが、それを想起させるような文を掲載するのがマズければ訂正して再投稿しますので指摘の程宜しくお願いします。

マスターの皆さんが少しでもティルのことを好きになってくれたら嬉しいです。

お目汚し失礼しました。

585名無しさん:2019/08/15(木) 21:01:52
アルマスの時も言った気がするけど、なんだこれ天才かよ?

586名無しさん:2019/08/15(木) 21:58:46
ギル出してくれてありがとう。ティルとの距離感がなんかもう。自分にストライクです

自分は読んでて長いとは思いませんでしたよ。掲示板という形ですし書き手の入れたいシーンは全部入れて書き手の満足な長さで書いていいんじゃないですかね
答えになってるかはわかりませんが自分はそう思います

587名無しさん:2019/08/16(金) 00:26:06
ブラボー!読みやすくて、甘酸っぱくて今回も良かったです!

588名無しさん:2019/08/16(金) 01:08:55
やっぱ本物にはいっぱいコメつくんすね
いいぞいいぞ〜

589名無しさん:2019/08/16(金) 01:11:16
なんで好みなだけで本物とかそういうこと言うかな

590名無しさん:2019/08/16(金) 01:16:27
他の方々が書いたのは道化の遊びとでも思っているんじゃないですか?
俺はSSを書いてくれるだけでもありがたいもんだけどな

591名無しさん:2019/08/16(金) 01:18:49
受容に関して言うのであれば、アルマスとティルは見たかったけど見れないものに準拠するからしゃーない

592名無しさん:2019/08/16(金) 01:26:02
ここもゲーム同様特定のキャラだけが生き残りそうだな

593名無しさん:2019/08/16(金) 01:26:06
あれなんかな?やっぱり人気のキャラだからかなぁ
言い方が悪いけど順位が中途半端なキャラとかマイナーなキャラはやっぱり受けが悪いのかなぁ
SSをちょいちょい書いてる俺には少し悩ましい問題だな
書きたいキャラのSSを書いても人気がない受けが悪い偽物なんだろ?
スクラップに陥った作家の気持ちを感じる

594名無しさん:2019/08/16(金) 01:30:52
優遇キャラのSS→当然多くコメがつく
不遇キャラのSS→当然多くがスルー

コメ数で計るのはナンセンス

595593:2019/08/16(金) 01:47:56
少し考えたら急に目が覚めた
だいたいここは掲示板であって運営ではない人気があるないとか需要があるとかないとか人気があるキャラ、マイナーキャラ関係ない!
コメントを貰うことが全てじゃない!言葉がなくても面白いと思ってくれたり楽しんでくれてる人は少なからずいる!見える言葉が全てじゃない!
そりゃあコメントされれば人気があるかどうかなんて解るよけどここはしたらば掲示板ファンキルSSスレ管理人さんが提示したルールにのっとり好きなSSを書いて良い場所
人の書いたSSを侮辱するような奴がいたら自分でやってみろ!って話だ!
ルールを守り自分の好きなキャラのSSを書く場所
誰かに命令されたり文句を言われる筋合いはない
自分の書きたい自分の好きなキャラのSSを書けば良い自己満と言われて結構結構、自分の愛するキャラのSSを書いてなにが悪い!
文句がある奴は一生ここに来るな!
ここは自分の描きたい物語を描く場所、人が描く物語に文句はご法度(ルール破りは文句言われて仕方ない)
自己満がないとキャラ愛なんて語れない
遠慮してる人がなら書くべきだ俺にとってはここに載ったSS全てが本物
人は多種多様、色んなSSを書く人がいるならその数ほど読む人はいる好みが合うことなんて余裕
SSを書くこれこそに一番の価値がある

そう自分に言い聞かせたらすっきりした
これからもSSをどんどん書いて行こう!

596名無しさん:2019/08/16(金) 01:49:25
SSは書いてくれる人が居るだけでもありがたいと思うんだがなぁ
今までマイナー姫とか関係無くどれも愛がある内容だったし
コメントは人それぞれとしか言えないけど…あまり比較とか差別的なのは見てるとちょっと嫌になるな…

597名無しさん:2019/08/16(金) 01:52:56
そういうのは気にせず自分が面白いとか好きだなと思ったものはそれで十分
書いてる人はこれを読んで楽しんでる人がいるそれを頭の隅に置いておけば十分
楽しみ方なんて人それぞれなんだから

598名無しさん:2019/08/16(金) 01:57:45
>>595
あ、後追記でSSは自分が楽しくないと書けないと俺は思う

599名無しさん:2019/08/16(金) 03:15:45
>>593
スクラップで草

600チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 09:46:18
チャレンジアロンちゃん9

これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです

マスター
「久々にチャレンジのネタ持ってきたよ」

アロンダイト
「なんか本当に久しぶりな気がします」

マスター
「はい今回はこれ」

アロンダイト
「縄跳びですか?」

マスター
「なんか今までアロンが確実に出来なさそうなものばかりだったから今回は行けんじゃないの?って言うのを持ってきた」

アロンダイト
「縄跳びでパフォーマンスでもするんですか?」

マスター
「1人でやるものじゃない気がする」

アロンダイト
「それじゃあ色々な技にチャレンジですね」

マスター
「まあ今回はアロンが出来る範囲のをやっていこう」

アロンダイト
「私縄跳びは結構やりますよ」

マスター
「そうなんだ」

アロンダイト
「ダイエットにも良いので梓弓と時々やってます」

マスター
(たぶんそれは跳んだ際ポヨンポヨン跳ねるアロンのおっぱい目当てだろ....)

601チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 09:58:19
>>600
マスター
「でも縄跳びの技って良く知らないんだよな」

アロンダイト
「そうですね私も一般的に知られているものと競技で使うSCC,SOO,SSO,TJ,EK,トリプルアンダーAS,トリプルアンダーCL,ジャーミー,SEBOくらいしか知りません」

マスター
「あーごめん全然わかんない」

アロンダイト
「それにマスターが知ってるものでないと失敗したかどうか判断出来ませんし」

マスター
「それはアロンの自己申告で良いんじゃないの?」

アロンダイト
「それで私が不正したらどうするんですか!?」

マスター
「それ自分で言う?」

アロンダイト
「自分で言います」

マスター
「ああそう」

アロンダイト
「そうですね今回は6重跳びにしましょう」

マスター
「6重跳び?」

アロンダイト
「2重跳びの2が6になっただけです」

マスター
「2が6になっただけってそれでも大変そうな気がするけど」

アロンダイト
「それならいっそうチャレンジのしがいがあります!」

マスター
「まあ頑張って」

アロンダイト
「行きます!」

602チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 10:06:46
>>601
アロンダイトはものすごい勢いで縄を回し跳んだ

マスター
「おお...」

マスター
(速すぎて全然わからん)

マスター
(ただわかるのは)

アロンダイトが勢い良く回しすぎたのか地面がえぐれていた

マスター
(アロン力強すぎ)

アロンダイト
「マスターどうでしたか?出来ていましたか?」

アロンダイトはキラキラと目を輝かせて聞いて来た

マスター
「あ...ああ良く出来てたよ」

アロンダイト
「よっしゃーー!」

アロンダイトは嬉しそうに手を強く握り空に掲げた

マスター
(ああやっぱりアロンはキル姫なんだよな)

マスターはえぐれている地面を見てそうも思ったが嬉しそうにしているアロンダイトを見てやっぱり女の子なんだなとも思うマスターなのであった

603名無しさん:2019/08/16(金) 10:20:18
>>601
まさかの縄跳びガチ勢
梓弓の眼光が冴え渡るッ!

604名無しさん:2019/08/16(金) 13:09:51
使った縄は宇宙船の素材とかで使われてそう

605名無しさん:2019/08/16(金) 13:10:09
えぐれた地面に引っ掛かってコケないかヒヤッとしたが無事に成功、たまには出来るのも良いよね

606EPILOGUE ティルフィング:2019/08/16(金) 17:54:44

意見・感想をくださった皆様、ありがとうございます。

こうして書いたSSを見て頂き、何か少しでも心に残るものがあればとても嬉しいです。

ただ自分は596さんと同じ意見で、他の方のSSを楽しみにしてる読者でもあるので、自分自身が意見を貰う際の配慮が足りなかったように思います。

意見を頂いてる身で申し訳ありませんが、今後は他のSSを上げてくださった方と比較したものではなく、純粋にSSの内容について触れて貰えると嬉しいです。

ワガママばかりですみません。
今後もSSを投稿することがあれば、宜しくお願いします。

607名無しさん:2019/08/16(金) 18:00:50
作者さんは悪くない
悪いのは他作者を煽るような感想を書き込む奴らだ

608名無しさん:2019/08/16(金) 18:02:10
>>607
激しく同意

609名無しさん:2019/08/16(金) 18:25:27
>>607
せやな。コメントが無いって言っても、コメント書く側としては自分の感想コメでスレを埋めても良いのか配慮したり
たまたまスレが早く流れて作品を見逃してたとかあるからな
それに単純にマナーとモラルの問題やし、作者は悪ない

610名無しさん:2019/08/16(金) 23:20:35
ROM勢のSS読者もいるだろうし感想コメ数が全てではないと思ってSS作者さんたちにはこれからも神作品をたくさん投稿していただけたらと思う

611プリキュア系?パロディ:2019/08/17(土) 23:25:29
※初投稿の単発ネタです、誤字脱字ありましたら、その時はすみません




「あー!遅刻!遅刻!…っと、行ってきまーす!」

私の名前はアルマス、ロストラグナロク高校に通う普通の高校1年生!

…だったんだけど、突然人間が人外の存在に支配される現象、霊装支配〈ギアハック〉で魔獣に支配された弟のギルを助けたい、私がそう願った時

「アルマス!鞄を忘れてますよ。」

「ありがとうティニ!」

異世界ティルヘルムから来た妖精、ティターニアのティニと妖精結合〈テイルリンク〉して私は伝説の天使、斬ル姫に絶!変身!その力で無事にギルを助ける事が出来たわ

「昨日セットしたのに何でアラームが止まってたのよ、絶あり得ない!…まさか地底世界〈アビス〉の仕業!?」

「アラームが鳴ってもアルマスが寝てただけで地底世界は関係ありませんよ、来たら私が分かりますから。」

そして今はティニがこの世界に来た理由、霊装支配で人々を苦しめる悪の組織の地底世界と戦う正義の斬ル姫に私はなったの!

「…そうだった、だけどいつでも来なさい地底世界!世界の秩序を取り戻す、それが私達の使命なんだから!」

「…今来られたら、遅刻しますよ。」




おわり

612名無しさん:2019/08/18(日) 01:34:35
わりとそれっぽくて草

613名無しさん:2019/08/18(日) 14:52:58
なかなかこういうのでいいんだよ的なのがこないな

614名無しさん:2019/08/18(日) 15:27:48
そりゃあ人の書きたいものはそれぞれなんだから期待してるものが来るとは限らないだろ

615pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:04:14
『530からの続きです』





 鎗というよりはハルバードに近い形状の長鎗を方天画戟は体の一部のように使いこなし暴風のようなラッシュをかける。

 払う。薙ぐ、回す。叩く。振り下ろす。掛ける。捻じ込む。斬る。翻す。刺す。突き上げる。

 鎗は剣と比べても選べる技の選択肢が格段に違う。さらに先端に斧やウォーハンマーを装備可能なハルバードが放てる技の数は刺突を基本とする鎗の数倍。
 アロンダイトは吹き荒れる技の嵐を神業じみた合わせで防ぎきる。
 方天画戟が暴風なら、アロンダイトは神風だった。
「そう例えるなら、デュランダルは突風でしょうか……、一瞬の勢いなら台風すら貫けるほどの」
「なに言ってんだおまえ!」
 疾風の追撃。
 それはアロンダイトが大剣を寝かせ盾のように構えたことで弾かれた。
「何度繰り返しても、技量なら私の方が上のようですね。私の体に届いていませんよ。あなたの鎗」
「そうだな。繰り返しだな。さっきから」
 方天画戟がバックステップで距離を取る。
「少し、大技使うぞ」
 その長鎗の先から禍々しい黒い光が溢れだす。

 キィィンと空気が烈震した。

 燃えるように黒く輝く長鎗を構える。低く。低く。肉食獣のように。
 にィィっ。と方天画戟の口角が釣りあがり凶悪な笑顔を形成した。
「これで死ぬんじゃねえぞオラァッ!」
 鋭く踏み込み。全身をしならせたアンダースロー。その結果、爆発的な速度で長鎗はアロンダイトへと射出された。

「—―――投げっ!?」
 アロンダイトは体を反転させ全力で床を蹴って後退した。
 だがそれも予想以上の速度で飛翔してくる長鎗には間に合わない。
 ガチッ、と突き出された剣先に触れわずかに軌道を反らした後。
 剣を突き出した右腕に導火線のような赤い筋が走った。一瞬後、血の赤線に沿って毒々しい黒い光が油を注いだ炎のように噴き上がる。
「—―――――――ッ!」
 腕の皮膚が溶けて、焦げて、焼けていく。かつてエドゥーで熱した鉄棒を押し付けられた時に似た痛みに言葉にならない悲鳴を上げて鎗の勢いに巻き込まれたかのようにきりもみ回転して床に倒れこんだ。
 遅れて、ドン! という轟音。
 アロンダイトの右腕を掠めて飛んで行った方天画戟の長鎗が背後の壁を爆散させた音だった。
 ぐりり、とアロンダイトは発狂しかねない痛みに耐えながら転がりながら背後の壁を見る。
 その先にはまるで大きな彫刻刀でも挿しこんだかのように壁にマンホール大の穴が穿たれていた。
 破片などは一切飛び散っていない。方天画戟の槍のあまりの威力に目で見えないほどの塵へと分解されたかのようだった。
 有体に言えば丸ごと食い破られたかのようだった。
 アバドン。
 町を丸ごと滅ぼす蝗の大群をモチーフに生まれた悪魔。農作物や衣服、木材から動物まで一切を喰らい尽くす捕食者の化身。
 それは、自分は食べる側なのだと宣言するかのような一撃。

616pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:05:05

奈落から来る捕食者(方天画戟)
・攻撃時に確率発動。三百%威力の攻撃を繰り出し、デュエル後、相手の背後二マスの敵に自身の物理攻撃力の二十%分のダメージを与える※ デュエル後のダメージで撤退させられる




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 放たれた長鎗は一人でに方天画戟の掌に帰ってきた。
「すげえだろ。これがオレのスキルってことになるのかな」
 粗暴な薄ら笑いを浮かべ、倒れ伏すアロンダイトを見下ろす方天画戟。
 嘗め切っているのか追撃はない。アロンダイトが立ち上がるのを待っているようだった。
「確かに……強いのかもしれませんね」
 痛みのあまり頬を流れていた涙を振り払い。ゆっくりと弱弱しくアロンダイトは立ち上がった。長鎗が掠めた右腕の傷口は焦げて炭化しており動かすと焼きすぎたパンのような炭がボロボロと落ちた。
 ここまでの傷を受けてなおアロンダイトの瞳には諦めの色はない。
 その証拠にボロボロになった右腕に未だ大剣『シトゴロシ』が握られている。
「ですが私はまだ立っている! あなたの鎗が真に必殺というならば。それは大言壮語と言わざるを得ません!」
 自信を鼓舞するように叫んでアロンダイトは立ち向かう。
 その態度と言葉に方天画戟は、
「ほう。ま、それもそうだ」
 苛立つでも、嘲笑うでもなく冷静にアロンダイトの言葉を受け止めた。
 たしかに方天画戟は先ほどの一撃で首を吹き飛ばすつもりだった。
 必殺。と名乗った覚えはないがそのぐらい自負はある。
 それが破られたのはいささかプライドに傷がついた。
「なら、もう一度だ。防げるもんなら防いで見せろ」
 先ほどとは比べ物にならないほどの殺気と闘気が放出される。
 アロンダイトも感覚のない右手を左手で包むようにして大剣を両手持ちに変えて受け止める態勢に入った。
 今のアロンダイトでは回避は間に合わない。それならば守りに入った方がいいと考えたのだろう。
「上等だ……」
 ひゅんひゅんと長鎗が回転し方天画戟の肩にまるでロケットランチャーのように構えられた。
 長鎗が黒い光を放つ。その不気味な光は鎗に蓄えられたエネルギーを象徴するかのように鼓動のリズムで明滅していた。
「が、ルァアアアアアアアアアァアアアアアァ―――――――ッ!」
 そして今、鎗に充填されたマナが方天画戟の手を離れ、荒れ狂う。

 —――――――ばすん!

 その時、特徴的な砲撃音が炸裂した。
「……え」
「あん?」
 二人の斬ル姫の声がそろった。
 方天画戟の体からは白い煙が上がっており砲撃を受けたのは彼女だとわかる。
 続いてばすん! ばすん! と二度目、三度目の砲撃が方天画戟に叩きこまれた。
「ああ、そういえばこんなのもいたな」
 アロンダイトと戦闘しているときの嬉々とした雰囲気から一変してつまらなそうに呟く方天画戟。
 その視線の先にいたのは白い鎧に大型の銃を構えたキトだった。
「なにをしているのです! 早く逃げなさい!」
 キトがアロンダイトへ叫ぶ。アロンダイトは反応せず、愕然とキトの方を見ていた。その顏が青ざめている。
 方天画戟の長鎗に当たった時でさえみせなかった表情だ。
 ばすん! ばすん! とその間にも銃から撃ち出される風のマナの塊を方天画戟は真っ正面から受け止めていた。当たるたびに緑色の閃光が瞬くが、方天画戟は微動だにしない。
 ただ青い髪の三つ編みがバサバサと舞った。そして、
「邪魔だ」
 気だるげに方天画戟から放たれた言葉。そして長鎗。
 それらは真っすぐ正確にキトの胸の中心を貫通していった。

617pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:06:00
「ギぁっ!」
 何の力も籠っていないその投擲を斬ル姫でもない一般的ハルモニア兵のキトは避けることができず、がくりと膝をつく。
「…………っ!」
 そこでようやく凍り付いたように固まっていたアロンダイトが動いた。
 大剣を左手に持ち替え、キトへ走りよるとその体に左腕でラリアットをかけてそのまま連れ去っていく。
「おい! 逃げるのか! まだ終わってねえぞ!」
 戻ってきた長鎗を握り、方天画戟がアロンダイトの背に吠える。
 今の両者の間合いは十メートル。方天画戟の長鎗はだいたい二メートル。残り八メートルの間合いなどこの槍兵にかかれば一息で詰められる。
「……あぁん?」
 だが方天画戟は動かなかった。
 否、動けなかった。
「なんだこれ、足が……」
 方天画戟の両足が床に釘で打ち付けられたように持ち上がらなかった。
「お、おい! 待てよ! 待てって! こっちは動けねえんだ! 卑怯だぞ!」
 もがく方天画戟に目を向けることはなく、アロンダイトは一人のハルモニア兵とともに彼女の視界から去っていった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



・移動不可(三国兵)
攻撃時、五十%の確率で二ターンの間移動不可を付与



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 方天画戟から逃れたアロンダイトとキトはひとまず船の幾つかある武器庫の一つに入った。
「どういうことか説明してもらえますか!」
 壁に叩きつけるようにキトを投げおろしたアロンダイトは開口一番そう問い詰める。
 方天画戟が動けなくなったのはキトによる銃の効果(移動不可)によるものだ。キトの攻撃によってアロンダイトは救われたともとれる状況であったが、アロンダイトはそれに気が付く余裕がないほどに動揺しているようだった。
「今すぐ納得のいく説明をしてください!」
 大剣を壁に突き刺し、左腕一本でキトの胸倉をつかみ上げる。
「……何の説明をしましょうか?」
 その手の中でキトが絞り出すような声を出した。
 ぴちゃん。キトの胸から垂れた血液が雫となって床に落ちる音。
「あっ……」
 その時になってようやくアロンダイトは自分が体に穴が開いた怪我人を乱暴に扱っていたことに気が付きキトを静かに床に寝かせた。
「それで、何が聞きたいのです」
 致命傷とは言わないまでも命に関わるレベルの傷を負っているのに気丈なのか痩せ我慢かキトは普段通りの口調で再度聞いた。
 アロンダイトはそれに同情するでもなく切りつけるように答える。
「あなたの銃。あれはあなた専用の物なのですか?」
「そうですが何か? 私は潔癖症でして。他人が使った武具は、それは例え部下が触ったものであろうと使いたくないのです」
 なぜ今それを聞くのだろう。不思議そうにキトは答える。
「ではあの銃声はあの銃からしか発せられないのですか?」
「そうですね。あれは私が手ずから調節した銃です。風のマナが砲筒を抜けるときの天使のラッパにも似た音は……」
「同じ音はあなたが引き金を引いた時にしか鳴らない音なのですね?」

618pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:06:42
 キトの語りを途中で止めてまでアロンダイトは重ねて尋ねた。
 その表情は愕然としている。子供の作り方を知ってしまった幼子のような、それ以上知ってはいけないという理性のブレーキと好奇心という本能がせめぎ合っているような複雑な表情だった。
「あの日、つい昨日なのでしょうか……私たちトレイセーマ軍のハルモニア軍が『大穴』でぶつかったあの戦い……」
 アロンダイトは慎重に言葉を選びながら話した。
「私の記憶違いでなければ、あの戦いの原因となった銃声……あなたの銃の発砲音とまったく同じなのですが?」
「ああ、あれは私が撃った音です」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「え……」
 アロンダイトは自分の耳を疑う。

 あの日、ハルモニアの砦に魔弾が打ち込まれた。その犯人はトレイセーマ軍にいると言ってハルモニア軍はトレイセーマに進軍してきた。
 深夜鳴り響いた一発の銃声。それが原因だった。
 そして結果としてトレイセーマ軍は瓦解し『大穴』から撤退。追撃するハルモニア軍を足止めするために一人残ったアロンダイトはハルモニアに捕縛され、船で護送されることになった。
 それも元を正せばあの一発の銃声が原因だった。

 今、目の前のハルモニア兵はその銃の引き金を引いたのは自分だと確かに宣言した。
「な、なんで……」
「そうですね。端的に言うなら貴女が欲しかったからです」
 悪びれもせずに語るキト。アロンダイトにはその言葉の全てが分からなかった。
「な、なぜトレイセーマ陣に進軍してきたときはトレイセーマ側が撃ったなどと嘘を……」
「だってそうしないと戦争が起こせないではないですか」
「わかりません! 順序立てて説明してください!」
「……難しいですね。まず、私はハルモニア砦に着き、トレイセーマ陣を見た時にアロンダイト。貴女を見つけた。貴女という斬ル姫はハルモニアにいるべきだと思った。だから戦争を起こした」
 一瞬わけがわからなかった。
 だがそのすぐ後、貴女が欲しい。戦争が起こせない。アロンダイトの中で二つの言葉がイコールで繋がった。
 だがその事実が信じられない。
こんなおぞましいことを行う人間がいるだろうか。
目の前にいる。

 キトはアロンダイトをハルモニアに引き入れようと思った。
 だが仇敵トレイセーマから話し合いで手に入れることは不可能。戦争で奪い取るしかない。そしてハルモニアとしても一軍を動かすにはそれなりの大義名分が必要だ。アロンダイト一人を手に入れるという私欲を覆い隠せるほどの建前が。
 それが銃声だった。
 深夜、誰も見るものがいなくなった時、ハルモニア砦の外壁にキトは魔弾を撃った。本人のマナを大量にチャージして放たれた魔弾はハルモニア砦のみならずトレイセーマ陣へと届くほどの銃声を生み出す。
 その結果、ハルモニアの大多数(キトを除く)はトレイセーマかケイオスリオンの攻撃だと疑い、混乱する。
 そこへキトがトレイセーマの攻撃だと断定し、反撃するなどと言えば自然とハルモニア兵たちはトレイセーマへ進軍する。

619pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:07:19
 これがあの夜の真実だ。


「だからと言って何年も均衡を保ち、不干渉を続けていた三国のバランスを崩すようなことをなぜできるのです!」
「それで何か悪いことが? トレイセーマは瓦解し、ケイオスリオンも巻き添えで撤退し、ハルモニアは勝利し貴女は我々と共にある。何も問題ないではないですか?」
「人が死んだじゃないですか!?」
 怒りをあらわにするアロンダイトにキトはあくまで不思議そうに首を傾げる。
「それは死ぬでしょう。戦争をしたのですから」
「ハルモニア側も! あなたの部下だって何十人も亡くなったのですよ!」
「それは悪いことでしょうか?」
 キトに罪悪感は欠片もなかった。
 むしろ出来の悪い教え子を諭すように語る。
「これも全てアロンダイト。貴女一人を手に入れるという結果が手に入ったことでそれらの犠牲も許されることなのですよ。おまけにトレイセーマとケイオスリオンを浄化できたことでお釣りが出てもいいくらいです。
 アロンダイト。大いなる理想に殉ずるためであればどんな犠牲も数にはならないのですよ」
「彼等には、ハルモニア兵だけではありません。トレイセーマの方々だって、ケイオスリオン兵だって、自分の意思も生きる希望だってあったはずなのにあなたの勝手な行動で捨てなくてもいい命を捨てたんですよ! 少しでも罪の意識はないんですか!?」
「貴女という武具が加われば神聖ハルモニアの理想が世に広まるまでの時が縮む。それだけのことです」
 キトの兜の隙間から血が垂れた。平気そうに見えるが時間がそれほどないらしい。
「人は愚かなものです。欲望に際限はなく。その果てには家族だろうと容赦なく争う。ケイオスリオンのように力のみが真実だと戦いあって。その先に何がありますか? 万人の万人による闘争の末に国土も人民も疲弊し痩せ細るだけでは?
トレイセーマもよくない。あの国には未来がない。平等であるだけです。得手不得手や個性を認めず全員が全員同じことをしていては発展するものもしない。いずれ限界の来るシステムです
 資源は無限ではないのですよ。幸福と言い換えてもいい。現実的に考えて幸福は世の中全員に行き渡るものではないです。だからこそ教皇様のような方が必要なのです。人々に階級を与え、幸福を配分する優先順位を決定してくださる絶対的な方が。
 人もイミテーションも選ばれなくてはなりません。順番を決めねばならないのです」
 キトは一息で言い切ると血混じりの咳をした。
 近くのまだ破壊されていないガラスケースを指さす。
 その先には緑色の液体の入った瓶が一本だけあった。
 極生命水。とラベルがされている。
「あの薬を飲んでその右腕を治療しなさい。貴女は選ばれた者です。選ばれし武具です。選ばれた一級の武具は常に最高の状態でなくてはならない」
 それは宝物室室長としての言葉だったのだろう。
 人の命をあっけなく切り捨てる人物ではあったが、その命の軽視には自分の命すらも含まれているのだ。
 自分の胸の穴よりアロンダイトの負傷を優先すべきと判断した、
「………………………」
 この人物を断罪することはできない。
 アロンダイトの心の中からキトに対する怒りはいつしか萎えていた。
 代わりにこんな人をこれ以上、生み出してはならないと強く思った。
 やはり、ハルモニアに正しさはない。
「この薬はあなたが使ってください」
 アロンダイトは取り出した生命水を横たわるキトの傍らに置いた。
「なっ、止めなさい! その右腕でどこに行くのです!」
 今度はキトが動揺する番だった。震える手で生命水の瓶を掴むと背を向け部屋を出るアロンダイトへ差し出す。

620pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:07:57
アロンダイトは振り返らずに言う。
「私は負けません。生きてここを出て、トレイセーマへ帰ります」
 それは静かな決別の言葉だった。
 その言葉に込められた思いを多少は感じ取ることができたのかキトは黙り、その背に謎かけのような言葉を贈る。
「貴女は百人の人を生かすためにその中の三人を犠牲にしなければならないとわかれば私は吟味して三人殺します。貴女はどうしますか?」
 それはキトなりの殺し文句だったのだろう。
 対して、アロンダイトはきっぱりと答え、去っていった。
「百人の人に任せます」

 例え誰かが死ななくては全滅するのだとしても、死ななければいけない誰かを本人の意思を無視して他人が選ぶのは間違っている。全員がそれぞれの判断で生きるか自己犠牲かを決めるべきだ。
 そう思う。

621pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:09:19
今回はここまでです。次がラストバトルなのでもうすぐ終わります

622方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:10:15
『方天画戟と未来日記』


青龍偃月刀「さあ、勉学の時間ですよ」

方天画戟「知るかバーカ!」(スタコラサー)

青龍偃月刀「あ、逃げるな!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



方天画戟「うっせーんだよな青龍のヤツはよ。いつも勉学勉学と……ん? なんだこのノート。誰か落としたのか?」

リットゥ「あ、方天画戟! 見つけてくれたのか! ありがとう!」

方天画戟「なんだなんだ展開が早いな。おまえのノートか?」

リットゥ「厳密には私ではないんだが。とにかくずっと探してたんだ。見つけてくれて嬉しいよ。さ、それをこちらに……」

方天画戟「やなこった」

リットゥ「な、落とし物を拾ったら持ち主に届けなきゃいけないんだぞ! いいから渡せ!」

方天画戟「未来の覇王が拾ったもん簡単に渡すかよ。ほーれ、悔しかったら取ってみろ」(身長175センチ)

リットゥ「くそっ! 持ち上げるなんて卑怯だぞ!」(身長165センチ)

方天画戟「あっはっは!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



方天画戟「で、なんなんだこのノート。なになに、『8月18日午後 ナーゲルリング。リンゴ狩りに行くが脚立を忘れた』。なんだこりゃ。日記か? それに日付が今になってるぞ」

リットゥ「実際にそれが書かれたのは何日も前なんだ」

方天画戟「ふーん。予言書ってやつか。それにしてもリンゴって夏の果物だったか……?」

リットゥ「予言は絶対だぞ」

方天画戟「ま、とりあえず行ってみるか」


(数10分後)


方天画戟「ホントだったな」(リンゴがりがり)

リットゥ「いや驚いたよ。お前人助けとかするんだな」

623方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:10:47
方天画戟「勘違いするなよ。手が届いたからついでに取ってやっただけだ。ていうかおまえなんでついて来てるんだ」

リットゥ「お前がノート返さないからだろ! い、いやいい。ところでそのリンゴ。そんなにたくさんあるなら一つくれないか? がっつくようだが好物なんだ」

方天画戟「おまえ、地元でさんざん食ってんじゃないのか?」

リットゥ「いや、私は守護者だから自分が守ってるもの自分で食べてたら本末転倒というか……そもそもエデンの果実ってリンゴじゃないっていうか……」

方天画戟「おっしじゃあ次行くぞー」

リットゥ「聞けよ」

方天画戟「この本によると、『方天画戟、最大の敵と出会う』とある。時間はこの後すぐ」

リットゥ「ふむ。予め知っておけば覚悟ができていいな」

方天画戟「いや、オレはむしろ自分から挑みに行くぜ! そう、覚悟をもって危機を受け入れるのではなく危機に挑みに行くんだ!」

リットゥ「おお、いい心がけだ」

方天画戟「やあやあ! オレを殺せる者はいるか!」

青龍偃月刀「ここにいるぞ!」

方天画戟「げぇっ! 青龍!」

リットゥ「なんだ逃げるのか方天画戟。覚悟は幸福だぞ」

方天画戟「こんな最大の敵はいらねえよ!」

青龍偃月刀「こら、逃げるな方天画戟! 貴方が立派な武将となるためにこの私が直々に指導をすると言っているのですよ!」

方天画戟「紙と筆はオレには向いてねーんだよ! だいたい勉学ってなんのためにするんだよ!」

青龍偃月刀「勉学はなりたい自分になるためにすべきことなんです! 貴方は覇王になりたいのでしょう! 愚行移山、面壁九年!」

方天画戟「うるせー頭でっかち! 漢字使えば頭よく見えると思ってんだろ! 世の中強けりゃいいんだよ!」

青龍偃月刀「そんなことでは最低最悪の魔王になっちゃいますよ! …………むぅ、逃げられましたか」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



方天画戟「はぁ、はぁ……そんなことない。オレは最高最善の魔王になるんだ」

リットゥ「なんか違う気がする」

方天画戟「間違えた。混沌の世を制する覇王だった」

リットゥ「そこお前のアイデンティティだろう。間違えるなよ」

方天画戟「青龍に乗せられたんだよ。それはともかくリットゥ。オレにはこのノートの使い方がわかったぞ」

624方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:11:22
マスター「いや今日も方天画戟のおかげで助かったよ。次の戦いもよろしくね」

方天画戟「はっはっは。これからもオレにどーんと任せておけ」

リットゥ「うまくやったな」

方天画戟「そりゃそうだ。つまりこのノート、書いてあることは変えられないけどそれに対する準備だけはできるってやつだろ。なら普通に準備していればいいだけだ」

リットゥ「そうだな。異族の大群が来ると書いてあればその時間にこちらもキル姫を揃えて待ち構えればいいし、誰かがケガするとわかれば生命水を準備してすぐに回復されれば感謝されると」

方天画戟「そういうことだ。よーし、オレはこのノートで新世界の覇王になる!」


(数週間が過ぎた)


方天画戟「この本によると次の戦いでは剣を持った異族が大量に来るらしい。弓と銃を揃えなけりゃ」

リットゥ「お前顔色悪いぞ。働きすぎだ」

方天画戟「そうもいってられねえよ。日に三十時間の準備行動という矛盾を可能にするくらい動かないとこの本に書かれた予言に対応しきれないだろうが」

リットゥ「待て、中にはフェアリーが期限過ぎて使用不能になるとかいうしょうもないのもあるし。そんなのにもいちいち対応してたら身が持たんぞ」

方天画戟「そこから致命的なことになるかもしれないだろ。とにかく準備しないといけねーんだよ」

リットゥ「方天画戟……お前」



青龍偃月刀「方天画戟」

方天画戟「なんだ青龍。悪いがおまえに構っている時間はねーぞ。来週新しい姫が入ってくる前にマナシード集めなきゃならねえんだ。百個くらい」

青龍偃月刀「勉学をしましょう」

方天画戟「オレの声が聞こえなかったのか?」

青龍偃月刀「たしかに最近の貴方の働きは知っています。隊は前より強くなったし皆も喜んでいます。貴方の貢献もマスターの耳に届いているそうで近々なにか役割が与えられるそうです」

方天画戟「いいことじゃねえか」

青龍偃月刀「貴方がよくないのです。貴方が常々言っていた覇王ってそんなものなんですか。今の貴方って本当に貴方が夢見た貴方なんですか?」

方天画戟「さぁ? 知らねえ。とにかくオレはやらなきゃいけないことが」

青龍偃月刀「方天画戟、貴方はどんな覇王になりたいのですか?」

方天画戟「…………」

青龍偃月刀「わからないなら勉学しましょう」

方天画戟「勉学ってなんのためにするんだよ」

青龍偃月刀「勉学はなりたい自分になるためにすべきことなのです」

青龍偃月刀「方天画戟、貴方はどんな覇王になりたいのですか?」

625方天画戟と未来日記:2019/08/18(日) 16:12:02
リットゥ「方天画戟……」

方天画戟「寝る」

リットゥ「そうか」

方天画戟「なあ、最近のオレってなんか違うよな。よく考えたら覇王ってあんな敵が来る前にチマチマ備えなくて行き当たりばったりにドーンと勝つイメージがあるっつーか」

リットゥ「そうだな。私もどちらかと言うとそんな感じが」

方天画戟「だからこの本はもうオレにはいらねえや」

リットゥ「おお! ついにか!」

方天画戟「ああ、決別の意を込めて」(びりびりびり)

リットゥ「返して…………………は?」

(ノートが縦裂きにされて紙片がひらひら宙を舞う)

リットゥ「ああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

方天画戟「どうしたリットゥ。突然大声出して」

リットゥ「……………終わった」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



リットゥ「……かくして方天画戟は普段通り覇王目指して青龍偃月刀から逃げ回る日々に戻り……そして君の日記帳はびりびりに破れましたとさ」

セファー「えぇ……。それわたくしだけ損してません?」







セファー・ラジエール
・過去現在未来含むあらゆる知識を書き記した本。



『終わり』

626名無しさん:2019/08/18(日) 18:40:09
これいいな
センスを感じる

627名無しさん:2019/08/18(日) 19:11:40
未来日記!

628名無しさん:2019/08/18(日) 19:34:00
面白かったわ・・・

629名無しさん:2019/08/18(日) 20:40:02
今回いつにもましてパロディネタ多いのね

630パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:27:34
【パンデミックラブポーション】①

ある日、それは完成した。
彼女は自らの技術によって作られた大発明をみながら満足げに頷く。

パラケルスス「遂に完成した。存外、調合は難しかったがな」

彼女の後で青狸の秘密道具のテーマでもながれそうなほどに高らかに掲げたそれは、コルクで蓋をされた試験管だった。
試験管のなかにはピンク色の液体が泡をたてて揺らめいている。

パラケルスス「さて、問題はこの惚れ薬をどうするかだが・・・どうしようか?」

惚れ薬を興味本位で作ったは良いが、使用方法までは考えてなかったらしく、パラケルススは椅子に深く腰かけて思考を巡らし始めた。

パラケルスス「使うか?・・・いやいや、私が使うのは、その・・・そういうのは違うと本で書いてあったし、マスターとはプラトニックな関係でありたいというか・・・しかし、周囲には私など及ばない魅力的なキル姫が多いわけなわけで・・・いや、だが・・・」

彼女は深く考え込み始めると回りが見えなくなる。今回はかなり考え込んでいるようで、その時間は数分にも及んだ。そしてーー

パラケルスス「なに!?薬がなくなっている!?馬鹿な、いったいどうして?」

パラケルススが気付くと惚れ薬は忽然となくなっていた。
周囲を見渡して見ると、窓と実験室の扉が開いているのに気付く。

パラケルスス「実験室の窓は前もって開けていたが、実験室の扉は確かに閉めていた。ということはつまり誰かが持ち去ったのか?」

パラケルススはズラリと並んだ試験管の中から黄色い液体の入ったものを取る。入り口に詰めていたコルクを引き抜き床に黄色い液体をまいた。
この黄色い薬はパラケルススが開発した魔道具の一つで映歴ボトルといい、数分前の過去の映像の一部を映し出すことができるものだ。
映歴ボトルの黄色い液体は一瞬で蒸発し、液体から発生した煙が部屋に充満していく。それは次第に人の形を形成していき、一人の少女のシルエットを型どった。

パラケルスス「・・・なるほど、そういえば薬のいくつかを彼女にあげる約束だったな。色も確かに伝えたが、まあ確かに間違う色をしているか・・・まあいい、彼女を取り合えず訪ねるとしよう。・・・間に合えばいいのだがな」

パラケルススは着ていた白衣を脱ぐと、急いで映像に映し出された彼女の部屋に向かった。

631パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:36:12
>>630

【パンデミックラブポーション】②

???「でぇ!?私が間違って貴女の薬を持ってったって言うわけぇ?」
パラケルスス「ああ、そうだグリモワール。映歴ボトルで確認した。それで君の姿が映ったのだ、君以外に持っていっていた人物はいない」
グリモワール「知りませんわ、そんな薬。私が持ってったのは赤の薬だもの、間違いないわ」

映歴ボトルに映し出されたのは特徴的な服と、くるくるとロールしたツインテールだった。どう考えてもグリワール以外に考えられないシルエットであり、パラケルススは彼女に惚れ薬のありかを聞くのだが、彼女は知らないと返していた。

パラケルスス「君を信用していないわけではない。だが、万一の勘違いというのもある。薬を確認させてくれないか?」
グリモワール「・・・わかったわ。でも、なんだって言うの?その、ピンク色の薬ってやつ」
パラケルスス「あ、いや、それは・・・だね」
グリモワール「あーいいわ。その反応を見ただけで、まーた変な薬作ったってわかりましたしぃ」

グリモワールは部屋の中央に立ち詠唱を唱える。すると、足元から魔法陣が現れ、そこから3本の試験管が茸のように顔を出した。
グリモワールは3本の赤い試験管を拾ってパラケルスス目の前に突き出す。

グリモワール「ほら、これで全部よ。それによくみなさい。ちゃんとビーカーの中身は赤色でしょ?」
パラケルスス「確かに、なくなった赤色のビーカーの数は合う。だが・・・」
グリモワール「なぁに?私がピンクのビーカーを隠してるって言いたいの?」
パラケルスス「正直、その可能性は否めないが、そうでないとすれば・・・いったいビーカーはどこに?」
グリモワール「さぁ?他の誰かが持ってちゃったんじゃない?それか、貴女が気付かずつかちゃったとか」

しばらく思案するパラケルススを余所に、グリモワールは赤のビーカーをそのまま魔法陣へと落とす。ビーカーは魔法陣のなかに消えていった。

グリモワール「それよりもうお昼よ、ご飯食べに顔出さないと、またマスターが心配してしまいますわよ」

グリモワールはくるりと回り優雅にスカートを靡かせると魔法陣は消失する。そのまま部屋からでようと、自室の扉へと手をかけようとした瞬間、それは起きた。

???「うわああああああああああ!?」

宿舎に木霊する男性の悲鳴。

グリモワール&パラケルスス「マスター!?」

二人はその悲鳴がマスターのものであると察する。
彼女達は急いで悲鳴の下へ駆け出すのだった。

632パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 06:43:16
>>631

【パンデミックラブポーション】③

マスター「パ、パラケルスス!グリモワールも!良かった君たちは無事だったんだね!」

自らの魔力で探知したグリモワールは即座にマスターを見つけ、パラケルススと共に合流を果たした。
マスターは珍しく憔悴しているようで、どこか怯えているようでもあった。

マスター「じ、実は、み、みんなが!みんなが!」
パラケルスス「お、落ち着けマスター。君らしくもない。異族でも襲撃してきたのか?」
マスター「いや、そうじゃない!そうじゃないんだけど・・たぶん、それよりも厄介なことが起きてるんだ」
パラケルスス「大変なこと・・・っと、なんだこれは?」

ずしん、ずしんと断続的な地震でも起きているかのような感覚に襲われるグリモワールとパラケルススは顔を見合わせる。
目の前の廊下の角に明らかに異常なにかが近づいてきている気配に臨戦態勢をとった。

グリモワール「えぇ!?フライシュッツ!?なにこれどういうこと!?」

そこから現れたのはフライシュッツだった。いやフライシュッツなのかと疑問に思うほど、明らかにその風貌は様変わりしていた。
簡潔にいうなら太っている。否、それだけではない。太っている上に巨大化しているのだ。
訳がわからない異常な事態に、グリモワールはドン引きしていた。

フライシュッツ「マ〜スタ〜く〜〜〜〜〜ん!こ〜こ〜に〜いたんだ〜〜!」

ずしんずしんと巨大シュッツが近づいてくる。
この場の3人はフライシュッツの抱き付き癖を知っているからこそ、次にする行動は決まっていた。

マスター「逃げるよ!二人とも!」
グリモワール「と、ととと、当然ですわ。あんなのに抱きつかれたら死んでしまいますもの!」
マスター「ごめん。シュッツ!本当にごめん!」
パラケルスス「訳がわからないな。いったいどうしてこんなことになったんだ?」
マスター「いまはそんなこと考えてる場合じゃないよ!」

3人はフライシュッツを背に逆方向に全速力で走り出す。
幸いにもシュッツは廊下を上手く移動できなかったらしく、まくことは自体は簡単だったが、マスターは遠ざかっていくフライシュッツが心配だった。

フライシュッツ「マスタ〜く〜〜ん!待って〜〜ハグさせてよ〜〜〜〜〜」

マスターからは彼女の姿は見えなくなってしまっていたが、フライシュッツの野太くなった声が、ただただ虚しく廊下に響くのだった。

633名無しさん:2019/08/19(月) 17:50:07
SSと小説の境目みたいな印象

634名無しさん:2019/08/19(月) 18:19:11
フォルカスメインのSSってありましたっけ?

635名無しさん:2019/08/19(月) 18:23:52
なかったと思うよ

636名無しさん:2019/08/19(月) 18:31:05
フォルカスがメインのSS書いて欲しいですねー 仮にも殿堂入りしたキャラなので良いと思うのですが如何でしょうか?

637名無しさん:2019/08/19(月) 18:39:32
お前が書くんだよ(迫真)
いやー、でもss書くって結構労力いるよ?7割がた書いたけどまだ終わらなくて心が折れそう……

638名無しさん:2019/08/19(月) 18:44:20
お疲れなりよ(´・ω・`) っ麦茶

639名無しさん:2019/08/19(月) 18:44:32
やはり管理人はクオリティで選んでるな

640名無しさん:2019/08/19(月) 18:49:25
今回の人のpixivであげてるからまとめないものかと思ってた

641名無しさん:2019/08/19(月) 18:51:38
クオリティの低い俺のは一生まとめに上がらないことが確定した
クオリティってなんだろう?俺はクリティカルしか知らない

642名無しさん:2019/08/19(月) 19:00:58
そりゃあからさまおっぱいの記事ばっか推してロリコンの風評被害記事なんて書こうとせんよ

643名無しさん:2019/08/19(月) 19:08:09
責任転嫁の時間?

644名無しさん:2019/08/19(月) 19:14:30
俺は今自分の文章を書く力のなさを戒めいている時間

645名無しさん:2019/08/19(月) 19:32:06
クオリティの問題ならなんでアルマスやティルの好評だったSSはあがってないの?

646名無しさん:2019/08/19(月) 20:04:24
管理人ちゃんさんもっとSSの記事も上げてくれなりよ(´・ω・`)

647名無しさん:2019/08/19(月) 20:06:04
逆にこういうことになるのならSSは記事にしないほうがいいのではと思えてきた

648リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/08/19(月) 20:33:41
何か書こうと思ってます
候補で気になるのがあれば

・ホラーハウスの続編
・ガチ百合ディスラプ(もちろん描写無し、ギャグ寄り)
・イナンナシスターズ
・キョヌーとヒンヌー 海上編
・妹が好き過ぎる件
・姉が好き過ぎる件
・既存の物語(昔話など)のパロ

全部は無理
時間はかかるかも

649名無しさん:2019/08/19(月) 20:35:50
マ?ディスラプ見たい見たい

650名無しさん:2019/08/19(月) 20:39:27
ディスラプは需要ある

651名無しさん:2019/08/19(月) 20:42:19
僕は王道を往くぅ……ガチ百合ディスラプですか。でも作者さんが書きたいやつが一番最初に書けばいいんやと思うで

652名無しさん:2019/08/19(月) 20:42:31
>>647
俺もそう思ってきた

653名無しさん:2019/08/19(月) 21:10:46
きょぬーとひんぬー

654名無しさん:2019/08/19(月) 21:59:08
百合ディスラプ…いいっすねえ

655パンデミックラブポーション:2019/08/19(月) 22:06:42
>>632

【パンデミックラブポーション】④

3人はフライシュッツから逃げおおせると、宿舎から離れたパラケルススの工房へと逃げ込んでいた。

パラケルスス「まず状況を整理しようか」
グリモワール「そうね。そうした方がよさそう」
パラケルスス「まず、どういった経緯でああなったかを聞きたい。マスター話せるか?」
マスター「うん、大丈夫。話せるよ」

深呼吸をして先程まで乱れていた呼吸を整えて、マスターは語り出そうとした。その時、扉をノックする音が部屋に響く。
一瞬、3人は体を強ばらせる。当然だ。外には原因不明で巨大化したキル姫がいるのだから、このノックの相手が巨大化したキル姫である可能性は低くはない。

パラケルスス「誰だ?名を名乗りたまえ」

ドクンドクンと早鐘を打つ心臓を抑えて、彼女達は来訪者の返答を待った。

???「私です。ミネルヴァです。その声はパラケルススですね?すみませんが扉を開けてはもらえないでしょうか?」

声の主はミネルヴァのものだった。
巨大化の影響を受けたもの特有のふとましい声はなく、彼女はなんの影響も受けてはいなさそうだとマスターは安心して扉を開けようとしたが、それをパラケルススは制止した。

パラケルスス「マスター、扉を開けるのはまってほしい」
マスター「どうして?早くミネルヴァも中にいれてあげないと危ないし、外の巨大化キル姫に見つかっちゃうよ」
グリモワール「そうよ!入れてあげない理由がないわ」
パラケルスス「それは確かにそうだがね。彼女が彼女である確証がない。今は非常時だ慎重に慎重を重ねる必要がある」
グリモワール「だったら、どうするって言うの?」
パラケルスス「私の仮説が正しければ・・・この確認の方法で問題ないはずだ」

パラケルススはミネルヴァ?にニケを先導して中に入ってもらうことを提案する。
ニケはミネルヴァのキラーズと繋がっている梟であり、彼女の最友のパートナーでもある。
彼女が偽物であればニケを寄越すことはできず、仮にミネルヴァ本人が巨大化の影響を受けているのならばミネルヴァのキラーズと繋がっているニケも巨大化して然るべきだ。
ならば当然、パラケルススの工房に出入りするなどできはしない。全ての窓と扉を締め切った状態で侵入できる場所は煙突の隙間だけ。
パラケルススはミネルヴァに煙突を通って中に入って貰うように頼んだ。

ミネルヴァ?「わかりました。ニケを先行させますね」

ミネルヴァ?はマスターたちに聞こえるように言う。その十数秒後、ニケが煙突から姿を現した。
ニケはパラケルススに向けてやや不満そうにホー!と鳴いたあと、グリモワールの膝元に着地する。

グリモワール「もう、ニケったら〜。これでわかったでしょ、ミーネは安全よ入れてあげなさい」

グリモワールは自分の服が汚れることも気にせず、事前に用意していたタオルでニケの体を優しく拭いてあげながら言う。

パラケルスス「む、そうだな。ミネルヴァ・・・疑って悪かった」

パラケルススはそういうと、扉にかけられた施錠魔術を解除する。しかし、彼女は警戒を解いてはいない。
マスターもまた、ごくりと唾を飲み込んでミネルヴァであろう来訪者が入ってくるのを待つ。

ミネルヴァ「みなさん、ご無事だったようですね。顔を見て本当に安心しました」

いつもとかわらない姿のミネルヴァは、心から安心をしたようでほっと胸を撫で下ろした。

パラケルスス「あらためてすまない、ミネルヴァ」
ミネルヴァ「いいですよ。こんな状況です、私だって同じ場面に遭遇したら同じことをしたと思います」
パラケルスス「そうか、そういってもらえるとこちらとしても助かる」
グリモワール「まあ、私はミーネがあんな風になるようなヘマしてるとは思いませんでしたけどね」
ミネルヴァ「それはありがとうグリモ。貴女の信頼が私は凄く嬉しいです。それと、ニケを洗ってくれてありがとうございます」

裏のない無垢な親友の笑顔を向けられ、照れを隠せないグリモワールは先程まで洗っていたニケを手放す。
ニケは満足そうにホ〜ゥと鳴くと、ミネルヴァのマフラーのなかへと戻っていった。

グリモワール「そ、それほどでもないですわ。それより、この事件私たちで手早く片付けてしまいましょう。なーに心配は要らないわ、ミーネと私、パラケルススにマスターがいるんですもの、すぐに解決して見せるわよ」
パラケルスス「そうだな。では、まずは情報交換と整理からだな。各自、自らの見たもの聞いたものを何でもいい、言っていってくれ」

656名無しさん:2019/08/19(月) 23:10:33
ディスラプは王道やな

657名無しさん:2019/08/19(月) 23:29:28
>>655
やっぱ前回のあれで終わりはちょっと変だなと思ってたんだ。続きあってよかった

658名無しさん:2019/08/20(火) 00:15:30
>>648
妹が好きすぎるってファンキルでは珍しいなって。だからこれ読みたいです

659リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/08/20(火) 01:47:31
いただいた要望を参考にします
順次投稿していきますので気長にお待ち下さい

660名無しさん:2019/08/20(火) 07:05:36
楽しみに待ってます!

661名無しさん:2019/08/21(水) 21:31:12
パンデミックラブポーションおもろい
続き待ってます

662パンデミックラブポーション:2019/08/21(水) 23:36:56
>>655
【パンデミックラブポーション】⑤

マスターと3人のキル姫は互いの情報を交換した。
第一に、事件は食堂で起こったらしい。マスターは何人かのキル姫と一緒に、いつも通りの時間に昼食を食べていた。
異変に気付いたのは昼食を開始してしばらくしてのこと。突然一人、また一人とキル姫が苦しみ始めた。
マスターは料理に毒でも盛られたのではないかと考えはしたが、自分も同じ料理を食べていたし、周囲にもそのようなそぶりをしたキル姫はいなかったのだと言う。
そしてキル姫達が苦しみ出して数秒も経たないうちに変化が起きた。その場にいた全てのキル姫がフライシュッツのように巨大化していったのだ。
マスターは目の前の状況に困惑こそすれ、対応をしようとしたのだが最初にマスターを視認した巨大なフライシュッツに抱きつかれそうになり、このままでは確実にヤられると思い逃げ出して現在に至っている、というのがマスターの経緯だった。

パラケルスス「マスターを除いて全員が巨大化したのか」
グリモワール「荒唐無稽な話ね。ま、実際問題起こってるのだから信じるしかないけれど」
マスター「そうだね。僕もこの目を疑ったよ」
ミネルヴァ「何か他に変わったことはありませんでしたか?マスター」
マスター「んー、そうだね。シュッツは目が虚ろだったというか、焦点があってなかったというか、キル姫が暴走したあの感じに似てたかな」
パラケルスス「ふむ・・・暴走状態・・・・・・」
マスター「それと、シュッツの顔が紅潮してた・・・と思う。それと、何度呼びかけてもマスターくんハグハグ言うだけで、僕の声が聞こえてなかった感じだったなぁ」
ミネルヴァ「フライシュッツが、ですか?彼女は確かに、好きな相手ハグをすることが大好きですが、それでも良識はあります。普段の彼女なら、自分が巨大化した状態でマスターにハグをすればどうなるかわからないはずはないと思うですが・・・」
マスター「そうなんだよね。まるで何かにとりつかれでもしている感じだった」
グリモワール「霊的なものも、魔術的な干渉もなかったようだけど?それに、仮にキル姫数人をあんなふうにした原因が魔術や霊的な何かなら私以前に他のキル姫が気づくはずよ」
パラケルスス「・・・・・・」

3人の会話を聞きながら、パラケルススは先程制作してなくなった薬について考えていた。おそらく、いや間違いなく原因はこれであるだろうという直感が嫌な悪寒と共に彼女を襲う。

663パンデミックラブポーション:2019/08/21(水) 23:40:29
>>662

ミネルヴァ「パラケルスス?何か気付いたことでも?」
パラケルスス「ああ、いや・・・・・・その、だな」

パラケルススの腹がきゅっと締まる。腹を下したかのような不快感で汗がダラダラ流れ出す。
今現状知り得た情報の中で、この事態を引き起こした可能性が最も高いのはパラケルススが作った惚れ薬だろう。
いまは仮定仮説の段階だが、この事件を解いていけば、隠したとしても少なからず惚れ薬の件が明るみ出てしまう。彼女はそれを避けたかった。

パラケルスス「(この二人なら、まだいい。・・・だが、マスターに聞かれるのは問題だ。何より・・・女の私が惚れ薬を作った。この隊に男は一人だけ。使用する気は全くなかったと言えば嘘になるが、それでも使う気はなかった。・・・だが、それでも、マスターに勘違いをされたら私は・・・)」

人として嫌われ慣れているパラケルススが唯一耐えられなくなってしまったこと。それはマスターから女性として自分が嫌われることだ。軽蔑、その言葉がこれほど恐ろしく感じられたことはない。
故に、パラケルススの沈黙した。次に話す言葉が見つけられなかった。

グリモワール「(でぇ!それが何か問題なわけぇ!)」

心配そうに彼女の言葉を待つだけの時間、それを破ったのはグリモワールだった。

グリモワール「(まどろこっしいわね!パラケルスス、貴女がどういう気持ちでいるかはそれなりにわかってるつもりよ、でもね、ちゃんと言って受け入れてくれないマスターだと思ってるわけぇ。それってマスターのこと信頼してるって言えるのかしら?)」

以前に霊的な通信手段として念話ができるようにグリモワールは各キル姫にレイラインを繋いでいた。
相手側に魔術的な素養がなければ片道のみの電話のようなものでしかないのだが、それを使ってグリモワールはパラケルススに語りかけている。

グリモワール「(ちゃんと話せばマスターだってわかってくれるし、許してくれるわよ。それにたぶんパラケルススが一番心配に思ってることは杞憂に終わると思いますの。だってマスター、鈍感でしょ?)」
パラケルスス「(そうだ。そうだった。・・・・・・ああ、そうだね君の言う通りかもしれない)」

大丈夫だ。何をもってしても異性にたいしてあまりにも鈍感であるマスターへの信頼は厚いのだからと、パラケルススは最友のキル姫の言葉で一本踏み出すことを決意した。

パラケルスス「・・・実は、つい1時間ほど前のことなんだが」

惚れ薬の件を話した結果、マスターには呆れられもせず、逆に心配される羽目になった。
その後の流れで当然のようにパラケルススの心配は杞憂に終わったわけだが、パラケルススが少し不服そうに頬を膨らませたのをグリモワールは見逃さなかった。

664名無しさん:2019/08/22(木) 06:51:32
1回で書ききろうよ

665名無しさん:2019/08/22(木) 06:56:04
ほならね、書けもしないくせに黙ってろ

666名無しさん:2019/08/22(木) 07:04:40
みんながみんな一回で全部書ききれると思うなよ

667名無しさん:2019/08/22(木) 08:13:22
長編だってあって良いやろ…

668名無しさん:2019/08/22(木) 12:24:03
グリモが出てて気づいたがセブンスメンバーって今まであんま登場しないよね。書きにくいのかな

669名無しさん:2019/08/22(木) 13:12:26
普通書きためるんじゃないんか・・・?

670pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/22(木) 15:08:35
「あれ?」
 もはや戦場は船の甲板だけに留まらず地上も広がりつつあった船外の戦いであったが、一つの決着がつきつつあった。
「ケイオスリオン兵が、消えていく」
 乱戦の中での呟き。
 その数秒後には一帯を黒く埋め尽くすほどにいたケイオスリオン兵たちは半数以上が霧か霞のように姿を消していた。
「おい、見ろ! あれ!」
 誰かの声に反応してハルモニア兵もケイオスリオン兵も顔を上げた。
 ケイオスリオン兵たちが乗ってきた海賊船が、マストは折れ曲がり大砲は錆び付き割れていき、みるみるうちに朽ち果てて萎んでいく。
 それはまるで木材が風化して砂になる様子を早回ししているかのようだった。
 そして数秒後には海賊船があった場所には箱を横倒しにして車輪をつけたようなみすぼらしい輸送車が残った。
「な、なんだこれ?」
 ケイオスリオン兵たちに動揺がはしる。
 彼らには知らされていないことだったがケイオスリオン兵たちは実際の人数よりも多く見えるように幻術で偽装をされていたのだった。
 そしてそれは彼らが乗ってきた海賊船に関しても同様。その正体は小さな輸送車だった。
 その幻術をかけていたオティヌスという斬ル姫が戦闘が始まって早々に離脱した以上、その幻術も長くはもたない。
 短期決戦で勝負をつけられなかった以上幻術は解け、あとに残されたのはハルモニア兵が圧倒的に人数において勝る戦場のみ。
 結果としてケイオスリオンの有象無象たちは、数秒呆けた後、

「……え?」「なんか仲間がだいぶ減ったんだが?」「—―――それに船もだいぶ小さくなって」「幻術?」「そういやそんなのが得意な斬ル姫が貸し出されてるとか聞いたような?」「今はどうしてるんだソイツは」「帰った」「えっ?」「この状況俺ら不利じゃね? なんか白いのに囲まれてんだけど」「どーすんだこれ?」「いやもう無理じゃねってやつ」「なーんだ」「がははは」
「…………………………――――――――――………………………」

 一気に沈黙が広がったケイオスリオン兵たちにハルモニア兵たちは囲んで無言で武器を突き付ける。
「その命、神に返しなさい」
「う、わああああ―――――ああああああああ――――――――っ!」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 こちらは船内。
「おう、ようやく見つけたぜ。いやこの場合、待ちくたびれたぜって言うべきなのか?」
 方天画戟は船の武器庫の一室にいた。
 横倒しにしたガラスケースに腰かけて、二メートルを超すハルバード状の長鎗を肩に担いでくつろいでいる。
 部屋に踏み込んできたアロンダイトに対して待ち合わせをしていた友達のように微笑みながら軽く手を振った。
「麻痺が解けてからおまえを探していろいろ動いたけど疲れたんで、ちょっと一休みしてたところだったんだ」
 方天画戟は無邪気に笑っているが部屋は悲惨の一言だった。
 破壊されていない箇所を探すのが難しい。元は鏡のように磨かれていた壁も床も天井も無数の穴が穿たれていて仕切りの役割を果たしていない。
 武器を保管していたガラスケースも残らず倒されていて中身の武具は飛び出してそこらに散乱している。
 それらの間を赤黒く染め上げている血溜りや肉塊はもちろん方天画戟のものではない。返り討ちにした船内のハルモニア兵のものだろう。原型を留めないほどに破壊されていたので何人が犠牲になったのかもわからない。
 それらの惨状をたった一人で作り出したのが方天画戟だ。
「この船の武器ってさ。全部いいやつだよな」
 そんな凶暴性を一切感じさせずに方天画戟は感心した風に足元に転がる槍を蹴った。




掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板