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【ファンキル】SSスレ

1ゆるりと管理人:2019/07/21(日) 01:13:38

ファンキルの二次創作SSを投稿するスレです。

・18禁の内容はNGです
・原作のキャラクター性を著しく損ねる内容はご遠慮下さい、
また損ねている可能性がある場合は注意書き等でご配慮下さい
・複数レスに跨る場合は投稿者名(いわゆるコテハン)を利用しましょう
・投稿に対する暴言は規制対象になります
・ダモクレスばかり登場させるのは控えましょう

※物は試しのスレなので需要が無く過疎った場合は放置でOKです

522仲良しキーゴッド!:2019/08/14(水) 01:39:02

・鍵キャラの悩み 〜アルマスの場合〜

フェイルノート
「お前に悩みなんてものはなさそうね」

アルマス
「なんでよ!」

523仲良しキーゴッド!:2019/08/14(水) 01:42:43

・鍵キャラの悩み 〜フェイルノートの場合〜

ティファレト 
「フェイルノート、何か悩みがあれば話してください」←B92

シェキナー
「教皇様のご慈悲に感謝してください」←B100

ヴァナルガンド
「がう!」←B110

フェイルノート
「…………」←B73

フェイルノート
「お前達に打ち明ける悩みなどないわ」

ティファレトの善意による最悪の人選だったと、フェイルノートは後に語った。

524仲良しキーゴッド!:2019/08/14(水) 01:45:19
フェイルノート好きのマスターの皆様、ごめんなさい。

無駄のない弓と言われることを気にする彼女が自分は大好きです。

お目汚し失礼しました。

525名無しさん:2019/08/14(水) 02:14:12
全編に溢れ出るこの終・制作・著作NHK感たまらんな

526名無しさん:2019/08/14(水) 12:43:08
管理人の目に留まりたいならイシューを出さないとダメだぞ

527名無しさん:2019/08/14(水) 13:09:29
今のところイシューが出てるのないね

528pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/14(水) 13:38:28
※『442からの続きです』







「テメエら怯むな! 一点突破で包囲を貫け!」
「前衛、砲身の限界まで打ち続けなさい!」
 ハルモニアとケイオスリオンの戦いはハルモニア側の優勢だった。
 地上を走るハルモニアの輸送船。それに体当たりするようにして現れたケイオスリオンの海賊船。そこから現れたケイオスリオン軍はじわじわと後退に移っている。
 個々の戦闘力で勝るケイオスリオン兵といえども準備を整えたハルモニア兵の連携の前ではやや分が悪いようだった。
 前衛でマナ式の銃で弾幕を張るハルモニア兵が呟く。
「それにしても、こちらが圧倒しているというのに気味が悪いものですね。この敵がほとんど幻とは」
 その言葉通り、弾丸に貫かれたケイオスリオン兵の多くが花火のようにボンッと煙を上げて消失している。
 ケイオスリオン側はオティヌスと呼ばれる斬ル姫の幻術で兵士を実際の数より多く見せていた。白兵戦では極めて厄介だったそれらも、弓兵や銃兵による弾幕で掃討すればさしたる脅威ではなかった。
「兵の編成が済むまで持ちこたえた斬ル姫には有能ですね。たしか、室長が捕獲したとかいう……なんでしたか?」
「アロンダイトとかいうトレイセーマの斬ル姫です。たしかにアレがハルモニアとして戦ってくれるならば心強い」
「おまけにこちらにはシェキナーの援護が……」
 ハルモニア兵たちがそこまで話した時だった。

 バガキッ!

 交通事故のような音が聞こえてきた。ハルモニア兵たちはそれが石造りの床が砕けた音だと気づく前に、
「なんです今の?」
 続いてヒュンヒュンヒュンと空中でブーメランが回転するような音が近づいてきたかと思うと。

 —―――グガシャン!

「うわっ! た、隊長。空から斬ル姫が!」
 戦場の真ん中に大剣を持った女性が落下してきた。
 甲板を人型に陥没させているその人物を恐る恐る覗き込むと、
「なっ、お前トレイセーマの……」
 白を基調とし青でアクセントを加えた清潔感のある服。
 それと不釣り合いなほど無骨な大剣。
 そして特徴的な桃色の長髪。
「アロンダイト!」
 傷だらけになったアロンダイトの無残な姿がそこにあった。
「早く、戻らなければ! ここにいてはあなた方も巻き込まれる!」
 アロンダイトはハルモニア兵の姿など見てはいない。
 ガバリと起き上がり自らの傷など意にも介さずに、大剣を床に向かって振るい、人が通れるくらいの穴を開けると飛び込んでいった。
 おそらく彼女が今戦っている『敵』に向かって。

「ま、まさか吹っ飛ばされて来たのですか? 一体どこから……」
 驚愕のままに恐る恐る穴を覗き込むハルモニア兵。
 そこでアロンダイトの戦いを目にした。
「ここまでとは……」
 昨日まで過ごしていた船内はすっかり様変わりしていた。
 調度品や家具で仕切られていたはずの部屋はズタズタに引き裂かれ、壁すらも破壊されて、むしろ視界が開けている。
 切断された棚や家具の木片が散乱し、船を動かすための歯車やパイプが壁や床から突き出していた。

529pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/14(水) 13:39:05
 パイプの先端は折れて水を噴き出している。
「ひっ、不潔」
 真っ赤な汚水の雫が甲板にまで飛んできて思わず避ける。意外と粘っこい。
 立ち込める鉄サビの匂いは血を思わせた。
「アロンダイトはどこに、いや誰と戦っている?」
 目を凝らし、船内をぐるりと見渡す。
 ボロボロの壁。
 割れた武具のガラスケース。
 真っ二つになったテーブル。
 露出した歯車。
 流れる汚水。
 剥き出しになった骨組み。
 それらが船の傷口の如く痛々しく連なり、存在していた品々がことごとくただの物体に変わっている。その傷の連なりの先でなおも新たな破壊を続けながら戦闘は行われていた。
 激しい剣戟の音。
 いや、それは岩の如き大剣と、無軌道に振るわれる長鎗の衝突音。
 疾しる青い槍兵、応じる白い騎士。
 青色の稲妻が幾度も迸り、その度に火花が飛び散る。
 二色の影は縦横無尽に戦場を駆け巡り、何遍もぶつかり合った。
「見なかったことにしましょう……」
 常人の目には追えないほどの速度で繰り広げられる斬ル姫同士の戦い。
 それを直視することを諦めたハルモニア兵はその戦場にもう一人いたことに気が付かなかった。
「は、はは、ははは、あははははははははははははははははははははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――ッ!」
 物品の破壊音と剣戟音に紛れ、戦場の真ん中で一人感激のあまり高笑いを続けているハルモニア兵がいた。
 そのハルモニア兵の名はキトという。宝物室の室長をしている男だった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「やっぱりだ! おまえ中々食いでがあるじゃねえか! 好きだぜ! 骨のあるヤツはよ!」
「あなたが言うと『骨まで食べちゃうぞ』って意味に聞こえますね!」
 ガッチィ! と何十回目かの剣と鎗が打ち合わされる音が響く。
 アロンダイトの顔に焦りが浮かんでいた。
(『高潔の守護盾』の効果が切れましたね。ダメージを無効化できるので便利なスキルではあるのですが、一定量しか耐えられないのがどうも……)
 先のデュランダルとの連戦なのもありダメージを耐えるスキルもついに効果切れとなっていた。
「この状態では肉を切らせて骨を断つといった戦法も慎重に行う必要がありますね。スタミナはまだ持ちますが」
「あ? 馬だから持久力には自信があんのか?」
「独り言聞かないでもらえますか」
「つれねーこと言うなよ。殺し合いの、食い合いの仲だろうが、よ!」
 暴風が如く吹き荒れる長鎗の襲撃を、必死の思いで受け流す。
「そもそもさー、おまえトレイセーマの出身なんだろ? オレに埋め込まれた悪魔の因子もどっちかっていうと獣よりな気がするんだよな」
「えっ、そうでしたっけ?」
「あ、言ってなかったか?」
 青い槍兵はそこで動きを止めた。
 一旦アロンダイトへの攻撃を止めて、近くのまだ破壊されていないテーブルの上に立つ。
 たぶん目立つからだろう。

530pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/14(水) 13:39:38

「オレは方天画戟! D. plug・アバドン! 破壊と滅び、奈落より現れ全てを喰らい潰す蝗の化身だ! 短い間だけどよろしくな!」
 実際その姿はよく目立った。
 トゲの飾りがついたジャケットやズボン、先の尖ったヒールなど攻撃的なファッションで170センチ以上ある長身を飾り付けている。真っ青な長髪を太い三つ編みで一本にしているのだが、よくみるとその三つ編みは途中から黒い甲殻に覆われたサソリの尾に変化してゆらゆら揺れていた。
 あのサソリの尾のような三つ編みの先についている刃も武器として使用するのかもしれない。
「じゃ、戦うか」
 ダンッと地面を蹴って一瞬のうちにアロンダイトとの間に空いていた数メートルの距離を方天画戟はゼロに変える。
「楽しみだ! おまえをいつ食えるのかと思うとよ!」



(やはりデュランダルとはタイプが違う。この方天画戟という斬ル姫……単純に強い!)
 剣道三倍段。という言葉がある。
 素手の人が剣を持った人を相手に勝つには剣側の三倍の技量が必要という俗語であるのだが。鎗と剣にも同じようなことが言える。
 デュランダルにも語ったことだが武芸は自分より体格で勝る相手に勝つために作られたものだ。その中でも鎗、ランスやハルバード、薙刀などの柄の長い武器は他の武器に比べて体格差のハンデを詰めやすい。
 ただでさえその鎗を方天画戟のように長身でパワーもある者が扱っているのだ。ウェイトでも武器のリーチでも劣るアロンダイトは大きく不利である。
(そのうえ方天画戟の鎗術は一見乱暴に見えてちゃんと様式にのっとったもの……おそらくキラーズの持ち主がそうだったのか)
 デュランダルの時のように力で押し切るといった戦法は使えそうにない。
(事実、私は方天画戟の攻撃を受けるばかりでこちらから攻撃ができていません)
 とにかく方天画戟の射程距離に入ること。
 それがアロンダイトの勝利への道だった。



 払う。薙ぐ、回す。叩く。掛ける。捻じ込む。翻す。刺す。突き上げる。
 鎗は剣と比べても選べる技の選択肢が格段に違う。
 アロンダイトは吹き荒れる技の嵐を神業じみた合わせで防ぎきる。
 方天画戟が暴風なら、アロンダイトは神風だった。
「そう例えるなら、デュランダルは突風でしょうか……、一瞬の勢いなら台風すら貫けるほどの」
「なに言ってんだおまえ!」
 疾風の追撃。
 それはアロンダイトが大剣を寝かせ盾のように構えたことで弾かれた。
「何度繰り返しても、技量なら私の方が上のようですね。私の体に届いていませんよ。あなたの鎗」
「そうだな。繰り返しだな。さっきから」
 方天画戟がバックステップで距離を取る。
「少し、大技使うぞ」
 その長鎗の先から禍々しい黒い光が溢れだす。

 キィィンと空気が烈震した。

 燃えるように黒く輝く長鎗を構える。低く。低く。肉食獣のように。
 にィィっ。と方天画戟の口角が釣りあがり凶悪な笑顔を形成した。
「これで死ぬんじゃねえぞオラァッ!」
 鋭く踏み込み。全身をしならせたアンダースロー。その結果、爆発的な速度で長鎗はアロンダイトへと射出された。

531pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/14(水) 13:41:43
今回はここまでです。自分もイシューは書いてみたいんですけどうちの隊にいないんで口調がよくわかんないです

532マサムネ 四年越しの腹痛:2019/08/14(水) 13:42:59
※マサムネ推しの皆さんごめんなさい



『マサムネ 四年越しの腹痛』



マサムネ「……このように、剣道が普及したのは戦の時代が終わり実用的な鎗、弓が蔵にしまわれるようになったころ。精神修養を目的とした武道が流行したのをきっかけに、単なる殺法だった剣術が剣道へと変化し……」

青龍偃月刀「ふむ。マサムネが授業をすると聞きどんなものかと思い来てみればなかなか面白いではありませんか」

ムラマサ「当然です! 拙者の姉上ですから!」

マサムネ「ここまで聞いて和風弓ユニットの諸君は弓道を思い浮かべたかもしれん。たしかに発生は似ているが刀は弓にはないある特徴が……うぐっ!?」

与一「? うぐ……?」

マサムネ(うぐぐぐぐぐ……ま、まずい! 腹が痛むでござる! やはり腹か!? 腹を出しておるのがそんなに悪いのか!?)

ムラマサ「姉上?」

マサムネ(くっ、しかし今は講義を続けねば……)

マサムネ「刀はそもそも……」(ぎゅるるるるるるるる!)

マサムネ(ぐ、うううううううう……! し、しかし講義中に出したら拙者の人生終わるでござる!)

マサムネ(閃いた! 大声を出して痛みをかき消すのだ!)

マサムネ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

ムラマサ「ど、どうしたのです姉上!? なぜいきなり大声を!?」

マサムネ「な、なんでもな」(ぎゅるるるるるるぐるるるる!)

マサムネ(いかん! かき消えたのはむしろ教室の雰囲気! こうなれば仕方なし……できればこれは使いたくなかったが……)

マサムネ「……膝に矢を受けてしまってな」

ムラマサ「は、早く杖の方を呼んで回復を」

マサムネ「それには及ばぬ。おそらく敵は動きが早く射程距離が長い使徒チャリオット……今から追えば間に合うであろう」

青龍偃月刀「では長射程には長射程を! シェキナーを呼びましょう!」

マサムネ「それにも及ばぬ。自分に向けられた殺意程度は自分でカタをつけられるつもりだ。拙者が行こう。誰もついて来るな。そしてムラマサ、この後の講義は任せたぞ……」

ムラマサ「あ、姉上。承りました! 拙者、精進いたします!」

マサムネ「よし。いざ参る!」(パリーン!)

533マサムネ 四年越しの腹痛:2019/08/14(水) 13:43:44
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


マサムネ「なんとか逃げられたな」(ぎゅううううううう!)

マサムネ「割ったガラスは後で弁償せねば……」(ぎゅるるるるっ!)

マサムネ「痛みが収まらぬ……。さっき動けたのはまさに奇跡……天の救いに相違あるまい」

マサムネ「そこの茂みにしばし隠れよう……」

方天画戟「おーい、そこに誰かいるのかー?」

マサムネ(何っ、方天!?)

マサムネ「止まれ! それ以上近づくな!」

方天画戟「ん? その声は我が戦友マサムネじゃあねえか?」

マサムネ「危ないところでござった」

方天画戟「何か言ったか?」

マサムネ「気にするな」

方天画戟「ふーん。まあいいや。マサムネ、今日も勝負しようぜ!」(鎗びゅんびゅん)

マサムネ「すまぬ。今は無理だ……」

方天画戟「どうしたんだよノリ悪いな。それに声も少し震えてるような? 何かあったのか?」

マサムネ「本当にそなたが気にするようなことではないのだ?」

マサムネ(そなたにはこんな姿見せられぬ……)

方天画戟「水くせーな。オレとおまえの仲だろ。どうしたってんだよ? とりあえずそっち行くからな」

マサムネ「来るな!」

方天画戟「っ」

マサムネ「いや、すまぬ。とにかく今は来ないでくれ」

方天画戟「……そうかよ。そりゃあいつもケンカふっかけてるからオレなんか信用できねーってのはあるかもしれねえけどよ。そう言われるとなんかな」

マサムネ「あっ、いや……その……」

方天画戟「ま、悪かったな。とりあえずオレはどっかふらついて来るわ」

マサムネ(そうではない、傷つけるつもりはなかったのだが……)

マサムネ「方天画戟! 待ってくれ!」

方天画戟「なんだよ?」

マサムネ「使徒チャリオットの首、獲ってきてくれぬか?」

534マサムネ 四年越しの腹痛:2019/08/14(水) 13:44:20
方天画戟「あ? よくわかんねえが。必要なんだな? よし、待ってろ」

マサムネ「すまぬな」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


マサムネ(これで使徒チャリオットの首が持ち帰れれば拙者の言い訳も成立するな。方天画戟には悪いことをしたが……)

マサムネ「むっ! 落ち着いたらまた腹が!」(ぎゅるるるるっ)

マサムネ(ああ、もしや拙者はずっとこのままなのでは……)

マスター「ああ、ここにいたんだ」

マサムネ「しゅ、主君!」

マスター「ムラマサから突然教室を飛び出したって聞いて探してたんだよ。もしかしたら……アレかと思って」

マサムネ「申し訳ない……そうなのだ」

マスター「四年ぶりだね」

マサムネ「う、うむ……」

マスター「どうする? やっぱりしようか?」

マサムネ「ああ。しゅ、主君……あいすまぬが……腹をさすってくださらぬか?」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


方天画戟「おーい! 意外と近くにいたからすぐに狩れたぜ!」(生首ブランブラン)

方天画戟「ん? 茂みの中から声。どれどれ、マサムネと……げぇっ!? 主君!?」

方天画戟(主君がマサムネを膝枕して腹をさすってる……? なんでだ!?)



マサムネ「皆にはこんな姿見せられんな」

マサムネ「む。だいぶ痛みが治まった。かたじけない」

マスター「あ、今お腹少し動いた」

マサムネ「ああ、拙者も感じたぞ。おそらく今ので元の状態に戻ったのであろうな」



方天画戟「オレに見せられない……腹が痛む……動いた……そして主君が腹を……?」

方天画戟「えっ? えっ? えっ?」


『おわり』

535日の出より、晴れた姿の君達へ②:2019/08/14(水) 13:44:50
>>477
???「動くな。そして振り向くな。少しでも妙な動きをすればお前の命はない」
トレイセーマに戻ったマスターは路地裏に引き込まれていた。
ボイスチェンジャーのような無機質な声音をしていて相手が誰かはわからない。
トレイセーマで重要人物となったマスターの命を狙うものなどそれこそ、完全平等を唱えたトレイセーマでは旧13議会から失脚した老人たちからの刺客か、紛れ込んだ悪魔か天使ぐらいなものだろう。
いまここには、先ほどまで同行していたガボーとガジャルグの姿はない。彼女たちはどうやらマスターが連れ去られていることに気づいていないらしく表で騒ぎは起こっていない。ならば考えられるのはーーー
マスター「・・・」
???「どうした恐怖で声も出せないか?当然だろう。生殺与奪の権はいま私が握っている。お前は私の気分次第で死んで」
マスター「ケラウノス。それと、八咫もいるんでしょ?」
???「ーーーっ!?」
マスターは一言キル姫の名前を言っただけだが、それだけで確認は十分だった。その一瞬の同様で襲撃者が彼女であると確信する。
振り返るととそこにはやはりケラウノスの姿があった。
ケラウノス「ええ〜どうしてわかったの?せっかく、八咫ちゃんにも協力してもらって驚いてもらおうと思ったのに〜」
八咫鏡「まったくじゃ、これではサプライズが台無しじゃの」
気配のなかった路地の影からひょっこりと現れる八咫鏡と、腕の銃口を突きつけていたケラウノスは不服そうだった。
マスター「理由は簡単。ガボーとガジャルグが僕の存在に気付かなかったことだね。あの二人の察知する能力はかなり凄いし、姉が側にいるとはいえ、僕が突然消えたらガボーの方がパニックを起こしかねないし」
ケラウノス「なるほど〜、つまり私たちはやりすぎたってことだね」
八咫鏡「ふむ、そういう点を配慮した悪戯じゃったが、逆にそれが仇になったというわけか。この失敗は次回に生かすこととしよう」
マスター「いや、生かさなくていいよ。それに僕以外にこんなことしたら駄目だよ。トレイセーマは真面目な人が多いんだから」
ケラウノス「うん、それについては謝るよ」
八咫鏡「それについては謝ろう」
マスター「それについてはって言うと、何かあるの?」
ケラウノス「マスター、それ本気でいってるの・・・私たちの気持ち、気付かないマスターじゃないよね?」
マスター「あー、ごめん。ガボーを追って勝手に飛び出したことだよね、怒ってるの」
八咫鏡「そういうことじゃな。マサムネが追いかけていたから良かったものの、マスターのみであの二人を止めるのは無謀じゃったよ、たとえバイブスがお主の中にあったとしてもな」
ケラウノス「後でマスターがガボーを追っていったって聞いて驚いたんだよ。だから私は、八咫鏡のログ検索の力を貸してもらってマスターとガボーを探して貰おうと思ったの」
八咫鏡「ちょっとお昼寝をしてたところを叩き起こされた時は何事かと思ったものじゃぞ。調べてみたら事が終わっておったがの」
マスター「ごめん、配慮が足りなかったね」
八咫鏡「そうじゃな、全くもって配慮がたらん。お主はもうトレイセーマにとって欠かせない存在となっているのじゃ。それを忘れるでないぞ」
ケラウノス「私たちはこんな感じだからいいけど、ミョルニルは大変だったよ〜。マスタマスタが大変なの〜!って出会うキル姫に事情を説明して回ってたし」
マスター「そうなの?それだったら、僕が帰ってきたこと早くみんなに伝えてあげないと」
八咫鏡「それは問題ない。事が大きくなりそうだったから、周囲の人やキル姫にはマスターが見つかったように認識するようログを書き換えたしの。まあ約1名はここに呼んでおるがの・・・それ来たようじゃ」
マスター「え?それってまさか!」

536日の出より、晴れた姿の君達へ②:2019/08/14(水) 13:46:10
>>535
???「マァアアアアアアアアアアスタ!!」
マスター「ミョルニル!待って、その勢いでこられたらーーーガホォ!?」
超特急ミョルニルは減速することなくマスターの鳩尾に頭から飛び込む。
ミョルニル「マスタマスタマスタァ!心配したんだよ大丈夫だった?怪我してない?生きてる?ねぇねぇねぇ!」
マスター「だ、大丈夫だ、よ、ミョル、ニル。ごめ、んね。心配か、けて」
ミョルニル「マスタ!大丈夫じゃないよどうしたの蹲って!お腹いたいの!?」
マスター「うん、大丈夫。だから、今は、ちょっと・・・眠らせ・・・て・・・・・」
ミョルニル「マスタ!マスタ!マスタ!」
八咫鏡「あの状況でミョルニルの突進を受けてこの程度とはやりおるな」
ケラウノス「大丈夫じゃないんだろうけどね。でも、これに懲りたら少しは気を付けてくれ・・・ないよねぇ」
八咫鏡「ないじゃろうなぁ。三つ児の魂100までというしの・・・こやつの馬鹿は、いや、死んでもなおらんかったのじゃったな」
ミョルニル「二人とも難しい話してないで!マスタを医務室に運ばないと!」
八咫鏡「そうじゃのと言いたいところじゃが、少しガボーとガジャルグにあってくるのじゃ。あやつらのへの術を解除して一応のフォローもしておかんとの。さすがにそろそろバレかねん」
ケラウノス「んー、了解。私はミョルニルと一緒にマスターを運んで行くね〜」
八咫鏡「うむ、周囲への術は後で解いておくから騒ぎにはならんが、気を付けてマスターを運ぶのじゃぞミョルニル」
ミョルニル「うん、わかったよ八咫!ケラウ!早く早く!」
ケラウノス「急ぐのはいいけど、あんまり無理して運ばないようにね。それじゃ行こっか」
八咫鏡と別れを告げると、気絶したマスターをケラウノスが背負い、ミョルニルは辛そうなマスターの背中を撫でながら医療棟へ向かうのだった。

To Be Continued

537名無しさん:2019/08/14(水) 13:51:18
>>519の言うように管理人さんも人だから最近忙しいのかもしれない
そしたらみんなでこのSSをまとめてほしいって意見出してみたら?もしかしたらまとめてくれるかもしれない

538名無しさん:2019/08/14(水) 14:13:37
解決アロンちゃん番外編

これはアロンダイトの疑問を解決したりしなかったりアロンダイトが人の悩みを解決したりしなかったりするものです

アロンダイト
「はぁピンクの髪の女は淫乱ですか....はぁ」

アロンダイト
「私は淫乱じゃないのに」

アロンダイトが悩んでいると時空が歪んで1人現れた

通りすがりのライダー
「変な世界に来てしまったなまああんまり関係なさそうだな」

アロンダイト
「あ、私と髪色と同じピンクだ」

通りすがりのライダー
「ピンク?おいそこのお前」

アロンダイト
「は、はいなんですか?」

通りすがりのライダー
「俺のはピンクじゃないマゼンタだ」

アロンダイト
「マ、マゼンタ?」

通りすがりのライダー
「そうだもう一度言っておくピンクじゃなくてマ・ゼ・ン・タ」

アロンダイト
「わ、わかりました」

通りすがりのライダー
「お前なんか悩んでいるのか?」

アロンダイト
「はい実は....」

539名無しさん:2019/08/14(水) 14:33:00
アローンライダ〜....ジオウ!

540名無しさん:2019/08/14(水) 14:37:41
>>538
通りすがりのライダー
「なるほどなそれじゃあお前は淫乱か?」

アロンダイト
「ち、違います!」

通りすがりのライダー
「ならそれで良いじゃないか」

通りすがりのライダー
「誰がなんと言おうとも自分は自分だそれになんの違いがあるって言うんだ?」

アロンダイト
「自分は自分」

通りすがりのライダー
「そうだ俺なんて行く先々で『世界の破壊者だ!』とか言われるし鳴滝のおっさんにつきまとわられるし海東の奴もたまに首突っ込んで面倒こどを残して行くだけだしそういうのをいちいち気にしてたらきりがないしな」

アロンダイト
「中々大変な日々を送っているんですね」

通りすがりのライダー
「そうだなそれじゃあそろそろ次のところに行くとするか」

アロンダイト
「ありがとうございます!少し元気が出ました」

通りすがりのライダー
「そうかそれは良かった」

アロンダイト
「あの...最後の確認でピンクじゃなくてマゼンタですよね?」

通りすがりのライダー
「ああピンクじゃなくてマゼンタだからな」

アロンダイト
「マゼンタ...覚えました」

通りすがりのライダー
「じゃあな」

アロンダイト
「消えた...」

541名無しさん:2019/08/14(水) 14:42:50
SSって描写無しでセリフだけの応酬なのか?

542名無しさん:2019/08/14(水) 14:44:34
そういうのもある

543名無しさん:2019/08/14(水) 14:45:15
>>540
アロンダイト
「ん?なにか落ちてる?」

アロンダイト
「なんでしょうかこれは?」

白いバックルのような物が落ちていた

アロンダイト
「そういえばあの人はこれに似た形のピn..じゃなくてマゼンタ色をしてましたね」

アロンダイト
「また会えた時に返せるように大事に持っときましょう」

アロンダイトがディ○イドになる日はたぶん来ない

544解決アロンちゃん:2019/08/14(水) 14:47:35
名無しさんのまま書いてしまったのに今気がついた
色んな人がディケイドを入れるからネタが浮かんできたから書いた
後悔はないたぶん

545名無しさん:2019/08/14(水) 15:06:58
たった1時間くらいの間に怒涛のSSラッシュが

546名無しさん:2019/08/14(水) 19:26:42
長編だったりシリーズだったりするとまとめ辛いんかな

547名無しさん:2019/08/14(水) 20:29:07
長編だと長くなってしまうのとシリーズだとどこを区切ってまとめれば良いのかわからないって言う問題があるのかもね

548名無しさん:2019/08/14(水) 20:42:07
最近は反応(感想)が少ないから記事としてまとめにくいんだと思われ
雑談も萌えも話題として成り立っていないものはまとめられないからね

549名無しさん:2019/08/14(水) 20:50:28
まだ書いてる途中の人もいるしね

550名無しさん:2019/08/14(水) 20:56:40
単純にクオリティの問題では?

551名無しさん:2019/08/14(水) 20:57:29
でも反応(感想)が4つぐらいのをまとめてた時もあったような

552名無しさん:2019/08/14(水) 20:58:36
>>550
それは書いてくださってる方々に失礼だから思ってでも言うな

553名無しさん:2019/08/14(水) 21:34:58
同じキャラの話題を連続でまとめないっていうのも多少あると思う

554リクエストあれば気が向いたら書くかも:2019/08/14(水) 22:03:57
※過去に萌えスレに投稿した作品の修正版です

太陽と月

「アポロン、今日の片付けは私がしましょう。ゆっくり休んでいて下さい」

朝食が終わると姉のアルテミスが手早く食器を片け出す
普段はアポロンの役割なのだが今日は率先してアルテミスが取り掛かる

「どうしたのお姉ちゃん?」
「え?べ、別に?気が向いただけですよ?」

不信に思ったアポロンが尋ねるも、ギクシャクとした反応が返ってくる
どうも普段と様子が違う
姉の事には異常な執着を持つアポロンは、その違いをどうしても受け流すことは出来ない

「ボクに隠し事?絶対、絶対何かあるよね?」

少し困った顔をしてアルテミスはアポロンの頭を撫でる

「隠し事なんて…ただ、今日は本当にアポロンのために何かしていたいだけです」
「本当に?」
「ええ」

アルテミスは視線を逸らし、申し訳無さそうに呟く

「だって、今日は日食ですから…」

日食とは月が太陽を隠してしまう現象だ

「私(月)がアポロン(太陽)を隠してしまうので、少々後ろめたい気持ちに…」
「……お姉ちゃん」

突然ぎゅっとアポロンがアルテミスを抱きしめる

「ちょ…アポロン?」
「ふんふん♪お姉ちゃん、その日食って太陽と月が重なる…つまり一緒になる日でしょ?だったら同じようにちゃ〜んとボク達も一緒にいないとダメだよ!」

まさに太陽のような笑顔を向けられて、アルテミスの心も晴れやかになっていく

「そうですね。じゃあ、片付けも二人で早く済ませて、今日は共にゆっくりしましょう」
「うん!やったー!」


二人並んでの日食鑑賞
太陽と月が重なる間、その手はしっかりと繋がれていた

END

555名無しさん:2019/08/14(水) 22:36:20
これ懐かしいな。覚えてるよ

556正月のあること:2019/08/15(木) 01:03:25
戦いが終わり平和になった頃の正月

アバリスとマスターは出掛けていた

アバリスは正月に着た着物を再び着ていた

「うわー綺麗な人だな」

「モデルさんかしら?」

アバリス「やっぱりこの着物を着ていると目立ちますね」

アバリス「でも目立つことにはまだなれませんけど////」

アバリスは少し恥ずかしそうにしていた

マスター「.................」

アバリス「マスターどうかしましたか?」

マスターは黙ったままアバリスの手を掴み走った

二人は人気のないところまで来た

アバリス「あの...マスター本当にどうしましたか?」

マスター「なんかアバリスが色んな人から見られてるのが我慢ならなくて」

マスター「なんか自分勝手でごめん」

アバリス「ふふマスター仕方ありませんね」

そういうとアバリスはどこかに行きいつもの服装に着替えて戻って来た

マスター「アバリス俺のためにいちいち着替えなくても」

アバリス「ふふ私はマスターにだけ知ってもらえたら十分です」

アバリス「それに」

アバリスはマスターの耳元まで来て囁いた

アバリス「私の気持ちはマスター以外には揺らいだりなびいたりしませんよ」

マスター「え?それって...」

アバリスはマスターに少し離れて手を伸ばした

アバリス「さあマスター行きましょう」

マスターに向かって手を伸ばすアバリスの笑顔はとても美しくとても素敵なものだった

END

557正月のあること:2019/08/15(木) 01:04:34
ネタが降りて来たので季節外れだけど書いた
やっぱり推しの話を書いてると楽しい

558名無しさん:2019/08/15(木) 08:49:49
>>557
俺の推しで嫁でもあるのでにっこり

559名無しさん:2019/08/15(木) 08:55:18
>>554
簡潔にまとまってていいなぁ
アポテミは過剰編のイメージが強い

560名無しさん:2019/08/15(木) 09:01:34
>>534
オチも良いが使徒チャリオットが不憫すぎてワロタ

561名無しさん:2019/08/15(木) 09:03:20
投稿しても反応が無いか薄いのは…ナオキです

562名無しさん:2019/08/15(木) 10:32:55
この人ほんとにアバリスが好きなんだなぁって感じる

563名無しさん:2019/08/15(木) 12:01:02
>>534
長編と短編で方天の扱いの差よ

564EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:47:10
マスター×ティルフィングのSSです。

EPILOGUEアルマスと同様に、新章ストーリー後を想定して書きました。

これを機に少しでもティルのことを好きになって頂けると嬉しいです。

EPILOGUEアルマスと比べると倍程の長さになっており、短くまとめることが出来ませんでした。

展開が遅く、冗長すぎると感じられるかもしれません。

その辺りも含め、意見・感想の方を頂けると嬉しいです。

565EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:48:06

ティルフィング。

持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。

叶えられる願いは3つまで。

持ち主が誰かなんて言うまでもない。

彼はきっと世界の平和を強く願っている。

だけど。

アルマス達と共に平和を取り戻した今は?

平和以外で彼が望むものに心当たりはなかった。

彼の願い事は何だろう?

知る必要がある。

その願いを、叶えさせないために。

566EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:48:45

「レーヴァ、もうお昼ですよ」

「ん……、ティル?」

レーヴァが眠そうに目を擦りながら、体を起こした。

「どうしたの?何か予定あったっけ…‥?」

「ごめんなさい、レーヴァの顔が見たくなって」

「……寝顔で我慢して」

そう言ったものの、レーヴァは嫌そうな顔をしなかった。

レーヴァはディスラプターズのリーダーだ。

メンバーは個性的で、まとめることに苦労してるらしい。

ヘレナのイタズラに困ってるだとか。

カリスの奔放さに振り回されてばかりだとか。

あと、ソロモンの感性が理解できないとか。

そんな他愛もないことを話して過ごした。

「レーヴァには居場所ができたんですね」

「ティルだって……。ずっとマスター達と過ごしてるじゃない」

「…………え?」

「ティルの居場所はマスターの隣でしょ?」

「え、と…………」

答えられなかった。だってその居場所は……。

「おーい、レヴァ!マスターが来たぜ!」

「お邪魔するよ」

「!!」

突然の来客に心臓が跳ねる。赤くなっていく顔を見られたくなくて俯いてしまう。

「久しぶり、ティルフィング」

「は、はい。お久しぶりです……」

上手く受け答えできただろうか?

「レーヴァテイン、今日は機嫌が良さそうだね」

「そうかもね」

気になって親友を横目でチラッと見てみる。

レーヴァは私を見てクスクスと笑っていた。

たまらなく恥ずかしかった。

「も、もう!用事を思い出したので帰ります!!」

羞恥に堪えきれず、私はその場を逃げ去った。

567EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:49:23

「レーヴァはイジワルです……」

ディスラプターズのアジトを少し離れた所、空に浮いて、ひとりごちる。

いまだに顔が熱い。

「マスターは何の用事で……?」

私とマスターはここ数ヶ月間会ってなかった。

新生ラグナロク王国の女王に推挙されてからというものの忙しい毎日を送っている、というのが表向きの理由。

実際にはとある事情で、私は彼から距離を置いている。

私の交友関係は狭い。

慕ってくれる国民は多いものの、友人となると極小数だ。

マスターの傍には居られない。

ギルとは依然気まずいまま。

気兼ねなく話せるのはレーヴァだけ。

……とはいえ、顔を見るなり出て行くのは流石に失礼だったと思う。

そんなことを考えていると、アジトからマスターが出てきた。

「……謝らないと」

マスターに声をかけようとしたその時、彼に駆け寄るアルマスの姿が目に入る。

彼女は自然に彼の隣へ並び立つ。

ーーーーーーティルの居場所はマスターの隣でしょ?

「……違います」

もうそこは、私の居場所じゃない。

楽しそうに話すアルマスとマスターを無言のままに見送る。

胸の奥がチクリと痛んだ気がした。

568EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:50:06

彼の事がずっと好きだった。

平和の為に天上世界で一緒に旅をした。

彼の隣はとても居心地が良くて、気がつけば男性として意識し始めていた。

地上世界を悪魔から奪還した。

その為に、キル姫全員を地上世界へ転送するという無茶を彼はやってのけた。

誰かの為に体を張れる、そんな彼に憧れた。

ユグドラシルを守るために地上世界へ残った私は、彼と別れることになった。

何年、何十年、何百年。

本当は寂しかった。

会えない時間が長くなる程、想いは募っていく。

そして、この世界で彼と再会した。

アルマス達と旅をしてる時は、他のことを考える余裕なんてなかったけど。

平和を取り戻した今となっては、マトモに顔を見ることさえできない。

ーーー好き。

ーーーーーー大好き。

彼への好意は膨らんでいくばかり。

それがたまらなく苦しい。でも、

彼の隣は、もう私の居場所じゃない。

569EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:50:37

ティルフィング。

持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。

叶えられる願いは3つまで。

持ち主が誰かなんて言うまでもない。

既に願いは2つ叶えられている。

天上世界と地上世界を救うこと。

残る願いはあと1つ。

彼の願い事は何だろう?

知る必要がある。

その願いを、叶えさせないために。

3つの願いを叶えた時、魔剣ティルフィングは持ち主の命を奪うのだから。

570EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:51:17

「はぁ……」

もう日は傾きかけていた。

膝を抱えて宙に浮き、物思いにふける。

彼の傍にいて、私のキラーズが3つめの願いを叶えてしまったら。

マスターは命を落としてしまう。

傍にいちゃいけない。

分かってるけど。

「…………マスター」

会いたい。傷ついてほしくない。

求めて欲しい。傍にいちゃダメ。

……マスターが私を選んでくれるなら。

そう考える自分の勝手さに嫌気が差す。

もうマスターの隣にはアルマスがいる。でも、

「……そんなの、嫌です」

何百年も前から育んできたこの気持ちを、簡単に諦めることは出来なかった。

瞳から涙が溢れそうになる。

「ティルフィング、さん……?」

誰かに呼びかけられ、急いで袖で目元を拭う。

振り返るとそこにいたのは、

「…………ギル?」

かつて私がナディアだった頃に、親しくしていた男の子だった。

571EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:51:56

「えっと、今日はトレイセーマとの会談でしたよね、お疲れ様です」

ギルはラグナロク王国の外交官として毎日頑張ってくれている。

「はは、ありがとうございます……。それよりティルフィングさん、こんなところでどうしたんですか?」

「それは……」

他の人に話すようなことじゃない。

そう思って、話を濁そうと考えたけど。

「やっぱり俺じゃ力になれませんか?」

「いえ、そんなことは……」

私の考えはギルに見透かされていた。

「アルマス達と旅をしてた頃は、足を引っ張ることが多くて……」

「外交官を務めてる今でも失敗することはあるけど、それでも色んな国の癖の強い斬ル姫達と話してきたんです」

「だから……」

「ギル……」

私がティルフィングとなってから、ずっとギルとは気まずいままだった。

それでもギルは困ってる私を見て、声をかけてくれた。

「ギルは優しいですね」

「へ?」

弟のように接していたギルの成長が嬉しくて微笑む。

ギルは照れて、頭をガシガシと掻いていた。

「と、とにかく!」

「困ってることがあるなら、せめて話し相手ぐらいは務めさせてください!」

ギルの真っ直ぐな気持ちが嬉しかった。

572EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:52:35

「私には、好きな人がいるんです」

「マスターでしょ」

「…………」

「ど、どうしてギルが知ってるんですか?」

「いや、俺がっていうか……。多分皆分かってます」

あまりの恥ずかしさに顔を手で覆う。

「あ、いや、大丈夫ですよ!昨日今日とかの話じゃなくて、とっくの昔に知れ渡ってたことなんで!」

「それはちっとも大丈夫じゃありません……」

ギルのフォロー(という名の追い討ち)が胸に刺さる。

「ティルフィングさんは何であいつのことをそんなに……?」

「……ずっと前から、あの人のことを見てきたんです」

何百年も前から。

「少し、長い話になります」

天上世界でのこと。

地上世界でのこと。

この世界でのこと。

そして、私のキラーズのこと。

ギルは、私の話を最後まで聞いてくれた。

「……すみません。俺には、ティルフィングさんがどうするべきか分からないです」

「いえ、ギルが話を聞いてくれたおかげで少し楽になりました」

ギルが話しかけてくれなかったら、きっと私は塞ぎ込んでいたままだったから。

「……俺には、何が正しいかは分からないけど、でも」

「俺がもしマスターの立場なら、独りで抱え込んで欲しくないって思います」

「……え?」

573EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:53:16

「もー!!ギル遅い!!」

「げ!モラベガのこと忘れてた!」

「えっと……」

確か今日のトレイセーマとの会談では、モラベガにギルの護衛を頼んでいた。

「トレイセーマの帰りにティルフィングさんを見かけて、その時に待って貰ってたんです」

もう既に日は落ちている。

モラベガは結構な時間ギルのことを待っていたハズだ。

「ギル、行ってあげてください」

「で、でも……」

「また今度話を聞かせてください。今日みたいに、私がナディアだった頃のように」

「は、はい!」

嬉しそうに手を振り、モラベガのもとへ戻るギルを見送る。

「ありがとう、ギル」

ーーー独りで抱え込んで欲しくないって思います。

私は、自分のことばかりでマスターのことを考えてなかった。

彼に打ち明けないといけない。

これは私の問題だけど。

私だけの問題ではなく、私と彼の問題なのだから。

「会いたい……」

そんな私の願いは、神様に聞こえていたのかもしれない。

「ティルフィング!」

最愛の人の声が耳に届いた。

574EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:54:09

息を切らしながらティルフィングのもとへ駆けていく。

「ハァっ、ハァっ!や、やっと見つけた……」

「ま、マスター?どうしたんですか?」

「ハァっ……君を探してたんだけど……、ハァっ…、どこを探しても、中々見つからなくて」

その言葉に彼女は目を丸くした。

「もしかして国中を走り回ってたんですか?」

「どうしても君と話したいことがあったから」

「……アルマスは?」

「ラグナロク王国を出るときは護衛としてついて貰ってるけど、今日は先に戻って貰ったよ。あまり他の人には聞かせたくない話だから」

「……はい」

そう答えたティルフィングの表情は暗かった。

僕の考えていることに、彼女は気づいているのだろう。

「僕を避けてるのは、ティルフィングのキラーズが関係してるのかな」

「やっぱりお見通しだったんですね」

「付き合いが長いからね」

ティルフィングは、僕を避けてることを否定しなかった。

「私のキラーズのことはマスターもご存知ですよね?」

「持ち主の願いを3つまで叶える剣、だよね」

「そして3つめの願いを叶えた時、持ち主は命を落とすと言われています」

「マスターは天上世界と地上世界を救うために、願いを既に2つ叶えています」

「もし3つめの願いが叶ってしまったら、マスターは……」

「……そっか」

彼女は、ずっと悩んでくれたのだろう。

「話してくれて、ありがとう」

「……マスター」

よく見ると、彼女の目元は少し赤くなっている。

「…………」

許せなかった。

何もしてこなかった自分の不甲斐なさを。

「ティルフィング」

だから僕は決意した。

「行きたい場所があるんだ」

もうこれ以上、君の表情を曇らせたくはないから。

「ま、マスター!?」

彼女の手を取り、僕はある場所へと向かった。

575EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:54:55

「ここは……」

「うん、展望台だよ」

マスターと一緒に備え付けられたベンチへ座る。

「わぁ……」

雲一つない夜空には、幾つもの星が瞬いていた。

「ラグナロク王国にこんな場所があったんですね」

星空に向けて手を伸ばしてみる。

「いつか、君と二人でこの夜空を眺めたいと思ってた」

「そ、それは、私をデートに誘うつもりだったと思ってもいいんですか……?」

「うん。……初めてデートをしたときのこと、覚えてる?」

「も、勿論です!」

それは天上世界で旅をしてた頃の思い出。

「剣の特訓に明け暮れていた私を、街に連れ出してくれました」

洋服を試着したり、買い物をしたり、2人でお茶をしたり。

「皆で海に行ったりもして」

適当な理由をつけて、アナタを1人占めして。

「バレンタインにチョコレートをくれたこともあったよね」

「う……」

徹夜でチョコレート作りに励んだこともあった。

「料理が苦手だったなんて知らなかったな」

「そ、そのことは忘れてください」

アナタの前だと、私は普通の女の子でいられた。

それだけで、もう満足だ。

やっぱり私は、どうしようもない程に彼が好きで。

だからこそ傷ついてほしくないと想えるから。

576EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:55:33

「……マスター、お願いをしてもいいですか?」

「……うん」

例え、マスターの傍に居られないとしても。

マスターが誰を選んでも。

「また、私を連れ出して……」

こうして時々話してくれるなら、私は……

「今日みたいに、話をして貰えませんか?」

「そんなことでいいの?」

「はい、私にはもったいないくらいです」

「こうして私を普通の女の子として見てくれるのは、マスターだけですから」

これでアナタを諦めることができる。

「ティルフィング……」

マスターと正反対の方の夜空を眺める。

泣いてる姿を見られたくなかった。

「……綺麗な星空ですね」

「うん、月が綺麗だね」

ーーーえ?

マスターが呟いた言葉の意図を理解できず、彼の方へ振り向く。

彼は夜空ではなく、私を見つめていて。

「ん……!」

気がつけば、唇を奪われていた。

優しく触れ合うだけのキス。

「ま、マスター……?」

唇を離したマスターは、私の頬に伝っていた涙を指先で拭った。

「……僕は、君を普通の女の子として見ることなんてできない」

「僕にとって、君は特別だから」

彼と触れ合った場所が熱い。心臓がうるさい。

「で、でも、私が傍にいると、マスターは!」

「僕の願い事はずっと前から叶ってたんだ。3つの願いを叶えても、こうして僕はここにいる」

だから、もう心配しなくていいんだ、と彼は告げた。

「マスターの願い事って……」

「君と、その、両想いになれたらなって……。僕の自惚れじゃなければだけど」

もう堪えきれなかった。

嬉しくて、ホッとして、幸せで。

「自惚れな訳っ、ありません……」

「何百年も前から、ずっと、ずっと好きでした!」

優しく抱きしめられ、彼の腕の中で涙を流し続けた。

577EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:56:26

数十分程して。泣き止んだ私は、彼に寄り添い再び夜空を眺めていた。

「……マスターは大胆ですね」

「うっ、ご、ごめん……」

「ち、違うんです!その、キスされたことを咎めてる訳じゃありません!」

「3つめの願いを叶えて、もし何かあったらどうするつもりだったんですか……?」

私がナディアだった頃、ティファレトは「願いを3つ叶えた時何が起こるか分からない」と言っていた。

「考えてなかったな……、3つめの願いは地上世界を救うことだったから」

「え?そ、それって……」

「君と両想いになれたらなっていうのは、1つめの願いなんだ」

それが本当なら、

「ま、マスターはずっと前から」

「うん、君のことがす……」

「私の気持ちを知ってたんですか…!」

「あ、あ〜〜……」

マスターの目が泳いだのを私は見逃さなかった。

「ごめん、天上世界にいた頃に……。エロースに相談したら、きっと両想いだって教えて貰って」

「も、もうあの子は……」

「ま、まあ、良かれと思って教えてくれたんだと思うよ」

「それは、分かってますけど……」

納得がいかない。自分だけ何百年もヤキモキしてたと思うと尚更。

「マスターはエロースのことを庇うんですね」

「え、えーっと…、どうしたら許してくれるかな…‥?」

だから、これぐらいのワガママは許してほしい。

「……私のこと、ティルって呼んでください。それと」

彼の首に腕を回して顔を寄せていく。

「ん……」

愛しい人と唇を重ねた。

「……ティル」

「ん!んぅ……」

背中に手を回され、きつく抱き締められながら互いに何度も唇を求め合った。

今夜のことを忘れないように。

彼の腕の中で幸せに浸った。

578EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:56:58

マスターと手を繋いで、帰路につく。

「えっと、私達って恋人同士になったんですよね……?」

「そうだよ。……どうしたの?」

「こうしていると、恋人同士というより親子という感じがしてしまって……」

今は自分の身長が恨めしい。

女性として、彼に意識して貰えるかも心配になってくる。

「僕には、今も昔も君が魅力的に見えるけどな」

「あ、ありがとうございます……」

そんな不安を彼は吹き飛ばしてくれた。

「……でも、もしティルが恋人になった実感が湧かないっていうなら」

「恋人同士でしかできないことを、これから沢山していきたいな」

恋人同士ですることを想像して、顔が熱くなる。

「あ、あの……」

「ま、マスターさえ、良ければ……」

俯いて、蚊の鳴くような声で呟いた。

もしかしたら、今夜は眠れないかもしれない。

579EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:57:41

ーーーーーー

ーーー

「ティル……」

「ん……、マスター?」

「違うわ……」

目を覚ますと、レーヴァが私の寝顔を覗き込んでいた。

「あ、あれ…………?」

もしかして、さっきまでのことは……夢?

「マスターなら、さっきまでティルの横で一緒に寝てたわ……」

「そ、そうですか……」

昨日のことが夢じゃなかったことにホッとする。時計を見るともうお昼を回っていた。

「……あ!」

とんでもないところを親友に見られたことに今更気づく。

「あ、あの!ま、マスターと一緒に寝てたのは!!」

「マスターから聞いたわ。恋人になったって」

ちゃんとマスターが弁明してくれてたみたいだ。

「ティルに手を出したのかと思って、最初は思わずビンタしそうになったわ……」

「…………」

昨夜のことを思い出し、顔を赤らめてしまう。

それがいけなかった。

レーヴァはすぐに察してしまった。

「グーで殴るべきだったみたいね……」

「ち、違うんです!私はこんな身体のままですし、最後まではしてません!」

「ふふっ……」

優しく笑みを浮かべた親友を見て、からかわれてたのだと遅れて理解する。

「最近のレーヴァはイジワルです」

「私が寝室に入った時、マスターがティルの額にキスしてたわよ」

「も、もう!!」

恥ずかしさに堪えられず、毛布を頭から被る。

「ティル、ごめんってば」

「もう苛めたりしませんか……?」

「うん、約束する」

そう言ってるレーヴァはまだクスクスと笑ってるようなので、抵抗の意味も示すために毛布からちょっぴりだけ顔を出す。

「今日はコマンドキラーズの動向の報告に来たんだけど、ティルが珍しく寝坊してるって聞いたから様子を見に来たの」

「……レーヴァ、面白がってませんか?」

「最初は心配してたんだけどね……。ティルが寝込んでるところなんて、今まで見たことがなかったから」

実際は寝込んでた訳ではなく、朝まで寝かせて貰えなかっただけ……とは言えない。

580EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:59:18

ずっとベッドにいるのも悪いので、レーヴァに断り着替えを済ませた。

「もうちょっと、かな……」

「……?」

「こっちの話。……そういえば」

「ティル、この間私に会いに来た時、本当は何か相談したいことがあったんじゃないの?」

「……レーヴァには敵いませんね」

もしかしたら、それが今日私に会いに来てくれた本当の理由なのかもしれない。

「レーヴァは、私のキラーズについてどう思いますか?」

「……願い事を叶えるんだっけ?」

「そうです」

「…………」

レーヴァは悩んでいるというより、質問の意図が分からないといった感じだった。

「ティルには悪いけど、どうも思わないわ……」

「私のキラーズはレーヴァテインだけど、世界を9回焼き尽くせる力なんて出せた試しはないし……。ティルのキラーズの力で願い事が叶ったなんて思ってない」

「天上世界も地上世界も、この世界だって。皆で勝ち取った平和だから」

「それに、キラーズが何であってもティルはティルだし」

「レーヴァらしいですね」

素敵な親友を持てたことに感謝した。

「おーいレヴァ!マスターが戻ってきたぜ!」

「もう、待たせすぎ……。それじゃ私は帰るから」

「また遊びにいってもいいですか?」

「……うん、またね」

581EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 19:59:56

レヴァはティルフィングに甘いよなー、うるさい……と小言を言い合ってレーヴァ達は帰っていった。

レーヴァと入れ替わりでマスターが寝室に入ってくる。

「おはよう、ティル」

「おはようございます、もうお昼ですけどね」

「「…………」」

会話が続かず、何となく見つめあってしまう。

「何だか照れくさいね」

「そうですね」

でも、決して気まずい訳ではなくて。

「ティル、目を閉じて……」

「は、はい……」

目を閉じて、顎を上げる。

きっと、この時が一番幸せを感じられると、そう思っていたのだけれど。

「…………?」

いつまで経っても、待ち望んだ感覚は訪れなかった。

「もう目を開けていいよ」

そういって、マスターは私の手に何かを握らせた。

「これは……」

目を開けると、掌の中には指輪が光っていた。

よく見ると、自分の首にはネックレスが掛けられていて。

そのネックレスに指輪が通されていた。

「指輪のサイズは、身体が元に戻ったら合うように作って貰ったんだ」

「それまではネックレスとして使ってくれたら嬉しいな」

…………ズルい。

昨日、これ以上ないくらい幸せだと思っていたのに。

「もし、その時が来なかったら……?」

「変わらないよ。ずっと傍にいる。だから」

ネックレスに通された指輪を、両手で優しく握りしめる。

「僕と結婚してほしい」

マスターと出会って、私は泣き虫になったのかもしれない。

「……はい!」

涙を瞳いっぱいに溜めながら、彼と歩む道を笑顔で選んだ。

582EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 20:00:35

いろんなことがあった。

天上世界でのこと。

地上世界でのこと。

この世界でのこと。

数え切れない程の困難と、幾つもの試練に心が折れそうになることもあった。

でも、辛い時には必ずアナタが傍に居てくれた。

挫けそうな時には必ずアナタが支えてくれた。

誰よりも、何よりも信じてくれた。



ティルフィング。

持ち主の願いを叶える魔剣、それが私のキラーズ。

でも、関係ない。

斬ル姫ティルフィングではなくティルとして、彼は私自身を見てくれるから。

「ティル!」

愛しい人の声が耳に届く。

名前を呼ばれただけで嬉しいと思ってしまうのは、惚れた弱味なのかもしれない。

好き、大好き。

心の中でそう呟く。

「ーーー」

彼の名を呼ぶ。

アナタも同じことを考えてくれてたら嬉しいな。

幸せはここにある。

胸元で指輪が優しく輝いていた。


Fin

583名無しさん:2019/08/15(木) 20:05:26
アルマスLOVEを書いてくれた人だな!
今回はティルか!良いぞ〜これ!

584EPILOGUE ティルフィング:2019/08/15(木) 20:07:08

最後まで目を通して頂いた皆様、ありがとうございます。

ゆるり管理人様、R-18描写はカットしてますが、それを想起させるような文を掲載するのがマズければ訂正して再投稿しますので指摘の程宜しくお願いします。

マスターの皆さんが少しでもティルのことを好きになってくれたら嬉しいです。

お目汚し失礼しました。

585名無しさん:2019/08/15(木) 21:01:52
アルマスの時も言った気がするけど、なんだこれ天才かよ?

586名無しさん:2019/08/15(木) 21:58:46
ギル出してくれてありがとう。ティルとの距離感がなんかもう。自分にストライクです

自分は読んでて長いとは思いませんでしたよ。掲示板という形ですし書き手の入れたいシーンは全部入れて書き手の満足な長さで書いていいんじゃないですかね
答えになってるかはわかりませんが自分はそう思います

587名無しさん:2019/08/16(金) 00:26:06
ブラボー!読みやすくて、甘酸っぱくて今回も良かったです!

588名無しさん:2019/08/16(金) 01:08:55
やっぱ本物にはいっぱいコメつくんすね
いいぞいいぞ〜

589名無しさん:2019/08/16(金) 01:11:16
なんで好みなだけで本物とかそういうこと言うかな

590名無しさん:2019/08/16(金) 01:16:27
他の方々が書いたのは道化の遊びとでも思っているんじゃないですか?
俺はSSを書いてくれるだけでもありがたいもんだけどな

591名無しさん:2019/08/16(金) 01:18:49
受容に関して言うのであれば、アルマスとティルは見たかったけど見れないものに準拠するからしゃーない

592名無しさん:2019/08/16(金) 01:26:02
ここもゲーム同様特定のキャラだけが生き残りそうだな

593名無しさん:2019/08/16(金) 01:26:06
あれなんかな?やっぱり人気のキャラだからかなぁ
言い方が悪いけど順位が中途半端なキャラとかマイナーなキャラはやっぱり受けが悪いのかなぁ
SSをちょいちょい書いてる俺には少し悩ましい問題だな
書きたいキャラのSSを書いても人気がない受けが悪い偽物なんだろ?
スクラップに陥った作家の気持ちを感じる

594名無しさん:2019/08/16(金) 01:30:52
優遇キャラのSS→当然多くコメがつく
不遇キャラのSS→当然多くがスルー

コメ数で計るのはナンセンス

595593:2019/08/16(金) 01:47:56
少し考えたら急に目が覚めた
だいたいここは掲示板であって運営ではない人気があるないとか需要があるとかないとか人気があるキャラ、マイナーキャラ関係ない!
コメントを貰うことが全てじゃない!言葉がなくても面白いと思ってくれたり楽しんでくれてる人は少なからずいる!見える言葉が全てじゃない!
そりゃあコメントされれば人気があるかどうかなんて解るよけどここはしたらば掲示板ファンキルSSスレ管理人さんが提示したルールにのっとり好きなSSを書いて良い場所
人の書いたSSを侮辱するような奴がいたら自分でやってみろ!って話だ!
ルールを守り自分の好きなキャラのSSを書く場所
誰かに命令されたり文句を言われる筋合いはない
自分の書きたい自分の好きなキャラのSSを書けば良い自己満と言われて結構結構、自分の愛するキャラのSSを書いてなにが悪い!
文句がある奴は一生ここに来るな!
ここは自分の描きたい物語を描く場所、人が描く物語に文句はご法度(ルール破りは文句言われて仕方ない)
自己満がないとキャラ愛なんて語れない
遠慮してる人がなら書くべきだ俺にとってはここに載ったSS全てが本物
人は多種多様、色んなSSを書く人がいるならその数ほど読む人はいる好みが合うことなんて余裕
SSを書くこれこそに一番の価値がある

そう自分に言い聞かせたらすっきりした
これからもSSをどんどん書いて行こう!

596名無しさん:2019/08/16(金) 01:49:25
SSは書いてくれる人が居るだけでもありがたいと思うんだがなぁ
今までマイナー姫とか関係無くどれも愛がある内容だったし
コメントは人それぞれとしか言えないけど…あまり比較とか差別的なのは見てるとちょっと嫌になるな…

597名無しさん:2019/08/16(金) 01:52:56
そういうのは気にせず自分が面白いとか好きだなと思ったものはそれで十分
書いてる人はこれを読んで楽しんでる人がいるそれを頭の隅に置いておけば十分
楽しみ方なんて人それぞれなんだから

598名無しさん:2019/08/16(金) 01:57:45
>>595
あ、後追記でSSは自分が楽しくないと書けないと俺は思う

599名無しさん:2019/08/16(金) 03:15:45
>>593
スクラップで草

600チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 09:46:18
チャレンジアロンちゃん9

これはアロンダイトをバカにするものではございません出来ないアロンを愛でるためのものです

マスター
「久々にチャレンジのネタ持ってきたよ」

アロンダイト
「なんか本当に久しぶりな気がします」

マスター
「はい今回はこれ」

アロンダイト
「縄跳びですか?」

マスター
「なんか今までアロンが確実に出来なさそうなものばかりだったから今回は行けんじゃないの?って言うのを持ってきた」

アロンダイト
「縄跳びでパフォーマンスでもするんですか?」

マスター
「1人でやるものじゃない気がする」

アロンダイト
「それじゃあ色々な技にチャレンジですね」

マスター
「まあ今回はアロンが出来る範囲のをやっていこう」

アロンダイト
「私縄跳びは結構やりますよ」

マスター
「そうなんだ」

アロンダイト
「ダイエットにも良いので梓弓と時々やってます」

マスター
(たぶんそれは跳んだ際ポヨンポヨン跳ねるアロンのおっぱい目当てだろ....)

601チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 09:58:19
>>600
マスター
「でも縄跳びの技って良く知らないんだよな」

アロンダイト
「そうですね私も一般的に知られているものと競技で使うSCC,SOO,SSO,TJ,EK,トリプルアンダーAS,トリプルアンダーCL,ジャーミー,SEBOくらいしか知りません」

マスター
「あーごめん全然わかんない」

アロンダイト
「それにマスターが知ってるものでないと失敗したかどうか判断出来ませんし」

マスター
「それはアロンの自己申告で良いんじゃないの?」

アロンダイト
「それで私が不正したらどうするんですか!?」

マスター
「それ自分で言う?」

アロンダイト
「自分で言います」

マスター
「ああそう」

アロンダイト
「そうですね今回は6重跳びにしましょう」

マスター
「6重跳び?」

アロンダイト
「2重跳びの2が6になっただけです」

マスター
「2が6になっただけってそれでも大変そうな気がするけど」

アロンダイト
「それならいっそうチャレンジのしがいがあります!」

マスター
「まあ頑張って」

アロンダイト
「行きます!」

602チャレンジアロンちゃん:2019/08/16(金) 10:06:46
>>601
アロンダイトはものすごい勢いで縄を回し跳んだ

マスター
「おお...」

マスター
(速すぎて全然わからん)

マスター
(ただわかるのは)

アロンダイトが勢い良く回しすぎたのか地面がえぐれていた

マスター
(アロン力強すぎ)

アロンダイト
「マスターどうでしたか?出来ていましたか?」

アロンダイトはキラキラと目を輝かせて聞いて来た

マスター
「あ...ああ良く出来てたよ」

アロンダイト
「よっしゃーー!」

アロンダイトは嬉しそうに手を強く握り空に掲げた

マスター
(ああやっぱりアロンはキル姫なんだよな)

マスターはえぐれている地面を見てそうも思ったが嬉しそうにしているアロンダイトを見てやっぱり女の子なんだなとも思うマスターなのであった

603名無しさん:2019/08/16(金) 10:20:18
>>601
まさかの縄跳びガチ勢
梓弓の眼光が冴え渡るッ!

604名無しさん:2019/08/16(金) 13:09:51
使った縄は宇宙船の素材とかで使われてそう

605名無しさん:2019/08/16(金) 13:10:09
えぐれた地面に引っ掛かってコケないかヒヤッとしたが無事に成功、たまには出来るのも良いよね

606EPILOGUE ティルフィング:2019/08/16(金) 17:54:44

意見・感想をくださった皆様、ありがとうございます。

こうして書いたSSを見て頂き、何か少しでも心に残るものがあればとても嬉しいです。

ただ自分は596さんと同じ意見で、他の方のSSを楽しみにしてる読者でもあるので、自分自身が意見を貰う際の配慮が足りなかったように思います。

意見を頂いてる身で申し訳ありませんが、今後は他のSSを上げてくださった方と比較したものではなく、純粋にSSの内容について触れて貰えると嬉しいです。

ワガママばかりですみません。
今後もSSを投稿することがあれば、宜しくお願いします。

607名無しさん:2019/08/16(金) 18:00:50
作者さんは悪くない
悪いのは他作者を煽るような感想を書き込む奴らだ

608名無しさん:2019/08/16(金) 18:02:10
>>607
激しく同意

609名無しさん:2019/08/16(金) 18:25:27
>>607
せやな。コメントが無いって言っても、コメント書く側としては自分の感想コメでスレを埋めても良いのか配慮したり
たまたまスレが早く流れて作品を見逃してたとかあるからな
それに単純にマナーとモラルの問題やし、作者は悪ない

610名無しさん:2019/08/16(金) 23:20:35
ROM勢のSS読者もいるだろうし感想コメ数が全てではないと思ってSS作者さんたちにはこれからも神作品をたくさん投稿していただけたらと思う

611プリキュア系?パロディ:2019/08/17(土) 23:25:29
※初投稿の単発ネタです、誤字脱字ありましたら、その時はすみません




「あー!遅刻!遅刻!…っと、行ってきまーす!」

私の名前はアルマス、ロストラグナロク高校に通う普通の高校1年生!

…だったんだけど、突然人間が人外の存在に支配される現象、霊装支配〈ギアハック〉で魔獣に支配された弟のギルを助けたい、私がそう願った時

「アルマス!鞄を忘れてますよ。」

「ありがとうティニ!」

異世界ティルヘルムから来た妖精、ティターニアのティニと妖精結合〈テイルリンク〉して私は伝説の天使、斬ル姫に絶!変身!その力で無事にギルを助ける事が出来たわ

「昨日セットしたのに何でアラームが止まってたのよ、絶あり得ない!…まさか地底世界〈アビス〉の仕業!?」

「アラームが鳴ってもアルマスが寝てただけで地底世界は関係ありませんよ、来たら私が分かりますから。」

そして今はティニがこの世界に来た理由、霊装支配で人々を苦しめる悪の組織の地底世界と戦う正義の斬ル姫に私はなったの!

「…そうだった、だけどいつでも来なさい地底世界!世界の秩序を取り戻す、それが私達の使命なんだから!」

「…今来られたら、遅刻しますよ。」




おわり

612名無しさん:2019/08/18(日) 01:34:35
わりとそれっぽくて草

613名無しさん:2019/08/18(日) 14:52:58
なかなかこういうのでいいんだよ的なのがこないな

614名無しさん:2019/08/18(日) 15:27:48
そりゃあ人の書きたいものはそれぞれなんだから期待してるものが来るとは限らないだろ

615pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:04:14
『530からの続きです』





 鎗というよりはハルバードに近い形状の長鎗を方天画戟は体の一部のように使いこなし暴風のようなラッシュをかける。

 払う。薙ぐ、回す。叩く。振り下ろす。掛ける。捻じ込む。斬る。翻す。刺す。突き上げる。

 鎗は剣と比べても選べる技の選択肢が格段に違う。さらに先端に斧やウォーハンマーを装備可能なハルバードが放てる技の数は刺突を基本とする鎗の数倍。
 アロンダイトは吹き荒れる技の嵐を神業じみた合わせで防ぎきる。
 方天画戟が暴風なら、アロンダイトは神風だった。
「そう例えるなら、デュランダルは突風でしょうか……、一瞬の勢いなら台風すら貫けるほどの」
「なに言ってんだおまえ!」
 疾風の追撃。
 それはアロンダイトが大剣を寝かせ盾のように構えたことで弾かれた。
「何度繰り返しても、技量なら私の方が上のようですね。私の体に届いていませんよ。あなたの鎗」
「そうだな。繰り返しだな。さっきから」
 方天画戟がバックステップで距離を取る。
「少し、大技使うぞ」
 その長鎗の先から禍々しい黒い光が溢れだす。

 キィィンと空気が烈震した。

 燃えるように黒く輝く長鎗を構える。低く。低く。肉食獣のように。
 にィィっ。と方天画戟の口角が釣りあがり凶悪な笑顔を形成した。
「これで死ぬんじゃねえぞオラァッ!」
 鋭く踏み込み。全身をしならせたアンダースロー。その結果、爆発的な速度で長鎗はアロンダイトへと射出された。

「—―――投げっ!?」
 アロンダイトは体を反転させ全力で床を蹴って後退した。
 だがそれも予想以上の速度で飛翔してくる長鎗には間に合わない。
 ガチッ、と突き出された剣先に触れわずかに軌道を反らした後。
 剣を突き出した右腕に導火線のような赤い筋が走った。一瞬後、血の赤線に沿って毒々しい黒い光が油を注いだ炎のように噴き上がる。
「—―――――――ッ!」
 腕の皮膚が溶けて、焦げて、焼けていく。かつてエドゥーで熱した鉄棒を押し付けられた時に似た痛みに言葉にならない悲鳴を上げて鎗の勢いに巻き込まれたかのようにきりもみ回転して床に倒れこんだ。
 遅れて、ドン! という轟音。
 アロンダイトの右腕を掠めて飛んで行った方天画戟の長鎗が背後の壁を爆散させた音だった。
 ぐりり、とアロンダイトは発狂しかねない痛みに耐えながら転がりながら背後の壁を見る。
 その先にはまるで大きな彫刻刀でも挿しこんだかのように壁にマンホール大の穴が穿たれていた。
 破片などは一切飛び散っていない。方天画戟の槍のあまりの威力に目で見えないほどの塵へと分解されたかのようだった。
 有体に言えば丸ごと食い破られたかのようだった。
 アバドン。
 町を丸ごと滅ぼす蝗の大群をモチーフに生まれた悪魔。農作物や衣服、木材から動物まで一切を喰らい尽くす捕食者の化身。
 それは、自分は食べる側なのだと宣言するかのような一撃。

616pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:05:05

奈落から来る捕食者(方天画戟)
・攻撃時に確率発動。三百%威力の攻撃を繰り出し、デュエル後、相手の背後二マスの敵に自身の物理攻撃力の二十%分のダメージを与える※ デュエル後のダメージで撤退させられる




◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 放たれた長鎗は一人でに方天画戟の掌に帰ってきた。
「すげえだろ。これがオレのスキルってことになるのかな」
 粗暴な薄ら笑いを浮かべ、倒れ伏すアロンダイトを見下ろす方天画戟。
 嘗め切っているのか追撃はない。アロンダイトが立ち上がるのを待っているようだった。
「確かに……強いのかもしれませんね」
 痛みのあまり頬を流れていた涙を振り払い。ゆっくりと弱弱しくアロンダイトは立ち上がった。長鎗が掠めた右腕の傷口は焦げて炭化しており動かすと焼きすぎたパンのような炭がボロボロと落ちた。
 ここまでの傷を受けてなおアロンダイトの瞳には諦めの色はない。
 その証拠にボロボロになった右腕に未だ大剣『シトゴロシ』が握られている。
「ですが私はまだ立っている! あなたの鎗が真に必殺というならば。それは大言壮語と言わざるを得ません!」
 自信を鼓舞するように叫んでアロンダイトは立ち向かう。
 その態度と言葉に方天画戟は、
「ほう。ま、それもそうだ」
 苛立つでも、嘲笑うでもなく冷静にアロンダイトの言葉を受け止めた。
 たしかに方天画戟は先ほどの一撃で首を吹き飛ばすつもりだった。
 必殺。と名乗った覚えはないがそのぐらい自負はある。
 それが破られたのはいささかプライドに傷がついた。
「なら、もう一度だ。防げるもんなら防いで見せろ」
 先ほどとは比べ物にならないほどの殺気と闘気が放出される。
 アロンダイトも感覚のない右手を左手で包むようにして大剣を両手持ちに変えて受け止める態勢に入った。
 今のアロンダイトでは回避は間に合わない。それならば守りに入った方がいいと考えたのだろう。
「上等だ……」
 ひゅんひゅんと長鎗が回転し方天画戟の肩にまるでロケットランチャーのように構えられた。
 長鎗が黒い光を放つ。その不気味な光は鎗に蓄えられたエネルギーを象徴するかのように鼓動のリズムで明滅していた。
「が、ルァアアアアアアアアアァアアアアアァ―――――――ッ!」
 そして今、鎗に充填されたマナが方天画戟の手を離れ、荒れ狂う。

 —――――――ばすん!

 その時、特徴的な砲撃音が炸裂した。
「……え」
「あん?」
 二人の斬ル姫の声がそろった。
 方天画戟の体からは白い煙が上がっており砲撃を受けたのは彼女だとわかる。
 続いてばすん! ばすん! と二度目、三度目の砲撃が方天画戟に叩きこまれた。
「ああ、そういえばこんなのもいたな」
 アロンダイトと戦闘しているときの嬉々とした雰囲気から一変してつまらなそうに呟く方天画戟。
 その視線の先にいたのは白い鎧に大型の銃を構えたキトだった。
「なにをしているのです! 早く逃げなさい!」
 キトがアロンダイトへ叫ぶ。アロンダイトは反応せず、愕然とキトの方を見ていた。その顏が青ざめている。
 方天画戟の長鎗に当たった時でさえみせなかった表情だ。
 ばすん! ばすん! とその間にも銃から撃ち出される風のマナの塊を方天画戟は真っ正面から受け止めていた。当たるたびに緑色の閃光が瞬くが、方天画戟は微動だにしない。
 ただ青い髪の三つ編みがバサバサと舞った。そして、
「邪魔だ」
 気だるげに方天画戟から放たれた言葉。そして長鎗。
 それらは真っすぐ正確にキトの胸の中心を貫通していった。

617pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:06:00
「ギぁっ!」
 何の力も籠っていないその投擲を斬ル姫でもない一般的ハルモニア兵のキトは避けることができず、がくりと膝をつく。
「…………っ!」
 そこでようやく凍り付いたように固まっていたアロンダイトが動いた。
 大剣を左手に持ち替え、キトへ走りよるとその体に左腕でラリアットをかけてそのまま連れ去っていく。
「おい! 逃げるのか! まだ終わってねえぞ!」
 戻ってきた長鎗を握り、方天画戟がアロンダイトの背に吠える。
 今の両者の間合いは十メートル。方天画戟の長鎗はだいたい二メートル。残り八メートルの間合いなどこの槍兵にかかれば一息で詰められる。
「……あぁん?」
 だが方天画戟は動かなかった。
 否、動けなかった。
「なんだこれ、足が……」
 方天画戟の両足が床に釘で打ち付けられたように持ち上がらなかった。
「お、おい! 待てよ! 待てって! こっちは動けねえんだ! 卑怯だぞ!」
 もがく方天画戟に目を向けることはなく、アロンダイトは一人のハルモニア兵とともに彼女の視界から去っていった。



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



・移動不可(三国兵)
攻撃時、五十%の確率で二ターンの間移動不可を付与



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 方天画戟から逃れたアロンダイトとキトはひとまず船の幾つかある武器庫の一つに入った。
「どういうことか説明してもらえますか!」
 壁に叩きつけるようにキトを投げおろしたアロンダイトは開口一番そう問い詰める。
 方天画戟が動けなくなったのはキトによる銃の効果(移動不可)によるものだ。キトの攻撃によってアロンダイトは救われたともとれる状況であったが、アロンダイトはそれに気が付く余裕がないほどに動揺しているようだった。
「今すぐ納得のいく説明をしてください!」
 大剣を壁に突き刺し、左腕一本でキトの胸倉をつかみ上げる。
「……何の説明をしましょうか?」
 その手の中でキトが絞り出すような声を出した。
 ぴちゃん。キトの胸から垂れた血液が雫となって床に落ちる音。
「あっ……」
 その時になってようやくアロンダイトは自分が体に穴が開いた怪我人を乱暴に扱っていたことに気が付きキトを静かに床に寝かせた。
「それで、何が聞きたいのです」
 致命傷とは言わないまでも命に関わるレベルの傷を負っているのに気丈なのか痩せ我慢かキトは普段通りの口調で再度聞いた。
 アロンダイトはそれに同情するでもなく切りつけるように答える。
「あなたの銃。あれはあなた専用の物なのですか?」
「そうですが何か? 私は潔癖症でして。他人が使った武具は、それは例え部下が触ったものであろうと使いたくないのです」
 なぜ今それを聞くのだろう。不思議そうにキトは答える。
「ではあの銃声はあの銃からしか発せられないのですか?」
「そうですね。あれは私が手ずから調節した銃です。風のマナが砲筒を抜けるときの天使のラッパにも似た音は……」
「同じ音はあなたが引き金を引いた時にしか鳴らない音なのですね?」

618pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:06:42
 キトの語りを途中で止めてまでアロンダイトは重ねて尋ねた。
 その表情は愕然としている。子供の作り方を知ってしまった幼子のような、それ以上知ってはいけないという理性のブレーキと好奇心という本能がせめぎ合っているような複雑な表情だった。
「あの日、つい昨日なのでしょうか……私たちトレイセーマ軍のハルモニア軍が『大穴』でぶつかったあの戦い……」
 アロンダイトは慎重に言葉を選びながら話した。
「私の記憶違いでなければ、あの戦いの原因となった銃声……あなたの銃の発砲音とまったく同じなのですが?」
「ああ、あれは私が撃った音です」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「え……」
 アロンダイトは自分の耳を疑う。

 あの日、ハルモニアの砦に魔弾が打ち込まれた。その犯人はトレイセーマ軍にいると言ってハルモニア軍はトレイセーマに進軍してきた。
 深夜鳴り響いた一発の銃声。それが原因だった。
 そして結果としてトレイセーマ軍は瓦解し『大穴』から撤退。追撃するハルモニア軍を足止めするために一人残ったアロンダイトはハルモニアに捕縛され、船で護送されることになった。
 それも元を正せばあの一発の銃声が原因だった。

 今、目の前のハルモニア兵はその銃の引き金を引いたのは自分だと確かに宣言した。
「な、なんで……」
「そうですね。端的に言うなら貴女が欲しかったからです」
 悪びれもせずに語るキト。アロンダイトにはその言葉の全てが分からなかった。
「な、なぜトレイセーマ陣に進軍してきたときはトレイセーマ側が撃ったなどと嘘を……」
「だってそうしないと戦争が起こせないではないですか」
「わかりません! 順序立てて説明してください!」
「……難しいですね。まず、私はハルモニア砦に着き、トレイセーマ陣を見た時にアロンダイト。貴女を見つけた。貴女という斬ル姫はハルモニアにいるべきだと思った。だから戦争を起こした」
 一瞬わけがわからなかった。
 だがそのすぐ後、貴女が欲しい。戦争が起こせない。アロンダイトの中で二つの言葉がイコールで繋がった。
 だがその事実が信じられない。
こんなおぞましいことを行う人間がいるだろうか。
目の前にいる。

 キトはアロンダイトをハルモニアに引き入れようと思った。
 だが仇敵トレイセーマから話し合いで手に入れることは不可能。戦争で奪い取るしかない。そしてハルモニアとしても一軍を動かすにはそれなりの大義名分が必要だ。アロンダイト一人を手に入れるという私欲を覆い隠せるほどの建前が。
 それが銃声だった。
 深夜、誰も見るものがいなくなった時、ハルモニア砦の外壁にキトは魔弾を撃った。本人のマナを大量にチャージして放たれた魔弾はハルモニア砦のみならずトレイセーマ陣へと届くほどの銃声を生み出す。
 その結果、ハルモニアの大多数(キトを除く)はトレイセーマかケイオスリオンの攻撃だと疑い、混乱する。
 そこへキトがトレイセーマの攻撃だと断定し、反撃するなどと言えば自然とハルモニア兵たちはトレイセーマへ進軍する。

619pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:07:19
 これがあの夜の真実だ。


「だからと言って何年も均衡を保ち、不干渉を続けていた三国のバランスを崩すようなことをなぜできるのです!」
「それで何か悪いことが? トレイセーマは瓦解し、ケイオスリオンも巻き添えで撤退し、ハルモニアは勝利し貴女は我々と共にある。何も問題ないではないですか?」
「人が死んだじゃないですか!?」
 怒りをあらわにするアロンダイトにキトはあくまで不思議そうに首を傾げる。
「それは死ぬでしょう。戦争をしたのですから」
「ハルモニア側も! あなたの部下だって何十人も亡くなったのですよ!」
「それは悪いことでしょうか?」
 キトに罪悪感は欠片もなかった。
 むしろ出来の悪い教え子を諭すように語る。
「これも全てアロンダイト。貴女一人を手に入れるという結果が手に入ったことでそれらの犠牲も許されることなのですよ。おまけにトレイセーマとケイオスリオンを浄化できたことでお釣りが出てもいいくらいです。
 アロンダイト。大いなる理想に殉ずるためであればどんな犠牲も数にはならないのですよ」
「彼等には、ハルモニア兵だけではありません。トレイセーマの方々だって、ケイオスリオン兵だって、自分の意思も生きる希望だってあったはずなのにあなたの勝手な行動で捨てなくてもいい命を捨てたんですよ! 少しでも罪の意識はないんですか!?」
「貴女という武具が加われば神聖ハルモニアの理想が世に広まるまでの時が縮む。それだけのことです」
 キトの兜の隙間から血が垂れた。平気そうに見えるが時間がそれほどないらしい。
「人は愚かなものです。欲望に際限はなく。その果てには家族だろうと容赦なく争う。ケイオスリオンのように力のみが真実だと戦いあって。その先に何がありますか? 万人の万人による闘争の末に国土も人民も疲弊し痩せ細るだけでは?
トレイセーマもよくない。あの国には未来がない。平等であるだけです。得手不得手や個性を認めず全員が全員同じことをしていては発展するものもしない。いずれ限界の来るシステムです
 資源は無限ではないのですよ。幸福と言い換えてもいい。現実的に考えて幸福は世の中全員に行き渡るものではないです。だからこそ教皇様のような方が必要なのです。人々に階級を与え、幸福を配分する優先順位を決定してくださる絶対的な方が。
 人もイミテーションも選ばれなくてはなりません。順番を決めねばならないのです」
 キトは一息で言い切ると血混じりの咳をした。
 近くのまだ破壊されていないガラスケースを指さす。
 その先には緑色の液体の入った瓶が一本だけあった。
 極生命水。とラベルがされている。
「あの薬を飲んでその右腕を治療しなさい。貴女は選ばれた者です。選ばれし武具です。選ばれた一級の武具は常に最高の状態でなくてはならない」
 それは宝物室室長としての言葉だったのだろう。
 人の命をあっけなく切り捨てる人物ではあったが、その命の軽視には自分の命すらも含まれているのだ。
 自分の胸の穴よりアロンダイトの負傷を優先すべきと判断した、
「………………………」
 この人物を断罪することはできない。
 アロンダイトの心の中からキトに対する怒りはいつしか萎えていた。
 代わりにこんな人をこれ以上、生み出してはならないと強く思った。
 やはり、ハルモニアに正しさはない。
「この薬はあなたが使ってください」
 アロンダイトは取り出した生命水を横たわるキトの傍らに置いた。
「なっ、止めなさい! その右腕でどこに行くのです!」
 今度はキトが動揺する番だった。震える手で生命水の瓶を掴むと背を向け部屋を出るアロンダイトへ差し出す。

620pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:07:57
アロンダイトは振り返らずに言う。
「私は負けません。生きてここを出て、トレイセーマへ帰ります」
 それは静かな決別の言葉だった。
 その言葉に込められた思いを多少は感じ取ることができたのかキトは黙り、その背に謎かけのような言葉を贈る。
「貴女は百人の人を生かすためにその中の三人を犠牲にしなければならないとわかれば私は吟味して三人殺します。貴女はどうしますか?」
 それはキトなりの殺し文句だったのだろう。
 対して、アロンダイトはきっぱりと答え、去っていった。
「百人の人に任せます」

 例え誰かが死ななくては全滅するのだとしても、死ななければいけない誰かを本人の意思を無視して他人が選ぶのは間違っている。全員がそれぞれの判断で生きるか自己犠牲かを決めるべきだ。
 そう思う。

621pixivにあげたけど掲示板にも書きたくなったマスター:2019/08/18(日) 16:09:19
今回はここまでです。次がラストバトルなのでもうすぐ終わります




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