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【アク禁】スレに作品を上げられない人の依頼スレ【巻き添え】part2

1名無しリゾナント:2011/01/18(火) 17:04:23
アク禁食らって作品を上げられない人のためのスレ第2弾です。

ここに作品を上げる → このスレの中で本スレに代理投稿する人が立候補する
って感じでお願いします。

(例)
>>1-3に作品を投稿
>>4で作者が代理投稿の依頼
>>5で代理投稿者が立候補
>>6で代理投稿完了通知

立候補者が重複したら適宜調整してください。ではよろしこ。

573名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:53:35
 「だけどね、それで少し良かったって思うことはあるよ。
 泣けないなら、笑えばいい。
 だってそうすれば、いろんなことが良い方向に進むような気がしない?
 後ろ向きに考えるよりはさ、生きてるならきっと、その方がいいよ。
 死んだあとのことなんて、人間は考えないんだから」

彼女は鼻歌にメロディを口ずさむ。
流行りではないが、それでもなんとなく気に入っていて、無意識の
うちに口に出してしまうくらいの歌。
心地よかった。意味はない、ただ、心地よかっただけで。

日常の中で、誰もが他人に無関心になる。
"此処"にいる殆どの人間もそうで、そいつの存在自体がまるで最初
から無かったかのように。
しかし彼女はそんなことを傍から理解していて、そしてむしろ、状況を
楽しんでいる節もある。
実際、楽しもうとしていた。

 「だから変にディスられてるのも知ってるよ。アハハ。
 まあそうだよね、皆やっぱり、心のどこかでは悲しんでるのに、私だけ
 気持ち悪いくらいニコニコして立ってるんだから。
 でもさ、逆に考えてもいいじゃない?悲しむだけ悲しんでさ、それで
 見ぬふりするより、背負った方がいいでしょ?」

誰もが全てを見えているというワケじゃない。
全て見えると思っているだけで、全てを見た気になっているだけで、実際のところ
目に見えるモノなど小指の先ほどの事柄しかない。
しかもそれは決まって、他人にはどうだっていいことなんだ。

574名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:54:09
そんな事を思うと、彼女は愉快になって軽く吹き出しそうになったが、口元を
ゆるめるだけに留めてくれた。
感情なんて、余計なものだと思う。

 「私さ、ずっと笑ってたいんだよね。そんな場合じゃないっていうのは
 判ってるんだけどさ。無理に笑ってないのだけは覚えててほしいな。
 きっとさ、神様のきまぐれなんだよ。私にそうやって背負えるように
 涙を与えなかっただけ。涙だけなら、安いものじゃない?」

彼女はテーブルの上のコーヒーカップに手を伸ばす。
湯気を立てるそれをのぞき込むと、コーヒーの香りとミルクの匂いが
同時に漂ってくる。
コーヒーは正直苦手だけれど、ミルクを入れればそれは別の代物へと変化する。
口が緩むことに躊躇すると、彼女が代わりに笑った。

日常にリアルを求めること自体がすでに不自然だった。
日常こそがすでに非日常で、感覚の麻痺した世界でリアルなど存在しない。
現実感などずっと昔に失くしてしまっているのだから。
最初からそんなモノは存在していないかのように。

最初からセカイは、全てが失せている。
それなのに。

 「じゃあさ、もしもどちらかに何かがあった時は、どちらかの気持ちを
 互いに渡そう。欠けたものを渡し合おう。
 いらないかもだけど、迷惑かもだけど。こんな歪んだものなんてきっと
 好きにはなってくれないかもだし、言ってる時点であれか、アハハ。
 でもまあ、私は嬉しいかな、―― が泣いてる姿、けっこー好きなんだよね」

575名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:55:20
泣けない彼女と、笑えない自分。
神経の異常なのか、障害の一種なのかは分からない。
そんな知識の必要がない場所に、自分達は居るのだから。

笑えない代わりに、涙がなんの前触れも無く、流れることがあった。
恐怖も絶望も感じてないはずなのに、それでも人間は本能的に
感情を浮かべるようになっている。

 それが自分にとってどんなに目ざとく思っていても。

気がつけば"組織"にいて、気がつけばヒトゴロシだった自分達。
ときには強引に殺し、ときには事故に見せかけて殺し、ときには消し去るように殺す。
研究員たちは"チカラ"のことに関して両目を輝かせ、ヒトゴロシを
する自分や彼女に対しても恐怖と、好奇と、絶望と、希望と。
様々な色と、音と、歌と、血と、人と、死と。

だけど誰が悪いのかなんて、判らなかった。
自分達が悪いのかもしれない、研究員が悪いのかもしれない。
何が悪いのかが分からないけど、どうして悪いのかが分からないけど。

 彼女が死んだ時に、自分は、全てを背負えただろうか?



 パンッ、パパパパパッ、パパパパパパッ。

複数の乾いたような、連続した音。
銃声。
分解から組み立て、その種類も能力も把握している。
音を聞けばそれが何なのか判った。

576名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:57:17
気付けば叫んで、常人には有り得ないような脚力で一瞬にして、彼女を
抱き上げ、その場から逃げ出す。
背後から銃声がして、数発が身体をかすめる。
途端に傷口から血が噴き出してきたが、走るのをやめはしない。

抱きしめる身体から少しずつ、確実に力が抜けていた。
それでもまだ暖かい。心臓が、鳴っている。
早かった鼓動が、少しずつ、ゆっくりに。

グッと、腕を掴まれる。
最後の力を振り絞るように、腕を、手を、自分の首に押しやった。
それはまるで、儀式のように行われた通過儀礼。

 「私さ、親友を殺したの。もう助からないって思ったから。
 私が肌に触れると、そこが砂になって、粒になって、灰になるの。
 身も心も血も、全てが燐粉になっていった。まるでヒカリみたいに」

"作戦"が失敗した場合、死んでも"組織"につながるような証拠は残してはならない。
外部に少しでも情報が漏れるのを防ぐために。
自分達の死体ひとつを残すことさえ許されない。
そうやって生まれたときから教育を受けて来て、それが全てだった。

 そして"作戦"は、失敗した。

 「私が殺してきた人達も、あんな風にヒカリになって、飛んで行った。
 蝶みたいに、私もさ、あんな風になれるかな?醜くてもいいから」

577名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 02:59:27
最後の言葉なんてものもなく、最後に受け止めるココロもなく。
"作戦"が失敗したという事実だけが残って、カラッポの世界だけが残って。
砂になって、粒になって、灰になる彼女を見上げた。

涙が溢れるのに、恐怖も、絶望もない、ただ、口角を強引に開けて、笑った。
歪な笑顔で笑って、笑って、笑って、笑って、笑って、ごめんと叫ぶ。

 「きっとこれも、神様のきまぐれなんだよ。
 このセカイも、あのセカイも、この"チカラ"も、私達もね。
 もしもどちらかが欠けたなら、探しに行けばいいの。このセカイも私で、―― も、私なんだから」

―― 私は、青空の下に居た。
小さなベンチに一人佇んで、何をすることもなく、眠ることも無く。
このまま地面に溶かされてもいいくらいに思えた。

 「どうしたの?まるで死人みたいな顔してさ」

なんて挨拶だと、思った。表情に浮かぶそれに、そっと言葉を乗せる。

 「親友が、死んだの」
 「そっか、私の親友も、さっき死んじゃったんだ」
 「…そう」
 「でもね、泣けないんだ、なんでだろうね。悲しいときにも涙は
 でるはずなのに、アハハ、ほら、変でしょ?うん、まあこんな事
 言ってもしょうがないんだけどね、アハハ。ねえ、そこ座っていい?」

陽の光に、目を細める。
アスファルトから飛び出したその花に名前を付けて。
そうしてまた日常が始まって。ただ願ってたはずのココロが微かに、笑ってた ―― 。

578名無し募集中。。。:2012/06/17(日) 03:09:26
「Whim of God」

以上です。だいぶ舞台の影響を受けましたってことでツヅカナイヨ。
名前を伏せたのは神様のきまぐれです、ウソです想像に
お任せという事でどうか。

----------------------------------ここまで。
ちょっと長くなりました、投下が難しいかも…申し訳ないです。

579名無しリゾナント:2012/06/17(日) 12:50:35
ふぅなんとかいけた
名前を描かなかったことで普遍的な広がりが感じられる仕上がりになってますね

580名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:31:01
>>189-192 の続き。

闇の中に、【闇】が浮かんでいる。
ユラユラユラユラ。
闇の空間をたゆたう影。
影は黒いコートに身を包み、フードを深く被っていた。
小柄な影。手のひらには三つの球体。

誰かは【ダークネス】と呼んだ。
悪意の塊。
悪意の記憶を糧として生まれた、それが【ダークネス】。

【闇】を満たす唯一の概念。
ただ、其処には何も無い、ナニモナイ。
満たされているから、満たされていると思い込んでしまう。
手では掴めない。
叫んでも答えてくれない。
ただ満たされてるだけ、闇が、在るだけ。

その【闇】に、影は球体を投げ込んだ。
誰かの悪意の記憶を零していく。

すると、闇の中の一部に裂け目が現れ、大きな口の形をしていた。
闇に落ちた球体。

 ムシャムシャムシャ…咀嚼音。

喰らっていた、響く、誰かを食べる音が。果てしなく続くような闇の中で。
グググググググググググググ。
闇が盛り上がるように『成長』する音が微かに鳴っている。
パキパキと枯れた音が無骨に。

581名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:32:37
 オオオオオオオオオオオオオオオオ。

【闇】が、啼いた。

 *

黎明学園敷地内。
二つの影がフェンスの裏側から入り込み、上手く闇に身を潜めながら校舎に近付く。
何処かに中に入れるところはないかと探していると、一ヶ所灯りの点っている場所を
見つけた。

 「…誰かいますかー?」

窓に近付いてそっと中をうかがった鈴木が言った。
そこは警備員が使っている宿直室のような部屋だ。

 「鍵もかかってないよ、不用心だなあ」

鈴木が窓に手をかけると、軽く力を入れただけでそれはゆっくりと動いた。
窓の隙間から、暖房の暖かい空気を感じることが出来た。
これでは警備も監視もないじゃないか、とは思ったけれど、そのツメの甘さに
今だけは感謝しようと思う、状況が状況なだけに。

 「じゃ、ここから入るよ」

鞘師はうん、と頷いた。


 ――― 鞘師が彼女の元に来たのは数時間前の事。
 鈴木は驚いた、心底驚いた。
 だって知るはずがないのだ、鞘師が鈴木の家を知ってるはずがない。

582名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:33:09
だけど鞘師は平然とサイダーを飲んでいて、鈴木もまたその手に持っていた。
本物だった。
しゅわしゅわしていた、「しゅわしゅわーぽんっ」とお決まりの言葉を言って
恥ずかしそうにしている鞘師は本物だった。
頭痛は、いつの間にか治っていた。

 「なんでクマがアフロなの?」
 「アフロヘアーに憧れた時期があったんだよ。ちゃーちゃんにも」
 「ちゃーちゃんって言うんだ」
  
そう言って鞘師は飾ってあったクマのアフロを鈴木に被せてニヤニヤ笑っていた。
鈴木はアフロ頭のままで疑問を聞いてみる。

 「で、なんでりほちゃんがいるのさ」
 「お見舞いだよ」
 「あたし、家教えたことないよね?」
 「うん」
 「いや、うんじゃなくて、誰かに聞いたの?」
 「うん」
 「誰?」
 「宇宙人に」
 
鈴木はサイダーの瓶を鞘師の頭に振り落とすフリをした。
流れるように避ける鞘師。
壁にドカッと頭をぶつけてしまい、手でさする鞘師。
いろんな意味でアホだった。

 「痛いよかのんちゃん」
 「りほちゃんが変なこと言うからだよ、しかもあたし何もしてないよ」
 「でも聞いたのはホント、信頼できる人だから大丈夫」

583名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:39:00
信頼してる割には宇宙人呼ばわりとは。
個人情報のセキュリティが期待できないこの時代。
ただそこまでしてこの家に来た訳がなんなのか、それが知りたくなった。

 「で、なんでりほちゃんがいるの?」
 「かのんちゃんにお願いしたいことがあるの」
 「お願い?」

鞘師はまた薄い笑みを浮かべた。
けなしている訳ではないんだろうけど、何かを企んでいる様な笑顔。
引いた表情をすると、今度は口を開いてイヒヒと笑う。

 「かのんちゃんだから、お願いしたいことがあるんだよ」
 

――― 二人はソロソロと足音を消しながら、まるで泥棒みたく
身を小さくして、廊下を進んで行く。

学校というところは、昼間は人の声で溢れている場所も、今は
逆に音を吸い込んだように静まり返っている。
油断すると傍らの闇に引きずり込まれてしまいそうな錯覚に襲われる。

だが、鈴木は平然としていた。
お化けが居ると思うから居るように思うのだと思ってる。
気味が悪いと思うから変な想像をするのだと思ってる。
空気が読めないわけではない。
断じて読めないわけではない。
怖いことは怖い、だけどそう思わないようにしてるだけなのだ。

584名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:39:41
そんな鈴木とは裏腹に、隣の鞘師は異様に辺りを見回すかと思えば
ギュウギュウと身体をひっつかせてくる。

 「ねえ歩きにくいんだけど」
 「かのんちゃん怖くないの?」
 「怖いけど、りほちゃんが言いだしたことなんだからしっかりしてよね」
 「……」

鞘師は何かを言いたそうにしていたが、突然足音が聞こえた。

 「!?」

廊下の突き当たりを曲がった向こうから。
こればかりは鞘師ばかりではなく鈴木もビクっと身を震わせ硬直する。
懐中電灯と思われる光が見えてマズイ、と思った。

 警備員だ!
 鈴木にとってはオバケよりも人間の方が怖い。

鈴木は小さく舌打ちをすると、硬直したままの鞘師の手を引いて
丁度通りかかっていた教室の中に滑り込んだ。

585名無し募集中。。。:2012/06/19(火) 03:43:57
以上です。
こんな物を拾いました つ「鞘師<モー娘。メンバーを戦隊モノのヒーローに例えてみた」
http://www.youtube.com/watch?v=KMt_JEI8U5Y

---------------------------------ここまで。
最近ここを独占し過ぎですねすみません(汗
いつも代理してくださる人、ありがとうございます。

昔の9人話の受領は今でもあるのか少し気になりました。

586名無しリゾナント:2012/06/19(火) 21:38:32
遅くなりましたが投下終了しました


>昔の9人話の受領は今でもあるのか少し気になりました。

受領は致しかねますが需要はありますw

587名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:45:43

――――――――――――――――――――――



心の中を無にしよう。

この世界は贋物だ。

構成要素の配置が変わっただけの紛い物。

だから、戸惑う必要も捉われる必要もない。

現実(リアリティ)はすべて、この世界の外にある。



――――――――――――――――――――――

588名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:46:25

追いかける。
追いつめる。
この爽快感がたまらない。
敵の能力者は、大通りを突っ切ってそこの角を曲がった。
衣梨奈は知っている。そこの角は行き止まりだ。
もう奴に逃げ場はない。

「観念しなさい、悪の手先め!」

予想通り袋小路に追いつめられて慌てふためく男に向かって、衣梨奈は得意げに人差し指を突き立てた。

「このところの連続婦女誘拐事件の犯人はあんたやろ!調べはついてるけんね!」
「・・・へへ、こんなお嬢ちゃんに追跡されるたぁ俺も落ちたもんだ・・・・・・なあ!」

男は軽薄な笑みを浮かべ、右手を振り上げる。
白くしなやかに蠢くそれは、もはや人間のそれではなかった。
イカだ。
男は半獣人化し、その右手を長さ二メートルはあろうかというイカの足に変化させた。

「ガキには興味ねえ!死ねやぁ!」

白い右手が衣梨奈の身体をなぎ払おうと迫る。
衣梨奈はかろうじてそれを避けると、自らの腰に提げていたバトンに手をかけた。

「くらえ!」

589名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:47:21
引き抜いたバトンを、ブーメランの要領で投げる。
しかし微妙な体勢から放たれたバトンはブーメランのようにはいかない。
ぐらぐらと不規則な回転を繰り返し、衣梨奈のバトンは男の遥か後方に逸れていった。

「ギャハハ!どこ狙ってやがる!」
「いや・・・これでいいっちゃん」

衣梨奈が不敵に笑う。

「半獣化能力者には、能力だけではカバーできん大きな弱点があるとよ」

すると突然、バトンの軌道が変わった。
あさっての方向に飛んだはずのバトンが変則的に曲がり、さらに大きく回転を加えて戻ってくる。

「それは」
「んがっ!!」

戻ってきたバトンが直撃し、男は地面へと倒された。
イカの足と化した白い右手も、隠し玉のつもりだったのだろうカニのハサミと化した赤い左手も、ぴくりとも動かない。

「あ・た・ま。どいつもこいつも、そこだけは人間のままやけんね」

死角から勢いよく飛んできたバトンが後頭部に当たり、気を失っている。
男が起き上がってくる気配はなかった。

「いえーい!生田衣梨奈、完璧完全大勝利ぃー!またバトンの腕が上がったかもー!」

590名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:48:06


「“だいしょうりぃー!”じゃないよ、まったくもう」

勝利の余韻に水を差す、不機嫌そうな声。
衣梨奈が振り返るとそこには、腕を組みこちらを睨むように見つめる鞘師里保と、困ったように眉尻を下げる譜久村聖の姿があった。

「念動力で操ってるんだから“バトンの腕”関係ないじゃん。そもそも犯人が現れたらまずみんなに連絡して、
 それから尾行って話に決まったでしょ?何一人で勝手に突っ走っちゃってんの」
「だぁってー、犯人がもう女の人に声かけてたんだもん。このままじゃ次の犠牲者が出ると思って」
「だからって、街中を『こいつ犯人です!こいつ犯人です!』って言いながら追いかけまわすことないじゃん。ホントえりぽんってKYだよね」
「ちょっと!なん、その言い方!」
「本当のことを言ったまでだよ。フクちゃんが通行人の記憶を全部操作するのにどれだけ苦労したか、わかってる?」
「あ、あの、里保ちゃん。そのくらいでもういいから・・・」

喧嘩腰になる里保と衣梨奈の間に、聖が割って入る。

「えりぽん。私たちは目立たずひっそりと、でも確実に敵を倒していかなくちゃいけない。どうしてだか覚えてる?」
「・・・うちらは・・・少人数だから。敵がその気になったら、すぐ潰されちゃうから」
「そうだよね。『でもそこが秘密の正義の味方って感じがしてかっこいい!』って、えりぽんが言ってくれたんだよね」
「・・・・・・」

591名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:48:41
聖の口調は優しかった。
子供の間違いを正す母親のように、優しく衣梨奈に言い聞かせる。

「あんまり派手な妨害をすると目をつけられちゃう。目をつけられたら・・・殺されちゃう」
「・・・ごめん」
「それに、今回はえりぽんだって危なかったんだよ?犯人が逃げた先にもっと強い敵が待ち構えてたらどうするつもりだったの?」
「ごめんってば!」

優しく追及されることが却って辛いこともある。
衣梨奈は強引に話の流れを断ち切り、言った。

「勝手に単独行動に出てすみませんでした!もうしません!」

それこそ子供のするような、投げやりな謝罪だった。
だが衣梨奈の性格を知っている二人は、そんなことに目くじらを立てたりはしない。

「まあ、わかればいいんじゃない?」
「警察には通報しておいたし。・・・帰ろうか。みんな心配して待ってるよ」

里保は矛を収め、聖は笑って手を差し出す。
衣梨奈は膨れっ面をしながらもその手をとる。
それが彼女たちのバランスだった。
この世界においての彼女たちの関係は、そんな風にして成り立っている。

592名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:49:41


= = = =


衣梨奈が誘拐事件の犯人を倒した数日後。
聖たち八人は、彼女たちの本拠地である街外れの空き家に集まった。
空き家と言っても、聖の家が所有して聖が離れとして使うことを黙認されている“生きた”家だ。
誰が手を回したか知らないが当然のように電気は通うし、家具もきちんとされている。

「鈴木さーん!さっきそこで膝を擦りむいちゃったんですけど、これって治してもらえますかねー?」
「ちょっとやめてよ、くどぅー。香音ちゃんは薬箱じゃないんだよ」
「鞘師さんはもっと大きなケガ治してもらったりしてるじゃないですか。ハルこれから撮影なんすよ」
「“傷の共有”使った時の傷と、そこら辺を走り回ってできた傷を一緒にしないでほしい」
「まぁいいからいいから。ほら、どぅー。膝見せてごらん」

八人が集ったリビングはいっそう賑やかだった。
この賑やかさは聖も好んでいたが、真面目な話を切り出すには向いていない雰囲気だと常々思っていた。

「みんなー!ちゅーもーく!」

左手に鍋、右手におたまを持って、大きな音が出るように叩く。
やや古典的だが、効果的なやり方ではあるようだ。
思い思いにくつろいでいたメンバーの視線が聖に集中する。

「はい。先日の誘拐事件はご苦労様でした。みんなの活躍のおかげで犯人は無事逮捕。以後、能力者による事件は今のところ確認されていません」

聖の報告に対して、「イェイ!」「やったー」などと喜びの声が返される。

593名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:50:26
「ただ、今回みたいな事件がまた起こらないとも限らない。だから今日は、いざという時のためのペアを決めたいと思います」
「ペア?」
「そう。一人一人が別々の場所に張り込むのって、効率は良いんだけどやっぱり危険じゃない?
 だから今のうちに、そういう事態になった場合に一緒に行動するペアを決めておきたくて」

先日の一件での反省を踏まえた発案だった。
こうすれば、衣梨奈のように深追いして身を危険にさらすメンバーはいなくなる。

「なるほど。じゃあ、私とまーちゃんは一緒にしてください。“白銀のキタキツネ”様をお守りするのが“蒼炎”を背負う私の使命です」
「もうあゆみんってば。そうゆうのヤダって私ずっとゆってるのに」
「亜佑美ちゃんはそう言うと思ったよ。他には?希望ある人はいる?」

聖は周りを見回した。
蝦夷の頃より続く神使の家系である佐藤優樹と、代々神使に仕えてきた一族の末裔・石田亜佑美がコンビを組むことは予想していた。
問題はそれ以外の組み合わせだ。
どういったペアが適当か、聖には皆目見当がつかない。

「希望っていうか推薦なんだけど、えりちゃんは聖ちゃんと一緒がいいと思う」

鈴木香音が手を上げて言った。

「力ずく以外でえりちゃんの暴走を止められるの、聖ちゃんしかいないもん」
「確かに。うちがやったら鋼線でケガさせちゃうけど、聖ちゃんなら“精神干渉”でえりぽんの心を直接止められるもんね」
「ちょっと意味が違うんだけどな・・・」
「え〜!でもでもぉー、リーダーとサブリーダーはバラけたほうがいいっちゃない?」
「は?サブリーダーって生田さんだったんすか?」
「年齢と落ち着きと話の面白さから考えて、てっきりはるなんがサブリーダーかと思ってました」
「えっ!いやいやそんな!私なんてそんな!」

594名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:51:34
聖なら衣梨奈を説得できると考えての香音の提案だったのだが、なぜだか話は逸れていく。
いつしか議題は、「このチームのサブリーダーは誰か」ということになっていた。

「待って、こういうのは年功序列って決まってるの!この中で聖との付き合いが一番長いのはえりやけん、えりが」
「付き合いの長さならフクちゃんと幼なじみのハルのほうが上ですけどね」
「年齢だったら飯窪ちゃんとだーいしのほうが上だし」
「ちーがーうー!そういうことじゃなくって!」
「あ、でも生田さん、この前お一人でイカカニ男を倒したんですよね。すごいです、私一人じゃ絶対無理です!
 やっぱりそういう実力を考えると、生田さんのほうがサブリーダーに向いてるんじゃないかなって思うんですけど・・・」
「出た、はるなんのヨイショ芸」
「ほらほらぁ!本人もそう言ってるんだから!サブリーダーは、生田衣梨奈ってことで!」
「しょーじき私はどーでもいいです。ウフフ」
「“どーでも”!?“どっちでも”の言い間違いだよね優樹ちゃん!ねえ!」



= =


話し合いは終わり、解散宣言が出される。
留まるも帰るも個人の自由だ。
これから雑誌の取材の予定が入っているという工藤遥は、大慌てで帰り支度を始める。

「売れっ子の子役も大変だねえ」
「忙しいのに呼び出してごめんね、くどぅー」
「いえいえ。ハルはお仕事してるより、こうしてみんなと過ごすほうが楽しいですから」

遥はテレビや雑誌などで活躍する女優の卵だった。
数年前に母親が応募した子役オーディションに合格して以来、それなりに忙しい日々を送っている。

595名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:52:14
「あっ!くどぅー、いつもの駅は行かないほうがいいよ!accidentのかんばんが視えた!」
「アクシデントの看板?・・・あぁ、人身事故の表示か。サンキューまーちゃん。タクシーで行くよ」
「一人でタクシーなんて大丈夫?仕事場まで“瞬間移動”で送ろうか?」
「大丈夫だって。それよりはるなん、来週からテストって言ってたじゃん。勉強しなくていいの?」
「もぉ!思い出させないでよー!」
「それじゃ、みなさん!お先に失礼しまーす!」

最後に威勢よく挨拶をして、遥は仕事へ向かった。
それからまもなくしてテスト勉強を理由に春菜が、門限を理由に香音が、アルバイトを理由に亜佑美が、それぞれこの場所を後にする。
残ったメンバーは再び他愛のない話に興じた。



やがて、衣梨奈がふと何かに気がついたような顔になる。

「・・・あれ?」
「どうしたの、えりぽん」
「いや、大したことじゃないっちゃけど・・・」

衣梨奈が思い返しているのは、先日の戦闘の後と先程の会話の記憶。
あの日自分は確かに、その場に居合わせなかった仲間に闘いの顛末を聞かせた。
が、“使われなかった”能力についてまで言及した覚えはない。
それなのに彼女はなぜ、敵をはっきり『イカカニ』と称することができたのだろう。

「えり、この前倒した敵がイカ以外にカニの手も持ってたこと、はるなんに教えたっけ?」

596名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:54:55


= =


“女”は、携帯電話で誰かと連絡をとっている。

「はい、そうです。今日は非常時の取り決めだけで特に連絡事項は、えっ・・・ああ、鞘師ですか?
 鞘師は鈴木とペアになりました。・・・・・・そうですね、その時に仕掛ければよろしいかと。・・・はい、ではまた」

一拍、二拍、三拍と間を置いて、無機質な電子音。
接続が断たれたことを確認し、女は通話終了のキーを叩いた。
例外的な場合でない限り、こちらから通話を切ることは認められていない。

女は小さく溜息を吐いて空を見上げた。
物憂げだったその表情が、次第に諦念的なものへと変わっていく。

「『私が身を置く組織は破綻する運命にある』。初めにそう忠告したじゃないですか、譜久村さん・・・」

自嘲気味に呟く“春菜”の顔は、仲間の誰にも見せたことがない深い哀しみに包まれていた。

597名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:55:32



――――――――――――――――――――――


「また神様ごっこ?」

その一言が、今回の箱庭世界に蓋をした。

声をかけられたことで集中が途切れ、中澤裕子の作り上げた“箱庭”が霧消する。
中澤の身に現実(リアリティ)が帰ってきた。
瞼の裏で群像劇を繰り広げていた少女たちの姿は、影も形も見えない。
あるのはテーブルとソファと、コーヒーの入ったカップを片手に持った飯田圭織の姿だけだった。

「よく飽きないよね。何をそんな熱心にシミュレーションしてるの?」
「シミュレーションやない。再構築や。この世界の構成要素を全部バラして組み立て直したらどうなるんかなぁ思ってな」
「ふうん」

わかったようなわからないような曖昧な返事をして、飯田は踵を返す。
おそらく、わかってはいないだろう。
飯田は中澤の能力を把握している数少ないメンバーの一人だが、彼女とてその能力の全容を理解しているとは言い難い。

598名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:56:11
自らの持つ空間移動能力によって、中澤は並行世界に起こるすべての事象を把握することができる。

あらゆる並行世界に共通して発生する要素と一定の条件下でしか発生しない要素とを区別し、それらを再度組み直して今までにない世界を頭の中に構築する。
中澤はその作業を“箱庭作り”と呼んでいた。
つい先程まで見ていたのは、高橋愛以下九名のリゾナンターがこの世に存在せず、
まったく別の少女たちが高橋らの立場に成り代わって存在している世界である。

「で?再構築したらどうなったの?」
「興味深いことがわかった。色々とな」

今回高橋らの代わりとして用意した少女たちは、敢えて高橋らと同じ能力を持つよう調整した。
念動力や治癒といったオーソドックスな能力だけではない、傷の共有や獣化といった変わり種まで用意したのだ。
それなのに。

「・・・いっこだけ、どうしても作れへんかったモンがあるんや」

共鳴増幅能力の使い手、田中れいな。
彼女の代わりだけはどうしても再構築することができなかった。
新垣里沙のスパイ要素や、ジュンジュンとリンリンのような神使と庇護者の関係にある者などは配置できたというのに。

「とっておきのイレギュラーやな、アレは」

“田中れいな”は、完全に世界から独立した要素だった。
神の真似事では生み出せない絶対的な存在。
唯一無二の“個”だ。

599名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:56:41


中澤は家具から距離をとり、何もない空間を切り裂く。

「おでかけ?」
「ああ。実地調査に行ってくる」
「なんだ。せっかくおいしいコーヒー持ってきてあげたのに」
「マジか」
「テーブルに置いてあるやつ。お中元にもらったの」
「はよ言ってよ」
「置いたからわかると思って」

コーヒーをすすりながら飯田が言った。
よく見れば、テーブルの上には見慣れないコーヒー豆の袋が載っている。

「惜しいことしたなぁ」
「賞味期限は再来年の七月だってさ」
「ならええわ。それまでには帰ってこれるやろ」
「あれ、飲むの?圭織、持って帰ろうと思ったのに」
「飲むわアホ。あたしの机の一番下の引き出しの中に入れといて」
「オッケー。一番下の引き出しの仕切り板の奥の隠しスペースだね」
「ちょ、待って。なんであんたがあたしの机の秘密を知ってるん」

奇しくも、いつまでに答えを出すべきかの期限が定まった。
遅くとも再来年の七月。
その頃までには、この世界における田中れいなというイレギュラーの扱いが決まっているはずだ。

含み笑いを漏らして、中澤は裂けた空間の中へ足を踏み入れた。

600名無しリゾナント:2012/06/22(金) 21:58:49
>>587-599
『Reconstructed Resonantor 〜箱庭の少女たち〜』です
リゾスレと910期の融合を真面目に考えたらこんな形になりました

=====
以上を、スレの間が空いた時で構わないので代理投稿お願いします
一度で投稿できない場合は>>591までを前半として二回に分けてくださるとありがたいです

601名無しリゾナント:2012/06/23(土) 19:04:58
すみません上がってるの気付いてませんでしたが…すごくおもしろい…!
めちゃくちゃゾクリときました
まだもし上がっていなければ今夜にでも代理します

602名無しリゾナント:2012/06/23(土) 23:04:28
代理と感想ありがとうございます

603名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 03:15:32
>>385-389 の続き。

 「かのんちゃんも気付いたんだよね、あの不気味な"音"」
 「りほちゃんも分かったの?」
 「あの"音"の正体、知りたくない?」
 「待ってよ、なんでりほちゃんが分かるの?あたしと同じなの?」
 「私はかのんちゃんみたいに絶対音感は持ってないよ。
 けど、私もかのんちゃんも、『共鳴』してるから」
 「きょう、めい…?」
 「私だったら教えてあげれるよ?かのんちゃんに起こってる事」

物音を聞きつけてすぐに警備員達が近くまでやってきた。
鈴木は生徒の机よりも大きく隠れやすい教卓にまず鞘師を押しこみ
次に自分も身体をねじ込んだ。
すぐ傍の廊下では警備員の照らすライトが教室の中に侵入してくる。

 「今、物音しましたよね?」

アルバイトらしき若い男性の声。

 「念のため、中も調べてみよう」

ベテランといった感じの中年男性の声。
直後に、二人が隠れた教室のドアが開かれる。
鈴木は祈るように目を閉じ、鞘師に身体を密着させた。
懐中電灯の光は教室中を照らす。

大量の汗が体中から噴き出した。冷や汗だ。
もうダメだとなかば諦めている。と。

604名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 03:16:27
 「何もないみたいだな、他を見に行こう」

中年男性が言って、ピシャっとドアが閉められた。
二人分の足跡がやがて遠ざかって行き、鈴木は大きく深呼吸をした。
無意識に息を止めていたらしい。同じように鞘師も息を吐いた。

 「今のは完全にアウトだと思った…」

鈴木は笑顔を引きつらせながら言う。
鞘師も予想外のことが起きてただ笑った。
すぐに出てしまわずにしばらくの間そこで隠れることにする。
ようやく気持ちも呼吸も落ち着いてきた頃になって、二人は教室を出た。

 
 「かのんちゃんなら来てくれると思ってた」
 「あんなのがずっと続くのが嫌だから行くだけだよ。出てくるのに苦労したし。
 今もほら、また耳がじくじくしてきた」
 「大丈夫、私がなんとかしてあげるよ」
 「本当は早く行きたいんだけど、このフェンスの穴を使おう」
 「え、忍び込むの?」
 「うん、かのんちゃん守ってね」
 「は?」
 「私こういうのダメだから」

周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。

605名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 03:19:01


周囲に十分注意を払いながらも鞘師は手を引かれ、足早に廊下を進んでいた。
月が雲に隠れたまま出てこない。闇がいっそう濃くなっていた。
非常灯の赤いランプがやけに目に入る。
鈴木は教室を出る少し前からそわそわし始め、何かを強く感じていた。
鞘師にしてみれば、その何かが問題だ。

走る。走る。鈴木に聞こえる"音"は、闇の中で静かに啼いている。
闇の中にある"色"は、もっと色濃い闇。
闇の闇の闇の闇の闇。黒と黒と黒と黒。

 「最初から見てたって事か」

南棟の屋上。勿体ないほどの広さがある其処。
その柵の傍がぽっかりと空間が喰われた様に、【闇】になっていた。
誰かが静かに佇んでいる。
鈴木は彼女の顔に見覚えがあった。
鼻歌が聞こえたかと思うと、じくじくしていた疼きが強くなる。

 「大丈夫?」
 「これが大丈夫そうに見える?」
 「そうか、あの子自身がサブウーファーなんだよ」
 「サブ…なに?」
 「「『共鳴振動 -サブウーファー-』、低周波音って分かる?」
 「分かんないってばっ、説明はいいからなんとかしてっ」
 「…しょうがない、か」

パチンッ――

606名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 03:24:31
奇蹟のようなヒカリが、闇夜を貫く。円形の青空が二人に注がれた。
鈴木はその光を仰ぐ。
見上げた先、細まる視線にはあるはずのない青空。
隣の鞘師の身体が白い光に包まれ、手には鞘に収まった『刀』
背中のベルトに固定された何かが重い音を鳴らす。
それら全てが、カタナだった。

 「まさか『位相空間』の内側(なか)にまで響くなんて…」

鞘師が苦い表情を見せた、頭痛はまだ疼いている。
目の前の彼女はまだ鼻歌を歌っている。人形の玩具のように。
なによりあの"音"が、何かを突き破るような恐怖を湧き立たせる。
 
その時だった。鞘師が一瞬にして、彼女との距離を失くす。
彼女の抜き放った刃がまともに顔面を捉える。
彼女の身体もろとも、真っ二つに切り裂かれた。
柔らかいものが斬れる音が生々しく、響く。

 鈴木はただ、その光景を見ていることしか出来なかった。
 鞘師のオーラの"色"と両眼に釘付けになる。鬼の様に染まった、朱の色に。

607名無し募集中。。。:2012/06/26(火) 03:29:42
以上です。ようやく何かが出て来ました。
引っ張り過ぎてもう夏になりそうですね…(汗

--------------------------------------ここまで。

いつでも構わないので、よろしくお願いします。

608名無しリゾナント:2012/06/26(火) 21:32:05
空いているみたいだから行って来ますかね

609名無しリゾナント:2012/06/26(火) 21:48:16
完了
遂に話が動き出したw
描かれてる少女たちの日常だけでも魅力的なのですが物語の根底に流れるものにも心ひかれます

610名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:21:23
『「リゾナンター。大好き!」』

〈One ちょびっと不安で 〉

1−1
れいなは絶望した。
敵の力が分かってしまったから。
この少女は武道の達人。
それも、れいなが今まで戦った中でも最強クラスの。

様々な理由によって、リゾナンターのメンバーが大幅に入れ替わった。
高橋・新垣の離脱後は、れいな・鞘師が戦闘における「ツートップ」となっている。
この二人は、攻撃に際して特殊能力を使用していない。
れいなの強さは、天性の格闘センスと、豊富な闘いの経験とによるものだ。
また、鞘師の方は、特殊能力自体いまだに発現していない。
驚くべきことだが、これまで二人は体術だけで強力な能力者を撃退してきたのだ。
そう、これまでは…。

得意の体術勝負で敗れたことに、れいなは打ちのめされていた。
「やっぱり愛ちゃんとガキさんがおらんとダメなんかなあ…。」
れいなが弱音を吐いている。
傷ついたれいなを治療しているさゆみは、それを聞いて衝撃を受けた。
そして、事態の深刻さを思い知った。

611名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:22:00
1−2
その少し前。
街の中心部から外れた細い道を、三人は歩いている。
さゆみは上機嫌である。欲しかった最新のノートパソコンを購入できたのだ。
れいなには、安物のサングラスで恩を着せ、まんまと荷物持ちをさせている。
「好きな食玩を一つ買ってあげるの」と誘い出した愛しの鞘師も一緒だ。
深夜の帰り道、三人はとりとめもない話をしながら歩いていた。
れいなが偽札を発見したことや、石田の唇を見る鞘師の目が妖しいことなど、
楽しいおしゃべりは尽きることが無かった。
「うわーっ、あれ、きれいやねえ。」
遠くに見える高層ビル群をれいなが指差す。
厚い雲に覆われているのか、空には月も星も見えない。
闇を背景に、摩天楼たちは自らの光でショーアップしているように美しく聳えていた。

駅から三十分も歩くと、辺りには気味が悪いほど人気が無くなった。
三人は角を曲がり、さらに寂しい通りに足を踏み入れた。
その時である。
暗闇の中から、すっと一人の少女があらわれた。
そして唐突にこう言った。
「組織に私の力を認めさせたいので、申し訳ありませんが、貴方たちを破壊します。」
この静かで丁重な挨拶が、そのまま戦闘開始の合図となった。
さゆみはその少女の雰囲気に、ちょびっとだが、拭いきれない不安を感じた。

612名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:22:36
1−3
さゆみの不安は的中した。
数十秒後、さゆみの眼前には信じ難い光景があった。
れいなと鞘師がアスファルトに這いつくばっている。
二人の神速の攻撃は、少女にかすりもしなかった。
少女は二人の動きを完全に見切っていた。
人は誰かと戦うとき、相手に対する敵意をまとう。
少女はそのようないわゆる「殺気」を正確に感知することができた。
相手の殺気から、攻撃してくる方向・タイミングを察知してしまうのである。
そして、鍛練の賜物であろう俊敏な動きで、それらを全てかわしていく。
もちろん、れいなや鞘師にだって敵の攻撃を読むことはできる。
実戦で鍛えられた経験や洞察力は、敵の動きの分析・予測を可能にするからだ。
しかしそれは、敵の動きをある程度視認した上でのことである。
その少女は違っていた。
少女の両目は、戦いの間ずっと閉じられていた。
れいなと鞘師の二人がかりの攻撃を、殺気だけを手掛かりに、完全にかわしきる。
さらに、二人の動きの先を読み、速く重い正拳突きを急所に撃ち込んできた。
闇夜であったことが、二人には不利に、そして、その少女には有利に働いた。
そして何より少女の身体能力が、二人のそれを上回っていた。
並外れた天賦の才と、それを磨き続けた努力とが、その強さに結実していた。
また、少女には、地獄から這い上がって来たかのような凄味もあった。
少女の強烈無比な打撃を浴びた二人は思った。
勝ち目が無い、と。

613名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:23:18
〈Two パリッと服着て 〉

2−1
さゆみは倒された二人に駆け寄り、まず比較的傷の浅い鞘師を数秒で応急処置した。
治療が終ると鞘師は立ち上がり、すぐに少女へ向かって行った。
れいなの方は重傷で、治療に数分間かかりそうだった。
そのための時間を稼ごうと、鞘師は少女を引き付けながら、二人から離れた。

さゆみは懸命にれいなを治療している。
れいなは苦痛に顔をゆがめながらも、何かを決意したようだ。
先程の弱気な口調とはうって変わって、しっかりと諭すように言った。
「さゆ。次にれいなが攻撃を仕掛けた時、鞘師を連れて逃げりぃ。
 そんでいつか…、あの子らと一緒にあいつにリベンジして…。
あの子らは、絶対にれいなたちより強くなるけん…。」
れいなの言葉に、さゆみは何も答えられなかった。
ただ、目頭の透明な水塊がみるみる大きくなり、零れ落ちそうになっていた。

鞘師は、少女の前に立っていた。
目の前の敵を睨みつけながら、自分が着ている洋服の襟に触れた。
その服は、上京したばかりの頃、着替えが無かった鞘師にれいながくれたもの。
鞘師がそれまで着ていた服は、家の人が選んでくれた、子供っぽいものばかりだった。
少しヤンキーっぽくても、れいなのお下がりの服は、パリッとお洒落なものに感じた。
鞘師はその時の喜びを思い出し、心の中でれいなに誓った。
「田中さん…、田中さんが来るまで絶対に持ちこたえます。
田中さんのように、私は…、どんな場面でも…、逃げない!」

614名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:24:07
2−2
「うわああっ!」
乱暴な子供に放り投げられた縫いぐるみのように、鞘師が二人の方に飛ばされてきた。
そして、道路脇の自動販売機に背中をぶつけ、座ったような姿勢になって、止まった。
鞘師が小さな顔を上げて二人に謝る。
「すみません…。時間…、あまり稼げませんでした…。」
目の光は死んでいなかったが、四肢はもう動かない。
そこへ、鞘師に止めを刺そうと少女が矢のような速さで走って来た。
「りほりほっ!」
さゆみがれいなの治療を中断し、鞘師の方へ無意識に駆け出す。
「うっ!」「きゃあっ!」
二人は鞘師の目の前で激突した。
鞘師を案ずる余り無心で飛び出してきたさゆみに、少女は全く気付いていなかった。
結果、さゆみが少女へ体当たりをくらわせた格好となった。
それは、その夜その少女に初めて当たった攻撃だった。
少女はもんどりうって転倒する。さゆみも大きく弾き飛ばされた。
その光景を、鞘師は見ていた。
節電中とはいえ、後ろの自動販売機の光は、視界をほんのり明るくしてくれていた。
鞘師は途切れそうな意識を必死に保ち、冷静に目の前で起こったことを分析した。
そして、一筋の光明を見出した。

615名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:28:02
2−3
「さゆっ!」れいなが足を引きずりながら、さゆみのもとへ向かう。
そして、さゆみの横にひざまずき、上体を抱き起こす。
少女は立ち上がりつつそれを見ていた。そして、標的を鞘師かられいなに変えた。
れいなは少女を睨みつける。滅多にかかない汗が頬を伝っているのを感じた。
少女は目を閉じ、必殺の一撃を放つべくれいなのまとう殺気を捉える。
(ちくしょー……、二人を守れんかった…。) 
(やっぱりさゆみにはリーダーなんて無理だったのかな…。)
れいなとさゆみは同時に思った。
((みんな、ごめん…))
その時、鞘師が叫んだ。
「待てえ!自分の力を証明したいんなら、最強の能力者を倒せばええじゃろう!」
少女が目を開ける。
「…最強?」
「そうじゃ…。その人は、高橋さんも新垣さんも、田中さんもいっぺんに倒した!」
少女は鞘師の方へすっと顔を向けた。
「…リゾナンターを壊滅寸前まで追い詰めた能力者がいたと聞いたことがありますが…
 しかし、その能力者はもうこの世にいないのでは?」
「いや…、まだ生きておる…、あの人の『中』に…。」
鞘師は、れいなの腕の中の「あの人」に目を向けた。
れいなとさゆみは思った。
(まさかさえみさんのことをいっとると!?さえみさんはもうおらんとよ!)
(お姉ちゃんは…、お姉ちゃんはあの日…、えりが…。)
二人はただ鞘師を見つめるしかなかった。

616名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:28:38
〈Three もちょっと我慢ね 〉

3−1
二人の思いを知ってか知らずか、鞘師は続ける。
「その人が目覚めたら、誰にも止められん…。おそらくダークネスにも…」
「……いいでしょう。
最強の能力者を破壊できたら、組織からの評価も上がるはず。
 その人をすぐに目覚めさせて下さい。」
「それにはあんたにも協力してもらわんといけん。」
そう言うと鞘師は、少女の方を向いてから、自分の背後の方へ視線を移す。
そこには一台の自動販売機…。
「…鞘師!?」
鞘師の狙いに気付いたれいなの顔が一瞬にして蒼白となる。
「田中さん…、これから大変なことになりますが、ちょっと我慢して下さい…。」
「が、我慢って…。」
れいなはそれ以上声が出なかった。
一方、さゆみにはまだ鞘師の狙いが掴めていない。
そんなさゆみを複雑な思いで見つめながら、鞘師はれいなに告げた。
「目覚めさせましょう…。あの……、悪魔を……。」

617名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:29:11
3−2
鞘師の提案を受け入れた少女は、震えるれいなの腕の中からさゆみを引き離した。
そして鞘師の指示通りに、さゆみにあるものを飲ませた。
すなわち、少女は、自らの手で「最強の能力者」を目覚めさせてしまったのだ。
それが少女(たち)にとって惨劇の幕開けとなった。

勝負は、実にあっけなくついた。
ゆらりと立ち上がったさゆみと対峙した少女は、愕然とした。
「動きが全く読めない…。」
目覚めた悪魔に殺気は無かった。あるのは、純粋な「欲望」のみ。
「好きだな、ロリが!」「触りたーい!」「ムシャムシャしたい!」
そのような異常な欲望を感知する術は、武道の修行では習得できなかった。
少女は何の防御もできず、懐に入られ、抱きしめられ、弄ばれた。
不幸にも、着ていた黄色いTシャツや、程よく筋肉質な肢体が欲望に拍車をかけた。
それらは(鞘師の読み通り、)さゆみの脳裏に、ある人物の体を思い出させていた。
最高潮に萌え盛ったピンク色の欲望の炎が、少女の全てを舐め尽くす。
幼時から武道に全てを捧げてきた少女にとって、その愛撫は致死量の劇薬だった。
少女の精神は、初めて体験した屈辱と恍惚によって完全に崩壊してしまった。
悪魔は二本の指を立てた両手の甲を、自分の額の両端につける。
「イエエェッス!!うぅさちゃあーんっ!ぴいいーーーーーーーーーーーっす!!」
こみ上げてきた何かを噴出するような咆哮が、夜空に響き渡った。
悪魔の両目からはピンクの光線が放たれている。
その光線が、サーチライトのように、ゆっくりと次の哀れな獲物をとらえた。
「ひいいっ!さゆが…、さゆが、こっち向きようっ!」
れいなは再び絶望した。

618名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:30:10
3−3
それからしばらく後。
三人の身を案じた譜久村たちがようやく駆けつけた。
七人はまず仰向けに倒れている一人の少女を見つけた。
黄色いTシャツは少しはだけ、スカートも若干ズレ下がっている。
焦点の合わない視線は、いつの間にか雲が消えて月が輝く夜空に向けられている。
口の周りには大量の唾液がついており、なぜかそれは甘いアルコールの匂いがした。
少女には、それを拭い取る体力も気力も残っていないようだった。

「たなさたーん!」
佐藤が突然走り出す。その先にれいなが倒れていた。
特に怪我はなさそうだが意識はなく、少女と同様に服装が乱れていた。
工藤がれいなにすがりつき、わんわんと低い声で泣き出す。
一方佐藤は、お薬のつもりなのか、不味そうな白い飴玉をれいなの口に次々詰め込む。
譜久村たちがさらに辺りを見回すと、何者かに破壊された自動販売機があった。
そして、そのすぐ近くに、気を失っている鞘師が見つかった。
手足はパソコンのコードのようなもので縛られている。服装の乱れはれいな以上だ。
しかし、その表情はどこか満足げにも見える。
腕は折り曲げられていて、胸の前にある両手が服の襟を握りしめていた。
「怪我は無いようです。…それにしても鞘師さん、萌えですねぇ!ハウーーンッ!」
縛られている姿を見て興奮したのか、飯窪が奇妙なポーズをとりながら高音で叫んだ。
一方石田は、自動販売機からこぼれ落ちた硬貨の山を、嬉しそうに凝視している。
「ねえ!今日すごく調子がいいー!上手くなーい?ねえ!何でみんな無視するとー?」
生田はそう言いながら、なぜか狂ったようにハンドスプリングを続けている。
その生田の足に当たり、缶チューハイの空き缶が音を立てて側溝に転がっていった。

619名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:30:47
〈Endingでーす!〉

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛――!」
突然、嬌声とも嗚咽ともつかない声が響いた。
鈴木は、その声が発せられた方向を見た。
「聖ちゃあん!道重さん、見つかったの?」
譜久村は哭きながら、倒れている女性の脇腹辺りに頭を押し付けている。
譜久村が何をしたいのか、鈴木には全く分からない。
近付いて見てみると、その女性はやはり道重さゆみだった。
少しお酒の香りを漂わせ、満ち足りた表情でスヤスヤ眠っている。
鈴木は、三人が見つかったことにとりあえず安堵した。
と同時に、仲間達が繰り広げる異様な光景を前にして、改めて不安になった。
(こんなに自由なメンバーばっかりで、これから大丈夫なのかなあ…。)
そう考えながらさゆみの寝顔を見ていると、その唇がかすかに動き出した。
何やら寝言を言っている。ただしその声は、常人には聞こえないほど小さい。
しかし、鈴木は、確かにその言葉を聞き取った。
それは、新垣がリゾナンターを去る時に残していった、あの言葉だった。
鈴木は何だか嬉しくなり、新米リーダーに向かってこうつぶやいた。
「道重さん、私もです。みんなもきっとそうだと思います。
みんながそう思っていれば、どんなことがあっても絶対に乗り越えられますよね!」
ふと顔をあげると、東の空がかすかに明るさを帯びていた。

―おしまい―
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

620名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 14:34:52
以上、『「リゾナンター。大好き」』でした。
初投稿です。
皆さんの力作・大作と違い、内容が浅くてお恥ずかしいのですが、
「どんな場面でも逃げない」ということで勇気を出して投稿しました。
ちなみに「少女」のモデルは、(仮)の破壊王です。

===========================
>>610からここまでです。
 お好きなところで分割していただいても構いません。
 お手数おかけしますがよろしくお願いします。

621名無しリゾナント:2012/06/27(水) 19:03:22
>>620
代理しときました
ピンクの悪魔こわいw

622名無しさん募集中。。。:2012/06/27(水) 21:24:11
>>610-620を投稿した者です
621さん、早速の代理投稿ありがとうございました
感想のレスを読めてすごく嬉しいです!
書いてる時も楽しかったし、
改めて「リゾナンター。大好き!」と思いました

623名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 03:56:40
>>576-579 の続き。

先ほど鞘師が真っ二つにした彼女は、あのいじめっ子のリーダー格だった。
だが雰囲気がまるで違う。
耳障りな鼻歌が頭にこびりついているが、まるで中身が別物の人形のようで。
"色"がまるでない。
しかも上から有り得ない青空の光が降り注いでいるというのに、彼女の周り
は何ものも一切寄せ付けないほど闇に満ちている。
コールタールのようにベットリと、まるで、血液を全て流し落としてしまったように。
 
 【グゲエエエエアアアァアアアァ!!】

鼻歌が止み、身体を曲げた状態で奇声を発する彼女に【闇】が映る、鬱る。
歪が大きくなっていた。
そして身体がまるで喰われるように呑み込まれる。
真っ二つになったはずの少女の口からは、下品で不気味な笑い声を上げていた。

げらげらげらげらげらげらげらげら。
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ。
げらげらげらげらげらげらげらげら。

呼応するように真っ二つにされた身体が分離して三つへ。
首の根元から別々の顔が浮き出てくるように生えてきたのだ。

 「うぇっ…」

最早見られるものじゃなかった。
言葉にするのもおぞましい物体が、今鈴木の目の前に在る。
確認できても三人分の身体。
まるでつぎはぎだらけの大樹のよう。

624名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 03:57:47
ミシミシと音を立て軋みながら、水蒸気の様な煙を吐いている。
何処かの恐怖映画でもこんな過激な演出をするだろうか。
うねうねと動く幹のような腕が不気味さを増す。

 「かのんちゃん、あれが人間の悪意が【闇】に呑まれた姿じゃ。
 そうして"狂鳴"した者を【ダークネス】って呼ばれてる」

悪。悪とはなんだ?悪というのはあんなにも醜くて、悲しいモノなのか。

 「かのんちゃんはあまり直視しない方がいい。逆に呑まれる」

"色"の中で黒は恐怖の他にも不安や、悲哀を思い付かされる。
鈴木は異様な寂しさにかられ、頭をかかえて叫ぶ。

 「分かんないよ、意味分かんないってりほちゃん。
 私バカだからさ、頭悪いから、これが現実なのか、夢なのか…」
 「…現実だよ」
 「あれが現実だっていうの?いじめられてた子が可哀想だって思ってた。
 でもやっぱりなんか…ダメだよ、こんなのおかしいって」
 「いじめてた事実は変わらないよ。そうして生まれた悪意をあれは
 狙って襲って、自分の力に変えるんだ。狙われたら私達にはどうすることも出来ない」
 「どうしてそんな風に思えるのさ」

"あれ"を目の前にして、動揺すら見せず、逆に恨んでるように。

 「…ずっと、戦ってきたから」

625名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 03:58:21
鞘師は持っていた刃で襲いかかってきた木の根のような触手を一閃。
背中のベルトに収まっていた鞘から刃を抜き取り、斬り落とす。
次々と斬り落とす、斬って、斬って、斬って、斬る。何本もの刃を突き立てる。
大樹が後ずさりする度にフェンスがひしゃげていく。

 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ。

大樹が啼いた。泣いた。泣いている、彼女達が、泣いている。
誰か、ねぇねぇ誰か。
鞘師の刃が、最後の一撃を喰らわせようと振り下ろされた。

 「「イヤアアアアァァアア!!」」

鈴木がまるで大樹と同調するように絶叫した。
鞘師の光と波動が辺り一帯を呑み込み、弾ける。
それと同時に、崩れていく大樹のバケモノが爆発し、フェンスごと弾け飛んだ。
体内から飛び出したのは小さな球体が三つ。

 「ごめんね、かのんちゃん。巻きこんだりして」
 
それを手のひらに乗せる鞘師は、冷たい表情をしている。
まるでそれになんの感情も抱いていないように。

鈴木に対して謝ったときだけ、鞘師は泣きそうな表情を浮かべた。
それを最後に、意識は途絶えた。

626名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 03:58:53
 ―― 夢を、見る。

それは過去なのか、未来なのか、今なのか。
曖昧で、不明瞭で、でも事実のような、不思議な感覚。
ただ、自分の記憶にないことだけは確かで。
酷く、現実味を帯びない。
だからこれは、夢だ。微かに聞こえる誰かの声に、耳を傾ける。

627名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 04:07:43
以上です。
話の流れでまた再登場してもらったんですが、酷い扱いに…。
新しい作者さんの作品 >>604 もレベルが高くて
とても楽しませてもらいました。

ガス会社とか酷く懐かしい…w
--------------------------------ここまで。

なかなか話が進まない…。
いつでも構わないので、よろしくお願いします(平伏

628名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 10:56:47
規制に巻き込まれたみたいです。
申し訳ないのですが代理投稿よろしくお願いしますm(_ _)m


629名無しさん募集中。。。:2012/06/29(金) 10:58:08
次回予告
                      -街は歌っている-
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro18254.jpg
                  子猫が街を歩く 夜の街を歩く
街の木漏れ日 ネオンのスポットライトを浴びれば どんな小さな子猫だって 今夜の主役になれる
   耳に流れ込む音はとても複雑で どんなに有名な音楽家でも真似をする事は出来ない
      クラクション 人の声 ドアの閉まる音 信号 そして自分の足音が混ざり合い
      1つの曲を奏で街を走り 私の耳と言うトンネルから私の真ん中を通過する
  トンネル 私はトンネルを歩く 昔 下を向いて 生きてく意味無いと 歩いた都会のトンネル
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro17099.jpg
      私はいつまでも 恋愛が下手 付き合いが下手 上手に甘えたりも 出来ない
                 ・・・生きるのが 上手くない・・・
     だから たまに小さな子猫は街に飛び出して こうして街と共に歌うんだ

                 そして子猫の足はすみかへと

                  -その曲に歌詞は無いの?-
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro18255.jpg
       「知りたいと?もう少しで聞けるったい!最高の歌詞っちゃよ!」
                 -本当に?そんなに最高なの?-
       「本当 いっつもあの人が とびきりの歌詞を付けてくれよる ほら」


次回かなしみ戦隊リゾナンターV「SONGS」

ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro18249.jpg
                     【 お か え り 】
ttp://resonant.web.fc2.com/data/toro18254.jpg
               今日も 子猫が街を歩く 夜の街と歌う

630名無しリゾナント:2012/06/29(金) 19:17:09
ちょっと時間の余裕がないので順番はぎゃくになりましたがかなしみさんの予告編を先にだいこうさせてもらいました
>>627さんの9期話は後ほど落ち着いてからさせていただきます

631名無し募集中。。。:2012/06/29(金) 21:12:55
ありがとうございましたm(__)m助かりました感謝

632名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 00:48:13
>>627です。
全然構いませんよ、自分のはちょっと長いですし、すぐに
代理投下できる作品を優先してあげてください。
自分のも早く規制が無くなれば話が早いんですが…いつもすみません(平伏

633名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 03:21:28
>>632 さん
すいません割り込んでしまってm(__)m
自分もここに暫くお世話になりそうです、早く解除されないかな。

634名無しリゾナント:2012/06/30(土) 06:27:59
代理しときましたよん

635名無し募集中。。。:2012/06/30(土) 16:29:19
>>632 さん
いえいえ、かなしみさんの作品も楽しみにしてます。

>>634
代理ありがとうございました。
戦闘描写はだいぶやっつけだったりするので
褒められると舞い上がります。

636名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:11:27
>>>>659-662 の続き。

 「あなた、クラスで苛められるタイプでしょ」

言われた少女は固まったまま、何も言わない。
言った少女は何も思わないように、ただ言った。
薄紫色の彼女と、赤色の彼女。

だが大人びたように見せても、異なった環境で育ったとしても
何かを落としてしまったように子供の面影を見せる。

二人を繋ぎ合せたものと出会わせたものは、"独り"、だった。

 「何で、休業しはるんですか?好きでやらはってるんですよね、お仕事」

赤色の彼女は世間でいう"アイドル"だ。
モデル業などもこなし、メディアでも在る程度の名前も知られているにも関わらず
休業をすると言いだした彼女に、紫色の彼女は問い詰める。

 「ダークネスと戦う皆と一緒に戦えるのは、今しかないから」

"アイドル"としての自分を捨てて、対立するある組織との戦いを優先する。
まるで夢物語のような現実に、身を置くことを告げた彼女。
それは強がりであり、意志であり、自分に欠けていた信念とも捉えれる。

そうして自分を確立していく彼女に、紫色の彼女の表情は優れない。
この頃から能力の副作用で、彼女の視力が徐々に低下していた。

 「何でなんですか。何で小春がリゾナンターを辞めなければいけないんですか」

637名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:12:41
赤色の彼女はそのことを仲間に指摘され、半ば喧嘩別れのように店を飛び出す。
紫色の彼女の頬が朱色に染まっている。
悲しそうな表情に、思わず胸が痛んだ。
こうして見ると、薄紫色の彼女はあまりにも優し過ぎる上に、気を遣い過ぎる。

どうして自分の本音を言わないのか疑問になるほど。
どうして相手のことをそこまで思えるのか。

 「私の目が光を失うのも、愛佳を失うのも私にとっては同じことなんだよ。
 だったら、私はこの目が見えなくなる方を選…」

平手を受ける赤色の彼女。
自分なんかのために大事な視力を無駄にさせるのが情けなかったのもある。
そしてそんな自分なんかのために大事な視力を無駄にさせる彼女が
許せなかった。

 「そんなことをして守ってもらったって私は嬉しくない」

初めて本音を叫んだ彼女。
彼女に対して、初めて言葉をぶつけた瞬間だった。
というよりは、本当は前からずっと思っていた事で、それを口に
する事で、これからの関係性に響くのが怖かったのもある。

自分はもっとわがままなのだ、もっと話しをしてみたかったし、もっと
自分の言いたいことを叫んでもみたかった。
だからあの時に叫んだら、意外とそれで良いんだと思えたのだ。

 そうして赤色の彼女と、紫色の彼女の心は重なった。
 そういった意味では、その時に初めて、彼女達は心を通わせるようになった。

638名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:14:15
そして、光景が変わる。
タイヤやガラスの破片、車体の部品。
それらが反対車線にまで広がっている。

死者が、出ていた。
四方から、火の手と悲鳴が上がっている。
街中を走行していた大型バスが、原因不明の爆発を起こした。
焼けこげたニオイ。
おびただしい悲壮、炎の色、血の色、黒く染まる空。
そして今、灯が一つ、消えようとしている。

 「なんでや、なんで…!?」

『刀』が散らばる其処で、紫色の彼女が絶叫した。

人間の悪意と【闇】が融合することで生まれる【ダークネス】
姿は様々な記憶に形容して変化し、暴走する。
【闇】がどういった概念の存在なのかは判らない。
どうして人間に立ちはだかるのかも。

人間にとって闇は敵で、本能的にも拒絶する存在。
闇によって絶望が生まれるのなら、誰かがやらなければならない。
だから彼女達は闘ってきた。
そうして戦う彼女達をある者はこう呼んだ―― 共鳴者と。
なのに。

 「どうしてですか!―― 新垣さん!」

639名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:15:51
紫色の彼女が対峙するのは、黒いフードとマント姿の女性だった。
その背後には【闇】と、それによって生まれた【ダークネス】が数体。
女性は円形の何かを操作する。

 「悪いけど、話してる時間はないよ、だから手っ取り早い方法をとったんだから」
 「そんな…そんな事のために他の人を巻き込んだっていうんですか?」
 「小春は手間がかかるからね、何か手立てはある?光井」
 「…ッ」
 「必要なのはあんた達の"共鳴"のチカラだけ」
 
  そして私が、世界を終わらせるんだよ。

それが、【闇】の意志だった。
理解不能?否、理解など通り越して、それは起こりつつある。
今更理解すること自体が間違っているとでも言うように。
ただ、終わらせるだけ。
今自分達がいる世界を終わらせるだけ。
簡単だと、新垣里沙は、【闇】は言った。

 次の瞬間には、【闇】が迫っている。
 成す術は無い、何も出来ない。
 だが背後から黄金の光が追い抜き、何かを告げるように弾けた。

――― 誰かの夢はそこまで。

640名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:16:38
鈴木香音が目が覚めると、そこは自分の部屋で、ベッドの中で、独りだった。
生まれも死にもしない。
平和の形骸のように切り取られた箱の中。
外には終わる世界で、久遠にたゆたう影。
灰になったモノは全てを失くして、還る。

鈴木の吐く息は何処にも行かず、ただ漂う。
あの学校潜入から3日目の朝を迎えたのを知るのは後の事。

 鈴木は制服を着込み、母親の言葉を振り切って家を飛び出した。
 
学校の廊下で同級たちと会ったが、南棟へと走っていく。
ハアハアハア。息が上がる。
心臓が痛い、階段を二段飛びで上がり、屋上に向かう階段には
『立ち入り禁止』のプレートと障害物。
それすらも跨ごうとして、スカートが引っ掛かってバランスを崩しそうになった。
鍵のかかっているはずのドアはスルリと開く。

給水塔を見上げた瞬間、鈴木は落ちていた空き缶を思いっきり振りあげ、投げた。
寝ていた朱色の彼女は反射的にスルリと避けたが、給水塔の柱にガツンと頭をぶつける。

  「痛いよかのんちゃん」

頭を手で撫でる鞘師は、薄い笑みを浮かべていた。

641名無し募集中。。。:2012/07/01(日) 03:22:35
以上です。
知らない現実は誰かにとっては夢のように不透明。
厨二病バンザーイ。

---------------------ここまで。
また少し長くなりました…。
いつでも構わないのでよろしくお願いします。

642名無しリゾナント:2012/07/01(日) 08:14:19
拝読させていただきまして候
忍法帖のレベルをチェックして投下できるようならば早急に行ってまいります

643名無しリゾナント:2012/07/01(日) 08:23:16
完了
少し心が痛くなるような展開というか
でも心惹かれますね闇の使徒的なガキさんは
完結されることを心待ちにしています

644名無しリゾナント:2012/07/01(日) 12:51:46


エル、襲来

645名無しさん募集中。。。:2012/07/02(月) 07:03:30
かなしみです規制解除されたみたいです
代理ナンターさん先日はありがとうございましたm(__)m

646名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:08:14
>>690-694 の続き。

その昔、闇と光があった。

闇は光を嫌い、光もまた、闇を嫌っていた。
闇がいつも悪い事をしていたので、光はとても困っていた。
人々が悲しんでいることに心を痛んでいた。

その時、光はある事を思い付く。
闇を打ち払う為の光を増やせばいいのだと。

だけど闇もまた、光と同じことを考え、それを増やす方法を思い付く。
光が考えたのは、人間のチカラを借りるというもの。

 それによって、≪共鳴者≫と呼ばれる人達が生まれた。
 それによって、【ダークネス】と呼ばれる怪物が生まれた。

≪共鳴者≫は光から与えられたチカラによって戦いを始めた。
【ダークネス】もまた、闇から与えられたチカラによって襲いかかる。

 光は≪ココロ≫を使って。
 闇もまた【ココロ】を使って。

それからずっと、闇と光は戦い続けている。

 
学園は静かな日々を送っている。
まるで自分の周りで"事件"が起こっていないように、平穏で、平和な日常。
誰もが知らずに、気付かずに、生きている。
気付いているのはきっと、彼女達だけ。

647名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:09:40
 「――― ……だから、この公式に当てはめると、イコールで、ガッと
 答えがくるワケなー。判ったかー?っておーい、譜久村聞いてた?」

名前を呼ばれた。
誰かの名前。
はっ、と顔を上げる。
それが自分の名前だと気付くまでに数秒もかかってしまった。
まるで遠い誰かに声をかけられたみたいだった。

 「えっと、あっと、その……っ、…す、すみません。聞いてませんでした」

譜久村聖は、申し訳なさそうに俯いた。微かに笑いが上がる。
教壇に立つ若い数学の教師は、やれやれといった風に大袈裟に溜息を
ついて見せる。

 「まあ、判るけどさあ。おまえも…てか、みんな、だな。
 この学校に入学してもうけっこー経ったよな。小学校とぜんぜん違うから
 最初のうちは緊張してだろうさ。
 んでも今の時期、学校にもすっかり慣れて、外は相変わらず
 晴れてて、おまけに昼飯を食ってお腹も満たされて。
 かったるい授業なんか、受けてられないっつう気持ちも判るさ。
 そりゃ、私も今は先生やってるけど、きみらくらいのときがあったワケで
 ……あ、ごめん。何をいおうと思ってたかってゆうとーあー…判んなくなった」

たくましさのある女性教師が話をはじめた直後、譜久村の態度に怒っているのかと教室中が
緊張感に包みこまれたが、その軽い調子に、緊張が一気に解けて、ドッと笑いが起こる。
ただ譜久村だけが笑っていいのか、まずいのか考えあぐねているらしく
表情を少し強張らせていた。

 「まあ、力を抜き過ぎず、入れ過ぎずって感じで、肩に力が入り過ぎてると
 うまくいかないこともあるからさ。そうだな、まずは、楽しもう」

648名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:12:15
穏やかに言葉を落とす。
生徒達の顔に一瞬「?」が浮かび上がり、その科白を呟く。

 「楽しもう」

めまぐるしく過ぎて行く日々。
今でも、楽しいと思える授業もある。
でも、中学生になってからは、みんな急に背伸びをはじめ、授業を純粋に
楽しむのがいけないように感じることがあった。
覚えることがたくさん。やらなきゃいけないこともたくさん。
やりたいこともあるけど、やらなきゃならないことの方が多かった。

生徒達、そして、譜久村の中で、ほんの少しの変化。
明日には忘れてしまう気持ちかもしれない。
でも、楽しめばいいんだと、思った。
なんだか判らない切迫感に心を裂かれるよりも、この日々がなんだか判らないのなら
なんだか判らないなりに、それなりに楽しめばいい。
楽しんでいけばいい。
急がなくても、いいんだ。

そう思って、譜久村はさっきまでぼんやりと眺めていた窓の外ののどかな風景から
再び黒板に敷き詰められた文字を目で追った。

これは譜久村聖が2年になったばかりの頃の記憶。
瞬きをした。

649名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:12:52
「女の子が、助けてくれたんだ」
 「女の子?」
 「私、どうすればいいのか判らなかったの。支えられなければ動かない足
 なんていらないって思ってた。でも、違ったの。私は、いつでも支えられてた。
 一人で立ってるって思ってた、独りで走ってるって思ってた。
 でも違った、私は、間違ってた、ずっと、ずっと間違い続けて、手遅れに
 なるかもって時に、その時に、あの子が助けてくれたの。
 やり直すチャンスをくれたの。もうダメかもしれないけど、頑張れるかもって。
 ねえ聖、私、まだ言ってないことがあるの、その子に―――」

ベットに横たわる彼女は弱弱しく泣いていたが、それは後悔や絶望でも
ない、ただ力を抜いて、安心したように。
気付けば譜久村は、屋上のドアを回していた。今は昼休み。今が現在。
微かに聞こえる話に耳を傾ける。

 「"きょーめいしゃ"?」
 「ほとんど敵にしか言われないけどね」

鞘師はどこから取り出したのか、チョークでコンクリートに文字を書く。
「共鳴者」と書いた後に、変なキャラクターが付け加えられている。

 「はあ、そうなんですか」
 「なんか冷静になってる?」
 「いや、驚いてほしいなら驚くよ、リアクション込みで」
 「いいよ別に」

空に近い場所に、二人は居る。
誰かが来るような気配はない、鈴木の姿を見ているのは何人も
居る筈なのに、それを追ってきた人間は一人も居なかった。

650名無し募集中。。。:2012/07/03(火) 03:24:06
以上です。
今回の新曲の特設サイトが出来たらしいですね。
プロフィールムービーはかなりアリガタイ。
http://www.youtube.com/watch?v=UkliS4_2xWQ

>>714
ロリコン言うな(ローキック×9)

-------------------------------ここまで。
少し作品が多く投下されてるようなので、少し間を
置いてもらえると助かります。
いつでも構わないので、よろしくお願いします。

651名無しリゾナント:2012/07/04(水) 00:36:34
作品がたくさん上がってるので途切れたときで構いません。
よろしくおねがいします。
出会い方とか能力とかいろいろあっていいです、よね?と
ちょっと弱気になりつつ投下w

652名無しリゾナント:2012/07/04(水) 00:38:58

れいなと香音が同じタイミングで耳を塞いだその時、愛佳が両手で目を覆った。
れいなの手から包丁が滑り、指の薄い皮膚を撫でながら床に落ちる。
白い指先から真っ赤な血が溢れ出すその刹那、絵里の指先からも鮮血が生まれ
それが流れ落ちるより早くさゆみが能力を開放した。

キィィィィ、と耳元で電車が猛スピードでカーブに差し掛かる。
鉄が強い力で擦れ、火花が散る。
轟音を響かせながら、車両が何台も途切れることなく通過していく。
 
香音が耳を手で塞いだまま顔を歪め、目をきつく瞑り天井を仰いだ。
あまりの音にれいなは蹲り、歯を食いしばった。声にならない声が漏れる。

愛佳の脳裏に映し出されるいくつもの映像。
重なり、混じり、走馬灯のように流れていく。
そのスピードに追いつけず愛佳は突っ伏し幾度となくカウンターに頭を打ち付けた。

653名無しリゾナント:2012/07/04(水) 00:47:05

「生田!!!!」

そう叫んだのは愛だったか、里沙だったか。
リゾナントが紫色の光で覆われた時、3人は同時に意識を失い見えない何かから開放される。

「ダレ!?」

拳を握り立ち上がるジュンジュンとリンリン。それにつられ里保も腰をあげ鞘を握る。
意識を失った所為でバランスを無くし椅子ごと倒れそうになった香音の身体を聖が支えた。 
 
「小春、光井の映像映せる?あたし光井の中に入っていくから。」

里沙の言葉に小春が頷き、カウンターに突っ伏したままの愛佳に触れる。
愛は全神経を愛佳の、里沙の意識に集中させた。
 
紫色の中にピンクが生まれ、そしてその中にオレンジが混じる。
絵里は能力を開放しさゆみと衣梨奈の力を風に乗せた。

「きたっ」

小春が叫ぶ。
愛佳の見た映像が小春の能力によって目に見えるものとして映し出される。

654名無しリゾナント:2012/07/04(水) 00:48:06


 重なり、混じり、ものすごいスピードで流れる映像。


 大声で泣き叫ぶ少女。振り上げられる拳、噛み付く。血飛沫
 暗い大きな部屋。蔑む視線。砂埃、細い足、抉れた膝。
 強いフラッシュ。靡く長い髪。笑顔。ニコリ。吊り上げられた目。罵倒。
 充血した瞳。鋭い眼光。歪む世界。空が…落ちる。闇、闇、闇。


 誰か、ねぇねぇ。誰か―――…


 
 新しい未来が動き出す。それは、光か。それとも闇か。

655名無しリゾナント:2012/07/04(水) 00:52:50
>>652-654 いいタイトルが浮かばないのでタイトルなしで。以上です
続きは妄想してますが設定が自分勝手すぎるので葛藤中ですw
リゾナントに13人集まったらきっと満員でしょうね。


―――
代理投稿お願いいたします。

656名無しリゾナント:2012/07/04(水) 12:32:44
スレも終わりに近づきつつあるのでいっときますか
ひとまず先に>>650さんの方から

657名無しリゾナント:2012/07/04(水) 12:39:16
とりあえず完了
>>651さんのに関してはまた間隔を空けた方が良いのかな

658名無し募集中。。。:2012/07/05(木) 12:09:20
>>650です。
代理投稿ありがとうございました。
夏になったからなのか投下の量が増えてきましたね。

659名無しリゾナント:2012/07/05(木) 12:56:49
>>655
とりあえず完了しました

660名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 01:04:28
>>795-798 の続き。

昨日のように蘇るあの出来事があったはずの屋上は、何事もなかったように
形を保っていて、維持していて、鳥がフェンスの上で立っている。
ただ夢ではないことだけが、鈴木の記憶に残っていた。

鈴木は両手をあげようとした形で鞘師に止められ、ゆっくりと腕を下げる。
手にあったサイダーの中身がポチャン、と揺れた。
いつものように晴れた青空の色を水で薄めたような其れ。

 「≪共鳴者≫はね、【ダークネス】を倒すヒトのことだよ。
 かのんちゃんが見たのがそれ、私は、それを追ってここに来たんだ」
 「…なんでここなの?」
 「別にここじゃなくても良かったと思う。簡単に"悪意"を生産して、なおかつ
 まとめて効率的に集めれる場所としては良いってだけ」
 「ニワトリって感じか」
 「うまいね」
 「別に笑わせるために言ったんじゃないよっ。…その制服の学校も?」
 「…そうだね」

地雷踏んだ?
鈴木は暗い影を落とす鞘師に何も言えなくなってしまい、サイダーを傾ける。
何かと事情はあるんだろうと思ったが、話がリアルを通り越してしまったらしい。
疲労度満載でここに来たことが馬鹿みたいに感じる。
きょーめいしゃだとかだーくねすとか、今まで聞いたことのない単語は
新しく学ぶ英文よりも理解に悩む。

 「あのさ、なんであたしには"アレ"が見えるの?」

661名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 01:05:48
鈴木は自分の目を人差し指で示す。
あの時、鞘師は自分のチカラを知って学校のあの場所に連れ出し、そして感じた。
どうして自分には、あの【闇】が"みえた"のか。

 「多分、光に触れたからだと思う」
 「ヒカリ?」
 「かのんちゃんのチカラは"音"から"色"を探ることが出来る。
 それに光が加わったことで、【闇】を感じれるようになったんじゃないかな」
 「…へえ」 

つまり見えなかったものが見えるようになったという事なのか。
ヒカリとかヤミとか、それにしては少し難しい言葉で彼女は説明をする。
鞘師は本当に宇宙人かなにかかもしれないと思った。
鈴木の表情に気付いたのか、鞘師は口を線に引き、視線を伏せる。

 「これが光の正体」

不意に取り出されたのは、見覚えのある小さな箱。
「あ」と漏らす鈴木に、布で包まれたソレが姿を現した。
微かにアメジストのヒカリを帯びた、ガラスレンズ。

 「これ、かのんちゃんに預けるね」
 「え、なんで?」
 「おまじないだよ。あとお礼。それがあればかのんちゃんのチカラも
 もっと扱えるようになるかもしれないから」

差し出される箱を鈴木は恐る恐る持ちあげる。
輝きを見ていると、何故だか安心した。ホゥ、と息を吐く。

662名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 01:08:15
 「りほちゃんは、なんでこんな事に巻き込まれてるの?
 そのきょーめいしゃってヤツだから?」
 「かのんちゃんは神様を信じてる?」

鞘師から意外な存在の名前を出されたが、鈴木は素直に頷いた。

 「神様がヒトの願いを叶えるなら、神様の願いを叶えるのは誰だと思う?」
 「誰って言われても、神様は万能だよ」
 「じゃあなんで救われない人がいるか分かる?」
 「それは…」
 「つまりそういう事だよ。私がこうなろうって思ったのは。
 神様ができない事をしようってね」
 「神様…ねえ」

神様はいるのかと問われれば、居ると鈴木は思う。
だって願いを叶えて欲しいとお願いするのは『神様』だから。
だから思いもつかなかった。

『神様』の願いを叶えるのは誰かなんて。
鞘師が浮かべる『神様』は、一体どんな姿をしているのだろう。

 不思議な気分だった。あんな事があったのに、世界は何事も無く平和で。
 あれが夢のような気がして、箱のヒカリに安堵していて。
 鈴木は、あの時の夢や、あの時の現実を口にする事はしなかった。

鞘師はサイダーを一口飲んで、僅かに視線を向ける、開いたドアがゆっくりと。

663名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 01:14:00
以上です。
ようやくあの二人と合流できる所まで辿り着いたorz
実に日常的で実に非日常な日々はまだまだ続きます。

------------------------------ここまで。
●の買い方が分からないのもあるのですが、これ以上代理を
お願いすると規制になるかもしれないので、何とか
しないといけないとは思うのですが…いつでも構わないのでよろしくお願いします。

664名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:00:49
初めてですが行ってきます

665名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 02:07:43
行ってきました
先の読めない展開が大好きです
乙です

666名無し募集中。。。:2012/07/06(金) 13:17:36
>>663です。
代理投稿ありがとうございました。
できれば>>845-847とどこまでの書き込みかを明記して
もらえると良かったのですが…。

667名無し募集中。。。:2012/07/07(土) 20:44:00
>>845-847 の続き。

 「――― みーずきっ」
 「うわひゃあっ」
 「なにしてんの?こんなところにへばり付いて」
 「な、なんだえりぽんか。驚かさないでよ。なんでいるの?」
 「質問を質問で返すなんて聖ひどいっちゃねえ。んー?あそこにいるのって確か敵怪人…」
 「えりぽん」
 「冗談っちゃん、えーとそうだそうだ、香音ちゃんだ。でも隣は知らない子。
 制服もみたことないし、もしかして侵入者っ?」
 「違うよ、ええとあの子はその、友達なの、そう友達っ」
 「そうなの?じゃあ別に隠れることないっちゃない?おーい、そこの二人ー」
 「あっ、ちょっとえりぽん!……もおKYっ」

譜久村は飛びだした生田に叫んだ。
結果的にその声で二人に気付かれたのだが、生田が携帯を構える。

パシャリ。
携帯を顔から離すと、鞘師に向けて笑顔を浮かべた。

 「見かけない子っちゃね。名前はなんて言うの?」

突然の訪問者に鈴木はうわっと思った。
生田衣梨奈、何故ここに?
その背後から出て来た譜久村が慌てて生田の肩を掴む。

 「ご、ごめんね二人共っ、その、盗み聞きしようなんて思ってなくて…」
 「何言っとうとよ、壁にへばりついとったやん」
 「わー!わー!」
 「ねえそっちに行っても良いっ?」

668名無し募集中。。。:2012/07/07(土) 20:46:23
その言葉とは裏腹にがっつりとはしごを上って来る生田。
鈴木は慌てて箱をポケットに突っ込むと、鞘師の影に隠れるように移動する。
生田の後に上がってきた譜久村は気まずそうに笑顔を浮かべていた。

 「へえ、こんな所上がったの初めてだけど、良い景色っちゃねえ。
 で、あんたはどこの子?えりなはここの学校の2年っちゃけど」

鈴木と譜久村が鞘師に視線を注ぐ。
すると、鞘師は薄く笑顔を浮かべて、こう言った。

 「初めまして"えりなちゃん"。
 今度ここに転校することになった鞘師里保と言います」

 *



 「――― 知ってる?なんかさ、転校生くるらしいよ?」

黎明学園一年の生徒達は、朝一番、教室に入った瞬間から
この話題で盛り上がっていた。
ただその盛り上がりは普通とは少し違っていて。

 「転校生ってマジ?」
 「だってさあ今って…」
 「だよねえ…」
 「まだ"四月"でしょ?」

669名無し募集中。。。:2012/07/07(土) 20:47:24
四月に入学式があり、その一週間後に一学期の始業式。
さらにその約一週間後が、今日。五月に入ろうという下旬だ。
ちなみに天気は相変わらずの晴天。
気温も高くなく風もゆるやかで、たいへん気持ちのよろしい一日が始まる予感。
中学生活は始まったばかりだ。

それなのに、転校生がやってくる。
妙なタイミングなのもあって、その騒動は他のクラス、他の学年にも飛び火しようとしていた。
そんな中で一番気になるのは。

 「ていうかオトコ!?オンナ!?」

それぞれがそれぞれに想像、妄想を膨らませる。
ああだこうだ、イメージは拡大していく。
ただ大概、冷たい現実。

日常の中のちょっとした刺激的な出来事は、そうやって幕を下ろす。
そのはずだった――― 。


 ――― 何を言い出すんだこの子は。

きょとんとする生田に、どう反応すれば良いのか判らない鈴木と譜久村。
鞘師はさも当然のようにドヤ顔を隠さない。

 「新しい学校が気になって、ちょっと忍びこんじゃったの。
 ここはあまり人も来ないから、丁度いいかなって思って」
 「…あはっ、そっか転校生かあ、やることが大胆っちゃねえ」

670名無し募集中。。。:2012/07/07(土) 20:52:20
生田も笑う、鞘師の言葉に何の疑いも見せずに、純粋に受け止めていた。
そんな二人をよそに、鈴木とその隣に移動してきた譜久村は変に焦っている。
肩を掴まれた。

 「ねえ、転校ってホント?」
 「いや、今初めて聞いて…ていうかなんでみずきちゃんがいるの?」
 「私は里保ちゃんに用があって……それを言えば香音ちゃんだって。
 ずっと寝込んでるから今日も休むってお母さんから聞いてたのに」
 「あーうん、治ったから大丈夫だよ。ほら、このとおり」
 「そ、そうなの?でも気分悪くなったら言うんだよ」

笑顔を含めて表したのが良かったのか、譜久村の優しさにほんわりとした鈴木。
半分は嘘で半分は本当。
ただ説明するにはいろんな意味で面倒くさい。
ふと、視線に気づいたかと思うと、鞘師がこちらを見ていた。
鈴木ではなく、譜久村の方に。

 「フクちゃん、私に何か聞きたい事があるんでしょ?」
 「え?あ、ええと…」
 「良いよ、ここで話してもらっても」
 「でも二人が…」
 「なになに?なんの話?」

鞘師の言葉に戸惑う譜久村は、だが他の二人の視線も集まる。
口にした時点で遅し。
自分の知らない顔ではないというのもある。
諦めたように一呼吸つき、おもむろに口を開いた。

671名無し募集中。。。:2012/07/07(土) 21:02:33
以上です。
4人の出会いは偶然のように歩き出す。

>>30
やっと洞窟から出て来ましたねおかえりなさい(殴

----------------------------ここまで。
す、進まない…(汗
ただここで4人を合流させないと布石の意味がないので。
いつでも構わないのでよろしくお願いします。

672名無しリゾナント:2012/07/08(日) 21:13:01
ちょうどスレも空いてるようですので行ってまいります


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